刑事訴訟法 / テーマ別まとめ

公判/公判の裁判

公判の裁判の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

公判の裁判は、審理を終えた事件について裁判所がどのような場合にどの種類の裁判(判決・決定)を言い渡すかを定めています。管轄違い・移送・有罪・無罪・免訴・公訴棄却などの要件と、判決の告知方法、さらに拘禁刑以上の判決を受けた者の出国制限・許可の仕組みまでを含みます。

公判の裁判
裁判の種類形式言い渡す場合
管轄違い判決事件が裁判所の管轄外のとき
高裁からの移送決定特別権限事件が下級裁判所の管轄と判明
簡裁からの移送決定地方裁判所で審理するのが相当なとき
有罪(刑の言渡し)判決犯罪の証明があったとき
執行猶予判決刑の言渡しと同時に猶予を付す
刑の免除判決刑を免除するとき
無罪判決罪とならない・証明がないとき
免訴判決確定判決・法令廃止・大赦・時効完成
公訴棄却(判決)判決裁判権なし・二重起訴等
公訴棄却(決定)決定公訴取消し・被告人死亡等
  • 土地管轄の管轄違いは被告人の申立てが必要で、証拠調べ開始後は申立てできない(331条)
  • 266条2号により地裁の審判に付された事件は管轄違いの言渡しができない(329条ただし書)
  • 公訴棄却の決定には即時抗告ができる(339条2項)
  • 公訴取消しによる公訴棄却が確定した場合、新たに重要な証拠を発見したときに限り再起訴できる(340条)
  • 被告人が陳述せず、無許可退廷、秩序維持のための退廷命令のときは、陳述を聴かず判決できる(341条)
  • 判決は公判廷で宣告により告知する(342条)
1

公判の裁判

公判の裁判について、条文は何を定めているか。

第329条管轄外の事件は判決で管轄違いを言い渡す1項判例 3件
  • 被告事件が裁判所の管轄外なら判決で管轄違いを言い渡す
  • 266条2号〈裁判所は、第二百六十二条第一項の請求を受けたときは、左の区別に従い、決定をしなければならない。 請求が理由のあるときは、事件を管轄地方裁判所の審判に付する。〉で地裁の審判に付された事件は管轄違いを言い渡せない
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第330条特別権限事件が下級裁判所の管轄なら決定で移送1項判例 2件
  • 高裁の特別権限事件が下級裁判所の管轄と分かれば決定で移送する
  • この場合329条〈被告事件が裁判所の管轄に属しないときは、判決で管轄違の言渡をしなければならない。但し、第二百六十六条第二号の規定により地…〉の管轄違いの言渡しはしない
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第331条土地管轄違いは被告人の申立てが必要2項判例 6件
  • 土地管轄については被告人の申立てがなければ管轄違いを言い渡せない
  • 証拠調べを始めた後は管轄違いの申立てができない
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第332条簡裁は地裁が相当なら決定で移送する1項判例 11件
  • 簡易裁判所が地方裁判所での審理が相当と認めれば決定で移送する
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第333条犯罪の証明があれば判決で刑を言い渡す2項判例 5件
  • 犯罪の証明があれば334条〈被告事件について刑を免除するときは、判決でその旨の言渡をしなければならない。〉の場合を除き判決で刑を言い渡す
  • 執行猶予を付けるときも刑の言渡しと同時に判決で言い渡す
  • 猶予期間中の保護観察も同時に判決で言い渡す
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第334条刑を免除するときも判決で言い渡す1項判例 7件
  • 刑を免除するときは判決でその旨を言い渡す
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第335条有罪判決には事実・証拠・法令適用を示す2項判例 85件
  • 有罪の言渡しには罪となる事実、証拠の標目、法令の適用を示す
  • 犯罪の成立を妨げる事実や刑の加重減免の事実の主張には判断を示す
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第336条罪にならない・証明がないときは無罪1項判例 45件
  • 被告事件が罪とならない、または犯罪の証明がないときは判決で無罪を言い渡す
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第337条確定判決・大赦などがあれば免訴1項・4号判例 66件
  • 確定判決を経た、犯罪後に法令で刑が廃止された場合は判決で免訴
  • 大赦があった、時効が完成した場合も判決で免訴
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第338条裁判権がない等のときは判決で公訴棄却1項・4号判例 42件
  • 被告人に裁判権がないときは判決で公訴を棄却する
  • 340条〈公訴の取消による公訴棄却の決定が確定したときは、公訴の取消後犯罪事実につきあらたに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事…〉違反の起訴、二重起訴、起訴手続きが無効なときも判決で棄却
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第339条取消し・被告人死亡等は決定で公訴棄却2項・5号判例 31件
  • 公訴取消しの効力発生、事実が罪にならない、被告人死亡等は決定で棄却
  • 10条〈同一事件が事物管轄を異にする数個の裁判所に係属するときは、上級の裁判所が、これを審判する。〉・11条〈同一事件が事物管轄を同じくする数個の裁判所に係属するときは、最初に公訴を受けた裁判所が、これを審判する。〉により審判できないときも決定で棄却
  • この決定には即時抗告ができる
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第340条公訴取消し後の再起訴は新証拠発見時のみ1項判例 13件
  • 公訴取消しによる棄却決定が確定しても、犯罪事実の重要な新証拠が見つかれば再起訴できる
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第341条陳述しない・退廷した被告人は聴かず判決できる1項判例 6件
  • 被告人が陳述しない、無許可で退廷した、秩序維持で退廷を命じられたときは陳述を聴かず判決できる
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第342条判決は公判廷での宣告で告知する1項判例 9件
  • 判決は公判廷において宣告により告知する
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第342_2条拘禁刑以上の判決を受けた者は出国に許可が必要1項判例なし
  • 拘禁刑以上の刑の判決宣告を受けた者は裁判所の許可なく本邦から出国できない
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第342_3条本人や家族が出国許可を請求できる1項判例なし
  • 判決宣告を受けた本人のほか、弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系親族・兄弟姉妹が請求できる
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第342_4条特別な事情があれば期間を定めて出国を許可5項判例なし
  • 出国を許すべき特別の事情があれば決定で期間を指定して許可する
  • 収容令書・退去強制令書の発付者や被監理者は対象外
  • 決定前に検察官の意見を聴き、必要なら期間の延長・短縮ができる
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第342_5条出国許可には帰国等保証金を定める3項判例なし
  • 出国を許可するときは帰国等保証金額を定める(保釈中の者を除く)
  • 保証金額は刑名・刑期、生活の本拠、資産、在留資格等を考慮して定める
  • 渡航先の制限など適当な条件を付けることができる
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第342_6条許可の効力は保証金の納付時に生じる2項判例なし
  • 帰国等保証金額が定められた場合、納付があった時に許可の効力が生じる
  • 保証金の納付手続には94条2項〈保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない。〉・3項の規定を準用する
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第342_7条違反や不帰国時は許可取消し・保証金没取4項・2号判例なし
  • 収容令書・退去強制令書・監理措置決定を受けたときは決定で許可を取り消す
  • 帰国しないおそれや条件違反があるときも検察官の請求か職権で許可を取り消せる
  • 取消し時や指定期間内に帰国等しなかったときは保証金の全部・一部を没取できる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第329条刑事訴訟法

一 土地管轄についての瑕疵が治癒されたと認められた事例
二 刑訴法六条〈土地管轄を異にする数個の事件が関連するときは、一個の事件につき管轄権を有する裁判所は、併せて他の事件を管轄することができ…〉所定の関連事件の管轄と併合審判の要否

裁判要旨一 刑訴法一九条〈裁判所は、適当と認めるときは、検察官若しくは被告人の請求により又は職権で、決定を以て、その管轄に属する事件を事物管轄を同…〉により移送を受けた被告事件について、当初土地管轄のあることが明らかでなかつたとしても、その後管轄違の申立がされるまでの間に土地管轄が備わるに至つた場合には(判文参照)、土地管轄についての瑕疵は治癒される。
二 刑訴法六条〈土地管轄を異にする数個の事件が関連するときは、一個の事件につき管轄権を有する裁判所は、併せて他の事件を管轄することができ…〉による関連事件の管轄が認められるためには、いわゆる固有管轄事件及びその関連事件が共に同一の裁判所に係属することを要するが、必ずしもその併合審判を要するものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年11月30日 昭和56(あ)929
登載
集刑 第238号247頁
参照法条
刑訴法2条,刑訴法6条,刑訴法7条,刑訴法9条,刑訴法19条,刑訴法329条,刑訴法331条,刑訴法378条1号,刑訴法398条,刑訴法399条,刑訴法412条
論点2第329条刑事訴訟法

土地管轄についての瑕疵が治癒されたと認められた事例

裁判要旨刑訴法一九条〈裁判所は、適当と認めるときは、検察官若しくは被告人の請求により又は職権で、決定を以て、その管轄に属する事件を事物管轄を同…〉により移送を受けた被告事件について、その当時土地管轄があることが明らかでなかつたとしても、その後管轄違の申立がされるまでの間に土地管轄が具備されるに至つた場合には(判文参照)、土地管轄についての右瑕疵は治癒される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年10月13日 昭和56(あ)1398
登載
刑集 第37巻8号1139頁
参照法条
刑訴法2条,刑訴法6条,刑訴法9条,刑訴法19条,刑訴法329条,刑訴法331条,刑訴法378条1号,刑訴法398条,刑訴法399条,刑訴法412条
論点3第329条刑事訴訟法

一 公判調書の末尾に裁判所書記官補の官名の記載並びにその署名捺印の存することと公判期日に立会した裁判所書記
二 公判調書の末尾に裁判所書記官補の官名の記載並びにその署名捺印することと旧刑訴第六〇条第二項第二号〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉

裁判要旨一 公判調書の末尾に裁判所書記官補A某の官名の記載並びにその署名捺印がある外、他にその公判期日に立会した裁判所書記の官氏名の記載がない場合には、右A書記官補が裁判所書記として同公判期日に立会したものと認めることができる。
二 公判調書の末尾に裁判所書記官補A某の官名の記載並びにその署名捺印がある場合には、たとえその公判期日に立会した裁判所書記の官氏名につき特別の記載がなくても、その公判調書は旧刑訴第六〇条第二項第二号〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉の要件も欠くものとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年2月14日 昭和26(れ)1786
登載
刑集 第6巻2号237頁
参照法条
旧刑訴法60条2項2号,旧刑訴法63条,旧刑訴法329条
論点4第330条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる一事例。−制限住居の不備による送達の不完全から被告不出頭のまま審理判決した場合−

裁判要旨職権をもつて調査すると、本件についての上訴権回復を申立事件に対する東京高裁の決定並びに同事件および本件の一件記録によれば、被告人は、昭和二三年七月二〇日静岡地裁において保釈決定を受けた際その住居を静岡市abに制限されたが、被告人並びにその代人の責に帰すべからざる事由によつて被告人はその制限住居を知らず且つ被告人は該制限住居に居住したこともなかつたことを認めることができる。然るに、本件記録によれば、原審は、右の制限住居に宛てて本件公判期日の召喚状を発送し、その不送達となるや公判期日の召喚状及びその後の書類の送達はすべて公示送達によつてなし、そのため同第四回公判において被告人不出頭のまま旧刑訴四〇四条〈第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。〉、刑訴法施行法二条の規定により被告人の陳述を聴かず審理した上判決をしたものであることを認めることができる。されば、原判決の審判には事実の確定に影響を及ぼすべき法令の違反があつて、刑訴施行法三条の二、刑訴四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年3月27日 昭和30(れ)13
登載
集刑 第123号829頁
参照法条
旧刑訴法330条,旧刑訴法404条,刑訴施行法2条,刑訴施行法3条の2,刑訴法411条1号
論点5第330条刑事訴訟法

一 旧刑訴第四一〇条第八号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。但し、判決に影響を及ぼさな…〉および第一六号にあたらない事例
二 憲法第三七条第一項にいわゆる公平な裁判所の裁判の意義

裁判要旨一 旧刑訴法事件における控訴審の第二八回公判期日(昭和二六年六月一八日)になつて、被告人よりその二日前の日附になる医師の診断書を添え公判延期願が提出されたが、その診断書によつては必らずしも出廷不可能な疾病とは認められず、また現に被告人がその公判期日に出頭していて、右公判延期申請が却下されるや自ら裁判長忌避の申立を為し、その申立が却下されるとさらに抗告を申し立て、且つ証人の尋問途中裁判長の許可を受けないで退廷し、その後適式な公判期日の指定があつたにかかわらず、第九二回公判期日(同年七月四日)二日前の日附になる医師の診断書を差し出しただけで、公判延期願を提出することもなく、その他首肯すべき事由も示すことなく、同公判期日および第三〇回公判期日(同月六日)に出頭しなかつた場合には、裁判所が右診断書を措信せず、何ら公判手続を停止することなく、爾後被告人不出頭のままその陳述を聴かないで審判したからといつて、旧刑訴第四一〇条第八号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。但し、判決に影響を及ぼさな…〉および第一六号所定の事由があるものとすることはできない。
二 憲法第三七条第一項にいわゆる公平な裁判所の裁判とは被告人の側からみてその手続が不公平であると思われる裁判を指すものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年1月17日 昭和26(れ)2143
登載
集刑 第72号207頁
参照法条
旧刑訴法410条8号,旧刑訴法410条16号,旧刑訴法404条,旧刑訴法330条,旧刑訴法407条,旧刑訴法352条,刑訴規則183条,刑訴規則施行規則3条1号,憲法37条1項
論点6第331条刑事訴訟法

弁論再開決定に対する特別抗告の適否

裁判要旨弁論再開決定のように、訴訟手続に関し判決前にした決定は、刑訴法四三三条一項〈この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に…〉にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」にあたらないのであるから、本件抗告は不適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年10月9日 昭和44(し)62
登載
集刑 第173号289頁
参照法条
刑訴法331条1項,刑訴法420条1項,刑訴法433条1項
論点7第331条刑事訴訟法

刑訴法第三三二条〈簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。〉による移送と土地管轄。

裁判要旨簡易裁判所が刑訴第三三二条〈簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。〉により移送するにあたり、土地管轄を有しない地方裁判所に移送することは違法であるが、移送を受けた地方裁判所は被告人の申立がなければ管轄違の言渡をすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年10月31日 昭和33(あ)769
登載
刑集 第12巻14号3429頁
参照法条
刑訴法332条,刑訴法331条
論点8第331条刑事訴訟法

刑訴第二条第一項〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉にいわゆる「現在地」の意義

裁判要旨刑訴第二条第一項〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉にいわゆる「現在地」とは、公訴提起の同時被告人が現在する地を指称し、これに現在する事由の如何を問わないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月17日 昭和30(あ)91
登載
刑集 第9巻6号1065頁
参照法条
刑訴法2条,刑訴法331条
論点9第331条刑事訴訟法

一 判決に被告たる会社を表示する方法と被告会社名の変更
二 会社代表者と誤記された会社代理人の供述の証拠能力

裁判要旨判決に表示すべき被告会社については会社の名称、事務所及びその代表者の氏名を掲げるのが相当であるが、会社の名称に変更があつて判決に会社の旧名称を掲げたからといつてこれを以つて違法ということはできないし、代表者の氏名は必ずしもこれを判決に表示することを要するものではない。原判決にAを被告会社の代表者と表示したのは代理人の誤記であること記録上明白であり、代理人の供述は被告人本人の供述としてではなく代理人の供述としてこれを証拠とすることができるのである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年10月23日 昭和26(れ)998
登載
集刑 第55号75頁
参照法条
旧刑訴法69条,旧刑訴法331条
論点10第332条刑事訴訟法

刑訴法第三三二条〈簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。〉の適用範囲。

裁判要旨刑訴法第三三二条〈簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。〉は、当該事件について、地裁が事物管轄をもつ場合にのみ適用あるものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年1月28日 昭和39(あ)1437
登載
集刑 第154号545頁
参照法条
刑訴法332条,裁判所法33条2項,裁判所法33条3項
論点11第332条刑事訴訟法

刑訴法第三三二条〈簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。〉の適用範囲。

裁判要旨刑訴法第三三二条〈簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。〉は、当該事件について、地裁が事物管轄をもつ場合にのみ適用である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年12月25日 昭和39(あ)1439
登載
刑集 第18巻10号978頁
参照法条
刑訴法332条,裁判所法33条2項,裁判所法33条3項
論点12第332条刑事訴訟法

一 略式命令をした裁判官と除斥原因
二 共同被疑者に対し刑訴法第二二七条による証人尋問の請求が許されるか

裁判要旨一 略式命令をした裁判官が、同命令に対して正式裁判の請求があつた場合に、その事件を別件と併合した上、刑訴第三三二条〈簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。〉により地方裁判所に移送しても、除斥さるべき職務の執行をしたものといえない
二 共同被疑者に対しても、他の共同被疑者の被疑事件につき、刑訴第二二七条〈第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日において…〉による証人尋問の請求が許される
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年2月23日 昭和35(あ)1695
登載
刑集 第15巻2号396頁
参照法条
刑訴法20条7号,刑訴法461条,刑訴法313条1項,刑訴法332条,刑訴法227条,刑訴法223条
論点13第332条刑事訴訟法

簡易裁判所が裁判所法第三三条第三項の制限を超えて懲役刑を言渡した判決の違法と非常上告

裁判要旨裁判所法三三条一項によれば簡易裁判所は窃盗及び傷害の罪について裁判権を有するが、同条二項によつて但書の場合を除いて禁錮以上の刑を科することができないことになつており、傷害罪につき懲役刑を選択し窃盗罪と併合加重をして懲役刑を言渡すことはできないことが明らかである。簡易裁判所がそのような処断を相当であると認めれば同条三項、刑訴法三三二条〈簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。〉の規定により事件を地裁に移送しなければならない。これをしないで傷害罪に懲役刑を選択の上併合加重をした原判決は、裁判所法三三条二項に違反したもので本件非常上告は理由がある。そして原判決は被告人のため不利益であると認められるから刑訴法四五八条一号により原判決を破棄し、右被告事件について更に判決することとする。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年3月26日 昭和32(さ)1
登載
集刑 第118号419頁
参照法条
裁判所法33条,刑訴法332条,刑訴法454条,刑訴法458条1号
論点14第332条刑事訴訟法

簡易裁判所が裁判所法第三三条第三項の制限を超えて懲役刑を言渡した判決の違法と非常上告

裁判要旨原審(簡易裁判所)が、本件の窃盗と鉄砲刀剣類等所持取締令違反とを刑法四五条の併合罪と認めた以上、前者につき懲役三年以下を言い渡し、後者につき罰金刑を選択して言い渡すべきものとするならば格別、しからずして、後者につき懲役刑を選択し、重い前者の法定懲役刑に併合罪の加重をした刑期範囲内において被告人に対し一個の懲役刑を言い渡すのを相当と認めたのであるから、原審としてはすべからく裁判所法三三条三項、刑訴法三三二条〈簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。〉により事件を管轄地裁に移送する決定をなすべきものであつた。しかるに原審はこれをしないで自から一個の懲役刑を言渡したのであるから、原審の審判は裁判所法三三条二項に違反するものというのほかない。本件上告は理由がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年1月29日 昭和31(さ)3
登載
集刑 第117号501頁
参照法条
裁判所法33条,刑訴法332条,刑訴法458条1号
論点15第332条刑事訴訟法

簡易裁判所が裁判所法第三三条第三項の制限を超えて懲役刑を言渡した判決の違法と非常上告

裁判要旨原審釧路簡易裁判所は昭和二八年五月六日、被告人Aに対する窃盗傷害被告事件につき二個の窃盗の事実並びに二個の傷害の事実を認定して、これに対しそれぞれ相当法条適用の上傷害罪について刑法二〇四条所定刑中懲役刑を選択し、以上の各罪を併合罪として法定の加重をした刑期範囲内において同被告人を懲役一年六月に処し、五年間右刑の執行を猶予する旨の判決を言い渡し、この判決は上訴申立期間の経過により確定したものであることが認められる。されば原審簡易裁判所は右各傷害罪についてその法定刑中懲役刑をもつて処断するを相当と認めながら、裁判所法三三条三項、刑訴三三二条〈簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。〉により事件を地方裁判所に移すことなく、自ら同罪につき懲役刑をもつて処断したものであつて、裁判所法三三条二項に違反するものであること明らかである。よつて右の点に関する非常上告は理由があり、しかも原判決は被告人のため不利益であると認められるから、刑訴四五八条一号〈非常上告が理由のあるときは、左の区別に従い、判決をしなければならない。 原判決が法令に違反したときは、その違反した部分を破棄する。但し、原判決が被告人のため不利益であるときは、これを破棄して、被告事件について更に判決をする。〉により原判決を破棄し、右事件につき更に判決すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年7月13日 昭和31(さ)1
登載
集刑 第114号189頁
参照法条
裁判所法33条,刑訴法332条,刑訴法454条,刑訴法458条1号
論点16第332条刑事訴訟法

刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたる一事例 ―簡易裁判所が違法に懲役刑を言渡した場合と破棄の事由―

裁判要旨簡易裁判所が裁判所法第三三条第二項所定の制限に違反し、外国人登録法違反罪について懲役刑を選択処断した違法を看過して控訴を棄却した原判決は、第一審判決とともに、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年12月20日 昭和29(あ)232
登載
刑集 第9巻14号2906頁
参照法条
裁判所法33条,刑訴法332条,刑訴法411条1号,刑訴法413条
論点17第332条刑事訴訟法

公判手続の更新と公判調書の記載

裁判要旨裁判官が、かわつたことにより公判手続を更新した場合には、公判調書にその旨を記載すれば足り、更新前の公判調書、証拠書類および証拠物等について証拠の標目、その取調の順序を記載する必要はない。註。本件は簡易裁判所から地方裁判所え移送のあつた場合である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年7月14日 昭和28(あ)1220
登載
刑集 第8巻7号1108頁
参照法条
刑訴法48条,刑訴法315条,刑訴法332条,刑訴規則44条,刑訴規則213条の2
論点18第332条刑事訴訟法

簡易裁判所の管轄に属しない事件を刑訴第三三二条〈簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。〉により移送できるか

裁判要旨簡易裁判所の事物管轄に属する刑事事件が簡易裁判所に起訴された後、検察官においてその訴因罰条の変更を請求し、同裁判所がこれを許可したためその事件が簡易裁判所の事物管轄に属しないこととなつた場合においても、同裁判所が刑訴三三二条〈簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。〉により事件を管轄地方裁裁所に移送することを妨げないものと解すべきである。(ただしかかる場合においては、簡易裁判所が訴因罰条変更請求の許可の決定を留保したまゝ移送するを可とする。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年3月20日 昭和26(あ)2287
登載
刑集 第7巻3号597頁
参照法条
刑訴法332条,裁判所法33条
論点19第332条刑事訴訟法

憲法第三七条第一項に違反しない事例

裁判要旨ただ一人の裁判官が配属せられ且つその裁判官が簡易裁判所裁判官と地裁支部裁判官とを兼任している場合、裁判官が簡易裁判所に略式命令の請求があつた事件につき、これを略式命令不相当として通常公判手続に移し、二回の公判審理とこれに伴う証拠調をした上、地方裁判所において審判するのが相当だとしてさらに地方裁判所支部に移送し、自ら審理判決をしたとしても、その一事をもつて憲法第三七条第一項にいわゆる公平な裁判所の裁判でないということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年2月19日 昭和26(あ)4205
登載
刑集 第7巻2号293頁
参照法条
刑訴法463条,刑訴法332条,刑訴法20条,裁判所法33条3項,憲法37条1項
論点20第333条刑事訴訟法

型の適用に関する裁判所の裁量権。―刑法第二四六条第一項の法定刑

裁判要旨刑法二四六条一項は、「人ヲ欺罔シテ財物ヲ騙取シタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス」る旨を規定し、詐欺の犯罪構成要件の定め方に明確を欠くところはない。そして右のように刑の適用に関し裁判所の裁量権を広く認めているのは、形式的標準によつて量刑を拘束することを不当とする立法政策によるものであつて、量刑については、犯人の性行、経歴、環境、犯行の動機、手段方法、実害の大小等犯人の主観及び客観の事情を併せ考察してその適切を期すべきことを当然の前提とするものであり、決して裁判所の恣意を許す趣旨に出たものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年6月16日 昭和36(あ)588
登載
集刑 第138号455頁
参照法条
刑法246条1項,刑訴法333条
論点21第333条刑事訴訟法

犯罪行為後の発生事実を刑の量定に参酌した一事例

裁判要旨被告人が火薬類を所持しこれを譲渡しなかつたならば、その直後に災害が発生しなかつたものであると認められる事情の存する場合に、その火薬類により発生した災害の結果を火薬類所持罪の量刑の一事情として参酌したからといつて、不当ではなく、違法ということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年12月22日 昭和29(あ)665
登載
刑集 第10巻12号1667頁
参照法条
刑訴法333条,刑訴法381条,刑訴法411条2号,火薬類取締法59条2号,火薬類取締法21条
論点22第333条刑事訴訟法

宣告刑を、判決書と告知された判決との間に、有罪として認定された犯罪事実の個数が合致するか否かの判断の資料に供することができるか

裁判要旨第一審裁判所の判決書において有罪として認定摘示された犯罪事実の個数と宣告された判決において有罪として告知された犯罪事実の個数とが合致するかどうか、即ち判決書には全部有罪となつているが、宣告の際には一部分を無罪として告知したかどうかを上訴審において判断する場合、争なき宣告刑をその判断の資料の一つに供することは妨げない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年12月25日 昭和26(あ)2313
登載
集刑 第90号399頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法336条,刑訴法333条1項,刑訴法379条,刑訴法381条,刑訴規則34条,刑訴規則35条
論点23第333条刑事訴訟法

併合罪関係にある複数の罪のうちの1個の罪のみでは死刑又は無期刑が相当とされない場合にその罪について死刑又は無期刑を選択することの可否

裁判要旨併合罪関係にある複数の罪のうちの1個の罪のみでは死刑又は無期刑が相当とされない場合であっても,死刑又は無期刑を選択する結果科されないこととなる刑に係る罪を,これをも含めて処罰する趣旨で考慮し,上記1個の罪について死刑又は無期刑を選択することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成19年3月22日 平成18(あ)2455
登載
刑集 第61巻2号81頁
参照法条
刑法45条,刑法46条,刑訴法333条1項
論点24第333条刑事訴訟法

1 有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義
2 有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義は,直接証拠によって事実認定をすべき場合と情況証拠によって事実認定をすべき場合とで異なるか

裁判要旨1 有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」というのは,反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく,抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても,健全な社会常識に照らしてその疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には有罪認定を可能とする趣旨である。
2 有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義は,直接証拠によって事実認定をすべき場合と情況証拠によって事実認定をすべき場合とで異ならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成19年10月16日 平成19(あ)398
登載
刑集 第61巻7号677頁
参照法条
(1,2につき)刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法333条1項
論点25第334条刑事訴訟法

一 占領軍軍事裁判所の裁判と憲法第三九条並びに刑訴第三三七条第一号〈左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。 確定判決を経たとき。〉
二 刑法第五条但書に基く刑の執行の軽減又は免除とその手続並びに形式

裁判要旨一 すでに占領軍軍事裁判所の裁判を経た事実について、重てねわが裁判所で処罰しても、憲法第三九条に違反しない。また、右軍事裁判が確定しても、刑訴第三三七条第一号〈左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。 確定判決を経たとき。〉の確定判決を経たときとはいえない。
二 刑法第五条但書に基く刑の執行の軽減又は免除は、裁判所が、刑の言渡と同時に主文においてなすべきものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年12月23日 昭和28(あ)882
登載
刑集 第8巻13号2288頁
参照法条
憲法39条,刑訴法337条1号,刑訴法334条,刑法5条
論点26第334条刑事訴訟法

刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉に該当する一事例

裁判要旨旧刑訴法事件の控訴審において、必要的弁護事件につき、弁護人の立会なしに審理判決したときは、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉に該当する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年3月28日 昭和26(れ)521
登載
刑集 第6巻3号559頁
参照法条
刑訴法411条1号,旧刑訴法334条
論点27第334条刑事訴訟法

必要的弁護の条件に関する新旧両刑訴法の差異と憲法の平等の原則

裁判要旨必要的弁護の条件が新旧刑訴法の間に区別があり従つて旧件と新件との間に取扱に差等を生ずるが、それは憲法の平等原則に違反するものでない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年1月31日 昭和26(れ)2132
登載
集刑 第59号483頁
参照法条
憲法14条,旧刑訴法334条,新刑訴法289条
論点28第334条刑事訴訟法

一 旧刑訴法第三三四条は憲法第三七条、刑訴応急措置法第四条により改正変更されたが−必要的弁護事件以外の事件と弁護人の立会の要否
二 公判期日に適式の召喚を受けた弁護人の不出頭と弁護権の不法制限

裁判要旨一 論旨は、原審裁判所は旧刑訴法第三三四条を墨守して弁護人の期日懈怠の責任を被告人等に負わしめ、弁護人の立会なくして公判の審理を受けることを被告人等に強制したものであるが、旧刑訴法第三三四条は憲法第三七条第三項、刑訴応急措置第四条〈事物管轄を異にする数個の関連事件が上級の裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、…〉によつて改正変更されたものと解すべきであるから、原審の審理手続は、右憲法及び刑訴応急措置法の規定に違反するというのである。しかし、憲法第三七条第三項前段は刑事被告人に対しいかなる場合にも被告人自ら資格を有する弁護人を依頼し得ることを保障したものであり、また同項後段及び刑訴応急措置法第四条は、被告人において自ら弁護人を依頼することができないときに国に対し弁護人を選任することを請求する権利があることを認めたものであつて、刑事事件についてはいかなる事件であつても例外なしに弁護人がなければ公判を開廷することができないことを規定したものではない。従つて、これらの規定により旧刑訴第三三四条〈被告事件について刑を免除するときは、判決でその旨の言渡をしなければならない。〉は所論のように改正変更されたものではないから論旨は理由がない。
二 公判期日に適式の召喚を受けた弁護人が自らその期日を懈怠して出頭しなかつたにかかわらず、原審に弁護権行使の不法制限があると主張する論旨の理由ないことは、言うまでもないところである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和26年1月31日 昭和24(れ)824
登載
集刑 第39号947頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴応急措置法4条,旧刑訴法334条,旧刑訴法320条1項,旧刑訴法410条11号
論点29第334条刑事訴訟法

一 犯罪供用物件である兇器を公判廷で證據調をしないで強盜殺人罪を認定した場合
二 搜査段階において司法警察官によつて領置された物件と舊刑訴法第三四二條
三 事實認定の資料とした司法警察官の證據物の領置書又は領置目録の證據能力
四 公判期日の前日に選任された辯護人が終始公判に立會いながら期日の延期、續行の申請がない場合と辯護權の不法制限

裁判要旨一 本件のごとく、短刀拳銃、小銃等を使用して人を殺害して、物を強取したという條件において、これら兇器が領置、押収されている場合、裁判所が事實審理をするに當つては、公判廷において被告人に直接これらの證據物を示し、その意見辯解を開き適法な證據調を經た上で犯罪の證據としてこれを判決に舉示することは事實審として、まさにとるべき妥當の措置ではあるけれども、かくのごとき兇器等といえども必らずしも常に、これを公判廷に顯示して證據調をしなければならないというものではない。その他の證據で犯罪事實を認定し得る場合には事情によつて兇器等を證據としないで、本件におけるがごとく間接に、右兇器等に對する捜査官の領置書若しくは領置日録をとつて、犯罪事實認定の資料とすることも法律上許されないことではないのである。
二 犯罪捜査の段階において、司法警察官によつて、領置された物件のごときものは、舊刑訴法第三四二條の、「公判期日前訴訟關係人ヨリ提出シタル證據物」にも、同法第三二六條乃至第三二八條により、裁判所が公判期日前「集取シタル物」にも該當しないのであるから右物件について、原審が公判において證據調をしなかつたことをもつて、同法第四一〇條第一三號に該當する違法ありとすることはできない。
三 論旨は、原判決が、司法警察官作成の證據物の領置書若しくは、領置目録を事實認定の資料としたことをもつて、適法なる證據に基ずかして事實を認定した違法があると主張するのであるが、右のごとき書類といえども、公務員がその職務權限に基いて作成した文書であつて、その記載内容が證據品の領置に關するに過ぎないからといつて當然にその證據能力を否定する何らの根據もなくその文書の記載内容の趣旨に從つて、事實證明の用に供し得ることは勿論である。
四 公判期日の前日に辯護人を選任するかごときは、辯護權を尊重すべき裁判所の措置として、當を得たものでないことは勿論であるといわなければならない、記録を査閲すれば、原審において、被告人Aは、自ら辯護人を選任することができない旨を申出でたため、裁判所は昭和二三年六月一四同人のため辯護士宗政美三を辯護人に選任し、翌一五日公判を開廷し、同辯護士立會の上自實審理、證據調を施行同辯護士の辯論を經て、即日公判手續を終結したことは、所論のとおりである。しかしながら、原審公判調書によれば當日の公判には終始、右辯護人は立會つたのであるが、辯護人から辯論準備のため期日の延期若しくは審理の續行を申出た形跡もなく、その開廷並びに審理の進行について、被告人からも辯護人からも別段の異議もなく、辯護人の辯論を經て結審となつているのである。おもうに本件はその内容かさして複雜というでもなく公判における事件の審理も相當詳密に行われたので、辯護人としては、特に期日の延期續行等を申請するまでもなく、公判審理に立會うことによつて十分に事件の全貌を把握し得て被告人の辯護に欠くるところのないものと信じ直ちに辯論をして、その日の結審に別段の異議を述べなかつたものと推斷するのが相當である。若し辯護人において辯論準備のためになお時間的余裕が必要と思えば期日の延期續行を申請すべきであつて、裁判所がかかる申請をも容れず従らに結審を急いだという場合ならはまさに不法に辯護權を制限したというべきであるけれども、本件においてかかる形跡のないことは前述のとおりであつて、かくのごとき場合においても、裁判所が職權をもつて辯論を續行しない限り、不法に辯護權を制限した違法あるものとすることは到底首肯し難いところである、以上の次第であるから裁判所が公判期日の前日に辯護人を選任した一事をもつて直ちに原判決に舊刑訴第四一〇條第一一號に該當する違法ありとの論旨は、これを採用することができない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和24年7月13日 昭和23(れ)1488
登載
刑集 第3巻8号1304頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法327条,旧刑訴法342条,旧刑訴法410条13号,旧刑訴法337条,旧刑訴法334条,旧刑訴法410条11号
論点30第334条刑事訴訟法

