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上訴/上告

上告の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

上告は、高等裁判所がした第一審・第二審の判決に対して、憲法違反や判例違反などの法定の理由がある場合、または法令解釈上重要な事件として最高裁判所が自ら受理した場合に行うことができる不服申立てです。上告審では、これらの理由がなくても著しく正義に反する事情があれば原判決を破棄できる一方、理由がないことが明らかなときは弁論を経ずに棄却されることもあります。原判決を破棄した場合の処理(移送・差戻し・自判)や、判決確定後の訂正手続についても条文で定められています。

上告
区分事由の内容破棄の要否
405条1号憲法違反・解釈の誤り原則破棄
405条2号最高裁判例と相反原則破棄
405条3号高裁判例等と相反(最高裁判例なし)原則破棄
406条法令解釈上重要な事件最高裁が職権受理
411条各号著しく正義に反する事由破棄は裁量
  • 410条1項但書:判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合は破棄しない。
  • 410条2項:405条2号・3号のみの場合、判例を変更して原判決を維持することもできる。
  • 412条:管轄を誤って認めたことによる破棄は、管轄控訴裁判所か管轄第一審裁判所に移送する。
  • 413条:その他の理由による破棄は差戻し・移送が原則だが、記録・証拠で直ちに判決できるときは上告裁判所が自判できる。
  • 413条の2:即決裁判手続事件は、411条3号(重大な事実誤認)を理由には破棄できない。
  • 415条:上告裁判所の判決内容の誤りは、宣告日から10日以内の申立てにより訂正でき、この期間は延長できる。
1

上告

上告について、条文は何を定めているか。

第405条上告できる3つの理由を定める1項・3号判例 101件
  • 憲法違反や憲法解釈の誤りがある場合
  • 最高裁判例と異なる判断をした場合
  • 最高裁判例がないとき、高裁等の判例と相反する場合
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第406条重要な法令解釈は最高裁が自ら受理できる1項判例 9件
  • 405条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉の理由がなくても対象になりうる
  • 法令解釈上重要な事件に限られる
  • 判決確定前に限り、規則の定めで受理する
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第407条上告理由は上告趣意書に明示する1項判例 17件
  • 規則で定める方法により理由を明示する必要がある
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第408条理由がないと明らかなら弁論なしで棄却できる1項判例 16件
  • 上告趣意書その他の書類から明らかな場合に限る
  • 判決で上告を棄却する
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第409条上告審では被告人の召喚は不要1項判例 22件
  • 公判期日に被告人を呼び出さなくてよい
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第410条405条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉の理由があれば原則破棄2項判例 58件
  • 判決に影響しないことが明らかなら破棄しない
  • 2号・3号のみの理由なら、判例変更で原判決維持も可
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第411条理由がなくても著しく不当なら破棄できる1項・5号判例 318件
  • 判決に影響する法令違反や著しく不当な量刑があるとき
  • 重大な事実誤認や再審請求できる事由があるとき
  • 判決後に刑の廃止・変更・大赦があったとき
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第412条管轄違いでの破棄は管轄裁判所へ移送1項判例 2件
  • 不法に管轄を認めた場合、管轄控訴裁判所か第一審裁判所に移送する
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第413条その他の理由の破棄は差戻し・移送が原則1項判例 24件
  • 原裁判所や第一審裁判所、同等の他裁判所に移送する
  • 記録・証拠で直ちに判決できるなら上告裁判所が自判できる
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第413_2条即決裁判手続事件は事実誤認を理由にできない1項判例なし
  • 411条3号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉(重大な事実誤認)による破棄はできない
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第414条控訴の規定を上告にも準用する1項判例 71件
  • この法律に特別の定めがない限り、前章(控訴)の規定を準用する
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第415条判決内容の誤りは申立てで訂正できる3項判例 23件
  • 検察官・被告人・弁護人が申立てできる
  • 宣告があった日から10日以内に申立てが必要
  • 上告裁判所が適当と認めれば期間を延長できる
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第416条訂正の判決は弁論なしでできる1項判例 5件
  • 弁論を経ずに訂正判決ができる
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第417条訂正しないときは決定で申立てを棄却する2項判例 8件
  • 速やかに決定で棄却する
  • 訂正判決に対しては415条1項〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉の申立てはできない
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第418条上告裁判所の判決が確定する時期を定める1項判例 1件
  • 宣告日から415条〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉の期間(10日等)を経過したとき
  • 期間内に申立てがあれば、訂正判決または棄却決定があったとき
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第405条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入部分のみが破棄された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和63年3月14日 昭和61(あ)174
登載
集刑 第248号677頁
参照法条
刑法21条,刑訴法405条2号,刑訴法410条1項
論点2第405条刑事訴訟法

刑訴法四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉が憲法八一条に違反する旨の主張が原判決に対する論難ではないとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和62年9月7日 昭和62(あ)605
登載
集刑 第247号1頁
参照法条
憲法81条,刑訴法405条
論点3第405条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入部分のみが破棄された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和62年7月16日 昭和62(あ)226
登載
集刑 第246号195頁
参照法条
刑法21条,刑訴法405条2号,刑訴法410条
論点4第405条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入部分のみが破棄された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和61年10月21日 昭和61(あ)369
登載
集刑 第244号109頁
参照法条
刑法21条,刑訴法405条2号,刑訴法410条1項
論点5第405条刑事訴訟法

言渡裁判所及び言渡日のみを指摘するにとどまる判例違反の主張は、判例の具体的な摘示があるとはいえない

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年9月21日 昭和57(あ)690
登載
集刑 第228号435頁
参照法条
刑訴法405条
論点6第405条刑事訴訟法

一 判例違反の主張が、実質は事実誤認、単なる法令違反の主張された事例

二 判例違反の主張が、前提を欠くとされた事例

三 引用の判例が刑訴法四〇五条二号、三号にいう判例にあたらないとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和57年9月17日 昭和56(あ)1662
登載
集刑 第228号371頁
参照法条
刑訴法405条2号,刑訴法405条3号
論点7第405条刑事訴訟法

刑訴法四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉は憲法八一条に違反する旨の主張が「欠前提」とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年2月5日 昭和56(あ)1547
登載
集刑 第225号651頁
参照法条
憲法81条,刑訴法405条
論点8第405条刑事訴訟法

判例違反の主張が限判決の所論判示部分は所論の趣旨を含むものではないとして「欠前提」とされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和57年1月26日 昭和56(あ)1377
登載
集刑 第225号99頁
参照法条
刑訴法405条2号
論点9第405条刑事訴訟法

量刑不当を理由とする破棄自判の原判決が手適用した罰条についての規定違憲の主張を原審不経由で処理した事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年2月27日 昭和55(あ)1711
登載
集刑 第221号121頁
参照法条
刑訴法386条1項3号,刑訴法405条
論点10第405条刑事訴訟法

道路交通法一二一条二項の規定違憲(憲法一四条違反)の主張を立法政策の問題として不適法とした事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年11月11日 昭和56(あ)613
登載
集刑 第224号19頁
参照法条
憲法14条,刑訴法405条,道交法121条2項
論点11第405条刑事訴訟法

福岡県青少年保護育成条例一〇条一項〈同一事件が事物管轄を異にする数個の裁判所に係属するときは、上級の裁判所が、これを審判する。〉、一六条一項〈法律による管轄裁判所がないとき、又はこれを知ることができないときは、検事総長は、最高裁判所に管轄指定の請求をしなければな…〉の規定違憲(憲法九四条違反)の主張が不適法とされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和56年11月10日 昭和55(あ)923
登載
集刑 第224号13頁
参照法条
憲法94条,刑訴法405条,福岡県青少年保護育成条例10条1項,福岡県青少年保護育成条例16条1項
論点12第405条刑事訴訟法

下級審がその事件について上告審の破棄理由とした法律上の判断に従つてした判決に対する上告理由が不適法とされた事例

裁判要旨下級審がその事件について上告審の破棄理由とした法律上の判断に従つてした判決に対しては、その法律上の判断を不服として上告することは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和55年7月4日 昭和54(あ)1427
登載
集刑 第218号117頁
参照法条
集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(昭和25年東京都条例44号)1条,集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(昭和25年東京都条例44号)5条,憲法21条,憲法31条,刑訴法405条,裁判所法4条
論点13第405条刑事訴訟法

事案を異にする判例違反の主張とされた事例(控訴審における訴因変更の限界に関するもの)

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年5月30日 昭和55(あ)303
登載
集刑 第217号889頁
参照法条
刑訴法405条2号,刑訴法404条,刑訴法312条1項
論点14第405条刑事訴訟法

刑法一七五条が憲法二一条に違反しないとされた事例

原判決の説示が女性を不当に差別する思想に基づくとして違憲(憲法二四条二項違反)をいう主張が「欠前提」とされた事例

大審院判例を引用する判例違反の主張がすでに最高裁判所の判例があるとして不適法とされた事例―いわゆる「ふたりのラブジユース」事件ー

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年11月28日 昭和54(あ)690
登載
集刑 第220号331頁
参照法条
憲法21条,憲法24条2項,刑法175条,刑訴法405条3号
論点15第405条刑事訴訟法

罰金刑の法定刑を超過した宣告刑が判例違反とされた事例―いわゆる朝日新聞社労組侵入事件―

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年7月19日 昭和53(あ)1439
登載
集刑 第215号121頁
参照法条
刑法130条,刑訴法405条2号
論点16第405条刑事訴訟法

緊急避難に関する判例違反の諭旨が事案を異にする主張とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年11月13日 昭和54(あ)1323
登載
集刑 第216号351頁
参照法条
刑訴法405条2号,刑法37条1項
論点17第405条刑事訴訟法

正当防衛に関する判例の違反を主張する論旨を欠前提で処理した事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和52年7月20日 昭和52(あ)703
登載
集刑 第205号309頁
参照法条
刑法36条,刑訴法405条2号
論点18第405条刑事訴訟法

判例違反の主張が相反する判断をしたものでないことがきわめて明らかであるとして不適法処理されなかつた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和50年2月20日 昭和49(あ)312
登載
集刑 第195号365頁
参照法条
刑訴法405条2項,刑訴法408条
論点19第405条刑事訴訟法

一 最高裁判所のした破棄差戻判決の破棄理由とした法律上の判断に従つた原審の法律上の判断を不服とする上告の適否

二 憲法三七条一項の迅速な裁判の保障条項に反する異常な事態が生じていないものとされた事例

裁判要旨一 最高裁判所のした破棄差戻判決の破棄理由とした法律上の判断に従つた原審の法律上の判断を不服として上告することは許されない。

二 第三次控訴審において約七年間の審理中断が生じたが、それが事後審である控訴審において生じたこと、右控訴は有罪の第一審判決に対する被告人からの控訴であつて、被告人側が審理促進を求めるべき段階にあつたのにこれに則した積極的な態度を示したことが窺われないこと、審理中断により被告人が不利益を蒙つたとみるべき格別の事情もないこと(判文参照)を合わせ考えると、本件においてはいまだ憲法三七条一項に定める迅速な裁判の保障条項に反する異常な事態に立ち至つたものとすべきでない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年5月31日 昭和48(あ)2253
登載
集刑 第192号585頁
参照法条
裁判所法44条,刑訴法405条,憲法37条1項
論点20第405条刑事訴訟法

一 使用者の団体交渉拒否が正当とされた事例
二 原判決自体においてその結論に影響のないことが明らかな憲法解釈を非難する上告趣意の適否

裁判要旨一 A東京支部からの団体交渉の要求に対し、東京都側が、その三日前および前日の際のように数百名の組合員らが東京都庁に押しかけ、場合によつては三日前の際のように庁内における正常な業務が阻害されるおそれがあると判断して(判文参照)、右団体交渉の求めを拒否したのは、正当である。
二 原判決自体においてその結論に影響のないことが明らかな憲法解釈を非難する主張は、適法な上告理由にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和49年2月22日 昭和44(あ)2701
登載
集刑 第191号165頁
参照法条
憲法28条,労働組合法1条2項,刑訴法405条
論点21第405条刑事訴訟法

弁護人の上告趣意における判例違反の論旨が被告人に不利益な主張として不適法とされた事例

裁判要旨一 弁護人の上告趣意のうち判例違反をいう点は、第一審判決が本件業務上過失傷害罪と酒酔い運転の罪とを観念的競合として法令を適用したのに対し、両罪を併合罪と解すべきである旨を主張するに帰し、被告人に不利益な主張であるから不適法である。
二 (参考)本件は、犯罪事実として、業務上過失傷害罪および酒酔い運転の罪のほかに、被害者救護義務違反罪および事故報告義務違反罪がある事案である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年6月9日 昭和46(あ)1938
登載
集刑 第184号589頁
参照法条
刑訴法402条,刑訴法405条2号
論点22第405条刑事訴訟法

控訴審における破棄自判判決と審級利益

裁判要旨第一審で無罪を言い渡された被告人に対し、控訴裁判所が事実調のうえ、右無罪判決を破棄し、自ら有罪の判決を言い渡すこと、およびこの場合、右控訴審判決に対し、上訴において事実誤認等を争う途が閉ざされていることは、憲法三一条ないし四〇条〈弁護人は、公訴の提起後は、裁判所において、訴訟に関する書類(刑事確定訴訟記録法(昭和六十二年法律第六十四号)第二条第一項…〉またはその精神に反するものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年6月15日 昭和44(あ)2560
登載
集刑 第184号637頁
参照法条
憲法31条,刑訴法400条但書,刑訴法405条
論点23第405条刑事訴訟法

一 原判示自体において原判決の結論に影響のないことが明らかな憲法解釈を非難する上告趣意の適否
二 道路交通法違反(無免許運転)罪につき自白の補強証拠があるとされた事例

裁判要旨一 原判示自体において原判決の結論に影響のないことが明らかな憲法解釈を非難する違憲の主張は、適法な上告理由とならない(最高裁判所昭和三九年一二月三日第二小法廷決定・刑集一八巻一〇号六九八頁参照)。
二 原判決が司法巡査作成の実況見分調書から認められる事実として判示するところによると、昭和四五年一〇月二四日午後八時五〇分頃普通乗用自動車が小牧市大字ab番地先道路の歩道の上に乗り上げており、そのかたわらに被告人がいたというのであるから、右実況見分調書は、被告人の自白とあいまって第一審判示の罪となるべき事実第一(注一)を認定するに足りるものである(注二)。
三 (注一)第一審判示罪となるべき事実第一は、「被告人は、公安委員会の運転免許を受けないで、昭和四五年一〇月二四日午後八時四五分頃、小牧市大字ab番地先路上において、普通乗用車を運転したものである。」というものである。
四 (注二)上告趣意は、右(注一)掲記の事実のうち「運転した」との点について自白の補強証拠がない旨主張し、判旨は、これに答えたものである(実況見分調書の内容上それが「無免許」の点についての自白の補強証拠となることは、争いがなかったものである。)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年2月8日 昭和46(あ)1786
登載
集刑 第183号99頁
参照法条
刑訴法405条,刑訴法319条2項,道路交通法118条1項1号
論点24第405条刑事訴訟法

刑法一八六条一項の規定を違憲(三一条〈弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。〉)とする主張が前提を欠くとされた事例

裁判要旨上告趣意は、違憲(三一条〈弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。〉)をいうが、賭博行為が風俗を害し公共の福祉に反するもので、実質的に違法であることは、判例(昭和二五年(れ)第二八〇号同年一一月二二日最高裁判所大法廷判決、刑集四巻一一号二三八〇頁)の趣旨に徴し明らかであつて、この点の主張は前提を欠く。
注 所論は賭博行為が実質的には違法でないとして、これを禁止処罰する刑法一八六条一項の違憲をいうもの。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年5月29日 昭和45(あ)318
登載
集刑 第176号425頁
参照法条
刑法186条1項,憲法31条,刑訴法405条1号
論点25第405条刑事訴訟法

公職選挙法(昭和三七年法律第一一二号による改正前のもの)第二二一条第三項の「選挙運動を総括主宰した者」の意義と右にいう選挙運動の時期

裁判要旨公職選挙法(昭和三七年法律第一一二号による改正前のもの)第二二一条第三項の「選挙運動を総括主宰した者」とは、公職の候補者の選挙運動を推進する中心的存在として、これを掌握指揮する立場にあつた者をいい、右にいう選挙運動とは、当該公職の候補者が正式の立候補届出または推薦届出により候補者としての地位を有するにいたつてから以後に行なわれたものを指称すると解するのが相当である。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和43年4月3日 昭和41(あ)1863
登載
刑集 第22巻4号167頁
参照法条
公職選挙法(昭和37年法律112号による改正前のもの)221条3項,公職選挙法(昭和37年法律112号による改正前のもの)251条の2,刑訴法410条1項但書,刑訴法405条3号
論点26第405条刑事訴訟法

被告人に対し不利益な判例違反の主張として適法な上告理由にあたらないとされた事例

裁判要旨原判決が昭和二五年(れ)第一二六〇号同二六年九月二八日第二小法定判決(集五巻一〇号二一二七頁)と相反する判断をしていることは所論指摘のとおりであるが、右判例に従えば、原判決の是認した第一審判決の適用している刑法第二四九条第一項の未遂の罪よりも重い同条第二項の既遂の罪によつて処断しなければならなくなり、被告人に不利益な結果を来すことになるから、所論判例違反の主張は、被告人に不利益な主張であつて、上告理由として許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年3月6日 昭和42(あ)1736
登載
集刑 第166号311頁
参照法条
刑訴法402条,刑訴法405条2号,刑法249条
論点27第405条刑事訴訟法

権利行使と恐喝罪成否に関する判例変更の有無。

裁判要旨一 判例違反を主張する所論引用の大正二年(れ)第一二一一号同年一二月二三日大審院判決は、当裁判所の判例によりすでに変更されたものである(昭和二七年(あ)第六五九六号同三〇年一〇月一四日第二小法廷判決、刑集九巻一一号二一七三頁・昭和三一年(あ)第四六九号同三三年五月六日第三小法廷判決、刑集一二巻七号一三三六頁参照)。
二 (所論引用の大審院判決の要旨)正当な権利者が欺罔または恐喝の手段を用いて、義務者から正数以外の財物または正数以上の利益を取得した場合、詐欺恐喝の罪は、右権利の範囲外において領得した財産または利益の部分につき成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年3月26日 昭和39(あ)2421
登載
集刑 第155号289頁
参照法条
刑訴法405条,刑法249条
論点28第405条刑事訴訟法

下級審がその事件について上告審の破棄理由とした法律上の判断に従つてした判決に対する上告理由の適否。

裁判要旨下級裁判所が最高裁判所の破棄理由とした法律上の判断に従つてした判決に対しては、その法律上の判断を不服として上告することは許されないというべきである。(昭和三九年一一月二四日第三小法廷決定、刑集一八巻九号六三九頁参照)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年10月12日 昭和40(あ)285
登載
集刑 第157号43頁
参照法条
刑訴法405条,裁判所法4条
論点29第405条刑事訴訟法

控訴審において主張判断のなかつた実体法規に関する違憲の主張が上告理由として不適法とされた事例。

裁判要旨自衛隊員である被告人に対する収賄被告事件の控訴審において、主張判断のなかつた「防衛庁設置法および自衛隊法が憲法第九条に違反して無効であるから、被告人は公務員ではないのにかかわらず、これを公務員として処罰した第一審判決を是認した原判決は違憲である」との主張は、適法な上告理由に当らない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年9月22日 昭和38(あ)884
登載
集刑 第152号883頁
参照法条
刑訴法405条,憲法9条,刑法7条
論点30第405条刑事訴訟法

控訴審において主張判断のない訴訟手続に関する主張であるとして適法な上告理由にあたらないとされた事例。

裁判要旨所論は、原判決は、令状なくして違憲違法の押収手続により押収された物件を証拠として、その支持する第一審判決判示事実を有罪と認定しているから、原判決は憲法第三五条に違反する旨主張するが、かかる論旨は、原審で主張も判断もなかつた訴訟手続に関する主張であるから適法な上告理由に当らない(昭和三五年(あ)第一七二一号、同三六年七月一九日大法廷決定、刑集一五巻七号一一九四頁参照)。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年8月28日 昭和38(あ)2078
登載
集刑 第152号679頁
参照法条
刑訴法405条,刑訴法218条,刑訴法219条,憲法35条
論点31第405条刑事訴訟法

略式命令請求書に司法警察職員作成の現認報告書の記載を引用することの当否。

裁判要旨略式命令請求書に司法警察職員作成の現認報告書の記載を引用することは相当ではないが、このために弁護人の弁護権が妨げられたと認めるべき証跡が全くない場合は所論訴訟法違反の主張は採用しがたい。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年6月27日 昭和38(あ)842
登載
集刑 第151号541頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法405条,刑訴法411条,刑訴法462条,刑訴規則289条,刑訴規則293条
論点32第405条刑事訴訟法

権利行使と恐喝罪成否に関する大審判例の変更の有無。

裁判要旨判例違反を主張する所論引用の大正一二年(れ)第一八〇五号同一三年三月五日大審院決定は、当裁判所の判例により変更されたものである(昭和二六年(れ)第七七号同年六月一日第二小法廷判決、刑集五巻七号一二二二頁・昭和二七年(あ)第六五九六号同三〇年一〇月一四日第二小法廷判決、刑集九巻一一号二一七三頁・昭和三一年(あ)第四六九号同三三年五月六日第三小法廷判決、刑集一二巻七号一三三六頁参照)。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年6月26日 昭和39(あ)258
登載
集刑 第151号517頁
参照法条
刑訴法405条,刑法249条
論点33第405条刑事訴訟法

一 違憲の主張が適法な上告理由とならないとされた事例。
二 集会、思想、表現等の自由に対する侵害の回復及び予防を目的とした逮捕、監禁行為につき違法性が阻却されないとされた事例。(いわゆる舞鶴事件)

裁判要旨一 原判示自体において原判決の結論に影響のないことが明らかな憲法解釈を非難する違憲の主張は、適法な上告理由とならない。
二 第三次中国引揚の帰国者約七百名の参加する帰国者大会において、同大会が非公開とされた後も秘かに会場内に残留して傍聴した舞鶴引揚援護局非常勤女子職員(当二六年)を、同女による右帰国者等の集会、思想、表現等の自由に対する侵害を回復し、かつ将来における同種の法益の侵害を防しようとして逮捕し、ひきつづき午後九時過頃から翌日午前二時頃まで監禁した行為(原判文参照)は、社会通念上許容される限度を超えるものであつて、刑法第三五条の正当行為として違法性が阻却される場合に当たらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年12月3日 昭和36(あ)2865
登載
刑集 第18巻10号698頁
参照法条
刑法35条,刑法220条1項,刑訴法405条
論点34第405条刑事訴訟法

下級審がその事件について上告審の破棄理由とした法律上の判断に従つてした判決に対する上告理由の適否。

裁判要旨下級審がその事件について上告審の破棄理由とした法律上の判断に従つてした判決に対しては、その法律上の診断を不服として上告することは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年11月24日 昭和37(あ)2354
登載
刑集 第18巻9号639頁
参照法条
刑訴法405条,裁判所法4条
論点35第405条刑事訴訟法

一罪に対し数罪の主張と上告の利益。

裁判要旨第二審判決が一罪と認定した事実を数罪であると主張するのは、被告人に不利益な主張である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年10月13日 昭和37(あ)2570
登載
集刑 第152号1007頁
参照法条
刑訴法405条,刑法54条,刑法45条
論点36第405条刑事訴訟法

一 刑訴法第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉にいう「判例と相反する判断をした」というためにはその判断が原判決に示されていることを要するか
二 自白がその信用性に疑いがあつて有罪の証拠とすることは許されないとされた事例

裁判要旨一 刑訴法第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉にいう「判例と相反する判断をした」というためには、その判例と相反する法律判断が原判決に示されているのでなければならない。
二 本件のように被告人と実行行為とを結びつける証拠が、自白のほかになく、その自白が明らかに事実に反しまたは不合理不自然な幾多のものを含み(判文参照)、その信用性に疑いのあるときは、これをもつて有罪の証拠とすることは許されない。
(二について補足意見、少数意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年9月12日 昭和36(あ)2378
登載
刑集 第17巻6号661頁
参照法条
刑訴法405条2号,刑訴法405条3号,刑訴法318条
論点37第405条刑事訴訟法

原判決が、いわゆる「ひき逃げ」事件に関し、既になされた高等裁判所の判例および原判決後になされた右判例と同趣旨の最高裁判所の判例と相反する判断をしている場合と破棄理由。

裁判要旨車両等の運転者等が、交通事故を起しながらいわゆる「ひき逃げ」をした場合には、道路交通法第七二条第一項前段の救護等の義務違反の罪と同項後段の報告義務違反の罪とが成立し、両者は併合罪の関係に立つものと解すべきことは、当裁判所大法廷判決(昭和三七年(あ)第五〇二号、同三八年四月一七日宣告)の示すところである。してみると、これと同趣旨に出でた論旨引用の各高等裁判所の判例は正当として支持さるべきで、論旨は理由があり(原判決言渡当時においては、右大法廷判決はまだなされていなかつたのであるから、本件の場合が刑訴法第四〇五条第三号後段に当ることを妨げるものではない。)、原判決は刑訴法第四〇五条第三号、第四一〇条第一項本文により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年7月19日 昭和37(あ)1918
登載
集刑 第147号851頁
参照法条
道路交通法72条,道路交通法117条,道路交通法119条10号,刑法211条前段,刑法45条,刑訴法405条3号,刑訴法410条1項
論点38第405条刑事訴訟法

刑訴法第四六五条第一項〈略式命令を受けた者又は検察官は、その告知を受けた日から十四日以内に正式裁判の請求をすることができる。〉同規則第三四条〈前条の規定による主任弁護人の権限については、裁判所の規則の定めるところによる。〉の解釈と刑訴法第四〇五条に規程する事由の存否。

裁判要旨所論は、違憲をいうけれども、略式命令が被告人に告知されたというには、その謄本が適法に送達されたというだけでは足りず、被告人が現実に略式命令を知ることを要するものとなし、原決定が略式命令謄本の適法な送達があつたときは、これにより略式命令の告知がなされたものというべきであると解したことを非難するものであつて、刑訴法第四六五条第一項〈略式命令を受けた者又は検察官は、その告知を受けた日から十四日以内に正式裁判の請求をすることができる。〉同規則第三四条〈前条の規定による主任弁護人の権限については、裁判所の規則の定めるところによる。〉を解釈を争う訴訟法違反の主張に帰し、原決定に刑訴法第四〇五条に規程する事由があることを主張するものとは認められない。かつ原決定の右解釈は正当であつて当裁判所はこれを支持する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年11月8日 昭和38(し)44
登載
集刑 第149号61頁
参照法条
刑訴法465条1項,刑訴法405条,刑訴法54条,刑訴規則34条,憲法32条,憲法37条1項,民訴法171条1項
論点39第405条刑事訴訟法

記録の謄写を上告審が許さなかつたことを不服とする上告理由の適否。

裁判要旨所論は、違憲をいうが、当庁で記録の謄写が許されなかつたことに対し不服を申立てるに過ぎず、原判決に対する攻撃とは認められないから上告適法の理由に当らない。

註、上告論旨は、被告人(弁護人なし)は上告趣意書を作成するため記録の謄写を求めたが許されなかつた。公判調書の閲覧だけでは上告趣意書の作成は不可能である。弁護人には謄写権を認めながら、被告人本人にはこれを認めないのは、実質上、上訴権を奪うことになるとして憲法一四条、三二条違反を主張した。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年11月8日 昭和35(あ)1203
登載
集刑 第145号41頁
参照法条
刑訴法40条,刑訴法49条,刑訴法405条
論点40第405条刑事訴訟法

控訴審において主張判断のない訴訟手続に関する主張を上告理由とすることの適否。

裁判要旨控訴審において主張判断のない訴訟手続に関する主張は、適法な上告理由とならない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和36年7月19日 昭和35(あ)1721
登載
刑集 第15巻7号1194頁
参照法条
刑訴法405条,刑法180条
論点41第405条刑事訴訟法

判例違反が判決に影響を及ぼさない事例―刑法第一九条第一項各号の適用の誤り。

裁判要旨原判決は、刑法一九条一項三号、二項により押収にかかる「A印」と刻してある丸型印鑑一個を被告人らから没収するとしていること所論のとおりであつて、論旨引用の大審院昭和七年(れ)第六七五号同年七月二〇日判決の趣旨に相反するわけであるが、原判決が刑法一九条を適用して所論の印章を没収している以上、同条一項各号の適用に誤があつても、判決に影響を及ぼさないことが明らかであるから、原判決を破棄する理由とならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年12月19日 昭和36(あ)2043
登載
集刑 第140号493頁
参照法条
刑訴法401条1項,刑訴法405条3号,刑法19条1項2号,刑法19条1項3号
論点42第405条刑事訴訟法

判例にいわゆる「真実の高度の蓋然性」があるとされた事例。

裁判要旨昭和三四年二月二四日午後八時三〇分から午後一〇時三〇分頃までの間に自転車一台が一関市a所在A病院玄関脇自転車置場において窃取されたこと、被告人は翌二五日午後三時四〇分頃および同日午後八時過頃自転車に乗つていたが、右午後八時過頃被告人が乗つていたものは右の被害品であること、右自転車は同月二六日同市b所在のB病院玄関口に置いてあつたこと、同病院には当時被告人の母Cが入院しており、被告人は同病院に寝泊りしていたことを根拠として第一審の窃盗の認定を支持するのは判例にいわゆる真実の高度の蓋然性があるということができる。
註。判例―昭和二三年八月五日第一小法廷判決昭和二三年(れ)第四四一号判例集二巻九号一一二三頁
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和35年9月8日 昭和35(あ)821
登載
集刑 第135号231頁
参照法条
刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法405条2号,刑法235条
論点43第405条刑事訴訟法

判例違反(法令の適用の誤り)が判決に影響しない事例。

裁判要旨原判決は第一審判決をその科刑重きにすぎるとして破棄自判し、被告人の犯罪事実である第一審判決判示第一の各所為及び第三の所為につき、いずれも刑法第二五三条(第三の所為については更に同第六〇条〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉をも適用)の業務上横領罪の規定を適用しているが、右第三の所為(註。業務上横領に加功した非業務者の加功行為)につき刑法二五三条を適用した点は、法令の適用を誤つたものであり、所論判例に違反していること所論の指摘するとおりである。しかし被告人にはこれと併合罪の関係にある右第一の業務上横領の多数の犯行もあり、原判決はこれら業務上横領のうち犯罪の最も重い罪の刑に法定の加重をなした刑期範囲内において量刑処断していることも原判文上明白であるから、右判例違反は判決に影響を及ぼさないから、判決破棄の理由とならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年6月24日 昭和32(あ)609
登載
集刑 第134号359頁
参照法条
刑訴法405条3号,刑訴法410条,刑法253条,刑法252条1項,刑法60条,刑法65条2項
論点44第405条刑事訴訟法

一 適法な上告理由にあたらない事例
二 包括一罪と認められる事例

裁判要旨一 包括一罪として法令を適用したのに対し、右は併合罪であるとして判例違反を主張することは、自己に不利益な主張であつて適法な上告理由にあたらない。
二 被害者の子女を真実一流歌手として世に出しうる社会的地位背景なくその見込もないのに、その旨欺罔して金員を騙取しようと企て、種々術策を弄してその旨誤信させ、因つて右運動費等の名目で昭和三三年九月三〇日被害者の別宅で二万円、同年一〇月六日頃同本宅で一〇万円、同月一〇日頃同所で二万円、同月一三日頃同所で三万五千円、同月二四日頃同所で壱万円の各交付を受けてこれを騙取所為は、包括一罪を構成する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和35年6月16日 昭和35(あ)265
登載
集刑 第134号87頁
参照法条
刑法45条,刑法246条1項,刑訴法402条,刑訴法405条2号
論点45第405条刑事訴訟法

判例違反の主張がその前提を欠く事例。−期待可能性理論の適用は判例違反である旨の主張−

裁判要旨所論引用の各判例は、いずれもその挙示の証拠により、犯罪事実を認定するに当り、情状の斟酌、法令の解釈その他に関し必要な説示、判断を示したに止まり、判文中期待可能性の文字を使用したとしても、いまだ期待可能性の理論を肯定又は否定する判断を示したものとは認められない。されば所論判例違反の主張はその前提を欠くものであつて採るを得ない。

所論引用の判例
昭和八年(れ)第四二八号同年一一月二一日大審院判決(判例集一二巻二〇七頁)
昭和一一年(れ)第一二〇八号同年一一月二一日大審院判決(判例集一五巻一五〇一頁)
昭和一〇年(れ)第一七八四号同一一年三月五日大審院判決
昭和二五年(う)自第二一四二号至第二一四四号同二六年四月七日名古屋高裁判決(高裁判例集四巻四号三六四頁)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年9月12日 昭和28(あ)3548
登載
集刑 第127号137頁
参照法条
刑法35条,刑法37条,刑訴法405条3号
論点46第405条刑事訴訟法

刑訴法第三三五条第二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の主張に対する判断が示されたものとは認められない事例。

裁判要旨本件行為当時の情況上被告人に他の行為を期待することができない旨の主張があつた場合に、単に暴力行為等処罰に関する法律違反、暴行の有罪事実を認定することは、間接的にも期待可能性なるものの存否につき判断を示したものとは認められない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年7月29日 昭和31(あ)1660
登載
集刑 第126号1153頁
参照法条
刑訴法335条2項,刑訴法410条1項,刑訴法405条
論点47第405条刑事訴訟法

一 優生保護法第一四条第一項第四号による人工妊娠中絶と堕胎罪の成否。

二 最高裁判所、大審院または高等裁判所の判例がない場合、地方裁判所の判例を援用して判例の違反を主張することができるか。

裁判要旨一 優生保護法(昭和二七年法律第一四一号により改正されたもの)にいう指定医師が同法第一四条第一項四号に該当する者に対し、同条第一項本文の規定に従つて人工妊娠中絶を行つた場合には、刑法第二一四条、第二一二条の堕胎罪は成立しない。

二 最高裁判所、大審院または高等裁判所の判例がない場合、地方裁判所の判例を援用して判例の違反を主張することは、刑訴法第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉の認めないところである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年7月11日 昭和30(あ)522
登載
集刑 第126号809頁
参照法条
優生保護法(昭和27年法律14号により改正されたもの)14条1項4号,刑法214条,刑法212条,刑法35条,刑訴法405条2項,刑訴法405条3項
論点48第405条刑事訴訟法

一 一部破棄の一事例
二 原判決が既になされた高等裁判所の判例および原判決後になされた右判例と同趣旨の最高裁判所の判例と相反する判断をしている場合と刑訴法四〇五条第三号の適用

裁判要旨一 原判決中「本件控訴を棄却する」とある部分に対する上告がその理由なく、「当審における未決勾留日数中百弐拾日を原判決の本刑に算入する」とある部分に対する上告がその理由ある本件においては、原判決中「当審における未決勾留日数中百弐拾日を原判決の本刑に算入する」との部分だけを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきものである
二 原判決が既になされた高等裁判所の判例および原判決後になされた右判例と同趣旨の最高裁判所の判例と相反する判断をしている場合には、刑訴法四〇五条第三号〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。〉を適用して、原判決を破棄することができる
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年4月10日 昭和32(あ)908
登載
刑集 第12巻5号866頁
参照法条
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法410条1項,刑訴法405条2項,刑訴法405条3項
論点49第405条刑事訴訟法

一 被告人に不利益な主張であつて、上告理由とすることの許されない事例
二 台湾製パイン・アツプル罐詰の輸入税率

裁判要旨一 刑法第四五条前段の併合罪の関係にあるものとして、(一)関税逋脱、(二)(1)(2)密輸入品運搬、(三)関税逋脱未遂の罪が認定せられ、同第四七条〈訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる…〉第一〇条〈同一事件が事物管轄を異にする数個の裁判所に係属するときは、上級の裁判所が、これを審判する。〉により右(一)の罪を犯情の最も重いものとしてこれに所定の加重をして処断せられたのに対し、右(二)(1)(2)をもつて関税逋脱または密輸入の罪にあたると主張する上告論旨は、被告人にとつて不利益な主張をなすものであつて、上告適法の理由とならない。
二 台湾製パイン・アツプル罐詰は関税定率法別表輸入税表番号三〇一の一にあたり、これによつて輸入税が課せられる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年7月19日 昭和28(あ)5347
登載
刑集 第11巻7号1939頁
参照法条
旧関税法75条1項,旧関税法75条2項,旧関税法76条ノ2第1項,刑訴法405条,刑訴法407条,刑訴法402条,刑訴法351条,関税定率法別表輸入税表番号301の1甲,関税定率法別表輸入税表番号301の2甲
論点50第405条刑事訴訟法

一 憲法違反の主張と認められない一事例
二 刑訴法第二七三条第二項〈裁判長は、公判期日を定めなければならない。〉の合憲性

裁判要旨一 刑訴第二七三条第二項〈裁判長は、公判期日を定めなければならない。〉の規定は、憲法第三二条に違反するというだけであつて、何ら原判決に対する不服の理由を示していない主張は、適法な上告理由と認められない。
二 刑訴二七三条二項は違憲でない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年5月31日 昭和32(あ)178
登載
集刑 第119号293頁
参照法条
刑訴法273条2項,刑訴法405条,刑訴法273条2項,憲法32条
論点51第405条刑事訴訟法

一 控訴審において主張判断のない事項を上告理由とすることの適否。
二 旧関税法第八三条第一項の法意と憲法第二九条。

裁判要旨一 所論は原審において主張判断を経ない事項であるから、上告適法の理由とならない。
二 (所論の要旨)原判決の支持する第一審判決によれば「関税法第八三条第一項により主文第二項記載の物件を没収する」と摘示しており、右物件中にはAが包含せられている。これによつてこれを見れば、右法条中犯人の占有に係るものとして、右船舶を没収したものと解せられる、若し本件船舶が同法条にあたるものとせば、同法条は憲法第一三条、第二九条に違反し無効なりといわざるを得ない。蓋し右Aは、B株式会社の所有品であつて、訴外甲等が賃借し、更に同人等より被告人等が転借占有していたもので、被告人等において密輸入に使用するの企図を以て占有していたとしても、所有者たるB株式会社はかかる企図につきては、何等知ることなきは勿論何等関知せざりしものである。単に賃貸借契約せるのみで、その転借人の行為により、船舶が没収せらるるとせば、会社は何等の故意過失なくして没収されることとなるからである。
三 旧関税法第八三条第一項(昭和二三年法律第一〇七号により改正された明治三二年法律第六一号)は、犯人以外の第三者の所有に属する同条所定の貨物または船舶でも、それが犯人の占有に係るものであれば、右所有者の善意、悪意に関係なく、すべて無条件に没収すべき旨を定めたものではなく、右所有者たる第三者が貨物について同条所定の犯罪行為が行われることまたは船舶が同条所定の犯罪行為の用に供せられることをあらかじめ知つており、その犯罪が行われた時から引きつづき右貨物または船舶を所有していた場合にその貨物または船舶を没収できる趣旨に解すべきであつて、憲法第二九条に違反しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和32年11月27日 昭和26(あ)1897
登載
刑集 第11巻12号3132頁
参照法条
旧関税法(明治32年法律61号−昭和23年法律107号により改正されたもの)83条,旧関税法(明治32年法律61号−昭和23年法律107号により改正されたもの)76条,旧関税法(明治32年法律61号−昭和23年法律107号により改正のもの)83条1項,関税法(昭和29年法律61号)118条,関税法(昭和29年法律61号)118条1項,憲法13条,憲法29条,刑訴法405条,刑訴法414条,刑訴法392条
論点52第405条刑事訴訟法

一 海難審判所のなした裁決における判断は地方裁判所を拘束するか
二 海難審判所のなした裁決は刑訴第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉の判例にあたるか

裁判要旨一 海難事件で審判所のなした過失の有無に関する判断は同一事件について地方裁判所を拘束しない。
二 海難事件で審判所のなした裁決は、刑訴第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉にいう判例にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年6月28日 昭和30(あ)3995
登載
刑集 第10巻6号939頁
参照法条
刑訴法405条,刑訴法317条,裁判所法4条,海難審判法4条1項
論点53第405条刑事訴訟法

一 高等裁判所の判例と相反する判断をした原判決に対する上告と、上告申立後の最高裁判所が先例たる判例及び原判決のいずれをも維持するをえない場合の措置
二 経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉にいう「其ノ職務」の意義
三 経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条にいう「其ノ職務」にあたる一事例

裁判要旨一 原判決が高等裁判所の判例と相反する判断をし、これを理由として上告された場合に、最高裁判所が先例たる判例及び原判決のいずれとも異なる見解に立ち原判決を維持するをえないときは、原判決は破棄すべきものである。
二 当裁判所判例(昭和二八年(あ)第四三八一号同三〇年五月一〇日第三小法廷判決、昭和二八年(あ)第二九〇九号、同三〇年七月五日第三小法廷判決)は、「経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律」二条〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉が、同条の定める会社、組合またはこれらに準ずるものについて、その事業または業務を限定するところにかんがみるときは、同条にいう役職員の職務とは、その職務であれば右にいう事業または業務にかかわりなく、すべて含むと解すべきでないことはいうまでもないが、他面、立法の趣旨がこれらの事業または業務の公共的性質に注目して本条の収賄罪を設けたことを考え合わせると、これを厳に本来の独占的または統制的性質をもつ事務に局限すべきではなく、本来の事業または業務を行うために必要な関係にある事務をも含むべきものとしており、いまこれを変更すべき理由をみない。
三 本件A株式会社が経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律二条別表乙号三〇にいう「地方鉄道法第十二条ノ規定ニ依ル免許ヲ受ケ地方鉄道業ヲ営ム者」である以上、同会社が線路の一部を電化するに当り、その架線工事を請負わせことは、その会社の本来の事業たる運輸事業自体とはいえないが、これを行うために必要な関係にある事務であること明らかである。従つて右会社の役職員がこのような事務を担当している場合には、その事務は右法律二条にいう職務に当るものと解しなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年3月9日 昭和28(あ)4064
登載
刑集 第10巻3号309頁
参照法条
刑訴法405条3号,刑訴法410条,刑訴法413条本文,経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条別表乙号,経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条,経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律5条1項
論点54第405条刑事訴訟法

原判決が証拠として採用していない供述調書の証拠能力についてした判断の違法を主張する上告の適否

裁判要旨原判決が証拠として採用していない検察官作成の第三者に対する供述調書の証拠能力についてした判断が違法であるという主張は、原判決の違法にかかわりないものであるから上告理由として不適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年2月16日 昭和30(あ)2113
登載
集刑 第112号395頁
参照法条
刑訴法321条1項,刑訴法328条,刑訴法405条
論点55第405条刑事訴訟法

一 控訴趣旨に対する判断遺脱の違法と上告理由
二 覚せい剤取締法第四一条第二項の法意

裁判要旨一 所論は憲法三一条違反をいうけれども、その実質は原判決が覚せい剤取締法四一条二項の解釈の誤りの控訴趣旨に対する判断を遺脱したという単なる刑訴法違反の主張であり、かような判断遺脱の主張は刑訴法四〇五条の上告理由にあたらないこと当裁判所の判例とするところである(昭和二六年(あ)第三一三〇号同二七年一月一〇日第一小法廷判決、刑集六巻一号六九頁参照)
二 覚せい剤取締法四一条一項所定の各違反者がたとえ不当の利益を得なかつた場合でもなお情状により同条項所定の刑を併科することができること同条二項の法意として明白である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年10月9日 昭和31(あ)1515
登載
集刑 第115号49頁
参照法条
刑訴法405条1項,刑訴法392条1項,憲法31条,覚せい剤取締法41条1項,覚せい剤取締法41条2項
論点56第405条刑事訴訟法

一 日米安全保障条約第三条〈事物管轄を異にする数個の事件が関連するときは、上級の裁判所は、併せてこれを管轄することができる。〉に基く行政協定第一七条〈検察官は、左の場合には、直近上級の裁判所に管轄移転の請求をしなければならない。〉3(a)(ii)にいう「公務執行中」の意義

二 右行政協定第一七条3(a)(ii)にいう「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」にあたらない一事例。

三 条約の解釈の誤と上告理由。

裁判要旨一 日米安全保障条約第三条〈事物管轄を異にする数個の事件が関連するときは、上級の裁判所は、併せてこれを管轄することができる。〉に基く行政協定第一七条〈検察官は、左の場合には、直近上級の裁判所に管轄移転の請求をしなければならない。〉3(a)(ii)にいう「公務執行中」とは、「公務執行の週程における」という意味であつて、「勤務時間中」と解すべきでない。

二 米国駐留軍所属の伍長が、駐留地の市内を巡回警らの任意の途中で乗用のジープから降りて、一般民家に侵入し、婦女を強姦しようとして障害を加えた場合には、右行政協定第一七条3(a)(ii)にいう「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」にあたらない。

三 条約の解釈、適用を非難するにすぎない主張は、刑訴第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉の上告理由にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年3月3日 昭和29(あ)2439
登載
刑集 第9巻3号423頁
参照法条
日米安全保障条約3条に基く行政協定17条,刑法130条,刑法181条,憲法98条2項,刑訴法405条1号
論点57第405条刑事訴訟法

一 証拠決定に関する意見の聴取は公判調書の必要的記載事項か ―判例と相反する判断をしたことにならない一事例
二 検察官作成の供述調書が証拠能力の認められる事例

裁判要旨一 論旨前段は、第一審が所論Aの検察官に対する第三、四回供述調書を証拠調するにあたり、被告人に対し意見並に同意の有無を確かめた事跡がない、ということを前提として判例違反を主張する。しかし証拠調につき被告人の意見並に同意の有無を確かめることは、公判調書に記載することを必要とする事項ではないから、公判調書にその旨の記載がないからとて、論旨援用の判例のように被告人の意見並に同意の有無が確かめなかつたものということはできない。従つて論旨援用の判例は本件に適切でない。
二 論旨後段は、Aの検察官に対する第三、四回供述調書の内容が同人の公判期日における証言内容と大要同一であるという見解を前提として、右供述調書の取締は不当であり、これを証拠に援用した第一審判決も違法であり、適法な証拠調のない証拠を判決に引用した点においては所論援用の判例にも違背する、と主張する。しかし右Aの検察官に対する第三、四回供述調書の内容を同人の公判期日における証言内容と比較してみると、後者は、金員の援受は選挙事務所の費用等性正当の支出のためになされたものであつた、との趣意を含む点において前者と異なつているから、原判決が、刑訴三二一条一項二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉によつて前者を証拠としたことには何等の違法もない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年3月1日 昭和29(あ)3145
登載
集刑 第103号39頁
参照法条
刑訴法321条1項2号,刑訴法326条1項,刑訴法405条,刑訴規則44条,刑訴起訴190条2項
論点58第405条刑事訴訟法

証拠調請求につき留保したまま決定をしないことの違法性

裁判要旨Aの裁判官に対する弁解録取書謄本についてはその証拠調が留保になつていることの所論のとおりであるが、前記第三回公判調書の記載と対照してみれば、検察官においてその証拠調請求を撤回したものと解するのが相当である。そうしてこれは第一審判決に証拠として採用されていないと認むべきこと、前記説明においておのずから明らかであるから、所論引用の判例は適切でない。註。所論は証拠調請求について決定をしない違法が判例と相反するというのである。本件においては同じ公判期日に取調請求され同様決定留保となつた書証は後の期日に決定取調が行われ、所論の書証のみは何らの決定がなかつた場合である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年3月15日 昭和29(あ)2413
登載
集刑 第103号421頁
参照法条
刑訴法405条,刑訴法298条,刑訴規則190条
論点59第405条刑事訴訟法

主訴因を詐欺罪、予備的訴因を物価統制令違反罪(不当高価販売)とした起訴事実を詐欺罪として判断した判決は同一性質の所為を物価統制令違反罪(不当高価販売)として処断した判例に反するか

裁判要旨主訴因を詐欺罪、予備的訴因を物価統制令違反罪(不当高価販売)とした起訴事実を詐欺罪とした処断した原判決は、同一性質の事件につき訴因を不当高価販売罪として起訴され、判決においても物価統制令違反罪(不当高価販売)の成立を認めた高裁判例に違反するということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年12月26日 昭和29(あ)9
登載
集刑 第111号865頁
参照法条
刑法246条,物価統制令9条ノ2,刑訴法405条3号,刑訴法256条3項
論点60第405条刑事訴訟法

高等裁判所の判例と相反する判断をした原判決に対する上告と、上告申立後最高裁判所によりその判例が変更された場合の措置

裁判要旨原判決が高裁の判例と相反する判断をし、これを理由として上告された場合に、上告申立後先例たる高等裁判所の判例が最高裁判所の判決により変更されたときは、最高裁判所はその上告を棄却すべきものである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年12月21日 昭和27(あ)4637
登載
刑集 第9巻14号2912頁
参照法条
刑訴法405条3号,刑訴法410条2項,刑訴法414条,刑訴法396条
論点61第405条刑事訴訟法

一 覚せい剤取締法第一四条にいわゆる「所持」の概念
二 覚せい剤取締違法第四一条第一項が第一号から第五号までの所為に対し同一の法定刑を定めたことは憲法第一三条に違反するか
三 被告人にとり不利益な主張であつて上告理由として許されない一事例

裁判要旨一 覚せい剤取締法第一四条にいわゆる「所持」の概念は明確を欠くものではない。
二 覚せい剤取締法第四一条第一項がその第一号から第五号までの所為に対し、同一の法定刑を定めたからといつて、憲法第一三条に違反しない
三 押収の覚せい剤を没収しなかつた第一審判決の違法を職権により匡正しないでこれを看過した原判決は違法であると主張する上告論旨は、被告人にとり不利益な主張であつて、上告理由として許されない
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年12月21日 昭和30(あ)2311
登載
刑集 第9巻14号2946頁
参照法条
覚せい剤取締法14条,覚せい剤取締法41条,覚せい剤取締法41条の3,憲法13条,憲法31条,刑訴法405条
論点62第405条刑事訴訟法

一 被告人甲の私選弁護人を相被告人乙の国選弁護人に選任することと公正な弁護権の行使 ―被告人間の利害相反しない事例―
二 裁判所が被告人の私選弁護人を共犯関係に立つ相被告人の国選弁護人に選任する措置の適否
三 被告人と相被告人が利害相反するに至つたが被告人において弁護人の弁護権の行使につき特別の措置をとらなかつた場合とこの点に関する上告理由の適否

裁判要旨一 本件起訴状に記載するような共犯関係においては、これをもつて直ちに当然両被告人は利害相反するということはできないから、第一審裁判書が公判進行の必要上当面の急に応じ同一弁護人を選任したこと自体をもつて、直ちに公正な弁護権の行使を妨げる違法な処置ということはできない。
二 被告人は第一審相被告人と共謀の上詐欺を行つたという被告事件につき、被告人が弁護士Aを私選弁護人に選任した場合、第一審裁判所が第一回公判期日に、右Aを相被告人の国選弁護人に選任したからといつて、直ちに右裁判所の措置を以て、利外相反する被告人に同一弁護人を選任し、公正な弁護権の行使を妨げた違法な措置であるということはできない。
三 被告人は第一審被告人と共謀の上詐欺を行つたという事件において、被告人は共謀の事実を否認し、相被告人の単独犯行であると主張し、相被告人は、被告人の依頼されるままに機械的に行動したに過ぎないと主張したからといつて、弁護人Aの相被告人のための弁護権の行使につき被告人において、異議を述べる等特段の措置を取らなかつた以上、被告人が上告理由においてはじめてその主張をなして争うことは許されないものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年12月20日 昭和29(あ)121
登載
集刑 第111号555頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法30条,刑訴法289条,刑訴法405条,刑訴法38条,刑訴規則29条2項,弁護士法25条
論点63第405条刑事訴訟法

検察官の過誤による違法な刑の執行指揮と上告理由の適否

裁判要旨もし未確定の右第一審判決の刑の執行として被告人が所論のように昭和二五年四月二八日から昭和二六年五月二六日までの間刑務所に収監され服役させられたとすれば右判の執行指揮が違法不当のものであることは論をまたない。しかし所論によれば右は検察官の過誤に基くものであつて、原判決は何等の法令違反もなく又原判決は、この点に関し憲法適法の判断はしないのである。所論は原判決言渡後に生じた右検察官の過誤による執行指揮を理由として種々憲法違反であると主張するけれども、これがため原判決の違法を来たす理由もなく右執行指揮は本件上告の対象とはない得ないものであるから、当裁判所はこれに関し憲法適否の判断を示すに由ないものである。したがつて所論は結局刑訴四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉に規定する理由にあたらないこと明白である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年10月31日 昭和26(あ)117
登載
集刑 第55号981頁
参照法条
刑訴法471条,刑訴法405条
論点64第405条刑事訴訟法

当該事件につき高等裁判所がさきに為した破棄差戻の判決と刑訴法第四〇五条第三号の判例

裁判要旨論旨引用の判決は裁判所法第四条の拘束力があるにとどまり、いまだ刑訴四〇五条三号〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。〉にいわゆる判例には当らない。従つて所論は判例違反をいうけれども、その実質は単なる法令違反の主張に帰し同四〇五条の上告理由に当らない。(本件における破棄差戻判決は審理を尽していないという趣旨のものである)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年8月20日 昭和27(あ)6189
登載
集刑 第98号101頁
参照法条
刑訴法405条3号,裁判所法4条
論点65第405条刑事訴訟法

判例と相反する判断が判決に影響しない一事例

裁判要旨犯罪さえ発覚すれば犯人の誰であるかが判明しなくても刑法第四二条第一項「官ニ発覚セサル前」ではあり得ないとの判断は、「官ニ発覚セサル前」とは犯罪の発覚前または犯人の誰であるかが、判明しない前を意味するとする当裁判所の判例(刑集三巻六号七二一頁)と相反する判断をしたことになるが、原審のこの判断が、職務質問に際し種々弁解した後に自供した場合は自首とはいえないとする判断の余論として判示されたに過ぎないときは、判決に影響しないこと明らかである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年7月16日 昭和29(あ)1484
登載
刑集 第8巻7号1210頁
参照法条
刑法42条1項,刑訴法405条2号,刑訴法410条1項
論点66第405条刑事訴訟法

背任罪成立の一事例 ―大審院令と相反する判断をしたことにあたらない場合―

裁判要旨論旨援用の判例(大審院大正三年十〇月一六日刑録二〇輯一八六七頁)は、「本人に損害を加えたる場合においても」「若しその目的にして本人の利益を図るに在りとすれば」背任罪は成立しないというのである。しかるに原判決は、被告人の「所論保障はその主要な目的が直接本人たるA銀行のためでなくして(A銀行の利益をも無視したものではないとしても)同被告人自己の責任である不当貸付の免責を図るがため」であつたという事実を認めて、これを有罪としたのであるから、前記判例に反するところは少しもない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年3月30日 昭和27(あ)5855
登載
集刑 第93号1007頁
参照法条
刑法247条,刑訴法405条3号,刑訴法408条
論点67第405条刑事訴訟法

