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第一審/捜査

捜査の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

第189条から第207条は、捜査の主体となる警察官・検察事務官・検察官の役割分担と、協力・指示・指揮の関係を定めています。捜査は任意捜査が原則で、強制処分には法律上の根拠が必要です。さらに、逮捕状の発付要件や、逮捕後の引致・送致・勾留請求までの時間制限も規定しています。

捜査における時間制限
主体場面時間制限
司法警察員逮捕後、検察官へ送致48時間以内
検察官自ら逮捕・受取後の勾留請求48時間以内
検察官送致を受けた後の勾留請求24時間以内
(通算上限)逮捕から勾留請求まで72時間以内
  • 第199条ただし書き:軽微な罰金・拘留・科料の罪は、住居不定か正当理由なく出頭に応じない場合に限り逮捕状請求ができる(罰金は原則30万円以下、刑法等以外は当分2万円以下)
  • 第206条:やむを得ない事情があれば、時間制限を超えても事由を疎明して勾留請求できる場合がある
  • 第204条・第205条:時間制限内に公訴を提起すれば勾留請求は不要
  • 第197条3項〜5項:通信履歴を消去しないよう求める期間は最長30日、延長しても通算60日が上限
  • 第201条の2:性犯罪被害者等は、氏名等を伏せた逮捕状の抄本等で逮捕できる制度がある
  • 第194条:検察官の指示・指揮に正当理由なく従わない警察官は懲戒・罷免の訴追を受けることがある
1

捜査

捜査について、条文は何を定めているか。

第189条警察官は司法警察職員として捜査する2項判例 4件
  • 職務のやり方は法律や公安委員会規則で定まる
  • 犯罪があると思うときは犯人と証拠を捜査する
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第190条森林・鉄道など特別分野は別法律で定める1項判例なし
  • 対象者と職務範囲は別に法律で定められる
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第191条検察官も自ら捜査でき、事務官は指揮下で捜査2項判例 2件
  • 検察官は必要と認めれば自分で捜査できる
  • 検察事務官は検察官の指揮を受けて捜査する
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第192条検察官と警察は捜査で協力する義務がある1項判例なし
  • 検察官・都道府県公安委員会・司法警察職員は相互に協力しなければならない
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第193条検察官は警察に一般的指示・指揮ができる4項判例なし
  • 捜査を適正にするための一般的指示ができる
  • 協力を求める一般的指揮、自ら捜査時は補助の指揮もできる
  • 司法警察職員は指示・指揮に従わなければならない
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第194条指示に従わない警察官は懲戒・罷免を求められる2項判例なし
  • 検事総長・検事長・検事正が公安委員会等に訴追できる
  • 訴追に理由があれば懲戒・罷免しなければならない
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第195条検察官・検察事務官は管轄外でも捜査できる1項判例なし
  • 捜査に必要なら管轄区域を越えて職務ができる
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第196条捜査関係者は名誉配慮と支障回避の注意義務1項判例 2件
  • 検察官・検察事務官・司法警察職員・弁護人などが対象
  • 被疑者らの名誉を害さないよう注意する
  • 捜査の妨げにならないよう注意する
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第197条捜査は任意が原則、強制処分は法定の場合のみ5項判例 13件
  • 強制処分は法律に特別の定めがある場合だけ可能
  • 公務所等への照会で必要事項の報告を求められる
  • 通信履歴を消去しないよう最長30日(延長で通算60日)求められる
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第198条被疑者取調べは出頭を求め黙秘権を告げて行う5項判例 21件
  • 逮捕・勾留中でなければ出頭拒否や退去ができる
  • 取調べ前に供述しなくてよい旨を告げる
  • 供述は調書に録取し、閲覧・読み聞かせて確認する
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第199条逮捕状は相当な理由があるときに裁判官が発する3項判例 11件
  • 軽微な罰金・拘留・科料事件は住居不定か出頭拒否時のみ
  • 罰金は原則30万円以下(刑法等以外は当分2万円以下)
  • 明らかに逮捕の必要がなければ裁判官は発しない
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第200条逮捕状には氏名・罪名・被疑事実などを記載2項判例 1件
  • 引致場所、有効期間、発付年月日などを記載する
  • 裁判官が記名押印する
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第201条逮捕時は被疑者に逮捕状を示さなければならない2項判例 7件
  • 逮捕状を示してから逮捕する
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第201_2条性犯罪被害者等は氏名等を伏せた逮捕状で逮捕可4項・2号判例なし
  • 性犯罪等の被害者や報復のおそれがある者が対象
  • 個人特定事項を記載しない抄本等の交付を請求できる
  • 抄本を持たず急ぐときは事項を伏せて要旨を告げられる
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第202条逮捕した検察事務官・司法巡査は直ちに引致1項判例なし
  • 検察事務官は検察官に、司法巡査は司法警察員に引致する
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第203条警察は48時間以内に検察官へ送致するか釈放5項判例 8件
  • 犯罪事実の要旨と弁護人選任権を告げ弁解の機会を与える
  • 留置不要なら釈放、必要なら48時間以内に送致
  • 時間内に送致しなければ直ちに釈放する
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第204条検察官は48時間以内に勾留請求するか釈放5項判例 2件
  • 弁解の機会を与え、留置不要なら直ちに釈放
  • 留置必要なら48時間以内に勾留請求
  • 時間内に公訴提起すれば勾留請求は不要
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第205条送致後は24時間、通算72時間以内に勾留請求4項判例 3件
  • 送致を受けた時から24時間以内に勾留請求
  • 身体拘束時から通算72時間を超えられない
  • 時間内に公訴提起すれば勾留請求は不要
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第206条やむを得ない事情があれば期限超過でも請求可2項判例 4件
  • 検察官が裁判官に事由を疎明して勾留請求できる
  • 裁判官は遅延が正当と認めるときのみ勾留状を発する
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第207条勾留請求を受けた裁判官は裁判所と同一の権限5項判例 14件
  • 保釈についてはこの権限に含まれない
  • 弁護人選任権・国選請求権を告げる(弁護人がいる場合を除く)
  • 理由がなければ勾留状を発さず直ちに釈放を命じる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第189条刑事訴訟法

国税犯則事件につき当該官吏告発前における強制捜査の適否。

裁判要旨司法警察職員および検察官は、当該官吏の告発をまつて論ずべき国税犯則事件につき、その告発前においても強制捜査をすることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年12月23日 昭和34(あ)1049
登載
刑集 第14巻14号2213頁
参照法条
刑訴法189条2項,刑訴法191条1項,刑訴法197条1項,刑訴法239条,関税法140条1項,国税犯則取締法17条1項
論点2第189条刑事訴訟法

昭和二九年国家公安委員会規則第五号により司法警察員に指定された司法巡査の権限

裁判要旨昭和二九年国家公安委員会規則第五号の定めるところにより当該管区警察局長が司法警察員に指定した司法巡査は、司法警察員の資格において参考人の供述調書を作成することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年8月22日 昭和31(あ)1719
登載
刑集 第10巻8号1266頁
参照法条
昭和29年国家公安委員会規則第5号,刑訴法189条,刑訴法223条
論点3第189条刑事訴訟法

警察職員による被疑者の取調と黙祕権または供述拒否権の告知の要否

裁判要旨警察職員が被疑者を取り調べるにあたつて、あらかじめいわゆる黙祕権または供述拒否権のあることを告知しなかつたからといつて、憲法三八条一項に違反するものでないこと及び右告知のなかつた一事を以つて右取調に基く被疑者の供述が任意性を欠くものと速断することのできないことは当裁判所の判例の趣旨に徴し極めて明かである。(昭和二三年(れ)第一〇一号同年七月一四日大法廷判決及び昭和二五年(れ)第一〇八二号同年一一月二一日第三小法廷判決参照)。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年5月1日 昭和26(あ)4531
登載
集刑 第80号49頁
参照法条
憲法38条1項,刑訴法189条
論点4第189条刑事訴訟法

家庭裁判所の捜査機関に対し補充捜査を促し又は求める権限

裁判要旨家庭裁判所は、事実調査のため、捜査機関に対し、補充捜査を促し、又は少年法一六条の規定に基づいて補充捜査を求めることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成2年10月24日 平成1(し)121
登載
刑集 第44巻7号639頁
参照法条
少年法8条,少年法16条,刑訴法189条2項,刑訴法191条1項
論点5第196条刑事訴訟法

付審判請求事件の審理手続において検察官から裁判所に送付された一件記録の閲覧謄写を許可することが違法とされた事例

裁判要旨本件付審判請求事件の審理手続において裁判所が定めた審理方式のうち、請求人代理人に対し検察官から裁判所に送付された一件記録の閲覧謄写を許可する部分は、本件事案(判文参照)のもとでは、裁判所に許された裁量の範囲を逸脱し違法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年3月13日 昭和48(し)42
登載
刑集 第28巻2号1頁
参照法条
刑訴法47条,刑訴法196条,刑訴法262条,刑訴法265条,刑訴規則171条
論点6第196条刑事訴訟法

一 第一審当時において旧刑訴第二〇一条第一項第三号〈逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。〉後段に該当した証人が第二審当時之に該当しなかつた場合の第一審公判調書中の証言の証拠能力
二 憲法違反の主張と認められない事例

裁判要旨一 一件記録を精査すれば、所論証人A、同Bについて第一審裁判所は、旧刑訴二〇一条一項三号〈逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。〉後段に基きその尋問当時現に供述を為すべき事件の被告人と共犯の嫌疑ある者と認め、宣誓を為さしめないで尋問し、原審裁判所は、第一審裁判所の尋問当時はその嫌疑があつたが自己の尋問当時には最早かかる嫌疑なきものと認め、宣誓を為さしめて尋問したものであると認められる。されば、原審裁判所が第一審裁判所がその尋問同時共犯の嫌疑ありと認め宣誓を為さしめないで尋問した所論証人尋問の措置を正当と認めその証言を有効として採用したからといつて所論判例に反する判断をしたものとはいえない。
二 刑訴施行法第三条の二は憲法に反する無効の規定であるというだけであつて、何等原判決に対する不服の理由を示していない主張は、適法な上告理由と認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年3月13日 昭和26(れ)2299
登載
刑集 第6巻3号470頁
参照法条
旧刑訴法337条,旧刑訴法201条1項,旧刑訴法196条,刑訴施行法3条の2,刑訴法405条
論点7第197条刑事訴訟法

