論点1第99条刑事訴訟法
強制採尿の過程に適切な条件を付した捜索差押令状によらなかつた不備があつても採尿検査の適法性がそこなわれないとされた事例
裁判要旨強制採尿の過程に、適切な条件を付した捜索差押令状でなく、身体検査令状及び鑑定処分許可状によつてこれを行つた不備があつても、法の実質的な要請が満されているときには(判文参照)、右の不備は採尿検査の適法性をそこなうものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和55年11月19日 昭和54(あ)627
- 登載
- 集刑 第220号223頁
- 参照法条
- 憲法31条,憲法35条,憲法38条2項,刑訴法99条,刑訴法102条,刑訴法218条,刑訴法219条,刑訴法222条
論点2第99条刑事訴訟法
一 捜査手続上の強制処分として被疑者の体内から導尿管(カテーテル)を用いて尿を採取することの可否
二 被疑者からの強制採尿に必要な令状の種類とその形式
三 強制採尿の過程に適切な条件を付した捜索差押令状によらなかつた不備があつても採尿検査の適法性がそこなわれないとされた事例
裁判要旨一 被疑者の体内から導尿管(カテーテル)を用いて強制的に尿を採取することは、捜査手続上の強制処分として絶対に許されないものではなく、被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終的手段として、適切な法律上の手続を経たうえ、被疑者の身体の安全と人格の保護のための十分な配慮のもとに行うことが許される。
二 捜査機関が強制採尿をするには捜索差押令状によるべきであり、右令状には、医師をして医学的に相当と認められる方法で行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠である。
三 強制採尿の過程に、適切な条件を付した捜索差押令状でなく、身体検査令状及び鑑定処分許可状によつてこれを行つた不備があつても、それ以外の点では法の要求する要件がすべて充足されているときには(判文参照)、右の不備は、採尿検査の適法性をそこなうものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和55年10月23日 昭和54(あ)429
- 登載
- 刑集 第34巻5号300頁
- 参照法条
- 刑訴法99条,刑訴法102条,刑訴法218条,刑訴法219条,刑訴法222条,覚せい剤取締法19条,覚せい剤取締法41条の2第1項3号
論点3第99条刑事訴訟法
一 裁判所のした提出命令は刑訴法四二〇条二項にいう押収に関する決定にあたるか
二 いわゆる付審判請求事件についてなされた提出命令に対する不服申立の方法
裁判要旨一 裁判所のした提出命令は、刑訴法
四二〇条二項〈裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定に対しては、この法律に特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合を除…〉にいう押収に関する決定にあたる。
二 いわゆる付審判請求事件についてなされた提出命令に対しては、刑訴法
四一九条〈抗告は、特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合の外、裁判所のした決定に対してこれをすることができる。但し、この…〉による抗告をすることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和44年9月18日 昭和44(し)59
- 登載
- 刑集 第23巻9号1146頁
- 参照法条
- 刑訴法99条2項,刑訴法420条1項,刑訴法420条2項,刑訴法262条1項,刑訴法352条,刑訴法419条,刑訴法433条
論点4第99条刑事訴訟法
一 刑訴法四三〇条〈検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収(電磁的記録提供命令(第百二条の二第一項第一号イに掲げる方法によ…〉による不服申立を受けた裁判所と差押の必要性に関する審査権
二 事件送致後の司法警察職員と押収処分に関する裁判に対する特別抗告権
裁判要旨一 検察官等のした差押に関する処分に対して、刑訴法
四三〇条〈検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収(電磁的記録提供命令(第百二条の二第一項第一号イに掲げる方法によ…〉の規定により不服の申立を受けた裁判所は、差押の必要性の有無についても審査することができる。
二 司法警察職員は、事件を検察官に送致した後においては、当該事件につき司法警察職員がした押収に関する処分を取り消しまたは変更する裁判に対して抗告を申し立てることができない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和44年3月18日 昭和43(し)100
- 登載
- 刑集 第23巻3号153頁
- 参照法条
- 刑訴法99条1項,刑訴法218条1項,刑訴法222条1項,刑訴法430条,刑訴法203条1項,刑訴法352条,刑訴法433条
論点5第99条刑事訴訟法
