刑事訴訟法 / テーマ別まとめ

総則/弁護及び補佐

弁護及び補佐の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

刑事訴訟法第30条から第39条までの規定に基づき、被告人・被疑者が弁護人を選任する仕組みと、裁判所・裁判官が国選弁護人を付す場合の要件・手続を整理しています。私選弁護人の選任方法や資格に加え、貧困等を理由とする国選弁護人の請求、資力申告書の提出、弁護人の解任、身柄拘束中の接見交通権についても扱います。

弁護及び補佐
区分対象者選任のきっかけ資力要件
私選弁護人被告人・被疑者いつでも自由に選任不要
被告人国選弁護人被告人貧困等で私選不能資力申告書が必要
被疑者国選弁護人勾留された被疑者貧困等で私選不能資力申告書が必要
職権による付与(被告人)未成年・高齢等弁護人不在時に裁判所が付す不要
職権による付与(被疑者)精神障害の疑い等弁護人不在時に裁判官が付す不要
  • 36条の国選弁護は、被告人以外が選任した弁護人がある場合は対象外
  • 37条の2の国選弁護は、被疑者以外が選任した弁護人がある場合・釈放された場合は対象外
  • 資力が基準額以上のときは請求前に弁護士会へ選任申出をしていることが必要(36条の3・37条の3)
  • 裁判官が付した弁護人の選任は被疑者の釈放で失効するが、勾留の執行停止による釈放は除く
  • 死刑または無期拘禁刑にあたる事件では、特に必要なら弁護人をもう1人付せる
  • 虚偽記載の資力申告書を提出すると10万円以下の過料の対象になる
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弁護及び補佐

弁護及び補佐について、条文は何を定めているか。

第30条本人と一定の親族が弁護人を選任できる2項判例 17件
  • 被告人・被疑者は何時でも弁護人を選任できる
  • 法定代理人・保佐人・配偶者・直系親族・兄弟姉妹は本人から独立して選任できる
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第31条弁護人は原則弁護士から選ぶ2項判例 3件
  • 弁護人は弁護士の中から選任するのが原則
  • 簡易裁判所・地方裁判所では裁判所の許可があれば非弁護士も選任できる
  • 地方裁判所では他に弁護士の弁護人がいる場合に限り非弁護士を選任できる
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第31_2条弁護士会に弁護人選任を申し出られる3項判例 83件
  • 被告人・被疑者は弁護士会に弁護人選任の申出ができる
  • 弁護士会は申出を受けたら速やかに弁護人候補を紹介する
  • 候補がいない・紹介先に断られた場合は速やかにその旨を通知する
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第32条選任の効力は審級ごとに区切られる2項判例 4件
  • 起訴前の選任は第一審まで効力が続く
  • 起訴後の選任は審級ごとに改めて必要
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第33条弁護人が複数なら主任弁護人を定める1項判例なし
  • 被告人に弁護人が数人いるときは規則により主任弁護人を定める
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第34条主任弁護人の権限は規則で定まる1項判例なし
  • 主任弁護人の権限は裁判所の規則で定められる
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第35条裁判所は弁護人の人数を制限できる1項判例 4件
  • 裁判所は規則により被告人・被疑者の弁護人の数を制限できる
  • 被告人側の弁護人の制限は特別の事情がある場合に限る
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第36条貧困等なら被告人に国選弁護人を付す1項判例 18件
  • 貧困その他の事由で私選できないとき請求により国選弁護人を付す
  • 被告人以外が選任した弁護人がいる場合は対象外
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第36_2条国選請求には資力申告書が必要1項判例 22件
  • 法律上弁護人が必要な場合を除き資力申告書の提出が必要
  • 資力申告書は現金・預金等の資力と内訳を申告する書面
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第36_3条資力が基準額以上なら事前に弁護士会へ申出2項判例 21件
  • 資力が基準額以上の被告人は請求前に弁護士会へ選任申出が必要
  • 弁護士会が紹介不能を通知したら管轄地裁等にもその旨を通知する
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第37条一定の事情があれば裁判所が職権で付す1項・5号判例 1件
  • 未成年・70歳以上・聴覚言語障害・心神喪失等の疑いがあるとき等
  • 弁護人がいない場合に裁判所が職権で弁護人を付せる
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第37_2条勾留中の被疑者にも国選弁護人を付す2項判例 4件
  • 勾留状が出た被疑者が貧困等で私選できないとき請求により付す
  • 被疑者以外が選任した弁護人がいる・釈放された場合は対象外
  • 勾留を請求された段階の被疑者も請求できる
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第37_3条被疑者の国選請求にも資力申告書が必要3項判例 7件
  • 請求には資力申告書の提出が必要
  • 資力が基準額以上なら事前に管轄地裁の弁護士会へ申出が必要
  • 弁護士会は紹介不能の通知をしたら地裁にもその旨を通知する
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第37_4条判断困難な被疑者に裁判官が職権で付す1項判例 11件
  • 精神上の障害等で弁護人の要否を判断しづらい被疑者に職権で付せる
  • 被疑者が釈放された場合は対象外
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第37_5条死刑・無期拘禁刑事件では弁護人を追加できる1項判例 8件
  • 死刑または無期拘禁刑にあたる事件で特に必要なら更に1人付せる
  • 被疑者が釈放された場合は対象外
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第38条付された弁護人は弁護士から選び費用も請求できる2項判例 5件
  • 裁判所・裁判長・裁判官が付す弁護人は弁護士の中から選任する
  • 旅費・日当・宿泊料・報酬を請求できる
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第38_2条被疑者が釈放されると裁判官選任は失効1項判例 22件
  • 釈放されると裁判官による弁護人選任は効力を失う
  • ただし勾留の執行停止による釈放の場合は失効しない
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第38_3条一定の事由があれば付した弁護人を解任できる4項・5号判例 4件
  • 必要消滅・利益相反・職務困難・任務違反・被告人の責による支障等で解任できる
  • 解任前にあらかじめ弁護人の意見を聴く必要がある
  • 起訴前は裁判官が同様の手続で解任する
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第38_4条資力を偽った申告書提出は過料の対象1項判例 1件
  • 判断を誤らせる目的で虚偽記載の資力申告書を出すと10万円以下の過料
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第39条身柄拘束中でも弁護人と立会人なしに会える3項判例 23件
  • 拘束中の被告人・被疑者は弁護人等と立会人なく接見・書類等の授受ができる
  • 弁護士でない選任予定者は31条2項〈弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。〉の許可後に限り対象になる
  • 捜査上必要なら起訴前に限り接見等の日時・場所・時間を指定できる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第30条刑事訴訟法

原判決後上訴権のない選任権者により選任された弁護人のした上訴申立の適否

裁判要旨原判決後選任された弁護人は、その選任者が上訴権を有しない場合であつても、被告人を代理して上訴申立をすることができる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和63年2月17日 昭和62(し)107
登載
刑集 第42巻2号299頁
参照法条
刑訴法30条2項,刑訴法32条2項,刑訴法41条,刑訴法351条1項,刑訴法353条,刑訴法355条,刑訴法433条
論点2第30条刑事訴訟法

弁護人であつた者からなされた訴訟費用執行免除の申立が、右申立をするについて被告人の委任を欠いたため不適法とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年6月26日 昭和54(せ)65
登載
集刑 第214号749頁
参照法条
刑訴法30条,刑訴法41条,刑訴法500条
論点3第30条刑事訴訟法

第一審判決後被告人の妻によつて選任された弁護人と控訴申立権

裁判要旨第一審判決後被告人の妻によつて選任された弁護人は、被告人のために控訴申立をする権限がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年10月19日 昭和54(し)71
登載
刑集 第33巻6号651頁
参照法条
刑訴法30条2項,刑訴法351条1項,刑訴法355条
論点4第30条刑事訴訟法

第二審判決後被告人の父によつて選任された弁護人と上告申立権

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和51年1月27日 昭和51(あ)36
登載
集刑 第199号27頁
参照法条
刑訴法30条2項,刑訴法351条1項,刑訴法353条,刑訴法355条
論点5第30条刑事訴訟法

一審判決後被告人の妻によつて選任された弁護人の控訴申立権限(消極)

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年10月31日 昭和47(し)80
登載
集刑 第185号461頁
参照法条
刑訴法30条2項,刑訴法351条1項,刑訴法353条,刑訴法355条
論点6第30条刑事訴訟法

第一審判決後被告人の妻によつて選任された弁護人と控訴申立権

裁判要旨第一審判決後被告人の妻によつて選任された弁護人には、被告人のため控訴申立をする権限がない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年9月4日 昭和43(あ)2531
登載
刑集 第23巻9号1085頁
参照法条
刑訴法30条2項,刑訴法351条1項,刑訴法353条,刑訴法355条
論点7第30条刑事訴訟法

被告人の署名のない弁護人選任届によつてした弁護人選任の効力と憲法三七条三項

裁判要旨氏名を記載することができない合理的な理由がないのに、被告人の署名のない弁護人選任届によつてした弁護人選任を無効と解釈しても、憲法三七条三項に違反しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年6月11日 昭和44(し)25
登載
刑集 第23巻7号941頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法30条1項,刑訴規則1条2項,刑訴規則18条,刑訴規則60条
論点8第30条刑事訴訟法

一 署名のない申立書によつてした被告人の上告申立の効力。
二 署名のない弁護人選任届によつてした被告人の弁護人選任の効力。

裁判要旨一 氏名を記載することができない合理的な理由がないのに、署名のない申立書によつてした被告人の上告申立は、無効である。
二 氏名を記載することができない合理的な理由がないのに、署名のない弁護人選任届によつてした被告人の弁護人選任は、無効である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年7月20日 昭和39(あ)2029
登載
刑集 第19巻5号591頁
参照法条
刑訴法30条1項,刑訴法355条,刑訴法374条,刑訴法385条,刑訴法414条,刑訴規則1条2項,刑訴規則18条,刑訴規則60条
論点9第30条刑事訴訟法

弁護人選任届の弁護人の表示が記名である場合の弁護人選任届は違法か。

裁判要旨控訴審における弁護人選任届の弁護人の表示が記名であつても、右弁護人が異議なく公判に立会して弁論し、被告人にも異議なかつたことが記録上明らかな場合は、右弁護人選任届は違法ではない(昭和二六年(あ)第二六八号同二八年二月一九日第一小法廷決定、刑集七巻二号二四二頁参照)。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年6月18日 昭和38(あ)3176
登載
集刑 第151号471頁
参照法条
刑訴規則18条,刑訴法30条
論点10第30条刑事訴訟法

必要的共犯の関係にある贈収賄被告人等に同一弁護人による弁護をさせることと利害対立の有無

裁判要旨原判決の判示は「被告人A、同Bと被告人Cとは、形式的に相対立的立場にあり、一見利害相反する如くであるが原審において右三名とも、各金二万円授受の事実を認めてその趣旨を否認し、被告人Cはたんにお歳暮として渡し、被告人A等もお歳暮に貰つたと全く同じ弁解をなし、主任弁護人も亦被告人Cは被告人A等のいずれからも、その職務に関して便宜の取扱を受けた事実なく被告人A等も被告人Cに対して職務上便宜の取扱をしてやつた事実は毛頭なく右金員は年末の儀礼的な土産物代にすぎないと主張し、各弁護人も各被告人に共通の弁論をなし同一結果を期待し、その弁護を相互に牴触することなく完全に遂行しており、一方に有利なことは必ず他方に不利となるものとは毫も認められないので原審における被告人A同Bと被告人Cとはその利害相反しないものといわねばならぬ……」というのである。ゆえに右被告人三名はその利害対立せず、各弁護人も私選弁護人としてそれぞれ有利の弁護をなし得るものと認められるから右原審の判断は正当であり違法とはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年6月7日 昭和28(あ)3276
登載
集刑 第106号43頁
参照法条
刑訴法30条,刑訴法31条,刑訴規則29条2項
論点11第30条刑事訴訟法

一 被告人甲の私選弁護人を相被告人乙の国選弁護人に選任することと公正な弁護権の行使 ―被告人間の利害相反しない事例―
二 裁判所が被告人の私選弁護人を共犯関係に立つ相被告人の国選弁護人に選任する措置の適否
三 被告人と相被告人が利害相反するに至つたが被告人において弁護人の弁護権の行使につき特別の措置をとらなかつた場合とこの点に関する上告理由の適否

裁判要旨一 本件起訴状に記載するような共犯関係においては、これをもつて直ちに当然両被告人は利害相反するということはできないから、第一審裁判書が公判進行の必要上当面の急に応じ同一弁護人を選任したこと自体をもつて、直ちに公正な弁護権の行使を妨げる違法な処置ということはできない。
二 被告人は第一審相被告人と共謀の上詐欺を行つたという被告事件につき、被告人が弁護士Aを私選弁護人に選任した場合、第一審裁判所が第一回公判期日に、右Aを相被告人の国選弁護人に選任したからといつて、直ちに右裁判所の措置を以て、利外相反する被告人に同一弁護人を選任し、公正な弁護権の行使を妨げた違法な措置であるということはできない。
三 被告人は第一審被告人と共謀の上詐欺を行つたという事件において、被告人は共謀の事実を否認し、相被告人の単独犯行であると主張し、相被告人は、被告人の依頼されるままに機械的に行動したに過ぎないと主張したからといつて、弁護人Aの相被告人のための弁護権の行使につき被告人において、異議を述べる等特段の措置を取らなかつた以上、被告人が上告理由においてはじめてその主張をなして争うことは許されないものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年12月20日 昭和29(あ)121
登載
集刑 第111号555頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法30条,刑訴法289条,刑訴法405条,刑訴法38条,刑訴規則29条2項,弁護士法25条
論点12第30条刑事訴訟法

甲の私選弁護人が共同被告人乙の国選弁護人を兼ねることと弁護権不当制限の有無

裁判要旨−被告人間の利害が相反しない事例− 記録によれば、第一審において被告人Aの私選弁護人大曲実形は、同時に共同被告人Bの国選弁護人に選任されたけれども、Bに対する公訴事実は密出国の事実であり被告人Aに対する公訴事実は密出国にあたり登録証明書を返還しなかつた事実及び密輸出を幇助した事実であつて両名間に共犯関係のないことはもちろん、その公訴事実もそれぞれ別個独立して相互に直接のかかわりなく、たゞBは朝鮮に行く意図を認めたが被告人Aはその意図を否認したに過ぎず、一方に利益な事実は当然他方の不利益な事実に帰するという利害相反する場合とは認められない。これらの事実から見れば、被告人Aの私選弁護人がBの国選弁護人を兼ねたことのために、被告人Aの弁護権が不当に制限されたものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年3月16日 昭和27(あ)5346
登載
集刑 第93号451頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法30条,刑訴法289条,刑訴規則29条2項
論点13第30条刑事訴訟法

弁護人が被告人の氏名を代書してした弁護人選任届の効力

裁判要旨かりに所論弁護人選任届に所論のような瑕疵(註、被告人氏名の弁護人による代書)がありとしても、右弁護人は何らの異議なく原審公判に立ち会い弁論をしており、また、その際被告人も、これに関し何ら異議を述べなかつたことは、記録上明らかであるから、右の瑕疵はこれによつて治癒せられたと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年10月6日 昭和27(あ)5417
登載
集刑 第99号9頁
参照法条
刑訴法30条,刑訴規則18条,刑訴規則61条
論点14第30条刑事訴訟法

一 警察に身柄拘束中の被疑者と弁護人との面接時間が短時間であつたこと等と右被疑者が検事に対してなした自白の任意性の有無との関係
二 被告人の検察官に対する供述の任意性の有無についての判断基準の一事例
三 刑訴第三二一条第一項第二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉但書の規定の趣旨

裁判要旨一 被疑者として警察に身柄を拘束されていた間に弁護人との面接時間が二分ないし三分と指定され、しかも右面接の際警察官が立ち会つていた事実があつたとしても、右被疑者が検事に対してなした自白に任意性があるか否かは、それらの事由とは関係なくその自白をした当時の情況に照らして判断すべきである。
二 被告人Aの検事に対する供述調書を検討すると同被告人は検事から黙祕権を告げられた後任意に供述し且つ供述を録取した後これを読聞けられその誤のないことを認めた上で署名押印しており、しかもその供述内容は自然であつて首肯せしめるものがありその間に何者矛盾のないことが認められ同被告人の供述が直接その取調に当つた検事の不当な影響の下になされたことを疑わしめるに足る形跡は少しも認められない。
三 刑訴三二一条一項二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉但書により検察官の面前における供述を録取した書面を証拠とするに当り該書面の供迷が公判準備又は公判期日における供述より信用すべき特別の情況が存するか否かは結局事実審裁判所の裁量に委されているものと解するのが相当である(昭和二六年(あ)第一一一一号同年一一月一五日第一小法廷判決参照)。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年7月10日 昭和25(あ)1657
登載
刑集 第7巻7号1474頁
参照法条
刑訴法30条,刑訴法39条,刑訴法319条,刑訴法430条,刑訴法431条,刑訴法322条,刑訴法321条1項2号
論点15第30条刑事訴訟法

被告人の弁護人選任権を妨げたものといゝ得ない例−被告人の意思を確かめず国選した場合

裁判要旨第一審裁判所が被告人の私選弁護人選任の意思を確かめずして、被告人のため国選弁護人を選任したものであるとしても、必ずしもこれによつて被告人が自らその弁護人を選任することを妨げたものといい得ないこと勿論である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年8月21日 昭和27(あ)1250
登載
集刑 第67号145頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法30条,刑訴法289条
論点16第30条刑事訴訟法

控訴審における公判期日に、私選弁護人が出頭しない場合、国選弁護人を選任して弁論させることと訴訟手続に関する法令違反の有無。

裁判要旨原審が弁護人古明池為重の第一回公判期日の変更申請はこれを許容したが、第二回公判期日の変更申請はこれを許容しなかつたこと及び同弁護人が右公判期日に立ち会わなかつたとしても、右期日に新たに選任された国選弁護人によつて被告人自身が選任した古明池弁護人提出の控訴趣意書に基ずく弁論がなされたこと、その控訴趣意書の内容も特に新たな事実証拠の取調を要する趣旨でもないときは訴訟手続に法令違反があるといえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年7月8日 昭和25(あ)3117
登載
集刑 第66号81頁
参照法条
刑訴法30条,刑訴法289条,刑訴法379条,刑訴法388条,刑訴法391条
論点17第30条刑事訴訟法

殺人,死体遺棄の公訴事実について被告人が第1審公判の終盤において従前の供述を翻し全面的に否認する供述をするようになったが弁護人が被告人の従前の供述を前提にした有罪を基調とする最終弁論をして裁判所がそのまま審理を終結した第1審の訴訟手続に法令違反は存しないとされた事例

裁判要旨殺人,死体遺棄の公訴事実について,被告人が第1審公判の終盤において従前の供述を翻し全面的に否認する供述をするようになったが,弁護人が被告人の従前の供述を前提にした有罪を基調とする最終弁論をして,裁判所がそのまま審理を終結した第1審の訴訟手続には,上記弁論において弁護人が,証拠関係,審理経過を踏まえた上で被告人に最大限有利な認定がなされることを企図した主張をしたとみることができるなど判示の事情の下では,法令違反は存しない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成17年11月29日 平成16(あ)2172
登載
刑集 第59巻9号1847頁
参照法条
刑訴法30条,刑訴法293条2項,刑訴法379条,刑訴規則211条,憲法37条3項
論点18第31条刑事訴訟法

特別弁護人の選任を許可しない旨の決定が刑訴法420条1項にいう「訴訟手続に関し判決前にした決定」に当たるとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成5年7月20日 平成5(し)71
登載
集刑 第262号339頁
参照法条
刑訴法31条2項,刑訴法420条1項
論点19第31条刑事訴訟法

被疑事件につき刑訴法三一条二項によりいわゆる特別弁護人を選任することの可否

裁判要旨刑訴法三一条二項〈弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。〉によりいわゆる特別弁護人を選任することができるのは公訴が提起された後に限られる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成5年10月19日 平成5(し)79
登載
刑集 第47巻8号67頁
参照法条
刑訴法31条
論点20第31_2条刑事訴訟法

覚せい剤使用罪につき使用時間、場所、方法に差異のある訴因間において公訴事実の同一性が認められた事例

裁判要旨覚せい剤使用罪の当初の訴因と変更後の訴因との間において、使用時間、場所、方法に多少の差異があるとしても、いずれも被告人の提出した尿中から検出された覚せい剤の使用行為に関するものであつて、事実上の共通性があり、両立しない関係にあると認められる場合には、右両訴因は、公訴事実の同一性を失わない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和63年10月25日 昭和61(あ)916
登載
刑集 第42巻8号1100頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,覚せい剤取締法19条
論点21第31_2条刑事訴訟法

自動車運転者に注意義務を課す根拠となる具体的事実が訴因変更手続を経て撤回された場合につき右事実を認定することに違法はないとされた事例

裁判要旨自動車運転者に速度調節義務を課す根拠となる路面の滑りやすい原因と程度に関する具体的事実として、石灰の粉塵の路面への堆積凝固という事実が、公訴事実中に記載され、その後訴因変更手続を経て撤回されたとしても、被告人の防禦権が侵害されたとは認められない本件においては、右事実を認定することに違法はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和63年10月24日 昭和62(あ)1051
登載
刑集 第42巻8号1079頁
参照法条
刑法211条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点22第31_2条刑事訴訟法

誤つて公訴事実の同一性のない訴因の追加及び立証がされた場合の事後措置

裁判要旨誤つて公訴事実の同一性のない訴因の追加を許可し、その訴因についての証拠を取り調べた第一審裁判所は、右誤りを是正するために訴因追加の許可及び証拠の採用を各取消決定をすることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和62年12月3日 昭和62(あ)114
登載
刑集 第41巻8号323頁
参照法条
刑訴法294条,刑訴法298条,刑訴法312条
論点23第31_2条刑事訴訟法

一 交付された金銭等が交付者との共謀の趣旨に従い受交付者から第三者に供与された疑いがある場合と交付罪による起訴の可否
二 交付された金銭等が交付者との共謀の趣旨に従い受交付者から第三者に供与された疑いがある場合において交付罪で起訴された者に対する審理方法

裁判要旨一 甲が、選挙運動者たる乙に対し、公職選挙法二二一条一項一号所定の目的をもつて金銭等を交付したと認められるときは、たとえ、甲乙間で右金銭等を第三者に供与することの共謀があり乙が右共謀の趣旨に従いこれを第三者に供与した疑いがあつたとしても、検察官は、立証の難易等諸般の事情を考慮して、甲を交付罪のみで起訴することが許される。
二 甲が乙に対する金銭等の交付罪で起訴されたときは、たとえ、甲乙間で金銭等を第三者に供与することの共謀があり乙が右共謀の趣旨に従いこれを第三者に供与した疑いがあつたとしても、裁判所は、訴因の制約のもとにおいて、甲についての交付罪の成否を判断すれば足り、訴因として掲げられていない乙との共謀による供与罪の成否につき審理したり、検察官に対し右供与罪の訴因の追加・変更を促したりする義務を負うものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年1月27日 昭和58(あ)909
登載
刑集 第38巻1号136頁
参照法条
公職選挙法221条1項1号,公職選挙法221条1項5号,刑訴法247条,刑訴法248条,刑訴法312条,刑訴法378条3号
論点24第31_2条刑事訴訟法

訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務がないとされた事例

裁判要旨第一審において被告人らが無罪とされた公訴事実が警察官一名に対する傷害致死を含む重大な罪にかかるものであり、また、同事実に関する現場共謀の訴因を事前共謀の訴因に変更することにより同事実につき被告人らに対し共謀共同正犯としての罪責を問いうる余地がある場合であつても、検察官が、約八年半に及ぶ第一審の審理の全課程を通じ一貫して右公訴事実はいわゆる現場共謀に基づく犯行であつて右現場共謀に先立つ事前共謀に基づく犯行とは別個のものであるとの主張をしていたのみならず、審理の最終段階における裁判長の求釈明に対しても従前の主張を変更する意思はない旨明確かつ断定的な釈明をしていたこと、第一審における被告人らの防禦活動は検察官の右主張を前提としてなされたことなど判示の事情があるときは、第一審裁判所としては、検察官に対し右のような求釈明によつて事実上訴因変更を促したことによりその訴訟法上の義務を尽くしたものというべきであり、さらに進んで、検察官に対し、訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務を有するものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年9月6日 昭和55(あ)629
登載
刑集 第37巻7号930頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴規則208条,刑法60条,刑法205条1項
論点25第31_2条刑事訴訟法

一 賍物寄蔵の公訴事実につき賍物性の未必的認識を認めた原判断に事実誤認があるとして破棄自判(無罪)された事例
二 控訴審における予備的訴因追加の適否につき意見が付された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年2月24日 昭和56(あ)1354
登載
集刑 第230号161頁
参照法条
刑法256条,刑訴法411条3号,刑訴法413条但,刑訴法312条,刑訴法400条,刑訴法404条
論点26第31_2条刑事訴訟法

事案を異にする判例違反の主張とされた事例(控訴審における訴因変更の限界に関するもの)

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年5月30日 昭和55(あ)303
登載
集刑 第217号889頁
参照法条
刑訴法405条2号,刑訴法404条,刑訴法312条1項
論点27第31_2条刑事訴訟法

道路交通法一一七条の二第一号の酒酔い運転の訴因に対し訴因変更手続を経ずに同法一一九条一項七号の二の酒気帯び運転を認定することが許される場合

裁判要旨道路交通法一一七条の二第一号の酒酔い運転の訴因に対し訴因変更手続を経ずに同法一一九条一項七号の二の酒気帯び運転を認定しても、運転当時の身体内のアルコール保有量につき被告人の防禦が尽されている場合には、違法ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和55年3月4日 昭和54(あ)159
登載
刑集 第34巻3号89頁
参照法条
刑訴法312条,道路交通法117条の2第1号,道路交通法119条1項7号の2
論点28第31_2条刑事訴訟法

枉法収賄と贈賄の各訴因の間に公訴事実の同一性が認められる事例

裁判要旨「被告人甲は、公務員乙と共謀のうえ、乙の職務上の不正行為に対する謝礼の趣旨で、丙から賄賂を収受した」という枉法収賄の訴因と、「被告人甲は、丙と共謀のうえ、右と同じ趣旨で、公務員乙に対して賄賂を供与した」という贈賄の訴因とは、収受したとされる賄賂と供与したとされる賄賂との間に事実上の共通性がある場合には、公訴事実の同一性を失わない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年3月6日 昭和52(あ)1115
登載
刑集 第32巻2号218頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑法197条ノ3,刑法198条
論点29第31_2条刑事訴訟法

一 数人共同して二人以上に対しそれぞれ暴行を加え一部の者に傷害を負わせた場合の罪数
二 起訴状に記載されていない罰条の適用
三 起訴状に記載されていない罰条の適用が許されるとされた事例

裁判要旨一 数人共同して二人以上に対しそれぞれ暴行を加え、一部の者に傷害を負わせた場合には、傷害を受けた者の数だけの傷害罪と暴行を受けるにとどまつた者の数だけの暴力行為等処罰に関する法律一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉の罪が成立し、以上は併合罪として処断すべきである。
二 裁判所は、訴因により公訴事実が十分に明確にされていて被告人の防禦に実質的な不利益が生じない限りは、罰条変更の手続を経ないで、起訴状に記載されていない罰条を適用することができる。
三 暴力行為等処罰に関する法律一条の罪にあたる事実が訴因によつて十分に明示されている場合には、裁判所は、起訴状に記載された刑法二〇八条の罰条を変更させる手続を経ないで、右法律一条を適用することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和53年2月16日 昭和52(あ)1431
登載
刑集 第32巻1号47頁
参照法条
暴力行為等処罰に関する法律1条,刑法45条,刑法204条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点30第31_2条刑事訴訟法

監禁の訴因に対し暴力行為等処罰に関する法律一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉の共同暴行罪を認定することは違法であるとの主張が排斥された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和52年12月6日 昭和51(あ)1696
登載
集刑 第208号15頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法378条3号後段
論点31第31_2条刑事訴訟法

一 公訴事実の同一性があるとされた事例
二 金沢市金銭物品等の寄附募集に関する条例または小松市寄附金品取締条例にいう寄附募集にあたるとされた事例

裁判要旨一 「今度のお盆に戦没者の法要をするので、おろうそく代を上げて欲しい」等虚構の事実を申し向けて合計六〇〇円と合計七七〇円の各金銭を詐取したとの各事実と、金沢市金銭物品等の寄附募集に関する条例に基づく金沢市長の許可を受けず、または、小松市寄附金品取締条例に基づく小松市長に対する届出をしないで、それぞれ右各同額の寄附募集をしたとの右各条例違反の事実との間には、公訴事実の同一性がある。
二 「盆の法要を営むので、御志をいただきたい」旨述べて前後五回にわたり合計六〇〇円と前後一七回にわたり合計七七〇円の各金銭の交付を受けた場合における被告人の各行為(原判文参照)は、金沢市金銭物品等の寄附募集に関する条例または小松市寄附金品取締条例にいわゆる寄附募集にあたる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年7月25日 昭和40(あ)2483
登載
刑集 第26巻6号366頁
参照法条
刑訴法256条3項,刑訴法256条5項,刑訴法312条,刑法246条1項,金沢市金銭物品等の寄附募集に関する条例3条,金沢市金銭物品等の寄附募集に関する条例11条1号,小松市寄附金品取締条例2条2項,小松市寄附金品取締条例11条
論点32第31_2条刑事訴訟法

