論点1第90条民法
一 賭博の用に供されることを知つてする金銭の消費貸借契約と公序良俗違反
二 相殺の抗弁を容れて原告の請求を棄却した第一審判決に対し原告のみが控訴した場合と不利益変更禁止の原則
裁判要旨一 賭博の用に供されることを知つてする金銭の消費貸借契約は、公序良俗に違反し無効である。
二 原告の訴求債権の存在を認めながら被告の相殺の抗弁を容れ原告の請求を棄却した第一審判決に対し、原告のみが控訴し被告が控訴も附帯控訴もしなかつた場合において、控訴審が、被告の相殺の抗弁について判断するまでもなく、訴求債権の不存在を理由に原告の請求を棄却すべきときは、不利益変更禁止の原則に従い、第一審判決を維持して、原告の控訴を棄却するにとどめなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年9月4日 昭和60(オ)1563
- 登載
- 集民 第148号417頁
- 参照法条
- 民法90条,民訴法199条2項,民訴法384条,民訴法385条,民訴法386条
論点2第90条民法
非公認市場における金地金の先物取引の委託が公序良俗に反し無効とされた事例
裁判要旨顧客の委託を受けて非公認市場で将来の一定の時期に商品の授受及び代金決済を行う予約取引の方法で金地金の売買を営む会社の社員らが、商品取引の知識のない主婦に対して、引続き三時間にも及ぶ勧誘を続け、その間右取引が投機性を有し、損失を被る虞のあること、委託追証拠金等を必要とすることがあり、これを納めないときには多額の損害を被ることなどについて説明せず、かえつて損失の虞のない安全かつ有利な取引であると強調し、更に、主婦が現金のないことを理由に逡巡するのに、貸付信託通帳でも支障がないなどと述べて執拗に取引を勧め、その結果、主婦が右社員らの言うに委せれば利益を生ずることが確実であると考えて本件取引をするに至つたなど原判示の事実関係のもとにおいては、主婦と会社との間に成立した本件取引は、著しく不公正な方法によつて行われたものとして公序良俗に反し無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年5月29日 昭和59(オ)12
- 登載
- 集民 第148号1頁
- 参照法条
- 民法90条,民法643条,商品取引所法2条4項,商品取引所法8条,商品取引所法94条
論点3第90条民法
不倫な関係にある女性に対する包括遺贈が公序良俗に反しないとされた事例
裁判要旨妻子のある男性がいわば半同棲の関係にある女性に対し遺産の三分の一を包括遺贈した場合であつても、右遺贈が、妻との婚姻の実体をある程度失つた状態のもとで右の関係が約六年間継続したのちに、不倫な関係の維持継続を目的とせず、専ら同女の生活を保全するためにされたものであり、当該遺言において相続人である妻子も遺産の各三分の一を取得するものとされていて、右遺贈により相続人の生活の基盤が脅かされるものとはいえないなど判示の事情があるときは、右遺贈は公序良俗に反するものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年11月20日 昭和61(オ)946
- 登載
- 民集 第40巻7号1167頁
- 参照法条
- 民法90条,民法964条
論点4第90条民法
クラブのホステスが顧客の飲食代金債務についてした保証契約が公序良俗に反するものとはいえないとされた事例
裁判要旨クラブのホステスが顧客の当該クラブに対する飲食代金債務についてした保証契約は、ホステスにおいて自己独自の客としての当該顧客との関係の維持継続を図ることによりクラブから支給される報酬以外の特別の利益を得ることを目的として任意に締結したと認められるなど原判示のような事情がある場合には、公序良俗に反するものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年11月20日 昭和60(オ)356
- 登載
- 集民 第149号151頁
- 参照法条
- 民法90条,民法446条
論点5第90条民法
土地付分譲マンション付属の駐車場専用使用権分譲特約が公序良俗違反として無効とはいえないとされた事例
裁判要旨マンシヨン分譲業者がマンシヨンの敷地の持分と右敷地内の付属の駐車場専用使用権とを別個に譲渡することが同一土地から二重に利益を得ることになるものと速断することはできず、マンシヨン購入者の全員において、駐車場専用使用権を土地付マンシヨン本体の分譲とは別個に購入者に対して分譲する権利が分譲業者に留保されていること並びに右専用使用権の分譲を受けた者及びその譲受人が右駐車場を専用使用することを容認・承諾して、分譲業者とマンシヨン分譲契約を締結したことなど原審認定の事情のもとにおいては、右駐車場専用利用権の設定に関する約定が公序良俗に反するものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和56年1月30日 昭和55(オ)747
- 登載
- 集民 第132号71頁
- 参照法条
- 民法90条,民法251条,民法252条,建物の区分所有等に関する法律8条,建物の区分所有等に関する法律9条,建物の区分所有等に関する法律23条,建物の区分所有等に関する法律24条
論点6第90条民法
同業他社への転職者に対する退職金の支給額を一般の退職の場合の半額と定めた退職金規定の効力
裁判要旨原審確定の事実関係のもとにおいては、会社が営業担当社員に対し退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限し、右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給する退職金の額を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることは、労働基準法三条、一六条、二四条及び民法
九〇条〈公序良俗〉に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年8月9日 昭和51(オ)1270
- 登載
- 集民 第121号225頁
- 参照法条
- 労働基準法3条,労働基準法16条,労働基準法24条,民法90条
論点7第90条民法
一、いわゆる拘束された即時両建預金を取引条件とする信用組合の貸付が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条〈審判相互の関係〉に違反するとされた事例
二、いわゆる拘束された即時両建預金を取引条件とする信用協同組合の貸付が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条に違反する場合と貸付契約の私法上の効力
裁判要旨一、信用協同組合が、組合員に現実に借受を必要とする実質貸付額五五〇万円を貸し付けるにあたり、右貸付について十分な物的・人的担保があるのに、実質金利を高める等のため、取引条件として、組合員に、貸付額七五〇万円の本件貸付契約及び同四〇〇万円の別口貸付契約を締結させて実質貸付額を超過する六〇〇万円を貸し付け、その六〇〇万円を即時二〇〇万円の定期預金及び四〇〇万円の割増金付定期預金として組合に預託させ、これに担保権を設定して払戻を制限し、また、実質金利が年一割七分一厘入毛余になるなど、判示の事情のもとにおいては、右各貸付契約及び各定期預金契約は、昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(不公正な取引方法)の一〇にあたり、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条に違反するというべきである。
二、いわゆる拘束された即時両建預金を取引条件とする信用協同組合の貸付が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
一九条〈審判相互の関係〉に違反する場合でも、その違反により、貸付契約が直ちに私法上無効になるとはいえず、また、右契約が公序良俗に反するともいえないが、両建預金及び超過貸付があるために実質金利が利息制限法所定の制限利率を超過しているときは、右超過する限度で貸付契約中の利息、損害金についての約定は、同法一条、四条により無効になるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年6月20日 昭和48(オ)1113
- 登載
- 民集 第31巻4号449頁
- 参照法条
- 私的独占の禁止及び公正取引の確保関する法律2条7項5号,私的独占の禁止及び公正取引の確保関する法律9条,昭和28年公正取引委員会告示11号10,民法90条,利息制限法1条1項,利息制限法2条,利息制限法4条1項
論点8第90条民法
一、外国為替及び外国貿易管理法並びに外国為替管理令に違反する保証契約の私法上の効力
二、外国の通貨をもつて債権額が指定された金銭債権と日本の通貨による請求
三、外国の通貨をもつて債権額が指定された金銭債権についての裁判上の請求と日本の通貨による債権額の算定
裁判要旨一、外国為替及び外国貿易管理法三〇条三号、外国為替管理令一三条一項一号、二項に違反して締結された保証契約でも、私法上は有効である。
二、外国の通貨をもつて債権額が指定された金銭債権については、債権者は債務者に対して外国の通貨又は日本の通貨のいずれによつてもこれを請求することができる。
三、外国の通貨をもつて債権額が指定された金銭債権について日本の通貨により裁判上の請求がされた場合、日本の通貨による債権額は、事実審の最終口頭弁論期日の外国為替相場によつて外国の通貨を日本の通貨に換算した額である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年7月15日 昭和48(オ)305
- 登載
- 民集 第29巻6号1029頁
- 参照法条
- 外国為替及び外国貿易管理法30条3号,外国為替管理令13条1項1号,外国為替管理令13条2項,民法90条,民法403条
論点9第90条民法
いわゆる仮登記担保契約と民法九〇条
裁判要旨いわゆる仮登記担保契約は、被担保債権額と目的不動産の価額との間に著しい較差がある場合であつても、特段の事情のないかぎり、暴利行為として公序良俗に反するものということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和50年4月10日 昭和48(オ)889
- 登載
- 集民 第114号497頁
- 参照法条
- 民法90条,民法482条,民法556条
論点10第90条民法
仮登記担保と目的不動産による旅館営業
裁判要旨仮登記担保権者が予約完結権を行使して目的不動産の引渡を受けるとともに、債務者との特約に基づき右不動産による旅館の営業権をその施設、器具ともども引渡を受けたなど判示事情のもとでは、債権者が目的不動産を換価して清算するまでこれを使用して旅館営業を継続しても右不動産に対する債務者の所有権を侵害するものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和50年12月26日 昭和46(オ)267
- 登載
- 集民 第116号935頁
- 参照法条
- 民法90条,民法200条,民法709条,不動産登記法2条,不動産登記法7条2項
論点11第90条民法
一、国際的裁判の合意の方式
二、外国の裁判所を専属管轄裁判所与る国際的専属的裁判管轄の合意
三、船荷証券に基づく国際的専属的裁判管轄の合意が公序違反として無効とはいえないとされた事例
裁判要旨一、国際的裁判管轄の合意は、両当事者の署名のある書面によつてされることを要せず、特定国の裁判所を管轄裁判所として明示的に指定する当事者の一方が作成した書面に基づいて締結されれば足りる。
二、ある訴訟事件についてわが国の裁判権を排除し特定の外国の裁判所を第一審の専属的管轄裁判所と指定する国際的専属的裁判管轄の合意は、当該事件がわが国の裁判権に専属的に服するものではなく、かつ指定された外国の裁判所がその外国法上当該事件につき管轄権を有する場合には、原則として有効であり、その外国法上右合意が有効とされること又は当該外国裁判所の判決につき相互の保証のあることを要しない。
三、国際海上物品運送契約に基づく荷主の運送人に対する損害賠償請求訴訟につき、国際的海運業者である被告の本店のあるオランダ国の裁判所を第一審の専属的管轄裁判所と指定する国際的専属的裁判管轄の合意は、たとえそれが被告の発行した船荷証券上の管轄約款に基づくものであり、また、右合意に従うとき荷主の負うこととなる費用及び手数が増大するとしても、それだけでは公序違反として無効とはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年11月28日 昭和45(オ)297
- 登載
- 民集 第29巻10号1554頁
- 参照法条
- 民法1条,民法90条,民法521条,民訴法25条,民訴法200条4号,民訴法515条,1924年8月25日にブラツセルで署名された船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約3条8項,国際海上物運送法15条1項
論点12第90条民法
一、相続人間の相続分譲渡契約が公序良俗に違反すると認められた事例
二、相続財産一般につき相続人がその相続分該当の権利を有することの確認請求が認容された事例
裁判要旨一、二(省略)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和48年6月22日 昭和47(オ)1311
- 登載
- 集民 第109号411頁
- 参照法条
- 民法90条,民法900条
論点13第90条民法
一、憲法一四条、一九条と私人相互間の関係
二、特定の思想、信条を有することを理由とする雇入れの拒否は許されるか
三、雇入れと労働基準法三条
四、企業者が労働者の雇入れにあたりその思想、信条を調査することの可否
五、試用期間中に企業者が管理職要員として不適格であると認めたときは解約できる旨の特約に基づく留保解約権の行使が許される場合
裁判要旨一、憲法一四条や
