論点1第317条刑事訴訟法
一 審判の請求を受けない事件について判決した場合に当たらないとされた事例
二 被告人らの自白のとおりに有罪とした原判決の事実認定に不合理な点があるとして破棄された事例
裁判要旨一 甲、乙に対する起訴状の罪名及び罰条は殺人のみであつても、逮捕監禁の事実が殺人の実行行為の一部を組成するものとして公訴事実中に記載されていると認められるときは(判文参照)、たとえ右逮捕監禁の事実が殺人とは併合罪関係に立つものと解すべきであつたとしても、裁判所が甲につき殺人の実行行為の一部として右逮捕監禁の事実を認定し、乙につき逮捕監禁罪のみの成立を認めたことが、刑訴法
三七八条三号〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われ… 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。〉にいう審判の請求を受けない事件について判決した場合に当たるとはいえない。
二 被告人らの自白にはその重要部分に信用し難い点があるのに(判文参照)、右自白のとおりに被告人らを有罪と認めた原判決は、刑訴法
四一一条三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉により破棄を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和63年1月29日 昭和59(あ)1551
- 登載
- 刑集 第42巻1号38頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法199条,刑法220条1項,刑訴法256条2項,刑訴法256条4項,刑訴法317条,刑訴法378条3号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点2第317条刑事訴訟法
警察犬による臭気選別の結果が有罪認定の用に供しうるとされた事例
裁判要旨警察犬による本件臭気選別の結果は、右選別につき専門的な知識と経験を有する指導手が、臭気選別能力が優れ選別時においても右能力のよく保持されている警察犬を使用して実施したものであり、かつ、臭気の採取、保管の過程や選別の方法に不適切な点がないから、これを有罪認定の用に供することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和62年3月3日 昭和61(あ)714
- 登載
- 刑集 第41巻2号60頁
- 参照法条
- 刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法321条3項
論点3第317条刑事訴訟法
租税逋脱犯における逋脱所得金額の認定に当たりいわゆる財産増減法を用いることの適否
裁判要旨租税逋脱犯における逋脱所得金額を認定するに当たり、一定期間の期首と期末の財産状態を比較することを基本にしてその期間の利益すなわち所得の金額を算定するいわゆる財産増減法を用いることも許される。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和60年11月25日 昭和57(あ)1563
- 登載
- 刑集 第39巻7号467頁
- 参照法条
- 法人税法22条,法人税法159条1項,刑訴法317条
論点4第317条刑事訴訟法
殺人教唆等の公訴事実につき被教唆者の供述の信用性を肯定しアリバイの成立を否定した原審の判断が支持し難いとして破棄された事例
裁判要旨殺人教唆等の公訴事実についての唯一の直接証拠である被教唆者の検察官に対する供述調書の証拠価値に疑問を容れる余地がないとはいえず、被告人のアリバイの成否について幾多の疑問が残されているのに(判文参照)、被告人を有罪とした原判決は、刑訴法
四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉、三号により破棄を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和59年4月24日 昭和56(あ)897
- 登載
- 刑集 第38巻6号2196頁
- 参照法条
- 刑法61条1項,刑法199条,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点5第317条刑事訴訟法
一 心神喪失又は心神耗弱の判断の性質
二 責任能力判断の前提となる生物学的要素及び心理学的要素についての判断権
裁判要旨一 刑法三九条にいう心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であつて、専ら裁判所に委ねられるべき問題である。
二 刑法三九条にいう心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかの法律判断の前提となる生物学的、心理学的要素についての評価は、右法律判断との関係で究極的には裁判所に委ねられるべき問題である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和58年9月13日 昭和58(あ)753
- 登載
- 集刑 第232号95頁
- 参照法条
- 刑法39条,刑訴法165条,刑訴法317条,刑訴法318条
論点6第317条刑事訴訟法
訴訟法的事実につき自由な証明で足りるとされた事例
裁判要旨電報電話局長に対し逆探知資料の送付嘱託を行うことの当否等を判断するため、右資料の存否という訴訟法的事実を認定するには、いわゆる自由な証明で足りる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和58年12月19日 昭和57(あ)1144
- 登載
- 刑集 第37巻10号1753頁
- 参照法条
- 刑訴法317条,刑訴法320条,刑訴法323条3号
論点7第317条刑事訴訟法
控訴審における謀議の認定手続に不意打ちの違法があるとされた事例
裁判要旨三月一二日から一四日までの謀議への関与を理由にハイジヤツクの共謀共同正犯として起訴された被告人につき、一三日及び一四日の謀議とりわけ一三日夜の第一次謀議への関与を重視してその刑責を肯定した第一審判決に対し、被告人のみが控訴を申し立てた事案において、右第一次謀議への関与の有無がハイジヤツクに関する謀議の成否の判断上とりわけ重要であるとの基本的認識に立つ控訴審が、一三日夜の被告人のアリバイの成立を認めながら、第一審判決が認定せず控訴審において被告人側が何らの防禦活動を行つていない一二日夜の謀議の存否を争点として顕在化させる措置をとることなく、率然として、第一次謀議の日を一二日夜であると認めてこれに対する被告人の関与を肯定した本件訴訟手続(判文参照)は、被告人に不意打ちを与え違法である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和58年12月13日 昭和55(あ)1284
- 登載
- 刑集 第37巻10号1581頁
- 参照法条
- 刑法60条,刑訴法294条,刑訴法308条,刑訴法317条,刑訴法404条
論点8第317条刑事訴訟法
被告人の自白及びこれを裏付けるべき重要な客観的証拠等の証拠価値に疑問があるとして原判決が破棄された事例
裁判要旨被告人を犯行と結びつけるための唯一の直接証拠である被告人の捜査段階における自白及びこれを裏付けるべき重要な客観的証拠等について、その証拠価値をめぐる幾多の疑問があるのに(判文参照)、これらの疑問点を解明することなく被告人を有罪と認めた原判決は、刑訴法
四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉、三号により破棄を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和57年1月28日 昭和55(あ)677
- 登載
- 刑集 第36巻1号67頁
- 参照法条
- 刑法199条,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点9第317条刑事訴訟法
租税逋脱犯における逋脱所得の金額の認定にあたりいわゆる推計の方法を用いることの可否
裁判要旨租税逋脱犯における逋脱所得の金額の認定にあたつては、いわゆる推計の方法、すなわち、財産・負債の増減、収入・支出の状況、取扱量、事業の規模、対比に値する同業者の業績等を示す間接的な資料から所得金額を推認して認定する方法も、その方法が経験則に照らして合理的である限りにおいては、当然に許容されるべきものであり、要は、それによつて合理的な疑いをさしはさむ余地のない程度の証明が得られれば足りる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和54年11月8日 昭和52(あ)1808
- 登載
- 刑集 第33巻7号695頁
- 参照法条
- 所得税法156条,所得税法238条1項,刑訴法317条
論点10第317条刑事訴訟法
被告人の自白に信用性真実性があると認めた原審の判断が支持し難いとして破棄された事例
裁判要旨記録にあらわれた証拠関係を検討すれば、犯行の外形的事実と被告人との結びつきについて、合理的な疑いを容れるに足りる幾多の問題点が存し(判文参照)、原審が、被告人の自白に信用性、真実性があるものと認め、これに基づいて犯行を被告人の所為であるとした判断が支持し難いときは、刑訴法
四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉、三号により、原判決は破棄を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和45年7月31日 昭和43(あ)602
- 登載
- 刑集 第24巻8号597頁
- 参照法条
- 刑法240条後段,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点11第317条刑事訴訟法
控訴裁判所が事実誤認の有無の審査にあたつて使用できる証拠の範囲
裁判要旨控訴裁判所が共同被告人の一人に対する一審判決判示の事実について事実誤認の有無を審査するにあたり、同被告人の関係では証拠調の手続を経ていない、他の共同被告人の関係で弁論併合前に取り調べた証拠をその資料に供することは、違法である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和45年11月5日 昭和45(あ)675
- 登載
- 集刑 第178号105頁
- 参照法条
- 刑訴法411条1号,刑訴法317条,刑訴法313条
論点12第317条刑事訴訟法
被告人の統率する輩下の前科前歴等を量刑上参酌することと憲法第三一条
裁判要旨被告人の統率する輩下の前科、前歴等を被告人の性格、経歴その他の量刑の情状を推知するための資料としてこれを考慮することが憲法第三一条に違反しないことは、当裁判所大法廷判決(昭和四〇年(あ)第八七八号同四一年七月一三日宣告、刑集二〇巻六号六〇九頁)の趣旨に照らし明らかである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和42年3月24日 昭和41(あ)1629
- 登載
- 集刑 第162号1145頁
- 参照法条
- 憲法31条,刑訴法317条
論点13第317条刑事訴訟法
被告人本人との関係における共犯者の犯罪事実に関する供述と憲法第三八条第三項にいわゆる「本人の自白」
裁判要旨共犯者の犯罪事実に関する供述(自白)は、被告人に対する関係においては、被告人以外の者の供述であつて、憲法第三八条第三項にいわゆる「本人の自白」にあたらないことは当裁判所昭和二九年(あ)第一〇五六号同三三年五月二八日大法廷判決(集一二巻八号一七一八頁)の判示するところであり、今なお右判例を変更すべきものとは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和42年2月16日 昭和41(あ)2329
- 登載
- 集刑 第162号381頁
- 参照法条
- 憲法38条3項,刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法319条
論点14第317条刑事訴訟法
起訴されていない犯罪事実を量刑の資料として考慮することと憲法第三一条第三九条
裁判要旨起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮することは許されないが、単に被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等の情状を推知するための資料としてこれを考慮することは、憲法第三一条、第三九条に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和41年7月13日 昭和40(あ)878
- 登載
- 刑集 第20巻6号609頁
- 参照法条
- 憲法31条,憲法38条3項,憲法39条,刑訴法317条,刑訴法319条2項,刑訴法319条3項
論点15第317条刑事訴訟法
適法な証拠調を経ない証拠を他の証拠と総合して犯罪事実を認定した違法と判決への影響
裁判要旨原判決の是認する第一審判決が、適法に証拠調のされていない所論Aの各供述調書を犯罪事実認定の証拠としているとしても、かような違法は、本件のごとく、右証拠調を経ない証拠を除いてもその余の挙示の証拠により犯罪事実を認定できる場合においては判決破棄の理由とならないこと、当裁判所の累次の判例(昭和二四年(れ)第一九四六号、同二五年一月一九日第一小法廷判決、刑集四巻一号三〇頁、昭和二六年(あ)第四六七七号同二七年三月六日第一小法廷判決、刑集六巻三号三六三頁)とするところである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和41年5月26日 昭和40(あ)2776
- 登載
- 集刑 第159号839頁
- 参照法条
- 刑訴法317条,刑訴法335条1項
論点16第317条刑事訴訟法
いわゆる伝統的筆跡鑑定方法の証拠能力。
裁判要旨いゆゆる伝統的筆跡鑑定方法は、多分に鑑定人の経験と感に頼るところがあり、ことの性質上、その証明力には自ら限界があるとしても、そのことから直ちに、この鑑定方法が非科学的で、不合理であるということはできないのであつて、筆跡鑑定におけるこれまでの経験の集積と、その経験によつて裏付けられた判断は、鑑定人の単なる主観にすぎないもの、といえないことはもちろんである。したがつて、事実審裁判所の自由心証によつて、これを罪証に供すると否とは、その専権に属することがらであるといわなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和41年2月21日 昭和40(あ)238
- 登載
- 集刑 第158号321頁
- 参照法条
- 刑訴法165条,刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法321条4項
論点17第317条刑事訴訟法
一 認定した事実と証拠力
二 伝聞供述にあたるかどうかを定める基準
三 原供述者が二者択一的である伝聞供述と証拠能力
裁判要旨一 証拠によつて認定した事実は、他の事実の証拠となり得る。
二 伝聞供述となるかどうかは、要証事実と当該供述者の知覚との関係により決せられるものと解すべきであつて、甲が一定内容の発言をしたこと自体を要証事実とする場合には、その発言を直接知覚した乙の供述は、伝聞供述にあたらないが、甲の発言内容に符合する事実を要証事実とする場合には、その発言を直接知覚したのみで、要証事実自体を直接知覚していない乙の供述は伝聞供述にあたる。
三 刑訴法
第三二四条第二項〈被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条の規定を準用…〉と
第三二一条第一項第三号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。〉所定の要件を具備した伝聞供述の原供述者が特定の甲又は乙のいずれであるか不明確であつても、それだけの理由でその伝聞供述が証拠能力を有しないものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年10月17日 昭和35(あ)1378
- 登載
- 刑集 第17巻10号1795頁
- 参照法条
- 刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法320条1項,刑訴法321条1項2号,刑訴法321条1項3号,刑訴法324条2項
論点18第317条刑事訴訟法
一 賄賂供与申込罪の成立と相手方の賄賂たることの認識の要否
二 証拠により認定した事実を他の事実の証拠とすることの適否
三 刑訴法第四一一条第二号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 刑の量定が甚しく不当であること。〉に該当し、刑の執行を猶予するのが相当であるとした事例
裁判要旨一 賄賂供与申込罪の成立には、相手方に賄賂たることを認識し得べき事情の下に金銭その他の利益の収受を促す意思表示をなせば足りるのであつて、相手方において実際上その意思表示を又はその利益が賄賂たる性質を具有することを認識すると否とは、同罪の成立に影響を及ぼすものではない。
二 証拠によつて認定した或る事実を他の事実の証拠としても、少しも違法ではない(昭和九年(れ)第一五六八号同一〇年二月一四日大審院判決、刑集一四巻九二頁参照)。
三 職権により調査するに原判決の判示するところによれば、被告人の本件利益贈与ないし利益提供の動機としては、相手方の職務行為に対する依頼又は謝礼の趣旨のほかに、多かれ少なかれ、それ以外の個人的な友交関係、政治献金、職務に関係のない個人的将来の庇護期待等の趣旨も認められ、必ずしも職務要因のみに基くものというような状況であつたとは認められないとし、また食糧事情が急迫していた当時の状況下においては被告人の右各贈与は犯情として被告人に有利なものを含んでいたとも認定している。そして被告人は逮捕拘禁以来約一四年の長期に亘り心身に有形無形の多大の苦痛を受けたものというべく、また被告人が反省謹慎の日を送りつつあることは一審判決の判示の趣旨からも窺知しうるところである。本件は当時いわゆるA事件として世人の耳目を聳動せしめた大事件であるが、その後の推移はA事件のB関係においては、収賄罪で起訴されたC、Dは無罪、E、F外五名は執行猶予となつている。叙上の諸事情(判文参照)を考慮するときは、被告人Bに対し実刑を科さなければ刑政の目的を達することができないものとは断じ難く、刑の執行を猶予するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年4月13日 昭和34(れ)2
- 登載
- 集刑 第141号789頁
- 参照法条
- 刑法198条,刑法25条1項,経済関係罰則の整備に官する法律5条,旧刑訴法336条,旧刑訴法360条1項,刑訴法317条,刑訴法335条1項,刑訴法411条2号
論点19第317条刑事訴訟法
刑法第四五条後段の確定裁判のあつたことを認定する証拠書類と刑訴第三〇五条〈検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、その取調べを請求した者にこれを朗読させ…〉による取調の要否。
裁判要旨刑法四五条後段の確定裁判のあつたことを認定する証拠書類は、刑訴
第三〇五条〈検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、その取調べを請求した者にこれを朗読させ…〉による取調をすることを要する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和36年11月28日 昭和28(あ)4375
- 登載
- 刑集 第15巻10号1774頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑訴法305条,刑訴法317条
論点20第317条刑事訴訟法
判例にいわゆる「真実の高度の蓋然性」があるとされた事例。
裁判要旨昭和三四年二月二四日午後八時三〇分から午後一〇時三〇分頃までの間に自転車一台が一関市a所在A病院玄関脇自転車置場において窃取されたこと、被告人は翌二五日午後三時四〇分頃および同日午後八時過頃自転車に乗つていたが、右午後八時過頃被告人が乗つていたものは右の被害品であること、右自転車は同月二六日同市b所在のB病院玄関口に置いてあつたこと、同病院には当時被告人の母Cが入院しており、被告人は同病院に寝泊りしていたことを根拠として第一審の窃盗の認定を支持するのは判例にいわゆる真実の高度の蓋然性があるということができる。
註。判例―昭和二三年八月五日第一小法廷判決昭和二三年(れ)第四四一号判例集二巻九号一一二三頁
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和35年9月8日 昭和35(あ)821
- 登載
- 集刑 第135号231頁
- 参照法条
- 刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法405条2号,刑法235条
論点21第317条刑事訴訟法
英文で記載した証明書および右日本語の翻訳文の証拠調が適法に行われたとした事例。
裁判要旨所論証拠調請求書五中番号2及び3には、証拠の標目としてA軍曹の証明書各一通となつており、その翻訳書を掲げられていないこと所論のとおりであるが、それらの証明書は、一枚の書面の上段が英文の証明書、下段が日本語の翻訳文となつていること記録上明らかであるから、証拠の標目として右軍曹の証明書とあるのは、右日本語の翻訳文も含む趣旨であり、右証明書について適法な証拠調が行われたことは、右日本語の翻訳文についても適法な証拠調が行われたものと認めるのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和35年7月19日 昭和32(あ)1831
- 登載
- 集刑 第134号649頁
- 参照法条
- 裁判所法74条,刑訴法177条,刑訴法305条,刑訴法317条,刑訴法298条,刑訴規則188条の2第2項
論点22第317条刑事訴訟法
一 上告審で提出命令が出せるか
二 上告審における証拠物の取調方法
三 上告審で取り調べた証拠物はどの程度に判断の資料となし得るか。
四 共謀共同正犯における共謀または謀議は罪となるべき事実か。
五 事実誤認を疑うに足りる顕著な事由がある場合と刑訴法第四一一条第三号による原判決の破棄。
裁判要旨一 本件における「諏訪メモ」の如き証拠物については上告審で所有者にその提出を命ずることができる。
二 上告審で右の証拠物を取り調べるにあたつては、公判にこれを顕出するをもつて足りる。
三 上告審は右の方法で取り調べた証拠物を原判決の事実認定の当否を判断する資料に供することができる。
四 共謀共同正犯における共謀または謀議は罪となるべき事実である。
五 判決に影響があつてこれを破棄しなければ著しく正義に反する重大な事実誤認を疑うに足りる顕著な事由があるときは、刑訴
第四一一条第三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉によつて原判決を破棄することができる。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和34年8月10日 昭和29(あ)1671
- 登載
- 刑集 第13巻9号1419頁
- 参照法条
- 刑訴法99条2項,刑訴法303条,刑訴法305条,刑訴法306条,刑訴法307条,刑訴法317条,刑訴法404条,刑訴法409条,刑訴法414条,刑訴法335条1項,刑訴法411条3号,刑法60条
論点23第317条刑事訴訟法
原判決が是認した第一審判決の採証する自白調書の任意性に疑いがあると認められる場合と刑訴法第四一一条第一号による原判決の破棄
裁判要旨第一審判決が被告人の司法警察員に対する供述(自白)調書を他の証拠と綜合して犯罪事実を認定し、原判決もまたその自白の任意性を認め、第一審判決の右採証を是認している場合、諸般の証拠上、右自白の任意性に疑いがあるとみるのが相当で(判文参照)、且つ同自白が犯罪事実認定の有力な証拠となつていると認めるときは、刑訴
第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により原判決を破棄することができる
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年6月13日 昭和31(あ)4204
- 登載
- 刑集 第12巻9号2009頁
- 参照法条
- 刑訴法411条1号,刑訴法322条1項,刑訴法319条1項,刑訴法335条1項,刑訴法317条,憲法38条2項
論点24第317条刑事訴訟法
一 いわゆる共謀共同正犯の成立要件
二 実行行為に関与しない共謀者の刑責と憲法第三一条
三 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」であるか
四 共謀の判示方法
五 憲法第三八条第二項の法意
六 憲法第三八条第三項の法意
七 被告人本人との関係における共犯者の犯罪事実に関する供述と、憲法第三八条第三項にいわゆる「本人の自白」
八 数人間の順次の共謀と共謀共同正犯の成立
裁判要旨一 いわゆる共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が存しなければならない
二 いわゆる共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという意味において、共同正犯の刑責を負うもので、かく解することは憲法第三一条に違反しない
三 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」にほかならず、これを認めるためには厳格な証明によらなければならない
四 共謀の判示は、謀議の行われた日時、場所またはその内容の詳細、すなわち実行の方法、各人の行為の分担役割等についてまで、いちいち具体的に判示することを要しない
五 憲法第三八条第二項は、強制、拷問若しくは脅迫による自白または不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白の証拠能力を否定したものである
六 憲法第三八条第三項の規定は、被告人本人の自白の証拠能力を否定または制限したものではなく、かかる自白の証明力(証拠価値)に対する自由心証を制限し、被告人本人を処罰するには、さらにその自由の証明力を補充しまたは強化すべき他の証拠(いわゆる補強証拠)を要することを規定したものである
七 共同審理を受けていない単なる共犯者は勿論、共同審理を受けている共犯者(共同被告人)であつても、被告人本人との関係においては、被告人以外の者であつて、かかる共犯者または共同被告人の犯罪事実に関する供述は、憲法三八条二項とごとき証拠能力を有しないものでない限り、独立、完全な証明力を有し、憲法三八条三項にいわゆる「本人の自白と同一視し、またはこれに準ずるものではない
八 同一の犯罪について、数人の間の順次共謀が行われた場合は、これらの者のすべての間に当該犯行の共謀が行われたものと解するを相当とし、数人の間に共謀共同正犯が成立するためには、その数人が同一場所に会し、その数人の間に一個の共謀の成立することを必要とするものではない
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和33年5月28日 昭和29(あ)1056
- 登載
- 刑集 第12巻8号1718頁
- 参照法条
- 刑法60条,憲法31条,憲法38条2項,憲法38条3項,刑訴法335条,刑訴法335条1項,刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法319条
論点25第317条刑事訴訟法
累犯となる前科を認定する証拠書類と刑訴法第三〇五条による取調の要否
裁判要旨累犯となる前科を認定する証拠書類は、刑訴法
第三〇五条〈検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、その取調べを請求した者にこれを朗読させ…〉による取調をなすことを要するものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和33年2月26日 昭和32(あ)1029
- 登載
- 刑集 第12巻2号316頁
- 参照法条
- 刑訴法305条,刑訴法335条1項,刑訴法317条,刑法56条,刑法57条
論点26第317条刑事訴訟法
心神耗弱と認めたことが経験則に違反しない事例
裁判要旨二つの精神鑑定書の各結論の部分に、いずれも、被告人が犯行当時心神喪失の情況にあつた旨の記載があつても、其部分を採用せず、右鑑定書全体の記載内容とその他の情況証拠とを綜合して、心神耗弱の事実を認定することは、必ずしも経験則に反するとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和33年2月11日 昭和31(あ)721
- 登載
- 刑集 第12巻2号168頁
- 参照法条
- 刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法411条1号,刑訴法165条,刑法39条
論点27第317条刑事訴訟法
刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉第三号にあたる一事例
裁判要旨贈収賄被告事件において、不可分の供述の一部をとつて全体の意味と異る趣旨を認定して職務に関する饗応を認めた判決は証拠法の違反があると共に事実の誤認があつて刑訴
第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉第三号によりこれを破棄した上無罪の言渡をすることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和32年2月14日 昭和26(あ)5023
- 登載
- 刑集 第11巻2号696頁
- 参照法条
- 刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法411条,刑訴法413条,刑法197条,刑法198条
論点28第317条刑事訴訟法
上告審において証拠能力を争うことが許されない一事例
裁判要旨第一審において証拠とすることに同意した証拠尋問調書の証拠能力を、上告審に至つて争うことは許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和31年9月25日 昭和29(あ)2685
- 登載
- 集刑 第114号733頁
- 参照法条
- 刑訴法317条,刑訴法321条1項1号,刑訴法326条
論点29第317条刑事訴訟法
適法な証拠調を経たことが認められる証拠書類が記録に編綴されていない場合と犯罪事実の認定
裁判要旨犯罪事実を認定するには適法な証拠調を経た証拠によることを要するが、記録によれば、第一審第二回公判期日において所論証拠書類が適法に証拠調べを施行された旨の記載があるから、その適法な証拠調がなされたことは明らかである。該証拠書類が記録に編綴されているかどうかは、犯罪事実の認定を左右するものではない。所論は、証拠書類が記録に編綴されていなければ、これを調査することもできず、当事者に不可能を強いる結果になると主張するが、記録公判調書によれば、所論証拠書類は、第一審裁判所の別件により引用することが明示されており、従つてその所在も明確にされており、かつ該記録は、自由に閲覧することができるものであるから(刑訴
四〇条〈弁護人は、公訴の提起後は、裁判所において、訴訟に関する書類(刑事確定訴訟記録法(昭和六十二年法律第六十四号)第二条第一項…〉、
五三条〈何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。但し、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のある…〉)所論のごとく不能を強いるものということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年9月13日 昭和30(あ)2949
- 登載
- 集刑 第114号635頁
- 参照法条
- 刑訴法310条,刑訴法335条,刑訴法317条,刑訴法52条,刑訴規則44条
論点30第317条刑事訴訟法
一 海難審判所のなした裁決における判断は地方裁判所を拘束するか
