民事訴訟法 / テーマ別まとめ

第一審の訴訟手続/判決

判決の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

第一審における判決について、終局判決・中間判決をする要件から、判決の言渡し方式、言渡し後の変更・更正・仮執行の宣言までの条文を整理しています。自由心証主義や損害額の認定基準など、判決の中身を支える基本ルールも含みます。

判決
種類内容要件・期限
終局判決訴訟の全部または一部を判断裁判をするのに熟したとき
中間判決争いの一部を先に判断独立した攻撃防御方法など
変更の判決言渡し後に判決内容を修正言渡しから1週間以内
更正決定計算違い・誤記を訂正申立てまたは職権、いつでも
仮執行の宣言確定前に強制執行を可能に申立てまたは職権
  • 判決言渡しは口頭弁論終結の日から2月以内が原則(事件が複雑な場合等は例外)
  • 被告が争わない場合や公示送達で出頭しない場合は電子判決書によらず言渡しできる
  • 手形・小切手による金銭請求等は職権で無担保の仮執行宣言をしなければならない
  • 請求の一部について裁判が脱漏した場合、その部分だけ第一審裁判所に係属したまま残る
  • 当事者双方または一方が欠席・退廷した場合も要件を満たせば終局判決ができる
  • 変更の判決の期日呼出しに電子呼出状を使う場合の送達みなし時期が定められている
1

判決

判決について、条文は何を定めているか。

第243条終局判決事件が熟したら判決で終わらせる3項判例 3件
  • 訴訟全体が判断できる状態になれば終局判決をする
  • 一部だけ熟していればその部分だけ先に判決できる
  • 併合した訴訟や本訴・反訴の一部にも同じ扱いが準用される
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第244条当事者が欠席・退廷しても判決できる場合がある1項判例 2件
  • 審理の状況などから相当なら欠席のまま終局判決できる
  • 一方だけ欠席・退廷した場合は出頭した相手方の申出が必要
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第245条中間判決争いの途中の論点を先に判断できる1項判例 1件
  • 独立した攻撃防御方法など中間の争いが熟せば中間判決できる
  • 損害の原因と数額に争いがある場合は原因だけ先に判断できる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第246条判決事項申し立てていない事項は判決できない1項判例 6件
  • 裁判所は当事者が求めていない事項を判決の対象にできない
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第247条自由心証主義裁判官が自由な心証で事実を認定する1項判例 18件
  • 口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果をもとに判断する
  • 主張が真実かどうかは裁判官の自由な心証による
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第248条損害額の認定損害額の立証が極めて困難なら相当額を認定できる1項判例 4件
  • 損害の発生自体は認められることが前提となる
  • 性質上立証が極めて困難な場合に限り相当な額を認定できる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第249条直接主義判決は口頭弁論に関わった裁判官がする3項判例 1件
  • 判決はその基礎となる口頭弁論に関与した裁判官が行う
  • 裁判官が交代したら従前の弁論結果を陳述し直す必要がある
  • 単独裁判官交代・合議体の過半数交代時は証人の再尋問申出があれば必ず尋問する
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第250条判決の発効判決は言渡しで効力が生じる1項判例なし
  • 判決の効力発生は言渡しの時点
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第251条言渡期日判決は弁論終結から2月以内に言い渡す2項判例なし
  • 原則、口頭弁論終結の日から2月以内に言渡しをする
  • 事件が複雑であるときなど特別の事情があれば例外になる
  • 当事者が在廷していなくても言渡しはできる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第252条電子判決書判決言渡し時に電子判決書を作成する2項・6号判例なし
  • 主文・事実・理由・弁論終結日・当事者等・裁判所を記録する
  • 事実の記録では請求と主文を支える主張を摘示する
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第253条言渡しの方式言渡しは電子判決書に基づいて行う2項判例 1件
  • 作成した電子判決書に基づき言渡しをする
  • 言渡し後、電子判決書をファイルに記録する
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第254条言渡しの方式の特則争わない場合などは電子判決書なしで言渡し可2項・2号判例 1件
  • 被告が事実を争わず防御方法も出さない場合に使える
  • 公示送達で呼出されても出頭しない場合も使える(準備書面陳述みなし除く)
  • この場合は当事者等・主文・請求・理由の要旨を電子調書に記録させる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第255条電子判決書等の送達電子判決書等は当事者に送達する2項・2号判例 1件
  • 電子判決書または理由の要旨等を記録した電子調書を送達する
  • 送達は内容を証明した書面の送達か、規定の方法による送達で行う
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第256条変更の判決法令違反があれば1週間以内に判決を変更できる3項・2号判例なし
  • 言渡し後1週間以内に限り変更の判決ができる
  • 判決確定後や更に弁論が必要なときはできない
  • 変更の判決は口頭弁論を経ないで行う
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第257条判決の更正決定計算違いなど明白な誤りは更正決定で直せる3項判例 21件
  • 申立てまたは職権でいつでも更正決定ができる
  • 更正決定には即時抗告ができる(適法な控訴があれば不可)
  • 更正申立てを却下した決定にも即時抗告ができる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第258条裁判の脱漏判断漏れがあった部分は裁判所に係属したまま4項判例 11件
  • 請求の一部を裁判し忘れた場合その部分は同じ裁判所に残る
  • 訴訟費用負担の裁判漏れは申立てまたは職権で決定する
  • その決定には即時抗告ができ、適法な控訴があれば効力を失う
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第259条仮執行の宣言確定前でも強制執行できる仮執行宣言6項判例 22件
  • 財産権上の請求は申立てまたは職権で仮執行宣言ができる
  • 手形・小切手の金銭請求等は職権で無担保の宣言が必要
  • 仮執行を免れる担保付き宣言も申立てまたは職権でできる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第260条仮執行の宣言の失効及び原状回復等判決変更で仮執行の効力は変更の範囲で失効3項判例 4件
  • 本案判決を変更する判決の言渡しで変更の限度で失効する
  • 本案判決変更時は被告の申立てで原状回復・損害賠償を命じる
  • 仮執行宣言のみ変更した場合も後の変更判決に同様の規定を適用
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第243条民事訴訟法

準備書面に記載した形成権行使の意思表示がなされた時期

裁判要旨準備書面に記載した形成権行使の意思表示は当該準備書面を相手方に受領せしめた時に行使されたと認めることもできる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年10月20日 昭和41(オ)641
登載
集民 第84号629頁
参照法条
民訴法243条,民法97条
論点2第243条民事訴訟法

口頭弁論終結後に提出された「準備書面」と題する書面と相手方への送達の要否

裁判要旨単に口頭弁論終結後に提出されたにすぎない「準備書面」と題する書面は、民訴第二四三条〈終局判決〉にいわゆる「準備書面」に該当せず、これを相手方に送達する必要はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年1月22日 昭和24(オ)239
登載
民集 第7巻1号65頁
参照法条
民訴法243条1項
論点3第243条民事訴訟法

相手方不在廷の場合における準備書面に記載もなく写の送達もない書証の提出。

裁判要旨被告(控訴人)が数回適法な呼出を受けながら、第一、二審とも口頭弁論に出頭しなかつた場合、第二審裁判所が、準備書面に記載もなくまた写の送達もなかつた原告(被控訴人)提出の書証を採用して控訴人敗訴の判決をしても、控訴人において右書証が提出さるべきことを十分予想し得べかりし場合においては、右第二審裁判所の措置は違法ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年6月17日 昭和25(オ)178
登載
民集 第6巻6号595頁
参照法条
民訴法243条,民訴法245条,民訴法247条
論点4第244条民事訴訟法

適法な控訴の提起があつたとされた事例

裁判要旨控訴期間内に控訴人使者の署名捺印のある第一の控訴状が控訴状の提出を委任する旨の控訴人代表者名義の委任状とともに控訴裁判所に提出され、次いで控訴期間経過後に第一の控訴状と同日付をもつて控訴人代表者の署名捺印のある第二の控訴状が提出されたときは、特段の事情のない限り、控訴期間内に第一審判決に対する適法な控訴の提起があつたものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和57年5月28日 昭和56(オ)757
登載
集民 第136号31頁
参照法条
民訴法244条,民訴法367条,民訴法368条
論点5第244条民事訴訟法

準備書面、書証の表示文言によっては、要証事実の主張があったと見られなかった事例。

裁判要旨準備書面及び書証の表示文言に判示のような記載があっただけでは、当該要証事実の主張があったとは見られない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年6月30日 昭和38(オ)235
登載
集民 第74号353頁
参照法条
民訴法186条,民訴法244条,民訴法258条
論点6第246条民事訴訟法

当事者が土地賃借権そのものを有することの確認を求め,地代額の確認まで求めたとはいえないにもかかわらず,判決の主文で地代額を確認することの適否

裁判要旨当事者が土地賃借権そのものを有することの確認を求め,地代額の
確認まで求めたとはいえないにもかかわらず,地代額の確認をも求
めているものとして主文で地代額を確認した判決には,当事者が申し立てていない事項について判決をした違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成24年1月31日 平成21(受)1766
登載
集民 第239号659頁
参照法条
民訴法134条,民訴法246条,民法601条
論点7第246条民事訴訟法

1 甲乙の共有に属する不動産につき甲乙丙を共有者とする所有権保存登記がされている場合における,甲の丙に対する上記登記のうち丙の持分に関する部分の抹消登記手続請求は,更正登記手続を求める趣旨を含むか
2 甲乙の共有に属する不動産につき甲乙丙を共有者とする所有権保存登記がされている場合に甲が丙に対して上記登記の更正登記手続を求めることができる範囲

裁判要旨1 甲乙の共有に属する不動産につき,甲乙丙を共有者とする所有権保存登記がされている場合における,甲の丙に対する上記登記のうち丙の持分に関する部分の抹消登記手続請求は,上記部分を実体的権利に合致させるための更正登記手続を求める趣旨を含むものと解することができる。
2 甲乙の共有に属する不動産につき,甲乙丙を共有者とする所有権保存登記がされている場合において,甲は,丙に対し,甲の持分についての更正登記手続を求めることができるにとどまり,乙の持分についての更正登記手続までを求めることはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年4月20日 平成21(オ)1408
登載
集民 第234号49頁
参照法条
(1,2につき)不動産登記法66条,不動産登記法67条(1につき)民訴法246条,不動産登記法68条(2につき)民法249条
論点8第246条民事訴訟法