訴因変更許可決定に対する特別抗告の適否

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和47年11月17日 昭和47(し)86
登載
集刑 第185号517頁
参照法条
刑訴法312条1項,刑訴法420条1項,刑訴法433条1項
論点33第31_2条刑事訴訟法

事件の同一性を欠くとされた事例

裁判要旨被告人が、昭和四三年三月二八日にaにおいて賭博をしたとの勾留状記載の事実と、同日同所においてAらがした賭博開張図利を、賭具を貸与して幇助したとの起訴状記載の事実とは、併合罪の関係にあるものであるから、事件の同一性を欠くものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年7月10日 昭和45(あ)576
登載
集刑 第177号171頁
参照法条
刑法45条,刑法185条,刑法186条2項,刑訴法60条,刑訴法256条,刑訴法280条,刑訴法312条
論点34第31_2条刑事訴訟法

公訴事実の同一性があるとされた事例

裁判要旨被告人が、甲から、八〇〇円の供与および二四〇〇円の交付を受けたとする本位的訴因と、被告人が、甲と共謀のうえ、右三二〇〇円のうちから、乙ら七名に対し、ひとりあたり四〇〇円、合計二八〇〇円相当の饗応接待をしたとする予備的誘因との間には、公訴事実の同一性がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年9月24日 昭和43(あ)1353
登載
集刑 第168号775頁
参照法条
刑訴法256条5項,刑訴法312条1項,公職選挙法221条1項
論点35第31_2条刑事訴訟法

訴因変更の手続を要しないとされた事例

裁判要旨本件起訴状記載の公訴事実を客観的に観察すれば、本件は被告人個人の犯罪行為を起訴した趣旨と解されること所論のとおりであるが、その事実記載の方法および第一審裁判所における審理の経過に徴し、これを被告人が法人の機関としてその業務に関して行なつたものと認定するには、訴因変更の手続を経ることを要しないものと解するのを相当とするから、第一審判決には審判の請求を受けた事件について判決をせず、審判の請求を受けない事件について判決をした違法はないとする原判決の判断は、その結論において正当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年4月16日 昭和42(あ)284
登載
集刑 第166号675頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法378条3号,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律5条1項,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律11条1項2号,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律13条1項
論点36第31_2条刑事訴訟法

訴因の変更を促しまたはこれを命じないことが審理不尽になるとされた事例

裁判要旨裁判所は、原則として、自らすすんで検察官に対し、訴因変更手続を促しまたはこれを命ずる義務はないが、本件のように、証拠上、起訴状に記載された殺人の訴因については無罪とするほかなくても、これを重過失致死という相当重大な罪の訴因に変更すれば有罪であることが明らかな場合には、例外的に、訴因変更を促しまたはこれを命ずる義務があり、これをしないで殺人の訴因につきただちに無罪の判決をするのは、審理不尽の違法があるものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年11月26日 昭和42(あ)1192
登載
刑集 第22巻12号1352頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法397条1項,刑訴法379条,刑法199条,刑法211条
論点37第31_2条刑事訴訟法

控訴審における訴因罰条の追加と第一審判決破棄の適否

裁判要旨第一審当時の訴因罰条からみて、第一審判決になんら誤りが見いだされないのに、控訴審において新たに追加された訴因罰条が認められることを理由として、控訴審裁判所が、第一審判決を破棄することは許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和42年5月25日 昭和41(あ)2022
登載
刑集 第21巻4号705頁
参照法条
刑訴法404条,刑訴法312条1項,刑訴法396条,刑訴法397条,刑訴法380条
論点38第31_2条刑事訴訟法

一 起訴状(略式命令請求書)との間に記載内容上軽微とはいえない差異がある略式命令に対し正式裁判の請求がなされ公判が開始された場合における審理の対象
二 訴因罰条の追加を明確な形でなさしめなかつた訴訟手続上の瑕疵が治癒されたものと認められた事例

裁判要旨一 訴因について起訴状(略式命令請求書)と略式命令との各記載内容に軽微とはいえない差異(判文参照)があり、被告人には略式命令の謄本だけが送達されたまま、右略式命令に対し正式裁判の請求がなされ公判が開始された場合、その公判における審理の対象(訴因)は、起訴状と略式命令との各記載内容が一致した部分にかぎられるものと解すべきである。
二 本件のように実質において訴因、罰条の追加と同視できる手続がなされている場合(判文参照)、その訴因、罰条の追加を明確な形でなさしめなかつたという点において、第一審判決に訴訟手続上の瑕疵があつたとしても、控訴趣意中になんら右瑕疵の指摘がなされていないときには、右瑕疵は既に治癒されたものと認めるのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年11月24日 昭和42(あ)1798
登載
刑集 第21巻9号1258頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法271条,刑訴法461条,刑訴法463条,刑訴法312条
論点39第31_2条刑事訴訟法

一 公職選挙法第二一一条第一項第一号の供与等を共謀した者の間における金銭又は物品の授受と同条項第五号の交付又は受交付の罪の成否
二 右共謀にかかる供与等が行なわれた場合における供与等の罪と交付又は受交付の罪との関係
三 前記共謀にかかる供与等が共謀者間で授受された金銭又は物品の一部について行なわれた場合における供与等の罪と交付又は受交付の罪との関係
四 二審が一審判決を破棄するにさいし二審で追加された予備的訴因に基づいて自判することと審級の利益
五 甲が乙に三万円を交付したとする訴因と甲乙共謀のうえ右三万円中二万七、〇〇〇円について丙らに供与等をしたとする訴因との間の公訴事実の同一性。

裁判要旨一 公職選挙法第二二一条第一項第一号の供与等いわゆる買収を目的とする金銭又は物品を交付し、又はその交付を受ける行為は、右買収を共謀した者相互の間で行なわれた場合でも、同条項第五号の交付又は受交付の罪を構成するのに妨げない
二 前項の場合において、共謀にかかる供与等が行なわれたときは、交付又は受交付の罪は、後の供与等の罪に吸収される
三 前二項の場合において、共謀者間で授受された金銭又は物品の一部について供与等が行なわれ、その残部が受交付者の手裡に保留されたときは、前者についての供与等の罪と後者についての交付又は受交付の罪との併合罪として処断すべきである
四 第一審以来の審理において、金員の授受およびこれに関連する一連の事実関係が十分明らかにされ、被告人の防禦にも支障はなかつたものと認められる本件の場合、原審が、事件を第一審に差し戻すことなく、右予備的訴因に基づいて自ら判決をした措置は、被告人Aに対して審級の利益をはく奪したものとはいえない
五 被告人Aが被告人Bに対して現金三万円を交付したとする本位的訴因と、被告人Aが被告人Bとの共謀のうえ、右現金三万円中合計二万七、〇〇〇円をCらに対してそれぞれ供与もしくはその申込をし、又は交付したとする予備的訴因との間には、公訴事実の同一性が認められるから、右予備的訴因の追加を許可した原審の措置に違法の点はない
裁判
最高裁判所大法廷 昭和41年7月13日 昭和40(あ)1541
登載
刑集 第20巻6号623頁
参照法条
公職選挙法221条1項1号,公職選挙法221条1項5号,刑法60条,刑法45条,刑訴法400条,刑訴法312条
論点40第31_2条刑事訴訟法

公訴事実の同一性がなく訴因の予備的追加の請求が許されないとされた事例

裁判要旨「被告人は喜多方市a町b番地において衣料品商を営んでいた者であるが、昭和二六年度の衣料品の暴落等により業績振るわず経営頗る困難な状態に立至つたところ、予て自己に対し多額の不正融資をしていたA農業協同組合専務理事Bがその回収を急いでいる弱点に乗じ、旧い債務と共に返済するという口実等で同人から金員を騙取せんことを企て昭和二七年九月二四日頃喜多方市字c丁目d番地A農業協同組合事務所において、右Bに対し、仕事も順調だから儲けられる故、手形でもよいから貸してくれと虚構の事実を申し向け、その旨誤信した同人から額面四〇万円の約束手形一通を騙取した」旨の本位的訴因と「被告人は喜多方市字c丁目d番地所在A農業協同組合の専務理事として同農業協同組合の金銭出納保管など一切の業務に従事していたBと共謀のうえ昭和二九年九月頃、前同所においてその業務上保管にかかる現金二〇万円を擅にCに対する借金の返済として同人に交付して横領したものである」旨の予備的に追加された訴因との間には公訴事実の同一性は存しないから第一審裁判所が検察官の右追加請求を許可したことは、刑訴法第三一二条第一項〈裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又…〉に違反するものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年4月12日 昭和39(あ)804
登載
集刑 第159号157頁
参照法条
刑法246条,刑法253条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点41第31_2条刑事訴訟法

第二審における訴因変更手続の要否。

裁判要旨殺人罪として起訴された事案について、第一審判決が殺人予備と重過失致死で処断し、第二審がこれを破棄自判するに当り、訴因変更手続を経ることなく殺人罪として処断したとしても、第一審において訴因変更手続がとられた形跡が存しないときは、第二審は本来の訴因そのものにつき審判をしたに止まり、訴因変更手続要否の問題が生ずる余地は存しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年8月24日 昭和38(あ)386
登載
集刑 第152号545頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法404条,刑訴規則209条,刑法199条,刑法201条,刑法211条後段
論点42第31_2条刑事訴訟法

収賄と詐欺の両訴因につき、事実の同一性が認められた事例。

裁判要旨一 本件収賄と詐欺の両訴因については、事実の同一性を有するものと認められる。
二 (収賄の訴因)被告人は、Aが神戸市土地区画整理事業の対象となつた同市a区bc丁目d番地の八所在同人所有の土地約四十一坪につき、神戸市に対し右所有地を換地用地として買収方を希望しており、同人により右買収価格の査定につき寛大有利な取扱いを受けたい趣旨のもとに供与されることの情を知りながら、昭和三十三年四月十一日頃同市a区ec丁目f番地喫茶店「B」において、現金五万円の供与を受け、自己の職務に関し収賄したものである。

三 (詐欺の訴因)被告人は、神戸市a区bc丁目に宅地四十坪余を所有しているAが同宅地を神戸市より高価に買収されることを希望しているのを奇貨として、その運動資金名義のもとに金員を騙取しようと企て、昭和三十三年四月十日頃同人に対し、自己は右買収価格査定に関する職務を担当しておらず、又その職務担当の係に対し斡旋運動などしてやる意思がないのにも拘らず、同宅地の買収に関する用務のため建設省に出張する上司に対する運動資金が必要につき明日午前十一時までに五万円出してくれと虚構の事実を申向け同人をしてその旨誤信させ、よつて、翌十一日頃同市a区ec丁目f番地喫茶店「B」において、同人から右土地の高価買収に関する運動資金名義のもとに現金五万円の交付を受けてこれを騙取したものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年8月20日 昭和39(あ)125
登載
集刑 第152号537頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑法246条1項,刑法197条1項
論点43第31_2条刑事訴訟法

控訴審において訴因の変更が許されるか。

裁判要旨控訴審が事実の取調をして、破棄自判するような場合には、検察官の請求により、公訴事実の同一性を害しない限度において、訴因の変更を許すべきものであることは、当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第五一五号同年九月三〇日第一小法廷決定、刑集八巻一五六五頁)とするところである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年5月7日 昭和38(あ)2812
登載
集刑 第151号199頁
参照法条
刑訴法404条,刑訴法312条,刑訴法400条,刑訴法393条
論点44第31_2条刑事訴訟法

公訴事実の同一性を認められた事例。―詐欺の本位的訴因と賍物牙保の予備的訴因―

裁判要旨一 本件記訴状記載の詐欺の事実と予備的訴因追加請求書掲記の賍物牙保の事実との間に公訴事実の同一性を認めた原判断を相当と認める。
二 (原判断の要旨)詐欺の本意的訴因と賍物牙保の予備的訴因の両者が構成要件、罪名を異にし、前者は甲を被害者とする金員騙取の行為であるのに対し後者は乙会社が遺失物に対して有する追及回復の権利を侵害する行為であつて、両者は被害者及び被害法益を異にし一見恰も公訴事実の同一性を害するもののようであるが、後者において第一ないし第四に分割されている各賍物牙保罪を通じてその基本に存する事実関係が、後者における検察官の罪数的評価にもかかわらず前者の事実関係と全面的に重畳融合していることは、いずれの事実関係も丙が本件小切手を拾得したことに縁由し、被告人から第一審相被告人A、B、Cに順次右小切手の割引換金の依頼承諾がなされ、いずれも右小切手の正当に入手されたものでないことを知りながら敢てなした右一連の依頼承諾に基づき、究極において甲から割引換金を受けたというに帰するのであり、被告人及びA、B、C三名の現実の行為はその内容、日時、場所等同一であつて、この同一の事実関係を本位的訴因は詐欺罪に該るものと評価し、予備的訴因は賍物牙保罪に該るものと評価するに過ぎないのであつて、畢竟両者は基本的事実関係を同じくするものというべく公訴事実の同一性において欠くるところはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年4月22日 昭和37(あ)2463
登載
集刑 第151号67頁
参照法条
刑法246条,刑法256条2項,刑訴法312条,刑訴法256条
論点45第31_2条刑事訴訟法

公訴事実の同一性ありと解された事例。―勾留状の被疑事実(窃盗)と起訴状の公訴事実(賍物故買)―

裁判要旨所論勾留状の被疑事実(窃盗)と所論起訴状の公訴事実(賍物故買)との間には、公訴事実の同一性ありと解するのが相当である。注、所論の

(勾留状の被疑事実)被疑者は昭和三五年八月一六日午前一一時頃より同日午後四時〇分頃迄の間東京都品川区abの)c番地通信員A方において同人所有に係る現金六千円及びトランジスターラジオ(時価金八千円相当)一台並びに振袖(鶴とささ梅模様)一点外衣類四一点時価合計金二七万壱千円相当を窃取したものである。

(起訴状の公訴事実)第一、被告人Bは昭和三五年八月一六日頃東京都品川区ae丁目c番地A方において同人所有のトランジスターラジオ一台及び女物袷着物四〇点(時価合計約二六万五千円相当)を窃取し。第二、被告人Cは昭和三五年八月一九日頃東京都墨田区d町g丁目f番地h荘内D方においてBより同人が前記第一記載の通り窃取した来た前記トランジスターラジオ一台及び女物袷着物等四〇点をそれが賍品である事を知り乍ら代金約三万円で買取り以つて賍物を故買したものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年7月25日 昭和36(あ)2837
登載
集刑 第147号863頁
参照法条
刑法235条,刑法256条2項,刑訴法64条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点46第31_2条刑事訴訟法

贈賄罪の事実認定につき訴因変更の手続を要しないとされた事例。

裁判要旨被告人が販売した不正な収入印紙および取引高税印紙を貼付使用の登記申請書を審査校合し右不正印紙類を黙認の上登記手続を完了して貰つたことの報酬として金員を供与した旨の訴因に対し、被告人が販売した不正な収入印紙および取引高税印紙を貼付使用の登記申請書を受理し、該印紙類の正不正を審査確認するに当り、厳重な審査をなすことなく、右印紙類に消印除去の痕跡が明瞭に認められない限り、これを正当なものとして寛大且つ有利な取扱をして貰つたことに対する報酬として金員を供与した旨認定するには、訴因変更の手続を要しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年7月12日 昭和36(あ)1881
登載
集刑 第147号791頁
参照法条
刑法198条,刑法197条ノ3,刑訴法312条,刑訴法256条3項,印紙犯罪処罰法2条1項前段
論点47第31_2条刑事訴訟法

訴因、罰条の変更手続を要しないとされた事例―職業安定法第六三条第一項と同法第六四条第一号第三二条第一項本文刑法第六〇条

裁判要旨一 被告人は甲女と同棲中同女を働かせてその周旋料を取得しようと企て肩書住居において同女に対し短刀を示しながら「逃げたら只ではおかんぞ」と申し向けて同女を脅迫し昭和三四年二月二八日頃料理店AことBに対し、同女を同人方女給として雇入方斡旋し、もつて脅迫による職業紹介を行つたものであるとの職業安定法六三条一項該当の公訴事実と被告人は相被告人と共謀の上、法定の除外事由がないのに営利の目的で昭和三四年二月二八日頃右山本に対し右甲女を仲居として雇用するよう斡旋し、もつて有料の職業紹介事業を行つたものであるとの、職業安定法六四条一号三二条一項本文刑法六〇条該当の第一審判決認定事実とは基本的事業関係においては同一であると認められるので、いわゆる公訴事実の同一性には何ら欠くるところはない。
二 本件における事実関係並びに訴訟の経過にかんがみると、前者の罪として起訴された訴因を右脅迫という要件を欠如する後者の罪、しかも起訴にかかる同種の職業犯の一部として認定することは、被告人の防禦に実質的な不利益を与える虞れはなく、いわゆる訴因、罰条の変更手続を要しない場合であると解すべく、第一審裁判所の訴訟手続には所論の如き違法は勿論何ら違法の点は存しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年6月5日 昭和36(あ)102
登載
集刑 第143号15頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,職業安定法63条1項,職業安定法64条1号,職業安定法32条,刑法60条
論点48第31_2条刑事訴訟法

公訴事実に同一性の認められる事例

裁判要旨被告人は某日午後一一時四〇分頃千葉県印幡郡a町a某病院前付近の道路上において、甲の保管にかかるその兄所有の腕時計一個を窃取したとの事実(主たる訴因)と、被告人は前同日時場所において、甲と乙が喧嘩闘争をする際、甲がその場に脱ぎ捨てたジヤンバーのポケツトから路上にころがり出た右時計一個を拾得して甲のため占有保管し、その翌日乙をして右時計を甲に届けさせるために乙に預け、同人において甲のためこれを占有保管中、同日乙と共謀の上、右時計を同町a某質店に入質横領したとの事実(予備的追加訴因)の間には、公訴事実の同一性がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年3月15日 昭和36(あ)2447
登載
刑集 第16巻3号274頁
参照法条
刑訴法312条,刑法235条,刑法252条1項
論点49第31_2条刑事訴訟法

一 背任罪(農業共同組合法違反)の成立する事例。
二 訴因変更の手続を要しない事例。―業務上横領と背任

裁判要旨一 原審の確定した事実関係の下においては、本件行為が岐阜県販売農業協同組合連合会の事業の範囲外の行為であつて、農業協同組合法に違反するものであるとした原審の判断は正当である。
二 (原判決の要旨)被告人A等が販連の資金をその事業の範囲外において融資(貸付)することは、販連定款及び農業協同組合法により固く禁止されており、これに違反することはその任務に背く行為であるのにかかわらず、同人等はその情を知りながら役員会に諮りB活性炭株式会社に対し事業資金の融資を図らんことを決意し、B、C等と共謀の上、同年度第十回役員会を開催し「活性炭素取扱に関する件」と題する議案を提出して、販連より同社に対し融資(貸付)をする旨の議決をなした上、その後右融資を隠蔽するため……同組合をして架空または虚偽の内容を記載した薪炭発送報告書(空発報と略称)を作成してこれを販連に送付させ、そして同空発報にもとずき販連より同社に対し融資する旨を決定し……販連に対し財産上の損害を加えた。
三 業務上横領の控訴事実につき、訴因変更の手続を経ないで、背任の犯罪事実を認定しても差支えない。
四 (公訴事実の要旨)被告人Dは岐阜県販売農業協同組合連合会の会計主任として……いたものであるが被告人B、Cより依頼を受け、共謀の上E銀行F支店の普通預金として業務上保管中の販連の資金中より百五十万円を引出し、ほしいままにG化工株式会社の設立資本金として利用する目的をもつて同銀行の被告人B名義の普通預金口座に入金して横領したものである。
五 (原審認定の要旨)販連の会計主任として……いた被告人Dは第三者の利益を図り、その任務に背き、或いは本人たる販連に財産上の損害を加うべきことを認識しながら、業務上保管中の販連の資金中より百五十万円を販連名義をもつてG化工株式会社に不正融資(貸付)し、その結果、右金員の回収を不能ならしめて、販連に同額の財産上の損害を加えたものであるから、背任罪を構成する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年4月27日 昭和34(あ)2130
登載
集刑 第137号633頁
参照法条
農業協同組合法1条,農業協同組合法10条,刑法247条,刑法253条,刑訴法312条
論点50第31_2条刑事訴訟法

予備的訴因の追加を許可する旨の決定と特別抗告。

裁判要旨予備的訴因の追加を許可する旨の決定のごときは、「訴訟手続に関し判決前にした決定」であつても、刑訴第四三三条第一項〈この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に…〉にいわゆる「この法律により不服を申し立てることができない決定」にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年2月7日 昭和36(し)7
登載
刑集 第15巻2号304頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法420条,刑訴法433条1項
論点51第31_2条刑事訴訟法

訴因変更手続を要しない事例―業務上横領と単純横領。

裁判要旨本件の如く、業務上横領罪の訴因を肯定した第一審判決の認定に対し、被告人が控訴審において判示金員に対する被告人の占有は業務に基くものでないから業務上横領罪が成立しない旨抗争している場合において控訴審が右の主張を理由があるとして単純横領罪と認定するには訴因変更の手続を経ることを要しないものと解する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年11月10日 昭和33(あ)1581
登載
集刑 第140号77頁
参照法条
刑訴法312条,刑法252条,刑法253条
論点52第31_2条刑事訴訟法

訴因変更を許した事例。―「被告人は偽造公文書を行使した」との訴因と「被告人は他人と共謀の上右と同一の公文書を偽造した」との訴因。

裁判要旨本件は、被告人が偽造公文書を行使したとの訴因を、被告人が他人と共謀の上右と同一の公文書を偽造したとの訴因に変更した場合であり被告人自ら同一の公文書に対する公信力を害したとの点において、両者その基本的事実を同一にし、しかも刑法一五八条も、偽造公文書行使の罪を犯した者は、公文書偽造の罪を犯した者と同一の刑に処する旨規定して居るのであつて、起訴状において訴因とされた偽造公文書行使の事実と変更の許可を得て新らしい訴因となつた同一公文書偽造の事実とは、刑事訴訟法上、同一事実関係と解すべきである。されば第一審が所論の如く訴因変更を許可し、原審がこれを適法と判断したことに所論の違法がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年7月19日 昭和31(あ)4296
登載
集刑 第134号633頁
参照法条
刑訴法312条,刑法155条,刑法158条,刑法60条
論点53第31_2条刑事訴訟法

故意犯(現住建造物放火幇助)と過失犯(失火)との間に公訴事実の同一性の認められた事例。

裁判要旨被告人に対する本件現住建造物放火幇助の公訴事実と失火の公訴事実(各判文参照)との間には同一性があるものと認むべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年7月15日 昭和31(あ)1357
登載
刑集 第14巻9号1152頁
参照法条
憲法39条,刑訴法312条,刑訴法337条1号,刑法116条,刑法108条,刑法62条
論点54第31_2条刑事訴訟法

一 訴因変更手続を要しない事例。―起訴状記載の事実と一審判決認定事実の間における場所の差異―
二 第一審に提出した弁論要旨と題する書面を援用する旨の控訴趣意書の適否
三 収賄罪における税務署法人税課係員の担当地域と職務権限

裁判要旨一 収賄罪における賄賂収受の場所の差異につき、起訴状の記載に「東京都北区ab丁目c番地被告人自宅」とあるのを第一審判決で「東京都北区de丁目b、f番地の当時の被告人自宅」と認定するには、訴因変更の手続を要しない。
二 控訴趣意書自体に控訴理由を明示しないで、第一審に提出した弁論要旨と題する書面の記載を援用する旨の控訴趣意は許されない。
三 収賄罪において、税務署法人税課第六係係員として法人税の課税標準の調査等に関する事務を分掌するとともに、事実上同係次席として係長の職務を補佐していた者につき、その賄賂の対象となつた行為が、同係の管轄区域内ではあるが同人の担当地域外であつたというだけで、直ちにその職務権限に属しないものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年4月19日 昭和31(あ)3605
登載
刑集 第14巻6号685頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法376条,刑法197条,刑訴規則240条
論点55第31_2条刑事訴訟法

一 覚せい剤取締法違反(不法譲受)罪の実行の着手があつたと認められる事例
二 訴因変更手続を必要としない事例

裁判要旨一 甲、乙間に覚せい剤売買に関する合意が成立し、甲が乙の面前において、情を知らない丙に合札を渡し、荷物預り所に預けてある覚せい剤の受取方を委託し、丙がこれを承諾し、甲または乙に交付するつもりで右覚せい剤を受け取つたときは、乙はその覚せい剤譲受の実行に着手したものと認めることができる。
二 「被告人は法定の除外事由がないのに、昭和二九年一〇月二七日金沢市a町b番地被告人居宅において、覚せい剤二CC入りアンプル六、〇〇〇本を所持していたものである。」旨の訴因に対し、「被告人は法定の除外理由がないのに、右月日AをしてB運輸株式会社C支店より覚せい剤二CC入りアンプル二、八〇〇本を運ばせ、右被告人宅玄関前でこれを受け取り、もつて覚せい剤を所持したものである。」旨の事実を認定するには、訴因変更手続を必要としない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年7月3日 昭和31(あ)4036
登載
集刑 第130号439頁
参照法条
覚せい剤取締法17条3項,覚せい剤取締法41条1項4号,覚せい剤取締法41条3項,刑法43条,刑訴法312条
論点56第31_2条刑事訴訟法

一 公訴事実の同一性の認められる事例−業務上横領と窃盗
二 同一事実に対する別訴の提起が二重起訴にあたらないとされた事例

裁判要旨一 被告人は家畜商を営むものであるが、昭和二五年七月二五日頃家畜商Aより同人所有の馬四頭の売却方を依頼され、同月二九日うち二頭をBに代金六万円で売却しこれを保管中、同月三〇日新潟県西蒲原郡a町C旅館において、内金三万円を着服して横領をしたとの業務上横領の訴因と、被告人は昭和二五年七月三新潟県西蒲原郡b村大字cD方から同人が一時Aより預つていたAの父E所有の牝馬鹿毛および青色各一頭を窃盗したとの窃取の訴因とは、事実の同一性を失わない。
二 第一次第一審において、右業務上横領の訴因を右窃盗の訴因に変更し後者につき有罪を認定したところ、第二審において、右は事実の同一性を欠くとしてこれを破棄、移送したため、第二次第一審において、右破棄判決の判断に従い検察官から右窃盗の訴因と同一内容の別訴が提起され、併合審理された結果、窃盗につき有罪、業務上横領はその不可罰的事後行為であるとして無罪が言渡されたが、第二次第二審を経た上告審において、右破棄判決の判断は誤りで事実の同一性があり、第二次第一審における別訴の提起は実質において訴因変更の趣旨であると解される以上、二重起訴の違法はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年12月11日 昭和29(あ)2526
登載
刑集 第13巻13号3195頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法256条,刑訴法338条3号,刑訴法337条,刑法253条,刑法235条
論点57第31_2条刑事訴訟法

傷害の同時犯の起訴を共同正犯と認定する場合と訴因変更手続の要否。

裁判要旨傷害の同時犯として起訴されたものを共同正犯と認定しても、それによつて被告人に不当な不意打を加え、その防禦権の行使に実質的な不利益を与えるおそれのないかぎり訴因変更の手続を必要としないものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年7月18日 昭和30(あ)3982
登載
刑集 第12巻12号2656頁
参照法条
刑訴法312条,刑法207条,刑法204条,刑法60条
論点58第31_2条刑事訴訟法

訴因の変更を必要としない事例(強盗殺人の共同正犯―殺人の幇助)

裁判要旨被告人は、甲が金品強取の目的で乙を殺害しようとしてその首を絞めているとき、その企図を察知共謀の上乙の抵抗を阻止し、また着用の腰紐を甲に与えて絞首殺害の目的を達成するに至らせた旨の訴因で、被告人において甲が乙殺害の目的でその首を絞めている企図を察知しながら、その着用の腰紐を甲に与えて、絞首殺害の目的達成を容易ならしめてこれを幇助したと認めるのには訴因の変更を必要としない
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年6月24日 昭和31(あ)462
登載
刑集 第12巻10号2269頁
参照法条
刑訴法312条,刑法240条,刑法199条,刑法60条,刑法62条
論点59第31_2条刑事訴訟法

一 道路交通取締法違反(無謀操縦)と業務上過失致死の各事実が公訴事実の同一性を欠く一事例
二 道路交通取締法違反(無謀操縦)罪と業務上過失致死罪との間に牽連関係乃至一所為数法の関係が存しない場合

裁判要旨一 本件における道路交通取締法違反(無謀操縦)の事実と業務上過失致死の事実とは、公訴事実としては別個の事実であつて、公訴事実の同一性を認むべきではない。
二 本件における道路交通取締法違反(無謀操縦)の罪と業務上過失致死罪とは別個独立の犯罪であつて、右両者の間には牽連関係ないし一所為数法の関係は存しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年3月17日 昭和30(あ)2676
登載
刑集 第12巻4号581頁
参照法条
道路交通取締法28条1号,道路交通取締法7条1項,道路交通取締法2項,刑法54条1項,刑法211条,刑訴法256条,刑訴法312条1項
論点60第31_2条刑事訴訟法