一 公判手續の瑕疵と手續の更新
(辯論更新前における刑訴第四三條第二項の違反)
二 辯護人不出頭のまま行われた公判手續を更新した場合と辯護權の不法制限
三 強盗共犯者の犯意の認定と他の共犯者の行爲に對する共同責任
四 勾留六ケ月後にした自白と不當に長い拘禁後の自白
五 十一歳の小學兒童の證人資格
六 刑訴第二〇一條第一項の取調をした旨の記載を缺く證人訊問調書の證據能力
七 刑訴第一九九條の法意と僞證の罰を告げないでした證人訊問の効力
八 共同被告人に對し訴訟費用の分擔を命ずる場合と裁判所の自由裁量
九 刑訴法第二四二條の法意

裁判要旨一 原審は右第一回公判期日において審理を終結したのではなく、その後公判手續は第二回及び第三回各公判期日においてその都度適法に更新され、第二回公判期日には被告人Aの私選辯護人伊藤博夫が、又第三回公判期日には同様同被告人の私選辯護人桑名邦雄がそれぞれ出頭して審理に立曾つていることが記録上明かであるから、右第一回公判期日における前記瑕疵(利害相反する相被告人の辯護人をして被告人を辯護せしめたこと)は右審理更新の結果原判決に影響を及ぼさないものというべきである。
二 原審が右のように第一回公判期日において被告人Aの辯護人伊藤博夫から提出した所論期日變更申請を却下し、同辯護人不出頭のまま同期日の審理を行つたことは所論のとおりであるが、その後第二回公判期日は同辯護人にも適法に通知され同期日には同辯護人出頭の上、公判手續が更新されたこと前示のとおりであるから、結局原審手續は不當に辯護權を制限した違法のものということはできない。
三 原審判決が、被告人Aは相被告人Bにおいて判示被害者宅内で判示暴行脅迫を行つた現場には居合わせず屋外にいたと認定したからといつて直ちに被告人Aは、右暴行脅迫の事實について認識していなかつたとはいえないのみならず、同被告人が暴行脅迫行爲を現認しないからとて、共犯者中の他の者が暴行脅迫を加えて財物を奪取している以上強盗の共犯としての責任を免れ得るものでもない。
四 被告人が勾留されたのは所論のとおり昭和二一年一二月一九日であり、又同被告人の原審における自白は昭和二二年六月五日の第一回公判以後同年八月三〇日の第三回公判を通じてなされているのであつて、右勾留後第一回公判期日迄に約六ケ月、第三回公判期日迄には二五〇日餘を經過していることが明かではあるが、本件事案の内容、取調の経過、相被告人の供述内容等諸般の事情に鑑み、右程度の勾留は未だ不當に長い拘禁とはいえない。
五 原審證人Cが原審における取調べを受けた當時一一年(昭和一二年三月生)の小學兒童であつたことは同證人訊問調書の記載から明かであるが、この程度の年齢の者は絶對に證人たる資格がないとはいえないのであつて、同調書記載の同證人の供述内容から見ても同人は本件強盗の被害當時の状況について、詳細に記憶しているその實驗事實を順序良く訊問に答えて陳述報告しているのであつて、事理を辯識する能力を備えていた者と認めるべく、かかる年齢の證人の供述を證據として採用するか否かは事實審たる原番の自由になし得るところであるから、原審が同證人の右證言を判斷の資料に供したとて無効の證據を罪證に供した違法があるということはできない。
六 證人訊問調書に、その證人が刑訴第二〇一條第一項各號に該當するかしないかの取調をした旨の記載がなくても、右證人の供述内容その他によつて、右各號に該當せず宣誓を要する證人であることが明白であり、且つ、宣誓をなさしめて訊問をしている場合には、右訊問調書はこれを證據として差支えない。
七 元来刑事訴訟法第一九九條は、證人にその供述をなす前あらかじめその注意を促し、良心に從つてありのまゝにその實験した事實を供述させるとともに、僞證罪に問われることのないようにさせるため設けられた訓示的規定であるから、證人に宣誓をなさした上供述させている以上、たとえ宣誓前に僞證の罰を論示しなかつたからといつて、宣誓の効力には何ら影響がなく、その證人の證言を無効と考える必要は少しもない。
八 共同被告人中のある者が公訴事實を認め、他の者がこれを否認している場合に、裁判所がその公訴事實の審理のため證人を喚問するのは、結局眞實を發見するためであるから、かような證人に支給した旅費日當などの訴訟費用を、その共同被告人をして連帶して負擔させるか又はその中のある者のみに負擔させるかは、裁判所が自由に定めることのできる問題であつて、從つて、審理の結果右の公訴事實が證明され判決において認定された場合には右の費用は、公訴事實を否認していた被告人のみに負擔させるべきであつて當初からこれを認めていた被告人には負擔させてはいけないという理由はない。
九 刑事訴訟法第二四二條によれば、訴訟費用の負擔を命じる裁判に對しては本案の裁判について上訴する場合に限り不服を申立て得るものであつて、本案の裁判と獨立して上告の申立をすることはできないものである。從つて、本案の裁判に對する上告が理由があるときは、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服もこれを維持することができるけれども、本案の裁判に對する上告が理由がないときは、これの離れて、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服のみを維持することはできないものと解するのが相當である。しかるに本件において本案の裁判に對する上告が少しも理由がないものであることは、上に説明したとおりであるから、結局論旨は上告適法の理由とならないものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和23年4月17日 昭和22(れ)209
登載
刑集 第2巻4号364頁
参照法条
刑訴法43条2項,刑訴法411条,刑訴法334条,刑訴法410条10号,刑訴法184条,刑訴法201条,刑訴法199条,刑訴法238条,刑訴法242条,刑法60条,刑法236条,憲法38条2項,刑訴応急措置法10条2項
論点31第334条刑事訴訟法

強盗被告事件の被告人に弁護人を附けない違法

裁判要旨強盗被告事件において、弁護人なくして開廷し、事件を審理したときは、その審理に立ち会つた他の共同被告人の弁護人が被告人のため有利な弁論をしても、この審理に基く判決は違法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和23年11月9日 昭和23(れ)719
登載
刑集 第2巻12号1508頁
参照法条
刑訴法334条,刑訴法410条10号
論点32第335条刑事訴訟法

所得秘匿工作をしたうえ逋脱の意思で会社臨時特別税確定申告書を税務署長に提出しなかつた場合における会社臨時特別税法二二条一項にいう「偽りその他不正の行為」とその判示方法

裁判要旨所得秘匿工作をしたうえ逋脱の意思で会社臨時特別税確定申告書を税務署長に提出しなかつた場合、会社臨時特別税法二二条一項にいう「偽りその他不正の行為」に当たるのは、所得秘匿工作を伴う不申告の行為であり、また、その判示に当たつては、右の行為があつたことを摘示すれば足り、所得秘匿工作の具体的な日時、場所、方法などについては摘示することを要しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和63年9月2日 昭和60(あ)1528
登載
刑集 第42巻7号975頁
参照法条
会社臨時特別税法22条1項,会社臨時特別税法27条,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項
論点33第335条刑事訴訟法

原判決書の作成日の記載を誤記と認めた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年12月18日 昭和60(あ)384
登載
集刑 第247号1355頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴規則53条,刑訴規則58条
論点34第335条刑事訴訟法

遊技機を設置して行う常習賭博罪の罪となるべき事実の摘示の程度

裁判要旨多数の賭博遊技機を設置した遊技場の経営者が、不特定多数の遊技客との賭博を反覆継続した事案につき、右遊技場の営業継続期間の全般にわたつて行われた各賭博行為を一個の常習賭博罪と認定する場合には、右遊技場の所在地、営業継続期間、遊技機の種類・台数、賭博の態様を摘示したうえ、「右期間中、常習として、甲ほか不特定多数の賭客を相手とし、多数回にわたり、右遊技機を使用して賭博をした」旨判示した程度であつても、常習賭博罪の罪となるべき事実の具体的摘示として欠けるところはない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和61年10月28日 昭和60(あ)1263
登載
刑集 第40巻6号509頁
参照法条
刑法186条1項,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項
論点35第335条刑事訴訟法

証拠の標目の記載を明白な誤記と認めて、憲法三八条三項違反の主張を欠前提処理した事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和60年1月23日 昭和59(あ)1257
登載
集刑 第239号5頁
参照法条
憲法38条3項,刑訴法335条1項
論点36第335条刑事訴訟法

殺人未遂罪の罪となるべき事実中の犯罪行為の判示として不十分とはいえないとされた事例

裁判要旨「未必の殺意をもつて、被害者の身体を、有形力を行使して、被告人方屋上の高さ約〇・八メートルの転落防護壁の手摺り越しに約七・三メートル下方のコンクリート舗装の路上に落下させて路面に激突させた」旨判示し、被害者を屋上から落下させた手段・方法を右以上に具体的に摘示していない場合でも、右判示は、殺人未遂罪の罪となるべき事実中の犯罪行為の判示として、不十分とはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和58年5月6日 昭和57(あ)1807
登載
刑集 第37巻4号375頁
参照法条
刑法199条,刑法203条,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項,刑訴法378条4号
論点37第335条刑事訴訟法

判決書の記載を明白な誤記と認めることが許されない場合

裁判要旨判決書自体又は記録に照らし、判決書の記載が単なる表現上の誤りであることが明らかでなく、判決裁判所の意図した記載も一義的に明確でないときは、これを明白な誤記と認めることは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和53年6月16日 昭和53(あ)22
登載
刑集 第32巻4号645頁
参照法条
刑訴法335条1項,民訴法194条1項
論点38第335条刑事訴訟法

擬律不備が罰条の誤記とみて救つた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年2月17日 昭和50(あ)1736
登載
集刑 第199号209頁
参照法条
刑訴法335条
論点39第335条刑事訴訟法

証拠として請求も取調べもされず記録中に編綴されてもいない供述調書を証拠の標目に掲げた違法と判決への影響

裁判要旨第一審判決が証拠の標目に挙げているAの司法巡査に対する供述調は、証拠として請求書も取調べもされておらず、記録中に編綴されてもいないが、右判決の記載は誤記と認めるのが相当であるから、右判決及び原判決に影響を及ぼすものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年3月7日 昭和49(あ)2238
登載
集刑 第195号567頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法379条,刑訴法335条1項
論点40第335条刑事訴訟法

一、併合罪の刑の加重をするにあたり刑法一四条を適用しなかつた違法と判決に及ぼす影響
二、公判調書中の「公判をした裁判所及び裁判官」欄ならびに「裁判所書記官」欄の各記載が単なる誤記と認められた事例

裁判要旨一 第一審判決に、併合罪の刑の加重をするにあたり刑法一四条を適用しなかつた違法があつても、被告人に対するその宣告刑が正当な処断刑の範囲内にあり、かつ、被告人の犯罪事実の内容その他情状に徴し右宣告刑が重きに過ぎるものと認められないときは、右違法が判決に影響を及ぼすこと明らかであるとはいえない。
二 第一審第九回公判調書中の「公判をした裁判所及び裁判官」欄に「金沢地裁小松支部乙」とあり、また「裁判所書記官」欄に「甲」とあるのは、同公判調書の末尾に作成者として金沢地方裁判所小松支部裁判所書記官乙の署名および押印があり、また、裁判官認印欄に「甲」の認印があること、ならびに第一審のその余の公判調書および判決書の各記載に徴すれば、それぞれ「金沢地方裁判所小松支部甲」および「乙」の単なる誤記にすぎないと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年2月16日 昭和47(あ)1193
登載
刑集 第27巻1号46頁
参照法条
刑法14条,刑訴法335条1項,刑訴法380条,刑訴法48条,刑訴法52条,刑訴規則44条
論点41第335条刑事訴訟法

不可抗力の主張と刑訴法三三五条二項

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和46年9月16日 昭和46(あ)1171
登載
集刑 第181号505頁
参照法条
刑訴法335条2項
論点42第335条刑事訴訟法

自救行為の主張と刑訴法三三五条二項

裁判要旨自救行為の主張は、刑訴法三三五条二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の主張にあたる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和46年7月30日 昭和45(あ)1358
登載
刑集 第25巻5号756頁
参照法条
刑訴法335条2項,刑法35条
論点43第335条刑事訴訟法

業務上過失致死被告事件において被害者を事前に発見することが不可能であつたという主張と刑訴法三三五条二項

裁判要旨業務上過失致死被告事件において、被害者の自転車が被告人の進路前方に停車中の大型貨物自動車の背後から突如飛び出して来たため、被告人にはこれを事前に発見することが不可能であつたという主張は、刑訴法三三五条二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」の主張にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年2月13日 昭和44(あ)1931
登載
刑集 第24巻2号17頁
参照法条
刑訴法335条2項,刑法211条
論点44第335条刑事訴訟法

建設業法第四五条第一項第三号の罪の判示として刑訴法第三三五条第一項に違反しないとされた事例

裁判要旨被告人が建設業者登録申請書を提出するにあたり、同申請書に、「技術職員Aについて、虚偽の事実を記載した実務経験証明書及び内容虚偽の機械工具明細書等を添付し」もつて右虚偽の事実に基づいて被告人名義の建設業者登録を受けたとあるだけで、これら添付書面の記載内容がどのように虚偽であるのかを何ら具体的に判示していないのは事実摘示として十分でないが、この程度の判示でも、右事実が建設業法第四五条第一項第三号に該当するかどうかを判定するに足りる程度の具体性は備えており、かつ、他の事実と区別ができる程度に特定されているものと認められるから、右判示をもつて、直ちに刑訴法第三三五条第一項に反するものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年6月13日 昭和41(あ)3090
登載
集刑 第163号537頁
参照法条
建設業法8条1項,建設業法45条1項3号,刑訴法335条1項
論点45第335条刑事訴訟法

放火罪について択一的事実摘示の方法が違法でないとされた事例

裁判要旨本件放火の手段方法に関する第一審判決の判示につき、理由不備等の違法に当らないとした原判決の判断に誤があるとは認められない。
(注、第一審判決の判示)
「……右生石灰に水を注入して之を発熱させ、前記羽目板、木箱、ガソリン類等の可燃物に引火させる方法によつたものか或はその他何等かの手段方法により、同家屋に火を放ち……」
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年3月17日 昭和41(あ)1478
登載
集刑 第162号1059頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法378条4号
論点46第335条刑事訴訟法

一 密輸拳銃の故買と同一拳銃の不法所持の罪数関係
二 刑法第四五条前段、第四八条第一項の摘示を遺脱した原判決の適否

裁判要旨一 密輸拳銃故買(関税法第一一二条第一項)の罪と同一拳銃の不法所持(銃砲刀剣類等所持取締法第三条第一項違反)の罪とは、観念的競合の関係に立たない。
二 刑法総則の規定である同法第四五条前段、第四八条第一項のような規定は、これを適用した趣旨であることが、原判決自体から明らかに認められる以上、その適用をあえて掲げてなくても、違法とするに足りない(昭和二四年一一月二九日および同二六年九月一八日各第三小法廷判決、裁判集14号841頁、同五三号六一頁参照)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年3月14日 昭和41(あ)1354
登載
集刑 第162号851頁
参照法条
関税法112条1項,銃砲刀剣類等所持取締法3条1項,刑法45条前段,刑法54条1項,刑法48条1項,刑訴法335条1項
論点47第335条刑事訴訟法

一 公職選挙法第二二五条第三号の「特殊の利害関係を利用した」ことにあたる事実の判示として不備はないとされた事例
二 公職選挙法第二二五条第一号の「威力」と同条第三号の「威迫」との相違

裁判要旨一 「被告人両名は、衆議院議員選挙候補者Aの選挙運動者であり、いずれも町議会議員としてKの夫が校長として奉職する町立小学校の改築の審議とその施行に尽力してした者であるが、今後予想される同校給食室等付属建物の改築の予算審議にも当然関与すべき特殊の利害関係があるところから、対立候補者Bの選挙運動者であるK方に電話し、同女がB派の自動車に乗つたことがあるかどうかを確かめたうえ、右特殊の利害関係を利用して、こもごも「給食室も造らねばならんし、校長先生まで誤解されるから、よく考えて行動してもらわねばならぬ。」「校長先生はあまり旗色をはつきりしないように。もし旗色をはつきりするならA派にこい。」などと、同女をして、同女の支持者に対する選挙運動に不安を抱かせるに足りることを告げ、もつて共同して同女を威迫したものである。」旨の判示は、公職選挙法第二二五条第三号の「特殊の利害関係を利用した」ことにあたる事実の判示として不備はない。
二 公職選挙法第二二五条第一号の「威力」とは人の意思を制圧するに足りる勢力、同第三号の「威迫」とは人に不安の念を抱かせるに足りる行為をいい、両者の相違は、人の意思を制圧するに足りる程度のものであるかどうかにあるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年2月4日 昭和41(あ)2062
登載
刑集 第21巻1号9頁
参照法条
公職選挙法225条,刑訴法335条1項
論点48第335条刑事訴訟法

適法な証拠調を経ない証拠を他の証拠と総合して犯罪事実を認定した違法と判決への影響

裁判要旨原判決の是認する第一審判決が、適法に証拠調のされていない所論Aの各供述調書を犯罪事実認定の証拠としているとしても、かような違法は、本件のごとく、右証拠調を経ない証拠を除いてもその余の挙示の証拠により犯罪事実を認定できる場合においては判決破棄の理由とならないこと、当裁判所の累次の判例(昭和二四年(れ)第一九四六号、同二五年一月一九日第一小法廷判決、刑集四巻一号三〇頁、昭和二六年(あ)第四六七七号同二七年三月六日第一小法廷判決、刑集六巻三号三六三頁)とするところである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年5月26日 昭和40(あ)2776
登載
集刑 第159号839頁
参照法条
刑訴法317条,刑訴法335条1項
論点49第335条刑事訴訟法

二通の小切手を喝取した事実を単純一罪として起訴されその一部について犯罪の成立が認められない場合の判示方法

裁判要旨被告人が二通の小切手を喝取した事実を単純一罪として起訴された場合、右被害金品の一部である額面六六万円の小切手一通について、犯罪の成立が認められないときには、有罪と認めた事実のみを罪となるべき事実として判示すれば足り、認めなかつた部分について、主文においては勿論理由においても特に判示する必要はないものと解すべきであるから、所論のように審判の請求を受けた事件について判決をしなかつたという違法はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年4月15日 昭和40(あ)2538
登載
集刑 第159号215頁
参照法条
刑訴法335条,刑訴法336条,刑法249条
論点50第335条刑事訴訟法

累犯となる前科の認定とその証拠摘示の要否。

裁判要旨累犯となる前科の事実は、審理において適法な証拠調をした証拠によりこれを認定することができる限り、判決においては、その事実を判示すれば足り、必らずしもこれを認定する証拠の標目を挙示するを要しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年5月23日 昭和38(あ)2389
登載
刑集 第18巻4号166頁
参照法条
刑訴法44条1項,刑訴法305条,刑訴法335条1項
論点51第335条刑事訴訟法

一 控訴棄却の判決と刑訴法第三三五条の準用の有無。
二 刑訴法第二九三条〈証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。〉、刑訴規則第二一一条の規定は控訴審に準用があるか。

裁判要旨一 控訴棄却の判決をした場合には、刑訴法第四〇四条〈第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。〉の「この法律に特定の定のある場合」に属し、刑訴法第三三五条〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の準用はない(昭和二五年(あ)三一七七号同二六年五月一〇日第一小法廷決定、刑集五巻六号一〇二一頁参照)。
二 控訴審は事後審であるから、刑訴法第二九三条〈証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。〉、刑訴規則第二一一条の規定は控訴審に準用されない(昭和二五年(あ)第一四一五号同年一〇月一二日第一小法廷決定、刑集四巻一〇号二〇八七頁参照)。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年11月5日 昭和39(あ)1237
登載
集刑 第153号1頁
参照法条
刑訴法335条,刑訴法396条,刑訴法404条,刑訴法293条,刑訴法390条,刑訴法388条,刑訴規則211条,刑訴規則250条
論点52第335条刑事訴訟法

従犯の主張と刑訴法第三三五条第二項。

裁判要旨従犯の主張は刑訴法第三三五条第二項の主張にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年2月26日 昭和35(あ)2264
登載
集刑 第146号431頁
参照法条
刑法63条,刑訴法335条2項
論点53第335条刑事訴訟法

被害者の傷害と死亡との間の因果関係の存否に関する判断に理由不備があつて、刑訴法第四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたるとされた事例。

裁判要旨被告人から濃硫酸約五合を浴びせかけられ、頭部、顔面、頸部、前胸部、両上下肢等殆んど身体の全部位に治療数ケ月を要する硫酸腐蝕傷を受けた被害者が、入院加療の途上、該硫酸腐蝕傷は八割以上治癒したが結核性胸膜炎を誘発し、これに基づく循環機能不全により死亡するに至つた事案において、原審が、専門医に対し右被害者の受傷の部位、程度、治療の経過、治療中の健康状態等について具体的に何ら示すところがなく、単に「硫酸腐蝕傷を受けた患者がその症痕形成において約八割以上治癒した場合右受傷に基因して結核性胸膜炎による循環機能不全を発病する場合ありや」との鑑定を求め、その鑑定結果は「硫酸腐蝕傷を受けた者が結核性胸膜炎にかかり循環機能不全をおこすことは極めて稀れである」との一般的判断のみを示したに止まるにも拘わらず、他に特段の事由を説示することなく、右鑑定結果だけで、被害者の傷害と死亡との間に因果関係がないと判断したのは、証拠理由不備の違法があり、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免かれない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年8月21日 昭和33(あ)1588
登載
刑集 第16巻8号1303頁
参照法条
刑法205条1項,刑訴法44条1項,刑訴法335条1項,刑訴法411条1号
論点54第335条刑事訴訟法

一 賄賂供与申込罪の成立と相手方の賄賂たることの認識の要否
二 証拠により認定した事実を他の事実の証拠とすることの適否
三 刑訴法第四一一条第二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉に該当し、刑の執行を猶予するのが相当であるとした事例

裁判要旨一 賄賂供与申込罪の成立には、相手方に賄賂たることを認識し得べき事情の下に金銭その他の利益の収受を促す意思表示をなせば足りるのであつて、相手方において実際上その意思表示を又はその利益が賄賂たる性質を具有することを認識すると否とは、同罪の成立に影響を及ぼすものではない。
二 証拠によつて認定した或る事実を他の事実の証拠としても、少しも違法ではない(昭和九年(れ)第一五六八号同一〇年二月一四日大審院判決、刑集一四巻九二頁参照)。
三 職権により調査するに原判決の判示するところによれば、被告人の本件利益贈与ないし利益提供の動機としては、相手方の職務行為に対する依頼又は謝礼の趣旨のほかに、多かれ少なかれ、それ以外の個人的な友交関係、政治献金、職務に関係のない個人的将来の庇護期待等の趣旨も認められ、必ずしも職務要因のみに基くものというような状況であつたとは認められないとし、また食糧事情が急迫していた当時の状況下においては被告人の右各贈与は犯情として被告人に有利なものを含んでいたとも認定している。そして被告人は逮捕拘禁以来約一四年の長期に亘り心身に有形無形の多大の苦痛を受けたものというべく、また被告人が反省謹慎の日を送りつつあることは一審判決の判示の趣旨からも窺知しうるところである。本件は当時いわゆるA事件として世人の耳目を聳動せしめた大事件であるが、その後の推移はA事件のB関係においては、収賄罪で起訴されたC、Dは無罪、E、F外五名は執行猶予となつている。叙上の諸事情(判文参照)を考慮するときは、被告人Bに対し実刑を科さなければ刑政の目的を達することができないものとは断じ難く、刑の執行を猶予するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年4月13日 昭和34(れ)2
登載
集刑 第141号789頁
参照法条
刑法198条,刑法25条1項,経済関係罰則の整備に官する法律5条,旧刑訴法336条,旧刑訴法360条1項,刑訴法317条,刑訴法335条1項,刑訴法411条2号
論点55第335条刑事訴訟法

一 密輸時計の判示程度
二 右時計の追徴額の算定

裁判要旨一 弁護人の所論各点に関する原審の判断は正当として首肯できる。
二 (原判決の要旨)時計の如くその銘柄、型式、石数、側等による種別の多数に上る品物にあつては、それらによつて他から完全に区別し得る程度に表示するのは甚だ困難であつて、判決にこれを表示するに当つては、要するに被告人が同一物につき再度起訴される虞れがなく、又その価額を一応算定できる程度にこれを特定表示すれば足りる。
三 起訴にかかる時計の現品が存在せず、その銘柄、品種(男物か女物かの区別)のみ明らかで、その他、型式等の詳細が判明しない本件の如き場合にあつては、でき得る限りこれと近似した時計を選び、その価格により追徴額を算定したとしても、これを以て違法とはなし難い。しかもその内最低価格の物につきその価格を鑑定し、原判定はそれによつて追徴額を決定したものであるから相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年11月15日 昭和37(あ)1443
登載
集刑 第145号73頁
参照法条
関税法110条,関税法118条,刑訴法335条1項,刑訴法378条3号
論点56第335条刑事訴訟法

刑法第六三条の適用と同六八条〈裁判所は、必要があるときは、指定の場所に被告人の出頭又は同行を命ずることができる。被告人が正当な理由がなくこれに応じない…〉適用の遺脱。

裁判要旨原審で支持した第一審判は本件幇助罪に適条として刑法六三条を適用している。それは当然に同六八条〈裁判所は、必要があるときは、指定の場所に被告人の出頭又は同行を命ずることができる。被告人が正当な理由がなくこれに応じない…〉の規定の適用せられたことを示しているものということができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年2月24日 昭和33(あ)1156
登載
集刑 第137号329頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑法62条,刑法68条
論点57第335条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない事例―心神耗弱の主張に対する判断遺脱。

裁判要旨弁護人の上告趣意第一点につき記録を調べて見ると原審弁護人は控訴趣意第一点において被告人のAに対する所為は心神耗弱に出たものであることを主張したにかかわらず原判決がこれに対し何等判断を示さなかつたことは違法たるを免れない。しかし、被害者Aに対する供述調書によれば、かかる主張事実を認められないから、右の違法は、原判決を破棄しなければ、著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年11月30日 昭和36(あ)1761
登載
集刑 第140号301頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法335条2項,刑法39条2項
論点58第335条刑事訴訟法

控訴審が第一審判決の法令の適用に誤りありとして破棄自判した場合と第一審判決の証拠の援用。

裁判要旨控訴審が第一審判決の法令の適用に誤りありとしてこれを破棄自判するにあたり、第一審判決の認定した事実に法令を適用したのみでその証拠を引用せずまたはその証拠の標目を掲げていないとしても、控訴審は第一審判決挙示の同一の証拠を援用した趣旨と解するのを相当とする。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年9月2日 昭和35(あ)1079
登載
集刑 第135号227頁
参照法条
刑訴法400条但書,刑訴法335条1項,刑訴法380条
論点59第335条刑事訴訟法

一 上告審で提出命令が出せるか
二 上告審における証拠物の取調方法
三 上告審で取り調べた証拠物はどの程度に判断の資料となし得るか。
四 共謀共同正犯における共謀または謀議は罪となるべき事実か。
五 事実誤認を疑うに足りる顕著な事由がある場合と刑訴法第四一一条第三号による原判決の破棄。

裁判要旨一 本件における「諏訪メモ」の如き証拠物については上告審で所有者にその提出を命ずることができる。
二 上告審で右の証拠物を取り調べるにあたつては、公判にこれを顕出するをもつて足りる。
三 上告審は右の方法で取り調べた証拠物を原判決の事実認定の当否を判断する資料に供することができる。
四 共謀共同正犯における共謀または謀議は罪となるべき事実である。
五 判決に影響があつてこれを破棄しなければ著しく正義に反する重大な事実誤認を疑うに足りる顕著な事由があるときは、刑訴第四一一条第三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉によつて原判決を破棄することができる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和34年8月10日 昭和29(あ)1671
登載
刑集 第13巻9号1419頁
参照法条
刑訴法99条2項,刑訴法303条,刑訴法305条,刑訴法306条,刑訴法307条,刑訴法317条,刑訴法404条,刑訴法409条,刑訴法414条,刑訴法335条1項,刑訴法411条3号,刑法60条
論点60第335条刑事訴訟法

常習賭博の判示方法。

裁判要旨常習として賭博をした事実を認定判示するには、常習として賭博をなした旨を説示すれば定り、いかなる事実によつて賭博の常習を認めたかを摘示する必要はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年5月22日 昭和33(あ)2496
登載
集刑 第129号941頁
参照法条
刑法186条1項,刑訴法335条1項,刑訴法378条4号
論点61第335条刑事訴訟法

一 証拠の標目の表示程度。
二 外来語である「ドル」は日本語か。

裁判要旨一 所論六月四日付の書類は、記録によれば、原判示の照会とこれに対する回答との両者を含む書類の謄本であつて、その謄本作成名義人は憲兵中佐Aであり、その内容たる回答書の作成名義人はBであること明白であるから、右書類を表示するのに一審第五回公判調書は、右回答書の作成名義人によつて記載したのに対し、一審判決は右謄本作成名義人によつて記載したものと認めるのを相当とする。従つて所論のように証拠調を経ない虚無の証拠を採証したとの非難は当らない。この点に関する原判決の判断は正当である。
二 所論の「ドル」なる言葉は、外来した言語ではあるけれども、メートル、グラム等と同様、日本語である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年9月16日 昭和33(あ)1229
登載
集刑 第127号219頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法177条,刑訴規則44条,裁判所法74条
論点62第335条刑事訴訟法

刑訴法第三三五条第二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の主張に対する判断が示されたものとは認められない事例。

裁判要旨本件行為当時の情況上被告人に他の行為を期待することができない旨の主張があつた場合に、単に暴力行為等処罰に関する法律違反、暴行の有罪事実を認定することは、間接的にも期待可能性なるものの存否につき判断を示したものとは認められない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年7月29日 昭和31(あ)1660
登載
集刑 第126号1153頁
参照法条
刑訴法335条2項,刑訴法410条1項,刑訴法405条
論点63第335条刑事訴訟法

起訴状に記載のない犯行の動機を認定することの当否

裁判要旨原判決が本件各起訴状に記載されていない犯行の動機をも認定していること所論のとおりであるが、これをもつて原判決が審判の請求を受けない事実を審判した違法があるということはできない
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年6月17日 昭和33(あ)454
登載
集刑 第126号379頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法335条1項,刑訴法387条3号
論点64第335条刑事訴訟法

原判決が是認した第一審判決の採証する自白調書の任意性に疑いがあると認められる場合と刑訴法第四一一条第一号による原判決の破棄

裁判要旨第一審判決が被告人の司法警察員に対する供述(自白)調書を他の証拠と綜合して犯罪事実を認定し、原判決もまたその自白の任意性を認め、第一審判決の右採証を是認している場合、諸般の証拠上、右自白の任意性に疑いがあるとみるのが相当で(判文参照)、且つ同自白が犯罪事実認定の有力な証拠となつていると認めるときは、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により原判決を破棄することができる
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年6月13日 昭和31(あ)4204
登載
刑集 第12巻9号2009頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法322条1項,刑訴法319条1項,刑訴法335条1項,刑訴法317条,憲法38条2項
論点65第335条刑事訴訟法

一 いわゆる共謀共同正犯の成立要件
二 実行行為に関与しない共謀者の刑責と憲法第三一条
三 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」であるか
四 共謀の判示方法
五 憲法第三八条第二項の法意
六 憲法第三八条第三項の法意
七 被告人本人との関係における共犯者の犯罪事実に関する供述と、憲法第三八条第三項にいわゆる「本人の自白」
八 数人間の順次の共謀と共謀共同正犯の成立

裁判要旨一 いわゆる共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が存しなければならない
二 いわゆる共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという意味において、共同正犯の刑責を負うもので、かく解することは憲法第三一条に違反しない
三 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」にほかならず、これを認めるためには厳格な証明によらなければならない
四 共謀の判示は、謀議の行われた日時、場所またはその内容の詳細、すなわち実行の方法、各人の行為の分担役割等についてまで、いちいち具体的に判示することを要しない
五 憲法第三八条第二項は、強制、拷問若しくは脅迫による自白または不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白の証拠能力を否定したものである
六 憲法第三八条第三項の規定は、被告人本人の自白の証拠能力を否定または制限したものではなく、かかる自白の証明力(証拠価値)に対する自由心証を制限し、被告人本人を処罰するには、さらにその自由の証明力を補充しまたは強化すべき他の証拠(いわゆる補強証拠)を要することを規定したものである
七 共同審理を受けていない単なる共犯者は勿論、共同審理を受けている共犯者(共同被告人)であつても、被告人本人との関係においては、被告人以外の者であつて、かかる共犯者または共同被告人の犯罪事実に関する供述は、憲法三八条二項とごとき証拠能力を有しないものでない限り、独立、完全な証明力を有し、憲法三八条三項にいわゆる「本人の自白と同一視し、またはこれに準ずるものではない
八 同一の犯罪について、数人の間の順次共謀が行われた場合は、これらの者のすべての間に当該犯行の共謀が行われたものと解するを相当とし、数人の間に共謀共同正犯が成立するためには、その数人が同一場所に会し、その数人の間に一個の共謀の成立することを必要とするものではない
裁判
最高裁判所大法廷 昭和33年5月28日 昭和29(あ)1056
登載
刑集 第12巻8号1718頁
参照法条
刑法60条,憲法31条,憲法38条2項,憲法38条3項,刑訴法335条,刑訴法335条1項,刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法319条
論点66第335条刑事訴訟法

一 児童福祉法第六〇条第三項本文にいう「児童の年齢を知らないこと」と刑訴法第三三五条第二項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」
二 児童福祉法第六〇条第三項但書にいう「過失のない」ことと刑訴法第三三五条第二項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」

裁判要旨一 児童福祉法第六〇条第三項本文は、児童を使用する者において「児童の年齢を知らないこと」が刑訴法第三三五条第二項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」にあたらない旨を規定するものである。
二 児童福祉法第六〇条第三項但書は、児童を使用する者において児童の年齢を知らないことにつき「過失のない」ことが、刑訴法第三三五条第二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」にあたる旨を規定するものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年3月27日 昭和28(あ)3015
登載
刑集 第12巻4号658頁
参照法条
児童福祉法34条1項6号,児童福祉法60条1項,児童福祉法60条2項,児童福祉法60条3項,刑訴法335条2項
論点67第335条刑事訴訟法

