論点1第44条刑法
刑訴第四一一条にあたらない一事例 ―既遂と未遂の認定の誤り―
裁判要旨所論の如く未遂罪であるとしても、只裁判所は減軽を為し得るだけでその他法定刑に変りはなく、その範囲において刑を量定し執行猶予迄言渡した原判決はこれを破棄しなければ著しく正義に反するものとは到底いえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年4月5日 昭和27(あ)6238
- 登載
- 集刑 第104号21頁
- 参照法条
- 刑法43条,刑法44条,刑訴法411条
論点2第102条刑法
一 刑法第九八条〈加重逃走〉、同法第一〇二条〈未遂罪〉の合憲性
二 違憲審査権の限界(違憲の主張のない法令の違憲審査はできるか)
裁判要旨一 しかし憲法は理由があれば被疑者が拘禁され抑留されうることを認め且犯罪による処罰の場合には犯人に肉体的拘束が加えられることを是認している(憲法第三四条、三一条)。従つて所論未決若しくは既決の囚人が拘禁の苦痛を免れようとする衝動から逃走するのは、憲法が保障する自由を回復する行為ではない。なぜならば未決、既決の囚人がその身体の自由を制限されている場合には法律の定める手続によらなければ右自由を回復しえないものだからである。そしてかかる囚人の自己逃走を処罰するために設けられた前記刑法第九八条及び同法第一〇二条の規定は公共の福祉を保持するために自由の制限を認めたものであつて、所論のごとき違憲のかどは認められないから論旨は採用できない。
二 (少数意見要旨)裁判官栗山茂
憲法上立法権の専断的行使を抑制(チエック)する一方法として裁判所は訴訟の形式においてだけ違憲法律の審判ができることになつているのである。これを通俗に司法の優位と呼んだからといつて憲法上の機関として司法権が立法権に優位するのではないから、裁判所は争訟がないのに(争訟がないということは当事者から違憲性の主張がないということと同じである。)法律が憲法に適合するかしないかについて調査をしてその意見を表示する権限までも含むものではない。されば裁判所は当事者から法律の違憲について主張がないにもかかわらず、性質上適憲性が推定されている法条を解釈適用するに当つて、一々該法条が適憲であるかどうかを判断した上で事案を処理しなければならないものではない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和26年7月11日 昭和25(あ)1545
- 登載
- 刑集 第5巻8号1419頁
- 参照法条
- 刑法98条,刑法102条,憲法11条,憲法13条,憲法81条
論点3第112条刑法
現に人の住居に使用せず又は人の現存しない建造物に対する放火未遂罪の成否
裁判要旨刑法
一一五条〈差押え等に係る自己の物に関する特例〉の規定する現に人の住居に使用せず又は人の現存しない建造物に対する放火罪が、その未遂をも罰する法意であることは、放火の目的物に、同条所定の事実が存するときは、たとえそれが自己の所有に係る場合と雖も他人の物を焼燬した場合と同様に取扱われ刑法一〇九条一項の犯罪を構成する旨を定めていること、そしてこの場合は同法一一二条によりその未遂罪をも罰していることに照して明らかである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年6月12日 昭和26(あ)5032
- 登載
- 集刑 第82号719頁
- 参照法条
- 刑法115条,刑法109条1項,刑法112条
論点4第112条刑法
訴因罰条の変更を要しない一事例 ―刑法一〇八条〈現住建造物等放火〉の放火未遂を一一〇条一項〈建造物等以外放火〉の放火の既遂と認定する場合―
裁判要旨裁判所が刑法一〇八条の放火の未遂の起訴に対し、同法一一〇条一項の放火の既遂を認定するについては、訴因罰条の変更手続を経る必要がないものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年11月10日 昭和27(あ)4808
- 登載
- 集刑 第88号259頁
- 参照法条
- 刑法108条,刑法112条,刑法110条,刑訴法312条,刑訴規則209条
論点5第112条刑法
一 疊建具と刑法第一〇八条にいわゆる「建造物」放火未遂罪の成立
二 強盗の機会に人を殺害した所為と強盗殺人罪の成立
裁判要旨一 疊建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とするものである。従つて、判示布団は勿論判示疊のごときは未だ家屋と一体となつてこれを構成する建造物の一部といえないこと多言を要しないから、原判決の前示判示は、建造物の放火既遂の犯罪事実を認定判示したものではなく、その放火未遂の認定判示であるといわなければならない。
