会社法 / テーマ別まとめ

自己株式の取得

会社が自社株を買う場合の決議・手続・財源規制。特定の株主から買うときの売主追加請求権まで。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

自己株式の取得は、会社法155条が限定的に定める場合にしか認められず、株主との合意により有償で取得するときは株主総会の決議であらかじめ枠(数量・対価・期間)を決め、実際に買うつど価格等を個別に決定する仕組みになっている。特定の株主だけから買う場合には他の株主に売主として自分も加えるよう請求する権利が認められる一方、子会社からの取得や市場取引・公開買付けによる取得では通知や売主追加請求権に関する規定が適用されない。

自己株式の取得方法別:決議・通知・売主追加請求権
取得方法必要な決議株主への通知売主追加請求権
株主全員に申込機会を付与株主総会の決議全株主に通知(公開会社は公告可)なし
特定の株主から取得株主総会の決議特定の株主に通知あり
子会社からの取得取締役会(非設置会社は総会)規定の適用なし規定の適用なし
市場取引等株主総会の決議(定款で取締役会も可)規定の適用なし規定の適用なし
  • 特定の株主からの取得では、その株主は原則として当該株主総会で議決権を行使できない(他の株主全員が議決権を行使できない場合を除く)。
  • 他の株主が「自分も売主に加えてほしい」と請求できるのは、法務省令で定める時までに請求した場合に限られる。
  • 156条の株主総会決議で定める取得期間は1年を超えることができない。
  • 取得のつど定める価格等の条件は、同一の決定の中では株主ごとに均等でなければならない。
  • 取締役会設置会社では、取得のつどの価格等の具体的決定は取締役会の決議による。
  • 155条各号のいずれかに該当しない限り、株式会社は自己の株式を取得できない。
表

自己株式を取得できる場合の全一覧

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号対象となる株主総会(条文原文)関連条文
株式会社が自己の株式を取得することができる場合会社法 第155条第1項株式会社は、次に掲げる場合に限り、当該株式会社の株式を取得することができる。該当 13 号
一第百七条第二項第三号イの事由が生じた場合第107条
二第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求があった場合第138条
三次条第一項の決議があった場合―
四第百六十六条第一項の規定による請求があった場合第166条
五第百七十一条第一項の決議があった場合第171条
六第百七十六条第一項の規定による請求をした場合第176条
七第百九十二条第一項の規定による請求があった場合第192条
八第百九十七条第三項各号に掲げる事項を定めた場合第197条
九第二百三十四条第四項各号(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)に掲げる事項を定めた場合第234条第235条
十他の会社(外国会社を含む。)の事業の全部を譲り受ける場合において当該他の会社が有する当該株式会社の株式を取得する場合―
十一合併後消滅する会社から当該株式会社の株式を承継する場合―
十二吸収分割をする会社から当該株式会社の株式を承継する場合―
十三前各号に掲げる場合のほか、法務省令で定める場合―
1

どんなときに自社株を買えるか

取得が認められる場合の限定列挙

第155条自己株を取得できる場合を限定列挙1項・13号判例なし
  • 株主との合意による取得のほか、条文に列挙された場合に限り自己株式を取得できる
  • 他社の事業全部の譲受けや合併・吸収分割で他社株を承継する場合も含まれる
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2

株主総会で何を決めるか

取得枠の決定と取得の条件

第156条株式の取得に関する事項の決定株主との合意取得は総会決議で枠を決める2項・3号判例なし
  • 取得する株式数、対価の内容・総額、取得期間を株主総会の決議で定める
  • 取得できる期間は1年を超えることができない
  • 155条1号〈株式会社は、次に掲げる場合に限り、当該株式会社の株式を取得することができる。 第百七条第二項第三号イの事由が生じた場合〉・2号・4号から13号までの場合はこの決議は不要
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第157条取得価格等の決定実際に買うたびに価格等を個別決定3項・4号判例なし
  • 156条〈株式の取得に関する事項の決定〉の枠内で、取得のつど株式数・対価の内容や算定方法・総額・申込期日を定める
  • 取締役会設置会社では、この決定は取締役会の決議で行う
  • 同じ決定の中では取得条件を株主ごとに均等に定める
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第158条株主に対する通知等決定内容を株主に通知する2項判例なし
  • 157条〈取得価格等の決定〉で決めた事項を対象株主(種類株式発行会社では種類株主)に通知する
  • 公開会社は通知に代えて公告でよい
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特定の株主から買うとき

