刑事訴訟法 / テーマ別まとめ

上訴/控訴

控訴の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

控訴は、地方裁判所又は簡易裁判所がした第一審判決に対して不服を申し立てる手続です。提起期間は14日で、申立書は第一審裁判所に提出し、その後の控訴趣意書には控訴理由ごとに定められた保証書・疎明資料・事実の援用などを添付する必要があります。方式違反や理由不備がある場合は決定で棄却され、控訴審では弁護人は弁護士に限られ、被告人の出頭も原則不要とされています。

控訴
控訴理由条文必要な添付・援用
裁判所構成違反・除斥裁判官関与・非公開審理377条保証書(検察官又は弁護人)
管轄誤り・公訴受理棄却誤り・理由不備等378条記録上の事実を援用
その他の訴訟手続の法令違反379条記録上の事実を援用
法令適用の誤り380条誤りと影響を明示
刑の量定不当381条記録上の事実を援用
事実誤認382条記録上の事実を援用
再審事由・刑の廃止変更・大赦383条疎明資料
  • 384条:控訴の理由は377条~382条及び383条に定める事由に限られる
  • 385条:方式違反・控訴権消滅後の申立が明らかなときは控訴裁判所が決定で棄却し、428条2項の異議申立(即時抗告の規定も準用)ができる
  • 386条:趣意書の未提出・方式違反・必要書類不足、理由の不該当が明らかなときも決定で棄却され、385条2項を準用
  • 382条の2:やむを得ない事由で第一審弁論終結前に請求できなかった証拠による事実や、弁論終結後判決前に生じた事実も、疎明資料を添えて援用できる
  • 375条:控訴権消滅後の申立が明らかなときは第一審裁判所が決定で棄却し、即時抗告ができる
  • 390条:被告人の出頭は原則不要だが、50万円(当分の間5万円)以下の罰金・科料事件以外で出頭が権利保護上重要なときは出頭を命じられる
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控訴

控訴について、条文は何を定めているか。

第372条控訴できるのは地裁・簡裁の第一審判決1項判例 4件
  • 地方裁判所又は簡易裁判所がした第一審判決が控訴の対象
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第373条控訴の提起期間は14日1項判例 7件
第374条申立書は第一審裁判所に提出する1項判例 11件
  • 控訴するには申立書を第一審裁判所に差し出す
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第375条期間経過後の明白な申立は第一審が棄却1項判例 8件
  • 控訴権消滅後の申立が明らかなときは第一審裁判所が決定で棄却
  • この決定には即時抗告ができる
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第376条趣意書は規則の期間内に控訴裁判所へ提出2項判例 29件
  • 控訴趣意書は裁判所規則で定める期間内に控訴裁判所に提出
  • 趣意書には必要な疎明資料や保証書を添付
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第377条裁判所構成等の違反は保証書が必要1項・3号判例 6件
  • 判決裁判所の構成違反・除斥裁判官の関与・非公開審理を理由とする場合
  • 事由を証明できる旨の検察官又は弁護人の保証書を添付
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第378条管轄誤り・理由不備等は事実を援用1項・4号判例 30件
  • 管轄の誤り、公訴受理・棄却の誤り、審判外判決等を理由とする場合
  • 判決の理由不備・理由くいちがいも含む
  • 訴訟記録・取調べ済み証拠に現れた事実を援用
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第379条その他の訴訟手続の法令違反も対象1項判例 23件
  • 377・378条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われ…〉以外の訴訟手続の法令違反で判決への影響が明らかな場合
  • 記録・証拠上の事実を援用して信じるに足りることを示す
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第380条法令適用の誤りは内容と影響を明示1項判例 19件
  • 法令適用の誤りが判決に影響することが明らかな場合
  • 誤りの内容とその影響を趣意書に示す
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第381条量刑不当も控訴理由になる1項判例 25件
  • 刑の量定が不当なことを理由とする場合
  • 記録・証拠上の事実を援用
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第382条事実誤認も控訴理由になる1項判例 22件
  • 事実誤認が判決に影響することが明らかな場合
  • 記録・証拠上の事実を援用
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第382_2条やむを得ない事情の新証拠も援用可3項判例なし
  • 第一審弁論終結前にやむを得ず請求できなかった証拠の事実も援用可
  • 弁論終結後判決前に生じた事実も同様に援用可
  • 援用には疎明資料、新証拠の場合は請求できなかった事情の疎明資料も添付
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第383条再審事由・大赦なども控訴理由1項・2号判例 4件
  • 再審請求ができる場合にあたる事由がある場合
  • 判決後の刑の廃止・変更又は大赦があった場合
  • 事由を疎明する資料を添付
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第384条控訴理由は377条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨…〉~383条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることを疎明する資料を添附しなければな…〉に限定1項判例 1件
  • 控訴の申立は377条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨…〉から382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉及び383条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることを疎明する資料を添附しなければな…〉の事由に限られる
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第385条方式違反等が明らかなら控訴裁判所が却下2項判例 37件
  • 申立が法令上の方式違反又は控訴権消滅後と明らかなら控訴裁判所が決定で棄却
  • この決定には428条2項〈高等裁判所の決定に対しては、抗告をすることはできない。〉の異議申立ができ、即時抗告の規定も準用
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第386条趣意書不提出等も決定で棄却2項・3号判例 41件
  • 376条1項〈控訴申立人は、裁判所の規則で定める期間内に控訴趣意書を控訴裁判所に差し出さなければならない。〉の期間内に趣意書を出さないとき棄却
  • 趣意書が方式違反又は必要書類不足のとき棄却
  • 理由が377条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨…〉~383条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることを疎明する資料を添附しなければな…〉に明らかに該当しないとき棄却
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第387条控訴審の弁護人は弁護士に限る1項判例 3件
  • 控訴審では弁護士以外を弁護人に選任できない
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第388条被告人のための弁論は弁護人のみ1項判例 17件
  • 控訴審での被告人のための弁論は弁護人でなければできない
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第389条検察官・弁護人は趣意書に基づき弁論1項判例 24件
  • 公判期日の弁論は控訴趣意書に基づいて行う
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第390条被告人の出頭は原則不要1項判例 16件
  • 控訴審の公判期日に被告人は出頭不要
  • 50万円(当分の間5万円)以下の罰金・科料事件以外で出頭が権利保護上重要なら出頭命令可
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第372条刑事訴訟法

控訴趣意書を控訴申立をした検察庁の検察官が作成しこれを控訴裁判所に対応する検察庁の検察官が提出することの適否

裁判要旨控訴趣意書を控訴申立をした検察庁の検察官が作成し、これを控訴裁判所に対応する検察庁の検察官が提出することは、訴訟法に違反しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年7月4日 昭和42(あ)1123
登載
集刑 第168号125頁
参照法条
刑訴法351条1項,刑訴法372条,刑訴法376条1項,刑訴規則236条1項,検察庁法5条
論点2第372条刑事訴訟法

第一審判決に対し検査官が控訴を申し立てた場合の控訴趣意書の作成提出者。

裁判要旨第一審判決に対し、検察官が控訴を申し立てた場合、その検察官が控訴趣意書を作成し、控訴裁判所に対応する検察庁の検察官がこれを同裁判所に提出することは訴訟法に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年7月1日 昭和33(あ)424
登載
集刑 第126号633頁
参照法条
刑訴法351条1項,刑訴法372条,刑訴法376条1項,刑訴規則236条1項
論点3第372条刑事訴訟法

控訴申立があつたものと認められない一事例。−控訴申立期間内に弁護人選任届のみ提出された場合−

裁判要旨第一審の有罪判決に対し被告人弁護人から適式の控訴申立書の提出がなく、ただ控訴申立期間内に控訴審における弁護人選任届が裁判所に提出されただけでは、控訴申立があつたものということができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年7月30日 昭和32(し)29
登載
集刑 第119号1157頁
参照法条
刑訴法372条,刑訴法373条,刑訴法374条
論点4第372条刑事訴訟法

刑訴第四一一条第四号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。〉にいわゆる「再審の請求をすることができる場合にあたる事由がある」との主張と上告趣意書提出の時期

裁判要旨再審事由があるとさえ主張すれば上告趣意書提出期間後でも有効に上告趣意書が提出出来るなどという論旨は全く理由がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年1月29日 昭和27(み)3
登載
集刑 第59号455頁
参照法条
刑訴法411条4号,刑訴法414条,刑訴法372条,刑訴規則252条
論点5第373条刑事訴訟法

控訴提起期間の末日が「文化の日」にあたる場合に不成立として棄却した違法は法四〇六条の上告受理申立の理由となるか

裁判要旨記録を調査するに、原判決の違法であるとはまことに所論のとおりであるから、刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉四一三条〈前条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所若しくは第一審裁判所に差し戻し、又はこ…〉により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。註。本件は原審が控訴申立期間の最終日が国民の祝日に関する法律により一般の休日と指定された文化の日に当るとを看過して控訴棄却の判決をしたと見られるのであるがこれを右法律の解釈を誤つたとして上告を受理して破棄したものである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年5月14日 昭和29(あ)1101
登載
集刑 第95号403頁
参照法条
刑訴法373条,刑訴法395条,刑訴法55条3項,刑訴法406条,国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)2条,刑訴規則257条
論点6第373条刑事訴訟法

昭和二四年五月二四日経済案定本部訓令第二二号指定物資の輸送証明要領の性質

裁判要旨昭和二四年五月二四日経済案定本部訓令第二二号指定物資の輸送証明制要領のごときは、臨時物資需給調整法第一条第一項の命令に対する同条第四項の同意たる性質を有するに過ぎず、何等法令を改廃する効力を有するものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年7月26日 昭和25(あ)2184
登載
刑集 第5巻8号1640頁
参照法条
刑訴法373条2号,臨時物資需給調整法1条1項4項,昭和24年5月24日経済安定本部訓令
論点7第373条刑事訴訟法

一 公定價格の定めある賍物の對價に對する被害者の交付請求權の範圍と沒収額
二 賍物の一部が犯行後加工により価格を増加して被害者に仮還付されている場合と被害者の交付請求により還付の言渡をすべき未還付品の対価の額
三 公定價格のある定め賍物の時價に對する被害者の交付請求權と不當利得

裁判要旨一 賍物の對價として得たものが犯人以外の者に屬せざるときは、これを沒収することができる。その賍物が公定價格の定めあるものであるときは、公定價格相當額について被害者に右對價の交付請求權があり、その請求があれば裁判所は右相當額を被害者に還付し(舊刑訴第三七三條第二項)その殘額を沒収することができるのである。(昭和二三年(れ)第五四六號同二四年一月二五日第二小法廷判決)
二 押収した賍物の一部が被害者に仮還付されている場合、被告人が未還付品の対価として得た金銭のうち公定価格相当額に対して被害者より交付の請求があつたときは、裁判所は、仮還付されている物が犯行後仮還付の時までに加工によりその価格を増加しているかどうかにかかわらず、未還付品の公定価格相当額について還付の言渡をすれば足りる。
三 刑事訴訟の手續としては賍物の對價については被害者に對する辯償の有無に拘らず被害者から公定價格に相當する額の範圍内においてその交付の請求のあつた場合は裁判所はその請求額を被害者に還付すべきであつてこれによつて、被害者が不當に利得するや否やは、専ら民事訴訟において裁定すべき問題で刑事訴訟の關知せざるところである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和24年4月30日 昭和23(れ)1796
登載
刑集 第3巻5号679頁
参照法条
刑法19條,舊刑訴法373條,旧刑訴法373条
論点8第373条刑事訴訟法

一 「賍物の對價として得たる物」に對する沒収言渡の可否
二 公定價格ある賍物の對價に對する被害者の交付請求權の範圍
三 公定價格ある賍物の對價に關する沒収額の範圍

裁判要旨一 刑法第十九條第一項第四號に所謂「前號に記載したる物の對價として得たる物」の中には「臓物の對價として得たる物」をも含み、且つその對價が同條第二項に定める「其物犯人以外の者に屬せざるとき」の條件に當てはまるときは、之を沒収することができる。(昭和二三年(れ)第五四五號、同年一一月一八日第一小法廷判決参照)。
二 賍物が公定價格の定めのあるものであるときは、被害者の刑訴第三七三條第二項に據るその賍物の對價に對する交付請求權の許容せられる範圍は、右公定價格相當額に限られるのであつて、從つて裁判所は右交付の請求あるときは、押収中の賍物の對價の内より右公定價格相當額を被害者に還付する言渡を爲すべきである。(昭和二三年(れ)第五四五號、同年一一月一八日第一小法廷判決参照)
三 賍物が公定價格の定めのあるものであるときは、裁判所は押収中の賍物の對價の中より、刑訴第三七三條第二項により被害者に還付する額として右公定價格相當額を差引いた残額の全額を沒収することができる。(昭和二三年(れ)第五四五號、同年一一月一八日第一小法廷判決参照)。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和24年1月25日 昭和23(れ)546
登載
刑集 第3巻1号53頁
参照法条
刑法19條1項3号,刑法19条2項,旧刑訴法373条1項,旧刑訴法373條2項
論点9第373条刑事訴訟法

一 賍物の還附を受けるべき被害者と被害当時の所有者との関係
二 賍物の還附を受けるべき被害者であることの理由明示の要否
三 文字の挿入削除が法定の要式を缺いた調書の効力

裁判要旨一 盜賍を被害者に還付する言渡をする場合、その還付を受けるべき被害者は、必ずしも、判決の事実摘示において被害物件の所有者として指示された者であることを要しない。
二 賍物を還付する旨の言渡を受けた被害者が、その還付を受けるべき者であるとする理由は、特に判示することを要しない。
三 調書における文字の挿入削除が法定の要式を缺いた場合でも、直ちにこれを無効とすべきでなく、その効力の有無は、專ら、裁判所が諸般の状況を勘考して、自由の裁量によつて決すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和23年12月11日 昭和23(れ)998
登載
刑集 第2巻13号1728頁
参照法条
刑訴法373条1項,刑訴法360条,刑訴法72條
論点10第373条刑事訴訟法

一 賍物の對價として得た物を沒收するにはその對價を得た行爲が犯罪を構成することを必要とするか
二 刑訴法第三七三條の「被害者ニ還付スヘキ理由明白ナル」旨の判示の要否
三 賍物の對價として得た金錢は沒收し得るか
四 公定價格ある賍物の對價として得た金錢に對する被害者の交付請求權の範圍

裁判要旨一 所論のごとく物の對價を得た行爲(本件では賍物の賣買行爲)が犯罪を構成する場合でなければ、その對價の沒收の言渡ができぬと論ずるのは全くの獨斷である。犯罪行爲によつて得た對價を沒收するのであれば同項第三號によるのであつて、第四號によるのではない。そして第四號の對價を取得する行爲については、それが犯罪を構成することを要件とするものでないことは規定上も明らかである。
二 原審判決においては、賍物の對價として得た物を被害者から交付の請求があつたこと及びその適用法條は刑訴法第三七三條第二項であることを明示しているのであるから、所論のように被害者に還付すべき理由が明白である旨を特に説示しなくともその趣旨を判示していることは自明であると言わなければならぬ。
三 刑法第一九條第一項第四號の規定は獨立した沒收事由として追加規定せられたものであるから、同號を適用するのに前號所定の物が同條第二項の規定により沒收し得るものであることを前提とすべき理由は毫も存しない、それ故前記贓品の對價物たる押收金全額は、犯人以外の者に屬せざる限り沒收し得る譯である。
四 本件では刑訴第三七三條第二項の規定に基き贓物の對價物につき被害者から交付の請求があつた。普通の場合であつたならば、對價物の全部を被害者に還付すべきであろうが既に贓物は處分せられた後のことであるから、被害者が犯人に對して損害賠償として交付を請求し得るのは、法令の許容する價額を標準とすべきであり、從つて本件においては「みのり」千百個、「きんし」六千本に對する處分當時の公定價額三千二百四〇圓に相當する押收現金の還付であると言わねばならぬ。されば、原判決がこれを被害者に還付する言渡をなし、これを差引きたる押收金の殘額二萬四千五百九十五圓を沒收したのは正當である
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和23年11月18日 昭和23(れ)545
登載
刑集 第2巻12号1597頁
参照法条
刑法256条2項,刑法19条,刑法256条,刑訴法373条,刑訴法49条1項,刑訴法373条2号
論点11第374条刑事訴訟法

一 署名のない申立書によつてした被告人の上告申立の効力。
二 署名のない弁護人選任届によつてした被告人の弁護人選任の効力。

裁判要旨一 氏名を記載することができない合理的な理由がないのに、署名のない申立書によつてした被告人の上告申立は、無効である。
二 氏名を記載することができない合理的な理由がないのに、署名のない弁護人選任届によつてした被告人の弁護人選任は、無効である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年7月20日 昭和39(あ)2029
登載
刑集 第19巻5号591頁
参照法条
刑訴法30条1項,刑訴法355条,刑訴法374条,刑訴法385条,刑訴法414条,刑訴規則1条2項,刑訴規則18条,刑訴規則60条
論点12第374条刑事訴訟法

検察官作成の控訴申立諸に肩書の誤記または遺脱がある場合と控訴申立の適否。

裁判要旨区検察庁検察官事務取扱の職務を担当する地方検察庁検察官が、簡易裁判所のした判決に対して控訴するにあたり、誤つて控訴申立書にその肩書を地方検察庁検察官検事と表示したとしても、同検察官が区検察庁検察官事務取扱の職務もあわせて担当しており、その資格で控訴申立をしたことが記録上明らかで、肩書の明白な誤記または遺脱にすぎないと認められる場合には、右控訴の申立は適法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年10月25日 昭和36(あ)2945
登載
刑集 第17巻9号1786頁
参照法条
刑訴法374条,刑訴規則58条
論点13第374条刑事訴訟法

電報による上告の申立。

裁判要旨電報による上告の申立は法令上の方式に違反したものである(昭和二五年(あ)第二八三〇号同年一二月五日当裁判所第三小法廷決定、刑集四巻一二号二四八九頁)。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年12月20日 昭和36(あ)2829
登載
集刑 第140号687頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法374条
論点14第374条刑事訴訟法

電報による上告申立の適否。

裁判要旨電報による上告の申立は、不敵法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年2月27日 昭和35(あ)201
登載
刑集 第14巻2号206頁
参照法条
刑訴法374条,刑訴法385条1項,刑訴法414条
論点15第374条刑事訴訟法

控訴の範囲は何によつて判断すべきか

裁判要旨控訴が、裁判の一部に対して為されたものか、それとも全部に対して為されたものかは、控訴申立書(控訴趣意書でなく)によつて、判断されるべきことである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年2月17日 昭和29(あ)2230
登載
集刑 第102号813頁
参照法条
刑訴法357条,刑訴法374条,刑訴法376条,憲法39条
論点16第374条刑事訴訟法

一 刑訴応急措置法第一八条による特別抗告にも刑訴第四〇五条第二号〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。〉、第三号、第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉の準用があるか
二 検察官から刑の執行猶予言渡の取消請求があつた場合の決定手続の方式

裁判要旨一 刑訴応急措置法第一八条による特別抗告には、刑訴第四〇五条第二号〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。〉第三号および第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉は準用されない。
二 本件に適用される旧刑訴三七四条二項〈控訴をするには、申立書を第一審裁判所に差し出さなければならない。〉の規定によれば、検察官から執行猶予の言渡の取消請求があつた場合には、裁判所は、被告人又はその代理人の意見を聴き決定を為すべきものであつて、決定を為すには国選弁護人を選任したり、口頭弁論に基いたりする必要のないものであることは論を俟たない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和28年6月10日 昭和26(し)47
登載
刑集 第7巻6号1419頁
参照法条
刑訴応急措置法18条,刑訴法405条,刑訴法411条1号,刑法26条,旧刑訴法374条2項
論点17第374条刑事訴訟法

一 刑法第二六条第三号の意義
二 昭和二四年一月一日前に公訴の提起があつた事件についてなされた刑執行猶予言渡に対する取消請求事件に適用される手続法
三 いわゆる旧刑訴事件について簡易裁判所がした決定に対する管轄抗告裁判所
四 いわゆる旧刑訴事件について簡易裁判所がした決定に対する即時抗告の申立について、高等裁判所が新刑訴法を適用して棄却した決定に対する不服申立の方法
五 刑法第二六条第一項第三号の「猶予ノ言渡前他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコト発覚シタルトキ」の意義

裁判要旨一 執行猶予の言渡前にすでに他の罪につき禁錮以上の刑に処せられたことが発覚していた場合には、刑法二六条三号によつて執行猶予の言渡を取消すことはできないものと言わなければならない。
二 昭和二四年一月一日前に公訴の提起があつたいわゆる旧刑訴事件についてなされた刑執行猶予言渡に対する取消請求事件については、刑訴施行法第二条により、旧刑訴法及び刑訴応急措置法によるべきである。
三 いわゆる旧刑訴事件について簡易裁判所がした刑執行猶予言渡取消決定に対する即時抗告の申立については、昭和二三年法律第二六〇号による改正前の裁判所法第二四条第三号により地方裁判所がこれを審判すべきである。
四 いわゆる旧刑訴事件について簡易裁判所がした刑執行猶予言渡取消決定に対する即時抗告の申立について、誤つて高等裁判所が新刑訴法を適用して棄却の決定をした場合でも、この決定に対しては、刑訴応急措置法第一八条により特別抗告をするは格別、刑訴第四二八条第二項〈高等裁判所の決定に対しては、抗告をすることはできない。〉による異議の申立又は刑訴第四三三条〈この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に…〉による特別抗告をすることはできない。
五 刑法第二六条第一項第三号に「猶予ノ言渡前他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコト発覚シタルトキ」とあるは、所定の処刑の事実が猶予の言渡後に発覚した場合をいうのであつて、その言渡前に既に発覚していた場合はこれにあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年2月7日 昭和24(つ)87
登載
刑集 第6巻2号197頁
参照法条
刑法26条3号,刑法26条1項3号,刑訴施行法2条,旧刑訴法374条,昭和23年12月21日法律260号裁判所法の一部を改正する等の法律による改正前及び改正後の裁判所法16条2号,昭和23年12月21日法律260号裁判所法の一部を改正する等の法律による改正前及び改正後の裁判所法24条3号,右改正法律附則11条,刑訴応急措置法18条,刑訴法428条2項,刑訴法433条
論点18第374条刑事訴訟法

電報による上告申立の適否

裁判要旨電報による上告の申立は、不適法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和25年12月5日 昭和25(あ)2830
登載
刑集 第4巻12号2489頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法374条
論点19第374条刑事訴訟法

電子複写機によって複写されたコピーであって作成名義人たる外国人である被告人の署名がない控訴申立書による控訴申立ての効力

裁判要旨電子複写機によって複写されたコピーであって,作成名義人たる外国人である被告人の署名がない控訴申立書による控訴申立ては,同書面中に被告人の署名が複写されていたとしても,無効である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成17年7月4日 平成17(し)125
登載
刑集 第59巻6号510頁
参照法条
刑訴法374条,刑訴規則60条,外国人の署名捺印及び無資力証明に関する法律1条1項
論点20第374条刑事訴訟法

被告人の記名のみがあり署名押印がいずれもない控訴申立書による控訴申立ての効力

裁判要旨被告人の記名のみがあり署名押印がいずれもない控訴申立書による控訴申立ては,同申立書を封入した郵便の封筒に被告人の署名があったとしても,無効である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和元年12月10日 平成30(あ)1409
登載
刑集 第73巻5号155頁
参照法条
刑訴法374条,刑訴規則60条
論点21第375条刑事訴訟法

上訴権回復請求及びこれと同時にされた特別抗告の申立を併せて棄却した地方裁判所の各決定に対する特別抗告の適否

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年6月8日 昭和62(し)51
登載
集刑 第246号33頁
参照法条
刑訴法364条,刑訴法375条,刑訴法414条,刑訴法433条
論点22第375条刑事訴訟法

特別抗告についての上訴権回復請求を棄却する場合と特別抗告棄却の権能

裁判要旨特別抗告についての上訴権回復請求を受理した裁判所は、これを棄却する場合には、刑訴法三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉、四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉を類推適用して、右請求と同時にされた特別抗告の申立を自ら棄却することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年6月21日 昭和48(し)22
登載
刑集 第27巻6号1197頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法375条,刑訴法414条,刑訴法433条
論点23第375条刑事訴訟法

裁判権ないし管轄権なくしてなされた刑法第五二条による刑を定める決定に対し法定の期間経過後になされた即時抗告

裁判要旨刑法第五二条による刑を定める決定が裁判権ないし管轄権をなくしてなされたものであつても、右決定に対する即時抗告が法定の期間経過後になされたものである以上、不適法のものとして棄却を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年2月11日 昭和31(し)37
登載
刑集 第12巻3号355頁
参照法条
刑法52条,旧刑訴法375条,旧刑訴法459条,旧刑法469条4号,旧刑法466条1項,昭和21年勅令第278号(陸軍運法会議法海軍軍法会議法及第1復員裁判所及第2復員裁判所廃止ニ関スル件)附則5項,昭和27年法律81号(右勅令廃止法律)
論点24第375条刑事訴訟法

一 被告人の父からの控訴申立の適否。
二 控訴の申立が法令上の方式に違反する場合と第一審裁判所の措置。

裁判要旨一 原審における代理人または弁護人および被告人の法定代理人または保佐人に該当しない被告人の父からの控訴申立は不適法である。
二 第一審裁判所は、控訴の申立が法令上の方式に違反していることを理由として右申立を棄却することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年11月24日 昭和33(し)12
登載
刑集 第12巻15号3531頁
参照法条
刑訴法353条,刑訴法355条,刑訴法42条,刑訴法375条,刑訴法385条1項,刑訴規則235条
論点25第375条刑事訴訟法

高等裁判所が刑訴第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉第三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉によりなした上告申立棄却決定と特別抗告

裁判要旨高等裁判所が刑訴第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、第三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉によりなした上告申立棄却決定に対して、最高裁判所に特別抗告をなすことは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年1月8日 昭和26(し)104
登載
刑集 第6巻1号1頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法375条,刑訴法428条1項,刑訴法428条2項,刑訴法433条
論点26第375条刑事訴訟法

刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例

裁判要旨高等裁判所が、刑訴第三八六条第一項〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。〉により控訴を棄却した決定に対してなされた上告申立を、異議申立と見ながら、同法第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、第三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉を準用して自ら棄却したとしても、右申立が異議申立期間後になされたものであることが明らかなときは、右の瑕疵は同法第四一一条所定の事由にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年1月11日 昭和26(し)41
登載
集刑 第59号237頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法375条,刑訴法386条1項,刑訴法386条2項,刑訴法411条,刑訴法405条
論点27第375条刑事訴訟法