二 強盗の機会に人を殺害すれば、刑法
第二四〇条〈強盗致死傷〉後段の「強盗人ヲ死ニ致シタルトキ」にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和25年12月14日 昭和25(れ)1403
- 登載
- 刑集 第4巻12号2548頁
- 参照法条
- 刑法108条,刑法112条,刑法240条
論点6第168条刑法
1 刑法168条の2第1項〈不正指令電磁的記録作成等〉にいう「その意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」に当たるか否かの判断方法
2 ウェブサイトの閲覧者の同意を得ることなくその電子計算機を使用して仮想通貨のマイニングを行わせるプログラムコードが不正指令電磁的記録に当たらないとされた事例
裁判要旨1 刑法
168条の2第1項〈不正指令電磁的記録作成等〉の反意図性(「その意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせるべき」という要件)は,当該プログラムについて一般の使用者が認識すべき動作と実際の動作が異なる場合に肯定されるものと解するのが相当であり,一般の使用者が認識すべき動作の認定に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,プログラムに付された名称,動作に関する説明の内容,想定される当該プログラムの利用方法等を考慮する必要があり,同項の不正性(「不正な」という要件)は,電子計算機による情報処理に対する社会一般の信頼を保護し,電子計算機の社会的機能を保護するという観点から,社会的に許容し得ないプログラムについて肯定されるものと解するのが相当であり,その判断に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,その動作が電子計算機の機能や電子計算機による情報処理に与える影響の有無・程度,当該プログラムの利用方法等を考慮する必要がある。
2 ウェブサイトの閲覧者の同意を得ることなくその電子計算機を使用して仮想通貨のマイニングを行わせるプログラムコードは,(1)ウェブサイトの収益方法として閲覧者の電子計算機にマイニングを行わせるという仕組みは一般の使用者に認知されていなかったことなどの判示の事情(判文参照)の下では,その動作を一般の使用者が認識すべきとはいえず,刑法
168条の2第1項の反意図性(「その意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせるべき」という要件)が認められるが,(2)①その動作が閲覧者の電子計算機の機能等に与える影響は,閲覧中に中央処理装置を一定程度使用することにとどまり,その程度も,消費電力が若干増加したり処理速度が遅くなったりするが,閲覧者がその変化に気付くほどのものではなかったこと,②ウェブサイトの運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは,ウェブサイトによる情報の流通にとって重要であるところ,同プログラムコードはそのような収益の仕組みとして利用されたものである上,そのような仕組みとして社会的に受容されている広告表示プログラムと比較しても,閲覧者の電子計算機の機能等に与える影響に有意な差異はなく,利用方法等も同様であって,これらの点は社会的に許容し得る範囲内といえることなどの判示の事情(判文参照)の下では,社会的に許容し得ないものとはいえず,同項の不正性(「不正な」という要件)は認められないため,不正指令電磁的記録とは認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和4年1月20日 令和2(あ)457
- 登載
- 刑集 第76巻1号1頁
- 参照法条
- (1,2につき)刑法168条の2第1項,刑法168条の3
論点7第180条刑法
いわゆる輸姦の幇助者に対する訴追と告訴の要否
裁判要旨正犯につき刑法第一八〇条第二項の適用がある以上、その幇助者が現場に居合わせたか否かを問わず、これを訴追するについて告訴を要しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年10月15日 昭和42(あ)1930
- 登載
- 刑集 第22巻10号928頁
- 参照法条
