論点1第605条民法
賃貸中の宅地を譲り受けた者の賃貸人たる地位の対抗要件
裁判要旨賃貸中の宅地を譲り受けた者は、その所有権の移転につき登記を経由しないかぎり、賃貸人たる地位の取得を賃借人に対抗することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和49年3月19日 昭和47(オ)1121
- 登載
- 民集 第28巻2号325頁
- 参照法条
- 民法177条,民法605条,建物保護に関する法律1条
論点2第605条民法
賃貸家屋が他に譲渡された場合と賃借人の賃料の弁済の効力
裁判要旨賃貸家屋が他に譲渡されいまだ対抗要件を具備していない場合においても、賃借人が後にこの事実を認めて、新家主に対し、遡つて賃料を皮払つたときは、右賃料の弁済は、その弁済時以前の分も含めて、すべて有効と解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和46年12月3日 昭和46(オ)734
- 登載
- 集民 第104号557頁
- 参照法条
- 民法605条,民法478条
論点3第605条民法
一、競売期日の公告に記載されなかつた賃借権とその対抗力
二、執行裁判所の取調に対して申出のなかつた賃借権とその効力
三、土地の所有権と賃借権とが混同しても賃借権が消滅しない場合
裁判要旨一、建物保護に関する法律
一条〈基本原則〉による対抗要件を具備した土地の賃借権は、競売期日の公告に記載されなかつたとしても、その対抗力が消滅するものではない。
二、執行裁判所の取調に対して土地の賃借権者が賃借権の申出をしなかつたとしても、その賃借権の効力に影響を及ぼすものではない。
三、特定の土地につき所有権と賃借権とが同一人に帰属するに至つた場合であつても、その賃借権が対抗要件を具備したものであり、かつ、その対抗要件を具備したのちに右土地に抵当権が設定されていたときは、民法
一七九条一項〈混同〉但書の準用により、賃借権は消滅しないものと解すべきであり、このことは、賃借権の対抗要件が建物保護に関する法律
一条によるものであるときでも同様である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和46年10月14日 昭和46(オ)582
- 登載
- 民集 第25巻7号933頁
- 参照法条
- 民法179条1項,民法520条,民法601条,民法605条,建物保護に関する法律1条,民訴法643条1項,民訴法643条3項,民訴法658条
論点4第605条民法
隣接土地上に存在する保存登記を経由した建物の庭として使用することを目的とする土地の賃借権と建物保護に関する法律一条〈基本原則〉による対抗力
裁判要旨乙所有の土地(乙地)を借り受け、同士地上に保存登記を経由した建物を所有する者が、甲所有の隣接土地(甲地)を右建物の庭として使用するため借り受けた場合においては、甲地が乙地と一体として右建物所有を目的として賃借されているものであるか否かにかかわらず、建物保護に関する法律
一条〈基本原則〉による賃借権の対抗力は甲地に及ばない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和44年10月28日 昭和44(オ)423
- 登載
- 民集 第23巻10号1854頁
- 参照法条
- 建物保護に関する法律1条,民法605条
論点5第605条民法
特約に基づき賃借権設定登記をする義務と賃料支払義務との同時履行の成否
裁判要旨不動産の賃貸人が特約に基づき賃借権設定登記をする義務を負つていても、右義務と賃借人の賃料支払義務とを同時履行の関係にたたせる旨の特約がなく、かつ、登記がないため契約の目的を達することができないという特段の事情もない場合には、賃借人は、右登記義務の履行がないことを理由として賃料の支払を拒むことができない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和43年11月28日 昭和43(オ)199
- 登載
- 民集 第22巻12号2833頁
- 参照法条
- 民法533条,民法605条
論点6第605条民法
隣接土地上に存在する居宅の庭として使用することを目的とする土地賃借権が「建物保護ニ関スル法律」第一条〈基本原則〉所定の対抗力を有しないとされた事例。
裁判要旨甲所定の土地(甲土地)を無償で借り受け、同土地上に居宅を所有する者が、乙の所有の隣接土地(乙土地)を右居宅の庭として使用するため賃借したにすぎず、しかも、甲土地の使用権は乙土地の賃借権の存否にかかわらず存続すべきものである等判示の事情のもとにおいては、たとい当該賃借人が甲乙両土地を一括して右居宅利用の便益に供しており、かつ、右居宅について登記を了していても、乙土地の賃借権は「建物保護ニ関スル法律」
第一条〈基本原則〉所定の対抗力を有しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年6月29日 昭和38(オ)372
- 登載
- 民集 第19巻4号1027頁
- 参照法条
- 建物保護ニ関スル法律1条,民法605条
論点7第605条民法
進駐車の接収使用中の土地について存する対抗要件を欠く賃借権とその対抗力
裁判要旨賃借している土地が、昭和二〇年勅令第六三六号土地工作物使用令第一一条によつて進駐車が接収使用中のものであつても、賃借人は賃貸借の登記があるか、またはその土地の上に登記した建物を有しない限り、その賃借権をもつて土地の新取得者に対抗できない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和30年3月17日 昭和27(オ)291
- 登載
- 民集 第9巻3号307頁
- 参照法条
- 民法605条,土地工作物使用令(昭和20年勅令第636号)11条
論点8第605条民法
一 戦時罹災土地物件令第三条の趣旨
二 相手方の賃借権を承認した者と賃貸借の対抗要件の欠缺主張の許否
裁判要旨一 戦時罹災土地物件令第三条は、同条所定の期間、借地権者の土地に対する使用収益を制限すると共に、その地代又は借賃の支払義務を免れしめるに止まり、借地権自体の譲渡を制限禁止する趣旨ではない。
二 一旦相手方の賃借権を承認した者は、賃貸借の対抗要件の欠缺を主張して相手方の賃借権を否定することは許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年12月25日 昭和24(オ)293
- 登載
- 民集 第5巻13号829頁
- 参照法条
- 戦時罹災土地物件令(昭和20年勅令411号)3条,民法605条,建物保護ニ関スル法律(明治42年法律40号)1号
論点9第605条民法
抵当権と併用して賃借権設定仮登記を経由した者の後順位短期賃借権者に対する明渡請求の可否
裁判要旨抵当権と併用して抵当不動産につき賃借権設定の予約をしその仮登記を経由した者が、予約完結権を行使して賃借権の本登記を経由しても、後順位の短期賃借権者に対し右不動産の明渡を求めることは、右短期賃貸借の解除請求とともにする場合であつてもできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成元年6月5日 昭和61(オ)1454
- 登載
- 民集 第43巻6号355頁
- 参照法条
- 民法395条,民法602条,民法605条
論点10第605条民法
抵当権設定登記後に賃借権の時効取得に必要な期間不動産を用益した者が賃借権の時効取得を当該不動産の競売又は公売による買受人に対抗することの可否
裁判要旨不動産につき賃借権を有する者がその対抗要件を具備しない間に,当該不動産に抵当権が設定されてその旨の登記がされた場合,上記の者は,上記登記後,賃借権の時効取得に必要とされる期間,当該不動産を継続的に用益したとしても,競売又は公売により当該不動産を買い受けた者に対し,賃借権を時効により取得したと主張して,これを対抗することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成23年1月21日 平成21(受)729
- 登載
- 集民 第236号27頁
- 参照法条
- 民法163条,民法601条,民法605条,民事執行法59条1項,民事執行法59条2項,国税徴収法124条1項
論点11第606条民法
修繕は賃借人がする旨の契約条項が賃貸人が修繕義務を負わないとの趣旨にすぎないとされた事例