公訴事実の同一性を欠く一事例

裁判要旨「被告人は昭和二七年一二月三〇日頃の午後一一時半頃肩書自宅において、Aが川崎市aB化学工業株式会社工場内より同工場長某の管理にかかる銅製艶付板三二枚(価格九万六千円相当)を窃取するに際し、同人から例の銅板を会社から持出すからリヤカーを貸して呉れと頼まれてこれを貸与しよつて同人の右窃盗の犯行を容易ならしめて幇助した」との窃盗幇助の公訴事実と、「被告人は昭和二七年一二月三一日頃肩書自宅において、Aから、同人が他より窃取して来たものであることの情を知りながら、銅製艶付板三二枚(価格九万六千円相当)を金三万円で買受け賍物の故買をした」との賍物故買の事実との間には、公訴事実の同一性がない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年2月21日 昭和30(あ)212
登載
刑集 第12巻2号288頁
参照法条
刑訴法312条1項,刑法235条,刑法256条2項
論点61第31_2条刑事訴訟法

訴因変更の許可と旧訴因についての公訴の取消

裁判要旨訴因変更の許可があつたときは、旧訴因につき公訴の取消がなされたものと解することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年7月23日 昭和30(あ)2539
登載
集刑 第119号1059頁
参照法条
刑訴法312条1項,刑訴法257条
論点62第31_2条刑事訴訟法

一 訴因、罰条の追加、変更をさせないで審判することが違法と解せられる事例
二 背任の成立しない事例
三 期待可能性についての無用の判示と判例違反

裁判要旨一 第一審が業務上横領罪の訴因、罰条について判決した事件について、控訴審が背任の点についても既に十分な証拠調がされているというだけの理由で、未だ任務に背いたか否かの点について十分な防禦を尽していると認められないのにかかわらず、背任について訴因罰条の追加、変更なしに審判することは違法である。
二 A公団BA局長が先に従業員に貸し付けた越冬資金の返済方を強行すれば、ストライキは避けられない情勢の下において、石炭操作賃金名義で資金を作り、恰も帳簿上右越冬資金の返済があつたかのように装つて、規定上は許されない右資金の返済方の免除を行つたからといつて、直ちに背任罪を構成するとはいえない。
三 右の場合背任罪は成立するが期待可能性がない旨の判断は無用の議論であつて、判例と相反する判断をしたものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年4月30日 昭和30(あ)737
登載
集刑 第118号1111頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑法253条,刑法247条
論点63第31_2条刑事訴訟法

一罪の訴因を二罪と認定する場合と訴因の追加変更

裁判要旨一個の窃盗として起訴せられたものを、訴因の追加変更の手続を経ないで、二個の窃盗と認定しても、公訴事実の同一性を失わずかつ被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞れがない限り、違法ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年10月8日 昭和30(あ)3499
登載
刑集 第11巻10号2487頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法256条,刑法235条
論点64第31_2条刑事訴訟法

一 特別公務員暴行陵虐被告事件の職務執行の認定につき、審判に付する決定および一審判決認定事実と異る控訴審の事実認定の適法
二 刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらない一事例
三 ―特別公務員暴行陵虐被告事件の判決言渡期日に検察官が出席した場合―

裁判要旨一 特別公務員暴行陵虐の罪について、被告人の所為が、証拠品の任意提出を求める職務執行にあたり行われたという審判に付する決定事実および一審判決の事実認定を、控訴審において緊急逮捕の職務執行にあたり行われたと認定することは、それが証拠に即する限り違法ではない。
二 (裁判官池田克の補足意見)
特別公務員暴行陵虐被告事件の一審における判決言渡のために開かれた公判期日に、検察官の職務を行う弁護士が出席せず、検察官が出席しても刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉を適用すべき場合にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年2月10日 昭和28(あ)4724
登載
刑集 第10巻2号159頁
参照法条
刑訴法378条3号,刑訴法312条,刑訴法411条1号,刑訴法268条,刑訴法282条2項,刑訴法377条1号,裁判所法11条
論点65第31_2条刑事訴訟法

一 麻薬取締法第六七条等の合憲性
二 書面審理と憲法第八二条第一項
三 包括一罪を構成する一部の行為に対する追起訴状の提出と二重起訴
四 旧麻薬取締法の一部を改正する昭和二七年法律第一五二号の施行期日の前後にまたがる常習行為の適条

裁判要旨一 麻薬取締法第六七条等は憲法第二二条第一項に違反しない。
二 一審裁判所は、被告人、弁護人の出頭した公開の公判廷で審理を行い、被告人は犯罪事実をすべて自認し、弁護人同意の下に証拠書類について適法に証拠調を終つた上、弁論を終結して判決し、控訴審もまた公開した公判廷において出頭した弁護人の控訴趣意書に基く弁論並びにこれに対する検察官の意見をきいた上結審して、控訴を理由ないものとして棄却する旨の判決を宣告した以上憲法第八二条に違反するところはない。
三 麻薬取締法違反の常習営利の一罪を構成する行為について追起訴状が提出されても、それが右一罪を構成する行為で起訴状に洩れたものを追加補充する趣旨でなされたものと認められる以上、二重起訴の違法はない。
四 旧麻薬取締法の一部を改正して、常習行為の加重処罰を規定した昭和二七年法律第一五二号の施行期日の前後にまたがる行為は、それが不可分の関係にあつて一罪と認められる場合でないかぎり、これをその前後によつて区分し、それぞれ行為時法に従つて法律上の処遇を判断すべきものと解するを相当とする。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和31年12月26日 昭和29(あ)1400
登載
刑集 第10巻12号1746頁
参照法条
麻薬取締法67条,麻薬取締法66条,麻薬取締法64条,麻薬取締法12条,麻薬取締法附則第2項,16項,憲法22条1項,憲法82条1項,憲法39条,刑訴法312条,刑訴法309条2項,刑訴法338条3号,刑訴規則209条,刑訴規則205条2項,旧麻薬取締法(昭和27年法律152号による改正後のもの)57条ノ3,旧麻薬取締法(昭和27年法律152号による改正後のもの)57条ノ4,旧麻薬取締法(昭和27年法律152号による改正後のもの)附則2項
論点66第31_2条刑事訴訟法

一 公訴事実の同一性の認められる一事例
二 業務上横領と詐欺

裁判要旨被告人はA事務局の外務員として同連盟賛助会員の募金並びに賛助金集金等の業務に従事中、昭和二六年三月二四日頃から同年八月一六日頃までの間二五回にわたつてB株式会社外二四名から集金した合計一七五〇〇〇円をその都度ほしいままに着服横領したとの業務上横領の訴因と、被告人は昭和二五年一〇月末まで右事務局員として右事務に従事し同日解職されたものであるが、なお右事務局員であるが如くよそおい前記期間中右二五名から賛助金名義で前記金額を騙取したとの詐欺の訴因とは、事実の同一性を失わない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年11月9日 昭和29(あ)2278
登載
刑集 第10巻11号1531頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法256条,刑法253条,刑法246条
論点67第31_2条刑事訴訟法

公訴事実の同一性の認められる一事例

裁判要旨被告人は甲と共謀して昭和二五年九月一七日某劇場においてストリツプ・ガールA子をして伴奏曲にあわせ脚光を受けながら逐次着衣全部を脱ぎこれを両手にて腰部にあて舞台全面を踊りながら二回にわたり衣裳を脇にずらせ陰部を露出させ最後に舞台中央にて手にした衣裳を下にずり下げ陰部を示す等、猥褻な日本舞踊を踊らせこれを約二〇〇名の客に観覧させ以て猥褻のものを公然陳列したとの起訴状記載の事実(罰条、刑法第一七五条記載)と被告人は甲と共謀して前同日同所において前記ストリツプ・ガールをして右伴奏曲にあわせて脚光を受け逐次着衣を脱ぎ且つ衣裳を両手で押えこれを左右に交互に振りつつ、多数観客の面前で踊りながら時折衣裳を脇にずらせ陰部を露出させる等猥褻な行為をなさしめたとの原判決認定の犯罪事実(刑法第六一条第一項第一七四条適用)とは同一性を失わない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年7月1日 昭和28(あ)1772
登載
刑集 第9巻9号1769頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑法174条,刑法175条
論点68第31_2条刑事訴訟法

一 別個の所持の認められる一事例
二 所持罪における場所の変更と公訴事実の同一性
三 被告人の控訴趣意書に対する判断遺脱が刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例

裁判要旨一 かねて自宅に保管していた麻薬を持ち出し、これを二個に分割し、その一部を他人に交付し、残余の部分を留保して自宅外の場所に隠匿した場合には別個独立の所持罪が成立する。
二 麻薬所持の罪において起訴事実と認定事実との間に、所持の場所に多少の変更があつても、所持の目的物が同一である限り、その一事を以つて直ちに公訴事実の同一性が失われるとは解されない。
三 被告人の控訴趣意書中事実誤認を指摘するが如き口吩があつても、控訴の要旨は量刑過重に失するを不服とし刑の執行猶予を願うにあるときは、同被告人の弁護人の控訴趣意の量刑不当の主張に対する判断がなされている限り、右被告人の控訴趣意書に対する判断を遺脱した違法があつても、右違法は判決に影響がなく刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年7月19日 昭和28(あ)2775
登載
刑集 第9巻9号1885頁
参照法条
旧麻薬取締法(昭和23年法律123号)3条1項,旧麻薬取締法(昭和23年法律123号)57条,刑法45条,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法378条3号,刑訴法392条1項,刑訴法411条
論点69第31_2条刑事訴訟法

一 起訴状の訂正が許される一事例
二 判決を宣告する場合と通訳人の要否

裁判要旨一 所論は、憲法三一条違反をいうも、その実質は単なる刑訴法違反の主張であり、しかもそれは第二審判決に対する攻撃ではなく、第一審判決に対する攻撃に過ぎないばかりでなく、所論起訴状の訂正は同一公訴事実の細部を変更しに過ぎないので所論のような刑訴法の違反も認められない。註。「所論」とは訴因又は公訴事実に異にし、この事実に対して弁解と証拠調のないという主張である。
二 判決を宣告する場合においても国語に通じない被告人に対しは通訳人を付しなければならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年2月15日 昭和28(あ)1731
登載
刑集 第9巻2号282頁
参照法条
刑訴法256条3項,刑訴法312条,刑訴法175条
論点70第31_2条刑事訴訟法

審判の請求を受けない事件について判決をしたものとならない事例

裁判要旨起訴状に「被告人は納税組合設立の件が議せられている労働組合大会の席上『現在a町で工事中の観光道路は幅三間で戦車が通るようになつているという事は米ソ戦争の際アメリカの軍用道路に使われるのだ。現在の警察予備隊七万五千名は売国奴吉田によつて戦争に駆り立てられているのは明らかで、其の拳銃も我々の税金で賄われているので其の様な税金を納めるのには反対だし、従つて其の様な税金を納める為めの納税組合にも反対である。』旨発言して地方税を納入しないことをせん動した」と記載して起訴されたのに対し、第一審判決が起訴条に記載のない『委員長は税金が戦争準備のため使われていないというが平衡交付金が減らされたこと自体戦争準備のために使われている証拠だ』との文言を被告人の発言内容として、右起訴状記載の発言内容に附加して判示したからといつて第一審判決は審判の請求を受けない事件について判決をしたものではない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年11月30日 昭和26(あ)3472
登載
刑集 第9巻12号2529頁
参照法条
刑訴法256条1乃至3項,刑訴法312条,刑訴法378条3号,地方税法12条1項
論点71第31_2条刑事訴訟法

詐欺罪について訴因の変更を必要としない一事例

裁判要旨被告人が昭和二七年一〇月中旬頃およびその翌日頃の二回に古鉄商A方において、同人に偽造の砲金棒を示してこれが純正な砲金棒であるように装い同人をそのとおり誤信させ砲金棒合計二七本の買受方を承諾させて現金合計二十七万三千五百円を騙取した旨の訴因に対し、被告人が右各日時頃二回に前同所古鉄商B(A方の女)方において前同様の方法で同人を欺罔し砲金棒合計二七本の買受方を承諾させて現金合計二十七万三千五百円を騙取した旨の事実を認定するには、訴因変更の手続を経ることを要しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年10月4日 昭和28(あ)4367
登載
刑集 第9巻11号2136頁
参照法条
刑法246条1項,刑訴法256条,刑訴法312条
論点72第31_2条刑事訴訟法

一 起訴状記載の訴因が刑法第二四四条第一項後段の親族相盗にあたるに拘らず告訴を欠く場合と訴因変更の可否
二 起訴条記載の訴因が刑法第二四四条第一項後段の親族相盗にあたるに拘らず告訴を欠く場合と起訴手続の効力

裁判要旨本件公訴にかかる窃盗の事実が、刑法二四四条一項後段の親告罪であるか否かは、最終的には、裁判所により事実審理の結果をまつて、判定さるべくものであり、必ずしも起訴状記載の訴因に拘束されるものではない。従つて、本件のように、事実審理の過程において起訴状に記載された訴因事実が前示の親告罪にあたることが明らかになつた場合にも、適法な告訴がないからといつて、所論のようにその起訴手続を直ちに無効であると断定すべきではない。尤も、かように訴因について訴訟条件を欠くことが明らかとなつたときは、裁判所は、もはや、この訴因について実体的訴訟関係を進展させることを得ないから、訴訟条件の欠缺が治癒または補正されない以上、その起訴手続は不適法、無効なものとして、公訴棄却の形式的裁判を以つて、その訴訟手続を締結せざるを得ないことはいうまでもない(刑訴三三八条四号〈左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。 公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき。〉)。しかし、本来の訴因が右の如く訴訟条件を欠くからといつて、現行法上、それだけで訴因の変更、追加を絶対に許さないとする理由は何ら存しない(親告罪と否とにより直ちに公訴事実の同一性を失うものではない)。そして、本件においては、本来の訴因事実の一部について、訴因変更への手続が適法になされているのであつて、刑法二四四条の適用のない新しい訴因事実が裁判所により認定され、確定されたのであるから、その部分に関する限り本件被告事件は、本来、親告罪でなかつた訳であり、従つてこの点に関する本件起訴手続は、告訴がなくても、もともと、有効であつて無効でなかつたことに帰するのである。原判決には所論のような法令違反もない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年9月8日 昭和26(あ)4394
登載
刑集 第8巻9号1471頁
参照法条
刑法244条1項,刑訴法312条,刑訴法338条4号
論点73第31_2条刑事訴訟法

殺人未遂の訴因に対し傷害の事実を認定する場合と訴因変更の要否

裁判要旨殺人未遂の訴因に対し傷害と認定するについては、訴因変更の手続を経る必要はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年8月24日 昭和27(あ)6580
登載
刑集 第8巻8号1392頁
参照法条
刑訴法312条,刑法203条,刑法199条,刑法204条
論点74第31_2条刑事訴訟法

強制猥褻の訴因に対し、訴因変更手続を経ることなく公然猥褻の事実を認定した判決と刑訴第三七八条第三号〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われ… 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。〉後段

裁判要旨行為の公然性について何ら明示するところなく、単に被告人甲乙両名はS方二畳の間において、M女に対し暴行を加え、それぞれ猥褻の行為をなしたとの強制猥褻の訴因に対し、訴因の変更または追加の手続をなすことなく、飲食店S方において右S及び同店の客T外二名の面前で被告人甲乙両名はM女に対しそれぞれ公然猥褻の行為をなしたとの事実を認定した有罪判決は、審判の請求を受けない事件について判決をした違法があるものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年8月20日 昭和27(あ)4522
登載
刑集 第8巻8号1249頁
参照法条
刑法176条,刑法174条,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法378条3号
論点75第31_2条刑事訴訟法

訴因変更と公訴時効

裁判要旨詐欺で起訴され、後に訴因が横領に変更せられた事件に対する公訴時効完成の有無は右起訴の時を基準として判断すべきであつて、右訴因変更の時を基準として判断すべきではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年7月14日 昭和27(あ)680
登載
刑集 第8巻7号1100頁
参照法条
刑訴法250条,刑訴法312条
論点76第31_2条刑事訴訟法

一 投票買収資金と法廷選挙費用とが不可分的に一括交付された場合その全額につき交付罪が成立するか
二 控訴審において罰条変更の手続を必要としない事例

裁判要旨一 投票買収資金と法廷選挙費用とが一括交付され、その区分ができない場合には、その全額につき公職選挙法第二二一条第一項第五号の交付罪が成立すると解すべきである。
二 第一審判決が公職選挙法第二二一条第一項第一号を適用したのは誤であつて、同項第五号を適用すべきであるが、この法令適用の誤は判決に影響することが明らかでないとして控訴を棄却するに当つて、控訴裁判所は罰条変更の手続をとる必要がない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年6月19日 昭和28(あ)4950
登載
刑集 第8巻6号903頁
参照法条
公職選挙法221条1項1号,公職選挙法221条1項5号,公職選挙法221条1項,刑訴法312条2項,刑訴法380条
論点77第31_2条刑事訴訟法

詐欺罪について起訴事実と認定事実とが単に欺罔方法の一部につき差異あるに過ぎない場合と訴因変更の要否

裁判要旨所論公訴事実と原審認定の事実とはその基本的事実関係において相違するところなく、単に欺罔方法の一部に差異あるに過ぎないのであるから、たとえ原審が訴因変更の手続を経ることなく、判示事実を認定したからとて、これによつて、実質的に被告人に不当な不意打を加えその防禦権の行使を妨げたものと認めることはできないのであつて原判決には所論の訴訟法違反もない。(昭和二六年(あ)一三〇三号同二八年三月五日当法廷決定、集七巻三号四四三頁以下参照)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年4月22日 昭和28(あ)2982
登載
集刑 第94号587頁
参照法条
刑法246条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点78第31_2条刑事訴訟法

選挙違反罪において交付又は供与された金員の趣旨につき差異ある場合と訴因変更の要否

裁判要旨所論原審認定の事実は、犯罪の日時、場所、金員の交付又は供与を受けたとする相手方及びその金額等の点において本件公訴事実と何等の差異もなく、ただ交付又は供与されたとする金員の趣旨について差異あるに止まり、両者間に基礎たる事実の同一性ありと認め得るばかりでなく、その罰条の点においても共に公職選挙法二二一条一項に該当し、単に五号(交付)によるか、一号(供与)によるかの差異あるに過ぎないのであつて、原審が本件公訴事実に対し、訴因、罰条の変更手続を経ないで所論のような判示事実を認定処断したとしても被告人の防禦権の行使に不意打的に実質的な不利益を及ぼしたものということはできない(昭和二六年(あ)第二五二六号、同二九年一月二八日当法延判決参照)。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年4月22日 昭和28(あ)4213
登載
集刑 第94号625頁
参照法条
公職選挙法221条1項1号,公職選挙法221条1項5号,刑訴法312条,刑訴法256条,刑訴法338条4号
論点79第31_2条刑事訴訟法

一 公判調書における文字の挿入削除が刑訴規則第五九条所定の方式を欠く場合の効力
二 予備的訴因の追加により公訴事実の同一性が害されない事例
三 予備的訴因につき有罪を認定した場合に主たる訴因に対する判断を明示することの要否

裁判要旨一 公判調書における文字の挿入削除が刑訴規則第五九条所定の方式を欠いていても、ただちにその挿入削除を無効とすべきではなく、その効力の有無は、裁判所が諸般の状況に照して合理的な裁量により決すべきものである。
二 「被告人はA税務事務所に勤務中、B日頃、かねて同税務事務所滞納整理係Cから徴収方依頼を受けていた納税者D会社より、固定資産税一六四、七三〇円を同会社振出の同額の小切手で徴収し保管中、その頃擅に着服横領した。」との横領の訴因に対し、「被告人はA税務事務所に勤務中、B日頃、D会社において、その制限なきにかかわらず権限あるをよそおい、Eに対し同会社の固定資産税一六四、七三〇円の請求をし、同人をしてその旨誤信せしめ、よつて同人から同会社振出の同額の小切手の交付を受けて、これを騙取した。」との詐欺の予備的訴因を追加することにより、公訴事実の同一性は害されない。
三 主たる訴因と予備的訴因のある場合に、予備的訴因につき有罪を認定したときは、主文において主たる訴因につき無罪を言い渡すべきでないことは勿論、理由中においても、かならずしもこれに対する判断を明示することを要するものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年3月23日 昭和27(あ)5538
登載
刑集 第8巻3号305頁
参照法条
刑訴規則59条,刑訴法256条3項,刑訴法256条5項,刑訴法312条1項,刑訴法44条1項,刑訴法336条,刑訴法378条3号,刑法252条1項,形法246条1項
論点80第31_2条刑事訴訟法

訴因変更を要しない例 ―恐喝の起訴に対し脅迫と認定する場合―

裁判要旨恐喝として起訴されたものを脅迫と認定しても、脅迫をしたという基本事実に変更がなく、かつ、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずるおそれのないものであるから訴因変更の手続を経る必要はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年11月9日 昭和28(あ)914
登載
集刑 第100号91頁
参照法条
刑法249条,刑法222条,刑訴法312条
論点81第31_2条刑事訴訟法

訴因罰条の変更を必要としない一事例

裁判要旨控訴裁判所が、強盗の起訴に対し強盗幇助と認定した第一審判決を破棄して、自ら恐喝と認定するについては訴因、罰条の変更手続を経ることを要しないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年10月19日 昭和29(あ)1260
登載
刑集 第8巻10号1600頁
参照法条
刑法236条,刑法62条,刑法249条,刑訴法312条
論点82第31_2条刑事訴訟法

訴因、罰条の変更を必要としない一事例

裁判要旨殺人の起訴に対し刑法第三八条第二項を適用し同意殺人の責任を認めるときは、訴因、罰条の変更を必要としない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年9月30日 昭和28(あ)2850
登載
刑集 第7巻9号1868頁
参照法条
刑法199条,刑法202条,刑訴法312条
論点83第31_2条刑事訴訟法

一 詐欺罪と背任行為
二 控訴裁判所が第一審判決には法令の適用に誤がありとしてこれを破棄した場合と控訴審における訴因変更の要否

裁判要旨一 他人の事務を処理する者が自己の利益を図り任務に関して本人を欺き財物を交付せしめたときは、詐欺罪が成立し、別に背任罪を構成しない。
二 第一審裁判所が、基礎状記載の訴因と同一の背任罪を認定して刑法第二四七条を適用したが、背任罪として判示したのは法令の誤解であつて判示自体により詐欺の事実が確定されているものと認められる場合には、控訴裁判所は第一審判決を破棄した上、法令適用の誤を正すべきであつて、控訴審において背任の訴因を詐欺の訴因に変更する手続を必要としない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年5月8日 昭和26(あ)3819
登載
刑集 第7巻5号965頁
参照法条
刑法246条,刑法247条,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法380条
論点84第31_2条刑事訴訟法

一 公訴事実に同一性の認められる一場合
二 一審で横領と認定した事実を控訴審で訴因罰条の変更手続を経ることなく占有離脱物横領と認定することの適法な一場合

裁判要旨一 「被告人は甲日、某信用組合において、事務員Aが誤つて他人に支払うべき払戻金三万五千円を被告人に提供せんとするや右誤信に乗じてこれを受け取り騙取した」との詐欺の事実(主たる訴因)と「被告人は甲日某信用組合事務員の過失により他人に支払うべき払戻金三万五千円を受領し帰宅後、事務員Bより財布の内容を尋ねられるや、領得の意思でその返還を拒否して着服横領した」との横領の事実(予備的訴因)とは、公訴事実の同一性があるし控訴審において、これを右はA事務員の真意に基かない授受であるとして、占有離脱物横領と認定することも、公訴事実の同一性を害しない。
二 右の場合、横領を占有離脱物横領と認定するには訴因罰条の変更手続を経るを要しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年5月29日 昭和26(あ)4626
登載
刑集 第7巻5号1158頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法256条,刑訴規則209条,刑法246条,刑法252条,刑法254条
論点85第31_2条刑事訴訟法

業務妨害罪について訴因の変更を必要としない一事例

裁判要旨被告人が会社工場長の制止するにかかわらず、これに反抗して同工場に対する送電用スイツチを切断して送電を不能ならしめ、もつて威力を用い同会社の業務を妨害した旨の起訴状記載の訴因に対し、被告人が送電設備の状況を監視していた右会社の工場長に対し、同人が制止するにかかわらず暴行、脅迫をなし、その間数回にわたつてスイツチを切断しもつて威力を用い右工場長の業務を妨害した旨の事実を認定するには訴因変更の手続を経ることを要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年3月5日 昭和26(あ)1303
登載
刑集 第7巻3号443頁
参照法条
刑法234条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点86第31_2条刑事訴訟法

一 罰金の寡額が刑法第一五条によつて定められている場合においては罰金の寡額の引上は罰金等臨時措置法第二条第一項によるのか
二 検察官が供述調書を作成する際にこれを供述者に読み聞けなかつた場合における供述調書の証拠能力
三 公法関係において債務の一部弁済があつた場合民法第四八九条を適用するのは相当か
四 民法第四八九条第二号の弁済の利益中には刑事上の責任の有無を含むか
五 前任者が控除した失業保険料を所定期日までに納付しなかつた者について失業保険法第五三条第三号の罪が成立するか
六 自ら保険料を控除した者であつても所定の納付期日にはその地位を去つた者について失業保険法第五三条第三号の罪が成立するか
七 失業保険法第三四条(改正前のもの)、同法施行令第一〇条にいわゆる翌月末日の意義
八 失業保険法第五五条の規定により法人が責任を負う場合において行為者が異るときは公訴事実も異なるか

裁判要旨一 特別法であつても、罰金の寡額が刑法第一五条によつて定められる場合には、その寡額の引上は、罰金等臨時措置法第四条によるのではなく、同法第二条第一項の規定によるものである。
二 検察官が供述調書を作成する際にこれを供述者に読み聞けなかつたとしても、その一事のみによつて供述調書がただちに証拠能力を失うことにはならない。
三 債務の一部弁済があつた場合に特段の規定または合意のないかぎりは、公法関係においても民法第四八九条の規定に従うものと解するのが相当である。
四 民法第四八九条第二号の弁済の利益は、財産上の利益を指称し、刑事上の責任の有無を含まない。
五 失業保険法第五三条第三号は、自ら保険料を控除した者が、これを所定期日までに納付しなかつた場合はもとより、その前任者が控除したことを知りながら、所定期日までに納付しなかつた者をも処罰するものと解すべきである。
六 自ら失業保険料を控除した者であつても、所定の納付期日にはこれを納付すべき地位を去つた者については、失業保険法第五三条第三号の罪は成立しない。
七 失業保険法第三四条(改正前のもの)、同法施行令第一〇条にいわゆる翌月末日とは、それが前月の遅延分であつても、実際に失業保険料を控除した日から起算して翌月末日と解すべきである。
八 失業保険法第五五条の規定により会社が従業者等の違反行為につき責任を負うべき場合において、責任を負うべき従業者等が異る場合においては、会社についても公訴事実を異にするものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年1月27日 昭和25(あ)3098
登載
刑集 第7巻1号64頁
参照法条
罰金等臨時措置法2条1項,罰金等臨時措置法4条,刑訴法198条4項,刑訴法223条,刑訴法312条,刑訴法256条,民法489条,失業保険法53条,失業保険法34条(改正前のもの),失業保険法55条,失業保険法施行令10条
論点87第31_2条刑事訴訟法

訴因罰条の変更を要しない一事例 ―刑法一〇八条の放火未遂を一一〇条一項〈差押状又は捜索状は、処分を受ける者にこれを示さなければならない。〉の放火の既遂と認定する場合―

裁判要旨裁判所が刑法一〇八条の放火の未遂の起訴に対し、同法一一〇条一項の放火の既遂を認定するについては、訴因罰条の変更手続を経る必要がないものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年11月10日 昭和27(あ)4808
登載
集刑 第88号259頁
参照法条
刑法108条,刑法112条,刑法110条,刑訴法312条,刑訴規則209条
論点88第31_2条刑事訴訟法

一 起訴状および訴因追加請求書各謄本の被告人に対する不送達と刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉
二 恐喝罪の公訴犯罪事実中に被告人の性格、経歴及び素行等を記載することと刑訴法第二五六条第六項

裁判要旨一 起訴状および訴因追加請求書の各謄本が被告人に送達されていなくても、起訴の日に被告人が自ら弁護人を選任し、弁護人は裁判所書記官に請求して、起訴状および訴因追加請求書各謄本の送達を受け、第一審第一回公判も起訴の日から二箇月以内に開かれており、また起訴状謄本が弁護人に送達されてから同公判までに一箇月以上、訴因追加請求書が同人に送達されてからでも同じく一箇月近くの余裕があつて、弁論準備のために十分の期間があつたものということができ、かつ右公判で被告人側から何の異議も申し立てていない場合には、前記のような刑訴第二七一条第一項〈裁判所は、公訴の提起があつたときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない。〉、第三一二条第三項〈裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又…〉、刑訴規則第二〇九条第三項の不遵守は、未だ刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべき事由とするにたらない。
二 本件公訴事実は、被告人が一般人を恐れさせるに足るような自己の性格、経歴及び素行等に関する事実を告知し、若しくは相手方が予ねて、そのような事実を知つて恐れをなしているのに乗じて金品、その他財産上の利益を受けるという方法によつて度々の恐喝を働いたというにあつて、被告人の性格、経歴及び素行等に関する事実は、本件では、犯罪事実と何等直接の関係のない事項ではなく、むしろ、その恐喝手段そのものゝ内容をなしている事柄であるといわなければならないから刑訴第二五六条〈公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。〉末項に反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年7月18日 昭和25(あ)262
登載
刑集 第6巻7号913頁
参照法条
刑訴法271条1項,刑訴法312条3項,刑訴法411条,刑訴法256条,刑訴規則209条3項,刑法249条
論点89第31_2条刑事訴訟法