詐害行為取消訴訟の訴訟物である詐害行為取消権は,取消債権者が有する個々の被保全債権に対応して複数発生するか

裁判要旨詐害行為取消訴訟の訴訟物である詐害行為取消権は,取消債権者が有する個々の被保全債権に対応して複数発生するものではない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年10月19日 平成21(受)708
登載
集民 第235号93頁
参照法条
民法424条,民訴法246条
論点9第246条民事訴訟法

一 不動産の共有者が当該不動産を単独で占有する他の共有者に対し不当利得返還請求ないし損害賠償請求をすることの可否
二 請求の一部についての予備的な請求原因となるべき相続取得の主張を原告がしていなくても裁判所は被相続人の死亡等の事実をしんしゃくすべきであるとされた事例

裁判要旨一 不動産の共有者は、当該不動産を単独で占有することができる権原がないのにこれを単独で占有している他の共有者に対し、自己の持分割合に応じて占有部分に係る賃料相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することができる。
二 原告が、夫の父が土地を夫に贈与し夫から右土地を相続取得したと主張して、右土地を占有する被告らに対し地代相当損害金等を請求する訴訟において、裁判所は、当事者の主張に基づいて右父の死亡、夫がその相続人の一人であること等の事実を確定した以上、右死亡により夫が右土地の持分を相続取得したことを原告が主張しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこれらの事実をしんしゃくし、夫の相続による持分の取得及び原告の相続による当該持分の取得を理由に原告の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成12年4月7日 平成9(オ)1876
登載
集民 第198号1頁
参照法条
民法249条,民法703条,民法709条,民訴法246条
論点10第246条民事訴訟法

有期労働契約を締結していた労働者が労働契約上の地位の確認等を求める訴訟において,契約期間の満了により当該契約の終了の効果が発生するか否かを判断せずに請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨有期労働契約を締結していた労働者が解雇の無効を主張して労働契約上の地位の確認及び解雇の日以降の賃金の支払を求める訴訟において,当該解雇が無効であると判断するのみで,当該契約の契約期間が満了した事実をしんしゃくせず,当該契約期間の満了により当該契約の終了の効果が発生するか否かを判断することなく,当該契約期間の満了後である原審口頭弁論終結時における労働者の労働契約上の地位の確認請求及び当該契約期間の満了後の賃金の支払請求を認容した原審の判断には,判断遺脱の違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和元年11月7日 平成30(受)755
登載
集民 第262号151頁
参照法条
民訴法246条,労働契約法17条1項
論点11第246条民事訴訟法

1 弁護士を受託者とし、預り金を信託財産に属すべきものと定めた信託契約に関し、信託の目的についての合意が成立したことの主張があるとはいえないとされた事例
2 預金債権の債権者が信託法23条5項の規定による異議に係る訴えを提起した場合において、上記預金債権が信託財産に属する財産であるか否かを判断する基準時

裁判要旨1 預金債権の差押えを受けた弁護士が、上記預金債権は、自らを受託者とする信託契約によって信託財産に属すべきものと定められた依頼者からの預り金を原資とするもので、信託財産に属する財産であると主張し、差押債権者に対し、信託法23条5項の規定による異議に係る訴えを提起した場合に、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、上記弁護士がその成立をいう上記信託契約に関し、信託の目的についての合意が成立したことの主張があるとはいえない。
⑴ 上記差押債権者は、上記信託契約の成立を争い、信託の目的をはじめとする上記信託契約の具体的内容を上記弁護士において明らかにすることを求めている。
⑵ 上記弁護士は、依頼者からの預り金が信託財産に属する財産となることは当然であることなどからすると、上記信託契約の具体的内容を明らかにする必要はないとして、自己が依頼者から預り金を預かり保管した目的に関し、具体的な主張を明示的にしていない。
⑶ 上記弁護士は、上記預り金に関する帳簿や上記預金債権に係る口座の通帳の一部を証拠として提出しているものの、上記帳簿等をみても上記預り金を預かり保管した目的を把握することができない。
2 受託者の固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務に係る債権を請求債権として、信託財産に属する預金債権に対する差押えがされたのに対し、上記預金債権の債権者が、上記預金債権が信託財産に属する財産であって自らが受託者であると主張し、信託法23条5項の規定による異議に係る訴えを提起した場合において、上記預金債権が信託財産に属する財産であるか否かは、事実審の口頭弁論終結時を基準として判断される。
(1、2につき補足意見、1につき意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和8年1月20日 令和5(受)2245
登載
民集 第80巻1号1頁
参照法条
(1、2につき)信託法23条1項、5項、民事執行法38条 (1につき)民訴法246条、信託法3条1号、信託法16条1号 (2につき)民訴法253条1項4号
論点12第247条民事訴訟法

請負人の製造した目的物が,注文者から別会社を介してユーザーとリース契約を締結したリース会社に転売されることを予定して請負契約が締結され,目的物がユーザーに引き渡された場合において,注文書に「ユーザーがリース会社と契約完了し入金後払い」等の記載があったとしても,上記請負契約は上記リース契約の締結を停止条件とするものとはいえず,上記リース契約が締結されないことになった時点で請負代金の支払期限が到来するとされた事例

裁判要旨請負人の製造した目的物が,注文者から別会社を介してユーザーとリース契約を締結したリース会社に転売されることを予定して請負契約が締結され,目的物がユーザーに引き渡された場合において,注文者が請負人に交付した注文書に「支払いについて,ユーザーがリース会社と契約完了し入金後払いといたします。手形は,リース会社からの廻し手形とします。」との記載があったとしても,次の(1),(2)など判示の事実関係の下においては,上記請負契約は,上記リース契約が締結されることを停止条件とするものとはいえず,上記リース契約が締結されないことになった時点で,請負代金の支払期限が到来する。
(1)上記リース契約は,上記ユーザーに目的物の代金支払につき金融の便宜を付与することを目的とするものであった。
(2) 上記請負人が,請負代金の支払確保のため,あえて信用のある会社を取引に介在させることを求めた結果,上記注文者との間で上記請負契約が締結された。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年7月20日 平成21(受)309
登載
集民 第234号323頁
参照法条
民法127条1項,民法135条1項,民法632条,民訴法247条
論点13第247条民事訴訟法

賃貸人から賃借人に対して借地借家法38条2項所定の書面の交付があったとした原審の認定に経験則又は採証法則に反する違法があるとされた事例

裁判要旨賃貸人が定期建物賃貸借契約の締結に先立ち説明書面の交付があったことにつき主張立証をしていないに等しいにもかかわらず,賃貸借契約に係る公正証書に説明書面の交付があったことを相互に確認する旨の条項があり,賃借人において上記公正証書の内容を承認していることのみから,借地借家法38条2項において賃貸借契約の締結に先立ち契約書とは別に交付するものとされている説明書面の交付があったとした原審の認定には,経験則又は採証法則に反する違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成22年7月16日 平成21(受)120
登載
集民 第234号307頁
参照法条
借地借家法38条,民訴法247条
論点14第247条民事訴訟法

痴漢の虚偽申告を理由とするXのYに対する損害賠償請求訴訟において,目撃者が見付からない場合に,これに準ずる立場にある者の証人尋問を実施せず,Yの供述の信用性を肯定して,Xが痴漢行為をしたと認めた原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨電車内でXから痴漢行為を受けた旨のYの警察官に対する申告が虚偽であることを理由としてXがYに損害賠償を求める訴訟において,目撃者が見付からない場合に,(1)痴漢行為があったとYが主張する時点の前後にかけてYと電話をしていたAが電話を通して聞いたXとYの発言についてのAの検察官に対する供述内容が,Yの供述と整合しない一方で,Xの供述と合致すること,(2)Aは目撃証人に準ずる立場にある唯一の人物ということができることなど判示の事情の下においては,Aの証人尋問を実施することなく,Yの供述の信用性を肯定し,Xの供述の信用性を否定して,Xが痴漢行為をしたと認めた原審の判断には,違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年11月7日 平成19(受)1878
登載
集民 第229号151頁
参照法条
民法709条,民訴法181条,民訴法247条
論点15第247条民事訴訟法

精神科病院に入院中の患者が消化管出血による吐血等の際に吐物を誤嚥して窒息死した場合において担当医に転送義務違反等の過失があるとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨精神科病院に入院中の患者が消化管出血による吐血,嘔吐の際に吐物を誤嚥して窒息死した場合において,当該患者が,上記吐血,嘔吐の約1時間20分前の時点で,発熱,脈微弱,酸素飽和度の低下,唇色不良といった呼吸不全の症状を呈していたとしても,(1)上記の時点で,当該患者に頻脈及び急激な血圧低下は見られず,酸素吸入等が行われた後は当該患者に口唇及び爪のチアノーゼや四肢冷感はなく,体動も見られたこと,(2)上記の時点で,当該患者に循環血液量減少性ショックの原因になるような多量の消化管出血を疑わせる症状があったとはうかがわれないこと,(3)病理解剖の結果に照らせば当該患者が感染性ショックに陥っていたとも考え難いことなど判示の事実関係の下では,当該患者の意識レベルを含む全身状態等について確定することなく,上記の時点で当該患者がショックに陥り自ら気道を確保することができない状態にあったとして,このことを前提に,担当医に転送義務又は気道確保義務に違反した過失があるとした原審の判断には,経験則に反する違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成19年4月3日 平成18(受)1547
登載
集民 第224号35頁
参照法条
民法415条,民訴法247条
論点16第247条民事訴訟法

1 「衝突,接触…その他偶然な事故」及び「被保険自動車の盗難」を保険事故として規定している一般自動車総合保険約款に基づき上記盗難に当たる保険事故が発生したとして車両保険金の支払を請求する場合における事故の偶発性についての主張立証責任
2 被保険自動車の盗難を理由に車両保険金を請求する者が主張立証責任を負う盗難の外形的事実について単に「外形的・客観的にみて第三者による持ち去りとみて矛盾のない状況」を立証するだけで盗難の事実が推定されるとした原審の判断には違法があるとされた事例

