刑事訴訟法 / テーマ別まとめ

総則/訴訟費用

訴訟費用の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

刑事訴訟法第181条から第188条は、刑事事件で生じた訴訟費用を誰にどこまで負担させるか、そしてその負担をどのような手続で決定するかを定めている。有罪判決を受けた被告人のほか、落度のある被疑者・告訴人等・上訴等を取り下げた者にも費用を負担させられる場合があり、決定は原則として裁判所が職権で行い、その裁判・決定に対する不服申立ての方法も条文ごとに定められている。

訴訟費用
条文場面結論不服申立て
181条有罪判決・本人の落度・不起訴等被告人または被疑者が負担—
182条共犯者が複数いる場合共犯人に連帯負担も可—
183条告訴等による無罪・不起訴告訴人・告発人・請求人が負担—
184条上訴等を取り下げた場合取り下げた本人が負担—
185条裁判で手続が終了(被告人負担)被告人が負担本案の上訴時のみ
186条裁判で手続が終了(被告人以外)被告人以外の者が負担即時抗告
187条裁判によらず手続が終了関係者が負担即時抗告
187条の2公訴が提起されなかった場合被疑者が負担即時抗告
188条負担額の表示がない場合検察官が金額を算定—
  • 181条1項ただし書:被告人が貧困のため訴訟費用を納付できないことが明らかなときは負担させない
  • 181条3項:検察官のみが上訴し棄却・取下げの場合は原則負担させないが、被告人の責めに帰すべき事由による費用は除く
  • 183条:告訴人・告発人・請求人に故意または重大な過失があった場合に限り負担させられる
  • 185条:被告人に費用を負担させる裁判は職権で行い、不服申立ては本案の裁判に上訴があった場合に限られる
  • 186条・187条・187条の2の決定には即時抗告ができる
  • 188条:負担額の表示がないときは、執行の指揮をする検察官がその額を算定する
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訴訟費用

訴訟費用について、条文は何を定めているか。

第181条有罪判決を受けた被告人に費用を負担させる4項判例 19件
  • 有罪判決を受けたら訴訟費用の全部か一部を被告人が負担する
  • 無罪でも本人の落度による費用は負担させられる
  • 検察官のみの上訴が不成立なら上訴費用は原則負担なし
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第182条共犯者には連帯して負担させられる1項判例なし
  • 共犯者が複数いる場合、共犯人に連帯して費用を負担させられる
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第183条告訴人等に故意・重過失があれば負担させる2項判例なし
  • 告訴・告発・請求により起訴され無罪や免訴になった場合が対象
  • 告訴人・告発人・請求人に故意または重大な過失があれば費用を負担させられる
  • 起訴されなかった場合も、故意・重過失があれば同様に負担させられる
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第184条上訴等を取り下げた者に費用を負担させる1項判例 1件
  • 検察官以外の者が上訴・再審・正式裁判の請求を取り下げた場合が対象
  • 取り下げた本人にその手続にかかった費用を負担させられる
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第185条被告人に費用負担を命じる裁判は職権で行う1項判例 8件
  • 裁判で訴訟手続が終わり被告人に費用を負担させるときは職権でその裁判をする
  • この裁判への不服申立ては、本案の裁判に上訴があった場合に限られる
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第186条被告人以外への負担は別に決定し即時抗告可1項判例なし
  • 裁判で手続が終わり被告人以外の者に費用を負担させるときは職権で別に決定する
  • この決定には即時抗告ができる
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第187条裁判によらず終了した場合は最終裁判所が決定1項判例なし
  • 裁判によらず終了し費用を負担させる場合、最終に係属した裁判所が職権で決定する
  • この決定には即時抗告ができる
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第187_2条不起訴の費用負担は検察官の請求で裁判所が決定1項判例なし
  • 公訴が提起されなかった場合に被疑者へ費用を負担させるときが対象
  • 検察官の請求を受けて裁判所が決定という形で行う
  • この決定には即時抗告ができる
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第188条金額の記載がなければ検察官が算定する1項判例 10件
  • 訴訟費用の負担を命じる裁判に金額の表示がないときが対象
  • 執行の指揮をする検察官がその金額を算定する
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第181条刑事訴訟法

