論点1第349条会社法
株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をしたことを理由に同取引の無効を会社以外の者が主張することの可否
裁判要旨株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合,当該会社以外の者が取締役会の決議を経ていないことを理由にその無効を主張することは,当該会社の取締役会が上記無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り,許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成21年4月17日 平成19(受)1219
- 登載
- 民集 第63巻4号535頁
- 参照法条
- 会社法362条4項,会社法349条4項
論点2第349条会社法
1 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合における破産手続の終了と刑訴法339条1項4号にいう「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」
2 破産手続開始当時の会社を代表する権限を有する取締役と当該会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続についての代表権の有無
3 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合における破産手続の終了と当該刑事事件に係る訴訟手続についての取締役の代表権の消長
4 汚水を下水道に放流する行為が下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)の罰則の対象となり得ることと廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)16条〈通知義務〉違反の罪の成否
裁判要旨1 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合には、破産手続が終了したとしても、刑訴法339条1項4号にいう「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」に当たらない。
2 破産手続開始当時の会社を代表する権限を有する取締役は、破産手続開始によりその地位を当然には失わず、破産手続が終了するまでの間、当該会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続について当該会社を代表する。
3 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続について当該会社を代表する取締役は、会社法
478条1項2号〈清算人の就任 定款で定める者〉又は3号に掲げる者がある場合を除き、破産手続の終了後は、当該刑事事件に係る訴訟手続について清算人の立場で当該会社を代表する。
4 汚水を下水道に放流する行為は、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)によって基準に適合しない下水の排除として規制され、同法の罰則の対象となり得るとしても、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)
16条〈通知義務〉違反の罪が成立し得る。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 令和8年4月7日 令和6(あ)1479
- 登載
- ―
- 参照法条
- (1、3につき)会社法475条1号、会社法476条、会社法481条1号 (1につき)刑訴法339条1項4号 (2、3につき)刑訴法27条1項 (2につき)会社法330条、会社法349条1項、民法653条2号、破産法78条1項 (3につき)会社法478条1項、会社法483条1項 (4につき)廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)1条、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)16条、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)25条1項14号、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)32条1項、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)1条、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)12条の2第1項、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)38条1項1号、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)45条、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)46条1項1号
論点3第350条会社法
株式会社の従業員らが営業成績を上げる目的で架空の売上げを計上したため有価証券報告書に不実の記載がされ,株主が損害を被ったことにつき,会社の代表者に従業員らによる架空売上げの計上を防止するためのリスク管理体制構築義務違反の過失がないとされた事例