二 海難審判所のなした裁決は刑訴第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉の判例にあたるか
裁判要旨一 海難事件で審判所のなした過失の有無に関する判断は同一事件について地方裁判所を拘束しない。
二 海難事件で審判所のなした裁決は、刑訴
第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉にいう判例にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年6月28日 昭和30(あ)3995
- 登載
- 刑集 第10巻6号939頁
- 参照法条
- 刑訴法405条,刑訴法317条,裁判所法4条,海難審判法4条1項
論点31第317条刑事訴訟法
他人の被擬事件につき差押えられた証拠物件を証拠とすることの適否
裁判要旨他人の被擬事件につき差押えられた証拠物件であつても、被告人において異議なく証拠調のなされてある以上これを証拠とすることは妨げない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年6月21日 昭和30(あ)3628
- 登載
- 刑集 第10巻6号860頁
- 参照法条
- 刑訴法220条,刑訴法309条,刑訴法306条,刑訴法317条
論点32第317条刑事訴訟法
共同被告人が弁論分離後他の事件の証人としてした証言を自己の犯罪事実に対する証拠とすることの可否
裁判要旨甲乙が共同被告人である場合に、弁論分離後乙が甲の事件の証人としてした証言は、乙の犯罪事実に対する証拠となる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年12月13日 昭和28(あ)3280
- 登載
- 刑集 第10巻12号1629頁
- 参照法条
- 刑訴法143条,刑訴法317条,刑訴法322条
論点33第317条刑事訴訟法
一 理由不備の違法のない事例
二 裁判所法第四条に違反しない事例
裁判要旨一 特別公務員暴行陵虐致死被告事件において、被害者の解剖所見のみを基礎として受傷時と死亡時との時間的間隔を推認し、これにより或る幅をもつた受傷時を推認した上、その推認時間内において被害者と交渉を持つた者のうちから証拠と推理によつて加害者を認定しても差支えなく、理由不備の違法があるとはいえない。
二 証拠と理由不備の違法を理由として破棄差戻された後の第二審が、証拠を追加し同一事実を認定した場合には、上級審の裁判所の裁判における判断と相反する判断をしたことにはならない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和30年12月16日 昭和29(れ)19
- 登載
- 刑集 第9巻14号2797頁
- 参照法条
- 刑訴法411条1号,刑訴法317条,裁判所法4条
論点34第317条刑事訴訟法
一 鑑定の目的物を破壊するについて刑訴第一六八条〈鑑定人は、鑑定について必要がある場合には、裁判所の許可を受けて、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に…〉所定の裁判所の許可を受けなかつた場合と当該鑑定の証拠能力
二 軽犯罪法第一条第一九号の法意
裁判要旨一 鑑定の目的物を破壊するについて、刑訴
第一六八条〈鑑定人は、鑑定について必要がある場合には、裁判所の許可を受けて、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に…〉所定の裁判所の許可を受けなかつた場合でも、右処置に対し当該強制処分の対象となつた者から異議がなされていない以上、その鑑定の証拠能力を否定すべき理由はない。
二 軽犯罪法第一条第一九号は、正当の理由なくして変死体又は死胎の現場を変える行為を取り締ろうとする法意であつて、故意に死体を放棄する行為を処罰の対象とする死体遺棄罪とはその罪質を異にする。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和29年4月15日 昭和27(あ)3156
- 登載
- 刑集 第8巻4号471頁
- 参照法条
- 刑訴法168条,刑訴法317条,刑訴法318条,軽犯罪法1条19号,刑法190条
論点35第317条刑事訴訟法
綜合認定した証拠の一部に刑訴三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉に基き提出した証拠があつても判決に影響を及ぼさない一事例
裁判要旨所論供述調書は刑訴
三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉に基き提出されたもので、本件事実認定の資料となし得ないものであること所論のとおりであるが、第一審判決挙示の証拠中右調書を除いてもその余の証拠だけで、十分に同判決摘示の事実を認定し得るから、右の違法は未だ原判決を破棄するに足る事由となし得ない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年9月30日 昭和27(あ)3684
- 登載
- 集刑 第86号1219頁
- 参照法条
- 刑訴法328条,刑訴法317条
論点36第317条刑事訴訟法
一 密入国の補強証拠の一事例
二 占領軍軍事裁判所の裁判と憲法第三九条
裁判要旨一 原判決が証拠とした所論「出入国管理庁審判調査第三課作成の検察官に対する解答書」(正確には、同課から千葉地検渋佐検事に対する回答電信の飜訳書)の内容が所論のとおり(被告人の外国人登録が見当らないとするもの)であることは相違ないが、これにより被告人が従来日本に居なかつたことが推認できるから被告人の第一審公判廷における詳細な自白に対する補強証拠としてはこれを以つて足りるものということができる。従つて、被告人の第一審公判廷における自白と前記書面とによつて、本件密入国の事実を認定した原判決に所論の違法はなく、論旨は採用できない。
二 すでに占領軍軍事裁判所の裁判を経た事実について、重ねてわが裁判所で処罰しても、憲法第三九条に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和28年7月22日 昭和27(あ)6010
- 登載
- 刑集 第7巻7号1621頁
- 参照法条
- 外国人登録令3条,刑訴法319条2項,刑訴法317条,憲法31条,憲法38条3項,憲法39条,刑法5条
論点37第317条刑事訴訟法
綜合認定した証拠の一部に刑訴三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉により提出したに過ぎない証拠があつても、判決に影響を及ぼさない一事例
裁判要旨第一審判決の採用した証拠が刑訴
三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉の証拠として検察官により提出されたことは認められるが、原審は事実の取調として所論の二証人を含む計一三名の証人と被告人本人を各尋問した上これらの証拠に基いて第一審判決を維持したのであるから、なんら違法を認めることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年7月22日 昭和27(あ)1183
- 登載
- 集刑 第85号187頁
- 参照法条
- 刑訴法328条,刑訴法393条,刑訴法317条
論点38第317条刑事訴訟法
有罪判決を受けて服役中の共犯者の供述の証拠能力
裁判要旨記録によれば同人(註、共犯者たる証人を指す)は既に有罪の判決を受けて事件が確定し、服役中の第三者であつて、右供述(註、第一審公判廷における供述及び検察官に対する供述)は、その服役中のものにかかり、従つて、その供述は証言であつて、自白とはいえないことは明らかである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年3月26日 昭和26(あ)2856
- 登載
- 集刑 第77号327頁
- 参照法条
- 刑訴法317条,刑訴法143条,刑訴法321条1項2号,憲法38条
論点39第317条刑事訴訟法
一 強盗傷人罪における暴行と認められる一事例
二 傷害が暴行の結果と認められる一事例
三 共同被告人が弁論分離後証人としてした供述の証拠能力
裁判要旨一 被害者に対し「金を出せ、騒ぐと突き刺すぞ」等と申し向けて刃渡四五糎の日本刀を突きつける所為は、人の身体に対する不法な有形力の行使であつて、強盗傷人罪における暴行にあたる。
二 右の場合、被害者が右日本刀にしがみついて救を求め、犯人がその刀を引いたことによつて右手掌等に傷害を負わしめたときは、その所為は暴行の結果といい得る。
三 共同被告人であつても弁論分離後証人としてした供述は、完全な証拠能力を有する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年2月19日 昭和26(あ)3700
- 登載
- 刑集 第7巻2号280頁
- 参照法条
- 刑法236条1項,刑法240条,刑訴法317条,刑訴法319条2項
論点40第317条刑事訴訟法
第二回目の酒税法違反についての証拠物件の存在と第一回、第二回違反の自白の補強証拠
裁判要旨被告人は昭和二六年六月初旬以来米麹二斗五升白米三斗位の蒸米に約水一石位を加えこれを醗酵させて約一石四斗位の醪を作り、うち七斗を蒸溜して酒精分二十三度位の焼酎約一斗九升五合位を製造して他に販売し、残り七斗の醪は同月中旬頃蒸溜して酒精分二十三度位の焼酎約一斗九升五合位を製造して所持しておるところを押えられたと供述している。そして右押収の焼酎は存在しており、その換算酒精分が二十三度六分であることは第一審判決挙示の証拠により肯認し得られるのであるから、被告人の前記供述の全部はこれらの証拠により補強されているものと認められる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年12月8日 昭和27(あ)3601
- 登載
- 集刑 第89号151頁
- 参照法条
- 酒税法16条,酒税法60条,酒税法3条,酒税法12条,憲法38条3項,刑訴法317条,刑訴法319条2項
論点41第317条刑事訴訟法
一 勾留中の被疑者が勾留状に記載されていない犯罪事実について供述した場合の供述の効力
二 刑法第一九七条にいう「職務」の意義
三 法令と証拠調手続
四 共犯者たる共同被告人の公判廷における供述の証拠能力
裁判要旨一 背任および臨時物資需給調整法違反が被疑事実によつて勾留された間に被疑者が収賄事実について検察官に対して供述した場合、その一事をもつて直ちに右供述を無効と解すべきではない。
二 刑法第一九七条にいう「職務」には、公務員がその地位に伴い公務として取り扱うべき一切の執務を指称するものである。
三 富山県庁達第五二号「土木工事直営施行規程」もまた法令の一種であつて、これを証拠説明の中に雑えて挙示する場合においても別に証拠調手続をすることを要しない。
四 共犯者たる共同被告人の公判廷における供述であるからといつて、証拠能力を欠くものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年10月27日 昭和26(あ)3999
- 登載
- 刑集 第7巻10号1971頁
- 参照法条
- 刑法197条,刑訴法62条,刑訴法64条,刑訴法318条,刑訴法305条,刑訴法317条,刑訴法311条3項
論点42第317条刑事訴訟法
一 他の証拠能力ある供述書の内容を補足する趣旨で証拠能力のない書面を判決に引用した場合の適否
二 右の場合における供述書の証拠調の方法
裁判要旨一 判決の証拠説明において証拠能力のない書面を挙げていても、それが他の証拠能力のある供述書に引用せられており、その内容を補足する趣旨のものに過ぎないときは、違法ではない。
二 右の場合、供述書の証拠調の方法としては、これを朗読する外引用せられた書面を朗読すれば足り、これを示す必要はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年3月25日 昭和25(あ)2456
- 登載
- 刑集 第6巻3号514頁
- 参照法条
- 刑訴法317条,刑訴法305条,刑訴法306条
論点43第317条刑事訴訟法
被告人が警察署において犯行に関する略図を書いた事実を証言によつて認定し、この事実と他の証拠と相俟つて同被告人の犯行を認定したことの適否
裁判要旨原審は所論の略図そのものを事実認定の資料としたものではなく、被告人が警察署における取調に際し詳細に窃盗の事実を述べた上、犯行当時における被告人及び第一審相被告人Aの位置などを明確にするため所論の略図を書いたという事実を証人Bの証言によつて、認定し、この事実を考慮に入れて他の証拠と相俟つて被告人がAと共謀の条第一審判決判示第二の窃盗を敢行したものたることを推断したに外ならないのである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和26年1月25日 昭和25(あ)676
- 登載
- 集刑 第39号707頁
- 参照法条
- 刑訴法317条,刑訴法323条3号
論点44第317条刑事訴訟法
共犯者の供述に信用性を認めた原判決が破棄された事例
裁判要旨殺人、死体遺棄の公訴事実に関し、被告人と犯行とを結びつける唯一の直接証拠である共犯者の供述の信用性について幾多の疑問点があるのに、それらを解明することなく被告人を有罪と認めた原判決は、刑訴法
四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉、三号により破棄を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成元年6月22日 昭和57(あ)223
- 登載
- 刑集 第43巻6号427頁
- 参照法条
- 刑法190条,刑法199条,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点45第317条刑事訴訟法
所持品検査に違法があってもこれにより得られた証拠の証拠能力を肯定できるとした原判断を是認した事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成8年11月29日 平成8(あ)867
- 登載
- 集刑 第269号693頁
- 参照法条
- 憲法31条,憲法35条,刑訴法1条,刑訴法218条1項,刑訴法317条,警職法2条1項
論点46第317条刑事訴訟法
今状に基づく捜索の現場で警察官が被告人に暴行を加えた違法があってもそれ以前に発見されていた覚せい剤の証拠能力は否定されないとされた事例
裁判要旨今状に基づく捜索の現場で警察官が被告人に暴行を加えた違法があっても、その暴行の時点は証拠物たる覚せい剤発見の後であり、被告人の発言に触発されて行われたものであって、証拠物の発見を目的とし捜索に利用するために行われたものとは認められないなど判示の事実関係の下においては、右証拠物を警察官の違法行為の結果収集された証拠として証拠能力を否定することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成8年10月29日 平成6(あ)611
- 登載
- 刑集 第50巻9号683頁
- 参照法条
- 憲法31条,憲法35条,刑訴法1条,刑訴法218条1項,刑訴法317条
論点47第317条刑事訴訟法
採尿手続に違法があっても尿の鑑定書の証拠能力は肯定できるとされた事例
裁判要旨警察官が職務質問に付随して行う所持品検査として被疑者の運転していた自動車内を承諾なく調べた行為及びこれに基づき発見された覚せい剤の所持を被疑事実とする現行犯逮捕手続に違法があり、引き続いて行われた採尿手続も違法性を帯びるが、警察官は、停止の求めを無視して自動車で逃走するなどの不審な挙動を示した被疑者について、覚せい剤の所持又は使用の嫌疑があり、所持品を検査する必要性、緊急性が認められる状況の下で、覚せい剤の存在する可能性の高い右自動車内を調べたものであり、また、採尿手続自体は、何らの強制も加えられることなく被疑者の自由な意思による応諾に基づいて行われているなどの判示の事実関係の下においては、採尿手続の違法はいまだ重大とはいえず、右手続により得られた尿の鑑定書の証拠能力は肯定することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成7年5月30日 平成6(あ)894
- 登載
- 刑集 第49巻5号703頁
- 参照法条
- 憲法35条,警察官職務執行法2条1項,刑訴法1条,刑訴法218条1項,刑訴法221条,刑訴法317条
論点48第317条刑事訴訟法
一 いわゆる刑事免責を付与して得られた供述を録取した嘱託証人尋問調書の証拠能力
二 内閣総理大臣が運輸大臣に対し民間航空会社に特定機種の航空機の選定購入を勧奨するよう働き掛けることと賄賂罪における職務行為
裁判要旨一 刑訴法はいわゆる刑事免責の制度を採用しておらず、刑事免責を付与して得られた供述を録取した嘱託証人尋問調書を事実認定の証拠とすることは許容されない。
二 内閣総理大臣が運輸大臣に対し民間航空会社に特定機種の航空機の選定購入を勧奨するよう働き掛けることは、内閣総理大臣の運輸大臣に対する指示として、賄賂罪の職務行為に当たる。
(一につき補足意見,二につき補足意見及び意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 平成7年2月22日 昭和62(あ)1351
- 登載
- 刑集 第49巻2号1頁
- 参照法条
- 刑訴法1条,刑訴法146条,刑訴法226条,刑訴法248条,刑訴法317条,憲法38条1項,憲法66条,憲法68条,憲法72条,刑法(昭和55年法律30号による改正前のもの)197条1項,刑法(昭和55年法律30号による改正前のもの)198条1項,運輸省設置法(昭和47年法律105号による改正前のもの)3条11号,運輸省設置法(昭和47年法律105号による改正前のもの)4条1項44号の9,運輸省設置法(昭和47年法律105号による改正前のもの)28条の2第1項13号,航空法(昭和48年法律113号による改正前のもの)100条1項,航空法(昭和48年法律113号による改正前のもの)101条,航空法(昭和48年法律113号による改正前のもの)109条,航空法施行規則(昭和48年運輸省令59号による改正前のもの)210条1項,航空法施行規則(昭和48年運輸省令59号による改正前のもの)220条,内閣法4条,内閣法6条,内閣法8条
論点49第317条刑事訴訟法
一 いわゆる強制採尿令状により採尿場所まで連行することの適否
二 任意同行を求めるため被疑者を職務質問の現場に長時間違法に留め置いたとしてもその後の強制採尿手続により得られた尿の鑑定書の証拠能力は否定されないとされた事例
裁判要旨一 身柄を拘束されていない被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合には、いわゆる強制採尿令状の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができる。
二 覚せい剤使用の嫌疑のある被疑者に対し、自動車のエンジンキーを取り上げるなどして運転を阻止した上、任意同行を求めて約六時間半以上にわたり職務質問の現場に留め置いた警察官の措置は、任意捜査として許容される範囲を逸脱し、違法であるが、被疑者が覚せい剤中毒をうかがわせる異常な言動を繰り返していたことなどから運転を阻止する必要性が高く、そのために警察官が行使した有形力も必要最小限度の範囲にとどまり、被疑者が自ら運転することに固執して任意同行をかたくなに許否し続けたために説得に長時間を要したものであるほか、その後引き続き行われた強制採尿手続自体に違法がないなどの判示の事情の下においては、右一連の手続を全体としてみてもその違法の程度はいまだ重大であるとはいえず、右強制採尿手続により得られた尿についての鑑定書の証拠能力は否定されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成6年9月16日 平成6(あ)187
- 登載
- 刑集 第48巻6号420頁
- 参照法条
- 刑訴法99条,刑訴法102条,刑訴法218条,刑訴法219条,刑訴法222条,刑訴法317条,警察官職務執行法2条1項,警察官職務執行法2条2項,警察官職務執行法2条3項,道路交通法67条3項
論点50第317条刑事訴訟法
公判調書中の被告人供述調書に添付されたのみで証拠として取り調べられていない電子メールが独立の証拠又は被告人の供述の一部にならないとされた事例
裁判要旨被告人質問において被告人に示され,公判調書中の被告人供述調書に添付されたが,これとは別に証拠として取り調べられていない本件の電子メールは,その存在及び記載が記載内容の真実性と離れて証拠価値を有するものであり,被告人に対してこれを示して質問をした手続に違法はなく,被告人がその同一性や真正な成立を確認したとしても,独立の証拠又は被告人の供述の一部となるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成25年2月26日 平成22(あ)1632
- 登載
- 刑集 第67巻2号143頁
- 参照法条
- 刑訴法317条,刑訴規則49条,刑訴規則199条の10,刑訴規則199条の11
論点51第317条刑事訴訟法
1 前科に係る犯罪事実及び前科以外の他の犯罪事実を被告人と犯人の同一性の間接事実とすることの許否
2 前科に係る犯罪事実及び前科以外の他の犯罪事実を被告人と犯人の同一性の間接事実とすることが許されないとされた事例
裁判要旨1 前科に係る犯罪事実や前科以外の他の犯罪事実を被告人と犯人の同一性の間接事実とすることは,これらの犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,その特徴が証明対象の犯罪事実と相当程度類似していない限りは,許されない。
2 前科に係る住居侵入,窃盗,現住建造物等放火等の犯罪事実及び前科以外の他の住居侵入,窃盗等の犯罪事実を,証明対象の住居侵入,窃盗,窃盗未遂,現住建造物等放火の犯人と被告人の同一性の間接事実とすることは,これらの犯罪事実に顕著な特徴があるとはいえないなどの事情(判文参照)の下では,被告人に対して実証的根拠の乏しい人格的評価を加え,これをもとに犯人が被告人であるという合理性に乏しい推論をすることにほかならず,許されない。
(1,2につき補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成25年2月20日 平成23(あ)1789
- 登載
- 刑集 第67巻2号1頁
- 参照法条
- (1,2につき) 刑訴法317条
論点52第317条刑事訴訟法
1 前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合の証拠能力
2 前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いることが許されないとされた事例
裁判要旨1 前科証拠は,自然的関連性があることに加え,証明しようとする事実について,実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに証拠能力が肯定され,前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合は,前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから,それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであるときに証拠能力が肯定される。
2 被告人の現住建造物等放火等の前科に係る証拠を被告人と起訴に係る現住建造物等放火の犯人の同一性の証明に用いることは,前科に係る犯罪事実に顕著な特徴があるとはいえず,同事実と起訴に係る犯罪事実との類似点が持つ両者の犯人が同一であることを推認させる力がさほど強いものではないなどの事情の下では,被告人に対して放火を行う犯罪性向があるという人格的評価を加え,これをもとに被告人が犯人であるという合理性に乏しい推論をすることに等しく,許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成24年9月7日 平成23(あ)670
- 登載
- 刑集 第66巻9号907頁
- 参照法条
- (1,2につき)刑訴法317条,刑訴法379条
論点53第317条刑事訴訟法
1 被害者の証人尋問において,捜査段階で撮影された被害者による被害再現写真を示すことを許可した裁判所の措置に違法がないとされた事例
2 証人に示した写真を刑訴規則49条に基づいて証人尋問調書に添付する措置について,当事者の同意は必要か
3 独立した証拠として採用されていない被害再現写真を示して得られた証言を事実認定の用に供することができるか
裁判要旨1 被害者の証人尋問において,検察官が,証人から被害状況等に関する具体的な供述が十分にされた後に,その供述を明確化するため,証拠として採用されていない捜査段階で撮影された被害者による被害再現写真を示すことを求めた場合において,写真の内容が既にされた供述と同趣旨のものであるときは,刑訴規則199条の12に基づきこれを許可した裁判所の措置に違法はない。
2 証人に示した写真を刑訴規則49条に基づいて証人尋問調書に添付する措置について,当事者の同意は必要ではない。
3 証人に示された被害再現写真が独立した証拠として採用されていなかったとしても,証人がその写真の内容を実質的に引用しながら証言した場合には,引用された限度において写真の内容は証言の一部となり,そのような証言全体を事実認定の用に供することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成23年9月14日 平成21(あ)1125
- 登載
- 刑集 第65巻6号949頁
- 参照法条
- (1〜3につき)刑事訴訟規則199条の12,(1につき)刑訴法304条,(2につき)刑事訴訟規則49条,(3につき)刑訴法317条
論点54第317条刑事訴訟法
通行中の女性に対して暴行,脅迫を加えてビルの階段踊り場まで連行し,強いて姦淫したとされる強姦被告事件について,被害者とされた者の供述の信用性を全面的に肯定した第1審判決及び原判決の認定が是認できないとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成23年7月25日 平成22(あ)509
- 登載
- 集刑 第304号139頁
- 参照法条
- 刑法177条前段,刑訴法317条,刑訴法411条3号
論点55第317条刑事訴訟法
殺人,現住建造物等放火の公訴事実について間接事実を総合して被告人を有罪とした第1審判決及びその事実認定を是認した原判決に,審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあるとされた事例
裁判要旨殺人,現住建造物等放火の公訴事実について,間接事実を総合して被告人が犯人であるとした第1審判決及びその事実認定を是認した原判決は,認定された間接事実中に被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは,少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれているとは認められないなど,間接事実に関する審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあり,刑訴法
411条1号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉,3号により破棄を免れない。
(補足意見,意見,反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成22年4月27日 平成19(あ)80
- 登載
- 刑集 第64巻3号233頁
- 参照法条
- 刑法108条,刑法199条,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点56第317条刑事訴訟法
1 上告審における事実誤認の主張に関する審査の方法
2 満員電車内における強制わいせつ被告事件について,被害者とされた者の供述の信用性を全面的に肯定した第1審判決及び原判決の認定が是認できないとされた事例
裁判要旨1 上告審における事実誤認の主張に関する審査は,原判決の認定が論理則,経験則等に照らして不合理かどうかの観点から行うべきである。
2 被告人が満員電車内で女性Aに対して痴漢行為をしたとされる強制わいせつ被告事件について,被告人が一貫して犯行を否認しており,Aの供述以外にこれを基礎付ける証拠がなく,被告人にこの種の犯行を行う性向もうかがわれないという事情の下では,Aの供述の信用性判断は特に慎重に行う必要があり,Aの供述する被害状況に不自然な点があること(判文参照)などを勘案すると,Aの供述の信用性を全面的に肯定した第1審判決及び原判決の認定は不合理であり是認できない。
(2について補足意見,反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成21年4月14日 平成19(あ)1785
- 登載
- 刑集 第63巻4号331頁
- 参照法条
- (1,2につき)刑訴法411条3号 (2につき)刑法176条前段,刑訴法317条
論点57第317条刑事訴訟法
1 有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義
2 有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義は,直接証拠によって事実認定をすべき場合と情況証拠によって事実認定をすべき場合とで異なるか
裁判要旨1 有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」というのは,反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく,抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても,健全な社会常識に照らしてその疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には有罪認定を可能とする趣旨である。
2 有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義は,直接証拠によって事実認定をすべき場合と情況証拠によって事実認定をすべき場合とで異ならない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成19年10月16日 平成19(あ)398
- 登載
- 刑集 第61巻7号677頁
- 参照法条
- (1,2につき)刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法333条1項
論点58第317条刑事訴訟法
治療の目的で救急患者から尿を採取して薬物検査をした医師の通報を受けて警察官が押収した上記尿につきその入手過程に違法はないとされた事例
裁判要旨医師が,治療の目的で救急患者の尿を採取して薬物検査をしたところ,覚せい剤反応があったため,その旨警察官に通報し,これを受けて警察官が上記尿を押収したなどの事実関係の下では(判文参照),警察官が上記尿を入手した過程に違法はない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成17年7月19日 平成17(あ)202
- 登載
- 刑集 第59巻6号600頁
- 参照法条
- 刑法134条1項,刑訴法218条1項,刑訴法239条,刑訴法317条
論点59第317条刑事訴訟法
1 警察官がホテル客室に赴き宿泊客に対し職務質問を行った際ドアが閉められるのを防止した措置が適法とされた事例
2 警察官がホテル客室において宿泊客を制圧しながら所持品検査を行って発見した覚せい剤について証拠能力が肯定された事例
裁判要旨1 警察官がホテルの責任者から料金不払や薬物使用の疑いがある宿泊客を退去させてほしい旨の要請を受けて,客室に赴き職務質問を行った際,宿泊客が料金の支払について何ら納得し得る説明をせず,制服姿の警察官に気付くといったん開けたドアを急に閉めて押さえたなど判示の事情の下においては,警察官がドアを押し開けその敷居上辺りに足を踏み入れて,ドアが閉められるのを防止した措置は,適法である。