一 刑訴法一八条一項〈犯罪の性質、地方の民心その他の事情により管轄裁判所が審判をするときは公安を害する虞があると認める場合には、検事総長は、最…〉、刑事訴訟費用等に関する法律二条三号〈裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。〉と憲法二九条一項、三七条三項
二 訴訟費用の全部を被告人に負担させた裁判が憲法二九条一項、三七条三項に違反しないとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和63年9月27日 昭和62(あ)1285
登載
集刑 第250号139頁
参照法条
憲法29条1項,憲法37条3項,刑訴法181条1項,刑訴費用法2条3号
論点2第181条刑事訴訟法

訴訟費用の連帯負担を命じた裁判の違法に関する刑訴法四一一条一号の判例違反の主張が事案異とされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和60年4月17日 昭和60(あ)239
登載
集刑 第239号285頁
参照法条
刑訴法181条,刑訴法185条但書,刑訴法411条1項
論点3第181条刑事訴訟法

一 道路標識等による最高速度の指定を都道府県公安委員会に委任することと憲法三一条、七三条六号
二 訴訟費用の負担と憲法二九条、三二条

裁判要旨一 道路標識等による最高速度の指定を都道府県公安委員会に委任することは、憲法三一条、七三条六号に違反しない。
二 証人尋問に要した訴訟費用の負担を有罪の言渡しを受けた被告人に命ずることは、憲法二九条、三二条に違反しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和60年12月19日 昭和59(あ)1472
登載
集刑 第241号543頁
参照法条
憲法29条,憲法31条,憲法32条,憲法73条6号,道路交通法4条,道路交通法22条,刑訴法181条
論点4第181条刑事訴訟法

一 訴訟費用負担の主文例
二 刑法二〇八条の二にいう「兇器」等の文言があいまい不明確で憲法三一条に違反するとの主張が欠前提とされた事例
三 いわゆる分割審理をしたこと、国選弁護人の辞任申出を認めず弁護人不出頭のまま審理をしたこと等につき違憲をいう主張が欠前提とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年11月10日 昭和54(あ)846
登載
集刑 第216号261頁
参照法条
刑訴法181条1項本文,刑訴法185条,憲法31条,憲法32条,憲法37条1項,刑法208条ノ2
論点5第181条刑事訴訟法

私選弁護人が上告趣意書を提出し、提出期限も経過した後、裁判成立直前に、被告人が私選弁護人を解任し、国選請求をした事案(必要的弁護事件)で、国選弁護人を選任したうえ、旧私選弁護人提出の上告趣意書につき判断し、国選弁護人提出の趣意書については期限後提出にかかるものであるから判断を加えない旨の判示をし、なお当審訴訟費用は被告人負担とされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年7月17日 昭和47(あ)360
登載
集刑 第185号121頁
参照法条
刑訴法36条,刑訴法181条,刑訴法386条1項1号,刑訴規則238条
論点6第181条刑事訴訟法

違法に被告人に訴訟費用を負担させたとして原判決中被告人に訴訟費用の負担を命じた部分のみが破棄された事例

裁判要旨相被告人に対する公訴事実のみに関する原審証人の尋問について生じた訴訟費用を、右の事実になんら関係のない被告人に負担させたときは、原判決中被告人に対し右訴訟費用の負担を命じた部分は、刑訴法四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により、破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和46年4月27日 昭和45(あ)1217
登載
刑集 第25巻3号534頁
参照法条
刑訴法181条,刑訴法185条,刑訴法411条1号
論点7第181条刑事訴訟法

控訴費用の裁判に対する不服申立。

裁判要旨上訴審において訴訟費用の裁判を是正すべき場合は、単に本案の裁判に対し上訴の申立があつただけでは足りず、その上訴が適法でありかつ理由があり、本案についても下級審の判決が取消される場合にかぎるものと解すべきことは、当裁判所の判例とするところであり―昭和三〇年(あ)第二九五五号同三一年一二月一三日第一小法廷判決参照―所論控訴費用負担に対する不服の論旨は採るを得ない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年7月16日 昭和39(あ)101
登載
集刑 第152号273頁
参照法条
刑訴法181条,刑訴法185条
論点8第181条刑事訴訟法