一 報道および取材の自由と憲法二一条
二 報道機関の取材フイルムに対する提出命令の許容される限度
裁判要旨一 報道の自由は、表現の自由を規定した憲法二一条の保障のもとにあり、報道のための取材の自由も、同条の精神に照らし、十分尊重に値いするものといわなければならない。
二 報道機関の取材フイルムに対する提出命令が許容されるか否かは、審判の対象とされている犯罪の性質、態様、軽重および取材したものの証拠としての価値、公正な刑事裁判を実現するにあたつての必要性の有無を考慮するとともに、これによつて報道機関の取材の自由が妨げられる程度、これが報道の自由に及ぼす影響の度合その他諸般の事情を比較衡量して決せられるべきであり、これを刑事裁判の証拠として使用することがやむを得ないと認められる場合でも、それによつて受ける報道機関の不利益が必要な限度をこえないように配慮されなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和44年11月26日 昭和44(し)68
- 登載
- 刑集 第23巻11号1490頁
- 参照法条
- 憲法21条,刑訴法99条,刑訴法262条,刑訴法265条
論点6第99条刑事訴訟法
一 上告審で提出命令が出せるか
二 上告審における証拠物の取調方法
三 上告審で取り調べた証拠物はどの程度に判断の資料となし得るか。
四 共謀共同正犯における共謀または謀議は罪となるべき事実か。
五 事実誤認を疑うに足りる顕著な事由がある場合と刑訴法第四一一条第三号による原判決の破棄。
裁判要旨一 本件における「諏訪メモ」の如き証拠物については上告審で所有者にその提出を命ずることができる。
二 上告審で右の証拠物を取り調べるにあたつては、公判にこれを顕出するをもつて足りる。
三 上告審は右の方法で取り調べた証拠物を原判決の事実認定の当否を判断する資料に供することができる。
四 共謀共同正犯における共謀または謀議は罪となるべき事実である。
五 判決に影響があつてこれを破棄しなければ著しく正義に反する重大な事実誤認を疑うに足りる顕著な事由があるときは、刑訴
第四一一条第三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉によつて原判決を破棄することができる。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和34年8月10日 昭和29(あ)1671
- 登載
- 刑集 第13巻9号1419頁
- 参照法条
- 刑訴法99条2項,刑訴法303条,刑訴法305条,刑訴法306条,刑訴法307条,刑訴法317条,刑訴法404条,刑訴法409条,刑訴法414条,刑訴法335条1項,刑訴法411条3号,刑法60条
論点7第99条刑事訴訟法
没収と裁判所による押収の要否
裁判要旨没収を言い渡すためには、その物件が裁判所により押収されている物であることを要しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年3月23日 昭和27(あ)5977
- 登載
- 刑集 第8巻3号318頁
- 参照法条
- 酒税法62条2項,刑訴法99条,刑訴法101条
論点8第99条刑事訴訟法
押収には差押のほかに領置をも含むか
裁判要旨所論第一点前段は押収中には領置を含まないというが、押収中には強制処分としての差押の外任意処分たる領置も含まれるのであるから、所論は失当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年10月26日 昭和29(あ)2617
- 登載
- 集刑 第99号531頁
- 参照法条
- 刑訴法99条,刑訴法101条
論点9第99条刑事訴訟法
刑訴第一二三条〈押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たないで、決定でこれを還付しなければならない。〉にいう差出人の意義
裁判要旨検察官が他から任意提出を受け領置した物件を証拠物として提出し、裁判所がこれを領置した場合には、その者は差出人として裁判所に右押収物の仮還付を求めることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和29年10月20日 昭和29(す)347
- 登載
- 集刑 第99号241頁
- 参照法条
- 刑訴法123条,刑訴法221条,刑訴法310条,刑訴法99条
論点10第99条刑事訴訟法
一 捜索差押許可状の違法は差押調書の証拠能力に影響するか
二 同一書記官が第一、二審の審理に立ち会つたことと憲法第三七条
裁判要旨一 仮りに捜索差押許可状に差し押えるべき物の特定を欠く違法があつたとしてもその一事によつて、所論差押調書そのものが無効となるものとはいえないし、また右調書を証拠に供することについては、被告人並びに弁護人が同意しているのみならず、原判決判示第一の事実は、右調書の記載を除外した他の証拠によつてもこれを認定し得るのであるから、原判決の訴訟手続には憲法三三条に反するような違法はない。