裁判要旨株式会社の従業員らが営業成績を上げる目的で架空の売上げを計上したため有価証券報告書に不実の記載がされ,その後同事実が公表されて当該会社の株価が下落し,公表前に株式を取得した株主が損害を被ったことにつき,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,当該会社の代表者に,従業員らによる架空売上げの計上を防止するためのリスク管理体制を構築すべき義務に違反した過失があるとはいえない。
(1) 当該会社は,営業部の所属する事業部門と財務部門を分離し,売上げについては,事業部内の営業部とは別の部署における注文書,検収書の確認等を経て財務部に報告される体制を整えるとともに,監査法人及び当該会社の財務部がそれぞれ定期的に取引先から売掛金残高確認書の返送を受ける方法で売掛金残高を確認することとするなど,通常想定される架空売上げの計上等の不正行為を防止し得る程度の管理体制は整えていた。
(2) 上記架空売上げの計上に係る不正行為は,事業部の部長が部下である営業担当者数名と共謀して,取引先の偽造印を用いて注文書等を偽造し,これらを確認する担当者を欺いて財務部に架空の売上報告をさせた上,上記営業担当者らが言葉巧みに取引先の担当者を欺いて,監査法人等が取引先あてに郵送した売掛金残高確認書の用紙を未開封のまま回収し,これを偽造して監査法人等に送付するという,通常容易に想定し難い方法によるものであった。
(3) 財務部が売掛金債権の回収遅延につき上記事業部の部長らから受けていた説明は合理的なもので,監査法人も当該会社の財務諸表につき適正意見を表明していた。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成21年7月9日 平成20(受)1602
- 登載
- 集民 第231号241頁
- 参照法条
- 会社法350条
論点4第350条会社法
不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金を民法405条の適用又は類推適用により元本に組み入れることの可否
裁判要旨不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金は,民法405条の適用又は類推適用により元本に組み入れることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 令和4年1月18日 令和2(受)1518
- 登載
- 民集 第76巻1号1頁
- 参照法条
- 民法405条,民法709条,会社法350条
論点5第352条旧商法下の裁判例
代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分がされた場合にその本案訴訟において会社を代表すべき者
裁判要旨株主総会における取締役選任決議の無効確認請求訴訟を本案とする代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分がされた場合に、本案訴訟において会社を代表すべき者は、職務の執行を停止された代表取締役ではなく、代表取締役職務代行者である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和59年9月28日 昭和57(オ)1419
- 登載
- 民集 第38巻9号1121頁
- 参照法条
- 商法270条1項,商法271条1項,民訴法58条
論点6第352条旧商法下の裁判例
少数株主の請求に基づく取締役解任を目的とする臨時総会の招集と商法二七一条一項の会社の常務
裁判要旨取締役の解任を目的とする臨時総会の招集は、少数株主による招集請求に基づくときでも、商法二七一条一項にいう会社の常務に属さない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和50年6月27日 昭和50(オ)157
- 登載
- 民集 第29巻6号879頁
- 参照法条
- 商法232条,商法235条,商法237条,商法270条,商法271条
論点7第352条旧商法下の裁判例
一、株式会社の取締役に対する職務執行停止・代行者選任の仮処分の効力存続中に右取締役が辞任しその後の株主総会の決議をもつて同一人を再度取締役に選任することが許されるか
二、株式名義書換請求につき許否を決する行為と商法二七一条にいう「会社ノ常務」
裁判要旨一、株式会社の取締役に対する職務執行停止・代行者選任の仮処分の効力存続中に、右取締役が辞任しその後の株主総会の決議をもつて同一人を再度取締役に選任することも許される。
二、株式名義書換請求につき、その要件を具備するかどうかを審査し、その許否を決することは、商法二七一条にいう「会社ノ常務」に属する行為として、代表取締役職務代行者も、これをすることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年2月3日 昭和42(オ)1113
- 登載
- 集民 第105号37頁
- 参照法条
- 商法270条,商法271条,商法254条
論点8第352条旧商法下の裁判例
株式会社の取締役に対する職務執行停止代行者選任の仮処分後右取締役が辞任し後任の取締役が選任された場合における代表取締役の選任および右代表取締役の権限の行使