違憲を主張する上告がその前提を欠く事例

裁判要旨弁護人富田喜作の上告趣意第一点は原判決の憲法三八条三項違反を主張する。しかし、原判決は第一審判決を破棄し自判しているけれども、自から被告人に対する犯罪事実を認定しているものではなく、単に第一審判決の確定した犯罪事実に対し法律を適用したにすぎないから、原判決には所論の如き違法の存する余地はないわけである。従つて論旨は理由がない。
註。原判決は量刑不当として破棄自判したのであるが「第一審判決の確定した事実に対し法律を通用する」と判示した場合にかかる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年2月26日 昭和28(あ)4149
登載
集刑 第92号815頁
参照法条
刑訴法405条,刑訴法408条
論点68第405条刑事訴訟法

証拠の標目として掲げられている証人の供述中に伝聞にかかる部分がある場合その部分を証拠としたものと解すべきであるか

裁判要旨一 判決に証拠の標目として掲げられている証人の供述中に伝聞にかかる部分がある場合、その部分について特に排除決定、または判決に当該部分を除外する旨の説示がないからといつて、その伝聞にかかる部分をも証拠としたものと断定すべきではない。
二 判決に証拠の標目として掲げられている証人の供述中伝聞にかかる部分を除いた他の部分とその余の証拠とによつて判示事実が充分に認定できる場合には、右証人の供述については、伝聞にかかる部分を除いた部分だけを証拠としたものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年2月18日 昭和27(あ)5694
登載
刑集 第8巻2号145頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法320条,刑訴法324条2項,刑訴法326条,刑訴法405条3号,刑訴法401条2項
論点69第405条刑事訴訟法

一 昭和二三年七月七日法律第一一〇号による改正後で、同二五年七月三一日法律第二二六号による改正前の地方税法第一三六条第二項の合憲性
二 昭和二三年七月七日法律一一〇号による改正後で、同二後年七月三一日法律第二二六号による改正前の地方税法(以下旧地方税法と略称)第一三六条第二項の不納入罪の成立と同法第四一条の督促との関係
三 旧地方税法第一三六条第二項の犯罪の日時の判示に欠けるところのない事例
四 昭和二三年八月一日以後同二四年六月一日以前に為された入場税および同附加税犯則事件と通告処分および告発
五 入場税法の犯則取締について通告処分や告発を必要とするものと定めるか否かによつて法令の違憲の問題を生ずるか
六 税法違反被告事件について大審院民事判例を引用して判例違反を主張することの適否

裁判要旨一 旧地方税法第一三六条第二項は憲法第一三条、第三六条に違反しない。
二 旧地方税法第一三六条第二項の不納入罪は特別徴収義務者が納入すべき金額を納入しないで法定の期限を経過することによつて当然に成立するものであつて、これに対して同法第四一条の督促状を発することは右不納入罪の成立要件ではない。
三 判決に被告人が入場税および同附加税を徴収した年月日を明示し、徴収した入場税を府税条例所定の期限内に所定の場所に納入しなかつた旨判示してある以上、旧地方税法第一三六条第二項の犯罪成立の年月日は判示されているものというべきである。
四 昭和二三年八月一日以後同二四年六月一日以前に為された入場税および同附加税犯則事件については国税犯則取締法所定の通告処分および告発を訴訟条件と解すべき余地はない。
五 入場税法の犯則取締について通告処分や告発を必要とするものと定めるか否かというが如きことは、国が立法政策として自由に決し得るところであつて、このことで法令の違憲問題を生ずるものではない。
六 税金不納入と刑事責任との関係が問題となつている税法違反被告事件において、債務の履行遅滞または不履行と損害賠償との関係に関する民事判例を引用して判例違反を主張するのは失当である。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和29年11月10日 昭和26(あ)990
登載
刑集 第8巻11号1749頁
参照法条
旧地方税法136条2項(昭和23年7月7日法律110号による改正後で、同25年7月31日法律226号による改正前のもの),旧地方税法136条1項,旧地方税法136条2項,旧地方税法136条3項,旧地方税法140条,旧地方税法36条,旧地方税法37条,旧地方税法41条,旧地方税法46条,旧地方税法99条,旧地方税法141条,旧地方税法151条,憲法13条,憲法36条,刑訴法335条,刑訴法405条3号,昭和24年法律第169号中の地方税法に第126条の2を加えた部分,昭和24年法律第169号中の地方税法に第126条の2を加えた附則1項,昭和24年法律第169号中の地方税法に第126条の2を加えた附則3項,大阪府税条例58条,大阪府入場税条例6条,大阪府入場税条例7条,大阪市税条例39条,地方税法(昭和23年法律110号による改正後で、同25年法律226号による改正前のもの)136条2項
論点70第405条刑事訴訟法

一 刑訴応急措置法第一八条による特別抗告にも刑訴第四〇五条第二号〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。〉、第三号、第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉の準用があるか
二 検察官から刑の執行猶予言渡の取消請求があつた場合の決定手続の方式

裁判要旨一 刑訴応急措置法第一八条による特別抗告には、刑訴第四〇五条第二号〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。〉第三号および第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉は準用されない。
二 本件に適用される旧刑訴三七四条二項〈控訴をするには、申立書を第一審裁判所に差し出さなければならない。〉の規定によれば、検察官から執行猶予の言渡の取消請求があつた場合には、裁判所は、被告人又はその代理人の意見を聴き決定を為すべきものであつて、決定を為すには国選弁護人を選任したり、口頭弁論に基いたりする必要のないものであることは論を俟たない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和28年6月10日 昭和26(し)47
登載
刑集 第7巻6号1419頁
参照法条
刑訴応急措置法18条,刑訴法405条,刑訴法411条1号,刑法26条,旧刑訴法374条2項
論点71第405条刑事訴訟法

一 判例と相反する判断をした一事例
二 外国人登録不申請罪の性質
三 外国人登録令に違反して登録申請をしない行為の公訴時効の起算点
四 勅令の定める登録義務を通牒により左右することができるか

裁判要旨一 原判決が、所論のごとく、要するに外国人登録令に定める登録不申請罪は、所定期間の三〇日を徒過することにより既遂となると同時に犯罪実行々為も終了しその時から公訴の時効は進行するものと判断して、結局被告人に対し免訴の言渡をしたこと、並びに、所論引用の原判決の言渡前になされた各高等裁判所の判決が、要するに所定期間経過後においても登録義務は依然存続しその間犯罪状態継続し公訴の時効期間はその義務終了の時から進行する旨の判断をしたものであることは所論のとおりである。従つて、原判決は、右各高等裁判所の判例と相反する判断をしたものといわなければならない。
二 外国人登録令施行の際本邦に在留する外国人で、同令附則第二項の規定に違反して三〇日以内に所定の登録申請をしなかつた者については、その登録義務を履行するまで不申請は継続して成立する。
三 外国人登録令附則第二項所定の三〇日以内に登録申請をしなかつた罪の公訴時効はその後当該外国人が本邦に在留する限りその登録義務を履行したときから進行する。
四 原判決引用の通牒(昭和二四年一一月一日法務府民事局民事甲第二四九一号(六)一五九号法務府民事法務長官、法務府刑政長官連名の各都道府県知事宛未登録外国人の新規登録申請に関する件)は、未登録外国人の新規登録申請あつたときは、市区町村長は一応これを受取りおき、退去命令又は退去強制の処分がなされるか否かを見定め、それがなされないで引続き本邦に在留することを許容されたとき正式に申請を受理して登録証明書を発行する簡捷な行政措置を執るよう指示したに止り、未登録外国人の新規登録申請を原則として受理しないことを命じたものとは解されないばかりでなくかかる通牒を以て前記勅令の登録申請義務を左右することのできないこと多言を要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年5月14日 昭和27(あ)753
登載
刑集 第7巻5号1026頁
参照法条
外国人登録令4条,外国人登録令12条,外国人登録令附則2項,外国人登録令附則3項,刑訴法405条,刑訴法250条,刑訴法253条1項,昭和24年政令381号外国人登録令附則7項,通牒(昭和24年11月1日法務府民事局民事甲2491号(6)159号法務府民事法務長官、法務府政長官連名の各都道府県知事宛未登録外国人の新規登録申請に関する件)
論点72第405条刑事訴訟法

大審院によつて既に変更された決定に違反するとの主張と上告理由の適否

裁判要旨大審院のした決定であつても、大審院のその後の決定で既に変更されている以上、右変更前の決定と相反する判断をしたとの主張は、刑訴第四〇五条第三号〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。〉の上告理由として不適法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年8月30日 昭和27(し)16
登載
刑集 第6巻8号1063頁
参照法条
刑訴法405条3号,裁判所構成法49条
論点73第405条刑事訴訟法

一 委任命令は「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」の規定により失効するか
二 判例と相反する判断をしたことにならない一事例
三 証拠決定をしないままで結審した違法が判決に影響を及ぼさない一事例
四 証拠調をしない証拠を証拠とした違法が判決に影響を及ぼさない一事例

裁判要旨一 委任命令は、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」の規定により失効しない。
二 証拠決定をしないまま弁論を終結したにすぎないだけの場合は、証拠決定をしないで弁論を終結するのは絶対的上告理由にあたるとした当裁判所の判例と相反する判断をしたことにならない。
三 証拠決定をしないままで弁論を終結した違法があつても、申請された証人が単に被告人の性格を証明するためのものにすぎないときは、刑訴411条1号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にいわゆる判決に影響を及ぼす違法があるとはいえない。
四 証拠調をしない証拠を証拠としたところでそれが他の適法な証拠の証明力を強めるためのものにすぎないものであるときは、刑訴第四一一条第一号にいわゆる判決に影響を及ぼす違法があるということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月13日 昭和26(れ)1206
登載
刑集 第6巻5号744頁
参照法条
日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律1条,日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律1条の3,刑訴法405条2号,刑訴法411条1号,旧刑訴法344条,旧刑訴法410条14号,旧刑訴法340条,旧刑訴法336条
論点74第405条刑事訴訟法

適法な証拠調を経ない被害届を事実認定の一証拠に供した違法と判決に影響を及ぼさない例

裁判要旨原審公判においてA提出の被害届につき適法に証拠調がなされていないことは所論のとおりである。しかるに原判決は右被害届を建造物損壊の事実認定の一証拠に供したのであるから、論旨引用の昭和二四年(れ)二一〇〇号、二五年一月一九日第一小法廷判決に徴するも違法の譏を免れないのである。しかし原審は建造物損壊の事実についてA提出の被害届のほか適法の証拠調を経た原審共同被告人Bに対する司法警察官の聴取書の記載をも合せてこれを認定したものであること、かつ右の聴取書のみによつて建造物損壊の事実の認定を肯認しうることに徴すれば、原判決の右違法は判決に影響を及ぼさないといいうるのである。よつて判例違反の所論は採用し難い。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年4月18日 昭和26(れ)2066
登載
集刑 第63号355頁
参照法条
旧刑訴法236条,刑訴法405条
論点75第405条刑事訴訟法

正当な権利を有する者がその権利を実行するにあたり詐欺恐喝の手段を用いた場合に関する判例と債権回収の目的でした強盗行為

裁判要旨法律上、他人より財物の交付を受け又は財産上の利得を領得すべき正当の権利を有する者が、その権利を実行するにあたり、欺罔又は恐喝の手段を用いて義務の履行をなさしめて財産の交付を受け又は財産上の利益を領得するも、詐欺恐喝の罪を構成することなしとした大審院刑事総部連合の判決(大正二年(れ)第一二一一号同年一二月二三日宣告)は、債権を回収するためとはいえ、虚言をもつて被害者をおびき出した上、突如野球用バツトにその頭部を強打して昏倒させ、その所持していた金品を強取した事案に対しては、判例として適切でない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年3月7日 昭和26(れ)1800
登載
集刑 第62号295頁
参照法条
刑法236条,刑法246条,刑法249条,刑訴法405条3号
論点76第405条刑事訴訟法

一 第一審当時において旧刑訴第二〇一条第一項第三号〈逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。〉後段に該当した証人が第二審当時之に該当しなかつた場合の第一審公判調書中の証言の証拠能力
二 憲法違反の主張と認められない事例

裁判要旨一 一件記録を精査すれば、所論証人A、同Bについて第一審裁判所は、旧刑訴二〇一条一項三号〈逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。〉後段に基きその尋問当時現に供述を為すべき事件の被告人と共犯の嫌疑ある者と認め、宣誓を為さしめないで尋問し、原審裁判所は、第一審裁判所の尋問当時はその嫌疑があつたが自己の尋問当時には最早かかる嫌疑なきものと認め、宣誓を為さしめて尋問したものであると認められる。されば、原審裁判所が第一審裁判所がその尋問同時共犯の嫌疑ありと認め宣誓を為さしめないで尋問した所論証人尋問の措置を正当と認めその証言を有効として採用したからといつて所論判例に反する判断をしたものとはいえない。
二 刑訴施行法第三条の二は憲法に反する無効の規定であるというだけであつて、何等原判決に対する不服の理由を示していない主張は、適法な上告理由と認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年3月13日 昭和26(れ)2299
登載
刑集 第6巻3号470頁
参照法条
旧刑訴法337条,旧刑訴法201条1項,旧刑訴法196条,刑訴施行法3条の2,刑訴法405条
論点77第405条刑事訴訟法

刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例

裁判要旨高等裁判所が、刑訴第三八六条第一項〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。〉により控訴を棄却した決定に対してなされた上告申立を、異議申立と見ながら、同法第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、第三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉を準用して自ら棄却したとしても、右申立が異議申立期間後になされたものであることが明らかなときは、右の瑕疵は同法第四一一条所定の事由にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年1月11日 昭和26(し)41
登載
集刑 第59号237頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法375条,刑訴法386条1項,刑訴法386条2項,刑訴法411条,刑訴法405条
論点78第405条刑事訴訟法

一 控訴審における陳述されなかつた控訴趣意に対する判断の要否
二 控訴趣意に対する判断遺脱の違法と上告理由
三 控訴趣意に対する判断違脱の違法が判決に影響を及ぼさない場合及びその違法が著るしく正義に反すると認められない場合

裁判要旨一 法定の期間内に差し出された被告人の控訴趣意書が、その後適法に撤回されるか、又は公判期日において適法にこれを陳述しない旨の明確な意思表示のなされない以上は、たとえ弁護人がその控訴趣意書に基いて弁論しなくても、控訴裁判所はその控訴趣意に対し判断をしなければならない。
二 控訴裁判所が控訴趣意に対する判断を遺脱した旨の主張は、単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉に定める上告理由にあたらない。
三 原判決が弁護人の事実誤認の控訴趣意に対して判断している以上は、これと同一の犯罪事実についてなされた被告人の事実誤認の控訴趣意に対して特に判断しなくても、その違法は、原判決に影響を及ぼさないものといわなければならない。
四 原判決が量刑の不当を理由として第一審判決を破棄し、刑訴第四〇〇条〈前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の…〉但書に従い、職権をもつて第一審判決の認定した事実を是認引用して更に判決をしている以上は、被告人の事実誤認の控訴趣意に対して特に判断していなくても、その違法は、刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉に当らない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年1月10日 昭和26(あ)3130
登載
刑集 第6巻1号69頁
参照法条
刑訴法376条1項,刑訴法388条,刑訴法389条,刑訴法392条1項,刑訴法405条1項,刑訴法411条1号,刑訴法400条,憲法32条
論点79第405条刑事訴訟法

一 事実認定を異にする判例を援用してした判例違反の主張の適否
二 判決書に裁判所の「部名」を表示することの要否

裁判要旨一 第一審判決は、被害者Aが、被告人は検事であるから代金は支払つてくれるものと誤信した結果、金約五百円に相当する酒食を被告人に提供した事実を認定し、原判決もこの事実認定を肯定しているのである。しかるに所論援用の当裁判所判例では、被害者は畏怖の結果として財物の交付をするに至つた場合なのであるから、本件とは事例を異にし、従つて、原判決は何等右判例と相反する判断を示しているものではない。
二 判決書には裁判所名を示すを以て足り部名を表示することは、刑訴法上要請されていない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年8月9日 昭和25(あ)2884
登載
集刑 第51号793頁
参照法条
刑訴法405条2号,刑訴法405条3号,刑訴法44条,刑法246条,刑法249条,刑訴規則55条,刑訴規則58条
論点80第405条刑事訴訟法

控訴審が採用しなかつた証拠について憲法第三七条第二項違反の主張と上告理由

裁判要旨原審が公判期日外の証人尋問をするに当り勾留中の被告人に実質的に立会の機会を与えていないのは憲法第三七条第二項に違反するというのであるが、原審は、これら証人尋問調書中の供述記載を事実認定或は量刑の資料としたものではなく、単に第一審判決を是認して控訴棄却したに止まることは、原判文自体に徴して極めて明らかである。然らば原判決には原判に影響のある憲法違反があるとの主張は、その前提を欠くものといわなればならない。。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年6月8日 昭和26(あ)211
登載
刑集 第5巻7号1250頁
参照法条
憲法37条2項,刑訴法393条1項,刑訴法157条,刑訴法405条1号,刑訴法410条1項
論点81第405条刑事訴訟法

一 控訴審では控訴趣意書に包含されない事項を当然職権調査すべき義務を有しない
二 控訴棄却の判決には刑訴法第三七七条乃至第三八三条にあたる事由についても判断を示しているとはいえない

裁判要旨控訴審では控訴趣意書に包含されない事項を当然職権調査しなければならない義務を負担するものではなく、従つて、かかる事項を職権調査しなかつたからといつて違法であるといえないばかりでなく所論のごとく控訴棄却の判決には控訴趣意書に包含されている事項を排斥した外に明らかに刑訴第三七七条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨…〉乃至第三八三条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることを疎明する資料を添附しなければな…〉に該当すると思われる事由もないという判断をも示しているものということもできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年5月31日 昭和25(あ)2326
登載
刑集 第5巻6号1211頁
参照法条
刑訴法392条,刑訴法393条,刑訴法377条,刑訴法383条,刑訴法405条,刑訴法411条
論点82第405条刑事訴訟法

一 擬律違反を理由として破棄自判した第二審判決は自ら犯罪事実を認定したものか

二 第一審判決の憲法違反を理由とする上告の適否

裁判要旨しかし、所論検察官に対する被告人の第一回供述調書を証拠として被告人の犯罪事実を認定したのは、本件第一審判決であつて、原判決ではない。原判決は被告人側の控訴趣意は何れも理由ないが第一審判決には、事実の確定に影響を及ぼさない法令の適用に違法があるとして第一審判決が確定した事実に対し改めて法令の適用を示し、刑の言渡をしたに過ぎない。してみれば所論は第一審判決に対する非難であるといわなければならない。しかも、右検察官に対する被告人の第一回供述調書の自白は任意性のないものであるとのことは、原審に対する控訴趣意としてはこれを主張せず従つて原判決は、右の事由については何等判断を与えていないところである。控訴審において控訴趣意として主張せず、従つて原判決で何等判断されなかつた点について、第一審判決に憲法違反の瑕疵があると攻撃するにすぎない主張は、上告適法の理由とならない(昭和二四年新(れ)第四九二号、同二五年五月一九日第二小法廷決定、昭和二四年新(れ)第五九号同年一二月一二日第二小法廷決定参照)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年3月9日 昭和24新(れ)178
登載
集刑 第41号435頁
参照法条
刑訴法405条,刑訴法408条
論点83第405条刑事訴訟法

一 刑訴法第四九五条〈上訴の提起期間中の未決勾留の日数は、上訴申立後の未決勾留の日数を除き、全部これを本刑に通算する。〉に定める未決勾留日数の通算の性質
二 控訴趣意として主張されず原審においても判断していない事項について判例違反を主張する上告の適否

裁判要旨一 所論の刑訴法第四九五条に定める未決勾留日数は判決が確定して本刑の執行される際当然に全部本刑に通算されるべきものであつて、原裁判所には右日数を本刑に通算するか否かの裁量権が委ねられてないのであると解するを相当とするから、原裁判所が右日数を本刑に通算すべき旨言渡さなかつたことは当然であつて、毛頭違法ではない。
二 控訴趣意には所論の点に関して何等主張されていないこと記録上明らかであるから原審が所論の点について判示していないのは当然である。されば、原判決を目して所論の判例(昭和二三年(れ)第九七八号、同年一一月一八日第一小法廷判決参照)に反するとなす論旨は判示にそわない事実を独断し、これを前提とするものであつて、とるをえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月29日 昭和25(あ)1477
登載
刑集 第5巻4号722頁
参照法条
刑訴法495条,刑訴法405条2号,刑法21条
論点84第405条刑事訴訟法

窃盗と賍物牙保との公訴事実の同一性の有無に関する判例違反の主張の適否―原判決言渡後の判例と刑訴法第四〇五条第二号

裁判要旨論旨は、窃盗と賍物牙保とがその日時、場所において近接し、対象となる賍物も同一である場合には、基本的事実関係は同一と解すべきであるとして旧刑訴法の適用される事件についての公訴事実の同一性に関する当裁判所の判例を挙示し、原判決は、これら判例と相反する判断をしたものであると主張しているもののようである。論旨挙示の判例中昭和二五年(れ)同二七五号同年六月三〇日第二小法廷判決は、原判決の宣告された後の判例であるから、これを除外し(なお右判決も従来の判例を変更したものではない)その他の判例に照して見ても原判決は窃盗と賍物牙保とは常に公訴事実の同一性がないとか或は犯罪の日時場所が隔つている場合には公訴事実の同一性がないとか判断したのではなく、基本的事実関係が同一でないから公訴事実の同一性がないと判断したに止まるのであるから、その理論においてはこれらの判例と相反する判断をしたことにならないのである。(昭和二五年(あ)第八四号同年二月二一日第三小法廷判決参照)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年2月6日 昭和25(あ)1851
登載
集刑 第40号245頁
参照法条
刑法235条,刑法256条2項,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法405条2号
論点85第405条刑事訴訟法

証拠調の方式に関する判例違反の主張の適否

裁判要旨論旨は、所論の証拠物につき第一審のした証拠調の方式が、刑訴第三〇七条〈証拠物中書面の意義が証拠となるものの取調をするについては、前条の規定による外、第三百五条の規定による。〉に違反するとの前提の下に、これを証拠に採用した第一審判決を相当なりとした原判決は、論旨援用の判例に相反する判断をしたと主張するのであるが第一審公判調書中証拠調の箇所を見ると所論の証拠物については適式の証拠調(即ち朗読並びに提示)が施行された旨記載されている(記録一六丁表六行目)。それ故所論は前提において既に誤つており、採用し難い。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年2月2日 昭和25(あ)2432
登載
集刑 第40号213頁
参照法条
刑訴法307条,刑訴法405条3号
論点86第405条刑事訴訟法

控訴趣意として主張せず原判決も判断していない事由と上告の適否

裁判要旨論旨は、原審において控訴趣意として全く主張されず、従つて原審が何ら判断をしていない事項であることは、原判決と上告趣意とを対比して明らかなところであり、かかる論旨が上告の理由としてその適法要件を欠くものであることは、すでに当裁判所の判例として示されている(昭和二五年(あ)第三九一号同年一二月五日第三小法廷判決、昭和二四年新(れ)第二七号昭和二五年五月二日第三小法廷判決、昭和二四年新(れ)第五九号同年一二月一二日第二小法廷決定、昭和二四年新(れ)第四九二号昭和二五年五月一九日第二小法廷決定、昭和二五年(あ)第九四一号同年一一月一六日第一小法廷決定)それゆえ、論旨は採用することができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年2月13日 昭和25(あ)2056
登載
集刑 第40号533頁
参照法条
刑訴法392条,刑訴法407条,刑訴法405条
論点87第405条刑事訴訟法

判例違反が判決に影響を及ぼさない一事例

裁判要旨被告人が一箇の恐喝行為によつて同時に二人の被害者から全品を奪取した所為に対し刑法第五四条第一項前段、第一〇条を適用しなかつた点に、たとえ判例違反があるとしても、右犯行と併合罪の関係にある他の恐喝罪の刑に併合罪の加重をして処断している以上、右判例違反は判決に影響を及ぼさないことが明らかである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年12月25日 昭和25(あ)1189
登載
刑集 第5巻13号2613頁
参照法条
刑訴法405条,刑訴法410条1項,刑法249条,刑法54条1項,刑法45条前段,刑法47条
論点88第405条刑事訴訟法

刑法第四八条第二項の規定が解除される場合にれを適用した違法と刑訴法第四一一条

裁判要旨所論酒税法第六〇条一項二項の規定を通用して被告人に罰金と懲役とを科するに当り罰金についても刑法第四八条二項を適用した原判決は所論酒税法第六六条の規定の解釈をあやまつて右刑法の規定を適用した違法あるものといわなければならぬ。しかしかかる酒税法の解釈に関する論旨は明らかに刑訴第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉に定める上告理由たる事由にあたらないし、また、右の違法の主張は被告人に対し却つて不利益な結果を生ずるから、被告人のための本件上告としてはこれを以て原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認め難い、それ故同第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきものとも認められない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年12月18日 昭和25(あ)629
登載
集刑 第58号361頁
参照法条
昭和24年法律43号による改正前の酒税法60条,刑法48条2項,刑訴法405条,刑訴法411条
論点89第405条刑事訴訟法

第一審で懲役三年、罰金三〇万円、第二審で懲役三年但し五年間刑の執行猶予及び罰金四〇万円を言渡した場合と不利益変更に関する判例違反の有無

裁判要旨本件において、第一審判決は被告人を懲役三年及び罰金三〇万円(罰金不完納の場合における労役場留置期間の言渡を遺脱)に処したのに対し、原控訴審判決は被告人を懲役三年但し五年間刑の執行猶予及び罰金四〇万円(前金不完納の場合に金一、〇〇〇円を一日に換算した期間労役場留置)に処したのであるから、原控訴審判決は少しも前記大審院判決(昭和一五年(れ)第五〇四号同年七月二四日)に反するものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年11月27日 昭和26(れ)1826
登載
刑集 第5巻13号2457頁
参照法条
旧刑訴法403条,刑訴法405条,刑訴法411条
論点90第405条刑事訴訟法

具体的に違法又は違憲の事実あることの主張に当らない上告理由の適否

裁判要旨所論は、本件と契約当事者、引渡数量、適用条文等を異にする全然別種の事件を引用して漫然原判決は法律上平等の取扱いを受ける原則を無視し且つ基本的人権を尊重せず罪のない被告人に対し重刑を科した憲法違反があると非難するに過ぎないもので毫も本件につき具体的な違法又は違憲の事実あることを主張するものでないから、適法な上告理由と認め難い。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年10月18日 昭和26(れ)1028
登載
集刑 第54号1083頁
参照法条
刑訴法405条,刑訴法408条
論点91第405条刑事訴訟法

一 罰金不完納の場合における労役場留置の言渡と不利益変更禁止の原則
二 刑訴法第四〇五条第三号〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。〉にあたらない二つの事例

裁判要旨一 罰金不完納の場合における労役場留置の言渡についてもいわゆる不利益変更禁止の規定の適用がある。
二 大審院の判例に反すると主張していても、既にこれと同趣旨の最高裁判所の判例があるときは、刑訴第四〇五条第三号〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。〉にあたらない。
三 高裁の判例に反すると主張していても、既にその判例が最高裁判所の判例で変更せられているときは、刑訴第四〇五条第三号にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年10月16日 昭和26(れ)384
登載
刑集 第5巻11号2249頁
参照法条
刑法18条,旧刑訴法403条,刑訴法405条3条
論点92第405条刑事訴訟法

一 有罪判決において証拠の標目を挙示したことと証拠説明に関する法律上の判断
二 刑訴法第一二二条〈没収することができる押収物で滅失若しくは破損の虞があるもの又は保管に不便なものについては、これを売却してその代価を保管す…〉による換価代金と刑法第一九条

裁判要旨一 有罪判決において、数個の独立した犯罪事実を認定するにあたり、証拠の標目を一括して挙示したからといつて、ただそれだけでは、その判決は、かかる場合の証拠説明の仕方に関し、何ら法律上の判断見解を示したものとはいえない。
二 押収した犯罪行為組成物件の刑訴第一二二条〈没収することができる押収物で滅失若しくは破損の虞があるもの又は保管に不便なものについては、これを売却してその代価を保管す…〉(第二二二条〈第九十九条第一項、第百条、第百二条、第百三条から第百五条まで、第百十条、第百十条の二前段、第百十一条第一項前段及び第二項…〉)による換価代金は、刑法第一九条の適用上、被換価物件と同一視すべきものであつて、同条にいわゆる「対価」ではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年10月26日 昭和25(あ)477
登載
刑集 第4巻10号2170頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法405条,刑訴法122条,刑訴法222条,刑訴法19条
論点93第405条刑事訴訟法

一 酒税法の犯則者に対して刑罰を科する趣旨と刑法第四八条第二項の適用の排除
二 昭和二四年法律第四三号による改正前の酒税法第六六条と懲役及び罰金を併科する場合の刑法第四八条の適用の有無
三 酒税法の犯則者に対して当該税務官吏の告発は犯罪の処罰要件か――右告発についての証拠説明の要否

裁判要旨一 従来酒税法でその犯則者に対して刑罰を科するおもなる趣旨は犯則によつて国に財政上の損失を生ぜしめないことを担保するにあるから、その刑罰も純然たる刑事犯と異り犯人の責任年齢、心神の状態、法の不知等の主観的条件を顧慮せずに各犯罪行為を客観的、数理的に考察して、罰金科料等の金刑だけを脱税額の倍数を以て決定し自由裁量を許さない建前を執つたのである。されば犯則者には例外なく刑法第四八条二項の規定を適用しない旨規定されていたのである(明治二九年法律第二八号酒税法第三一条、昭和一五年法律第二五号酒税法第六六条参照)。
二 昭和二四年法律第四三号酒税第六六条〈裁判所は、被告人の現在地の地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に被告人の勾引を嘱託することができる。〉「第六〇条第一項〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉………ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法………第四八条第三項〈公判期日における訴訟手続については、公判調書を作成しなければならない。〉………ノ規定ヲ適用セズ但シ第六〇条第二項………ノ場合ニ於テ懲役ノ刑ニ処スルトキハ此ノ限ニ在ラズ」の規定は同法の犯則者に対して懲役と罰金科とを併する場合にも罰金刑については従前通り各犯罪行為ごとに罰金刑を科すべく刑法第四八条二項の規定を適用しない趣旨と解するのを相当とする。
三 酒税法の犯則者に対して当該税務官吏から告発をなすことは訴訟要件ではあるが、酒税法違反罪の構成要件ではないから、受訴裁判所は告発が適法になされているか否かを審査しなければならぬことはいうまでもないところであるが、裁判所は公判廷において告発に関する書類被告人に読みきけ、その意見を聴く等これが証拠調をしたり、告発のありたることを判決に示しその証拠を説明すべき法律上の義務は裁判所に存しない。されば論旨は当該税務官吏のなす告発を犯罪の処罰要件と誤解せるに基くものであつてとるをえない。そしてかかる論旨は明らかに刑訴第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉に定める上告理由たる事由にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年10月12日 昭和25(あ)692
登載
刑集 第4巻10号2073頁
参照法条
昭和24年法律43号による改正前の酒税法60条,昭和24年法律43号による改正前の酒税法66条,刑法48条2項,刑訴法338条4号,刑訴法335条,刑訴法405条
論点94第405条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入部分が破棄された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成6年11月25日 平成6(あ)592
登載
集刑 第264号263頁
参照法条
刑法21条,刑訴法405条2号
論点95第405条刑事訴訟法

刑訴法461条〈簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、百万円以下の罰金又は科料を科すること…〉以下の略式手続の規定違憲の主張が原判決の結論に影響のない事項に関するものであるとして不適法とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成27年10月16日 平成27(あ)1105
登載
集刑 第318号1頁
参照法条
憲法31条,憲法32条,憲法37条,憲法38条3項,憲法82条,刑訴法405条,刑訴法461条以下
論点96第405条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入部分が破棄された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成25年11月19日 平成25(あ)507
登載
集刑 第312号49頁
参照法条
刑法21条,刑訴法495条2項2号,刑訴法405条2号
論点97第405条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入部分が破棄された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成25年11月19日 平成25(あ)508
登載
集刑 第312号59頁
参照法条
刑法21条,刑訴法495条2項2号,刑訴法405条2号
論点98第405条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入部分が破棄された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成23年7月21日 平成23(あ)357
登載
集刑 第304号133頁
参照法条
刑法21条,刑訴法405条2号
論点99第405条刑事訴訟法

高等裁判所の判決中の判断がその上告審である最高裁判所の決定において否定された場合における上記判決の刑訴法405条3号の「判例」該当性

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年3月16日 平成21(あ)1619
登載
集刑 第300号95頁
参照法条
刑訴法405条3号
論点100第405条刑事訴訟法

1 労役場留置期間を定めるに当たり,1日に満たない端数を生じる換算率を定めても刑法18条4項所定の同期間を定めない違法があるとはいえない
2 労役場留置期間を定めるに当たり,1日に満たない端数について換算刑の言渡しをしないのは法令違反であるとした高等裁判所の判決は,これに先立つ最高裁判所の判例と相反する判断をしたものであり,刑訴法405条3号〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。〉の高等裁判所の判例に当たらない

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成20年6月23日 平成20(あ)305
登載
集刑 第294号527頁
参照法条
刑法18条4項,刑訴法405条3号
論点101第405条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入部分が破棄された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成12年7月13日 平成12(あ)408
登載
集刑 第279号13頁
参照法条
刑法21条,刑訴法405条2号
論点102第406条刑事訴訟法

跳躍上告申立が不適法とされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和62年6月9日 昭和62(あ)355
登載
集刑 第246号35頁
参照法条
刑訴法406条,刑訴規則254条
論点103第406条刑事訴訟法

上告受理相当と認められた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年11月11日 昭和55(ゆ)7
登載
集刑 第220号71頁
参照法条
刑訴法406条,刑訴規則261条
論点104第406条刑事訴訟法

控訴申立にあわせてなされた跳躍上告の処理

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和48年10月16日 昭和48(あ)2016
登載
集刑 第190号505頁
参照法条
刑訴法406条
論点105第406条刑事訴訟法

一 人事院規則一四−七政治的行為第五項第一号にいう「特定の候補者」には、「立候補しようとする特定人」を含むか
二 控訴審の差戻判決は上告審を拘束するか
三 最高裁判所が上告受理の申立を理由ありとして原判決を破棄する場合の法条
四 想像的併合罪の関係に立つ二罪のうち一罪につき免訴の裁判があつた場合と上級審への移審の効力

裁判要旨一 昭和二四年九月一九日人事院規則一四−七政治的行為第五項第一号にいう「特定の候補者」とは、法令の規定にもとづく正式の立候補届出または推薦届出により候補者としての地位を有するに至つた特定人を指すものと解すべきであつて、「立候補しようとする特定人」を含むものと解することはできない。
二 第一次の控訴審が第一審判決の法令解釈に誤りがあるとしてこれを破棄、差し戻し、第二次の第一審及び控訴審が右判断に従つた場合においても、上告審たる最高裁判所は右第一次の控訴審の法律判断に拘束されるものではない。
三 最高裁判所が刑訴第四〇六条〈最高裁判所は、前条の規定により上告をすることができる場合以外の場合であつても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認…〉により上告審として事件を受理し、申立を理由ありと認めた場合は、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉によつて原判決を破棄すべきものである。
四 想像的併合罪の関係に立つ二罪のうち一罪について、第一審判決が主文において免訴を言渡し、被告人から控訴、上告がなされたような場合には、右免訴部分は上級審に移審していないものと解するを妨げない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和32年10月9日 昭和29(あ)499
登載
刑集 第11巻10号2520頁
参照法条
人事院規則14−7政治的行為(昭和24年9月19日),国家公務員法102条,国家公務員法110条1項19号,裁判所法4条,刑訴法406条,刑訴法411条1号,刑訴法357条
論点106第406条刑事訴訟法

一 刑法第二五条第二項の法意
二 刑訴第四〇六条〈最高裁判所は、前条の規定により上告をすることができる場合以外の場合であつても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認…〉刑訴規則第二五七条によつて受理された事件と同法第四一一条の適用

裁判要旨一 刑法第二五条第二項は、前に禁錮以上の刑に処せられたその執行を猶予せられた者に対して一年以下の懲役または禁錮の言渡をなす場合に再度の執行猶予の言渡をなすことができる趣旨である。
二 刑訴第四〇六条〈最高裁判所は、前条の規定により上告をすることができる場合以外の場合であつても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認…〉刑訴規則第二五七条によつて受理された事件についても、同法第四一一条を適用することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年11月22日 昭和30(あ)4104
登載
刑集 第10巻11号1551頁
参照法条
刑法25条,刑訴法406条,刑訴法411条,刑訴規則257条
論点107第406条刑事訴訟法

刑訴規則第二四七条により最高裁判所への移送が許可された一事例

裁判要旨右に対するあん摩師、はり師、きゆう師及柔道整腹師法違反被告事件について昭和二八年九月八日大津簡易裁判所の言渡した判決に対する上訴事件を最高裁判所に移送することを許可する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年8月9日 昭和29(め)1
登載
集刑 第98号11頁
参照法条
刑訴法406条,刑訴規則247条,刑訴規則248条
論点108第406条刑事訴訟法

控訴提起期間の末日が「文化の日」にあたる場合に不成立として棄却した違法は法四〇六条の上告受理申立の理由となるか

裁判要旨記録を調査するに、原判決の違法であるとはまことに所論のとおりであるから、刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉四一三条〈前条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所若しくは第一審裁判所に差し戻し、又はこ…〉により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。註。本件は原審が控訴申立期間の最終日が国民の祝日に関する法律により一般の休日と指定された文化の日に当るとを看過して控訴棄却の判決をしたと見られるのであるがこれを右法律の解釈を誤つたとして上告を受理して破棄したものである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年5月14日 昭和29(あ)1101
登載
集刑 第95号403頁
参照法条
刑訴法373条,刑訴法395条,刑訴法55条3項,刑訴法406条,国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)2条,刑訴規則257条
論点109第406条刑事訴訟法

刑訴施行法第三条の二施行後旧法事件につき最高裁判所に跳躍上告をすることは許されるか

裁判要旨刑訴施行法第三条の二(昭和二五年法律第二六七号)施行後は、旧法事件につき、地方裁判所がした第一審判決に対し、控訴をしないで最高裁判所に上告することは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年6月30日 昭和28(れ)12
登載
刑集 第7巻6号1401頁
参照法条
旧刑訴法416条,新刑訴法406条,刑訴施行法3条の2
論点110第406条刑事訴訟法

刑訴規則第二五四条と跳躍上告の適否

裁判要旨本件はいわゆる跳躍上告事件であるが、検察官でない者が、地方裁判所のした第一審判決に対して控訴審を飛び越え最高裁判所に上告をするには、その第一審の判決において法律等が憲法に違反するものとした判断が不当であることを理由とするときに限り許されるものであつて、本件のごとくかかる判断を含まない第一審判決の違憲を理由として跳躍上告をすることは許されないことは、刑訴四〇六条〈最高裁判所は、前条の規定により上告をすることができる場合以外の場合であつても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認…〉、刑訴規則二五四条によつて明白である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年12月24日 昭和25(あ)630
登載
集刑 第90号211頁
参照法条
刑訴法406条,刑訴規則254条1項
論点111第407条刑事訴訟法

電子複写機によつて複写されたコピーによる上告趣意書が有効とされた事例

裁判要旨電子複写機によつて複写されたコピーであつて作成名義人の署名押印のない上告趣意書は、刑訴規定六〇条〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉の規定に違背するが、作成名義人の署名押印も複写されており、これを封入した郵便の封筒には、作成名義人によるものと認められる氏名の記載があつて、権限のない者がほしいままに作成し提出したなどの特段の事情はうかがわれず、右作成名義人の意思に基づいて作成され提出されたものと認められるときは、これを有効なものとして判断の対象とすべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年10月28日 昭和58(あ)640
登載
刑集 第37巻8号1332頁
参照法条
刑訴法376条,刑訴法407条,刑訴法414条,刑訴規則60条,刑訴規則240条,刑訴規則266条
論点112第407条刑事訴訟法

上告趣意書に判例の具体的摘示がないとされた事例

裁判要旨判決登載刊行物の号巻丁数のみを掲げ、もしくは裁判所名および言渡日のみを指摘するにとどまる主張は判例の具体的な摘示があるといえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和48年9月25日 昭和47(あ)2566
登載
集刑 第190号367頁
参照法条
刑訴法407条,刑訴規則253条
論点113第407条刑事訴訟法

被告人が上告申立をした場合における原審弁護人提出の上告趣意書の効力。

裁判要旨被告人自ら上告の申立をなした場合に、原審弁護人が上告趣意書提出期間内にその資格で上告趣意書を提出しても、右上告趣意は審理の対象とならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年7月18日 昭和36(あ)730
登載
刑集 第15巻7号1103頁
参照法条
刑訴法355条,刑訴法376条,刑訴法392条,刑訴法407条,刑訴法414条,刑訴法32条2項,刑訴規則252条
論点114第407条刑事訴訟法

一 売買農地の所有権移転の効力発生時期
二 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第四条〈事物管轄を異にする数個の関連事件が上級の裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、…〉所定の「金銭の貸借の媒介を行う者」の意義
三 不動産の登記簿上の所有名義と刑法上の占有
四 上告受理申立の理由書記載事項を援用した上告趣意書の適否

裁判要旨一 売買農地の所有権移転は知事の許可と同時に其の効力を発生するものと解すべきである。
二 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第四条〈事物管轄を異にする数個の関連事件が上級の裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、…〉所定の「金銭の貸借の媒介を行う者」とは単に金銭の貸借の媒介を行う者と解すべきであつて、業として行うと否とを問わない。
三 不動産の所有権が売買により買主に移転しかつ該不動産が買主に引渡されたとしても、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主は刑法上その不動産を占有するものと解すべきである。
四 上告趣意書自体にその趣意内容を示さないで、単に上告受理申立の理由書記載事項につき裁判を求めると記載したものは、適法な上告趣意書といえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年3月13日 昭和31(あ)2521
登載
刑集 第13巻3号310頁
参照法条
農地法3条1項,農地法92条,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律4条,刑法252条,刑訴法407条,刑訴規則266条,刑訴規則240条
論点115第407条刑事訴訟法

控訴趣意書を援用すると記載した上告趣意書の適否

裁判要旨論旨は、本件記録添附の控訴趣意書を援用するというのであるが、上告趣意書自体にその趣意内容を示さず記録中の他の書面を援用するに過ぎないものは適法な上告趣意といえない(昭和二五年(あ)一二二〇号同年一〇月一二日当裁判所第一小法廷決定参照)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年7月14日 昭和27(あ)782
登載
集刑 第84号509頁
参照法条
刑訴法407条,刑訴規則240条
論点116第407条刑事訴訟法

一 旧刑訴第四一〇条第八号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。但し、判決に影響を及ぼさな…〉および第一六号にあたらない事例
二 憲法第三七条第一項にいわゆる公平な裁判所の裁判の意義

裁判要旨一 旧刑訴法事件における控訴審の第二八回公判期日(昭和二六年六月一八日)になつて、被告人よりその二日前の日附になる医師の診断書を添え公判延期願が提出されたが、その診断書によつては必らずしも出廷不可能な疾病とは認められず、また現に被告人がその公判期日に出頭していて、右公判延期申請が却下されるや自ら裁判長忌避の申立を為し、その申立が却下されるとさらに抗告を申し立て、且つ証人の尋問途中裁判長の許可を受けないで退廷し、その後適式な公判期日の指定があつたにかかわらず、第九二回公判期日(同年七月四日)二日前の日附になる医師の診断書を差し出しただけで、公判延期願を提出することもなく、その他首肯すべき事由も示すことなく、同公判期日および第三〇回公判期日(同月六日)に出頭しなかつた場合には、裁判所が右診断書を措信せず、何ら公判手続を停止することなく、爾後被告人不出頭のままその陳述を聴かないで審判したからといつて、旧刑訴第四一〇条第八号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。但し、判決に影響を及ぼさな…〉および第一六号所定の事由があるものとすることはできない。
二 憲法第三七条第一項にいわゆる公平な裁判所の裁判とは被告人の側からみてその手続が不公平であると思われる裁判を指すものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年1月17日 昭和26(れ)2143
登載
集刑 第72号207頁
参照法条
旧刑訴法410条8号,旧刑訴法410条16号,旧刑訴法404条,旧刑訴法330条,旧刑訴法407条,旧刑訴法352条,刑訴規則183条,刑訴規則施行規則3条1号,憲法37条1項
論点117第407条刑事訴訟法

刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない事例

裁判要旨最終口頭弁論期日の変更決定の告知が期日後に被告人に送達され、従つて同期日の召喚が不適法であつても、被告人が公判準備期日において控訴理由を詳細に供述し、犯罪事実については争わず、単に量刑の軽減を求める趣旨を述べており、また、被告人の弁護人は右公判準備期日に立ち会い被告人のため証人の尋問を申請したばかりでなくその証人の尋問に立ち会い尋問をし、なお最終口頭弁論期日に出頭して被告人の権利保護のため有利な弁論をしている場合には、同期日に被告人が出頭していなくても刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年4月10日 昭和26(れ)2437
登載
刑集 第6巻4号648頁
参照法条
刑訴法411条1号,旧刑訴法404条,旧刑訴法407条,旧刑訴法320条2項
論点118第407条刑事訴訟法

第一審判決が起訴にかかる窃盗の事実を認定した事件につき控訴審が賍物牙保罪に問擬したことと被告人の防禦の機会

裁判要旨第一審判決が起訴にかかる窃盗の事実を認定し、控訴審において、検察官が右認定の事実と同一の被告事件を陳述してその審判を求めたのに対し、控訴審が公訴事実の同一性の範囲内において賍物牙保の事実を認定して有罪の言渡をしても、控訴審が右賍物牙保の点について詳細に取調をしており、検察官は論告に際し附帯控訴をした上、本件を賍物牙保として求刑する旨その意見を陳述し、弁護人もその弁論において窃盗罪の外賍物牙保罪の成否についても言及している場合には、右控訴審の裁判を目して被告人に防禦の機会を与えないでして闇打的な裁判ということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年2月29日 昭和26(れ)2362
登載
集刑 第61号727頁
参照法条
旧刑訴法345条,旧刑訴法349条,旧刑訴法407条
論点119第407条刑事訴訟法

県当局の諒解が物価統制令第七条の認可にならない場合にこの点につき審判しなかつたことの適否

裁判要旨物価統制令違反の取引について被告人が予め県当局の諒解を得ていたとしても、同令第七条〈土地管轄を異にする数個の関連事件が同一裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、そ…〉に基く例外価格の認可があつたというのでもない場合は、統制価格を左右する効力のないこと勿論であるから、統制違反の罪責を免れしめる事由に当らない。従つて原審がこの点につき審判しなかつたことは当然であつて、違法ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年2月12日 昭和26(れ)769
登載
集刑 第60号487頁
参照法条
物価統制令7条,物価統制令3条,旧刑訴法407条,旧刑訴法345条,旧刑訴法360条2項
論点120第407条刑事訴訟法

家庭の都合で上告した旨を記載した上告趣意書は適法か

裁判要旨何等上告の趣意を記載していない上告趣意書(家庭の都合で上告した旨記載)は、適法な上告趣意書とは認めることができないから判断を与える必要がない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年10月16日 昭和27(あ)2190
登載
集刑 第68号351頁
参照法条
刑訴法407条,刑訴規則240条,刑訴規則266条
論点121第407条刑事訴訟法

上告趣意書に引用すべき判例を具体的に示したことにならない一事例

裁判要旨所論「大正一五年九月二五日の判例」というだけでは論旨に引用する判例を具体的に示したことにならない(刑訴規制第二五三条〈時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。〉)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年11月27日 昭和26(れ)1703
登載
集刑 第57号449頁
参照法条
刑訴法407条,刑訴規則253条
論点122第407条刑事訴訟法

控訴趣意を援用すると記載した上告趣意の適否

裁判要旨上告趣意第二点は、理由については控訴趣意第一点を援用するというのであつて、上告趣意書自体に亳もその趣意内容を示していないから適法な上告趣意ではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年10月12日 昭和25(あ)1220
登載
刑集 第4巻10号2084頁
参照法条
刑訴法407条,刑訴規則240条
論点123第407条刑事訴訟法

検事の事実及び法律の適用についての意見の陳べ方

裁判要旨控訴審において、証拠調を終つた後に、検事が「原判決と同様に審判せられるを相当と思料する」と述べたときは、適法に、事実及び法律の適用について意見を陳述したものというべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和24年2月22日 昭和23(れ)1449
登載
刑集 第3巻2号230頁
参照法条
旧刑訴法349条,旧刑訴法407条
論点124第407条刑事訴訟法

弁論要旨と控訴趣意書を援用する旨の上告趣意の適否

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成4年3月27日 平成4(あ)2
登載
集刑 第260号193頁
参照法条
刑訴法407条
論点125第407条刑事訴訟法

補佐人提出の上告趣意を判断対象とした事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成24年3月26日 平成24(あ)148
登載
集刑 第307号759頁
参照法条
刑訴法42条,刑訴法376条1項,刑訴法407条,刑訴法414条
論点126第408条刑事訴訟法

重加算税のほかに刑罰を科することが憲法三九条に違反するとの主張を刑訴法四〇八条で処理した事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年10月23日 昭和55(あ)329
登載
集刑 第220号19頁
参照法条
国税通則法68条,法人税法159条1項,法人税法164条1項,憲法39条,刑訴法408条
論点127第408条刑事訴訟法

国税犯則取締法一五条が憲法三一条に違反するとの主張を刑訴法四〇八条により処理した事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年3月29日 昭和53(あ)519
登載
集刑 第214号285頁
参照法条
国税犯則取締法15条,憲法31条,刑訴法408条
論点128第408条刑事訴訟法

昭和三六年全国中学一せい学力調査が違憲であるとの主張を刑訴法四〇八条により処理した事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和54年3月23日 昭和53(あ)726
登載
集刑 第214号95頁
参照法条
憲法26条,憲法92条,憲法94条,刑訴法408条
論点129第408条刑事訴訟法

延滞税、過少申告加算税、重加算税のほかに刑罰を科することが憲法三九条に違反するとの主張を刑訴法四〇八条で処理した事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和53年6月6日 昭和52(あ)1222
登載
集刑 第210号225頁
参照法条
国税通則法60条,国税通則法65条,国税通則法68条,所得税法238条,憲法39条,刑訴法408条
論点130第408条刑事訴訟法

いわゆる追徴税と罰金を併科することが憲法三九条に違反するとの主張を刑訴法四〇八条で処理した事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和53年6月6日 昭和52(あ)1240
登載
集刑 第210号231頁
参照法条
国税通則法68条,所得税法238条,憲法39条,刑訴法408条
論点131第408条刑事訴訟法

原判決の刑の量定に対する非難を上告理由として認めるか否かは立法政策の問題であるとして処理された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和52年9月9日 昭和52(あ)1045
登載
集刑 第205号515頁
参照法条
憲法81条,憲法29条1項,関税法118条2項,刑訴法408条
論点132第408条刑事訴訟法

刑訴法第四〇八条〈上告裁判所は、上告趣意書その他の書類によつて、上告の申立の理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、判…〉にあたるとして判決言渡期日を指定したことに対する忌避申立と刑訴法第二四条

裁判要旨上告の申立の理由があるかないかということ及びその理由のないことが明かであるかどうかということは、憲法及び法律に則り上告裁判所がその良心に従い独立して判断すべきところに委ねられている事柄である。しかるに、本件忌避の申立は、自己の上告の理由あることを独断して当裁判所を構成する裁判官全員に不公平の裁判をする虞ありとするものであつて、他に何らの理由をも示していない。されば本件申立は、もつぱら訴訟を遅延させる目的を以つてなされたものと解するの外はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年5月11日 昭和26(す)109
登載
刑集 第5巻6号1107頁
参照法条
刑訴法21条,刑訴法24条,刑訴法408条
論点133第408条刑事訴訟法

一 昭和二一年一〇月一日商工省令第四一号にいう「繊維製品配給消費統制規則はこれを臨時物資需給調整法に基いて発したものとす」との意議
二 判決書作成の遅延を理由とする上告の適否
三 判決宣言の年月日を記載した判決書の効力

裁判要旨一 昭和二一年九月三〇日を以て国家総動員法、物資統制令が失効するに当り、同年一〇月一日法律三二号臨時物資需給調整法により、商工大臣は産業の回復及び振興に関し経済安定本部総裁の定める基本的な政策及び計画の実施を確保するために同総裁の定める方策に基いて繊維製品の割当又は配給等に関し必要な命令をなすことを得るに至つたのである。従つて当時商工大臣は右臨時物資需給調整法に基ずいて前示昭和一七年一月二〇日商工省令第四号繊維製品配給消費統制規則と同一内容の規則を制定する権限を有していたこと勿論であるから、同大臣がかかる措置に出ることに替えて既存の右統制規則を引用して昭和二一年一〇月一日商工省令第四一号を以て該規則は臨時物資需給調整法に基ずいて発したものとする旨規定したからとてその立法技術としての巧拙の問題はあるとしても、右規則が臨時物資需給調整法に基ずいて発せられたものとしてその効力を持続することを否むべきいわれは存在しない。
二 原判決は昭和二四年一〇月一七日言渡されたものであり、右判決書末尾にはその作成年月日として同日附の記載があるに拘わらず、その原本が書記課に領収されたのは同二六年三月八日である旨、その欄外に明記せられている。仮りに所論の如く判決書の作成がその言渡後原本領収の頃まで遅延されていたものであるとしても、それは判決成立後の事由に過ぎないものであり、司法行政上の問題となることは格別、原判決の内容そのものの違法とは何等のかかわりもないのであるからこれを上告理由となすことはできない。
三 判決書にはその作成の年月日を記載すべきであり(旧刑訴七一条〈検察事務官又は司法警察職員は、必要があるときは、管轄区域外で、勾引状若しくは勾留状を執行し、又はその地の検察事務官若しく…〉参照)判決宣告の日を記載すべきでないことは所論のとおりである。しかし、仮りに原審が判決書の作成を前示原本領収当時まで遅延しながらこの日附をさかのぼらせて判決宣告の日を記載したものとしても、それは単に旧刑訴七一条に違反したというだけのことでありこの違法は原判決の内容そのものには何等影響するところはない。しかもかかる事態は前記刑訴の法条を誤解することに起因して生ずることもあり得るのであるから、必ずしもこれを原審の公文書偽造と目することはできない。のみならずたとえ原審が故意にその作成日につき虚偽の記載をなしたとしても、それはその記載部分の無効を来すだけのことであり原判決全部の無効を誘致するものということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年10月18日 昭和26(れ)1055
登載
刑集 第5巻11号2274頁
参照法条
繊維製品配給消費統制規則(昭和17年10月20日商工省令4号)2条,臨時物資需給調整法1条,昭和21年10月1日商工省令41号,旧刑訴法66条,旧刑訴法67条,旧刑訴法408条,旧刑訴法409条,旧刑訴法71条
論点134第408条刑事訴訟法

