論点1第199条刑事訴訟法
一 違法な別件逮捕中の自白を資料として発付された逮捕状による逮捕中の被疑者に対する勾留質問調書の証拠能力
二 違法な別件逮捕中の自白を資料として発付された勾留状による勾留中の被疑者に対する消防職員の質問調書の証拠能力
三 消防署長等が当該消防署等に所属する消防職員に質問調査を行わせることと消防法三二条一項〈公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有する。〉
四 消防署長等が放火又は失火の罪で逮捕された被疑者に対し検察官送致後に質問調査を行うことと消防法三五条の二第一項
裁判要旨一 逮捕中の被疑者に対する勾留質問調書は、その逮捕が違法な別件逮捕中の自白を資料として発付された逮捕状によるものであつても、他に特段の事情のない限り、証拠能力を否定されるものではない。
二 勾留中の被疑者に対する消防職員の消防法
三二条一項〈公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有する。〉による質問調書はその勾留が違法な別件逮捕中の自白を資料として発付された勾留状によるものであつても、他に特段の事情のない限り、証拠能力を否定されるものではない。
三 消防法
三二条一項は、消防署長等が当該消防署等に所属する消防職員をして質問調査を行わせることを禁じた趣旨ではない。
四 消防法三五条の二第一項は、消防署長等が、放火又は失火の罪で警察官に逮捕された被疑者に対し、事件が検察官に送致された後に、検察官等の許諾を得て同法三二条一項による質問調査を行うことを禁じた趣旨ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和58年7月12日 昭和55(あ)790
- 登載
- 刑集 第37巻6号791頁
- 参照法条
- 刑訴法61条,刑訴法199条,刑訴法207条,刑訴法319条1項,刑訴法322条1項,消防法31条,消防法32条1項,消防法35条1項,消防法35条の2
論点2第199条刑事訴訟法
逮捕に関する裁判と刑訴法四二九条一項所定の準抗告
逮捕に関する裁判と刑訴法四二九条一項〈裁判官が次に掲げる裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他…〉所定の準抗告
裁判要旨逮捕に関する裁判は、刑訴法
四二九条一項〈裁判官が次に掲げる裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他…〉各号所定の準抗告の対象となる裁判に含まれない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和57年8月27日 昭和57(し)101
- 登載
- 刑集 第36巻6号726頁
- 参照法条
- 刑訴法199条,刑訴法429条1項
論点3第199条刑事訴訟法
甲事実について逮捕勾留中の被疑者を乙事実について取調べることが違法ではないとされた事例
裁判要旨甲事実について逮捕・勾留の理由と必要があり、甲事実と乙事実とが社会的事実として一連の密接な関連がある場合(判文参照)、甲事実について逮捕・勾留中の被疑者を、同事実について取調べるとともに、これに付随して乙事実について取調べても、違法とはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年8月9日 昭和49(あ)2470
- 登載
- 刑集 第31巻5号821頁
- 参照法条
- 刑訴法60条1項,刑訴法198条1項,刑訴法198条2項,刑訴法199条
論点4第199条刑事訴訟法
刑訴規則第一四二条第一項第八号所定の事項の記載を欠いた逮捕状請求書によつて発付された逮捕状による逮捕およびこれにつづく勾留が違法ではないとされた事例
裁判要旨前に逮捕状の発付があつた同一被疑者に対する再度の逮捕状の発付が、いわゆる逮捕のむしかえしによる逮捕権の濫用と認められないときは、右逮捕状の請求書に刑訴規則第一四二条第一項第八号所定の事項の記載を欠いていても、右の逮捕およびこれにひきつづきなされた勾留は違法ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和42年12月20日 昭和42(し)69
- 登載
- 集刑 第165号487頁
- 参照法条
- 刑訴法199条,刑訴規則142条1項
論点5第199条刑事訴訟法
被疑者を午前三時頃警察署に任意出頭せしめた処置と、被疑者の司法警察員に対する供述調書(自白)の証拠能力
裁判要旨被疑者を午前三時頃に出頭せしめる必要もないのに、警察署に任意出頭せしめた場合でも、その日の午後六時三〇分頃適法な手続によつて逮捕され、次いで適法に勾留された後において被疑者が司法警察員に対してなした供述(自白)の任意性が認められ、また被告人(被疑者)および弁護人共にその供述調書を証拠とすることに同意している等特段の事情ある場合に、右供述調書の証拠能力を認めることは相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和31年12月11日 昭和28(あ)5265
- 登載
- 集刑 第116号69頁
- 参照法条
- 刑訴法198条,刑訴法199条,刑訴法201条,刑訴法207条,刑訴法210条,刑訴法322条,刑訴法326条
論点6第199条刑事訴訟法
勾留に際し陳述を聴いた調書が記録にないことは勾留を不適法たらしめるか
裁判要旨新刑訴においては、逮捕状、勾留状等法律又は規則によつて提出を要する書類を除いて、証拠上必要と認めて当事者が提出した書類の外記録に編綴されないのであるから、勾留に際して陳述を聴いた書面も編綴されていないのがむしろ普通である。されば、この書面が記録に見当らないことを理由とする憲法第三四条違反の主張は、その前提を欠き採用の限りでない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月18日 昭和25(あ)2068
- 登載
- 集刑 第70号721頁
- 参照法条
- 憲法34条,刑訴法62条,刑訴法61条,刑訴法199条,刑訴規則167条3項
論点7第199条刑事訴訟法
一 旧地方税法第一三六条第二項〈第六十二条、第六十三条及び第六十五条の規定は、第百三十二条及び前条の規定による召喚について、第六十二条、第六十四条、第六…〉の罪の判示方
二 旧地方税法第一三六条第二項違反罪の成立と、同法第一三七条第一号
三 旧地方税法第一三六条第二項の罪の成立と同法第四一条所定の督促手続との関係
四 不法拘禁中における供述の任意性又は強制の有無
五 証人に宣誓前偽証の罰を告げなかつた場合と証言の効力
六 縣税入場税市税入場税附加税犯則事件につき国税犯則取締法の規定が適用又は準用されない事例
七 地方税特別徴収義務者の不納付行為加功者に対する刑法第六五条第一項〈召喚状は、これを送達する。〉の適用と総則規定を明示することの要否
八 旧地方税法第一三六条第一項と同条第二項の相違と同条第二項の適用
裁判要旨一 しかし、旧地方税法第一三六条第二項の規定は、特別徴収義務者が徴取すべき地方税を故意に徴収せず又は徴収した地方税を故意に納入しなかつた場合に成立する脱税に関する犯罪の処罰規定であつて、地方税の単なる滞納の場合の規定ではない。されば同条項の犯罪事実を判示するには、所論のごとき知事又は市長の発令の有無、特別徴取義務者が払込告知書を受取つたか否か及び指定期日に払込を了したか否か等の事実を確定判定するの要はない。
二 旧地方税法
第一三六条第二項〈第六十二条、第六十三条及び第六十五条の規定は、第百三十二条及び前条の規定による召喚について、第六十二条、第六十四条、第六…〉の犯罪は、特別徴収義務者が徴収すべき地方税を故意に徴収せず、又は徴収した地方税を故意に納入しないときは直ちに成立し、不徴収又は不納入の手段方法の如何を問わないものであり、従つて、判事虚偽の報告が所論同法第一三七条第一号に触れることがあつても、前記条項の犯罪の成立を阻却しないものであるから、原判決が判示事実に対し同条項を適用処断したのは正当であつて、原判決には所論の違法は認められない。
三 本件入場税の納入期日が徴収した月の翌月中であることは法令である高知縣条例によつて明らかであり、判示逋脱の入場税については昭和二三年八月中に徴収されたものであることは原判決の認定判示したところである。そして特別徴収義務者の徴収した入場税の納入期日が右のごとく条例上徴収した月の翌月中に到来すべきものであるから、徴収した月が認定判示されていれば特にその納入期日を明示しなくとも自ら確定されるわけである。されば原判決は判示入場税の徴収日を八月四日から同月一〇日迄及び一八日から月末頃迄の間と確定判示し、その納入期日をその頃納入すべかりし期日にと説明した以上、旧地方税法第一三六条第二項違反罪の判示として何等欠くるところは存しない。又督促状を発することは納入しない入場税金について徴収義務者に対して滞納処分を行う法律上の要件であるにとどまり、不納入罪成立の要件ではない。されば原判決が判示逋脱の入場税金について督促状の発せられた事実及指定納入期日を判示しなかつたからといつて、原判決には違法のかどは存しない。
四 拘禁が不法であつてもその一事を以て直ちに拘禁中の供述が強制その他不任意のものであると速断することもできない。
五 しかし一九五〇年一〇月一八日附連合国最高司令官総司令部覚書施行期日たる同年一一月一日以前においては、連合国人である証人に対しては一般に宣誓をさせる場合でも偽証の罰を告げないのを相当と解すべきである(昭和二四年(れ)第一六七号同年七月九日第二小法廷判決判例集三巻八号一一九三頁以下参照)ばかりでなく、旧刑訴
第一九九条〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発す…〉は証人に偽証の罪に陥ることのないようにその注意を喚起せしめる趣旨の訓示的規定と解するを相当とするから、たとえ同規定に反して裁判所が証人に偽証の罰を告げなかつたとしても、その供述は証言たるの効力を妨げられるものではない。されば原判決には所論のような違法は存しない。
六 本件のような昭和二三年八月一日以後同二四年六月一日以前に係る高知縣税入場税、高知市税入場税附加税犯則事件には国税犯則取締法の規定は適用も準用もされない筋合であることは多言を要しないところである。従つて本件高知縣税入場税高知市税入場税附加税の犯則事件に国税犯則取締法の規定の適用又は準用のあることを前提とする各論旨はいずれもその前提を欠きとるをえない。
七 原判示とその挙示する各証拠とを対照してみると原判決は判示入場税の特別徴収義務者はAであつて被告人B、同C、同D等は徴収義務者たる身分のない者で徴収義務者Aの判示入場税の一部逋脱に加功したものであると認め、刑法第六五条第一項を適用して被告人B等をAの判示逋脱犯の共犯者として処断したものであることを推断しえられるのである。そして刑法
第六五条第一項〈召喚状は、これを送達する。〉のごとき総則規定はこれを適用するを以て足り、特にこれを判決中に明示する必要のないものである。
八 地方税法第一三六条第一項の規定は地方税の納税義務者が詐欺、その他不正の行為によつて地方税を逋脱した場合の処罰規定であり、同条第二項の規定は特別徴収義務者が徴収すべき地方税を納税義務者から徴収せず、又は納税義務者から徴収した地方税を納入しなかつた場合の処罰規定であつて、その不徴収又は不納入の手段、方法の如何を問わないから、本件のごとき特別徴収義務者が地方税たる判示入場税不納入の場合において、たとえ所論のような詐欺その他不正の行為が伴つたとしても同条第一項を適用すべきではなく、同条第二項を適用すべきであることは多言を要しないところである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月15日 昭和25(れ)766