一 被告人の在延する公判廷において口頭で罰条を追加する場合に特に被告人に通知手続を執ることの要否
二 犯罪事実認定の資料となる医師の診断書の採証要件
三 一個の強盗行為の手段として甲、乙に対してそれぞれ暴行を加え、同人等に各傷害を与えた場合の罪責

裁判要旨一 被告人が在延する公判廷における口頭の罰条追加の場合には裁判所が特に被告人に対しこれが通知の手続を執る必要のないことは多言を要しないし、また、犯罪事実認定の資料となるべき医師の診断書は刑訴法第三二一条、第三二六条の要件あるを以て足り(本件では同第三二六条〈検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認め…〉の同意あること記録上明白である)、同第二七八条〈公判期日に召喚を受けた者が病気その他の事由によつて出頭することができないときは、裁判所の規則の定めるところにより、医師の…〉、刑訴規則第一八三条所定の事実を記載するの必要ないこと勿論であるから、刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきものとも認められない。
二 一個の強盗行為の手段として甲、乙に対しそれぞれ暴行を加え同人等に各傷害を与えた場合は、甲、乙に対する各強盗傷人罪の併合罪となる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年8月9日 昭和26(あ)1140
登載
刑集 第5巻9号1730頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法321条,刑訴法411条,刑訴法326条,刑訴法278条,刑訴規則183条,刑法240条前段,刑法45条前段
論点90第31_2条刑事訴訟法

窃盗と賍物牙保との公訴事実の同一性の有無に関する判例違反の主張の適否―原判決言渡後の判例と刑訴法第四〇五条第二号

裁判要旨論旨は、窃盗と賍物牙保とがその日時、場所において近接し、対象となる賍物も同一である場合には、基本的事実関係は同一と解すべきであるとして旧刑訴法の適用される事件についての公訴事実の同一性に関する当裁判所の判例を挙示し、原判決は、これら判例と相反する判断をしたものであると主張しているもののようである。論旨挙示の判例中昭和二五年(れ)同二七五号同年六月三〇日第二小法廷判決は、原判決の宣告された後の判例であるから、これを除外し(なお右判決も従来の判例を変更したものではない)その他の判例に照して見ても原判決は窃盗と賍物牙保とは常に公訴事実の同一性がないとか或は犯罪の日時場所が隔つている場合には公訴事実の同一性がないとか判断したのではなく、基本的事実関係が同一でないから公訴事実の同一性がないと判断したに止まるのであるから、その理論においてはこれらの判例と相反する判断をしたことにならないのである。(昭和二五年(あ)第八四号同年二月二一日第三小法廷判決参照)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年2月6日 昭和25(あ)1851
登載
集刑 第40号245頁
参照法条
刑法235条,刑法256条2項,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法405条2号
論点91第31_2条刑事訴訟法

一 傷害罪について訴因罰条の変更を必要としない一場合
二 刑法第二〇七条と刑訴法第二五六条第四項〈公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。〉にいわゆる「罰条」

裁判要旨一 被告人と甲とが某所を通行中乙に出合い、乙が被告人に対し暴行を加えたので、甲が棍棒で乙の頭部を数回殴打した後、被告人がその棍棒を取つて乙の頭部を数回殴打し、よつて同人に二ケ月間の安静加療を要する頭蓋不全骨折脳出血の傷害を負わせたとの趣旨の公訴事実を記載し、罪名及罰条として傷害罪刑法第二〇四条と記載した起訴状をもつてする起訴に対し、前と同一の経過順序で被告人と甲とが乙に対しそれぞれ暴行を加え、乙に対し前同様の傷害を負わせたが、右は、被告人及び甲のうち何人の暴行に基因するものであるかを知ることができないとの趣旨の事実を認定し、刑法第二〇四条、第二〇七条を適用するについては、訴因罰条変更の手続を経ることを要しない。
二 刑法第二〇七条のごとき規定は、刑訴第二五六条第四項〈公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。〉にいわゆる罰条には含まれないものと解するを相当とする。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年11月30日 昭和25(あ)1538
登載
刑集 第4巻11号2453頁
参照法条
刑法204条,刑法207条,刑訴法256条1項,刑訴法256条2項,刑訴法256条3項,刑訴法312条1項2項,刑訴法256条4項
論点92第31_2条刑事訴訟法

被告人の控訴により差し戻された事件の第二次第一審裁判所が第一次第一審で否定された本位的訴因につき判決したことに違法はないとされた事例

裁判要旨本位的訴因の犯罪事実も予備的訴因の犯罪事実も同一の被害者に対する同一の交通事故に係るものであり、過失の態様についての証拠関係上本位的訴因と予備的訴因とが構成された場合において、予備的訴因に沿う事実を認定した第一審判決に対し被告人のみが控訴して破棄差戻しになつたとき、第二次第一審裁判所が本位的訴因について審理判決することは違法でない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年5月1日 昭和60(あ)249
登載
刑集 第43巻5号323頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法392条2項,刑訴法400条
論点93第31_2条刑事訴訟法

追加補正された訴因事実が有罪認定から除外された場合において,右訴因の追加補正措置につき憲法31条及び判例違反をいう主張が利益を欠くとして不敵法とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成3年10月23日 昭和63(あ)979
登載
集刑 第258号69頁
参照法条
刑訴法312条
論点94第31_2条刑事訴訟法

1 刑法218条の不保護による保護責任者遺棄罪の実行行為の意義
2 子に対する保護責任者遺棄致死被告事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
3 裁判員の参加する合議体で審理された保護責任者遺棄致死被告事件について,訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務がないとされた事例

裁判要旨1 刑法218条の不保護による保護責任者遺棄罪の実行行為は,老年者,幼年者,身体障害者又は病者につきその生存のために特定の保護行為を必要とする状況(要保護状況)が存在することを前提として,その者の生存に必要な保護行為として行うことが刑法上期待される特定の行為をしなかったことを意味する。
2 低栄養に基づく衰弱により死亡した被告人の子(当時3歳)に対する保護責任者遺棄致死被告事件について,被告人において,乳児重症型先天性ミオパチーにり患している等の子の特性に鑑みると,子が一定の保護行為を必要とする状態にあることを認識していたとするには合理的疑いがあるとして被告人を無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,第1審判決の評価が不合理であるとする説得的な論拠を示しているとはいい難く,第1審判決とは別の見方もあり得ることを示したにとどまっていて,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
3 保護責任者遺棄致死罪として起訴されて公判前整理手続に付され,検察官が,公判前整理手続期日において,公判審理の進行によっては過失致死罪又は重過失致死罪の訴因を追加する可能性があると釈明をするなどした後,裁判員の参加する合議体により審理が行われ,第1審裁判所の裁判長が,証拠調べ終了後の公判期日において,検察官に対して訴因変更の予定の有無につき釈明を求めたところ,検察官がその予定はない旨答えたなどの訴訟経緯,本件事案の性質・内容等(判文参照)に照らすと,第1審裁判所としては,検察官に対して,上記のような求釈明によって事実上訴因変更を促したことによりその訴訟法上の義務を尽くしたものというべきであり,更に進んで,検察官に対し,訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務を有するものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成30年3月19日 平成28(あ)1549
登載
刑集 第72巻1号1頁
参照法条
(1から3につき) 刑法218条,刑法219条 (2につき) 刑訴法382条,刑訴法411条1号 (3につき) 刑訴法312条,刑訴規則208条
論点95第31_2条刑事訴訟法

原判決が理由中において訴因外の共同正犯が成立するとしたことが是認できないとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成30年2月26日 平成28(あ)1869
登載
集刑 第323号1頁
参照法条
刑法60条,刑法205条,刑訴法294条,刑訴法308条,刑訴法312条,刑訴法404条
論点96第31_2条刑事訴訟法

現住建造物等放火被告事件につき,訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる放火方法を認定したことが違法とされた事例

裁判要旨現住建造物等放火被告事件につき,ガスコンロの点火スイッチを作動させて点火し,台所に充満したガスに引火,爆発させたとの訴因に対し,訴因変更手続を経ることなく,何らかの方法により上記ガスに引火,爆発させたと認定したことは,引火,爆発の原因が上記スイッチの作動以外の行為であるとした場合の被告人の刑事責任について検察官の予備的な主張がなく,そのような行為に関し求釈明や証拠調べにおける発問等もされていなかったなどの審理経過の下では,被告人に不意打ちを与えるものとして違法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成24年2月29日 平成23(あ)775
登載
刑集 第66巻4号589頁
参照法条
刑訴法312条1項,刑訴法312条2項
論点97第31_2条刑事訴訟法

1 労働基準法36条1項に基づき月単位の時間外労働の協定が締結されている場合における協定時間を超えた時間外労働と同法32条1項違反の罪
2 週単位の時間外労働の規制違反に係る訴因の特定が不十分で,その記載に瑕疵がある場合に,訴因変更と同様の手続を採ってこれを補正しようとした検察官の予備的訴因変更請求について,裁判所の採るべき措置

裁判要旨1 労働基準法36条1項に基づき月単位の時間外労働の協定が締結されている場合において,協定時間を超えた時間外労働があるときには,原則的な労働時間制の下では,始期から順次1週間について40時間の法定労働時間を超えて労働させた時間を積算し,協定時間に至るまでは協定の効力によって時間外労働の違法性が阻却されるが,これを超えた時点以後は,1週間について40時間を超える時間外労働がある各週につき同法32条1項違反の罪が成立する。
2 週単位の時間外労働の規制違反に係る訴因の特定が不十分で,その記載に瑕疵がある本件のような場合(判文参照),訴因変更と同様の手続を採ってこれを補正しようとした検察官の予備的訴因変更については,適正な訴因となるように措置した上,これを許可すべきである。
(1,2につき意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成21年7月16日 平成19(あ)1951
登載
刑集 第63巻6号641頁
参照法条
(1,2につき) 労働基準法32条1項,労働基準法36条1項,労働基準法119条1号 (2につき)刑訴法256条3項,刑訴法312条1項
論点98第31_2条刑事訴訟法

誤ってした併合罪関係にある事実についての訴因変更請求と公訴時効停止の効力

裁判要旨誤って併合罪関係にある事実を追加する内容の訴因変更請求をした場合,検察官が訴因変更請求書を裁判所に提出した時点から,その請求に係る事実について公訴時効の進行が停止する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年11月20日 平成18(あ)590
登載
刑集 第60巻9号696頁
参照法条
刑訴法254条1項,刑訴法312条1項
論点99第31_2条刑事訴訟法

業務上過失傷害事件について,第1審裁判所には検察官に対し訴因変更を促し又はこれを命ずる義務があるとした原判決には,法令違反があるが,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成15年2月20日 平成12(あ)1242
登載
集刑 第283号335頁
参照法条
刑法(平成13年法律第138号による改正前のもの)211条前段,刑訴法312条1項,刑訴法312条2項,刑訴法411条
論点100第31_2条刑事訴訟法

1 殺害の日時・場所・方法の判示が概括的で実行行為者の判示が択一的であっても殺人罪の罪となるべき事実の判示として不十分とはいえないとされた事例
2 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が明示された場合に訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することの適否
3 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が被告人と明示された場合に訴因変更手続を経ることなく実行行為者が共犯者又は被告人あるいはその両名であると択一的に認定したことに違法はないとされた事例

裁判要旨1 殺害の日時・場所・方法の判示が概括的なものである上,実行行為者の判示が「A又は被告人あるいはその両名」という択一的なものであっても,その事件が被告人とAの2名の共謀による犯行であるときには,殺人罪の罪となるべき事実の判示として不十分とはいえない。
2 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が明示された場合に,それと実質的に異なる認定をするには,原則として訴因変更手続を要するが,被告人に不意打ちを与えるものではなく,かつ,認定される事実が訴因に記載された事実に比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には,訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定しても違法ではない。
3 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が被告人と明示された場合に,訴因変更手続を経ることなく実行行為者がA又は被告人あるいはその両名であると択一的に認定したことは,訴因と認定との間で共犯者の範囲に変わりがなく,被告人が1審の審理においてAとの共謀及び実行行為への関与を否定し,実行行為者は被告人である旨のAの証言につき自己の責任を被告人に転嫁するものであると主張するなどした判示の事情の下においては,違法とはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成13年4月11日 平成11(あ)423
登載
刑集 第55巻3号127頁
参照法条
刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)60条,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)199条,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項,刑訴法312条1項,刑訴法312条2項
論点101第31_2条刑事訴訟法

全体が包括一罪を構成する業務上横領の事案について月ごとの横領金額を明示した訴因に対し一部の月の横領金額につき訴因を上回る金額を認定するに当たり訴因変更手続を経なかったことに違法はないとされた事例

裁判要旨全体が包括一罪を構成する長期間継続的に行われた業務上横領の事案について、月ごとの横領金額を明示した訴因に対し、第1審裁判所が、訴因を下回る合計横領金額を認定しつつ、横領の成立時期をより遅く認定した部分があることに伴い、一部の月の横領金額につき訴因に明示された金額を上回る金額を認定したという事情の下では、第1審裁判所が訴因変更手続を経なかったことが違法であるとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和7年10月20日 令和6(あ)1506
登載
刑集 第79巻7号321頁
参照法条
刑法(令和4年法律第67号による改正前のもの)253条、刑訴法312条1項、刑訴法312条2項
論点102第31_2条刑事訴訟法

個人として免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因と、法人の代表者として法人の業務に関し免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因との間に公訴事実の同一性が認められた事例

裁判要旨被告人が、個人として免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因と、法人の代表者として法人の業務に関し免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因とは、個人として宅地建物取引業を営んだのか、法人の業務に関し法人の代表者としてこれを営んだのかに違いがあるとしても、被告人を行為者とした同一の建物賃貸借契約を媒介する行為を内容とするものであって、公訴事実の同一性を失わない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和5年10月16日 令和3(あ)1752
登載
刑集 第77巻7号467頁
参照法条
刑訴法312条1項、宅地建物取引業法12条1項、宅地建物取引業法79条2号、宅地建物取引業法84条1号
論点103第32条刑事訴訟法

有効な上告趣意書が提出されなかつたとされた事例。

裁判要旨本件上告趣意書提出期間内である昭和四〇年一月二〇日被告人の原審弁護人酒井祝成から「上告理由書」と題する書面が提出されているけれども、本件上告は被告人自身により提起されたもので、右原弁護人が提起したものでないことおよび同人を当審における弁護人に選任する旨の弁護人選任届は、遂に提出されていないことを認めることができる。してみれば右原審弁護人により提出された上告趣意は、何ら権限のない者の提出に係り不適法であるから、本件においては、上告趣意書提出期間内に有効な上告趣意書が差し出されなかつたことに帰する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年9月22日 昭和39(あ)2533
登載
集刑 第156号673頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法376条,刑訴法32条2項
論点104第32条刑事訴訟法

被告人が上告申立をした場合における原審弁護人提出の上告趣意書の効力。

裁判要旨被告人自ら上告の申立をなした場合に、原審弁護人が上告趣意書提出期間内にその資格で上告趣意書を提出しても、右上告趣意は審理の対象とならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年7月18日 昭和36(あ)730
登載
刑集 第15巻7号1103頁
参照法条
刑訴法355条,刑訴法376条,刑訴法392条,刑訴法407条,刑訴法414条,刑訴法32条2項,刑訴規則252条
論点105第32条刑事訴訟法

国選弁護人を付された被告人が判決宣告後上訴申立てのため公判調書の閲覧を請求することの可否

裁判要旨国選弁護人を付されて審理を受けた被告人が判決宣告後に上訴申立てのため必要であるとして公判調書の閲覧を請求した場合は、刑訴法四九条〈被告人に弁護人がないときは、公判調書は、裁判所の規則の定めるところにより、被告人も、これを閲覧することができる。被告人は…〉にいう「弁護人がないとき」に当たらず、右閲覧請求は許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成4年12月14日 平成4(し)110
登載
刑集 第46巻9号675頁
参照法条
刑訴法32条2項,刑訴法49条
論点106第35条刑事訴訟法

一 刑訴法第三五条〈裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、被告人又は被疑者の弁護人の数を制限することができる。但し、被告人の弁護人につ…〉但書の特別の事情がなくなつたものと認められた事例
二 憲法第九条の立法趣旨
三 憲法第九条第二項の戦力不保持の規定の立法趣旨
四 憲法第九条はわが国の自衛権を否定するか
五 憲法はわが国が自国の平和と安全を維持しその存立を全うするための自衛の措置をとることを禁止するか
六 憲法は右自衛のための措置を国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事措置等に限定し、他国にわが国の安全保障を求めることを禁止するか
七 わが国に駐留する外国軍隊は憲法第九条第二項の「戦力」にあたるるか
八 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(以下安保条約と略す。)と司法裁判所の司法審査権
九 安保条約がいわゆる前提問題となつている場合と司法裁判所の司法審査権
一0 安保条約は一見明白に違憲と見められるか
一一 特に国会の承認を経ていない安保条約第三条〈事物管轄を異にする数個の事件が関連するときは、上級の裁判所は、併せてこれを管轄することができる。〉に基く行政協定(以下行政協定と略す。)の合憲性

裁判要旨一 刑訴規則第二五四条の跳躍上告事件において、審判を迅速に終結せしめる必要上、被告人の選任すべき弁護人の数を制限したところ、その後公判期日および答弁書の提出期日がきまり、かつ弁護人が公判期日に弁論をする弁護人の数を自主的に〇人以内に制限する旨申出たため、審理を迅速に終結せしめる見込がついたときは、刑訴第三五条〈裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、被告人又は被疑者の弁護人の数を制限することができる。但し、被告人の弁護人につ…〉但書の特別の事情はなくなつたものと認めることができる。
二 憲法第九条は、わが国が敗戦の結果、ポツダム宣言を受諾したことに伴い、日本国民が過去におけるわが国の誤つて犯すに至つた軍国主義的行動を反省し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、深く恒久の平和を念願して制定したものであつて、前文および第九八条第二項〈保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定があつたとき、又は勾留の執行停止の期間が満了したときは、検察事務官、司法警察職員…〉の国際協調の精神と相まつて、わが憲法の特色である平和主義を具体化したものである。
三 憲法第九条第二項が戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となつて、これに指揮権、管理権を行使することにより、同条第一項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起すことのないようにするためである。
四 憲法第九条はわが国が主権国として有する固有の自衛権を何ら否定してはいない。
五 わが国が、自国の平和と安全とを維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置を執り得ることは、国家固有の権能の行使であつて、憲法は何らこれを禁止するものではない。
六 憲法は、右自衛のための措置を、国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事措置等に限定していないのであつて、わが国の平和と安全を維持するためにふさわしい方式または手段である限り、国際情勢の実情に則し適当と認められる以上、他国に安全保障を求めることを何ら禁ずるものではない。
七 わが国が主体となつて指揮権、管理権を行使し得ない外国軍隊はたとえそれがわが国に駐留するとしても憲法第九条第二項の「戦力」には該当しない。
八 安保条約の如き、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査に原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする。
九 安保条約(またはこれに基く政府の行為)が違憲であるか否かが、本件のように(行政協定に伴う刑事特別法第二条が違憲であるか)前提問題となつている場合においても、これに対する司法裁判所の審査権は前項と同様である。
一0 安保条約(およびこれに基くアメリカ合衆国軍隊の駐留)は、憲法第九条、第九八条第二項および前文の趣旨に反して違憲無効であることが一見極めて明白であるとは認められない。
一一 行政協定は特に国会の承認を経ていないが違憲無効とは認められない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和34年12月16日 昭和34(あ)710
登載
刑集 第13巻13号3225頁
参照法条
刑訴法35条,刑訴規則26条,憲法前文,憲法9条1項,憲法9条2項,憲法98条2項,憲法9条,憲法73条3号,憲法76条3項,憲法81条,憲法98条,日本とアメリカ合衆国間の安全保障条約前文,日本とアメリカ合衆国間の安全保障条約1条,日本とアメリカ合衆国間の安全保障条約3条,日本とアメリカ合衆国間の安全保障条約3条に基く行政協定2条1,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約前文,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約1条,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約3条,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約3条に基く行政協定2条1,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約3条に基く行政協定に伴う刑事特別法2条
論点107第35条刑事訴訟法

1 刑訴規則27条1項ただし書にいう「特別の事情」があるとされる場合
2 3人を超える弁護人の数の許可につき刑訴規則27条1項ただし書にいう「特別の事情」があるとされた事例

裁判要旨1 事案が複雑で,頻繁な接見の必要性が認められるなど,広範な弁護活動が求められ,3人を超える数の弁護人を選任する必要があり,かつ,それに伴う支障が想定されない場合には,刑訴規則27条1項ただし書にいう「特別の事情」がある。
2 架空の減価償却費用を計上するなどして多額の所得を秘匿して法人税の納付を免れたという法人税法違反被疑事件につき,犯意,共謀等を争っている複雑な事案であること,申立人は被疑事件につき接見禁止中であり,弁護人による頻繁な接見の必要性があること,多数の関係者と弁護人が接触するなどの弁護活動も必要とされることなどの事情が認められ,3人を超える数の弁護人を選任することに伴う支障も想定されないという本件事実関係の下では,刑訴規則27条1項ただし書にいう「特別の事情」がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成24年5月10日 平成24(し)219
登載
刑集 第66巻7号663頁
参照法条
刑訴法35条,刑訴規則27条1項
論点108第35条刑事訴訟法

被疑者の弁護人の人数超過許可決定に対する刑訴法419条による抗告申立ての可否

裁判要旨被疑者の弁護人の人数超過許可決定(請求人数よりも少ない人数を指定するもの)に対しては,刑訴法419条〈抗告は、特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合の外、裁判所のした決定に対してこれをすることができる。但し、この…〉により高等裁判所に抗告の申立てをすることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成24年4月20日 平成24(し)178
登載
刑集 第66巻6号645頁
参照法条
刑訴法35条,刑訴法419条,刑訴法420条1項,刑訴法433条1項,刑訴規則27条
論点109第35条刑事訴訟法

一 裁判所法五二条一号にいう「積極的に政治運動をすること」の意義
二 裁判官が積極的に政治運動をすることを禁止する裁判所法五二条一号と憲法二一条一項
三 裁判官が積極的に政治運動をしたとされた事例
四 裁判官が積極的に政治運動をしたことがその職務上の義務に違反するとして当該裁判官に対し戒告がされた事例
五 裁判官分限事件への憲法八二条一項の適用の有無
六 民事訴訟又は非訟の手続において期日に立ち会う代理人の数を制限することの可否

裁判要旨一 裁判所法五二条一号にいう「積極的に政治運動をすること」とは、組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって裁判官の独立及び中立・公正を害するおそれがあるものをいい、具体的行為の該当性を判断するに当たっては、行為の内容、行為の行われるに至った経緯、行われた場所等の客観的な事情のほか、行為をした裁判官の意図等の主観的な事情をも総合的に考慮して決するのが相当である。
二 裁判官が積極的に政治運動をすることを禁止する裁判所法五二条一号の規定は、憲法二一条一項に違反しない。
三 裁判官が、その取扱いが政治的問題となっていた法案を廃案に追い込もうとする党派的な運動の一環として開かれた集会において、会場の一般参加者席から、裁判官であることを明らかにした上で、「当初、この集会において、盗聴法と令状主義というテーマのシンポジウムにパネリストとして参加する予定であったが、事前に所長から集会に参加すれば懲戒処分もあり得るとの警告を受けたことから、パネリストとしての参加は取りやめた。自分としては、仮に法案に反対の立場で発言しても、裁判所法に定める積極的な政治運動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言は辞退する。」との趣旨の発言をした行為は、判示の事実関係の下においては、右集会の参加者に対し、右法案が裁判官の立場からみて令状主義に照らして問題のあるものであり、その廃案を求めることは正当であるという同人の意見を伝えるものというべきであり、右集会の開催を決定し右法案を廃案に追い込むことを目的として共同して行動している諸団体の組織的、計画的、継続的な反対運動を拡大、発展させ、右目的を達成させることを積極的に支援しこれを推進するものであって、裁判所法五二条一号が禁止している「積極的に政治運動をすること」に該当する。
四 裁判官が積極的に政治運動をしたことは、裁判所法四九条所定の懲戒事由である職務上の義務違反に該当し、当該行為の内容、その後の態度等判示の事情にかんがみれば、当該裁判官を戒告することが相当である。
五 裁判官分限事件には、憲法八二条一項は適用されない。
六 民事訴訟又は非訟の手続を主宰する裁判所は、その手続を円滑に進行させるために与えられた指揮権に基づいて、期日を開く場所の収容能力、当該期日に予定されている手続の内容、裁判所の法廷警察権ないし指揮権行使の難易等を考慮して、必要かつ相当な場合には、期日に立ち会う代理人の数を合理的と認められる限度にまで制限することができる。
裁判
最高裁判所大法廷 平成10年12月1日 平成10(分ク)1
登載
民集 第52巻9号1761頁
参照法条
裁判所法49条,裁判所法52条1項,憲法21条1項,憲法82条1項,裁判官分限法2条,裁判官の分限事件手続規則7条,非訟事件手続法6条,非訟事件手続法13条,民訴法55条,民訴法148条,刑訴法35条,刑訴規則26条,刑訴規則27条
論点110第36条刑事訴訟法

判決宣告期日の直前に国選弁護人選任の請求がされた場合にその選任をしないまま判決の宣告をしたことが憲法三一条、三七条三項に違反しないとされた事例

裁判要旨被告人が判決宣告期日の二日前に私選弁護人全員を解任し、その翌日国選弁護人選任の請求をした場合において、被告人がその時期に私選弁護人を解任するのもやむを得ないとする事情がなく、裁判所が判決宣告期日に間に合うように国選弁護人を選任するのが困難であつたときは、裁判所が国選弁護人を選任しないまま判決の宣告をしても、憲法三一条、三七条三項に違反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和63年7月8日 昭和62(あ)508
登載
刑集 第42巻6号841頁
参照法条
憲法31条,憲法37条3項,刑訴法36条
論点111第36条刑事訴訟法

一 国選弁護人の解任がやむをえないとされた事例
二 被告人の国選弁護人選任請求を却下した裁判所の措置の当否と憲法三七条三項
三 国選弁護人の辞任の申出と解任の裁判の要否
四 国選弁護人の解任の裁判と事実の取調

裁判要旨一 被告人が国選弁護人を通じて正当な防禦活動を行う意思がないことを自らの行動によつて表明したものと評価すべき判示の事情のもとにおいては、裁判所が国選弁護人の辞意を容れてこれを解任してもやむをえない。
二 被告人が国選弁護人を通じて正当な防禦活動を行う意思がないことを自らの行動によつて表明したため、裁判所が国選弁護人の辞意を容れてやむなくこれを解任した場合、被告人が再度国選弁護人の選任を請求しても、被告人においてその後も判示のような状況を維持存続させたとみるべき本件においては、裁判所が右再選任請求を却下した措置は相当であり、このように解しても憲法三七条三項に違反しない。
三 国選弁護人は、辞任の申出をした場合であつても、裁判所が辞任の申出について正当な理由があると認めて解任しない限り、その地位を失うものではない。
四 国選弁護人から辞任の申出を受けた裁判所は、解任すべき事由の有無を判断するに必要な限度において、相当と認める方法により、事実の取調をすることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年7月24日 昭和51(あ)798
登載
刑集 第33巻5号416頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴法43条3項,刑訴規則1条2項
論点112第36条刑事訴訟法

私選弁護人が上告趣意書を提出し、提出期限も経過した後、裁判成立直前に、被告人が私選弁護人を解任し、国選請求をした事案(必要的弁護事件)で、国選弁護人を選任したうえ、旧私選弁護人提出の上告趣意書につき判断し、国選弁護人提出の趣意書については期限後提出にかかるものであるから判断を加えない旨の判示をし、なお当審訴訟費用は被告人負担とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年7月17日 昭和47(あ)360
登載
集刑 第185号121頁
参照法条
刑訴法36条,刑訴法181条,刑訴法386条1項1号,刑訴規則238条
論点113第36条刑事訴訟法

刑訴法第三六条〈被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しな…〉刑訴規則第二八条の合憲性

裁判要旨国選弁護人の選任に関する刑訴法第三六条、刑訴規則第二八条は憲法第三七条第三項に違反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年1月27日 昭和41(あ)666
登載
集刑 第162号13頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴規則28条
論点114第36条刑事訴訟法

任意弁護事件の第一審において判決宣告期日として指定告知された公判期日に国選弁護人の出頭がないままで弁論を再開し審理判決することは違法か

裁判要旨国選弁護人が付されている第一審において、判決宣告期日として指定告知された公判期日に、弁護人の出頭がないままで、弁論を再開し、書証の取調を行なつたのち、即日判決を宣告することは、事件がいわゆる必要的弁護事件でない場合でも、違法な措置というべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年12月27日 昭和41(あ)760
登載
刑集 第20巻10号1242頁
参照法条
刑訴法36条,刑訴法273条3項,刑訴法289条1項,刑訴法293条2項,刑訴規則211条
論点115第36条刑事訴訟法

