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債権/不法行為

不法行為の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

民法709条以下は、故意または過失によって他人に損害を与えた場合の損害賠償責任(不法行為責任)の基本ルールを定めています。誰が賠償責任を負うのか(本人・監督義務者・使用者・占有者など)、免責が認められる場合、共同不法行為や正当防衛など特殊な場面の扱い、損害賠償請求権が消滅する時効期間までを整理しています。実務担当者が押さえるべきは、責任の所在・免責事由・期限の3点です。

不法行為
類型責任を負う者免責の余地求償
一般不法行為(709条)加害者本人なし―
責任無能力者(712・713条)未成年・精神障害者本人弁識能力がなければ免責―
監督義務者の責任(714条)法定の監督義務者監督を怠らなければ免責―
使用者責任(715条)使用者選任・監督に相当の注意で免責被用者に求償可
注文者の責任(716条)原則負わない注文・指図に過失があれば負う―
工作物占有者・所有者(717条)まず占有者、次に所有者占有者は注意していれば免責真の責任者へ求償可
動物占有者(718条)占有者(管理者含む)相当の注意で免責―
共同不法行為(719条)各自が連帯なし―
正当防衛・緊急避難(720条)加害者は原則免責―被害者は不法行為者に請求可
  • 717条:占有者が注意していた場合は所有者が無過失でも賠償する
  • 715条:選任・監督に相当の注意をしても損害が生じたはずのときも使用者は免責
  • 720条:他人の物から生じた急迫の危難を避けるための物の損傷にも準用
  • 722条:被害者に過失があれば裁判所が考慮して賠償額を定められる(過失相殺)
  • 724条:損害・加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効消滅
  • 724条の2:人の生命・身体を害する不法行為は、知った時からの期間が3年でなく5年になる
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不法行為

不法行為について、条文は何を定めているか。

第709条不法行為による損害賠償故意か過失で他人を害したら賠償義務1項判例 167件
  • 権利だけでなく法律上保護される利益の侵害も対象になる
  • 故意または過失が要件で、無過失なら責任は生じない
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第710条財産以外の損害の賠償身体・自由・名誉の侵害は慰謝料も賠償1項判例 49件
  • 財産以外の損害(実務上「慰謝料」と呼ばれるもの)も賠償対象
  • 財産権を侵害した場合も同じ扱いになる
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第711条近親者に対する損害の賠償生命侵害は父母・配偶者・子にも賠償1項判例 19件
  • 被害者の父母・配偶者・子は自分の財産権侵害がなくても請求できる
  • 対象となる近親者は父母・配偶者・子に限られる
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第712条責任能力責任弁識能力のない未成年者は免責1項判例 3件
  • 自分の行為の責任を理解する知能がなければ賠償責任を負わない
  • 未成年であるというだけでは免責されない
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第713条精神障害で弁識能力を欠く間は免責1項判例 2件
  • 行為時に責任を弁識する能力を欠いていれば賠償責任を負わない
  • 故意・過失で自ら一時的にその状態を招いた場合は免責されない
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第714条責任無能力者の監督義務者等の責任監督義務者が責任無能力者の代わりに賠償2項判例 6件
  • 712条〈責任能力〉・713条〈精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。た…〉で本人が免責される場合が対象になる
  • 監督を怠らなかった、または怠らなくても損害が生じたなら免責
  • 監督義務者に代わって監督する者も同じ責任を負う
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第715条使用者等の責任使用者は被用者の事業執行中の加害に責任3項判例 23件
  • 事業の執行について第三者に加えた損害が対象になる
  • 被用者の選任・監督に相当の注意をしていれば免責
  • 使用者・監督者は被用者への求償権を行使できる
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第716条注文者の責任注文者は請負人の加害に原則責任を負わない1項判例 4件
  • 請負人が仕事について加えた損害の責任は原則負わない
  • 注文または指図に注文者の過失があれば責任を負う
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第717条土地の工作物等の占有者及び所有者の責任土地工作物の瑕疵による損害は占有者が責任3項判例 11件
  • 設置・保存の瑕疵で生じた損害はまず占有者が賠償する
  • 占有者が損害防止に必要な注意をしていれば所有者が賠償
  • 竹木の栽植・支持の瑕疵にも準用され、真の責任者へ求償できる
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第718条動物の占有者等の責任動物が加えた損害は占有者が責任2項判例 6件
  • 動物の種類・性質に応じた相当の注意をしていれば免責
  • 占有者に代わって管理する者も同じ責任を負う
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第719条共同不法行為者の責任共同不法行為は各自が連帯して賠償責任2項判例 15件
  • 誰が損害を加えたか分からない場合も連帯責任になる
  • 教唆した者・幇助した者も共同行為者とみなされる
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第720条正当防衛及び緊急避難正当防衛・緊急避難による加害は免責2項判例 1件
  • 自己・第三者の権利や利益を守るためやむを得ない加害は免責
  • 被害者は元の不法行為者に賠償を請求できる
  • 他人の物による急迫の危難を避けるための物の損傷にも準用
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第721条損害賠償請求権に関する胎児の権利能力胎児にも損害賠償請求権を認める1項判例 1件
  • 損害賠償請求権に限り、胎児は既に生まれたものとみなされる
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第722条損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺損害賠償の方法・中間利息控除・過失相殺2項判例 23件
  • 417条〈損害賠償の方法〉・417条の2〈中間利息の控除〉を準用する(金銭賠償の原則などが及ぶ)
  • 被害者に過失があれば裁判所が考慮して賠償額を定められる
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第723条名誉毀損における原状回復名誉毀損には原状回復の処分も可能1項判例 8件
  • 裁判所は被害者の請求により名誉を回復する適当な処分を命じられる
  • 損害賠償に代えて、または損害賠償とともに命じられる
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第724条不法行為による損害賠償請求権の消滅時効不法行為の損害賠償請求権は3年・20年で時効1項・2号判例 16件
  • 損害と加害者を知った時から3年間行使しないと時効消滅する
  • 不法行為の時から20年間行使しないと時効消滅する
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第724_2条人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効生命・身体侵害は知った時から5年で時効1項判例なし
  • 724条1号〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。〉の「3年間」は、人の生命・身体を害する場合「5年間」となる
  • 不法行為時から20年間という期間の定めは変わらない
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第709条民法

労働者災害補償保険法による休業補償給付若しくは傷病補償年金又は厚生年金保険法(昭和六〇年法律第三四号による改正前のもの)による障害年金を被害者の受けた財産的損害のうちの積極損害又は精神的損害から控除することの可否

裁判要旨労働者災害補償保険法による休業補償給付若しくは傷病補償年金又は厚生年金保険法(昭和六〇年法律第三四号による改正前のもの)による障害年金は、被害者の受けた財産的損害のうちの積極損害又は精神的損害から控除すべきでない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年7月10日 昭和58(オ)128
登載
民集 第41巻5号1202頁
参照法条
労働基準法84条2項,労働者災害補償保険法12条の4,労働者災害補償保険法14条,労働者災害補償保険法18条,厚生年金保険法40条,厚生年金保険法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)47条,民法709条,民法710条
論点2第709条民法

一 人格権又は条理を根拠とするいわゆる反論文掲載請求権の成否

二 新聞紙上における政党間の批判・論評の意見広告につき名誉毀損の不法行為の成立が否定された事例

裁判要旨一 新聞記事に取り上げられた者は、当該新聞紙を発行する者に対し、その記事の掲載により名誉毀損の不法行為が成立するかどうかとは無関係に、人格権又は条理を根拠として、右記事に対する自己の反論文を当該新聞紙に無修正かつ無料で掲載することを求めることはできない。

二 新聞社が新聞紙上に掲載した甲政党の意見広告が、乙政党の社会的評価の低下を狙つたものであるが乙政党を批判・論評する内容のものであり、かつ、その記事中乙政党の綱領等の要約等が一部必ずしも妥当又は正確とはいえないとしても、右要約のための綱領等の引用文言自体は原文のままであり、要点を外したものといえないなど原判示の事実関係のもとでは、右広告の掲載は、その広告が公共の利害に関する事実にかかり専ら公益を図る目的に出たものであり、かつ、主要な点において真実の証明があつたものとして、名誉毀損の不法行為となるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年4月24日 昭和55(オ)1188
登載
民集 第41巻3号490頁
参照法条
憲法21条,民法1条,民法709条,民法710条,民法723条,刑法230条ノ2
論点3第709条民法

将来の賃料相当損害金の請求を認容する判決が確定した場合においてその後公租公課の増大等により認容額が不相当となつたときと損害金の追加請求

裁判要旨従前の土地の所有者は、仮換地の不法占拠者に対し、将来の賃料相当損害金の請求を認容する確定判決を得た場合においても、その事実審口頭弁論終結後に、公租公課の増大、土地の価格の昂騰により、又は比隣の土地の賃料に比較して、認容額が不相当となつたときは、新訴により、認容額と適正賃料額との差額に相当する損害金の支払を求めることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和61年7月17日 昭和56(オ)756
登載
民集 第40巻5号941頁
参照法条
民訴法199条,民訴法226条,民法709条
論点4第709条民法

一 出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めと憲法二一条二項前段にいう検閲
二 名誉侵害と侵害行為の差止請求権
三 公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関する出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めの許否
四 公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によつて命ずる場合と口頭弁論又は債務者審尋

裁判要旨一 雑誌その他の出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めは、憲法二一条二項前段にいう検閲に当たらない。
二 名誉侵害の被害者は、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対して、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる。
三 人格権としての名誉権に基づく出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めは、右出版物が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関するものである場合には、原則として許されず、その表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときに限り、例外的に許される。
四 公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によつて命ずる場合には、原則として口頭弁論又は債務者の審尋を経ることを要するが、債権者の提出した資料によつて、表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であり、かつ、債権者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があると認められるときは、口頭弁論又は債務者の審尋を経なくても憲法二一条の趣旨に反するものとはいえない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和61年6月11日 昭和56(オ)609
登載
民集 第40巻4号872頁
参照法条
憲法13条,憲法21条,民訴法757条2項,民訴法760条,民法1条ノ2,民法198条,民法199条,民法709条,民法710条,刑法230条ノ2
論点5第709条民法

船舶所有者が被用者である船長に対しその加害行為により被つた損害についてする賠償又は求償の請求と信義則に基づくその制限

裁判要旨船舶所有者がその被用者である船長の加害行為により被つた損害につき船長に対してする損害の賠償又は求償の請求についても、信義則を適用しこれを制限することを妨げない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和60年2月12日 昭和59(オ)1085
登載
集民 第144号99頁
参照法条
民法1条2項,民法709条,民法715条3項,商法705条1項
論点6第709条民法

債務者が代物弁済に供した不動産をその登記未了の間に第三者に譲渡したがその後代物弁済契約が遡つて失効した場合と債権者に対する不法行為責任の有無

裁判要旨債務者が、債権者に対し賃借権譲受代金債務の支払に代えて不動産を譲渡した後その登記未了の間に、これを第三者に二重に譲渡し登記を経由した場合であつても、右賃借権譲渡契約が解除されて右債務が遡つて消滅し、代物弁済契約による所有権移転の効果も遡つて失われたときは、債務者は債権者に対し、右不動産の所有権侵害による不法行為責任を負わない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和60年12月20日 昭和58(オ)706
登載
集民 第146号355頁
参照法条
民法176条,民法482条,民法545条,民法709条
論点7第709条民法

不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用の賠償債務が履行遅滞となる時期

裁判要旨不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用の賠償債務は、当該不法行為の時に履行遅滞となるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年9月6日 昭和55(オ)1113
登載
民集 第37巻7号901頁
参照法条
民法412条,民法709条,自動車損害賠償保障法3条
論点8第709条民法

労働者災害補償保険法による障害補償一時金及び休業補償給付を被災労働者の慰藉料から控除することの可否

裁判要旨労働者災害補償保険法による障害補償一時金及び休業補償給付は、被災労働者の精神上の損害を填補するためのものではなく、これを同人の慰藉料から控除すべきではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年4月19日 昭和55(オ)82
登載
民集 第37巻3号321頁
参照法条
労働基準法84条,労働者災害補償保険法14条,労働者災害補償保険法15条,民法709条,民法710条
論点9第709条民法

船舶の発航により商法八四二条八号所定の先取特権を消滅させた行為が不法行為にあたらないとされた事例

裁判要旨船舶所有者がその所有の船舶につき第三者が商法八四二条八号所定の先取特権を有することを知りながらこれを発航させて右先取特権を消滅させるに至つたとしても、右船舶所有者が船舶発航前に先取特権者の権利行使を妨げる行為をしたなどの特段の事情のない限り、右発航行為をもつて先取特権者の権利を違法に侵害した不法行為にあたるということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年3月24日 昭和56(オ)1213
登載
集民 第138号361頁
参照法条
民法709条,商法842条8号,商法847条2項
論点10第709条民法

所有権留保売買の売主がその目的動産を処分する行為が右動産につき買主の設定した譲渡担保権の侵害にあたらないとされた事例

裁判要旨所有権留保売買の目的動産につき、買主から譲渡担保権の設定を受けた者が、売主に対し、買主の未払残代金を支払う旨申し入れ、その額の調査に要する期間右の動産の処分を猶予するよう要請し、売主がこれに応じるかのような態度を示していたときでも、売主が猶予する旨約したのでない限り、売主が右動産を他に処分しても右譲渡担保権の侵害にはあたらず、売主は、右譲渡担保権者に対しその担保権の喪失による損害を賠償する責を負わない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和58年3月18日 昭和56(オ)542
登載
集民 第138号293頁
参照法条
民法128条,民法134条,民法342条,民法555条,民法709条
論点11第709条民法

闘犬の襲撃による幼児の死亡事故につき飼主に飼育場所を提供しかつ日常飼育に協力していた者が民法七〇九条の不法行為責任を負うとされた事例

裁判要旨闘犬の飼主が危険防止のための十全の措置をとらないため右闘犬の襲撃による人身事故等が続発していることを知りながら、飼主に対して飼育場所を提供し、かつ、日常飼育に協力するなど多大の便益を提供していた者が、飼主が不在のためみずから右闘犬の保管に当たつていながら、第三者が右闘犬を容易に連れ出せる程度の施錠装置しかない犬舎を路上に置いたまま漫然外出し、その間に飼主の雇人が酒に酔つて右犬舎から闘犬を連れ出したため、右闘犬が幼児を襲い死亡させた場合には、右便益の提供者は、右事故につき民法七〇九条の不法行為責任を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和57年9月7日 昭和55(オ)978
登載
民集 第36巻8号1572頁
参照法条
民法709条,民法718条
論点12第709条民法

一 民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用の差止めを求める訴えの適否
二 営造物の利用の態様及び程度が一定の限度を超えるために利用者又は第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合と国家賠償法二条一項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵
三 国営空港に離着陸する航空機の騒音が一定の程度に達しており空港周辺地域の住民の一部により右騒音を原因とする空港供用の差止請求等の訴訟が提起されているなどの状況のもとに右地域に転入した者が右騒音により被害を受けたとして国に対し慰藉料を請求した場合につき右請求を排斥すべき事由がないとした認定判断に経験則違背等の違法があるとされた事例
四 将来にわたつて継続する不法行為に基づく損害賠償請求権が将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格性を有するとされるための要件

裁判要旨一 民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用の差止めを求める訴えは、不適法である。
二 営造物の利用の態様及び程度が一定の限度にとどまる限りはその施設に危害を生ぜしめる危険性がなくても、これを超える利用によつて利用者又は第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある状況にある場合には、そのような利用に供される限りにおいて右営造物につき国家賠償法二条一項にいう設置又は管理の瑕疵があるものというべきである。
三 当該空港に離着陸する航空機の騒音がその頻度及び大きさにおいて一定の程度に達しており、また、空港周辺住民の一部により右騒音を原因とする空港供用差止請求等の訴訟が提起され、主要日刊新聞紙上に当該空港周辺における騒音問題が頻々として報道されていたなど、判示のような状況のもとに空港周辺地域に転入した者が空港の設置・管理者たる国に対し右騒音による被害について慰藉料の支払を求めたのに対し、特段の事情の存在を確定することなく、転入当時右の者は航空機騒音が問題になつている事情ないしは航空機騒音の存在の事実をよく知らなかつたものとし、右請求を排斥すべき理由はないとした原審の認定判断には、経験則違背等の違法がある。
四 現在不法行為が行われており、同一態様の行為が将来も継続することが予想されても、損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず、具体的に請求権が成立したとされる時点においてはじめてこれを認定することができ、かつ、右権利の成立要件の具備については債権者がこれを立証すべきものと考えられる場合には、かかる将来の損害賠償請求権は、将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格性を有しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和56年12月16日 昭和51(オ)395
登載
民集 第35巻10号1369頁
参照法条
民訴法第2編第1章訴,民訴法226条,国家賠償法2条1項,民法709条
論点13第709条民法

同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間における相殺の許否

裁判要旨双方の過失に起因する同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間においても、相殺は許されない。

(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和54年9月7日 昭和53(オ)1198
登載
集民 第127号415頁
参照法条
民法509条,民法709条
論点14第709条民法

頭部に受けた打撲創の結果外傷性てんかんないし頭部外傷後遺症が生じたとは認められないとした認定につき経験則違背の違法があるとされた事例

裁判要旨頭部打撲創の受傷を契機として被害者に生じた症状につき、D病院、E病院、F病院の各専門医師が脳波検査、気脳写検査などを含む神経医学上の諸検査を経たうえ、頭部外傷後遺症ないし外傷性てんかんの診断を下しているなど判示の事実関係のもとでは、他に特段の事情のない限り、被害者に右受傷の結果頭部外傷後遺症ないし外傷性てんかんが生じたことを否定するのは、経験則に反する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年2月9日 昭和52(オ)608
登載
集民 第123号7頁
参照法条
民法709条,民訴法185条,民訴法394条
論点15第709条民法

離婚の訴の附帯請求として離婚に基づく損害賠償及び財産分与の双方を併合して請求することの可否

裁判要旨裁判上の離婚を請求する者はこれに附帯して離婚に基づく損害賠償及び財産分与の双方を併合して請求することを妨げず、その場合には裁判所は財産分与額を定めるにつき損害賠償の点をその要素として考慮することができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和53年2月21日 昭和52(オ)1239
登載
集民 第123号83頁
参照法条
民法709条,民法768条,人事訴訟手続法7条,人事訴訟手続法15条
論点16第709条民法

労働者災害補償保険法又は厚生年金保険法に基づく保険給付の確定と受給権者の使用者に対する損害賠償債権額から将来の給付額を控除することの要否

裁判要旨労働者災害補償保険法又は厚生年金保険法に基づき政府が将来にわたり継続して保険金を給付することが確定していても、いまだ現実の給付がない以上、将来の給付額を受給権者の使用者に対する損害賠償債権額から控除することを要しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和52年10月25日 昭和50(オ)621
登載
民集 第31巻6号836頁
参照法条
民法709条,労働基準法84条2項,労働者災害補償保険法12条の4,厚生年金保険法40条
論点17第709条民法

共有物に対する不法行為と共有者の損害賠償請求権の範囲

裁判要旨共有者は、共有物に対する不法行為によつて被つた損害について、自己の共有持分の割合に応じてのみ、その賠償を請求することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和51年9月7日 昭和50(オ)1072
登載
集民 第118号423頁
参照法条
民法249条,民法709条
論点18第709条民法

仮処分異議訴訟における仮処分却下の確定判決と当該仮処分が不法行為であるとして提起された損害賠償訴訟に対する拘束力

裁判要旨仮処分に対する異議訴訟において、当該仮処分を保全の必要性がないとして取り消し、その仮処分申請を却下する旨の判決が言い渡され、これが確定した場合、この確定判決は、右仮処分が不法行為を構成するとして仮処分債務者によつて提起された仮処分債権者に対する損害賠償訴訟の係属する裁判所を法律上拘束するものとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和50年4月25日 昭和48(オ)382
登載
集民 第114号605頁
参照法条
民法709条,民訴法201条
論点19第709条民法

一、いわゆる仮登記担保者と仮登記に遅れて目的不動産を占有する第三者に対する右不動産の換価処分における損害賠償請求
二、目的不動産の換価処分前に被担保債権について弁済の提供を受けその受領を拒絶したいわゆる仮登記担保権者と仮登記に遅れて右不動産を賃借し占有する第三者に対する明渡請求

裁判要旨一、いわゆる仮登記担保権者は、目的不動産の換価処分前においては、自己が右不動産を使用収益することができる旨の約定がある等特段の事情のないかぎり、仮登記に遅れて右不動産を賃借し占有する第三者に対し、賃料相当の損害金の賠償を請求することができない。
二、いわゆる仮登記担保権者が、目的不動産の換価処分前に、被担保債権について適法な弁済の提供を受けその受領を拒絶しながら、換価手続の一環として、仮登記に遅れて右不動産を賃借し占有する第三者に対しその明渡を請求することは、許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年2月25日 昭和46(オ)653
登載
民集 第29巻2号112頁
参照法条
民法369条,民法413条,民法482条,民法492条,民法556条,民法709条,不動産登記法2条2号,不動産登記法7条2項
論点20第709条民法

仮登記担保と目的不動産による旅館営業

裁判要旨仮登記担保権者が予約完結権を行使して目的不動産の引渡を受けるとともに、債務者との特約に基づき右不動産による旅館の営業権をその施設、器具ともども引渡を受けたなど判示事情のもとでは、債権者が目的不動産を換価して清算するまでこれを使用して旅館営業を継続しても右不動産に対する債務者の所有権を侵害するものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和50年12月26日 昭和46(オ)267
登載
集民 第116号935頁
参照法条
民法90条,民法200条,民法709条,不動産登記法2条,不動産登記法7条2項
論点21第709条民法

医師が化膿性髄膜炎の治療としてしたルンバール(腰椎穿刺による髄液採取とペニシリンの髄腔内注入)の施術とその後の発作等及びこれにつづく病変との因果関係を否定したのが経験則に反するとされた事例

裁判要旨重篤な化膿性髄膜炎に罹患した三才の幼児が入院治療を受け、その病状が一貫して軽快していた段階において、医師が治療としてルンバール(腰椎穿刺による髄液採取とペニシリンの髄腔内注入)を実施したのち、嘔吐、けいれんの発作等を起こし、これにつづき右半身けいれん性不全麻癖、知能障害及び運動障害等の病変を生じた場合、右発作等が施術後一五分ないし二〇分を経て突然に生じたものであつて、右施術に際しては、もともと血管が脆弱で出血性傾向があり、かつ、泣き叫ぶ右幼児の身体を押えつけ、何度か穿刺をやりなおして右施術終了まで約三〇分を要し、また、脳の異常部位が左部にあつたと判断され、当時化膿性髄膜炎の再燃するような事情も認められなかつたなど判示の事実関係のもとでは、他に特段の事情がないかぎり、右ルンバ一ルと右発作等及びこれにつづく病変との因果関係を否定するのは、経験則に反する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和50年10月24日 昭和48(オ)517
登載
民集 第29巻9号1417頁
参照法条
民法709条,国家賠償法1条1項,民訴法185条,民訴法394条
論点22第709条民法

同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間における相殺の許否

裁判要旨双方の過失に基因する同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間においても、相殺は許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和49年6月28日 昭和47(オ)36
登載
民集 第28巻5号666頁
参照法条
民法509条,民法709条
論点23第709条民法

責任能力のある未成年者の不法行為と監督義務者の不法行為責任

裁判要旨未成年者が責任能力を有する場合であつても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法七〇九条に基づく不法行為が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年3月22日 昭和47(オ)1067
登載
民集 第28巻2号347頁
参照法条
民法709条,民法714条
論点24第709条民法

融通手形の所持人の振出人に対する不当仮差押と振出人につき生じた損害との間の因果関係の認定に理由不備があるとされた事例

裁判要旨約束手形の振出人が融通手形であることを理由としてその支払を拒絶した場合に、右振出人が同一の被融通者に対し額面合計五六七万円余に及ぶ七通の融通手形を振出しており、しかも右被融通者が既に支払を停止しているときは、これらの事実を知つた金融機関は右振出人との金融取引を警戒、敬遠するのが一般であるから、当該手形の所持人の右振出人に対する仮差押の申請、執行が右振出人の無資力であることにつき虚偽の疏明資料を用いたものであるとしても、右振出人が支払拒絶後金融取引に支障を生じたことに因り被つた損害が右不当仮差押によるものというためには、他に特別な事情が存在することを必要とするものと解すべきであり、かかる特別事情をなんら認定しないで右不当仮差押と右損害との間に因果関係があると即断することは、理由不備にあたる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年3月15日 昭和47(オ)720
登載
集民 第111号387頁
参照法条
手形法77条,手形法17条,民法709条
論点25第709条民法

一、身体傷害による財産上および精神上の損害の賠償請求における請求権および訴訟物の個数
二、不法行為による損害賠償の一部請求と過失相殺

裁判要旨一、同一事故により生じた同一の身体傷害を理由として財産上の損害と精神上の損害との賠償を請求する場合における請求権および訴訟物は、一個である。
二、不法行為に基づく一個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたつては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を認容することができるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年4月5日 昭和43(オ)943
登載
民集 第27巻3号419頁
参照法条
民訴法186条,民訴法224条1項,民法709条,民法710条,民法722条2項
論点26第709条民法

債権者が代位弁済を受けるに際し担保物を代位者に交付しなかつたことにつき過失があるとされた事例

裁判要旨金融機関である甲が、乙に対する貸金債権の担保のため乙の甲に対する預金債権につき質権の設定を受け、乙から丙に右預金債権が譲渡されたのち、これに対する質権の実行としてその取立をし右貸金債権の弁済に充当するに際し、乙から右貸金債権の担保として交付されていた手形を丙に交付しないで乙に返還し、そのため丙の乙に対する求償権の満足を得ることを不可能にさせたなど判示の事情がある場合には、甲は、右手形を交付すべき相手方を誤り丙に損害を与えたことにつき、過失の責を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和48年4月10日 昭和47(オ)136
登載
集民 第109号39頁
参照法条
民法500条,民法503条,民法709条
論点27第709条民法

株式会社の取締役がその職務執行行為により第三者に与えた損害につき不法行為責任を負うとされた事例

裁判要旨株式会社の代表取締役が、会社において代金を支払う資力がないものである事情を知りながら、会社の被用者をして会社のため第三者から商品を買い受けさせ、右第三者にその代金相当額の損害を与えた場合には、右代表取締役は、右第三者に対し、不法行為による損害賠償責任を負うものと解すべきである。

(意見がある)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年9月21日 昭和45(オ)399
登載
集民 第106号721頁
参照法条
民法709条,商法266条ノ3第1項
論点28第709条民法

未成年者の不法行為における注意義務の程度

裁判要旨責任能力がある未成年者の不法行為において、その過失の有無は、成人と同一の注意義務を標準として定めるべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年6月22日 昭和47(オ)212
登載
集民 第106号335頁
参照法条
民法709条,民法712条
論点29第709条民法

所有権留保特約つきで売り渡された建設機械の転買人に所有権調査義務懈怠による不法行為の成立を認めた事例

裁判要旨(省略)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年12月12日 昭和47(オ)253
登載
集民 第107号329頁
参照法条
民法555条,民法709条
論点30第709条民法

離婚による慰籍料と財産分与との関係

裁判要旨すでに財産分与がなされた場合においても、それが損害賠償の要素を含めた趣旨とは解されないか、または、その額および方法において分与請求者の精神的苦痛を慰籍するに足りないと認められるものであるときは、右請求者は、別個に、相手方の不法行為を理由として離婚による慰籍料を請求することを妨げられない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和46年7月23日 昭和43(オ)142
登載
民集 第25巻5号805頁
参照法条
民法709条,民法710条,民法768条,民法771条
論点31第709条民法

一、得べかりし利益の喪失による損害額の算定と租税控除の要否
二、一部請求の趣旨が明示されていない場合の訴提起による時効中断の範囲

裁判要旨一、不法行為の被害者が負傷のため営業上得べかりし利益を喪失したことによつて被つた損害額を算定するにあたつては、営業収益に対して課せられるべき所得税その他の租税額を控除すべきではない。
二、一個の債権の一部についてのみ判決を求める趣旨が明示されていないときは、訴提起による消滅時効中断の効力は、右債権の同一性の範囲内においてその全部に及ぶ。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年7月24日 昭和44(オ)882
登載
民集 第24巻7号1177頁
参照法条
民法709条,民法147条1号,民法149条,所得税法9条1項21号,民訴法235条
論点32第709条民法

偽造手形の取得者の損害賠償請求権と手形法上の遡求権との関係

裁判要旨対価を支払つて偽造手形を取得した手形所持人は、その出捐と手形偽造行為との間に相当因果関係が認められるかぎり、その出捐額につき、ただちに損害賠償請求権を行使することができ、手形の所持人としてその前者に対し手形法上の遡求権を有することによつては、損害賠償の請求を妨げられることはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年5月22日 昭和44(オ)260
登載
集民 第99号215頁
参照法条
民法709条,民法715条,手形法43条
論点33第709条民法

株式会社の代表取締役が職務の執行として第三者所有の機械を無権限者から買い受け解体処分して右第三者に損害を与えた場合における右代表取締役に対する第三者の損害賠償請求権の根拠法条

裁判要旨省略(最高裁昭和三九年(オ)第一一七五号同四四年一一月二六日大法廷判決・民集二三巻一一号二一五〇頁参照)

(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年4月30日 昭和45(オ)50
登載
集民 第99号149頁
参照法条
民法709条,商法266条ノ3
論点34第709条民法

一、被用者の不法行為に基づく責任と民法七一五条に基づく使用者の責任との関係

二、不法行為による慰籍料請求権と相続

裁判要旨一、被用者の不法行為に基づく責任と民法七一五条に基づく使用者の責任とは、いわゆる不真正連帯債務の関係にあり、その一方の債務について和解等がされても、現実の弁済がされないかぎり、他方の債務については影響がないと解するのが相当である。

二、不法行為による慰籍料請求権は、被害者の死亡によつて当然に発生し、これを放棄、免除する等特別の事情の認められないかぎり、被害者の相続人が相続する。

(右二につき田中、松本裁判官の反対意見がある)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和45年4月21日 昭和44(オ)479
登載
集民 第99号89頁
参照法条
民法709条,民法710条,民法711条,民法715条
論点35第709条民法

男性に妻のあることを知りながら情交関係を結んだ女性の慰籍料請求

裁判要旨女性が、男性に妻のあることを知りながら情交関係を結んだとしても、情交の動機が主として男性の詐言を信じたことに原因している場合で、男性側の情交関係を結んだ動機、詐言の内容程度およびその内容についての女性の認識等諸般の事情を斟酌し、女性側における動機に内在する不法の程度に比し、男性側における違法性が著しく大きいものと評価できるときには、貞操等の侵害を理由とする女性の男性に対する慰籍料請求は、許される。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和44年9月26日 昭和42(オ)790
登載
民集 第23巻9号1727頁
参照法条
民法709条,民法710条,民法708条
論点36第709条民法

代理受領を承認した債務者が当該債務を本人に支払つた場合に不法行為の成立が認められた事例

裁判要旨甲の乙に対する手形金債権を担保する目的で、乙が丙に対する請負代金債権の代理受領を甲に委任し、丙が甲に対し右代理受領を承認しながら、請負代金を乙に支払つたため、甲が手形金債権の満足を受けられなくなつた場合において、丙が右承認の際担保の事実を知つていたなど原判示の事情(原判決理由参照)があるときは、丙は、甲に対し過失による不法行為責任を負う。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和44年3月4日 昭和41(オ)611
登載
民集 第23巻3号561頁
参照法条
民法99条,民法709条
論点37第709条民法

一、運送取扱人ないし運送人の運送契約上の債務不履行に基づく賠償請求権と不法行為に基づく賠償請求権との関係
二、国際海上物品運送法一四条と運送人または荷役業者に対する不法行為に基づく損害賠償責任