赤色警光灯をつけずに最高速度を超過して追尾したことによつて得られた速度測定結果の証拠能力

裁判要旨パトカーが赤色警光灯をつけずに最高速度を超過して速度違反車両を追尾した場合においても、警察官に速度違反の罪の成立することがあるのは格別、追尾によつて得られた速度測定結果を内容とする証拠の証拠能力の否定に結びつくような性質の違法はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和63年3月17日 昭和61(あ)390
登載
刑集 第42巻3号403頁
参照法条
刑訴法1条,刑訴法197条1項,道路交通法22条1項,道路交通法41条2項,道路交通法施行令14条
論点8第197条刑事訴訟法

一 被疑者を所轄警察署近辺のホテル等に宿泊させて取調べを続行したことが任意捜査の方法として違法とまではいえないとされた事例
二 伝聞証言につき異議の申立がなかつた場合の証拠能力

裁判要旨一 被疑者につき帰宅できない特段の事情もないのに、同人を四夜にわたり所轄警察署近辺のホテル等に宿泊させるなどした上、連日、同警察署に出頭させ、午前中から夜間に至るまで長時間取調べをすることは、任意捜査の方法として必ずしも妥当とはいい難いが、同人が右のような宿泊を伴う取調べに任意に応じており、事案の性質上速やかに同人から詳細な事情及び弁解を聴取する必要性があるなど本件の具体的状況のもとにおいては(判文参照)、任意捜査の限界を越えた違法なものとまでいうことはできない。
二 いわゆる伝聞証言であつても、異議の申立がないまま当該証人に対する尋問が終了した場合には、直ちに異議の申立ができないなどの特段の事情がない限り、黙示の同意があつたものとして、証拠能力を有する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年2月29日 昭和57(あ)301
登載
刑集 第38巻3号479頁
参照法条
刑訴法197条1項,刑訴法198条1項,刑訴法309条,刑訴法320条1項,刑訴法324条,刑訴法326条1項,刑訴規則205条,刑訴規則205条の2
論点9第197条刑事訴訟法

歩行中の集団を停止させた警察官の行為が犯人検挙のための捜査活動として適法な職務執行にあたるとされた事例

裁判要旨集団の一員が、警備中の警察官に暴行を加えてその職務の執行を妨害するとともに傷害を負わせ、右集団にまぎれ込んだ場合において、右犯人を探索して検挙するため、歩行中の右集団を六、七分間にわたり停止させた本件警察官の行為は、当時、犯罪発生後間がなく、かつ、被害警察官が犯人の人相特徴を明確に記憶しているなど犯人検挙の可能性がきわめて高い状況にあり、また、集団が四散する直前で、犯人検挙のためには直ちに集団を停止させてその四散を防止する緊急の必要があり、しかも、その方法が停止を求めるための説得の手段の域にとどまるなどの本件事実関係(判文参照)のもとにおいては、犯人検挙のための捜査活動として適法な職務執行にあたる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年2月13日 昭和55(あ)1104
登載
刑集 第38巻3号295頁
参照法条
刑法95条1項,刑訴法197条1項,警察官職務執行法2条1項
論点10第197条刑事訴訟法

任意の取調の範囲を超えていないとされた事例

裁判要旨捜査官が被疑者を午前九時から午後一一時まで取調べても、調べを続けてほしい旨の申出が被疑者からなされたような事情がある場合は、任意の取調の範囲を超えたものということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和52年10月27日 昭和52(あ)1080
登載
集刑 第207号765頁
参照法条
刑訴法197条,刑訴法198条,憲法31条,憲法38条1項,憲法38条2項
論点11第197条刑事訴訟法

一 任意捜査において許容される有形力の行使の限度
二 任意捜査において許容される限度内の有形力の行使と認められた事例

裁判要旨一 任意捜査における有形力の行使は、強制手段、すなわち個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段にわたらない限り、必要性、緊急性などをも考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において、許容される。
二 警察官が、酒酔い運転の罪の疑いが濃厚な被疑者をその同意を得て警察署に任意同行し、同人の父を呼び呼気検査に応じるよう説得を続けるうちに、母が警察署に来ればこれに応じる旨を述べたので、連絡を被疑者の父に依頼して母の来署を待つていたところ、被疑者が急に退室しようとしたため、その左斜め前に立ち、両手でその左手首を掴んだ行為(判文参照)は、任意捜査において許容される限度内の有形力の行使である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和51年3月16日 昭和50(あ)146
登載
刑集 第30巻2号187頁
参照法条
刑法95条1項,刑訴法197条1項
論点12第197条刑事訴訟法

起訴後における捜査官による被告人の取調の適否―起訴後作成された被告人の捜査官(検察官)に対する供述調書の証拠能力。

裁判要旨起訴後においては被告人の当事者たる地位にかんがみ、捜査官が当該公訴事実について被告人を取り調べることはなるべく避けなければならないが、これによつて直ちにその取調を違法とし、その取調の上作成された供述調書の証拠能力を否定すべきではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年11月21日 昭和36(あ)1776
登載
刑集 第15巻10号1764頁
参照法条
刑訴法197条,刑訴法198条
論点13第197条刑事訴訟法

被疑者に対する長時間の取調べが任意捜査として許容される限度を逸脱したものとまではいえないとされた事例(反対意見がある)

裁判要旨午後一一時過ぎに任意同行の上翌日午後九時二五分ころまで続けられた被疑者に対する取調べは、特段の事情のない限り、容易に是認できないが、取調べが本人の積極的な承諾を得て参考人からの事情聴取として開始されていること、一応の自白があつた後も取調べが続けられたのは重大事犯の枢要部分に関する供述に虚偽が含まれていると判断されたためであること、その間本人が帰宅や休息の申出をした形跡はないことなどの特殊な事情のある本件においては、任意捜査として許容される限度を逸脱したものとまではいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成元年7月4日 昭和60(あ)826
登載
刑集 第43巻7号581頁
参照法条
刑訴法197条1項,刑訴法198条1項
論点14第197条刑事訴訟法

車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は令状がなければ行うことができない強制の処分か

裁判要旨車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であり,令状がなければ行うことができない強制の処分である。
裁判
最高裁判所大法廷 平成29年3月15日 平成28(あ)442
登載
刑集 第71巻3号13頁
参照法条
憲法35条,刑訴法197条1項
論点15第197条刑事訴訟法

宅配便業者の運送過程下にある荷物について,荷送人や荷受人の承諾を得ずに,捜査機関が検証許可状によることなくエックス線検査を行うことは適法か

裁判要旨荷送人の依頼に基づき宅配便業者の運送過程下にある荷物について,捜査機関が,捜査目的を達成するため,荷送人や荷受人の承諾を得ずに,これに外部からエックス線を照射して内容物の射影を観察する行為は,検証としての性質を有する強制処分に当たり,検証許可状によることなくこれを行うことは違法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年9月28日 平成19(あ)798
登載
刑集 第63巻7号868頁
参照法条
刑訴法197条1項,刑訴法218条1項
論点16第197条刑事訴訟法

1 捜査機関が公道上及びパチンコ店内にいる被告人の容ぼう,体型等をビデオ撮影した捜査活動が適法とされた事例
2 捜査機関が公道上のごみ集積所に不要物として排出されたごみを領置することの可否

裁判要旨1 捜査機関において被告人が強盗殺人等事件の犯人である疑いを持つ合理的な理由が存在し,かつ,同事件の捜査に関して行われたビデオ撮影が,防犯ビデオに写っていた人物の容ぼう,体型等と被告人の容ぼう,体型等との同一性の有無という犯人の特定のための重要な判断に必要な証拠資料を入手するため,これに必要な限度において,公道上及び不特定多数の客が集まるパチンコ店内にいる被告人の容ぼう等を撮影したものであるなど判示の事実関係の下では,これらのビデオ撮影は,捜査活動として適法である。
2 捜査機関は,不要物として公道上のごみ集積所に排出されたごみについて,捜査の必要がある場合には,刑訴法221条〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者その他の者が遺留した物又は所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物は、…〉によりこれを遺留物として領置することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年4月15日 平成19(あ)839
登載
刑集 第62巻5号1398頁
参照法条
(1につき)刑訴法197条1項 (2につき)刑訴法221条
論点17第197条刑事訴訟法

1 おとり捜査の許容性
2 大麻の有償譲渡を企図していると疑われる者を対象にして行われたおとり捜査が適法とされた事例

裁判要旨1 直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において,通常の捜査方法のみでは犯罪の摘発が困難である場合に,機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象にして行われるおとり捜査は,刑訴法197条1項〈捜査については、その目的を達するため必要な取調べをすることができる。ただし、強制の処分は、この法律に特別の定めのある場合…〉に基づく任意捜査として許容される。
2 大麻の有償譲渡を企図していると疑われる者を対象にして行われた本件おとり捜査(判文参照)は,麻薬取締官において,取引の場所を準備し,大麻を買い受ける意向を示し,取引の場に大麻を持参するように仕向けたとしても,適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成16年7月12日 平成15(あ)1815
登載
刑集 第58巻5号333頁
参照法条
刑訴法197条1項
論点18第197条刑事訴訟法

平成一一年法律第一三八号による刑訴法二二二条の二の追加前において検証許可状により電話傍受を行うことの適否

裁判要旨平成一一年法律第一三八号による刑訴法二二二条の二の追加前において、捜査機関が電話の通話内容を通話当事者の同意を得ずに傍受することは、重大な犯罪に係る被疑事件について、罪を犯したと疑うに足りる十分な理由があり、かつ、当該電話により被疑事実に関連する通話の行われる蓋然性があるとともに、他の方法によってはその罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが著しく困難であるなどの事情が存し、犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められる場合に、対象の特定に資する適切な記載がある検証許可状によって実施することが許されていた。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成11年12月16日 平成9(あ)636
登載
刑集 第53巻9号1327頁
参照法条
憲法13条,憲法21条2項,憲法31条,憲法35条,刑訴法128条,刑訴法129条,刑訴法197条1項,刑訴法218条1項,刑訴法218条3項,刑訴法218条5項,刑訴法219条1項,刑訴法222条1項,刑訴法222条の2
論点19第198条刑事訴訟法

違法な取調のもとで作成中の供述録取書と刑法二五八条にいう「公務所ノ用ニ供スル文書」

裁判要旨違法な取調のもとに作成されつつあつた供述録取書であつても、既に文書としての意味、内容を備えるに至つているものであるときは、刑法二五八条にいう「公務所ノ用ニ供スル文書」にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年6月24日 昭和54(あ)1647
登載
刑集 第36巻5号646頁
参照法条
刑法258条,刑訴法198条,刑訴法223条
論点20第198条刑事訴訟法

起訴後作成された被告人の捜査官に対する供述調書の証拠能力に関する判例違反の主張が欠前提とされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和57年3月2日 昭和56(あ)551
登載
集刑 第225号689頁
参照法条
刑訴法198条
論点21第198条刑事訴訟法

