論点1第45条刑法
一 審判の請求を受けない事件について判決した場合に当たらないとされた事例
二 被告人らの自白のとおりに有罪とした原判決の事実認定に不合理な点があるとして破棄された事例
裁判要旨一 甲、乙に対する起訴状の罪名及び罰条は殺人のみであつても、逮捕監禁の事実が殺人の実行行為の一部を組成するものとして公訴事実中に記載されていると認められるときは(判文参照)、たとえ右逮捕監禁の事実が殺人とは併合罪関係に立つものと解すべきであつたとしても、裁判所が甲につき殺人の実行行為の一部として右逮捕監禁の事実を認定し、乙につき逮捕監禁罪のみの成立を認めたことが、刑訴法三七八条三号にいう審判の請求を受けない事件について判決した場合に当たるとはいえない。
二 被告人らの自白にはその重要部分に信用し難い点があるのに(判文参照)、右自白のとおりに被告人らを有罪と認めた原判決は、刑訴法四一一条三号により破棄を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和63年1月29日 昭和59(あ)1551
- 登載
- 刑集 第42巻1号38頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法199条,刑法220条1項,刑訴法256条2項,刑訴法256条4項,刑訴法317条,刑訴法378条3号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点2第45条刑法
堕胎により出生させた未熟児を放置した医師につき保護者遺棄致死罪が成立するとされた事例
裁判要旨妊婦の依頼を受け、妊娠第二六週に入つた胎児の堕胎を行つた産婦人科医師が、右堕胎により出生した未熟児に適切な医療を受けさせれば生育する可能性のあることを認識し、かつ、そのための措置をとることが迅速容易にできたにもかかわらず、同児を自己の医院内に放置して約五四時間後に死亡するに至らせたときは、業務上堕胎罪に併せて保護者遺棄致死罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和63年1月19日 昭和59(あ)588
- 登載
- 刑集 第42巻1号1頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法214条,刑法218条1項,刑法219条
論点3第45条刑法
常習累犯窃盗の罪と別の機会に窃盗目的で犯された軽犯罪法一条三号(侵入具携帯)の罪との罪数関係
裁判要旨常習累犯窃盗の罪と軽犯罪法一条三号(侵入具携帯)の罪とが機会を異にして犯された場合には、たとえ侵入具携帯が常習性の発現と認められる窃盗を目的とするものであつたとしても、両罪は併合罪の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和62年2月23日 昭和61(あ)1177
- 登載
- 刑集 第41巻1号1頁
- 参照法条
- 盗犯等の防止及び処分に関する法律3条,軽犯罪法1条3号,刑法45条
論点4第45条刑法
選挙運動者に対する金銭供与の共謀者間における供与資金の交付約束が供与の実行直後に履行された場合の供与の罪と交付の罪との関係
裁判要旨選挙運動者に対する金銭供与の共謀者間において供与の実行前にあらかじめされていた供与資金交付の約束が供与の実行直後に履行された場合にも、交付の罪は供与の罪に吸収される。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年7月17日 昭和61(あ)160
- 登載
- 刑集 第40巻5号397頁
- 参照法条
- 公職選挙法221条1項1号,公職選挙法221条1項5号,刑法45条
論点5第45条刑法
同一の日時場所において多数の選挙人に対し饗応接待をした場合の罪数
裁判要旨自己の当選を得る目的をもつて同一の日時場所において多数の選挙人に対し饗応接待をした行為は、包括して一個の饗応接待罪を構成する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和61年4月1日 昭和60(あ)1573
- 登載
- 刑集 第40巻3号197頁
- 参照法条
- 公職選挙法221条1項1号,刑法45条,刑法54条1項前段
論点6第45条刑法
いわゆる一項強盗による強盗殺人未遂罪ではなく窃盗罪又は詐欺罪といわゆる二項強盗による強盗殺人未遂罪との包括一罪になるとされた事例
裁判要旨甲と乙が、当初は丙を殺害してその所持する覚せい剤を強取することを計画したが、その後計画を変更し、共謀の上、まず甲において、覚せい剤取引の斡旋にかこつけて丙をホテルの一室に呼び出し、別室に買主が待機しているかのように装つて、覚せい剤の売買の話をまとめるためには現物を買主に見せる必要がある旨申し向けて丙から覚せい剤を受け取り、これを持つて同ホテルから逃走した後、間もなく、乙が丙のいる部屋に赴き丙を拳銃で狙撃したが殺害の目的を遂げなかつたという本件事案(判文参照)においては、いわゆる一項強盗による強盗殺人未遂罪は成立しないが、窃盗罪又は詐欺罪といわゆる二項強盗による強盗殺人未遂罪との包括一罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年11月18日 昭和60(あ)1198
- 登載
- 刑集 第40巻7号523頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法235条,刑法236条,刑法238条,刑法240条,刑法243条,刑法246条1項
論点7第45条刑法
金員の供与が公職選挙法二二一条一項一号及び三号の双方の目的をもって行われた場合の罪数関係
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和59年4月25日 昭和59(あ)153
- 登載
- 集刑 第236号837頁
- 参照法条
- 公選法221条,刑法45条,刑法54条1項
論点8第45条刑法
一 覚せい剤取締法一三条、四一条の輸入罪の既遂時期
二 覚せい剤取締法一三条、四一条の輸入罪と関税法一一一条の無許可輸入罪との罪数関係
裁判要旨一 保税地域、税関空港等外国貨物に対する税関の実力的管理支配が及んでいる地域に、外国から船舶又は航空機により覚せい剤を持ち込む場合、覚せい罪取締法一三条、四一条の輸入罪は、覚せい剤を船舶から保税地域に陸揚げし、あるいは税関空港に着陸した航空機から覚せい剤を取りおろすことによつて既遂に達する。
二 保税地域、税関空港等外国貨物に対する税関の実力的管理支配が及んでいる地域に、外国から船舶又は航空機により覚せい剤を持ち込み、これを携帯していわゆる通関線を突破し又は突破しようとした場合に成立する覚せい剤取締法一三条、四一条の輸入罪と関税法一一一条の無許可輸入罪とは、刑法
五四条一項〈一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理〉前段の観念的競合の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和58年9月29日 昭和57(あ)1153
- 登載
- 刑集 第37巻7号1110頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項,覚せい剤取締法13条,覚せい剤取締法41条,関税法111条
論点9第45条刑法
みのしろ金取得の目的で人を拐取した者が被拐取者を監禁しみのしろ金を要求した場合の罪数関係
裁判要旨みのしろ金取得の目的で人を拐取した者が、更に被拐取者を監禁し、その間にみのしろ金を要求した場合には、みのしろ金目的拐取罪とみのしろ金要求罪とは牽連犯の関係に、以上の各罪と監禁罪とは併合罪の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和58年9月27日 昭和57(あ)1012
- 登載
- 刑集 第37巻7号1078頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項後段,刑法225条ノ2,刑法220条1項
論点10第45条刑法
一 大麻取締法四条、二四条二号の輸入罪の成立時期
二 大麻取締法四条、二四条二号の輸入罪と関税法一一一条の無許可輸入罪との罪数関係
裁判要旨一 税関空港、保税地域等外国貨物に対する税関の実力的管理支配が及んでいる地域に外国から航空機又は船舶により大麻を持ち込む場合、大麻取締法四条、二四条一項の輸入罪は、大麻を税関空港に着陸した航空機から取りおろし、あるいは船舶から保税地域に陸揚げすることによつて成立する。
二 税関空港、保税地域等外国貨物に対する税関の実力的管理支配が及んでいる地域に外国から航空機又は船舶により大麻を持ち込み、これを携帯して通関線を突破し又は突破しようとした場合に成立する大麻取締法四条、二四条二号の輸入罪と関税法一一一条の無許可輸入罪とは、刑法
五四条一項〈一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理〉前段の観念的競合の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和58年12月21日 昭和58(あ)1235
- 登載
- 刑集 第37巻10号1878頁
- 参照法条
- 大麻取締法4条,大麻取締法24条2号,刑法45条,刑法54条1項,関税法111条
論点11第45条刑法
住居侵入罪と軽犯罪法一条二三号の罪との罪数関係
住居侵入罪と軽犯罪法一条二三号の罪との罪数関係(反対意見がある)
裁判要旨他人の住居の庭先に侵入してその住居内をひそかにのぞき見た場合における住居侵入罪と軽犯罪法一条二三号の罪とは、牽連犯の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和57年3月16日 昭和55(あ)487
- 登載
- 刑集 第36巻3号260頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項,刑法130条,軽犯罪法1条23号
論点12第45条刑法
営利略取罪とみのしろ金要求罪の罪数関係
裁判要旨営利の目的で人を略取した者がみのしろ金要求罪を犯した場合には、右両罪は、併合罪の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和57年11月29日 昭和57(あ)270
- 登載
- 刑集 第36巻11号988頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法225条,刑法225条の2第2項
論点13第45条刑法
一 検察官が被告人の利益のために控訴をした事件と刑訴法四〇二条にいう「被告人のため控訴をした事件」
二 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律五条一項〈外国判決の効力〉違反の罪が反覆累行された場合の罪数
裁判要旨一 検察官が控訴をした事件は、たとえその申立理由が被告人に利益なものである場合であつても、刑訴法四〇二条にいう「被告人のため控訴をした事件」にあたらない。
二 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律
五条一項〈外国判決の効力〉違反の罪が反復累行された場合には、特段の事情のない限り、個々の契約又は受領ごとに一罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和53年7月7日 昭和52(あ)1271
- 登載
- 刑集 第32巻5号1011頁
- 参照法条
- 刑訴法402条,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律5条1項,刑法45条
論点14第45条刑法
覚せい剤の輸入罪(覚せい剤取締法四一条一項一号)と覚せい剤の無許可輸入未遂罪(関税法一一一条二項、一項)を併合罪とした原判断は首肯しえないとしながら、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められないとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年2月21日 昭和52(あ)1072
- 登載
- 集刑 第209号139頁
- 参照法条
- 刑訴法411条,覚せい剤法41条1項1号、,覚せい剤法13条,関税法111条1項,関税法111条2項,刑法45条,刑法54条1項前
論点15第45条刑法
一 数人共同して二人以上に対しそれぞれ暴行を加え一部の者に傷害を負わせた場合の罪数
二 起訴状に記載されていない罰条の適用
三 起訴状に記載されていない罰条の適用が許されるとされた事例
裁判要旨一 数人共同して二人以上に対しそれぞれ暴行を加え、一部の者に傷害を負わせた場合には、傷害を受けた者の数だけの傷害罪と暴行を受けるにとどまつた者の数だけの暴力行為等処罰に関する法律
一条〈国内犯〉の罪が成立し、以上は併合罪として処断すべきである。
二 裁判所は、訴因により公訴事実が十分に明確にされていて被告人の防禦に実質的な不利益が生じない限りは、罰条変更の手続を経ないで、起訴状に記載されていない罰条を適用することができる。
三 暴力行為等処罰に関する法律
一条の罪にあたる事実が訴因によつて十分に明示されている場合には、裁判所は、起訴状に記載された刑法二〇八条の罰条を変更させる手続を経ないで、右法律
一条を適用することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和53年2月16日 昭和52(あ)1431
- 登載
- 刑集 第32巻1号47頁
- 参照法条
- 暴力行為等処罰に関する法律1条,刑法45条,刑法204条,刑訴法256条,刑訴法312条
論点16第45条刑法
兇器準備集合の罪とその継続中における暴力行為等処罰に関する法律一条〈国内犯〉違反の罪とが併合罪の関係にあるとされた事例
裁判要旨被告人が、甲ほか一一名と共謀のうえ、乙らに危害を加える目的をもつて、某日午後一一時頃から翌日午前二時三〇分頃までの間、某市内の乙方およびその付近路上ならびに同市内の甲方において猟銃、日本刀、包丁等の兇器を準備し、またはその準備のあることを知つて集合したという兇器準備集合の罪と、右某日午後一一時頃乙方において乙に対し所携の包丁、日本刀を示し、「指を詰めろ」等と申し向け、手拳等でその身体を殴打し、あるいは足蹴にする等し、もつて数人共同して兇器を示し、かつ、多衆の威力を示して暴行、脅迫を加えたという暴力行為等処罰に関する法律
一条〈国内犯〉違反の罪とは、併合罪の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和48年2月8日 昭和47(あ)159
- 登載
- 刑集 第27巻1号1頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項,刑法208条2第1項,暴力行為等処罰に関する法律1条
論点17第45条刑法
兇器準備集合の所為とその継続中における暴力行為等処罰に関する法律一条〈国内犯〉違反の所為とが併合罪の関係にあるとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和48年2月8日 昭和47(あ)160
- 登載
- 集刑 第186号33頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項,刑法208条の2,暴力行為等処罰法1条
論点18第45条刑法
一 上告審判決の主文に控訴棄却の旨を表示することの可否
二 関税法一一一条一項所定の無許可輸出罪と同法一一三条の二所定の虚偽申告罪との罪数関係
三 関税法の無許可輸出罪の公訴事実中に税関吏に対し虚偽の申告をした旨の記載があるが同法の虚偽申告罪の起訴はなかつたものとみるのが相当であるとされた事例
四 当初の関税法の無許可輸出罪の訴因につき第一審で無罪とされ検察官が控訴したが控訴審でも罪とならないとされただ外国為替及び外国貿易管理法の無承認輸出罪の成立する余地があるとして破棄差し戻した判決に対し被告人のみが上告した場合と上告審の職権調査の範囲
裁判要旨一 上告審が、第一審判決を破棄した控訴審判決を破棄して第一審判決を維持するのを相当と認めるときは、第一審判決と同一内容の主文を表示するかわりに、控訴を棄却する旨の主文を表示してもよい。
二 関税法一一一条一項所定の無許可輸出罪と同法一一三条の二所定の虚偽申告罪とは併合罪の関係にある。
三 関税法の無許可輸出罪の公訴事実中に、税関吏に対し実際に輸出しようとする薬品の輸出申告をしないで他の薬品の輸出申告をした旨の記載があるが、罪名は単に関税法違反と記載され、罰条として、関税法一一一条一項のみが示されているにすぎない場合には、同法上の虚偽申告の点は起訴されなかったとみるのが相当である。
四 当初の無許可輸出罪の訴因につき第一審で無罪とされ、検察官が控訴したが、控訴審でも罪とならないとされ、ただ、外国為替及び外国貿易管理法の無承認輸出罪の成立する余地があるとして破棄差し戻した判決に対し被告人のみが上告した場合には、上告審が職権調査により右訴因を有罪とすべきものとして破棄差し戻し、または、みずから有罪の裁判をすることは許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年3月9日 昭和42(あ)582
- 登載
- 刑集 第26巻2号102頁
- 参照法条
- 刑訴法396条,刑訴法413条,刑訴法256条2項,刑訴法378条3号,刑訴法392条2項,刑訴法414条,関税法111条1項,関税法113条の2,刑法45条,刑法54条
論点19第45条刑法
刑法二七条〈刑の全部の執行猶予の猶予期間経過の効果〉による刑の言渡の失効と同法四五条後段の併合罪関係の成否
裁判要旨刑法
二七条〈刑の全部の執行猶予の猶予期間経過の効果〉によつて、執行猶予を言い渡した確定裁判による刑の言渡がその効力を失つても、そのことは同法四五条後段の併合罪関係の成否とは相関しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和45年9月29日 昭和44(あ)1853
- 登載
- 刑集 第24巻10号1421頁
- 参照法条
- 刑法27条,刑法45条
論点20第45条刑法
事件の同一性を欠くとされた事例
裁判要旨被告人が、昭和四三年三月二八日にaにおいて賭博をしたとの勾留状記載の事実と、同日同所においてAらがした賭博開張図利を、賭具を貸与して幇助したとの起訴状記載の事実とは、併合罪の関係にあるものであるから、事件の同一性を欠くものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和45年7月10日 昭和45(あ)576
- 登載
- 集刑 第177号171頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法185条,刑法186条2項,刑訴法60条,刑訴法256条,刑訴法280条,刑訴法312条
論点21第45条刑法
一 牽連犯を構成する二罪の中間に別罪の確定裁判が介在する場合と刑法五四条の適用
二 偽造運転免許証の携帯運転と偽造公文書行使罪の成否
裁判要旨一 牽連犯を構成する手段となる犯罪と結果となる犯罪との中間に別罪の確定裁判が介在する場合においても、なお刑法五四条の適用がある。
二 自動車を運転する際に偽造にかかる運転免許証を携帯しているに止まる場合には、偽造公文書行使罪を構成しない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和44年6月18日 昭和43(あ)1651
- 登載
- 刑集 第23巻7号950頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項,刑法158条,刑法155条,道路交通法95条
論点22第45条刑法
被告人に不利益な主張であつて上告理由として許されないとされた事例
裁判要旨一所為数法の関係にあたると認定された所為を併合罪にあたると主張する上告論旨は、被告人にとつて不利益な主張であつて、上告理由として許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和44年2月5日 昭和42(あ)2747
- 登載
- 集刑 第170号191頁
- 参照法条
- 刑訴法351条,刑法54条1項前段,刑法45条
論点23第45条刑法
傷害の手段として監禁し傷害を加えた場合と牽連犯の成否
裁判要旨傷害の手段として監禁し傷害を加えた場合でも、両者は牽連犯を構成しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年9月17日 昭和42(あ)2551
- 登載
- 刑集 第22巻9号853頁
- 参照法条
- 刑法204条,刑法220条,刑法54条1項,刑法45条
論点24第45条刑法
兇器準備集合の所為と暴力行為等処罰に関する法律第一条〈国内犯〉違反の所為とが併合罪の関係にあるとされた事例