一 旧刑訴事件につき刑法第五二条の規定により刑の変更をする場合は新旧何れの刑訴によるべきか
二 右の場合高等裁判所がした刑の変更決定に対し新刑訴により異議の申立が許されるか
三 本人と弁護人との双方に原決定謄本が送達された場合における不服申立期間の起算日

裁判要旨一 旧刑訴事件につき刑法第五二条の規定により刑の変更をする場合は、刑訴施行法第二条により旧刑訴第三七五条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉の規定によるべきである。
二 右の場合、高等裁判所が誤つて新刑訴第三五〇条〈刑法第五十二条の規定により刑を定むべき場合には、検察官は、その犯罪事実について最終の判決をした裁判所にその請求をしなけれ…〉を適用して決定をしても、これに対して異議の申立は許されない。
三 本人と弁護人との双方に原決定の謄本が日を異にして送達された場合における不服申立の期間は、本人に送達がされた時から起算すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年11月18日 昭和27(し)77
登載
刑集 第6巻10号1213頁
参照法条
刑法52条,刑訴施行法2条,旧刑訴法375条,旧刑訴法50条,新刑訴法350条,新刑訴法349条2項,新刑訴法428条,刑訴応急措置法18条,刑訴規則34条
論点28第375条刑事訴訟法

即時抗告の申立てを受理した裁判所が刑訴法375条を類推適用してその申立てを自ら棄却することの可否

裁判要旨即時抗告の申立てを受理した裁判所は,刑訴法375条〈控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定…〉を類推適用してその申立てを自ら棄却することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年4月24日 平成18(し)82
登載
刑集 第60巻4号409頁
参照法条
刑訴法375条,刑訴法422条,刑訴法423条
論点29第376条刑事訴訟法

電子複写機によつて複写されたコピーによる上告趣意書が有効とされた事例

裁判要旨電子複写機によつて複写されたコピーであつて作成名義人の署名押印のない上告趣意書は、刑訴規定六〇条〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉の規定に違背するが、作成名義人の署名押印も複写されており、これを封入した郵便の封筒には、作成名義人によるものと認められる氏名の記載があつて、権限のない者がほしいままに作成し提出したなどの特段の事情はうかがわれず、右作成名義人の意思に基づいて作成され提出されたものと認められるときは、これを有効なものとして判断の対象とすべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年10月28日 昭和58(あ)640
登載
刑集 第37巻8号1332頁
参照法条
刑訴法376条,刑訴法407条,刑訴法414条,刑訴規則60条,刑訴規則240条,刑訴規則266条
論点30第376条刑事訴訟法

弁護人によつてなされた被告人出の公訴趣意書の撤回が有効とされた事例

裁判要旨控訴審第一回公判期日において弁護人が陳述しない旨述べた被告人提出の控訴意旨書がその諭旨必ずしも明確ではなく、右公判期日に出頭していた被告人が弁護人の右措置につきこれを争う態度を示していない場合には、被告人の控訴趣意について判断をせず弁護人の控訴趣意についてのみ判断したとしても、違法ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和48年7月17日 昭和48(あ)800
登載
集刑 第189号609頁
参照法条
刑訴法376条1項,刑訴法389条,刑訴法392条1項
論点31第376条刑事訴訟法

控訴趣意の撤回

裁判要旨被告人は、弁護人が被告人のために差し出した控訴趣意を撤回することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年9月4日 昭和44(あ)726
登載
刑集 第24巻10号1311頁
参照法条
刑訴法41条,刑訴法351条1項,刑訴法359条,刑訴法376条1項,刑訴規則236条1項
論点32第376条刑事訴訟法

控訴趣意書差出最終日指定後選任された弁護人にあらためて最終日の通知をしなかつたことを違法でないとした原決定の合憲性

裁判要旨控訴趣意書差出最終日指定後選任された弁護人に、あらためて最終日の通知をしなかつたことを違法でないとして、控訴棄却の決定に対する異議申立を棄却した原決定は、憲法三二条、一三条に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和45年2月13日 昭和45(し)5
登載
刑集 第24巻2号45頁
参照法条
憲法32条,憲法13条,刑訴法386条,刑訴法376条,刑訴規則236条
論点33第376条刑事訴訟法

必要的弁護事件について弁護人選任前に控訴趣意書差出最終日の通知をすることの適否および控訴申立をした一審の弁護人に右の通知をすることの要否

裁判要旨控訴裁判所の控訴趣意書差出最終日の通知は、いわゆる必要的弁護事件の場合であつても、弁護人の選任がなされたうえでなければすることができないものではないことおよび第一審の弁護人が控訴の申立をしたときでも、これに右の通知をする必要のないことは、いずれもすでに当裁判所の判例(前段については、昭和三〇年(し)第一八号同年六月三日第二小法廷決定、刑集九巻七号一一三六頁、後段については、昭和二六年(あ)第二二一七号同二七年一〇月二三日第一小法廷決定、刑集六巻九号一一一八頁)とするところであるから、法令解釈に関する論旨も採るをえないものである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年10月17日 昭和42(し)42
登載
集刑 第164号815頁
参照法条
刑訴法376条1項,刑訴規則236条1項
論点34第376条刑事訴訟法

有効な上告趣意書が提出されなかつたとされた事例。

裁判要旨本件上告趣意書提出期間内である昭和四〇年一月二〇日被告人の原審弁護人酒井祝成から「上告理由書」と題する書面が提出されているけれども、本件上告は被告人自身により提起されたもので、右原弁護人が提起したものでないことおよび同人を当審における弁護人に選任する旨の弁護人選任届は、遂に提出されていないことを認めることができる。してみれば右原審弁護人により提出された上告趣意は、何ら権限のない者の提出に係り不適法であるから、本件においては、上告趣意書提出期間内に有効な上告趣意書が差し出されなかつたことに帰する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年9月22日 昭和39(あ)2533
登載
集刑 第156号673頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法376条,刑訴法32条2項
論点35第376条刑事訴訟法

控訴趣意書提出最終日指定の後に弁護人選任届の提出された弁護人に対する最終日通知の要否。

裁判要旨控訴趣意書提出最終日指定の後に弁護人選任届の提出された弁護人に対しては、右最終日の通足を要しないことは、当裁判所の屡次の判例−昭和二五年(あ)第二七七七号、同二七年五月六日第三小法廷判決、刑集六巻五号七三三頁・昭和三六年(し)第四六号、同年一一月一四日第二小法廷決定、裁判集第一四〇号一二三頁・昭和三七年(し)第三五号、同年九月二七日第一小法廷決定、裁判集一四四号六八三頁各参照−の示すところである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年3月12日 昭和39(し)13
登載
集刑 第150号791頁
参照法条
刑訴規則236条1項,刑訴法376条
論点36第376条刑事訴訟法

記録上の住居にあててなされた上告趣意書最終提出日の通知が無効とされ、意義申立が容れられた事例。

裁判要旨当裁判所は被告人の上告申立にかかる昭和三八年(あ)第八三九号道路交通法違反等被告事件について、上告趣意書最終提出日を指定し、その通知書を、郵便により、記録上被告人の住居と認められる京都市a区b町(新町名c町)d番地あてに送達したとおろ、送達報告書によると、被告人の雇人である甲が前記場所において右通知書を受領したことによりその送達を終つたことが窺われる。ところが、当裁判所の照会の結果、a郵便局の回答書により、右送達の当時被告人は既に他に転居していて前記場所に住居を有せずその受領者である甲は被告人の雇人、事務員、同居者のいずれでもなかつたこと及び右通知書が甲から被告人に交付されたかどうかも疑わしいことが明らかになつた。しがつて、被告人に対する右通知書の送達は有効になされていなかつたものといわざるをえない。当裁判所は、被告人が上告趣意書を指定の期間内に提出しなかつたことを理由として上告を棄却したのであるが、右のように被告人に対する上告趣意書最終提出日の通知が有効になされていなかつた以上、その瑕疵は原決定に影響すること明らかであり、原決定を取消すべきものと認める。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年9月10日 昭和38(す)203
登載
集刑 第148号65頁
参照法条
刑訴法54条,刑訴法414条,刑訴法376条,刑訴法386条1項1号,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法422条,刑訴法428条2項,刑訴法426条2項,刑訴規則62条,刑訴規則63条,刑訴規則266条,刑訴規則236条
論点37第376条刑事訴訟法

被告人が上告申立をした場合における原審弁護人提出の上告趣意書の効力。

裁判要旨被告人自ら上告の申立をなした場合に、原審弁護人が上告趣意書提出期間内にその資格で上告趣意書を提出しても、右上告趣意は審理の対象とならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年7月18日 昭和36(あ)730
登載
刑集 第15巻7号1103頁
参照法条
刑訴法355条,刑訴法376条,刑訴法392条,刑訴法407条,刑訴法414条,刑訴法32条2項,刑訴規則252条
論点38第376条刑事訴訟法

一 訴因変更手続を要しない事例。―起訴状記載の事実と一審判決認定事実の間における場所の差異―
二 第一審に提出した弁論要旨と題する書面を援用する旨の控訴趣意書の適否
三 収賄罪における税務署法人税課係員の担当地域と職務権限

裁判要旨一 収賄罪における賄賂収受の場所の差異につき、起訴状の記載に「東京都北区ab丁目c番地被告人自宅」とあるのを第一審判決で「東京都北区de丁目b、f番地の当時の被告人自宅」と認定するには、訴因変更の手続を要しない。
二 控訴趣意書自体に控訴理由を明示しないで、第一審に提出した弁論要旨と題する書面の記載を援用する旨の控訴趣意は許されない。
三 収賄罪において、税務署法人税課第六係係員として法人税の課税標準の調査等に関する事務を分掌するとともに、事実上同係次席として係長の職務を補佐していた者につき、その賄賂の対象となつた行為が、同係の管轄区域内ではあるが同人の担当地域外であつたというだけで、直ちにその職務権限に属しないものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年4月19日 昭和31(あ)3605
登載
刑集 第14巻6号685頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法376条,刑法197条,刑訴規則240条
論点39第376条刑事訴訟法

刑訴規則第二三六条にいわゆる控訴申立人には控訴申立をした第一審弁護人を含むか。

裁判要旨刑訴規則二三六条にいわゆる控訴申立人には、控訴申立をした第一審弁護人を含まない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和34年2月25日 昭和33(あ)2497
登載
刑集 第13巻2号190頁
参照法条
刑訴規則236条,刑訴法376条
論点40第376条刑事訴訟法

弁護人に対する控訴趣意書提出最終日指定通知のなされなかつた違法とその治ゆ

裁判要旨所論のとおり、弁護人牟田真に対する控訴趣意書提出最終日指定通知の効力が認められず、従つて弁護人田原昇に対し右通知がなされていない違法があるとしても、本件記録によれば、被告人両名に対しては右通知が適法になされており、その弁護人田原昇において、右指定の提出期日最終日に控訴趣意書を提出しておるのみならず、原審第一回公判期日に出廷の上右の点については何らの異議を述べることもなく、自己の外牟田弁護人提出の各控訴趣意書に基づき陳述した事実が認められるから、所論通知のなされなかつた違法は治ゆされたものと解するを相当とする。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年6月25日 昭和30(あ)1532
登載
集刑 第119号581頁
参照法条
刑訴法376条,刑訴法389条,刑訴規則236条
論点41第376条刑事訴訟法

控訴趣意書提出の遅延がやむを得ない事情に基くものと認められない場合、該書面に基き弁論がなされたとき、これに対する判断を与えなかつたのは違法か

裁判要旨所論被告人本人の上申書と題する控訴趣意書は、記録によれば、昭和三一年二月二五日原審において受理されているところ、原審が指定した控訴趣意書提出最終日は昭和三〇年一一月二一日であつて、その後原審弁護人側から数回にわたりその延期申請があつたため、その都度延期され、結局昭和三一年一月一五日まで延期が認められたけれども、その延期された期限からみても一ケ月以上遅れて提出されたものであること明らかである。従つて、その提出の遅延がやむを得ない事情に基くものとは認められないし、又原審公判廷において該書面に基き弁論がなされたことによつて、遅延の瑕疵が治癒されるものでもないのであるから、原審がこれを不適法のものとして、これに対する判断を与えなかつたのは何等違法ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年4月23日 昭和31(あ)4635
登載
集刑 第118号957頁
参照法条
刑訴法376条,刑訴法389条,刑訴法392条,刑訴規則236条,刑訴規則238条
論点42第376条刑事訴訟法

上告趣意書不提出の被告人に対して大赦を理由とする破棄判決の要否

裁判要旨有罪の第二審判決に対し、被告人から上告中大赦があつたときは、被告人が所定期間内に上告趣意書を差し出さなくても刑訴第四一一条第五号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。〉により原判決を破棄すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和32年2月27日 昭和31(あ)3701
登載
刑集 第11巻2号935頁
参照法条
刑訴法411条5号,刑訴法337条3号,刑訴法414条,刑訴法376条,刑訴法386条1項1号
論点43第376条刑事訴訟法

控訴趣意書の撤回

裁判要旨弁護人が自己名義の控訴趣意書に基き弁論し「被告人名義の控訴趣意書は陳述しない」と述べた場合に、控訴審裁判所が、被告人名義の控訴趣意に対して判断をしなかつたことは違法ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年6月19日 昭和29(あ)2898
登載
集刑 第113号791頁
参照法条
刑訴法376条1項,刑訴法389条,刑訴法392条1項
論点44第376条刑事訴訟法

不法に弁護権を制限したことにならない一事例

裁判要旨記録に徴すれば、原審裁判所は公訴趣意書提出最終日より後、第1回公判期日の二四日前に弁護人を選任したものであるが、これより先に被告人から詳細な事実誤認、未決勾留日数の本刑通算要求の主張を記載した公訴趣意書が提出されており、右弁護人は被告人と共に原審第一回公判期日に出席して被告人提出の公訴趣意書中の事実誤認の主張のみについて弁論し、結審されたものであり、被告人及び弁護人からは弁護人選任、弁護人からの公訴趣意書不提出に関し何等異議を述べた形跡がないのであるから、所論違憲の主張は前提を欠くのみならず、原審において弁護権の行使が不当に制限されたものというに足りない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年3月22日 昭和30(あ)757
登載
集刑 第112号721頁
参照法条
刑訴法389条,刑訴法376条
論点45第376条刑事訴訟法

控訴趣意書最終差出日の通知と弁護人選任の要否

裁判要旨強制弁護の事件について、控訴裁判所が被告人に対し控訴趣意書の最終差出日を通知するにあたり、まだ弁護人の選任届が提出されていない場合でも、先ず弁護人を選任したうえでなければ右通知をすることができないものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年6月3日 昭和30(し)18
登載
刑集 第9巻7号1136頁
参照法条
刑訴法376条1項,刑訴法388条,刑訴法389条,刑訴法404条,刑訴法272条
論点46第376条刑事訴訟法

一 刑訴第三七九条〈前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申…〉にいう「訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかである」の意義
二 刑法第一二七条にいう「前条」には刑法第一二六条第三項を含むか
三 刑法第一二六条第三項にいう「人」には車外の人を含むか
四 刑法第一二七条にいう「汽車又は電車」には刑法第一二五条の犯行に供用されたものを含むか
五 過失致死の結果的加重犯について死刑を定めた刑法第一二七条は憲法第一三条、第三六条に違反するか
六 刑訴第四〇〇条〈前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の…〉但書によるいわゆる自判の限界
七 被告人が犯罪の実行者であることについて自白のみによる認定は憲法第三八条第三項に違反するか
八 日本国有鉄道職員の争議禁止は憲法第二八条に違反するか
九 刑訴法第三七九条の法意
一〇 判決に影響を及ぼすことが明らかでない訴訟手続の違法ある判決と憲法第三一条
一一 第一審の訴訟手続の違法が判決に影響を及ぼしたことが明らかといえない場合と刑訴第三七九条
一二 憲法第三八条第二項にいう「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」にあたらない一事例
一三 控訴申立をした検察庁の検察官が作成した控訴趣意書を控訴裁判所に対応する検察庁の検察官が提出することは違法か

裁判要旨一 刑訴第三七条〈左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。〉の場合は、訴訟手続の法令違反が判決に影響を及ぼすべき可能性があるというだけでは、控訴理由とすることはできないのであつて、その法令違反がなかつたならば現になされている判決と異る判決がなされたであろうという蓋然性がある場合でなければ、同条の法令違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであるということはできない。
二 刑法第一二七条は、刑法第一二五条の罪を犯し因て汽車又は電車の顛覆若しくは破壊を致し、因て人の致死の結果を生じた場合には、刑法第一二六条第三項の例により処断すべきことを規定したものと解するを相当とする。
三 刑法第一二六条第三項にいう「人」とは、必ずしも同条第一項の車中に現在した人に限定すべきでなく、汽車又は電車の顛覆くは破壊に因つて死に致された人をすべて包含する法意と解するを相当する。
四 刑法第一二七条にいう「汽車又は電車」には、刑法第一二五条の犯行に供用されたものを含むものと解すべきである。
五 刑法第一二七条が、刑法第一二六条第三項の例により汽車又は電車の顛覆若くは破壊による人の致死の場合に、死刑をもつて処断し得ることを定めても、憲法第一三条、第三六条に違反しない。
六 刑訴第四〇〇条〈前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の…〉但書は、控訴審において事実の取調をする必要がないと認める場合でも、必ず新たな証拠の取調をした上でなければ自判できない旨を規定しているものと解すべきではない。また控訴審において記録調査及び事実取調の結果第一審判決を破棄すべき理由ありと認め、且つそれ以上審理をなすまでもなく判決をなすに孰していると認められ、しかも客観的に見て自判の結果が差戻または移送後の第一審判決よりも被告人にとつて不利益でないということが確信される場合ならば、自判により第一審判決の無期懲役の宣告刑を変更して死刑を言い渡すことも、必ずしも違法ということはできない。
七 被告人の自白について、同人が犯罪の実行者であると推断するに足る直接の補強証拠が欠けていても、その他の点について補強証拠が備わり、それと被告人の自白とを綜合して犯罪事実を認定するに足る以上、憲法第三八条第三項の違反があるということはできない。
八 日本国有鉄道職員が公共企業体労働関係法第一七条により争議行為を禁止されても、憲法第二八条に違反しない。
九 絶対的控訴理由(三七七条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨…〉三七八条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われ…〉)に当る場合は常に相当因果関係があるものと訴訟法上みなされているものと解すべきであるが、三七九条〈前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申…〉の場合には、裁判所が当該事件について具体的に諸般の情況を検討して判断すべき問題であつて、或る訴訟手続の法令違反は当然に判決に影響あるものと解し、或はその影響の可能性があれば足ると解するが如きは、同条の法意に反するものといわなければならない。また判決に影響を及ぼすことが明らかでない訴訟手続の違法があつたからといつて、その判決が憲法三一条にいわゆる法律の定める手続によらなかつたものであるということのできないのはいうまでもない。
一〇 第一審において、検察官の起訴状朗読に先だち、事件の実体又は証拠関係に触れた被告人側の右起訴が無効である旨の主張及び控訴の取消を求むる発言を許容したこと、法定の手続を経ないで被告人等からの事件の実体に触れた上申書を受理して訴訟記録に編綴したこと、甲証拠の証明力を争うために提出した証拠を乙証拠の証明力を否定する資料に供したこと、の各訴訟手続の法令違反があつても、その違反が常に第一審判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。
一一 記録に徴すれば、検察官に対する被告人の自白は拘禁一七日以後なされたものであり、また所論公判廷における供述は勾留五ケ月余又は一〇ケ月余を経てなされたものであることは明らかであるけれども、本件事案の内容、取調の経過その他諸般の事情に照し右一七日の拘禁は不当に長きにわたる拘禁とはいえない。また所論公判廷における自白は既に右検察官に対してなされた自白の反覆であるから、右公判廷における自白をもつて、不当に長い拘禁後の自白ということはできない。
一二 控訴趣意書を控訴申立をした検察庁の検察官が作成し、これを控訴裁判所に対応する検察庁の検察官が提出することは、少しも訴訟法に違反するものということはできない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年6月22日 昭和26(あ)1688
登載
刑集 第9巻8号1189頁
参照法条
刑訴法379条,刑訴法400条,刑訴法319条2項,刑訴法319条1項,刑訴法376条,刑法127条,刑法126条3項,憲法13条,憲法36条,憲法31条,憲法38条3項,憲法28条,憲法38条2項,公共企業体労働関係法2条,公共企業体労働関係法17条,公共企業体労働関係法18条
論点47第376条刑事訴訟法

弁護人選任権の不法制限とならない一事例

裁判要旨憲法三七条三項前段所定の弁護人に依頼する権利は、被告人が自ら行使すべきもので、裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足るものであること、同条項後段の規定は被告人が貧困その他の理由で弁護人を依頼できないときは国に対して弁護人の選任を請求できるものであり、国はこれに対して弁護人を附すれば足るものであること及び同条項は被告人に対し弁護人の選任を盛況し得る旨を告知すべき義務を裁判所に負わせているものでないことは、すでに当裁判所の判例としているところである(昭和二四年(れ)二三八号同年一一月三〇日大法廷判決、集三巻一一号一八五七頁)。本件において、被告人Aは、同被告人に対する詐欺、賍物故買被告事件について、昭和二八年四月九日、盛岡地裁一関支部が言渡した判決に対し同日控訴の申立をなし即日第一審において被告人の弁護人があつた弁護人千葉参治を原審弁護人に選任したのであるが、同弁護人は同年五月一日辞任したので、原審は、同年五日二一日被告人に対して刑訴規則一七七条、一七八条の通知書及び控訴趣意書差出最終日通知書(最終日は同年六月一九日)を郵便により送達し、被告人は同年六月五日弁護人を私選する旨を回答をしたが、自己の弁護人を選任しないのみならず、国選弁護人の選任をも請求せず、適法に定められた控訴趣意書差出期間内に控訴趣意書提出をしなかつたため、原審は刑訴三八六条一項〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。〉一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉により控訴を棄却したことが、本件記録上明らかである。そして、被告人が弁護人において控訴趣意書差出期間内に控訴趣意書を提出できるような時期に弁護人を選任しなかつたことは、被告人の懈怠に基因するものであり、記録を調べても、原審が被告人の憲法三七条三項によつて保障された弁護人選任権の行使を妨げた事跡は認められない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年2月23日 昭和28(し)56
登載
集刑 第102号907頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴法272条,刑訴法289条,刑訴法376条,刑訴法386条1項1号,刑訴規則177条,刑訴規則178条(250条)
論点48第376条刑事訴訟法

刑訴第三六六条第一項〈刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上…〉は、在監者が控訴趣意書を差し出す場合に準用されるか

裁判要旨上告趣意第一点は所論控訴趣意書(上申書と題するもの)は法廷期間経過後の提出にかかるものであるから、この場合刑訴規則二三八条を適用すべき場合でない限り、原審が同趣意書に対し判断を与えなかつたことは当然である。所論引用の判例は適法期間内に提出された控訴趣意書に関するものであつて、本件の場合に当てはまるものではなく、また所論刑訴三六六条〈刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上…〉は所論もいうとおり、上訴申立に関する規定であつて控訴趣意書に準用あるものとは解されないから、所論はすべて採ることができない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年9月11日 昭和29(あ)2120
登載
刑集 第8巻9号1490頁
参照法条
刑訴法366条,刑訴法367条,刑訴法376条,刑訴規則236条,刑訴規則238条
論点49第376条刑事訴訟法

一 国選弁護人の選任が控訴趣意書最終提出日経過後であつても弁護権の制限とならない事例
二 控訴審において上申書等として提出された書面につき判断することの要否―弁護人が控訴趣意として陳述していない場合

裁判要旨一 原審における国選弁護人の選任が控訴趣意書最終提出日経過後であつたとしても、弁護人は控訴趣意書補充書を提出し、原審公判延に出頭の上異議なく被告人の控訴趣意書及び右補充書に基いて弁論をしているのであり、原判決もこの補充書に対し判断を加えているのである、従つて、原審が弁護権の行使を制限したことを前提とする論旨は、既にその前提において失当であるから論旨の理由のないこと明らかである。
二 上申書等として提出された書面であつて被告人出頭の原審公判廷で弁護人が控訴趣意として陳述していないものについては、原判決がこれについて判断を与えなくても違法はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月6日 昭和26(あ)5038
登載
集刑 第64号225頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法376条,刑訴法289条,刑訴法272条,刑訴法404条,刑訴法388条,刑訴法389条,刑訴法392条,刑訴規則177条,刑訴規則178条,刑訴規則250条
論点50第376条刑事訴訟法

一 控訴審における陳述されなかつた控訴趣意に対する判断の要否
二 控訴趣意に対する判断遺脱の違法と上告理由
三 控訴趣意に対する判断違脱の違法が判決に影響を及ぼさない場合及びその違法が著るしく正義に反すると認められない場合

裁判要旨一 法定の期間内に差し出された被告人の控訴趣意書が、その後適法に撤回されるか、又は公判期日において適法にこれを陳述しない旨の明確な意思表示のなされない以上は、たとえ弁護人がその控訴趣意書に基いて弁論しなくても、控訴裁判所はその控訴趣意に対し判断をしなければならない。
二 控訴裁判所が控訴趣意に対する判断を遺脱した旨の主張は、単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉に定める上告理由にあたらない。
三 原判決が弁護人の事実誤認の控訴趣意に対して判断している以上は、これと同一の犯罪事実についてなされた被告人の事実誤認の控訴趣意に対して特に判断しなくても、その違法は、原判決に影響を及ぼさないものといわなければならない。
四 原判決が量刑の不当を理由として第一審判決を破棄し、刑訴第四〇〇条〈前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の…〉但書に従い、職権をもつて第一審判決の認定した事実を是認引用して更に判決をしている以上は、被告人の事実誤認の控訴趣意に対して特に判断していなくても、その違法は、刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉に当らない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年1月10日 昭和26(あ)3130
登載
刑集 第6巻1号69頁
参照法条
刑訴法376条1項,刑訴法388条,刑訴法389条,刑訴法392条1項,刑訴法405条1項,刑訴法411条1号,刑訴法400条,憲法32条
論点51第376条刑事訴訟法

控訴趣意書最終提出日の通知と弁護人選任の要否

裁判要旨強制弁護の事件につき、裁判所が被告人に対し、弁護人を選任することができること、貧困その他の事由によつて弁護人を選任することができないときは、弁護人の選任を請求することができるとの記載のある弁護人選任に関する通知を出したのに対し、被告人から自分の方で弁護人甲を選任する旨を回答があつた場合には、控訴裁判所は被告人に対し、控訴趣意書の最終提出日を通知するにあたり、まだ弁護人の選任届が提出されていない場合でも、先ず弁護人を選任したうえでなければ右通知をすることができないものではない。(昭和二四年(れ)第二三八号同年一一年三〇日大法廷判決第三巻二号一八五七頁参照)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年2月9日 昭和25(し)27
登載
刑集 第5巻3号397頁
参照法条
刑訴法272条,刑訴法376条1項,刑訴法388条,刑訴法289条,刑訴法389条,刑訴規則236条1項,刑訴規則177条,刑訴規則178条
論点52第376条刑事訴訟法