裁判要旨一、運送取扱人ないし運送人の運送契約上の債務不履行に基づく賠償請求権と不法行為に基づく賠償請求権は競合し、右不法行為責任は、運送品の取扱上通常予想される事態ではなく、契約本来の目的範囲を著しく逸脱する場合にだけ限定されるものではない。
二、国際海上物品運送法一四条は運送人または荷役業者に対する不法行為に基づく損害賠償請求については適用されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和44年10月17日 昭和43(オ)58
登載
集民 第97号35頁
参照法条
民法709条,民法415条,商法766条,商法566条,国際海上物品運送法14条,国際海上物品運送法3条
論点38第709条民法

子の身体傷害についての父母の慰藉料の請求を認めた判断が違法とされた事例

裁判要旨不法行為により、年令八年二月の男児が頭蓋骨骨折などの傷害を受けて約二週間意識不明の状態になり、その父母も、受傷後四日間にわたり不眠不休の看病を続け、四日目にはその死を覚悟するなど原判決の認定した事実関係(原判決理由参照)があつても、そのことから、ただちに、父母は、その子の生命を害された場合に比肩するかまたは右の場合に比して著しく劣らない程度の精神上の苦痛を受けたものということはできず、自己の権利として、慰藉料を請求することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年9月19日 昭和43(オ)63
登載
民集 第22巻9号1923頁
参照法条
民法709条,民法710条,民法711条
論点39第709条民法

一、企業主が生命または身体を侵害されたことにより生ずる財産上の損害額の算定基準
二、附帯上告が上告理由と同一の理由に基づく場合とその提起期間

裁判要旨一、企業主が生命または身体を侵害されたため企業に従事することができなくなつたことによつて生ずる財産上の損害額は、特段の事情のないかぎり、企業収益中に占める企業主の労務その他企業に対する個人的寄与に基づく収益部分の割合によつて算定すべきである。
二、附帯上告が上告理由と同一の理由に基づく場合において上告審で口頭弁論が開かれたときは、該附帯上告は右口頭弁論の終結時までに提起されなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年8月2日 昭和37(オ)611
登載
民集 第22巻8号1525頁
参照法条
民法709条,民法416条1項,民訴法396条,民訴法374条
論点40第709条民法

母の受傷を理由とする子の慰藉料請求について調停が成立した後母が死亡した場合とその死亡を理由とする子の慰藉料請求権

裁判要旨母の身体侵害を理由とする子の慰藉料請求と右身体侵害に基づく母の生命侵害を理由とする子の慰藉料請求とは、同一性がなく、前者に関する調停が成立した後母が死亡した場合には、特別の事情のないかぎり、その調停が後者をも含むと解することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年4月11日 昭和39(オ)538
登載
民集 第22巻4号862頁
参照法条
民法709条,民法710条,民法711条,民事調停法19条,民訴法203条,民訴法199条1項
論点41第709条民法

示談当時予想しなかつた後遺症等が発生した場合と示談の効力

裁判要旨交通事故による全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に、小額の賠償金をもつて示談がされた場合において、右示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求は、示談当時予想していた損害についてのみと解すべきであつて、その当時予想できなかつた後遺症等については、被害者は、後日その損害の賠償を請求することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年3月15日 昭和40(オ)347
登載
民集 第22巻3号587頁
参照法条
民法709条,民法695条,民法696条
論点42第709条民法

加害自動車と同一方向に進行していた被害自転車の衝突において自転車に過失があるかどうかを判断するにつき審理不尽・理由不備・理由そごの違法があるとされた事例

裁判要旨加害自動車と同一方向に進行していた被害自転車とが衝突した場合において、自転車に過失があるかどうかを判断するにつき、自転車が道路上で方向を転ずるのを自動車の運転手が三・二メートル手前で発見したと認定しながら、判示事情のもとで自転車が自動車の直前においてUターンしたと認むべきではないと認定し、自転車には過失はないと判断したのは、審理不尽・理由不備・理由そごの違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年3月14日 昭和41(オ)54
登載
集民 第90号647頁
参照法条
民法709条,民法722条2項,自動車損害賠償保障法3条,民訴法394条,民訴法395条1項6号
論点43第709条民法

一、証言当時九歳、八歳の児童の証言に信憑性がないとはいえないとされた事例
二、児童の遊戯による傷害に違法性があるとされた事例
三、親権者に児童の監督について過失がないとされた事例

裁判要旨一、証言当時九歳、八歳の児童であつても、その証言事項は単純であり、かつ、印象深い出来事であるなど判示のような事情のもとにおいては、その証言に信憑性がないものということはできない。
二、児童が判示のごとく弓矢を携えてする戦争ごつこまたはインデイアンごつこは、遊戯中の行為であるからといつても、その行為の態様、なかんずく失明という重大な結果を発生するおそれがあることなどからみて社会的に是認されるものとはいえず、違法性がないものとはいえない。
三、児童が弓矢を携行して外出するに際し、親権者である母が、これを現認し、児童に対し弓矢の使用を禁じその旨を約束せしめていたなど判示のような事情のもとにおいては、親権者である父母に児童の監督責任上の過失があるものとすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年2月9日 昭和42(オ)966
登載
集民 第90号255頁
参照法条
民訴法271条,民法722条2項,民法709条
論点44第709条民法

一、離婚届を偽造して届出をした者と不法行為の成否
二、離婚無効の訴と人事訴訟手続法の準用

裁判要旨一、婚姻の継続中に、自己の意思に基づかないでほしいままに協議離婚届を偽造、行使され、真実に反する離婚の事実を戸籍に記載された者がこれによつて損害を生じたときは、不法行為が成立し、該行為者は被偽造者に対して損害賠償の義務を負担する。
二、離婚無効の訴は人事訴訟に属し、人事訴訟手続法の規定が準用され、その判決の効力は第三者に対しても及ぶものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年10月31日 昭和43(オ)834
登載
集民 第92号783頁
参照法条
民法709条,民法764条,戸籍法76条,人事訴訟手続法18条
論点45第709条民法

不法行為によつて身体を害された者の配偶者および子が自己の権利として慰藉料の請求ができないとされた事例

裁判要旨被害者が、不法行為によつて、全治まで一年以上を要する左大腿部骨折等の重傷をこうむり、手術等の治療をうけたが、現在においても、左下肢が約三〇度外旋位をとつて約三・五センチメートル短縮し、大腿囲、下腿囲とも狭少となり、股、膝関節の運動領域に障害を残し、正座は不能で、歩行も約一キロメートル以上は苦痛のため不可能な状態である等原審認定の事実関係(原判決およびその引用する第一審判決参照)のもとにおいては、まだ、被害者の配偶者および子は、自己の権利として慰藉料を請求することができるものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年6月13日 昭和40(オ)1308
登載
民集 第21巻6号1447頁
参照法条
民法709条,民法710条,民法711条
論点46第709条民法

一 内縁関係を破綻させた第三者の不法行為の成否
二 内縁に民法第七六〇条の規定は類推適用されるか

裁判要旨一 内縁関係に不当な干渉をしてこれを破綻するにいたらしめた者は、不法行為に基づく損害賠償の責任を負う。
二 民法第七六〇条〈婚姻費用の分担〉の規定は、内縁に類推適用されるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年2月22日 昭和39(オ)714
登載
集民 第82号453頁
参照法条
民法709条,民法760条
論点47第709条民法

私力の行使が許されないとされた事例。

裁判要旨使用貸借の終了した敷地上に建築された原判示仮店舗の周囲に、右敷地所有者(終了前の敷地使用貸主)が仮店舗所有者(終了前の敷地使用借主)の承諾を得ないで、板囲を設置した場合であつても、右仮店舗所有者が右板囲を実力をもつて撤去することは、同人が原判示の経緯で原判示旧店舗に復帰してすでに飲食営業を再開している等原判示の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、私力行使の許される限界をこえるものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年12月7日 昭和38(オ)1236
登載
民集 第19巻9号2101頁
参照法条
民法709条,民法200条1項
論点48第709条民法

不法行為により身体の障害を受けた者の父母が自己の権利として慰藉料請求権を有するとされた事例。

裁判要旨一二歳の娘が不法行為により身体の傷害を受け、右受傷の部位程度、治癒後の創痕などが原判示(原判決理由参照)のごとくであるところから、同女が世間なみの幸福な結婚生活にはいることができるかどうかを危惧するなど人の親として相当の精神的苦痛を味つている場合においては、右父母は、民法第七〇九条〈不法行為による損害賠償〉第七一〇条〈財産以外の損害の賠償〉に基づいて自己の権利として加害者に対し慰藉料の請求ができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年1月24日 昭和38(オ)373
登載
民集 第18巻1号121頁
参照法条
民法709条,民法710条,民法711条
論点49第709条民法

一 停止条件の成就を故意に妨げたとして報酬請求権が認められた事例
二 停止条件の成就を故意に妨げた場合と不法行為の成立

裁判要旨一 山林売却斡旋依頼とともに判示内容の停止条件付報酬契約がなされた場合において、委任者が受任者を介せず右山林を他に売却したときは、受任者は条件が成就したものとみなして、約定報酬の請求ができる。
二 停止条件の成就を故意に妨げた場合には、期待権侵害による不法行為が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月23日 昭和36(オ)1307
登載
民集 第18巻1号99頁
参照法条
民法130条,民法656条,民法648条,民法128条,民法709条
論点50第709条民法

一 村民の村道使用関係の性質
二 村民の村道使用権に対する侵害の継続と妨害排除請求権の成否

裁判要旨一 村民各自は、村道に対し、他の村民の有する利益ないし自由を侵害しない程度において、自己の生活上必須の行動を自由に行いうべき使用の自由権を有する。
二 村民の右村道使用の自由権に対して継続的な妨害がなされた場合には、当該村民は、右妨害の排除を請求することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月16日 昭和35(オ)676
登載
民集 第18巻1号1頁
参照法条
地方自治法(昭和38年6月8日法律99号による改正前のもの)10条,民法709条,民法710条,民法198条
論点51第709条民法

一 弁論再開の不許と証拠提出の不当制限
二 国家賠償と賠償責任の負担者

裁判要旨一 裁判所が当事者の弁論再開の申請を採用しなかつたため、新たな証拠の提出ができなかつたとしても、証拠提出を不当に制限したことにはならない(昭和二三年(オ)第七号、同年四月一七日第二小法廷判決、民集二巻四号一〇四頁参照)。
二 公務員の職務執行に基づく損害については、国家または公共団体がその責任を負い、当該公務員は被害者に対し、その責任を負担しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年8月30日 昭和37(オ)328
登載
集民 第67号361頁
参照法条
民訴法133条,民訴法137条,国家賠償法1条,民法709条
論点52第709条民法

他誌を誹謗する学界誌の記事につき名誉毀損の成立を否定した事例。

裁判要旨甲学界誌において掲載の承諾を得ている外国人学者の講演内容を、乙学界誌が、本人の承諾を得ずに原判示のような不明朗な手段で、通訳から講演訳文原稿を入手した上、甲誌に先がけて掲載発表する等原判決認定のような経緯があるときは、甲誌編集者らが乙誌を非難するのに「盗載」「犯罪的不徳行為」等の言辞を用いたとしても、乙誌の名誉信用を害するものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年4月16日 昭和34(オ)1019
登載
民集 第17巻3号476頁
参照法条
民法709条,民法723条
論点53第709条民法

商人間の不法行為に基づく損害賠償債権の遅延損害金の法定利率。

裁判要旨商人間の不法行為に基づく損害賠償債権の遅延損害金の法定利率は、年五分の割合であつて、商法第五一四条を類推適用すべきではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年12月19日 昭和37(オ)708
登載
集民 第70号389頁
参照法条
民法404条,民法709条,商法514条
論点54第709条民法

一 運送品滅失毀損の場合の運送取扱人ないし運送人に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権と不法行為に基づく損害賠償請求権の競合
二 前項の不法行為に基づく損害賠償請求権の成立が認められるためには運送取扱人ないし運送人の故意または重過失を必要とするか

裁判要旨一 運送品の取扱上通常予想される事態ではなく、契約本来の目的範囲を著しく逸脱する態様において、運送品の滅失、毀損が生じた場合には、運送取扱人ないし運送人に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権と不法行為に基づく損害賠償請求権との競合が認められる。
二 前項の不法行為に基づく損害賠償請求権の成立が認められるためには、運送取扱人ないし運送人に、必ずしも故意または重過失があることを要しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年11月5日 昭和35(オ)1456
登載
民集 第17巻11号1510頁
参照法条
商法560条,商法577条,商法566条,民法709条,民法715条
論点55第709条民法

一 原告代理人と被告代理人を取り違えた調書の記載が明白な誤記と認められ判決に影響がないとされた事例。

二 不当な告訴によつて不法行為が成立するとされた事例。

裁判要旨松一本を盗伐した者が杉四七石、松二五石の盗伐の告訴を所有者から受けた場合には、実質と右告訴の内容とを異にし、これにより取調を受ける被告訴者の苦痛の程度もまた相違するから、右不当な内容の告訴により受ける精神的損害につき不法行為が成立しうる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年11月12日 昭和37(オ)965
登載
集民 第69号181頁
参照法条
民訴法394条,民訴法143条,民法709条
論点56第709条民法

「鬼ごつこ」中の傷害行為に違法性がないとされた事例

裁判要旨小学校二年生の児童甲が「鬼ごつこ」中に一年生の児童乙に背負われて逃げようとし、判示の事情のもとに過つて乙児童を転倒させ、よつて右上腕骨骨折の負傷を与えた場合、右傷害行為は、違法性がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年2月27日 昭和35(オ)114
登載
民集 第16巻2号407頁
参照法条
民法709条,民法712条,民法714条
論点57第709条民法

診断後症状が疫痢に急変した患者についての看護指導に関し医師に過失がないとされた事例

裁判要旨診察時に患者が嘔吐、下痢、発熱三九度五分、扁桃腺腫赤の症状を呈していたが浣腸を施し検便の結果、粘液、膿汁、血液が発見されず脳症状も現れていなかつた場合においては、いまだ疫痢を疑う段階になかつたものというべく、事後患者の症状が疫痢に急変する予想のもとに附添人に看護上特別の指導を与えなかつたとしても、当該医師に過失はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年1月19日 昭和33(オ)142
登載
集民 第58号151頁
参照法条
民法709条,民法711条,医師法23条
論点58第709条民法

一 死者の活動年令期の算定。
二 労働基準法第七九条の補償と民法第四二二条。
三 民法第七一五条〈使用者等の責任〉の使用者責任の認められる事例。

裁判要旨一 死者の活動年令期は、死者の経歴、年令、職業、健康状態その他の具体的事情を考慮して算定することができ、必ずしも統計による生命表の有限平均余命の数値に拘束されない。
二 労働者の死亡について第三者が不法行為に基づく損害賠償責任を負担する場合には、労働基準法第七九条に基づく補償義務を履行した使用者は、民法第四二二条〈損害賠償による代位〉の類推により、その履行した時期及び程度で遺族に代位して第三者に対し賠償請求権を取得する。
三 専ら貨物運送を業とする会社の被用者である貨物自動車運転者が、貨物運送にあたりたまたま他人に同乗を許したため、運転者の過失により惹き起された事故において右の者が死亡するに至つた場合であつても、右同乗が運転者との個人的関係に基づくものでなく、荷受会社の集荷課長として積荷の受渡を便にするためのものであつたときは、右運送会社は民法第七一五条の責任を負うと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年1月24日 昭和31(オ)364
登載
民集 第15巻1号35頁
参照法条
民法185条,民法709条,民法422条,民法715条,労働基準法79条
論点59第709条民法

不法行為により身体を害された被害者の母の慰藉料請求が認容された事例。

裁判要旨不法行為により身体を害された者の母は、そのために被害者が生命を害されたときにも比肩すべき精神上の苦痛を受けた場合、自己の権利として慰藉料を請求しうるものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年8月5日 昭和31(オ)215
登載
民集 第12巻12号1901頁
参照法条
民法709条,民法710条,民法711条
論点60第709条民法

一 内縁不当破棄と不法行為の成否
二 内縁に民法第七六〇条の規定は準用されるか

裁判要旨一 内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し不法行為を理由として損害の賠償を求めることができる
二 民法第七六〇条〈婚姻費用の分担〉の規定は、内縁に準用されるものと解すべきである
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年4月11日 昭和32(オ)21
登載
民集 第12巻5号789頁
参照法条
民法709条,民法760条
論点61第709条民法

一 本権の訴における敗訴者は不法行為についても起訴の時から悪意の占有者とみなされるか
二 後訴における主張が前訴の既判力に牴触しない一事例
三 不法行為による物の滅失毀損と損害賠償額算定の基準時期

裁判要旨一 係争物件を自己の所有と信じ占有していた者が、本権の訴において敗訴したからとて、右敗訴者は、当然には、不法行為の関係についてまで、起訴の時から悪意の占有者とみなされるものではない。
二 甲が乙を相手として船舶の所有権確認、同引渡請求の訴(前訴)につき勝訴の確定判決を得た上、さらに乙を相手として、右船舶の滅失毀損による不法行為を理由とし損害賠償請求の訴(後訴)を提起した場合、たとえ前訴において、乙が右船舶を現に占有している事実を認めていたとしても、後訴において、乙が、右船舶は前訴の口頭弁論終結前乙において売却処分し、その頃右船舶が滅失毀損したと主張することは、なんら前訴の既判力に牴触しない。
三 不法行為による物の滅失毀損に対する損害賠償の金額は、特段の事由のないかぎり、滅失毀損当時の交換価格により定むべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年1月31日 昭和28(オ)849
登載
民集 第11巻1号170頁
参照法条
民法189条,民法709条,民訴法199条1項,民訴法709条
論点62第709条民法

一 法人に対する民法第四四条に基く請求と同法第七一五条に基く請求との訴訟物の異同
二 新聞記事が名誉を毀損すべき内容の意味かどうかの判断基準
三 新聞記事により過失に基き名誉を毀損した場合と正当業務行為の主張の許否

裁判要旨一 法人に対する民法第四四条に基く損害賠償の請求と同法第七一五条に基く損害賠償の請求とは、訴訟物を異にする。
二 一定の新聞記事の内容が事実に反し名誉を毀損すべき意味のものかどうかは、一般読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきである。
三 新聞に事実に反する記事を掲載頒布し、これにより他人の名誉を毀損することは単なる過失に基く場合でも、これを正当業務行為ということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年7月20日 昭和29(オ)634
登載
民集 第10巻8号1059頁
参照法条
民法44条,民法715条,民法709条,民訴法224条1項
論点63第709条民法

一 離婚と慰藉料請求権
二 離婚の場合における慰藉料請求権と財産分与請求権との関係

裁判要旨一 夫婦がその一方甲の有責不法な行為によつて離婚のやむなきに至つたときは、その行為が必ずしも相手方乙の身体、自由、名誉等に対する重大な侵害行為にはあたらない場合でも、乙は、その離婚のやむなきに至つたことについての損害の賠償として、甲に対し慰藉料を請求することができる。
二 前項の場合において、乙が甲に対し、財産分与請求権を有することは、慰藉料請求権の成立を妨げるものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年2月21日 昭和26(オ)469
登載
民集 第10巻2号124頁
参照法条
民法709条,民法710条,民法768条,民法771条
論点64第709条民法

一 独占禁止法二五条一項に定める違反行為によって損害を被ったことと民法上の不法行為に基づく損害賠償請求
二 消費者が独占禁止法三条にいう「不当な取引制限」に当たる価格協定による損害の賠償を民法上の不法行為に基づき請求する訴訟において価格協定の実施直前の小売価格をもっていわゆる想定購入価格と推認することができるための要件

裁判要旨一 独占禁止法二五条一項に定める違反行為によって損害を被った者は、その行為が民法上の不法行為に該当する限り、同法の規定に基づき損害賠償の請求をすることができる。
二 消費者が事業者に対し、独占禁止法三条にいう「不当な取引制限」に当たる価格協定による損害の賠償を民法上の不法行為に基づき請求する訴訟において、価格協定の実施直前の小売価格をもっていわゆる想定購入価格と推認することができるのは、価格協定の実施当時から消費者が商品を購入する時点までの間にその商品の小売価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等に変動がないときに限られる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年12月8日 昭和60(オ)933
登載
民集 第43巻11号1259頁
参照法条
民法709条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条6項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条9項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律3条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律19条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律25条1項
論点65第709条民法

公立小学校における通知表の交付をめぐる混乱についての批判、論評を主題とするビラの配布行為が名誉侵害としての違法性を欠くとされた事例

裁判要旨公立小学校教師の氏名・住所・電話番号等を記載し、かつ、有害無能な教職員等の表現を用いた大量のビラを繁華街等で配布した場合において、右ビラの内容が、一般市民の間でも大きな関心事になつていた通知表の交付をめぐる混乱についての批判、論評を主題とする意見表明であつて、専ら公益を図る目的に出たものに当たらないとはいえず、その前提としている客観的事実の主要な点につき真実の証明があり、論評としての域を逸脱したものでないなど判示の事実関係の下においては、右配布行為は、名誉侵害としての違法性を欠く。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年12月21日 昭和60(オ)1274
登載
民集 第43巻12号2252頁
参照法条
民法709条,民法723条,刑法230条ノ2第1項,刑法230条ノ2第3項
論点66第709条民法

一 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損において行為者が右事実を真実と信ずるにつき相当の理由がある場合の不法行為の成否
二 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事における事実の摘示と意見ないし論評の表明との区別
三 特定の者について新聞報道等により犯罪の嫌疑の存在が広く知れ渡っていたこととその者が当該犯罪を行ったと公表した者において右のように信ずるについての相当の理由

裁判要旨一 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損について、その行為が公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあって、表明に係る内容が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない場合に、行為者において右意見等の前提としている事実の重要な部分を真実と信ずるにつき相当の理由があるときは、その故意又は過失は否定される。
二 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事が、意見ないし論評の表明に当たるかのような語を用いている場合にも、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に、前後の文脈や記事の公表当時に読者が有していた知識ないし経験等を考慮すると、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張するものと理解されるときは、右記事は、右事項についての事実の摘示を含むものというべきである。
三 特定の者が犯罪を犯したとの嫌疑が新聞等により繰り返し報道されていたため社会的に広く知れ渡っていたとしても、このことから、直ちに、右嫌疑に係る犯罪の事実が実際に存在したと公表した者において、右事実を真実であると信ずるにつき相当の理由があったということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年9月9日 平成6(オ)978
登載
民集 第51巻8号3804頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点67第709条民法

いわゆる懲罰的損害賠償を命じた外国裁判所の判決について執行判決をすることの可否

裁判要旨外国裁判所の判決のうち、補償的損害賠償等に加えて、見せしめと制裁のために懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分については、執行判決をすることができない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成9年7月11日 平成5(オ)1762
登載
民集 第51巻6号2573頁
参照法条
民訴法200条3号,民事執行法22条6号,民事執行法24条,民法709条
論点68第709条民法

証券会社の従業員が顧客に利回り保証の約束をして株式等の取引を勧誘し一連の取引をさせた場合に右取引による顧客の損失について証券会社が不法行為責任を免れないとされた事例

裁判要旨証券会社の営業部員が、株式等の取引の勧誘をするに際し、取引の開始を渋る顧客に対し、法令により禁止されている利回り保証が会社として可能であるかのように装って利回り保証の約束をして勧誘し、その旨信じた顧客に取引を開始させ、その後、同社の営業部長や営業課長も右約束を確認するなどして取引を継続させ、これら一連の取引により顧客が損失を被ったもので、顧客が右約束の書面化や履行を求めてはいるが、自ら要求して右約束をさせたわけではないなど判示の事実関係の下においては、顧客の不法性に比し、証券会社の従業員の不法の程度が極めて強いものと評価することができ、証券会社は、顧客に対し、不法行為に基づく損害賠償責任を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成9年4月24日 平成8(オ)390
登載
集民 第183号263頁
参照法条
民法708条,民法709条,民法715条,証券取引法(平成3年法律第96号による改正前のもの)50条1項,証券会社の健全性の準則等に関する省令(昭和40年大蔵省令第60号。平成3年大蔵省令第55号による改正前のもの)1条
論点69第709条民法

一 医療過誤訴訟において鑑定のみに依拠してされた顆粒球減少症の起因剤の認定に経験則違反の違法があるとされた事例
二 医療過誤訴訟において鑑定のみに依拠してされた顆粒球減少症の発症日の認定に経験則違反の違法があるとされた事例
三 顆粒球減少症の副作用を有する薬剤を長期間継続的に投与された患者に薬疹の可能性のある発疹を認めた場合における開業医の義務

裁判要旨一 顆粒球減少症の副作用を有する複数の薬剤の投与を原因として患者が同症にかかった場合において、鑑定は、右薬剤はいずれも起因剤と断定するには難点があり、発症時期に最も近接した時期に投与されたネオマイゾンが最も疑われるが確証がなく、複数の右薬剤の相互作用により同症が発症することはあり得るものの本件においては右相互作用による発症は医学的に具体的に証明されていないとするにとどまり、本件において右相互作用により同症が発症したという蓋然住を否定するものではなく、証拠として提出された医学文献には同症の病因論は未完成な部分が多く個々の症例において起因剤を決定することは困難なことが多い旨が記載されているなど判示の事実関係の下においては、右鑑定のみに依拠してネオマイゾンを唯一単独の起因剤と認定することには、経験則違反の違法がある。
二 顆粒球減少症の副作用を有する複数の薬剤の投与を原因として患者が同症にかかった場合において、鑑定は、四月一四日より前の患者の病歴に同症発症を確認し得る検査所見及び症候がないこと並びに同日以降の患者の症状の急激な進行から推測して、発症日を四月一三日から一四日朝とするが、これは患者の同症発症日をどこまでさかのぼり得るかについて科学的、医学的見地から確実に証明できることだけを述べたにすぎないものであり、他方、同症発症を確認し得る検査所見及び症候がないのは医師が同症特有の症状の有無に注意を払った問診及び診察をしなかった結果にすぎず、患者の症状の進行が急激であったと断ずるには疑いを生じさせる事情も存在するなど判示の事実関係の下においては、右鑑定のみに依拠して発症日は四月一三日から一四日朝と認定することには、経験則違反の違法がある。
三 開業医は、顆粒球減少症の副作用を有する多種の薬剤を長期間継続的に投与された患者について薬疹の可能性のある発疹を認めた場合においては、自院又は他の診療機関において患者が必要な検査、治療を速やかに受けることができるように相応の配慮をすべき義務がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年2月25日 平成7(オ)1205
登載
民集 第51巻2号502頁
参照法条
民法415条,民法709条,民訴法185条,民訴法394条
論点70第709条民法

一 一時的に我が国に滞在し将来出国が予定される外国人の逸失利益の算定方法
二 不法残留外国人の労災事故による逸失利益の算定に当たり我が国における就労可能期間を事故の約五箇月後まで勤めた会社を退社した日の翌日から三年間を超えて認めなかった原審の認定判断が不合理ではないとされた事例
三 損害賠償額を過少に算定した違法があるとしてされた上告の上告理由書提出期間経過後にこれを過大に算定した違法があるとしてされた附帯上告の適否

裁判要旨一 一時的に我が国に滞在し将来出国が予定される外国人の事故による逸失利益を算定するに当たっては、予測される我が国での就労可能期間内は我が国での収入等を基礎とし、その後は想定される出国先での収入等を基礎とするのが合理的であり、我が国における就労可能期間は、来日目的、事故の時点における本人の意思、在留資格の有無、在留資格の内容、在留期間、在留期間更新の実績及び蓋然性、就労資格の有無、就労の態様等の事実的に及び規範的な諸要素を考慮して、これを認定するのが相当である。
二 短期滞在の在留資格で我が国に入国し、在留期間経過後も不法に残留して就労していた外国人が、労災事故により後遺障害を残す負傷をし、事故後も国内に残留し事故の二〇日後から約五箇月後までの間は製本会社で就労するなどして収入を得ているが、最終的には退去強制の対象とならざるを得ず、特別に在留が合法化され退去強制を免れ得るなどの事情は認められないという判示の事実関係の下においては、右外国人の逸失利益の算定に当たり、我が国における就労可能期間を同人が事故後に勤めた右製本会社を退社した日の翌日から三年間を超えるものとは認められないとした原審の認定判断は、不合理とはいえない。
三 損害賠償額を過少に算定した違法があるとしてされた上告の上告理由書提出期間経過後に、これを過大に算定した違法があるとしてされた附帯上告は、不適法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年1月28日 平成5(オ)2132
登載
民集 第51巻1号78頁
参照法条
民法416条,民法709条,民訴法372条,民訴法396条,民訴規則58条,民訴規則57条
論点71第709条民法

一 交通事故の被害者がその後に第二の交通事故により死亡した場合に最初の事故の後遺障害による財産上の損害の額の算定に当たり被害者の死亡を考慮することの許否
二 交通事故の被害者が事故後に死亡した場合に後遺障害による財産上の損害の額の算定に当たり死亡後の生活費を控除することの許否

裁判要旨一 交通事故の被害者がその後に第二の交通事故により死亡した場合、最初の事故の後遺障害による財産上の損害の額の算定に当たっては、死亡の事実は就労可能期間の算定上考慮すべきものではない。
二 交通事故の被害者が事故後に死亡した場合、後遺障害による財産上の損害の額の算定に当たっては、事故と被害者の死亡との間に相当因果関係がある場合に限り、死亡後の生活費を控除することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成8年5月31日 平成5(オ)1958
登載
民集 第50巻6号1323頁
参照法条
民法416条,民法709条
論点72第709条民法

仮差押解放金に充てた借入金に対する利息及び自己資金に対する法定利率による金員と違法な仮差押命令の申立てにより債務者に通常生ずべき損害

裁判要旨不動産の仮差押命令の申立て及びその執行が債務者に対する不法行為となる場合において、債務者が仮差押解放金を供託してその執行の取消しを求めるため、金融機関から資金を借り入れ、あるいは自己の資金をもってこれに充てることを余儀なくされたときは、仮差押解放金の供託期間中に債務者が支払った右借入金に対する通常予測し得る範囲内の利息及び右自己資金に対する法定利率の割合に相当する金員は、右不法行為により債務者に通常生ずべき損害に当たる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年5月28日 平成7(オ)531
登載
民集 第50巻6号1301頁
参照法条
民法416条,民法709条
論点73第709条民法

売買契約の目的物に対する仮差押命令の申立てが違法である場合において売主が違約金支払による損害を被ることを債権者において予見することができたとされた事例

裁判要旨建物について代金一億円の売買契約が締結された後、違法な申立てにより、売主を債務者として右建物に対する仮差押命令が発せられて仮差押えの登記がされたため、売主が右契約の履行をすることができなくなり買主に違約金を支払ったことにより一〇〇〇万円相当の損害を被った場合には、債権者が、右申立ての時点において、売主が右建物を競売により代金四五二一万円で買い受けたことを知っており、売主が転売の意思を有すること及び売主が転売により少なくとも一三五〇万円の利益を得ることを知ることができたなど判示の事実関係の下においては、債権者は、右仮差押、えにより売主が売買契約を履行できずに一〇〇〇万円程度の違約金を負担せざるを得なくなることをも知ることができたというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年5月28日 平成7(オ)839
登載
集民 第179号71頁
参照法条
民法416条,民法709条
論点74第709条民法

後遺障害による逸失利益の算定に当たり事故後の別の原因による被害者の死亡を考慮することの許否

裁判要旨交通事故の被害者が後遺障害により労働能力の一部を喪失した場合における逸失利益の算定に当たっては、事故後に別の原因により被害者が死亡したとしても、事故の時点で、死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成8年4月25日 平成5(オ)527
登載
民集 第50巻5号1221頁
参照法条
民法416条,民法709条
論点75第709条民法

労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和四九年労働省令第三〇号)による特別支給金を被災労働者の損害額から控除することの可否