裁判要旨被告人らが、共謀のうえ、甲らに危害を加える目的をもつて、猟銃、日本刀等の兇器を準備し、または準備のあることを知つて、某所に集合したという兇器準備集合の所為と、その集合の直後、集合場所付近において、甲の身体を手拳で殴打し、足蹴にするなどし、かつ、甲に対し「横着だぞ」等と怒号し、もつて数人共同し、多衆の威力を示して暴行、脅迫をしたという暴力行為等処罰に関する法律
第一条〈国内犯〉違反の所為とは、併合罪の関係にあると解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年7月16日 昭和42(あ)2277
- 登載
- 刑集 第22巻7号830頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項,刑法208条ノ2,暴力行為等処罰に関する法律1条
論点25第45条刑法
刑訴法第四一一条第一号にあたらないとされた事例
裁判要旨原判決が、昭和四三年法律第六一号による改正後の刑法第四五条を適用して一個の懲役刑を科すべきであつたのに、右改正前の同条を適用して三個の懲役刑を科したのは、判決に影響を及ぼすべき法令違反であるが、本件事案のもとでは(判文参照)、原判決を破棄しなくても著しく正義に反するものとは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年11月26日 昭和43(あ)1640
- 登載
- 刑集 第22巻12号1387頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法45条(昭和43年法律61号による改正前のもの),刑法の一部を改正する法律(昭和43年法律61号)附則2項,刑訴法411条1号
論点26第45条刑法
併合罪の一部についての非常上告と破棄の範囲
裁判要旨各一個の窃盗および道路交通法違反(無免許運転)の併合罪につき、原判決が懲役刑および罰金刑を併科している場合において、道路交通法違反の罪についての非常上告に理由があるときは、原判決中罰金刑の部分のみを破棄すれば足りる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年10月15日 昭和43(さ)2
- 登載
- 刑集 第22巻10号940頁
- 参照法条
- 刑法45条前段,刑法48条1項本文,刑訴法458条
論点27第45条刑法
公正証書原本不実記載罪とその行使罪と詐欺罪との関係
裁判要旨甲から金員を騙取するため、乙名義の偽造の委任状等を登録官吏に提出し、乙の不動産の登記簿の原本に抵当権が設定された旨の不実の記載をさせて、これを行使するとともに、甲にその登録済権利証を示して、抵当権設定登録を経由した旨誤信させ、同人から借用金名下に金員を騙取したときは、公正証書原本不実記載罪とその行使罪と詐欺罪との牽連犯となる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和42年8月28日 昭和41(あ)2732
- 登載
- 刑集 第21巻7号863頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項,刑法157条1項,刑法158条1項,刑法246条1項
論点28第45条刑法
一 密輸拳銃の故買と同一拳銃の不法所持の罪数関係
二 刑法第四五条〈併合罪〉前段、第四八条第一項〈罰金の併科等〉の摘示を遺脱した原判決の適否
裁判要旨一 密輸拳銃故買(関税法第一一二条第一項)の罪と同一拳銃の不法所持(銃砲刀剣類等所持取締法第三条第一項違反)の罪とは、観念的競合の関係に立たない。
二 刑法総則の規定である同法第四五条前段、第四八条第一項のような規定は、これを適用した趣旨であることが、原判決自体から明らかに認められる以上、その適用をあえて掲げてなくても、違法とするに足りない(昭和二四年一一月二九日および同二六年九月一八日各第三小法廷判決、裁判集14号841頁、同五三号六一頁参照)。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和42年3月14日 昭和41(あ)1354
- 登載
- 集刑 第162号851頁
- 参照法条
- 関税法112条1項,銃砲刀剣類等所持取締法3条1項,刑法45条前段,刑法54条1項,刑法48条1項,刑訴法335条1項
論点29第45条刑法
不法監禁中になされた暴行により被害者が傷害を負つた場合に監禁致傷罪ではなく監禁と傷害の二罪が成立するとされた事例
裁判要旨暴行が不法監禁中になされたものであつても、その手段としてなされたものでなく、別個の動機、原因からなされた場合において、右暴行の結果被害者に傷害を負わせたときは、監禁致傷罪ではなく、監禁と傷害の二罪が成立し、両者は併合罪の関係となる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和42年12月21日 昭和42(あ)1482
- 登載
- 集刑 第165号551頁
- 参照法条
- 刑法204条,刑法220条1項,刑法221条,刑法45条
論点30第45条刑法
一 公職選挙法第二一一条第一項第一号の供与等を共謀した者の間における金銭又は物品の授受と同条項第五号の交付又は受交付の罪の成否
二 右共謀にかかる供与等が行なわれた場合における供与等の罪と交付又は受交付の罪との関係
三 前記共謀にかかる供与等が共謀者間で授受された金銭又は物品の一部について行なわれた場合における供与等の罪と交付又は受交付の罪との関係
四 二審が一審判決を破棄するにさいし二審で追加された予備的訴因に基づいて自判することと審級の利益
五 甲が乙に三万円を交付したとする訴因と甲乙共謀のうえ右三万円中二万七、〇〇〇円について丙らに供与等をしたとする訴因との間の公訴事実の同一性。
裁判要旨一 公職選挙法第二二一条第一項第一号の供与等いわゆる買収を目的とする金銭又は物品を交付し、又はその交付を受ける行為は、右買収を共謀した者相互の間で行なわれた場合でも、同条項第五号の交付又は受交付の罪を構成するのに妨げない
二 前項の場合において、共謀にかかる供与等が行なわれたときは、交付又は受交付の罪は、後の供与等の罪に吸収される
三 前二項の場合において、共謀者間で授受された金銭又は物品の一部について供与等が行なわれ、その残部が受交付者の手裡に保留されたときは、前者についての供与等の罪と後者についての交付又は受交付の罪との併合罪として処断すべきである
四 第一審以来の審理において、金員の授受およびこれに関連する一連の事実関係が十分明らかにされ、被告人の防禦にも支障はなかつたものと認められる本件の場合、原審が、事件を第一審に差し戻すことなく、右予備的訴因に基づいて自ら判決をした措置は、被告人Aに対して審級の利益をはく奪したものとはいえない
五 被告人Aが被告人Bに対して現金三万円を交付したとする本位的訴因と、被告人Aが被告人Bとの共謀のうえ、右現金三万円中合計二万七、〇〇〇円をCらに対してそれぞれ供与もしくはその申込をし、又は交付したとする予備的訴因との間には、公訴事実の同一性が認められるから、右予備的訴因の追加を許可した原審の措置に違法の点はない
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和41年7月13日 昭和40(あ)1541
- 登載
- 刑集 第20巻6号623頁
- 参照法条
- 公職選挙法221条1項1号,公職選挙法221条1項5号,刑法60条,刑法45条,刑訴法400条,刑訴法312条
論点31第45条刑法
売春防止法第一二条違反罪において反復された同種行為が別罪を構成するものとされた事例。
裁判要旨本件のようないわゆる営業犯において、反復された同種行為が一罪として評価されるか否かは、その行為の時間的、場所的関係その他諸般の事情を目的論的見地に立つて考察し、社会通念上同一の営業活動と認められる限度内にあるか否かによつて決するのが相当である。しかるところ、原審の確定した事実によれば、被告人が昭和三七年一月一七日に宇都宮地裁において有罪判決を受けた事実は、被告人が昭和三六年三月初めごろから同年四月二八日までの間に、栃木県塩谷郡a町大字bc番地のdアパートに、AことBという婦女を居住させて、いわゆる管理売春をしたというのであるのに対し、本件事実は、被告人が昭和三七年一月二日ごろから同年五月上旬ごろまでの間に、福島市e町字fg番地のhヌードスタヂオに、Cという婦女を居住させて、いわゆる管理売春をしたというのであつて、両者間には、時間的にも場所的にも相当の隔たりがあり、また売春をさせた婦女も異なつており、社会通念上とうてい同一の営業活動とは認められないから、これを別罪に当るものとした原判断は相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年8月2日 昭和39(あ)2033
- 登載
- 集刑 第156号297頁
- 参照法条
- 売春防止法12条,刑法45条,刑法50条
論点32第45条刑法
日時場所を同じくする猥せつ図画販売罪と猥せつ図画販売目的所持罪との罪数。
裁判要旨原判決の是認した第一審判決は、判示第一、第二の行為を併合罪の関係にあるものとしているが、同判決の確定したところによれば、右第二の行為は、第一の行為と同時刻頃、同一場所においてなされており、そのような事実関係の下においては、刑法
第一七五条〈わいせつ物頒布等〉の猥せつ図画販売罪と猥せつ図画販売目的所持罪とは、包括一罪であると解するのが正当であつて、この点において第一審判決は違法たるを免れない。しかし、記録にあらわれた本件事案の内容および被告人の前科関係等の事情を考えると、右第一、第二の行為を包括一罪としても、被告人の本件犯行に対する量刑が不当に重いものとは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和40年12月23日 昭和40(あ)921
- 登載
- 集刑 第157号495頁
- 参照法条
- 刑法175条,刑法45条,刑訴法411条
論点33第45条刑法
一 常習犯の中間に別罪の確定裁判が介在した場合における罪数。
二 右常習犯と確定裁判を経た罪とは併合罪か。
三 刑訴法第四一一条第一号に当らないとされた事例。
裁判要旨一 常習犯の中間に別罪の確定裁判が介在しても、そのためにその常習犯が二個の常習犯に分割されるものではないと解すべきである。
二 右の場合、その常習犯は別罪の裁判確定後に終了したものであるから、右確定裁判を経た罪とは刑法第四五条の併合罪の関係に立つものではない。
三 原判決が、刑法
第四五条〈併合罪〉の適用を誤り二個の刑を言い渡すべきであるのに一個の刑を言い渡した場合には、その違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるが、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年7月9日 昭和39(あ)103
- 登載
- 刑集 第18巻6号375頁
- 参照法条
- 刑法45条,盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律2条4号,刑訴法411条1号
論点34第45条刑法
被告人に対し不利益な主張であつて適法な上告理由にあたらないとされた事例。―一罪に対する併合罪の主張―
裁判要旨所論は、原判決は被告人の昭和三四年六月下旬頃から同三五年五月初旬頃までの管理売春の所為につき、これを一罪として一個の刑を科しているけれども、被告人には昭和三四年九月一九日宣告同年一〇月七日確定の道路交通取締法違反による罰金三、〇〇〇円及び昭和三五年一月二八日宣告同年二月一七日確定の同法違反による罰金四、〇〇〇円の二個の確定裁判が存するのであるから、被告人の管理売春の所為はそれぞれ右二個の確定裁判と併合罪の関係に立ち、結局三個の刑を科すべきことになるのであつて、これを一罪として一個の刑を科した原判決は東京高裁昭和二九年九月二八日判決、名古屋高裁金沢支部昭和三一年一一月二七日判決に違反しかつ刑法第四五条の適用を誤つたものであると主張するが、所論は結局被告人に不利益な主張に帰するのであつて、適法な上告理由に当らない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年6月1日 昭和37(あ)3013
- 登載
- 集刑 第151号303頁
- 参照法条
- 刑法45条4後段,刑訴法351条,刑訴法402条,刑訴法411条
論点35第45条刑法
各個の包括一罪をなす詐欺罪の訴因特定方法。
裁判要旨本件公訴事実は同一被害者に対し、一定期間反覆継続して行われた単一意思の発現と認めらるる同種の詐欺行為を包括して、一個の詐欺罪とし、八名の被害者につき各個の訴因毎に、被害者、詐欺の行われた日時(始期と終期)、場所及び被害物件の総計その価格の総額等を明示しているのであるから、詐欺罪の訴因の特定について欠くることなく、右一罪の内容をなす個々の行為につき、更に、日時場所等によりこれを特定する要なき旨の原審の判断は、違法とは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年4月23日 昭和38(あ)2437
- 登載
- 集刑 第151号71頁
- 参照法条
- 刑法246条1項,刑法45条,刑訴法256条
論点36第45条刑法
二個の刑が言渡された場合の未決勾留日数の裁定通算の方法。
裁判要旨被告人に対し二個の刑が言渡された場合の未決勾留日数の裁定通算は、まず、勾留状が発せられた罪に対する刑を本刑として、これに算入すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月23日 昭和37(あ)2173
- 登載
- 刑集 第18巻1号15頁
- 参照法条
- 刑法21条,刑法45条後段,刑法50条
論点37第45条刑法
窃盗幇助をした者がその賍物を故買した場合の罪数。
裁判要旨窃盗幇助をした者がその賍物を故買した場合には、窃盗罪と賍物故買の二罪が成立すると解するを相当する(昭和二四年(れ)第一五〇六号同年一〇月一日第二小法廷判決、刑集三巻一〇号一六二九頁・昭和二七年(あ)第五四四〇号同二八年三月六日第二小法廷判決、裁判集七五号四三五頁参照)。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年12月17日 昭和39(あ)904
- 登載
- 集刑 第153号699頁
- 参照法条
- 刑法325条,刑法62条1項,刑法256条2項,刑法45条前段
論点38第45条刑法
一罪に対し数罪の主張と上告の利益。
裁判要旨第二審判決が一罪と認定した事実を数罪であると主張するのは、被告人に不利益な主張である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和39年10月13日 昭和37(あ)2570
- 登載
- 集刑 第152号1007頁
- 参照法条
- 刑訴法405条,刑法54条,刑法45条
論点39第45条刑法
建築基準法違反罪(第六条第一項〈刑の変更〉、第九九条第一項第二号〈被拘禁者奪取〉)の罪数。
裁判要旨建築主が建築主事の確認を受けないで、用途上不可分の関係の認められない一戸建住宅及び二戸建ないし五戸建長屋住宅合計三八棟を建築したときは、三八個の建築基準法違反罪(
第六条第一項〈刑の変更〉、
第九九条第一項第二号〈被拘禁者奪取〉)が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和38年9月18日 昭和38(あ)975
- 登載
- 刑集 第17巻8号1742頁
- 参照法条
- 建築基準法6条1項,建築基準法99条1項2号,同法施行令1条1号,刑法45条,刑法48条
論点40第45条刑法
原判決が、いわゆる「ひき逃げ」事件に関し、既になされた高等裁判所の判例および原判決後になされた右判例と同趣旨の最高裁判所の判例と相反する判断をしている場合と破棄理由。
裁判要旨車両等の運転者等が、交通事故を起しながらいわゆる「ひき逃げ」をした場合には、道路交通法第七二条第一項前段の救護等の義務違反の罪と同項後段の報告義務違反の罪とが成立し、両者は併合罪の関係に立つものと解すべきことは、当裁判所大法廷判決(昭和三七年(あ)第五〇二号、同三八年四月一七日宣告)の示すところである。してみると、これと同趣旨に出でた論旨引用の各高等裁判所の判例は正当として支持さるべきで、論旨は理由があり(原判決言渡当時においては、右大法廷判決はまだなされていなかつたのであるから、本件の場合が刑訴法第四〇五条第三号後段に当ることを妨げるものではない。)、原判決は刑訴法第四〇五条第三号、第四一〇条第一項本文により破棄を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和38年7月19日 昭和37(あ)1918
- 登載
- 集刑 第147号851頁
- 参照法条
- 道路交通法72条,道路交通法117条,道路交通法119条10号,刑法211条前段,刑法45条,刑訴法405条3号,刑訴法410条1項
論点41第45条刑法
一部有罪一部無罪の判決に対し全部について控訴の申立があり有罪部分ついて理由がなく無罪部分について第一審判決破棄の理由があるときの措置。
裁判要旨一部有罪(有期懲役刑)一部無罪の判決に対し、その全部について警察官から、有罪部分について被告人から控訴の申立があり、無罪部分について第一審判決を破棄すべき理由があつてこれを有期懲役刑に処するには、有罪部分について控訴の理由がない場合でも、全部について第一審判決を破棄し、刑法
第四五条〈併合罪〉、
第四七条〈有期拘禁刑の加重〉を適用して一個の有期懲役刑ををもつて処断すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和38年11月12日 昭和35(あ)2800
- 登載
- 刑集 第17巻11号2367頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法47条,刑訴法357条,刑訴法397条
論点42第45条刑法
誣告罪の罪数。
裁判要旨たとえ同一人をして刑罰の処分を受けしむる目的をもつて、同一の誣告事項を記載した書面であつても、時期及び作成名義を異にしてこれを二通作成し、各別異の犯罪捜査機関に提出して虚偽の申告をしたときは、その行為は二個の誣告罪にあたり、併合罪の規定を適用すべきものである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和36年3月2日 昭和35(あ)1102
- 登載
- 刑集 第15巻3号451頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法172条
論点43第45条刑法
刑法第四五条〈併合罪〉後段の確定裁判のあつたことを認定する証拠書類と刑訴第三〇五条による取調の要否。
裁判要旨刑法
四五条〈併合罪〉後段の確定裁判のあつたことを認定する証拠書類は、刑訴第三〇五条による取調をすることを要する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和36年11月28日 昭和28(あ)4375
- 登載
- 刑集 第15巻10号1774頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑訴法305条,刑訴法317条
論点44第45条刑法
一 適法な上告理由にあたらない事例
二 包括一罪と認められる事例
裁判要旨一 包括一罪として法令を適用したのに対し、右は併合罪であるとして判例違反を主張することは、自己に不利益な主張であつて適法な上告理由にあたらない。
二 被害者の子女を真実一流歌手として世に出しうる社会的地位背景なくその見込もないのに、その旨欺罔して金員を騙取しようと企て、種々術策を弄してその旨誤信させ、因つて右運動費等の名目で昭和三三年九月三〇日被害者の別宅で二万円、同年一〇月六日頃同本宅で一〇万円、同月一〇日頃同所で二万円、同月一三日頃同所で三万五千円、同月二四日頃同所で壱万円の各交付を受けてこれを騙取所為は、包括一罪を構成する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和35年6月16日 昭和35(あ)265
- 登載
- 集刑 第134号87頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法246条1項,刑訴法402条,刑訴法405条2号
論点45第45条刑法
刑法第四五条〈併合罪〉前段の併合罪につき懲役刑と罰金刑とが同法第四八条第一項によつて併科され罰金刑につき免訴すべき場合の判決破棄の範囲。
裁判要旨刑法
第四五条〈併合罪〉前段の併合罪中甲罪につき懲役刑が、乙罪につき罰金刑が各選択され、両者が同法第四八条第一項により併科され懲役および罰金の言渡があつた後、乙罪につき大赦があつたときは、罰金を言渡した部分のみを破棄すべく、全部を破棄すべきものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和35年5月6日 昭和27(あ)520
- 登載
- 刑集 第14巻7号861頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法48条1項,刑訴法411条5号
論点46第45条刑法
