論点1第906条民法
一 家事審判法第九条第一項乙類第一〇号の遺産の分割に関する処分の審判の合憲性
二 遺産の分割に関する処分の審判の前提となる権利関係の存否を右審判中で審理判断することの可否
裁判要旨一 家事審判法第九条第一項乙類第一〇号の遺産の分割に関する処分の審判は、憲法第三二条、第八二条に違反しない。
二 家庭裁判所は、遺産の分割に関する処分の審判の前提となる相続権、相続財産等の権利関係の存否を、右審判中で、審理判断することができる。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和41年3月2日 昭和39(ク)114
- 登載
- 民集 第20巻3号360頁
- 参照法条
- 民法906条,民法907条,家事審判法9条1項乙類10号,家事審判法7条,家事審判法15条,家事審判規則6条,憲法32条
論点2第906条民法
一 相続財産の共有の性質
二 遺産分割の方法
裁判要旨一 相続財産の共有は、民法改正の前後を通じ、民法
二四九条〈共有物の使用〉以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではない。
二 遺産の分割に関しては、民法
二五六条〈共有物の分割請求〉以下の規定が適用せられる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月31日 昭和28(オ)163
- 登載
- 民集 第9巻6号793頁
- 参照法条
- 民法898条,民法256条,民法258条,民法906条,民法907条,旧民法1002条,家事審判法9条乙類10号,家事審判規則104条,家事審判規則107条
論点3第907条民法
相続により相続人の共有となつた財産について共有物分割の訴えを提起することの許否
裁判要旨相続により相続人の共有となつた財産について、共同相続人間に遺産の分割の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、遺産の分割の審判を求めるべきであつて、共有物分割の訴えを提起することは許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和62年9月4日 昭和59(オ)569
- 登載
- 集民 第151号645頁
- 参照法条
- 民法258条,民法907条,家事審判法9条1項乙類10号
論点4第907条民法
相続土地の共有持分の取得が地方税法七三条の七第一号にいう「相続に因る不動産の取得」に該当するとされた事例
裁判要旨相続土地の共有持分の取得が相続人らにおいて第一回遺産分割協議を合意解除し改めて第二回遺産分割協議をしたことに伴うものである場合には、右取得は地方税法七三条の七第一号にいう「相続に因る不動産の取得」に該当する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和62年1月22日 昭和59(行ツ)299
- 登載
- 集民 第150号65頁
- 参照法条
- 地方税法73条の7第1号,民法907条1項,民法909条
論点5第907条民法
共同相続人が全員の合意によつて遺産分割前の相続財産を構成する特定不動産を第三者に売却した場合における代金債権の性質
裁判要旨共同相続人が全員の合意によつて遺産分割前の相続財産を構成する特定不動産を第三者に売却した場合における代金債権は、特別の事情のない限り、右相続財産に属さない分割債権であり、各共同相続人がその持分に応じて個々にこれを分割取得するものである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和54年2月22日 昭和50(オ)736
- 登載
- 集民 第126号129頁
- 参照法条
- 民法898条,民法899条,民法907条2項
論点6第907条民法
共同相続人がその全員の合意によつて遺産を構成する特定不動産を第三者に売却した場合における代金債権の性質
裁判要旨共同相続人が全員の合意によつて遺産を構成する特定不動産を第三者に売却した場合における代金債権は、分割債権であり、各相続人は相続分に応じて個々にこれを行使することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年9月19日 昭和52(オ)5
- 登載
- 集民 第121号247頁
- 参照法条
- 民法898条,民法899条,民法907条2項
論点7第907条民法
共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が共有関係解消のためにとるべき裁判手続
裁判要旨共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が当該共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は、遺産分割審判ではなく、共有物分割訴訟である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和50年11月7日 昭和47(オ)121
- 登載
- 民集 第29巻10号1525頁
- 参照法条
- 民法258条1項,民法907条2項
論点8第907条民法
一、民法八二六条二項〈利益相反行為〉所定の利益相反行為の意義
二、遺産分割の協議と民法八二六条二項
裁判要旨一、民法
八二六条二項〈利益相反行為〉所定の利益相反行為とは、行為の客観的性質上数人の子ら相互間に利害の対立を生ずるおそれのあるものを指称し、その行為の結果現実にその子らの間に利害の対立を生ずるか否かは問わない。