裁判要旨株式会社の取締役全員の職務の執行を停止しその代行者を選任する仮処分の裁判があつたのち、右取締役全員が辞任し、後任の取締役が選任された場合において、代表取締役が欠けているときは、右後任取締役が構成する取締役会の決議をもつて代表取締役を定めることができるが、右代表取締役は、仮処分の存続中は、その権限を行使することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和45年11月6日 昭和40(オ)834
- 登載
- 民集 第24巻12号1744頁
- 参照法条
- 商法261条,商法270条,民訴法760条
論点9第352条旧商法下の裁判例
一 取締役の職務執行停止、職務代行者選任の仮処分と民訴法上の仮処分に関する規定の適用
二 取締役の職務執行停止、職務代行者選任の仮処分の執行停止ができるとされた事例
裁判要旨一 取締役の職務執行停止、職務代行者選任の仮処分に、民訴法上の仮処分に関する規定を適用することができる。
二 取締役の職務執行停止、職務代行者選任の仮処分に対し、原判示の事実関係(原判決理由参照)のもとで異議申立がなされた場合には、民訴法第五一二条の準用によつて、異議の裁判があるまで右仮処分の執行停止を命ずることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和41年2月1日 昭和38(オ)436
- 登載
- 集民 第82号219頁
- 参照法条
- 商法270条,民訴法760条,民訴法744条,民訴法745条,民訴法512条
論点10第352条旧商法下の裁判例
一 代表取締役職務代行者が招集した臨時社員総会における決議の効力
二 職務執行停止仮処分の効力。
裁判要旨一 有限会社の代表取締役職務代行者が臨時社員総会を招集した場合でも、該総会における決議は、当然無効と解すべきではなく、商法第二四七条所定の決議取消の訴によつて取り消しうるにすぎないものと解すべきである。
二 仮処分により代表取締役の職務の執行を停止された者が代表者としてなした行為は、無効であつて、後に仮処分が取り消されても、遡つて有効となるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年5月21日 昭和35(オ)1447
- 登載
- 民集 第18巻4号608頁
- 参照法条
- 商法270条,商法271条,商法247条,商法252条,有限会社法32条,有限会社法41条
論点11第354条旧商法下の裁判例
取締役会の無効な決議により選任された代表取締役がした行為と商法二六二条の類推適用
裁判要旨取締役会の無効な決議により選任された代表取締役が会社の代表としてした行為については、会社は、商法二六二条の類推適用により、善意の第三者に対してその責に任ずべきものである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和56年4月24日 昭和54(オ)475
- 登載
- 集民 第132号585頁
- 参照法条
- 商法262条
論点12第354条旧商法下の裁判例
代表権の欠缺を知らないことにつき重大な過失がある第三者と商法二六二条に基づく会社の責任
裁判要旨会社は、商法二六二条所定の表見代表取締役の行為につき、重大な過失によりその代表権の欠缺を知らない第三者に対しては、責任を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年10月14日 昭和52(オ)106
- 登載
- 民集 第31巻6号825頁
- 参照法条
- 商法262条
論点13第354条旧商法下の裁判例
更生会社の管財人が数人あるのにそのうちの一人が単独で手形行為をした場合に商法二六二条の類推適用があるとされた事例
裁判要旨更生会社の管財人が数人あるにもかかわらず、そのうちの一人が、単独で、管財人の名称を使用して手形行為をした場合において、手形の取得者が、右一人の管財人が単独で手形行為をなすことができると信じて手形を取得し、更生会社においては、数人の管財人の間に会社更生法九七条一項但書の職務分掌の定めはなかつたが、右一人の管財人が更生会社の管財人として常勤し、他の管財人の同意のもとに事実上更生会社の経営部門の職務を担当し、自己の単独名義で手形行為をなすことを他の管財人が黙認していた事情があるときは、更生会社は、商法二六二条の類推適用により、手形行為者としての責に任じなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和46年2月23日 昭和44(オ)1048
- 登載
- 民集 第25巻1号151頁
- 参照法条
- 会社更生法97条1項,商法262条
論点14第354条旧商法下の裁判例
一、会社の訴訟上の代表者の確定と民法一〇九条、商法二六二条の適用の有無
二、控訴裁判所が被告会社代表者の代表権限の欠缺を看過してなされた第一審判決を取り消す場合の措置
裁判要旨一、民法一〇九条、商法二六二条は、会社を訴訟上代表する権限を有する者を定めるにあたつては、適用されない。
二、控訴裁判所が被告会社代表者の代表権限の欠缺を看過してなされた第一審判決を取り消す場合には、原告に対し訴状の補正を命じさせるため、事件を第一審裁判所に差し戻すべきであり、ただちに訴を不適法として却下すべきではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和45年12月15日 昭和45(オ)112
- 登載
- 民集 第24巻13号2072頁
- 参照法条
- 民訴法58条,民訴法45条,民訴法388条,民訴法389条,民法109条,商法262条
論点15第354条旧商法下の裁判例
一、代表取締役代行者なる名称と商法二六二条
