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上訴/通則

通則の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

上訴・通則は、検察官や被告人など誰が上訴・抗告をできるか、上訴期間の起算や一部上訴の扱い、上訴の放棄・取下げとその制限、期限徒過時の上訴権回復、刑事施設にいる被告人への特則を定めています。実務では、上訴できる主体の範囲と期限管理、放棄・取下げに必要な手続要件を押さえておく必要があります。

通則
主体できること条件
検察官・被告人上訴制限なし
決定を受けた第三者抗告制限なし
法定代理人・保佐人被告人のため上訴被告人の意思に反せず不可
勾留理由開示請求者被告人のため上訴開示請求後に限る
原審の代理人・弁護人被告人のため上訴被告人の意思に反せず不可
検察官・被告人等放棄・取下げ死刑・無期拘禁刑判決は放棄不可
法定代理人等放棄・取下げ書面による被告人の同意が必要
  • 併合事件が一個の裁判となった場合、各検察官(弁護士検察官含む)は独立して上訴できる(351条2項)
  • 上訴は裁判の一部に対してもできるが、範囲を限定しないと全部への上訴とみなされる(357条)
  • 上訴期間は裁判が告知された日から起算する(358条)
  • 上訴放棄の申立ては書面でしなければならない(360条の3)
  • 上訴を放棄・取下げた者(同意した被告人含む)は同一事件で再度上訴できない(361条)
  • 刑事施設にいる被告人が期間内に施設長等へ申立書を提出すれば期間内の上訴とみなす(366条、放棄等にも準用367条)
1

通則

通則について、条文は何を定めているか。

第351条検察官・被告人は上訴できる2項判例 23件
  • 検察官・被告人はどちらも上訴が可能
  • 併合事件が一個の裁判になれば各検察官が独立して上訴できる
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第352条決定を受けた第三者も抗告できる1項判例 10件
  • 検察官・被告人以外で決定を受けた者は抗告できる
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第353条法定代理人・保佐人も上訴できる1項判例 9件
  • 法定代理人・保佐人は被告人のために上訴できる
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第354条勾留理由開示請求者も上訴できる1項判例 2件
  • 勾留理由開示があった場合、開示請求者も被告人のため上訴できる
  • その上訴を棄却する決定に対しても同様に上訴できる
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第355条原審の代理人・弁護人も上訴できる1項判例 21件
  • 原審で選任されていた代理人・弁護人は被告人のため上訴できる
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第356条本人の意思に反する上訴は不可1項判例 1件
  • 353〜355条〈原審における代理人又は弁護人は、被告人のため上訴をすることができる。〉の上訴は被告人の明示した意思に反しては不可
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第357条上訴は裁判の一部にもできる1項判例 14件
  • 上訴の範囲を限定しないと裁判全部への上訴とみなされる
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第358条上訴期間は告知日から起算1項判例 9件
  • 上訴の提起期間は裁判が告知された日から進行する
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第359条上訴の放棄・取下げができる1項判例 16件
  • 検察官・被告人・決定を受けた者は上訴の放棄や取下げができる
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第360条代理人等は同意書面で放棄可1項判例 50件
  • 法定代理人・保佐人・勾留理由開示請求者は被告人の書面同意を得て放棄・取下げできる
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第360_2条死刑・無期拘禁刑判決は放棄不可1項判例なし
  • 死刑または無期拘禁刑の判決に対する上訴は放棄できない
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第360_3条上訴放棄の申立ては書面が必要1項判例なし
  • 上訴を放棄する申立ては書面で行う
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第361条放棄・取下げ後は再上訴不可1項判例 4件
  • 放棄・取下げをした者は同一事件で再度上訴できない
  • 放棄・取下げに同意した被告人も再度上訴できない
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第362条期限徒過なら上訴権回復請求可1項判例 22件
  • 自己や代人の責によらず期間内に上訴できなかった場合、原裁判所に上訴権回復を請求できる
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第363条回復請求は期間内・同時申立て2項判例 21件
  • 回復請求は事由が止んだ日から上訴期間相当の期間内にする
  • 回復請求と同時に上訴の申立てもしなければならない
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第364条回復請求の決定に即時抗告可1項判例 7件
  • 上訴権回復請求についての決定には即時抗告ができる
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第365条回復請求中は執行停止も可能1項判例 1件
  • 原裁判所は決定までの間、裁判の執行停止を決定できる
  • その場合、被告人に勾留状を発することができる
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第366条在監者は施設長への提出で有効2項判例 16件
  • 刑事施設にいる被告人が提起期間内に施設長等へ申立書を出せば期間内の上訴となる
  • 自分で申立書を作れないときは施設長等が代筆等をする
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第367条放棄・回復請求にも同様の特則1項判例 3件
  • 在監者の上訴放棄・取下げ・回復請求にも前条の規定を準用する
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第351条刑事訴訟法

原判決後上訴権のない選任権者により選任された弁護人のした上訴申立の適否

裁判要旨原判決後選任された弁護人は、その選任者が上訴権を有しない場合であつても、被告人を代理して上訴申立をすることができる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和63年2月17日 昭和62(し)107
登載
刑集 第42巻2号299頁
参照法条
刑訴法30条2項,刑訴法32条2項,刑訴法41条,刑訴法351条1項,刑訴法353条,刑訴法355条,刑訴法433条
論点2第351条刑事訴訟法

検察官の量刑不当の上訴と憲法三九条

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和60年5月23日 昭和60(あ)107
登載
集刑 第240号47頁
参照法条
憲法39条,刑訴法351条,刑訴法381条
論点3第351条刑事訴訟法

第一審判決後被告人の妻によつて選任された弁護人と控訴申立権

裁判要旨第一審判決後被告人の妻によつて選任された弁護人は、被告人のために控訴申立をする権限がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年10月19日 昭和54(し)71
登載
刑集 第33巻6号651頁
参照法条
刑訴法30条2項,刑訴法351条1項,刑訴法355条
論点4第351条刑事訴訟法

公訴棄却の決定に対する被告人・弁護人の上訴権

裁判要旨公訴棄却の決定に対しては、被告人・弁護人からその違法・不当を主張して上訴することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年10月31日 昭和53(し)57
登載
刑集 第32巻7号1793頁
参照法条
刑訴法339条,刑訴法351条,刑訴法355条,刑訴法426条1項,憲法32条
論点5第351条刑事訴訟法

第二審判決後被告人の父によつて選任された弁護人と上告申立権

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和51年1月27日 昭和51(あ)36
登載
集刑 第199号27頁
参照法条
刑訴法30条2項,刑訴法351条1項,刑訴法353条,刑訴法355条
論点6第351条刑事訴訟法

判決宣告後に被告人の兄が選任した弁護人の上訴申立の適否

裁判要旨判決宣告後に被告人の兄が選任した弁護人の上訴申立は不適法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年3月28日 昭和49(あ)2843
登載
集刑 第195号731頁
参照法条
刑訴法351条1項,刑訴法355条
論点7第351条刑事訴訟法

検察官の量刑不当の控訴趣意を理由ありと認めて第一審判決を破棄しこれより重い刑を言い渡すことと憲法三九条

裁判要旨検察官が控訴を申し立てて第一審判決の刑より重い刑の判決を求め、控訴裁判所が右申立を理由ありと認めて第一審判決を破棄しこれより重い刑を言い渡すことが憲法三九条に違反するものでないことは、昭和二四年新(れ)第二二号同二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)の趣旨とするところである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年2月21日 昭和48(あ)2707
登載
集刑 第191号159頁
参照法条
憲法39条,刑訴法351条,刑訴法397条,刑訴法400条但書
論点8第351条刑事訴訟法

一審判決後被告人の妻によつて選任された弁護人の控訴申立権限(消極)

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年10月31日 昭和47(し)80
登載
集刑 第185号461頁
参照法条
刑訴法30条2項,刑訴法351条1項,刑訴法353条,刑訴法355条
論点9第351条刑事訴訟法

免訴の判決に対する被告人の上訴権

裁判要旨被告人は、免訴の判決に対しては、理由のいかんを問わず上訴することができない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和46年2月25日 昭和45(あ)1754
登載
集刑 第179号119頁
参照法条
刑訴法337条,刑訴法351条
論点10第351条刑事訴訟法

一 第一審の無期懲役刑の判決に対し検察官が控訴を申し立て死刑の判決を求めることと憲法三九条
二 第一審判決が死刑以外の言渡しをしたのに対し控訴審がこれを破棄して死刑を言い渡すことと憲法三六条

裁判要旨一 第一審の無期懲役刑の判決に対し、検察官が控訴を申し立て、死刑の判決を求めることは、憲法三九条に違反しない(当裁判所昭和四四年(あ)第一二一二号、同四五年三月二六日第一小法廷判決参照)。
二 第一審判決が死刑以外の言渡しをしたのに対し、控訴審がこれを破棄して死刑を言い渡すことは、憲法三六条に違反しない(当裁判所昭和四四年(あ)第一二一二号、同四五年三月二六日第一小法廷判決参照)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和46年2月23日 昭和44(あ)667
登載
集刑 第179号97頁
参照法条
憲法36条,憲法39条,刑訴法351条1項,刑訴法400条但書
論点11第351条刑事訴訟法

控訴趣意の撤回

裁判要旨被告人は、弁護人が被告人のために差し出した控訴趣意を撤回することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年9月4日 昭和44(あ)726
登載
刑集 第24巻10号1311頁
参照法条
刑訴法41条,刑訴法351条1項,刑訴法359条,刑訴法376条1項,刑訴規則236条1項
論点12第351条刑事訴訟法

死刑を求める検察官控訴と憲法三九条

裁判要旨検察官が控訴を申し立て第一審判決の刑より重い刑の判決を求めることが憲法三九条に違反しないことは、昭和二四年新(れ)第二二号同二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)の判示するとおりであり、検察官が死刑の判決を求める場合もその例外とは解されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年3月26日 昭和44(あ)1212
登載
集刑 第175号511頁
参照法条
憲法39条後段,刑訴法351条1項
論点13第351条刑事訴訟法

第一審判決後被告人の妻によつて選任された弁護人と控訴申立権

裁判要旨第一審判決後被告人の妻によつて選任された弁護人には、被告人のため控訴申立をする権限がない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年9月4日 昭和43(あ)2531
登載
刑集 第23巻9号1085頁
参照法条
刑訴法30条2項,刑訴法351条1項,刑訴法353条,刑訴法355条
論点14第351条刑事訴訟法

被告人に不利益な主張であつて上告理由として許されないとされた事例

裁判要旨一所為数法の関係にあたると認定された所為を併合罪にあたると主張する上告論旨は、被告人にとつて不利益な主張であつて、上告理由として許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和44年2月5日 昭和42(あ)2747
登載
集刑 第170号191頁
参照法条
刑訴法351条,刑法54条1項前段,刑法45条
論点15第351条刑事訴訟法

控訴趣意書を控訴申立をした検察庁の検察官が作成しこれを控訴裁判所に対応する検察庁の検察官が提出することの適否

裁判要旨控訴趣意書を控訴申立をした検察庁の検察官が作成し、これを控訴裁判所に対応する検察庁の検察官が提出することは、訴訟法に違反しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年7月4日 昭和42(あ)1123
登載
集刑 第168号125頁
参照法条
刑訴法351条1項,刑訴法372条,刑訴法376条1項,刑訴規則236条1項,検察庁法5条
論点16第351条刑事訴訟法

最高裁判所のした保釈却下決定に対する異議申立が棄却された事例。

裁判要旨本件について、最高裁判所がした保釈却下決定に対し異議の申立があつたが、最高裁判所のした保釈却下決定に対し異議申立を許す規定はないから、申立は不適法であつて棄却すべきものである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年1月26日 昭和40(す)6
登載
集刑 第154号525頁
参照法条
刑訴法351条,刑訴法428条
論点17第351条刑事訴訟法

被告人に対し不利益な主張であつて適法な上告理由にあたらないとされた事例。―一罪に対する併合罪の主張―

裁判要旨所論は、原判決は被告人の昭和三四年六月下旬頃から同三五年五月初旬頃までの管理売春の所為につき、これを一罪として一個の刑を科しているけれども、被告人には昭和三四年九月一九日宣告同年一〇月七日確定の道路交通取締法違反による罰金三、〇〇〇円及び昭和三五年一月二八日宣告同年二月一七日確定の同法違反による罰金四、〇〇〇円の二個の確定裁判が存するのであるから、被告人の管理売春の所為はそれぞれ右二個の確定裁判と併合罪の関係に立ち、結局三個の刑を科すべきことになるのであつて、これを一罪として一個の刑を科した原判決は東京高裁昭和二九年九月二八日判決、名古屋高裁金沢支部昭和三一年一一月二七日判決に違反しかつ刑法第四五条の適用を誤つたものであると主張するが、所論は結局被告人に不利益な主張に帰するのであつて、適法な上告理由に当らない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年6月1日 昭和37(あ)3013
登載
集刑 第151号303頁
参照法条
刑法45条4後段,刑訴法351条,刑訴法402条,刑訴法411条
論点18第351条刑事訴訟法

第一審の無罪判決を維持した第二審判決に対する被告人の上訴権。

裁判要旨被告人等は控訴判決に対し上告申立をしたが、被告人は第一審の無罪判決を維持した第二審判決に対し上訴権を有しないこと当裁判所の判例(昭和三七年(あ)第一七五一号、昭和三七年九月一八日第三小法廷決定)とするところである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年3月31日 昭和39(あ)42
登載
集刑 第150号937頁
参照法条
刑訴法351条,刑訴法336条
論点19第351条刑事訴訟法

無罪の判決の被告人の上訴。

裁判要旨被告人は、無罪の判決については、その理由の如何を問わずこれに対し上訴権を有しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年9月18日 昭和37(あ)1751
登載
集刑 第144号651頁
参照法条
刑訴法351条
論点20第351条刑事訴訟法

第一審判決に対し検査官が控訴を申し立てた場合の控訴趣意書の作成提出者。

裁判要旨第一審判決に対し、検察官が控訴を申し立てた場合、その検察官が控訴趣意書を作成し、控訴裁判所に対応する検察庁の検察官がこれを同裁判所に提出することは訴訟法に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年7月1日 昭和33(あ)424
登載
集刑 第126号633頁
参照法条
刑訴法351条1項,刑訴法372条,刑訴法376条1項,刑訴規則236条1項
論点21第351条刑事訴訟法

一 被告人に不利益な主張であつて、上告理由とすることの許されない事例
二 台湾製パイン・アツプル罐詰の輸入税率

裁判要旨一 刑法第四五条前段の併合罪の関係にあるものとして、(一)関税逋脱、(二)(1)(2)密輸入品運搬、(三)関税逋脱未遂の罪が認定せられ、同第四七条〈訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる…〉第一〇条〈同一事件が事物管轄を異にする数個の裁判所に係属するときは、上級の裁判所が、これを審判する。〉により右(一)の罪を犯情の最も重いものとしてこれに所定の加重をして処断せられたのに対し、右(二)(1)(2)をもつて関税逋脱または密輸入の罪にあたると主張する上告論旨は、被告人にとつて不利益な主張をなすものであつて、上告適法の理由とならない。
二 台湾製パイン・アツプル罐詰は関税定率法別表輸入税表番号三〇一の一にあたり、これによつて輸入税が課せられる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年7月19日 昭和28(あ)5347
登載
刑集 第11巻7号1939頁
参照法条
旧関税法75条1項,旧関税法75条2項,旧関税法76条ノ2第1項,刑訴法405条,刑訴法407条,刑訴法402条,刑訴法351条,関税定率法別表輸入税表番号301の1甲,関税定率法別表輸入税表番号301の2甲
論点22第351条刑事訴訟法

被告人に不利益な主張であつて上告理由として許されない一事例

裁判要旨科刑上の一罪として認定された所為を併合罪にあたると主張する上告論旨は、被告人にとり不利益な主張であつて、上告理由として許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年10月19日 昭和29(あ)1156
登載
刑集 第8巻10号1596頁
参照法条
刑法54条1項,刑法45条,刑法47条,刑訴法351条
論点23第351条刑事訴訟法

弁護人からの証拠開示命令請求(刑訴法316条の26第1項〈裁判所は、検察官が第三百十六条の十四第一項若しくは第三百十六条の十五第一項若しくは第二項(第三百十六条の二十一第四項にお…〉)の棄却決定の謄本が先に弁護人に送達され、その後に被告人本人に送達された場合における、同決定に対する弁護人の即時抗告提起期間の起算日

裁判要旨弁護人からの証拠開示命令請求(刑訴法316条の26第1項〈裁判所は、検察官が第三百十六条の十四第一項若しくは第三百十六条の十五第一項若しくは第二項(第三百十六条の二十一第四項にお…〉)を棄却した決定の謄本が先に弁護人に送達され、その後に被告人本人に送達された場合において、弁護人が同決定に対して即時抗告をするときは、その提起期間は、同決定の謄本が被告人本人に送達された日から進行する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和6年11月15日 令和6(し)761
登載
刑集 第78巻6号447頁
参照法条
刑訴法316条の20第1項、刑訴法316条の26、刑訴法351条1項、刑訴法352条、刑訴法355条、刑訴法358条、刑訴法422条
論点24第352条刑事訴訟法

弁護人選任届の提出されていない弁護士がなした等の問題点のある抗告が適法視された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和48年7月27日 昭和48(し)57
登載
集刑 第189号737頁
参照法条
刑訴法21条2項,刑訴法352条,刑訴法433条2項
論点25第352条刑事訴訟法

一 裁判所のした提出命令は刑訴法四二〇条二項にいう押収に関する決定にあたるか
二 いわゆる付審判請求事件についてなされた提出命令に対する不服申立の方法

裁判要旨一 裁判所のした提出命令は、刑訴法四二〇条二項〈裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定に対しては、この法律に特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合を除…〉にいう押収に関する決定にあたる。
二 いわゆる付審判請求事件についてなされた提出命令に対しては、刑訴法四一九条〈抗告は、特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合の外、裁判所のした決定に対してこれをすることができる。但し、この…〉による抗告をすることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年9月18日 昭和44(し)59
登載
刑集 第23巻9号1146頁
参照法条
刑訴法99条2項,刑訴法420条1項,刑訴法420条2項,刑訴法262条1項,刑訴法352条,刑訴法419条,刑訴法433条
論点26第352条刑事訴訟法

一 刑訴法四三〇条〈検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収(電磁的記録提供命令(第百二条の二第一項第一号イに掲げる方法によ…〉による不服申立を受けた裁判所と差押の必要性に関する審査権

二 事件送致後の司法警察職員と押収処分に関する裁判に対する特別抗告権

裁判要旨一 検察官等のした差押に関する処分に対して、刑訴法四三〇条〈検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収(電磁的記録提供命令(第百二条の二第一項第一号イに掲げる方法によ…〉の規定により不服の申立を受けた裁判所は、差押の必要性の有無についても審査することができる。

二 司法警察職員は、事件を検察官に送致した後においては、当該事件につき司法警察職員がした押収に関する処分を取り消しまたは変更する裁判に対して抗告を申し立てることができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和44年3月18日 昭和43(し)100
登載
刑集 第23巻3号153頁
参照法条
刑訴法99条1項,刑訴法218条1項,刑訴法222条1項,刑訴法430条,刑訴法203条1項,刑訴法352条,刑訴法433条
論点27第352条刑事訴訟法

一 保釈保証金等を納付しまたは保証書を差し出した被告人以外の者の保証金没取決定に対する不服申立権の有無
二 あらかじめ告知・弁解等の機会を与えずになされた保証金没取決定と憲法第三一条第二九条

裁判要旨一 被告人以外の者で、保釈保証金もしくはこれに代わる有価証券を納付し、または保証書を差し出したものは、保釈保証金没取決定につき刑訴法第三五二条にいう「検察官又は被告人以外の者で決定を受けたもの」に該当し、その者も右決定に対し不服の申立(抗告)をすることができる。
二 保釈保証金没取決定は、これに対し事後に不服申立の途が認められれば、あらかじめ告知、弁解、防禦の機会が与えられていないからといつて、憲法第三一条、第二九条に違反するものではない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和43年6月12日 昭和42(し)7
登載
刑集 第22巻6号462頁
参照法条
刑訴法94条,刑訴法352条,刑訴法96条2項,刑訴法96条3項,憲法31条,憲法29条
論点28第352条刑事訴訟法

保釈保証書を差し出した者の保証金没取決定に対する異議申立権の有無。

裁判要旨保釈された者が有罪判決確定後逃亡したことを理由として高等裁判所がなした同人に対する保釈保証金没取決定に対し、さきに同人のため保証書を差し出した者は、刑訴第三五二条〈検察官又は被告人以外の者で決定を受けたものは、抗告をすることができる。〉の「被告人以外の者で決定を受けたもの」として、みずから異議申立をすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年2月13日 昭和33(し)84
登載
刑集 第13巻2号153頁
参照法条
刑訴法96条,刑訴法94条3項,刑訴法352条,428条,420条1項,420条2項
論点29第352条刑事訴訟法

保釈保証書を差し出した者の保証金没取決定に対する異議申立権の有無

裁判要旨保釈された者が有罪判決確定後逃亡したることを理由として高等裁判所がなした同人に対する保釈保証金没取決定に対し、さきに同人のため保証書を差し出した者は、刑訴第三五二条〈検察官又は被告人以外の者で決定を受けたものは、抗告をすることができる。〉の「被告人以外の者で決定を受けたもの」として、自ら異議申立をすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年8月22日 昭和31(し)25
登載
刑集 第10巻8号1273頁
参照法条
刑訴法96条,刑訴法94条3項,刑訴法352条,刑訴法428条,刑訴法420条1項,刑訴法420条2項
論点30第352条刑事訴訟法

一 旧刑訴第四一〇条第八号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。但し、判決に影響を及ぼさな…〉および第一六号にあたらない事例
二 憲法第三七条第一項にいわゆる公平な裁判所の裁判の意義