弁護権の不法制限とならないとされた事例

裁判要旨本件記録によると、原審が、第一回公判期日を昭和四〇年九月三日と指定し、同年八月三日、国選弁護人として弁護士小野原肇を選任したが、被告人の申請により、右公判期日を同年一〇月一五日に変更し、同年九月三日、被告人が私選弁護人を選任したので、右国選弁護人を解任したところ、同年一〇月四日、被告人から、弁護人の選任、証拠の収集を理由として再び公判期日の変更申請がなされ、同月七日、右私選弁護人が辞任したが、原審は、同月一五日公判を開き、当日在廷していた前記小野原弁護士を再び国選弁護人として選任し、同弁護人請求の証拠を却下したうえ、異議なく弁論を修了したことが認められる。 このような場合には、前記私選弁護人が辞任した後、被告人において直ちに他の弁護人を選任するか、または裁判所に対し国選弁護人の選任を請求しなかつたことは、むしろ被告人の懈怠に基づくものというべきであり(昭和二四年(れ)第二三八号、同年一一月三〇日大法廷判決、刑集三巻一一号一八五七頁参照)、また、本件は、その内容がさほど複雑というけでもないのであるから、これと前記の経緯とを合わせ考えると、原審が被告人の再度の公判期日変更申請に応じなかつたことをもつて不当とするのは当らず、さらに、さきに本件について、一ケ月以上の期間被告人の国選弁護人の地位にあつた小野原弁護人としては、十分に事件の全貌を把握し得て、被告人の弁護に欠くるところのないものと信じて、直ちに証拠調を請求し、結審について別段の異議を述べなかつたものと推断するのが相当であるから、このような事情の下では、原審の手続は違法とはいえず、違憲(三七条〈左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。〉)の主張は、前提を欠く。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年11月22日 昭和40(あ)2526
登載
集刑 第161号335頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴法272条,刑訴法289条,刑訴法273条,刑訴法276条,刑訴規則177条,刑訴規則178条,刑訴規則178条の2,刑訴規則178条の4(250条)
論点116第36条刑事訴訟法

控訴審が被告人から意思の疏通を欠くとして弁護人改任の上申があつたのでさきに選任した被告人のための国選弁護人を解任し即日(控訴趣意書提出最終日経過後)新たに国選弁護人を選任し、同弁護人が異義なく弁論した場合における裁判所の措置と憲法第三七条第三項。

裁判要旨弁護人の上告趣意は控訴審の訴訟手続には、被告人が弁護を受ける権利を剥奪または制限した違法があるとして、憲法第三七条第三項違反を主張するが、記録によると、控訴審は昭和三八年六月一九日被告人のための国選弁護人として甲を選任し、同弁護人は同年七月一七日行控訴趣意書を提出している。その後にいたつて、被告人から意思の疏通を欠くとして弁護人改任の上申があつたので、控訴審は同月二五日甲弁護人を解任し、即日乙弁護人を国選弁護人に選任し、同年八月一五日の第一回公判期日には「乙弁護人は甲弁護人名義及び被告人名義の各控訴趣意書に基づき控訴の趣意を陳述し」ている。かくのごとく、乙弁護人は自ら控訴趣意書を提出していないが、控訴趣意書を提出するための最終日の変更その他格別の措置を求めておらず、右第一回公判期日においてなんら異議を留めずして弁論したことについては被告人においても異議のあつた形跡もない。かかる事実関係の下においては所論の被告人の憲法上の権利を侵したことにならないことは、当裁判所昭和三一年(あ)第三八四八号、同三二年六月一九日大法廷判決の趣旨により明白である。それ故、所論違憲の主張は理由がない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年4月9日 昭和38(あ)2460
登載
集刑 第151号11頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴規則236条,刑訴規則238条
論点117第36条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらない事例。

裁判要旨必要的弁護事件の控訴審において選任された国選弁護人の控訴趣意書には「控訴の理由なし」と記載してあつても、同弁護人は、量刑の当不当、法令適用の正誤、事実誤認の有無、訴訟手続違反の有無、刑訴第三七七条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨…〉、第三八三条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることを疎明する資料を添附しなければな…〉関係の各事項にわたり詳細に取り調べた上控訴の理由なしとしたものであり、また被告人の控訴趣意は量刑不当の主張のみであつて、原判決がこれにつき詳細に説示していることを認めることができるときは、原審の訴訟手続には違法は認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年3月30日 昭和35(あ)1562
登載
刑集 第15巻3号688頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法第36条,刑訴法298条,刑訴法388条
論点118第36条刑事訴訟法

「貧困のため弁護人を選任しえない」旨の回答は国選弁護人選任の請求となるか。

裁判要旨第一審において、裁判所より被告人に対し、弁護人を選任するや否やと照会していること明らかであり、仮に被告人よりこれに対し、貧困のため弁護人を選任しえない旨回答したことが所論の如くであつたとしても、これを以つては未だ、積極的に弁護人選任を請求したものとはなしえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和34年1月30日 昭和33(あ)1858
登載
集刑 第129号11頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴法272条,刑訴規則28条
論点119第36条刑事訴訟法

刑訴規則第一七八条が控訴審に準用される場合の処置。

裁判要旨弁護人のない事件の処理に関する刑訴規則一七八条の運用については、控訴裁判所から包括的な依頼があつたものとして第一審裁判所において被告人に確かめ、その結果を訴訟記録の送付と同時に控訴審に通知するのを適当とする。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和34年1月20日 昭和33(し)90
登載
集刑 第129号1頁
参照法条
刑訴規則178条,刑訴規則250条,刑訴法289条,刑訴法36条
論点120第36条刑事訴訟法

被告人の裁判所に対する「私選弁護人は頼まない」旨の意思表示と国選弁護人選任請求の有無の解釈

裁判要旨国選弁護人選任請求の意思も表示されておらず、またなにら理由も付されていない、被告人の裁判所に対する「私選弁護人は頼まない」旨の意思表示は、国選弁護人選任の請求とみることはできない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和32年7月17日 昭和32(あ)300
登載
刑集 第11巻7号1842頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴法289条,刑訴規則28条
論点121第36条刑事訴訟法

控訴審が被告人から国選弁護人選任の請求があつたのに、その選任を遅延し控訴趣意書差出最終日経過後に国選弁護人を選任した措置が刑訴法第三六条、憲法第三七条第三項後段違反とならない事例

裁判要旨控訴審が被告人から貧困を理由に国選弁護人選任の請求があつたのにその選任を遅延し、控訴趣意書差出最終日を経過した後に至り国選弁護人を選任した場合において、改めて同弁護人に対し控訴趣意書を提出する機会を与える措置をとらなかつたとしても、同弁護人において自ら控訴趣意書を提出するため右最終日の変更方その他格別の請求をすることなく公判期日に臨み、異議を止めず被告人提出の控訴趣意書に基いて弁論をなし、そのまま結審となつたときは、右控訴審の措置を以つて、直ちに刑訴第三六条〈被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しな…〉に違反し、憲法第三七条第三項後段により保障された被告人の権利の行使を妨げたということはできない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和32年6月19日 昭和31(あ)3848
登載
刑集 第11巻6号1673頁
参照法条
憲法37条,刑訴法36条,刑訴規則236条,刑訴規則238条
論点122第36条刑事訴訟法

必要的弁護事件において弁護人選任の請求なき場合に控訴趣意書の提出最終日を経過して国選弁護人を選任することは違憲か

裁判要旨必要的弁護人事件であつても、弁護人選任の請求がない限り、裁判所が控訴趣意書の提出最終日を経過して国選弁護人を選任しても、右手続は違憲でない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年7月29日 昭和28(あ)1707
登載
集刑 第107号1133頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴法289条,刑訴法411条1号,刑訴規則177条,刑訴規則178条,刑訴規則250条
論点123第36条刑事訴訟法

弁護人選任権の不法制限とならない一事例

裁判要旨憲法三七条三項前段所定の弁護人に依頼する権利は、被告人が自ら行使すべきもので、裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足るものであること、同条項後段の規定は被告人が貧困その他の理由で弁護人を依頼できないときは国に対して弁護人の選任を請求できるものであり、国はこれに対して弁護人を附すれば足るものであること及び同条項は被告人に対し弁護人の選任を盛況し得る旨を告知すべき義務を裁判所に負わせているものでないことは、すでに当裁判所の判例としているところである(昭和二四年(れ)二三八号同年一一月三〇日大法廷判決、集三巻一一号一八五七頁)。本件において、被告人Aは、同被告人に対する詐欺、賍物故買被告事件について、昭和二八年四月九日、盛岡地裁一関支部が言渡した判決に対し同日控訴の申立をなし即日第一審において被告人の弁護人があつた弁護人千葉参治を原審弁護人に選任したのであるが、同弁護人は同年五月一日辞任したので、原審は、同年五日二一日被告人に対して刑訴規則一七七条、一七八条の通知書及び控訴趣意書差出最終日通知書(最終日は同年六月一九日)を郵便により送達し、被告人は同年六月五日弁護人を私選する旨を回答をしたが、自己の弁護人を選任しないのみならず、国選弁護人の選任をも請求せず、適法に定められた控訴趣意書差出期間内に控訴趣意書提出をしなかつたため、原審は刑訴三八六条一項〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。〉一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉により控訴を棄却したことが、本件記録上明らかである。そして、被告人が弁護人において控訴趣意書差出期間内に控訴趣意書を提出できるような時期に弁護人を選任しなかつたことは、被告人の懈怠に基因するものであり、記録を調べても、原審が被告人の憲法三七条三項によつて保障された弁護人選任権の行使を妨げた事跡は認められない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年2月23日 昭和28(し)56
登載
集刑 第102号907頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴法272条,刑訴法289条,刑訴法376条,刑訴法386条1項1号,刑訴規則177条,刑訴規則178条(250条)
論点124第36条刑事訴訟法

刑法四一一条にあたらない事例 ―控訴審における請求による国選弁護人選任の時期―

裁判要旨被告人が控訴趣意書最終提出日(昭和二七年一一月一〇日)の国選弁護人の選任の請求をした場合、原審が第一回公判期日当日(昭和二八年二月一七日)に至つてはじめて弁護人を国選としたとしても、その弁護人が異議なく被告人提出の控訴趣意書に基いて弁論した場合には刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきものとは認められない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年11月30日 昭和28(あ)1303
登載
刑集 第8巻11号1898頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法36条
論点125第36条刑事訴訟法

一 憲法第三七条第三項前段と刑訴規則第一七八条により裁判所のなす弁護人選任の照会手続
二 控訴趣意書の提出期限に近接してなされた弁護人選任の請求と憲法第三七条第三項

裁判要旨一 刑訴規則第一七八条により裁判所のなす弁護人選任の照会手続は、憲法第三七条第三項前段の要請にもとずくものでない。
二 被告人による弁護人選任の請求がその責に帰すべき事由により控訴趣意書の提出期限に近接していて、期間内に控訴趣意書を提出できるような適当な時期になされなかつた場合には、たとえ裁判所が控訴趣意書の提出期限後に弁護人を選任したとしても、憲法第三七条第三項によつて保障された権利の行使を妨げたものとはいえない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和28年4月1日 昭和25(あ)2153
登載
刑集 第7巻4号713頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴法272条,刑訴法289条,刑訴規則177条,刑訴規則178条,刑訴規則250条
論点126第36条刑事訴訟法

弁護士は資格のある弁護人か

裁判要旨国選弁護人は、裁判所がその所在地に在る弁護士の中から、特に明らかに不適当な事情のない限り、何人かを選任すれば足りるのであつて各選任毎にその弁護人の実質的な能力責任感の強弱等を調査する責務を負担するものとは解されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年12月15日 昭和27(あ)5113
登載
集刑 第89号317頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法272条,刑訴法36条,刑訴規則177条
論点127第36条刑事訴訟法

控訴趣意書提出期間経過後に弁護人が国選された場合と憲法第三七条第三項

裁判要旨本件につき原審訴訟記録をみれば、裁判所から被告人に弁護人を選任するかどうかの問合せをした旨の記載なく、控訴趣意書提出の最終日たる昭和二六年一二月七日を経過して公判期日の二日前たる昭和二七年二月九日に至り始めて弁護人が国選されていること所論のとおりであるが、弁護人は公判期日に出頭して被告人提出の控訴趣意書に基いて弁論し、異議なく弁論を終了したことが認められる。このような場合には憲法三七条三項の違背があるといえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年8月5日 昭和27(あ)1938
登載
集刑 第67号59頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴法289条,刑訴法391条
論点128第36_2条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立と上訴権回復に関する規定の準用の有無

裁判要旨上告棄却決定に対する異議申立については、上訴権回復に関する規定の準用がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年4月7日 昭和57(す)19
登載
刑集 第36巻4号556頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法385条2項,刑訴法386条2項,刑訴法414条
論点129第36_2条刑事訴訟法

在監者が付審判請求事件についてされた抗告棄却決定に対し特別抗告申立書を差し出す場合と刑訴法三六六条一項の準用の有無(消極)

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年9月5日 昭和54(し)88
登載
集刑 第215号271頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法362条1項,刑訴法433条
論点130第36_2条刑事訴訟法

上訴権回復請求及び異議申立を一つの決定で棄却した例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年7月3日 昭和54(す)145
登載
集刑 第215号17頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法428条
論点131第36_2条刑事訴訟法

訴訟費用執行免除申立権の回復請求の適否

裁判要旨訴訟費用執行免除申立権の回復請求は不適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年7月2日 昭和54(す)113
登載
刑集 第33巻5号397頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法500条
論点132第36_2条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する上訴権回復の請求が棄却された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和52年4月8日 昭和52(す)68
登載
集刑 第203号555頁
参照法条
刑訴法362条
論点133第36_2条刑事訴訟法

特別抗告についての上訴権回復請求を棄却する場合と特別抗告棄却の権能

裁判要旨特別抗告についての上訴権回復請求を受理した裁判所は、これを棄却する場合には、刑訴法三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉、四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉を類推適用して、右請求と同時にされた特別抗告の申立を自ら棄却することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年6月21日 昭和48(し)22
登載
刑集 第27巻6号1197頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法375条,刑訴法414条,刑訴法433条
論点134第36_2条刑事訴訟法

刑訴法第三六一条〈上訴の放棄又は取下をした者は、その事件について更に上訴をすることができない。上訴の放棄又は取下に同意をした被告人も、同様…〉の合憲性

裁判要旨上訴の放棄または取下をした者は、その事件についてさらに上訴をすることができないものとしている刑訴法第三六一条が違憲でないことは、昭和二四年(つ)第九六号同二五年四月二一日大法廷決定(刑集四巻四号六七五頁)の趣旨に徴し明らかである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年7月22日 昭和42(し)38
登載
集刑 第163号1119頁
参照法条
刑訴法361条,刑訴法362条
論点135第36_2条刑事訴訟法

上訴権回復請求が認められた事例。

裁判要旨上訴申告書が上訴申立期間の最終日に速達郵便に付され、該郵便物が法令上即日管轄裁判所に配達さるべき時間内に配達受持局に到達したにもかかわらず、翌日配達された場合、右期間の徒過は、上訴権者又はその代人の責に帰することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年7月17日 昭和39(し)30
登載
刑集 第18巻6号399頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法411条1号,郵便法60条,郵便規則100条1項,郵便規則100条2項,昭和38年12月28日郵業6633号仙台郵政局郵務部長通達
論点136第36_2条刑事訴訟法

一 判決宣告手続に違法がある場合と上訴提起期間の起算点
二 控訴申立書と題する書面の意思解釈―上訴権回復の請求の意思表示をも含むと解された事例
三 自己又は代人の責に帰すべからざる事由によつて上訴権の行使を妨げられたと認められた事例

裁判要旨一 被告人が公判期日に出頭しなければ、判決の宣告ができない事件につき、被告人不出頭のまま判決の宣告をした瑕疵があつても、上訴提起期間は判決宣告の日から進行する。
二 右の場合において、控訴申立書と題する書面に、被告人が判決宣告の翌日判決通知書を受けた旨並びに右判決に不服を申し立てるについては上訴権回復の請求に関する刑訴法第三六二条ないし第三六五条〈上訴権回復の請求があつたときは、原裁判所は、前条の決定をするまで裁判の執行を停止する決定をすることができる。この場合には…〉をも理由とする旨の記載があるときは、右申立書は本来の控訴の申立のほかに、もし控訴申立書が法定の期間内に裁判所に到達しなければ、上訴権回復の請求をする旨の意思表示をも含むものと解すべきである。
三 右一の場合において、被告人が宣告の日の翌日判決の通知を受けたときは、その通知が被告人に到達するまでは被告人自身又は代人の責に帰すべからざる事由によつて上訴権の行使を妨げられていたものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年10月31日 昭和37(し)50
登載
刑集 第17巻11号2391頁
参照法条
刑訴法285条2項,刑訴法286条,刑訴法358条,刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法411条1号,罰金等臨時措置法7条2項,罰金等臨時措置法3条1項各号
論点137第36_2条刑事訴訟法

一、刑訴法第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉所定の申立人の代人に該当するとされた事例
二、いわゆる判決通知と上訴権回復事由
三、刑訴規則第二二二条と控訴審への準用の有無

裁判要旨一、原決定において、申立人が上告申立の手続を依頼したAは、刑訴三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉所定の申立人の代人に該当するとしたのは相当である(後記註参照)。
二、刑訴規則第二二二条所定の判決結果の通知がなされなかつたという一事をもつては、上訴権回復請求の理由とならないことは当裁判所の判例(昭和二九年(し)第三号昭和二九年九月二一日第三小法廷決定、最集八巻九号一五一四頁)である。
三、刑訴規則第二二二条の規定は、控訴審には準用がないことも当裁判所の判例(昭和二七年(し)第四二号昭和三三年五月二六日第一小法廷決定、集一二巻八号一六二一頁)である。
註。本件は控訴棄却の判決宣告があつたので申立人は上告申立の手続を訴訟手続の実務に明るいと自称する知人Aに依頼して置いたところ右Aが上告申立をしても無駄だ等と思い且つ刑訴規則を誤解したため法廷期間内に上告の申立ができなかつた事案である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年10月9日 昭和37(し)34
登載
集刑 第144号771頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法284条,刑訴法285条,刑訴規則222条,刑訴規則250条
論点138第36_2条刑事訴訟法

訴訟費用の負担を命ずる裁判の執行免除の申立期間経過後の申立権回復請求。

裁判要旨訴訟費用の負担を命ずる裁判の執行免除の申立期間経過後の申立権回復請求は不適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年7月13日 昭和36(す)239
登載
刑集 第15巻7号1082頁
参照法条
刑訴法500条,刑訴法362条
論点139第36_2条刑事訴訟法

刑訴法第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉の合憲性

裁判要旨刑訴第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉が代人の過失によつて上訴期間を徒過した場合上訴権回復の請求権がないものとしたのは、違憲でない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年6月7日 昭和36(し)22
登載
刑集 第15巻6号956頁
参照法条
憲法32条,刑訴法362条
論点140第36_2条刑事訴訟法

上訴権回復請求の事由にあたらない事例。

裁判要旨刑訴三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉にいわゆる「責に帰することができない事由」とは、上訴不能の事由が上訴権者またはその代人の故意または過失にもとずかないことをいうものであり(昭和三一年七月四日第一小法廷決定、刑集一〇巻七号一〇一五頁参照)、所論の如く、当裁判所の裁判宣告期日の通知及び裁判宣告の行われた当時被告人が欧米諸国に旅行中であつたがため裁判宣告の行われた事実を知らず、従つて法廷の期間内に不服の申立をすることができなかつたことは、これに該当する事由にならないことが明らかである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和35年9月14日 昭和35(す)198
登載
集刑 第135号327頁
参照法条
刑訴法362条
論点141第36_2条刑事訴訟法

一 刑訴第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉にいわゆる「責に帰することができない事由」の意義
二 上訴権回復請求の許されない一事例

裁判要旨一 刑訴第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉にいわゆる「責に帰することができない事由」とは、上訴不能の事由が上訴権者またはその代人の故意または過失にもとづかないことをいうものである。
二 被告人が刑訴第三八六条第一号〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。 第三百七十六条第一項に定める期間内に控訴趣意書を差し出さないとき。〉の規定による控訴棄却決定の送達を受けた当時病床にあり、医師より絶対安静を命ぜられていたために異議の申立をすることができなかつたというような事由は、被告人の責に帰することができない事由とはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年7月4日 昭和31(し)29
登載
刑集 第10巻7号1015頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法386条,刑訴法422条,刑訴法428条
論点142第36_2条刑事訴訟法

刑訴法第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉に該当しない一事例

裁判要旨原決定が「所論主張のような事由により錯誤に陥り正式裁判の申立をしなかつたとしても、単に検察官の一片の言辞を軽信し失格問題は起らないものと解し略式命令の当選に及ぼす効果について何等の調査もしなかつたのは明かに過失たるを免れないから、かような事由は刑訴三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉に該当しないものといわねばならない」とした判断は正当であり、従つて所論違憲論は前提において失当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年5月1日 昭和31(し)19
登載
集刑 第113号437頁
参照法条
刑訴法362条
論点143第36_2条刑事訴訟法

一 裁判宣告期日における被告人の不出頭と上訴期間の起算点 ―いわゆる判決通知との関係―
二 いわゆる判決通知と上訴権回復事由

裁判要旨一 原判決の示すところによれば、控訴審が、被告人に第一回公判期日の召喚状を適法に送達したところ、被告人がその公判期日に出頭しなかつたので、そのまま開廷審理の上結審し判決宣告期日を指定告知し、さらにその宣告期日にも被告人が出頭しないのでそのまま判決を宣告したというのであつて、かかる場合判決の宣告は被告人に対し効力を生じ、上訴期間は判決の通知をまたずその翌日より進行すると解すべきこと、大審院以来また当裁判所においても裁判の趣旨とするところであり、新刑訴法の解釈としても、なおこれを変更するの要を認めない。(昭和二四年(れ)第九八六号同年六月七日第三小法廷判決、集三巻七号九五三頁参照)
二 刑法起訴二二二条〈第九十九条第一項、第百条、第百二条、第百三条から第百五条まで、第百十条、第百十条の二前段、第百十一条第一項前段及び第二項…〉の判決の通知は、第一審における被告人が本来公判期日に出頭すべき義務があるにかかわわず、刑訴二八四条〈五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、五万円)以…〉が所定の軽微な事件につき特にその義務を免除したのに対応し、被告人のためを慮つた特別の規定に過ぎないのであつて、この規定があるからといつて、そのため被告人が右通知を受けた時から上訴期間が進行するものではなく、通常の場合と同じく判決言渡の時から進行するのであり、被告人自ら起訴進行の状態を知る手段を講ずることを要することも変りないのである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年9月21日 昭和29(し)3
登載
刑集 第8巻9号1514頁
参照法条
刑訴規則220条,刑訴規則222条(250条),刑訴規則222条(250号),刑訴法362条
論点144第36_2条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例

裁判要旨記録を調べて見ると、原審判決は、第一審判決において有罪とされた犯罪事実のうち、所論の部分を除外し、なんらの判断をせず、その余の部分についてのみ有罪とし刑を言い渡したことは所論のとおりである。しかし、原判決が第一審判決認定の有罪事実より除外した部分は、有罪とされなかつたのであるから、被告人にとつて利益であるばかりでなく、この部分は、原判決において無罪の判示がなかつたとはいえ、一たん公訴犯罪事実として、第一審の審判を受け、次で控訴審の審理を経て、有罪事実より除外された以上、この部分について、被告人は再び起訴されることはない訳である。従つて、本件については、刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用して原判決を破棄すべきものとは認められない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年3月18日 昭和26(れ)2407
登載
刑集 第6巻3号498頁
参照法条
旧刑訴法360条,旧刑訴法362条,刑訴法411条,憲法39条
論点145第36_2条刑事訴訟法

控訴審の弁護人として選任された弁護士は、控訴申立に関しては刑訴法第三六二条にいわゆる被告人の代人か

裁判要旨控訴審の弁護人として選任された弁護士は控訴申立に関しては刑訴三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉にいわゆる被告人の代人と解すべきものである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年10月31日 昭和27(し)2
登載
集刑 第68号849頁
参照法条
刑訴法362条
論点146第36_2条刑事訴訟法

高等裁判所のした控訴棄却の決定に対する異議申立期間と上訴権回復の規定の準用

裁判要旨高等裁判所がした控訴棄却の決定に対し、自己又は代人の責に帰することができない事由により所定の期間内に異議の申立をすることができなかつた場合には、上訴権の回復の規定の準用がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年10月6日 昭和26(し)57
登載
刑集 第5巻11号2177頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法386条1項,刑訴法386条2項,刑訴法385条,刑訴法428条2項
論点147第36_2条刑事訴訟法

少年法上の保護処分決定に対する上訴権回復請求棄却決定及び抗告棄却決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件において刑訴法の特別抗告に関する規定(刑訴法433条〈この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に…〉、434条〈第四百二十三条、第四百二十四条及び第四百二十六条の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、前条第一項の抗告につい…〉、426条1項〈抗告の手続がその規定に違反したとき、又は抗告が理由のないときは、決定で抗告を棄却しなければならない。〉)を類推適用して処理した事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成9年9月8日 平成9(し)145
登載
集刑 第271号205頁
参照法条
少年法32条,少年法33条,少年法35条,刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法364条,刑訴法433条,刑訴法434条,刑訴法426条1項
論点148第36_2条刑事訴訟法

異議申立権の回復請求が棄却された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成4年2月25日 平成4(す)14
登載
集刑 第260号181頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法385条2項,刑訴法414条
論点149第36_2条刑事訴訟法

訴訟費用執行免除申立権の回復請求の適否

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成3年6月6日 平成3(す)79
登載
集刑 第258号1頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法500条
論点150第36_3条刑事訴訟法

一 いわゆる準新事件の公訴時効とその中断
二 同事件につき上告趣意書提出最終日の指定がなされその通知書が上告人に送達されたときは公訴時効中断の効力を生ずるか。
三 同事件につき上告審で公訴時効が完成した場合の措置。

裁判要旨一 本件のように昭和二三年二月一九日公訴が提起され同二六年六月一九日原判決の言渡があつた事件においては、刑訴施行法第二条、第三条の二より、公訴の時効、その中断等については、旧刑訴第二八一条〈証人については、裁判所は、第百五十八条に掲げる事項を考慮した上、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き必要と認めるときに…〉、第二八五条〈拘留に当たる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告…〉等旧刑訴の適用を受けるものであつて、刑訴第二五四条〈時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める…〉等の適用を受けるものではない。
二 右事件につき上告趣意書提出最終日の指定がなされその通知書が上告人に送達されたときは、旧刑訴第二八五条の公判の処分があつたものとして、公訴時効中断の効力を生ずる。
三 同事件につき上告審において公訴の時効が完成したときは、刑訴施行法第二条、第三条の二、刑訴第四一一条第五号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。〉を準用し、原判決を破棄の上、旧刑訴第四四八条〈再審の請求が理由のあるときは、再審開始の決定をしなければならない。〉、第四五五条〈非常上告をするには、その理由を記載した申立書を最高裁判所に差し出さなければならない。〉、第三六三条第四号〈上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。〉により被告人を免訴すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和35年6月9日 昭和29(れ)10
登載
刑集 第14巻7号953頁
参照法条
刑法130条,刑訴施行法2条,刑訴施行法3条の2,刑訴法411条5号,旧刑訴法281条,旧刑訴法285条,旧刑訴法363条4号,旧刑訴法448条,旧刑訴法455条
論点151第36_3条刑事訴訟法

公訴時効完成により刑訴法第四一一条により免訴を言渡した一事例

裁判要旨贈賄の事実については、原判決の言渡後、本件を当裁判所が受理した昭和三一年六月二二日までに既に三年以上経過し、しかも、その間公訴時効の中断の事実のないことは記録上明らかであるので、右の罪に対する公訴の時効が完成したものであるから、共に被告人に免訴の言渡をすべきであつて、この点において原判決は破棄を免れない。よつて、刑訴施行法二条、三条の二、刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉により、原判決破棄の上、旧刑訴四四八条〈再審の請求が理由のあるときは、再審開始の決定をしなければならない。〉、四五五条〈非常上告をするには、その理由を記載した申立書を最高裁判所に差し出さなければならない。〉、三六三条三号〈上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。〉、四号により被告人を免訴すべきものとする。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年9月14日 昭和31(れ)8
登載
集刑 第114号695頁
参照法条
刑法198条,刑訴法411条5号,旧刑訴法281条5号,旧刑訴法363条4号
論点152第36_3条刑事訴訟法

刑訴応急措置法第一七条による再上告事件と大赦

裁判要旨刑訴応急措置法一七条による高裁が上告審としてした判決に対する再上告事件においては、再上告により判決の確定を妨げる効力を有しないものであること同条第二項の規定により明白であり、従つて、原判決は、その性質上判決においてした法律、命令等が憲法に適合するかしないかについての判断を除くのほか被告事件に対しては確定力を生じた確定判決であつて、たゞ当該判断に対する再上告がその理由があり、しかも、判決に影響を及ぼす場合に限り、その確定力が破棄され、審級に従い更らに審判する状態に復帰せしめられるに過ぎないものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年2月19日 昭和27(れ)81
登載
刑集 第7巻2号299頁
参照法条
臨時物資需給調整法1条,臨時物資需給調整法4条,繊維製品配給消費統制規則9条,刑訴応急措置法17条,昭和27年政令117号,大赦令1条88号,旧刑訴法363条3号
論点153第36_3条刑事訴訟法