一 下級審が事件について上級審が示した意見に従つて処理した場合の下級審判決の適否
二 免訴判決に対する検察官の上訴と憲法第三九条

裁判要旨一 上級審の裁判所における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束するものであること、裁判所法第四条の規定するところである。それゆえ「上級審において下級審判決が破棄され事件の差戻があつた場合には、下級審はその事件を処理するに当り判決破棄の理由となつた上級審の事実上及び法律上の意見に拘束され必ずその意見に従いこれに基ずいて事件の審判をしなければならないのであるから、既に下級審が上級審の意見に従つて事件を処理したものである以上、その上級審の意見が客観的に間違つて居ると否とに拘らずその下級審の判決を違法視することはできない」こと当裁判所大法廷判決の示すとおりである(昭和二四年(れ)第二〇二九号同二五年一〇月二五日大法廷判決)。
二 被告人に対し免訴の言渡された判決につき検察官が上訴を申し立てることは、憲法第三九条に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年10月23日 昭和26(れ)1785
登載
刑集 第5巻11号2281頁
参照法条
裁判所法4条,旧刑訴法409条,旧刑訴法376条,憲法39条
論点53第376条刑事訴訟法

判例既変更とした事例(控訴趣意書差出最終日の指定後最終日通知書が被告人に送達される前に選任された弁護人に対する右最終日の通知の要否)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成4年11月13日 平成4(し)108
登載
集刑 第261号261頁
参照法条
刑訴法376条1項,刑訴規則236条1項,刑訴規則236条2項
論点54第376条刑事訴訟法

補佐人提出の上告趣意を判断対象とした事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成24年3月26日 平成24(あ)148
登載
集刑 第307号759頁
参照法条
刑訴法42条,刑訴法376条1項,刑訴法407条,刑訴法414条
論点55第377条刑事訴訟法

一 特別公務員暴行陵虐被告事件の職務執行の認定につき、審判に付する決定および一審判決認定事実と異る控訴審の事実認定の適法
二 刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらない一事例
三 ―特別公務員暴行陵虐被告事件の判決言渡期日に検察官が出席した場合―

裁判要旨一 特別公務員暴行陵虐の罪について、被告人の所為が、証拠品の任意提出を求める職務執行にあたり行われたという審判に付する決定事実および一審判決の事実認定を、控訴審において緊急逮捕の職務執行にあたり行われたと認定することは、それが証拠に即する限り違法ではない。
二 (裁判官池田克の補足意見)
特別公務員暴行陵虐被告事件の一審における判決言渡のために開かれた公判期日に、検察官の職務を行う弁護士が出席せず、検察官が出席しても刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉を適用すべき場合にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年2月10日 昭和28(あ)4724
登載
刑集 第10巻2号159頁
参照法条
刑訴法378条3号,刑訴法312条,刑訴法411条1号,刑訴法268条,刑訴法282条2項,刑訴法377条1号,裁判所法11条
論点56第377条刑事訴訟法

公務員の免官の効力発生時期と辞令の発信または官報の掲載

裁判要旨公務員(裁判官)の免官の効力は辞令の交付によつて生ずるものであつて、辞令の発信または官報の掲載によつて生ずるものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年4月12日 昭和27(あ)4000
登載
刑集 第9巻4号838頁
参照法条
憲法32条,裁判官分限法1条,刑訴法377条1号
論点57第377条刑事訴訟法

刑訴法第三七七条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨…〉に定める保証書の添附がない場合と裁判の不公開を理由とする上告の適否

裁判要旨原審第一、二回公判が公開されなかつたことを上告理由とするときは、上告趣意書にその事由あることの充分な証明をすることができる旨の保証書が添附されなければならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年10月9日 昭和27(あ)2820
登載
集刑 第68号143頁
参照法条
刑訴法377条,刑訴法414条
論点58第377条刑事訴訟法

一 控訴審では控訴趣意書に包含されない事項を当然職権調査すべき義務を有しない
二 控訴棄却の判決には刑訴法第三七七条乃至第三八三条にあたる事由についても判断を示しているとはいえない

裁判要旨控訴審では控訴趣意書に包含されない事項を当然職権調査しなければならない義務を負担するものではなく、従つて、かかる事項を職権調査しなかつたからといつて違法であるといえないばかりでなく所論のごとく控訴棄却の判決には控訴趣意書に包含されている事項を排斥した外に明らかに刑訴第三七七条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨…〉乃至第三八三条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることを疎明する資料を添附しなければな…〉に該当すると思われる事由もないという判断をも示しているものということもできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年5月31日 昭和25(あ)2326
登載
刑集 第5巻6号1211頁
参照法条
刑訴法392条,刑訴法393条,刑訴法377条,刑訴法383条,刑訴法405条,刑訴法411条
論点59第377条刑事訴訟法

一 司法警察員の被告人に対する供述調書に犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告知したことの記載を欠く場合と憲法第三四条
二 証拠調前の裁判所の被告人に対する質問
三 審判の公開に関する規定違反を理由とする上告と刑訴法第三七七条所定の保証書の添付

裁判要旨一 司法警察員が犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を被告人に告げたことを必ず調書に記載すべき旨の法令の規定も存しないから、所論の警察員に対する被告人の供述調書に司法警察員が被告人に対して犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告知したことの記載が存しないからといつて、被告人の抑留をとらえて憲法第三四条に反するものということはできない。
二 証拠調前に裁判所が被告人に質問することは、裁判所がその裁量に基き必要であると思料して質問し、被告人がこれに対し任意に供述をした以上、必ずしも違法であるということはできない。
三 刑訴法第三七七条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨…〉は、同法第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉により上告審に準用されるから審判の公開に関する規定違反を主張する上告趣意書には、同法第三七七条所定の保証書を添付することを要する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年11月30日 昭和25(あ)1166
登載
刑集 第4巻11号2438頁
参照法条
憲法34条,刑訴203条1項,刑訴法311条,刑訴法377条,刑訴法414条
論点60第377条刑事訴訟法

1 最高裁判所から高等裁判所判事の職務を代行させる旨の人事措置が発令されていない判事補が構成に加わった高等裁判所により宣告された原判決が,刑訴法411条1号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄された事例
2 上告裁判所が原判決を破棄するに当たり,口頭弁論を経ることを要しないとされた事例

裁判要旨1 判事補の職権の特例等に関する法律1条の2第1項に基づいて最高裁判所から高等裁判所判事の職務を代行させる旨の人事措置が発令されていない判事補が構成に加わった高等裁判所により宣告された原判決は,その宣告手続に法律に従って判決裁判所を構成しなかった違法があり,刑訴法411条1号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄するのが相当である。
2 上告裁判所が原判決を破棄するに当たり,原判決の宣告手続に法律に従って判決裁判所を構成しなかった違法があるという破棄事由の性質,被告事件の内容,審理経過等本件事情の下では,必ずしも口頭弁論を経ることを要しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成19年7月10日 平成19(あ)567
登載
刑集 第61巻5号436頁
参照法条
(1,2につき)刑訴法377条1号,刑訴法411条1号,刑訴法413条 (1につき)裁判所法18条,裁判所法19条,判事補の職権の特例等に関する法律1条の2第1項 (2につき)刑訴法43条1項,刑訴法408条
論点61第378条刑事訴訟法

一 審判の請求を受けない事件について判決した場合に当たらないとされた事例
二 被告人らの自白のとおりに有罪とした原判決の事実認定に不合理な点があるとして破棄された事例

裁判要旨一 甲、乙に対する起訴状の罪名及び罰条は殺人のみであつても、逮捕監禁の事実が殺人の実行行為の一部を組成するものとして公訴事実中に記載されていると認められるときは(判文参照)、たとえ右逮捕監禁の事実が殺人とは併合罪関係に立つものと解すべきであつたとしても、裁判所が甲につき殺人の実行行為の一部として右逮捕監禁の事実を認定し、乙につき逮捕監禁罪のみの成立を認めたことが、刑訴法三七八条三号〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われ… 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。〉にいう審判の請求を受けない事件について判決した場合に当たるとはいえない。
二 被告人らの自白にはその重要部分に信用し難い点があるのに(判文参照)、右自白のとおりに被告人らを有罪と認めた原判決は、刑訴法四一一条三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和63年1月29日 昭和59(あ)1551
登載
刑集 第42巻1号38頁
参照法条
刑法45条,刑法199条,刑法220条1項,刑訴法256条2項,刑訴法256条4項,刑訴法317条,刑訴法378条3号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点62第378条刑事訴訟法

一 交付された金銭等が交付者との共謀の趣旨に従い受交付者から第三者に供与された疑いがある場合と交付罪による起訴の可否
二 交付された金銭等が交付者との共謀の趣旨に従い受交付者から第三者に供与された疑いがある場合において交付罪で起訴された者に対する審理方法

裁判要旨一 甲が、選挙運動者たる乙に対し、公職選挙法二二一条一項一号所定の目的をもつて金銭等を交付したと認められるときは、たとえ、甲乙間で右金銭等を第三者に供与することの共謀があり乙が右共謀の趣旨に従いこれを第三者に供与した疑いがあつたとしても、検察官は、立証の難易等諸般の事情を考慮して、甲を交付罪のみで起訴することが許される。
二 甲が乙に対する金銭等の交付罪で起訴されたときは、たとえ、甲乙間で金銭等を第三者に供与することの共謀があり乙が右共謀の趣旨に従いこれを第三者に供与した疑いがあつたとしても、裁判所は、訴因の制約のもとにおいて、甲についての交付罪の成否を判断すれば足り、訴因として掲げられていない乙との共謀による供与罪の成否につき審理したり、検察官に対し右供与罪の訴因の追加・変更を促したりする義務を負うものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年1月27日 昭和58(あ)909
登載
刑集 第38巻1号136頁
参照法条
公職選挙法221条1項1号,公職選挙法221条1項5号,刑訴法247条,刑訴法248条,刑訴法312条,刑訴法378条3号
論点63第378条刑事訴訟法

一 土地管轄についての瑕疵が治癒されたと認められた事例
二 刑訴法六条〈土地管轄を異にする数個の事件が関連するときは、一個の事件につき管轄権を有する裁判所は、併せて他の事件を管轄することができ…〉所定の関連事件の管轄と併合審判の要否

裁判要旨一 刑訴法一九条〈裁判所は、適当と認めるときは、検察官若しくは被告人の請求により又は職権で、決定を以て、その管轄に属する事件を事物管轄を同…〉により移送を受けた被告事件について、当初土地管轄のあることが明らかでなかつたとしても、その後管轄違の申立がされるまでの間に土地管轄が備わるに至つた場合には(判文参照)、土地管轄についての瑕疵は治癒される。
二 刑訴法六条〈土地管轄を異にする数個の事件が関連するときは、一個の事件につき管轄権を有する裁判所は、併せて他の事件を管轄することができ…〉による関連事件の管轄が認められるためには、いわゆる固有管轄事件及びその関連事件が共に同一の裁判所に係属することを要するが、必ずしもその併合審判を要するものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年11月30日 昭和56(あ)929
登載
集刑 第238号247頁
参照法条
刑訴法2条,刑訴法6条,刑訴法7条,刑訴法9条,刑訴法19条,刑訴法329条,刑訴法331条,刑訴法378条1号,刑訴法398条,刑訴法399条,刑訴法412条
論点64第378条刑事訴訟法

殺人未遂罪の罪となるべき事実中の犯罪行為の判示として不十分とはいえないとされた事例

裁判要旨「未必の殺意をもつて、被害者の身体を、有形力を行使して、被告人方屋上の高さ約〇・八メートルの転落防護壁の手摺り越しに約七・三メートル下方のコンクリート舗装の路上に落下させて路面に激突させた」旨判示し、被害者を屋上から落下させた手段・方法を右以上に具体的に摘示していない場合でも、右判示は、殺人未遂罪の罪となるべき事実中の犯罪行為の判示として、不十分とはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和58年5月6日 昭和57(あ)1807
登載
刑集 第37巻4号375頁
参照法条
刑法199条,刑法203条,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項,刑訴法378条4号
論点65第378条刑事訴訟法

土地管轄についての瑕疵が治癒されたと認められた事例

裁判要旨刑訴法一九条〈裁判所は、適当と認めるときは、検察官若しくは被告人の請求により又は職権で、決定を以て、その管轄に属する事件を事物管轄を同…〉により移送を受けた被告事件について、その当時土地管轄があることが明らかでなかつたとしても、その後管轄違の申立がされるまでの間に土地管轄が具備されるに至つた場合には(判文参照)、土地管轄についての右瑕疵は治癒される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年10月13日 昭和56(あ)1398
登載
刑集 第37巻8号1139頁
参照法条
刑訴法2条,刑訴法6条,刑訴法9条,刑訴法19条,刑訴法329条,刑訴法331条,刑訴法378条1号,刑訴法398条,刑訴法399条,刑訴法412条
論点66第378条刑事訴訟法

監禁の訴因に対し暴力行為等処罰に関する法律一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉の共同暴行罪を認定することは違法であるとの主張が排斥された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和52年12月6日 昭和51(あ)1696
登載
集刑 第208号15頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法378条3号後段
論点67第378条刑事訴訟法

被告人の緊急避難の主張を斥けた原判決には審理不尽、理由不備の違法があるとして破棄された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年6月13日 昭和45(あ)1396
登載
集刑 第184号615頁
参照法条
刑法37条,刑訴法378条4号
論点68第378条刑事訴訟法

一 上告審判決の主文に控訴棄却の旨を表示することの可否
二 関税法一一一条一項所定の無許可輸出罪と同法一一三条の二所定の虚偽申告罪との罪数関係
三 関税法の無許可輸出罪の公訴事実中に税関吏に対し虚偽の申告をした旨の記載があるが同法の虚偽申告罪の起訴はなかつたものとみるのが相当であるとされた事例
四 当初の関税法の無許可輸出罪の訴因につき第一審で無罪とされ検察官が控訴したが控訴審でも罪とならないとされただ外国為替及び外国貿易管理法の無承認輸出罪の成立する余地があるとして破棄差し戻した判決に対し被告人のみが上告した場合と上告審の職権調査の範囲

裁判要旨一 上告審が、第一審判決を破棄した控訴審判決を破棄して第一審判決を維持するのを相当と認めるときは、第一審判決と同一内容の主文を表示するかわりに、控訴を棄却する旨の主文を表示してもよい。
二 関税法一一一条一項所定の無許可輸出罪と同法一一三条の二所定の虚偽申告罪とは併合罪の関係にある。
三 関税法の無許可輸出罪の公訴事実中に、税関吏に対し実際に輸出しようとする薬品の輸出申告をしないで他の薬品の輸出申告をした旨の記載があるが、罪名は単に関税法違反と記載され、罰条として、関税法一一一条一項のみが示されているにすぎない場合には、同法上の虚偽申告の点は起訴されなかったとみるのが相当である。
四 当初の無許可輸出罪の訴因につき第一審で無罪とされ、検察官が控訴したが、控訴審でも罪とならないとされ、ただ、外国為替及び外国貿易管理法の無承認輸出罪の成立する余地があるとして破棄差し戻した判決に対し被告人のみが上告した場合には、上告審が職権調査により右訴因を有罪とすべきものとして破棄差し戻し、または、みずから有罪の裁判をすることは許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年3月9日 昭和42(あ)582
登載
刑集 第26巻2号102頁
参照法条
刑訴法396条,刑訴法413条,刑訴法256条2項,刑訴法378条3号,刑訴法392条2項,刑訴法414条,関税法111条1項,関税法113条の2,刑法45条,刑法54条
論点69第378条刑事訴訟法

控訴審の職権調査義務

裁判要旨第一審判決の理由不備が、なんら特段の調査をするまでもなく、判決を一読すればただちに発見しうるところであるときには、控訴審は、当然職権をもって同判決を破棄しなければならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年1月18日 昭和45(あ)450
登載
集刑 第183号1頁
参照法条
刑訴法378条,刑訴法392条,刑訴法397条
論点70第378条刑事訴訟法

業務上過失傷害罪の判示として理由不備の違法があるとされた事例

裁判要旨原判決の判示によると、被告人は時速約一〇粁で北から本件交差点に進入し、一方被害者は、時速二〇ないし三〇粁で東から右交差点に進入してまもなく、北から進入してくる被告人の車を約三〇米以上の距離をへだてて認めながら、そのままの速度で進行した事実が認められるというのであり、被害者の速度は被告人の速度の少なくとも二倍であるから、特段の事情のないかぎり、被害者の車は被告人の車が本件衝突地点に至る前にその前を通過できたはずであつて、本件衝突は起こり得ないのにかかわらず、原判決は、何ら特段の事情のあつたことを判示しておらず、右の事実関係のもとにおいては、原判示の被告人の過失のため本件衝突が発生したとすることは困難であり、判決に影響を及ぼすべき理由不備、理由のくいちがいがある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年3月20日 昭和43(あ)190
登載
集刑 第170号837頁
参照法条
刑法211条,刑訴法378条4号
論点71第378条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらないとされた事例―判断遺脱の場合

裁判要旨第一審判決が、併合罪の関係にある数個の訴因中の一個に対する判断を遺脱し、残りの訴因についてのみ有罪の判決をした違法があるのに、原判決がこれを看過し、量刑不当を理由にこれを破棄したうえ、第一審判決の認定判示した事実に法令を適用して自判した違法があつても、右違法により被告人に重大な法律上の利益の侵害を生ずるような事情がなく(判文参照)、かつ、検察官の上告がない場合には、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年4月26日 昭和42(あ)1884
登載
刑集 第22巻4号342頁
参照法条
刑訴法378条3号,刑訴法411条1号
論点72第378条刑事訴訟法

訴因変更の手続を要しないとされた事例

裁判要旨本件起訴状記載の公訴事実を客観的に観察すれば、本件は被告人個人の犯罪行為を起訴した趣旨と解されること所論のとおりであるが、その事実記載の方法および第一審裁判所における審理の経過に徴し、これを被告人が法人の機関としてその業務に関して行なつたものと認定するには、訴因変更の手続を経ることを要しないものと解するのを相当とするから、第一審判決には審判の請求を受けた事件について判決をせず、審判の請求を受けない事件について判決をした違法はないとする原判決の判断は、その結論において正当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年4月16日 昭和42(あ)284
登載
集刑 第166号675頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法378条3号,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律5条1項,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律11条1項2号,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律13条1項
論点73第378条刑事訴訟法

放火罪について択一的事実摘示の方法が違法でないとされた事例

裁判要旨本件放火の手段方法に関する第一審判決の判示につき、理由不備等の違法に当らないとした原判決の判断に誤があるとは認められない。
(注、第一審判決の判示)
「……右生石灰に水を注入して之を発熱させ、前記羽目板、木箱、ガソリン類等の可燃物に引火させる方法によつたものか或はその他何等かの手段方法により、同家屋に火を放ち……」
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年3月17日 昭和41(あ)1478
登載
集刑 第162号1059頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法378条4号
論点74第378条刑事訴訟法

理由齟齬ないし理由不備の違法があつて刑事訴訟法第四一一条第一号に当るとされた事例。

裁判要旨「期末原料在庫高を正当とすれば、当該年度における生産量と原料の消費量とが計算上非常にくいちがうことにならざるを得ないのであつて、この点よりするも第一審判決認定の期末原料在庫高は誤りである」との主張に対し、「生産量と消費量とにそのようなくいちがいの存することは記録上否定し得ないけれども、記録にあらわれた被告会社の事業内容その他の状況から見て、それら多額の原料の消費に見合う記帳外の原料の受入れがなかつたとはたやすく断定し難い」として右期末在庫高に関する第一審判決の認定を支持した原判決には理由齟齬ないし理由不備の違法があり、刑事訴訟法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉に当る。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年11月13日 昭和36(あ)2298
登載
集刑 第153号45頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法378条4号,法人税法9条1号
論点75第378条刑事訴訟法

理由にくいちがいがないとされた事例。
――広義における殺意を認定した第一審判決を控訴審が少くとも殺害の未必的故意があつたと認定して事実誤認の主張を排斥した事例。

裁判要旨第一審判決は広義における殺意を判示したに止まるのであるから、原判決が事実誤認の論旨につき少くとも殺害の未必的故意のあつたことを認定して事実誤認がない旨判示しても、理由齟齬の生じないことは明らかである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年11月20日 昭和37(あ)1661
登載
集刑 第145号143頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法378条4号,刑法199条
論点76第378条刑事訴訟法

一 密輸時計の判示程度
二 右時計の追徴額の算定

裁判要旨一 弁護人の所論各点に関する原審の判断は正当として首肯できる。
二 (原判決の要旨)時計の如くその銘柄、型式、石数、側等による種別の多数に上る品物にあつては、それらによつて他から完全に区別し得る程度に表示するのは甚だ困難であつて、判決にこれを表示するに当つては、要するに被告人が同一物につき再度起訴される虞れがなく、又その価額を一応算定できる程度にこれを特定表示すれば足りる。
三 起訴にかかる時計の現品が存在せず、その銘柄、品種(男物か女物かの区別)のみ明らかで、その他、型式等の詳細が判明しない本件の如き場合にあつては、でき得る限りこれと近似した時計を選び、その価格により追徴額を算定したとしても、これを以て違法とはなし難い。しかもその内最低価格の物につきその価格を鑑定し、原判定はそれによつて追徴額を決定したものであるから相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年11月15日 昭和37(あ)1443
登載
集刑 第145号73頁
参照法条
関税法110条,関税法118条,刑訴法335条1項,刑訴法378条3号
論点77第378条刑事訴訟法

包括一罪の起訴と認められる事例。

裁判要旨一 原判事は正当として是認できる。
二 (註 原判決の要旨)本件起訴状には「被告人A、同B、同Cは順次共謀の上、昭和三三年一月中旬頃福岡市a通り喫茶店「D」に於て、Eに対し、被告人Aが職務上知つた同月一四日Eに対する福岡県風紀取締条例違反被疑事件につき、捜索差押許可状の請求があり、同月一六日同許可状が発布された事実を通報し、云々」とあるのに対し、原判示においては「……同月一四日前記令状の請求がなされた事実を通報して、被告人Aの職務上知ることを得た秘密を漏らし」と認定している。捜査段階にある被疑者に対し捜索差押許可状の請求のあつた事実はもとより、同令状発布の事実のいずれもが、捜査上の秘密事項に属することは明白であるところ、被告人Aに対しては他の被告人両名と共謀の上、売春業者Eに対し前記双方の事実を通報して、その職務上の秘密を漏らしたとする包括一罪の起訴であることは本件起訴状の記録に徴し明らかである。従つて原審において、訴因変更の手続を経なかつたのは、まことに正当であつて、起訴状にある公訴事実の範囲内で判示判定していることは、これまた原判示と対照すれば自から明白である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和35年3月31日 昭和34(あ)2136
登載
集刑 第132号799頁
参照法条
国家公務員法100条1項,国家公務員法109条12号,刑訴法378条3号
論点78第378条刑事訴訟法

常習賭博の判示方法。

裁判要旨常習として賭博をした事実を認定判示するには、常習として賭博をなした旨を説示すれば定り、いかなる事実によつて賭博の常習を認めたかを摘示する必要はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年5月22日 昭和33(あ)2496
登載
集刑 第129号941頁
参照法条
刑法186条1項,刑訴法335条1項,刑訴法378条4号
論点79第378条刑事訴訟法

一 控訴審の公判と憲法第三七条第一項および第八二条第一項。
二 量刑過重の控訴趣意と量刑過軽の控訴趣旨がいずれも理由ありとした控訴審判決の説示と理由そごの有無。

裁判要旨一 控訴審における公判の審理が、単に、控訴趣意書に基く陳述とこれに対する相手方の答弁だけであつても、被告人に対しては、右公判に出頭する機会が適法に与えられ、しかも検察官が出席し、弁護人が出頭して、弁論をしている以上、憲法第三七条第一項、第八二条第一項に違反しない。
二 第一審の有罪判決に対し、検察官、被告人双方共控訴を申し立て、控訴趣意として、検察官は第一審判決の量刑が軽きにすぎると主張し、被告人は、その量刑が重きに過ぎると主張している場合に、控訴審の判決が、「第一審の科刑は不当であると思われるので、論旨は結局においていずれも理由がある」と説示しても、理由そごの違法はない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和33年7月2日 昭和27(あ)276
登載
刑集 第12巻11号2377頁
参照法条
憲法37条1項,憲法82条1項,刑訴法389条,刑訴法390条,刑訴法400条但書,刑訴法378条4号,刑訴法397条1項,刑訴法381条
論点80第378条刑事訴訟法

一 期待可能性がないとした判断が法令の適用の誤または理由不備であるとされた事例。
二 原判決が一部無罪、一部有罪としたとき、上告審が無罪の部分の判断が誤りであるとする場合の措置。

裁判要旨一 労働争議に際し、被告人ら労組員が会社側幹部に暴行を加え且つ引き続き監禁した事件において、原判決が、争議に相当の理由があり、急速な解決を必要としたこと、会社側幹部が逃避的態度を示したこと、被告人等は組合員の勢に引き摺られたものであること、加えた危害が高度でないことなどの理由だけで前半の暴行を期待可能性がないものとして無罪とし、後半の不法監禁のみを有罪としたときは無罪の判断部分について法令の適用を誤つたかまたは理由不備の違法があることになる。
二 右のように原判決が一部無罪、一部有罪とした場合上告審が有罪部分には破棄事由がないが無罪部分について破棄事由があると認めたときは、原判決全部を破棄すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年11月4日 昭和30(あ)1996
登載
刑集 第12巻15号3439頁
参照法条
刑法37条,刑訴法380条,刑訴法378条4号,刑訴法411条,刑訴法413条
論点81第378条刑事訴訟法

刑訴法第三七八条第三号〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われ… 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。〉にあたる違法の認められない一事例

裁判要旨起訴にかかる事実は、競馬施行者でない被告人が、地方競馬の競走に関し勝馬投票券に類似するものを発売して競馬を行つたという競馬法第三〇条第一号違反の起訴にかかる事実を、判決において被告人は地方競馬の競走に関し勝馬投票類似の行為をさせて利を図つたという同法第三〇条第三号違反の事実を認定したからといつて、刑訴第三七八条第三号〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われ… 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。〉にあたる違法があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年7月19日 昭和32(あ)725
登載
刑集 第11巻7号2006頁
参照法条
競馬法30条,競馬法1条3項,刑訴法378条3号
論点82第378条刑事訴訟法