裁判要旨一 旧刑訴法事件における控訴審の第二八回公判期日(昭和二六年六月一八日)になつて、被告人よりその二日前の日附になる医師の診断書を添え公判延期願が提出されたが、その診断書によつては必らずしも出廷不可能な疾病とは認められず、また現に被告人がその公判期日に出頭していて、右公判延期申請が却下されるや自ら裁判長忌避の申立を為し、その申立が却下されるとさらに抗告を申し立て、且つ証人の尋問途中裁判長の許可を受けないで退廷し、その後適式な公判期日の指定があつたにかかわらず、第九二回公判期日(同年七月四日)二日前の日附になる医師の診断書を差し出しただけで、公判延期願を提出することもなく、その他首肯すべき事由も示すことなく、同公判期日および第三〇回公判期日(同月六日)に出頭しなかつた場合には、裁判所が右診断書を措信せず、何ら公判手続を停止することなく、爾後被告人不出頭のままその陳述を聴かないで審判したからといつて、旧刑訴第四一〇条第八号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。但し、判決に影響を及ぼさな…〉および第一六号所定の事由があるものとすることはできない。
二 憲法第三七条第一項にいわゆる公平な裁判所の裁判とは被告人の側からみてその手続が不公平であると思われる裁判を指すものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年1月17日 昭和26(れ)2143
登載
集刑 第72号207頁
参照法条
旧刑訴法410条8号,旧刑訴法410条16号,旧刑訴法404条,旧刑訴法330条,旧刑訴法407条,旧刑訴法352条,刑訴規則183条,刑訴規則施行規則3条1号,憲法37条1項
論点31第352条刑事訴訟法

弁護人に対し証拠開示することを命じる旨求めた弁護人からの証拠開示命令請求(刑訴法316条の26第1項〈裁判所は、検察官が第三百十六条の十四第一項若しくは第三百十六条の十五第一項若しくは第二項(第三百十六条の二十一第四項にお…〉)の棄却決定に対する即時抗告提起期間の起算日

裁判要旨弁護人に対し証拠開示することを命じる旨求めた弁護人からの証拠開示命令請求(刑訴法316条の26第1項〈裁判所は、検察官が第三百十六条の十四第一項若しくは第三百十六条の十五第一項若しくは第二項(第三百十六条の二十一第四項にお…〉)を棄却する決定については,即時抗告の提起期間は,同決定の謄本が弁護人に送達された日から進行する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成23年8月31日 平成23(し)286
登載
刑集 第65巻5号935頁
参照法条
刑訴法316条の15第1項,刑訴法316条の26,刑訴法352条,刑訴法358条,刑訴法422条
論点32第352条刑事訴訟法

被告人の配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹からの保釈請求を却下した裁判に対する同人らの不服申立ての許否

裁判要旨被告人の配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹は,自ら申し立てた保釈の請求を却下した裁判に対し,刑訴法352条〈検察官又は被告人以外の者で決定を受けたものは、抗告をすることができる。〉にいう「決定を受けたもの」又は同法429条1項にいう「不服がある者」として抗告又は準抗告を申し立てることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成17年3月25日 平成17(し)91
登載
刑集 第59巻2号49頁
参照法条
刑訴法88条1項,刑訴法352条,刑訴法429条1項
論点33第353条刑事訴訟法

被告人の支配人からの正式裁判請求の適否

裁判要旨略式手続における代理人または弁護人に該当せず、被告人の法定代理人または保佐人にも該当しない被告人の支配人からの正式裁判請求は不適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年1月17日 昭和42(し)71
登載
刑集 第22巻1号1頁
参照法条
刑訴法353条,刑訴法355条,刑訴法465条,刑訴法467条,刑訴法468条1項,商法38条1項
論点34第353条刑事訴訟法

一 被告人の父からの控訴申立の適否。
二 控訴の申立が法令上の方式に違反する場合と第一審裁判所の措置。

裁判要旨一 原審における代理人または弁護人および被告人の法定代理人または保佐人に該当しない被告人の父からの控訴申立は不適法である。
二 第一審裁判所は、控訴の申立が法令上の方式に違反していることを理由として右申立を棄却することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年11月24日 昭和33(し)12
登載
刑集 第12巻15号3531頁
参照法条
刑訴法353条,刑訴法355条,刑訴法42条,刑訴法375条,刑訴法385条1項,刑訴規則235条
論点35第353条刑事訴訟法

被告人の母からの上告申立の適否

裁判要旨原審における代理人または弁護人および被告人の法定代理人または保佐人に該当しない被告人の母からの上告申立は不適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年4月11日 昭和30(あ)732
登載
刑集 第9巻4号836頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法385条1項,刑訴法355条,刑訴法353条,刑訴法42条
論点36第353条刑事訴訟法

一 弁論終結後と旧刑訴法第三五三条
二 迅速でない裁判と破棄の事由

裁判要旨一 旧刑訴法第三五三条は、弁論終結後には適用されない。
二 憲法第三七条第一項に違反し、迅速を欠いた裁判であるということは、原判決破棄の理由にならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和24年3月12日 昭和23(れ)1579
登載
刑集 第3巻3号293頁
参照法条
旧刑訴法353条,旧刑訴法411条,憲法37条
論点37第353条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する被告人の補佐人からの異議申立ての適否(消極)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年10月25日 平成16(す)616
登載
集刑 第286号407頁
参照法条
刑訴法42条,刑訴法353条,刑訴法355条,刑訴法385条2項,刑訴法386条2項,刑訴法414条
論点38第354条刑事訴訟法

除斥事由ある裁判官が審理に関与しても後に適法に審理が更新された場合には右の違法は判決に影響するか

裁判要旨本件の差戻後の控訴審第一、二回公判に除斥事由ある裁判官が関与しても第三回公判期日において両裁判官を除き適法なる構成の裁判所が審理を更新し、新たなる審理を遂げた上、これに基いて判決をした場合には右の違法は該判決に何等影響を及ぼさなかつたものというべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年7月25日 昭和26(れ)2315
登載
集刑 第66号407頁
参照法条
旧刑訴法354条,旧刑訴法448条ノ2第2項
論点39第354条刑事訴訟法

公判手続の重要部分に関与しない判事が判決に関与した場合と原判決の破棄

裁判要旨原審判事小林登一が原審公判に関与する以前において既に検察官の起訴状の朗読その他冐頭手続、証拠書類及び証拠物の取調、証人Aの尋問等が行われ、同判事は公判手続の更新のなされないままにその証人Bの尋問及び当事者の弁論に関与したにすぎないのであつて、かくの如く公判手続の重要部分に関与しない判事が判決に関与することは口頭弁論主義直接審理主義の大原則を著しく蹂躙するものであり審理に関与した裁判官が裁判をするのと然らざる裁判官が裁判をするのとでは心証を異にし従つて主文が反対になることもないではないから刑訴四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉によつて原判決を破棄すべき場合にあたるものといわねばならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月27日 昭和26(れ)2333
登載
集刑 第64号705頁
参照法条
旧刑訴法354条,旧刑訴法345条,刑訴法411条1号
論点40第355条刑事訴訟法

忌避申立却下決定に対する即時抗告棄却決定謄本が被告人と弁護人との双方に日を異にして送達された場合と抗告申立期間の起算日

裁判要旨忌避申立却下決定に対する即時抗告棄却決定の謄本が、被告人と申立人である弁護人との双方に日を異にして送達された場合における抗告申立の期間は、被告人本人に送達された時から進行をはじめる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年4月30日 昭和45(し)24
登載
集刑 第176号277頁
参照法条
刑訴法21条,刑訴法41条,刑訴法355条,刑訴法358条,刑訴法433条
論点41第355条刑事訴訟法

保釈請求却下決定に対する準抗告申立棄却決定謄本が被告人と弁護人との双方に日を異にして送達された場合と抗告申立期間の起算日

裁判要旨保釈請求却下決定に対する準抗告申立棄却決定の謄本が、被告人と申立人である弁護人との双方に日を異にして送達された場合における抗告申立の期間は、被告人本人に送達された日から起算すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年6月19日 昭和43(し)20
登載
刑集 第22巻6号483頁
参照法条
刑訴法88条1項,刑訴法41条,刑訴法355条,刑訴法358条,刑訴法433条,刑訴規則34条
論点42第355条刑事訴訟法

保釈請求却下決定に対する準抗告申立棄却決定謄本が被告人と弁護人との双方に日を異にして送達された場合と抗告申立期間の起算日

裁判要旨保釈請求却下決定に対する準抗告申立棄却決定の謄本が、被告人と申立人である弁護人との双方に日を異にして送達された場合における抗告申立の期間は、被告人本人に送達された日から起算すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年10月25日 昭和43(し)83
登載
集刑 第169号209頁
参照法条
刑訴法88条1項,刑訴法41条,刑訴法355条,刑訴法358条,刑訴法433条,刑訴規則34条
論点43第355条刑事訴訟法

一 署名のない申立書によつてした被告人の上告申立の効力。
二 署名のない弁護人選任届によつてした被告人の弁護人選任の効力。

裁判要旨一 氏名を記載することができない合理的な理由がないのに、署名のない申立書によつてした被告人の上告申立は、無効である。
二 氏名を記載することができない合理的な理由がないのに、署名のない弁護人選任届によつてした被告人の弁護人選任は、無効である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年7月20日 昭和39(あ)2029
登載
刑集 第19巻5号591頁
参照法条
刑訴法30条1項,刑訴法355条,刑訴法374条,刑訴法385条,刑訴法414条,刑訴規則1条2項,刑訴規則18条,刑訴規則60条
論点44第355条刑事訴訟法

被告人が上告申立をした場合における原審弁護人提出の上告趣意書の効力。

裁判要旨被告人自ら上告の申立をなした場合に、原審弁護人が上告趣意書提出期間内にその資格で上告趣意書を提出しても、右上告趣意は審理の対象とならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年7月18日 昭和36(あ)730
登載
刑集 第15巻7号1103頁
参照法条
刑訴法355条,刑訴法376条,刑訴法392条,刑訴法407条,刑訴法414条,刑訴法32条2項,刑訴規則252条
論点45第355条刑事訴訟法

控訴審が検察官の量刑不当を理由とする控訴趣意を認めて第一審判決を破棄し自判する場合と第一審における心神耗弱の主張に対する判断の要否。

裁判要旨第一審判決の量刑軽きにすぎるとして検察官から控訴の申立がなされた事件において、控訴審が右量刑の点のみについて判断し、第一審判決を破棄して自判する場合には、第一審において弁護人からなされた心神耗弱の主張については判断を加えなくても違法ではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年11月9日 昭和36(あ)10
登載
刑集 第15巻10号1696頁
参照法条
刑訴法355条2項,刑法39条2項
論点46第355条刑事訴訟法

一 刑訴第三三五条第二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の主張に当らない一事例。―所持の麻薬がもはや薬効のないものと信じていた旨の主張―

二 控訴趣意書提出最終日指定の通知は控訴の申立をした弁護人にもしなければならないか。

三 控訴趣意書提出最終日に近く選任届を提出した援護人に対して右通知を要するか。

裁判要旨一 被告人は所持の麻薬がもはや薬効のないものと信じていた旨の主張は、単に麻薬所持の犯意を否認するものに過ぎないものであつて、刑訴第三三五条第二項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の主張に当らない。

二 原審において戸田弁護人に対し控訴趣意書提出最終日指定の通知をしなかつたのは、被告人に対して右通知をなした当時、同弁護人については未だ控訴審における弁護人選任届が提出されていなかつたためであつて、たとえ同弁護人が第一審弁護人として控訴申立をしたものであり、また控訴趣意書提出最終日に近く弁護人選任届を提出したからといつて、右通知をしなかつた原審の措置を非難するのは当らない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年5月11日 昭和28(あ)3703
登載
集刑 第105号197頁
参照法条
刑訴法335条2項,刑訴法355条,刑訴規則236条
論点47第355条刑事訴訟法

弁護人の上告申立が被告人の明示した意思に反する例

裁判要旨一件記録によれば、原審弁護人は刑訴三五五条〈原審における代理人又は弁護人は、被告人のため上訴をすることができる。〉に基き被告人のために原判決に対し、上告の申立をしたのであるが当裁判所からの弁護人選任についての照会に対し、被告人は書面を以つて当裁判所に対し原判決に服し、上告の意思なき旨を回答し且つ何故に事件が上告されたか従つて右弁護人の上告申立を全然知らないことが明認されるのである。されば、原審弁護人の本件上告は被告人の明示した意思に反したこととなり、結局本件上告は不適法なものといわなければならぬ。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年3月6日 昭和26(あ)1643
登載
集刑 第62号155頁
参照法条
刑訴法41条,刑訴法355条,刑訴法356条
論点48第355条刑事訴訟法

1 刑訴法349条の2第1項〈前条の請求があつたときは、裁判所は、猶予の言渡を受けた者又はその代理人の意見を聴いて決定をしなければならない。〉に基づく求意見に対する回答について成人である被請求人から委任を受けた母親のした刑の執行猶予言渡しの取消決定に対する即時抗告の適否
2 刑の執行猶予言渡しの取消決定に対する即時抗告について被請求人から権限の委任を受けた母親が被請求人を代理してした即時抗告の適否

裁判要旨1 刑の執行猶予言渡しの取消決定に対し,成人である被請求人の母親は,被請求人から刑訴法349条の2第1項に基づく求意見に対する回答について委任を受けていたとしても,即時抗告をする権限を有しない。
2 刑の執行猶予言渡しの取消決定に対し,被請求人の母親は,被請求人から即時抗告に関する権限の委任を受けたとしても,被請求人を代理して即時抗告をすることはできない。
(2につき反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年3月18日 平成16(し)316
登載
刑集 第59巻2号38頁
参照法条
刑法26条,刑訴法349条,刑訴法349条の2,刑訴法355条
論点49第357条刑事訴訟法

一 受交付金員が起訴外の供与に費消された場合と公職選挙法二二四条による追徴

二 受交付金員が選挙運動の正当費用に費消された場合と公職選挙法二二四条による追徴

三 上告審において原判決中没収追徴の部分のみが破棄された事例

裁判要旨一 公職選挙法二二一条一項五号所定の受交付者が、その交付を受けた趣旨に従つて受交付金員の一部を他に供与したときは、その供与が起訴されていなくても、同法二二四条後段による受交付者からの追徴額の算定にあたり、右供与にかかる金額を控除すべきである。

二 公職選挙法二二一条一項五号所定の受交付者が、受交付金員の一部を後援会等の選挙運動の正当費用に支出したときは、同法二二四条後段による受交付者からの追徴額の算定にあたり、右正当費用にかかる金額を控除すべきである。

三 上告裁判所は、原判決中没収・追徴の部分につき刑訴法四一一条一号、三号に該当する事由があると認めるときは、原判決の右部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年12月11日 昭和59(あ)1005
登載
刑集 第41巻8号352頁
参照法条
公職選挙法221条1項5号,公職選挙法224条,刑訴法357条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号
論点50第357条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入の部分のみが破棄された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和59年7月20日 昭和59(あ)189
登載
集刑 第237号1081頁
参照法条
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法410条1項
論点51第357条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入の部分のみが破棄された事例
(反対意見がある)

裁判要旨原判決の違法が、現実に存在しない未決勾留日数を裁量により本刑に算入した点のみにある場合においては、原判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年7月16日 昭和56(あ)654
登載
刑集 第35巻5号557頁
参照法条
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法410条1項
論点52第357条刑事訴訟法

一 甲事件の裁判確定によりその本刑たる自由刑の執行に替えられるべき未決勾留と重複する未決勾留を乙事件の本刑に算入することの適否
二 原判決中未決勾留日数算入の部分のみが破棄された事例

裁判要旨一 甲事件の裁判確定によりその本刑たる自由刑の執行に替えられるべき未決勾留と重複する未決勾留を乙事件の本刑に算入しても、ただちにこれを違法なものとはいえないが、右裁判は、後に甲事件の裁判が確定したことによつて、結局、違法なものとなる。
二 原判決の違法が、後に他事件の裁判確定によつてその本刑たる自由刑の執行に替えられた未決勾留と重複する未決勾留を裁量により本刑に算入した点のみにある場合においては、原判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和55年1月11日 昭和54(あ)1145
登載
刑集 第34巻1号1頁
参照法条
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法411条1号,刑訴法495条
論点53第357条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入の部分のみが破棄された事例

裁判要旨原判決の違法が、罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行と競合する未決勾留日数の一部を裁量により本刑に算入した点にのみある場合においては、原判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年4月19日 昭和53(あ)2328
登載
刑集 第33巻3号261頁
参照法条
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法410条1項
論点54第357条刑事訴訟法

原判決中未決勾留日数算入の部分のみが破棄された事例

裁判要旨原判決の違法が、法律上当然に全部本刑に通算されるべき未決勾留日数の一部を裁量により本刑に算入した点にのみある場合においては、厚判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年11月18日 昭和51(あ)761
登載
刑集 第30巻10号1902頁
参照法条
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法410条1項,刑訴法495条
論点55第357条刑事訴訟法

全部控訴があつたと認めた原判断は相当である旨のなお書の付された事例
一審判決の一部破棄で足りたにかかわらず全部を破棄し自判した原判決につき四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用しない旨判示された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年9月26日 昭和49(あ)1018
登載
集刑 第193号461頁
参照法条
刑訴法357条,刑訴法411条
論点56第357条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたるとされた事例。

裁判要旨記録によれば、第一審において、被告人に対する起訴罪名甲乙丙の各罪の事実につき有罪を認め、甲乙の罪につき懲役刑を丙の罪につき罰金刑を言渡したところ、検察官から右甲乙の各罪に関する部分を限つて控訴の申立がなされ、被告人からは右判決に対して控訴の申立がなされないまま、その申立期間を経過したことが認められるにもかかわらず、第二審において、右第一審判決にかかる事件の全部について審判し、右丙罪についても、第一審判決を破棄したうえ、被告人を罰金刑に処する旨の判決をしている。右によれば第二審は被告人に対する丙罪について、係属していない事件の審判をした違法があり、この違法は判決に影響があるから刑訴法第四一一条第一号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年8月4日 昭和37(あ)2678
登載
集刑 第152号423頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法357条
論点57第357条刑事訴訟法

一部有罪一部無罪の判決に対し全部について控訴の申立があり有罪部分ついて理由がなく無罪部分について第一審判決破棄の理由があるときの措置。

裁判要旨一部有罪(有期懲役刑)一部無罪の判決に対し、その全部について警察官から、有罪部分について被告人から控訴の申立があり、無罪部分について第一審判決を破棄すべき理由があつてこれを有期懲役刑に処するには、有罪部分について控訴の理由がない場合でも、全部について第一審判決を破棄し、刑法第四五条、第四七条を適用して一個の有期懲役刑ををもつて処断すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年11月12日 昭和35(あ)2800
登載
刑集 第17巻11号2367頁
参照法条
刑法45条,刑法47条,刑訴法357条,刑訴法397条
論点58第357条刑事訴訟法

一 一部破棄の一事例
二 原判決が既になされた高等裁判所の判例および原判決後になされた右判例と同趣旨の最高裁判所の判例と相反する判断をしている場合と刑訴法四〇五条第三号の適用

裁判要旨一 原判決中「本件控訴を棄却する」とある部分に対する上告がその理由なく、「当審における未決勾留日数中百弐拾日を原判決の本刑に算入する」とある部分に対する上告がその理由ある本件においては、原判決中「当審における未決勾留日数中百弐拾日を原判決の本刑に算入する」との部分だけを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきものである
二 原判決が既になされた高等裁判所の判例および原判決後になされた右判例と同趣旨の最高裁判所の判例と相反する判断をしている場合には、刑訴法四〇五条第三号〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。〉を適用して、原判決を破棄することができる
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年4月10日 昭和32(あ)908
登載
刑集 第12巻5号866頁
参照法条
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法410条1項,刑訴法405条2項,刑訴法405条3項
論点59第357条刑事訴訟法

一 人事院規則一四−七政治的行為第五項第一号にいう「特定の候補者」には、「立候補しようとする特定人」を含むか
二 控訴審の差戻判決は上告審を拘束するか
三 最高裁判所が上告受理の申立を理由ありとして原判決を破棄する場合の法条
四 想像的併合罪の関係に立つ二罪のうち一罪につき免訴の裁判があつた場合と上級審への移審の効力

裁判要旨一 昭和二四年九月一九日人事院規則一四−七政治的行為第五項第一号にいう「特定の候補者」とは、法令の規定にもとづく正式の立候補届出または推薦届出により候補者としての地位を有するに至つた特定人を指すものと解すべきであつて、「立候補しようとする特定人」を含むものと解することはできない。
二 第一次の控訴審が第一審判決の法令解釈に誤りがあるとしてこれを破棄、差し戻し、第二次の第一審及び控訴審が右判断に従つた場合においても、上告審たる最高裁判所は右第一次の控訴審の法律判断に拘束されるものではない。
三 最高裁判所が刑訴第四〇六条〈最高裁判所は、前条の規定により上告をすることができる場合以外の場合であつても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認…〉により上告審として事件を受理し、申立を理由ありと認めた場合は、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉によつて原判決を破棄すべきものである。
四 想像的併合罪の関係に立つ二罪のうち一罪について、第一審判決が主文において免訴を言渡し、被告人から控訴、上告がなされたような場合には、右免訴部分は上級審に移審していないものと解するを妨げない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和32年10月9日 昭和29(あ)499
登載
刑集 第11巻10号2520頁
参照法条
人事院規則14−7政治的行為(昭和24年9月19日),国家公務員法102条,国家公務員法110条1項19号,裁判所法4条,刑訴法406条,刑訴法411条1号,刑訴法357条
論点60第357条刑事訴訟法

控訴の範囲は何によつて判断すべきか

裁判要旨控訴が、裁判の一部に対して為されたものか、それとも全部に対して為されたものかは、控訴申立書(控訴趣意書でなく)によつて、判断されるべきことである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年2月17日 昭和29(あ)2230
登載
集刑 第102号813頁
参照法条
刑訴法357条,刑訴法374条,刑訴法376条,憲法39条
論点61第357条刑事訴訟法

刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる一事例

裁判要旨第一審で、起訴事実ABの中、Aは有罪となつたが、Bは無罪となり、検察官から無罪部分B事実に対してのみ控訴の申立があつたにもかかわらず、第二審で第一審判決を破棄自判するに当り、被告人よりの控訴もなかつたA事実についても審理し、ABを刑法第四五条前段の併合罪とし、これに対して一つの刑を言い渡したときは、右第二審判決は、何ら控訴がなく、従つて控訴審に係属していない事件について審判した違法があつて、刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年9月25日 昭和27(あ)6209
登載
刑集 第7巻9号1832頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法357条
論点62第357条刑事訴訟法

刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉に当る一事例。第一審で確定した部分につき控訴審が更に審判したとき

裁判要旨原審が控訴審として既に第一審判決の確定によつて完結した銃砲等所持禁止令違反事件についてまで審判をなしたのは違法であり、刑訴四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉に基きこの部分を破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。(そして、右銃砲等所持禁止令違反の点については、前示の如く第一審判決の確定により事件は完結し、その判決の効力が持続するのは当然であるから、本件ではこの点に関する原判決を破棄するのみで足るものと認める。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年10月15日 昭和27(あ)3989
登載
集刑 第87号377頁
参照法条
憲法39条後段,刑訴法411条,刑訴法357条
論点63第358条刑事訴訟法

刑の執行猶予言渡取消請求事件についての即時抗告棄却決定謄本が申立人本人と弁護人との双方に日を異にして送達された場合と特別抗告申立期間の起算日

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年10月19日 昭和58(し)97
登載
集刑 第232号415頁
参照法条
刑訴法358条,刑訴法433条
論点64第358条刑事訴訟法

刑事補償請求事件についての即時抗告棄却決定謄本が請求人本人と代理人との双方に日を異にして送達された場合と特別抗告申立期間の起算日

裁判要旨刑事補償請求事件についてされた即時抗告棄却決定の謄本が、請求人本人と即時抗告申立代理人との双方に日を異にして送達された場合における特別抗告申立の期間は、請求人本人に送達された日から進行する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年5月19日 昭和55(し)33
登載
刑集 第34巻3号202頁
参照法条
刑事補償法9条,刑事補償法14条,刑事補償法19条,刑事補償法23条,刑訴法358条,刑訴法433条
論点65第358条刑事訴訟法

第一審判決言渡の日の勾留が控訴審における裁定算入の対象となるとされた事例

裁判要旨保釈中の被告人が第一審判決の言渡により保釈が失効し即時収監され、即日控訴の申立及び保釈請求をし、その日のうちに保釈釈放された場合には、右判決言渡の日の勾留は、控訴審における裁定算入の対象となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和54年7月13日 昭和54(あ)227
登載
刑集 第33巻5号405頁
参照法条
刑法21条,刑訴法358条,刑訴法495条1項
論点66第358条刑事訴訟法

一 判決宣告手続に違法がある場合と上訴提起期間の起算点
二 控訴申立書と題する書面の意思解釈―上訴権回復の請求の意思表示をも含むと解された事例
三 自己又は代人の責に帰すべからざる事由によつて上訴権の行使を妨げられたと認められた事例

裁判要旨一 被告人が公判期日に出頭しなければ、判決の宣告ができない事件につき、被告人不出頭のまま判決の宣告をした瑕疵があつても、上訴提起期間は判決宣告の日から進行する。
二 右の場合において、控訴申立書と題する書面に、被告人が判決宣告の翌日判決通知書を受けた旨並びに右判決に不服を申し立てるについては上訴権回復の請求に関する刑訴法第三六二条ないし第三六五条〈上訴権回復の請求があつたときは、原裁判所は、前条の決定をするまで裁判の執行を停止する決定をすることができる。この場合には…〉をも理由とする旨の記載があるときは、右申立書は本来の控訴の申立のほかに、もし控訴申立書が法定の期間内に裁判所に到達しなければ、上訴権回復の請求をする旨の意思表示をも含むものと解すべきである。
三 右一の場合において、被告人が宣告の日の翌日判決の通知を受けたときは、その通知が被告人に到達するまでは被告人自身又は代人の責に帰すべからざる事由によつて上訴権の行使を妨げられていたものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年10月31日 昭和37(し)50
登載
刑集 第17巻11号2391頁
参照法条
刑訴法285条2項,刑訴法286条,刑訴法358条,刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法411条1号,罰金等臨時措置法7条2項,罰金等臨時措置法3条1項各号
論点67第359条刑事訴訟法

高等裁判所がした控訴取下による訴訟終了宣言の決定に対する不服申立の可否

裁判要旨高等裁判所がした控訴取下による訴訟終了宣言の決定に対しては、これに不服のある者は、三日以内にその高等裁判所に異議の申立をすることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和61年6月27日 昭和61(し)44
登載
刑集 第40巻4号389頁
参照法条
刑訴法359条,刑訴法422条,刑訴法428条2項,刑訴法428条3項,刑訴法433条1項
論点68第359条刑事訴訟法

錯誤に基づく控訴取下の効力

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年3月31日 昭和55(し)26
登載
集刑 第217号367頁
参照法条
刑訴法359条,刑訴法361条
論点69第359条刑事訴訟法

上告取下の撤回を認めないとした事例

裁判要旨本件申立の趣旨は、一たん上告を取り下げた後原判決の謄本を読むと事実に全く相反する判断により有罪とされているので、上告の取下を撤回するというが、所論のような理由によつて上告取下を無効ということはできず、また上告取下の撤回も許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年5月2日 昭和50(あ)795
登載
集刑 第196号355頁
参照法条
刑訴法359条
論点70第359条刑事訴訟法

一 錯誤による上告取下の効力
二 上告取下の撤回の適否

裁判要旨一 被告人のした上告取下に錯誤があつたとしても、その錯誤が被告人の責に帰することのできない事由に基づくものでないときは、右取下を無効ということはできない。
二 上告が取下によつて終了した以上、その取下の撤回は認められない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和44年5月31日 昭和44(あ)314
登載
刑集 第23巻6号931頁
参照法条
刑訴法359条
論点71第359条刑事訴訟法

被告人の控訴取下に関する錯誤が控訴取下を無効にするものではないとされた事例

裁判要旨被告人の控訴取下について、かりに上告趣意所論のような錯誤(被告人が他地に出張滞在して自宅に不在中に検察官の控訴申立通知書が送達され、妻が受領したが、被告人にこれを知らせなかつたため、被告人は、検察官の控訴申立のあつたことを知らず、自己の控訴取下により刑の執行猶予の第一審判決が確定するものと信じたという錯誤)があつたとしても、その錯誤が被告人の責に帰することのできない事由に基づくものとは認められないから、控訴取下を無効とすることはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年10月24日 昭和43(あ)799
登載
集刑 第169号181頁
参照法条
刑訴法359条
論点72第359条刑事訴訟法

上告取下げを無効ということはできずその撤回は認められないとして上告終了宣言がされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成9年4月30日 平成8(あ)992
登載
集刑 第270号607頁
参照法条
刑訴法359条
論点73第359条刑事訴訟法

上告取下げを無効ということはできずその撤回は認められないとして上告終了宣言がされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成9年4月30日 平成8(あ)992
登載
集刑 第270号593頁
参照法条
刑訴法359条
論点74第359条刑事訴訟法

死刑判決の言渡しを受けた被告人の控訴取下げが無効とされた事例

裁判要旨死刑判決の言渡しを受けた被告人が、その判決に不服があるのに、死刑判決の衝撃及び公判審理の重圧に伴う精神的苦痛によって精神障害を生じ、その影響下において、苦痛から逃れることを目的として控訴を取り下げたなどの判示の事実関係の下においては、被告人の控訴取下げは、自己の権利を守る能力を著しく制限されていたものであって、無効である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成7年6月28日 平成6(し)173
登載
刑集 第49巻6号785頁
参照法条
刑訴法359条,刑訴法411条1号
論点75第359条刑事訴訟法

上告取下げを有効として上告終了宣言がされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成6年6月17日 平成6(あ)545
登載
集刑 第263号537頁
参照法条
刑訴法359条
論点76第359条刑事訴訟法

事実取調べ(精神鑑定)をした上,上告取下げは有効であり,上告取下げの撤回も認められないとした事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成5年9月10日 平成4(あ)824
登載
集刑 第262号419頁
参照法条
刑訴法359条
論点77第359条刑事訴訟法

最高裁判所がした訴訟終了宣言の決定に対する不服申立ての許否

裁判要旨最高裁判所がした訴訟終了宣言の決定に対しては不服申立てをすることは許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成27年2月24日 平成27(す)109
登載
刑集 第69巻1号214頁
参照法条
刑訴法359条,刑訴法419条,刑訴法433条1項,裁判所法7条2号
論点78第359条刑事訴訟法

被告人が控訴を取り下げる際に弁護人が付されていないことと憲法37条3項

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年7月7日 平成20(し)202
登載
集刑 第294号595頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法359条
論点79第359条刑事訴訟法

死刑事件において被告人の上告取下げ後に高裁に対してなされた最高裁への記録送付の申入れについて当審により上告取下げを有効として上告終了宣言がされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成19年12月17日 平成19(あ)1684
登載
集刑 第292号753頁
参照法条
刑訴法359条
論点80第359条刑事訴訟法

被告人が控訴を取り下げる際に弁護人が付されていないことと憲法37条3項

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成16年6月14日 平成15(し)360
登載
集刑 第285号447頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法359条
論点81第359条刑事訴訟法

高等裁判所がした控訴取下げを無効と認め訴訟手続を再開・続行する旨の決定に対する不服申立ての可否

裁判要旨高等裁判所がした控訴取下げを無効と認め訴訟手続を再開・続行する旨の決定に対しては,これに不服のある者は,3日以内にその高等裁判所に異議の申立てをすることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和2年2月25日 令和1(し)807
登載
刑集 第74巻2号277頁
参照法条
刑訴法359条,刑訴法422条,刑訴法428条2項,刑訴法428条3項,刑訴法433条1項
論点82第360条刑事訴訟法

一 賄賂供与申込罪の成立と相手方の賄賂たることの認識の要否
二 証拠により認定した事実を他の事実の証拠とすることの適否
三 刑訴法第四一一条第二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉に該当し、刑の執行を猶予するのが相当であるとした事例

裁判要旨一 賄賂供与申込罪の成立には、相手方に賄賂たることを認識し得べき事情の下に金銭その他の利益の収受を促す意思表示をなせば足りるのであつて、相手方において実際上その意思表示を又はその利益が賄賂たる性質を具有することを認識すると否とは、同罪の成立に影響を及ぼすものではない。
二 証拠によつて認定した或る事実を他の事実の証拠としても、少しも違法ではない(昭和九年(れ)第一五六八号同一〇年二月一四日大審院判決、刑集一四巻九二頁参照)。
三 職権により調査するに原判決の判示するところによれば、被告人の本件利益贈与ないし利益提供の動機としては、相手方の職務行為に対する依頼又は謝礼の趣旨のほかに、多かれ少なかれ、それ以外の個人的な友交関係、政治献金、職務に関係のない個人的将来の庇護期待等の趣旨も認められ、必ずしも職務要因のみに基くものというような状況であつたとは認められないとし、また食糧事情が急迫していた当時の状況下においては被告人の右各贈与は犯情として被告人に有利なものを含んでいたとも認定している。そして被告人は逮捕拘禁以来約一四年の長期に亘り心身に有形無形の多大の苦痛を受けたものというべく、また被告人が反省謹慎の日を送りつつあることは一審判決の判示の趣旨からも窺知しうるところである。本件は当時いわゆるA事件として世人の耳目を聳動せしめた大事件であるが、その後の推移はA事件のB関係においては、収賄罪で起訴されたC、Dは無罪、E、F外五名は執行猶予となつている。叙上の諸事情(判文参照)を考慮するときは、被告人Bに対し実刑を科さなければ刑政の目的を達することができないものとは断じ難く、刑の執行を猶予するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年4月13日 昭和34(れ)2
登載
集刑 第141号789頁
参照法条
刑法198条,刑法25条1項,経済関係罰則の整備に官する法律5条,旧刑訴法336条,旧刑訴法360条1項,刑訴法317条,刑訴法335条1項,刑訴法411条2号
論点83第360条刑事訴訟法

一 供述調書中に引用された他の供述調書についても常に証拠調を要するか
二 旧刑訴法第三六〇条第二項の主張にあたらない事例

裁判要旨一 論旨援用の当裁判所の判例は、証拠とされた副検事の聴取書に「司法警察官作成の意見書記載の犯罪事実を読み聞けたところ、相違なき旨を述べた」との記載があり、右の意見書を見なければ聴取書の内容がよくわからないにもかかわらず、この意見書の証拠調をしなかつた場合についてのものである。しかるに本件においては、所論昭和二三年三月二五日附及び同年四月一五日附被告人Aに対する検察官の聴取書には、被告人が所論各会社当から金を貰つたという事実の記載があるのであるから、読み聞かされた司法警察官の意見書を除いても、右の聴取書の記載だけで判事事実を証明する証拠となり得るものである。それ故原審が右の司法警察官の意見書について証拠調をしないで検事の聴取書のみについて証拠調をしこれを証拠に採用したとしても、所論のような違法はなく、所論援用の判例に違背するところもない。論旨は理由がない。
二 原審公判において、被告人及びその弁護人が、被告人が判示各会社等から交付を受けた各金員は、喝取したものではなく、本代、広告料の値上りの差額及び「株式時代来る」という単行本の料金として受取つたものである旨を供述し主張していることは所論のとおりである。しかし右の主張は、旧刑訴三六〇条二項〈第三百五十三条又は第三百五十四条に規定する者は、書面による被告人の同意を得て、上訴の放棄又は取下をすることができる。〉にいわゆる法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張に該当するものとは認められない。それ故原判決には所論のような違法はなく、所論援用の各判例は本件と場合を異にするものであつて、適切でない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年3月22日 昭和29(れ)9
登載
集刑 第103号599頁
参照法条
刑訴法305条,刑法249条,旧刑訴法360条2項
論点84第360条刑事訴訟法

一 人を逮捕し、引き続き監禁した場合の擬律
二 監禁罪が成立するために要する脅迫の程度
三 監禁の動機目的と監禁罪の成否
四 同時に同一場所に数人を監禁した行為と罪数
五 憲法ならびに労働組合法施行前の労働組合の団体交渉と刑法第三五条
六 権利を実行する行為が違法とならない要件
七 逮捕監禁の所為が単純一罪として起訴されているとき、監禁の事実のみを有罪とする場合の判示方 ―逮捕の点についても説示することを要するか―
八 いわゆる人民裁判による判決の履行のために監禁することは適法か

裁判要旨一 人を不法に逮捕し引き続き監禁した場合には、刑法第二二〇条第一項の一罪が成立する。
二 脅迫による監禁罪が成立するためには、その脅迫は被害者をして一定の場所から立ち去ることを得しめない程度のものでなければならない。
三 監禁罪は、暴行によると脅迫によるとを問わず、他人を一定の場所の外に出ることができなくした場合に成立し、目的の如何を問わない。
四 同時に同一場所において別個の人を監禁したときは、一個の行為で被害者の数に応じた数個の監禁の罪名に触れる。
五 出勤手当坑内五円、坑外三円の支給を受けることが労働組合側から見れば一種の債権であり、かつ、憲法ならびに労働組合法(昭和二〇年法律第五一号)施行前において右組合がこれを要求のため団体交渉をすること自体が正当であるとしても、その手段として為された所為が社会通念上許容される限度を超えたものであるときは、その行為は刑法第三五条の正当の行為とはいえない。
六 他人に対し権利を有するものが、その権利を実行する行為は、それが権利の範囲内であつて、かつその方法が社会通念上一般に許容されるものと認められる程度を超えない限り違法とはならない。
七 逮捕監禁の所為ありとして起訴され若しくは公判に付された場合に、裁判所が単に監禁の事実だけを認め、逮捕の事実は認められないとしたときは、逮捕の点は単純一罪の一部に過ぎないから、認められた監禁の事実だけを判決に判示し、これについて処断すれば足り、逮捕の点は判決主文において無罪を言渡すべきではなく、その理由中においても、必ずしも罪として認めない理由を判示する必要はない。
八 日本国民は、法律に定めた裁判官以外の裁判を受けることのないことは、憲法に保障されている国民の権利である。本件、労働組合員等大衆を裁判官とする人民裁判において、B、Cが敗訴の判決を受けたのに、これに服しなかつたため退去を許されず、又その判決の履行を、迫られたもので、被告人等に不法監禁罪は成立しないという所論は、法治国の精神に反し、憲法を無視する所論であつて採るを得ない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和28年6月17日 昭和24(れ)1622
登載
刑集 第7巻6号1289頁
参照法条
刑法220条,刑法54条1項,刑法35条,労働組合法(昭和20年法律51号)1条,憲法28条,憲法32条,旧刑訴法360条1項
論点85第360条刑事訴訟法

「旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則」第六条〈土地管轄を異にする数個の事件が関連するときは、一個の事件につき管轄権を有する裁判所は、併せて他の事件を管轄することができ…〉によつて事実の摘示証拠の説明を記載した判決の趣旨

裁判要旨「旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則」第六条〈土地管轄を異にする数個の事件が関連するときは、一個の事件につき管轄権を有する裁判所は、併せて他の事件を管轄することができ…〉により、判決の事実の摘示証拠の説明として、「罪となるべき事実は原審判決に記載してある通りであつて、右は控訴申立人において不服のないところである」と記載した控訴審判決は、右規則第五条〈数個の関連事件が各別に上級の裁判所及び下級の裁判所に係属するときは、事物管轄にかかわらず、上級の裁判所は、決定で下級の裁…〉に則つて、被告人に不服のない限度において、第一審判決の認定した事実によつた旨を明らかにしたものであつて、控訴審における被告人の自白で犯罪事実を認定した趣旨ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年11月13日 昭和26(れ)2321
登載
集刑 第88号347頁
参照法条
旧刑訴事件の上訴審における審判の特例規則5条,旧刑訴事件の上訴審における審判の特例規則6条,旧刑訴法360条1項,新刑訴法335条1項
論点86第360条刑事訴訟法

一 刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例
二 旧刑訴法事件の控訴審及び上告審に於ける審判の特例に関する規則(昭和二五年最高裁判所規則第三〇号)第八号にいわゆる「法令を掲げれば足りる」の適用

裁判要旨一 裁判長が被告人に対し旧刑訴第三四七条第二項〈押収した贓物で被害者に還付すべき理由が明らかなものは、これを被害者に還付する言渡をしなければならない。〉による告知をしなくても、各個の証拠につき取調を終える毎に被告人に対し意見の有無を尋ねており、最後に弁護人から「他に立証等ない。」と答えている以上、原判決に刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたる事由あるとはいえない。
二 旧刑訴法事件の上告審に於ける審判の特例規則第八条には、法令を掲げれば足りるとあるから想像的競合についていずれに対する法益の侵害が犯情重いかについて説明する必要はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年3月28日 昭和26(れ)2152
登載
刑集 第6巻3号566頁
参照法条
旧刑訴法347条2項,旧刑訴法360条1項,刑訴法411条,刑法54条1項前段,刑法10条,旧刑訴事件の上訴審における審判の特例規則8条
論点87第360条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例

裁判要旨記録を調べて見ると、原審判決は、第一審判決において有罪とされた犯罪事実のうち、所論の部分を除外し、なんらの判断をせず、その余の部分についてのみ有罪とし刑を言い渡したことは所論のとおりである。しかし、原判決が第一審判決認定の有罪事実より除外した部分は、有罪とされなかつたのであるから、被告人にとつて利益であるばかりでなく、この部分は、原判決において無罪の判示がなかつたとはいえ、一たん公訴犯罪事実として、第一審の審判を受け、次で控訴審の審理を経て、有罪事実より除外された以上、この部分について、被告人は再び起訴されることはない訳である。従つて、本件については、刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用して原判決を破棄すべきものとは認められない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年3月18日 昭和26(れ)2407
登載
刑集 第6巻3号498頁
参照法条
旧刑訴法360条,旧刑訴法362条,刑訴法411条,憲法39条
論点88第360条刑事訴訟法

一 旧刑訴事件の上訴審における審判の特例規則が適用される控訴審判決の証拠説示の方法
二 綿布生地の買受及び売渡行為が別罪として起訴されている場合に買受行為のみを有罪とする場合の判示方
三 事実の同一性ある例

裁判要旨一 本件については、旧刑訴事件の上訴審における審判の特例に関する規則八条が適用されるから、控訴審判決が、証拠により罪となるべき事実を認めた理由を説明するには、証拠の標目を掲げれば足りるのである。(同規則の違法、無効でないことは、昭和二四年(れ)第二一二七号同二五年一〇月二五日大法廷判決、集四巻一〇号二一五一頁の趣旨に徴して明らかである。)そうして、証拠の標目を提げることによる証拠説示については、判文上証拠と事実との関連が明らかでなくても、記録と照らし合せて見てどの証拠にどの事実が認定されたか明らかであれば足りるとするのが、当裁判所の判例である。(昭和二五年(あ)第一〇六八号同年九月一九日第三小法廷判決、集四巻九号一六九五頁、昭和二五年(あ)第七七三号同二六年四月一七日第三小法廷判決、集五巻六九六三頁)。

二 本件各公判請求書によると、本件綿布生地の買受行為とその売渡行為とは、各々別罪を構成するものとして、起訴されているものと解すべきである。従つて、原判決が、その売渡行為につき無罪を言渡し、その買受行為につき有罪の言渡をしたからといつて、所論のように一個の公訴事実を分割し、一部有罪、一部無罪の言渡をしたものとはいえない。そしてまた、本件綿布生地の買受行為を、衣料品としての買受行為とみても、生産資材としての買受行為とみても、基本の事実関係を異にするものではないから、原審認定の事実は、起訴事実と同一性を失わず、従つて、審判の請求を受けた事件について判決せず、審判の請求を受けない事件について判決をしたものとの非難はあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年2月26日 昭和26(れ)2396
登載
集刑 第61号607頁
参照法条
旧刑訴事件の上訴審における審判の特例規則8条,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条18号
論点89第360条刑事訴訟法