- 登載
- 刑集 第5巻4号535頁
- 参照法条
- 旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改定前のもの)136条2項,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)136条2項,旧地方税法137条1号,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)36条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)37条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)41条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)136条1項,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)2項,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法199条,旧刑訴法360条の1項,刑訴応急措置法10条2項,国税犯則取締法12条の2,刑法65条1項
論点8第199条刑事訴訟法
一 公判手續の瑕疵と手續の更新
(辯論更新前における刑訴第四三條第二項の違反)
二 辯護人不出頭のまま行われた公判手續を更新した場合と辯護權の不法制限
三 強盗共犯者の犯意の認定と他の共犯者の行爲に對する共同責任
四 勾留六ケ月後にした自白と不當に長い拘禁後の自白
五 十一歳の小學兒童の證人資格
六 刑訴第二〇一條第一項の取調をした旨の記載を缺く證人訊問調書の證據能力
七 刑訴第一九九條の法意と僞證の罰を告げないでした證人訊問の効力
八 共同被告人に對し訴訟費用の分擔を命ずる場合と裁判所の自由裁量
九 刑訴法第二四二條の法意
裁判要旨一 原審は右第一回公判期日において審理を終結したのではなく、その後公判手續は第二回及び第三回各公判期日においてその都度適法に更新され、第二回公判期日には被告人Aの私選辯護人伊藤博夫が、又第三回公判期日には同様同被告人の私選辯護人桑名邦雄がそれぞれ出頭して審理に立曾つていることが記録上明かであるから、右第一回公判期日における前記瑕疵(利害相反する相被告人の辯護人をして被告人を辯護せしめたこと)は右審理更新の結果原判決に影響を及ぼさないものというべきである。
二 原審が右のように第一回公判期日において被告人Aの辯護人伊藤博夫から提出した所論期日變更申請を却下し、同辯護人不出頭のまま同期日の審理を行つたことは所論のとおりであるが、その後第二回公判期日は同辯護人にも適法に通知され同期日には同辯護人出頭の上、公判手續が更新されたこと前示のとおりであるから、結局原審手續は不當に辯護權を制限した違法のものということはできない。
三 原審判決が、被告人Aは相被告人Bにおいて判示被害者宅内で判示暴行脅迫を行つた現場には居合わせず屋外にいたと認定したからといつて直ちに被告人Aは、右暴行脅迫の事實について認識していなかつたとはいえないのみならず、同被告人が暴行脅迫行爲を現認しないからとて、共犯者中の他の者が暴行脅迫を加えて財物を奪取している以上強盗の共犯としての責任を免れ得るものでもない。
四 被告人が勾留されたのは所論のとおり昭和二一年一二月一九日であり、又同被告人の原審における自白は昭和二二年六月五日の第一回公判以後同年八月三〇日の第三回公判を通じてなされているのであつて、右勾留後第一回公判期日迄に約六ケ月、第三回公判期日迄には二五〇日餘を經過していることが明かではあるが、本件事案の内容、取調の経過、相被告人の供述内容等諸般の事情に鑑み、右程度の勾留は未だ不當に長い拘禁とはいえない。
五 原審證人Cが原審における取調べを受けた當時一一年(昭和一二年三月生)の小學兒童であつたことは同證人訊問調書の記載から明かであるが、この程度の年齢の者は絶對に證人たる資格がないとはいえないのであつて、同調書記載の同證人の供述内容から見ても同人は本件強盗の被害當時の状況について、詳細に記憶しているその實驗事實を順序良く訊問に答えて陳述報告しているのであつて、事理を辯識する能力を備えていた者と認めるべく、かかる年齢の證人の供述を證據として採用するか否かは事實審たる原番の自由になし得るところであるから、原審が同證人の右證言を判斷の資料に供したとて無効の證據を罪證に供した違法があるということはできない。
六 證人訊問調書に、その證人が刑訴第二〇一條第一項各號に該當するかしないかの取調をした旨の記載がなくても、右證人の供述内容その他によつて、右各號に該當せず宣誓を要する證人であることが明白であり、且つ、宣誓をなさしめて訊問をしている場合には、右訊問調書はこれを證據として差支えない。
七 元来刑事訴訟法第一九九條は、證人にその供述をなす前あらかじめその注意を促し、良心に從つてありのまゝにその實験した事實を供述させるとともに、僞證罪に問われることのないようにさせるため設けられた訓示的規定であるから、證人に宣誓をなさした上供述させている以上、たとえ宣誓前に僞證の罰を論示しなかつたからといつて、宣誓の効力には何ら影響がなく、その證人の證言を無効と考える必要は少しもない。
八 共同被告人中のある者が公訴事實を認め、他の者がこれを否認している場合に、裁判所がその公訴事實の審理のため證人を喚問するのは、結局眞實を發見するためであるから、かような證人に支給した旅費日當などの訴訟費用を、その共同被告人をして連帶して負擔させるか又はその中のある者のみに負擔させるかは、裁判所が自由に定めることのできる問題であつて、從つて、審理の結果右の公訴事實が證明され判決において認定された場合には右の費用は、公訴事實を否認していた被告人のみに負擔させるべきであつて當初からこれを認めていた被告人には負擔させてはいけないという理由はない。
九 刑事訴訟法第二四二條によれば、訴訟費用の負擔を命じる裁判に對しては本案の裁判について上訴する場合に限り不服を申立て得るものであつて、本案の裁判と獨立して上告の申立をすることはできないものである。從つて、本案の裁判に對する上告が理由があるときは、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服もこれを維持することができるけれども、本案の裁判に對する上告が理由がないときは、これの離れて、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服のみを維持することはできないものと解するのが相當である。しかるに本件において本案の裁判に對する上告が少しも理由がないものであることは、上に説明したとおりであるから、結局論旨は上告適法の理由とならないものといわなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和23年4月17日 昭和22(れ)209
- 登載
- 刑集 第2巻4号364頁
- 参照法条
- 刑訴法43条2項,刑訴法411条,刑訴法334条,刑訴法410条10号,刑訴法184条,刑訴法201条,刑訴法199条,刑訴法238条,刑訴法242条,刑法60条,刑法236条,憲法38条2項,刑訴応急措置法10条2項
論点9第199条刑事訴訟法
逮捕状の更新が繰り返されている時点における捜査機関又は令状発付裁判官の判断の違法を理由とする国家賠償請求の許否
裁判要旨逮捕状の更新が繰り返されている時点で、逮捕状の請求、発付における捜査機関又は令状発付裁判官の被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があったとする判断の違法を主張して、国家賠償を請求することは許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成5年1月25日 平成1(オ)548
- 登載
- 民集 第47巻1号310頁
- 参照法条
- 国家賠償法1条1項,刑訴法199条
論点10第199条刑事訴訟法
外国人登録法(昭和六二年法律第一〇二号による改正前のもの)に定める指紋押なつを拒否した者に対する逮捕状の請求及び発付につき明らかに逮捕の必要がなかったということはできないとされた事例
裁判要旨外国人登録法(昭和六二年法律第一〇二号による改正前のもの)に定める指紋押なつを拒否した者について、その生活は安定したものであったことがうかがわれ、また、指紋押なつをしなかったとの事実を自ら認めていたことなどからすると、逃亡のおそれ及び右事実に関する罪証隠滅のおそれが強いものであったということはできないが、同人が司法警察職員から五回にわたって任意出頭するように求められながら、正当な理由がなく出頭せず、その行動には組織的な背景が存することがうかがわれたなど判示の事情の下においては、同人に対する逮捕状の請求及び発付につき、明らかに逮捕の必要がなかったということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成10年9月7日 平成7(オ)527
- 登載
- 集民 第189号613頁
- 参照法条
- 刑訴法199条1項,刑訴法199条2項,刑訴規則143条の3,外国人登録法(昭和62年法律102号による改正前のもの)14条1項,外国人登録法(昭和62年法律102号による改正前のもの)18条1項8号,国家賠償法 1条1項
論点11第199条刑事訴訟法
逮捕に関する裁判に対する特別抗告の可否
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和6年7月17日 令和6(し)462
- 登載
- 集刑 第333号361頁
- 参照法条
- 刑訴法199条、刑訴法429条1項、刑訴法433条1項
論点12第284条刑事訴訟法
一、刑訴法第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉所定の申立人の代人に該当するとされた事例
二、いわゆる判決通知と上訴権回復事由
三、刑訴規則第二二二条と控訴審への準用の有無
裁判要旨一、原決定において、申立人が上告申立の手続を依頼したAは、刑訴
三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉所定の申立人の代人に該当するとしたのは相当である(後記註参照)。
二、刑訴規則第二二二条所定の判決結果の通知がなされなかつたという一事をもつては、上訴権回復請求の理由とならないことは当裁判所の判例(昭和二九年(し)第三号昭和二九年九月二一日第三小法廷決定、最集八巻九号一五一四頁)である。
三、刑訴規則第二二二条の規定は、控訴審には準用がないことも当裁判所の判例(昭和二七年(し)第四二号昭和三三年五月二六日第一小法廷決定、集一二巻八号一六二一頁)である。
註。本件は控訴棄却の判決宣告があつたので申立人は上告申立の手続を訴訟手続の実務に明るいと自称する知人Aに依頼して置いたところ右Aが上告申立をしても無駄だ等と思い且つ刑訴規則を誤解したため法廷期間内に上告の申立ができなかつた事案である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年10月9日 昭和37(し)34
- 登載
- 集刑 第144号771頁
- 参照法条
- 刑訴法362条,刑訴法284条,刑訴法285条,刑訴規則222条,刑訴規則250条
論点13第284条刑事訴訟法
刑訴規則第二一六条、第二二二条と控訴審への準用の有無
裁判要旨刑訴規則第二一六条、第二二二条の規定は第一審における刑訴
第二八四条〈五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、五万円)以…〉、