甲事実について逮捕勾留中の被疑者を乙事実について取調べることが違法ではないとされた事例

裁判要旨甲事実について逮捕・勾留の理由と必要があり、甲事実と乙事実とが社会的事実として一連の密接な関連がある場合(判文参照)、甲事実について逮捕・勾留中の被疑者を、同事実について取調べるとともに、これに付随して乙事実について取調べても、違法とはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和52年8月9日 昭和49(あ)2470
登載
刑集 第31巻5号821頁
参照法条
刑訴法60条1項,刑訴法198条1項,刑訴法198条2項,刑訴法199条
論点22第198条刑事訴訟法

未完成の供述録取書は刑法第二五八条にいう公務所の用に供する文書にあたるか

裁判要旨司法警察員が被疑者の供述を録取した調書は、いまだ被疑者および司法警察員の署名押印がなくても、刑法第二五八条にいう公務所の用に供する文書にあたるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年5月15日 昭和42(あ)2694
登載
集刑 第167号167頁
参照法条
刑法258条,刑訴法198条
論点23第198条刑事訴訟法

被告人の捜査官に対する黙秘権行使自体を量刑上不利益に考慮したものではないとされた事例。

裁判要旨所論は憲法第三八条第一項違反をいうのであるが第一審裁判所は捜査官に対する被告人の黙秘権行使の際の愚弄的の態度をもつて量刑上非難すべき情状として斟酌したにとどまり、原判決も右第一審判決の判示を是認したものであつて、所論のごとく黙秘したこと自体を量刑上不利益に考慮したものでないことは判文上明らかであり、従つて違憲の主張は前提を欠く。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年3月18日 昭和39(あ)2026
登載
集刑 第155号99頁
参照法条
憲法38条1項,刑訴法198条2項
論点24第198条刑事訴訟法

収税官吏が供述拒否権を告知しないで質問することは憲法第三八条に違反するか。

裁判要旨収税官吏が犯罪嫌疑者に対し質問するに当つて、供述拒否権のあることをあらかじめ告知しなかつたからといつて、その質問手続が憲法第三八条に違反するものでないことは当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第一〇一号同三三年七月一四日大法廷判決、刑集二巻八号八四六頁・昭和二三年(れ)第一〇一〇号同二四年二月九日大法廷判決、刑集三巻二号一四六頁・昭和二五年(れ)第一〇八二号同年一一月二一日第三小法廷判決、刑集四巻一一号二三五九頁・昭和二六年(あ)第二四三四号同二八年四月一四日第三小法廷判決、刑集七巻四号八四一頁)の趣旨に徴して明らかである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年8月20日 昭和37(あ)1495
登載
集刑 第152号499頁
参照法条
刑訴法198条2項,刑訴法311条,憲法38条,旧地方税法(昭和29年法律95号による改正前のもの)79条
論点25第198条刑事訴訟法

刑事事件の捜査上氏名住所を知るため外国人登録証明書の呈示を要求することと憲法第三八条第一項

裁判要旨刑事事件の捜査上氏名住所を知るため外国人登録証明書の呈示を要求したとしても憲法第三八条第一項に違反しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年1月16日 昭和29(あ)1993
登載
刑集 第12巻1号1頁
参照法条
外国人登録法1条,外国人登録法13条2項,外国人登録法18条1項7号,憲法38条1項,刑訴法198条2項
論点26第198条刑事訴訟法

被疑者を午前三時頃警察署に任意出頭せしめた処置と、被疑者の司法警察員に対する供述調書(自白)の証拠能力

裁判要旨被疑者を午前三時頃に出頭せしめる必要もないのに、警察署に任意出頭せしめた場合でも、その日の午後六時三〇分頃適法な手続によつて逮捕され、次いで適法に勾留された後において被疑者が司法警察員に対してなした供述(自白)の任意性が認められ、また被告人(被疑者)および弁護人共にその供述調書を証拠とすることに同意している等特段の事情ある場合に、右供述調書の証拠能力を認めることは相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年12月11日 昭和28(あ)5265
登載
集刑 第116号69頁
参照法条
刑訴法198条,刑訴法199条,刑訴法201条,刑訴法207条,刑訴法210条,刑訴法322条,刑訴法326条
論点27第198条刑事訴訟法

一 被疑者の供述調書に供述拒否権の告知の記載がないときは右告知がなかつたことになるか
二 捜査機関の作成する被疑者の供述調書には刑訴規則第三九条が適用されるか
三 証拠能力ある書面についてもこれを証拠とすることの同意を確めることを要するか

裁判要旨一 被疑者の供述調書に供述拒否権を告知した旨の記載がないからといつて、直ちにこの告知がなかつたとはいえない。
二 捜査機関の作成する被疑者の供述調書は刑訴第一九八条〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べること…〉の適用を受け、刑訴規則第三九条の適用は受けない。
三 法律条証拠能力のある書面については、これを証拠とすることに同意するかどうかを確める必要はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年8月20日 昭和28(あ)1613
登載
刑集 第8巻8号1299頁
参照法条
刑訴法198条,刑訴法326条,刑訴規則39条
論点28第198条刑事訴訟法

被疑者の弁解録取書の作成にあたり、いわゆる黙祕権の告知が必要か。−刑訴法二〇三条〈司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨…〉に基く弁解録取書と同法一九八条に基く取調調書との関係

裁判要旨刑訴二〇三条〈司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨…〉に基く司法警察員の被疑者に対する弁解録取書は、専ら被疑者を留置する必要あるか否かを調査するための弁解を録取する書面であつて、同一九八条〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べること…〉の被疑者の取調調書ではないから、刑訴法上その弁解の機会を与えるには犯罪事実の要旨を告げれば充分であつて、同一九八条二項に従いあらかじめ被疑者に供述を拒むことができる旨を告げることを要するものでなく、従つてその旨の記載がないからといつて刑訴法に違反するところはない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年7月14日 昭和27(あ)772
登載
集刑 第84号799頁
参照法条
刑訴法203条,刑訴法198条
論点29第198条刑事訴訟法

検察庁における被告人の供述が畏迫強制に基くものとは認められない一事例

裁判要旨被告人が検察庁に身柄を送致されるに際し、警察署で事実をはつきりいえば保釈して貰えるというような事を言い聞かされたとしてもこの一事だけで検察庁における被告人の供述が畏迫強制によるものであると断ずることを得ない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年4月23日 昭和26(あ)5243
登載
集刑 第79号213頁
参照法条
刑訴法319条,刑訴法322条,刑訴法198条,憲法38条
論点30第198条刑事訴訟法

一 同一検察官が引き続き被疑者を取り調べる場合にその都度供述拒否権を告知しなければならないか
二 供述拒否権を告知しないで取り調べることは憲法三八条一項に反するか

裁判要旨一 第一回供述調書作成八日後に同一検事が更に被疑者を取り調べる場合には、改めて供述拒否権を告知しなくても刑訴一九八条二項〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べること…〉に反しない。
二 供述拒否権を告知しないで取り調べても憲法三八条一項に反するものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年4月14日 昭和26(あ)2434
登載
刑集 第7巻4号841頁
参照法条
刑訴法198条1項,刑訴法198条2項,憲法38条1項
論点31第198条刑事訴訟法

検察官事務取扱検察事務官作成の被疑者または第三者に対する供述調書の証拠能力

裁判要旨検察官事務取扱検察事務官作成にかかる被疑者または第三者に対する供述調書は、刑訴第三二六条〈検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認め…〉の同意があるときは、事物管轄の如何にかかわらず、証拠能力を有する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年2月26日 昭和26(あ)3776
登載
刑集 第7巻2号339頁
参照法条
刑訴法198条,刑訴法223条,刑訴法321条1項,刑訴法322条,刑訴法326条,検察庁法36条
論点32第198条刑事訴訟法

一 罰金の寡額が刑法第一五条によつて定められている場合においては罰金の寡額の引上は罰金等臨時措置法第二条第一項によるのか
二 検察官が供述調書を作成する際にこれを供述者に読み聞けなかつた場合における供述調書の証拠能力
三 公法関係において債務の一部弁済があつた場合民法第四八九条を適用するのは相当か
四 民法第四八九条第二号の弁済の利益中には刑事上の責任の有無を含むか
五 前任者が控除した失業保険料を所定期日までに納付しなかつた者について失業保険法第五三条第三号の罪が成立するか
六 自ら保険料を控除した者であつても所定の納付期日にはその地位を去つた者について失業保険法第五三条第三号の罪が成立するか
七 失業保険法第三四条(改正前のもの)、同法施行令第一〇条にいわゆる翌月末日の意義
八 失業保険法第五五条の規定により法人が責任を負う場合において行為者が異るときは公訴事実も異なるか

裁判要旨一 特別法であつても、罰金の寡額が刑法第一五条によつて定められる場合には、その寡額の引上は、罰金等臨時措置法第四条によるのではなく、同法第二条第一項の規定によるものである。
二 検察官が供述調書を作成する際にこれを供述者に読み聞けなかつたとしても、その一事のみによつて供述調書がただちに証拠能力を失うことにはならない。
三 債務の一部弁済があつた場合に特段の規定または合意のないかぎりは、公法関係においても民法第四八九条の規定に従うものと解するのが相当である。
四 民法第四八九条第二号の弁済の利益は、財産上の利益を指称し、刑事上の責任の有無を含まない。
五 失業保険法第五三条第三号は、自ら保険料を控除した者が、これを所定期日までに納付しなかつた場合はもとより、その前任者が控除したことを知りながら、所定期日までに納付しなかつた者をも処罰するものと解すべきである。
六 自ら失業保険料を控除した者であつても、所定の納付期日にはこれを納付すべき地位を去つた者については、失業保険法第五三条第三号の罪は成立しない。
七 失業保険法第三四条(改正前のもの)、同法施行令第一〇条にいわゆる翌月末日とは、それが前月の遅延分であつても、実際に失業保険料を控除した日から起算して翌月末日と解すべきである。
八 失業保険法第五五条の規定により会社が従業者等の違反行為につき責任を負うべき場合において、責任を負うべき従業者等が異る場合においては、会社についても公訴事実を異にするものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年1月27日 昭和25(あ)3098
登載
刑集 第7巻1号64頁
参照法条
罰金等臨時措置法2条1項,罰金等臨時措置法4条,刑訴法198条4項,刑訴法223条,刑訴法312条,刑訴法256条,民法489条,失業保険法53条,失業保険法34条(改正前のもの),失業保険法55条,失業保険法施行令10条
論点33第198条刑事訴訟法