裁判要旨労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和四九年労働省令第三〇号)による特別支給金は、被災労働者の損害額から控除することができない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成8年2月23日 平成6(オ)992
登載
民集 第50巻2号249頁
参照法条
労働基準法84条2項,労働者災害補償保険法12条の4,労働者災害補償保険法(平成7年法律第35号による改正前のもの)23条1項,労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和49年労働省令第30号)1条,労働者災害補償保険特別支給金支給規則(昭和49年労働省令第30号)2条,民法709条
論点76第709条民法

会社が従業員株主らを他の株主よりも先に株主総会の会場に入場させて株主席の前方に着席させたことにより株主が希望する席に座る機会を失ったとしても右株主の法的利益が侵害されたということはできないとされた事例

裁判要旨会社が従業員株主らを他の株主よりも先に株主総会の会場に入場させて株主席の前方に着席させたことにより、株主が希望する席に座る機会を失ったとしても、右株主が会場中央部付近に着席した上、議長からの指名を受けて動議を提出したという事実関係の下においては、右株主の法的利益が侵害されたということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年11月12日 平成5(オ)1747
登載
集民 第180号671頁
参照法条
民法709条,商法237条ノ4
論点77第709条民法

一 一般国道等の道路の周辺住民が受けた自動車騒音の屋外騒音レベルの認定に違法はないとされた事例
二 一般国道等の道路の周辺住民がその供用に伴う自動車騒音等により受けた被害が社会生活上受忍すべき限度を超えるとして右道路の設置又は管理に瑕疵があるとされた事例
三 自動車騒音によるいわゆる生活妨害を被害の中心として多数の被害者から一律の額の慰謝料が請求された場合についての受忍限度を超える被害を受けた者とそうでない者とを識別するための基準の設定に違法はないとされた事例

裁判要旨一 一般国道等の道路の周辺住民がその供用に伴う自動車騒音にほぼ一日中暴露されている場合、右道路の周辺地域を交通量によって三地域に道路構造によって四区画に分類した上、右道路端からの遠近や右道路への見通しの程度に基づき、周辺住民を合計一九のグループに分け、鑑定の結果を基本にして、右グループごとに上限と下限の等価騒音レベルによる数値を抽出し、その幅のある数値をもって同一のグループに属する各住民が日常暴露された原則的な屋外騒音レベルと推認することに違法はない。
二 一般国道等の道路の周辺住民がその供用に伴う自動車騒音等により睡眠妨害、会話、電話による通話、家族の団らん、テレビ・ラジオの聴取等に対する妨害及びこれらの悪循環による精神的苦痛等の被害を受けている場合において、右道路は産業物資流通のための地域間交通に相当の寄与をしているが、右道路が地域住民の日常生活の維持存続に不可欠とまではいうことのできないいわゆる幹線道路であって、周辺住民が右道路の存在によってある程度の利益を受けているとしても、その利益とこれによって被る被害との間に、後者の増大に必然的に前者の増大が伴うというような彼此相補の関係はないなど判示の事情の存するときは、右被害は社会生活上受忍すべき限度を超え、右道路の設置又は管理には瑕疵があるというべきである。
三 一般国道等の道路の供用に伴う自動車騒音によるいわゆる生活妨害を被害の中心とし、多数の被害者から全員に共通する限度において各自の被害につき一律の額の慰謝料が請求された場合について、受忍限度を超える被害を受けた者とそうでない者とを識別するため、被害者の居住地における屋外等価騒音レベルを主要な基準とし、右道路端と居住地との距離を補助的な基準としたのは、侵害行為の態様及び被害の内容との関連性を考慮したものとして不合理ではなく、この基準の設定に違法はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成7年7月7日 平成4(オ)1503
登載
民集 第49巻7号1870頁
参照法条
民訴法185条,国家賠償法2条1項,民法709条
論点78第709条民法

一般国道等の道路の周辺住民からその供用に伴う自動車騒音等により被害を受けているとして右道路の供用の差止めが請求された場合につき右請求を認容すべき違法性があるとはいえないとされた事例

裁判要旨一般国道等の道路の周辺住民がその供用に伴う自動車騒音等により被害を受けている場合において、右道路の周辺住民が現に受け、将来も受ける蓋然性の高い被害の内容が、睡眠妨害、会話、電話による通話、家族の団らん、テレビ・ラジオの聴取等に対する妨害及びこれらの悪循環による精神的苦痛等のいわゆる生活妨害にとどまるのに対し、右道路が地域間交通や産業経済活動に対してその内容及び量においてかけがえのない多大な便益を提供しているなど判示の事情の存するときは、右道路の周辺住民による自動車騒音等の一定の値を超える侵入の差止請求を認容すべき違法性があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成7年7月7日 平成4(オ)1504
登載
民集 第49巻7号2599頁
参照法条
国家賠償法2条1項,民法709条
論点79第709条民法

工場の操業に起因する騒音等により被害を受けているとして隣接地住民がした操業の差止め及び慰謝料の請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨レデイミクストコンクリート製造工場の隣接地住民が右工場の操業に起因する騒音等により被害を受けているとして操業の差止め及び慰謝料の支払を請求したのに対し、住宅の建替えによって被害の程度が変化していること、付近は相当の交通騒音が存在する地域であることなど判示の事情を総合的に考察することなく、右工場の操業が法令等に違反していることを主な理由として、右請求を認容した原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成6年3月24日 平成1(オ)1682
登載
集民 第172号99頁
参照法条
民法198条,民法199条,民法709条
論点80第709条民法

一 地方税法三四八条二項ただし書にいう「固定資産を有料で借り受けた」とされる場合
二 市が公共の用に供するために借り受けた土地につき固定資産税を非課税とすることができないのに非課税措置を採ったことによる損害と右措置を採らなかったならば必要とされる右土地の使用の対価の支払を免れたという利益とは損益相殺の対象となるとされた事例

裁判要旨一 通常の取引上固定資産の貸借の対価に相当する額に至らないとしても、その固定資産の使用に対する代償として金員が支払われている場合は、地方税法三四八条二項ただし書にいう「固定資産を有料で借り受けた」場合に当たる。
二 市が公共の用に供するために借り受けた土地につき、固定資産税を非課税とすることができないのに非課税措置を採ったことにより、通常の賃貸借における賃料額よりかなり低額の使用料を支払うにとどめる旨の合意に至った場合においては、右措置を採ったことにより被った固定資産税相当額の損害と右措置を採らなかったならば必要とされる土地使用の対価の支払を免れたという利益とは、損益相殺の対象となる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成6年12月20日 平成5(行ツ)15
登載
民集 第48巻8号1676頁
参照法条
地方税法348条2項1号,東村山市税条例(昭和25年条例第4号)40条の6,地方自治法242条の2第1項4号,民法709条
論点81第709条民法

不法行為により死亡した者の相続人が加害者に対し死亡者の得べかりし普通恩給及び国民年金(老齢年金)をその逸失利益として請求することの可否

裁判要旨不法行為により死亡した者の得べかりし普通恩給及び国民年金(老齢年金)は、その逸失利益として相続人が相続によりこれを取得し、加害者に対してその賠償を請求することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成5年9月21日 平成1(オ)297
登載
集民 第169号793頁
参照法条
恩給法9条1項1号,国民年金法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)29条,民法709条,民法896条
論点82第709条民法

管理者に準ずる地位にある職員が組合員バッジの取外し命令に従わないため点呼執行業務から外して営業所構内の火山灰の除去作業に従事することを命じた業務命令が違法とはいえないとされた事例

裁判要旨自動車営業所の管理者に準ずる地位にある職員が、取外し命令を無視して組合員バッジの着用をやめないため、同人を通常業務である点呼執行業務から外し、営業所構内の火山灰の除去作業に従事することを命じた業務命令は、右作業が職場環境整備等のために必要な作業であり、従来も職員が必要に応じてこれを行うことがあったなど判示の事情の下においては、違法なものとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成5年6月11日 平成1(オ)1631
登載
集民 第169号117頁
参照法条
民法623条,民法709条,労働基準法13条
論点83第709条民法

一 民事上の請求として自衛隊の使用する航空機の離着陸等の差止め及び右航空機の騒音の規制を求める訴えの適否
二 国に対しアメリカ合衆国軍隊の使用する航空機の離着陸等の差止めを請求することの可否
三 国及びアメリカ合衆国軍隊が管理する飛行場の周辺住民が右飛行場に離着陸する航空機に起因する騒音等により被害を受けたとして国に対し慰謝料を請求した場合につき右被害が受忍限度の範囲内にあるとした判断に違法があるとされた事例

裁判要旨一 民事上の請求として自衛隊の使用する航空機の離着陸等の差止め及び右航空機の騒音の規制を求める訴えは不適法である。
二 国が日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づきアメリカ合衆国に対し同国軍隊の使用する施設及び区域として飛行場を提供している場合において、国に対し右軍隊の使用する航空機の離着陸等の差止めを請求することはできない。
三 国及びアメリカ合衆国軍隊が管理する飛行場の周辺住民が右飛行場に離着陸する航空機に起因する騒音等により被害を受けたとして国に対し慰謝料の支払を求めたのに対し、単に右飛行場の使用及び供用が高度の公共性を有するということから右被害が受忍限度の範囲内にあるとした原審の判断には、不法行為における侵害行為の違法性に関する法理の解釈適用を誤つた違法がある。
(一につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成5年2月25日 昭和62(オ)58
登載
民集 第47巻2号643頁
参照法条
民訴法第2編第1章訴,日本国とアメリカ合衆国との相互協力及び安全保障条約6条,日本国とアメリカ合衆国との相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定2条,民法198条299条,民法709条,国家賠償法1条1項,国家賠償法2条1項,日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法1条,日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法2条
論点84第709条民法

注文者が労働安全衛生法三〇条二項前段による指名をしなかったことと作業員の死亡事故との間に相当因果関係がないとされた事例

裁判要旨漁船の機関室で甲社と乙社の作業が並行して行われた際、甲社の作業員の過失によりアンモニアガスが漏出して乙社の作業員が死亡した場合において、甲乙両社に漁船の整備点検を分割発注した注文者が労働安全衛生法三〇条二項前段による指名をしていなかったとしても、当日予定されていた甲社の作業にはアンモニアガス漏出の危険性のあるものはなく、事故の原因となった作業は甲社の作業員がその場の思い付きで行ったものであるなど判示の事実関係の下では、注文者が右指名をしなかったことと事故との間に相当因果関係があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成5年1月21日 平成1(オ)745
登載
集民 第167号297頁
参照法条
民法709条,労働安全衛生法30条1項,労働安全衛生法30条2項
論点85第709条民法

違法な仮差押命令の申立てと債務者がその後に債務者と第三債務者との間で新たな取引が行われなくなったことにより喪失したと主張する得べかりし利益の損害との間に相当因果関係がないとされた事例

裁判要旨債権の仮差押命令の申立てが債務者に対する不法行為となる場合において,上記仮差押命令の申立ての後に債務者と第三債務者との間で新たな取引が行われなくなったとしても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,上記不法行為と債務者がその後に債務者と第三債務者との間で新たな取引が行われなくなったことにより喪失したと主張する得べかりし利益の損害との間に相当因果関係があるということはできない。
(1) 債務者は,1年4箇月間に7回にわたり第三債務者との間で商品の売買取引を行ったが,両者の間で商品の売買取引を継続的に行う旨の合意があったことはうかがわれず,債務者において両者間の商品の売買取引が将来にわたって反復継続して行われるものと期待できるだけの事情があったとはいえない。
(2) 上記仮差押命令の執行は,上記仮差押命令が第三債務者に送達された日の5日後に取り消され,その頃,第三債務者に対してその旨の通知がされており,第三債務者が債務者に新たな商品の発注を行わない理由として上記仮差押命令の執行を特に挙げていたという事情もうかがわれない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成31年3月7日 平成29(受)1372
登載
集民 第261号87頁
参照法条
民法416条,民法709条
論点86第709条民法

夫婦の一方が他方と不貞行為に及んだ第三者に対し離婚に伴う慰謝料を請求することの可否

裁判要旨夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対し,当該第三者が,単に不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成31年2月19日 平成29(受)1456
登載
民集 第73巻2号187頁
参照法条
民法709条,民法710条
論点87第709条民法

親会社が,自社及び子会社等のグループ会社における法令遵守体制を整備し,法令等の遵守に関する相談窓口を設け,現に相談への対応を行っていた場合において,親会社が子会社の従業員による相談の申出の際に求められた対応をしなかったことをもって,信義則上の義務違反があったとはいえないとされた事例

裁判要旨Y社が,法令等の遵守に関する社員行動基準を定め,自社及び子会社である甲社,乙社等のグループ会社から成る企業集団の業務の適正等を確保するための体制を整備し,その一環として,上記グループ会社の事業場内で就労する者から法令等の遵守に関する相談を受ける相談窓口を設け,上記の者に対し,上記相談窓口に係る制度を周知してその利用を促し,現に上記相談窓口における相談への対応を行っていた場合において,甲社の従業員が,上記相談窓口に対し,甲社の元契約社員であって退職後は派遣会社を介してY社の別の事業場内で勤務していたXのために,Xの元交際相手である乙社の従業員AがXの自宅の近くに来ているようなので事実確認等の対応をしてほしいとの相談の申出をしたときであっても,次の(1)~(3)など判示の事情の下においては,Y社において上記申出の際に求められたXに対する事実確認等の対応をしなかったことをもって,Y社のXに対する損害賠償責任を生じさせることとなる信義則上の義務違反があったとはいえない。
(1) 上記体制の仕組みの具体的内容は,Y社において上記相談窓口に対する相談の申出をした者の求める対応をすべきとするものであったとはうかがわれない。
(2) 上記申出に係る相談の内容は,Xが退職した後に上記グループ会社の事業場外で行われた行為に関するものであり,Aの職務執行に直接関係するものとはうかがわれない。
(3) 上記申出の当時,Xは,既にAと同じ職場では就労しておらず,上記申出に係るAの行為が行われてから8箇月以上経過していた。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成30年2月15日 平成28(受)2076
登載
集民 第258号43頁
参照法条
民法1条2項,民法415条,民法709条
論点88第709条民法

1 精神障害者と同居する配偶者と民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」
2 法定の監督義務者に準ずべき者と民法714条1項の類推適用
3 線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた認知症の者の妻が法定の監督義務者に準ずべき者に当たらないとされた事例
4 線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた認知症の者の長男が法定の監督義務者に準ずべき者に当たらないとされた事例

裁判要旨1 精神障害者と同居する配偶者であるからといって,その者が民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできない。
2 法定の監督義務者に該当しない者であっても,責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし,第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には,法定の監督義務者に準ずべき者として,民法714条1項〈責任無能力者の監督義務者等の責任〉が類推適用される。
3 認知症により責任を弁識する能力のない者Aが線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた場合において,Aの妻Y1が,長年Aと同居しており長男Y2らの了解を得てAの介護に当たっていたものの,当時85歳で左右下肢に麻ひ拘縮があり要介護1の認定を受けており,Aの介護につきY2の妻Bの補助を受けていたなど判示の事情の下では,Y1は,民法714条1項所定の法定の監督義務者に準ずべき者に当たらない。
4 認知症により責任を弁識する能力のない者Aが線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた場合において,Aの長男Y2がAの介護に関する話合いに加わり,Y2の妻BがA宅の近隣に住んでA宅に通いながらAの妻Y1によるAの介護を補助していたものの,Y2自身は,当時20年以上もAと同居しておらず,上記の事故直前の時期においても1箇月に3回程度週末にA宅を訪ねていたにすぎないなど判示の事情の下では,Y2は,民法714条1項所定の法定の監督義務者に準ずべき者に当たらない。
(1,2につき補足意見,4につき意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成28年3月1日 平成26(受)1434
登載
民集 第70巻3号681頁
参照法条
(1~4につき)民法709条,民法713条,民法714条 (1につき)民法752条,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(平成25年法律第47号による改正前のもの)20条
論点89第709条民法

台湾統治中の日本がXの父親を含む台湾の一民族の暮らしぶりを博覧会で見せ物として展示したという内容を含むテレビ番組が,Xの名誉を毀損するものではないとされた事例

裁判要旨テレビ番組を視聴した一般の視聴者において,その番組の内容について,日本が,約100年前に,台湾統治の成果を世界に示す目的で,西欧列強が野蛮で劣った植民地の人間を文明化させていると宣伝するために行っていた「人間動物園」と呼ばれる見せ物をまねて,Xの父親を含む台湾の一民族を,英国で開催された博覧会に連れて行き,その暮らしぶりを展示するという差別的な取扱いをしたという事実を摘示するものと理解するのが通常であるなど判示の事情の下においては,その番組は,Xの名誉を毀損するものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成28年1月21日 平成26(受)547
登載
集民 第252号1頁
参照法条
民法709条,民法710条
論点90第709条民法

責任を弁識する能力のない未成年者が,サッカーボールを蹴って他人に損害を加えた場合において,その親権者が民法714条1項の監督義務者としての義務を怠らなかったとされた事例

裁判要旨責任を弁識する能力のない未成年者の蹴ったサッカーボールが校庭から道路に転がり出て,これを避けようとした自動二輪車の運転者が転倒して負傷し,その後死亡した場合において,次の(1)~(3)など判示の事情の下では,当該未成年者の親権者は,民法714条1項〈責任無能力者の監督義務者等の責任〉の監督義務者としての義務を怠らなかったというべきである。
(1) 上記未成年者は,放課後,児童らのために開放されていた小学校の校庭において,使用可能な状態で設置されていたサッカーゴールに向けてフリーキックの練習をしていたのであり,殊更に道路に向けてボールを蹴ったなどの事情もうかがわれない。
(2) 上記サッカーゴールに向けてボールを蹴ったとしても,ボールが道路上に出ることが常態であったものとはみられない。
(3) 上記未成年者の親権者である父母は,危険な行為に及ばないよう日頃から通常のしつけをしており,上記未成年者の本件における行為について具体的に予見可能であったなどの特別の事情があったこともうかがわれない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成27年4月9日 平成24(受)1948
登載
民集 第69巻3号455頁
参照法条
民法709条,民法712条,民法714条
論点91第709条民法

1 不法行為によって死亡した被害者の損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受けるなどした場合に,上記の遺族補償年金との間で損益相殺的な調整を行うべき損害
2 不法行為によって死亡した被害者の損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受けるなどしたとして損益相殺的な調整をするに当たって,損害が塡補されたと評価すべき時期

裁判要旨1 被害者が不法行為によって死亡した場合において,その損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定したときは,損害賠償額を算定するに当たり,上記の遺族補償年金につき,その塡補の対象となる被扶養利益の喪失による損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する逸失利益等の消極損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきである。
2 被害者が不法行為によって死亡した場合において,その損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定したときは,制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,その塡補の対象となる損害は不法行為の時に塡補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが相当である。
裁判
最高裁判所大法廷 平成27年3月4日 平成24(受)1478
登載
民集 第69巻2号178頁
参照法条
(1,2につき)民法709条,労働者災害補償保険法16条 (2につき)民法412条
論点92第709条民法

自動車保険契約の人身傷害補償条項の被保険者である被害者に過失がある場合において上記条項に基づき保険金を支払った保険会社による損害賠償請求権の代位取得の範囲

裁判要旨保険会社は保険金請求権者の権利を害さない範囲内に限り保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する旨の定めがある自動車保険契約の人身傷害補償条項の被保険者である被害者に過失がある場合において,上記条項に基づき被害者が被った損害に対して保険金を支払った保険会社は,上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が民法上認められるべき過失相殺前の損害額を上回るときに限り,その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成24年5月29日 平成22(受)2035
登載
集民 第240号261頁
参照法条
商法(平成20年法律第57号による改正前のもの)662条,保険法25条,民法91条,民法709条,民法722条2項
論点93第709条民法

インターネット上のウェブサイトに記事を掲載した行為が名誉毀損の不法行為を構成するとされた事例

裁判要旨インターネット上のウェブサイトに掲載された記事が,それ自体として一般の閲覧者がおよそ信用性を有しないと認識し,評価するようなものではなく,会社の業務の一環として取引先を訪問した従業員が取
引先の所持していた物をその了解なく持ち去った旨の事実を摘示す
るものと理解されるのが通常であるなど判示の事情の下では,その記事を掲載した行為は,上記の会社及び従業員の名誉を毀損するものとして不法行為を構成する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成24年3月23日 平成22(受)1529
登載
集民 第240号149頁
参照法条
民法709条,民法710条
論点94第709条民法

1 自動車保険契約の人身傷害条項に基づき保険金を支払った保険会社による損害金元本に対する遅延損害金の支払請求権の代位取得の有無
2 自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に過失がある場合において上記条項に基づき保険金を支払った保険会社による損害賠償請求権の代位取得の範囲

裁判要旨1 被害者が被る損害の元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めがない自動車保険契約の人身傷害条項に基づき被害者が被った損害に対して保険金を支払った保険会社は,上記保険金に相当する額の保険金請求権者の加害者に対する損害金元本の支払請求権を代位取得するものであって,損害金元本に対する遅延損害金の支払請求権を代位取得するものではない。
2 保険会社は保険金請求権者の権利を害さない範囲内に限り保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する旨の定めがある自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に過失がある場合において,上記条項に基づき被害者が被った損害に対して保険金を支払った保険会社は,上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が民法上認められるべき過失相殺前の損害額を上回る場合に限り,その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する。
(1,2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成24年2月20日 平成21(受)1461
登載
民集 第66巻2号742頁
参照法条
(1,2につき)商法(平成20年法律第57号による改正前のもの)662条,保険法25条,民法91条,民法709条,(2につき)民法722条2項
論点95第709条民法

新聞社が通信社からの配信に基づき自己の発行する新聞に記事を掲載するに当たり当該記事に摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があるといえる場合

裁判要旨新聞社が,通信社からの配信に基づき,自己の発行する新聞に記事を掲載した場合において,少なくとも,当該通信社と当該新聞社とが,記事の取材,作成,配信及び掲載という一連の過程において,報道主体としての一体性を有すると評価することができるときは,当該通信社が当該配信記事に摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があるのであれば,当該新聞社が当該配信記事に摘示された事実の真実性に疑いを抱くべき事実があるにもかかわらずこれを漫然と掲載したなど特段の事情のない限り,当該新聞社が自己の発行する新聞に掲載した記事に摘示された事実を真実と信ずるについても相当の理由があり,以上の理は,新聞社が掲載した記事に,これが通信社からの配信に基づく記事である旨の表示がない場合であっても異なるものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成23年4月28日 平成21(受)2057
登載
民集 第65巻3号1499頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点96第709条民法

精神神経科の医師の患者に対する言動と上記患者が上記言動に接した後にPTSD(外傷後ストレス障害)と診断された症状との間に相当因果関係があるということはできないとされた事例

裁判要旨精神神経科の医師が,過去に知人から首を絞められるなどの被害を受けたことのある患者に対し,人格に問題があり,病名は「人格障害」であると発言するなどした後,上記患者が,精神科の他の医師に対し,頭痛,集中力低下等の症状を訴え,上記の言動を再外傷体験としてPTSD(外傷後ストレス障害)を発症した旨の診断を受けたとしても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,上記の言動と上記症状との間に相当因果関係があるということはできない。
(1) 上記の言動は,それ自体がPTSDの発症原因となり得る外傷的な出来事に当たるものではないし,上記患者がPTSD発症のそもそもの原因となった外傷体験であるとする上記被害と類似し,又はこれを想起させるものでもない。
(2) PTSDの発症原因となり得る外傷体験のある者は,これとは類似せず,また,これを想起させるものともいえない他の重大でないストレス要因によってもPTSDを発症することがある旨の医学的知見が認められているわけではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成23年4月26日 平成21(受)733
登載
集民 第236号497頁
参照法条
民法416条,民法709条
論点97第709条民法

簡易生命保険契約の保険金受取人が無断で保険金等の支払を受けた者に対し不法行為に基づく損害賠償を請求する場合において上記の者が損害の発生を否認して請求を争うことが信義誠実の原則に反し許されないとされた事例

裁判要旨簡易生命保険契約の保険金受取人であるXが,無断で保険金等の支払を受けたY1及びY2に対し不法行為に基づく損害賠償を請求する場合において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,上記支払が有効な弁済とはならず,Xが依然として上記保険金等の支払請求権を有しているとしても,Y1及びY2がXに損害が発生したことを否認してXの損害賠償請求を争うことは,信義誠実の原則に反し許されない。
(1) Y1及びY2は,郵便局員から上記保険金等の支払請求権がXに帰属する旨の説明を受けていながら,Xに無断で,X名義の支払請求書兼受領証を作成するなどして,支払請求手続きを執った。
(2) Y1及びY2が上記保険金等の支払を受けた後,Xは,日本郵政公社に上記保険金等の支払を請求したが拒絶された。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成23年2月18日 平成21(受)216
登載
集民 第236号147頁
参照法条
民法1条2項,民法478条,民法709条,民法719条,民訴法2条
論点98第709条民法

1 我が国について既に効力を生じている文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に我が国が国家として承認していない国が事後に加入した場合における同国の国民の著作物である映画の著作権法6条3号所定の著作物該当性
2 著作権法6条各号所定の著作物に該当しない著作物の利用行為と不法行為の成否

裁判要旨1 我が国について既に効力を生じている文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に我が国が国家として承認していない国が事後に加入した場合において,我が国が同国との間で同条約に基づく権利義務は発生しないという立場を採っているときは,同国の国民の著作物である映画は,同国が上記条約に加入したことによって,著作権法6条3号所定の著作物に当たるとされることはない。
2 著作権法6条各号所定の著作物に該当しない著作物の利用行為は,同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成23年12月8日 平成21(受)602
登載
民集 第65巻9号3275頁
参照法条
(1につき)著作権法6条3号,文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約3条(1)(a) (2につき)著作権法6条,民法709条
論点99第709条民法

葬儀場の営業を行う業者が,その近隣に居宅を共有してこれに居住する者に対し,上記居宅から葬儀場の様子が見えないようにするための目隠しを設置する措置を更に講ずべき義務も,葬儀場の営業についての不法行為責任も負わないとされた事例

裁判要旨葬儀場の営業を行う業者は,その近隣に上記営業の開始前から建っている居宅から,告別式等の参列者が葬儀場に参集する様子や棺が搬入又は搬出される様子等が見えることにより,上記居宅を共有してこれに居住する者が強いストレスを感じているとしても,次の(1)〜(4)など判示の事情の下においては,上記の者に対し,上記居宅から葬儀場の様子が見えないようにするための目隠しを設置する措置を更に講ずべき義務も,葬儀場の営業についての不法行為責任も負わない。
(1) 葬儀場と上記居宅との間には幅員15.3mの道路があり,上記居宅において葬儀場の様子が見える場所は2階の一部の居室等に限られる。
(2) 葬儀場における棺の搬入や出棺は,霊きゅう車等を葬儀場の建物の玄関先まで近付けて停車させ,速やかに,ごく短時間のうちに行われている。
(3) 葬儀場の建物の建築やその営業は,行政法規の規制に反するものではない。
(4) 上記業者は,周辺住民により構成される自治会からの要望事項に配慮して,目隠しのためのフェンスの設置,入口位置の変更,防音,防臭対策等の措置を講じている。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年6月29日 平成21(受)1709
登載
集民 第234号159頁
参照法条
民法2条,民法709条,憲法13条
論点100第709条民法

1 労働審判に対し適法な異議の申立てがあったため訴訟に移行した場合において,当該労働審判は民訴法23条1項6号にいう「前審の裁判」に当たるか
2 統括事業部長を兼務する取締役の地位にある従業員に対して会社がした普通解雇が,当該従業員に対する不法行為を構成するとはいえないとされた事例

裁判要旨1 労働審判に対し適法な異議の申立てがあったため訴訟に移行した場合において,当該労働審判は民訴法23条1項6号にいう「前審の裁判」に当たらない。
2 統括事業部長を兼務する取締役の地位にある従業員が,その勤務態度は他の従業員や取引先から会社に対し苦情が寄せられるほどであり,これはその飲酒癖に起因するものであったのに,代表取締役社長から注意されても飲酒を控えることがなく,取引先の担当者と打合せをする予定のある日に欠勤した上,その日の夜に同社長と電話で話をした際,酒に酔った状態で「(自分を)辞めさせたらどうですか。」と述べたなど判示の事実関係の下では,当該従業員に対して会社がした普通解雇は,懲戒処分などの解雇以外の方法を採ることなくされたとしても,当該従業員に対する不法行為を構成するものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年5月25日 平成21(オ)1727
登載
集民 第234号99頁
参照法条
(1につき)民訴法23条1項6号,労働審判法20条1項,労働審判法22条(2につき)民法709条,労働基準法(平成19年法律第128号による改正前のもの)18条の2,労働契約法16条
論点101第709条民法

当直の看護師らが抑制具であるミトンを用いて入院中の患者の両上肢をベッドに拘束した行為が,診療契約上の義務に違反せず,不法行為法上違法ともいえないとされた事例

裁判要旨当直の看護師らが抑制具であるミトン(手先の丸まった長い手袋様のもので緊縛用のひもが付いているもの)を用いて入院中の患者の両上肢をベッドに拘束した行為は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記患者が転倒,転落により重大な傷害を負う危険を避けるため緊急やむを得ず行われた行為であって,診療契約上の義務に違反するものではなく,不法行為法上違法ともいえない。
(1) 上記患者は,上記行為が行われた当日,せん妄の状態で,深夜頻繁にナースコールを繰り返し,車いすで詰所に行ってはオムツの交換を求め,大声を出すなどした上,興奮してベッドに起き上がろうとする行動を繰り返していたものであり,当時80歳という高齢で,4か月前に他病院で転倒して骨折したことがあったほか,10日ほど前にもせん妄の状態で上記と同様の行動を繰り返して転倒したことがあった。
(2) 看護師らは,約4時間にもわたって,上記患者の求めに応じて汚れていなくてもオムツを交換し,お茶を飲ませるなどして落ち着かせようと努めたが,上記患者の興奮状態は一向に収まらず,また,その勤務態勢からして,深夜,長時間にわたり,看護師が上記患者に付きっきりで対応することは困難であった。
(3) 看護師が上記患者の入眠を確認して速やかにミトンを外したため,上記行為による拘束時間は約2時間であった。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年1月26日 平成20(受)2029
登載
民集 第64巻1号219頁
参照法条
民法415条,民法709条
論点102第709条民法

1 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働者災害補償保険法に基づく保険給付を受けたときに,この社会保険給付との間で損益相殺的な調整を行うべき損害
2 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働者災害補償保険法に基づく保険給付の支給がされ,又は支給されることが確定したときに,損益相殺的な調整に当たって,損害がてん補されたと評価すべき時期

裁判要旨1 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働者災害補償保険法に基づく保険給付を受けたときは,この社会保険給付については,これによるてん補の対象となる特定の損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきである。
2 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働者災害補償保険法に基づく保険給付の支給がされ,又は支給されることが確定したときには,制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,てん補の対象となる損害は,不法行為の時にてん補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整を行うべきである。
(1,2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成22年10月15日 平成21(受)1932
登載
集民 第235号65頁
参照法条
(1,2につき)民法709条,労働者災害補償保険法22条の2,労働者災害補償保険法22条の3 (2につき)民法412条
論点103第709条民法

貸金業者が借主に貸金の支払を請求し借主から弁済を受ける行為が不法行為を構成する場合

裁判要旨貸金業者が借主に対し貸金の支払を請求し借主から弁済を受ける行為が不法行為を構成するのは,貸金業者が当該貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに,あえてその請求をしたなど,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られ,この理は,当該貸金業者が過払金の受領につき民法704条所定の悪意の受益者であると推定されるときであっても異ならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年9月4日 平成21(受)47
登載
民集 第63巻7号1445頁
参照法条
民法704条,民法709条
論点104第709条民法

動産の購入代金を立替払し立替金債務の担保として当該動産の所有権を留保した者は,第三者の土地上に存在しその土地所有権の行使を妨害している当該動産について,その所有権が担保権の性質を有することを理由として撤去義務や不法行為責任を免れるか