裁判要旨原判決判示のごとき事実関係のもとにおいては、「入居後の大小修繕は賃借人がする」旨の住居用家屋についての契約条項は、単に賃貸人が民法第六〇六条第一項所定の修繕義務を負わないとの趣旨にすぎず、賃借人が右家屋の使用中に生じる一切の汚損、破損個所を自己の費用で修繕し、右家屋を賃借当初と同一状態で維持すべき義務を負うとの趣旨ではないと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和43年1月25日 昭和42(オ)820
- 登載
- 集民 第90号121頁
- 参照法条
- 民法606条
論点12第606条民法
賃借家屋修繕義務の不履行を理由に賃料支払を拒絶できないとされた事例
裁判要旨賃貸家屋の僅かな一部が破損したが、その余の部分に著しい支障もなく居住の目的を達することができ、また、賃料が地代家賃統制例の統制に服している等原判決判示の事情のもとにおいては、賃借人は賃貸人の賃貸家屋修繕義務の不履行を理由に賃料全部の支払を拒むことはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年9月10日 昭和39(オ)1000
- 登載
- 集民 第80号251頁
- 参照法条
- 民法606条1項,民法533条
論点13第606条民法
民法第六〇六条〈賃貸人による修繕等〉は賃料額統制法令の施行のもとで適用があるか
裁判要旨民法
第六〇六条〈賃貸人による修繕等〉は、賃料額統制法令の施行のもとでも、判示のような特段の事情がないかぎり、適用がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年7月6日 昭和38(オ)1354
- 登載
- 集民 第79号677頁
- 参照法条
- 民法606条
論点14第606条民法
家屋賃借人において修繕義務を負う特約がある場合の大修繕。
裁判要旨家屋賃借人において修繕義務を負う特約がある場合でも大修繕は特別の事情のない限り賃借人において負担する義務がないと、一般的にいうことはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年6月26日 昭和38(オ)191
- 登載
- 集民 第74号297頁
- 参照法条
- 民法606条
論点15第606条民法
賃貸家屋の修繕義務の不履行を理由に賃料支払を拒絶できないとされた事例。
裁判要旨賃貸家屋の破損、腐蝕の状況が居住に著しい支障を生ずるほどでなく、また、賃料が地代家賃統制令の統制に服している等原判決判示の事情のもとにおいては(原判決理由参照)、賃借人は賃貸人の賃貸家屋修繕義務の不履行を理由に賃料全部の支払を拒むことができない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年11月28日 昭和37(オ)347
- 登載
- 民集 第17巻11号1477頁
- 参照法条
- 民法606条1項,民法533条
論点16第606条民法
一 家屋所有者の家屋保存のための工事と家屋使用者の工事妨害
二 判決主文の表現が不明確でないとされた事例
裁判要旨一 家屋所有者が、その家屋保存のため必要とする限度において修繕改築等の工事をする場合、右家屋を使用する者は、賃借権の有無にかかわらず右工事を妨害してはならない。
二 「被告等は原告等の右家屋の修繕及び模様替工事をなすに必要な期間中必要部分を占有使用することを妨害してはならない。」との判決主文は、判決理由と対照して内容不明確ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年2月20日 昭和34(オ)191
- 登載
- 集民 第58号745頁
- 参照法条
- 民法206条,民法606条,民訴法191条1項
論点17第606条民法
朽廃時期の迫つた賃貸家屋に対する大修繕の必要と借家法第一条ノ二にいわゆる正当事由。
裁判要旨賃貸家屋の朽廃の時期が迫つた場合、これを大修繕するために賃貸借を終了させる必要があり、その必要が賃借人の利益と比べてこれにまさるときは、解約申入につき借家第法一条ノ二にいわゆる正当の事由があると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和35年4月26日 昭和33(オ)728
- 登載
- 民集 第14巻6号1091頁
- 参照法条
- 借家法1条ノ2,民法606条
論点18第606条民法
修繕は賃借人においてなす旨の契約の趣旨
裁判要旨映画館用建物及びその附属設備の賃貸借における「雨漏等の修繕は賃貸人においてこれをなすも、営業上必要なる修繕は賃借人においてこれをなすものとする」との契約条項は、単に賃貸人の修繕義務の限界を定めただけでなく、賃借人にその営業上必要な範囲の修繕の義務を負担させた趣旨と解し得られないことはない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和29年6月25日 昭和26(オ)775
- 登載
- 民集 第8巻6号1224頁
- 参照法条
- 民法606条
論点19第606条民法
店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った営業利益相当の損害について,賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期以降に被った損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできないとされた事例
裁判要旨ビルの店舗部分を賃借してカラオケ店を営業していた賃借人が,同店舗部分に発生した浸水事故に係る賃貸人の修繕義務の不履行により,同店舗部分で営業することができず,営業利益相当の損害を被った場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,遅くとも賃貸人に対し損害賠償を求める本件訴えが提起された時点においては,賃借人がカラオケ店の営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を執ることなく発生する損害のすべてについての賠償を賃貸人に請求することは条理上認められず,賃借人が上記措置を執ることができたと解される時期以降における損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできない。
(1) 賃貸人が上記修繕義務を履行したとしても,上記ビルは,上記浸水事故時において建築から約30年が経過し,老朽化して大規模な改修を必要としており,賃借人が賃貸借契約をそのまま長期にわたって継続し得たとは必ずしも考え難い。
(2) 賃貸人は,上記浸水事故の直後に上記ビルの老朽化を理由に賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしており,同事故から約1年7か月が経過して本件訴えが提起された時点では,上記店舗部分における営業の再開は,実現可能性の乏しいものとなっていた。
(3) 賃借人が上記店舗部分で行っていたカラオケ店の営業は,それ以外の場所では行うことができないものとは考えられないし,上記浸水事故によるカラオケセット等の損傷に対しては保険金が支払われていた。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成21年1月19日 平成19(受)102
- 登載
- 民集 第63巻1号97頁
- 参照法条
- 民法416条1項,民法606条1項
論点20第607条民法
賃貸人と賃借人、不法占有者との間の関係と民法第一八九条第一九〇条の適用の有無
裁判要旨賃貸人と賃借人ないし不法占有者との間には民法第一八九条、第一九〇条の適用はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和41年8月26日 昭和40(オ)1200
- 登載
- 集民 第84号287頁
- 参照法条
- 民法189条,民法190条,民法607条
論点21第608条民法
賃借建物に関して支出する必要費、有益費の償還請求権を予め放棄する旨の特約と借家法六条
裁判要旨賃貸人と賃借人との間で、賃借人が賃借建物に関して支出する必要費、有益費の償還請求権を予め放棄する特約は、借家法六条に抵触しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和49年3月14日 昭和48(オ)1106
- 登載
- 集民 第111号303頁
- 参照法条
- 民法608条,借家法6条
論点22第608条民法
賃借人が賃借建物に附加した部分が滅失した場合と有益費償還請求権