累犯となる前科を認定する証拠書類と刑訴法第三〇五条による取調の要否

裁判要旨累犯となる前科を認定する証拠書類は、刑訴法第三〇五条〈検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、その取調べを請求した者にこれを朗読させ…〉による取調をなすことを要するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和33年2月26日 昭和32(あ)1029
登載
刑集 第12巻2号316頁
参照法条
刑訴法305条,刑訴法335条1項,刑訴法317条,刑法56条,刑法57条
論点68第335条刑事訴訟法

いわゆる想像的競合犯中の一部を無罪と認める場合その判断を判決理由に示すことの要否

裁判要旨いわゆる想像的競合犯中の一部を無罪と認める場合には、判決の主文においてその言渡をなすべきではないけれども、理由中でその判断を示すことは必要である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年9月24日 昭和32(あ)1083
登載
集刑 第120号507頁
参照法条
刑法54条,刑訴法44条,刑訴法335条,刑訴法336条
論点69第335条刑事訴訟法

自首があつたとの主張と刑訴法第三三五条第二項

裁判要旨自首があつたとの主張は、刑訴第三三五条第二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の主張にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年7月18日 昭和31(あ)4723
登載
刑集 第11巻7号1880頁
参照法条
刑法42条1項,刑訴法335条2項
論点70第335条刑事訴訟法

一 飼犬が所有者の事実上の支配を及ぼし得ない地域に出遊した場合とその所持
二 法定刑(懲役刑)を同じくするが種類を異にする数個の犯罪を併合加重する場合と法令適用の判示方

裁判要旨一 飼犬が時に所有者の事実上の支配を及ぼし得べき地域外に出遊した場合でも、その習性として所有者の許に帰来するのを常としているものは、特段の事情の生じないかぎり、所有者の所持を離れたものということはできない。
二 窃盗、傷害(懲役刑選択)、恐喝の三罪につき併合罪の加重をする場合、いずれの罪を最も重いと認めて加重をしたかを明示しなくとも、必ずしも違法ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年7月16日 昭和30(あ)2908
登載
刑集 第11巻7号1829頁
参照法条
刑法235条,刑法47条,刑法10条,刑訴法335条1項
論点71第335条刑事訴訟法

刑訴法第四四条第一項〈裁判には、理由を附しなければならない。〉にいう「裁判の理由」の意義

裁判要旨刑訴四四条一項〈裁判には、理由を附しなければならない。〉にいう「裁判の理由」とは、主文のよつて生ずる理由を指すのであつて、証拠上の理由のごときはこれに含まれないと解すべきであるから、有罪判決において、所論のように、何故にある証拠を採用し他の証拠を排斥したかの理由、あるいは採用した証拠の証明力の判断について必しも一々これを判示することを要するものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年6月18日 昭和30(あ)2181
登載
集刑 第119号505頁
参照法条
刑訴法44条1項,刑訴法335条
論点72第335条刑事訴訟法

犯罪の軽重を判示しないことが違法でない一事例

裁判要旨法定刑が同一である三四個の併合罪につき法定の加重をする場合において、刑法第四七条、第一〇条の適用を示しているときは、いずれの罪の犯情が最も重いかを判文に明示しなくても違法ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年11月5日 昭和32(あ)1903
登載
集刑 第122号43頁
参照法条
刑法45条,刑法47条,刑法10条,刑訴法335条1項
論点73第335条刑事訴訟法

控訴趣旨の一部に対しても判断があつたものと認められる場合

裁判要旨原判決は、弁護人らの量刑不当を主張する論旨は理由があるとして、この点で第一審判決を破棄し自ら判決をなすに当り、同判決挙示の証拠により同判決摘示事実と同一の罪となるべき事実を認定しているのであるから、所論第一審判決判示第六の事実についても誤認はない旨の判断を示した趣旨に解され、所論のような判断遺脱はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年11月26日 昭和30(あ)2009
登載
集刑 第122号351頁
参照法条
刑訴法392条1項,刑訴法400条但書,刑訴法335条1項
論点74第335条刑事訴訟法

適法な証拠調を経たことが認められる証拠書類が記録に編綴されていない場合と犯罪事実の認定

裁判要旨犯罪事実を認定するには適法な証拠調を経た証拠によることを要するが、記録によれば、第一審第二回公判期日において所論証拠書類が適法に証拠調べを施行された旨の記載があるから、その適法な証拠調がなされたことは明らかである。該証拠書類が記録に編綴されているかどうかは、犯罪事実の認定を左右するものではない。所論は、証拠書類が記録に編綴されていなければ、これを調査することもできず、当事者に不可能を強いる結果になると主張するが、記録公判調書によれば、所論証拠書類は、第一審裁判所の別件により引用することが明示されており、従つてその所在も明確にされており、かつ該記録は、自由に閲覧することができるものであるから(刑訴四〇条〈弁護人は、公訴の提起後は、裁判所において、訴訟に関する書類(刑事確定訴訟記録法(昭和六十二年法律第六十四号)第二条第一項…〉、五三条〈何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。但し、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のある…〉)所論のごとく不能を強いるものということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年9月13日 昭和30(あ)2949
登載
集刑 第114号635頁
参照法条
刑訴法310条,刑訴法335条,刑訴法317条,刑訴法52条,刑訴規則44条
論点75第335条刑事訴訟法

刑法第四二条第一項の刑の減軽と刑訴法第三三五条第二項にいう法律上刑の減免の理由となる事実

裁判要旨刑法四二条一項の刑の減軽は、裁判所の裁量に属する事項であつて、刑訴三三五条二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉に所謂法律上刑上刑の減免の理由となる事実には当らない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年6月21日 昭和31(あ)93
登載
集刑 第113号829頁
参照法条
刑法42条1項,刑訴法335条2項
論点76第335条刑事訴訟法

検察官事務取扱検察事務官作成の供述調書を検察官作成の供述調書と表示することの適否

裁判要旨証拠の標目として、検察官事務取扱検察事務官作成の供述調書を検察官作成の供述調書と表示しても、違法ということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年6月19日 昭和29(あ)2705
登載
刑集 第10巻6号853頁
参照法条
刑訴法321条1項2号,刑訴法335条1項,検察庁法36条
論点77第335条刑事訴訟法

一 公文書偽造罪の判示として正当と認められる一事例

二 偽造外食券の形式外観
三 心神耗弱の主張に対する判断の遺脱は絶対的控訴理由となるか
四 右判断遺脱は訴訟手続の法令違反として常に判決に影響するか

裁判要旨一 原判決が「第一院判決挙示の証拠によると、同判示の偽造公文書は、いずれも、当該公文書の信用を害する危険がある程度の形式外観を具えていることが認められる」旨の判示並びに『第一審判決の判示各偽造外食券に「当該地方食糧配給公団名及び交付配給所名のなつ印」の要求されるのは、整理上交付配給所を明らかにするためで、これを欠くからといつて外食券でないという趣旨ではないと解すべき』旨の判示は、いずれも正当であると認められる。
二 原判決が、所論のごとく第一審判決が心神耗弱の主張に対し、判断をしなかつた違法を認めながら、所論のごとき理由をもつて判決に影響を及ぼさないとして弁護人の主張を排斥したこと、並びに、所論各高裁の判決がかかる違法は判決に影響を及ぼすこと明らかである旨判示したことは、所論のとおりである。従つて、原判決は、右各高等裁判所の判例に違反したものといわなければならない。しかし当裁判所第三小法廷は、原判決後昭和二八年五月一二日原判決と同趣旨に出た昭和二六年九月一三日の東京高等裁判所の判決を是認して、判断遺脱があつても常に必ずしも判決に影響を及ぼさない旨判示しているのである(判例集七巻五号一〇一一頁以下参照)。そして、当法廷においても右の判断を正当と考える。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年12月27日 昭和28(あ)2055
登載
集刑 第116号555頁
参照法条
刑法155条,刑法39条2項,刑訴法44条,刑訴法335条1項,刑訴法335条2項,刑訴法378条4号,刑訴法379条
論点78第335条刑事訴訟法

控訴審の破棄自判の判決が心神喪失もしくは心神耗弱の主張に対し判断を遺脱した違法と刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉

裁判要旨控訴審の破棄自判の判決が、心神喪失もしくは心神耗弱の主張に対し判断を示さなかつた場合は、刑訴第四〇四条〈第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。〉、第三三五条第二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉に違反するけれども、同第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉によりこの法令違反が判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる場合に破棄せられるにとどまる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年12月25日 昭和29(あ)1796
登載
集刑 第116号347頁
参照法条
刑訴法335条2項,刑訴法411条1号,刑法39条
論点79第335条刑事訴訟法

刑訴第一八一条第一項〈刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付す…〉但書により被告人に訴訟費用を負担させない場合判決主文にその旨の判示の要否

裁判要旨裁判所が刑の言渡をした場合において、刑訴一八一条一項〈刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付す…〉但書により被告人に訴訟費用を負担させないときは、その旨を主文に判示する必要はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年7月29日 昭和30(あ)1411
登載
集刑 第107号1207頁
参照法条
刑訴法181条1項但書,刑訴法335条1項
論点80第335条刑事訴訟法

第一審が公訴事実よりも供与額を少なく認定した場合、その差額につき特に判決の理由において説明することを要するか

裁判要旨第一審が、被告人Aが昭和二七年九月二五日頃その自宅でBに一二、〇〇〇円を供与したとの公訴事実(第三の9)について、判示第三の8の如くBに対する五、〇〇〇円だけの供与の事実を認定したのは正当である。而してこのような場合に、公訴事実の一二、〇〇〇円と右認定の五、〇〇〇円との差額七、〇〇〇円を認めなかつた理由を特に説明する必要のないことは原判決の説示するとおりであつて、何等所論理由不備の違法はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年5月20日 昭和29(あ)3891
登載
集刑 第105号753頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法44条1項,刑訴法378条4号
論点81第335条刑事訴訟法

一 刑訴第三三五条第二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の主張に当らない一事例。―所持の麻薬がもはや薬効のないものと信じていた旨の主張―

二 控訴趣意書提出最終日指定の通知は控訴の申立をした弁護人にもしなければならないか。

三 控訴趣意書提出最終日に近く選任届を提出した援護人に対して右通知を要するか。

裁判要旨一 被告人は所持の麻薬がもはや薬効のないものと信じていた旨の主張は、単に麻薬所持の犯意を否認するものに過ぎないものであつて、刑訴第三三五条第二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の主張に当らない。

二 原審において戸田弁護人に対し控訴趣意書提出最終日指定の通知をしなかつたのは、被告人に対して右通知をなした当時、同弁護人については未だ控訴審における弁護人選任届が提出されていなかつたためであつて、たとえ同弁護人が第一審弁護人として控訴申立をしたものであり、また控訴趣意書提出最終日に近く弁護人選任届を提出したからといつて、右通知をしなかつた原審の措置を非難するのは当らない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年5月11日 昭和28(あ)3703
登載
集刑 第105号197頁
参照法条
刑訴法335条2項,刑訴法355条,刑訴規則236条
論点82第335条刑事訴訟法

証拠の標目中に掲げられた証言中の伝聞証言を除いても判示事実を認めることができる場合と違法の有無

裁判要旨記録によると、所論指摘の証人の供述調書中に所論のような伝聞証言が認められるが、この伝聞証言を除いても判示事実を認めるに十分であるから当裁判所の判例(昭和二七年(あ)第五六九四号第二九年二月一八日第一小法廷判決集八巻二号一四五頁)の趣旨に徴し、違法とはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年4月19日 昭和28(あ)3345
登載
集刑 第104号637頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法320条,刑訴法324条2項
論点83第335条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にたらない一事例 ―同意のないのにかかわらず伝聞供述をふくむ証人尋問調書の全般に亘つて罪証に供した場合―

裁判要旨原判決は第一審第九回公判期日において所論Aの尋問調書の証拠調の施行について、被告人及び弁護人において異議を述べた形跡が窺われないから、右尋問調書中伝聞供述記載部分をも証拠とすることに同意したものと認めることができるとしているけれども、被告人は第一審公判において密入国事実を全面的に否認しているのであるから同公判調書の記載内容から考えて、被告人及び弁護人が前記尋問調書の証拠調に異議を述べなかつた一事をもつて直ちに同調書中伝聞証拠の供述記載の証拠能力までも認めるに同意したものと推断することはできない。しかしながら同調書中から右伝聞証拠である供述記載の部分の除いた部分及び第一審判決挙示のその他を綜合すれば同判決の判示事実を認めるに難くないから、第一審判決が本件尋問調書の全般に亘つて罪証に供した違法があるけれども、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があつて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年1月14日 昭和28(あ)443
登載
集刑 第102号341頁
参照法条
刑訴法324条,刑訴法335条1項,刑訴法411条,刑訴法326条
論点84第335条刑事訴訟法

控訴審が第一審判決の量刑不当を理由として破棄自判した場合と犯罪事実の確定

裁判要旨控訴審が第一審判決の量刑不当の主張を理由ありとしてこれを破棄自判するにあたつては、第一審判決の確定した事実に対し法令の適用を示せば足り、控訴審として改めて事実を認定するを要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年12月1日 昭和30(あ)1924
登載
刑集 第9巻13号2577頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法400条,刑訴法335条
論点85第335条刑事訴訟法

一 刑訴第三二一条第一項第三号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。〉但書の規定の趣旨
二 児童福祉法第六〇条第一項の罪については児童の年齢の認識または不認識についての過失の判示を要するか

裁判要旨一 所論刑訴三二一条第一項第三号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。〉但書の「特に信用すべき情況」については事実審の裁量規定に関する事項であり(昭和二五年(あ)第一六五七号、同二八年七月一〇日第二小法廷判決、集七巻七号一四七四頁参照)、また所論供述者が一八歳未満の者であることの一事をもつては、未だ右刑訴同条の「特に信用すべき情況」でないといい得ないことは論ずるまでもないところである。
二 第一審判決は特に被告人が児童の年齢を知つていたことを判文に明示してはいないけれども、犯罪の客観的事実を表示することにより右認識の存在を判示することができるのであり、第一審判決の判示事実と挙示の証拠のを通読すれば、被告人に右認識のあつたことを認定した趣旨をうかがうことができる。殊に児童福祉法六〇条三項には「児童の年齢を知らないことを理由として、前二項の規定による処罰を免れることができない。但し、過失のないときは、この限りでない。」と規定しておつて、被告人が児童の年齢を知つて犯行に及んだ場合は勿論これを知らなかつたことにつき過失のなかつたことを被告人において立証しない限りは処罰を免れないところである。本件において被告人がこのような立証をした事迹はないのであるから右認証の有無及び認識しないことについての過失の有無につき明示しなかつた第一審判決を違法ということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年9月11日 昭和27(あ)5497
登載
刑集 第8巻9号1479頁
参照法条
刑訴法321条1項3号,刑訴法335条,児童福祉法60条1項,児童福祉法60条3項,児童福祉法34条1項6号
論点86第335条刑事訴訟法

法令の適用にあたり誤つて余事を記載しても判決に影響しない一事例

裁判要旨第一審判決によれば、被告人A及び同Bの犯罪事実(註、贈賄の事実を指す)は、理由中第二の事実として摘示されているところであつて、それは旧自転車競技法一七条一項に該当するものである。従つて同判決法律適用の部分は、A及びBの所為を同条項に該当するものとして、それぞれ懲役六月及び懲役四月に処する旨判示した後段のみで事足り、前段中にA及びBの所為を同法一六条刑法六〇条(註、収賄の法条を指す)に該当するものとしてそれぞれ懲役六月及び懲役四月に処すると判示した部分は誤つて余計なことを記したものと認められる。しかしこの誤りのために第一審判決も第二審判決も主文に影響を受けてはいない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年8月31日 昭和28(あ)375
登載
集刑 第98号421頁
参照法条
自車競技法(改正前のもの)16条,自車競技法(改正前のもの)17条,刑訴法44条,刑訴法335条,刑訴法411条
論点87第335条刑事訴訟法

証拠の標目中に刑訴三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉による証拠かかかげられていても、その余の挙示の証拠で犯罪事実が認定され得る場合と刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉

裁判要旨刑訴三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉にいう証拠は被告人、証人その他の者の供述の証明力を攻撃する資料に止まり、同法三二一条〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り…〉乃至三二四条〈被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条の規定を準用…〉の規定で証拠能力が認められていないものであつて、犯罪事実を認定するための刑訴三三五条〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の証拠の標目として掲記すべきものではないから、第一審判決が所論Aの供述調書を証拠の標目中にかかげたのは失当たるを免れないこと所論のとおりである。しかしながら本件において所論供述調書を除いてもその余の挙示の証拠で判示事実は優に認定することができるから、かような場合には刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべき事由となすに足りないこと当裁判所の判例とするところである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年7月7日 昭和28(あ)624
登載
集刑 第97号189頁
参照法条
刑訴法328条,刑訴法335条,刑訴法411条
論点88第335条刑事訴訟法

証人の供述中の伝聞部分を排除してその余を罪証の用に供したと認められる場合

裁判要旨所論証人Aの証言については、同証言中伝聞にわたる部分は、第一審裁判所において排除決定をしていること記録上明らかであるから、第一審判決は、右の部分を除いて同証言を採証したものと解するを相当する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年6月23日 昭和29(あ)799
登載
集刑 第96号479頁
参照法条
刑訴法320条,刑訴法335条1項,刑訴法309条,刑訴規則205条の6
論点89第335条刑事訴訟法

判決に罰金等臨時措置法の適用を示すことの要否

裁判要旨本件は罰金臨時措置法施行後の犯罪であるから、刑訴三三五条〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉所定の法令の適用を示す場合に同措置法を必ずしも常に示す必要はない(昭和二六年(あ)三九七六号、同二七年一〇月二日第一小法廷判定、判例集六巻九号一〇九七頁を参照)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年6月22日 昭和28(あ)573
登載
集刑 第96号447頁
参照法条
罰金等臨時措置法3条,刑訴法335条
論点90第335条刑事訴訟法

原判決の判断の通りとすれば第一審判決を破棄自判しなければならない場合に控訴を棄却した誤りがあつても結局同一の刑に処するときは、刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉に当らない

裁判要旨第一審判決は、被告人の本件行為を過剰防衛行為であると認定して法律上の減軽をした上更らに酌量減軽をして被告人を懲役四年に処しているのに、原判決は証拠に基き過剰防衛行為に該当しないことも明らかであるとして被告人の控訴趣意を排斥して控訴を棄却したものであるから、原判決は第一審判決を事実誤認又は判決に影響ある法令違反ありとしてこれを破棄し、ただ被告人のため控訴をした事件であるの故を以て第一審判決の言渡した懲役刑よりも重くない刑を言渡すべきものであつたといわなければならない。それ故、この点において原判決には違法がある。しかし、本件は被告人のために上告した事件であるから、右の違法は原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年4月15日 昭和28(あ)5689
登載
集刑 第94号523頁
参照法条
刑法36条2項,刑訴法335条2項,刑訴法380条,刑訴法396条,刑訴法402条,刑訴法411条
論点91第335条刑事訴訟法

第一審判決が証人の供述中の異議申立のあつた伝聞部分のみを排除し、その余を罪証の用に供したと認められる場合

裁判要旨証人Aの供述につき所論のように弁護人の異議申立により排除決定があつたのは、Bからの伝聞事項に関する部分のみであること原判決の説示するとおりである。そして第一審判決が証拠に引用したのは、前記証人の直接見分した事実に関する供述部分であると原審は認めたのであつて、その判断に誤りはない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年3月16日 昭和27(あ)5410
登載
集刑 第93号469頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法320条,刑訴法324条2項,刑訴法309条,刑訴規則205条の6
論点92第335条刑事訴訟法

罰則施行前から施行後まで引き続きかつ新旧両法に跨つてなされた麻薬所持に対する適用

裁判要旨麻薬所得の罪において、一個の所持が罰則施行前より罰則施行後まで引き続きなされかつ新旧両法に跨つてなされたとしても、その一個の所持全体に対して新法を適用して処置すべきものであつて、罰則施行前の部分を分割して無罪の言渡しをなしまたは旧法の部分を分割してこれに対し旧法および刑法第六条をも適用すべきものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年2月25日 昭和27(あ)309
登載
集刑 第92号709頁
参照法条
麻薬取締規則42条,麻薬取締規則56条1項1号,旧麻薬取締法3条1項,旧麻薬取締法57条1項,旧麻薬取締法74条,刑訴法335条,刑法6条
論点93第335条刑事訴訟法

一 所得税脱税犯の成立時期と大赦令適用の有無
二 所得税法違反罪における脱税額の判示方

裁判要旨一 所論違憲の主張について、その理由とする第一審判決の判示第二の事実に大赦令に当るべき所得税に関するものを包含していてるかどうかを記録によつて調べてみると、大阪国税局告発書脱税額計算書には、過月分給与当月支給額とあつて、昭和二五年四月以降の分について当月とは、四月以降の月を指すこと文理上明らかであるのみならず、給与の支払遅延によつて昭和二五年三月以降の分が支給されたとしても、現実に支給されたのが当月すなわち昭和二五年四月以降であれば、犯罪は現に支給された時に成立するものと解すべきであり、犯罪成立以前においては大赦令適用の余地も存しないものといわなければならない。
二 原判決は脱税額の算出に当り扶養控除を受くべき者の数額を計算していないと主張するけれど、そのような事実は記録上なんら認められないのみならず、源泉徴収義務者の納付額は、所得税法の規定により、控除に当る事項の申告に応じ計算されるのであるから、別に控除額を計算して判示することを要するものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年2月23日 昭和27(あ)5270
登載
集刑 第92号643頁
参照法条
大赦令(昭和27年政令第117号)1条12号,所得税法69条,刑訴法335条
論点94第335条刑事訴訟法

証拠の標目として掲げられている証人の供述中に伝聞にかかる部分がある場合その部分を証拠としたものと解すべきであるか

裁判要旨一 判決に証拠の標目として掲げられている証人の供述中に伝聞にかかる部分がある場合、その部分について特に排除決定、または判決に当該部分を除外する旨の説示がないからといつて、その伝聞にかかる部分をも証拠としたものと断定すべきではない。
二 判決に証拠の標目として掲げられている証人の供述中伝聞にかかる部分を除いた他の部分とその余の証拠とによつて判示事実が充分に認定できる場合には、右証人の供述については、伝聞にかかる部分を除いた部分だけを証拠としたものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年2月18日 昭和27(あ)5694
登載
刑集 第8巻2号145頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法320条,刑訴法324条2項,刑訴法326条,刑訴法405条3号,刑訴法401条2項
論点95第335条刑事訴訟法

一 検察官の冒頭陳述および判決理由中の説示と裁判官の予断偏見
二 信書が刑訴第三二三条第三号〈第三百二十一条から前条までに掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。 前二号に掲げるもののほか特に信用すべき情況の下に作成された書面〉によつて証拠能力を認められる事例

裁判要旨一 或る犯行が、甲の単独犯として起訴せられ申に対し有罪の確定判決があつた後、甲の右犯行は乙の教唆に基ずくものであり、且つ丙および丁は甲の犯行を幇助したものであるとして、さらに乙、丙および丁が起訴せられた場合、検察官が冒頭陳述に際し、さきに甲を起訴した時の検察当局の意見を或る程度説明し、また判決がその理由中に、審判に当り考慮すべき点を列挙して、事件の発端から起訴を見るに至るまでの経過および事件の特殊性を説示しているからといつて、裁判所が予断と偏見に基ずいて審判したものということはできない。
二 右甲が服役中妻との間でやりとりした一連の手紙は公判における右両名の証言および同手紙の外観、内容等により特に信用すべき状況のもとに作成されたものと認められるかぎり刑訴第三二三条第三号〈第三百二十一条から前条までに掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。 前二号に掲げるもののほか特に信用すべき情況の下に作成された書面〉によつて、乙、丙および丁に対する被告事件の証拠とすることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年12月2日 昭和27(あ)4481
登載
刑集 第8巻12号1923頁
参照法条
憲法37条1項,刑訴法296条,刑訴法44条1項,刑訴法335条1項,刑訴法323条3号
論点96第335条刑事訴訟法

窃盗未遂の公訴事実に対し、目的物を遺失物と誤認したとの主張と刑訴第三三五第二項の主張

裁判要旨或る物を窃取しようとして遂げなかつたとの公訴事実に対し、被告人がその物を遺失物と誤認したとの主張は刑訴第三三五条第二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉にいわゆる「犯罪の成立を妨げる理由となる事実の主張」にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年12月24日 昭和29(あ)1910
登載
刑集 第8巻13号2420頁
参照法条
刑法235条,刑法254条,刑訴法335条2項
論点97第335条刑事訴訟法

証人の供述中の伝聞にかかる部分は証拠とせず、その他の証拠を罪証の用に供したと認められる場合

裁判要旨第一点所論Aの供述中伝聞に関する部分は、第一審判決は、これを証拠としなかつたものとみとめるを相当とする。(昭和二七年(あ)五六九四号、同二九年二月一八日第一小法廷判決参照)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年11月26日 昭和29(あ)2381
登載
集刑 第100号605頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法320条,刑訴法324条2項
論点98第335条刑事訴訟法

一 騒擾罪の成立要件
二 訴訟費用の裁判に対する不服申立

裁判要旨一 騒擾罪は多衆が集合して暴行脅迫をすることによつて成立しその地方の静謐を害することを要件とするものではないから、騒擾罪にあたる事実を判示するには、多衆が集合して暴行または脅迫の行為をしたことを明らかにすれば足り、特にその行為が地方の静謐を害しまたは公共の平和を害するおそれのあることを判示する必要はなく、従つて仮りに同判決に他方の静謐を害した旨の判示にその証拠が欠けていたとしてもそれが直ちに理由不備の違法を来すものでもない。(大正一三年(れ)一〇〇九号同年七月一〇日大審院判決及び昭和二六年(れ)九〇八号同二八年五月二一日第一小法廷判決参照)
二 本案の裁判に対する上告理由がない場合は、訴訟費用の裁判に対する不服の申立は許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年11月16日 昭和28(あ)5577
登載
集刑 第100号411頁
参照法条
刑法106条,刑訴法335条,刑訴法378条4号,刑訴法181条,刑訴法185条
論点99第335条刑事訴訟法

一 昭和二三年七月七日法律第一一〇号による改正後で、同二五年七月三一日法律第二二六号による改正前の地方税法第一三六条第二項の合憲性
二 昭和二三年七月七日法律一一〇号による改正後で、同二後年七月三一日法律第二二六号による改正前の地方税法(以下旧地方税法と略称)第一三六条第二項の不納入罪の成立と同法第四一条の督促との関係
三 旧地方税法第一三六条第二項の犯罪の日時の判示に欠けるところのない事例
四 昭和二三年八月一日以後同二四年六月一日以前に為された入場税および同附加税犯則事件と通告処分および告発
五 入場税法の犯則取締について通告処分や告発を必要とするものと定めるか否かによつて法令の違憲の問題を生ずるか
六 税法違反被告事件について大審院民事判例を引用して判例違反を主張することの適否

裁判要旨一 旧地方税法第一三六条第二項は憲法第一三条、第三六条に違反しない。
二 旧地方税法第一三六条第二項の不納入罪は特別徴収義務者が納入すべき金額を納入しないで法定の期限を経過することによつて当然に成立するものであつて、これに対して同法第四一条の督促状を発することは右不納入罪の成立要件ではない。
三 判決に被告人が入場税および同附加税を徴収した年月日を明示し、徴収した入場税を府税条例所定の期限内に所定の場所に納入しなかつた旨判示してある以上、旧地方税法第一三六条第二項の犯罪成立の年月日は判示されているものというべきである。
四 昭和二三年八月一日以後同二四年六月一日以前に為された入場税および同附加税犯則事件については国税犯則取締法所定の通告処分および告発を訴訟条件と解すべき余地はない。
五 入場税法の犯則取締について通告処分や告発を必要とするものと定めるか否かというが如きことは、国が立法政策として自由に決し得るところであつて、このことで法令の違憲問題を生ずるものではない。
六 税金不納入と刑事責任との関係が問題となつている税法違反被告事件において、債務の履行遅滞または不履行と損害賠償との関係に関する民事判例を引用して判例違反を主張するのは失当である。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和29年11月10日 昭和26(あ)990
登載
刑集 第8巻11号1749頁
参照法条
旧地方税法136条2項(昭和23年7月7日法律110号による改正後で、同25年7月31日法律226号による改正前のもの),旧地方税法136条1項,旧地方税法136条2項,旧地方税法136条3項,旧地方税法140条,旧地方税法36条,旧地方税法37条,旧地方税法41条,旧地方税法46条,旧地方税法99条,旧地方税法141条,旧地方税法151条,憲法13条,憲法36条,刑訴法335条,刑訴法405条3号,昭和24年法律第169号中の地方税法に第126条の2を加えた部分,昭和24年法律第169号中の地方税法に第126条の2を加えた附則1項,昭和24年法律第169号中の地方税法に第126条の2を加えた附則3項,大阪府税条例58条,大阪府入場税条例6条,大阪府入場税条例7条,大阪市税条例39条,地方税法(昭和23年法律110号による改正後で、同25年法律226号による改正前のもの)136条2項
論点100第335条刑事訴訟法

一 たばこ専売法第七五条第二項の適用と「没収することのできないとき」の判断
二 追徴と没収することができなかつた具体的理由および追徴金額算出の基礎の各証拠説示の要否
三 刑法第一九条第一項第一九条ノ二とたばこ専売法第七五条との関係

裁判要旨一 製造たばこの価額を追徴するにあたり、たばこ専売法第七五条第二項を適用している以上、その製造たばこが同項にいう「没収することのできないとき」であると判断した趣旨に解すべきである。
二 判決で追徴を言い渡す場合、必ずしも特に、没収することができなかつた具体的理由および追徴金額算出の基礎を、証拠を掲げて説明するを要しない。
三 刑法第一九条第一項、第一九条ノ二の規定とたばこ専売法第七五条の規定とは、一般法と特別法の関係にある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年8月25日 昭和27(あ)1525
登載
刑集 第7巻8号1762頁
参照法条
刑訴法44条1項,刑訴法335条1項,刑法8条,刑法19条1項,刑法19条ノ2,たばこ専売法75条1項,たばこ専売法75条2項
論点101第335条刑事訴訟法

自首があつたとの主張と刑訴第三三五条第二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉

裁判要旨自首があつたとの主張は、刑訴第三三五条第二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の主張にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年8月18日 昭和27(あ)1264
登載
刑集 第7巻8号1737頁
参照法条
刑法42条1項,刑訴法335条2項
論点102第335条刑事訴訟法

第二審において、第一審判決を破棄自判するに当り、自ら証拠説明をしている場合と、第一審認定の摘示事実の引用

裁判要旨原判決は、第一審判決中被告人に関する部分を破棄した上、新たに証拠説明をやり直しているから、自ら事実認定をして第一審判決の摘示事実を引用した趣旨と解される。従つて原判決には所論のように理由を附しないという違法はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年7月22日 昭和27(あ)1088
登載
集刑 第85号177頁
参照法条
刑訴法380条,刑訴法397条,刑訴法335条
論点103第335条刑事訴訟法

判決に罰金等臨時措置法第二条第一項の如き総則的規定を引用することの要否

裁判要旨法令の適用についても罰金等臨時措置法二条一項の如き総則的規定の如きは一々引用するを要しないものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年2月26日 昭和26(あ)3495
登載
集刑 第74号447頁
参照法条
罰金等臨時措置法2条,罰金等臨時措置法3条,刑訴法335条
論点104第335条刑事訴訟法

綜合認定した証拠中に証拠能力のない書面があつた場合と刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉

裁判要旨被告人以外の者の司法警察員に対する供述調書が、証拠とすることの同意がなかつたため、刑訴第三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉の規定により提出された場合に、これを綜合認定の証拠の一つとして挙示するのは違法であるが、他の証拠のみで事実の認定ができれば刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年2月17日 昭和27(あ)2719
登載
刑集 第7巻2号237頁
参照法条
刑訴法321条1項3号,刑訴法326条,刑訴法328条,刑訴法335条,刑訴法411条
論点105第335条刑事訴訟法

一 銃砲等所持禁止令違反罪の公訴事実の同一性の有無
二 不法監禁中になされた暴行脅迫行為が別罪を構成する事例

裁判要旨一 同一被告人に対する二個の銃砲等所持禁止令違反の公訴事実において、その不法所持にかかる日本刀がいずれも別個のものであり、且つ、判示の如くその事実上の支配状態を別異にするときは、たとい不法所持の日時、場所が彼此近接しているとしても、その間に公訴事実の同一性は認められない。
二 暴行脅迫が不法監禁中になされたものであつても、不法監禁の状態を維持存続させるため、その手段としてなされたものでなく、全く別個の動機、原因からなされたものであるときは、右暴行脅迫の行為は、不法監禁罪に吸収されることなく、別罪を構成する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年11月27日 昭和27(あ)5833
登載
刑集 第7巻11号2344頁
参照法条
憲法39条,刑訴法256条2項,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項,刑訴法337条1号,刑法220条1項,刑法208条,刑法222条,刑法54条1項前段,暴力行為等処罰に関する法律1条1項
論点106第335条刑事訴訟法

「旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則」第六条〈土地管轄を異にする数個の事件が関連するときは、一個の事件につき管轄権を有する裁判所は、併せて他の事件を管轄することができ…〉によつて事実の摘示証拠の説明を記載した判決の趣旨

裁判要旨「旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則」第六条〈土地管轄を異にする数個の事件が関連するときは、一個の事件につき管轄権を有する裁判所は、併せて他の事件を管轄することができ…〉により、判決の事実の摘示証拠の説明として、「罪となるべき事実は原審判決に記載してある通りであつて、右は控訴申立人において不服のないところである」と記載した控訴審判決は、右規則第五条〈数個の関連事件が各別に上級の裁判所及び下級の裁判所に係属するときは、事物管轄にかかわらず、上級の裁判所は、決定で下級の裁…〉に則つて、被告人に不服のない限度において、第一審判決の認定した事実によつた旨を明らかにしたものであつて、控訴審における被告人の自白で犯罪事実を認定した趣旨ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年11月13日 昭和26(れ)2321
登載
集刑 第88号347頁
参照法条
旧刑訴事件の上訴審における審判の特例規則5条,旧刑訴事件の上訴審における審判の特例規則6条,旧刑訴法360条1項,新刑訴法335条1項
論点107第335条刑事訴訟法

綜合認定した証拠の一部に違法なものがあつても判決に影響を及ぼさない一事例 ―検察官が刑訴三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉により提出した供述調書に対し、取調の同意はあつたが証拠とすることの同意があると認められない場合―