二 原審裁判所の書記が第一審裁判所の審理に立ち会つたことは、裁判所法及び刑訴法の規定に照らし何等の違法なく、従つて所論憲法三七条違反の主張は前提を欠くものである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年3月26日 昭和26(あ)1694
- 登載
- 集刑 第77号245頁
- 参照法条
- 憲法33条,憲法37条1項,刑訴法99条,刑訴法102条,刑訴法106条,刑訴法282条,刑訴法26条,刑訴法20条
論点11第99条刑事訴訟法
一 いわゆる強制採尿令状により採尿場所まで連行することの適否
二 任意同行を求めるため被疑者を職務質問の現場に長時間違法に留め置いたとしてもその後の強制採尿手続により得られた尿の鑑定書の証拠能力は否定されないとされた事例
裁判要旨一 身柄を拘束されていない被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合には、いわゆる強制採尿令状の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができる。
二 覚せい剤使用の嫌疑のある被疑者に対し、自動車のエンジンキーを取り上げるなどして運転を阻止した上、任意同行を求めて約六時間半以上にわたり職務質問の現場に留め置いた警察官の措置は、任意捜査として許容される範囲を逸脱し、違法であるが、被疑者が覚せい剤中毒をうかがわせる異常な言動を繰り返していたことなどから運転を阻止する必要性が高く、そのために警察官が行使した有形力も必要最小限度の範囲にとどまり、被疑者が自ら運転することに固執して任意同行をかたくなに許否し続けたために説得に長時間を要したものであるほか、その後引き続き行われた強制採尿手続自体に違法がないなどの判示の事情の下においては、右一連の手続を全体としてみてもその違法の程度はいまだ重大であるとはいえず、右強制採尿手続により得られた尿についての鑑定書の証拠能力は否定されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成6年9月16日 平成6(あ)187
- 登載
- 刑集 第48巻6号420頁
- 参照法条
- 刑訴法99条,刑訴法102条,刑訴法218条,刑訴法219条,刑訴法222条,刑訴法317条,警察官職務執行法2条1項,警察官職務執行法2条2項,警察官職務執行法2条3項,道路交通法67条3項
論点12第99条刑事訴訟法
錯乱状態に陥り任意の尿の提出が期待できない状況において実施された強制採尿手続に違法はないとされた事例
裁判要旨錯乱状態に陥り任意の尿の提出が期待できない状況にあった被告人に対する本件強制採尿手続は、犯罪の捜査上真にやむを得ない場合に実施されたものであり、違法ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成3年7月16日 平成3(あ)305
- 登載
- 刑集 第45巻6号201頁
- 参照法条
- 刑訴法99条1項,刑訴法102条1項,刑訴法218条1項,刑訴法222条1項
論点13第99条刑事訴訟法
弁護士である弁護人が被告人の委託を受けて保管している同人の犯行状況とされるものを撮影録画したデジタルビデオカセットについて,刑訴法105条〈医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、公証人、宗教の職に在る者又はこれらの職に在つ…〉の「他人の秘密に関するもの」に当たらないとされた事例
裁判要旨被告人が強姦等の犯行状況とされるものを撮影録画したデジタルビデオカセットについて,被告人の委託を受けて保管していた弁護士である弁護人により証拠請求がされ,更にその複製DVDが公判期日で被告人及び弁護人の異議なく取り調べられているなどの本件事実関係(判文参照)の下では,上記デジタルビデオカセットは,刑訴法
105条〈医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、公証人、宗教の職に在る者又はこれらの職に在つ…〉の「他人の秘密に関するもの」に当たらない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成27年11月19日 平成27(し)556
- 登載
- 刑集 第69巻7号797頁
- 参照法条
- 刑訴法99条1項,刑訴法99条3項,刑訴法105条
論点14第99条刑事訴訟法
被告事件について証拠調べ手続が開始された後に裁判官が発付した捜索差押許可状に基づき検察官が行った差押処分が是認された事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成14年12月17日 平成14(し)235
- 登載
- 集刑 第282号1041頁
- 参照法条
- 刑訴法99条,刑訴法218条1項
論点15第99条刑事訴訟法
フロッピーディスク等につき内容を確認せずに差し押さえることが許されるとされた事例
裁判要旨フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような情報が実際に記録されているかを捜索差押えの現場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるなどの事情の下では、内容を確認せずに右フロッピーディスク等を差し押さえることが許される。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成10年5月1日 平成10(し)45