裁判要旨賃借人が賃借建物に附加した増・新築部分が、賃貸人に返還される以前に、賃貸人、賃借人いずれの責にも帰すべきでない事由により滅失したときは、特段の事情のないかぎり、右部分に関する有益費償還請求権は消滅する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和48年7月17日 昭和48(オ)128
- 登載
- 民集 第27巻7号798頁
- 参照法条
- 民法196条2項,民法608条2項
論点23第608条民法
建物の賃借人が有益費を支出したのち建物の賃貸人が交替した場合と有益費の償還義務者
裁判要旨建物の賃借人が有益費を支出したのち建物の所有権譲渡により賃貸人が交替したときは、特段の事情のないかぎり、新賃貸人が右有益費の償還義務を承継し、旧賃貸人は右償還義務を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和46年2月19日 昭和42(オ)779
- 登載
- 民集 第25巻1号135頁
- 参照法条
- 民法608条2項,民法196条2項
論点24第608条民法
借地上の家屋に関する費用償還請求権とその敷地の留置権
裁判要旨借地上の家屋に関する費用償還請求権は、その家屋の敷地自体に関して生じた債権でもなければ、その敷地の所有者に対して取得した債権でもないから、右請求権を有する者であつても、その家屋の敷地を留置する権利は有しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和44年11月6日 昭和44(オ)413
- 登載
- 集民 第97号179頁
- 参照法条
- 民法295条,民法608条
論点25第611条民法
賃借土地の使用に事実上の支障がある場合と賃料支払義務。
裁判要旨建物所有の目的で賃借した土地の地上建物が戦災により滅失した後、右土地は特別都市計画法による区画整理区域に指定されたが、換地予定地の指定が遅れ、その間原審認定のような事情があつて(原判決理由参照)、事実上これを家屋所有の目的で使用することに支障を来したとしても、賃借人の使用収益が全面的に不能であつたものとは認められないときは、賃借人は賃料の支払義務を当然に免れたものということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年12月4日 昭和31(オ)393
- 登載
- 民集 第13巻12号1588頁
- 参照法条
- 民法536条,民法611条
論点26第612条民法
土地賃借権譲渡契約につきその譲渡の効力が契約締結時に発生するとして締結されたと解された事例
裁判要旨土地賃借権の譲渡契約において、譲渡について地主の承諾が得られなかつたときは、譲渡契約当事者間で協議し、円満に取引を完了する旨の特約がある場合に、譲渡の効力発生について地主の承諾を停止条件とする旨を直接定めた書面上の合意がなく、土地上の建物の売買代金を含む譲渡代金の四割相当の手付金が譲渡契約時に支払われ、譲受人が契約締結のころ右建物に入居してそこに造作工事を施したなど、判示の事情のもとにおいては、右譲渡契約は、その締結と同時に土地賃借権の譲渡の効力が発生するとして締結されたと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和63年9月8日 昭和59(オ)147
- 登載
- 集民 第154号465頁
- 参照法条
- 民法1編4章1節,民法127条1項,民法612条
論点27第612条民法
無断転貸にもかかわらず賃貸借の解除ができない場合にされた賃貸借の合意解除と転借人の地位
裁判要旨土地の無断転貸が行われたにもかかわらず賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が賃貸借を解除することができない場合において、当該賃貸借が合意解除されたとしても、それが賃料不払等による法定解除権の行使が許されるときにされたものである等の事情のない限り、賃貸人は右合意解除の効果を転借人に対抗することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和62年3月24日 昭和59(オ)1178
- 登載
- 集民 第150号509頁
- 参照法条
- 民法545条1項,民法612条
論点28第612条民法
建物転借の意思が客観的に表現されるに至つたとされた事例
裁判要旨甲が乙に賃貸している建物の一部につき、丙が、乙との間において転貸借契約を締結し、平穏公然に当該建物部分を占有使用して、乙に対し賃料の支払いを継続してきた場合において甲が丙の用益の事実を知つたなど判示の事実関係のもとにおいては、丙の用益が転借の意思に基づくものであることが甲に対しても客観的に表現されるに至つたというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和62年12月15日 昭和61(オ)698
- 登載
- 集民 第152号263頁
- 参照法条
- 民法163条,民法601条,民法612条
論点29第612条民法
無断転貸を理由とする土地賃貸借契約の解除権の消滅時効の起算点
裁判要旨無断転貸を理由とする土地賃貸借契約の解除権の消滅時効は、転借人が転貸借契約に基づき当該土地の使用収益を開始した時から進行する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和62年10月8日 昭和58(オ)457
- 登載
- 民集 第41巻7号1445頁
- 参照法条
- 民法166条1項,民法612条2項
論点30第612条民法
賃借権の無断譲渡を理由とする契約解除権が時効消滅した場合と賃貸人の譲受人に対する明渡請求の許否
裁判要旨債借権の譲渡を承諾しない賃貸人は、無断譲渡を理由とする契約解除権が時効消滅した場合であつても、所有権に基づき、賃借権の無断譲受人に対し、賃貸借の目的物の明渡を求めることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和55年12月11日 昭和53(オ)1440
- 登載
- 集民 第131号285頁
- 参照法条
- 民法601条,民法612条
論点31第612条民法
破産宣告後の不動産転借権の取得と破産法五四条一項
裁判要旨破産宣告当時破産者所有の不動産につき対抗力ある賃借権の負担が存する場合において、破産宣告後に右不動産が転貸されたとしても、特段の事情のない限り、転借人の転借権取得は破産法五四条一項所定の破産者の法律行為によらない権利の取得に該当しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和54年1月25日 昭和53(オ)662
- 登載
- 民集 第33巻1号1頁
- 参照法条
- 民法612条,破産法54条1項
論点32第612条民法
賃貸中の不動産に対する競売開始決定後賃貸人のした賃借権譲渡の承諾と譲受人の競落人に対する地位
裁判要旨賃貸中の不動産に対する競売開始決定の差押の効力発生後賃貸人のした賃借権譲渡の承諾は、特段の事情のない限り、右差押の効力によつて禁止される処分行為にあたらず、譲受人は、賃借権の取得をもつて競落人に対抗することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年6月29日 昭和52(オ)1111
- 登載
- 民集 第32巻4号762頁
- 参照法条
- 民法612条,民訴法644条,競売法25条
論点33第612条民法
土地賃借権の移転と敷金に関する敷金交付者の権利義務関係の承継の有無
裁判要旨土地賃借権が賃貸人の承諾を得て旧賃借人から新賃借人に移転された場・合であつても、敷金に関する敷金交付者の権利義務関係は、敷金交付者において賃貸人との間で敷金をもつて新賃借人の債務の担保とすることを約し又は新賃借人に対して敷金返還請求権を譲渡するなど特段の事情のない限り、新賃借人に承継されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和53年12月22日 昭和52(オ)844
- 登載
- 民集 第32巻9号1768頁
- 参照法条
- 民法612条,民法619条2項
論点34第612条民法
土地賃借権の無断譲受人による土地の使用が賃借意思に基づくものではないとして賃借権の時効取得が否定された事例
裁判要旨土地賃借権の無断譲受人が、土地の引渡を受けながら賃貸人に賃料を支払つたことがなく、また、賃貸人に賃借権譲渡の承諾を求めたが拒絶され、かえつて譲渡人との賃貸借契約は既に解除ずみであるとして土地の明渡を求められ、その後にいたつて賃料の弁済供託を開始したなど、判示の事実関係のもとにおいては、譲受人が賃借意思に基づいて土地の使用を継続したものということはできず、賃借権の時効取得を認めることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年12月14日 昭和53(オ)719