一 逮捕後被疑者に弁解の機会を与えるに際していわゆる黙秘権の告知が必要か
二 被疑者の弁解録取書は証拠能力を有するか

裁判要旨一 刑訴二〇三条〈司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨…〉に基く司法警察員の被疑者に対する弁解録取書、又は同二〇四条〈検察官は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者(前条の規定により送致された被疑者を除く。)…〉若しくは同二〇五条〈検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直…〉に基く検察官の被疑者に対する弁解録取書は、専ら被疑者を留置する必要あるか否かを調査するための弁解録取書であつて、同一九八条〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べること…〉所定の被疑者の取調調書ではないから、訴訟法上その弁解の機会を与えるには犯罪事実の要旨を告げるだけで充分であつて、同一九八条二項所定のように被疑者に対し、あらかじめ、供述を拒むことができる旨を告げなければならないことは要請されていない。
二 弁解録取書であつても、被告人の供述を録取した書面と認められ且つ刑訴三二二条〈被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事…〉の要件を具備するか又は同三二六条〈検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認め…〉の同意がありさえすれば証拠とすることができること論を俟たない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年3月27日 昭和26(あ)2650
登載
刑集 第6巻3号520頁
参照法条
刑訴法203条,刑訴法204条,刑訴法205条,刑訴法198条1項2項,刑訴法322条,刑訴法326条
論点34第198条刑事訴訟法

副検事のすでに作成した供述調書の記載に対する変更申立と刑訴法第一九八条第四項

裁判要旨副検事が、既に適法に作成した供述調書の記載に対して爾後の尋問に際し変更を申立てても、その申立は、刑訴第一九八条第四項〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べること…〉にいわゆる増減変更の申立にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年9月6日 昭和26(あ)634
登載
刑集 第5巻10号1878頁
参照法条
刑訴法198条4項
論点35第198条刑事訴訟法

刑訴法第一九八条〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べること…〉に基ずく司法警察員の被疑者取調と弁護人選任権の告知義務

裁判要旨しかのみならず所論司法警察員作成の供述調書は刑訴第二〇三条〈司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨…〉に基く弁解録取書ではなく、同一九八条〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べること…〉によつた調書であると解されるから訴訟法上被疑者に対し弁護人を選任することができる旨の告知をなすべき調書とは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月29日 昭和25(あ)2615
登載
集刑 第42号993頁
参照法条
刑訴法198条,刑訴法203条
論点36第199条刑事訴訟法

一 違法な別件逮捕中の自白を資料として発付された逮捕状による逮捕中の被疑者に対する勾留質問調書の証拠能力
二 違法な別件逮捕中の自白を資料として発付された勾留状による勾留中の被疑者に対する消防職員の質問調書の証拠能力
三 消防署長等が当該消防署等に所属する消防職員に質問調査を行わせることと消防法三二条一項
四 消防署長等が放火又は失火の罪で逮捕された被疑者に対し検察官送致後に質問調査を行うことと消防法三五条の二第一項

裁判要旨一 逮捕中の被疑者に対する勾留質問調書は、その逮捕が違法な別件逮捕中の自白を資料として発付された逮捕状によるものであつても、他に特段の事情のない限り、証拠能力を否定されるものではない。
二 勾留中の被疑者に対する消防職員の消防法三二条一項による質問調書はその勾留が違法な別件逮捕中の自白を資料として発付された勾留状によるものであつても、他に特段の事情のない限り、証拠能力を否定されるものではない。
三 消防法三二条一項は、消防署長等が当該消防署等に所属する消防職員をして質問調査を行わせることを禁じた趣旨ではない。
四 消防法三五条の二第一項は、消防署長等が、放火又は失火の罪で警察官に逮捕された被疑者に対し、事件が検察官に送致された後に、検察官等の許諾を得て同法三二条一項による質問調査を行うことを禁じた趣旨ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年7月12日 昭和55(あ)790
登載
刑集 第37巻6号791頁
参照法条
刑訴法61条,刑訴法199条,刑訴法207条,刑訴法319条1項,刑訴法322条1項,消防法31条,消防法32条1項,消防法35条1項,消防法35条の2
論点37第199条刑事訴訟法

逮捕に関する裁判と刑訴法四二九条一項所定の準抗告

逮捕に関する裁判と刑訴法四二九条一項所定の準抗告

裁判要旨逮捕に関する裁判は、刑訴法四二九条一項〈裁判官が次に掲げる裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他…〉各号所定の準抗告の対象となる裁判に含まれない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年8月27日 昭和57(し)101
登載
刑集 第36巻6号726頁
参照法条
刑訴法199条,刑訴法429条1項
論点38第199条刑事訴訟法

刑訴規則第一四二条第一項第八号所定の事項の記載を欠いた逮捕状請求書によつて発付された逮捕状による逮捕およびこれにつづく勾留が違法ではないとされた事例

裁判要旨前に逮捕状の発付があつた同一被疑者に対する再度の逮捕状の発付が、いわゆる逮捕のむしかえしによる逮捕権の濫用と認められないときは、右逮捕状の請求書に刑訴規則第一四二条第一項第八号所定の事項の記載を欠いていても、右の逮捕およびこれにひきつづきなされた勾留は違法ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年12月20日 昭和42(し)69
登載
集刑 第165号487頁
参照法条
刑訴法199条,刑訴規則142条1項
論点39第199条刑事訴訟法

勾留に際し陳述を聴いた調書が記録にないことは勾留を不適法たらしめるか

裁判要旨新刑訴においては、逮捕状、勾留状等法律又は規則によつて提出を要する書類を除いて、証拠上必要と認めて当事者が提出した書類の外記録に編綴されないのであるから、勾留に際して陳述を聴いた書面も編綴されていないのがむしろ普通である。されば、この書面が記録に見当らないことを理由とする憲法第三四条違反の主張は、その前提を欠き採用の限りでない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月18日 昭和25(あ)2068
登載
集刑 第70号721頁
参照法条
憲法34条,刑訴法62条,刑訴法61条,刑訴法199条,刑訴規則167条3項
論点40第199条刑事訴訟法

一 旧地方税法第一三六条第二項の罪の判示方
二 旧地方税法第一三六条第二項違反罪の成立と、同法第一三七条第一号
三 旧地方税法第一三六条第二項の罪の成立と同法第四一条所定の督促手続との関係
四 不法拘禁中における供述の任意性又は強制の有無
五 証人に宣誓前偽証の罰を告げなかつた場合と証言の効力
六 縣税入場税市税入場税附加税犯則事件につき国税犯則取締法の規定が適用又は準用されない事例
七 地方税特別徴収義務者の不納付行為加功者に対する刑法第六五条第一項の適用と総則規定を明示することの要否
八 旧地方税法第一三六条第一項と同条第二項の相違と同条第二項の適用

裁判要旨一 しかし、旧地方税法第一三六条第二項の規定は、特別徴収義務者が徴取すべき地方税を故意に徴収せず又は徴収した地方税を故意に納入しなかつた場合に成立する脱税に関する犯罪の処罰規定であつて、地方税の単なる滞納の場合の規定ではない。されば同条項の犯罪事実を判示するには、所論のごとき知事又は市長の発令の有無、特別徴取義務者が払込告知書を受取つたか否か及び指定期日に払込を了したか否か等の事実を確定判定するの要はない。
二 旧地方税法第一三六条第二項の犯罪は、特別徴収義務者が徴収すべき地方税を故意に徴収せず、又は徴収した地方税を故意に納入しないときは直ちに成立し、不徴収又は不納入の手段方法の如何を問わないものであり、従つて、判事虚偽の報告が所論同法第一三七条第一号に触れることがあつても、前記条項の犯罪の成立を阻却しないものであるから、原判決が判示事実に対し同条項を適用処断したのは正当であつて、原判決には所論の違法は認められない。
三 本件入場税の納入期日が徴収した月の翌月中であることは法令である高知縣条例によつて明らかであり、判示逋脱の入場税については昭和二三年八月中に徴収されたものであることは原判決の認定判示したところである。そして特別徴収義務者の徴収した入場税の納入期日が右のごとく条例上徴収した月の翌月中に到来すべきものであるから、徴収した月が認定判示されていれば特にその納入期日を明示しなくとも自ら確定されるわけである。されば原判決は判示入場税の徴収日を八月四日から同月一〇日迄及び一八日から月末頃迄の間と確定判示し、その納入期日をその頃納入すべかりし期日にと説明した以上、旧地方税法第一三六条第二項違反罪の判示として何等欠くるところは存しない。又督促状を発することは納入しない入場税金について徴収義務者に対して滞納処分を行う法律上の要件であるにとどまり、不納入罪成立の要件ではない。されば原判決が判示逋脱の入場税金について督促状の発せられた事実及指定納入期日を判示しなかつたからといつて、原判決には違法のかどは存しない。
四 拘禁が不法であつてもその一事を以て直ちに拘禁中の供述が強制その他不任意のものであると速断することもできない。
五 しかし一九五〇年一〇月一八日附連合国最高司令官総司令部覚書施行期日たる同年一一月一日以前においては、連合国人である証人に対しては一般に宣誓をさせる場合でも偽証の罰を告げないのを相当と解すべきである(昭和二四年(れ)第一六七号同年七月九日第二小法廷判決判例集三巻八号一一九三頁以下参照)ばかりでなく、旧刑訴第一九九条〈検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発す…〉は証人に偽証の罪に陥ることのないようにその注意を喚起せしめる趣旨の訓示的規定と解するを相当とするから、たとえ同規定に反して裁判所が証人に偽証の罰を告げなかつたとしても、その供述は証言たるの効力を妨げられるものではない。されば原判決には所論のような違法は存しない。
六 本件のような昭和二三年八月一日以後同二四年六月一日以前に係る高知縣税入場税、高知市税入場税附加税犯則事件には国税犯則取締法の規定は適用も準用もされない筋合であることは多言を要しないところである。従つて本件高知縣税入場税高知市税入場税附加税の犯則事件に国税犯則取締法の規定の適用又は準用のあることを前提とする各論旨はいずれもその前提を欠きとるをえない。
七 原判示とその挙示する各証拠とを対照してみると原判決は判示入場税の特別徴収義務者はAであつて被告人B、同C、同D等は徴収義務者たる身分のない者で徴収義務者Aの判示入場税の一部逋脱に加功したものであると認め、刑法第六五条第一項を適用して被告人B等をAの判示逋脱犯の共犯者として処断したものであることを推断しえられるのである。そして刑法第六五条第一項のごとき総則規定はこれを適用するを以て足り、特にこれを判決中に明示する必要のないものである。
八 地方税法第一三六条第一項の規定は地方税の納税義務者が詐欺、その他不正の行為によつて地方税を逋脱した場合の処罰規定であり、同条第二項の規定は特別徴収義務者が徴収すべき地方税を納税義務者から徴収せず、又は納税義務者から徴収した地方税を納入しなかつた場合の処罰規定であつて、その不徴収又は不納入の手段、方法の如何を問わないから、本件のごとき特別徴収義務者が地方税たる判示入場税不納入の場合において、たとえ所論のような詐欺その他不正の行為が伴つたとしても同条第一項を適用すべきではなく、同条第二項を適用すべきであることは多言を要しないところである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月15日 昭和25(れ)766
登載
刑集 第5巻4号535頁
参照法条
旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改定前のもの)136条2項,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)136条2項,旧地方税法137条1号,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)36条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)37条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)41条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)136条1項,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)2項,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法199条,旧刑訴法360条の1項,刑訴応急措置法10条2項,国税犯則取締法12条の2,刑法65条1項
論点41第199条刑事訴訟法