一 憲法第三三條違反と上告理由
二 留置の際その理由及び辯護人を選任することを得る旨を告げられなかつた場合と上告理由
三 裁判官の令状なき押收搜索と上告理由
四 採證の用に供しない自白強制の主張と上告理由
五 採證の用に供しない被告人の訊問調書を讀み聞かせなかつた場合と上告理由
六 警察官に對する強制自白と同一内容の自白を公判廷において任意にした場合と間接強制の有無
七 證據の取捨選擇の自由と採證の法則
八 第一審に對する非難と上告理由の適否
九 窃取した物の數量の一部を自白のみによつて認定した場合と刑訴應急措置法第一〇條第三項
一〇 地方專賣局煙草取扱所の監視人が葉煙草を不法領得した行爲と窃盜罪の成否
一一 從犯と正犯の區別

裁判要旨一 假りに被告人が逮捕状なくして、警察に出頭せしめられたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
二 假りに被告人が警察に留置せられるに當り、留置の理由及び辯護人を選任することが出來る旨を告げられなかつたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
三 假りに被告人が現行犯でない本罪に付いて裁判官の令状なく押收、搜索を受けたものであるとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
四 假りに被告人が警察で強制的に自白せしめられたとしても、その自白を證據に採つて居ない限り、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
五 假りに被告人の訊問調書を被告人に讀み聞かせなかつたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
六 假りに被告人の警察官に對する供述が強制によるものであり、且つ公判廷における自白の内容がそれと全然同じであつたとしても、後者は何等強制を加えられないで任意に爲されたものであるから、これを間接の強制とは斷言できない。
七 證據の取捨選擇は原審の自由裁量權に屬する事項であるから、既に原審が採用した證據だけで判示事實を認定するに充分である以上、それに關係のない他の點はこれを不問に付し、又この點を證明するための證人の申請を却下したとしても、採證の法則の違反は審理不盡の違法があるということにはならない。
八 論旨一の中には、第一審に對する非難を含んでいるが、上告は第二審に對してなされるべきものであるからこれは上告理由となし得ないものである。
九 刑訴應急措置法第一〇條第三項は、被告人の自白のみを證據としてこれを有罪とすることを禁じているけれども、犯罪事實の細部に亘つて悉く自白以外の補強證據を必要とする趣旨ではないから、本件のように窃盜の事實の概要が既に、補強證據によつて認められた場合に窃取した物の數量の一部分につき自白のみによつてこれを認めても差支えない。
一〇 地方專賣局煙草取扱所の監視人が取扱所の保管する政府所有の葉煙草を領得した行爲は横領罪でなくして窃盜罪である。
一一 原判決が被告人はB及びCの手足又は機械として動いたものであるとの認定をしていないことは、判文上明らかである。從つて原判決が被告人の所爲を、窃盜從犯でなくて窃盜正犯に該當するものと判斷したことは何等の違法も存しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和23年11月5日 昭和23(れ)61
登載
刑集 第2巻12号1473頁
参照法条
憲法33条,憲法34条,憲法35条1項,憲法38条2項,憲法38条,刑訴法411条,刑訴法56条3項,刑訴法337条,刑訴法344条,刑訴法408条,刑訴応急措置法6条1項,刑訴応急措置法7条2項,刑訴応急措置法10条2項,刑訴応急措置法10条3項,刑法253条,刑法235条,刑法60条,刑法62条
論点135第408条刑事訴訟法

1 最高裁判所から高等裁判所判事の職務を代行させる旨の人事措置が発令されていない判事補が構成に加わった高等裁判所により宣告された原判決が,刑訴法411条1号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄された事例
2 上告裁判所が原判決を破棄するに当たり,口頭弁論を経ることを要しないとされた事例

裁判要旨1 判事補の職権の特例等に関する法律1条の2第1項に基づいて最高裁判所から高等裁判所判事の職務を代行させる旨の人事措置が発令されていない判事補が構成に加わった高等裁判所により宣告された原判決は,その宣告手続に法律に従って判決裁判所を構成しなかった違法があり,刑訴法411条1号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄するのが相当である。
2 上告裁判所が原判決を破棄するに当たり,原判決の宣告手続に法律に従って判決裁判所を構成しなかった違法があるという破棄事由の性質,被告事件の内容,審理経過等本件事情の下では,必ずしも口頭弁論を経ることを要しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成19年7月10日 平成19(あ)567
登載
刑集 第61巻5号436頁
参照法条
(1,2につき)刑訴法377条1号,刑訴法411条1号,刑訴法413条 (1につき)裁判所法18条,裁判所法19条,判事補の職権の特例等に関する法律1条の2第1項 (2につき)刑訴法43条1項,刑訴法408条
論点136第408条刑事訴訟法

上告裁判所が原判決を破棄するに当たり,口頭弁論を経ることを要しないとされた事例

裁判要旨上告裁判所が原判決を破棄するに当たり,原審の公判審理に関与していない裁判官が原判決に関与した違法があるという破棄事由の性質,被告事件の内容,審理経過等本件事情の下では,必ずしも口頭弁論を経ることを要しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和2年1月31日 令和1(あ)1987
登載
刑集 第74巻1号257頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法43条1項,刑訴法408条,刑訴規則54条,刑訴規則55条
論点137第409条刑事訴訟法

一 上告審で提出命令が出せるか
二 上告審における証拠物の取調方法
三 上告審で取り調べた証拠物はどの程度に判断の資料となし得るか。
四 共謀共同正犯における共謀または謀議は罪となるべき事実か。
五 事実誤認を疑うに足りる顕著な事由がある場合と刑訴法第四一一条第三号による原判決の破棄。

裁判要旨一 本件における「諏訪メモ」の如き証拠物については上告審で所有者にその提出を命ずることができる。
二 上告審で右の証拠物を取り調べるにあたつては、公判にこれを顕出するをもつて足りる。
三 上告審は右の方法で取り調べた証拠物を原判決の事実認定の当否を判断する資料に供することができる。
四 共謀共同正犯における共謀または謀議は罪となるべき事実である。
五 判決に影響があつてこれを破棄しなければ著しく正義に反する重大な事実誤認を疑うに足りる顕著な事由があるときは、刑訴第四一一条第三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉によつて原判決を破棄することができる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和34年8月10日 昭和29(あ)1671
登載
刑集 第13巻9号1419頁
参照法条
刑訴法99条2項,刑訴法303条,刑訴法305条,刑訴法306条,刑訴法307条,刑訴法317条,刑訴法404条,刑訴法409条,刑訴法414条,刑訴法335条1項,刑訴法411条3号,刑法60条
論点138第409条刑事訴訟法

一 犯意の成立と違法の認識
二 上告審において始めて期待可能性がないと主張した場合と上告理由の適否

裁判要旨一 被告人等の犯意は被告人等の買受けた本件物質の価格が公定価格を超えたものであることを被告人等において認識するによつて成立し、さらにその違法であることの認識を必要としないことは当裁判所昭和二四年(れ)第二〇〇六号第二六年一月三〇日第三小法廷判決(判例集五巻二号三七問頁)の趣旨に徴して明らかなところである。
二 原審においては、期待可能性がないとの主張がなく、原判決もこの点につき何等判示していないに拘らず、上告審において始めてかかる主張がなされた場合には、その論旨は結局原判示にそわない事実を前提とする主張に帰する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年8月9日 昭和26(れ)700
登載
集刑 第51号595頁
参照法条
刑法38条1項3項,旧刑訴法409条,旧刑訴法360条2項
論点139第409条刑事訴訟法

一 二回に収受した占領物資を所持する罪の罪数

二 被告人に不利益な主張と上告の適否

三 数回の取引に対して一括して統制額超過の謝礼を為した行為と罪数

四 違法の認識と犯意の成立

五 違法の認識を欠いていたという主張と旧刑訴法第三六〇条第二項

裁判要旨一 原判決はその事実摘示(第一審判決の記載引用)において、被告人Aが二回に亘つて占領軍兵士某から占領軍物資を収受して不法に所持した旨を判示しているが、二個の占領軍物資不法収受罪乃至同所持罪を認定したのではなく、包括して一個の同所持罪を認めたものであることがその判文上からおのづからわかる。論旨は原判決が二個の犯罪を認めたものと誤解し、誤解を前提として原判決を非難するものであるから、採用することができない。(なお二個の犯罪を認むべきであるという主張は被告人にとつて不利益な主張であるから適法な上告理由とならない)

二 原判決は(その引用する第一審判決第五の一において)、被告人Aが(イ)二回に亘りBより鮮魚等を統制額にて買受けるに際り杉下駄二百足を謝礼名義にて超過支払をした事実及び(ロ)三回に亘り右Bより鮮魚等を統制額にて買受けるに際り協力金又は謝礼金名義にて金二万円を超過支払をした事実を認定している、各一回の取引毎に各一個の犯罪があつたものとしたのではなく(イ)の二回の取引につき杉下駄二百を贈与したとき並に(ロ)の三回の取引につき現金二万円を交付したときそれぞれ各一罪が成立したものとした趣旨が窺われる。

三 所論のように進駐軍の一兵士が本件物資は占領軍の払下品であるという証明書を交付したからとて、それだけで昭和二二年政令第一六五号第一条第一項〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉にいはゆる「公に認められた場合に」にあたるものでないことは論をまたずして明かである。仮りに被告人が所論のような事情によつて公に認められた場合に該当すると信じたとしても、それは結局違法の認識を欠いていたというに過ぎない。しかるに違法の認識を欠いたからとて、犯意の成立を妨げるものでもなく、罪責を左右するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第二〇二号同年七月一四日大法廷判決、昭和二四年(れ)第二二七六号二五年一一年二八日第三小法廷決定)に徴して明らかである。

四 進駐軍兵士が占領軍の払下品であるという証明を交付したから被告人は本件物件は払下品と思つて買受けたので無罪の判決を願うとの主張は前記のように結局違法の認識を欠いていたという主張に外ならないから、旧刑訴法第三六〇条第二項にいわゆる法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年8月28日 昭和26(れ)485
登載
集刑 第51号1101頁
参照法条
旧刑訴法409条,旧刑訴法411条,旧刑訴法360条2項,刑法45条,刑法38条3項,物価統制令3条
論点140第409条刑事訴訟法

自白の任意性についての判断と経験則違反

裁判要旨本件記録中には、被告人の警察署における供述が強制若しくは拷問による自白であることを推認させるような幾多の証人の供述が存在するのである。殊に、直接、取調の衝に当つた警察官自身が被告人の取調は被告人に手錠をはめたままで行われたこと、午前二時頃まで取調べたこと、警察官が四人がかりで、被告人を取調べたこと、警察官の一人が被告人を殴つたことのあることを認めていることを前述のとおりである。本件において記録を精査しても右各供述の真実性を疑うに足りるような資料は存在しないのであるから、原審が若し右各警察官自身の以上のごとき供述を以て、措信するに足らないものとしたのであるならば、それは原審のいわれなき独断であつて、経験則に反する判断といわなければならない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和26年8月1日 昭和25(れ)622
登載
刑集 第5巻9号1684頁
参照法条
刑法186条,旧刑訴法336条,旧刑訴法326条,旧刑訴法409条,旧刑訴法337条,旧刑訴法411条,憲法38条1項,憲法38条2項,刑訴応急措置法10条1項,刑訴応急措置法10条2項
論点141第409条刑事訴訟法

被告人に不利益な上告理由の例

裁判要旨原判決が所論被告人の犯行を一罪として処断していることは明白である。これを併合罪として取扱うべきもののごとく主張する所論は被告人のため不利益を主張することに帰し、上告適法の理由とならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年7月19日 昭和26(れ)610
登載
集刑 第50号333頁
参照法条
旧刑訴法409条
論点142第409条刑事訴訟法

権利実行の手段としての恐喝にあたらない事例

裁判要旨原判決は、その判示のごときAが原審相被告人Bに無断で同人の住所及び氏名を冐用し、禁制品である手巻タバコを小包郵便で他に発送したという不都合な所為につき、被告人が原審共同被告人Bと共謀し、右Aを恐喝して右の事情を内密に済ませるという名義の下にAから金員を喝取することを企て、判示のごとき恐喝行為をしたという事実を認定したものであることは原判文上明瞭であつて所論のように、被告人が所論権利実行の手段として右のごとき恐喝をしたことは原審の認定しないところであり、また、被告人も原審において、右のごとき事実関係を主張した形迹はみとめられないのである所論は理由がない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年4月27日 昭和25(れ)1791
登載
集刑 第44号689頁
参照法条
刑法249条1項,刑法60条,旧刑訴法409条
論点143第409条刑事訴訟法

相被告人から上告趣意が提出されたら有利に援用するとの上申と上告理由

裁判要旨所論は上告適法の理由とは認められない。ことに相被告人より上告趣意書が提出されますればこれを有利に援用するとの上申書はその内容が未必的で不明確でこれに対し当審で判断を与えることができないから、適法な上告理由に当らないこと明らかであつて、援用できない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年4月26日 昭和26(れ)159
登載
刑集 第5巻5号939頁
参照法条
旧刑訴法423条,旧刑訴法434条,旧刑訴法409条
論点144第409条刑事訴訟法

新少年法による事件につき旧少年法に基き原判決の違法を主張する上告の適否―新少年法第五〇条第九条は訓示的規定である

裁判要旨記録に徴するに本件は昭和二四年四月二〇日に控訴申立がなされたのであるから原審においては新少年法の規定を適用すべきものである(新少年法は昭和二四年一月一日から施行された)従つて旧少年法に基いて原判決の違法を主張する論旨は理由がない。なお所論旧少年法第六四条第三一条に相当する規定は新少年法第五〇条第九条であるが同規定は訓示的規定であると解すべきであるから(昭和二五年(れ)第三四〇号同二五年五月二五日第一小法廷判決参照)同条の規定に違反するところがあつたとしてもこれを以て違法ということにはならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年4月10日 昭和25(れ)1846
登載
集刑 第43号485頁
参照法条
旧刑訴法409条,新少年法50条,新少年法9条
論点145第409条刑事訴訟法

一 刑訴施行法第二条の合憲性

二 食糧緊急措置令第一〇条本文を適用した主要食糧不正受配の事実につき詐欺罪を以て問擬すべしと主張する上告の適否

裁判要旨一 新刑訴法を如何なる時から如何なる事件に適用するかは、経過法の制定に際して諸般の事情を勘案して決せらるべき問題で法律に一任されているところである。従つて刑訴施行法第二条が新刑訴法施行前に公訴の提起があつた事件について新法施行後もなお旧刑訴応急措置法を適用すべき旨を規定したとしても何等憲法に違反するものではなく(昭和二三年(れ)第一五七七号同年五月一八日大法廷判決、第三巻六号八四七頁参照)。しかも同条は「すべて同類型の事件に同様の取扱をなすものであつて、もとより憲法第一四条の平等の原則に違反するものではない」(昭和二四年(れ)第二三二号同二五年七月一九日大法廷判決集四巻八号一四二九頁参照)。

二 原判決は単に主食の不正受配の事実を認定しただけであつて、被告人に詐欺の犯意があつたことを認定してはいないのである。従つて原審が本件につき食糧緊急措置令第一〇条本文を適用しただけで刑法第二四六条第一項によつて処断しなかつたのは当然であり、原判決には所論のような違法はない。しかも本件において原審が適用した食糧緊急措置令第一〇条よりも重い法定刑を定めている詐欺罪を以て問擬すべしとなす論旨は、被告人のため不利益を主張するものに外ならないのであつて上告適法の理由とならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月29日 昭和26(れ)53
登載
集刑 第42号861頁
参照法条
憲法14条,刑訴施行法2条,旧刑訴法409条,旧刑訴法403条,刑法246条1項,食糧緊急措置令10条本文
論点146第409条刑事訴訟法

一 旧物価統制令第一一条第二項にいわゆる不当高価額認定の基準
二 上告理由として不利益な主張となる場合の一例

裁判要旨一 旧物価統制令第一一条第二項にいわゆる不当に高価な額であるか否かは、所論のように取引当時事実上世間一般に行われているいわゆる闇価格を標準として決すべきものではなくその場合には同種又は類似の物資に対する法令告示等による統制価格を標準として決すべきものであることは当裁判所の判例とするところである(昭和二四年(れ)第三〇六号第二五年三月三〇日第一小法廷判決参照)従つて、原判決が判示小売業者に対する統制額を基準として本件取引を以て不当高価による取引であると判断したことは正当であつてこの点に関する論旨は理由がない。
二 昭和二二年四月勅令第一三三号による改正前の物価統制令の適用ある事件において、不当高価販売罪として認定された所為を公定価格超過販売罪にあたる所為であると主張する上告論旨は、被告人にとり不利益な主張である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年3月16日 昭和24(れ)2119
登載
刑集 第5巻5号788頁
参照法条
旧物価統制令(昭和21・8・12勅令382号による改正前のもの)11条2項,物価統制令36条(昭和22年4月勅令133号による改正前のもの),物価統制令36条(昭和22年4月勅令133号による改正前のもの)11条2項,物価統制令36条(昭和22年4月勅令133号による改正前のもの)33条,物価統制令36条(昭和22年4月勅令133号による改正前のもの)3条,旧刑訴法409条
論点147第409条刑事訴訟法

上告審においてはじめて緊急避難である旨主張することの適否

裁判要旨上告審においてはじめて被告人の所為は緊急避難に該当し違法性がない旨主張することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年2月22日 昭和25(れ)1759
登載
刑集 第5巻3号418頁
参照法条
刑法37条,旧刑訴法409条
論点148第409条刑事訴訟法

一 昭和二二年政令第六五号重要物資緊急調査令の合憲性
二 原審に提出された上告趣意を最上告趣意として援用することの可否

裁判要旨一 昭和二二年政令第六五号重要物資緊急調査令は同二〇年勅令第五号二号ポッダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基いて制定されたもので、それが官報による公布の際同政令前文にその旨明示せず罰則を設けても憲法第七三条に違反しない。
二 なお、論旨末段においては原審に提出された上告趣意書の記載を本件再上告趣意として援用しているが、このような援用は許されないのであるから、この点については別に説明を与えない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和26年1月31日 昭和24(れ)2696
登載
刑集 第5巻1号137頁
参照法条
憲法73条,昭和20年勅令542号ポッダム宣言の受諾に伴い発する命令の件,昭和23年3月27日政令65号9条,昭和23年3月27日政令65号11条,旧刑訴法409条
論点149第409条刑事訴訟法

物価統制令違反罪につきその取引行為が告示制定の前後にまたがる場合と右告示制定以前の行為については他の告示の適用がある場合と自己に不利益な上告理由

裁判要旨本件に適用せられた告示が昭和二二年一〇月二八日以後効力を生じたものであること、しかるに原判示の事実は昭和二二年一〇月一五日以降同二三年五月三日までの取引であるにかかわらず昭和二二年一〇月二八日以前と以後の分の区別が記録上明瞭でないことは所論のとおりである。従つてもし昭和二二年一〇月二八日以前の取引があつたとすればこれについても右告示を適用すべきでないからこの点において原判決は違法である。しかし昭和二二年一〇月二八日以前においては本件洗剤について昭和二一年六月二九日大蔵省告示第五〇四号が適用されその統制額は一瓩六円(本告示においては一瓩五〇円)であるから、たとえ右違法があつたとしてもそれはむしろ被告人に利益であるから原判決破毀の事由とはならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年1月26日 昭和24(れ)2354
登載
集刑 第39号753頁
参照法条
旧刑訴法409条,昭和22年10月28日物価調告示938号,昭和21年月29日大蔵省告示504号
論点150第409条刑事訴訟法

一 法令の不和と犯意の成立
二 犯罪の情状に関する主張に過ぎない期待不可能の主張

裁判要旨一 法令の不和と犯意の成立を阻却しないことはいうまでもないところであるし、しかも、被告人が本件犯行当時判示の所為が違法であることを知つていたことは原審公廷における所論引用の裁判長の「幽霊人員を作つて配給を受けるということは悪いと言う事は判つていたね」の問に対し被告人の「はい承知して居りました」の供述に照らしてたやすく容認しえられるところであつて、右供述を本件が問題となつてからの判断であるとする所論は独自の見解に過ぎないものといわなければならない。
二 なお所論被告人に本件犯行をしないことを期待できないとの主張は犯罪の情状に関し、毫も犯罪の成立に関係のないものであることその主張自体で明白であつて、原新でも主張しなかつたのであるから原判決がこれにつき審理も判断もしないのは当然であつて論旨は結局原判決の事実認定を非難するに帰し上告適法の理由とならぬ。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年1月25日 昭和25(れ)1559
登載
集刑 第39号671頁
参照法条
刑法38条3項,旧刑訴法360条2項,旧刑訴法409条
論点151第409条刑事訴訟法

横領罪と不当高価販売行為との想像的競合と公訴事実の同一性

裁判要旨右追公判請求書によれば検察官はA等において本件帆布を前記代金にて販売したときに横領行為が完成したものとして公訴を提起した趣旨と認められる。されば、横領罪を構成するものとして起訴された被告人A等の右販売行為が他面において物価統制令に違反するのであるから、刑法五四一条一項前段にいう一個の行為が他の罪名に触れる場合に当り、公訴事実の同一性を害しないものと認められる。それゆえ、原審が被告人A等を同令に違反するものとして処罰したからとて審判の請求を受けない事件につき判決したものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年12月25日 昭和26(れ)1504
登載
集刑 第58号751頁
参照法条
物価統制令9条ノ2,刑法253条,刑法54条1項前段,旧刑訴法291条,旧刑訴法409条,旧刑訴法410条18号
論点152第409条刑事訴訟法

起訴事実たる森林窃盗の賍物収受を森林窃盗と認定することと公訴事実の同一件

裁判要旨本件における起訴事実である森林窃盗の賍物収受と原判決の認定事実である森林窃盗とは、その基本的事実関係において同一性を失わないものと認められるか、論旨後段の不告不理の違反があるという主張も採ることを得ない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年11月15日 昭和26(れ)226
登載
集刑 第56号733頁
参照法条
森林法87条,森林法84条7号,旧刑訴法291条,旧刑訴法409条,旧刑訴法410条18号
論点153第409条刑事訴訟法

一 下級審が事件について上級審が示した意見に従つて処理した場合の下級審判決の適否
二 免訴判決に対する検察官の上訴と憲法第三九条

裁判要旨一 上級審の裁判所における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束するものであること、裁判所法第四条の規定するところである。それゆえ「上級審において下級審判決が破棄され事件の差戻があつた場合には、下級審はその事件を処理するに当り判決破棄の理由となつた上級審の事実上及び法律上の意見に拘束され必ずその意見に従いこれに基ずいて事件の審判をしなければならないのであるから、既に下級審が上級審の意見に従つて事件を処理したものである以上、その上級審の意見が客観的に間違つて居ると否とに拘らずその下級審の判決を違法視することはできない」こと当裁判所大法廷判決の示すとおりである(昭和二四年(れ)第二〇二九号同二五年一〇月二五日大法廷判決)。
二 被告人に対し免訴の言渡された判決につき検察官が上訴を申し立てることは、憲法第三九条に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年10月23日 昭和26(れ)1785
登載
刑集 第5巻11号2281頁
参照法条
裁判所法4条,旧刑訴法409条,旧刑訴法376条,憲法39条
論点154第409条刑事訴訟法

一 判決に掲げてある証拠の誤記であることの明瞭な場合
二 賄賂の価格算定の誤謬を主張する上告理由と被告人に不利益な主張
三 農地委員会の職務権限
四 いわゆる荒廃地と自作農創設特別措置法第三条の農地

裁判要旨一 判決に証拠として「被告人に対する検事の第二回聴取書中判示同旨の供述記載」と掲げてあつても、記録中数通ある被告人に対する検事の聴取書中判示事項と同旨の記載ある聴取書は第一回聴取書だけであつて、その余の聴取書には別個の事実についての供述記載しかない場合には、右第二回聴取書は第一回聴取書の誤記であること明らかであるといわなければならない。
二 判示玄米七斗については、当時適用のあつた昭和二二年一一月一日物価庁告示第九六〇号に定めている統制額に基ずいて算出すべきものであつて、同告示により算出すれば、原判示金額より若干多額になること算数上明らかであり、原判決はこの点において違法が存するものといわなければならないが、原判示価格は被告人Aに有利に算出されている結果、同被告人に対する追徴の金額もそれだけ少額になつているので、右玄米七斗の価格の誤謬を指摘する論旨は結局被告人に不利益な主張となる。
三 農地所有権の移転についての地方長官の許可申請書に意見を附し、之を地方長官に進達することは右農地委員会の職務権限に属するものと認むべきである。
四 いわゆる荒廃地であつても、自作農創設特別措置法第三条の農地にあたる以上、政府買収の対象となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年10月12日 昭和25(れ)1409
登載
刑集 第5巻11号2183頁
参照法条
旧刑訴法360条1項,旧刑訴法409条,刑法197条,農地調整法(昭和21年法律第42号により改正されたもの)4条1項,農地調整法(昭和21年法律第42号により改正されたもの)4条3項,農地調整法施行令(昭和21年勅令第556号により改正されたもの)2条1項,農地調整法施行令(昭和21年勅令第556号により改正されたもの)2条3項,農地調整法施行規則(昭和21年農林省令第68号により改正されたもの)6条1項本文,農地調整法施行規則(昭和21年農林省令第68号により改正されたもの)6条2項,農地調整法施行規則(昭和21年農林省令第68号により改正されたもの)6条3項,自作農創設特別措置法(昭和24年法律第205号による改正前のもの)3条5項5号
論点155第409条刑事訴訟法

強要罪の認定に対し恐喝罪を主張することの適否

裁判要旨刑法第二二三条第一項前段の強要罪の認定に対し、恐喝罪をもつて処断すべきであるとの主張は、被告人の不利益に帰すから、上告の理由として許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和25年12月19日 昭和25(れ)1228
登載
刑集 第4巻12号2562頁
参照法条
刑法223条1項,刑法249条,旧刑訴法409条
論点156第409条刑事訴訟法

取寄記録の性質と証拠物の送付に関する手続違反は上告理由となるか

裁判要旨取寄記録のごときは、旧刑訴法上訴訟記録に包含されるものではなく証拠物に属するものである。そして、原二審裁判所は、必ずしもかかる証拠物を法律審である上告裁判所に送付することを要しないものであることは旧刑訴第四二一条〈抗告は、即時抗告を除いては、何時でもこれをすることができる。但し、原決定を取り消しても実益がないようになつたときは、この…〉を同第三九八条〈不法に、管轄違を言い渡し、又は公訴を棄却したことを理由として原判決を破棄するときは、判決で事件を原裁判所に差し戻さなけれ…〉と対照すれば明白であつて弁護人は必要とあれば何時でも当裁判所にその取寄を求めることができるのである。しかのみならず、元来訴訟記録又は証拠物の上訴裁判所への送付に関する手続違反のごときは、原判決そのものの違反ではないから、かかる手続違反ありとの主張は、原判決に対する適法な上訴理由ではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年11月16日 昭和25(れ)1268
登載
刑集 第4巻11号2315頁
参照法条
旧刑訴法398条,旧刑訴法421条,旧刑訴法409条
論点157第409条刑事訴訟法

一 犯人が被告人であることの證據が自白のみである場合の正否
二 犯罪の動機等を被告人の自白及び取調警察官の供述によつて認定することの可否
三 自白の強要を認定し得ない一事例
四 自白の強要を認定し得ない事例
五 證人が自己の證言を補充するために差し出した書面と證人尋問調書との關係
六 犯行の動機の一部を證據によらずして認定した違法と上告理由

裁判要旨一 原審は被告人の自白のみならず多くの證據を綜合して判示事實を認定したのであつて、自白と原審舉示の他の證據とを綜合すれば原審認定の犯行事實を認定することが出來る。かかる場合犯人が被告人であることの證據が自白のみであつても違憲違法ではない。
二 殺人の動機及殺人に到るまでの被告人の心理的推移過程は、被告人の公判廷外の自白と被告人を取り調べた警察官の供述によつて認定しても違法ではない。
三 被告人の取調にあたつた司法警察官の作成した「殺人事件取調状況について」と題する記録編綴の書面中に、數日來犯行を否認していた被告人に對して」只今から捜査會議を始めるが取調にあたつている者は殆んど犯人は君だと信じている」とか唾液鑑定の結果によつては「否認しても無駄である」とか「自供が送れる程被告人に不利である」と繰り返し説得し眞相を追及した旨の記載があることだけで被告人の自白が強要によつたものと認定することはできない。
四 被告人が第一、二審公判廷で、警察での自白は取調官からアゝではないかコウではないかと問い詰められ強激な堪えられぬ苦痛を受けたので、取調官の云わるまゝ答えて了つたものでそれは皆事實に反すると供述したことだけで、直ちに自白が強要によつたものと斷定することはできない。
五 證人尋問調書に當該證人が自己の證言を補充するため書面を差し出し裁判長がこれを同調書の末尾に添付すると告げた旨の記載があり、且つ同調書と該書面との間に同調書作成者の契印が押してあるときは、右書面は同尋問調書の一部をなすものと認められる。
六 證據によらずして事実を認定した違法があつても、その事實が犯罪の動機として極めて輕微且つ間接の遠因に過ぎないため判決に影響を及ぼすべきものとは到底官考えられない場合には上告の理由とならない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和24年11月2日 昭和23(れ)1382
登載
刑集 第3巻11号1691頁
参照法条
憲法38条3項,憲法38条1項,旧刑訴法337条,旧刑訴法56条,旧刑訴法71条2項,旧刑訴法336条,旧刑訴法409条
論点158第410条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入の部分のみが破棄された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和59年7月20日 昭和59(あ)189
登載
集刑 第237号1081頁
参照法条
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法410条1項
論点159第410条刑事訴訟法

未決誤算入部分を破棄する場合における主文の表示方法(反対意見がある)

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年3月29日 昭和59(あ)27
登載
集刑 第236号429頁
参照法条
刑法21条,刑訴法396条,刑訴法410条,刑訴法414条
論点160第410条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入の部分のみが破棄された事例
(反対意見がある)

裁判要旨原判決の違法が、現実に存在しない未決勾留日数を裁量により本刑に算入した点のみにある場合においては、原判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年7月16日 昭和56(あ)654
登載
刑集 第35巻5号557頁
参照法条
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法410条1項
論点161第410条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入の部分のみが破棄された事例

裁判要旨原判決の違法が、罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行と競合する未決勾留日数の一部を裁量により本刑に算入した点にのみある場合においては、原判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年4月19日 昭和53(あ)2328
登載
刑集 第33巻3号261頁
参照法条
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法410条1項
論点162第410条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入の部分のみが破棄された事例

裁判要旨原判決の違法が、法律上当然に全部本刑に通算されるべき未決勾留日数の一部を裁量により本刑に算入した点にのみある場合においては、厚判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年11月18日 昭和51(あ)761
登載
刑集 第30巻10号1902頁
参照法条
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法410条1項,刑訴法495条
論点163第410条刑事訴訟法

刑訴法第四〇〇条〈前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の…〉但書に違反するとされた事例

裁判要旨一審無罪の収賄事件の核心たる犯意の点について何ら事実の取調をすることなく、訴訟記録および一審で取り調べた証拠のみにより、犯罪事実の存在を確定し有罪の判決をしたことは、刑訴法第四〇〇条〈前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の…〉但書の解釈適用を誤り、当裁判所の判例に反する判断をしたものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年12月19日 昭和42(あ)2677
登載
集刑 第169号721頁
参照法条
刑訴法400条但書,刑訴法410条,刑法197条1項
論点164第410条刑事訴訟法

一 起訴されていない犯罪事実を量刑の資料として考慮したことが憲法第三一条第三八条第三項に違反するとされた事例
二 原判決の憲法違反が判決に影響を及ぼさないとして上告が棄却された事例

裁判要旨一 起訴されていない犯罪事実で、被告人の捜査官に対する自白のほかに証拠のないものを、いわゆる余罪として認定し、これをも実質上処罰する趣旨のもとに重い刑を科することは、憲法第三一条、第三八条第三項覆に違反する。
二 右のような憲法違反を犯している第一審判決を違法ではないとして認容した違憲が原判決にあつても、原判決が、結論において、第一審判決の量刑を不当としてこれを破棄し、自判する際に、余罪を犯罪事実として認定しこれを処罰する趣旨を含めて量刑したものとは認められないときは、右違憲は判決に影響を及ぼさない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和42年7月5日 昭和40(あ)2611
登載
刑集 第21巻6号748頁
参照法条
憲法31条,憲法38条3項,刑訴法319条2項,刑訴法410条1項但書
論点165第410条刑事訴訟法

迅速を欠いた裁判と破棄の理由。

裁判要旨本件被告事件につき、第一審の有罪判決が言い渡され、被告人から控訴の申立をなし、第一審の大分地裁日田支部から原審の福岡高等裁判所え一件記録が送付せられる迄二年五ケ月以上を経過していること、その遅延した理由が第一審担当事務官の過失によるものであることは所論のとおりであるが右の如き事情で裁判の迅速を欠いたとしても、これにより原判決を破棄する理由にならないことは当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一〇七一号、同年一二月二二日大法廷判決)とするところであり、論旨は理由がない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年10月26日 昭和37(あ)1066
登載
集刑 第144号811頁
参照法条
憲法37条1項,刑訴法410条
論点166第410条刑事訴訟法

訴訟記録の紛失と上告理由の判断

裁判要旨訴訟記録が紛失し上告理由の有無について証明の方法がなく、その他に原審の訴訟手続が適法になされたことを確証するに足る証拠もないときは上告理由があるものといわねばならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年1月24日 昭和30(れ)5
登載
刑集 第10巻1号82頁
参照法条
旧刑訴法410条,旧刑訴法64条,刑訴法411条,刑訴法410条
論点167第410条刑事訴訟法

公訴事実の同一性が認められる一事例

裁判要旨所論の本件公訴事実と原審認定事実とは基本的事実関係としては、いずれも同一物件について車票の差換による不法領得という同一行為に関するものであつて、一は所論の日時場所における貨車の転送をもつて窃盗既遂として起訴し他の転送先の駅又は倉庫で管理者より騙取し又は騙取しようとしたと認定したのは単に占有関係の法的価値評価を異にした結果にすぎない。それ故原審認定事実と公訴事実は同一性を失うものではなく所論は理由がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年8月24日 昭和29(れ)3
登載
刑集 第8巻8号1426頁
参照法条
旧刑訴法291条,旧刑訴法410条18号,刑法235条,刑法246条1項
論点168第410条刑事訴訟法

公判期の召喚状の不送達と刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉

裁判要旨原審における附郵便送達が事実上到達しなかつたとしても右不送達の原因は、被告人の住居の申出の不完全なことに基因するものと認められるばかりでなく、被告人は、同年三月六日午前九時の判決言渡期日を同年二月二三日適式に通知され且つ右言渡期日に被告人自身が原審公判廷に出頭したにかかわらず、前記再度の公判期日の通知が不送達であつたことを申し出ることなく且つ弁論再開等の申立をもしなかつたことも記録上明白である。されば、当裁判所は、結局刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用して原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認めることができない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年2月4日 昭和26(れ)619
登載
集刑 第92号59頁
参照法条
旧刑訴法76条,旧刑訴法410条8号,新刑訴法411条
論点169第410条刑事訴訟法

占領軍物資不法所持の公訴提起の効果

裁判要旨占領軍物資不法所持の公訴提起の効果は、その不法所持を為すに至つた賍物収受行為に及ぶものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年4月24日 昭和26(れ)1187
登載
刑集 第6巻4号693頁
参照法条
旧刑訴法291条1項,旧刑訴法410条18号
論点170第410条刑事訴訟法

一 旧刑訴事件の上訴審における審判の特例規則が適用される控訴審判決の証拠説示の方法
二 綿布生地の買受及び売渡行為が別罪として起訴されている場合に買受行為のみを有罪とする場合の判示方
三 事実の同一性ある例

裁判要旨一 本件については、旧刑訴事件の上訴審における審判の特例に関する規則八条が適用されるから、控訴審判決が、証拠により罪となるべき事実を認めた理由を説明するには、証拠の標目を掲げれば足りるのである。(同規則の違法、無効でないことは、昭和二四年(れ)第二一二七号同二五年一〇月二五日大法廷判決、集四巻一〇号二一五一頁の趣旨に徴して明らかである。)そうして、証拠の標目を提げることによる証拠説示については、判文上証拠と事実との関連が明らかでなくても、記録と照らし合せて見てどの証拠にどの事実が認定されたか明らかであれば足りるとするのが、当裁判所の判例である。(昭和二五年(あ)第一〇六八号同年九月一九日第三小法廷判決、集四巻九号一六九五頁、昭和二五年(あ)第七七三号同二六年四月一七日第三小法廷判決、集五巻六九六三頁)。

二 本件各公判請求書によると、本件綿布生地の買受行為とその売渡行為とは、各々別罪を構成するものとして、起訴されているものと解すべきである。従つて、原判決が、その売渡行為につき無罪を言渡し、その買受行為につき有罪の言渡をしたからといつて、所論のように一個の公訴事実を分割し、一部有罪、一部無罪の言渡をしたものとはいえない。そしてまた、本件綿布生地の買受行為を、衣料品としての買受行為とみても、生産資材としての買受行為とみても、基本の事実関係を異にするものではないから、原審認定の事実は、起訴事実と同一性を失わず、従つて、審判の請求を受けた事件について判決せず、審判の請求を受けない事件について判決をしたものとの非難はあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年2月26日 昭和26(れ)2396
登載
集刑 第61号607頁
参照法条
旧刑訴事件の上訴審における審判の特例規則8条,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条18号
論点171第410条刑事訴訟法

弁護権不法制限の例

裁判要旨被告人が弁護人を選任しその届出をなしたに拘わらず、原審がその後指定した公判期日を弁護人に通知せず、従つて弁護人不出頭のまま審理を終結し、判決宣告期日に有罪判決を言渡したときは弁護権の不法な制限であつて、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があり、且つ原判決を破棄しなければ著しく正義に反する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年1月31日 昭和26(れ)2078
登載
集刑 第59号475頁
参照法条
旧刑訴法410条11号,旧刑訴法320条2項,旧刑訴法320条3項,新刑訴法411条,刑訴施行法3条の2
論点172第410条刑事訴訟法

判決に理由不備の違法がある一事例

裁判要旨一定の時に被害者に脳出血による何らかの身体的症状の生じたことを前提として被害者の受傷と死亡との時間的間隔を判定した場合に、右身体的症状を生じたことを認定するための証拠が明らかにその証拠の趣旨と矛盾し、かつ他にこれを認定するにたる証拠のない判決には理由不備の違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月25日 昭和23(れ)1738
登載
集刑 第71号431頁
参照法条
旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条19号,刑法195条,刑法205条
論点173第410条刑事訴訟法

強姦致傷罪の事実を認定した原判決に対して為された、単純強姦罪の事実を前提とする弁護人の主張に対する判断の要否

裁判要旨所論は、弁護人は原審において「本件は単純強姦罪と認むべきであつて、被害者の告訴が取下げられた以上免訴すべきものである」旨公訴権消滅免訴の原由たる主張をしたから、原審はこれに対する判断を示すべきであつたにかかわらずこれを示さなかつた違法があると言うのである。しかしながら、右弁護人の主張は単純強姦罪の事実を前提とするものであるが、原判決は強姦致傷罪の事実を認定判示することによつて、単純強姦罪の事実を否認し、従つてこれを前提とする弁護人の主張全部を否定していることは明白であるから所論は理由がない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月18日 昭和24(れ)1410
登載
集刑 第70号619頁
参照法条
旧刑訴法360条2項,旧刑訴法410条19号,刑法177条,刑法180条,刑法181条
論点174第410条刑事訴訟法

単に被告人の供述の一部を措信しない理由の説示の根拠としたに過ぎない聴取書に対する適法な証拠調手続を欠くことと証拠手続上の違法の有無

裁判要旨所論聴取書は、原判決が、犯罪事実認定の証拠に供したものではなく、単に被告人の供述の一部を措信しない理由の説示の根拠にしたに過ぎないものであるから、仮りに所論聴取書について適法な証拠調手続を履践していないとしても、原判決には証拠手続上の違法があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月11日 昭和24(れ)2493
登載
集刑 第70号417頁
参照法条
旧刑訴法340条,旧刑訴法336条,旧刑訴法410条13号
論点175第410条刑事訴訟法

被告事件の陳述を聴かないで審判したことにならない事例

裁判要旨記録によれば原審第一回公判期日において検察官は第一審判決の事実摘示に基いて公訴事実の陳述をなし、そこには公文書偽造の事実の摘示はあるが、偽造公文書行使の事実の記載録のないことは所論のとおりである。しかし行使の目的をもつてする公文書の偽造とその偽造公文書の行使とは刑法第五四条第一項後段の牽連犯として科刑上の一罪に属するものであるから偽造公文書行使について公訴事実の陳述がなかつたところで裁判所がこの部分についても審判することを妨げられるものでないと解しなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年6月29日 昭和26(れ)249
登載
刑集 第5巻7号1363頁
参照法条
旧刑訴法345条1項,旧刑訴法410条12号
論点176第410条刑事訴訟法

一 裁判所法第三三条第三項による事件移送前における簡易裁判所の訴訟手続の効力
二 犯罪の時が判示事実と証拠との間にくいちがいがある判決の適否

裁判要旨一 簡易裁判所がその事物管轄に属する罪名により起訴せられた事件につき、審理の中途において裁判所法第三三条第三項の場合に当るものと認めて事件を管轄地方裁判所に移送し、同地方裁判所は審理の上その事件を簡易裁判所の事物管轄に属しない罪名により処断すべきものと認めた場合にも、右移送前に既にした簡易裁判所の訴訟手続はその効力を失うものでないことは、旧刑訴法第一二条の規定によつて明らかである。
二 犯罪の時は罪となるべき事実の属するものではないから、この点について判決理由と証拠との間に多少のくいちがいがあつても、これがためにその判決を違法として破棄するに足りない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年4月13日 昭和25(れ)1711
登載
刑集 第5巻5号898頁
参照法条
裁判所法33条3項,旧刑訴法12条,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条19号
論点177第410条刑事訴訟法

公判請求書を引用した公判調書の採証と右公判調書の証拠調の方法

裁判要旨原判決は証拠として「原審第一回公判調書中被告人A、同B、同C及び原審相被告人Dの供述として、公判請求書記載の公訴事実を読聞けられた通り間違いない旨の供述記載及び右公判請求書中判示同趣旨の記載」をも綜合していることは、所論の指摘するとおりである。そしてかかる場合には右公判調書の証拠調をするに当つて同調書に引用されている公判請求書の記載をも読聞けなければ該調書について適法な証拠調がされたものということができない。しかるに記録を調べてもかような手続をしていないのは違法であつて論旨は理由がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月22日 昭和24(れ)1552
登載
集刑 第42号297頁
参照法条
旧刑訴法340条,旧刑訴法336条,旧刑訴法410条13号
論点178第410条刑事訴訟法

刑事の契印を欠く判決書の適否と共同上告人に対する破棄理由の共通

裁判要旨原判決を調べて見るに、その第二葉目と第三葉目との間に所論の契印を欠いていることは明である。旧刑訴法によると、判決書に判示の契印が欠けているときは常に上告の理由があつて判決に影響を及ぼすべき法令違背あるものと、されているのであるから、論旨は理由があり原判決は破棄を免れない。そして、原判決は被告人Aに対する強盗、住所侵入、銃砲等所持禁止令違反被告事件についてばかりであく同一事件の共同被告人であるBに対しても言渡されたものであるから、前記破棄の理由は共同被告人たるBにも共通のものといわなければならない。従つて原判決は右Bの為にも破棄を免れないのである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年2月2日 昭和25(れ)1768
登載
刑集 第5巻3号395頁
参照法条
旧刑訴法71条2項,旧刑訴法410条21号,旧刑訴法451条
論点179第410条刑事訴訟法

一 旧刑訴法第三三四条は憲法第三七条、刑訴応急措置法第四条により改正変更されたが−必要的弁護事件以外の事件と弁護人の立会の要否
二 公判期日に適式の召喚を受けた弁護人の不出頭と弁護権の不法制限

裁判要旨一 論旨は、原審裁判所は旧刑訴法第三三四条を墨守して弁護人の期日懈怠の責任を被告人等に負わしめ、弁護人の立会なくして公判の審理を受けることを被告人等に強制したものであるが、旧刑訴法第三三四条は憲法第三七条第三項、刑訴応急措置第四条〈事物管轄を異にする数個の関連事件が上級の裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、…〉によつて改正変更されたものと解すべきであるから、原審の審理手続は、右憲法及び刑訴応急措置法の規定に違反するというのである。しかし、憲法第三七条第三項前段は刑事被告人に対しいかなる場合にも被告人自ら資格を有する弁護人を依頼し得ることを保障したものであり、また同項後段及び刑訴応急措置法第四条は、被告人において自ら弁護人を依頼することができないときに国に対し弁護人を選任することを請求する権利があることを認めたものであつて、刑事事件についてはいかなる事件であつても例外なしに弁護人がなければ公判を開廷することができないことを規定したものではない。従つて、これらの規定により旧刑訴第三三四条〈被告事件について刑を免除するときは、判決でその旨の言渡をしなければならない。〉は所論のように改正変更されたものではないから論旨は理由がない。
二 公判期日に適式の召喚を受けた弁護人が自らその期日を懈怠して出頭しなかつたにかかわらず、原審に弁護権行使の不法制限があると主張する論旨の理由ないことは、言うまでもないところである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和26年1月31日 昭和24(れ)824
登載
集刑 第39号947頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴応急措置法4条,旧刑訴法334条,旧刑訴法320条1項,旧刑訴法410条11号
論点180第410条刑事訴訟法

被告人に読聞けず証拠調をもしないで採証した判決の適否

裁判要旨第一審公判調書によれば同調書には「判事は公判請求書の公訴事実を読み聞かせ、この事実はどうかとの問に対して、被告人はその通り間違ありませんと答えた旨」の記載が存するのみであるから、原審がそれを証拠に供するには第一審公判調書の外公判請求書も読みきけこれが証拠調をしなければならないものといわねばならぬ。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年1月25日 昭和25(れ)1632
登載
集刑 第39号689頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法338条,旧刑訴法340条,旧刑訴法410条19号
論点181第410条刑事訴訟法

一 検証調書添付の図面等について証拠調がなされていない場合と右検証調書を証拠とすることの適否
二 検察官の任意捜査としての嘱託に基く鑑定書の証拠能力−鑑定の請求と鑑定書を作成した鑑定人の尋問の請求

裁判要旨一 第二事実の納屋については敢て検証調書添附の写真を俟たなくても全焼したことを推認できる記載がある。それ故原判決はこの点について理由不備はないしかも訊問調書添附の図面等を除いても右供述が独立性がある場合にはこの部分のみを証拠調をしてそれを証拠とすることを妨げないことについては当裁判所の判例とするところであり(昭和二四年(れ)第二一四五号同年一二月一三日第三小法廷判決判例集第三巻一二号一九八一頁)この理は検証調書の場合にも異るものでない。
二 検察官が任意の捜査として鑑定の嘱託をしたものは他に何らかの証拠能力を失わせるような事情のある場合を除いて証拠能力がないと論ずることはできない。又水差の鉱物性油の鑑定を求めただけでは未だ如露には鉱物性油が存在したことを確認することの所論鑑定書を作成した鑑定人の喚問を請求したものとはいい得ない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年1月23日 昭和24(れ)1766
登載
刑集 第5巻1号61頁
参照法条
旧刑訴法340条1項,旧刑訴法341条,旧刑訴法336条,旧刑訴法410条19号,旧刑訴法337条,旧刑訴法228条,刑訴応急措置法12条
論点182第410条刑事訴訟法

一 審判の請求を受けない事件につき判決した事
二 審判の請求を受けない事件につき判した違法と破棄理由の共通

裁判要旨一 本件公訴提起は公判請求書に基いて公判請求がなされているのであるが、右公判請求書の記載は論旨摘録の通りであつて、その記載においては被告人等が欺罔手段を用いたのは被害者を誘い出す為めであり、財物の交付を受ける手段としてこれを用いたことは少しも記載されていない。換言すれば財物を騙取せんとした行為は少しも書いてないのである。それ故詐欺については審判の請求が無かつたものというの外なく、従つて原審は審判の請求を受けない事件について判決した違法あるものといわざるを得ない。本件の場合の様に起訴状において強取の事実が起訴され裁判所で調べた結果正に起訴状記載の強取の事実が認められた場合、裁判所はその事実に強盗の規定を適用して所罰した上、その事実の外に更に起訴状に書いてない詐欺の事実について審理し、その事実を認定してこれに詐欺の規定を適用し二罪として併合罪の加重をするのは不告不理の原則に反するものといわなければならない。本件公判請求書を見ると罪名としては強盗傷人とあり、公訴事実としては「被告人等は共謀の上水飴の取引に藉口してA等を誘出し金品を強奪せんことを企て、被告人Bが昭和二二年一〇月八日頃…A方に至り同人に対し千葉縣庁の職員に配給した水飴二百三十本を横流しすべきにより、買受けられたき旨申欺き同人がその共同買受人にして右水飴代金の内金四十六万円を携帯したる旨Cを被告人D、Eが附近に待機せる千代田区a…農林省庁舎に同道して中(略)被告人Bな所携の鉄棒を以て右Fの頭部を乱打し…云々)と記載し強盗傷害の事実を記載して居る。
二 審判の請求を受けない詐欺事件について判決した違法があるという理由で原判決を破棄する場合は、右詐欺の共犯と認められた共同上告人に対しても破棄の理由は共通であるものとして旧刑訴法第四五一条を適用すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年1月23日 昭和25(れ)1011
登載
刑集 第5巻1号73頁
参照法条
旧刑訴法410条18号,旧刑訴法291条,旧刑訴法451条
論点183第410条刑事訴訟法

一 酩酊すると暴行する習癖のある注意義務
二 殺人の公訴事実中には過失致死の事実も含まれるか

裁判要旨一 本件被告人の如く、多量に飲酒するときは病的酩酊に陥り、因つて心神喪失状態において他人に犯罪の害悪を及ぼす危険ある素質を有する者は、居常右心神喪失の原因となる飲酒を抑止又は制限する等前示危険の発生を未然に防止するよう注意する義務あるものといわねばならない。しからば、たとえ原判決認定のように、本件殺人の所為は被告人の心身喪失時の所為であつたとしても、(イ)被告人にして既に前示のような己れの素質を自覚していたものであり且つ(ロ)本件事前の飲酒につき前示注意義務を怠つたがためであるとするならば、被告人は過失致死の罪責を免れ得ないものといわねばならない。
二 殺人の公訴事実中には過失致死の事実をも包含するものと解するを至当とすべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和26年1月17日 昭和25(れ)548
登載
刑集 第5巻1号20頁
参照法条
刑法199条,刑法210条,旧刑訴法291条,旧刑訴法410条18号
論点184第410条刑事訴訟法

被告人に対する公判期日の召喚状を公示送達したことが違法と認められる一事例

裁判要旨被告人が第一審裁判所における保釈の制限住居に居住し、その後転宅又は長期間家を不在にしたことはなく、右制限住居に宛てた他の郵便物も被告人に到達しているのに、原審が同人に対するこの制限住居宛の公判期日の召喚状が郵便局集配人により「宛先番地を尋ねたるも不明、転居先不明」の事由により返戻されたことの一事をもつて、他に何等の調査をつくさず直ちに住居が不明な場合として同人に対する召喚状を公示送達したことは違法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年10月12日 昭和26(れ)1792
登載
刑集 第5巻11号2224頁
参照法条
旧刑訴法78条,旧刑訴法410条8号
論点185第410条刑事訴訟法

総則規定の適用を明示しない判決と擬律不備の有無

裁判要旨原判決が被告人Aの判示虚偽公文書作成の所為に加功した所為に対し、刑法第六五条一項の適用を明示しなかつたことは所論のとおりである。しかし、同条項のごとき総則規定は特にこれが適用を明示しなくとも、これを適用したことを看取し得れば差支ないものといわなければならない。そして原判決は、その判示冒頭において被告人は昭和二一年三月三〇日退官し爾後判示常任幹事であつたに過ぎないことを判示し刑法第六〇条を適用する等判示全体により自ら同条項を適用処断した趣旨であることを窺い知ることができるから、原判決にはこれを破棄しなければならない擬律不備の違法はないものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年11月2日 昭和25(れ)216
登載
集刑 第35号39頁
参照法条
刑法65条1項,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条19号
論点186第410条刑事訴訟法

擬律錯誤が判決破棄の理由とならない一事例

裁判要旨強盗致死の一罪と認むべき所為につき、強盗未遂と強盗致死の両規定を適用した擬律錯誤があつても、これを連続犯として結局強盗致死の一罪で問擬している場合には、右擬律錯誤は未だ原判決破棄の理由と為すに足らない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和25年11月17日 昭和25(れ)1112
登載
刑集 第4巻11号2334頁
参照法条
刑法240条後段,刑法55条(削除前),刑法243条,旧刑訴法410条19号,旧刑訴法236条
論点187第410条刑事訴訟法

旧刑訴法第四一〇条第一三号にいわゆる「法律により公判において取調ぶべき証拠」の意義

裁判要旨旧刑訴法第四一〇条一三号にいう「法律により公判において取調ぶべき証拠」とは例えば同法第三四二条所定の証拠のごとくその取調が裁判所の自由裁量に属せず従つて法律上必ず公判において取調べなければならないような証拠の取調をいうのであつて(昭和二三月(れ)第一〇一号同二三年七月一四日大法廷判決)所論の刃渡り六寸の出刃庖丁は右にいわゆる法律により公判において取調ぶべき証拠に該当しないこと明らかである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和25年11月17日 昭和25(れ)744
登載
集刑 第36号143頁
参照法条
旧刑訴法342条,旧刑訴法410条13号
論点188第410条刑事訴訟法

弁護人からの鑑定申請に対し留保の決定をしながら採否の決定を為さずに結審した判決の違法

裁判要旨原審の公判調書を調べてみると、第一回公判において豊島弁護人から鑑定を申請したのに対して、裁判長はこれを留保する旨の決定を言渡したが、その後第二回第三回の公判においてもこれが採否の決定を為さず、遂に留保した儘結審し判決を言渡したこと、所論の通りである。かような違法が上告の理由となることは当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第二六三五号同二五年三月七日第三小法廷判決参照)に照らしてみても明らかである。論旨は理由があり、原判決はこの点において破棄を免れない、
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和25年10月31日 昭和25(れ)914
登載
集刑 第19号1055頁
参照法条
旧刑訴法344条,旧刑訴法410条14号
論点189第410条刑事訴訟法