刑訴法第一八一条第一項〈刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付す…〉は憲法第三七条第二項に違反するか。

裁判要旨刑訴法第一八一条第一項〈刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付す…〉は憲法第三七条第二項に違反しない。このことは当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第三一六号同年一二月二七日大法廷判決、刑集二巻一四号一九三四頁・昭和三四年(あ)第一五二〇号同三五年一月一九日第三小法廷判決、刑集一四巻一号一八頁)の趣旨に照らして明らかである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年4月26日 昭和37(あ)2986
登載
集刑 第147号99頁
参照法条
刑訴法181条1項,憲法37条2項
論点9第181条刑事訴訟法

刑訴法第一八一条〈刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付す…〉は、憲法第三七条第二項に違反するか。

裁判要旨刑訴第一八一条〈刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付す…〉は、憲法第三七条第二項に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年1月19日 昭和34(あ)1520
登載
刑集 第14巻1号18頁
参照法条
刑訴法181条,憲法37条2項
論点10第181条刑事訴訟法

刑訴第一八一条第一項〈刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付す…〉但書により被告人に訴訟費用を負担させない場合判決主文にその旨の判示の要否

裁判要旨裁判所が刑の言渡をした場合において、刑訴一八一条一項〈刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付す…〉但書により被告人に訴訟費用を負担させないときは、その旨を主文に判示する必要はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年7月29日 昭和30(あ)1411
登載
集刑 第107号1207頁
参照法条
刑訴法181条1項但書,刑訴法335条1項
論点11第181条刑事訴訟法

被告人が負担すべき訴訟費用がないのに之を被告人に負担させた場合と空文

裁判要旨論旨は原判決が憲法二九条に違反すると主張する。なるほど原審は、「当番の国選弁護人に支給した訴訟費用は被告人の負担とする」との判決をしているけれども、記録上国選弁護人に報酬等を支給した形跡は認められず、被告人に負担させるべき費用は存在しない。従つて判決中右の部分は空文に帰したと同様である。それ故、被告人が現実に訴訟費用を徴収されることを前提として違憲を主張する論旨は、その前提を失い、採用することができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年7月19日 昭和28(あ)3973
登載
集刑 第107号571頁
参照法条
刑訴法181条,憲法29条
論点12第181条刑事訴訟法

刑訴法第四一五条〈上告裁判所は、その判決の内容に誤のあることを発見したときは、検察官、被告人又は弁護人の申立により、判決でこれを訂正するこ…〉、第四一六条〈訂正の判決は、弁論を経ないでもこれをすることができる。〉による判決の訂正をした事例 ―負担さすべき控訴費用がないのに之を負担させた判決の訂正―

裁判要旨当裁判所が被告人に対する被告事件について昭和三〇年七月一日言渡した判決の主文中第三項(被告人の訴訟費用負担)及び理由中「、一八一条〈刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付す…〉」を各削除する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年7月15日 昭和30(み)24
登載
集刑 第107号439頁
参照法条
刑訴法181条,刑訴法415条,刑訴法416条,刑訴規則270条
論点13第181条刑事訴訟法

被告人および検察官が上訴し双方共棄却された場合の訴訟費用の負担

裁判要旨刑訴第一八一条第三項〈刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付す…〉の規定は検察官のみが上訴した場合の規定であり、原審が被告人に刑訴第一八一条第一項により訴訟費用の負担を命じたとしても本件においては、被告人の控訴により生じた国選弁護人に関する費用の負担を命じたにすぎないのであるから所論違憲の主張は前提において採用できない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年4月12日 昭和27(あ)5774
登載
集刑 第104号423頁
参照法条
刑訴法181条1項,刑訴法181条3項
論点14第181条刑事訴訟法

刑訴法第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉に該当する一事例 ―訴訟費用を違法に被告人に負担せしめた場合―