一 普通地方公共団体たる村の水害罹災者に対する救援物資及び義損金の受払、保管の事務の性格と村長に対する業務上横領罪の成立
二 横領罪にいわゆる「他人ノ物」の判示の程度

裁判要旨一 本件各救援物資及義損金の受払、保管の事務は普通地方公共団体であるa村水害罹災者を救護する事務の一部に外ならないので、地方自治法(昭和二三年法律第一七九号による改正前の法律)二条二項にいわゆる普通地方公共団体の公共事務に該当し、同法一四八条により同村長たる被告人Aの管理、執行すべき事務に属するものと解するを相当とする。さればa村の水害罹災者に対するものとして交付された判示各救援物資及び義損金の保管は、村長たる被告人において職務としてこれを為すものといわなければならぬから、原判決には地方自治法の解釈をあやまつた違法は存しない。
二 横領罪の判示には所論の物資が他人の所有に属していることを示せば足り、その何人の所有に属するかまで判示するの要はないから、所論の物資が被告人以外の者の所有に属することの判文上明らかな原判決には所論の違法はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年2月21日 昭和26(れ)1663
登載
集刑 第61号279頁
参照法条
地方自治法(昭和23年法律179号による改正前のもの)2条2項,地方自治法(昭和23年法律179号による改正前のもの)148条,刑法253条,旧刑訴法360条1項
論点90第360条刑事訴訟法

県当局の諒解が物価統制令第七条の認可にならない場合にこの点につき審判しなかつたことの適否

裁判要旨物価統制令違反の取引について被告人が予め県当局の諒解を得ていたとしても、同令第七条〈土地管轄を異にする数個の関連事件が同一裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、そ…〉に基く例外価格の認可があつたというのでもない場合は、統制価格を左右する効力のないこと勿論であるから、統制違反の罪責を免れしめる事由に当らない。従つて原審がこの点につき審判しなかつたことは当然であつて、違法ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年2月12日 昭和26(れ)769
登載
集刑 第60号487頁
参照法条
物価統制令7条,物価統制令3条,旧刑訴法407条,旧刑訴法345条,旧刑訴法360条2項
論点91第360条刑事訴訟法

判決に理由不備の違法がある一事例

裁判要旨一定の時に被害者に脳出血による何らかの身体的症状の生じたことを前提として被害者の受傷と死亡との時間的間隔を判定した場合に、右身体的症状を生じたことを認定するための証拠が明らかにその証拠の趣旨と矛盾し、かつ他にこれを認定するにたる証拠のない判決には理由不備の違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月25日 昭和23(れ)1738
登載
集刑 第71号431頁
参照法条
旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条19号,刑法195条,刑法205条
論点92第360条刑事訴訟法

実収高を越えた米麦の供出割当に対する供出不能の主張と旧刑訴法第三六〇条第二項

裁判要旨米麦の供出割当数量が実収高以上であつた場合には、実収高を越える部分については、供出違反罪は成立しないのであるから、被告人の右の如き主張は、明かに旧刑訴三六〇条二項〈第三百五十三条又は第三百五十四条に規定する者は、書面による被告人の同意を得て、上訴の放棄又は取下をすることができる。〉にいわゆる、法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月25日 昭和26(れ)640
登載
集刑 第71号655頁
参照法条
食糧管理法3条,旧刑訴法360条2項
論点93第360条刑事訴訟法

強姦致傷罪の事実を認定した原判決に対して為された、単純強姦罪の事実を前提とする弁護人の主張に対する判断の要否

裁判要旨所論は、弁護人は原審において「本件は単純強姦罪と認むべきであつて、被害者の告訴が取下げられた以上免訴すべきものである」旨公訴権消滅免訴の原由たる主張をしたから、原審はこれに対する判断を示すべきであつたにかかわらずこれを示さなかつた違法があると言うのである。しかしながら、右弁護人の主張は単純強姦罪の事実を前提とするものであるが、原判決は強姦致傷罪の事実を認定判示することによつて、単純強姦罪の事実を否認し、従つてこれを前提とする弁護人の主張全部を否定していることは明白であるから所論は理由がない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月18日 昭和24(れ)1410
登載
集刑 第70号619頁
参照法条
旧刑訴法360条2項,旧刑訴法410条19号,刑法177条,刑法180条,刑法181条
論点94第360条刑事訴訟法

強姦致傷罪で納得ずくで関係したという主張と旧刑訴第三六〇条第二項〈第三百五十三条又は第三百五十四条に規定する者は、書面による被告人の同意を得て、上訴の放棄又は取下をすることができる。〉

裁判要旨強姦致傷罪で、納得ずくで関係したという主張は、旧刑訴第三六〇条第二項〈第三百五十三条又は第三百五十四条に規定する者は、書面による被告人の同意を得て、上訴の放棄又は取下をすることができる。〉にいわゆる犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張に該当しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年11月18日 昭和27(れ)123
登載
刑集 第6巻10号1207頁
参照法条
刑法181条,刑法177条,旧刑訴法360条2項
論点95第360条刑事訴訟法

入場税法第一六条第一項の逋脱犯既遂の判示方

裁判要旨一 入場税法(昭和一五年法律第四四号)第一六条第一項の逋脱犯の事実摘示として「昭和二二年一〇月一四日から同月二六日迄の間甲府税務署の検察済証印を受けない入場券を発売しその売上高を正規の帳簿に記入せず且つ入場税課税標準申告書に不正の記載をなして甲府税務署長に提出して入場税金二万五千二百円を逋脱し」と判示してあつても、不正の記載をした申告書を税務署長に提出したときに逋脱犯が成立した趣旨と解すべきではない。
二 右の事実摘示は逋脱犯既遂の事実摘示として理由不備の違法があるということはできない。
三 逋脱犯既遂の事実を摘示するにあたり、入場税課税標準申告書を提出した日時、入場税の納期、納付すべき税額と実際に納付した税額及びその差額を算定判示することは必ずしも必要ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年10月3日 昭和24(れ)1982
登載
集刑 第68号21頁
参照法条
入場税法(昭和15年法律44号)6条の2,入場税法(昭和15年法律44号)6条の3,入場税法(昭和15年法律44号)16,入場税法施行規則6条,旧地方税法(昭和23年法律110号)151条,旧刑訴法360条1項
論点96第360条刑事訴訟法

一 傷害致死罪の成立と致死の結果の予見の要否
二 二人以上の者が共謀しないで他人に暴行を加え傷害致死の結果を生じその傷害を生ぜしめた者を知ることができない場合の罪責

裁判要旨一 傷害致死罪の成立には傷害と死亡、との間の因果関係の存在を必要とするにとどまり、致死の結果についての予見は必要としないのであるから、原判決が所論傷害の結果たる致死の予見について判示しなかつたからといつて、原判決には所論理由不備の違法は存しない。
二 二人以上の者が共謀しないで、他人に暴行を加え傷害致死の結果を生ぜしめた者を知ることができない場合は、共同暴行者はいずれも傷害致死の責任を負う。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年9月20日 昭和26(れ)797
登載
刑集 第5巻10号1937頁
参照法条
刑法205条1項,刑法207条,旧刑訴法360条1項
論点97第360条刑事訴訟法

刑法第四五条後段の併合罪と同第五〇条〈公判調書が次回の公判期日までに整理されなかつたときは、裁判所書記は、検察官、被告人又は弁護人の請求により、次回の公判期日…〉の適用を判示することの要否

裁判要旨記録に徴すれば、被告人には別罪につき所論指摘の裁判が確定して居り、原判決認定の各罪はその裁判確定前に犯されたものであること明らかであるが、原判決は右確定裁判のあることを明らかにしていないけれども、未だ裁判を経ない本件各罪について処断したのは、刑法第四五条後段第五〇条を実際上適用した結果に外ならず、また右各法条の適用は必ずしもこれを判決に示す要はないのであるから、原判決に右各法条の適用を掲げないことは違法とするに足りない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年9月18日 昭和26(れ)1231
登載
集刑 第53号61頁
参照法条
刑法45条後段,刑法50条,旧刑訴法360条1項
論点98第360条刑事訴訟法

従犯であるとの主張と旧刑訴法第三六〇条第二項

裁判要旨共同正犯としての公訴事実に対し従犯であると主張することは、単なる事実の否認の一種であつて、旧刑訴法第三六〇条第二項に定める主張に当らないことは、当裁判所の判例として示すところである(昭和二四年(れ)第一四三五号、同二六年三月一五日第一小法廷判決、昭和二四年(れ)第二四四五号、同二五年二月二八日第三小法廷判決)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年9月14日 昭和26(れ)350
登載
集刑 第52号459頁
参照法条
刑訴法60条,刑訴法62条,旧刑訴法360条2項
論点99第360条刑事訴訟法

一 犯意の成立と違法の認識
二 上告審において始めて期待可能性がないと主張した場合と上告理由の適否

裁判要旨一 被告人等の犯意は被告人等の買受けた本件物質の価格が公定価格を超えたものであることを被告人等において認識するによつて成立し、さらにその違法であることの認識を必要としないことは当裁判所昭和二四年(れ)第二〇〇六号第二六年一月三〇日第三小法廷判決(判例集五巻二号三七問頁)の趣旨に徴して明らかなところである。
二 原審においては、期待可能性がないとの主張がなく、原判決もこの点につき何等判示していないに拘らず、上告審において始めてかかる主張がなされた場合には、その論旨は結局原判示にそわない事実を前提とする主張に帰する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年8月9日 昭和26(れ)700
登載
集刑 第51号595頁
参照法条
刑法38条1項3項,旧刑訴法409条,旧刑訴法360条2項
論点100第360条刑事訴訟法

一 二回に収受した占領物資を所持する罪の罪数

二 被告人に不利益な主張と上告の適否

三 数回の取引に対して一括して統制額超過の謝礼を為した行為と罪数

四 違法の認識と犯意の成立

五 違法の認識を欠いていたという主張と旧刑訴法第三六〇条第二項

裁判要旨一 原判決はその事実摘示(第一審判決の記載引用)において、被告人Aが二回に亘つて占領軍兵士某から占領軍物資を収受して不法に所持した旨を判示しているが、二個の占領軍物資不法収受罪乃至同所持罪を認定したのではなく、包括して一個の同所持罪を認めたものであることがその判文上からおのづからわかる。論旨は原判決が二個の犯罪を認めたものと誤解し、誤解を前提として原判決を非難するものであるから、採用することができない。(なお二個の犯罪を認むべきであるという主張は被告人にとつて不利益な主張であるから適法な上告理由とならない)

二 原判決は(その引用する第一審判決第五の一において)、被告人Aが(イ)二回に亘りBより鮮魚等を統制額にて買受けるに際り杉下駄二百足を謝礼名義にて超過支払をした事実及び(ロ)三回に亘り右Bより鮮魚等を統制額にて買受けるに際り協力金又は謝礼金名義にて金二万円を超過支払をした事実を認定している、各一回の取引毎に各一個の犯罪があつたものとしたのではなく(イ)の二回の取引につき杉下駄二百を贈与したとき並に(ロ)の三回の取引につき現金二万円を交付したときそれぞれ各一罪が成立したものとした趣旨が窺われる。

三 所論のように進駐軍の一兵士が本件物資は占領軍の払下品であるという証明書を交付したからとて、それだけで昭和二二年政令第一六五号第一条第一項〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉にいはゆる「公に認められた場合に」にあたるものでないことは論をまたずして明かである。仮りに被告人が所論のような事情によつて公に認められた場合に該当すると信じたとしても、それは結局違法の認識を欠いていたというに過ぎない。しかるに違法の認識を欠いたからとて、犯意の成立を妨げるものでもなく、罪責を左右するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第二〇二号同年七月一四日大法廷判決、昭和二四年(れ)第二二七六号二五年一一年二八日第三小法廷決定)に徴して明らかである。

四 進駐軍兵士が占領軍の払下品であるという証明を交付したから被告人は本件物件は払下品と思つて買受けたので無罪の判決を願うとの主張は前記のように結局違法の認識を欠いていたという主張に外ならないから、旧刑訴法第三六〇条第二項にいわゆる法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年8月28日 昭和26(れ)485
登載
集刑 第51号1101頁
参照法条
旧刑訴法409条,旧刑訴法411条,旧刑訴法360条2項,刑法45条,刑法38条3項,物価統制令3条
論点101第360条刑事訴訟法

一 第三者を介してする脅迫罪における害悪の告知
二 併合罪の事実認定と証拠説明

裁判要旨一 被告人が中地区警察署に対し若い者三〇名程つれてA小学校にフイルムを沒収に行く旨を通知したことはその前後の関係から観察して警察署からB青年団側に告げられるであろうことは被告人が十分認識していたものであることを推測するに十分である。そして被告人が警察署に告知した右ことがらは警察側から青年団員C等に告知されていることは挙示の証拠により明らかである。なお脅迫罪における害悪の告知は被害者に対し直接になす必要なく被告人おいて脅迫の意思を以て害悪を加うべきことを知らしめる手段を施し被害者が害悪を被るべきことを知つた事実があれば足るのであるから、被告人の害悪告知がC等に対し直接になされないとしても脅迫罪の成立をさまたげるものではない。
二 判決に証拠と犯罪事実との関係が明らかにされている以上、併合罪の関係にある各個の犯罪事実について個々各別にその証拠を摘示する必要はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年7月24日 昭和25(れ)981
登載
刑集 第5巻8号1609頁
参照法条
刑法222条1項,旧刑訴法360条1項
論点102第360条刑事訴訟法

一 賄賂収受罪判示の程度−公務員たる法令上の根拠を示す要否
二 兵庫県雇と公務員

裁判要旨一 公務員の賄賂収受罪を判示するに当つては、公務員であることを判断しうる具体的事実を示しその者が職務に関し賄賂を収受した事実を説明すれば足り、公務員たることの資格を認められる法令上の根拠までも示す必要はないのである。(昭和二四年(れ)第八五六号、同二五年二月二八日第三小法廷判決。最高裁判所判例終四巻二号二六八頁参照)
二 被告人は兵庫県知事より任命された国費支弁の雇であつたことが窺われる。そして、同知事にかかる雇の任命権があつたことは大正十五年六月四日勅令第一四七号地方官々制第五条〈数個の関連事件が各別に上級の裁判所及び下級の裁判所に係属するときは、事物管轄にかかわらず、上級の裁判所は、決定で下級の裁…〉第八条〈数個の関連事件が各別に事物管轄を同じくする数個の裁判所に係属するときは、各裁判所は、検察官又は被告人の請求により、決定で…〉一行の規定の趣旨に徴し明らかである。されば、原判決は被告人の公務員たる判示に欠くるところはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年7月20日 昭和25(れ)822
登載
刑集 第5巻8号1586頁
参照法条
旧刑訴法360条1項,刑法197条,刑法7条
論点103第360条刑事訴訟法

一 販売一覧表の内容を示さず証拠に引用した証拠説示の適否
二 販売価格が著しく統制額を超過しているときその販売価額から客器代を控除しなかつたことの適否
三 その物品の販売を営業としない者の販売行為と販売業者販売価格の適用
四 物価統制令第三条違反罪における統制額超過販売の事実の摘示方―統制額の指定官庁を示すことの要否
五 公判廷において弁護人から被告人の利益のため提出された書証の証拠調の請求と証拠決定の要否
六 物価統制令違反罪の判示方
七 罰金不完納の場合の労役場留置期間を定むるにあたり一日に満たない端数を生ずる換算率を定めた判決の適否
八 始末書の内容を示さず証拠に引用した証拠説示の適否

裁判要旨一 原判決は、所論被告人A作成の小麦粉短麺販売一覧表の記載を第一審第一回公判調書中の同被告人の判示第二と同旨の供述記載と綜合して原判決判示第二の事実認定の証拠としたものであることは、原判決自体に徴して明らかである。しかして第一審第一回公判調書によれば同被告人は、判事から右一覧表を示された上、其の表の記載のとおり小麦粉短麺等を販売したことは相違ないと供述している。そして本件記録によれば右販売一覧表には同被告人が昭和二二年二月中旬頃から同年九月中旬頃迄の間五回に亘りBに売渡した原判示第二の事実に符合する小麦粉短麺等の取引をその販売日時、販売品目数量、販売価格を一々明細に表示した記載が存するのである。してみれば原判決は、所論販売表と相俟つて、明らかにされた第一審第一回公判調書中に存する同被告人の判示第二と同旨の供述記載により、判示第二の事実を認定した趣旨であることは明らかであるから、原判決には証拠の如何なる部分により如何なる事実を認定したかを明らかにしない違法があるということはできない。
二 所論小麦粉に対する昭和二一年一一月二〇日物価庁告示第一八五号、並昭和二二年七月六日物価庁告示第三五八号による統制額及び短麺に対する昭和二一年三月二二日大蔵省告示第一三二号並に昭和二二年七月六日物価庁告示第三五九号による統制額は何れも、容器を含まない裸売の価格であることは所論のとおりであるとしても、被告人の販売した価格が著しく統制額を超過しているときは、原判決が被告人の販売した価格から容器代を控除しなかつたからといつて、その違法は原判決に影響を及ぼさないこと明白である。
三 所論昭和二一年三月二二日大蔵省告示第一三二号によれば短麺について、製造業者販売価格の統制額、中央食糧営団販売価格の統制額及び販売業者(中央食糧営団を除く)販売価格の統制額を指定していることは所論のとおりである。しかし、右告示にいわゆる中央食糧営団を除く販売価格の統制額というのは、一応は現実に法規に従つて正当に短麺の販売業を営む者の販売する場合の統制額を意味するのであるが、価格の統制は正常に営業を営む業者の取引を対象とするだけではなく、その他の取引にも及ぶものと解すべきであるから、その物品の販売を営業とする者でなくても、たまたまその物資を度重ねて販売し又は多量に販売したような場合には、その取引については右告示の販売業者販売価格の統制額を適用してその行為を取締るべきである(昭和二四年(れ)第一七八一号、同二六年一月三〇日第三小法廷判決参照)。
四 物価統制令第三条に違反し統制額を超えて物資を販売した犯罪事実を判示するには、その販売した目的物に統制額が存しその統制額を超えて販売した事実を示せば足りるものである。原判決が小麦粉、短麺を「物価庁指定の公定価格より………超過して販売し」と判示したのは右小麦粉、短麺をこれについて夫々定められている統制額を超過して販売した事実を判示した趣旨であつて、小麦粉に対する統制額は物価庁告示により、短麺に対する統制額は大蔵省告示及物価庁告示により夫々指定されていることは所論のとおりであるけれども、犯罪事実の判示としては一々その統制額が如何なる官庁により指定されているかを示す必要はない。
五 公判廷において弁護人から被告人の利益のため提出された書証の如きは、直ちに証拠調ができるもので新期日を指定する必要もなく又証拠調をするため別段の手続を必要とするものでもない。しかも原審第四回公判調書によれば被告人の弁護人杉浦酉太郎が被告人の利益のため所論書証を提出したのに対し裁判長はこれが取調を為した上検事に示し本件記録に編綴する旨告げたとの記載が存するから原審は所論書証については直ちに証拠調をしているのである。〔公判廷で被告人の利益のため提出された書証は裁判所及び検察官が之を閲覧しさえすればその証拠調の手続は履践されたものであつて必ずしもこれを被告人に示しその被告人の意見弁解を聴く必要のないことは判例である(昭和二四年(れ)第一四三五号同二六年三月一五日第一小法廷判決)〕から論旨は理由がない。
六 統制額を超えて物品を売渡した所為を物価統制令第三条違反の罪に問擬するには、被告人が当該物品を統制額を超えて他人に売渡した事実を確定すれば足り、その他人が自己の為買受けたものであるか又は第三者の従業員としてその第三者の業務として買受けたものであるかということは、売渡人たる被告人に対する犯罪の成否に関係のないことである。
七 原判決は、被告人Bに対し、罰金五万円に処し右罰金を完納することができないときは金三〇〇円を一日に換算して同被告人を労役場に留置する旨言渡したので同被告人が罰金を完納しない場合は、一六六日間留置してもなお二〇〇円の残りが生じ一日に満たない金額を生ずることは所論のとおりである。さればといつて、原判決は罰金を完納することができない場合における労役場留置の期間を定めないものとはいえないから原判決が刑法第一八条四項に違反したものといえない。
八 原判決が判示第三の事実を被告人Bの原審公判廷の判示同旨の供述と共に、所論「買入明細一覧表及び小麦粉短麺販売一覧表の各記載」並に「Cの所論始末書の記載」その他を綜合して之を認める旨説示していることは所論のとおりである。しかし、本件記録に存する所論始末書にはCが被告人Bと共謀して、原判示第三の(一)の(ロ)の共犯に係る買受行為をした旨の記載があり、他にこれと矛盾する事実の記載は存したのであるから、原判決が証拠として右始末書の記載と表示したのは、右始末書の、右判示(ロ)の事実を符合する記載全体によりこれを同被告人の右判示と同旨の原審公判廷の供述と綜合して右判示事実を認定した趣旨であること明らかであるから、原判決には、如何なる証拠の如何なる部分で如何なる事実を認定したかを示さないという違法はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年5月15日 昭和24(れ)2819
登載
刑集 第5巻6号1112頁
参照法条
旧刑訴法360条1項,旧刑訴法336条,旧刑訴法344条,昭和21年3月22日大蔵省告示132号,昭和22年7月6日物価庁告示359号,物価統制令3条,刑法18条1項,刑法18条4項,刑法18条8項
論点104第360条刑事訴訟法

証拠調を経ない書面を引用して証拠の内容を摘示しても判決破棄の理由とならない場合

裁判要旨原判決が証拠として「原審(第一審)第二回公判調書中被告人の供述として、御読聞けの……犯罪報告書記載の犯罪事実は販売目的の各代金額の点を除いてその余はその通り相違ない旨並びに右犯罪報告書中の上記除外の点を除いて判示第三と同趣旨の記載」と摘示しながら、右犯罪報告書につき原審で証拠調を経ていない場合でも、右公判調書に記載してある被告人の供述が、裁判官の読み聞かせた犯罪報告書の内容を援用することなく、具体的に原判示第三と同趣旨の犯罪事実を自供したものであつて、この供述記載の内容を表示するため前記のように摘示したものと解しうるときは、原判決破棄の理由とならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年4月3日 昭和25(れ)1849
登載
集刑 第43号43頁
参照法条
旧刑訴法340条1項,旧刑訴法360条1項
論点105第360条刑事訴訟法