二、遺産分割の協議は、民法
八二六条二項の適用上は、利益相反行為に該当し、共同相続人中の数人の未成年者が、相続権を有しない一人の親権者の親権に服するときは、右未成年者らのうち当該親権者によつて代理される一人の者を除くその余の未成年者については、各別に選任された特別代理人がその各人を代理して遺産分割の協議に加わることを要する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和49年7月22日 昭和46(オ)675
- 登載
- 集民 第112号389頁
- 参照法条
- 民法826条2項,民法907条
論点9第907条民法
家事審判規則一〇六条一項の相続財産管理人の応訴権限
裁判要旨家庭裁判所が家事審判規則一〇六条一項により選任する相続財産管理人は、相続財産に関して提起された訴につき、相続人の法定代理人として、家庭裁判所の許可なくして応訴することができるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年7月6日 昭和46(オ)773
- 登載
- 民集 第26巻6号1133頁
- 参照法条
- 民法28条,民法103条,民法907条2項,家事審判規則106条1項
論点10第907条民法
遺産分割協議と民法五四一条による解除の可否
裁判要旨共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が右協議において負担した債務を履行しないときであつても、その債権を有する相続人は、民法
五四一条〈催告による解除〉によつて右協議を解除することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成元年2月9日 昭和59(オ)717
- 登載
- 民集 第43巻2号1頁
- 参照法条
- 民法541条,民法907条,民法909条
論点11第907条民法
預託金会員制ゴルフクラブの規則に会員の死亡後六箇月以内に届出をした相続人が会員の地位を承継し得るなどの定めがある場合に右の届出期間は遺産分割協議が成立した時から起算すべきであるとされた事例
裁判要旨預託金会員制ゴルフクラブの規則に、会員が死亡したときは、相続人は、六箇月以内に、預託金の返還、相続人のうち一名への名義書換え又は第三者への会員資格の譲渡のいずれかの手続を選択して理事長に届け出なければならず、相続人が右期間内に所定の届出をしないときは預託金の返還手続がとられる旨の定めがある場合に、右クラブの会員権は、他人に譲渡することが認められ、ゴルフ会員権市場において預託金の金額よりも高額の取引価格で売買されており、相続人から所定の会費が納入されている限り、会員の地位の承継の手続が遅延することによってゴルフクラブ側が格別の不利益を被ることはないなど判示の事情の下においては、右規則は、相続人間で遺産分割協議が成立した後六箇月以内に所定の届出をしなければならない旨を定めたものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年5月27日 平成5(オ)1169
- 登載
- 集民 第183号393頁
- 参照法条
- 民法第3編第2章契約,民法896条,民法907条
論点12第907条民法
遺言者の財産全部の包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利の性質
裁判要旨遺言者の財産全部の包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成8年1月26日 平成3(オ)1772
- 登載
- 民集 第50巻1号132頁
- 参照法条
- 民法898条,民法907条,民法964条,民法1031条
論点13第907条民法
特定の土地の分割方法を定めた遺言の存在を知らないでされた遺産分割協議の意思表示に要素の錯誤がないとはいえないとされた事例
裁判要旨特定の土地につきおおよその面積と位置を示して分割した上それぞれを相続人甲、乙、丙に相続させる趣旨の分割方法を定めた遺言が存在したのに、相続人丁が右土地全部を相続する旨の遺産分割協議がされた場合において、相続人の全員が右遺言の存在を知らなかったなど判示の事実関係の下においては、甲のした遺産分割協議の意思表示に要素の錯誤がないとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成5年12月16日 平成2(オ)1828
- 登載
- 集民 第170号757頁
- 参照法条
- 民法95条,民法907条,民法908条
論点14第907条民法
相続人が遺産分割前に遺産である金銭を保管している他の相続人に対して自己の相続分相当の金銭の支払を請求することの可否
裁判要旨相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成4年4月10日 平成1(オ)433
- 登載
- 集民 第164号285頁
- 参照法条
- 民法898条,民法899条,民法907条
論点15第907条民法
遺産分割協議と合意解除及び再分割協議の可否
裁判要旨共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成2年9月27日 昭和63(オ)115
- 登載
- 民集 第44巻6号995頁
- 参照法条
- 民法545条,民法907条,民法909条
論点16第907条民法