第二八五条〈拘留に当たる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告…〉第一、二項にあたる事件に関するものであつて、控訴審には準用のない規定である
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和33年5月26日 昭和27(し)42
- 登載
- 刑集 第12巻8号1621頁
- 参照法条
- 刑訴法284条,刑訴法285条,刑訴法390条,刑訴規則216条,刑訴規則222条
論点14第284条刑事訴訟法
刑訴規則第二一六条、第二二二条と控訴審への準用の有無
裁判要旨刑訴規則第二一六条、第二二二条の規定は第一審における刑訴
第二八四条〈五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、五万円)以…〉、
第二八五条〈拘留に当たる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告…〉第一、二項にあたる事件に関するものであつて、控訴審には準用のない規定である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和27年10月31日 昭和27(し)43
- 登載
- 集刑 第68号855頁
- 参照法条
- 刑訴法284条,刑訴法285条,刑訴法390条,刑訴規則216条,刑訴規則222条
論点15第285条刑事訴訟法
一 判決宣告手続に違法がある場合と上訴提起期間の起算点
二 控訴申立書と題する書面の意思解釈―上訴権回復の請求の意思表示をも含むと解された事例
三 自己又は代人の責に帰すべからざる事由によつて上訴権の行使を妨げられたと認められた事例
裁判要旨一 被告人が公判期日に出頭しなければ、判決の宣告ができない事件につき、被告人不出頭のまま判決の宣告をした瑕疵があつても、上訴提起期間は判決宣告の日から進行する。
二 右の場合において、控訴申立書と題する書面に、被告人が判決宣告の翌日判決通知書を受けた旨並びに右判決に不服を申し立てるについては上訴権回復の請求に関する刑訴法
第三六二条〈第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつ…〉ないし
第三六五条〈上訴権回復の請求があつたときは、原裁判所は、前条の決定をするまで裁判の執行を停止する決定をすることができる。この場合には…〉をも理由とする旨の記載があるときは、右申立書は本来の控訴の申立のほかに、もし控訴申立書が法定の期間内に裁判所に到達しなければ、上訴権回復の請求をする旨の意思表示をも含むものと解すべきである。
三 右一の場合において、被告人が宣告の日の翌日判決の通知を受けたときは、その通知が被告人に到達するまでは被告人自身又は代人の責に帰すべからざる事由によつて上訴権の行使を妨げられていたものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和38年10月31日 昭和37(し)50
- 登載
- 刑集 第17巻11号2391頁
- 参照法条
- 刑訴法285条2項,刑訴法286条,刑訴法358条,刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法411条1号,罰金等臨時措置法7条2項,罰金等臨時措置法3条1項各号
論点16第285条刑事訴訟法
一 いわゆる準新事件の公訴時効とその中断
二 同事件につき上告趣意書提出最終日の指定がなされその通知書が上告人に送達されたときは公訴時効中断の効力を生ずるか。
三 同事件につき上告審で公訴時効が完成した場合の措置。
裁判要旨一 本件のように昭和二三年二月一九日公訴が提起され同二六年六月一九日原判決の言渡があつた事件においては、刑訴施行法第二条、第三条の二より、公訴の時効、その中断等については、旧刑訴
第二八一条〈証人については、裁判所は、第百五十八条に掲げる事項を考慮した上、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き必要と認めるときに…〉、
第二八五条〈拘留に当たる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告…〉等旧刑訴の適用を受けるものであつて、刑訴
第二五四条〈時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める…〉等の適用を受けるものではない。
二 右事件につき上告趣意書提出最終日の指定がなされその通知書が上告人に送達されたときは、旧刑訴
第二八五条の公判の処分があつたものとして、公訴時効中断の効力を生ずる。
三 同事件につき上告審において公訴の時効が完成したときは、刑訴施行法第二条、第三条の二、刑訴
第四一一条第五号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。〉を準用し、原判決を破棄の上、旧刑訴
第四四八条〈再審の請求が理由のあるときは、再審開始の決定をしなければならない。〉、
第四五五条〈非常上告をするには、その理由を記載した申立書を最高裁判所に差し出さなければならない。〉、
第三六三条第四号〈上訴権回復の請求は、事由が止んだ日から上訴の提起期間に相当する期間内にこれをしなければならない。〉により被告人を免訴すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和35年6月9日 昭和29(れ)10
- 登載
- 刑集 第14巻7号953頁
- 参照法条
- 刑法130条,刑訴施行法2条,刑訴施行法3条の2,刑訴法411条5号,旧刑訴法281条,旧刑訴法285条,旧刑訴法363条4号,旧刑訴法448条,旧刑訴法455条
論点17第285条刑事訴訟法
公判期日変更申請却下の決定並びに刑訴法第二八五条第二項による公判期日不出頭許可の決定は刑訴法第四三三条第一項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」に当るか。
裁判要旨公判期日変更申請却下の決定並びに刑訴法二八五条二項による公判期日不出頭許可の決定は、いずれも訴訟手続に関し判決前にした決定であつて、かかる決定は、刑訴
四三三条一項〈この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に…〉にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」に当らないと解するを相当とする。それ故、本件特別抗告は不適法たるを免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和33年10月9日 昭和33(し)72
- 登載
- 集刑 第128号211頁
- 参照法条
- 刑訴法276条,刑訴法285条,刑訴法433条,刑訴規則179条の4
論点18第285条刑事訴訟法
一 訴訟遅延のみを目的とする忌避申立却下決定に対する即時抗告と刑訴第四二五条〈即時抗告の提起期間内及びその申立があつたときは、裁判の執行は、停止される。〉の適用の有無及び憲法第三七条第一項
二 刑訴第二八五条第二項〈拘留に当たる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告…〉にあたる事件で被告人不出頭のまま公判の審理をした場合と被告人の不出頭許可決定
裁判要旨一 刑訴
第二四条〈訴訟を遅延させる目的のみでされたことの明らかな忌避の申立は、決定でこれを却下しなければならない。この場合には、前条第三項…〉により、訴訟を遅延させる目的のみでなされたことの明らかな忌避申立を却下した決定に対する即時抗告については、刑訴
第四二五条〈即時抗告の提起期間内及びその申立があつたときは、裁判の執行は、停止される。〉の規定は適用されないものと解しても、憲法第三七条第一項に違反しない。
二 刑訴
第二八五条第二項〈拘留に当たる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告…〉の適用を受ける事件において、被告人が召喚されていた公判期日に出頭しなかつた場合に、裁判所が被告人不出頭のまま審理をなし、公判調書にもその旨記載されているときは、裁判所は被告人に不出頭を許可し、その旨の決定があつたものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和31年3月30日 昭和29(あ)2760
- 登載
- 刑集 第10巻3号422頁
- 参照法条
- 憲法37条1項,刑訴法24条,刑訴法25条,刑訴法425条,刑訴法285条2項,刑訴法43条,刑訴規則33条,刑訴規則34条
論点19第390条刑事訴訟法
控訴審の公判期日について被告人に対する召喚手続または公判期日の通知を怠つた場合と破棄事由
裁判要旨控訴審の第一回公判期日において、弁護人の出頭はあつたが被告人の出頭がないまま実質審理を行ない即日結審している場合において、同公判期日についての召喚手続または同公判期日の通知が被告人に対しなされていないときは、その訴訟手続は違法であり、原判決を破棄しなければいちじるしく正義に反する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和44年10月3日 昭和42(あ)2527
- 登載
- 集刑 第173号201頁
- 参照法条
- 刑訴法273条2項,刑訴法390条,刑訴法404条,刑訴法411条1号
論点20第390条刑事訴訟法
控訴審において被告人に公判期日を通知することなく被告人不出頭のまま公判を開廷することの適否
裁判要旨控訴審において被告人に公判期日(判決宣告期日を含む。)の通知をすることなく、被告人が出頭しないまま公判を開廷することは違法である。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和44年10月1日 昭和44(し)22
- 登載
- 刑集 第23巻10号1161頁
- 参照法条
- 刑訴法273条2項,刑訴法404条,刑訴法390条
論点21第390条刑事訴訟法
一 控訴棄却の判決と刑訴法第三三五条〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の準用の有無。
二 刑訴法第二九三条〈証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。〉、刑訴規則第二一一条の規定は控訴審に準用があるか。
裁判要旨一 控訴棄却の判決をした場合には、刑訴法
第四〇四条〈第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。〉の「この法律に特定の定のある場合」に属し、刑訴法
第三三五条〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の準用はない(昭和二五年(あ)三一七七号同二六年五月一〇日第一小法廷決定、刑集五巻六号一〇二一頁参照)。
二 控訴審は事後審であるから、刑訴法
第二九三条〈証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。〉、刑訴規則第二一一条の規定は控訴審に準用されない(昭和二五年(あ)第一四一五号同年一〇月一二日第一小法廷決定、刑集四巻一〇号二〇八七頁参照)。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年11月5日 昭和39(あ)1237
- 登載
- 集刑 第153号1頁
- 参照法条