裁判要旨無罪の言渡をした公訴事実に関する証人尋問について生じた訴訟費用を違法に被告人に負担せしめた場合には刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉に該当し原判決を破棄すべきものである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年1月14日 昭和28(あ)1570
登載
刑集 第9巻1号52頁
参照法条
刑訴法181条,刑訴法411条
論点15第181条刑事訴訟法

一 騒擾罪の成立と地方の静謐との関係
二 訴訟費用の裁判に対する不服申立

裁判要旨一 騒擾罪は多衆が集合して暴行または脅迫をなすことによつて成立し、その地方の静謐を害することを要件とするものではない。
二 本案の裁判に対する上告の理由がないときは、控訴費用の裁判に対する不服の申立は不適法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年7月16日 昭和28(あ)5604
登載
刑集 第8巻7号1169頁
参照法条
刑法106条,刑訴法181条,刑訴法185条
論点16第181条刑事訴訟法

訴訟費用負担の裁判の執行処分に関する異議申立が理由のない一場合

裁判要旨申立人主張のような事由(訴訟費用負担の執行免除の申立を刑務官吏によつて妨げられた旨の主張)は、前記訴訟費用の負担を命ずる裁判について検察官のした執行に関する処分を不当とすべき根拠にはならないから、本件申立は理由がないものとして棄却すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年5月25日 昭和29(す)145
登載
集刑 第95号587頁
参照法条
刑訴法181条,刑訴法500条,刑訴法502条
論点17第181条刑事訴訟法

一 騒擾罪の成立要件
二 訴訟費用の裁判に対する不服申立

裁判要旨一 騒擾罪は多衆が集合して暴行脅迫をすることによつて成立しその地方の静謐を害することを要件とするものではないから、騒擾罪にあたる事実を判示するには、多衆が集合して暴行または脅迫の行為をしたことを明らかにすれば足り、特にその行為が地方の静謐を害しまたは公共の平和を害するおそれのあることを判示する必要はなく、従つて仮りに同判決に他方の静謐を害した旨の判示にその証拠が欠けていたとしてもそれが直ちに理由不備の違法を来すものでもない。(大正一三年(れ)一〇〇九号同年七月一〇日大審院判決及び昭和二六年(れ)九〇八号同二八年五月二一日第一小法廷判決参照)
二 本案の裁判に対する上告理由がない場合は、訴訟費用の裁判に対する不服の申立は許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年11月16日 昭和28(あ)5577
登載
集刑 第100号411頁
参照法条
刑法106条,刑訴法335条,刑訴法378条4号,刑訴法181条,刑訴法185条
論点18第181条刑事訴訟法

裁判資料に供されなかつた証人の費用を訴訟費用として被告人に負担させることの適否と刑訴法第四〇二条違反の有無

裁判要旨裁判資料に供されなかつた証人の費用を訴訟費用として刑の言渡をうけた被告人に負担せしめることは違法でない。また訴訟費用の負担は刑ではないのであるから、所論刑訴第四〇二条〈被告人が控訴をし、又は被告人のため控訴をした事件については、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。〉に違反するとの主張は当を得ない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月8日 昭和25(あ)1591
登載
刑集 第5巻4号495頁
参照法条
刑訴法181条,刑訴法402条
論点19第181条刑事訴訟法

憲法第三七条第二項の法意と被告人に対する訴訟費用の負担

裁判要旨右憲法第三七条第二項の規定は証人尋問に要する費用は、すべて国家でこれを支給し、訴訟進行の過程において、被告人にこれを支弁せしむることなく、被告人の無資産などの事情のために、充分に証人の喚問を請求する自由が妨げられてはならないという趣旨であつて、もつぱら判事被告人をして訴訟上の防禦を遺憾なく行使せしめんとする法意にもとずくものであつて、その被告人が判決において、有罪の言渡を受けた場合にも、訴訟費用の負担を命じてはならないという趣旨の規定ではない。そして裁判確定の上で、その訴訟に要した費用を何人に負担せしめるかということは、法律をもつて、適当に規定し得る事柄であるから、刑事訴訟法並びに刑事訴訟費用法にもとずき、原審が証人尋問費用の負担を被告人に命じたことは正当であり、右憲法の条項に反するものではない。(昭和二三年(れ)第三一六号同年一二月二七日大法廷判決参照)。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和25年10月19日 昭和25(あ)3190
登載
集刑 第54号1325頁
参照法条
憲法37条2項,刑訴法181条
論点20第184条刑事訴訟法