裁判要旨動産の購入代金を立替払した者が,立替金債務の担保として当該動産の所有権を留保する場合において,買主との契約上,期限の利益喪失による残債務全額の弁済期の到来前は当該動産を占有,使用する権原を有せず,その経過後は買主から当該動産の引渡しを受け,これを売却してその代金を残債務の弁済に充当することができるとされているときは,所有権を留保した者は,第三者の土地上に存在してその土地所有権の行使を妨害している当該動産について,上記弁済期が到来するまでは,特段の事情がない限り,撤去義務や不法行為責任を負うことはないが,上記弁済期が経過した後は,留保された所有権が担保権の性質を有するからといって撤去義務や不法行為責任を免れることはない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年3月10日 平成20(受)422
登載
民集 第63巻3号385頁
参照法条
民法206条,民法369条(所有権留保),民法709条
論点105第709条民法

民法704条〈悪意の受益者の返還義務等〉後段の規定の趣旨

裁判要旨民法704条〈悪意の受益者の返還義務等〉後段の規定は,悪意の受益者が不法行為の要件を充足する限りにおいて不法行為責任を負うことを注意的に規定したものにすぎず,悪意の受益者に対して不法行為責任とは異なる特別の責任を負わせたものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年11月9日 平成21(受)247
登載
民集 第63巻9号1987頁
参照法条
民法704条後段,民法709条
論点106第709条民法

Yが投資資金名下にXから金員を騙取した場合に,Xからの不法行為に基づく損害賠償請求においてYが詐欺の手段として配当金名下にXに交付した金員の額を損益相殺等の対象としてXの損害額から控除することは,民法708条〈不法原因給付〉の趣旨に反するものとして許されないとされた事例

裁判要旨Yが自己を介して米国債を購入すれば高額の配当金を得ることができると架空の事実を申し向けてXから金員を騙取した場合において,Yが,詐欺の発覚を防ぎ,更なる詐欺を実行するための手段として,あたかも米国債を購入して配当金を得たかのように装い,配当金名下にXに金員を交付したという事情の下では,XのYに対する不法行為に基づく損害賠償請求において同金員の額を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象としてXの損害額から控除することは,民法708条〈不法原因給付〉の趣旨に反するものとして許されない。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年6月24日 平成19(受)1146
登載
集民 第228号385頁
参照法条
民法708条,民法709条,刑法246条1項
論点107第709条民法

1 社会の倫理,道徳に反する醜悪な行為に該当する不法行為の被害者が当該醜悪な行為に係る給付を受けて利益を得た場合に,被害者からの損害賠償請求において同利益を損益相殺等の対象として被害者の損害額から控除することの可否
2 いわゆるヤミ金融業者が元利金等の名目で違法に金員を取得する手段として著しく高利の貸付けの形をとって借主に金員を交付し,借主が貸付金に相当する利益を得た場合に,借主からの不法行為に基づく損害賠償請求において同利益を損益相殺等の対象として借主の損害額から控除することは,民法708条〈不法原因給付〉の趣旨に反するものとして許されないとされた事例

裁判要旨1 社会の倫理,道徳に反する醜悪な行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るとともに,当該醜悪な行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,同利益については,加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく,被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除することも,民法708条〈不法原因給付〉の趣旨に反するものとして許されない。
2 いわゆるヤミ金融の組織に属する業者が,借主から元利金等の名目で違法に金員を取得して多大の利益を得る手段として,年利数百%〜数千%の著しく高利の貸付けという形をとって借主に金員を交付し,これにより,当該借主が,弁済として交付した金員に相当する損害を被るとともに,上記貸付けとしての金員の交付によって利益を得たという事情の下では,当該借主から上記組織の統括者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において同利益を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として当該借主の損害額から控除することは,民法708条の趣旨に反するものとして許されない。
(1,2につき意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年6月10日 平成19(受)569
登載
民集 第62巻6号1488頁
参照法条
(1,2につき)民法708条,民法709条 (2につき)出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項
論点108第709条民法

採石権侵害の不法行為を理由とする損害賠償請求事件において,損害の発生を前提としながら,民訴法248条の適用について考慮することなく,損害額を算定することができないとして請求を棄却した原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨採石権侵害の不法行為を理由とするXのYに対する損害賠償請求事件において,Xが採石権を有する土地でYが採石したとの事実が認定されており,これによればXに損害が発生したことは明らかである以上,上記採石行為の後,Yが当該土地につき採石権を取得して適法に採石したため,Yの違法な行為による採石量と適法な行為による採石量とを明確に区別することができず,損害額の立証が極めて困難であったとしても,民訴法248条により,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて相当な損害額が認定されなければならず,損害額を算定することができないとしてXの請求を棄却した原審の判断には,違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年6月10日 平成18(受)265
登載
集民 第228号181頁
参照法条
民訴法248条,民法709条
論点109第709条民法

痴漢の虚偽申告を理由とするXのYに対する損害賠償請求訴訟において,目撃者が見付からない場合に,これに準ずる立場にある者の証人尋問を実施せず,Yの供述の信用性を肯定して,Xが痴漢行為をしたと認めた原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨電車内でXから痴漢行為を受けた旨のYの警察官に対する申告が虚偽であることを理由としてXがYに損害賠償を求める訴訟において,目撃者が見付からない場合に,(1)痴漢行為があったとYが主張する時点の前後にかけてYと電話をしていたAが電話を通して聞いたXとYの発言についてのAの検察官に対する供述内容が,Yの供述と整合しない一方で,Xの供述と合致すること,(2)Aは目撃証人に準ずる立場にある唯一の人物ということができることなど判示の事情の下においては,Aの証人尋問を実施することなく,Yの供述の信用性を肯定し,Xの供述の信用性を否定して,Xが痴漢行為をしたと認めた原審の判断には,違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年11月7日 平成19(受)1878
登載
集民 第229号151頁
参照法条
民法709条,民訴法181条,民訴法247条
論点110第709条民法

交通事故の加害者Yが被害者Xに賠償すべき人的損害の額の算定に当たり,Xの父が締結していた自動車保険契約の人身傷害補償条項に基づきXが支払を受けた保険金の額を控除した原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨Yが運転する車両との衝突事故により傷害を負ったXが,Xの父が保険会社との間で締結していた自動車保険契約の人身傷害補償条項に基づき保険金の支払を受けた場合において,上記保険金の支払をもってYの損害賠償債務の履行と同視することはできないこと,上記保険契約にはいわゆる代位に関する約定があり,上記保険会社は上記保険金の支払によってXのYに対する損害賠償請求権の一部を代位する可能性があるが,原審が確定した事実関係からは,上記条項を含む上記保険契約の具体的内容等が明らかではないことなど判示の事情の下では,上記事故によるXの人的損害についてYが賠償すべき額を算定するに当たり,上記保険契約の具体的内容等について審理判断することなく,Xの過失割合による減額をした残損害額から上記保険金の額を控除した原審の判断には,違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年10月7日 平成20(受)12
登載
集民 第229号19頁
参照法条
民法709条,民法722条2項,商法662条
論点111第709条民法

Xの開発,製造したゲーム機を順次XからY,YからAに販売する旨の契約が締結に至らなかった場合においてYがXに対して契約準備段階における信義則上の注意義務違反を理由とする損害賠償責任を負うとされた事例

裁判要旨XがAの意向を受けて開発,製造したゲーム機を順次XからY,YからAに継続的に販売する旨の契約が,締結の直前にAが突然ゲーム機の改良要求をしたことによって締結に至らなかった場合において,Yが,開発等の続行に難色を示すXに対し,Aから具体的な発注を受けていないにもかかわらず,ゲーム機200台を発注する旨を口頭で約したり,具体的な発注内容を記載した発注書及び条件提示書を交付するなどし,ゲーム機の売買契約が確実に締結されるとの過大な期待を抱かせてゲーム機の開発,製造に至らせたなど判示の事情の下では,Yは,Xに対する契約準備段階における信義則上の注意義務に違反したものとして,これによりXに生じた損害を賠償する責任を負う。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成19年2月27日 平成17(受)869
登載
集民 第223号343頁
参照法条
民法1条2項,民法415条,民法709条
論点112第709条民法

1 建築会社の担当者が顧客に対し融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後にその敷地の一部売却により返済資金を調達する計画を提案した際に上記計画には建築基準法にかかわる問題があることを説明しなかった点に説明義務違反があるとされた事例
2 建築会社の担当者と共に顧客に対し融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後にその敷地の一部売却により返済資金を調達する計画を説明した銀行の担当者に上記計画には建築基準法にかかわる問題があることについての説明義務違反等がないとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨1 建築会社の担当者が,顧客に対し,銀行から融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後,敷地として建築確認を受けた土地の一部を売却することにより融資の返済資金を調達する計画を提案し,顧客が,上記計画に沿って銀行から融資を受けて建物を建築したが,その後,上記土地の一部を予定どおり売却することができず,上記融資の返済資金を調達することができなくなったところ,上記計画には,上記土地の一部の売却によりその余の敷地部分のみでは上記建物が容積率の制限を超える違法な建築物となり,また,上記土地の一部の買主がこれを敷地として建物を建築する際には,敷地を二重に使用することとなって建築確認を直ちには受けられない可能性があるという問題があったなど判示の事実関係の下においては,上記問題を認識しながらこれを顧客に説明しなかった上記担当者には,信義則上の説明義務違反がある。
2 銀行の担当者が,顧客に対し,融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後,敷地として建築確認を受けた土地の一部を売却することにより融資の返済資金を調達する計画を提案した建築会社の担当者と共に,上記計画を説明し,顧客が,上記計画に沿って銀行から融資を受けて建物を建築したが,その後,上記土地の一部を予定どおり売却することができず,上記融資の返済資金を調達することができなくなったところ,上記計画には,上記土地の一部の買主がこれを敷地として建物を建築する際,敷地を二重に使用することとなって建築確認を直ちには受けられない可能性があることなどの問題があったなど判示の事実関係の下においては,顧客が,原告として,銀行の担当者は顧客に対して上記土地の一部の売却について取引先に働き掛けてでも確実に実現させる旨述べたなどの事情があったと主張しているにもかかわらず,上記事情の有無を審理することなく,上記担当者について,上記問題を含め上記土地の一部の売却可能性を調査し,これを顧客に説明すべき信義則上の義務がないとした原審の判断には,違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成18年6月12日 平成16(受)1219
登載
集民 第220号403頁
参照法条
(1,2につき)民法1条2項,民法415条,民法709条,建築基準法52条 (1につき)民法632条 (2につき)民法587条
論点113第709条民法

冠状動脈バイパス手術を受けた患者が術後に腸管え死となって死亡した場合において担当医師に腸管え死が発生している可能性が高いと診断し直ちに開腹手術を実施すべき注意義務を怠った過失があるとされた事例

裁判要旨冠状動脈バイパス手術を受けた患者が術後に腸管え死となって死亡した場合において,(1)当該患者は,腹痛を訴え続け,鎮痛剤を投与されてもその腹痛が強くなるとともに,高度のアシドーシスを示し,腸管のぜん動こう進薬を投与されても腸管閉そくの症状が改善されない状況にあったこと,(2)当時の医学的知見では,患者が上記のような状況にあるときには,腸管え死の発生が高い確率で考えられ,腸管え死であるときには,直ちに開腹手術を実施し,え死部分を切除しなければ,救命の余地はないとされていたこと,(3)当該患者は,開腹手術の実施によってかえって生命の危険が高まるために同手術の実施を避けることが相当といえるような状況にはなかったこと,(4)当該患者の症状は次第に悪化し,経過観察によって改善を見込める状態にはなかったことなど判示の事情の下では,担当医師には,当該患者に腸管え死が発生している可能性が高いと診断し,直ちに開腹手術を実施し,腸管にえ死部分があればこれを切除すべき注意義務を怠った過失がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年4月18日 平成16(受)1147
登載
集民 第220号111頁
参照法条
民法415条,民法709条
論点114第709条民法

高等学校の生徒が課外のクラブ活動としてのサッカーの試合中に落雷により負傷した事故について引率者兼監督の教諭に落雷事故発生の危険が迫っていることを予見すべき注意義務の違反があるとされた事例

裁判要旨高等学校の生徒が,課外のクラブ活動としてのサッカーの試合中に落雷により負傷した場合において,その当時の文献には,運動場に居て雷鳴が聞こえるときには,遠くても直ちに屋内に避難すべきであるとの趣旨の記載が多く存在していること,上記試合の開始直前ころには,黒く固まった暗雲が立ち込め,雷鳴が聞こえ,雲の間で放電が起きるのが目撃されていたことなど判示の事実関係の下では,引率者兼監督の教諭は,落雷事故発生の危険が迫っていることを具体的に予見することが可能であったというべきであり,また,予見すべき注意義務を怠ったものというべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年3月13日 平成17(受)76
登載
集民 第219号703頁
参照法条
民法415条,民法709条,民法715条
論点115第709条民法

入院患者がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染した後に死亡した場合につき担当医師が早期に抗生剤バンコマイシンを投与しなかったことに過失があるとはいえないとした原審の判断に経験則又は採証法則に反する違法があるとされた事例

裁判要旨入院患者がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染した後に死亡した場合につき,鑑定書には,担当医師が早期に抗生剤バンコマイシンを投与しなかったことは当時の医療水準にかなうものではないという趣旨の指摘をするものと理解できる記載があることがうかがわれ,医師の意見書は,担当医師が早期に上記抗生剤を投与しなかったことについて当時の医療水準にかなうものであるという趣旨を指摘するものであるか否かが明らかではないなど判示の事情の下において,上記の鑑定書や意見書に基づいて,担当医師が早期に上記抗生剤を投与しなかったことに過失があるとはいえないとした原審の判断には,経験則又は採証法則に反する違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年1月27日 平成15(受)1739
登載
集民 第219号361頁
参照法条
民法415条,民法709条,民訴法247条
論点116第709条民法

ポリープ摘出手術を受けた患者が術後に出血性ショックにより死亡した場合につき担当医が追加輸血等を行わなかったことに過失があるとはいえないとした原審の判断に採証法則に反する違法があるとされた事例

裁判要旨上行結腸ポリープの摘出手術を受けた患者が,術後9日目に急性胃潰瘍に起因する出血性ショックにより死亡した場合において,患者の相当多量な血便や下血,ヘモグロビン値やヘマトクリット値の急激な下降,頻脈の出現,ショック指数の動向等からすれば,患者の循環血液量に顕著な不足を来す状態が継続し,輸血を追加する必要性があったことがうかがわれ,第1審で提出された医師Aの意見書中の担当医には追加輸血をするなどして当該患者のショック状態による重篤化を防止すべき義務違反があるとする意見が相当の合理性を有することを否定できず,むしろ,原審で提出された医師Bの意見書の追加輸血の必要性を否定する意見の方に疑問があると思われるにもかかわらず,両意見書の各内容を十分に比較検討する手続を執ることなく,医師Bの意見書が提出された原審の第1回口頭弁論期日において口頭弁論を終結した上,医師Bの意見書を主たる根拠として,担当医が追加輸血等を行わなかったことにつき過失を否定し,医師Aの意見書等に基づき担当医の過失を肯定した第1審判決の請求認容部分を取り消した原審の判断には,採証法則に反する違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年11月14日 平成16(受)2226
登載
集民 第222号167頁
参照法条
民法709条,民訴法247条
論点117第709条民法

売主から委託を受けてマンションの専有部分の販売に関する一切の事務を行っていた宅地建物取引業者に専有部分内に設置された防火戸の操作方法等につき買主に対して説明すべき信義則上の義務があるとされた事例

裁判要旨防火設備の一つとして重要な役割を果たし得る防火戸が室内に設置されたマンションの専有部分の販売に際し,防火戸の電源スイッチが一見してそれとは分かりにくい場所に設置され,それが切られた状態で専有部分の引渡しがされた場合において,宅地建物取引業者が,購入希望者に対する勧誘,説明等から引渡しに至るまで販売に関する一切の事務について売主から委託を受け,売主と一体となって同事務を行っていたこと,買主は,上記業者を信頼して売買契約を締結し,上記業者から専有部分の引渡しを受けたことなど判示の事情においては,上記業者には,買主に対し,防火戸の電源スイッチの位置,操作方法等について説明すべき信義則上の義務がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成17年9月16日 平成16(受)1847
登載
集民 第217号1007頁
参照法条
民法1条2項,民法555条,民法643条,民法709条
論点118第709条民法

貸金業者の債務者に対する取引履歴開示義務の有無

裁判要旨貸金業者は,債務者から取引履歴の開示を求められた場合には,その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り,貸金業の規制等に関する法律の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として,信義則上,その業務に関する帳簿に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負う。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成17年7月19日 平成16(受)965
登載
民集 第59巻6号1783頁
参照法条
民法1条2項,民法587条,民法709条,貸金業の規制等に関する法律19条,貸金業の規制等に関する法律施行規則16条
論点119第709条民法

我が国における加熱血液製剤の製造承認等に関する雑誌記者等の執筆者がその記事等に摘示されている事実を真実であると信じたことには相当の理由があるとして名誉毀損による不法行為の成立が否定された事例

裁判要旨血液学者で加熱血液製剤の治験統括医であった甲が血液製剤市場の最大手で加熱血液製剤の開発が遅れていた製薬会社に合わせて加熱血液製剤の治験を遅らせ,その結果,我が国における加熱血液製剤の製造承認が米国より2年4か月遅れた事実,治験の時期に甲が製薬会社各社から資金提供を受けていた事実等が,乙の執筆した雑誌記事等において摘示された場合につき,甲が新聞社のインタビュー等に対し,開発が遅れていた上記製薬会社に合わせて加熱血液製剤の治験を遅らせたことを認める旨の発言をしていたこと,甲の上記発言内容を裏付ける事実が存在したこと,甲が講演において自己が設立の準備をしている血友病治療にかかわる財団法人への寄付を募っている旨の発言をしており,同財団法人への寄付を製薬会社各社に要求しているとのうわさがあるとの指摘に対してもその事実を否定しなかったことなど判示の事実関係の下においては,乙が上記記事等において摘示した事実を真実であると信じたことには相当の理由があり,名誉毀損による不法行為の成立は否定される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年6月16日 平成15(受)900
登載
集民 第217号139頁
参照法条
民法709条,刑法230条の2第1項
論点120第709条民法

損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合

裁判要旨損害賠償額の算定に当たり,被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は,民事法定利率によらなければならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成17年6月14日 平成16(受)1888
登載
民集 第59巻5号983頁
参照法条
民法404条,民法709条
論点121第709条民法

1 所有者から占有権原の設定を受けて抵当不動産を占有する者に対して抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる場合
2 抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり抵当権者が直接自己への抵当不動産の明渡しを請求することができる場合
3 第三者による抵当不動産の占有と抵当権者についての賃料額相当の損害の発生の有無

裁判要旨1 抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者であっても,抵当権設定登記後に占有権原の設定を受けたものであり,その設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ,その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権者は,当該占有者に対し,抵当権に基づく妨害排除請求として,上記状態の排除を求めることができる。
2 抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり,抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には,抵当権者は,当該占有者に対し,直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる。
3 抵当権者は,抵当不動産に対する第三者の占有により賃料額相当の損害を被るものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年3月10日 平成13(オ)656
登載
民集 第59巻2号356頁
参照法条
民法369条,民法709条
論点122第709条民法

1 人の容ぼう,姿態をその承諾なく撮影する行為と不法行為の成否
2 写真週刊誌のカメラマンが刑事事件の法廷において被疑者の容ぼう,姿態を撮影した行為が不法行為法上違法とされた事例
3 人の容ぼう,姿態を描写したイラスト画を公表する行為と不法行為の成否
4 刑事事件の法廷における被告人の容ぼう,姿態を描いたイラスト画を写真週刊誌に掲載して公表した行為が不法行為法上違法とはいえないとされた事例
5 刑事事件の法廷において身体の拘束を受けている状態の被告人の容ぼう,姿態を描いたイラスト画を写真週刊誌に掲載して公表した行為が不法行為法上違法とされた事例

裁判要旨1 人はみだりに自己の容ぼう,姿態を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有し,ある者の容ぼう,姿態をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。
2 写真週刊誌のカメラマンが,刑事事件の被疑者の動静を報道する目的で,勾留理由開示手続が行われた法廷において同人の容ぼう,姿態をその承諾なく撮影した行為は,手錠をされ,腰縄を付けられた状態の同人の容ぼう,姿態を,裁判所の許可を受けることなく隠し撮りしたものであることなど判示の事情の下においては,不法行為法上違法である。
3 人は自己の容ぼう,姿態を描写したイラスト画についてみだりに公表されない人格的利益を有するが,上記イラスト画を公表する行為が社会生活上受忍の限度を超えて不法行為法上違法と評価されるか否かの判断に当たっては,イラスト画はその描写に作者の主観や技術を反映するものであり,公表された場合も,これを前提とした受け取り方をされるという特質が参酌されなければならない。
4 刑事事件の被告人について,法廷において訴訟関係人から資料を見せられている状態及び手振りを交えて話しているような状態の容ぼう,姿態を描いたイラスト画を写真週刊誌に掲載して公表した行為は,不法行為法上違法であるとはいえない。
5 刑事事件の被告人について,法廷において手錠,腰縄により身体の拘束を受けている状態の容ぼう,姿態を描いたイラスト画を写真週刊誌に掲載して公表した行為は,不法行為法上違法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年11月10日 平成15(受)281
登載
民集 第59巻9号2428頁
参照法条
民法709条,民法710条,憲法13条,刑訴規則215条
論点123第709条民法

名誉毀損の成否が問題となっている法的な見解の表明と意見ないし論評の表明

裁判要旨名誉毀損の成否が問題となっている法的な見解の表明は,判決等により裁判所が判断を示すことができる事項に係るものであっても,事実を摘示するものとはいえず,意見ないし論評の表明に当たる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成16年7月15日 平成15(受)1793
登載
民集 第58巻5号1615頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点124第709条民法

競走馬の所有者が当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対しいわゆる物のパブリシティ権の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることの可否

裁判要旨競走馬の所有者は,当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対し,その名称等が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利(いわゆる物のパブリシティ権)の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成16年2月13日 平成13(受)866等
登載
民集 第58巻2号311頁
参照法条
民法198条,民法199条,民法206条,民法709条,知的財産基本法2条2項
論点125第709条民法

1 いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社に派遣された県職員に対する給与支出が違法であるとされた事例
2 県といわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で締結された県職員を同社に派遣してその給与を県が負担することを内容とする協定が私法上無効であるとはいえないとされた事例
3 県がいわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で県職員を同社に派遣してその給与を負担することを内容とする協定を締結して派遣職員に給与を支出したことにつき知事に過失があるとはいえないとされた事例

裁判要旨1 県が,職務専念義務の免除をするとともに勤務しないことの承認をして,いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社に県職員を派遣し,その給与を支出した場合において,上記派遣が,同社に事業収入がなく,同社が十分な人材を確保していないことを考慮して行われたこと,同社の事業内容は遊園施設等の経営であったこと,派遣職員が従事した職務の内容は同社の業務全般に 及んでいたこと,派遣人数は延べ13人,派遣期間は約7年間に及んだことなど判示の事実関係の下においては,上記給与支出は,違法である。
2 県が,いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で,県職員を同社に派遣してその給与を負担することを内容とする協定を締結し,派遣職員につき職務専念義務の免除をするとともに勤務しないことの承認をして給与を支出した場合において,上記協定が地方公務員法24条1項,30条及び35条の趣旨に反して違法であるとしても,上記協定締結当時,地方公務員の派遣に関する法制度が整備されないまま,全国各地の地方公共団体において第3セクター等への職員派遣が行われており,職務専念義務の免除による職員派遣の場合には派遣職員の給与を支出する例が多かったこと,その適否については定説がなく,裁判例も分かれていたことなど判示の事情の下においては,上記協定が私法上無効であるということはできない。
3 県が,いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で,県職員を同社に派遣してその給与を負担することを内容とする協定を締結した当時,地方公務員の派遣に関する法制度が整備されないまま,全国各地の地方公共団体において第3セクター等への職員派遣が行われており,職務専念義務の免除による職員派遣の場合には派遣職員の給与を支出する例が多かったこと,その適否については定説がなく,裁判例も分かれていたこと,県の同社への職員派遣は条例等の定める職務専念義務の免除等の法的手続を踏んで行われたことなど判示の事情の下においては,上記協定を締結して派遣職員に給与を支出したことにつき知事に過失があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成16年1月15日 平成13(行ヒ)266
登載
民集 第58巻1号156頁
参照法条
地方公務員法24条1項,地方公務員法30条,地方公務員法35条,職務に専念する義務の特例に関する条例(昭和28年岡山県条例第49号)2条,岡山県職員給与条例(昭和26年岡山県条例第18号)14条,職務に専念する義務の特例に関する規則(昭和28年岡山県人事委員会規則第10号)2条,民法90条,民法709条,地方自治法2条17項,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号
論点126第709条民法

分譲住宅の譲渡契約の譲受人が同契約を締結するか否かの意思決定をするに当たり価格の適否を検討する上で重要な事実につき譲渡人において説明をしなかったことが慰謝料請求権の発生を肯認し得る違法行為と評価すべきものとされた事例

裁判要旨甲らは,乙(住宅,都市整備公団)との間で,その設営に係る団地内の住宅につき賃貸借契約を締結していたところ,乙による団地の建て替え事業の実施に当たって,上記賃貸借契約を合意解約し,上記住宅を明け渡すなどした上,建て替え後の団地内の分譲住宅につき譲渡契約を締結したこと,上記建て替え事業の実施に当たり甲らと乙が交わした覚書には,乙において甲らに対し分譲住宅をあっせんした後未分譲住宅の一般公募を直ちにすること及び一般公募における譲渡価格と甲らに対する譲渡価格が少なくとも同等であることを意味する条項があり,甲らは,上記譲渡契約締結の時点において,上記条項の意味するとおりの認識を有していたこと,乙は,上記時点において,甲らに対する譲渡価格が高額に過ぎることなどから,上記一般公募を直ちにする意思を有しておらず,かつ,甲らにおいて上記認識を有していたことを少なくとも容易に知り得たにもかかわらず,甲らに対し,上記一般公募を直ちにする意思がないことを説明しなかったこと,これにより甲らは乙の設定に係る分譲住宅の価格の適否について十分に検討した上で上記譲渡契約を締結するか否かの意思決定をする機会を奪われたことなど判示の事情の下においては,乙が甲らに対し上記一般公募を直ちにする意思がないことを説明しなかったことは,慰謝料請求権の発生を肯認し得る違法行為と評価すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成16年11月18日 平成16(受)482
登載
民集 第58巻8号2225頁
参照法条
民法709条,民法710条
論点127第709条民法

婚姻外の男女の関係を一方的に解消したことにつき不法行為責任が否定された事例

裁判要旨婚姻外の男女の関係が継続していた期間中,両者は,その住居を異にしており,共同生活をしたことは全くなく,それぞれが自己の生計を維持管理しており,共有する財産もなかったこと,女性は,男性との間に2人の子を出産したが,子の養育の負担を免れたいとの女性の要望に基づく両者の事前の取決め等に従い,2人の子の養育には一切かかわりを持たず,また,出産の際には,男性側から出産費用等として相当額の金員をその都度受領していること,両者の間に民法所定の婚姻をする旨の意思の合致が存したことはなく,かえって,両者は意図的に婚姻を回避していること,両者の間において,その一方が相手方に無断で相手方以外の者と婚姻をするなどしてその関係から離脱してはならない旨の関係存続に関する合意がされた形跡はないことなど判示の事情の下においては,男性が,両者の関係を突然かつ一方的に解消し,他の女性と婚姻したことをもって,慰謝料請求権の発生を肯認し得る不法行為と評価することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成16年11月18日 平成15(受)1943
登載
集民 第215号639頁
参照法条
民法709条,民法710条 ,民法第4編第2章第1節 婚姻の成立
論点128第709条民法

1 大学主催の講演会に参加を申し込んだ学生の氏名,住所等の情報は法的保護の対象となるか
2 大学がその主催する講演会に参加を申し込んだ学生の氏名,住所等の情報を警察に開示した行為が不法行為を構成するとされた事例

裁判要旨1 大学が講演会の主催者として学生から参加者を募る際に収集した参加申込者の学籍番号,氏名,住所及び電話番号に係る情報は,参加申込者のプライバシーに係る情報として法的保護の対象となる。
2 大学が講演会の主催者として学生から参加者を募る際に収集した参加申込者の学籍番号,氏名,住所及び電話番号に係る情報を参加申込者に無断で警察に開示した行為は,大学が開示についてあらかじめ参加申込者の承諾を求めることが困難であった特別の事情がうかがわれないという事実関係の下では,参加申込者のプライバシーを侵害するものとして不法行為を構成する。
(2につき反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成15年9月12日 平成14(受)1656
登載
民集 第57巻8号973頁
参照法条
民法709条,民法710条
論点129第709条民法

1 少年法61条が禁止しているいわゆる推知報道に当たるか否かの判断基準
2 犯行時少年であった者の犯行態様,経歴等を記載した記事を実名類似の仮名を用いて週刊誌に掲載したことにつき名誉又はプライバシーの侵害による損害賠償責任を肯定した原審の判断に被侵害利益ごとに違法性阻却事由の有無を審理判断しなかった違法があるとされた事例

裁判要旨1 少年法61条が禁止しているいわゆる推知報道に当たるか否かは,その記事等により,不特定多数の一般人がその者を当該事件の本人であると推知することができるかどうかを基準にして判断すべきである。
2 犯行時少年であった者の犯行態様,経歴等を記載した記事を実名類似の仮名を用いて週刊誌に掲載したことにつき,その記事が少年法61条に違反するとした上,同条により保護される少年の権利ないし法的利益より明らかに社会的利益の擁護が優先する特段の事情がないとして,直ちに,名誉又はプライバシーの侵害による損害賠償責任を肯定した原審の判断には,被侵害利益ごとに違法性阻却事由の有無を個別具体的に審理判断しなかった違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成15年3月14日 平成12(受)1335
登載
民集 第57巻3号229頁
参照法条
少年法61条,民法709条,民法710条
論点130第709条民法

1 火災保険契約の申込者が同契約に附帯して地震保険契約を締結するか否かの意思決定をするに当たり保険会社側からの地震保険の内容等に関する情報の提供や説明に不十分,不適切な点があったことを理由とする慰謝料請求の可否
2 火災保険契約の申込者が同契約に附帯して地震保険契約を締結するか否かの意思決定をするに当たり保険会社側からの地震保険の内容等に関する情報の提供や説明に不十分な点があったとしても慰謝料請求権の発生を肯認し得る違法行為と評価すべき特段の事情が存するものとはいえないとされた事例

裁判要旨1 火災保険契約の申込者は,特段の事情が存しない限り,同契約に附帯して地震保険契約を締結するか否かの意思決定をするに当たり保険会社側からの地震保険の内容等に関する情報の提供や説明に不十分,不適切な点があったことを理由として,慰謝料を請求することはできない。
2 火災保険契約の申込者が,同契約を締結するに当たり,同契約に附帯して地震保険契約を締結するか否かの意思決定をする場合において,火災保険契約の申込書には「地震保険は申し込みません」との記載のある欄が設けられ,申込者が地震保険に加入しない場合にはこの欄に押印をすることとされていること,当該申込者が上記欄に自らの意思に基づき押印をしたこと,保険会社が当該申込者に対し地震保険の内容等について意図的にこれを秘匿したという事実はないことなど判示の事情の下においては,保険会社側に,火災保険契約の申込者に対する地震保険の内容等に関する情報の提供や説明において不十分な点があったとしても,慰謝料請求権の発生を肯認し得る違法行為と評価すべき特段の事情が存するものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成15年12月9日 平成14(受)218
登載
民集 第57巻11号1887頁
参照法条
商法629条,民法415条,民法709条,民法710条,保険募集の取締に関する法律11条1項
論点131第709条民法

