刑事訴訟法 / テーマ別まとめ

第一審/公訴

公訴の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

この章は、検察官による公訴提起の要件と方式、公訴時効の期間・起算・停止、公訴の取消しなど、第一審に至るまでの公訴に関する基本ルールを定めている。あわせて、不起訴処分を受けた側への通知・理由告知の仕組みや、一定の犯罪について地方裁判所に審判を求める不服申立て(条文上は「事件を裁判所の審判に付することを請求する」制度で、実務では「付審判請求」と呼ばれる)についても規定している。実務担当者は、誰が・どの範囲で・いつまでに起訴できるかを押さえておく必要がある。

公訴
項目内容条文
提起権者検察官だけが行う247条
起訴の要否情状等により不起訴も可248条
効力の範囲指定した被告人のみに及ぶ249条
提起の方式起訴状を提出して行う256条1項
起訴状の記載事項氏名・公訴事実・罪名256条2項
予断防止予断を生む書類の添付禁止256条6項
取消しの時期第一審判決までは取消せる257条
不服申立て不起訴に不服なら地裁へ請求262条
申立て期限通知から7日以内262条2項
  • 罰条の記載に誤りがあっても、被告人の防御に実質的な不利益がない限り起訴の効力に影響しない(256条4項)
  • 起訴状の謄本は起訴と同時提出が原則だが、やむを得ない事情があれば起訴後速やかな提出でも足りる(256条の2)
  • 公訴時効の期間・起算・停止の細目は罪の種類ごとに250条〜255条で個別に定められている
  • 検察官は管轄外と思われる事件を、対応する検察庁の検察官に送致する(258条)
  • 告訴人・告発人・請求人には起訴・不起訴等の結果、および不起訴の場合の理由を通知・告知する(259条〜261条)
  • 付審判請求(262条)ができるのは刑法193条〜196条等の特定の罪に限られる
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公訴

公訴について、条文は何を定めているか。

第247条公訴は検察官だけが行う1項判例 6件
  • 起訴するかどうかを決めるのは検察官のみ
  • 私人が自ら起訴することはできない
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第248条情状等により不起訴にできる1項判例 9件
  • 犯人の性格・年齢・境遇や犯罪の軽重を考慮できる
  • 犯罪後の状況も踏まえ訴追不要なら不起訴にできる
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第249条起訴の効力は指定された被告人のみ1項判例 2件
  • 検察官が指定した被告人以外には効力が及ばない
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第250条死亡させた罪の公訴時効期間を定める4項・13号判例 20件
  • 死亡させ拘禁刑相当の罪は30年・20年・10年
  • その他の罪は死刑25年〜拘留科料1年まで区分
  • 被害者が18歳未満なら18歳到達までの期間を加算
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第251条併科・択一刑は重い刑を基準に時効計算1項判例なし
  • 二以上の主刑がある罪は重い方の刑で時効期間を適用
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第252条加重減軽前の刑で時効期間を計算1項判例 2件
  • 刑を加重・減軽すべき場合も加重減軽前の刑で250条〈時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑に当たるものについては、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。〉を適用
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第253条時効は犯罪行為が終わった時から進行2項判例 15件
  • 犯罪行為が終わった時点から時効の期間を数える
  • 共犯は最後の行為が終わった時から全員分を起算
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第254条起訴で時効は停止し、裁判確定後に再進行2項判例 8件
  • 公訴提起により時効の進行が停止する
  • 管轄違い・公訴棄却が確定した時から再び進行
  • 共犯の一人への起訴による停止は他の共犯にも及ぶ
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第255条国外逃亡・逃げ隠れ中は時効が停止2項判例 6件
  • 犯人が国外にいる間は時効が進行しない
  • 逃げ隠れて謄本送達等ができない間も停止する
  • 証明に必要な事項は裁判所の規則で定める
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第256条起訴状の提出方法と記載事項を定める6項・3号判例 78件
  • 起訴状を提出して公訴を提起する
  • 氏名・公訴事実・罪名を記載し訴因を明示する
  • 予断を生じる書類等の添付・引用は禁止
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第256_2条起訴と同時に起訴状謄本を裁判所へ提出1項判例なし
  • 原則は起訴と同時に謄本を提出する
  • やむを得ない事情があれば起訴後速やかな提出でも可
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第257条公訴は第一審判決まで取り消せる1項判例 2件
  • 第一審判決が出るまでは検察官が取消可能
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第258条管轄外の事件は管轄の検察庁へ送致1項判例 2件
  • 対応する裁判所の管轄外と思うとき書類・証拠物ごと送致
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第259条被疑者の請求で不起訴処分を告知1項判例なし
  • 不起訴にした場合、被疑者の請求があれば速やかに告げる
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第260条告訴人等に公訴提起等の結果を通知1項判例なし
  • 起訴・不起訴・取消し・送致を速やかに通知する
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第261条請求があれば不起訴の理由を告げる1項判例なし
  • 告訴人・告発人・請求人の請求で理由を速やかに告知
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第262条不起訴に不服なら地裁へ審判を請求できる2項判例 23件
  • 対象は刑法193条〜196条〈検察官、検察事務官及び司法警察職員並びに弁護人その他職務上捜査に関係のある者は、被疑者その他の者の名誉を害しないように注…〉等の特定の罪
  • 検察官所属庁の所在地の地裁に請求する
  • 通知を受けた日から7日以内に請求書を提出
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第263条審判請求は決定前なら取り下げ可能2項判例なし
  • 266条〈裁判所は、第二百六十二条第一項の請求を受けたときは、左の区別に従い、決定をしなければならない。〉の決定があるまで取下げできる
  • 取下げ後は同じ事件で再請求できない
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第264条請求に理由があれば検察官は起訴する1項判例なし
  • 262条1項〈刑法第百九十三条から第百九十六条まで又は破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)第四十五条若しくは無差別大量殺人行…〉の請求を理由ありと認めたら公訴提起の義務
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第265条審判請求の審理は合議体で行う2項判例 6件
  • 審理・裁判は合議体で行う
  • 必要なら構成員や地裁・簡裁裁判官に取調べを嘱託できる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第247条刑事訴訟法

一 交付された金銭等が交付者との共謀の趣旨に従い受交付者から第三者に供与された疑いがある場合と交付罪による起訴の可否
二 交付された金銭等が交付者との共謀の趣旨に従い受交付者から第三者に供与された疑いがある場合において交付罪で起訴された者に対する審理方法

裁判要旨一 甲が、選挙運動者たる乙に対し、公職選挙法二二一条一項一号所定の目的をもつて金銭等を交付したと認められるときは、たとえ、甲乙間で右金銭等を第三者に供与することの共謀があり乙が右共謀の趣旨に従いこれを第三者に供与した疑いがあつたとしても、検察官は、立証の難易等諸般の事情を考慮して、甲を交付罪のみで起訴することが許される。
二 甲が乙に対する金銭等の交付罪で起訴されたときは、たとえ、甲乙間で金銭等を第三者に供与することの共謀があり乙が右共謀の趣旨に従いこれを第三者に供与した疑いがあつたとしても、裁判所は、訴因の制約のもとにおいて、甲についての交付罪の成否を判断すれば足り、訴因として掲げられていない乙との共謀による供与罪の成否につき審理したり、検察官に対し右供与罪の訴因の追加・変更を促したりする義務を負うものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年1月27日 昭和58(あ)909
登載
刑集 第38巻1号136頁
参照法条
公職選挙法221条1項1号,公職選挙法221条1項5号,刑訴法247条,刑訴法248条,刑訴法312条,刑訴法378条3号
論点2第247条刑事訴訟法

刑訴法二四七条〈公訴は、検察官がこれを行う。〉、二四八条〈犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができ…〉の規定違憲(七六条〈被告人を勾引したときは、直ちに被告人に対し、公訴事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨並びに貧困その他の事由により…〉違反)の主張が欠前提として処理された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和53年7月18日 昭和52(あ)2323
登載
集刑 第211号837頁
参照法条
憲法76条,刑訴法247条,刑訴法248条
論点3第247条刑事訴訟法

一 刑訴規則第一六六条にいう証明資料の差出時期
二 逃亡中の被疑者に対する起訴の効力
三 刑訴第二二七条〈第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日において…〉による裁判官の証人尋問と除斥原因

裁判要旨一 検察官が起訴当時所在不明であることの明らかな被告人に対し公訴を提起した場合、その起訴状謄本の送達が不能になるのをまたないで、送達不能の証明資料を裁判所に提出することは、刑訴規則第一六六条の禁ずるところでないと解するを相当とする。
二 論旨は違憲をいうが、その実質は、被疑者に被疑事実について弁解の機会を与えないで起訴することが、訴訟法違反であることを主張するに外ならないものであつて、上告適法の理由とならない(被疑者が逃げ隠れしていた等のため捜査官憲法の取調を受けず、被疑事実についての弁解の機会が与えられないままで起訴されたからといつて、その起訴が違法であると解すべき理由は少しもない)。
三 刑訴第二二七条〈第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日において…〉による証人尋問をした裁判官は、当該被告事件の審判から除斥されるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年3月25日 昭和29(あ)1396
登載
刑集 第9巻3号519頁
参照法条
刑訴法255条,刑訴法247条,刑訴法227条,刑訴法20条,刑訴規則166条
論点4第247条刑事訴訟法

副検事が地方検察庁支部事務取扱検察官としてなした公訴提起の効力

裁判要旨副検事が地方検察庁支部事務取扱検察官として地裁支部に対してした公訴の提起の有効であることは、すでに当裁判所判決の示したとおりである(昭和二三年(れ)一六三号同二四年四月七日第一小法廷判決)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年11月16日 昭和29(あ)1614
登載
集刑 第100号511頁
参照法条
刑訴法247条,検察庁法12条,検察庁法16条2項
論点5第247条刑事訴訟法

区検察庁検察官事務取扱検察事務官の公訴提起

裁判要旨検察庁法第三六条により区検察庁の検察官の事務を取り扱う検察事務官は、同庁に対応する簡易裁判所に公訴を提起することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年7月14日 昭和27(あ)796
登載
刑集 第7巻7号1529頁
参照法条
検察庁法(昭和27・7・31法律268号による改正(法務総裁を法務大臣と改称)前のもの)2条1項,検察庁法(昭和27・7・31法律268号による改正(法務総裁を法務大臣と改称)前のもの)3条,検察庁法(昭和27・7・31法律268号による改正(法務総裁を法務大臣と改称)前のもの)4条,検察庁法(昭和27・7・31法律268号による改正(法務総裁を法務大臣と改称)前のもの)36条,刑訴法247条
論点6第247条刑事訴訟法

一 憲法第三二条と被害者訴追主義
二 検察官のした不起訴処分に対する民事訴訟ないし行政訴訟の適否

裁判要旨一 憲法第三二条は、被害者訴追主義または一般訴追主義を保障した規定ではない。
二 検察官のした不起訴処分に対する民事訴訟ないし行政訴訟の提起は、わが国法上許されない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和27年12月24日 昭和25(オ)131
登載
民集 第6巻11号1214頁
参照法条
憲法32条,刑訴法247条,行政事件訴訟特例法1条
論点7第248条刑事訴訟法

一 検察官の訴追裁量権の逸脱と公訴提起の効力
二 公訴の提訴を無効ならしめるような訴追裁量権の逸脱があるとはいえないとされた事例
三 刑訴法四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらないとされた事例

裁判要旨一 検察官の訴追裁量権の逸脱が公訴の提起を無効ならしめる場合がありうるが、それはたとえば公訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られる。
二 本件公訴提起が著しく不当であつたとする原審の認定判断(原判文参照)はただちに肯認することができず、まして、本件の事態が公訴提起の無効を結果するような極限的な場合にあたるとはいえない。
三 原判決が本件公訴を棄却したのは判決に影響を及ぼすべき法令違反であるが、本件事案のもとでは(判文参照)、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年12月17日 昭和52(あ)1353
登載
刑集 第34巻7号672頁
参照法条
刑訴法1条,刑訴法248条,刑訴法411条1号,刑訴規則1条2項,検察庁法4条
論点8第248条刑事訴訟法

一 少年の被疑事件につき捜査等に日時を要したため家庭裁判所の審判を受ける機会が失われたときと捜査手続の違法
二 捜査手続の違法と公訴提起の効力

裁判要旨一 犯時の年令一九年三月の少年の業務上過失傷害被疑事件につき、司法警察員の実況見分調書等に不備があり、その補正に七ケ月余の日時を要し、また、検察庁の事件受理手続が年末事務処理のため遅延をみる等、判文記載の事情のもとにおいては、そのために家庭裁判所の審判を受ける機会が失われたとしても、必ずしも捜査手続が違法となるものではない。
二 捜査手続の違法は、必ずしも公訴提起の効力を当然に失わせるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和44年12月5日 昭和44(あ)858
登載
刑集 第23巻12号1583頁
参照法条
刑訴法246条,刑訴法248条,刑訴法338条4号,少年法41条,少年法42条
論点9第248条刑事訴訟法

一旦不起訴にした犯罪を起訴することと憲法第三九条

裁判要旨検察官が一旦不起訴にした犯罪を後日起訴しても、憲法第三九条に違反するものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年5月24日 昭和31(あ)900
登載
刑集 第11巻5号1540頁
参照法条
憲法39条,刑訴法248条
論点10第248条刑事訴訟法

犯罪が前刑の執行猶予期間内に犯されたことを量刑に考慮することの適否

裁判要旨量刑の当否を判断するにあたり、犯罪が前刑の執行猶予期間内に犯されたことを情状として考慮することは、違法ではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年4月25日 昭和31(あ)3746
登載
刑集 第11巻4号1485頁
参照法条
刑訴法381条,刑訴法248条,憲法14条
論点11第248条刑事訴訟法

不起訴釈放した後、起訴することと一事不再理の原則

裁判要旨一旦不起訴釈放した後、起訴したとしても遡及処罰又は一事不再理の違反であるといえないこと多言を要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年7月2日 昭和27(あ)4500
登載
集刑 第84号23頁
参照法条
憲法39条,刑訴法248条
論点12第248条刑事訴訟法

一 いわゆる刑事免責を付与して得られた供述を録取した嘱託証人尋問調書の証拠能力
二 内閣総理大臣が運輸大臣に対し民間航空会社に特定機種の航空機の選定購入を勧奨するよう働き掛けることと賄賂罪における職務行為

裁判要旨一 刑訴法はいわゆる刑事免責の制度を採用しておらず、刑事免責を付与して得られた供述を録取した嘱託証人尋問調書を事実認定の証拠とすることは許容されない。
二 内閣総理大臣が運輸大臣に対し民間航空会社に特定機種の航空機の選定購入を勧奨するよう働き掛けることは、内閣総理大臣の運輸大臣に対する指示として、賄賂罪の職務行為に当たる。
(一につき補足意見,二につき補足意見及び意見がある。)
裁判
最高裁判所大法廷 平成7年2月22日 昭和62(あ)1351
登載
刑集 第49巻2号1頁
参照法条
刑訴法1条,刑訴法146条,刑訴法226条,刑訴法248条,刑訴法317条,憲法38条1項,憲法66条,憲法68条,憲法72条,刑法(昭和55年法律30号による改正前のもの)197条1項,刑法(昭和55年法律30号による改正前のもの)198条1項,運輸省設置法(昭和47年法律105号による改正前のもの)3条11号,運輸省設置法(昭和47年法律105号による改正前のもの)4条1項44号の9,運輸省設置法(昭和47年法律105号による改正前のもの)28条の2第1項13号,航空法(昭和48年法律113号による改正前のもの)100条1項,航空法(昭和48年法律113号による改正前のもの)101条,航空法(昭和48年法律113号による改正前のもの)109条,航空法施行規則(昭和48年運輸省令59号による改正前のもの)210条1項,航空法施行規則(昭和48年運輸省令59号による改正前のもの)220条,内閣法4条,内閣法6条,内閣法8条
論点13第248条刑事訴訟法

少年の被疑事件につき一旦は嫌疑不十分を理由に不起訴処分にするなどしたため家庭裁判所の審判を受ける機会が失われた後に事件を再起してした公訴提起が無効であるとはいえないとされた事例

裁判要旨犯行時16歳の少年の業務上過失傷害被疑事件について,検察官への事件送致までに約2年11か月を要した上,一旦は嫌疑不十分を理由に不起訴処分(家庭裁判所へ送致しない処分)とされたため,被疑者が成人に達して家庭裁判所で審判を受ける機会が失われたとしても,運転者の特定に日時を要し,検察官が嫌疑不十分と判断し不起訴処分にしたのもやむを得ないなどの事情(判文参照)がある場合には,その後に事件を再起してした公訴提起が無効であるとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成25年6月18日 平成23(あ)2032
登載
刑集 第67巻5号653頁
参照法条
刑訴法248条,刑訴法338条4号,少年法42条1項
論点14第249条刑事訴訟法

他人の氏名を冒用して交付を受けた略式命令が冒用者に効力を生じないとされた事例

裁判要旨いわゆる三者即日処理方式による略式手続において、甲が乙の氏名を冒用し、捜査機関に対し被疑者として行動し、かつ、裁判所で被告人として乙名義の略式命令の謄本の交付を受けて即日罰金を仮納付するなどの事実(原判文参照)があつたからといつて、右略式命令の効力が冒用者である甲に生じたものとすることはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年5月30日 昭和49(あ)2216
登載
刑集 第29巻5号360頁
参照法条
刑訴法249条,刑訴法256条2項,刑訴法337条1号,刑訴法第6編,刑訴規則56条
論点15第249条刑事訴訟法

旧刑訴法第二四八条の司法警察官と巡査部長の聴取書作成資格

裁判要旨原判決は、第一審判決と同一の証拠(被告人に対する第二回司法警察官の聴取書中判示同旨の供述記載)のほか、原審証人Aの供述をも証書に援用している。そして前記聴取書は司法警察官巡査部長B名義で作成されたものであるが(所論のようにCが作成したものではない)、警察法第三五条、四六条、同法附則一九条〈裁判所は、適当と認めるときは、検察官若しくは被告人の請求により又は職権で、決定を以て、その管轄に属する事件を事物管轄を同…〉等によれば、巡査部長は、旧刑訴二四八条〈犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができ…〉の司法警察官に当ること疑ないので(昭和二四年(れ)七七三号同年六月一八日言渡当裁判所第二小法廷判決参照)右聴取書は所論のように作成資格を濫用した無効のものでない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年10月30日 昭和26(れ)1293
登載
集刑 第55号871頁
参照法条
警察法35条,警察法46条,警察法附則19条,旧刑訴法48条,旧刑訴法249条
論点16第250条刑事訴訟法

一 迅速な裁判の保障との関係で公訴提起の遅延がいまだ著しいとまでは認められないとされた事例
二 胎児に病変を発生させ出生後死亡させた場合における業務上過失致死罪の成否
三 刑訴法二五三条一項〈時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。〉にいう「犯罪行為」の意義
四 被害者が受傷後期間を経て死亡した場合における業務上過失致死罪の公訴時効
五 結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合の公訴時効