原判決の証拠説明中に「供述記載」は供述の「供述」は「記載」の各誤記ある場合と理由不備

裁判要旨所論の原判決証拠説明中の二の証拠は、被告人の第一回公判期日における供述を裁判官更送のため公判手続が更新された第二回公判期日において繰り返したのであるから、証拠説明中には「当公廷における供述」と書くのが正確であるし、又所論原判決証拠説明中の三の証拠は、被告人が愛知縣経済防犯課長宛提出した始末書を証拠調べをしてその中の供述記載を証拠としたものであるから「始末書の「……………」旨の記載」とするのが正確であるが、原判決証拠説明中二の「供述記載」は「供述」の、同三の「供述」は「記載」の各誤記であることは、本件記録上明白であるから、原判決に理由不備又は理由齟齬ありとする所論は、採用することができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和25年10月31日 昭和25(れ)955
登載
集刑 第19号1061頁
参照法条
旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条19号,旧刑訴法10条20号
論点190第410条刑事訴訟法

窃盗の共犯として起訴せられ第一審が臟物運搬と認定し原審が窃盗の幇助と認定した場合と事実の同一性

裁判要旨裁判所は、その基本たる事実関係の同一性を害しない限り、公訴事実とその態様において異り、したがつて適用法条を異にする事実を認定することができるものである(昭和二三年れ第八三八号、同年一二月四日第二小法廷判決参照)。そして、所論の原判示事実は、窃盗の共犯として起訴せられ、第一審が臟物運搬と認定したのを、原審において窃盗の幇助と認定したものであり、起訴事実と原審認定事実とは、その基本たる事実関係において同一性を失わないことが明らかであるから、原判決には何等所論のような違法はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和25年10月27日 昭和25(れ)1098
登載
集刑 第19号1051頁
参照法条
刑法60条,刑法235条,刑法256条,刑法62条,旧刑訴法291条,旧刑訴法410条18号
論点191第410条刑事訴訟法

一 公判廷における原審相被告人のための証拠調の請求について決定をしなかつた違法と判決破棄の事由
二 訊問をした時刻の記載が正確を缺く訊問調書の効力

裁判要旨一 公判廷における証拠調の請求について、その採否の決定をすることなく弁論を終結して判決を言い渡したとしても、右証拠調の請求が単に原審相被告人のためにされたものであり、被告人に何等関係のない場合には、その違法は原判決破棄の事由にならない。

二 訊問調書にはその取調をした年月日を記載すれば足るのであつて、檢證、押収又は捜査の場合のように必ずしもその時刻を記載する必要はないのである。(舊刑訴法五六乃至五八條参照)從つて假りに訊問調書にその訊問をした時刻の記載があり、しかも假りにその記載が正確を缺いていたとしてもその必要的記載事項に關しないかかる一事由から直ちに該調書そのものの無効を結論し得ないことは勿論であろう。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和24年8月18日 昭和24(れ)614
登載
刑集 第3巻9号1487頁
参照法条
旧刑訴法410条14号,旧刑訴法344条,舊刑訴法56條,舊刑訴法58條1項
論点192第410条刑事訴訟法

一 暴行又は脅迫を以つて婦女の心神を喪失させ若しくは抗拒不能に爲して姦淫した行為の擬律
二 強姦の點が未遂に終つた強姦致死罪の擬律
三 驚愕によつて犯行を中止した場合と中止未遂
四 死因の確実性につき程度の差のある鑑定の結果を綜合して死因を確定することの適否
五 原審において從來の自白を飜した場合における同自白の任意性及び眞實性の有無と裁判所の自由裁量

裁判要旨一 刑法第一七七條は暴行又は脅迫を以つて婦女を姦淫した者は、強姦の罪として處罰するを規定し、次に同法第一七八條において、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又はこれをして心神を喪失せしめ、若しくは抗拒不能ならしめて姦淫したる者についても、前條の例による旨を規定している。かかる法條の排列から見れば、苟しくも暴行又は脅迫を以つて婦女を姦淫した者は、前條に該當するのであつて從つてその暴行又は脅迫によつて、婦女をして心神を喪失せしめ、若しくは抗拒不能ならしめて姦淫した者も、また當然これに包含せられるものと解すべきである。
二 強姦致死罪は單一な刑法第一八一條の犯罪を構成するものであつて、強姦の點が未遂であるかどうか及びその未遂が中止未遂であるか障礙未遂であるかということは、單に情状の問題にすぎないのであつて、處斷刑に變更を來たすべき性質のものではにから、本罪に對しては刑法第一八一條を適用すれば足り、未遂減輕に關する同法第四三條本文又は但書を適用すべきものではない。
三 犯罪の実行に着手した後、驚愕によつて犯行を中止した場合においても、その驚愕の原因となつた諸般の状況が、被告人の犯意の遂行を思い止まらしめる障碍の事情として客観性のあるものと認められるときは、障碍未遂であつて中止未遂ではない。
四 致死罪において、甲鑑定人の窒息死と認めるという鑑定の結果と乙鑑定人の窒息死と認めるのが蓋然性が最も多いという鑑定の結果とを、他の証拠と綜合して被害者の死因を窒素死と認定しても、理由齟齬の違法があるとはいえない。
五 被告人が原審において從來の自白を飜し、右は被告人の眞意に出たものではないと辯解した場合に、右自白の任意性並びに眞實性について如何なる範圍において取調を行い、その供述のいづれを措信するかは凡て事實審たる原審の自由な判斷に委ねられているところである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和24年7月9日 昭和23(れ)1252
登載
刑集 第3巻8号1174頁
参照法条
刑法177条,刑法178条,刑法43条,刑法181条,刑法179条,旧刑訴法337条,旧刑訴法410条19号,憲法38条3項,旧刑訴法337条
論点193第410条刑事訴訟法

一 犯罪供用物件である兇器を公判廷で證據調をしないで強盜殺人罪を認定した場合
二 搜査段階において司法警察官によつて領置された物件と舊刑訴法第三四二條
三 事實認定の資料とした司法警察官の證據物の領置書又は領置目録の證據能力
四 公判期日の前日に選任された辯護人が終始公判に立會いながら期日の延期、續行の申請がない場合と辯護權の不法制限

裁判要旨一 本件のごとく、短刀拳銃、小銃等を使用して人を殺害して、物を強取したという條件において、これら兇器が領置、押収されている場合、裁判所が事實審理をするに當つては、公判廷において被告人に直接これらの證據物を示し、その意見辯解を開き適法な證據調を經た上で犯罪の證據としてこれを判決に舉示することは事實審として、まさにとるべき妥當の措置ではあるけれども、かくのごとき兇器等といえども必らずしも常に、これを公判廷に顯示して證據調をしなければならないというものではない。その他の證據で犯罪事實を認定し得る場合には事情によつて兇器等を證據としないで、本件におけるがごとく間接に、右兇器等に對する捜査官の領置書若しくは領置日録をとつて、犯罪事實認定の資料とすることも法律上許されないことではないのである。
二 犯罪捜査の段階において、司法警察官によつて、領置された物件のごときものは、舊刑訴法第三四二條の、「公判期日前訴訟關係人ヨリ提出シタル證據物」にも、同法第三二六條乃至第三二八條により、裁判所が公判期日前「集取シタル物」にも該當しないのであるから右物件について、原審が公判において證據調をしなかつたことをもつて、同法第四一〇條第一三號に該當する違法ありとすることはできない。
三 論旨は、原判決が、司法警察官作成の證據物の領置書若しくは、領置目録を事實認定の資料としたことをもつて、適法なる證據に基ずかして事實を認定した違法があると主張するのであるが、右のごとき書類といえども、公務員がその職務權限に基いて作成した文書であつて、その記載内容が證據品の領置に關するに過ぎないからといつて當然にその證據能力を否定する何らの根據もなくその文書の記載内容の趣旨に從つて、事實證明の用に供し得ることは勿論である。
四 公判期日の前日に辯護人を選任するかごときは、辯護權を尊重すべき裁判所の措置として、當を得たものでないことは勿論であるといわなければならない、記録を査閲すれば、原審において、被告人Aは、自ら辯護人を選任することができない旨を申出でたため、裁判所は昭和二三年六月一四同人のため辯護士宗政美三を辯護人に選任し、翌一五日公判を開廷し、同辯護士立會の上自實審理、證據調を施行同辯護士の辯論を經て、即日公判手續を終結したことは、所論のとおりである。しかしながら、原審公判調書によれば當日の公判には終始、右辯護人は立會つたのであるが、辯護人から辯論準備のため期日の延期若しくは審理の續行を申出た形跡もなく、その開廷並びに審理の進行について、被告人からも辯護人からも別段の異議もなく、辯護人の辯論を經て結審となつているのである。おもうに本件はその内容かさして複雜というでもなく公判における事件の審理も相當詳密に行われたので、辯護人としては、特に期日の延期續行等を申請するまでもなく、公判審理に立會うことによつて十分に事件の全貌を把握し得て被告人の辯護に欠くるところのないものと信じ直ちに辯論をして、その日の結審に別段の異議を述べなかつたものと推斷するのが相當である。若し辯護人において辯論準備のためになお時間的余裕が必要と思えば期日の延期續行を申請すべきであつて、裁判所がかかる申請をも容れず従らに結審を急いだという場合ならはまさに不法に辯護權を制限したというべきであるけれども、本件においてかかる形跡のないことは前述のとおりであつて、かくのごとき場合においても、裁判所が職權をもつて辯論を續行しない限り、不法に辯護權を制限した違法あるものとすることは到底首肯し難いところである、以上の次第であるから裁判所が公判期日の前日に辯護人を選任した一事をもつて直ちに原判決に舊刑訴第四一〇條第一一號に該當する違法ありとの論旨は、これを採用することができない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和24年7月13日 昭和23(れ)1488
登載
刑集 第3巻8号1304頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法327条,旧刑訴法342条,旧刑訴法410条13号,旧刑訴法337条,旧刑訴法334条,旧刑訴法410条11号
論点194第410条刑事訴訟法

一 舊刑訴法による事件において公判廷外における被告人、辯護人からの證人、鑑定人等の取調の請求の性質
二 公判期日前被告人又は辯護人からなされた證據調の請求却下の決定をしない場合と上告理由
三 辯護人からの證人喚問請求の趣旨が公判廷において立證され十分取調べをしている場合に法廷外における右請求につき決定をしなかつたことの違法
四 囑託による委託判事の證人尋問期日を辯護人に通知しなかつたことと上告理由

裁判要旨一 舊刑訴法の事件において公判廷外でする被告人、辯護人からの證人、鑑定人等の取調の請求は舊刑訴法上は同法第三二四條第三項に基き裁判所に對し同條第一項に規定する證據物若しくは證據書類の提出命令證人、鑑定人等に對する召喚状發布等の處分を請求することに歸するものと解すべきである。
二 被告人、辯護人から舊刑訴法第三二四條第一項の規定による處分の請求があつた場合裁判所が右請求を却下するときは決定をしなければならないことは同法第三二四條第四項の規定するところであるから、若し裁判所が右規定に違反し、右請求を容れないにも拘らずこれを却下する決定をしなかつたときは違法ではあるけれども、その違法は同法第四一〇條に規定する絶對上告理由となるものとはいえない。何となれば舊刑訴法第四一〇條第一四號にいわゆる「公判ニ於テ爲シタル證據調ノ請求」とは公判における同法第三四四條の場合を規定したもので公判外における同法第三二四條の場合を規定したものでないこと明文上明であるからである。
三 所論證人申請書を見ると、辯護人がその申出た證人により立證しようとするところは何れも、被告人の人となり、性格、素行、習癖等であると書いてある。しかるに本件については原審裁判所は職權により、若しくは辯護人の申請によつて二〇人餘の證人を尋問し、又被告人の精神鑑定をも命じているのであり、これ等證人の取調鑑定の結果によつて、所論證人申請により立證しようとする事項は十分に取調べられているのであるから、原裁判所が、法廷外で所論各證人の喚問の請求に對し何等決定をしなかつた違法は、本件では原判決に影響を及ぼさないこと明らかである。
四 囑託による委託判事の證人尋問期日を辯護人に通知しなかつたことが違法であるとしても判決において右證人尋問調書を證據にしていないときは、右違法は右判決に對する上告理由とならない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和24年10月5日 昭和23(れ)983
登載
刑集 第3巻10号1641頁
参照法条
旧刑訴法324条1項,旧刑訴法324条3項,旧刑訴法324条4項,旧刑訴法410条14号,旧刑訴法344条,旧刑訴法324条,旧刑訴法411条
論点195第410条刑事訴訟法

一 公判の公開と公判調書の記載
二 公開禁止の決定の効力
三 裁判官が「合議の上」裁判の公開を禁止した旨の公判調書の記載と憲法第八二條
四 強盗行爲に對し必死に反抗中の被害者から腕時計を奪取した行爲と強盗罪の成立

裁判要旨一 判決宣告期日の公判調書に、公開を禁じた旨の記載がない限り、判決の宣告は、公開法廷で行われたものと認めることができる。
二 審理が風俗を害する虞があるとして、裁判所が公判の公開を禁じた場合には、その公開禁止の効力は、結審後の判決宣告期日の公判には及ばないものと解すべきである。
三 裁判が公開の法廷において公正な裁判所によつてなさるべきことは所論のごとく憲法の明定するところである。ただ公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある場合には、裁判官の全員一致で對審を公開しないで行うことができることは、憲法第八二條第二項の定めているところである。そして、本件記録を調査すると(イ)所論のように「裁判長は合議の上爾後の審理は風俗を害する虞あるにより公開を禁止する旨を告げ非公開とした」との記載が昭和二二年九月三〇日の公判調書に明記されている。かくとごとく裁判所が非公開で審理をした場合には「裁判官の全員一致で」公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決定した旨を明確な表現で調書に記載しておくことが大切である。そこで本件調書に「合議の上」風俗を害する虞あるにより公開を禁止した旨を告げ非公開としたとの記載は嚴格にいえば稍不正確の嫌があるがしかしなお裁判所法にいわゆる評議を經て裁判官全員の意見が合致して非公開を決定したものと認め得るのである強いて所論のように評議の結果多數決をもつて公開を禁止したものと解すべき根據は全記録の何處にも見當らない。
四 判決宣告期日の公判調書に公開を禁じた旨の記載がない限り判決の宣告は、公開法廷で行われたものを認むべきである。
五 論旨は被害者が強姦行爲に對し力一杯反抗した證據と被害者が畏怖し抗拒不能となつているのに乘じて右手の腕時計をもぎ取つて強取した犯罪事實との間は重要な齟齬があるというのであるが、本件被害者は「ぐずぐずしておれば強姦され私の一生は臺無にされると思い私は力一杯の元氣を出して反抗しました處相手は私に馬乘りになつた儘左手にはめていた腕時計をもぎ取り」し旨を供述しているのであつて、婦人が強姦に對し本能的に強く反抗したからといつて前記状態において畏怖を感じ腕時計の強奪に對し抗拒不能であつたと原審が認定したことは常識上むしろ當然であつて毫も所論のような齟齬を存在しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和23年6月23日 昭和22(れ)219
登載
刑集 第2巻7号680頁
参照法条
刑訴法60条2項4号,刑訴法64条,刑訴法410条7号,憲法82条,刑訴法60条2項4号,刑訴法64条,刑法177条,刑法236条
論点196第410条刑事訴訟法

一 公判手續の瑕疵と手續の更新
(辯論更新前における刑訴第四三條第二項の違反)
二 辯護人不出頭のまま行われた公判手續を更新した場合と辯護權の不法制限
三 強盗共犯者の犯意の認定と他の共犯者の行爲に對する共同責任
四 勾留六ケ月後にした自白と不當に長い拘禁後の自白
五 十一歳の小學兒童の證人資格
六 刑訴第二〇一條第一項の取調をした旨の記載を缺く證人訊問調書の證據能力
七 刑訴第一九九條の法意と僞證の罰を告げないでした證人訊問の効力
八 共同被告人に對し訴訟費用の分擔を命ずる場合と裁判所の自由裁量
九 刑訴法第二四二條の法意

裁判要旨一 原審は右第一回公判期日において審理を終結したのではなく、その後公判手續は第二回及び第三回各公判期日においてその都度適法に更新され、第二回公判期日には被告人Aの私選辯護人伊藤博夫が、又第三回公判期日には同様同被告人の私選辯護人桑名邦雄がそれぞれ出頭して審理に立曾つていることが記録上明かであるから、右第一回公判期日における前記瑕疵(利害相反する相被告人の辯護人をして被告人を辯護せしめたこと)は右審理更新の結果原判決に影響を及ぼさないものというべきである。
二 原審が右のように第一回公判期日において被告人Aの辯護人伊藤博夫から提出した所論期日變更申請を却下し、同辯護人不出頭のまま同期日の審理を行つたことは所論のとおりであるが、その後第二回公判期日は同辯護人にも適法に通知され同期日には同辯護人出頭の上、公判手續が更新されたこと前示のとおりであるから、結局原審手續は不當に辯護權を制限した違法のものということはできない。
三 原審判決が、被告人Aは相被告人Bにおいて判示被害者宅内で判示暴行脅迫を行つた現場には居合わせず屋外にいたと認定したからといつて直ちに被告人Aは、右暴行脅迫の事實について認識していなかつたとはいえないのみならず、同被告人が暴行脅迫行爲を現認しないからとて、共犯者中の他の者が暴行脅迫を加えて財物を奪取している以上強盗の共犯としての責任を免れ得るものでもない。
四 被告人が勾留されたのは所論のとおり昭和二一年一二月一九日であり、又同被告人の原審における自白は昭和二二年六月五日の第一回公判以後同年八月三〇日の第三回公判を通じてなされているのであつて、右勾留後第一回公判期日迄に約六ケ月、第三回公判期日迄には二五〇日餘を經過していることが明かではあるが、本件事案の内容、取調の経過、相被告人の供述内容等諸般の事情に鑑み、右程度の勾留は未だ不當に長い拘禁とはいえない。
五 原審證人Cが原審における取調べを受けた當時一一年(昭和一二年三月生)の小學兒童であつたことは同證人訊問調書の記載から明かであるが、この程度の年齢の者は絶對に證人たる資格がないとはいえないのであつて、同調書記載の同證人の供述内容から見ても同人は本件強盗の被害當時の状況について、詳細に記憶しているその實驗事實を順序良く訊問に答えて陳述報告しているのであつて、事理を辯識する能力を備えていた者と認めるべく、かかる年齢の證人の供述を證據として採用するか否かは事實審たる原番の自由になし得るところであるから、原審が同證人の右證言を判斷の資料に供したとて無効の證據を罪證に供した違法があるということはできない。
六 證人訊問調書に、その證人が刑訴第二〇一條第一項各號に該當するかしないかの取調をした旨の記載がなくても、右證人の供述内容その他によつて、右各號に該當せず宣誓を要する證人であることが明白であり、且つ、宣誓をなさしめて訊問をしている場合には、右訊問調書はこれを證據として差支えない。
七 元来刑事訴訟法第一九九條は、證人にその供述をなす前あらかじめその注意を促し、良心に從つてありのまゝにその實験した事實を供述させるとともに、僞證罪に問われることのないようにさせるため設けられた訓示的規定であるから、證人に宣誓をなさした上供述させている以上、たとえ宣誓前に僞證の罰を論示しなかつたからといつて、宣誓の効力には何ら影響がなく、その證人の證言を無効と考える必要は少しもない。
八 共同被告人中のある者が公訴事實を認め、他の者がこれを否認している場合に、裁判所がその公訴事實の審理のため證人を喚問するのは、結局眞實を發見するためであるから、かような證人に支給した旅費日當などの訴訟費用を、その共同被告人をして連帶して負擔させるか又はその中のある者のみに負擔させるかは、裁判所が自由に定めることのできる問題であつて、從つて、審理の結果右の公訴事實が證明され判決において認定された場合には右の費用は、公訴事實を否認していた被告人のみに負擔させるべきであつて當初からこれを認めていた被告人には負擔させてはいけないという理由はない。
九 刑事訴訟法第二四二條によれば、訴訟費用の負擔を命じる裁判に對しては本案の裁判について上訴する場合に限り不服を申立て得るものであつて、本案の裁判と獨立して上告の申立をすることはできないものである。從つて、本案の裁判に對する上告が理由があるときは、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服もこれを維持することができるけれども、本案の裁判に對する上告が理由がないときは、これの離れて、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服のみを維持することはできないものと解するのが相當である。しかるに本件において本案の裁判に對する上告が少しも理由がないものであることは、上に説明したとおりであるから、結局論旨は上告適法の理由とならないものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和23年4月17日 昭和22(れ)209
登載
刑集 第2巻4号364頁
参照法条
刑訴法43条2項,刑訴法411条,刑訴法334条,刑訴法410条10号,刑訴法184条,刑訴法201条,刑訴法199条,刑訴法238条,刑訴法242条,刑法60条,刑法236条,憲法38条2項,刑訴応急措置法10条2項
論点197第410条刑事訴訟法

強盗被告事件の被告人に弁護人を附けない違法

裁判要旨強盗被告事件において、弁護人なくして開廷し、事件を審理したときは、その審理に立ち会つた他の共同被告人の弁護人が被告人のため有利な弁論をしても、この審理に基く判決は違法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和23年11月9日 昭和23(れ)719
登載
刑集 第2巻12号1508頁
参照法条
刑訴法334条,刑訴法410条10号
論点198第410条刑事訴訟法

裁判長判事として公判に列席した事実の認定

裁判要旨公判調書に某判事が裁判長判事として列席したと記載してあり、且つ、右調書の末尾に右判事が裁判長判事として署名捺印している場合には、公判調害が虚偽又は偽造であると認むべき事情か存在しない限り、右某判事が裁判長判事として公判に列席したものと認むべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和23年11月4日 昭和23(れ)755
登載
刑集 第2巻12号1459頁
参照法条
刑訴法60条,刑訴法410条4号,刑訴法63条1項,刑訴法64条
論点199第411条刑事訴訟法

一 審判の請求を受けない事件について判決した場合に当たらないとされた事例
二 被告人らの自白のとおりに有罪とした原判決の事実認定に不合理な点があるとして破棄された事例

裁判要旨一 甲、乙に対する起訴状の罪名及び罰条は殺人のみであつても、逮捕監禁の事実が殺人の実行行為の一部を組成するものとして公訴事実中に記載されていると認められるときは(判文参照)、たとえ右逮捕監禁の事実が殺人とは併合罪関係に立つものと解すべきであつたとしても、裁判所が甲につき殺人の実行行為の一部として右逮捕監禁の事実を認定し、乙につき逮捕監禁罪のみの成立を認めたことが、刑訴法三七八条三号〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われ… 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。〉にいう審判の請求を受けない事件について判決した場合に当たるとはいえない。
二 被告人らの自白にはその重要部分に信用し難い点があるのに(判文参照)、右自白のとおりに被告人らを有罪と認めた原判決は、刑訴法四一一条三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和63年1月29日 昭和59(あ)1551
登載
刑集 第42巻1号38頁
参照法条
刑法45条,刑法199条,刑法220条1項,刑訴法256条2項,刑訴法256条4項,刑訴法317条,刑訴法378条3号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点200第411条刑事訴訟法

一 受交付金員が起訴外の供与に費消された場合と公職選挙法二二四条による追徴

二 受交付金員が選挙運動の正当費用に費消された場合と公職選挙法二二四条による追徴

三 上告審において原判決中没収追徴の部分のみが破棄された事例

裁判要旨一 公職選挙法二二一条一項五号所定の受交付者が、その交付を受けた趣旨に従つて受交付金員の一部を他に供与したときは、その供与が起訴されていなくても、同法二二四条後段による受交付者からの追徴額の算定にあたり、右供与にかかる金額を控除すべきである。

二 公職選挙法二二一条一項五号所定の受交付者が、受交付金員の一部を後援会等の選挙運動の正当費用に支出したときは、同法二二四条後段による受交付者からの追徴額の算定にあたり、右正当費用にかかる金額を控除すべきである。

三 上告裁判所は、原判決中没収・追徴の部分につき刑訴法四一一条一号、三号に該当する事由があると認めるときは、原判決の右部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年12月11日 昭和59(あ)1005
登載
刑集 第41巻8号352頁
参照法条
公職選挙法221条1項5号,公職選挙法224条,刑訴法357条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号
論点201第411条刑事訴訟法

租税逋脱犯において差別的起訴を理由とする憲法一四条、三一条違反の主張が排斥された事例

所得税逋脱犯につき懲役一年二月、罰金七〇〇〇万円の量刑が維持された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和61年7月18日 昭和58(あ)1590
登載
集刑 第243号671頁
参照法条
憲法14条,憲法31条,刑訴法411条,刑訴法2条
論点202第411条刑事訴訟法

訴訟費用の連帯負担を命じた裁判の違法に関する刑訴法四一一条一号の判例違反の主張が事案異とされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和60年4月17日 昭和60(あ)239
登載
集刑 第239号285頁
参照法条
刑訴法181条,刑訴法185条但書,刑訴法411条1項
論点203第411条刑事訴訟法

殺人教唆等の公訴事実につき被教唆者の供述の信用性を肯定しアリバイの成立を否定した原審の判断が支持し難いとして破棄された事例

裁判要旨殺人教唆等の公訴事実についての唯一の直接証拠である被教唆者の検察官に対する供述調書の証拠価値に疑問を容れる余地がないとはいえず、被告人のアリバイの成否について幾多の疑問が残されているのに(判文参照)、被告人を有罪とした原判決は、刑訴法四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉、三号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和59年4月24日 昭和56(あ)897
登載
刑集 第38巻6号2196頁
参照法条
刑法61条1項,刑法199条,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点204第411条刑事訴訟法

受傷直後の行動に関する被害者の供述中に一部事実に反する点はあるが、その被害状況に関する供述の信用性は否定し難く、刑訴法四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきでないとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年2月17日 昭和57(あ)441
登載
集刑 第234号787頁
参照法条
刑法204条,刑訴法411条3号
論点205第411条刑事訴訟法

わいせつ図画販売目的所持の事案につき、懲役一〇月の実刑を科した原判決の量刑が維持された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年2月15日 昭和58(あ)1544
登載
集刑 第234号779頁
参照法条
刑法25条1項,刑法175条,刑訴法411条2号
論点206第411条刑事訴訟法

一 死刑選択の許される基準
二 無期懲役を言い渡した控訴審判決が検察官の上告により量刑不当として破棄された事例

裁判要旨一 死刑制度を存置する現行法制の下では、犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性ことに殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき、その罪責が誠に重大であつて、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむをえないと認められる場合には、死刑の選択も許される。
二 先の犯行の発覚をおそれ、あるいは金品の強取するため、残虐、執拗あるいは冷酷な方法で、次々に四人を射殺し、遺族の被害感情も深刻である等の不利な情状(判文参照)のある本件においては、犯行時の年齢(一九歳余)、不遇な生育歴、犯行後の獄中結婚、被害の一部弁償等の有利な情状を考慮しても、第一審の死刑判決を破棄して被告人を無期懲役に処した原判決は、甚だしく刑の量定を誤つたものとして破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和58年7月8日 昭和56(あ)1505
登載
刑集 第37巻6号609頁
参照法条
刑法9条,刑法199条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点207第411条刑事訴訟法

一 賍物寄蔵の公訴事実につき賍物性の未必的認識を認めた原判断に事実誤認があるとして破棄自判(無罪)された事例
二 控訴審における予備的訴因追加の適否につき意見が付された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年2月24日 昭和56(あ)1354
登載
集刑 第230号161頁
参照法条
刑法256条,刑訴法411条3号,刑訴法413条但,刑訴法312条,刑訴法400条,刑訴法404条
論点208第411条刑事訴訟法

検察官の冒頭陳述中の被告人の余罪に関する部分が冒頭陳述として相当でないとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年11月29日 昭和57(あ)1505
登載
集刑 第232号995頁
参照法条
刑法9条,刑法199条,刑法240条,刑訴法296条,刑訴法411条2号
論点209第411条刑事訴訟法

未決勾留日数の本刑算入過少と刑訴法四一一条二号

裁判要旨原判決中、第一審判決が被告人に対し一二一四日の未決勾留日数のうち四〇〇日を本刑に算入したにすぎない点に裁量の誤りはないとした判断は、いまだ違法とはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年11月10日 昭和58(あ)79
登載
集刑 第232号787頁
参照法条
刑法21条,刑訴法411条2号
論点210第411条刑事訴訟法

犯行時及び判決言渡し時に保護観察付執行猶予期間中であつた者に対し執行猶予付懲役刑を言い渡した原判決が職権により破棄差戻された事例

裁判要旨犯行時及び判決言渡し時に保護観察付執行猶予期間中の被告人に対しては再度刑の執行を猶予することができない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年10月20日 昭和58(あ)309
登載
集刑 第232号417頁
参照法条
刑法25条,刑法25条ノ2,刑訴法411条,刑訴法413条本文
論点211第411条刑事訴訟法

被告人の自白及びこれを裏付けるべき重要な客観的証拠等の証拠価値に疑問があるとして原判決が破棄された事例

裁判要旨被告人を犯行と結びつけるための唯一の直接証拠である被告人の捜査段階における自白及びこれを裏付けるべき重要な客観的証拠等について、その証拠価値をめぐる幾多の疑問があるのに(判文参照)、これらの疑問点を解明することなく被告人を有罪と認めた原判決は、刑訴法四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉、三号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年1月28日 昭和55(あ)677
登載
刑集 第36巻1号67頁
参照法条
刑法199条,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点212第411条刑事訴訟法

一 甲事件の裁判確定によりその本刑たる自由刑の執行に替えられるべき未決勾留と重複する未決勾留を乙事件の本刑に算入することの適否
二 原判決中未決勾留日数算入の部分のみが破棄された事例

裁判要旨一 甲事件の裁判確定によりその本刑たる自由刑の執行に替えられるべき未決勾留と重複する未決勾留を乙事件の本刑に算入しても、ただちにこれを違法なものとはいえないが、右裁判は、後に甲事件の裁判が確定したことによつて、結局、違法なものとなる。
二 原判決の違法が、後に他事件の裁判確定によつてその本刑たる自由刑の執行に替えられた未決勾留と重複する未決勾留を裁量により本刑に算入した点のみにある場合においては、原判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和55年1月11日 昭和54(あ)1145
登載
刑集 第34巻1号1頁
参照法条
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法411条1号,刑訴法495条
論点213第411条刑事訴訟法

一 検察官の訴追裁量権の逸脱と公訴提起の効力
二 公訴の提訴を無効ならしめるような訴追裁量権の逸脱があるとはいえないとされた事例
三 刑訴法四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらないとされた事例

裁判要旨一 検察官の訴追裁量権の逸脱が公訴の提起を無効ならしめる場合がありうるが、それはたとえば公訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られる。
二 本件公訴提起が著しく不当であつたとする原審の認定判断(原判文参照)はただちに肯認することができず、まして、本件の事態が公訴提起の無効を結果するような極限的な場合にあたるとはいえない。
三 原判決が本件公訴を棄却したのは判決に影響を及ぼすべき法令違反であるが、本件事案のもとでは(判文参照)、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年12月17日 昭和52(あ)1353
登載
刑集 第34巻7号672頁
参照法条
刑訴法1条,刑訴法248条,刑訴法411条1号,刑訴規則1条2項,検察庁法4条
論点214第411条刑事訴訟法

司法警察員による建物差押処分を取り消す旨の準抗告決定に対する特別抗告の決定中に、「なお、所論にかんがみ職権により調査するもいまだ刑訴法四一一条を適用すべきものとまでは認められない。」との判示が付加された事例―いわゆる成田・横堀要塞差押事件―

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和53年7月26日 昭和53(し)44
登載
集刑 第211号875頁
参照法条
刑訴法430条2項,刑訴法411条
論点215第411条刑事訴訟法

無許可の集団示威運動の指導者につき相当の理由に基づく違法性の錯誤があつたとして昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例五条〈数個の関連事件が各別に上級の裁判所及び下級の裁判所に係属するときは、事物管轄にかかわらず、上級の裁判所は、決定で下級の裁…〉の罪の成立を否定した原判決に事実の誤認があるとされた事例―いわゆる羽田空港ロビーデモ第二次上告審事件―

裁判要旨A内国際線出発ロビーにおける参加者約三〇〇名による無許可の集団示威運動を指導した被告人について違法性の錯誤を認めた原判決は、被告人が終始みずからの意思と行動で右集団を指導、煽動していたなど判示の事情のもとにおいては、事実を誤認したものであり、破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年6月29日 昭和51(あ)1163
登載
刑集 第32巻4号967頁
参照法条
昭和25年東京都条例1条,昭和25年東京都条例5条,刑法38条3項,刑訴法411条3号
論点216第411条刑事訴訟法

被告人の責任能力について事実誤認の疑いがあるとされた事例

裁判要旨被告人の精神分裂病の既往歴、犯行時の右疾病による欠陥状態(人格水準低下、感情鈍麻)の存在、犯行の動機についての妄想の関与及び犯行に際しての奇異な行動など(判文参照)の事情がうかがわれる本件においては、犯行が精神分裂病の寛解期にされたことのほか、犯行の動機の存在、犯行の計画性、犯行後の証拠隠滅工作を含む一連の行動を重視し、是非善悪の判断が可能な精神状態にあつた旨の鑑定意見を裏付けとして、被告人の精神状態の著しい欠陥、障害はなかつたものと認めた原判決は、被告人の限定責任能力を認めなかつた点において事実を誤認した疑いがあり、破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和53年3月24日 昭和50(あ)1159
登載
刑集 第32巻2号408頁
参照法条
刑法39条2項,刑訴法411条3号
論点217第411条刑事訴訟法

覚せい剤の輸入罪(覚せい剤取締法四一条一項一号)と覚せい剤の無許可輸入未遂罪(関税法一一一条二項、一項)を併合罪とした原判断は首肯しえないとしながら、刑訴法四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきものとは認められないとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年2月21日 昭和52(あ)1072
登載
集刑 第209号139頁
参照法条
刑訴法411条,覚せい剤法41条1項1号、,覚せい剤法13条,関税法111条1項,関税法111条2項,刑法45条,刑法54条1項前
論点218第411条刑事訴訟法

一、共同加害の目的が認められないとして兇器準備集合罪の成立を成否を否定した原判決に事実誤認の疑いがあるとされた事例
二、無許可集団示威運動と昭和二十五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例四条〈事物管轄を異にする数個の関連事件が上級の裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、…〉飯田橋

裁判要旨一 角材の柄付きプラカード等を所持して集団示威運動を行つていた学生集団の先頭部分の学生のうち、所携の右プラカード等を振り上げて警察官をめがけて殴りかかつている状況を相互に目撃し得る場所に近接して位置し、しかもみずから警察官に対し暴行に及んだ者あるいは暴行に及ぼうとしていた者についてまで、右行為は各自の個人的な意思発動による偶発的行為であるとして、兇器準備集合罪にいう共同加害目的の存在を否定した原判決は、判示の事情のもとにおいては、事実を誤認した疑いがあり、破棄を免れない。
二 昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例四条〈事物管轄を異にする数個の関連事件が上級の裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、…〉は、同条にいう所要の措置が違反行為の態様、公共の秩序に対する侵害の程度等に応じて必要な限度を超えてはならないことを規定したものであつて、無許可の集団示威運動に対し、これを直ちに実力で阻止し解散させなければならないほど明白かつ切迫した事態にない限り阻止することも許されないとする趣旨ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和52年5月6日 昭和49(あ)1200
登載
刑集 第31巻3号544頁
参照法条
刑法95条1項,刑法208条ノ2第1項,刑訴法411条3号,集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(昭和25年東京都条例44号)4条
論点219第411条刑事訴訟法

被告人の妻を買主贈賄者を連帯保証人とする自動車割賦販売契約に基づいて贈賄者が被告人に自動車を供与したとの原認定に審理不尽、事実誤認の疑があるとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年6月17日 昭和50(あ)1122
登載
集刑 第201号59頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法3条
論点220第411条刑事訴訟法

一、地方公務員法三七条一項、六一条四号の合憲性
二、地方公務員法六一条四号の法意
三、昭和三六年度全国中学校一せい学力調査実施のため中学校に赴こうとするテスト立会人らを道路上で阻止した行為につき道路交通法一二〇条一項九号、七六条四項二号の罪の成立を否定した原判決が刑訴法四一一条一号にあたるとされた事例

裁判要旨一、地方公務員法三七条一項は憲法二八条に、地方公務員法六一条四号は憲法一八条、二八条に違反しない。
二、地方公務員法六一条四号は、地方公務員の争議行為に違法性の強いものと弱いものとを区別して前者のみが右法条にいう争議行為にあたるものとし、また、右争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、又はあおる等の行為のうちいわゆる争議行為に通常随伴する行為を刑事制裁の対象から除外する趣旨と解すべきではない。
三、昭和三六年度全国中学校一せい学力調査実施のため中学校に赴こうとするテスト立会人らを道路上で阻止した本件行為(判文参照)につき、道路交通法一二〇条一項九号、七六条四項二号に該当するとしながら、正当な団体行動権の行使にあたることを理由に違法性が阻却されるとした原判決は、法令の解釈適用を誤り、かつ、これを破棄しなければ著しく正義に反する場合にあたる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和51年5月21日 昭和44(あ)1275
登載
刑集 第30巻5号1178頁
参照法条
憲法18条,憲法21条,憲法28条,地方公務員法37条1項,地方公務員法61条4号,道路交通法76条4項2号,道路交通法120条1項9号,刑法35条,刑訴法411条1号
論点221第411条刑事訴訟法

一 判決の言直しの効力
二 量刑不当により破棄自判された事例

裁判要旨一 判決は、宣告のための公判期日が終了するまでの間は、判決書又はその原稿の朗読を誤つた場合にこれを訂正することも、いつたん宣告した判決の内容を変更してあらためてこれを宣告することも、違法ではなく、言直しがあつたときは、その内容どおりのものとして効力を生ずる。
二 一審裁判官が、いつたん保護観察付き刑の執行猶予の判決を言い渡した後、法律上執行猶予とすることが許されない場合であるとの誤解から実刑の判決に言直しをしたことなど、諸般の事情のあることを考慮するときは、当初に宣告された刑をもつて臨むのが正義にかない、一、二審判決は量刑不当により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年11月4日 昭和50(あ)2427
登載
刑集 第30巻10号1887頁
参照法条
刑訴法342条,刑訴法411条2号,刑訴規則35条
論点222第411条刑事訴訟法

労働組合役員の他組合員に対する暴行、逮捕行為が法秩序全体の見地からみて到底許容されないものであるとされた事例

裁判要旨甲労働組合とこれから脱退した者を中心とする乙労働組合との間の紛争の過程で、甲組合の副組合長が、乙組合の言い分を記載したビラを甲組合の組合員に配付しようとした乙組合の書記長の左肩を掴んで後方に引きのかせ、胸部付近を突き、さらに手首を掴み腕を組むようにして引つ張つて甲組合事務所に連れ込む等した暴行行為、及び右副組合長と甲組合の書記長が、ビラの内容について取消文を書かせるため、いつたん組合事務所を出た同人を再び連れ戻そうと考え、同人を中にはさんで両腕を抱え約六〇メートルを約一五分にわたり無理に連行した逮捕行為(各判文参照)は、法秩序全体の見地からみるとき、原判決の諸般の事情を考慮に入れても、到底許容されるものとはいい難い。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和50年8月27日 昭和46(あ)1095
登載
刑集 第29巻7号442頁
参照法条
刑法35条,刑法208条,刑法220条1項,刑訴法411条1号,労働組合法1条2項
論点223第411条刑事訴訟法

一 大阪市屋外広告物条例(昭和四九年四月一日大阪市条例三二号による改正前のもの)二条一項〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉、四条三項〈事物管轄を異にする数個の関連事件が上級の裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、…〉、一六条一号〈法律による管轄裁判所がないとき、又はこれを知ることができないときは、検事総長は、最高裁判所に管轄指定の請求をしなければな…〉と憲法二一条、三一条、九四条、四一条との関係
二、観念的競合の関係にある二つの罪のうち一つについて刑の廃止があるが原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされた事例

裁判要旨一 大阪市屋外広告物条例(昭和四九年四月一日大阪市条例第三二号による改正前のもの)二条一項〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉、一六条一号〈法律による管轄裁判所がないとき、又はこれを知ることができないときは、検事総長は、最高裁判所に管轄指定の請求をしなければな…〉は憲法二一条、四条三項、三一条、九四条、四一条に違反しない。
二 被告人に対する本件公訴事実のうち、被告人が大阪市条例によりはり紙の表示が禁止された物件である電柱にビラ五枚を表示した点については、原判決後の法令により刑の廃止があった場合にあたるが、右事実は法定の除外事由がないのに大阪市長の許可を受けないではり紙を表示した事実と観念的競合の関係にあるものとして起訴されており、かつ、これら両罪の法定刑は同一であること、被告人に対する原判決の科刑(罰金二、〇〇〇円、換刑一、〇〇〇円一日、一年間執行猶予)は、法定の除外事由がないのに大阪市長の許可を受けないではり紙を表示した罪だけに対する科刑としても不当に重いとは認められないことを考慮すると、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和50年5月29日 昭和49(あ)1377
登載
集刑 第196号517頁
参照法条
大阪市屋外広告物条令(昭和49年4月1日大阪市条例32号による改正前のもの)2条1項,大阪市屋外広告物条令(昭和49年4月1日大阪市条例32号による改正前のもの)4条3項,大阪市屋外広告物条令(昭和49年4月1日大阪市条例32号による改正前のもの)16条1項,憲法21条,憲法31条,憲法41条,憲法94条,刑訴法337条2号,刑訴法411条5号,刑法54条1項前段
論点224第411条刑事訴訟法

証拠として請求も取調べもされず記録中に編綴されてもいない供述調書を証拠の標目に掲げた違法と判決への影響

裁判要旨第一審判決が証拠の標目に挙げているAの司法巡査に対する供述調は、証拠として請求書も取調べもされておらず、記録中に編綴されてもいないが、右判決の記載は誤記と認めるのが相当であるから、右判決及び原判決に影響を及ぼすものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年3月7日 昭和49(あ)2238
登載
集刑 第195号567頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法379条,刑訴法335条1項
論点225第411条刑事訴訟法

全部控訴があつたと認めた原判断は相当である旨のなお書の付された事例
一審判決の一部破棄で足りたにかかわらず全部を破棄し自判した原判決につき四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用しない旨判示された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年9月26日 昭和49(あ)1018
登載
集刑 第193号461頁
参照法条
刑訴法357条,刑訴法411条
論点226第411条刑事訴訟法

付審判請求事件の審理手続について不当な措置が認められるが、いまだ刑訴法四一一条を準用すべきものとは認められないとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年3月13日 昭和48(し)29
登載
集刑 第191号345頁
参照法条
刑訴法262条,刑訴法411条
論点227第411条刑事訴訟法

執行猶予の要件を欠く被告人に執行猶予の判決を言い渡した原判決が刑訴法四一一条一号により破棄された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年12月20日 昭和49(あ)1074
登載
集刑 第194号479頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法25条1項
論点228第411条刑事訴訟法

原決定が刑訴法四三〇条の準抗告を「却下」したことは違法であるとしてこれを取り消したうえ準抗告申立は利益を欠くとしてこれを棄却された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年3月30日 昭和47(し)92
登載
集刑 第186号551頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法430条
論点229第411条刑事訴訟法

原判決には被告人の自首を認めなかつた誤りがあるが破棄しなければ著しく正義に反するとはいえないとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年3月29日 昭和47(あ)2025
登載
集刑 第186号503頁
参照法条
刑法42条1項,刑訴法411条
論点230第411条刑事訴訟法

上告審であらたに提出された書面を公判廷に顕出し、その外観、記載内容、事件の経緯等に徴し、事実誤認を疑うべき顕著な事由があるとして破棄された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年6月15日 昭和46(あ)149
登載
集刑 第184号763頁
参照法条
刑訴法393条,刑訴法411条3号
論点231第411条刑事訴訟法

横領の犯意につき事実誤認の疑いがあるとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年3月2日 昭和45(あ)1966
登載
集刑 第183号301頁
参照法条
刑訴法411条3号,刑法252条
論点232第411条刑事訴訟法

刑の量定に影響を及ぼすべき一審判決後の情状に関する重大の事実誤認の疑を理由に破棄差戻しをした事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年2月17日 昭和45(あ)1886
登載
集刑 第183号241頁
参照法条
刑訴法411条3号,刑訴法393条2項
論点233第411条刑事訴訟法

上告審において真犯人が別にいることを検察官が認めたことにより原判決に事実誤認の疑いがあるとして破棄自判(無罪)された事例

裁判要旨公文書毀棄の公訴事実を肯認しうる証拠として犯行を目撃したとするYの証言しかなく、被告人は一貫として犯行を否認し、被告人にとって有利なFほか四名の証言も存在する場合に、上告審になって、真犯人が別におり起訴猶予処分に付された旨の検察官の答弁書が提出されたときは、前記Yの証言を信用して被告人に対し有罪の言渡をした一、二審判決には重大な事実誤認の疑いがあるものとしてこれを破棄すべきものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年2月10日 昭和46(あ)1136
登載
集刑 第183号111頁
参照法条
刑訴法411条3号,刑法258条
論点234第411条刑事訴訟法

控訴審における刑訴法二七三条二項違反と判決への影響の有無

裁判要旨控訴審における判決宣言期日につき被告人に対する召喚ないし期日通知を欠いたことは、刑訴法二七三条二項〈裁判長は、公判期日を定めなければならない。〉に違反するが、被告人が第一回公判期日については適法な召喚を受けており、当日出頭した弁護人により弁論がなされ、また、弁護人に対しては判決宣言期日の告知があったものであり、かつ、事件につき被告人に上訴権回復の請求が許容されているときは、右瑕疵は判決に影響を及ぼさない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和46年9月9日 昭和44(あ)2494
登載
集刑 第181号445頁
参照法条
刑訴法237条2項,刑訴法411条1号
論点235第411条刑事訴訟法

違法に被告人に訴訟費用を負担させたとして原判決中被告人に訴訟費用の負担を命じた部分のみが破棄された事例

裁判要旨相被告人に対する公訴事実のみに関する原審証人の尋問について生じた訴訟費用を、右の事実になんら関係のない被告人に負担させたときは、原判決中被告人に対し右訴訟費用の負担を命じた部分は、刑訴法四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により、破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和46年4月27日 昭和45(あ)1217
登載
刑集 第25巻3号534頁
参照法条
刑訴法181条,刑訴法185条,刑訴法411条1号
論点236第411条刑事訴訟法

横領と犯意につき事実誤認の疑いがあるとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和46年12月9日 昭和46(あ)365
登載
集刑 第182号457頁
参照法条
刑訴法411条3号,刑法252条
論点237第411条刑事訴訟法

被告人の自白に信用性真実性があると認めた原審の判断が支持し難いとして破棄された事例

裁判要旨記録にあらわれた証拠関係を検討すれば、犯行の外形的事実と被告人との結びつきについて、合理的な疑いを容れるに足りる幾多の問題点が存し(判文参照)、原審が、被告人の自白に信用性、真実性があるものと認め、これに基づいて犯行を被告人の所為であるとした判断が支持し難いときは、刑訴法四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉、三号により、原判決は破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年7月31日 昭和43(あ)602
登載
刑集 第24巻8号597頁
参照法条
刑法240条後段,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点238第411条刑事訴訟法

控訴裁判所が事実誤認の有無の審査にあたつて使用できる証拠の範囲

裁判要旨控訴裁判所が共同被告人の一人に対する一審判決判示の事実について事実誤認の有無を審査するにあたり、同被告人の関係では証拠調の手続を経ていない、他の共同被告人の関係で弁論併合前に取り調べた証拠をその資料に供することは、違法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年11月5日 昭和45(あ)675
登載
集刑 第178号105頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法317条,刑訴法313条
論点239第411条刑事訴訟法

控訴審の公判期日について被告人に対する召喚手続または公判期日の通知を怠つた場合と破棄事由

裁判要旨控訴審の第一回公判期日において、弁護人の出頭はあつたが被告人の出頭がないまま実質審理を行ない即日結審している場合において、同公判期日についての召喚手続または同公判期日の通知が被告人に対しなされていないときは、その訴訟手続は違法であり、原判決を破棄しなければいちじるしく正義に反する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和44年10月3日 昭和42(あ)2527
登載
集刑 第173号201頁
参照法条
刑訴法273条2項,刑訴法390条,刑訴法404条,刑訴法411条1号
論点240第411条刑事訴訟法

控訴趣意書不提出を理由とする控訴棄却決定に対する異議申立棄却決定が審理不尽の違法があるとして取り消された事例

裁判要旨本件のような事情(決定文参照)のもとにおいては、控訴趣意書不提出による控訴棄却決定に対する異議申立を受けた原裁判所としては、当該郵便送達報告書の記載内容に疑いの余地があるから、申立人に控訴趣意書差出最終日通知書が送達されたかどうかを判断するには、なお、関係者の取調等事実の取調を必要とすると認められるのに、原裁判所が、事実の取調を行なうことなく、記録上控訴趣意書差出最終日通知書は適式に申立人に送達されていると認定して、異議申立を棄却する決定をしたのは、審理不尽の違法があり、刑訴法第四一一条第一項第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により取消を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年9月17日 昭和43(し)38
登載
集刑 第168号717頁
参照法条
刑訴法54条,刑訴法386条,刑訴法411条1号,刑訴法433条
論点241第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉に該当するとして原判決破棄刑の執行猶予が言い渡された事例

裁判要旨被告人は炭坑事故のため負傷し生活保護を受けている者であり、三三才の病妻と二児を扶養し、三九才の今日まで一切犯歴がなく、被告人が副会長をしていた生活保護者の互助会の会員の中で生活苦のため米代の支払えない者が数名おり、被告人が金融業者Kから高利で一五万円を借りうけて右の支払にあててやつたが、その金利に追われ生活苦に陥つたのが本件犯行の動機であり、本件の被害総額は約一六万円であるが、実質的な被害者はKただひとりであつて、犯行の発覚前すでに同人との間に示談が成立しており、弁償の担保として被告人所有の家屋一棟を提供している等の諸事情(判文参照)を考慮すると、原判決が被告人を懲役六月の実刑に処したのは、量刑が甚しく不当であつて、これを破棄しなければ著しく正義に反する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年7月19日 昭和42(あ)2877
登載
集刑 第168号609頁
参照法条
刑訴法411条2号,刑訴法381条,刑法159条1項,刑法161条1項,刑法246条1項,刑法252条1項
論点242第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらないとされた事例―判断遺脱の場合

裁判要旨第一審判決が、併合罪の関係にある数個の訴因中の一個に対する判断を遺脱し、残りの訴因についてのみ有罪の判決をした違法があるのに、原判決がこれを看過し、量刑不当を理由にこれを破棄したうえ、第一審判決の認定判示した事実に法令を適用して自判した違法があつても、右違法により被告人に重大な法律上の利益の侵害を生ずるような事情がなく(判文参照)、かつ、検察官の上告がない場合には、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年4月26日 昭和42(あ)1884
登載
刑集 第22巻4号342頁
参照法条
刑訴法378条3号,刑訴法411条1号
論点243第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらないとされた事例

裁判要旨原判決が、昭和四三年法律第六一号による改正後の刑法第四五条を適用して一個の懲役刑を科すべきであつたのに、右改正前の同条を適用して三個の懲役刑を科したのは、判決に影響を及ぼすべき法令違反であるが、本件事案のもとでは(判文参照)、原判決を破棄しなくても著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年11月26日 昭和43(あ)1640
登載
刑集 第22巻12号1387頁
参照法条
刑法45条,刑法45条(昭和43年法律61号による改正前のもの),刑法の一部を改正する法律(昭和43年法律61号)附則2項,刑訴法411条1号
論点244第411条刑事訴訟法

一 犯行と被告人らとの結びつきに関する原判決の事実認定に不合理な点があるとして刑訴法第四一一条第三号により破棄された事例
二 破棄判決の破棄の理由とされた事実上の判断の拘束力の有無
三 破棄判決の拘束力を有する判断の範囲
四 証人の尋問終了後に作成された同人の検察官調書と刑訴法第三二八条

裁判要旨一 犯行と被告人らとの結びつきに関する原判決の事実認定に不合理なところがあるときは(判文参照)、刑訴法第四一一条第三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉により原判決を破棄しなければならない。
二 破棄判決の破棄の理由とされた事実上の判断は、拘束力を有する。
三 破棄判決の拘束力は、破棄の直接の理由、すなわち原判決に対する消極的、否定的判断についてのみ生ずるものであり、右判断を裏付ける積極的、肯定的事由についての判断は、なんら拘束力を有するものではない。
四 公判準備期日における証人の尋問終了後に作成された同人の検察官調書を、右証人の証言の証明力を争う証拠として採証しても(原判文参照)、必ずしも刑訴法第三二八条に違反するものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年10月25日 昭和41(あ)108
登載
刑集 第22巻11号961頁
参照法条
刑訴法411条3号,刑訴法400条,刑訴法328条,裁判所法4条,民訴法407条2項但書,刑訴法414条
論点245第411条刑事訴訟法

一、上告審において外国の公文書(韓国の戸籍抄本)を取り調べる方法
二、右戸籍抄本取調の結果審理不尽の違法があるとして原判決が破棄された事例

裁判要旨一、上告審において韓国の戸籍抄本を取り調べるにあたつては、公判にこれを顕出するをもつて足りる。
二、被告人が外国人登録事項確認申請にあたつて申告した姓名、生年月日と一致する戸籍抄本が、上告審においてはじめて提出され、その取調が行なわれた場合、虚偽の申請をしたものとして被告人を有罪とした第一審判決およびこれを是認した原判決は、結果的に審理不尽の違法をきたし、これを破棄しなければ著しく正義に反する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年9月19日 昭和42(あ)810
登載
集刑 第164号521頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法393条1項,刑訴法404条,刑訴法305条,刑訴法411条1号,刑訴法379条,刑訴法435条6号
論点246第411条刑事訴訟法

未決勾留と労役場留置の執行とが競合する場合においてその未決勾留日数を本刑に裁定算入することの適否

裁判要旨勾留と競合して罰金刑の帰刑処分たる労役場留置の執行が行なわれた場合には、自由刑の執行が競合して行なわれた場合と同様、その勾留日数を刑法第二一条により本刑に算入することは違法と解すべきである(昭和二九年(あ)第三八九号同三二年一二月二五日大法廷判決、刑集一一巻一四号三三七七頁参照)。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年5月26日 昭和41(あ)1878
登載
集刑 第163号435頁
参照法条
刑法21条,刑法18条,刑訴法411条1号
論点247第411条刑事訴訟法

一 旅館業法第六条第二項第一二条の合憲性
二 刑訴法第四一一条第二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉に該当するとして同法第四一三条第一項本文により破棄差し戻された事例
三 旅館業法第六条第二項第一二条と憲法第二二条第一項