一 裁判所法第三三条第三項による事件移送前における簡易裁判所の訴訟手続の効力
二 犯罪の時が判示事実と証拠との間にくいちがいがある判決の適否

裁判要旨一 簡易裁判所がその事物管轄に属する罪名により起訴せられた事件につき、審理の中途において裁判所法第三三条第三項の場合に当るものと認めて事件を管轄地方裁判所に移送し、同地方裁判所は審理の上その事件を簡易裁判所の事物管轄に属しない罪名により処断すべきものと認めた場合にも、右移送前に既にした簡易裁判所の訴訟手続はその効力を失うものでないことは、旧刑訴法第一二条の規定によつて明らかである。
二 犯罪の時は罪となるべき事実の属するものではないから、この点について判決理由と証拠との間に多少のくいちがいがあつても、これがためにその判決を違法として破棄するに足りない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年4月13日 昭和25(れ)1711
登載
刑集 第5巻5号898頁
参照法条
裁判所法33条3項,旧刑訴法12条,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条19号
論点106第360条刑事訴訟法

一 臨時建築等制限規則の性質と同規則失効後の行為に対する罰則適用の関係
二 昭和二二年閣令第六号臨時建築等制限規則の趣旨と同規則第二条違反罪の事実の成立要件並びにその判示方

裁判要旨一 原判決が本件被告人の行為に対して適用した臨時建築等制限規則は、臨時物資需給調整法第一条に基づく命令であるが、同法はその附則において、当初よりその効力を存続すべき期間を予定し、かつ、その時までになした行為に対する罰則の適用については、この法律は、存続期間の到来によりその効力を失うべき時以後もなお、その効力を有する旨を規定し、同法がいわゆる限時法の性質を有することを明らかにしているのみならず、同法に基づいて制定された前記規則についても同規則の改定に当つては、その改正規則の附則に、改正前にされた行為に対する罰則の適用については、旧規則が改正後もなお、その効力を有する旨の規定がなされているのである。(右附則は、単に罰則適用の関係において、改正前規則の効力の存続を規定したに過ぎないのであつて、所論のように、命令を以て罰則に関する定めをしたものと解すべきでない)しからば、本件は、右規則の施行当時の行為であるから、罰則の適用に関しては、右規則の改廃にかかわらず、行為時法によるべきは当然であつて、所論のように刑法第六条、旧刑訴法第三六四条を適用すべき場合ではないのである。(当裁判所昭和二三年(れ)第八〇〇号同二五年一〇月一一日大法廷判決参照)
二 原判決は、被告人が昭和二三年八月中頃建設大臣の許可を受けてないでその営業所二〇坪をAに命じて、床及び天井を取り外しキヤバレー用に改築工事を施行させた事実を確定し、これに対して昭和二二年閣令第六号臨時建築等制限規則第二条を適用したものであつて、原判定確定の事実が同条違反の行為に該当することは明らかである。同条違反の行為となるには同条所定の新築、改築等の築造工事が完成されなければならないとの所論は、何等同規則に根拠のない解釈と言うべく、又同規則は所論のごとく、供給の特に不足する物資の濫用を防ぎ又は使用を制限するに必要な命令として制定されたものであるけれども、判決に同第二条〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉違反の犯罪として示すには、右築造工事が施行された事実を摘示すれば足りるのであつて所論のように、供給の特に不足する物資を使用して改築行為がなされたことを判示する要はないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年3月2日 昭和25(れ)1463
登載
集刑 第41号121頁
参照法条
臨時物資需給調整法(昭和24年法律21号による改正前のもの)1条,昭和12年閣令6号臨時建築等制限規則2条,旧刑訴法364条,旧刑訴法360条1項,刑法6条,昭和22年閣令4号臨時建築等制限規則2条
論点107第360条刑事訴訟法

一 上申書は証拠書類にあたらない―――公判廷で弁護人の提出した証拠書類の証拠調の方法
二 従犯であるとの主張と旧刑訴法第三六〇条第二項

裁判要旨一 所論の書類は、何れも上申書であつて旧刑訴第三四〇条〈公訴の取消による公訴棄却の決定が確定したときは、公訴の取消後犯罪事実につきあらたに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事…〉にいわゆる証拠書類には当らないばかりでなく、たとえ証拠書類であるとしても公判廷で被告人の弁護機関である弁護人が提出し、裁判所及び検察官の閲覧を経た証拠書類については特に必要のある場合を除くの外、必ずしもこれを被告人に読み聞かせ又は示してその意見、弁解を求める必要のないことは判例の示すとおりである。
二 所論は、原審で弁護人が従犯であると主張したのに対し、原判決はその判断を遺脱した違法があるというのである。しかし、従犯であるとの主張は、共同正犯の起訴事実に対しては単なる否認の一種であつて旧刑訴法第三六〇条第二項に定める主張に当らない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月15日 昭和24(れ)1435
登載
刑集 第5巻4号527頁
参照法条
旧刑訴法340条,旧刑訴法347条1項,旧刑訴法360条2項,刑法62条
論点108第360条刑事訴訟法

一 旧地方税法第一三六条第二項の罪の判示方
二 旧地方税法第一三六条第二項違反罪の成立と、同法第一三七条第一号
三 旧地方税法第一三六条第二項の罪の成立と同法第四一条所定の督促手続との関係
四 不法拘禁中における供述の任意性又は強制の有無
五 証人に宣誓前偽証の罰を告げなかつた場合と証言の効力
六 縣税入場税市税入場税附加税犯則事件につき国税犯則取締法の規定が適用又は準用されない事例
七 地方税特別徴収義務者の不納付行為加功者に対する刑法第六五条第一項の適用と総則規定を明示することの要否
八 旧地方税法第一三六条第一項と同条第二項の相違と同条第二項の適用

裁判要旨一 しかし、旧地方税法第一三六条第二項の規定は、特別徴収義務者が徴取すべき地方税を故意に徴収せず又は徴収した地方税を故意に納入しなかつた場合に成立する脱税に関する犯罪の処罰規定であつて、地方税の単なる滞納の場合の規定ではない。されば同条項の犯罪事実を判示するには、所論のごとき知事又は市長の発令の有無、特別徴取義務者が払込告知書を受取つたか否か及び指定期日に払込を了したか否か等の事実を確定判定するの要はない。
二 旧地方税法第一三六条第二項の犯罪は、特別徴収義務者が徴収すべき地方税を故意に徴収せず、又は徴収した地方税を故意に納入しないときは直ちに成立し、不徴収又は不納入の手段方法の如何を問わないものであり、従つて、判事虚偽の報告が所論同法第一三七条第一号に触れることがあつても、前記条項の犯罪の成立を阻却しないものであるから、原判決が判示事実に対し同条項を適用処断したのは正当であつて、原判決には所論の違法は認められない。
三 本件入場税の納入期日が徴収した月の翌月中であることは法令である高知縣条例によつて明らかであり、判示逋脱の入場税については昭和二三年八月中に徴収されたものであることは原判決の認定判示したところである。そして特別徴収義務者の徴収した入場税の納入期日が右のごとく条例上徴収した月の翌月中に到来すべきものであるから、徴収した月が認定判示されていれば特にその納入期日を明示しなくとも自ら確定されるわけである。されば原判決は判示入場税の徴収日を八月四日から同月一〇日迄及び一八日から月末頃迄の間と確定判示し、その納入期日をその頃納入すべかりし期日にと説明した以上、旧地方税法第一三六条第二項違反罪の判示として何等欠くるところは存しない。又督促状を発することは納入しない入場税金について徴収義務者に対して滞納処分を行う法律上の要件であるにとどまり、不納入罪成立の要件ではない。されば原判決が判示逋脱の入場税金について督促状の発せられた事実及指定納入期日を判示しなかつたからといつて、原判決には違法のかどは存しない。
四 拘禁が不法であつてもその一事を以て直ちに拘禁中の供述が強制その他不任意のものであると速断することもできない。
五 しかし一九五〇年一〇月一八日附連合国最高司令官総司令部覚書施行期日たる同年一一月一日以前においては、連合国人である証人に対しては一般に宣誓をさせる場合でも偽証の罰を告げないのを相当と解すべきである(昭和二四年(れ)第一六七号同年七月九日第二小法廷判決判例集三巻八号一一九三頁以下参照)ばかりでなく、旧刑訴第一九九条〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発す…〉は証人に偽証の罪に陥ることのないようにその注意を喚起せしめる趣旨の訓示的規定と解するを相当とするから、たとえ同規定に反して裁判所が証人に偽証の罰を告げなかつたとしても、その供述は証言たるの効力を妨げられるものではない。されば原判決には所論のような違法は存しない。
六 本件のような昭和二三年八月一日以後同二四年六月一日以前に係る高知縣税入場税、高知市税入場税附加税犯則事件には国税犯則取締法の規定は適用も準用もされない筋合であることは多言を要しないところである。従つて本件高知縣税入場税高知市税入場税附加税の犯則事件に国税犯則取締法の規定の適用又は準用のあることを前提とする各論旨はいずれもその前提を欠きとるをえない。
七 原判示とその挙示する各証拠とを対照してみると原判決は判示入場税の特別徴収義務者はAであつて被告人B、同C、同D等は徴収義務者たる身分のない者で徴収義務者Aの判示入場税の一部逋脱に加功したものであると認め、刑法第六五条第一項を適用して被告人B等をAの判示逋脱犯の共犯者として処断したものであることを推断しえられるのである。そして刑法第六五条第一項のごとき総則規定はこれを適用するを以て足り、特にこれを判決中に明示する必要のないものである。
八 地方税法第一三六条第一項の規定は地方税の納税義務者が詐欺、その他不正の行為によつて地方税を逋脱した場合の処罰規定であり、同条第二項の規定は特別徴収義務者が徴収すべき地方税を納税義務者から徴収せず、又は納税義務者から徴収した地方税を納入しなかつた場合の処罰規定であつて、その不徴収又は不納入の手段、方法の如何を問わないから、本件のごとき特別徴収義務者が地方税たる判示入場税不納入の場合において、たとえ所論のような詐欺その他不正の行為が伴つたとしても同条第一項を適用すべきではなく、同条第二項を適用すべきであることは多言を要しないところである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月15日 昭和25(れ)766
登載
刑集 第5巻4号535頁
参照法条
旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改定前のもの)136条2項,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)136条2項,旧地方税法137条1号,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)36条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)37条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)41条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)136条1項,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)2項,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法199条,旧刑訴法360条の1項,刑訴応急措置法10条2項,国税犯則取締法12条の2,刑法65条1項
論点109第360条刑事訴訟法

一 賭博常習者の意義
二 「カブ」と称する賭博と賭博方法の判示の程度

裁判要旨一 しかし賭博常習者というのは賭博を反覆累行する習癖を有する者の義であつて、必ずしも所論のような織業的賭博、いわゆる博賭打ち又は遊人或は定職があつても専ら勝負事に耽つて、半職業化したような特殊な存在をいうものでないことは当裁判所屡次の判例とするところであつて、今なおこれを変更する必要を認めない。
二 しかし、「カブ」と俗に称する賭博が偶然の事実によつて勝敗が決する博戯であることは顕著の事実であるばかりでなく、原判決は「第四被告人Aは……前示カブ………」と判示しているのであるから右判示は判示第一の一の被告人Bについての判示と同じく「被告人Aは………金銭を賭し、花札を使用してカブと称する賭銭博奕をした」旨を判示しているものに外ならないこと明白である。されば、右原判示はたとえ「カブ」と俗に称する博奕の方法内容を仔細に判示しなくとも花札の使用による偶然のゆえいに関し財物の得喪を争うものであることを判示したものと理解することができるから賭博の判示としていささかも欠くるところがないといわなくてはならぬ。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月15日 昭和25(れ)1918
登載
集刑 第41号871頁
参照法条
刑法186条1項,刑法185条,旧刑訴法360条1項
論点110第360条刑事訴訟法

一 法令の不和と犯意の成立
二 犯罪の情状に関する主張に過ぎない期待不可能の主張

裁判要旨一 法令の不和と犯意の成立を阻却しないことはいうまでもないところであるし、しかも、被告人が本件犯行当時判示の所為が違法であることを知つていたことは原審公廷における所論引用の裁判長の「幽霊人員を作つて配給を受けるということは悪いと言う事は判つていたね」の問に対し被告人の「はい承知して居りました」の供述に照らしてたやすく容認しえられるところであつて、右供述を本件が問題となつてからの判断であるとする所論は独自の見解に過ぎないものといわなければならない。
二 なお所論被告人に本件犯行をしないことを期待できないとの主張は犯罪の情状に関し、毫も犯罪の成立に関係のないものであることその主張自体で明白であつて、原新でも主張しなかつたのであるから原判決がこれにつき審理も判断もしないのは当然であつて論旨は結局原判決の事実認定を非難するに帰し上告適法の理由とならぬ。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年1月25日 昭和25(れ)1559
登載
集刑 第39号671頁
参照法条
刑法38条3項,旧刑訴法360条2項,旧刑訴法409条
論点111第360条刑事訴訟法

一 賭博罪の判示とその相手方の員数及び氏名の判示の要否
二 賭博方法の判示の程度

裁判要旨一 賭博罪は二人で偶然の事情により勝負を決しこれに財物を賭けることによつて成立するものであり、その相手方が特定の人物であること及びその員数の如きは必ずしも賭博罪成立の要件ではない。されば所論のように被告人等のなした各賭博行為毎にその相手方の員数及びその氏名を明確に判示しなかつたとしても違法はない。
二 花札を使用して行われる俗に名古屋花、後先、又はハンカンと称する賭銭博賭をしたと犯時する以上、賭博罪の判示として欠くるところがないからそれ以上詳細にその方法内容を判示しなくとも差支えないのである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年1月25日 昭和25(れ)1627
登載
集刑 第39号685頁
参照法条
刑法185条,旧刑訴法360条1項
論点112第360条刑事訴訟法

証拠調をしない証拠を綜合証拠とした違法と、証拠に基かないで事実を認定した違法とがある判決と、著しく正義に反する場合

裁判要旨原審は所論Aに対する大蔵事務官の質問調書の証拠調をしていないことを明らかである。そして右質問調書は本件罪証として有力なものと認められるのであり、かかる証拠を他の証拠と綜合して犯罪事実を認定したことは違法である。又原判決は、判示汽船の乗組員たる中華船員が連合国占領軍、その将兵又は連合国占領軍に附属し、若しくは随伴するものであることについては何等の証拠を挙示せず、従つて証拠に基かずして事実を認定した違法がある。かかる違法は判決に影響を及ぼし且つ著しく正義に反するものと認める。(準新事件である)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年12月28日 昭和26(れ)1125
登載
集刑 第58号1041頁
参照法条
刑訴法411条,旧刑訴法336条,旧刑訴法360条
論点113第360条刑事訴訟法

一 食糧管理法施行規則(昭和二二年八月一二日農林省令第六八号による改正前のもの)第一条の市町村長のなす米麦供出割当数量の通知方法
二 米麦不供出罪の審判と右通知が公示されたか否かの審理の要否
三 米麦の供出割当数量が実収高を超えるとの主張と旧刑訴法第三六〇条第二項の主張

裁判要旨一 食糧管理法施行規則(昭和二二年八月一二日農林省令第六八号による改正前のもの)第一条により市町村長がなすべき米麦の生産者に対する政府に売り渡すべき米の数量の通知は、適宜の方法によれば足り、他人に代行せしめても差支ない。
二 右の通知が米麦の生産者たる被告人になされている以上、被告人に生産米不供出罪の責があるかを判定するについては、右通知が公示されたか否かを審理する必要はない。
三 米麦の供出割当数量が実収高を超えるとの主張は、法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年12月27日 昭和23(れ)1039
登載
刑集 第5巻13号2657頁
参照法条
食糧管理法(昭和22年12月30日法律247号による改正前のもの)3条,食糧管理法(昭和22年法律247号による改正前のもの)3条,食糧管理法施行規則(昭和22年8月12日農林省令68号による改正前のもの)1条,旧刑訴法360条
論点114第360条刑事訴訟法

胴元のために寺銭を徴収することと賄場開帳図利幇助剤の判示方

裁判要旨原判示によれば、被告人Aが昭和二二年六月二六日と翌二七日の両日に亘つてBのために寺銭を徴収して同人の賭博開帳図利の所為を幇助したことが明らかであるから、所論のように寺銭の額や徴収の方法を一々判示しなくても賄場開帳図利幇助の犯罪事実の摘示として十分である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年11月6日 昭和26(れ)1608
登載
集刑 第56号339頁
参照法条
刑法186条2項,刑法62条,旧刑訴法360条1項
論点115第360条刑事訴訟法

被告人の自白と補強証拠の供述との間に多少のくいちがいのある場合と犯罪事実の認定

裁判要旨原判決が、判示第六の犯罪事実認定の証拠として、被告人の原審並に第一審公判における自白の外、Aに対する司法警察官の聴取書を掲げたのは、これを以て右被告人の自白を補強するためであつて、右聴取書におけるAの供述がその内容の全部に亘つて、右被告人の自白と符合するものではないとしても、少くとも、その外形的事実―例えば同人が自転車一台の対価として被告人から精米一俵の交付を受けたことのある事実―において符合することは、右聴取書の記載に徴し明らかであつて、かかる供述が右被告人の自白の真実性を保障するに足ることは勿論であるから、これらを綜合して右犯罪事実を認定した原判決に所論のような相互に矛盾した証拠を引用した理由不備の違法ありとすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年11月30日 昭和26(れ)683
登載
集刑 第57号781頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法337条,旧刑訴法360条1項,刑訴応急措置法10条3項,憲法383条3項
論点116第360条刑事訴訟法

犯罪発生原因上に存する憫諒すべき客観的な情状と期待可能性の有無

裁判要旨本件は期待可能性を欠き責任を阻却し無罪である旨の所論は、原審でその主張がなく従つて原判決もその点について何等判断を与えていなのである。しかのみならず、所論摘示の事情(割当てられた原料は公定価格で買えず製品の公定価格は生産原価を割るので原料の出目で作つた製品を公定価格で売らなければ立ち行かない等)は、いわば貧困で止むなく窃盗をした場合の貧困という状態のように、本件犯罪の主観的責任に関係のない単なる犯罪発生原因上に存する憫諒すべき客観的な情状たるに過ぎないものと認められる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年11月29日 昭和26(れ)1655
登載
集刑 第57号701頁
参照法条
旧刑訴法360条2項,刑法36条
論点117第360条刑事訴訟法

一 旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則第五条にいわゆる「不服のないことが明らかな事項」の意義
二 訴訟手続に関する規定を判決に摘示することの要否

裁判要旨所論規則第五条にいわゆる「不服のないことが明らかな事項」とは罪となるべき事実中の不服のない事項を指し所論の量刑に関する事項をいうものではなく、かかる量刑に関する資料をどの程度に証拠調をするかは原審の裁量に属するところである。されば、原判決には所論規則の解釈を誤つた等の違法は認められない。また、所論規則第五条第六条の各規定のような訴訟手続に関する規定はこれを判決に摘示するの要はないのであるから、原判決には法令の適用を遺脱した違法も認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年11月15日 昭和26(れ)1261
登載
刑集 第5巻12号2383頁
参照法条
旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則5条,旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則6条,旧刑訴法360条
論点118第360条刑事訴訟法

一 判決に掲げてある証拠の誤記であることの明瞭な場合
二 賄賂の価格算定の誤謬を主張する上告理由と被告人に不利益な主張
三 農地委員会の職務権限
四 いわゆる荒廃地と自作農創設特別措置法第三条の農地

裁判要旨一 判決に証拠として「被告人に対する検事の第二回聴取書中判示同旨の供述記載」と掲げてあつても、記録中数通ある被告人に対する検事の聴取書中判示事項と同旨の記載ある聴取書は第一回聴取書だけであつて、その余の聴取書には別個の事実についての供述記載しかない場合には、右第二回聴取書は第一回聴取書の誤記であること明らかであるといわなければならない。
二 判示玄米七斗については、当時適用のあつた昭和二二年一一月一日物価庁告示第九六〇号に定めている統制額に基ずいて算出すべきものであつて、同告示により算出すれば、原判示金額より若干多額になること算数上明らかであり、原判決はこの点において違法が存するものといわなければならないが、原判示価格は被告人Aに有利に算出されている結果、同被告人に対する追徴の金額もそれだけ少額になつているので、右玄米七斗の価格の誤謬を指摘する論旨は結局被告人に不利益な主張となる。
三 農地所有権の移転についての地方長官の許可申請書に意見を附し、之を地方長官に進達することは右農地委員会の職務権限に属するものと認むべきである。
四 いわゆる荒廃地であつても、自作農創設特別措置法第三条の農地にあたる以上、政府買収の対象となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年10月12日 昭和25(れ)1409
登載
刑集 第5巻11号2183頁
参照法条
旧刑訴法360条1項,旧刑訴法409条,刑法197条,農地調整法(昭和21年法律第42号により改正されたもの)4条1項,農地調整法(昭和21年法律第42号により改正されたもの)4条3項,農地調整法施行令(昭和21年勅令第556号により改正されたもの)2条1項,農地調整法施行令(昭和21年勅令第556号により改正されたもの)2条3項,農地調整法施行規則(昭和21年農林省令第68号により改正されたもの)6条1項本文,農地調整法施行規則(昭和21年農林省令第68号により改正されたもの)6条2項,農地調整法施行規則(昭和21年農林省令第68号により改正されたもの)6条3項,自作農創設特別措置法(昭和24年法律第205号による改正前のもの)3条5項5号
論点119第360条刑事訴訟法