一 公判手續の瑕疵と手續の更新
(辯論更新前における刑訴第四三條第二項の違反)
二 辯護人不出頭のまま行われた公判手續を更新した場合と辯護權の不法制限
三 強盗共犯者の犯意の認定と他の共犯者の行爲に對する共同責任
四 勾留六ケ月後にした自白と不當に長い拘禁後の自白
五 十一歳の小學兒童の證人資格
六 刑訴第二〇一條第一項の取調をした旨の記載を缺く證人訊問調書の證據能力
七 刑訴第一九九條の法意と僞證の罰を告げないでした證人訊問の効力
八 共同被告人に對し訴訟費用の分擔を命ずる場合と裁判所の自由裁量
九 刑訴法第二四二條の法意

裁判要旨一 原審は右第一回公判期日において審理を終結したのではなく、その後公判手續は第二回及び第三回各公判期日においてその都度適法に更新され、第二回公判期日には被告人Aの私選辯護人伊藤博夫が、又第三回公判期日には同様同被告人の私選辯護人桑名邦雄がそれぞれ出頭して審理に立曾つていることが記録上明かであるから、右第一回公判期日における前記瑕疵(利害相反する相被告人の辯護人をして被告人を辯護せしめたこと)は右審理更新の結果原判決に影響を及ぼさないものというべきである。
二 原審が右のように第一回公判期日において被告人Aの辯護人伊藤博夫から提出した所論期日變更申請を却下し、同辯護人不出頭のまま同期日の審理を行つたことは所論のとおりであるが、その後第二回公判期日は同辯護人にも適法に通知され同期日には同辯護人出頭の上、公判手續が更新されたこと前示のとおりであるから、結局原審手續は不當に辯護權を制限した違法のものということはできない。
三 原審判決が、被告人Aは相被告人Bにおいて判示被害者宅内で判示暴行脅迫を行つた現場には居合わせず屋外にいたと認定したからといつて直ちに被告人Aは、右暴行脅迫の事實について認識していなかつたとはいえないのみならず、同被告人が暴行脅迫行爲を現認しないからとて、共犯者中の他の者が暴行脅迫を加えて財物を奪取している以上強盗の共犯としての責任を免れ得るものでもない。
四 被告人が勾留されたのは所論のとおり昭和二一年一二月一九日であり、又同被告人の原審における自白は昭和二二年六月五日の第一回公判以後同年八月三〇日の第三回公判を通じてなされているのであつて、右勾留後第一回公判期日迄に約六ケ月、第三回公判期日迄には二五〇日餘を經過していることが明かではあるが、本件事案の内容、取調の経過、相被告人の供述内容等諸般の事情に鑑み、右程度の勾留は未だ不當に長い拘禁とはいえない。
五 原審證人Cが原審における取調べを受けた當時一一年(昭和一二年三月生)の小學兒童であつたことは同證人訊問調書の記載から明かであるが、この程度の年齢の者は絶對に證人たる資格がないとはいえないのであつて、同調書記載の同證人の供述内容から見ても同人は本件強盗の被害當時の状況について、詳細に記憶しているその實驗事實を順序良く訊問に答えて陳述報告しているのであつて、事理を辯識する能力を備えていた者と認めるべく、かかる年齢の證人の供述を證據として採用するか否かは事實審たる原番の自由になし得るところであるから、原審が同證人の右證言を判斷の資料に供したとて無効の證據を罪證に供した違法があるということはできない。
六 證人訊問調書に、その證人が刑訴第二〇一條第一項各號に該當するかしないかの取調をした旨の記載がなくても、右證人の供述内容その他によつて、右各號に該當せず宣誓を要する證人であることが明白であり、且つ、宣誓をなさしめて訊問をしている場合には、右訊問調書はこれを證據として差支えない。
七 元来刑事訴訟法第一九九條は、證人にその供述をなす前あらかじめその注意を促し、良心に從つてありのまゝにその實験した事實を供述させるとともに、僞證罪に問われることのないようにさせるため設けられた訓示的規定であるから、證人に宣誓をなさした上供述させている以上、たとえ宣誓前に僞證の罰を論示しなかつたからといつて、宣誓の効力には何ら影響がなく、その證人の證言を無効と考える必要は少しもない。
八 共同被告人中のある者が公訴事實を認め、他の者がこれを否認している場合に、裁判所がその公訴事實の審理のため證人を喚問するのは、結局眞實を發見するためであるから、かような證人に支給した旅費日當などの訴訟費用を、その共同被告人をして連帶して負擔させるか又はその中のある者のみに負擔させるかは、裁判所が自由に定めることのできる問題であつて、從つて、審理の結果右の公訴事實が證明され判決において認定された場合には右の費用は、公訴事實を否認していた被告人のみに負擔させるべきであつて當初からこれを認めていた被告人には負擔させてはいけないという理由はない。
九 刑事訴訟法第二四二條によれば、訴訟費用の負擔を命じる裁判に對しては本案の裁判について上訴する場合に限り不服を申立て得るものであつて、本案の裁判と獨立して上告の申立をすることはできないものである。從つて、本案の裁判に對する上告が理由があるときは、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服もこれを維持することができるけれども、本案の裁判に對する上告が理由がないときは、これの離れて、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服のみを維持することはできないものと解するのが相當である。しかるに本件において本案の裁判に對する上告が少しも理由がないものであることは、上に説明したとおりであるから、結局論旨は上告適法の理由とならないものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和23年4月17日 昭和22(れ)209
登載
刑集 第2巻4号364頁
参照法条
刑訴法43条2項,刑訴法411条,刑訴法334条,刑訴法410条10号,刑訴法184条,刑訴法201条,刑訴法199条,刑訴法238条,刑訴法242条,刑法60条,刑法236条,憲法38条2項,刑訴応急措置法10条2項
論点21第185条刑事訴訟法