- 登載
- 民集 第32巻9号1658頁
- 参照法条
- 民法163条,民法601条,民法612条
論点35第612条民法
賃借地上の建物が譲渡された場合において敷地賃借権の譲渡を伴わない特別の事情があつたものと認められた事例
裁判要旨賃借地の一部に分譲用建物を建築して第三者に分譲した賃借人が、賃貸人に対しては、右分譲後も賃借地全部の面積に相当する坪単価をもつて計算された額の賃料を一括して支払い、建物譲受人らからは、その敷地の広狭その他の事情を考慮してこれらの者と各別に約定した額の賃料の支払を受けてきたなど判示の事実関係のもとでは、分譲用建物の敷地については、転貸借契約がされたものであつて、賃借地上の建物が譲渡されたにもかかわらず、賃借権の譲渡を伴わない特例の事情があつたものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年10月26日 昭和53(オ)641
- 登載
- 集民 第125号543頁
- 参照法条
- 民法612条,民法613条
論点36第612条民法
賃貸人の無断再転借人に対する物の返還請求と賃貸借契約の解除の要否
裁判要旨賃貸人は、賃貸借契約を解除することなしに無断再転借人に対し物の返還を請求することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和52年4月7日 昭和50(オ)839
- 登載
- 集民 第120号407頁
- 参照法条
- 民法612条
論点37第612条民法
一、土地の賃借人が地上に所有する建物の抵当権を設定しその登記を経たのち第三者が賃貸人の承諾を得て土地賃借権のみを譲り受けた場合と抵当権実行後の右土地賃借権の帰すう
二、土地の賃貸人が抵当権の実行による地上建物の競落人の土地賃借権取得を承諾したことにより右抵当権の設定登記後に賃貸人の承諾を得て土地の賃借権のみを譲り受けた者が賃借人としての地位を失つた場合と賃貸人の責に帰すべき事由の有無
裁判要旨一、土地の賃借人が地上に所有する建物に抵当権を設定しその登記を経たのちに賃貸人の承諾を得て賃借人から土地の賃借権のみを譲り受けた者は、抵当権の実行により競落人が建物の所有権とともに土地の賃借権を取得したときに競落人との関係において賃借権を失い、競落人が右賃借権の取得につき賃貸人の承諾を得たときに賃貸人との関係においても賃借人の地位を失う。
二、土地の賃貸人が抵当権の実行による地上建物の競落人の土地賃借権取得を承諾したことにより、右抵当権の設定登記後に賃貸人の承諾を得て土地の賃借権のみを譲り受けた者が賃借人としての地位を失つても、これをもつて賃貸人の責に帰すべき事由によるものとすることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年3月11日 昭和48(オ)118
- 登載
- 民集 第31巻2号171頁
- 参照法条
- 民法87条2項,民法370条,民法415条,民法601条,民法612条1項
論点38第612条民法
借地上の建物についての登記名義のみの変動と敷地賃借権の譲渡、転貸
裁判要旨土地賃借人が借地上に所有する建物につき、第三者名義で保存登記をし、あるいは第三者に所有権移転登記をした場合でも、それが登記上の名義のみであつて建物所有権の帰属に変動がないときは、敷地賃借権について民法六一二条所定の譲渡又は転貸はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和50年4月18日 昭和49(オ)1118
- 登載
- 集民 第114号523頁
- 参照法条
- 民法612条
論点39第612条民法
賃借権の無断譲渡が賃貸人に対する背信行為に当たらないとみることはできないとした判断に審理不尽があるとされた事例
裁判要旨ゴルフ場経営を目的とする株式会社が、ゴルフ場用地の一部として賃借していた土地の賃借権を、賃貸人に無断で他の株式会社に譲渡したときでも、当該賃貸人に賃貸借契約締結の当初から不誠実な態度があつたほか、譲受会社が元来賃借会社の子会社として当該ゴルフ場運営のために設立された会社であり、また、他の百余名の賃貸人らがすべて賃借権の譲渡に承諾を与えている等、判示の事情がある場合においては、右譲渡当時、譲受会社が賃借会社の子会社たる地位を失つていて、賃借会社とは別個独立に当該ゴルフ場を経営するに至つていたとしても、そのことから直ちに、右譲渡が賃貸人に対する背信行為に当たらないとみることはできないとは言えず、賃借地の使用収益の方法や賃料支払の確実性等に実質約影響があるかどうかなど判示の諸点についても審理を尽くすことを要する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和49年3月22日 昭和48(オ)657
- 登載
- 集民 第111号457頁
- 参照法条
- 民法612条,民訴法394条
論点40第612条民法
借地上建物の仮装譲渡の無効は土地賃貸人に対抗しうるか
裁判要旨土地の賃借人が地上建物を仮装譲渡した場合、土地賃貸人は、右譲渡につき民法九四条二項にいわゆる第三者にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和48年4月24日 昭和47(オ)1301
- 登載
- 集民 第109号205頁
- 参照法条
- 民法94条,民法612条
論点41第612条民法
土地の賃貸借契約が賃借人の破産により解除されても信義則上転借権が消滅しないとされた事例
裁判要旨土地が適法に転貸され、転借人になんら非違もないのに、賃借人会社の代表者である賃貸入が、右転借権を消滅させるため、右会社の自己破産を申し立てて破産宣告をえ、これを理由に賃貸借契約を解除するようなことは、転借人に対し著しく信義則に反し、右解除により賃貸借契約が終了しても、転借権は消滅しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和48年10月12日 昭和48(オ)68
- 登載
- 民集 第27巻9号1192頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法612条,民法621条
論点42第612条民法
借地上の建物の所有権の移転とその借地権
裁判要旨借地上の建物の所有権が第三者に移転する場合には、任意譲渡であると競売等国家機関の介入による場合であるとを問わず、特別の事情がないかぎり、その敷地の借地権は、建物の所有権とともに当然に第三者に移転するものと解すべく、右特別の事情の存することの主張立証責任はこれを自己の利益に援用する者の側にあるものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年7月18日 昭和46(オ)659
- 登載
- 集民 第106号469頁
- 参照法条
- 民法559条,民法612条,民訴法686条,競売法32条
論点43第612条民法
賃借地上にある建物の売主と敷地賃借権譲渡の承諾取得義務
裁判要旨賃借地上にある建物の売買契約が締結された場合においては、特別の事情のないかぎり、売主は、買主に対し、その建物の敷地の賃借権をも譲渡したものであつて、それに伴い、その賃借権譲渡につき賃貸人の承諾を得る義務を負うものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年3月9日 昭和45(オ)803
- 登載
- 民集 第26巻2号213頁
- 参照法条
- 民法87条,民法555条,民法601条,民法612条
論点44第612条民法
借地上建物の仮装譲渡の場合に土地賃貸人は民法九四条二項の第三者にあたるか
裁判要旨土地賃借人が地上建物を他に仮装譲渡した場合に、右土地の賃貸人は民法九四条二項にいう第三者にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年3月7日 昭和46(オ)777
- 登載
- 集民 第105号259頁
- 参照法条
- 民法94条2項,民法612条
論点45第612条民法
土地の無断転貸借と土地の賃借権ないし転借権の時効取得