刑訴応急措置法第一七条による再上告事件と大赦

裁判要旨生糸等ノ数量報告等ニ関スル件(昭和二〇年商工省令農林省令第一号)違反被告事件の上告審判決に対し、刑訴応急措置法第一七条によりさらに上告を申し立て該事件が最高裁判所に係属中右被告事件について大赦があつた場合には、これを理由に免訴の判決をすべきものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月4日 昭和23(れ)1962
登載
刑集 第6巻11号1288頁
参照法条
生糸等ノ数量報告等ニ関スル件(昭和20年商工省令農林省令1号),刑訴応急措置法17条,昭和27年政令117号大赦令1条55号,旧刑訴法363条3号
論点154第36_3条刑事訴訟法

憲法第三九条前段の「既に無罪とされた行為については刑事上の責任を問われない」の法意

裁判要旨また憲法第三九条前段に「既に無罪とされた行為については刑事上の責任を問われない」というのは、所論のように行為時の法令によれば有罪であつたものが裁判時の法令に従えば無罪である行為につき刑事上の責任を問われないという趣旨ではなく、既に無罪の裁判のあつた行為については再び刑事上の責任を問われないという趣旨であるから、原判決はこの規定に抵触するところはない。論旨は、憲法第三九条前段後半を右のように解するときは、行為時の法令によれば有罪であつた行為がその後、法令の変更によつて裁判時には無罪とされる場合につき憲法の規定を欠くに至ると非難するけれども、この場合については憲法は自ら規定することなく、これを刑法、刑訴法等の法令の規定するところに委ねているものと解されるのであるから、右の非難はあたらない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和26年5月30日 昭和23(れ)1961
登載
刑集 第5巻6号1205頁
参照法条
憲法39条,旧刑訴法363条2号
論点155第36_3条刑事訴訟法

繊維製品の指定に関する告示の廃止および衣料品配給規則の一部施行停止と従前の行為の可罰性

裁判要旨繊維製品の指定に関する商工省告示の廃止および衣料品配給規則の一部施行停止は、その廃止または施行停止以前に行われた違反行為の可罰性に何らの影響を与えるものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年4月10日 昭和25(れ)1781
登載
刑集 第5巻5号835頁
参照法条
臨時物資需給調整法附則2項,旧刑訴法363条
論点156第36_3条刑事訴訟法

衣料品配給規則第三条(昭和二二年商工省第二五号)昭和二二年商工省告示第五八号の廃止と刑の廃止

裁判要旨被告人の所為に対し適用した衣料品配給規則第三条(昭和二二年商工省令第二五号)昭和二二年商工省告示第五八号は、臨時物資需給調整法に基いて制定せられたものであり、同法が所謂限時法の性格を有することは、同法第一条及び同法附則三項の規定によつて明確でわるから、右告示の廃止は旧刑訴第三六三条二号〈上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。〉にいわゆる「犯罪後ノ法令ニ因リ刑ノ廃止アリタルトキ」に該当しないものと解するを正当とすることは当裁判所昭和二三年(れ)第八〇〇号同二五年一〇月一一日言渡した大法廷判決(判例集四巻一〇号一九七二頁以下)の趣旨に照らし明らかである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年3月23日 昭和24(れ)2240
登載
刑集 第5巻4号622頁
参照法条
臨時物資需給調整法1条,衣料品配給規則3条(昭和22・商工省令25号)昭和22年商工省告示58号,旧刑訴法363条2号
論点157第36_3条刑事訴訟法

昭和二四年一二月一日農林省令第一一五号による食糧管理法施行規則の一部改正との刑の廃止

裁判要旨しかし、主要食糧を決定の除外理由なくして輸送することを禁止する法規範を定めた食糧管理法施行規則第二三条の七(その後二九条〈前二条の規定により被告人を代表し、又は代理する者がないときは、検察官の請求により又は職権で、特別代理人を選任しなければな…〉)の規定は、本件犯行の昭和二二年八月二九日及び同月三〇日当時においては勿論、現在でも尚厳として存在する。ただ本件犯罪成立後昭和二四年一二月一日公布農林省令一一五号によつて食糧管理法施行規則第二九条の一部は改正せられ、本件犯罪の目的物と同種類の馬齢薯が主要食糧から除かれ、従つて馬齢薯については同年同月同日以後輸送しても差支えなくなつただけである。それは例えば通貨偽造罪成立後当該種類の通貨だけが法令によりその通貨としての強制通用力を失い、又は収賄罪成立後当該公務員の官職だけが法令により廃止されても犯罪の成立に影響のないのと同じである。されば、右省令は、既に成立した主要食糧輸送禁止違反の犯罪に対する刑罰を廃止したものとはいえないから、所論は採用できない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月22日 昭和24(れ)2471
登載
刑集 第5巻4号613頁
参照法条
食糧管理法施行規則(昭和24・12・1農林省令115号により一部改正)29条,旧刑訴法363条2号
論点158第36_3条刑事訴訟法

昭和二一年一〇月二四日物価庁告示第一三七号(度量器、計算器等)の廃止と刑の廃止

裁判要旨昭和二一年一〇月二四日物価庁告示第一三七号が昭和二四年八月一五日限り廃止されたことは所論のとおりであるが、物価統制令第三条違反の行為があつた後に同令に基く統制額指定の告示が廃止されても旧刑訴第三六三条〈上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。〉にいわゆる「犯罪後ノ法令ニ依リ刑ノ廃止アリタルトキ」に当らないことは当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第八〇〇号第二五年一〇月一一日大法廷判決参照)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年2月9日 昭和25(れ)1474
登載
集刑 第40号419頁
参照法条
旧刑訴法363条3号,昭和25年10月24日物価庁告示137号
論点159第36_3条刑事訴訟法

一 昭和二二年四月四日物価庁許可第一六号による青表の例外許可価格制定の趣旨と正規のルート以外の取引に対する右価格適用の有無
二 青表の販売価格の統制額に関する告示の廃止と刑の廃止

裁判要旨一 昭和二二年四月四日物価庁許可第一六号による青表の例外許可価格は同庁長官が物価統制令第三条第一項但書に基づき、A協会及びB農業会の申請を容れ、青表のその当時における需給関係と取引の実情とに鑑み、品物を正規のルートに乗せる為め特定の取引に限つてこれを適用する目的を以つて、真に例外的に許可したものと解すべきである。然るに、本件は正規ルートを経ない闇取引であつて、而も被告人は右協会や農業会とは何等の関係がなく、又本件取引の当事者において別に右規定による許可を受けた事実も認められないから、これに、前記のような特殊の見地から例外的に許可せられた価格の適用があるとの所論には、たやすく賛同することができない。
二 本件犯行後、青表の販売価格の統制額が、物価庁告示の数次の改廃により幾度か改正せられた後、昭和二五年一月一〇日同庁告示第七四号を以つて遂に廃止せられることに至つたことは所論の通りである。しかし、このように、統制額を指定した告示が廃止せられたからとて、これを以つて旧刑訴法第三六三条第二号所定の場合ということができないことは、さきに当裁判所が判例として示した通りであつて(昭和二三年(れ)第八〇〇号、同二五年一〇月一一日大法廷判決参照)論旨は採用することができない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年2月2日 昭和25(れ)972
登載
集刑 第40号103頁
参照法条
物価統制令3条1項,昭和21年9月2日物価庁告示43号,昭和22年4月4日物価庁許可16号,旧刑訴法363条,昭和25年1月10日物価庁告示74号
論点160第36_3条刑事訴訟法

恐喝罪として起訴された事実を暴力行為等処罰に関する法律違反と認定する場合と公訴の時効

裁判要旨検事が犯行後三年五月を経過したときに恐喝罪として公訴を提起した公訴事実を、裁判所が暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉に該当する所為と認めるときは、被告人に対し公訴の時効が完成したものとして免訴の言渡をなすべきものである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年12月25日 昭和26(れ)1984
登載
刑集 第5巻13号2623頁
参照法条
旧刑訴法281条,旧刑訴法363条,刑法249条,暴力行為等処罰に関する法律1条
論点161第36_3条刑事訴訟法

一 犯意の成立と違法の認識
二 物価統制令第三条第一項違反の罪につき犯罪後統制額が取引価格より高価に改正指定された場合と刑の廃止

裁判要旨一 原判決は、弁護人の「当時被告人において進駐軍の許可があり違法でないものと信じていたものであるから、犯意を欠き罪とならないものである旨」の主張に対し、所論のごとく当時被告人は判示超過価格による精米の売買につき違法の認識を有しなかつたと断じながら右は通常人としての注意を著しく欠き判示超過価格による精米の売買が法律上許容されたものであると信じたことにつき明らかに過失があるものというべきであるから、被告人に犯意がなかつたものとして物価統制令違反の罪責を否定することは到底できないと説示したことは所論のとおりである。
しかし、犯意があるとするためには犯罪構成要件に該当する具体的事実を認識すれば足り、その行為の違法を認識することを要しないものである(昭和二四年(れ)第二二七六号同二五年一一月二八日第三小法廷判決刑事判例集四巻一二号二四六三頁、昭和二五年(れ)第一三三九号同年一二月二六日同小法廷判決同判例集二六二七頁以下参照)。
二 しかし、物価統制令四条に基き指定された統制額違反の犯罪については、行為当時の告示によるべきものである。従つて、犯罪当時の統制額を指定した告示がその後屡々改正され、行為当時の売渡価格よりも高価に指定されるに至つても、既に成立した犯罪の刑罰を廃止するものではないから、所論は採用し難い。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年11月15日 昭和24(れ)1694
登載
刑集 第5巻12号2354頁
参照法条
刑法38条,物価統制令3条1項,旧刑訴法363条2号
論点162第36_3条刑事訴訟法

民法改正前における分家同意書の偽造、行使罪の処罰可能と憲法第一一条

裁判要旨一 原判決の確定したところによれば、被告人は昭和一九年六月末頃私文書である戸主Aの分家同意書を偽造、行使したというのである。そして、既に成立したかかる私文書偽造、行使罪を免訴とすべき憲法規定は存しないのであるから、所論は採用し難い。(弁護人沖田誠の上告趣意書)
二 本件は封建的旧民法の戸主権を極端に認容した非民主的思想に重点を置いた判決であつて、現在家族制度は廃止され、戸主権はないのであるから、仮りに戸主の同意書を無断で作つて分家したとしても何人の権益をも侵さないのは勿論の事で、かくの如き事実を以て被告人を有罪と断定するは、憲法に保証された被告人の基本的人権を侵害する不当の判決と云わなければならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年10月4日 昭和26(れ)1044
登載
集刑 第54号135頁
参照法条
刑法159条,旧刑訴法363条2号,旧刑訴法161条,憲法11条
論点163第36_3条刑事訴訟法

一 物価統制令は限特法である
二 統制額を指定した行政官庁の告示の廃止は「刑の廃止」となるか
三 原審訴訟手続に違法があるとの事由は適法な飛躍上の告理由となるか

裁判要旨一 物価統制令は、その第一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉に規定するごとく「終戦後ノ事態ニ対処シ物価ノ安定確保シ以テ社会経済秩序ヲ維持シ国民生活ノ安定ヲ図ルヲ以テ目的トス」るものであつて、終戦後という一時的異常な時態に対処するための法規であつて、かかる異常な社会状勢が終熄して経済事態が常態に復したときは、早晩廃止さるべき運命にある法規であることは、同条の規定するところによつて明らかである。即ち、いわゆる限時法性格を具有する法規である。
二 物価統制令自体の問題でなく、これにもとずく行政官庁の告示の廃止の場合のごときは、ある特定の品目に対する統制額廃止の結果として、統制違反の行為が必然的に罪とならなくなるというに過ぎないのであつて、かかる法規違反の行為を以て自今これを罪とせず、若しくは処罰せずとの法的確信にもとずいて、「刑ノ廃止」が行われるのではないのである。旧事情下においては反社会性を有つものとせられたその違反行為の可罰性に関する価値判断は告示廃止の後においても依然として異るところはないのである。
三 本件は旧刑訴法第四一六条第一号によつて、第一審判決に対し、上告の申立(いわゆる飛躍上告)をしたものであるが、同条同号によれば「被告事件ノ事実ニ付法令ヲ適用セズ又ハ不当ニ法令ヲ適用シタルコトヲ理由トスルトキ」すなわち原判決の事実の確定について争わず、その確定された事実に対する擬律上の違法を主張するときに限り、上告をすることができるのである。しかるに、論旨は原判決は、公判において為した証拠調の請求に対して決定をしなかつた違法があるというのであつて、畢竟、原判決の事実確定の手続に関して違法があると主張するに帰し原判決によつて確定された事実に対する法規適用上の違法を主張するものでない、から飛躍上告適法の理由とすることはできない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和25年10月11日 昭和23(れ)800
登載
刑集 第4巻10号1972頁
参照法条
物価統制令1条(昭22・4・勅令133号改正前のもの),旧刑訴法363条2号,旧刑訴法416条1号
論点164第36_3条刑事訴訟法

1 旧刑訴法適用事件につき再審が開始された場合,その対象となった判決の確定後に刑の廃止又は大赦があったときは,再審開始後の審判手続において免訴に関する規定の適用を排除して実体判決をすることができるか
2 旧刑訴法適用事件についての再審開始後の審判手続において,被告人は免訴判決に対し無罪を主張して上訴することができるか
3 旧刑訴法適用事件について再審が開始され,第1審判決及び控訴審判決が言い渡されて更に上告に及んだ後に,当該再審の請求人が死亡しても,再審の手続が終了しない場合

裁判要旨1 旧刑訴法適用事件について再審が開始された場合,その対象となった判決の確定後に刑の廃止又は大赦があったときは,再審開始後の審判手続においても,同法363条2号,3号の適用を排除して実体判決をすることはできず,免訴判決が言い渡されるべきである。
2 旧刑訴法適用事件についての再審開始後の審判手続においても,被告人は免訴判決に対し無罪を主張して上訴することはできない。
3 旧刑訴法適用事件について再審が開始されて第1審判決及び控訴審判決が言い渡され,更に上告に及んだ後に,当該再審の請求人が死亡しても,同請求人が既に上告審の弁護人を選任しており,かつ,同弁護人が引き続き弁護活動を継続する意思を有する限り,再審の手続は終了しない。
(1,2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年3月14日 平成19(れ)1
登載
刑集 第62巻3号185頁
参照法条
(1,2につき)旧刑訴法363条2号,旧刑訴法363条3号 (1,3につき)旧刑訴法511条 (1につき)旧刑訴法485条6号 (2につき)旧刑訴法400条
論点165第37条刑事訴訟法

判決言渡期日として適法な呼出を受けた私選弁護人が右期日に出頭しない場合に、裁判所が国選弁護人を選任し弁論を再開して事実の取調をなし、判決を言い渡すことの適否。

裁判要旨私選弁護人が判決言渡期日として適法な呼出を受けながら右期日に出頭しない場合に、裁判所が国選弁護人を選任し、弁論を再開して事実の取調べをした上、判決言渡をしたとしても、右手続に違法があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年12月15日 昭和36(あ)2207
登載
集刑 第140号475頁
参照法条
刑訴法289条,刑訴法313条1項,刑訴法37条5号,刑訴規則216条1項
論点166第37_2条刑事訴訟法

控訴趣意書を控訴申立をした検察庁の検察官が作成しこれを控訴裁判所に対応する検察庁の検察官が提出することの適否

裁判要旨控訴趣意書を控訴申立をした検察庁の検察官が作成し、これを控訴裁判所に対応する検察庁の検察官が提出することは、訴訟法に違反しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年7月4日 昭和42(あ)1123
登載
集刑 第168号125頁
参照法条
刑訴法351条1項,刑訴法372条,刑訴法376条1項,刑訴規則236条1項,検察庁法5条
論点167第37_2条刑事訴訟法

第一審判決に対し検査官が控訴を申し立てた場合の控訴趣意書の作成提出者。

裁判要旨第一審判決に対し、検察官が控訴を申し立てた場合、その検察官が控訴趣意書を作成し、控訴裁判所に対応する検察庁の検察官がこれを同裁判所に提出することは訴訟法に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年7月1日 昭和33(あ)424
登載
集刑 第126号633頁
参照法条
刑訴法351条1項,刑訴法372条,刑訴法376条1項,刑訴規則236条1項
論点168第37_2条刑事訴訟法

控訴申立があつたものと認められない一事例。−控訴申立期間内に弁護人選任届のみ提出された場合−

裁判要旨第一審の有罪判決に対し被告人弁護人から適式の控訴申立書の提出がなく、ただ控訴申立期間内に控訴審における弁護人選任届が裁判所に提出されただけでは、控訴申立があつたものということができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年7月30日 昭和32(し)29
登載
集刑 第119号1157頁
参照法条
刑訴法372条,刑訴法373条,刑訴法374条
論点169第37_2条刑事訴訟法

刑訴第四一一条第四号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。〉にいわゆる「再審の請求をすることができる場合にあたる事由がある」との主張と上告趣意書提出の時期

裁判要旨再審事由があるとさえ主張すれば上告趣意書提出期間後でも有効に上告趣意書が提出出来るなどという論旨は全く理由がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年1月29日 昭和27(み)3
登載
集刑 第59号455頁
参照法条
刑訴法411条4号,刑訴法414条,刑訴法372条,刑訴規則252条
論点170第37_3条刑事訴訟法

控訴提起期間の末日が「文化の日」にあたる場合に不成立として棄却した違法は法四〇六条の上告受理申立の理由となるか

裁判要旨記録を調査するに、原判決の違法であるとはまことに所論のとおりであるから、刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉四一三条〈前条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所若しくは第一審裁判所に差し戻し、又はこ…〉により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。註。本件は原審が控訴申立期間の最終日が国民の祝日に関する法律により一般の休日と指定された文化の日に当るとを看過して控訴棄却の判決をしたと見られるのであるがこれを右法律の解釈を誤つたとして上告を受理して破棄したものである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年5月14日 昭和29(あ)1101
登載
集刑 第95号403頁
参照法条
刑訴法373条,刑訴法395条,刑訴法55条3項,刑訴法406条,国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)2条,刑訴規則257条
論点171第37_3条刑事訴訟法

昭和二四年五月二四日経済案定本部訓令第二二号指定物資の輸送証明要領の性質

裁判要旨昭和二四年五月二四日経済案定本部訓令第二二号指定物資の輸送証明制要領のごときは、臨時物資需給調整法第一条第一項の命令に対する同条第四項の同意たる性質を有するに過ぎず、何等法令を改廃する効力を有するものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年7月26日 昭和25(あ)2184
登載
刑集 第5巻8号1640頁
参照法条
刑訴法373条2号,臨時物資需給調整法1条1項4項,昭和24年5月24日経済安定本部訓令
論点172第37_3条刑事訴訟法

一 公定價格の定めある賍物の對價に對する被害者の交付請求權の範圍と沒収額
二 賍物の一部が犯行後加工により価格を増加して被害者に仮還付されている場合と被害者の交付請求により還付の言渡をすべき未還付品の対価の額
三 公定價格のある定め賍物の時價に對する被害者の交付請求權と不當利得

裁判要旨一 賍物の對價として得たものが犯人以外の者に屬せざるときは、これを沒収することができる。その賍物が公定價格の定めあるものであるときは、公定價格相當額について被害者に右對價の交付請求權があり、その請求があれば裁判所は右相當額を被害者に還付し(舊刑訴第三七三條第二項)その殘額を沒収することができるのである。(昭和二三年(れ)第五四六號同二四年一月二五日第二小法廷判決)
二 押収した賍物の一部が被害者に仮還付されている場合、被告人が未還付品の対価として得た金銭のうち公定価格相当額に対して被害者より交付の請求があつたときは、裁判所は、仮還付されている物が犯行後仮還付の時までに加工によりその価格を増加しているかどうかにかかわらず、未還付品の公定価格相当額について還付の言渡をすれば足りる。
三 刑事訴訟の手續としては賍物の對價については被害者に對する辯償の有無に拘らず被害者から公定價格に相當する額の範圍内においてその交付の請求のあつた場合は裁判所はその請求額を被害者に還付すべきであつてこれによつて、被害者が不當に利得するや否やは、専ら民事訴訟において裁定すべき問題で刑事訴訟の關知せざるところである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和24年4月30日 昭和23(れ)1796
登載
刑集 第3巻5号679頁
参照法条
刑法19條,舊刑訴法373條,旧刑訴法373条
論点173第37_3条刑事訴訟法

一 「賍物の對價として得たる物」に對する沒収言渡の可否
二 公定價格ある賍物の對價に對する被害者の交付請求權の範圍
三 公定價格ある賍物の對價に關する沒収額の範圍

裁判要旨一 刑法第十九條第一項第四號に所謂「前號に記載したる物の對價として得たる物」の中には「臓物の對價として得たる物」をも含み、且つその對價が同條第二項に定める「其物犯人以外の者に屬せざるとき」の條件に當てはまるときは、之を沒収することができる。(昭和二三年(れ)第五四五號、同年一一月一八日第一小法廷判決参照)。
二 賍物が公定價格の定めのあるものであるときは、被害者の刑訴第三七三條第二項に據るその賍物の對價に對する交付請求權の許容せられる範圍は、右公定價格相當額に限られるのであつて、從つて裁判所は右交付の請求あるときは、押収中の賍物の對價の内より右公定價格相當額を被害者に還付する言渡を爲すべきである。(昭和二三年(れ)第五四五號、同年一一月一八日第一小法廷判決参照)
三 賍物が公定價格の定めのあるものであるときは、裁判所は押収中の賍物の對價の中より、刑訴第三七三條第二項により被害者に還付する額として右公定價格相當額を差引いた残額の全額を沒収することができる。(昭和二三年(れ)第五四五號、同年一一月一八日第一小法廷判決参照)。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和24年1月25日 昭和23(れ)546
登載
刑集 第3巻1号53頁
参照法条
刑法19條1項3号,刑法19条2項,旧刑訴法373条1項,旧刑訴法373條2項
論点174第37_3条刑事訴訟法

一 賍物の還附を受けるべき被害者と被害当時の所有者との関係
二 賍物の還附を受けるべき被害者であることの理由明示の要否
三 文字の挿入削除が法定の要式を缺いた調書の効力

裁判要旨一 盜賍を被害者に還付する言渡をする場合、その還付を受けるべき被害者は、必ずしも、判決の事実摘示において被害物件の所有者として指示された者であることを要しない。
二 賍物を還付する旨の言渡を受けた被害者が、その還付を受けるべき者であるとする理由は、特に判示することを要しない。
三 調書における文字の挿入削除が法定の要式を缺いた場合でも、直ちにこれを無効とすべきでなく、その効力の有無は、專ら、裁判所が諸般の状況を勘考して、自由の裁量によつて決すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和23年12月11日 昭和23(れ)998
登載
刑集 第2巻13号1728頁
参照法条
刑訴法373条1項,刑訴法360条,刑訴法72條
論点175第37_3条刑事訴訟法

一 賍物の對價として得た物を沒收するにはその對價を得た行爲が犯罪を構成することを必要とするか
二 刑訴法第三七三條の「被害者ニ還付スヘキ理由明白ナル」旨の判示の要否
三 賍物の對價として得た金錢は沒收し得るか
四 公定價格ある賍物の對價として得た金錢に對する被害者の交付請求權の範圍

裁判要旨一 所論のごとく物の對價を得た行爲(本件では賍物の賣買行爲)が犯罪を構成する場合でなければ、その對價の沒收の言渡ができぬと論ずるのは全くの獨斷である。犯罪行爲によつて得た對價を沒收するのであれば同項第三號によるのであつて、第四號によるのではない。そして第四號の對價を取得する行爲については、それが犯罪を構成することを要件とするものでないことは規定上も明らかである。
二 原審判決においては、賍物の對價として得た物を被害者から交付の請求があつたこと及びその適用法條は刑訴法第三七三條第二項であることを明示しているのであるから、所論のように被害者に還付すべき理由が明白である旨を特に説示しなくともその趣旨を判示していることは自明であると言わなければならぬ。
三 刑法第一九條第一項第四號の規定は獨立した沒收事由として追加規定せられたものであるから、同號を適用するのに前號所定の物が同條第二項の規定により沒收し得るものであることを前提とすべき理由は毫も存しない、それ故前記贓品の對價物たる押收金全額は、犯人以外の者に屬せざる限り沒收し得る譯である。
四 本件では刑訴第三七三條第二項の規定に基き贓物の對價物につき被害者から交付の請求があつた。普通の場合であつたならば、對價物の全部を被害者に還付すべきであろうが既に贓物は處分せられた後のことであるから、被害者が犯人に對して損害賠償として交付を請求し得るのは、法令の許容する價額を標準とすべきであり、從つて本件においては「みのり」千百個、「きんし」六千本に對する處分當時の公定價額三千二百四〇圓に相當する押收現金の還付であると言わねばならぬ。されば、原判決がこれを被害者に還付する言渡をなし、これを差引きたる押收金の殘額二萬四千五百九十五圓を沒收したのは正當である
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和23年11月18日 昭和23(れ)545
登載
刑集 第2巻12号1597頁
参照法条
刑法256条2項,刑法19条,刑法256条,刑訴法373条,刑訴法49条1項,刑訴法373条2号
論点176第37_4条刑事訴訟法

検察官作成の控訴申立諸に肩書の誤記または遺脱がある場合と控訴申立の適否。

裁判要旨区検察庁検察官事務取扱の職務を担当する地方検察庁検察官が、簡易裁判所のした判決に対して控訴するにあたり、誤つて控訴申立書にその肩書を地方検察庁検察官検事と表示したとしても、同検察官が区検察庁検察官事務取扱の職務もあわせて担当しており、その資格で控訴申立をしたことが記録上明らかで、肩書の明白な誤記または遺脱にすぎないと認められる場合には、右控訴の申立は適法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年10月25日 昭和36(あ)2945
登載
刑集 第17巻9号1786頁
参照法条
刑訴法374条,刑訴規則58条
論点177第37_4条刑事訴訟法

電報による上告の申立。

裁判要旨電報による上告の申立は法令上の方式に違反したものである(昭和二五年(あ)第二八三〇号同年一二月五日当裁判所第三小法廷決定、刑集四巻一二号二四八九頁)。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年12月20日 昭和36(あ)2829
登載
集刑 第140号687頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法374条
論点178第37_4条刑事訴訟法

電報による上告申立の適否。

裁判要旨電報による上告の申立は、不敵法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年2月27日 昭和35(あ)201
登載
刑集 第14巻2号206頁
参照法条
刑訴法374条,刑訴法385条1項,刑訴法414条
論点179第37_4条刑事訴訟法

控訴の範囲は何によつて判断すべきか

裁判要旨控訴が、裁判の一部に対して為されたものか、それとも全部に対して為されたものかは、控訴申立書(控訴趣意書でなく)によつて、判断されるべきことである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年2月17日 昭和29(あ)2230
登載
集刑 第102号813頁
参照法条
刑訴法357条,刑訴法374条,刑訴法376条,憲法39条
論点180第37_4条刑事訴訟法

一 刑訴応急措置法第一八条による特別抗告にも刑訴第四〇五条第二号〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。〉、第三号、第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉の準用があるか
二 検察官から刑の執行猶予言渡の取消請求があつた場合の決定手続の方式

裁判要旨一 刑訴応急措置法第一八条による特別抗告には、刑訴第四〇五条第二号〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。〉第三号および第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉は準用されない。
二 本件に適用される旧刑訴三七四条二項〈控訴をするには、申立書を第一審裁判所に差し出さなければならない。〉の規定によれば、検察官から執行猶予の言渡の取消請求があつた場合には、裁判所は、被告人又はその代理人の意見を聴き決定を為すべきものであつて、決定を為すには国選弁護人を選任したり、口頭弁論に基いたりする必要のないものであることは論を俟たない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和28年6月10日 昭和26(し)47
登載
刑集 第7巻6号1419頁
参照法条
刑訴応急措置法18条,刑訴法405条,刑訴法411条1号,刑法26条,旧刑訴法374条2項
論点181第37_4条刑事訴訟法

一 刑法第二六条第三号の意義
二 昭和二四年一月一日前に公訴の提起があつた事件についてなされた刑執行猶予言渡に対する取消請求事件に適用される手続法
三 いわゆる旧刑訴事件について簡易裁判所がした決定に対する管轄抗告裁判所
四 いわゆる旧刑訴事件について簡易裁判所がした決定に対する即時抗告の申立について、高等裁判所が新刑訴法を適用して棄却した決定に対する不服申立の方法
五 刑法第二六条第一項第三号の「猶予ノ言渡前他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコト発覚シタルトキ」の意義