裁判要旨1 「衝突,接触…その他偶然な事故」及び「被保険自動車の盗難」を保険事故として規定している一般自動車総合保険約款に基づき,上記盗難に当たる保険事故が発生したとして保険者に対して車両保険金の支払を請求する者は,「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という盗難の外形的な事実を主張,立証すべき責任を負うが,被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思に基づかないものであることを主張,立証すべき責任を負わない。
2 「被保険自動車の盗難」という保険事故が発生したとして一般自動車総合保険約款に基づき車両保険金の支払を請求する者が,「外形的・客観的にみて第三者による持ち去りとみて矛盾のない状況」を立証するだけでは「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という盗難の外形的事実を合理的な疑いを超える程度にまで立証したことにはならないにもかかわらず,上記の立証をするだけで盗難の事実が推定されるとした原審の判断には,主張立証責任の分配に実質的に反する違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成19年4月23日 平成17(受)1841
登載
集民 第224号171頁
参照法条
(1,2につき) 商法629条,商法641条,民法91条,民訴法第2編第4章第1節 総則 (2につき) 民訴法247条
論点17第247条民事訴訟法

団体定期保険(いわゆるAグループ保険)に基づいて被保険者である従業員の死亡により保険金を受領した会社が生命保険会社との間の合意をもって社内規定に基づく給付額を超えて上記保険金の一部を死亡従業員の遺族に支払うことを約したと認めるべきであるとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨Y社が,複数の生命保険会社との間で,保険金受取人をY,被保険者をYの従業員全員とし,死亡保険金の合計額が従業員1人につき6000万円を超える団体定期保険(いわゆるAグループ保険)契約を締結し,従業員の死亡により保険金を受領する一方,当該従業員の遺族Xに対しては,社内規定に基づく給付額である1000万円程度の死亡時給付金を支払ったにとどまる場合において,1 他人の生命の保険については被保険者の同意を求めることでその適正な運用を図るべく保険金額に見合う被保険利益の裏付けを要求する規制を採用していない立法の下では,直ちに上記契約が公序良俗に違反するとはいえないこと,2 Yは,団体定期保険の主たる目的が受領保険金を従業員に対する福利厚生制度に基づく給付に充てることにあることは認識していたものの,死亡従業員の遺族に支払うべき死亡時給付金が社内規定に基づく給付額の範囲内にとどまることは当然と考え,そのような取扱いに終始していたのであり,社内規定に基づく給付額を超えて受領した保険金の全部又は一部を遺族に支払うことを黙示的にも合意したと認める余地はないことなど判示の事情の下では,上記のような団体定期保険の運用が公序良俗に違反することを前提として,これを免れるためには,Yは,生命保険会社との間の第三者のためにする契約をもって,社内規定に基づく給付額を超えて死亡時給付金として社会的に相当な金額(3000万円)に満つるまでの額をXに支払うことを約したと認めるべきであるとした原審の判断には,違法がある。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年4月11日 平成14(受)1358
登載
民集 第60巻4号1387頁
参照法条
商法674条1項,民法90条,民法537条,民訴法247条
論点18第247条民事訴訟法

入院患者がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染した後に死亡した場合につき担当医師が早期に抗生剤バンコマイシンを投与しなかったことに過失があるとはいえないとした原審の判断に経験則又は採証法則に反する違法があるとされた事例

裁判要旨入院患者がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染した後に死亡した場合につき,鑑定書には,担当医師が早期に抗生剤バンコマイシンを投与しなかったことは当時の医療水準にかなうものではないという趣旨の指摘をするものと理解できる記載があることがうかがわれ,医師の意見書は,担当医師が早期に上記抗生剤を投与しなかったことについて当時の医療水準にかなうものであるという趣旨を指摘するものであるか否かが明らかではないなど判示の事情の下において,上記の鑑定書や意見書に基づいて,担当医師が早期に上記抗生剤を投与しなかったことに過失があるとはいえないとした原審の判断には,経験則又は採証法則に反する違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年1月27日 平成15(受)1739
登載
集民 第219号361頁
参照法条
民法415条,民法709条,民訴法247条
論点19第247条民事訴訟法

ポリープ摘出手術を受けた患者が術後に出血性ショックにより死亡した場合につき担当医が追加輸血等を行わなかったことに過失があるとはいえないとした原審の判断に採証法則に反する違法があるとされた事例

裁判要旨上行結腸ポリープの摘出手術を受けた患者が,術後9日目に急性胃潰瘍に起因する出血性ショックにより死亡した場合において,患者の相当多量な血便や下血,ヘモグロビン値やヘマトクリット値の急激な下降,頻脈の出現,ショック指数の動向等からすれば,患者の循環血液量に顕著な不足を来す状態が継続し,輸血を追加する必要性があったことがうかがわれ,第1審で提出された医師Aの意見書中の担当医には追加輸血をするなどして当該患者のショック状態による重篤化を防止すべき義務違反があるとする意見が相当の合理性を有することを否定できず,むしろ,原審で提出された医師Bの意見書の追加輸血の必要性を否定する意見の方に疑問があると思われるにもかかわらず,両意見書の各内容を十分に比較検討する手続を執ることなく,医師Bの意見書が提出された原審の第1回口頭弁論期日において口頭弁論を終結した上,医師Bの意見書を主たる根拠として,担当医が追加輸血等を行わなかったことにつき過失を否定し,医師Aの意見書等に基づき担当医の過失を肯定した第1審判決の請求認容部分を取り消した原審の判断には,採証法則に反する違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年11月14日 平成16(受)2226
登載
集民 第222号167頁
参照法条
民法709条,民訴法247条
論点20第247条民事訴訟法

1 国税の納税者から申告の委任を受けた者が偽りその他不正の行為を行い納税者が税額の全部又は一部を免れた場合における国税通則法70条5項の適用の有無
2 税理士に所得税の申告を委任した納税者が脱税を意図しその意図に基づいて行動したとは認められないとした認定に経験則違反の違法があるとされた事例

裁判要旨1 国税通則法70条5項は,国税の納税者から申告の委任を受けた者が偽りその他不正の行為を行い,これにより納税者が税額の全部又は一部を免れた場合にも適用される。
2 納税者が,土地の譲渡所得を得た年分の所得税の申告を委任した税理士から,委任に先立ち,実際に出費していない土地の買手の紹介料等が経費として記載されたメモを示され,多額の税額を減少させて得をすることができる旨の説明を受けた上で,同税理士に上記の申告を委任したものであり,同税理士が架空経費の計上などの違法な手段により税額を減少させようと企図していることを了知していたとみることができるなど判示の事情の下においては,税理士に申告を委任する者は法律に違反しない方法と範囲で必要最小限の税負担となるように節税することを期待して委任するのが一般的であることなどを理由として,上記納税者が脱税を意図し,その意図に基づいて行動したとは認められないとした原審の認定には,経験則に違反する違法がある。
(2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成17年1月17日 平成14(行ヒ)103
登載
民集 第59巻1号28頁
参照法条
国税通則法68条1項,国税通則法70条5項,民訴法247条,税理士法1条
論点21第247条民事訴訟法

遺言公正証書の原本に公証人の署名押印がなかったとした原審の認定判断に経験則違反又は採証法則違反の違法があるとされた事例

裁判要旨現時点においては公証人の署名押印がある遺言公正証書原本について,当該原本を利用して作成された謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等の内容に食違いがあることなどを理由として,上記謄本作成の時点において公証人の署名押印がなかったとした原審の認定判断には,上記謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等は,その細部に食違いがあるものの主要な部分で一致していること,原本の各葉上部欄外には公証人の印による契印がされているのに公証人の署名欄に署名押印がされていないとするのは不自然であること,公証人が原本作成と同じ日に作成して遺言者に交付した正本及び謄本には公証人の署名押印がされていることなど判示の事情の下では,特段の事情の存しない限り,経験則違反又は採証法則違反の違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成16年2月26日 平成13(受)398
登載
集民 第213号581頁
参照法条
民法969条5号,民訴法247条,公証人法39条
論点22第247条民事訴訟法

関連新聞社から記事の提供を受けてこれとほぼ同一内容の記事を掲載した新聞社に対する名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟において被害者が同記事の掲載を認識したとする認定に経験則違反の違法があるとされた事例

裁判要旨関連新聞社甲から記事の提供を受けてこれとほぼ同一内容の記事を掲載した新聞社乙に対する名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟において,甲と乙の各掲載記事の紙面構成や見出しが一見して明らかに異なっており,乙の掲載記事には甲の掲載記事にはない記述が書き加えられており,甲が発行する新聞に掲載された記事でも乙が発行する新聞に掲載されない場合があるという判示の事情の下においては,被害者Aが乙の掲載記事に接する機会があった,又はAが他者から甲の掲載記事と同じ記事が乙の発行する新聞にも掲載されたことを知らされた等の具体的事実の立証がないのに,Aが,甲が乙に提供した記事を東京で発行する新聞に掲載したこと及び乙が九州地方で甲と同一名称の新聞を発行していることを知った時に,乙の発行する新聞に上記記事が掲載されたことを認識したとする原審の認定には,経験則違反の違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成14年1月29日 平成10(オ)780
登載
集民 第205号309頁
参照法条
民法724条,民訴法247条
論点23第247条民事訴訟法

1 不法行為に基づく損害賠償請求訴訟につき民訴法の不法行為地の裁判籍の規定に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するために証明すべき事項
2 ある管轄原因により我が国の裁判所の国際裁判管轄が肯定される請求の当事者間における他の請求につき民訴法の併合請求の裁判籍の規定に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するための要件

裁判要旨1 我が国に住所等を有しない被告に対し提起された不法行為に基づく損害賠償請求訴訟につき,民訴法の不法行為地の裁判籍の規定に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するためには,原則として,被告が我が国においてした行為により原告の法益について損害が生じたとの客観的事実関係が証明されれば足りる。
2 ある管轄原因により我が国の裁判所の国際裁判管轄が肯定される請求の当事者間における他の請求につき,民訴法の併合請求の裁判籍の規定に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するためには,両請求間に密接な関係が認められることを要する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成13年6月8日 平成12(オ)929
登載
民集 第55巻4号727頁
参照法条
民法709条,民訴法5条9号,民訴法7条本文,民訴法136条,民訴法247条,民訴法第1編第2章裁判所
論点24第247条民事訴訟法