裁判要旨他人の土地の用益がその他人の承諾のない転貸借に基づくものである場合において、土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、その用益が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているときは、その土地の賃借権ないし転借権を時効により取得することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和44年7月8日 昭和41(オ)991
- 登載
- 民集 第23巻8号1374頁
- 参照法条
- 民法163条,民法601条,民法612条
論点46第612条民法
賃借権譲渡に賃貸人の書面による承諾を要する旨の特約と賃貸借の解除
裁判要旨賃借権譲渡に賃貸人の書面による承諾を要する旨の特約があるにかかわらず、賃借人が賃貸人の書面による承諾を得ないで賃借権を譲渡した場合であつても、右書面による承諾を必要とした特約の趣旨その他諸般の事情に照らし、右譲渡が賃貸人に対する背信的行為であると認めるに足りない特段の事情が存する事実について、賃借人から立証がなされたときには、前記特約に基づく賃貸借の解除は、許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和44年2月13日 昭和42(オ)1382
- 登載
- 民集 第23巻2号316頁
- 参照法条
- 民法540条,民法612条
論点47第612条民法
相続による土地の共同賃借人のうちの一人がした賃借権の無断譲渡を理由に他の賃借人に対しても、賃貸借の解除ができるか
裁判要旨賃貸人が、相続により土地の共同賃借人となつた甲乙に対し、甲のした賃借権の無断譲渡を理由として賃貸借解除の意思表示をした場合、乙は右無断譲渡行為を知らず何らこれに関与していなかつたとしても、解除権不可分の原則が働くのであるから、右解除の効果は乙についても生ずるものといわなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和43年4月12日 昭和42(オ)1027
- 登載
- 集民 第90号963頁
- 参照法条
- 民法544条1項,民法612条
論点48第612条民法
一 土地貸借人が該地上の建物に設定した抵当権の効力は当該土地の賃借権に及ぶか。
二 地上建物に抵当権を設定した土地賃借人は抵当建物の競落人に対し地主に代位して当該土地の明渡を請求できるか。
裁判要旨一 土地賃借人が該土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、原則として、右抵当権の効力は当該土地の賃借権に及び、右建物の競落人と賃借人との関係においては、右建物の所有権とともに土地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である。
二 前項の場合には、賃借人は、賃貸人において右賃借権の移転を承諾しないときであつても、競落人に対し、土地所有者たる賃貸人に代位して右土地の明渡を請求することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年5月4日 昭和39(オ)1033
- 登載
- 民集 第19巻4号811頁
- 参照法条
- 民法370条,民法87条2項,民法423条,民法612条
論点49第612条民法
承諾のない転貸をした転貸人の転借人に対する損害賠償責任。
裁判要旨賃貸人の承諾のない転貸をした転貸人は、転借人に対し将来賃貸人の承諾を得ることを約諾し、またはこれを得ることの確実であることを保証した等特段の事由がない限り、右承諾のない事実を知つて転貸借契約をした転借人に対し損害賠償請求を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年3月23日 昭和39(オ)86
- 登載
- 集民 第78号395頁
- 参照法条
- 民法561条,民法612条
論点50第612条民法
経営委託の形式による店舗の使用関係が転貸借契約と認められた事例。
裁判要旨店舗建物の賃借人が、経営委託契約の形式のもとに店舗の一部を使用させ、該使用者は、自己の計算において、鳥禽類の仕入販売を行い、収益如何にかかわらず、前記賃借人に対し月額六〇〇〇円を下らない金員を支払うことを約した場合は、転貸借契約が成立したものと認めるのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年9月24日 昭和38(オ)638
- 登載
- 集民 第75号445頁
- 参照法条
- 民法612条,民法643条
論点51第612条民法
一 賃貸借終了による賃貸家屋の明渡請求と家屋所有の要否
二 旅館共同経営にもとづく経営の参加と無断転賃の成否
裁判要旨一 賃貸借終了による賃貸家屋の明渡請求においては、賃貸人は、解除の時に家屋所有者であることを要しない。
二 家屋賃借人が第三者との旅館共同経営契約にもとづいて当該第三者に右営業上独立の占有させているなど原判決認定の事情のもとにおいては、民法
第六一二条〈賃借権の譲渡及び転貸の制限〉の解除の原因となる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和39年3月10日 昭和38(オ)1050
- 登載
- 集民 第72号441頁
- 参照法条
- 民法617条,民法612条
論点52第612条民法
賃借権の持分の譲渡が民法第六一二条の解除事由にならないとされた事例。
裁判要旨建物所有のための土地賃借人たる母がその所有する建物をその親権に服する子との共有名義とし、これにともない敷地の賃借権の持分を譲渡した場合には、賃借地の利用および賃料支払等の実質関係に前後変りがなければ、右賃借権の持分の譲渡は、これについて賃貸人の承諾がなくても、民法
第六一二条〈賃借権の譲渡及び転貸の制限〉による解除の事由とはならない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月16日 昭和37(オ)322
- 登載
- 民集 第18巻1号11頁
- 参照法条
- 民法612条,民法264条
論点53第612条民法
家屋の一部の転借人が賃貸人から右家屋の所有権を取得した場合における賃借人との法律関係。
裁判要旨家屋賃借人が賃借家屋の一部を賃貸人の承諾を得て他に転貸した場合において、転借人がその後賃貸人から右家屋の譲渡を受けてその所有権を取得したときは、転借人において賃貸人の地位を承継し、爾後は自ら賃借人に対して右家屋全部の使用収益をなさしめる義務を負うことになるのであり、転借人において当該転借部分の使用収益をなしうるのは、賃借人との間の転貸借関係に基づくものであつて、転借人の右家屋所有権取得により転貸借が当然消減するものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和39年12月15日 昭和38(オ)917
- 登載
- 集民 第76号519頁
- 参照法条
- 民法612条,民法613条,借家法1条
論点54第612条民法
市有地の賃借権を市条例所定の市長の承認なしに譲渡する契約の効力。
裁判要旨市有地の賃借権を譲渡するには、市条例所定の市長の承認を要するとしても、当事者がその承認を予期して右譲渡契約を締結することは違法でなく、その対価を取得しても、不法原因給付とはならない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和38年10月22日 昭和37(オ)98
- 登載
- 集民 第68号467頁
- 参照法条
- 民法612条,民法708条,昭和24.4.1大阪市条例19号「大阪市財産及び営造物条例」12条
論点55第612条民法
賃料延滞による賃貸借の解除と転借人に対する催告の要否
裁判要旨適法な転貸借がある場合、賃貸人が賃料延滞を理由として賃貸借契約を解除するには、賃借人に対して催告すれば足り、転借人に対して右延滞賃料の支払の機会を与えなければならないものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和37年3月29日 昭和33(オ)963
- 登載
- 民集 第16巻3号662頁
- 参照法条
- 民法541条,民法612条,民法613条
論点56第612条民法
判決の反射的効力を認めたことが違法とされた一事例
裁判要旨土地の適法な転借人およびその者からその所有の地上建物を賃借する者等は、賃借人の土地明渡義務が判決により確定されている場合においても、これがために当然賃貸人の土地明渡の請求を拒みえないものと解すべきではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和31年7月20日 昭和29(オ)110
- 登載