裁判要旨一 公訴提起が事件発生から相当の長年月を経過した後になされたとしても、複雑な過程を経て発生した未曾有の公害事犯であつてその解明に格別の困難があつたこと等の特殊事情があるときは、迅速な裁判の保障との関係において、いまだ公訴提起の遅延が著しいとまではいえない。
二 業務上の過失により、胎児に病変を発生させ、これに起因して出生後その人を死亡させた場合も、人である母体の一部に病変を発生させて人を死に致したものとして、業務上過失致死罪が成立する。
三 刑訴法二五三条一項〈時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。〉にいう「犯罪行為」には、刑法各本条所定の結果も含まれる。
四 業務上過失致死罪の公訴時効は、被害者の受傷から死亡までの間に業務上過失傷害罪の公訴時効期間が経過したか否かにかかわらず、その死亡の時点から進行する。
五 結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合につき公訴時効完成の有無を判定するに当たつては、その全部を一体として観察すべきであり、最終の結果が生じたときから起算して同罪の公訴時効期間が経過していない以上、その全体について公訴時効は未完成である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和63年2月29日 昭和57(あ)1555
登載
刑集 第42巻2号314頁
参照法条
憲法37条1項,刑法211条前段(昭和43年法律61号による改正前のもの),刑法54条1項,刑訴法250条,刑訴法253条1項
論点17第250条刑事訴訟法

一、民訴法四二〇条一項六号または七号に基づく再審の訴と同項但書
二、民訴法四二〇条二項後段の再審の要件が具備されたと認められた事例
三、牽連犯の公訴時効
四、民訴法四二〇条一項六号または七号に基づく再審の訴と同法四二四条四項

裁判要旨一、民訴法四二〇条一項六号または七号を再審事由とする再審の訴が同条一項但書により許されないのは、再審原告が、再審の訴の対象となつた判決に対する上訴により、右再審事由のほか、同条二項の要件を主張したか、または右要件の存在を知りながらこれを主張しなかつた場合に限られる。
二、偽造された文書が判決の証拠となつた場合において、右偽造自体につき有罪の判決がなされていなくとも、それと科刑上一罪の関係にある公正証書原本不実記載・同行使の罪に対し有罪判決が確定したときは、右文書偽造行為につき、民訴法四二〇条二項後段の再審の要件が具備されるに至つたものと解すべきである。
三、牽連犯において、目的行為がその手段行為に対する時効期間の満了前に実行されたときは、両者の公訴時効は、不可分的に、最も重い刑を標準に最終行為の時より起算すべきである。
四、再審の訴が民訴法四二〇条一項六号または七号に基づいて提起された場合において、同条二項の要件が判決確定後に具備されたときは、同法四二四条四項にいう「再審ノ事由カ判決確定後ニ生シタルトキ」にあたると解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年5月30日 昭和44(オ)210
登載
民集 第26巻4号826頁
参照法条
民訴法420条1項6号,民訴法420条1項7号,民訴法420条1項但書,民訴法420条2項,民訴法424条3項4項,刑法54条1項後段,刑訴法250条,刑訴法253条1項
論点18第250条刑事訴訟法

いわゆる審判請求事件につき違憲の主張が判断の実益を欠くから適法な特別抗告理由にあたらないとされた事例

裁判要旨記録を調べてみると、申立人が本件被疑事実につき福島地方検察庁に告訴した当時すでに公訴時効の完成していたことが明らかであるから、同検察庁検察官森山英一が右被疑事実につき公訴を提起しない旨の処分をしたのは相当であるとした原決定の判断は相当であり、右被疑事実の内容である副検事による公訴提起が違憲であるかどうかの点について判断してみたところで、原決定の右判断になんら影響を及ぼすものではないから、所論違憲の主張は判断の実益を欠き、刑訴法第四三三条〈この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に…〉の抗告理由にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年11月21日 昭和43(し)78
登載
集刑 第169号527頁
参照法条
刑訴法433条,刑訴法262条,刑訴法250条
論点19第250条刑事訴訟法

旧物品税法第二二条(昭和二四年法律第二八六号による改正前のもの)のいわゆる両罰規定における事業主としての法人または人に対する公訴時効

裁判要旨旧物品税法第二二条(昭和二四年法律第二八六号による改正前のもの)のいわゆる両罰規定における事業主としての法人または人に対する公訴時効は、その法人または人に対する法定刑である罰金刑につき定められた三年の期間を経過することによつて完成する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年7月14日 昭和41(あ)3055
登載
刑集 第21巻6号825頁
参照法条
物品税法(昭和24年法律第286号による改正前のもの)22条,物品税法(昭和24年法律第286号による改正前のもの)18条,刑訴法250条5号,刑訴法253条
論点20第250条刑事訴訟法

犯罪後の法律による刑の変更と公訴時効の期間

裁判要旨犯罪後の法律により刑の変更があつた場合における公訴時効の期間は、当該犯罪事実に適用すべき罰条の法定刑によつて定まる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年5月19日 昭和42(し)2
登載
刑集 第21巻4号494頁
参照法条
刑訴法250条
論点21第250条刑事訴訟法

観念的競合犯の公訴時効

裁判要旨一個の行為が数個の罪名に触れる場合における公訴の時効期間算定については、各別に論ずることなく、これを一体として観察し、その最も重い罪の刑につき定めた時効期間によるのを相当とする。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年4月21日 昭和40(あ)1318
登載
刑集 第20巻4号275頁
参照法条
刑法54条1項前段,刑訴法250条,公職選挙法(昭和37年法律112号による改正前)253条
論点22第250条刑事訴訟法

一 いわゆる闘争手段としてのビラ貼り行為が建造物損壊罪、器物損壊罪を構成しないものとされた事例。
二 建造物損壊罪並びに暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の罪(器物損壊を内容とする)として起訴された事実を軽犯罪法第一条第三三号に該当する事実と認定する場合と公訴の時効。

裁判要旨一 駅長室の一部である室内の板壁や、白壁の下部の腰板に国鉄当局に対する要求事項等を墨書ないし印刷したビラ三四枚を、室内硝子窓、出入口の硝子戸、木製衝立等に同様のビラ三〇米を、メリケン粉製の糊でそれぞれ貼り付けた行為は、いまだ刑法上の建造物損壊罪ないし器物破損罪を構成するものでないと解するものを相当する。
二 検察官が犯行後一年一月余を経過したときに建造物損壊罪並びに暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の罪(器物損害を内容とする)として公訴を提起いた公訴事実を、裁判所が軽犯罪法第一条第三三号に該当する事実と認めるときは、被告人に対し公訴時効が完成したものとして免訴の言渡をすべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年11月24日 昭和37(あ)468
登載
刑集 第18巻9号610頁
参照法条
刑法260条,刑法261条,暴力行為等処罰ニ関スル法律(昭和39年法律114号による改正前のもの)1条1項,軽犯罪法1条33号,刑訴法250条,刑訴法337条4号,刑訴法411条1号
論点23第250条刑事訴訟法

物品税法第二二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人に対する公訴時効

裁判要旨物品税法第二二条にいわゆる両罰規定における事業主たる法人に対する公訴時効は、刑訴第二五〇条第五号〈時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑に当たるものについては、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。〉により時効期間はその法人に対する法定刑たる罰金刑につき定められた三年であり、その起算点は同法第二五三条第一項により右物品税法第一八条第一項の違反行為が終つた時と解するのを正当とする。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年3月6日 昭和33(あ)559
登載
集刑 第141号411頁
参照法条
物品税法22条,物品税法18条1項(昭和28年法律41号による改正前のもの),刑訴法250条5号,刑訴法253条1項
論点24第250条刑事訴訟法

旧物品税法第二二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人又は人に対する公訴時効。

裁判要旨旧物品税法第二二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人又は人に対する公訴時効は、その法人又は人に対する法定刑たる罰金刑につき定められた三年の期間を経過することによつて完成する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年12月27日 昭和35(あ)712
登載
刑集 第16巻12号1741頁
参照法条
物品税法(昭和26年法律77号、78号による改正後の昭和15年法律40号)22条,物品税法(昭和26年法律77号、78号による改正後の昭和15年法律40号)18条1項,刑訴法250条5号,刑訴法253条,刑訴法411条1号
論点25第250条刑事訴訟法

一 酒税法第六二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人又は人に対する公訴時効
二 第一審における証拠とすることの同意を控訴審に至つて撤回することの可否

裁判要旨一 酒税法第六二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人又は人に対する公訴時効は、その法人又は人に対する法定刑たる罰金刑につき定められた三年の期間を経過することによつて完成する。
二 第一審における証拠とすることの同意を控訴審に至つて撤回することは、原則として許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年12月25日 昭和34(あ)1973
登載
刑集 第16巻12号1718頁
参照法条
酒税法62条,酒税法55条1項1号,刑訴法250条5号,刑訴法253条,刑訴法411条1号,刑訴法326条
論点26第250条刑事訴訟法

物品税法(昭和二五年法律第二八六号による改正前のもの)第二二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人又は人に対する公訴時効。

裁判要旨物品税法(昭和二五年法律第二八六号による改正前のもの)第二二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人又は人に対する公訴時効は、その法人又は人に対する法定刑たる罰金刑につき定められた三年の期間を経過することによつて完成する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年7月25日 昭和30(あ)2705
登載
刑集 第15巻7号1202頁
参照法条
物品税法(昭和25年法律286号による改正前のもの)22条,物品税法(昭和25年法律286号による改正前のもの)18条1項,物品税法(昭和25年法律286号による改正前のもの)18条2号,刑訴法250条5号,刑訴法253条
論点27第250条刑事訴訟法

取引高税法(昭和二三年法律第一〇八号)第四八条第一項のいわゆる両罰規定における事業主たる法人または人に対する公訴時効。

裁判要旨取引高税法(昭和二三年法律第一〇八号)第四八条第一項のいわゆる両罰規定における事業主たる法人または人に対する公訴時効は、その法人または人に対する法定刑たる罰金刑につき定められた三年の期間を経過することによつて完成する。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和35年12月21日 昭和29(あ)1303
登載
刑集 第14巻14号2162頁
参照法条
取引高税法(昭和23年法律108号昭和24年法律43号による改正前のもの)48条1項,取引高税法(昭和23年法律108号昭和24年法律43号による改正前のもの)41条1項1号,取引高税法(昭和23年法律108号昭和24年法律43号による改正前のもの)42条,取引高税法(昭和23年法律108号昭和24年法律43号による改正前のもの)13条1項,取引高税法(右改正後のもの)48条1項,取引高税法(右改正後のもの)41条1項3号,刑訴法250条5号,刑訴法252条,刑訴法253条
論点28第250条刑事訴訟法

名誉毀損罪として起訴された事実を侮辱罪と認定する場合と公訴の時効

裁判要旨検察官が犯行後一年一月余を経過したときに名誉毀損罪として公訴を提起した公訴事実を裁判所が侮辱罪に該当する所為と認めるときは、被告人に対し公訴の時効が完成したものとして免訴の言渡をなすべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年4月12日 昭和30(あ)1305
登載
刑集 第10巻4号540頁
参照法条
刑訴法250条,刑訴法337条4号,刑訴法411条1号,刑法230条,刑法231条
論点29第250条刑事訴訟法

一 貸金業等の取締に関する法律第一八条第一号〈犯罪の性質、地方の民心その他の事情により管轄裁判所が審判をするときは公安を害する虞があると認める場合には、検事総長は、最…〉の罪の性質
二 営業犯の公訴時効
三 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律附則第一一項と憲法第一四条

裁判要旨一 貸金業等の取締に関する法律第一八条第一号〈犯罪の性質、地方の民心その他の事情により管轄裁判所が審判をするときは公安を害する虞があると認める場合には、検事総長は、最…〉の罪は営業犯である。
二 営業犯の公訴時効は最終の犯罪行為が終つた時から進行する。

三 刑罰法令は行為時法によるべきものであつて、所為出資の受入、預り近及び金利等の取締等に関する法律附則第一一項は貸金業等の取締に関する法律第五条〈数個の関連事件が各別に上級の裁判所及び下級の裁判所に係属するときは、事物管轄にかかわらず、上級の裁判所は、決定で下級の裁…〉違反の行為をした者に対しては、何人に対しても平等に適用せられ、何ら差別を設けていないのであるから、違憲の主張はその前提を欠き、所論は適法な上告理由とは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年10月25日 昭和31(あ)813
登載
刑集 第10巻10号1447頁
参照法条
貸金業等の取締に関する法律5条,貸金業等の取締に関する法律18条1号,貸金業等の取締に関する法律18条,出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律附則5項11項,刑訴法250条5号,刑訴法253条,刑法45条,出資の受入預り金及び金利等の取締等に関る法律附則11項,憲法14条
論点30第250条刑事訴訟法

訴因変更と公訴時効

裁判要旨詐欺で起訴され、後に訴因が横領に変更せられた事件に対する公訴時効完成の有無は右起訴の時を基準として判断すべきであつて、右訴因変更の時を基準として判断すべきではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年7月14日 昭和27(あ)680
登載
刑集 第8巻7号1100頁
参照法条
刑訴法250条,刑訴法312条
論点31第250条刑事訴訟法

外国人登録令に違反して登録申請をしない行為の公訴時効の起算点

裁判要旨外国人登録令附則第二項所定の三〇日以内に登録申請をしなかつた罪の公訴時効は、その後当該外国人が本邦に在留するかぎり、その登録義務を履行した時から進行する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年7月31日 昭和26(あ)3895
登載
刑集 第7巻7号1654頁
参照法条
外国人登録令(昭和22勅令207号)4条,外国人登録令(昭和22勅令207号)12条,外国人登録令(昭和22勅令207号)附則2,外国人登録令(昭和22勅令207号)附則3項,外国人登録令(昭和24勅令381号)附則7項,刑訴法250条,刑訴法253条1項
論点32第250条刑事訴訟法

一 判例と相反する判断をした一事例
二 外国人登録不申請罪の性質
三 外国人登録令に違反して登録申請をしない行為の公訴時効の起算点
四 勅令の定める登録義務を通牒により左右することができるか

裁判要旨一 原判決が、所論のごとく、要するに外国人登録令に定める登録不申請罪は、所定期間の三〇日を徒過することにより既遂となると同時に犯罪実行々為も終了しその時から公訴の時効は進行するものと判断して、結局被告人に対し免訴の言渡をしたこと、並びに、所論引用の原判決の言渡前になされた各高等裁判所の判決が、要するに所定期間経過後においても登録義務は依然存続しその間犯罪状態継続し公訴の時効期間はその義務終了の時から進行する旨の判断をしたものであることは所論のとおりである。従つて、原判決は、右各高等裁判所の判例と相反する判断をしたものといわなければならない。
二 外国人登録令施行の際本邦に在留する外国人で、同令附則第二項の規定に違反して三〇日以内に所定の登録申請をしなかつた者については、その登録義務を履行するまで不申請は継続して成立する。
三 外国人登録令附則第二項所定の三〇日以内に登録申請をしなかつた罪の公訴時効はその後当該外国人が本邦に在留する限りその登録義務を履行したときから進行する。
四 原判決引用の通牒(昭和二四年一一月一日法務府民事局民事甲第二四九一号(六)一五九号法務府民事法務長官、法務府刑政長官連名の各都道府県知事宛未登録外国人の新規登録申請に関する件)は、未登録外国人の新規登録申請あつたときは、市区町村長は一応これを受取りおき、退去命令又は退去強制の処分がなされるか否かを見定め、それがなされないで引続き本邦に在留することを許容されたとき正式に申請を受理して登録証明書を発行する簡捷な行政措置を執るよう指示したに止り、未登録外国人の新規登録申請を原則として受理しないことを命じたものとは解されないばかりでなくかかる通牒を以て前記勅令の登録申請義務を左右することのできないこと多言を要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年5月14日 昭和27(あ)753
登載
刑集 第7巻5号1026頁
参照法条
外国人登録令4条,外国人登録令12条,外国人登録令附則2項,外国人登録令附則3項,刑訴法405条,刑訴法250条,刑訴法253条1項,昭和24年政令381号外国人登録令附則7項,通牒(昭和24年11月1日法務府民事局民事甲2491号(6)159号法務府民事法務長官、法務府政長官連名の各都道府県知事宛未登録外国人の新規登録申請に関する件)
論点33第250条刑事訴訟法

花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,警察署副署長に同署地域官との業務上過失致死傷罪の共同正犯は成立しないとされた事例

裁判要旨花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,警備計画策定の第一次的責任者ないし現地警備本部の指揮官という立場にあった警察署地域官と,同署副署長ないし署警備本部の警備副本部長として同署署長を補佐する立場にあった被告人とでは,分担する役割や事故発生の防止のために要求され得る行為が基本的に異なっていたなどの本件事実関係(判文参照)の下では,事故を回避するために両者が負うべき具体的注意義務が共同のものであったということはできず,被告人に同署地域官との業務上過失致死傷罪の共同正犯は成立しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成28年7月12日 平成26(あ)747
登載
刑集 第70巻6号411頁
参照法条
刑法60条,刑法(平成13年法律第138号による改正前のもの)211条前段,刑訴法254条2項,刑訴法337条4号,刑訴法(平成16年法律第156号による改正前のもの)250条4号
論点34第250条刑事訴訟法

公訴時効を廃止するなどした「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(平成22年法律第26号)の経過措置を定めた同法附則3条2項〈事物管轄を異にする数個の事件が関連するときは、上級の裁判所は、併せてこれを管轄することができる。〉と憲法39条,31条

裁判要旨公訴時効を廃止するなどした「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(平成22年法律第26号)の経過措置として,同改正法律施行の際公訴時効が完成していない罪について改正後の刑訴法250条1項を適用する旨を定めた同改正法律附則3条2項〈事物管轄を異にする数個の事件が関連するときは、上級の裁判所は、併せてこれを管轄することができる。〉は,憲法39条,31条に違反せず,それらの趣旨にも反しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成27年12月3日 平成26(あ)749
登載
刑集 第69巻8号815頁
参照法条
憲法31条,憲法39条,刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成22年法律第26号)附則3条2項,刑法等の一部を改正する法律(平成16年法律第156号)附則3条2項,刑訴法(平成16年法律第156号による改正前のもの)250条,刑訴法250条1項
論点35第250条刑事訴訟法

他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合における非占有者に対する公訴時効の期間

裁判要旨他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合、非占有者に対する公訴時効の期間は、刑法252条1項の横領罪の法定刑である5年以下の懲役について定められた5年(刑訴法250条2項5号〈時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑に当たるものについては、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。 長期十年未満の拘禁刑に当たる罪については五年〉)である。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和4年6月9日 令和3(あ)821
登載
刑集 第76巻5号613頁
参照法条
刑法65条、刑法252条1項、刑法253条、刑訴法250条、刑訴法337条4号
論点36第252条刑事訴訟法

使途を定められて寄託された金銭と横領罪

裁判要旨使途を限定されて寄託された金銭は、受託者において委託の本旨に違つた処分をしたときは横領罪を構成する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年7月3日 昭和29(あ)2267
登載
集刑 第114号37頁
参照法条
刑訴法252条
論点37第253条刑事訴訟法

入場税逋脱罪の既遂時期。

裁判要旨入場税法(昭和三七年法律第五〇号による改正前のもの)第二五条第一項第一号前段の入場税逋脱罪は、同法第一二条に定めるその納期日の徒過により既遂となるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年7月12日 昭和40(あ)205
登載
刑集 第20巻6号567頁
参照法条
入場税法(昭和37年法律50号による改正前)12条,入場税法(昭和37年法律50号による改正前)25条1項1号,刑訴法253条1項
論点38第253条刑事訴訟法

農地法第四条第一項違反の罪と公訴時効

裁判要旨農地法第四条第一項違反の罪は、宅地化の目的でなされる場合、家屋の建築工事に着手し、あるいは完全に宅地としての外観を整えるまでにいたらなくとも、農地の肥培管理を不能もしくは著しく困難にして、耕作の目的に供される土地とはいいがたい状態にしたときに成立し、その時から公訴の時効が進行するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年5月31日 昭和39(あ)1111
登載
刑集 第20巻5号341頁
参照法条
農地法4条1項,農地法92条,刑訴法253条1項,刑訴法337条4号
論点39第253条刑事訴訟法