上訴審における訴訟費用の是正。

裁判要旨上訴審において訴訟費用の裁判を是正すべき場合は、単に本案の裁判に対し上訴の申立があつただけでは足らず、その上訴が適法かつ理由があり、本案についても下級審の判決が取り消される場合に限るものと解すべきである(昭和三〇年(あ)第二九五五号同三一年一二月一三日第一小法廷判決、刑集一〇巻一二号一六三三頁参照)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年6月2日 昭和38(あ)2135
登載
集刑 第151号323頁
参照法条
刑訴法185条
論点22第185条刑事訴訟法

訴訟費用の裁判に対する不服申立

裁判要旨上訴審において訴訟費用の裁判を是正すべき場合は単に本案の裁判に対し上訴の申立があつただけでは足らずその上訴が適法であり且つ理由があり、本案についても下級審の判決が取消される場合にかぎるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和31年12月13日 昭和30(あ)2955
登載
刑集 第10巻12号1633頁
参照法条
刑訴法185条
論点23第188条刑事訴訟法

費用補償の請求が認容された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和61年4月2日 昭和61(ひ)1
登載
集刑 第242号313頁
参照法条
刑訴法188条の2号,刑訴法188条の3号,刑訴法188条の6号
論点24第188条刑事訴訟法

刑訴法一八八条の二第一項〈無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であつた者に対し、その裁判に要した費用の補償をする。ただし、被告人であ…〉により費用の補償をすべき場合

裁判要旨刑訴法一八八条の二第一項〈無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であつた者に対し、その裁判に要した費用の補償をする。ただし、被告人であ…〉は、費用の補償をすべき場合を無罪の判決が確定したときに限り、公訴棄却の判決が確定したときを含まない趣旨である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年9月27日 昭和58(し)39
登載
刑集 第37巻7号1092頁
参照法条
刑訴法188条の2第1項,刑訴法336条,刑訴法338条
論点25第188条刑事訴訟法