労働基準法第六二条違反の罪の罪数。
裁判要旨使用者が労働基準法第六二条に違反して、多数日にわたり多数の年少または女子労働者を深夜業に使用した場合には、特段の事情ある場合を除き、その使用日毎に各就業者各個人別に独立して同条違反の罪が成立するものと解すべく、これらを包括して一罪が成立するものとなすべきではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和34年7月2日 昭和33(あ)2714
- 登載
- 刑集 第13巻7号1026頁
- 参照法条
- 労働基準法62条1項,労働基準法119条1号,刑法45条
論点47第45条刑法
自動車操縦者の被害者救護義務違反と要保護者遺棄罪の成否。
裁判要旨自動車の操縦中過失に因り通行人に約三ケ月の入院加療を要する歩行不能の重傷を負わしめながら道路交通取締法、同法施行令に定める被害者の救護措置を講ずることなく、被害者を自動車に乗せて事故現場を離れ、折柄降雪中の薄暗い車道上まで運び、医者を呼んで来てやる旨申し欺いて被害者を自動車から下ろし、同人を同所に放置したまま自動車を操縦して同所を立ち去つたときは、道路交通取締法違反(被害者救護義務違反)罪のほか要保護者遺棄罪(刑法
第二一八条〈保護責任者遺棄等〉)が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年7月24日 昭和31(あ)4547
- 登載
- 刑集 第13巻8号1163頁
- 参照法条
- 道路交通取締法24条,道路交通取締法施行令67条,刑法218条,刑法45条
論点48第45条刑法
傷害致死後における死体遺棄の罪責。
裁判要旨身体傷害により人を死に致した後、さらに死体を遺棄するにおいては、傷害致死罪のほかに死体遺棄罪を構成する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和34年2月19日 昭和33(あ)742
- 登載
- 刑集 第13巻2号161頁
- 参照法条
- 刑法205条,刑法190条,刑法45条
論点49第45条刑法
同一旅館内での窃盗と強盗とが併合罪となる事例
裁判要旨同一旅館内において宿泊客の所有物を窃取した後、女中を脅迫して主人の所有物件を強取した場合は、窃盗罪と強盗罪との併合罪になると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年3月5日 昭和31(あ)3863
- 登載
- 刑集 第11巻3号989頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法235条,刑法236条
論点50第45条刑法
犯罪の軽重を判示しないことが違法でない一事例
裁判要旨法定刑が同一である三四個の併合罪につき法定の加重をする場合において、刑法
第四七条〈有期拘禁刑の加重〉、
第一〇条〈刑の軽重〉の適用を示しているときは、いずれの罪の犯情が最も重いかを判文に明示しなくても違法ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年11月5日 昭和32(あ)1903
- 登載
- 集刑 第122号43頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法47条,刑法10条,刑訴法335条1項
論点51第45条刑法
一 包括一罪と認むべき事例
二 包括一罪の公訴時効
裁判要旨一 医師で麻薬施用者として免許を受けている被告人が、昭和二三年六月一五日頃より同九月三〇日頃までの間五四回および昭和二六年八月一〇日頃より同年一〇月一六日頃までの間三五回にわたり、同一の麻薬中毒患者に対しその中毒症状を緩和する目的をもつて麻薬である塩酸モルヒネ注射八九本を施用した各所為は、それぞれ包括一罪であると解するのが相当である。
二 包括一罪の公訴時効は、その最終の犯罪行為が終つた日から進行する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和31年8月3日 昭和29(あ)180
- 登載
- 刑集 第10巻8号1202頁
- 参照法条
- 旧麻薬取締法(昭和23年法律123号)39条,旧麻薬取締法(昭和23年法律123号)57条,刑法45条,刑訴法253条
論点52第45条刑法
刀剣類の不法所持と殺人未遂は牽連犯か
裁判要旨厚判決が刀剣類の不法所持と殺人未遂との間には通常手段結果の関係にあるとはいえないから、本件短刀の不法所持と殺人未遂とを牽連犯と認めることはできないとして、これを併合罪として処断したのは正当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和31年7月4日 昭和29(あ)2250
- 登載
- 集刑 第114号75頁
- 参照法条
- 銃砲刀剣類等所持取締令2条,銃砲刀剣類等所持取締令26条1号,刑法199条,刑法203条,刑法45条,刑法54条
論点53第45条刑法
職業安定法第六三条第二号の罪と同法第六四条第一号の罪につき併合罪加重をなす場合と刑法施行法第三条第三項。
裁判要旨職業安定法第六三条第二号の罪と同法第六四条第一号の罪につき併合罪加重をなす場合には刑法施行法第三条第三項を適用すべきでない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年6月28日 昭和30(あ)4024
- 登載
- 刑集 第10巻6号949頁
- 参照法条
- 職業安定法63条2号,職業安定法64条1号,刑法施行法3条3項,刑法45条,刑法47条
論点54第45条刑法
一 貸金業等の取締に関する法律第一八条第一号〈労役場留置〉の罪の性質
二 営業犯の公訴時効
三 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律附則第一一項と憲法第一四条
裁判要旨一 貸金業等の取締に関する法律
第一八条第一号〈労役場留置〉の罪は営業犯である。
二 営業犯の公訴時効は最終の犯罪行為が終つた時から進行する。
三 刑罰法令は行為時法によるべきものであつて、所為出資の受入、預り近及び金利等の取締等に関する法律附則第一一項は貸金業等の取締に関する法律
第五条〈外国判決の効力〉違反の行為をした者に対しては、何人に対しても平等に適用せられ、何ら差別を設けていないのであるから、違憲の主張はその前提を欠き、所論は適法な上告理由とは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年10月25日 昭和31(あ)813
- 登載
- 刑集 第10巻10号1447頁
- 参照法条
- 貸金業等の取締に関する法律5条,貸金業等の取締に関する法律18条1号,貸金業等の取締に関する法律18条,出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律附則5項11項,刑訴法250条5号,刑訴法253条,刑法45条,出資の受入預り金及び金利等の取締等に関る法律附則11項,憲法14条
論点55第45条刑法
一 別個の所持の認められる一事例
二 所持罪における場所の変更と公訴事実の同一性
三 被告人の控訴趣意書に対する判断遺脱が刑訴第四一一条にあたらない一事例
裁判要旨一 かねて自宅に保管していた麻薬を持ち出し、これを二個に分割し、その一部を他人に交付し、残余の部分を留保して自宅外の場所に隠匿した場合には別個独立の所持罪が成立する。
二 麻薬所持の罪において起訴事実と認定事実との間に、所持の場所に多少の変更があつても、所持の目的物が同一である限り、その一事を以つて直ちに公訴事実の同一性が失われるとは解されない。
三 被告人の控訴趣意書中事実誤認を指摘するが如き口吩があつても、控訴の要旨は量刑過重に失するを不服とし刑の執行猶予を願うにあるときは、同被告人の弁護人の控訴趣意の量刑不当の主張に対する判断がなされている限り、右被告人の控訴趣意書に対する判断を遺脱した違法があつても、右違法は判決に影響がなく刑訴第四一一条にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年7月19日 昭和28(あ)2775
- 登載
- 刑集 第9巻9号1885頁
- 参照法条
- 旧麻薬取締法(昭和23年法律123号)3条1項,旧麻薬取締法(昭和23年法律123号)57条,刑法45条,刑訴法256条,刑訴法312条,刑訴法378条3号,刑訴法392条1項,刑訴法411条
論点56第45条刑法
暴行を加えた直後の脅迫行為と罪数
裁判要旨犯人が他人に対し暴行を加えた後、さらに別個の害悪を告知し脅迫行為をした場合において、たとえ、右脅迫が暴行行為の直後同一場所でなされたものであつても、暴行罪の外に併合罪の関係にたつ脅迫罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年11月1日 昭和28(あ)5372
- 登載
- 集刑 第110号79頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法208条,刑法222条1項
論点57第45条刑法
包括一罪と認められない一事例
裁判要旨被告人が単一の犯罪意思にもるものではなく、別個の犯罪意思にもとずき、犯罪の期間および場所を異にし別の共犯者とともに同一の犯罪構成要件に該当する数個の行為をしたときは、被害法益が同一であるからといつて一個の犯罪が成立するものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年10月18日 昭和28(あ)4883
- 登載
- 刑集 第9巻11号2245頁
- 参照法条
- 商標法34条1号,刑法45条前段
論点58第45条刑法
麻薬の譲受行為とその所持とが併合罪となる一事例
裁判要旨麻薬の譲受とその譲受けた麻薬の所持が、仮りに、所論のごとく、法律上牽連一罪であるとしても、本件では譲受行為が二回あり、且つ譲受行為が千葉市であり、その譲受けた麻薬が東京都内に運搬され、しかも、譲受けた被告人以外の他の被告人も参加して同都内において所持されたものであるから、譲受行為とは別に独立した所持行為があつたものとも解され、いずれにしても併合罪の存することが明白な案件であるから、刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和29年1月14日 昭和26(あ)2207
- 登載
- 集刑 第91号219頁
- 参照法条
- 麻薬取締法3条,刑法45条,刑訴法411条
論点59第45条刑法
被告人に不利益な主張であつて上告理由として許されない一事例
裁判要旨科刑上の一罪として認定された所為を併合罪にあたると主張する上告論旨は、被告人にとり不利益な主張であつて、上告理由として許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年10月19日 昭和29(あ)1156
- 登載
- 刑集 第8巻10号1596頁
- 参照法条
- 刑法54条1項,刑法45条,刑法47条,刑訴法351条
論点60第45条刑法
通帳を騙取した行為と右通帳を配給所へ提出して米穀を騙取した行為との関係
裁判要旨米穀通帳を騙取しこれを配給所へ提出し、係員を欺罔して米穀の配給を受けた場合、米穀通帳の詐欺罪のほかに米穀の詐欺罪が成立するのであつて、この二罪は併合罪の関係にあるものと解するのを相当とする。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年6月30日 昭和27(あ)1485
- 登載
- 刑集 第7巻6号1397頁
- 参照法条
- 刑法246条,刑法45条,刑法47条
論点61第45条刑法
刑訴法第四一一条にあたらない一事例―併合罪の一につき誤つて累犯加重をしたとき―
裁判要旨窃盗の犯罪事実の一につき累犯にあたらない場合に累犯加重をした違法があつても、他の犯罪事実につき適法に累犯加重がなされ、その事実を最も重しと認めて併合罪加重をした所定刑期範囲内で処断された趣旨が明であるときは、未だ右違法は刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年6月12日 昭和27(あ)278
- 登載
- 集刑 第82号735頁
- 参照法条
- 刑訴法411条,刑法56条,刑法57条,刑法45条
論点62第45条刑法
上告理由として不利益な主張となる場合の一例
裁判要旨窃盗の併合罪として認定された所為を窃犯等の防止及処分に関する法律
第二条第四号〈すべての者の国外犯 第百四十八条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪〉の常習窃盗罪にあたる所為であると主張する上告論旨は、被告人にとり不利益な主張であつて上告理由としては許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年1月29日 昭和27(あ)878
- 登載
- 刑集 第7巻1号124頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法45条,刑法47条,窃盗等ノ防止及処分ニ関スル法律2条
論点63第45条刑法
併合罪の関係にある確定判決を経ない他の罪を審理裁判することと憲法第三九条
裁判要旨併合罪の関係にある一部の罪について確定裁判がなされても、その既判力は他の部分の罪には及ばないし、右両者の罪は同一の犯罪ではなく別個の犯罪であつて、後者の罪を審理裁判したことは確定判決に判示された前者の罪につき再び審理裁判をしたものということはできないから、憲法第三九条に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和27年9月12日 昭和27(あ)2416
- 登載
- 刑集 第6巻8号1071頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法50条,刑訴法337条1号,憲法39条
論点64第45条刑法
一 麻薬中毒患者であるか否かの認定と鑑定の要否
二 麻薬施用の罪及び記録不作成の罪の罪数
裁判要旨一 麻薬中毒患者であるか否かの認定には所論のように特別の知識経験のある者の鑑定等を必要とするものではない。
二 第一審判決竝びに原判決が麻薬施用の罪及び記録不作成の罪について、その施用の都度又は記録不作成毎に別個独立の各罪が成立し包括一罪でない旨判示したのは正当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年8月21日 昭和25(あ)2445
- 登載
- 集刑 第67号103頁
- 参照法条
- 麻薬取締法39条,麻薬取締法42条1項,刑訴法165条,刑法45条
論点65第45条刑法
一 旧労働組合法第一条第二項の規定の趣旨
二 被告人三名の姦淫により致傷の結果を生ぜしめた行為の罪数
裁判要旨一 しかし旧労働組合法第一条第二項の規定は同条第一項の目的違反のためにした正当な行為についてのみ刑法第三五条の適用を認めたに過ぎず勤労者の団体交渉においても刑法所定の暴行罪又は脅迫罪にあたる行為が行われた場合にまでその適用があることを定めたものでないことは当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第三一九号、同二四年五月一八日大法廷判決、判例集三巻六号七七二頁以下参照)とするところであるから原判決には所論のような違法はない。
二 姦淫行為は被告人等各自の姦淫行為であるけれども、因つて生じた致傷の結果は被告人等中の何者かが被害者の処女膜に裂傷を与えたという単一の傷害の結果を発生させたことに帰するものであつて、被告人等三名各自の行為に因る三個の傷害でないこと明白である。しかるに、原判決は三個の強姦致傷罪成立し被告人三名各自が三個の併合罪の責を負うべきものと解したのは失当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月25日 昭和24(れ)1505
- 登載
- 集刑 第71号487頁
- 参照法条
- 旧労働組合法(昭和24年6月法律174号による改正前のもの)1条,刑法35条,刑法181条,刑法177条,刑法45条
論点66第45条刑法
包括一罪として起訴され併合罪または連続犯として起訴されたものと認められない一事例
裁判要旨公判請求書に公訴事実として引用された司法警察官の意見書に犯罪事実として単に被告人が実在しない架空人員をもつて一定の期間、一定の主要食糧を不正に受配した旨の記載があるだけで、犯罪の回数の記載もなければ犯意係属とも記載されておらず、また右公判請求書若しくは意見書には犯罪明細表の添附がないばかりでなく記録添附の始末書、聴取書等にも右意見書に記載されている程度の犯罪事実の記載しかない場合には、右公訴にかかる犯罪は、併合罪または連続犯として起訴されたものではなく包括一罪として起訴されたものと認めるのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月25日 昭和24(れ)2991
- 登載
- 集刑 第71号525頁
- 参照法条
- 旧刑訴法288条,旧刑訴法290条,旧刑訴法291条,刑法45条,改正前の刑法55条
論点67第45条刑法
数個の恐喝罪と暴行罪(懲役刑選撰)とを併合加重する場合の法令適用の判示方
裁判要旨数個の恐喝罪と一個の暴行罪(懲役刑選択)とを併合加重するにあたつては、何れの罪が最も重いかを明示説明しなくても、必ずしも違法でない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年10月2日 昭和26(あ)4561
- 登載
- 刑集 第6巻9号1100頁
- 参照法条
- 刑法249条,刑法208条,刑法45条,刑法47条,刑法10条,刑訴法335条
論点68第45条刑法
一 生年月日についての知識と伝聞証言
二 兒童をして数名の男子と売淫させた行為と罪数
裁判要旨一 所論証人の証言は、自己の認識そのものとして供述せられていること記録上明らかである。そして人は自己又は年令の極めて近接した兄弟姉妹の生月日については、その幼小の頃にあつては父母その他のものから教えられることによつてのみ、はじめてこれが知識を得るものであること勿論であるが、その成長するに従い、近親者相亘の密接な生活関係、殊に日常の家庭生活等において集積される自己の体験によりその知識の真実性に関し独自の確信を有するに至るものであることも亦多言を要しないところであるから、かかる知識はその直接体験による認識というを妨ぐるものではない。されば右証言が刑訴三二四条二項の適用を受くべき伝聞証言たることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠くものであり、上告適法の理由とならない。
二 「被告人は自宅において昭和二四年九月二〇日から同月二二日迄の間に兒童であるAに客として男子五名を斡旋し右五名と売淫させ以つて兒童に淫行をさせる行為をした」と判示した第一審判決は所論被告人の所為を一体として兒童福祉法三四条一項六号にいわゆる兒童に淫行をさせる行為をしたものに該当すると判示しているのである。この事は判文上明白であり、同判決には所論のような違法はない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和26年9月6日 昭和25(あ)2589
- 登載
- 刑集 第5巻10号1895頁
- 参照法条
- 刑訴法324条2項,刑訴法320条,刑訴法321条1項3号,兒童福祉法34条1項6号,兒童福祉法40条1項,刑法45条
論点69第45条刑法
一 公判調書における証拠調をした書類の表示方と「各聴取書」との表示の意義
二 甘藷澱粉の恐喝罪と之を運搬した食糧管理法違反罪との関係
裁判要旨一 しかし本件記録中には、聴取書として原本たる多くの聴取書の外に、所論指摘の聴取書謄本同抄本が編綴されており、謄本又は抄本の原本たる聴取書は編綴されていない。そして、原審第二回公判調書には、ただ単に「各聴取書」とのみ記載され、「各聴取書原本」と記載されていないのであるから、右「各聴取書」の中には前示各聴取書の謄本及び抄本も含まれていると解するのを相当とする。
二 甘藷澱粉の恐喝はその性質上通常必ずしも甘藷澱粉を食糧管理法の条項に違反して運搬する手段としてなされるものということはできない上、甘藷澱粉の恐喝とそれを食糧管理法に違反して不法に運搬する罪とは、犯罪構成要件も異り、被害法益も異つているから、原判決が本件恐喝罪と食糧管理法違反の罪とを併合罪として処断したことは正当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年9月25日 昭和26(れ)1431
- 登載
- 集刑 第53号345頁
- 参照法条
- 旧刑訴法343条1項3号,旧刑訴法60条,刑法45条,刑法249条,食糧管理法9条
論点70第45条刑法
刑法第四五条〈併合罪〉後段の併合罪と同第五〇条〈余罪の処理〉の適用を判示することの要否
裁判要旨記録に徴すれば、被告人には別罪につき所論指摘の裁判が確定して居り、原判決認定の各罪はその裁判確定前に犯されたものであること明らかであるが、原判決は右確定裁判のあることを明らかにしていないけれども、未だ裁判を経ない本件各罪について処断したのは、刑法