2 警察官が,ホテル客室に赴き宿泊客に対し職務質問を行ったところ,覚せい剤事犯の嫌疑が飛躍的に高まったことから,客室内のテーブル上にあった財布について所持品検査を行い,ファスナーの開いていた小銭入れの部分から覚せい剤を発見したなど判示の事情の下においては,所持品検査に際し警察官が暴れる全裸の宿泊客を約30分間にわたり制圧していた事実があっても,当該覚せい剤の証拠能力を肯定することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成15年5月26日 平成11(あ)1164
- 登載
- 刑集 第57巻5号620頁
- 参照法条
- 警察官職務執行法2条1項,刑訴法1条,刑訴法317条
論点60第317条刑事訴訟法
1 逮捕当日に採取された被疑者の尿に関する鑑定書の証拠能力が逮捕手続に重大な違法があるとして否定された事例
2 捜索差押許可状の発付に当たり疎明資料とされた被疑者の尿に関する鑑定書が違法収集証拠として証拠能力を否定される場合において同許可状に基づく捜索により発見押収された覚せい剤等の証拠能力が肯定された事例
裁判要旨1 被疑者の逮捕手続には,逮捕状の呈示がなく,逮捕状の緊急執行もされていない違法があり,これを糊塗するため,警察官が逮捕状に虚偽事項を記入し,公判廷において事実と反する証言をするなどの経緯全体に表れた警察官の態度(判文参照)を総合的に考慮すれば,本件逮捕手続の違法の程度は,令状主義の精神を没却するような重大なものであり,本件逮捕の当日に採取された被疑者の尿に関する鑑定書の証拠能力は否定される。
2 捜索差押許可状の発付に当たり疎明資料とされた被疑者の尿に関する鑑定書が違法収集証拠として証拠能力を否定される場合であっても,同許可状に基づく捜索により発見され,差し押さえられた覚せい剤及びこれに関する鑑定書は,その覚せい剤が司法審査を経て発付された令状に基づいて押収されたものであり,同許可状の執行が別件の捜索差押許可状の執行と併せて行われたものであることなど判示の事情の下では,証拠能力を否定されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成15年2月14日 平成13(あ)1678
- 登載
- 刑集 第57巻2号121頁
- 参照法条
- 刑訴法1条,刑訴法73条3項,刑訴法201条,刑訴法218条1項,刑訴法221条,刑訴法317条
論点61第317条刑事訴訟法
いわゆるMCT118DNA型鑑定の証拠としての許容性
裁判要旨科学的原理が理論的正確性を有するいわゆるMCT118DNA型鑑定は、技術を習得した者により科学的に信頼される方法で実施された場合には証拠として用いることが許される。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成12年7月17日 平成8(あ)831
- 登載
- 刑集 第54巻6号550頁
- 参照法条
- 刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法321条4項
論点62第317条刑事訴訟法
相手方の同意を得ないで相手方との会話を録音したテープの証拠能力が認められた事例
裁判要旨詐欺の被害を受けたと考えた者が、相手方の説明内容に不審を抱き、後日の証拠とするため、相手方との会話を録音することは、たとえそれが相手方の同意を得ないで行われたものであっても、違法ではなく、その録音テープの証拠能力は否定されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成12年7月12日 平成11(あ)96
- 登載
- 刑集 第54巻6号513頁
- 参照法条
- 刑訴法317条
論点63第317条刑事訴訟法
殺人事件の被害者の両親が加害者とされる少年らの親権者に対して提起した損害賠償請求訴訟において捜査機関等に対する自白に依拠して少年らを殺人等の犯人であるとした認定に経験則違反の違法があるとされた事例
裁判要旨殺人事件の被害者の両親が加害者とされる少年らの親権者に対して提起した損害賠償請求訴訟において、殺人行為等に関する少年らの捜査機関等に対する自白が極めて詳細かつ具体的であり、その内容が各少年とも大筋において一致し、互いに補強し補完し合うものであっても、右自白には、いわゆる秘密の暴露がなく、一部に捜査官の誤導による可能性の高い明らかな虚偽の部分が含まれ、犯行事実の中核的な部分について変遷が見られる上、自白を裏付ける客観的証拠がほとんど見られず、自白が真実を述べたものであればあってしかるべき証拠が発見されていないなど判示の事情の下においては、自白の信用性について慎重に検討することなく、右自白に依拠して少年らが殺人等の犯人であるとした原審の認定には、経験則違反の違法がある。
(意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成12年2月7日 平成7(オ)793
- 登載
- 民集 第54巻2号255頁
- 参照法条
- 民法709条,民訴法247条,刑訴法317条
論点64第317条刑事訴訟法
病院の診療録中、刑訴法323条2号〈第三百二十一条から前条までに掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。 商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面〉により採用された出所不明確な記載を受傷直後の被害者による申告事実の認定に用いた第1審判決の認定判断が違法とされた事例
裁判要旨傷害被告事件につき、病院の診療録中、刑訴法
323条2号〈第三百二十一条から前条までに掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。 商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面〉により採用された、被害者が被告人以外の者の行為により受傷した旨の記載は、記載者である看護師がいかなる情報に基づいて記載したのかが明らかでなく、その情報の発信者も特定されていない出所不明確なものであり、これを受傷直後の被害者による申告事実の認定に用いた第1審判決の認定判断は、要証事実との関連性を見誤り、あるいは、伝聞証拠に関する刑訴法の規定を潜脱し違法である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 令和7年12月10日 令和5(あ)237
- 登載
- 刑集 第79巻8号438頁
- 参照法条
- 刑訴法317条、刑訴法320条1項、刑訴法323条2号
論点65第317条刑事訴訟法
強制採尿令状の発付に違法があっても尿の鑑定書等の証拠能力は肯定できるとされた事例
裁判要旨被疑者に対して強制採尿を実施することが「犯罪の捜査上真にやむを得ない」場合とは認められないのにされた強制採尿令状の発付は違法であり、警察官らが同令状に基づいて強制採尿を実施した行為も違法であるが、警察官らはありのままを記載した疎明資料を提出して同令状を請求し、裁判官の審査を経て発付された適式の同令状に基づき強制採尿を実施したもので、その執行手続自体に違法な点はなく、「犯罪の捜査上真にやむを得ない」場合であることについて、疎明資料において、合理的根拠が欠如していることが客観的に明らかであったというものではなく、また、警察官らは直ちに強制採尿を実施することなく被疑者に対して尿を任意に提出するよう繰り返し促すなどしていたなど判示の事情(判文参照)の下では、強制採尿手続の違法の程度はいまだ重大とはいえず、同手続により得られた尿の鑑定書等の証拠能力を肯定することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和4年4月28日 令和3(あ)711
- 登載
- 刑集 第76巻4号380頁
- 参照法条
- 刑訴法1条、刑訴法99条1項、刑訴法102条1項、刑訴法218条1項、刑訴法222条1項、刑訴法317条
論点66第317条刑事訴訟法
違法収集証拠として証拠能力を否定した第1審の訴訟手続に法令違反があるとした原判決に,法令の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
裁判要旨警察官が,被告人の自動車内にチャック付きビニール袋を確認した旨の疎明資料を作成して同車に対する捜索差押許可状及び強制採尿令状を請求して上記各令状の発付を受け,同車内から覚醒剤等の薬物を差し押さえ,被告人から尿の任意提出を受けたなどの本件の事実経過(判文参照)の下では,同薬物並びに同薬物及び被告人の尿に関する各鑑定書の証拠能力の判断に当たり,警察官が上記ビニール袋は同車内になかったのに上記疎明資料を作成して上記各令状を請求した事実の存否を確定せず,その存否を前提に上記各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断しないまま,証拠能力が否定されないとした原判決は,法令の解釈適用を誤った違法があり,刑訴法
411条1号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 令和3年7月30日 令和2(あ)1763
- 登載
- 刑集 第75巻7号930頁
- 参照法条
- 刑訴法1条,刑訴法317条,刑訴法411条1号
論点67第318条刑事訴訟法
一 刑訴法第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉にいう「判例と相反する判断をした」というためにはその判断が原判決に示されていることを要するか
二 自白がその信用性に疑いがあつて有罪の証拠とすることは許されないとされた事例
裁判要旨一 刑訴法
第四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉にいう「判例と相反する判断をした」というためには、その判例と相反する法律判断が原判決に示されているのでなければならない。
二 本件のように被告人と実行行為とを結びつける証拠が、自白のほかになく、その自白が明らかに事実に反しまたは不合理不自然な幾多のものを含み(判文参照)、その信用性に疑いのあるときは、これをもつて有罪の証拠とすることは許されない。
(二について補足意見、少数意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年9月12日 昭和36(あ)2378
- 登載
- 刑集 第17巻6号661頁
- 参照法条
- 刑訴法405条2号,刑訴法405条3号,刑訴法318条
論点68第318条刑事訴訟法
一 加持祈祷の結果人を死亡させた行為と憲法第二〇条第一項
二 捜査の必要上、宗教的行事の外形を再現した検証調書と証拠能力の有無
裁判要旨一 精神異常者の平癒を祈願するために宗教行為として加持祈祷行為がなされた場合でも、それが原判決の認定したような他人の生命、身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使に当るものであり、それにより被害者を死に致したものである以上、憲法第二〇条第一項の信教の自由の保障の限界を逸脱したものというほかなく、これを刑法第二〇五条に該当するものとして処罰することは、何ら憲法の右条項に反するものではない。
二 上告趣意第五中に、司法警察員作成の昭和三三年一〇月二五日付検証調書の内容である検証は、宗教的所作を、宗教を伴わないで再現しようとしたものであつて、宗教に対する冒涜であるから、かかる検証調書は、証拠能力を有しない旨の主張があるが、捜査の必要上、宗教行為としてでなく、宗教的行事の外形を再現したからといつて、その一事をもつてそれが宗教に対する冒涜であり、その状況を記載した検証調書が証拠能力を有しないものであるということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和38年5月15日 昭和36(あ)485
- 登載
- 刑集 第17巻4号302頁
- 参照法条
- 憲法20条1項,刑法205条,刑訴法218条,刑訴法220条,刑訴法318条,刑訴法321条3項
論点69第318条刑事訴訟法
一 証人の供述中その一部の採証と事実の認定。
二 相互に矛盾する多数の証拠による事実の認定。
三 傷害致死罪において暴行と死亡との間に因果関係が存在すると認められる事例。
裁判要旨一 証人の供述中分離することができる部分があるときは、その一部を採り、他の部分を捨てても差支えなく、また、多数の証拠のうち一部において相互に牴触するものがあつても、論理法則または実験則に反しない限り、その全部を綜合して事実を認定しても差支えないものである。(昭和二三年(れ)第一三一二号同二四年二月二四日第一小法廷判決、刑集三巻二号二三八頁参照)
二 被告人が、小料理店の土間で被害者から帰宅を促されたことに憤慨のあまり、同人に対しその着用していたワイシヤツの襟を両手でつかんで強く首を締めつけたうえ、同人を同店東側出入口の方向に突き飛ばして右出入口外側道路上に仰向けに転倒させるなどの暴行を加え、即時同所において、同人をして心筋梗塞のために死亡するに至らしめたことの証拠上明白である以上、たとえ、被害者の心臓に高度の肥大を存するうえ、心筋の各所に白色瘢痕化部分を有し、かつ心冠状動脈に顕著な狭穿を存するなど高度重篤な病変があつたとしても、被告人の右暴行と被害者の死亡との間に因果関係が存在する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和36年11月21日 昭和35(あ)2042
- 登載
- 刑集 第15巻10号1731頁
- 参照法条
- 刑訴法318条,刑法205条1項
論点70第318条刑事訴訟法
心神喪失の状態にあつたものとすることはできないとした事例−智能年令との関係。
裁判要旨被告人の智能年令が、本件犯行当時九歳ないし一一歳相当であつたとしても、そのため直ちに被告人が心神喪失の状態にあつたものとすることはできない旨の原判示は、相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和36年10月31日 昭和36(あ)1867
- 登載
- 集刑 第139号813頁
- 参照法条
- 刑法39条,刑訴法318条
論点71第318条刑事訴訟法
六歳の児童の証言を証拠に採用した事例
裁判要旨一 弁護人の上告趣意は、事実誤認の主張を出でないものであつて刑訴
四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉の上告理由に当らない。また同
四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきものとは認められない。
二 (原判決の要旨)第一審判決は、Aの証言を説示の如き理由の下に排斥しているけれども、成程同人は当時僅か年歯六歳であつて智能程度も低く、又本件自故は瞬間的の出来事であるからその供述内容を全面的に信用することは無理であり、又供述の一部には他からの影響によるものもあるかも知れない。しかし同人は被害者Bが郵便ポストの所に立つていて、そのとき駅の方からトラツクが来て四つ角を左折し浜の方に行つた直ぐ後にBが転んでいたこと、その車は車輪が四個あり車体は青色であつたことについては検察官に対する供述以来、原審及び当審の証人尋問に至るまで終始一貫供述しているのであつて、同人は何と云つても本件自故直後における最初の目撃者であり、純真な子供のことであり故らに事実を曲げて供述しているものとは到底考えられないから、詳細微妙の点については不確実なものがあるにしても少くとも右の部分については信用してよいものと考えられる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和35年9月15日 昭和35(あ)759
- 登載
- 集刑 第135号329頁
- 参照法条
- 刑訴法143条,刑訴法318条
論点72第318条刑事訴訟法
一 証拠を排斥する理由を説明することの要否
二 刑訴法第二二七条〈第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日において…〉、第二二八条〈前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。〉により被告人、被疑者または弁護人に審問の機会を与えずに作成された証人尋問調書を証拠とすることは、憲法第三七条第二項に違反するか。
三 旧銃砲刀剣類等所持取締令にいう「刃渡」の意義。
裁判要旨一 判決において個々の証拠につき、その採るをえない理由を逐一説明する必要はない。
二 刑訴法
第二二七条〈第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日において…〉第二二八条〈前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。〉により被告人、被疑者または弁護人に審問の機会を与えずに作成された証人尋問調書を、その証人が公判廷において尋問され、被告人側の反対尋問にさらされ、その証人尋問調書につき尋問を受けている場合に、証拠とすることは憲法第三七条第二項に違反しない。
三 旧銃砲刀剣類等所持取締令にいう「刃渡」とは鋩子と棟区とを直線で測つた長さをいうのであつて、刃渡が一五糎以上あつたものがたまたま・によつて刃の一部が覆われていても、そのために「刃渡」の長さが変るものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和35年12月16日 昭和33(あ)1439
- 登載
- 刑集 第14巻14号1947頁
- 参照法条
- 刑訴法44条,刑訴法318条,刑訴法227条,刑訴法228条,憲法37条2項,旧銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年7月4日法律51号による改正前のもの)1条
論点73第318条刑事訴訟法
一 偽証教唆被告事件において被教唆者の自白は憲法第三八条第三項の「本人の自白」に含まれるか。
二 釈放直後精神障害を呈した者の勾留中における供述の証拠力。
裁判要旨一 偽証教唆被告事件において、被教唆者の自白は憲法第三八条第三項の「本人の自白」に含まれない。
二 元来ヒステリー性格者である者が、公判廷における証言直後偽証の疑ありとして逮捕勾留され、十日目に釈放されたが心因性反応による一時的精神障害を呈し、二日後には精神病院に入院し約三週間後にほぼ治癒して退院した場合、右の者の勾留中における検察官に対する供述等は必ずしも証拠力がないものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和33年7月10日 昭和32(あ)3266
- 登載
- 刑集 第12巻11号2492頁
- 参照法条
- 憲法38条3項,刑訴法321条2号,刑訴法318条
論点74第318条刑事訴訟法
一 自白の任意性に関する立証責任
二 刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる一事例。−勾留中の被疑者に対する糧食差入禁止とその間またはその後に作成された自白調書の証拠能力−
裁判要旨一 自白が任意になされたかどうかについての合理的な疑の存否につき、何れとも決し難いときは、これを被告人の不利益に判断すべきではない。
二 被疑者に対する糧食差入禁止の事実を認め、しかもその糧食差入禁止の期間と自白の時日との関係上、外形的には糧食差入禁止と自白との間に因果の関係を推測させ、少くともその疑ある事実であるにかかわらず、原判決が「単に糧食差入禁止の事実のみを理由として直ちにその間またはその後に作成せられた供述調書の証拠能力、証明力を否定することはできない」と断じ、何等特段の事由を説示することなく「記録に徴しまた当審における事実取調の結果に照しても右調書の証拠能力、証明力を否定するに足るべき状況は発見できない」という理由のみで、右自白の任意性、信用性を争う主張を排斥した判断は、審理不尽、理由不備の違法があり刑訴
第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年5月31日 昭和28(あ)1516
- 登載
- 刑集 第11巻5号1579頁
- 参照法条
- 刑訴法319条,刑訴法318条,刑訴法322条,刑訴法81条,刑訴法207条,刑訴法411条1号
論点75第318条刑事訴訟法
補強証拠としての価値を認め得る一事例
裁判要旨犯人自ら当該物件を盗んだことを認めているのであるから、盗難にあつたことは間違いないものと思う旨の記載がある被害顛末書でも、それに詳記されている被害物件の保管場所、保管者、保管状況等によつては、その補強証拠としての価値を認めて差支えない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和32年5月23日 昭和31(あ)3543
- 登載
- 刑集 第11巻5号1531頁
- 参照法条
- 刑訴法318条,刑訴法319条2項,刑訴法321条,憲法38条3項
論点76第318条刑事訴訟法
古物台帳が改竄されている状況を採証に供する場合に、その状況に関する鑑定が必要か
裁判要旨原判示の様に第一審は古物台帳が改竄されて居る状況を賍物性の知情に関する一つの証拠として居るのであつて、右状況は所論鑑定(改竄された部分の指印が誰のものかという点について)の如何によつて変わるものではないから、鑑定を却下したことは右採証には何等影響のないことで審理不尽の違法は存しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年5月25日 昭和28(あ)36
- 登載
- 集刑 第95号525頁
- 参照法条
- 刑訴法165条,刑訴法318条
論点77第318条刑事訴訟法
被告人側が証拠とすることには同意するが内容には異議があると述べた告訴状の証拠力
裁判要旨告訴状につき弁護人及び被告人がこれを証拠とすることに同意するが告訴状の内容については異議があると述べたときは結局告訴状の証拠能力は認めるが証明力は争うという趣旨であると認められる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年5月29日 昭和26(あ)2992
- 登載
- 集刑 第81号597頁
- 参照法条
- 刑訴法230条,刑訴法318条
論点78第318条刑事訴訟法
被告人の悪い性格に関する証拠調をすることの可否。
裁判要旨暴行被告事件を第一審において審理するにあたり、要証事実に関する証拠調を終了し、量刑に関する諸般の情状を調査する手続上の段階において、検察官から、被告人に暴行の習癖あることを立証するためなされた証人尋問の請求を許容して、その取調をしても、これを違法であるということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年5月12日 昭和26(あ)3756
- 登載
- 刑集 第7巻5号981頁
- 参照法条
- 刑訴法295条,刑訴法296条,刑訴法297条,刑訴法318条,憲法37条1項
論点79第318条刑事訴訟法
一の事実についての自白の補強証拠によつて他の事実についてなされた自白を補強することができるか
裁判要旨第一審判決が被告人の自白の補強証拠とした試験検定又は鑑定の目的となつた残存の合成清酒及びAが飲用し又は譲り受けた合成清酒が、仮りに所論のように第一審判決摘示の第一の(四)の事実によつて製造されたものであつたとしても、これら各証拠が右と同一方法によつて合成清酒を製造したという同第一の(一)乃至(三)の事実の補強証拠になり得ないとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年4月3日 昭和26(あ)3183
- 登載
- 集刑 第78号119頁
- 参照法条
- 刑訴法318条,刑訴法319条2項,刑訴法165条
論点80第318条刑事訴訟法
麻薬の認定には自白のほかに鑑定等を必要とするか
裁判要旨所論の物件が麻薬たる塩酸モルヒネであつたかどうかの事実については自白だけで足り鑑定等の方法によつてこれを認定する必要はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年2月24日 昭和26(あ)1391
- 登載
- 集刑 第74号253頁
- 参照法条
- 刑訴法318条,刑訴法319条2項,刑訴法165条
論点81第318条刑事訴訟法
検察官が在監者をいわゆる在延証人として尋問した場合と証言の証拠能力
裁判要旨所論の証人Aがたとえ当時本件に関連する窃盗被告事件のため未決勾留中で上田拘置所に在監していたのを検察官の命令で第一審公判延に出頭させ、検察官からいわゆる在延証人として尋問したものであつてもその故を以つて同証人が検察官に畏怖迎合して供述したものとは速断できないのであつて、所論は結局事実審の専権に属する証拠の証明力に関する判断を非難するもので採るを得ない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年3月11日 昭和25(あ)3305
- 登載
- 集刑 第62号343頁
- 参照法条
- 刑訴法143条,刑訴法318条
論点82第318条刑事訴訟法
被害者たる証人の供述と補強証拠の要否
裁判要旨証人の供述は事実審たる原審において自由なる心証により採否を決し得べきものであつて、被害者の証言であるからとて其証言の真実性を裏付ける他の補強証拠がなければその証言のみによつて犯罪事実を認定することができない理由はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年2月20日 昭和25(あ)1246
- 登載
- 集刑 第40号687頁
- 参照法条
- 刑訴法318条,刑訴法304条
論点83第319条刑事訴訟法
一 違法な別件逮捕中の自白を資料として発付された逮捕状による逮捕中の被疑者に対する勾留質問調書の証拠能力
二 違法な別件逮捕中の自白を資料として発付された勾留状による勾留中の被疑者に対する消防職員の質問調書の証拠能力
三 消防署長等が当該消防署等に所属する消防職員に質問調査を行わせることと消防法三二条一項
四 消防署長等が放火又は失火の罪で逮捕された被疑者に対し検察官送致後に質問調査を行うことと消防法三五条の二第一項
裁判要旨一 逮捕中の被疑者に対する勾留質問調書は、その逮捕が違法な別件逮捕中の自白を資料として発付された逮捕状によるものであつても、他に特段の事情のない限り、証拠能力を否定されるものではない。
二 勾留中の被疑者に対する消防職員の消防法三二条一項による質問調書はその勾留が違法な別件逮捕中の自白を資料として発付された勾留状によるものであつても、他に特段の事情のない限り、証拠能力を否定されるものではない。
三 消防法三二条一項は、消防署長等が当該消防署等に所属する消防職員をして質問調査を行わせることを禁じた趣旨ではない。
四 消防法三五条の二第一項は、消防署長等が、放火又は失火の罪で警察官に逮捕された被疑者に対し、事件が検察官に送致された後に、検察官等の許諾を得て同法三二条一項による質問調査を行うことを禁じた趣旨ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和58年7月12日 昭和55(あ)790
- 登載
- 刑集 第37巻6号791頁
- 参照法条
- 刑訴法61条,刑訴法199条,刑訴法207条,刑訴法319条1項,刑訴法322条1項,消防法31条,消防法32条1項,消防法35条1項,消防法35条の2
論点84第319条刑事訴訟法
共犯者の供述と憲法三八条三項にいう「本人の自白」
裁判要旨共犯者の供述を憲法三八条三項にいう「本人の自白」と同一視し、又はこれに準ずるものとすべきではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和51年2月19日 昭和49(あ)321
- 登載
- 刑集 第30巻1号25頁
- 参照法条
- 憲法38条3項,刑訴法319条2項
論点85第319条刑事訴訟法
共犯者二名以上の自白による被告人の有罪認定と憲法三八条三項
裁判要旨共犯者二名以上の自白により被告人を有罪と認定しても憲法三八条三項に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和51年10月28日 昭和51(あ)765
- 登載
- 刑集 第30巻9号1859頁
- 参照法条
- 憲法38条3項,刑訴法319条2項
論点86第319条刑事訴訟法
共犯者の自白と憲法三八条三項
裁判要旨共犯者(いわゆる対向犯)の自白を、憲法三八条三項にいわゆる「本人の自白」と同一視し、又はこれを準ずるものとすることのできないことは、当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第一〇五六号同三三年五月二八日大法廷判決・刑集一二巻八号一七一八頁)の明らかにするところである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和50年10月17日 昭和50(あ)1413
- 登載
- 集刑 第198号35頁
- 参照法条
- 憲法38条3項,刑訴法319条2項」
論点87第319条刑事訴訟法
窃盗事件につき被告人の自白後に作成された被害届が自白の補強証拠とするに足りるとされた事例
裁判要旨所論の被害届(A作成名義)は第一審判示第二の窃盗の事実(注一)につき被告人の自白の補強証拠とするに足りる旨の原判決の判断(注二)は、正当である。
(注一)第一審判示第二の窃盗の事実−「被告人は、昭和四五年六月下旬ころ奈良県橿原市a町b番地A方タイヤ置場において、同人所有の中古普通乗用自動車用タイヤ四本(時価四、〇〇〇円相当)を窃取したものである。」
(注二)原判決の判断−「なお、原判示第二の窃盗の被害者A作成の被害届は所論も指摘する如く、同人が本件被害当時自発的に提出したものでなく、被告人の自供後、その詳細な自白内容に基づき裏付捜査の結果、右被害者より警察当局のいわゆる「未届盗難被害届用紙」の様式に則り作成提出されるに至つたものであることが認められる。しかし、このような経緯で、被告人の自供後、作成提出された被害届であつても、それによつて、自白に照応する盗難被害の事実が認められ、しかも、被害物件の保管場所、保管者、保管方法等、被害物件の盗難前の存在の諸状況が、右自供内容と相俟つて、相当詳細且つ、具体的に特定され得る以上、補強証拠とするに足るものというべく(最高裁判所昭和三二年五月二三日第一小法廷決定参照)採証の妨げとなるものではない。」
〔備考〕
昭和三二年五月二三日の第一小法廷決定は昭和三一年(あ)第三五四三号事件・刑集一一巻五号一五三一頁登載。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和47年3月9日 昭和46(あ)2528
- 登載
- 集刑 第183号353頁
- 参照法条
- 刑訴法319条2項
論点88第319条刑事訴訟法
共犯者の自白が唯一の証拠である場合
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年3月24日 昭和46(あ)1850
- 登載
- 集刑 第183号467頁
- 参照法条
- 刑訴法319条2項
論点89第319条刑事訴訟法
一 原判示自体において原判決の結論に影響のないことが明らかな憲法解釈を非難する上告趣意の適否
二 道路交通法違反(無免許運転)罪につき自白の補強証拠があるとされた事例
裁判要旨一 原判示自体において原判決の結論に影響のないことが明らかな憲法解釈を非難する違憲の主張は、適法な上告理由とならない(最高裁判所昭和三九年一二月三日第二小法廷決定・刑集一八巻一〇号六九八頁参照)。
二 原判決が司法巡査作成の実況見分調書から認められる事実として判示するところによると、昭和四五年一〇月二四日午後八時五〇分頃普通乗用自動車が小牧市大字ab番地先道路の歩道の上に乗り上げており、そのかたわらに被告人がいたというのであるから、右実況見分調書は、被告人の自白とあいまって第一審判示の罪となるべき事実第一(注一)を認定するに足りるものである(注二)。
三 (注一)第一審判示罪となるべき事実第一は、「被告人は、公安委員会の運転免許を受けないで、昭和四五年一〇月二四日午後八時四五分頃、小牧市大字ab番地先路上において、普通乗用車を運転したものである。」というものである。
四 (注二)上告趣意は、右(注一)掲記の事実のうち「運転した」との点について自白の補強証拠がない旨主張し、判旨は、これに答えたものである(実況見分調書の内容上それが「無免許」の点についての自白の補強証拠となることは、争いがなかったものである。)。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年2月8日 昭和46(あ)1786
- 登載
- 集刑 第183号99頁
- 参照法条