殺人事件の被害者の両親が加害者とされる少年らの親権者に対して提起した損害賠償請求訴訟において捜査機関等に対する自白に依拠して少年らを殺人等の犯人であるとした認定に経験則違反の違法があるとされた事例

裁判要旨殺人事件の被害者の両親が加害者とされる少年らの親権者に対して提起した損害賠償請求訴訟において、殺人行為等に関する少年らの捜査機関等に対する自白が極めて詳細かつ具体的であり、その内容が各少年とも大筋において一致し、互いに補強し補完し合うものであっても、右自白には、いわゆる秘密の暴露がなく、一部に捜査官の誤導による可能性の高い明らかな虚偽の部分が含まれ、犯行事実の中核的な部分について変遷が見られる上、自白を裏付ける客観的証拠がほとんど見られず、自白が真実を述べたものであればあってしかるべき証拠が発見されていないなど判示の事情の下においては、自白の信用性について慎重に検討することなく、右自白に依拠して少年らが殺人等の犯人であるとした原審の認定には、経験則違反の違法がある。
(意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成12年2月7日 平成7(オ)793
登載
民集 第54巻2号255頁
参照法条
民法709条,民訴法247条,刑訴法317条
論点25第247条民事訴訟法

顔面けいれんの根治術である脳神経減圧手術を受けた後間もなく患者が脳内血腫を生じその結果死亡した場合につき脳内血腫の原因が右手術にあることを否定した原審の認定判断に違法があるとされた事例

裁判要旨顔面けいれんの根治術である脳神経減圧手術を受けた後間もなく手術部位である小脳橋角部の近傍部等に血腫を生じ、その結果患者が死亡した場合において、術前検査である高血圧症とは認められず手術適応があるとされている上、高血圧性脳内出血が小脳内に発生する確率は低く、他方、手術内容が小脳右半球を開排し小脳橋角部において顔面神経と脳動脈の接触部分をはく離するという小脳内出血を引き起こす可能性を有するものであり、かつ、手術記録及び診療録に本件手術の施行とその後の患者の脳内血腫の発生との関連性を疑わせる記載があるなど判示の事実関係の下においては、その体裁等から客観的資料を精査した上でされたものか疑問のある鑑定結果等に依拠して血腫の原因が本件手術にあることを否定した原審の認定判断には、経験則ないし採証法則違背の違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成11年3月23日 平成8(オ)609
登載
集民 第192号165頁
参照法条
民法709条,民訴法247条
論点26第247条民事訴訟法

内縁の夫婦による共有不動産の共同使用と一方の死亡後に他方が右不動産を単独で使用する旨の合意の推認

裁判要旨内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成10年2月26日 平成6(オ)1900
登載
民集 第52巻1号255頁
参照法条
民法249条,民法703条,民法第4編第2章第1節婚姻の成立,民訴法247条
論点27第247条民事訴訟法

原告らの採る立証手法により特定の建材メーカーの製造販売した石綿含有建材が特定の建設作業従事者の作業する建設現場に相当回数にわたり到達していたとの事実が立証され得ることを一律に否定した原審の判断に経験則又は採証法則に反する違法があるとされた事例

裁判要旨次の⑴から⑸までの手順による立証手法により,特定の建材メーカーの製造販売した石綿含有建材が特定の建設作業従事者の作業する建設現場に相当回数にわたり到達していたとの事実が立証され得ることを一律に否定した原審の判断には,経験則又は採証法則に反する違法がある。
⑴ 国土交通省及び経済産業省により公表されているデータベースに掲載されるなどした石綿含有建材を複数の種別に分類し,そのうち,建設作業従事者らの職種ごとに,直接取り扱う頻度が高く,取り扱う時間も長く,取り扱う際に多量の石綿粉じんにばく露するといえる種別を選定する。
⑵ 上記のとおり選定された種別に属する石綿含有建材のうち,上記建設作業従事者らが建設作業に従事していた地域での販売量が僅かであるもの等を除外し,さらに,上記建設作業従事者ごとに,建設作業に従事した期間とその建材の製造期間との重なりが1年未満である可能性のあるもの等を除外する。
⑶ 上記⑴及び⑵により上記建設作業従事者ごとに特定した石綿含有建材のうち,同種の建材の中での市場占有率がおおむね10%以上であるものは,その市場占有率を用いた確率計算を考慮して,上記建設作業従事者の作業する建設現場に到達した蓋然性が高いものとする。
⑷ 上記建設作業従事者がその取り扱った石綿含有建材の名称,製造者等につき具体的な記憶に基づいて供述等をする場合には,その供述等により上記建設作業従事者の作業する建設現場に到達した石綿含有建材を特定することを検討する。
⑸ 建材メーカーらから,自社の石綿含有建材につき販売量が少なかったこと等が具体的な根拠に基づいて指摘された場合には,その建材を上記⑴から⑷までにより特定したものから除外することを検討する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和3年5月17日 平成31(受)596
登載
民集 第75巻6号2303頁
参照法条
民法719条1項後段,民訴法247条
論点28第247条民事訴訟法

公認会計士協会から上場会社監査事務所名簿への登録を認めない旨の決定を受けた公認会計士らにつき,その実施した監査手続が当該監査において識別すべきリスクに個別に対応したものであったか否か等の点を十分に検討することなく当該決定の前提となる監査の基準不適合の事実はないとして当該決定の開示の差止めを認めた原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨公認会計士協会の設置する品質管理委員会から上場会社監査事務所名簿への登録を認めない旨の決定を受けた公認会計士らが上記決定の開示の差止めを求めた場合において,次の⑴~⑶など判示の事情の下では,上記公認会計士らが実施した監査手続が,現金元帳と通帳及び領収書等との突合を監査対象期間の一部に限定して実施したこと等において,現金等に関する特別な検討を必要とするリスクに個別に対応したものであり,高いリスクの下で十分かつ適切な監査証拠を入手するに足りるものであったといえるか否かの点を検討することなく,上記公認会計士らにつき「品質管理の基準が求める個々の監査業務における品質管理の手続を実施していない事実」に該当する事実はないから上記決定はその前提となる事実を欠くものであるとして上記差止めを認めた原審の判断には,違法がある。
⑴ 上記公認会計士らと監査契約を締結した会社は,上記公認会計士らによる監査の以前から,連続して営業損失を計上し,営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなるなどしていた。
⑵ 上記会社においては,1億円程度に上る多額の現金を保有することが常態化していた。
⑶ 上記会社が上記公認会計士らに対して上記現金の所在を明らかにしなかったため,上記公認会計士らは監査対象事業年度末に予定していた現金の実在性の確認を行うことができなかった。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和2年11月27日 令和1(受)1900
登載
集民 第264号393頁
参照法条
民訴法247条
論点29第248条民事訴訟法

訳文の添付のない外国語で書かれた文書を採証の用に供しても違法でないとされた事例

裁判要旨訳文の添付がなくても、外国語で書かれた文書の意味内容・立証趣旨が口頭弁論および証拠調の結果を通じて明らかにされ、当事者においてもこれを了知していること明らかな場合においては、右文書を採証の用に供しても、判決を違法ならしめるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年3月11日 昭和39(オ)1426
登載
集民 第82号717頁
参照法条
民訴法248条
論点30第248条民事訴訟法

金融商品取引法19条2項の賠償の責めに任じない損害の額と民訴法248条の類推適用

裁判要旨金融商品取引法18条1項に基づく損害賠償請求訴訟において,請求権者の受けた損害につき,有価証券届出書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり,又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けていたことによって生ずべき当該有価証券の値下がり以外の事情により生じたことが認められる場合に,当該事情により生じた損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは,裁判所は,民訴法248条の類推適用により,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき,金融商品取引法19条2項の賠償の責めに任じない損害の額として相当な額を認定することができる。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成30年10月11日 平成29(受)1496
登載
民集 第72巻5号477頁
参照法条
金融商品取引法18条1項,金融商品取引法19条,民訴法248条
論点31第248条民事訴訟法

採石権侵害の不法行為を理由とする損害賠償請求事件において,損害の発生を前提としながら,民訴法248条の適用について考慮することなく,損害額を算定することができないとして請求を棄却した原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨採石権侵害の不法行為を理由とするXのYに対する損害賠償請求事件において,Xが採石権を有する土地でYが採石したとの事実が認定されており,これによればXに損害が発生したことは明らかである以上,上記採石行為の後,Yが当該土地につき採石権を取得して適法に採石したため,Yの違法な行為による採石量と適法な行為による採石量とを明確に区別することができず,損害額の立証が極めて困難であったとしても,民訴法248条により,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて相当な損害額が認定されなければならず,損害額を算定することができないとしてXの請求を棄却した原審の判断には,違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年6月10日 平成18(受)265
登載
集民 第228号181頁
参照法条
民訴法248条,民法709条
論点32第248条民事訴訟法

1 特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかったことによる損害の額
2 特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかったことを理由とする国家賠償請求事件において損害の発生を認めるべきであって損害額の立証が困難であったとしても民訴法248条により相当な損害額が認定されなければならないとされた事例