- 登載
- 刑集 第52巻4号275頁
- 参照法条
- 刑訴法99条1項,刑訴法218条1項,刑訴法222条1項
論点16第99条刑事訴訟法
強制採尿令状の発付に違法があっても尿の鑑定書等の証拠能力は肯定できるとされた事例
裁判要旨被疑者に対して強制採尿を実施することが「犯罪の捜査上真にやむを得ない」場合とは認められないのにされた強制採尿令状の発付は違法であり、警察官らが同令状に基づいて強制採尿を実施した行為も違法であるが、警察官らはありのままを記載した疎明資料を提出して同令状を請求し、裁判官の審査を経て発付された適式の同令状に基づき強制採尿を実施したもので、その執行手続自体に違法な点はなく、「犯罪の捜査上真にやむを得ない」場合であることについて、疎明資料において、合理的根拠が欠如していることが客観的に明らかであったというものではなく、また、警察官らは直ちに強制採尿を実施することなく被疑者に対して尿を任意に提出するよう繰り返し促すなどしていたなど判示の事情(判文参照)の下では、強制採尿手続の違法の程度はいまだ重大とはいえず、同手続により得られた尿の鑑定書等の証拠能力を肯定することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和4年4月28日 令和3(あ)711
- 登載
- 刑集 第76巻4号380頁
- 参照法条
- 刑訴法1条、刑訴法99条1項、刑訴法102条1項、刑訴法218条1項、刑訴法222条1項、刑訴法317条
論点17第99条刑事訴訟法
1 電磁的記録を保管した記録媒体がサイバー犯罪に関する条約の締約国に所在し同記録を開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合に国際捜査共助によることなく同記録媒体へのリモートアクセス及び同記録の複写を行うことの許否
2 警察官が日本国外に所在する蓋然性がある記録媒体にリモートアクセスをして電磁的記録を複写するなどして収集した証拠について証拠能力が肯定された事例
3 リモートアクセスによる電磁的記録の複写の処分を許可した捜索差押許可状の執行に当たり個々の電磁的記録につき内容を確認せずに複写することが許されるとされた事例
4 インターネット上の動画の投稿サイト及び配信サイトを管理・運営していた被告人両名に上記各サイト上におけるわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪及び公然わいせつ罪の各共同正犯が成立するとされた事例
裁判要旨1 電磁的記録を保管した記録媒体がサイバー犯罪に関する条約の締約国に所在し,同記録を開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合に,国際捜査共助によることなく同記録媒体へのリモートアクセス及び同記録の複写を行うことは許される。
2 警察官が,(1)リモートアクセスによる電磁的記録の複写の処分を許可した捜索差押許可状記載の捜索場所においてコンピュータから記録媒体にリモートアクセスをして当該コンピュータの使用者のメールアドレスに係るメール等の電磁的記録を複写するなどし,(2)同所に所在するコンピュータの使用者からアカウントの付与を受けるなどして同所外のコンピュータからリモートアクセスをして電磁的記録の複写を行った場合,上記各リモートアクセスの対象である記録媒体が日本国外にあるか,その蓋然性が否定できないものであっても,(1)の手続は,コンピュータの使用者の任意の承諾に基づく任意捜査として適法であるとはいえず,サイバー犯罪に関する条約
32条〈公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有する。〉が規定する場合に該当するともいえないが,実質的には,司法審査を経て発付された同許可状に基づく手続ということができ,警察官は,同許可状の執行と同様の手続により,同許可状において差押え等の対象とされていた証拠を収集したものであって,同許可状が許可する処分の範囲を超えた証拠の収集等を行ったものとは認められず,警察官が,国際捜査共助によらずにコンピュータの使用者の任意の承諾を得てリモートアクセス等を行うという方針を採ったこと自体が不相当であるということはできない,(2)の手続についてのコンピュータの使用者の承諾の効力を否定すべき理由はないなど判示の事情の下においては,(1),(2)の各手続について重大な違法があるということはできず,警察官が各手続により収集した証拠の証拠能力を肯定することができる。
3 捜索差押許可状によるリモートアクセスによる複写の処分の対象となる電磁的記録に被疑事実と関連する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において,差押えの現場における電磁的記録の内容確認の困難性や確認作業を行う間に情報の毀損等が生ずるおそれ等があるという事情の下においては,個々の電磁的記録について個別に内容を確認することなく複写の処分を行うことが許される。