第四五条〈併合罪〉後段
第五〇条〈余罪の処理〉を実際上適用した結果に外ならず、また右各法条の適用は必ずしもこれを判決に示す要はないのであるから、原判決に右各法条の適用を掲げないことは違法とするに足りない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年9月18日 昭和26(れ)1231
- 登載
- 集刑 第53号61頁
- 参照法条
- 刑法45条後段,刑法50条,旧刑訴法360条1項
論点71第45条刑法
一 被告人の在延する公判廷において口頭で罰条を追加する場合に特に被告人に通知手続を執ることの要否
二 犯罪事実認定の資料となる医師の診断書の採証要件
三 一個の強盗行為の手段として甲、乙に対してそれぞれ暴行を加え、同人等に各傷害を与えた場合の罪責
裁判要旨一 被告人が在延する公判廷における口頭の罰条追加の場合には裁判所が特に被告人に対しこれが通知の手続を執る必要のないことは多言を要しないし、また、犯罪事実認定の資料となるべき医師の診断書は刑訴法第三二一条、第三二六条の要件あるを以て足り(本件では同第三二六条の同意あること記録上明白である)、同第二七八条、刑訴規則第一八三条所定の事実を記載するの必要ないこと勿論であるから、刑訴法第四一一条を適用すべきものとも認められない。
二 一個の強盗行為の手段として甲、乙に対しそれぞれ暴行を加え同人等に各傷害を与えた場合は、甲、乙に対する各強盗傷人罪の併合罪となる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和26年8月9日 昭和26(あ)1140
- 登載
- 刑集 第5巻9号1730頁
- 参照法条
- 刑訴法312条,刑訴法321条,刑訴法411条,刑訴法326条,刑訴法278条,刑訴規則183条,刑法240条前段,刑法45条前段
論点72第45条刑法
一 二回に収受した占領物資を所持する罪の罪数
二 被告人に不利益な主張と上告の適否
三 数回の取引に対して一括して統制額超過の謝礼を為した行為と罪数
四 違法の認識と犯意の成立
五 違法の認識を欠いていたという主張と旧刑訴法第三六〇条第二項
裁判要旨一 原判決はその事実摘示(第一審判決の記載引用)において、被告人Aが二回に亘つて占領軍兵士某から占領軍物資を収受して不法に所持した旨を判示しているが、二個の占領軍物資不法収受罪乃至同所持罪を認定したのではなく、包括して一個の同所持罪を認めたものであることがその判文上からおのづからわかる。論旨は原判決が二個の犯罪を認めたものと誤解し、誤解を前提として原判決を非難するものであるから、採用することができない。(なお二個の犯罪を認むべきであるという主張は被告人にとつて不利益な主張であるから適法な上告理由とならない)
二 原判決は(その引用する第一審判決第五の一において)、被告人Aが(イ)二回に亘りBより鮮魚等を統制額にて買受けるに際り杉下駄二百足を謝礼名義にて超過支払をした事実及び(ロ)三回に亘り右Bより鮮魚等を統制額にて買受けるに際り協力金又は謝礼金名義にて金二万円を超過支払をした事実を認定している、各一回の取引毎に各一個の犯罪があつたものとしたのではなく(イ)の二回の取引につき杉下駄二百を贈与したとき並に(ロ)の三回の取引につき現金二万円を交付したときそれぞれ各一罪が成立したものとした趣旨が窺われる。
三 所論のように進駐軍の一兵士が本件物資は占領軍の払下品であるという証明書を交付したからとて、それだけで昭和二二年政令第一六五号
第一条第一項〈国内犯〉にいはゆる「公に認められた場合に」にあたるものでないことは論をまたずして明かである。仮りに被告人が所論のような事情によつて公に認められた場合に該当すると信じたとしても、それは結局違法の認識を欠いていたというに過ぎない。しかるに違法の認識を欠いたからとて、犯意の成立を妨げるものでもなく、罪責を左右するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第二〇二号同年七月一四日大法廷判決、昭和二四年(れ)第二二七六号二五年一一年二八日第三小法廷決定)に徴して明らかである。
四 進駐軍兵士が占領軍の払下品であるという証明を交付したから被告人は本件物件は払下品と思つて買受けたので無罪の判決を願うとの主張は前記のように結局違法の認識を欠いていたという主張に外ならないから、旧刑訴法第三六〇条第二項にいわゆる法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年8月28日 昭和26(れ)485
- 登載
- 集刑 第51号1101頁
- 参照法条
- 旧刑訴法409条,旧刑訴法411条,旧刑訴法360条2項,刑法45条,刑法38条3項,物価統制令3条
論点73第45条刑法
一個の通帳に基く数個の詐欺受配行為と罪数
裁判要旨刑法
第五五条〈削除〉が削除された後においては、いわゆる犯意の継続があつたからとて、それだけで数個の行為を一罪として処断しなければならないという理由はない。本件についてみれば、原審が認定しているように、各受配の度毎にそれぞれ別個の欺罔行為が認められる以上、たとえそれが一個の配給通帳に基き、継続した意図の下にくりかえされたものであつても、各受配行為ごとに一個の詐欺罪が成立するものといわなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年5月8日 昭和26(れ)131
- 登載
- 刑集 第5巻6号1012頁
- 参照法条
- 刑法55条(削除前),刑法45条,刑法246条1項
論点74第45条刑法
強盗予備罪と強盗罪が併合罪となる一事例
裁判要旨被告人が甲乙と強盗と共謀し被害者方に侵入しようとしたが強盗の目的を達せずその予備をした後、さらに乙、丙と右同一被害者方に強盗に押し入ることを共謀しその目的を遂げた場合は、強盗予備罪と強盗罪の併合罪となる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年4月3日 昭和25(れ)1852
- 登載
- 刑集 第5巻5号804頁
- 参照法条
- 刑法236条,刑法237条,刑法45条前段
論点75第45条刑法
判例違反が判決に影響を及ぼさない一事例
裁判要旨被告人が一箇の恐喝行為によつて同時に二人の被害者から全品を奪取した所為に対し刑法第五四条第一項前段、第一〇条を適用しなかつた点に、たとえ判例違反があるとしても、右犯行と併合罪の関係にある他の恐喝罪の刑に併合罪の加重をして処断している以上、右判例違反は判決に影響を及ぼさないことが明らかである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年12月25日 昭和25(あ)1189
- 登載
- 刑集 第5巻13号2613頁
- 参照法条
- 刑訴法405条,刑訴法410条1項,刑法249条,刑法54条1項,刑法45条前段,刑法47条
論点76第45条刑法
一 重要物資輸送証明規則及び指定物資輸送証明規則と限時法
二 指定物資輸送証明規則の改正により同規則第一条にいわゆる「指定物資」からいか油を除外したことと刑訴法第四一一条第五号にいわゆる「刑ノ廃止」
三 いか油を油糧需給調整規則第三条に違反して譲渡した行為と、これを重要物資輸送証明規則による出荷証明書なくして輸送を委託した行為との関係
裁判要旨一 尤もその後、本件物資たる「いか油」は原判決宣告後たる昭和二五年四月一日総理府令、法務府令、外務省令、大蔵省令、文部省令、厚生省令、農林省令、通商産業省令、運輸省令、郵政省令、電気通信省令、労働省令、建設省令、経済安定本部令第六号により、新令(指定物資輸送証明規則)
一条〈国内犯〉にいわゆる「指定物資」から除外され、従つて新令二条一項の適用を受けないことになつたので、ここに刑の廃止があつた如く見える。しかし、この新令自体を廃止した昭和二六年三月三一日前同府令省令本部令第一号も、その附則二項において「この命令施行前にした行為に対する罰則の適用についてはこの命令施行後も、なお従前の例による」との規定を設けている。して見ると、旧令も新令もいわゆる限時法的性格を有するものと解するを相当とするから、昭和二五年四月一日の前記命令が本件物資たる「いか油」を新令一条にいわゆる「指定物資」から除外した際に、「罰則の適用については、なお従前の例による」と云うような附則を設けなかつたからといつて、立法者の意思がこの場合に限り「刑ノ廃止」の効果を生ぜしめようとするにあつたとは到底考えられない、(なお所論油糧需給調整規則の改廃についても同様のことがいえるばかりでなく、「いか油」を右規則の適用から除いた所論農林省令第二三号の附則二項は「この省令施行前にした行為に対する罰則の適用については、この省令施行後もなお従前の例による」と規定している)。以上の次第であるから本件は刑訴法四一一条五号にいわゆる判決後「刑ノ廃止」があつた場合にはあたらないものといわなければならない。
二 所論確定判決のあつた事件は、被告人がその生産にかかる「いか油」を油糧需給調整規則三条に違反してA、Bに自宅において譲渡した事実について、臨時物資需給調整法一条、四条に該当するものとして起訴され、右事実について有罪の判決を言い渡されて確定したものである。ところが、本件は被告人が右「いか油」を前記A、B方まで輸送するため、重要物資輸送証明規則三条に違反して法定の出荷証明書をなくして、その輸送方をC株式会社に委託した事実について、右は臨時物資需給調整法一条、四条に該当するものとして起訴された案件である。従つて、右両者は別個の犯罪を構成するものであるばかりでなく、その基礎たる事実関係においても同一性を認め難く、科刑上一罪として取り扱われる場合にも該当しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和26年10月12日 昭和25(あ)893
- 登載
- 刑集 第5巻11号2214頁
- 参照法条
- 臨時物資需給調整法1条,臨時物資需給調整法4条,重要物資輸送証明規則(昭和22年9月20日総理庁令、外務、内務、大蔵、司法、文部厚生、農林、商工、運輸、逓信、労働省令1号)1条,重要物資輸送証明規則(昭和22年9月20日総理庁令、外務、内務、大蔵、司法、文部厚生、農林、商工、運輸、逓信、労働省令1号)3条1項,重要物資輸送証明規則附則2項,重要物資輸送証明規則附則3項,指定物資輸送証明規則(昭和24年6月20日総理庁令外務、大蔵、法務庁令、文部、厚生、農林、通商産業、運輸、逓信労働、建設省令1号)1条,指定物資輸送証明規則(昭和24年6月20日総理庁令外務、大蔵、法務庁令、文部、厚生、農林、通商産業、運輸、逓信労働、建設省令1号)2条1項,刑訴法411条5号,刑訴法337条1号,油糧需給調整規則(昭和22年12月29日農林省令98号)1条,油糧需給調整規則(昭和22年12月29日農林省令98号)3条1項,刑法45条
論点77第45条刑法
一 公然猥褻罪の罪数
二 近接して行われた同一場所における同一内容の公然猥褻罪の公訴事実の特定
三 刑法第五五条〈削除〉の廃止と意思継続にかかる行為の罪数
裁判要旨一 前後七回、各異る多数の観客に対して、露出した局部を観覧に供すれば七個の独立した公然猥褻罪が成立する。
二 引き続いた二日間にわたる計八回の同一場所における同一内容の演芸会に際し、うち一回を除いて他の七回は、いずれも露出した局部を観覧に供し公然猥褻の行為をしたという同一内容の七個の事実を起訴するにあたつては、各犯行の時間、回次まで摘示しなくても、一括して日時、場所、方法、回数を明らかにすれば、各犯罪事実の特定に欠けるところはない。
三 刑法
第五五条〈削除〉が廃止された後は、同一罪名に触れる数個の行為が、いわゆる意思継続があるというだけでは、一罪として処断しなければならないということはない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和25年12月19日 昭和25(れ)1291
- 登載
- 刑集 第4巻12号2577頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法175条,刑法55条(廃止前),刑訴法256条
論点78第45条刑法
一 公務員甲、乙に各別に贈賄する意見をもつて二口の金包を何人に贈与するかを指示せず同時に同場所でその旨を告げ甲に交付した場合と乙に対する贈賄罪の成立―右の場合乙が收賄したとき贈賄者に対する擬律
二 第一審において有罪とせられた二個の事実の中一個の事実を無罪としながら、なお第一審判決と同一の刑を科した場合と不利益変更の禁止
裁判要旨一 被告人が二千五百円と千五百円の二口の金包を、何れの金包を何人に贈与するかを指示せず、同時に同場所で判示Aを通じBに交付したとしても、右Bに対する金品の交付行為をもつてしては未だ同人に対する贈賄行為の成立あるに止り、Cに対してはさらに情を知つた右Bが判示の金品をCに交付したときはじめてその実行行為があつたものというべきである。然らば被告人のBに対する贈賄行為と、Cに対する贈賄行為とは別個の贈賄行為であつて、原判決がこれを併合罪の関係にあるものとして処断したのは相当である。
二 旧刑訴法第四〇三条にいわゆる原判決の刑より重い刑を言渡すというのは判決主文における科刑を原判決にくらべて重くするということゝは当裁判所の判例とするところである。(昭和二四年(れ)第一四八四号同年一〇月一日第二小法廷判決参照)そうして論旨引用の各判例もいずれもこれと同旨に出でたものである。されば原判決が第一審において有罪とせられた(イ)(ロ)の各贈賄事実の中(ロ)の事実を無罪としながらなお第一審判決と同一の刑を被告人に科しても旧刑訴法第四〇三条に違脊しないこと明らかである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和25年11月10日 昭和25(れ)757
- 登載
- 刑集 第4巻11号2248頁
- 参照法条
- 刑法198条,刑法197条,刑法45条前段,刑法54条1項前段,旧刑訴法403条
論点79第45条刑法
制限速度を超過した状態で継続して自動車を運転した場合の二地点における速度違反の行為が併合罪の関係にある別罪を構成するとされた事例
裁判要旨制限速度を超過した状態で継続して普通乗用自動車を運転し、二地点を進行した場合、右二地点間の距離が約一九・四キロメートルも離れており、その間道路状況等も変化している本件事案(判文参照)においては、右二地点における速度違反の行為は併合罪の関係にある別罪を構成する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成5年10月29日 平成3(あ)602
- 登載
- 刑集 第47巻8号98頁
- 参照法条
- 道路交通法4条1項,道路交通法22条1項,道路交通法118条1項2号,道路交通法施行令1条の2第1項,刑法45条
論点80第45条刑法
罪数に関する法令適用の誤りがあるが,刑訴法411条を適用すべきものとは認められないとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成28年3月23日 平成26(あ)1870
- 登載
- 集刑 第319号301頁
- 参照法条
- 刑法45条前段,刑訴法411条
論点81第45条刑法
労働基準法32条1項(週単位の時間外労働の規制)違反の罪と同条2項(1日単位の時間外労働の規制)違反の罪との罪数関係
裁判要旨労働基準法32条1項(週単位の時間外労働の規制)違反の罪が成立する場合においても,その週内の1日単位の時間外労働の規制違反について同条2項違反の罪が成立し,両罪は併合罪の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成22年12月20日 平成22(あ)148
- 登載
- 刑集 第64巻8号1312頁
- 参照法条
- 労働基準法32条1項,労働基準法32条2項,労働基準法119条1号,刑法45条前段
論点82第45条刑法
1 児童ポルノを,不特定又は多数の者に提供するとともに,不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合の罪数
2 児童ポルノであり,かつ,刑法175条〈わいせつ物頒布等〉のわいせつ物である物を,不特定又は多数の者に販売して提供するとともに,不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持した行為が,全体として一罪とされた事例
裁判要旨1 児童ポルノを,不特定又は多数の者に提供するとともに,不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
7条4項〈定義〉の児童ポルノ提供罪と同条5項の同提供目的所持罪とは併合罪の関係にある。
2 児童ポルノであり,かつ,刑法
175条〈わいせつ物頒布等〉のわいせつ物である物を,不特定又は多数の者に販売して提供するとともに,不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持した場合,わいせつ物販売と児童ポルノ提供,わいせつ物販売目的所持と児童ポルノ提供目的所持はそれぞれ観念的競合の関係に立つから,わいせつ物販売と同販売目的所持が包括して一罪を構成すると認められるときには,全体が一罪となる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成21年7月7日 平成20(あ)1703
- 登載
- 刑集 第63巻6号507頁
- 参照法条
- (1,2につき)児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条4項,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条5項 (1につき)刑法45条 (2につき)刑法54条1項,刑法175条
論点83第45条刑法
児童福祉法34条1項6号違反の児童に淫行をさせる罪と児童買春・児童ポルノ等処罰法7条3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例
裁判要旨被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては,児童福祉法34条1項6号違反の児童に淫行をさせる罪と児童買春・児童ポルノ等処罰法7条3項の児童ポルノ製造罪は,観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成21年10月21日 平成19(あ)619
- 登載
- 刑集 第63巻8号1070頁
- 参照法条
- 児童福祉法34条1項6号,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項,刑法54条1項前段,刑法45条前段,少年法(平成20年法律第71号による改正前のもの)37条
論点84第45条刑法
不正アクセス行為の禁止等に関する法律8条1号〈他の法令の罪に対する適用〉の罪と私電磁的記録不正作出罪との罪数関係
裁判要旨不正アクセス行為の禁止等に関する法律
3条〈国民の国外犯〉所定の不正アクセス行為を手段として私電磁的記録不正作出の行為が行われた場合であっても,同法8条1号の罪と私電磁的記録不正作出罪とは,牽連犯の関係にはない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成19年8月8日 平成19(あ)720
- 登載
- 刑集 第61巻5号576頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項,刑法161条の2第1項,不正アクセス行為の禁止等に関する法律3条1項,不正アクセス行為の禁止等に関する法律3条2項1号,不正アクセス行為の禁止等に関する法律8条1号
論点85第45条刑法
併合罪関係にある複数の罪のうちの1個の罪のみでは死刑又は無期刑が相当とされない場合にその罪について死刑又は無期刑を選択することの可否
裁判要旨併合罪関係にある複数の罪のうちの1個の罪のみでは死刑又は無期刑が相当とされない場合であっても,死刑又は無期刑を選択する結果科されないこととなる刑に係る罪を,これをも含めて処罰する趣旨で考慮し,上記1個の罪について死刑又は無期刑を選択することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成19年3月22日 平成18(あ)2455
- 登載
- 刑集 第61巻2号81頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法46条,刑訴法333条1項
論点86第45条刑法
刑法46条2項〈併科の制限〉により刑を科さないとされた公訴事実に係る未決勾留日数の算入
裁判要旨併合罪関係にある数罪を併合審理して刑を言い渡す場合,刑法
46条2項〈併科の制限〉により刑を科さないとされた公訴事実に係る未決勾留日数を非勾留事実に係る罪に対する無期懲役刑及び罰金刑にそれぞれ算入することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成18年8月31日 平成17(あ)2113
- 登載
- 刑集 第60巻6号489頁
- 参照法条