一 公判手續の瑕疵と手續の更新
(辯論更新前における刑訴第四三條第二項の違反)
二 辯護人不出頭のまま行われた公判手續を更新した場合と辯護權の不法制限
三 強盗共犯者の犯意の認定と他の共犯者の行爲に對する共同責任
四 勾留六ケ月後にした自白と不當に長い拘禁後の自白
五 十一歳の小學兒童の證人資格
六 刑訴第二〇一條第一項の取調をした旨の記載を缺く證人訊問調書の證據能力
七 刑訴第一九九條の法意と僞證の罰を告げないでした證人訊問の効力
八 共同被告人に對し訴訟費用の分擔を命ずる場合と裁判所の自由裁量
九 刑訴法第二四二條の法意

裁判要旨一 原審は右第一回公判期日において審理を終結したのではなく、その後公判手續は第二回及び第三回各公判期日においてその都度適法に更新され、第二回公判期日には被告人Aの私選辯護人伊藤博夫が、又第三回公判期日には同様同被告人の私選辯護人桑名邦雄がそれぞれ出頭して審理に立曾つていることが記録上明かであるから、右第一回公判期日における前記瑕疵(利害相反する相被告人の辯護人をして被告人を辯護せしめたこと)は右審理更新の結果原判決に影響を及ぼさないものというべきである。
二 原審が右のように第一回公判期日において被告人Aの辯護人伊藤博夫から提出した所論期日變更申請を却下し、同辯護人不出頭のまま同期日の審理を行つたことは所論のとおりであるが、その後第二回公判期日は同辯護人にも適法に通知され同期日には同辯護人出頭の上、公判手續が更新されたこと前示のとおりであるから、結局原審手續は不當に辯護權を制限した違法のものということはできない。
三 原審判決が、被告人Aは相被告人Bにおいて判示被害者宅内で判示暴行脅迫を行つた現場には居合わせず屋外にいたと認定したからといつて直ちに被告人Aは、右暴行脅迫の事實について認識していなかつたとはいえないのみならず、同被告人が暴行脅迫行爲を現認しないからとて、共犯者中の他の者が暴行脅迫を加えて財物を奪取している以上強盗の共犯としての責任を免れ得るものでもない。
四 被告人が勾留されたのは所論のとおり昭和二一年一二月一九日であり、又同被告人の原審における自白は昭和二二年六月五日の第一回公判以後同年八月三〇日の第三回公判を通じてなされているのであつて、右勾留後第一回公判期日迄に約六ケ月、第三回公判期日迄には二五〇日餘を經過していることが明かではあるが、本件事案の内容、取調の経過、相被告人の供述内容等諸般の事情に鑑み、右程度の勾留は未だ不當に長い拘禁とはいえない。
五 原審證人Cが原審における取調べを受けた當時一一年(昭和一二年三月生)の小學兒童であつたことは同證人訊問調書の記載から明かであるが、この程度の年齢の者は絶對に證人たる資格がないとはいえないのであつて、同調書記載の同證人の供述内容から見ても同人は本件強盗の被害當時の状況について、詳細に記憶しているその實驗事實を順序良く訊問に答えて陳述報告しているのであつて、事理を辯識する能力を備えていた者と認めるべく、かかる年齢の證人の供述を證據として採用するか否かは事實審たる原番の自由になし得るところであるから、原審が同證人の右證言を判斷の資料に供したとて無効の證據を罪證に供した違法があるということはできない。
六 證人訊問調書に、その證人が刑訴第二〇一條第一項各號に該當するかしないかの取調をした旨の記載がなくても、右證人の供述内容その他によつて、右各號に該當せず宣誓を要する證人であることが明白であり、且つ、宣誓をなさしめて訊問をしている場合には、右訊問調書はこれを證據として差支えない。
七 元来刑事訴訟法第一九九條は、證人にその供述をなす前あらかじめその注意を促し、良心に從つてありのまゝにその實験した事實を供述させるとともに、僞證罪に問われることのないようにさせるため設けられた訓示的規定であるから、證人に宣誓をなさした上供述させている以上、たとえ宣誓前に僞證の罰を論示しなかつたからといつて、宣誓の効力には何ら影響がなく、その證人の證言を無効と考える必要は少しもない。
八 共同被告人中のある者が公訴事實を認め、他の者がこれを否認している場合に、裁判所がその公訴事實の審理のため證人を喚問するのは、結局眞實を發見するためであるから、かような證人に支給した旅費日當などの訴訟費用を、その共同被告人をして連帶して負擔させるか又はその中のある者のみに負擔させるかは、裁判所が自由に定めることのできる問題であつて、從つて、審理の結果右の公訴事實が證明され判決において認定された場合には右の費用は、公訴事實を否認していた被告人のみに負擔させるべきであつて當初からこれを認めていた被告人には負擔させてはいけないという理由はない。
九 刑事訴訟法第二四二條によれば、訴訟費用の負擔を命じる裁判に對しては本案の裁判について上訴する場合に限り不服を申立て得るものであつて、本案の裁判と獨立して上告の申立をすることはできないものである。從つて、本案の裁判に對する上告が理由があるときは、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服もこれを維持することができるけれども、本案の裁判に對する上告が理由がないときは、これの離れて、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服のみを維持することはできないものと解するのが相當である。しかるに本件において本案の裁判に對する上告が少しも理由がないものであることは、上に説明したとおりであるから、結局論旨は上告適法の理由とならないものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和23年4月17日 昭和22(れ)209
登載
刑集 第2巻4号364頁
参照法条
刑訴法43条2項,刑訴法411条,刑訴法334条,刑訴法410条10号,刑訴法184条,刑訴法201条,刑訴法199条,刑訴法238条,刑訴法242条,刑法60条,刑法236条,憲法38条2項,刑訴応急措置法10条2項
論点42第199条刑事訴訟法

逮捕状の更新が繰り返されている時点における捜査機関又は令状発付裁判官の判断の違法を理由とする国家賠償請求の許否

裁判要旨逮捕状の更新が繰り返されている時点で、逮捕状の請求、発付における捜査機関又は令状発付裁判官の被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があったとする判断の違法を主張して、国家賠償を請求することは許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成5年1月25日 平成1(オ)548
登載
民集 第47巻1号310頁
参照法条
国家賠償法1条1項,刑訴法199条
論点43第199条刑事訴訟法

外国人登録法(昭和六二年法律第一〇二号による改正前のもの)に定める指紋押なつを拒否した者に対する逮捕状の請求及び発付につき明らかに逮捕の必要がなかったということはできないとされた事例

裁判要旨外国人登録法(昭和六二年法律第一〇二号による改正前のもの)に定める指紋押なつを拒否した者について、その生活は安定したものであったことがうかがわれ、また、指紋押なつをしなかったとの事実を自ら認めていたことなどからすると、逃亡のおそれ及び右事実に関する罪証隠滅のおそれが強いものであったということはできないが、同人が司法警察職員から五回にわたって任意出頭するように求められながら、正当な理由がなく出頭せず、その行動には組織的な背景が存することがうかがわれたなど判示の事情の下においては、同人に対する逮捕状の請求及び発付につき、明らかに逮捕の必要がなかったということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年9月7日 平成7(オ)527
登載
集民 第189号613頁
参照法条
刑訴法199条1項,刑訴法199条2項,刑訴規則143条の3,外国人登録法(昭和62年法律102号による改正前のもの)14条1項,外国人登録法(昭和62年法律102号による改正前のもの)18条1項8号,国家賠償法 1条1項
論点44第199条刑事訴訟法

逮捕に関する裁判に対する特別抗告の可否

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和6年7月17日 令和6(し)462
登載
集刑 第333号361頁
参照法条
刑訴法199条、刑訴法429条1項、刑訴法433条1項
論点45第200条刑事訴訟法

被疑者の逮捕引致後における留置場所変更の適否。

裁判要旨逮捕状の執行によつて引致された被疑者を留置の必要ある場合に、他の警察署の代用監獄に押送拘置することは違法な措置ではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年4月9日 昭和38(あ)2476
登載
刑集 第18巻4号127頁
参照法条
刑訴法200条,刑訴法209条,刑訴法75条,監獄法1条3項
論点46第201条刑事訴訟法

一 刑訴法第二〇一条第二項〈逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。〉の準用する同法第七三条第三項にいわゆる「急速を要するとき」にあたる一事例
二 逮捕状を所持しない司法巡査が被疑者を逮捕しようとするに当り被疑者を奪還するためになした暴行と公務執行妨害罪の成立

裁判要旨一 某会社に勃発した労働争議に関し、発生した建造物損壊被疑事件の被疑者に対し逮捕状が発せられたので、某警部補指揮の下に甲、乙両巡査を含む司法巡査五名が右会社工場内外付近各所において、右被疑者が工場を出てくるのを待つて、右逮捕状を執行すべく待機中、自転車で工場から出て来た被疑者を甲、乙両巡査が発見したが、逮捕状の所持者と連絡してこれを同人に示す時間的余裕がなかつたので、逮捕状が発せられている旨を告げて逮捕しようとした当時の情況は、刑訴法第二〇一条第二項〈逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。〉の準用する同法第七三条にいわゆる「急速を要するとき」にあたる。
二 右の如き情況の下において、折柄被疑者の求めに応じて工場から馳せつけた被告人等が被疑者奪還のため、甲、乙両巡査に対し暴行を加えた以上、被告人等の右所為は公務執行妨害罪を構成する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年3月9日 昭和26(あ)4557
登載
刑集 第10巻3号303頁
参照法条
刑訴法201条2項,刑訴法73条3項(昭和28年法律172号による改正前のもの),刑法95条1項,憲法33条
論点47第201条刑事訴訟法