1 テレビジョン放送をされた報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについての判断基準
2 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された事実がどのようなものであるかについての判断基準
3 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された特定産地の野菜のダイオキシン類汚染に関する事実についてその重要な部分が真実であることの証明があるとはいえないとされた事例

裁判要旨1 テレビジョン放送をされた報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについては,一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断すべきである。
2 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された事実がどのようなものであるかについては,一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準とし,その番組の全体的な構成,これに登場した者の発言の内容,画面に表示された文字情報の内容を重視し,映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して判断すべきである。
3 テレビジョン放送をされた報道番組において,乙市産の野菜のダイオキシン類汚染に関し,丙研究所の調査結果によれば乙市産の野菜のダイオキシン類濃度が1g当たり0.64〜3.80ピコグラムである旨記載されたフリップが示され,その野菜がほうれん草をメインとする乙市産の葉っぱ物であるとの説明がされたなど判示の事実関係の下では,その番組により摘示された事実の重要な部分は,ほうれん草を中心とする乙市産の葉物野菜が全般的にダイオキシン類による高濃度の汚染状態にあり,その測定値が上記数値で示される高い水準にあることとみるべきであり,別の調査結果において乙市産のラベルが付けられた白菜1検体から上記最高値に比較的近似した測定値が得られたことなどをもって,上記摘示された事実の重要な部分について真実であることの証明があるとはいえない。
(3につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成15年10月16日 平成14(受)846
登載
民集 第57巻9号1075頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点132第709条民法

1 特許権の効力の準拠法
2 特許権に基づく差止め及び廃棄請求の準拠法
3 米国特許法を適用して米国特許権の侵害を積極的に誘導する我が国内での行為の差止め又は我が国内にある侵害品の廃棄を命ずることと法例33条〈法人の成立等〉にいう「公ノ秩序」
4 特許権侵害を理由とする損害賠償請求の準拠法
5 米国特許権の侵害を積極的に誘導する行為を我が国で行ったことを理由とする損害賠償請求について法例11条1項〈保佐開始の審判〉にいう「原因タル事実ノ発生シタル地」が米国であるとされた事例
6 米国特許権の侵害を積極的に誘導する行為を我が国で行ったことと法例11条2項にいう「外国ニ於テ発生シタル事実カ日本ノ法律ニ依レハ不法ナラサルトキ」

裁判要旨1 特許権の効力の準拠法は,当該特許権が登録された国の法律である。
2 特許権に基づく差止め及び廃棄請求の準拠法は,当該特許権が登録された国の法律である。
3 米国特許法を適用して,米国特許権の侵害を積極的に誘導する我が国内での行為の差止め又は我が国内にある侵害品の廃棄を命ずることは,法例33条〈法人の成立等〉にいう「公ノ秩序」に反する。
4 特許権侵害を理由とする損害賠償請求の準拠法は,法例11条1項〈保佐開始の審判〉による。
5 米国で販売される米国特許権の侵害品を我が国から米国に輸出した者に対する,米国特許権の侵害を積極的に誘導したことを理由とする損害賠償請求について,法例11条1項にいう「原因タル事実ノ発生シタル地」は,米国である。
6 米国特許権の侵害を積極的に誘導する行為を我が国で行ったことは,法例11条2項にいう「外国ニ於テ発生シタル事実カ日本ノ法律ニ依レハ不法ナラサルトキ」に当たる。
(5につき意見,6につき補足意見及び反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成14年9月26日 平成12(受)580
登載
民集 第56巻7号1551頁
参照法条
特許法66条1項,特許法68条,特許法第4章第2節権利侵害,特許法100条,法例,法例11条1項,法例11条2項,法例33条,アメリカ合衆国特許法271条(b)項,アメリカ合衆国特許法283条,アメリカ合衆国特許法284条,民法709条
論点133第709条民法

通信社から配信を受けた記事をそのまま掲載した新聞社にその内容を真実と信ずるについて相当の理由があるとはいえないとされた事例

裁判要旨判示の事実関係の下においては,新聞に掲載された記事が一般的には定評があるとされる通信社から配信された記事に基づくものであるという理由によっては,新聞社において配信記事に摘示された事実を真実と信ずるについての相当の理由があったと認めることはできない。
(意見及び反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成14年3月8日 平成8(オ)852
登載
集民 第206号1頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点134第709条民法

通信社から配信を受けた記事をそのまま掲載した新聞社にその内容を真実と信ずるについて相当の理由があるとはいえないとされた事例

裁判要旨新聞社が通信社から配信を受けて自己の発行する新聞紙にそのまま掲載した記事が私人の犯罪行為やスキャンダルないしこれに関連する事実を内容とするものである場合には,当該記事が取材のための人的物的体制が整備され,一般的にはその報道内容に一定の信頼性を有しているとされる通信社から配信された記事に基づくものであるとの一事をもって,当該新聞社に同事実を真実と信ずるについて相当の理由があったものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成14年1月29日 平成7(オ)1421
登載
民集 第56巻1号185頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点135第709条民法

名誉毀損に該当する事実の真実性についての判断の基準時及び認定のための証拠の範囲

裁判要旨裁判所は,名誉毀損に該当する事実の真実性につき,事実審の口頭弁論終結時において客観的な判断をすべきであり,その際に名誉毀損行為の時点では存在しなかった証拠を考慮することも許される。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成14年1月29日 平成8(オ)576
登載
集民 第205号233頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点136第709条民法

通信社が新聞社に記事を配信するに当たりその内容を真実と信ずるについて相当の理由があるとはいえないとされた事例

裁判要旨通信社が,殺人未遂罪で逮捕された甲が7,8年前に自宅で大麻を所持しており,その事実を捜査機関が突き止めた旨の事実を記事にして配信し,新聞社がこれを掲載した場合に,甲が自宅に大麻を所持していた事実の裏付けになる資料は甲と離婚した乙の供述のみであること,捜査の対象となっていない大麻所持についての報道であること,甲以外の関係者からそのころの甲と大麻とのかかわりについて取材することが不可能であった状況がうかがえないこと,捜査官が甲の大麻所持についていかなる事実を把握し,どのような心証を持ち,どのように判断しているのかについての取材内容が明らかでないことなど判示の事情の下においては,乙の供述が一貫し,甲が大麻と深いつながりがあることを自ら認めており,記事作成の時点で甲が既に逮捕され,甲に対する取材が不可能であった等の事情が存するときであっても,通信社に上記配信記事に摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があったものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成14年1月29日 平成9(オ)1371
登載
集民 第205号289頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点137第709条民法

1 不法行為に基づく損害賠償請求訴訟につき民訴法の不法行為地の裁判籍の規定に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するために証明すべき事項
2 ある管轄原因により我が国の裁判所の国際裁判管轄が肯定される請求の当事者間における他の請求につき民訴法の併合請求の裁判籍の規定に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するための要件

裁判要旨1 我が国に住所等を有しない被告に対し提起された不法行為に基づく損害賠償請求訴訟につき,民訴法の不法行為地の裁判籍の規定に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するためには,原則として,被告が我が国においてした行為により原告の法益について損害が生じたとの客観的事実関係が証明されれば足りる。
2 ある管轄原因により我が国の裁判所の国際裁判管轄が肯定される請求の当事者間における他の請求につき,民訴法の併合請求の裁判籍の規定に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するためには,両請求間に密接な関係が認められることを要する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成13年6月8日 平成12(オ)929
登載
民集 第55巻4号727頁
参照法条
民法709条,民訴法5条9号,民訴法7条本文,民訴法136条,民訴法247条,民訴法第1編第2章裁判所
論点138第709条民法

専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるカラオケ装置につきリース業者がリース契約を締結して引き渡す場合の注意義務

裁判要旨カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負う。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成13年3月2日 平成12(受)222
登載
民集 第55巻2号185頁
参照法条
著作権法22条,著作権法22条の2,著作権法第7章権利侵害,民法709条,民法719条
論点139第709条民法

1 メモリーカードの使用がゲームソフトの著作者の有する同一性保持権を侵害するとされた事例
2 専らゲームソフトの改変のみを目的とするメモリーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図して流通に置いた者の不法行為責任

裁判要旨1 パラメータにより主人公の人物像が表現され,その変化に応じてストーリーが展開されるゲームソフトについて,パラメータを本来ならばあり得ない高数値に置き換えるメモリーカードの使用によって,主人公の人物像が改変され,その結果,上記ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開されるなど判示の事実関係の下においては,当該メモリーカードの使用は,上記ゲームソフトを改変し,その著作者の有する同一性保持権を侵害する。
2 専らゲームソフトの改変のみを目的とするメモリーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図して流通に置いた者は,他人の使用により,ゲームソフトの同一性保持権の侵害をじゃっ起したものとして,ゲームソフトの著作者に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成13年2月13日 平成11(受)955
登載
民集 第55巻1号87頁
参照法条
著作権法20条,著作権法第7章権利侵害,民法709条,民法719条
論点140第709条民法

不法行為によって扶養者が死亡した場合における被扶養者の将来の扶養利益喪失による損害額の算定方法

裁判要旨不法行為によって扶養者が死亡した場合における被扶養者の将来の扶養利益喪失による損害額は、扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、扶養を要する状態が存続すべき期間などの具体的事情に応じて算定すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成12年9月7日 平成11(受)94
登載
集民 第199号477頁
参照法条
民法416条,民法709条,民法877条
論点141第709条民法

一 不動産の共有者が当該不動産を単独で占有する他の共有者に対し不当利得返還請求ないし損害賠償請求をすることの可否
二 請求の一部についての予備的な請求原因となるべき相続取得の主張を原告がしていなくても裁判所は被相続人の死亡等の事実をしんしゃくすべきであるとされた事例

裁判要旨一 不動産の共有者は、当該不動産を単独で占有することができる権原がないのにこれを単独で占有している他の共有者に対し、自己の持分割合に応じて占有部分に係る賃料相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することができる。
二 原告が、夫の父が土地を夫に贈与し夫から右土地を相続取得したと主張して、右土地を占有する被告らに対し地代相当損害金等を請求する訴訟において、裁判所は、当事者の主張に基づいて右父の死亡、夫がその相続人の一人であること等の事実を確定した以上、右死亡により夫が右土地の持分を相続取得したことを原告が主張しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこれらの事実をしんしゃくし、夫の相続による持分の取得及び原告の相続による当該持分の取得を理由に原告の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成12年4月7日 平成9(オ)1876
登載
集民 第198号1頁
参照法条
民法249条,民法703条,民法709条,民訴法246条
論点142第709条民法

一 長時間にわたる残業を恒常的に伴う業務に従事していた労働者がうつ病にり患し自殺した場合に使用者の民法七一五条に基づく損害賠償責任が肯定された事例
二 業務の負担が過重であることを原因として心身に生じた損害につき労働者がする不法行為に基づく賠償請求において使用者の賠償額を決定するに当たり右労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等をしんしゃくすることの可否

裁判要旨一 大手広告代理店に勤務する労働者甲が長時間にわたり残業を行う状態を一年余り継続した後にうつ病にり患し自殺した場合において、甲は、業務を所定の期限までに完了させるべきものとする一般的、包括的な指揮又は命令の下にその遂行に当たっていたため、継続的に長時間にわたる残業を行わざるを得ない状態になっていたものであって、甲の上司は、甲が業務遂行のために徹夜までする状態にあることを認識し、その健康状態が悪化していることに気付いていながら、甲に対して業務を所定の期限内に遂行すべきことを前提に時間の配分につき指導を行ったのみで、その業務の量等を適切に調整するための措置を採らず、その結果、甲は、心身共に疲労困ぱいした状態となり、それが誘因となってうつ病にり患し、うつ状態が深まって衝動的、突発的に自殺するに至ったなど判示の事情の下においては、使用者は、民法七一五条〈使用者等の責任〉に基づき、甲の死亡による損害を賠償する責任を負う。
二 業務の負担が過重であることを原因として労働者の心身に生じた損害の発生又は拡大に右労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が寄与した場合において、右性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでないときは、右損害につき使用者が賠償すべき額を決定するに当たり、右性格等を、民法七二二条二項〈損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺〉の類推適用により右労働者の心因的要因としてしんしゃくすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成12年3月24日 平成10(オ)217
登載
民集 第54巻3号1155頁
参照法条
民法709条,民法715条,民法722条2項
論点143第709条民法

殺人事件の被害者の両親が加害者とされる少年らの親権者に対して提起した損害賠償請求訴訟において捜査機関等に対する自白に依拠して少年らを殺人等の犯人であるとした認定に経験則違反の違法があるとされた事例

裁判要旨殺人事件の被害者の両親が加害者とされる少年らの親権者に対して提起した損害賠償請求訴訟において、殺人行為等に関する少年らの捜査機関等に対する自白が極めて詳細かつ具体的であり、その内容が各少年とも大筋において一致し、互いに補強し補完し合うものであっても、右自白には、いわゆる秘密の暴露がなく、一部に捜査官の誤導による可能性の高い明らかな虚偽の部分が含まれ、犯行事実の中核的な部分について変遷が見られる上、自白を裏付ける客観的証拠がほとんど見られず、自白が真実を述べたものであればあってしかるべき証拠が発見されていないなど判示の事情の下においては、自白の信用性について慎重に検討することなく、右自白に依拠して少年らが殺人等の犯人であるとした原審の認定には、経験則違反の違法がある。
(意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成12年2月7日 平成7(オ)793
登載
民集 第54巻2号255頁
参照法条
民法709条,民訴法247条,刑訴法317条
論点144第709条民法

顔面けいれんの根治術である脳神経減圧手術を受けた後間もなく患者が脳内血腫を生じその結果死亡した場合につき脳内血腫の原因が右手術にあることを否定した原審の認定判断に違法があるとされた事例

裁判要旨顔面けいれんの根治術である脳神経減圧手術を受けた後間もなく手術部位である小脳橋角部の近傍部等に血腫を生じ、その結果患者が死亡した場合において、術前検査である高血圧症とは認められず手術適応があるとされている上、高血圧性脳内出血が小脳内に発生する確率は低く、他方、手術内容が小脳右半球を開排し小脳橋角部において顔面神経と脳動脈の接触部分をはく離するという小脳内出血を引き起こす可能性を有するものであり、かつ、手術記録及び診療録に本件手術の施行とその後の患者の脳内血腫の発生との関連性を疑わせる記載があるなど判示の事実関係の下においては、その体裁等から客観的資料を精査した上でされたものか疑問のある鑑定結果等に依拠して血腫の原因が本件手術にあることを否定した原審の認定判断には、経験則ないし採証法則違背の違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成11年3月23日 平成8(オ)609
登載
集民 第192号165頁
参照法条
民法709条,民訴法247条
論点145第709条民法

一 医師の不作為と患者の死亡との間の因果関係の存否の判断と患者が適切な診療行為を受けていたとした場合の生存可能期間の認定
二 医師が肝硬変の患者につき肝細胞がんを早期に発見するための検査を実施しなかった注意義務違反と患者の右がんによる死亡との間の因果関係を否定した原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨一 医師が注意義務に従って行うべき診療行為を行わなかった不作為と患者の死亡との間の因果関係は、医師が右診療行為を行っていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度のがい然性が証明されれば肯定され、患者が右診療行為を受けていたならば生存し得たであろう期間を認定するのが困難であることをもって、直ちには否定されない。
二 肝硬変の患者が後に発生した肝細胞がんにより死亡した場合において、医師が、右患者につき当時の医療水準に応じた注意義務に従って肝細胞がんを早期に発見すべく適切な検査を行っていたならば、遅くとも死亡の約六箇月前の時点で外科的切除術の実施も可能な程度の大きさの肝細胞がんを発見し得たと見られ、右治療法が実施されていたならば長期にわたる延命につながる可能性が高く、他の治療法が実施されていたとしてもやはり延命は可能であったと見られるとしながら、仮に適切な診療行為が行われていたとしてもどの程度の延命が期待できたかは確認できないとして、医師の検査に関する注意義務違反と患者の死亡との間の因果関係を否定した原審の判断には、違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成11年2月25日 平成8(オ)2043
登載
民集 第53巻2号235頁
参照法条
民法416条,民法709条
論点146第709条民法

交通事故の被害者が事故のため介護を要する状態となった後に別の原因により死亡した場合に死亡後の期間に係る介護費用を右交通事故による損害として請求することの可否

裁判要旨交通事故の被害者が事故のため介護を要する状態となった後に別の原因により死亡した場合には、死亡後の期間に係る介護費用を右交通事故による損害として請求することはできない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成11年12月20日 平成10(オ)583
登載
民集 第53巻9号2038頁
参照法条
民法416条,民法709条
論点147第709条民法

名誉毀損の行為者が刑事第一審の判決を資料として事実を適示した場合と右事実を真実と信ずるについての相当の理由

裁判要旨名誉毀損の行為者において刑事第一審の判決を資料としてその認定事実と同一性のある事実を真実と信じて摘示した場合には、特段の事情がない限り、摘示した事実を真実と信ずるについて相当の理由がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成11年10月26日 平成9(オ)411
登載
民集 第53巻7号1313頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点148第709条民法

一 不法行為により死亡した者の相続人が被害者の得べかりし障害基礎年金及び障害厚生年金を逸失利益として請求することの可否
二 不法行為により死亡した者の相続人が被害者の得べかりし障害基礎年金及び障害厚生年金についての各加給分を逸失利益として請求することの可否
三 障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者が不法行為により死亡した場合にその相続人がする損害賠償請求において当該相続人が受給権を取得した遺族基礎年金及び遺族厚生年金を控除すべき損害の費目

裁判要旨一 障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、被害者の得べかりし右各障害年金額を逸失利益として請求することができる。
二 障害基礎年金及び障害厚生年金についてそれぞれ加給分を受給している者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、被害者の得べかりし右各加給分額を逸失利益として請求することはできない。
三 障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者が不法行為により死亡した場合に、その相続人が被害者の死亡を原因として遺族基礎年金及び遺族厚生年金の受給権を取得したときは、当該相続人がする損害賠償請求において、支給を受けることが確定した右各遺族年金は、財産的損害のうちの逸失利益から控除すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成11年10月22日 平成9(オ)434
登載
民集 第53巻7号1211頁
参照法条
国民年金法30条,厚生年金保険法47条,民法709条,国民年金法35条1号,厚生年金保険法53条1号,民法896条,国民年金法33条の2,厚生年金保険法50条の2,国民年金法37条,厚生年金保険法58条
論点149第709条民法

一 前訴において相手方当事者の不法行為により訴訟手続に関与する機会のないまま判決が確定した場合に右判決に基づく債務の弁済として支払った金員につき損害賠償請求をすることが許されないとされた事例
二 前訴において相手方当事者の不法行為により訴訟手続に関与する機会を奪われたことにより被った精神的苦痛に対する損害賠償請求と前訴判決の既判力

裁判要旨一 甲乙間の前訴において,甲が受訴裁判所の裁判所書記官からの照会に対して乙の就業場所が不明である旨の誤った回答をしたことにより,乙に対して訴状等の付郵便送達がされたため,乙が前訴の訴訟手続に関与する機会のないまま判決が確定した場合に,右照会に対して必要な調査を尽くすことなく安易に誤った回答をしたことにつき,甲に重大な過失があるにとどまり,甲に乙の権利を害する意図があったとは認められないという事情の下においては,乙が,甲の右不法行為を理由として,右判決に基づく債務の弁済として甲に支払った金員につき損害賠償請求をすることは,許されない。
二 前訴において相手方当事者の不法行為により第一審での訴訟手続に関与する機会を奪われたことにより被った精神的苦痛に対する慰謝料の支払を求める請求は,確定した前訴判決の既判力ある判断と実質的に矛盾する損害賠償請求に当たらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成10年9月10日 平成5(オ)1211
登載
集民 第189号743頁
参照法条
民法709条,民法710条,民訴法114条
論点150第709条民法

論評中の他人の著作物の引用紹介に適切を欠く部分があっても全体として正確性を欠くとまではいえないとして右論評に名誉毀損としての違法性があるということはできないとされた事例

裁判要旨他人の著作物に対する論評中に、右著作物の記述が第三者の談話をそのまま紹介したものではなく著作者自身の認識判断であるかのような適切を欠く引用紹介部分があっても、他の部分を併せて読むならば、右論評は専ら著作者が第三者の談話をその真偽を確認しないでそのまま紹介したことを批判するものであって、このことは右論評を通読する一般読者にとって明白であり、右適切を欠く引用紹介部分の内容が右批判の前提となっているわけでもないという事情の下においては、右著作物の引用紹介が全体として正確性を欠くとまではいえないから、右論評に名誉毀損としての違法性があるということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年7月17日 平成6(オ)1082
登載
集民 第189号267頁
参照法条
民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項
論点151第709条民法

一 手形につき商事留置権を有する者が債務者に対する破産宣告の後に破産管財人からの手形の返還請求を拒むことの可否
二 手形につき商事留置権を有する銀行が債務者に対する破産宣告の後に右手形を手形交換制度によって取り立てて被担保債権の弁済に充当する行為が破産管財人に対する不法行為とならないとされた事例

裁判要旨一 手形につき商事留置権を有する者は、債務者が破産宣告を受けた後においても、右手形を留置する権能を有し、破産管財人からの手形の返還請求を拒むことができる。
二 手形につき商事留置権を有する甲銀行が債務者乙に対する破産宣告の後に右手形を手形交換制度によって取り立てて被担保債権の弁済に充当する行為は、乙が債務を履行しないときは甲が占有している乙の手形等を取り立て又は処分して債権の弁済に充当できる旨の銀行取引約定書四条四項〈成年〉による合意が甲乙間に存在し、被担保債権の履行期が既に到来し、債権額も手形金額を超えており、右手形について甲に優先する他の特別の先取特権者が存在することをうかがわせる事情もないなど判示の事実関係の下においては、乙の破産管財人に対する不法行為となるものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成10年7月14日 平成7(オ)264
登載
民集 第52巻5号1261頁
参照法条
破産法93条,破産法95条,破産法204条,商法521条,民事執行法136条,民事執行法192条,民法91条,民法709条
論点152第709条民法

宅配便の荷受人が運送会社に対して運送中の荷物の紛失を理由として運送契約上の責任限度額を超える損害の賠償を請求することが信義則に反し許されないとされた事例

裁判要旨荷受人甲が、宅配便を利用して宝石類を送付することができないことを知りながら、荷送人乙が運送会社丙の宅配便を利用してダイヤモンド等を送付することを容認していたなど判示の事実関係の下においては、運送中の右ダイヤモンド等の紛失を理由として甲が丙に対し乙丙間の運送契約上の責任限度額三〇万円を超える損害の賠償を請求することは、信義則に反し、許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成10年4月30日 平成6(オ)799
登載
集民 第188号385頁
参照法条
民法1条2項,民法91条,民法709条,商法577条,商法578条,商法580条,商法583条
論点153第709条民法

高齢者の医療の確保に関する法律による後期高齢者医療給付を行った後期高齢者医療広域連合が当該後期高齢者医療給付により代位取得した不法行為に基づく損害賠償請求権に係る債務についての遅延損害金の起算日

裁判要旨高齢者の医療の確保に関する法律による後期高齢者医療給付を行った後期高齢者医療広域連合は,その給付事由が第三者の不法行為によって生じた場合,当該第三者に対し,当該後期高齢者医療給付により代位取得した当該不法行為に基づく損害賠償請求権に係る債務について,当該後期高齢者医療給付が行われた日の翌日からの遅延損害金の支払を求めることができる。
(意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和元年9月6日 平成30(受)1730
登載
民集 第73巻4号419頁
参照法条
高齢者の医療の確保に関する法律58条,民法412条,民法709条
論点154第709条民法

労働者が使用者に対し一時金相当額を不法行為に基づく損害賠償として請求することはできないとされた事例

裁判要旨労働者が、労働契約に基づき一時金の支払を求める具体的請求権を有していたことを前提とした上で、専ら一時金が支払われなかったことをもって不法行為に該当すると主張するという事情の下では、労働者は、使用者に対し、使用者による一時金の支払債務の不履行を理由として、一時金相当額を不法行為に基づく損害賠償として請求することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和8年2月13日 令和6(受)2399
登載
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参照法条
民法709条
論点155第709条民法

請求異議の訴えについて請求を棄却する判決が確定し、当該訴えを本案とする強制執行の停止を命ずる裁判が取り消された場合において、当該裁判に係る申立てをした者が、債権者が強制執行の停止によって被った損害を賠償する義務を負うか

裁判要旨請求異議の訴えを本案とする民事執行法36条1項の強制執行の停止の申立てがされ、強制執行の停止を命ずる裁判がされた後、当該訴えについて請求を棄却する判決が確定し、当該強制執行の停止を命ずる裁判が取り消された場合において、当該申立てをした者に主張した異議の事由が事実上又は法律上の根拠を欠くことについて故意又は過失があるときは、当該申立てをした者は、債権者が強制執行の停止によって被った損害を賠償する義務を負う。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和7年9月9日 令和5(受)2207
登載
民集 第79巻6号2652頁
参照法条
民法709条、民事執行法36条1項
論点156第709条民法

裁判所が自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に対する損害賠償の額を定めるに当たり民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して被害者に対する加害行為前から存在していた被害者の疾患をしんしゃくしその額を減額する場合における上記条項に基づき人身傷害保険金を支払った保険会社による損害賠償請求権の代位取得の範囲

裁判要旨被保険者が自動車の運行に起因する事故等に該当する急激かつ偶然な外来の事故により傷害を被った時に既に存在していた身体の障害又は疾病の影響により、上記傷害が重大となった場合には、保険会社は、その影響がなかったときに相当する金額を支払う旨の定めがある自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に対する加害行為と加害行為前から存在していた被害者の疾患とが共に原因となって損害が発生した事案について、裁判所が、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項〈損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺〉の過失相殺の規定を類推適用して、上記疾患をしんしゃくし、その額を減額する場合において、上記疾患が上記定めにいう身体の障害又は疾病に当たるときは、被害者に対して人身傷害保険金を支払った保険会社は、支払った人身傷害保険金の額と上記の減額をした後の損害額のうちいずれか少ない額を限度として被害者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和7年7月4日 令和5(受)1838
登載
民集 第79巻5号2155頁
参照法条
保険法25条、民法91条、民法709条、民法722条2項
論点157第709条民法

民法709条〈不法行為による損害賠償〉の不法行為を構成する行為は宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たるか

裁判要旨民法709条〈不法行為による損害賠償〉の不法行為を構成する行為は、宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和7年3月3日 令和6(許)31
登載
民集 第79巻3号997頁
参照法条
民法709条、宗教法人法81条1項1号
論点158第709条民法

1 宗教法人とその信者との間において締結された不起訴の合意が公序良俗に反し無効であるとされた事例
2 宗教法人の信者らによる献金の勧誘が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨1 宗教法人Yとその信者Aとの間において締結された書面による不起訴の合意は、次の⑴~⑷など判示の事情の下においては、公序良俗に反し、無効である。
⑴ Aは、上記の締結の当時、86歳という高齢の単身者であり、その約半年後にはアルツハイマー型認知症により成年後見相当と診断された。
⑵ Aは、Yの教理を学び始めてから上記締結までの約10年間、その教理に従い、1億円を超える多額の献金を行い、多数回にわたり渡韓してYの儀式に参加していた。
⑶ Yの信者らは、上記書面の文案を作成し、公証人役場におけるその認証の手続にも同行し、その後、Aの意思を確認する様子をビデオ撮影した。
⑷ 上記不起訴の合意の内容は、上記多額の献金について、何らの見返りもなく無条件に不法行為に基づく損害賠償請求等に係る訴えを一切提起しないというものであった。
2 宗教法人Yの信者らによる信者Aに対する献金の勧誘について、次の⑴~⑶など判示の事情の下においては、献金をする者が献金をするか否かについて適切な判断をすることに支障が生ずるなどした事情の有無やその程度、献金により上記の者又はその配偶者等の生活の維持に支障が生ずるなどした事情の有無やその程度等を総合的に考慮し、上記勧誘が勧誘の在り方として社会通念上相当な範囲を逸脱するといえるかについて検討するという判断枠組みを採ることなく、上記信者らが上記勧誘において献金をしないことによる具体的な害悪を告知したとは認められない、Aがその資産や生活の状況に照らして過大な献金を行ったとは認められないなどとして上記勧誘が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断には、献金勧誘行為の違法性に関する法令の解釈適用を誤った結果、上記の判断枠組みに基づく審理を尽くさなかった違法がある。
⑴ Aは、献金当時、80歳前後という高齢であり、種々の身内の不幸を抱えていた。
⑵ Aは、Yに対し、1億円を超える多額の献金を行い、また、自己の所有する土地を売却してまで献金を行い、残りの売得金をYの信者らによって構成される組織に預け、同組織を通じてさらに献金を行うとともに、同組織から生活費の交付を受けていた。
⑶ Aの献金をめぐる一連の行為は、いずれもYの信者らによる勧誘等を受けて行われたものであった。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和6年7月11日 令和4(受)2281
登載
民集 第78巻3号921頁
参照法条
(1につき)民訴法第2編第1章 訴え、民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)90条 (2につき)民法709条、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律3条1号、2号
論点159第709条民法

マンションの建築工事の注文者から上記マンションの敷地を譲り受けた行為が請負人の注文者に対する請負代金債権を違法に侵害する行為に当たらないとされた事例

裁判要旨マンションの建築工事の請負人が、上記工事全体の99%を超える出来高の工事を行ったが、上記工事に係る請負契約で定められた支払時期に支払われるべき請負代金の一部の支払を受けるにとどまったため、自ら上記マンションを分譲販売する方法によって上記代金に係る債権の回収を図ることとしていた場合において、次の⑴、⑵の事情の下では、第三者において注文者から上記マンションの敷地を譲り受けた行為は、上記方法によって上記債権を回収するという請負人の利益を侵害するものとして上記債権を違法に侵害する行為に当たるということはできない。
⑴ 上記の譲受行為の当時、上記敷地については注文者が所有しており、また、請負人において、将来、上記敷地の所有権その他の敷地利用権を取得する見込みがあったという事情もうかがわれない。
⑵ 注文者は、上記譲受行為の当時、請負人に対し、その意向とは異なり、上記マンションの引渡しを受けて自らこれを分譲販売することを要望していた。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和5年10月23日 令和3(受)2001
登載
集民 第270号191頁
参照法条
民法709条
論点160第709条民法

被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が、上記被害者の遺族に対し、上記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について人身傷害保険金額に相当する額の金員を支払った場合において、上記遺族の加害者に対する損害賠償請求権の額から上記金員を全額控除することはできないとされた事例

裁判要旨被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が、上記被害者の遺族に対し、上記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について、人身傷害保険金として給付義務を負うとされている人身傷害保険金額に相当する額の金員を支払った場合、上記金員について作成された仮協定書に自動車損害賠償責任保険からの損害賠償額の支払の立替払であることを確認する趣旨を含む記載があることがうかがわれないなど判示の事情の下では、その後、上記保険会社が自動車損害賠償責任保険から損害賠償額の支払を受けて上記遺族に対して追加で金員を支払ったことにより人身傷害保険金額を超える額の金員を支払うに至ったとしても、上記保険会社が上記遺族に対して当初支払った人身傷害保険金額に相当する額の金員については、上記遺族の加害者に対する損害賠償請求権の額から、上記保険会社が上記金員の支払により保険代位することができる範囲を超える額を控除することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和5年10月16日 令和4(受)648
登載
集民 第270号173頁
参照法条
民法91条、民法第3編第2章契約、民法709条、自動車損害賠償保障法16条1項
論点161第709条民法

被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が,被害者との間でいわゆる人傷一括払合意をし,上記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について被害者に対して金員を支払った後に自動車損害賠償責任保険から損害賠償額の支払を受けた場合において,被害者の加害者に対する損害賠償請求権の額から上記損害賠償額の支払金相当額を全額控除することはできないとされた事例