総則規定の適用を明示しない判決と擬律不備の有無

裁判要旨原判決が被告人Aの判示虚偽公文書作成の所為に加功した所為に対し、刑法第六五条一項の適用を明示しなかつたことは所論のとおりである。しかし、同条項のごとき総則規定は特にこれが適用を明示しなくとも、これを適用したことを看取し得れば差支ないものといわなければならない。そして原判決は、その判示冒頭において被告人は昭和二一年三月三〇日退官し爾後判示常任幹事であつたに過ぎないことを判示し刑法第六〇条を適用する等判示全体により自ら同条項を適用処断した趣旨であることを窺い知ることができるから、原判決にはこれを破棄しなければならない擬律不備の違法はないものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年11月2日 昭和25(れ)216
登載
集刑 第35号39頁
参照法条
刑法65条1項,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条19号
論点120第360条刑事訴訟法

一 従犯の地位にあつた旨の主張と法律上刑の減免の原由たる事実上の主張
二 被告人に対する最終陳述の機会の附与と「別にありません」を「別にあります」とした調書記載の誤記の認定
三 公判調書における弁護人の姓の誤記たることの認定

裁判要旨一 論旨は原審認定の被告人の犯行について被告人は原審に於て従記の地位にあつたことを主張しているのであるからこれは旧刑事訴訟第三六〇条第二項〈第三百五十三条又は第三百五十四条に規定する者は、書面による被告人の同意を得て、上訴の放棄又は取下をすることができる。〉に所謂法律上刑の減免の原由たる事実上の主張に当るにも拘らず原判決は何らこれに対する判断を示していないのは判断遺脱の違法があると主張するが、所論の様な陳述があつたとしてもこれをて刑の減免の原由たる事実の主張があつたのとは認められない。
二 原審裁判長は被告人に意見及び最後い述べたいことはないかと問を発していることは所論の通りであるから被告人に対し最終陳述の機会を与えたものと言わなければならない。もしも、裁判長の発した右問に対し被告人が別に陳述する必要があつたなら其機会を与えられたのであるから陳述すべき筈であるに何も陳述した形跡はなく又裁判長が被告人の発言を禁じた形跡もない等に右「別にあります」の調書記載は「別にありません」の誤記と認むるを相当とする。調書の粗雑な点は誠に遺憾であるが何れも誤記と認められる。
三 被告人Aの弁護人選任届其他本件記録を調べて見ると山下弁護人が原審における被告人Aの弁護人であり同人の為め弁論したことは明らかであつて岡田弁護人が被告人Aの弁護人であるとは認められないから所論岡田弁護人とあるは山下弁護人の誤記と認めるを相当とする。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和25年10月31日 昭和25(れ)1224
登載
集刑 第19号1065頁
参照法条
刑法62条,旧刑訴法360条2項,旧刑訴法60条,旧刑訴法74条,旧刑訴法349条3項,旧刑訴法40条17号,旧刑訴法64条
論点121第360条刑事訴訟法

原判決の証拠説明中に「供述記載」は供述の「供述」は「記載」の各誤記ある場合と理由不備

裁判要旨所論の原判決証拠説明中の二の証拠は、被告人の第一回公判期日における供述を裁判官更送のため公判手続が更新された第二回公判期日において繰り返したのであるから、証拠説明中には「当公廷における供述」と書くのが正確であるし、又所論原判決証拠説明中の三の証拠は、被告人が愛知縣経済防犯課長宛提出した始末書を証拠調べをしてその中の供述記載を証拠としたものであるから「始末書の「……………」旨の記載」とするのが正確であるが、原判決証拠説明中二の「供述記載」は「供述」の、同三の「供述」は「記載」の各誤記であることは、本件記録上明白であるから、原判決に理由不備又は理由齟齬ありとする所論は、採用することができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和25年10月31日 昭和25(れ)955
登載
集刑 第19号1061頁
参照法条
旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条19号,旧刑訴法10条20号
論点122第360条刑事訴訟法

一 犯罪供用物件である兇器を公判廷で證據調をしないで強盜殺人罪を認定した場合
二 搜査段階において司法警察官によつて領置された物件と舊刑訴法第三四二條
三 事實認定の資料とした司法警察官の證據物の領置書又は領置目録の證據能力
四 公判期日の前日に選任された辯護人が終始公判に立會いながら期日の延期、續行の申請がない場合と辯護權の不法制限

裁判要旨一 本件のごとく、短刀拳銃、小銃等を使用して人を殺害して、物を強取したという條件において、これら兇器が領置、押収されている場合、裁判所が事實審理をするに當つては、公判廷において被告人に直接これらの證據物を示し、その意見辯解を開き適法な證據調を經た上で犯罪の證據としてこれを判決に舉示することは事實審として、まさにとるべき妥當の措置ではあるけれども、かくのごとき兇器等といえども必らずしも常に、これを公判廷に顯示して證據調をしなければならないというものではない。その他の證據で犯罪事實を認定し得る場合には事情によつて兇器等を證據としないで、本件におけるがごとく間接に、右兇器等に對する捜査官の領置書若しくは領置日録をとつて、犯罪事實認定の資料とすることも法律上許されないことではないのである。
二 犯罪捜査の段階において、司法警察官によつて、領置された物件のごときものは、舊刑訴法第三四二條の、「公判期日前訴訟關係人ヨリ提出シタル證據物」にも、同法第三二六條乃至第三二八條により、裁判所が公判期日前「集取シタル物」にも該當しないのであるから右物件について、原審が公判において證據調をしなかつたことをもつて、同法第四一〇條第一三號に該當する違法ありとすることはできない。
三 論旨は、原判決が、司法警察官作成の證據物の領置書若しくは、領置目録を事實認定の資料としたことをもつて、適法なる證據に基ずかして事實を認定した違法があると主張するのであるが、右のごとき書類といえども、公務員がその職務權限に基いて作成した文書であつて、その記載内容が證據品の領置に關するに過ぎないからといつて當然にその證據能力を否定する何らの根據もなくその文書の記載内容の趣旨に從つて、事實證明の用に供し得ることは勿論である。
四 公判期日の前日に辯護人を選任するかごときは、辯護權を尊重すべき裁判所の措置として、當を得たものでないことは勿論であるといわなければならない、記録を査閲すれば、原審において、被告人Aは、自ら辯護人を選任することができない旨を申出でたため、裁判所は昭和二三年六月一四同人のため辯護士宗政美三を辯護人に選任し、翌一五日公判を開廷し、同辯護士立會の上自實審理、證據調を施行同辯護士の辯論を經て、即日公判手續を終結したことは、所論のとおりである。しかしながら、原審公判調書によれば當日の公判には終始、右辯護人は立會つたのであるが、辯護人から辯論準備のため期日の延期若しくは審理の續行を申出た形跡もなく、その開廷並びに審理の進行について、被告人からも辯護人からも別段の異議もなく、辯護人の辯論を經て結審となつているのである。おもうに本件はその内容かさして複雜というでもなく公判における事件の審理も相當詳密に行われたので、辯護人としては、特に期日の延期續行等を申請するまでもなく、公判審理に立會うことによつて十分に事件の全貌を把握し得て被告人の辯護に欠くるところのないものと信じ直ちに辯論をして、その日の結審に別段の異議を述べなかつたものと推斷するのが相當である。若し辯護人において辯論準備のためになお時間的余裕が必要と思えば期日の延期續行を申請すべきであつて、裁判所がかかる申請をも容れず従らに結審を急いだという場合ならはまさに不法に辯護權を制限したというべきであるけれども、本件においてかかる形跡のないことは前述のとおりであつて、かくのごとき場合においても、裁判所が職權をもつて辯論を續行しない限り、不法に辯護權を制限した違法あるものとすることは到底首肯し難いところである、以上の次第であるから裁判所が公判期日の前日に辯護人を選任した一事をもつて直ちに原判決に舊刑訴第四一〇條第一一號に該當する違法ありとの論旨は、これを採用することができない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和24年7月13日 昭和23(れ)1488
登載
刑集 第3巻8号1304頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法327条,旧刑訴法342条,旧刑訴法410条13号,旧刑訴法337条,旧刑訴法334条,旧刑訴法410条11号
論点123第360条刑事訴訟法

一 証言中証人の実験した事実と無関係な意見の陳述にすぎない部分の証拠能力
二 證人の供述の趣旨を變えて採證した違法な判決の一例

裁判要旨一 証人の陳述中証人が実験した事実、又は実験した事実によつて推測した事項の陳述ではなく、単に意見を表示したにすぎないとみられる部分は、証拠に採用することができない。
二 然るに原判決はその證據説明中にかような證人の意見に過ぎない陳述をも挿入しそれを「然し」という言葉で接續して、その前後の供述の順序を變えて、記録に現はれた供述とは違つた趣旨の摘録をしている。原審第五回公判で裁判長自らも前後二回に亘つて「全然違う」と云つた「法廷におけるAの證言」即ち原判決が證據として舉示する第一審第三回公判調書中におけるAの供述及び前記原審第五回公判における同人の供述と「檢事聽取書中における同人の供述」とは互に相反する證據である。前者は被告人BがC代議士等の民主自由黨えの加盟斡旋方傳言を證人Aに頼んだのではないという事實であり、後者は右加盟斡旋方の傳言を證人Aに頼んだという事實である。かかる相容れない事實から、「Bが暗に(Aに)傳言方を慫慂し因て(Aをして)その旨傳言させた」と判事事實を積極的に認定したのは證據上の理由において齟齬あるものと云はなければならない。從つて論旨はその理由があつて原判決は破毀を免れない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和24年6月13日 昭和24(れ)226
登載
刑集 第3巻7号1039頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法206条1項,昭和22年勅令1號,舊刑訴法410條19號,舊刑訴法360條1項
論点124第360条刑事訴訟法

過失の主張と旧刑訴法第三六〇条第二項

裁判要旨殺人被告事件において、被告人が過失による傷害である旨の主張は、旧刑訴法第三六〇条第二項の主張にはあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和24年5月17日 昭和23(れ)2030
登載
刑集 第3巻6号729頁
参照法条
旧刑訴法360条2項,刑法199条,刑法210条,刑法410条20号
論点125第360条刑事訴訟法

一 賭博罪の判示と博戯の方法
二 賭博罪の着手と既遂の時期
三 賭博罪の成立と勝敗の未決
四 公判關與の檢事と異なる檢事の氏名を判決に記載した違法と上告理由

裁判要旨一 「先づ賭銭をその場に出し、次に花札を取り、俗に飯田花という博戯に着手し」た旨のを判示する以上、特に博戯の方法を詳細に説示する必要はない。
二 金銭を賭け花札を使用する博戯において、当事者が既に賭銭をその場に出し花札を配布したときは、たとえそれが親をきめるためであつても、賭博罪は成立する。
三 勝敗が既に決したことは、賭博罪の成立に必要なことではない。
四 原審第一回公判調書によれば、該公判には大月和男檢事が立會い、更新後の第二回公判調書によれば該公判には岡崎格檢事が立會つている。しかるに原判決においては「檢事大月和男立會の上審理を行」つた旨を記載しているのは、所論のとおり公判關與の檢事と異なる檢事の氏名を判決に記載したものであつて刑訴第六九條第二項に違反するものではあるが、かかる形式上の違法は刑訴第四一〇條に列舉している上告理由に該當しないことは勿論、判決の内容自體に影響を及ぼさないことは明白である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和23年7月8日 昭和23(れ)305
登載
刑集 第2巻8号822頁
参照法条
刑訴法360条1項,刑訴法69條2項,刑法185条
論点126第360条刑事訴訟法

一 見張りと窃盜の共同正犯
二 財物奪取の意思連絡による行爲の分擔と強盜の共同正犯
三 共謀の事實についての判示の程度
四 見張りと強盜の共同正犯
五 脅迫されて犯行現場の近くに立つていたとの主張と刑訴第三六〇条第二項〈第三百五十三条又は第三百五十四条に規定する者は、書面による被告人の同意を得て、上訴の放棄又は取下をすることができる。〉
六 共謀の日時場所の判示の要否
七 共同正犯に對し刑法第六〇條の適用を判文に明示することの當否

裁判要旨一 窃盜の共犯者と意思連絡のもとに見張をした場合は窃盜の共同正犯と斷ずべきものである。
二 他人の財物を奪取する意思連絡の下にその目的を達するために、或者は財物の奪取行爲を擔當し、他の者は被害者に暴行又は脅迫を加えた場合に、その全員について強盜罪の共同正犯が成立することは多く論ずるまでもないことである。
三 論旨は何日何處で誰々との間に如何なる通謀をしたかの事實理由を判決に明示しなければならないというのであるが、共謀の日時場所は必ずしも判決に明示する必要はなく誰々の間に本件犯行の共謀があつたかは判文自體より明らかであり且第一審相被告人等と被告人との間に主從關係があるとか、對等關係でないとかの事實は、原審では認めないのであるからことさらに對等關係で共謀した旨を説示しなくとも所論の如き違法はない。
四 原判決舉示の證據により、被告人と第一審相被告人との間に本件犯行について意思連絡があり、しかも相被告人等と被告人の間に主從關係とか、不平等關係があつたということは原審で認めないのであるから所論の如き主犯とかの區別は認められないのである。被告人は直接財物窃盜行爲をなさずただ見張をしただけであるから幇助罪として斷ずべきものだと主張するのであるが、原審においては本件共犯者間には強盜についての意思連絡ありと認定したものであり、強盜についての意思連絡の下に見張をしたものは共同正犯として處罰し得べきことは大審院判例の示すところであつて、今これを改める必要なしとの見解に基き強盜の見張をした被告人を強盜の共同正犯と斷じたことを窺い知ることができるのであるから、所論の如き刑法第六〇條の解釋を誤つたものではない。
五 強盗犯人から、犯行を共にするよう誘われ、これを拒んだところ、匕首で脅迫されたので、やむを得ず犯行の現場近くで立つていたとの主張は、刑訴法第三六〇条第二項〈第三百五十三条又は第三百五十四条に規定する者は、書面による被告人の同意を得て、上訴の放棄又は取下をすることができる。〉の「法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張」にあたらない。
六 数人共謀して犯罪を犯した場合に、共謀をした日時場所は、必ずしも判示する必要はない。
七 原判決において刑法第六〇條を適用した旨を判文上明示しなかつたことは所論の通りである。しかし原判決は第一審相被告人等と被告人とは本件犯行について共謀したものと認定し、且其共謀に基いて被告人は見張をした事實を認定したのであり。意思連絡のもとに強盜の見張をしたのであるから、本件犯行の共同正犯であると断じたものである從つて刑法第六〇條を適用した旨を判文上明示しなくとも、同條を適用した趣旨であることはおのづから明白であるから、所論の如き違法はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和23年7月20日 昭和23(れ)351
登載
刑集 第2巻8号979頁
参照法条
刑法356条,刑法60条,刑法236条,刑訴法360条1項,刑訴法360条2項
論点127第360条刑事訴訟法

自首の事實の判示の要否

裁判要旨自首減輕を與へると否とは事實裁判所の專權に屬することで、之を與えない場合、特に自首の事實を判決に判示する必要はない。然らば原判決が被告人が自首した事實を摘示せず又之に關する法條を示さなかつたとしても何等違法はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和23年4月10日 昭和22(れ)273
登載
刑集 第2巻4号330頁
参照法条
刑法42条,刑訴法360条2項
論点128第360条刑事訴訟法

一 連續犯の判示の具體性の程度
二 控訴審において第一審が有罪と認定した犯罪事實の一部を無罪としながら第一審と同一の刑を言渡した場合と不利益變更禁止
三 証拠説明の方法
四 刑訴応急措置法第一〇条第二項と六ケ月余の拘禁後の自白
五 實質上理由のない不利益變更禁止規定違反の主張と裁判所第一〇條

裁判要旨一 連續一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには各個の行爲の内容を一々具體的に判示することを要せず數多の行爲に共通した犯罪の手段方法その他の事實を具體的に判示する該其連續した行爲の始期終期、回數等を明らかにし且つ財産上の犯罪であつて被害者又は賍額に異同があるときは被害者中ある者の氏名を表示する外他は員數を掲げ賍額の合計額を表示する等これによつて其行爲の内容が同一罪質を有する複數のものであることを知り得べき程度に表示すれば十分であることは當裁判所判例の示す所である。昭和二二年(れ)第九二號同二二年一二月四日、第一小法廷判決言渡)
二 刑事訴訟法第四〇三條の所謂不利益變更禁止の規定は被告人が控訴した事件又は被告人の爲に控訴した事件については控訴審の判決において第一審判決の主文の刑を重く變更することはできないという趣旨であつて、たとい控訴審において第一審が有罪と認定した犯罪事實中の一部分については犯罪の成立を認めないで、しかも第一審判決と同一の刑を言渡したとしても第一審判決の主文の刑を重く變更したとは言い得ない。
三 証拠説明は、必ずしも証拠の内容を一々摘録したり、原文のままを写録したりすることを要するものではなく、その趣旨を摘示し、或はその題目を掲げて判示事実又は他の判示証拠と綜合してその内容を認識し得る程度に挙示することにより、如何かる事実が如何なる証拠によつて証明されるかを判文上示せば足りる。
四 勾留状を執行されてから六ケ月余を経過した後になされた自白であつても、被告人の数が九人で、犯行は約一年三ケ月間にわたり、その間単独或は二名乃至五名が共謀して強盗傷人、強盗各一件、強盗予備二件、窃盗二三件にのぼる犯罪をした案件においては、右自白は、刑訴応急措置法第一〇条第二項にいわゆる「不当に長く拘禁された後の自白」にあたらない。
五 論旨は第一審で認定した犯罪行爲の一部が第二審で無罪になつたかにかかわらず刑が同じでは結局上訴しても不利益を受けることになり、かくの如きは憲法違反であるというのであるが同じ刑である以上實質上不利益ということは有り得ない。かかる有り得ない事實を前提として憲法違反であるという論旨の如きは裁判所第一〇條にいう「法律命令又は處分が憲法に適合するか否かを判断するとき」に該當しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和23年12月14日 昭和23(れ)745
登載
刑集 第2巻13号1739頁
参照法条
刑法55條,刑法60條,刑訴法360條1項,刑訴法403條,刑訴法360条,刑訴法130條,刑訴応急措置法10条2項,裁判所法10條
論点129第360条刑事訴訟法

一 賍物の還附を受けるべき被害者と被害当時の所有者との関係
二 賍物の還附を受けるべき被害者であることの理由明示の要否
三 文字の挿入削除が法定の要式を缺いた調書の効力

裁判要旨一 盜賍を被害者に還付する言渡をする場合、その還付を受けるべき被害者は、必ずしも、判決の事実摘示において被害物件の所有者として指示された者であることを要しない。
二 賍物を還付する旨の言渡を受けた被害者が、その還付を受けるべき者であるとする理由は、特に判示することを要しない。
三 調書における文字の挿入削除が法定の要式を缺いた場合でも、直ちにこれを無効とすべきでなく、その効力の有無は、專ら、裁判所が諸般の状況を勘考して、自由の裁量によつて決すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和23年12月11日 昭和23(れ)998
登載
刑集 第2巻13号1728頁
参照法条
刑訴法373条1項,刑訴法360条,刑訴法72條
論点130第360条刑事訴訟法

一 犯意繼續の點が犯行の性質態樣等から自ら推知せられる場合と證據理由説示の要否
二 參考として裁判所に提出された書類につき公判調書に記載の要否

裁判要旨一 數個の行爲が繼續の意思に出でたものであることが、證據にょつて認められた犯罪行爲の性質、態樣等から自ら推知される場合には、犯意繼續の點について、特に之を證據にょつて認めた理由を説明する必要がないものと解すべきである。
二 所論被害辨償に關する受領書は、證據書類として裁判所に提出せらるる場合と、證據方法としてでなく參考として裁判所に提出せらるる場合とがある。右前段の場合は證據書類の領置押收として所論の如く刑事訴訟法第六〇條第九號第一〇號等に則り、その旨公判調書に記載せらるべきものであること勿論であるが、右後段の場合には公判調書に何等の記載をも必要としないものと云わねばならぬ。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和23年11月5日 昭和23(れ)396
登載
刑集 第2巻12号1477頁
参照法条
刑法55条,刑訴法360条1項,刑訴法60条9号,刑訴法60条10号
論点131第360条刑事訴訟法

一 被告人の住居の認定と證據調
二 被告人の住居の誤認と上告理由

裁判要旨一 判決書に記載すべき被告人の住居は、被告人を特定する事項たるに止り、もとより罪となるべき事實ではないからこれを認めるのに、證據調その他特別の審理を要するものではなく、記録その他について適宜これが取調を爲すを以て足るものといわねばならぬ。
二 假りに原審が被告人の住居に對する判斷につき誤りがあつたとしても前段説示のごとく判決に影響を及ぼす事柄でないから所論は上告適法の理由とならないものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和23年11月25日 昭和23(れ)834
登載
刑集 第2巻12号1647頁
参照法条
刑訴法69条1項,刑訴法360条1項,刑訴法411条
論点132第361条刑事訴訟法

特別抗告取下後に申し立てられた特別抗告が不適法とされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和60年11月15日 昭和60(し)131
登載
集刑 第241号193頁
参照法条
刑訴法361条
論点133第361条刑事訴訟法

刑訴法第三六一条〈上訴の放棄又は取下をした者は、その事件について更に上訴をすることができない。上訴の放棄又は取下に同意をした被告人も、同様…〉の合憲性

裁判要旨上訴の放棄または取下をした者は、その事件についてさらに上訴をすることができないものとしている刑訴法第三六一条が違憲でないことは、昭和二四年(つ)第九六号同二五年四月二一日大法廷決定(刑集四巻四号六七五頁)の趣旨に徴し明らかである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年7月22日 昭和42(し)38
登載
集刑 第163号1119頁
参照法条
刑訴法361条,刑訴法362条
論点134第361条刑事訴訟法

一 刑訴法第三六一条〈上訴の放棄又は取下をした者は、その事件について更に上訴をすることができない。上訴の放棄又は取下に同意をした被告人も、同様…〉の要旨
二 第一審判決に対し被告人および検察官の双方から控訴の申立があり被告人のみこれを取り下げた場合において控訴棄却の判決に対し被告人から上告を申し立てることは許されるか