- 刑訴法405条,刑訴法319条2項,道路交通法118条1項1号
論点90第319条刑事訴訟法
原審が供述調書の任意性を肯認する理由の一としてあげた事由に事実誤認がある場合と任意性
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和46年10月26日 昭和45(あ)1677
- 登載
- 集刑 第181号871頁
- 参照法条
- 刑訴法319条1項
論点91第319条刑事訴訟法
共犯者の自白と憲法三八条三項
裁判要旨共犯者の自白を、憲法三八条三項にいわゆる「本人の自白」と同一視し、またはこれに準ずるものとすることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和45年4月7日 昭和44(あ)238
- 登載
- 刑集 第24巻4号126頁
- 参照法条
- 憲法38条3項,刑訴法319条2項
論点92第319条刑事訴訟法
偽計による自白の証拠能力と憲法三八条二項
裁判要旨偽計によつて被疑者が心理的強制を受け、その結果虚偽の自白が誘発されるおそれのある場合には、偽計によつて獲得された自白はその任意性に疑いがあるものとして証拠能力を否定すべきであり、このような自白を証拠に採用することは、刑訴法
三一九条一項〈強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠…〉、憲法三八条二項に違反する。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和45年11月25日 昭和42(あ)1546
- 登載
- 刑集 第24巻12号1670頁
- 参照法条
- 刑訴法1条,刑訴法319条1項,憲法38条2項
論点93第319条刑事訴訟法
接見交通の不法制限と自白の証拠能力
裁判要旨仮に、所論のように、当時被疑者であつた被告人と弁護人との間の接見交通に対し検察官による不法な制限があつたとしても、本件においては、その制限があるとされた以前の段階において被告人が犯行を全面的に自白しており、しかも、第一審の公判において、被告人側は所論の自白調書をすべて証拠とすることに同意していることが記録上明らかであるから、所論憲法三四条違反の主張は、結局判決に影響を及ぼさない訴訟法違反のあることを前提とするものであつて、適法な上告理由にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和44年12月23日 昭和43(あ)1181
- 登載
- 集刑 第174号751頁
- 参照法条
- 憲法34条前段,憲法37条3項,憲法38条,刑訴法39条,刑訴法319条1項
論点94第319条刑事訴訟法
一 起訴されていない犯罪事実を量刑の資料として考慮したことが憲法第三一条第三八条第三項に違反するとされた事例
二 原判決の憲法違反が判決に影響を及ぼさないとして上告が棄却された事例
裁判要旨一 起訴されていない犯罪事実で、被告人の捜査官に対する自白のほかに証拠のないものを、いわゆる余罪として認定し、これをも実質上処罰する趣旨のもとに重い刑を科することは、憲法第三一条、第三八条第三項覆に違反する。
二 右のような憲法違反を犯している第一審判決を違法ではないとして認容した違憲が原判決にあつても、原判決が、結論において、第一審判決の量刑を不当としてこれを破棄し、自判する際に、余罪を犯罪事実として認定しこれを処罰する趣旨を含めて量刑したものとは認められないときは、右違憲は判決に影響を及ぼさない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和42年7月5日 昭和40(あ)2611
- 登載
- 刑集 第21巻6号748頁
- 参照法条
- 憲法31条,憲法38条3項,刑訴法319条2項,刑訴法410条1項但書
論点95第319条刑事訴訟法
一 憲法第三八条第三項にいう「本人の自白」
二 道路交通法第六四条第一一八条第一項第一号のいゆる無免許運転の罪と補強証拠の範囲
裁判要旨一 憲法第三八条第三項にいう「本人の自白」には、その判決をした裁判所の公判廷における被告人の自白を含まない。
二 道路交通法第六四条、第一一八条第一項第一号のいゆる無免許運転の犯罪事実を認定するにあたつては、運転行為のみならず、運転免許を受けていなかつたという点についても、被告人の自白のほかに、補強証拠の存在することを要するものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和42年12月21日 昭和42(あ)1362
- 登載
- 刑集 第21巻10号1476頁
- 参照法条
- 憲法38条3項,刑訴法319条2項,道路交通法64条,道路交通法118条1項1号
論点96第319条刑事訴訟法
一七九日ないし一九二日の拘禁後の自白と不当に長い抑留もしくは拘禁後の自白
裁判要旨本件のように、事案が複雑で、関係人が多数に上り、捜査にかなりの日数を要するのもやむをえないと認められる事情のある場合には、所論の一七九日ないし一九二日の拘禁後の自白であつても、不当に長く抑留または拘禁されたのちの自白に当るものといえないことは、当裁判所大法廷の判例(昭和二二年(れ)第三〇号同二三年二月六日判決刑集二巻二号一七頁、昭和二三年(れ)第四三五号同年一〇月六日判決刑集二巻一一号一二七五頁参照)の趣旨に照らし明らかである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和41年9月6日 昭和41(あ)351
- 登載
- 集刑 第160号553頁
- 参照法条
- 憲法38条2項,刑訴法319条1項
論点97第319条刑事訴訟法
いわゆる約束による自白の証拠能力。
裁判要旨自白をすれば起訴猶予にする旨の検察官のことばを信じた被疑者が、起訴猶予になることを期待してした自白は、任意性に疑いがあるものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和41年7月1日 昭和40(あ)1968
- 登載
- 刑集 第20巻6号537頁
- 参照法条
- 憲法38条2項,刑訴法319条1項
論点98第319条刑事訴訟法
公職選挙法違反罪(受供与)の自白と補強証拠。
裁判要旨被告人が、昭和三九年三月六、七日頃、甲から投票並びに投票取纒めの選挙運動を依頼され、その報酬として金一〇〇〇円の供与を受けたとの受供与罪につき、被告人の捜査段階における自白と、被告人の妻乙の「『甲から金を貰つて来たがお前にもやる、選挙のときは甲に投票してくれ。』と右日時頃被告人から頼まれ、自分の分として金五〇〇円貰つた。」旨の供述とを綜合して、右受供与の事実を認定しても、刑訴法
三一九条第二項〈強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠…〉に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年10月19日 昭和40(あ)1073
- 登載
- 刑集 第19巻7号765頁
- 参照法条
- 公職選挙法221条1項1号,公職選挙法221条1項4号,刑訴法319条2項
論点99第319条刑事訴訟法
放火の手段、方法の一部に属する事実を被告人の自白だけで認定することの可否。
裁判要旨所論放火の手段、方法の一部に属する事実のごときは被告人の自白だけでこれを認定しても差支えない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和34年3月12日 昭和33(あ)1547
- 登載
- 集刑 第129号343頁
- 参照法条
- 刑法108条,刑訴法319条2項
論点100第319条刑事訴訟法
米国空軍特別捜査官の面前における被疑者の供述書の証拠能力。
裁判要旨日本駐留のアメリカ合衆国軍人である被告人が同国の軍法会議に関する統一法に基き同国空軍特別捜査官の面前において被疑者として取調を受けた際作成した供述書であつて、供述前当該被疑事実につきその意に反して供述をなす必要なく、且つ当該供述について宣誓をなすと否とは全く自由である趣旨の告知を受けながら任意に供述の上宣誓をしたものは何ら任意性に欠くるところなく、刑訴
第三二二条第一項〈被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事…〉に則り証拠能力を有するものと解すべく、かかる宣誓が存するの一事によつては未だ証拠能力を有することを妨げるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年10月17日 昭和33(あ)521
- 登載
- 刑集 第12巻14号3333頁
- 参照法条
- 憲法31条,憲法38条,刑訴法319条,刑訴法322条
論点101第319条刑事訴訟法
刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる事例。
裁判要旨被告人の司法警察職員、検察官に対する各供述書(自白)と証人の供述の証明力を争うために刑訴
第三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉にもとずき提出された被告人以外の者の司法警察職員に対する供述調書とで犯罪事実を認定した判決は、刑訴
第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年10月10日 昭和31(あ)2419
- 登載
- 集刑 第128号265頁
- 参照法条
- 刑訴法411条1号,刑訴法328条,刑訴法319条2項
論点102第319条刑事訴訟法
被告人が備忘のため取引関係を記入した書面を自白の補強証拠となると認めた事例
裁判要旨米穀小売販売業者である被告人が本件犯罪の嫌疑を受ける前にこれと関係なく、自らその販売未収金関係を備忘のため、闇米と配給米とを問わず、その都度記入したものと認められる未収金控帳の記載内容は被告人の自白と目すべきでなく右控帳はこれを刑訴
第三二三条第二号〈第三百二十一条から前条までに掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。 商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面〉の書面として証拠能力を有し、自白の補強証拠たりうる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年11月2日 昭和30(あ)865
- 登載
- 刑集 第11巻12号3047頁
- 参照法条
- 憲法38条3項,刑訴法319条2項,刑訴法323条2号
論点103第319条刑事訴訟法
一 被告人と弁護人との起訴前の接見交通に関する不当な制限措置と上告理由
二 右制限措置と被告人の捜査官に対する供述の任意性
裁判要旨一 被告人とその弁護人との起訴前の接見交通に関し不当な制限措置が採られたとしても、これに対する救済は別に刑訴
四三〇条〈検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収(電磁的記録提供命令(第百二条の二第一項第一号イに掲げる方法によ…〉、
四三一条〈前二条の請求をするには、請求書を管轄裁判所に差し出さなければならない。〉の規定に従い準抗告の方法によるべきものであつて、かかる制限措置自体に対する違憲の主張が刑訴
四〇五条〈高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。〉の上告理由とならないことは当裁判所の判例の趣旨に徴して明らかである。(昭和二三年(れ)第六五号同年七月一四日大法廷判決集二巻八号八七二頁、昭和二三年(れ)第七七四号同年一二月一日大法廷判決集二巻一三号一六七九頁参照)
二 右制限措置がなされたことからそれが直ちに被告人の捜査官に対してなした供述まで任意性を欠くものであるとは断定し得ないところであつて、その任意性の有無はその供述をした当時の諸般の情況に照してこれを判断すべきである。(昭和二五年(あ)第一六五七号、同二八年七月一〇日第二小法廷判決集七巻七号一四七四頁参照)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和31年8月3日 昭和31(あ)727
- 登載
- 集刑 第114号471頁
- 参照法条
- 刑訴法39条,刑訴法319条,刑訴法430条,刑訴法431条,憲法38条
論点104第319条刑事訴訟法
一 刑訴第三七九条〈前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申…〉にいう「訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかである」の意義
二 刑法第一二七条にいう「前条」には刑法第一二六条第三項を含むか
三 刑法第一二六条第三項にいう「人」には車外の人を含むか
四 刑法第一二七条にいう「汽車又は電車」には刑法第一二五条の犯行に供用されたものを含むか
五 過失致死の結果的加重犯について死刑を定めた刑法第一二七条は憲法第一三条、第三六条に違反するか
六 刑訴第四〇〇条〈前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の…〉但書によるいわゆる自判の限界
七 被告人が犯罪の実行者であることについて自白のみによる認定は憲法第三八条第三項に違反するか
八 日本国有鉄道職員の争議禁止は憲法第二八条に違反するか
九 刑訴法第三七九条の法意
一〇 判決に影響を及ぼすことが明らかでない訴訟手続の違法ある判決と憲法第三一条
一一 第一審の訴訟手続の違法が判決に影響を及ぼしたことが明らかといえない場合と刑訴第三七九条
一二 憲法第三八条第二項にいう「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」にあたらない一事例
一三 控訴申立をした検察庁の検察官が作成した控訴趣意書を控訴裁判所に対応する検察庁の検察官が提出することは違法か
裁判要旨一 刑訴
第三七条〈左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。〉の場合は、訴訟手続の法令違反が判決に影響を及ぼすべき可能性があるというだけでは、控訴理由とすることはできないのであつて、その法令違反がなかつたならば現になされている判決と異る判決がなされたであろうという蓋然性がある場合でなければ、同条の法令違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであるということはできない。
二 刑法第一二七条は、刑法第一二五条の罪を犯し因て汽車又は電車の顛覆若しくは破壊を致し、因て人の致死の結果を生じた場合には、刑法第一二六条第三項の例により処断すべきことを規定したものと解するを相当とする。
三 刑法第一二六条第三項にいう「人」とは、必ずしも同条第一項の車中に現在した人に限定すべきでなく、汽車又は電車の顛覆くは破壊に因つて死に致された人をすべて包含する法意と解するを相当する。
四 刑法第一二七条にいう「汽車又は電車」には、刑法第一二五条の犯行に供用されたものを含むものと解すべきである。
五 刑法第一二七条が、刑法第一二六条第三項の例により汽車又は電車の顛覆若くは破壊による人の致死の場合に、死刑をもつて処断し得ることを定めても、憲法第一三条、第三六条に違反しない。
六 刑訴
第四〇〇条〈前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の…〉但書は、控訴審において事実の取調をする必要がないと認める場合でも、必ず新たな証拠の取調をした上でなければ自判できない旨を規定しているものと解すべきではない。また控訴審において記録調査及び事実取調の結果第一審判決を破棄すべき理由ありと認め、且つそれ以上審理をなすまでもなく判決をなすに孰していると認められ、しかも客観的に見て自判の結果が差戻または移送後の第一審判決よりも被告人にとつて不利益でないということが確信される場合ならば、自判により第一審判決の無期懲役の宣告刑を変更して死刑を言い渡すことも、必ずしも違法ということはできない。
七 被告人の自白について、同人が犯罪の実行者であると推断するに足る直接の補強証拠が欠けていても、その他の点について補強証拠が備わり、それと被告人の自白とを綜合して犯罪事実を認定するに足る以上、憲法第三八条第三項の違反があるということはできない。
八 日本国有鉄道職員が公共企業体労働関係法第一七条により争議行為を禁止されても、憲法第二八条に違反しない。
九 絶対的控訴理由(
三七七条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、その事由があることの充分な証明をすることができる旨…〉三七八条〈左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われ…〉)に当る場合は常に相当因果関係があるものと訴訟法上みなされているものと解すべきであるが、
三七九条〈前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申…〉の場合には、裁判所が当該事件について具体的に諸般の情況を検討して判断すべき問題であつて、或る訴訟手続の法令違反は当然に判決に影響あるものと解し、或はその影響の可能性があれば足ると解するが如きは、同条の法意に反するものといわなければならない。また判決に影響を及ぼすことが明らかでない訴訟手続の違法があつたからといつて、その判決が憲法三一条にいわゆる法律の定める手続によらなかつたものであるということのできないのはいうまでもない。
一〇 第一審において、検察官の起訴状朗読に先だち、事件の実体又は証拠関係に触れた被告人側の右起訴が無効である旨の主張及び控訴の取消を求むる発言を許容したこと、法定の手続を経ないで被告人等からの事件の実体に触れた上申書を受理して訴訟記録に編綴したこと、甲証拠の証明力を争うために提出した証拠を乙証拠の証明力を否定する資料に供したこと、の各訴訟手続の法令違反があつても、その違反が常に第一審判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。
一一 記録に徴すれば、検察官に対する被告人の自白は拘禁一七日以後なされたものであり、また所論公判廷における供述は勾留五ケ月余又は一〇ケ月余を経てなされたものであることは明らかであるけれども、本件事案の内容、取調の経過その他諸般の事情に照し右一七日の拘禁は不当に長きにわたる拘禁とはいえない。また所論公判廷における自白は既に右検察官に対してなされた自白の反覆であるから、右公判廷における自白をもつて、不当に長い拘禁後の自白ということはできない。
一二 控訴趣意書を控訴申立をした検察庁の検察官が作成し、これを控訴裁判所に対応する検察庁の検察官が提出することは、少しも訴訟法に違反するものということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和30年6月22日 昭和26(あ)1688
- 登載
- 刑集 第9巻8号1189頁
- 参照法条
- 刑訴法379条,刑訴法400条,刑訴法319条2項,刑訴法319条1項,刑訴法376条,刑法127条,刑法126条3項,憲法13条,憲法36条,憲法31条,憲法38条3項,憲法28条,憲法38条2項,公共企業体労働関係法2条,公共企業体労働関係法17条,公共企業体労働関係法18条
論点105第319条刑事訴訟法
一 供述調書の任意性とその調査の方法
二 犯罪の類似した犯人間の処罰の差異と憲法第一四条
三 多数の同種の違反者が起訴されず被告人らのみ起訴処罰された場合と憲法第一四条
裁判要旨一 事実審裁判所は適当と認める方法で供述調書の任意性を調査すれば足りるのであつて、本件についてもその調査に違法は認められないのであるから所論違憲の主張はその前提を欠くことにより理由がない。
二 犯情の類似した被告人間の処罰の差異が憲法一四情に違反しないことは、当裁判所大法廷の判例(昭和二三年(れ)四三五号同年一〇月六日大法廷判決)とするところであつて、この趣旨は他の多数の違反者が検挙られず、或は起訴されなかつた場合にも推し及ぼさざるべきものである(昭和二六年(れ)五四四号同年九月一四日第二小法廷判決参照)。従つて論旨のように、たとえ他の違反者が検挙処罰されなかつたとしても原判決を目して憲法一四条に違反するものと論ずることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年6月22日 昭和28(あ)321
- 登載
- 集刑 第96号397頁
- 参照法条
- 刑訴法319条,刑訴法325条,憲法14条
論点106第319条刑事訴訟法
適法な緊急逮捕により拘禁された被告人の供述調書の証拠能力
裁判要旨仮りに、被告人の拘禁が不法であつても、その一事でその後における供述調書が強制、拷問又は脅迫による証拠能力のないものといえないことは、当裁判所屡次の判例とするところである。しかのみならず、本件逮捕状は、刑訴
二一〇条〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したことを疑うに足りる十分な…〉所定の逮捕状であることが記録上明白であるから、本件逮捕による拘禁は不法とはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和29年1月28日 昭和26(あ)1050
- 登載
- 集刑 第91号955頁
- 参照法条
- 刑訴法210条,刑訴法319条,刑訴法322条1項,憲法33条,憲法38条1項,憲法38条2項
論点107第319条刑事訴訟法
累犯加重事由である前科の認定と憲法第三八条第三項および刑訴第三一九条第二項〈強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠…〉
裁判要旨累犯加重の事由である前科の事実を被告人の自白だけで認定しても、憲法第三八条第三項および刑訴
第三一八条第二項〈証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる。〉に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和29年12月24日 昭和28(あ)514
- 登載
- 刑集 第8巻13号2343頁
- 参照法条
- 刑法56条,刑法57条,憲法38条3項,刑訴法319条2項
論点108第319条刑事訴訟法
高血圧に苦んでいた被告人の取調官に対する供述の任意性の有無
裁判要旨論旨は所論被告人の供述が、同人が高血圧に苦しんでいた時なされたものであり、また取調官の誘導尋問にもとずくものであつて、任意性なきこと若しくは任意性なき疑のあるものであるということを前提として、原判決の違憲及び違法を主張する。しかし所論供述が誘導尋問等によつてなされたものであるという事実、その他任意性を欠くものであるとの事実は記録上これを認めるに足る証跡がないから、論旨はその前提を欠き採用することができない。(なお所論Aの供述記載謄本によれば、被告人が本件で山形拘置所に勾留されていた当時同人は高血圧等の病気にかかつていたのであるが、拘禁に耐えられない程度の状態ではなく、記憶が多少薄らいでいたことを認められるに過ぎない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年12月24日 昭和29(あ)2029
- 登載
- 集刑 第101号907頁
- 参照法条
- 憲法38条2項,刑訴法319条1項,刑訴法322条1項
論点109第319条刑事訴訟法
証拠とすることに同意した供述調書と任意性の調査
裁判要旨被告人が証拠とすることに同意した供述調書について、その調書の作成されたときの情況を考慮して相当と認めたときは、これを証拠とすることができるのであつて、それ以上任意性につき調査することを要しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和29年12月23日 昭和29(あ)1270
- 登載
- 刑集 第8巻13号2295頁
- 参照法条
- 刑訴法326条,刑訴法325条,刑訴法319条1項,憲法38条2項
論点110第319条刑事訴訟法
一 警察に身柄拘束中の被疑者と弁護人との面接時間が短時間であつたこと等と右被疑者が検事に対してなした自白の任意性の有無との関係
二 被告人の検察官に対する供述の任意性の有無についての判断基準の一事例
三 刑訴第三二一条第一項第二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉但書の規定の趣旨
裁判要旨一 被疑者として警察に身柄を拘束されていた間に弁護人との面接時間が二分ないし三分と指定され、しかも右面接の際警察官が立ち会つていた事実があつたとしても、右被疑者が検事に対してなした自白に任意性があるか否かは、それらの事由とは関係なくその自白をした当時の情況に照らして判断すべきである。
二 被告人Aの検事に対する供述調書を検討すると同被告人は検事から黙祕権を告げられた後任意に供述し且つ供述を録取した後これを読聞けられその誤のないことを認めた上で署名押印しており、しかもその供述内容は自然であつて首肯せしめるものがありその間に何者矛盾のないことが認められ同被告人の供述が直接その取調に当つた検事の不当な影響の下になされたことを疑わしめるに足る形跡は少しも認められない。
三 刑訴
三二一条一項二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉但書により検察官の面前における供述を録取した書面を証拠とするに当り該書面の供迷が公判準備又は公判期日における供述より信用すべき特別の情況が存するか否かは結局事実審裁判所の裁量に委されているものと解するのが相当である(昭和二六年(あ)第一一一一号同年一一月一五日第一小法廷判決参照)。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年7月10日 昭和25(あ)1657
- 登載
- 刑集 第7巻7号1474頁
- 参照法条
- 刑訴法30条,刑訴法39条,刑訴法319条,刑訴法430条,刑訴法431条,刑訴法322条,刑訴法321条1項2号
論点111第319条刑事訴訟法
検察庁における被告人の供述が畏迫強制に基くものとは認められない一事例
裁判要旨被告人が検察庁に身柄を送致されるに際し、警察署で事実をはつきりいえば保釈して貰えるというような事を言い聞かされたとしてもこの一事だけで検察庁における被告人の供述が畏迫強制によるものであると断ずることを得ない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年4月23日 昭和26(あ)5243
- 登載
- 集刑 第79号213頁
- 参照法条
- 刑訴法319条,刑訴法322条,刑訴法198条,憲法38条
論点112第319条刑事訴訟法
不正逮捕拘禁中司法警察員の作成した被告人の供述調書の証拠能力
裁判要旨司法警察員が作成した被告人の供述調書は、それがかりに不法逮捕拘禁中に作成されたものであつてもその一事をもつて、ただちに無効と解すべきではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年11月25日 昭和26(あ)468
- 登載
- 刑集 第6巻10号1245頁
- 参照法条
- 刑訴法319条1項,刑訴法322条1項,憲法33条,憲法34条,憲法38条1項,憲法38条2項
論点113第319条刑事訴訟法
一 憲法第三八條第三項にいわゆる本人の自白と刑訴法第三一九條第二項の意義
二 強盗の豫備をなしたものがその實行に着手した場合と強盗豫備罪の成否
三 死刑及無期懲役刑の合憲性−死刑と無期懲役刑との本質的相異
四 被告人が殺意を以て兇器を携え乘車勤務中の車掌に殺害を加えその懐中時計を強奪し進行中の列車から付き落した所爲に對する無期懲役刑の宣告と殘虐な刑罰
五 牽連犯の意義と罪數−銃砲等所持禁止令違反と強盗殺人未遂は牽連犯となるか
裁判要旨一 憲法第三八條第項三に所謂本人の自白には判決裁判所の公判廷における自白を含まないと解すべきことは、當裁判所の判例において展々判示したところであり、今この判例を變更する必要を認めない。新刑訴法が第三一九條第二項において公判廷における自白であつてもそれが被告人に不利益な唯一の證據である場合にはこれによつて有罪とされない旨の規定を新設したことは所論のとおりである。しかし、かゝる規定を設けたことの當否はしばらくこれを措くとしてこの規定は憲法第三八條第三項に對する所謂解釋規定ではなく自白偏重の弊害を矯正し被告人の人權を擁護せんとする憲法の根本精神をさらに擴充すると共に新刑訴法の指導原理たる當事者對等主義にも立脚して、自白が當事者である被告人の供述たる點を考慮してその證據能力について、新たな一の制限を設け公判廷における自白にまで及ぼしたものに過ぎないのである。それは丁度憲法第三八條第二項においては「強制拷問若しくは脅迫による自白又は不當に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」について證據能力を制限しているのを、新刑訴法第三一九條第一項においてはさらに擴充して「その他任意にされたものでない疑いのある自白」についても證據能力を制限するに至つたのと同様である。これ等は何れも憲法の基本精神を擴充しその線に沿つた法律改姓であつて、毫も憲法の趣旨に背反するものでないからその合憲性を有することは疑のないところである。されば憲法第三八條第三項の合理的解釋として示した判例の見解は毫も新刑訴法第三一九條第二項の規定と矛盾するところはなく今後も維持さるべきものである。従つて反對の見地に立つて右判例の變更を求める所論には賛同することはできない。
二 強盗の豫備をしたものかその實行に着手した以上それが未遂に終ると既遂になるとを問わずその豫備行爲は未遂または既遂の強盗罪に吸收されて獨立して所罰の對象となるものではない。本件において、原審は既に強盗殺人未遂罪を認定所斷したのであるから、もはや所論の豫備行爲は所罰の對象として獨立して審判さるべきものではないのである原判決の事實摘示は、獨立した強盗豫備罪を構成する罪となるべき事實を認定した意味ではなく單に被告人が本件犯行を爲すに至るまでの経過を示しその犯情の一端を明らかにする目的を以て認定掲記したに過ぎない。従つて原審が該事實に對し刑法第二三七條を適用しなかつたのはむしろ當然であり原判決には所論のような違法はない。
三 死刑そのものは憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」に當らないとすることは當裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)第一一九號昭和二二年三月一二日大法廷判決参照)。既に現行制度における死刑それ自体が然りとすれば同様に現行制度における無期懲役刑そのものも亦殘虐な刑罰といゝ得ないことは一層當然であろう。論旨は死刑はその與へる苦痛が瞬間的であるに反し、無期自由刑は犯人の生涯を通じ永續的に人間存在の前提ともいうべき自由を剥奪し、必要以上の精神的肉体的苦痛を與え死刑に比して却つて殘虐であるといわねばならないと主張する。無期自由刑が觀念的には−假出獄、刑の執行停止、恩赦等の制度のあることを度外視すれば−犯人の一生を通じその自由を剥奪せんとするものであることは所論のとおりであるが、欲に「命あつてのもの種」といわれるやうに、論旨が人間存在の前提であるとする自由そのものは實は生命の存在を前提とするものであり、生命の剥奪は、すべての自由の絶對的剥奪となる。人は本能的にその自由よりもその生命を尊重し、生命の剥奪を自由のそれにも増して嫌惡し恐怖するのが通常である。尤も特殊の人が特殊の事情の下に無期自由刑よりも死刑を選ぶようなこともないではないであろう。しかしそれはあくまで稀有な例外的事例に過ぎないのであつてこれを以て一般を律することはできない。さればわが刑法においても現代文明各國の立法例と共に死刑を以て最重の刑とし無期自由刑をこれに次くものとしているのである(刑法第一〇條参照〃のみならず科刑の目的は受刑者その人を對象とする特別豫防の他に社會を犯罪から防衛せんとする一般豫防の面もあるのであるから、刑の種類及び量の適否と要否とについてもこの兩者の立場から考察されなければならない。そして又犯罪と犯人とがその型と質とを異にするに従いこれに對應する刑罰も亦その量及種類を異にせざるを得ないのである。死刑の以てしては過酷に失し有期の自由刑を以てしてはなお足りないとする場合もあり得るのであるから、法律が無期自由刑を認めたからというて、唯特殊の受刑者の個人的立場からのみこれを目して必要以上にその精神的肉体的苦痛を與へる殘虐な刑罰を規定するものとし、違憲であると斷じ去ることはできない。しかも近時における行刑制度は素朴な應報刊主義の見地のみによらず教育刑主義にも立脚して組織され運用されているのである。すなわち現代の行刑は、無期自由刑の受刑者に對してもでき得る限りその物心兩生活においてその反省の機會を與え人間生活の廣さと深さとを味得せしめてその更生を誘致すべく努力するのである。所論は人間の生命に對する本能を顧みず刑の眞義と行刑の實情とを正規しない偏見に過ぎない。この要旨に對する裁判官斎藤悠輔同澤田竹治郎の意見あり。