裁判要旨一 旅館業法第六条第二項、第一二条は、憲法第三八条第一項に違反しない。
二 被告人が三日間にわたつて三個所の旅館で宿泊するにあたり、各旅館の営業者から宿泊者名簿の記載を請求された際、それぞれ住所、氏名を偽つて告げたとの事実につき、旅館業法第六条、第一二条を適用して、右三個所三泊の際の各事実につき被告人を各拘留二〇日に処した第一審判決の量刑をそのまま是認した原判決は、第一審判決および原判決の判示する事実関係のもとにおいては(第一審判文、原判文参照)、刑訴法第四一一条第二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉に該当し、同法第四一三条第一項〈前条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所若しくは第一審裁判所に差し戻し、又はこ…〉本文により差し戻すべきものである。
三 所論は、旅館業法第六条第二項、第一二条が憲法第二二条第一項に違反すると主張する。しかし旅館業法第六条第二項は、旅館営業者の備える宿泊者名簿に関し、宿泊者に氏名、住所、職業等の告知義務を認め、同法第一二条は、これに違反して虚偽の事項を告げた者に対し刑事罰を科することを定めているが、右のような規定は、これによつて居所もしくは住居の設定および移転自体を制限しようとするものではなく、憲法第二二条にいう居住、移転の自由とは関係のない規定というべきであるから、右違憲の主張はその前提を欠く。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和42年12月21日 昭和42(あ)313
登載
刑集 第21巻10号1441頁
参照法条
旅館業法6条,旅館業法12条,憲法38条1項,刑訴法411条2号,刑訴法413条1項本文,刑訴法22条1項
論点248第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉に該当するとして第一、二審判決破棄刑の執行猶予が言い渡された事例

裁判要旨被告人が二七歳の配管工で、二六歳の妻と二歳の長男を扶養し、道路交通法違反の罰金一回のほか一切犯歴がなく、素行上特に非難すべき点も認められず、犯行の動機は、仕事の資金に困つていたとき、たまたま現金を手にしたため工事資金に流用したということで、遊興費等にはあてられておらず、本件は被害金額約八万円の単純横領の罪で、犯罪個数は一回だけであり、被害者が分割弁済の要請に応じないうえ、一部弁済の提供をも拒否したため示談が成立するに至らなかつた等の諸事情(判文参照)を考慮すると、第一審判決が被告人を懲役五月の実刑に処し、原判決がこれを維持したのは、量刑が甚しく不当であつて、これを破棄しなければ著しく正義に反する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年12月1日 昭和41(あ)3016
登載
集刑 第165号911頁
参照法条
刑訴法411条2号,刑訴法381条,刑法252条1項,刑法25条
論点249第411条刑事訴訟法

窃盗(すり)未遂被告事件につき証拠の信用性に疑いがあるとして原判決が破棄された事例

裁判要旨本件のように、被告人の捜査官に対するすり未遂事実の自白と、被害者である私服警官の供述の信用性に、多くの疑いがある(判文参照)のにかかわらず、原判決がその点に十分検討を加えることなくこれを信用し、第一審判決認定の窃盗未遂を是認したときは、刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉、第三号により、原判決を破棄すべきものである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年10月3日 昭和41(あ)1788
登載
集刑 第164号633頁
参照法条
刑法235条,刑法243条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号
論点250第411条刑事訴訟法

判決書の日付に弁論を終結した公判期日より前の年月日が記載されている場合と判決破棄の理由

裁判要旨判決宣告期日として指定された公判期日に、弁論を再開して証拠調をしたのち、弁論を終結し直ちに判決を宣告した場合において、判決書の日付に右公判期日より前の年月日が記載されているときは、右判決は前記弁論再開後の口頭弁論に基づかないでした違法なものと認められ、判決破棄の理由となる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年2月24日 昭和40(あ)1407
登載
刑集 第20巻2号49頁
参照法条
刑訴法43条1項,刑訴法411条1号,刑訴規則53条,刑訴規則54条,刑訴規則58条
論点251第411条刑事訴訟法

一 横領罪ではなく背任罪が成立するとされた事例。
二 刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらないとされた事例。

裁判要旨一 農業協同組合の組合長である被告人が、任務に背いて組合名義をもつて約束手形を振出したときは、背任罪が成立し、その手形を組合の当座預金から払出して支払つた行為もまた右背任罪の一部であつて、別に横領罪を構成するものではない。
二 原判決の認定する被告人の犯行が、合計二四回総額一、三四一万円に達する業務上横領並びに合計六回総額二、二三〇万円に達する背任の所為である場合において、原判決が法令の適用を誤り、背任罪とすべきものを業務上横領として処断したのが、そのうち合計四回総額一六五万円にすぎないときは、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年5月27日 昭和39(あ)2013
登載
刑集 第19巻4号396頁
参照法条
刑法247条,刑法253条,刑訴法411条1号
論点252第411条刑事訴訟法

日時場所を同じくする猥せつ図画販売罪と猥せつ図画販売目的所持罪との罪数。

裁判要旨原判決の是認した第一審判決は、判示第一、第二の行為を併合罪の関係にあるものとしているが、同判決の確定したところによれば、右第二の行為は、第一の行為と同時刻頃、同一場所においてなされており、そのような事実関係の下においては、刑法第一七五条の猥せつ図画販売罪と猥せつ図画販売目的所持罪とは、包括一罪であると解するのが正当であつて、この点において第一審判決は違法たるを免れない。しかし、記録にあらわれた本件事案の内容および被告人の前科関係等の事情を考えると、右第一、第二の行為を包括一罪としても、被告人の本件犯行に対する量刑が不当に重いものとは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年12月23日 昭和40(あ)921
登載
集刑 第157号495頁
参照法条
刑法175条,刑法45条,刑訴法411条
論点253第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらないとされた事例。―器物損壊罪において第一審が被害者を誤認しかつ訴訟条件を欠くのに有罪とした場合の控訴審の処置―

裁判要旨記録によれば、一審判決が、本件器物損壊の被害者はAであると認定し、同人からの適法な告訴がないのに、被告人らを有罪としたのに対し、原判決は、被害者はBであり、同人からの適法な告訴があつたことが認められるから、一審判決の右事実誤認は、犯罪の成否に影響を及ぼさない事項に属するとして、被告人らの控訴を棄却したことが認められる。しかし、一審判決の認定した事実を基礎とすれば、本件は訴訟条件を欠き、公訴棄却の裁判がなされるべき場合であつたのであるから、これを目して犯罪の成否に影響を及ぼさない事実誤認として、そのまま控訴を棄却した原審の処置は、相当ではなかつたといわなければならない。しかしながら、原審の認定するところによれば、本件被害者はBであり、また、その認定を肯認するに足りる証拠も存在する。そうだとすれば、訴訟条件も完備しているのであるから、原判決の前記判断のあやまりも、未だ判決に影響を及ぼすべき法令違反とはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年12月14日 昭和39(あ)1778
登載
集刑 第157号433頁
参照法条
刑訴法411条,刑法261条,刑法264条
論点254第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたるとされた事例。

裁判要旨記録によれば、第一審において、被告人に対する起訴罪名甲乙丙の各罪の事実につき有罪を認め、甲乙の罪につき懲役刑を丙の罪につき罰金刑を言渡したところ、検察官から右甲乙の各罪に関する部分を限つて控訴の申立がなされ、被告人からは右判決に対して控訴の申立がなされないまま、その申立期間を経過したことが認められるにもかかわらず、第二審において、右第一審判決にかかる事件の全部について審判し、右丙罪についても、第一審判決を破棄したうえ、被告人を罰金刑に処する旨の判決をしている。右によれば第二審は被告人に対する丙罪について、係属していない事件の審判をした違法があり、この違法は判決に影響があるから刑訴法第四一一条第一号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年8月4日 昭和37(あ)2678
登載
集刑 第152号423頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法357条
論点255第411条刑事訴訟法

一 常習犯の中間に別罪の確定裁判が介在した場合における罪数。

二 右常習犯と確定裁判を経た罪とは併合罪か。

三 刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉に当らないとされた事例。

裁判要旨一 常習犯の中間に別罪の確定裁判が介在しても、そのためにその常習犯が二個の常習犯に分割されるものではないと解すべきである。

二 右の場合、その常習犯は別罪の裁判確定後に終了したものであるから、右確定裁判を経た罪とは刑法第四五条の併合罪の関係に立つものではない。

三 原判決が、刑法第四五条の適用を誤り二個の刑を言い渡すべきであるのに一個の刑を言い渡した場合には、その違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるが、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年7月9日 昭和39(あ)103
登載
刑集 第18巻6号375頁
参照法条
刑法45条,盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律2条4号,刑訴法411条1号
論点256第411条刑事訴訟法

上訴権回復請求が認められた事例。

裁判要旨上訴申告書が上訴申立期間の最終日に速達郵便に付され、該郵便物が法令上即日管轄裁判所に配達さるべき時間内に配達受持局に到達したにもかかわらず、翌日配達された場合、右期間の徒過は、上訴権者又はその代人の責に帰することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年7月17日 昭和39(し)30
登載
刑集 第18巻6号399頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法411条1号,郵便法60条,郵便規則100条1項,郵便規則100条2項,昭和38年12月28日郵業6633号仙台郵政局郵務部長通達
論点257第411条刑事訴訟法

一 所得の申告と憲法第三八条第一項にいう「自己に不利益な供述」。
二 所得税逋脱額の算定に関する第一審判決の違法が、判決に影響を及ぼすこと明らかである場合にあたらないとされ、また、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められないとされた事例。

裁判要旨一 申告納税制度の下における所得の申告の如く、憲法の規定する納税義務を前提とし、その税額を決定するために所得の申告を求めるが如きは、憲法第三八条第一項にいう「自己に不利益な供述」に当らない(昭和二七年(あ)第八三八号同三二年二月二〇日大法廷判決、刑集一一巻二号八〇二頁参照)。
二 原判決が、被告人と共謀して所得税を逋脱したとされている者が、組合員として組合から支給されていた給与所得に対し源泉徴収により納付した税額を逋脱額の算定に際し差し引かなかつた第一審判決は違法であると認めながら、右の差し引かれるべき額が逋脱額に比し些少であるから、判決に影響を及ぼすこと明らかである場合に当らないと判断したことは、相当であり、仮りに、右違法が判決に影響を及ぼすべきものとしても、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められないから、論旨は理由がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年6月30日 昭和36(あ)1638
登載
集刑 第151号547頁
参照法条
所得税法(昭和28年法律91号による改正前のもの)26条1項,所得税法(昭和28年法律91号による改正前のもの)69条1項,憲法38条1項,刑訴法397条,刑訴法411条
論点258第411条刑事訴訟法

被告人に対し不利益な主張であつて適法な上告理由にあたらないとされた事例。―一罪に対する併合罪の主張―

裁判要旨所論は、原判決は被告人の昭和三四年六月下旬頃から同三五年五月初旬頃までの管理売春の所為につき、これを一罪として一個の刑を科しているけれども、被告人には昭和三四年九月一九日宣告同年一〇月七日確定の道路交通取締法違反による罰金三、〇〇〇円及び昭和三五年一月二八日宣告同年二月一七日確定の同法違反による罰金四、〇〇〇円の二個の確定裁判が存するのであるから、被告人の管理売春の所為はそれぞれ右二個の確定裁判と併合罪の関係に立ち、結局三個の刑を科すべきことになるのであつて、これを一罪として一個の刑を科した原判決は東京高裁昭和二九年九月二八日判決、名古屋高裁金沢支部昭和三一年一一月二七日判決に違反しかつ刑法第四五条の適用を誤つたものであると主張するが、所論は結局被告人に不利益な主張に帰するのであつて、適法な上告理由に当らない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年6月1日 昭和37(あ)3013
登載
集刑 第151号303頁
参照法条
刑法45条4後段,刑訴法351条,刑訴法402条,刑訴法411条
論点259第411条刑事訴訟法

一 いわゆる闘争手段としてのビラ貼り行為が建造物損壊罪、器物損壊罪を構成しないものとされた事例。
二 建造物損壊罪並びに暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の罪(器物損壊を内容とする)として起訴された事実を軽犯罪法第一条第三三号に該当する事実と認定する場合と公訴の時効。

裁判要旨一 駅長室の一部である室内の板壁や、白壁の下部の腰板に国鉄当局に対する要求事項等を墨書ないし印刷したビラ三四枚を、室内硝子窓、出入口の硝子戸、木製衝立等に同様のビラ三〇米を、メリケン粉製の糊でそれぞれ貼り付けた行為は、いまだ刑法上の建造物損壊罪ないし器物破損罪を構成するものでないと解するものを相当する。
二 検察官が犯行後一年一月余を経過したときに建造物損壊罪並びに暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の罪(器物損害を内容とする)として公訴を提起いた公訴事実を、裁判所が軽犯罪法第一条第三三号に該当する事実と認めるときは、被告人に対し公訴時効が完成したものとして免訴の言渡をすべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年11月24日 昭和37(あ)468
登載
刑集 第18巻9号610頁
参照法条
刑法260条,刑法261条,暴力行為等処罰ニ関スル法律(昭和39年法律114号による改正前のもの)1条1項,軽犯罪法1条33号,刑訴法250条,刑訴法337条4号,刑訴法411条1号
論点260第411条刑事訴訟法

理由齟齬ないし理由不備の違法があつて刑事訴訟法第四一一条第一号に当るとされた事例。

裁判要旨「期末原料在庫高を正当とすれば、当該年度における生産量と原料の消費量とが計算上非常にくいちがうことにならざるを得ないのであつて、この点よりするも第一審判決認定の期末原料在庫高は誤りである」との主張に対し、「生産量と消費量とにそのようなくいちがいの存することは記録上否定し得ないけれども、記録にあらわれた被告会社の事業内容その他の状況から見て、それら多額の原料の消費に見合う記帳外の原料の受入れがなかつたとはたやすく断定し難い」として右期末在庫高に関する第一審判決の認定を支持した原判決には理由齟齬ないし理由不備の違法があり、刑事訴訟法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉に当る。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年11月13日 昭和36(あ)2298
登載
集刑 第153号45頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法378条4号,法人税法9条1号
論点261第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらないとされた事例。

裁判要旨第一審判決が、併合罪として起訴された被告人の延三二名に対する三二回、合計四二万円の供与、交付の公職選挙法違反行為につき、全部有罪としたところ、原判決が右起訴事実中一名に対する一回、一万円の交付について無罪と認めながら、右第一審判決の事実誤認、法令適用の誤は判決に影響を及ぼさないとして控訴を棄却したときは、原判決には判決に影響を及ぼすべき法令違反はあるけれども、これを破棄しなければ著しく正義に反するものとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年8月23日 昭和38(あ)542
登載
刑集 第17巻6号628頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法380条,刑訴法382条
論点262第411条刑事訴訟法

密輸に係る貨物の所有者を確定しないで被告人らから同貨物の価格に相当する金額を追徴した場合と破棄理由。

裁判要旨職権をもつて調査すると、原判決の是認する第一審判決は、同判示第一の犯罪に係る貨物の所有者を確定しないで、同貨物の価格に相当する金額を被告人らから追徴しているのであるが、犯罪に係る貨物等が被告人以外の第三者の所有である場合には、その物の没収につき当該第三者に告知、弁解、防禦の機会を与えるべき旨の規定がないから、没収は憲法第三一条、第二九条に違反するものであり、従つて没収に代わる追徴の言渡もまた許されないものと解すべきことは、当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第五六六号、同三七年一二月一二日大法廷判決)とするところであるから、本件において右貨物が被告人らおよび第一審相被告人ら以外の者の所有であるとすれば、被告人らに対しこれが没収に代わる追徴の言渡をすることは、許されないわけである。そうだとすれば、本件密輸に係る貨物の所有者が誰であるかを確定しないで被告人らから同貨物の価格に相当する金額を追徴した第一審判決およびこれを是認した原判決は関税法第一一八条第二項の解釈を誤つた違法があるか、又は追徴の前提要件たる貨物の所有者を確定しない審理不尽の違法がある。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和38年5月8日 昭和34(あ)1423
登載
集刑 第147号181頁
参照法条
関税法111条1項,関税法118条1項,関税法118条2項,憲法31条,憲法29条,刑訴法411条1号,刑訴法413条
論点263第411条刑事訴訟法

一 判決宣告手続に違法がある場合と上訴提起期間の起算点
二 控訴申立書と題する書面の意思解釈―上訴権回復の請求の意思表示をも含むと解された事例
三 自己又は代人の責に帰すべからざる事由によつて上訴権の行使を妨げられたと認められた事例

裁判要旨一 被告人が公判期日に出頭しなければ、判決の宣告ができない事件につき、被告人不出頭のまま判決の宣告をした瑕疵があつても、上訴提起期間は判決宣告の日から進行する。
二 右の場合において、控訴申立書と題する書面に、被告人が判決宣告の翌日判決通知書を受けた旨並びに右判決に不服を申し立てるについては上訴権回復の請求に関する刑訴法第三六二条ないし第三六五条〈上訴権回復の請求があつたときは、原裁判所は、前条の決定をするまで裁判の執行を停止する決定をすることができる。この場合には…〉をも理由とする旨の記載があるときは、右申立書は本来の控訴の申立のほかに、もし控訴申立書が法定の期間内に裁判所に到達しなければ、上訴権回復の請求をする旨の意思表示をも含むものと解すべきである。
三 右一の場合において、被告人が宣告の日の翌日判決の通知を受けたときは、その通知が被告人に到達するまでは被告人自身又は代人の責に帰すべからざる事由によつて上訴権の行使を妨げられていたものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年10月31日 昭和37(し)50
登載
刑集 第17巻11号2391頁
参照法条
刑訴法285条2項,刑訴法286条,刑訴法358条,刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法411条1号,罰金等臨時措置法7条2項,罰金等臨時措置法3条1項各号
論点264第411条刑事訴訟法

選挙権、被選挙権の停止は刑訴法第三八一条等の「刑の量定」に含まれるか

裁判要旨公職選挙法第二五二条にいう選挙権、被選挙権の停止は刑法にいわゆる刑ではないが、それに関する裁判所の裁量は刑訴第三八一条〈刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に…〉同第四一一条第二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉にいわゆる「刑の量定」には含まれる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年8月23日 昭和37(あ)659
登載
刑集 第16巻8号1322頁
参照法条
公職選挙法252条,刑訴法381条,刑訴法411条2号,刑法9条,刑法10条
論点265第411条刑事訴訟法

被害者の傷害と死亡との間の因果関係の存否に関する判断に理由不備があつて、刑訴法第四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたるとされた事例。

裁判要旨被告人から濃硫酸約五合を浴びせかけられ、頭部、顔面、頸部、前胸部、両上下肢等殆んど身体の全部位に治療数ケ月を要する硫酸腐蝕傷を受けた被害者が、入院加療の途上、該硫酸腐蝕傷は八割以上治癒したが結核性胸膜炎を誘発し、これに基づく循環機能不全により死亡するに至つた事案において、原審が、専門医に対し右被害者の受傷の部位、程度、治療の経過、治療中の健康状態等について具体的に何ら示すところがなく、単に「硫酸腐蝕傷を受けた患者がその症痕形成において約八割以上治癒した場合右受傷に基因して結核性胸膜炎による循環機能不全を発病する場合ありや」との鑑定を求め、その鑑定結果は「硫酸腐蝕傷を受けた者が結核性胸膜炎にかかり循環機能不全をおこすことは極めて稀れである」との一般的判断のみを示したに止まるにも拘わらず、他に特段の事由を説示することなく、右鑑定結果だけで、被害者の傷害と死亡との間に因果関係がないと判断したのは、証拠理由不備の違法があり、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免かれない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年8月21日 昭和33(あ)1588
登載
刑集 第16巻8号1303頁
参照法条
刑法205条1項,刑訴法44条1項,刑訴法335条1項,刑訴法411条1号
論点266第411条刑事訴訟法

一 賄賂供与申込罪の成立と相手方の賄賂たることの認識の要否
二 証拠により認定した事実を他の事実の証拠とすることの適否
三 刑訴法第四一一条第二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉に該当し、刑の執行を猶予するのが相当であるとした事例

裁判要旨一 賄賂供与申込罪の成立には、相手方に賄賂たることを認識し得べき事情の下に金銭その他の利益の収受を促す意思表示をなせば足りるのであつて、相手方において実際上その意思表示を又はその利益が賄賂たる性質を具有することを認識すると否とは、同罪の成立に影響を及ぼすものではない。
二 証拠によつて認定した或る事実を他の事実の証拠としても、少しも違法ではない(昭和九年(れ)第一五六八号同一〇年二月一四日大審院判決、刑集一四巻九二頁参照)。
三 職権により調査するに原判決の判示するところによれば、被告人の本件利益贈与ないし利益提供の動機としては、相手方の職務行為に対する依頼又は謝礼の趣旨のほかに、多かれ少なかれ、それ以外の個人的な友交関係、政治献金、職務に関係のない個人的将来の庇護期待等の趣旨も認められ、必ずしも職務要因のみに基くものというような状況であつたとは認められないとし、また食糧事情が急迫していた当時の状況下においては被告人の右各贈与は犯情として被告人に有利なものを含んでいたとも認定している。そして被告人は逮捕拘禁以来約一四年の長期に亘り心身に有形無形の多大の苦痛を受けたものというべく、また被告人が反省謹慎の日を送りつつあることは一審判決の判示の趣旨からも窺知しうるところである。本件は当時いわゆるA事件として世人の耳目を聳動せしめた大事件であるが、その後の推移はA事件のB関係においては、収賄罪で起訴されたC、Dは無罪、E、F外五名は執行猶予となつている。叙上の諸事情(判文参照)を考慮するときは、被告人Bに対し実刑を科さなければ刑政の目的を達することができないものとは断じ難く、刑の執行を猶予するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年4月13日 昭和34(れ)2
登載
集刑 第141号789頁
参照法条
刑法198条,刑法25条1項,経済関係罰則の整備に官する法律5条,旧刑訴法336条,旧刑訴法360条1項,刑訴法317条,刑訴法335条1項,刑訴法411条2号
論点267第411条刑事訴訟法

一 弁論の分離決定によつて著しく裁判の遅延を招来するものということはできないとした事例
二 特別抗告について刑訴法第四一一条の準用があるか
三 公判期日を追つて指定する旨の裁判長の処分が迅速裁判の要請に著しく反し違法であるとされた事例

裁判要旨一 抗告趣意第一点は、原分離決定は、著しく裁判の遅延を招来するものであるから憲法三七条1項に違反すると主張するが、原分離決定は、被告人Aに対する被告事件と他の被告人に対する被告事件とを別個に審判する効果を有するにすぎないから、これによつて著しく裁判の遅延を招来するものということはできない。
二 特別抗告については、刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉の準用がある。
三 被告人の留学の便宜を考慮し五年後に被告人が帰国した後に判決宣告をしようとする意図によつてなされた判決宣告期日を追つて指定する旨の裁判長の処分は、迅速裁判の要請に著しく反し、違法である。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和37年2月14日 昭和36(し)38
登載
刑集 第16巻2号85頁
参照法条
刑訴法313条,刑訴法1条,刑訴法433条,刑訴法434条,刑訴法411条,刑訴法273条,憲法37条1項
論点268第411条刑事訴訟法

旧物品税法第二二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人又は人に対する公訴時効。

裁判要旨旧物品税法第二二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人又は人に対する公訴時効は、その法人又は人に対する法定刑たる罰金刑につき定められた三年の期間を経過することによつて完成する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年12月27日 昭和35(あ)712
登載
刑集 第16巻12号1741頁
参照法条
物品税法(昭和26年法律77号、78号による改正後の昭和15年法律40号)22条,物品税法(昭和26年法律77号、78号による改正後の昭和15年法律40号)18条1項,刑訴法250条5号,刑訴法253条,刑訴法411条1号
論点269第411条刑事訴訟法

一 酒税法第六二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人又は人に対する公訴時効
二 第一審における証拠とすることの同意を控訴審に至つて撤回することの可否

裁判要旨一 酒税法第六二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人又は人に対する公訴時効は、その法人又は人に対する法定刑たる罰金刑につき定められた三年の期間を経過することによつて完成する。
二 第一審における証拠とすることの同意を控訴審に至つて撤回することは、原則として許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年12月25日 昭和34(あ)1973
登載
刑集 第16巻12号1718頁
参照法条
酒税法62条,酒税法55条1項1号,刑訴法250条5号,刑訴法253条,刑訴法411条1号,刑訴法326条
論点270第411条刑事訴訟法

一 外国とみなされていた地域から貨物の無免許輸入等の罪と右地域が外国とみなされなくなつたことによる刑の廃止の有無
二 第三者所有物の没収の違憲と旧関税法第八三条第三項による追徴の適否

裁判要旨一 北緯二九度以南、同二七度以北の南西諸島が外国とみなされていた当時、免許を受けないで、同地域から貨物を輸入しまたはその貨物を故買、牙保した罪について、その後右地域が外国とみなされなくなつた場合は、犯罪後の法令により刑が廃止されるものと解すべきである。
二 旧関税(昭和二九年法律第六一号による改正前の関税法をいう。)第八三条第一項〈勾留の理由の開示は、公開の法廷でこれをしなければならない。〉による第三者所有物の没収が違憲である場合には、同条第三項によるその没収に代わる追徴を言渡すこともまた許されない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和37年12月12日 昭和29(あ)566
登載
刑集 第16巻12号1672頁
参照法条
旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)76条,旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)76条の二,旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)104条,旧関税法(明治32年法律61号・昭和26年11月29日法律271号により改正されたもの)104条,旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)第76条,旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)第83条,関税法104条,関税法関税定率法12条及び噸税法第8条の規定に基き附属島しょを定める等の省令(昭和24年5月26日大蔵省令36号)1条,関税定率法及び噸税法の適用上外国とみなされる地域を定ける政令(昭和27年4月7日政令第99号),奄美群島の復帰に伴う国税関係法令の適用の暫定措置等に関する政令(昭和28年12月24日政令407号)附則8項,刑法6条,刑訴法337条2号,刑訴法411条5号,刑訴法411条1号,憲法29条,憲法31条
論点271第411条刑事訴訟法

一 農林漁業金融公庫法第一七条、第一九条第二項の各規定の合憲性。
二 刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらない事例。

裁判要旨一 農林漁業金融公庫法第一七条、第一九条第二項の各規定は憲法第一四条第一項に違反しない。
二 農林中央金庫の職員に対し贈賄した行為に対する法令の適用として刑法第一九八条が掲げられている以上、農林漁業金融公庫法第一九条第二項の規定によるべき場合に、誤つて、同法第一七条を表示したとしても、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にいわゆる判決に影響を及ぼす違法があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年7月25日 昭和35(あ)701
登載
刑集 第15巻7号1216頁
参照法条
憲法14条1項,農林漁業金融公庫法17条,農林漁業金融公庫法19条2項,刑法198条,刑訴法411条1号
論点272第411条刑事訴訟法

一 特別抗告について刑訴法第四一一条の準用があるか
二 公判期日変更決定が刑訴規則第一八二条第一項に違反するとされた事例

裁判要旨一 特別抗告については刑訴法第四一一条の準用がある
二 裁判所が判決宣言期日を変更した場合に、被告事件についての審理が判決に熟しているものと認められ、右公判期日変更が証拠調その他犯罪事実及び情状についての審理を更に続行し或は再開する必要上為されたものと認むべき事迹は全くなく、専ら約一〇月半の時の経過を測る目的を以て為されたと認められる等の事情(判文参照)があるときは、右期日変更決定を支持した原決定は刑訴規則第一八二条第一項の解釈を誤つた違法がある
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年5月9日 昭和36(し)10
登載
刑集 第15巻5号871頁
参照法条
刑訴法276条,刑訴法443条,刑訴法434条,刑訴法411条,刑訴規則182条1項
論点273第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない事例―心神耗弱の主張に対する判断遺脱。

裁判要旨弁護人の上告趣意第一点につき記録を調べて見ると原審弁護人は控訴趣意第一点において被告人のAに対する所為は心神耗弱に出たものであることを主張したにかかわらず原判決がこれに対し何等判断を示さなかつたことは違法たるを免れない。しかし、被害者Aに対する供述調書によれば、かかる主張事実を認められないから、右の違法は、原判決を破棄しなければ、著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年11月30日 昭和36(あ)1761
登載
集刑 第140号301頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法335条2項,刑法39条2項
論点274第411条刑事訴訟法

一 いわゆる準新事件の公訴時効とその中断
二 同事件につき上告趣意書提出最終日の指定がなされその通知書が上告人に送達されたときは公訴時効中断の効力を生ずるか。
三 同事件につき上告審で公訴時効が完成した場合の措置。

裁判要旨一 本件のように昭和二三年二月一九日公訴が提起され同二六年六月一九日原判決の言渡があつた事件においては、刑訴施行法第二条、第三条の二より、公訴の時効、その中断等については、旧刑訴第二八一条〈証人については、裁判所は、第百五十八条に掲げる事項を考慮した上、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き必要と認めるときに…〉、第二八五条〈拘留に当たる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告…〉等旧刑訴の適用を受けるものであつて、刑訴第二五四条〈時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める…〉等の適用を受けるものではない。
二 右事件につき上告趣意書提出最終日の指定がなされその通知書が上告人に送達されたときは、旧刑訴第二八五条の公判の処分があつたものとして、公訴時効中断の効力を生ずる。
三 同事件につき上告審において公訴の時効が完成したときは、刑訴施行法第二条、第三条の二、刑訴第四一一条第五号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。〉を準用し、原判決を破棄の上、旧刑訴第四四八条〈再審の請求が理由のあるときは、再審開始の決定をしなければならない。〉、第四五五条〈非常上告をするには、その理由を記載した申立書を最高裁判所に差し出さなければならない。〉、第三六三条第四号〈上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。〉により被告人を免訴すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和35年6月9日 昭和29(れ)10
登載
刑集 第14巻7号953頁
参照法条
刑法130条,刑訴施行法2条,刑訴施行法3条の2,刑訴法411条5号,旧刑訴法281条,旧刑訴法285条,旧刑訴法363条4号,旧刑訴法448条,旧刑訴法455条
論点275第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる事例。(判決宣告期日を変更しながら変更前の期日に判決を宣告した場合)

裁判要旨判決宣告期日を変更したにも拘らず、その変更前の期日に言い渡した第二審判決は、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年6月10日 昭和34(あ)2388
登載
刑集 第14巻7号970頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法342条,刑訴法273条
論点276第411条刑事訴訟法

刑法第四五条前段の併合罪につき懲役刑と罰金刑とが同法第四八条第一項によつて併科され罰金刑につき免訴すべき場合の判決破棄の範囲。

裁判要旨刑法第四五条前段の併合罪中甲罪につき懲役刑が、乙罪につき罰金刑が各選択され、両者が同法第四八条第一項により併科され懲役および罰金の言渡があつた後、乙罪につき大赦があつたときは、罰金を言渡した部分のみを破棄すべく、全部を破棄すべきものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年5月6日 昭和27(あ)520
登載
刑集 第14巻7号861頁
参照法条
刑法45条,刑法48条1項,刑訴法411条5号
論点277第411条刑事訴訟法

一 人権侵害、労働基準法違反等の疑があるとして関係官庁において調査を開始したという事実の報道と名誉毀損罪の成否
二 刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる事例

裁判要旨一 苟も人権侵害、労働基準法違反等の疑があるとして関係官庁において該事実の有無について調査を開始したという事実の如きは公益に影響を及ぼすべき問題であるから報道機関としての新聞紙がこれを取り上げ報道することは許容さるべきところである。註第一、二審判決は高等裁判所判例集第一〇巻一号五〇頁に登載されている。
二 名誉毀損幇助被告事件において、控訴事実となつている被告人の談話の記事がK新聞の「年少者も酷使?N営業所人権問題労基署でも調査へ」なる見出のもとに掲載された社会ニユース記事の一部分をなし、そのニユース記事の構造上これを綜合的全体的に考察するを相当とする場合に、単に被告人の談話部分のみを名誉毀損罪の成否の対象とするにととまり、右ニユース記事を取材した記者及びその編集責任者に同罪の正犯としての要件がそなわつているか否の点についての審理を尽さず、たやすく被告人のした談話をもつて名誉毀損罪の幇助に当るものとしたときは、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年12月16日 昭和32(あ)523
登載
刑集 第14巻14号2126頁
参照法条
刑法230条,刑法230条1項,刑法62条1項,昭和20年9月19日附連合国最高司令官の日本政府に対する覚書「新聞規則」,刑訴法411条1号
論点278第411条刑事訴訟法

一 刑訴法第四一一条第三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉にあたる事例
二 ―威力業務妨害に関する事実誤認―

裁判要旨家屋(住宅と店舗)の貸主である被告人甲、その息子である被告人乙、その娘婿である被告人丙の三名が、約束の明渡期限経過後現場に臨み、店舗の無断使用者(商事会社)の代理人とみられる者に明渡を求めたところ、同人において、初めは会社の代表者の不在を理由に明渡の猶予を請うていたが、それまでの折衝の経緯にかんがみ事態やむをえないものとして敢えて明渡拒絶の態度に出なかつたので、被告人側の手で会社の什器類の一部を横の道路に出し、被告人側の商品を搬入した上店舗に施錠したが、その間特に威力を用いた形跡も認められない場合に、これを威力業務妨害にあたるとするのは、判決に影響を及ぼすべき事実誤認の疑いがあつて、刑訴第四一一条第三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年5月22日 昭和31(あ)2842
登載
集刑 第129号897頁
参照法条
刑訴法411条3号,刑法233条,刑法234条
論点279第411条刑事訴訟法

一 有価証券変造罪の成立する事例
二 刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらない事例
―有価証券の偽造と変造

裁判要旨一 行使の目的をもつて有効に成立している他人振出名義の小切手の金額欄の数字をインキ消で抹消した上、ほしいままに同欄に別の金額をあらたにペンで記入したときは、有価証券の偽造罪ではなく、その変造罪が成立する。
二 有価証券の変造にあたるものと解すべき場合に、第一審判決がこれを有価証券の偽造にあたると判示したとしても、判決を破棄する事由とはならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和34年2月12日 昭和33(あ)1176
登載
集刑 第129号125頁
参照法条
刑法162条1項,刑訴法380条,刑訴法411条1号
論点280第411条刑事訴訟法

一 刑訴規則第一七九条第一項違反と刑訴法第四一一条第一号。
二 刑訴法第二七二条〈裁判所は、公訴の提起があつたときは、遅滞なく被告人に対し、弁護人を選任することができる旨及び貧困その他の事由により弁護人…〉、刑訴規則第一七七条の規定は、控訴の審判に準用があるか。
三 刑訴規則第一七八条の規定は、起訴の審判に準用があるか。
四 控訴の相手方たる検察官は、刑訴規則第二四三条により答弁書差出の義務があるか。

裁判要旨一 刑訴規則第一七九条第一項に違反して、被告人に対する第一回の公判期日の召喚状の送達が起訴状の謄本を送達する前になされた違法があつても、起訴状の謄本の送達と第一回の公判期日との間に二〇日の期間が存し、しかも右第一回の公判期日において裁判官が訴訟当事者に弁論を命ずることなく被告人に対し十分訴訟準備をするように告げた上公判期日の変更決定をなし、更に一六日先きに次回の公判期日を指定し告知したような場合においては、右の違法は未だ判決に影響を及ぼすべきものとはいえない。
二 刑訴法第二七二条〈裁判所は、公訴の提起があつたときは、遅滞なく被告人に対し、弁護人を選任することができる旨及び貧困その他の事由により弁護人…〉、刑訴規則第一七七条の規定は控訴の審判については準用されないものと解すべきである。
三 刑訴規則第一七八条の規定は起訴の審判についても準用される。
四 刑訴規則第二四三条の規定は、控訴の相手方である検察官に対し答弁書差出の義務を課したものと解すべきではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年9月12日 昭和33(あ)220
登載
刑集 第12巻13号3007頁
参照法条
刑訴法275条,刑訴法411条1号,刑訴法272条,刑訴法404条,刑訴法289条,刑訴規則179条,刑訴規則177条,刑訴規則250条,刑訴規則178条,刑訴規則243条
論点281第411条刑事訴訟法

原判決が是認した第一審判決の採証する自白調書の任意性に疑いがあると認められる場合と刑訴法第四一一条第一号による原判決の破棄

裁判要旨第一審判決が被告人の司法警察員に対する供述(自白)調書を他の証拠と綜合して犯罪事実を認定し、原判決もまたその自白の任意性を認め、第一審判決の右採証を是認している場合、諸般の証拠上、右自白の任意性に疑いがあるとみるのが相当で(判文参照)、且つ同自白が犯罪事実認定の有力な証拠となつていると認めるときは、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により原判決を破棄することができる
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年6月13日 昭和31(あ)4204
登載
刑集 第12巻9号2009頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法322条1項,刑訴法319条1項,刑訴法335条1項,刑訴法317条,憲法38条2項
論点282第411条刑事訴訟法

再犯につき刑法第五九条を適用した違法と刑訴法第四一一条

裁判要旨本件犯罪が(イ)の前科とは累犯の関係にあるが(ロ)の前科の仮出獄中の犯行である場合に、原判決が刑法第五九条を適用した違法であつても、刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべき場合にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年3月5日 昭和30(あ)2419
登載
集刑 第123号505頁
参照法条
刑法56条1項,刑法57条,刑法59条,刑訴法411条1号
論点283第411条刑事訴訟法

刑訴法四一一号第一号にあたらない事例

裁判要旨船舶により貨物密輸出の予備をなした場合において、その用に供した船舶を旧関税法第八三条によることなく刑法第一九条第一項第一号第二項により没収した違法があつても、右違法は未だ刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉を適用すべきものとは認められない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年3月4日 昭和30(あ)271
登載
刑集 第12巻3号367頁
参照法条
刑訴法411条1号,旧関税法(明治32年法律61号)83条,刑法19条1項1号,刑法19条2項
論点284第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる一事例。−制限住居の不備による送達の不完全から被告不出頭のまま審理判決した場合−

裁判要旨職権をもつて調査すると、本件についての上訴権回復を申立事件に対する東京高裁の決定並びに同事件および本件の一件記録によれば、被告人は、昭和二三年七月二〇日静岡地裁において保釈決定を受けた際その住居を静岡市abに制限されたが、被告人並びにその代人の責に帰すべからざる事由によつて被告人はその制限住居を知らず且つ被告人は該制限住居に居住したこともなかつたことを認めることができる。然るに、本件記録によれば、原審は、右の制限住居に宛てて本件公判期日の召喚状を発送し、その不送達となるや公判期日の召喚状及びその後の書類の送達はすべて公示送達によつてなし、そのため同第四回公判において被告人不出頭のまま旧刑訴四〇四条〈第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。〉、刑訴法施行法二条の規定により被告人の陳述を聴かず審理した上判決をしたものであることを認めることができる。されば、原判決の審判には事実の確定に影響を及ぼすべき法令の違反があつて、刑訴施行法三条の二、刑訴四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年3月27日 昭和30(れ)13
登載
集刑 第123号829頁
参照法条
旧刑訴法330条,旧刑訴法404条,刑訴施行法2条,刑訴施行法3条の2,刑訴法411条1号
論点285第411条刑事訴訟法

心神耗弱と認めたことが経験則に違反しない事例

裁判要旨二つの精神鑑定書の各結論の部分に、いずれも、被告人が犯行当時心神喪失の情況にあつた旨の記載があつても、其部分を採用せず、右鑑定書全体の記載内容とその他の情況証拠とを綜合して、心神耗弱の事実を認定することは、必ずしも経験則に反するとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年2月11日 昭和31(あ)721
登載
刑集 第12巻2号168頁
参照法条
刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法411条1号,刑訴法165条,刑法39条
論点286第411条刑事訴訟法

一 いわゆる電源ストについて原判決に理由不備、事実誤認の疑があるとされた事例。
二 ピケツテイングについて理由のくいちがい、真実誤認の疑があるとされた事例。

裁判要旨一 本件電源ストにおいて被告人らが排水門、制水門を開放して水力発電所の用水を放流した積極的な所為が、電源職場における被告人ら従業員の労務提供義務不履行行為にあたる理由を説示するところなく無罪とした原判決は、理由不備ないし重大な事実誤認の疑がある。
二 原判決が一面ピケツテイングは平和的説得ないし団結の示威を建前とすると判示しながら、他面本件電源ストにおいて説得前すでに会社側臨時人夫ら非組合員の現場立入をスクラムによるピケツテイングにより阻止しても違法でないと判示したのは、理由にくいちがいがあるかまたは重大な事実誤認の疑がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年12月25日 昭和31(あ)3844
登載
刑集 第12巻16号3555頁
参照法条
刑法35条,刑法234条,刑法123条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,労働組合法1条2項
論点287第411条刑事訴訟法

一 期待可能性がないとした判断が法令の適用の誤または理由不備であるとされた事例。
二 原判決が一部無罪、一部有罪としたとき、上告審が無罪の部分の判断が誤りであるとする場合の措置。

裁判要旨一 労働争議に際し、被告人ら労組員が会社側幹部に暴行を加え且つ引き続き監禁した事件において、原判決が、争議に相当の理由があり、急速な解決を必要としたこと、会社側幹部が逃避的態度を示したこと、被告人等は組合員の勢に引き摺られたものであること、加えた危害が高度でないことなどの理由だけで前半の暴行を期待可能性がないものとして無罪とし、後半の不法監禁のみを有罪としたときは無罪の判断部分について法令の適用を誤つたかまたは理由不備の違法があることになる。
二 右のように原判決が一部無罪、一部有罪とした場合上告審が有罪部分には破棄事由がないが無罪部分について破棄事由があると認めたときは、原判決全部を破棄すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年11月4日 昭和30(あ)1996
登載
刑集 第12巻15号3439頁
参照法条
刑法37条,刑訴法380条,刑訴法378条4号,刑訴法411条,刑訴法413条
論点288第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる事例。

裁判要旨被告人の司法警察職員、検察官に対する各供述書(自白)と証人の供述の証明力を争うために刑訴第三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉にもとずき提出された被告人以外の者の司法警察職員に対する供述調書とで犯罪事実を認定した判決は、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年10月10日 昭和31(あ)2419
登載
集刑 第128号265頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法328条,刑訴法319条2項
論点289第411条刑事訴訟法

一 自白の任意性に関する立証責任
二 刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる一事例。−勾留中の被疑者に対する糧食差入禁止とその間またはその後に作成された自白調書の証拠能力−

裁判要旨一 自白が任意になされたかどうかについての合理的な疑の存否につき、何れとも決し難いときは、これを被告人の不利益に判断すべきではない。
二 被疑者に対する糧食差入禁止の事実を認め、しかもその糧食差入禁止の期間と自白の時日との関係上、外形的には糧食差入禁止と自白との間に因果の関係を推測させ、少くともその疑ある事実であるにかかわらず、原判決が「単に糧食差入禁止の事実のみを理由として直ちにその間またはその後に作成せられた供述調書の証拠能力、証明力を否定することはできない」と断じ、何等特段の事由を説示することなく「記録に徴しまた当審における事実取調の結果に照しても右調書の証拠能力、証明力を否定するに足るべき状況は発見できない」という理由のみで、右自白の任意性、信用性を争う主張を排斥した判断は、審理不尽、理由不備の違法があり刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年5月31日 昭和28(あ)1516
登載
刑集 第11巻5号1579頁
参照法条
刑訴法319条,刑訴法318条,刑訴法322条,刑訴法81条,刑訴法207条,刑訴法411条1号
論点290第411条刑事訴訟法

一 弁護権の不法制限にあたらない一事例
二 控訴審の破棄差戻判決関与裁判官の破棄差戻後の控訴審判決言渡関与の適否

裁判要旨一 控訴審において、一人の弁護人に公判期日の通知をしなかつた違法があつても、適法な通知を受けた他の弁護人において公判期日に出頭し、同弁護人において、主任弁護人の指定を受け、不出頭の弁護人の控訴趣意書についても弁論し、その後何らの異議なく審判がなされたときは、右手続の瑕疵は判決破棄の理由とならない。
二 控訴審の破棄差戻判決に関与した裁判官が、その後の控訴審の判決の宣告に関与しても除斥の理由とならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年4月16日 昭和30(あ)1291
登載
刑集 第11巻4号1372頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法273条3項,刑訴法20条7号
論点291第411条刑事訴訟法

上告趣意書不提出の被告人に対して大赦を理由とする破棄判決の要否

裁判要旨有罪の第二審判決に対し、被告人から上告中大赦があつたときは、被告人が所定期間内に上告趣意書を差し出さなくても刑訴第四一一条第五号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。〉により原判決を破棄すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和32年2月27日 昭和31(あ)3701
登載
刑集 第11巻2号935頁
参照法条
刑訴法411条5号,刑訴法337条3号,刑訴法414条,刑訴法376条,刑訴法386条1項1号
論点292第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉第三号にあたる一事例

裁判要旨贈収賄被告事件において、不可分の供述の一部をとつて全体の意味と異る趣旨を認定して職務に関する饗応を認めた判決は証拠法の違反があると共に事実の誤認があつて刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉第三号によりこれを破棄した上無罪の言渡をすることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年2月14日 昭和26(あ)5023
登載
刑集 第11巻2号696頁
参照法条
刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法411条,刑訴法413条,刑法197条,刑法198条
論点293第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる一事例。―違法な保護観察の言渡―

裁判要旨有罪判決において刑の執行猶予を言い渡すにあたり、保護観察に付することを得ない場合であるにかかわらず、併せて保護観察に付する旨言い渡した第一審判決およびこれを看過した原判決は、共に違法であつて刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年11月1日 昭和29(あ)3170
登載
刑集 第11巻12号3037頁
参照法条
刑法25条1項,刑法25条2項,刑法(昭和29年法律57号による改正前および改正後のもの)25条ノ2,刑法の一部を改正する法律(昭和29年法律57号)附則2項,刑訴法411条1号
論点294第411条刑事訴訟法

外国とみなされていた地域に対する貨物無免許輸出入の罪と右地域が外国とみなされなくなつたことによる刑の廃止の有無

裁判要旨北緯二九度以南、同二七度以北の南西諸島が外国とみなされていた当時、免許を受けないで日本内地から同地域へ、若しくは同地域から日本内地へ貨物を密輸出し若しくは密輸入した罪については、その後右地域が外国とみなされなくなつた場合は、犯罪後の法令により刑が廃止されたものと解すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和32年10月9日 昭和25(あ)2778
登載
刑集 第11巻10号2497頁
参照法条
旧関税法(明治32年法律61号−昭和24年法律65号により改正されたもの)76条,旧関税法(明治32年法律61号−昭和24年法律65号により改正されたもの)104条,旧関税法(昭和26年法律271号により改正されたもの)104条,関税法104条,、関税定率法12条及び噸税法8条の規定に基き附属島しよを定める等の省令(昭和24年大蔵省令36号),関税法関税定率法及び噸税法の適用上外国とみなされる地域を定める政令(昭和27年政令99号),奄美群島の復帰に伴う国税関係法令の適用の暫定措置等に関する政令(昭和28年政令407号)附則8項,刑法6条,刑訴法337条2号,刑訴法411条5号
論点295第411条刑事訴訟法

外国とみなされていた地域からの貨物無免許輸入の罪と、右地域が外国とみなされなくなつたことによる刑の廃止の有無

裁判要旨北緯三〇度以南の南西諸島(口之島を含む)が外国とみなされていた当時免許を受けないで貨物を同地域から日本内地に密輸入した罪については、その後右地域が外国とみなされなくなつた場合は、犯罪後の法令により刑が廃止されたものと解すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和32年10月9日 昭和27(あ)2456
登載
刑集 第11巻10号2509頁
参照法条
旧関税法(明治32年法律61号−昭和24年法律65号により改正のもの)104条,旧関税法(昭和25年法律117号により改正されたもの)76条,関税法104条、関税定率法12条及び噸税法8条の規定に基き附属島しよを定める等の省令(昭和24年大蔵省令36号),右省令の一部を改正する省令(昭和27年大蔵省令5号),刑法6条,刑訴法337条2号,刑訴法411条5号
論点296第411条刑事訴訟法

刑訴法第三八一条〈刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に…〉第四一一条第二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉にいう「刑の量定」の意義

裁判要旨刑訴三八一条〈刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に…〉、四一一条二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉の規定にいわゆる「刑の量定」とは、広義であつて、刑法にいわゆる「刑」の量定のほか、罰金の換刑処分、未決勾留日数の算入、刑の執行猶予等の附随処分をも含む概念であるから、選挙権、被選挙権に関する公職選挙法二五二条三項所定の裁判所の裁量に関する上訴理由は、前記刑訴の規定にいわゆる「刑の量定」の非難に該当するものと解すべきことは、大審院及び当裁判所における従来の判例の示すところである。(大審院判例集七巻一四六頁以下、最高裁判所判例集八巻六号七九四頁以下第二小法廷決定参照)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年9月27日 昭和31(あ)890
登載
集刑 第114号803頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法411条2号
論点297第411条刑事訴訟法

公訴時効完成により刑訴法第四一一条により免訴を言渡した一事例

裁判要旨贈賄の事実については、原判決の言渡後、本件を当裁判所が受理した昭和三一年六月二二日までに既に三年以上経過し、しかも、その間公訴時効の中断の事実のないことは記録上明らかであるので、右の罪に対する公訴の時効が完成したものであるから、共に被告人に免訴の言渡をすべきであつて、この点において原判決は破棄を免れない。よつて、刑訴施行法二条、三条の二、刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉により、原判決破棄の上、旧刑訴四四八条〈再審の請求が理由のあるときは、再審開始の決定をしなければならない。〉、四五五条〈非常上告をするには、その理由を記載した申立書を最高裁判所に差し出さなければならない。〉、三六三条三号〈上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。〉、四号により被告人を免訴すべきものとする。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年9月14日 昭和31(れ)8
登載
集刑 第114号695頁
参照法条
刑法198条,刑訴法411条5号,旧刑訴法281条5号,旧刑訴法363条4号
論点298第411条刑事訴訟法

誤つて累犯加重をした違法が判決に影響を及ぼさないとした事例

裁判要旨原審の是認した第一審判決が、刑法五六条一項、五七条の適用を誤つて累犯加重をした違法のあることは所論のとおりである。しかし、被告人は本件犯行の外、三個の犯罪を犯し(内二件は本件と同様窃盗である。)ていることは記録上明らかであり、しかも本件犯行は、他の犯罪につき昭和三〇年一月一二日仮釈放せられた後数日にして同年一月二一日行つたものである等、諸般の事情を総合すれば、本件犯行はその犯情甚だ重く、被告人が懲役一年二月に処せられたことについては、上記の違法に拘らず、刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきものとは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年7月12日 昭和30(あ)3899
登載
集刑 第114号125頁
参照法条
刑法235条,刑法56条1項,刑法57条,刑訴法411条
論点299第411条刑事訴訟法

名誉毀損罪として起訴された事実を侮辱罪と認定する場合と公訴の時効

裁判要旨検察官が犯行後一年一月余を経過したときに名誉毀損罪として公訴を提起した公訴事実を裁判所が侮辱罪に該当する所為と認めるときは、被告人に対し公訴の時効が完成したものとして免訴の言渡をなすべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年4月12日 昭和30(あ)1305
登載
刑集 第10巻4号540頁
参照法条
刑訴法250条,刑訴法337条4号,刑訴法411条1号,刑法230条,刑法231条
論点300第411条刑事訴訟法

刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる事例―審理不尽、理由不備の違法

裁判要旨農業協同組合参事として組合員に対する金員の貸付けにつき包括的権限を有している者が組合員に対して制度上認められている仮払金名義により金員を貸出す行為が業務上横領の罪を構成するとする理由として、仮払金の制度、定款の規定等を審理することなく、単に「農業協同組合法並びに組合の定款の定めるところに準拠することなく、且つ正規の貸出手続によらないで、その業務上保管に係る組合公金を擅に仮払金名義で支出して……融通したことを認めるに充分であるから……なお組合の公金を不法に領得したものということができる」とするのは、審理不尽、理由不備の違法あることを免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年4月10日 昭和29(あ)597
登載
集刑 第113号5頁
参照法条
刑法253条,刑訴法411条1号,刑訴法413条本文,農業協同組合法42条
論点301第411条刑事訴訟法

一 特別公務員暴行陵虐被告事件の職務執行の認定につき、審判に付する決定および一審判決認定事実と異る控訴審の事実認定の適法
二 刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらない一事例
三 ―特別公務員暴行陵虐被告事件の判決言渡期日に検察官が出席した場合―

裁判要旨一 特別公務員暴行陵虐の罪について、被告人の所為が、証拠品の任意提出を求める職務執行にあたり行われたという審判に付する決定事実および一審判決の事実認定を、控訴審において緊急逮捕の職務執行にあたり行われたと認定することは、それが証拠に即する限り違法ではない。
二 (裁判官池田克の補足意見)
特別公務員暴行陵虐被告事件の一審における判決言渡のために開かれた公判期日に、検察官の職務を行う弁護士が出席せず、検察官が出席しても刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉を適用すべき場合にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年2月10日 昭和28(あ)4724
登載
刑集 第10巻2号159頁
参照法条
刑訴法378条3号,刑訴法312条,刑訴法411条1号,刑訴法268条,刑訴法282条2項,刑訴法377条1号,裁判所法11条
論点302第411条刑事訴訟法

昭和三〇年法律第五一号による銃砲刀剣類等所持取締令の一部改正と刑の廃止

裁判要旨昭和三〇年法律第五一号による銃砲刀剣類等所持取締令の一部改正前に業務その他正当な理由がなく刃渡一五センチメートル未満のあいくち(七首)を携帯した所為については、右改正により刑の廃止があつたものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年12月25日 昭和31(あ)667
登載
刑集 第10巻12号1701頁
参照法条
銃砲刀剣類等所持取締令1条2項,銃砲刀剣類等所持取締令2条,銃砲刀剣類等所持取締令15条,銃砲刀剣類等所持取締令26条1号,銃砲刀剣類等所持取締令27条,銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前)1条,銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前)15条,刑訴法337条2号,刑訴法383条2号,刑訴法411条5号,刑法6条
論点303第411条刑事訴訟法

控訴審の破棄自判の判決が心神喪失もしくは心神耗弱の主張に対し判断を遺脱した違法と刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉

裁判要旨控訴審の破棄自判の判決が、心神喪失もしくは心神耗弱の主張に対し判断を示さなかつた場合は、刑訴第四〇四条〈第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。〉、第三三五条第二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉に違反するけれども、同第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉によりこの法令違反が判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる場合に破棄せられるにとどまる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年12月25日 昭和29(あ)1796
登載
集刑 第116号347頁
参照法条
刑訴法335条2項,刑訴法411条1号,刑法39条
論点304第411条刑事訴訟法

犯罪行為後の発生事実を刑の量定に参酌した一事例

裁判要旨被告人が火薬類を所持しこれを譲渡しなかつたならば、その直後に災害が発生しなかつたものであると認められる事情の存する場合に、その火薬類により発生した災害の結果を火薬類所持罪の量刑の一事情として参酌したからといつて、不当ではなく、違法ということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年12月22日 昭和29(あ)665
登載
刑集 第10巻12号1667頁
参照法条
刑訴法333条,刑訴法381条,刑訴法411条2号,火薬類取締法59条2号,火薬類取締法21条
論点305第411条刑事訴訟法