- 刑法21条,刑法45条前段,刑法46条2項,刑法48条1項
論点87第45条刑法
併合罪関係にある数罪を併合審理して1個の主文による刑を言い渡す場合と刑法21条にいう「本刑」
裁判要旨併合罪関係にある数罪を併合審理して1個の主文による刑を言い渡す場合,その刑が刑法21条にいう「本刑」に該当し,この理は,その刑が懲役刑と罰金刑を併科するものであるときでも異ならない。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年8月30日 平成17(あ)2535
- 登載
- 刑集 第60巻6号457頁
- 参照法条
- 刑法21条,刑法45条前段,刑法48条1項
論点88第45条刑法
1 出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項〈外国判決の効力〉所定の行為が反復累行された場合の罪数
2 貸金業の規制等に関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)47条2号〈有期拘禁刑の加重〉,11条1項〈死刑〉に違反して無登録で貸金業を営む行為と出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項の制限超過利息を受領する行為との罪数関係
3 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条1項〈刑の軽重〉の犯罪収益等の取得につき仮装する行為と出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項の制限超過利息を受領する行為とが併合罪の関係にあるとされた事例
裁判要旨1 出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)
5条2項〈外国判決の効力〉所定の行為は,反復累行されても,特段の事情のない限り,個々の契約又は受領ごとに一罪が成立し,併合罪となる。
2 貸金業の規制等に関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)
47条2号〈有期拘禁刑の加重〉,
11条1項〈死刑〉に違反して無登録で貸金業を営む行為と,業として金銭の貸付けを行う中で個別的に出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)
5条2項の制限超過利息を受領する行為とは,刑法
54条1項〈一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理〉の観念的競合又は牽連犯ではなく,併合罪の関係にある。
3 出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)
5条2項の制限超過利息の取得につき継続的に事実を仮装する意図で,架空人名義の銀行預金口座を入手し,同口座に元金及び利息を振り込ませることにより,上記架空人が犯罪収益等を取得したものであるように仮装したなど判示の事実関係の下においては,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律
10条1項〈刑の軽重〉に該当する上記行為と,個別的に上記制限超過利息を受領する行為とは,刑法
54条1項前段の観念的競合ではなく,併合罪の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成17年8月1日 平成16(あ)2723
- 登載
- 刑集 第59巻6号676頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項,出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項,貸金業の規制等に関する法律2条1項,貸金業の規制等に関する法律3条1項,貸金業の規制等に関する法律11条1項,貸金業の規制等に関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)47条2号,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条1項
論点89第45条刑法
恐喝の手段として監禁が行われた場合の罪数関係
裁判要旨恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても,両罪は,牽連犯の関係にはない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成17年4月14日 平成16(あ)2077
- 登載
- 刑集 第59巻3号283頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項,刑法220条,刑法249条
論点90第45条刑法
自動車内において覚せい剤を所持した罪と同車内にとび口を隠して携帯した罪とが併合罪の関係にあるとされた事例
裁判要旨自動車内において覚せい剤を所持した罪と同車内にとび口を隠して携帯した罪とは,覚せい剤がセカンドバッグに入れて持ち歩いていたものであり,とび口が同車内に積み置いていたものであることなど判示の事実関係の下においては,併合罪の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成15年11月4日 平成12(あ)1345
- 登載
- 刑集 第57巻10号1031頁
- 参照法条
- 刑法45条,刑法54条1項,覚せい剤取締法41条の2第1項,軽犯罪法1条2号
論点91第47条刑法
確定裁判を経ない数個の犯罪が併合罪の関係にある併合審判の要否。
裁判要旨確定裁判を経ない数個の犯罪が併合罪の関係にある場合でも、必ずしもこれを併合審判しなければならないものではないのであつて、原番がその措置に出なかつたことをもつて違法ということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和35年3月1日 昭和34(あ)2139
- 登載
- 集刑 第132号307頁
- 参照法条
- 刑法34条,刑法47条,刑法50条
論点92第47条刑法
一 飼犬が所有者の事実上の支配を及ぼし得ない地域に出遊した場合とその所持
二 法定刑(懲役刑)を同じくするが種類を異にする数個の犯罪を併合加重する場合と法令適用の判示方
裁判要旨一 飼犬が時に所有者の事実上の支配を及ぼし得べき地域外に出遊した場合でも、その習性として所有者の許に帰来するのを常としているものは、特段の事情の生じないかぎり、所有者の所持を離れたものということはできない。
二 窃盗、傷害(懲役刑選択)、恐喝の三罪につき併合罪の加重をする場合、いずれの罪を最も重いと認めて加重をしたかを明示しなくとも、必ずしも違法ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年7月16日 昭和30(あ)2908
- 登載
- 刑集 第11巻7号1829頁
- 参照法条
- 刑法235条,刑法47条,刑法10条,刑訴法335条1項
論点93第47条刑法
併合罪の関係にある事件を分離して審判とすることの適否
裁判要旨併合罪の関係にある二個以上の犯罪について、各別に公訴の提起があり、各別個の事件として、同一裁判所に繋属する場合においても、これを併合審理するか否かは、裁判所が各場合における諸般の事情を斟酌して適当に裁定するところに委ねられているのである。そして刑法はその
第四七条〈有期拘禁刑の加重〉乃至
第五三条〈拘留及び科料の併科〉において、併合罪が同時に審判せられる場合の刑の加重併科等に関して規定すると共に、それが各別に裁判せられた場合における刑の執行に関しても特に規定を設け以て併合罪が各別個の事件として審判せられるか否かにより被告人に不利益を来さないように用意しているのである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和26年1月18日 昭和25(あ)2074
- 登載
- 集刑 第39号517頁
- 参照法条
- 刑法47条,刑法53条,刑訴法313条
論点94第47条刑法
一 昭和二〇年勅令第五四二号の合憲性と麻薬取締規則の合憲性
二 麻薬取締規則第二条の注意と塩酸モルヒネ
三 麻薬取締規則の違反と併合罪の規定の適用
裁判要旨一 昭和二〇年勅令第五四二号が旧憲法第八条の緊急勅令として法律と同一の効力を有したこと、且つそれが後に国会の承諾を得て引続き今日に至るまで有効に存続してあるものであることは、当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第二七九号同二三年六月二三日大法廷判決)の示す通りである。従つてその委任に基いて制定せられた麻薬取締規則が有効であることも亦、右の判例に徹して明かである。「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」
第一条ノ〈国内犯 この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。〉二は右の当然の法理を念のために明らかにしただけであつて、この法律によつて初めて麻薬取締規則が有効とされたのではない。
二 麻薬取締規則第二条は麻薬の種類を定めたものであつて、原判決の判示する本件取引の目的物たる塩酸モルヒネが同条にいう麻薬であることは自明のことである。
三 刑法
第四七条〈有期拘禁刑の加重〉の規定は、麻薬取締規則違反に適用がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和25年11月21日 昭和25(れ)1298
- 登載
- 刑集 第4巻11号2364頁
- 参照法条
- 憲法31条,昭和20年勅令542号,大日本帝国憲法8条,麻薬取締規則(昭和21年厚生省令25号),麻薬取締規則(昭和21年厚生省令25号)2条,麻薬取締規則(昭和20年厚生省令25号),刑法47条
論点95第47条刑法
1 刑法47条〈有期拘禁刑の加重〉の法意
2 刑訴法495条2項2号にいう「上訴審において原判決が破棄されたとき」の意義
裁判要旨1 刑法
47条〈有期拘禁刑の加重〉は,併合罪のうち2個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは,同条が定めるところに従って併合罪を構成する各罪全体に対する統一刑を処断刑として形成し,その範囲内で各罪全体に対する刑を決することとした規定であって,併合罪の構成単位である各罪について個別的な量刑判断を行うことは,法律上予定されていない。
2 刑訴法495条2項2号にいう「上訴審において原判決が破棄されたとき」とは,当該上訴審における破棄判決が確定した場合をいう。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成15年7月10日 平成15(あ)60
- 登載
- 刑集 第57巻7号903頁
- 参照法条
- 刑法21条,刑法47条,刑訴法495条2項
論点96第48条刑法
一 米国軍票を羽田空港到着の航空機により密輸入しようとして同税関内で発見された場合に支払手段の無許可輸入財は成立するか
二 一部破棄無罪、一部上告破棄を言渡すべき事例
裁判要旨一 米国軍票を密輸入しようとして着衣等に隠匿して羽田空港税関内外貨申告所を通過しても、同税関内旅具検査所において職員に発見されたときは、未だ外国為替及び外国貿易管理法第四五条、第七〇条第一九号の無許可輸入罪は成立しない。
二 刑法
第四八条二項〈罰金の併科等〉の規定の適用が除外されている関税法違反の罪並びに外国為替並びに外国貿易管理法違反の罪につき、第一審判決が各別に罰金を言渡し、控訴審がこれを支持して、控訴を棄却した場合において、部分を限らない上告の申立を受けた上告審が、後者は犯罪を構成しないとするときは、第一審判決中当該部分およびこれを支持した原判決の判断部分を破棄し、当該部分の公訴事実につき被告人を無罪とし、前者の罪については上告を棄却すべきものである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年3月14日 昭和29(あ)3810
- 登載
- 刑集 第12巻3号556頁
- 参照法条
- 旧関税法(明治32年法律61号)76条,旧関税法(明治32年法律61号)82条ノ4,外国為替及び外国貿易管理法45条,外国為替及び外国貿易管理法70条19号,外国為替管理令19条,昭和27年政令127号(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約3条に基く行政協定の実施に伴う外国為替管理令等の臨時特例に関する政令)4条2項,刑法48条2項
論点97第48条刑法
刑訴第四一一条にあたらない一事例
裁判要旨昭和二四年法律第四三号による改正後の酒税法第六六条の解釈を誤り懲役及び罰金を併科した場合の罰金刑について刑法第四八条第二項を適用した違法があつても、刑訴第四一一条を適用すべきものとは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年4月9日 昭和26(あ)2343
- 登載
- 刑集 第7巻4号837頁
- 参照法条
- 酒税法(昭和24年法律43号による改正後のもの)60条,酒税法(昭和24年法律43号による改正後のもの)66条,刑法48条,刑訴法411条
論点98第48条刑法
法令の適用の誤りがあつても刑訴法第四一一条に当らない一事例
裁判要旨第一審判決の認定した六つの犯罪事実中第一乃至第四の所為は罰金等臨時措置法施行期日前の行為であるから、新旧両法の定める罰金刑を比照した上、軽い旧法を適用すべきであるにかかわらず、第一審判決が重い新法を適用して処断したのは違法たるを免れない。しかし前記六つの犯罪の中前の四つにつき旧法を適用するとしても、後の二つについては新法が適用されるのであるから、被告人に科せらるべき罰金は、刑法
四八条二項〈罰金の併科等〉により、各罪につき定めた罰金の合算額即ち十万四千円以下において処断せられることとなる。しかるに第一審判決及びこれを維持した原判決は被告人を罰金五千円に処したのであるから、これは本件犯情に照らして刑の量定が甚だしく不当であるとは言えず、刑訴四一一条により原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年4月14日 昭和26(あ)4004
- 登載
- 集刑 第78号445頁
- 参照法条
- 罰金等臨時措置法2条,罰金等臨時措置法3条,刑法48条2項,刑訴法411条
論点99第48条刑法
刑法第四八条第二項〈罰金の併科等〉の規定が解除される場合にれを適用した違法と刑訴法第四一一条
裁判要旨所論酒税法第六〇条一項二項の規定を通用して被告人に罰金と懲役とを科するに当り罰金についても刑法第四八条二項を適用した原判決は所論酒税法第六六条の規定の解釈をあやまつて右刑法の規定を適用した違法あるものといわなければならぬ。しかしかかる酒税法の解釈に関する論旨は明らかに刑訴第四〇五条に定める上告理由たる事由にあたらないし、また、右の違法の主張は被告人に対し却つて不利益な結果を生ずるから、被告人のための本件上告としてはこれを以て原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認め難い、それ故同第四一一条を適用すべきものとも認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年12月18日 昭和25(あ)629
- 登載
- 集刑 第58号361頁
- 参照法条
- 昭和24年法律43号による改正前の酒税法60条,刑法48条2項,刑訴法405条,刑訴法411条
論点100第48条刑法
一 酒税法の犯則者に対して刑罰を科する趣旨と刑法第四八条第二項の適用の排除
二 昭和二四年法律第四三号による改正前の酒税法第六六条と懲役及び罰金を併科する場合の刑法第四八条の適用の有無
三 酒税法の犯則者に対して当該税務官吏の告発は犯罪の処罰要件か――右告発についての証拠説明の要否
裁判要旨一 従来酒税法でその犯則者に対して刑罰を科するおもなる趣旨は犯則によつて国に財政上の損失を生ぜしめないことを担保するにあるから、その刑罰も純然たる刑事犯と異り犯人の責任年齢、心神の状態、法の不知等の主観的条件を顧慮せずに各犯罪行為を客観的、数理的に考察して、罰金科料等の金刑だけを脱税額の倍数を以て決定し自由裁量を許さない建前を執つたのである。されば犯則者には例外なく刑法第四八条二項の規定を適用しない旨規定されていたのである(明治二九年法律第二八号酒税法第三一条、昭和一五年法律第二五号酒税法第六六条参照)。
二 昭和二四年法律第四三号酒税
第六六条〈酌量減軽〉「
第六〇条第一項〈共同正犯〉………ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法………
第四八条第三項〈罰金の併科等〉………ノ規定ヲ適用セズ但シ
第六〇条第二項………ノ場合ニ於テ懲役ノ刑ニ処スルトキハ此ノ限ニ在ラズ」の規定は同法の犯則者に対して懲役と罰金科とを併する場合にも罰金刑については従前通り各犯罪行為ごとに罰金刑を科すべく刑法第四八条二項の規定を適用しない趣旨と解するのを相当とする。
三 酒税法の犯則者に対して当該税務官吏から告発をなすことは訴訟要件ではあるが、酒税法違反罪の構成要件ではないから、受訴裁判所は告発が適法になされているか否かを審査しなければならぬことはいうまでもないところであるが、裁判所は公判廷において告発に関する書類被告人に読みきけ、その意見を聴く等これが証拠調をしたり、告発のありたることを判決に示しその証拠を説明すべき法律上の義務は裁判所に存しない。されば論旨は当該税務官吏のなす告発を犯罪の処罰要件と誤解せるに基くものであつてとるをえない。そしてかかる論旨は明らかに刑訴第四〇五条に定める上告理由たる事由にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和25年10月12日 昭和25(あ)692
- 登載
- 刑集 第4巻10号2073頁
- 参照法条
- 昭和24年法律43号による改正前の酒税法60条,昭和24年法律43号による改正前の酒税法66条,刑法48条2項,刑訴法338条4号,刑訴法335条,刑訴法405条
論点101第48条刑法
1 第1審判決と控訴審判決の自判部分とがいずれも懲役刑と罰金刑とを刑法48条1項により併科している場合に控訴審判決の刑が刑訴法402条にいう「原判決の刑より重い刑」に当たるかどうかを判断する方法
2 刑訴法402条にいう「原判決の刑より重い刑」に当たらないとされた事例
裁判要旨1 第1審判決と控訴審判決の自判部分とが,いずれも懲役刑と罰金刑とを刑法48条1項により併科している場合に,控訴審判決の刑が刑訴法402条にいう「原判決の刑より重い刑」に当たるかどうかを判断するに当たっては,各判決の主文を全体として総合的に考慮すべきである。
2 第1審の「被告人を懲役1年6月及び罰金7000円に処する。その罰金を完納することができないときは,金7000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。」との判決に対する控訴審の「被告人を懲役1年2月及び罰金1万円に処する。その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。」との判決の刑は,刑訴法402条にいう「原判決の刑より重い刑」に当たらない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年2月27日 平成17(あ)1680
- 登載
- 刑集 第60巻2号240頁
- 参照法条
- (1,2につき)刑訴法402条 (1につき)刑法48条1項
論点102第49条刑法
一 関税法による没収および追徴の性質
二 関税法の没収および追徴の規定の趣旨
三 想像的競合の関係にある数罪の処断と、没収または追徴の附加
裁判要旨一 昭和二七年法律第一九八号による改正後の関税法第八三条による没収および追徴は、国家が同法規に違背して輸入したる貨物またはこれに代るべき価額が犯則者の手に存在することを禁止し、もつて密輸入の取締を厳に励行せんとする趣旨に出たものであつて、被告人をして不正の利益を獲得せしめざるがため、これを剥奪することを本旨とするものではない。
二 右同条の規定は、刑法
第一九条〈没収〉および
第一九条の二〈追徴〉の規定に対する特則であつて、いわゆる必要的没収または追徴を定めたものである。
三 想像的競合の関係にある数罪が刑法第五四条第一項前段の規定により、その最も重い刑をもつて処断される場合においては、その最も重い罪について没収または追徴を附加すべき旨の規定がないときでも、その他の罪につきその旨の規定が存する限り、これを附加することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年7月19日 昭和29(あ)3590
- 登載
- 刑集 第11巻7号1996頁
- 参照法条
- 憲法29条,憲法31条,関税法(昭和27年法律198号による改正後のもの)75条,関税法(昭和27年法律198号による改正後のもの)76条ノ2,関税法(昭和27年法律198号による改正後のもの)83条,刑法19条,刑法19条ノ2,刑法10条,刑法49条,刑法54条,刑法256条2項