一 包括一罪と認むべき事例
二 包括一罪の公訴時効

裁判要旨一 医師で麻薬施用者として免許を受けている被告人が、昭和二三年六月一五日頃より同九月三〇日頃までの間五四回および昭和二六年八月一〇日頃より同年一〇月一六日頃までの間三五回にわたり、同一の麻薬中毒患者に対しその中毒症状を緩和する目的をもつて麻薬である塩酸モルヒネ注射八九本を施用した各所為は、それぞれ包括一罪であると解するのが相当である。
二 包括一罪の公訴時効は、その最終の犯罪行為が終つた日から進行する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年8月3日 昭和29(あ)180
登載
刑集 第10巻8号1202頁
参照法条
旧麻薬取締法(昭和23年法律123号)39条,旧麻薬取締法(昭和23年法律123号)57条,刑法45条,刑訴法253条
論点40第253条刑事訴訟法

現況調査に訪れた執行官に対して虚偽の事実を申し向けるなどした刑法96条の3第1項該当行為があった時点が刑訴法253条1項にいう「犯罪行為が終つた時」とはならないとされた事例

裁判要旨現況調査に訪れた執行官に対して虚偽の事実を申し向け,内容虚偽の契約書類を提出した行為は,刑法96条の3第1項の「公の競売又は入札の公正を害すべき行為」に当たるが,上記虚偽の事実の陳述等に基づく競売手続が進行する限り(判文参照),その行為の時点をもって,刑訴法253条1項〈時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。〉にいう「犯罪行為が終つた時」とはならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年12月13日 平成17(あ)1153
登載
刑集 第60巻10号857頁
参照法条
刑法96条の3第1項,刑訴法253条1項
論点41第254条刑事訴訟法

一 訴因の特定が十分でない起訴状による公訴提起と公訴時効停止の効力
二 二個の事実のいずれに対する起訴であるのか一見まぎらわしく訴因の特定が十分でない起訴状による公訴提起が一方の事実に関する公訴時効停止の効力を有するとされた事例
三 再起訴に対する判断が旧起訴に対する確定判決のいわゆる内容的確定力に抵触しないとされた事例
(三につき反対意見がある)

裁判要旨一 公訴事実の記載に不備があつて、実体審理を継続するのに十分な程度に訴因が特定していない起訴状による公訴提起であつても、それが特定の事実について検察官が訴追意思を表明したものと認められるときは、右事実と公訴事実を同一にする範囲において、公訴時効の進行を停止する効力を有する。
二 建物の所有名義を偽つて不実の登記をさせたことなどを内容とする公正証書原本不実記載・同行使の旧起訴状公訴事実の記載に不備があつて、旧起訴が、右建物の表示登記と保存登記のいずれの不実記載についてされたのか一見まぎらわしく訴因の特定が十分でない場合であつても、旧起訴状の公訴事実に記載された犯行の日時、場所、方法及び不実登記の対象となる建物がすべて表示登記の不実記載に関する本件公訴事実第一のそれと同一であることなどの事情があるときは(判文参照)、右旧起訴は、本件公訴事実第一につき公訴時効の進行を停止する効力を有する。
三 訴因の不特定を理由とする公訴棄却の確定判決が、右判断を導くための根拠の一つとして、旧起訴状の公訴事実によつては併合罪関係に立つ建物の表示登記と保存登記に関する各公正証書原本不実記載・同行使罪のいずれについて起訴がされたのか一見明らかでないという趣旨に解しうる判断を示している場合において、再起訴を審理する裁判所が、旧起訴により表示登記の不実記載に関する本件公訴事実第一につき公訴時効の進行が停止されたと判断することは、右確定判決のいわゆる内容的確定力に抵触しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和56年7月14日 昭和55(あ)1499
登載
刑集 第35巻5号497頁
参照法条
刑訴法254条1項,刑訴法256条3項,刑訴法338条4号
論点42第254条刑事訴訟法

起訴状謄本の不送達と公訴時効停止の効力

裁判要旨刑訴法二五四条一項〈時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める…〉の規定は、起訴状の謄本が法定の期間内に被告人に送達されなかつたため決定で公訴が棄却される場合にも適用があり、公訴の提起により進行を停止していた公訴時効は、右公訴棄却決定の確定した時から再びその進行を始める。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年5月12日 昭和54(あ)621
登載
刑集 第34巻3号185頁
参照法条
刑訴法254条1項,刑訴法271条2項,刑訴法339条1項1号
論点43第254条刑事訴訟法

一 会社の代表者でない者の作成提出にかかり本来無効な上告趣意書がいわゆる瑕疵の治癒により有効と認められた事例。
二 現行刑事訴訟法の施行と国税犯則取締法第一五条の効力。

裁判要旨一 上告趣意書作成日附当時にはすでに死亡していた合資会社の代表社員名義で提出された上告趣意書につき、その提出当時においてはこれを適式、有効と認めるだけの余地がなかつた場合でも、当該会社の有限責任社員であつた者が右趣意書の作成、提出に関与したものと認められ、かつ、その者が無限責任社員となり会社代表資格を取得するのに至つた等の事情の変化(判文参照)があつたときには、これを有効と認めるのが相当である。
二 国税犯則取締法第一五条の公訴時効中断の規定は、公訴時効中断の制度を廃し公訴時効停止の制度だけを採用している現行刑事訴訟法の施行により当然に廃止されたものと解することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年10月16日 昭和38(あ)2860
登載
集刑 第152号1029頁
参照法条
刑訴法27条1項,刑訴法29条1項,刑訴法254条,商法151条,商法156条,商法162条1項,商法147,商法76条,商法85条3号,刑訴規則266条,刑訴規則238条,国税犯則取締法15条,国税犯則取締法14条
論点44第254条刑事訴訟法

いわゆる準起訴手続における公訴時効停止の時期

裁判要旨いわゆる準起訴手続において公訴時効は刑訴二六六条二号〈裁判所は、第二百六十二条第一項の請求を受けたときは、左の区別に従い、決定をしなければならない。 請求が理由のあるときは、事件を管轄地方裁判所の審判に付する。〉により裁判所の審判に附する決定があつたときに停止されるであつて、審判請求時に遡つて停止されるのではない
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年5月27日 昭和31(あ)745
登載
刑集 第12巻8号1665頁
参照法条
刑訴法266条2号,刑訴法267条,刑訴法254条,刑法195条
論点45第254条刑事訴訟法

一 分離して結審した事件を併合して判決することの適否
二 証拠調を経ないで証拠に採つた判決の違法
三 司法警察官が事件を検察官に送致した後に作成した被告人に対する訊問調書の証拠能力
四 麻薬取締規則第四二条所定の麻薬はいわゆる無登録の麻薬を含むか
五 共同被告人についての採証の違法と破棄理由の共通

裁判要旨一 原審第七回公判において原審は被告人Aに対する弁論を分離したことは所論のとおりである。そして第九回公判において被告人Aに対する弁論を終結したのであるが原審は右分離した事件を再び併合して判決したものであることは原判決前文において併合して判決すると判示していることから明らかである。裁判所は職権によつて弁論の分離併合が出来るのであるから原審が前示のように分離した事件を併合して判決することは何等違法の点なく論旨は理由がない。
二 原判決は所論押収に係るモルヒネ注射液五十本入二箱(昭和二二年証第八十七条〈勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人…〉号の一)の存在を他の証拠と綜合して原判示第一の(一)及び(ニ)の犯罪事実を認定したものであることは判文上明らかであることは判文上明らかである。ところが原審公判調書を調べてみると原審公判廷において右証拠物について証拠調をした記載がないのであるから原審はその証拠調をしなかつたものというべく従つて原判決は証拠調をしない証拠を断罪の資料に供した違法がありその違法は判決に影響を及ぼすものと言わねばならない。
三 刑訴応急措置法においては聴取書と訊問調書との区別を撤廃し両者ともに供述を録取した書類として一定の条件の下にその証拠能力を認めこれが採否は一に裁判官の自由心証に委せられたのである(同第一二条〈裁判所は、事実発見のため必要があるときは、管轄区域外で職務を行うことができる。〉参照)。それゆえに所論被告人に対する司法警察官の訊問調書がたとえ事件を検察官に送致した後に作成されたものであつて作成者たる司法警察官が訊問なし得ないにかかわらず作成したものであつたとしても訊問が直ちに供述を強制したものとはいえないのであるからその訊問調書は聴取書と同様供述を録取した書類として証拠能力があるものといわなければならない。
四 しかし麻薬取締規則第四二条には「次に掲げる者以外の者は麻薬を所有又は所持することができない」と規定しているのであつて右の麻薬というのは正規の手続を経た論旨の所謂調録された麻薬のみを指すのではなく正規の手続を経ない所謂登録の麻薬をも包含するものと解するを相当とする。然らば原判決が同規則施行前に被告人が取得した麻薬について同規則を適用してその麻薬の所持を処罰したことは正当である。
五 原審共同被告人B、A、Cについて原審が証拠調をしない証拠を採証した違法があるとしても被告人の原判示の犯罪事実は挙示の証拠のみで十分認定できるのでありその証拠のうちには証拠調をしない証拠は採用されていないのであるから、かかる場所には旧刑訴第四五一条〈裁判所は、再審開始の決定が確定した事件については、第四百四十九条の場合を除いては、その審級に従い、更に審判をしなければな…〉にいわゆる「破棄の理由が上告を為したる共同被告人に共通なるとき」に該当しないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年8月17日 昭和24(れ)2777
登載
刑集 第5巻9号1764頁
参照法条
旧刑訴法349条,旧刑訴法336条,旧刑訴法127条,旧刑訴法254条,旧刑訴法451条,刑訴法313条1項,刑訴応急措置法8条4号,刑訴応急措置法12条,麻薬取締規則(昭和21年厚生省令25号)42条
論点46第254条刑事訴訟法

検察事務官の取調と默秘権の告知

裁判要旨原審並びに検察事務官がその取調に際し被告人に默秘権のあることを告知しなかつたからといつて憲法第三八条、刑訴応急措置法第一〇条に違反しないし、またこれらの取調に基く被告人の供述が任意性を欠くものと速断することもできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和25年11月21日 昭和25(れ)1082
登載
刑集 第4巻11号2359頁
参照法条
憲法38条,刑訴応急措置法10条,旧刑訴法254条1項
論点47第254条刑事訴訟法

誤ってした併合罪関係にある事実についての訴因変更請求と公訴時効停止の効力

裁判要旨誤って併合罪関係にある事実を追加する内容の訴因変更請求をした場合,検察官が訴因変更請求書を裁判所に提出した時点から,その請求に係る事実について公訴時効の進行が停止する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年11月20日 平成18(あ)590
登載
刑集 第60巻9号696頁
参照法条
刑訴法254条1項,刑訴法312条1項
論点48第255条刑事訴訟法

一 刑訴法第二五五条〈犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時…〉にいう「犯人が国外にいる場合」の意義。
二 出入国管理令第六〇条第二項第七一条および旅券法第一三条第一項第一四条第一九条第一項第四号の合憲性。

裁判要旨一 刑訴法第二五五条〈犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時…〉にいう「犯人が国外にいる場合」とは、検察官において公訴を提起し得る程度に犯人および犯罪事実を覚知していることを要件とするものではなく、単に犯人が国外にいるという事実があれば足りるとした原判決の判断は正当である―昭和三五年(あ)第七三五号、同三七年九月一八日最高裁判所第三小法廷判決、刑集一六巻九号一三八六頁参照。
二 所論は憲法第二二条第二項、第三一条違反につきるる主張をするが、本件に適用された出入国管理令第六〇条第二項、第七一条および旅券法第一三条第一項、第一四条、第一九条第一項第四号の規定が憲法の右条項に違反するものでないことは、当裁判所大法廷の判例(昭和三四年(あ)第一六七八号、同三七年一一月二八日判決、刑集一六巻一一号一六三三頁、昭和二九年(オ)第八九八号、同三三年九月一〇日判決、民集一二巻一三号一九六九頁)の趣旨とするところであり、いまこれを変更する必要を認めない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年11月25日 昭和38(あ)1800
登載
集刑 第157号305頁
参照法条
刑訴法255条,憲法22条2項,憲法31条,出入国管理令60条2項,出入国管理令71条,旅券法13条1項,旅券法14条,旅券法19条1項4号
論点49第255条刑事訴訟法

刑訴法第二五五条第一項〈犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時…〉前段の法意。

裁判要旨諭旨は、原判決の刑訴二五五条第一項〈犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時…〉の解釈を非難するけれども、同項前段の「犯人が国外にいる場合」は、同項後段の「犯人が逃げ隠れている」場合と異なり、公訴時効の進行停止につき、起訴状の謄本の送達もしくは略式命令の告知ができなかつたことを前提要件とするものでないことは該規定の明文上疑いを容れないところであり、また、犯人が国外にいる場合は、捜査官において犯罪の発生またはその犯人を知ると否とを問わず、犯人の国外にいる期間、公訴時効の進行を停止するものと解すべきことは、当裁判所の判例とするところである。(昭和三五年(あ)第七三五号同三七年九月十八日第三小法定判決参照)。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年1月17日 昭和36(あ)1536
登載
集刑 第146号1頁
参照法条
刑訴法255条1項
論点50第255条刑事訴訟法

一 刑訴法第二五五条第一項〈犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時…〉前段の法意
二 出入国管理令第六〇条第二項、第七一条の合憲性

裁判要旨一 刑訴法第二五五条第一項〈犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時…〉前段は、犯人が国外にいる場合は、そのことだけで、公訴の時効はその国外にいる期間中進行を停止することを規定したものである。
二 出入国管理令第六〇条第二項、第七一条は、憲法第二二条第二項に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年9月18日 昭和35(あ)735
登載
刑集 第16巻9号1386頁
参照法条
刑訴法255条1項,出入国管理令60条2項,出入国管理令条71条,憲法22条2項
論点51第255条刑事訴訟法

一 未決勾留日数を本刑に算入し得ない一事例
二 刑法第二一条にいわゆる未決勾留の範囲

裁判要旨一 勾留状記載の被疑事実が公判請求書記載の公判事実中に包含されていないとの理由で勾留を取り消した場合にはその未決勾留日数を本刑に算入することはできない。
二 刑法第二一条にいわゆる未決勾留は当該事件に関する判決確定前の勾留であればその勾留が適法であると不法であるとを問わない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年3月16日 昭和24(れ)2513
登載
集刑 第103号445頁
参照法条
刑法21条,旧刑訴法255条,旧刑訴法291条,刑訴応急措置法8条5号,刑訴法256条,刑訴法204条
論点52第255条刑事訴訟法

犯人の一時的な海外渡航と公訴時効停止の効力

裁判要旨犯人が国外にいる間は,それが一時的な海外渡航による場合であっても,公訴時効はその進行を停止する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成21年10月20日 平成20(あ)1657
登載
刑集 第63巻8号1052頁
参照法条
刑訴法255条1項
論点53第256条刑事訴訟法

所得秘匿工作をしたうえ逋脱の意思で会社臨時特別税確定申告書を税務署長に提出しなかつた場合における会社臨時特別税法二二条一項にいう「偽りその他不正の行為」とその判示方法

裁判要旨所得秘匿工作をしたうえ逋脱の意思で会社臨時特別税確定申告書を税務署長に提出しなかつた場合、会社臨時特別税法二二条一項にいう「偽りその他不正の行為」に当たるのは、所得秘匿工作を伴う不申告の行為であり、また、その判示に当たつては、右の行為があつたことを摘示すれば足り、所得秘匿工作の具体的な日時、場所、方法などについては摘示することを要しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和63年9月2日 昭和60(あ)1528
登載
刑集 第42巻7号975頁
参照法条
会社臨時特別税法22条1項,会社臨時特別税法27条,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項
論点54第256条刑事訴訟法

一 審判の請求を受けない事件について判決した場合に当たらないとされた事例
二 被告人らの自白のとおりに有罪とした原判決の事実認定に不合理な点があるとして破棄された事例

裁判要旨一 甲、乙に対する起訴状の罪名及び罰条は殺人のみであつても、逮捕監禁の事実が殺人の実行行為の一部を組成するものとして公訴事実中に記載されていると認められるときは(判文参照)、たとえ右逮捕監禁の事実が殺人とは併合罪関係に立つものと解すべきであつたとしても、裁判所が甲につき殺人の実行行為の一部として右逮捕監禁の事実を認定し、乙につき逮捕監禁罪のみの成立を認めたことが、刑訴法三七八条三号〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われ… 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。〉にいう審判の請求を受けない事件について判決した場合に当たるとはいえない。
二 被告人らの自白にはその重要部分に信用し難い点があるのに(判文参照)、右自白のとおりに被告人らを有罪と認めた原判決は、刑訴法四一一条三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和63年1月29日 昭和59(あ)1551
登載
刑集 第42巻1号38頁
参照法条
刑法45条,刑法199条,刑法220条1項,刑訴法256条2項,刑訴法256条4項,刑訴法317条,刑訴法378条3号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点55第256条刑事訴訟法

覚せい剤使用罪につき使用時間、場所、方法に差異のある訴因間において公訴事実の同一性が認められた事例

裁判要旨覚せい剤使用罪の当初の訴因と変更後の訴因との間において、使用時間、場所、方法に多少の差異があるとしても、いずれも被告人の提出した尿中から検出された覚せい剤の使用行為に関するものであつて、事実上の共通性があり、両立しない関係にあると認められる場合には、右両訴因は、公訴事実の同一性を失わない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和63年10月25日 昭和61(あ)916
登載
刑集 第42巻8号1100頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,覚せい剤取締法19条
論点56第256条刑事訴訟法

自動車運転者に注意義務を課す根拠となる具体的事実が訴因変更手続を経て撤回された場合につき右事実を認定することに違法はないとされた事例

裁判要旨自動車運転者に速度調節義務を課す根拠となる路面の滑りやすい原因と程度に関する具体的事実として、石灰の粉塵の路面への堆積凝固という事実が、公訴事実中に記載され、その後訴因変更手続を経て撤回されたとしても、被告人の防禦権が侵害されたとは認められない本件においては、右事実を認定することに違法はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和63年10月24日 昭和62(あ)1051
登載
刑集 第42巻8号1079頁
参照法条
刑法211条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点57第256条刑事訴訟法

遊技機を設置して行う常習賭博罪の罪となるべき事実の摘示の程度

裁判要旨多数の賭博遊技機を設置した遊技場の経営者が、不特定多数の遊技客との賭博を反覆継続した事案につき、右遊技場の営業継続期間の全般にわたつて行われた各賭博行為を一個の常習賭博罪と認定する場合には、右遊技場の所在地、営業継続期間、遊技機の種類・台数、賭博の態様を摘示したうえ、「右期間中、常習として、甲ほか不特定多数の賭客を相手とし、多数回にわたり、右遊技機を使用して賭博をした」旨判示した程度であつても、常習賭博罪の罪となるべき事実の具体的摘示として欠けるところはない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和61年10月28日 昭和60(あ)1263
登載
刑集 第40巻6号509頁
参照法条
刑法186条1項,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項
論点58第256条刑事訴訟法