決定刑を超えた刑を科した第一審判決の違法を看過した控訴または上告審判決と非常上告理由

裁判要旨第一審が法定刑を超えた刑を科した違法がある場合において控訴または上告審が職権調査をなさず、右違法を看過しても、法令に違反したものということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年9月29日 昭和30(さ)2
登載
刑集 第9巻10号2102頁
参照法条
刑訴法457条,刑訴法458条,刑訴法392条,刑訴法411条
論点306第411条刑事訴訟法

必要的弁護事件において弁護人選任の請求なき場合に控訴趣意書の提出最終日を経過して国選弁護人を選任することは違憲か

裁判要旨必要的弁護人事件であつても、弁護人選任の請求がない限り、裁判所が控訴趣意書の提出最終日を経過して国選弁護人を選任しても、右手続は違憲でない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年7月29日 昭和28(あ)1707
登載
集刑 第107号1133頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴法289条,刑訴法411条1号,刑訴規則177条,刑訴規則178条,刑訴規則250条
論点307第411条刑事訴訟法

一 別個の所持の認められる一事例
二 所持罪における場所の変更と公訴事実の同一性
三 被告人の控訴趣意書に対する判断遺脱が刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例

裁判要旨一 かねて自宅に保管していた麻薬を持ち出し、これを二個に分割し、その一部を他人に交付し、残余の部分を留保して自宅外の場所に隠匿した場合には別個独立の所持罪が成立する。
二 麻薬所持の罪において起訴事実と認定事実との間に、所持の場所に多少の変更があつても、所持の目的物が同一である限り、その一事を以つて直ちに公訴事実の同一性が失われるとは解されない。
三 被告人の控訴趣意書中事実誤認を指摘するが如き口吩があつても、控訴の要旨は量刑過重に失するを不服とし刑の執行猶予を願うにあるときは、同被告人の弁護人の控訴趣意の量刑不当の主張に対する判断がなされている限り、右被告人の控訴趣意書に対する判断を遺脱した違法があつても、右違法は判決に影響がなく刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年7月19日 昭和28(あ)2775
登載
刑集 第9巻9号1885頁
参照法条
旧麻薬取締法(昭和23年法律123号)3条1項,旧麻薬取締法(昭和23年法律123号)57条,刑法45条,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法378条3号,刑訴法392条1項,刑訴法411条
論点308第411条刑事訴訟法

改正前の法令を適用した誤が判決に影響を及ぼさない一事例

裁判要旨第一審判決は、被告会社につき同判決別表一一の犯罪に対し、昭和二四年一二月二七日法律第二八六号による改正前の物品税法第一八条第一項を適用し、同被告を罰金六十一万五千七百円に処しているが、前記犯罪の行為は昭和二五年一月九日であるから、これに対しては右法律第二八六号附則一項により前記改正後の物品税法第一八条を適用すべきものである。従つて第一審判決はこの点において法令の適用を誤つた違法があることとなるが、改正後の物品税法第一八条第一、二項によれば前記犯罪につき被告を金五十万円以上の罰金に処し得ること明らかであるから、右第一審判決の違法は判決に影響がなく、従つてこれを理由として判決を破棄すべきものとは認められない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月17日 昭和28(あ)3198
登載
集刑 第105号475頁
参照法条
物品税法(昭和24年法律第286号による改正前)18条,物品税法(昭和24年法律第286号による改正後)18条,刑訴法379条,刑訴法411条
論点309第411条刑事訴訟法

刑訴第四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる一事例 ―詐欺の犯意の認定の審理不尽、理由不備の違法―

裁判要旨被告人が欺罔手段を弄し、選挙管理委員会をして、選挙権者に、特別投票用紙および特別投票者証明書を郵送させたという事案において、右選挙権者がその特別投票用紙等を受け取る権利のある者であるか否か、或いは被告人が右選挙権者にその権利ありと信じていたか否かを審理しないで、たんに手段に欺罔行為があつたという一事(被告人が選挙管理委員会に対し、何等予め当該選挙人の承認を得たものでないことを十分知つていながら、勝手に選挙人の名義を用いて、本人よりの請求の如く装い、特別投票用紙等の請求手続をしたことが認め得られるという一事)をもつて、ただちに被告人の詐欺の犯意を認定し得るとすることは、審理不尽、理由不備の違法があつて刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年4月5日 昭和27(あ)4768
登載
集刑 第104号1頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑法246条1項,地方自治法(昭和25年4月法律101号による改正前)34条1項3号,同施行令(昭和25年5月政令113号による改正前)36条1項,同施行令(昭和25年5月政令113号による改正前)37条1項3号,公職選挙法49条,公職選挙法施行令52条
論点310第411条刑事訴訟法

刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例 ―既遂と未遂の認定の誤り―

裁判要旨所論の如く未遂罪であるとしても、只裁判所は減軽を為し得るだけでその他法定刑に変りはなく、その範囲において刑を量定し執行猶予迄言渡した原判決はこれを破棄しなければ著しく正義に反するものとは到底いえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年4月5日 昭和27(あ)6238
登載
集刑 第104号21頁
参照法条
刑法43条,刑法44条,刑訴法411条
論点311第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉に該当する一事例 ―訴訟費用を違法に被告人に負担せしめた場合―

裁判要旨無罪の言渡をした公訴事実に関する証人尋問について生じた訴訟費用を違法に被告人に負担せしめた場合には刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉に該当し原判決を破棄すべきものである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年1月14日 昭和28(あ)1570
登載
刑集 第9巻1号52頁
参照法条
刑訴法181条,刑訴法411条
論点312第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にたらない一事例 ―同意のないのにかかわらず伝聞供述をふくむ証人尋問調書の全般に亘つて罪証に供した場合―

裁判要旨原判決は第一審第九回公判期日において所論Aの尋問調書の証拠調の施行について、被告人及び弁護人において異議を述べた形跡が窺われないから、右尋問調書中伝聞供述記載部分をも証拠とすることに同意したものと認めることができるとしているけれども、被告人は第一審公判において密入国事実を全面的に否認しているのであるから同公判調書の記載内容から考えて、被告人及び弁護人が前記尋問調書の証拠調に異議を述べなかつた一事をもつて直ちに同調書中伝聞証拠の供述記載の証拠能力までも認めるに同意したものと推断することはできない。しかしながら同調書中から右伝聞証拠である供述記載の部分の除いた部分及び第一審判決挙示のその他を綜合すれば同判決の判示事実を認めるに難くないから、第一審判決が本件尋問調書の全般に亘つて罪証に供した違法があるけれども、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があつて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年1月14日 昭和28(あ)443
登載
集刑 第102号341頁
参照法条
刑訴法324条,刑訴法335条1項,刑訴法411条,刑訴法326条
論点313第411条刑事訴訟法

一 伝聞証拠の一事例
二 刑訴第四一一条第三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉を適用して破棄差戻した事例

裁判要旨一 強姦致死被告事件において、被告人はかねて被害者某女と情を通じたいとの野心をもつていたという事実を認定する証拠として、某女がその生前、被告人が自分に変な言動をするのでいやらしい旨第三者に告白したことがある旨の第三者の公判廷における供述は伝聞証拠である。
二 第一審判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があることを疑うに足る顕著な事由があつて判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときも、刑訴第四一一条第三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉により原判決及び第一審判決を破棄しなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年12月9日 昭和29(あ)2784
登載
刑集 第9巻13号2699頁
参照法条
刑訴法320条,刑訴法324条,刑訴法321条,刑訴法411条3号
論点314第411条刑事訴訟法

刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたる一事例 ―簡易裁判所が違法に懲役刑を言渡した場合と破棄の事由―

裁判要旨簡易裁判所が裁判所法第三三条第二項所定の制限に違反し、外国人登録法違反罪について懲役刑を選択処断した違法を看過して控訴を棄却した原判決は、第一審判決とともに、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年12月20日 昭和29(あ)232
登載
刑集 第9巻14号2906頁
参照法条
裁判所法33条,刑訴法332条,刑訴法411条1号,刑訴法413条
論点315第411条刑事訴訟法

一 理由不備の違法のない事例
二 裁判所法第四条に違反しない事例

裁判要旨一 特別公務員暴行陵虐致死被告事件において、被害者の解剖所見のみを基礎として受傷時と死亡時との時間的間隔を推認し、これにより或る幅をもつた受傷時を推認した上、その推認時間内において被害者と交渉を持つた者のうちから証拠と推理によつて加害者を認定しても差支えなく、理由不備の違法があるとはいえない。
二 証拠と理由不備の違法を理由として破棄差戻された後の第二審が、証拠を追加し同一事実を認定した場合には、上級審の裁判所の裁判における判断と相反する判断をしたことにはならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年12月16日 昭和29(れ)19
登載
刑集 第9巻14号2797頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法317条,裁判所法4条
論点316第411条刑事訴訟法

第一審で懲役四月罰金一万円、第二審で懲役三月二年間刑の執行猶予及び罰金一万五千円を言渡した場合と不利益変更禁止の原則違反の有無

裁判要旨論旨は、原判決が不利益変更禁止の規定に反するというのであるが、何が不利益であるかは必ずしも刑訴九、一〇条〈同一事件が事物管轄を異にする数個の裁判所に係属するときは、上級の裁判所が、これを審判する。〉の刑の順序に従うとのみはいえないけれども、これを全体として観察し、懲役刑が減軽されてその刑の執行が猶予された場合には罰金刑が増額されていても刑訴四〇二条〈被告人が控訴をし、又は被告人のため控訴をした事件については、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。〉に反しないこと明らかである(昭和二六年(れ)一八二六号同年一一月二七日第三小法廷判決刑集五、一三、二四五七頁参照)。所論は違憲の前提を欠く。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年9月21日 昭和28(あ)1109
登載
集刑 第98号701頁
参照法条
刑法9条,刑法10条,刑訴法411条,刑訴法402条
論点317第411条刑事訴訟法

法令の適用にあたり誤つて余事を記載しても判決に影響しない一事例

裁判要旨第一審判決によれば、被告人A及び同Bの犯罪事実(註、贈賄の事実を指す)は、理由中第二の事実として摘示されているところであつて、それは旧自転車競技法一七条一項に該当するものである。従つて同判決法律適用の部分は、A及びBの所為を同条項に該当するものとして、それぞれ懲役六月及び懲役四月に処する旨判示した後段のみで事足り、前段中にA及びBの所為を同法一六条刑法六〇条(註、収賄の法条を指す)に該当するものとしてそれぞれ懲役六月及び懲役四月に処すると判示した部分は誤つて余計なことを記したものと認められる。しかしこの誤りのために第一審判決も第二審判決も主文に影響を受けてはいない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年8月31日 昭和28(あ)375
登載
集刑 第98号421頁
参照法条
自車競技法(改正前のもの)16条,自車競技法(改正前のもの)17条,刑訴法44条,刑訴法335条,刑訴法411条
論点318第411条刑事訴訟法

証拠の標目中に刑訴三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉による証拠かかかげられていても、その余の挙示の証拠で犯罪事実が認定され得る場合と刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉

裁判要旨刑訴三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉にいう証拠は被告人、証人その他の者の供述の証明力を攻撃する資料に止まり、同法三二一条〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り…〉乃至三二四条〈被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条の規定を準用…〉の規定で証拠能力が認められていないものであつて、犯罪事実を認定するための刑訴三三五条〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の証拠の標目として掲記すべきものではないから、第一審判決が所論Aの供述調書を証拠の標目中にかかげたのは失当たるを免れないこと所論のとおりである。しかしながら本件において所論供述調書を除いてもその余の挙示の証拠で判示事実は優に認定することができるから、かような場合には刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべき事由となすに足りないこと当裁判所の判例とするところである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年7月7日 昭和28(あ)624
登載
集刑 第97号189頁
参照法条
刑訴法328条,刑訴法335条,刑訴法411条
論点319第411条刑事訴訟法

綜合認定した証拠の一部に違法なものがあつても判決に影響を及ぼさない一事例

裁判要旨第一審判決認定の事実は、所論検察官の被告人に対する供述調書(刑訴三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉の証拠として取調の請求があり、取調のあつたもの)を除いてもその他の同判決挙示の各証拠により認定することができるのであるから、仮りに所論のごとき違法ありとしても原判決に影響を及ぼさないものである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年5月21日 昭和27(あ)4620
登載
集刑 第95号493頁
参照法条
刑訴法321条1項3号,刑訴法328条,刑訴法411条
論点320第411条刑事訴訟法

刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない事例 −控訴審における弁護人の不出頭−

裁判要旨弁護人から公判期日延期の申請があつても、その申請の理由につき何等疏明もしない本件においては、原裁判所は、これを許さなければならないものではない。原裁判所は右申請を許さず当初指定した公判期日にその公判を開いたものであつて、その法廷において右申請を許さない旨の決定を宣したからといつてその決定を被告人並びに弁護人に通知する必要はない。又本件は必要弁護事件ではないから、弁護人が出頭しなくても開廷することができるものであり、原審は刑訴三九一条〈弁護人が出頭しないとき、又は弁護人の選任がないときは、この法律により弁護人を要する場合又は決定で弁護人を附した場合を除い…〉に基き検察官の陳述を聴いて結審し弁護人提出の控訴趣意書に含まれた事項につき判決したのであるから、控訴趣意書につき審理しないとの主張は理由がない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年5月21日 昭和29(あ)448
登載
集刑 第95号519頁
参照法条
刑訴法276条,刑訴法391条,刑訴法411条,刑訴規則179条の4,刑訴規則179条の5
論点321第411条刑事訴訟法

原判決の判断の通りとすれば第一審判決を破棄自判しなければならない場合に控訴を棄却した誤りがあつても結局同一の刑に処するときは、刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉に当らない

裁判要旨第一審判決は、被告人の本件行為を過剰防衛行為であると認定して法律上の減軽をした上更らに酌量減軽をして被告人を懲役四年に処しているのに、原判決は証拠に基き過剰防衛行為に該当しないことも明らかであるとして被告人の控訴趣意を排斥して控訴を棄却したものであるから、原判決は第一審判決を事実誤認又は判決に影響ある法令違反ありとしてこれを破棄し、ただ被告人のため控訴をした事件であるの故を以て第一審判決の言渡した懲役刑よりも重くない刑を言渡すべきものであつたといわなければならない。それ故、この点において原判決には違法がある。しかし、本件は被告人のために上告した事件であるから、右の違法は原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年4月15日 昭和28(あ)5689
登載
集刑 第94号523頁
参照法条
刑法36条2項,刑訴法335条2項,刑訴法380条,刑訴法396条,刑訴法402条,刑訴法411条
論点322第411条刑事訴訟法

麻薬の譲受行為とその所持とが併合罪となる一事例

裁判要旨麻薬の譲受とその譲受けた麻薬の所持が、仮りに、所論のごとく、法律上牽連一罪であるとしても、本件では譲受行為が二回あり、且つ譲受行為が千葉市であり、その譲受けた麻薬が東京都内に運搬され、しかも、譲受けた被告人以外の他の被告人も参加して同都内において所持されたものであるから、譲受行為とは別に独立した所持行為があつたものとも解され、いずれにしても併合罪の存することが明白な案件であるから、刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきものとは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年1月14日 昭和26(あ)2207
登載
集刑 第91号219頁
参照法条
麻薬取締法3条,刑法45条,刑訴法411条
論点323第411条刑事訴訟法

公判調書における判決宣告期日の誤記と判決への影響の有無

裁判要旨第一審第三回公判調書の記載によれば、第一審判決の宣告期日は、昭和二四年八月三日と指定されており、同第四回公判調書によれば、右八月三日に同判決の宣告が為された旨記載されているが、三輪、豊田両弁護人の上告趣旨第一点、三、挙示の各書面中の年月日の記載によれば、右各公判調書の八月三日の記載は、九月五日の誤記であつて、本件第一審判決宣告の日は、昭和二四年九月五日であると認定するを相当とする。従つてこの点に関する原判決の判断は、失当たるを免れないものといわなければならない。尤も、右は、前記第一審公判調書の年月日の記載が誤記たるに止り(三輪弁護人等の上告趣意第一点、二、掲記の大正一三年二月九日の大審院判例参照)、有効な第一審判決の宣告があり、従つて、適法な控訴の申立があつたのであるから、その欠点は、結局において第一審判決及び原判決に影響を及ぼすものとは思われない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年1月14日 昭和26(あ)4393
登載
集刑 第91号349頁
参照法条
憲法31条,刑訴法379条,刑訴法52条,刑訴法48条,刑訴法411条,刑訴規則44条2号,刑訴規則44条30号
論点324第411条刑事訴訟法

電気事業法施行当時同法に違反した行為と刑の廃止

裁判要旨電気事業法第三八条違反の所為は、公益事業令が昭和二七年一〇月二四日かぎり失効した後においては、刑の廃止があつたものとして免訴すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年12月23日 昭和29(あ)1545
登載
刑集 第8巻13号2309頁
参照法条
刑法6条,刑訴法411条5号,刑訴法337条3号,電気事業法(昭和6年法律61号)38条,公益事業令(昭和25年政令343号)附則2項,公益事業令(昭和25年政令343号)2項,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律(昭和27年法律81号)1項,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律(昭和27年法律81号)2項,電気及びガスに関する臨時措置に関する法律(昭和27年法律341号)
論点325第411条刑事訴訟法

刑法四一一条にあたらない事例 ―控訴審における請求による国選弁護人選任の時期―

裁判要旨被告人が控訴趣意書最終提出日(昭和二七年一一月一〇日)の国選弁護人の選任の請求をした場合、原審が第一回公判期日当日(昭和二八年二月一七日)に至つてはじめて弁護人を国選としたとしても、その弁護人が異議なく被告人提出の控訴趣意書に基いて弁論した場合には刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきものとは認められない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年11月30日 昭和28(あ)1303
登載
刑集 第8巻11号1898頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法36条
論点326第411条刑事訴訟法

一 米弗表示軍票は刑法第一四九条第一項の「内国ニ流通スル外国ノ貨幣」に該当するか
二 刑訴第四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらない事例 ―物品税証紙の偽造に対する適用法令の誤り―

裁判要旨一 本件のような米弗表示軍票は、本件当時占領軍の軍人、軍属及びその家族が、占領軍施設内においてこれを使用することができるほか、わが国の通信官署の職員が、電信電話の料金として受領することができる等制限的ではあるが、日本国内に流通するものであるから、刑法一四九条一項の「内国ニ流通スル外国ノ紙幣」に当るものと解するを相当とする。されば、所論引用の当裁判第二小法廷の決定(判例集七巻五号一一二八頁以下)を変更すべきものとは認められない。
二 物品税証紙の偽造に対し、刑法第一五五条第三項を適用しないで、同法第一六六条第一項を適用した違法があつても、右の違法は原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年11月11日 昭和28(あ)4583
登載
刑集 第8巻11号1821頁
参照法条
刑法149条,刑法155条3項,刑法166条1項,刑訴法411条1号
論点327第411条刑事訴訟法

公益事業令失効後従前の電気事業法第三三条違反の所為は免訴すべきか

裁判要旨電気事業法第三三条違反の所為は、公益事業令が昭和二七年一〇号二四日かぎりで失効した後においては、刑の廃止があつたものとして免訴すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和29年11月10日 昭和27(あ)1676
登載
刑集 第8巻11号1791頁
参照法条
刑法6条,刑訴法411条5号,刑訴法337号2号,電気事業法(昭和6年法律61号)33条,公益事業令(昭和25年政令343号)1条,公益事業令(昭和25年政令343号)83条,公益事業令附則1項,公益事業令附則2項,公益事業令附則3項,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律(昭和27年法律81号)1項,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律(昭和27年法律81号)2項,電気及びガスに関する臨時措置に関する法律(昭和27年法律341号)
論点328第411条刑事訴訟法

判決書における契印の欠缺の刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉

裁判要旨判決書に契印がないということだけでは判決を破棄すべき法令違反に当らない(昭和二五年(あ)第一九七号同年六月一五日第一小法廷判決参照)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年10月26日 昭和29(あ)2137
登載
集刑 第99号495頁
参照法条
刑訴法379条,刑訴法411条,刑訴規則58条2項
論点329第411条刑事訴訟法

他人の登録商標を類似商品に貼付して販売する目的で所持した場合と商標法第三四条第二号違反罪の成立

裁判要旨他人の登録商標と同一の商標を、類似の商品に貼付して、販売する目的で所持していたからといつて、商標法第三四条第二号違反をもつて論ずることはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年9月3日 昭和27(あ)3897
登載
刑集 第7巻9号1800頁
参照法条
商標法34条1号,商標法34条2号,刑訴法411条1号
論点330第411条刑事訴訟法

刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる一事例

裁判要旨第一審で、起訴事実ABの中、Aは有罪となつたが、Bは無罪となり、検察官から無罪部分B事実に対してのみ控訴の申立があつたにもかかわらず、第二審で第一審判決を破棄自判するに当り、被告人よりの控訴もなかつたA事実についても審理し、ABを刑法第四五条前段の併合罪とし、これに対して一つの刑を言い渡したときは、右第二審判決は、何ら控訴がなく、従つて控訴審に係属していない事件について審判した違法があつて、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年9月25日 昭和27(あ)6209
登載
刑集 第7巻9号1832頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法357条
論点331第411条刑事訴訟法

刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる一事例。

裁判要旨控訴審が、指定した公判期日を被告人及び私選弁護人に通知せず同弁護人不出頭のまま審理を終結し、判決宣告期日に有罪判決を言い渡したときは、たとえ国選弁護人を選任して私選弁護人提出の控訴趣意書に基いて弁論したときでも、弁護権の不法制限であり刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年7月31日 昭和26(あ)3162
登載
刑集 第7巻7号1651頁
参照法条
刑訴法411条,刑訴法388条,刑訴法389条
論点332第411条刑事訴訟法

刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる一事例

裁判要旨刑の執行猶予期間中に犯した罪について右執行猶予を付せられた前刑があるからとして累犯加重の上処断することは、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年7月17日 昭和28(あ)223
登載
刑集 第7巻7号1537頁
参照法条
刑法56条,刑法57条,刑訴法411条1号
論点333第411条刑事訴訟法

一 赦免される罪と然らざる罪とが一個の連続犯をなす場合と大赦
二 連続犯の一部が赦免される場合と上告審における原判決破棄の事由

裁判要旨一 大赦令により赦免される罪が改正前の刑法第五五条により一個の連続犯をなす場合に、その一部の行為が、同時に赦免されない他の罪名に触れるため赦免されなくても、その余の行為は赦免されない。
二 控訴判決後に、連続犯の一部が大赦令により赦免されたため、原判決の刑の量定が甚しく不当となり、これを破棄しなければ著しく正義に反する場合には、原判決を破棄すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和28年6月24日 昭和26(れ)2123
登載
刑集 第7巻6号1371頁
参照法条
昭和22年法律124号による改正前の刑法55条,昭和27年政令117号大赦令1条97号,昭和27年政令117号大赦令2条,刑訴法411条2号,刑訴法411条5号
論点334第411条刑事訴訟法

刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例−収税官吏が臨検捜索にあたり被告人の暴行により令状を示すことができなかつた場合

裁判要旨収税官吏が令状を被告人に示さなかつたことは論旨主張のとおりであるが、右は収税官吏が臨検捜索をなさんとしたとき被告人が不在であつたので警察吏員立会のもとにこれを開始したが、その執行の途中で被告人が帰宅するや、これを見た被告人は痛く憤慨して収税官吏に暴行を加えたので令状を被告人に示すことができなかつたためであるときは、令状を示さなかつた違法があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年6月12日 昭和26(あ)3865
登載
集刑 第82号641頁
参照法条
刑訴法110条,刑訴法411条,国税犯則取締法2条,国税犯則取締法6条,刑法95条
論点335第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例―併合罪の一につき誤つて累犯加重をしたとき―

裁判要旨窃盗の犯罪事実の一につき累犯にあたらない場合に累犯加重をした違法があつても、他の犯罪事実につき適法に累犯加重がなされ、その事実を最も重しと認めて併合罪加重をした所定刑期範囲内で処断された趣旨が明であるときは、未だ右違法は刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきものとは認められない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年6月12日 昭和27(あ)278
登載
集刑 第82号735頁
参照法条
刑訴法411条,刑法56条,刑法57条,刑法45条
論点336第411条刑事訴訟法

刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例

裁判要旨昭和二四年法律第四三号による改正後の酒税法第六六条の解釈を誤り懲役及び罰金を併科した場合の罰金刑について刑法第四八条第二項を適用した違法があつても、刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきものとは認められない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年4月9日 昭和26(あ)2343
登載
刑集 第7巻4号837頁
参照法条
酒税法(昭和24年法律43号による改正後のもの)60条,酒税法(昭和24年法律43号による改正後のもの)66条,刑法48条,刑訴法411条
論点337第411条刑事訴訟法

公判の審理に関与しなかつた裁判官が判決に関与した違法と刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉の適用

裁判要旨公判の審理に関与しなかつた裁判官が原判決に関与した場合は、判決に影響を及ぼすべき法令違反であつて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する場合にあたる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年4月17日 昭和26(あ)2521
登載
刑集 第7巻4号873頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法43条1項,刑訴規則54条
論点338第411条刑事訴訟法

法令の適用の誤りがあつても刑訴法第四一一条に当らない一事例

裁判要旨第一審判決の認定した六つの犯罪事実中第一乃至第四の所為は罰金等臨時措置法施行期日前の行為であるから、新旧両法の定める罰金刑を比照した上、軽い旧法を適用すべきであるにかかわらず、第一審判決が重い新法を適用して処断したのは違法たるを免れない。しかし前記六つの犯罪の中前の四つにつき旧法を適用するとしても、後の二つについては新法が適用されるのであるから、被告人に科せらるべき罰金は、刑法四八条二項により、各罪につき定めた罰金の合算額即ち十万四千円以下において処断せられることとなる。しかるに第一審判決及びこれを維持した原判決は被告人を罰金五千円に処したのであるから、これは本件犯情に照らして刑の量定が甚だしく不当であるとは言えず、刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉により原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年4月14日 昭和26(あ)4004
登載
集刑 第78号445頁
参照法条
罰金等臨時措置法2条,罰金等臨時措置法3条,刑法48条2項,刑訴法411条
論点339第411条刑事訴訟法

非常上告につき原判決を破棄して更に判決をした一事例。(執行猶予中の前科刑に対し累犯加重をした場合)

裁判要旨原判決において当時被告人の判示前科の刑が執行猶予中であることを認定しながら、刑法五六条、五七条を適用して累犯加重をした上被告人を懲役一年に処する旨の言渡をなしたことは、右各法条の適用を誤つた違法があり、本件非常上告は理由があるのみならず、原判決は被告人のため不利益であること明らかであるから、刑訴四五八条一号〈非常上告が理由のあるときは、左の区別に従い、判決をしなければならない。 原判決が法令に違反したときは、その違反した部分を破棄する。但し、原判決が被告人のため不利益であるときは、これを破棄して、被告事件について更に判決をする。〉により原判決を破棄し、被告事件につき更に判決をする。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年3月20日 昭和28(さ)2
登載
集刑 第76号663頁
参照法条
刑法25条,刑法56条,刑法57条,刑訴法411条
論点340第411条刑事訴訟法

従犯減軽をした罰金刑が法律上の減軽をした処断刑の範囲を超えた場合と判決の破棄

裁判要旨本件行為時における昭和一九年法律第四号経済関係罰則の整備に関する法律五条〈数個の関連事件が各別に上級の裁判所及び下級の裁判所に係属するときは、事物管轄にかかわらず、上級の裁判所は、決定で下級の裁…〉所定の罰金刑は五千円以下であり、従犯減軽をした罰金刑は二千五百円以下であるのに、原判決は被告人に対して法律上の減軽をした処断刑の範囲を超える罰金刑を科したものであるから、刑訴施行法三条の二により適用される刑訴四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉に該当する法令の違反があるといわなければならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年2月26日 昭和27(れ)76
登載
集刑 第74号403頁
参照法条
経済関係罰則の整備に関する法律5条,刑法63条,刑法68条,新刑訴法411条1号
論点341第411条刑事訴訟法

綜合認定した証拠中に証拠能力のない書面があつた場合と刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉

裁判要旨被告人以外の者の司法警察員に対する供述調書が、証拠とすることの同意がなかつたため、刑訴第三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉の規定により提出された場合に、これを綜合認定の証拠の一つとして挙示するのは違法であるが、他の証拠のみで事実の認定ができれば刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年2月17日 昭和27(あ)2719
登載
刑集 第7巻2号237頁
参照法条
刑訴法321条1項3号,刑訴法326条,刑訴法328条,刑訴法335条,刑訴法411条
論点342第411条刑事訴訟法

証人尋問期日通知書の送達の不適法と憲法第三七条第二項(証人尋問期日通知書の送達に関する違背とその治癒)

裁判要旨証人尋問期日通知書の送達が不適法であつたため弁護人が出頭できなかつた違法があつたとしても、原審第二回公判期日に所論の各証人尋問調書は朗読されており、これに対し弁護人から何らの請求も異議の申立もなされておらず、却つて弁護人において尋問調書を弁論に援用しているのであるから、右違法は判決に影響を及ぼすものとは認められないのであつて、所論は理由がない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年11月19日 昭和28(あ)2072
登載
集刑 第88号581頁
参照法条
憲法37条2項,刑訴法157条,刑訴法393条,刑訴法411条1号
論点343第411条刑事訴訟法

認定事実に関係なき事項について無用の説示をした判決の適否

裁判要旨所論A及びBの共犯関係についての原判決の説示は所論の事実ありと仮定して無用の説明をなしたに過ぎないものであるからこの点を捉えて云為する論旨(註、共犯関係については何らの証拠がないから憲法一一条に違反するとする事を指す)は原判決を破棄する理由となすに足りない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年10月1日 昭和27(あ)6219
登載
集刑 第87号1頁
参照法条
憲法11条,刑訴法411条,刑訴法396条,刑訴規則246条
論点344第411条刑事訴訟法

綜合認定した証拠の一部に違法なものがあつても判決に影響を及ぼさない一事例 ―検察官が刑訴三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉により提出した供述調書に対し、取調の同意はあつたが証拠とすることの同意があると認められない場合―

裁判要旨第一審第三回公判調書には、「検察官は……刑事訴訟法第三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉により、四、Aの麻薬取締官作成第一回供述調書一の各取調べを請求した」と明記されているから、そのあとに、「被告人及弁護人は、右各書面の取調べに異議なく之を証拠とするに同意する…旨述べた」とあるのは、Aの供述調書についてはこれを事実認定の証拠とすることに同意(刑三二六条〈検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認め…〉にいう同意)した趣旨でないことが明瞭である。従つて、第一審判決が右供述調書を犯罪事実認定の証拠の一つとして挙示していることは、まことに所論のとおり違法であり、原判決が被告人側の同意を理由としてこれを適法な採証と解したことは、誤であるといわなければならない。しかし、右供述調書を除外しても、第一審判決挙示の他の各証拠により本件犯罪事実は充分に認定しうるものと判断されるから、右違法は判決に影響を及ぼさず、したがつて刑訴四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉を適用すべき事由とはならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年10月19日 昭和27(あ)2904
登載
集刑 第87号531頁
参照法条
刑訴法321条1項3号,刑訴法328条,刑訴法326条,刑訴法335条,刑訴法411条
論点345第411条刑事訴訟法

刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる一事例(前科の誤認の場合)

裁判要旨大赦令により赦免された罪に科せられた懲役刑を前科と認定して累犯加重をした法令違反は、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉の場合にあたる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年10月16日 昭和28(あ)168
登載
刑集 第7巻10号1940頁
参照法条
恩赦法3条,昭和27第政令117号大赦令1条83号,昭和27第政令117号大赦令1条117号,刑法56条,刑法57条,刑訴法411条1号
論点346第411条刑事訴訟法

刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉に当る一事例。第一審で確定した部分につき控訴審が更に審判したとき

裁判要旨原審が控訴審として既に第一審判決の確定によつて完結した銃砲等所持禁止令違反事件についてまで審判をなしたのは違法であり、刑訴四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉に基きこの部分を破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。(そして、右銃砲等所持禁止令違反の点については、前示の如く第一審判決の確定により事件は完結し、その判決の効力が持続するのは当然であるから、本件ではこの点に関する原判決を破棄するのみで足るものと認める。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年10月15日 昭和27(あ)3989
登載
集刑 第87号377頁
参照法条
憲法39条後段,刑訴法411条,刑訴法357条
論点347第411条刑事訴訟法

一 第一審における証人尋問手続に関する違法のみでは判決に影響を及ぼさない一事例
二 全く日本語を解しないでもない(或る程度日本語を解する)被告人に対し、第一回公判に通訳を付せず、第二回公判にそれを付したことと刑訴法第一七五条

裁判要旨一 訴訟手続に法令の違反があることを控訴の理由とする場合には、その違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを要するのであるが(刑訴三七九条〈前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申…〉参照)、仮りに所論のように第一審の証人尋問手続に違反があつたとしても、ただそれだけでは右の違法は判決に影響を及ぼすこと明らかな場合とは到底云うことができない。
二 被告人が全く日本語を解しなかつた者でない場合は、刑訴一七五条〈国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない。〉により通訳人に通訳させなければならない場合ではない。たゞ、刑訴一七五条は、このような場合に通訳人を付することを禁ずる趣旨ではないので、第一審裁判所が第二回公判以後審理上適当の処置として通訳人を付したのは相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年7月22日 昭和25(あ)2767
登載
集刑 第66号307頁
参照法条
刑訴法379条,刑訴法411条,刑訴法175条
論点348第411条刑事訴訟法

一 起訴状および訴因追加請求書各謄本の被告人に対する不送達と刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉
二 恐喝罪の公訴犯罪事実中に被告人の性格、経歴及び素行等を記載することと刑訴法第二五六条第六項

裁判要旨一 起訴状および訴因追加請求書の各謄本が被告人に送達されていなくても、起訴の日に被告人が自ら弁護人を選任し、弁護人は裁判所書記官に請求して、起訴状および訴因追加請求書各謄本の送達を受け、第一審第一回公判も起訴の日から二箇月以内に開かれており、また起訴状謄本が弁護人に送達されてから同公判までに一箇月以上、訴因追加請求書が同人に送達されてからでも同じく一箇月近くの余裕があつて、弁論準備のために十分の期間があつたものということができ、かつ右公判で被告人側から何の異議も申し立てていない場合には、前記のような刑訴第二七一条第一項〈裁判所は、公訴の提起があつたときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない。〉、第三一二条第三項〈裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又…〉、刑訴規則第二〇九条第三項の不遵守は、未だ刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべき事由とするにたらない。
二 本件公訴事実は、被告人が一般人を恐れさせるに足るような自己の性格、経歴及び素行等に関する事実を告知し、若しくは相手方が予ねて、そのような事実を知つて恐れをなしているのに乗じて金品、その他財産上の利益を受けるという方法によつて度々の恐喝を働いたというにあつて、被告人の性格、経歴及び素行等に関する事実は、本件では、犯罪事実と何等直接の関係のない事項ではなく、むしろ、その恐喝手段そのものゝ内容をなしている事柄であるといわなければならないから刑訴第二五六条〈公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。〉末項に反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年7月18日 昭和25(あ)262
登載
刑集 第6巻7号913頁
参照法条
刑訴法271条1項,刑訴法312条3項,刑訴法411条,刑訴法256条,刑訴規則209条3項,刑法249条
論点349第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉に該当しない一事例(起訴状謄本の送達が適式でなくても被告人が異議を述べていないとき)

裁判要旨かりに、起訴状謄本の送達が適式でなかつたとしても、本件においては、被告人が異議を述べていないのであつてかかる場合には刑訴四二条〈被告人の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、何時でも補佐人となることができる。〉の問題とならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年7月15日 昭和25(あ)2628
登載
集刑 第66号225頁
参照法条
刑訴法271条,刑訴法309条,刑訴法411条
論点350第411条刑事訴訟法

一 在監者に対する送達が違法と認められる一事例
二 違法な起訴状謄本の送達と刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉

裁判要旨一 代用監獄である警視庁管下の警察署に在監する被告人に対して起訴状謄本を送達するにあたり、監獄の長たる右警察署長あてとすることなく警視総監あてとすることは違法である。
二 警視庁刑事部押送係において受領した起訴状謄本の伝達を受けた同庁管下警察署看守係巡査が、刑訴第二七一条第一項〈裁判所は、公訴の提起があつたときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない。〉所定の期間内に同署に在監する被告人に対し、弁護人の選任通知書とともに、右記訴状謄本を示し、且つ、読み聞かせた上、被告人承諾の下に改めてこれを保管したという場合には、被告人に対する起訴状謄本の交付があつたものと認められるのみならず、弁論の経過をみても被告人の防禦権が害されたと認むべき何らの事迹のないときは、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年5月31日 昭和25(あ)1226
登載
刑集 第6巻5号788頁
参照法条
刑訴法271条,刑訴法54条,刑訴法411条,民訴法168条
論点351第411条刑事訴訟法

公判手続の重要部分に関与しない判事が判決に関与した場合と原判決の破棄

裁判要旨原審判事小林登一が原審公判に関与する以前において既に検察官の起訴状の朗読その他冐頭手続、証拠書類及び証拠物の取調、証人Aの尋問等が行われ、同判事は公判手続の更新のなされないままにその証人Bの尋問及び当事者の弁論に関与したにすぎないのであつて、かくの如く公判手続の重要部分に関与しない判事が判決に関与することは口頭弁論主義直接審理主義の大原則を著しく蹂躙するものであり審理に関与した裁判官が裁判をするのと然らざる裁判官が裁判をするのとでは心証を異にし従つて主文が反対になることもないではないから刑訴四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉によつて原判決を破棄すべき場合にあたるものといわねばならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月27日 昭和26(れ)2333
登載
集刑 第64号705頁
参照法条
旧刑訴法354条,旧刑訴法345条,刑訴法411条1号
論点352第411条刑事訴訟法

権利行使の方法が違法と認められ恐喝罪又は脅迫罪の成立を免れない一事例

裁判要旨他人に対し権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であつて、且つその方法が社会通念上一般に、忍容すべきものと認められる程度を越えないかぎり、なんら違法の問題を生じないけれども、右の範囲又は程度を逸脱するときは違法となり恐喝罪又は脅迫罪の成立することがあると解するのを相当とする。そして被告人の採つた債権の行使は、社念通念上一般に、債務者の忍容すべきものと認められる程度を明らかに越えるものであるから、たとえ取り立てた金額は、債権の範囲内であつても、その方法において違法たるを免れないのである。従つて、仮りに所論によつても、少くとも脅迫罪の成立することは明らかであり、原判示の量刑はその刑期の範囲内であつて、且つ原判決の認定した事実によればその量刑は原判決を破棄しなければ著しく正義に反する場合とも認められず、論旨は、この点においても結局とることはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月20日 昭和26(れ)2482
登載
集刑 第64号575頁
参照法条
刑法249条,刑法222条,刑訴法411条
論点353第411条刑事訴訟法

一 刑訴第四一一条第四号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。〉(再審請求)にあたる一事例
二 いわゆる準新事件について上告審においても事実の取調として証拠調ができるか
三 いわゆる準新事件について刑訴第四一一条第四号に該当するとして原判決を破棄する場合に上告審は自ら判決することができるか

裁判要旨一 原判決後真犯人が検挙され、有罪の判決を受け確定した場合には、旧刑訴第四八五条第六号〈死刑、拘禁刑又は拘留の言渡しを受けた者が逃亡したとき、又は逃亡するおそれがあるときは、検察官は、直ちに収容状を発し、又は…〉にいわゆる「有罪ノ言渡ヲ受ケタル者ニ対シテ無罪ヲ言渡スヘキ明確ナル証拠ヲ新ニ発見シタルトキ」に該当し、刑訴第四一一条第四号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。〉にあたる。
二 いわゆる準新事件について上告審において事実の取調として証拠調をすることができる。
三 いわゆる準新事件について刑訴第四一一条第四号に該当するとして原判決を破棄するに当つて、上告審は、事実につき心証を得た場合には自ら判決をすることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年4月24日 昭和26(れ)2509
登載
刑集 第6巻4号708頁
参照法条
刑訴法411条,刑訴法414条,刑訴法393条,旧刑訴法485条,旧刑訴法448条,旧刑訴法448条の2,刑訴応急措置法16条
論点354第411条刑事訴訟法

刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例

裁判要旨累犯加重をするにあたり再犯を三犯と誤つて刑法第五九条を適用しても、刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべき違法とは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年4月10日 昭和26(あ)3067
登載
刑集 第6巻4号653頁
参照法条
刑法56条,刑法57条,刑法59条,刑訴法411条
論点355第411条刑事訴訟法

一 刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例
二 旧刑訴法事件の控訴審及び上告審に於ける審判の特例に関する規則(昭和二五年最高裁判所規則第三〇号)第八号にいわゆる「法令を掲げれば足りる」の適用

裁判要旨一 裁判長が被告人に対し旧刑訴第三四七条第二項〈押収した贓物で被害者に還付すべき理由が明らかなものは、これを被害者に還付する言渡をしなければならない。〉による告知をしなくても、各個の証拠につき取調を終える毎に被告人に対し意見の有無を尋ねており、最後に弁護人から「他に立証等ない。」と答えている以上、原判決に刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたる事由あるとはいえない。
二 旧刑訴法事件の上告審に於ける審判の特例規則第八条には、法令を掲げれば足りるとあるから想像的競合についていずれに対する法益の侵害が犯情重いかについて説明する必要はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年3月28日 昭和26(れ)2152
登載
刑集 第6巻3号566頁
参照法条
旧刑訴法347条2項,旧刑訴法360条1項,刑訴法411条,刑法54条1項前段,刑法10条,旧刑訴事件の上訴審における審判の特例規則8条
論点356第411条刑事訴訟法

刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉に該当する一事例

裁判要旨旧刑訴法事件の控訴審において、必要的弁護事件につき、弁護人の立会なしに審理判決したときは、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉に該当する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年3月28日 昭和26(れ)521
登載
刑集 第6巻3号559頁
参照法条
刑訴法411条1号,旧刑訴法334条
論点357第411条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例

裁判要旨記録を調べて見ると、原審判決は、第一審判決において有罪とされた犯罪事実のうち、所論の部分を除外し、なんらの判断をせず、その余の部分についてのみ有罪とし刑を言い渡したことは所論のとおりである。しかし、原判決が第一審判決認定の有罪事実より除外した部分は、有罪とされなかつたのであるから、被告人にとつて利益であるばかりでなく、この部分は、原判決において無罪の判示がなかつたとはいえ、一たん公訴犯罪事実として、第一審の審判を受け、次で控訴審の審理を経て、有罪事実より除外された以上、この部分について、被告人は再び起訴されることはない訳である。従つて、本件については、刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用して原判決を破棄すべきものとは認められない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年3月18日 昭和26(れ)2407
登載
刑集 第6巻3号498頁
参照法条
旧刑訴法360条,旧刑訴法362条,刑訴法411条,憲法39条
論点358第411条刑事訴訟法

刑訴第四一一条第四号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。〉にいわゆる「再審の請求をすることができる場合にあたる事由がある」との主張と上告趣意書提出の時期

裁判要旨再審事由があるとさえ主張すれば上告趣意書提出期間後でも有効に上告趣意書が提出出来るなどという論旨は全く理由がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年1月29日 昭和27(み)3
登載
集刑 第59号455頁
参照法条
刑訴法411条4号,刑訴法414条,刑訴法372条,刑訴規則252条
論点359第411条刑事訴訟法

一 法廷外の訴訟行為と公判手続の更新の要否
二 被害者の供述記載を含む検証調書と判断の資料に供した「検証の結果」の意義
三 控訴審において勾留中の被告人に対し、尋問の日時場所を予め通知しないで法廷外で決定実施した証人尋問と憲法第三七条第二項
四 弁護人の控訴趣意と内容同一なる被告人の控訴趣意に対して特に判断をしない控訴判決と刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉

裁判要旨一 証拠決定、並にこれが実施をしたのが何れも法廷外の訴訟行為であるときは、裁判所の構成に変更があつても、公判手続の更新を要しない。
二 控訴審でした検証調書に被害者の供述が記載されていても、同裁判所は別にその被害者を証人として訊問し、その判決において、「右検証の結果と右証人の証言とに徴し、第一審判決の事実認定には誤りがない。」と判断した場合には、その判決は、右検証調書中の被害者の供述を除いた、裁判官自ら実験した検証の結果と証人として尋問した被害者の証言とを判断の資料としたものと解すべきである。
三 被告人が勾留されている事件の控訴審において、公判延でした証拠決定に基き、検証とその検証現場における証人尋問を実施した際、裁判所が法廷外で職権により新な証人を尋問しようとして、検察官及び弁護人の何れも「然るべく」との意見を聴いた上、その証人尋問を決定し、即日その場で検察官、弁護人立会の上その証人を尋問したときは、予め被告人に対し右証人尋問の日時場所を通知せず又被告人をその尋問に立ち会わせなくても、憲法第三七条第二項に違反しない。
四 原審が被告人の弁護人砂山博をして、被告人本人の控訴趣意書及び同弁護人の控訴趣意書に基いて弁論をさせながら、原判決には弁護人の控訴趣意についてのみ判断を示し、被告人の控訴趣意については判断を示していないことは所論のとおりである。しかし被告人の控訴趣意は、事実誤認の主張で弁護人の控訴趣意第一点の内容と同様である。そして右第一点について原判決は判断を示しているので、原判決は被告人の控訴趣意についても判断を示したと同様に帰するから原判決の右瑕疵はこれを以つて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものといえない。(昭和二五年(あ)第一四四号同年七月六日第一小法廷判決、同二五年(あ)第四二号同年一〇月三日第三小法廷判決参照)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年1月11日 昭和26(あ)3051
登載
刑集 第6巻1号78頁
参照法条
刑訴法315条,刑訴法321条2項,刑訴法157条,刑訴法392条1項,刑訴法411条1号,憲法37条2項
論点360第411条刑事訴訟法

上告を申し立てた共同被告人につきともに原判決後大赦があつた場合と上告趣意書を差し出さなかつた共同被告人の一人に対する裁判

裁判要旨原審で同種の犯行につき有罪判決を受け、ともに上告の申立をし、当審で併合審理を受けた共同被告人の一人が、旧刑訴法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則第一〇条により定めた期間内に上告趣意書を差し出さなかつたときは、他の共同被告人については原判決後に大赦があつたことを理由として原判決を破棄すべき場合でも、右上告趣意書を差し出さなかつた共同被告人に対しては原判決を破棄すべきでない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年12月26日 昭和26(れ)2005
登載
刑集 第6巻12号1466頁
参照法条
刑訴施行法2条,刑訴施行法3条の2,刑訴施行法13条,刑訴法411条5号,旧刑訴法法律の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則10条,旧刑訴法427条,旧刑訴法451条,昭和27年法令117号大赦令1条83号,昭和27年法令117号大赦令1条117号
論点361第411条刑事訴訟法

裁判所外における証人尋問手続に違法がある判決と憲法第三七条第二項及び刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉。

裁判要旨証人を検証現場において尋問するに際し刑事訴訟法一五八条二項、刑事訴訟規則一〇八条一項所定の尋問事項の告知をした形跡が記録上認められない違法があるが、右証拠調の決定は、当事者の意見を聴いて公判延でなされた上、右各証人の尋問においてはいづれも被告人並びに被告人の弁護人が立会い何等異議を述べず殊に弁護人は右各証人に対し尋問している場合には、右法令違反は、単なる訴訟手続の違法に過ぎず、これを以て憲法三七条に違反するとの論旨の当らないことは勿論であるのみならず、刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にも当らない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年12月26日 昭和25(あ)3370
登載
集刑 第71号871頁
参照法条
憲法37条2項,刑訴法158条2項,刑訴法411条,刑訴規則108条1項
論点362第411条刑事訴訟法

刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉の適用のある一事例

裁判要旨控訴審において、被告人の住居が記録上知れているにかかわらず、誤つてこれを知れざるものとして被告人に対し公示送達の方法により公判期日の召喚手続をなし、被告人の不出頭を理由に、旧刑訴第四〇四条〈第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。〉を適用して被告人の陳述を聽かないで審判した場合には、その審判手続は違法であつて、その判決は、刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉により破棄すべきものである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年11月28日 昭和26(れ)2256
登載
刑集 第6巻10号1274頁
参照法条
旧刑訴法320条2項,旧刑訴法78条1項,旧刑訴法404条,新刑訴法411条
論点363第411条刑事訴訟法

控訴審における判決宣告期日の指定及びその通知に関する手続上の瑕疵が判決に影響を及ぼさない一事例

裁判要旨判決宣告期日が如何にして指定されたか、またその期日の通知が弁護人及び被告人等になされたものであるか否かを記録上窺い知る由もないときは原審の訴訟手続が適法になされたものといい得ないが、前示裁判宣告期日には弁護人三名が出廷していること明らかでその公判手続の公正に行われたことは認め得るのであるから、右手続上の瑕疵は原判決に影響がない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年11月13日 昭和26(あ)2675
登載
集刑 第69号269頁
参照法条
刑訴法273条,刑訴法411条
論点364第411条刑事訴訟法

控訴審における刑訴第二七三条第三項〈裁判長は、公判期日を定めなければならない。〉違背が刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉に該当しないものと認められる一事例

裁判要旨控訴審において第一回公判期日の通知が被告人の私選弁護人に対して為されていなくても、被告人が控訴審で初め弁護人を私選しない旨回答しながら、被告人のために弁護人が国選せられ、被告人および国選弁護人の双方から控訴趣意書の提出があり、国選弁護人に右公判期日の通知がなされた後(但し、被告人に対しては未だ同公判期日の召喚場が送達されない以前)になつて、あらたに弁護人を私選したものであり、同公判期日にはさきに私選弁護人の選任によつて一たん解任された国選弁護人が再任せられたが、同期日に出頭した被告人はこれに対し何ら異議の申立もせず、また同弁護人は同公判で被告人および国選弁護人の控訴趣意書は勿論、弁護人の選任届と同時に提出せられた前記私選弁護人の控訴趣意書に基ずいて弁論しており、原判決もまたこの三者について適確な判断を与えており、さらに判決言渡期日たる第二回公判期日は右私選弁護人にも適法に通知せられているのに、同弁護人よりは弁論再開の申請等の申立もなく、原判決が、同弁護人出頭の上同公判で言い渡されている場合には、前記のような刑訴第二七三第三項違背は未だもつて原判決破棄の理由とするにたらないものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年10月7日 昭和27(あ)3013
登載
刑集 第6巻9号1109頁
参照法条
刑訴法404条,刑訴法273条,刑訴法388条,刑訴法389条,刑訴法392条1項,刑訴法411条1号
論点365第411条刑事訴訟法

一 被告人の在延する公判廷において口頭で罰条を追加する場合に特に被告人に通知手続を執ることの要否
二 犯罪事実認定の資料となる医師の診断書の採証要件
三 一個の強盗行為の手段として甲、乙に対してそれぞれ暴行を加え、同人等に各傷害を与えた場合の罪責

裁判要旨一 被告人が在延する公判廷における口頭の罰条追加の場合には裁判所が特に被告人に対しこれが通知の手続を執る必要のないことは多言を要しないし、また、犯罪事実認定の資料となるべき医師の診断書は刑訴法第三二一条、第三二六条の要件あるを以て足り(本件では同第三二六条〈検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認め…〉の同意あること記録上明白である)、同第二七八条〈公判期日に召喚を受けた者が病気その他の事由によつて出頭することができないときは、裁判所の規則の定めるところにより、医師の…〉、刑訴規則第一八三条所定の事実を記載するの必要ないこと勿論であるから、刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきものとも認められない。
二 一個の強盗行為の手段として甲、乙に対しそれぞれ暴行を加え同人等に各傷害を与えた場合は、甲、乙に対する各強盗傷人罪の併合罪となる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年8月9日 昭和26(あ)1140
登載
刑集 第5巻9号1730頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法321条,刑訴法411条,刑訴法326条,刑訴法278条,刑訴規則183条,刑法240条前段,刑法45条前段
論点366第411条刑事訴訟法

一 刑法第六条違背と著しく正義に反すると認むべき場合
二 被告人の控訴及び上告に係る事件において上告審が第一、二審判決を破棄自判する場合と未決勾留日数の法廷通算

裁判要旨一 職権を以て調査すると、第一審判決の認定によれば、被告人の本件賍物運搬の犯行は、昭和二四年一月一七日頃であつて、未だ罰金等臨時措置法が施行されていない時のことである。従つて、第一審としては、この点につき、犯行後刑の変更があつた場合として、刑法第六条第一〇条により、行為時法と裁判時法について所定刑の軽量を比照した上、軽い行為時法を適用し、罰金刑については一〇〇〇円以下で量定しなければならなかつた筋合である。しかるに第一審判決が、事茲に出でず、直に裁判時法を適用して被告人に対して被告人に対し罰金一万円を量定し、原判決も亦この瑕疵を看過したのは、共に違法であるといわなければならない。よつて刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉、第四一三条〈前条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所若しくは第一審裁判所に差し戻し、又はこ…〉第一八一条〈刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付す…〉により、第一審判決中の有罪部分及び原判決を破棄する。
二 被告人が控訴しさらに上告した事件において、上告審が第一、二審判決を破棄自判した場合には、第一審判決後の未決勾留日数は刑訴法第四九五条によりすべて本刑に通算さるべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年7月20日 昭和26(あ)1400
登載
刑集 第5巻8号1604頁
参照法条
刑法6条,刑法10条,刑訴法411条1号,刑訴法495条
論点367第411条刑事訴訟法

一、自首減軽と裁判所の自由裁量
一、自首調書を作成しないことと法令違背の有無

裁判要旨所論の如き旧刑訴法上の手続違反(自首調書を作成せざる)があつたとしても、それは原審の訴訟手続に関するものではないばかりでなく、自首減軽を為すべきか否かは原審が自由に決し得べきことであるから、真実被告人が自首したものであり且つ原審において自首減軽を相当と認めたならば所論調書の有無に拘わらず、自首の事実を認定して減軽することができるのである、従つて所論調書を作成しないからとて判決に影響すべき法令違背があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年4月24日 昭和25(れ)1620
登載
集刑 第44号431頁
参照法条
刑法42条,旧刑訴法276条,旧刑訴法273条,旧刑訴法411条
論点368第411条刑事訴訟法

一 特別抗告について刑訴法第四一一条の準用があるか

二 保釈決定謄本と異つた制限住居に宛てた付郵便送達の効力

三 特別抗告において原決定を取り消さなければ着しく正義に反するものと認められる事例

裁判要旨一 そして最高裁判所が正義を維持するため発動する職権破棄権は本件のような場合には当然にこれを保有するものというべきであるから本件特別抗告については刑訴法第四一一条の準用があるものと解するのが正当である。