他の株主が「自分からも買え」と言える場合

第160条特定の株主からの取得特定の株主だけから買うときの手続5項判例なし
  • 156条〈株式の取得に関する事項の決定〉の決議に併せ、通知を特定の株主だけに行う旨を株主総会で定められる
  • 他の株主は自分も売主に加えるよう法務省令で定める時までに請求できる
  • 特定の株主はその株主総会で原則議決権を行使できない(他の株主全員が行使できない場合を除く)
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第163条子会社からの株式の取得子会社が持つ自社株を買う場合の決議1項判例なし
  • 156条〈株式の取得に関する事項の決定〉の「株主総会」は、取締役会設置会社では「取締役会」に読み替えられる
  • この場合、157条〈取得価格等の決定〉から160条〈特定の株主からの取得〉まで(価格決定・通知・売主追加請求権)は適用されない
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第165条市場取引・公開買付けによる取得の特例3項判例なし
  • 市場取引や金融商品取引法上の公開買付けの方法で取得する場合、157条〈取得価格等の決定〉から160条〈特定の株主からの取得〉までは適用されない
  • 定款に定めれば、取締役会設置会社は取締役会の決議で市場取引等による取得を決められる
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関連する会計・監査の基準

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原

条文原文

原文ママ

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会社法 第155条 詳細ページ
第百五十五条株式会社は、次に掲げる場合に限り、当該株式会社の株式を取得することができる。
一第百七条第二項第三号イの事由が生じた場合
二第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求があった場合
三次条第一項の決議があった場合
四第百六十六条第一項の規定による請求があった場合
五第百七十一条第一項の決議があった場合
六第百七十六条第一項の規定による請求をした場合
七第百九十二条第一項の規定による請求があった場合
八第百九十七条第三項各号に掲げる事項を定めた場合
九第二百三十四条第四項各号(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)に掲げる事項を定めた場合
十他の会社(外国会社を含む。)の事業の全部を譲り受ける場合において当該他の会社が有する当該株式会社の株式を取得する場合
十一合併後消滅する会社から当該株式会社の株式を承継する場合
十二吸収分割をする会社から当該株式会社の株式を承継する場合
十三前各号に掲げる場合のほか、法務省令で定める場合
会社法 第156条(株式の取得に関する事項の決定) 詳細ページ
(株式の取得に関する事項の決定)
第百五十六条株式会社が株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得するには、あらかじめ、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。ただし、第三号の期間は、一年を超えることができない。
一取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
二株式を取得するのと引換えに交付する金銭等(当該株式会社の株式等を除く。以下この款において同じ。)の内容及びその総額
三株式を取得することができる期間
2前項の規定は、前条第一号及び第二号並びに第四号から第十三号までに掲げる場合には、適用しない。
会社法 第157条(取得価格等の決定) 詳細ページ
(取得価格等の決定)
第百五十七条株式会社は、前条第一項の規定による決定に従い株式を取得しようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。
一取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び数)
二株式一株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
三株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額
四株式の譲渡しの申込みの期日
2取締役会設置会社においては、前項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。
3第一項の株式の取得の条件は、同項の規定による決定ごとに、均等に定めなければならない。
会社法 第158条(株主に対する通知等) 詳細ページ
(株主に対する通知等)
第百五十八条株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)に対し、前条第一項各号に掲げる事項を通知しなければならない。
2公開会社においては、前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
会社法 第160条(特定の株主からの取得) 詳細ページ
(特定の株主からの取得)
第百六十条株式会社は、第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定に併せて、同項の株主総会の決議によって、第百五十八条第一項の規定による通知を特定の株主に対して行う旨を定めることができる。
2株式会社は、前項の規定による決定をしようとするときは、法務省令で定める時までに、株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)に対し、次項の規定による請求をすることができる旨を通知しなければならない。
3前項の株主は、第一項の特定の株主に自己をも加えたものを同項の株主総会の議案とすることを、法務省令で定める時までに、請求することができる。
4第一項の特定の株主は、第百五十六条第一項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、第一項の特定の株主以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。
5第一項の特定の株主を定めた場合における第百五十八条第一項の規定の適用については、同項中「株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)」とあるのは、「第百六十条第一項の特定の株主」とする。
会社法 第163条(子会社からの株式の取得) 詳細ページ
(子会社からの株式の取得)
第百六十三条株式会社がその子会社の有する当該株式会社の株式を取得する場合における第百五十六条第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)」とする。この場合においては、第百五十七条から第百六十条までの規定は、適用しない。
会社法 第165条 詳細ページ
第百六十五条第百五十七条から第百六十条までの規定は、株式会社が市場において行う取引又は金融商品取引法第二十七条の二第六項に規定する公開買付けの方法(以下この条において「市場取引等」という。)により当該株式会社の株式を取得する場合には、適用しない。
2取締役会設置会社は、市場取引等により当該株式会社の株式を取得することを取締役会の決議によって定めることができる旨を定款で定めることができる。
3前項の規定による定款の定めを設けた場合における第百五十六条第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第百六十五条第一項に規定する場合にあっては、株主総会又は取締役会)」とする。
出

一次情報

原文ママ

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