- 刑訴法335条,刑訴法396条,刑訴法404条,刑訴法293条,刑訴法390条,刑訴法388条,刑訴規則211条,刑訴規則250条
論点22第390条刑事訴訟法
刑訴法第三九〇条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉但書の出頭命令と裁判所の裁量。
裁判要旨控訴審においては、被告人は、原則として公判期日に出頭することを要せず(刑訴
三九〇条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉本分)、公判期日に対する被告人の召喚は、召喚とはいつても、その性質は、右期日を被告人に通知し自ら欲すれば出頭する機会与える意味をもつに過ぎず(昭和二四年新(れ)第五一九号、同二七年一月二日第一小法廷判決、刑集六巻一二号一四〇一頁)、ただ、例外としていわゆる軽微事件以外の事件について、被告人の出頭がその権利の保護のため重要であると認めるときは、被告人の出頭を命ずることができる(同
三九〇条但書)のであるが、被告人の出頭を命ずるかどうかは、裁判所の裁量に属するところである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年12月14日 昭和34(あ)1279
- 登載
- 集刑 第145号541頁
- 参照法条
- 刑訴法390条,刑訴法273条2項
論点23第390条刑事訴訟法
一 控訴審の公判と憲法第三七条第一項〈左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。〉および第八二条第一項〈勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。〉。
二 量刑過重の控訴趣意と量刑過軽の控訴趣旨がいずれも理由ありとした控訴審判決の説示と理由そごの有無。
裁判要旨一 控訴審における公判の審理が、単に、控訴趣意書に基く陳述とこれに対する相手方の答弁だけであつても、被告人に対しては、右公判に出頭する機会が適法に与えられ、しかも検察官が出席し、弁護人が出頭して、弁論をしている以上、憲法第三七条第一項、第八二条第一項に違反しない。
二 第一審の有罪判決に対し、検察官、被告人双方共控訴を申し立て、控訴趣意として、検察官は第一審判決の量刑が軽きにすぎると主張し、被告人は、その量刑が重きに過ぎると主張している場合に、控訴審の判決が、「第一審の科刑は不当であると思われるので、論旨は結局においていずれも理由がある」と説示しても、理由そごの違法はない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和33年7月2日 昭和27(あ)276
- 登載
- 刑集 第12巻11号2377頁
- 参照法条
- 憲法37条1項,憲法82条1項,刑訴法389条,刑訴法390条,刑訴法400条但書,刑訴法378条4号,刑訴法397条1項,刑訴法381条
論点24第390条刑事訴訟法
控訴審における書面審理と憲法第三七条第一項。
裁判要旨控訴審において、公開法廷で公判審理が行われ、右期日に被告人は適法な召喚状の送達を受けたが出頭せず、弁護人の控訴趣旨書に基ずく弁論および検察官の意見の陳述の後弁論が終結された以上右手続は憲法
第三七条第一項〈左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。〉に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年10月24日 昭和33(あ)1331
- 登載
- 刑集 第12巻14号3407頁
- 参照法条
- 憲法37条1項,刑訴法389条,刑訴法390条
論点25第390条刑事訴訟法
一 刑訴法第三九〇条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉の合憲性
二 被告人の上訴を棄却する場合とその審級における未決勾留日数の通算
裁判要旨一 刑訴法
第三九〇条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉は憲法第三一条に違反しない。
二 上訴裁判所は、被告人の上訴を棄却する場合においても、その審級における未決勾留日数を本刑に算入することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和32年3月28日 昭和31(あ)3965
- 登載
- 刑集 第11巻3号1306頁
- 参照法条
- 刑訴法390条,刑訴法495条,憲法31条,刑法21条
論点26第390条刑事訴訟法
一 原本に代えて証拠書類の謄本の取調請求のあつた場合と証拠調
二 控訴審において被告人が出頭した場合と人定質問の要否
裁判要旨一 原本に代えて証拠書類の謄本の取調請求があつた場合、被告人および弁護人がこれを証拠とすることに同意し、且つ証拠調をすることに異議がない以上、謄本を証拠とするため証拠調をしても違法ではない。
二 控訴審においては、被告人が出頭した場合でも、必ずしも人定質問をするを要しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年12月17日 昭和25(あ)547
- 登載
- 刑集 第7巻12号2558頁
- 参照法条
- 刑訴法298条1項,刑訴法305条1項,刑訴法309条,刑訴法326条,刑訴法390条,刑訴規則115条,刑訴規則196条
論点27第390条刑事訴訟法
控訴審の公判期日に被告人に召喚状を発しながらその不出頭のまま結審した場合と憲法37条1項〈左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。〉
裁判要旨原審が被告人に対し第一回公判期日の召喚状を発していることは所論のとおりであるが、右は刑訴
三九〇条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉但書の規定にもとずいて被告人の出頭がその権利保護のため重要であると認めて出頭を命じたものでないことは記録に徴し明らかである。そして、被告人は控訴審において召喚に応じ公判期日に出頭する義務はないのであり、本件被告人は適法な公判期日の告知を受けながら自ら同公判期日に出頭しなかつただけであるから憲法
三七条一項〈左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。〉違反の論旨は既にその前提において失当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月13日 昭和25(あ)2147
- 登載
- 集刑 第64号395頁
- 参照法条
- 憲法37条1項,刑訴法390条
論点28第390条刑事訴訟法
一 控訴審における事実の取調と被告人の立会権
二 控訴審における証人尋問と憲法第三七条第二項〈左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。〉
三 控訴審の公判期日における証人尋問に被告人が立会しなくても違法でない一事例
裁判要旨一 控訴裁判所では、必ずしも常に事実の取調に被告人を立ち会わせ、被告人に弁論の機会を与えなければならないものということはない。
二 控訴審で事実の取調の一方法として証人の尋問をし、これを裁判の資料とするような場合には、憲法第三七条第二項の刑事被告人の権利保護のため特に被告人をこれに立ち会わせ、その証人を審問する機会を与えなければならないものと解するを相当とする。
三 本件記録によると、原審は第三回公判で証人二名を尋問し、しかもこれら証人の供述を事実認定の資料に供したこと、並びに、右証人尋問が行われた公判には被告人が出頭しておらず、且つその後においても特に被告人に対し、これら証人の供述の内容を知らせる手続を執らなかつたことは所論のとおりである。しかしながら、本件では、前記公判期日における証人の取調は、もともと弁護人の申請した証人の尋問であつて、各被告人にはいずれも右公判期日の召喚状が適法に送達され、且つ、弁護人は同公判期日に出頭して右各証人に対し、それぐ尋問もしていることが記録上明白であるから、被告人の前記憲法上の権利保護に充分な機会を与えたものといわなければならない。されば原審の手続には所論の違法があるとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和27年2月6日 昭和25(あ)641
- 登載
- 刑集 第6巻2号134頁
- 参照法条
- 刑訴法393条,刑訴法390条,刑訴法389条,刑訴法388条,刑訴法293条,刑訴法404条,刑訴法157条,憲法37条2項
論点29第390条刑事訴訟法
控訴審において公判期日に被告人を召喚することの要否
裁判要旨しかし、控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護士たる弁護人でなければ、これをすることができないものであつて、被告人は、原則として公判期日に出頭することを要しないものであるから、所論第三回公判期日に弁護人が出廷して弁論をした以上、仮りに被告人を召喚しなくとも(本件では昭和二五年五月二七日第二回公判期日に被告人出頭の上第三回公判期日の告知を受けている)違法でもないし、また、原判決に影響を及ぼさないことも明白である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月8日 昭和25(あ)2535
- 登載
- 集刑 第41号395頁
- 参照法条
- 刑訴法388条,刑訴法390条
論点30第390条刑事訴訟法
控訴審の訴訟手続と被告人出頭の要否――刑訴法第二九一条第二項〈検察官は、まず、起訴状を朗読しなければならない。〉は控訴審の審判に準用されるか
裁判要旨しかし新刑訴における控訴審は旧刑訴におけるそれが第一審手続の覆審であつたのとは異なり、第一審判決における一定の事実点並びに法律点に対する事後審査の手続である。されば新刑訴の規定においても控訴審の公判期日には被告人は必ずしも出頭することを要しないのであり(刑訴
第三九〇条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉)は被告人のためにする弁論は弁護人でなければこれをすることができず(同
第三八八条〈控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護人でなければ、これをすることができない。〉)、しかも検察官及び弁護人は控訴趣意書に基ずいて弁論しなければならない(同
第三八九条〈公判期日には、検察官及び弁護人は、控訴趣意書に基いて弁論をしなければならない。〉)等と定められているのである。従つて被告人に対し被告事件について陳述する機会を与うべきことを定めた刑訴
第二九一条第二項〈検察官は、まず、起訴状を朗読しなければならない。〉のごとき第一審公判に関する規定はその性質上控訴審の審判について準用せられないことは明白である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和26年3月30日 昭和25(あ)2761
- 登載
- 刑集 第5巻5号801頁
- 参照法条
- 刑訴法388条,刑訴法389条,刑訴法390条,刑訴法291条2項
論点31第390条刑事訴訟法
一 舊刑訴法第六九第二項により判決書に記載すべき檢事の氏名
二 控訴審の公判期日に被告人を召喚することの要否。
裁判要旨一 舊刑事訴訟法第六九條第二項により判決書に記載すべき檢事の氏名は公判に關與した檢事の氏名であるから、審理又は判決言渡のいずれかの公判に關與した檢事の氏名であればよいのであつて、必ず審理に關與した檢事の氏名でなければならないと解すべき理由はない。