併合罪の各一部につき第一審控訴審及び上告審において順次無罪の判決があつた場合と費用の補償請求

裁判要旨併合罪として起訴された事実上、甲事実につき第一審において、乙事実につき控訴審において、丙事実につき上告審において順次無罪の判決があり、上告審が丙事実の裁判に要した費用を補償する場合において、甲、乙各事実についての無罪判決の各確定後刑訴法一八八条の三第二項所定の期間が経過しているときは、右各事実の裁判に要した費用の補償を請求することは許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年11月7日 昭和58(ひ)1
登載
刑集 第37巻9号1353頁
参照法条
刑訴法188条の3第1項,刑訴法188条の3第2項
論点26第188条刑事訴訟法

再審請求手続において要した費用と刑訴法一八八条の二による補償の範囲

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年5月13日 昭和55(し)40
登載
集刑 第217号711頁
参照法条
刑訴法188条の2,刑訴法188条の6
論点27第188条刑事訴訟法

刑訴法一八八条の二〈無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であつた者に対し、その裁判に要した費用の補償をする。ただし、被告人であ…〉、一八八条の六〈第百八十八条の二第一項又は第百八十八条の四の規定により補償される費用の範囲は、被告人若しくは被告人であつた者又はそれらの…〉により補償すべき費用の算定基準時

裁判要旨刑訴法一八八条の二〈無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であつた者に対し、その裁判に要した費用の補償をする。ただし、被告人であ…〉、一八八条の六〈第百八十八条の二第一項又は第百八十八条の四の規定により補償される費用の範囲は、被告人若しくは被告人であつた者又はそれらの…〉により補償すべき費用のうち、被告人又は弁護人であつた者に対する旅費、日当、宿泊料については、これらの者が公判準備及び公判期日に出頭した時点を、また、弁護人であつた者に対する報酬については、当該各審級の判決宣告の時点を、それぞれ基準として算定すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年12月14日 昭和54(し)118
登載
刑集 第33巻7号917頁
参照法条
刑訴法188条の2,刑訴法188条の6
論点28第188条刑事訴訟法

再審請求手続において要した費用と刑訴法一八八条の二による補償

裁判要旨再審請求手続において要した費用は、刑訴法一八八条の二〈無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であつた者に対し、その裁判に要した費用の補償をする。ただし、被告人であ…〉による補償の対象とはならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和53年7月18日 昭和53(し)58
登載
刑集 第32巻5号1055頁
参照法条
刑訴法188条の2,刑訴法188条の6
論点29第188条刑事訴訟法

費用補償の請求が認容された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年7月18日 昭和53(ひ)1
登載
集刑 第211号865頁
参照法条
刑訴法188条の2,刑訴法188条の3,刑訴法188条の6
論点30第188条刑事訴訟法

費用補償の請求が認容された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和52年6月20日 昭和52(ひ)1
登載
集刑 第204号621頁
参照法条
刑訴法188条の2,刑訴法188条の3,刑訴法188条の6
論点31第188条刑事訴訟法

一 証言拒絶権ある証人を宣誓させて尋問した場合と憲法第三八条第一項
二 宣誓させないで尋問すべき証人に宣誓させた場合と偽証罪の成否

裁判要旨一 旧刑訴第一八八条第一項〈訴訟費用の負担を命ずる裁判にその額を表示しないときは、執行の指揮をすべき検察官が、これを算定する。〉にあたる場合、証人は証言を拒む権利があるから、右証人に宣誓させて尋問したからといつて直ちに憲法第三八条第一項にいう自己に不利益な供述を強要したものということはできない。
二 証人が旧刑訴第一八八条第一項により証言を拒むことができるのにこれを拒まなかつた場合に、その証人が、宣誓の上虚偽の陳述をしても偽証罪は成立しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和27年11月5日 昭和23(れ)1541
登載
刑集 第6巻10号1159頁
参照法条
刑法169,旧刑訴法188条,旧刑訴法201条,憲法38条1項
論点32第188条刑事訴訟法