裁判要旨第一審第三回公判調書には、「検察官は……刑事訴訟法第三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉により、四、Aの麻薬取締官作成第一回供述調書一の各取調べを請求した」と明記されているから、そのあとに、「被告人及弁護人は、右各書面の取調べに異議なく之を証拠とするに同意する…旨述べた」とあるのは、Aの供述調書についてはこれを事実認定の証拠とすることに同意(刑三二六条〈検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認め…〉にいう同意)した趣旨でないことが明瞭である。従つて、第一審判決が右供述調書を犯罪事実認定の証拠の一つとして挙示していることは、まことに所論のとおり違法であり、原判決が被告人側の同意を理由としてこれを適法な採証と解したことは、誤であるといわなければならない。しかし、右供述調書を除外しても、第一審判決挙示の他の各証拠により本件犯罪事実は充分に認定しうるものと判断されるから、右違法は判決に影響を及ぼさず、したがつて刑訴四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉を適用すべき事由とはならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年10月19日 昭和27(あ)2904
登載
集刑 第87号531頁
参照法条
刑訴法321条1項3号,刑訴法328条,刑訴法326条,刑訴法335条,刑訴法411条
論点108第335条刑事訴訟法

量刑不当の控訴趣意を排斥する判示の程度

裁判要旨原判決が、「所論に鑑み記録によつて被告人の本件犯情、その他諸般の情状を考察して見たが原審の科刑は必ずしも重きに過ぐるとすることはできない」と説示しているときは、訴訟法が有罪を言渡す判決においても必ずしも量刑上の理由につき斟酌された情状を一々説示すべきことを要請していないことに徴しても(刑訴三三五条一項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉参照)、原判決に量刑不当の訴訟趣意を排斥する判示として理由不備の違法ありということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年1月24日 昭和26(あ)125
登載
集刑 第59号413頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法381条,刑訴法396条,刑訴規則246条
論点109第335条刑事訴訟法

判決に罰金等臨時措置法の適用を示すことの要否

裁判要旨罰金等臨時措置法施行後の犯罪について同法をも適用処断するにあたつては同法の適用を必ずしも常に示す必要がない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年10月2日 昭和26(あ)3976
登載
刑集 第6巻9号1097頁
参照法条
罰金等臨時措置法2条,罰金等臨時措置法3条,刑法256条,刑訴法335条
論点110第335条刑事訴訟法

数個の恐喝罪と暴行罪(懲役刑選撰)とを併合加重する場合の法令適用の判示方

裁判要旨数個の恐喝罪と一個の暴行罪(懲役刑選択)とを併合加重するにあたつては、何れの罪が最も重いかを明示説明しなくても、必ずしも違法でない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年10月2日 昭和26(あ)4561
登載
刑集 第6巻9号1100頁
参照法条
刑法249条,刑法208条,刑法45条,刑法47条,刑法10条,刑訴法335条
論点111第335条刑事訴訟法

一 有罪判決において証拠の標目を挙示したことと証拠説明に関する法律上の判断
二 刑訴法第一二二条〈没収することができる押収物で滅失若しくは破損の虞があるもの又は保管に不便なものについては、これを売却してその代価を保管す…〉による換価代金と刑法第一九条

裁判要旨一 有罪判決において、数個の独立した犯罪事実を認定するにあたり、証拠の標目を一括して挙示したからといつて、ただそれだけでは、その判決は、かかる場合の証拠説明の仕方に関し、何ら法律上の判断見解を示したものとはいえない。
二 押収した犯罪行為組成物件の刑訴第一二二条〈没収することができる押収物で滅失若しくは破損の虞があるもの又は保管に不便なものについては、これを売却してその代価を保管す…〉(第二二二条〈第九十九条第一項、第百条、第百二条、第百三条から第百五条まで、第百十条、第百十条の二前段、第百十一条第一項前段及び第二項…〉)による換価代金は、刑法第一九条の適用上、被換価物件と同一視すべきものであつて、同条にいわゆる「対価」ではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年10月26日 昭和25(あ)477
登載
刑集 第4巻10号2170頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法405条,刑訴法122条,刑訴法222条,刑訴法19条
論点112第335条刑事訴訟法

一 酒税法の犯則者に対して刑罰を科する趣旨と刑法第四八条第二項の適用の排除
二 昭和二四年法律第四三号による改正前の酒税法第六六条と懲役及び罰金を併科する場合の刑法第四八条の適用の有無
三 酒税法の犯則者に対して当該税務官吏の告発は犯罪の処罰要件か――右告発についての証拠説明の要否

裁判要旨一 従来酒税法でその犯則者に対して刑罰を科するおもなる趣旨は犯則によつて国に財政上の損失を生ぜしめないことを担保するにあるから、その刑罰も純然たる刑事犯と異り犯人の責任年齢、心神の状態、法の不知等の主観的条件を顧慮せずに各犯罪行為を客観的、数理的に考察して、罰金科料等の金刑だけを脱税額の倍数を以て決定し自由裁量を許さない建前を執つたのである。されば犯則者には例外なく刑法第四八条二項の規定を適用しない旨規定されていたのである(明治二九年法律第二八号酒税法第三一条、昭和一五年法律第二五号酒税法第六六条参照)。
二 昭和二四年法律第四三号酒税第六六条〈裁判所は、被告人の現在地の地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に被告人の勾引を嘱託することができる。〉「第六〇条第一項〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉………ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法………第四八条第三項〈公判期日における訴訟手続については、公判調書を作成しなければならない。〉………ノ規定ヲ適用セズ但シ第六〇条第二項………ノ場合ニ於テ懲役ノ刑ニ処スルトキハ此ノ限ニ在ラズ」の規定は同法の犯則者に対して懲役と罰金科とを併する場合にも罰金刑については従前通り各犯罪行為ごとに罰金刑を科すべく刑法第四八条二項の規定を適用しない趣旨と解するのを相当とする。
三 酒税法の犯則者に対して当該税務官吏から告発をなすことは訴訟要件ではあるが、酒税法違反罪の構成要件ではないから、受訴裁判所は告発が適法になされているか否かを審査しなければならぬことはいうまでもないところであるが、裁判所は公判廷において告発に関する書類被告人に読みきけ、その意見を聴く等これが証拠調をしたり、告発のありたることを判決に示しその証拠を説明すべき法律上の義務は裁判所に存しない。されば論旨は当該税務官吏のなす告発を犯罪の処罰要件と誤解せるに基くものであつてとるをえない。そしてかかる論旨は明らかに刑訴第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉に定める上告理由たる事由にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年10月12日 昭和25(あ)692
登載
刑集 第4巻10号2073頁
参照法条
昭和24年法律43号による改正前の酒税法60条,昭和24年法律43号による改正前の酒税法66条,刑法48条2項,刑訴法338条4号,刑訴法335条,刑訴法405条
論点113第335条刑事訴訟法

1 街頭募金詐欺について包括一罪と解することができるとされた事例
2 包括一罪を構成する街頭募金詐欺について,その罪となるべき事実の特定に欠けるところはないとされた事例

裁判要旨1 街頭募金の名の下に通行人から現金をだまし取ろうと企てた者が,約2か月間にわたり,事情を知らない多数の募金活動員を通行人の多い複数の場所に配置し,募金の趣旨を立看板で掲示させるとともに,募金箱を持たせて寄付を勧誘する発言を連呼させ,これに応じた通行人から現金をだまし取ったという本件街頭募金詐欺については,(1)不特定多数の通行人一般に対し一括して同一内容の定型的な働き掛けを行って寄付を募るという態様のものであること,(2)1個の意思,企図に基づき継続して行われた活動であること,(3)被害者が投入する寄付金を個々に区別して受領するものではないことなどの特徴(判文参照)にかんがみると,これを一体のものと評価して包括一罪と解することができる。
2 包括一罪を構成する判示のような街頭募金詐欺の罪となるべき事実については,募金に応じた多数人を被害者とした上,被告人の行った募金の方法,その方法により募金を行った期間,場所及びこれにより得た総金額を摘示することをもってその特定に欠けるところはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成22年3月17日 平成21(あ)178
登載
刑集 第64巻2号111頁
参照法条
(1,2につき)刑法246条1項 (2につき)刑訴法335条1項
論点114第335条刑事訴訟法

1 犯罪行為の実行に着手する前に取得した前払い代金等の財産の取得につき事実を仮装した場合と,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条1項〈同一事件が事物管轄を異にする数個の裁判所に係属するときは、上級の裁判所が、これを審判する。〉前段の「犯罪収益等の取得につき事実を仮装した罪」の成否
2 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条1項前段の「犯罪収益等の取得につき事実を仮装した罪」の罪となるべき事実の摘示として欠けるところはないとされた事例
3 注文に応じて有償で児童ポルノを送付して提供するに際し,提供者が注文者から取得した金員の一部を送料として支出した場合と,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律による追徴金額の算定方法

裁判要旨1 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律2条2項1号〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉にいう「犯罪行為により得た財産」とは,当該犯罪行為によって取得した財産であればよく,その実行に着手する前に取得した前払い代金等の財産であっても後に当該犯罪が成立する限り犯罪収益に該当し,その取得につき事実を仮装すれば,同法10条1項前段の「犯罪収益等の取得につき事実を仮装した罪」が成立する。
2 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条1項〈同一事件が事物管轄を異にする数個の裁判所に係属するときは、上級の裁判所が、これを審判する。〉前段の「犯罪収益等の取得につき事実を仮装した罪」の罪となるべき事実の摘示に当たっては,犯罪行為によって得た財産が同法所定の犯罪収益であることを示せば足り,第1審判決(判文参照)は,同罪の罪となるべき事実の摘示において欠けるところはない。
3 注文に応じて有償で児童ポルノを送付して提供する場合,当該提供行為によって提供者が注文者から取得したと認められる金員の全額が「犯罪行為により得た財産」として組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律所定の犯罪収益に該当し,提供者が児童ポルノを提供するに際して同金員の一部を送料として支出したとしても,同法による追徴に当たり,その分を控除して追徴金額を算定すべきではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年11月4日 平成20(あ)865
登載
刑集 第62巻10号2811頁
参照法条
(1〜3につき) 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律2条2項,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条1項前段 (2につき) 刑訴法335条1項 (3につき) 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律13条1項,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律16条1項本文,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条4項前段
論点115第335条刑事訴訟法

1 殺害の日時・場所・方法の判示が概括的で実行行為者の判示が択一的であっても殺人罪の罪となるべき事実の判示として不十分とはいえないとされた事例
2 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が明示された場合に訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することの適否
3 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が被告人と明示された場合に訴因変更手続を経ることなく実行行為者が共犯者又は被告人あるいはその両名であると択一的に認定したことに違法はないとされた事例

裁判要旨1 殺害の日時・場所・方法の判示が概括的なものである上,実行行為者の判示が「A又は被告人あるいはその両名」という択一的なものであっても,その事件が被告人とAの2名の共謀による犯行であるときには,殺人罪の罪となるべき事実の判示として不十分とはいえない。
2 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が明示された場合に,それと実質的に異なる認定をするには,原則として訴因変更手続を要するが,被告人に不意打ちを与えるものではなく,かつ,認定される事実が訴因に記載された事実に比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には,訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定しても違法ではない。
3 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が被告人と明示された場合に,訴因変更手続を経ることなく実行行為者がA又は被告人あるいはその両名であると択一的に認定したことは,訴因と認定との間で共犯者の範囲に変わりがなく,被告人が1審の審理においてAとの共謀及び実行行為への関与を否定し,実行行為者は被告人である旨のAの証言につき自己の責任を被告人に転嫁するものであると主張するなどした判示の事情の下においては,違法とはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成13年4月11日 平成11(あ)423
登載
刑集 第55巻3号127頁
参照法条
刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)60条,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)199条,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項,刑訴法312条1項,刑訴法312条2項
論点116第336条刑事訴訟法

非常上告事件において原略式命令破棄・無罪が言い渡された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和62年2月19日 昭和61(さ)1
登載
集刑 第245号669頁
参照法条
刑訴法458条1項,刑訴法336条
論点117第336条刑事訴訟法

非常上告事件において、原略式命令破棄・無罪が言い渡された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年12月20日 昭和59(さ)3
登載
集刑 第238号385頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法336条前
論点118第336条刑事訴訟法

刑訴法一八八条の二第一項〈無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であつた者に対し、その裁判に要した費用の補償をする。ただし、被告人であ…〉により費用の補償をすべき場合

裁判要旨刑訴法一八八条の二第一項〈無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であつた者に対し、その裁判に要した費用の補償をする。ただし、被告人であ…〉は、費用の補償をすべき場合を無罪の判決が確定したときに限り、公訴棄却の判決が確定したときを含まない趣旨である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年9月27日 昭和58(し)39
登載
刑集 第37巻7号1092頁
参照法条
刑訴法188条の2第1項,刑訴法336条,刑訴法338条
論点119第336条刑事訴訟法

一部の公訴事実につき判決理由中で犯罪の証明がないと判断しながら主文における無罪の言渡を欠く場合と無罪部分の確定の有無等

裁判要旨第一審判決は被害者Aに対する強姦致傷の公訴事実に関して、判決理由中において被告人両名については犯罪の証明がない旨判示するにとどまり、主文において無罪の言渡をしていない違法があるが、第一審判決中右公訴事実に対する無罪判断の部分は、控訴申立がなく、すでに確定しているから、右違法は、第一審判決の有罪部分および原判決に影響はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和46年1月29日 昭和44(あ)1831
登載
集刑 第179号25頁
参照法条
刑訴法336条
論点120第336条刑事訴訟法

刑訴法第四五八条第一号〈非常上告が理由のあるときは、左の区別に従い、判決をしなければならない。 原判決が法令に違反したときは、その違反した部分を破棄する。但し、原判決が被告人のため不利益であるときは、これを破棄して、被告事件について更に判決をする。〉により原略式命令破棄、被告人無罪の言渡がなされた事例。

裁判要旨道路交通法第七条第一項の規定に基づく考案委員会告示により特定交差点における車両の右折が原則として禁止され、特定方向からの特定種類の車両による右折のみは除外されていた場合において、除外された右折にあたる事実を有罪と認めた略式命令が確定したときは、刑訴法第四五八条第一号〈非常上告が理由のあるときは、左の区別に従い、判決をしなければならない。 原判決が法令に違反したときは、その違反した部分を破棄する。但し、原判決が被告人のため不利益であるときは、これを破棄して、被告事件について更に判決をする。〉により原略式命令破棄、被告人無罪の言渡をすべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和40年7月14日 昭和39(さ)7
登載
刑集 第19巻5号585頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法336条,昭和37年3月13日京都府公安委員会告示別表1号
論点121第336条刑事訴訟法

第一審の無罪判決を維持した第二審判決に対する被告人の上訴権。

裁判要旨被告人等は控訴判決に対し上告申立をしたが、被告人は第一審の無罪判決を維持した第二審判決に対し上訴権を有しないこと当裁判所の判例(昭和三七年(あ)第一七五一号、昭和三七年九月一八日第三小法廷決定)とするところである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年3月31日 昭和39(あ)42
登載
集刑 第150号937頁
参照法条
刑訴法351条,刑訴法336条
論点122第336条刑事訴訟法

一 公判調書における文字の挿入削除が刑訴規則第五九条所定の方式を欠く場合の効力
二 予備的訴因の追加により公訴事実の同一性が害されない事例
三 予備的訴因につき有罪を認定した場合に主たる訴因に対する判断を明示することの要否

裁判要旨一 公判調書における文字の挿入削除が刑訴規則第五九条所定の方式を欠いていても、ただちにその挿入削除を無効とすべきではなく、その効力の有無は、裁判所が諸般の状況に照して合理的な裁量により決すべきものである。
二 「被告人はA税務事務所に勤務中、B日頃、かねて同税務事務所滞納整理係Cから徴収方依頼を受けていた納税者D会社より、固定資産税一六四、七三〇円を同会社振出の同額の小切手で徴収し保管中、その頃擅に着服横領した。」との横領の訴因に対し、「被告人はA税務事務所に勤務中、B日頃、D会社において、その制限なきにかかわらず権限あるをよそおい、Eに対し同会社の固定資産税一六四、七三〇円の請求をし、同人をしてその旨誤信せしめ、よつて同人から同会社振出の同額の小切手の交付を受けて、これを騙取した。」との詐欺の予備的訴因を追加することにより、公訴事実の同一性は害されない。
三 主たる訴因と予備的訴因のある場合に、予備的訴因につき有罪を認定したときは、主文において主たる訴因につき無罪を言い渡すべきでないことは勿論、理由中においても、かならずしもこれに対する判断を明示することを要するものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年3月23日 昭和27(あ)5538
登載
刑集 第8巻3号305頁
参照法条
刑訴規則59条,刑訴法256条3項,刑訴法256条5項,刑訴法312条1項,刑訴法44条1項,刑訴法336条,刑訴法378条3号,刑法252条1項,形法246条1項
論点123第336条刑事訴訟法

鑑定書にもとずく動機の認定が実験則に違反しない一事例

裁判要旨被告人が昭和二三年一一月一二日同一会社に事務員として勤務中の婦女を殺害した動機は、被告人が同年七月頃より被害者と情交関係を結び、その結果同女は妊娠したので会社における自己の立場に鑑みその処置に苦慮したがためであると認めるにあたり(情交から殺害までの期間四ケ月余)、被害者が妊娠六ケ月に達する男性の胎児を有する旨の鑑定書を証拠として採用しても、右の認定に実験則の違反はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年3月27日 昭和26(れ)2125
登載
刑集 第7巻4号680頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法337条,旧刑訴法221条1項
論点124第336条刑事訴訟法

一 委任命令は「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」の規定により失効するか
二 判例と相反する判断をしたことにならない一事例
三 証拠決定をしないままで結審した違法が判決に影響を及ぼさない一事例
四 証拠調をしない証拠を証拠とした違法が判決に影響を及ぼさない一事例

裁判要旨一 委任命令は、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」の規定により失効しない。
二 証拠決定をしないまま弁論を終結したにすぎないだけの場合は、証拠決定をしないで弁論を終結するのは絶対的上告理由にあたるとした当裁判所の判例と相反する判断をしたことにならない。
三 証拠決定をしないままで弁論を終結した違法があつても、申請された証人が単に被告人の性格を証明するためのものにすぎないときは、刑訴411条1号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にいわゆる判決に影響を及ぼす違法があるとはいえない。
四 証拠調をしない証拠を証拠としたところでそれが他の適法な証拠の証明力を強めるためのものにすぎないものであるときは、刑訴第四一一条第一号にいわゆる判決に影響を及ぼす違法があるということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月13日 昭和26(れ)1206
登載
刑集 第6巻5号744頁
参照法条
日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律1条,日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律1条の3,刑訴法405条2号,刑訴法411条1号,旧刑訴法344条,旧刑訴法410条14号,旧刑訴法340条,旧刑訴法336条
論点125第336条刑事訴訟法

単に被告人の供述の一部を措信しない理由の説示の根拠としたに過ぎない聴取書に対する適法な証拠調手続を欠くことと証拠手続上の違法の有無

裁判要旨所論聴取書は、原判決が、犯罪事実認定の証拠に供したものではなく、単に被告人の供述の一部を措信しない理由の説示の根拠にしたに過ぎないものであるから、仮りに所論聴取書について適法な証拠調手続を履践していないとしても、原判決には証拠手続上の違法があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月11日 昭和24(れ)2493
登載
集刑 第70号417頁
参照法条
旧刑訴法340条,旧刑訴法336条,旧刑訴法410条13号
論点126第336条刑事訴訟法

一 傷害罪における傷害の意義と、中毒による全身倦怠、膝蓋健反射亢進
二 メチール入ドラム罐を売渡した行為により数人に対し夫々傷害致死、傷害の結果を生ぜしめた場合の罪数
三 証拠物を訊問した予審調書の採証と右証拠物の証拠調の要否

裁判要旨一 原判決がAに対する傷害として認定した中毒による全身倦怠、膝蓋健反射亢進は人の生活機能の障害を惹起したものであり、これ等は傷害罪にいわゆる傷害に当る。
二 原判決のメチール入ドラム罐をBに売渡したため右メチールアルコールが被告人不知の間に順次被害者に飲用された判示犯罪行為の態様から見て、傷害致死、傷害の各所為は所論の如く一所為数法の関係と見るのが相当である。
三 予審判事が証人に示した訊問した物件について証拠調がなされていなくても、その予審訊問調書について適法な証拠調がなされている以上同調書中の右物件を除いても独立性のある供述部分又は右物件に関係のない供述記載部分を証拠に採用することは違法でない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年9月25日 昭和26(れ)1418
登載
集刑 第53号313頁
参照法条
刑法204条,刑法205条,刑法54条1項前段,旧刑訴法336条,旧刑訴法341条
論点127第336条刑事訴訟法

一 綜合して事実認定に供した数個の証拠中、数量、場所について多少相違するものがあるときと理由齟齬の有無
二 一審公判調書中の共同被告人の供述記載の採証と刑訴応急措置法第一二条第一項

裁判要旨一 原審の事実認定は、原判決挙示の証拠を綜合すれば肯認することができる。論旨の指摘するよのに、A提出に係る盗難被害届記載の被告物件の数量と被告人の運搬したと認定された判示物件の数量との間に多少の齟齬があるとしても、また、右届書記載の被害物件保管の場所と、被告人が本件物件を運搬すべくトラツクに積込をしたと認定された場所とが相違しているとしても、原審が綜合認定の資料とした証拠に照らしそれらの事情は必ずしも被告人の運搬した判示物件がB人絹倉庫株式会社第二号倉庫の盗難被害品たることを認定する妨げとなるものではない。所論は畢竟事実審である原審の裁量に属する事実の認定を非難するに歸し、上告適法の理由とならない。
二 第二審において原審共同被告人を証人として申請した場合に之を却下しながら同人の一審公判調書中の供述記載を事実認定の資料とすることは、刑訴応急措置第一二条〈裁判所は、事実発見のため必要があるときは、管轄区域外で職務を行うことができる。〉に違反しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年9月13日 昭和26(れ)254
登載
刑集 第5巻10号1920頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法10条19号,刑訴応急措置法12条1項,刑訴応急措置法11条2項
論点128第336条刑事訴訟法

自白の任意性についての判断と経験則違反

裁判要旨本件記録中には、被告人の警察署における供述が強制若しくは拷問による自白であることを推認させるような幾多の証人の供述が存在するのである。殊に、直接、取調の衝に当つた警察官自身が被告人の取調は被告人に手錠をはめたままで行われたこと、午前二時頃まで取調べたこと、警察官が四人がかりで、被告人を取調べたこと、警察官の一人が被告人を殴つたことのあることを認めていることを前述のとおりである。本件において記録を精査しても右各供述の真実性を疑うに足りるような資料は存在しないのであるから、原審が若し右各警察官自身の以上のごとき供述を以て、措信するに足らないものとしたのであるならば、それは原審のいわれなき独断であつて、経験則に反する判断といわなければならない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和26年8月1日 昭和25(れ)622
登載
刑集 第5巻9号1684頁
参照法条
刑法186条,旧刑訴法336条,旧刑訴法326条,旧刑訴法409条,旧刑訴法337条,旧刑訴法411条,憲法38条1項,憲法38条2項,刑訴応急措置法10条1項,刑訴応急措置法10条2項
論点129第336条刑事訴訟法

一 分離して結審した事件を併合して判決することの適否
二 証拠調を経ないで証拠に採つた判決の違法
三 司法警察官が事件を検察官に送致した後に作成した被告人に対する訊問調書の証拠能力
四 麻薬取締規則第四二条所定の麻薬はいわゆる無登録の麻薬を含むか
五 共同被告人についての採証の違法と破棄理由の共通

裁判要旨一 原審第七回公判において原審は被告人Aに対する弁論を分離したことは所論のとおりである。そして第九回公判において被告人Aに対する弁論を終結したのであるが原審は右分離した事件を再び併合して判決したものであることは原判決前文において併合して判決すると判示していることから明らかである。裁判所は職権によつて弁論の分離併合が出来るのであるから原審が前示のように分離した事件を併合して判決することは何等違法の点なく論旨は理由がない。
二 原判決は所論押収に係るモルヒネ注射液五十本入二箱(昭和二二年証第八十七条〈勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人…〉号の一)の存在を他の証拠と綜合して原判示第一の(一)及び(ニ)の犯罪事実を認定したものであることは判文上明らかであることは判文上明らかである。ところが原審公判調書を調べてみると原審公判廷において右証拠物について証拠調をした記載がないのであるから原審はその証拠調をしなかつたものというべく従つて原判決は証拠調をしない証拠を断罪の資料に供した違法がありその違法は判決に影響を及ぼすものと言わねばならない。
三 刑訴応急措置法においては聴取書と訊問調書との区別を撤廃し両者ともに供述を録取した書類として一定の条件の下にその証拠能力を認めこれが採否は一に裁判官の自由心証に委せられたのである(同第一二条〈裁判所は、事実発見のため必要があるときは、管轄区域外で職務を行うことができる。〉参照)。それゆえに所論被告人に対する司法警察官の訊問調書がたとえ事件を検察官に送致した後に作成されたものであつて作成者たる司法警察官が訊問なし得ないにかかわらず作成したものであつたとしても訊問が直ちに供述を強制したものとはいえないのであるからその訊問調書は聴取書と同様供述を録取した書類として証拠能力があるものといわなければならない。
四 しかし麻薬取締規則第四二条には「次に掲げる者以外の者は麻薬を所有又は所持することができない」と規定しているのであつて右の麻薬というのは正規の手続を経た論旨の所謂調録された麻薬のみを指すのではなく正規の手続を経ない所謂登録の麻薬をも包含するものと解するを相当とする。然らば原判決が同規則施行前に被告人が取得した麻薬について同規則を適用してその麻薬の所持を処罰したことは正当である。
五 原審共同被告人B、A、Cについて原審が証拠調をしない証拠を採証した違法があるとしても被告人の原判示の犯罪事実は挙示の証拠のみで十分認定できるのでありその証拠のうちには証拠調をしない証拠は採用されていないのであるから、かかる場所には旧刑訴第四五一条〈裁判所は、再審開始の決定が確定した事件については、第四百四十九条の場合を除いては、その審級に従い、更に審判をしなければな…〉にいわゆる「破棄の理由が上告を為したる共同被告人に共通なるとき」に該当しないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年8月17日 昭和24(れ)2777
登載
刑集 第5巻9号1764頁
参照法条
旧刑訴法349条,旧刑訴法336条,旧刑訴法127条,旧刑訴法254条,旧刑訴法451条,刑訴法313条1項,刑訴応急措置法8条4号,刑訴応急措置法12条,麻薬取締規則(昭和21年厚生省令25号)42条
論点130第336条刑事訴訟法

証拠に供した記録中の書類の一部が紛失した場合とその採証の適否

裁判要旨所論Aに対する司法警察官の聴取書について、本件記録中所論のような落丁のあることは認めざるを得ない。しかしながら、原審公判調書によれば、右聴取書は同公判において、被告人及び弁護人立会の上適法に証拠調が行われたことが明白であり、その際被告人からも、弁護人からも何等議異の申立なくその後原審公判を終結する迄の間において、被告人側から何等議異の申立のなされた形跡のない本件においては右書類は原審がこれを採証した当時においては、存在したものと認めるを相当とする。とすれば、その後においてその書類の一部が紛失したとしても、それが紛失したという一事によつて、直に所論のように原審の採証を不法ならしめるものということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年7月6日 昭和25(れ)551
登載
刑集 第5巻8号1404頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法347条1項,旧刑訴法337条,旧刑訴法340条
論点131第336条刑事訴訟法

一 麻薬取締法施行前に入手した麻薬の所持と麻薬取締法第三条第一項但書の適用
二 麻薬であることの認定資料
三 麻薬取締法第一条にいわゆる麻薬の種類判示の要否

裁判要旨一 麻薬取締法第三条第一項但書には「但しこの法律の規定により麻薬を麻薬施用者から施用のため交付を受け又は麻薬小売業者若しくは家庭麻薬小売業者から譲り受け若しくは譲り受けた者がその麻薬を所持することはこの限りではない」と規定してあるから、この但書の適用のある場合は麻薬取締法の規定によつて麻薬の交付を受け、又は譲り受けた者がこれを所持する場合に限られることは明らかである。それゆえ麻薬取締法施行数年間にその子女の病気に施用するため入手した麻薬であつても、同法施行後の所持については右但書の規定はその適用がないものと解すべきである。
二 麻薬取締法違反事件の物件が麻薬であることを、薬剤師の資格を有する被告人の供述によつて認定しても不当ではない。
三 判示麻薬が、麻薬取締法第一条の何号に属する麻薬であるかを特に判示しなくても、違法ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年7月20日 昭和25(れ)1448
登載
刑集 第5巻8号1592頁
参照法条
麻薬取締法3条,麻薬取締法1条,旧刑訴法336条
論点132第336条刑事訴訟法

鑑定書の死因に関する記載の証拠力

裁判要旨所論指摘の鑑定書の死因に関する記載は単なる空な想像を記載したものではなく、学識経験者がそれにより実験した事実に基ずき推測した事項を記載したもの(旧刑訴第二一九条〈前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、捜索すべき場所、身体若しくは物、提供させるべき電磁…〉、第二二八条〈前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。〉第二〇六条〈検察官又は司法警察員がやむを得ない事情によつて前三条の時間の制限に従うことができなかつたときは、検察官は、裁判官にその事…〉参照)であることは右後の鑑定書の記載に照し極めて明瞭であるから、これを証拠に供した原
判決には何等所論のような違法はないのである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年5月4日 昭和25(れ)1979
登載
集刑 第45号155頁
参照法条
旧刑訴法219条,旧刑訴法206条,旧刑訴法336条
論点133第336条刑事訴訟法

一 販売一覧表の内容を示さず証拠に引用した証拠説示の適否
二 販売価格が著しく統制額を超過しているときその販売価額から客器代を控除しなかつたことの適否
三 その物品の販売を営業としない者の販売行為と販売業者販売価格の適用
四 物価統制令第三条違反罪における統制額超過販売の事実の摘示方―統制額の指定官庁を示すことの要否
五 公判廷において弁護人から被告人の利益のため提出された書証の証拠調の請求と証拠決定の要否
六 物価統制令違反罪の判示方
七 罰金不完納の場合の労役場留置期間を定むるにあたり一日に満たない端数を生ずる換算率を定めた判決の適否
八 始末書の内容を示さず証拠に引用した証拠説示の適否

裁判要旨一 原判決は、所論被告人A作成の小麦粉短麺販売一覧表の記載を第一審第一回公判調書中の同被告人の判示第二と同旨の供述記載と綜合して原判決判示第二の事実認定の証拠としたものであることは、原判決自体に徴して明らかである。しかして第一審第一回公判調書によれば同被告人は、判事から右一覧表を示された上、其の表の記載のとおり小麦粉短麺等を販売したことは相違ないと供述している。そして本件記録によれば右販売一覧表には同被告人が昭和二二年二月中旬頃から同年九月中旬頃迄の間五回に亘りBに売渡した原判示第二の事実に符合する小麦粉短麺等の取引をその販売日時、販売品目数量、販売価格を一々明細に表示した記載が存するのである。してみれば原判決は、所論販売表と相俟つて、明らかにされた第一審第一回公判調書中に存する同被告人の判示第二と同旨の供述記載により、判示第二の事実を認定した趣旨であることは明らかであるから、原判決には証拠の如何なる部分により如何なる事実を認定したかを明らかにしない違法があるということはできない。
二 所論小麦粉に対する昭和二一年一一月二〇日物価庁告示第一八五号、並昭和二二年七月六日物価庁告示第三五八号による統制額及び短麺に対する昭和二一年三月二二日大蔵省告示第一三二号並に昭和二二年七月六日物価庁告示第三五九号による統制額は何れも、容器を含まない裸売の価格であることは所論のとおりであるとしても、被告人の販売した価格が著しく統制額を超過しているときは、原判決が被告人の販売した価格から容器代を控除しなかつたからといつて、その違法は原判決に影響を及ぼさないこと明白である。
三 所論昭和二一年三月二二日大蔵省告示第一三二号によれば短麺について、製造業者販売価格の統制額、中央食糧営団販売価格の統制額及び販売業者(中央食糧営団を除く)販売価格の統制額を指定していることは所論のとおりである。しかし、右告示にいわゆる中央食糧営団を除く販売価格の統制額というのは、一応は現実に法規に従つて正当に短麺の販売業を営む者の販売する場合の統制額を意味するのであるが、価格の統制は正常に営業を営む業者の取引を対象とするだけではなく、その他の取引にも及ぶものと解すべきであるから、その物品の販売を営業とする者でなくても、たまたまその物資を度重ねて販売し又は多量に販売したような場合には、その取引については右告示の販売業者販売価格の統制額を適用してその行為を取締るべきである(昭和二四年(れ)第一七八一号、同二六年一月三〇日第三小法廷判決参照)。
四 物価統制令第三条に違反し統制額を超えて物資を販売した犯罪事実を判示するには、その販売した目的物に統制額が存しその統制額を超えて販売した事実を示せば足りるものである。原判決が小麦粉、短麺を「物価庁指定の公定価格より………超過して販売し」と判示したのは右小麦粉、短麺をこれについて夫々定められている統制額を超過して販売した事実を判示した趣旨であつて、小麦粉に対する統制額は物価庁告示により、短麺に対する統制額は大蔵省告示及物価庁告示により夫々指定されていることは所論のとおりであるけれども、犯罪事実の判示としては一々その統制額が如何なる官庁により指定されているかを示す必要はない。
五 公判廷において弁護人から被告人の利益のため提出された書証の如きは、直ちに証拠調ができるもので新期日を指定する必要もなく又証拠調をするため別段の手続を必要とするものでもない。しかも原審第四回公判調書によれば被告人の弁護人杉浦酉太郎が被告人の利益のため所論書証を提出したのに対し裁判長はこれが取調を為した上検事に示し本件記録に編綴する旨告げたとの記載が存するから原審は所論書証については直ちに証拠調をしているのである。〔公判廷で被告人の利益のため提出された書証は裁判所及び検察官が之を閲覧しさえすればその証拠調の手続は履践されたものであつて必ずしもこれを被告人に示しその被告人の意見弁解を聴く必要のないことは判例である(昭和二四年(れ)第一四三五号同二六年三月一五日第一小法廷判決)〕から論旨は理由がない。
六 統制額を超えて物品を売渡した所為を物価統制令第三条違反の罪に問擬するには、被告人が当該物品を統制額を超えて他人に売渡した事実を確定すれば足り、その他人が自己の為買受けたものであるか又は第三者の従業員としてその第三者の業務として買受けたものであるかということは、売渡人たる被告人に対する犯罪の成否に関係のないことである。
七 原判決は、被告人Bに対し、罰金五万円に処し右罰金を完納することができないときは金三〇〇円を一日に換算して同被告人を労役場に留置する旨言渡したので同被告人が罰金を完納しない場合は、一六六日間留置してもなお二〇〇円の残りが生じ一日に満たない金額を生ずることは所論のとおりである。さればといつて、原判決は罰金を完納することができない場合における労役場留置の期間を定めないものとはいえないから原判決が刑法第一八条四項に違反したものといえない。
八 原判決が判示第三の事実を被告人Bの原審公判廷の判示同旨の供述と共に、所論「買入明細一覧表及び小麦粉短麺販売一覧表の各記載」並に「Cの所論始末書の記載」その他を綜合して之を認める旨説示していることは所論のとおりである。しかし、本件記録に存する所論始末書にはCが被告人Bと共謀して、原判示第三の(一)の(ロ)の共犯に係る買受行為をした旨の記載があり、他にこれと矛盾する事実の記載は存したのであるから、原判決が証拠として右始末書の記載と表示したのは、右始末書の、右判示(ロ)の事実を符合する記載全体によりこれを同被告人の右判示と同旨の原審公判廷の供述と綜合して右判示事実を認定した趣旨であること明らかであるから、原判決には、如何なる証拠の如何なる部分で如何なる事実を認定したかを示さないという違法はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年5月15日 昭和24(れ)2819
登載
刑集 第5巻6号1112頁
参照法条
旧刑訴法360条1項,旧刑訴法336条,旧刑訴法344条,昭和21年3月22日大蔵省告示132号,昭和22年7月6日物価庁告示359号,物価統制令3条,刑法18条1項,刑法18条4項,刑法18条8項
論点134第336条刑事訴訟法