二 控訴審の公判期日に被告人を召喚する手続がとられていなくても、その期日が被告人に通知されておれば、その控訴審の手続も違法ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和24年9月10日 昭和24(れ)519
- 登載
- 刑集 第3巻10号1585頁
- 参照法条
- 舊刑訴法69條2項,刑訴法404条,刑訴法273条2項,刑訴法390条
論点32第390条刑事訴訟法
刑訴法390条〈控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、五十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法…〉についての規定違憲(憲法37条1項)の主張が不適法(本来立法政策)とされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成4年2月14日 平成3(あ)1011
- 登載
- 集刑 第260号3頁
- 参照法条
- 刑訴法390条
論点33第60条刑事訴訟法
起訴前の勾留の裁判に対する準抗告と起訴後におけるその利益
裁判要旨起訴前の勾留の裁判に対する準抗告申立の利益は、起訴後は失われる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和59年11月20日 昭和59(し)115
- 登載
- 刑集 第38巻11号2984頁
- 参照法条
- 刑訴法60条,刑訴法207条,刑訴法429条1項2号,刑訴法433条
論点34第60条刑事訴訟法
本件の勾留及び接見等禁止の裁判は自白を強要するためにとられた措置で憲法三八条一項〈この法律の規定に基づいて裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付すべき弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。〉に違反するという論旨を、実質事実誤認、単なる法令違反の主張として処理した事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年7月5日 昭和53(し)54
- 登載
- 集刑 第211号623頁
- 参照法条
- 憲法38条1項,刑訴法60条,刑訴法81条,刑訴法433条
論点35第60条刑事訴訟法
一 勾留期間延長の裁判が従前の勾留期間経過後に準抗告審で取り消された場合と検察官が身柄釈放の手続をとるべき時期
二 違法に身柄を拘束されていたことが勾留の裁判の効力に影響を及ぼさないとされた事例
裁判要旨一 勾留期間延長の裁判が従前の勾留期間経過後に準抗告審で取り消され、その決定が検察官に告知されたときは、検察官は直ちに身柄釈放の手続をとらなければならない。
二 勾留期間延長の裁判が準抗告審で取り消されたのにもかかわらず、検察官において釈放の手続をとることなく身柄を拘束していた違法は、判示の事実関係のもとにおいては、それが刑訴法六一条の手続をする段階まで継続していたとしても、裁判官が勾留の手続じたいとしては適法な手続を経たうえ、裁判所の審判のために必要であるとしてした勾留の裁判の効力に影響を及ぼさない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年10月31日 昭和53(し)79
- 登載
- 刑集 第32巻7号1847頁
- 参照法条
- 刑訴法60条,刑訴法61条,刑訴法208条
論点36第60条刑事訴訟法
いわゆる逮捕中求令状起訴により勾留がなされた場合に逮捕手続の当否は起訴後の勾留の効力に影響を及ぼさないとされた事例
裁判要旨いわゆる逮捕中求令状起訴により勾留がなされた場合において、これに先だつ逮捕手続の当否は起訴後の勾留の効力に何ら影響を及ぼさない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和48年7月24日 昭和48(し)49
- 登載
- 集刑 第189号733頁
- 参照法条
- 刑訴法60条1項
論点37第60条刑事訴訟法
事件の同一性を欠くとされた事例
裁判要旨被告人が、昭和四三年三月二八日にaにおいて賭博をしたとの勾留状記載の事実と、同日同所においてAらがした賭博開張図利を、賭具を貸与して幇助したとの起訴状記載の事実とは、併合罪の関係にあるものであるから、事件の同一性を欠くものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和45年7月10日 昭和45(あ)576
- 登載
- 集刑 第177号171頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法185条,刑法186条2項,刑訴法60条,刑訴法256条,刑訴法280条,刑訴法312条
論点38第60条刑事訴訟法
勾留請求却下後における被疑者の身柄拘束の有無および適否と準抗告審の裁判の効力
裁判要旨勾留請求却下の裁判に対する検察官の準抗告に対し、準抗告裁判所が、単に、被疑者につき刑訴法六〇条所定の要件の存否を判断して右裁判を取消し、かつ勾留の裁判をしたものであるときは、勾留請求却下後における被疑者の身柄拘束の有無および適否は、ただちに原決定および勾留の裁判の効力に影響を及ぼすものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和44年2月17日 昭和43(し)53
- 登載
- 集刑 第170号329頁
- 参照法条
- 憲法31条,憲法33条,刑訴法60条,刑訴法207条,刑訴法429条
論点39第60条刑事訴訟法
勾留の効力に影響がないとされた事例
裁判要旨甲被疑事実による勾留を利用して乙被疑事実につき取り調べた後、いつたん釈放し直ちに乙被疑事実により逮捕勾留した場合において、乙事実について公訴が提起され、その後も勾留理由があるときは、起訴前の段階における右のような勾留およびその勾留中の捜査官の取調べの当否は、起訴後における勾留の効力に影響を及ぼさない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和42年8月31日 昭和42(し)26
- 登載
- 刑集 第21巻7号890頁
- 参照法条
- 刑訴法60条,刑訴法87条
論点40第60条刑事訴訟法
検察官の過失に基づく違法な勾留継続による精神的苦痛に対して国家賠償法第一条〈この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適…〉の責任があるとされた事例
裁判要旨鑑定の結果血液型の不一致が明らかになつたため、被疑者が犯人であることが極めて疑わしいものとなつた等原審認定の事実関係(原判決理由参照)のもとでは、勾留を継続すべき相当な理由は消滅したものといわなければならず、その後の釈放遅延による被疑者の精神的苦痛に対して、国は担当検察官の過失による国家賠償法第一条に基づく責任を負わなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和41年10月21日 昭和40(オ)76
- 登載
- 集民 第84号639頁
- 参照法条
- 刑訴法207条,刑訴法208条1項,刑訴法60条,国家賠償法1条
論点41第60条刑事訴訟法
一 上訴提起後における原裁判所の勾留の権限
二 受訴裁判所が勾留する場合における勾留質問の要否
裁判要旨一 原裁判所は上訴提起後であつても、訴訟記録がまだ上訴裁判所に到達しない間は、被告人を勾留することができる
二 勾留をする裁判所が、すでに被告事件の審理の際、被告事件に関する陳述を聞いている場合には、改めて刑訴法第六一条のいわゆる勾留質問をしなければならないものではない
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和41年10月19日 昭和40(し)79
- 登載
- 刑集 第20巻8号864頁
- 参照法条
- (一につき)刑訴法60条,(一につき)刑訴法97条,刑訴規則92条,(二につき)刑訴法61条
論点42第60条刑事訴訟法
勾留更新決定の執行と謄本の送達。
裁判要旨勾留更新決定の執行は、その謄本の送達を要件としない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和35年10月4日 昭和35(し)29
- 登載
- 集刑 第135号517頁
- 参照法条
- 刑訴法70条,刑訴法73条,刑訴法60条2項
論点43第60条刑事訴訟法
勾留状の失効とその勾留の効力を争う抗告の利益
裁判要旨勾留せられた被疑者が留置の必要事由消滅により釈放された以上、同人に対する勾留状の効力を争うことは利益がない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年5月21日 昭和32(し)23
- 登載
- 刑集 第11巻5号1521頁
- 参照法条
- 刑訴法60条,刑訴法61条,刑訴法207条,刑訴法426条2項,刑訴法429条1項2号,刑訴法433条
論点44第60条刑事訴訟法
保釈請求却下決定の理由として「被告人が逃亡する疑なしとは認められない」との認定に対する違憲(第三四条〈前条の規定による主任弁護人の権限については、裁判所の規則の定めるところによる。〉違反)の主張
裁判要旨所論は違憲をいうが、実質は原審が適法に認定した本件被告人に逃亡する疑なしとは認められないとする事実認定を争うに帰し、前提において採用できない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和31年9月26日 昭和31(し)39
- 登載
- 集刑 第114号797頁
- 参照法条
- 刑訴法60条,刑訴法89条,刑訴法344条,憲法34条
論点45第60条刑事訴訟法
勾留状の失効とその勾留の効力を争う抗告の利益
裁判要旨勾留せられた被疑者が留置の必要事由消滅により処分留保のまま釈放された以上同人に対する勾留状の効力を争うことは利益がない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和30年7月14日 昭和30(し)24
- 登載
- 刑集 第9巻9号1872頁
- 参照法条
- 刑訴法207条,刑訴法208条,刑訴法60条,刑訴法429条,刑訴法433条
論点46第60条刑事訴訟法
一 公判調書紛失の場合とその公判期日における訴訟手続の適法性の証明
二 紛失した公判調書における裁判長裁判所書記の署名捺印の存否とその公判期日における訴訟手続の適否
裁判要旨一 公判調書がすべて紛失して存在しない場合には、上告裁判所は自ら旧刑訴
第四三五条〈再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができ…〉によつて事実の取調をした上で、公判期日における訴訟手続が適法に行われたか否かを認定することができる。
二 公判調書紛失のため、公判調書以外の資料により公判期日における訴訟手続がすべて適法に行われたことが認められた場合には、その紛失した公判調書に裁判長、裁判所書記の署名捺印が存したか否かは問うところではない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和29年4月28日 昭和27(れ)30
- 登載
- 刑集 第8巻4号584頁
- 参照法条
- 旧刑訴法60条,旧刑訴法63条,旧刑訴法64条,旧刑訴法435条
論点47第60条刑事訴訟法
一 第一審における執行猶予の判決後控訴審が新たに勾留状を発することの適否
二 第一審における執行猶予の判決後控訴審が新たに勾留状を発した場合における保釈請求の許否