- 民集 第10巻8号965頁
- 参照法条
- 民訴法201条,民法612条
論点57第612条民法
賃貸借の合意解約により転借権が当然消滅すると解すべき場合
裁判要旨家屋の賃貸人が、家屋の一部の転貸借につき近く予想される賃借人の家屋退去に至るまでの間を限つて承諾を与えたものであり、転借人もそのことを知つていたときは、右転借権は賃借人の家屋退去と同時に消滅するものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年4月5日 昭和30(オ)604
- 登載
- 民集 第10巻4号330頁
- 参照法条
- 民法612条,民法第3編第2章第7節第3款(617条の前),借家法4条
論点58第612条民法
借地上の建物の譲渡担保権者が建物の引渡しを受けて使用収益をする場合と民法六一二条にいう賃借権の譲渡又は転貸
裁判要旨借地上の建物につき借地人から譲渡担保権の設定を受けた者が、建物の引渡しを受けて使用又は収益をする場合には、いまだ譲渡担保権が実行されておらず、譲渡担保権設定者による受戻権の行使が可能であるとしても、建物の敷地について民法六一二条にいう賃借権の譲渡又は転貸がされたものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成9年7月17日 平成5(オ)486
- 登載
- 民集 第51巻6号2882頁
- 参照法条
- 民法369条(譲渡担保),民法612条
論点59第612条民法
賃借人の債務不履行による賃貸借の解除と賃貸人の承諾のある転貸借の帰すう
裁判要旨賃貸借が賃借人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年2月25日 平成6(オ)456
- 登載
- 民集 第51巻2号398頁
- 参照法条
- 民法601条,民法612条
論点60第612条民法
小規模で閉鎖的な有限会社における実質的な経営者の交代と民法六一二条にいう賃借権の譲渡
裁判要旨賃借人である小規模で閉鎖的な有限会社において、持分の譲渡及び役員の交代により実質的な経営者が交代しても、そのことは、民法
六一二条〈賃借権の譲渡及び転貸の制限〉にいう賃借権の譲渡に当たらない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成8年10月14日 平成6(オ)693
- 登載
- 民集 第50巻9号2431頁
- 参照法条
- 民法612条
論点61第612条民法
1 賃借人が,借地上の建物の建て替えに当たり賃貸人から得た承諾とは異なる持分割合で新築建物を他の者らの共有とすることを容認して借地を無断転貸したことにつき,賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるとされた事例
2 賃借人が,借地上の建物の共有者がその持分を他の者に譲渡することを容認して借地を無断転貸したことにつき,賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるとされた事例
裁判要旨1 賃借人が,借地上の建物を建て替えるに当たり,賃貸人から得た承諾とは異なる持分割合で新築建物を他の者らの共有とすることを容認し,これに伴い共有者の1人において上記承諾を超える持分を取得した限度で借地を無断転貸したとしても,次の(1)〜(3)など判示の事情の下においては,賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるというべきである。
(1) 新築建物の共有者は,賃借人の妻及び子であって,建て替えの前後を通じて借地上の建物において賃借人と同居しており,上記転貸により借地の利用状況に変化は生じていない。
(2) 賃貸人は,賃借人の持分を10分の1,子の持分を10分の7,妻の持分を10分の2として建物を建て替えることを承諾しており,上記転貸については,賃借人の持分とされるはずであった10分の1の持分が妻の持分とされたことに伴う限度で賃貸人の承諾がなかったにとどまる。
(3) 賃貸人は,賃借人が新築建物の持分を取得することにつき重大な関心を有していなかった。
2 賃借人が,借地上の建物の共有者がその持分を他の者に譲渡することを容認し,これに伴い借地を無断転貸したとしても,次の(1)〜(3)の事情の下においては,賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるというべきである。
(1) 上記の持分譲渡は,賃借人の子からその妻に対し,離婚に伴う財産分与として行われたものである。
(2) 賃借人の子の妻は,離婚前から借地上の建物において賃借人と同居しており,賃借人の子が上記建物から退去したほかは,上記転貸により借地の利用状況に変化は生じていない。
(3) 賃貸人は,上記転貸により不利益を全く被っていない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成21年11月27日 平成20(受)1340
- 登載
- 集民 第232号409頁
- 参照法条
- 民法612条2項
論点62第612条民法
土地の無断転貸をした賃借人が賃貸人に対し転借人が不法に投棄した産業廃棄物を賃貸借契約終了時に撤去すべき義務を負うとされた事例
裁判要旨土地の賃借人が同土地を無断で転貸し,転借人が同土地に産業廃棄物を不法に投棄したという事実関係の下では,賃借人は,賃貸借契約の終了に基づく原状回復義務として,上記産業廃棄物を撤去すべき義務を負う
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成17年3月10日 平成14(受)1565
- 登載
- 集民 第216号379頁
- 参照法条
- 民法597条1項,民法612条1項,民法616条
論点63第612条民法
事業用ビルの賃貸借契約が賃借人の更新拒絶により終了しても賃貸人が信義則上その終了を再転借人に対抗することができないとされた事例
裁判要旨ビルの賃貸,管理を業とする会社を賃借人とする事業用ビル1棟の賃貸借契約が賃借人の更新拒絶により終了した場合において,賃貸人が,賃借人にその知識,経験等を活用してビルを第三者に転貸し収益を上げさせることによって,自ら各室を個別に賃貸することに伴う煩わしさを免れるとともに,賃借人から安定的に賃料収入を得ることを目的として賃貸借契約を締結し,賃借人が第三者に転貸することを賃貸借契約締結の当初から承諾していたものであること,当該ビルの貸室の転借人及び再転借人が,上記のような目的の下に賃貸借契約が締結され転貸及び再転貸の承諾がされることを前提として,転貸借契約及び再転貸借契約を締結し,再転借人が現にその貸室を占有していることなど判示の事実関係があるときは,賃貸人は,信義則上,賃貸借契約の終了をもって再転借人に対抗することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成14年3月28日 平成11(受)1220
- 登載
- 民集 第56巻3号662頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法612条,借地借家法34条
論点64第613条民法
賃借家屋につき適法な転貸借がなされた場合、賃貸人が賃料不払を理由に賃貸借を解除するときと、転借人に対する催告の要否
裁判要旨賃借家屋につき適法に転貸借がなされた場合であつても、賃貸人が賃借人の賃料延滞を理由として賃貸借を解除するときは、転借人に対し右延滞賃料の支払の機会を与えなければならないものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和49年5月30日 昭和49(オ)71
- 登載
- 集民 第112号9頁
- 参照法条
- 民法613条,借家法4条
論点65第613条民法
一 賃貸人の承諾をえた賃借権の譲渡による旧賃借人が賃貸借関係から離脱した旨の判断については、当事者の主張を要するか
二 所有者兼賃貸人からする賃借人に対する損害賠償の請求について同人の占有関係を確定しないでこれを排斥することが適法とされた事例
裁判要旨一 賃貸人の承諾をえた賃借権の譲渡による旧賃借人が賃貸借関係から離脱した旨の判断については、当事者の主張を要しない。けだし、これは、適法な賃借権の譲渡の事実から生ずる法律上の効果にすぎないからである。
二 所有者兼賃貸人から賃借人に対する損害賠償の請求は、賃貸借の終了による原状回復義務の債務不履行にもとづくものであると解せられる場合には、その終了が認められない以上、賃借人の占有関係を確定しないで、右請求を排斥しても、違法ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和41年12月16日 昭和41(オ)798