裁判要旨1 特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかった場合,これによる損害の額は,特段の事情のない限り,その被担保債権が履行遅滞に陥ったころ,当該質権を実行することによって回収することができたはずの債権額である。
2 特許権者戊に対して融資をしたXが,戊から特許権を目的とする質権の設定を受け,特許庁長官にその設定登録を申請し,これが受け付けられたにもかかわらず,この受付に後れて申請及び受付がされた己に対する特許権移転登録が先にされたため,上記質権を取得することができなかった場合において,上記特許権が最終的にはその事業化に成功せず消滅するに至ったとしても,(1)戊が,特許出願中の上記特許権を構成する技術の一部を用いた工法を発表したところ,多数の新聞に取り上げられ,多数の企業等から同工法についての照会や資料請求があったこと,(2)戊から上記特許権の譲渡を受けた己が,庚に対し,上記特許権等を代金4億円で譲渡したこと,(3)庚は,戊らと共に上記特許権の事業化に取り組み,その商品の販売営業に努力したこと,(4)戊は,銀行取引停止処分を受け,上記質権の被担保債務についての期限の利益を喪失したが,それは上記販売営業中のことであったこと,(5)庚は,最終的に,上記特許権の事業化は採算が合わないものと判断してこれを断念し,上記特許権の第5年分の特許料の支払をしなかったため,上記特許権が消滅したが,それは戊が銀行取引停止処分を受けてから約2年半後のことであったことなど判示の事実関係の下では,Xには上記質権を取得することができなかったことにより損害が発生したというべきであり,これを理由とする国家賠償請求事件につき,損害額の立証が極めて困難であったとしても,民訴法248条により,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて,相当な損害額が認定されなければならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年1月24日 平成17(受)541
登載
集民 第219号329頁
参照法条
(1,2につき)国家賠償法1条1項,民法362条,民法369条,特許法27条1項3号,特許法95条,特許法98条1項3号 (2につき)民訴法248条
論点33第249条民事訴訟法

事件が一人の裁判官により審理された後、判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が民訴法254条1項により判決書の原本に基づかないで第1審判決を言い渡した場合において、全部勝訴した原告が控訴をすることの許否

裁判要旨第1審において、事件が一人の裁判官により審理された後、判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が民訴法254条1項により判決書の原本に基づかないで第1審判決を言い渡した場合、全部勝訴した原告であっても、第1審判決に対して控訴をすることができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和5年3月24日 令和4(受)324
登載
民集 第77巻3号803頁
参照法条
民訴法249条1項、民訴法254条1項、民訴法281条1項、民訴法338条1項1号
論点34第255条民事訴訟法

訴状または準備手続前に提出された準備書面に記載された事項で準備手続における主張整理の結果撤回されたものを口頭弁論において主張することの許否。

裁判要旨訴状または準備手続前に提出された準備書面に記載された事項であつても、準備手続における主張整理の結果撤回されたものは、民訴第二五五条第三項〈電子判決書等の送達〉の規定にかかわらず、口頭弁論においてこれを主張することは許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年2月12日 昭和32(オ)652
登載
民集 第14巻2号196頁
参照法条
民訴法255条
論点35第257条民事訴訟法

事実認定が証拠に基づかないものとして違法とされた事例

裁判要旨新生児が核黄疸による脳性麻痺に罹患したことにつき、担当医師が新生児に投与したリンコシンがビリルビン転送機能障害の副作用を有するネオマイシン系抗生物質に属し、右投与が黄疸を増強させたとの事実を認定して、医師の過失を肯定している場合において、リンコシンがネオマイシン系抗生物質に属することの証拠がない等判示の事実関係があるときは、右事実の認定は証拠に基づかない違法なものというべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和60年12月13日 昭和59(オ)43
登載
集民 第146号251頁
参照法条
民訴法185条,民訴法257条
論点36第257条民事訴訟法

書証の成立の真正についての自白の裁判所に対する拘束力

裁判要旨書証の成立の真正についての自白は裁判所を拘束しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和55年4月22日 昭和54(オ)337
登載
集民 第129号583頁
参照法条
民訴法257条
論点37第257条民事訴訟法

書証の成立の真正についての自白の裁判所に対する拘束力

裁判要旨書証の成立の真正についての自白は裁判所を拘束しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和52年4月15日 昭和51(オ)1174
登載
民集 第31巻3号頁
参照法条
民訴法257条
論点38第257条民事訴訟法

自白の成立が認められないとされた事例

裁判要旨(省略)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年9月27日 昭和48(オ)182
登載
集民 第112号741頁
参照法条
民訴法257条
論点39第257条民事訴訟法

間接事実についての自白の拘束力

裁判要旨いわゆる間接事実についての自白は、自白した当事者を拘束しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年9月22日 昭和40(オ)574
登載
民集 第20巻7号1392頁
参照法条
民訴法257条
論点40第257条民事訴訟法

自白の撤回が許されるためには錯誤につき無過失であることが必要か

裁判要旨自白の撤回が許されるためには、真実に反しかつ錯誤に基づくことで足り、右錯誤につき無過失であることを必要とするものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年12月6日 昭和41(オ)756
登載
集民 第85号569頁
参照法条
民訴法257条
論点41第257条民事訴訟法

取得時効の成否の判断にあたり占有開始の起算日の調書の記載により右日時について当事者間に争いがないとした原判決の判断を違法といえないとした事例

裁判要旨取得時効の成否の判断にあたり、占有開始の起算日についてその弁論が、判示のように口頭弁論調書に記載されている以上、右日時をもつて占有を開始した事は当事者間に争いがない旨判示しても、原判決には違法があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年12月20日 昭和40(オ)246
登載
集民 第85号763頁
参照法条
民法162条,民訴法144条,民訴法147条,民訴法257条
論点42第257条民事訴訟法

自白の撤回を許容したものと解されるとした事例

裁判要旨原判決の右認定は、その挙示する証拠関係、事実関係から肯認し得るところであるから、原審は、被上告人社会の右自白が事実に反し、かつ、被上告人会社の錯誤に基づいてなされたものと推定の上、右自白の撤回を許容して右認定をなしたものと解することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年9月7日 昭和38(オ)778
登載
集民 第80号149頁
参照法条
民訴法257条
論点43第257条民事訴訟法

書証の成立の認定と当事者の認否の要否

裁判要旨当事者の認否の陳述がないままに、書証の成立を認定しても、違法ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年12月17日 昭和40(オ)752
登載
集民 第81号621頁
参照法条
民訴法325条,民訴法257条
論点44第257条民事訴訟法

公知の事実ではないとされた事例。

裁判要旨未乾燥の印刷物を断截して製本作業をするとその結果インキの光沢を失い、断截機の押力でインキが印刷物の紙の裏に附着したりインキが飛んだり紙を汚染し出来上りが不良になるという事実を、公知の事実ということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年6月18日 昭和38(オ)691
登載
集民 第74号105頁
参照法条
民訴法257条
論点45第257条民事訴訟法

確定申告にかかる所得金額と所得の推定。

裁判要旨申告納税の所得税にあつては、納税義務者において一旦申告書を提出した以上、その申告書に記載された所得金額が真実の所得金額に反するものであるとの主張・立証がない限り、その確定申告にかかる所得金額をもつて正当のものと認めるのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年2月7日 昭和37(オ)215
登載
集民 第72号91頁
参照法条
所得税法26条,民訴法257条
論点46第257条民事訴訟法

継続的取引関係の終期における残代金の支払請求において、取引の開始日について争いがあるのに当事者間に争いがないと判示された場合は破棄事由となるか。

裁判要旨継続的取引関係の終期における残代金の支払請求においては取引の始期および終期の確定は、右取引関係を特定させる方法にすぎないから、取引の始期について争いがあるのに争いがないものと判示する違法であつても、ただちに判決に影響を及ぼす法令違反があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年2月27日 昭和38(オ)104
登載
集民 第72号329頁
参照法条
民訴法185条,民訴法257条,民訴法394条
論点47第257条民事訴訟法

自白の撤回にあたらないとされた事例。

裁判要旨「一定の日に賃貸借更新拒絶の通知がなされた」旨の相手方の主張を認める旨陳述した後、「別の日に更新拒絶の通知をした」旨陳述しても、後者の陳述が前者の陳述と相俟つて二度にわたり、それぞれ別個の通知をしたという事実関係を表明する趣旨であるときは、前者の陳述が裁判上の自白にあたるとしても、後者の陳述は自白の撤回にはならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年2月11日 昭和38(オ)527
登載
集民 第72号127頁
参照法条
民訴法257条
論点48第257条民事訴訟法

本人尋問において自己に不利益な事実が真実であると供述した場合と裁判上の自白。

裁判要旨裁判上の自白は当事者の訴訟行為としての陳述であることを要し、本人尋問において自己に不利益な事実が真実であると供述しても、右供述は自白とはならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月23日 昭和36(オ)647
登載
集民 第71号193頁
参照法条
民訴法257条
論点49第257条民事訴訟法

自白が錯誤にもとづきなされたとの事実認定が経験則に違反するとされた事例。

裁判要旨原告主張の甲売買を被告が乙売買と混同、錯誤して自白したものと認定した場合において、甲乙間には成立日時において九ケ月、目的土地の面積において二倍、代金において一一倍の開きがあるのみならず買受人も異る事情にあるときには、右錯誤の認定は経験則に照らし肯認しえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年10月20日 昭和38(オ)1208
登載
集民 第75号917頁
参照法条
民訴法257条,民訴法185条
論点50第257条民事訴訟法

自白の撤回につき暗黙の同意があつたものとされた事例。

裁判要旨自白を撤回したことが明らかであるにもかかわらず、弁論終結に至るまで異議を述べた形迹がなんら存しない場合には、右自白の撤回を暗黙裡に同意したものとすべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年4月2日 昭和37(オ)901
登載
集民 第65号411頁
参照法条
民訴法257条
論点51第257条民事訴訟法

自白の拘束力の喪失と他の証拠による証明。

裁判要旨書証の成立について自白があるとした判決は、その自白が撤回され自白の拘束力がないとしても、他の証拠によつても右成立を認めうるとしている以上、判決の結論に影響を及ぼすべき違法をきたさない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年3月15日 昭和37(オ)577
登載
集民 第65号181頁
参照法条
民訴法257条
論点52第257条民事訴訟法

一 原告主張の金額の債務の負担を認める旨の口頭弁論調書の記載からその弁済期の主張についても自白があつたものと解された事例
二 本案の上訴理由がないときの訴訟費用の裁判に対する不服申立

裁判要旨本案の裁判に対する上訴とともに訴訟費用の裁判に対し不服が申し立てられた場合においても、本案の裁判に対する上訴の理由がないときは、訴訟費用の裁判に対する不服の申立は許されない。(昭和二九年一月二八日第一小法廷判決、民集八巻一号三〇八頁参照)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年2月26日 昭和35(オ)8
登載
集民 第64号619頁
参照法条
民訴法257条,民訴法361条,民訴法384条,民訴法396条,民訴法414条
論点53第257条民事訴訟法