裁判要旨一 執行猶予の言渡前にすでに他の罪につき禁錮以上の刑に処せられたことが発覚していた場合には、刑法二六条三号によつて執行猶予の言渡を取消すことはできないものと言わなければならない。
二 昭和二四年一月一日前に公訴の提起があつたいわゆる旧刑訴事件についてなされた刑執行猶予言渡に対する取消請求事件については、刑訴施行法第二条により、旧刑訴法及び刑訴応急措置法によるべきである。
三 いわゆる旧刑訴事件について簡易裁判所がした刑執行猶予言渡取消決定に対する即時抗告の申立については、昭和二三年法律第二六〇号による改正前の裁判所法第二四条第三号により地方裁判所がこれを審判すべきである。
四 いわゆる旧刑訴事件について簡易裁判所がした刑執行猶予言渡取消決定に対する即時抗告の申立について、誤つて高等裁判所が新刑訴法を適用して棄却の決定をした場合でも、この決定に対しては、刑訴応急措置法第一八条により特別抗告をするは格別、刑訴第四二八条第二項〈高等裁判所の決定に対しては、抗告をすることはできない。〉による異議の申立又は刑訴第四三三条〈この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に…〉による特別抗告をすることはできない。
五 刑法第二六条第一項第三号に「猶予ノ言渡前他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコト発覚シタルトキ」とあるは、所定の処刑の事実が猶予の言渡後に発覚した場合をいうのであつて、その言渡前に既に発覚していた場合はこれにあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年2月7日 昭和24(つ)87
登載
刑集 第6巻2号197頁
参照法条
刑法26条3号,刑法26条1項3号,刑訴施行法2条,旧刑訴法374条,昭和23年12月21日法律260号裁判所法の一部を改正する等の法律による改正前及び改正後の裁判所法16条2号,昭和23年12月21日法律260号裁判所法の一部を改正する等の法律による改正前及び改正後の裁判所法24条3号,右改正法律附則11条,刑訴応急措置法18条,刑訴法428条2項,刑訴法433条
論点182第37_4条刑事訴訟法

電報による上告申立の適否

裁判要旨電報による上告の申立は、不適法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和25年12月5日 昭和25(あ)2830
登載
刑集 第4巻12号2489頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法374条
論点183第37_4条刑事訴訟法

電子複写機によって複写されたコピーであって作成名義人たる外国人である被告人の署名がない控訴申立書による控訴申立ての効力

裁判要旨電子複写機によって複写されたコピーであって,作成名義人たる外国人である被告人の署名がない控訴申立書による控訴申立ては,同書面中に被告人の署名が複写されていたとしても,無効である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成17年7月4日 平成17(し)125
登載
刑集 第59巻6号510頁
参照法条
刑訴法374条,刑訴規則60条,外国人の署名捺印及び無資力証明に関する法律1条1項
論点184第37_4条刑事訴訟法

被告人の記名のみがあり署名押印がいずれもない控訴申立書による控訴申立ての効力

裁判要旨被告人の記名のみがあり署名押印がいずれもない控訴申立書による控訴申立ては,同申立書を封入した郵便の封筒に被告人の署名があったとしても,無効である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和元年12月10日 平成30(あ)1409
登載
刑集 第73巻5号155頁
参照法条
刑訴法374条,刑訴規則60条
論点185第37_5条刑事訴訟法

上訴権回復請求及びこれと同時にされた特別抗告の申立を併せて棄却した地方裁判所の各決定に対する特別抗告の適否

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年6月8日 昭和62(し)51
登載
集刑 第246号33頁
参照法条
刑訴法364条,刑訴法375条,刑訴法414条,刑訴法433条
論点186第37_5条刑事訴訟法

裁判権ないし管轄権なくしてなされた刑法第五二条による刑を定める決定に対し法定の期間経過後になされた即時抗告

裁判要旨刑法第五二条による刑を定める決定が裁判権ないし管轄権をなくしてなされたものであつても、右決定に対する即時抗告が法定の期間経過後になされたものである以上、不適法のものとして棄却を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年2月11日 昭和31(し)37
登載
刑集 第12巻3号355頁
参照法条
刑法52条,旧刑訴法375条,旧刑訴法459条,旧刑法469条4号,旧刑法466条1項,昭和21年勅令第278号(陸軍運法会議法海軍軍法会議法及第1復員裁判所及第2復員裁判所廃止ニ関スル件)附則5項,昭和27年法律81号(右勅令廃止法律)
論点187第37_5条刑事訴訟法

一 被告人の父からの控訴申立の適否。
二 控訴の申立が法令上の方式に違反する場合と第一審裁判所の措置。

裁判要旨一 原審における代理人または弁護人および被告人の法定代理人または保佐人に該当しない被告人の父からの控訴申立は不適法である。
二 第一審裁判所は、控訴の申立が法令上の方式に違反していることを理由として右申立を棄却することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年11月24日 昭和33(し)12
登載
刑集 第12巻15号3531頁
参照法条
刑訴法353条,刑訴法355条,刑訴法42条,刑訴法375条,刑訴法385条1項,刑訴規則235条
論点188第37_5条刑事訴訟法

高等裁判所が刑訴第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉第三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉によりなした上告申立棄却決定と特別抗告

裁判要旨高等裁判所が刑訴第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、第三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉によりなした上告申立棄却決定に対して、最高裁判所に特別抗告をなすことは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年1月8日 昭和26(し)104
登載
刑集 第6巻1号1頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法375条,刑訴法428条1項,刑訴法428条2項,刑訴法433条
論点189第37_5条刑事訴訟法

刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例

裁判要旨高等裁判所が、刑訴第三八六条第一項〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。〉により控訴を棄却した決定に対してなされた上告申立を、異議申立と見ながら、同法第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、第三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉を準用して自ら棄却したとしても、右申立が異議申立期間後になされたものであることが明らかなときは、右の瑕疵は同法第四一一条所定の事由にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年1月11日 昭和26(し)41
登載
集刑 第59号237頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法375条,刑訴法386条1項,刑訴法386条2項,刑訴法411条,刑訴法405条
論点190第37_5条刑事訴訟法

一 旧刑訴事件につき刑法第五二条の規定により刑の変更をする場合は新旧何れの刑訴によるべきか
二 右の場合高等裁判所がした刑の変更決定に対し新刑訴により異議の申立が許されるか
三 本人と弁護人との双方に原決定謄本が送達された場合における不服申立期間の起算日

裁判要旨一 旧刑訴事件につき刑法第五二条の規定により刑の変更をする場合は、刑訴施行法第二条により旧刑訴第三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉の規定によるべきである。
二 右の場合、高等裁判所が誤つて新刑訴第三五〇条〈刑法第五十二条の規定により刑を定むべき場合には、検察官は、その犯罪事実について最終の判決をした裁判所にその請求をしなけれ…〉を適用して決定をしても、これに対して異議の申立は許されない。
三 本人と弁護人との双方に原決定の謄本が日を異にして送達された場合における不服申立の期間は、本人に送達がされた時から起算すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年11月18日 昭和27(し)77
登載
刑集 第6巻10号1213頁
参照法条
刑法52条,刑訴施行法2条,旧刑訴法375条,旧刑訴法50条,新刑訴法350条,新刑訴法349条2項,新刑訴法428条,刑訴応急措置法18条,刑訴規則34条
論点191第37_5条刑事訴訟法

即時抗告の申立てを受理した裁判所が刑訴法375条を類推適用してその申立てを自ら棄却することの可否

裁判要旨即時抗告の申立てを受理した裁判所は,刑訴法375条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉を類推適用してその申立てを自ら棄却することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年4月24日 平成18(し)82
登載
刑集 第60巻4号409頁
参照法条
刑訴法375条,刑訴法422条,刑訴法423条
論点192第38条刑事訴訟法

国選弁護人に支給すべき報酬額の決定に対する不服申立の可否

裁判要旨国選弁護人に支給すべき報酬額の決定に対しては刑訴法に準拠する不服申立をすることは許されず、このように解しても憲法三二条、三七条三項に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和63年11月29日 昭和62(し)70
登載
刑集 第42巻9号1389頁
参照法条
憲法32条,憲法37条3項,刑訴法38条2項,刑訴法419条,刑訴法428条,刑事訴訟費用等に関する法律8条2項
論点193第38条刑事訴訟法

国選弁護人に支給すべき報酬額の決定に対する不服申立の可否(補足意見がある)

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和63年11月29日 昭和62(し)120
登載
集刑 第250号1045頁
参照法条
憲法13条,憲法31条,憲法32条,憲法37条3項,憲法98条1項,刑訴法38条2項,419条,428条,刑訴費用等に関する法律8条2項
論点194第38条刑事訴訟法

国選弁護人に支給すべき報酬の額の決定と憲法三二条、八二条

裁判要旨国選弁護人に支給すべき報酬の額の決定は、公開の法廷における審理を経なくても、憲法三二条、八二条に違反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和61年9月8日 昭和58(行ツ)27
登載
集民 第148号425頁
参照法条
刑事訴訟費用等に関する法律8条2項,刑訴法38条2項,憲法32条,憲法82条
論点195第38条刑事訴訟法

一 国選弁護人と民法委任の規定の適用の有無
二 国選弁護人と費用償還請求権

裁判要旨一 国選弁護人の選任に基く法律関係については、民法委任の規定を適用すべきものではない。
二 国選弁護人は、裁判所の支給する旅費、日当、宿泊料及び報酬以外に、別に費用の請求をすることはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年8月24日 昭和27(オ)483
登載
民集 第8巻8号1549頁
参照法条
民法643条,民法650条,刑訴法38条2項,刑事訴訟費用法7条
論点196第38_2条刑事訴訟法

刑訴法三八二条の二〈やむを得ない事由によつて第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかつた証拠によつて証明することのできる事実であつて…〉にいう「やむを得ない事由」に当たらないとされた事例

裁判要旨弁護人が控訴審で新たな証拠の取調べを請求するにあたり、その事情として、被告人が第一審では量刑上有利に参酌してもらつた方が得策であると考えて事実を認めていたところ懲役刑の実刑判決の言渡しを受けたため事実を争うに至つた旨主張したとしても、そのような事情は刑訴法三八二条の二にいう「やむを得ない事由」に当たらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年10月30日 昭和62(あ)406
登載
刑集 第41巻7号309頁
参照法条
刑訴法382条の2,刑訴法393条1項
論点197第38_2条刑事訴訟法

控訴審における新たな証拠の取調と刑訴法三九三条一項本文

裁判要旨控訴裁判所は、第一審判決以前に存在した事実に関する限り、第一審で取調ないし取調請求されていない新たな証拠につき、刑訴法三九三条一項〈控訴裁判所は、前条の調査をするについて必要があるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で事実の取調をす…〉但書の要件を欠く場合であつても、第一審判決の当否を判断するため必要と認めるときは、同項本文に基づき、裁量によつてその取調をすることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年9月20日 昭和58(あ)1436
登載
刑集 第38巻9号2810頁
参照法条
刑訴法382条の2,刑訴法393条1項
論点198第38_2条刑事訴訟法

破棄差戻しの原判決が憲法三七条一項の迅速裁判の保障条項に反しないとされた事例

裁判要旨殺人の実行行為者が被告人であるのか、現場に同道していた甲であるのか等が争われた事案につき、第一審において約八年を費して詳細な事実審理を行つており、原審においても約二年を費して検察官申請の証人のすべてを取り調べる等していて、これを第一審に差し戻しても、実質的に意味のある新証拠の提出される蓋然性が必ずしも大きくないときは、できる限り事件を第一審に差し戻さないで処理するのが相当であるが、公判審理が長期に及んだ主たる原因が、捜査段階における被告人側の節国的な罪証隠滅行為等にあると認められること、これを第一審に差し戻してもそのために今後審理が格段に長期化するとか被告人が防禦上著しい不利益を受けるおそれがあるとまでは認め難いことなどの事情(判文参照)のある本件においては、事実誤認を理由に第一審判決を破棄し事件を第一審に差し戻した原判決が、憲法三七条一項の迅速裁判の保障条項に反するとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和58年5月27日 昭和57(あ)752
登載
刑集 第37巻4号474頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法400条,憲法37条1項
論点199第38_2条刑事訴訟法

控訴趣意書の記載が法律で定める方式に違反するとされた事例

裁判要旨控訴の趣意として、「一 原判決は明らかに判決に影響を及ぼす事実の誤認がある。二 原判決は量刑が不当である。追つて詳細は書面で述べる。」と記載したにすぎない控訴趣意書は、刑訴法三八二条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉、三八一条〈刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に…〉所定の事実の援用を欠き、法律で定める方式に違反する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和52年11月11日 昭和52(し)127
登載
刑集 第31巻6号1019頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法382条,刑訴法386条1項2号
論点200第38_2条刑事訴訟法

前科調書の記載洩れと刑訴法三八二条の二第一項という「やむを得ない事由」

裁判要旨被告人が、区検察庁検察事務官の取調に対し、無免許運転で懲役刑に処せられ刑の執行猶予の言渡を受けたことを秘匿し、前科は無免許や酒酔い運転で二回罰金刑に処せられただけである旨供述し、他方、区検察庁検察事務官が地方検察庁犯歴係に電話照会して作成した前科調書には道交法違反による罰金の前科二犯のみが記載され、これが一審公判廷で取り調べられてその判決の言渡があつた後、たまたま、被告人の前科を記憶していた係官により右執行猶予付懲役刑の前科の存在が判明し、検察官がこれを知るにいたつた場合においては、刑訴法三八二条の二第一項〈やむを得ない事由によつて第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかつた証拠によつて証明することのできる事実であつて…〉にいう「やむを得ない事由」により一審の弁論終結前に、刑の執行猶予言渡に影響を及ぼすべき前科に関する証拠の取調を請求することができなかつたものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年2月16日 昭和47(あ)1333
登載
刑集 第27巻1号58頁
参照法条
刑訴法382条2第1項
論点201第38_2条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらないとされた事例。

裁判要旨第一審判決が、併合罪として起訴された被告人の延三二名に対する三二回、合計四二万円の供与、交付の公職選挙法違反行為につき、全部有罪としたところ、原判決が右起訴事実中一名に対する一回、一万円の交付について無罪と認めながら、右第一審判決の事実誤認、法令適用の誤は判決に影響を及ぼさないとして控訴を棄却したときは、原判決には判決に影響を及ぼすべき法令違反はあるけれども、これを破棄しなければ著しく正義に反するものとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年8月23日 昭和38(あ)542
登載
刑集 第17巻6号628頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法380条,刑訴法382条
論点202第38_2条刑事訴訟法

控訴審が第一審判決の併合罪の関係にある一部の事実認定を是認し、他の事実には犯罪の証明がないとして破棄自判する場合と前者の事実をさらに自ら認定判示することの適否。

裁判要旨控訴審が、第一審判決判示第二および第三(一)(二)の事実認定ならびに法令の適用には誤がないとして是認し、ただ同判決第一事実は犯罪の証明がないとして破棄自判する場合において、あらためて右判決の判示第二および第三(一)(二)と同一事実を認定判示することは違法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和34年2月26日 昭和33(あ)1376
登載
刑集 第13巻2号232頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法397条,刑訴法400条
論点203第38_2条刑事訴訟法

第一審判決の引用しない証拠と控訴審における判断資料

裁判要旨控訴審が第一審判決の事実認定の当否を判断する資料は、第一審判決が引用した証拠に限るべきではなく、記録にあらわれ、適法に証拠調を経た全証拠によるべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月10日 昭和29(あ)4188
登載
集刑 第105号177頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法396条
論点204第38_2条刑事訴訟法

量刑不当の控訴理由として訴訟記録等に現われていない裁判例を援用することの適否

裁判要旨量刑不当の控訴趣意において、その理由として訴訟記録にも第一審裁判所において取り調べた証拠にも現われていない同種事案に関する従来の裁判例を援用しても、不適法ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年10月22日 昭和28(あ)5435
登載
刑集 第8巻10号1653頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法382条の2,刑訴法393条
論点205第38_2条刑事訴訟法

控訴趣意書に事実誤認の記載があつても、これを撤回したものと認められる場合における判断の要否

裁判要旨原審弁護人提出の控訴趣意書に事実誤認の記載があつても、同弁護人が原審公判廷において事実誤認は論じないと述べているときはこの点について判断を与える必要はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年2月17日 昭和27(あ)1073
登載
集刑 第73号555頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法389条,刑訴法392条,刑訴規則246条
論点206第38_2条刑事訴訟法

被告人を殺人及び窃盗の犯人と認めて有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨被告人を殺人及び窃盗の犯人と認めて有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,全体として,第1審判決の説示を分断して個別に検討するのみで,情況証拠によって認められる一定の推認力を有する間接事実の総合評価という観点からの検討を欠いており,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成30年7月13日 平成29(あ)837
登載
刑集 第72巻3号324頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法411条1号
論点207第38_2条刑事訴訟法

女子高校生に強いてわいせつな行為をして殺害したとして起訴された事案につき,目撃証言の信用性を否定するなどして事実誤認を理由に有罪(無期懲役)の第1審判決を破棄し無罪とした原判決が是認された事例(舞鶴女子高校生殺害事件)

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年7月8日 平成25(あ)169
登載
集刑 第314号99頁
参照法条
刑法9条,刑法181条1項,刑法176条前段,刑法199条,刑訴法382条,刑訴法397条1項,刑訴法411条3号
論点208第38_2条刑事訴訟法

保護責任者遺棄致死被告事件について,被害者の衰弱状態等を述べた医師らの証言が信用できることを前提に被告人両名を有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨保護責任者遺棄致死被告事件について,被害者の衰弱状態等を述べた医師らの証言が信用できることを前提に被告人両名を有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,証言の信用性を支える根拠があるのにこれを考慮しないなど,証言の信用性評価を誤っており,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年3月20日 平成24(あ)797
登載
刑集 第68巻3号499頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法411条1号
論点209第38_2条刑事訴訟法

覚せい剤の密輸入事件について,共犯者供述の信用性を否定して無罪とした第1審判決には事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用の誤りはないとされた事例

裁判要旨覚せい剤の密輸入事件について,被告人から指示を受けていたとする共犯者供述の信用性を否定して被告人を無罪とした第1審判決には事実誤認があるとした原判決は,第1審判決が,受信は記録されていないなどの通話記録の性質に十分配慮せず,それと同共犯者供述との整合性を細部について必要以上に要求するなどしたことや,同共犯者に指示を与えていた第三者の存在に関する抽象的な可能性をもって同共犯者供述の信用性を否定したことなどを指摘して,その判断は経験則に照らして不合理であるとしており(判文参照),第1審判決の事実認定が経験則に照らして不合理であることを具体的に示したものといえ,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用の誤りはない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年3月10日 平成24(あ)744
登載
刑集 第68巻3号87頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法397条1項
論点210第38_2条刑事訴訟法

覚せい剤を密輸入した事件について,被告人の故意を認めながら共謀を認めずに無罪とした第1審判決には事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用の誤りはないとされた事例

裁判要旨覚せい剤を密輸入した事件について,被告人の故意を認めながら共謀を認めずに無罪とした第1審判決には事実誤認があるとした原判決は,被告人が,犯罪組織関係者から日本に入国して輸入貨物を受け取ることを依頼され,その中に覚せい剤が隠匿されている可能性を認識しながらこれを引き受けたという本件事実関係の下では,特段の事情がない限り,覚せい剤輸入の故意だけでなく共謀をも認定するのが相当である旨を具体的に述べた上,本件では,特段の事情がなく,むしろ共謀を裏付ける事情があるとしており,第1審判決の事実認定が経験則に照らして不合理であることを具体的に示したものということができ,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用の誤りはない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成25年4月16日 平成24(あ)167
登載
刑集 第67巻4号549頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法397条1項
論点211第38_2条刑事訴訟法

密輸組織が関与する覚せい剤の密輸入事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用の誤りはないとされた事例

裁判要旨密輸組織が関与する覚せい剤の密輸入事件について,被告人の覚せい剤に関する認識を否定して無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,この種事案に適用されるべき経験則等を示しつつ,被告人は覚せい剤が隠匿されたスーツケースを日本に運ぶよう指示又は依頼を受けて来日したと認定するなどした上,被告人の覚せい剤に関する認識を肯定し,第1審判決の結論を是認できないとしたもので(判文参照),第1審判決の事実認定が経験則等に照らして不合理であることを具体的に示したものといえ,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用の誤りはない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成25年10月21日 平成24(あ)724
登載
刑集 第67巻7号755頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法397条1項
論点212第38_2条刑事訴訟法

1 刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉にいう事実誤認の意義
2 刑訴法382条にいう事実誤認の判示方法
3 覚せい剤を密輸入した事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨1 刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の事実誤認とは,第1審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることをいう。
2 控訴審が第1審判決に事実誤認があるというためには,第1審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることを具体的に示す必要がある。
3 覚せい剤を密輸入した事件について覚せい剤を輸入する認識がなかった旨の弁解が排斥できないなどとして,被告人を無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,その弁解が客観的事実関係に一応沿うもので第1審判決のような評価も可能であることなどに照らすと,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
(1〜3につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成24年2月13日 平成23(あ)757
登載
刑集 第66巻4号482頁
参照法条
(1〜3につき)刑訴法382条,(2につき)刑訴法397条1項,(3につき)刑訴法411条1号
論点213第38_2条刑事訴訟法

強要未遂罪の成立を認めた第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨労働組合の組合員である被告人両名らが、同組合の組合員が稼働する会社の取締役を脅迫し、同組合員を雇用している旨の就労証明書の作成等を要求したとして強要未遂罪の成立を認めた第1審判決について、強要未遂罪の解釈適用を誤り、ひいては事実を誤認したと説示しつつ、第1審判決が前提とする事実のうち、同社に同組合員を雇用している旨の就労証明書を作成等すべき義務はないとしたことについての事実の誤認を指摘しただけで、強要罪の成立を基礎付けるその余の事実関係について、その認定の不合理性を検討しないまま、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決は、第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照)、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり、同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和5年9月11日 令和4(あ)125
登載
刑集 第77巻6号181頁
参照法条
刑訴法382条、刑訴法411条1号
論点214第38_2条刑事訴訟法

外国公務員等に対して金銭を供与したという不正競争防止法違反の罪について、共謀の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨外国公務員等に対して金銭を供与したという不正競争防止法違反の罪について、被告人の地位及び立場、被告人が同供与に関する相談を受けるに至った経緯及びこれに対する被告人の言動並びにその相談後に同供与が実行されたという経過等を総合考慮して、被告人が同供与を了承し、これを実行する意思決定に関与したとして共謀の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決は、共謀を基礎付ける事実関係となる上記の諸事情に対する評価を十分示さないまま、主として同供与を積極的に容認する意思の有無という観点から検討し、第1審判決の認定が不合理であるとする説得的な論拠を示していないなど、第1審判決が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照)、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり、同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和4年5月20日 令和2(あ)1135
登載
刑集 第76巻4号452頁
参照法条
刑法60条、不正競争防止法18条1項、不正競争防止法21条2項7号、刑訴法382条、刑訴法411条1号
論点215第38_2条刑事訴訟法

傷害罪の成立を認めた第1審判決に判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨医師の意見から認められる外力の態様に加え、Aが受傷した当時の状況、Aの受傷状況に関する被告人の言動を総合してAに対する被告人の暴行を認定し傷害罪の成立を認めた第1審判決について、医師の意見からは第1審判決が認定の根拠としたAの頭部にA以外の者の行為による強い外力が加わった事実は認められないからその認定は前提を欠くとしたほかは、Aの受傷状況に関する被告人の供述が信用できないからといって被告人の暴行を認定することはできない旨を説示しただけで、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決は、間接事実を総合した場合に被告人の暴行を認定することができるか否かについて判断を示したものとはいえないから、事実誤認の審査に当たり必要な検討を尽くして第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照)、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり、同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和4年4月21日 令和2(あ)1751
登載
刑集 第76巻4号268頁
参照法条
刑訴法382条、刑訴法411条1号
論点216第38_2条刑事訴訟法

自動車を運転する予定の者に対し,ひそかに睡眠導入剤を摂取させ運転を仕向けて交通事故を引き起こさせ,事故の相手方に傷害を負わせたという殺人未遂被告事件について,事故の相手方に対する殺意を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨被告人が,自動車を運転する予定の者に対し,ひそかに睡眠導入剤を摂取させて運転するよう仕向けたことにより,走行中にその運転者が仮睡状態等に陥って自車を対向車線に進出させて対向車に衝突させる交通事故を引き起こし,対向車の運転者に傷害を負わせたという殺人未遂被告事件について,対向車の運転者に対する殺意を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,死亡の危険性及びその認識に関する第1審判決の評価が不合理であるとする説得的な論拠を示していないなど,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和3年1月29日 令和2(あ)96
登載
刑集 第75巻1号1頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法411条1号
論点217第38_3条刑事訴訟法

控訴趣意に対する再審事由の有無についての判断がなされているものと認められる場合

裁判要旨原判決に所論再審事由の有無について直接的な判断が示されていないことは論旨指摘のとおりであるが、原審は自ら証人その他の証拠の取調をした上で、第一審判決に事実誤認はないと判断しているのであるから、再審事由の存在を否定する判断がなされているものと認むべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年11月15日 昭和30(あ)1738
登載
集刑 第122号241頁
参照法条
刑訴法392条,刑訴法396条,刑訴法384条,刑訴法383条
論点218第38_3条刑事訴訟法

昭和三〇年法律第五一号による銃砲刀剣類等所持取締令の一部改正と刑の廃止

裁判要旨昭和三〇年法律第五一号による銃砲刀剣類等所持取締令の一部改正前に業務その他正当な理由がなく刃渡一五センチメートル未満のあいくち(七首)を携帯した所為については、右改正により刑の廃止があつたものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年12月25日 昭和31(あ)667
登載
刑集 第10巻12号1701頁
参照法条
銃砲刀剣類等所持取締令1条2項,銃砲刀剣類等所持取締令2条,銃砲刀剣類等所持取締令15条,銃砲刀剣類等所持取締令26条1号,銃砲刀剣類等所持取締令27条,銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前)1条,銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前)15条,刑訴法337条2号,刑訴法383条2号,刑訴法411条5号,刑法6条
論点219第38_3条刑事訴訟法

一 控訴審では控訴趣意書に包含されない事項を当然職権調査すべき義務を有しない
二 控訴棄却の判決には刑訴法第三七七条乃至第三八三条にあたる事由についても判断を示しているとはいえない

裁判要旨控訴審では控訴趣意書に包含されない事項を当然職権調査しなければならない義務を負担するものではなく、従つて、かかる事項を職権調査しなかつたからといつて違法であるといえないばかりでなく所論のごとく控訴棄却の判決には控訴趣意書に包含されている事項を排斥した外に明らかに刑訴第三七七条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨…〉乃至第三八三条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることを疎明する資料を添附しなければな…〉に該当すると思われる事由もないという判断をも示しているものということもできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年5月31日 昭和25(あ)2326
登載
刑集 第5巻6号1211頁
参照法条
刑訴法392条,刑訴法393条,刑訴法377条,刑訴法383条,刑訴法405条,刑訴法411条
論点220第38_3条刑事訴訟法

刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成18年法律第36号)による窃盗罪の法定刑の変更と刑訴法397条1項による第1審判決の破棄の要否

裁判要旨刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成18年法律第36号)により,選択刑として50万円以下の罰金刑が追加された窃盗罪の法定刑の変更は,当該窃盗罪の犯情,第1審判決が併せて認定した他の犯罪の有無及びその内容等に照らし,上記法改正との関係からは第1審判決の量刑を再検討する余地のないことが明らかである場合には,刑訴法397条1項〈第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。〉により第1審判決を破棄すべき刑の変更に当たらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年10月10日 平成18(あ)1414
登載
刑集 第60巻8号523頁
参照法条
刑法6条,10条,235条,同法(平成18年法律第36号による改正前のもの)235条,刑訴法383条2号,397条1項
論点221第39条刑事訴訟法

一般的指定等に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告が公訴提起により不適法となつたとして棄却された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年10月28日 昭和58(し)100
登載
集刑 第232号625頁
参照法条
刑訴法39条,刑訴法429条,刑訴法433条
論点222第39条刑事訴訟法

一 弁護人から被疑者との接見の申出があつた場合に捜査機関のとるべき措置
二 弁護人の被疑者に対する接見の申出を拒んだ警察官の行為が国家賠償法一条一項にいう違法な行為にあたらないとされた事例

裁判要旨一 捜査機関は、弁護人から被疑者との接見の申出があつたときは、原則として何時でも接見の機会を与えるべきであり、現に被疑者を取調中であるとか、実況見分、検証等に立ち会わせる必要があるなど捜査の中断による支障が顕著な場合には、弁護人と協議してできる限り速やかな接見のための日時等を指定し、被疑者が防禦のため弁護人と打ち合せることのできるような措置をとるべきである。
二 被疑者取調中に弁護人から接見の申出を受けた警察官が、接見の日時等の指定権限を内部的に制限されているため、右弁護人に対し権限を有する捜査本部の捜査主任官の指定を受けるよう求め、かつ、右申出を捜査本部に伝達したなど、判示の事情があるときには、右警察官が捜査主任官の指定のないことを理由に接見を拒んでも、国家賠償法一条一項にいう違法な行為にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年7月10日 昭和49(オ)1088
登載
民集 第32巻5号820頁
参照法条
憲法34条前段,刑訴法39条1項,刑訴法39条3項,国家賠償法1条1項
論点223第39条刑事訴訟法