旧刑訴法第二〇一条第一項第三号及び第一八八条第二項にいう「共犯」と必要的共犯

裁判要旨旧刑訴第二〇一条第一項第三号〈逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。〉及び第一八八条第二項〈訴訟費用の負担を命ずる裁判にその額を表示しないときは、執行の指揮をすべき検察官が、これを算定する。〉にいう「共犯」とは、刑法第六〇条以下の定める共犯(狭義の共犯)のみを指すのではなく、収賄及び贈賄の罪のように、法律がそれぞれ別個の罪として規定していても、その性質上たがいに関与、加担の関係がある場合(いわゆる必要的共犯に属する場合)をも含むものと解すべきである。なぜなら、当該事件の被告人と右のような関係にある者を証人として調べる場合、その宣誓及び供述義務の有無について、刑法上の共犯関係にある者と別異の取扱をすべき理由はないからである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年5月1日 昭和26(れ)98
登載
刑集 第5巻6号978頁
参照法条
旧刑訴法201条1項3号,旧刑訴法188条2項,刑法197条,刑法198条
原

条文原文

原文ママ

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刑事訴訟法 第181条 詳細ページ
第百八十一条刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することのできないことが明らかであるときは、この限りでない。
2被告人の責に帰すべき事由によつて生じた費用は、刑の言渡をしない場合にも、被告人にこれを負担させることができる。
3検察官のみが上訴を申し立てた場合において、上訴が棄却されたとき、又は上訴の取下げがあつたときは、上訴に関する訴訟費用は、これを被告人に負担させることができない。ただし、被告人の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、この限りでない。
4公訴が提起されなかつた場合において、被疑者の責めに帰すべき事由により生じた費用があるときは、被疑者にこれを負担させることができる。
刑事訴訟法 第182条 詳細ページ
第百八十二条共犯の訴訟費用は、共犯人に、連帯して、これを負担させることができる。
刑事訴訟法 第183条 詳細ページ
第百八十三条告訴、告発又は請求により公訴の提起があつた事件について被告人が無罪又は免訴の裁判を受けた場合において、告訴人、告発人又は請求人に故意又は重大な過失があつたときは、その者に訴訟費用を負担させることができる。
2告訴、告発又は請求があつた事件について公訴が提起されなかつた場合において、告訴人、告発人又は請求人に故意又は重大な過失があつたときも、前項と同様とする。
刑事訴訟法 第184条 詳細ページ
第百八十四条検察官以外の者が上訴又は再審若しくは正式裁判の請求を取り下げた場合には、その者に上訴、再審又は正式裁判に関する費用を負担させることができる。
刑事訴訟法 第185条 詳細ページ
第百八十五条裁判によつて訴訟手続が終了する場合において、被告人に訴訟費用を負担させるときは、職権でその裁判をしなければならない。この裁判に対しては、本案の裁判について上訴があつたときに限り、不服を申し立てることができる。
刑事訴訟法 第186条 詳細ページ
第百八十六条裁判によつて訴訟手続が終了する場合において、被告人以外の者に訴訟費用を負担させるときは、職権で別にその決定をしなければならない。この決定に対しては、即時抗告をすることができる。
刑事訴訟法 第187条 詳細ページ
第百八十七条裁判によらないで訴訟手続が終了する場合において、訴訟費用を負担させるときは、最終に事件の係属した裁判所が、職権でその決定をしなければならない。この決定に対しては、即時抗告をすることができる。
刑事訴訟法 第187_2条 詳細ページ
第百八十七条の二公訴が提起されなかつた場合において、訴訟費用を負担させるときは、検察官の請求により、裁判所が決定をもつてこれを行う。この決定に対しては、即時抗告をすることができる。
刑事訴訟法 第188条 詳細ページ
第百八十八条訴訟費用の負担を命ずる裁判にその額を表示しないときは、執行の指揮をすべき検察官が、これを算定する。
出

一次情報

原文ママ

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