4 インターネット上の動画の投稿サイト及び配信サイトを管理・運営していた被告人両名が,上記各サイトに投稿・配信された動画が無修正わいせつ動画であったとしても,これを利用して利益を上げる目的で,上記各サイトにおいて不特定多数の利用者の閲覧又は観覧に供するという意図の下,上記各サイトの仕組み等を通じて動画の投稿・配信を勧誘し,投稿者及び配信者らが,上記の働きかけを受け,同様の意図に基づき,上記各サイトのシステムに従って投稿又は配信を行ったものであり,わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪及び公然わいせつ罪は,上記投稿者らが無修正わいせつ動画を上記各サイトに投稿又は配信することによって初めて成立し,上記投稿者らも,被告人両名らによる上記勧誘及び上記各サイトの管理・運営行為がなければ,無修正わいせつ動画を不特定多数の者が認識できる状態に置くことがなかったなどの本件事実関係(判文参照)の下では,被告人両名について,上記投稿者らとの上記各罪の各共同正犯が成立する。
(1,2につき補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 令和3年2月1日 平成30(あ)1381
- 登載
- 刑集 第75巻2号123頁
- 参照法条
- (1~3につき)刑訴法99条2項,刑訴法218条2項 (1,2につき)サイバー犯罪に関する条約32条 (4につき)刑法60条,刑法174条,刑法175条1項前段
論点18第101条刑事訴訟法
検察官から証拠物として提出し領置された物件と仮還付の請求
裁判要旨公判で検察官から証拠物として提出し領置された物件につき、所有者(当初その物件が捜査機関により領置された際の指出人)は、裁判所に仮還付の請求をすることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和30年11月18日 昭和30(す)357
- 登載
- 刑集 第9巻12号2483頁
- 参照法条
- 刑訴法101条,刑訴法123条2項,刑訴法221条
論点19第102条刑事訴訟法
差押令状または捜索令状における押収または捜索すべき場所を表示する程度
裁判要旨差押令状または捜索令状における押収または捜索すべき場所の表示は合理的に解釈してその場所を特定しうる程度に記載することを必要とするとともに、その程度の記載があれば足ると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年11月22日 昭和30(あ)1521
- 登載
- 刑集 第9巻12号2484頁
- 参照法条
- 刑訴法102条2項,刑訴法107条,刑訴法218条1項,刑訴法219条
論点20第102条刑事訴訟法
甲の居住する場所に対する捜索差押許可状によって、そこに同居する乙がその場で携帯していたボストンバッグについて捜索することの適否
裁判要旨甲の居住する場所に対する捜索差押許可状により、そこに同居する乙がその場で携帯していたボストンバッグについても捜索することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成6年9月8日 平成5(あ)852
- 登載
- 刑集 第48巻6号263頁
- 参照法条
- 刑訴法102条,刑訴法218条,刑訴法219条
論点21第102条刑事訴訟法
被疑者方居室に対する捜索差押許可状により同居室を捜索中に被疑者あてに配達され同人が受領した荷物について同許可状に基づき捜索することの可否
裁判要旨被疑者方居室に対する捜索差押許可状により同居室を捜索中に被疑者あてに配達され同人が受領した荷物についても,同許可状に基づき捜索することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成19年2月8日 平成18(あ)1733
- 登載
- 刑集 第61巻1号1頁
- 参照法条
- 刑訴法102条,刑訴法218条1項,刑訴法219条1項
論点22第103条刑事訴訟法
一 「九四式拳銃」と銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍
二 彈倉と銃砲等所持禁止令施行規則第一條銃砲の範圍
三 銃砲等所持禁止令第二の「所持した者」の判示方法
四 刑訴法第三二九條の「公判廷」の意義
五 公文書に文字の挿入あるも、その字數の記入なき場合
六 公判調書に公判廷を公開しなかつた旨の記載がない場合と公判の公開
七 公判調書に署名すべき裁判長の表示を缺く場合
八 公判廷における自白と憲法第三八條第三項及び刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」
九 銃砲等の所持を処罰しない旨の一地方行政官庁の掲示と刑訴第四一五条〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉
一〇 勾留状に記載すべき「執行の場所」
一一 保釈後四ケ月後の公判廷における自白と憲法第三八条第二項
一二 銃砲等所持禁止令第一条の法意
一三 銃砲等所持禁止令第二條の所持に對する犯意