四 原審認定事實によれぼ被告人は乘者勤務中の車掌を殺害してその所持する運輸省貸與の懐中時計を強奪しようと決意し、昭和二三年四月二三日ハンマー及び匕首を携えてa驛から常磐線下り貨物列車の最後部車掌室に、車掌Aの承諾を得て乘込み同日午後一〇時半頃突如Aの前頭をハンマーで殴打し、次いで匕首をふるつて同人の肩、顔面その他を數回突刺し又は斬付けて重傷を負はせてから、同人の所持していた運輸省貸與の懐中時計及びその鎖を強奪した上、同人を進行中の列車から車外に突落したが、殺害の目的を遂げなかつたというのである。原審は、この事實にもとづき刑法第二四〇條後段第二四三條を適用し、未遂減輕をしないで無期懲役を撰擇所斷した。その未遂減輕をしなかつたのは本件犯情を斟酌した結果であつて未遂減輕が事實審の裁定に委ねられている現行法においては、直ちにこれを違法とはいゝ得ない。そしてまた原判決にはその量刑においても實驗則に背反したと認むべきかどもなく、まして人道に悖る殘虐な科刑をしたものと到底は認め得ないのである。所論は畢竟事實審である原審の裁量權の範圍内において適法になした量刑を非難するに歸着するもので採用に値しない。
五 牽連犯は元來數罪の成立があるのであるが、法律がこれを處斷上一罪として取扱うこととした所以は、その數罪間にその罪質上通例その一方が他方の手段又は結果となるという關係があり、しかも具体的にも犯人がかゝる關係においてその數罪を實行したような場合にあつてはこれを一罪としてその最も重き罪につき定めた刑を以て處斷すれば、それによつて輕き罪に對する處罰をも充し得るのを通例とするから、犯行目的の單一性をも考慮して、もはや數罪としてこれを處斷するの必要なきものと認めたことによるものである。従つて數罪が牽連犯となるためには犯人が主観的にその一方を他方の手段又は結果の關係において實行したというだけでは足らず、その數罪間にその罪質上通例手段結果の關係が存在すべきものたることを必要とするのである。然るに所論銃砲等所持禁止令違反の罪と強盗殺人未遂罪とは、必ずしもその罪質上通常手段又は結果の關係あるべきものとは認め得ないのであるから、たとえ、本件において被告人が所論強盗殺人未遂罪實行の手段として匕首不法所持罪を犯したものとしても、その一事だけで右兩面の罪を牽連犯とみることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和24年12月21日 昭和23(れ)2063
- 登載
- 刑集 第3巻12号2048頁
- 参照法条
- 憲法38条3項,憲法36条,刑訴法319条2項,刑法237条,刑法236条,刑法9条,刑法11条,刑法12条,刑法240条,刑法243条,刑法54条,銃砲等所持禁止令1条
論点114第319条刑事訴訟法
検察官調書の任意性を肯定した原判断が是認された事例(反対意見がある)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成元年10月27日 昭和61(あ)36
- 登載
- 集刑 第253号215頁
- 参照法条
- 刑法197条1項,刑法198条,刑訴法319条
論点115第319条刑事訴訟法
1 刑訴法403条の2第1項〈即決裁判手続においてされた判決に対する控訴の申立ては、第三百八十四条の規定にかかわらず、当該判決の言渡しにおいて示された…〉と憲法32条
2 即決裁判手続の制度が虚偽の自白を誘発するか
裁判要旨1 刑訴法
403条の2第1項〈即決裁判手続においてされた判決に対する控訴の申立ては、第三百八十四条の規定にかかわらず、当該判決の言渡しにおいて示された…〉は,憲法32条に違反しない。
2 即決裁判手続の制度自体が虚偽の自白を誘発するとはいえない。(1,2につき補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成21年7月14日 平成20(あ)1575
- 登載
- 刑集 第63巻6号623頁
- 参照法条
- (1につき)憲法32条,刑訴法403条の2第1項 (2につき)刑訴法319条1項,刑訴法350条の14
論点116第320条刑事訴訟法
一 被疑者を所轄警察署近辺のホテル等に宿泊させて取調べを続行したことが任意捜査の方法として違法とまではいえないとされた事例
二 伝聞証言につき異議の申立がなかつた場合の証拠能力
裁判要旨一 被疑者につき帰宅できない特段の事情もないのに、同人を四夜にわたり所轄警察署近辺のホテル等に宿泊させるなどした上、連日、同警察署に出頭させ、午前中から夜間に至るまで長時間取調べをすることは、任意捜査の方法として必ずしも妥当とはいい難いが、同人が右のような宿泊を伴う取調べに任意に応じており、事案の性質上速やかに同人から詳細な事情及び弁解を聴取する必要性があるなど本件の具体的状況のもとにおいては(判文参照)、任意捜査の限界を越えた違法なものとまでいうことはできない。
二 いわゆる伝聞証言であつても、異議の申立がないまま当該証人に対する尋問が終了した場合には、直ちに異議の申立ができないなどの特段の事情がない限り、黙示の同意があつたものとして、証拠能力を有する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和59年2月29日 昭和57(あ)301
- 登載
- 刑集 第38巻3号479頁
- 参照法条
- 刑訴法197条1項,刑訴法198条1項,刑訴法309条,刑訴法320条1項,刑訴法324条,刑訴法326条1項,刑訴規則205条,刑訴規則205条の2
論点117第320条刑事訴訟法
一 現場写真の証拠能力
二 複数の集団による暴行脅迫と騒擾罪における共同意思
三 騒擾罪にいわゆる「一地方」における公共の平和静謐に対する侵害の有無の判断基準
裁判要旨一 犯行の状況等を撮影したいわゆる現場写真は、非供述証拠に属し、当該写真自体又は他の証拠により事件との関連性を認めうる限り証拠能力を具備する。
二 同一地域内において、構成を異にする複数の集団により時間、場所を異にしてそれぞれ暴行脅迫が行われた場合であつても、先行の集団による暴行脅迫に触発、刺激され、右暴行脅迫の事実を認識、認容しつつこれを承継する形態において、その集団による暴行脅迫に時間的、場所的に近接して、後の集団による暴行脅迫が順次継続的に行われたときは、各集団による暴行脅迫は、全体として同一の共同意思によるものというべきである。
三 騒擾罪の成立に必要な暴行脅迫が「一地方」における公共の平和、静謐を害するに足りるものであるか否かを判断するにあたつては、単に暴行脅迫が行われた地域の広狭や居住者の多寡のみではなく、右地域が社会生活において占める重要性や同所を利用する一般市民の動き、同所を職域として勤務する者らの活動状況、当該騒動の様相等をも総合して考察すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和59年12月21日 昭和57(あ)1504
- 登載
- 刑集 第38巻12号3071頁
- 参照法条
- 刑訴法320条1項,刑訴法321条3項,刑法106条
論点118第320条刑事訴訟法
伝聞部分の排除と採証に関する高裁判例が変更されている旨を判示された事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和48年9月27日 昭和48(あ)738
- 登載
- 集刑 第190号467頁
- 参照法条
- 刑訴法320条
論点119第320条刑事訴訟法
一 保釈または保釈取消に関する裁判手続における疎明資料としての伝聞証拠とこれについての閲覧の機会
二 勾留に関する処分の決定手続のような受訴裁判所の公判手続以外の付随的な手続を利用し被告事件につき受訴裁判所に予断を抱かせる意図をもつてする不必要な書類等の提出の適否
裁判要旨一 刑訴法上、保釈または保釈取消に関する裁判手続においては、疎明資料である書類は伝聞証拠であつても差支えなく、また、疎明資料につき被告人または弁護人に閲覧の機会を与える必要はない。
二 当事者が、勾留に関する処分の決定手続のような受訴裁判所における公判手続以外の付随的な手続を利用し、ことさらに受訴裁判所に対し被告事件につき予断を抱かせるため、疎明資料の提出に名を藉りて不必要な書類等を提出するごときことは違法である。
(注)しかし、本件第二審における検察官の裁判所への書類の提出がかかる場合には該当しないとされたものである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和45年7月28日 昭和44(あ)870
- 登載
- 集刑 第177号431頁
- 参照法条
- 刑訴法43条3項,刑訴法88条1項,刑訴法96条1項,刑訴法299条1項,刑訴法320条,刑訴規則1条2項
論点120第320条刑事訴訟法
実況見分調書における立会人の供述記載の性質。
裁判要旨捜査機関が任意処分として検証(実況見分)を行うに当り、被疑者、目撃者その他の者(以下関係人という)を立合わせ、これらの立会人をして実況見分の目的物その他必要な状態を任意に指示、説明させるのは、実況見分の一つの手段であつて、関係人を取調べて、その供述を求めるのとは、その性質を異にし、また、右指示説明を実況見分調書に記載するのは、結局これに基づいてなした実況見分の結果を記載する手段にすぎないと解すべきである(昭和三六年(あ)第一四九号同年五月二六日第二小法廷判決、刑集一五巻五号八九三頁参照)。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和41年2月17日 昭和40(あ)1768
- 登載
- 集刑 第158号271頁
- 参照法条
- 刑訴法320条1項,刑訴法321条1項3号,刑訴法321条3項
論点121第320条刑事訴訟法
刑訴法に定めた簡易公判手続の合憲性
裁判要旨刑訴法に定めた簡易公判手続は、憲法第三七条第二項、第一四条第一項に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和37年2月22日 昭和36(あ)1915
- 登載
- 刑集 第16巻2号203頁
- 参照法条
- 刑訴法291条の2,刑訴法307条の2,刑訴法320条2項,憲法37条2項,憲法14条1項
論点122第320条刑事訴訟法
所在不明者作成の答申書を証拠とすることと憲法第三七条第二項
裁判要旨答申書の作成者が所在不明であるとき、その答申書を証拠に採用することは、憲法第三七条第二項に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年1月29日 昭和30(あ)881
- 登載
- 刑集 第11巻1号337頁
- 参照法条
- 憲法37条2項,刑訴法320条1項,刑訴法321条1項3号
論点123第320条刑事訴訟法
刑訴第三二〇条第二項〈第三百二十一条乃至第三百二十八条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外にお…〉の法意
裁判要旨いわゆる簡易公判手続の決定のあつた事件において、検察官提出の証拠につき、被告人または弁護人が証拠とすることに意義を述べないときは、被告人または弁護人の同意がなくても証拠調をし且つこれに証拠能力を認めて事実認定の資料に供することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和30年7月7日 昭和30(あ)822
- 登載
- 刑集 第9巻9号1863頁
- 参照法条
- 刑訴法291条の2,刑訴法320条,刑訴法326条
論点124第320条刑事訴訟法
証拠の標目中に掲げられた証言中の伝聞証言を除いても判示事実を認めることができる場合と違法の有無
裁判要旨記録によると、所論指摘の証人の供述調書中に所論のような伝聞証言が認められるが、この伝聞証言を除いても判示事実を認めるに十分であるから当裁判所の判例(昭和二七年(あ)第五六九四号第二九年二月一八日第一小法廷判決集八巻二号一四五頁)の趣旨に徴し、違法とはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年4月19日 昭和28(あ)3345
- 登載
- 集刑 第104号637頁
- 参照法条
- 刑訴法335条1項,刑訴法320条,刑訴法324条2項
論点125第320条刑事訴訟法
一 伝聞証拠の一事例
二 刑訴第四一一条第三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉を適用して破棄差戻した事例
裁判要旨一 強姦致死被告事件において、被告人はかねて被害者某女と情を通じたいとの野心をもつていたという事実を認定する証拠として、某女がその生前、被告人が自分に変な言動をするのでいやらしい旨第三者に告白したことがある旨の第三者の公判廷における供述は伝聞証拠である。
二 第一審判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があることを疑うに足る顕著な事由があつて判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときも、刑訴
第四一一条第三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉により原判決及び第一審判決を破棄しなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和30年12月9日 昭和29(あ)2784
- 登載
- 刑集 第9巻13号2699頁
- 参照法条
- 刑訴法320条,刑訴法324条,刑訴法321条,刑訴法411条3号
論点126第320条刑事訴訟法
証人の供述中の伝聞部分を排除してその余を罪証の用に供したと認められる場合
裁判要旨所論証人Aの証言については、同証言中伝聞にわたる部分は、第一審裁判所において排除決定をしていること記録上明らかであるから、第一審判決は、右の部分を除いて同証言を採証したものと解するを相当する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和29年6月23日 昭和29(あ)799
- 登載
- 集刑 第96号479頁
- 参照法条
- 刑訴法320条,刑訴法335条1項,刑訴法309条,刑訴規則205条の6
論点127第320条刑事訴訟法
伝聞証言について証拠とすることの同意があつたと認められる場合
裁判要旨伝聞証言について、被告人が何ら異議を述べず、証人に兼ねることもないといつている場合には、これを証拠とすることの同意があつたものと認められる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年5月11日 昭和27(あ)6547
- 登載
- 刑集 第8巻5号664頁
- 参照法条
- 刑訴法326条,刑訴法320条
論点128第320条刑事訴訟法
第一審判決が証人の供述中の異議申立のあつた伝聞部分のみを排除し、その余を罪証の用に供したと認められる場合
裁判要旨証人Aの供述につき所論のように弁護人の異議申立により排除決定があつたのは、Bからの伝聞事項に関する部分のみであること原判決の説示するとおりである。そして第一審判決が証拠に引用したのは、前記証人の直接見分した事実に関する供述部分であると原審は認めたのであつて、その判断に誤りはない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年3月16日 昭和27(あ)5410
- 登載
- 集刑 第93号469頁
- 参照法条
- 刑訴法335条1項,刑訴法320条,刑訴法324条2項,刑訴法309条,刑訴規則205条の6
論点129第320条刑事訴訟法
証拠の標目として掲げられている証人の供述中に伝聞にかかる部分がある場合その部分を証拠としたものと解すべきであるか
裁判要旨一 判決に証拠の標目として掲げられている証人の供述中に伝聞にかかる部分がある場合、その部分について特に排除決定、または判決に当該部分を除外する旨の説示がないからといつて、その伝聞にかかる部分をも証拠としたものと断定すべきではない。
二 判決に証拠の標目として掲げられている証人の供述中伝聞にかかる部分を除いた他の部分とその余の証拠とによつて判示事実が充分に認定できる場合には、右証人の供述については、伝聞にかかる部分を除いた部分だけを証拠としたものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和29年2月18日 昭和27(あ)5694
- 登載
- 刑集 第8巻2号145頁
- 参照法条
- 刑訴法335条1項,刑訴法320条,刑訴法324条2項,刑訴法326条,刑訴法405条3号,刑訴法401条2項
論点130第320条刑事訴訟法
証人の供述中の伝聞にかかる部分は証拠とせず、その他の証拠を罪証の用に供したと認められる場合
裁判要旨第一点所論Aの供述中伝聞に関する部分は、第一審判決は、これを証拠としなかつたものとみとめるを相当とする。(昭和二七年(あ)五六九四号、同二九年二月一八日第一小法廷判決参照)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和29年11月26日 昭和29(あ)2381
- 登載
- 集刑 第100号605頁
- 参照法条
- 刑訴法335条1項,刑訴法320条,刑訴法324条2項
論点131第320条刑事訴訟法
証言が伝聞証拠であるか否かに関する決定と特別抗告の許否
裁判要旨証言が伝聞証言であるか否かは、もつぱら訴訟法上の問題であつて憲法上の問題ではない。訴訟手続に関し判決前にした決定でもつぱら訴訟法上の問題にとどまり憲法上の問題に触れないものに対しては、特別抗告を許さないとすることは当裁判所の判例とするところである(昭和二四年新(つ)第三号、同年同月同日同法廷決定)。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年7月29日 昭和27(し)39
- 登載
- 集刑 第66号525頁
- 参照法条
- 刑訴法443条,刑訴法320条
論点132第320条刑事訴訟法
被告人らは「不良の徒として同町民より恐れられ」ていたとの証人の供述が伝聞証言にならない事例
裁判要旨論旨は、原判決が、被告人らは「不良の徒として同町民より恐れられ」ていたと判示している点を捉え、かかる伝聞証言に基いて事実認定をしたことは、判決に影響を及ぼすべき法令違反があるというのであるが、記録について、原判決の挙げている各証人の供述を委しく調べて見ると、むしろ被害者としてそれぞれの体験を述べているのであつて、具体的事実の伝聞を証言しているとは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年4月8日 昭和26(あ)4311
- 登載
- 集刑 第63号103頁
- 参照法条
- 刑訴法320条,刑訴法324条2項
論点133第320条刑事訴訟法
刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない事例
裁判要旨最終口頭弁論期日の変更決定の告知が期日後に被告人に送達され、従つて同期日の召喚が不適法であつても、被告人が公判準備期日において控訴理由を詳細に供述し、犯罪事実については争わず、単に量刑の軽減を求める趣旨を述べており、また、被告人の弁護人は右公判準備期日に立ち会い被告人のため証人の尋問を申請したばかりでなくその証人の尋問に立ち会い尋問をし、なお最終口頭弁論期日に出頭して被告人の権利保護のため有利な弁論をしている場合には、同期日に被告人が出頭していなくても刑訴
第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年4月10日 昭和26(れ)2437
- 登載
- 刑集 第6巻4号648頁
- 参照法条
- 刑訴法411条1号,旧刑訴法404条,旧刑訴法407条,旧刑訴法320条2項
論点134第320条刑事訴訟法
弁護権不法制限の例
裁判要旨被告人が弁護人を選任しその届出をなしたに拘わらず、原審がその後指定した公判期日を弁護人に通知せず、従つて弁護人不出頭のまま審理を終結し、判決宣告期日に有罪判決を言渡したときは弁護権の不法な制限であつて、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があり、且つ原判決を破棄しなければ著しく正義に反する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年1月31日 昭和26(れ)2078
- 登載
- 集刑 第59号475頁
- 参照法条
- 旧刑訴法410条11号,旧刑訴法320条2項,旧刑訴法320条3項,新刑訴法411条,刑訴施行法3条の2
論点135第320条刑事訴訟法
刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉の適用のある一事例
裁判要旨控訴審において、被告人の住居が記録上知れているにかかわらず、誤つてこれを知れざるものとして被告人に対し公示送達の方法により公判期日の召喚手続をなし、被告人の不出頭を理由に、旧刑訴
第四〇四条〈第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。〉を適用して被告人の陳述を聽かないで審判した場合には、その審判手続は違法であつて、その判決は、刑訴
第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉により破棄すべきものである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和27年11月28日 昭和26(れ)2256
- 登載
- 刑集 第6巻10号1274頁
- 参照法条
- 旧刑訴法320条2項,旧刑訴法78条1項,旧刑訴法404条,新刑訴法411条
論点136第320条刑事訴訟法
一 生年月日についての知識と伝聞証言
二 兒童をして数名の男子と売淫させた行為と罪数
裁判要旨一 所論証人の証言は、自己の認識そのものとして供述せられていること記録上明らかである。そして人は自己又は年令の極めて近接した兄弟姉妹の生月日については、その幼小の頃にあつては父母その他のものから教えられることによつてのみ、はじめてこれが知識を得るものであること勿論であるが、その成長するに従い、近親者相亘の密接な生活関係、殊に日常の家庭生活等において集積される自己の体験によりその知識の真実性に関し独自の確信を有するに至るものであることも亦多言を要しないところであるから、かかる知識はその直接体験による認識というを妨ぐるものではない。されば右証言が刑訴
三二四条二項〈被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条の規定を準用…〉の適用を受くべき伝聞証言たることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠くものであり、上告適法の理由とならない。
二 「被告人は自宅において昭和二四年九月二〇日から同月二二日迄の間に兒童であるAに客として男子五名を斡旋し右五名と売淫させ以つて兒童に淫行をさせる行為をした」と判示した第一審判決は所論被告人の所為を一体として兒童福祉法三四条一項六号にいわゆる兒童に淫行をさせる行為をしたものに該当すると判示しているのである。この事は判文上明白であり、同判決には所論のような違法はない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和26年9月6日 昭和25(あ)2589
- 登載
- 刑集 第5巻10号1895頁
- 参照法条
- 刑訴法324条2項,刑訴法320条,刑訴法321条1項3号,兒童福祉法34条1項6号,兒童福祉法40条1項,刑法45条
論点137第320条刑事訴訟法
一 旧刑訴法第三三四条は憲法第三七条、刑訴応急措置法第四条により改正変更されたが−必要的弁護事件以外の事件と弁護人の立会の要否
二 公判期日に適式の召喚を受けた弁護人の不出頭と弁護権の不法制限
裁判要旨一 論旨は、原審裁判所は旧刑訴法第三三四条を墨守して弁護人の期日懈怠の責任を被告人等に負わしめ、弁護人の立会なくして公判の審理を受けることを被告人等に強制したものであるが、旧刑訴法第三三四条は憲法第三七条第三項、刑訴応急措置
第四条〈事物管轄を異にする数個の関連事件が上級の裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、…〉によつて改正変更されたものと解すべきであるから、原審の審理手続は、右憲法及び刑訴応急措置法の規定に違反するというのである。しかし、憲法第三七条第三項前段は刑事被告人に対しいかなる場合にも被告人自ら資格を有する弁護人を依頼し得ることを保障したものであり、また同項後段及び刑訴応急措置法第四条は、被告人において自ら弁護人を依頼することができないときに国に対し弁護人を選任することを請求する権利があることを認めたものであつて、刑事事件についてはいかなる事件であつても例外なしに弁護人がなければ公判を開廷することができないことを規定したものではない。従つて、これらの規定により旧刑訴
第三三四条〈被告事件について刑を免除するときは、判決でその旨の言渡をしなければならない。〉は所論のように改正変更されたものではないから論旨は理由がない。
二 公判期日に適式の召喚を受けた弁護人が自らその期日を懈怠して出頭しなかつたにかかわらず、原審に弁護権行使の不法制限があると主張する論旨の理由ないことは、言うまでもないところである。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和26年1月31日 昭和24(れ)824
- 登載
- 集刑 第39号947頁
- 参照法条
- 憲法37条3項,刑訴応急措置法4条,旧刑訴法334条,旧刑訴法320条1項,旧刑訴法410条11号
論点138第320条刑事訴訟法
一 退去強制によって出国した者の検察官に対する供述調書の証拠能力
二 退去強制によって出国した者の検察官に対する供述調書について証拠能力が認められた事例
裁判要旨一 退去強制によって出国した者の検察官に対する供述調書については、検察官において供述者がいずれ国外に退去させられ公判準備又は公判期日に供述することができなくなることを認識しながら殊更そのような事態を利用しようとした場合や、裁判官又は裁判所がその供述者について証人尋問の決定をしているにもかかわらず強制送還が行われた場合など、その供述調書を刑訴法三二一条一項二号前段書面として証拠請求することが手続的正義の観点から公正さを欠くと認められるときは、これを事実認定の証拠とすることが許容されないこともある。
二 検察官において本件供述者が強制送還され将来公判準備又は公判期日に供述することができなくなるような事態を殊更利用しようとしたとは認められず、本件に関連して同時期に強制送還された他の供述者については証拠保全としての証人尋問が行われており、本件供述者のうち、証拠保全請求があった一名については請求時に既に強制送還されており、その余の者については証拠保全の請求がないまま強制送還が行われたなどの判示の事実関係の下においては、本件供述者の検察官面前調書を証拠請求することが手続的正義の観点から公正さを欠くとは認められず、これを事実認定の証拠とすることは許容される。
(一につき補足意見がある)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成7年6月20日 平成2(あ)72
- 登載
- 刑集 第49巻6号741頁
- 参照法条
- 刑訴法1条,刑訴法320条1項,刑訴法321条1項2号,憲法37条2項
論点139第321条刑事訴訟法
すでに公判期日において証人として尋問された者を同一事項につき検察官が取り調べて作成した供述調書と刑訴法三二一条一項二号にいう「前の供述」
裁判要旨すでに公判期日において証人として尋問された者を同一事項につき検察官が取り調べて作成した供述調書であつても、その後の公判準備若しくは公判期日において、その者が右供述調書の内容と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をした以上、刑訴法
三二一条一項二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉にいう「前の供述」の要件を欠くものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和58年6月30日 昭和57(あ)1777
- 登載
- 刑集 第37巻5号592頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項2号
論点140第321条刑事訴訟法
第一審公判期日における証言と相反するか若しくは実質的に異るものとして、控訴審において検察官調書を取り調べながら、弁護人がした供述者の証人尋問請求を却下することと、被告人の証人審問権
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和58年2月8日 昭和57(あ)302
- 登載
- 集刑 第230号21頁
- 参照法条
- 憲法37条2項,刑訴法321条1項2号後
論点141第321条刑事訴訟法
刑訴法三二一条一項二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉の規定違憲の主張が理由なしとして棄却された事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和54年6月1日 昭和53(あ)2074
- 登載
- 集刑 第214号575頁
- 参照法条
- 憲法37条2項,刑訴法321条1項2号
論点142第321条刑事訴訟法
刑訴法二二七条一項〈第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日において…〉二二八条二項〈前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。〉に基づき被告人及び弁護人に立会の機会を与えず作成された証人尋問調書を同証人の死亡を理由に同法三二一条一項一号により証拠として採用することと憲法三七条二項三項
裁判要旨刑訴法
二二七条〈第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日において…〉二二八条〈前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。〉に基づき、被告人及び弁護人に立会の機会を与えることなく証人尋問調書が作成されたのち、当該証人が死亡したため、第一審が、検察官の請求により、同法
三二一条一項一号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 裁判官の面前(映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法による場合を含む。次号において同じ。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異なつた供述をしたとき。〉により右証人尋問調書を証拠として採用したため、結局、被告人は証人尋問調書について証人を反対尋問する機会を与えられずに終ったとしても、憲法三七条二項、三項に違反するものでないことは、最高裁判所の判例(昭和二三年(れ)第八三三号同二四年五月一八日大法廷判決・刑集三巻六号七八九頁、昭和二五年(し)第一六号同年一〇月四日大法廷決定・刑事四巻一〇号一八六六頁、昭和二六年(お)第二三五七号同二七年四月九日大法廷判決・刑集六巻四号五八四頁)の趣旨に照らし明らかである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年3月25日 昭和48(あ)1759
- 登載
- 集刑 第195号643頁
- 参照法条
- 憲法37条2項,憲法37条3項,憲法37条1項1号,刑訴法228条2項,刑訴法321条
論点143第321条刑事訴訟法