一九条〈審判相互の関係〉の規定は、直接私人相互間の関係に適用されるものではない。
二、企業者が特定の思想、信条を有する労働者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。
三、労働基準法三条は、労働者の雇入れそのものを制約する規定ではない。
四、労働者を雇い入れようとする企業者が、その採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることは、違法とはいえない。
五、企業者が、大学卒業者を管理職要員として新規採用するにあたり、採否決定の当初においてはその者の管理職要員としての適格性の判定資料を十分に蒐集することができないところから、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨で試用期間を設け、企業者において右期間中に当該労働者が管理職要員として不適格であると認めたときは解約できる旨の特約上の解約権を留保したときは、その行使は、右解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和48年12月12日 昭和43(オ)932
- 登載
- 民集 第27巻11号1536頁
- 参照法条
- 憲法14条,憲法19条,民法1条,民法90条,労働基準法3条,労働基準法第2章
論点14第90条民法
賭博による債務の履行のために交付された第三者振出の小切手の支払につき所持人と振出人との間に成立した和解の効力
裁判要旨賭博による債務の履行のために第三者振出の小切手の交付を受けた所持人が、振出人との間で小切手金の支払に関し和解契約を締結した場合においては、右契約の内容である振出人の所持人に対する金銭支払の約定は、公序良俗に違反し無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和46年4月9日 昭和46(オ)134
- 登載
- 民集 第25巻3号264頁
- 参照法条
- 民法90条,民法696条,小切手法22条
論点15第90条民法
一 臨時物資需給調整法第四条ノ〈成年 年齢十八歳をもって、成年とする。〉二に違反した行為の効力
二 第三者のためにする契約において契約の利益を受ける者に反対給付を課しうるか
裁判要旨一 臨時物資需給調整法
第四条ノ〈成年 年齢十八歳をもって、成年とする。〉二に違反した行為も、私法上その効力がないとはいえない。
二 民法
第五三七条〈第三者のためにする契約〉の第三者のためにする契約においては、契約の利益を受ける者に反対給付を課することを妨げない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和42年10月27日 昭和41(オ)269
- 登載
- 集民 第88号793頁
- 参照法条
- 臨時物資需給調整法4条ノ2,民法90条,民法537条
論点16第90条民法
自動車の割賦売買契約における違約金の特約が民法第九〇条により無効といえないとされた事例。
裁判要旨自動車の割賦売買契約で、割賦金遅滞のときは契約を解除され、買主は自動車を返還する外、売買代金相当額の違約金を支払うものとする特約がされていても、該特約を一概に民法第九〇条により無効とすることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年5月21日 昭和38(オ)1347
- 登載
- 集民 第79号125頁
- 参照法条
- 民法420条,民法90条,割賦販売法6条
論点17第90条民法
貸金の遅延損害金の約定が公序良俗に反しないとされた事例。
裁判要旨貸金の遅延損害金を日歩一〇〇円につき三〇銭と約定したからといつて、直ちに右約定が公序良俗に反するとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年1月26日 昭和38(オ)63
- 登載
- 集民 第77号137頁
- 参照法条
- 民法90条,民法420条
論点18第90条民法
譲渡担保契約に伴う代物弁済の約定部分を無効と解すべき場合でも譲渡担保契約全体が無効となるとは限らないとされた事例。
裁判要旨譲渡担保契約において、期限に債務の弁済がないときは担保物件を債務の代物弁済に供する旨の約定を含む場合、被担保債権額に比し担保物件の価額が著しく高額であつて、債務者の経済的困窮に乗じて右の約定をなしたものとして右約定部分を公序良俗に反し無効と解すべきときでも、必ずしも譲渡担保契約全部が無効となるとは限らない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和38年1月18日 昭和36(オ)1162
- 登載
- 民集 第17巻1号25頁
- 参照法条
- 民法90条,民法92条,民法555条
論点19第90条民法
共同事業達成のため関係官庁に対する運動費として当事者の一方が相手方に交付した金員の返還を約する当事者間の合意が有効とされた事例
裁判要旨当事者間の共同事業を達成するために、市復興区画調整委員会等に対する運動費として、当事者の一方が相手方に対し、合計金三〇万円を交付した場合、右が不法原因給付に当るとしても、後にその返還を約する当事者間の合意は、民法
第七〇八条〈不法原因給付〉の禁ずるところではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年5月25日 昭和35(オ)1215
- 登載
- 民集 第16巻5号1195頁
- 参照法条
- 民法90条,民法708条
論点20第90条民法
一 停止条件付代物弁材契約が公序良俗に違反しないとされた事例
二 同一審級における裁判官の過半数の更迭と民訴法第一八七条第三項後段の適用の有無
裁判要旨適用なし。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年12月21日 昭和37(オ)616
- 登載
- 集民 第63号831頁
- 参照法条
- 民法90条,民法482条,民訴法187条
論点21第90条民法
一 知事の許可を停止条件とする農地売買の効力
二 民法第五五七条〈手付〉にいわゆる「契約の履行に著手」したものと認められた事例
裁判要旨一 知事の許可を停止条件として締結された農地の売買契約は、無効ではない
二 土地の買主が約定の履行期後、売主に対し、しばしばその履行を求め、かつ売主において右土地の所有権移転登記手続をすれば、何時でも支払えるよう残代金の準備をしていたときは、民法
第五五七条〈手付〉にいわゆる「契約の履行に著手」したものと認めるのが相当である
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和33年6月5日 昭和30(オ)995
- 登載
- 民集 第12巻9号1359頁
- 参照法条
- 農地法3条1項本文,農地法3条4項,農地調整法4条1項,農地調整法4条5項,民法90条,民法557条
論点22第90条民法
酌婦としての稼働契約に伴い消費賃借名義で交付された金員の返還請求の許容
裁判要旨酌婦としての稼働契約が公序良俗に反し無効である場合には、これに伴い消費賃借名義で交付された金員の返還請求は許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和30年10月7日 昭和28(オ)622
- 登載
- 民集 第9巻11号1616頁
- 参照法条
- 民法90条,民法708条
論点23第90条民法
消費貸借成立のいきさつに不法の点があつた場合における貸金返還請求と民法第九〇条〈公序良俗〉および第七〇八条〈不法原因給付〉の適用の有無
裁判要旨消費貸借成立のいきさつにおいて、貸主の側に多少の不法があつたとしても、借主の側にも不法の点があり、前者の不法性が後者のそれに比しきわめて微弱なものに過ぎない場合には、民法
第九〇条〈公序良俗〉および
第七〇八条〈不法原因給付〉は適用がなく、貸主は貸金の返還を請求することができるものと解するのを相当とする。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年8月31日 昭和27(オ)13
- 登載
- 民集 第8巻8号1557頁
- 参照法条
- 民法90条,民法587条,民法708条
論点24第90条民法
一 隠居者と家督相続人との合意の下になされた、確定日附のない財産留保の効力
二 民法第一六二条第二項〈所有権の取得時効〉の無過失の一事例
三 隠居者が相続財産全部を保留した場合の効力
裁判要旨一 隠居者の財産保留は、家督相続人との合意の下になされたときは、確定日附がなくとも、当事者間においては効力があるものと解するを相当とする。
二 隠居者が確定日附ある証書による財産保留をしなかつたため、家督相続人において建物の所有権を相続したとしても、原審認定の事実(原判決参照)の下に、隠居者がこれを有効に保留し得たものと信じたのは過失がない。
三 隠居者の財産全部の保留は、相続人の遺留分について問題を生ずるだけで、保留を全面的に無効ならしめるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年12月24日 昭和27(オ)368
- 登載
- 民集 第8巻12号2271頁
- 参照法条
- 旧民法988条,民法162条2項,民法90条
論点25第90条民法
一 証拠方法を放棄したものと認むべき一事例
二 代物弁済の予約が公序良俗に反すると認められる一事例
裁判要旨一 証拠申請につき許否を決定しないで口頭弁論を終結した場合、当事者が異議を述べないときは、その証拠方法を放棄したものと認むべきである。
二 代物弁済の予約につき、後記事由(第二審判決理由参照)があるときは、公序良俗に反し無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年11月20日 昭和24(オ)138
- 登載
- 民集 第6巻10号1015頁
- 参照法条
- 民訴法258条,民法482条,民法90条
論点26第90条民法
土地家屋の譲渡契約に附された譲受人の帰郷居住等を内容とする停止条件の適法性
裁判要旨土地家屋の譲受人が、現住所を引き揚げて帰郷し、右家屋に居住し、相続人として病臥中の実父を扶養し、且祖先の祭祝を行うという、右譲渡契約に附された停止条件は、譲受人の個人的自由を拘束するものではないから、不法ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和23年9月18日 昭和22(オ)11
- 登載
- 民集 第2巻10号231頁
- 参照法条
- 民法90条,民法132条
論点27第90条民法
前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条項の一部が公序に反し無効とされた事例
裁判要旨すべての原因による不就労を基礎として算出した前年の稼働率が八〇パーセント以下の従業員を翌年度のベースアップを含む賃金引上げの対象者から除外する旨の労働協約条項は、そのうち労働基準法又は労働組合法上の権利に基づくもの以外の不就労を稼働率算定の基礎とする部分は有効であるが、右各権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分は公序に反し無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成元年12月22日 昭和59(オ)303
- 登載
- 集民 第158号805頁
- 参照法条
- 民法90条,労働基準法39条,労働基準法65条,労働基準法66条,労働基準法67条,労働基準法68条,労働基準法76条,労働組合法2章,労働組合法14条,労働組合法16条,憲法28条
論点28第90条民法
ユニオン・ショップ協定の効力
裁判要旨ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法
九〇条〈公序良俗〉により無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成元年12月21日 昭和62(オ)515
- 登載
- 集民 第158号659頁
- 参照法条
- 憲法28条,民法90条,労働組合法2章,労働組合法3章
論点29第90条民法
前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条項の一部が公序に反し無効とされた事例
裁判要旨すべての原因による不就労を基礎として算出した前年の稼働率が八〇パーセント以下の従業員を翌年度のベースアップを含む賃金引上げの対象者から除外する旨の労働協約条項は、そのうち労働基準法又は労働組合法上の権利に基づくもの以外の不就労を稼働率算定の基礎とする部分は有効であるが、右各権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分は公序に反し無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成元年12月14日 昭和58(オ)1542
- 登載
- 民集 第43巻12号1895頁
- 参照法条
- 民法90条,労働基準法39条,労働基準法65条,労働基準法66条,労働基準法67条,労働基準法68条,労働基準法76条,労働組合法第2章,労働組合法14条,労働組合法16条,憲法28条
論点30第90条民法
ユニオン・ショップ協定の効力
裁判要旨ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法
九〇条〈公序良俗〉により無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成元年12月14日 昭和60(オ)386
- 登載
- 民集 第43巻12号2051頁
- 参照法条
- 憲法28条,民法90条,労働組合法2章,労働組合法3章
論点31第90条民法
賭博債権の譲渡を異議なく承諾した債務者が右債権の譲受人に対して賭博契約の公序良俗違反による無効を主張することの可否