裁判要旨一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。
二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。
三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示する必要はない。
四 刑訴法第三二九條の「公判廷」とは、同條第二項所定の者が全部列席して開かれた審判廷をいうのであるから、たとえ判事の事務室で開かれたとしても、右第二項所定の人員が總て列席して開かれた以上公判廷である
五 刑訴法第七二條所定の字數記入がなくても、文字の挿入は必ずしも無効ではない。書類作成者が正當に挿入したものと認められる場合は有効である。
六 公判調書に特に公開しなかつた旨の記載がない限り公判廷を公開したものと解すべきである。
七 公判調書には事實上裁判長をした者が署名すればよいのであつて、裁判長としての表示を缺くも差支えない。
八 公判廷における自白は憲法第三八條第三項及び刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」に含まれない。
九 地方官庁の行政的措置として、法定の期間経過後銃砲等の所持を届け出た者を処罰しない旨の掲示があつた事実は、刑訴
第四一五条〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉所定の事実に準ずべきものではない。
一〇 勾留状を執行した司法警察官吏が勾留状に記載すべき「執行の場所」というのは、司法警察官吏が被告人にその勾留状を示してそれを執行した場所をいうのである。
一一 保釈後四ケ月以上を経過した後、公判廷においてなされた自白は、憲法第三八条第二項にいう、「不当に長い拘禁後の自白」ということはできない。
一二 銃砲等所持禁止令第一条は、わが国民一般に対し、許可なくして銃砲等を所持することを絶対に禁ずる趣旨である。
一三 犯意所持の認識がありながら、所持していれば、所持について犯意があつたといえるのであつて、その上さらに使用する意思等を必要とするものではない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和23年7月29日 昭和23(れ)397
- 登載
- 刑集 第2巻9号1076頁
- 参照法条
- 銃砲等所持禁止令1條1項本文,銃砲等所持禁止令2條,銃砲等所持禁止令1條,銃砲等所持禁止令施行規則(昭和21年内務省令28號)1條,刑訴法329條1項,刑訴法72條,刑訴法60條2項4號,刑訴法64條,刑訴法410條7號,刑訴法63條1項,刑訴法415条,刑訴法109条1項,刑訴法103条2項,憲法38條3項,憲法38条2項,刑訴應急措置法10條3項
論点23第110条刑事訴訟法
税務署員が被告人等の暴行脅迫により捜索差押許可状を呈示できなかつた場合と公務執行妨害罪の成立
裁判要旨税務署員において捜索差押許可状をその処分を受ける者に対し呈示することが法の要請するところであるとしても、本件の如く相手方においてこれが呈示を要求した事実の認められないのは勿論、これを呈示することが事実上不可能であつたと認められる場合においては、たとい税務署員が許可状を呈示しなかつたとしても、唯だその一事により、その調査が公務の執行たることを妨げられるものではなく、暴行脅迫によつてこれを妨害した被告人等の所為が公務執行妨害罪を構成することは多言を要しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年6月19日 昭和27(あ)37
- 登載
- 集刑 第83号319頁
- 参照法条
- 刑訴法110条,国税犯則取締法2条,刑法95条
論点24第110条刑事訴訟法
刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない一事例−収税官吏が臨検捜索にあたり被告人の暴行により令状を示すことができなかつた場合
裁判要旨収税官吏が令状を被告人に示さなかつたことは論旨主張のとおりであるが、右は収税官吏が臨検捜索をなさんとしたとき被告人が不在であつたので警察吏員立会のもとにこれを開始したが、その執行の途中で被告人が帰宅するや、これを見た被告人は痛く憤慨して収税官吏に暴行を加えたので令状を被告人に示すことができなかつたためであるときは、令状を示さなかつた違法があるとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年6月12日 昭和26(あ)3865
- 登載
- 集刑 第82号641頁
- 参照法条
- 刑訴法110条,刑訴法411条,国税犯則取締法2条,国税犯則取締法6条,刑法95条
論点25第110条刑事訴訟法
1 捜索差押許可状及び捜索差押令状請求書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に当たるとされた事例
2 民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当することを理由としてされた捜索差押許可状の文書提出命令の申立てに対して刑訴法47条に基づきその提出を拒否した所持者の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとされた事例