殺人未遂罪の罪となるべき事実中の犯罪行為の判示として不十分とはいえないとされた事例

裁判要旨「未必の殺意をもつて、被害者の身体を、有形力を行使して、被告人方屋上の高さ約〇・八メートルの転落防護壁の手摺り越しに約七・三メートル下方のコンクリート舗装の路上に落下させて路面に激突させた」旨判示し、被害者を屋上から落下させた手段・方法を右以上に具体的に摘示していない場合でも、右判示は、殺人未遂罪の罪となるべき事実中の犯罪行為の判示として、不十分とはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和58年5月6日 昭和57(あ)1807
登載
刑集 第37巻4号375頁
参照法条
刑法199条,刑法203条,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項,刑訴法378条4号
論点59第256条刑事訴訟法

覚せい剤使用罪における訴因の特定

裁判要旨覚せい剤使用の日時を「昭和五四年九月二六日ころから同年一〇月三日までの間」、その場所を「広島県a郡b町内及びその周辺」、その使用量、使用方法を「若干量を自己の身体に注射又は服用して施用し」との程度に表示してある公訴事実の記載は、検察官において起訴当時の証拠に基づきできる限り特定したものである以上、覚せい剤使用罪の訴因の特定に欠けるところはない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年4月25日 昭和55(あ)1593
登載
刑集 第35巻3号116頁
参照法条
刑訴法256条3項,覚せい剤取締法19条
論点60第256条刑事訴訟法

枉法収賄と贈賄の各訴因の間に公訴事実の同一性が認められる事例

裁判要旨「被告人甲は、公務員乙と共謀のうえ、乙の職務上の不正行為に対する謝礼の趣旨で、丙から賄賂を収受した」という枉法収賄の訴因と、「被告人甲は、丙と共謀のうえ、右と同じ趣旨で、公務員乙に対して賄賂を供与した」という贈賄の訴因とは、収受したとされる賄賂と供与したとされる賄賂との間に事実上の共通性がある場合には、公訴事実の同一性を失わない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年3月6日 昭和52(あ)1115
登載
刑集 第32巻2号218頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑法197条ノ3,刑法198条
論点61第256条刑事訴訟法

一 数人共同して二人以上に対しそれぞれ暴行を加え一部の者に傷害を負わせた場合の罪数
二 起訴状に記載されていない罰条の適用
三 起訴状に記載されていない罰条の適用が許されるとされた事例

裁判要旨一 数人共同して二人以上に対しそれぞれ暴行を加え、一部の者に傷害を負わせた場合には、傷害を受けた者の数だけの傷害罪と暴行を受けるにとどまつた者の数だけの暴力行為等処罰に関する法律一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉の罪が成立し、以上は併合罪として処断すべきである。
二 裁判所は、訴因により公訴事実が十分に明確にされていて被告人の防禦に実質的な不利益が生じない限りは、罰条変更の手続を経ないで、起訴状に記載されていない罰条を適用することができる。
三 暴力行為等処罰に関する法律一条の罪にあたる事実が訴因によつて十分に明示されている場合には、裁判所は、起訴状に記載された刑法二〇八条の罰条を変更させる手続を経ないで、右法律一条を適用することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和53年2月16日 昭和52(あ)1431
登載
刑集 第32巻1号47頁
参照法条
暴力行為等処罰に関する法律1条,刑法45条,刑法204条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点62第256条刑事訴訟法

監禁の訴因に対し暴力行為等処罰に関する法律一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉の共同暴行罪を認定することは違法であるとの主張が排斥された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和52年12月6日 昭和51(あ)1696
登載
集刑 第208号15頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法378条3号後段
論点63第256条刑事訴訟法

略式命令を不相当とし、その事件の通常裁判手続をも担当した裁判官が、刑訴法二五六条六項〈公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。〉の趣旨に反する措置をとつたことをもつて、直ちに不公平な裁判をする虞れがあるとは認められないとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和50年7月21日 昭和50(し)51
登載
集刑 第197号91頁
参照法条
刑訴法21条1項,刑訴法256条6項
論点64第256条刑事訴訟法

一 第一審における併合審理の範囲、程度が相当であるとされた事例
二 いわゆる裁定合議委員会の行なつた調査と裁判に対する司法行政の介入
三 司法行政の運営上必要な資料の入手といわゆる事件に関する予断

裁判要旨一 弁論の分離併合は受訴裁判所の裁量に属するものであつて、第一審における本件併合審理の範囲、程度は相当であるとした原判断に誤りは認められない。
二 所論裁定合議委員会は、裁判官会議の決議によつて、裁定合議事件の公正な事務分配を期するために設置されて現在に至つたものであるところ、裁判所における事務分配は、当該裁判所の固有の行政事務に属するものであつて、同委員会がその責務を果すうえには、所論の併合案の作成及びそれに必要な事前の調査はその当然の職務とするところであり、これをもつて裁判に対する司法行政の支配介入とするのはいわれがない。
三 司法行政事務が裁判官会議の議によつて行われる法制のもとにおいて、裁判官が司法行政の運営上必要な資料を入手することは、当然予想されており、それによつて、担当の裁判官が事件につきなんらかの知識を得ることとなつても、右は事件に関しいわゆる予断を抱いたこととなるものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年7月18日 昭和48(あ)2460
登載
集刑 第193号145頁
参照法条
刑訴法313条1項,刑訴法256条6項,憲法37条,裁判所法29条2項,裁判所法81条
論点65第256条刑事訴訟法

一 公訴事実の同一性があるとされた事例
二 金沢市金銭物品等の寄附募集に関する条例または小松市寄附金品取締条例にいう寄附募集にあたるとされた事例

裁判要旨一 「今度のお盆に戦没者の法要をするので、おろうそく代を上げて欲しい」等虚構の事実を申し向けて合計六〇〇円と合計七七〇円の各金銭を詐取したとの各事実と、金沢市金銭物品等の寄附募集に関する条例に基づく金沢市長の許可を受けず、または、小松市寄附金品取締条例に基づく小松市長に対する届出をしないで、それぞれ右各同額の寄附募集をしたとの右各条例違反の事実との間には、公訴事実の同一性がある。
二 「盆の法要を営むので、御志をいただきたい」旨述べて前後五回にわたり合計六〇〇円と前後一七回にわたり合計七七〇円の各金銭の交付を受けた場合における被告人の各行為(原判文参照)は、金沢市金銭物品等の寄附募集に関する条例または小松市寄附金品取締条例にいわゆる寄附募集にあたる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年7月25日 昭和40(あ)2483
登載
刑集 第26巻6号366頁
参照法条
刑訴法256条3項,刑訴法256条5項,刑訴法312条,刑法246条1項,金沢市金銭物品等の寄附募集に関する条例3条,金沢市金銭物品等の寄附募集に関する条例11条1号,小松市寄附金品取締条例2条2項,小松市寄附金品取締条例11条
論点66第256条刑事訴訟法

一 上告審判決の主文に控訴棄却の旨を表示することの可否
二 関税法一一一条一項所定の無許可輸出罪と同法一一三条の二所定の虚偽申告罪との罪数関係
三 関税法の無許可輸出罪の公訴事実中に税関吏に対し虚偽の申告をした旨の記載があるが同法の虚偽申告罪の起訴はなかつたものとみるのが相当であるとされた事例
四 当初の関税法の無許可輸出罪の訴因につき第一審で無罪とされ検察官が控訴したが控訴審でも罪とならないとされただ外国為替及び外国貿易管理法の無承認輸出罪の成立する余地があるとして破棄差し戻した判決に対し被告人のみが上告した場合と上告審の職権調査の範囲

裁判要旨一 上告審が、第一審判決を破棄した控訴審判決を破棄して第一審判決を維持するのを相当と認めるときは、第一審判決と同一内容の主文を表示するかわりに、控訴を棄却する旨の主文を表示してもよい。
二 関税法一一一条一項所定の無許可輸出罪と同法一一三条の二所定の虚偽申告罪とは併合罪の関係にある。
三 関税法の無許可輸出罪の公訴事実中に、税関吏に対し実際に輸出しようとする薬品の輸出申告をしないで他の薬品の輸出申告をした旨の記載があるが、罪名は単に関税法違反と記載され、罰条として、関税法一一一条一項のみが示されているにすぎない場合には、同法上の虚偽申告の点は起訴されなかったとみるのが相当である。
四 当初の無許可輸出罪の訴因につき第一審で無罪とされ、検察官が控訴したが、控訴審でも罪とならないとされ、ただ、外国為替及び外国貿易管理法の無承認輸出罪の成立する余地があるとして破棄差し戻した判決に対し被告人のみが上告した場合には、上告審が職権調査により右訴因を有罪とすべきものとして破棄差し戻し、または、みずから有罪の裁判をすることは許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年3月9日 昭和42(あ)582
登載
刑集 第26巻2号102頁
参照法条
刑訴法396条,刑訴法413条,刑訴法256条2項,刑訴法378条3号,刑訴法392条2項,刑訴法414条,関税法111条1項,関税法113条の2,刑法45条,刑法54条
論点67第256条刑事訴訟法

事件の同一性を欠くとされた事例

裁判要旨被告人が、昭和四三年三月二八日にaにおいて賭博をしたとの勾留状記載の事実と、同日同所においてAらがした賭博開張図利を、賭具を貸与して幇助したとの起訴状記載の事実とは、併合罪の関係にあるものであるから、事件の同一性を欠くものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年7月10日 昭和45(あ)576
登載
集刑 第177号171頁
参照法条
刑法45条,刑法185条,刑法186条2項,刑訴法60条,刑訴法256条,刑訴法280条,刑訴法312条
論点68第256条刑事訴訟法

公訴事実の同一性があるとされた事例

裁判要旨被告人が、甲から、八〇〇円の供与および二四〇〇円の交付を受けたとする本位的訴因と、被告人が、甲と共謀のうえ、右三二〇〇円のうちから、乙ら七名に対し、ひとりあたり四〇〇円、合計二八〇〇円相当の饗応接待をしたとする予備的誘因との間には、公訴事実の同一性がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年9月24日 昭和43(あ)1353
登載
集刑 第168号775頁
参照法条
刑訴法256条5項,刑訴法312条1項,公職選挙法221条1項
論点69第256条刑事訴訟法

一 事前準備の際検察官が訴因以外の事実を含む一覧表を提示した行為と裁判官の予断
二 検察官被告人の双方から上訴の申立がありその一方の上訴だけを理由があるとして原判決を破棄する場合主文に他方の上訴を棄却する旨の表示をすることの可否

裁判要旨一 当選を得しめる目的をもつて選挙運動者に対し現金を供与したとの訴因で起訴された事件につき、第一審における第一回公判期日前の公判進行についての打合せの際、検察官が、打合せの便宜に供するため、右訴因の事実のほかに、受供与者が受領した金員を更に他の者に交付したり、饗応にあてたりした趣旨の事実が系統的に図示されている一覧表を裁利官に提示したことは、刑訴法第二五六条第六項〈公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。〉の趣旨に照らし妥当ではないが、右の程度では、いまだ同項にいう裁判官に事件につき予断を生ぜしめるおそれのある書類を示したものとは認めがたい。
二 検察官、被告人の双方から上訴の申立があり、その一方の上訴だけを理由があるとして原判決を破棄する場合、主文に他方の上訴を棄却する旨の表示をすべきではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年11月28日 昭和42(あ)297
登載
刑集 第21巻9号1299頁
参照法条
刑訴法256条6項,刑訴法396条
論点70第256条刑事訴訟法

一 起訴状(略式命令請求書)との間に記載内容上軽微とはいえない差異がある略式命令に対し正式裁判の請求がなされ公判が開始された場合における審理の対象
二 訴因罰条の追加を明確な形でなさしめなかつた訴訟手続上の瑕疵が治癒されたものと認められた事例

裁判要旨一 訴因について起訴状(略式命令請求書)と略式命令との各記載内容に軽微とはいえない差異(判文参照)があり、被告人には略式命令の謄本だけが送達されたまま、右略式命令に対し正式裁判の請求がなされ公判が開始された場合、その公判における審理の対象(訴因)は、起訴状と略式命令との各記載内容が一致した部分にかぎられるものと解すべきである。
二 本件のように実質において訴因、罰条の追加と同視できる手続がなされている場合(判文参照)、その訴因、罰条の追加を明確な形でなさしめなかつたという点において、第一審判決に訴訟手続上の瑕疵があつたとしても、控訴趣意中になんら右瑕疵の指摘がなされていないときには、右瑕疵は既に治癒されたものと認めるのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年11月24日 昭和42(あ)1798
登載
刑集 第21巻9号1258頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法271条,刑訴法461条,刑訴法463条,刑訴法312条
論点71第256条刑事訴訟法

公訴事実の同一性がなく訴因の予備的追加の請求が許されないとされた事例

裁判要旨「被告人は喜多方市a町b番地において衣料品商を営んでいた者であるが、昭和二六年度の衣料品の暴落等により業績振るわず経営頗る困難な状態に立至つたところ、予て自己に対し多額の不正融資をしていたA農業協同組合専務理事Bがその回収を急いでいる弱点に乗じ、旧い債務と共に返済するという口実等で同人から金員を騙取せんことを企て昭和二七年九月二四日頃喜多方市字c丁目d番地A農業協同組合事務所において、右Bに対し、仕事も順調だから儲けられる故、手形でもよいから貸してくれと虚構の事実を申し向け、その旨誤信した同人から額面四〇万円の約束手形一通を騙取した」旨の本位的訴因と「被告人は喜多方市字c丁目d番地所在A農業協同組合の専務理事として同農業協同組合の金銭出納保管など一切の業務に従事していたBと共謀のうえ昭和二九年九月頃、前同所においてその業務上保管にかかる現金二〇万円を擅にCに対する借金の返済として同人に交付して横領したものである」旨の予備的に追加された訴因との間には公訴事実の同一性は存しないから第一審裁判所が検察官の右追加請求を許可したことは、刑訴法第三一二条第一項〈裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又…〉に違反するものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年4月12日 昭和39(あ)804
登載
集刑 第159号157頁
参照法条
刑法246条,刑法253条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点72第256条刑事訴訟法

収賄と詐欺の両訴因につき、事実の同一性が認められた事例。

裁判要旨一 本件収賄と詐欺の両訴因については、事実の同一性を有するものと認められる。
二 (収賄の訴因)被告人は、Aが神戸市土地区画整理事業の対象となつた同市a区bc丁目d番地の八所在同人所有の土地約四十一坪につき、神戸市に対し右所有地を換地用地として買収方を希望しており、同人により右買収価格の査定につき寛大有利な取扱いを受けたい趣旨のもとに供与されることの情を知りながら、昭和三十三年四月十一日頃同市a区ec丁目f番地喫茶店「B」において、現金五万円の供与を受け、自己の職務に関し収賄したものである。

三 (詐欺の訴因)被告人は、神戸市a区bc丁目に宅地四十坪余を所有しているAが同宅地を神戸市より高価に買収されることを希望しているのを奇貨として、その運動資金名義のもとに金員を騙取しようと企て、昭和三十三年四月十日頃同人に対し、自己は右買収価格査定に関する職務を担当しておらず、又その職務担当の係に対し斡旋運動などしてやる意思がないのにも拘らず、同宅地の買収に関する用務のため建設省に出張する上司に対する運動資金が必要につき明日午前十一時までに五万円出してくれと虚構の事実を申向け同人をしてその旨誤信させ、よつて、翌十一日頃同市a区ec丁目f番地喫茶店「B」において、同人から右土地の高価買収に関する運動資金名義のもとに現金五万円の交付を受けてこれを騙取したものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年8月20日 昭和39(あ)125
登載
集刑 第152号537頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑法246条1項,刑法197条1項
論点73第256条刑事訴訟法

略式命令請求書に司法警察職員作成の現認報告書の記載を引用することの当否。

裁判要旨略式命令請求書に司法警察職員作成の現認報告書の記載を引用することは相当ではないが、このために弁護人の弁護権が妨げられたと認めるべき証跡が全くない場合は所論訴訟法違反の主張は採用しがたい。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年6月27日 昭和38(あ)842
登載
集刑 第151号541頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法405条,刑訴法411条,刑訴法462条,刑訴規則289条,刑訴規則293条
論点74第256条刑事訴訟法

各個の包括一罪をなす詐欺罪の訴因特定方法。

裁判要旨本件公訴事実は同一被害者に対し、一定期間反覆継続して行われた単一意思の発現と認めらるる同種の詐欺行為を包括して、一個の詐欺罪とし、八名の被害者につき各個の訴因毎に、被害者、詐欺の行われた日時(始期と終期)、場所及び被害物件の総計その価格の総額等を明示しているのであるから、詐欺罪の訴因の特定について欠くることなく、右一罪の内容をなす個々の行為につき、更に、日時場所等によりこれを特定する要なき旨の原審の判断は、違法とは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年4月23日 昭和38(あ)2437
登載
集刑 第151号71頁
参照法条
刑法246条1項,刑法45条,刑訴法256条
論点75第256条刑事訴訟法

公訴事実の同一性を認められた事例。―詐欺の本位的訴因と賍物牙保の予備的訴因―

裁判要旨一 本件記訴状記載の詐欺の事実と予備的訴因追加請求書掲記の賍物牙保の事実との間に公訴事実の同一性を認めた原判断を相当と認める。
二 (原判断の要旨)詐欺の本意的訴因と賍物牙保の予備的訴因の両者が構成要件、罪名を異にし、前者は甲を被害者とする金員騙取の行為であるのに対し後者は乙会社が遺失物に対して有する追及回復の権利を侵害する行為であつて、両者は被害者及び被害法益を異にし一見恰も公訴事実の同一性を害するもののようであるが、後者において第一ないし第四に分割されている各賍物牙保罪を通じてその基本に存する事実関係が、後者における検察官の罪数的評価にもかかわらず前者の事実関係と全面的に重畳融合していることは、いずれの事実関係も丙が本件小切手を拾得したことに縁由し、被告人から第一審相被告人A、B、Cに順次右小切手の割引換金の依頼承諾がなされ、いずれも右小切手の正当に入手されたものでないことを知りながら敢てなした右一連の依頼承諾に基づき、究極において甲から割引換金を受けたというに帰するのであり、被告人及びA、B、C三名の現実の行為はその内容、日時、場所等同一であつて、この同一の事実関係を本位的訴因は詐欺罪に該るものと評価し、予備的訴因は賍物牙保罪に該るものと評価するに過ぎないのであつて、畢竟両者は基本的事実関係を同じくするものというべく公訴事実の同一性において欠くるところはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年4月22日 昭和37(あ)2463
登載
集刑 第151号67頁
参照法条
刑法246条,刑法256条2項,刑訴法312条,刑訴法256条
論点76第256条刑事訴訟法

公訴事実の同一性ありと解された事例。―勾留状の被疑事実(窃盗)と起訴状の公訴事実(賍物故買)―

裁判要旨所論勾留状の被疑事実(窃盗)と所論起訴状の公訴事実(賍物故買)との間には、公訴事実の同一性ありと解するのが相当である。注、所論の

(勾留状の被疑事実)被疑者は昭和三五年八月一六日午前一一時頃より同日午後四時〇分頃迄の間東京都品川区abの)c番地通信員A方において同人所有に係る現金六千円及びトランジスターラジオ(時価金八千円相当)一台並びに振袖(鶴とささ梅模様)一点外衣類四一点時価合計金二七万壱千円相当を窃取したものである。