裁判要旨一 第一審が勾留中の被告人に対し懲役刑の執行猶予の判決を言渡したため勾留状が効力を失つた後においても刑訴
第六〇条第一項〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉各号の事由が新たに生じたときは控訴審において新たに勾留状を発することができる。
二 右の場合控訴審において新たに勾留状を発したときの保釈の許否については、刑事訴訟法総則の規定が適用され、第一審が禁錮以上の判決をしたことを請求却下の理由とすることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年10月26日 昭和29(あ)2248
- 登載
- 集刑 第99号507頁
- 参照法条
- 刑訴法60条1項,刑訴法89条,刑訴法344条,刑訴法345条
論点48第60条刑事訴訟法
懲役一年の言渡を受け勾留中の被告人に対してなした控訴裁判所の第二回の勾留更新決定の可否
裁判要旨前審判決により禁錮以上の刑の宣告を受けた勾留中の被告人に対しては、刑訴
六〇条一項一号〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで… 被告人が定まつた住居を有しないとき。〉乃至三号に当る事由が存続し同
三四三条〈拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があつたときは、保釈又は勾留の執行停止は、その効力を失う。〉の趣旨に従い勾留を継続する必要があると認められる限り勾留期間を更新することができるものと解するを相当とする。されば原決定が、被告人は当該事件の第一審裁判所で懲役一年の言渡を受けて勾留中のものであり、なお被告人には刑訴
六〇条一項三号の事由が存続するものと認め、控訴裁判所のなした第二回の勾留期間更新決を違法でないと判示して異議申立を棄却したことは、もとより適法というべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年7月31日 昭和28(し)30
- 登載
- 集刑 第85号697頁
- 参照法条
- 刑訴法60条1項,刑訴法60条2項,刑訴法343条,刑訴法344条
論点49第60条刑事訴訟法
一 公判調書の末尾に裁判所書記官補の官名の記載並びにその署名捺印の存することと公判期日に立会した裁判所書記
二 公判調書の末尾に裁判所書記官補の官名の記載並びにその署名捺印することと旧刑訴第六〇条第二項第二号〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉
裁判要旨一 公判調書の末尾に裁判所書記官補A某の官名の記載並びにその署名捺印がある外、他にその公判期日に立会した裁判所書記の官氏名の記載がない場合には、右A書記官補が裁判所書記として同公判期日に立会したものと認めることができる。
二 公判調書の末尾に裁判所書記官補A某の官名の記載並びにその署名捺印がある場合には、たとえその公判期日に立会した裁判所書記の官氏名につき特別の記載がなくても、その公判調書は旧刑訴
第六〇条第二項第二号〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉の要件も欠くものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年2月14日 昭和26(れ)1786
- 登載
- 刑集 第6巻2号237頁
- 参照法条
- 旧刑訴法60条2項2号,旧刑訴法63条,旧刑訴法329条
論点50第60条刑事訴訟法
一 公判調書における証拠調をした書類の表示方と「各聴取書」との表示の意義
二 甘藷澱粉の恐喝罪と之を運搬した食糧管理法違反罪との関係
裁判要旨一 しかし本件記録中には、聴取書として原本たる多くの聴取書の外に、所論指摘の聴取書謄本同抄本が編綴されており、謄本又は抄本の原本たる聴取書は編綴されていない。そして、原審第二回公判調書には、ただ単に「各聴取書」とのみ記載され、「各聴取書原本」と記載されていないのであるから、右「各聴取書」の中には前示各聴取書の謄本及び抄本も含まれていると解するのを相当とする。
二 甘藷澱粉の恐喝はその性質上通常必ずしも甘藷澱粉を食糧管理法の条項に違反して運搬する手段としてなされるものということはできない上、甘藷澱粉の恐喝とそれを食糧管理法に違反して不法に運搬する罪とは、犯罪構成要件も異り、被害法益も異つているから、原判決が本件恐喝罪と食糧管理法違反の罪とを併合罪として処断したことは正当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年9月25日 昭和26(れ)1431
- 登載
- 集刑 第53号345頁
- 参照法条
- 旧刑訴法343条1項3号,旧刑訴法60条,刑法45条,刑法249条,食糧管理法9条
論点51第60条刑事訴訟法
従犯であるとの主張と旧刑訴法第三六〇条第二項
裁判要旨共同正犯としての公訴事実に対し従犯であると主張することは、単なる事実の否認の一種であつて、旧刑訴法第三六〇条第二項に定める主張に当らないことは、当裁判所の判例として示すところである(昭和二四年(れ)第一四三五号、同二六年三月一五日第一小法廷判決、昭和二四年(れ)第二四四五号、同二五年二月二八日第三小法廷判決)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和26年9月14日 昭和26(れ)350
- 登載
- 集刑 第52号459頁
- 参照法条
- 刑訴法60条,刑訴法62条,旧刑訴法360条2項
論点52第60条刑事訴訟法
一 犯罪事実の同一性の認められる一場合
二 起訴状記載の罪名と勾留状記載の罪名とが異なる場合と勾留の効力
三 人身保護規則第四条〈事物管轄を異にする数個の関連事件が上級の裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、…〉但書の趣旨
裁判要旨一 「被疑者は、昭和二六年一月一〇日午後六時頃甲某を乙駅車庫詰所へ連れ込み、近くにあつた丸鉄棒で後頭部を殴打し暴行を加え、極度に畏怖せしめた上同人の冬オーバーを喝取した」との勾留状記載の被疑事実と「被告人は、昭和二六年一月一〇日午後五時過頃乙駅車庫詰所において甲某に対し右手拳又はストーブ用鉄棒(約一尺五寸位)等により交々頭部、背部等を殴打し、引き続き同人を八〇米位離れた被告人自宅入口まで引きずり込み、右手拳で数回殴打し、台所にあつた庖丁を取り上げ、その背部で同人の頭部を一回殴打した上告人自宅前小川に突き落す等暴行を加えた」との起訴状記載の公訴事実とは同一性を失わない。
二 刑訴法
第二〇八条第一項〈第二百七条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ち…〉所定の一〇日の期間内に公訴の提起があつた場合、たとえ起訴状記載の罪名と勾留状記載の罪名とが異なつていても、両者に記載した犯罪事実に同一性がある以上、勾留の効力は、公訴提起の日から刑訴
第六〇条第二項〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉所定の期間中存続する。
三 人身保護規則
第四条〈事物管轄を異にする数個の関連事件が上級の裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、…〉但書は、たとえ拘束が同条本文に該当する不法なものであつても、他に救済の目的を達するに適当な方法があるときは、右但書後段の要件を具備しない限り人身保護の請求ができないことを定めたものであつて、単に右但書の要件を具備するだけで人身保護の請求をなし得ることを認めた趣旨ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和26年7月6日 昭和26(オ)190
- 登載
- 民集 第5巻8号474頁
- 参照法条
- 刑訴法256条,刑訴法208条,刑訴法60条2項,人身保護規則4条
論点53第60条刑事訴訟法
旧刑訴法第三四九条所定の手続きを履践した旨記載のない公判調書と判決の破棄
裁判要旨原審第四回公判調書をみるに、原審裁判長は事実並びに証拠調を終了する旨を告げた後、直に判決宣告期日を指定告知して閉廷したと記載されており、旧刑訴法第三四九条所定の手続を履践した旨の記載が欠けている(記録四一一丁裏)。従つて、原審では被告人と弁護人のいづれにも最終に陳述する機会を与えなかつたものと認めざるを得ないから(旧刑訴法
第六〇条第二項第一二号〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉、
第六四条〈勾引状又は勾留状には、被告人の氏名及び住居、罪名、公訴事実の要旨、引致すべき場所又は勾留すべき刑事施設、有効期間及びその…〉参照)、この点に関する論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年7月24日 昭和26(れ)880
- 登載
- 集刑 第50号1053頁
- 参照法条
- 旧刑訴法349条,旧刑訴法60条2項12号,旧刑訴法64条
論点54第60条刑事訴訟法
証拠調に関する公判調書の記載の解釈
裁判要旨原審第一回公判調書によれば「裁判長は本件証拠として各原審公判調書各訊問調書各聴取書各領置書各顛末書被告人の履歴書その他関係書類一切の要旨を告げ」証拠調をした旨の記載のあることは所論指摘のとおりである。そして右の内の「その他関係書類一切」という部分の記載は、証拠能力ある「各原審公判調書各訊問調書各聴取書」の内に引用されている逮捕状強制処分請求書及び公判請求書等を指す趣旨の記載であることはこれを了解するに十分であつて、所論のように、証拠関係の有無に拘わらず「一件記録中の一切の書類」につき証拠調手続としての各要旨を告げた趣旨の記載とは、到底解することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和26年5月4日 昭和25(れ)1905
- 登載
- 集刑 第45号125頁
- 参照法条
- 旧刑訴法60条,旧刑訴法64条,旧刑訴法340条
論点55第60条刑事訴訟法
一 刑訴規則第五九条〈勾引した被告人は、裁判所に引致した時から二十四時間以内にこれを釈放しなければならない。但し、その時間内に勾留状が発せられ…〉に違反する勾留更新決定書中の更新日の不明瞭な記載と右決定の効力
二 勾留期間満了の日の算出方法
三 被告人が保釈出所をした場合の勾留残存期間の算出方法
四 勾留の残存期間満了の日の算出方法
裁判要旨一 所論勾留更新決定書中の更新日の記載が不明瞭であることは所論のとおりであつて、右は「八」の文字と「七」の文字とを重複記載していることは右記載自体から窺われるのであるが、これを二八日と判読するべきか或はこれを二七日と判読すべきかはかかる文字の記載だけから断定することは困難であつて、かかる記載が刑訴規則第五九条に違反するものであることはいうまでもない。しかし本件勾留更新は九月二八日から行わるべきものであることは前説示のとおりであるから、右勾留更新決定書中の更新日は二八日と記載されたものであると解するのを相当とする。従つて、更新日の記載が前示のように明瞭でないからといつて、右更新決定を無効であるとすることはできない。
二 記録を調査するに本件勾留の起算日は昭和二四年四月二二日(公訴の提起があつた日)であるからそのまま勾留されていれば六月二一日が勾留期間満了の日にあたるのであるが被告人は四月二八日まで勾留され同日保釈決定により釈放されたので四月二九日から勾留期間を暦に従つて算出すれば、五月二八日で一ケ月となり、五月の残存日の三日と六月の残存日の二一日を加算して残存期間は一ケ月二四日となるのである。しかるに被告人は八月四日に再び収監されたのであるから八月四日から右残存期間一ケ月二四日を暦に従つて算出すれば九月二七日が右残存期間の満了日にあたることは計算上明白である。