二、いわゆる持ち廻りの方式によつたため有効な取締役会の決議とは認められないとされた事例
三、代表者選任が無効な場合において商法二六二条の類推適用が認められた事例
裁判要旨一、代表取締役代行者なる名称は、商法二六二条にいう会社を代表する権限を有するものと認むべき名称に該当する。
二、株式会社の代表取締役が行方不明となる緊急状態が生じたので、他の取締役全員が、判示のように、取締役甲に代表権を付与することを承認した場合において、その承認が、いわゆる持ち廻りの方式によるものであるときは、有効な取締役会の決議とは認められず、取締役甲は、会社の代表権を取得しない。
三、株式会社の代表取締役が行方不明のため、他の取締役全員により、正式に代表取締役が選任されるまでの間一時的に、会社の代表権を行使することを承認された取締役が、右承認に基づき、代表権を有するものと認むべき名称を使用してその職務を行なつたときは、右承認が取締役会の代表者選任決議と認められず、無効の場合であつても、会社は、商法二六二条の類推適用により、右名称を付した取締役の行為につき、善意の第三者に対してその責に任ずべきものである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和44年11月27日 昭和40(オ)1197
- 登載
- 民集 第23巻11号2301頁
- 参照法条
- 商法262条,商法260条ノ2第1項,商法261条1項
論点16第354条旧商法下の裁判例
共同代表の定があるのに代表取締役の一人が単独の代表名義で約束手形を振り出した場合に商法第二六二条の類推適用があるとされた事例
裁判要旨共同代表の定があるのにかかわらず、代表取締役の一人が、単独で、代表取締役の名称を使用して約束手形を振り出した場合においても、右手形の取得者が、共同代表の定の登記がされていることを知らず、右代表取締役が社長と称し会社の主宰者として行動している事実から単独の代表権を有するものと信じてこれを取得し、会社においても当時右代表取締役が社長と称して行動することを許容し、または黙認していた等の事情が存在するときは、会社は、右手形について、商法第二六二条の類推適用により、振出人としての責に任ずるものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日 昭和41(オ)684
- 登載
- 民集 第22巻13号3349頁
- 参照法条
- 商法262条,商法261条,商法12条
論点17第354条旧商法下の裁判例
表見代表取締役が自己の利益を図るためにした行為と会社の責任
裁判要旨商法第二六二条は、第三者が代表権の欠缺について善意であるかぎり、表見代表取締役のした行為の目的のいかんにかかわらず適用され、行為者の意図が自己の利益を図ることにあつた場合においては、第三者がその意図を知り、または知りうべかりしときにかぎり、会社は、民法第九三条但書の提起を類推適用して、その責を免れることができるにすぎないものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和42年7月6日 昭和41(オ)875
- 登載
- 集民 第88号1頁
- 参照法条
- 商法262条,民法93条但書
論点18第354条旧商法下の裁判例
共同代表の定めがあるのに代表取締役が単独で代表権限を行使した場合に商法第二六二条の類推適用があるとされた事例
裁判要旨共同代表の定めがあり、その旨の登記がある場合において、当該代表取締役が単独で代表権限を行使できる者であると見られる外観をもつて代表取締役の名称を使用しているのに対し、これを他の代表取締役全員が黙認していた等原審認定の事実関係(原判決理由参照)のもとでは、当該代表取締役が単独で行なつた法律行為についても、会社は、商法第二六二条の規定の類推適用により善意の第三者に対してその責に任ずるものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和42年4月28日 昭和41(オ)1042
- 登載
- 民集 第21巻3号496頁
- 参照法条
- 商法262条,商法261条,商法12条
論点19第354条旧商法下の裁判例
表見代表取締役の行為につき会社が責任を負うためには第三者の無過失を要するか
裁判要旨表見代表取締役の行為につき会社が責任を負うためには、第三者が善意であれば足り、その無過失を要しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和41年11月10日 昭和41(オ)777
- 登載
- 民集 第20巻9号1771頁
- 参照法条
- 商法262条
論点20第354条旧商法下の裁判例
表見代表取締役が直接代表取締役の記名押印をして会社名義の約束手形を振り出した場合と商法第二六二条の適用の有無。
裁判要旨会社名義で振り出された約束手形につき、手形面上に会社代表者として表示されている者に代表権はあるが、右代表者の記名押印をした者に代表権がない場合であつても、会社が後者に対して常務取締役等会社を代表する権限を有するものと認められる名称を与えており、かつ、手形受取人が右後者の代表権の欠缺につき善意であるときは、右後者が自己の氏名を手形面上に表示した場合と同様、会社は手形金支払の責を負うものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年4月9日 昭和37(オ)433
- 登載
- 民集 第19巻3号632頁
- 参照法条
- 商法262条
論点21第354条旧商法下の裁判例