- 刑法180条,刑法177条
論点8第180条刑法
告訴権の抛棄。
裁判要旨強姦未遂の被害者の法定代理人は告訴権の抛棄をすることはできず、従つて右被害者の検察官に対する告訴は有効であるとする原判示は相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年6月26日 昭和37(あ)399
- 登載
- 集刑 第143号205頁
- 参照法条
- 刑法177条,刑法179条,刑法180条,刑訴法230条,刑訴法231条,刑訴法237条
論点9第180条刑法
親告罪の告訴と起訴状記載の要否。
裁判要旨親告罪の告訴は、訴訟条件であつて、公訴事実に属しないから、被害者から告訴のあつたことを起訴状に記載する必要はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年6月15日 昭和37(あ)613
- 登載
- 集刑 第143号159頁
- 参照法条
- 刑訴法256条2項,刑訴法230条,刑法177条,刑法180条
論点10第180条刑法
控訴審において主張判断のない訴訟手続に関する主張を上告理由とすることの適否。
裁判要旨控訴審において主張判断のない訴訟手続に関する主張は、適法な上告理由とならない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和36年7月19日 昭和35(あ)1721
- 登載
- 刑集 第15巻7号1194頁
- 参照法条
- 刑訴法405条,刑法180条
論点11第180条刑法
強姦罪について告訴がない場合に同罪の手段たる共同暴行のみを処罰することができるか
裁判要旨数人が婦女に対し共同して暴行を加え姦淫した事実が認められる場合に、強姦罪についての告訴が適法に取消されても同罪の手段たる共同暴行を暴力行為等処罰に関する法律
第一条〈国内犯〉違反として処罰することは違法ではない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和28年12月16日 昭和27(さ)1
- 登載
- 刑集 第7巻12号2550頁
- 参照法条
- 暴力行為等処罰に関する法律1条,刑法177条,刑法180条,旧刑訴法258条,旧刑訴法267条,旧刑訴法364条6号,旧刑訴法516条
論点12第180条刑法
強姦罪について告訴が適法に取消された場合に、同罪の手段たる共同暴行のみを処罰し得るか
裁判要旨数人が婦女に対し共同して暴行を加え姦淫した事実が認められるが、強姦罪について告訴が適法に取り消された場合、同罪の手段たる共同暴行を「暴力行為等処罰に関する法律」
第一条〈国内犯〉違反として処罰することは違法である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和27年7月11日 昭和26(れ)1732
- 登載
- 刑集 第6巻7号896頁
- 参照法条
- 暴力行為等処罰に関する法律1条,刑法177条,刑法180条,刑法181条,旧刑訴法258条,旧刑訴法267条,旧刑訴法364条5号
論点13第180条刑法
強姦致傷罪の事実を認定した原判決に対して為された、単純強姦罪の事実を前提とする弁護人の主張に対する判断の要否
裁判要旨所論は、弁護人は原審において「本件は単純強姦罪と認むべきであつて、被害者の告訴が取下げられた以上免訴すべきものである」旨公訴権消滅免訴の原由たる主張をしたから、原審はこれに対する判断を示すべきであつたにかかわらずこれを示さなかつた違法があると言うのである。しかしながら、右弁護人の主張は単純強姦罪の事実を前提とするものであるが、原判決は強姦致傷罪の事実を認定判示することによつて、単純強姦罪の事実を否認し、従つてこれを前提とする弁護人の主張全部を否定していることは明白であるから所論は理由がない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月18日 昭和24(れ)1410
- 登載
- 集刑 第70号619頁
- 参照法条
- 旧刑訴法360条2項,旧刑訴法410条19号,刑法177条,刑法180条,刑法181条
論点14第203条刑法
殺人未遂罪の罪となるべき事実中の犯罪行為の判示として不十分とはいえないとされた事例