一 公文書偽造罪の判示として正当と認められる一事例

二 偽造外食券の形式外観
三 心神耗弱の主張に対する判断の遺脱は絶対的控訴理由となるか
四 右判断遺脱は訴訟手続の法令違反として常に判決に影響するか

裁判要旨一 原判決が「第一院判決挙示の証拠によると、同判示の偽造公文書は、いずれも、当該公文書の信用を害する危険がある程度の形式外観を具えていることが認められる」旨の判示並びに『第一審判決の判示各偽造外食券に「当該地方食糧配給公団名及び交付配給所名のなつ印」の要求されるのは、整理上交付配給所を明らかにするためで、これを欠くからといつて外食券でないという趣旨ではないと解すべき』旨の判示は、いずれも正当であると認められる。
二 原判決が、所論のごとく第一審判決が心神耗弱の主張に対し、判断をしなかつた違法を認めながら、所論のごとき理由をもつて判決に影響を及ぼさないとして弁護人の主張を排斥したこと、並びに、所論各高裁の判決がかかる違法は判決に影響を及ぼすこと明らかである旨判示したことは、所論のとおりである。従つて、原判決は、右各高等裁判所の判例に違反したものといわなければならない。しかし当裁判所第三小法廷は、原判決後昭和二八年五月一二日原判決と同趣旨に出た昭和二六年九月一三日の東京高等裁判所の判決を是認して、判断遺脱があつても常に必ずしも判決に影響を及ぼさない旨判示しているのである(判例集七巻五号一〇一一頁以下参照)。そして、当法廷においても右の判断を正当と考える。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年12月27日 昭和28(あ)2055
登載
集刑 第116号555頁
参照法条
刑法155条,刑法39条2項,刑訴法44条,刑訴法335条1項,刑訴法335条2項,刑訴法378条4号,刑訴法379条
論点83第378条刑事訴訟法

一 別個の所持の認められる一事例
二 所持罪における場所の変更と公訴事実の同一性
三 被告人の控訴趣意書に対する判断遺脱が刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例

裁判要旨一 かねて自宅に保管していた麻薬を持ち出し、これを二個に分割し、その一部を他人に交付し、残余の部分を留保して自宅外の場所に隠匿した場合には別個独立の所持罪が成立する。
二 麻薬所持の罪において起訴事実と認定事実との間に、所持の場所に多少の変更があつても、所持の目的物が同一である限り、その一事を以つて直ちに公訴事実の同一性が失われるとは解されない。
三 被告人の控訴趣意書中事実誤認を指摘するが如き口吩があつても、控訴の要旨は量刑過重に失するを不服とし刑の執行猶予を願うにあるときは、同被告人の弁護人の控訴趣意の量刑不当の主張に対する判断がなされている限り、右被告人の控訴趣意書に対する判断を遺脱した違法があつても、右違法は判決に影響がなく刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年7月19日 昭和28(あ)2775
登載
刑集 第9巻9号1885頁
参照法条
旧麻薬取締法(昭和23年法律123号)3条1項,旧麻薬取締法(昭和23年法律123号)57条,刑法45条,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法378条3号,刑訴法392条1項,刑訴法411条
論点84第378条刑事訴訟法

第一審が公訴事実よりも供与額を少なく認定した場合、その差額につき特に判決の理由において説明することを要するか

裁判要旨第一審が、被告人Aが昭和二七年九月二五日頃その自宅でBに一二、〇〇〇円を供与したとの公訴事実(第三の9)について、判示第三の8の如くBに対する五、〇〇〇円だけの供与の事実を認定したのは正当である。而してこのような場合に、公訴事実の一二、〇〇〇円と右認定の五、〇〇〇円との差額七、〇〇〇円を認めなかつた理由を特に説明する必要のないことは原判決の説示するとおりであつて、何等所論理由不備の違法はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年5月20日 昭和29(あ)3891
登載
集刑 第105号753頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法44条1項,刑訴法378条4号
論点85第378条刑事訴訟法

審判の請求を受けない事件について判決をしたものとならない事例

裁判要旨起訴状に「被告人は納税組合設立の件が議せられている労働組合大会の席上『現在a町で工事中の観光道路は幅三間で戦車が通るようになつているという事は米ソ戦争の際アメリカの軍用道路に使われるのだ。現在の警察予備隊七万五千名は売国奴吉田によつて戦争に駆り立てられているのは明らかで、其の拳銃も我々の税金で賄われているので其の様な税金を納めるのには反対だし、従つて其の様な税金を納める為めの納税組合にも反対である。』旨発言して地方税を納入しないことをせん動した」と記載して起訴されたのに対し、第一審判決が起訴条に記載のない『委員長は税金が戦争準備のため使われていないというが平衡交付金が減らされたこと自体戦争準備のために使われている証拠だ』との文言を被告人の発言内容として、右起訴状記載の発言内容に附加して判示したからといつて第一審判決は審判の請求を受けない事件について判決をしたものではない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年11月30日 昭和26(あ)3472
登載
刑集 第9巻12号2529頁
参照法条
刑訴法256条1乃至3項,刑訴法312条,刑訴法378条3号,地方税法12条1項
論点86第378条刑事訴訟法

強制猥褻の訴因に対し、訴因変更手続を経ることなく公然猥褻の事実を認定した判決と刑訴第三七八条第三号〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われ… 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。〉後段

裁判要旨行為の公然性について何ら明示するところなく、単に被告人甲乙両名はS方二畳の間において、M女に対し暴行を加え、それぞれ猥褻の行為をなしたとの強制猥褻の訴因に対し、訴因の変更または追加の手続をなすことなく、飲食店S方において右S及び同店の客T外二名の面前で被告人甲乙両名はM女に対しそれぞれ公然猥褻の行為をなしたとの事実を認定した有罪判決は、審判の請求を受けない事件について判決をした違法があるものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年8月20日 昭和27(あ)4522
登載
刑集 第8巻8号1249頁
参照法条
刑法176条,刑法174条,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法378条3号
論点87第378条刑事訴訟法

一 公判調書における文字の挿入削除が刑訴規則第五九条所定の方式を欠く場合の効力
二 予備的訴因の追加により公訴事実の同一性が害されない事例
三 予備的訴因につき有罪を認定した場合に主たる訴因に対する判断を明示することの要否

裁判要旨一 公判調書における文字の挿入削除が刑訴規則第五九条所定の方式を欠いていても、ただちにその挿入削除を無効とすべきではなく、その効力の有無は、裁判所が諸般の状況に照して合理的な裁量により決すべきものである。
二 「被告人はA税務事務所に勤務中、B日頃、かねて同税務事務所滞納整理係Cから徴収方依頼を受けていた納税者D会社より、固定資産税一六四、七三〇円を同会社振出の同額の小切手で徴収し保管中、その頃擅に着服横領した。」との横領の訴因に対し、「被告人はA税務事務所に勤務中、B日頃、D会社において、その制限なきにかかわらず権限あるをよそおい、Eに対し同会社の固定資産税一六四、七三〇円の請求をし、同人をしてその旨誤信せしめ、よつて同人から同会社振出の同額の小切手の交付を受けて、これを騙取した。」との詐欺の予備的訴因を追加することにより、公訴事実の同一性は害されない。
三 主たる訴因と予備的訴因のある場合に、予備的訴因につき有罪を認定したときは、主文において主たる訴因につき無罪を言い渡すべきでないことは勿論、理由中においても、かならずしもこれに対する判断を明示することを要するものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年3月23日 昭和27(あ)5538
登載
刑集 第8巻3号305頁
参照法条
刑訴規則59条,刑訴法256条3項,刑訴法256条5項,刑訴法312条1項,刑訴法44条1項,刑訴法336条,刑訴法378条3号,刑法252条1項,形法246条1項
論点88第378条刑事訴訟法

一 騒擾罪の成立要件
二 訴訟費用の裁判に対する不服申立

裁判要旨一 騒擾罪は多衆が集合して暴行脅迫をすることによつて成立しその地方の静謐を害することを要件とするものではないから、騒擾罪にあたる事実を判示するには、多衆が集合して暴行または脅迫の行為をしたことを明らかにすれば足り、特にその行為が地方の静謐を害しまたは公共の平和を害するおそれのあることを判示する必要はなく、従つて仮りに同判決に他方の静謐を害した旨の判示にその証拠が欠けていたとしてもそれが直ちに理由不備の違法を来すものでもない。(大正一三年(れ)一〇〇九号同年七月一〇日大審院判決及び昭和二六年(れ)九〇八号同二八年五月二一日第一小法廷判決参照)
二 本案の裁判に対する上告理由がない場合は、訴訟費用の裁判に対する不服の申立は許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年11月16日 昭和28(あ)5577
登載
集刑 第100号411頁
参照法条
刑法106条,刑訴法335条,刑訴法378条4号,刑訴法181条,刑訴法185条
論点89第378条刑事訴訟法

被告人のみの控訴に基づく控訴審において裁判所が第1審判決の理由中で無罪とされた事実を第1審に差し戻すことが職権の発動の限界を超え許されないとされた事例

裁判要旨第1審判決が,起訴された事実を理由中で無罪とした上,同事実に含まれるとして,同事実と併合罪の関係にある事実を認定して有罪の判決をし,それに対し被告人のみが控訴したなど判示の訴訟経過の下では,控訴審裁判所が,刑訴法378条3号〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われ… 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。〉前段,後段に違反する違法があるとして第1審判決を破棄するに当たり,第1審判決の理由中で無罪とされた事実について,有罪とする余地があるものとして第1審に差し戻すことは,職権の発動の限界を超えるものであって,許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成16年2月16日 平成14(あ)876
登載
刑集 第58巻2号133頁
参照法条
刑訴法378条3号,刑訴法392条2項,刑訴法400条
論点90第379条刑事訴訟法

刑訴法三七九条〈前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申…〉にいう「訴訟手続の法令違反が判決に影響を及ぼすことが明らかである」ことの意義に関する判例に対する判例違反の主張が「欠前提」とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年4月1日 昭和55(あ)975
登載
集刑 第221号293頁
参照法条
刑訴法379条
論点91第379条刑事訴訟法

証拠として請求も取調べもされず記録中に編綴されてもいない供述調書を証拠の標目に掲げた違法と判決への影響

裁判要旨第一審判決が証拠の標目に挙げているAの司法巡査に対する供述調は、証拠として請求書も取調べもされておらず、記録中に編綴されてもいないが、右判決の記載は誤記と認めるのが相当であるから、右判決及び原判決に影響を及ぼすものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年3月7日 昭和49(あ)2238
登載
集刑 第195号567頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法379条,刑訴法335条1項
論点92第379条刑事訴訟法

一 公判調書の記載の正確性についての異議申立権の行使が妨げられた場合と刑訴法五二条の適用の有無
二 第一審公判調書の記載の正確性についての異議申立権行使の機会が与えられなかった違法が控訴審判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の違法にあたらないとされた事例

裁判要旨一 公判調書の記載の正確性についての異議申立権の行使が妨げられている場合には、刑訴法五二条〈公判期日における訴訟手続で公判調書に記載されたものは、公判調書のみによつてこれを証明することができる。〉の証明力が排除される。
二 本件の具体的諸般の情況(判文参照)のもとでは、第一審公判調書の記載の正確性についての異議申立権行使の機会が与えられなかった違法は、控訴審判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の違法にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年3月14日 昭和46(あ)1991
登載
刑集 第26巻2号195頁
参照法条
刑訴法51条,刑訴法52条,刑訴法379条
論点93第379条刑事訴訟法

訴因の変更を促しまたはこれを命じないことが審理不尽になるとされた事例

裁判要旨裁判所は、原則として、自らすすんで検察官に対し、訴因変更手続を促しまたはこれを命ずる義務はないが、本件のように、証拠上、起訴状に記載された殺人の訴因については無罪とするほかなくても、これを重過失致死という相当重大な罪の訴因に変更すれば有罪であることが明らかな場合には、例外的に、訴因変更を促しまたはこれを命ずる義務があり、これをしないで殺人の訴因につきただちに無罪の判決をするのは、審理不尽の違法があるものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年11月26日 昭和42(あ)1192
登載
刑集 第22巻12号1352頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法397条1項,刑訴法379条,刑法199条,刑法211条
論点94第379条刑事訴訟法

一、上告審において外国の公文書(韓国の戸籍抄本)を取り調べる方法
二、右戸籍抄本取調の結果審理不尽の違法があるとして原判決が破棄された事例

裁判要旨一、上告審において韓国の戸籍抄本を取り調べるにあたつては、公判にこれを顕出するをもつて足りる。
二、被告人が外国人登録事項確認申請にあたつて申告した姓名、生年月日と一致する戸籍抄本が、上告審においてはじめて提出され、その取調が行なわれた場合、虚偽の申請をしたものとして被告人を有罪とした第一審判決およびこれを是認した原判決は、結果的に審理不尽の違法をきたし、これを破棄しなければ著しく正義に反する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年9月19日 昭和42(あ)810
登載
集刑 第164号521頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法393条1項,刑訴法404条,刑訴法305条,刑訴法411条1号,刑訴法379条,刑訴法435条6号
論点95第379条刑事訴訟法

一 適法な控訴理由として前提を欠く一事例
二 供述調書謄本の証拠能力

裁判要旨一 第一審においては、弁護人は所論供述調書の内容が信用できないことを理由として、証拠とすることに異議を申立てたのであり、右異議は、原本の存在を争つたり、謄本なるが故に証拠能力がないと主張したものでないことが認められる。従つて、被告人が本件につき控訴審において申立てた控訴趣意第一点において「而も右は謄本であつて、弁護人において謄本を証拠とすることに対し異議を述べており原本の顕出もなされていないものであるから証拠となし得ないものである」というのは、第一審において主張のなかつた事項を恰も主張したもののごとくいうのであり、第一審判決の攻撃としては前提を欠くものである。
二 第一審が本件供述調書の謄本の内容を措信するに足るものとしてこれを証拠に採用したことには違法は認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年6月28日 昭和30(あ)2427
登載
集刑 第113号929頁
参照法条
刑訴法379条,刑訴法322条,刑訴法323条
論点96第379条刑事訴訟法

証拠能力のない証拠を証拠調した違法と判決に対する影響の有無

裁判要旨証拠能力のない証拠を証拠調した違法のある場合、これを判決に証拠として掲げていない一事を以て直ちに右違法は判決に影響がないと解することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年8月26日 昭和25(あ)3095
登載
刑集 第9巻9号2049頁
参照法条
刑訴法379条,刑訴法305条
論点97第379条刑事訴訟法

改正前の法令を適用した誤が判決に影響を及ぼさない一事例

裁判要旨第一審判決は、被告会社につき同判決別表一一の犯罪に対し、昭和二四年一二月二七日法律第二八六号による改正前の物品税法第一八条第一項を適用し、同被告を罰金六十一万五千七百円に処しているが、前記犯罪の行為は昭和二五年一月九日であるから、これに対しては右法律第二八六号附則一項により前記改正後の物品税法第一八条を適用すべきものである。従つて第一審判決はこの点において法令の適用を誤つた違法があることとなるが、改正後の物品税法第一八条第一、二項によれば前記犯罪につき被告を金五十万円以上の罰金に処し得ること明らかであるから、右第一審判決の違法は判決に影響がなく、従つてこれを理由として判決を破棄すべきものとは認められない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月17日 昭和28(あ)3198
登載
集刑 第105号475頁
参照法条
物品税法(昭和24年法律第286号による改正前)18条,物品税法(昭和24年法律第286号による改正後)18条,刑訴法379条,刑訴法411条
論点98第379条刑事訴訟法

一 上告申立をした原審弁護人がその資格で提出した上告趣意書の効力
二 上告趣意書提出期間後に上告審の弁護届を提出した原審弁護人が右期間内に提出した上告趣意書の効力
三 刑法第九五条と鉄道営業法第三八条との関係

裁判要旨一 自ら上告申立をした原審弁護人が上告趣意書提出期間内にその資格で上告趣意書を提出した場合でも、右上告趣意は審理の対象とさるべきものである。
二 上告趣意書提出期間内に、原審弁護人が、その資格で上告趣意書を提出した場合でも、裁判の時まで上告審の弁護届が追完されたときは、右上告趣意は拒否さるべきではなく、審理するを相当する。
三 公務員たる鉄道係員(駅助役)の執務中、同係員の脅迫してその職務の執行を妨害した場合には、一個の行為にして刑法第九五条と鉄道営業法第三八条との二個の罪名に触れるものとして、重き前者の刑を以つて処断すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和29年7月7日 昭和24(れ)1028
登載
刑集 第8巻7号1052頁
参照法条
旧刑訴法379条,旧刑訴法423条,旧刑訴法41条1項,旧刑訴法42条,刑法54条,刑法95条,鉄道営業法38条
論点99第379条刑事訴訟法

公判調書における判決宣告期日の誤記と判決への影響の有無

裁判要旨第一審第三回公判調書の記載によれば、第一審判決の宣告期日は、昭和二四年八月三日と指定されており、同第四回公判調書によれば、右八月三日に同判決の宣告が為された旨記載されているが、三輪、豊田両弁護人の上告趣旨第一点、三、挙示の各書面中の年月日の記載によれば、右各公判調書の八月三日の記載は、九月五日の誤記であつて、本件第一審判決宣告の日は、昭和二四年九月五日であると認定するを相当とする。従つてこの点に関する原判決の判断は、失当たるを免れないものといわなければならない。尤も、右は、前記第一審公判調書の年月日の記載が誤記たるに止り(三輪弁護人等の上告趣意第一点、二、掲記の大正一三年二月九日の大審院判例参照)、有効な第一審判決の宣告があり、従つて、適法な控訴の申立があつたのであるから、その欠点は、結局において第一審判決及び原判決に影響を及ぼすものとは思われない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年1月14日 昭和26(あ)4393
登載
集刑 第91号349頁
参照法条
憲法31条,刑訴法379条,刑訴法52条,刑訴法48条,刑訴法411条,刑訴規則44条2号,刑訴規則44条30号
論点100第379条刑事訴訟法

判決書における契印の欠缺の刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉

裁判要旨判決書に契印がないということだけでは判決を破棄すべき法令違反に当らない(昭和二五年(あ)第一九七号同年六月一五日第一小法廷判決参照)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年10月26日 昭和29(あ)2137
登載
集刑 第99号495頁
参照法条
刑訴法379条,刑訴法411条,刑訴規則58条2項
論点101第379条刑事訴訟法

宣告刑を、判決書と告知された判決との間に、有罪として認定された犯罪事実の個数が合致するか否かの判断の資料に供することができるか

裁判要旨第一審裁判所の判決書において有罪として認定摘示された犯罪事実の個数と宣告された判決において有罪として告知された犯罪事実の個数とが合致するかどうか、即ち判決書には全部有罪となつているが、宣告の際には一部分を無罪として告知したかどうかを上訴審において判断する場合、争なき宣告刑をその判断の資料の一つに供することは妨げない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年12月25日 昭和26(あ)2313
登載
集刑 第90号399頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法336条,刑訴法333条1項,刑訴法379条,刑訴法381条,刑訴規則34条,刑訴規則35条
論点102第379条刑事訴訟法

第一審における証人喚問手続に関する違法があつても判決に影響を及ぼさない事例

裁判要旨第一審の裁判官が職権を以て所論証人を喚問する旨の決定をするについて検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなかつたことは所論のとおりであるが、検察官及び被告人又は弁護人はこれに対し何等異議の申立をした形跡はなく、却つて、右証人尋問の際、検察官及び弁護人は自ら進んで右証人の尋問をもしていることが認められるのであるから、前記違反は、該証言を証拠とすることに影響を及ぼさないことが明白である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年12月17日 昭和25(あ)334
登載
集刑 第89号489頁
参照法条
刑訴法298条2項,刑訴法299条2項,刑訴法379条,刑訴規則190条2項後段
論点103第379条刑事訴訟法

控訴審における公判期日に、私選弁護人が出頭しない場合、国選弁護人を選任して弁論させることと訴訟手続に関する法令違反の有無。

裁判要旨原審が弁護人古明池為重の第一回公判期日の変更申請はこれを許容したが、第二回公判期日の変更申請はこれを許容しなかつたこと及び同弁護人が右公判期日に立ち会わなかつたとしても、右期日に新たに選任された国選弁護人によつて被告人自身が選任した古明池弁護人提出の控訴趣意書に基ずく弁論がなされたこと、その控訴趣意書の内容も特に新たな事実証拠の取調を要する趣旨でもないときは訴訟手続に法令違反があるといえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年7月8日 昭和25(あ)3117
登載
集刑 第66号81頁
参照法条
刑訴法30条,刑訴法289条,刑訴法379条,刑訴法388条,刑訴法391条
論点104第379条刑事訴訟法

一 第一審における証人尋問手続に関する違法のみでは判決に影響を及ぼさない一事例
二 全く日本語を解しないでもない(或る程度日本語を解する)被告人に対し、第一回公判に通訳を付せず、第二回公判にそれを付したことと刑訴法第一七五条

裁判要旨一 訴訟手続に法令の違反があることを控訴の理由とする場合には、その違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを要するのであるが(刑訴三七九条〈前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申…〉参照)、仮りに所論のように第一審の証人尋問手続に違反があつたとしても、ただそれだけでは右の違法は判決に影響を及ぼすこと明らかな場合とは到底云うことができない。
二 被告人が全く日本語を解しなかつた者でない場合は、刑訴一七五条〈国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない。〉により通訳人に通訳させなければならない場合ではない。たゞ、刑訴一七五条は、このような場合に通訳人を付することを禁ずる趣旨ではないので、第一審裁判所が第二回公判以後審理上適当の処置として通訳人を付したのは相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年7月22日 昭和25(あ)2767
登載
集刑 第66号307頁
参照法条
刑訴法379条,刑訴法411条,刑訴法175条
論点105第379条刑事訴訟法

公判前整理手続を終了するに当たり確認された争点に明示的に掲げられなかった点につき,公判手続で争点として提示する措置をとることなく認定した第1審判決に違法はないとされた事例

裁判要旨殺害行為に先立つけん銃の引き金を引いたという行為につき,公判前整理手続を終了するに当たり確認された争点に明示的に掲げられなかったとしても,同手続で議論され,公判手続で実質的な攻撃防御を経ていたなどの本件事実関係(判文参照)の下においては,公判手続で争点として提示する措置をとることなく殺害に至る経過として上記行為を認定した第1審判決に違法はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成26年4月22日 平成24(あ)1816
登載
刑集 第68巻4号730頁
参照法条
刑訴法294条,刑訴法316条の24,刑訴法379条,刑訴規則208条
論点106第379条刑事訴訟法

1 前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合の証拠能力
2 前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いることが許されないとされた事例

裁判要旨1 前科証拠は,自然的関連性があることに加え,証明しようとする事実について,実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに証拠能力が肯定され,前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合は,前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから,それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであるときに証拠能力が肯定される。
2 被告人の現住建造物等放火等の前科に係る証拠を被告人と起訴に係る現住建造物等放火の犯人の同一性の証明に用いることは,前科に係る犯罪事実に顕著な特徴があるとはいえず,同事実と起訴に係る犯罪事実との類似点が持つ両者の犯人が同一であることを推認させる力がさほど強いものではないなどの事情の下では,被告人に対して放火を行う犯罪性向があるという人格的評価を加え,これをもとに被告人が犯人であるという合理性に乏しい推論をすることに等しく,許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成24年9月7日 平成23(あ)670
登載
刑集 第66巻9号907頁
参照法条
(1,2につき)刑訴法317条,刑訴法379条
論点107第379条刑事訴訟法

被告人の検察官調書の取調べ請求を却下した第1審の訴訟手続について,同調書が犯行場所の確定に必要であるとして,その任意性に関する主張立証を十分にさせなかった点に審理不尽があるとした控訴審判決が,刑訴法294条〈公判期日における訴訟の指揮は、裁判長がこれを行う。〉,379条〈前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申…〉,刑訴規則208条の解釈適用を誤っているとされた事例

裁判要旨検察官請求に係る被告人の検察官調書の取調べ請求を却下した第1審の訴訟手続について,同調書が犯行場所の確定に必要であるとして,その任意性に関する主張立証を十分にさせなかった点に審理不尽があるとした控訴審判決は,同調書の立証趣旨が犯行場所に関連するものではなく弁解状況等であり,検察官は控訴審において犯行場所がいずれであっても刑責に軽重はない旨釈明していたなどの本件訴訟経過の下では,刑訴法294条〈公判期日における訴訟の指揮は、裁判長がこれを行う。〉,379条〈前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申…〉,刑訴規則208条の解釈適用を誤った違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年10月16日 平成21(あ)191
登載
刑集 第63巻8号937頁
参照法条
刑訴法294条,刑訴法379条,刑訴規則208条
論点108第379条刑事訴訟法

1 検察官の出席がないまま判決を宣告した後退廷した被告人を呼び戻して検察官出席の上再度行った判決の宣告が法的な効果を有しないとされた事例
2 検察官の出席がないまま行われた第1審の判決宣告手続の違法と判決に対する影響の有無

裁判要旨1 第1審の裁判官が,判決宣告期日として指定告知した日時に,検察官の出席がない法廷で,判決を宣告した上,被告人の退廷を許し,被告人が法廷外に出た後,勾留場所に戻った被告人を呼び戻して検察官出席の上再度行った判決の宣告は,法的な効果を有しない。
2 検察官の出席がないまま行われた第1審の判決宣告手続には,判決に影響を及ぼすことが明らかな違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成19年6月19日 平成19(あ)88
登載
刑集 第61巻4号369頁
参照法条
(1,2につき)刑訴法282条2項,刑訴法342条,刑訴規則35条 (2につき)刑訴法379条
論点109第379条刑事訴訟法

殺人,死体遺棄の公訴事実について被告人が第1審公判の終盤において従前の供述を翻し全面的に否認する供述をするようになったが弁護人が被告人の従前の供述を前提にした有罪を基調とする最終弁論をして裁判所がそのまま審理を終結した第1審の訴訟手続に法令違反は存しないとされた事例

裁判要旨殺人,死体遺棄の公訴事実について,被告人が第1審公判の終盤において従前の供述を翻し全面的に否認する供述をするようになったが,弁護人が被告人の従前の供述を前提にした有罪を基調とする最終弁論をして,裁判所がそのまま審理を終結した第1審の訴訟手続には,上記弁論において弁護人が,証拠関係,審理経過を踏まえた上で被告人に最大限有利な認定がなされることを企図した主張をしたとみることができるなど判示の事情の下では,法令違反は存しない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成17年11月29日 平成16(あ)2172
登載
刑集 第59巻9号1847頁
参照法条
刑訴法30条,刑訴法293条2項,刑訴法379条,刑訴規則211条,憲法37条3項
論点110第379条刑事訴訟法