(起訴状の公訴事実)第一、被告人Bは昭和三五年八月一六日頃東京都品川区ae丁目c番地A方において同人所有のトランジスターラジオ一台及び女物袷着物四〇点(時価合計約二六万五千円相当)を窃取し。第二、被告人Cは昭和三五年八月一九日頃東京都墨田区d町g丁目f番地h荘内D方においてBより同人が前記第一記載の通り窃取した来た前記トランジスターラジオ一台及び女物袷着物等四〇点をそれが賍品である事を知り乍ら代金約三万円で買取り以つて賍物を故買したものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年7月25日 昭和36(あ)2837
登載
集刑 第147号863頁
参照法条
刑法235条,刑法256条2項,刑訴法64条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点77第256条刑事訴訟法

贈賄罪の事実認定につき訴因変更の手続を要しないとされた事例。

裁判要旨被告人が販売した不正な収入印紙および取引高税印紙を貼付使用の登記申請書を審査校合し右不正印紙類を黙認の上登記手続を完了して貰つたことの報酬として金員を供与した旨の訴因に対し、被告人が販売した不正な収入印紙および取引高税印紙を貼付使用の登記申請書を受理し、該印紙類の正不正を審査確認するに当り、厳重な審査をなすことなく、右印紙類に消印除去の痕跡が明瞭に認められない限り、これを正当なものとして寛大且つ有利な取扱をして貰つたことに対する報酬として金員を供与した旨認定するには、訴因変更の手続を要しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年7月12日 昭和36(あ)1881
登載
集刑 第147号791頁
参照法条
刑法198条,刑法197条ノ3,刑訴法312条,刑訴法256条3項,印紙犯罪処罰法2条1項前段
論点78第256条刑事訴訟法

訴因、罰条の変更手続を要しないとされた事例―職業安定法第六三条第一項と同法第六四条第一号第三二条第一項本文刑法第六〇条

裁判要旨一 被告人は甲女と同棲中同女を働かせてその周旋料を取得しようと企て肩書住居において同女に対し短刀を示しながら「逃げたら只ではおかんぞ」と申し向けて同女を脅迫し昭和三四年二月二八日頃料理店AことBに対し、同女を同人方女給として雇入方斡旋し、もつて脅迫による職業紹介を行つたものであるとの職業安定法六三条一項該当の公訴事実と被告人は相被告人と共謀の上、法定の除外事由がないのに営利の目的で昭和三四年二月二八日頃右山本に対し右甲女を仲居として雇用するよう斡旋し、もつて有料の職業紹介事業を行つたものであるとの、職業安定法六四条一号三二条一項本文刑法六〇条該当の第一審判決認定事実とは基本的事業関係においては同一であると認められるので、いわゆる公訴事実の同一性には何ら欠くるところはない。
二 本件における事実関係並びに訴訟の経過にかんがみると、前者の罪として起訴された訴因を右脅迫という要件を欠如する後者の罪、しかも起訴にかかる同種の職業犯の一部として認定することは、被告人の防禦に実質的な不利益を与える虞れはなく、いわゆる訴因、罰条の変更手続を要しない場合であると解すべく、第一審裁判所の訴訟手続には所論の如き違法は勿論何ら違法の点は存しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年6月5日 昭和36(あ)102
登載
集刑 第143号15頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,職業安定法63条1項,職業安定法64条1号,職業安定法32条,刑法60条
論点79第256条刑事訴訟法

親告罪の告訴と起訴状記載の要否。

裁判要旨親告罪の告訴は、訴訟条件であつて、公訴事実に属しないから、被害者から告訴のあつたことを起訴状に記載する必要はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年6月15日 昭和37(あ)613
登載
集刑 第143号159頁
参照法条
刑訴法256条2項,刑訴法230条,刑法177条,刑法180条
論点80第256条刑事訴訟法

一 出入国管理令第六〇条の合憲性
二 出入国管理令第六〇条第二項違反罪における訴因の特定

裁判要旨一 出入国管理令第六〇条は、憲法第二二条第二項に違反しない。
二 密出国の日時を「昭和二七年四月頃より同三三年六月下旬まで」、その場所を「本邦より本邦外の地域たる中国に」と各表示し、その方法につき具体的な表示をしていない起訴状であつても、検察官の冒頭陳述により、被告人は昭和二七年四月頃までは本邦に在住していたが、その後所在不明となつてから、日時は詳らかでないが中国に向けて不法に出国し、引き続いて本邦外にあり、同三三年七月八日帰国したものであるとして、右不法出国の事実を起訴したものとみるべき場合には、審判の対象および防禦の範囲はおのずから明らかであつて、刑訴第二五六条第三項〈公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。〉に違反するものということはできない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和37年11月28日 昭和34(あ)1678
登載
刑集 第16巻11号1633頁
参照法条
出入国管理令60条,出入国管理令71条,憲法22条2項,刑訴法256条3項
論点81第256条刑事訴訟法

予備的訴因の追加を許可する旨の決定と特別抗告。

裁判要旨予備的訴因の追加を許可する旨の決定のごときは、「訴訟手続に関し判決前にした決定」であつても、刑訴第四三三条第一項〈この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に…〉にいわゆる「この法律により不服を申し立てることができない決定」にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年2月7日 昭和36(し)7
登載
刑集 第15巻2号304頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法420条,刑訴法433条1項
論点82第256条刑事訴訟法

一 公訴事実の同一性の認められる事例−業務上横領と窃盗
二 同一事実に対する別訴の提起が二重起訴にあたらないとされた事例

裁判要旨一 被告人は家畜商を営むものであるが、昭和二五年七月二五日頃家畜商Aより同人所有の馬四頭の売却方を依頼され、同月二九日うち二頭をBに代金六万円で売却しこれを保管中、同月三〇日新潟県西蒲原郡a町C旅館において、内金三万円を着服して横領をしたとの業務上横領の訴因と、被告人は昭和二五年七月三新潟県西蒲原郡b村大字cD方から同人が一時Aより預つていたAの父E所有の牝馬鹿毛および青色各一頭を窃盗したとの窃取の訴因とは、事実の同一性を失わない。
二 第一次第一審において、右業務上横領の訴因を右窃盗の訴因に変更し後者につき有罪を認定したところ、第二審において、右は事実の同一性を欠くとしてこれを破棄、移送したため、第二次第一審において、右破棄判決の判断に従い検察官から右窃盗の訴因と同一内容の別訴が提起され、併合審理された結果、窃盗につき有罪、業務上横領はその不可罰的事後行為であるとして無罪が言渡されたが、第二次第二審を経た上告審において、右破棄判決の判断は誤りで事実の同一性があり、第二次第一審における別訴の提起は実質において訴因変更の趣旨であると解される以上、二重起訴の違法はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年12月11日 昭和29(あ)2526
登載
刑集 第13巻13号3195頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法256条,刑訴法338条3号,刑訴法337条,刑法253条,刑法235条
論点83第256条刑事訴訟法

起訴状が紛失していても適法な公訴提起があつたものと認めた事例

裁判要旨第二審判決宣告後起訴状が紛失した場合に、第一審判決謄本、右第二審判決謄本および第一審担当検察官の証明書並びに右検察官および第一審判決に関与した裁判官の各証言によつて、公訴提起のあつたことおよびその犯罪事実は第一審判決認定事実と同一であつたことを認定し、適法な公訴の提起があつたものと認めることは違法でない
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年6月26日 昭和33(れ)1
登載
刑集 第12巻10号2319頁
参照法条
旧刑訴法290条,旧刑訴法291条,新刑訴法256条
論点84第256条刑事訴訟法

起訴状に記載のない犯行の動機を認定することの当否

裁判要旨原判決が本件各起訴状に記載されていない犯行の動機をも認定していること所論のとおりであるが、これをもつて原判決が審判の請求を受けない事実を審判した違法があるということはできない
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年6月17日 昭和33(あ)454
登載
集刑 第126号379頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法335条1項,刑訴法387条3号
論点85第256条刑事訴訟法

一 法人をたばこ専売法第七七条第七一条第一号第六六条第一項により処罰する場合と同法第七五条の没収、追徴
二 刑訴法第三三九号第一項第四号にいう「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」にあたらない事例
三 略式命令の請求による起訴の効力発生の時期

裁判要旨一 法人とたばこ専売法第七七条、第七一条、第六六条第一項により処罰する場合には、所定の罰金のほか同法第七五条の没収、追徴の言渡ができる
二 法人の清算人が清算結了前に検察官から解散前の違反行為につき略式手続によることに異議がないかどうかを確められ、異議がない旨申述し、清算結了後、その登記前に略式命令の請求がなされている場合は、刑訴第三三九条第一項第四号〈左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。〉にいう「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」にあたらない
三 略式命令の請求による起訴の効力は、その請求が裁判所に対してなされた時に発生し、略式命令の謄本が被告人に送達された時に生ずるのではないと解するのが相当である
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年5月24日 昭和32(あ)2199
登載
刑集 第12巻8号1611頁
参照法条
たばこ専売法77条,たばこ専売法71条1号,たばこ専売法66条1項,たばこ専売法75条,刑法8条,刑法9条,刑法20条,憲法31条,刑訴法339条1項4号,刑訴法256条,刑訴法461条,刑訴法462条,刑訴規則290条
論点86第256条刑事訴訟法

一 被告人の経歴等と詳細な記載がある起訴状が刑訴法第二五六条第六項に違反しないとされた一事例
二 恐喝の手段として郵送された脅迫文書の殆んど全文が記載された起訴状と刑訴法第二五六条第六項

裁判要旨一 本件起訴状に被告人の経歴等に関する詳細な記載があるからといつてそれが刑訴法第二五六条第六項に違反するものであるということはできない
二 恐喝の手段として被害者に郵送された脅迫文書の趣旨が婉曲暗示的であつて、起訴状にこれを要約摘示するには相当詳細にわたるのでなければその文書の趣旨が判明し難いような場合には、起訴状にその文書の全文と殆んど同様の記載がなされても、その起訴状は刑訴法第二五六条第六項に違反しないものと解すべきである
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年5月20日 昭和28(あ)3906
登載
刑集 第12巻7号1398頁
参照法条
刑訴法256条,刑法249条
論点87第256条刑事訴訟法

製造たばこ無指定販売罪幇助犯の公訴事実の記載方法

裁判要旨製造たばこ無指定販売罪の幇助犯の公訴事実を起訴状に記載するには、日本専売公社より製造たばこの小売人として指令を受けない者が製造たばこを販売したこと、ならびにその販売を容易ならしめた具体的行為の日時、場所、方法を特定して記載するをもつて足るものと解するを相当とする。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年3月27日 昭和32(あ)2914
登載
刑集 第12巻4号697頁
参照法条
たばこ専売法29条2項,たばこ専売法71条5号,刑訴法256条,刑法62条
論点88第256条刑事訴訟法

一 道路交通取締法違反(無謀操縦)と業務上過失致死の各事実が公訴事実の同一性を欠く一事例
二 道路交通取締法違反(無謀操縦)罪と業務上過失致死罪との間に牽連関係乃至一所為数法の関係が存しない場合

裁判要旨一 本件における道路交通取締法違反(無謀操縦)の事実と業務上過失致死の事実とは、公訴事実としては別個の事実であつて、公訴事実の同一性を認むべきではない。
二 本件における道路交通取締法違反(無謀操縦)の罪と業務上過失致死罪とは別個独立の犯罪であつて、右両者の間には牽連関係ないし一所為数法の関係は存しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年3月17日 昭和30(あ)2676
登載
刑集 第12巻4号581頁
参照法条
道路交通取締法28条1号,道路交通取締法7条1項,道路交通取締法2項,刑法54条1項,刑法211条,刑訴法256条,刑訴法312条1項
論点89第256条刑事訴訟法

他の共犯者に対する公判審理により被告事件の内容を予め知つていた裁判官の裁判と憲法第三七条第一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」

裁判要旨共同被告人として起訴された共犯者らと被告人との弁論が分離された結果、判決裁判所の裁判官が右共犯者らの公判審理により被告人に対する公判審理の開始前に被告事件の内容に関し予め知識を有していたからといつて、その裁判官のした審理判決が憲法三七条一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」でないということはできないことは当裁判所の判例(昭和二四年新(れ)第一〇四号、同二五年四月一二日、大法廷判決、集四巻四号五三五頁、昭和二八年(あ)第二三九二号同年一〇月六日第三小法廷判決、集七巻一〇号一八八八頁、昭和三一年(あ)第二一七八号、同年一一月二七日第三小法廷決定、集一〇巻一一号一五五八号)の趣旨に徴し明らかである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年7月30日 昭和32(あ)1146
登載
集刑 第119号1139頁
参照法条
憲法37条1項,刑訴法20条,刑訴法21条,刑訴法256条6項
論点90第256条刑事訴訟法

一 訴因、罰条の追加、変更をさせないで審判することが違法と解せられる事例
二 背任の成立しない事例
三 期待可能性についての無用の判示と判例違反

裁判要旨一 第一審が業務上横領罪の訴因、罰条について判決した事件について、控訴審が背任の点についても既に十分な証拠調がされているというだけの理由で、未だ任務に背いたか否かの点について十分な防禦を尽していると認められないのにかかわらず、背任について訴因罰条の追加、変更なしに審判することは違法である。
二 A公団BA局長が先に従業員に貸し付けた越冬資金の返済方を強行すれば、ストライキは避けられない情勢の下において、石炭操作賃金名義で資金を作り、恰も帳簿上右越冬資金の返済があつたかのように装つて、規定上は許されない右資金の返済方の免除を行つたからといつて、直ちに背任罪を構成するとはいえない。
三 右の場合背任罪は成立するが期待可能性がない旨の判断は無用の議論であつて、判例と相反する判断をしたものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年4月30日 昭和30(あ)737
登載
集刑 第118号1111頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑法253条,刑法247条
論点91第256条刑事訴訟法

裁判官が他の被告事件の公判審理により被告事件の内容を予め知つていた場合と刑訴法第二五六条第六項

裁判要旨被告人甲に対する窃盗事件の第一回公判期日において同被告人から窃盗の事実を自認する陳述を聴取しその証拠書類の取調をした裁判官が、同被告人より右窃盗の賍物を故買したことを公訴事実とする被告人乙に対する賍物故買事件(別件)を、前記甲に対する事件の第二回公判期日冒頭において、これに併合審理することとし、乙に対し起訴状の朗読に始まる審理をすることは、乙に対する起訴状朗読前予め判決裁判所の裁判官がその公訴事実と密接の関係ある事実の証拠資料の一部を了知していることになるけれども、刑訴第二五六条第六項〈公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。〉に違反するものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年1月29日 昭和29(あ)2076
登載
刑集 第11巻1号305頁
参照法条
刑訴法256条6項,刑訴法296条
論点92第256条刑事訴訟法

一罪の訴因を二罪と認定する場合と訴因の追加変更

裁判要旨一個の窃盗として起訴せられたものを、訴因の追加変更の手続を経ないで、二個の窃盗と認定しても、公訴事実の同一性を失わずかつ被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞れがない限り、違法ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年10月8日 昭和30(あ)3499
登載
刑集 第11巻10号2487頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法256条,刑法235条
論点93第256条刑事訴訟法

一 公訴事実の同一性の認められる一事例
二 業務上横領と詐欺

裁判要旨被告人はA事務局の外務員として同連盟賛助会員の募金並びに賛助金集金等の業務に従事中、昭和二六年三月二四日頃から同年八月一六日頃までの間二五回にわたつてB株式会社外二四名から集金した合計一七五〇〇〇円をその都度ほしいままに着服横領したとの業務上横領の訴因と、被告人は昭和二五年一〇月末まで右事務局員として右事務に従事し同日解職されたものであるが、なお右事務局員であるが如くよそおい前記期間中右二五名から賛助金名義で前記金額を騙取したとの詐欺の訴因とは、事実の同一性を失わない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年11月9日 昭和29(あ)2278
登載
刑集 第10巻11号1531頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法256条,刑法253条,刑法246条
論点94第256条刑事訴訟法

公訴事実の同一性の認められる一事例

裁判要旨被告人は甲と共謀して昭和二五年九月一七日某劇場においてストリツプ・ガールA子をして伴奏曲にあわせ脚光を受けながら逐次着衣全部を脱ぎこれを両手にて腰部にあて舞台全面を踊りながら二回にわたり衣裳を脇にずらせ陰部を露出させ最後に舞台中央にて手にした衣裳を下にずり下げ陰部を示す等、猥褻な日本舞踊を踊らせこれを約二〇〇名の客に観覧させ以て猥褻のものを公然陳列したとの起訴状記載の事実(罰条、刑法第一七五条記載)と被告人は甲と共謀して前同日同所において前記ストリツプ・ガールをして右伴奏曲にあわせて脚光を受け逐次着衣を脱ぎ且つ衣裳を両手で押えこれを左右に交互に振りつつ、多数観客の面前で踊りながら時折衣裳を脇にずらせ陰部を露出させる等猥褻な行為をなさしめたとの原判決認定の犯罪事実(刑法第六一条第一項第一七四条適用)とは同一性を失わない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年7月1日 昭和28(あ)1772
登載
刑集 第9巻9号1769頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑法174条,刑法175条
論点95第256条刑事訴訟法

一 別個の所持の認められる一事例
二 所持罪における場所の変更と公訴事実の同一性
三 被告人の控訴趣意書に対する判断遺脱が刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例

裁判要旨一 かねて自宅に保管していた麻薬を持ち出し、これを二個に分割し、その一部を他人に交付し、残余の部分を留保して自宅外の場所に隠匿した場合には別個独立の所持罪が成立する。
二 麻薬所持の罪において起訴事実と認定事実との間に、所持の場所に多少の変更があつても、所持の目的物が同一である限り、その一事を以つて直ちに公訴事実の同一性が失われるとは解されない。
三 被告人の控訴趣意書中事実誤認を指摘するが如き口吩があつても、控訴の要旨は量刑過重に失するを不服とし刑の執行猶予を願うにあるときは、同被告人の弁護人の控訴趣意の量刑不当の主張に対する判断がなされている限り、右被告人の控訴趣意書に対する判断を遺脱した違法があつても、右違法は判決に影響がなく刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年7月19日 昭和28(あ)2775
登載
刑集 第9巻9号1885頁
参照法条
旧麻薬取締法(昭和23年法律123号)3条1項,旧麻薬取締法(昭和23年法律123号)57条,刑法45条,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法378条3号,刑訴法392条1項,刑訴法411条
論点96第256条刑事訴訟法

一 起訴状の訂正が許される一事例
二 判決を宣告する場合と通訳人の要否

裁判要旨一 所論は、憲法三一条違反をいうも、その実質は単なる刑訴法違反の主張であり、しかもそれは第二審判決に対する攻撃ではなく、第一審判決に対する攻撃に過ぎないばかりでなく、所論起訴状の訂正は同一公訴事実の細部を変更しに過ぎないので所論のような刑訴法の違反も認められない。註。「所論」とは訴因又は公訴事実に異にし、この事実に対して弁解と証拠調のないという主張である。
二 判決を宣告する場合においても国語に通じない被告人に対しは通訳人を付しなければならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年2月15日 昭和28(あ)1731
登載
刑集 第9巻2号282頁
参照法条
刑訴法256条3項,刑訴法312条,刑訴法175条
論点97第256条刑事訴訟法

主訴因を詐欺罪、予備的訴因を物価統制令違反罪(不当高価販売)とした起訴事実を詐欺罪として判断した判決は同一性質の所為を物価統制令違反罪(不当高価販売)として処断した判例に反するか

裁判要旨主訴因を詐欺罪、予備的訴因を物価統制令違反罪(不当高価販売)とした起訴事実を詐欺罪とした処断した原判決は、同一性質の事件につき訴因を不当高価販売罪として起訴され、判決においても物価統制令違反罪(不当高価販売)の成立を認めた高裁判例に違反するということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年12月26日 昭和29(あ)9
登載
集刑 第111号865頁
参照法条
刑法246条,物価統制令9条ノ2,刑訴法405条3号,刑訴法256条3項
論点98第256条刑事訴訟法