証拠調を経ない証拠によつて事実を認定した判決の違法

裁判要旨一 原判決が所論A提出の盗難被害届の記載を、原判決挙示の他の証拠と共に綜合して判示被告人の犯行を認定したものであることは所論のとおりである。
二 しかるに原審公判調書によれば、原審においては、ただ「各訊問調書並各聴取書、原審公判調書並判決書、上申書及病気診断書」についてのみ順次読聞け又はその要旨を告げ、次いで押収品並びに記録添付の図面を展示し、意見弁解ありや否やを問うに止まり、前示A提出の盗難被害届については何等証拠調手続の履践された証跡は存在しないのである(もとより被告人訊問の際においても右被害届が読聞けられ又は展示され、これに関する意見弁解の求められた形跡は認められない)果して然りとすれば原審は証拠調を経ない証拠によつて事実を認定した違法あるに帰し、既にこの点において原判決は全部破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年4月12日 昭和25(あ)1555
登載
集刑 第43号669頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法340条1項
論点135第336条刑事訴訟法

捜査官の単なる意見の陳述とその証拠能力

裁判要旨強盗傷人事件において強盗の犯意を認定するにあたり、当時その捜査に当つた司法主任の「品物を強奪すべくやつたというように印象に残つている」との単なる意見の陳述を証拠とすることは許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年3月30日 昭和25(れ)97
登載
刑集 第5巻4号731頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法206条1項
論点136第336条刑事訴訟法

公判請求書を引用した公判調書の採証と右公判調書の証拠調の方法

裁判要旨原判決は証拠として「原審第一回公判調書中被告人A、同B、同C及び原審相被告人Dの供述として、公判請求書記載の公訴事実を読聞けられた通り間違いない旨の供述記載及び右公判請求書中判示同趣旨の記載」をも綜合していることは、所論の指摘するとおりである。そしてかかる場合には右公判調書の証拠調をするに当つて同調書に引用されている公判請求書の記載をも読聞けなければ該調書について適法な証拠調がされたものということができない。しかるに記録を調べてもかような手続をしていないのは違法であつて論旨は理由がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月22日 昭和24(れ)1552
登載
集刑 第42号297頁
参照法条
旧刑訴法340条,旧刑訴法336条,旧刑訴法410条13号
論点137第336条刑事訴訟法

一 建物の庇下に堆積せる藁に放火した事実によつて建物延焼の認識ありと認め得られるか
二 証拠の一部に矛盾があつても綜合して事実認定ができる場合と採証法則違背の有無

裁判要旨一 建物の庇下に堆積されている藁に放火すればその建物及びこれに隣接する住家に延焼する危険があることは常識上認められる事柄であるから、特に所論Aの供述のようなものがない場合でも、各被告人に建物に延焼の認識があつたものと認め得られるのである。
二 証拠にはおのずから強弱、直接間接の別があるから、綜合する証拠の一部に矛盾するがごとき感を呈する部分があるとしても、本件の場合のごとく全体として事実の認定を肯認することができる限り採証の法則に反する違法を認めることはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月22日 昭和25(れ)1873
登載
集刑 第42号357頁
参照法条
刑法108条,旧刑訴法336条,旧刑訴法337条
論点138第336条刑事訴訟法

被告人に読聞けず証拠調をもしないで採証した判決の適否

裁判要旨第一審公判調書によれば同調書には「判事は公判請求書の公訴事実を読み聞かせ、この事実はどうかとの問に対して、被告人はその通り間違ありませんと答えた旨」の記載が存するのみであるから、原審がそれを証拠に供するには第一審公判調書の外公判請求書も読みきけこれが証拠調をしなければならないものといわねばならぬ。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年1月25日 昭和25(れ)1632
登載
集刑 第39号689頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法338条,旧刑訴法340条,旧刑訴法410条19号
論点139第336条刑事訴訟法

一 検証調書添付の図面等について証拠調がなされていない場合と右検証調書を証拠とすることの適否
二 検察官の任意捜査としての嘱託に基く鑑定書の証拠能力−鑑定の請求と鑑定書を作成した鑑定人の尋問の請求

裁判要旨一 第二事実の納屋については敢て検証調書添附の写真を俟たなくても全焼したことを推認できる記載がある。それ故原判決はこの点について理由不備はないしかも訊問調書添附の図面等を除いても右供述が独立性がある場合にはこの部分のみを証拠調をしてそれを証拠とすることを妨げないことについては当裁判所の判例とするところであり(昭和二四年(れ)第二一四五号同年一二月一三日第三小法廷判決判例集第三巻一二号一九八一頁)この理は検証調書の場合にも異るものでない。
二 検察官が任意の捜査として鑑定の嘱託をしたものは他に何らかの証拠能力を失わせるような事情のある場合を除いて証拠能力がないと論ずることはできない。又水差の鉱物性油の鑑定を求めただけでは未だ如露には鉱物性油が存在したことを確認することの所論鑑定書を作成した鑑定人の喚問を請求したものとはいい得ない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年1月23日 昭和24(れ)1766
登載
刑集 第5巻1号61頁
参照法条
旧刑訴法340条1項,旧刑訴法341条,旧刑訴法336条,旧刑訴法410条19号,旧刑訴法337条,旧刑訴法228条,刑訴応急措置法12条
論点140第336条刑事訴訟法

適法な証拠調を経ない証拠物を証拠とした判決の違法

裁判要旨原判決は、被告人等は、原判示のごとく押収にかかる革帯(証第三号)樫棒(証第二号)及び繩(証第四号)を使用して、被害者に暴行を加えその結果、遂に死亡するに至らしめた事実を認定し、右認定の証拠として押収にかかる右革帯、樫棒及び繩の存在を判決に挙示しているにかかわらず、右物件については、原審公判において、適法に証拠調を施行した証跡のないことは上告人の指摘するとおりである。しからば、原判決には適法な証拠調を経ない証拠を証拠として犯罪事実を認定した違法があるものというべく右の違法は原判決の事実の認定に影響を及ぼすことは勿論であるから、本件上告は理由あり、原判決は破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年12月7日 昭和26(れ)1263
登載
集刑 第58号219頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法341条
論点141第336条刑事訴訟法

証拠調をしない証拠を綜合証拠とした違法と、証拠に基かないで事実を認定した違法とがある判決と、著しく正義に反する場合

裁判要旨原審は所論Aに対する大蔵事務官の質問調書の証拠調をしていないことを明らかである。そして右質問調書は本件罪証として有力なものと認められるのであり、かかる証拠を他の証拠と綜合して犯罪事実を認定したことは違法である。又原判決は、判示汽船の乗組員たる中華船員が連合国占領軍、その将兵又は連合国占領軍に附属し、若しくは随伴するものであることについては何等の証拠を挙示せず、従つて証拠に基かずして事実を認定した違法がある。かかる違法は判決に影響を及ぼし且つ著しく正義に反するものと認める。(準新事件である)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年12月28日 昭和26(れ)1125
登載
集刑 第58号1041頁
参照法条
刑訴法411条,旧刑訴法336条,旧刑訴法360条
論点142第336条刑事訴訟法

被告人の自白と補強証拠の供述との間に多少のくいちがいのある場合と犯罪事実の認定

裁判要旨原判決が、判示第六の犯罪事実認定の証拠として、被告人の原審並に第一審公判における自白の外、Aに対する司法警察官の聴取書を掲げたのは、これを以て右被告人の自白を補強するためであつて、右聴取書におけるAの供述がその内容の全部に亘つて、右被告人の自白と符合するものではないとしても、少くとも、その外形的事実―例えば同人が自転車一台の対価として被告人から精米一俵の交付を受けたことのある事実―において符合することは、右聴取書の記載に徴し明らかであつて、かかる供述が右被告人の自白の真実性を保障するに足ることは勿論であるから、これらを綜合して右犯罪事実を認定した原判決に所論のような相互に矛盾した証拠を引用した理由不備の違法ありとすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年11月30日 昭和26(れ)683
登載
集刑 第57号781頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法337条,旧刑訴法360条1項,刑訴応急措置法10条3項,憲法383条3項
論点143第336条刑事訴訟法

一 証言中証人の実験した事実と無関係な意見の陳述にすぎない部分の証拠能力
二 證人の供述の趣旨を變えて採證した違法な判決の一例

裁判要旨一 証人の陳述中証人が実験した事実、又は実験した事実によつて推測した事項の陳述ではなく、単に意見を表示したにすぎないとみられる部分は、証拠に採用することができない。
二 然るに原判決はその證據説明中にかような證人の意見に過ぎない陳述をも挿入しそれを「然し」という言葉で接續して、その前後の供述の順序を變えて、記録に現はれた供述とは違つた趣旨の摘録をしている。原審第五回公判で裁判長自らも前後二回に亘つて「全然違う」と云つた「法廷におけるAの證言」即ち原判決が證據として舉示する第一審第三回公判調書中におけるAの供述及び前記原審第五回公判における同人の供述と「檢事聽取書中における同人の供述」とは互に相反する證據である。前者は被告人BがC代議士等の民主自由黨えの加盟斡旋方傳言を證人Aに頼んだのではないという事實であり、後者は右加盟斡旋方の傳言を證人Aに頼んだという事實である。かかる相容れない事實から、「Bが暗に(Aに)傳言方を慫慂し因て(Aをして)その旨傳言させた」と判事事實を積極的に認定したのは證據上の理由において齟齬あるものと云はなければならない。從つて論旨はその理由があつて原判決は破毀を免れない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和24年6月13日 昭和24(れ)226
登載
刑集 第3巻7号1039頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法206条1項,昭和22年勅令1號,舊刑訴法410條19號,舊刑訴法360條1項
論点144第336条刑事訴訟法

一 犯人が被告人であることの證據が自白のみである場合の正否
二 犯罪の動機等を被告人の自白及び取調警察官の供述によつて認定することの可否
三 自白の強要を認定し得ない一事例
四 自白の強要を認定し得ない事例
五 證人が自己の證言を補充するために差し出した書面と證人尋問調書との關係
六 犯行の動機の一部を證據によらずして認定した違法と上告理由

裁判要旨一 原審は被告人の自白のみならず多くの證據を綜合して判示事實を認定したのであつて、自白と原審舉示の他の證據とを綜合すれば原審認定の犯行事實を認定することが出來る。かかる場合犯人が被告人であることの證據が自白のみであつても違憲違法ではない。
二 殺人の動機及殺人に到るまでの被告人の心理的推移過程は、被告人の公判廷外の自白と被告人を取り調べた警察官の供述によつて認定しても違法ではない。
三 被告人の取調にあたつた司法警察官の作成した「殺人事件取調状況について」と題する記録編綴の書面中に、數日來犯行を否認していた被告人に對して」只今から捜査會議を始めるが取調にあたつている者は殆んど犯人は君だと信じている」とか唾液鑑定の結果によつては「否認しても無駄である」とか「自供が送れる程被告人に不利である」と繰り返し説得し眞相を追及した旨の記載があることだけで被告人の自白が強要によつたものと認定することはできない。
四 被告人が第一、二審公判廷で、警察での自白は取調官からアゝではないかコウではないかと問い詰められ強激な堪えられぬ苦痛を受けたので、取調官の云わるまゝ答えて了つたものでそれは皆事實に反すると供述したことだけで、直ちに自白が強要によつたものと斷定することはできない。
五 證人尋問調書に當該證人が自己の證言を補充するため書面を差し出し裁判長がこれを同調書の末尾に添付すると告げた旨の記載があり、且つ同調書と該書面との間に同調書作成者の契印が押してあるときは、右書面は同尋問調書の一部をなすものと認められる。
六 證據によらずして事実を認定した違法があつても、その事實が犯罪の動機として極めて輕微且つ間接の遠因に過ぎないため判決に影響を及ぼすべきものとは到底官考えられない場合には上告の理由とならない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和24年11月2日 昭和23(れ)1382
登載
刑集 第3巻11号1691頁
参照法条
憲法38条3項,憲法38条1項,旧刑訴法337条,旧刑訴法56条,旧刑訴法71条2項,旧刑訴法336条,旧刑訴法409条
論点145第336条刑事訴訟法

非常上告事件において原略式命令破棄・無罪が言い渡された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年9月3日 平成8(さ)1
登載
集刑 第268号135頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法336条
論点146第336条刑事訴訟法

非常上告事件において原略式命令破棄・無罪が言い渡された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年9月3日 平成8(さ)2
登載
集刑 第268号137頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法336条
論点147第336条刑事訴訟法

非常上告事件において原略式命令破棄・無罪が言い渡された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年9月3日 平成8(さ)3
登載
集刑 第268号139頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法336条
論点148第336条刑事訴訟法

非常上告事件において原略式命令破棄・無罪が言い渡された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年9月3日 平成8(さ)4
登載
集刑 第268号143頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法336条
論点149第336条刑事訴訟法

非常上告事件において原略式命令破棄・無罪が言い渡された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年9月3日 平成8(さ)5
登載
集刑 第268号145頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法336条
論点150第336条刑事訴訟法

非常上告事件において原略式命令破棄・無罪が言い渡された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年9月3日 平成8(さ)6
登載
集刑 第268号147頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法336条
論点151第336条刑事訴訟法

「車両通行帯の設けられた道路」と誤認して法定の車両通行帯以外を通行したとしてされた略式命令に対する非常上告

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成27年6月8日 平成27(さ)1
登載
集刑 第317号335頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法336条
論点152第336条刑事訴訟法

自転車専用通行帯を自転車道と誤認して通行区分違反に当たるとしてされた略式命令に対する非常上告

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成27年4月20日 平成26(さ)1
登載
集刑 第316号155頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法336条
論点153第336条刑事訴訟法

最高速度を誤認して速度違反に当たるとしてされた略式命令に対する非常上告

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成26年4月15日 平成25(さ)10
登載
集刑 第313号369頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法336条
論点154第336条刑事訴訟法

交通事故による休業損害補償金として自動車共済契約による共済金を騙し取ったとされた事件において詐欺の故意が認められないとして無罪が言い渡された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成13年1月25日 平成11(あ)1614
登載
集刑 第280号5頁
参照法条
刑法246条1項,刑訴法336条,刑訴法411条3号
論点155第336条刑事訴訟法

小型特殊自動車による牽引について,小型特殊自動車を「牽引自動車」と誤認して無免許運転(牽引免許を受けないで運転)に当たるとしてされた略式命令に対する非常上告

裁判
最高裁判所第二小法廷 令和元年8月9日 令和1(さ)1
登載
集刑 第326号213頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法336条
論点156第337条刑事訴訟法

公判途中二六年余の逃亡と刑法三二条、刑訴法三三七条〈左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。〉の類推適用の有無

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年12月12日 昭和59(あ)591
登載
集刑 第238号325頁
参照法条
刑法32条,刑訴法337条
論点157第337条刑事訴訟法

他人の氏名を冒用して交付を受けた略式命令が冒用者に効力を生じないとされた事例

裁判要旨いわゆる三者即日処理方式による略式手続において、甲が乙の氏名を冒用し、捜査機関に対し被疑者として行動し、かつ、裁判所で被告人として乙名義の略式命令の謄本の交付を受けて即日罰金を仮納付するなどの事実(原判文参照)があつたからといつて、右略式命令の効力が冒用者である甲に生じたものとすることはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年5月30日 昭和49(あ)2216
登載
刑集 第29巻5号360頁
参照法条
刑訴法249条,刑訴法256条2項,刑訴法337条1号,刑訴法第6編,刑訴規則56条
論点158第337条刑事訴訟法

一 大阪市屋外広告物条例(昭和四九年四月一日大阪市条例三二号による改正前のもの)二条一項〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉、四条三項〈事物管轄を異にする数個の関連事件が上級の裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、…〉、一六条一号〈法律による管轄裁判所がないとき、又はこれを知ることができないときは、検事総長は、最高裁判所に管轄指定の請求をしなければな…〉と憲法二一条、三一条、九四条、四一条との関係
二、観念的競合の関係にある二つの罪のうち一つについて刑の廃止があるが原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされた事例

裁判要旨一 大阪市屋外広告物条例(昭和四九年四月一日大阪市条例第三二号による改正前のもの)二条一項〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉、一六条一号〈法律による管轄裁判所がないとき、又はこれを知ることができないときは、検事総長は、最高裁判所に管轄指定の請求をしなければな…〉は憲法二一条、四条三項、三一条、九四条、四一条に違反しない。
二 被告人に対する本件公訴事実のうち、被告人が大阪市条例によりはり紙の表示が禁止された物件である電柱にビラ五枚を表示した点については、原判決後の法令により刑の廃止があった場合にあたるが、右事実は法定の除外事由がないのに大阪市長の許可を受けないではり紙を表示した事実と観念的競合の関係にあるものとして起訴されており、かつ、これら両罪の法定刑は同一であること、被告人に対する原判決の科刑(罰金二、〇〇〇円、換刑一、〇〇〇円一日、一年間執行猶予)は、法定の除外事由がないのに大阪市長の許可を受けないではり紙を表示した罪だけに対する科刑としても不当に重いとは認められないことを考慮すると、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和50年5月29日 昭和49(あ)1377
登載
集刑 第196号517頁
参照法条
大阪市屋外広告物条令(昭和49年4月1日大阪市条例32号による改正前のもの)2条1項,大阪市屋外広告物条令(昭和49年4月1日大阪市条例32号による改正前のもの)4条3項,大阪市屋外広告物条令(昭和49年4月1日大阪市条例32号による改正前のもの)16条1項,憲法21条,憲法31条,憲法41条,憲法94条,刑訴法337条2号,刑訴法411条5号,刑法54条1項前段
論点159第337条刑事訴訟法

一、学生集会と憲法二三条の関係
二、併合罪の関係にある二個の公訴事実についてされた原判決につき上告審が主文においてこれを破棄差し戻す旨を示しその理由中において右公訴事実の一部にのみ関係のある破棄理由を示すにとどまる判決を言い渡した場合における右破棄判決の効果

裁判要旨一、大学の許可した学生集会であつても、真に学問的研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動にあたる行為をする場合には、大学の有する特別の自由と自治を享有するものではない。
二、併合罪の関係にある甲乙二個の公訴事実のうち甲についてはその一部の事実を認めながら正当行為とし、乙についてはその事実が認められないとした第一審の無罪判決を維持した第二審判決全部に対し検察官が上告したが、憲法違反、法令違反のみを主張し、事実誤認の主張をしなかつた場合において、上告審が原判決および第一審判決を破棄し事件を第一審裁判所に差し戻す旨の主文の判決を言い渡したときは、その理由として検察官の憲法違反の諭旨が理由があると判示しただけであつても、右第一、二審判決はすべて破棄されたものであり、起訴された甲、乙の各行為はすべて、いまだ無罪とされたものでも、また刑事上の責任を問われたものでもない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年3月22日 昭和42(あ)47
登載
刑集 第27巻2号167頁
参照法条
憲法23条,憲法39条,刑訴法337条1号,刑訴法386条1項1号,刑訴法413条,刑訴法414条
論点160第337条刑事訴訟法

免訴の判決に対する被告人の上訴権

裁判要旨被告人は、免訴の判決に対しては、理由のいかんを問わず上訴することができない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和46年2月25日 昭和45(あ)1754
登載
集刑 第179号119頁
参照法条
刑訴法337条,刑訴法351条
論点161第337条刑事訴訟法

農地法第四条第一項違反の罪と公訴時効

裁判要旨農地法第四条第一項違反の罪は、宅地化の目的でなされる場合、家屋の建築工事に着手し、あるいは完全に宅地としての外観を整えるまでにいたらなくとも、農地の肥培管理を不能もしくは著しく困難にして、耕作の目的に供される土地とはいいがたい状態にしたときに成立し、その時から公訴の時効が進行するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年5月31日 昭和39(あ)1111
登載
刑集 第20巻5号341頁
参照法条
農地法4条1項,農地法92条,刑訴法253条1項,刑訴法337条4号
論点162第337条刑事訴訟法

一 いわゆる闘争手段としてのビラ貼り行為が建造物損壊罪、器物損壊罪を構成しないものとされた事例。
二 建造物損壊罪並びに暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の罪(器物損壊を内容とする)として起訴された事実を軽犯罪法第一条第三三号に該当する事実と認定する場合と公訴の時効。

裁判要旨一 駅長室の一部である室内の板壁や、白壁の下部の腰板に国鉄当局に対する要求事項等を墨書ないし印刷したビラ三四枚を、室内硝子窓、出入口の硝子戸、木製衝立等に同様のビラ三〇米を、メリケン粉製の糊でそれぞれ貼り付けた行為は、いまだ刑法上の建造物損壊罪ないし器物破損罪を構成するものでないと解するものを相当する。
二 検察官が犯行後一年一月余を経過したときに建造物損壊罪並びに暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の罪(器物損害を内容とする)として公訴を提起いた公訴事実を、裁判所が軽犯罪法第一条第三三号に該当する事実と認めるときは、被告人に対し公訴時効が完成したものとして免訴の言渡をすべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年11月24日 昭和37(あ)468
登載
刑集 第18巻9号610頁
参照法条
刑法260条,刑法261条,暴力行為等処罰ニ関スル法律(昭和39年法律114号による改正前のもの)1条1項,軽犯罪法1条33号,刑訴法250条,刑訴法337条4号,刑訴法411条1号
論点163第337条刑事訴訟法

旧道路交通取締法施行令第四一条に基づく旧新潟県道路交通取締規則(昭和三一年新潟県公安委員会規則第一号)第八条の改正と刑の廃止の有無

裁判要旨旧道路交通取締法施行令第四一条に基づく旧新潟県道路交通取締規則(昭和三一年新潟県公安委員会規則第一号)第八条による第二種原動機付自転車の二人乗の禁止が同条の改正により廃止されても、その廃止前にこれに違反した行為について、同施行令第七二条第三号の刑の廃止があつたものということはできない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和37年4月4日 昭和34(あ)125
登載
刑集 第16巻4号345頁
参照法条
旧道路交通取締法23条1項,旧道路交通取締法30条,旧道路交通取締法施行令41条,旧道路交通取締法施行令72条3号,旧新潟県道路交通取締規則(昭和31年新潟県公安委員会規則1号)8条,旧新潟県道路交通取締改正規則(昭和33年新潟県公安委員会規則2号)9条,道路交通法附則14条,刑訴法337条2号
論点164第337条刑事訴訟法

旧道路交通取締法施行令第四一条に基づく旧新潟県道路交通取締規則(昭和三一年新潟県公安委員会規則第一号)第八条の改正と刑の廃止の有無

裁判要旨旧道路交通取締法施行令第四一条に基づく旧新潟県道路交通取締規則(昭和三一年新潟県公安委員会規則第一号)第八条による第二種原動機付自転車の二人乗の禁止が同条の改正により廃止されても、その廃止前にこれに違反した行為について、同施行令第七二条第三号の刑の廃止があつたものということはできない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和37年4月4日 昭和34(あ)311
登載
集刑 第141号659頁
参照法条
旧道路交通取締法23条1項,旧道路交通取締法30条,旧道路交通取締法施行令41条,旧道路交通取締法施行令72条3号,旧新潟県道路交通取締規則(昭和31年新潟県公安委員会規則1号)8条,旧新潟県道路交通取締改正規則(昭和33年新潟県公安委員会規則2号)9条,道路交通法附則14条,刑訴法337条2号
論点165第337条刑事訴訟法

一 旧道路交通取締法施行令第四一条に基づく旧新潟県道路交通取締規則(昭和三一年新潟県公安委員会規則第一号)第八条の改正と刑の廃止の有無
二 第一、二審の免訴の判決を上告審において事実の取調をすることなく有罪の判決を言い渡した事例

裁判要旨一 旧道路交通取締法施行令第四一条に基づく旧新潟県道路交通取締規則(昭和三一年新潟県公安委員会規則第一号)第八条による第二種原動機付自転車の二人乗の禁止が同条の改正により廃止されても、その廃止前にこれに違反した行為について、同施行令第七二条第三号の刑の廃止があつたものということはできない。
二 原審は第一審の免訴の判決を維持したが、被告人の本件犯罪事実の存在については、第一審がこれを適法に確定していることは半文上明らかである。よつて、当裁判所は、事実の取調をすることなく有罪の判決をなしうるものと解する。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和37年4月4日 昭和34(あ)316
登載
集刑 第141号689頁
参照法条
旧道路交通取締法23条1項,旧道路交通取締法30条,旧道路交通取締法施行令41条,旧道路交通取締法施行令72条3号,旧新潟県道路交通取締規則(昭和31年新潟県公安委員会規則1号)8条,旧新潟県道路交通取締改正規則(昭和33年新潟県公安委員会規則2号)9条,道路交通法附則14条,刑訴法337条2号,刑訴法400条但書,刑訴法414条
論点166第337条刑事訴訟法

一 外国とみなされていた地域から貨物の無免許輸入等の罪と右地域が外国とみなされなくなつたことによる刑の廃止の有無
二 第三者所有物の没収の違憲と旧関税法第八三条第三項による追徴の適否

裁判要旨一 北緯二九度以南、同二七度以北の南西諸島が外国とみなされていた当時、免許を受けないで、同地域から貨物を輸入しまたはその貨物を故買、牙保した罪について、その後右地域が外国とみなされなくなつた場合は、犯罪後の法令により刑が廃止されるものと解すべきである。
二 旧関税(昭和二九年法律第六一号による改正前の関税法をいう。)第八三条第一項〈勾留の理由の開示は、公開の法廷でこれをしなければならない。〉による第三者所有物の没収が違憲である場合には、同条第三項によるその没収に代わる追徴を言渡すこともまた許されない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和37年12月12日 昭和29(あ)566
登載
刑集 第16巻12号1672頁
参照法条
旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)76条,旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)76条の二,旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)104条,旧関税法(明治32年法律61号・昭和26年11月29日法律271号により改正されたもの)104条,旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)第76条,旧関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)第83条,関税法104条,関税法関税定率法12条及び噸税法第8条の規定に基き附属島しょを定める等の省令(昭和24年5月26日大蔵省令36号)1条,関税定率法及び噸税法の適用上外国とみなされる地域を定ける政令(昭和27年4月7日政令第99号),奄美群島の復帰に伴う国税関係法令の適用の暫定措置等に関する政令(昭和28年12月24日政令407号)附則8項,刑法6条,刑訴法337条2号,刑訴法411条5号,刑訴法411条1号,憲法29条,憲法31条
論点167第337条刑事訴訟法

故意犯(現住建造物放火幇助)と過失犯(失火)との間に公訴事実の同一性の認められた事例。

裁判要旨被告人に対する本件現住建造物放火幇助の公訴事実と失火の公訴事実(各判文参照)との間には同一性があるものと認むべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年7月15日 昭和31(あ)1357
登載
刑集 第14巻9号1152頁
参照法条
憲法39条,刑訴法312条,刑訴法337条1号,刑法116条,刑法108条,刑法62条
論点168第337条刑事訴訟法

一 公訴事実の同一性の認められる事例−業務上横領と窃盗
二 同一事実に対する別訴の提起が二重起訴にあたらないとされた事例

裁判要旨一 被告人は家畜商を営むものであるが、昭和二五年七月二五日頃家畜商Aより同人所有の馬四頭の売却方を依頼され、同月二九日うち二頭をBに代金六万円で売却しこれを保管中、同月三〇日新潟県西蒲原郡a町C旅館において、内金三万円を着服して横領をしたとの業務上横領の訴因と、被告人は昭和二五年七月三新潟県西蒲原郡b村大字cD方から同人が一時Aより預つていたAの父E所有の牝馬鹿毛および青色各一頭を窃盗したとの窃取の訴因とは、事実の同一性を失わない。
二 第一次第一審において、右業務上横領の訴因を右窃盗の訴因に変更し後者につき有罪を認定したところ、第二審において、右は事実の同一性を欠くとしてこれを破棄、移送したため、第二次第一審において、右破棄判決の判断に従い検察官から右窃盗の訴因と同一内容の別訴が提起され、併合審理された結果、窃盗につき有罪、業務上横領はその不可罰的事後行為であるとして無罪が言渡されたが、第二次第二審を経た上告審において、右破棄判決の判断は誤りで事実の同一性があり、第二次第一審における別訴の提起は実質において訴因変更の趣旨であると解される以上、二重起訴の違法はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年12月11日 昭和29(あ)2526
登載
刑集 第13巻13号3195頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法256条,刑訴法338条3号,刑訴法337条,刑法253条,刑法235条
論点169第337条刑事訴訟法

上告趣意書不提出の被告人に対して大赦を理由とする破棄判決の要否

裁判要旨有罪の第二審判決に対し、被告人から上告中大赦があつたときは、被告人が所定期間内に上告趣意書を差し出さなくても刑訴第四一一条第五号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。〉により原判決を破棄すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和32年2月27日 昭和31(あ)3701
登載
刑集 第11巻2号935頁
参照法条
刑訴法411条5号,刑訴法337条3号,刑訴法414条,刑訴法376条,刑訴法386条1項1号
論点170第337条刑事訴訟法

外国とみなされていた地域に対する貨物無免許輸出入の罪と右地域が外国とみなされなくなつたことによる刑の廃止の有無

裁判要旨北緯二九度以南、同二七度以北の南西諸島が外国とみなされていた当時、免許を受けないで日本内地から同地域へ、若しくは同地域から日本内地へ貨物を密輸出し若しくは密輸入した罪については、その後右地域が外国とみなされなくなつた場合は、犯罪後の法令により刑が廃止されたものと解すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和32年10月9日 昭和25(あ)2778
登載
刑集 第11巻10号2497頁
参照法条
旧関税法(明治32年法律61号−昭和24年法律65号により改正されたもの)76条,旧関税法(明治32年法律61号−昭和24年法律65号により改正されたもの)104条,旧関税法(昭和26年法律271号により改正されたもの)104条,関税法104条,、関税定率法12条及び噸税法8条の規定に基き附属島しよを定める等の省令(昭和24年大蔵省令36号),関税法関税定率法及び噸税法の適用上外国とみなされる地域を定める政令(昭和27年政令99号),奄美群島の復帰に伴う国税関係法令の適用の暫定措置等に関する政令(昭和28年政令407号)附則8項,刑法6条,刑訴法337条2号,刑訴法411条5号
論点171第337条刑事訴訟法

外国とみなされていた地域からの貨物無免許輸入の罪と、右地域が外国とみなされなくなつたことによる刑の廃止の有無

裁判要旨北緯三〇度以南の南西諸島(口之島を含む)が外国とみなされていた当時免許を受けないで貨物を同地域から日本内地に密輸入した罪については、その後右地域が外国とみなされなくなつた場合は、犯罪後の法令により刑が廃止されたものと解すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和32年10月9日 昭和27(あ)2456
登載
刑集 第11巻10号2509頁
参照法条
旧関税法(明治32年法律61号−昭和24年法律65号により改正のもの)104条,旧関税法(昭和25年法律117号により改正されたもの)76条,関税法104条、関税定率法12条及び噸税法8条の規定に基き附属島しよを定める等の省令(昭和24年大蔵省令36号),右省令の一部を改正する省令(昭和27年大蔵省令5号),刑法6条,刑訴法337条2号,刑訴法411条5号
論点172第337条刑事訴訟法

公益事業失効後同令違反の所為は免訴すべきか

裁判要旨公益事業令が昭和二七年一〇月二四日かぎり失効し、その後においては刑の廃止があつたものとして同令違反の所為を免訴すべきであること既に当裁判所大法廷の判例(集八巻一一号一七九一頁参照)とするところである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年7月27日 昭和29(あ)1776
登載
集刑 第114号391頁
参照法条
刑法6条,刑訴法337条2号,公益事業令(昭和25年政令343号)
論点173第337条刑事訴訟法

名誉毀損罪として起訴された事実を侮辱罪と認定する場合と公訴の時効

裁判要旨検察官が犯行後一年一月余を経過したときに名誉毀損罪として公訴を提起した公訴事実を裁判所が侮辱罪に該当する所為と認めるときは、被告人に対し公訴の時効が完成したものとして免訴の言渡をなすべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年4月12日 昭和30(あ)1305
登載
刑集 第10巻4号540頁
参照法条
刑訴法250条,刑訴法337条4号,刑訴法411条1号,刑法230条,刑法231条
論点174第337条刑事訴訟法

昭和三〇年法律第五一号による銃砲刀剣類等所持取締令の一部改正と刑の廃止

裁判要旨昭和三〇年法律第五一号による銃砲刀剣類等所持取締令の一部改正前に業務その他正当な理由がなく刃渡一五センチメートル未満のあいくち(七首)を携帯した所為については、右改正により刑の廃止があつたものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年12月25日 昭和31(あ)667
登載
刑集 第10巻12号1701頁
参照法条
銃砲刀剣類等所持取締令1条2項,銃砲刀剣類等所持取締令2条,銃砲刀剣類等所持取締令15条,銃砲刀剣類等所持取締令26条1号,銃砲刀剣類等所持取締令27条,銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前)1条,銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前)15条,刑訴法337条2号,刑訴法383条2号,刑訴法411条5号,刑法6条
論点175第337条刑事訴訟法