民法第一一二条の表見代理の主張に対し商法第二六二条の表見代表取締役の規定を適用して判断することの可否。
裁判要旨当事者が民法第一一二条の表見代理による約束手形金の支払請求を主張している場合であっても、商法第二六二条の要件事実が主張されている以上、同条の表見代表取締役の行為による会社に対する責任に基づいて、請求を認容することに違法はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年6月12日 昭和38(オ)306
- 登載
- 集民 第74号57頁
- 参照法条
- 民法112条,商法262条,民訴法186条
論点22第354条旧商法下の裁判例
会社の使用人が代表取締役の承認のもとに常務取締役の名称を使用してなした行為に対する商法第二六二条の類推適用の有無。
裁判要旨商法第二六二条は、会社の使用人が代表取締役の承認のもとに常務取締役の名称を使用してなした行為につき、類推適用されると解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和35年10月14日 昭和32(オ)596
- 登載
- 民集 第14巻12号2499頁
- 参照法条
- 商法262条
論点23第355条会社法
A社が事業再編計画の一環としてB社の株式を任意の合意に基づき買い取る場合において,A社の取締役に上記株式の買取価格の決定について善管注意義務違反はないとされた事例
裁判要旨不動産賃貸あっせんのフランチャイズ事業等を展開するA社が,事業再編計画の一環としてB社を完全子会社とする目的で同社の株式を任意の合意に基づき買い取る場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,株式交換に備えて算定された上記株式の評価額が1株当たり6561円ないし1万9090円であったとしても,上記株式の買取価格をB社の設立時の株式の払込金額を基準として1株当たり5万円とする決定をしたことについて,A社の取締役が取締役としての善管注意義務に違反したということはできない。
(1) B社の株主には,A社が事業の遂行上重要であると考えていた上記フランチャイズ事業の加盟店等が含まれる。
(2) 非上場株式である上記株式の評価額には相当の幅があり,事業再編の効果によるB社の企業価値の増加も期待できた。
(3) 上記の決定に至る過程で,A社の役付取締役全員により構成される経営会議において検討がされ,弁護士の意見も聴取されるなどの手続が履践された。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成22年7月15日 平成21(受)183
- 登載
- 集民 第234号225頁
- 参照法条
- 会社法330条,会社法355条,会社法423条1項,会社法847条,民法644条
論点24第356条旧商法下の裁判例
取締役と会社との取引が株主全員の合意によつてされた場合と取締役会の承認
裁判要旨取締役と会社との取引が株主全員の合意によつてされた場合には、右取引につき取締役会の承認を要しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和49年9月26日 昭和47(オ)1225
- 登載
- 民集 第28巻6号1306頁
- 参照法条
- 商法265条
論点25第356条旧商法下の裁判例
会社から貸金の返還を求められた取締役と商法二六五条違反の主張
裁判要旨会社が取締役に貸し付けた金員の返還を求めた場合に、その取締役は、商法二六五条違反を理由として右貸付けの無効を主張することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和48年12月11日 昭和48(オ)531
- 登載
- 民集 第27巻11号1529頁
- 参照法条
- 商法265条
論点26第356条旧商法下の裁判例
一、株式会社がその取締役が代表取締役となつている他の株式会社のために為替手形に引受をする行為と商法二六五条
二、商法二六五条に違反して株式会社が引受をした為替手形を取得した第三者に対する会社の手形上の責任
裁判要旨一、株式会社が、その取締役が代表取締役となつている他の株式会社のために為替手形に引受をする行為は、原則として、商法二六五条にいう取引にあたる。
二、甲株式会社が、その取締役が代表取締役となつている乙株式会社のために、商法二六五条に違反して、為替手形に引受をした場合において、甲会社は、右手形を裏書により取得した第三者に対しては、右手形が甲会社において前述のように乙会社のために引き受けたものであり、かつ、その引受につき取締役会の承認がなかつたことについて、右第三者が悪意であつたことを主張・立証しないかぎり、引受人としての責任を免かれない。
(一につき意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年2月22日 昭和42(オ)1258
- 登載
- 集民 第105号155頁
- 参照法条
- 商法265条
論点27第356条旧商法下の裁判例
会社が自己の取締役が代表取締役を兼ねている他の会社に宛てて約束手形を振り出す行為と商法二六五条
裁判要旨会社が自己の取締役が代表取締役を兼ねている他の会社に宛てて約束手形を振り出す行為は、原則として、商法二六五条にいわゆる取引にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和46年12月23日 昭和41(オ)556
- 登載
- 集民 第104号783頁
- 参照法条
- 商法265条