共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は遺産分割の対象となるか
裁判要旨共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる。
(補足意見及び意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 平成28年12月19日 平成27(許)11
- 登載
- 民集 第70巻8号2121頁
- 参照法条
- 民法264条,民法427条,民法898条,民法907条
論点17第907条民法
1 共有物について遺産共有持分と他の共有持分とが併存する場合における共有物分割と遺産分割の関係
2 遺産共有持分の価格を賠償させる方法による共有物分割の判決がされた場合に支払われる賠償金の性質とその支払を受けた者の保管義務
3 遺産共有持分の価格を賠償させる方法による共有物分割の判決において賠償金の支払等に関し命じ得る事項
裁判要旨1 共有物について,遺産共有持分と他の共有持分とが併存する場合,共有者が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は民法258条に基づく共有物分割訴訟であり,共有物分割の判決によって遺産共有持分を有していた者に分与された財産は遺産分割の対象となり,この財産の共有関係の解消については同法907条に基づく遺産分割によるべきである。
2 遺産共有持分と他の共有持分とが併存する共有物について,遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ,その価格を賠償させる方法による分割の判決がされた場合には,遺産共有持分を有していた者に支払われる賠償金は,遺産分割によりその帰属が確定されるべきものであり,賠償金の支払を受けた者は,遺産分割がされるまでの間これを保管する義務を負う。
3 裁判所は,遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ,その価格を賠償させてその賠償金を遺産分割の対象とする方法による共有物分割の判決をする場合には,その判決において,遺産共有持分を有していた者らが各自において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定めた上で,同持分を取得する者に対し,各自の保管すべき範囲に応じた額の賠償金を支払うことを命ずることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成25年11月29日 平成22(受)2355
- 登載
- 民集 第67巻8号1736頁
- 参照法条
- (1〜3につき) 民法258条, 民法907条
論点18第907条民法
定額郵便貯金債権が遺産に属することの確認を求める訴えの確認の利益
裁判要旨共同相続人間において定額郵便貯金債権が現に被相続人の遺産に属することの確認を求める訴えには,上記債権の帰属に争いがある限り,確認の利益がある。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成22年10月8日 平成21(受)565
- 登載
- 民集 第64巻7号1719頁
- 参照法条
- 民訴法134条,民法264条,民法427条,民法898条,民法899条,民法907条,郵便貯金法7条1項3号
論点19第907条民法
1 遺産分割協議は国税徴収法39条にいう第三者に利益を与える処分に当たり得るか
2 滞納者に詐害の意思のあることは国税徴収法39条所定の第二次納税義務の成立要件か
裁判要旨1 国税の滞納者を含む共同相続人の間で成立した遺産分割協議は,滞納者である相続人にその相続分に満たない財産を取得させ,他の相続人にその相続分を超える財産を取得させるものであるときは,国税徴収法39条にいう第三者に利益を与える処分に当たり得る。
2 滞納者に詐害の意思のあることは,国税徴収法39条所定の第二次納税義務の成立要件ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成21年12月10日 平成20(行ヒ)177
- 登載
- 民集 第63巻10号2516頁
- 参照法条
- (1,2につき)国税徴収法39条 (1につき)民法907条1項 (2につき)民法424条1項本文
論点20第907条民法
共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権の帰属と後にされた遺産分割の効力
裁判要旨相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,その帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成17年9月8日 平成16(受)1222
- 登載
- 民集 第59巻7号1931頁
- 参照法条
- 民法88条2項,民法89条2項,民法427条,民法601条,民法896条,民法898条,民法899条,民法900条,民法907条,民法909条
論点21第907条民法
相続が開始して遺産分割未了の間に第2次の相続が開始した場合において第2次被相続人から特別受益を受けた者があるときの持戻しの要否
裁判要旨相続が開始して遺産分割未了の間に相続人が死亡した場合において,第2次被相続人が取得した第1次被相続人の遺産についての相続分に応じた共有持分権は,実体上の権利であって第2次被相続人の遺産として遺産分割の対象となり,第2次被相続人から特別受益を受けた者があるときは,その持戻しをして具体的相続分を算定しなければならない