被害者の検察官調書抄本を採用した第1審の訴訟手続に法令違反がありこれが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとして第1審判決を破棄した原判決に、刑訴法397条1項〈第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。〉、379条〈前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨第1審裁判所が被害者の検察官調書抄本を刑訴法321条1項2号前段により採用する証拠決定をしたことについて、証拠能力をいまだ獲得していない証拠を採用し、事実認定に供した違法があるとして、同法397条1項、379条により第1審判決を破棄した原判決は、原審における事実の取調べの結果も踏まえ、前記証拠決定の時点で既に被害者が供述不能の情況にあったとも説示しており、同時点で同法321条1項2号前段の要件を満たしていたと認めているのであるから、前記証拠決定それ自体が違法であるとはいえないにもかかわらず、同法379条に規定する事由があるとして第1審判決を破棄したことに帰し、同法397条1項、379条の解釈適用を誤った違法がある。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和7年7月7日 令和6(あ)1161
登載
刑集 第79巻5号159頁
参照法条
刑訴法379条、刑訴法397条1項
論点111第380条刑事訴訟法

一、併合罪の刑の加重をするにあたり刑法一四条を適用しなかつた違法と判決に及ぼす影響
二、公判調書中の「公判をした裁判所及び裁判官」欄ならびに「裁判所書記官」欄の各記載が単なる誤記と認められた事例

裁判要旨一 第一審判決に、併合罪の刑の加重をするにあたり刑法一四条を適用しなかつた違法があつても、被告人に対するその宣告刑が正当な処断刑の範囲内にあり、かつ、被告人の犯罪事実の内容その他情状に徴し右宣告刑が重きに過ぎるものと認められないときは、右違法が判決に影響を及ぼすこと明らかであるとはいえない。
二 第一審第九回公判調書中の「公判をした裁判所及び裁判官」欄に「金沢地裁小松支部乙」とあり、また「裁判所書記官」欄に「甲」とあるのは、同公判調書の末尾に作成者として金沢地方裁判所小松支部裁判所書記官乙の署名および押印があり、また、裁判官認印欄に「甲」の認印があること、ならびに第一審のその余の公判調書および判決書の各記載に徴すれば、それぞれ「金沢地方裁判所小松支部甲」および「乙」の単なる誤記にすぎないと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年2月16日 昭和47(あ)1193
登載
刑集 第27巻1号46頁
参照法条
刑法14条,刑訴法335条1項,刑訴法380条,刑訴法48条,刑訴法52条,刑訴規則44条
論点112第380条刑事訴訟法

控訴審における訴因罰条の追加と第一審判決破棄の適否

裁判要旨第一審当時の訴因罰条からみて、第一審判決になんら誤りが見いだされないのに、控訴審において新たに追加された訴因罰条が認められることを理由として、控訴審裁判所が、第一審判決を破棄することは許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和42年5月25日 昭和41(あ)2022
登載
刑集 第21巻4号705頁
参照法条
刑訴法404条,刑訴法312条1項,刑訴法396条,刑訴法397条,刑訴法380条
論点113第380条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらないとされた事例。

裁判要旨第一審判決が、併合罪として起訴された被告人の延三二名に対する三二回、合計四二万円の供与、交付の公職選挙法違反行為につき、全部有罪としたところ、原判決が右起訴事実中一名に対する一回、一万円の交付について無罪と認めながら、右第一審判決の事実誤認、法令適用の誤は判決に影響を及ぼさないとして控訴を棄却したときは、原判決には判決に影響を及ぼすべき法令違反はあるけれども、これを破棄しなければ著しく正義に反するものとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年8月23日 昭和38(あ)542
登載
刑集 第17巻6号628頁
参照法条
刑訴法411条1号,刑訴法380条,刑訴法382条
論点114第380条刑事訴訟法

控訴審が第一審判決の法令の適用に誤りありとして破棄自判した場合と第一審判決の証拠の援用。

裁判要旨控訴審が第一審判決の法令の適用に誤りありとしてこれを破棄自判するにあたり、第一審判決の認定した事実に法令を適用したのみでその証拠を引用せずまたはその証拠の標目を掲げていないとしても、控訴審は第一審判決挙示の同一の証拠を援用した趣旨と解するのを相当とする。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年9月2日 昭和35(あ)1079
登載
集刑 第135号227頁
参照法条
刑訴法400条但書,刑訴法335条1項,刑訴法380条
論点115第380条刑事訴訟法

一 有価証券変造罪の成立する事例
二 刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらない事例
―有価証券の偽造と変造

裁判要旨一 行使の目的をもつて有効に成立している他人振出名義の小切手の金額欄の数字をインキ消で抹消した上、ほしいままに同欄に別の金額をあらたにペンで記入したときは、有価証券の偽造罪ではなく、その変造罪が成立する。
二 有価証券の変造にあたるものと解すべき場合に、第一審判決がこれを有価証券の偽造にあたると判示したとしても、判決を破棄する事由とはならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和34年2月12日 昭和33(あ)1176
登載
集刑 第129号125頁
参照法条
刑法162条1項,刑訴法380条,刑訴法411条1号
論点116第380条刑事訴訟法

業務上横領罪の共犯ではあるが身分なき被告人に対し刑法第二五三条を適用したる違法と判決への影響

裁判要旨業務上の占有者たる身分なき被告人が他人の業務上横領罪に共同正犯として加功した事実を認めながら刑法二五三条を適用処断したのは性質上判決に影響を及ぼすことの明らかな法律適用の誤りがあるものというべきこと論をまたない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年6月5日 昭和29(あ)2903
登載
集刑 第113号719頁
参照法条
刑法65条,刑法252条,刑法253条,刑訴法380条
論点117第380条刑事訴訟法

一 農業団体法第六七条の合憲性
二 犯罪の個数の認定の誤による罰金合算額の相違が判決に影響することが明らかでない一事例

裁判要旨一 農業団体法第六七条は憲法に違反しない。
二 犯罪の個数の認定を誤つたため罰金の合算額が正当な合算額を超えている場合であつても、宣告刑が正当な合算額の範囲内であつて、しかも甚だ低いものである場合には、右の法令違反は、判決に影響することが明らかであるとはいえない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年3月16日 昭和27(あ)697
登載
刑集 第9巻3号461頁
参照法条
憲法13条,憲法14条,農業団体法67条,刑訴法380条,刑法55条
論点118第380条刑事訴訟法

控訴審において控訴を棄却する場合には如何なる時期を標準として少年法第五二条の適用の適否を判断すべきか

裁判要旨上訴審において原判決を破棄し自判する場合においては、その自判する時を標準として少年法五二条を適用すべきや否やを決すべきであるが(昭和二六年(あ)第一二四一号同年八月一七日第二小法廷判決、集五巻九号参照)控訴審が控訴を理由ないものとして棄却する場合においては、第一審判決時を基準として被告人に少年法を適用するか否かを決すべきものと解するを相当とする(昭和二六年(あ)第三一一五号同二八年一月二七日第三小法廷判決参照)から原判決には所論判例違反並びに法令の適用を誤つた違法はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年6月30日 昭和28(あ)857
登載
集刑 第96号605頁
参照法条
刑訴法396条,刑訴法380条,少年法52条
論点119第380条刑事訴訟法

一 投票買収資金と法廷選挙費用とが不可分的に一括交付された場合その全額につき交付罪が成立するか
二 控訴審において罰条変更の手続を必要としない事例

裁判要旨一 投票買収資金と法廷選挙費用とが一括交付され、その区分ができない場合には、その全額につき公職選挙法第二二一条第一項第五号の交付罪が成立すると解すべきである。
二 第一審判決が公職選挙法第二二一条第一項第一号を適用したのは誤であつて、同項第五号を適用すべきであるが、この法令適用の誤は判決に影響することが明らかでないとして控訴を棄却するに当つて、控訴裁判所は罰条変更の手続をとる必要がない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年6月19日 昭和28(あ)4950
登載
刑集 第8巻6号903頁
参照法条
公職選挙法221条1項1号,公職選挙法221条1項5号,公職選挙法221条1項,刑訴法312条2項,刑訴法380条
論点120第380条刑事訴訟法

一 数個の前科がある場合と刑法第五九条にいわゆる「三犯」
二 再犯につき刑法第五九条を適用した違法と判決への影響

裁判要旨一 本件犯罪と累犯の関係にある前科が数個あつても、前科相互間に刑法第五六条所定の条件を欠くときは、再犯であつて三犯ではない。
二 前科相互間に刑法第五六条所定の条件を欠くため、再犯であつて三犯でないにも拘らず、刑法第五九条を適用した違法があつても、その前科がいずれも本件犯罪と累犯の関係にある場合には、右の違法は、判決に影響を及ぼすことが明らかな場合にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年4月2日 昭和28(あ)5680
登載
刑集 第8巻4号399頁
参照法条
刑法56条,刑法57条,刑法59条,刑訴法380条
論点121第380条刑事訴訟法

原判決の判断の通りとすれば第一審判決を破棄自判しなければならない場合に控訴を棄却した誤りがあつても結局同一の刑に処するときは、刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉に当らない

裁判要旨第一審判決は、被告人の本件行為を過剰防衛行為であると認定して法律上の減軽をした上更らに酌量減軽をして被告人を懲役四年に処しているのに、原判決は証拠に基き過剰防衛行為に該当しないことも明らかであるとして被告人の控訴趣意を排斥して控訴を棄却したものであるから、原判決は第一審判決を事実誤認又は判決に影響ある法令違反ありとしてこれを破棄し、ただ被告人のため控訴をした事件であるの故を以て第一審判決の言渡した懲役刑よりも重くない刑を言渡すべきものであつたといわなければならない。それ故、この点において原判決には違法がある。しかし、本件は被告人のために上告した事件であるから、右の違法は原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年4月15日 昭和28(あ)5689
登載
集刑 第94号523頁
参照法条
刑法36条2項,刑訴法335条2項,刑訴法380条,刑訴法396条,刑訴法402条,刑訴法411条
論点122第380条刑事訴訟法

控訴審が第一審判決の法令の適用に誤りありとして破棄自判した場合と犯罪事実の確定

裁判要旨控訴審が第一審判決の法命の適用に誤りありとしてこれを破棄自判するに当り、第一審判決の認定した事実に対し法令の適用を示す旨判示した場合に於ては控訴審は第一審判決が確定した事実に対し法令を適用したものと解するのを相当とする。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年8月7日 昭和26(あ)2943
登載
刑集 第7巻8号1679頁
参照法条
刑訴法380条,刑訴法397条,刑訴法400条
論点123第380条刑事訴訟法

第二審において、第一審判決を破棄自判するに当り、自ら証拠説明をしている場合と、第一審認定の摘示事実の引用

裁判要旨原判決は、第一審判決中被告人に関する部分を破棄した上、新たに証拠説明をやり直しているから、自ら事実認定をして第一審判決の摘示事実を引用した趣旨と解される。従つて原判決には所論のように理由を附しないという違法はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年7月22日 昭和27(あ)1088
登載
集刑 第85号177頁
参照法条
刑訴法380条,刑訴法397条,刑訴法335条
論点124第380条刑事訴訟法

一 詐欺罪と背任行為
二 控訴裁判所が第一審判決には法令の適用に誤がありとしてこれを破棄した場合と控訴審における訴因変更の要否

裁判要旨一 他人の事務を処理する者が自己の利益を図り任務に関して本人を欺き財物を交付せしめたときは、詐欺罪が成立し、別に背任罪を構成しない。
二 第一審裁判所が、基礎状記載の訴因と同一の背任罪を認定して刑法第二四七条を適用したが、背任罪として判示したのは法令の誤解であつて判示自体により詐欺の事実が確定されているものと認められる場合には、控訴裁判所は第一審判決を破棄した上、法令適用の誤を正すべきであつて、控訴審において背任の訴因を詐欺の訴因に変更する手続を必要としない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年5月8日 昭和26(あ)3819
登載
刑集 第7巻5号965頁
参照法条
刑法246条,刑法247条,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法380条
論点125第380条刑事訴訟法

第一審裁判所が懲役刑につき誤つてその執行を猶予したが控訴中に執行を猶予しうる状態が生じた場合と控訴裁判所の量刑

裁判要旨第一審裁判所が禁錮以上の刑に処せられてその執行を終つた日から七年を経過しない者に対し、誤つて懲役刑に執行猶予を付したが、控訴中に七年を経過した場合、控訴裁判所が第一審判決を破棄した上、更めて実刑を科することは違法ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年4月30日 昭和26(あ)3266
登載
集刑 第79号633頁
参照法条
刑法25条,刑訴法380条,刑訴法397条,刑訴法400条
論点126第380条刑事訴訟法

控訴審において控訴を棄却する場合には如何なる時期を標準として少年法第五二条の適用の適否を判断すべきか

裁判要旨新刑訴法による控訴審は事後審であつて、控訴を理由ないものと認めて棄却する場合には、第一審判決時を基準として、被告人に少年法を適用すべきや否やを決すべきものと解するを相当とする。されば第一審判決当時に成人であつた被告人に対し定期刑を科した第一審判決を是認した原判決が、被告人に対して不定期刑を科さなかつたことは正当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年1月27日 昭和26(あ)3115
登載
集刑 第72号517頁
参照法条
刑訴法396条,刑訴法380条,少年法2条,少年法52条,少年法68条
論点127第380条刑事訴訟法

一 控訴審が第一審判決の法令適用の誤りを理由として破棄自判した場合と犯罪事実の確定
二 右の場合第一審の証拠に関する違憲の非難は上告適法の理由になるか

裁判要旨一 原判決は、第一審判決を破棄したが、それは事実の確定に影響を及ぼすことなき法令適用の誤りを理由としてなされたのであつた。このような場合には自判するに当つては、第一審判決の認定した事実を基礎としてこれに法令を適用することが正当であること、当裁判所の判例(昭和二六年(あ)二九四三号同二八年八月七日第二小法廷決定)の示すとおりである。
二 右の場合第一審の証拠に関する違憲の非難は、上告適法の理由にならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年11月10日 昭和27(あ)417
登載
刑集 第7巻11号2051頁
参照法条
刑訴法380条,刑訴法397条,刑訴法400条
論点128第380条刑事訴訟法

控訴趣意中の相容れない二つの主張につきその一つを理由ありと判断した場合に他の主張につき判断を省略することの適否

裁判要旨原判決を精査すると、原審において弁護人は控訴理由第三点で第一審判決は恐喝及び窃盗の事実を認定して刑法第四五条前段の併合罪に該当するものとして併合加重したけれども右二罪の中間に確定判決があるから原判決には法令適用の違法があると主張したのに対し原判決は右主張は理由があるから本件は第一審判決のように併合罪として一個の刑を以て臨むべきではないとして第一審判決を破棄して被告人に対し恐喝の罪と窃盗の罪とにつき各別に量定したのである。然るに弁護人は控訴理由第四点で第一審判決が言渡した一個の刑を前提として右量刑の不当を主張したのであるから、右主張は第三点の主張と相容れない主張であつて、第三点の主張が理由ある結果第四点の主張はそれ自体主張する理由がなくなつたものである。然らば原判決が判示の通り論旨第三点を理由ありとした当然の帰結として主張の理由がなくなつた論旨第四点について判断を省略したのは適法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年3月16日 昭和25(あ)842
登載
集刑 第42号1頁
参照法条
刑訴法392条1項,刑訴法380条
論点129第381条刑事訴訟法

検察官の量刑不当の上訴と憲法三九条

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和60年5月23日 昭和60(あ)107
登載
集刑 第240号47頁
参照法条
憲法39条,刑訴法351条,刑訴法381条
論点130第381条刑事訴訟法

控訴趣意書の記載が法律で定める方式に違反するとされた事例

裁判要旨控訴の趣意として、「一 原判決は明らかに判決に影響を及ぼす事実の誤認がある。二 原判決は量刑が不当である。追つて詳細は書面で述べる。」と記載したにすぎない控訴趣意書は、刑訴法三八二条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉、三八一条〈刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に…〉所定の事実の援用を欠き、法律で定める方式に違反する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和52年11月11日 昭和52(し)127
登載
刑集 第31巻6号1019頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法382条,刑訴法386条1項2号
論点131第381条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉に該当するとして原判決破棄刑の執行猶予が言い渡された事例

裁判要旨被告人は炭坑事故のため負傷し生活保護を受けている者であり、三三才の病妻と二児を扶養し、三九才の今日まで一切犯歴がなく、被告人が副会長をしていた生活保護者の互助会の会員の中で生活苦のため米代の支払えない者が数名おり、被告人が金融業者Kから高利で一五万円を借りうけて右の支払にあててやつたが、その金利に追われ生活苦に陥つたのが本件犯行の動機であり、本件の被害総額は約一六万円であるが、実質的な被害者はKただひとりであつて、犯行の発覚前すでに同人との間に示談が成立しており、弁償の担保として被告人所有の家屋一棟を提供している等の諸事情(判文参照)を考慮すると、原判決が被告人を懲役六月の実刑に処したのは、量刑が甚しく不当であつて、これを破棄しなければ著しく正義に反する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年7月19日 昭和42(あ)2877
登載
集刑 第168号609頁
参照法条
刑訴法411条2号,刑訴法381条,刑法159条1項,刑法161条1項,刑法246条1項,刑法252条1項
論点132第381条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉に該当するとして第一、二審判決破棄刑の執行猶予が言い渡された事例

裁判要旨被告人が二七歳の配管工で、二六歳の妻と二歳の長男を扶養し、道路交通法違反の罰金一回のほか一切犯歴がなく、素行上特に非難すべき点も認められず、犯行の動機は、仕事の資金に困つていたとき、たまたま現金を手にしたため工事資金に流用したということで、遊興費等にはあてられておらず、本件は被害金額約八万円の単純横領の罪で、犯罪個数は一回だけであり、被害者が分割弁済の要請に応じないうえ、一部弁済の提供をも拒否したため示談が成立するに至らなかつた等の諸事情(判文参照)を考慮すると、第一審判決が被告人を懲役五月の実刑に処し、原判決がこれを維持したのは、量刑が甚しく不当であつて、これを破棄しなければ著しく正義に反する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年12月1日 昭和41(あ)3016
登載
集刑 第165号911頁
参照法条
刑訴法411条2号,刑訴法381条,刑法252条1項,刑法25条
論点133第381条刑事訴訟法

選挙権、被選挙権の停止は刑訴法第三八一条等の「刑の量定」に含まれるか

裁判要旨公職選挙法第二五二条にいう選挙権、被選挙権の停止は刑法にいわゆる刑ではないが、それに関する裁判所の裁量は刑訴第三八一条〈刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に…〉同第四一一条第二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉にいわゆる「刑の量定」には含まれる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年8月23日 昭和37(あ)659
登載
刑集 第16巻8号1322頁
参照法条
公職選挙法252条,刑訴法381条,刑訴法411条2号,刑法9条,刑法10条
論点134第381条刑事訴訟法

控訴審が第一審判決の量刑不当を理由として破棄自判する場合と前科事実の摘示。

裁判要旨原判決は、第一審判決の量刑不当を主張した弁護人の控訴趣意を理由ありと認めて破棄自判したものであるから、第一審判決が適法な証拠により認定した罪となるべき事実及び前科事実はこれをそのまま引用した上、これに法令の適用をなして刑の量定をしたものと解すべきである(昭和二七年(あ)第六三一六号同二九年四月一三日第三小法廷判決、集八巻四号四六二頁、昭和二四年新(れ)第五三八号同二五年九月七日第一小法廷決定各参照)。そして第一審判決は被告人の前刑の終了の年月日その他前科事実を具体的に判示していることその判文上明白であるから、これを引用していると解すべき原判決には、所論の如く前科事実の具体的摘示がないということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年7月28日 昭和36(あ)1018
登載
集刑 第138号887頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法397条,刑訴法400条,刑法56条,刑法57条
論点135第381条刑事訴訟法

選挙権、被選挙権の停止、不停止は刑訴法第三八一条の「刑の量定」に含まれるか

裁判要旨公職選挙法第二五二条にいう選挙権、被選挙権の停止、不停止は刑法第九条、第一〇条にいわゆる刑ではないが刑訴法第三八一条の「刑の量定」には含まれる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年4月4日 昭和35(あ)2426
登載
刑集 第15巻4号709頁
参照法条
公職選挙法252条,刑法第9条,刑法第10条,刑訴法381条
論点136第381条刑事訴訟法

刑法第二七条により刑の言渡の効力を失つた前科を量刑資料に参酌することの適否

裁判要旨執行猶予の言渡を取り消されることなく猶予の期間を経過し刑の言渡がその効力を失つても、その言渡を受けたいという既往の事実そのものを量刑の資料に参酌することは違法でない
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年5月1日 昭和32(あ)3136
登載
刑集 第12巻7号1293頁
参照法条
刑法27条,刑訴法381条
論点137第381条刑事訴訟法

控訴審における職権破棄と量刑判断。

裁判要旨控訴審において、職権をもつて、法令違反を理由として第一審判決を破棄し改めて有罪判決をした以上、量刑不当の控訴趣意に対し特に判断を与うるの必要はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年11月17日 昭和33(あ)1446
登載
刑集 第12巻15号3513頁
参照法条
刑訴法392条,刑訴法44条1項,刑訴法381条,刑訴法400条但書
論点138第381条刑事訴訟法

大赦令により赦免され、刑の言渡の効力を失つた前科を量刑当否の判断の資料に供すること等の適否

裁判要旨大赦令により赦免され、刑の言渡の効力を失つた前科であつても、第一審においてその前科調書を証拠として取り調べ、右受刑の事実を審問し、または第二審においてこれを前審の量刑当否の判断の資料に供したからといつて、違法ということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年6月19日 昭和32(あ)614
登載
刑集 第11巻6号1695頁
参照法条
大赦令(昭和20年勅令579号)1条1項44号,恩赦令(大正元年勅令23号)3条1号,恩赦法(昭和22年法律20号)3条1号,刑訴法381条
論点139第381条刑事訴訟法

犯罪が前刑の執行猶予期間内に犯されたことを量刑に考慮することの適否

裁判要旨量刑の当否を判断するにあたり、犯罪が前刑の執行猶予期間内に犯されたことを情状として考慮することは、違法ではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年4月25日 昭和31(あ)3746
登載
刑集 第11巻4号1485頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法248条,憲法14条
論点140第381条刑事訴訟法

刑訴法第三八一条〈刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に…〉第四一一条第二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉にいう「刑の量定」の意義

裁判要旨刑訴三八一条〈刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に…〉、四一一条二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉の規定にいわゆる「刑の量定」とは、広義であつて、刑法にいわゆる「刑」の量定のほか、罰金の換刑処分、未決勾留日数の算入、刑の執行猶予等の附随処分をも含む概念であるから、選挙権、被選挙権に関する公職選挙法二五二条三項所定の裁判所の裁量に関する上訴理由は、前記刑訴の規定にいわゆる「刑の量定」の非難に該当するものと解すべきことは、大審院及び当裁判所における従来の判例の示すところである。(大審院判例集七巻一四六頁以下、最高裁判所判例集八巻六号七九四頁以下第二小法廷決定参照)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年9月27日 昭和31(あ)890
登載
集刑 第114号803頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法411条2号
論点141第381条刑事訴訟法

犯罪行為後の発生事実を刑の量定に参酌した一事例

裁判要旨被告人が火薬類を所持しこれを譲渡しなかつたならば、その直後に災害が発生しなかつたものであると認められる事情の存する場合に、その火薬類により発生した災害の結果を火薬類所持罪の量刑の一事情として参酌したからといつて、不当ではなく、違法ということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年12月22日 昭和29(あ)665
登載
刑集 第10巻12号1667頁
参照法条
刑訴法333条,刑訴法381条,刑訴法411条2号,火薬類取締法59条2号,火薬類取締法21条
論点142第381条刑事訴訟法

控訴審が第一審判決の量刑不当を理由として破棄自判した場合と犯罪事実の確定

裁判要旨控訴審が第一審判決の量刑不当の主張を理由ありとしてこれを破棄自判するにあたつては、第一審判決の確定した事実に対し法令の適用を示せば足り、控訴審として改めて事実を認定するを要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年12月1日 昭和30(あ)1924
登載
刑集 第9巻13号2577頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法400条,刑訴法335条
論点143第381条刑事訴訟法

一 憲法違反の語を用いていても憲法違反の主張をするものと認められない一事例
二 選挙権、被選挙権の停止、不停止は刑訴第三八一条〈刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に…〉の「刑の量定」に含まれるか

裁判要旨一 如何なる理由により憲法の如何なる条項に違反するか述べていない上告趣意は、違憲の語を用いていても刑訴第四〇五条第一号〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。〉の主張といえない。
二 公職選挙法第二五二条にいう選挙権、被選挙権の停止、不停止は刑法第九条第一〇条にいわゆる刑ではないが刑訴法第三八一条の「刑訴法の量定」には含まれるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年6月2日 昭和28(あ)5322
登載
刑集 第8巻6号794頁
参照法条
公職選挙法252条,刑訴法381条,刑法9条,刑法10条
論点144第381条刑事訴訟法

被告人間の刑の軽重の差異と憲法第一四条

裁判要旨何年間刑の執行を猶予するか、又は何年間選挙権を停止するかということは、事実審たる裁判所が各犯人毎に法定の範囲内で自由に裁量するところに委ねられているものといわなければならない。懲役四月に処せられた他の被告人には一年間の執行猶予が言い渡されたにもかかわらず、懲役三月に処せられた本件被告人には二年間の執行猶予が言い渡され、そのために後者が前者よりも長い期間選挙権を停止されるという結果を生じたとしても、これを目して憲法一四条に違反するものと言うを得ない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年10月26日 昭和28(あ)4623
登載
集刑 第99号389頁
参照法条
憲法14条,刑訴法381条
論点145第381条刑事訴訟法

量刑不当の控訴理由として訴訟記録等に現われていない裁判例を援用することの適否

裁判要旨量刑不当の控訴趣意において、その理由として訴訟記録にも第一審裁判所において取り調べた証拠にも現われていない同種事案に関する従来の裁判例を援用しても、不適法ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年10月22日 昭和28(あ)5435
登載
刑集 第8巻10号1653頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法382条の2,刑訴法393条
論点146第381条刑事訴訟法

量刑不当の控訴趣意を排斥する判示の程度

裁判要旨原判決が、「所論に鑑み記録によつて被告人の本件犯情、その他諸般の情状を考察して見たが原審の科刑は必ずしも重きに過ぐるとすることはできない」と説示しているときは、訴訟法が有罪を言渡す判決においても必ずしも量刑上の理由につき斟酌された情状を一々説示すべきことを要請していないことに徴しても(刑訴三三五条一項〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉参照)、原判決に量刑不当の訴訟趣意を排斥する判示として理由不備の違法ありということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年1月24日 昭和26(あ)125
登載
集刑 第59号413頁
参照法条
刑訴法335条1項,刑訴法381条,刑訴法396条,刑訴規則246条
論点147第381条刑事訴訟法