一 地代家賃統制令第二三条第二項三号の解釈を誤つた違法があるとされた事例
二 地代家賃統制令の適用を受けなくなつたことを認める旨の陳述の拘束力

裁判要旨地代家賃統制令の適用を受けなくなつたことを認める旨の当事者の陳述によつて、同令の適用の有無を判断するにつき拘束を受けることはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年12月6日 昭和37(オ)1329
登載
集民 第70号105頁
参照法条
地代家賃統制令23条2項3号,民訴法257条
論点54第257条民事訴訟法

証拠によらず事実を認定した違法があるとして破棄した一事例。

裁判要旨原判決記載の証拠によれば債務を免除した事実が認められるのに、債務の免除は認められず連帯の免除が認められると認定したのは、証拠によらずに事実を認定した違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年9月25日 昭和34(オ)1104
登載
集民 第62号587頁
参照法条
民訴法257条,民訴法394条
論点55第257条民事訴訟法

一 特許審判の委任状に印刷記入された抗告審判に関する特別委任の文言は例文か
二 旧特許法第二五条による追完の許否

裁判要旨一 特許の無効審判事件において、当事者が弁理士に対して交付した委任状に当該審判手続のほか抗告審判に関する特別委任をなす旨の文言が印刷記入されている場合に、かかる文言を全然意味のない例文であるとみるべき経験則はなく、またかような慣習の存在が裁判上顕著な事実であるともいえない。
二 期間を遵守することができなかつたことについて、当事者本人にその責に帰することができない事由があつても、同人に代つて当該手続をする権限のある代理人に右の事由がない場合には、旧特許法第二五条によつて懈怠した手続の追完をすることはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年8月14日 昭和36(オ)894
登載
集民 第62号165頁
参照法条
旧特許法17条,旧特許法25条,民訴法257条,民訴法159条
論点56第258条民事訴訟法

鑑定の結果が受訴裁判所の心証形成の資料に供されたのちに鑑定の申出を撤回することの許否

裁判要旨鑑定の結果が受訴裁判所の心証形成の資料に供されたのちは、鑑定の申出を撤回することは許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年5月26日 昭和56(オ)466
登載
集民 第139号1頁
参照法条
民訴法185条,民訴法258条,民訴法301条
論点57第258条民事訴訟法

証すべき事実を表示しないで申し出られた書証の取調が違法でないとされた事例

裁判要旨書証の内容と当事者双方の事実上の主張とに照らし右書証により立証しようとしている事実が明白な場合には、右書証の申出において証すべき事実の表示を欠いているときでも、裁判所が右書証を取り調べて事実認定の資料に供することは違法でない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和56年10月13日 昭和56(オ)526
登載
集民 第134号105頁
参照法条
民訴法258条
論点58第258条民事訴訟法

書証の申出と写の提出

裁判要旨挙証者がみずから所持する文書に関する書証の申出は、証すべき事実を表示して文書を提出してすれば足り、同時にその写を提出することはその有効要件ではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年12月4日 昭和44(オ)971
登載
集民 第97号701頁
参照法条
民訴法258条,民訴法311条,民訴規則39条
論点59第258条民事訴訟法

口頭弁論終結後その再開申立とともになされた答弁書および証拠の申出書の提出と印紙の納付義務

裁判要旨当事者が、口頭弁論終結後その再開申立とともに、それぞれ所定の印紙を貼用した答弁書および証拠の申出書を提出し、それが裁判所の行為を求める申立であると解されるときは、印紙の納付義務がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和44年10月21日 昭和41(オ)681
登載
集民 第97号55頁
参照法条
民訴法138条,民訴法258条,民事訴訟用印紙法6条ノ3第3号,民事訴訟用印紙法10条
論点60第258条民事訴訟法

成立の真正が立証されない書証を判決に摘示しないことは審理不尽の違法をきたすか。

裁判要旨右によつては審理不尽の違法をきたさない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年3月12日 昭和35(オ)781
登載
集民 第65号103頁
参照法条
民訴法258条
論点61第258条民事訴訟法

文書の郵送と書証の提出。

裁判要旨書証申出の目的で文書の原本を裁判所に郵送するだけでは、書証の提出とはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年9月21日 昭和36(オ)71
登載
民集 第16巻9号2052頁
参照法条
民訴法311条,民訴法258条2項,民訴法131条1項2号
論点62第258条民事訴訟法

一 執行行為に基づく弁済の否認と破産法第七二条第一号の適用
二 破産法第七二条第一号による否認権行使における受益者の悪意の立証責任

裁判要旨一 破産者が強制執行を受けるについて害意ある加功をなした場合には、執行行為に基づく破産者の弁済は、破産法第七二条第一号によつて否認されうる。
二 破産法第七二条第一号による否認権行使においては、否認を免れようとする受益者がその行為の当時破産債権者を害することを知らなかつたことの立証責任を負う。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年12月6日 昭和37(オ)422
登載
民集 第16巻12号2313頁
参照法条
破産法75条,破産法72条1号,民訴法258条
論点63第258条民事訴訟法

唯一の証拠方法であつても取り調べることを要しないとされた事例。

裁判要旨証拠申出が採用された後、尋問事項等を記載した書面の提出がないまま約一〇カ月を徒過した場合には、たとえ唯一の証拠方法であつても、これを取り調べることを要しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年11月10日 昭和36(オ)622
登載
民集 第15巻10号2474頁
参照法条
民訴法258条,民訴法259条,民訴規則31条
論点64第258条民事訴訟法

一 証拠方法を放棄したものと認むべき一事例
二 代物弁済の予約が公序良俗に反すると認められる一事例

裁判要旨一 証拠申請につき許否を決定しないで口頭弁論を終結した場合、当事者が異議を述べないときは、その証拠方法を放棄したものと認むべきである。
二 代物弁済の予約につき、後記事由(第二審判決理由参照)があるときは、公序良俗に反し無効である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年11月20日 昭和24(オ)138
登載
民集 第6巻10号1015頁
参照法条
民訴法258条,民法482条,民法90条
論点65第258条民事訴訟法

一 責問権喪失の事例
二 証拠申出の放棄と認められる事例
三 裁判所法第二六条第二項第一号の決定を変更する決定の適否
四 裁判所法第二六条第二項第一号の決定及びその変更決定の方式
五 合議体の審理が単独裁判官の審理に移行した場合と口頭弁論更新の要否
六 労務の提供と賃貸借契約の成否

裁判要旨一 甲証人尋問のため指定された期日に、別に期日外に申請されていた乙証人がたまたま在廷していたために、甲証人尋問に引き続いてその取調をした場合においても、当事者がその尋問について異議を述べなかつたときは、その証拠申請について特に意見を述べる機会が与えられていなくても、乙証人の証言を証拠とすることは差支えない。
二 本人尋問を申し出た当事者が、その尋問未済のまま口頭弁論終結に際して「他に主張立証はない」と述べたときは、その申出を放棄したものと認むべきである。
三 地方裁判所は、合議体で、裁判所法第二六条第二項一号の決定を変更して、一人の裁判官で事件を取り扱わしめる旨の決定をすることができる。
四 裁判所法第二六条第二項第一項の決定及びその変更決定は、口頭弁論調書若しくは合議体の裁判官全員の署名押印又は少くとも押印をもつて、記録上明白にして置くべきである。
五 合議体の審理が単独裁判官の審理に移行した場合において、その合議体の構成員が単独裁判官として引き続き審理をするときは、口頭弁論の更新を要しない。
六 家屋使用の対価としてその家屋の留守管理をする旨の契約は、賃貸借契約とはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月29日 昭和24(オ)63
登載
民集 第5巻5号177頁
参照法条
民訴法141条,民訴法258条,民訴法144条,民訴法207条,民訴法187条2項,裁判所法26条2項1号,民法601条
論点66第259条民事訴訟法

唯一の証拠方法を取り調べることを要しない特段の事情にあたらないとされた事例

裁判要旨口頭弁論終結にあたつて当事者が他に主張立証はない旨述べたことは、唯一の証拠方法を取り調べることを要しない特段の事情にはあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年3月23日 昭和52(オ)591
登載
集民 第123号283頁
参照法条
民訴法259条
論点67第259条民事訴訟法

証拠決定と民訴法四一九条ノ二第一項にいう「不服ヲ申立ツルコトヲ得サル決定及命令」

裁判要旨鑑定申立却下の決定は、民訴法四一九条ノ二第一項にいう「不服ヲ申立ツルコトヲ得サル決定及命令」に当たらないものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年2月15日 昭和48(ク)15
登載
集民 第108号193頁
参照法条
民訴法259条,民訴法419条ノ2
論点68第259条民事訴訟法

唯一の証拠方法である証拠の申出と弁論再開の要否

裁判要旨口頭弁論終結後唯一の証拠方法である証拠の申出と共に弁論再開の申立があつた場合でも、弁論の再開を命ずると否とは、裁判所の専権に属する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年5月21日 昭和45(オ)66
登載
集民 第99号187頁
参照法条
民訴法133条,民訴法259条
論点69第259条民事訴訟法

唯一の証拠方法を取調べなくても違法でないとされた事例

裁判要旨原審が、上告人(被告)の証人申請を採用したうえ、前後四回にわたつて同人に対して呼出状を送付し、その間同人が正当な事由なく出頭しないことを理由として過料三、〇〇〇円に処する旨の決定をもしているにかかわらず、同人が出頭しなかつたため、ついに右採用決定を取り消して審理を終結したものであるときは、かりに右証人が上告人の申し出た唯一の証拠方法であつても、これを取り調べることなく審理を終結した原審の手続には、何らの違法もない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和44年12月5日 昭和44(オ)997
登載
集民 第97号705頁
参照法条
民訴法259条
論点70第259条民事訴訟法

離婚事件における証拠調の限度

裁判要旨上告人申出の証人を採用しなかつたことは、唯一証拠排斥の場合ではなく、且つ、原審が証拠調の必要限度を合理的に裁量した結果と認められる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年11月18日 昭和40(オ)567
登載
集民 第81号85頁
参照法条
民訴法259条,人訴法14条
論点71第259条民事訴訟法