一 証言拒絶権ある証人を宣誓させて尋問した場合と憲法第三八条第一項
二 宣誓させないで尋問すべき証人に宣誓させた場合と偽証罪の成否

裁判要旨一 旧刑訴第一八八条第一項〈訴訟費用の負担を命ずる裁判にその額を表示しないときは、執行の指揮をすべき検察官が、これを算定する。〉にあたる場合、証人は証言を拒む権利があるから、右証人に宣誓させて尋問したからといつて直ちに憲法第三八条第一項にいう自己に不利益な供述を強要したものということはできない。
二 証人が旧刑訴第一八八条第一項により証言を拒むことができるのにこれを拒まなかつた場合に、その証人が、宣誓の上虚偽の陳述をしても偽証罪は成立しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和27年11月5日 昭和23(れ)1541
登載
刑集 第6巻10号1159頁
参照法条
刑法169,旧刑訴法188条,旧刑訴法201条,憲法38条1項
論点48第201条刑事訴訟法

旧刑訴法第二〇一条第一項第三号及び第一八八条第二項にいう「共犯」と必要的共犯

裁判要旨旧刑訴第二〇一条第一項第三号〈逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。〉及び第一八八条第二項〈訴訟費用の負担を命ずる裁判にその額を表示しないときは、執行の指揮をすべき検察官が、これを算定する。〉にいう「共犯」とは、刑法第六〇条以下の定める共犯(狭義の共犯)のみを指すのではなく、収賄及び贈賄の罪のように、法律がそれぞれ別個の罪として規定していても、その性質上たがいに関与、加担の関係がある場合(いわゆる必要的共犯に属する場合)をも含むものと解すべきである。なぜなら、当該事件の被告人と右のような関係にある者を証人として調べる場合、その宣誓及び供述義務の有無について、刑法上の共犯関係にある者と別異の取扱をすべき理由はないからである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年5月1日 昭和26(れ)98
登載
刑集 第5巻6号978頁
参照法条
旧刑訴法201条1項3号,旧刑訴法188条2項,刑法197条,刑法198条
論点49第201条刑事訴訟法

1 逮捕当日に採取された被疑者の尿に関する鑑定書の証拠能力が逮捕手続に重大な違法があるとして否定された事例
2 捜索差押許可状の発付に当たり疎明資料とされた被疑者の尿に関する鑑定書が違法収集証拠として証拠能力を否定される場合において同許可状に基づく捜索により発見押収された覚せい剤等の証拠能力が肯定された事例

裁判要旨1 被疑者の逮捕手続には,逮捕状の呈示がなく,逮捕状の緊急執行もされていない違法があり,これを糊塗するため,警察官が逮捕状に虚偽事項を記入し,公判廷において事実と反する証言をするなどの経緯全体に表れた警察官の態度(判文参照)を総合的に考慮すれば,本件逮捕手続の違法の程度は,令状主義の精神を没却するような重大なものであり,本件逮捕の当日に採取された被疑者の尿に関する鑑定書の証拠能力は否定される。
2 捜索差押許可状の発付に当たり疎明資料とされた被疑者の尿に関する鑑定書が違法収集証拠として証拠能力を否定される場合であっても,同許可状に基づく捜索により発見され,差し押さえられた覚せい剤及びこれに関する鑑定書は,その覚せい剤が司法審査を経て発付された令状に基づいて押収されたものであり,同許可状の執行が別件の捜索差押許可状の執行と併せて行われたものであることなど判示の事情の下では,証拠能力を否定されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成15年2月14日 平成13(あ)1678
登載
刑集 第57巻2号121頁
参照法条
刑訴法1条,刑訴法73条3項,刑訴法201条,刑訴法218条1項,刑訴法221条,刑訴法317条
論点50第203条刑事訴訟法

一 刑訴法四三〇条〈検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収(電磁的記録提供命令(第百二条の二第一項第一号イに掲げる方法によ…〉による不服申立を受けた裁判所と差押の必要性に関する審査権

二 事件送致後の司法警察職員と押収処分に関する裁判に対する特別抗告権

裁判要旨一 検察官等のした差押に関する処分に対して、刑訴法四三〇条〈検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収(電磁的記録提供命令(第百二条の二第一項第一号イに掲げる方法によ…〉の規定により不服の申立を受けた裁判所は、差押の必要性の有無についても審査することができる。

二 司法警察職員は、事件を検察官に送致した後においては、当該事件につき司法警察職員がした押収に関する処分を取り消しまたは変更する裁判に対して抗告を申し立てることができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和44年3月18日 昭和43(し)100
登載
刑集 第23巻3号153頁
参照法条
刑訴法99条1項,刑訴法218条1項,刑訴法222条1項,刑訴法430条,刑訴法203条1項,刑訴法352条,刑訴法433条
論点51第203条刑事訴訟法

一 未完成の弁解録取書は刑法第二五八条の「公務所ノ用ニ供スル文書」にあたるか
二 公文書毀棄罪の成立する一事例

裁判要旨司法警察員が刑訴二〇三条〈司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨…〉に基き被疑者に対し被疑事実の要旨および弁護人を選任し得る旨を告げ、被疑者がこれに対する供述をしたので、その旨を記載した弁解録取書原本を執筆し、これを読み聞かせ誤の有無を問うたところ被疑者が黙秘したため、司法警察員がその旨の文言の一部を末尾に記載した場合においては、いまだ被疑者および司法警察員の署名押印がなくても、右弁解録取書は、刑法第二五八条にいわゆる「公務所ノ用ニ供スル文書」と解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年1月29日 昭和29(あ)2424
登載
刑集 第11巻1号325頁
参照法条
刑法258条,刑訴法203条,刑訴規則58条
論点52第203条刑事訴訟法

調書上、刑訴法第二〇三条〈司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨…〉所定の告知事項の記載のない場合と憲法第三四条

裁判要旨司法警察員が犯人を逮捕した時、犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を犯人に告げたことを必ず調書に記載すべき旨の法規は存在しないから、かかる記載が存しないからといつて被告人の逮捕をもつて憲法三四条に違反するものということはできないことは、当裁判所の判例(昭和二五年(あ)第一一六六号同年一一月三〇日第一小法廷決定、集四巻一一号二四三八頁)の趣旨に微し明らかなところである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年7月6日 昭和28(あ)72
登載
集刑 第97号157頁
参照法条
憲法34条,刑訴法203条
論点53第203条刑事訴訟法

弁解録取書に印刷された「弁護人を選任することができる旨告げた」との文言と右告知の事実の有無

裁判要旨被告人の司法警察員に対する弁解録取書に、司法警察員が被告人に対し「弁護人を選任することができる旨告げた」と記載されている以上右記載が印刷されたものであるからといつて、たゞちに、右告知の事実がなかつたものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和25年12月5日 昭和25(あ)492
登載
刑集 第4巻12号2481頁
参照法条
刑訴法203条
論点54第203条刑事訴訟法

司法警察員による被疑者の留置についての国家賠償法一条一項所定の違法性の判断基準

裁判要旨司法警察員による被疑者の留置は、司法警察員が、留置時において、捜査により収集した証拠資料を総合勘案して刑訴法二〇三条一項所定の留置の必要性を判断する上において、合理的根拠が客観的に欠如していることが明らかであるにもかかわらず、あえて留置したと認め得るような事情がある場合に限り、国家賠償法一条一項の適用上違法の評価を受ける。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成8年3月8日 平成4(オ)77
登載
民集 第50巻3号408頁
参照法条
国家賠償法1条1項,刑訴法203条1項
論点55第204条刑事訴訟法

一 未決勾留日数を本刑に算入し得ない一事例
二 刑法第二一条にいわゆる未決勾留の範囲

裁判要旨一 勾留状記載の被疑事実が公判請求書記載の公判事実中に包含されていないとの理由で勾留を取り消した場合にはその未決勾留日数を本刑に算入することはできない。
二 刑法第二一条にいわゆる未決勾留は当該事件に関する判決確定前の勾留であればその勾留が適法であると不法であるとを問わない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年3月16日 昭和24(れ)2513
登載
集刑 第103号445頁
参照法条
刑法21条,旧刑訴法255条,旧刑訴法291条,刑訴応急措置法8条5号,刑訴法256条,刑訴法204条
論点56第205条刑事訴訟法

一 甲事件について起訴勾留中の被告人を乙事件の被疑者として取り調べることの合憲性
二 甲事件につき起訴勾留された被告人を乙事件の被疑者として約三九日間連続約五〇回にわたり取り調べたことと憲法第三八条第一項にいう「不利益な供述の強要」
三 憲法第三八条第二項にいう「強制拷問による自白」にあたらない一事例
四 憲法第三八条第二項にいう「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」にあたらない一事例
五 絞首刑の合憲性
六 被告人の証人審問権と事件に関連性のない発問の禁止

裁判要旨一 検察官が、まず甲事件について起訴勾留の手続をとつた後、右勾留中の被告人を乙事件の被疑者として取り調べたとしても、検察官においてはじめから乙事件の取調に利用する目的または意図をもつて、ことさらに甲事件を起訴し、かつ不当に勾留を請求したものと認められない場合には、右取調をもつて直ちに自白を強制し、不利益な供述を強要したものということはできない。
二 甲事件を理由として勾留された被告人を、検察官が乙事件の被疑者として約三九日間連続約五〇回にわたり取り調べたからといつて、右取調をもつて直ちに不利益な供述を強要したものということはできない。
三 判示のような特異な性格を有する者が、検察官から判示のように取り調べられて、犯行を自白したからといつて、その自白をもつて、憲法第三八条第二項にいう「強制拷問による自白」ということを得ない。

四 昭和二三年八月二一日小樽市において乙事件の被疑者として逮捕され東京都に護送された後、起訴前の処分により勾留され、その後の取調により発覚した甲事件につき同年九月三日起訴され、翌四日右事件につき発せられた勾留状によつて引続き勾留されて来た被告人が、検察官の約一ケ月連続三十数回にわたる取調の後、同月二三日より翌一〇月九日までの間に、乙事件について自白した場合においても、事案の内容が極めて複雑で、かつ被告人の著しい特異性格から生ずる虚言癖に煩わされて取調に日時を要したものであり、その間検察官において相当の証人参考人を取り調べたというような特別の事情のある場合には、右自白をもつて憲法第三八条第二項にいう「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」ということはできない。
五 現在わが国の採用している方法による絞首刑は憲法第三六条にいう「残虐な刑罰」にあたらない。
六 証人の取調に際し、裁判長が訴訟指揮権に基いて、事件に関連性のない被告人の発問を制限しても、憲法第三七条第二項に違反しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和30年4月6日 昭和26(れ)2518
登載
刑集 第9巻4号663頁
参照法条
憲法38条1項,憲法38条2項,憲法36条,憲法37条2項,刑訴応急措置法10条1項,刑訴応急措置法10条2項,刑訴応急措置法11条2項,刑法11条1項,監獄法71条,監獄法72条,刑訴法294条,刑訴法295条,旧刑訴法205条1項,裁判所構成法104条1項,裁判所構成法108条
論点57第205条刑事訴訟法