審判の請求を受けない事件について判決をしたものとならない事例

裁判要旨起訴状に「被告人は納税組合設立の件が議せられている労働組合大会の席上『現在a町で工事中の観光道路は幅三間で戦車が通るようになつているという事は米ソ戦争の際アメリカの軍用道路に使われるのだ。現在の警察予備隊七万五千名は売国奴吉田によつて戦争に駆り立てられているのは明らかで、其の拳銃も我々の税金で賄われているので其の様な税金を納めるのには反対だし、従つて其の様な税金を納める為めの納税組合にも反対である。』旨発言して地方税を納入しないことをせん動した」と記載して起訴されたのに対し、第一審判決が起訴条に記載のない『委員長は税金が戦争準備のため使われていないというが平衡交付金が減らされたこと自体戦争準備のために使われている証拠だ』との文言を被告人の発言内容として、右起訴状記載の発言内容に附加して判示したからといつて第一審判決は審判の請求を受けない事件について判決をしたものではない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年11月30日 昭和26(あ)3472
登載
刑集 第9巻12号2529頁
参照法条
刑訴法256条1乃至3項,刑訴法312条,刑訴法378条3号,地方税法12条1項
論点99第256条刑事訴訟法

詐欺罪について訴因の変更を必要としない一事例

裁判要旨被告人が昭和二七年一〇月中旬頃およびその翌日頃の二回に古鉄商A方において、同人に偽造の砲金棒を示してこれが純正な砲金棒であるように装い同人をそのとおり誤信させ砲金棒合計二七本の買受方を承諾させて現金合計二十七万三千五百円を騙取した旨の訴因に対し、被告人が右各日時頃二回に前同所古鉄商B(A方の女)方において前同様の方法で同人を欺罔し砲金棒合計二七本の買受方を承諾させて現金合計二十七万三千五百円を騙取した旨の事実を認定するには、訴因変更の手続を経ることを要しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年10月4日 昭和28(あ)4367
登載
刑集 第9巻11号2136頁
参照法条
刑法246条1項,刑訴法256条,刑訴法312条
論点100第256条刑事訴訟法

他の被告事件の公判審理により被告事件の内容を予め知つていた裁判官の裁判と憲法第三七条第一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」

裁判要旨公判審理前に、これと必要的共犯の関係にある他の被告事件の証人として被告人を尋問し、被告事件の内容に関し、予め智識を有していたからといつて、その裁判官のした審理判決が憲法第三七条第一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」でないということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年10月14日 昭和30(あ)1708
登載
刑集 第9巻11号2213頁
参照法条
憲法37条1項,刑訴法256条6項,刑訴法296条,刑訴法20条
論点101第256条刑事訴訟法

強制猥褻の訴因に対し、訴因変更手続を経ることなく公然猥褻の事実を認定した判決と刑訴第三七八条第三号〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われ… 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。〉後段

裁判要旨行為の公然性について何ら明示するところなく、単に被告人甲乙両名はS方二畳の間において、M女に対し暴行を加え、それぞれ猥褻の行為をなしたとの強制猥褻の訴因に対し、訴因の変更または追加の手続をなすことなく、飲食店S方において右S及び同店の客T外二名の面前で被告人甲乙両名はM女に対しそれぞれ公然猥褻の行為をなしたとの事実を認定した有罪判決は、審判の請求を受けない事件について判決をした違法があるものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年8月20日 昭和27(あ)4522
登載
刑集 第8巻8号1249頁
参照法条
刑法176条,刑法174条,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法378条3号
論点102第256条刑事訴訟法

詐欺罪について起訴事実と認定事実とが単に欺罔方法の一部につき差異あるに過ぎない場合と訴因変更の要否

裁判要旨所論公訴事実と原審認定の事実とはその基本的事実関係において相違するところなく、単に欺罔方法の一部に差異あるに過ぎないのであるから、たとえ原審が訴因変更の手続を経ることなく、判示事実を認定したからとて、これによつて、実質的に被告人に不当な不意打を加えその防禦権の行使を妨げたものと認めることはできないのであつて原判決には所論の訴訟法違反もない。(昭和二六年(あ)一三〇三号同二八年三月五日当法廷決定、集七巻三号四四三頁以下参照)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年4月22日 昭和28(あ)2982
登載
集刑 第94号587頁
参照法条
刑法246条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点103第256条刑事訴訟法

選挙違反罪において交付又は供与された金員の趣旨につき差異ある場合と訴因変更の要否

裁判要旨所論原審認定の事実は、犯罪の日時、場所、金員の交付又は供与を受けたとする相手方及びその金額等の点において本件公訴事実と何等の差異もなく、ただ交付又は供与されたとする金員の趣旨について差異あるに止まり、両者間に基礎たる事実の同一性ありと認め得るばかりでなく、その罰条の点においても共に公職選挙法二二一条一項に該当し、単に五号(交付)によるか、一号(供与)によるかの差異あるに過ぎないのであつて、原審が本件公訴事実に対し、訴因、罰条の変更手続を経ないで所論のような判示事実を認定処断したとしても被告人の防禦権の行使に不意打的に実質的な不利益を及ぼしたものということはできない(昭和二六年(あ)第二五二六号、同二九年一月二八日当法延判決参照)。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年4月22日 昭和28(あ)4213
登載
集刑 第94号625頁
参照法条
公職選挙法221条1項1号,公職選挙法221条1項5号,刑訴法312条,刑訴法256条,刑訴法338条4号
論点104第256条刑事訴訟法

一 公判調書における文字の挿入削除が刑訴規則第五九条所定の方式を欠く場合の効力
二 予備的訴因の追加により公訴事実の同一性が害されない事例
三 予備的訴因につき有罪を認定した場合に主たる訴因に対する判断を明示することの要否

裁判要旨一 公判調書における文字の挿入削除が刑訴規則第五九条所定の方式を欠いていても、ただちにその挿入削除を無効とすべきではなく、その効力の有無は、裁判所が諸般の状況に照して合理的な裁量により決すべきものである。
二 「被告人はA税務事務所に勤務中、B日頃、かねて同税務事務所滞納整理係Cから徴収方依頼を受けていた納税者D会社より、固定資産税一六四、七三〇円を同会社振出の同額の小切手で徴収し保管中、その頃擅に着服横領した。」との横領の訴因に対し、「被告人はA税務事務所に勤務中、B日頃、D会社において、その制限なきにかかわらず権限あるをよそおい、Eに対し同会社の固定資産税一六四、七三〇円の請求をし、同人をしてその旨誤信せしめ、よつて同人から同会社振出の同額の小切手の交付を受けて、これを騙取した。」との詐欺の予備的訴因を追加することにより、公訴事実の同一性は害されない。
三 主たる訴因と予備的訴因のある場合に、予備的訴因につき有罪を認定したときは、主文において主たる訴因につき無罪を言い渡すべきでないことは勿論、理由中においても、かならずしもこれに対する判断を明示することを要するものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年3月23日 昭和27(あ)5538
登載
刑集 第8巻3号305頁
参照法条
刑訴規則59条,刑訴法256条3項,刑訴法256条5項,刑訴法312条1項,刑訴法44条1項,刑訴法336条,刑訴法378条3号,刑法252条1項,形法246条1項
論点105第256条刑事訴訟法

起訴状記載の罪名と勾留状記載の罪名とが異なる場合と勾留の効力

裁判要旨勾留状記載の罪名と起訴状記載の罪名とが異つていても、両者に記載されている犯罪事実に同一性があると認められる以上、勾留は違法でない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年12月14日 昭和28(あ)4001
登載
刑集 第8巻13号2142頁
参照法条
刑訴法64条,刑訴法256条,憲法34条
論点106第256条刑事訴訟法

一 恐喝罪の起訴状に、恐喝手段が正当な権利の行使にあたらないことを示す為に被告人の所為を記載することと刑訴法第二五六条第六項
二 刑訴第四七条〈訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる…〉本文の注意
三 刑訴第四七条但書にあたる一事例
四 控訴審における刑訴第三九三条〈控訴裁判所は、前条の調査をするについて必要があるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で事実の取調をす…〉但書による事実取調のための証人尋問請求却下の当否

裁判要旨一 所論は、要するに恐喝罪にかかる本件起訴状の前段記載に「被告人は…塩酸キニーネ一壜(約百五十瓦在中)価格約千円位のものを五万円の塩酸モルヒネと言う高価な薬だと偽つて売却方を依頼した如く見せかけた後」とあるのを指摘し、かかる記載は裁判官に事件に付予断を生ぜしめる虞のある事項にあたり、本件起訴は無効であるというのである。しかしながら本件の場合恐喝手段が正当な権利の行使にあたらないことを示すために本件起訴状に所論指摘のような記載をしても違法ということはできない。
二 刑訴第四七条〈訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる…〉本文は訴訟に関する書類が公判開廷前に公開されることによつて訴訟関係人の名誉を毀損し、公序良俗を害し、または裁判に対する不当な影響を引き起すことを防止するための規定である。
三 検察官が公訴の提起という本来の職務を行うために、その保管にかかり、捜査中の他の被疑事件記録中の書類から知得した事実を起訴状の公訴事実のなかに公訴の提起に必要なかぎり記載してこれを公にすることは、刑訴第四七条但書にあたるものと解すべきである。
四 仮りにこの原審における証人尋問の請求が刑訴三九三条〈控訴裁判所は、前条の調査をするについて必要があるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で事実の取調をす…〉但書前段の要件を具備するとしても、なおその証人を取り調べることが但書後段の要件を具備しこれを取り調べる必要のある場合にあたるかどうかは、結局原審の判断によつて決せられる事項であるから、原審が弁護人の請求の理由と、すでに取り調べた事実と証拠とを合せて考えた上、右証人を取り調べなければならない場合に当らないものとして却下したことはなんら違法ということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年7月18日 昭和27(あ)801
登載
刑集 第7巻7号1547頁
参照法条
刑法249条,刑訴法256条6項,刑訴法47条,刑訴法256条,刑訴法393条,刑訴規則164条
論点107第256条刑事訴訟法

一 詐欺罪と背任行為
二 控訴裁判所が第一審判決には法令の適用に誤がありとしてこれを破棄した場合と控訴審における訴因変更の要否

裁判要旨一 他人の事務を処理する者が自己の利益を図り任務に関して本人を欺き財物を交付せしめたときは、詐欺罪が成立し、別に背任罪を構成しない。
二 第一審裁判所が、基礎状記載の訴因と同一の背任罪を認定して刑法第二四七条を適用したが、背任罪として判示したのは法令の誤解であつて判示自体により詐欺の事実が確定されているものと認められる場合には、控訴裁判所は第一審判決を破棄した上、法令適用の誤を正すべきであつて、控訴審において背任の訴因を詐欺の訴因に変更する手続を必要としない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年5月8日 昭和26(あ)3819
登載
刑集 第7巻5号965頁
参照法条
刑法246条,刑法247条,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法380条
論点108第256条刑事訴訟法

一 公訴事実に同一性の認められる一場合
二 一審で横領と認定した事実を控訴審で訴因罰条の変更手続を経ることなく占有離脱物横領と認定することの適法な一場合

裁判要旨一 「被告人は甲日、某信用組合において、事務員Aが誤つて他人に支払うべき払戻金三万五千円を被告人に提供せんとするや右誤信に乗じてこれを受け取り騙取した」との詐欺の事実(主たる訴因)と「被告人は甲日某信用組合事務員の過失により他人に支払うべき払戻金三万五千円を受領し帰宅後、事務員Bより財布の内容を尋ねられるや、領得の意思でその返還を拒否して着服横領した」との横領の事実(予備的訴因)とは、公訴事実の同一性があるし控訴審において、これを右はA事務員の真意に基かない授受であるとして、占有離脱物横領と認定することも、公訴事実の同一性を害しない。
二 右の場合、横領を占有離脱物横領と認定するには訴因罰条の変更手続を経るを要しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年5月29日 昭和26(あ)4626
登載
刑集 第7巻5号1158頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法256条,刑訴規則209条,刑法246条,刑法252条,刑法254条
論点109第256条刑事訴訟法

業務妨害罪について訴因の変更を必要としない一事例

裁判要旨被告人が会社工場長の制止するにかかわらず、これに反抗して同工場に対する送電用スイツチを切断して送電を不能ならしめ、もつて威力を用い同会社の業務を妨害した旨の起訴状記載の訴因に対し、被告人が送電設備の状況を監視していた右会社の工場長に対し、同人が制止するにかかわらず暴行、脅迫をなし、その間数回にわたつてスイツチを切断しもつて威力を用い右工場長の業務を妨害した旨の事実を認定するには訴因変更の手続を経ることを要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年3月5日 昭和26(あ)1303
登載
刑集 第7巻3号443頁
参照法条
刑法234条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点110第256条刑事訴訟法

一 罰金の寡額が刑法第一五条によつて定められている場合においては罰金の寡額の引上は罰金等臨時措置法第二条第一項によるのか
二 検察官が供述調書を作成する際にこれを供述者に読み聞けなかつた場合における供述調書の証拠能力
三 公法関係において債務の一部弁済があつた場合民法第四八九条を適用するのは相当か
四 民法第四八九条第二号の弁済の利益中には刑事上の責任の有無を含むか
五 前任者が控除した失業保険料を所定期日までに納付しなかつた者について失業保険法第五三条第三号の罪が成立するか
六 自ら保険料を控除した者であつても所定の納付期日にはその地位を去つた者について失業保険法第五三条第三号の罪が成立するか
七 失業保険法第三四条(改正前のもの)、同法施行令第一〇条にいわゆる翌月末日の意義
八 失業保険法第五五条の規定により法人が責任を負う場合において行為者が異るときは公訴事実も異なるか

裁判要旨一 特別法であつても、罰金の寡額が刑法第一五条によつて定められる場合には、その寡額の引上は、罰金等臨時措置法第四条によるのではなく、同法第二条第一項の規定によるものである。
二 検察官が供述調書を作成する際にこれを供述者に読み聞けなかつたとしても、その一事のみによつて供述調書がただちに証拠能力を失うことにはならない。
三 債務の一部弁済があつた場合に特段の規定または合意のないかぎりは、公法関係においても民法第四八九条の規定に従うものと解するのが相当である。
四 民法第四八九条第二号の弁済の利益は、財産上の利益を指称し、刑事上の責任の有無を含まない。
五 失業保険法第五三条第三号は、自ら保険料を控除した者が、これを所定期日までに納付しなかつた場合はもとより、その前任者が控除したことを知りながら、所定期日までに納付しなかつた者をも処罰するものと解すべきである。
六 自ら失業保険料を控除した者であつても、所定の納付期日にはこれを納付すべき地位を去つた者については、失業保険法第五三条第三号の罪は成立しない。
七 失業保険法第三四条(改正前のもの)、同法施行令第一〇条にいわゆる翌月末日とは、それが前月の遅延分であつても、実際に失業保険料を控除した日から起算して翌月末日と解すべきである。
八 失業保険法第五五条の規定により会社が従業者等の違反行為につき責任を負うべき場合において、責任を負うべき従業者等が異る場合においては、会社についても公訴事実を異にするものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年1月27日 昭和25(あ)3098
登載
刑集 第7巻1号64頁
参照法条
罰金等臨時措置法2条1項,罰金等臨時措置法4条,刑訴法198条4項,刑訴法223条,刑訴法312条,刑訴法256条,民法489条,失業保険法53条,失業保険法34条(改正前のもの),失業保険法55条,失業保険法施行令10条
論点111第256条刑事訴訟法

一 銃砲等所持禁止令違反罪の公訴事実の同一性の有無
二 不法監禁中になされた暴行脅迫行為が別罪を構成する事例

裁判要旨一 同一被告人に対する二個の銃砲等所持禁止令違反の公訴事実において、その不法所持にかかる日本刀がいずれも別個のものであり、且つ、判示の如くその事実上の支配状態を別異にするときは、たとい不法所持の日時、場所が彼此近接しているとしても、その間に公訴事実の同一性は認められない。
二 暴行脅迫が不法監禁中になされたものであつても、不法監禁の状態を維持存続させるため、その手段としてなされたものでなく、全く別個の動機、原因からなされたものであるときは、右暴行脅迫の行為は、不法監禁罪に吸収されることなく、別罪を構成する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年11月27日 昭和27(あ)5833
登載
刑集 第7巻11号2344頁
参照法条
憲法39条,刑訴法256条2項,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項,刑訴法337条1号,刑法220条1項,刑法208条,刑法222条,刑法54条1項前段,暴力行為等処罰に関する法律1条1項
論点112第256条刑事訴訟法

一 起訴状および訴因追加請求書各謄本の被告人に対する不送達と刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉
二 恐喝罪の公訴犯罪事実中に被告人の性格、経歴及び素行等を記載することと刑訴法第二五六条第六項

裁判要旨一 起訴状および訴因追加請求書の各謄本が被告人に送達されていなくても、起訴の日に被告人が自ら弁護人を選任し、弁護人は裁判所書記官に請求して、起訴状および訴因追加請求書各謄本の送達を受け、第一審第一回公判も起訴の日から二箇月以内に開かれており、また起訴状謄本が弁護人に送達されてから同公判までに一箇月以上、訴因追加請求書が同人に送達されてからでも同じく一箇月近くの余裕があつて、弁論準備のために十分の期間があつたものということができ、かつ右公判で被告人側から何の異議も申し立てていない場合には、前記のような刑訴第二七一条第一項〈裁判所は、公訴の提起があつたときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない。〉、第三一二条第三項〈裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又…〉、刑訴規則第二〇九条第三項の不遵守は、未だ刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべき事由とするにたらない。
二 本件公訴事実は、被告人が一般人を恐れさせるに足るような自己の性格、経歴及び素行等に関する事実を告知し、若しくは相手方が予ねて、そのような事実を知つて恐れをなしているのに乗じて金品、その他財産上の利益を受けるという方法によつて度々の恐喝を働いたというにあつて、被告人の性格、経歴及び素行等に関する事実は、本件では、犯罪事実と何等直接の関係のない事項ではなく、むしろ、その恐喝手段そのものゝ内容をなしている事柄であるといわなければならないから刑訴第二五六条〈公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。〉末項に反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年7月18日 昭和25(あ)262
登載
刑集 第6巻7号913頁
参照法条
刑訴法271条1項,刑訴法312条3項,刑訴法411条,刑訴法256条,刑訴規則209条3項,刑法249条
論点113第256条刑事訴訟法

恐喝罪の起訴状記載につき刑訴法第二五六条第六項に違反しない例

裁判要旨「被告人は賭博恐喝等の前科数犯あり、その乾分数名と無為徒食し常に粗暴なる言動ある為世人の嫌忌畏怖して居るに乗じ恐喝せんことを企て」なる起訴状の記載は、恐喝罪の構成要件たる事実であるから、これを起訴状に記載したことは違法ではない(昭和二六年(あ)第二一四四号同年一二月一八日当裁判所決定、昭和二五年(あ)第一〇八九号同二七年三月五日大法定判決理由参照)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年4月8日 昭和26(あ)5087
登載
集刑 第63号115頁
参照法条
刑法249条,刑訴法256条6項
論点114第256条刑事訴訟法