接見交通の不法制限と自白の証拠能力

裁判要旨仮に、所論のように、当時被疑者であつた被告人と弁護人との間の接見交通に対し検察官による不法な制限があつたとしても、本件においては、その制限があるとされた以前の段階において被告人が犯行を全面的に自白しており、しかも、第一審の公判において、被告人側は所論の自白調書をすべて証拠とすることに同意していることが記録上明らかであるから、所論憲法三四条違反の主張は、結局判決に影響を及ぼさない訴訟法違反のあることを前提とするものであつて、適法な上告理由にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和44年12月23日 昭和43(あ)1181
登載
集刑 第174号751頁
参照法条
憲法34条前段,憲法37条3項,憲法38条,刑訴法39条,刑訴法319条1項
論点224第39条刑事訴訟法

一 起訴後余罪について捜査の必要がある場合検察官等は刑訴法第三九条第三項の指定権を行使できるか
二 検察官等が右の権限があるものと誤解して刑訴法第三九条第一項の接見を拒否した場合これに不服のある者は準抗告を申し立てることができるか

裁判要旨一 公訴の提起後は、余罪について捜査の必要がある場合であつても、検察官、検察事務官または司法警察職員は、被告事件の弁護人または弁護人となろうとする者に対し、刑訴法第三九条第三項〈身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁…〉の指定権を行使することができない。
二 右の場合、検察官等が、そのような権限があるものと誤解して、刑訴法第三九条第一項の接見等を拒否した場合、これに不服がある者は、同第四三〇条〈検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収(電磁的記録提供命令(第百二条の二第一項第一号イに掲げる方法によ…〉により準抗告を申し立てることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年7月26日 昭和41(し)39
登載
刑集 第20巻6号728頁
参照法条
刑訴法39条1項,刑訴法39条3項,刑訴法430条
論点225第39条刑事訴訟法

被告人と弁護人との接見交通に関し不当な制限が行なわれたことと原判決に対する影響の有無

裁判要旨被告人とその弁護人との接見交通に関し所論のような不当があつたとしても、これがため原判決に影響を及ぼさないことは昭和二三年(れ)第六五号同年七月一四日大法廷判決〔集二巻八号八七二頁〕、同二三年(れ)第七七四号同年一一月一日大法廷判決〔集二巻一三号一六七九頁〕の趣旨に徴し明らかであり、また、これがため常に被疑者の供述の任意性を疑わしめその証拠能力を当然に失わしめるものということはできないのであつて、その任意性の有無は、その供述をした当時の状況に応じてこれを判断すべきものである。そして本件においては、記録に徴するも、被告人の検察官に対する供述調書に任意性を疑うべき点はないとした原審の判断は相当であるから、憲法第三四条、第三七条、第三八条違反の主張はその前提を欠き上告違法の理由とならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年10月6日 昭和41(あ)933
登載
集刑 第161号21頁
参照法条
憲法34条前段,憲法37条3項,憲法38条,刑訴法39条
論点226第39条刑事訴訟法

一 被告人と弁護人との起訴前の接見交通に関する不当な制限措置と上告理由
二 右制限措置と被告人の捜査官に対する供述の任意性

裁判要旨一 被告人とその弁護人との起訴前の接見交通に関し不当な制限措置が採られたとしても、これに対する救済は別に刑訴四三〇条〈検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収(電磁的記録提供命令(第百二条の二第一項第一号イに掲げる方法によ…〉、四三一条〈前二条の請求をするには、請求書を管轄裁判所に差し出さなければならない。〉の規定に従い準抗告の方法によるべきものであつて、かかる制限措置自体に対する違憲の主張が刑訴四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉の上告理由とならないことは当裁判所の判例の趣旨に徴して明らかである。(昭和二三年(れ)第六五号同年七月一四日大法廷判決集二巻八号八七二頁、昭和二三年(れ)第七七四号同年一二月一日大法廷判決集二巻一三号一六七九頁参照)
二 右制限措置がなされたことからそれが直ちに被告人の捜査官に対してなした供述まで任意性を欠くものであるとは断定し得ないところであつて、その任意性の有無はその供述をした当時の諸般の情況に照してこれを判断すべきである。(昭和二五年(あ)第一六五七号、同二八年七月一〇日第二小法廷判決集七巻七号一四七四頁参照)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年8月3日 昭和31(あ)727
登載
集刑 第114号471頁
参照法条
刑訴法39条,刑訴法319条,刑訴法430条,刑訴法431条,憲法38条
論点227第39条刑事訴訟法

一 弁護人選任の機会を与えたと認むべき事例
二 憲法第三四条前段及び同第三七条第三項〈左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。〉前段所定の弁護人に依頼する権利と裁判所の告知義務

裁判要旨一 論旨中には、被告人は原審において弁護人に選任するため公判の続行を求めたが許されず、弁護人を選任する十分な機会もなく弁護人のないままで弁論を終結されたのは憲法に違反するとの主張があるが、記録によると、被告人は本件につき原審に控訴を申立てた後保釈によつて釈放されていたのであるからその機会に弁護人を選任することは十分にできた筈である。のみならず、被告人は原審において裁判所に対し国選弁護人を附することを請求もせず、また被告人自ら弁護人を選任するために公判期日の延期を求めたり証拠調の申請をした形跡は全くない。
二 憲法第三四条前段及び同第三七条第三項〈左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。〉前段所定の弁護人に依頼する権利は被告人が自ら行使すべきもので裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与えその行使を妨げなければいいのであつて、弁護人に依頼する方法及びその費用等についてまで被告人に説示する必要のないことは、当裁判所大法廷判決の示すとおりである。(昭和二四年(れ)第二三八号、同年一一月三〇日判決)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年8月9日 昭和26(れ)372
登載
集刑 第51号467頁
参照法条
旧刑訴法39条,旧刑訴法41条,憲法37条3項,憲法34条前段
論点228第39条刑事訴訟法

一、 弁護人との接見交通権の制限を含めて検討しても自白の任意性に疑いがないとされた事例
二、 迅速裁判保護条項違反の主張が欠前提とされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年1月23日 昭和58(あ)1324
登載
集刑 第251号13頁
参照法条
憲法34条,憲法38条,憲法37条1項,刑訴法39条
論点229第39条刑事訴訟法

刑訴法39条1項〈身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁…〉の「弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者」についての疎明が不十分であるとした原判断を相当とした事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成7年8月31日 平成7(し)125
登載
集刑 第266号983頁
参照法条
刑訴法39条1項,刑訴法39条3項
論点230第39条刑事訴訟法

一 刑訴法三九条三項〈身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁…〉の規定にいう「捜査のため必要があるとき」に当たる場合
二 弁護人からの被疑者との接見の申出が接見の日時等の指定権限のない捜査官に対してされた場合の措置
三 弁護人からの被疑者との接見の申出に対し応答が遅れても違法とはいえないとされた事例

裁判要旨一 刑訴法三九条三項〈身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁…〉の規定にいう「捜査のため必要があるとき」には、捜査機関が弁護人から被疑者との接見の申出を受けた時に、間近い時に被疑者を取り調べたり、実況見分、検証等に立ち会わせたりするなどの確実な予定があって、弁護人の必要とする接見を認めたのでは右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合が含まれる。
二 弁護人から被疑者との接見の申出を受けた者が接見の日時等の指定につき権限のある捜査官でないときは、右申出を受けた者が権限のある捜査官に連絡しその措置について指示を受けるなどの手続を要する間、弁護人が待機させられ、また、その間接見ができなかったとしても、それが合理的な範囲内にとどまる限り許される。
三 弁護人が事前に連絡しないで警察署に赴き、代用監獄に留置中の被疑者との接見を申し出たところ、右申出を受けたのが留置主任官であったため、同人が当該事件の捜査に当たっていた他の警察署捜査主任官を通じて検察官に連絡して指示を求めるなどの一連の手続のために約二八分を要し、その間に弁護人が自発的に警察署を退去してしまったなど判示の事情があるときは、右の間、捜査機関が弁護人と被疑者との接見交通を許さなかったことになるとしても、国家賠償法一条一項にいう違法な行為に当たらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成3年5月31日 昭和61(オ)851
登載
集民 第163号47頁
参照法条
国家賠償法1条1項,刑訴法39条1項,刑訴法39条3項,憲法34条前段
論点231第39条刑事訴訟法

一 刑訴法三九条三項〈身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁…〉の規定にいう「捜査のため必要があるとき」に当たる場合
二 捜査機関の接見の日時等の指定の方法と裁量の範囲
三 検察官のした接見等の指定の措置が指定の方法等において著しく合理性を欠き違法なものとされた事例

裁判要旨一 刑訴法三九条三項〈身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁…〉の規定にいう「捜査のため必要があるとき」には、捜査機関が弁護人から被疑者との接見の申出を受けた時に、間近い時に被疑者を取り調べたり、実況見分、検証等に立ち会わせたりするなどの確実な予定があつて、弁護人の必要とする接見を認めたのでは右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合が含まれる。
二 捜査機関が弁護人と被疑者との接見の日時等を指定する方法は、その合理的裁量にゆだねられているが、それが著しく合理性を欠き、弁護人と被疑者との迅速かつ円滑な接見交通が害される結果になるようなときは、違法なものとして許されない。
三 検察官が、弁護人から被疑者との接見等の申出を受けた警察官から電話によりその措置について指示を求められた際に、弁護人と協議する姿勢を示すことなく、一方的に往復約二時間を要するほど離れている勤務庁に接見指定書を取りに来させてほしい旨を伝言したのみで接見の日時等を指定しようとせず、かつ、被疑者に対する物の授受につき裁判所の接見禁止決定の解除決定を得ない限り認められないとした措置は、その指定の方法等において著しく合理性を欠き、違法である。
(一につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成3年5月10日 昭和58(オ)379
登載
民集 第45巻5号919頁
参照法条
国家賠償法1条1項,刑訴法39条1項3項,憲法34条前段
論点232第39条刑事訴訟法

刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律79条1項2号〈被告人を勾留したときは、直ちに弁護人にその旨を通知しなければならない。被告人に弁護人がないときは、被告人の法定代理人、保…〉に該当するとして保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人又は弁護人となろうとする者からあった場合に,その申出があった事実を未決拘禁者に告げないまま,保護室に収容中であることを理由として面会を許さない刑事施設の長の措置が国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合

裁判要旨刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律79条1項2号〈被告人を勾留したときは、直ちに弁護人にその旨を通知しなければならない。被告人に弁護人がないときは、被告人の法定代理人、保…〉に該当するとして保護室に収容されている未決拘禁者との面会の申出が弁護人又は弁護人となろうとする者からあった場合に,その申出があった事実を未決拘禁者に告げないまま,保護室に収容中であることを理由として面会を許さない刑事施設の長の措置は,未決拘禁者が精神的に著しく不安定であることなどにより同事実を告げられても依然として同号に該当することとなることが明らかであるといえる特段の事情がない限り,未決拘禁者及び弁護人等の接見交通権を侵害するものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成30年10月25日 平成29(受)990
登載
民集 第72巻5号940頁
参照法条
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律79条1項2号,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律79条4項,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律115条,刑訴法39条1項,国家賠償法1条1項
論点233第39条刑事訴訟法

死刑確定者又はその再審請求のために選任された弁護人が再審請求に向けた打合せをするために刑事施設の職員の立会いのない面会の申出をした場合にこれを許さない刑事施設の長の措置が国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合

裁判要旨死刑確定者又はその再審請求のために選任された弁護人が再審請求に向けた打合せをするために刑事施設の職員の立会いのない面会の申出をした場合に,これを許さない刑事施設の長の措置は,上記面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ,又は死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなど特段の事情がない限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者の上記面会をする利益を侵害するだけではなく,上記弁護人の固有の上記面会をする利益も侵害するものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成25年12月10日 平成24(受)1311
登載
民集 第67巻9号1761頁
参照法条
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第2編第2章第11節第2款 面会,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律121条,刑訴法39条1項,刑訴法440条1項,国家賠償法1条1項
論点234第39条刑事訴訟法

1 弁護人から検察庁の庁舎内に居る被疑者との接見の申出を受けた検察官が同庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として接見の申出を拒否することができる場合
2 検察官が検察庁の庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として同庁舎内に居る被疑者との接見の申出を拒否したにもかかわらず弁護人が同庁舎内における即時の接見を求め即時に接見をする必要性が認められる場合に検察官が執るべき措置
3 弁護人から検察庁の庁舎内に居る被疑者との接見の申出を受けた検察官が同庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として接見の申出を拒否するに際し立会人の居る部屋でのごく短時間の「接見」であっても差し支えないかどうかなどの点についての弁護人の意向を確かめることをせず上記申出に対して何らの配慮もしなかったことが違法とされた事例

裁判要旨1 弁護人から検察庁の庁舎内に居る被疑者との接見の申出を受けた検察官は,同庁舎内に,その本来の用途,設備内容等からみて,検察官が,その部屋等を接見のためにも用い得ることを容易に想到することができ,また,その部屋等を接見のために用いても,被疑者の逃亡,罪証の隠滅及び戒護上の支障の発生の防止の観点からの問題が生じないことを容易に判断し得るような部屋等が存しない場合には,接見の申出を拒否することができる。
2 検察官が検察庁の庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として同庁舎内に居る被疑者との接見の申出を拒否したにもかかわらず,弁護人がなお同庁舎内における即時の接見を求め,即時に接見をする必要性が認められる場合には,検察官には,捜査に顕著な支障が生ずる場合でない限り,秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の「接見」(面会接見)であってもよいかどうかという点につき,弁護人の意向を確かめ,弁護人がそのような面会接見であっても差し支えないとの意向を示したときは,面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務がある。
3 弁護人が,検察官から,検察庁の庁舎内には接見のための設備が無いことを理由に同庁舎内に居る被疑者との接見の申出を拒否されたのに対し,接見の場所は被疑者が現在待機中の部屋でもよいし,検察官の執務室でもよいなどと述べて,即時の接見を求めたこと,弁護人は,勾留場所が代用監獄から少年鑑別所に変更されたことをできる限り早く被疑者に伝えて元気づけようと考え,接見を急いでいたこと,ごく短時間の接見であれば,これを認めても捜査に顕著な支障が生ずるおそれがあったとまではいえないことなど判示の事情の下においては,検察官が,立会人の居る部屋でのごく短時間の「接見」(面会接見)であっても差し支えないかどうかなどの点についての弁護人の意向を確かめることをせず,上記申出に対して何らの配慮もしなかったことは,違法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成17年4月19日 平成12(受)243
登載
民集 第59巻3号563頁
参照法条
刑訴法39条,国家賠償法1条1項
論点235第39条刑事訴訟法

1 代用監獄である警察署に勾留中の各被疑者について「接見等の指定に関する通知書」を発した検察官が留置担当官から弁護人が接見の申出をしたことの連絡を受けて約40〜45分後又は約34分後に接見指定をしない旨の回答をしたことが違法とはいえないとされた事例
2 代用監獄である警察署に勾留中の被疑者について弁護人から接見の申出を受けた留置担当官が検察官から「接見等の指定に関する通知書」が発せられていたことを失念して接見を開始させた直後にこれに気付き接見を中断させた措置が違法とはいえないとされた事例

裁判要旨1 代用監獄である警察署に勾留中の被疑者甲乙について「接見等の指定に関する通知書」を発した検察官が,留置担当官から弁護人が甲との接見の申出をしたことの連絡を受けて約40〜45分後に,乙との接見の申出をしたことの連絡を受けて約34分後にそれぞれ接見指定をしない旨の回答をしたことは,甲については弁護人が閉庁日(土曜日)に事前の連絡なく突然に警察署に赴いたものであり,乙については弁護人が担当検察官の登庁前に事前の連絡なく突然に警察署に赴いたものであるため,いずれも担当検察官への連絡が直ちには取れなかったこと,担当検察官は連絡を受け次第速やかに回答をしたことなど判示の事情の下では,これを違法ということはできない。
2 代用監獄である警察署に勾留中の被疑者について弁護人から接見の申出を受けた留置担当官が,検察官から「接見等の指定に関する通知書」が発せられていたことを失念して接見指定書の有無を確認しないまま接見を開始させたが,その直後にこれに気付き,検察官に対して接見の申出があったことを連絡するため直ちに接見を中断させた措置は,抵抗の姿勢を示した被疑者の左腕をつかんで接見室から連れ出したなどの態様等を考慮しても,これを違法ということはできない。
(2につき,反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年9月7日 平成15(オ)975
登載
集民 第215号91頁
参照法条
国家賠償法1条1項,刑訴法39条1項,刑訴法39条3項
論点236第39条刑事訴訟法

同一人につき被告事件の勾留と余罪である被疑事件の勾留が競合している場合に被告事件についてだけ弁護人に選任された者に対する接見等指定権行使の可否(積極)

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成13年2月7日 平成13(し)48
登載
集刑 第280号115頁
参照法条
刑訴法39条3項
論点237第39条刑事訴訟法

一 弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者から被疑者の逮捕直後に初回の接見の申出を受けた捜査機関が接見の日時等の指定に当たって採るべき措置
二 被疑者の依頼により弁護人となろうとする者から被疑者の逮捕直後に初回の接見の申出を受けた捜査機関が接見の日時を翌日に指定した措置が国家賠償法一条一項にいう違法な行為に当たるとされた事例

裁判要旨一 弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者から被疑者の逮捕直後に初回の接見の申出を受けた捜査機関は、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能なときは、留置施設の管理運営上支障があるなど特段の事情のない限り、被疑者の引致後直ちに行うべきものとされている手続及びそれに引き続く指紋採取、写真撮影等所要の手続を終えた後、たとい比較的短時間であっても、時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認める措置を採るべきである。
二 接見の日時等の指定をする権限を有する司法警察職員が、逮捕された被疑者の依頼により弁護人となろうとする者として逮捕直後に警察署に赴いた弁護士から初回の接見の申出を受けたのに対し、接見申出があってから約一時間一〇分が経過した時点に至って、警察署前に待機していた弁護士に対して接見の日時を翌日に指定した措置は、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能であるにもかかわらず、犯罪事実の要旨の告知等引致後直ちに行うべきものとされている手続及びそれに引き続く写真撮影等所要の手続が終了した後も弁護士と協議することなく取調べを継続し、その後被疑者の夕食のために取調べが中断されたのに、夕食前の取調べの終了を早めたり、夕食後の取調べの開始を遅らせたりして接見させることをしなかったなど判示の事情の下においては、国家賠償法一条一項にいう違法な行為に当たる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成12年6月13日 平成7(オ)105
登載
民集 第54巻5号1635頁
参照法条
国家賠償法1条1項 刑訴法39条1項、刑訴法39条3項 憲法34条前段
論点238第39条刑事訴訟法

弁護人からの被疑者との接見の申出に対し接見の日時等の指定権限のない捜査機関が右権限のある検察官に連絡が取れるまでの間弁護人を待機させた措置が違法とはいえないとされた事例

裁判要旨弁護人が警察署に赴き勾留中の被疑者との接見の申出をしたのに対し、申出を受けた留置主任官が、接見の日時等を指定する権限のある検察官から被疑者と弁護人との接見についていわゆる一般的指定書が送付されていたのに弁護人が具体的指定書を所持していなかったので、右検察官に連絡して指示を受けるために三度にわたり検察庁に電話をしたが、右検察官が朝の登庁前であったため、連絡が取れないまま約四五分を経過した後、右権限のある他の検察官と連絡が取れ、その後は同検察官が弁護人と協議したなど判示の事実関係の下においては、右連絡が取れるまでの間弁護人を待機させた留置主任官の措置に違法があるとはいえない。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成12年3月17日 平成5(オ)1485
登載
集民 第197号397頁
参照法条
国家賠償法1条1項,刑訴法39条1項,刑訴法39条3項
論点239第39条刑事訴訟法

弁護人からの被疑者との接見の申出に対し接見の日時等の指定権限のない捜査機関が右権限のある検察官に連絡を取り同検察官から接見指定書が届けられるまでの間弁護人を待機させるなどした措置が違法とはいえないとされた事例

裁判要旨弁護人が警察署に赴き勾留中の被疑者との接見の申出をしたのに対し、申出を受けた留置担当官が、接見の日時等を指定する権限のある検察官から被疑者と弁護人との接見についていわゆる一般的指定書が送付されていたのに、具体的指定書を所持しているか否かを確認しないまま接見を開始させたが、その一、二分後に弁護人が具体的指定書を所持していないことに気付き、接見を中止させるとともに直ちに右検察官に電話で連絡したところ、右検察官から具体的指定書によって接見の日時等を指定するのでその日時まで接見をさせてはならない旨の指示を受けたなど判示の事実関係の下においては、接見を中止させた上、右検察官から具体的指定書が届けられるまでの間弁護人を待機させた留置担当官の措置に違法があるとはいえない。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成12年3月17日 平成6(オ)2302
登載
集民 第197号433頁
参照法条
国家賠償法1条1項,刑訴法39条1項,刑訴法39条3項
論点240第39条刑事訴訟法

弁護人からの被疑者との接見の申出に対しその日時を翌日に指定しようとして即時又は当日の昼食時間帯の接見を認めなっかた検察官の措置が違法とはいえないとされた事例

裁判要旨弁護人が午前中に警察署に赴いて勾留中の被疑者との接見の申出をし検察官に電話で即時又は昼食時間中の接見を求めたが、被疑者が現に取調べ中であり、勾留の満期を控えて、右取調べが昼食時間を挟んで夕方まで続く可能性があり、昼食時間の開始と終了の時刻及び午後の取調べの終了時刻を予測することが不可能であったため、検察官が接見の日時を翌日に指定する意向を示したところ、弁護人が即時又は昼食時間中の接見に固執して当日の取調べ終了後又は翌日以降の接見を希望せず間もなく警察署を退去したなど判示の事実関係の下においては、接見の日時を翌日に指定しようとして、即時又は当日の昼食時間中若しくはその直後の接見を認めなかった検察官の措置に違法があるとはいえない。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成12年2月24日 平成7(オ)2512
登載
集民 第196号841頁
参照法条
国家賠償法1条1項,刑訴法39条1項,刑訴法39条3項
論点241第39条刑事訴訟法

弁護人からの被疑者との接見の申出に対し書面を交付する方法により接見の日時等の指定をしようとした検察官の措置が違法とはいえないとされた事例

裁判要旨弁護人の事務所、検察庁及び被疑者が勾留されている警察署の位置関係などから、検察庁において接見指定書を受領して右警察署に持参することが弁護人にとって過重な負担となるものではなく、弁護人が申し出た接見の日時までに相当の時間があるために、弁護人が検察庁まで接見指定書を受け取りに行くことにしても接見の開始が遅れることはなく、検察庁から弁護人の事務所に対して接見指定書をファクシミリで送付することができないなど判示の事情の下においては、接見指定書を交付する方法により接見の日時等を指定しようとして、弁護人に対し検察庁において接見指定書を受領するよう求め、その間右指定をしなかった検察官の措置に違法があるとはいえない。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成12年2月22日 平成5(オ)1189
登載
集民 第196号729頁
参照法条
国家賠償法1条1項,刑訴法39条1項,刑訴法39条3項
論点242第39条刑事訴訟法

刑訴法三九条三項〈身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁…〉本文と憲法三四条前段、三七条三項、三八条一項

裁判要旨刑訴法三九条三項〈身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁…〉本文の規定は、憲法三四条前段、三七条三項、三八条一項に違反しない。
裁判
最高裁判所大法廷 平成11年3月24日 平成5(オ)1189
登載
民集 第53巻3号514頁
参照法条
憲法34条前段,憲法37条3項,憲法38条1項,刑訴法39条3項
原

条文原文

原文ママ

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刑事訴訟法 第30条 詳細ページ
第三十条被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。
2被告人又は被疑者の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任することができる。
刑事訴訟法 第31条 詳細ページ
第三十一条弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。
2簡易裁判所又は地方裁判所においては、裁判所の許可を得たときは、弁護士でない者を弁護人に選任することができる。ただし、地方裁判所においては、他に弁護士の中から選任された弁護人がある場合に限る。
刑事訴訟法 第31_2条 詳細ページ
第三十一条の二弁護人を選任しようとする被告人又は被疑者は、弁護士会に対し、弁護人の選任の申出をすることができる。
2弁護士会は、前項の申出を受けた場合は、速やかに、所属する弁護士の中から弁護人となろうとする者を紹介しなければならない。
3弁護士会は、前項の弁護人となろうとする者がないときは、当該申出をした者に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。同項の規定により紹介した弁護士が被告人又は被疑者がした弁護人の選任の申込みを拒んだときも、同様とする。
刑事訴訟法 第32条 詳細ページ
第三十二条公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有する。
2公訴の提起後における弁護人の選任は、審級ごとにこれをしなければならない。
刑事訴訟法 第33条 詳細ページ
第三十三条被告人に数人の弁護人があるときは、裁判所の規則で、主任弁護人を定めなければならない。
刑事訴訟法 第34条 詳細ページ
第三十四条前条の規定による主任弁護人の権限については、裁判所の規則の定めるところによる。
刑事訴訟法 第35条 詳細ページ
第三十五条裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、被告人又は被疑者の弁護人の数を制限することができる。但し、被告人の弁護人については、特別の事情のあるときに限る。
刑事訴訟法 第36条 詳細ページ
第三十六条被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。但し、被告人以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない。
刑事訴訟法 第36_2条 詳細ページ
第三十六条の二この法律により弁護人を要する場合を除いて、被告人が前条の請求をするには、資力申告書(その者に属する現金、預金その他政令で定めるこれらに準ずる資産の合計額(以下「資力」という。)及びその内訳を申告する書面をいう。以下同じ。)を提出しなければならない。
刑事訴訟法 第36_3条 詳細ページ
第三十六条の三この法律により弁護人を要する場合を除いて、その資力が基準額(標準的な必要生計費を勘案して一般に弁護人の報酬及び費用を賄うに足りる額として政令で定める額をいう。以下同じ。)以上である被告人が第三十六条の請求をするには、あらかじめ、その請求をする裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第三十一条の二第一項の申出をしていなければならない。
2前項の規定により第三十一条の二第一項の申出を受けた弁護士会は、同条第三項の規定による通知をしたときは、前項の地方裁判所又は当該被告事件が係属する裁判所に対し、その旨を通知しなければならない。
刑事訴訟法 第37条 詳細ページ
第三十七条左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。
一被告人が未成年者であるとき。
二被告人が年齢七十年以上の者であるとき。
三被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき。
四被告人が心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき。
五その他必要と認めるとき。
刑事訴訟法 第37_2条 詳細ページ
第三十七条の二被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない。
2前項の請求は、勾留を請求された被疑者も、これをすることができる。
刑事訴訟法 第37_3条 詳細ページ
第三十七条の三前条第一項の請求をするには、資力申告書を提出しなければならない。
2その資力が基準額以上である被疑者が前条第一項の請求をするには、あらかじめ、その勾留の請求を受けた裁判官の所属する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第三十一条の二第一項の申出をしていなければならない。
3前項の規定により第三十一条の二第一項の申出を受けた弁護士会は、同条第三項の規定による通知をしたときは、前項の地方裁判所に対し、その旨を通知しなければならない。
刑事訴訟法 第37_4条 詳細ページ
第三十七条の四裁判官は、被疑者に対して勾留状が発せられ、かつ、これに弁護人がない場合において、精神上の障害その他の事由により弁護人を必要とするかどうかを判断することが困難である疑いがある被疑者について必要があると認めるときは、職権で弁護人を付することができる。ただし、被疑者が釈放された場合は、この限りでない。
刑事訴訟法 第37_5条 詳細ページ
第三十七条の五裁判官は、死刑又は無期拘禁刑に当たる事件について第三十七条の二第一項又は前条の規定により弁護人を付する場合又は付した場合において、特に必要があると認めるときは、職権で更に弁護人一人を付することができる。ただし、被疑者が釈放された場合は、この限りでない。
刑事訴訟法 第38条 詳細ページ
第三十八条この法律の規定に基づいて裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付すべき弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。
2前項の規定により選任された弁護人は、旅費、日当、宿泊料及び報酬を請求することができる。
刑事訴訟法 第38_2条 詳細ページ
第三十八条の二裁判官による弁護人の選任は、被疑者がその選任に係る事件について釈放されたときは、その効力を失う。ただし、その釈放が勾留の執行停止によるときは、この限りでない。
刑事訴訟法 第38_3条 詳細ページ
第三十八条の三裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付した弁護人を解任することができる。
一第三十条の規定により弁護人が選任されたことその他の事由により弁護人を付する必要がなくなつたとき。
二被告人と弁護人との利益が相反する状況にあり弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。
三心身の故障その他の事由により、弁護人が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となつたとき。
四弁護人がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。
五弁護人に対する暴行、脅迫その他の被告人の責めに帰すべき事由により弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。
2弁護人を解任するには、あらかじめ、その意見を聴かなければならない。
3弁護人を解任するに当たつては、被告人の権利を不当に制限することがないようにしなければならない。
4公訴の提起前は、裁判官が付した弁護人の解任は、裁判官がこれを行う。この場合においては、前三項の規定を準用する。
刑事訴訟法 第38_4条 詳細ページ
第三十八条の四裁判所又は裁判官の判断を誤らせる目的で、その資力について虚偽の記載のある資力申告書を提出した者は、十万円以下の過料に処する。
刑事訴訟法 第39条 詳細ページ
第三十九条身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
2前項の接見又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。
3検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。