論点103第50条刑法
強盗殺人事件等に関する無期懲役の確定裁判のある被告人が,同事件の13日後に犯した被殺者1名の住居侵入,強盗殺人の事案(確定裁判の余罪)につき,無期懲役の量刑が維持された事例
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成24年12月17日 平成23(あ)494
- 登載
- 集刑 第309号213頁
- 参照法条
- 刑法9条,刑法50条,刑法240条,刑訴法411条2号
論点104第52条刑法
一 ポツダム宣言の受託に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律第三項の趣旨。
二 B軍法会議において併合罪につき処断せられた者に対し、刑法第五二条〈一部に大赦があった場合の措置〉による刑を定める裁判所。
裁判要旨一 ポツダム宣言の受託に伴い発する命令に関する件(昭和二〇年勅令第五四二号)の廃止に関する法律三項は「この法律は、勅令五四二号に基く命令により法律若しくは命令を廃止し、又はこれらの一部を改正した効果に影響を及ぼすものではない)と規定しており、この規定は、同法二項によつて失効する命令が法令を廃止しまたは、改正したものである場合には、右命令が失効しても、法令の改廃に由来する既成の効果を動かさないという趣旨と解すべきである。
二 B軍法会議において併合罪につき処断せられた者に対し、刑法
第五二条〈一部に大赦があった場合の措置〉による刑を定める裁判所は東京地裁である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和36年11月30日 昭和36(す)265
- 登載
- 刑集 第15巻10号1795頁
- 参照法条
- ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律(昭和27年法律81号)2項,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律2項,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律3項,ポツダム宣言の受託に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律(昭和27年法律81号)3項,刑法52条,旧刑訴法15条,昭和21年5月17日勅令第278号陸軍軍法会議法海軍軍法会議法(以下略)廃止ニ関スル件(昭和22年5月17日政令52号による改正前のもの)
論点105第52条刑法
裁判権ないし管轄権なくしてなされた刑法第五二条による刑を定める決定に対し法定の期間経過後になされた即時抗告
裁判要旨刑法
第五二条〈一部に大赦があった場合の措置〉による刑を定める決定が裁判権ないし管轄権をなくしてなされたものであつても、右決定に対する即時抗告が法定の期間経過後になされたものである以上、不適法のものとして棄却を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和33年2月11日 昭和31(し)37
- 登載
- 刑集 第12巻3号355頁
- 参照法条
- 刑法52条,旧刑訴法375条,旧刑訴法459条,旧刑法469条4号,旧刑法466条1項,昭和21年勅令第278号(陸軍運法会議法海軍軍法会議法及第1復員裁判所及第2復員裁判所廃止ニ関スル件)附則5項,昭和27年法律81号(右勅令廃止法律)
論点106第52条刑法
一 旧刑訴事件につき刑法第五二条の規定により刑の変更をする場合は新旧何れの刑訴によるべきか
二 右の場合高等裁判所がした刑の変更決定に対し新刑訴により異議の申立が許されるか
三 本人と弁護人との双方に原決定謄本が送達された場合における不服申立期間の起算日
裁判要旨一 旧刑訴事件につき刑法第五二条の規定により刑の変更をする場合は、刑訴施行法第二条により旧刑訴第三七五条の規定によるべきである。
二 右の場合、高等裁判所が誤つて新刑訴第三五〇条を適用して決定をしても、これに対して異議の申立は許されない。
三 本人と弁護人との双方に原決定の謄本が日を異にして送達された場合における不服申立の期間は、本人に送達がされた時から起算すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年11月18日 昭和27(し)77
- 登載
- 刑集 第6巻10号1213頁
- 参照法条
- 刑法52条,刑訴施行法2条,旧刑訴法375条,旧刑訴法50条,新刑訴法350条,新刑訴法349条2項,新刑訴法428条,刑訴応急措置法18条,刑訴規則34条
論点107第52条刑法
記録中に起訴状が現存しない場合における公訴提起の立証
裁判要旨公訴の規定は書面による要式行為であるが、それは一旦適式されれば足るのであつて必ずしも常にかかる書類の現存することを絶対的要件とするものではない。そうして書面に公訴の提起その他公判期日外の訴訟手続の有無及び適否については刑訴
第五二条〈一部に大赦があった場合の措置〉の制限なく他の資料による立証をもとにより妨げられるものではないと解すべきである。然るに原判決挙示の各書類を綜合すれば本件被告人に対し被告人及び犯罪事実を特定した適式な起訴状による公訴の提起があつたこと明らかである。なお記録編綴の所論起訴状謄本の写はこれによつて公訴の提起がなされたものではなく唯単に本件公訴提起手続が適法になされたことの証明資料として添付されたものに過ぎない。以上の次第であるから本件につき適法な公訴の提起のあつたことを認めた原判決の判断は正当である。されば所論憲法違反の論旨は既にその前提において理由のないこと明らかである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年2月6日 昭和25(あ)860
- 登載
- 集刑 第40号239頁
- 参照法条
- 刑法52条,刑法256条1項
論点108第54条刑法
一 迅速な裁判の保障との関係で公訴提起の遅延がいまだ著しいとまでは認められないとされた事例
二 胎児に病変を発生させ出生後死亡させた場合における業務上過失致死罪の成否
三 刑訴法二五三条一項にいう「犯罪行為」の意義
四 被害者が受傷後期間を経て死亡した場合における業務上過失致死罪の公訴時効
五 結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合の公訴時効
裁判要旨一 公訴提起が事件発生から相当の長年月を経過した後になされたとしても、複雑な過程を経て発生した未曾有の公害事犯であつてその解明に格別の困難があつたこと等の特殊事情があるときは、迅速な裁判の保障との関係において、いまだ公訴提起の遅延が著しいとまではいえない。
二 業務上の過失により、胎児に病変を発生させ、これに起因して出生後その人を死亡させた場合も、人である母体の一部に病変を発生させて人を死に致したものとして、業務上過失致死罪が成立する。
三 刑訴法二五三条一項にいう「犯罪行為」には、刑法各本条所定の結果も含まれる。
四 業務上過失致死罪の公訴時効は、被害者の受傷から死亡までの間に業務上過失傷害罪の公訴時効期間が経過したか否かにかかわらず、その死亡の時点から進行する。
五 結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合につき公訴時効完成の有無を判定するに当たつては、その全部を一体として観察すべきであり、最終の結果が生じたときから起算して同罪の公訴時効期間が経過していない以上、その全体について公訴時効は未完成である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和63年2月29日 昭和57(あ)1555
- 登載
- 刑集 第42巻2号314頁
- 参照法条
- 憲法37条1項,刑法211条前段(昭和43年法律61号による改正前のもの),刑法54条1項,刑訴法250条,刑訴法253条1項
論点109第54条刑法
一 有線電気通信法二条一項にいう「符号」に当たるとされた事例
二 マジツクホンと称する電気機器を電話回線に取り付けた行為と有線電気通信妨害罪及び偽計業務妨害罪の成否並びにその罪数関係
裁判要旨一 日本電信電話公社の電話回線を通じ、発信側電話の度数計器を作動させるため、受信側から送出される応答信号は、有線電気通信法二条一項にいう「符号」に当たる。
二 マジツクホンと称する電気機器を電話回線に取り付け、応答信号の送出を妨げるとともに、発信側電話の度数計器の作動を不能にした行為は、有線電気通信妨害罪(昭和五九年法律第八七号による改正前の有線電気通信法二一条)及び偽計業務妨害罪に当たり、両罪は観念的競合の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年2月3日 昭和58(あ)612
- 登載
- 刑集 第40巻1号1頁
- 参照法条
- 有線電気通信法2条1項,有線電気通信法21条(昭和59年法律87号による改正前のもの),刑法54条1項前段,刑法233条
論点110第54条刑法
一 幇助罪の個数
二 幇助罪が数個成立する場合と刑法五四条一項にいう一個の行為
裁判要旨一 幇助罪の個数は、正犯の罪のそれに従つて決定される。
二 幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法五四条一項にいう一個の行為によるものであるか否かは、幇助行為それ自体についてみるべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和57年2月17日 昭和55(あ)515
- 登載
- 刑集 第36巻2号206頁
- 参照法条
- 刑法54条1項,刑法62条1項,覚せい剤取締法41条1項1号
論点111第54条刑法
一 大阪市屋外広告物条例(昭和四九年四月一日大阪市条例三二号による改正前のもの)二条一項〈すべての者の国外犯〉、四条三項〈公務員の国外犯〉、一六条一号〈拘留〉と憲法二一条、三一条、九四条、四一条との関係
二、観念的競合の関係にある二つの罪のうち一つについて刑の廃止があるが原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされた事例
裁判要旨一 大阪市屋外広告物条例(昭和四九年四月一日大阪市条例第三二号による改正前のもの)
二条一項〈すべての者の国外犯〉、
一六条一号〈拘留〉は憲法二一条、四条三項、三一条、九四条、四一条に違反しない。
二 被告人に対する本件公訴事実のうち、被告人が大阪市条例によりはり紙の表示が禁止された物件である電柱にビラ五枚を表示した点については、原判決後の法令により刑の廃止があった場合にあたるが、右事実は法定の除外事由がないのに大阪市長の許可を受けないではり紙を表示した事実と観念的競合の関係にあるものとして起訴されており、かつ、これら両罪の法定刑は同一であること、被告人に対する原判決の科刑(罰金二、〇〇〇円、換刑一、〇〇〇円一日、一年間執行猶予)は、法定の除外事由がないのに大阪市長の許可を受けないではり紙を表示した罪だけに対する科刑としても不当に重いとは認められないことを考慮すると、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和50年5月29日 昭和49(あ)1377
- 登載
- 集刑 第196号517頁
- 参照法条
- 大阪市屋外広告物条令(昭和49年4月1日大阪市条例32号による改正前のもの)2条1項,大阪市屋外広告物条令(昭和49年4月1日大阪市条例32号による改正前のもの)4条3項,大阪市屋外広告物条令(昭和49年4月1日大阪市条例32号による改正前のもの)16条1項,憲法21条,憲法31条,憲法41条,憲法94条,刑訴法337条2号,刑訴法411条5号,刑法54条1項前段
論点112第54条刑法
一、民訴法四二〇条一項六号または七号に基づく再審の訴と同項但書
二、民訴法四二〇条二項後段の再審の要件が具備されたと認められた事例
三、牽連犯の公訴時効
四、民訴法四二〇条一項六号または七号に基づく再審の訴と同法四二四条四項
裁判要旨一、民訴法四二〇条一項六号または七号を再審事由とする再審の訴が同条一項但書により許されないのは、再審原告が、再審の訴の対象となつた判決に対する上訴により、右再審事由のほか、同条二項の要件を主張したか、または右要件の存在を知りながらこれを主張しなかつた場合に限られる。
二、偽造された文書が判決の証拠となつた場合において、右偽造自体につき有罪の判決がなされていなくとも、それと科刑上一罪の関係にある公正証書原本不実記載・同行使の罪に対し有罪判決が確定したときは、右文書偽造行為につき、民訴法四二〇条二項後段の再審の要件が具備されるに至つたものと解すべきである。
三、牽連犯において、目的行為がその手段行為に対する時効期間の満了前に実行されたときは、両者の公訴時効は、不可分的に、最も重い刑を標準に最終行為の時より起算すべきである。
四、再審の訴が民訴法四二〇条一項六号または七号に基づいて提起された場合において、同条二項の要件が判決確定後に具備されたときは、同法四二四条四項にいう「再審ノ事由カ判決確定後ニ生シタルトキ」にあたると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年5月30日 昭和44(オ)210
- 登載
- 民集 第26巻4号826頁
- 参照法条
- 民訴法420条1項6号,民訴法420条1項7号,民訴法420条1項但書,民訴法420条2項,民訴法424条3項4項,刑法54条1項後段,刑訴法250条,刑訴法253条1項
論点113第54条刑法
無免許運転教唆罪と道路交通法七五条所定の運行管理義務違反の罪との罪数
裁判要旨道路交通法七五条所定の車両等の運行を直接管理する地位にある者が、当該業務に関し、車両等の運転者に帯し無免許運転を教唆し、よって被教唆者をして無免許運転をするに至らせた場合には、無免許運転教唆罪と道路交通法七五条所定の運行管理義務違反の罪とが成立し、両者は観念的競合の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和46年9月28日 昭和45(あ)1282
- 登載
- 刑集 第25巻6号798頁
- 参照法条
- 道路交通法64条,道路交通法75条1項1号,道路交通法118条1項1号,道路交通法119条1項12号(昭和45年法律86号による改正前のもの、同法律による改正後は118条1項3号の2),刑法54条1項,刑法61条1項
論点114第54条刑法
刑法一九七条一項〈収賄、受託収賄及び事前収賄〉の罪と公職選挙法二〇〇条二項、二四九条の罪とが一所為数法の関係にあるとされた事例
裁判要旨地方公共団体の議会の議員が、公職選挙法一九九条三項に規定する会社から、その職務に関し賄賂を収受する趣旨および同議会議員の選挙に関し寄附を受ける趣旨で、現金の供与を受けた場合には、刑法
一九七条一項〈収賄、受託収賄及び事前収賄〉の罪および公職選挙法二〇〇条二項、二四九条の罪が成立し、両者は一所為数法の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和46年12月2日 昭和43(あ)1859
- 登載
- 刑集 第25巻9号1041頁
- 参照法条
- 刑法197条1項,刑法54条1項,公職選挙法199条3項,公職選挙法200条2項,公職選挙法249条
論点115第54条刑法
法定刑が同一である数個の罪が一所為数法の関係にある場合における法令適用の判示方法
裁判要旨法定刑が同一である数個の罪が一所為数法の関係にある場合には、法令適用の判示として、単に刑法五四条一項前段、一〇条を示しただけで、そのいずれの罪の刑が最も重いかを明示しないでも、必ずしも違法とはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和45年11月26日 昭和45(あ)687
- 登載
- 刑集 第24巻12号1699頁
- 参照法条
- 刑法54条1項前段,刑法10条
論点116第54条刑法
監禁罪の手段として行なわれた暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条〈国内犯〉所定の暴行脅迫と同法違反の罪の成否
裁判要旨監禁罪の手段として行なわれた暴力行為等処罰ニ関スル法律
第一条〈国内犯〉所定の暴行脅迫は監禁罪に吸収され、それと別個に同法違反の罪を構成するものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和42年4月27日 昭和41(あ)3101
- 登載
- 刑集 第21巻3号470頁
- 参照法条
- 暴力行為等処罰ニ関スル法律1条,刑法208条,刑法220条,刑法222条,刑法54条1項
論点117第54条刑法
一 指定商品を「コニヤツク」として登録されている商標を和製の「ブランデー」に使用する行為の擬律
二 商標法第七八条違反罪の罪数
裁判要旨一 商標が「コニヤツク」を指定商品として登録されている場合に、これを和製の「ブランデー」に使用する行為は、指定商品に類似する商品についての登録商標の使用として商標法第三七条第一号により商標権の侵害とみなされるものではなく、指定商品に登録商標を使用したものとして同法第七八条の商標権を侵害する行為にあたる
二 商標法第七八条の商標権を侵害する犯行は、それが継続して行なわれたときは、登録商標一個ごとに包括一罪となり、また、その行為が、別個の登録商標を表示するラベルが二個貼付されている空瓶にその内容を詰めかえる方法により行なわれたときは、観念的競合の関係に立つと解すべきである
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和41年6月10日 昭和40(あ)762
- 登載
- 刑集 第20巻5号429頁
- 参照法条
- 商標法4条1項11号,商標法6条,商標法27条2項,商標法37条1号,商標法78条,商標法2条3項,商標法78条,刑法54条1項前段
論点118第54条刑法
観念的競合犯の公訴時効
裁判要旨一個の行為が数個の罪名に触れる場合における公訴の時効期間算定については、各別に論ずることなく、これを一体として観察し、その最も重い罪の刑につき定めた時効期間によるのを相当とする。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和41年4月21日 昭和40(あ)1318
- 登載
- 刑集 第20巻4号275頁
- 参照法条
- 刑法54条1項前段,刑訴法250条,公職選挙法(昭和37年法律112号による改正前)253条
論点119第54条刑法
公職選挙法違反罪において一個の行為にして法定外文書の頒布につき単純一罪を、金銭供与申込につき数罪を構成する場合の適条。
裁判要旨被告人の本件所為中、法定外選挙運動文書の頒布は単純一罪を、各供与申込は被申込人ごとに一罪を構成し、頒布罪と供与申込罪とは一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから、刑法
第五四条第一項〈一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理〉前段により、結局全部一罪として処断すべき場合に該当し、この点に関する第一、二審の判示は正当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年9月10日 昭和40(あ)611
- 登載
- 集刑 第156号381頁
- 参照法条
- 公職選挙法142条,公職選挙法221条,公職選挙法243条3号,刑法54条1項,刑法10条
論点120第54条刑法
一 公職選挙法第二二一条第一項第一号の「供与の申込罪」
二 立候補届出前に戸別訪問をなし、その際金品等の供与又は供与の申込をなした所為に対する適条。
裁判要旨一 公職選挙法第二二一条第一項第一号の供与申込罪は、同号所定の目的をもつて相手方に対し、金品等を供与する意思を表示し、該意思が相手方に到着することにより成立するものであつて、右供与の意思表示は明示たることを要せず、その意思あるものと認められる金品等提供の方法でこれをなすことを妨けず、又右意思表示の到達とは、相手方自信が直接これを受けて了知する場合は勿論、相手方において了知し得べき客観的状態に置かれたときもこれに包含されるものと解すべきである。
二 立候補届出前に個別訪問をなし、その際金品等の供与又は供与の申込をなしたときは、戸別訪問と事前運動並びに供与又は供与の申込は一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であり、右戸別訪問は包括一罪であるから、結局刑法第五四条第一項前段、第一〇条により全部一罪として最も重い供与又は供与の申込罪の刑に従い処断すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和36年5月26日 昭和35(あ)2643
- 登載
- 刑集 第15巻5号871頁
- 参照法条
- 公職選挙法221条1項1号,公職選挙法129条,公職選挙法138条,公職選挙法239条,刑法54条,刑法10条