論点28第356条旧商法下の裁判例
一、株式会社がその取締役にあてて約束手形を振り出す行為と商法二六五条
二、商法二六五条に違反して株式会社が振り出した約束手形を取得した第三者に対する会社の手形上の責任
三、約束手形の振出につき手形上の記載にかかわらず商法二六五条の適用がないとされた事例
裁判要旨一、株式会社がその取締役にあてて約束手形を振り出す行為は、原則として、商法二六五条にいう取弓にあたる。
二、株式会社は、商法二六五条に違反して振り出した約束手形を裏書により取得した第三者に対しては、右手形が会社からその取締役にあてて振り出され、かつ、その振出につき取締役会の承認がなかつたことについて、右第三者が悪意であつたことを主張・立証しないかぎり、振出人としての責任を免れない。
三、株式会社振出の約束手形において、受取人の記載が右会社の取締役になつている場合でも、現実には、右会社が受取人欄白地の約束手形を振り出して直接取締役以外の者に交付し、その者が右取締役から受取人欄の補充と裏書を受けたものであるときは、商法二五六条の適用はない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和46年10月13日 昭和42(オ)1464
- 登載
- 民集 第25巻7号900頁
- 参照法条
- 商法265条
論点29第356条旧商法下の裁判例
商法二六五条所定の取引につき取締役会の承認を要しないとされた事例
裁判要旨会社と取締役間に商法二六五条所定の取引がなされる場合でも、右取締役が会社の全株式を所有し、会社の営業が実質上右取締役の個人経営のものにすぎないときは、右取引によつて両者の間に実質的に利害相反する関係を生ずるものでなく、右取引については、同条所定の取締役会の承認を必要としない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和45年8月20日 昭和43(オ)335
- 登載
- 民集 第24巻9号1305頁
- 参照法条
- 商法265条
論点30第356条旧商法下の裁判例
甲乙両会社の代表取締役が甲会社の債務につき乙会社を代表してする保証と商法二六五条
裁判要旨甲乙両会社の代表取締役を兼ねている者が、甲会社の債務につき乙会社を代表してする保証は、甲会社の利益にして、乙会社に不利益を及ぼす行為であつて、商法二六五条にいう取締役が第三者のためにする取引にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和45年4月23日 昭和41(オ)223
- 登載
- 民集 第24巻4号364頁
- 参照法条
- 商法265条
論点31第356条旧商法下の裁判例
商法二六五条にいう取引にあたるとされた事例
裁判要旨取締役が会社を代表して債権者に対し連帯保証契約を締結する行為は、商法二六五条にいう取引にあたる。
(意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和45年3月12日 昭和44(オ)610
- 登載
- 集民 第98号365頁
- 参照法条
- 商法265条
論点32第356条旧商法下の裁判例
株式会社の取締役が使用人として給料の支払を受ける場合と取締役会の承認
裁判要旨株式会社の取締役が、会社の使用人たる地位を兼ね、会社から使用人としての給料の支払を受ける場合には、右給料の支払につき取締役会の承認を受けなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年9月3日 昭和42(オ)461
- 登載
- 集民 第92号163頁
- 参照法条
- 商法265条
論点33第356条旧商法下の裁判例
一、商法第二六五条にいう取引の意義
二、商法第二六五条に違反する取引の効力
裁判要旨一、商法第二六五条にいう取引には、取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反行為のみならず、取締役個人の債務について、その取締役が会社を代表して、債権者に対し債務引受をする等取締役個人の利益となり会社に不利益を与える行為も包含されるものと解すべきである。
二、会社は、商法第二六五条に違反する取引のうち、取締役と会社との間に直接成立すべき取引については、右取締役に対して、その無効を主張することができるが、取締役が会社を代表して自己のためにした会社以外の第三者との間の取引については、右第三者が取締役会の承認を受けていなかつたことについて悪意であるときにかぎり、その無効を主張することができる。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和43年12月25日 昭和42(オ)1327
- 登載
- 民集 第22巻13号3511頁
- 参照法条
- 商法265条
論点34第356条旧商法下の裁判例
一 理由不備の違法があるとされた事例
二 株式会社の一人の清算人がした自己あてにした取引の効力
裁判要旨かりに株式会社の清算手続が清算人ひとりですることができるとしても、その清算人は、特段の事情のないかぎり清算会社と取引することができず、これに違反する取引は無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和42年12月15日 昭和42(オ)460
- 登載
- 集民 第89号427頁
- 参照法条
- 民訴法395条1項6号,商法430条2項,商法265条
論点35第356条旧商法下の裁判例
一 中小企業等協同組合法に基づく協同組合と株式会社間の取引においてその組合の代表理事が右会社の代表取締役を兼ねているときと同法第三八条の準用。