- 登載
- 集民 第85号685頁
- 参照法条
- 民訴法186条,民訴法39条,民法613条,民法416条
論点66第613条民法
賃貸人の地位と転借人の地位との混同と転貸借。
裁判要旨賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰した場合であつても、転貸借は、当事者間にこれを消滅させる合意の成立しない限り、消滅しないものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和35年6月23日 昭和33(オ)890
- 登載
- 民集 第14巻8号1507頁
- 参照法条
- 民法601条,民法613条
論点67第613条民法
賃料の不払を理由とする賃貸借契約の解除と転借人に賃料の代払の機会を与えることの要否
裁判要旨適法な転貸借関係が存在する場合、賃貸人が賃料の不払を理由として賃貸借契約を解除するには、特段の事情のない限り、転借人に通知等をして賃料の代払の機会を与えなければならないものではない。
(反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成6年7月18日 平成4(オ)1598
- 登載
- 集民 第172号1007頁
- 参照法条
- 民法541条,民法613条
論点68第613条民法
抵当不動産の賃借人が取得する転貸賃料債権について抵当権者が物上代位権を行使することの可否
裁判要旨抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成12年4月14日 平成11(許)23
- 登載
- 民集 第54巻4号1552頁
- 参照法条
- 民法304条1項・民法372条・民法613条
論点69第614条民法
一 家屋賃貸借における賃料の取立債務の約定と新所有者たる賃貸人による承継の有無。
二 催告金額以下の金額では賃貸人において受領しないことが明確であることを理由として催告が効力を生じないとされた事例。
裁判要旨一 家屋賃貸借における賃料の取立債務の約定は、賃借人と前賃貸人との間の特殊事情に基づいて成立したものであつても、新所有者たる賃貸人に承継される。
二 賃貸人が適正賃料である月三、九八九円を一、〇一一円しかこれない賃料月五、〇〇〇円の割合による賃料債務の支払を催告した場合であつても、賃貸人が右催告金額以下の金員ではこれを受領しないことが明確であるときには、右催告は、その効力を生じない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年6月26日 昭和38(オ)1071
- 登載
- 民集 第18巻5号968頁
- 参照法条
- 民法600条,民法614条,民法541条,借家法1条
論点70第614条民法
賃貸借の成立が否定された事例。
裁判要旨地主が売却代金六万円を土地使用人との共同事業に出資するとともに土地の使用を認め、共同事業による利益分配金を受領することを約していた場合において、数年後に右合意の内容を明確にするための覚書の案について「賃貸」などの表現を訂正して「使用」などの用語を用いてはじめて覚書に捺印したような判示の事情のあるときには、地主において判示のような金員を受領していても、賃貸借の成立は認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年4月17日 昭和38(オ)91
- 登載
- 集民 第73号229頁
- 参照法条
- 民法601条,民法614条
論点71第616条民法
借地契約の終了に伴う土地返還請求訴訟と地上建物の所有権の帰属
裁判要旨土地賃貸借の終了を原因として原状回復義務の履行を求める訴訟において、地上建物の所有権の帰属いかんは、被告の右建物の収去による該土地の明渡義務を定めるについて影響を及ぼすものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和53年2月14日 昭和52(オ)1002
- 登載
- 集民 第123号43頁
- 参照法条
- 民法616条,民法597条
論点72第616条民法
借地上に存する建物の賃借人の敷地利用が敷地の使用収益権の範囲を逸脱したものとされた事例
裁判要旨借地上に存する建物の賃借人が地主及び家主に無断で該建物の下屋部分を取り殿し、その跡地及び国道から建物に至る通路として利用していた敷地部分に賃借建物の床面積の約三分の二に達する木造瓦葺二階建店舗を築造する目的で角柱、支え材等を設置することは、建物賃借人の敷地の使用収益権の範囲を逸脱したものである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和50年7月10日 昭和49(オ)454
- 登載
- 集民 第115号269頁
- 参照法条
- 民法594条1項,民法616条
論点73第616条民法
一、賃貸借契約における信義則上の義務違反と契約解除
二、用方違反または信義則上の義務違反を理由とする賃貸借契約の解除が認められなかつた事例
裁判要旨一、賃貸借契約の当事者の一方が、右契約に基づき信義則上当事者に要求される義務に違反して、その信頼関係を破壊することにより、賃貸借関係の継続を著しく困離ならしめたときは、他方の当事者は、催告なくして賃貸借契約を解除することができる。
二、建物所有を目的とする土地賃貸借契約の賃借人が、借地の約半分にあたる空地をトラツク置場とし、無免許で自動車運送事業を営み、また、そのトラツクが完全に格納できずに公道上に約一メートルはみ出し公衆の通行を妨害している場合においても、格納を完全にするための工事が比較的容易であり、近隣や歩行者から苦情が出たこともない等原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいては、賃貸人は、用法違反または信義則上の義務違反を理由として、賃貸借契約を解除することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年11月16日 昭和45(オ)942
- 登載
- 民集 第26巻9号1603頁
- 参照法条
- 民法541条,民法594条1項,民法601条,民法616条
論点74第616条民法
家屋賃借人の敷地利用が賃借家屋およびその敷地の使用収益権の範囲を逸脱しその保管義務に反することはないとされた事例
裁判要旨家屋賃借人がその敷地に家屋を無断築造した場合であつても、現在の家主が賃貸人となつた当時、すでに右賃借人が地主の承諾をえて敷地の一部に約三坪の居宅兼物置を築造しており、その後約一二年をへて、右賃借人が右居宅兼物置を撤去した跡にそれと面積、位置をほぼ同じくして、木造トタン葺板壁の簡単な構造の作業場を新築したにすぎず、右新築による賃借家屋の損傷の程度や作業場の利用状況等が判示のとおりであるときには、右作業場の設置をもつて、家屋賃借人の敷地利用が賃借家屋およびその敷地の使用収益権の範囲を逸脱し、その保管義務に反するものということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和46年7月1日 昭和44(オ)508
- 登載
- 集民 第103号335頁
- 参照法条
- 民法400条,民法594条1項,民法616条
論点75第616条民法
信頼関係の破壊を理由とする無催告の賃貸借契約解除が許容された事例
裁判要旨家屋の一室を除く部分の賃借人が、賃借外の右一室につき、賃貸人の承諾なく判示のような改造を施し、これを賃借部分とあわせて使用している場合には、賃借人の右行為は、賃貸借契約の継続を困難ならしめる著しい不信行為に該当し、賃貸人は、催告なしに賃貸借契約を解除することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和44年6月17日 昭和44(オ)78
- 登載
- 集民 第95号509頁
- 参照法条
- 民法541条,民法616条,民法594条1項
論点76第616条民法
借地上の建物についてした工事が無断増改築禁止の特約違反を理由とする借地契約解除の原因とならないとされた事例
裁判要旨(省略)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和44年12月16日 昭和44(オ)948
- 登載
- 集民 第97号775頁
- 参照法条
- 民法540条,民法616条,民法594条,借地法11条