論点121第54条刑法
犯人蔵匿罪の罪数
裁判要旨同一事件につき同一人を蔵匿し、かつ、隠避させたときは包括一罪として処断すべく、また、同一事件であつても、数人の犯人を一個の行為で蔵匿しまたは隠避させたときは、一個の行為で数個の罪名に触れるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和35年3月17日 昭和34(あ)1880
- 登載
- 刑集 第14巻3号351頁
- 参照法条
- 刑法103条,刑法54条1項前段
論点122第54条刑法
一 騒擾罪の成立と共同意思
二 騒擾罪における多衆の意義
三 右共同意思の意義
四 騒擾罪における暴行の意義
五 騒擾罪と他の罪名に触れる暴行脅迫
六 騒擾罪における暴行又は脅迫と認められる場合
七 右罪における共同意思の内容
裁判要旨一 騒擾罪は、多衆が集合して暴行または脅迫をなすによつて成立するが、その暴行または脅迫は、集合した多衆の共同意思に出たものであることを要する。
二 右多衆であるためには一地方における公共の平和、静謐を害するに足る暴行、脅迫をなすに適当な多人数であることを要する。
三 騒擾罪の成立に必要な共同意思は、多衆全部間における意思の連絡ないし相互認識の交換までは必ずしもこれを必要とせず、事前の謀議、計画、一定の目的があることも、また当初から存在することも必要でなく、多衆集合の結果惹起せられることのあり得べき多衆の合同力による暴行脅迫の事態の発生を予見しながら、あえて騒擾行為に加担する意思があれば足り、必ずしも確定的に具体的な個々の暴行脅迫の認識を要するものではない。
四 騒擾罪における暴行は、物に対する有契力の行使を含む。
五 騒擾罪の成立要素である暴行、脅迫は、他の罪名に触れない程度のもので足り、その暴行、脅迫が他の罪名に触れる場合には、その行為は一面騒擾罪を成立せしむると同時に他の罪名に触れるものと解すべきである。
六 騒擾罪は、群集による集団犯罪であるから、その暴行又は脅迫は集合した多衆の共同意思に出たもの、いわば集団そのものの暴行又は脅迫と認められる場合であることを要するが、その多衆すべての者が現実に暴行脅迫を行うことは必要でなく、群集の集団として暴行脅迫を加えるという認識のあることが必要なのである。
七 右の共同意思は、多衆の合同力を恃んで自ら暴行又は脅迫をなす意思ないしは多衆をしてこれをなさしめる意思と、かかる暴行又は脅迫に同意を表し、その合同力に加わる意思とに分たれ、集合した多衆が前者の意思を有する者と後者の意思を有する物で構成されているときは、その多衆の共同意思があるものとなるのである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和35年12月8日 昭和33(あ)2082
- 登載
- 刑集 第14巻13号1818頁
- 参照法条
- 刑法106条,刑法54条
論点123第54条刑法
強盗強姦未遂と強盗殺人との競合
裁判要旨婦女を強姦した上所持品を強取しようと決意し、まずその前頸部を扼して失神させ被害者の自転車を隠す等の行為に出で、強姦の点は未遂に終つた後即時犯行の発覚をおそれて殺意を生じ殺害した場合は、刑法
第二四〇条〈強盗致死傷〉後段、
第二四一条〈強盗・不同意性交等及び同致死〉前段、
第二四三条〈未遂罪〉、
第五四条第一項〈一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理〉前段を適用すべきものである
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和33年6月24日 昭和32(あ)3259
- 登載
- 刑集 第12巻10号2301頁
- 参照法条
- 刑法240条,刑法241条,刑法243条,刑法54条1項
論点124第54条刑法
職業安定法第六四条第一号(第三二条第一項〈時効の期間〉違反)と労働基準法第一一八条の罪(第六条〈刑の変更〉違反)との関係
裁判要旨業として、求人依頼者に職人等をあつ旋し、依頼者より手数料を受領する行為は、一個の行為にして職業安定法第六四条第一号の罪(
第三二条第一項〈時効の期間〉違反)と労働基準法第一一八条の罪(
第六条〈刑の変更〉違反)との二個の罪名に触れる
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和33年6月19日 昭和32(あ)3274
- 登載
- 刑集 第12巻10号2236頁
- 参照法条
- 職業安定法64条,職業安定法32条,労働基準法118条,労働基準法6条,刑法54条1項
論点125第54条刑法
動労基準法第一一八条(第六条〈刑の変更〉違反)の罪と、職業安定法第六三条第二号の罪とが想像的競合となる事例
裁判要旨業として、同一の婦女を公衆衛生又は公衆道徳上有害な売淫婦の業に就かせる目的で、婦女に売淫させることを業としている者に接客婦として就職を斡旋し、雇主から紹介手数料として金員を受領し利益を得たときは、一個の行為にして労働基準法一一八条(
六条〈刑の変更〉違反)の罪と職業安定法六三条二号の罪との二個の罪名に触れる場合に当る
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年5月6日 昭和30(あ)3483
- 登載
- 刑集 第12巻7号1297頁
- 参照法条
- 労働基準法6条,労働基準法118条,職業安定法63条2号,刑法54条1項
論点126第54条刑法
一個の道路交通取締法違反(居眠り運転)行為と二個の刑法第二一一条にあたる行為とがそれぞれ想像的競合犯の関係にある場合とその擬律
裁判要旨一個の道路交通取締法違反(居眠り運転)行為と二個の刑法第二一一条にあたる行為とがそれぞれ想像的競合犯の関係にある本件の場合には、刑法
第五四条第一項〈一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理〉前段
第一〇条〈刑の軽重〉を適用し一罪としてその最も重い刑に従い処断すべきものである
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和33年4月10日 昭和32(あ)2377
- 登載
- 刑集 第12巻5号877頁
- 参照法条
- 刑法10条,刑法54条1項前段,刑法211条,道路交通取締法7条1項,道路交通取締法2項3号,道路交通取締法28条1号
論点127第54条刑法
商法(昭和一三年法律第七二号による改正後のもの)第四八九条(会社財産を危くする罪)第一号の罪と刑法第一五七条の罪(公正証書原本不実記載罪)とは刑法第五四条第一項前段の関係に立ちうるか
裁判要旨商法(昭和一三年法律第七二号による改正後のもの)第四八九条(会社財産を危くする罪)第一号の罪と刑法第一五七条の罪(公正証書原本不実記載罪)とは、共に成立し、両者は刑法第五四条第一項前段の関係に立ちうる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和33年3月27日 昭和28(あ)1870
- 登載
- 集刑 第123号805頁
- 参照法条
- 刑法157条,刑法54条1項,商法489条1号
論点128第54条刑法
一 道路交通取締法違反(無謀操縦)と業務上過失致死の各事実が公訴事実の同一性を欠く一事例
二 道路交通取締法違反(無謀操縦)罪と業務上過失致死罪との間に牽連関係乃至一所為数法の関係が存しない場合
裁判要旨一 本件における道路交通取締法違反(無謀操縦)の事実と業務上過失致死の事実とは、公訴事実としては別個の事実であつて、公訴事実の同一性を認むべきではない。
二 本件における道路交通取締法違反(無謀操縦)の罪と業務上過失致死罪とは別個独立の犯罪であつて、右両者の間には牽連関係ないし一所為数法の関係は存しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年3月17日 昭和30(あ)2676
- 登載
- 刑集 第12巻4号581頁
- 参照法条
- 道路交通取締法28条1号,道路交通取締法7条1項,道路交通取締法2項,刑法54条1項,刑法211条,刑訴法256条,刑訴法312条1項
論点129第54条刑法
いわゆる想像的競合犯中の一部を無罪と認める場合その判断を判決理由に示すことの要否
裁判要旨いわゆる想像的競合犯中の一部を無罪と認める場合には、判決の主文においてその言渡をなすべきではないけれども、理由中でその判断を示すことは必要である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年9月24日 昭和32(あ)1083
- 登載
- 集刑 第120号507頁
- 参照法条
- 刑法54条,刑訴法44条,刑訴法335条,刑訴法336条
論点130第54条刑法
一 強盗傷人とならない一事例
二 牽連犯の要件
裁判要旨一 前夜岡山県下で強盗を行つて得た賍物を舟で運搬し、翌晩神戸で陸揚げしようとする際巡査に発見され、逮捕を免れるため暴行を加え、これを傷害した所為は、強盗傷人ではなく、強盗と公務執行妨害、傷害との罪が成立する。
二 牽連犯が成立するためには犯人が主観的に数罪の一方を他方の手段または結果の関係において実行したというだけでは足りず、その数罪間にその罪質上通常手段結果の関係が存在することを必要とする。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和32年7月18日 昭和31(れ)16
- 登載
- 刑集 第11巻7号1861頁
- 参照法条
- 刑法240条,刑法238条,刑法236条,刑法95条,刑法204条,刑法54条
論点131第54条刑法
殺意ある者が犯した強姦致死の擬律
裁判要旨死亡の結果につき故意を有し、暴行を以つて婦女を姦淫し因つて死に致した所為は強姦致死罪および殺人の罪名に触れるものとする。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年10月25日 昭和31(あ)1219
- 登載
- 刑集 第10巻10号1455頁
- 参照法条
- 刑法177条,刑法181条,刑法199条,刑法54条1項
論点132第54条刑法
一 上告申立をした原審弁護人がその資格で提出した上告趣意書の効力
二 上告趣意書提出期間後に上告審の弁護届を提出した原審弁護人が右期間内に提出した上告趣意書の効力
三 刑法第九五条〈公務執行妨害及び職務強要〉と鉄道営業法第三八条との関係
裁判要旨一 自ら上告申立をした原審弁護人が上告趣意書提出期間内にその資格で上告趣意書を提出した場合でも、右上告趣意は審理の対象とさるべきものである。
二 上告趣意書提出期間内に、原審弁護人が、その資格で上告趣意書を提出した場合でも、裁判の時まで上告審の弁護届が追完されたときは、右上告趣意は拒否さるべきではなく、審理するを相当する。
三 公務員たる鉄道係員(駅助役)の執務中、同係員の脅迫してその職務の執行を妨害した場合には、一個の行為にして刑法第九五条と鉄道営業法第三八条との二個の罪名に触れるものとして、重き前者の刑を以つて処断すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和29年7月7日 昭和24(れ)1028
- 登載
- 刑集 第8巻7号1052頁
- 参照法条
- 旧刑訴法379条,旧刑訴法423条,旧刑訴法41条1項,旧刑訴法42条,刑法54条,刑法95条,鉄道営業法38条
論点133第54条刑法
一 刑法第二五八条〈公用文書等毀棄〉にいわゆる「公務所ノ用ニ供スル文書」にあたる事例
二 封印破毀罪と公文書毀棄罪とは牽連犯となるか
裁判要旨一 収税官吏が所得税法反則事件につきその必要ありと認めて差し押えた帳簿書類は、公文書毀棄罪にいわゆる公務所の用に供する文書にあたる。
二 封印破毀罪と公文書毀棄罪とはいわゆる牽連犯にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年7月24日 昭和27(あ)1647
- 登載
- 刑集 第7巻7号1638頁
- 参照法条
- 刑法96条,刑法258条,刑法54条1項
論点134第54条刑法
一 人を逮捕し、引き続き監禁した場合の擬律
二 監禁罪が成立するために要する脅迫の程度
三 監禁の動機目的と監禁罪の成否
四 同時に同一場所に数人を監禁した行為と罪数
五 憲法ならびに労働組合法施行前の労働組合の団体交渉と刑法第三五条
六 権利を実行する行為が違法とならない要件
七 逮捕監禁の所為が単純一罪として起訴されているとき、監禁の事実のみを有罪とする場合の判示方 ―逮捕の点についても説示することを要するか―
八 いわゆる人民裁判による判決の履行のために監禁することは適法か
裁判要旨一 人を不法に逮捕し引き続き監禁した場合には、刑法
第二二〇条第一項〈逮捕及び監禁〉の一罪が成立する。
二 脅迫による監禁罪が成立するためには、その脅迫は被害者をして一定の場所から立ち去ることを得しめない程度のものでなければならない。
三 監禁罪は、暴行によると脅迫によるとを問わず、他人を一定の場所の外に出ることができなくした場合に成立し、目的の如何を問わない。
四 同時に同一場所において別個の人を監禁したときは、一個の行為で被害者の数に応じた数個の監禁の罪名に触れる。
五 出勤手当坑内五円、坑外三円の支給を受けることが労働組合側から見れば一種の債権であり、かつ、憲法ならびに労働組合法(昭和二〇年法律第五一号)施行前において右組合がこれを要求のため団体交渉をすること自体が正当であるとしても、その手段として為された所為が社会通念上許容される限度を超えたものであるときは、その行為は刑法第三五条の正当の行為とはいえない。
六 他人に対し権利を有するものが、その権利を実行する行為は、それが権利の範囲内であつて、かつその方法が社会通念上一般に許容されるものと認められる程度を超えない限り違法とはならない。
七 逮捕監禁の所為ありとして起訴され若しくは公判に付された場合に、裁判所が単に監禁の事実だけを認め、逮捕の事実は認められないとしたときは、逮捕の点は単純一罪の一部に過ぎないから、認められた監禁の事実だけを判決に判示し、これについて処断すれば足り、逮捕の点は判決主文において無罪を言渡すべきではなく、その理由中においても、必ずしも罪として認めない理由を判示する必要はない。
八 日本国民は、法律に定めた裁判官以外の裁判を受けることのないことは、憲法に保障されている国民の権利である。本件、労働組合員等大衆を裁判官とする人民裁判において、B、Cが敗訴の判決を受けたのに、これに服しなかつたため退去を許されず、又その判決の履行を、迫られたもので、被告人等に不法監禁罪は成立しないという所論は、法治国の精神に反し、憲法を無視する所論であつて採るを得ない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和28年6月17日 昭和24(れ)1622
- 登載
- 刑集 第7巻6号1289頁
- 参照法条
- 刑法220条,刑法54条1項,刑法35条,労働組合法(昭和20年法律51号)1条,憲法28条,憲法32条,旧刑訴法360条1項
論点135第54条刑法
職業安定法第三二条第一項と労働基準法第六条との関係
裁判要旨職業安定法第三二条第一項の規定は、労働基準法第六条の規定に対しいわゆる特別法の関係にあるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年12月15日 昭和27(あ)3350
- 登載
- 刑集 第7巻12号2430頁
- 参照法条
- 職業安定法32条1項,労働基準法6条,刑法54条1項
論点136第54条刑法
一 銃砲等所持禁止令違反罪の公訴事実の同一性の有無
二 不法監禁中になされた暴行脅迫行為が別罪を構成する事例
裁判要旨一 同一被告人に対する二個の銃砲等所持禁止令違反の公訴事実において、その不法所持にかかる日本刀がいずれも別個のものであり、且つ、判示の如くその事実上の支配状態を別異にするときは、たとい不法所持の日時、場所が彼此近接しているとしても、その間に公訴事実の同一性は認められない。
二 暴行脅迫が不法監禁中になされたものであつても、不法監禁の状態を維持存続させるため、その手段としてなされたものでなく、全く別個の動機、原因からなされたものであるときは、右暴行脅迫の行為は、不法監禁罪に吸収されることなく、別罪を構成する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年11月27日 昭和27(あ)5833
- 登載
- 刑集 第7巻11号2344頁
- 参照法条
- 憲法39条,刑訴法256条2項,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項,刑訴法337条1号,刑法220条1項,刑法208条,刑法222条,刑法54条1項前段,暴力行為等処罰に関する法律1条1項
論点137第54条刑法
一 刑訴第四一一条にあたらない一事例
二 旧刑訴法事件の控訴審及び上告審に於ける審判の特例に関する規則(昭和二五年最高裁判所規則第三〇号)第八号にいわゆる「法令を掲げれば足りる」の適用
裁判要旨一 裁判長が被告人に対し旧刑訴第三四七条第二項による告知をしなくても、各個の証拠につき取調を終える毎に被告人に対し意見の有無を尋ねており、最後に弁護人から「他に立証等ない。」と答えている以上、原判決に刑訴第四一一条にあたる事由あるとはいえない。
二 旧刑訴法事件の上告審に於ける審判の特例規則第八条には、法令を掲げれば足りるとあるから想像的競合についていずれに対する法益の侵害が犯情重いかについて説明する必要はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和27年3月28日 昭和26(れ)2152
- 登載
- 刑集 第6巻3号566頁
- 参照法条
- 旧刑訴法347条2項,旧刑訴法360条1項,刑訴法411条,刑法54条1項前段,刑法10条,旧刑訴事件の上訴審における審判の特例規則8条
論点138第54条刑法
収賄と公印不正使用とは牽連犯となるか
裁判要旨収賄と公印不正使用とは牽連犯にならない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年2月7日 昭和26(れ)2098
- 登載
- 刑集 第6巻2号208頁
- 参照法条
- 刑法165条2項1項,刑法197条1項,刑法54条1項
論点139第54条刑法
想像的競合にあたる一事例
裁判要旨強盗が数人を殺害しようと決意し、続け様に三発拳銃を発射して一名を死亡させ他の一名に傷害を与えたとき、刑法
第五四条第一項〈一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理〉前段にあたる強盗殺人、同未遂であるとした原審の判断は相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年1月29日 昭和26(れ)2215
- 登載
- 集刑 第59号443頁
- 参照法条
- 刑法54条1項前段,刑法240条,刑法243条
論点140第54条刑法
一 傷害罪における傷害の意義と、中毒による全身倦怠、膝蓋健反射亢進
二 メチール入ドラム罐を売渡した行為により数人に対し夫々傷害致死、傷害の結果を生ぜしめた場合の罪数
三 証拠物を訊問した予審調書の採証と右証拠物の証拠調の要否
裁判要旨一 原判決がAに対する傷害として認定した中毒による全身倦怠、膝蓋健反射亢進は人の生活機能の障害を惹起したものであり、これ等は傷害罪にいわゆる傷害に当る。
二 原判決のメチール入ドラム罐をBに売渡したため右メチールアルコールが被告人不知の間に順次被害者に飲用された判示犯罪行為の態様から見て、傷害致死、傷害の各所為は所論の如く一所為数法の関係と見るのが相当である。
三 予審判事が証人に示した訊問した物件について証拠調がなされていなくても、その予審訊問調書について適法な証拠調がなされている以上同調書中の右物件を除いても独立性のある供述部分又は右物件に関係のない供述記載部分を証拠に採用することは違法でない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年9月25日 昭和26(れ)1418
- 登載
- 集刑 第53号313頁
- 参照法条
- 刑法204条,刑法205条,刑法54条1項前段,旧刑訴法336条,旧刑訴法341条
論点141第54条刑法
一 賍物である連合国占領軍の財産をその情を知りながら買い受けて所持する場合の罪責
二 追公判請求書と題する書面の提出があつても別個の控訴提起と認められない場合
裁判要旨一 昭和二二年政令第一六五号
第一条第一項〈国内犯〉に違反して連合国占領軍の財産を買い受けこれを所持する場合に、その財産が賍物であり、その情を知りながらこれを買い受けたのであれば、右政令違反の罪と賍物故買罪とが成立し、刑法
第五四条第一項〈一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理〉前段にいう一個の行為で数個の罪名に触れる場合に該当する。
二 検察官が、前記昭和二二年政令第一六五号