裁判要旨一 刑訴法第三六一条〈上訴の放棄又は取下をした者は、その事件について更に上訴をすることができない。上訴の放棄又は取下に同意をした被告人も、同様…〉は、同一審級においてのみ適用のある規定と解すべきであつて、控訴の放棄または取下をした者が控訴審の判決に対して上告をすることまで禁ずる趣旨のものと解すべきではない。
二 第一審判決に対し、被告人および検察官の双方から控訴の申立があり、被告人のみこれを取り下げた場合において、控訴審の判決が検察官の控訴を棄却したにとどまるときであつても、被告人から右判決に対し上告を申し立てることは許される。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年5月24日 昭和41(あ)3073
登載
刑集 第21巻4号576頁
参照法条
刑訴法361条
論点135第362条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立と上訴権回復に関する規定の準用の有無

裁判要旨上告棄却決定に対する異議申立については、上訴権回復に関する規定の準用がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年4月7日 昭和57(す)19
登載
刑集 第36巻4号556頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法385条2項,刑訴法386条2項,刑訴法414条
論点136第362条刑事訴訟法

在監者が付審判請求事件についてされた抗告棄却決定に対し特別抗告申立書を差し出す場合と刑訴法三六六条一項の準用の有無(消極)

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年9月5日 昭和54(し)88
登載
集刑 第215号271頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法362条1項,刑訴法433条
論点137第362条刑事訴訟法

上訴権回復請求及び異議申立を一つの決定で棄却した例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年7月3日 昭和54(す)145
登載
集刑 第215号17頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法428条
論点138第362条刑事訴訟法

訴訟費用執行免除申立権の回復請求の適否

裁判要旨訴訟費用執行免除申立権の回復請求は不適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年7月2日 昭和54(す)113
登載
刑集 第33巻5号397頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法500条
論点139第362条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する上訴権回復の請求が棄却された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和52年4月8日 昭和52(す)68
登載
集刑 第203号555頁
参照法条
刑訴法362条
論点140第362条刑事訴訟法

特別抗告についての上訴権回復請求を棄却する場合と特別抗告棄却の権能

裁判要旨特別抗告についての上訴権回復請求を受理した裁判所は、これを棄却する場合には、刑訴法三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉、四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉を類推適用して、右請求と同時にされた特別抗告の申立を自ら棄却することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年6月21日 昭和48(し)22
登載
刑集 第27巻6号1197頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法375条,刑訴法414条,刑訴法433条
論点141第362条刑事訴訟法

上訴権回復請求が認められた事例。

裁判要旨上訴申告書が上訴申立期間の最終日に速達郵便に付され、該郵便物が法令上即日管轄裁判所に配達さるべき時間内に配達受持局に到達したにもかかわらず、翌日配達された場合、右期間の徒過は、上訴権者又はその代人の責に帰することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年7月17日 昭和39(し)30
登載
刑集 第18巻6号399頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法411条1号,郵便法60条,郵便規則100条1項,郵便規則100条2項,昭和38年12月28日郵業6633号仙台郵政局郵務部長通達
論点142第362条刑事訴訟法

一、刑訴法第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉所定の申立人の代人に該当するとされた事例
二、いわゆる判決通知と上訴権回復事由
三、刑訴規則第二二二条と控訴審への準用の有無

裁判要旨一、原決定において、申立人が上告申立の手続を依頼したAは、刑訴三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉所定の申立人の代人に該当するとしたのは相当である(後記註参照)。
二、刑訴規則第二二二条所定の判決結果の通知がなされなかつたという一事をもつては、上訴権回復請求の理由とならないことは当裁判所の判例(昭和二九年(し)第三号昭和二九年九月二一日第三小法廷決定、最集八巻九号一五一四頁)である。
三、刑訴規則第二二二条の規定は、控訴審には準用がないことも当裁判所の判例(昭和二七年(し)第四二号昭和三三年五月二六日第一小法廷決定、集一二巻八号一六二一頁)である。
註。本件は控訴棄却の判決宣告があつたので申立人は上告申立の手続を訴訟手続の実務に明るいと自称する知人Aに依頼して置いたところ右Aが上告申立をしても無駄だ等と思い且つ刑訴規則を誤解したため法廷期間内に上告の申立ができなかつた事案である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年10月9日 昭和37(し)34
登載
集刑 第144号771頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法284条,刑訴法285条,刑訴規則222条,刑訴規則250条
論点143第362条刑事訴訟法

訴訟費用の負担を命ずる裁判の執行免除の申立期間経過後の申立権回復請求。

裁判要旨訴訟費用の負担を命ずる裁判の執行免除の申立期間経過後の申立権回復請求は不適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年7月13日 昭和36(す)239
登載
刑集 第15巻7号1082頁
参照法条
刑訴法500条,刑訴法362条
論点144第362条刑事訴訟法

刑訴法第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉の合憲性

裁判要旨刑訴第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉が代人の過失によつて上訴期間を徒過した場合上訴権回復の請求権がないものとしたのは、違憲でない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年6月7日 昭和36(し)22
登載
刑集 第15巻6号956頁
参照法条
憲法32条,刑訴法362条
論点145第362条刑事訴訟法

上訴権回復請求の事由にあたらない事例。

裁判要旨刑訴三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉にいわゆる「責に帰することができない事由」とは、上訴不能の事由が上訴権者またはその代人の故意または過失にもとずかないことをいうものであり(昭和三一年七月四日第一小法廷決定、刑集一〇巻七号一〇一五頁参照)、所論の如く、当裁判所の裁判宣告期日の通知及び裁判宣告の行われた当時被告人が欧米諸国に旅行中であつたがため裁判宣告の行われた事実を知らず、従つて法廷の期間内に不服の申立をすることができなかつたことは、これに該当する事由にならないことが明らかである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和35年9月14日 昭和35(す)198
登載
集刑 第135号327頁
参照法条
刑訴法362条
論点146第362条刑事訴訟法

一 刑訴第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉にいわゆる「責に帰することができない事由」の意義
二 上訴権回復請求の許されない一事例

裁判要旨一 刑訴第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉にいわゆる「責に帰することができない事由」とは、上訴不能の事由が上訴権者またはその代人の故意または過失にもとづかないことをいうものである。
二 被告人が刑訴第三八六条第一号〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。 第三百七十六条第一項に定める期間内に控訴趣意書を差し出さないとき。〉の規定による控訴棄却決定の送達を受けた当時病床にあり、医師より絶対安静を命ぜられていたために異議の申立をすることができなかつたというような事由は、被告人の責に帰することができない事由とはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年7月4日 昭和31(し)29
登載
刑集 第10巻7号1015頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法386条,刑訴法422条,刑訴法428条
論点147第362条刑事訴訟法

刑訴法第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉に該当しない一事例

裁判要旨原決定が「所論主張のような事由により錯誤に陥り正式裁判の申立をしなかつたとしても、単に検察官の一片の言辞を軽信し失格問題は起らないものと解し略式命令の当選に及ぼす効果について何等の調査もしなかつたのは明かに過失たるを免れないから、かような事由は刑訴三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉に該当しないものといわねばならない」とした判断は正当であり、従つて所論違憲論は前提において失当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年5月1日 昭和31(し)19
登載
集刑 第113号437頁
参照法条
刑訴法362条
論点148第362条刑事訴訟法

一 裁判宣告期日における被告人の不出頭と上訴期間の起算点 ―いわゆる判決通知との関係―
二 いわゆる判決通知と上訴権回復事由

裁判要旨一 原判決の示すところによれば、控訴審が、被告人に第一回公判期日の召喚状を適法に送達したところ、被告人がその公判期日に出頭しなかつたので、そのまま開廷審理の上結審し判決宣告期日を指定告知し、さらにその宣告期日にも被告人が出頭しないのでそのまま判決を宣告したというのであつて、かかる場合判決の宣告は被告人に対し効力を生じ、上訴期間は判決の通知をまたずその翌日より進行すると解すべきこと、大審院以来また当裁判所においても裁判の趣旨とするところであり、新刑訴法の解釈としても、なおこれを変更するの要を認めない。(昭和二四年(れ)第九八六号同年六月七日第三小法廷判決、集三巻七号九五三頁参照)
二 刑法起訴二二二条〈第九十九条第一項、第百条、第百二条、第百三条から第百五条まで、第百十条、第百十条の二前段、第百十一条第一項前段及び第二項…〉の判決の通知は、第一審における被告人が本来公判期日に出頭すべき義務があるにかかわわず、刑訴二八四条〈五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、五万円)以…〉が所定の軽微な事件につき特にその義務を免除したのに対応し、被告人のためを慮つた特別の規定に過ぎないのであつて、この規定があるからといつて、そのため被告人が右通知を受けた時から上訴期間が進行するものではなく、通常の場合と同じく判決言渡の時から進行するのであり、被告人自ら起訴進行の状態を知る手段を講ずることを要することも変りないのである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年9月21日 昭和29(し)3
登載
刑集 第8巻9号1514頁
参照法条
刑訴規則220条,刑訴規則222条(250条),刑訴規則222条(250号),刑訴法362条
論点149第362条刑事訴訟法

控訴審の弁護人として選任された弁護士は、控訴申立に関しては刑訴法第三六二条にいわゆる被告人の代人か

裁判要旨控訴審の弁護人として選任された弁護士は控訴申立に関しては刑訴三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉にいわゆる被告人の代人と解すべきものである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年10月31日 昭和27(し)2
登載
集刑 第68号849頁
参照法条
刑訴法362条
論点150第362条刑事訴訟法

高等裁判所のした控訴棄却の決定に対する異議申立期間と上訴権回復の規定の準用

裁判要旨高等裁判所がした控訴棄却の決定に対し、自己又は代人の責に帰することができない事由により所定の期間内に異議の申立をすることができなかつた場合には、上訴権の回復の規定の準用がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年10月6日 昭和26(し)57
登載
刑集 第5巻11号2177頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法386条1項,刑訴法386条2項,刑訴法385条,刑訴法428条2項
論点151第362条刑事訴訟法

少年法上の保護処分決定に対する上訴権回復請求棄却決定及び抗告棄却決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件において刑訴法の特別抗告に関する規定(刑訴法433条〈この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に…〉、434条〈第四百二十三条、第四百二十四条及び第四百二十六条の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、前条第一項の抗告につい…〉、426条1項〈抗告の手続がその規定に違反したとき、又は抗告が理由のないときは、決定で抗告を棄却しなければならない。〉)を類推適用して処理した事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成9年9月8日 平成9(し)145
登載
集刑 第271号205頁
参照法条
少年法32条,少年法33条,少年法35条,刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法364条,刑訴法433条,刑訴法434条,刑訴法426条1項
論点152第362条刑事訴訟法

異議申立権の回復請求が棄却された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成4年2月25日 平成4(す)14
登載
集刑 第260号181頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法385条2項,刑訴法414条
論点153第362条刑事訴訟法

訴訟費用執行免除申立権の回復請求の適否

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成3年6月6日 平成3(す)79
登載
集刑 第258号1頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法500条
論点154第363条刑事訴訟法

一 いわゆる準新事件の公訴時効とその中断
二 同事件につき上告趣意書提出最終日の指定がなされその通知書が上告人に送達されたときは公訴時効中断の効力を生ずるか。
三 同事件につき上告審で公訴時効が完成した場合の措置。

裁判要旨一 本件のように昭和二三年二月一九日公訴が提起され同二六年六月一九日原判決の言渡があつた事件においては、刑訴施行法第二条、第三条の二より、公訴の時効、その中断等については、旧刑訴第二八一条〈証人については、裁判所は、第百五十八条に掲げる事項を考慮した上、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き必要と認めるときに…〉、第二八五条〈拘留に当たる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告…〉等旧刑訴の適用を受けるものであつて、刑訴第二五四条〈時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める…〉等の適用を受けるものではない。
二 右事件につき上告趣意書提出最終日の指定がなされその通知書が上告人に送達されたときは、旧刑訴第二八五条の公判の処分があつたものとして、公訴時効中断の効力を生ずる。
三 同事件につき上告審において公訴の時効が完成したときは、刑訴施行法第二条、第三条の二、刑訴第四一一条第五号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。〉を準用し、原判決を破棄の上、旧刑訴第四四八条〈再審の請求が理由のあるときは、再審開始の決定をしなければならない。〉、第四五五条〈非常上告をするには、その理由を記載した申立書を最高裁判所に差し出さなければならない。〉、第三六三条第四号〈上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。〉により被告人を免訴すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和35年6月9日 昭和29(れ)10
登載
刑集 第14巻7号953頁
参照法条
刑法130条,刑訴施行法2条,刑訴施行法3条の2,刑訴法411条5号,旧刑訴法281条,旧刑訴法285条,旧刑訴法363条4号,旧刑訴法448条,旧刑訴法455条
論点155第363条刑事訴訟法

公訴時効完成により刑訴法第四一一条により免訴を言渡した一事例

裁判要旨贈賄の事実については、原判決の言渡後、本件を当裁判所が受理した昭和三一年六月二二日までに既に三年以上経過し、しかも、その間公訴時効の中断の事実のないことは記録上明らかであるので、右の罪に対する公訴の時効が完成したものであるから、共に被告人に免訴の言渡をすべきであつて、この点において原判決は破棄を免れない。よつて、刑訴施行法二条、三条の二、刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉により、原判決破棄の上、旧刑訴四四八条〈再審の請求が理由のあるときは、再審開始の決定をしなければならない。〉、四五五条〈非常上告をするには、その理由を記載した申立書を最高裁判所に差し出さなければならない。〉、三六三条三号〈上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。〉、四号により被告人を免訴すべきものとする。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年9月14日 昭和31(れ)8
登載
集刑 第114号695頁
参照法条
刑法198条,刑訴法411条5号,旧刑訴法281条5号,旧刑訴法363条4号
論点156第363条刑事訴訟法

刑訴応急措置法第一七条による再上告事件と大赦

裁判要旨刑訴応急措置法一七条による高裁が上告審としてした判決に対する再上告事件においては、再上告により判決の確定を妨げる効力を有しないものであること同条第二項の規定により明白であり、従つて、原判決は、その性質上判決においてした法律、命令等が憲法に適合するかしないかについての判断を除くのほか被告事件に対しては確定力を生じた確定判決であつて、たゞ当該判断に対する再上告がその理由があり、しかも、判決に影響を及ぼす場合に限り、その確定力が破棄され、審級に従い更らに審判する状態に復帰せしめられるに過ぎないものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年2月19日 昭和27(れ)81
登載
刑集 第7巻2号299頁
参照法条
臨時物資需給調整法1条,臨時物資需給調整法4条,繊維製品配給消費統制規則9条,刑訴応急措置法17条,昭和27年政令117号,大赦令1条88号,旧刑訴法363条3号
論点157第363条刑事訴訟法

刑訴応急措置法第一七条による再上告事件と大赦

裁判要旨生糸等ノ数量報告等ニ関スル件(昭和二〇年商工省令農林省令第一号)違反被告事件の上告審判決に対し、刑訴応急措置法第一七条によりさらに上告を申し立て該事件が最高裁判所に係属中右被告事件について大赦があつた場合には、これを理由に免訴の判決をすべきものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月4日 昭和23(れ)1962
登載
刑集 第6巻11号1288頁
参照法条
生糸等ノ数量報告等ニ関スル件(昭和20年商工省令農林省令1号),刑訴応急措置法17条,昭和27年政令117号大赦令1条55号,旧刑訴法363条3号
論点158第363条刑事訴訟法

憲法第三九条前段の「既に無罪とされた行為については刑事上の責任を問われない」の法意

裁判要旨また憲法第三九条前段に「既に無罪とされた行為については刑事上の責任を問われない」というのは、所論のように行為時の法令によれば有罪であつたものが裁判時の法令に従えば無罪である行為につき刑事上の責任を問われないという趣旨ではなく、既に無罪の裁判のあつた行為については再び刑事上の責任を問われないという趣旨であるから、原判決はこの規定に抵触するところはない。論旨は、憲法第三九条前段後半を右のように解するときは、行為時の法令によれば有罪であつた行為がその後、法令の変更によつて裁判時には無罪とされる場合につき憲法の規定を欠くに至ると非難するけれども、この場合については憲法は自ら規定することなく、これを刑法、刑訴法等の法令の規定するところに委ねているものと解されるのであるから、右の非難はあたらない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和26年5月30日 昭和23(れ)1961
登載
刑集 第5巻6号1205頁
参照法条
憲法39条,旧刑訴法363条2号
論点159第363条刑事訴訟法

繊維製品の指定に関する告示の廃止および衣料品配給規則の一部施行停止と従前の行為の可罰性

裁判要旨繊維製品の指定に関する商工省告示の廃止および衣料品配給規則の一部施行停止は、その廃止または施行停止以前に行われた違反行為の可罰性に何らの影響を与えるものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年4月10日 昭和25(れ)1781
登載
刑集 第5巻5号835頁
参照法条
臨時物資需給調整法附則2項,旧刑訴法363条
論点160第363条刑事訴訟法

衣料品配給規則第三条(昭和二二年商工省第二五号)昭和二二年商工省告示第五八号の廃止と刑の廃止

裁判要旨被告人の所為に対し適用した衣料品配給規則第三条(昭和二二年商工省令第二五号)昭和二二年商工省告示第五八号は、臨時物資需給調整法に基いて制定せられたものであり、同法が所謂限時法の性格を有することは、同法第一条及び同法附則三項の規定によつて明確でわるから、右告示の廃止は旧刑訴第三六三条二号〈上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。〉にいわゆる「犯罪後ノ法令ニ因リ刑ノ廃止アリタルトキ」に該当しないものと解するを正当とすることは当裁判所昭和二三年(れ)第八〇〇号同二五年一〇月一一日言渡した大法廷判決(判例集四巻一〇号一九七二頁以下)の趣旨に照らし明らかである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年3月23日 昭和24(れ)2240
登載
刑集 第5巻4号622頁
参照法条
臨時物資需給調整法1条,衣料品配給規則3条(昭和22・商工省令25号)昭和22年商工省告示58号,旧刑訴法363条2号
論点161第363条刑事訴訟法

昭和二四年一二月一日農林省令第一一五号による食糧管理法施行規則の一部改正との刑の廃止

裁判要旨しかし、主要食糧を決定の除外理由なくして輸送することを禁止する法規範を定めた食糧管理法施行規則第二三条の七(その後二九条〈前二条の規定により被告人を代表し、又は代理する者がないときは、検察官の請求により又は職権で、特別代理人を選任しなければな…〉)の規定は、本件犯行の昭和二二年八月二九日及び同月三〇日当時においては勿論、現在でも尚厳として存在する。ただ本件犯罪成立後昭和二四年一二月一日公布農林省令一一五号によつて食糧管理法施行規則第二九条の一部は改正せられ、本件犯罪の目的物と同種類の馬齢薯が主要食糧から除かれ、従つて馬齢薯については同年同月同日以後輸送しても差支えなくなつただけである。それは例えば通貨偽造罪成立後当該種類の通貨だけが法令によりその通貨としての強制通用力を失い、又は収賄罪成立後当該公務員の官職だけが法令により廃止されても犯罪の成立に影響のないのと同じである。されば、右省令は、既に成立した主要食糧輸送禁止違反の犯罪に対する刑罰を廃止したものとはいえないから、所論は採用できない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月22日 昭和24(れ)2471
登載
刑集 第5巻4号613頁
参照法条
食糧管理法施行規則(昭和24・12・1農林省令115号により一部改正)29条,旧刑訴法363条2号
論点162第363条刑事訴訟法

昭和二一年一〇月二四日物価庁告示第一三七号(度量器、計算器等)の廃止と刑の廃止

裁判要旨昭和二一年一〇月二四日物価庁告示第一三七号が昭和二四年八月一五日限り廃止されたことは所論のとおりであるが、物価統制令第三条違反の行為があつた後に同令に基く統制額指定の告示が廃止されても旧刑訴第三六三条〈上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。〉にいわゆる「犯罪後ノ法令ニ依リ刑ノ廃止アリタルトキ」に当らないことは当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第八〇〇号第二五年一〇月一一日大法廷判決参照)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年2月9日 昭和25(れ)1474
登載
集刑 第40号419頁
参照法条
旧刑訴法363条3号,昭和25年10月24日物価庁告示137号
論点163第363条刑事訴訟法

一 昭和二二年四月四日物価庁許可第一六号による青表の例外許可価格制定の趣旨と正規のルート以外の取引に対する右価格適用の有無
二 青表の販売価格の統制額に関する告示の廃止と刑の廃止

裁判要旨一 昭和二二年四月四日物価庁許可第一六号による青表の例外許可価格は同庁長官が物価統制令第三条第一項但書に基づき、A協会及びB農業会の申請を容れ、青表のその当時における需給関係と取引の実情とに鑑み、品物を正規のルートに乗せる為め特定の取引に限つてこれを適用する目的を以つて、真に例外的に許可したものと解すべきである。然るに、本件は正規ルートを経ない闇取引であつて、而も被告人は右協会や農業会とは何等の関係がなく、又本件取引の当事者において別に右規定による許可を受けた事実も認められないから、これに、前記のような特殊の見地から例外的に許可せられた価格の適用があるとの所論には、たやすく賛同することができない。
二 本件犯行後、青表の販売価格の統制額が、物価庁告示の数次の改廃により幾度か改正せられた後、昭和二五年一月一〇日同庁告示第七四号を以つて遂に廃止せられることに至つたことは所論の通りである。しかし、このように、統制額を指定した告示が廃止せられたからとて、これを以つて旧刑訴法第三六三条第二号所定の場合ということができないことは、さきに当裁判所が判例として示した通りであつて(昭和二三年(れ)第八〇〇号、同二五年一〇月一一日大法廷判決参照)論旨は採用することができない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年2月2日 昭和25(れ)972
登載
集刑 第40号103頁
参照法条
物価統制令3条1項,昭和21年9月2日物価庁告示43号,昭和22年4月4日物価庁許可16号,旧刑訴法363条,昭和25年1月10日物価庁告示74号
論点164第363条刑事訴訟法