一 公訴犯罪事実につき裁判官に予断を生ぜしめるおそれのある事項を起訴状に記載することの違法性
二 詐欺の起訴状に詐欺の前科を記載することと裁判官の予断

裁判要旨一 公訴犯罪事実について、裁判官に予断を生ぜしめるおそれのある事項は、起訴状に記載することは許されないのであつて、かかる事項を起訴状に記載したときは、これによつてすでに生じた違法性は、その性質上もはや治癒することができないものと解するを相当とする。
二 本件起訴状によれば、詐欺罪の公訴事実について、その冒頭に、「被告人は詐欺罪により既に二度処罰を受けたものであるが」と記載しているのであるが、このように詐欺の公訴について、詐欺の前科を記載することは、両者の関係からいつて、公訴犯罪事実につき、裁判官に予断を生ぜしめるおそれのある事項にあたると解しなければならない。もつとも被告人の前科であつても、それが、公訴犯罪事実の構成要件となつている場合(例えば常習累犯窃盗)又は公訴犯罪事実の内容となつている場合(例えば前科の事実を手段方法として恐喝)等は、公訴犯罪事実を示すのに必要であつて、これを一般の前科と同様に解することはできないからこれを記載することはもとより適法である。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和27年3月5日 昭和25(あ)1089
登載
刑集 第6巻3号351頁
参照法条
刑訴法256条,刑法246条
論点115第256条刑事訴訟法

控訴審に係属中の被告事件記録に被告人の他の同種犯罪に関する記録が添付されたことの適否

裁判要旨窃盗(すり)未遂の公訴事実について第一審判決が犯罪の証明がないとして無罪の言渡をしたのに対し、検察官より公訴の申立があつた事件の控訴審において、事実誤認の控訴趣意の当否を調査するため証拠の取調をするに先立ち、被告人がさきに同種の犯罪(すり)の嫌疑により逮捕され取調を受けた捜査記録が、偶々本件記録に添附されていたからといつて、その一事をもつて刑訴第二五六条〈公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。〉、第二九六条〈証拠調のはじめに、検察官は、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければならない。但し、証拠とすることができず、又は証拠…〉に違反するものとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年2月21日 昭和25(あ)3162
登載
集刑 第61号421頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法296条
論点116第256条刑事訴訟法

一 犯罪事実の同一性の認められる一場合
二 起訴状記載の罪名と勾留状記載の罪名とが異なる場合と勾留の効力
三 人身保護規則第四条但書の趣旨

裁判要旨一 「被疑者は、昭和二六年一月一〇日午後六時頃甲某を乙駅車庫詰所へ連れ込み、近くにあつた丸鉄棒で後頭部を殴打し暴行を加え、極度に畏怖せしめた上同人の冬オーバーを喝取した」との勾留状記載の被疑事実と「被告人は、昭和二六年一月一〇日午後五時過頃乙駅車庫詰所において甲某に対し右手拳又はストーブ用鉄棒(約一尺五寸位)等により交々頭部、背部等を殴打し、引き続き同人を八〇米位離れた被告人自宅入口まで引きずり込み、右手拳で数回殴打し、台所にあつた庖丁を取り上げ、その背部で同人の頭部を一回殴打した上告人自宅前小川に突き落す等暴行を加えた」との起訴状記載の公訴事実とは同一性を失わない。
二 刑訴法第二〇八条第一項〈第二百七条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ち…〉所定の一〇日の期間内に公訴の提起があつた場合、たとえ起訴状記載の罪名と勾留状記載の罪名とが異なつていても、両者に記載した犯罪事実に同一性がある以上、勾留の効力は、公訴提起の日から刑訴第六〇条第二項〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉所定の期間中存続する。
三 人身保護規則第四条但書は、たとえ拘束が同条本文に該当する不法なものであつても、他に救済の目的を達するに適当な方法があるときは、右但書後段の要件を具備しない限り人身保護の請求ができないことを定めたものであつて、単に右但書の要件を具備するだけで人身保護の請求をなし得ることを認めた趣旨ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年7月6日 昭和26(オ)190
登載
民集 第5巻8号474頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法208条,刑訴法60条2項,人身保護規則4条
論点117第256条刑事訴訟法

破棄差戻又は移送後の第一審の訴訟手続にする刑訴法第二五六条第六項、第二九一条、第二九二条、第二九八条及び第三〇一条の適用の有無と憲法違反の主張

裁判要旨破棄差戻又は移送後の第一審裁判所がその第一回公判期日前あらかじめ記録を調査し、且つ、公判廷において裁判官が証拠調をする前に被告人に対し、犯罪事実に関し可成り詳細に質問をし当事者の証拠調の請求を俟たないで記録中の各証拠書類及び証拠物を職権により証拠調をしたことが違法であるかどうかを争う主張は刑訴法第四〇五条第一項の憲法違反の主張にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年6月15日 昭和26(あ)129
登載
集刑 第47号1123頁
参照法条
刑訴法256条6項,刑訴法301条,刑訴法291条,刑訴規則217条,刑訴規則292条,裁判所法4条,裁判所法298条,憲法31条
論点118第256条刑事訴訟法

窃盗と賍物牙保との公訴事実の同一性の有無に関する判例違反の主張の適否―原判決言渡後の判例と刑訴法第四〇五条第二号

裁判要旨論旨は、窃盗と賍物牙保とがその日時、場所において近接し、対象となる賍物も同一である場合には、基本的事実関係は同一と解すべきであるとして旧刑訴法の適用される事件についての公訴事実の同一性に関する当裁判所の判例を挙示し、原判決は、これら判例と相反する判断をしたものであると主張しているもののようである。論旨挙示の判例中昭和二五年(れ)同二七五号同年六月三〇日第二小法廷判決は、原判決の宣告された後の判例であるから、これを除外し(なお右判決も従来の判例を変更したものではない)その他の判例に照して見ても原判決は窃盗と賍物牙保とは常に公訴事実の同一性がないとか或は犯罪の日時場所が隔つている場合には公訴事実の同一性がないとか判断したのではなく、基本的事実関係が同一でないから公訴事実の同一性がないと判断したに止まるのであるから、その理論においてはこれらの判例と相反する判断をしたことにならないのである。(昭和二五年(あ)第八四号同年二月二一日第三小法廷判決参照)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年2月6日 昭和25(あ)1851
登載
集刑 第40号245頁
参照法条
刑法235条,刑法256条2項,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法405条2号
論点119第256条刑事訴訟法

一 公然猥褻罪の罪数
二 近接して行われた同一場所における同一内容の公然猥褻罪の公訴事実の特定
三 刑法第五五条の廃止と意思継続にかかる行為の罪数

裁判要旨一 前後七回、各異る多数の観客に対して、露出した局部を観覧に供すれば七個の独立した公然猥褻罪が成立する。
二 引き続いた二日間にわたる計八回の同一場所における同一内容の演芸会に際し、うち一回を除いて他の七回は、いずれも露出した局部を観覧に供し公然猥褻の行為をしたという同一内容の七個の事実を起訴するにあたつては、各犯行の時間、回次まで摘示しなくても、一括して日時、場所、方法、回数を明らかにすれば、各犯罪事実の特定に欠けるところはない。
三 刑法第五五条が廃止された後は、同一罪名に触れる数個の行為が、いわゆる意思継続があるというだけでは、一罪として処断しなければならないということはない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和25年12月19日 昭和25(れ)1291
登載
刑集 第4巻12号2577頁
参照法条
刑法45条,刑法175条,刑法55条(廃止前),刑訴法256条
論点120第256条刑事訴訟法

一 傷害罪について訴因罰条の変更を必要としない一場合
二 刑法第二〇七条と刑訴法第二五六条第四項〈公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。〉にいわゆる「罰条」

裁判要旨一 被告人と甲とが某所を通行中乙に出合い、乙が被告人に対し暴行を加えたので、甲が棍棒で乙の頭部を数回殴打した後、被告人がその棍棒を取つて乙の頭部を数回殴打し、よつて同人に二ケ月間の安静加療を要する頭蓋不全骨折脳出血の傷害を負わせたとの趣旨の公訴事実を記載し、罪名及罰条として傷害罪刑法第二〇四条と記載した起訴状をもつてする起訴に対し、前と同一の経過順序で被告人と甲とが乙に対しそれぞれ暴行を加え、乙に対し前同様の傷害を負わせたが、右は、被告人及び甲のうち何人の暴行に基因するものであるかを知ることができないとの趣旨の事実を認定し、刑法第二〇四条、第二〇七条を適用するについては、訴因罰条変更の手続を経ることを要しない。
二 刑法第二〇七条のごとき規定は、刑訴第二五六条第四項〈公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。〉にいわゆる罰条には含まれないものと解するを相当とする。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年11月30日 昭和25(あ)1538
登載
刑集 第4巻11号2453頁
参照法条
刑法204条,刑法207条,刑訴法256条1項,刑訴法256条2項,刑訴法256条3項,刑訴法312条1項2項,刑訴法256条4項
論点121第256条刑事訴訟法

一 公判調書中の「証人に別紙宣誓書により宣誓させた」との記載と証人の誓宣が各別に行われたことの有無

二 起訴状に被害場所の番地の未記入並びに被害者の姓の記載に誤記ある場合と公訴事実の同一性

裁判要旨一 所論のように各証人個別に宣誓書を朗読せしめたか否かのごときは公判調書の記載事項でもないし、また、これが記載を欠くからといつてその手続が行われなかつたとはいえない。そして、原審公判調書に「証人に別紙宣誓書により宣誓させた」との記載があり且つ所論の証人が各別に署名押印した宣誓書が現に記録中に存在しているのであるから、所論の証人が各別に宣誓をしたことは明白である。

二 起訴状記載の被害者の姓が誤記であり且つ起訴状に被害場所の番地を記入せず又はその被害場所居住主の氏名の記載等が間違つていても、公訴事実若しくは訴因に変更を来すものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年10月19日 昭和24新(れ)351
登載
集刑 第19号897頁
参照法条
刑訴法48条,刑訴法154条,刑訴法256条,刑訴規則44条
論点122第256条刑事訴訟法

1 同一被害者に対し一定の期間内に反復累行された一連の暴行によって種々の傷害を負わせた事実について,包括一罪とされた事例
2 包括一罪を構成する一連の暴行による傷害について,訴因の特定に欠けるところはないとされた事例

裁判要旨1 同一被害者に対し約4か月間又は約1か月間という一定の期間内に反復累行された一連の暴行によって種々の傷害を負わせた事実については,その暴行が,被告人と被害者との一定の人間関係を背景として,共通の動機から繰り返し犯意を生じて行われたものであることなどの事情(判文参照)に鑑みると,全体を一体のものと評価し,包括して一罪と解することができる。
2 包括一罪を構成する一連の暴行による傷害については,本件のような訴因(判文参照)であっても,共犯者,被害者,期間,場所,暴行の態様及び傷害結果を記載することをもって,その特定に欠けるところはない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年3月17日 平成23(あ)1224
登載
刑集 第68巻3号368頁
参照法条
(1,2につき)刑法204条 (2につき)刑訴法256条3項
論点123第256条刑事訴訟法

1 労働基準法36条1項に基づき月単位の時間外労働の協定が締結されている場合における協定時間を超えた時間外労働と同法32条1項違反の罪
2 週単位の時間外労働の規制違反に係る訴因の特定が不十分で,その記載に瑕疵がある場合に,訴因変更と同様の手続を採ってこれを補正しようとした検察官の予備的訴因変更請求について,裁判所の採るべき措置

裁判要旨1 労働基準法36条1項に基づき月単位の時間外労働の協定が締結されている場合において,協定時間を超えた時間外労働があるときには,原則的な労働時間制の下では,始期から順次1週間について40時間の法定労働時間を超えて労働させた時間を積算し,協定時間に至るまでは協定の効力によって時間外労働の違法性が阻却されるが,これを超えた時点以後は,1週間について40時間を超える時間外労働がある各週につき同法32条1項違反の罪が成立する。
2 週単位の時間外労働の規制違反に係る訴因の特定が不十分で,その記載に瑕疵がある本件のような場合(判文参照),訴因変更と同様の手続を採ってこれを補正しようとした検察官の予備的訴因変更については,適正な訴因となるように措置した上,これを許可すべきである。
(1,2につき意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成21年7月16日 平成19(あ)1951
登載
刑集 第63巻6号641頁
参照法条
(1,2につき) 労働基準法32条1項,労働基準法36条1項,労働基準法119条1号 (2につき)刑訴法256条3項,刑訴法312条1項
論点124第256条刑事訴訟法

「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」5条〈数個の関連事件が各別に上級の裁判所及び下級の裁判所に係属するときは、事物管轄にかかわらず、上級の裁判所は、決定で下級の裁…〉違反の罪の公訴事実が多数回にわたり多数人に譲り渡した旨の概括的記載を含んでいても訴因の特定として欠けるところはないとされた事例

裁判要旨4回の覚せい剤譲渡の年月日,場所,相手,量,代金を記載した別表を添付した上,「被告人は,平成14年6月ころから平成16年3月4日までの間,営利の目的で,みだりに,別表記載のとおり覚せい剤を譲り渡すとともに,薬物犯罪を犯す意思をもって,多数回にわたり,大阪市内において,Aほか氏名不詳の多数人に対し,覚せい剤様の結晶を覚せい剤として有償で譲り渡し,もって,覚せい剤を譲り渡す行為と薬物その他の物品を規制薬物として譲り渡す行為を併せてすることを業とした」旨を記載した公訴事実は,「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」5条〈数個の関連事件が各別に上級の裁判所及び下級の裁判所に係属するときは、事物管轄にかかわらず、上級の裁判所は、決定で下級の裁…〉違反の罪の訴因の特定として欠けるところはない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年10月12日 平成17(あ)660
登載
刑集 第59巻8号1425頁
参照法条
国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律5条,国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律8条2項,刑訴法256条3項
論点125第256条刑事訴訟法

1 委託を受けて他人の不動産を占有する者がこれにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了していた場合においてその後これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了する行為と横領罪の成否
2 委託を受けて他人の不動産を占有する者がこれにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了した場合において後行の所有権移転行為のみが横領罪として起訴されたときの審理方法

裁判要旨1 委託を受けて他人の不動産を占有する者が,これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後,これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了したときは,後行の所有権移転行為について横領罪の成立を肯定することができ,先行の抵当権設定行為が存在することは同罪の成立自体を妨げる事情にはならない。
2 委託を受けて他人の不動産を占有する者が,これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後,これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了した場合において,後行の所有権移転行為のみが横領罪として起訴されたときは,裁判所は,所有権移転の点だけを審判の対象とすべきであり,犯罪の成否を決するに当たり,所有権移転行為に先立って横領罪を構成する抵当権設定行為があったかどうかといった訴因外の事情に立ち入って審理判断すべきではない。
裁判
最高裁判所大法廷 平成15年4月23日 平成13(あ)746
登載
刑集 第57巻4号467頁
参照法条
刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)第1編第7章 犯罪ノ不成立及ヒ刑ノ減免,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)252条,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)253条,刑訴法256条
論点126第256条刑事訴訟法

暴行態様,傷害の内容,死因等の表示が概括的であっても傷害致死罪の訴因の特定に欠けるところはないとされた事例

裁判要旨「被告人は,単独又は甲及び乙と共謀の上,平成9年9月30日午後8時30分ころ,福岡市a区所在のビジネス旅館Ab階c号室において,被害者に対し,その頭部等に手段不明の暴行を加え,頭蓋冠,頭蓋底骨折等の傷害を負わせ,よって,そのころ,同所において,頭蓋冠,頭蓋底骨折に基づく外傷性脳障害又は何らかの傷害により死亡させた。」との傷害致死の訴因は,暴行態様,傷害の内容,死因等の表示が概括的であるが,検察官において,当時の証拠に基づき,できる限り日時,場所,方法等をもって罪となるべき事実を特定して訴因を明示したものである以上,訴因の特定に欠けるところはない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成14年7月18日 平成13(あ)318
登載
刑集 第56巻6号307頁
参照法条
刑法205条,刑訴法256条3項
論点127第256条刑事訴訟法

1 殺害の日時・場所・方法の判示が概括的で実行行為者の判示が択一的であっても殺人罪の罪となるべき事実の判示として不十分とはいえないとされた事例
2 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が明示された場合に訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することの適否
3 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が被告人と明示された場合に訴因変更手続を経ることなく実行行為者が共犯者又は被告人あるいはその両名であると択一的に認定したことに違法はないとされた事例

裁判要旨1 殺害の日時・場所・方法の判示が概括的なものである上,実行行為者の判示が「A又は被告人あるいはその両名」という択一的なものであっても,その事件が被告人とAの2名の共謀による犯行であるときには,殺人罪の罪となるべき事実の判示として不十分とはいえない。
2 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が明示された場合に,それと実質的に異なる認定をするには,原則として訴因変更手続を要するが,被告人に不意打ちを与えるものではなく,かつ,認定される事実が訴因に記載された事実に比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には,訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定しても違法ではない。
3 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が被告人と明示された場合に,訴因変更手続を経ることなく実行行為者がA又は被告人あるいはその両名であると択一的に認定したことは,訴因と認定との間で共犯者の範囲に変わりがなく,被告人が1審の審理においてAとの共謀及び実行行為への関与を否定し,実行行為者は被告人である旨のAの証言につき自己の責任を被告人に転嫁するものであると主張するなどした判示の事情の下においては,違法とはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成13年4月11日 平成11(あ)423
登載
刑集 第55巻3号127頁
参照法条
刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)60条,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)199条,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項,刑訴法312条1項,刑訴法312条2項
論点128第257条刑事訴訟法

訴因変更の許可と旧訴因についての公訴の取消

裁判要旨訴因変更の許可があつたときは、旧訴因につき公訴の取消がなされたものと解することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年7月23日 昭和30(あ)2539
登載
集刑 第119号1059頁
参照法条
刑訴法312条1項,刑訴法257条
論点129第257条刑事訴訟法

一 被害者の多數ある強盜の單純一罪を判示するに當り被害者の一人を明示しなかつたことの當否
二 共同正犯の判示要領
三 公判請求書が裁判所に受理せられた日附の記載が明らかでない場合における公訴提起の日の認定
四 勾留状の方式の違法と上告理由

裁判要旨一 原判決は本件強盜を單純一罪として判示したのであるから被害者の一人であるAについて原判示のように説示して強盜罪の構成要件に當る具體的事實を明らかにした以上他の被害者の表示を明らかにしなくとも原判決には理由不備の違法はない。
二 被告人の分担した具体的な犯罪行為の判示がなくても、判示事実によつて、被告人が他の共犯者と共謀して自己の犯意を実現するために共犯者の行為を利用したことが認められる以上、共同正犯の判示として十分である。
三 公判請求書に押された裁判所の受理日附印の数字が明らかでないため、公訴が勾留状の請求のあつた日から一〇日以内になされたかどうかが問題となつた場合には、検察官の公判請求書作成の日附、検察庁の被告人に関する移監指揮書作成日附及びその内容、判事が右移監指揮書に同意した日附、刑務所の収容者領収証印の日附並びに弁護人選任届の日附等から公訴提起の日を判断しても差支えない。
四 勾留状の方式について違法があれば、勾留に關する決定に對する抗告その他法律の定める手續にょつてこれが是正を求むべきであつて、これをもつて原判決を攻撃する理由とすることはできない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和23年11月10日 昭和23(れ)582
登載
刑集 第2巻12号1512頁
参照法条
刑法236條,刑法60条,刑訴法360條1項,刑訴法257条1項,刑訴法457條,刑訴法411條
論点130第258条刑事訴訟法