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成17年10月11日 平成17(許)14
- 登載
- 民集 第59巻8号2243頁
- 参照法条
- 民法896条,民法898条,民法899条,民法900条,民法903条,民法907条,家事審判法9条乙類10号,家事審判規則104条
論点22第907条民法
相続財産である可分債権につき共同相続人の1人がその相続分を超えて債権を行使した場合に他の共同相続人が不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることの可否
裁判要旨共同相続人甲が相続財産中の可分債権につき権限なく自己の相続分以外の債権を行使した場合には,他の共同相続人乙は,甲に対し,侵害された自己の相続分につき,不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成16年4月20日 平成15(受)670
- 登載
- 集民 第214号13頁
- 参照法条
- 民法427条,民法898条,民法899条,民法907条
論点23第907条民法
相続税申告の基礎となった遺産分割協議の無効を確認する判決が確定したことが国税通則法23条2項1号に該当することを理由として更正の請求をすることはできないとされた事例
裁判要旨通謀虚偽表示により遺産分割協議が成立した外形を作出し,これに基づいて相続税の申告を行った後,遺産分割協議の無効を確認する判決が確定したという事実関係の下においては,当該判決の確定が国税通則法23条2項1号に該当することを理由として更正の請求をすることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成15年4月25日 平成13(行ヒ)230
- 登載
- 集民 第209号689頁
- 参照法条
- 国税通則法23条1項,国税通則法23条2項,民法94条,民法907条1項
論点24第907条民法
遺産分割協議と詐害行為取消権
裁判要旨共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成11年6月11日 平成10(オ)1077
- 登載
- 民集 第53巻5号898頁
- 参照法条
- 民法424条,民法907条1項
論点25第907条民法
一 遺産分割協議の申入れに遺留分減殺の意思表示が含まれていると解すべき場合
二 遺留分減殺の意思表示が記載された内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された場合に意思表示の到達が認められた事例
裁判要旨一 被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合において、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれていると解すべきである。
二 遺留分減殺の意思表示が記載された内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された場合において、受取人が、不在配達通知書の記載その他の事情から、その内容が遺留分減殺の意思表示又は少なくともこれを含む遺産分割協議の申入れであることを十分に推知することができ、また、受取人に受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって、さしたる労力、困難を伴うことなく右内容証明郵便を受領することができたなど判示の事情の下においては、右遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成10年6月11日 平成9(オ)685
- 登載
- 民集 第52巻4号1034頁
- 参照法条
- 民法97条,民法907条,民法1031条
論点26第908条民法
一 遺言無効確認訴訟における確認の利益の判断にあたり原告の相続分が生前贈与等によりなくなるか否かを考慮することの可否
二 遺言無効確認訴訟が固有必要的共同訴訟にあたらないとされた事例
三 同一の証書に記載された二人の遺言の一方に方式違背がある場合と民法九七五条
裁判要旨一 遺言無効確認訴訟における確認の利益の存否を判断するにあたつては、原則として、原告の相続分が被相続人から受けた生前贈与等によりなくなるか否かを考慮すべきものではない。
二 単に相続分及び遺産分割の方法を指定したにすぎない遺言の無効確認を求める訴は、固有必要的共同訴訟にあたらない。
三 同一の証書に二人の遺言が記載されている場合は、そのうちの一方につき氏名を自書しない方式の違背があるときでも、右遺言は、民法
九七五条〈共同遺言の禁止〉により禁止された共同遺言にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和56年9月11日 昭和54(オ)1208
- 登載
- 民集 第35巻6号1013頁
- 参照法条
- 民法902条,民法903条1項,民法903条2項,民法908条,民法968条1項,民法975条,民法985条,民訴法62条,民訴法225条
論点27第908条民法
特定の不動産を相続させる旨の遺言と遺言執行者の登記手続義務