裁判要旨賭博の勝ち負けによって生じた債権が譲渡された場合においては、右債権の債務者が異議をとどめずに右債権譲渡を承諾したときであっても、債務者に信義則に反する行為があるなどの特段の事情のない限り、債務者は、右債権の譲受人に対して右債権の発生に係る契約の公序良俗違反による無効を主張してその履行を拒むことができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年11月11日 平成7(オ)2025
- 登載
- 民集 第51巻10号4077頁
- 参照法条
- 民法90条,民法468条
論点32第90条民法
いわゆる従業員持株制度に基づいて取得した株式を退職時に額面額で取締役会の指定する者に譲渡する旨の会社と従業員との合意が有効とされた事例
裁判要旨定款で株式の譲渡制度を定めている会社において、いわゆる従業員持株制度に基づいて取得した株式を退職時に額面額で取締役会の指定する者に譲渡する旨の会社と従業員との間でされた合意は、従業員が、右制度の趣旨、内容を了解した上で株式を額面額で取得し、毎年八ないし三〇パーセントの割合による配当を受けていたなど判示の事実関係の下においては、商法二〇四条一項に違反するものではなく、公序良俗にも反せず、有効である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成7年4月25日 平成3(オ)1332
- 登載
- 集民 第175号91頁
- 参照法条
- 商法204条1項,民法90条
論点33第90条民法
タクシー会社の乗務員が月ごとの勤務予定表作成後に年次有給休暇を取得した場合に皆勤手当を支給しない旨の約定が公序に反する無効なものとはいえないとされた事例
裁判要旨タクシー会社の乗務員に対し、月ごとの勤務予定表どおり勤務した場合には月額三一〇〇円ないし四一〇〇円の皆勤手当を支給するが、右勤務予定表作成後に年次有給休暇を取得した場合には右手当の全部又は一部を支給しない旨の約定は、右手当の支給が代替要員の手配が困難となり自動車の実働率が低下する事態を避ける配慮をした乗務員に対する報奨としてされ、右手当の額も相対的に大きいものではないなどの判示の事情の下においては、年次有給休暇取得の権利の行使を抑制して労働基準法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものとは認められず、公序に反する無効なものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成5年6月25日 平成4(オ)1078
- 登載
- 民集 第47巻6号4585頁
- 参照法条
- 民法90条,労働基準法39条,労働基準法134条
論点34第90条民法
認定司法書士が弁護士法72条に違反して締結した裁判外の和解契約の効力
裁判要旨認定司法書士が委任者を代理して裁判外の和解契約を締結することが弁護士法72条に違反する場合であっても,当該和解契約は,その内容及び締結に至る経緯等に照らし,公序良俗違反の性質を帯びるに至るような特段の事情がない限り,無効とはならない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成29年7月24日 平成28(受)1463
- 登載
- 民集 第71巻6号969頁
- 参照法条
- 弁護士法72条,司法書士法3条1項7号,民法90条
論点35第90条民法
歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の賃金規則上の定めが公序良俗に反し無効であるとして未払賃金の請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の賃金規則上の定めが公序良俗に反し無効であると判断するのみで,当該賃金規則における賃金の定めにつき,通常の労働時間の賃金に当たる部分と労働基準法37条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができるか否かや,そのような判別をすることができる場合に,当該賃金規則に基づいて割増賃金として支払われた金額が同条その他の関係法令に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かについて審理判断することなく未払賃金の請求を認容すべきものとした原審の判断には,割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った結果,審理を尽くさなかった違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成29年2月28日 平成27(受)1998
- 登載
- 集民 第255号1頁
- 参照法条
- 民法90条,労働基準法37条
論点36第90条民法
過払金が発生している継続的な金銭消費貸借取引の当事者間で特定調停手続において成立した調停であって,借主の貸金業者に対する残債務の存在を認める旨の確認条項及びいわゆる清算条項を含むものが公序良俗に反するものとはいえないとされた事例
裁判要旨過払金が発生している継続的な金銭消費貸借取引に関し,借主と貸金業者との間で特定調停手続において成立した調停であって,借主の貸金業者に対する残債務の存在を認める旨の確認条項及び調停条項に定めるほか何らの債権債務がないことを確認する旨のいわゆる清算条項を含むものは,次の(1)~(3)など判示の事情の下においては,全体として公序良俗に反するものということはできない。
(1) 上記調停における調停の目的は,上記の継続的な金銭消費貸借取引のうち特定の期間内に借主が貸金業者から借り受けた借受金等の債務であると文言上明記され,上記確認条項及び上記清算条項もこれを前提とするものである。
(2) 上記確認条項は,上記(1)の借受金等の残債務として,上記特定の期間内の借受け及びこれに対する返済を利息制限法所定の制限利率に引き直して計算した残元利金を超えない金額の支払義務を確認する内容のものである。
(3) 上記清算条項に,上記の継続的な金銭消費貸借取引全体によって生ずる過払金返還請求権等の債権を特に対象とする旨の文言はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成27年9月15日 平成25(受)1989
- 登載
- 集民 第250号47頁
- 参照法条
- 民法90条,民法91条,民法695条,利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項,民事調停法16条,特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律2条,特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律3条
論点37第90条民法
公序良俗に反する無効な出資と配当に関する契約により給付を受けた金銭の返還につき,当該給付が不法原因給付に当たることを理由として拒むことは信義則上許されないとされた事例
裁判要旨破産者甲との間の契約が公序良俗に反して無効であるとして,乙が当該契約により給付を受けた金銭の返還を求められた場合において,当該金銭は無限連鎖講に該当する事業によって給付された配当金であって他の会員が出えんした金銭を原資とするものであり,当該事業の会員の相当部分の者は甲の破綻により損失を受けて破産債権者の多数を占めるに至っており,甲の破産管財人が破産債権者への配当を行うなど適正かつ公平な清算を図ろうとするため乙に対して当該配当金の返還を求めているなど判示の事情の下においては,乙が当該配当金の給付が不法原因給付に当たることを理由としてその返還を拒むことは,信義則上許されない。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成26年10月28日 平成24(受)2007
- 登載
- 民集 第68巻8号1325頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法90条,民法708条,破産法78条1項,無限連鎖講の防止に関する法律2条,無限連鎖講の防止に関する法律3条
論点38第90条民法
1 建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする請負契約が公序良俗に反し無効とされた事例
2 建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする公序良俗違反の請負契約に基づく本工事の施工が開始された後に施工された追加変更工事の施工の合意が公序良俗に反しないとされた事例
裁判要旨1 注文者と請負人が建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする請負契約を締結した場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記請負契約は,公序良俗に反し,無効である。
(1) 上記請負契約は,建築基準法所定の確認及び検査を潜脱するため,法令の規定に適合した建物の建築確認申請用図面のほかに,法令の規定に適合しない建物の建築工事の施工用図面を用意し,前者の図面を用いて建築確認申請をして確認済証の交付を受け,一旦は法令の規定に適合した建物を建築して検査済証の交付も受けた後に,後者の図面に基づき建築工事を施工することを計画して締結されたものである。
(2) 上記建物は,上記(1)の計画どおり建築されれば,耐火構造に関する規制違反や避難通路の幅員制限違反など,居住者や近隣住民の生命,身体等の安全に関わる違法を有する危険な建物となるものであった。
(3) 請負人は,建築工事請負等を業とする者でありながら,上記(1)の計画を全て了承し,上記請負契約の締結に及んだのであり,請負人が上記建物の建築という注文者からの依頼を拒絶することが困難であったというような事情もうかがわれない。
2 建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする公序良俗違反の請負契約に基づく本工事の施工が開始された後に施工された追加変更工事は,同工事が区役所の是正指示や近隣住民からの苦情など様々な事情を受けて別途合意の上施工されたものであり,その中には上記本工事の施工によって既に生じていた違法建築部分を是正する工事も含まれていたという事情の下では,上記追加変更工事の中に上記本工事で計画されていた違法建築部分につきその違法を是正することなくこれを一部変更する部分があるのであれば,その部分は別の評価を受けることになるが,そうでなければ,その施工の合意が公序良俗に反するものということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成23年12月16日 平成22(受)2324
- 登載
- 集民 第238号297頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法90条,民法632条
論点39第90条民法
個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効であることにより,購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となるか
裁判要旨個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効とされる場合であっても,販売業者とあっせん業者との関係,販売業者の立替払契約締結手続への関与の内容及び程度,販売業者の公序良俗に反する行為についてのあっせん業者の認識の有無及び程度等に照らし,販売業者による公序良俗に反する行為の結果をあっせん業者に帰せしめ,売買契約と一体的に立替払契約についてもその効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り,売買契約と別個の契約である購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となる余地はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成23年10月25日 平成21(受)1096
- 登載
- 民集 第65巻7号3114頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法90条,割賦販売法(平成20年法律第74号による改正前のもの)2条3項2号,割賦販売法(平成20年法律第74号による改正前のもの)30条の4,割賦販売法2条4項,割賦販売法35条の3の19
論点40第90条民法
債権の管理又は回収の委託を受けた弁護士が,その手段として本案訴訟の提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為の私法上の効力
裁判要旨債権の管理又は回収の委託を受けた弁護士が,その手段として本案訴訟の提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は,他人間の法的紛争に介入し,司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われたなど,公序良俗に反するような事情があれば格別,仮にこれが弁護士法28条に違反するものであったとしても,直ちにその私法上の効力が否定されるものではない。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成21年8月12日 平成20(許)49
- 登載
- 民集 第63巻6号1406頁
- 参照法条
- 弁護士法28条,民法90条
論点41第90条民法
株式会社の従業員がいわゆる持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じたときは持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意が有効とされた事例