一 刑訴法三二一条一項一号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 裁判官の面前(映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法による場合を含む。次号において同じ。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異なつた供述をしたとき。〉により同法二二七条一項、二二八条二項に基づく証人尋問調書を証拠として採用することと憲法三七条二項
二 必要的共犯者又は勾留中の他の被疑者に対する刑訴法二二七条による証人尋問の適否
裁判要旨一 第一審公判廷において証人として尋問され、被告人側に反対尋問の機会が充分に与えられたときは、右公判廷において同証人が裁判官の面前における供述と異なる供述をしたため、刑訴法
三二一条一項一号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 裁判官の面前(映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法による場合を含む。次号において同じ。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異なつた供述をしたとき。〉により、同法
二二七条一項〈第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日において…〉、
二二八条二項〈前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。〉に基づき被告人側に立会の機会を与えずに作成した証人尋問調書を証拠として採用しても、憲法三七条二項に違反すると主張して上告することはできない。
二 刑訴法
二二七条一項が引用する同法二二三条一項にいわゆる被疑者とは、当該被疑者をいい、これと必要的共犯の関係にある他の者又は勾留中の他の者を含まない(当裁判所昭和三五年(あ)第一六九五号同三六年二月二三日第一小法廷判決、刑集一五巻二号三九六頁参照)。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和49年3月5日 昭和48(あ)1552
- 登載
- 集刑 第191号239頁
- 参照法条
- 刑訴法228条2項,刑訴法321条1項1号,刑訴法227条1項,刑訴法223条1項
論点144第321条刑事訴訟法
検察官に対する供述調書についての証拠開示命令が違法であるとされた事例
裁判要旨裁判所が、検察官申請証人の採用決定前に、同証人の反対尋問のため必要であるとの理由で、検察官に対し、その所持する当該証人の検察官に対する供述調書を弁護人に閲覧させることを命じた場合、特段の事情のないかぎり、その閲覧の時期を主尋問終了後反対尋問前と指定したとしても、その閲覧が被告人の防禦のため特に重要であるということはできず、また右段階で、証人威迫、罪証隠滅の弊害がないとするのは時期尚早であつて、右証拠開示命令は違法である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和44年4月25日 昭和43(し)109
- 登載
- 刑集 第23巻4号275頁
- 参照法条
- 刑訴法294条,刑訴法299条1項,刑訴法300条,刑訴法321条1項2号
論点145第321条刑事訴訟法
起訴後の参考人の検察官に対する供述調書の証拠能力。
裁判要旨参考人の検察官に対する供述調書が単に起訴後の作成に係る数をもつてその証拠能力を否定すべきいわれは存しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和39年3月10日 昭和36(あ)2540
- 登載
- 集刑 第150号749頁
- 参照法条
- 刑訴法223条,刑訴法321条
論点146第321条刑事訴訟法
証拠関係カードの記載録と被告人等の検事に対する各供述調書がいずれも刑訴法第三二二条第一項及び同第三二一条第一項第二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉の書面として当該被告人に対する関係においてのみならず、他の共同被告人等に対する関係においても、その取調請求がなされ、その趣旨において証拠調がなされたことの証明の有無。
裁判要旨第一審第二回公判調書の記載によれば、「証拠調、別紙証拠関係カード記載のとおり」となつており、同調書添附の証拠関係カードによれば、被告人等及び第一審相被告人等の検事に対する所論供述調書は、検察官から一括して取調請求がなされたものであるところ、右カードの「同意不同意の別」欄に「全部同意」、「結果」欄に「決定、取調済」と記載されていること明らかである。されば右公判調書の記載は、簡略にすぎるきらいはあるが、所論供述調書がいずれも刑訴法第三二二条第一項及び同
第三二一条第一項第二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉の書面として、当該被告人に対する関係においてのみならず、他の共同被告人等に対する関係においても、その取調請求がなされ、その全部につき同
第三二六条〈検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認め…〉の同意があつたので、その趣旨において取調がなされたことを証明するものと解し得る。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和38年7月12日 昭和36(あ)1697
- 登載
- 集刑 第147号759頁
- 参照法条
- 刑訴法298条1項,刑訴法322条1項,刑訴法321条1項2号,刑訴法52条,刑訴規則189条,刑訴規則44条
論点147第321条刑事訴訟法
一 刑訴法三〇五条〈検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、その取調べを請求した者にこれを朗読させ…〉にいう「証拠書類」は当該事件について作成されたものに限るか
二 他の民事事件における鑑定人の作成した鑑定書は刑訴法第三二一条第四項にいう「鑑定の経過及び結果を記載した書面」に含まれるか
裁判要旨一 刑訴
三〇五条〈検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、その取調べを請求した者にこれを朗読させ…〉にいう証拠書類は必ずしも当該事件について作成されたものに限らないことは、すでに当裁判所の判例の趣旨とするところである(昭和二五年(あ)第二九六二号同二七年五月六日第三小法廷判決、刑集六巻五号七三六頁、同二九年(あ)第一四〇一号同年一一月一一日第一小法廷決定、刑集八巻一一号一八三四頁)。
二 他の民事事件における鑑定人の作成した鑑定書も刑訴法第三二一条第四項にいう鑑定の経過及び結果を記載した書面に含まれる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年4月10日 昭和33(あ)2038
- 登載
- 集刑 第141号729頁
- 参照法条
- 刑訴法305条,刑訴法321条4項,民訴法308条
論点148第321条刑事訴訟法
冒頭手続における共同被告人の陳述と刑訴法第三二一条第一項第二号にいう「公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異つた供述をしたとき」。
裁判要旨刑訴
第二九一条第二項〈検察官は、まず、起訴状を朗読しなければならない。〉の冒頭手続において、共同被告人が、公訴事実につき前に検察官に対してなした供述と相反するか若しくは実質的に異なつた陳述をし、その後の手続段階においても依然これを維持している場合には、たとえその共同被告人が証拠調の段階においては何らの供述をしておらなくとも、刑訴
第三二一条第一項第二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉にいう「公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異つた供述をしたとき」にあたると解するを相当とする。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和35年7月26日 昭和31(あ)4561
- 登載
- 刑集 第14巻10号1307頁
- 参照法条
- 刑訴法291条2項,刑訴法321条1項2号
論点149第321条刑事訴訟法
証人尋問請求の撤回があつたと認められる一事例
裁判要旨検察官の証人尋問請求の趣旨がその者の検察官に対する供述調書を刑訴
第三二一条一項二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉により証拠とするためになされたと認められる場合において、被告人がその証人尋問の施行に先立ち右書面を証拠とすることに同意した場合には右証人尋問請求は撤回されたものと認めることができる
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和33年5月27日 昭和30(あ)365
- 登載
- 刑集 第12巻8号1625頁
- 参照法条
- 刑訴法298条1項,刑訴法321条1項2号
論点150第321条刑事訴訟法
一 被告人の検察官に対する供述調書が刑訴法第三二二条第一項および第三二一条第一項第二号の書面として取調請求がなされたものと認められる事例
二 証拠調に関するかしが治癒されたと認められる事例
裁判要旨一 共犯者たる共同被告人が数名あつて、いずれも、公判で、公訴事実を全面的に否認している場合、検察官が証拠として同被告人等の検察官に対する供述調書を一括して取調請求をしたときは、特段の事情がない限り、同供述調書は、刑訴
第三二二条第一項〈被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事…〉および
第三二一条第一項第二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉により、当該被告人に対する関係のみならず、相被告人等に対する関係においても、また、その取調の請求があつたものと解するのが相当である。
二 共犯者たる共同被告人が数名あつて、いずれも、公判で、公訴事実を全面的に否認している場合、検察官が証拠として同被告人等の検察官に対する供述調書を一括して取調請求をしたときは、特段の事情がない限り、同供述調書は、刑訴
第三二二条第一項および
第三二一条第一項第二号により、当該被告人に対する関係のみならず、相被告人等に対する関係においても、また、その取調の請求があつたものと解するのが相当である、この場合、同供述調書の証拠調前に各被告人に対し相被告人等を尋問する機会を与えなかつたかしがあつたとしても、裁判所が右供述調書を録取した検察事務官を証人として取調べ、検察官に対し同調書の提示を命じ、その証拠調をした後に、各被告人に詳細に質問し、また各被告人をして相被告人等に対する尋問をさせているときは、前示かしは既に治癒されたものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和33年3月6日 昭和32(あ)1531
- 登載
- 刑集 第12巻3号400頁
- 参照法条
- 刑訴法298条1項,刑訴法322条1項,刑訴法321条1項2号,刑訴法291条2項,刑訴法311条3項,刑訴規則189条,刑訴規則192条,憲法37条2項
論点151第321条刑事訴訟法
立会の機会が与えられたのに被告人が立ち合わないで証人尋問がなされた場合の該手続の適否―その証人尋問調書の証拠能力
裁判要旨立会の機会が与えられたのに被告人が立ち合わないで証人尋問がなされたからといつてその尋問手続を違法とする理由はなく、又その証人尋問調書が証拠能力を有しないいわれもない(刑訴
三二一条二項〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り…〉参照)。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年2月12日 昭和32(あ)902
- 登載
- 集刑 第123号273頁
- 参照法条
- 憲法37条,刑訴法157条,刑訴法321条
論点152第321条刑事訴訟法
一 賍物運搬罪の成立する事例。
二 伝聞証言に証拠能力の認められる事例。
裁判要旨一 賍品を場所的に移転して、被害者の同品に対する権利の実行を困難ならしめた以上、これを運んだ距離にさほど遠くないものがあつても、賍物運搬罪は成立する。
二 第一審公判における検察官側の証人甲の証言中に、乙の供述を内容とするいわゆる伝聞部分があつても、同証言に際し被告人側から異議の申立があつた形跡がないばかりでなく、乙はすでに当時の記憶を全く喪失しており、第二審の際は所在不明となつていることが窺われるときは、第一審公判調書中の右の伝聞証言を証拠とすることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年10月24日 昭和31(あ)740
- 登載
- 刑集 第12巻14号3368頁
- 参照法条
- 刑法256条2項,刑訴法394条,刑訴法326条,刑訴法324条2項,刑訴法321条1項3号
論点153第321条刑事訴訟法
一 刑訴法第三二二条〈被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事…〉の書面にあたる一事例
二 刑訴法第三二一条第一項第二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉の書面にあたる一事例
裁判要旨一 船舶を焼失沈没させて保険金を騙取したとの公訴事実の証明のために提出された被告人の供述調書で、船舶沈没事故があつたことだけを認め、それが犯罪に因るものであることを否定しているものも、刑訴
第三二二条〈被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事…〉にいわゆる不利益な事実の承認を内容とする書面にあたる。
二 相被告人の検察官に対する供述を録取した書面で、その公判廷における供述よりも内容において詳細なものは、刑訴
第三二一条第一項第二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉にいわゆる公判期日において前の供述と実質的に異つた供述をしたときにあたらないとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年9月30日 昭和30(あ)600
- 登載
- 刑集 第11巻9号2403頁
- 参照法条
- 刑訴法322条,刑訴法321条1項2号
論点154第321条刑事訴訟法
一 犯行の謀議の一過程に属する事実を共同被告人中の一人の自白だけで認定することは憲法第三八条第三項に違反するか
二 証人の証言拒否を理由としてその検察官に対する供述調書を刑訴法第三二一条第一項第二号により証拠として取り調べた後、右証人が態度を変え真実を供述するといつているからとの理由で再尋問の申請があつた場合にこれを取り調べることの要否
三 被告人甲の検察官に対する供述調書中に共同被告人乙からの伝聞の供述が含まれている場合にこれを刑訴法第三二一条第一項第二号第三二四条により被告人乙に対する証拠とすることの可否
四 右の場合にその証拠能力を認めることは憲法第三七条第二項に違反するか
裁判要旨一 独立した犯罪事実でなく、犯行の謀議の一過程に属する事実について共同被告人中の一人の自白だけで認定しても、憲法第三八条第三項に違反するものではない。
二 公判期日に証人が証言を拒否したため刑訴
第三二一条第一項第二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉によりその検察官に対する供述調書を証拠として取り調べた後、右証人が公判廷で真実を述べるといつているからとの理由で再度の尋問の請求があつても、裁判所は必ず右尋問請求を許容しなければ違法であるということはできない。
三 被告人甲の検察官に対する供述調書中に共同被告人乙からの伝聞の供述が含まれているときは、刑訴
第三二一条第一項第二号同
第三二四条〈被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条の規定を準用…〉によりこれを被告人乙に対する証拠とすることができる。
四 右のように伝聞の供述を含む供述調書を証拠とすることは憲法第三七条第二項によつて許されないものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年1月22日 昭和30(あ)1941
- 登載
- 刑集 第11巻1号103頁
- 参照法条
- 憲法38条3項,憲法37条2項,刑訴法298条,刑訴法321条1項2号,刑訴法324条
論点155第321条刑事訴訟法
検察官事務取扱検察事務官作成の供述調書を検察官作成の供述調書と表示することの適否
裁判要旨証拠の標目として、検察官事務取扱検察事務官作成の供述調書を検察官作成の供述調書と表示しても、違法ということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和31年6月19日 昭和29(あ)2705
- 登載
- 刑集 第10巻6号853頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項2号,刑訴法335条1項,検察庁法36条
論点156第321条刑事訴訟法
一 心覚えのため取引を書き留めた手帳の証拠能力
二 たばこ専売法第六六条、第七一条は憲法第一四条に違反するとの主張の当否
裁判要旨一 被告人以外の者が単にその心覚えのため取引を書き留めた手帳は、これを刑訴法第三二三条第三号の書面としてその証拠能力を認めることはできず、刑訴法
第三二一条第一項第三号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。〉の書面として証拠能力を決すべきである。
二 たばこ専売法は、たばこの製造販売等の機能を国民中一定の者に許すのではなく、国民に対しては無差別にこれを禁止するものであるから、たばこ専売法第六六条第七一条は日本専売公社のみを厚く保護するもので憲法第一四条に違反するとの主張は前提を欠くものである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和31年3月27日 昭和27(あ)302
- 登載
- 刑集 第10巻3号387頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項3号,刑訴法323条,憲法14条,たばこ専売法2条,たばこ専売法3条,たばこ専売法66条,たばこ専売法71条1号
論点157第321条刑事訴訟法
原判決が証拠として採用していない供述調書の証拠能力についてした判断の違法を主張する上告の適否
裁判要旨原判決が証拠として採用していない検察官作成の第三者に対する供述調書の証拠能力についてした判断が違法であるという主張は、原判決の違法にかかわりないものであるから上告理由として不適法である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年2月16日 昭和30(あ)2113
- 登載
- 集刑 第112号395頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項,刑訴法328条,刑訴法405条
論点158第321条刑事訴訟法
一 証拠決定に関する意見の聴取は公判調書の必要的記載事項か ―判例と相反する判断をしたことにならない一事例
二 検察官作成の供述調書が証拠能力の認められる事例
裁判要旨一 論旨前段は、第一審が所論Aの検察官に対する第三、四回供述調書を証拠調するにあたり、被告人に対し意見並に同意の有無を確かめた事跡がない、ということを前提として判例違反を主張する。しかし証拠調につき被告人の意見並に同意の有無を確かめることは、公判調書に記載することを必要とする事項ではないから、公判調書にその旨の記載がないからとて、論旨援用の判例のように被告人の意見並に同意の有無が確かめなかつたものということはできない。従つて論旨援用の判例は本件に適切でない。
二 論旨後段は、Aの検察官に対する第三、四回供述調書の内容が同人の公判期日における証言内容と大要同一であるという見解を前提として、右供述調書の取締は不当であり、これを証拠に援用した第一審判決も違法であり、適法な証拠調のない証拠を判決に引用した点においては所論援用の判例にも違背する、と主張する。しかし右Aの検察官に対する第三、四回供述調書の内容を同人の公判期日における証言内容と比較してみると、後者は、金員の援受は選挙事務所の費用等性正当の支出のためになされたものであつた、との趣意を含む点において前者と異なつているから、原判決が、刑訴
三二一条一項二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉によつて前者を証拠としたことには何等の違法もない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年3月1日 昭和29(あ)3145
- 登載
- 集刑 第103号39頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項2号,刑訴法326条1項,刑訴法405条,刑訴規則44条,刑訴起訴190条2項
論点159第321条刑事訴訟法
一 刑訴第三二一条第一項第二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉後段の調書の取調時期
二 同号但書にいわゆる「前の供述を信用すべき特別の状況」の判断
裁判要旨一 刑訴
第三二一条第一項第二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉後段の調書の証拠調をその証人尋問期日の後の期日に行つたところで憲法第三七条第二項に反しない。
二 同号但書にいわゆる「前の供述を信用すべき特別の情況」は必ずしも外部的な特別の事情によらなくても、その供述の内容自体によつて判断することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年1月11日 昭和29(あ)1164
- 登載
- 刑集 第9巻1号14頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項2号,刑訴法298条,刑訴法300条,憲法37条2項
論点160第321条刑事訴訟法
一 刑訴第三二一条第一項第三号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。〉但書の規定の趣旨
二 児童福祉法第六〇条第一項の罪については児童の年齢の認識または不認識についての過失の判示を要するか
裁判要旨一 所論刑訴
三二一条第一項第三号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。〉但書の「特に信用すべき情況」については事実審の裁量規定に関する事項であり(昭和二五年(あ)第一六五七号、同二八年七月一〇日第二小法廷判決、集七巻七号一四七四頁参照)、また所論供述者が一八歳未満の者であることの一事をもつては、未だ右刑訴同条の「特に信用すべき情況」でないといい得ないことは論ずるまでもないところである。
二 第一審判決は特に被告人が児童の年齢を知つていたことを判文に明示してはいないけれども、犯罪の客観的事実を表示することにより右認識の存在を判示することができるのであり、第一審判決の判示事実と挙示の証拠のを通読すれば、被告人に右認識のあつたことを認定した趣旨をうかがうことができる。殊に児童福祉法六〇条三項には「児童の年齢を知らないことを理由として、前二項の規定による処罰を免れることができない。但し、過失のないときは、この限りでない。」と規定しておつて、被告人が児童の年齢を知つて犯行に及んだ場合は勿論これを知らなかつたことにつき過失のなかつたことを被告人において立証しない限りは処罰を免れないところである。本件において被告人がこのような立証をした事迹はないのであるから右認証の有無及び認識しないことについての過失の有無につき明示しなかつた第一審判決を違法ということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和29年9月11日 昭和27(あ)5497
- 登載
- 刑集 第8巻9号1479頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項3号,刑訴法335条,児童福祉法60条1項,児童福祉法60条3項,児童福祉法34条1項6号
論点161第321条刑事訴訟法
綜合認定した証拠の一部に違法なものがあつても判決に影響を及ぼさない一事例
裁判要旨第一審判決認定の事実は、所論検察官の被告人に対する供述調書(刑訴
三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉の証拠として取調の請求があり、取調のあつたもの)を除いてもその他の同判決挙示の各証拠により認定することができるのであるから、仮りに所論のごとき違法ありとしても原判決に影響を及ぼさないものである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和29年5月21日 昭和27(あ)4620
- 登載
- 集刑 第95号493頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項3号,刑訴法328条,刑訴法411条
論点162第321条刑事訴訟法
刑訴三二一条一項二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉後段の書面の取調の請求はその供述者に対する証人尋問中になされなければ憲法三七条二項に違反するか
裁判要旨第一審第一二回公判期日において、右Aの検察官に対する供述調書の証拠調が行われた後、箕山弁護人からこれに対し異議の申立があつたが、裁判官は右異議申立は却下する旨を告げたうえ、反証の取調の請求その他の方法によつて証拠の証明力を争うことができる旨を告げているにかかわらず、被告人側からA証人の再尋問請求はなされた形跡もないのである。従つて右供述調書に対して「被告人が全く右A証人に対して反対訊問を試す機会が十分与えられなかつた」というのは、何ら根拠がない(同証人が第八回公判期日において取調を受けた際、被告人側が十分反対尋問の機会を与えられていることは、いうまでもない)。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年5月11日 昭和27(あ)6704
- 登載
- 集刑 第95号273頁
- 参照法条
- 憲法37条2項,刑訴法308条,刑訴法309条,刑訴法321条1項2号
論点163第321条刑事訴訟法
刑訴第三二一条第一項第三号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。〉の「被告人以外の者が作成した供述書」にはその者の署名、押印を必要とするか
裁判要旨刑訴
第三二一条第一項第三号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。〉の「被告人以外の者が作成した供述書」にはその者の署名、押印を必要としない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和29年11月25日 昭和28(あ)5444
- 登載
- 刑集 第8巻11号1888頁
- 参照法条
- 刑訴法321条,刑訴法322条
論点164第321条刑事訴訟法
証人の伝聞事項の供述を証拠とすることに同意があつたと見られる一事例
裁判要旨証人が、共同被告人から伝聞した事項を供述したときに被告人および弁護人が、何ら異議を述べず、かえつて証人に対し尋ねることはないと述べたときは、その供述を証拠とすることに同意があつたものと認めるのを相当とする。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年5月12日 昭和26(あ)4248
- 登載
- 刑集 第7巻5号1023頁
- 参照法条
- 刑訴法324条2項,刑訴法321条1項3号,刑訴法326条
論点165第321条刑事訴訟法
検察官事務取扱検察事務官作成の被疑者または第三者に対する供述調書の証拠能力
裁判要旨検察官事務取扱検察事務官作成にかかる被疑者または第三者に対する供述調書は、刑訴
第三二六条〈検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認め…〉の同意があるときは、事物管轄の如何にかかわらず、証拠能力を有する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年2月26日 昭和26(あ)3776
- 登載
- 刑集 第7巻2号339頁
- 参照法条
- 刑訴法198条,刑訴法223条,刑訴法321条1項,刑訴法322条,刑訴法326条,検察庁法36条
論点166第321条刑事訴訟法
綜合認定した証拠中に証拠能力のない書面があつた場合と刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉
裁判要旨被告人以外の者の司法警察員に対する供述調書が、証拠とすることの同意がなかつたため、刑訴
第三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉の規定により提出された場合に、これを綜合認定の証拠の一つとして挙示するのは違法であるが、他の証拠のみで事実の認定ができれば刑訴
第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年2月17日 昭和27(あ)2719
- 登載
- 刑集 第7巻2号237頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項3号,刑訴法326条,刑訴法328条,刑訴法335条,刑訴法411条
論点167第321条刑事訴訟法
証拠調に異議の申立をしなかつたことと証拠とすることの同意
裁判要旨被告人及びその弁護人は、第一審において右犯罪事実を全部認めているのであり、検察官の右書面に対する証拠調については異議のない旨述べており、右証拠調の実施後においても、被告人も弁護人も何らの異議の申立をしていないのであるから、本件においては、被告人は右各書面を証拠とすることに同意したものと認めるのを相当とする。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年12月25日 昭和27(あ)4841
- 登載
- 集刑 第90号515頁
- 参照法条
- 刑訴法323条1号,刑訴法321条1項1号,刑訴法326条
論点168第321条刑事訴訟法
刑訴法第三二一条第一項〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り…〉の「被告人以外の者」及び同第二二三条第一項〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調…〉の「被疑者以外の者」の意義
裁判要旨所論の各供述書は、たとえ本件の事実に直接関係のある者であつても、本件被告人に対する関係で、刑訴
三二一条一項〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り…〉の「被告人以外の者」又は同
二二三条一項〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調…〉の「被疑者以外の者」にあたることは明らかである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年12月16日 昭和28(あ)4054
- 登載
- 集刑 第89号459頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項,刑訴法223条1項
論点169第321条刑事訴訟法
伝聞供述の内の訂正された部分は証拠としなかつたものと見るべきか
裁判要旨所論証人Aの伝聞にかかる供述部分は、同証人が反対尋問に対する供述で訂正したのであるから、第一審判決が証拠の標目として同証人の供述を挙示した場合においても右訂正された部分は証拠としなかつたものと見るべきである。されば右伝聞供述を証拠としたことを前提とする判例違反の論旨は問題とならない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年10月6日 昭和27(あ)2930