裁判要旨被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が,被害者との間で,上記条項に基づく保険金について自動車損害賠償責任保険による損害賠償額の支払分を含めて一括して支払う旨の合意(いわゆる人傷一括払合意)をし,上記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について被害者に対して金員を支払った後に自動車損害賠償責任保険から損害賠償額の支払を受けた場合において,保険会社が上記保険金として保険給付をすべき義務を負うとされている金額と同額を支払ったにすぎないなど判示の事実関係の下では,被害者の加害者に対する損害賠償請求権の額から,保険会社が上記金員の支払により保険代位することができる範囲を超えて上記損害賠償額の支払金相当額を控除することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和4年3月24日 令和2(受)1198
登載
民集 第76巻3号350頁
参照法条
民法91条,民法第3編第2章 契約,民法709条,自動車損害賠償保障法16条1項
論点162第709条民法

離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務が履行遅滞となる時期

裁判要旨離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時に遅滞に陥る。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和4年1月28日 令和2(受)1765
登載
民集 第76巻1号78頁
参照法条
民法412条,民法709条,民法710条
論点163第709条民法

不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金を民法405条の適用又は類推適用により元本に組み入れることの可否

裁判要旨不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金は,民法405条〈利息の元本への組入れ〉の適用又は類推適用により元本に組み入れることはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和4年1月18日 令和2(受)1518
登載
民集 第76巻1号1頁
参照法条
民法405条,民法709条,会社法350条
論点164第709条民法

1 厚生労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のために労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが屋外の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法とはいえないとされた事例
2 建材メーカーが,自らの製造販売する石綿含有建材を使用する屋外の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者に対し,上記石綿含有建材に当該建材から生ずる粉じんにばく露すると重篤な石綿関連疾患にり患する危険があること等の表示をすべき義務を負っていたとはいえないとされた事例

裁判要旨1 屋外の建設現場における石綿含有建材の切断,設置等の作業に従事する者が石綿粉じんにばく露したことにより中皮腫にり患した場合において,次の⑴~⑸など判示の事情の下では,国が,平成13年から平成16年9月30日までの期間に,上記作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたとはいえず,厚生労働大臣が,平成14年1月1日から平成16年9月30日までの期間に,労働安全衛生法に基づく規制権限を行使して,石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として,石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患にり患する危険がある旨を示すこと等を義務付けなかったことは,上記作業に従事する者との関係において,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。
⑴ 平成13年から平成16年9月30日までの期間において国が法令により定めていた石綿粉じん濃度の規制値は管理濃度としての2本/㎤であった。
⑵ 日本産業衛生学会が平成13年に勧告した過剰発がん生涯リスクレベル10-3(10のマイナス3乗)に対応する評価値としての0.15本/㎤は,法令上の規制値ではなく学会により勧告されたものであり,その意味は,労働者が1日8時間,週40時間程度,50年間にわたり0.15本/㎤のクリソタイルのみの石綿粉じんにばく露したときに,1000人に1人,過剰発がんリスクが発生するというものである。
⑶ 上記⑴の期間までに公表等がされていた上記作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果には,0.15本/㎤以上のものがあるが,それらは主に石綿含有建材の切断作業をする者につきその作業をする限られた時間の個人ばく露濃度を測定したもの等である。
⑷ 上記測定結果には,0.15本/㎤を下回るものがある。
⑸ 上記測定結果は,全体として屋内の作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果を大きく下回るところ,これは,屋外の作業場においては,屋内の作業場と異なり,風等により自然に換気がされ,石綿粉じん濃度が薄められるためであることがうかがわれる。
2 屋外の建設現場における石綿含有建材の切断,設置等の作業に従事する者が石綿粉じんにばく露したことにより中皮腫にり患した場合において,次の⑴~⑸など判示の事情の下では,建材メーカーが,平成13年から平成15年12月31日までの期間に,自らの製造販売する石綿含有建材を使用する上記作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたとはいえず,平成14年1月1日から平成15年12月31日までの期間に,上記の者に対し,上記石綿含有建材に当該建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患にり患する危険があること等の表示をすべき義務を負っていたとはいえない。
⑴ 平成13年から平成15年12月31日までの期間において国が法令により定めていた石綿粉じん濃度の規制値は管理濃度としての2本/㎤であった。
⑵ 日本産業衛生学会が平成13年に勧告した過剰発がん生涯リスクレベル10-3(10のマイナス3乗)に対応する評価値としての0.15本/㎤は,法令上の規制値ではなく学会により勧告されたものであり,その意味は,労働者が1日8時間,週40時間程度,50年間にわたり0.15本/㎤のクリソタイルのみの石綿粉じんにばく露したときに,1000人に1人,過剰発がんリスクが発生するというものである。
⑶ 上記⑴の期間までに公表等がされていた上記作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果には,0.15本/㎤以上のものがあるが,それらは主に石綿含有建材の切断作業をする者につきその作業をする限られた時間の個人ばく露濃度を測定したもの等である。
⑷ 上記測定結果には,0.15本/㎤を下回るものがある。
⑸ 上記測定結果は,全体として屋内の作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果を大きく下回るところ,これは,屋外の作業場においては,屋内の作業場と異なり,風等により自然に換気がされ,石綿粉じん濃度が薄められるためであることがうかがわれる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和3年5月17日 平成31(受)290
登載
集民 第265号201頁
参照法条
(1につき)国家賠償法1条1項,労働安全衛生法22条,労働安全衛生法23条,労働安全衛生法27条,労働安全衛生法57条 (2につき)民法709条
論点165第709条民法

1 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合に,同逸失利益は定期金による賠償の対象となるか
2 交通事故に起因する後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当たり被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることの要否
3 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合に,同逸失利益が定期金による賠償の対象となるとされた事例

裁判要旨1 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において,不法行為に基づく損害賠償制度の目的及び理念に照らして相当と認められるときは,同逸失利益は,定期金による賠償の対象となる。
2 交通事故に起因する後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当たっては,事故の時点で,被害者が死亡する原因となる具体的事由が存在し,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り,就労可能期間の終期より前の被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることを要しない。
3 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において,同人が事故当時4歳の幼児で,高次脳機能障害という後遺障害のため労働能力を全部喪失し,同逸失利益の現実化が将来の長期間にわたるなど判示の事情の下では,同逸失利益は,定期金による賠償の対象となる。
(1,2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和2年7月9日 平成30(受)1856
登載
民集 第74巻4号1204頁
参照法条
(1~3につき)民法417条,民法709条,民法722条1項,民訴法117条 (2につき)民法416条
論点166第709条民法

強制執行の申立てをした債権者が債務者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において当該強制執行に要した費用のうち民事訴訟費用等に関する法律2条〈解釈の基準〉各号に掲げられた費目のものを損害として主張することの許否

裁判要旨強制執行の申立てをした債権者が,当該強制執行における債務者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において,当該強制執行に要した費用のうち民事訴訟費用等に関する法律2条〈解釈の基準〉各号に掲げられた費目のものを損害として主張することは許されない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和2年4月7日 平成31(受)606
登載
民集 第74巻3号646頁
参照法条
民事執行法42条,民事訴訟費用等に関する法律2条,民法709条
論点167第709条民法

少年保護事件を題材として家庭裁判所調査官が執筆した論文を雑誌及び書籍において公表した行為がプライバシーの侵害として不法行為法上違法とはいえないとされた事例

裁判要旨少年保護事件を題材として家庭裁判所調査官が執筆した論文を雑誌及び書籍に掲載して公表した場合において,少年のプライバシーに属する情報が上記論文に含まれており,当該情報が上記少年保護事件における上記家庭裁判所調査官の調査によって取得されたものであったとしても,次の⑴~⑶など判示の事情の下においては,当該情報に係る事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するとまではいえず,上記の公表行為は,プライバシーを侵害したものとして不法行為法上違法であるということはできない。
⑴ 上記論文は,社会の関心を集めつつあったアスペルガー症候群の特性が非行事例でどのように現れるのか等を明らかにするという目的で執筆された。
⑵ 上記論文の公表は,医療関係者や研究者等を読者とする専門誌や専門書籍に掲載する方法で行われた。
⑶ 上記論文には,上記少年やその関係者を直接特定した記載部分や事実関係の時期を特定した記載部分はなかった。
(意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和2年10月9日 令和1(受)877
登載
民集 第74巻7号1807頁
参照法条
民法709条,民法710条
論点168第710条民法

一 名誉侵害を理由とする慰藉料請求権と行使上の一身専属性の喪失事由
二 名誉侵害を理由とする破産者の慰藉料請求権が破産終結決定後に行使上の一身専属性を失つた場合と破産法二八三条一項後段の適用の有無

裁判要旨一 名誉侵害を理由とする慰藉料請求権は、加害者が被害者に対し一定額の慰藉料を支払うことを内容とする合意若しくはかかる支払を命ずる債務名義が成立したなどその具体的な金額が当事者間において客観的に確定したとき又は被害者が死亡したときは、行使上の一身専属性を失う。
二 名誉侵害を理由とする破産者の慰藉料請求権が破産終結決定後に行使上の一身専属性を失つた場合には、破産法二八三条一項後段の適用はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年10月6日 昭和54(オ)719
登載
民集 第37巻8号1041頁
参照法条
民法423条,民法710条,民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)570条1項,民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)618条1項,破産法(昭和54年法律第5号による改正前のもの)6条3項,破産法(昭和54年法律第5号による改正前のもの)283条1項後段
論点169第710条民法

不法行為による慰藉料請求権の相続性

裁判要旨省略

(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和46年3月18日 昭和45(オ)780
登載
集民 第102号287頁
参照法条
民法710条,民法711条
論点170第710条民法

第三者の不法行為により身体を害された者の両親の慰籍料請求権

裁判要旨第三者の不法行為によつて身体を害された者の両親は、そのために子が生命を害されたにも比肩すべきか、または右場合に比して著しく劣らない程度の精神上の苦痛を受けたときにかぎり、自己の権利として慰籍料を請求することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年4月24日 昭和44(オ)46
登載
集民 第95号207頁
参照法条
民法710条,民法711条
論点171第710条民法

不法行為による慰籍料請求権は相続の対象となるか

裁判要旨不法行為による慰籍料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる。
(色川裁判官の反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和44年10月31日 昭和44(オ)555
登載
集民 第97号143頁
参照法条
民法710条,民法711条
論点172第710条民法

不法行為による慰藉料請求権は相続の対象となるか

裁判要旨不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる。

(田中裁判官および松本裁判官の反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年5月28日 昭和41(オ)1463
登載
集民 第91号125頁
参照法条
民法710条,民法711条
論点173第710条民法

夫の負傷によつて妻の被つた精神的苦痛を理由とする妻の慰籍料請求が認められなかつた事例

裁判要旨夫が交通事故によつて負傷し後遺症があつても、それが原審認定の程度にとどまり、そのために不具者となつて妻の一生の負担となるほどのものではなく、その他原判決判示のような諸般の事情(原判決理由参照)にあるときは、妻が夫の右負傷によつて被つた自己の精神的苦痛を理由として慰籍料を請求することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年5月30日 昭和39(オ)368
登載
民集 第21巻4号961頁
参照法条
民法715条,民法710条,民法711条
論点174第710条民法

不法行為による慰藉料請求権は相続の対象となるか

裁判要旨不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和42年11月1日 昭和38(オ)1408
登載
民集 第21巻9号2249頁
参照法条
民法710条,民法711条
論点175第710条民法

民法第七一〇条〈財産以外の損害の賠償〉は法人の名誉権侵害による無形の損害に適用があるか。

裁判要旨法人の名誉権が侵害され、無形の損害が生じた場合でも、右損害の金銭評価が可能であるかぎり、民法第七一〇条〈財産以外の損害の賠償〉の適用がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月28日 昭和34(オ)901
登載
民集 第18巻1号136頁
参照法条
民法710条,民法723条
論点176第710条民法

一 雇用者の安全配慮義務違反によりじん肺にかかったことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効の起算点
二 慰謝料額の認定に違法があるとされた事例

裁判要旨一 雇用者の安全配慮義務違反によりじん肺にかかったことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効は、じん肺法所定の管理区分についての最終の行政上の決定を受けた時から進行する。
二 炭鉱労務に従事してじん肺にかかった者又はその相続人が、雇用者に対し、財産上の損害の賠償を別途請求する意思のない旨を訴訟上明らかにして慰謝料の支払を求めた場合に、じん肺が重篤な進行性の疾患であって、現在の医学では治療が不可能とされ、その症状も深刻であるなど判示の事情の下において、その慰謝料額を、じん肺法所定の管理区分に従い、死者を含む管理四該当者につき一二〇〇万円又は一〇〇〇万円、管理三該当者につき六〇〇万円、管理二該当者につき三〇〇万円とした原審の認定には、その額が低きに失し、著しく不相当なものとして、経験則又は条理に反する違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成6年2月22日 平成1(オ)1667
登載
民集 第48巻2号441頁
参照法条
じん肺法4条,じん肺法13条,民法166条1項,民法415条,民法710条,民訴法394条
論点177第710条民法

建築基準法四二条二項の指定により同条一項の道路とみなされている土地上に設置されたブロック塀の収去請求が許されないとされた事例

裁判要旨建築基準法四二条二項の指定により同条一項の道路とみなされている土地上にブロック塀が設置された場合において、右ブロック塀の設置により既存の通路の幅員が狭められた範囲がブロック二枚分の幅にとどまり、右ブロック塀の外側に既存の通路があって、日常生活上支障が生じていないときは、隣接地の地上建物の所有者は、人格権が侵害されたことを理由として右ブロック塀の収去を求めることができない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成5年11月26日 平成1(オ)1792
登載
集民 第170号641頁
参照法条
建築基準法42条1項,建築基準法42条2項,民法198条,民法710条
論点178第710条民法

道路位置指定処分がされた土地上に設置された工作物の撤去請求が許されないとされた事例

裁判要旨道路位置指定処分がされたが現実に道路として開設されていない土地上に工作物が設置されている場合において、隣接地の所有者は、右処分がされた土地を自由に通行し得ることを前提として、右工作物の撤去を求めることができない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成3年4月19日 昭和62(オ)741
登載
集民 第162号489頁
参照法条
建築基準法(昭和34年法律第156号による改正前のもの)42条1項,民法198条,民法710条
論点179第710条民法

一 離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意が詐害行為に該当する場合の取消しの範囲
二 離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意と詐害行為取消権

裁判要旨一 離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意は、民法七六八条三項〈財産分与〉の規定の趣旨に反してその額が不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消されるべきである。
二 離婚に伴う慰謝料として配偶者の一方が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額を支払う旨の合意は、右損害賠償債務の額を超えた部分について、詐害行為取消権行使の対象となる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成12年3月9日 平成10(オ)560
登載
民集 第54巻3号1013頁
参照法条
民法424条,民法710条,民法763条,768条
論点180第711条民法

一、民法七一一条〈近親者に対する損害の賠償〉の類推適用により被害者の夫の妹に慰藉料請求権が認められた事例
二、不法行為による生命侵害があつた場合と民法七一一条所定以外の者の固有の慰藉料請求権

裁判要旨一、不法行為により死亡した被害者の夫の妹であつても、この者が、跛行顕著な身体障害者であるため、長年にわたり被害者と同居してその庇護のもとに生活を維持し、将来もその継続を期待しており、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた等判示の事実関係があるときには、民法七一一条〈近親者に対する損害の賠償〉の類推適用により加害者に対し慰藉料を請求しうる。
二、不法行為による生命侵害があつた場合、民法七一一条所定以外の者であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和49年12月17日 昭和49(オ)212
登載
民集 第28巻10号2040頁
参照法条
民法711条
論点181第711条民法

一 児童が道路上で遊ぶことについて親権者に監督上の過失がないとされた事例
二 子が重傷を受けた場合の父母の精神的苦痛について慰藉料請求が認められた事例

裁判要旨一 父母が子の戸外行動についてそのつど特別の具体的注意ないし監視をしないからといつて、右の子が小学校二年生の男児であること、平常より同児に対し道路上で遊ぶ際の車両等に対する一般的注意が父母によつて与えられていたことなど判示事情のもとでは、父母に親権者としての監督上の過失があつたものとはいえない。
二 満七年二月の男児が自動車事故によつて重傷を受け、通算約一一月にわたる入院、約一〇回に及ぶ手術等の加療の結果、両足切断は免れたが、現になお判示のような身体障害をのこしている等判示事情のもとで父母が被つた精神的苦痛は、右事故によつて同児の生命が侵害された場合に比し著しく劣るものでなく、父母は、右苦痛による慰藉料を請求することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年1月31日 昭和40(オ)1004
登載
民集 第21巻1号61頁
参照法条
民法820条,民法722条2項,民法711条
論点182第711条民法

一 労働基準法に基づく災害補償と慰藉料との関係
二 労働基準法第七五条の療養補償債務の履行遅滞となる時期
三 労働基準法第七六条の休業補償債務の履行遅滞となる時期

裁判要旨一 加害者である第三者が被災労働者に支払つた慰藉料は、使用者が労働基準法に基づいて被災労働者に支払うべき災害補償の額に影響を及ぼさない。
二 労働基準法第七五条に基づく使用者の療養補償債務は、少なくとも、当該補償の事由が生じた月の末日の経過とともに履行遅滞となるものと解すべきである。
三 労働基準法第七六条に基づく使用者の休業補償債務は、少なくとも、当該休業期間の属する月の末日の経過とともに履行遅滞となるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年12月1日 昭和38(オ)1035
登載
民集 第20巻10号2017頁
参照法条
労働基準法84条2項,労働基準法75条,労働基準法76条,労働基準法施行規則39条,民法711条,民法412条
論点183第711条民法

生命を害された者の兄に固有の慰藉料請求権が認められた事例

裁判要旨弟が他人から生命を害された場合において、兄が自分に子がないところから将来は右弟に家業を継がせようと考えていたこと、現に右弟は兄の同居の家族としてその有力な働き手であつたことからみれば、右弟の不慮の死によつて受けた兄の精神的苦痛は相当大きいものということができるから、右兄に固有の慰藉料請求権が認められる(論旨は、この点を指摘していない)。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年7月30日 昭和38(オ)1447
登載
集民 第79号981頁
参照法条
民法711条
論点184第711条民法

一 民法第七一七条〈土地の工作物等の占有者及び所有者の責任〉にいわゆる「土地ノ工作物」に該当するとされた事例
二 労働者災害補償保険法による遺族補償費として受給者の財産的損害額をこえる金額が支給された場合と受給者以外の遺族の財産的損害賠償請求権の有無
三 労働者災害補償保険法による遺族補償費の受給と遺族の慰藉料請求権の有無
四 労働者災害補償保険法による葬祭料の受給と遺族の損害補償請求権の有無

裁判要旨一 炭坑の坑口附近に設置された捲上機の一部をなし、炭車を坑口に捲き上げるために使用される原判ワイヤロープ(原判決引用の第一審判決理由参照)は、民法第七一条にいわゆる「土地ノ工作物」に該当する。
二 労働者災害補償保険法に基づき妻に支給された遺族補償費の額が、妻の使用者に対して有する不法行為による財産的損害賠償請求権の額をこえる場合でも、妻以外の遺族はそのことと関係なく、使用者に対し、不法行為による財産的損害の賠償を請求することができる。
三 労働者災害補償保険法に基づき遺族補償費が支給された場合でも、遺族は別に、使用者に対し、不法行為による損害賠償としての慰藉料を請求することができる。
四 労働者災害補償保険法に基づき葬祭料が支給された場合でも、不法行為による遺族損害賠償請求権には消長をきたさない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年4月26日 昭和35(オ)381
登載
民集 第16巻4号975頁
参照法条
民法717条,民法711条,労働者災害補償保険法12条1項4号,労働者災害補償保険法12条1項5号,労働基準法79条,労働基準法80条,労働基準法84条2項
論点185第711条民法

生命を害された責任無能力の子に過失があつた場合に父母のなす慰藉料請求と民法第七二二条第二項

裁判要旨他人の不法行為により生命を害された者の父母が民法第七一一条の規定に基き慰藉料を請求する場合において、たとえ右被害者に過失があつても、その者が行為の責任を弁識するに足るべき知能を具えない幼少者であつたときは、慰藉料の額を定めるにつき民法第七二二条第二項を適用しなくても、違法ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年7月20日 昭和29(オ)726
登載
民集 第10巻8号1079頁
参照法条
民法711条,民法722条2項
論点186第713条民法

他人に傷害を負わせた精神障害者の両親について民法七一四条の責任が否定された事例

裁判要旨既に成年に達しながら両親と同居している精神障害者が心神喪失の状況のもとで他人に傷害を負わせたが、当該傷害事件の発生するまでその行動にさし迫つた危険があつたわけではなく、右両親は老齢でその一方は一級の身体障害者であり、いずれも精神衛生法上の保護義務者にされることを避けて同法二〇条二項四号の家庭裁判所の選任を免れていたこともなかつた等判示の事実関係のもとでは、右両親に対し民法七一四条の法定の監督義務者又はこれに準ずべき者としての責任を問うことはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年2月24日 昭和56(オ)1154
登載
集民 第138号217頁
参照法条
民法713条,民法714条,精神衛生法20条1項,精神衛生法20条2項,精神衛生法22条,精神衛生法23条,精神衛生法24条
論点187第714条民法

責任を弁識する能力のない未成年者の行為により火災が発生した場合における監督義務者の損害賠償責任と失火の責任に関する法律

裁判要旨責任を弁識する能力のない未成年者の行為により火災が発生した場合において、失火の責任に関する法律にいう重大な過失の有無は、未成年者の監督義務者の監督について考慮され、右監督義務者は、その監督について重大な過失がなかったときは、右火災により生じた損害を賠償する責任を免れると解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成7年1月24日 平成3(オ)1989
登載
民集 第49巻1号25頁
参照法条
民法714条,失火の責任に関する法律
論点188第715条民法

被用者と第三者との共同不法行為による損害を賠償した第三者からの使用者に対する求償権の成否

裁判要旨被用者と第三者との共同不法行為により他人に損害を加えた場合において、第三者が自己と被用者との過失割合に従つて定められるべき自己の負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、第三者は、被用者の負担部分について使用者に対し求償することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和63年7月1日 昭和60(オ)1145
登載
民集 第42巻6号451頁
参照法条
民法442条,民法715条,民法719条
論点189第715条民法

信用組合の内規に反し職員外の者が職員を通じてした職員定期預金の払戻に関する右職員の行為と民法七一五条の事業の執行

裁判要旨信用組合が職員に対して職員外の者に職員定期預金を利用させることを禁止しているのを知りながら職員外の者が右組合の営業部預金課員の勧誘により同人を通じて右定期預金をした場合でも、職員定期預金でなければ預金をしないことが明らかであつた等特段の事情のないかぎり、右預金契約は一般定期預金として有効に成立し、右預金の払戻に関する右職員の行為は、その限度において組合の事業の執行にあたると解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和50年1月30日 昭和48(オ)270
登載
民集 第29巻1号1頁
参照法条
民法666条,民法715条
論点190第715条民法

一 銀行員の預金業務について銀行に民法第七一五条第一項の責任があるとされた事例
二 不法原因給付にあたらないとされた事例

裁判要旨一 原審認定の事実関係のもとでは、銀行員がその業務を行なうにあたり預金として受入れる意思がないのに相手方から預け入れ小切手を騙取したものとして銀行に民法第七一五条第一項の責任を問うことができる。
二 原審認定の事実関係のもとでは、貸付金が貸主が他から横領したものとしても、右金員の貸付をもつて不法原因の給付とは解せられない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和42年6月22日 昭和39(オ)838
登載
集民 第87号1087頁
参照法条
民法715条1項,民法708条
論点191第715条民法

自動車運送事業の営業名義を貸与した者が名義借受人の雇傭する運転手の過失による自動車事故について損害賠償責任があるとされた事例

裁判要旨免許を受けて自動車の運送事業を営む者が他人をして違法にその営業名義を使用して自動車運送事業を営ませた場合、名義貸与者とその借受人の事業の執行方法につき原判決確定の事実関係があるときは(原判決理由参照)、名義借受人の雇傭する運転手がその事業の執行に関し第三者に加えた自動車事故による損害について、名義貸与者は賠償責任を負担する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年6月10日 昭和39(オ)577
登載
民集 第20巻5号1029頁
参照法条
民法715条,商法23条
論点192第715条民法

民法第七一五条〈使用者等の責任〉の使用者責任と被用者自身の責任との関係

裁判要旨民法第七一五条〈使用者等の責任〉の使用者の損害賠償義務と加害者(被用者)本人の損害賠償義務とはいわゆる不真正連帯債務の関係にあるにすぎないから、加害者本人と被害者間の示談契約によつては、使用者は事故による損害賠償義務を免れるものではないと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年9月14日 昭和39(オ)1430
登載
集民 第80号335頁
参照法条
民法715条,民法437条
論点193第715条民法

一 被害者に業務執行上の過失のある場合と民法第七一五条
二 民法第七一五条〈使用者等の責任〉による損害賠償義務者と相殺の許否

裁判要旨一 被用者たる運転手甲が自動車を運転して当該自動車を輸送する業務に従事中、その過失により自動車を衝突させ同乗していた乙を死亡させたものであるときは、乙が自動車輸送業務の共同担当者たる被用者で右衝突事故の発生につき同人にも過失があつたとしても、使用者は乙の死亡につき民法第七一五条による損害賠償責任を免れない。
二 民法第七一五条〈使用者等の責任〉により損害賠償義務を負担している使用者は、被害者に対する不法行為による損害賠償債権を有している場合でも、相殺をもつて対抗することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年4月30日 昭和30(オ)199
登載
民集 第11巻4号646頁
参照法条
民法715条,民法509条
論点194第715条民法

信用金庫の職員に預金の名目で小切手を詐取された者が信用金庫に損害賠償を請求した場合につき右の者に重大な過失があるとした判断に違法があるとされた事例

裁判要旨甲が信用金庫の支店長代理乙に預金の名目で小切手を詐取されたとして信用金庫に損害賠償を請求した場合において、甲は信用金庫の店舗内で乙に預金の趣旨で小切手を交付したが、もともと正規の預金を勧誘されたものではないなど判示の事情があるときは、甲が勧誘を受けた預金の条件など勧誘から小切手の交付に至るまでの一連の過程に正常な普通預金取引としては不自然な点があったとしても、そのことのみから乙の職務権限の逸脱を知らなかったことにつき甲に重大な過失があるとした原審の判断には、民法七一五条〈使用者等の責任〉の解釈適用を誤った違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成6年11月22日 平成3(オ)284
登載
集民 第173号347頁
参照法条
民法715条
論点195第715条民法

一 共同不法行為の加害者の各使用者間における求償権の成立する範囲
二 加害者の複数の使用者間における各使用者の負担部分
三 加害者の複数の使用者間における求償権の成立する範囲

裁判要旨一 共同不法行為の加害者の各使用者が使用者責任を負う場合において、一方の加害者の使用者は、当該加害者の過失割合に従って定められる自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、他方の加害者の使用者に対し、当該加害者の過失割合に従って定められる負担部分の限度で、求償することができる。
二 加害者の複数の使用者が使用者責任を負う場合において、各使用者の負担部分は、加害者の加害行為の態様及びこれと各使用者の事業の執行との関連性の程度各使用者の指揮監督の強弱などを考慮して定められる責任の割合に従って定めるべきである。
三 加害者の複数の使用者が使用者責任を負う場合において、使用者の一方は、自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、使用者の他方に対し、その負担部分の限度で、求償することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成3年10月25日 昭和63(オ)1383
登載
民集 第45巻7号1173頁
参照法条
民法442条,民法715条,民法719条
論点196第715条民法

貸金業を営む株式会社の従業員が会社の貸金の原資に充てると欺罔して金員を詐取した行為が会社の事業の執行についてされたというための要件

裁判要旨貸金業を営む株式会社の従業員が会社の貸金の原資に充てると欺罔して第三者から金員を詐取した行為が会社の事業の執行についてされたものであるというためには,貸金の原資の調達が使用者である会社の事業の範囲に属するというだけでなく,これが客観的,外形的にみて,被用者である当該従業員が担当する職務の範囲に属するものでなければならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年3月30日 平成21(受)1780
登載
集民 第233号373頁
参照法条
民法715条
論点197第715条民法

1 都道府県による児童福祉法27条1項3号の措置に基づき社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童を養育監護する施設の職員等と国家賠償法1条1項にいう公権力の行使に当たる公務員
2 国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に加えた損害につき国又は公共団体が国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う場合における使用者の民法715条に基づく損害賠償責任の有無

裁判要旨1 都道府県による児童福祉法27条1項3号の措置に基づき社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童を養育監護する施設の長及び職員は,国家賠償法1条1項の適用において都道府県の公権力の行使に当たる公務員に該当する。
2 国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても,当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うときは,使用者は民法715条に基づく損害賠償責任を負わない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成19年1月25日 平成17(受)2335
登載
民集 第61巻1号1頁
参照法条
(1,2につき)国家賠償法1条1項 (1につき)児童福祉法27条1項3号 (2につき)民法715条
論点198第715条民法

1 階層的に構成されている暴力団の最上位の組長と下部組織の構成員との間に同暴力団の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業について民法715条1項所定の使用者と被用者の関係が成立しているとされた事例
2 階層的に構成されている暴力団の下部組織における対立抗争においてその構成員がした殺傷行為が民法715条1項にいう「事業ノ執行ニ付キ」した行為に当たるとされた事例

裁判要旨1 階層的に構成されている暴力団が,その威力をその暴力団員に利用させることなどを実質上の目的とし,下部組織の構成員に対しても同暴力団の威力を利用して資金獲得活動をすることを容認していたなど判示の事情の下では,同暴力団の最上位の組長と下部組織の構成員との間に同暴力団の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業について民法715条1項所定の使用者と被用者の関係が成立している。
2 階層的に構成されている暴力団の下部組織における対立抗争においてその構成員がした殺傷行為は,同暴力団が,その威力をその暴力団員に利用させることなどを実質上の目的とし,下部組織の構成員に対しても同暴力団の威力を利用して資金獲得活動をすることを容認し,その資金獲得活動に伴い発生する対立抗争における暴力行為を賞揚していたなど判示の事情の下では,民法715条1項〈使用者等の責任〉にいう「事業ノ執行ニ付キ」されたものに当たる。
(2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成16年11月12日 平成16(受)230
登載
民集 第58巻8号2078頁
参照法条
民法715条1項,暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条,暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律3条,暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律15条の2
論点199第715条民法

郵便局に所属する保険外務員が簡易保険の契約者に対し虚偽の事実を述べて資金の融通を受けることによって同契約者に加えた損害が民法715条1項にいう「被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害」に当たらないとされた事例

裁判要旨郵便局に所属する保険外務員が,簡易保険の契約者に対し,他の顧客に届けるべき満期保険金を盗まれ,これをその日のうちに届けなければ勤務先に発覚して免職になるなどの虚偽の事実を述べ,同契約者が簡易保険の契約者貸付けの方法により借り受けた資金の融通を受けることによって同契約者に加えた損害は,民法715条1項〈使用者等の責任〉にいう「被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害」に当たらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成15年3月25日 平成14(受)297
登載
集民 第209号291頁
参照法条
民法715条
論点200第715条民法

被用者が使用者の事業の執行について第三者に加えた損害を賠償した場合における被用者の使用者に対する求償の可否

裁判要旨被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え,その損害を賠償した場合には,被用者は,使用者の事業の性格,規模,施設の状況,被用者の業務の内容,労働条件,勤務態度,加害行為の態様,加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について,使用者に対して求償することができる。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和2年2月28日 平成30(受)1429
登載
民集 第74巻2号106頁
参照法条
民法715条
論点201第716条民法