裁判要旨「未必の殺意をもつて、被害者の身体を、有形力を行使して、被告人方屋上の高さ約〇・八メートルの転落防護壁の手摺り越しに約七・三メートル下方のコンクリート舗装の路上に落下させて路面に激突させた」旨判示し、被害者を屋上から落下させた手段・方法を右以上に具体的に摘示していない場合でも、右判示は、殺人未遂罪の罪となるべき事実中の犯罪行為の判示として、不十分とはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和58年5月6日 昭和57(あ)1807
- 登載
- 刑集 第37巻4号375頁
- 参照法条
- 刑法199条,刑法203条,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項,刑訴法378条4号
論点15第203条刑法
刑法二〇〇条〈削除〉と憲法一四条一項
裁判要旨刑法
二〇〇条〈削除〉は、憲法一四条一項に違反する。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和48年4月4日 昭和44(あ)916
- 登載
- 集刑 第187号21頁
- 参照法条
- 憲法14条1項,刑法199条,刑法200条,刑法203条
論点16第203条刑法
殺人未遂罪につき誤想過剰防衛が認められた事例。
裁判要旨被告人の長男甲が乙に対し、乙がまだなんらの侵害行為に出ていないのに、これに対し所携のチエーンで殴りかかつた上、なお攻撃を加えることを辞さない意思をもつて、庖丁を擬した乙と対峙していた際に、甲の叫び声を聞いて表道路に飛び出した被告人は、右のごとき事情を知らず、甲が乙から一方的に攻撃を受けているものと誤信し、その侵害を排除するため乙に対し猟銃を発射し、散弾の一部を同人の右頸部前面鎖骨上部に命中させたものであること、その他原判決認定の事実関係(原判文参照)のもとにおいては、被告人の本件所為は、誤想防衛であるが、その防衛の程度を超えたものとして、刑法
第三六条第二項〈正当防衛〉により処断すべきものである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和41年7月7日 昭和40(あ)1998
- 登載
- 刑集 第20巻6号554頁
- 参照法条
- 刑法36条,刑法38条,刑法199条,刑法203条
論点17第203条刑法
殺人の目的で静脈内に空気を注射する行為と不能犯
裁判要旨殺人の目的で静脈内に空気を注射したときは、右空気の量が致死量以下であつても、右行為は不能犯とはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年3月23日 昭和36(あ)2299
- 登載
- 刑集 第16巻3号305頁
- 参照法条
- 刑法203条,刑法199条
論点18第203条刑法
障がい未遂と認むべき一事例
裁判要旨被告人の犯行完成の意力を抑圧した原因が、本件のように、犯罪の完成を妨害するに足る性質の障がいに基くものと認められる場合は、いわゆる中止未遂ではなく、障がい未遂にあたると解するを相当とする。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年9月10日 昭和30(あ)1418
- 登載
- 刑集 第11巻9号2202頁
- 参照法条
- 刑法43条但書,刑法203条
論点19第203条刑法
刀剣類の不法所持と殺人未遂は牽連犯か
裁判要旨厚判決が刀剣類の不法所持と殺人未遂との間には通常手段結果の関係にあるとはいえないから、本件短刀の不法所持と殺人未遂とを牽連犯と認めることはできないとして、これを併合罪として処断したのは正当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和31年7月4日 昭和29(あ)2250
- 登載
- 集刑 第114号75頁
- 参照法条
- 銃砲刀剣類等所持取締令2条,銃砲刀剣類等所持取締令26条1号,刑法199条,刑法203条,刑法45条,刑法54条
論点20第203条刑法
殺人未遂の訴因に対し傷害の事実を認定する場合と訴因変更の要否
裁判要旨殺人未遂の訴因に対し傷害と認定するについては、訴因変更の手続を経る必要はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年8月24日 昭和27(あ)6580
- 登載
- 刑集 第8巻8号1392頁
- 参照法条
- 刑訴法312条,刑法203条,刑法199条,刑法204条
論点21第203条刑法
一 殺人の目的で鮒の味噌煮にストリキニーネを入れた行為と不能犯
二 第一審では主張せず控訴趣意書で初めてした「証拠に採用された被告人の司法警察員および検察官に対する自白が暴行脅迫に基いたものである」との主張と刑訴第三九三条による事実の取調の要否