二 中小企業等協同組合法に基づく協同組合の理事会の招集につき一部の理事に対する通知もれと理事会の決議の効力。
裁判要旨一 中小企業等協同組合法に基づく協同組合と株式会社間に取引がされた場合において、その組合の代表理事が右会社の代表取締役を兼ねているときには、前記取引について同法第三八条の規定が準用されると解すべきである。
二 中小企業等協同組合法に基づく協同組合の理事会の招集につき一部の理事に対し通知もれがの違法があつたときは、原則として、右理事会の決議は無効であるが、右理事が出席しても理事会の決議の結果になんらの影響がないときは、右理事会の決議の効力に消長を来さないと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年8月28日 昭和36(オ)1147
- 登載
- 民集 第18巻7号1366頁
- 参照法条
- 中小企業等協同組合法38条,中小企業等協同組合法36条の3,中小企業等協同組合法42条,商法265条
論点36第356条旧商法下の裁判例
代位弁済と商法第二六五条。
裁判要旨取締役が第三者の会社に対する債務を代位弁済した場においては、取締役の右行為は、債務の履行に関する行為というべきであつて、なんら会社に不利益を与えるものではないから、商法第二六五条の取引に該当しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年2月6日 昭和35(オ)672
- 登載
- 集民 第72号53頁
- 参照法条
- 商法265条
論点37第356条旧商法下の裁判例
手形裏書が商法第二六五条の取引にあたらないとされた事例。
裁判要旨会社が約束手形を取締役に裏書譲渡するに際し、取締役から手形金額と同額の金員の交付を受けた場合においては、右手形裏書は、商法第二六五条の取引に該当しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月28日 昭和34(オ)1228
- 登載
- 民集 第18巻1号180頁
- 参照法条
- 商法265条
論点38第356条旧商法下の裁判例
約束手形の振出は商法第二六五条にいう取引にあたるか。
裁判要旨株式会社がその取締役に対して約束手形を振り出す行為は、商法第二六五条にいう取引にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年3月14日 昭和35(オ)1139
- 登載
- 民集 第17巻2号335頁
- 参照法条
- 商法265条
論点39第356条旧商法下の裁判例
会社の代表者が自己の利を図る目的で会社の名においてした行為の会社に及ぼす効力。
裁判要旨会社の代表者がその権限を濫用し会社の損害において自己の利を図る目的で会社の名においてした行為は、相手方において右権限濫用の事実を知つていたという事実関係のもとでは、商法第二六五条の適用を問題とするまでもなく、その効力を会社に及ぼさない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年1月31日 昭和36(オ)798
- 登載
- 集民 第64号281頁
- 参照法条
- 民法53条,商法265条
論点40第356条旧商法下の裁判例
無利息無担保の金銭消費貸借は商法第二六五条にいう取引にあたるか。
裁判要旨株式会社に対しその取締役が無利息、無担保で金銭を貸し付ける行為は、商法第二六五条にいう取引にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和38年12月6日 昭和37(オ)437
- 登載
- 民集 第17巻12号1664頁
- 参照法条
- 商法265条
論点41第356条旧商法下の裁判例
商法第二六五条違反の為替手形と裏書人の責任。
裁判要旨為替手形の振出行為、引受行為が商法第二六五条違反によつて無効であるとしても、裏書行為自体に何らの瑕疵もない以上、裏書人の責任に消長をきたさない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年10月3日 昭和35(オ)574
- 登載
- 集民 第68号125頁
- 参照法条
- 商法265条,手形法7条
論点42第356条旧商法下の裁判例
取締役会の招集手続の省略
裁判要旨株式会社の取締役の全員が会社の業務執行に関する事項につき協議決定したときは、たとえ取締役会の招集手続を経ない旨の明示の同意なしにその手続を経なかつた場合でも、当該事項につき取締役会の決議がなされたものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和31年6月29日 昭和29(オ)749
- 登載
- 民集 第10巻6号774頁
- 参照法条
- 商法259条ノ2,商法259条ノ3,商法260条,商法265条
論点43第356条旧商法下の裁判例
商法二六五条一項の取引を行うにつき同法二五四条三項(民法六四四条)、商法二五四条ノ三に定める義務に違反した取締役と同法二六六条一項五号の責任
裁判要旨株式会社の取締役が商法二六五条一項の取引によって会社に損害を被らせた場合、当該取締役は、同法二六六条一項四号の責任を負う外、右取引を行うにつき故意又は過失により同法二五四条三項(民法六四四条)、商法二五四条ノ三に定める義務に違反したときには、同法二六六条一項五号の責任をも負う。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成12年10月20日 平成10(オ)920