論点77第616条民法
建物の一部の賃借人が他の部分を不法に占拠して賃借部分と併用している行為が著しい不信行為であるとして無催告の賃貸借契約の解除が許容された事例。
裁判要旨賃貸人の所有建物の一部の賃借人が、他の部分について賃貸人から賃貸の交渉を受けたにかかわらず、これに対する諾否を明らかにしないまま、五ケ月あまりの間、当該部分を不法に占拠して賃借部分と併用している等原判示の事情(原判決理由参照)がある場合には、賃借人の右行為は賃貸借契約の継続を著しく困難ならしめる不信行為に該当し、賃貸人は、催告なしに賃貸借契約を解除することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年8月2日 昭和39(オ)822
- 登載
- 民集 第19巻6号1368頁
- 参照法条
- 民法616条,民法594条1項,民法541条
論点78第616条民法
借家人の無断増改築が著しい不信行為であるとして無催告の賃貸借契約解除を有効とした事例
裁判要旨二階建家屋の賃借人が、無断で賃借家屋の階下の店舗部分の柱一本を切除して一畳半の床部分を落間とし、賃借家屋の廂の下からトタン葺の下屋をさげて約三畳の間を増築する等判示の増改築をした場合には、賃貸人は著しい不信行為のなされたことを理由として催告なしに賃貸借契約を解除することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年11月16日 昭和39(オ)1035
- 登載
- 集民 第81号57頁
- 参照法条
- 民法541条,民法616条,民法594条
論点79第616条民法
一 二筆の土地を一括して賃借した場合に一筆の土地についての用方違反によつて二筆の土地全部の賃貸借契約を解除できるとされた事例。
二 堅固建物への改築が消防署の命によつた場合でも借地の用方違反の違法性は阻却されないとされた事例。
裁判要旨一 道路を隔てて存在する甲乙二筆の土地の賃借人が甲地上にその用方違反となるべき石油貯蔵庫を建築した場合において、右二筆の土地が一括して賃貸借の目的となつていて、賃借人としては右二筆の土地を石油類販売業のため総合的に利用しようとして右貯蔵庫を建築した等原審判示の事情(原判決理由参照)のもとでは、賃貸人は右用方違反を事由として甲乙二筆の土地全体について賃貸借契約を解除することができる。
二 借地の用方を主として貯炭場を設けるためと定め、建物の建築としては木造の小規模のものに限るとの特約のもとでなされた土地賃貸借契約において、賃借人が賃貸人の事前の明白な拒否にもかかわらず、借地上に石油類販売用のコンクリートブロツク造の堅固な石油貯蔵庫を建築することは、賃借物の用方違反をきたすものというべく、当該石油貯蔵庫の建築が消防署の命によつて従前の木造をコンクリートブロツク造に改めたという事情によるものであつても、右事情は用方違反の違法性を阻却する事由とはならない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年6月19日 昭和38(オ)48
- 登載
- 民集 第18巻5号806頁
- 参照法条
- 民法616条,民法549条1項
論点80第616条民法
借家人の無断増築が著しい不信行為であるとして無催告の賃貸借契約解除が有効とされた事例。
裁判要旨土蔵造り瓦葺二階建家屋(建坪六坪)の賃借人が賃貸人所有の右敷地またはこれに隣接する同人所有地上に木造瓦葺二階建居宅一棟(建坪約六坪)を無断で建増ししたような場合においては、賃貸人は著しい不信行為のなれたことを理由として催告なしに賃貸借契約を解除することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和38年9月27日 昭和37(オ)588
- 登載
- 民集 第17巻8号1069頁
- 参照法条
- 民法541条,民法543条,民法616条,民法594条1項
論点81第616条民法
土地賃借人が借地に隣接する賃貸人所有地に越境建築したことが借地自体の用方違反になるとされた事例。
裁判要旨建物所有を目的とする土地賃借人が借地に隣接する賃貸人所有地にまで越境して建物を建築した場合、右越境建築が当該隣地における賃貸人の店舗経営上以上な支障をきたすなど判示のような事実関係のもとでは、右越境建築により、借地自体の用方違反があるということができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年11月14日 昭和36(オ)361
- 登載
- 民集 第17巻11号1346頁
- 参照法条
- 民法541条,民法616条,民法594条1項
論点82第616条民法
賃借建物の無断増築が契約解除原因に当らないとされた事例。
裁判要旨借地上の建物の賃借人が空地に建物を無断で増築した場合でも、増築部分が賃借建物の構造を変更しないでこれに附属せしめられた一日で撤去できる程度の仮建築であり、しかも賃借建物は賃借人が自己の費用で適宜改造して使用すべく家主において修理しない約定で借受けた等の経緯であるときは、賃借人の右増築行為は、建物の賃貸借契約を解除しうる背信行為に当らない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和36年7月21日 昭和33(オ)719
- 登載
- 民集 第15巻7号1939頁
- 参照法条
- 民法541条,民法616条,民法594条1項
論点83第616条民法
賃借家屋の改造と賃借人の原状回復義務
裁判要旨賃貸借の目的たる家屋を工場に改造して使用することが、特に賃貸借契約の内容となつているときは、特約なきかぎり、賃借人には改造家屋につき原状回復義務はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年2月2日 昭和26(オ)727
- 登載
- 民集 第8巻2号321頁
- 参照法条
- 民法616条,民法598条
論点84第616条民法
家屋の賃貸借で構造変更禁止の特約ある場合における構造変更の有無の解釈
裁判要旨家屋の賃貸借において、賃借人がその家屋の構造変更をすることを禁止する特約があり、賃借人が構造変更をした場合には、その構造変更の態様が社会通念上特約にいう構造変更と認められないような場合のほかは、禁止された構造変更にあたるものと解すべきであり、原状回復が簡単にできるというだけで、これにあたらないということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年12月21日 昭和26(オ)782
- 登載
- 民集 第8巻12号2199頁
- 参照法条
- 民法616条(594条1項)
論点85第616条民法
1 賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負う場合
2 賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負う旨の特約が成立していないとされた事例
裁判要旨1 賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負うためには,賃借人が補修費用を負担することになる上記損耗の範囲につき,賃貸借契約書自体に具体的に明記されているか,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識して,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約が明確に合意されていることが必要である。
2 建物賃貸借契約書の原状回復に関する条項には,賃借人が補修費用を負担することになる賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗の範囲が具体的に明記されておらず,同条項において引用する修繕費負担区分表の賃借人が補修費用を負担する補修対象部分の記載は,上記損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえず,賃貸人が行った入居説明会における原状回復に関する説明でも,上記の範囲を明らかにする説明はなかったという事情の下においては,賃借人が上記損耗について原状回復義務を負う旨の特約が成立しているとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成17年12月16日 平成16(受)1573
- 登載
- 集民 第218号1239頁
- 参照法条
- (1,2につき) 民法597条1項,民法598条,民法616条