3 民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当することを理由としてされた捜索差押令状請求書の文書提出命令の申立てに対して刑訴法47条に基づきその提出を拒否した所持者の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとはいえないとされた事例
裁判要旨1 警察官が文書提出命令の申立人の住居等において行った捜索差押えに係る捜索差押許可状及び捜索差押令状請求書は,いずれも,当該警察官が所属し,上記各文書を所持する地方公共団体と文書提出命令申立人との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当する。
2 民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当することを理由としてされた捜索差押許可状の文書提出命令の申立てに対して,刑訴法
47条〈訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる…〉に基づきその提出を拒否した所持者の判断は,本案訴訟において同許可状を証拠として取り調べる必要性が認められ,同許可状が開示されたとしても今後の捜査,公判に悪影響が生ずるとは考え難いなど判示の事情の下では,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものというべきである。
3 民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当することを理由としてされた捜索差押令状請求書の文書提出命令の申立てに対して,刑訴法
47条に基づきその提出を拒否した所持者の判断は,本案訴訟において同請求書を証拠として取り調べる必要性は認められるものの,被疑事件につき,いまだ被疑者の検挙に至っておらず,現在も捜査が継続中であって,同請求書には捜査の秘密にかかわる事項や被害者等のプライバシーに属する事項が記載されている蓋然性が高いなど,同請求書を開示することによって,被疑事件の今後の捜査及び公判に悪影響が生じたり,関係者のプライバシーが侵害されたりする具体的なおそれが存するという事情の下では,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成17年7月22日 平成17(許)4
- 登載
- 民集 第59巻6号1837頁
- 参照法条
- 民訴法220条3号,民訴法220条4号ホ,刑訴法47条,刑訴法110条,刑訴法218条1項,刑訴法218条3項,刑訴法219条,刑訴法222条1項,刑訴規則155条1項,憲法35条
論点26第110条刑事訴訟法
捜索差押許可状の呈示に先立ってホテル客室のドアをマスターキーで開けて入室した措置が適法とされた事例
裁判要旨被疑者が宿泊しているホテル客室に対する捜索差押許可状の執行に当たり,捜索差押許可状の呈示に先立って警察官らがホテル客室のドアをマスターキーで開けて入室した措置は,差押対象物件である覚せい剤を短時間のうちに破棄隠匿されるおそれがあったことなど判示の事情の下では,適法である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成14年10月4日 平成14(あ)413
- 登載
- 刑集 第56巻8号507頁
- 参照法条
- 刑訴法110条,刑訴法111条1項,刑訴法222条1項
論点27第113条刑事訴訟法
一 証拠物の押収手続に弁護人に立会の機会を与えなかつた違法とその証拠能力
二 死刑およびその執行方法としての絞首刑の憲法第三六条にいう「残虐な刑罰」
裁判要旨一 所論摘示の証拠物の押収手続に所論のような弁護人に立会の機会を与えなかつた違法があつたとしても、第一審公判廷において証拠調する際被告人および弁護人等より何等異議の申立があることなく、適法に証拠調が施行されたものであること記録上明白であるから、第一審裁判所がこれを罪証に供したとしても違法ということはできない
二 所論は原判決の処断した刑法死刑の規定は憲法第三六条にいわゆる残虐な刑罰であつて、違憲であると主張する。しかし、現行の死刑制度が憲法に違反しないものであることは、当裁判所大法廷判決のしばしば判示したところであり(判例集二巻三号一九一頁以下、同五巻五号九二三頁以下、同六巻一号一〇四頁以下参照)、また、現在わが国の採用している方法による絞首刑が憲法三六条にいう「残虐な刑罰に当らないことも当裁判所大法廷の判例(昭和二六年(れ)第二五一八号、同三〇年四月六日大法廷判決、判例集九巻四号六六三頁以下参照)とするところであるから、論旨は採るを得ない
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和33年4月17日 昭和31(あ)442
- 登載
- 集刑 第124号253頁
- 参照法条
- 刑訴法113条2項,刑訴法306条,刑訴法309条,刑法9条,刑法11条1項,憲法36条,監獄法71条,監獄法72条