裁判要旨一 なおストリキニーネを混入した鮒の味噌煮が苦味を呈しているからといつて何人もこれを食べることは絶対にないと断定し難いところであるから、殺人罪の不能犯であるとの主張は容認することはできない。
二 しかるに本件第一審公判において被告人及び弁護人は検察官の取調請求にかかる被告人の司法警察員に対する供述調書及び被告人の検察官に対する供述調書(いずれも自白を内容とするもの)を証拠とすることに同意し、かつ証拠調請求について異義がない旨述べたのであつて、自白が暴行脅迫に基いてなされたことを主張したことなく、また第一審裁判所において取調べた証拠及び訴訟記録には右のような疑念を抱かせる証拠は全然存しない。被告人は控訴趣意書において初めて、司法警察員及び検事に対して自白したのは暴行脅迫の結果で真実に出でたものでないと主張するのであるから、原審がこの点について職権により、取調にあたつた警察官や検事を証人として尋問する等事実の取調を行わないで、被告人は暴行脅迫によつて自白したものとは認められないと判断したことは違法ではない。(被告人の控訴趣意が刑訴法第三九三条第一項但書に基き事実の取調を求めるものでないことは明白である)。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年7月17日 昭和25(あ)2886
- 登載
- 刑集 第5巻8号1448頁
- 参照法条
- 刑法199条,刑法203条,刑訴法393条
論点22第203条刑法
家族に対する殺人5件,殺人未遂1件の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例(反対意見がある。)(岐阜中津川家族殺害事件)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成24年12月3日 平成22(あ)402
- 登載
- 集刑 第309号1頁
- 参照法条
- 刑法9条,刑法199条,刑法203条,刑訴法411条2号
論点23第203条刑法
1 被害者を失神させた上自動車ごと海中に転落させてでき死させようとした場合につき被害者を失神させる行為を開始した時点で殺人罪の実行の着手があるとされた事例
2 いわゆる早過ぎた結果の発生と殺人既遂の成否
裁判要旨1 クロロホルムを吸引させて失神させた被害者を自動車ごと海中に転落させてでき死させようとした場合において,クロロホルムを吸引させて失神させる行為が自動車ごと海中に転落させる行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠であり,失神させることに成功すれば,それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったなど判示の事実関係の下では,クロロホルムを吸引させる行為を開始した時点で殺人罪の実行の着手があったと認められる。
2 クロロホルムを吸引させて被害者を失神させた上自動車ごと海中に転落させるという一連の殺人行為に着手して,その目的を遂げた場合には,犯人の認識と異なり,海中に転落させる前の時点でクロロホルムを吸引させる行為により被害者が死亡していたとしても,殺人の故意に欠けるところはなく,殺人の既遂となる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成16年3月22日 平成15(あ)1625
- 登載
- 刑集 第58巻3号187頁
- 参照法条
- 刑法38条1項,刑法43条,刑法199条,刑法203条
論点24第203条刑法
自殺させて保険金を取得する目的で被害者に命令して岸壁上から自動車ごと海中に転落させた行為が殺人未遂罪に当たるとされた事例
裁判要旨自動車の転落事故を装い被害者を自殺させて保険金を取得する目的で,極度に畏怖して服従していた被害者に対し,暴行,脅迫を交えつつ,岸壁上から車ごと海中に転落して自殺することを執ように要求し,被害者をして,命令に応じて車ごと海中に飛び込む以外の行為を選択することができない精神状態に陥らせていたなど判示の事実関係の下においては,被害者に命令して岸壁上から車ごと海中に転落させた行為は,被害者において,命令に応じて自殺する気持ちがなく,水没前に車内から脱出して死亡を免れた場合でも,殺人未遂罪に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成16年1月20日 平成14(あ)973
- 登載
- 刑集 第58巻1号1頁
- 参照法条
- 刑法38条,刑法199条,刑法202条,刑法203条