控訴審において第一審の量刑の当否を判断するに用いた前科調書については厳格な証拠調の手続が必要か。

裁判要旨控訴審において第一審の量刑の当否を判断するに用いた前科調書については厳格な証拠調の手続をする必要がない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年12月27日 昭和27(あ)3574
登載
刑集 第6巻12号1481頁
参照法条
刑訴法392条1項,刑訴法393条1項,刑訴法381条,刑訴法404条,刑訴法305条
論点148第381条刑事訴訟法

控訴審が第一審の量刑を判断するに当つて被告人の自供を引用したに過ぎない場合と憲法第三八条第三項

裁判要旨原審は、第一審判決が適法に認定判示する本件犯罪事実に触れることなく単に犯情を考察するに当り、被告人の自供を引用したに過ぎないものであるから、被告人の自白のみによつて有罪として処断したものというを得ない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年12月19日 昭和26(あ)108
登載
集刑 第71号109頁
参照法条
憲法38条3項,刑訴法381条,刑訴法396条
論点149第381条刑事訴訟法

一、懲役六月執行猶予三年の言渡を禁錮三月に改めることと刑の不利益変更
二、理由のくいちがいが著しく正義に反することになる一事例
三、検察官並びに被告人双方から量刑不当を理由をする控訴を申立てた場合に検察官の控訴につき主文において棄却の言渡を為すことの可否

裁判要旨一 そこで、第一審の言渡した懲役六月、執行猶予三年間の刑と原審の言渡した禁錮三月の刑とはその何れが重いかの問題を生ずる。実質的には執行猶予のもつ法律的社会的価値判断は実際において高く評価されており又さるべきものである。かくて、本件において第一審の懲役六月が第二審において禁錮三月に変更されているにかかわらず、前者には執行猶予がつけられていたが後者にはこれがつけられていないのであるから、この具体的な両者の刑の比較の総体的考察において、原審の刑は重くなつていると言わなければならぬ。そうなると、原判決は理由においては、第一審判決は重すぎるから軽くすべきだと言いながら、その結論である主文においては却つてより重き刑を盛つたことになり理由と主文に食違いが存在する。この違法は、判決に影響を及ぼすことが明らかであり、かつ原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる場合に該当する。
(少数意見要旨)裁判官斎藤悠輔
二 しかし、かように第一審の言渡した単一刑の量定が不当であることを理由として(刑訴法第三八一条〈刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に…〉参照)の検察官並びに被告人の双方から控訴をした場合に(事実誤認を理由とする場合も同一)原控訴裁判所が第一審判決の刑を重きに失するものと認めるのは結局第一審判決の刑の量定が不当であると判断するものであつて、反対の根拠に立つて量刑軽きに過ぎるが故に刑の量定が不当であると主張する検察官の控訴も同時に理由あるに帰するものであるといわなければならない。従つて、控訴裁判所は判決の理由において説明するは格別原判決のように主文において検察官の控訴を棄却する言渡を為すべきものではない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和26年8月1日 昭和25(あ)2567
登載
刑集 第5巻9号1715頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法396条
論点150第381条刑事訴訟法

被告人を死刑に処した裁判員裁判による第1審判決を量刑不当として破棄し無期懲役に処した原判決の量刑が維持された事例

裁判要旨女性1名を殺害するなどした住居侵入,強盗殺人,建造物侵入,現住建造物等放火,死体損壊等のほか,その前後約2か月間に繰り返された強盗致傷,強盗強姦等の事案において,女性の殺害を計画的に実行したとは認められず,また,殺害態様の悪質性を重くみることにも限界があるのに,同女に係る事件以外の事件の悪質性や危険性,被告人の前科,反社会的な性格傾向等を強調して死刑に処した裁判員裁判による第1審判決の量刑判断が合理的ではなく,被告人を死刑に処すべき具体的,説得的な根拠を見いだし難いと判断して同判決を破棄し無期懲役に処したものと解される原判決の刑の量定は,甚だしく不当で破棄しなければ著しく正義に反するということはできない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成27年2月3日 平成25(あ)1729
登載
刑集 第69巻1号99頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法397条1項,刑訴法411条2号
論点151第381条刑事訴訟法

被告人を死刑に処した裁判員裁判による第1審判決を量刑不当として破棄し無期懲役に処した原判決の量刑が維持された事例

裁判要旨殺人等の罪により懲役20年の刑に服した前科がある被告人が被害者1名を殺害した住居侵入,強盗殺人の事案において,本件犯行とは関連が薄い前記前科があることを過度に重視して死刑に処した裁判員裁判による第1審判決の量刑判断が合理的ではなく,被告人を死刑に処すべき具体的,説得的な根拠を見いだし難いと判断して同判決を破棄し無期懲役に処したものと解される原判決の刑の量定は,甚だしく不当で破棄しなければ著しく正義に反するということはできない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成27年2月3日 平成25(あ)1127
登載
刑集 第69巻1号1頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法397条1項,刑訴法411条2号
論点152第382条刑事訴訟法

刑訴法三八二条の二〈やむを得ない事由によつて第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかつた証拠によつて証明することのできる事実であつて…〉にいう「やむを得ない事由」に当たらないとされた事例

裁判要旨弁護人が控訴審で新たな証拠の取調べを請求するにあたり、その事情として、被告人が第一審では量刑上有利に参酌してもらつた方が得策であると考えて事実を認めていたところ懲役刑の実刑判決の言渡しを受けたため事実を争うに至つた旨主張したとしても、そのような事情は刑訴法三八二条の二にいう「やむを得ない事由」に当たらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年10月30日 昭和62(あ)406
登載
刑集 第41巻7号309頁
参照法条
刑訴法382条の2,刑訴法393条1項
論点153第382条刑事訴訟法

控訴審における新たな証拠の取調と刑訴法三九三条一項本文

裁判要旨控訴裁判所は、第一審判決以前に存在した事実に関する限り、第一審で取調ないし取調請求されていない新たな証拠につき、刑訴法三九三条一項〈控訴裁判所は、前条の調査をするについて必要があるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で事実の取調をす…〉但書の要件を欠く場合であつても、第一審判決の当否を判断するため必要と認めるときは、同項本文に基づき、裁量によつてその取調をすることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年9月20日 昭和58(あ)1436
登載
刑集 第38巻9号2810頁
参照法条
刑訴法382条の2,刑訴法393条1項
論点154第382条刑事訴訟法

破棄差戻しの原判決が憲法三七条一項の迅速裁判の保障条項に反しないとされた事例

裁判要旨殺人の実行行為者が被告人であるのか、現場に同道していた甲であるのか等が争われた事案につき、第一審において約八年を費して詳細な事実審理を行つており、原審においても約二年を費して検察官申請の証人のすべてを取り調べる等していて、これを第一審に差し戻しても、実質的に意味のある新証拠の提出される蓋然性が必ずしも大きくないときは、できる限り事件を第一審に差し戻さないで処理するのが相当であるが、公判審理が長期に及んだ主たる原因が、捜査段階における被告人側の節国的な罪証隠滅行為等にあると認められること、これを第一審に差し戻してもそのために今後審理が格段に長期化するとか被告人が防禦上著しい不利益を受けるおそれがあるとまでは認め難いことなどの事情(判文参照)のある本件においては、事実誤認を理由に第一審判決を破棄し事件を第一審に差し戻した原判決が、憲法三七条一項の迅速裁判の保障条項に反するとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和58年5月27日 昭和57(あ)752
登載
刑集 第37巻4号474頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法400条,憲法37条1項
論点155第382条刑事訴訟法

前科調書の記載洩れと刑訴法三八二条の二第一項という「やむを得ない事由」

裁判要旨被告人が、区検察庁検察事務官の取調に対し、無免許運転で懲役刑に処せられ刑の執行猶予の言渡を受けたことを秘匿し、前科は無免許や酒酔い運転で二回罰金刑に処せられただけである旨供述し、他方、区検察庁検察事務官が地方検察庁犯歴係に電話照会して作成した前科調書には道交法違反による罰金の前科二犯のみが記載され、これが一審公判廷で取り調べられてその判決の言渡があつた後、たまたま、被告人の前科を記憶していた係官により右執行猶予付懲役刑の前科の存在が判明し、検察官がこれを知るにいたつた場合においては、刑訴法三八二条の二第一項〈やむを得ない事由によつて第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかつた証拠によつて証明することのできる事実であつて…〉にいう「やむを得ない事由」により一審の弁論終結前に、刑の執行猶予言渡に影響を及ぼすべき前科に関する証拠の取調を請求することができなかつたものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年2月16日 昭和47(あ)1333
登載
刑集 第27巻1号58頁
参照法条
刑訴法382条2第1項
論点156第382条刑事訴訟法

控訴審が第一審判決の併合罪の関係にある一部の事実認定を是認し、他の事実には犯罪の証明がないとして破棄自判する場合と前者の事実をさらに自ら認定判示することの適否。

裁判要旨控訴審が、第一審判決判示第二および第三(一)(二)の事実認定ならびに法令の適用には誤がないとして是認し、ただ同判決第一事実は犯罪の証明がないとして破棄自判する場合において、あらためて右判決の判示第二および第三(一)(二)と同一事実を認定判示することは違法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和34年2月26日 昭和33(あ)1376
登載
刑集 第13巻2号232頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法397条,刑訴法400条
論点157第382条刑事訴訟法

第一審判決の引用しない証拠と控訴審における判断資料

裁判要旨控訴審が第一審判決の事実認定の当否を判断する資料は、第一審判決が引用した証拠に限るべきではなく、記録にあらわれ、適法に証拠調を経た全証拠によるべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月10日 昭和29(あ)4188
登載
集刑 第105号177頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法396条
論点158第382条刑事訴訟法

控訴趣意書に事実誤認の記載があつても、これを撤回したものと認められる場合における判断の要否

裁判要旨原審弁護人提出の控訴趣意書に事実誤認の記載があつても、同弁護人が原審公判廷において事実誤認は論じないと述べているときはこの点について判断を与える必要はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年2月17日 昭和27(あ)1073
登載
集刑 第73号555頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法389条,刑訴法392条,刑訴規則246条
論点159第382条刑事訴訟法

被告人を殺人及び窃盗の犯人と認めて有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨被告人を殺人及び窃盗の犯人と認めて有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,全体として,第1審判決の説示を分断して個別に検討するのみで,情況証拠によって認められる一定の推認力を有する間接事実の総合評価という観点からの検討を欠いており,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成30年7月13日 平成29(あ)837
登載
刑集 第72巻3号324頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法411条1号
論点160第382条刑事訴訟法

1 刑法218条の不保護による保護責任者遺棄罪の実行行為の意義
2 子に対する保護責任者遺棄致死被告事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
3 裁判員の参加する合議体で審理された保護責任者遺棄致死被告事件について,訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務がないとされた事例

裁判要旨1 刑法218条の不保護による保護責任者遺棄罪の実行行為は,老年者,幼年者,身体障害者又は病者につきその生存のために特定の保護行為を必要とする状況(要保護状況)が存在することを前提として,その者の生存に必要な保護行為として行うことが刑法上期待される特定の行為をしなかったことを意味する。
2 低栄養に基づく衰弱により死亡した被告人の子(当時3歳)に対する保護責任者遺棄致死被告事件について,被告人において,乳児重症型先天性ミオパチーにり患している等の子の特性に鑑みると,子が一定の保護行為を必要とする状態にあることを認識していたとするには合理的疑いがあるとして被告人を無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,第1審判決の評価が不合理であるとする説得的な論拠を示しているとはいい難く,第1審判決とは別の見方もあり得ることを示したにとどまっていて,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
3 保護責任者遺棄致死罪として起訴されて公判前整理手続に付され,検察官が,公判前整理手続期日において,公判審理の進行によっては過失致死罪又は重過失致死罪の訴因を追加する可能性があると釈明をするなどした後,裁判員の参加する合議体により審理が行われ,第1審裁判所の裁判長が,証拠調べ終了後の公判期日において,検察官に対して訴因変更の予定の有無につき釈明を求めたところ,検察官がその予定はない旨答えたなどの訴訟経緯,本件事案の性質・内容等(判文参照)に照らすと,第1審裁判所としては,検察官に対して,上記のような求釈明によって事実上訴因変更を促したことによりその訴訟法上の義務を尽くしたものというべきであり,更に進んで,検察官に対し,訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務を有するものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成30年3月19日 平成28(あ)1549
登載
刑集 第72巻1号1頁
参照法条
(1から3につき) 刑法218条,刑法219条 (2につき) 刑訴法382条,刑訴法411条1号 (3につき) 刑訴法312条,刑訴規則208条
論点161第382条刑事訴訟法

女子高校生に強いてわいせつな行為をして殺害したとして起訴された事案につき,目撃証言の信用性を否定するなどして事実誤認を理由に有罪(無期懲役)の第1審判決を破棄し無罪とした原判決が是認された事例(舞鶴女子高校生殺害事件)

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年7月8日 平成25(あ)169
登載
集刑 第314号99頁
参照法条
刑法9条,刑法181条1項,刑法176条前段,刑法199条,刑訴法382条,刑訴法397条1項,刑訴法411条3号
論点162第382条刑事訴訟法

保護責任者遺棄致死被告事件について,被害者の衰弱状態等を述べた医師らの証言が信用できることを前提に被告人両名を有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨保護責任者遺棄致死被告事件について,被害者の衰弱状態等を述べた医師らの証言が信用できることを前提に被告人両名を有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,証言の信用性を支える根拠があるのにこれを考慮しないなど,証言の信用性評価を誤っており,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年3月20日 平成24(あ)797
登載
刑集 第68巻3号499頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法411条1号
論点163第382条刑事訴訟法

覚せい剤の密輸入事件について,共犯者供述の信用性を否定して無罪とした第1審判決には事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用の誤りはないとされた事例

裁判要旨覚せい剤の密輸入事件について,被告人から指示を受けていたとする共犯者供述の信用性を否定して被告人を無罪とした第1審判決には事実誤認があるとした原判決は,第1審判決が,受信は記録されていないなどの通話記録の性質に十分配慮せず,それと同共犯者供述との整合性を細部について必要以上に要求するなどしたことや,同共犯者に指示を与えていた第三者の存在に関する抽象的な可能性をもって同共犯者供述の信用性を否定したことなどを指摘して,その判断は経験則に照らして不合理であるとしており(判文参照),第1審判決の事実認定が経験則に照らして不合理であることを具体的に示したものといえ,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用の誤りはない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年3月10日 平成24(あ)744
登載
刑集 第68巻3号87頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法397条1項
論点164第382条刑事訴訟法

覚せい剤を密輸入した事件について,被告人の故意を認めながら共謀を認めずに無罪とした第1審判決には事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用の誤りはないとされた事例

裁判要旨覚せい剤を密輸入した事件について,被告人の故意を認めながら共謀を認めずに無罪とした第1審判決には事実誤認があるとした原判決は,被告人が,犯罪組織関係者から日本に入国して輸入貨物を受け取ることを依頼され,その中に覚せい剤が隠匿されている可能性を認識しながらこれを引き受けたという本件事実関係の下では,特段の事情がない限り,覚せい剤輸入の故意だけでなく共謀をも認定するのが相当である旨を具体的に述べた上,本件では,特段の事情がなく,むしろ共謀を裏付ける事情があるとしており,第1審判決の事実認定が経験則に照らして不合理であることを具体的に示したものということができ,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用の誤りはない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成25年4月16日 平成24(あ)167
登載
刑集 第67巻4号549頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法397条1項
論点165第382条刑事訴訟法

密輸組織が関与する覚せい剤の密輸入事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用の誤りはないとされた事例

裁判要旨密輸組織が関与する覚せい剤の密輸入事件について,被告人の覚せい剤に関する認識を否定して無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,この種事案に適用されるべき経験則等を示しつつ,被告人は覚せい剤が隠匿されたスーツケースを日本に運ぶよう指示又は依頼を受けて来日したと認定するなどした上,被告人の覚せい剤に関する認識を肯定し,第1審判決の結論を是認できないとしたもので(判文参照),第1審判決の事実認定が経験則等に照らして不合理であることを具体的に示したものといえ,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用の誤りはない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成25年10月21日 平成24(あ)724
登載
刑集 第67巻7号755頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法397条1項
論点166第382条刑事訴訟法

1 刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉にいう事実誤認の意義
2 刑訴法382条にいう事実誤認の判示方法
3 覚せい剤を密輸入した事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨1 刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の事実誤認とは,第1審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることをいう。
2 控訴審が第1審判決に事実誤認があるというためには,第1審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることを具体的に示す必要がある。
3 覚せい剤を密輸入した事件について覚せい剤を輸入する認識がなかった旨の弁解が排斥できないなどとして,被告人を無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,その弁解が客観的事実関係に一応沿うもので第1審判決のような評価も可能であることなどに照らすと,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
(1〜3につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成24年2月13日 平成23(あ)757
登載
刑集 第66巻4号482頁
参照法条
(1〜3につき)刑訴法382条,(2につき)刑訴法397条1項,(3につき)刑訴法411条1号
論点167第382条刑事訴訟法

強要未遂罪の成立を認めた第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨労働組合の組合員である被告人両名らが、同組合の組合員が稼働する会社の取締役を脅迫し、同組合員を雇用している旨の就労証明書の作成等を要求したとして強要未遂罪の成立を認めた第1審判決について、強要未遂罪の解釈適用を誤り、ひいては事実を誤認したと説示しつつ、第1審判決が前提とする事実のうち、同社に同組合員を雇用している旨の就労証明書を作成等すべき義務はないとしたことについての事実の誤認を指摘しただけで、強要罪の成立を基礎付けるその余の事実関係について、その認定の不合理性を検討しないまま、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決は、第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照)、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり、同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和5年9月11日 令和4(あ)125
登載
刑集 第77巻6号181頁
参照法条
刑訴法382条、刑訴法411条1号
論点168第382条刑事訴訟法

外国公務員等に対して金銭を供与したという不正競争防止法違反の罪について、共謀の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨外国公務員等に対して金銭を供与したという不正競争防止法違反の罪について、被告人の地位及び立場、被告人が同供与に関する相談を受けるに至った経緯及びこれに対する被告人の言動並びにその相談後に同供与が実行されたという経過等を総合考慮して、被告人が同供与を了承し、これを実行する意思決定に関与したとして共謀の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決は、共謀を基礎付ける事実関係となる上記の諸事情に対する評価を十分示さないまま、主として同供与を積極的に容認する意思の有無という観点から検討し、第1審判決の認定が不合理であるとする説得的な論拠を示していないなど、第1審判決が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照)、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり、同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和4年5月20日 令和2(あ)1135
登載
刑集 第76巻4号452頁
参照法条
刑法60条、不正競争防止法18条1項、不正競争防止法21条2項7号、刑訴法382条、刑訴法411条1号
論点169第382条刑事訴訟法

傷害罪の成立を認めた第1審判決に判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨医師の意見から認められる外力の態様に加え、Aが受傷した当時の状況、Aの受傷状況に関する被告人の言動を総合してAに対する被告人の暴行を認定し傷害罪の成立を認めた第1審判決について、医師の意見からは第1審判決が認定の根拠としたAの頭部にA以外の者の行為による強い外力が加わった事実は認められないからその認定は前提を欠くとしたほかは、Aの受傷状況に関する被告人の供述が信用できないからといって被告人の暴行を認定することはできない旨を説示しただけで、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決は、間接事実を総合した場合に被告人の暴行を認定することができるか否かについて判断を示したものとはいえないから、事実誤認の審査に当たり必要な検討を尽くして第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照)、刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり、同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和4年4月21日 令和2(あ)1751
登載
刑集 第76巻4号268頁
参照法条
刑訴法382条、刑訴法411条1号
論点170第382条刑事訴訟法

自動車を運転する予定の者に対し,ひそかに睡眠導入剤を摂取させ運転を仕向けて交通事故を引き起こさせ,事故の相手方に傷害を負わせたという殺人未遂被告事件について,事故の相手方に対する殺意を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

裁判要旨被告人が,自動車を運転する予定の者に対し,ひそかに睡眠導入剤を摂取させて運転するよう仕向けたことにより,走行中にその運転者が仮睡状態等に陥って自車を対向車線に進出させて対向車に衝突させる交通事故を引き起こし,対向車の運転者に傷害を負わせたという殺人未遂被告事件について,対向車の運転者に対する殺意を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,死亡の危険性及びその認識に関する第1審判決の評価が不合理であるとする説得的な論拠を示していないなど,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照),刑訴法382条〈事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、…〉の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和3年1月29日 令和2(あ)96
登載
刑集 第75巻1号1頁
参照法条
刑訴法382条,刑訴法411条1号
論点171第383条刑事訴訟法

控訴趣意に対する再審事由の有無についての判断がなされているものと認められる場合

裁判要旨原判決に所論再審事由の有無について直接的な判断が示されていないことは論旨指摘のとおりであるが、原審は自ら証人その他の証拠の取調をした上で、第一審判決に事実誤認はないと判断しているのであるから、再審事由の存在を否定する判断がなされているものと認むべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年11月15日 昭和30(あ)1738
登載
集刑 第122号241頁
参照法条
刑訴法392条,刑訴法396条,刑訴法384条,刑訴法383条
論点172第383条刑事訴訟法

昭和三〇年法律第五一号による銃砲刀剣類等所持取締令の一部改正と刑の廃止

裁判要旨昭和三〇年法律第五一号による銃砲刀剣類等所持取締令の一部改正前に業務その他正当な理由がなく刃渡一五センチメートル未満のあいくち(七首)を携帯した所為については、右改正により刑の廃止があつたものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年12月25日 昭和31(あ)667
登載
刑集 第10巻12号1701頁
参照法条
銃砲刀剣類等所持取締令1条2項,銃砲刀剣類等所持取締令2条,銃砲刀剣類等所持取締令15条,銃砲刀剣類等所持取締令26条1号,銃砲刀剣類等所持取締令27条,銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前)1条,銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年法律51号による改正前)15条,刑訴法337条2号,刑訴法383条2号,刑訴法411条5号,刑法6条
論点173第383条刑事訴訟法

刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成18年法律第36号)による窃盗罪の法定刑の変更と刑訴法397条1項による第1審判決の破棄の要否

裁判要旨刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成18年法律第36号)により,選択刑として50万円以下の罰金刑が追加された窃盗罪の法定刑の変更は,当該窃盗罪の犯情,第1審判決が併せて認定した他の犯罪の有無及びその内容等に照らし,上記法改正との関係からは第1審判決の量刑を再検討する余地のないことが明らかである場合には,刑訴法397条1項〈第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。〉により第1審判決を破棄すべき刑の変更に当たらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年10月10日 平成18(あ)1414
登載
刑集 第60巻8号523頁
参照法条
刑法6条,10条,235条,同法(平成18年法律第36号による改正前のもの)235条,刑訴法383条2号,397条1項
論点174第385条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立につき弁護人選任届の追完が認められなかつた事例

裁判要旨上告棄却決定に対し弁護人選任届のない弁護士名義で意義申立書が提出された場合において、異義申立期間経過後にその弁護人選任届が追加提出されても、これによつて右の異議申立が適法有効となるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和61年1月22日 昭和60(す)230
登載
集刑 第242号3頁
参照法条
刑訴法385条,刑訴法414条
論点175第385条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立と上訴権回復に関する規定の準用の有無

裁判要旨上告棄却決定に対する異議申立については、上訴権回復に関する規定の準用がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年4月7日 昭和57(す)19
登載
刑集 第36巻4号556頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法385条2項,刑訴法386条2項,刑訴法414条
論点176第385条刑事訴訟法

上告棄却決定が被告人の死亡により取消された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和56年10月8日 昭和56(す)142
登載
集刑 第223号363頁
参照法条
刑訴法339条1項4号,刑訴法385条2項,刑訴法426条2項,刑訴法428条2項,刑訴法428条3項
論点177第385条刑事訴訟法

控訴棄却決定に対し直接特別抗告が申し立てられた場合の処理例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年12月17日 昭和55(し)155
登載
集刑 第220号785頁
参照法条
刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法433条1項
論点178第385条刑事訴訟法

原審弁護人が死亡した被告人名義でした上告の申立が不適法とされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年4月17日 昭和53(あ)1796
登載
集刑 第214号365頁
参照法条
刑訴法385条1項
論点179第385条刑事訴訟法

会社代表者でない者の申し立てた上告が不適法とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和52年7月15日 昭和49(あ)1624
登載
集刑 第205号93頁
参照法条
刑訴法385条1項
論点180第385条刑事訴訟法

上告棄却決定が被告人死亡により取消された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和52年2月16日 昭和52(す)27
登載
集刑 第203号99頁
参照法条
刑訴法339条1項4号,刑訴法385条2項,刑訴法428条2項,刑訴法428条3項,刑訴法426条2項
論点181第385条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立に理由を付さずその申立期間内に理由書の提出もないので不適法棄却した事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年2月20日 昭和51(す)17
登載
集刑 第199号311頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法426条1項
論点182第385条刑事訴訟法

上告棄却定が被告人死亡により取消された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年7月18日 昭和49(す)127
登載
集刑 第193号199頁
参照法条
刑訴法339条1項4号,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法428条2項,刑訴法428条3項,刑訴法426条2項
論点183第385条刑事訴訟法

判決訂正申立(実質異議)の棄却にあたり、理由として、本案が既に確定している旨判示された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和49年12月6日 昭和49(す)299
登載
集刑 第194号323頁
参照法条
刑訴法385条2項
論点184第385条刑事訴訟法

正式裁判請求につき、弁護人選任届の追完が認められなかつた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年2月17日 昭和46(あ)1985
登載
集刑 第183号265頁
参照法条
刑訴法385条,刑訴法465条,刑訴規則18条
論点185第385条刑事訴訟法

上告棄却決定前に被告人が死亡していたことを理由として右決定に対する弁護人からの異議申立が認められた事例

裁判要旨上告棄却決定後、適法な異議申立期間内に、弁護人から右決定前に被告人が死亡していたことを理由として公訴棄却の決定を求める旨の異議の申立があり、右死亡の事実が明らかな場合には、右決定を取り消し、被告人に対する公訴を棄却すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年5月17日 昭和42(す)94
登載
刑集 第21巻4号491頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条1項3号,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法428条2項,刑訴法428条3項,刑訴法422条,刑訴法426条2項,刑訴法404条,刑訴法339条1項4号
論点186第385条刑事訴訟法

上告棄却の決定に対する電報による異議申立の適否

裁判要旨上告棄却の決定に対する異議の申立は、書面でこれをしなければならないとされているのであつて、訴訟手続の明確を期する趣旨から見れば、電報はここにいう書面に該当しないものと解するのを相当とする。従つて電報による本件申立は法令上の方式に違反したものであるから不適法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年5月29日 昭和37(す)149
登載
集刑 第142号845頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法423条1項
論点187第385条刑事訴訟法