裁判要旨いわゆる持株会が採用した株式譲渡ルールに従い,株式会社の従業員が持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じたときは持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意は,次の(1)〜(4)などの判示の事情の下では,会社法107条及び127条の規定に反するものではなく,公序良俗にも反せず,有効である。
(1) 上記株式譲渡ルールは,日刊新聞の発行を目的とし,日刊新聞法1条に基づき定款で株式の譲受人を事業に関係ある者に限ると規定して,株式の保有資格を原則として現役の従業員等に限定する社員株主制度を採用している当該会社において同制度を維持することを前提に,これにより譲渡制限を受ける株式を円滑に現役の従業員等に承継させるためのものである。
(2) 非公開会社である当該会社の株式にはもともと市場性がなく,上記株式譲渡ルールにおいては,従業員が持株会から株式を取得する際の価格も額面額とされていた。
(3) 当該従業員は,上記株式譲渡ルールの内容を認識した上,自由意思により持株会から額面額で株式を買い受けた。
(4) 当該会社が,多額の利益を計上しながら特段の事情もないのに一切配当を行うことなくこれをすべて会社内部に留保していたというような事情はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成21年2月17日 平成20(受)1207
- 登載
- 集民 第230号117頁
- 参照法条
- 会社法107条,会社法127条,民法90条,(日刊新聞法)日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律1条
論点42第90条民法
従業員と使用者との間でされた従業員に対し特定の労働組合から脱退する権利を行使しないことを義務付ける合意と公序良俗違反
裁判要旨従業員と使用者との間において従業員が特定の労働組合に所属し続けることを義務付ける内容の合意がされた場合において,同合意のうち,従業員に上記労働組合から脱退する権利をおよそ行使しないことを義務付けて脱退の効力そのものを生じさせないとする部分は,公序良俗に反し無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成19年2月2日 平成16(受)1787
- 登載
- 民集 第61巻1号86頁
- 参照法条
- 労働組合法第2章 労働組合,民法90条,憲法21条1項,憲法28条
論点43第90条民法
団体定期保険(いわゆるAグループ保険)に基づいて被保険者である従業員の死亡により保険金を受領した会社が生命保険会社との間の合意をもって社内規定に基づく給付額を超えて上記保険金の一部を死亡従業員の遺族に支払うことを約したと認めるべきであるとした原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨Y社が,複数の生命保険会社との間で,保険金受取人をY,被保険者をYの従業員全員とし,死亡保険金の合計額が従業員1人につき6000万円を超える団体定期保険(いわゆるAグループ保険)契約を締結し,従業員の死亡により保険金を受領する一方,当該従業員の遺族Xに対しては,社内規定に基づく給付額である1000万円程度の死亡時給付金を支払ったにとどまる場合において,1 他人の生命の保険については被保険者の同意を求めることでその適正な運用を図るべく保険金額に見合う被保険利益の裏付けを要求する規制を採用していない立法の下では,直ちに上記契約が公序良俗に違反するとはいえないこと,2 Yは,団体定期保険の主たる目的が受領保険金を従業員に対する福利厚生制度に基づく給付に充てることにあることは認識していたものの,死亡従業員の遺族に支払うべき死亡時給付金が社内規定に基づく給付額の範囲内にとどまることは当然と考え,そのような取扱いに終始していたのであり,社内規定に基づく給付額を超えて受領した保険金の全部又は一部を遺族に支払うことを黙示的にも合意したと認める余地はないことなど判示の事情の下では,上記のような団体定期保険の運用が公序良俗に違反することを前提として,これを免れるためには,Yは,生命保険会社との間の第三者のためにする契約をもって,社内規定に基づく給付額を超えて死亡時給付金として社会的に相当な金額(3000万円)に満つるまでの額をXに支払うことを約したと認めるべきであるとした原審の判断には,違法がある。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成18年4月11日 平成14(受)1358
- 登載
- 民集 第60巻4号1387頁
- 参照法条
- 商法674条1項,民法90条,民法537条,民訴法247条
論点44第90条民法
1 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分が公序良俗に反しないとされた事例
2 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格を原則として男子孫に限定し同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分が民法90条〈公序良俗〉の規定により無効とされた事例
裁判要旨1 A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分は,現在においても,公序良俗に反するものということはできない。
2 A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち,入会権者の資格を原則として男子孫に限定し,同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分は,遅くとも平成4年以降においては,性別のみによる不合理な差別として民法90条の規定により無効である。
(2につき補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年3月17日 平成16(受)1968
- 登載
- 民集 第60巻3号773頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法2条,民法90条,民法92条,民法263条,民法294条,憲法14条1項
論点45第90条民法
1 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約と公序良俗違反
2 私立医科大学の平成13年度の入学試験の合格者が同大学との間で納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した後に同契約を解除した場合において同特約は公序良俗に反しないなどとして同大学に対する納付済みの授業料等の返還請求が認められなかった事例
裁判要旨1 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,その目的,意義に照らして,合格者の大学選択に関する自由な意思決定を過度に制約し,その他合格者の著しい不利益において大学が過大な利益を得ることになるような著しく合理性を欠くと認められるものでない限り,公序良俗に反しない。
2 私立医科大学の平成13年度の入学試験の合格者が,同大学に授業料等を含む所定の納付金を納付して,同大学との間で,平成13年3月21日正午よりも後に入学辞退を申し出た場合には授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した後,同月27日ころ同契約を解除した場合において,医科大学においては入学辞退によって欠員が生ずる可能性が潜在的に高く,欠員が生じた場合に生ずる損失が多額になることは否定し難いこと,上記特約が当時の私立大学の医学関係の学部におけるそれとの比較において格別合格者に不利益な内容のものであることがうかがわれないことなど判示の事情の下では,上記授業料等の金額が614万円であり,このうち教育充実費については6年間に納付することとされている合計額950万円のうち500万円を在学契約締結時に納付すべきものとされていることや,同大学に定員割れが生じていないことなどを考慮しても,上記特約は公序良俗に反するものではなく,同大学が上記授業料等の返還を拒むことが信義に反するともいえず,上記合格者から同大学に対する上記授業料等の返還請求は認められない。
(2につき反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日 平成16(受)2117
- 登載
- 民集 第60巻9号3732頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法90条,民法420条,学校教育法6条,(2につき)民法1条2項,民法703条
論点46第90条民法
1 いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社に派遣された県職員に対する給与支出が違法であるとされた事例
2 県といわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で締結された県職員を同社に派遣してその給与を県が負担することを内容とする協定が私法上無効であるとはいえないとされた事例
3 県がいわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で県職員を同社に派遣してその給与を負担することを内容とする協定を締結して派遣職員に給与を支出したことにつき知事に過失があるとはいえないとされた事例
裁判要旨1 県が,職務専念義務の免除をするとともに勤務しないことの承認をして,いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社に県職員を派遣し,その給与を支出した場合において,上記派遣が,同社に事業収入がなく,同社が十分な人材を確保していないことを考慮して行われたこと,同社の事業内容は遊園施設等の経営であったこと,派遣職員が従事した職務の内容は同社の業務全般に 及んでいたこと,派遣人数は延べ13人,派遣期間は約7年間に及んだことなど判示の事実関係の下においては,上記給与支出は,違法である。
2 県が,いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で,県職員を同社に派遣してその給与を負担することを内容とする協定を締結し,派遣職員につき職務専念義務の免除をするとともに勤務しないことの承認をして給与を支出した場合において,上記協定が地方公務員法24条1項,30条及び35条の趣旨に反して違法であるとしても,上記協定締結当時,地方公務員の派遣に関する法制度が整備されないまま,全国各地の地方公共団体において第3セクター等への職員派遣が行われており,職務専念義務の免除による職員派遣の場合には派遣職員の給与を支出する例が多かったこと,その適否については定説がなく,裁判例も分かれていたことなど判示の事情の下においては,上記協定が私法上無効であるということはできない。
3 県が,いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で,県職員を同社に派遣してその給与を負担することを内容とする協定を締結した当時,地方公務員の派遣に関する法制度が整備されないまま,全国各地の地方公共団体において第3セクター等への職員派遣が行われており,職務専念義務の免除による職員派遣の場合には派遣職員の給与を支出する例が多かったこと,その適否については定説がなく,裁判例も分かれていたこと,県の同社への職員派遣は条例等の定める職務専念義務の免除等の法的手続を踏んで行われたことなど判示の事情の下においては,上記協定を締結して派遣職員に給与を支出したことにつき知事に過失があるとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成16年1月15日 平成13(行ヒ)266
- 登載
- 民集 第58巻1号156頁
- 参照法条
- 地方公務員法24条1項,地方公務員法30条,地方公務員法35条,職務に専念する義務の特例に関する条例(昭和28年岡山県条例第49号)2条,岡山県職員給与条例(昭和26年岡山県条例第18号)14条,職務に専念する義務の特例に関する規則(昭和28年岡山県人事委員会規則第10号)2条,民法90条,民法709条,地方自治法2条17項,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号
論点47第90条民法
1 法律行為が公序に反することを目的とするものであるかどうかを判断する基準時
2 証券取引法42条の2第1項3号が平成3年法律第96号による同法の改正前に締結された損失保証や特別の利益の提供を内容とする契約に基づく履行の請求をも禁止していることと憲法29条〈管理人の担保提供及び報酬〉
裁判要旨1 法律行為が公序に反することを目的とするものであるとして無効になるかどうかは,法律行為がされた時点の公序に照らして判断すべきである。
2 証券取引法42条の2第1項3号が,平成3年法律第96号による同法の改正前に締結された損失保証や特別の利益の提供を内容とする契約に基づいてその履行を請求する場合を含め,顧客等に対する損失補てんや利益追加のための財産上の利益の提供を禁止していることは,憲法29条に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成15年4月18日 平成11(受)1519
- 登載
- 民集 第57巻4号366頁
- 参照法条
- 民法90条,憲法29条,証券取引法42条の2第1項3号
論点48第90条民法
1 出勤率が90%以上の従業員を賞与支給対象者とする旨の就業規則条項の適用に関しその基礎とする出勤した日数に産前産後休業の日数等を含めない旨の定めが公序に反し無効とされた事例