強姦罪について告訴がない場合に同罪の手段たる共同暴行のみを処罰することができるか

裁判要旨数人が婦女に対し共同して暴行を加え姦淫した事実が認められる場合に、強姦罪についての告訴が適法に取消されても同罪の手段たる共同暴行を暴力行為等処罰に関する法律第一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉違反として処罰することは違法ではない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和28年12月16日 昭和27(さ)1
登載
刑集 第7巻12号2550頁
参照法条
暴力行為等処罰に関する法律1条,刑法177条,刑法180条,旧刑訴法258条,旧刑訴法267条,旧刑訴法364条6号,旧刑訴法516条
論点131第258条刑事訴訟法

強姦罪について告訴が適法に取消された場合に、同罪の手段たる共同暴行のみを処罰し得るか

裁判要旨数人が婦女に対し共同して暴行を加え姦淫した事実が認められるが、強姦罪について告訴が適法に取り消された場合、同罪の手段たる共同暴行を「暴力行為等処罰に関する法律」第一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉違反として処罰することは違法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年7月11日 昭和26(れ)1732
登載
刑集 第6巻7号896頁
参照法条
暴力行為等処罰に関する法律1条,刑法177条,刑法180条,刑法181条,旧刑訴法258条,旧刑訴法267条,旧刑訴法364条5号
論点132第262条刑事訴訟法

準起訴手続の審理及び裁判と憲法八二条

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和55年9月12日 昭和55(し)101
登載
集刑 第218号325頁
参照法条
憲法82条,刑訴法262条,刑訴法265条
論点133第262条刑事訴訟法

弁護士会の申し立てた付審判請求事件の特別抗告が棄却された事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和50年1月31日 昭和50(し)5
登載
集刑 第195号47頁
参照法条
刑訴法262条,刑訴法433条
論点134第262条刑事訴訟法

準起訴手続によつて審判に付された事件において刑訴法二六二条一項に掲げる罪以外の罪で処罰することの可否

裁判要旨準起訴裁判所が、相当な嫌疑のもとに刑訴法二六二条一項に掲げる罪が成立すると判断し公訴提起すべきものとして審判に付した以上、公判審理の結果それ以外の罪の成立が認められるにすぎないことになつたとしても、審判に付された事件と公訴事実の同一性が認められるかぎり、この罪で処罰することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年4月1日 昭和47(あ)1481
登載
刑集 第28巻3号17頁
参照法条
刑訴法262条1項,刑訴法265条,刑訴法338条4号
論点135第262条刑事訴訟法

付審判請求事件の特別抗告申立と刑訴法三六六条一項の準用

裁判要旨付審判請求事件の特別抗告申立には刑訴法三六六条一項は準用ないし類推適用されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年3月20日 昭和49(し)20
登載
集刑 第191号481頁
参照法条
刑訴法262条1項,刑訴法366条1項,刑訴法433条2項
論点136第262条刑事訴訟法

付審判請求事件の審理手続において検察官から裁判所に送付された一件記録の閲覧謄写を許可することが違法とされた事例

裁判要旨本件付審判請求事件の審理手続において裁判所が定めた審理方式のうち、請求人代理人に対し検察官から裁判所に送付された一件記録の閲覧謄写を許可する部分は、本件事案(判文参照)のもとでは、裁判所に許された裁量の範囲を逸脱し違法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年3月13日 昭和48(し)42
登載
刑集 第28巻2号1頁
参照法条
刑訴法47条,刑訴法196条,刑訴法262条,刑訴法265条,刑訴規則171条
論点137第262条刑事訴訟法

付審判請求事件の審理手続について不当な措置が認められるが、いまだ刑訴法四一一条を準用すべきものとは認められないとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年3月13日 昭和48(し)29
登載
集刑 第191号345頁
参照法条
刑訴法262条,刑訴法411条
論点138第262条刑事訴訟法

付審判請求事件の審理方式に対する不服申立の適否

裁判要旨付審判請求事件の審理方式は、裁判所が当該事件について審理に関する方針を宣明するものにすぎず、これによつて直ちに一定の訴訟法上の効果を生ずるものではないのが一般であり、審理方式中関係人に告知することにより一定の訴訟法上の効果を生じさせるものを除き、審理方式自体に不服申立をすることは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和49年3月13日 昭和48(し)62
登載
集刑 第191号361頁
参照法条
刑訴法433条,刑訴法43条,刑訴法262条1項
論点139第262条刑事訴訟法

付審判請求事件の審理方式と忌避事由

裁判要旨本件付審判請求事件の審理を担当する裁判所が示した審理方式(判文参照)は、裁量の許される範囲を逸脱している疑いを免れないけれども、そのことはただちに右裁判所を構成する裁判官らを忌避する事由とはなりえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和47年11月16日 昭和47(し)51
登載
刑集 第26巻9号515頁
参照法条
刑訴法21条,刑訴法262条,刑訴法265条,刑訴規則173条
論点140第262条刑事訴訟法

付審判請求事件における特別抗告申立に刑訴法三六六条一項が準用されるか

裁判要旨在監者の上訴申立に関する刑訴法三六六条一項は、付審判請求事件の特別抗告申立には準用ないし類推適用されない。
(注)同旨の第一小法廷決定がある(昭和四三年(し)第八五号、同年一一月一三日決定、裁判集一六九号三六七頁)。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年9月4日 昭和45(し)58
登載
集刑 第177号1121頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法262条
論点141第262条刑事訴訟法

刑訴法二六二条一項〈刑法第百九十三条から第百九十六条まで又は破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)第四十五条若しくは無差別大量殺人行…〉の付審判請求の効力発生時

裁判要旨刑訴法二六二条一項〈刑法第百九十三条から第百九十六条まで又は破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)第四十五条若しくは無差別大量殺人行…〉の付審判請求は、請求書が同条二項に定める七日の期間内に検察官に到達したときに効力を生ずる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年12月3日 昭和45(し)100
登載
集刑 第178号497頁
参照法条
刑訴法262条
論点142第262条刑事訴訟法

一 裁判所のした提出命令は刑訴法四二〇条二項にいう押収に関する決定にあたるか
二 いわゆる付審判請求事件についてなされた提出命令に対する不服申立の方法

裁判要旨一 裁判所のした提出命令は、刑訴法四二〇条二項〈裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定に対しては、この法律に特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合を除…〉にいう押収に関する決定にあたる。
二 いわゆる付審判請求事件についてなされた提出命令に対しては、刑訴法四一九条〈抗告は、特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合の外、裁判所のした決定に対してこれをすることができる。但し、この…〉による抗告をすることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年9月18日 昭和44(し)59
登載
刑集 第23巻9号1146頁
参照法条
刑訴法99条2項,刑訴法420条1項,刑訴法420条2項,刑訴法262条1項,刑訴法352条,刑訴法419条,刑訴法433条
論点143第262条刑事訴訟法

一 いわゆる付審判請求事件における被疑者の忌避申立権の有無
二 特別抗告と原決定を取り消しても実益がないようになつたときの措置

裁判要旨一 刑訴法二六二条〈刑法第百九十三条から第百九十六条まで又は破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)第四十五条若しくは無差別大量殺人行…〉以下に規定するいわゆる付審判請求事件における被疑者は、同法二一条一項〈裁判官が職務の執行から除斥されるべきとき、又は不公平な裁判をする虞があるときは、検察官又は被告人は、これを忌避することが…〉により、裁判官忌避の申立をすることができる。
二 忌避申立の対象とされた裁判官が、当該事件の審理を担当する裁判所の合議体の構成を離れたときは、特別抗告の論旨につき判断するまでもなく、同裁判官に対する忌避申立を却下した第一審決定およびこれを維持した原決定を取り消す実益を欠くに至つたものとして、特別抗告を棄却すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年9月11日 昭和44(し)53
登載
刑集 第23巻9号1100頁
参照法条
刑訴法20条,刑訴法21条,刑訴法262条,刑訴法265条,刑訴法266条,刑訴法267条,刑訴法433条1項,刑訴規則13条
論点144第262条刑事訴訟法

一 報道および取材の自由と憲法二一条
二 報道機関の取材フイルムに対する提出命令の許容される限度

裁判要旨一 報道の自由は、表現の自由を規定した憲法二一条の保障のもとにあり、報道のための取材の自由も、同条の精神に照らし、十分尊重に値いするものといわなければならない。
二 報道機関の取材フイルムに対する提出命令が許容されるか否かは、審判の対象とされている犯罪の性質、態様、軽重および取材したものの証拠としての価値、公正な刑事裁判を実現するにあたつての必要性の有無を考慮するとともに、これによつて報道機関の取材の自由が妨げられる程度、これが報道の自由に及ぼす影響の度合その他諸般の事情を比較衡量して決せられるべきであり、これを刑事裁判の証拠として使用することがやむを得ないと認められる場合でも、それによつて受ける報道機関の不利益が必要な限度をこえないように配慮されなければならない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和44年11月26日 昭和44(し)68
登載
刑集 第23巻11号1490頁
参照法条
憲法21条,刑訴法99条,刑訴法262条,刑訴法265条
論点145第262条刑事訴訟法

刑訴法二六二条〈刑法第百九十三条から第百九十六条まで又は破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)第四十五条若しくは無差別大量殺人行…〉の付審判請求の効力発生の日時

裁判要旨刑訴法二六二条〈刑法第百九十三条から第百九十六条まで又は破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)第四十五条若しくは無差別大量殺人行…〉の付審判請求は、同条に定める七日の期間内に、請求書が検察官に到達したときに効力を生ずる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和44年11月17日 昭和44(し)75
登載
集刑 第174号51頁
参照法条
刑訴法262条
論点146第262条刑事訴訟法

刑訴法第三六六条第一項〈刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上…〉はいわゆる審判請求事件についてされた抗告棄却の決定に対し在監者が特別抗告申立書を差し出す場合に準用されるか

裁判要旨在監者の上訴申立に関する刑訴法第三六六条第一項は、いわゆる審判請求事件についてされた抗告棄却の決定に対し、右請求をした在監者が特別抗告の申立書を差し出す場合には準用ないし類推適用されないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年11月13日 昭和43(し)85
登載
集刑 第169号367頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法262条1項,刑訴法433条
論点147第262条刑事訴訟法

刑訴法第三六六条第一項〈刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上…〉はいわゆる審判請求事件についてされた抗告棄却の決定に対し在監者が特別抗告申立書を差し出す場合に準用されるか

裁判要旨在監者の上訴申立に関する刑訴法第三六六条第一項は、いわゆる審判請求事件についてされた抗告棄却の決定に対し、右請求をした在監者が特別抗告の申立書を差し出す場合には準用ないし類推適用されないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年10月31日 昭和43(し)71
登載
刑集 第22巻10号955頁
参照法条
刑訴法366条1項,刑訴法262条1項,刑訴法433条
論点148第262条刑事訴訟法

一 告発の意義
二 弁護士会は人権に関する事件につき告発し、また、事件を裁判所の審判に対することを請求する権能を有するか

裁判要旨一 告発とは、犯人または告訴権者以外の者が、捜査機関に対し、犯罪事実を申告してその訴追を求める意思表示である。
二 弁護士会は、人権に関する事件につき弁護士会自身として告発をし、また、事件を裁判所の審判に付することを請求する権能を有する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年12月26日 昭和33(あ)2187
登載
刑集 第15巻12号2058頁
参照法条
刑訴法239条1項,刑訴法262条,弁護士法1条,弁護士法31条,弁護士法42条2項
論点149第262条刑事訴訟法

付審判請求棄却決定に対する抗告棄却決定と憲法第八二条にいう「裁判の対審」

裁判要旨所論は憲法八二条違反をいうけれども、本件における決定(付審判請求棄却決定に対する抗告を棄却する決定)の如きは同条にいわゆる「裁判の対審」に当らないことは当裁判所の判例(昭和二三年(つ)第二五号、同年一一月八日大法廷決定、集二巻一二号一四九八頁参照)の趣旨に徴し明らかであるから右違憲の主張はその前提を欠くものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年12月23日 昭和32(し)57
登載
集刑 第122号807頁
参照法条
憲法82条,刑訴法262条,刑訴法266条,刑訴法419条,刑訴法426条,刑訴法433条
論点150第262条刑事訴訟法

準起訴手続における審判請求棄却の決定に対し特別抗告が許されるか

裁判要旨準起訴手続審判請求棄却の決定に対しては、刑訴四三三条〈この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に…〉の事由がある限り抗告の手続を経ないで特別抗告することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年3月3日 昭和28(し)3
登載
集刑 第75号103頁
参照法条
刑訴法262条,刑訴法266条,刑訴法419条,刑訴法420条,刑訴法433条
論点151第262条刑事訴訟法

一 いわゆる審判請求を棄却した決定の性質
二 審判請求棄却決定に対する不服申立の方法

裁判要旨一 刑訴第二六六条第一号〈裁判所は、第二百六十二条第一項の請求を受けたときは、左の区別に従い、決定をしなければならない。 請求が法令上の方式に違反し、若しくは請求権の消滅後にされたものであるとき、又は請求が理由のないときは、請求を棄却する。〉により同法第二六二条第一項のいわゆる審判請求を棄却した決定は、同法第四二〇条の「裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定」にあたらない。
二 刑訴第二六六条第一号によりいわゆる審判請求を棄却した決定に対しては、刑訴第四一九条〈抗告は、特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合の外、裁判所のした決定に対してこれをすることができる。但し、この…〉による抗告をすることができる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和28年12月22日 昭和26(し)71
登載
刑集 第7巻13号2595頁
参照法条
刑訴法262条1項,刑訴法266条1号,刑訴法269条,刑訴法419条,刑訴法420条1項
論点152第262条刑事訴訟法

少年補導員が刑法一九五条一項にいう警察の職務を補助する者に当たらないとされた事例

裁判要旨大阪府警察本部通達に基づいて警察署長から委嘱を受け、非行少年等の早期発見・補導等を行う少年補導員(判文参照)は、警察署長から私人としての協力を依頼され、警察官と連携しつつ少年の補導等を行うものであって、警察の職務を補助する職務権限を何ら有するものではなく、刑法一九五条一項にいう警察の職務を補助する者に当たらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成6年3月29日 平成4(し)120
登載
刑集 第48巻3号1頁
参照法条
刑法195条1項,刑訴法262条1項
論点153第262条刑事訴訟法

刑訴法366条1項〈刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上…〉の付審判請求への類推適用の可否(消極)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年10月1日 平成16(し)208
登載
集刑 第286号349頁
参照法条
刑訴法262条2項,刑訴法366条1項
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

刑事訴訟法 第247条 詳細ページ
第二百四十七条公訴は、検察官がこれを行う。
刑事訴訟法 第248条 詳細ページ
第二百四十八条犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
刑事訴訟法 第249条 詳細ページ
第二百四十九条公訴は、検察官の指定した被告人以外の者にその効力を及ぼさない。
刑事訴訟法 第250条 詳細ページ
第二百五十条時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑に当たるものについては、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一無期拘禁刑に当たる罪については三十年
二長期二十年の拘禁刑に当たる罪については二十年
三前二号に掲げる罪以外の罪については十年
2時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一死刑に当たる罪については二十五年
二無期拘禁刑に当たる罪については十五年
三長期十五年以上の拘禁刑に当たる罪については十年
四長期十五年未満の拘禁刑に当たる罪については七年
五長期十年未満の拘禁刑に当たる罪については五年
六長期五年未満の拘禁刑又は罰金に当たる罪については三年
七拘留又は科料に当たる罪については一年
3前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる罪についての時効は、当該各号に定める期間を経過することによつて完成する。
一刑法第百八十一条の罪(人を負傷させたときに限る。)若しくは同法第二百四十一条第一項の罪又は盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)第四条の罪(同項の罪に係る部分に限る。)二十年
二刑法第百七十七条若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪十五年
三刑法第百七十六条若しくは第百七十九条第一項の罪若しくはこれらの罪の未遂罪又は児童福祉法第六十条第一項の罪(自己を相手方として淫行をさせる行為に係るものに限る。)十二年
4前二項の規定にかかわらず、前項各号に掲げる罪について、その被害者が犯罪行為が終わつた時に十八歳未満である場合における時効は、当該各号に定める期間に当該犯罪行為が終わつた時から当該被害者が十八歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した期間を経過することによつて完成する。
刑事訴訟法 第251条 詳細ページ
第二百五十一条二以上の主刑を併科し、又は二以上の主刑中その一を科すべき罪については、その重い刑に従つて、前条の規定を適用する。
刑事訴訟法 第252条 詳細ページ
第二百五十二条刑法により刑を加重し、又は減軽すべき場合には、加重し、又は減軽しない刑に従つて、第二百五十条の規定を適用する。
刑事訴訟法 第253条 詳細ページ
第二百五十三条時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。
2共犯の場合には、最終の行為が終つた時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算する。
刑事訴訟法 第254条 詳細ページ
第二百五十四条時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。
2共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。この場合において、停止した時効は、当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める。
刑事訴訟法 第255条 詳細ページ
第二百五十五条犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時効は、その国外にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止する。
2犯人が国外にいること又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつたことの証明に必要な事項は、裁判所の規則でこれを定める。
刑事訴訟法 第256条 詳細ページ
第二百五十六条公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
2起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
一被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
二公訴事実
三罪名
3公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
4罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。
5数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。
6起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。
刑事訴訟法 第256_2条 詳細ページ
第二百五十六条の二検察官は、公訴の提起と同時に、被告人に送達するものとして、起訴状の謄本を裁判所に提出しなければならない。ただし、やむを得ない事情があるときは、公訴の提起後速やかにこれを提出すれば足りる。
刑事訴訟法 第257条 詳細ページ
第二百五十七条公訴は、第一審の判決があるまでこれを取り消すことができる。
刑事訴訟法 第258条 詳細ページ
第二百五十八条検察官は、事件がその所属検察庁の対応する裁判所の管轄に属しないものと思料するときは、書類及び証拠物とともにその事件を管轄裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
刑事訴訟法 第259条 詳細ページ
第二百五十九条検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない。
刑事訴訟法 第260条 詳細ページ
第二百六十条検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人又は請求人に通知しなければならない。公訴を取り消し、又は事件を他の検察庁の検察官に送致したときも、同様である。
刑事訴訟法 第261条 詳細ページ
第二百六十一条検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人又は請求人にその理由を告げなければならない。
刑事訴訟法 第262条 詳細ページ
第二百六十二条刑法第百九十三条から第百九十六条まで又は破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)第四十五条若しくは無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成十一年法律第百四十七号)第四十二条若しくは第四十三条の罪について告訴又は告発をした者は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その検察官所属の検察庁の所在地を管轄する地方裁判所に事件を裁判所の審判に付することを請求することができる。
2前項の請求は、第二百六十条の通知を受けた日から七日以内に、請求書を公訴を提起しない処分をした検察官に差し出してこれをしなければならない。
刑事訴訟法 第263条 詳細ページ
第二百六十三条前条第一項の請求は、第二百六十六条の決定があるまでこれを取り下げることができる。
2前項の取下をした者は、その事件について更に前条第一項の請求をすることができない。
刑事訴訟法 第264条 詳細ページ
第二百六十四条検察官は、第二百六十二条第一項の請求を理由があるものと認めるときは、公訴を提起しなければならない。
刑事訴訟法 第265条 詳細ページ
第二百六十五条第二百六十二条第一項の請求についての審理及び裁判は、合議体でこれをしなければならない。
2裁判所は、必要があるときは、合議体の構成員に事実の取調をさせ、又は地方裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。この場合には、受命裁判官及び受託裁判官は、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。