裁判要旨特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる旨の遺言により、甲が被相続人の死亡とともに当該不動産の所有権を取得した場合には、甲が単独でその旨の所有権移転登記手続をすることができ、遺言執行者は、遺言の執行として右の登記手続をする義務を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成7年1月24日 平成3(オ)1057
- 登載
- 集民 第174号67頁
- 参照法条
- 民法908条,民法1012条1項,民法1013条
論点28第908条民法
一 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言の解釈
二 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合における当該遺産の承継
裁判要旨一 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきである。
二 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継される。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成3年4月19日 平成1(オ)174
- 登載
- 民集 第45巻4号477頁
- 参照法条
- 民法908条,民法964条,民法985条
論点29第908条民法
「相続させる」旨の遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合における当該遺言の効力
裁判要旨遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定する「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成23年2月22日 平成21(受)1260
- 登載
- 民集 第65巻2号699頁
- 参照法条
- 民法887条,民法908条,民法985条
論点30第908条民法
相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合において,遺留分の侵害額の算定に当たり,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することの可否
裁判要旨相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合には,遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り,相続人間においては当該相続人が相続債務もすべて承継したと解され,遺留分の侵害額の算定に当たり,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成21年3月24日 平成19(受)1548
- 登載
- 民集 第63巻3号427頁
- 参照法条
- 民法427条,民法899条,民法902条,民法908条,民法1029条,民法1031条
論点31第908条民法
「相続させる」趣旨の遺言による不動産の取得と登記
裁判要旨「相続させる」趣旨の遺言による不動産の権利の取得については,登記なくして第三者に対抗することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成14年6月10日 平成11(受)271
- 登載
- 集民 第206号445頁
- 参照法条
- 民法177条,民法908条,民法985条
論点32第908条民法
特定の不動産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言がされた場合において他の相続人が相続開始後に当該不動産につき被相続人からの所有権移転登記を経由しているときの遺言執行者の職務権限
裁判要旨特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる趣旨の遺言がされた場合において、他の相続人が相続開始後に当該不動産につき被相続人から自己への所有権移転登記を経由しているときは、遺言執行者は、右所有権移転登記の抹消登記手続のほか、甲への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成11年12月16日 平成10(オ)1499
- 登載
- 民集 第53巻9号1989頁
- 参照法条
- 民法908条,民法1012条,民法1013条,民法1015条,民訴法第1編第3章当事者
論点33第908条民法
遺言執行者がある場合における遺言によって特定の相続人に相続させるものとされた特定の不動産についての賃借権確認請求訴訟の被告適格
裁判要旨遺言によって特定の相続人に相続させるものとされた特定の不動産についての賃借権確認請求訴訟の被告適格を有する者は、遺言執行者があるときであっても、遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情のない限り、遺言執行者ではなく、右の相続人である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成10年2月27日 平成7(オ)1993
- 登載
- 民集 第52巻1号299頁
- 参照法条
- 民法908条,民法1012条,民法1013条,民法1015条,民訴法第1編第3章当事者
論点34第909条民法
遺産分割の結果当該不動産を取得しないこととなつた共同相続人による被相続人生存中の不動産譲渡行為と民法九〇九条但書の適用の有無