- 登載
- 集刑 第87号171頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項3号,刑訴法324条
論点170第321条刑事訴訟法
綜合認定した証拠の一部に違法なものがあつても判決に影響を及ぼさない一事例 ―検察官が刑訴三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉により提出した供述調書に対し、取調の同意はあつたが証拠とすることの同意があると認められない場合―
裁判要旨第一審第三回公判調書には、「検察官は……刑事訴訟法
第三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉により、四、Aの麻薬取締官作成第一回供述調書一の各取調べを請求した」と明記されているから、そのあとに、「被告人及弁護人は、右各書面の取調べに異議なく之を証拠とするに同意する…旨述べた」とあるのは、Aの供述調書についてはこれを事実認定の証拠とすることに同意(刑
三二六条〈検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認め…〉にいう同意)した趣旨でないことが明瞭である。従つて、第一審判決が右供述調書を犯罪事実認定の証拠の一つとして挙示していることは、まことに所論のとおり違法であり、原判決が被告人側の同意を理由としてこれを適法な採証と解したことは、誤であるといわなければならない。しかし、右供述調書を除外しても、第一審判決挙示の他の各証拠により本件犯罪事実は充分に認定しうるものと判断されるから、右違法は判決に影響を及ぼさず、したがつて刑訴
四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉を適用すべき事由とはならない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年10月19日 昭和27(あ)2904
- 登載
- 集刑 第87号531頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項3号,刑訴法328条,刑訴法326条,刑訴法335条,刑訴法411条
論点171第321条刑事訴訟法
捜査機関の嘱託にもとずき作成された鑑定書に刑訴第三二一条第四項〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り…〉の準用があるか
裁判要旨捜査機関の嘱託にもとずき作成された鑑定書には、裁判所が命じた鑑定人の作成した書面に関する刑訴
第三二一条第四項〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り…〉を準用すべきものである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年10月15日 昭和28(あ)2482
- 登載
- 刑集 第7巻10号1934頁
- 参照法条
- 刑訴法223条,刑訴法321条4項,刑訴法321条3項
論点172第321条刑事訴訟法
一 団体等規制令第一〇条第三項による法務総裁の出頭要求の効力に関する裁判所の審判権限
二 刑訴第三二一条第一項第二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉の法意
三 証人が証言を拒む場合と刑訴第三二一条第一項第二号の適用
裁判要旨一 団体等規制令一〇条による法務総裁の出頭要求命令の効力についての争訟は日本の裁判所が裁判権を有しないと解すべきことは昭和二五年(オ)一四七号同年七月五日大法廷判決(民事判例集四巻七号二六四頁以下)及び昭和二三年(れ)一八六二号昭和二四年六月一三日大法廷判決(刑事判例集三巻七号九七四頁以下)の趣旨に徴して明らかなところであるから、被告人Aに対する本件出頭要求命令を無効なりと主張する各論旨は採用することができない。
二 刑訴
第三二一条第一項第二号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉の規定に供述者が供述することができないときとしてその事由を掲記しているのは、その供述者を裁判所において証人として尋問することを妨ぐべき障碍事由を示したもので、これと同様またはそれ以上の事由の存する場合において同条所定の書面に証拠能力を認めることを妨げるものではない。
三 本件におけるが如く、Bが第一審裁判所に証人として喚問されながらその証言を拒絶した場合にあつては、検察官の面前における同人の供述につき被告人に反対尋問の機会を与え得ないことは右規定にいわゆる供述者の死亡した場合と何等選ぶところはないのであるから、原審が所論のBの検察官に対する供述調査の記載を、事実認定の資料に供した第一審判決を是認したからといつて、これを目して憲法第三七条第二項に違反すると即断することは出来ない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和27年4月9日 昭和26(あ)2357
- 登載
- 刑集 第6巻4号584頁
- 参照法条
- 団体等規正令10条1項3項,団体等規正令13条3号,刑訴法321条1項2号,刑訴法146条,刑訴法147条,憲法37条2項
論点173第321条刑事訴訟法
一 法廷外の訴訟行為と公判手続の更新の要否
二 被害者の供述記載を含む検証調書と判断の資料に供した「検証の結果」の意義
三 控訴審において勾留中の被告人に対し、尋問の日時場所を予め通知しないで法廷外で決定実施した証人尋問と憲法第三七条第二項
四 弁護人の控訴趣意と内容同一なる被告人の控訴趣意に対して特に判断をしない控訴判決と刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉
裁判要旨一 証拠決定、並にこれが実施をしたのが何れも法廷外の訴訟行為であるときは、裁判所の構成に変更があつても、公判手続の更新を要しない。
二 控訴審でした検証調書に被害者の供述が記載されていても、同裁判所は別にその被害者を証人として訊問し、その判決において、「右検証の結果と右証人の証言とに徴し、第一審判決の事実認定には誤りがない。」と判断した場合には、その判決は、右検証調書中の被害者の供述を除いた、裁判官自ら実験した検証の結果と証人として尋問した被害者の証言とを判断の資料としたものと解すべきである。
三 被告人が勾留されている事件の控訴審において、公判延でした証拠決定に基き、検証とその検証現場における証人尋問を実施した際、裁判所が法廷外で職権により新な証人を尋問しようとして、検察官及び弁護人の何れも「然るべく」との意見を聴いた上、その証人尋問を決定し、即日その場で検察官、弁護人立会の上その証人を尋問したときは、予め被告人に対し右証人尋問の日時場所を通知せず又被告人をその尋問に立ち会わせなくても、憲法第三七条第二項に違反しない。
四 原審が被告人の弁護人砂山博をして、被告人本人の控訴趣意書及び同弁護人の控訴趣意書に基いて弁論をさせながら、原判決には弁護人の控訴趣意についてのみ判断を示し、被告人の控訴趣意については判断を示していないことは所論のとおりである。しかし被告人の控訴趣意は、事実誤認の主張で弁護人の控訴趣意第一点の内容と同様である。そして右第一点について原判決は判断を示しているので、原判決は被告人の控訴趣意についても判断を示したと同様に帰するから原判決の右瑕疵はこれを以つて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものといえない。(昭和二五年(あ)第一四四号同年七月六日第一小法廷判決、同二五年(あ)第四二号同年一〇月三日第三小法廷判決参照)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和27年1月11日 昭和26(あ)3051
- 登載
- 刑集 第6巻1号78頁
- 参照法条
- 刑訴法315条,刑訴法321条2項,刑訴法157条,刑訴法392条1項,刑訴法411条1号,憲法37条2項
論点174第321条刑事訴訟法
一 被告人の在延する公判廷において口頭で罰条を追加する場合に特に被告人に通知手続を執ることの要否
二 犯罪事実認定の資料となる医師の診断書の採証要件
三 一個の強盗行為の手段として甲、乙に対してそれぞれ暴行を加え、同人等に各傷害を与えた場合の罪責
裁判要旨一 被告人が在延する公判廷における口頭の罰条追加の場合には裁判所が特に被告人に対しこれが通知の手続を執る必要のないことは多言を要しないし、また、犯罪事実認定の資料となるべき医師の診断書は刑訴法第三二一条、第三二六条の要件あるを以て足り(本件では同
第三二六条〈検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認め…〉の同意あること記録上明白である)、同
第二七八条〈公判期日に召喚を受けた者が病気その他の事由によつて出頭することができないときは、裁判所の規則の定めるところにより、医師の…〉、刑訴規則第一八三条所定の事実を記載するの必要ないこと勿論であるから、刑訴法
第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべきものとも認められない。
二 一個の強盗行為の手段として甲、乙に対しそれぞれ暴行を加え同人等に各傷害を与えた場合は、甲、乙に対する各強盗傷人罪の併合罪となる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和26年8月9日 昭和26(あ)1140
- 登載
- 刑集 第5巻9号1730頁
- 参照法条
- 刑訴法312条,刑訴法321条,刑訴法411条,刑訴法326条,刑訴法278条,刑訴規則183条,刑法240条前段,刑法45条前段
論点175第321条刑事訴訟法
刑訴第二二八条第二項〈前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。〉により被疑者弁護人等に反対尋問の機会を与えないで作成された証人尋問調書の証拠調決定と憲法第三七条第二項
裁判要旨証人が、公判廷において、前に刑訴
第二二八条〈前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。〉によつて裁判官の面前においてした供述と異つた供述をしたため、検察官から右裁判官の面前における供述録取書類の証拠調を請求した場合に、その供述録取書類が、被疑者、弁護人等に反対尋問の機会を与えないで作成されたものであつても、裁判所がその供述録取書類を証拠調する旨の決定をすることは、何ら憲法第三七条第二項に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和25年10月4日 昭和25(し)16
- 登載
- 刑集 第4巻10号1866頁
- 参照法条
- 刑訴法228条,刑訴法321条1項1号,憲法37条
論点176第321条刑事訴訟法
刑訴法321条1項2号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。〉後段の合憲性
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成9年3月6日 平成8(あ)1244
- 登載
- 集刑 第270号401頁
- 参照法条
- 憲法37条2項,刑訴法321条1項2号後段
論点177第321条刑事訴訟法
被害者等が被害状況等を再現した結果を記録した捜査状況報告書を刑訴法321条1項3号所定の要件を満たさないのに同法321条3項のみにより採用した第1審の措置を是認した原判決に違法があるとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成27年2月2日 平成26(あ)1422
- 登載
- 集刑 第316号133頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項3号,刑訴法321条3項
論点178第321条刑事訴訟法
国際捜査共助に基づき中華人民共和国において同国の捜査官によって作成された供述調書が刑訴法321条1項3号の書面に当たるとされた事例
裁判要旨国際捜査共助に基づき,中華人民共和国において身柄を拘束されていた共犯者を同国の捜査官が取り調べ,その供述を録取した供述調書であって,犯罪事実の証明に欠くことができないものは,同国の捜査機関に対し日本の捜査機関から取調べの方法等に関する要請があり,取調べに際しては黙秘権が実質的に告知され,取調べの間,肉体的,精神的強制が加えられた形跡はないなどの本件事実関係の下では,刑訴法
321条1項3号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。〉の書面に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成23年10月20日 平成19(あ)836
- 登載
- 刑集 第65巻7号999頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項3号
論点179第321条刑事訴訟法
火災原因の調査,判定に関し特別の学識経験を有する私人が燃焼実験を行ってその考察結果を報告した書面について,刑訴法321条3項〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り…〉は準用できないが,同条4項の書面に準じて同項により証拠能力が認められるとされた事例
裁判要旨火災原因の調査,判定に関し特別の学識経験を有する私人が燃焼実験を行ってその考察結果を報告した本件書面(判文参照)については,刑訴法
321条3項〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り…〉所定の書面の作成主体が「検察官,検察事務官又は司法警察職員」と規定されていること及びその趣旨に照らし同項の準用はできないが,同条4項の書面に準ずるものとして同項により証拠能力を有する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成20年8月27日 平成19(あ)2207
- 登載
- 刑集 第62巻7号2702頁
- 参照法条
- 刑訴法321条3項,刑訴法321条4項
論点180第321条刑事訴訟法
1 刑訴法321条1項〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り…〉にいう「署名」と刑訴規則61条
2 供述録取書の供述者の署名を代書した立会人が刑訴規則61条2項所定の代書事由を記載しなかった場合でも刑訴法321条1項にいう「署名」があるのと同視できるとされた事例
裁判要旨1 刑訴法
321条1項〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り…〉にいう「署名」には,刑訴規則61条の適用がある。
2 供述録取書の供述者の署名を代書した立会人が刑訴規則61条2項所定の代書事由を記載しなかった場合でも,同録取書が,末尾にその作成者による代書事由の記載があり,立会人が同記載を見た上で自己の署名押印をしたと認められるような態様のものであるとき(判文参照)は,刑訴法
321条1項にいう「署名」があるのと同視できる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成18年12月8日 平成18(あ)1038
- 登載
- 刑集 第60巻10号837頁
- 参照法条
- (1,2につき)刑訴法321条1項,刑訴規則61条
論点181第321条刑事訴訟法
捜査官が被害者や被疑者に被害・犯行状況を再現させた結果を記録した実況見分調書等で実質上の要証事実が再現されたとおりの犯罪事実の存在であると解される書証の証拠能力
裁判要旨捜査官が被害者や被疑者に被害・犯行状況を再現させた結果を記録した実況見分調書等で,実質上の要証事実が再現されたとおりの犯罪事実の存在であると解される書証が刑訴法326条の同意を得ずに証拠能力を具備するためには,同法321条3項所定の要件が満たされるほか,再現者の供述録取部分については,再現者が被告人以外の者である場合には同法321条1項2号ないし3号所定の要件が,再現者が被告人である場合には同法322条1項所定の要件が,写真部分については,署名押印の要件を除き供述録取部分と同様の要件が満たされる必要がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成17年9月27日 平成17(あ)684
- 登載
- 刑集 第59巻7号753頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項2号,刑訴法321条1項3号,刑訴法321条3項,刑訴法322条1項,刑訴法326条
論点182第321条刑事訴訟法
大韓民国の裁判所に起訴された共犯者の公判廷における供述を記載した同国の公判調書と刑訴法321条1項3号にいう「特に信用すべき情況」
裁判要旨大韓民国の裁判所に起訴された共犯者が,自らの意思で任意に供述できるよう手続的保障がされている同国の法令にのっとり,同国の裁判官,検察官及び弁護人が在廷する公開の法廷において,質問に対し陳述を拒否することができる旨告げられた上でした供述を記載した同国の公判調書は,刑訴法
321条1項3号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。〉にいう「特に信用すべき情況」の下にされた供述を録取した書面に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成15年11月26日 平成14(あ)409
- 登載
- 刑集 第57巻10号1057頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項3号
論点183第321条刑事訴訟法
国際捜査共助の要請に基づきアメリカ合衆国において作成された供述書が刑訴法三二一条一項三号の書面に当たるとされた事例
裁判要旨日本国からアメリカ合衆国に対する捜査共助の要請に基づき、同国に在住する者が、黙秘権の告知を受け、同国の捜査官及び日本の検察官の質問に対して任意に供述し、公証人の面前において、偽証罪の制裁の下で、記載された供述内容が真実であることを言明する旨を記載するなどして作成した供述書は、刑訴法
三二一条一項三号〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り… 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。〉にいう特に信用すべき情況の下にされた供述に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成12年10月31日 平成11(あ)400
- 登載
- 刑集 第54巻8号735頁
- 参照法条
- 刑訴法321条1項3号
論点184第322条刑事訴訟法
刑訴法第三二二条第一項〈被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事…〉にいわゆる被告人作成の供述書と認められる一事例
裁判要旨表面は、司法巡査作成名義の交通違反現認報告書と題する書類で、道路交通取締法令違反の被疑者の氏名、住所、違反の概要を記載せるものの裏面に、不動文字をもつて「表記の通り違反を認む」と記載しあり末尾に日付、被告人の住所、氏名の自署および押印がなされているときは、該書類の裏面は、書面全体の形式から被告人の意思に基き被告人自ら作成したものと認められる限り、刑訴
第三二二条第一項〈被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事…〉にいわゆる被告人作成の供述書に該当するものと認むべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和32年9月26日 昭和31(あ)1791
- 登載
- 刑集 第11巻9号2371頁
- 参照法条
- 刑訴法322条1項
論点185第322条刑事訴訟法
刑訴法第三二二条第一項〈被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事…〉本文前段の供述調書が証拠能力を有するための条件
裁判要旨所論被告人の検察官に対する供述調書は刑訴
三二二条〈被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事…〉の書面として検察官が取調を請求し、第一審裁判所も同書面として証拠決定をなし取り調べたものであることは所論のとおりであるが、右供述調書は被告人の署名拇印があり、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであること(同条一項本文前段参照)記録上明白であるから、かかる書面については供述の任意性が認められるかぎりこれを証拠とすることができるのであつて(同条一項但書参照)「特に信用すべき情況の下にされたものである」(同条一項本文後段参照)ことを条件とするものではないことは同条の明文に徴し明らかである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年3月26日 昭和29(あ)4146
- 登載
- 集刑 第118号391頁
- 参照法条
- 刑訴法322条
論点186第322条刑事訴訟法
外国人たる被告人の検察官に対する供述調書として証拠能力の認められる事例
裁判要旨外国人たる被告人が検察官に対して英語で供述したことを通訳人が日本語に通訳しこれを検察官が録取した書面に被告人の署名がなくても、これを英訳した調書に被告人の署名があり、右和英両文調書双方に通訳人が通訳及び翻訳の相違ないことを担保して署名しているときは、右両調書を一括して被告人の検察官に対する供述調書として、証拠能力を認めることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年10月29日 昭和32(あ)1195
- 登載
- 刑集 第11巻10号2708頁
- 参照法条
- 刑訴法175条,刑訴法177条,刑訴法322条1項
論点187第322条刑事訴訟法
一 適法な控訴理由として前提を欠く一事例
二 供述調書謄本の証拠能力
裁判要旨一 第一審においては、弁護人は所論供述調書の内容が信用できないことを理由として、証拠とすることに異議を申立てたのであり、右異議は、原本の存在を争つたり、謄本なるが故に証拠能力がないと主張したものでないことが認められる。従つて、被告人が本件につき控訴審において申立てた控訴趣意第一点において「而も右は謄本であつて、弁護人において謄本を証拠とすることに対し異議を述べており原本の顕出もなされていないものであるから証拠となし得ないものである」というのは、第一審において主張のなかつた事項を恰も主張したもののごとくいうのであり、第一審判決の攻撃としては前提を欠くものである。
二 第一審が本件供述調書の謄本の内容を措信するに足るものとしてこれを証拠に採用したことには違法は認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年6月28日 昭和30(あ)2427
- 登載
- 集刑 第113号929頁
- 参照法条
- 刑訴法379条,刑訴法322条,刑訴法323条
論点188第322条刑事訴訟法
自白の任意性の調査方法
裁判要旨公判廷外における被告人の自白の任意性調査の方法は裁判所の適宜な方法で足りる。(昭和二六年(あ)一六五七号、同二八年二月一二日第一小法廷判決、判例集七巻二号二〇四頁)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和31年4月17日 昭和27(れ)88
- 登載
- 集刑 第113号81頁
- 参照法条
- 刑訴法322条,刑訴法325条
論点189第322条刑事訴訟法
被疑者を午前三時頃警察署に任意出頭せしめた処置と、被疑者の司法警察員に対する供述調書(自白)の証拠能力
裁判要旨被疑者を午前三時頃に出頭せしめる必要もないのに、警察署に任意出頭せしめた場合でも、その日の午後六時三〇分頃適法な手続によつて逮捕され、次いで適法に勾留された後において被疑者が司法警察員に対してなした供述(自白)の任意性が認められ、また被告人(被疑者)および弁護人共にその供述調書を証拠とすることに同意している等特段の事情ある場合に、右供述調書の証拠能力を認めることは相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和31年12月11日 昭和28(あ)5265
- 登載
- 集刑 第116号69頁
- 参照法条
- 刑訴法198条,刑訴法199条,刑訴法201条,刑訴法207条,刑訴法210条,刑訴法322条,刑訴法326条
論点190第322条刑事訴訟法
検察官が同意を条件として被告人の検察官に対する供述調書の証拠調を請求したのに対し、被告人がこれを証拠とすることに同意しなかつた場合とその供述調書の証拠調
裁判要旨検察官が同意を条件として被告人の検察官に対する供述調書の証拠調を請求したのに対し、被告人がこれを証拠とすることに同意しなかつた場合でも、裁判所は刑訴
第三二三条〈第三百二十一条から前条までに掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。〉の条件を具備するか否かに関する事項を取調べた上で、右供述調書の証拠調をすることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年12月24日 昭和28(あ)1376
- 登載
- 刑集 第8巻13号2411頁
- 参照法条
- 刑訴法326条,刑訴法322条,刑訴法298条,刑訴法299条2項
論点191第322条刑事訴訟法
国税監察官あての被告人の始末書の証拠能力。
裁判要旨所論被告人の国税監察官A、同Bあて始末書は、第一審公判において、被告人がこれを証拠とすることに同意しており、右始末書は被告人自身が作成したものであるから供述拒否権の告知があつた旨の記載がないのは当然である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年10月19日 昭和28(あ)4692
- 登載
- 集刑 第99号195頁
- 参照法条
- 刑訴法322条,刑訴法326条
論点192第322条刑事訴訟法
自白の任意性の調査方法
裁判要旨公判廷外における被告人の自白の任意性の有無の調査は、必ずしも証人の取調によるの要なく、裁判所が適当と認める方法によつてこれを行うことができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年2月12日 昭和26(あ)1657
- 登載
- 刑集 第7巻2号204頁
- 参照法条
- 刑訴法322条,刑訴法325条
論点193第322条刑事訴訟法
一 被告人の供述調書の任意性立証の要否
二 右供述調書の任意性の調査方法
三 右供述調書の任意性調査と公判調書
裁判要旨一 被告人の供述調書の任意性を被告人が争つたからといつて、必ずしも検察官にその供述の任意性について立証させねばならないものではない。
二 右供述調書の任意性の有無の調査は、裁判所が適当と認める方法によつてこれを行うことができ、かつ供述調書の方式のみでなく内容自体も右調査の資料となし得る。
三 右供述調書の任意性調査の事実は、これを必ず調書に記載しなければならないものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年10月9日 昭和26(あ)1295
- 登載
- 刑集 第7巻10号1904頁
- 参照法条
- 刑訴法325条,刑訴法322条,刑訴法48条,刑訴規則44条
論点194第322条刑事訴訟法
一 逮捕後被疑者に弁解の機会を与えるに際していわゆる黙秘権の告知が必要か
二 被疑者の弁解録取書は証拠能力を有するか
裁判要旨一 刑訴
二〇三条〈司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨…〉に基く司法警察員の被疑者に対する弁解録取書、又は同
二〇四条〈検察官は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者(前条の規定により送致された被疑者を除く。)…〉若しくは同
二〇五条〈検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直…〉に基く検察官の被疑者に対する弁解録取書は、専ら被疑者を留置する必要あるか否かを調査するための弁解録取書であつて、同
一九八条〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べること…〉所定の被疑者の取調調書ではないから、訴訟法上その弁解の機会を与えるには犯罪事実の要旨を告げるだけで充分であつて、同
一九八条二項所定のように被疑者に対し、あらかじめ、供述を拒むことができる旨を告げなければならないことは要請されていない。
二 弁解録取書であつても、被告人の供述を録取した書面と認められ且つ刑訴
三二二条〈被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事…〉の要件を具備するか又は同
三二六条〈検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認め…〉の同意がありさえすれば証拠とすることができること論を俟たない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年3月27日 昭和26(あ)2650
- 登載
- 刑集 第6巻3号520頁
- 参照法条
- 刑訴法203条,刑訴法204条,刑訴法205条,刑訴法198条1項2項,刑訴法322条,刑訴法326条
論点195第322条刑事訴訟法
裁判長が「なお調べたいことがあるので判決言渡は延し、次回公判期日は追而指定する」旨の告示と弁論再開の有無
裁判要旨裁判長が「なお調べたい事があるので本日判決言渡は延し、次回公判期日は追而指定する」旨告げたからとて、これを所論のように弁論再開したものと認めなければならない理由はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年3月27日 昭和25(れ)1761
- 登載
- 集刑 第42号661頁
- 参照法条
- 旧刑訴法322条,旧刑訴法350条
論点196第323条刑事訴訟法
一 刑訴法三二三条二号〈第三百二十一条から前条までに掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。 商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面〉にいう「業務の通常の過程において作成された書面」に当たることの判断資料
二 刑訴法三二三条二号にいう「業務の通常の過程において作成された書面」に当たるとされた事例
裁判要旨一 刑訴法
三二三条二号〈第三百二十一条から前条までに掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。 商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面〉にいう「業務の通常の過程において作成された書面」に当たるか否かを判断するについては、当該書面自体の形状、内容だけでなく、その作成者の証言等も資料とすることができる。
二 漁船団の取決めに基づき船団所属の各漁船の乗組員から定時に発せられる操業位置等についての無線通信を、船団所属の一漁船の通信業務担当者がその都度機械的に記録した書面は、前記各漁船の操業位置等を認定するための証拠として、刑訴法
三二三条二号にいう「業務の通常の過程において作成された書面」に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年3月3日 昭和58(あ)1458
- 登載
- 刑集 第40巻2号175頁
- 参照法条
- 刑訴法323条2号
論点197第323条刑事訴訟法
金融機関の捜査関係事項照会に対する回答書の証拠能力
裁判要旨所論の金融機関から捜査官への捜査関係事項の照会に対する回答書は刑訴法三二三条三号にいう「特に信用すべき情況の下に作成された書面」にあたるものと認められる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和47年4月11日 昭和46(あ)118
- 登載
- 集刑 第184号27頁