2 賞与の額を欠勤日数に応じて減額することを内容とする計算式の適用に当たり産前産後休業の日数等を欠勤日数に含めた所定の減額を行わずに賞与全額の支払請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨1 出勤率が90%以上の従業員を賞与支給対象者としこれに満たない者には賞与を支給しないこととする旨の就業規則条項の適用に関し,出勤率算定の基礎とする出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し,出勤した日数に上記日数及び育児を容易にするための措置により短縮された勤務時間分を含めない旨を定めた就業規則の付属文書の定めは,従業員の年間総収入額に占める賞与の比重が高いため,上記条項により賞与が支給されない者の受ける経済的不利益が大きく,従業員が産前産後休業を取得し又は勤務時間短縮措置を受けた場合には,それだけで上記条項に該当して賞与の支給を受けられなくなる可能性が高いという事情の下においては,公序に反し無効である。
2 賞与の額を欠勤日数に応じて減額することを内容とする計算式及びその適用に当たりその基礎となる欠勤日数に産前産後休業の日数及び育児を容易にするための措置により短縮された勤務時間分を含める旨を定めた就業規則の付属文書の定めが無効となる理由を具体的に説示することなく,上記計算式を適用せず,産前産後休業の日数等を欠勤日数に含めた所定の減額を行わずに賞与全額の支払請求を認容した原審の判断には,違法がある。
(2につき意見及び反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成15年12月4日 平成13(受)1066
- 登載
- 集民 第212号87頁
- 参照法条
- 民法90条,労働基準法(平成9年法律第92号による改正前のもの)65条,育児休業等に関する法律(平成7年法律第107号による改正前のもの)10条
論点49第90条民法
衣料品の卸売業者と小売業者との間における周知性のある他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用した商品の売買契約が民法90条により無効とされた事例
裁判要旨衣料品の卸売業者と小売業者との間における周知性のある他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用した商品の売買契約は,当事者がそのような商品であることを互いに十分に認識しながら,あえてこれを消費者の購買のルートに乗せ,他人の真正な商品であると誤信させるなどして大量に販売して利益をあげようと企て,この目的を達成するために継続的かつ大量に行ったものであって,単に不正競争防止法及び商標法に違反するというだけでなく,経済取引における商品の信用の保持と公正な経済秩序の確保を害する著しく反社会性の強いものであるなど判示の事情の下においては,民法
90条〈公序良俗〉により無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成13年6月11日 平成12(受)67
- 登載
- 集民 第202号433頁
- 参照法条
- 民法90条,不正競争防止法2条1項1号,不正競争防止法13条1号,商標法78条
論点50第90条民法
やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約における約定の効力
裁判要旨やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約における約定は、無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成11年2月23日 平成7(オ)1747
- 登載
- 民集 第53巻2号193頁
- 参照法条
- 民法90条,民法91条,民法678条
論点51第90条民法
1 宗教法人とその信者との間において締結された不起訴の合意が公序良俗に反し無効であるとされた事例
2 宗教法人の信者らによる献金の勧誘が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨1 宗教法人Yとその信者Aとの間において締結された書面による不起訴の合意は、次の⑴~⑷など判示の事情の下においては、公序良俗に反し、無効である。
⑴ Aは、上記の締結の当時、86歳という高齢の単身者であり、その約半年後にはアルツハイマー型認知症により成年後見相当と診断された。
⑵ Aは、Yの教理を学び始めてから上記締結までの約10年間、その教理に従い、1億円を超える多額の献金を行い、多数回にわたり渡韓してYの儀式に参加していた。
⑶ Yの信者らは、上記書面の文案を作成し、公証人役場におけるその認証の手続にも同行し、その後、Aの意思を確認する様子をビデオ撮影した。
⑷ 上記不起訴の合意の内容は、上記多額の献金について、何らの見返りもなく無条件に不法行為に基づく損害賠償請求等に係る訴えを一切提起しないというものであった。
2 宗教法人Yの信者らによる信者Aに対する献金の勧誘について、次の⑴~⑶など判示の事情の下においては、献金をする者が献金をするか否かについて適切な判断をすることに支障が生ずるなどした事情の有無やその程度、献金により上記の者又はその配偶者等の生活の維持に支障が生ずるなどした事情の有無やその程度等を総合的に考慮し、上記勧誘が勧誘の在り方として社会通念上相当な範囲を逸脱するといえるかについて検討するという判断枠組みを採ることなく、上記信者らが上記勧誘において献金をしないことによる具体的な害悪を告知したとは認められない、Aがその資産や生活の状況に照らして過大な献金を行ったとは認められないなどとして上記勧誘が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断には、献金勧誘行為の違法性に関する法令の解釈適用を誤った結果、上記の判断枠組みに基づく審理を尽くさなかった違法がある。
⑴ Aは、献金当時、80歳前後という高齢であり、種々の身内の不幸を抱えていた。
⑵ Aは、Yに対し、1億円を超える多額の献金を行い、また、自己の所有する土地を売却してまで献金を行い、残りの売得金をYの信者らによって構成される組織に預け、同組織を通じてさらに献金を行うとともに、同組織から生活費の交付を受けていた。
⑶ Aの献金をめぐる一連の行為は、いずれもYの信者らによる勧誘等を受けて行われたものであった。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和6年7月11日 令和4(受)2281
- 登載
- 民集 第78巻3号921頁
- 参照法条
- (1につき)民訴法第2編第1章 訴え、民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)90条 (2につき)民法709条、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律3条1号、2号
論点52第90条民法
宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意の効力
裁判要旨宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,同法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものとして,公序良俗に反し,無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 令和3年6月29日 令和2(受)205
- 登載
- 民集 第75巻7号3340頁
- 参照法条
- 宅地建物取引業法12条1項,宅地建物取引業法13条1項,民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)90条
論点53第91条民法
「運送人は保険に付された危険によつて生じた貨物の滅失等については損害賠償の責めに任じない」旨の港湾運送約款の解釈
裁判要旨港湾運送契約の締結に際し、荷送人が、貨物を海上保険に付したうえ、運送人との間で港湾運送約款に基づき「運送人は、保険に付された危険によつて生じた貨物の滅失等については、損害賠償の責めに任じない。」旨の合意をした場合でも、特段の事情のない限り、被保険者である荷送人は、保険金額の範囲内の損害につき、貨物滅失に基づく運送人に対する損害賠償請求権をあらかじめ放棄したものではないと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和51年11月25日 昭和50(オ)1190
- 登載
- 民集 第30巻10号960頁
- 参照法条
- 民法91条,民法519条,商法569条,商法577条,商法581条,商法629条,商法662条
論点54第91条民法
いわゆる内整理のための債権者委員会の決議の効力
裁判要旨いわゆる内整理のための債権者委員会の決議は、その表決に加わらなかつた債権者を当然に拘束する効力を有するものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和51年11月1日 昭和50(オ)614
- 登載
- 集民 第119号149頁
- 参照法条
- 民法91条,破産法179条,破産法306条
論点55第91条民法
買主が売主に対し民法五七〇条に基づく損害賠償の請求をするとともに該請求権を自働債権とする相殺の意思表示をしたものと解された事例
裁判要旨単価を六五円とする穀用かますの売買契約において引き渡された一二万八一〇〇枚につき、買主が売主にあてて、右かますに欠陥があることを具体的に指摘したうえ、穀用かますとしての商品価値が認められず、一枚当り二〇円、数量一二万八一〇〇枚、この代金二五六万二〇〇〇円としての減価採用で精算させていただく等判示のような記載のある書面を送付したときは、特別の事情がないかぎり、買主は、売主に対し、受領物の瑕疵に基づく損害賠償の請求をするとともに、該請求権を自働債権とし売買代金債権を受働債権とする相殺の意思表示をしたものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年2月25日 昭和48(オ)558
- 登載
- 民集 第29巻2号168頁
- 参照法条
- 民法91条,民法506条1項,民法566条,民法570条
論点56第91条民法
一、賃金にあたる退職金債権放棄の効力
二、賃金にあたる退職金債権の放棄が労働者の自由な意思に基づくものとして有効とされた事例
裁判要旨一、賃金にあたる退職金債権放棄の意思表示は、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、有効である。
二、甲会社の被用者で西日本における総責任者の地位にある乙が、退職に際し、賃金にあたる退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合において、乙が退職後ただちに競争会社に就職することが甲に判明しており、また、乙の在職中における経費の使用につき書面上つじつまの合わない点から甲が疑惑をいだいて、その疑惑にかかる損害の一部を填補させる趣旨で退職金債権の放棄を求めた等判示の事情があるときは、右退職金債権放棄の意思表示は、乙の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在したものとして、有効とすべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和48年1月19日 昭和44(オ)1073
- 登載
- 民集 第27巻1号27頁
- 参照法条
- 労働基準法11条,労働基準法24条1項,民法91条,民法519条
論点57第91条民法
契約書に記載されない特約の存否に関する認定と経験則
裁判要旨国と私人との間に、私人を売主として成立した土地売買契約において、目的土地の利用方法に関する特約は、当事者にとつて極めて重要な特約であるから、右契約につき予算決算及び会計令(昭和二七年政令七六号による改正前)六八条に基づき契約書が作成された以上、かかる特約の趣旨は契約者に記載されるのが通常の事態であり、これに記載されていないときは、特段の事情のないかぎり、かかる特約は存在しないものと認めるべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年3月2日 昭和43(オ)1294
- 登載
- 集民 第105号225頁
- 参照法条
- 民法91条,予算決算及び会計令(昭和47年政令76号による改正前)68条,民訴法186条
論点58第91条民法
船舶海上保険において主務大臣の認可なしに変更された普通保険約款の拘束力
裁判要旨船舶海上保険において、保険業者が主務大臣の認可を受けないで普通保険約款を変更し、その約款に基づいて保険契約を締結しても、その変更が保険業者の懇意的な目的に出たものでなく、変更された条項が強行法規もしくは公序良俗に違反しまたはとくに不合理なものである場合でないかぎり、変更後の約款は、保険契約の内容を定めるものとして当事者を拘束する効力を有する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和45年12月24日 昭和41(オ)768
- 登載
- 民集 第24巻13号2187頁
- 参照法条
- 民法91条,商法815条,保険業法1条,保険業法10条
論点59第91条民法
電信送金契約は第三者のためにする契約であるか
裁判要旨電信送金契約は、特別の事情のないかぎり、第三者たる送金受取人のためにする契約であるとはいえず、被仕向銀行は、右契約により、仕向銀行に対する関係においては、送金受取人に送金の支払をする義務を負うが、送金受取人本人に対する関係においては、そのような義務を負うものではなく、単に仕向銀行の計算において送金の支払をなしうる権限を取得するにとどまると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和43年12月5日 昭和40(オ)1399