1 被疑者の勾留請求の資料とされた告訴状及び被害者の供述調書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとされた事例
2 被疑者の勾留請求の資料とされた告訴状及び被害者の供述調書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとして文書提出命令が申し立てられた場合に,刑訴法47条〈訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる…〉に基づきその提出を拒否した上記各文書の所持者である国の判断が,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとされた事例

裁判要旨1 検察官が被疑者の勾留請求に当たって刑訴規則148条1項3号所定の資料として裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書は,いずれも,上記各文書を所持する国と上記請求により勾留された者との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当する。
2 強姦の被疑事実に基づき勾留された被疑者が,勾留請求の違法を主張して国家賠償を求める本案訴訟において,検察官が刑訴規則148条1項3号所定の資料として裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書について,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当することを理由として文書提出命令を申し立てた場合,刑訴法47条〈訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる…〉に基づきその提出を拒否した上記各文書の所持者である国の判断は,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものというべきである。
(1) 勾留の裁判が準抗告審において取り消されており,検察官が被疑者には罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると判断するに際し最も基本的な資料となった上記各文書には,取調べの必要性がある。
(2) 被害者は,被疑事実が不法行為を構成するとして,被疑者に対する損害賠償請求訴訟を提起しており,その審理に必要な範囲でプライバシーが明らかにされることを容認していたということができ,また,国は,本案訴訟において,被害者の供述内容として被害の態様が極めて詳細かつ具体的に記載された検察官の陳述書を既に書証として提出しており,上記各文書が開示されることによって,被害者の名誉,プライバシーの侵害の弊害が生ずるおそれがあるとは認められない。
(3) 被疑事件については不起訴処分がされており,また,上記陳述書の内容はほぼ上記供述調書の記載に従ったもののようにうかがわれ,上記各文書が開示されることによって,捜査や公判に不当な影響が及ぶおそれがあるとは認められない。
(2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成19年12月12日 平成19(許)22
登載
民集 第61巻9号3400頁
参照法条
(1,2につき)民訴法220条3号,4号ホ,刑訴法60条,刑訴法205条,刑訴法207条,刑訴規則148条1項3号 (2につき)刑訴法47条
論点58第206条刑事訴訟法

証人が自ら実験した事実による推測事項の供述と採証の適否

裁判要旨原判決引用の第一審第四回公判調書中証人Aの証言の中「指示の被告人両名のうち背の高い方の人(B)は自分達の寝室に入つて来た人と背たけの具合が似ており」との部分は同証人が判示犯行当夜自ら実験した事実によつて推測した事項の陳述であるから原判決がこれを証拠としたことに何等違法はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年5月8日 昭和26(れ)206
登載
集刑 第45号357頁
参照法条
旧刑訴法337条,旧刑訴法206条1項
論点59第206条刑事訴訟法

鑑定書の死因に関する記載の証拠力

裁判要旨所論指摘の鑑定書の死因に関する記載は単なる空な想像を記載したものではなく、学識経験者がそれにより実験した事実に基ずき推測した事項を記載したもの(旧刑訴第二一九条〈前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、捜索すべき場所、身体若しくは物、提供させるべき電磁…〉、第二二八条〈前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。〉第二〇六条〈検察官又は司法警察員がやむを得ない事情によつて前三条の時間の制限に従うことができなかつたときは、検察官は、裁判官にその事…〉参照)であることは右後の鑑定書の記載に照し極めて明瞭であるから、これを証拠に供した原
判決には何等所論のような違法はないのである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年5月4日 昭和25(れ)1979
登載
集刑 第45号155頁
参照法条
旧刑訴法219条,旧刑訴法206条,旧刑訴法336条
論点60第206条刑事訴訟法

捜査官の単なる意見の陳述とその証拠能力

裁判要旨強盗傷人事件において強盗の犯意を認定するにあたり、当時その捜査に当つた司法主任の「品物を強奪すべくやつたというように印象に残つている」との単なる意見の陳述を証拠とすることは許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年3月30日 昭和25(れ)97
登載
刑集 第5巻4号731頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法206条1項
論点61第206条刑事訴訟法

一 証言中証人の実験した事実と無関係な意見の陳述にすぎない部分の証拠能力
二 證人の供述の趣旨を變えて採證した違法な判決の一例

裁判要旨一 証人の陳述中証人が実験した事実、又は実験した事実によつて推測した事項の陳述ではなく、単に意見を表示したにすぎないとみられる部分は、証拠に採用することができない。
二 然るに原判決はその證據説明中にかような證人の意見に過ぎない陳述をも挿入しそれを「然し」という言葉で接續して、その前後の供述の順序を變えて、記録に現はれた供述とは違つた趣旨の摘録をしている。原審第五回公判で裁判長自らも前後二回に亘つて「全然違う」と云つた「法廷におけるAの證言」即ち原判決が證據として舉示する第一審第三回公判調書中におけるAの供述及び前記原審第五回公判における同人の供述と「檢事聽取書中における同人の供述」とは互に相反する證據である。前者は被告人BがC代議士等の民主自由黨えの加盟斡旋方傳言を證人Aに頼んだのではないという事實であり、後者は右加盟斡旋方の傳言を證人Aに頼んだという事實である。かかる相容れない事實から、「Bが暗に(Aに)傳言方を慫慂し因て(Aをして)その旨傳言させた」と判事事實を積極的に認定したのは證據上の理由において齟齬あるものと云はなければならない。從つて論旨はその理由があつて原判決は破毀を免れない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和24年6月13日 昭和24(れ)226
登載
刑集 第3巻7号1039頁
参照法条
旧刑訴法336条,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法206条1項,昭和22年勅令1號,舊刑訴法410條19號,舊刑訴法360條1項
論点62第207条刑事訴訟法

起訴前の勾留の裁判に対する準抗告と起訴後におけるその利益

裁判要旨起訴前の勾留の裁判に対する準抗告申立の利益は、起訴後は失われる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年11月20日 昭和59(し)115
登載
刑集 第38巻11号2984頁
参照法条
刑訴法60条,刑訴法207条,刑訴法429条1項2号,刑訴法433条
論点63第207条刑事訴訟法

裁判所の庁舎外における勾留質問と憲法三二条

裁判要旨裁判官が裁判所の庁舎外で勾留質問を行なつても、憲法三二条に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和44年7月25日 昭和44(し)44
登載
刑集 第23巻8号1077頁
参照法条
憲法32条,刑訴法61条,刑訴法207条
論点64第207条刑事訴訟法

勾留請求却下後における被疑者の身柄拘束の有無および適否と準抗告審の裁判の効力

裁判要旨勾留請求却下の裁判に対する検察官の準抗告に対し、準抗告裁判所が、単に、被疑者につき刑訴法六〇条所定の要件の存否を判断して右裁判を取消し、かつ勾留の裁判をしたものであるときは、勾留請求却下後における被疑者の身柄拘束の有無および適否は、ただちに原決定および勾留の裁判の効力に影響を及ぼすものとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和44年2月17日 昭和43(し)53
登載
集刑 第170号329頁
参照法条
憲法31条,憲法33条,刑訴法60条,刑訴法207条,刑訴法429条
論点65第207条刑事訴訟法

検察官の過失に基づく違法な勾留継続による精神的苦痛に対して国家賠償法第一条の責任があるとされた事例

裁判要旨鑑定の結果血液型の不一致が明らかになつたため、被疑者が犯人であることが極めて疑わしいものとなつた等原審認定の事実関係(原判決理由参照)のもとでは、勾留を継続すべき相当な理由は消滅したものといわなければならず、その後の釈放遅延による被疑者の精神的苦痛に対して、国は担当検察官の過失による国家賠償法第一条に基づく責任を負わなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年10月21日 昭和40(オ)76
登載
集民 第84号639頁
参照法条
刑訴法207条,刑訴法208条1項,刑訴法60条,国家賠償法1条
論点66第207条刑事訴訟法

一 自白の任意性に関する立証責任
二 刑訴法第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたる一事例。−勾留中の被疑者に対する糧食差入禁止とその間またはその後に作成された自白調書の証拠能力−

裁判要旨一 自白が任意になされたかどうかについての合理的な疑の存否につき、何れとも決し難いときは、これを被告人の不利益に判断すべきではない。
二 被疑者に対する糧食差入禁止の事実を認め、しかもその糧食差入禁止の期間と自白の時日との関係上、外形的には糧食差入禁止と自白との間に因果の関係を推測させ、少くともその疑ある事実であるにかかわらず、原判決が「単に糧食差入禁止の事実のみを理由として直ちにその間またはその後に作成せられた供述調書の証拠能力、証明力を否定することはできない」と断じ、何等特段の事由を説示することなく「記録に徴しまた当審における事実取調の結果に照しても右調書の証拠能力、証明力を否定するに足るべき状況は発見できない」という理由のみで、右自白の任意性、信用性を争う主張を排斥した判断は、審理不尽、理由不備の違法があり刑訴第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年5月31日 昭和28(あ)1516
登載
刑集 第11巻5号1579頁
参照法条
刑訴法319条,刑訴法318条,刑訴法322条,刑訴法81条,刑訴法207条,刑訴法411条1号
論点67第207条刑事訴訟法

勾留状の失効とその勾留の効力を争う抗告の利益

裁判要旨勾留せられた被疑者が留置の必要事由消滅により釈放された以上、同人に対する勾留状の効力を争うことは利益がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年5月21日 昭和32(し)23
登載
刑集 第11巻5号1521頁
参照法条
刑訴法60条,刑訴法61条,刑訴法207条,刑訴法426条2項,刑訴法429条1項2号,刑訴法433条
論点68第207条刑事訴訟法

勾留状の失効とその勾留の効力を争う抗告の利益

裁判要旨勾留せられた被疑者が留置の必要事由消滅により処分留保のまま釈放された以上同人に対する勾留状の効力を争うことは利益がない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和30年7月14日 昭和30(し)24
登載
刑集 第9巻9号1872頁
参照法条
刑訴法207条,刑訴法208条,刑訴法60条,刑訴法429条,刑訴法433条
論点69第207条刑事訴訟法