裁判要旨被相続人の生存中に権限なくして不動産を第三者に譲渡した共同相続人が遺産分割の結果当該不動産を取得しないこととなつた場合については、民法
九〇九条〈遺産の分割の効力〉但書の適用がなく、第三者は右共同相続人の法定相続分に応じた共有持分権を取得しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和54年12月14日 昭和54(オ)801
- 登載
- 集民 第128号229頁
- 参照法条
- 民法909条
論点35第909条民法
遺産分割と登記
裁判要旨相続財産中の不動産につき、遺産分割により権利を取得した相続人は、登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、法定相続分をこえる権利の取得を対抗することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和46年1月26日 昭和45(オ)398
- 登載
- 民集 第25巻1号90頁
- 参照法条
- 民法177条,民法909条
論点36第909条民法
相続放棄と登記
裁判要旨相続人は、相続の放棄をした場合には相続開始時にさかのぼつて相続開始がなかつたと同じ地位に立ち、当該相続放棄の効力は、登記等の有無を問わず、何人に対してもその効力を生ずべきものと解すべきであつて、相続の放棄をした相続人の債権者が、相続の放棄後に、相続財産たる未登記の不動産について、右相続人も共同相続したものとして、代位による所有権保存登記をしたうえ、持分に対する仮差押登記を経由しても、その仮差押登記は無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和42年1月20日 昭和41(オ)457
- 登載
- 民集 第21巻1号16頁
- 参照法条
- 民法939条1項(昭和37年法律40号による改正前のもの),民法939条,民法177条,民法909条
論点37第909条民法
他の相続人に代償金を交付して単独で相続した不動産を売却した場合の譲渡所得の計算上右代償金を取得費に算入することの可否
裁判要旨相続人の一人が遺産分割協議に従い他の相続人に対し代償金を交付して単独で相続した不動産を売却した場合、譲渡所得の計算上、右代償金を右不動産の取得費に算入することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成6年9月13日 平成6(行ツ)78
- 登載
- 集民 第173号79頁
- 参照法条
- 所得税法33条3項,所得税法60条,民法909条
論点38第910条民法
母の死亡による相続につき遺産の分割その他の処分後に共同相続人である子の存在が明らかになつた場合と民法七八四条但書、九一〇条の類推適用の可否
裁判要旨母の死亡による相続について、共同相続人である子の存在が遺産の分割その他の処分後に明らかになつたとしても、民法
七八四条〈認知の効力〉但書、
九一〇条〈相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権〉を類推適用することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和54年3月23日 昭和51(オ)553
- 登載
- 民集 第33巻2号294頁
- 参照法条
- 民法784条,民法910条
論点39第910条民法
1 民法910条〈相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権〉に基づき価額の支払を請求する場合における遺産の価額算定の基準時
2 民法910条に基づく価額の支払債務が履行遅滞となる時期
裁判要旨1 相続の開始後認知によって相続人となった者が他の共同相続人に対して民法910条に基づき価額の支払を請求する場合における遺産の価額算定の基準時は,価額の支払を請求した時である。
2 民法
910条〈相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権〉に基づく他の共同相続人の価額の支払債務は,履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成28年2月26日 平成26(受)1312
- 登載
- 民集 第70巻2号195頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法910条 (2につき)民法412条
論点40第910条民法
相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において他の共同相続人が既に当該遺産の分割をしていたときの民法910条に基づき支払われるべき価額の算定の基礎となる遺産の価額
裁判要旨相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において,他の共同相続人が既に当該遺産の分割をしていたときは,民法
910条〈相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権〉に基づき支払われるべき価額の算定の基礎となる遺産の価額は,当該分割の対象とされた積極財産の価額である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 令和元年8月27日 平成30(受)1583
- 登載
- 民集 第73巻3号374頁
- 参照法条
- 民法910条