- 参照法条
- 刑訴法323条3号
論点198第323条刑事訴訟法
一 検察官の冒頭陳述および判決理由中の説示と裁判官の予断偏見
二 信書が刑訴第三二三条第三号〈第三百二十一条から前条までに掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。 前二号に掲げるもののほか特に信用すべき情況の下に作成された書面〉によつて証拠能力を認められる事例
裁判要旨一 或る犯行が、甲の単独犯として起訴せられ申に対し有罪の確定判決があつた後、甲の右犯行は乙の教唆に基ずくものであり、且つ丙および丁は甲の犯行を幇助したものであるとして、さらに乙、丙および丁が起訴せられた場合、検察官が冒頭陳述に際し、さきに甲を起訴した時の検察当局の意見を或る程度説明し、また判決がその理由中に、審判に当り考慮すべき点を列挙して、事件の発端から起訴を見るに至るまでの経過および事件の特殊性を説示しているからといつて、裁判所が予断と偏見に基ずいて審判したものということはできない。
二 右甲が服役中妻との間でやりとりした一連の手紙は公判における右両名の証言および同手紙の外観、内容等により特に信用すべき状況のもとに作成されたものと認められるかぎり刑訴
第三二三条第三号〈第三百二十一条から前条までに掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。 前二号に掲げるもののほか特に信用すべき情況の下に作成された書面〉によつて、乙、丙および丁に対する被告事件の証拠とすることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和29年12月2日 昭和27(あ)4481
- 登載
- 刑集 第8巻12号1923頁
- 参照法条
- 憲法37条1項,刑訴法296条,刑訴法44条1項,刑訴法335条1項,刑訴法323条3号
論点199第324条刑事訴訟法
伝聞証言の証拠能力に関する判例違反の主張が欠前提処理された事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年4月3日 昭和60(あ)1012
- 登載
- 集刑 第242号327頁
- 参照法条
- 刑訴法324条2項
論点200第324条刑事訴訟法
刑訴第三二四条第一項〈被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条の規定を準用…〉の趣旨
裁判要旨刑訴
第三二四条第一項〈被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条の規定を準用…〉は、被告人以外の者の公判準備または公判期日における供述で被告人の自白、自認を内容とするものは、証拠法上すべての関係において被告人の自白、自認と同一であるということを規定したものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和30年6月17日 昭和28(あ)4851
- 登載
- 刑集 第9巻7号1153頁
- 参照法条
- 刑訴法324条1項
論点201第324条刑事訴訟法
刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉にたらない一事例 ―同意のないのにかかわらず伝聞供述をふくむ証人尋問調書の全般に亘つて罪証に供した場合―
裁判要旨原判決は第一審第九回公判期日において所論Aの尋問調書の証拠調の施行について、被告人及び弁護人において異議を述べた形跡が窺われないから、右尋問調書中伝聞供述記載部分をも証拠とすることに同意したものと認めることができるとしているけれども、被告人は第一審公判において密入国事実を全面的に否認しているのであるから同公判調書の記載内容から考えて、被告人及び弁護人が前記尋問調書の証拠調に異議を述べなかつた一事をもつて直ちに同調書中伝聞証拠の供述記載の証拠能力までも認めるに同意したものと推断することはできない。しかしながら同調書中から右伝聞証拠である供述記載の部分の除いた部分及び第一審判決挙示のその他を綜合すれば同判決の判示事実を認めるに難くないから、第一審判決が本件尋問調書の全般に亘つて罪証に供した違法があるけれども、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があつて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和30年1月14日 昭和28(あ)443
- 登載
- 集刑 第102号341頁
- 参照法条
- 刑訴法324条,刑訴法335条1項,刑訴法411条,刑訴法326条
論点202第324条刑事訴訟法
一 舊刑訴法による事件において公判廷外における被告人、辯護人からの證人、鑑定人等の取調の請求の性質
二 公判期日前被告人又は辯護人からなされた證據調の請求却下の決定をしない場合と上告理由
三 辯護人からの證人喚問請求の趣旨が公判廷において立證され十分取調べをしている場合に法廷外における右請求につき決定をしなかつたことの違法
四 囑託による委託判事の證人尋問期日を辯護人に通知しなかつたことと上告理由
裁判要旨一 舊刑訴法の事件において公判廷外でする被告人、辯護人からの證人、鑑定人等の取調の請求は舊刑訴法上は同法第三二四條第三項に基き裁判所に對し同條第一項に規定する證據物若しくは證據書類の提出命令證人、鑑定人等に對する召喚状發布等の處分を請求することに歸するものと解すべきである。
二 被告人、辯護人から舊刑訴法第三二四條第一項の規定による處分の請求があつた場合裁判所が右請求を却下するときは決定をしなければならないことは同法第三二四條第四項の規定するところであるから、若し裁判所が右規定に違反し、右請求を容れないにも拘らずこれを却下する決定をしなかつたときは違法ではあるけれども、その違法は同法第四一〇條に規定する絶對上告理由となるものとはいえない。何となれば舊刑訴法第四一〇條第一四號にいわゆる「公判ニ於テ爲シタル證據調ノ請求」とは公判における同法第三四四條の場合を規定したもので公判外における同法第三二四條の場合を規定したものでないこと明文上明であるからである。
三 所論證人申請書を見ると、辯護人がその申出た證人により立證しようとするところは何れも、被告人の人となり、性格、素行、習癖等であると書いてある。しかるに本件については原審裁判所は職權により、若しくは辯護人の申請によつて二〇人餘の證人を尋問し、又被告人の精神鑑定をも命じているのであり、これ等證人の取調鑑定の結果によつて、所論證人申請により立證しようとする事項は十分に取調べられているのであるから、原裁判所が、法廷外で所論各證人の喚問の請求に對し何等決定をしなかつた違法は、本件では原判決に影響を及ぼさないこと明らかである。
四 囑託による委託判事の證人尋問期日を辯護人に通知しなかつたことが違法であるとしても判決において右證人尋問調書を證據にしていないときは、右違法は右判決に對する上告理由とならない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和24年10月5日 昭和23(れ)983
- 登載
- 刑集 第3巻10号1641頁
- 参照法条
- 旧刑訴法324条1項,旧刑訴法324条3項,旧刑訴法324条4項,旧刑訴法410条14号,旧刑訴法344条,旧刑訴法324条,旧刑訴法411条
論点203第325条刑事訴訟法
刑訴法三二五条〈裁判所は、第三百二十一条から前条までの規定により証拠とすることができる書面又は供述であつても、あらかじめ、その書面に記載…〉にいう任意性の調査の時期
裁判要旨刑訴法
三二五条〈裁判所は、第三百二十一条から前条までの規定により証拠とすることができる書面又は供述であつても、あらかじめ、その書面に記載…〉にいう任意性の調査は、必ずしも当該書面又は供述の証拠調の前にされなければならないわけのものではなく、裁判所が右書面又は供述の証拠調後にその証明力を評価するにあたつてしても差し支えない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和54年10月16日 昭和53(あ)1861
- 登載
- 刑集 第33巻6号633頁
- 参照法条
- 刑訴法325条
論点204第325条刑事訴訟法
被告人以外の者の検察官に対する供述調書の任意性に関する調査があつたと認められる事例
裁判要旨被告人以外の者の検察官に対する供述調書について、弁護人から特信性がないから証拠調に反対の旨の異議申立があり、右異議は理由なしとして却下された旨公判調書に記載されている場合は、右異議についての裁判に際し、その任意性の有無についても調査せられたものと解するを相当とする。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年9月18日 昭和29(あ)3619
- 登載
- 刑集 第11巻9号2324頁
- 参照法条
- 刑訴法325条
論点205第325条刑事訴訟法
供述調書の任意性の調査方法。
裁判要旨供述調書の任意性は、裁判所が適当と認める方法で調査すれば足りるものである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年7月23日 昭和27(あ)5553
- 登載
- 集刑 第85号303頁
- 参照法条
- 刑訴法325条
論点206第325条刑事訴訟法
被告人、弁護人が書面を証拠とすることに同意した場合と任意性調査の要否
裁判要旨被告人及び弁護人が前記書面を証拠とすることに同意したことは、すなわちその供述が任意になされたことを認めたのであり従つてその証拠能力を認めた趣旨であるから、一旦同意した後さらにまた任意性を争うのは前後矛盾する行為であつて、後にかかる主張をしても結局採用することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年11月17日 昭和27(あ)4255
- 登載
- 集刑 第88号511頁
- 参照法条
- 刑訴法325条,刑訴法326条
論点207第325条刑事訴訟法
被告人が書面の証拠とすることに同意した場合とその供述の任意性調査の要否
裁判要旨被告人が書面の証拠とすることに同意した場合には、刑訴法
第三二五条〈裁判所は、第三百二十一条から前条までの規定により証拠とすることができる書面又は供述であつても、あらかじめ、その書面に記載…〉に従つてその書面に記載された供述の任意性を調査しなければならないものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和26年6月7日 昭和25(あ)1333
- 登載
- 刑集 第5巻7号1243頁
- 参照法条
- 刑訴法325条,刑訴法326条
論点208第326条刑事訴訟法
被告人が秩序維持のため退廷を命ぜられ刑訴法三四一条により審理を進める場合と同法三二六条二項の適用の有無
裁判要旨刑訴法
三二六条二項〈検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認め…〉は、被告人が秩序維持のため退廷を命ぜられ同法三四一条により審理を進める場合においても適用される。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年6月28日 昭和50(あ)731
- 登載
- 刑集 第32巻4号724頁
- 参照法条
- 刑訴法326条2項,刑訴法341条
論点209第326条刑事訴訟法
ポリグラフ検査結果回答書が刑訴法第三二六条第一項の書面として証拠能力を認められた事例
裁判要旨刑訴法
第三二六条第一項〈検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認め…〉の同意のあつたポリグラフ検査結果回答書は、その検査結果が検査者の技術経験、検査器具の性能に徴して信頼できるものであり、かつ、検査の経過および結果を忠実に記載したものであるとき(原判文参照)は、証拠能力がある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和43年2月8日 昭和42(あ)2188
- 登載
- 刑集 第22巻2号55頁
- 参照法条
- 刑訴法326条1項
論点210第326条刑事訴訟法
一 酒税法第六二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人又は人に対する公訴時効
二 第一審における証拠とすることの同意を控訴審に至つて撤回することの可否
裁判要旨一 酒税法第六二条のいわゆる両罰規定における事業主たる法人又は人に対する公訴時効は、その法人又は人に対する法定刑たる罰金刑につき定められた三年の期間を経過することによつて完成する。
二 第一審における証拠とすることの同意を控訴審に至つて撤回することは、原則として許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年12月25日 昭和34(あ)1973
- 登載
- 刑集 第16巻12号1718頁
- 参照法条
- 酒税法62条,酒税法55条1項1号,刑訴法250条5号,刑訴法253条,刑訴法411条1号,刑訴法326条
論点211第326条刑事訴訟法
一 被疑者の緊急逮捕に着手する以前その不在中になされた捜索差押は適法か
二 右捜索差押調書および捜索差押にかかる麻薬に対する鑑定書の証拠能力
裁判要旨一 司法警察官の職務を行う麻薬取締官が麻薬不法譲渡罪の被疑者を緊急逮捕すべくその自宅に赴いたところ、被疑者が他出中であつたが、帰宅次第逮捕する態勢をもつて同人宅の捜索を開始し、麻薬を押収し、捜索の殆んどを終る頃帰宅した同人を適法に緊急逮捕した本件の場合の如く、(判文参照)、捜索差押が緊急逮捕に先行したとはいえ、時間的にはこれに接着し、場所的にも逮捕の現場でなされたものであるときは、その捜索差押を違憲違法とすべき理由はない。
二 右麻薬取締官作成の右捜索差押調書および捜索差押にかかる右麻薬に対する鑑定書につき、被告人および弁護人が第一審公判廷において、これを証拠とすることに同意し、意義なく適法な証拠調を経たときは、右各書面は、捜索差押手続の違法であつたかどうかにかかわらず証拠能力を有する。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和36年6月7日 昭和31(あ)2863
- 登載
- 刑集 第15巻6号915頁
- 参照法条
- 憲法33条,憲法35条,刑訴法210条,刑訴法220条,刑訴法309条,刑訴法326条
論点212第326条刑事訴訟法
原本に代えて証拠書類の謄本の取調請求があつた場合と証拠調
裁判要旨原本に代えて証拠書類の謄本の取調請求があつた場合、被告人および弁護人がこれを証拠とすることに同意し、且つ証拠調をすることに異議がない以上、謄本を証拠とするため証拠調をしても違法でない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和35年2月3日 昭和32(あ)918
- 登載
- 刑集 第14巻1号45頁
- 参照法条
- 刑訴法309条,刑訴法326条,刑訴法310条
論点213第326条刑事訴訟法
勾留中の被告人が原審の公判期日外の証人尋問に立ち合わなかつた場合と憲法第三七条第二項。
裁判要旨勾留中の被告人が出頭している原審公判廷で、被告人が一審においてはその供述調書を証拠とすることに同意していた証人五名を、検証の現場附近で尋問する旨の決定がされたのに、被告人および弁護人から立会の要求もなく、またその証人尋問には弁護人が立ち会い、それら証人尋問調書の証拠調にあたつても異議がなかつたときは、右証人尋問に際し被告人に反対尋問の機会が与えられなかつたから憲法第三七条第二項に反する旨の主張は、その前提を欠く。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和33年7月1日 昭和33(あ)417
- 登載
- 集刑 第126号623頁
- 参照法条
- 憲法37条2項,刑訴法157条,刑訴法326条
論点214第326条刑事訴訟法
告発書の性質
裁判要旨所論告発書の証拠調については第一審において所論のごとく弁護人が不同意を唱えた形跡が認められないばかりでなく、同告発書は、本件についての訴訟要件としての告発があつた事実を証明する資料であつて、本件事実認定の証拠として提出されたものでないこと記録上明白であるから、仮りに被告人、弁護人から不同意の申立があつたとしても、記録に編綴することは当然であつて、これを違法とすべき理由はない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年6月14日 昭和30(あ)3753
- 登載
- 集刑 第113号769頁
- 参照法条
- 刑訴法239条,刑訴法241条,刑訴法326条
論点215第326条刑事訴訟法
共同被告人とその弁護人が同じ公判期日に在廷し、各弁護人それぞれ分担を定めて書証に対する同意不同意の意見を陳述した場合の効果
裁判要旨共同被告人とその弁護人が同じ公判期日に在廷して数名の弁護人が書証を証拠とすることに同意不同意の意見を表示するに当り、弁護人が各分担を定めて意見を陳述し、そして他の弁護人はそれ以上同意不同意の意見を陳述しなかつた以上は(弁護人がそれ以上意見を陳述することを妨げられないで証拠調を終了した限り)各弁護人協議の上、自己の代理する被告人に最も関係深い書証の同意不同意を他の各弁護人に代り陳述したもので、その効果は全被告人に及ぼす趣意と解するのを相当とする。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年8月2日 昭和29(あ)1929
- 登載
- 集刑 第108号17頁
- 参照法条
- 刑訴法326条
論点216第326条刑事訴訟法
一 被疑者の供述調書に供述拒否権の告知の記載がないときは右告知がなかつたことになるか
二 捜査機関の作成する被疑者の供述調書には刑訴規則第三九条が適用されるか
三 証拠能力ある書面についてもこれを証拠とすることの同意を確めることを要するか
裁判要旨一 被疑者の供述調書に供述拒否権を告知した旨の記載がないからといつて、直ちにこの告知がなかつたとはいえない。
二 捜査機関の作成する被疑者の供述調書は刑訴
第一九八条〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べること…〉の適用を受け、刑訴規則第三九条の適用は受けない。
三 法律条証拠能力のある書面については、これを証拠とすることに同意するかどうかを確める必要はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和29年8月20日 昭和28(あ)1613
- 登載
- 刑集 第8巻8号1299頁
- 参照法条
- 刑訴法198条,刑訴法326条,刑訴規則39条
論点217第326条刑事訴訟法
一 原本に代えて証拠書類の謄本の取調請求のあつた場合と証拠調
二 控訴審において被告人が出頭した場合と人定質問の要否
裁判要旨一 原本に代えて証拠書類の謄本の取調請求があつた場合、被告人および弁護人がこれを証拠とすることに同意し、且つ証拠調をすることに異議がない以上、謄本を証拠とするため証拠調をしても違法ではない。
二 控訴審においては、被告人が出頭した場合でも、必ずしも人定質問をするを要しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年12月17日 昭和25(あ)547
- 登載
- 刑集 第7巻12号2558頁
- 参照法条
- 刑訴法298条1項,刑訴法305条1項,刑訴法309条,刑訴法326条,刑訴法390条,刑訴規則115条,刑訴規則196条
論点218第326条刑事訴訟法
鑑定書の取調請求と鑑定処分の許可状提出の要否
裁判要旨鑑定書の取調請求に対して被告人および弁護人が証拠調に異議がないと述べた以上、鑑定処分許可状が提出されなくても違法ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和27年7月25日 昭和26(あ)5121
- 登載
- 刑集 第6巻7号946頁
- 参照法条
- 刑訴法223条1項,刑訴法225条,刑訴法168条1項,刑訴法309条,刑訴法326条,刑訴規則159条
論点219第326条刑事訴訟法
自白の任意性についての判断と経験則違反
裁判要旨本件記録中には、被告人の警察署における供述が強制若しくは拷問による自白であることを推認させるような幾多の証人の供述が存在するのである。殊に、直接、取調の衝に当つた警察官自身が被告人の取調は被告人に手錠をはめたままで行われたこと、午前二時頃まで取調べたこと、警察官が四人がかりで、被告人を取調べたこと、警察官の一人が被告人を殴つたことのあることを認めていることを前述のとおりである。本件において記録を精査しても右各供述の真実性を疑うに足りるような資料は存在しないのであるから、原審が若し右各警察官自身の以上のごとき供述を以て、措信するに足らないものとしたのであるならば、それは原審のいわれなき独断であつて、経験則に反する判断といわなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和26年8月1日 昭和25(れ)622
- 登載
- 刑集 第5巻9号1684頁
- 参照法条
- 刑法186条,旧刑訴法336条,旧刑訴法326条,旧刑訴法409条,旧刑訴法337条,旧刑訴法411条,憲法38条1項,憲法38条2項,刑訴応急措置法10条1項,刑訴応急措置法10条2項
論点220第326条刑事訴訟法
証拠調の請求が却下された検察事務官に対する被告人の供述調書を読聞けてした質問の適法な一事例
裁判要旨第一審第一回公判において、出席の検察官より被告人の検察事務官に対する第一、二回供述調書の証拠調べ請求があつたのに対し、被告人側がこれを証拠とすることに同意せず、その証拠調べについて異議を申立てた結果、裁判所より右証拠調べの請求が却下せられたにもかかわらず、次の第二回公判において検察官が右供述調書の一部を被告人に読聞かしていることは所論の通りである。しかし、第一審第二回公判調書によると、検察官の被告人に対する質問の途中に「A小学校でどの様な話をしたのか」との質問に対し、被告人は「前に検察庁で調べられた時に述べた通りであります」と答えた旨の記載があつて、検察官も、そこで初めて前記供述調書の該当部分を被告人に読聞かせるようになつたこと及び右と同様の方法によるその後の検察官の質問に対しても、被告人は引続き、一々、任意の答弁をしていることが窺われ、かかる質問の方法に対し被告人側から異議を申立てた形跡も認められない。そして右供述調書は、同公判で検察官より再度証拠調べの請求があつたのであるが、同審第三回公判調書によると、被告人側もついにこれを証拠とすることに同意していることが認められる。以上のような訴訟の経過に照らして考えると、右のような質問も、検察官がいきなり被告人に証拠能力のない供述調書を読聞かして、裁判所に予断を与え、又は被告人に誘導尋問を試みたものと解すべきではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和26年10月12日 昭和26(あ)1804
- 登載
- 刑集 第5巻11号2229頁
- 参照法条
- 刑訴法311条,刑訴法295条,刑訴法326条
論点221第327条刑事訴訟法
一 犯罪供用物件である兇器を公判廷で證據調をしないで強盜殺人罪を認定した場合
二 搜査段階において司法警察官によつて領置された物件と舊刑訴法第三四二條
三 事實認定の資料とした司法警察官の證據物の領置書又は領置目録の證據能力
四 公判期日の前日に選任された辯護人が終始公判に立會いながら期日の延期、續行の申請がない場合と辯護權の不法制限
裁判要旨一 本件のごとく、短刀拳銃、小銃等を使用して人を殺害して、物を強取したという條件において、これら兇器が領置、押収されている場合、裁判所が事實審理をするに當つては、公判廷において被告人に直接これらの證據物を示し、その意見辯解を開き適法な證據調を經た上で犯罪の證據としてこれを判決に舉示することは事實審として、まさにとるべき妥當の措置ではあるけれども、かくのごとき兇器等といえども必らずしも常に、これを公判廷に顯示して證據調をしなければならないというものではない。その他の證據で犯罪事實を認定し得る場合には事情によつて兇器等を證據としないで、本件におけるがごとく間接に、右兇器等に對する捜査官の領置書若しくは領置日録をとつて、犯罪事實認定の資料とすることも法律上許されないことではないのである。
二 犯罪捜査の段階において、司法警察官によつて、領置された物件のごときものは、舊刑訴法第三四二條の、「公判期日前訴訟關係人ヨリ提出シタル證據物」にも、同法第三二六條乃至第三二八條により、裁判所が公判期日前「集取シタル物」にも該當しないのであるから右物件について、原審が公判において證據調をしなかつたことをもつて、同法第四一〇條第一三號に該當する違法ありとすることはできない。
三 論旨は、原判決が、司法警察官作成の證據物の領置書若しくは、領置目録を事實認定の資料としたことをもつて、適法なる證據に基ずかして事實を認定した違法があると主張するのであるが、右のごとき書類といえども、公務員がその職務權限に基いて作成した文書であつて、その記載内容が證據品の領置に關するに過ぎないからといつて當然にその證據能力を否定する何らの根據もなくその文書の記載内容の趣旨に從つて、事實證明の用に供し得ることは勿論である。
四 公判期日の前日に辯護人を選任するかごときは、辯護權を尊重すべき裁判所の措置として、當を得たものでないことは勿論であるといわなければならない、記録を査閲すれば、原審において、被告人Aは、自ら辯護人を選任することができない旨を申出でたため、裁判所は昭和二三年六月一四同人のため辯護士宗政美三を辯護人に選任し、翌一五日公判を開廷し、同辯護士立會の上自實審理、證據調を施行同辯護士の辯論を經て、即日公判手續を終結したことは、所論のとおりである。しかしながら、原審公判調書によれば當日の公判には終始、右辯護人は立會つたのであるが、辯護人から辯論準備のため期日の延期若しくは審理の續行を申出た形跡もなく、その開廷並びに審理の進行について、被告人からも辯護人からも別段の異議もなく、辯護人の辯論を經て結審となつているのである。おもうに本件はその内容かさして複雜というでもなく公判における事件の審理も相當詳密に行われたので、辯護人としては、特に期日の延期續行等を申請するまでもなく、公判審理に立會うことによつて十分に事件の全貌を把握し得て被告人の辯護に欠くるところのないものと信じ直ちに辯論をして、その日の結審に別段の異議を述べなかつたものと推斷するのが相當である。若し辯護人において辯論準備のためになお時間的余裕が必要と思えば期日の延期續行を申請すべきであつて、裁判所がかかる申請をも容れず従らに結審を急いだという場合ならはまさに不法に辯護權を制限したというべきであるけれども、本件においてかかる形跡のないことは前述のとおりであつて、かくのごとき場合においても、裁判所が職權をもつて辯論を續行しない限り、不法に辯護權を制限した違法あるものとすることは到底首肯し難いところである、以上の次第であるから裁判所が公判期日の前日に辯護人を選任した一事をもつて直ちに原判決に舊刑訴第四一〇條第一一號に該當する違法ありとの論旨は、これを採用することができない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和24年7月13日 昭和23(れ)1488
- 登載
- 刑集 第3巻8号1304頁
- 参照法条
- 旧刑訴法336条,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法327条,旧刑訴法342条,旧刑訴法410条13号,旧刑訴法337条,旧刑訴法334条,旧刑訴法410条11号
論点222第328条刑事訴訟法
刑訴法三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉に関する判例違反の主張が欠前提処理された事例
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和57年11月12日 昭和57(あ)701
- 登載
- 集刑 第229号233頁
- 参照法条
- 刑訴法328条
論点223第328条刑事訴訟法
一 犯行と被告人らとの結びつきに関する原判決の事実認定に不合理な点があるとして刑訴法第四一一条第三号により破棄された事例
二 破棄判決の破棄の理由とされた事実上の判断の拘束力の有無
三 破棄判決の拘束力を有する判断の範囲
四 証人の尋問終了後に作成された同人の検察官調書と刑訴法第三二八条
裁判要旨一 犯行と被告人らとの結びつきに関する原判決の事実認定に不合理なところがあるときは(判文参照)、刑訴法
第四一一条第三号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。〉により原判決を破棄しなければならない。
二 破棄判決の破棄の理由とされた事実上の判断は、拘束力を有する。
三 破棄判決の拘束力は、破棄の直接の理由、すなわち原判決に対する消極的、否定的判断についてのみ生ずるものであり、右判断を裏付ける積極的、肯定的事由についての判断は、なんら拘束力を有するものではない。
四 公判準備期日における証人の尋問終了後に作成された同人の検察官調書を、右証人の証言の証明力を争う証拠として採証しても(原判文参照)、必ずしも刑訴法第三二八条に違反するものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和43年10月25日 昭和41(あ)108
- 登載
- 刑集 第22巻11号961頁
- 参照法条
- 刑訴法411条3号,刑訴法400条,刑訴法328条,裁判所法4条,民訴法407条2項但書,刑訴法414条
論点224第328条刑事訴訟法
証拠の標目中に刑訴三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉による証拠かかかげられていても、その余の挙示の証拠で犯罪事実が認定され得る場合と刑訴四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉
裁判要旨刑訴
三二八条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉にいう証拠は被告人、証人その他の者の供述の証明力を攻撃する資料に止まり、同法
三二一条〈被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り…〉乃至
三二四条〈被告人以外の者の公判準備又は公判期日における供述で被告人の供述をその内容とするものについては、第三百二十二条の規定を準用…〉の規定で証拠能力が認められていないものであつて、犯罪事実を認定するための刑訴
三三五条〈有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。〉の証拠の標目として掲記すべきものではないから、第一審判決が所論Aの供述調書を証拠の標目中にかかげたのは失当たるを免れないこと所論のとおりである。しかしながら本件において所論供述調書を除いてもその余の挙示の証拠で判示事実は優に認定することができるから、かような場合には刑訴
四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉を適用すべき事由となすに足りないこと当裁判所の判例とするところである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和29年7月7日 昭和28(あ)624
- 登載
- 集刑 第97号189頁
- 参照法条
- 刑訴法328条,刑訴法335条,刑訴法411条
論点225第328条刑事訴訟法
刑訴法328条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉により許容される証拠
裁判要旨刑訴法
328条〈第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における…〉により許容される証拠は,信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が,同人の供述書,供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。),同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成18年11月7日 平成17(あ)378
- 登載
- 刑集 第60巻9号561頁
- 参照法条
- 刑訴法328条