二 被告人(控訴申立人)に対し、保釈決定原本に記載された制限住居とまつたく異つた制限住居を記載した謄本が送達せられ、被告人はそれを正しい謄本と信じて謄本記載の制限住居に居住していた場合に、控訴裁判所が原本記載の制限住居に宛てて控訴趣意書提出最終日通知書の送達を試み、それが不送達になつたのち、さらに同所に宛てて郵便に付する送達の方法をとり、右通知書は現実にも被告人に到達しなかつたが、同裁判所は控訴趣意書不提出の理由で控訴棄却の決定をしたのに対し、被告人から右事情を述べて異議の申立をしたにも拘らず、原決定が前記郵便に付する送達は有効であるとして異議申立を棄却したのは、刑訴規則第六三条の解釈を誤つた違法があり、刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を準用して原決定を取り消されなければ著しく正義に反するものと認められる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年4月13日 昭和25(し)64
登載
刑集 第5巻5号902頁
参照法条
刑訴法433条,刑訴法411条,刑訴法54条,刑訴規則63条
論点369第411条刑事訴訟法

被告人が異議を述べない違法な起訴状謄本の送達と刑訴法第四一一条

裁判要旨一 しかし、東京地方裁判所が昭和二四年一一月二日を以て被告人に対し本件起訴状謄本と同封して送達の手続をとつた弁護人の選任に関する通知書に対し、被告人は同年同月八日附で国選弁護人を頼みたい旨を同裁判所あてに回答していることは記録上(三丁、四丁)明らかであるし、また、被告人が翌九日小松川警察署の留置場から移監されて(記録第三五丁参照、東京拘置所に入所の際には既に本件起訴状の謄本を所持していたことは当裁判所の職権調査の結果明らかであるから、同月二日附の本件起訴状の謄本は同月八日までに被告人に交付されていることが推断できるのである しかのみならず、同年一二月一日の第一審裁判所の第一回公判期日に被告人及びその弁護人が出頭し、検事の起訴状の朗読を裁判長から被告事件について陳述することがあるかどうかを尋ねられた際にも、なおその後第一審判決の言渡しを受けるに至るまでのあいだにも、本件起訴状の謄本の送達がなかつたことについて異議を述べた形跡のないことは記録上明らかなところである。
二 されば、仮りに本件起訴状の謄本の送達が警視総監あてになされ所論のように小松川警察署長あてになされなかつたことが適式でないとしても被告人に対し豪も不利益を及ぼすものとはいえない。されば所論は明らかに刑訴第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉に定める上告適法の事由にあたらないし、また同第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用して原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとも認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年4月12日 昭和25(あ)2920
登載
刑集 第5巻5号893頁
参照法条
刑訴法271条,刑訴法411条
論点370第411条刑事訴訟法

証拠調をしない証拠を綜合証拠とした違法と、証拠に基かないで事実を認定した違法とがある判決と、著しく正義に反する場合

裁判要旨原審は所論Aに対する大蔵事務官の質問調書の証拠調をしていないことを明らかである。そして右質問調書は本件罪証として有力なものと認められるのであり、かかる証拠を他の証拠と綜合して犯罪事実を認定したことは違法である。又原判決は、判示汽船の乗組員たる中華船員が連合国占領軍、その将兵又は連合国占領軍に附属し、若しくは随伴するものであることについては何等の証拠を挙示せず、従つて証拠に基かずして事実を認定した違法がある。かかる違法は判決に影響を及ぼし且つ著しく正義に反するものと認める。(準新事件である)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年12月28日 昭和26(れ)1125
登載
集刑 第58号1041頁
参照法条
刑訴法411条,旧刑訴法336条,旧刑訴法360条
論点371第411条刑事訴訟法

一 重要物資輸送証明規則及び指定物資輸送証明規則と限時法
二 指定物資輸送証明規則の改正により同規則第一条にいわゆる「指定物資」からいか油を除外したことと刑訴法第四一一条第五号にいわゆる「刑ノ廃止」
三 いか油を油糧需給調整規則第三条に違反して譲渡した行為と、これを重要物資輸送証明規則による出荷証明書なくして輸送を委託した行為との関係

裁判要旨一 尤もその後、本件物資たる「いか油」は原判決宣告後たる昭和二五年四月一日総理府令、法務府令、外務省令、大蔵省令、文部省令、厚生省令、農林省令、通商産業省令、運輸省令、郵政省令、電気通信省令、労働省令、建設省令、経済安定本部令第六号により、新令(指定物資輸送証明規則)一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉にいわゆる「指定物資」から除外され、従つて新令二条一項の適用を受けないことになつたので、ここに刑の廃止があつた如く見える。しかし、この新令自体を廃止した昭和二六年三月三一日前同府令省令本部令第一号も、その附則二項において「この命令施行前にした行為に対する罰則の適用についてはこの命令施行後も、なお従前の例による」との規定を設けている。して見ると、旧令も新令もいわゆる限時法的性格を有するものと解するを相当とするから、昭和二五年四月一日の前記命令が本件物資たる「いか油」を新令一条にいわゆる「指定物資」から除外した際に、「罰則の適用については、なお従前の例による」と云うような附則を設けなかつたからといつて、立法者の意思がこの場合に限り「刑ノ廃止」の効果を生ぜしめようとするにあつたとは到底考えられない、(なお所論油糧需給調整規則の改廃についても同様のことがいえるばかりでなく、「いか油」を右規則の適用から除いた所論農林省令第二三号の附則二項は「この省令施行前にした行為に対する罰則の適用については、この省令施行後もなお従前の例による」と規定している)。以上の次第であるから本件は刑訴法四一一条五号にいわゆる判決後「刑ノ廃止」があつた場合にはあたらないものといわなければならない。
二 所論確定判決のあつた事件は、被告人がその生産にかかる「いか油」を油糧需給調整規則三条に違反してA、Bに自宅において譲渡した事実について、臨時物資需給調整法一条、四条に該当するものとして起訴され、右事実について有罪の判決を言い渡されて確定したものである。ところが、本件は被告人が右「いか油」を前記A、B方まで輸送するため、重要物資輸送証明規則三条に違反して法定の出荷証明書をなくして、その輸送方をC株式会社に委託した事実について、右は臨時物資需給調整法一条、四条に該当するものとして起訴された案件である。従つて、右両者は別個の犯罪を構成するものであるばかりでなく、その基礎たる事実関係においても同一性を認め難く、科刑上一罪として取り扱われる場合にも該当しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年10月12日 昭和25(あ)893
登載
刑集 第5巻11号2214頁
参照法条
臨時物資需給調整法1条,臨時物資需給調整法4条,重要物資輸送証明規則(昭和22年9月20日総理庁令、外務、内務、大蔵、司法、文部厚生、農林、商工、運輸、逓信、労働省令1号)1条,重要物資輸送証明規則(昭和22年9月20日総理庁令、外務、内務、大蔵、司法、文部厚生、農林、商工、運輸、逓信、労働省令1号)3条1項,重要物資輸送証明規則附則2項,重要物資輸送証明規則附則3項,指定物資輸送証明規則(昭和24年6月20日総理庁令外務、大蔵、法務庁令、文部、厚生、農林、通商産業、運輸、逓信労働、建設省令1号)1条,指定物資輸送証明規則(昭和24年6月20日総理庁令外務、大蔵、法務庁令、文部、厚生、農林、通商産業、運輸、逓信労働、建設省令1号)2条1項,刑訴法411条5号,刑訴法337条1号,油糧需給調整規則(昭和22年12月29日農林省令98号)1条,油糧需給調整規則(昭和22年12月29日農林省令98号)3条1項,刑法45条
論点372第411条刑事訴訟法

一 弁論終結後と旧刑訴法第三五三条
二 迅速でない裁判と破棄の事由

裁判要旨一 旧刑訴法第三五三条は、弁論終結後には適用されない。
二 憲法第三七条第一項に違反し、迅速を欠いた裁判であるということは、原判決破棄の理由にならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和24年3月12日 昭和23(れ)1579
登載
刑集 第3巻3号293頁
参照法条
旧刑訴法353条,旧刑訴法411条,憲法37条
論点373第411条刑事訴訟法

一 被告人の住居の認定と證據調
二 被告人の住居の誤認と上告理由

裁判要旨一 判決書に記載すべき被告人の住居は、被告人を特定する事項たるに止り、もとより罪となるべき事實ではないからこれを認めるのに、證據調その他特別の審理を要するものではなく、記録その他について適宜これが取調を爲すを以て足るものといわねばならぬ。
二 假りに原審が被告人の住居に對する判斷につき誤りがあつたとしても前段説示のごとく判決に影響を及ぼす事柄でないから所論は上告適法の理由とならないものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和23年11月25日 昭和23(れ)834
登載
刑集 第2巻12号1647頁
参照法条
刑訴法69条1項,刑訴法360条1項,刑訴法411条
論点374第411条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年9月7日 昭和63(あ)522
登載
集刑 第252号361頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,外国人登録法14条1項,外国人登録法18条1項8号
論点375第411条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例‐いわゆる在日韓国人指紋不押なつ事件‐

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年7月14日 昭和61(あ)1131
登載
集刑 第252号207頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,外国人登録法14条1項,外国人登録法18条1項8号
論点376第411条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例‐いわゆる在日韓国人指紋不押なつ事件‐

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年7月14日 昭和62(あ)231
登載
集刑 第252号253頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,外国人登録法14条1項,外国人登録法18条1項8号
論点377第411条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年7月14日 昭和63(あ)1152
登載
集刑 第252号341頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,外国人登録法13条1項,外国人登録法18条の2第4号
論点378第411条刑事訴訟法

共犯者の供述に信用性を認めた原判決が破棄された事例

裁判要旨殺人、死体遺棄の公訴事実に関し、被告人と犯行とを結びつける唯一の直接証拠である共犯者の供述の信用性について幾多の疑問点があるのに、それらを解明することなく被告人を有罪と認めた原判決は、刑訴法四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉、三号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年6月22日 昭和57(あ)223
登載
刑集 第43巻6号427頁
参照法条
刑法190条,刑法199条,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点379第411条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成元年4月25日 平成1(あ)210
登載
集刑 第251号781頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,軽犯罪法1条33前段
論点380第411条刑事訴訟法

恐喝の事実につき審理不尽ないし事実誤認の疑いがあるとして原判決を破棄差戻した事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年4月21日 昭和59(あ)19
登載
集刑 第251号657頁
参照法条
刑法249条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号
論点381第411条刑事訴訟法

業務上過失致死事件につき被告人車が轢過車両であると断定することに合理的な疑いが残るとして破棄無罪が言い渡された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年4月21日 昭和59(あ)626
登載
集刑 第251号697頁
参照法条
刑法211条,刑訴法411条3号
論点382第411条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年4月14日 平成1(あ)209
登載
集刑 第251号651頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,軽犯罪法1条33前段
論点383第411条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年3月30日 平成1(あ)167
登載
集刑 第251号631頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,軽犯罪法1条33前段
論点384第411条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年3月30日 平成1(あ)46
登載
集刑 第251号629頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,軽犯罪法1条32号,軽犯罪法1条33前段
論点385第411条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年3月30日 昭和63(あ)1271
登載
集刑 第251号627頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,軽犯罪法1条33前段
論点386第411条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年3月24日 昭和61(あ)1448
登載
集刑 第251号409頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,軽犯罪法1条33前段
論点387第411条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成元年3月14日 昭和63(あ)1072
登載
集刑 第251号373頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,軽犯罪法1条33前段
論点388第411条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年11月2日 平成1(あ)178
登載
集刑 第253号397頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,外国人登録法14条1項,外国人登録法18条1項8号
論点389第411条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例−いわゆる在日韓国人の外国人登録証明書不携帯事件−

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年11月2日 昭和63(あ)683
登載
集刑 第253号349頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,外国人登録法18条の2第4号,外国人登録法13条1項
論点390第411条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例−いわゆる在日韓国人指紋不押なつ事件−

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成元年11月14日 平成1(あ)186
登載
集刑 第253号481頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,外国人登録法14条1項,外国人登録法18条1項8号
論点391第411条刑事訴訟法

小学四年生の少女に対する強制わいせつ事件につき被告人が犯人であるとする右少女の供述等の信用性を肯定した原審の有罪判決が破棄され第一審の無罪判決が維持された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年10月26日 昭和63(あ)130
登載
集刑 第253号167頁
参照法条
刑法176条後段,刑訴法411条3号
論点392第411条刑事訴訟法

尊属傷害致死罪の成立を認めた控訴審判決言渡し後に施行された刑法の一部を改正する法律(平成七年法律第九一号)によって尊属傷害致死罪が廃止されたときと刑訴法四一一条五号にいう「刑の変更」

裁判要旨刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの)二〇五条二項の尊属傷害致死罪の成立を認めた控訴審判決言渡し後に施行された刑法の一部を改正する法律(平成七年法律第九一号)によって尊属傷害致死罪が廃止されたときは、刑訴法四一一条五号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。〉にいう「刑の変更」に当たる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成8年11月28日 平成6(あ)1021
登載
刑集 第50巻10号827頁
参照法条
刑法(平成7年法律91号による改正前のもの)6条,刑法205条,刑法(平成7年法律91号による改正前のもの)205条2項,刑法の一部を改正する法律(平成7年法律91号)附則2条1項,刑訴法411条5号
論点393第411条刑事訴訟法

死刑判決の言渡しを受けた被告人の控訴取下げが無効とされた事例

裁判要旨死刑判決の言渡しを受けた被告人が、その判決に不服があるのに、死刑判決の衝撃及び公判審理の重圧に伴う精神的苦痛によって精神障害を生じ、その影響下において、苦痛から逃れることを目的として控訴を取り下げたなどの判示の事実関係の下においては、被告人の控訴取下げは、自己の権利を守る能力を著しく制限されていたものであって、無効である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成7年6月28日 平成6(し)173
登載
刑集 第49巻6号785頁
参照法条
刑訴法359条,刑訴法411条1号
論点394第411条刑事訴訟法

傷害致死被告事件において接見等禁止の裁判に対する準抗告を棄却した原決定に刑訴法81条,426条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成31年3月13日 平成31(し)113
登載
集刑 第325号83頁
参照法条
刑訴法81条,刑訴法411条1号,刑訴法426条,刑訴法434条
論点395第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(堺市連続強盗殺人事件)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成31年2月12日 平成28(あ)1485
登載
集刑 第325号1頁
参照法条
刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号
論点396第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(愛知一家強盗殺傷事件)

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成30年9月6日 平成27(あ)1585
登載
集刑 第323号39頁
参照法条
刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号
論点397第411条刑事訴訟法

被告人を殺人及び窃盗の犯人と認めて有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨被告人を殺人及び窃盗の犯人と認めて有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,全体として,第1審判決の説示を分断して個別に検討するのみで,情況証拠によって認められる一定の推認力を有する間接事実の総合評価という観点からの検討を欠いており,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成30年7月13日 平成29(あ)837
登載
刑集 第72巻3号324頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法411条1号
論点398第411条刑事訴訟法

いわゆるSTR型によるDNA型鑑定の信用性を否定した原判決が破棄された事例

裁判要旨犯行現場で採取された精液様の遺留物について実施されたいわゆるSTR型によるDNA型鑑定について,15座位のSTR型の検出状況を分析した結果等に基づいて,遺留物が1人分のDNAに由来し,被告人のDNA型と一致するとした鑑定の信用性を否定し,被告人を無罪とした原判決は,同鑑定が遺留物を1人分のDNAに由来するとした理由の重要な点を見落とした上,科学的根拠を欠いた推測によって,鑑定の信用性の判断を誤り,重大な事実の誤認をしたというべきであり(判文参照),刑訴法411条3号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成30年5月10日 平成29(あ)882
登載
刑集 第72巻2号141頁
参照法条
刑法130条前段,刑法174条,刑訴法411条3号
論点399第411条刑事訴訟法

1 刑法218条の不保護による保護責任者遺棄罪の実行行為の意義
2 子に対する保護責任者遺棄致死被告事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
3 裁判員の参加する合議体で審理された保護責任者遺棄致死被告事件について,訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務がないとされた事例

裁判要旨1 刑法218条の不保護による保護責任者遺棄罪の実行行為は,老年者,幼年者,身体障害者又は病者につきその生存のために特定の保護行為を必要とする状況(要保護状況)が存在することを前提として,その者の生存に必要な保護行為として行うことが刑法上期待される特定の行為をしなかったことを意味する。
2 低栄養に基づく衰弱により死亡した被告人の子(当時3歳)に対する保護責任者遺棄致死被告事件について,被告人において,乳児重症型先天性ミオパチーにり患している等の子の特性に鑑みると,子が一定の保護行為を必要とする状態にあることを認識していたとするには合理的疑いがあるとして被告人を無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,第1審判決の評価が不合理であるとする説得的な論拠を示しているとはいい難く,第1審判決とは別の見方もあり得ることを示したにとどまっていて,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
3 保護責任者遺棄致死罪として起訴されて公判前整理手続に付され,検察官が,公判前整理手続期日において,公判審理の進行によっては過失致死罪又は重過失致死罪の訴因を追加する可能性があると釈明をするなどした後,裁判員の参加する合議体により審理が行われ,第1審裁判所の裁判長が,証拠調べ終了後の公判期日において,検察官に対して訴因変更の予定の有無につき釈明を求めたところ,検察官がその予定はない旨答えたなどの訴訟経緯,本件事案の性質・内容等(判文参照)に照らすと,第1審裁判所としては,検察官に対して,上記のような求釈明によって事実上訴因変更を促したことによりその訴訟法上の義務を尽くしたものというべきであり,更に進んで,検察官に対し,訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務を有するものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成30年3月19日 平成28(あ)1549
登載
刑集 第72巻1号1頁
参照法条
(1から3につき) 刑法218条,刑法219条 (2につき) 刑訴法382条,刑訴法411条1号 (3につき) 刑訴法312条,刑訴規則208条
論点400第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(資産家夫婦強盗殺人事件)

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成30年12月21日 平成28(あ)543
登載
集刑 第324号23頁
参照法条
刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号
論点401第411条刑事訴訟法

勾留の裁判に関する準抗告決定(原裁判取消し,勾留請求却下)に対する検察官からの特別抗告が棄却された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成30年10月31日 平成30(し)585
登載
集刑 第324号1頁
参照法条
大麻取締法24条1項,大麻取締法24条2項,国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律8条2項,刑訴法60条1項,刑訴法411条,刑訴法426条1項,刑訴法434条
論点402第411条刑事訴訟法

業務上過失致死事件につき禁錮10月の実刑が破棄されて執行猶予が付された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成2年5月11日 平成1(あ)1105
登載
集刑 第255号91頁
参照法条
刑訴法411条,刑法211条
論点403第411条刑事訴訟法

公訴時効の完成を看過して有罪を言い渡した原判決が刑訴法411条1号により破棄された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成2年12月7日 平成2(あ)491
登載
集刑 第256号467頁
参照法条
刑訴法337条4号,刑訴法411条1号
論点404第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(鳥取連続不審死事件)

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成29年7月27日 平成26(あ)589
登載
集刑 第322号1頁
参照法条
刑法11条,刑法240条,刑訴法411条2号,刑訴法411条3号
論点405第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(首都圏連続不審死事件)

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成29年4月14日 平成26(あ)639
登載
集刑 第321号83頁
参照法条
刑法11条,刑法199条,刑訴法411条2号,刑訴法411条3号
論点406第411条刑事訴訟法

陳述書等の新証拠が無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たるとして再審開始の決定をした原審の手続に審理不尽の違法があるとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成29年3月31日 平成28(し)639
登載
集刑 第321号55頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法426条2項,刑訴法434条,刑訴法435条6号,刑訴法448条1項
論点407第411条刑事訴訟法

置き忘れられた現金在中の封筒を窃取したとされる事件について,封筒内に現金が在中していたとの事実を動かし難い前提として被告人以外には現金を抜き取る機会のあった者がいなかったことを理由に被告人による窃取を認定した第1審判決及び原判決の判断が論理則,経験則等に照らして不合理で是認できないとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成29年3月10日 平成27(あ)63
登載
集刑 第321号1頁
参照法条
刑法235条,刑訴法411条3号
論点408第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(大阪ドラム缶遺体事件)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成29年12月8日 平成27(あ)120
登載
集刑 第322号57頁
参照法条
刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号,刑訴法411条3号
論点409第411条刑事訴訟法

陳述書等の新証拠が無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たるとして再審開始の決定をした原判断に刑訴法435条6号の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成29年12月25日 平成27(し)587
登載
集刑 第322号253頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法426条1項,刑訴法426条2項,刑訴法434条,刑訴法435条6号,刑訴法448条1項
論点410第411条刑事訴訟法

刑法等の一部を改正する法律(平成25年法律第49号)による刑の一部の執行猶予に関する各規定の新設と刑訴法411条5号にいう「刑の変更」

裁判要旨刑法等の一部を改正する法律(平成25年法律第49号)による刑の一部の執行猶予に関する各規定(刑法27条の2ないし27条の7)の新設は,刑訴法411条5号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。〉にいう「刑の変更」に当たらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成28年7月27日 平成28(あ)456
登載
刑集 第70巻6号571頁
参照法条
刑法27条の2,刑法27条の3,刑法27条の4,刑法27条の5,刑法27条の6,刑法27条の7,刑訴法411条5号
論点411第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(長崎ストーカー殺人事件)

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成28年7月21日 平成26(あ)1160
登載
集刑 第320号395頁
参照法条
刑法11条,刑法199条,刑訴法411条2号
論点412第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(元少年石巻殺傷事件)

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成28年6月16日 平成26(あ)452
登載
集刑 第320号99頁
参照法条
刑法11条,刑法199条,刑訴法411条2号
論点413第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(山形東京連続放火殺人事件)

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成28年6月13日 平成26(あ)1655
登載
集刑 第320号1頁
参照法条
刑法11条,刑法108条,刑法199条,刑訴法411条2号
論点414第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(長野一家3人強盗殺人事件)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成28年4月26日 平成26(あ)477
登載
集刑 第319号307頁
参照法条
刑法11条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点415第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(福島夫婦強盗殺人事件)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成28年3月8日 平成26(あ)959
登載
集刑 第319号163頁
参照法条
刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号
論点416第411条刑事訴訟法

罪数に関する法令適用の誤りがあるが,刑訴法411条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきものとは認められないとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成28年3月23日 平成26(あ)1870
登載
集刑 第319号301頁
参照法条
刑法45条前段,刑訴法411条
論点417第411条刑事訴訟法

自動車運転過失致死の公訴事実について防犯カメラの映像と整合しない走行態様を前提に被告人を有罪とした原判決に,審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあるとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成28年3月18日 平成26(あ)1844
登載
集刑 第319号269頁
参照法条
刑法(平成25年法律第86号による改正前のもの)211条2項,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点418第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(大阪パチンコ店放火殺人事件)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成28年2月23日 平成25(あ)1329
登載
集刑 第319号1頁
参照法条
刑法11条,刑法108条,刑法199条,刑訴法411条2号
論点419第411条刑事訴訟法

準強制わいせつ被告事件において保釈を許可した原々決定を取り消して保釈請求を却下した原決定に刑訴法90条,426条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成27年4月15日 平成27(し)223
登載
集刑 第316号143頁
参照法条
刑訴法90条,刑訴法411条1項,刑訴法426条,刑訴法434条
論点420第411条刑事訴訟法

被告人を死刑に処した裁判員裁判による第1審判決を量刑不当として破棄し無期懲役に処した原判決の量刑が維持された事例

裁判要旨女性1名を殺害するなどした住居侵入,強盗殺人,建造物侵入,現住建造物等放火,死体損壊等のほか,その前後約2か月間に繰り返された強盗致傷,強盗強姦等の事案において,女性の殺害を計画的に実行したとは認められず,また,殺害態様の悪質性を重くみることにも限界があるのに,同女に係る事件以外の事件の悪質性や危険性,被告人の前科,反社会的な性格傾向等を強調して死刑に処した裁判員裁判による第1審判決の量刑判断が合理的ではなく,被告人を死刑に処すべき具体的,説得的な根拠を見いだし難いと判断して同判決を破棄し無期懲役に処したものと解される原判決の刑の量定は,甚だしく不当で破棄しなければ著しく正義に反するということはできない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成27年2月3日 平成25(あ)1729
登載
刑集 第69巻1号99頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法397条1項,刑訴法411条2号
論点421第411条刑事訴訟法

被告人を死刑に処した裁判員裁判による第1審判決を量刑不当として破棄し無期懲役に処した原判決の量刑が維持された事例

裁判要旨殺人等の罪により懲役20年の刑に服した前科がある被告人が被害者1名を殺害した住居侵入,強盗殺人の事案において,本件犯行とは関連が薄い前記前科があることを過度に重視して死刑に処した裁判員裁判による第1審判決の量刑判断が合理的ではなく,被告人を死刑に処すべき具体的,説得的な根拠を見いだし難いと判断して同判決を破棄し無期懲役に処したものと解される原判決の刑の量定は,甚だしく不当で破棄しなければ著しく正義に反するということはできない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成27年2月3日 平成25(あ)1127
登載
刑集 第69巻1号1頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法397条1項,刑訴法411条2号
論点422第411条刑事訴訟法

検察官のした廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件に係る刑事確定訴訟記録の閲覧申出一部不許可処分を取り消し,原発事故により放出された放射性物質で汚染された木くずの移動経路,搬入先等を記載した捜査報告書の一部閲覧を命じた原決定について,刑事確定訴訟記録法4条2項5号の解釈適用を誤った違法があるとして,その一部が取り消された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成27年12月14日 平成27(し)401
登載
集刑 第318号171頁
参照法条
刑事確定訴訟記録法4条1項,刑事確定訴訟記録法4条2項,刑事確定訴訟記録法8条,刑訴法411条1号,刑訴法426条,刑訴法434条
論点423第411条刑事訴訟法

業務上横領被疑事件において勾留請求を却下した原々裁判を取り消して勾留を認めた原決定に刑訴法60条1項の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成27年10月22日 平成27(し)597
登載
集刑 第318号11頁
参照法条
刑訴法60条1項,刑訴法411条1号,刑訴法426条,刑訴法434条
論点424第411条刑事訴訟法

女子高校生に強いてわいせつな行為をして殺害したとして起訴された事案につき,目撃証言の信用性を否定するなどして事実誤認を理由に有罪(無期懲役)の第1審判決を破棄し無罪とした原判決が是認された事例(舞鶴女子高校生殺害事件)

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年7月8日 平成25(あ)169
登載
集刑 第314号99頁
参照法条
刑法9条,刑法181条1項,刑法176条前段,刑法199条,刑訴法382条,刑訴法397条1項,刑訴法411条3号
論点425第411条刑事訴訟法

傷害致死の事案につき,懲役10年の求刑を超えて懲役15年に処した第1審判決及びこれを是認した原判決が量刑不当として破棄された事例

裁判要旨親による幼児に対する傷害致死の事案において,これまでの量刑の傾向から踏み出し,公益の代表者である検察官の懲役10年の求刑を大幅に超える懲役15年という量刑をすることにつき,具体的,説得的な根拠を示しているとはいい難い第1審判決及びその量刑を是認した原判決は,量刑不当により破棄を免れない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年7月24日 平成25(あ)689
登載
刑集 第68巻6号925頁
参照法条
刑法205条,刑訴法411条2号
論点426第411条刑事訴訟法

暴力団関係者の利用を拒絶しているゴルフ場において暴力団関係者であることを申告せずに施設利用を申し込む行為が,詐欺罪にいう人を欺く行為に当たらないとされた事例

裁判要旨暴力団関係者の利用を拒絶しているゴルフ場において,暴力団関係者であるビジター利用客が,暴力団関係者であることを申告せずに,一般の利用客と同様に,氏名等を偽りなく記入した受付表等を提出して施設利用を申し込む行為は,ゴルフ場の従業員から暴力団関係者でないことを確認されなかったなどの本件事実関係(判文参照)の下では,申込者が当然に暴力団関係者でないことまで表しているとは認められず,詐欺罪にいう人を欺く行為には当たらない。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成26年3月28日 平成25(あ)3
登載
刑集 第68巻3号582頁
参照法条
刑法246条2項,刑訴法411条3号
論点427第411条刑事訴訟法

暴力団関係者の利用を拒絶しているゴルフ場において暴力団関係者であることを申告せずに施設利用を申し込む行為が,詐欺罪にいう人を欺く行為に当たらないとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成26年3月28日 平成25(あ)911
登載
集刑 第313号329頁
参照法条
刑法246条2項,刑訴法411条3号
論点428第411条刑事訴訟法

特別抗告審において原決定が取り消され,保釈を許可した原々決定が是認された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成26年3月25日 平成26(し)136
登載
集刑 第313号319頁
参照法条
刑訴法90条,刑訴法411条1号,刑訴法426条,刑訴法434条
論点429第411条刑事訴訟法

保護責任者遺棄致死被告事件について,被害者の衰弱状態等を述べた医師らの証言が信用できることを前提に被告人両名を有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨保護責任者遺棄致死被告事件について,被害者の衰弱状態等を述べた医師らの証言が信用できることを前提に被告人両名を有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,証言の信用性を支える根拠があるのにこれを考慮しないなど,証言の信用性評価を誤っており,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年3月20日 平成24(あ)797
登載
刑集 第68巻3号499頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法411条1号
論点430第411条刑事訴訟法

迷惑行為防止条例違反被疑事件において勾留請求を却下した原々裁判を取り消して勾留を認めた原決定に刑訴法60条1項,426条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年11月17日 平成26(し)578
登載
集刑 第315号183頁
参照法条
刑訴法60条1項,刑訴法411条1号,刑訴法426条,刑訴法434条
論点431第411条刑事訴訟法

殺人1件,傷害致死1件等の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例(中国人妻による替え玉殺人事件)

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成25年11月11日 平成23(あ)881
登載
集刑 第312号7頁
参照法条
刑法9条,刑法199条,刑法205条,刑訴法411条2号
論点432第411条刑事訴訟法

被害者1名の強盗殺人等の事案につき無期懲役の量刑が維持された事例(名古屋闇サイト殺人事件)

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成24年7月11日 平成23(あ)844
登載
集刑 第308号91頁
参照法条
刑法9条,刑法240条,刑訴法411条2項
論点433第411条刑事訴訟法

実母及び実子2名を殺害し,その保険金等を詐取したとして起訴された事案につき,被告人の自白の信用性を否定するなどして無罪とした第1審判決を維持した原判決が是認された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成24年2月22日 平成22(あ)174
登載
集刑 第307号509頁
参照法条
刑法108条,刑法199条,刑訴法411条3号
論点434第411条刑事訴訟法

1 刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉にいう事実誤認の意義
2 刑訴法382条にいう事実誤認の判示方法
3 覚せい剤を密輸入した事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨1 刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の事実誤認とは,第1審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることをいう。
2 控訴審が第1審判決に事実誤認があるというためには,第1審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることを具体的に示す必要がある。
3 覚せい剤を密輸入した事件について覚せい剤を輸入する認識がなかった旨の弁解が排斥できないなどとして,被告人を無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,その弁解が客観的事実関係に一応沿うもので第1審判決のような評価も可能であることなどに照らすと,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
(1〜3につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成24年2月13日 平成23(あ)757
登載
刑集 第66巻4号482頁
参照法条
(1〜3につき)刑訴法382条,(2につき)刑訴法397条1項,(3につき)刑訴法411条1号
論点435第411条刑事訴訟法

長崎市長を射殺した事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成24年1月16日 平成21(あ)1877
登載
集刑 第307号81頁
参照法条
刑法9条,刑法199条,刑訴法411条2号
論点436第411条刑事訴訟法

家族に対する殺人5件,殺人未遂1件の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例(反対意見がある。)(岐阜中津川家族殺害事件)

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成24年12月3日 平成22(あ)402
登載
集刑 第309号1頁
参照法条
刑法9条,刑法199条,刑法203条,刑訴法411条2号
論点437第411条刑事訴訟法

強盗殺人事件等に関する無期懲役の確定裁判のある被告人が,同事件の13日後に犯した被殺者1名の住居侵入,強盗殺人の事案(確定裁判の余罪)につき,無期懲役の量刑が維持された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成24年12月17日 平成23(あ)494
登載
集刑 第309号213頁
参照法条
刑法9条,刑法50条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点438第411条刑事訴訟法

特別抗告審において原決定が取り消され,保釈を許可した原々裁判が是認された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成24年10月26日 平成24(し)534
登載
集刑 第308号481頁
参照法条
刑訴法90条,刑訴法411条1号,刑訴法426条,刑訴法434条
論点439第411条刑事訴訟法

通行中の女性に対して暴行,脅迫を加えてビルの階段踊り場まで連行し,強いて姦淫したとされる強姦被告事件について,被害者とされた者の供述の信用性を全面的に肯定した第1審判決及び原判決の認定が是認できないとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成23年7月25日 平成22(あ)509
登載
集刑 第304号139頁
参照法条
刑法177条前段,刑訴法317条,刑訴法411条3号
論点440第411条刑事訴訟法

殺人1件,被害者に重傷を負わせた殺人未遂2件等の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例(愛知の立て籠もり発砲事件)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成23年3月22日 平成21(あ)1802
登載
集刑 第303号535頁
参照法条
刑法9条,刑法199条,刑訴法411条2号
論点441第411条刑事訴訟法

6名を殺害し,1名を死に致すなどした殺人,傷害致死等被告事件につき,被告人を無期懲役に処した控訴審判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められないとされた事例(反対意見がある。)(北九州連続監禁殺人等事件)

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成23年12月12日 平成19(あ)2276
登載
集刑 第306号695頁
参照法条
刑法9条,刑法199条,刑法205条,刑訴法411条2号
論点442第411条刑事訴訟法

1 訴訟条件である告発の事実を上告審において認定する方法
2 訴訟条件である告発の調査を怠った1,2審の法令違反と上告審において告発の事実を認定することができる場合の判決への影響の有無

裁判要旨1 訴訟条件である告発の存在は,上告審において,証拠調手続によることなく,適宜の方法で認定することができ,関税法140条所定の告発書の謄本が原判決後に原審に提出されて記録につづられ,その写しが上告審から弁護人に送付されている事情の下では,上告審は上記謄本により告発の事実を認定することができる。
2 1,2審が訴訟条件である関税法140条所定の告発について調査を怠った法令違反は,上告審において告発の事実を認定することができる場合には,判決に影響を及ぼすべきものとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成23年10月26日 平成23(あ)469
登載
刑集 第65巻7号1107頁
参照法条
(1,2につき)関税法140条 (1につき)刑訴法393条1項,刑訴法414条 (2につき)刑訴法411条1号
論点443第411条刑事訴訟法

保釈の請求に関する準抗告決定(原裁判取消し,保釈許可)に対する検察官からの特別抗告が棄却された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成22年7月2日 平成22(し)288
登載
集刑 第301号1頁
参照法条
刑訴法411条,刑訴法426条1項,刑訴法434条
論点444第411条刑事訴訟法

再審請求を棄却した原決定に審理不尽の違法があるとされた事例(いわゆる名張毒ぶどう酒殺人事件第7次再審請求)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年4月5日 平成19(し)23
登載
集刑 第300号167頁
参照法条
刑訴法435条6号,刑訴法411条1号
論点445第411条刑事訴訟法

殺人,現住建造物等放火の公訴事実について間接事実を総合して被告人を有罪とした第1審判決及びその事実認定を是認した原判決に,審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあるとされた事例

裁判要旨殺人,現住建造物等放火の公訴事実について,間接事実を総合して被告人が犯人であるとした第1審判決及びその事実認定を是認した原判決は,認定された間接事実中に被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは,少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれているとは認められないなど,間接事実に関する審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあり,刑訴法411条1号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉,3号により破棄を免れない。
(補足意見,意見,反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年4月27日 平成19(あ)80
登載
刑集 第64巻3号233頁
参照法条
刑法108条,刑法199条,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点446第411条刑事訴訟法

恐喝未遂罪の成否に関する原判決の事実認定の是非等について補足意見,反対意見が付された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年4月22日 平成20(あ)765
登載
集刑 第296号503頁
参照法条
刑法250条,刑法249条1項,刑訴法411条3号
論点447第411条刑事訴訟法

1 上告審における事実誤認の主張に関する審査の方法
2 満員電車内における強制わいせつ被告事件について,被害者とされた者の供述の信用性を全面的に肯定した第1審判決及び原判決の認定が是認できないとされた事例

裁判要旨1 上告審における事実誤認の主張に関する審査は,原判決の認定が論理則,経験則等に照らして不合理かどうかの観点から行うべきである。
2 被告人が満員電車内で女性Aに対して痴漢行為をしたとされる強制わいせつ被告事件について,被告人が一貫して犯行を否認しており,Aの供述以外にこれを基礎付ける証拠がなく,被告人にこの種の犯行を行う性向もうかがわれないという事情の下では,Aの供述の信用性判断は特に慎重に行う必要があり,Aの供述する被害状況に不自然な点があること(判文参照)などを勘案すると,Aの供述の信用性を全面的に肯定した第1審判決及び原判決の認定は不合理であり是認できない。
(2について補足意見,反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年4月14日 平成19(あ)1785
登載
刑集 第63巻4号331頁
参照法条
(1,2につき)刑訴法411条3号 (2につき)刑法176条前段,刑訴法317条
論点448第411条刑事訴訟法

保険金目的による被殺者2名の殺人の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年1月14日 平成17(あ)2621
登載
集刑 第296号1頁
参照法条
刑法9条,刑法199条,刑訴法411条2号
論点449第411条刑事訴訟法

強盗殺人1件,強盗致死・強盗致傷1件等の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成21年12月17日 平成19(あ)746
登載
集刑 第299号1275頁
参照法条
刑法9条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点450第411条刑事訴訟法

事後強盗としての暴行についての共謀等を認めなかった原判決を重大な事実誤認の疑いが顕著であるとして破棄して差し戻した事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成21年10月8日 平成20(あ)181
登載
集刑 第297号425頁
参照法条
刑法60条,刑法238条,刑法240条,刑訴法411条3号
論点451第411条刑事訴訟法

銃刀法違反被告事件につき,けん銃等所持の共謀が認められないとした第1審判決及びこれを是認した原判決に重大な事実誤認の疑いがあるとして破棄し,事件を第1審に差し戻した事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年10月19日 平成18(あ)1124
登載
集刑 第297号489頁
参照法条
刑訴法411条3号,刑法60条
論点452第411条刑事訴訟法

被殺者2名の殺人,強盗殺人等の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例(静岡大学生強殺事件)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年9月29日 平成19(あ)1317
登載
集刑 第295号135頁
参照法条
刑法9条,刑法199条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点453第411条刑事訴訟法

殺人,強姦致死等の懲役前科3犯を有する者に対するわいせつ致死,殺人被告事件につき,無期懲役とした量刑が維持された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年4月21日 平成19(あ)885
登載
集刑 第294号149頁
参照法条
刑法9条,刑法199条,刑訴法411条2号
論点454第411条刑事訴訟法

被殺者2名の強盗殺人等被告事件につき,多数意見では被告人2名を無期懲役に処した第1審判決を維持した控訴審判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされたが,1名の被告人について,2裁判官による量刑不当との反対意見が付された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成20年2月20日 平成18(あ)417
登載
集刑 第293号119頁
参照法条
刑法9条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点455第411条刑事訴訟法

強盗殺人1件,被害者を深刻な認知症に至らしめた強盗殺人未遂1件等の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成20年11月4日 平成18(あ)746
登載
集刑 第295号239頁
参照法条
刑法9条,刑法240条,刑法243条,刑訴法411条2号
論点456第411条刑事訴訟法

高速走行抑止システムによる速度測定結果の正確性について検察官に釈明を求めたり追加立証を促すなどすることなく証明が十分でないとした原判決を審理を尽くさず事実を誤認した疑いがあるとして破棄差し戻した事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成19年4月23日 平成18(あ)726
登載
集刑 第291号639頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点457第411条刑事訴訟法

正当防衛の成否及び量刑について補足意見が付された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成19年11月5日 平成19(あ)364
登載
集刑 第292号465頁
参照法条
刑法36条,刑訴法411条2号
論点458第411条刑事訴訟法

強盗強姦罪の成否に関する原判決の事実認定の是非等について補足意見,反対意見が付された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成19年10月10日 平成19(あ)79
登載
集刑 第292号265頁
参照法条
刑法241条前段,刑訴法411条3号
論点459第411条刑事訴訟法

準抗告申立てを不適法として棄却した原決定の処理が違法とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成18年12月19日 平成18(し)391
登載
集刑 第290号741頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法426条2項,刑訴法430条1項,刑訴法434条
論点460第411条刑事訴訟法

強盗殺人等被告事件につき,無期懲役に処した第1審判決を維持した控訴審判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められないとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成17年7月15日 平成12(あ)690
登載
集刑 第287号571頁
参照法条
刑法9条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点461第411条刑事訴訟法

業務上過失傷害事件について,第1審裁判所には検察官に対し訴因変更を促し又はこれを命ずる義務があるとした原判決には,法令違反があるが,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成15年2月20日 平成12(あ)1242
登載
集刑 第283号335頁
参照法条
刑法(平成13年法律第138号による改正前のもの)211条前段,刑訴法312条1項,刑訴法312条2項,刑訴法411条
論点462第411条刑事訴訟法

特別公務員暴行陵虐致死被告事件につき,懲役3年に処し5年間その刑の執行を猶予した控訴審判決の量刑が甚だしく不当であるとまでは認められないとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成15年10月21日 平成12(あ)821
登載
集刑 第284号455頁
参照法条
刑法195条1項,刑法196条,刑訴法411条2号
論点463第411条刑事訴訟法

特別抗告審において原決定が取り消され,保釈が許可された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成14年8月19日 平成14(し)218
登載
集刑 第282号1頁
参照法条
刑訴法90条,刑訴法411条1号,刑訴法426条2項,刑訴法434条
論点464第411条刑事訴訟法

1 法定刑の軽微な事件について身柄拘束の不必要な長期化を避けるための配慮が十分であったとはいえないとされた事例
2 罰金刑に未決勾留日数を算入しなかったことが量刑判断を誤ったものであるが,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成14年6月5日 平成13(あ)898
登載
集刑 第281号517頁
参照法条
刑法21条,刑訴法60条1項,刑訴法60条2項,刑訴法411条2号
論点465第411条刑事訴訟法

交通事故による休業損害補償金として自動車共済契約による共済金を騙し取ったとされた事件において詐欺の故意が認められないとして無罪が言い渡された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成13年1月25日 平成11(あ)1614
登載
集刑 第280号5頁
参照法条
刑法246条1項,刑訴法336条,刑訴法411条3号
論点466第411条刑事訴訟法

申立人が勾留され起訴された事実と異なる事実を前提として刑訴法89条4号所定の事由存否と裁量保釈の当否を判断した違法があるとして保釈請求却下の裁判に対する準抗告棄却決定が取り消された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成13年1月15日 平成13(し)3
登載
集刑 第280号1頁
参照法条
刑訴法89条4号,刑訴法90条,刑訴法411条1号,刑訴法426条2項,刑訴法434条
論点467第411条刑事訴訟法

所得税ほ脱事件において,原判決の有価証券売買益等の収益の帰属者の判断基準に関する判示に是認し難い点があるが,刑訴法411条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきものとは認められないとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成12年2月8日 平成9(あ)1255
登載
集刑 第278号43頁
参照法条
所得税法12条,刑訴法411条
論点468第411条刑事訴訟法

監禁,強姦事件につき,監禁罪の成立を認めた点で第一,二審判決には事実誤認があるとして破棄自判した事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成11年10月21日 平成11(あ)244
登載
集刑 第276号579頁
参照法条
刑法177条前段,刑法220条,刑訴法411条3号
論点469第411条刑事訴訟法

被告人を死刑に処した裁判員裁判による第1審判決を量刑不当として破棄し無期懲役に処した原判決の量刑が維持された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和元年7月1日 平成29(あ)605
登載
集刑 第326号63頁
参照法条
刑法199条,刑法225条,刑法190条,刑訴法411条2号
論点470第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(愛知の夫婦強盗殺人等事件)

裁判
最高裁判所第二小法廷 令和元年7月19日 平成28(あ)1889
登載
集刑 第326号193頁
参照法条
刑法11条,刑法(平成16年法律第156号による改正前のもの)240条後段,刑訴法411条2号
論点471第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(山口周南市連続殺人放火事件)

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和元年7月11日 平成28(あ)1508
登載
集刑 第326号133頁
参照法条
刑法11条,刑法199条,刑訴法411条2号
論点472第411条刑事訴訟法

鑑定等の新証拠が無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たるとして再審開始の決定をした原々決定及び結論においてこれを是認した原決定にはいずれも刑訴法435条6号の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和元年6月25日 平成30(し)146
登載
集刑 第326号1頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法426条2項,刑訴法434条,刑訴法435条6号,刑訴法447条1項
論点473第411条刑事訴訟法

鑑定等の新証拠が無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たるとして再審開始の決定をした原々決定及び結論においてこれを是認した原決定にはいずれも刑訴法435条6号の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和元年6月25日 平成30(し)147
登載
―
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法426条2項,刑訴法434条,刑訴法435条6号,刑訴法447条1項
論点474第411条刑事訴訟法

被告人を死刑に処した裁判員裁判による第1審判決を量刑不当として破棄し無期懲役に処した原判決の刑の量定が維持された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和元年12月2日 平成29(あ)621
登載
集刑 第327号17頁
参照法条
刑法199条,刑訴法411条2号
論点475第411条刑事訴訟法

性的姿態等撮影未遂被疑事件において接見等禁止の裁判に対する準抗告を棄却した原決定に刑訴法81条、426条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 令和7年8月14日 令和7(し)672
登載
―
参照法条
刑訴法81条、刑訴法411条1号、刑訴法426条、刑訴法434条
論点476第411条刑事訴訟法

津波による原子力発電所の事故につきこれを設置し運転していた電力会社の役員らに業務上過失致死傷罪が成立しないとした第1審判決を維持した原判決が是認された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 令和7年3月5日 令和5(あ)246
登載
―
参照法条
刑法(平成25年法律第86号による改正前のもの)211条1項前段、刑訴法411条
論点477第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(日立妻子6人殺害事件)

裁判
最高裁判所第二小法廷 令和7年2月21日 令和5(あ)541
登載
―
参照法条
刑法11条、刑法199条、刑訴法411条2号
論点478第411条刑事訴訟法

贈賄被疑事件において勾留請求を却下した原々裁判を取り消して勾留を認めた原決定に刑訴法60条1項、426条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和7年11月27日 令和7(し)1043
登載
―
参照法条
刑訴法60条1項、刑訴法411条1号、刑訴法426条、刑訴法434条
論点479第411条刑事訴訟法

被告人を死刑に処した裁判員裁判による第1審判決を量刑不当として破棄し無期懲役に処した原判決の量刑が維持された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和6年5月27日 令和5(あ)292
登載
集刑 第333号297頁
参照法条
刑法199条、刑訴法411条2号
論点480第411条刑事訴訟法

強要未遂罪の成立を認めた第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨労働組合の組合員である被告人両名らが、同組合の組合員が稼働する会社の取締役を脅迫し、同組合員を雇用している旨の就労証明書の作成等を要求したとして強要未遂罪の成立を認めた第1審判決について、強要未遂罪の解釈適用を誤り、ひいては事実を誤認したと説示しつつ、第1審判決が前提とする事実のうち、同社に同組合員を雇用している旨の就労証明書を作成等すべき義務はないとしたことについての事実の誤認を指摘しただけで、強要罪の成立を基礎付けるその余の事実関係について、その認定の不合理性を検討しないまま、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決は、第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照)、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり、同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和5年9月11日 令和4(あ)125
登載
刑集 第77巻6号181頁
参照法条
刑訴法382条、刑訴法411条1号
論点481第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(遺体なき殺人事件)

裁判
最高裁判所第二小法廷 令和5年7月3日 令和3(あ)855
登載
集刑 第332号79頁
参照法条
刑法11条、刑法199条、刑訴法411条2号
論点482第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(マニラ保険金殺人事件)

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和5年6月5日 令和2(あ)124
登載
集刑 第332号27頁
参照法条
刑法11条、刑法199条、刑訴法411条2号
論点483第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(元警官妻子3人殺害事件)

裁判
最高裁判所第三小法廷 令和5年12月8日 令和3(あ)1399
登載
集刑 第332号309頁
参照法条
刑法11条、刑法199条、刑訴法411条2号
論点484第411条刑事訴訟法

外国公務員等に対して金銭を供与したという不正競争防止法違反の罪について、共謀の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨外国公務員等に対して金銭を供与したという不正競争防止法違反の罪について、被告人の地位及び立場、被告人が同供与に関する相談を受けるに至った経緯及びこれに対する被告人の言動並びにその相談後に同供与が実行されたという経過等を総合考慮して、被告人が同供与を了承し、これを実行する意思決定に関与したとして共謀の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決は、共謀を基礎付ける事実関係となる上記の諸事情に対する評価を十分示さないまま、主として同供与を積極的に容認する意思の有無という観点から検討し、第1審判決の認定が不合理であるとする説得的な論拠を示していないなど、第1審判決が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照)、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり、同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和4年5月20日 令和2(あ)1135
登載
刑集 第76巻4号452頁
参照法条
刑法60条、不正競争防止法18条1項、不正競争防止法21条2項7号、刑訴法382条、刑訴法411条1号
論点485第411条刑事訴訟法

傷害罪の成立を認めた第1審判決に判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨医師の意見から認められる外力の態様に加え、Aが受傷した当時の状況、Aの受傷状況に関する被告人の言動を総合してAに対する被告人の暴行を認定し傷害罪の成立を認めた第1審判決について、医師の意見からは第1審判決が認定の根拠としたAの頭部にA以外の者の行為による強い外力が加わった事実は認められないからその認定は前提を欠くとしたほかは、Aの受傷状況に関する被告人の供述が信用できないからといって被告人の暴行を認定することはできない旨を説示しただけで、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決は、間接事実を総合した場合に被告人の暴行を認定することができるか否かについて判断を示したものとはいえないから、事実誤認の審査に当たり必要な検討を尽くして第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照)、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり、同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和4年4月21日 令和2(あ)1751
登載
刑集 第76巻4号268頁
参照法条
刑訴法382条、刑訴法411条1号
論点486第411条刑事訴訟法

準強制わいせつ被告事件について,公訴事実の事件があったと認めるには合理的な疑いが残るとして無罪とした第1審判決を事実誤認を理由に破棄し有罪とした原判決に,審理不尽の違法があるとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 令和4年2月18日 令和2(あ)1026
登載
集刑 第330号11頁
参照法条
刑法178条1項,刑訴法411条1号,刑訴法413条本文
論点487第411条刑事訴訟法

殺人の公訴事実について、自殺の主張は客観的証拠と矛盾するなどとして有罪の第1審判決の結論を是認した原判決に、審理不尽の違法、事実誤認の疑いがあるとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和4年11月21日 令和3(あ)319
登載
集刑 第331号7頁
参照法条
刑法199条、刑訴法411条1号、刑訴法411条3号、刑訴法413条本文
論点488第411条刑事訴訟法

違法収集証拠として証拠能力を否定した第1審の訴訟手続に法令違反があるとした原判決に,法令の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨警察官が,被告人の自動車内にチャック付きビニール袋を確認した旨の疎明資料を作成して同車に対する捜索差押許可状及び強制採尿令状を請求して上記各令状の発付を受け,同車内から覚醒剤等の薬物を差し押さえ,被告人から尿の任意提出を受けたなどの本件の事実経過(判文参照)の下では,同薬物並びに同薬物及び被告人の尿に関する各鑑定書の証拠能力の判断に当たり,警察官が上記ビニール袋は同車内になかったのに上記疎明資料を作成して上記各令状を請求した事実の存否を確定せず,その存否を前提に上記各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断しないまま,証拠能力が否定されないとした原判決は,法令の解釈適用を誤った違法があり,刑訴法411条1号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和3年7月30日 令和2(あ)1763
登載
刑集 第75巻7号930頁
参照法条
刑訴法1条,刑訴法317条,刑訴法411条1号
論点489第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(連続青酸不審死事件)

裁判
最高裁判所第三小法廷 令和3年6月29日 令和1(あ)953
登載
集刑 第329号101頁
参照法条
刑法11条,刑法199条,刑訴法411条2号
論点490第411条刑事訴訟法

判決書に裁判長の押印を欠く法令違反が判決に影響を及ぼさないとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 令和3年6月28日 令和3(あ)424
登載
集刑 第329号95頁
参照法条
刑訴規則55条,刑訴法411条1号
論点491第411条刑事訴訟法

自動車を運転する予定の者に対し,ひそかに睡眠導入剤を摂取させ運転を仕向けて交通事故を引き起こさせ,事故の相手方に傷害を負わせたという殺人未遂被告事件について,事故の相手方に対する殺意を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨被告人が,自動車を運転する予定の者に対し,ひそかに睡眠導入剤を摂取させて運転するよう仕向けたことにより,走行中にその運転者が仮睡状態等に陥って自車を対向車線に進出させて対向車に衝突させる交通事故を引き起こし,対向車の運転者に傷害を負わせたという殺人未遂被告事件について,対向車の運転者に対する殺意を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,死亡の危険性及びその認識に関する第1審判決の評価が不合理であるとする説得的な論拠を示していないなど,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和3年1月29日 令和2(あ)96
登載
刑集 第75巻1号1頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法411条1号
論点492第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(干物店強盗殺人事件)

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和3年1月28日 平成30(あ)1270
登載
集刑 第329号1頁
参照法条
刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号,刑訴法411条3号
論点493第411条刑事訴訟法

死刑の量刑が維持された事例(前橋市連続強盗殺人事件)

裁判
最高裁判所第三小法廷 令和2年9月8日 平成30(あ)318
登載
集刑 第328号41頁
参照法条
刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号
論点494第411条刑事訴訟法

再審請求を棄却した原決定に審理不尽の違法があるとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 令和2年12月22日 平成30(し)332
登載
集刑 第328号67頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法426条2項,刑訴法434条,刑訴法435条6号
論点495第412条刑事訴訟法

一 土地管轄についての瑕疵が治癒されたと認められた事例
二 刑訴法六条〈土地管轄を異にする数個の事件が関連するときは、一個の事件につき管轄権を有する裁判所は、併せて他の事件を管轄することができ…〉所定の関連事件の管轄と併合審判の要否

裁判要旨一 刑訴法一九条〈裁判所は、適当と認めるときは、検察官若しくは被告人の請求により又は職権で、決定を以て、その管轄に属する事件を事物管轄を同…〉により移送を受けた被告事件について、当初土地管轄のあることが明らかでなかつたとしても、その後管轄違の申立がされるまでの間に土地管轄が備わるに至つた場合には(判文参照)、土地管轄についての瑕疵は治癒される。
二 刑訴法六条〈土地管轄を異にする数個の事件が関連するときは、一個の事件につき管轄権を有する裁判所は、併せて他の事件を管轄することができ…〉による関連事件の管轄が認められるためには、いわゆる固有管轄事件及びその関連事件が共に同一の裁判所に係属することを要するが、必ずしもその併合審判を要するものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年11月30日 昭和56(あ)929
登載
集刑 第238号247頁
参照法条
刑訴法2条,刑訴法6条,刑訴法7条,刑訴法9条,刑訴法19条,刑訴法329条,刑訴法331条,刑訴法378条1号,刑訴法398条,刑訴法399条,刑訴法412条
論点496第412条刑事訴訟法