包括一罪と認められる一事例

裁判要旨被告人が法令に定められた運転の資格を持たないで、昭和三〇年五月一九日午後一時頃玉名市aよりA号自動三輪車を運転して、玉名市b町内を乗り廻して無謀操縦をしたという公訴事実と、同一被告人が法令に定められた運転の資格を持たないで、昭和三〇年五月一九日午後一時四〇分頃玉名市c町道路においてB家所有の自動三輪車を運転して無謀操縦をしたという公訴事実とは、その各運転行為が同一自動三輪車の一連の無謀操縦行為と認められる以上は、両公訴事実は包括一罪の関係にあるものというべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年11月29日 昭和31(さ)4
登載
刑集 第10巻11号1570頁
参照法条
刑訴法337条,刑訴法338条,刑訴法454条
論点176第337条刑事訴訟法

外国とみなされていた地域に対する貨物無免許輸出入の罪と右地域のわが国への復帰による刑の廃止の有無

裁判要旨口の島を含む北緯三〇度以南、北緯二九度以北の南西諸島が外国とみなされていた当時、免許を受けないで日本内地から同地域へ、若しくは同地域から日本内地へ貨物を密輸出し、若しくは密輸入した罪については、その後右地域がわが国に復帰し、外国とみなされなくなつても、刑の廃止があつたものとはいえない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年7月20日 昭和28(あ)371
登載
刑集 第9巻9号1922頁
参照法条
関税法(昭和25年法律117号による改正前)76条,関税法(昭和25年法律117号による改正前)104条,関税法104条関税定率法12条及び噸税法第8条の規定に基き附属島しよを定める等の省令(昭和24年大蔵省令36号)1条,関税法104条関税定率法12条及び噸税法第8条の規定に基き附属島しよを定める等の省令(昭和24年大蔵省令36号)3条1号,関税法104条関税定率法12条及び噸税法第8条の規定に基き附属島しよを定める等の省令(昭和24年大蔵省令36号)3条1号の一部を改正する省令(昭和27年大蔵省令5号),奄美群島の復帰に伴う国税関係法令の適用の暫定措置等関する政令(昭和28年政令407号)附則8項,刑法6条,刑訴法337条2号
論点177第337条刑事訴訟法

一 昭和二二年四月一四日附連合国最高司令官の「日本人の海外旅行者に対する旅行証明書に関する覚書」に違反した不法出国の罪と刑の廃止
二 外国とみなされていた地域に対する貨物無免許輸出入の罪と右地域のわが国えの復帰による刑の廃止の有無

裁判要旨一 日本人が、昭和二二年四月一四日附連合国最高司令官の「日本人の海外旅行者に対する旅行証明書に対する覚書」に違反して、同司令官の承認を受けないで不法に本邦から出国したとの、昭和二五年政令第三二五号違反の罪については、昭和二六年一二月一日以降の廃止があつたものである。
二 南西諸島大島郡が外国とみなされていた当時、免許を受けないで日本内地から同地域へ、若しくは同地域から日本内地へ貨物を密輸出し、若しくは密輸入した罪については、その後右地域がわが国に復帰し外国とみなされなくなつても、刑の廃止があつたものとはいえない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年2月23日 昭和27(あ)434
登載
刑集 第9巻2号344頁
参照法条
刑法6条,刑訴法337条2号,昭和25年政令325号占領目的阻害行為処罰令,昭和22年4月14日附連合国最高司令官の「日本人の海外旅行者に対する旅行証明書に関する覚書」,昭和26年6月2日附連合国最高司令官の「旅券発行の権限に関する覚書」,昭和26年11月26日附連合国最高司令官の「日本人の海外旅行」に関する覚書(SCAPIN2185号),旅券法附則2項,旅券法附則3項,出入国管理令(昭和26年10月4日政令319号)60条,出入国管理令(昭和26年10月4日政令319号)71条,昭和32年法律61号関税法(昭和25年9月30日政令295号による改正前のもの)76条,昭和32年法律61号関税法(昭和25年9月30日政令295号による改正前のもの)104条,昭和24年5月26日大蔵省令36号,昭和28年12月14日政令407号「奄美諸島の復帰に伴う国税関係法令の適用の暫廷措置に関する件」附則8項
論点178第337条刑事訴訟法

電気事業法施行当時同法に違反した行為と刑の廃止

裁判要旨電気事業法第三八条違反の所為は、公益事業令が昭和二七年一〇月二四日かぎり失効した後においては、刑の廃止があつたものとして免訴すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年12月3日 昭和27(あ)3799
登載
刑集 第8巻13号2065頁
参照法条
刑法6条,刑訴法422条5号,刑訴法337条2号,電気事業法(昭和6年法律61号)38条,公益事業令(昭和25年政令343号)附則2項,公益事業令(昭和25年政令343号)附則21項,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律(昭和27年法律81号)1項,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律(昭和27年法律81号)2項,電気及びガスに関する臨時措置に関する法律(昭和27年法律341号)
論点179第337条刑事訴訟法

電気事業法施行当時同法に違反した行為と刑の廃止

裁判要旨電気事業法第三八条違反の所為は、公益事業令が昭和二七年一〇月二四日かぎり失効した後においては、刑の廃止があつたものとして免訴すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年12月23日 昭和29(あ)1545
登載
刑集 第8巻13号2309頁
参照法条
刑法6条,刑訴法411条5号,刑訴法337条3号,電気事業法(昭和6年法律61号)38条,公益事業令(昭和25年政令343号)附則2項,公益事業令(昭和25年政令343号)2項,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律(昭和27年法律81号)1項,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律(昭和27年法律81号)2項,電気及びガスに関する臨時措置に関する法律(昭和27年法律341号)
論点180第337条刑事訴訟法

昭和二二年四月一四日附連合国最高指令官の「日本人の海外旅行者に対する旅行証明書に関する覚書」に違反した不法出国の罪と刑の廃止

裁判要旨日本人が昭和二二年四月一四日附連合国最高指令官の「日本人の海外旅行者に対する旅行証明書に関する覚書」に違反して、同指令官の承認を受けないで不法に本邦から出国したとの昭和二五年政令三二五号違反の罪については、昭和二六年一二月一日以降刑の廃止があつたものである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和29年12月1日 昭和27(あ)1570
登載
刑集 第8巻12号1911頁
参照法条
刑法6条,刑訴法337条2号,昭和25年政令325号占領目的阻害行為処罰令,昭和22年4月14日附連合国最高指令官の「日本人の海外旅行者に対する旅行証明書に関する覚書」,昭和26年6月2日附連合国最高指令官の「旅券発行の権限に関する覚書」,昭和26年11月26日附連合国最高指令官の「日本人の海外旅行」に関する覚書(SCAPIN2185号),旅券法附則2項,旅券法附則3項,出入国管理令(昭和26年10月4日政令319号)60条,出入国管理令(昭和26年10月4日政令319号)71条
論点181第337条刑事訴訟法

いわゆる囮捜査はこれによつて犯意を誘発された者の犯罪の成否および訴訟手続に影響するか

裁判要旨いわゆる囮捜査は、これによつて犯意を誘発された者の犯罪構成要件該当性、責任性若しくは違法性を阻却するものではなく、また公訴提起の手続に違反し若しくは公訴権を消滅せしめるものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年3月5日 昭和27(あ)5470
登載
刑集 第7巻3号482頁
参照法条
麻薬取締法53条,刑法61条,刑法62条,刑法38条,刑法35条,刑訴法338条4号,刑訴法337条
論点182第337条刑事訴訟法

併合罪の関係にある確定判決を経ない他の罪を審理裁判することと憲法第三九条

裁判要旨併合罪の関係にある一部の罪について確定裁判がなされても、その既判力は他の部分の罪には及ばないし、右両者の罪は同一の犯罪ではなく別個の犯罪であつて、後者の罪を審理裁判したことは確定判決に判示された前者の罪につき再び審理裁判をしたものということはできないから、憲法第三九条に違反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年9月12日 昭和27(あ)2416
登載
刑集 第6巻8号1071頁
参照法条
刑法45条,刑法50条,刑訴法337条1号,憲法39条
論点183第337条刑事訴訟法

一 第一審当時において旧刑訴第二〇一条第一項第三号〈逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。〉後段に該当した証人が第二審当時之に該当しなかつた場合の第一審公判調書中の証言の証拠能力
二 憲法違反の主張と認められない事例

裁判要旨一 一件記録を精査すれば、所論証人A、同Bについて第一審裁判所は、旧刑訴二〇一条一項三号〈逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。〉後段に基きその尋問当時現に供述を為すべき事件の被告人と共犯の嫌疑ある者と認め、宣誓を為さしめないで尋問し、原審裁判所は、第一審裁判所の尋問当時はその嫌疑があつたが自己の尋問当時には最早かかる嫌疑なきものと認め、宣誓を為さしめて尋問したものであると認められる。されば、原審裁判所が第一審裁判所がその尋問同時共犯の嫌疑ありと認め宣誓を為さしめないで尋問した所論証人尋問の措置を正当と認めその証言を有効として採用したからといつて所論判例に反する判断をしたものとはいえない。
二 刑訴施行法第三条の二は憲法に反する無効の規定であるというだけであつて、何等原判決に対する不服の理由を示していない主張は、適法な上告理由と認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年3月13日 昭和26(れ)2299
登載
刑集 第6巻3号470頁
参照法条
旧刑訴法337条,旧刑訴法201条1項,旧刑訴法196条,刑訴施行法3条の2,刑訴法405条
論点184第337条刑事訴訟法

一 併合罪にあたる数個の犯罪事実の一部にき確定判決があつた場合になすべき裁判
二 著しく正義に反する事例

裁判要旨本件第一審判決認定の七個の窃盗事実(併合罪)中の所論二個の窃盗事実については既に確定判決のあつたことを認めることができる。果して然らば少くとも該事実については刑訴法第三三七条第一号に基き免訴の言渡をし、残り五個の窃盗事実について審判すべきものといわなければならない。よつて爾余の論旨に対する判断を省略し、刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により主文第一項のごとく原判決を破棄し、なお当裁判所は同四一三条〈前条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所若しくは第一審裁判所に差し戻し、又はこ…〉但書によつて直ちに判決することがきるものとは認められないから同条本文に従い本件を広島高裁岡山支部に差戻すべきものとす。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年8月2日 昭和25(あ)2330
登載
刑集 第5巻9号1727頁
参照法条
刑訴法337条1号,刑訴法441条
論点185第337条刑事訴訟法

証人が自ら実験した事実による推測事項の供述と採証の適否

裁判要旨原判決引用の第一審第四回公判調書中証人Aの証言の中「指示の被告人両名のうち背の高い方の人(B)は自分達の寝室に入つて来た人と背たけの具合が似ており」との部分は同証人が判示犯行当夜自ら実験した事実によつて推測した事項の陳述であるから原判決がこれを証拠としたことに何等違法はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年5月8日 昭和26(れ)206
登載
集刑 第45号357頁
参照法条
旧刑訴法337条,旧刑訴法206条1項
論点186第337条刑事訴訟法

聴取書に作成者の捺印を欠いても真正に成立した書類と認められる場合とその書類の証拠能力

裁判要旨一 所論聴取書の作成者である司法警察官警部代理巡査部長Aの名下に捺印のないことは所論のとおりである。二 しかし、同書類にはBの署名拇印並に右Aの署名が存し各葉の間にAの印で契印が施され、神戸市生田警察署印が押されており、さらに立会人巡査Cの署名押印があり、真正に成立した書類と認め得られるから、捺印を欠くの一事をもつて、所論のように証拠能力のない書類と断じ去ることはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月15日 昭和25(れ)798
登載
集刑 第41号787頁
参照法条
旧刑訴法71条,旧刑訴法337条
論点187第337条刑事訴訟法

聴取書の作成日附の誤記とその聴取書の証拠能力

裁判要旨所論被告人に対する検察事務官の第一回聴取書の日附が昭和二三年三月二八日であり、同第二回聴取書の日附が同月二七日となつていることは所論指摘のとおりである。しかし本件起訴が同月二七日であること等の点から考えて、右第一回聴取書の日附も同月二七日の誤記と認められるのであるが、それはさておくも、右第一、二回の聴取書は右日附頃適法に作成されたものであり、原審において右両聴取書が証拠調された際も被告人も弁護人も所論の点につき何等の異議も述べていないのであつて、右日附が右の如く逆になつていることの一事によつては、右各聴取書が証拠能力のないものと論結し得ない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年12月21日 昭和26(れ)1351
登載
集刑 第58号637頁
参照法条
旧刑訴法71条,旧刑訴法337条
論点188第337条刑事訴訟法

一 重要物資輸送証明規則及び指定物資輸送証明規則と限時法
二 指定物資輸送証明規則の改正により同規則第一条にいわゆる「指定物資」からいか油を除外したことと刑訴法第四一一条第五号にいわゆる「刑ノ廃止」
三 いか油を油糧需給調整規則第三条に違反して譲渡した行為と、これを重要物資輸送証明規則による出荷証明書なくして輸送を委託した行為との関係

裁判要旨一 尤もその後、本件物資たる「いか油」は原判決宣告後たる昭和二五年四月一日総理府令、法務府令、外務省令、大蔵省令、文部省令、厚生省令、農林省令、通商産業省令、運輸省令、郵政省令、電気通信省令、労働省令、建設省令、経済安定本部令第六号により、新令(指定物資輸送証明規則)一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉にいわゆる「指定物資」から除外され、従つて新令二条一項の適用を受けないことになつたので、ここに刑の廃止があつた如く見える。しかし、この新令自体を廃止した昭和二六年三月三一日前同府令省令本部令第一号も、その附則二項において「この命令施行前にした行為に対する罰則の適用についてはこの命令施行後も、なお従前の例による」との規定を設けている。して見ると、旧令も新令もいわゆる限時法的性格を有するものと解するを相当とするから、昭和二五年四月一日の前記命令が本件物資たる「いか油」を新令一条にいわゆる「指定物資」から除外した際に、「罰則の適用については、なお従前の例による」と云うような附則を設けなかつたからといつて、立法者の意思がこの場合に限り「刑ノ廃止」の効果を生ぜしめようとするにあつたとは到底考えられない、(なお所論油糧需給調整規則の改廃についても同様のことがいえるばかりでなく、「いか油」を右規則の適用から除いた所論農林省令第二三号の附則二項は「この省令施行前にした行為に対する罰則の適用については、この省令施行後もなお従前の例による」と規定している)。以上の次第であるから本件は刑訴法四一一条五号にいわゆる判決後「刑ノ廃止」があつた場合にはあたらないものといわなければならない。
二 所論確定判決のあつた事件は、被告人がその生産にかかる「いか油」を油糧需給調整規則三条に違反してA、Bに自宅において譲渡した事実について、臨時物資需給調整法一条、四条に該当するものとして起訴され、右事実について有罪の判決を言い渡されて確定したものである。ところが、本件は被告人が右「いか油」を前記A、B方まで輸送するため、重要物資輸送証明規則三条に違反して法定の出荷証明書をなくして、その輸送方をC株式会社に委託した事実について、右は臨時物資需給調整法一条、四条に該当するものとして起訴された案件である。従つて、右両者は別個の犯罪を構成するものであるばかりでなく、その基礎たる事実関係においても同一性を認め難く、科刑上一罪として取り扱われる場合にも該当しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年10月12日 昭和25(あ)893
登載
刑集 第5巻11号2214頁
参照法条
臨時物資需給調整法1条,臨時物資需給調整法4条,重要物資輸送証明規則(昭和22年9月20日総理庁令、外務、内務、大蔵、司法、文部厚生、農林、商工、運輸、逓信、労働省令1号)1条,重要物資輸送証明規則(昭和22年9月20日総理庁令、外務、内務、大蔵、司法、文部厚生、農林、商工、運輸、逓信、労働省令1号)3条1項,重要物資輸送証明規則附則2項,重要物資輸送証明規則附則3項,指定物資輸送証明規則(昭和24年6月20日総理庁令外務、大蔵、法務庁令、文部、厚生、農林、通商産業、運輸、逓信労働、建設省令1号)1条,指定物資輸送証明規則(昭和24年6月20日総理庁令外務、大蔵、法務庁令、文部、厚生、農林、通商産業、運輸、逓信労働、建設省令1号)2条1項,刑訴法411条5号,刑訴法337条1号,油糧需給調整規則(昭和22年12月29日農林省令98号)1条,油糧需給調整規則(昭和22年12月29日農林省令98号)3条1項,刑法45条
論点189第337条刑事訴訟法

一 満一五歳又は満一六歳の未成年者の供述の証拠能力
二 刑法第二四四条と賍物

裁判要旨一 満一五才又は満一六才の未成年者であるというだけで事理を弁える能力がないということはできないのであるから、これらの者の供述は証拠能力を欠くものではない。その供述を信用し得るものとして証拠として採用するか否かは事実審たる裁判所の自由裁量に委ねられている問題である。
二 刑法第二四四条は、同条所定の者の間において行われた窃盗罪及びその未遂罪に関しその犯人の処罰につき特例を設けたに過ぎないのであつて、その犯罪の成立を否定したものではないから、右窃盗罪によつて奪取された物は賍物たる性質を失わない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和25年12月12日 昭和25(れ)1284
登載
刑集 第4巻12号2543頁
参照法条
旧刑訴法337条,刑法244条,刑法256条
論点190第337条刑事訴訟法

一 暴行又は脅迫を以つて婦女の心神を喪失させ若しくは抗拒不能に爲して姦淫した行為の擬律
二 強姦の點が未遂に終つた強姦致死罪の擬律
三 驚愕によつて犯行を中止した場合と中止未遂
四 死因の確実性につき程度の差のある鑑定の結果を綜合して死因を確定することの適否
五 原審において從來の自白を飜した場合における同自白の任意性及び眞實性の有無と裁判所の自由裁量

裁判要旨一 刑法第一七七條は暴行又は脅迫を以つて婦女を姦淫した者は、強姦の罪として處罰するを規定し、次に同法第一七八條において、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又はこれをして心神を喪失せしめ、若しくは抗拒不能ならしめて姦淫したる者についても、前條の例による旨を規定している。かかる法條の排列から見れば、苟しくも暴行又は脅迫を以つて婦女を姦淫した者は、前條に該當するのであつて從つてその暴行又は脅迫によつて、婦女をして心神を喪失せしめ、若しくは抗拒不能ならしめて姦淫した者も、また當然これに包含せられるものと解すべきである。
二 強姦致死罪は單一な刑法第一八一條の犯罪を構成するものであつて、強姦の點が未遂であるかどうか及びその未遂が中止未遂であるか障礙未遂であるかということは、單に情状の問題にすぎないのであつて、處斷刑に變更を來たすべき性質のものではにから、本罪に對しては刑法第一八一條を適用すれば足り、未遂減輕に關する同法第四三條本文又は但書を適用すべきものではない。
三 犯罪の実行に着手した後、驚愕によつて犯行を中止した場合においても、その驚愕の原因となつた諸般の状況が、被告人の犯意の遂行を思い止まらしめる障碍の事情として客観性のあるものと認められるときは、障碍未遂であつて中止未遂ではない。
四 致死罪において、甲鑑定人の窒息死と認めるという鑑定の結果と乙鑑定人の窒息死と認めるのが蓋然性が最も多いという鑑定の結果とを、他の証拠と綜合して被害者の死因を窒素死と認定しても、理由齟齬の違法があるとはいえない。
五 被告人が原審において從來の自白を飜し、右は被告人の眞意に出たものではないと辯解した場合に、右自白の任意性並びに眞實性について如何なる範圍において取調を行い、その供述のいづれを措信するかは凡て事實審たる原審の自由な判斷に委ねられているところである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和24年7月9日 昭和23(れ)1252
登載
刑集 第3巻8号1174頁
参照法条
刑法177条,刑法178条,刑法43条,刑法181条,刑法179条,旧刑訴法337条,旧刑訴法410条19号,憲法38条3項,旧刑訴法337条
論点191第337条刑事訴訟法

一 憲法第三三條違反と上告理由
二 留置の際その理由及び辯護人を選任することを得る旨を告げられなかつた場合と上告理由
三 裁判官の令状なき押收搜索と上告理由
四 採證の用に供しない自白強制の主張と上告理由
五 採證の用に供しない被告人の訊問調書を讀み聞かせなかつた場合と上告理由
六 警察官に對する強制自白と同一内容の自白を公判廷において任意にした場合と間接強制の有無
七 證據の取捨選擇の自由と採證の法則
八 第一審に對する非難と上告理由の適否
九 窃取した物の數量の一部を自白のみによつて認定した場合と刑訴應急措置法第一〇條第三項
一〇 地方專賣局煙草取扱所の監視人が葉煙草を不法領得した行爲と窃盜罪の成否
一一 從犯と正犯の區別

裁判要旨一 假りに被告人が逮捕状なくして、警察に出頭せしめられたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
二 假りに被告人が警察に留置せられるに當り、留置の理由及び辯護人を選任することが出來る旨を告げられなかつたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
三 假りに被告人が現行犯でない本罪に付いて裁判官の令状なく押收、搜索を受けたものであるとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
四 假りに被告人が警察で強制的に自白せしめられたとしても、その自白を證據に採つて居ない限り、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
五 假りに被告人の訊問調書を被告人に讀み聞かせなかつたとしても、それは原判決が事實を認定するために採用した證據と關係なく、從つて原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、上告の理由となすことのできないものである。
六 假りに被告人の警察官に對する供述が強制によるものであり、且つ公判廷における自白の内容がそれと全然同じであつたとしても、後者は何等強制を加えられないで任意に爲されたものであるから、これを間接の強制とは斷言できない。
七 證據の取捨選擇は原審の自由裁量權に屬する事項であるから、既に原審が採用した證據だけで判示事實を認定するに充分である以上、それに關係のない他の點はこれを不問に付し、又この點を證明するための證人の申請を却下したとしても、採證の法則の違反は審理不盡の違法があるということにはならない。
八 論旨一の中には、第一審に對する非難を含んでいるが、上告は第二審に對してなされるべきものであるからこれは上告理由となし得ないものである。
九 刑訴應急措置法第一〇條第三項は、被告人の自白のみを證據としてこれを有罪とすることを禁じているけれども、犯罪事實の細部に亘つて悉く自白以外の補強證據を必要とする趣旨ではないから、本件のように窃盜の事實の概要が既に、補強證據によつて認められた場合に窃取した物の數量の一部分につき自白のみによつてこれを認めても差支えない。
一〇 地方專賣局煙草取扱所の監視人が取扱所の保管する政府所有の葉煙草を領得した行爲は横領罪でなくして窃盜罪である。
一一 原判決が被告人はB及びCの手足又は機械として動いたものであるとの認定をしていないことは、判文上明らかである。從つて原判決が被告人の所爲を、窃盜從犯でなくて窃盜正犯に該當するものと判斷したことは何等の違法も存しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和23年11月5日 昭和23(れ)61
登載
刑集 第2巻12号1473頁
参照法条
憲法33条,憲法34条,憲法35条1項,憲法38条2項,憲法38条,刑訴法411条,刑訴法56条3項,刑訴法337条,刑訴法344条,刑訴法408条,刑訴応急措置法6条1項,刑訴応急措置法7条2項,刑訴応急措置法10条2項,刑訴応急措置法10条3項,刑法253条,刑法235条,刑法60条,刑法62条
論点192第337条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年9月7日 昭和63(あ)522
登載
集刑 第252号361頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,外国人登録法14条1項,外国人登録法18条1項8号
論点193第337条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例‐いわゆる在日韓国人指紋不押なつ事件‐

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年7月14日 昭和61(あ)1131
登載
集刑 第252号207頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,外国人登録法14条1項,外国人登録法18条1項8号
論点194第337条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例‐いわゆる在日韓国人指紋不押なつ事件‐

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年7月14日 昭和62(あ)231
登載
集刑 第252号253頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,外国人登録法14条1項,外国人登録法18条1項8号
論点195第337条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年7月14日 昭和63(あ)1152
登載
集刑 第252号341頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,外国人登録法13条1項,外国人登録法18条の2第4号
論点196第337条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成元年4月25日 平成1(あ)210
登載
集刑 第251号781頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,軽犯罪法1条33前段
論点197第337条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年4月14日 平成1(あ)209
登載
集刑 第251号651頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,軽犯罪法1条33前段
論点198第337条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年3月30日 平成1(あ)167
登載
集刑 第251号631頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,軽犯罪法1条33前段
論点199第337条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年3月30日 平成1(あ)46
登載
集刑 第251号629頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,軽犯罪法1条32号,軽犯罪法1条33前段
論点200第337条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年3月30日 昭和63(あ)1271
登載
集刑 第251号627頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,軽犯罪法1条33前段
論点201第337条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年3月24日 昭和61(あ)1448
登載
集刑 第251号409頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,軽犯罪法1条33前段
論点202第337条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成元年3月14日 昭和63(あ)1072
登載
集刑 第251号373頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,軽犯罪法1条33前段
論点203第337条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年11月2日 平成1(あ)178
登載
集刑 第253号397頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,外国人登録法14条1項,外国人登録法18条1項8号
論点204第337条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例−いわゆる在日韓国人の外国人登録証明書不携帯事件−

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年11月2日 昭和63(あ)683
登載
集刑 第253号349頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,外国人登録法18条の2第4号,外国人登録法13条1項
論点205第337条刑事訴訟法

平成元年政令第二七号(大赦令)により免訴となった事例−いわゆる在日韓国人指紋不押なつ事件−

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成元年11月14日 平成1(あ)186
登載
集刑 第253号481頁
参照法条
平成元年政令27号,刑訴法337条3号,刑訴法411条5号,外国人登録法14条1項,外国人登録法18条1項8号
論点206第337条刑事訴訟法

公訴時効の完成を看過して有罪を言い渡した原判決が刑訴法411条1号により破棄された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成2年12月7日 平成2(あ)491
登載
集刑 第256号467頁
参照法条
刑訴法337条4号,刑訴法411条1号
論点207第337条刑事訴訟法

花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,警察署副署長に同署地域官との業務上過失致死傷罪の共同正犯は成立しないとされた事例

裁判要旨花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,警備計画策定の第一次的責任者ないし現地警備本部の指揮官という立場にあった警察署地域官と,同署副署長ないし署警備本部の警備副本部長として同署署長を補佐する立場にあった被告人とでは,分担する役割や事故発生の防止のために要求され得る行為が基本的に異なっていたなどの本件事実関係(判文参照)の下では,事故を回避するために両者が負うべき具体的注意義務が共同のものであったということはできず,被告人に同署地域官との業務上過失致死傷罪の共同正犯は成立しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成28年7月12日 平成26(あ)747
登載
刑集 第70巻6号411頁
参照法条
刑法60条,刑法(平成13年法律第138号による改正前のもの)211条前段,刑訴法254条2項,刑訴法337条4号,刑訴法(平成16年法律第156号による改正前のもの)250条4号
論点208第337条刑事訴訟法

前訴の建造物侵入,窃盗の訴因と後訴の非現住建造物等放火の訴因との間には公訴事実の単一性がなく,前訴の確定判決の一事不再理効は後訴に及ばないとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成22年2月17日 平成21(あ)934
登載
集刑 第300号71頁
参照法条
憲法39条後段,刑訴法337条1号
論点209第337条刑事訴訟法

前訴及び後訴の各訴因が共に単純窃盗罪であるが実体的には一つの常習特殊窃盗罪を構成する場合と前訴の確定判決による一事不再理効の範囲

裁判要旨前訴及び後訴の各訴因が共に単純窃盗罪である場合には,両者が実体的には一つの常習特殊窃盗罪を構成するとしても,前訴の確定判決による一事不再理効は,後訴に及ばない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成15年10月7日 平成14(あ)743
登載
刑集 第57巻9号1002頁
参照法条
刑訴法337条1号,刑法235条,盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律2条
論点210第337条刑事訴訟法

他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合における非占有者に対する公訴時効の期間

裁判要旨他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合、非占有者に対する公訴時効の期間は、刑法252条1項の横領罪の法定刑である5年以下の懲役について定められた5年(刑訴法250条2項5号〈時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑に当たるものについては、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。 長期十年未満の拘禁刑に当たる罪については五年〉)である。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和4年6月9日 令和3(あ)821
登載
刑集 第76巻5号613頁
参照法条
刑法65条、刑法252条1項、刑法253条、刑訴法250条、刑訴法337条4号
論点211第337条刑事訴訟法

前訴で住居侵入,窃盗の訴因につき有罪の第1審判決が確定した場合において,後訴の訴因である常習特殊窃盗を構成する行為が前訴の第1審判決後にされたものであるときの前訴の確定判決による一事不再理効の範囲

裁判要旨前訴で住居侵入,窃盗の訴因につき有罪の第1審判決が確定した場合において,後訴の訴因である常習特殊窃盗を構成する住居侵入,窃盗の各行為が前訴の第1審判決後にされたものであるときは,前訴の訴因が常習性の発露として行われたか否かについて検討するまでもなく,前訴の確定判決による一事不再理効は,後訴に及ばない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和3年6月28日 令和2(あ)919
登載
刑集 第75巻7号909頁
参照法条
刑訴法337条1号,刑法235条,盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律2条
論点212第338条刑事訴訟法

免許停止処分の理由となつた交通事故が刑事裁判で無罪となつた場合において右処分歴に基づく非反則者に対する公訴の提起が適法であるとされた事例

裁判要旨免許停止処分の理由となつた軽傷交通事故につきその後の刑事裁判で傷害の事実の証明がないとして無罪となつた場合においても、右処分が無効となるものではなく、右処分歴に基づき反則者に当たらないとしてなされた速度違反事件の公訴の提起は、適法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和63年10月28日 昭和63(あ)103
登載
刑集 第42巻8号1239頁
参照法条
道路交通法125条1項,道路交通法130条,道路交通法(昭和61年法律63号による改正前のもの)118条1項2号,道路交通法(昭和61年法律63号による改正前のもの)125条2項2号,道路交通法(昭和61年法律63号による改正前のもの)別表,刑訴法338条4号
論点213第338条刑事訴訟法

検察官がA事件の公判において「これ以上追起訴はない」と陳述した後起訴したB事件につき、公訴権濫用による違憲(憲法三一条)の主張が、右陳述の趣旨解釈により欠前提とされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和59年4月27日 昭和58(あ)486
登載
集刑 第236号941頁
参照法条
憲法31条,刑訴法338条4号
論点214第338条刑事訴訟法

一 訴因の特定が十分でない起訴状による公訴提起と公訴時効停止の効力
二 二個の事実のいずれに対する起訴であるのか一見まぎらわしく訴因の特定が十分でない起訴状による公訴提起が一方の事実に関する公訴時効停止の効力を有するとされた事例
三 再起訴に対する判断が旧起訴に対する確定判決のいわゆる内容的確定力に抵触しないとされた事例
(三につき反対意見がある)

裁判要旨一 公訴事実の記載に不備があつて、実体審理を継続するのに十分な程度に訴因が特定していない起訴状による公訴提起であつても、それが特定の事実について検察官が訴追意思を表明したものと認められるときは、右事実と公訴事実を同一にする範囲において、公訴時効の進行を停止する効力を有する。
二 建物の所有名義を偽つて不実の登記をさせたことなどを内容とする公正証書原本不実記載・同行使の旧起訴状公訴事実の記載に不備があつて、旧起訴が、右建物の表示登記と保存登記のいずれの不実記載についてされたのか一見まぎらわしく訴因の特定が十分でない場合であつても、旧起訴状の公訴事実に記載された犯行の日時、場所、方法及び不実登記の対象となる建物がすべて表示登記の不実記載に関する本件公訴事実第一のそれと同一であることなどの事情があるときは(判文参照)、右旧起訴は、本件公訴事実第一につき公訴時効の進行を停止する効力を有する。
三 訴因の不特定を理由とする公訴棄却の確定判決が、右判断を導くための根拠の一つとして、旧起訴状の公訴事実によつては併合罪関係に立つ建物の表示登記と保存登記に関する各公正証書原本不実記載・同行使罪のいずれについて起訴がされたのか一見明らかでないという趣旨に解しうる判断を示している場合において、再起訴を審理する裁判所が、旧起訴により表示登記の不実記載に関する本件公訴事実第一につき公訴時効の進行が停止されたと判断することは、右確定判決のいわゆる内容的確定力に抵触しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和56年7月14日 昭和55(あ)1499
登載
刑集 第35巻5号497頁
参照法条
刑訴法254条1項,刑訴法256条3項,刑訴法338条4号
論点215第338条刑事訴訟法

被告人と対向的な共犯関係に立つ疑いのある者の一部が警察段階の捜査において不当に有利な取扱いを受けた場合と被告人自身に対する捜査手続の合憲性

裁判要旨被告人自身に対する警察の捜査が刑訴法にのつとり適正に行われており、被告人が、その思想、信条、社会的身分又は門地などを理由に、一般の場合に比べ捜査上不当に不利益に取り扱われたものでないときは、かりに、当該被疑事実につき被告人と対向的な共犯関係に立つ疑いのある者の一部が、警察段階の捜査において不当に有利な取扱いを受け、事実上刑事訴追を免れるという事実があつたとしても、そのために、被告人自身に対する捜査手続が憲法一四条に違反することになるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和56年6月26日 昭和55(あ)353
登載
刑集 第35巻4号426頁
参照法条
憲法14条,刑訴法338条4号
論点216第338条刑事訴訟法

準起訴手続によつて審判に付された事件において刑訴法二六二条一項に掲げる罪以外の罪で処罰することの可否

裁判要旨準起訴裁判所が、相当な嫌疑のもとに刑訴法二六二条一項に掲げる罪が成立すると判断し公訴提起すべきものとして審判に付した以上、公判審理の結果それ以外の罪の成立が認められるにすぎないことになつたとしても、審判に付された事件と公訴事実の同一性が認められるかぎり、この罪で処罰することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年4月1日 昭和47(あ)1481
登載
刑集 第28巻3号17頁
参照法条
刑訴法262条1項,刑訴法265条,刑訴法338条4号
論点217第338条刑事訴訟法

公訴権濫用の主張に関し証拠開示命令が許されないとして取り消された事例

裁判要旨検察官の冒頭陳述が終了した直後で、いまだ実質審理に入らない段階において、裁判所が、検察官に対し、弁護人主張にかかる警察当局の違法かつ過剰警備による違法捜査手続を理由とする公訴権濫用の事実を明らかにするため必要であるとして弁護人に警察官作成の警備実施状況報告書を閲覧させることを命ずることは、訴訟指揮権行使の適正かつ公平な範囲を逸脱したもので許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和48年4月12日 昭和47(し)93
登載
集刑 第187号255頁
参照法条
刑訴法294条,刑訴法299条1項,刑訴法338条4号
論点218第338条刑事訴訟法