上告を棄却した最高裁判所の決定に対する異議申立の要件。

裁判要旨上告を棄却した最高裁判所の決定に対する異議申立は、決定の内容に誤りのあることを発見した場合に限りすることができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年7月5日 昭和36(す)191
登載
刑集 第15巻7号1051頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法415条
論点188第385条刑事訴訟法

電報による上告棄却決定に対する意義申立の適否。

裁判要旨上告棄却決定に対する意義の申立をするには、三日以内に申立書を差し出さなければならないところ、起訴手続の明確を帰する趣旨から見れば、電報はここにいう申立書に該当しないものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和35年1月25日 昭和35(す)22
登載
集刑 第132号83頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法422条,刑訴法423条1項
論点189第385条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立棄却決定について刑訴法第五〇一条の申立ができるか

裁判要旨上告棄却決定に対する異議申立棄却決定に対しては刑訴第五〇一条〈刑の言渡を受けた者は、裁判の解釈について疑があるときは、言渡をした裁判所に裁判の解釈を求める申立をすることができる。〉にいわゆる裁判の解釈を求める申立をすることができない
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年6月17日 昭和33(す)238
登載
刑集 第12巻10号2232頁
参照法条
刑訴法501条,刑訴法414条,刑訴法386条1項3号,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法422条,刑訴法415条
論点190第385条刑事訴訟法

被告人に対する上告趣意書最終提出日の告知の不適法と、上告趣意書が期限内に提出なしとして上告を棄却した決定への影響

裁判要旨被告人が、保証金未納のためなお拘置所に勾留中であるのに、被告人に対する上告趣意書最終提出日の告知が肩書住居宛に郵送によつてなされたときは右告知は不適法であるから、被告人から上告趣意書が期限内に提出なしとして上告を棄却した決定はこれを取消すべきものである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年2月4日 昭和33(す)34
登載
集刑 第123号163頁
参照法条
刑訴法54条,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項(414条),刑訴法426条2項,刑訴規則236条(266条),刑訴規則252条,民訴法168条
論点191第385条刑事訴訟法

上告棄却決定前に被告人が死亡していたことを理由とする右決定に対する不服申立

裁判要旨最高裁判所が刑訴第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、第三八六条第一項三号〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。 控訴趣意書に記載された控訴の申立の理由が、明らかに第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由に該当しないとき。〉により上告棄却の決定をしたのち、三日の異義申立期間経過後に、弁護人から右決定前に被告人が死亡していたことを理由として公訴棄却の決定を求める旨の申立をしても、右申立は不適法として棄却する外はない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年7月18日 昭和28(す)223
登載
刑集 第9巻9号1878頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条1項3号,刑訴法2項,刑訴法385条2項,刑訴法422条,刑訴法415条,刑訴法404条,刑訴法339条1項4号
論点192第385条刑事訴訟法

電報による異議の申立―上告棄却決定に対する

裁判要旨刑訴第四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉、第三八六条第二項〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。〉、第三八五条第二項〈控訴の申立が法令上の方式に違反し、又は控訴権の消滅後にされたものであることが明らかなときは、控訴裁判所は、決定でこれを棄…〉、第四二二条〈即時抗告の提起期間は、三日とする。〉、第四二三条第一項〈抗告をするには、申立書を原裁判所に差し出さなければならない。〉によれば、上告棄却の決定に対する異議の申立は、右決定のあつた日から三日以内に書面でこれをしなればならないとされているのであつて、訴訟手続の明確を期する趣旨から見れば、電報はこゝにいう書面に該当しないものと解するのを相当とする。従つて電報による本件申立は法令上の方式に違反したものである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月24日 昭和30(す)134
登載
集刑 第105号1007頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法422条,刑訴法423条1項
論点193第385条刑事訴訟法

被告人の母からの上告申立の適否

裁判要旨原審における代理人または弁護人および被告人の法定代理人または保佐人に該当しない被告人の母からの上告申立は不適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年4月11日 昭和30(あ)732
登載
刑集 第9巻4号836頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法385条1項,刑訴法355条,刑訴法353条,刑訴法42条
論点194第385条刑事訴訟法

高等裁判所のした確定裁判(控訴棄却決定)に対する異議申立棄却決定とこれに対する特別抗告の適否

裁判要旨抗告人は昭和二九年二月二七日山梨県東八代郡a村bの自宅において同月六日附で東京高裁第一刑事部のした控訴趣意書の所定期日内不提出を理由とする控訴棄却決定の送達を受けたが、これに対する刑訴三八六条二項〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。〉に基く異議の申立書は同年三月一〇日附で同月一二日に東京高等裁判所に到達しているに過ぎない。右規定による異議の申立には即時抗告に関する規定が準用される結果同法四二二条によりその提起期間は三日であつて、その期間の経過により既に第一審判決及び控訴を棄却した決定は確定したものである。従つて、本件異議の申立は不適法として棄却すべきであつたのであり、原審が誤つてこれを適法として取り扱い異議申立を理由がないとして棄却したところで、その内容を憲法に違反するとして争うことは結局既に確定した第一、二審の裁判に対し法律の認めない方法で不服の申立をすることに帰し、特別抗告適法の理由にならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年11月30日 昭和29(し)61
登載
集刑 第100号789頁
参照法条
刑訴法422条,刑訴法386条,刑訴法385条2項
論点195第385条刑事訴訟法

高等裁判所のした控訴棄却の決定に対する、期間経過後の異議申立の適否 ―上訴権回復規定の準用―

裁判要旨原決定が本件異議の申立を棄却したことには、何ら訴訟法違反の点はないから、所論はその前提を欠き採用することができない。(なお、記録によると本件異議の申立は法定の申立期間後に提出されたものであり、これと同時に異議権回復の請求がなされたとは認められないから(刑訴三六三条二項〈上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。〉参照)、原決定が控訴趣意書提出の遅延事由につき「やむを得ない事情に基くもの」と認めなかつたことの当否は兎も角として、本件異議申立を不適法とし、これを棄却したことは結局正当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年12月26日 昭和27(し)69
登載
集刑 第90号693頁
参照法条
刑訴法385条,刑訴法428条,刑訴法426条,刑訴法422条
論点196第385条刑事訴訟法

高等裁判所のした控訴棄却の決定に対する異議申立期間と上訴権回復の規定の準用

裁判要旨高等裁判所がした控訴棄却の決定に対し、自己又は代人の責に帰することができない事由により所定の期間内に異議の申立をすることができなかつた場合には、上訴権の回復の規定の準用がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年10月6日 昭和26(し)57
登載
刑集 第5巻11号2177頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法386条1項,刑訴法386条2項,刑訴法385条,刑訴法428条2項
論点197第385条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立てと刑訴法四一五条三項の準用の有無

裁判要旨上告棄却決定に対する異議申立てには、刑訴法四一五条三項〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉の期間延長の申立てに関する規定の準用はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年5月27日 平成9(す)113
登載
刑集 第51巻5号433頁
参照法条
刑訴法385条2項,刑訴法386条2項,刑訴法414条,刑訴法415条
論点198第385条刑事訴訟法

跳躍上申立て棄却決定に対する異議の申立てが電報による期間経過後のものとして不適法とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成6年10月31日 平成6(す)204
登載
集刑 第264号197頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法385条1項,刑訴法385条2項
論点199第385条刑事訴訟法

上訴提起期間経過後の跳躍上告申立ての適否

裁判要旨上訴提起期間経過後の跳躍上告申立ては、控訴提起の有無にかかわらず不適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成6年10月19日 平成6(あ)980
登載
集刑 第264号195頁
参照法条
刑訴法385条1項,刑訴法414条,刑訴規則254条1項,刑訴規則255条
論点200第385条刑事訴訟法

会社代表者でない者が申立てた上告が不適法とされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成4年6月5日 平成4(あ)224
登載
集刑 第260号213頁
参照法条
刑訴法385条
論点201第385条刑事訴訟法

異議申立権の回復請求が棄却された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成4年2月25日 平成4(す)14
登載
集刑 第260号181頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法385条2項,刑訴法414条
論点202第385条刑事訴訟法

免訴判決に対し被告人が上訴することの可否

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成2年3月6日 平成1(あ)403
登載
集刑 第254号289頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法385条1項
論点203第385条刑事訴訟法

免訴判決に対し被告人が上訴することの可否

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成2年3月2日 平成1(あ)783
登載
集刑 第254号281頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法385条1項
論点204第385条刑事訴訟法

免訴判決に対し被告人が上訴することの可否

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成2年2月28日 平成1(あ)597
登載
集刑 第254号115頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法385条1項
論点205第385条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する被告人の補佐人からの異議申立ての適否(消極)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年10月25日 平成16(す)616
登載
集刑 第286号407頁
参照法条
刑訴法42条,刑訴法353条,刑訴法355条,刑訴法385条2項,刑訴法386条2項,刑訴法414条
論点206第385条刑事訴訟法

被告人が弁護人に対し上告趣意書差出最終日前に被告人作成の上告趣意書を送付したが、弁護人が上告棄却決定後にこれを裁判所に提出したという事案につき、上告棄却決定に判断遺脱はないとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和5年3月7日 令和5(す)14
登載
集刑 第332号9頁
参照法条
刑訴法385条2項、刑訴法386条2項、刑訴法414条
論点207第386条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する裁判解釈の申立を適法な異議申立として取り扱った事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和63年12月12日 昭和63(す)181
登載
集刑 第250号1061頁
参照法条
刑訴法501条,刑訴法386条
論点208第386条刑事訴訟法

英語で記載された上告趣意書の適法性

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年2月1日 昭和56(あ)1380
登載
集刑 第225号645頁
参照法条
刑訴法386条1項2号,刑訴法414条,裁判所法74条
論点209第386条刑事訴訟法

量刑不当を理由とする破棄自判の原判決が手適用した罰条についての規定違憲の主張を原審不経由で処理した事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年2月27日 昭和55(あ)1711
登載
集刑 第221号121頁
参照法条
刑訴法386条1項3号,刑訴法405条
論点210第386条刑事訴訟法

控訴趣意を引用する旨の上告趣意書の適法性

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年7月23日 昭和55(あ)620
登載
集刑 第218号273頁
参照法条
刑訴法386条1項2号
論点211第386条刑事訴訟法

上告棄却決定に対する異議申立棄却決定に補足意見の付せられた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和50年7月10日 昭和50(す)82
登載
集刑 第197号63頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条2項
論点212第386条刑事訴訟法

「三八六条一項二号〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。 控訴趣意書がこの法律若しくは裁判所の規則で定める方式に違反しているとき、又は控訴趣意書にこの法律若しくは裁判所の規則の定めるところに従い必要な疎明資料若しくは保証書を添附しないとき。〉、三号」によつて上告を棄却するとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年4月4日 昭和48(あ)2977
登載
集刑 第192号209頁
参照法条
刑訴法386条1項2号
論点213第386条刑事訴訟法

上告趣意書に具体的な上告理由の記載がないときの処理

裁判要旨上告趣意書に具体的な上告理由の記載がないときは、刑訴規則二四〇条に定める方式に違反し、不適法な上告であり、刑訴法三八六条一項二号〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。 控訴趣意書がこの法律若しくは裁判所の規則で定める方式に違反しているとき、又は控訴趣意書にこの法律若しくは裁判所の規則の定めるところに従い必要な疎明資料若しくは保証書を添附しないとき。〉、四一四条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉により棄却すべきものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年4月10日 昭和48(あ)2712
登載
集刑 第192号257頁
参照法条
刑訴法386条1項,刑訴法414条,刑訴規則240条
論点214第386条刑事訴訟法

上告理由の明示を欠いて不適法であるとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和49年10月24日 昭和49(あ)1911
登載
集刑 第194号57頁
参照法条
刑訴法386条1項2号
論点215第386条刑事訴訟法

一、学生集会と憲法二三条の関係
二、併合罪の関係にある二個の公訴事実についてされた原判決につき上告審が主文においてこれを破棄差し戻す旨を示しその理由中において右公訴事実の一部にのみ関係のある破棄理由を示すにとどまる判決を言い渡した場合における右破棄判決の効果

裁判要旨一、大学の許可した学生集会であつても、真に学問的研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動にあたる行為をする場合には、大学の有する特別の自由と自治を享有するものではない。
二、併合罪の関係にある甲乙二個の公訴事実のうち甲についてはその一部の事実を認めながら正当行為とし、乙についてはその事実が認められないとした第一審の無罪判決を維持した第二審判決全部に対し検察官が上告したが、憲法違反、法令違反のみを主張し、事実誤認の主張をしなかつた場合において、上告審が原判決および第一審判決を破棄し事件を第一審裁判所に差し戻す旨の主文の判決を言い渡したときは、その理由として検察官の憲法違反の諭旨が理由があると判示しただけであつても、右第一、二審判決はすべて破棄されたものであり、起訴された甲、乙の各行為はすべて、いまだ無罪とされたものでも、また刑事上の責任を問われたものでもない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年3月22日 昭和42(あ)47
登載
刑集 第27巻2号167頁
参照法条
憲法23条,憲法39条,刑訴法337条1号,刑訴法386条1項1号,刑訴法413条,刑訴法414条
論点216第386条刑事訴訟法

必要的弁護事件の控訴と刑訴法三八六条一項一号による決定棄却

裁判要旨いわゆる必要的弁護事件につき被告人が控訴した場合において、刑訴規則二五〇条により控訴の審判に準用される同規則一七八条三項の規定に違背して被告人に弁護人がないままであるときは、所定の期間内に控訴趣意書を差し出さないことに基づき刑訴法三八六条一項一号により決定で右控訴を棄却することは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年9月26日 昭和47(し)43
登載
刑集 第26巻7号431頁
参照法条
刑訴法289条1項,刑訴法386条1項1号,刑訴規則178条
論点217第386条刑事訴訟法

私選弁護人が上告趣意書を提出し、提出期限も経過した後、裁判成立直前に、被告人が私選弁護人を解任し、国選請求をした事案(必要的弁護事件)で、国選弁護人を選任したうえ、旧私選弁護人提出の上告趣意書につき判断し、国選弁護人提出の趣意書については期限後提出にかかるものであるから判断を加えない旨の判示をし、なお当審訴訟費用は被告人負担とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年7月17日 昭和47(あ)360
登載
集刑 第185号121頁
参照法条
刑訴法36条,刑訴法181条,刑訴法386条1項1号,刑訴規則238条
論点218第386条刑事訴訟法

控訴趣意書不提出を理由とする控訴棄却決定に対する異議申立棄却決定が審理不尽の違法があるとして取り消された事例

裁判要旨本件のような事情(決定文参照)のもとにおいては、控訴趣意書不提出による控訴棄却決定に対する異議申立を受けた原裁判所としては、当該郵便送達報告書の記載内容に疑いの余地があるから、申立人に控訴趣意書差出最終日通知書が送達されたかどうかを判断するには、なお、関係者の取調等事実の取調を必要とすると認められるのに、原裁判所が、事実の取調を行なうことなく、記録上控訴趣意書差出最終日通知書は適式に申立人に送達されていると認定して、異議申立を棄却する決定をしたのは、審理不尽の違法があり、刑訴法第四一一条第一項第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により取消を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年9月17日 昭和43(し)38
登載
集刑 第168号717頁
参照法条
刑訴法54条,刑訴法386条,刑訴法411条1号,刑訴法433条
論点219第386条刑事訴訟法

上告棄却決定謄本が本人と弁護人との双方に日を異にして送達された場合と異議申立期間の起算日

裁判要旨上告棄却決定の謄本が、本人と弁護人との双方に日を異にし本人に先に送達された場合における異議申立の期間は、本人に送達された日から起算すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年5月29日 昭和32(す)390
登載
刑集 第11巻5号1576頁
参照法条
刑訴法414条,刑訴法386条2項,刑訴法55条1項,刑訴規則34条
論点220第386条刑事訴訟法

一 刑訴第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉にいわゆる「責に帰することができない事由」の意義
二 上訴権回復請求の許されない一事例

裁判要旨一 刑訴第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉にいわゆる「責に帰することができない事由」とは、上訴不能の事由が上訴権者またはその代人の故意または過失にもとづかないことをいうものである。
二 被告人が刑訴第三八六条第一号〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。 第三百七十六条第一項に定める期間内に控訴趣意書を差し出さないとき。〉の規定による控訴棄却決定の送達を受けた当時病床にあり、医師より絶対安静を命ぜられていたために異議の申立をすることができなかつたというような事由は、被告人の責に帰することができない事由とはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年7月4日 昭和31(し)29
登載
刑集 第10巻7号1015頁
参照法条
刑訴法362条,刑訴法386条,刑訴法422条,刑訴法428条
論点221第386条刑事訴訟法

控訴趣意書差出最終日が徒過したことを理由に弁護人がいない状態で控訴棄却の決定をした控訴審の措置が是認された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年6月17日 平成21(し)205
登載
集刑 第296号861頁
参照法条
刑訴法289条,刑訴法386条1項1号,刑訴法404条
論点222第386条刑事訴訟法

被告人の訴訟能力を肯定し,控訴趣意書の提出の遅延につき刑訴規則238条にいう「やむを得ない事情」がないなどとされた事例(いわゆるオウム真理教教祖事件)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年9月15日 平成18(し)202
登載
集刑 第290号367頁
参照法条
刑訴法314条1項,刑訴法386条1項1号,刑訴規則238条
論点223第386条刑事訴訟法

被告人が上告趣意書の差出最終日に唯一の弁護人を解任し,新たに選任された弁護人につき延期された差出最終日に同弁護人を解任し,差出最終日を徒過した場合について,刑訴法414条〈前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。〉,386条1項1号〈左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。 第三百七十六条第一項に定める期間内に控訴趣意書を差し出さないとき。〉による上告棄却決定が是認された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成14年3月27日 平成14(す)134
登載
集刑 第281号331頁
参照法条
刑訴法386条1項1号,刑訴法414条
論点224第386条刑事訴訟法

上告趣意書の差出最終日に弁護人が辞任し差出最終日には被告人に弁護人がなかったとしても、差出最終日までに上告趣意書を差し出さなかったことを理由に被告人の上告を棄却したことが正当であるとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 令和4年7月20日 令和4(す)428
登載
集刑 第331号1頁
参照法条
刑訴法386条1項1号、刑訴法414条
論点225第387条刑事訴訟法

起訴状に記載のない犯行の動機を認定することの当否

裁判要旨原判決が本件各起訴状に記載されていない犯行の動機をも認定していること所論のとおりであるが、これをもつて原判決が審判の請求を受けない事実を審判した違法があるということはできない
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年6月17日 昭和33(あ)454
登載
集刑 第126号379頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法335条1項,刑訴法387条3号
論点226第387条刑事訴訟法

一 憲法第三七条第三項に違反しない事例
二 控訴審の判決に控訴趣意書記載の控訴趣意を引用する場合と控訴趣意書添付の要否。

裁判要旨一 必要的弁護事件の控訴審において、私選弁護人は控訴趣意書を提出せず、被告人がただ量刑不当を主張した控訴趣意書を提出しているに過ぎない場合、公判期日五日前に被告人より疾病を理由として右期日の延期を申請し、裁判所もまた同期日二日前に被告人に対し勾留執行停止の決定をしていても、右公判期日に私選弁護人が出頭しないときは、在廷の弁護士を弁護人に国選し、同弁護人に被告人提出の前記控訴趣意書に基いて弁論させた上で結審し、判決をしても、憲法第三七条第三項に違反するものではない。
二 控訴審の判決に控訴趣意書記載の控訴趣意を引用した場合、その控訴趣意書を判決書に添付しなければならないものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年3月14日 昭和31(あ)3468
登載
刑集 第11巻3号1080頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法414条,刑訴法289条,刑訴法387条,刑訴法389条,刑訴規則246条
論点227第387条刑事訴訟法

上告趣意書提出期間の徒過が被告人又は代人の責に帰すべからざる事由にあたらない事例

裁判要旨本件上告趣意書提出期間回復請求の理由とするところは、申立人は水産業を営みおり、水産物の仲介等のため地方に旅行その他外出勝であつて、前記公判期日通知書は申立人の不在中臨時留守居の者がこれを受取り申立人に渡すことを忘れてそのまゝ帰つてしまつた等のため紛失したものと思われ、申立人は受取つた記憶はないので、所定の期間内に上告趣意書を提出することができなくなつたというのであるが、仮に所論の如く前記通知書と直接受領した者が被告人自身でなかつたとしても、それによつて前記送達の効力に消長を及ぼすものではないから(旧刑訴第八〇条〈勾留されている被告人は、第三十九条第一項に規定する者以外の者と、法令の範囲内で、接見し、又は書類若しくは物の授受をするこ…〉民訴第一七一条〈前章の規定は、勾引に関する規定を除き、鑑定について準用する。この場合において、第百五十七条の六第二項中「ときは、」とある…〉参照)その一事を以つて被告人又は代人の席に帰すべからざる事由によつて右期間内に上告趣意書を提出することができなくなつたものということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年2月23日 昭和25(す)21
登載
集刑 第40号1059頁
参照法条
旧刑訴法80条,旧刑訴法387条,旧刑訴法423条,民訴法171条
論点228第388条刑事訴訟法

一 刑訴法四〇条〈弁護人は、公訴の提起後は、裁判所において、訴訟に関する書類(刑事確定訴訟記録法(昭和六十二年法律第六十四号)第二条第一項…〉の合憲性
二 刑訴法三八八条〈控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護人でなければ、これをすることができない。〉の合憲性

裁判要旨一 被告人が刑訴法四〇条に準拠して書類、証拠物の閲覧謄写ができないとしても、これは立法政策の問題であつて、右規定が憲法三二条、三七条に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第一七一号同二三年五月五日大法廷判決刑集二巻五号四四七頁、昭和二三年(れ)第二八一号同二五年二月一日大法廷判決刑集四巻二号八八頁、昭和二三年(れ)第五一二号同二四年三月二三日大法廷判決刑集三巻三号三五二頁)の趣旨に徴して明らかである。
二 被告人が刑訴法三八八条により控訴審では弁論能力を制限されているとしても、これは立法政策の問題であつて、右規定が憲法三二条、三七条に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第一七一号同二三年五月五日大法廷判決刑集二巻五号四四七頁、昭和二三年(れ)第二八一号同二五年二月一日大法廷判決刑集四巻二号八八頁、昭和二三年(れ)第五一二号同二四年三月二三日大法廷判決刑集三巻三号三五二頁)の趣旨に徴して明らかである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年9月24日 昭和44(あ)2435
登載
集刑 第177号1169頁
参照法条
刑訴法40条,刑訴法388条,憲法32条,憲法37条
論点229第388条刑事訴訟法

刑訴法第三八八条〈控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護人でなければ、これをすることができない。〉の合憲性

裁判要旨控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護人でなければ、これをすることができない旨を規定する刑訴法第三八八条は立法政策の問題であつて、憲法第三一条に違反するものでないことは、昭和当二三年七月一九日大法廷判決(刑集二巻八号九二二頁)、昭和二五年二月一日大法廷判決(刑集四巻二号八八頁)および昭和三一年七月一八日大法廷判決(刑集一〇巻七号一一四七頁)の趣旨に徴して明らかである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年2月25日 昭和39(あ)2110
登載
集刑 第154号859頁
参照法条
刑訴法388条,憲法31条
論点230第388条刑事訴訟法

一 控訴棄却の判決と刑訴法第三三五条の準用の有無。
二 刑訴法第二九三条〈証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。〉、刑訴規則第二一一条の規定は控訴審に準用があるか。

裁判要旨一 控訴棄却の判決をした場合には、刑訴法第四〇四条〈第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。〉の「この法律に特定の定のある場合」に属し、刑訴法第三三五条〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の準用はない(昭和二五年(あ)三一七七号同二六年五月一〇日第一小法廷決定、刑集五巻六号一〇二一頁参照)。
二 控訴審は事後審であるから、刑訴法第二九三条〈証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。〉、刑訴規則第二一一条の規定は控訴審に準用されない(昭和二五年(あ)第一四一五号同年一〇月一二日第一小法廷決定、刑集四巻一〇号二〇八七頁参照)。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年11月5日 昭和39(あ)1237
登載
集刑 第153号1頁
参照法条
刑訴法335条,刑訴法396条,刑訴法404条,刑訴法293条,刑訴法390条,刑訴法388条,刑訴規則211条,刑訴規則250条
論点231第388条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたらない事例。

裁判要旨必要的弁護事件の控訴審において選任された国選弁護人の控訴趣意書には「控訴の理由なし」と記載してあつても、同弁護人は、量刑の当不当、法令適用の正誤、事実誤認の有無、訴訟手続違反の有無、刑訴第三七七条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨…〉、第三八三条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることを疎明する資料を添附しなければな…〉関係の各事項にわたり詳細に取り調べた上控訴の理由なしとしたものであり、また被告人の控訴趣意は量刑不当の主張のみであつて、原判決がこれにつき詳細に説示していることを認めることができるときは、原審の訴訟手続には違法は認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年3月30日 昭和35(あ)1562
登載
刑集 第15巻3号688頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法第36条,刑訴法298条,刑訴法388条
論点232第388条刑事訴訟法

刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる一事例。

裁判要旨控訴審が、指定した公判期日を被告人及び私選弁護人に通知せず同弁護人不出頭のまま審理を終結し、判決宣告期日に有罪判決を言い渡したときは、たとえ国選弁護人を選任して私選弁護人提出の控訴趣意書に基いて弁論したときでも、弁護権の不法制限であり刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年7月31日 昭和26(あ)3162
登載
刑集 第7巻7号1651頁
参照法条
刑訴法411条,刑訴法388条,刑訴法389条
論点233第388条刑事訴訟法

控訴審において被告人に陳述の機会を与える要否

裁判要旨控訴審においてはその性格上刑訴二九三条〈証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。〉の準用がないことは当裁判所昭和二五年(あ)第六二号同二五年四月二〇日及び同二五年(あ)第一四一五号同年一〇月一二日の各第一小法廷の判決の趣旨とするところである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月13日 昭和25(あ)2476
登載
集刑 第64号401頁
参照法条
刑訴法293条,刑訴法388条,刑訴法404条
論点234第388条刑事訴訟法

一 控訴審における事実の取調と被告人の立会権
二 控訴審における証人尋問と憲法第三七条第二項
三 控訴審の公判期日における証人尋問に被告人が立会しなくても違法でない一事例