第一条第一項に違反する連合国占領軍財産の所持について控訴を提起したのち、右所持を始めるに至つたその財産の買受行為について、それが賍物の故買であるとして追公判請求書と題する書面を提出した場合には、これによつてさらに別個の公訴を提起したものではなく、前の公判請求書の内容を補充する趣旨でこれを提出したにすぎないものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年2月20日 昭和25(れ)1126
- 登載
- 刑集 第5巻3号403頁
- 参照法条
- 昭和22年政令165号1条1項,昭和22年政令3条,昭和22年政令165号3条,刑法256条2項,刑法54条1項,旧刑訴法364条4号
論点142第54条刑法
横領罪と不当高価販売行為との想像的競合と公訴事実の同一性
裁判要旨右追公判請求書によれば検察官はA等において本件帆布を前記代金にて販売したときに横領行為が完成したものとして公訴を提起した趣旨と認められる。されば、横領罪を構成するものとして起訴された被告人A等の右販売行為が他面において物価統制令に違反するのであるから、刑法五四一条一項前段にいう一個の行為が他の罪名に触れる場合に当り、公訴事実の同一性を害しないものと認められる。それゆえ、原審が被告人A等を同令に違反するものとして処罰したからとて審判の請求を受けない事件につき判決したものということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年12月25日 昭和26(れ)1504
- 登載
- 集刑 第58号751頁
- 参照法条
- 物価統制令9条ノ2,刑法253条,刑法54条1項前段,旧刑訴法291条,旧刑訴法409条,旧刑訴法410条18号
論点143第54条刑法
一 憲法第三八條第三項にいわゆる本人の自白と刑訴法第三一九條第二項の意義
二 強盗の豫備をなしたものがその實行に着手した場合と強盗豫備罪の成否
三 死刑及無期懲役刑の合憲性−死刑と無期懲役刑との本質的相異
四 被告人が殺意を以て兇器を携え乘車勤務中の車掌に殺害を加えその懐中時計を強奪し進行中の列車から付き落した所爲に對する無期懲役刑の宣告と殘虐な刑罰
五 牽連犯の意義と罪數−銃砲等所持禁止令違反と強盗殺人未遂は牽連犯となるか
裁判要旨一 憲法第三八條第項三に所謂本人の自白には判決裁判所の公判廷における自白を含まないと解すべきことは、當裁判所の判例において展々判示したところであり、今この判例を變更する必要を認めない。新刑訴法が第三一九條第二項において公判廷における自白であつてもそれが被告人に不利益な唯一の證據である場合にはこれによつて有罪とされない旨の規定を新設したことは所論のとおりである。しかし、かゝる規定を設けたことの當否はしばらくこれを措くとしてこの規定は憲法第三八條第三項に對する所謂解釋規定ではなく自白偏重の弊害を矯正し被告人の人權を擁護せんとする憲法の根本精神をさらに擴充すると共に新刑訴法の指導原理たる當事者對等主義にも立脚して、自白が當事者である被告人の供述たる點を考慮してその證據能力について、新たな一の制限を設け公判廷における自白にまで及ぼしたものに過ぎないのである。それは丁度憲法第三八條第二項においては「強制拷問若しくは脅迫による自白又は不當に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」について證據能力を制限しているのを、新刑訴法第三一九條第一項においてはさらに擴充して「その他任意にされたものでない疑いのある自白」についても證據能力を制限するに至つたのと同様である。これ等は何れも憲法の基本精神を擴充しその線に沿つた法律改姓であつて、毫も憲法の趣旨に背反するものでないからその合憲性を有することは疑のないところである。されば憲法第三八條第三項の合理的解釋として示した判例の見解は毫も新刑訴法第三一九條第二項の規定と矛盾するところはなく今後も維持さるべきものである。従つて反對の見地に立つて右判例の變更を求める所論には賛同することはできない。
二 強盗の豫備をしたものかその實行に着手した以上それが未遂に終ると既遂になるとを問わずその豫備行爲は未遂または既遂の強盗罪に吸收されて獨立して所罰の對象となるものではない。本件において、原審は既に強盗殺人未遂罪を認定所斷したのであるから、もはや所論の豫備行爲は所罰の對象として獨立して審判さるべきものではないのである原判決の事實摘示は、獨立した強盗豫備罪を構成する罪となるべき事實を認定した意味ではなく單に被告人が本件犯行を爲すに至るまでの経過を示しその犯情の一端を明らかにする目的を以て認定掲記したに過ぎない。従つて原審が該事實に對し刑法第二三七條を適用しなかつたのはむしろ當然であり原判決には所論のような違法はない。
三 死刑そのものは憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」に當らないとすることは當裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)第一一九號昭和二二年三月一二日大法廷判決参照)。既に現行制度における死刑それ自体が然りとすれば同様に現行制度における無期懲役刑そのものも亦殘虐な刑罰といゝ得ないことは一層當然であろう。論旨は死刑はその與へる苦痛が瞬間的であるに反し、無期自由刑は犯人の生涯を通じ永續的に人間存在の前提ともいうべき自由を剥奪し、必要以上の精神的肉体的苦痛を與え死刑に比して却つて殘虐であるといわねばならないと主張する。無期自由刑が觀念的には−假出獄、刑の執行停止、恩赦等の制度のあることを度外視すれば−犯人の一生を通じその自由を剥奪せんとするものであることは所論のとおりであるが、欲に「命あつてのもの種」といわれるやうに、論旨が人間存在の前提であるとする自由そのものは實は生命の存在を前提とするものであり、生命の剥奪は、すべての自由の絶對的剥奪となる。人は本能的にその自由よりもその生命を尊重し、生命の剥奪を自由のそれにも増して嫌惡し恐怖するのが通常である。尤も特殊の人が特殊の事情の下に無期自由刑よりも死刑を選ぶようなこともないではないであろう。しかしそれはあくまで稀有な例外的事例に過ぎないのであつてこれを以て一般を律することはできない。さればわが刑法においても現代文明各國の立法例と共に死刑を以て最重の刑とし無期自由刑をこれに次くものとしているのである(刑法第一〇條参照〃のみならず科刑の目的は受刑者その人を對象とする特別豫防の他に社會を犯罪から防衛せんとする一般豫防の面もあるのであるから、刑の種類及び量の適否と要否とについてもこの兩者の立場から考察されなければならない。そして又犯罪と犯人とがその型と質とを異にするに従いこれに對應する刑罰も亦その量及種類を異にせざるを得ないのである。死刑の以てしては過酷に失し有期の自由刑を以てしてはなお足りないとする場合もあり得るのであるから、法律が無期自由刑を認めたからというて、唯特殊の受刑者の個人的立場からのみこれを目して必要以上にその精神的肉体的苦痛を與へる殘虐な刑罰を規定するものとし、違憲であると斷じ去ることはできない。しかも近時における行刑制度は素朴な應報刊主義の見地のみによらず教育刑主義にも立脚して組織され運用されているのである。すなわち現代の行刑は、無期自由刑の受刑者に對してもでき得る限りその物心兩生活においてその反省の機會を與え人間生活の廣さと深さとを味得せしめてその更生を誘致すべく努力するのである。所論は人間の生命に對する本能を顧みず刑の眞義と行刑の實情とを正規しない偏見に過ぎない。この要旨に對する裁判官斎藤悠輔同澤田竹治郎の意見あり。
四 原審認定事實によれぼ被告人は乘者勤務中の車掌を殺害してその所持する運輸省貸與の懐中時計を強奪しようと決意し、昭和二三年四月二三日ハンマー及び匕首を携えてa驛から常磐線下り貨物列車の最後部車掌室に、車掌Aの承諾を得て乘込み同日午後一〇時半頃突如Aの前頭をハンマーで殴打し、次いで匕首をふるつて同人の肩、顔面その他を數回突刺し又は斬付けて重傷を負はせてから、同人の所持していた運輸省貸與の懐中時計及びその鎖を強奪した上、同人を進行中の列車から車外に突落したが、殺害の目的を遂げなかつたというのである。原審は、この事實にもとづき刑法第二四〇條後段第二四三條を適用し、未遂減輕をしないで無期懲役を撰擇所斷した。その未遂減輕をしなかつたのは本件犯情を斟酌した結果であつて未遂減輕が事實審の裁定に委ねられている現行法においては、直ちにこれを違法とはいゝ得ない。そしてまた原判決にはその量刑においても實驗則に背反したと認むべきかどもなく、まして人道に悖る殘虐な科刑をしたものと到底は認め得ないのである。所論は畢竟事實審である原審の裁量權の範圍内において適法になした量刑を非難するに歸着するもので採用に値しない。
五 牽連犯は元來數罪の成立があるのであるが、法律がこれを處斷上一罪として取扱うこととした所以は、その數罪間にその罪質上通例その一方が他方の手段又は結果となるという關係があり、しかも具体的にも犯人がかゝる關係においてその數罪を實行したような場合にあつてはこれを一罪としてその最も重き罪につき定めた刑を以て處斷すれば、それによつて輕き罪に對する處罰をも充し得るのを通例とするから、犯行目的の單一性をも考慮して、もはや數罪としてこれを處斷するの必要なきものと認めたことによるものである。従つて數罪が牽連犯となるためには犯人が主観的にその一方を他方の手段又は結果の關係において實行したというだけでは足らず、その數罪間にその罪質上通例手段結果の關係が存在すべきものたることを必要とするのである。然るに所論銃砲等所持禁止令違反の罪と強盗殺人未遂罪とは、必ずしもその罪質上通常手段又は結果の關係あるべきものとは認め得ないのであるから、たとえ、本件において被告人が所論強盗殺人未遂罪實行の手段として匕首不法所持罪を犯したものとしても、その一事だけで右兩面の罪を牽連犯とみることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和24年12月21日 昭和23(れ)2063
- 登載
- 刑集 第3巻12号2048頁
- 参照法条
- 憲法38条3項,憲法36条,刑訴法319条2項,刑法237条,刑法236条,刑法9条,刑法11条,刑法12条,刑法240条,刑法243条,刑法54条,銃砲等所持禁止令1条
論点144第54条刑法
酒気帯び運転の所為とその際の免許証不携帯の所為の罪数(観念的競合)
処断刑超過による非常上告
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成4年10月15日 平成4(さ)2
- 登載
- 集刑 第261号161頁
- 参照法条
- 刑法54条1項,道交法65条1項,道交法119条1項7号の2,道交法95条1項,道交法121条1項10号,刑訴法458条1号
論点145第54条刑法
1 法定刑超過による非常上告
2 観念的競合の適用条文について補足意見が付された事例
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成21年7月14日 平成21(さ)1
- 登載
- 集刑 第297号137頁
- 参照法条
- 刑訴法458条1号,刑法54条1項
論点146第54条刑法
数罪が科刑上一罪の関係にある場合において,その最も重い罪の刑は懲役刑のみであるがその他の罪に罰金刑の任意的併科の定めがあるときに,最も重い罪の懲役刑にその他の罪の罰金刑を併科することの可否
裁判要旨数罪が科刑上一罪の関係にある場合において,その最も重い罪の刑は懲役刑のみであるがその他の罪に罰金刑の任意的併科の定めがあるときには,最も重い罪の懲役刑にその他の罪の罰金刑を併科することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成19年12月3日 平成18(あ)2516
- 登載
- 刑集 第61巻9号821頁
- 参照法条
- 刑法54条1項
論点147第54条刑法
一 確定判決が科刑上一罪として処断した一部の罪について無罪とすべき明らかな証拠を新たに発見した場合と刑訴法四三五条六号の再審事由
二 確定判決が詳しく認定判示した犯行の態様の一部に事実誤認のあることが明らかになった場合と刑訴法四三五条六号の再審事由
三 刑訴法四三五条六号の再審事由の存否を判断するに当たり確定判決が標目を挙示しなかった証拠及び再審請求後の審理において新たに得られた証拠を検討の対象にすることの可否
裁判要旨一 確定判決が科刑上一罪として処断した一部の罪について無罪とすべき明らかな証拠を新たに発見した場合は、その罪が最も重い罪ではないときであっても、刑訴法四三五条六号の再審事由に該当する。
二 確定判決が詳しく認定判示した犯行の態様の一部に事実誤認のあることが判明した場合であっても、そのことにより罪となるべき事実の存在に合理的な疑いを生じさせない限り、刑訴法四三五条六号の再審事由には該当しない。
三 刑訴法四三五条六号の再審事由の存否を判断するため、新証拠と他の全証拠とを総合的に評価するに当たっては、確定判決が標目を挙示しなかったものであってもその審理中に提出されていた証拠、再審請求後の審理において新たに得られた他の証拠をも検討の対象にすることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成10年10月27日 平成7(し)49
- 登載
- 刑集 第52巻7号363頁
- 参照法条
- 刑訴法435条6号,刑法54条1項
論点148第54条刑法
数罪が科刑上一罪の関係にある場合において,各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり,軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときの罰金刑の多額
裁判要旨数罪が科刑上一罪の関係にある場合において,各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり,軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときは,罰金刑の多額は軽い罪のそれによるべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和2年10月1日 平成30(あ)845
- 登載
- 刑集 第74巻7号721頁
- 参照法条
- 刑法54条1項
論点149第55条刑法
一 農業団体法第六七条の合憲性
二 犯罪の個数の認定の誤による罰金合算額の相違が判決に影響することが明らかでない一事例
裁判要旨一 農業団体法第六七条は憲法に違反しない。
二 犯罪の個数の認定を誤つたため罰金の合算額が正当な合算額を超えている場合であつても、宣告刑が正当な合算額の範囲内であつて、しかも甚だ低いものである場合には、右の法令違反は、判決に影響することが明らかであるとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和30年3月16日 昭和27(あ)697
- 登載
- 刑集 第9巻3号461頁
- 参照法条
- 憲法13条,憲法14条,農業団体法67条,刑訴法380条,刑法55条
論点150第55条刑法
一 法人の代表者らが法人の業務に関してなした行為につき無罪の場合と法人の罪責
二 物価統制令第四〇条により法人を処罰する場合における適用法条
裁判要旨一 物価統制令第四〇条によつて法人の代表者、従業員等が同条に定められた違反行為をなした結果、法人が処罰せらるゝ場合には、代表者、従業員等が無罪であれば、法人も責を負わないことは理の当然である。
二 物価統制令第四〇条により法人が代表者の行為について責に任ずる場合に代表者の行為が連続一罪の関係にある以上、法人も連続一罪として処断をうくべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年8月5日 昭和25(れ)413
- 登載
- 刑集 第6巻8号957頁
- 参照法条
- 物価統制令40条,刑法55条(旧)
論点151第55条刑法
犯意継続による連続犯関係の認められない一事例
裁判要旨被告人が本件起訴に係る強盗関係の犯行後一年以上経過した後に原判決指摘の如き前科にかゝる強盗行為を更に犯したことが明白であつてしかも被告人は、本件起訴に係る犯行により逮捕された後昭和二一年四月二六日係検察官に対し深く前非を悔い、真人間となつて更正することを誓つているような場合には両犯罪の間に連続犯の関係を認めるべきではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月6日 昭和26(れ)2450
- 登載
- 集刑 第64号97頁
- 参照法条
- 刑法55条(昭和22年法律124号による削除前),刑法236条
論点152第55条刑法
一 刑法の一部を改正する法律(昭和二二年法律第一二四号)附則第四項中刑法第五五条に関する規定の性質と右規定の趣旨
二 当該判決裁判所の公判廷における自白は憲法第三八条第三項にいわゆる自白にあたるか
裁判要旨一 原判決判示第一の事実は昭和二二年七月二八日頃第二乃至第六の事実は同二二年一月二六日頃以降の所為である。そしてその間、同二二年一一月一五日施行の刑法の一部を改正する法律(同年法律第一二四号)により、連続犯を定めた刑法第五五条は廃止せられた。そして、かかる法律の改正によつて刑法第六条の適用に関して裁判上起るべき法律解釈の疑義を一掃するため、特に附則四項の規定を設け、「この法律施行前の行為については、刑法
第五十五条〈削除〉……の改正規定にかかわらず、なお従前例のによる」と明定し、同時にその反面において改正法律施行前の行為との間には、たとい犯意継続の下に行われたものであるとしても、連続犯として処罰しない趣旨を明かにしたのである。すなわち、前記附則四項は、連続犯の廃止に際し刑法第六条の存在を考慮し経過的に特別規定を以て具体的の定めをなしたものと解すべきである。
二 原判示第一の事実については、所論のとおり被告人の原審公判廷における自白を唯一の証拠として断罪いるのであるが、右の如き、当該判決裁判所の公判廷における自白は、憲法第三八条第三項に所謂自白にあたらないことは、既に当裁判所の判例として示すとろこである(昭和二三年(れ)第一六八号、同年七月二九日大法廷判決、判例集二巻九号一〇一二頁。昭和二三年(れ)第四五四号、第二四年四月六日大法廷判決、集三巻四号四四五頁。昭和二三年(れ)第一五四四号、同二四年四月二〇日大法廷判決、集三巻五号五八一頁)。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和26年1月31日 昭和25(れ)377
- 登載
- 刑集 第5巻1号143頁
- 参照法条
- 刑法の一部を改正する法律(昭和22年法律124号)附則4項,刑法55条(右法律による改正前のもの),憲法38条3項
論点153第55条刑法
擬律錯誤が判決破棄の理由とならない一事例
裁判要旨強盗致死の一罪と認むべき所為につき、強盗未遂と強盗致死の両規定を適用した擬律錯誤があつても、これを連続犯として結局強盗致死の一罪で問擬している場合には、右擬律錯誤は未だ原判決破棄の理由と為すに足らない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和25年11月17日 昭和25(れ)1112
- 登載
- 刑集 第4巻11号2334頁
- 参照法条
- 刑法240条後段,刑法55条(削除前),刑法243条,旧刑訴法410条19号,旧刑訴法236条
論点154第55条刑法
一 犯意繼續の點が犯行の性質態樣等から自ら推知せられる場合と證據理由説示の要否
二 參考として裁判所に提出された書類につき公判調書に記載の要否
裁判要旨一 數個の行爲が繼續の意思に出でたものであることが、證據にょつて認められた犯罪行爲の性質、態樣等から自ら推知される場合には、犯意繼續の點について、特に之を證據にょつて認めた理由を説明する必要がないものと解すべきである。
二 所論被害辨償に關する受領書は、證據書類として裁判所に提出せらるる場合と、證據方法としてでなく參考として裁判所に提出せらるる場合とがある。右前段の場合は證據書類の領置押收として所論の如く刑事訴訟法第六〇條第九號第一〇號等に則り、その旨公判調書に記載せらるべきものであること勿論であるが、右後段の場合には公判調書に何等の記載をも必要としないものと云わねばならぬ。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和23年11月5日 昭和23(れ)396
- 登載
- 刑集 第2巻12号1477頁
- 参照法条
- 刑法55条,刑訴法360条1項,刑訴法60条9号,刑訴法60条10号
論点155第55条刑法
窃盜罪及び強盜罪と刑法第五五條
裁判要旨窃盜罪と強盜罪とは、ともに財物奪取行爲より成り、唯後者にあつてはその手段として暴行又は脅迫を施用すると云う點において前者と異るものがあるに過ぎないので、兩者はいずれも同一罪質と云うを妨げないのみならず、ともに同一の章たる第三六章の下に規定されている刑法犯であるから、これを刑法第五五條にいわゆる同一の罪名とするにつき、毫も異とする所はない。原判決が所論の如く右法條を適用して被告人の判示所爲に對して連續犯の成立ありとしたとて、何等違法とする筋合はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和22年11月5日 昭和22(れ)72
- 登載
- 集刑 第1号5頁
- 参照法条
- 刑法55条,刑法235条,刑法236条