土地管轄についての瑕疵が治癒されたと認められた事例

裁判要旨刑訴法一九条〈裁判所は、適当と認めるときは、検察官若しくは被告人の請求により又は職権で、決定を以て、その管轄に属する事件を事物管轄を同…〉により移送を受けた被告事件について、その当時土地管轄があることが明らかでなかつたとしても、その後管轄違の申立がされるまでの間に土地管轄が具備されるに至つた場合には(判文参照)、土地管轄についての右瑕疵は治癒される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年10月13日 昭和56(あ)1398
登載
刑集 第37巻8号1139頁
参照法条
刑訴法2条,刑訴法6条,刑訴法9条,刑訴法19条,刑訴法329条,刑訴法331条,刑訴法378条1号,刑訴法398条,刑訴法399条,刑訴法412条
論点497第413条刑事訴訟法

一、学生集会と憲法二三条の関係
二、併合罪の関係にある二個の公訴事実についてされた原判決につき上告審が主文においてこれを破棄差し戻す旨を示しその理由中において右公訴事実の一部にのみ関係のある破棄理由を示すにとどまる判決を言い渡した場合における右破棄判決の効果

裁判要旨一、大学の許可した学生集会であつても、真に学問的研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動にあたる行為をする場合には、大学の有する特別の自由と自治を享有するものではない。
二、併合罪の関係にある甲乙二個の公訴事実のうち甲についてはその一部の事実を認めながら正当行為とし、乙についてはその事実が認められないとした第一審の無罪判決を維持した第二審判決全部に対し検察官が上告したが、憲法違反、法令違反のみを主張し、事実誤認の主張をしなかつた場合において、上告審が原判決および第一審判決を破棄し事件を第一審裁判所に差し戻す旨の主文の判決を言い渡したときは、その理由として検察官の憲法違反の諭旨が理由があると判示しただけであつても、右第一、二審判決はすべて破棄されたものであり、起訴された甲、乙の各行為はすべて、いまだ無罪とされたものでも、また刑事上の責任を問われたものでもない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年3月22日 昭和42(あ)47
登載
刑集 第27巻2号167頁
参照法条
憲法23条,憲法39条,刑訴法337条1号,刑訴法386条1項1号,刑訴法413条,刑訴法414条
論点498第413条刑事訴訟法

一 上告審判決の主文に控訴棄却の旨を表示することの可否
二 関税法一一一条一項所定の無許可輸出罪と同法一一三条の二所定の虚偽申告罪との罪数関係
三 関税法の無許可輸出罪の公訴事実中に税関吏に対し虚偽の申告をした旨の記載があるが同法の虚偽申告罪の起訴はなかつたものとみるのが相当であるとされた事例
四 当初の関税法の無許可輸出罪の訴因につき第一審で無罪とされ検察官が控訴したが控訴審でも罪とならないとされただ外国為替及び外国貿易管理法の無承認輸出罪の成立する余地があるとして破棄差し戻した判決に対し被告人のみが上告した場合と上告審の職権調査の範囲

裁判要旨一 上告審が、第一審判決を破棄した控訴審判決を破棄して第一審判決を維持するのを相当と認めるときは、第一審判決と同一内容の主文を表示するかわりに、控訴を棄却する旨の主文を表示してもよい。
二 関税法一一一条一項所定の無許可輸出罪と同法一一三条の二所定の虚偽申告罪とは併合罪の関係にある。
三 関税法の無許可輸出罪の公訴事実中に、税関吏に対し実際に輸出しようとする薬品の輸出申告をしないで他の薬品の輸出申告をした旨の記載があるが、罪名は単に関税法違反と記載され、罰条として、関税法一一一条一項のみが示されているにすぎない場合には、同法上の虚偽申告の点は起訴されなかったとみるのが相当である。
四 当初の無許可輸出罪の訴因につき第一審で無罪とされ、検察官が控訴したが、控訴審でも罪とならないとされ、ただ、外国為替及び外国貿易管理法の無承認輸出罪の成立する余地があるとして破棄差し戻した判決に対し被告人のみが上告した場合には、上告審が職権調査により右訴因を有罪とすべきものとして破棄差し戻し、または、みずから有罪の裁判をすることは許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年3月9日 昭和42(あ)582
登載
刑集 第26巻2号102頁
参照法条
刑訴法396条,刑訴法413条,刑訴法256条2項,刑訴法378条3号,刑訴法392条2項,刑訴法414条,関税法111条1項,関税法113条の2,刑法45条,刑法54条
論点499第413条刑事訴訟法

下級審がその事件について上告審の破棄理由とした法律上の判断に従つてした判決に対する上告理由の適否。

裁判要旨上告審において下級審判決が破棄されて事件の差戻があつた場合には、下級審はその事件を処理するに当り判決破棄の理由となつた上級審の事実上および法律上の意見に拘束され、必ずその意見に従いこれに基いて事件の審判をしなければならないのであるから、既に下級審が上級審の意見に従つて判断をしたものである以上、その下級審の判断を違法視することはできない。従つて、所論は原判決に影響なき主張であつて適法な上告理由とならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年7月14日 昭和41(あ)86
登載
集刑 第160号227頁
参照法条
刑訴法413条,裁判所法4条
論点500第413条刑事訴訟法

一 刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法施行前第三者所有物を没収した第一審判決を破棄する場合と同法施行後において上訴審のとるべき措置
二 関税法第一一八条の犯罪貨物が数人の犯人の間に転々譲渡された場合、最終知情取得者または犯人の一人が右貨物またはその価格を通告処分の履行として税関に納付した場合における他の犯人に対する追徴の適否
三 刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法の適用と憲法第三九条

裁判要旨一 上訴審が、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法施行前、第三者に告知聴問の機会を与えることなくその所有物を没収した第一審判決を破棄する場合、同法施行後においては、当該事件を第一審に差し戻して、同法所定の手続を履践させるのが相当である。
二 関税法第一一八情の犯罪貨物が数人の犯人の間に転々譲渡された場合、最終知情取得者が通告処分の履行として右貨物を税関に納付し、あるいは犯人の一人が通告処分の履行として追徴金相当額を税関に納付した後は、他の犯人に対し同条による追徴の言渡をすることは許されない。
三 昭和三八年法律第一三八号刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法は、同法施行前の犯行について、現に第一審に係属しまたは将来第一審に係属する被告事件に同法を適用しても、刑罰法規不遡及または事後立法禁止を定めた憲法第三九条の法意に反するものといえない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和38年12月4日 昭和35(あ)1772
登載
刑集 第17巻12号2415頁
参照法条
関税法118条1項,関税法118条,関税法138条,刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法1条,刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和38年法律138号),刑訴法400条本文,刑訴法413条本文,憲法39条
論点501第414条刑事訴訟法

上訴権回復請求及びこれと同時にされた特別抗告の申立を併せて棄却した地方裁判所の各決定に対する特別抗告の適否

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年6月8日 昭和62(し)51
登載
集刑 第246号33頁
参照法条
刑訴法364条,刑訴法375条,刑訴法414条,刑訴法433条
論点502第414条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立につき弁護人選任届の追完が認められなかつた事例

裁判要旨上告棄却決定に対し弁護人選任届のない弁護士名義で意義申立書が提出された場合において、異義申立期間経過後にその弁護人選任届が追加提出されても、これによつて右の異議申立が適法有効となるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和61年1月22日 昭和60(す)230
登載
集刑 第242号3頁
参照法条
刑訴法385条,刑訴法414条
論点503第414条刑事訴訟法

最高裁判所がした保釈請求却下決定に対する異議申立の適否(消極)

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和60年12月4日 昭和60(す)210
登載
集刑 第241号367頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法428条
論点504第414条刑事訴訟法

双方から上告があつて未決誤算入部分を破棄する場合における主文の表示方法

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和58年10月28日 昭和58(あ)1059
登載
集刑 第232号615頁
参照法条
刑訴法396条,刑訴法414条
論点505第414条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立と上訴権回復に関する規定の準用の有無

裁判要旨上告棄却決定に対する異議申立については、上訴権回復に関する規定の準用がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年4月7日 昭和57(す)19
登載
刑集 第36巻4号556頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法385条2項,刑訴法386条2項,刑訴法414条
論点506第414条刑事訴訟法

英語で記載された上告趣意書の適法性

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年2月1日 昭和56(あ)1380
登載
集刑 第225号645頁
参照法条
刑訴法386条1項2号,刑訴法414条,裁判所法74条
論点507第414条刑事訴訟法

一 死刑事件
二 分離決定をすることなく、被告人二名のうちの一名につき弁論を開き判決で上告を棄却した事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年4月25日 昭和52(あ)1348
登載
集刑 第217号607頁
参照法条
刑訴法313条,刑訴法404条,刑訴法414条
論点508第414条刑事訴訟法

一 無期懲役刑につき、一、二審は未決を算入しなかつたが、上告審は算入した事例
二 分離決定をすることなく、被告人二名のうちの一名につき決定で上告を棄却した事例(他の一名については判決で上告棄却)

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年4月23日 昭和52(あ)1348
登載
集刑 第217号583頁
参照法条
刑法21条,刑訴法313条,刑訴法404条,刑訴法414条
論点509第414条刑事訴訟法

双方から上告があつて未決誤算入部分を破棄する場合における棄却部分の主文の表示方法

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和53年5月2日 昭和52(あ)1944
登載
集刑 第210号1頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法396条
論点510第414条刑事訴訟法

上告の審判と刑訴法三九三条二項、三九七条二項の準用の有無

裁判要旨上告の審判には、刑訴法三九三条二項〈控訴裁判所は、前条の調査をするについて必要があるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で事実の取調をす…〉、三九七条二項〈第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。〉は準用されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和52年12月22日 昭和48(あ)526
登載
刑集 第31巻7号1147頁
参照法条
刑訴法393条2項,刑訴法397条2項,刑訴法414条
論点511第414条刑事訴訟法

刑の執行と重複する未決勾留日数の算入があつても、被告人のみからの上告の場合には破棄事由にあたらないとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和52年11月16日 昭和52(あ)931
登載
集刑 第207号803頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法402条
論点512第414条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立に理由を付さずその申立期間内に理由書の提出もないので不適法棄却した事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年2月20日 昭和51(す)17
登載
集刑 第199号311頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法426条1項
論点513第414条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立棄却決定に補足意見の付せられた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和50年7月10日 昭和50(す)82
登載
集刑 第197号63頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条2項
論点514第414条刑事訴訟法

上告趣意書に具体的な上告理由の記載がないときの処理

裁判要旨上告趣意書に具体的な上告理由の記載がないときは、刑訴規則二四〇条に定める方式に違反し、不適法な上告であり、刑訴法三八六条一項二号〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。 控訴趣意書がこの法律若しくは裁判所の規則で定める方式に違反しているとき、又は控訴趣意書にこの法律若しくは裁判所の規則の定めるところに従い必要な疎明資料若しくは保証書を添附しないとき。〉、四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉により棄却すべきものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年4月10日 昭和48(あ)2712
登載
集刑 第192号257頁
参照法条
刑訴法386条1項,刑訴法414条,刑訴規則240条
論点515第414条刑事訴訟法

特別抗告についての上訴権回復請求を棄却する場合と特別抗告棄却の権能

裁判要旨特別抗告についての上訴権回復請求を受理した裁判所は、これを棄却する場合には、刑訴法三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉、四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉を類推適用して、右請求と同時にされた特別抗告の申立を自ら棄却することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年6月21日 昭和48(し)22
登載
刑集 第27巻6号1197頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法375条,刑訴法414条,刑訴法433条
論点516第414条刑事訴訟法

第二審判決言渡前に被告人が死亡していた事案について最高裁判所において公訴棄却決定がなされた事例

裁判要旨本件につき、昭和四四年八月一二日広島高裁が言い渡した判決に対し、検察官から上告の申立があつたところ、戸籍謄本によれば、被告人は同年七月三一日に死亡したことが明白であるから、刑訴法四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、四〇三条一項〈原裁判所が不法に公訴棄却の決定をしなかつたときは、決定で公訴を棄却しなければならない。〉、四〇四条〈第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。〉、三三九条一項四号〈左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。〉に従い、公訴棄却の決定をなすべきものとする。(上告趣意書は提出させていない)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年10月1日 昭和44(あ)1916
登載
集刑 第173号1頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法403条1項,刑訴法404条,刑訴法339条1項4号
論点517第414条刑事訴訟法

上告棄却決定前に被告人が死亡していたことを理由として右決定に対する弁護人からの異議申立が認められた事例

裁判要旨上告棄却決定後、適法な異議申立期間内に、弁護人から右決定前に被告人が死亡していたことを理由として公訴棄却の決定を求める旨の異議の申立があり、右死亡の事実が明らかな場合には、右決定を取り消し、被告人に対する公訴を棄却すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年5月17日 昭和42(す)94
登載
刑集 第21巻4号491頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条1項3号,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法428条2項,刑訴法428条3項,刑訴法422条,刑訴法426条2項,刑訴法404条,刑訴法339条1項4号
論点518第414条刑事訴訟法

一 上告審において別件の証言速記録の謄本を取り調べる方法
二 上告審において取り調べた別件の証言速記録の謄本はどの程度に判断の資料となしうるか

裁判要旨一 上告審において、別件の証言速記録の謄本を取り調べるにあたつては、公判にこれを顕出するをもつて足りる。
二 上告審は、右の方法で取り調べた証言速記録の謄本を、被告人等の捜査官に対する自白調書の任意性に関する原判断の当否を判断する資料とすることができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年12月9日 昭和36(あ)1162
登載
刑集 第20巻10号1107頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法393条1項,刑訴法404条,刑訴法305条
論点519第414条刑事訴訟法

有効な上告趣意書が提出されなかつたとされた事例。

裁判要旨本件上告趣意書提出期間内である昭和四〇年一月二〇日被告人の原審弁護人酒井祝成から「上告理由書」と題する書面が提出されているけれども、本件上告は被告人自身により提起されたもので、右原弁護人が提起したものでないことおよび同人を当審における弁護人に選任する旨の弁護人選任届は、遂に提出されていないことを認めることができる。してみれば右原審弁護人により提出された上告趣意は、何ら権限のない者の提出に係り不適法であるから、本件においては、上告趣意書提出期間内に有効な上告趣意書が差し出されなかつたことに帰する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年9月22日 昭和39(あ)2533
登載
集刑 第156号673頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法376条,刑訴法32条2項
論点520第414条刑事訴訟法

一 署名のない申立書によつてした被告人の上告申立の効力。
二 署名のない弁護人選任届によつてした被告人の弁護人選任の効力。

裁判要旨一 氏名を記載することができない合理的な理由がないのに、署名のない申立書によつてした被告人の上告申立は、無効である。
二 氏名を記載することができない合理的な理由がないのに、署名のない弁護人選任届によつてした被告人の弁護人選任は、無効である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年7月20日 昭和39(あ)2029
登載
刑集 第19巻5号591頁
参照法条
刑訴法30条1項,刑訴法355条,刑訴法374条,刑訴法385条,刑訴法414条,刑訴規則1条2項,刑訴規則18条,刑訴規則60条
論点521第414条刑事訴訟法

最高裁判所において公訴棄却決定がなされた事例。―第二審判決言渡前の被告人の死亡―

裁判要旨本件につき、福岡高裁が言渡した判決に対し、原審弁護人及び検察官から上告の申立があつたところ、検察官の上告趣意書添付の死亡診断書及び戸籍謄本並びに右弁護人の答弁書の各記載によれば、被告人は、右判決言渡の日の前日に死亡したものであることが明白であるから、刑訴法第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、第四〇四条〈第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。〉、第四〇三条第一項〈原裁判所が不法に公訴棄却の決定をしなかつたときは、決定で公訴を棄却しなければならない。〉、第三三九条第一項第四号〈左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。〉に従い、公訴棄却の決定をなすべきものとする。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年1月19日 昭和39(あ)1707
登載
集刑 第154号43頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法404条,刑訴法403条1項,刑訴法339条1項4号
論点522第414条刑事訴訟法

記録上の住居にあててなされた上告趣意書最終提出日の通知が無効とされ、意義申立が容れられた事例。

裁判要旨当裁判所は被告人の上告申立にかかる昭和三八年(あ)第八三九号道路交通法違反等被告事件について、上告趣意書最終提出日を指定し、その通知書を、郵便により、記録上被告人の住居と認められる京都市a区b町(新町名c町)d番地あてに送達したとおろ、送達報告書によると、被告人の雇人である甲が前記場所において右通知書を受領したことによりその送達を終つたことが窺われる。ところが、当裁判所の照会の結果、a郵便局の回答書により、右送達の当時被告人は既に他に転居していて前記場所に住居を有せずその受領者である甲は被告人の雇人、事務員、同居者のいずれでもなかつたこと及び右通知書が甲から被告人に交付されたかどうかも疑わしいことが明らかになつた。しがつて、被告人に対する右通知書の送達は有効になされていなかつたものといわざるをえない。当裁判所は、被告人が上告趣意書を指定の期間内に提出しなかつたことを理由として上告を棄却したのであるが、右のように被告人に対する上告趣意書最終提出日の通知が有効になされていなかつた以上、その瑕疵は原決定に影響すること明らかであり、原決定を取消すべきものと認める。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年9月10日 昭和38(す)203
登載
集刑 第148号65頁
参照法条
刑訴法54条,刑訴法414条,刑訴法376条,刑訴法386条1項1号,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法422条,刑訴法428条2項,刑訴法426条2項,刑訴規則62条,刑訴規則63条,刑訴規則266条,刑訴規則236条
論点523第414条刑事訴訟法

上告棄却の決定に対する電報による異議申立の適否

裁判要旨上告棄却の決定に対する異議の申立は、書面でこれをしなければならないとされているのであつて、訴訟手続の明確を期する趣旨から見れば、電報はここにいう書面に該当しないものと解するのを相当とする。従つて電報による本件申立は法令上の方式に違反したものであるから不適法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年5月29日 昭和37(す)149
登載
集刑 第142号845頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法423条1項
論点524第414条刑事訴訟法

一 旧道路交通取締法施行令第四一条に基づく旧新潟県道路交通取締規則(昭和三一年新潟県公安委員会規則第一号)第八条の改正と刑の廃止の有無
二 第一、二審の免訴の判決を上告審において事実の取調をすることなく有罪の判決を言い渡した事例

裁判要旨一 旧道路交通取締法施行令第四一条に基づく旧新潟県道路交通取締規則(昭和三一年新潟県公安委員会規則第一号)第八条による第二種原動機付自転車の二人乗の禁止が同条の改正により廃止されても、その廃止前にこれに違反した行為について、同施行令第七二条第三号の刑の廃止があつたものということはできない。
二 原審は第一審の免訴の判決を維持したが、被告人の本件犯罪事実の存在については、第一審がこれを適法に確定していることは半文上明らかである。よつて、当裁判所は、事実の取調をすることなく有罪の判決をなしうるものと解する。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和37年4月4日 昭和34(あ)316
登載
集刑 第141号689頁
参照法条
旧道路交通取締法23条1項,旧道路交通取締法30条,旧道路交通取締法施行令41条,旧道路交通取締法施行令72条3号,旧新潟県道路交通取締規則(昭和31年新潟県公安委員会規則1号)8条,旧新潟県道路交通取締改正規則(昭和33年新潟県公安委員会規則2号)9条,道路交通法附則14条,刑訴法337条2号,刑訴法400条但書,刑訴法414条
論点525第414条刑事訴訟法

理由にくいちがいがないとされた事例。
――広義における殺意を認定した第一審判決を控訴審が少くとも殺害の未必的故意があつたと認定して事実誤認の主張を排斥した事例。

裁判要旨第一審判決は広義における殺意を判示したに止まるのであるから、原判決が事実誤認の論旨につき少くとも殺害の未必的故意のあつたことを認定して事実誤認がない旨判示しても、理由齟齬の生じないことは明らかである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年11月20日 昭和37(あ)1661
登載
集刑 第145号143頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法378条4号,刑法199条
論点526第414条刑事訴訟法

上告を棄却した最高裁判所の決定に対する異議申立の要件。

裁判要旨上告を棄却した最高裁判所の決定に対する異議申立は、決定の内容に誤りのあることを発見した場合に限りすることができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年7月5日 昭和36(す)191
登載
刑集 第15巻7号1051頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法415条
論点527第414条刑事訴訟法

電報による上告の申立。

裁判要旨電報による上告の申立は法令上の方式に違反したものである(昭和二五年(あ)第二八三〇号同年一二月五日当裁判所第三小法廷決定、刑集四巻一二号二四八九頁)。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年12月20日 昭和36(あ)2829
登載
集刑 第140号687頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法374条
論点528第414条刑事訴訟法

電報による上告申立の適否。

裁判要旨電報による上告の申立は、不敵法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年2月27日 昭和35(あ)201
登載
刑集 第14巻2号206頁
参照法条
刑訴法374条,刑訴法385条1項,刑訴法414条
論点529第414条刑事訴訟法

電報による上告棄却決定に対する意義申立の適否。

裁判要旨上告棄却決定に対する意義の申立をするには、三日以内に申立書を差し出さなければならないところ、起訴手続の明確を帰する趣旨から見れば、電報はここにいう申立書に該当しないものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和35年1月25日 昭和35(す)22
登載
集刑 第132号83頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法422条,刑訴法423条1項
論点530第414条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立棄却決定について刑訴法第五〇一条の申立ができるか

裁判要旨上告棄却決定に対する異議申立棄却決定に対しては刑訴第五〇一条〈刑の言渡を受けた者は、裁判の解釈について疑があるときは、言渡をした裁判所に裁判の解釈を求める申立をすることができる。〉にいわゆる裁判の解釈を求める申立をすることができない
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年6月17日 昭和33(す)238
登載
刑集 第12巻10号2232頁
参照法条
刑訴法501条,刑訴法414条,刑訴法386条1項3号,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法422条,刑訴法415条
論点531第414条刑事訴訟法

上告棄却決定謄本が本人と弁護人との双方に日を異にして送達された場合と異議申立期間の起算日

裁判要旨上告棄却決定の謄本が、本人と弁護人との双方に日を異にし本人に先に送達された場合における異議申立の期間は、本人に送達された日から起算すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年5月29日 昭和32(す)390
登載
刑集 第11巻5号1576頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条2項,刑訴法55条1項,刑訴規則34条
論点532第414条刑事訴訟法

一 憲法第三七条第三項に違反しない事例
二 控訴審の判決に控訴趣意書記載の控訴趣意を引用する場合と控訴趣意書添付の要否。

裁判要旨一 必要的弁護事件の控訴審において、私選弁護人は控訴趣意書を提出せず、被告人がただ量刑不当を主張した控訴趣意書を提出しているに過ぎない場合、公判期日五日前に被告人より疾病を理由として右期日の延期を申請し、裁判所もまた同期日二日前に被告人に対し勾留執行停止の決定をしていても、右公判期日に私選弁護人が出頭しないときは、在廷の弁護士を弁護人に国選し、同弁護人に被告人提出の前記控訴趣意書に基いて弁論させた上で結審し、判決をしても、憲法第三七条第三項に違反するものではない。
二 控訴審の判決に控訴趣意書記載の控訴趣意を引用した場合、その控訴趣意書を判決書に添付しなければならないものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年3月14日 昭和31(あ)3468
登載
刑集 第11巻3号1080頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法414条,刑訴法289条,刑訴法387条,刑訴法389条,刑訴規則246条
論点533第414条刑事訴訟法

上告棄却決定前に被告人が死亡していたことを理由とする右決定に対する不服申立

裁判要旨最高裁判所が刑訴第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、第三八六条第一項三号〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。 控訴趣意書に記載された控訴の申立の理由が、明らかに第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由に該当しないとき。〉により上告棄却の決定をしたのち、三日の異義申立期間経過後に、弁護人から右決定前に被告人が死亡していたことを理由として公訴棄却の決定を求める旨の申立をしても、右申立は不適法として棄却する外はない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年7月18日 昭和28(す)223
登載
刑集 第9巻9号1878頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条1項3号,刑訴法2項,刑訴法385条2項,刑訴法422条,刑訴法415条,刑訴法404条,刑訴法339条1項4号
論点534第414条刑事訴訟法

電報による異議の申立―上告棄却決定に対する

裁判要旨刑訴第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、第三八六条第二項〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。〉、第三八五条第二項〈控訴の申立が法令上の方式に違反し、又は控訴権の消滅後にされたものであることが明らかなときは、控訴裁判所は、決定でこれを棄…〉、第四二二条〈即時抗告の提起期間は、三日とする。〉、第四二三条第一項〈抗告をするには、申立書を原裁判所に差し出さなければならない。〉によれば、上告棄却の決定に対する異議の申立は、右決定のあつた日から三日以内に書面でこれをしなればならないとされているのであつて、訴訟手続の明確を期する趣旨から見れば、電報はこゝにいう書面に該当しないものと解するのを相当とする。従つて電報による本件申立は法令上の方式に違反したものである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月24日 昭和30(す)134
登載
集刑 第105号1007頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法422条,刑訴法423条1項
論点535第414条刑事訴訟法

被告人の母からの上告申立の適否

裁判要旨原審における代理人または弁護人および被告人の法定代理人または保佐人に該当しない被告人の母からの上告申立は不適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年4月11日 昭和30(あ)732
登載
刑集 第9巻4号836頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法385条1項,刑訴法355条,刑訴法353条,刑訴法42条
論点536第414条刑事訴訟法

高等裁判所が刑訴第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉第三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉によりなした上告申立棄却決定と特別抗告

裁判要旨高等裁判所が刑訴第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、第三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉によりなした上告申立棄却決定に対して、最高裁判所に特別抗告をなすことは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年1月8日 昭和26(し)104
登載
刑集 第6巻1号1頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法375条,刑訴法428条1項,刑訴法428条2項,刑訴法433条
論点537第414条刑事訴訟法

刑訴法第三七七条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨…〉に定める保証書の添附がない場合と裁判の不公開を理由とする上告の適否

裁判要旨原審第一、二回公判が公開されなかつたことを上告理由とするときは、上告趣意書にその事由あることの充分な証明をすることができる旨の保証書が添附されなければならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年10月9日 昭和27(あ)2820
登載
集刑 第68号143頁
参照法条
刑訴法377条,刑訴法414条
論点538第414条刑事訴訟法

控訴趣意書提出期間経過後に選任された弁護人に控訴趣意書を提出させる措置を採らないことと憲法三七条第三項

裁判要旨憲法第三七条前段所定の弁護人に依頼する権利は被告人が自ら行使すべきもので同条項は裁判所が被告人に対し国選弁護人の選任を請求し得る旨を告知すべき義務を課したものではなく、裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与えたこの行使を妨げなければならないのである。(昭和二四年(れ)第二三八号同二四年一一月三〇日大法廷判決参照)然るに、本件において被告人は第一審大阪地方裁判所の弁護人選任に対する通知に対し弁護人は私選する旨回答し、且つ弁護人を私選し、原審においても国選弁護人の選任を請求せず却つて控訴趣意書提出期間経過後の昭和二五年六月一日自ら弁護人を選任し同弁護人は同年六月一六日の第一回公判期日に出頭の上被告人提出の控訴意趣書に基いて異議なく弁論を終了していることは本件記録に徴し明らかである。そして被告人が弁護人において控訴趣意提出期間内に控訴趣意書を提出できるような適当な時期に弁護人を選任しなかつたことは正に被告人の懈怠に基くものであつて記録を精査しても原審が被告憲法第三七条三項によつて保障された弁護人選任権の行使を妨げた事跡はとうてい認められない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年5月15日 昭和25(あ)2431
登載
刑集 第5巻6号1152頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法414条,刑訴法272条,刑訴法289条
論点539第414条刑事訴訟法

電報による上告申立の適否

裁判要旨電報による上告の申立は、不適法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和25年12月5日 昭和25(あ)2830
登載
刑集 第4巻12号2489頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法374条
論点540第414条刑事訴訟法

一 司法警察員の被告人に対する供述調書に犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告知したことの記載を欠く場合と憲法第三四条
二 証拠調前の裁判所の被告人に対する質問
三 審判の公開に関する規定違反を理由とする上告と刑訴法第三七七条所定の保証書の添付

裁判要旨一 司法警察員が犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を被告人に告げたことを必ず調書に記載すべき旨の法令の規定も存しないから、所論の警察員に対する被告人の供述調書に司法警察員が被告人に対して犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告知したことの記載が存しないからといつて、被告人の抑留をとらえて憲法第三四条に反するものということはできない。
二 証拠調前に裁判所が被告人に質問することは、裁判所がその裁量に基き必要であると思料して質問し、被告人がこれに対し任意に供述をした以上、必ずしも違法であるということはできない。
三 刑訴法第三七七条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨…〉は、同法第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉により上告審に準用されるから審判の公開に関する規定違反を主張する上告趣意書には、同法第三七七条所定の保証書を添付することを要する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年11月30日 昭和25(あ)1166
登載
刑集 第4巻11号2438頁
参照法条
憲法34条,刑訴203条1項,刑訴法311条,刑訴法377条,刑訴法414条
論点541第414条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立てと刑訴法四一五条三項の準用の有無

裁判要旨上告棄却決定に対する異議申立てには、刑訴法四一五条三項〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉の期間延長の申立てに関する規定の準用はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年5月27日 平成9(す)113
登載
刑集 第51巻5号433頁
参照法条
刑訴法385条2項,刑訴法386条2項,刑訴法414条,刑訴法415条
論点542第414条刑事訴訟法

跳躍上申立て棄却決定に対する異議の申立てが電報による期間経過後のものとして不適法とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成6年10月31日 平成6(す)204
登載
集刑 第264号197頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法385条1項,刑訴法385条2項
論点543第414条刑事訴訟法

上訴提起期間経過後の跳躍上告申立ての適否

裁判要旨上訴提起期間経過後の跳躍上告申立ては、控訴提起の有無にかかわらず不適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成6年10月19日 平成6(あ)980
登載
集刑 第264号195頁
参照法条
刑訴法385条1項,刑訴法414条,刑訴規則254条1項,刑訴規則255条
論点544第414条刑事訴訟法

上告審の手続と刑訴法三一四条一項の準用の有無

裁判要旨公判手続の停止に関する刑訴法三一四項の規定は上告審の手続に準用される。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成5年5月31日 平成3(あ)519
登載
刑集 第47巻6号1頁
参照法条
刑訴法314条1項,刑訴法404条,刑訴法414条
論点545第414条刑事訴訟法

異議申立権の回復請求が棄却された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成4年2月25日 平成4(す)14
登載
集刑 第260号181頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法385条2項,刑訴法414条
論点546第414条刑事訴訟法

上告棄却決定謄本を被告人に発送したところ被告人死亡によりこれが返送されてきたため公訴棄却決定をした事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成2年9月11日 平成2(あ)402
登載
集刑 第255号239頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法404条,刑訴法339条1項4号
論点547第414条刑事訴訟法

免訴判決に対し被告人が上訴することの可否

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成2年3月6日 平成1(あ)403
登載
集刑 第254号289頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法385条1項
論点548第414条刑事訴訟法

免訴判決に対し被告人が上訴することの可否

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成2年3月2日 平成1(あ)783
登載
集刑 第254号281頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法385条1項
論点549第414条刑事訴訟法

免訴判決に対し被告人が上訴することの可否

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成2年2月28日 平成1(あ)597
登載
集刑 第254号115頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法385条1項
論点550第414条刑事訴訟法

控訴審判決の宣告前に被告人が死亡していた場合について最高裁判所において公訴棄却決定がされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成27年3月3日 平成27(あ)239
登載
集刑 第316号139頁
参照法条
刑訴法339条1項4号,刑訴法403条1項,刑訴法404条,刑訴法414条
論点551第414条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する被告人の補佐人からの異議申立ての適否(消極)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年10月25日 平成16(す)616
登載
集刑 第286号407頁
参照法条
刑訴法42条,刑訴法353条,刑訴法355条,刑訴法385条2項,刑訴法386条2項,刑訴法414条
論点552第414条刑事訴訟法

被告人が上告趣意書の差出最終日に唯一の弁護人を解任し,新たに選任された弁護人につき延期された差出最終日に同弁護人を解任し,差出最終日を徒過した場合について,刑訴法414条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉,386条1項1号〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。 第三百七十六条第一項に定める期間内に控訴趣意書を差し出さないとき。〉による上告棄却決定が是認された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成14年3月27日 平成14(す)134
登載
集刑 第281号331頁
参照法条
刑訴法386条1項1号,刑訴法414条
論点553第414条刑事訴訟法

上告審における公判手続停止決定が取り消された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年3月17日 平成3(あ)519
登載
集刑 第273号145頁
参照法条
刑訴法314条1項,刑訴法404条,刑訴法414条
論点554第414条刑事訴訟法

被告人が弁護人に対し上告趣意書差出最終日前に被告人作成の上告趣意書を送付したが、弁護人が上告棄却決定後にこれを裁判所に提出したという事案につき、上告棄却決定に判断遺脱はないとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和5年3月7日 令和5(す)14
登載
集刑 第332号9頁
参照法条
刑訴法385条2項、刑訴法386条2項、刑訴法414条
論点555第414条刑事訴訟法

上告趣意書の差出最終日に弁護人が辞任し差出最終日には被告人に弁護人がなかったとしても、差出最終日までに上告趣意書を差し出さなかったことを理由に被告人の上告を棄却したことが正当であるとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 令和4年7月20日 令和4(す)428
登載
集刑 第331号1頁
参照法条
刑訴法386条1項1号、刑訴法414条
論点556第415条刑事訴訟法

いわゆる連続企業爆破事件の判決訂正申立棄却決定

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和62年4月20日 昭和62(み)1
登載
集刑 第246号11頁
参照法条
刑訴法415条,刑訴法417条
論点557第415条刑事訴訟法

決定に記載された自己の本籍の表示の訂正を求める異議の申立が不適法とされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和59年2月7日 昭和59(す)11
登載
集刑 第234号481頁
参照法条
刑訴法415条
論点558第415条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する判決訂正の期間延長の申立を棄却した事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年9月11日 昭和53(す)183
登載
集刑 第213号85頁
参照法条
刑訴法415条
論点559第415条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立が、裁判の内容に誤りのあることを理由とするものでなく(住居表示の訂正を求めるもの)、かつ期間後の申立であつて不適法とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年4月13日 昭和48(す)90
登載
集刑 第187号267頁
参照法条
刑訴法415条1項
論点560第415条刑事訴訟法

原判決をした小法廷を構成する裁判官の退官による定足数の不足と、その判決に対する訂正申立についての裁判をなすべき裁判所の構成

裁判要旨原判決をした小法廷を構成する裁判官が退官したため、右小法廷判決に対する判決訂正の申立について裁判しようとする時において、その定足数を欠くときは、新たに任命された裁判官を加えた小法廷で右訂正申立についての裁判をなすべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和46年2月3日 昭和45(み)18
登載
刑集 第25巻1号1頁
参照法条
刑訴法415条,刑訴法416条,刑訴規則270条,最高裁判所裁判事務処理規則2条2項
論点561第415条刑事訴訟法

反対意見の付されている上告棄却決定に異議申立がなされたとき、申立棄却決定にも反対意見を付すべきか

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和46年11月25日 昭和46(す)200
登載
集刑 第182号161頁
参照法条
刑訴法415条,裁判所法11条
論点562第415条刑事訴訟法

刑訴法第三六六条第一項〈刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上…〉は勾留中の被告人が判決訂正申立書を差し出す場合に準用されるか

裁判要旨在監者の上訴申立に関する刑訴法第三六六条第一項は、勾留中の被告人が、判決訂正申立書を差し出す場合に準用される。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年4月27日 昭和41(み)8
登載
刑集 第20巻4号332頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法415条,刑訴規則267条1項
論点563第415条刑事訴訟法

原判決をした大法廷を構成する裁判官の退官による定足数の不足とその判決に対する訂正申立についての裁判をなすべき裁判所の構成。

裁判要旨原判決をした大法廷を構成する裁判官が退官したため、右大法廷判決に対する判決訂正の申立について裁判しようとする時において、その定足数を欠くときは、新たに任命された裁判官を加えた大法廷で右訂正申立についての裁判をなすべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和33年7月2日 昭和33(み)24
登載
刑集 第12巻11号2394頁
参照法条
刑訴法415条,刑訴法416条,刑訴規則270条,最高裁判所裁判事務処理規則7条
論点564第415条刑事訴訟法

刑訴法第四一五条〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉の判決の内容に誤のある場合にあたらない一事例

裁判要旨判決理由中の訂正を求める箇所が、訂正事項と趣旨において異るところがないときは、刑訴第四一五条〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉の判決の内容に誤ある場合にあたらない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和32年4月5日 昭和32(み)16
登載
集刑 第118号769頁
参照法条
刑訴法415条
論点565第415条刑事訴訟法

上告趣意書に押捺した指印の瑕疵が裁判後判明した場合と裁判の訂正

裁判要旨拘置所に在所中の被告人の上告趣意書が拘置所長から裁判所に提出され、裁判所はこれに基き裁判をした場合、その書面の被告人名下その他訂正個所に捺された指印が被告人以外の者の手により擅になされたものであることが裁判後に判明しても、右書面の作成、署名が被告人によつてなされ、被告人自らこれを拘置所長に提出したものであることに疑の余地がない以上、右指印についての瑕疵は裁判を訂正する理由とするに足りない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年9月11日 昭和31(す)326
登載
集刑 第114号629頁
参照法条
刑訴法428条,刑訴法415条,刑訴規則61条1項
論点566第415条刑事訴訟法

一 被告人の本籍、住居、生年月日の訂正申立と刑訴第四一五条第一項〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉
二 判決書に「公判期日に出席した検察官の官氏名の記載」を欠き無効であるとしてその訂正を求むる申立と刑訴第四一五条第一項

裁判要旨本件訂正申立趣意第一点は、判決書に表示された被告人の本籍並びに住居の地番及び生年月日の訂正を求めるものであり、同第二点は判決書に「公判期日に出席した検察官の官氏名の記載」(刑訴規則五六条二項)がないから無効であるとしてその訂正を求めるというのであつて、いずれも判決の内容に誤のあることを理由とするものでなく、刑訴四一五条一項〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉の要件を欠くものである。(なお右判決は刑訴四〇八条〈上告裁判所は、上告趣意書その他の書類によつて、上告の申立の理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、判…〉により弁論を経ないで上告を棄却したものであるから、判決書にはその宣告期日に出席した検察官の官氏名の記載はこれを必要としないものと解すべきである)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年2月14日 昭和31(み)7
登載
集刑 第112号359頁
参照法条
刑訴法415条1項
論点567第415条刑事訴訟法

刑訴法第四一五条〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉、第四一六条〈訂正の判決は、弁論を経ないでもこれをすることができる。〉による判決の訂正をした事例 ―負担さすべき控訴費用がないのに之を負担させた判決の訂正―

裁判要旨当裁判所が被告人に対する被告事件について昭和三〇年七月一日言渡した判決の主文中第三項(被告人の訴訟費用負担)及び理由中「、一八一条〈刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付す…〉」を各削除する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年7月15日 昭和30(み)24
登載
集刑 第107号439頁
参照法条
刑訴法181条,刑訴法415条,刑訴法416条,刑訴規則270条
論点568第415条刑事訴訟法

上告裁判所の判決訂正の要件

裁判要旨刑訴法第一四五条〈左に掲げる者が前条の申立をしたときは、第一号に掲げる者についてはその院、第二号に掲げる者については内閣の承諾がなければ、…〉による判決の訂正は、判決の内容に誤のあることを発見した場合に限りすることができる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年12月23日 昭和30(み)23
登載
刑集 第9巻14号2963頁
参照法条
刑訴法415条,刑訴規則270条
論点569第415条刑事訴訟法

一 原判決後に大赦があつたときと上告趣意書の不提出
二 上告を申し立てた共同被告人にともに原判決後大赦があつた場合と上告趣意書を提出しなかつた共同被告人の一人に対する裁判

裁判要旨一 上告申立人が旧刑訴第四二三条〈抗告をするには、申立書を原裁判所に差し出さなければならない。〉所定の期間内に上告趣意書を提出しなかつた場合には、原判決の認定した罪について原判決後大赦があつても、上告裁判所は、同法第四二七条〈抗告裁判所の決定に対しては、抗告をすることはできない。〉に従いその上告を棄却する決定をすべきである。
二 原審で同種の犯行につき有罪判決を受け、ともに上告の申立をした共同被告人の一人が前項のように上告趣意書を提出しなかつたときは、他の上告申立人については原判決後に大赦があつたことを理由として原判決を破棄すべき場合でも、右上告趣意書を提出しなかつた上告申立人に対しては原判決を破棄すべきではない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和27年11月5日 昭和23(れ)1541
登載
刑集 第6巻10号1176頁
参照法条
旧刑訴法415条,旧刑訴法423条,旧刑訴法427条,旧刑訴法434条,旧刑訴法451条,昭和27年政令117号大赦令
論点570第415条刑事訴訟法

本籍地の表示の訂正申立と刑訴法第四一五条第一項

裁判要旨然し当裁判所のした上告棄却の決定に対する本件訂正申立はただ被告人の本籍地の表示の訂正を求めるだけであつて、当裁判所の前示裁判の内容に誤のあることを理由とするものでなく、従つて、刑訴四一五条一項〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉の要件を欠くから同四一七条一項〈上告裁判所は、訂正の判決をしないときは、速やかに決定で申立を棄却しなければならない。〉に従いこれを棄却する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年9月13日 昭和26(す)312
登載
刑集 第5巻10号1925頁
参照法条
刑訴法415条1項,刑訴法417条1項
論点571第415条刑事訴訟法

一 昭和二二年政令第一一八号飲食営業緊急措置令の性格
二 旧刑訴第八条第一項第四号〈数個の関連事件が各別に事物管轄を同じくする数個の裁判所に係属するときは、各裁判所は、検察官又は被告人の請求により、決定で…〉の牽連関係があるものとして起訴されたものと認むべき事例
三 訴訟費用の負担と旧刑訴第四〇三条〈原裁判所が不法に公訴棄却の決定をしなかつたときは、決定で公訴を棄却しなければならない。〉

裁判要旨一 飲食営業緊急措置令は、当所からその二条〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉において一定の期間だけその効力を有するいわゆる限時法的性格を持つ趣旨を表明し、その後三回に亘りその期間を延長した末昭和二四年五月七日飲食営業臨時規整法附則四項で「飲食営業緊急措置令は廃止する。但し、この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、同令はなおその効力を有する。」と規定したものである。
二 公判請求書に、被告人の物価統制令違反の罪と相被告人の物価統制令違反の罪とが、その時期及び場所を同じくして各別に犯されたものとして記載されているときは、右二個の事件は旧刑訴第八条第一項第四号〈数個の関連事件が各別に事物管轄を同じくする数個の裁判所に係属するときは、各裁判所は、検察官又は被告人の請求により、決定で…〉の規定に従い併せて起訴されたものと認むべきである。
三 訴訟費用の負担のごときは、控訴審の判決において第一審判決より被告人に不利益に変更しても、旧刑訴第四〇三条〈原裁判所が不法に公訴棄却の決定をしなかつたときは、決定で公訴を棄却しなければならない。〉の違反があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年12月20日 昭和26(れ)1835
登載
刑集 第5巻13号2556頁
参照法条
刑法6条,旧刑訴法415条,旧刑訴法8条1項4号,旧刑訴法403条,飲食営業緊急措置令(昭和22年7月1日政令118号),昭和22年3月29日政令314号,昭和23年2月28日政令4号,昭和23年4月30日政令98号,飲食営業等規整法附則4条(昭和24年5月7日法律52号)
論点572第415条刑事訴訟法

一 「九四式拳銃」と銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍
二 彈倉と銃砲等所持禁止令施行規則第一條銃砲の範圍
三 銃砲等所持禁止令第二の「所持した者」の判示方法
四 刑訴法第三二九條の「公判廷」の意義
五 公文書に文字の挿入あるも、その字數の記入なき場合
六 公判調書に公判廷を公開しなかつた旨の記載がない場合と公判の公開
七 公判調書に署名すべき裁判長の表示を缺く場合
八 公判廷における自白と憲法第三八條第三項及び刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」
九 銃砲等の所持を処罰しない旨の一地方行政官庁の掲示と刑訴第四一五条〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉

一〇 勾留状に記載すべき「執行の場所」

一一 保釈後四ケ月後の公判廷における自白と憲法第三八条第二項

一二 銃砲等所持禁止令第一条の法意

一三 銃砲等所持禁止令第二條の所持に對する犯意

裁判要旨一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。
二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。
三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示する必要はない。
四 刑訴法第三二九條の「公判廷」とは、同條第二項所定の者が全部列席して開かれた審判廷をいうのであるから、たとえ判事の事務室で開かれたとしても、右第二項所定の人員が總て列席して開かれた以上公判廷である
五 刑訴法第七二條所定の字數記入がなくても、文字の挿入は必ずしも無効ではない。書類作成者が正當に挿入したものと認められる場合は有効である。
六 公判調書に特に公開しなかつた旨の記載がない限り公判廷を公開したものと解すべきである。
七 公判調書には事實上裁判長をした者が署名すればよいのであつて、裁判長としての表示を缺くも差支えない。
八 公判廷における自白は憲法第三八條第三項及び刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」に含まれない。

九 地方官庁の行政的措置として、法定の期間経過後銃砲等の所持を届け出た者を処罰しない旨の掲示があつた事実は、刑訴第四一五条〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉所定の事実に準ずべきものではない。

一〇 勾留状を執行した司法警察官吏が勾留状に記載すべき「執行の場所」というのは、司法警察官吏が被告人にその勾留状を示してそれを執行した場所をいうのである。

一一 保釈後四ケ月以上を経過した後、公判廷においてなされた自白は、憲法第三八条第二項にいう、「不当に長い拘禁後の自白」ということはできない。

一二 銃砲等所持禁止令第一条は、わが国民一般に対し、許可なくして銃砲等を所持することを絶対に禁ずる趣旨である。

一三 犯意所持の認識がありながら、所持していれば、所持について犯意があつたといえるのであつて、その上さらに使用する意思等を必要とするものではない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和23年7月29日 昭和23(れ)397
登載
刑集 第2巻9号1076頁
参照法条
銃砲等所持禁止令1條1項本文,銃砲等所持禁止令2條,銃砲等所持禁止令1條,銃砲等所持禁止令施行規則(昭和21年内務省令28號)1條,刑訴法329條1項,刑訴法72條,刑訴法60條2項4號,刑訴法64條,刑訴法410條7號,刑訴法63條1項,刑訴法415条,刑訴法109条1項,刑訴法103条2項,憲法38條3項,憲法38条2項,刑訴應急措置法10條3項
論点573第415条刑事訴訟法

爆発物取締罰則違反、殺人、殺人未遂被告事件に対する判決訂正の申立て

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成6年9月5日 平成6(み)2
登載
集刑 第264号1頁
参照法条
刑訴法415条,刑訴法417条
論点574第415条刑事訴訟法

殺人等被告事件に対する判決訂正の申立て

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成5年3月9日 平成5(み)2
登載
集刑 第262号323頁
参照法条
刑訴法415条,刑訴法417条
論点575第416条刑事訴訟法

一 物価統制令は限特法である
二 統制額を指定した行政官庁の告示の廃止は「刑の廃止」となるか
三 原審訴訟手続に違法があるとの事由は適法な飛躍上の告理由となるか

裁判要旨一 物価統制令は、その第一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉に規定するごとく「終戦後ノ事態ニ対処シ物価ノ安定確保シ以テ社会経済秩序ヲ維持シ国民生活ノ安定ヲ図ルヲ以テ目的トス」るものであつて、終戦後という一時的異常な時態に対処するための法規であつて、かかる異常な社会状勢が終熄して経済事態が常態に復したときは、早晩廃止さるべき運命にある法規であることは、同条の規定するところによつて明らかである。即ち、いわゆる限時法性格を具有する法規である。
二 物価統制令自体の問題でなく、これにもとずく行政官庁の告示の廃止の場合のごときは、ある特定の品目に対する統制額廃止の結果として、統制違反の行為が必然的に罪とならなくなるというに過ぎないのであつて、かかる法規違反の行為を以て自今これを罪とせず、若しくは処罰せずとの法的確信にもとずいて、「刑ノ廃止」が行われるのではないのである。旧事情下においては反社会性を有つものとせられたその違反行為の可罰性に関する価値判断は告示廃止の後においても依然として異るところはないのである。
三 本件は旧刑訴法第四一六条第一号によつて、第一審判決に対し、上告の申立(いわゆる飛躍上告)をしたものであるが、同条同号によれば「被告事件ノ事実ニ付法令ヲ適用セズ又ハ不当ニ法令ヲ適用シタルコトヲ理由トスルトキ」すなわち原判決の事実の確定について争わず、その確定された事実に対する擬律上の違法を主張するときに限り、上告をすることができるのである。しかるに、論旨は原判決は、公判において為した証拠調の請求に対して決定をしなかつた違法があるというのであつて、畢竟、原判決の事実確定の手続に関して違法があると主張するに帰し原判決によつて確定された事実に対する法規適用上の違法を主張するものでない、から飛躍上告適法の理由とすることはできない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和25年10月11日 昭和23(れ)800
登載
刑集 第4巻10号1972頁
参照法条
物価統制令1条(昭22・4・勅令133号改正前のもの),旧刑訴法363条2号,旧刑訴法416条1号
論点576第417条刑事訴訟法

反対意見の付された判決に対し、判決訂正の申立があつた場合において、反対意見の裁判官をも含め全員一致の意見により、判決の内容に誤りのあることを発見しないとして、訂正申立を棄却した事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年12月23日 昭和50(み)3
登載
集刑 第198号961頁
参照法条
刑訴法417条,裁判所法11条
論点577第417条刑事訴訟法

判決に反対意見を付した裁判官と判決訂正申立棄却決定における意見表示

裁判要旨判決に反対意見を付した裁判官が、判決訂正申立棄却決定にも同一反対意見を付した事例。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和45年4月28日 昭和45(み)6
登載
集刑 第176号249頁
参照法条
刑訴法417条,裁判所法11条
論点578第417条刑事訴訟法

上告棄却決定告知後、その確定前に被告人が死亡したことを理由とする右決定に対する不服申立

裁判要旨被告人が昭和三一年三月六日死亡したことは医師A作成の死体検案書及び東京都新宿区長B認証の戸籍謄本によつて明らかであるが、被告人が死亡したのは前記上告棄却の決定告知後のことであること、これまた一件記録上明瞭である。則ち右上告棄却の決定が告知せられた当時においては未だ被告人は死亡せず存命中であつたのであるから本件公訴を棄却せず上告を棄却した当裁判所の決定は相当であつてその決定が現在、未確定であると否とにかかわらず同決定を訂正すべき理由はすこしもない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年4月17日 昭和31(す)148
登載
集刑 第113号369頁
参照法条
刑訴法426条1項,刑訴法339条1項4号,刑訴法417条
論点579第417条刑事訴訟法

上告棄却の決定に対する訂正申立を実質的に判断して棄却した事例

裁判要旨従つて本件訂正申立の理由は既に違憲を主張する前提である事実関係において事実と相違しその理由がないから刑訴法第四一七条第一項に則り主文のように決定する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年7月12日 昭和26(す)200
登載
集刑 第49号1007頁
参照法条
刑訴法417条1項
論点580第418条刑事訴訟法

判決訂正申立棄却決定に対する異議申立の適否。

裁判要旨上告棄却判決に対する訂正申立棄却決定に対しては異議申立は許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年11月10日 昭和33(す)482
登載
刑集 第12巻15号3511頁
参照法条
刑訴法418条,裁判所法7条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

刑事訴訟法 第405条 詳細ページ
第四百五条高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
一憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。
二最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
三最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
刑事訴訟法 第406条 詳細ページ
第四百六条最高裁判所は、前条の規定により上告をすることができる場合以外の場合であつても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については、その判決確定前に限り、裁判所の規則の定めるところにより、自ら上告審としてその事件を受理することができる。
刑事訴訟法 第407条 詳細ページ
第四百七条上告趣意書には、裁判所の規則の定めるところにより、上告の申立の理由を明示しなければならない。
刑事訴訟法 第408条 詳細ページ
第四百八条上告裁判所は、上告趣意書その他の書類によつて、上告の申立の理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、判決で上告を棄却することができる。
刑事訴訟法 第409条 詳細ページ
第四百九条上告審においては、公判期日に被告人を召喚することを要しない。
刑事訴訟法 第410条 詳細ページ
第四百十条上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。但し、判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合は、この限りでない。
2第四百五条第二号又は第三号に規定する事由のみがある場合において、上告裁判所がその判例を変更して原判決を維持するのを相当とするときは、前項の規定は、これを適用しない。
刑事訴訟法 第411条 詳細ページ
第四百十一条上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
一判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
二刑の量定が甚しく不当であること。
三判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。
四再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
五判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。
刑事訴訟法 第412条 詳細ページ
第四百十二条不法に管轄を認めたことを理由として原判決を破棄するときは、判決で事件を管轄控訴裁判所又は管轄第一審裁判所に移送しなければならない。
刑事訴訟法 第413条 詳細ページ
第四百十三条前条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所若しくは第一審裁判所に差し戻し、又はこれらと同等の他の裁判所に移送しなければならない。但し、上告裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び第一審裁判所において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。
刑事訴訟法 第413_2条 詳細ページ
第四百十三条の二第一審裁判所が即決裁判手続によつて判決をした事件については、第四百十一条の規定にかかわらず、上告裁判所は、当該判決の言渡しにおいて示された罪となるべき事実について同条第三号に規定する事由があることを理由としては、原判決を破棄することができない。
刑事訴訟法 第414条 詳細ページ
第四百十四条前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。
刑事訴訟法 第415条 詳細ページ
第四百十五条上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正することができる。
2前項の申立は、判決の宣告があつた日から十日以内にこれをしなければならない。
3上告裁判所は、適当と認めるときは、第一項に規定する者の申立により、前項の期間を延長することができる。
刑事訴訟法 第416条 詳細ページ
第四百十六条訂正の判決は、弁論を経ないでもこれをすることができる。
刑事訴訟法 第417条 詳細ページ
第四百十七条上告裁判所は、訂正の判決をしないときは、速やかに決定で申立を棄却しなければならない。
2訂正の判決に対しては、第四百十五条第一項の申立をすることはできない。
刑事訴訟法 第418条 詳細ページ
第四百十八条上告裁判所の判決は、宣告があつた日から第四百十五条の期間を経過したとき、又はその期間内に同条第一項の申立があつた場合には訂正の判決若しくは申立を棄却する決定があつたときに、確定する。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。