被疑者を勾留する際の陳述調書は第一回公判期日後裁判官から裁判所に送付すべき書類に含まれるか

裁判要旨被疑者を勾留する際に被疑事件を告げこれに関する陳述をきいた調書は、第一回の公判期日が開かれたとき裁判官から裁判所に送付すべき書類のうちに含まれない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年5月11日 昭和27(あ)6602
登載
刑集 第8巻5号670頁
参照法条
刑訴法207条1項,刑訴法61条,刑訴規則39条,刑訴規則150条,刑訴規則167条1項,刑訴規則167条3項
論点70第207条刑事訴訟法

被疑者の勾留尋問をした判事の審判関与と憲法第三七条第一項

裁判要旨起訴前被疑者の勾留尋問をした判事がその事件の第二審の審判に関与しても憲法第三七条第一項の違反にならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年6月26日 昭和26(あ)694
登載
刑集 第5巻7号1291頁
参照法条
憲法37条1項,刑訴法207条,刑訴法280条,刑訴法20条7号,刑訴規則187条1項,刑訴規則187条2項,刑訴規則187条3項
論点71第207条刑事訴訟法

申立人が釈放された場合における刑訴法207条の3第1項の請求を却下する裁判に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告申立ての許否(消極)

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和7年9月19日 令和7(し)735
登載
―
参照法条
刑訴法207条の3第1項、刑訴法433条
論点72第207条刑事訴訟法

刑訴法207条の2〈検察官は、第二百一条の二第一項第一号又は第二号に掲げる者の個人特定事項について、必要と認めるときは、前条第一項の勾留の請…〉の規定について、被疑者を勾留するに当たり、その理由を被疑事件を特定して告げるものとはいえず、また、被疑者が弁護人に依頼する権利を侵害するから憲法34条に違反するとの主張が、欠前提処理された事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 令和6年4月24日 令和6(し)262
登載
集刑 第333号289頁
参照法条
憲法34条、刑訴法207条の2
原

条文原文

原文ママ

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刑事訴訟法 第189条 詳細ページ
第百八十九条警察官は、それぞれ、他の法律又は国家公安委員会若しくは都道府県公安委員会の定めるところにより、司法警察職員として職務を行う。
2司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。
刑事訴訟法 第190条 詳細ページ
第百九十条森林、鉄道その他特別の事項について司法警察職員として職務を行うべき者及びその職務の範囲は、別に法律でこれを定める。
刑事訴訟法 第191条 詳細ページ
第百九十一条検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができる。
2検察事務官は、検察官の指揮を受け、捜査をしなければならない。
刑事訴訟法 第192条 詳細ページ
第百九十二条検察官と都道府県公安委員会及び司法警察職員とは、捜査に関し、互に協力しなければならない。
刑事訴訟法 第193条 詳細ページ
第百九十三条検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、その捜査に関し、必要な一般的指示をすることができる。この場合における指示は、捜査を適正にし、その他公訴の遂行を全うするために必要な事項に関する一般的な準則を定めることによつて行うものとする。
2検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、捜査の協力を求めるため必要な一般的指揮をすることができる。
3検察官は、自ら犯罪を捜査する場合において必要があるときは、司法警察職員を指揮して捜査の補助をさせることができる。
4前三項の場合において、司法警察職員は、検察官の指示又は指揮に従わなければならない。
刑事訴訟法 第194条 詳細ページ
第百九十四条検事総長、検事長又は検事正は、司法警察職員が正当な理由がなく検察官の指示又は指揮に従わない場合において必要と認めるときは、警察官たる司法警察職員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会に、警察官たる者以外の司法警察職員については、その者を懲戒し又は罷免する権限を有する者に、それぞれ懲戒又は罷免の訴追をすることができる。
2国家公安委員会、都道府県公安委員会又は警察官たる者以外の司法警察職員を懲戒し若しくは罷免する権限を有する者は、前項の訴追が理由のあるものと認めるときは、別に法律の定めるところにより、訴追を受けた者を懲戒し又は罷免しなければならない。
刑事訴訟法 第195条 詳細ページ
第百九十五条検察官及び検察事務官は、捜査のため必要があるときは、管轄区域外で職務を行うことができる。
刑事訴訟法 第196条 詳細ページ
第百九十六条検察官、検察事務官及び司法警察職員並びに弁護人その他職務上捜査に関係のある者は、被疑者その他の者の名誉を害しないように注意し、且つ、捜査の妨げとならないように注意しなければならない。
刑事訴訟法 第197条 詳細ページ
第百九十七条捜査については、その目的を達するため必要な取調べをすることができる。ただし、強制の処分は、この法律に特別の定めのある場合でなければ、これをすることができない。
2捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
3検察官、検察事務官又は司法警察員は、差押えをし、又は電磁的記録提供命令により電磁的記録を提供させるため必要があるときは、電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者又は自己の業務のために不特定若しくは多数の者の通信を媒介することのできる電気通信を行うための設備を設置している者に対し、その業務上記録している電気通信の送信元、送信先、通信日時その他の通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定し、三十日を超えない期間を定めて、これを消去しないよう、書面又は電磁的記録により求めることができる。この場合において、当該求めに係る電磁的記録について差押えをし、又は電磁的記録提供命令により当該電磁的記録を提供させる必要がないと認めるに至つたときは、当該求めを取り消さなければならない。
4前項の規定により消去しないよう求める期間については、特に必要があるときは、三十日を超えない範囲内で延長することができる。ただし、消去しないよう求める期間は、通じて六十日を超えることができない。
5第二項又は第三項の規定による求めを行う場合において、必要があるときは、みだりにこれらに関する事項を漏らさないよう求めることができる。
刑事訴訟法 第198条 詳細ページ
第百九十八条検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
2前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
3被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。
4前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。
5被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。
刑事訴訟法 第199条 詳細ページ
第百九十九条検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
2裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。次項及び第二百一条の二第一項において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。ただし、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
3検察官又は司法警察員は、第一項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。
刑事訴訟法 第200条 詳細ページ
第二百条逮捕状には、被疑者の氏名及び住居、罪名、被疑事実の要旨、引致すべき官公署その他の場所、有効期間及びその期間経過後は逮捕をすることができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。
2第六十四条第二項及び第三項の規定は、逮捕状についてこれを準用する。
刑事訴訟法 第201条 詳細ページ
第二百一条逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。
2第七十三条第三項の規定は、逮捕状により被疑者を逮捕する場合にこれを準用する。
刑事訴訟法 第201_2条 詳細ページ
第二百一条の二検察官又は司法警察員は、次に掲げる者の個人特定事項(氏名及び住所その他の個人を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)について、必要と認めるときは、第百九十九条第二項本文の請求と同時に、裁判官に対し、被疑者に示すものとして、当該個人特定事項の記載がない逮捕状の抄本その他の逮捕状に代わるものの交付を請求することができる。
一次に掲げる事件の被害者
イ刑法第百七十六条、第百七十七条、第百七十九条、第百八十一条若しくは第百八十二条の罪、同法第二百二十五条若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る。以下このイにおいて同じ。)、同法第二百二十七条第一項(同法第二百二十五条又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項(わいせつの目的に係る部分に限る。)の罪若しくは同法第二百四十一条第一項若しくは第三項の罪又はこれらの罪の未遂罪に係る事件
ロ児童福祉法第六十条第一項の罪若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第四条から第八条までの罪又は性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第二条から第六条までの罪に係る事件
ハイ及びロに掲げる事件のほか、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者の個人特定事項が被疑者に知られることにより次に掲げるおそれがあると認められる事件
二前号に掲げる者のほか、個人特定事項が被疑者に知られることにより次に掲げるおそれがあると認められる者
イその者の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ
ロイに掲げるもののほか、その者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれ
2裁判官は、前項の規定による請求を受けた場合において、第百九十九条第二項の規定により逮捕状を発するときは、これと同時に、被疑者に示すものとして、当該請求に係る個人特定事項を明らかにしない方法により被疑事実の要旨を記載した逮捕状の抄本その他の逮捕状に代わるものを交付するものとする。ただし、当該請求に係る者が前項第一号又は第二号に掲げる者に該当しないことが明らかなときは、この限りでない。
3前項の規定による逮捕状に代わるものの交付があつたときは、前条第一項の規定にかかわらず、逮捕状により被疑者を逮捕するに当たり、当該逮捕状に代わるものを被疑者に示すことができる。
4第二項の規定による逮捕状に代わるものの交付があつた場合において、当該逮捕状に代わるものを所持しないためこれを示すことができない場合であつて、急速を要するときは、前条第一項の規定及び同条第二項において準用する第七十三条第三項の規定にかかわらず、被疑者に対し、逮捕状に記載された個人特定事項のうち当該逮捕状に代わるものに記載がないものを明らかにしない方法により被疑事実の要旨を告げるとともに、逮捕状が発せられている旨を告げて、逮捕状により被疑者を逮捕することができる。ただし、当該逮捕状に代わるものは、できる限り速やかに示さなければならない。
刑事訴訟法 第202条 詳細ページ
第二百二条検察事務官又は司法巡査が逮捕状により被疑者を逮捕したときは、直ちに、検察事務官はこれを検察官に、司法巡査はこれを司法警察員に引致しなければならない。
刑事訴訟法 第203条 詳細ページ
第二百三条司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
2前項の場合において、被疑者に弁護人の有無を尋ね、弁護人があるときは、弁護人を選任することができる旨は、これを告げることを要しない。
3司法警察員は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならない。
4司法警察員は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
5第一項の時間の制限内に送致の手続をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
刑事訴訟法 第204条 詳細ページ
第二百四条検察官は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者(前条の規定により送致された被疑者を除く。)を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。但し、その時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。
2検察官は、前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならない。
3検察官は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
4第一項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
5前条第二項の規定は、第一項の場合にこれを準用する。
刑事訴訟法 第205条 詳細ページ
第二百五条検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
2前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。
3前二項の時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。
4第一項及び第二項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
刑事訴訟法 第206条 詳細ページ
第二百六条検察官又は司法警察員がやむを得ない事情によつて前三条の時間の制限に従うことができなかつたときは、検察官は、裁判官にその事由を疎明して、被疑者の勾留を請求することができる。
2前項の請求を受けた裁判官は、その遅延がやむを得ない事由に基く正当なものであると認める場合でなければ、勾留状を発することができない。
刑事訴訟法 第207条 詳細ページ
第二百七条前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
2前項の裁判官は、勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げる際に、被疑者に対し、弁護人を選任することができる旨及び貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。
3前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、勾留された被疑者は弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならない。
4第二項の規定により弁護人の選任を請求することができる旨を告げるに当たつては、弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
5裁判官は、第一項の勾留の請求を受けたときは、速やかに勾留状を発しなければならない。ただし、勾留の理由がないと認めるとき、及び前条第二項の規定により勾留状を発することができないときは、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。