裁判要旨一 控訴裁判所では、必ずしも常に事実の取調に被告人を立ち会わせ、被告人に弁論の機会を与えなければならないものということはない。
二 控訴審で事実の取調の一方法として証人の尋問をし、これを裁判の資料とするような場合には、憲法第三七条第二項の刑事被告人の権利保護のため特に被告人をこれに立ち会わせ、その証人を審問する機会を与えなければならないものと解するを相当とする。
三 本件記録によると、原審は第三回公判で証人二名を尋問し、しかもこれら証人の供述を事実認定の資料に供したこと、並びに、右証人尋問が行われた公判には被告人が出頭しておらず、且つその後においても特に被告人に対し、これら証人の供述の内容を知らせる手続を執らなかつたことは所論のとおりである。しかしながら、本件では、前記公判期日における証人の取調は、もともと弁護人の申請した証人の尋問であつて、各被告人にはいずれも右公判期日の召喚状が適法に送達され、且つ、弁護人は同公判期日に出頭して右各証人に対し、それぐ尋問もしていることが記録上明白であるから、被告人の前記憲法上の権利保護に充分な機会を与えたものといわなければならない。されば原審の手続には所論の違法があるとはいえない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和27年2月6日 昭和25(あ)641
登載
刑集 第6巻2号134頁
参照法条
刑訴法393条,刑訴法390条,刑訴法389条,刑訴法388条,刑訴法293条,刑訴法404条,刑訴法157条,憲法37条2項
論点235第388条刑事訴訟法

控訴審における刑訴第二七三条第三項〈裁判長は、公判期日を定めなければならない。〉違背が刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉に該当しないものと認められる一事例

裁判要旨控訴審において第一回公判期日の通知が被告人の私選弁護人に対して為されていなくても、被告人が控訴審で初め弁護人を私選しない旨回答しながら、被告人のために弁護人が国選せられ、被告人および国選弁護人の双方から控訴趣意書の提出があり、国選弁護人に右公判期日の通知がなされた後(但し、被告人に対しては未だ同公判期日の召喚場が送達されない以前)になつて、あらたに弁護人を私選したものであり、同公判期日にはさきに私選弁護人の選任によつて一たん解任された国選弁護人が再任せられたが、同期日に出頭した被告人はこれに対し何ら異議の申立もせず、また同弁護人は同公判で被告人および国選弁護人の控訴趣意書は勿論、弁護人の選任届と同時に提出せられた前記私選弁護人の控訴趣意書に基ずいて弁論しており、原判決もまたこの三者について適確な判断を与えており、さらに判決言渡期日たる第二回公判期日は右私選弁護人にも適法に通知せられているのに、同弁護人よりは弁論再開の申請等の申立もなく、原判決が、同弁護人出頭の上同公判で言い渡されている場合には、前記のような刑訴第二七三第三項違背は未だもつて原判決破棄の理由とするにたらないものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年10月7日 昭和27(あ)3013
登載
刑集 第6巻9号1109頁
参照法条
刑訴法404条,刑訴法273条,刑訴法388条,刑訴法389条,刑訴法392条1項,刑訴法411条1号
論点236第388条刑事訴訟法

控訴審において公判期日に被告人を召喚することの要否

裁判要旨しかし、控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護士たる弁護人でなければ、これをすることができないものであつて、被告人は、原則として公判期日に出頭することを要しないものであるから、所論第三回公判期日に弁護人が出廷して弁論をした以上、仮りに被告人を召喚しなくとも(本件では昭和二五年五月二七日第二回公判期日に被告人出頭の上第三回公判期日の告知を受けている)違法でもないし、また、原判決に影響を及ぼさないことも明白である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月8日 昭和25(あ)2535
登載
集刑 第41号395頁
参照法条
刑訴法388条,刑訴法390条
論点237第388条刑事訴訟法

控訴審の訴訟手続と被告人出頭の要否――刑訴法第二九一条第二項〈検察官は、まず、起訴状を朗読しなければならない。〉は控訴審の審判に準用されるか

裁判要旨しかし新刑訴における控訴審は旧刑訴におけるそれが第一審手続の覆審であつたのとは異なり、第一審判決における一定の事実点並びに法律点に対する事後審査の手続である。されば新刑訴の規定においても控訴審の公判期日には被告人は必ずしも出頭することを要しないのであり(刑訴第三九〇条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉)は被告人のためにする弁論は弁護人でなければこれをすることができず(同第三八八条〈控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護人でなければ、これをすることができない。〉)、しかも検察官及び弁護人は控訴趣意書に基ずいて弁論しなければならない(同第三八九条〈公判期日には、検察官及び弁護人は、控訴趣意書に基いて弁論をしなければならない。〉)等と定められているのである。従つて被告人に対し被告事件について陳述する機会を与うべきことを定めた刑訴第二九一条第二項〈検察官は、まず、起訴状を朗読しなければならない。〉のごとき第一審公判に関する規定はその性質上控訴審の審判について準用せられないことは明白である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年3月30日 昭和25(あ)2761
登載
刑集 第5巻5号801頁
参照法条
刑訴法388条,刑訴法389条,刑訴法390条,刑訴法291条2項
論点238第388条刑事訴訟法

必要的弁護事件において裁判所による弁護人の選任が控訴趣意書差出期間経過後であつても違法にならない場合

裁判要旨原審は控訴趣意書を差出すべき最終日を昭和二四年八月一九日と指定し、同年七月二二日その通知書を被告人に送達してこれが通知をなしているのである。そして、被告人は国選弁護人選任要否の照会に対し一旦その必要なき旨の回答をしながら控訴趣意書差出最終日に切迫した同年八月一七日に改めてこれが選任を請求したものであつて、原審裁判長は同月二〇日被告人のため弁護士松井久市を弁護人に選任したのである。なるほどこの弁護人選任の通知は同年一一月四日に至りはじめて、同弁護人に対してなされたものであることは所論の通りであるが、この通知の遅延したために同弁護人が自ら控訴趣意書を提出し得なかつたものとはいい得ないのである。それは同弁護人の選任そのものが既に控訴趣意書差出最終日を経過した以後であつたからである。そして、弁護人の選任がかくの如く趣意書差出最終日後になされたことも、被告人が裁判所に対し一旦国選弁護人の選任不要の旨回答しながら、趣意書差出期間終了間際に至つて改めてこれが選任を請求したため、裁判所が遅滞なくその選任をなしたにも拘わらず、避けることのできなかつた結果であることは前説示の手続の経過に徹して明らかである。されば所論の如く原審によつて国選弁護人の制度が無視され弁護人の弁護権に重大な制限が加えられたものとなすことはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年11月2日 昭和25(あ)643
登載
刑集 第4巻11号2211頁
参照法条
刑訴法289条,刑訴法404条,刑訴法388条,刑訴規則236条1項
論点239第388条刑事訴訟法

控訴審において被告人に陳述の機会を与えることの要否

裁判要旨新刑訴における控訴審は旧刑訴における控訴審とは異り、第一審手続の覆審ではなく、第一審判決における一定の事実点並びに法律点に対する事後審査の手続である。されば控訴審の公判期日には被告人は必ずしも出頭することを要せず、被告人のためにする弁論は弁護人でなければこれをすることができないものとされ、しかも検察官及び弁護人は控訴趣意書に基ずいて弁論しなければならない等特別の規定が訴訟法にも存在しているのである(刑訴第三八八等乃至第三九〇条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉参照)。従つて被告人に陳述の機会を与うべきことを定めている刑訴法第二九三条刑訴規則第二一一条等の第一審に関する規定は控訴審には準用せられず、被告人はその希望により、また刑訴第三九〇条但書による裁判所の命令により公判期日に出頭した場合裁判所が必要と認めてなす質問に対し任意に供述することができるものたるに過ぎない。されば控訴審において被告人に最終の陳述をなす機会を与えなかつたとしても、これを違法ということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年10月12日 昭和25(あ)1415
登載
刑集 第4巻10号2087頁
参照法条
刑訴法404条,刑訴法293条,刑訴法388条,刑訴規則250条,刑訴規則211条
論点240第389条刑事訴訟法

一 弁護権の不法制限にならない一事例
二 事実の取調請求とは認められない一事例

裁判要旨一 量刑不当を主張している控訴趣意書を提出した私選弁護人が約二ヶ月の余裕を以て通知された第一回公判期日の三日前になつてから病気を理由として、公判期日変更の申請をしても、その病気が既に三ヶ月前に発した乳糜病でなお二ヶ月の安静加療を要するという場合には、右公判期日当日国選弁護人を選任して手続を進めても、特段の異議がない限り弁護権の不法制限とはいえない
二 量刑不当を理由とする控訴趣意書に数種の証明書類が添附されていたというだけでは、その証明書につき事実の取調請求があつたものとはいえない
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年5月6日 昭和30(あ)4054
登載
刑集 第12巻7号1327頁
参照法条
憲法37条3項,刑訴法276条,刑訴法389条,刑訴法393条1項,刑訴規則179の5
論点241第389条刑事訴訟法

控訴審における書面審理と憲法第三七条第一項。

裁判要旨控訴審において、公開法廷で公判審理が行われ、右期日に被告人は適法な召喚状の送達を受けたが出頭せず、弁護人の控訴趣旨書に基ずく弁論および検察官の意見の陳述の後弁論が終結された以上右手続は憲法第三七条第一項に違反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年10月24日 昭和33(あ)1331
登載
刑集 第12巻14号3407頁
参照法条
憲法37条1項,刑訴法389条,刑訴法390条
論点242第389条刑事訴訟法

控訴趣意書に証人尋問請求の旨の記載があつた場合、これに基く弁論は、証人尋問の請求となるか。

裁判要旨原審第二回公判調書によれば、弁護人は控訴趣意書記載のとおり弁論し、これに対し検察官は論旨は理由がないとの意見を述べ、裁判長は結審した旨の記載があること、右控訴趣意書には所論のような証人申請の記載があり、これを陳述したことにより、右証人申請がなされたものと認むべきことは、所論のとおりである。しかし右証人申請には刑訴三九三条一項〈控訴裁判所は、前条の調査をするについて必要があるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で事実の取調をす…〉但書、三八二条の二〈やむを得ない事由によつて第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかつた証拠によつて証明することのできる事実であつて…〉の所定の疎明がなされた形跡がなく、また、右裁判長の弁論終結、すなわち、証人採否の決定がなされないで弁論が終結されたのに対し、弁護人は何ら異議の申立をした形跡のない点からみると、右証人申請に対しては前示の疎明がないために不適法な申請として採否決定の要がないものとせられたか、ないしは弁護人において、右一旦なした証人申請を抛棄したものと認めるかのいずれかであつたものと解するを相当とするから、所論の違法は存しない。(昭和二九年(あ)一一四九号同年七月一七日第二小法廷決定参照)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年10月14日 昭和31(あ)1063
登載
集刑 第128号281頁
参照法条
刑訴法298条,刑訴法389条,刑訴法393条1項但書,刑訴規則190条
論点243第389条刑事訴訟法

控訴審における国選弁護人選任等の手続において被告人の防禦権を侵害した事実なしとされた一事例

裁判要旨原裁判所は控訴趣意書提出期間内たる昭和三〇年九月一二日(控訴趣意書提出最終日は同月二六日)弁護士甲を被告人の弁護人に選任し、同弁護人は右最終期日までに趣意書を提出することを引受けたが被告人と談合の結果同月二三日趣意書を提出しないで辞任し、同日原裁判所は弁護士乙を弁護人に選任し同弁護人は右最終期日までに趣意書を提出することを引受けたが一一月一一日趣意書を提出しないで辞任した。そこで原裁判所は同月一五日弁護士丙を弁護人に選任して同月一六日第一回の公判を開廷し同日同弁護人は出頭して被告人提出の控訴趣意書に基き弁論し、同日被告人は同公判廷に出頭して同弁護人と打合のため同月三〇日まで公判期日の続行を求め原裁判所はこれを許可し、同弁護人は同月二八日補充控訴趣意書を提出し更に第二回公判期日に右補充趣意書に基き弁論の上被告人のため証拠申請をしたものであることを認めることができる。されば、原審の手続には原裁判所が被告人の防禦権を侵害した事実を認めることはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年6月21日 昭和31(あ)339
登載
集刑 第113号845頁
参照法条
刑訴法289条,刑訴法389条
論点244第389条刑事訴訟法

控訴審と公開裁判

裁判要旨原審は刑訴法に従つて公開の公判廷において弁護人の控訴趣意の陳述、弁論を聞いた上判決しているのであつて、公開の公判を開かないわけではなく、また原判決は執行猶予の期間を変更したのみで、犯罪事実の認定、刑の量定そのものは第一審判決と同様に判示しているのであるから、原審が刑訴法第四〇〇条但書によつて破棄自判したことが憲法第三七条に違反するとの所論は本件に副わないものとして採用することができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年7月5日 昭和29(あ)3043
登載
集刑 第107号147頁
参照法条
憲法37条,刑訴法43条,刑訴法389条,刑訴法400条但書
論点245第389条刑事訴訟法

私選弁護人不出頭の場合、国選弁護人が私選弁護人提出の控訴趣意書にもとずいて弁論したことは私選弁護人の弁護権の不法制限となるか

裁判要旨記録に依れば、原審は公判期日を定めると共に、被告には召喚状を送達し弁護人島秀一には期日の通知をしているのであつて、右公判期日に弁護士大井亨を被告人の国選弁護人に選任した上公判を開廷し、同弁護人が島弁護人提出の控訴趣意書にもとづいて弁論したのは、被告人、島弁護人のいずれからも右公判期日に出頭し得ない理由を具申して期日の変更または延期の申請が何等なされていないのに、被告人も島弁護人も共に出頭しなかつたことに因るものであることが明らかである。されば、原審において国選弁護人を選任して私選弁護人提出の控訴趣意書にもとづいて弁論したことをとらえて、私選弁護人の弁護権を不能に制限したものということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年5月31日 昭和28(あ)2272
登載
集刑 第105号1063頁
参照法条
刑訴法289条,刑訴法389条,刑訴法391条
論点246第389条刑事訴訟法

必要的弁護事件において弁護権を不法に制限したことにならない一事例

裁判要旨原審は昭和二九年八月二七日、公訴趣意書提出の最終日を同年九月二九日と指定し、その指定通知書と共に、弁護人を選任するか否かの照会書を被告人等三名に送達し、なお当時被告人Aには弁護士古屋東が弁護人として選任届出がされていたので同弁護人にも右指定通知書を送達したところ、被告人Bは、同年八月二八日右弁護士古屋東を弁護人に選任の届出を提出し、右控訴趣意書提出期間内に被告人B並に同Aは自ら控訴趣意書を提出すると共に、被告人Aのためには古屋弁護人からも適法に控訴趣意書が提出された。又被告人Cは同年九月二四日自ら控訴趣意書を適法に提出すると共に、自己の弁護人は自ら選任する旨の回答を提出した。然るに同年一〇月一日に至り、被告人B及び同A両名の古屋弁護人から右両名に対する弁護を辞任する旨届出た。一方被告人Cからは控訴趣意書提出期間を経過するも弁護人選任届なく裁判所に対し弁護人選任の請求もしなかつたので、原審は本件が必要的弁護事件であるに鑑み同年一〇年四月被告人等三名の為弁護士上野利喜雄を弁護人に選任した上公判期日を同年一〇月二八日と指定し、被告人三名に同日の召喚状を送達したが同月二七日に至り、被告人A、同Cの関係において、弁護人上野利喜雄を解任し、被告人Aのために弁護人大久保銅三を、被告人Cのために弁護士新崎武外を弁護人に選任し、同年一〇月二八日の公判期日には被告人等の右各弁護人及び被告人Bが出廷し、被告人等及び前記弁護人古屋東提出の各控訴趣意書に基き弁論をし結審した事実を認めることができる。してみれば原審は何ら被告人等の弁護権を制限した事実は存しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月24日 昭和29(あ)3904
登載
集刑 第105号955頁
参照法条
刑訴法289条,刑訴法389条,刑訴法391条,刑訴規則236条1項
論点247第389条刑事訴訟法

公判調書に予め不動文字を印刷した用紙を利用することと憲法第三七条

裁判要旨原審における所論公判調書中検事の意見陳述の記載につき印刷文字を用いていることは所論のとおりであるが、右は検事が同旨の意見陳述をしたればこそ、かかる印刷文字の記載のある用紙を利用して、公判調書の作成を簡略にした趣旨であることは一見して明瞭であつて、到底所論の如く、原裁判所が控訴趣意の理由なきことを予断して公判に臨んだものと認めるを得ない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年3月17日 昭和26(あ)3090
登載
集刑 第76号273頁
参照法条
憲法37条,刑訴法48条,刑訴法389条
論点248第390条刑事訴訟法

控訴審の公判期日について被告人に対する召喚手続または公判期日の通知を怠つた場合と破棄事由

裁判要旨控訴審の第一回公判期日において、弁護人の出頭はあつたが被告人の出頭がないまま実質審理を行ない即日結審している場合において、同公判期日についての召喚手続または同公判期日の通知が被告人に対しなされていないときは、その訴訟手続は違法であり、原判決を破棄しなければいちじるしく正義に反する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和44年10月3日 昭和42(あ)2527
登載
集刑 第173号201頁
参照法条
刑訴法273条2項,刑訴法390条,刑訴法404条,刑訴法411条1号
論点249第390条刑事訴訟法

控訴審において被告人に公判期日を通知することなく被告人不出頭のまま公判を開廷することの適否

裁判要旨控訴審において被告人に公判期日(判決宣告期日を含む。)の通知をすることなく、被告人が出頭しないまま公判を開廷することは違法である。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和44年10月1日 昭和44(し)22
登載
刑集 第23巻10号1161頁
参照法条
刑訴法273条2項,刑訴法404条,刑訴法390条
論点250第390条刑事訴訟法

刑訴法第三九〇条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉但書の出頭命令と裁判所の裁量。

裁判要旨控訴審においては、被告人は、原則として公判期日に出頭することを要せず(刑訴三九〇条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉本分)、公判期日に対する被告人の召喚は、召喚とはいつても、その性質は、右期日を被告人に通知し自ら欲すれば出頭する機会与える意味をもつに過ぎず(昭和二四年新(れ)第五一九号、同二七年一月二日第一小法廷判決、刑集六巻一二号一四〇一頁)、ただ、例外としていわゆる軽微事件以外の事件について、被告人の出頭がその権利の保護のため重要であると認めるときは、被告人の出頭を命ずることができる(同三九〇条但書)のであるが、被告人の出頭を命ずるかどうかは、裁判所の裁量に属するところである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年12月14日 昭和34(あ)1279
登載
集刑 第145号541頁
参照法条
刑訴法390条,刑訴法273条2項
論点251第390条刑事訴訟法

刑訴規則第二一六条、第二二二条と控訴審への準用の有無

裁判要旨刑訴規則第二一六条、第二二二条の規定は第一審における刑訴第二八四条〈五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、五万円)以…〉、第二八五条〈拘留に当たる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告…〉第一、二項にあたる事件に関するものであつて、控訴審には準用のない規定である
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年5月26日 昭和27(し)42
登載
刑集 第12巻8号1621頁
参照法条
刑訴法284条,刑訴法285条,刑訴法390条,刑訴規則216条,刑訴規則222条
論点252第390条刑事訴訟法

一 刑訴法第三九〇条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉の合憲性
二 被告人の上訴を棄却する場合とその審級における未決勾留日数の通算

裁判要旨一 刑訴法第三九〇条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉は憲法第三一条に違反しない。
二 上訴裁判所は、被告人の上訴を棄却する場合においても、その審級における未決勾留日数を本刑に算入することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年3月28日 昭和31(あ)3965
登載
刑集 第11巻3号1306頁
参照法条
刑訴法390条,刑訴法495条,憲法31条,刑法21条
論点253第390条刑事訴訟法

一 原本に代えて証拠書類の謄本の取調請求のあつた場合と証拠調
二 控訴審において被告人が出頭した場合と人定質問の要否

裁判要旨一 原本に代えて証拠書類の謄本の取調請求があつた場合、被告人および弁護人がこれを証拠とすることに同意し、且つ証拠調をすることに異議がない以上、謄本を証拠とするため証拠調をしても違法ではない。
二 控訴審においては、被告人が出頭した場合でも、必ずしも人定質問をするを要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年12月17日 昭和25(あ)547
登載
刑集 第7巻12号2558頁
参照法条
刑訴法298条1項,刑訴法305条1項,刑訴法309条,刑訴法326条,刑訴法390条,刑訴規則115条,刑訴規則196条
論点254第390条刑事訴訟法

控訴審の公判期日に被告人に召喚状を発しながらその不出頭のまま結審した場合と憲法37条1項

裁判要旨原審が被告人に対し第一回公判期日の召喚状を発していることは所論のとおりであるが、右は刑訴三九〇条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉但書の規定にもとずいて被告人の出頭がその権利保護のため重要であると認めて出頭を命じたものでないことは記録に徴し明らかである。そして、被告人は控訴審において召喚に応じ公判期日に出頭する義務はないのであり、本件被告人は適法な公判期日の告知を受けながら自ら同公判期日に出頭しなかつただけであるから憲法三七条一項違反の論旨は既にその前提において失当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月13日 昭和25(あ)2147
登載
集刑 第64号395頁
参照法条
憲法37条1項,刑訴法390条
論点255第390条刑事訴訟法

刑訴規則第二一六条、第二二二条と控訴審への準用の有無

裁判要旨刑訴規則第二一六条、第二二二条の規定は第一審における刑訴第二八四条〈五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、五万円)以…〉、第二八五条〈拘留に当たる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告…〉第一、二項にあたる事件に関するものであつて、控訴審には準用のない規定である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年10月31日 昭和27(し)43
登載
集刑 第68号855頁
参照法条
刑訴法284条,刑訴法285条,刑訴法390条,刑訴規則216条,刑訴規則222条
論点256第390条刑事訴訟法

一 舊刑訴法第六九第二項により判決書に記載すべき檢事の氏名
二 控訴審の公判期日に被告人を召喚することの要否。

裁判要旨一 舊刑事訴訟法第六九條第二項により判決書に記載すべき檢事の氏名は公判に關與した檢事の氏名であるから、審理又は判決言渡のいずれかの公判に關與した檢事の氏名であればよいのであつて、必ず審理に關與した檢事の氏名でなければならないと解すべき理由はない。
二 控訴審の公判期日に被告人を召喚する手続がとられていなくても、その期日が被告人に通知されておれば、その控訴審の手続も違法ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和24年9月10日 昭和24(れ)519
登載
刑集 第3巻10号1585頁
参照法条
舊刑訴法69條2項,刑訴法404条,刑訴法273条2項,刑訴法390条
論点257第390条刑事訴訟法

刑訴法390条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉についての規定違憲(憲法37条1項)の主張が不適法(本来立法政策)とされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成4年2月14日 平成3(あ)1011
登載
集刑 第260号3頁
参照法条
刑訴法390条
原

条文原文

原文ママ

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刑事訴訟法 第372条 詳細ページ
第三百七十二条控訴は、地方裁判所又は簡易裁判所がした第一審の判決に対してこれをすることができる。
刑事訴訟法 第373条 詳細ページ
第三百七十三条控訴の提起期間は、十四日とする。
刑事訴訟法 第374条 詳細ページ
第三百七十四条控訴をするには、申立書を第一審裁判所に差し出さなければならない。
刑事訴訟法 第375条 詳細ページ
第三百七十五条控訴の申立が明らかに控訴権の消滅後にされたものであるときは、第一審裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。この決定に対しては、即時抗告をすることができる。
刑事訴訟法 第376条 詳細ページ
第三百七十六条控訴申立人は、裁判所の規則で定める期間内に控訴趣意書を控訴裁判所に差し出さなければならない。
2控訴趣意書には、この法律又は裁判所の規則の定めるところにより、必要な疎明資料又は検察官若しくは弁護人の保証書を添附しなければならない。
刑事訴訟法 第377条 詳細ページ
第三百七十七条左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨の検察官又は弁護人の保証書を添附しなければならない。
一法律に従つて判決裁判所を構成しなかつたこと。
二法令により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
三審判の公開に関する規定に違反したこと。
刑事訴訟法 第378条 詳細ページ
第三百七十八条左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつてその事由があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。
一不法に管轄又は管轄違を認めたこと。
二不法に、公訴を受理し、又はこれを棄却したこと。
三審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。
四判決に理由を附せず、又は理由にくいちがいがあること。
刑事訴訟法 第379条 詳細ページ
第三百七十九条前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき法令の違反があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。
刑事訴訟法 第380条 詳細ページ
第三百八十条法令の適用に誤があつてその誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その誤及びその誤が明らかに判決に影響を及ぼすべきことを示さなければならない。
刑事訴訟法 第381条 詳細ページ
第三百八十一条刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて刑の量定が不当であることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。
刑事訴訟法 第382条 詳細ページ
第三百八十二条事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき誤認があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。
刑事訴訟法 第382_2条 詳細ページ
第三百八十二条の二やむを得ない事由によつて第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかつた証拠によつて証明することのできる事実であつて前二条に規定する控訴申立の理由があることを信ずるに足りるものは、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実以外の事実であつても、控訴趣意書にこれを援用することができる。
2第一審の弁論終結後判決前に生じた事実であつて前二条に規定する控訴申立の理由があることを信ずるに足りるものについても、前項と同様である。
3前二項の場合には、控訴趣意書に、その事実を疎明する資料を添附しなければならない。第一項の場合には、やむを得ない事由によつてその証拠の取調を請求することができなかつた旨を疎明する資料をも添附しなければならない。
刑事訴訟法 第383条 詳細ページ
第三百八十三条左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることを疎明する資料を添附しなければならない。
一再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
二判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。
刑事訴訟法 第384条 詳細ページ
第三百八十四条控訴の申立は、第三百七十七条乃至第三百八十二条及び前条に規定する事由があることを理由とするときに限り、これをすることができる。
刑事訴訟法 第385条 詳細ページ
第三百八十五条控訴の申立が法令上の方式に違反し、又は控訴権の消滅後にされたものであることが明らかなときは、控訴裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。
2前項の決定に対しては、第四百二十八条第二項の異議の申立をすることができる。この場合には、即時抗告に関する規定をも準用する。
刑事訴訟法 第386条 詳細ページ
第三百八十六条左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。
一第三百七十六条第一項に定める期間内に控訴趣意書を差し出さないとき。
二控訴趣意書がこの法律若しくは裁判所の規則で定める方式に違反しているとき、又は控訴趣意書にこの法律若しくは裁判所の規則の定めるところに従い必要な疎明資料若しくは保証書を添附しないとき。
三控訴趣意書に記載された控訴の申立の理由が、明らかに第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由に該当しないとき。
2前条第二項の規定は、前項の決定についてこれを準用する。
刑事訴訟法 第387条 詳細ページ
第三百八十七条控訴審では、弁護士以外の者を弁護人に選任することはできない。
刑事訴訟法 第388条 詳細ページ
第三百八十八条控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護人でなければ、これをすることができない。
刑事訴訟法 第389条 詳細ページ
第三百八十九条公判期日には、検察官及び弁護人は、控訴趣意書に基いて弁論をしなければならない。
刑事訴訟法 第390条 詳細ページ
第三百九十条控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、五万円)以下の罰金又は科料に当たる事件以外の事件について、被告人の出頭がその権利の保護のため重要であると認めるときは、被告人の出頭を命ずることができる。
出

一次情報

原文ママ

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