地積の確定は検証の結果によらねばならないか。

裁判要旨地積の確定に争いあるときは検証の結果によって判定しなければならないという経験則はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年6月18日 昭和38(オ)870
登載
集民 第74号115頁
参照法条
民訴法185条,民訴法259条
論点72第259条民事訴訟法

唯一の証拠方法を取り調べなくても違法でないとされた事例。

裁判要旨当事者が証人および当該当事者本人の尋問を申請したが、二度にわたり指定した右証拠調を行うべき口頭弁論期日に右両名とも出頭せず、また、二度目の口頭弁論期日には右当事者の訴訟代理人も出頭せず、その不出頭の理由を釈明したなんらの書面の提出もなかつたときは、右証人および当事者本人の尋問が右当事者主張の抗弁事実立証のための唯一の証拠方法であつても、その取調べをしないで審理を終結することは違法ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年4月3日 昭和38(オ)1238
登載
民集 第18巻4号513頁
参照法条
民訴法259条
論点73第259条民事訴訟法

一 証人の取調べをなくしても審理不尽の違法があるとはいえないとされた事例。
二 民訴規則第四九条に違反するとされた事例。

裁判要旨一 第一回口頭弁論期日において証人尋問が採用されたが、当事者が証拠申請書、証人尋問事項等を記載した書面の提出もせず、約三カ月後の第二回口頭弁論期日に右当事者が何ら理由を届け出ることなく出頭しなかつた場合には、裁判所は右証人を取調べることなく弁論を終結しても、審理不尽の違法があるとはいえない。
二 「その余の理由は控訴理由と同一につき援用する」との論旨は、具体的上告理由の記載がなく、民訴規則第四九条に違反し採るを得ない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年4月10日 昭和37(オ)493
登載
集民 第73号77頁
参照法条
民訴法259条,民訴法395条1項6号,民訴規則49条
論点74第259条民事訴訟法

誰一の証拠方法の申請の却下が適法とされた事例。

裁判要旨唯一の証拠方法であつても、それによつて立証しようとする事実の主張がなされていない以上、これを採用しなくても違法でない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年7月9日 昭和36(オ)463
登載
集民 第67号19頁
参照法条
民訴法259条
論点75第259条民事訴訟法

一 釈明義務がないとされた事例
二 尋問事項書の提出がない証人の取調をしなかつたことが違法でないとされた事例

裁判要旨一 準備書面の第一審口頭弁論期日における陳述がなされなかつたからといつて、控訴審でこれに記載されている主張をするかどうかを確かめる釈明義務はない。
二 (省略)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年6月7日 昭和37(オ)106
登載
集民 第66号479頁
参照法条
民訴法127条,民訴法259条
論点76第259条民事訴訟法

唯一の証拠方法でない場合の証拠調の要否。

裁判要旨当事者の申し出た証拠方法については、唯一の証拠方法の場合を除き、審理の経過からみて必要がないと認めるときは、その取調べを要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年6月6日 昭和37(オ)425
登載
集民 第66号437頁
参照法条
民訴法259条
論点77第259条民事訴訟法

証拠調の申請につき許否を決することなく結審しても違法でないとされた事例

裁判要旨証拠調の申請につきその許否を決することなくして結審したのは、訴訟の指揮およびその経過に徴すれば、その取調の要がないとしてこれを排斥した趣旨と解することを相当とする。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年8月3日 昭和35(オ)419
登載
集民 第62号17頁
参照法条
民訴法259条
論点78第259条民事訴訟法

当事者本人尋問を行うべき期日に右本人が出頭しなかつた場合の弁論終結

裁判要旨その当事者の側からの申請による本人尋問を行うべき期日に、適式の呼出を受けながら何らの理由の届出もなく右本人が出頭しないときは、他にその当事者側の証拠申請がない場合でも、右尋問決定を取り消して弁論を終結しても違法でない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年1月30日 昭和34(オ)214
登載
集民 第58号369頁
参照法条
民訴法259条
論点79第259条民事訴訟法

唯一の証拠方法を却下しても違法でないとされた事例。

裁判要旨反証として当事者本人尋問の申請があつた場合において、当該申請について尋問事項書が提出されず、当該本人が裁判所の指定した尋問期日に出頭せず、かつ、その不出頭についての正当の事由が疎明されなかつたときは、当該本人が唯一の証拠方法であつても、裁判所は、必ずしも、これを尋問することを要しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年11月20日 昭和37(オ)205
登載
集民 第63号277頁
参照法条
民訴法259条
論点80第259条民事訴訟法

相手方申出の証人を取り調べないことと審理不尽の論旨。

裁判要旨相手方申出の証人につき相手方から尋問放棄の申出があつた以上、これを取調べることなく弁論を終結しても審理不尽をいう余地はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年10月9日 昭和35(オ)1127
登載
集民 第62号743頁
参照法条
民訴法259条,民訴法394条
論点81第259条民事訴訟法

一 昭和二七年法律第三〇七号公職選挙法改正法附則第二項の合憲性
二 書損を抹消して候補者氏名を記載した投票の効力
三 唯一の証拠方法と民訴第一三九条〈口頭弁論期日の指定〉の適用

裁判要旨一 昭和二七年法律第三〇七号公職選挙法改正法附則第二項が右改正によつて新たに設けられた第二〇九条の二を現に裁判所に係属している事件に適用すべきものとしたのは憲法第三一条に違反しない。
二 書損を抹消して候補者氏名を記載した投票は無効ではない。
三 唯一の証拠方法であつても時機に後れて提出された場合はこれを却下しても違法でない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年4月27日 昭和28(オ)720
登載
民集 第9巻5号582頁
参照法条
公職選挙法209条の2,公職選挙法68条1項本文5号,昭和27年法律307号(公職選挙法の一部を改正する法律)附則2項,民訴法139条,民訴法259条
論点82第259条民事訴訟法

一 民訴第一八七条第三項〈参考人等の審尋〉後段の趣旨
二 証拠決定をしないで結審しても違法でない場合

裁判要旨一 民訴第一八七条第三項〈参考人等の審尋〉後段の規定は、同一審級において裁判官の過半数が変更するに至つた場合に証人の再尋問の申出があつたときの手続を定めたものであつて、第一審裁判所が尋問した証人につき控訴審において再尋問の申出があつた場合に適用すべきでない。
二 当事者の申し出た証拠が唯一の証拠方法でないときは、申出の許否を決定することなく結審しても違法でない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月25日 昭和24(オ)93
登載
民集 第6巻12号1240頁
参照法条
民訴法187条3項,民訴法259条
論点83第259条民事訴訟法

1 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い金銭を供託する方法により担保を立てさせて強制執行の停止がされた後に債務者につき更生手続開始の決定がされた場合における上記担保の被担保債権の性質
2 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止に当たって金銭を供託する方法により担保が立てられた場合において債務者につき更生計画認可の決定がされた後であっても供託金の還付請求権を行使することの可否

裁判要旨1 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い,金銭を供託する方法により担保を立てさせて強制執行の停止がされた後に,債務者につき更生手続開始の決定がされた場合,その被担保債権である損害賠償請求権は,更生担保権ではなく,更生債権に当たる。
2 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止に当たって金銭を供託する方法により担保が立てられた場合,被供託者は,債務者につき更生計画認可の決定がされても,会社更生法203条2項にいう「更生会社と共に債務を負担する者に対して有する権利」として,供託金の還付請求権を行使することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成25年4月26日 平成24(許)15
登載
民集 第67巻4号1150頁
参照法条
(1,2につき)民訴法76条,民訴法77条,民訴法259条,民訴法403条1項,民訴法405条2項,民事執行法39条1項 (1につき)会社更生法2条8項,会社更生法2条10項 (2につき)会社更生法203条2項,会社更生法204条1項,供託法8条1項
論点84第259条民事訴訟法

第1審判決の仮執行宣言に基づく強制執行によって建物が明け渡されている場合における当該建物の明渡請求と併合されている他の請求の当否等についての控訴審の判断

裁判要旨第1審判決の仮執行宣言に基づく強制執行によって建物が明け渡されている場合には,控訴審は,当該建物の明渡請求と併合されている賃料相当損害金等の支払請求の当否や同請求に対する抗弁において主張されている敷金返還請求権の存否についても,当該明渡しの事実を考慮することなく,判断すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成24年4月6日 平成22(受)754
登載
民集 第66巻6号2535頁
参照法条
民訴法136条,民訴法259条,民訴法260条,民事執行法22条2号
論点85第259条民事訴訟法

仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止のために担保が立てられた場合における債務者に対する破産宣告と担保の事由の消滅

裁判要旨仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止のために担保が立てられた場合において,債務者が破産宣告を受けたことの一事をもって,「担保の事由が消滅したこと」に該当するということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成14年4月26日 平成14(許)1
登載
集民 第206号401頁
参照法条
破産法70条1項,民訴法79条1項,民訴法259条,民訴法398条1項,民訴法400条2項,民事執行法39条1項
論点86第259条民事訴訟法

仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い担保を立てさせて強制執行停止等がされた場合における債務者に対する破産宣告と担保の事由の消滅

裁判要旨仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い担保を立てさせて強制執行の停止又は既にした執行処分の取消しがされた場合において,債務者が破産宣告を受けたことの一事をもって,「担保の事由が消滅したこと」に該当するということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成13年12月13日 平成13(許)21
登載
民集 第55巻7号1546頁
参照法条
破産法70条1項,民訴法79条1項,民訴法259条,民訴法398条1項,民訴法400条2項,民事執行法39条1項,民事執行法40条1項
論点87第260条民事訴訟法

唯一の証拠取調と不定期間の障碍

裁判要旨唯一の証拠方法についても、不定期間の障碍ある場合には、取調をしないことができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年4月27日 昭和36(オ)1175
登載
集民 第60号471頁
参照法条
民訴法260条
論点88第260条民事訴訟法

唯一の証拠方法と民訴第二六〇条〈仮執行の宣言の失効及び原状回復等〉の適用の有無

裁判要旨唯一の証拠方法についても、民訴第二六〇条〈仮執行の宣言の失効及び原状回復等〉の適用を妨げない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年9月9日 昭和28(オ)407
登載
民集 第9巻10号1242頁
参照法条
民訴法260条
論点89第260条民事訴訟法