- 登載
- 民集 第22巻13号2876頁
- 参照法条
- 民法91条,民法92条,民法537条
論点60第91条民法
証券取引法第四九条に違反して委託証拠金なしに信用取引がなされた場合における証券業者と委託者との間の契約の効力。
裁判要旨証券取引法第四九条に違反して委託証拠金なしに信用取引により株式が売買されても、右違反は、証券業者と委託者との間の契約の効力に影響を及ぼすものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和40年4月22日 昭和39(オ)816
- 登載
- 民集 第19巻3号703頁
- 参照法条
- 民法91条,民法642条,商法552条,証券取引法49条
論点61第91条民法
一 生命保険契約の保険契約者兼保険金受取人である有限会社が意思表示の受領権限を有する者を欠く状態にある場合において保険金請求権の転付債権者に対して告知義務違反を理由とする解除の意思表示をすることの可否
二 保険会社が告知義務違反による生命保険契約の解除原因を知った時に解除の意思表示の受領権限を有する者がいない場合における解除原因を知った後一箇月を経過したときには契約を解除することができない旨の約款の解釈
裁判要旨一 有限会社を保険契約者兼保険金受取人とする生命保険契約における被保険者が死亡し、かつ、右有限会社が意思表示を受領する権限を有する者を欠く状態にある場合において、転付命令により保険金受取人の保険会社に対する生命保険金支払請求権を取得した者があるときには、保険会社は、右転付債権者に対しても告知義務違反を理由とする生命保険契約の解除の意思表示をすることができる。
二 有限会社を保険契約者とする生命保険契約に適用される約款に保険会社が告知義務違反による解除の原因を知った日からその日を含めて一箇月を経過したときには契約を解除することができない旨の定めがある場合において、保険会社が右の解除の原因を知った時に解除の意思表示の受領権限を有する者がいないときには、右の一箇月の期間は、保険会社が右受領権限を有する者が現れたことを知り、又は知り得べき時から進行するものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年6月17日 平成7(オ)949
- 登載
- 民集 第51巻5号2154頁
- 参照法条
- 民法91条,民法540条,商法644条2項,商法678条,民事執行法159条,民事執行法160条
論点62第91条民法
生命保険会社がいわゆる契約者貸付制度に基づいて保険契約者の代理人と称する者の申込みにより行った貸付けと民法四七八条〈受領権者としての外観を有する者に対する弁済〉の類推適用
裁判要旨生命保険会社甲が、いわゆる契約者貸付制度に基づいて保険契約者乙の代理人と称する丙の申込みによる貸付けを実行した場合において、丙を乙の代理人と認定するにつき相当の注意義務を尽くしたときは、甲は、民法
四七八条〈受領権者としての外観を有する者に対する弁済〉の類推適用により、乙に対し、右の貸付けの効力を主張することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成9年4月24日 平成5(オ)1951
- 登載
- 民集 第51巻4号1991頁
- 参照法条
- 民法91条,民法478条,民法587条,商法673条
論点63第91条民法
火災保険普通保険約款上保険会社が保険金の支払につき遅滞の責めを負うべき時期
裁判要旨保険会社は保険契約者又は被保険者が保険の目的について損害が発生したことを通知し所定の書類を提出した日から三〇日以内に保険金を支払う、ただし、保険会社が右期間内に必要な調査を終えることができないときはこれを終えた後遅滞なく保険金を支払う旨の火災保険普通保険約款の条項は、右三〇日の経過により保険金支払の履行期が到来することを定めたものと解すべきであり、保険会社は、右期間内に必要な調査を終えることができなかったとしても、右期間経過後は保険金の支払について遅滞の責めを免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年3月25日 平成5(オ)1858
- 登載
- 民集 第51巻3号1565頁
- 参照法条
- 民法91条,民法412条,商法629条,商法665条
論点64第91条民法
金融機関が信用保証協会との間の信用保証取引に関する約定中のいわゆる旧債振替禁止条項に違反した場合における保証債務の消滅の範囲
裁判要旨金融機関が、信用保証協会の保証に係る中小企業者等に対する貸付金の一部について、信用保証協会との間の信用保証取引に関する約定中のいわゆる旧債振替禁止条項に違反してこれを既存の債権の回収に充てた場合には、残額部分の貸付金では中小企業者等が融資を受けた目的を達成することができないなど、信用保証制度の趣旨・目的に照らして保証債務の全部について免責を認めるのを相当とする特段の事情がある場合を除き、当該違反部分のみについて保証債務の消滅の効果が生ずる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成9年10月31日 平成8(オ)1939
- 登載
- 民集 第51巻9号4004頁
- 参照法条
- 民法91条,民法446条,民法459条,信用保証協会法1条,信用保証協会法20条
論点65第91条民法
振込依頼人と受取人との間に振込みの原因となる法律関係が存在しない場合における振込みに係る普通預金契約の成否
裁判要旨振込依頼人から受取人の銀行の普通預金口座に振込みがあったときは、両者の間に振込みの原因となる法律関係が存在するか否かにかかわらず、受取人と銀行との間に振込金額相当の普通預金契約が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成8年4月26日 平成4(オ)413
- 登載
- 民集 第50巻5号1267頁
- 参照法条
- 民法91条,民法666条
論点66第91条民法
一 債権者が物上保証人に対して担保保存義務免除特約の効力を主張することが信義則に違反せず権利の濫用にも当たらないとされた事例
二 担保保存義務免除特約の効力により物上保証人について民法五〇四条〈債権者による担保の喪失等〉による免責の効果が生じなかった場合にその後物上保証人から担保物件の譲渡を受けた第三取得者が債権者に対して免責の効果を主張することの可否
裁判要旨一 債権者甲の債務者乙に対する債権を担保するために所有不動産に根抵当権を設定した丙が甲との間に民法
五〇四条〈債権者による担保の喪失等〉に規定する担保保存義務を免除する旨の特約をしていた場合に、甲が、右担保に追加して乙所有の不動産に設定を受けた根抵当権を放棄した上、丙に対し右特約の効力を主張することは、乙から設定を受けた右追加担保が甲の乙に対する追加融資の額に見合うものであり、甲が乙からその弁済を受けるのに伴って右追加担保を放棄したものであるなど判示の事実関係の下においては、信義則に違反せず、権利の濫用にも当たらない。
二 債権者甲の債務者乙に対する債権を担保するために所有不動産に根抵当権を設定した丙が甲との間に民法
五〇四条に規定する担保保存義務を免除する旨の特約をしていた場合に、甲が乙から設定を受けた担保を喪失し、又は減少させた時に右特約の効力により丙について同条による免責の効果が生じなかったときは、その後丙から右不動産の譲渡を受けた丁は、甲に対し、同条による免責の効果を主張することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成7年6月23日 平成6(オ)1835
- 登載
- 民集 第49巻6号1737頁
- 参照法条
- 民法1条,民法91条,民法504条
論点67第91条民法
甲乙丙三者間で乙所有の冷蔵庫を乙から丙を経て甲へ順次売却し更に甲が乙に割賦販売する形式でされた甲乙間の合意が消費貸借契約又は諾成的消費貸借契約であるとされた事例
裁判要旨甲乙丙の三者間で乙所有の冷凍冷蔵庫を乙から丙を経て甲へ順次売却し更に甲が乙に割賦販売する旨の合意がされた場合において、右合意が甲が乙に金融を得させる目的でされたものであり、右三者間では右冷蔵庫の所有権を真に移転する意思がなく、丙は甲から売買代金名義で受領した金員と同額の金員を乙に交付することを約したにすぎないなど判示の事情があるときは、甲乙間の合意は、右金額を元本としてその元利金を割賦販売代金の形式で返還する趣旨の甲の乙に対する消費貸借契約又は諾成的消費貸借契約である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成5年7月20日 昭和63(オ)38
- 登載
- 集民 第169号291頁
- 参照法条
- 民法91条,民法587条
論点68第91条民法
預金者以外の者が真正なキャッシュカードを使用し正しい暗証番号を入力して現金自動支払機から預金の払戻しを受けた場合と免責約款による銀行の免責
裁判要旨銀行の設置した現金自動支払機を利用して預金者以外の者が預金の払戻しを受けたとしても、真正なキャッシュカードが使用され、正しい暗証番号が入力されていた場合には、銀行による暗証番号の管理が不十分であったなど特段の事情がない限り、銀行は、免責約款により免責される。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成5年7月19日 平成1(オ)1473
- 登載
- 集民 第169号255頁
- 参照法条
- 民法91条,民法478条
論点69第91条民法
一 使用者が労働者の同意を得て労働者の退職金債権に対してする相殺と労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条〈仮住所〉・一項本文
二 使用者が労働者の同意の下に労働者の退職金債権等に対してした相殺が有効とされた事例
三 使用者が労働者の同意の下に労働者の退職金債権等に対してして相殺が否認権行使の対象とならないとされた事例
裁判要旨一 使用者が労働者の同意を得て労働者の退職金債権に対してする相殺は、右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条一項本文に違反しない。
二 甲会社の従業員乙が、銀行等から住宅資金の貸付けを受けるに当たり、退職時には乙の退職金等により融資残債務を一括返済し、甲会社に対しその返済手続を委任する等の約定をし、甲会社が、乙の同意の下に、右委任に基づく返済費用前払請求権をもつて乙の有する退職金債権等と相殺した場合において、右返済に関する手続を乙が自発的に依頼しており、右貸付けが低利かつ相当長期の挽割弁済の約定の下にされたものであつて、その利子の一部を甲会社が負担する措置が執られるなど判示の事情があるときは、右相殺は、乙の自由な意思に基づくものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在したものとして、有効と解すべきである。
三 甲会社の従業員乙が、銀行等から住宅資金の貸付けを受けるに当たり、退職時には乙の退職金等により融資残債務を一括返済し、甲会社に対しその返済手続を委任する等の約定をした場合において、甲会社が、乙の破産宣告前、右約定の趣旨を確認する旨の乙の同意の下に、右委任に基づく返済費用前払請求権をもつてした乙の有する退職金債権等との相殺は、否認権行使の対象とならない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成2年11月26日 昭和63(オ)4
- 登載
- 民集 第44巻8号1085頁
- 参照法条
- 労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)24条1項,民法91条,民法505条1項,破産法72条,破産法98条
論点70第91条民法
老人デイサービスセンターの利用者が当該センターの送迎車から降車し着地する際に負傷したという事故が,当該送迎車に係る自動車保険契約の搭乗者傷害特約にいう当該送迎車の運行に起因するものとはいえないとされた事例
裁判要旨老人デイサービスセンターの利用者が当該センターの送迎車から降車し着地する際に負傷したという事故は,(1)当該送迎車の運転を担当した当該センターの職員が降車場所として危険な場所に当該送迎車を停車しておらず,(2)上記利用者が当該送迎車から降車した際に上記職員による介助を受けるという当該送迎車の危険が現実化しないような一般的な措置がされていたなど判示の事情の下においては,当該送迎車の運行が本来的に有する危険が顕在化したものであるということはできず,当該送迎車に係る自動車保険契約の搭乗者傷害特約にいう当該送迎車の運行に起因するものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成28年3月4日 平成27(受)1384
- 登載
- 集民 第252号23頁
- 参照法条
- 保険法第4章 傷害疾病定額保険,民法91条
論点71第91条民法
1 信用保証協会と金融機関との間で保証契約が締結されて融資が実行された後に主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合において,信用保証協会の保証契約の意思表示に要素の錯誤がないとされた事例
2 金融機関による融資の主債務者が反社会的勢力であったときにおける信用保証協会と金融機関との間の信用保証に関する基本契約に定められた保証債務の免責条項にいう「保証契約に違反したとき」に当たる場合