恐喝罪として起訴された事実を暴力行為等処罰に関する法律違反と認定する場合と公訴の時効

裁判要旨検事が犯行後三年五月を経過したときに恐喝罪として公訴を提起した公訴事実を、裁判所が暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉に該当する所為と認めるときは、被告人に対し公訴の時効が完成したものとして免訴の言渡をなすべきものである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年12月25日 昭和26(れ)1984
登載
刑集 第5巻13号2623頁
参照法条
旧刑訴法281条,旧刑訴法363条,刑法249条,暴力行為等処罰に関する法律1条
論点165第363条刑事訴訟法

一 犯意の成立と違法の認識
二 物価統制令第三条第一項違反の罪につき犯罪後統制額が取引価格より高価に改正指定された場合と刑の廃止

裁判要旨一 原判決は、弁護人の「当時被告人において進駐軍の許可があり違法でないものと信じていたものであるから、犯意を欠き罪とならないものである旨」の主張に対し、所論のごとく当時被告人は判示超過価格による精米の売買につき違法の認識を有しなかつたと断じながら右は通常人としての注意を著しく欠き判示超過価格による精米の売買が法律上許容されたものであると信じたことにつき明らかに過失があるものというべきであるから、被告人に犯意がなかつたものとして物価統制令違反の罪責を否定することは到底できないと説示したことは所論のとおりである。
しかし、犯意があるとするためには犯罪構成要件に該当する具体的事実を認識すれば足り、その行為の違法を認識することを要しないものである(昭和二四年(れ)第二二七六号同二五年一一月二八日第三小法廷判決刑事判例集四巻一二号二四六三頁、昭和二五年(れ)第一三三九号同年一二月二六日同小法廷判決同判例集二六二七頁以下参照)。
二 しかし、物価統制令四条に基き指定された統制額違反の犯罪については、行為当時の告示によるべきものである。従つて、犯罪当時の統制額を指定した告示がその後屡々改正され、行為当時の売渡価格よりも高価に指定されるに至つても、既に成立した犯罪の刑罰を廃止するものではないから、所論は採用し難い。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年11月15日 昭和24(れ)1694
登載
刑集 第5巻12号2354頁
参照法条
刑法38条,物価統制令3条1項,旧刑訴法363条2号
論点166第363条刑事訴訟法

民法改正前における分家同意書の偽造、行使罪の処罰可能と憲法第一一条

裁判要旨一 原判決の確定したところによれば、被告人は昭和一九年六月末頃私文書である戸主Aの分家同意書を偽造、行使したというのである。そして、既に成立したかかる私文書偽造、行使罪を免訴とすべき憲法規定は存しないのであるから、所論は採用し難い。(弁護人沖田誠の上告趣意書)
二 本件は封建的旧民法の戸主権を極端に認容した非民主的思想に重点を置いた判決であつて、現在家族制度は廃止され、戸主権はないのであるから、仮りに戸主の同意書を無断で作つて分家したとしても何人の権益をも侵さないのは勿論の事で、かくの如き事実を以て被告人を有罪と断定するは、憲法に保証された被告人の基本的人権を侵害する不当の判決と云わなければならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年10月4日 昭和26(れ)1044
登載
集刑 第54号135頁
参照法条
刑法159条,旧刑訴法363条2号,旧刑訴法161条,憲法11条
論点167第363条刑事訴訟法

一 物価統制令は限特法である
二 統制額を指定した行政官庁の告示の廃止は「刑の廃止」となるか
三 原審訴訟手続に違法があるとの事由は適法な飛躍上の告理由となるか

裁判要旨一 物価統制令は、その第一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉に規定するごとく「終戦後ノ事態ニ対処シ物価ノ安定確保シ以テ社会経済秩序ヲ維持シ国民生活ノ安定ヲ図ルヲ以テ目的トス」るものであつて、終戦後という一時的異常な時態に対処するための法規であつて、かかる異常な社会状勢が終熄して経済事態が常態に復したときは、早晩廃止さるべき運命にある法規であることは、同条の規定するところによつて明らかである。即ち、いわゆる限時法性格を具有する法規である。
二 物価統制令自体の問題でなく、これにもとずく行政官庁の告示の廃止の場合のごときは、ある特定の品目に対する統制額廃止の結果として、統制違反の行為が必然的に罪とならなくなるというに過ぎないのであつて、かかる法規違反の行為を以て自今これを罪とせず、若しくは処罰せずとの法的確信にもとずいて、「刑ノ廃止」が行われるのではないのである。旧事情下においては反社会性を有つものとせられたその違反行為の可罰性に関する価値判断は告示廃止の後においても依然として異るところはないのである。
三 本件は旧刑訴法第四一六条第一号によつて、第一審判決に対し、上告の申立(いわゆる飛躍上告)をしたものであるが、同条同号によれば「被告事件ノ事実ニ付法令ヲ適用セズ又ハ不当ニ法令ヲ適用シタルコトヲ理由トスルトキ」すなわち原判決の事実の確定について争わず、その確定された事実に対する擬律上の違法を主張するときに限り、上告をすることができるのである。しかるに、論旨は原判決は、公判において為した証拠調の請求に対して決定をしなかつた違法があるというのであつて、畢竟、原判決の事実確定の手続に関して違法があると主張するに帰し原判決によつて確定された事実に対する法規適用上の違法を主張するものでない、から飛躍上告適法の理由とすることはできない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和25年10月11日 昭和23(れ)800
登載
刑集 第4巻10号1972頁
参照法条
物価統制令1条(昭22・4・勅令133号改正前のもの),旧刑訴法363条2号,旧刑訴法416条1号
論点168第363条刑事訴訟法

1 旧刑訴法適用事件につき再審が開始された場合,その対象となった判決の確定後に刑の廃止又は大赦があったときは,再審開始後の審判手続において免訴に関する規定の適用を排除して実体判決をすることができるか
2 旧刑訴法適用事件についての再審開始後の審判手続において,被告人は免訴判決に対し無罪を主張して上訴することができるか
3 旧刑訴法適用事件について再審が開始され,第1審判決及び控訴審判決が言い渡されて更に上告に及んだ後に,当該再審の請求人が死亡しても,再審の手続が終了しない場合

裁判要旨1 旧刑訴法適用事件について再審が開始された場合,その対象となった判決の確定後に刑の廃止又は大赦があったときは,再審開始後の審判手続においても,同法363条2号,3号の適用を排除して実体判決をすることはできず,免訴判決が言い渡されるべきである。
2 旧刑訴法適用事件についての再審開始後の審判手続においても,被告人は免訴判決に対し無罪を主張して上訴することはできない。
3 旧刑訴法適用事件について再審が開始されて第1審判決及び控訴審判決が言い渡され,更に上告に及んだ後に,当該再審の請求人が死亡しても,同請求人が既に上告審の弁護人を選任しており,かつ,同弁護人が引き続き弁護活動を継続する意思を有する限り,再審の手続は終了しない。
(1,2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年3月14日 平成19(れ)1
登載
刑集 第62巻3号185頁
参照法条
(1,2につき)旧刑訴法363条2号,旧刑訴法363条3号 (1,3につき)旧刑訴法511条 (1につき)旧刑訴法485条6号 (2につき)旧刑訴法400条
論点169第364条刑事訴訟法

上訴権回復請求及びこれと同時にされた特別抗告の申立を併せて棄却した地方裁判所の各決定に対する特別抗告の適否

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年6月8日 昭和62(し)51
登載
集刑 第246号33頁
参照法条
刑訴法364条,刑訴法375条,刑訴法414条,刑訴法433条
論点170第364条刑事訴訟法

強姦罪について告訴がない場合に同罪の手段たる共同暴行のみを処罰することができるか

裁判要旨数人が婦女に対し共同して暴行を加え姦淫した事実が認められる場合に、強姦罪についての告訴が適法に取消されても同罪の手段たる共同暴行を暴力行為等処罰に関する法律第一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉違反として処罰することは違法ではない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和28年12月16日 昭和27(さ)1
登載
刑集 第7巻12号2550頁
参照法条
暴力行為等処罰に関する法律1条,刑法177条,刑法180条,旧刑訴法258条,旧刑訴法267条,旧刑訴法364条6号,旧刑訴法516条
論点171第364条刑事訴訟法

強姦罪について告訴が適法に取消された場合に、同罪の手段たる共同暴行のみを処罰し得るか

裁判要旨数人が婦女に対し共同して暴行を加え姦淫した事実が認められるが、強姦罪について告訴が適法に取り消された場合、同罪の手段たる共同暴行を「暴力行為等処罰に関する法律」第一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉違反として処罰することは違法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年7月11日 昭和26(れ)1732
登載
刑集 第6巻7号896頁
参照法条
暴力行為等処罰に関する法律1条,刑法177条,刑法180条,刑法181条,旧刑訴法258条,旧刑訴法267条,旧刑訴法364条5号
論点172第364条刑事訴訟法

一 賍物である連合国占領軍の財産をその情を知りながら買い受けて所持する場合の罪責
二 追公判請求書と題する書面の提出があつても別個の控訴提起と認められない場合

裁判要旨一 昭和二二年政令第一六五号第一条第一項〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉に違反して連合国占領軍の財産を買い受けこれを所持する場合に、その財産が賍物であり、その情を知りながらこれを買い受けたのであれば、右政令違反の罪と賍物故買罪とが成立し、刑法第五四条第一項前段にいう一個の行為で数個の罪名に触れる場合に該当する。
二 検察官が、前記昭和二二年政令第一六五号第一条第一項に違反する連合国占領軍財産の所持について控訴を提起したのち、右所持を始めるに至つたその財産の買受行為について、それが賍物の故買であるとして追公判請求書と題する書面を提出した場合には、これによつてさらに別個の公訴を提起したものではなく、前の公判請求書の内容を補充する趣旨でこれを提出したにすぎないものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年2月20日 昭和25(れ)1126
登載
刑集 第5巻3号403頁
参照法条
昭和22年政令165号1条1項,昭和22年政令3条,昭和22年政令165号3条,刑法256条2項,刑法54条1項,旧刑訴法364条4号
論点173第364条刑事訴訟法

公訴提起についての検察官の意図と公訴の適否

裁判要旨公訴の提起について検察官に労働者の争議権を蹂躪する意図があつたとしても、公訴提起の手続が適法に行われている以上、その公訴を不敵法として排斥することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和24年12月10日 昭和24(れ)1819
登載
刑集 第3巻12号1933頁
参照法条
旧刑訴法364条6号
論点174第365条刑事訴訟法

第二審判決前に既に被告人が死亡していたことを主張して非常上告をすることができるか

裁判要旨被告人の生存していることを前提としてなされた第二審判決に対し、その判決前に被告人が既に死亡していたことを主張し、これを前提として非常上告をすることは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年7月18日 昭和25(さ)37
登載
刑集 第7巻7号1541頁
参照法条
旧刑訴法516条(現行刑訴法454条),旧刑訴法365条1項2号(現行刑訴法339条1項3号)
論点175第366条刑事訴訟法

刑訴法九六条三項〈裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定で、保釈又は勾留の執行停止を取り消す…〉による保釈保証金没取請求事件につき在監者が特別抗告を申し立てる場合と同法三六六条一項の準用の有無

裁判要旨在監者の上訴申立に関する刑訴法三六六条一項は、同法九六条三項による保釈保証金没取請求事件につき在監者が特別抗告を申し立てる場合に準用される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年9月22日 昭和56(し)86
登載
刑集 第35巻6号675頁
参照法条
刑訴法96条3項,刑訴法366条1項,刑訴法433条
論点176第366条刑事訴訟法

付審判請求棄却決定に対する特別抗告が不適法とされた事例(刑訴法三六六条一項〈刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上…〉の準用なし)

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和56年4月28日 昭和56(し)52
登載
集刑 第221号565頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法433条,刑訴法434条
論点177第366条刑事訴訟法

在監者が再審請求棄却決定に対し異議申立書を差し出す場合と刑訴法三六六条一項の準用の有無

裁判要旨在監者の上訴申立に関する刑訴法三六六条一項は、在監者が再審請求棄却決定に対し異議申立書を差し出す場合に準用される。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年5月1日 昭和51(し)130
登載
刑集 第33巻4号271頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法428条,刑訴法444条,刑訴法450条
論点178第366条刑事訴訟法

再審請求事件の特別抗告申立と刑訴法三六六条一項の準用
刑訴規則二八三条の合憲性

裁判要旨刑訴法三六六条一項〈刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上…〉は再審請求事件の特別抗告の申立に準用される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和50年3月20日 昭和50(し)1
登載
集刑 第195号639頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法444条
論点179第366条刑事訴訟法

在監者による刑事補償請求事件の特別抗告申立と刑訴法三六六条一項の準用の有無

裁判要旨在監者の上訴申立に関する刑訴法三六六条一項は、刑事補償請求事件の特別抗告申立には準用ないし類推適用されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年7月18日 昭和49(し)69
登載
刑集 第28巻5号257頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法433条,刑事補償法19条2項,刑事補償法23条
論点180第366条刑事訴訟法

付審判請求事件の特別抗告申立と刑訴法三六六条一項の準用

裁判要旨付審判請求事件の特別抗告申立には刑訴法三六六条一項は準用ないし類推適用されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年3月20日 昭和49(し)20
登載
集刑 第191号481頁
参照法条
刑訴法262条1項,刑訴法366条1項,刑訴法433条2項
論点181第366条刑事訴訟法

付審判請求事件における特別抗告申立に刑訴法三六六条一項が準用されるか

裁判要旨在監者の上訴申立に関する刑訴法三六六条一項は、付審判請求事件の特別抗告申立には準用ないし類推適用されない。
(注)同旨の第一小法廷決定がある(昭和四三年(し)第八五号、同年一一月一三日決定、裁判集一六九号三六七頁)。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年9月4日 昭和45(し)58
登載
集刑 第177号1121頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法262条
論点182第366条刑事訴訟法

刑訴法第三六六条第一項〈刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上…〉はいわゆる審判請求事件についてされた抗告棄却の決定に対し在監者が特別抗告申立書を差し出す場合に準用されるか

裁判要旨在監者の上訴申立に関する刑訴法第三六六条第一項は、いわゆる審判請求事件についてされた抗告棄却の決定に対し、右請求をした在監者が特別抗告の申立書を差し出す場合には準用ないし類推適用されないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年11月13日 昭和43(し)85
登載
集刑 第169号367頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法262条1項,刑訴法433条
論点183第366条刑事訴訟法

刑訴法第三六六条第一項〈刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上…〉はいわゆる審判請求事件についてされた抗告棄却の決定に対し在監者が特別抗告申立書を差し出す場合に準用されるか

裁判要旨在監者の上訴申立に関する刑訴法第三六六条第一項は、いわゆる審判請求事件についてされた抗告棄却の決定に対し、右請求をした在監者が特別抗告の申立書を差し出す場合には準用ないし類推適用されないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年10月31日 昭和43(し)71
登載
刑集 第22巻10号955頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法262条1項,刑訴法433条
論点184第366条刑事訴訟法

刑訴法第三六六条第一項〈刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上…〉は勾留中の被告人が判決訂正申立書を差し出す場合に準用されるか

裁判要旨在監者の上訴申立に関する刑訴法第三六六条第一項は、勾留中の被告人が、判決訂正申立書を差し出す場合に準用される。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年4月27日 昭和41(み)8
登載
刑集 第20巻4号332頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法415条,刑訴規則267条1項
論点185第366条刑事訴訟法

刑訴第三六六条第一項〈刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上…〉は、在監者が控訴趣意書を差し出す場合に準用されるか

裁判要旨上告趣意第一点は所論控訴趣意書(上申書と題するもの)は法廷期間経過後の提出にかかるものであるから、この場合刑訴規則二三八条を適用すべき場合でない限り、原審が同趣意書に対し判断を与えなかつたことは当然である。所論引用の判例は適法期間内に提出された控訴趣意書に関するものであつて、本件の場合に当てはまるものではなく、また所論刑訴三六六条〈刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上…〉は所論もいうとおり、上訴申立に関する規定であつて控訴趣意書に準用あるものとは解されないから、所論はすべて採ることができない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年9月11日 昭和29(あ)2120
登載
刑集 第8巻9号1490頁
参照法条
刑訴法366条,刑訴法367条,刑訴法376条,刑訴規則236条,刑訴規則238条
論点186第366条刑事訴訟法

一 在監者の控訴取下の効力発生時期
二 控訴取下後の控訴審判決の効力
三 控訴取下後の控訴審判決と非常上告

裁判要旨一 監獄にいる被告人が監獄の長に対し控訴取下申立書を差し出したときは、控訴裁判所がその申立のあつたことを知ると否とにかかわらず、ただちに控訴取下の効力を生じる。
二 控訴取下後の控訴審判決は当然無効であつてその内容に副う効力を生じない。
三 控訴取下後の控訴審判決に対する非常上告は許されない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和27年11月19日 昭和26(さ)1
登載
刑集 第6巻10号1217頁
参照法条
刑訴法367条,刑訴法366条1項,刑訴法454条,刑訴規則229条,刑訴規則227条,刑訴規則228条
論点187第366条刑事訴訟法

刑事施設にいる被告人から交付された上訴取下書を刑事施設職員が受領した場合と刑訴法367条の準用する同法366条1項にいう「刑事施設の長又はその代理者に差し出したとき」

裁判要旨刑事施設にいる被告人が,被収容者からの書面の受領を担当する刑事施設職員に対し,上訴取下書を交付し,同職員がこれを受領したときは,刑訴法367条〈前条の規定は、刑事施設にいる被告人が上訴の放棄若しくは取下げ又は上訴権回復の請求をする場合にこれを準用する。〉の準用する同法366条1項にいう「刑事施設の長又はその代理者に差し出したとき」に当たる。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成26年11月28日 平成26(し)538
登載
刑集 第68巻9号1069頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法367条,刑訴規則227条,刑訴規則228条,刑訴規則229条
論点188第366条刑事訴訟法

刑の執行猶予言渡しの取消請求事件について在監者のした特別抗告申立てと刑訴法366条1項の類推適用の有無

裁判要旨在監者の上訴申立てに関する刑訴法366条1項は,刑の執行猶予言渡しの取消請求事件についての特別抗告申立てに類推適用される。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成16年10月8日 平成16(し)214
登載
刑集 第58巻7号641頁
参照法条
刑訴法349条,刑訴法349条の2,刑訴法366条1項,刑訴法433条
論点189第366条刑事訴訟法

刑訴法366条1項〈刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上…〉の付審判請求への類推適用の可否(消極)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年10月1日 平成16(し)208
登載
集刑 第286号349頁
参照法条
刑訴法262条2項,刑訴法366条1項
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

刑事訴訟法 第351条 詳細ページ
第三百五十一条検察官又は被告人は、上訴をすることができる。
2第二百六十六条第二号の規定により裁判所の審判に付された事件と他の事件とが併合して審判され、一個の裁判があつた場合には、第二百六十八条第二項の規定により検察官の職務を行う弁護士及び当該他の事件の検察官は、その裁判に対し各々独立して上訴をすることができる。
刑事訴訟法 第352条 詳細ページ
第三百五十二条検察官又は被告人以外の者で決定を受けたものは、抗告をすることができる。
刑事訴訟法 第353条 詳細ページ
第三百五十三条被告人の法定代理人又は保佐人は、被告人のため上訴をすることができる。
刑事訴訟法 第354条 詳細ページ
第三百五十四条勾留に対しては、勾留の理由の開示があつたときは、その開示の請求をした者も、被告人のため上訴をすることができる。その上訴を棄却する決定に対しても、同様である。
刑事訴訟法 第355条 詳細ページ
第三百五十五条原審における代理人又は弁護人は、被告人のため上訴をすることができる。
刑事訴訟法 第356条 詳細ページ
第三百五十六条前三条の上訴は、被告人の明示した意思に反してこれをすることができない。
刑事訴訟法 第357条 詳細ページ
第三百五十七条上訴は、裁判の一部に対してこれをすることができる。部分を限らないで上訴をしたときは、裁判の全部に対してしたものとみなす。
刑事訴訟法 第358条 詳細ページ
第三百五十八条上訴の提起期間は、裁判が告知された日から進行する。
刑事訴訟法 第359条 詳細ページ
第三百五十九条検察官、被告人又は第三百五十二条に規定する者は、上訴の放棄又は取下をすることができる。
刑事訴訟法 第360条 詳細ページ
第三百六十条第三百五十三条又は第三百五十四条に規定する者は、書面による被告人の同意を得て、上訴の放棄又は取下をすることができる。
刑事訴訟法 第360_2条 詳細ページ
第三百六十条の二死刑又は無期拘禁刑に処する判決に対する上訴は、前二条の規定にかかわらず、これを放棄することができない。
刑事訴訟法 第360_3条 詳細ページ
第三百六十条の三上訴放棄の申立は、書面でこれをしなければならない。
刑事訴訟法 第361条 詳細ページ
第三百六十一条上訴の放棄又は取下をした者は、その事件について更に上訴をすることができない。上訴の放棄又は取下に同意をした被告人も、同様である。
刑事訴訟法 第362条 詳細ページ
第三百六十二条第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつて上訴の提起期間内に上訴をすることができなかつたときは、原裁判所に上訴権回復の請求をすることができる。
刑事訴訟法 第363条 詳細ページ
第三百六十三条上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。
2上訴権回復の請求をする者は、その請求と同時に上訴の申立をしなければならない。
刑事訴訟法 第364条 詳細ページ
第三百六十四条上訴権回復の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。
刑事訴訟法 第365条 詳細ページ
第三百六十五条上訴権回復の請求があつたときは、原裁判所は、前条の決定をするまで裁判の執行を停止する決定をすることができる。この場合には、被告人に対し勾留状を発することができる。
刑事訴訟法 第366条 詳細ページ
第三百六十六条刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上訴をしたものとみなす。
2被告人が自ら申立書を作ることができないときは、刑事施設の長又はその代理者は、これを代書し、又は所属の職員にこれをさせなければならない。
刑事訴訟法 第367条 詳細ページ
第三百六十七条前条の規定は、刑事施設にいる被告人が上訴の放棄若しくは取下げ又は上訴権回復の請求をする場合にこれを準用する。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。