1 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され,同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合において,過払金が発生している時点で新たな借入れをしたときにおける利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項にいう「元本」の額
2 民訴法260条2項の裁判を求める申立ての相手方が破産手続開始の決定を受けた場合における同申立てに係る請求権の破産債権該当性
3 本案請求と民訴法260条2項の申立てに係る請求とが併合されている場合における本案請求に係る部分についてのみの受継又は続行命令の許否
4 訴訟当事者の一方が破産手続開始の決定を受け,破産債権である当該訴訟に係る請求権につき破産債権としての届出がないのに破産管財人に対して違法にされた続行命令の瑕疵が治癒されるとされた事例

裁判要旨1 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され,同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合において,過払金が発生している時点で新たな借入れをしたときには,利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項にいう「元本」の額は,新たな借入金に上記過払金を充当した後の額をいう。
2 民訴法260条2項の裁判を求める申立ての相手方が破産手続開始の決定を受けた場合における同申立てに係る請求権は,破産債権である。
3 本案請求と民訴法260条2項の裁判を求める申立てに係る請求とが併合されている訴訟手続の全部が中断した場合,同申立てについての適法な受継がされないまま,本案請求に係る部分についてのみ,当事者が受継の申立てをし,又は受訴裁判所が続行命令をすることは許されない。
4 訴訟当事者の一方が破産手続開始の決定を受け,破産債権である当該訴訟に係る請求権につき破産債権としての届出がないのに破産管財人に対して訴訟手続の続行命令が違法にされた瑕疵がある場合であっても,当該破産手続が既に終結し,かつ,破産管財人が当事者として関与した訴訟手続が全部勝訴判決の送達を受けたことなどにとどまるという事実関係の下においては,当該瑕疵は治癒される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成25年7月18日 平成23(受)1948
登載
集民 第244号55頁
参照法条
(1につき)利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項 (2,3につき)民訴法260条2項 (2につき)破産法2条5項 (3,4につき)民訴法129条 (3につき)民訴法124条,民訴法136条 (4につき)破産法100条1項,破産法111条1項,破産法220条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民事訴訟法 第243条(終局判決) 詳細ページ
(終局判決)
第二百四十三条裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときは、終局判決をする。
2裁判所は、訴訟の一部が裁判をするのに熟したときは、その一部について終局判決をすることができる。
3前項の規定は、口頭弁論の併合を命じた数個の訴訟中その一が裁判をするのに熟した場合及び本訴又は反訴が裁判をするのに熟した場合について準用する。
民事訴訟法 第244条 詳細ページ
第二百四十四条裁判所は、当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合において、審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは、終局判決をすることができる。ただし、当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合には、出頭した相手方の申出があるときに限る。
民事訴訟法 第245条(中間判決) 詳細ページ
(中間判決)
第二百四十五条裁判所は、独立した攻撃又は防御の方法その他中間の争いについて、裁判をするのに熟したときは、中間判決をすることができる。請求の原因及び数額について争いがある場合におけるその原因についても、同様とする。
民事訴訟法 第246条(判決事項) 詳細ページ
(判決事項)
第二百四十六条裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。
民事訴訟法 第247条(自由心証主義) 詳細ページ
(自由心証主義)
第二百四十七条裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
民事訴訟法 第248条(損害額の認定) 詳細ページ
(損害額の認定)
第二百四十八条損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
民事訴訟法 第249条(直接主義) 詳細ページ
(直接主義)
第二百四十九条判決は、その基本となる口頭弁論に関与した裁判官がする。
2裁判官が代わった場合には、当事者は、従前の口頭弁論の結果を陳述しなければならない。
3単独の裁判官が代わった場合又は合議体の裁判官の過半数が代わった場合において、その前に尋問をした証人について、当事者が更に尋問の申出をしたときは、裁判所は、その尋問をしなければならない。
民事訴訟法 第250条(判決の発効) 詳細ページ
(判決の発効)
第二百五十条判決は、言渡しによってその効力を生ずる。
民事訴訟法 第251条(言渡期日) 詳細ページ
(言渡期日)
第二百五十一条判決の言渡しは、口頭弁論の終結の日から二月以内にしなければならない。ただし、事件が複雑であるときその他特別の事情があるときは、この限りでない。
2判決の言渡しは、当事者が在廷しない場合においても、することができる。
民事訴訟法 第252条(電子判決書) 詳細ページ
(電子判決書)
第二百五十二条裁判所は、判決の言渡しをするときは、最高裁判所規則で定めるところにより、次に掲げる事項を記録した電磁的記録(以下「電子判決書」という。)を作成しなければならない。
一主文
二事実
三理由
四口頭弁論の終結の日
五当事者及び法定代理人
六裁判所
2前項の規定による事実の記録においては、請求を明らかにし、かつ、主文が正当であることを示すのに必要な主張を摘示しなければならない。
民事訴訟法 第253条(言渡しの方式) 詳細ページ
(言渡しの方式)
第二百五十三条判決の言渡しは、前条第一項の規定により作成された電子判決書に基づいてする。
2裁判所は、前項の規定により判決の言渡しをした場合には、最高裁判所規則で定めるところにより、言渡しに係る電子判決書をファイルに記録しなければならない。
民事訴訟法 第254条(言渡しの方式の特則) 詳細ページ
(言渡しの方式の特則)
第二百五十四条次に掲げる場合において、原告の請求を認容するときは、判決の言渡しは、前条の規定にかかわらず、電子判決書に基づかないですることができる。
一被告が口頭弁論において原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合
二被告が公示送達による呼出しを受けたにもかかわらず口頭弁論の期日に出頭しない場合(被告の提出した準備書面が口頭弁論において陳述されたものとみなされた場合を除く。)
2裁判所は、前項の規定により判決の言渡しをしたときは、電子判決書の作成に代えて、裁判所書記官に、当事者及び法定代理人、主文、請求並びに理由の要旨を、判決の言渡しをした口頭弁論期日の電子調書に記録させなければならない。
民事訴訟法 第255条(電子判決書等の送達) 詳細ページ
(電子判決書等の送達)
第二百五十五条電子判決書(第二百五十三条第二項の規定によりファイルに記録されたものに限る。次項、第二百八十五条、第三百五十五条第二項、第三百五十七条、第三百七十八条第一項及び第三百八十一条の七第一項において同じ。)又は前条第二項の規定により当事者及び法定代理人、主文、請求並びに理由の要旨が記録された電子調書(第百六十条第二項の規定によりファイルに記録されたものに限る。次項、第二百六十一条第五項、第二百八十五条、第三百五十七条及び第三百七十八条第一項において同じ。)は、当事者に送達しなければならない。
2前項に規定する送達は、次に掲げる方法のいずれかによってする。
一電子判決書又は電子調書に記録されている事項を記載した書面であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該書面の内容が当該電子判決書又は当該電子調書に記録されている事項と同一であることを証明したものの送達
二第百九条の二の規定による送達
民事訴訟法 第256条(変更の判決) 詳細ページ
(変更の判決)
第二百五十六条裁判所は、判決に法令の違反があることを発見したときは、その言渡し後一週間以内に限り、変更の判決をすることができる。ただし、判決が確定したとき、又は判決を変更するため事件につき更に弁論をする必要があるときは、この限りでない。
2変更の判決は、口頭弁論を経ないでする。
3電子呼出状(第九十四条第二項の規定によりファイルに記録されたものに限る。)により前項の判決の言渡期日の呼出しを行う場合においては、次の各号に掲げる送達の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める時に、その送達があったものとみなす。
一第百九条の規定による送達同条の規定により作成した書面を送達すべき場所に宛てて発した時
二第百九条の二の規定による送達同条第一項本文の通知が発せられた時
民事訴訟法 第257条(判決の更正決定) 詳細ページ
(判決の更正決定)
第二百五十七条判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。
2前項の更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。ただし、判決に対し適法な控訴があったときは、この限りでない。
3第一項の申立てを不適法として却下した決定に対しては、即時抗告をすることができる。ただし、判決に対し適法な控訴があったときは、この限りでない。
民事訴訟法 第258条(裁判の脱漏) 詳細ページ
(裁判の脱漏)
第二百五十八条裁判所が請求の一部について裁判を脱漏したときは、訴訟は、その請求の部分については、なおその裁判所に係属する。
2訴訟費用の負担の裁判を脱漏したときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、その訴訟費用の負担について、決定で、裁判をする。この場合においては、第六十一条から第六十六条までの規定を準用する。
3前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4第二項の規定による訴訟費用の負担の裁判は、本案判決に対し適法な控訴があったときは、その効力を失う。この場合においては、控訴裁判所は、訴訟の総費用について、その負担の裁判をする。
民事訴訟法 第259条(仮執行の宣言) 詳細ページ
(仮執行の宣言)
第二百五十九条財産権上の請求に関する判決については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。
2手形又は小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する法定利率による損害賠償の請求に関する判決については、裁判所は、職権で、担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。ただし、裁判所が相当と認めるときは、仮執行を担保を立てることに係らしめることができる。
3裁判所は、申立てにより又は職権で、担保を立てて仮執行を免れることができることを宣言することができる。
4仮執行の宣言は、判決の主文に掲げなければならない。前項の規定による宣言についても、同様とする。
5仮執行の宣言の申立てについて裁判をしなかったとき、又は職権で仮執行の宣言をすべき場合においてこれをしなかったときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、補充の決定をする。第三項の申立てについて裁判をしなかったときも、同様とする。
6第七十六条、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、第一項から第三項までの担保について準用する。
民事訴訟法 第260条(仮執行の宣言の失効及び原状回復等) 詳細ページ
(仮執行の宣言の失効及び原状回復等)
第二百六十条仮執行の宣言は、その宣言又は本案判決を変更する判決の言渡しにより、変更の限度においてその効力を失う。
2本案判決を変更する場合には、裁判所は、被告の申立てにより、その判決において、仮執行の宣言に基づき被告が給付したものの返還及び仮執行により又はこれを免れるために被告が受けた損害の賠償を原告に命じなければならない。
3仮執行の宣言のみを変更したときは、後に本案判決を変更する判決について、前項の規定を適用する。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。