一 破壊活動防止法三九条および四〇条は犯罪の構成要件が不明確か
二 公訴棄却を求める申立とこれに対する裁判の要否

裁判要旨一 破壊活動防止法三九条および四〇条は、その所定の目的をもつて、刑法一九九条、一〇六条等の罪を実行するための具体的な準備をすることや、その実行のための具体的な協議をすることのような、社会的に危険な行為を処罰しようとするものであり、その犯罪構成要件が不明確なものとは認められない。
二 公訴棄却を求める申立は、職権の発動を促す意味をもつに過ぎず、これに対して申立棄却の裁判をする義務はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年7月2日 昭和42(あ)2220
登載
刑集 第24巻7号412頁
参照法条
破壊活動防止法39条,破壊活動防止法40条,憲法21条,憲法31条,刑訴法338条,刑訴法339条,刑訴規則33条
論点219第338条刑事訴訟法

少年の被疑事件につき捜査等に日時を要したため家庭裁判所の審判を受ける機会が失われたときと捜査手続の違法

裁判要旨犯行時の年令一九歳二か月の少年の業務上過失傷害被疑事件について、警察における捜査の終結が遅滞したため被疑者が成年に達して家庭裁判所の審判を受ける機会が失われたとしても、それが捜査に従事した司法巡査の勤務先警察署内における配置の変更、他事件の処理等の事情(判文参照)によるものであるときは、捜査官の措置にいまだ重大な職務違反があるとはいえず、その捜査手続を違法とすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年5月29日 昭和44(あ)2037
登載
刑集 第24巻5号223頁
参照法条
刑訴法246条,刑訴法338条4号,少年法41条,少年法42条
論点220第338条刑事訴訟法

一 少年の被疑事件につき捜査等に日時を要したため家庭裁判所の審判を受ける機会が失われたときと捜査手続の違法
二 捜査手続の違法と公訴提起の効力

裁判要旨一 犯時の年令一九年三月の少年の業務上過失傷害被疑事件につき、司法警察員の実況見分調書等に不備があり、その補正に七ケ月余の日時を要し、また、検察庁の事件受理手続が年末事務処理のため遅延をみる等、判文記載の事情のもとにおいては、そのために家庭裁判所の審判を受ける機会が失われたとしても、必ずしも捜査手続が違法となるものではない。
二 捜査手続の違法は、必ずしも公訴提起の効力を当然に失わせるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和44年12月5日 昭和44(あ)858
登載
刑集 第23巻12号1583頁
参照法条
刑訴法246条,刑訴法248条,刑訴法338条4号,少年法41条,少年法42条
論点221第338条刑事訴訟法

罰金のみにあたる罪を犯した少年の事件について家庭裁判所を経由することなく公訴が提起され略式命令が確定したときと非常上告

裁判要旨罰金のみにあたる罪を犯した少年の事件について、家庭裁判所を経由することなく公訴が提起され、これを有罪とした略式命令が確定した場合において、これに対する非常上告の申立があつたときは、右略式命令を破棄して公訴棄却の言渡をすべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年6月20日 昭和42(さ)4
登載
刑集 第21巻6号741頁
参照法条
刑訴法458条,刑訴法338条4号,少年法3条1項1号,少年法20条,少年法41条,少年法42条
論点222第338条刑事訴訟法

一 地方議会の議事進行に関連する議員の刑事犯罪と議会または議長の告訴告発
二 地方議会の議事進行に関する議長の措置が会議規則に違反していたとしても刑法第九五条第一項にいう公務員の職務の執行にあたるとされた事例

裁判要旨一 地方議会の議事進行に関連する議員の刑事犯罪については、議会または議長の告訴告発を訴訟条件と解すべきではない。
二 地方議会の議長が議員から提出された質疑打切り、討論省略、全上程議案一括採決の動議に基づき全上程議案の一括採決を議場に諮ろうとした措置は、かりに会議規則に違反するものである等法令上の適法要件を完全には満たしていなかつたとしても、原審の認定した具体的な事実関係(原判文参照)のもとにおいては、刑法第九五条第一項にいう公務員の職務の執行にあたる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和42年5月24日 昭和38(あ)1184
登載
刑集 第21巻4号505頁
参照法条
憲法51条,刑訴法230条,刑訴法239条,刑訴法338条4号,刑法95条1項,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)31条,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)32条,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)36条,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)37条,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)38条,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)39条,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)76条,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)77条
論点223第338条刑事訴訟法

逮捕手続における警察官の違法行為と公訴提起の効力

裁判要旨逮捕の際犯人に対して警察官による暴行陵虐の行為があつたとしても、そのために公訴提起の手続が憲法第三一条に違反し無効となるものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年7月21日 昭和41(あ)491
登載
刑集 第20巻6号696頁
参照法条
憲法31条,刑訴法338条4号
論点224第338条刑事訴訟法

法人税法違反事件について告発は公訴提起の訴訟条件か。

裁判要旨法人税法違反事件については、収税官吏の告発をもつて公訴提起の訴訟条件と解することはできないとした原判決の判断は相当である(昭和二八年(あ)第一六号同年九月二四年第一小法廷判決、集七巻九号一八二五頁参照)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年9月21日 昭和40(あ)11
登載
集刑 第156号667頁
参照法条
国税犯則取締法12条ノ2,刑訴法239条,刑訴法338条4号
論点225第338条刑事訴訟法

起訴状謄本不送達による公訴棄却の決定がなされた後その確定前に同一の事実についてさらに公訴を提起することは二重起訴にあたるか。

裁判要旨起訴状謄本不送達による公訴棄却の決定がなされた後、その確定前に同一の事実についてさらに公訴の提起があつた場合、その後右決定が確定したときは、二重の起訴のあつた場合にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年10月31日 昭和33(あ)65
登載
刑集 第15巻9号1653頁
参照法条
刑訴法338条3号,刑訴法339条1項1号,刑訴法339条2項,刑訴法271条
論点226第338条刑事訴訟法

一 刑訴法第二条〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉にいう「現在地」の意義
二 国外において俘虜の管理にあたり日本人がその権限を逸脱して行つた逮捕監禁の罪とわが科刑権、裁判権

裁判要旨一 刑訴第二条〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉にいう「現在地」とは、被告人が公訴提起の当該任意又は適法な強制によつて現在する地域をいう
二 国外において俘虜の管理に当り日本人が正当行為の範囲を逸脱して行つた逮捕監禁の所為については、わが科刑権及び、我が国が事実上、裁判権を行使できる状態になればこれを処罰することができる
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年5月24日 昭和28(あ)1683
登載
刑集 第12巻8号1535頁
参照法条
刑訴法2条,刑訴法338条1号,刑法4条,刑法3条9号,刑法3条10号,刑法218条,刑法219条,刑法220条,刑法221条
論点227第338条刑事訴訟法

適法な告訴があつたものと認められる事例

裁判要旨A所有の田圃にBが植付け所有した稲苗を土中に埋没させて毀棄した事件において、告訴状がA名義でなされていても、他の証拠によつて、右告訴が苗の被害者Bの委任によるものであることがうかがわれ、またB自身も検察官に対し告訴の意思を表示している場合は、適法な告訴があるものと認めるべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年1月27日 昭和28(あ)4840
登載
集刑 第112号139頁
参照法条
刑訴法230条,刑訴法338条4号
論点228第338条刑事訴訟法

一 麻薬取締法第六七条等の合憲性
二 書面審理と憲法第八二条第一項
三 包括一罪を構成する一部の行為に対する追起訴状の提出と二重起訴
四 旧麻薬取締法の一部を改正する昭和二七年法律第一五二号の施行期日の前後にまたがる常習行為の適条

裁判要旨一 麻薬取締法第六七条等は憲法第二二条第一項に違反しない。
二 一審裁判所は、被告人、弁護人の出頭した公開の公判廷で審理を行い、被告人は犯罪事実をすべて自認し、弁護人同意の下に証拠書類について適法に証拠調を終つた上、弁論を終結して判決し、控訴審もまた公開した公判廷において出頭した弁護人の控訴趣意書に基く弁論並びにこれに対する検察官の意見をきいた上結審して、控訴を理由ないものとして棄却する旨の判決を宣告した以上憲法第八二条に違反するところはない。
三 麻薬取締法違反の常習営利の一罪を構成する行為について追起訴状が提出されても、それが右一罪を構成する行為で起訴状に洩れたものを追加補充する趣旨でなされたものと認められる以上、二重起訴の違法はない。
四 旧麻薬取締法の一部を改正して、常習行為の加重処罰を規定した昭和二七年法律第一五二号の施行期日の前後にまたがる行為は、それが不可分の関係にあつて一罪と認められる場合でないかぎり、これをその前後によつて区分し、それぞれ行為時法に従つて法律上の処遇を判断すべきものと解するを相当とする。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和31年12月26日 昭和29(あ)1400
登載
刑集 第10巻12号1746頁
参照法条
麻薬取締法67条,麻薬取締法66条,麻薬取締法64条,麻薬取締法12条,麻薬取締法附則第2項,16項,憲法22条1項,憲法82条1項,憲法39条,刑訴法312条,刑訴法309条2項,刑訴法338条3号,刑訴規則209条,刑訴規則205条2項,旧麻薬取締法(昭和27年法律152号による改正後のもの)57条ノ3,旧麻薬取締法(昭和27年法律152号による改正後のもの)57条ノ4,旧麻薬取締法(昭和27年法律152号による改正後のもの)附則2項
論点229第338条刑事訴訟法

一 間接国税犯則事件における一個の犯罪事実の一部に対する告発の効力
二 戻入に関する税務署の承認とすでに成立している物品税逋脱罪への影響
三 通告処分後二年有半を経過してあらためてなされた告発の効力
四 訴訟記録の紛失を理由とする公訴棄却の判決と再起訴

裁判要旨一 間接国税犯則事件において、当該官吏の告発は公訴提起の有効条件であるけれども、一個の犯罪事実の一部に対する告発は、その全部について効力を生ずるものと解すべきである。
二 製造場から移出した物品を同一製造場内に戻入した事実があり、後にその戻入について所轄税務署承認があつても、その承認前すでに納期が到来して既遂となつている物品税逋脱罪に対しては、なんら影響をおよぼすものではない。
三 物品税逋事件につき訴訟記録の紛失により公訴棄却の判決があつたため、当初の通告処分後二年有半を経過したのちあらためて告発がなされたからといつて、右告発を無効とすべきいわれはない。
四 訴訟記録の紛失により公訴が適法な手続により提起されたことを証明すべき方法がないという理由で、刑訴第三三八条第四号〈左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。 公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき。〉にもとずく公訴棄却の判決があつたのち、同一事件につき再度公訴を提起することは、なんら法の禁じるところではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年11月1日 昭和28(あ)2219
登載
刑集 第9巻12号2353頁
参照法条
国税犯則取締法17条1項,刑訴法239条,刑訴法338条4号,物品税法(昭和23年12月21日法律262号による改正前のもの)4条,物品税法(昭和23年12月21日法律262号による改正前のもの)9条1項,物品税法(昭和23年12月21日法律262号による改正前のもの)10条1項,物品税法(昭和23年12月21日法律262号による改正前のもの)18条1項2項,物品税法施行規則(昭和24年4月30日政令83号による改正前のもの)17条,憲法39条
論点230第338条刑事訴訟法

一 起訴状記載の訴因が刑法第二四四条第一項後段の親族相盗にあたるに拘らず告訴を欠く場合と訴因変更の可否
二 起訴条記載の訴因が刑法第二四四条第一項後段の親族相盗にあたるに拘らず告訴を欠く場合と起訴手続の効力

裁判要旨本件公訴にかかる窃盗の事実が、刑法二四四条一項後段の親告罪であるか否かは、最終的には、裁判所により事実審理の結果をまつて、判定さるべくものであり、必ずしも起訴状記載の訴因に拘束されるものではない。従つて、本件のように、事実審理の過程において起訴状に記載された訴因事実が前示の親告罪にあたることが明らかになつた場合にも、適法な告訴がないからといつて、所論のようにその起訴手続を直ちに無効であると断定すべきではない。尤も、かように訴因について訴訟条件を欠くことが明らかとなつたときは、裁判所は、もはや、この訴因について実体的訴訟関係を進展させることを得ないから、訴訟条件の欠缺が治癒または補正されない以上、その起訴手続は不適法、無効なものとして、公訴棄却の形式的裁判を以つて、その訴訟手続を締結せざるを得ないことはいうまでもない(刑訴三三八条四号〈左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。 公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき。〉)。しかし、本来の訴因が右の如く訴訟条件を欠くからといつて、現行法上、それだけで訴因の変更、追加を絶対に許さないとする理由は何ら存しない(親告罪と否とにより直ちに公訴事実の同一性を失うものではない)。そして、本件においては、本来の訴因事実の一部について、訴因変更への手続が適法になされているのであつて、刑法二四四条の適用のない新しい訴因事実が裁判所により認定され、確定されたのであるから、その部分に関する限り本件被告事件は、本来、親告罪でなかつた訳であり、従つてこの点に関する本件起訴手続は、告訴がなくても、もともと、有効であつて無効でなかつたことに帰するのである。原判決には所論のような法令違反もない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年9月8日 昭和26(あ)4394
登載
刑集 第8巻9号1471頁
参照法条
刑法244条1項,刑訴法312条,刑訴法338条4号
論点231第338条刑事訴訟法

選挙違反罪において交付又は供与された金員の趣旨につき差異ある場合と訴因変更の要否

裁判要旨所論原審認定の事実は、犯罪の日時、場所、金員の交付又は供与を受けたとする相手方及びその金額等の点において本件公訴事実と何等の差異もなく、ただ交付又は供与されたとする金員の趣旨について差異あるに止まり、両者間に基礎たる事実の同一性ありと認め得るばかりでなく、その罰条の点においても共に公職選挙法二二一条一項に該当し、単に五号(交付)によるか、一号(供与)によるかの差異あるに過ぎないのであつて、原審が本件公訴事実に対し、訴因、罰条の変更手続を経ないで所論のような判示事実を認定処断したとしても被告人の防禦権の行使に不意打的に実質的な不利益を及ぼしたものということはできない(昭和二六年(あ)第二五二六号、同二九年一月二八日当法延判決参照)。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年4月22日 昭和28(あ)4213
登載
集刑 第94号625頁
参照法条
公職選挙法221条1項1号,公職選挙法221条1項5号,刑訴法312条,刑訴法256条,刑訴法338条4号
論点232第338条刑事訴訟法

同一裁判所に二重の起訴があつたものとして控訴棄却申立があつた場合における判断の時期と方法

裁判要旨起訴状の謄本が所定期間内に送達されなかつたとして検察官がさらに控訴を提起した場合に、弁護人から同一裁判所に二重の起訴があつたものとして控訴棄却の申立があつたとしても、裁判所は、最終の判決自体においてその判断を示せばたり、その都度申立に対し決定することを要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年1月22日 昭和25(し)17
登載
刑集 第7巻1号26頁
参照法条
刑訴法338条3号,刑訴法271条
論点233第338条刑事訴訟法

方式違背の告発書の効力

裁判要旨告発書に契印を欠き、かつ名宛の検察庁名を訂正しながら、その箇所に作成者の認印がなく、挿入、削除の字数の記載もない場合でも、ただちに無効とすべきものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年7月15日 昭和26(あ)254
登載
集刑 第66号257頁
参照法条
刑訴規則58条,刑訴規則59条,刑訴法241条,刑訴法338条,国税犯則取締法13条
論点234第338条刑事訴訟法

被告人の防禦権の行使と名誉毀損罪の成立

裁判要旨誣告被告事件の公判廷において、被告人が弁解として故意に虚偽の事実を陳述して、公然誣告の相手方の名誉を毀損することは、被告人としての防禦権を濫用するものであつて、その行為につき名誉毀損罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年3月7日 昭和26(れ)1931
登載
刑集 第6巻3号441頁
参照法条
旧刑訴法135条,旧刑訴法338条,刑法230条,刑法35条
論点235第338条刑事訴訟法

一 保護処分決定が抗告審で取り消された場合において差戻しを受けた家庭裁判所が当該事件を少年法二〇条により検察官に送致することの可否
二 保護処分決定が抗告審で取り消された事件について家庭裁判所が少年法二〇条により検察官送致決定をした場合に同法四五条五号に従って行われた公訴提起の効力

裁判要旨一 家庭裁判所のした保護処分決定に対する少年側からの抗告に基づき、右決定が取り消された場合には、差戻しを受けた家庭裁判所が当該事件を少年法二〇条により検察官に送致することは許されない。
二 保護処分決定が抗告審で取り消された事件について、家庭裁判所が少年法二〇条により検察官送致決定をした場合、同法四五条五号に従って行われた公訴提起は違法、無効である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成9年9月18日 平成8(あ)838
登載
刑集 第51巻8号571頁
参照法条
少年法1条,少年法20条,少年法32条,少年法45条5号,刑訴法338条4号,刑訴法402条
論点236第338条刑事訴訟法

罰金以下の刑に当たる罪を犯した少年に対する略式命令と非常上告

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成4年9月8日 平成4(さ)1
登載
集刑 第261号1頁
参照法条
刑訴法458条1項,刑訴法338条
論点237第338条刑事訴訟法

反則行為に当たる通行禁止場所通行を犯した被告人に対し運転免許が失効しているものと誤認してされた略式命令に対する非常上告

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成29年4月7日 平成28(さ)2
登載
集刑 第321号73頁
参照法条
刑訴法338条4号,刑訴法458条1号
論点238第338条刑事訴訟法

被告人に訴訟能力がないために公判手続が停止された後訴訟能力の回復の見込みがないと判断される場合と公訴棄却の可否

裁判要旨被告人に訴訟能力がないために公判手続が停止された後,訴訟能力の回復の見込みがなく公判手続の再開の可能性がないと判断される場合,裁判所は,刑訴法338条4号〈左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。 公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき。〉に準じて,判決で公訴を棄却することができる。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成28年12月19日 平成27(あ)1856
登載
刑集 第70巻8号865頁
参照法条
刑訴法1条,刑訴法314条1項,刑訴法338条4号
論点239第338条刑事訴訟法

反則行為について通告を欠いたまま反則金不納付事件として発付された略式命令に対する非常上告

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成27年6月8日 平成27(さ)2
登載
集刑 第317号339頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法338条4号
論点240第338条刑事訴訟法

少年につき禁錮以上の刑に当たる罪として家庭裁判所から少年法20条1項の送致を受けた事件をそれと事実の同一性が認められる罰金以下の刑に当たる罪の事件として公訴を提起することの許否

裁判要旨少年につき禁錮以上の刑に当たる罪として家庭裁判所から少年法20条1項の送致を受けた事件について,それと事実の同一性が認められるとしても,罰金以下の刑に当たる罪の事件として公訴を提起することは許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年1月20日 平成25(さ)4
登載
刑集 第68巻1号79頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法338条4号,少年法20条1項
論点241第338条刑事訴訟法

少年の被疑事件につき一旦は嫌疑不十分を理由に不起訴処分にするなどしたため家庭裁判所の審判を受ける機会が失われた後に事件を再起してした公訴提起が無効であるとはいえないとされた事例

裁判要旨犯行時16歳の少年の業務上過失傷害被疑事件について,検察官への事件送致までに約2年11か月を要した上,一旦は嫌疑不十分を理由に不起訴処分(家庭裁判所へ送致しない処分)とされたため,被疑者が成人に達して家庭裁判所で審判を受ける機会が失われたとしても,運転者の特定に日時を要し,検察官が嫌疑不十分と判断し不起訴処分にしたのもやむを得ないなどの事情(判文参照)がある場合には,その後に事件を再起してした公訴提起が無効であるとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成25年6月18日 平成23(あ)2032
登載
刑集 第67巻5号653頁
参照法条
刑訴法248条,刑訴法338条4号,少年法42条1項
論点242第338条刑事訴訟法

昭和40年法律第96号附則2条1項〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉等により運転できる普通自動車が制限された運転免許を受けている者が上記制限外の普通自動車を運転した行為は平成16年法律第90号により道路交通法91条違反となったのにこれを看過してなされた略式命令に対する非常上告

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年3月16日 平成20(さ)3
登載
集刑 第296号189頁
参照法条
刑訴法338条4号,刑訴法458条1号,道路交通法91条,道路交通法119条1項15号,道路交通法125条1項,昭和40年法律第96号附則2条1項,昭和40年法律第96号附則2条3項,昭和40年法律第96号附則2条4項,昭和40年法律第96号附則5条5項,平成7年法律第74号附則11条,平成16年法律第90号附則6条10号,平成16年法律第90号附則15条
論点243第338条刑事訴訟法

起訴状に検察官の署名(記名)押印が欠けていることを看過して発せられた略式命令に対する非常上告

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成19年7月5日 平成19(さ)1
登載
集刑 第292号47頁
参照法条
刑訴法338条4号,刑訴法458条1号,刑訴法463条1項,刑訴規則58条1項,刑訴規則60条の2第2項
論点244第338条刑事訴訟法

家庭裁判所から検察官への送致決定を経ることなくされた起訴に基づき発付された略式命令に対する非常上告

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成19年12月13日 平成19(さ)3
登載
集刑 第292号703頁
参照法条
刑訴法338条4号,刑訴法458条1号,刑訴法463条1項,少年法20条1項
論点245第338条刑事訴訟法

裁判官が公訴棄却の判決をし又はその判決に至る手続に関与したことと再起訴後の審理における刑訴法20条7号本文所定の除斥原因

裁判要旨裁判官が公訴棄却の判決をし,又はその判決に至る手続に関与したことは,その手続において再起訴後の第1審で採用された証拠又はそれと実質的に同一の証拠が取り調べられていても,再起訴後の審理において,刑訴法20条7号〈裁判官は、次に掲げる場合には、職務の執行から除斥される。 裁判官が事件について第二百六十六条第二号の決定、略式命令、前審の裁判、第三百九十八条乃至第四百条、第四百十二条若しくは第四百十三条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となつた取調べに関与したとき。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。〉本文所定の除斥原因に当たらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年8月30日 平成16(あ)2716
登載
刑集 第59巻6号726頁
参照法条
刑訴法20条7号,刑訴法338条
論点246第338条刑事訴訟法

「普通車は軽車(360)に限る」という条件が付された普通自動車免許で上記条件を超える普通貨物自動車(軽四)を運転した免許条件違反行為を昭和40年法律第96号附則2条4項〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉及び5条4項〈数個の関連事件が各別に上級の裁判所及び下級の裁判所に係属するときは、事物管轄にかかわらず、上級の裁判所は、決定で下級の裁…〉の規定する無免許運転行為と誤認してされた略式命令に対する非常上告

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年12月12日 平成17(さ)2
登載
集刑 第288号747頁
参照法条
刑訴法338条4号,刑訴法458条1号,道路交通法91条,道路交通法119条1項15号,道路交通法125条1項,昭和40年法律第96号附則2条4項,昭和40年法律第96号附則5条4項
論点247第338条刑事訴訟法

反則行為に当たる過失による通行禁止違反について,反則行為に関する処理手続を経由しないまま仮免許運転条件違反との併合罪として発付された略式命令に対する非常上告

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和2年3月12日 令和2(さ)1
登載
集刑 第328号1頁
参照法条
刑訴法458条1号,刑訴法338条4号
論点248第339条刑事訴訟法

上告棄却決定送達後被告人の死亡が判明したとして異議申立があった場合の処理例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和62年6月2日 昭和62(す)80
登載
集刑 第246号27頁
参照法条
刑訴法339条1項
論点249第339条刑事訴訟法

一 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)八五条三号の規定と憲法一四条一項、三一条、三二条

二 独禁法八五条三号の規定と憲法七七条一項

三 石油製品の値上げの上限に関し通産省の了承を得させることとする行政指導がある場合と石油製品価格に関する不当な取引制限行為の成否

四 不当な取引制限行為が事業者団体によつて行われた場合と事業者の処罰

五 独禁法二条六項にいう「相互にその事業活動を拘束し」にあたる場合

六 独禁法二条六項にいう「公共の利益に反して」の意義

七 法人の従業者が法人の業務に関して独禁法八九条一項一号違反の行為をした場合と右従業者及び法人の処罰

八 独禁法八九条一項一号の罪の既遂時期

九 石油製品価格に関する行政指導の許される範囲

一〇 適法な行政指導に従つて行われた行為と違法性の阻却

一一 独禁法九六条二項所定の告発状の方式

一二 刑訴規則五八条違反の瑕疵のある告発状の効力

一三 清算の結了による株式会社の法人格消滅の要件

一四 株式会社の吸収合併が不成立ないし不存在とはいえないとされた事例

一五 会社の吸収合併と刑事責任の承継

裁判要旨一 独禁法八九条から九一条までの罪に係る訴訟につき二審制を定めた同法八五条三号の規定は、憲法一四条一項、三一条、三二条に違反しない。

二 独禁法八九条から九一条までの罪に係る訴訟の第一審の裁判権を東京高等裁判所に専属させた同法八五条三号の規定は、憲法七七条一項に違反しない。

三 石油製品の値上げの上限に関し通産省の了承を得させることとする行政指導が行われており、右行政指導が違法とまではいえない場合であつても、石油製品元売り会社の従業者等が、値上げの上限に関する通産省の了承を得るために右上限についての業界の希望案を合意するに止まらず、その属する事業者の業務に関し、通産省の了承の得られることを前提として、了承された限度一杯まで各社一致して石油製品の価格を引き上げることまで合意したときは、右合意は、独禁法三条、八九条一項一号、九五条一項によつて禁止・処罰される不当な取引制限行為にあたる。

四 独禁法上処罰の対象となる不当な取引制限行為が事業者団体によつて行われた場合であつても、これが同時に事業者団体を構成する各事業者の従業者等によりその業務に関して行われたと観念しうる事情があるときは、右行為に対する刑責を事業者団体のほか各事業者に対して問うことも許される。

五 各事業者の従業者等が、事業者の業務に関し、その内容の実施に向けて努力する意思をもち、かつ、他の事業者もこれに従うものと考えて、製品の価格をいつせいに一定の幅で引き上げる旨の協定を締結したときは、協定の実効性を担保するための制裁等の定めがなくても、独禁法二条六項にいう「相互にその事業活動を拘束し」にあたる。

六 独禁法二条六項の「公共の利益に反して」との文言は、原則としては同法の直接の保護法益である自由競争経済秩序に反することを意味するが、現に行われた行為が形式上これに該当するものであつても、右法益と当該行為によつて守られる利益とを比較衡量すれば「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という同法の究極の目的に実質的には反しないと認められる例外的な場合を、同項にいう「不当な取引制限」行為から除外する趣旨を含む。

七 事業者たる法人の従業者である自然人が、法人の業務に関して、独禁法八九条一項一号に違反する行為をした場合には、行為者たる自然人及びその所属する法人は、いずれも、同法九五条一項及び同法八九条一項一号により処罰される。

八 事業者が他の事業者と共同して対価を協議・決定する等相互にその事業活動を拘束すべき合意をした場合において、右合意により、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争が実質的に制限されたものと認められるときは、独禁法八九条一項一号の罪は直ちに既遂に達し、右決定された内容が各事業者によつて実施に移されることや決定された実施時期が現実に到来することなどは、同罪の成立に必要ではない。

九 石油業法に直接の根拠を持たない石油製品価格に関する行政指導であつても、これを必要とする事情がある場合に、これに対処するため社会通念上相当と認められる方法によつて行われるものは、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という独禁法の究極の目的に実質的に抵触しない限り、違法とはいえない。

一〇 価格に関する事業者間の合意は、形式的に独禁法に違反するようにみえる場合であつても、適法な行政指導に従いこれに協力して行われたものであるときは、違法性を阻却される。

一一 独禁法九六条二項所定の告発状の方式には、刑訴規則五八条の適用ないし準用があり、公正取引委員会委員長の署名押印が必要である。

一二 告発状の方式に刑訴規則五八条違反の瑕疵がある場合でも、その体裁・形式・記載内容などから告発人の真意に基づいて作成されたものであることが容易に推認されうるときは、告発状の訴訟法上の効力は否定されない。

一三 清算の結了により株式会社の法人格が消滅したというためには、商法四三〇条一項、一二四条所定の清算事務が終了しただけでは足りず、清算人が決算報告書を作成してこれを株主総会に提出しその承認を得ることを要する。

一四 解散後清算事務を終了したが商法四二七条一項所定の手続が未了であつた甲株式会社につき会社継続の手続をしたうえ、乙株式会社をこれに吸収する合併契約をする等の手続を履践して行われた本件吸収合併(判文参照)は、これを不成立ないし不存在ということはできない。

一五 乙会社の従業者が会社の業務に関して価格協定に参加したのち、同会社が甲会社との吸収合併により消滅したときは、合併当時甲会社が清算事務を終了しており、かつ、右合併が乙会社の株式の額面金額の変更のみを目的としたものであつたとしても、現に存在する甲会社に対し右従業者の行為を理由としてその刑責を追及することは許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年2月24日 昭和55(あ)2153
登載
刑集 第38巻4号1287頁
参照法条
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)1条,独禁法2条6項,独禁法8条1項,独禁法33条,独禁法85条3号,独禁法89条1項(昭和52年法律第63号による改正前のもの),独禁法95条1項(昭和52年法律第63号による改正前のもの),独禁法96条,憲法14条,憲法31条,憲法32条,憲法77条1項,商法124条,商法406条,商法408条,商法415条,商法427条,商法430条1項,刑訴法239条,刑訴法241条,刑訴法339条1項4号,刑訴法490条1項,刑訴規則58条,刑法35条,通商産業省設置法3条2号,石油業法3条,石油業法4条,石油業法7条,石油業法15条,法人ノ役員処罰ニ関スル法律
論点250第339条刑事訴訟法

原判決後被告人が死亡し、そのことを理由とし検察官から上告があり(原審弁護人がすでに上告していたもの)、当審が公訴を棄却した事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年10月14日 昭和58(あ)1312
登載
集刑 第232号413頁
参照法条
刑訴法339条1項
論点251第339条刑事訴訟法

上告棄却決定が被告人の死亡により取消された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和56年10月8日 昭和56(す)142
登載
集刑 第223号363頁
参照法条
刑訴法339条1項4号,刑訴法385条2項,刑訴法426条2項,刑訴法428条2項,刑訴法428条3項
論点252第339条刑事訴訟法

当審係属中被告人死亡のため公訴を棄却した事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和55年7月11日 昭和55(あ)1092
登載
集刑 第218号231頁
参照法条
刑訴法339条1項4号
論点253第339条刑事訴訟法

起訴状謄本の不送達と公訴時効停止の効力

裁判要旨刑訴法二五四条一項〈時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める…〉の規定は、起訴状の謄本が法定の期間内に被告人に送達されなかつたため決定で公訴が棄却される場合にも適用があり、公訴の提起により進行を停止していた公訴時効は、右公訴棄却決定の確定した時から再びその進行を始める。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年5月12日 昭和54(あ)621
登載
刑集 第34巻3号185頁
参照法条
刑訴法254条1項,刑訴法271条2項,刑訴法339条1項1号
論点254第339条刑事訴訟法

公訴棄却の決定に対する被告人・弁護人の上訴権

裁判要旨公訴棄却の決定に対しては、被告人・弁護人からその違法・不当を主張して上訴することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年10月31日 昭和53(し)57
登載
刑集 第32巻7号1793頁
参照法条
刑訴法339条,刑訴法351条,刑訴法355条,刑訴法426条1項,憲法32条
論点255第339条刑事訴訟法

上告棄却決定が被告人死亡により取消された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和52年2月16日 昭和52(す)27
登載
集刑 第203号99頁
参照法条
刑訴法339条1項4号,刑訴法385条2項,刑訴法428条2項,刑訴法428条3項,刑訴法426条2項
論点256第339条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立後に被告人が死亡した場合に公訴棄却された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和51年12月21日 昭和51(す)254
登載
集刑 第202号581頁
参照法条
刑訴法339条1項
論点257第339条刑事訴訟法

上告棄却定が被告人死亡により取消された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年7月18日 昭和49(す)127
登載
集刑 第193号199頁
参照法条
刑訴法339条1項4号,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法428条2項,刑訴法428条3項,刑訴法426条2項
論点258第339条刑事訴訟法

原判決後被告人が死亡し、そのことを理由として検察官から上告があり、当審が公訴を棄却した事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和49年10月11日 昭和49(あ)2026
登載
集刑 第194号9頁
参照法条
刑訴法339条1項
論点259第339条刑事訴訟法

一 被告人であるアメリカ合衆国軍人等に対する訴訟書類の送達方法
二 被告人であるアメリカ合衆国軍属に対する起訴状謄本の送達の瑕疵と公訴提起の効力

裁判要旨一 被告人であるアメリカ合衆国軍人等に対する訴訟書類の送達をするには、刑訴法五四条〈書類の送達については、裁判所の規則に特別の定めのある場合を除いては、民事訴訟に関する法令の規定(民事訴訟法(平成八年法律…〉によつて準用される民訴法一六九条その他によるほか、日米合同委員会の合意事項たる「日米行政協定の実施上問題となる事項に関する件」八項Eによるべきである。
二 被告人であるアメリカ合衆国軍属に対する起訴状謄本の送達につき、送達すべき場所の表示を誤つたほか、日本文の起訴状の謄本自体が被告人本人に交付されなかつた瑕疵があつたとしても、横須賀米海軍基地司令部法務部気付で被告人宛とされた右起訴状謄本が同法務部に送付され、米軍当局の慣行に従い、同法務部が職務上これを英文を翻訳したのち、同英訳にかかる起訴状が弁護人選任に関する通知とともに被告人本人に交付されたときは、右送達の瑕疵は、いまだ被告人に対する公訴提起の効力を失わせるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和47年7月28日 昭和46(あ)1422
登載
刑集 第26巻6号397頁
参照法条
刑訴法54条,刑訴法271条,刑訴法272条,刑訴法339条1項1号,刑訴規則176条,刑訴規則177条,民訴法169条,民訴法削除前の167条,日米行政協定の実施上問題となる事項に関する件8項E
論点260第339条刑事訴訟法