請負人が第三者に損害を与えた場合において注文者に注文又は指図について過失があるとされた事例

裁判要旨注文者が請負人に対し、注文者所有の旧木造建物を取り壊してその跡地一杯に鉄骨ブロック四階建てアパートの建築工事を請け負わせ、請負人の人夫が右旧建物に隣接する第三者所有の建物の屋根に上つて建築資材等を運搬し、屋根瓦上に資材等を落下させるなどして瓦を破壊し、それによる雨漏りによつて野地板、垂木が腐蝕するような損害を与えた場合において、旧建物と第三者所有の建物とが互いに屋根が重なり合うほど密着して建てられていたものであり、旧建物の跡地一杯にアパートを建築すれば、両者の間には、足場を組む余地も、落下物の防止措置を施す余裕もなかつたなどの事情(原判決理由参照)にあるときは、注文者に注文又は指図について過失があつたというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年2月20日 昭和53(オ)1012
登載
集民 第126号107頁
参照法条
民法716条
論点202第716条民法

請負人が第三者に与えた損害につき注文者の注文または指図に過失が認められないとされた事例

裁判要旨請負人の施行した道路開設工事による落石のため第三者に損害を生じた場合において、右損害が注文者の作成した設計図および仕様書自体のかしによつて生じたものではなく、注文者は請負人に対し、落石等により損害を生ずることのないような措置を講ずべきことを要求し、これに要する費用を加算して請負代金額を決定し、請負人も、その趣旨を諒承して、自己の責任において事故防止の措置を講ずることを約して工事を引き受け、注文者の具体的指示によらず、自主的な判断によつて岩石の切捨てをしたものであり、注文者は、請負契約上、工事施行方法について判示のような指示監督の権限を有し、かつ、常時監督員を工事現場に派遣していたが、その目的はもつぱら工事が契約どおりに行なわれることを確保することにあつたなど判示の事実関係があるときは、注文者が、当初から右損害の発生のおそれのあることを予知していながら、損害防止に必要な措置を請負人に具体的に命ずることなく工事を注文し施行させたものであつても、注文者の注文または指図に過失があつたものと認めることはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年7月16日 昭和42(オ)647
登載
民集 第24巻7号982頁
参照法条
民法716条
論点203第716条民法

一、民法七六一条〈日常の家事に関する債務の連帯責任〉と表見代理
二、妻の日常家事代理権の範囲内に属するとは認められない事例

裁判要旨一、昭和四三年(オ)第九七一号同四四年一二月一八日第一小法廷判決(民集の二三巻三号二四七六頁)と同旨。
二、原審確定の事実関係のもとでは、妻が夫を代理して本件手形貸付取引契約(注、妻の知人が上告人信用金庫から貸付をうける取引契約である)の連帯保証をなす権限が、妻の日常家事代理権の範囲内に属するとは認められない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年2月27日 昭和44(オ)1274
登載
集民 第98号327頁
参照法条
民法716条,民法110条
論点204第716条民法

請負人が第三者に損害を与えた場合において注文者に注文または指図について過失があるとされた事例

裁判要旨請負人の過失により建築中の建物が倒壊し、隣家の居住者に損害を与えた場合において、注文者が、土木出張所から建物の補強工作を完備するよう強く勧告を受けたにもかかわらず、請負人にその工作をさせることなく、所定の中間検査も受けないままで瓦葺作業に取りかからせたため、瓦の重みで右建物が倒壊するに至つた等判示の事情があるときは、右注文者に、注文または指図について過失があつたものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日 昭和43(オ)26
登載
民集 第22巻13号3413頁
参照法条
民法716条
論点205第717条民法

新築されたビルに隣接する家屋の所有者がいわゆるビル風による被害発生を予防するための工事に要した費用の出捐と民法七一七条の損害発生の有無

裁判要旨新築されたビルに隣接する家屋の所有者が、将来いわゆるビル風により右家屋に被害を生ずるおそれがあるとして、これを予防するための工事を施したとしても、右工事を施さざるをえない特段の事情のない限り、右工事のために費用を出捐したことをもつて、右ビルの設置又は保存の瑕疵によつて損害を生じたものということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年12月21日 昭和53(オ)1470
登載
集民 第143号491頁
参照法条
民法717条
論点206第717条民法

道路の交差点における信号機の設置に瑕疵があつたとされた事例

裁判要旨南北に通ずる道路と東西に通ずる二本の近接した道路とがほぼ直角に交わる交差点のほぼ中央に電車の軌道が敷設されているなど、判示のような複雑な構造を有する交差点において、東西に通ずる道路上の車両の進行を規制するとともに、交差点の北側の横断歩道上を西から東に向かう歩行者の歩行をもかねて規制するものとして東側に信号機が設置された場合に、横断歩道の西端から信号機の設置位置までの距離が約三〇メートルあり、同西端における信号機の見通し角度が正面から右約四七ないし五五度であつたなど判示のような事情があるため、一般の歩行者にとつて右信号機が横断歩道の歩行をもかねて規制するものであることを容易に認識できないときは、右信号機は、横断歩道の歩行者の歩行をも規制するものとしては、不適当な位置に設置されていたものというべく、その設置に瑕疵があつたものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年2月16日 昭和43(オ)431
登載
民集 第27巻1号99頁
参照法条
国家賠償法2条,民法717条
論点207第717条民法

踏切道の設備に瑕疵があつたとされた事例

裁判要旨踏切に警報機を設置したのみでは保安設備として不十分であり、少なくとも自動遮断機の設備をするのでなければ踏切道としての本来の機能を全うしえない状況にあるときは、踏切に自動遮断機の保安設備を欠いていることは、土地工作物の設置に瑕疵があつたものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和46年9月28日 昭和42(オ)1227
登載
集民 第103号555頁
参照法条
民法717条
論点208第717条民法

一、踏切道の軌道施設に保安設備を欠く場合と民法七一七条の責任
二、踏切道の軌道施設に設置上のかしがあるとされた事例

裁判要旨一、土地の工作物たる踏切道の軌道施設は、保安設備とあわせ一体としてこれを考察すべきであり、本来そなえるべき保安設備を欠く場合には、土地の工作物たる軌道施設の設置にかしがあるものとして、民法七一七条〈土地の工作物等の占有者及び所有者の責任〉所定の帰責原因になる。
二、電車の踏切において、横断者からみた踏切付近の見通しが判示のとおりであり、所定の速度で踏切を通過しようとする電車の運転者が、踏切上にある歩行者を最遠距離において発見してただちに急停車の措置をとつても、踏切を越える地点でなければ停止できないほど見通しが悪いうえ、一日につき、換算交通量七〇〇人程度、列車回数五〇四回にのぼり、過去においても数度に及ぶ電車と通行人との接触事故があつたという事情のある場合には、少なくとも右踏切に警報機を設置していなかつたことは、土地の工作物たる軌道施設の設置にかしがあつたものというべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和46年4月23日 昭和40(オ)536
登載
民集 第25巻3号351頁
参照法条
民法717条
論点209第717条民法

民法第七一七条〈土地の工作物等の占有者及び所有者の責任〉の規定に基づく妨害予防請求の可否

裁判要旨民法第七一七条〈土地の工作物等の占有者及び所有者の責任〉の規定に基づいて、いまだ損害が発生しないのにかかわらず、将来損害を生ずるおそれがあることを理由として、その予防のため右工作物の修復を求め、さらにその修復を終えるまでその使用の差止めを求めることはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年7月4日 昭和42(オ)1024
登載
集民 第91号567頁
参照法条
民法717条
論点210第717条民法

電気工作物に瑕疵があるとされた事例。

裁判要旨三五〇〇ボルト以下の高圧架空送電線のゴム被覆が破損していたため感電事故が生じた場合、行政上の取締規定からは右電線にゴム被覆を用いることが必要でなく、また、終戦後の国内物資の欠乏からその電力会社管下の破損したゴム被覆高圧送電線を全部完全なものに取り替えることは極めて困難な状況にあつても、事故現場の電線の修補することが絶対不可能でないかぎりは、右送電線を所有する電力会社は、右事故によつて生じた損害を賠償する責任がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年11月8日 昭和33(オ)510
登載
民集 第16巻11号2216頁
参照法条
民法717条
論点211第717条民法

いわゆる接収建物の賃借人たる国と民法第七一七条にいう占有者

裁判要旨国が連合国占領軍の接収通知に応じ、建物をその所有者から賃借してこれを同軍の使用に供した場合には、国はその建物の設置保存に関する瑕疵に基因する損害につき、民法第七一七条〈土地の工作物等の占有者及び所有者の責任〉にいう占有者としてその責に任ずべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年12月18日 昭和29(オ)848
登載
民集 第10巻12号1559頁
参照法条
民法717条
論点212第717条民法

一 液化石油ガス消費設備が民法七一七条にいう「土地ノ工作物」に当たるとされた事例
二 液化石油ガスの供給者がガス消費設備について民法七一七条にいう「占有者」に当たるとされた事例

裁判要旨一 土地のコンクリート面にビスで固定されたベーパーライザー(気化器)にガスボンベから高圧ゴムホース及び導管によって接続されるなど判示のような構造を有し、一体として機能を果たす液化石油ガス消費設備は、高圧ゴムホースを含め、民法七一七条〈土地の工作物等の占有者及び所有者の責任〉にいう「土地ノ工作物」に当たる。
二 液化石油ガスの供給者が、自らが専ら保守、管理及び操作を行うとの合意の下にその所有するガス消費設備を被供給者に貸与して液化石油ガスを供給し、ガスボンベの取替えのため被供給者の包括的な許諾を得て定期的にその建物の敷地内の設置箇所に出入りしていたという事実関係の下においては、供給者はガス消費設備について民法七一七条にいう「占有者」に当たる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成2年11月6日 昭和61(オ)1512
登載
集民 第161号91頁
参照法条
民法717条
論点213第717条民法

原審が,壁面に吹き付けられた石綿が露出している建物が通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになった時点を明らかにしないまま,同建物の設置又は保存の瑕疵の有無について判断したことに審理不尽の違法があるとされた事例

裁判要旨壁面に吹き付けられた石綿が露出している建物で昭和45年から平成14年まで勤務していた間にその石綿の粉じんにばく露したことにより悪性胸膜中皮腫に罹患した者の相続人が,同建物の所有者に対し,民法717条1項〈土地の工作物等の占有者及び所有者の責任〉ただし書の規定に基づく損害賠償を求める訴訟において,原審が,同建物が通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになったのはいつの時点からであるかを明らかにしないまま,昭和45年以降の時期における同建物の設置又は保存の瑕疵の有無について,平成7年に一部改正された政令及び平成17年に制定された省令の規定による規制措置の導入をも根拠にして直ちに判断をしたことには,審理が尽くされていない違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成25年7月12日 平成22(受)1163
登載
集民 第244号1頁
参照法条
民法717条1項
論点214第717条民法

建物の区分所有等に関する法律3条〈私権の享有は、出生に始まる。〉前段所定の団体と民法717条1項本文にいう「占有者」

裁判要旨建物の区分所有等に関する法律3条〈私権の享有は、出生に始まる。〉前段所定の団体は、特段の事情がない限り、区分所有建物の共用部分について、民法717条1項〈土地の工作物等の占有者及び所有者の責任〉本文にいう「占有者」に当たる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和8年1月22日 令和6(受)385
登載
民集 第80巻1号37頁
参照法条
民法717条1項、建物の区分所有等に関する法律3条
論点215第718条民法

犬が近付いてきたため自転車の操縦を誤り転倒受傷した七歳の児童に対し犬の飼主が民法七一八条の責任を負うとされた事例

裁判要旨七歳の児童が、自転車に乗つて幅員約三メートルの道路を通行中、飼主の手を離れて道路前方にいる体長約四〇センチメートル、体高約二〇センチメートルの愛玩用犬と約八・五メートルの距離に接近したところ、犬が約二メートル程歩いて自転車に近付いたため、日頃から犬嫌いの右児童が一瞬ひるんで操縦を誤つて転倒し、道路沿いの川に自転車とともに転落し左眼を失明するに至つたなど原判示の事実関係のもとにおいては、飼主は民法七一八条の損害賠償責任を負う。

(反対意見がある)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和58年4月1日 昭和57(オ)993
登載
集民 第138号469頁
参照法条
民法718条
論点216第718条民法

畜犬の飼主に保管上の過失を認めた事例

裁判要旨飼主が散歩に連れて行こうとして檻から出した畜犬が公道に飛び出し、進行中の原動機付自転車に接触して転倒させ、運転者を負傷させるなど原判示のような事情があるときは、飼主に畜犬保管上の過失がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年11月5日 昭和56(オ)523
登載
集民 第134号183頁
参照法条
民法718条1項
論点217第718条民法

動物の占有者が保管者を選任して動物の保管をさせた場合における民法第七一八条の責任。

裁判要旨動物の占有者は、自己に代つて動物を保管する者を選任してこれに保管をさせた場合において、「動物ノ種類及ビ性質ニ従ヒ相当ノ注意ヲ以テ」その保管者を選任・監督したときは、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を免れるものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年9月24日 昭和39(オ)1336
登載
民集 第19巻6号1668頁
参照法条
民法718条
論点218第718条民法

飼犬保管上の注意義務。

裁判要旨咬癖のある飼犬を戸外に連れ出すに当つては、危害防止のため鎖でつないでその一端を堅持し、常に注意をそらさず、いつでもこれに十分な支配制御を加える万全の姿勢をとつていなければならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年6月27日 昭和37(オ)1287
登載
集民 第66号751頁
参照法条
民法718条
論点219第718条民法

畜犬の飼主に保管上の過失を認めた事例

裁判要旨畜犬の占有機関がその操作制御方法を十分会得していなかつたにもかかわらず、公道上を、二頭一諸に運動させ、畜犬が被害者に跳びついた際その力に負けて制御できなかつたなど原判示のような事情(原判決引用の第一審判決理由参照)があるときは、飼主に畜犬保管上の過失がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年2月1日 昭和34(オ)1049
登載
民集 第16巻2号143頁
参照法条
民法718条1項
論点220第719条民法

一 共謀による共同不法行為と民法四三四条の適用の有無
二 継続性のない事務処理を目的とする委任契約の債務不履行による解除と民法六五二条の適用

裁判要旨一 共同不法行為が行為者の共謀による場合であつても、民法四三四条〈連帯債権者の一人との間の相殺〉の規定は適用されない。
二 民法六五二条〈委任の解除の効力〉の規定は、継続性のない事務処理を目的とする委任契約を委任者の債務不履行を理由にして解除する場合にも適用される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年3月4日 昭和56(オ)173
登載
集民 第135号269頁
参照法条
民法434条,民法652条,民法719条
論点221第719条民法

共同訴訟人の一人が相手方と他の共同訴訟人との訴訟につき相手方に補助参加をすることができる場合

裁判要旨甲の乙丙に対する乙丙の共同不法行為を理由とする損害賠償請求訴訟の第一審において、乙に対する請求を認容し、丙に対する請求を棄却する判決があり、乙が自己に対する判決につき控訴しないときは、乙は、甲丙間の判決について控訴するため甲に補助参加をすることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和51年3月30日 昭和46(オ)1057
登載
集民 第117号323頁
参照法条
民法719条,民訴法64条
論点222第719条民法

一 被用者と第三者との共同過失によつて惹起された交通事故による損害を賠償した使用者の第三者に対する求償権の成否
二 右の場合における第三者の負担部分

裁判要旨一 使用者は、被用者と第三者との共同過失によつて惹起された交通事故による損害を賠償したときは、右第三者に対し、求償権を行使することができる。
二 右の場合における第三者の負担部分は、共同不法行為者である被用者と第三者との過失の割合にしたがつて定められるべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年11月18日 昭和41(オ)58
登載
民集 第20巻9号1886頁
参照法条
民法719条,民法442条
論点223第719条民法

共同不法行為者が負担する損害賠償債務と民法四三七条の適用の有無

裁判要旨共同不法行為者が負担する損害賠償債務については、民法四三七条〈連帯債務者の一人についての法律行為の無効等〉の規定は適用されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成6年11月24日 平成4(オ)1814
登載
集民 第173号431頁
参照法条
民法437条,民法719条
論点224第719条民法

複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故においていわゆる絶対的過失割合を認定することができる場合における過失相殺の方法と加害者らの賠償責任

裁判要旨複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において,その交通事故の原因となったすべての過失の割合(いわゆる絶対的過失割合)を認定することができるときには,絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について,加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成15年7月11日 平成14(オ)1689
登載
民集 第57巻7号815頁
参照法条
民法719条,民法722条2項
論点225第719条民法

1 交通事故と医療事故とが順次競合し運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において各不法行為者が責任を負うべき損害額を被害者の被った損害額の一部に限定することの可否
2 交通事故と医療事故とが順次競合し運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合の各不法行為者と被害者との間の過失相殺の方法

裁判要旨1 交通事故と医療事故とが順次競合し,そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって,運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において,各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯責任を負うべきものであり,結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害額を案分し,責任を負うべき損害額を限定することはできない。
2 交通事故と医療事故とが順次競合し,そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって,運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において,過失相殺は,各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり,他の不法行為者と被害者との間における過失の割合をしんしゃくしてすることは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成13年3月13日 平成10(受)168
登載
民集 第55巻2号328頁
参照法条
民法719条,民法722条2項
論点226第719条民法

一つの交通事故について甲及び乙が連帯して損害賠償責任を負う場合に乙の損害賠償責任についてのみ過失相殺がされて両者の賠償すべき額が異なるときに甲のした損害の一部てん補が乙の賠償すべき額に及ぼす影響

裁判要旨一つの交通事故について甲及び乙が被害者丙に対して連帯して損害賠償責任を負う場合において、乙の損害賠償責任についてのみ過失相殺がされ、両者の賠償すべき額が異なるときは、甲がした損害の一部てん補は、てん補額を丙が甲からてん補を受けるべき損害額から控除しその残損害額が乙の賠償すべき額を下回ることにならない限り、乙の賠償すべき額に影響しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成11年1月29日 平成9(オ)2049
登載
集民 第191号265頁
参照法条
民法719条,民法722条2項
論点227第719条民法

一 共同不法行為者の一人と被害者との間で成立した訴訟上の和解における債務の免除の効力が他の共同不法行為者に対しても及ぶ場合
二 共同不法行為者の一人と被害者との間で成立した訴訟上の和解における債務の免除の効力が他の共同不法行為者に対しても及ぶ場合における求償金額の算定

裁判要旨一 甲と乙が共同の不法行為により丙に損害を加えたが、甲と丙との間で成立した訴訟上の和解により、甲が丙の請求額の一部につき和解金を支払うとともに、丙が甲に対し残債務を免除した場合において、丙が右訴訟上の和解に際し乙の残債務をも免除する意思を有していると認められるときは、乙に対しても残債務の免除の効力が及ぶ。
二 共同不法行為者の一人甲と被害者丙との間で成立した訴訟上の和解により、甲が丙の請求額の一部につき和解金を支払うとともに、丙が甲に対し残債務を免除した場合において、他の共同不法行為者乙に対しても残債務の免除の効力が及ぶときは、甲の乙に対する求償金額は、確定した損害額である右訴訟上の和解における甲の支払額を基準とし、双方の責任割合に従いその負担部分を定めて、これを算定すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成10年9月10日 平成9(オ)448
登載
民集 第52巻6号1494頁
参照法条
民法437条,民法442条,民法719条
論点228第719条民法

1 労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のために労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが屋内の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した労働者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例
2 労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のために労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが屋内の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者のうち労働者に該当しない者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例
3 被害者によって特定された複数の行為者のほかに被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為をした者が存在しないことは,民法719条1項〈共同不法行為者の責任〉後段の適用の要件か
4 石綿含有建材を製造販売した建材メーカーらが,中皮腫にり患した大工らに対し,民法719条1項後段の類推適用により,上記大工らの各損害の3分の1について連帯して損害賠償責任を負うとされた事例
5 石綿含有建材を製造販売した建材メーカーらが,石綿肺,肺がん又はびまん性胸膜肥厚にり患した大工らに対し,民法719条1項後段の類推適用により,上記大工らの各損害の3分の1について連帯して損害賠償責任を負うとされた事例

裁判要旨1 屋根を有し周囲の半分以上が外壁に囲まれ屋内作業場と評価し得る建設現場の内部における建設作業(石綿吹付け作業を除く。)に従事する者が石綿粉じんにばく露したことにより石綿肺,肺がん,中皮腫等の石綿関連疾患にり患した場合において,次の⑴~⑷など判示の事情の下では,石綿に係る規制を強化する昭和50年の改正後の特定化学物質等障害予防規則が一部を除き施行された同年10月1日以降,労働大臣が,労働安全衛生法に基づく規制権限を行使して,通達を発出するなどして,石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として,石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること並びに石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業をする際には必ず適切な防じんマスクを着用する必要があることを示すように指導監督をせず,また,同法に基づく省令制定権限を行使して,事業者に対し,上記の屋内作業場と評価し得る建設現場の内部において上記各作業に労働者を従事させる場合に呼吸用保護具を使用させることを義務付けなかったことは,上記の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した労働者との関係において,国家賠償法1条1項の適用上違法である。
⑴ 昭和50年当時,建設現場は石綿粉じんにばく露する危険性の高い作業環境にあったところ,国による石綿粉じん対策は不十分なものであり,建設作業従事者に石綿関連疾患にり患する広範かつ重大な危険が生じていた。
⑵ 昭和33年には,石綿肺に関する医学的知見が確立し,昭和47年には,石綿粉じんにばく露することと肺がん及び中皮腫の発症との関連性並びに肺がん及び中皮腫が潜伏期間の長い遅発性の疾患であることが明らかとなっていた。
⑶ 国は,昭和48年には,石綿のがん原性が明らかとなったことに伴い,石綿粉じんに対する規制を強化する必要があると認識し,昭和50年には,石綿含有建材を取り扱う建設作業従事者について,石綿関連疾患にり患することを防止する必要があると認識していた。
⑷ 国は,昭和48年頃には,建設作業従事者が,当時の通達の示す抑制濃度を超える石綿粉じんにさらされている可能性があることを認識することができたのであり,建設現場における石綿粉じん濃度の測定等の調査を行えば,石綿吹付け作業に従事する者以外の上記の屋内作業場と評価し得る建設現場の内部における建設作業従事者にも,石綿関連疾患にり患する広範かつ重大な危険が生じていることを把握することができた。
2 屋根を有し周囲の半分以上が外壁に囲まれ屋内作業場と評価し得る建設現場の内部における建設作業(石綿吹付け作業を除く。)に従事する者が石綿粉じんにばく露したことにより石綿肺,肺がん,中皮腫等の石綿関連疾患にり患した場合において,次の⑴~⑷など判示の事情の下では,石綿に係る規制を強化する昭和50年の改正後の特定化学物質等障害予防規則が一部を除き施行された同年10月1日以降,労働大臣が,労働安全衛生法に基づく規制権限を行使して,通達を発出するなどして,石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として,石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること並びに石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業をする際には必ず適切な防じんマスクを着用する必要があることを示すように指導監督をしなかったことは,上記の建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者のうち同法2条2号において定義された労働者に該当しない者との関係においても,国家賠償法1条1項の適用上違法である。
⑴ 昭和50年当時,建設現場は石綿粉じんにばく露する危険性の高い作業環境にあったところ,国による石綿粉じん対策は不十分なものであり,建設作業従事者に石綿関連疾患にり患する広範かつ重大な危険が生じていた。
⑵ 昭和33年には,石綿肺に関する医学的知見が確立し,昭和47年には,石綿粉じんにばく露することと肺がん及び中皮腫の発症との関連性並びに肺がん及び中皮腫が潜伏期間の長い遅発性の疾患であることが明らかとなっていた。
⑶ 国は,昭和48年には,石綿のがん原性が明らかとなったことに伴い,石綿粉じんに対する規制を強化する必要があると認識し,昭和50年には,石綿含有建材を取り扱う建設作業従事者について,石綿関連疾患にり患することを防止する必要があると認識していた。
⑷ 国は,昭和48年頃には,建設作業従事者が,当時の通達の示す抑制濃度を超える石綿粉じんにさらされている可能性があることを認識することができたのであり,建設現場における石綿粉じん濃度の測定等の調査を行えば,石綿吹付け作業に従事する者以外の上記の屋内作業場と評価し得る建設現場の内部における建設作業従事者にも,石綿関連疾患にり患する広範かつ重大な危険が生じていることを把握することができた。
3 被害者によって特定された複数の行為者のほかに被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為をした者が存在しないことは,民法719条1項〈共同不法行為者の責任〉後段の適用の要件である。
4 Y1,Y2及びY3を含む多数の建材メーカーが,石綿含有建材を製造販売する際に,当該建材が石綿を含有しており,当該建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること等を当該建材に表示する義務を負っていたにもかかわらず,その義務を履行しておらず,大工らが,建設現場において,複数の建材メーカーが製造販売した石綿含有建材を取り扱うことなどにより,累積的に石綿粉じんにばく露し,中皮腫にり患した場合において,次の⑴~⑷など判示の事情の下では,Y1,Y2及びY3は,民法719条1項後段の類推適用により,上記大工らの各損害の3分の1について,連帯して損害賠償責任を負う。
⑴ 上記大工らは,建設現場において,石綿含有スレートボード・フレキシブル板,石綿含有スレートボード・平板及び石綿含有けい酸カルシウム板第1種という種類の石綿含有建材を直接取り扱っていた。
⑵ 上記の各種類の石綿含有建材のうち,Y1,Y2及びY3が製造販売したものが,上記大工らが稼働する建設現場に相当回数にわたり到達して用いられていた。
⑶ 上記大工らが,上記の各種類の石綿含有建材を直接取り扱ったことによる石綿粉じんのばく露量は,各自の石綿粉じんのばく露量全体のうち3分の1程度であった。
⑷ 上記大工らの中皮腫の発症について,Y1,Y2及びY3が個別にどの程度の影響を与えたのかは明らかでない。
5 Y1,Y2及びY3を含む多数の建材メーカーが,石綿含有建材を製造販売する際に,当該建材が石綿を含有しており,当該建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること等を当該建材に表示する義務を負っていたにもかかわらず,その義務を履行しておらず,大工らが,建設現場において,複数の建材メーカーが製造販売した石綿含有建材を取り扱うことなどにより,累積的に石綿粉じんにばく露し,石綿肺,肺がん又はびまん性胸膜肥厚にり患した場合において,次の⑴~⑷など判示の事情の下では,Y1,Y2及びY3は,民法719条1項後段の類推適用により,上記大工らの各損害の3分の1について,連帯して損害賠償責任を負う。
⑴ 上記大工らは,建設現場において,石綿含有スレートボード・フレキシブル板,石綿含有スレートボード・平板及び石綿含有けい酸カルシウム板第1種という種類の石綿含有建材を直接取り扱っていた。
⑵ 上記の各種類の石綿含有建材のうち,Y1,Y2及びY3が製造販売したものが,上記大工らが稼働する建設現場に相当回数にわたり到達して用いられていた。
⑶ 上記大工らが,上記の各種類の石綿含有建材を直接取り扱ったことによる石綿粉じんのばく露量は,各自の石綿粉じんのばく露量全体のうち3分の1程度であった。
⑷ 上記大工らの石綿肺,肺がん又はびまん性胸膜肥厚の発症について,Y1,Y2及びY3が個別にどの程度の影響を与えたのかは明らかでない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和3年5月17日 平成30(受)1447
登載
民集 第75巻5号1359頁
参照法条
(1,2につき)国家賠償法1条1項,労働安全衛生法22条,労働安全衛生法23条, 労働安全衛生法27条,労働安全衛生法57条1項 (3~5につき)民法719条1項後段
論点229第719条民法

原告らの採る立証手法により特定の建材メーカーの製造販売した石綿含有建材が特定の建設作業従事者の作業する建設現場に相当回数にわたり到達していたとの事実が立証され得ることを一律に否定した原審の判断に経験則又は採証法則に反する違法があるとされた事例

裁判要旨次の⑴から⑸までの手順による立証手法により,特定の建材メーカーの製造販売した石綿含有建材が特定の建設作業従事者の作業する建設現場に相当回数にわたり到達していたとの事実が立証され得ることを一律に否定した原審の判断には,経験則又は採証法則に反する違法がある。
⑴ 国土交通省及び経済産業省により公表されているデータベースに掲載されるなどした石綿含有建材を複数の種別に分類し,そのうち,建設作業従事者らの職種ごとに,直接取り扱う頻度が高く,取り扱う時間も長く,取り扱う際に多量の石綿粉じんにばく露するといえる種別を選定する。
⑵ 上記のとおり選定された種別に属する石綿含有建材のうち,上記建設作業従事者らが建設作業に従事していた地域での販売量が僅かであるもの等を除外し,さらに,上記建設作業従事者ごとに,建設作業に従事した期間とその建材の製造期間との重なりが1年未満である可能性のあるもの等を除外する。
⑶ 上記⑴及び⑵により上記建設作業従事者ごとに特定した石綿含有建材のうち,同種の建材の中での市場占有率がおおむね10%以上であるものは,その市場占有率を用いた確率計算を考慮して,上記建設作業従事者の作業する建設現場に到達した蓋然性が高いものとする。
⑷ 上記建設作業従事者がその取り扱った石綿含有建材の名称,製造者等につき具体的な記憶に基づいて供述等をする場合には,その供述等により上記建設作業従事者の作業する建設現場に到達した石綿含有建材を特定することを検討する。
⑸ 建材メーカーらから,自社の石綿含有建材につき販売量が少なかったこと等が具体的な根拠に基づいて指摘された場合には,その建材を上記⑴から⑷までにより特定したものから除外することを検討する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和3年5月17日 平成31(受)596
登載
民集 第75巻6号2303頁
参照法条
民法719条1項後段,民訴法247条
論点230第720条民法

漁港管理者である町が漁港水域内の不法設置に係るヨット係留杭を法規に基づかずに強制撤去する費用を支出したことが違法とはいえないとされた事例

裁判要旨漁港管理者である町が当該漁港の区域内の水域に不法に設置されたヨット係留杭を漁港管理規程が制定されていなかったため法規に基づかずに強制撤去する費用を支出した場合において、右係留杭の不法設置により、その設置水域においては、漁船等の航行可能な水路が狭められ、特に夜間、干潮時に航行する漁船等にとって極めて危険な状況が生じていたのに、右係留杭の除却命令権限を有する県知事は直ちには撤去することができないとし、その設置者においても右県知事の至急撤去の指示にもかかわらず、撤去しようとしなかったなど判示の事実関係の下においては、右撤去費用の支出は、緊急の事態に対処するためのやむを得ない措置に係る支出として、違法とはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成3年3月8日 平成1(行ツ)99
登載
民集 第45巻3号164頁
参照法条
民法720条,漁港法26条,行政代執行法2条,地方自治法2条3項1号,地方自治法242条の2第1項
論点231第721条民法

自家用自動車総合保険契約の記名被保険者の子が胎児であった時に発生した交通事故により出生後に傷害を生じその結果後遺障害が残存した場合における同契約の無保険車傷害条項に基づく保険金請求の可否

裁判要旨自家用自動車総合保険契約の記名被保険者の子が,胎児であった時に発生した交通事故により出生後に傷害を生じ,その結果,後遺障害が残存した場合には,当該子又はその父母は,当該傷害及び後遺障害によってそれぞれが被った損害について,同契約の無保険車傷害条項が被保険者として定める「記名被保険者の同居の親族」に生じた傷害及び後遺障害による損害に準ずるものとして,同条項に基づく保険金の請求をすることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年3月28日 平成17(受)1751
登載
民集 第60巻3号875頁
参照法条
商法第3編第10章 保険,民法91条,民法721条
論点232第722条民法

一 公立学校における教師の教育活動と国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」

二 損害賠償請求権者が一時金による支払を訴求している場合と定期金による支払を命ずる判決の許否

裁判要旨一 国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれる。

二 損害賠償請求権者が訴訟上一時金による支払を求めている場合には、定期金による支払を命ずる判決をすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年2月6日 昭和59(オ)1058
登載
集民 第150号75頁
参照法条
国家賠償法1条1項,民法417条,民法722条1項
論点233第722条民法