(抗告人は原審で前示残存期間を日数に換算して五四日と計算し残存期間の満了日を九月二六日であると主張するが前記のように暦に従つて計算すべきであるからその主張は理由がない)従つて、本件勾留の更新は九月二八日から行われるべきものであるから原決定の勾留期間の計算は正当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和26年4月27日 昭和25(し)11
- 登載
- 刑集 第5巻5号957頁
- 参照法条
- 刑訴規則59条,刑訴法60条2項,刑訴法55条2項,民法143条2項
論点56第60条刑事訴訟法
一 従犯の地位にあつた旨の主張と法律上刑の減免の原由たる事実上の主張
二 被告人に対する最終陳述の機会の附与と「別にありません」を「別にあります」とした調書記載の誤記の認定
三 公判調書における弁護人の姓の誤記たることの認定
裁判要旨一 論旨は原審認定の被告人の犯行について被告人は原審に於て従記の地位にあつたことを主張しているのであるからこれは旧刑事訴訟
第三六〇条第二項〈第三百五十三条又は第三百五十四条に規定する者は、書面による被告人の同意を得て、上訴の放棄又は取下をすることができる。〉に所謂法律上刑の減免の原由たる事実上の主張に当るにも拘らず原判決は何らこれに対する判断を示していないのは判断遺脱の違法があると主張するが、所論の様な陳述があつたとしてもこれをて刑の減免の原由たる事実の主張があつたのとは認められない。
二 原審裁判長は被告人に意見及び最後い述べたいことはないかと問を発していることは所論の通りであるから被告人に対し最終陳述の機会を与えたものと言わなければならない。もしも、裁判長の発した右問に対し被告人が別に陳述する必要があつたなら其機会を与えられたのであるから陳述すべき筈であるに何も陳述した形跡はなく又裁判長が被告人の発言を禁じた形跡もない等に右「別にあります」の調書記載は「別にありません」の誤記と認むるを相当とする。調書の粗雑な点は誠に遺憾であるが何れも誤記と認められる。
三 被告人Aの弁護人選任届其他本件記録を調べて見ると山下弁護人が原審における被告人Aの弁護人であり同人の為め弁論したことは明らかであつて岡田弁護人が被告人Aの弁護人であるとは認められないから所論岡田弁護人とあるは山下弁護人の誤記と認めるを相当とする。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和25年10月31日 昭和25(れ)1224
- 登載
- 集刑 第19号1065頁
- 参照法条
- 刑法62条,旧刑訴法360条2項,旧刑訴法60条,旧刑訴法74条,旧刑訴法349条3項,旧刑訴法40条17号,旧刑訴法64条
論点57第60条刑事訴訟法
一 公判廷における自白と憲法第三八條第三項刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」
二 刑訴施行法第二條の合憲性
三 被告人の身体拘束の事実の有無と公判調書の記載
裁判要旨一 しかしその判決をした當該裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法第三八條第三項並びに刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」にあたらないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一六八號、同年七月二九日大法廷判決)從つて論旨は採用することができない。
二 しかし新刑訴法を如何なる事件に適用するかは經過法の立法に際して諸般の事情を勘案して決せらるべき問題で法律に一任されてをるものである、從つて刑訴施行法第二條が新法施行前に公訴の提起があつた事件に付ては新法施行後もなお舊法及應急措置法による旨を規定し新法を適用しないことにしたのは何等憲法に違反するものではなく、又所論の如き理由からこれを憲法違反と解せなければならないものでもない。
三 公判調書に被告人が身体の拘束を受けなかつたという記載がないからといつて、それだけで直ちに、被告人が公判廷において身体の拘束を受けたということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和24年5月18日 昭和23(れ)1577
- 登載
- 刑集 第3巻6号847頁
- 参照法条
- 憲法38條3項,刑訴應急措置法10條3項,旧刑訴法64条,旧刑訴法60条2項,刑訴施行法2條
論点58第60条刑事訴訟法
一 公判の公開と公判調書の記載
二 公開禁止の決定の効力
三 裁判官が「合議の上」裁判の公開を禁止した旨の公判調書の記載と憲法第八二條
四 強盗行爲に對し必死に反抗中の被害者から腕時計を奪取した行爲と強盗罪の成立
裁判要旨一 判決宣告期日の公判調書に、公開を禁じた旨の記載がない限り、判決の宣告は、公開法廷で行われたものと認めることができる。
二 審理が風俗を害する虞があるとして、裁判所が公判の公開を禁じた場合には、その公開禁止の効力は、結審後の判決宣告期日の公判には及ばないものと解すべきである。
三 裁判が公開の法廷において公正な裁判所によつてなさるべきことは所論のごとく憲法の明定するところである。ただ公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある場合には、裁判官の全員一致で對審を公開しないで行うことができることは、憲法第八二條第二項の定めているところである。そして、本件記録を調査すると(イ)所論のように「裁判長は合議の上爾後の審理は風俗を害する虞あるにより公開を禁止する旨を告げ非公開とした」との記載が昭和二二年九月三〇日の公判調書に明記されている。かくとごとく裁判所が非公開で審理をした場合には「裁判官の全員一致で」公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決定した旨を明確な表現で調書に記載しておくことが大切である。そこで本件調書に「合議の上」風俗を害する虞あるにより公開を禁止した旨を告げ非公開としたとの記載は嚴格にいえば稍不正確の嫌があるがしかしなお裁判所法にいわゆる評議を經て裁判官全員の意見が合致して非公開を決定したものと認め得るのである強いて所論のように評議の結果多數決をもつて公開を禁止したものと解すべき根據は全記録の何處にも見當らない。
四 判決宣告期日の公判調書に公開を禁じた旨の記載がない限り判決の宣告は、公開法廷で行われたものを認むべきである。
五 論旨は被害者が強姦行爲に對し力一杯反抗した證據と被害者が畏怖し抗拒不能となつているのに乘じて右手の腕時計をもぎ取つて強取した犯罪事實との間は重要な齟齬があるというのであるが、本件被害者は「ぐずぐずしておれば強姦され私の一生は臺無にされると思い私は力一杯の元氣を出して反抗しました處相手は私に馬乘りになつた儘左手にはめていた腕時計をもぎ取り」し旨を供述しているのであつて、婦人が強姦に對し本能的に強く反抗したからといつて前記状態において畏怖を感じ腕時計の強奪に對し抗拒不能であつたと原審が認定したことは常識上むしろ當然であつて毫も所論のような齟齬を存在しない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和23年6月23日 昭和22(れ)219
- 登載
- 刑集 第2巻7号680頁
- 参照法条
- 刑訴法60条2項4号,刑訴法64条,刑訴法410条7号,憲法82条,刑訴法60条2項4号,刑訴法64条,刑法177条,刑法236条
論点59第60条刑事訴訟法
一 犯意繼續の點が犯行の性質態樣等から自ら推知せられる場合と證據理由説示の要否
二 參考として裁判所に提出された書類につき公判調書に記載の要否
裁判要旨一 數個の行爲が繼續の意思に出でたものであることが、證據にょつて認められた犯罪行爲の性質、態樣等から自ら推知される場合には、犯意繼續の點について、特に之を證據にょつて認めた理由を説明する必要がないものと解すべきである。
二 所論被害辨償に關する受領書は、證據書類として裁判所に提出せらるる場合と、證據方法としてでなく參考として裁判所に提出せらるる場合とがある。右前段の場合は證據書類の領置押收として所論の如く刑事訴訟法第六〇條第九號第一〇號等に則り、その旨公判調書に記載せらるべきものであること勿論であるが、右後段の場合には公判調書に何等の記載をも必要としないものと云わねばならぬ。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和23年11月5日 昭和23(れ)396
- 登載
- 刑集 第2巻12号1477頁
- 参照法条
- 刑法55条,刑訴法360条1項,刑訴法60条9号,刑訴法60条10号
論点60第60条刑事訴訟法
裁判長判事として公判に列席した事実の認定
裁判要旨公判調書に某判事が裁判長判事として列席したと記載してあり、且つ、右調書の末尾に右判事が裁判長判事として署名捺印している場合には、公判調害が虚偽又は偽造であると認むべき事情か存在しない限り、右某判事が裁判長判事として公判に列席したものと認むべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和23年11月4日 昭和23(れ)755
- 登載
- 刑集 第2巻12号1459頁
- 参照法条
- 刑訴法60条,刑訴法410条4号,刑訴法63条1項,刑訴法64条
論点61第60条刑事訴訟法
勾留期間更新の裁判と刑訴規則六条にいう「訴訟手続」
裁判要旨勾留期間更新の裁判は刑訴規則六条にいう「訴訟手続」には含まれない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成9年9月16日 平成9(し)160
- 登載
- 刑集 第51巻8号567頁
- 参照法条
- 刑訴規則6条,刑訴法60条
論点62第60条刑事訴訟法
一 勾留に関する処分を行う裁判官が職権で移監命令を発することの可否
二 移監命令の職権発動を促す趣旨でされた勾留取消し請求を却下した裁判に対する不服申立ての許否
裁判要旨一 勾留に関する処分を行う裁判官は職権により被疑者又は被告人の勾留場所を変更する旨の移監命令を発することができる。
二 裁判官に移監命令の職権発動を促す趣旨でされた勾留取消し請求を却下した裁判に対する不服申立ては許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成7年4月12日 平成7(し)40
- 登載
- 刑集 第49巻4号609頁
- 参照法条
- 刑訴法60条,刑訴法64条1項,刑訴法87条,刑訴法429条,刑訴規則80条
論点63第60条刑事訴訟法
勾留期間更新決定による勾留の期間の満了と右決定に関する抗告申立ての利益の消長
裁判要旨勾留期間更新決定に関する抗告申立ての利益は、右決定による勾留の期間の満了により失われる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成6年7月8日 平成6(し)88
- 登載
- 刑集 第48巻5号47頁
- 参照法条
- 刑訴法60条2項,刑訴法426条1項,刑訴法433条
論点64第60条刑事訴訟法
勾留の裁判に関する準抗告決定(原裁判取消し,勾留請求却下)に対する検察官からの特別抗告が棄却された事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成30年10月31日 平成30(し)585
- 登載
- 集刑 第324号1頁
- 参照法条