第二審判決言渡前に被告人が死亡していた事案について最高裁判所において公訴棄却決定がなされた事例

裁判要旨本件につき、昭和四四年八月一二日広島高裁が言い渡した判決に対し、検察官から上告の申立があつたところ、戸籍謄本によれば、被告人は同年七月三一日に死亡したことが明白であるから、刑訴法四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、四〇三条一項〈原裁判所が不法に公訴棄却の決定をしなかつたときは、決定で公訴を棄却しなければならない。〉、四〇四条〈第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。〉、三三九条一項四号〈左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。〉に従い、公訴棄却の決定をなすべきものとする。(上告趣意書は提出させていない)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年10月1日 昭和44(あ)1916
登載
集刑 第173号1頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法403条1項,刑訴法404条,刑訴法339条1項4号
論点261第339条刑事訴訟法

上告棄却決定前に被告人が死亡していたことを理由として右決定に対する弁護人からの異議申立が認められた事例

裁判要旨上告棄却決定後、適法な異議申立期間内に、弁護人から右決定前に被告人が死亡していたことを理由として公訴棄却の決定を求める旨の異議の申立があり、右死亡の事実が明らかな場合には、右決定を取り消し、被告人に対する公訴を棄却すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年5月17日 昭和42(す)94
登載
刑集 第21巻4号491頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条1項3号,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法428条2項,刑訴法428条3項,刑訴法422条,刑訴法426条2項,刑訴法404条,刑訴法339条1項4号
論点262第339条刑事訴訟法

被告会社の合併による解散と刑訴法第三三九条第一項第四号。

裁判要旨被告会社が合併により解散したときは、刑訴法第三三九条第一項第四号〈左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。〉にいわゆる「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」にあたる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年5月25日 昭和38(あ)198
登載
刑集 第19巻4号353頁
参照法条
刑訴法339条1項4号,商法56条,商法94条3号,商法103条,商法404条,商法416条
論点263第339条刑事訴訟法

最高裁判所において公訴棄却決定がなされた事例。―第二審判決言渡前の被告人の死亡―

裁判要旨本件につき、福岡高裁が言渡した判決に対し、原審弁護人及び検察官から上告の申立があつたところ、検察官の上告趣意書添付の死亡診断書及び戸籍謄本並びに右弁護人の答弁書の各記載によれば、被告人は、右判決言渡の日の前日に死亡したものであることが明白であるから、刑訴法第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、第四〇四条〈第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。〉、第四〇三条第一項〈原裁判所が不法に公訴棄却の決定をしなかつたときは、決定で公訴を棄却しなければならない。〉、第三三九条第一項第四号〈左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。〉に従い、公訴棄却の決定をなすべきものとする。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年1月19日 昭和39(あ)1707
登載
集刑 第154号43頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法404条,刑訴法403条1項,刑訴法339条1項4号
論点264第339条刑事訴訟法

一 原動機付自転車には後写鏡の装置が必要か
二 起訴状に記載された事実が真実であつても、何らの罪となるべき事実を包含していない場合に、その事実につき略式命令が確定したときと非常上告

裁判要旨一 原動機付自転車の保安基準について規定した道路運送車両法四四条には、後写鏡については何ら定めがない。従つて原動機付自転車については、後写鏡の装置は必要がないものと解しなければならない。
二 起訴状に記載された事実が真実であつても、何らの罪となるべき事実を包含していない場合に、その事実につき略式命令が確定したときは、非常上告により原略式命令を破棄し、公訴を棄却すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年6月14日 昭和37(さ)2
登載
刑集 第16巻7号1245頁
参照法条
道路運送車両法44条,道路交通法62条,道路交通法119条1項5号,刑訴法339条1項2号,刑訴法458条1号
論点265第339条刑事訴訟法

一 法人をたばこ専売法第七七条第七一条第一号第六六条第一項により処罰する場合と同法第七五条の没収、追徴
二 刑訴法第三三九号第一項第四号にいう「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」にあたらない事例
三 略式命令の請求による起訴の効力発生の時期

裁判要旨一 法人とたばこ専売法第七七条、第七一条、第六六条第一項により処罰する場合には、所定の罰金のほか同法第七五条の没収、追徴の言渡ができる
二 法人の清算人が清算結了前に検察官から解散前の違反行為につき略式手続によることに異議がないかどうかを確められ、異議がない旨申述し、清算結了後、その登記前に略式命令の請求がなされている場合は、刑訴第三三九条第一項第四号〈左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。〉にいう「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」にあたらない
三 略式命令の請求による起訴の効力は、その請求が裁判所に対してなされた時に発生し、略式命令の謄本が被告人に送達された時に生ずるのではないと解するのが相当である
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年5月24日 昭和32(あ)2199
登載
刑集 第12巻8号1611頁
参照法条
たばこ専売法77条,たばこ専売法71条1号,たばこ専売法66条1項,たばこ専売法75条,刑法8条,刑法9条,刑法20条,憲法31条,刑訴法339条1項4号,刑訴法256条,刑訴法461条,刑訴法462条,刑訴規則290条
論点266第339条刑事訴訟法

上告棄却決定告知後、その確定前に被告人が死亡したことを理由とする右決定に対する不服申立

裁判要旨被告人が昭和三一年三月六日死亡したことは医師A作成の死体検案書及び東京都新宿区長B認証の戸籍謄本によつて明らかであるが、被告人が死亡したのは前記上告棄却の決定告知後のことであること、これまた一件記録上明瞭である。則ち右上告棄却の決定が告知せられた当時においては未だ被告人は死亡せず存命中であつたのであるから本件公訴を棄却せず上告を棄却した当裁判所の決定は相当であつてその決定が現在、未確定であると否とにかかわらず同決定を訂正すべき理由はすこしもない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年4月17日 昭和31(す)148
登載
集刑 第113号369頁
参照法条
刑訴法426条1項,刑訴法339条1項4号,刑訴法417条
論点267第339条刑事訴訟法

上告棄却決定前に被告人が死亡していたことを理由とする右決定に対する不服申立

裁判要旨最高裁判所が刑訴第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、第三八六条第一項三号〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。 控訴趣意書に記載された控訴の申立の理由が、明らかに第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由に該当しないとき。〉により上告棄却の決定をしたのち、三日の異義申立期間経過後に、弁護人から右決定前に被告人が死亡していたことを理由として公訴棄却の決定を求める旨の申立をしても、右申立は不適法として棄却する外はない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年7月18日 昭和28(す)223
登載
刑集 第9巻9号1878頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条1項3号,刑訴法2項,刑訴法385条2項,刑訴法422条,刑訴法415条,刑訴法404条,刑訴法339条1項4号
論点268第339条刑事訴訟法

一 刑訴第二七一条第二項〈裁判所は、公訴の提起があつたときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない。〉(昭和二八年法律第一七二号により追加された刑訴第三三九条第一項第一号〈左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。 第二百七十一条第二項の規定により公訴の提起がその効力を失つたとき。〉の規定の施行前における)の規定による公訴提起の失効と判断の要否
二 第一次の公訴提起失効後の第二次の公訴提起と二重危険

裁判要旨一 昭和二八年法律第一七二号により追加された刑訴第三三九条第一項第一号〈左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。 第二百七十一条第二項の規定により公訴の提起がその効力を失つたとき。〉の規定の施行前においては、起訴状の謄本が公訴の提起があつた日から二箇月以内に被告人に送達されなかつた場合には、公訴の提起は、公訴棄却の裁判をまつまでもなく当然さかのぼつてその効力を失つたものと解すべきである。
二 第一次の公訴の提起がさかのぼつてその効力を失つた以上、同一事件につき第二次の公訴の提起があつても被告人を二重危険に曝すことはあり得ない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年11月1日 昭和28(あ)5050
登載
刑集 第9巻12号2370頁
参照法条
刑訴法271条2項,刑訴法339条1項1号(昭和28年法律172号により改正されたもの),刑訴規則176条2項(昭和28年最高規則21号による改正前),刑訴規則219条の2,憲法39条
論点269第339条刑事訴訟法

同一事件が数個の簡易裁判所に係属している場合に、関連事件の係属している地方裁判所は、後に起訴された事件を併せて審判することができるか

裁判要旨同一の傷害事件が数個の簡易裁判所に別々に起訴され、同時に係属する場合において、上級の地方裁判所に窃盗等の関連事件が係属しているときは、同地方裁判所は刑訴第一一条〈同一事件が事物管轄を同じくする数個の裁判所に係属するときは、最初に公訴を受けた裁判所が、これを審判する。〉にかかわらず、後に起訴された傷害事件を併せて審判することができる。(本件においては先に起訴された傷害事件は略式命令謄本の不送達によりその後失効した場合に関する。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年6月29日 昭和28(あ)685
登載
刑集 第8巻6号985頁
参照法条
刑訴法5条1項,刑訴法10条1項,刑訴法11条1項,刑訴法339条1項5号
論点270第339条刑事訴訟法

刑訴第九条〈数個の事件は、左の場合に関連するものとする。〉の関連事件と同一〇条〈同一事件が事物管轄を異にする数個の裁判所に係属するときは、上級の裁判所が、これを審判する。〉の同一事件

裁判要旨共犯者甲に対する被告事件は、共犯者乙にとつて刑訴第九条〈数個の事件は、左の場合に関連するものとする。〉の関連事件ではあるが、同第一〇条〈同一事件が事物管轄を異にする数個の裁判所に係属するときは、上級の裁判所が、これを審判する。〉にいう同一事件ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年4月27日 昭和28(あ)5302
登載
刑集 第8巻4号572頁
参照法条
刑訴法9条,刑訴法10条,刑訴法11条,刑訴法339条1項5号
論点271第339条刑事訴訟法

刑訴法第三三九条第一項第四号〈左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。〉にいわゆる「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」と法人の解散

裁判要旨法人が解散しても、刑訴法第三三九条第一項四号〈左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。〉にいわゆる「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年11月18日 昭和29(あ)1922
登載
刑集 第8巻11号1850頁
参照法条
刑訴法339条1項4号,商法116条,商法124条1項1号
論点272第339条刑事訴訟法

上告棄却決定送達後被告人の死亡が判明したとして異議申立があった場合の処理例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年3月13日 平成1(す)22
登載
集刑 第251号359頁
参照法条
刑訴法339条1項
論点273第339条刑事訴訟法

上告棄却決定謄本を被告人に発送したところ被告人死亡によりこれが返送されてきたため公訴棄却決定をした事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成2年9月11日 平成2(あ)402
登載
集刑 第255号239頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法404条,刑訴法339条1項4号
論点274第339条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立後に被告人が死亡した場合の処理例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成2年4月12日 平成2(す)48
登載
集刑 第254号355頁
参照法条
刑訴法339条1項
論点275第339条刑事訴訟法

控訴審判決の宣告前に被告人が死亡していた場合について最高裁判所において公訴棄却決定がされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成27年3月3日 平成27(あ)239
登載
集刑 第316号139頁
参照法条
刑訴法339条1項4号,刑訴法403条1項,刑訴法404条,刑訴法414条
論点276第339条刑事訴訟法

1 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合における破産手続の終了と刑訴法339条1項4号にいう「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」
2 破産手続開始当時の会社を代表する権限を有する取締役と当該会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続についての代表権の有無
3 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合における破産手続の終了と当該刑事事件に係る訴訟手続についての取締役の代表権の消長
4 汚水を下水道に放流する行為が下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)の罰則の対象となり得ることと廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)16条〈法律による管轄裁判所がないとき、又はこれを知ることができないときは、検事総長は、最高裁判所に管轄指定の請求をしなければな…〉違反の罪の成否

裁判要旨1 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合には、破産手続が終了したとしても、刑訴法339条1項4号〈左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。〉にいう「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」に当たらない。
2 破産手続開始当時の会社を代表する権限を有する取締役は、破産手続開始によりその地位を当然には失わず、破産手続が終了するまでの間、当該会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続について当該会社を代表する。
3 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続について当該会社を代表する取締役は、会社法478条1項2号又は3号に掲げる者がある場合を除き、破産手続の終了後は、当該刑事事件に係る訴訟手続について清算人の立場で当該会社を代表する。
4 汚水を下水道に放流する行為は、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)によって基準に適合しない下水の排除として規制され、同法の罰則の対象となり得るとしても、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)16条〈法律による管轄裁判所がないとき、又はこれを知ることができないときは、検事総長は、最高裁判所に管轄指定の請求をしなければな…〉違反の罪が成立し得る。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和8年4月7日 令和6(あ)1479
登載
―
参照法条
(1、3につき)会社法475条1号、会社法476条、会社法481条1号 (1につき)刑訴法339条1項4号 (2、3につき)刑訴法27条1項 (2につき)会社法330条、会社法349条1項、民法653条2号、破産法78条1項 (3につき)会社法478条1項、会社法483条1項 (4につき)廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)1条、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)16条、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)25条1項14号、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)32条1項、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)1条、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)12条の2第1項、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)38条1項1号、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)45条、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)46条1項1号
論点277第340条刑事訴訟法

犯罪届書(被害届書)は証拠書類か

裁判要旨盗難被害者によつてその被害顛末を報告するため作成せられ捜査官憲に提出された記録に編綴された犯罪届書は、旧刑訴第三四〇条〈公訴の取消による公訴棄却の決定が確定したときは、公訴の取消後犯罪事実につきあらたに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事…〉にいわゆる証拠書類である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年8月28日 昭和24(れ)1614
登載
刑集 第5巻9号1809頁
参照法条
旧刑訴法340条
論点278第340条刑事訴訟法

証拠調に関する公判調書の記載の解釈

裁判要旨原審第一回公判調書によれば「裁判長は本件証拠として各原審公判調書各訊問調書各聴取書各領置書各顛末書被告人の履歴書その他関係書類一切の要旨を告げ」証拠調をした旨の記載のあることは所論指摘のとおりである。そして右の内の「その他関係書類一切」という部分の記載は、証拠能力ある「各原審公判調書各訊問調書各聴取書」の内に引用されている逮捕状強制処分請求書及び公判請求書等を指す趣旨の記載であることはこれを了解するに十分であつて、所論のように、証拠関係の有無に拘わらず「一件記録中の一切の書類」につき証拠調手続としての各要旨を告げた趣旨の記載とは、到底解することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年5月4日 昭和25(れ)1905
登載
集刑 第45号125頁
参照法条
旧刑訴法60条,旧刑訴法64条,旧刑訴法340条
論点279第340条刑事訴訟法

証拠調を経ない書面を引用して証拠の内容を摘示しても判決破棄の理由とならない場合

裁判要旨原判決が証拠として「原審(第一審)第二回公判調書中被告人の供述として、御読聞けの……犯罪報告書記載の犯罪事実は販売目的の各代金額の点を除いてその余はその通り相違ない旨並びに右犯罪報告書中の上記除外の点を除いて判示第三と同趣旨の記載」と摘示しながら、右犯罪報告書につき原審で証拠調を経ていない場合でも、右公判調書に記載してある被告人の供述が、裁判官の読み聞かせた犯罪報告書の内容を援用することなく、具体的に原判示第三と同趣旨の犯罪事実を自供したものであつて、この供述記載の内容を表示するため前記のように摘示したものと解しうるときは、原判決破棄の理由とならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年4月3日 昭和25(れ)1849
登載
集刑 第43号43頁
参照法条
旧刑訴法340条1項,旧刑訴法360条1項
論点280第340条刑事訴訟法

一 上申書は証拠書類にあたらない―――公判廷で弁護人の提出した証拠書類の証拠調の方法
二 従犯であるとの主張と旧刑訴法第三六〇条第二項

裁判要旨一 所論の書類は、何れも上申書であつて旧刑訴第三四〇条〈公訴の取消による公訴棄却の決定が確定したときは、公訴の取消後犯罪事実につきあらたに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事…〉にいわゆる証拠書類には当らないばかりでなく、たとえ証拠書類であるとしても公判廷で被告人の弁護機関である弁護人が提出し、裁判所及び検察官の閲覧を経た証拠書類については特に必要のある場合を除くの外、必ずしもこれを被告人に読み聞かせ又は示してその意見、弁解を求める必要のないことは判例の示すとおりである。
二 所論は、原審で弁護人が従犯であると主張したのに対し、原判決はその判断を遺脱した違法があるというのである。しかし、従犯であるとの主張は、共同正犯の起訴事実に対しては単なる否認の一種であつて旧刑訴法第三六〇条第二項に定める主張に当らない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月15日 昭和24(れ)1435
登載
刑集 第5巻4号527頁
参照法条
旧刑訴法340条,旧刑訴法347条1項,旧刑訴法360条2項,刑法62条
論点281第340条刑事訴訟法

一 被害者提出の診断書と証拠書類
二 證據書類の意義及び證據物との相違

裁判要旨一 傷害被告事件において、被害者から捜査官憲に提出され記録に編綴してある被害創傷に関する医師の診断書は、旧刑訴第三四〇条〈公訴の取消による公訴棄却の決定が確定したときは、公訴の取消後犯罪事実につきあらたに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事…〉にいわゆる調拠書類にあたる。
二 舊刑事訴訟法にいわゆる證據物と證據書類との相違は、前者に於てはその物理的存在自體が問題であるのに對して、後者に於てはその存在は明白であり、唯その記載内容が犯罪事實の證明に役立つという點に存すること所論の通りである。大審院の判例は、證據書類とは當該訴訟に關し作成せられ證據の用に供せられる書面を指稱するものである。との解釋を維持して來たが(例へば昭和七年二月一八日判決集一一巻八四頁)、かような文書はその存在及び成立については特別の場合を除く外全く疑を生ぜず唯その記載の内容のみが證據となるのであるからこの解釋も結果に於ては上記の見解に背馳するものではない。從つて右の判例は、舊刑事訴訟法の解釋に關する限り、新憲法の下に於ても、これを變改する必要を認めない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和24年8月9日 昭和24(れ)655
登載
刑集 第3巻9号1432頁
参照法条
旧刑訴法340条,旧刑訴法341条,舊刑訴法340條,舊刑訴法341條
論点282第340条刑事訴訟法

一 被告人に對する豫審訊問調書の作成者を訊問し得ることを被告人に告知することの要否
二 犯罪事實の一部について被告人の自白を唯一の證據として認定することの可否
三 誘導訊問に當らぬ一場合
四 証拠調の履践方法に関する公判調書の記載

裁判要旨一 刑訴應急措置法第一二條の規定は、被告人の供述を録取した書類については、その適用のないこと明文の示す通りであるから、右の豫審訊問調書の作成者を訊問し得ることを被告人に告知すべきであつたという所論は理由がない。
二 裁判所が被告人の自白とその他の證據とを綜合して犯罪事實を認定するにあたつては、その犯罪事實の全部にわたつて自白以外の傍證を必要とするのではなく、一部分については自白が唯一の證據であつても違法でないこと、當裁判所の屡次の判例(昭和二二年(れ)第一三六號同年十二月一六日言渡第三小法廷判決。昭和二二年(れ)第一五三號同二三年六月九日言渡大法廷判決等参照)の示す通りである。
三 裁判長が「腦實質内出血乃至腦室内出血があつたことは、死因たり得たろうとは言えるか」と問うたのに對して、右の證人は「斷定することは難しいですが、言えると思います」と答えている。かような問いは所論のようにいわゆる誘導訊問とは認められない。從つて右の證言を證據として採用することには何等の違法も存しない。
四 公判調書に「各尋問調書その他の証拠書類の各要旨を順次告げた」旨の記載があるときは、各尋問調書を一括してその要旨を告げたのではなくて、各尋問調書等について個別的に適法な証拠調がなされたものと認むべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和24年3月29日 昭和23(れ)1619
登載
刑集 第3巻3号381頁
参照法条
刑訴應急措置法12條1項,刑訴應急措置法10條3項,憲法38條3項,憲法38條,旧刑訴法340条,旧刑訴法347条
論点283第341条刑事訴訟法

被告人が秩序維持のため退廷を命ぜられ刑訴法三四一条により審理を進める場合と同法三二六条二項の適用の有無

裁判要旨刑訴法三二六条二項〈検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認め…〉は、被告人が秩序維持のため退廷を命ぜられ同法三四一条により審理を進める場合においても適用される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年6月28日 昭和50(あ)731
登載
刑集 第32巻4号724頁
参照法条
刑訴法326条2項,刑訴法341条
論点284第341条刑事訴訟法

いったん公判期日に出頭した被告人が法廷の秩序維持のため退廷を命ぜられたとき裁判所は刑訴法三四一条により当日の公判審理を行うことができるか

裁判要旨いったん公判期日に出頭した被告人が裁判長から法廷の秩序維持のため退廷を命ぜられたときは、裁判所は刑訴法三四一条に基づき、被告人不在のまま当日の公判審理を行うことができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和50年9月11日 昭和49(あ)2469
登載
集刑 第197号317頁
参照法条
刑訴法341条
論点285第342条刑事訴訟法

一 判決の言直しの効力
二 量刑不当により破棄自判された事例

裁判要旨一 判決は、宣告のための公判期日が終了するまでの間は、判決書又はその原稿の朗読を誤つた場合にこれを訂正することも、いつたん宣告した判決の内容を変更してあらためてこれを宣告することも、違法ではなく、言直しがあつたときは、その内容どおりのものとして効力を生ずる。
二 一審裁判官が、いつたん保護観察付き刑の執行猶予の判決を言い渡した後、法律上執行猶予とすることが許されない場合であるとの誤解から実刑の判決に言直しをしたことなど、諸般の事情のあることを考慮するときは、当初に宣告された刑をもつて臨むのが正義にかない、一、二審判決は量刑不当により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年11月4日 昭和50(あ)2427
登載
刑集 第30巻10号1887頁
参照法条
刑訴法342条,刑訴法411条2号,刑訴規則35条
論点286第342条刑事訴訟法

判決主文の言直しが有効とされた事例

裁判要旨判決の宣告にあたり、裁判長が主文の刑を懲役一年六月と朗読すべきところを誤つて懲役一年二月と朗読し、次いで理由の要旨を告げ上訴期間等の告知を行ない、席を立ちかけたところ、弁護人から質問があつたので、即座にその場で懲役一年六月と主文の刑を朗読し直した場合には、被告人に対する宣告刑は懲役一年六月としてその効力を生ずる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年6月15日 昭和45(あ)2274
登載
刑集 第26巻5号341頁
参照法条
刑訴法342条,刑訴規則35条
論点287第342条刑事訴訟法

弁護権の行使を不法に制限したことにならない事例。―必要弁護事件につき弁護人の選任がないまま開廷し判決の宣告をした場合―

裁判要旨必要弁護事件につき、弁護人の選任がないまま、判決宣告のために公判廷を開き、判決の宣告をしても、何ら事件につき実体的審理が行われたものではないから、弁護権の行使を不法に制限したことにはならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年6月4日 昭和39(あ)859
登載
集刑 第156号11頁
参照法条
刑訴法289条,刑訴法342条
論点288第342条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる事例。(判決宣告期日を変更しながら変更前の期日に判決を宣告した場合)

裁判要旨判決宣告期日を変更したにも拘らず、その変更前の期日に言い渡した第二審判決は、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年6月10日 昭和34(あ)2388
登載
刑集 第14巻7号970頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法342条,刑訴法273条
論点289第342条刑事訴訟法

一 法律が一定の規定の制定を最高裁判所に委任することの合憲性
二 刑訴施行法第一三条にいわゆる「裁判所の規則」の意議
三 公判期日に提出された被告人の上申書が旧刑訴法第三四二条にいわゆる証拠居類にあたらない事例

裁判要旨一 法律が一定の規定の制定を最高裁判所の規則に委任することは何ら憲法の禁ずるところでないことは、前記第法法廷判決(昭和二四年(れ)第二一二七号、同二五年一〇月二五日判決参照)の趣旨から容易にうかがわれるところである。
二 又論旨は刑訴施行法第一三条は規則の制定方を最高裁判所だけに委任せず下級裁判所にも委任しているのは憲法第七七条第三項に違反すると主張する。しかし前記刑訴規則施行規則第三条第三号は最高裁判所の制定した規則であつて下級裁判所の制定したものではないのであるから所論は本件規則の効力に無関係であるのみならず刑訴施行法第一三条に「裁判所の規則の定めるところによる」とあるいわゆる「裁判所の規則」とは憲法により司法裁判所に制定権を認められた規則の意であつて最高裁判所が憲法第七七条第一項により自ら設定する規則及び最高裁判所の委任に基き下級裁判所の制定する規則を指すことは右刑訴施行法第一三条の解釈上当然である。
三 右上申書なる書面前文を読めば右は被告人が検察官に対し恐喝の事実を自白するに至つた経緯を弁解し後日原審の公判廷において右経緯を立証し弁明しようとすることを予め裁判所に上申する趣旨の書面であつて、その後原審公判廷で裁判長が被告人弁護人に立証を促した際に同弁護人は証人としてA、B、Cの三名の喚問を申請している(右三名のうちB、Cは前記自白の経緯を立証するため申請したものと解される)のに拘らず前記上申書については裁判所に対し証拠調手続をとられたい旨促した形跡も在しないところを見ると右上申書は特に証拠として提出されたものとは認められない。してみれば右上申書は旧刑訴第三四二条〈判決は、公判廷において、宣告によりこれを告知する。〉にいわゆる証拠書類とはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年2月23日 昭和25(れ)718
登載
刑集 第5巻3号450頁
参照法条
憲法77条1項,刑訴施行法13条,起訴規則施行規則3条3号,旧刑訴法342条
論点290第342条刑事訴訟法

旧刑訴法第四一〇条第一三号にいわゆる「法律により公判において取調ぶべき証拠」の意義

裁判要旨旧刑訴法第四一〇条一三号にいう「法律により公判において取調ぶべき証拠」とは例えば同法第三四二条所定の証拠のごとくその取調が裁判所の自由裁量に属せず従つて法律上必ず公判において取調べなければならないような証拠の取調をいうのであつて(昭和二三月(れ)第一〇一号同二三年七月一四日大法廷判決)所論の刃渡り六寸の出刃庖丁は右にいわゆる法律により公判において取調ぶべき証拠に該当しないこと明らかである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和25年11月17日 昭和25(れ)744
登載
集刑 第36号143頁
参照法条
旧刑訴法342条,旧刑訴法410条13号
論点291第342条刑事訴訟法

検事が起訴前にした強制処分の請求に基き作成された「検証並押収調書」が被告人の控訴申立後第一審裁判所に提出された場合控訴審は右調書及び押收物につき証拠調をすることを要するか

裁判要旨検事が起訴前にした強制処分の請求に基き作成された「検証並押収調書」が、第一審判決の言渡及び被告人の控訴申立後、第一審裁判所に提出され記録とともに控訴審に送付された場合、控訴審は、旧刑訴法第三四二条によつて、右調書及び検証の現場で押收された物件を公判廷において取り調べなければならぬものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年10月5日 昭和25(れ)988
登載
刑集 第4巻10号1898頁
参照法条
旧刑訴法342条
論点292第342条刑事訴訟法

1 検察官の出席がないまま判決を宣告した後退廷した被告人を呼び戻して検察官出席の上再度行った判決の宣告が法的な効果を有しないとされた事例
2 検察官の出席がないまま行われた第1審の判決宣告手続の違法と判決に対する影響の有無

裁判要旨1 第1審の裁判官が,判決宣告期日として指定告知した日時に,検察官の出席がない法廷で,判決を宣告した上,被告人の退廷を許し,被告人が法廷外に出た後,勾留場所に戻った被告人を呼び戻して検察官出席の上再度行った判決の宣告は,法的な効果を有しない。
2 検察官の出席がないまま行われた第1審の判決宣告手続には,判決に影響を及ぼすことが明らかな違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成19年6月19日 平成19(あ)88
登載
刑集 第61巻4号369頁
参照法条
(1,2につき)刑訴法282条2項,刑訴法342条,刑訴規則35条 (2につき)刑訴法379条
原

条文原文

原文ママ

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刑事訴訟法 第329条 詳細ページ
第三百二十九条被告事件が裁判所の管轄に属しないときは、判決で管轄違の言渡をしなければならない。但し、第二百六十六条第二号の規定により地方裁判所の審判に付された事件については、管轄違の言渡をすることはできない。
刑事訴訟法 第330条 詳細ページ
第三百三十条高等裁判所は、その特別権限に属する事件として公訴の提起があつた場合において、その事件が下級の裁判所の管轄に属するものと認めるときは、前条の規定にかかわらず、決定で管轄裁判所にこれを移送しなければならない。
刑事訴訟法 第331条 詳細ページ
第三百三十一条裁判所は、被告人の申立がなければ、土地管轄について、管轄違の言渡をすることができない。
2管轄違の申立は、被告事件につき証拠調を開始した後は、これをすることができない。
刑事訴訟法 第332条 詳細ページ
第三百三十二条簡易裁判所は、地方裁判所において審判するのを相当と認めるときは、決定で管轄地方裁判所にこれを移送しなければならない。
刑事訴訟法 第333条 詳細ページ
第三百三十三条被告事件について犯罪の証明があつたときは、第三百三十四条の場合を除いては、判決で刑の言渡をしなければならない。
2刑の執行猶予は、刑の言渡しと同時に、判決でその言渡しをしなければならない。猶予の期間中保護観察に付する場合も、同様とする。
刑事訴訟法 第334条 詳細ページ
第三百三十四条被告事件について刑を免除するときは、判決でその旨の言渡をしなければならない。
刑事訴訟法 第335条 詳細ページ
第三百三十五条有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。
2法律上犯罪の成立を妨げる理由又は刑の加重減免の理由となる事実が主張されたときは、これに対する判断を示さなければならない。
刑事訴訟法 第336条 詳細ページ
第三百三十六条被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。
刑事訴訟法 第337条 詳細ページ
第三百三十七条左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。
一確定判決を経たとき。
二犯罪後の法令により刑が廃止されたとき。
三大赦があつたとき。
四時効が完成したとき。
刑事訴訟法 第338条 詳細ページ
第三百三十八条左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。
一被告人に対して裁判権を有しないとき。
二第三百四十条の規定に違反して公訴が提起されたとき。
三公訴の提起があつた事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたとき。
四公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき。
刑事訴訟法 第339条 詳細ページ
第三百三十九条左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。
一第二百七十一条第二項の規定により公訴の提起がその効力を失つたとき。
二起訴状に記載された事実が真実であつても、何らの罪となるべき事実を包含していないとき。
三公訴が取り消されたとき。
四被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。
五第十条又は第十一条の規定により審判してはならないとき。
2前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
刑事訴訟法 第340条 詳細ページ
第三百四十条公訴の取消による公訴棄却の決定が確定したときは、公訴の取消後犯罪事実につきあらたに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事件について更に公訴を提起することができる。
刑事訴訟法 第341条 詳細ページ
第三百四十一条被告人が陳述をせず、許可を受けないで退廷し、又は秩序維持のため裁判長から退廷を命ぜられたときは、その陳述を聴かないで判決をすることができる。
刑事訴訟法 第342条 詳細ページ
第三百四十二条判決は、公判廷において、宣告によりこれを告知する。
刑事訴訟法 第342_2条 詳細ページ
第三百四十二条の二拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告を受けた者は、裁判所の許可を受けなければ本邦から出国してはならない。
刑事訴訟法 第342_3条 詳細ページ
第三百四十二条の三拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告を受けた者又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、前条の許可の請求をすることができる。
刑事訴訟法 第342_4条 詳細ページ
第三百四十二条の四裁判所は、前条の請求があつた場合において、本邦から出国することを許すべき特別の事情があると認めるときは、決定で、国外にいることができる期間を指定して、第三百四十二条の二の許可をすることができる。ただし、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第四十条(入管法第四十四条の四第四項において準用する場合を含む。)に規定する収容令書若しくは入管法第五十一条に規定する退去強制令書の発付を受けている者又は入管法第四十四条の二第七項に規定する被監理者については、この限りでない。
2裁判所は、前項本文に規定する特別の事情の有無を判断するに当たつては、第三百四十二条の二の許可がされた場合に拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告を受けた者が同項の規定により指定する期間内に本邦に帰国せず又は上陸しないこととなるおそれの程度のほか、本邦から出国することができないことによりその者が受ける不利益の程度その他の事情を考慮するものとする。
3裁判所は、前条の請求について決定をするときは、検察官の意見を聴かなければならない。
4裁判所は、必要と認めるときは、第一項本文の期間を延長することができる。
5裁判所は、第三百四十二条の二の許可を受けた者について、国外にいることができる期間として指定された期間(以下「指定期間」という。)の終期まで国外にいる必要がなくなつたと認めるときは、当該指定期間を短縮することができる。
刑事訴訟法 第342_5条 詳細ページ
第三百四十二条の五裁判所は、第三百四十二条の二の許可をする場合には、帰国等保証金額を定めなければならない。ただし、保釈を許す決定を受けた被告人について、同条の許可をするときは、この限りでない。
2帰国等保証金額は、宣告された判決に係る刑名及び刑期、当該判決の宣告を受けた者の性格、生活の本拠及び資産、その者が外国人である場合にあつてはその在留資格(入管法第二条の二第一項に規定する在留資格をいう。)の内容その他の事情を考慮して、その者が前条第一項の規定により指定される期間内に本邦に帰国し又は上陸することを保証するに足りる相当な金額でなければならない。
3裁判所は、第三百四十二条の二の許可をする場合には、その許可を受ける者の渡航先を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。
刑事訴訟法 第342_6条 詳細ページ
第三百四十二条の六第三百四十二条の二の許可は、帰国等保証金額が定められたときは、帰国等保証金の納付があつた時にその効力を生ずる。
2第九十四条第二項及び第三項の規定は、帰国等保証金の納付について準用する。この場合において、同条第二項中「保釈請求者」とあるのは「第三百四十二条の三の請求をした者」と、同条第三項中「被告人」とあるのは「拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告を受けた者」と読み替えるものとする。
刑事訴訟法 第342_7条 詳細ページ
第三百四十二条の七裁判所は、第三百四十二条の二の許可を受けた者が、入管法第四十条に規定する収容令書若しくは入管法第五十一条に規定する退去強制令書の発付又は入管法第四十四条の二第七項に規定する監理措置決定を受けたときは、決定で、当該許可を取り消さなければならない。
2裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、決定で、第三百四十二条の二の許可を取り消すことができる。
一第三百四十二条の二の許可を受けた者が、正当な理由がなく、指定期間内に本邦に帰国せず又は上陸しないと疑うに足りる相当な理由があるとき。
二第三百四十二条の二の許可を受けた者が渡航先の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
3前項の規定により第三百四十二条の二の許可を取り消す場合には、裁判所は、決定で、帰国等保証金(第九十四条第一項の保証金が納付されている場合にあつては、当該保証金。次項において同じ。)の全部又は一部を没取することができる。
4第三百四十二条の二の許可を受けた者が、正当な理由がなく、指定期間内に本邦に帰国せず又は上陸しなかつたときは、裁判所は、検察官の請求により、又は職権で、決定で、帰国等保証金の全部又は一部を没取することができる。
出

一次情報

原文ママ

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