県が職員らの不正につき損害賠償金を支払ったことにより取得した求償権の一部を知事において行使しないことが違法な怠る事実に当たるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨県が教員採用試験における職員らの不正のため不合格となった受験者らに損害賠償金を支払ったことにより取得した求償権の一部を知事において行使しないことが財産の管理を違法に怠るものであるとして提起された住民訴訟において,上記不正は県の教育委員会の職員らが現職の教員を含む者から依頼を受けて受験者の得点を操作するなどして組織的に行われ,一部は賄賂の授受を伴うなど悪質なものであり,その結果も本来合格していたはずの多数の受験者が不合格となるなど極めて重大であったことに鑑み,これに関与した職員らに対する退職手当の返納命令や不支給は正当なものであったという事情の下では,教員の選考に試験の総合点以外の要素を加味すべきであるとの考え方に対して上記教育委員会が確固とした方針を示してこなかったことや,上記返納命令に基づく返納の実現が必ずしも確実ではなかったこと等の抽象的な事情のみから直ちに上記求償権のうち上記返納に係る額に相当する部分を行使しないことが違法な怠る事実に当たるとはいえないとした原審の判断には,違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成29年9月15日 平成28(行ヒ)33
登載
集民 第256号77頁
参照法条
国家賠償法1条2項,民法1条2項,民法722条2項,地方自治法242条の2第1項3号,地方自治法242条の2第1項4号
論点234第722条民法

労働者に過重な業務によって鬱病が発症し増悪した場合において,使用者の安全配慮義務違反等に基づく損害賠償の額を定めるに当たり,当該労働者が自らの精神的健康に関する一定の情報を使用者に申告しなかったことをもって過失相殺をすることができないとされた事例

裁判要旨労働者に過重な業務によって鬱病が発症し増悪した場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,使用者の安全配慮義務違反等に基づく損害賠償の額を定めるに当たり,当該労働者が自らの精神的健康に関する一定の情報を使用者に申告しなかったことをもって過失相殺をすることはできない。
(1) 当該労働者は,鬱病発症以前の数か月に休日や深夜を含む相応の時間外労働を行い,その間,最先端の製品の製造に係るプロジェクトの工程で初めて技術担当者のリーダーになってその職責を担う中で,業務の期限や日程を短縮されて督促等を受け,上記工程の技術担当者を理由の説明なく減員された上,過去に経験のない異種の製品の開発等の業務も新たに命ぜられるなど,その業務の負担は相当過重であった。
(2) 上記情報は,神経科の医院への通院,その診断に係る病名,神経症に適応のある薬剤の処方等を内容とし,労働者のプライバシーに属する情報であり,人事考課等に影響し得る事柄として通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される性質の情報であった。
(3) 上記(1)の過重な業務が続く中で,当該労働者は,同僚から見ても体調が悪い様子で仕事を円滑に行えるようには見えず,頭痛等の体調不良が原因であると上司に伝えた上で欠勤を繰り返して重要な会議を欠席し,それまでしたことのない業務の軽減の申出を行い,産業医にも上記欠勤の事実等を伝え,使用者の実施する健康診断でも頭痛,不眠,いつもより気が重くて憂鬱になる等の症状を申告するなどしていた。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成26年3月24日 平成23(受)1259
登載
集民 第246号89頁
参照法条
民法418条,民法722条2項
論点235第722条民法

Aが運転しBが同乗する自動二輪車とパトカーとが衝突しBが死亡した交通事故につき,Bの相続人がパトカーの運行供用者に対し損害賠償を請求する場合において,過失相殺をするに当たり,Aの過失をBの過失として考慮することができるとされた事例

裁判要旨Aが運転しBが同乗する自動二輪車と,これを停止させる目的で前方の路上に停車していたパトカーとが衝突し,Bが死亡した交通事故につき,Bの相続人が上記パトカーの運行供用者に対し損害賠償を請求する場合において,(1)AとBは,上記交通事故の前に上記自動二輪車を交代で運転しながら共同して暴走行為を繰り返し,上記パトカーに追跡されていたこと,(2)Aは,道路脇の駐車場に停車していた別のパトカーを見付け,これから逃れるため制限速度を大きく超過して走行するとともに,その様子をうかがおうとしてわき見をするという運転行為をしたため上記交通事故が発生したものであることなど判示の事実関係の下では,Aの上記(2)の運転行為はAとBが共同して行っていた上記(1)の暴走行為の一環を成すものとして,過失相殺をするに当たり,Aの上記(2)の運転行為における過失をBの過失として考慮することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年7月4日 平成19(受)1386
登載
集民 第228号399頁
参照法条
民法722条2項
論点236第722条民法

業務上の過重負荷と基礎疾患とが共に原因となって従業員が死亡した場合において,使用者の不法行為を理由とする損害賠償の額を定めるに当たり,使用者による過失相殺の主張が訴訟上の信義則に反するとして民法722条2項の規定を類推適用しなかった原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨業務上の過重負荷と従業員Aの基礎疾患とが共に原因となってAが急性心筋虚血により死亡した場合において,(1)Aは,虚血性心疾患の危険因子となる家族性高コレステロール血症にり患し,冠状動脈の2枝に障害があり,陳旧性心筋梗塞の合併症を有していたこと,(2)使用者は,原審(控訴審)において初めて過失相殺の主張をしたが,第1審の段階ではAが家族性高コレステロール血症にり患していた事実を認識していなかったことがうかがわれることなど判示の事情の下では,使用者の不法行為を理由とする損害賠償の額を定めるに当たり,上記過失相殺の主張が訴訟上の信義則に反するとして民法722条2項の規定を類推適用しなかった原審の判断には,違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成20年3月27日 平成18(受)1870
登載
集民 第227号585頁
参照法条
民法722条2項,民訴法2条
論点237第722条民法

内縁の夫の運転する自動車に同乗中に第三者の運転する自動車との衝突事故により傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合にその賠償額を定めるに当たり内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することの可否

裁判要旨内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが衝突し,それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において,その損害賠償額を定めるに当たっては,内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成19年4月24日 平成18(受)688
登載
集民 第224号261頁
参照法条
民法722条2項,民法第4編第2章第1節 婚姻の成立
論点238第722条民法

差押えがされている動産引渡請求権を更に差し押さえた債権者が先行する差押事件で実施される配当手続に参加するために執行裁判所に対して競合差押債権者の存在を認識させる措置を執るべき義務の有無

裁判要旨差押えがされている動産引渡請求権を更に差し押さえた債権者には,先行する差押事件で実施される配当手続に参加するために,自らの差押事件の執行裁判所及び先行する差押事件の執行裁判所に対し,自らの差押事件の進行について問い合わせをするなどして,競合差押債権者の存在を認識させる措置を執るべき義務はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成18年1月19日 平成17(受)761
登載
民集 第60巻1号109頁
参照法条
民事執行法85条3項,民事執行法165条4号,民事執行法166条,民法722条
論点239第722条民法

1 自動車損害賠償保障法72条1項後段の規定による損害のてん補額支払義務の履行期と履行遅滞
2 自動車損害賠償保障法72条1項後段の規定による損害のてん補額の算定に当たっての過失相殺と国民健康保険法58条1項の規定による葬祭費の支給額の控除との先後

裁判要旨1 自動車損害賠償保障法72条1項後段の規定による損害のてん補額支払義務は,期限の定めのない債務であり,政府が被害者から履行の請求を受けた時から履行遅滞となる。
2 自動車損害賠償保障法72条1項後段の規定による損害のてん補額の算定に当たり,被害者の過失をしんしゃくすべき場合であって,国民健康保険法58条1項の規定による葬祭費の支給額を控除すべきときは,被害者に生じた現実の損害の額から過失割合による減額をし,その残額からこれを控除する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年6月2日 平成16(受)29
登載
民集 第59巻5号901頁
参照法条
民法412条3項,民法722条2項,自動車損害賠償保障法施行令21条14号,自動車損害賠償保障法72条1項,自動車損害賠償保障法73条1項,国民健康保険法58条1項
論点240第722条民法

夫婦が別居を開始してから九箇月余り後に出生した子を被告として嫡出否認の訴えによらずに夫が提起した親子関係不存在確認の訴えが不適法とされた事例

裁判要旨夫婦が子の出生する九箇月余り前に別居し、夫婦間にはその以前から性交渉がなかったが、夫は、別居開始から子の出生までの間に、妻と性交渉の機会を有したほか、妻となお婚姻関係にあることに基づいて婚姻費用の分担金や出産費用の支払に応ずる調停を成立させたなど判示の事実関係の下においては、嫡出否認の訴えによらずに夫が提起した親子関係不存在確認の訴えは、不適法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年8月31日 平成7(オ)1095
登載
集民 第189号437頁
参照法条
民法722条,民法775条,人事訴訟手続法第2章 親子関係事件ニ関スル手続
論点241第723条民法

民法七二三条〈名誉毀損における原状回復〉にいう名誉の意義

裁判要旨民法七二三条〈名誉毀損における原状回復〉にいう名誉とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年12月18日 昭和43(オ)1357
登載
民集 第24巻13号2151頁
参照法条
民法723条
論点242第723条民法

新聞紙に謝罪広告を掲載することを命ずる判決の合憲性

裁判要旨一 新聞紙に謝罪広告を掲載することを命ずる判決は、その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものにあつては、憲法第一九条に違反しないことは当裁判所の大法廷の判決(昭和二八年(オ)第一二四一号同三一年七月四日大法廷判決、民集一〇巻七号七八五頁参照)の示すところであり、右のごとき判決が憲法第二一条第一項に違反しないことは、右判決の趣旨に徴して明らかである(注、本件は新聞紙の発行人に対するものを含み、代替執行できない点が前記大法廷判決と異なることに留意のこと)。
二 (意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年4月21日 昭和39(テ)35
登載
集民 第83号269頁
参照法条
民法723条,憲法19条,憲法21条1項
論点243第723条民法

一 謝罪広告を命ずる判決と強制執行
二 右判決は憲法第一九条に反しないか

裁判要旨一 新聞紙に謝罪広告を掲載することを命ずる判決は、その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものにあつては、民訴第七三三条〈削除〉により代替執行をなし得る。
二 右判決は憲法第一九条に反しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和31年7月4日 昭和28(オ)1241
登載
民集 第10巻7号785頁
参照法条
民訴法733条,民法723条,憲法19条
論点244第723条民法

放送事業者がした真実でない事項の放送により権利の侵害を受けた本人等が放送法4条1項の規定に基づく訂正又は取消しの放送を求める私法上の権利の有無

裁判要旨放送事業者がした真実でない事項の放送により権利の侵害を受けた本人等は,放送事業者に対し,放送法4条1項の規定に基づく訂正又は取消しの放送を求める私法上の権利を有しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成16年11月25日 平成13(オ)1513
登載
民集 第58巻8号2326頁
参照法条
放送法4条,民法723条
論点245第724条民法

民法七二四条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉所定の三年の時効期間の計算と初日の不算入

裁判要旨民法七二四条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉所定の三年の時効期間の計算においては、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知つた時が午前零時でない限り、時効期間の初日を算入すべきではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和57年10月19日 昭和56(オ)767
登載
民集 第36巻10号2163頁
参照法条
民法138条,民法140条,民法724条
論点246第724条民法

商法二六六条の三第一項前段所定の第三者の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間

裁判要旨商法二六六条の三第一項前段所定の第三者の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は一〇年と解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和49年12月17日 昭和49(オ)768
登載
民集 第28巻10号2059頁
参照法条
民法167条1項,民法724条,商法266条の3第1項
論点247第724条民法

事務管理により他人の不法行為上の損害賠償義務を免れさせるに足りる費用を支出した場合における右費用償還請求権の消滅時効の起算点

裁判要旨第三者が事務管理により他人の不法行為上の損害賠償義務を免れさせるに足りる費用を支出した場合における右第三者の右他人に対する右費用償還請求権の消滅時効は、右不法行為上の損害賠償請求権とは別個に、右費用償還請求権を行使することのできる時、すなわち、その権利の発生した時から、進行を開始する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年7月9日 昭和43(オ)157
登載
集民 第91号683頁
参照法条
民法166条,民法702条,民法724条
論点248第724条民法

一、民法第七二四条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉の「損害及ヒ加害者ヲ知リタル時」にあたるとされた事例
二、一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴を提起した場合と右残部についての消滅時効中断の効力

裁判要旨一、登記官吏の過失により虚偽の所有権移転登記がされ、これを信頼して土地を買い受け、その地上に建物を建築したものが、右事実関係を知り自己が右土地の所有権を取得しえないことを知つたときは、その時に、右建物を収去することによつて生ずる損害についてもその損害および加害者を知つたものと解するのが相当である。
二、不法行為に基づく損害賠償債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴を提起した場合、訴提起による消滅時効中断の効力はその一部の範囲においてのみ生じ、残部には及ばないと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年6月27日 昭和38(オ)842
登載
集民 第91号461頁
参照法条
民法724条,民法147条1号,国家賠償法1条,国家賠償法4条
論点249第724条民法

信用協同組合が自らの経営破綻の危険を説明すべき義務に違反して出資の勧誘をしたことを理由とする出資者の信用協同組合に対する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効が,遅くとも同種の集団訴訟が提起された時点から進行するとされた事例

裁判要旨信用協同組合が自らの経営破綻の危険を説明すべき義務に違反して出資の勧誘をしたことを理由とする出資者の信用協同組合に対する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は,経営破綻の直後に,上記出資者が上記勧誘に応じて出資をした結果損害を被った事実を認識していたことに加え,次の(1)〜(3)など判示の事実関係の下においては,上記出資者が上記勧誘当時の信用協同組合の代表者の経営破綻の危険性についての具体的認識に関する証拠となる資料を得ていなかったとしても,遅くとも上記出資者と同様の立場にある者らにより信用協同組合に対する集団訴訟が提起された時点から進行する。
(1) 上記出資者が出資をしてから信用協同組合が経営破綻に至るまでの期間は9か月に満たなかった。
(2) 経営破綻の3か月後までには,信用協同組合が経営破綻の前年に実施された監督官庁の検査で既に債務超過と見込まれていたなどの事情が明らかにされた。
(3) 上記出資者と同様の立場にある者らにより,経営破綻の約半年後から信用協同組合に対する損害賠償請求訴訟が逐次提起され,経営破綻の約1年後までには集団訴訟も提起された。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成23年4月22日 平成21(受)131
登載
集民 第236号443頁
参照法条
民法724条
論点250第724条民法

被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出したため相続人がその事実を知ることができなかった場合における上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権と民法724条後段の除斥期間

裁判要旨被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経過した場合において,その後相続人が確定した時から6か月内に相続人が上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは,民法160条〈相続財産に関する時効の完成猶予〉の法意に照らし,同法724条後段の効果は生じない。
(意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年4月28日 平成20(受)804
登載
民集 第63巻4号853頁
参照法条
民法160条,民法724条
論点251第724条民法

1 B型肝炎ウイルスに感染した患者が乳幼児期に受けた集団予防接種等とウイルス感染との間の因果関係を肯定するのが相当とされた事例
2 乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染しB型肝炎を発症したことによる損害につきB型肝炎を発症した時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例

裁判要旨1 乳幼児期に集団予防接種等を受けたX1〜X3がB型肝炎ウイルスに感染した場合において,(1)B型肝炎ウイルスは,血液を介して人から人に感染するものであり,その感染力の強さに照らし,集団予防接種等の被接種者の中に感染者が存在した場合,注射器の連続使用によって感染する危険性があること,(2)X1〜X3は,最も持続感染者になりやすいとされる0〜3歳時を含む6歳までの幼少期に集団予防接種等を受け,それらの集団予防接種等において注射器の連続使用がされたこと,(3)X1〜X3は,その幼少期にB型肝炎ウイルスに感染して持続感染者となり,うちX1及びX2は,成人期に入ってB型肝炎を発症したこと,(4)X1〜X3は,出産時にB型肝炎ウイルスの持続感染者である母親の血液が子の体内に入ることによる感染(垂直感染)により感染したものではなく,それ以外の感染(水平感染)により感染したものであること,(5)昭和61年から母子間感染阻止事業が開始された結果,同年生まれ以降の世代における新たな持続感染者の発生がほとんどみられなくなったということは,少なくとも,幼少児については,垂直感染を阻止することにより同世代の幼少児の水平感染も防ぐことができたことを意味し,一般に,幼少児については,集団予防接種 等における注射器の連続使用によるもの以外は,家庭内感染を含む水平感染の可能性が極めて低かったことを示すものであること,(6)X1〜X3について,上記集団予防接種等のほかには感染の原因となる可能性の高い具体的な事実の存在はうかがわれず,他の原因による感染の可能性は,一般的,抽象的なものにすぎないことなど判示の事情の下においては,上記集団予防接種等とX1〜X3のB型肝炎ウイルス感染との間の因果関係を肯定するのが相当である。
2 乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染したX4及びX5がB型肝炎を発症したことによる損害については,(1)乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染し,持続感染者となった場合,HBe抗原陽性からHBe抗体陽性への変換(セロコンバージョン)が起きることなく成人期に入ると,肝炎を発症することがあること,(2)X4は,昭和26年5月生まれで,同年9月〜昭和33年3月に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染し,昭和59年8月ころ,B型肝炎と診断されたこと,(3)X5は,昭和36年7月生まれで,昭和37年1月〜昭和42年10月に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染し,昭和61年10月,B型肝炎と診断されたことなど判示の事情の下においては,上記集団予防接種等(加害行為)の時ではなく,B型肝炎の発症(損害の発生)の時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年6月16日 平成16(受)672
登載
民集 第60巻5号1997頁
参照法条
国家賠償法1条1項,予防接種法2条,結核予防法4条,結核予防法13条,民法724条
論点252第724条民法

船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効の起算点

裁判要旨船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効は,民法724条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉により,被害者が損害及び加害者を知った時から進行する
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成17年11月21日 平成16(受)1434
登載
民集 第59巻9号2558頁
参照法条
民法166条1項,民法724条,商法798条1項
論点253第724条民法

1 通商産業大臣が石炭鉱山におけるじん肺発生防止のための鉱山保安法上の保安規制の権限を行使しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例
2 加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合における民法724条後段所定の除斥期間の起算点

裁判要旨1 炭鉱で粉じん作業に従事した労働者が粉じんの吸入によりじん肺にり患した場合において,炭鉱労働者のじん肺り患の深刻な実情及びじん肺に関する医学的知見の変遷を踏まえて,じん肺を炭じん等の鉱物性粉じんの吸入によって生じたものを広く含むものとして定義し,これを施策の対象とするじん肺法が成立したこと,そのころまでには,さく岩機の湿式型化によりじん肺の発生の原因となる粉じんの発生を著しく抑制することができるとの工学的知見が明らかとなっており,金属鉱山と同様に,すべての石炭鉱山におけるさく岩機の湿式型化を図ることに特段の障害はなかったのに,同法成立の時までに,鉱山保安法に基づく省令の改正を行わず,さく岩機の湿式型化等を一般的な保安規制とはしなかったことなど判示の事実関係の下では,じん肺法が成立した後,通商産業大臣が鉱山保安法に基づく省令改正権限等の保安規制の権限を直ちに行使しなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
2 民法724条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉後段所定の除斥期間は,不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には,当該損害の全部又は一部が発生した時から進行する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年4月27日 平成13(受)1760
登載
民集 第58巻4号1032頁
参照法条
国家賠償法1条1項,鉱山保安法1条,鉱山保安法4条,鉱山保安法(昭和37年法律第105号による改正前のもの)30条,じん肺法(昭和52年法律第76号による改正前のもの)2条1項1号,石炭鉱山保安規則(昭和61年通商産業省令第74号による改正前のもの)284条の2,民法724条
論点254第724条民法

交通事故による後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効が遅くとも症状固定の診断を受けた時から進行するとされた事例

裁判要旨交通事故により負傷した者が,後遺障害について症状固定の診断を受け,これに基づき自動車保険料率算定会に対して自動車損害賠償責任保険の後遺障害等級の事前認定を申請したときは,その結果が非該当であり,その後の異議申立てによって等級認定がされたという事情があったとしても,上記後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効は,遅くとも上記症状固定の診断を受けた時から進行する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成16年12月24日 平成14(受)1355
登載
集民 第215号1109頁
参照法条
民法724条
論点255第724条民法

1 国が水俣病による健康被害の拡大防止のためにいわゆる水質二法に基づく規制権限を行使しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例
2 熊本県が水俣病による健康被害の拡大防止のために同県の漁業調整規則に基づく規制権限を行使しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例
3 水俣病による健康被害につき加害行為の終了から相当期間を経過した時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例

裁判要旨1 国が,昭和34年11月末の時点で,多数の水俣病患者が発生し,死亡者も相当数に上っていると認識していたこと,水俣病の原因物質がある種の有機水銀化合物であり,その排出源が特定の工場のアセトアルデヒド製造施設であることを高度のがい然性をもって認識し得る状況にあったこと,同工場の排水に含まれる微量の水銀の定量分析をすることが可能であったことなど判示の事情の下においては,同年12月末までに,水俣病による深刻な健康被害の拡大防止のために,公共用水域の水質の保全に関する法律及び工場排水等の規制に関する法律に基づいて,指定水域の指定,水質基準及び特定施設の定めをし,上記製造施設からの工場排水についての処理方法の改善,同施設の使用の一時停止その他必要な措置を執ることを命ずるなどの規制権限を行使しなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
2 熊本県が,昭和34年11月末の時点で,多数の水俣病患者が発生し,死亡者も相当数に上っていると認識していたこと,水俣病の原因物質がある種の有機水銀化合物であり,その排出源が特定の工場のアセトアルデヒド製造施設であることを高度のがい然性をもって認識し得る状況にあったことなど判示の事情の下においては,同年12月末までに,水俣病による深刻な健康被害の拡大防止のために,旧熊本県漁業調整規則(昭和26年熊本県規則第31号。昭和40年熊本県規則第18号の2による廃止前のもの)に基づいて,上記製造施設からの工場排水につき除害に必要な設備の設置を命ずるなどの規制権限を行使しなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
3 水俣病による健康被害につき,患者が水俣湾周辺地域から転居した時点が加害行為の終了時であること,水俣病患者の中には潜伏期間のあるいわゆる遅発性水俣病が存在すること,遅発性水俣病の患者においては水俣病の原因となる魚介類の摂取を中止してから4年以内にその症状が客観的に現れることなど判示の事情の下では,上記転居から4年を経過した時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成16年10月15日 平成13(オ)1194
登載
民集 第58巻7号1802頁
参照法条
国家賠償法1条1項,公共用水域の水質の保全に関する法律(昭和45年法律第108号による改正前のもの)1条,公共用水域の水質の保全に関する法律5条,工場排水等の規制に関する法律1条,工場排水等の規制に関する法律2条2項,工場排水等の規制に関する法律7条,工場排水等の規制に関する法律12条,旧熊本県漁業調整規則(昭和26年熊本県規則第31号。昭和40年熊本県規則第18号の2による廃止前のもの)1条,旧熊本県漁業調整規則(昭和26年熊本県規則第31号。昭和40年熊本県規則第18号の2による廃止前のもの)32条,民法724条
論点256第724条民法

民法724条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉にいう被害者が損害を知った時の意義

裁判要旨民法724条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉にいう被害者が損害を知った時とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成14年1月29日 平成8(オ)2607
登載
民集 第56巻1号218頁
参照法条
民法724条
論点257第724条民法

関連新聞社から記事の提供を受けてこれとほぼ同一内容の記事を掲載した新聞社に対する名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟において被害者が同記事の掲載を認識したとする認定に経験則違反の違法があるとされた事例

裁判要旨関連新聞社甲から記事の提供を受けてこれとほぼ同一内容の記事を掲載した新聞社乙に対する名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟において,甲と乙の各掲載記事の紙面構成や見出しが一見して明らかに異なっており,乙の掲載記事には甲の掲載記事にはない記述が書き加えられており,甲が発行する新聞に掲載された記事でも乙が発行する新聞に掲載されない場合があるという判示の事情の下においては,被害者Aが乙の掲載記事に接する機会があった,又はAが他者から甲の掲載記事と同じ記事が乙の発行する新聞にも掲載されたことを知らされた等の具体的事実の立証がないのに,Aが,甲が乙に提供した記事を東京で発行する新聞に掲載したこと及び乙が九州地方で甲と同一名称の新聞を発行していることを知った時に,乙の発行する新聞に上記記事が掲載されたことを認識したとする原審の認定には,経験則違反の違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成14年1月29日 平成10(オ)780
登載
集民 第205号309頁
参照法条
民法724条,民訴法247条
論点258第724条民法

不法行為を原因として心神喪失の常況にある被害者の損害賠償請求権と民法七二四条後段の除斥期間

裁判要旨不法行為の被害者が不法行為の時から二〇年を経過する前六箇月内において右不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後当該被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就職した者がその時から六箇月内に右不法行為による損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法一五八条〈未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予〉の法意に照らし、同法七二四条後段の効果は生じない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年6月12日 平成5(オ)708
登載
民集 第52巻4号1087頁
参照法条
民法158条,民法724条
論点259第724条民法

1 優生保護法3条1項1号から3号まで、10条〈後見開始の審判の取消し〉及び13条2項〈保佐人の同意を要する行為等〉(3条1項1号〈私権の享有は、出生に始まる。〉、2号及び10条については、昭和23年9月11日から平成8年9月25日までの間、3条1項3号については、昭和23年9月11日から平成8年3月31日までの間、13条2項については、昭和27年5月27日から平成8年9月25日までの間において施行されていたもの)と憲法13条及び14条1項
2 優生保護法3条1項1号から3号まで、10条及び13条2項(3条1項1号、2号及び10条については、昭和23年9月11日から平成8年9月25日までの間、3条1項3号については、昭和23年9月11日から平成8年3月31日までの間、13条2項については、昭和27年5月27日から平成8年9月25日までの間において施行されていたもの)に係る国会議員の立法行為の国家賠償法1条1項所定の違法性の有無
3 裁判所が民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段の除斥期間の主張が信義則に反し又は権利の濫用として許されないと判断することができる場合
4 民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉後段の除斥期間の主張をすることが信義則に反し権利の濫用として許されないとされた事例

裁判要旨1 優生保護法3条1項1号から3号まで、10条〈後見開始の審判の取消し〉及び13条2項〈保佐人の同意を要する行為等〉(3条1項1号〈私権の享有は、出生に始まる。〉、2号及び10条については、昭和23年9月11日から平成8年9月25日までの間、3条1項3号については、昭和23年9月11日から平成8年3月31日までの間、13条2項については、昭和27年5月27日から平成8年9月25日までの間において施行されていたもの)は、憲法13条及び14条1項に違反する。
2 優生保護法3条1項1号から3号まで、10条及び13条2項(3条1項1号、2号及び10条については、昭和23年9月11日から平成8年9月25日までの間、3条1項3号については、昭和23年9月11日から平成8年3月31日までの間、13条2項については、昭和27年5月27日から平成8年9月25日までの間において施行されていたもの)に係る国会議員の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受ける。
3 不法行為によって発生した損害賠償請求権が民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段の除斥期間の経過により消滅したものとすることが著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない場合には、裁判所は、除斥期間の主張が信義則に反し又は権利の濫用として許されないと判断することができる。
4 優生保護法(昭和27年法律第141号による改正後のもの)3条1項1号の規定に基づいて生殖を不能にする手術を受けた者及びその配偶者並びに同法13条2項の規定に基づいて生殖を不能にする手術を受けた者が、国に対し、上記各規定を含む優生保護法の関係規定に係る国会議員の立法行為は違法であると主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた場合において、次の⑴~⑸など判示の事情の下では、上記の者らが上記損害賠償を求める訴えを提起した後に「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」が成立し、施行されたことを考慮しても、上記の者らの上記の損害賠償請求権の行使に対して国が民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段の除斥期間の主張をすることは、信義則に反し、権利の濫用として許されない。
⑴ 国は、約48年間にわたり、国家の政策として、優生保護法3条1項1号から3号まで、10条及び13条2項の規定(3条1項1号、2号及び10条については、昭和23年9月11日から平成8年9月25日までの間、3条1項3号については、昭和23年9月11日から平成8年3月31日までの間、13条2項については、昭和27年5月27日から平成8年9月25日までの間において施行されていたもの)に基づく施策を実施してきた。
⑵ 国は、上記施策の実施に当たり、審査を要件とする優生手術を行う際に身体の拘束、麻酔薬施用又は欺罔等の手段を用いることも許される場合がある旨の厚生事務次官通知を各都道府県知事宛てに発出するなどして、優生手術を行うことを積極的に推進していた。
⑶ 上記施策が実施された結果として、少なくとも約2万5000人の者が上記規定に基づいて生殖を不能にする手術を受け、これにより生殖能力を喪失するという被害を受けた。
⑷ 上記訴えを提起した者らについて、上記損害賠償請求権の速やかな行使を期待することができたと解すべき事情があったことはうかがわれない。
⑸ 国は、平成8年に上記規定が削除された後、長期間にわたって、上記規定により行われた生殖を不能にする手術は適法であり、補償はしないという立場をとり続けてきた。
(3につき補足意見及び意見、4につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所大法廷 令和6年7月3日 令和5(受)1319
登載
民集 第78巻3号382頁
参照法条
(1、2、4につき)優生保護法(昭和27年法律第141号による改正後のもの)3条1項1号ないし3号、優生保護法(昭和27年法律第141号による改正後のもの)4条、優生保護法(昭和27年法律第141号による改正後のもの)10条、優生保護法(昭和27年法律第141号による改正後のもの)12条、優生保護法(昭和27年法律第141号による改正後のもの)13条 (1につき)憲法13条、憲法14条1項 (2、4につき)国家賠償法1条1項 (3、4につき)民法1条2項、民法3項、民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条
論点260第724条民法

家屋の評価の誤りに基づき固定資産税等の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権に係る民法724条後段所定の除斥期間の起算点

裁判要旨家屋の評価の誤りに基づきある年度の固定資産税及び都市計画税の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権に係る民法724条後段所定の除斥期間は,当該年度の固定資産税等に係る賦課決定がされ所有者に納税通知書が交付された時から進行する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和2年3月24日 平成30(受)388
登載
民集 第74巻3号292頁
参照法条
国家賠償法1条1項,民法724条
原

条文原文

原文ママ

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民法 第709条(不法行為による損害賠償) 詳細ページ
(不法行為による損害賠償)
第七百九条故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
民法 第710条(財産以外の損害の賠償) 詳細ページ
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
民法 第711条(近親者に対する損害の賠償) 詳細ページ
(近親者に対する損害の賠償)
第七百十一条他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
民法 第712条(責任能力) 詳細ページ
(責任能力)
第七百十二条未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
民法 第713条 詳細ページ
第七百十三条精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。
民法 第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任) 詳細ページ
(責任無能力者の監督義務者等の責任)
第七百十四条前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
民法 第715条(使用者等の責任) 詳細ページ
(使用者等の責任)
第七百十五条ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
民法 第716条(注文者の責任) 詳細ページ
(注文者の責任)
第七百十六条注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。
民法 第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任) 詳細ページ
(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第七百十七条土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
民法 第718条(動物の占有者等の責任) 詳細ページ
(動物の占有者等の責任)
第七百十八条動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
2占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。
民法 第719条(共同不法行為者の責任) 詳細ページ
(共同不法行為者の責任)
第七百十九条数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
民法 第720条(正当防衛及び緊急避難) 詳細ページ
(正当防衛及び緊急避難)
第七百二十条他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。
2前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。
民法 第721条(損害賠償請求権に関する胎児の権利能力) 詳細ページ
(損害賠償請求権に関する胎児の権利能力)
第七百二十一条胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。
民法 第722条(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺) 詳細ページ
(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)
第七百二十二条第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
民法 第723条(名誉毀損における原状回復) 詳細ページ
(名誉毀損における原状回復)
第七百二十三条他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
民法 第724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効) 詳細ページ
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二不法行為の時から二十年間行使しないとき。
民法 第724_2条(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効) 詳細ページ
(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条の二人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
出

一次情報

原文ママ

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