- 登載
- 民集 第54巻8号2619頁
- 参照法条
- 商法254条3項,商法254条ノ3,商法265条1項,商法266条1項4号,商法266条1項5号
論点44第361条会社法
株主総会の決議を経て内規に従い支給されることとなった会社法361条1項にいう取締役の報酬等に当たる退職慰労年金につき,集団的,画一的な処理が制度上要請されているという理由のみから,内規の廃止により未支給の退職慰労年金債権を失わせることの可否
裁判要旨株主総会の決議を経て,役員に対する退職慰労金の算定基準等を定める会社の内規に従い支給されることとなった会社法361条1項にいう取締役の報酬等に当たる退職慰労年金について,退任取締役相互間の公平を図るため集団的,画一的な処理が制度上要請されているという理由のみから,上記内規の廃止の効力を既に退任した取締役に及ぼし,その同意なく未支給の退職慰労年金債権を失わせることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成22年3月16日 平成21(受)1154
- 登載
- 集民 第233号217頁
- 参照法条
- 会社法361条1項
論点45第361条会社法
株式会社が株主総会の決議等を経ることなく退任取締役に支給された退職慰労金相当額の金員につき不当利得返還請求をすることが信義則に反せず権利の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨株式会社が退任取締役に対し株主総会の決議等を経ることなく支給された退職慰労金相当額の金員につき不当利得返還請求をする場合において,(1)当該会社では発行済株式総数の99%以上を保有する代表者が内規に基づく退職慰労金の支給を決裁することにより株主総会の決議に代えてきた,(2)退任取締役が上記内規に基づく退職慰労金の支給を催告したところその約10日後に上記金員の送金がされ,これにつき代表者の決裁はなかったものの,当該会社が退任取締役に対しその返還を明確に求めたのは送金後1年近く経過してからであったなど判示の事実関係の下においては,代表者が上記送金をその直後に認識していた事実や退任取締役が従前退職慰労金を支給された退任取締役と同等以上の業績を上げてきた事実の有無等につき審理判断することなく,当該会社による上記請求は信義則に反せず,権利の濫用に当たらないとした原審の判断には,違法がある。
(反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成21年12月18日 平成21(受)233
- 登載
- 集民 第232号803頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法1条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)269条,会社法361条
論点46第361条会社法
退任取締役の退職慰労金について内規に従って決定することを取締役会に一任する旨の株主総会決議がされた場合に、上記退任取締役に対し上記内規の定める基準額から減額した退職慰労金を支給する旨の取締役会決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないとされた事例
裁判要旨退任取締役の退職慰労金につき、退任時の報酬月額等により一義的に定まる額を基準とするが、退任取締役のうち在任中特に重大な損害を与えたものに対しこの基準額を減額することができること等を定める内規が存在する株式会社の株主総会において、取締役を退任する者の退職慰労金について、上記内規に従って決定することを取締役会に一任する旨の決議がされた場合に、次の⑴~⑷など判示の事情の下では、上記会社の取締役会がした、上記の者に対し、同人の退職慰労金に係る基準額として算出した3億7720万円から減額した額である5700万円の退職慰労金を支給する旨の決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。
⑴ 上記取締役会は、上記の者が、代表取締役在任中に、①長期間にわたって上記会社から社内規程所定の上限額を超過する額の宿泊費等を受領し、このことが発覚した後には、いったん負担した当該超過分に係る源泉徴収税相当額を上記会社に転嫁するとともに、社内規程に違反する宿泊費等の支給を実質的に永続化する目的で自らの報酬を増額したこと、②複数年度にわたり、交際費として従前の支出額を大幅に超過する額を上記会社に支出させるなどしたこと等を考慮して上記決議をした。
⑵ 上記の者と利害関係のない弁護士等で構成された調査委員会による調査等の結果をとりまとめた調査報告書では、上記①の行為は特別背任罪に該当する疑いがあり、上記②の行為も正当化することができず、上記の者はこれらの行為により上記会社に多大な損害を与えたとの指摘がされた。
⑶ 上記決議は上記調査報告書の内容を踏まえたものであったところ、上記調査委員会が調査等に当たって収集した情報に不足があったことはうかがわれない。
⑷ 上記取締役会は、上記①の行為につき告訴をして退職慰労金を支給しないとする上記調査委員会から提示された案も検討したが、審議の結果、告訴をせずに退職慰労金を大幅に減額する旨の判断に至った。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和6年7月8日 令和4(受)1780
- 登載
- 民集 第78巻3号839頁
- 参照法条
- 会社法361条1項1号