- 大麻取締法24条1項,大麻取締法24条2項,国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律8条2項,刑訴法60条1項,刑訴法411条,刑訴法426条1項,刑訴法434条
論点65第60条刑事訴訟法
業務上横領被疑事件において勾留請求を却下した原々裁判を取り消して勾留を認めた原決定に刑訴法60条1項〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成27年10月22日 平成27(し)597
- 登載
- 集刑 第318号11頁
- 参照法条
- 刑訴法60条1項,刑訴法411条1号,刑訴法426条,刑訴法434条
論点66第60条刑事訴訟法
迷惑行為防止条例違反被疑事件において勾留請求を却下した原々裁判を取り消して勾留を認めた原決定に刑訴法60条1項〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉,426条〈抗告の手続がその規定に違反したとき、又は抗告が理由のないときは、決定で抗告を棄却しなければならない。〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成26年11月17日 平成26(し)578
- 登載
- 集刑 第315号183頁
- 参照法条
- 刑訴法60条1項,刑訴法411条1号,刑訴法426条,刑訴法434条
論点67第60条刑事訴訟法
裁判所が職権により被告人の勾留場所を変更する旨の移送決定をした事例
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成24年10月25日 平成24(あ)1515
- 登載
- 集刑 第308号475頁
- 参照法条
- 刑訴規則80条,刑訴法60条
論点68第60条刑事訴訟法
第1審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の言渡しをした場合と控訴審における勾留
裁判要旨第1審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の言渡しをした場合であっても,控訴審裁判所は,第1審裁判所の判決の内容,取り分け無罪とした理由及び関係証拠を検討した結果,なお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり,かつ,刑訴法
345条〈無罪、免訴、刑の免除、刑の全部の執行猶予、公訴棄却(第三百三十八条第四号による場合を除く。)、罰金又は科料の裁判の告知が…〉の趣旨及び控訴審が事後審査審であることを考慮しても,勾留の理由及び必要性が認められるときは,その審理の段階を問わず,被告人を勾留することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成23年10月5日 平成23(し)376
- 登載
- 刑集 第65巻7号977頁
- 参照法条
- 刑訴法60条1項,刑訴法345条
論点69第60条刑事訴訟法
第1審裁判所で犯罪の証明がないとして無罪判決を受けた被告人を控訴裁判所が勾留する場合と刑訴法60条1項〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉にいう「被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」の有無の判断
裁判要旨第1審裁判所で犯罪の証明がないとして無罪判決を受けた被告人を控訴裁判所が勾留する場合,刑訴法
60条1項〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉にいう「被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」の有無の判断は,無罪判決の存在を十分に踏まえて慎重になされなければならず,嫌疑の程度としては,第1審段階におけるものよりも強いものが要求される。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成19年12月13日 平成19(し)369
- 登載
- 刑集 第61巻9号843頁
- 参照法条
- 刑訴法60条1項,刑訴法345条
論点70第60条刑事訴訟法
1 被疑者の勾留請求の資料とされた告訴状及び被害者の供述調書が民訴法220条3号〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第百九十九条の規定により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合において必要…〉所定のいわゆる法律関係文書に該当するとされた事例
2 被疑者の勾留請求の資料とされた告訴状及び被害者の供述調書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとして文書提出命令が申し立てられた場合に,刑訴法47条〈訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる…〉に基づきその提出を拒否した上記各文書の所持者である国の判断が,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとされた事例
裁判要旨1 検察官が被疑者の勾留請求に当たって刑訴規則
148条1項3号〈共犯又は共同被告人の一人又は数人に対し前条の関係がある者でも、他の共犯又は共同被告人のみに関する事項については、証言を拒…〉所定の資料として裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書は,いずれも,上記各文書を所持する国と上記請求により勾留された者との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当する。
2 強姦の被疑事実に基づき勾留された被疑者が,勾留請求の違法を主張して国家賠償を求める本案訴訟において,検察官が刑訴規則148条1項3号所定の資料として裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書について,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当することを理由として文書提出命令を申し立てた場合,刑訴法
47条〈訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる…〉に基づきその提出を拒否した上記各文書の所持者である国の判断は,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものというべきである。
(1) 勾留の裁判が準抗告審において取り消されており,検察官が被疑者には罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると判断するに際し最も基本的な資料となった上記各文書には,取調べの必要性がある。
(2) 被害者は,被疑事実が不法行為を構成するとして,被疑者に対する損害賠償請求訴訟を提起しており,その審理に必要な範囲でプライバシーが明らかにされることを容認していたということができ,また,国は,本案訴訟において,被害者の供述内容として被害の態様が極めて詳細かつ具体的に記載された検察官の陳述書を既に書証として提出しており,上記各文書が開示されることによって,被害者の名誉,プライバシーの侵害の弊害が生ずるおそれがあるとは認められない。
(3) 被疑事件については不起訴処分がされており,また,上記陳述書の内容はほぼ上記供述調書の記載に従ったもののようにうかがわれ,上記各文書が開示されることによって,捜査や公判に不当な影響が及ぶおそれがあるとは認められない。
(2につき補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成19年12月12日 平成19(許)22
- 登載
- 民集 第61巻9号3400頁
- 参照法条
- (1,2につき)民訴法220条3号,4号ホ,刑訴法60条,刑訴法205条,刑訴法207条,刑訴規則148条1項3号 (2につき)刑訴法47条
論点71第60条刑事訴訟法
1 法定刑の軽微な事件について身柄拘束の不必要な長期化を避けるための配慮が十分であったとはいえないとされた事例
2 罰金刑に未決勾留日数を算入しなかったことが量刑判断を誤ったものであるが,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成14年6月5日 平成13(あ)898
- 登載
- 集刑 第281号517頁
- 参照法条
- 刑法21条,刑訴法60条1項,刑訴法60条2項,刑訴法411条2号
論点72第60条刑事訴訟法
第一審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の判決を言い渡した場合と控訴審における勾留
裁判要旨第一審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の判決を言い渡した場合であっても、控訴審裁判所は、記録等の調査により、右無罪判決の理由の検討を経た上でもなお罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由があると認めるときは、勾留の理由があり、かつ、控訴審における適正、迅速な審理のためにも勾留の必要性があると認める限り、その審理の段階を問わず、被告人を勾留することができる。
(反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成12年6月27日 平成12(し)94
- 登載
- 刑集 第54巻5号461頁
- 参照法条
- 刑訴法60条1項,刑訴法345条
論点73第60条刑事訴訟法
第一審で無罪判決の言渡しを受けた外国人である被告人について控訴審が判決前に勾留したことは憲法14条1項〈裁判所は、管轄権を有しないときでも、急速を要する場合には、事実発見のため必要な処分をすることができる。〉に違反するという主張が前提を欠くとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成11年10月13日 平成11(し)159
- 登載
- 集刑 第276号245頁
- 参照法条
- 憲法14条1項,刑訴法60条1項,刑訴法345条
論点74第60条刑事訴訟法
勾留中求令状起訴について勾留状が発せられなかったのに、検察官が先行勾留に係る被疑事実と公訴事実に同一性が認められたと理解して釈放指揮を行わなかった違法が、その後に裁判官がした勾留の効力に影響を及ぼさないとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 令和8年4月1日 令和8(し)235
- 登載
- ―
- 参照法条
- 刑訴法60条1項、刑訴法208条1項
論点75第60条刑事訴訟法
贈賄被疑事件において勾留請求を却下した原々裁判を取り消して勾留を認めた原決定に刑訴法60条1項〈裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することがで…〉、426条〈抗告の手続がその規定に違反したとき、又は抗告が理由のないときは、決定で抗告を棄却しなければならない。〉の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和7年11月27日 令和7(し)1043
- 登載
- ―
- 参照法条
- 刑訴法60条1項、刑訴法411条1号、刑訴法426条、刑訴法434条