裁判要旨1 信用保証協会と金融機関との間で保証契約が締結され融資が実行された後に主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合において,上記保証契約の当事者がそれぞれの業務に照らし,上記の場合が生じ得ることを想定でき,その場合に信用保証協会が保証債務を履行しない旨をあらかじめ定めるなどの対応を採ることも可能であったにもかかわらず,上記当事者間の信用保証に関する基本契約及び上記保証契約等にその場合の取扱いについての定めが置かれていないなど判示の事情の下では,主債務者が反社会的勢力でないことという信用保証協会の動機は,明示又は黙示に表示されていたとしても,当事者の意思解釈上,上記保証契約の内容となっていたとは認められず,信用保証協会の上記保証契約の意思表示に要素の錯誤はない。
2 金融機関が,主債務者が反社会的勢力であるか否かについて相当な調査をすべきであるという信用保証協会との間の信用保証に関する基本契約上の付随義務に違反して,その結果,反社会的勢力を主債務者とする融資について保証契約が締結された場合には,上記基本契約に定められた保証債務の免責条項にいう金融機関が「保証契約に違反したとき」に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成28年1月12日 平成26(受)1351
- 登載
- 民集 第70巻1号1頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法446条 (1につき)民法95条 (2につき)民法91条,信用保証協会法1条
論点72第91条民法
共同企業体を請負人とする請負契約における請負人「乙」に対する公正取引委員会の排除措置命令等が確定した場合「乙」は注文者「甲」に約定の賠償金を支払うとの約款の条項の解釈
裁判要旨A及びBを構成員とする共同企業体を請負人とする請負契約において,注文者を「甲」,請負人を「乙」とし,「乙」に対する公正取引委員会の排除措置命令又は課徴金納付命令が確定した場合「乙」は「甲」に約定の賠償金を支払うとの請負契約約款の条項がある場合に,上記条項において排除措置命令等が確定したことを要する「乙」の意味が当該共同企業体のほか「A又はB」か「A及びB」かは上記契約の文言上一義的に明らかではないのに,「乙」の後に例えば「(共同企業体にあっては,その構成員のいずれかの者をも含む。)」などの記載もないなど判示の事情の下では,「乙」とは当該共同企業体又は「A及びB」をいうものとする点で合意が成立していると解すべきである。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成26年12月19日 平成25(受)1833
- 登載
- 集民 第248号189頁
- 参照法条
- 民法91条,民法632条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律7条1項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律7条の2第1項
論点73第91条民法
吐物の誤嚥は傷害保険普通保険約款において保険金の支払事由として定められた「外来の事故」に該当するか
裁判要旨吐物の誤嚥は,傷害保険普通保険約款において保険金の支払事由として定められた「外来の事故」に該当する。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成25年4月16日 平成23(受)1043
- 登載
- 集民 第243号315頁
- 参照法条
- 商法(平成20年法律第57号による改正前のもの)第2編第10章 保険,保険法第2章 損害保険,民法91条
論点74第91条民法
貸金業者Yの完全子会社である貸金業者Aが,その顧客Xとの間の基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る債権をYに譲渡した場合において,YがAのXに対する過払金返還債務を承継したとはいえないとされた事例
裁判要旨貸金業者Yの完全子会社である貸金業者Aが,Yとの間の債権譲渡基本契約に基づき,Aの顧客Xとの間の基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る債権をYに譲渡した場合において,上記債権譲渡基本契約が,Yの国内の消費者金融子会社の再編を目的として,Aの貸金債権をYに移行し,その貸金業を廃止するために行われたもので,同契約にはAが顧客に対して負担する過払金返還債務をYが併存的に引き受ける旨の条項があったとしても,次の⑴,⑵など判示の事情の下では,Yは,AのXに対する過払金返還債務を承継したとはいえない。
⑴ 上記債権譲渡基本契約には,個別の債権譲渡によりAの契約上の地位がYに移転する旨又はAの負担する過払金返還債務が当然にYに承継される旨を定めた条項はない。
⑵ Xは,上記債権譲渡に係る通知を受けてから上記の併存的債務引受けに係る条項が効力を失うまでの間に,Yに対し,弁済をしただけであって,上記条項に係る受益の意思表示とみる余地のある行為をしていない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成24年6月29日 平成24(受)539
- 登載
- 集民 第241号1頁
- 参照法条
- 民法91条,民法703条,民法第3編第1章第4節(債務引受)
論点75第91条民法
自動車保険契約の人身傷害補償条項の被保険者である被害者に過失がある場合において上記条項に基づき保険金を支払った保険会社による損害賠償請求権の代位取得の範囲
裁判要旨保険会社は保険金請求権者の権利を害さない範囲内に限り保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する旨の定めがある自動車保険契約の人身傷害補償条項の被保険者である被害者に過失がある場合において,上記条項に基づき被害者が被った損害に対して保険金を支払った保険会社は,上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が民法上認められるべき過失相殺前の損害額を上回るときに限り,その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成24年5月29日 平成22(受)2035
- 登載
- 集民 第240号261頁
- 参照法条
- 商法(平成20年法律第57号による改正前のもの)662条,保険法25条,民法91条,民法709条,民法722条2項
論点76第91条民法
1 損害の元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めがない自動車保険契約の無保険車傷害条項に基づき支払われるべき保険金の額の算定方法
2 自動車保険契約の無保険車傷害条項に基づく保険金の支払債務に係る遅延損害金の利率
裁判要旨1 損害の元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めがない自動車保険契約の無保険車傷害条項に基づき支払われるべき保険金の額は,損害の元本の額から,自動車損害賠償責任保険等からの支払額の全額を差し引くことにより算定すべきであり,上記支払額のうち損害の元本に対する遅延損害金に充当された額を控除した残額を差し引くことにより算定すべきではない。
2 自動車保険契約の無保険車傷害条項に基づく保険金の支払債務に係る遅延損害金の利率は,商事法定利率である年6分と解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成24年4月27日 平成21(受)1923
- 登載
- 集民 第240号223頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法91条 (1につき)保険法第2章 損害保険 (2につき)商法514条
論点77第91条民法
保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに生命保険契約が失効する旨を定める約款の条項の,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項〈基本原則〉に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」該当性
裁判要旨生命保険契約に適用される約款中の保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに保険契約が失効する旨を定める条項は,(1)これが,保険料が払込期限内に払い込まれず,かつ,その後1か月の猶予期間の間にも保険料支払債務の不履行が解消されない場合に,初めて保険契約が失効する旨を明確に定めるものであり,(2)上記約款に,払い込むべき保険料等の額が解約返戻金の額を超えないときは,自動的に保険会社が保険契約者に保険料相当額を貸し付けて保険契約を有効に存続させる旨の条項が置かれており,(3)保険会社が,保険契約の締結当時,上記債務の不履行があった場合に契約失効前に保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う実務上の運用を確実にしているときは,消費者契約法10条にいう「民法
第1条第2項〈基本原則〉に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に当たらない。
(反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成24年3月16日 平成22(受)332
- 登載
- 民集 第66巻5号2216頁
- 参照法条
- 消費者契約法10条,民法91条,民法541条,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)第3編第10章 保険,保険法第3章 生命保険,保険法第4章 傷害疾病定額保険
論点78第91条民法
1 自動車保険契約の人身傷害条項に基づき保険金を支払った保険会社による損害金元本に対する遅延損害金の支払請求権の代位取得の有無
2 自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に過失がある場合において上記条項に基づき保険金を支払った保険会社による損害賠償請求権の代位取得の範囲
裁判要旨1 被害者が被る損害の元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めがない自動車保険契約の人身傷害条項に基づき被害者が被った損害に対して保険金を支払った保険会社は,上記保険金に相当する額の保険金請求権者の加害者に対する損害金元本の支払請求権を代位取得するものであって,損害金元本に対する遅延損害金の支払請求権を代位取得するものではない。
2 保険会社は保険金請求権者の権利を害さない範囲内に限り保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する旨の定めがある自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に過失がある場合において,上記条項に基づき被害者が被った損害に対して保険金を支払った保険会社は,上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が民法上認められるべき過失相殺前の損害額を上回る場合に限り,その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する。
(1,2につき補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成24年2月20日 平成21(受)1461
- 登載
- 民集 第66巻2号742頁
- 参照法条
- (1,2につき)商法(平成20年法律第57号による改正前のもの)662条,保険法25条,民法91条,民法709条,(2につき)民法722条2項
論点79第91条民法
貸金業者Yとその完全子会社である貸金業者Aの顧客Xとが,金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結するに当たり,YがXとの関係において,AのXに対する債権を承継するにとどまらず,AのXに対する債務についても全て引き受ける旨を合意したものと解された事例
裁判要旨貸金業者Yとその完全子会社である貸金業者Aの顧客Xとが,金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結し,この際,Xが,Aとの継続的な金銭消費貸借取引における約定利息を前提とする残債務相当額をYから借り入れ,これをAに弁済してAとの取引を終了させた場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,XとYとは,上記基本契約の締結に当たり,Yが,Xとの関係において,Aとの取引に係る債権を承継するにとどまらず,債務についても全て引き受ける旨を合意したと解するのが相当である。
(1) Yは,国内の消費者金融子会社の再編を目的として,Aの貸金業を廃止し,これをYに移行,集約するために,Aとの間で業務提携契約を締結し,同契約において,Aが顧客に対して負担する過払金債務等一切の債務をYが併存的に引き受けることや,Aと顧客との間の債権債務に関する紛争について,Yが,単にその申出窓口になるにとどまらず,その処理についても引き受けることとし,その旨を周知することを,それぞれ定めた。
(2) Yは,上記業務提携契約を前提として,Xに対し,上記基本契約を締結するのはYのグループ会社再編に伴うものであることや,Aとの取引に係る紛争等の窓口が今後Yになることなどが記載された書面を示して,Yとの間で上記基本契約を締結することを勧誘した。
(3) Xは,Yの上記勧誘に応じ,上記書面に署名してYに差し入れた。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成23年9月30日 平成23(受)516
- 登載
- 集民 第237号655頁
- 参照法条
- 民法91条,民法703条,民法第3編第1章第4節(債務引受)
論点80第91条民法
貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合における,借主と上記債権を譲渡した業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転及び上記取引に係る過払金返還債務の承継の有無
裁判要旨貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合において,上記債権を譲渡した業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんにより,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が上記債権を譲り受けた業者に当然に移転する,あるいは,当該業者が上記取引に係る過払金返還債務を譲渡の対象に含まれる貸金債権と一体のものとして当然に承継すると解することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成23年7月8日 平成22(受)1405
- 登載
- 集民 第237号159頁
- 参照法条
- 民法91条,民法703条,民法第3編第1章第4節(債務引受)
論点81第91条民法
貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合における,借主と上記債権を譲渡した業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転及び上記取引に係る過払金返還債務の承継の有無
裁判要旨貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合において,上記債権を譲渡した業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんにより,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が上記債権を譲り受けた業者に当然に移転する,あるいは,当該業者が上記取引に係る過払金返還債務を譲渡の対象に含まれる貸金債権と一体のものとして当然に承継すると解することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成23年7月7日 平成22(受)1784
- 登載
- 集民 第237号139頁
- 参照法条
- 民法91条,民法703条,民法第3編第1章第4節(債務引受)
論点82第91条民法
貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合における,借主と上記債権を譲渡した業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転の有無
裁判要旨貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合において,上記債権を譲渡した業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんにより,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が上記債権を譲り受けた業者に当然に移転すると解することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成23年3月22日 平成22(受)1238
- 登載
- 集民 第236号225頁
- 参照法条
- 民法91条,民法703条,民法第3編第1章第4節(債務引受)
論点83第91条民法
会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行が,同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を銀行取引約定に基づき同会社の債務の弁済に充当することの可否
裁判要旨会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行は,同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を,法定の手続によらず同会社の債務の弁済に充当し得る旨を定める銀行取引約定に基づき,同会社の債務の弁済に充当することができる。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成23年12月15日 平成22(受)16
- 登載
- 民集 第65巻9号3511頁
- 参照法条
- 民事再生法53条1項,民事再生法53条2項,民事再生法85条1項,商法521条,手形法18条,手形法77条1項1号,民法91条
論点84第91条民法
公有地に係る土地信託契約において,受益者に対する費用補償請求権を定めた旧信託法(平成18年法律第109号による改正前のもの)36条2項本文の適用を排除する旨の合意が成立していたとはいえないとされた事例
裁判要旨県と信託銀行との間で,県を委託者兼受益者,信託銀行を受託者として,県がその所有する土地を信託銀行に信託譲渡し,信託銀行が建設資金等を借り入れた上で同土地上にスポーツ・レクリエーション施設を建設し,これを管理運営することを目的とする土地信託契約が締結された場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記信託契約において,受益者に対する費用補償請求権を定めた旧信託法(平成18年法律第109号による改正前のもの。以下同じ。)36条2項本文の適用を排除する旨の合意が成立していたとはいえない。
(1) 上記信託契約締結当時,公有地の信託といえども旧信託法36条2項本文の適用があるのが原則であることが公有地の信託に関わる関係者の共通認識であり,県もその例外ではなかったにもかかわらず,上記信託契約の締結に至るまでの間に,県と信託銀行との間において,旧信託法36条2項本文の適用を排除するための交渉がもたれたことは全くうかがわれない。
(2) 上記信託契約に係る契約書には,「信託事務に必要な費用は,信託財産から支弁する。」,「信託終了に要する費用は,信託財産から支弁する。」との条項があるが,上記各条項には旧信託法36条2項本文の適用を排除する趣旨の文言はなく,上記契約書には,ほかに同項本文の適用を排除する旨を文言上明確に定めた条項はない。
(3) 上記信託契約締結後,信託事業の収支が悪化し,県は,信託事業に資金不足が生じた場合の処理方法について信託銀行と協議を重ねるようになったが,その協議の過程において,県が信託銀行に対し自己の費用補償義務を否定するような態度を示したことはうかがわれず,県がこれを明確に否定したのは,上記協議の開始から約2年9か月経過した後のことであった。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成23年11月17日 平成22(受)1584
- 登載
- 集民 第238号115頁
- 参照法条
- 旧信託法(平成18年法律第109号による改正前のもの)36条2項本文,民法91条
論点85第91条民法
医療法人の定款に当該法人の解散時にはその残余財産を払込出資額に応じて分配する旨の規定がある場合における,同定款中の退社した社員はその出資額に応じて返還を請求することができる旨の規定の解釈
裁判要旨医療法人の定款に当該法人の解散時にはその残余財産を払込出資額に応じて分配する旨の規定がある場合において,同定款中の退社した社員はその出資額に応じて返還を請求することができる旨の規定は,出資した社員は,退社時に,当該法人に対し,同時点における当該法人の財産の評価額に,同時点における総出資額中の当該社員の出資額が占める割合を乗じて算定される額の返還を請求することができることを規定したものと解すべきである。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成22年4月8日 平成20(受)1809
- 登載
- 民集 第64巻3号609頁
- 参照法条
- 民法91条,医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの)44条,医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの)56条,医療法44条,医療法54条,医療法56条
論点86第91条民法
コンビニエンス・ストアのフランチャイズ・チェーンの運営者が,加盟店に代わって支払った商品仕入代金の具体的な支払内容について,加盟店に報告すべき義務を負うとされた事例
裁判要旨コンビニエンス・ストアのフランチャイズ・チェーンを運営するYとその加盟店の経営者であるXとの間の加盟店基本契約に,XがYの推薦する仕入先からYの提供する発注システムにより商品を仕入れたときはYがXに代わってその委託に基づき商品の仕入代金を支払う旨の定めがあり,これによって仕入代金が支払われたときの支払内容に関するYからXへの報告については何ら定めがない場合において,(1)商品の仕入れは加盟店経営の根幹を成すものであり,Xが自らの仕入代金の具体的な支払内容を知ろうとするのは当然であること,(2)Yには商品の仕入れに関する情報が集約されており,Yがその情報の範囲で上記報告をすることに大きな困難はないこと,(3)上記委託には,Yは費用の前払を受けることなく仕入代金を支払わなければならないなど民法の規定する準委任と比較してYにとって不利益な点もあるが,Yにはこれによって加盟店経営に関する対価の増加を見込めるという利益があることなど判示の事情の下では,上記契約について民法の規定する受任者の報告義務が認められない理由はなく,Yは上記契約に基づきXの求めに応じて上記報告をする義務を負う。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成20年7月4日 平成19(受)1401
- 登載
- 集民 第228号443頁
- 参照法条
- 民法91条,民法645条,民法656条
論点87第91条民法
いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約中の,ユーザーについて民事再生手続開始の申立てがあったことを契約の解除事由とする旨の特約の効力
裁判要旨いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約中の,ユーザーについて民事再生手続開始の申立てがあったことを契約の解除事由とする旨の特約は,無効である。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成20年12月16日 平成19(受)1030
- 登載
- 民集 第62巻10号2561頁
- 参照法条
- 民法91条,民法540条1項,民法601条,民事再生法1条
論点88第91条民法
いわゆる自動継続特約付きの定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効の起算点
裁判要旨いわゆる自動継続特約付きの定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効は,自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時から進行する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成19年6月7日 平成17(受)1519
- 登載
- 集民 第224号479頁
- 参照法条
- 民法91条,民法166条1項,民法666条
論点89第91条民法
いわゆる自動継続特約付きの定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効の起算点
裁判要旨いわゆる自動継続特約付きの定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効は,それ以降自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時から進行する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成19年4月24日 平成17(受)844
- 登載
- 民集 第61巻3号1073頁
- 参照法条
- 民法91条,民法166条1項,民法666条
論点90第91条民法
1 「衝突,接触…その他偶然な事故」及び「被保険自動車の盗難」を保険事故として規定している一般自動車総合保険約款に基づき上記盗難に当たる保険事故が発生したとして車両保険金の支払を請求する場合における事故の偶発性についての主張立証責任
2 被保険自動車の盗難を理由に車両保険金を請求する者が主張立証責任を負う盗難の外形的事実について単に「外形的・客観的にみて第三者による持ち去りとみて矛盾のない状況」を立証するだけで盗難の事実が推定されるとした原審の判断には違法があるとされた事例
裁判要旨1 「衝突,接触…その他偶然な事故」及び「被保険自動車の盗難」を保険事故として規定している一般自動車総合保険約款に基づき,上記盗難に当たる保険事故が発生したとして保険者に対して車両保険金の支払を請求する者は,「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という盗難の外形的な事実を主張,立証すべき責任を負うが,被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思に基づかないものであることを主張,立証すべき責任を負わない。
2 「被保険自動車の盗難」という保険事故が発生したとして一般自動車総合保険約款に基づき車両保険金の支払を請求する者が,「外形的・客観的にみて第三者による持ち去りとみて矛盾のない状況」を立証するだけでは「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という盗難の外形的事実を合理的な疑いを超える程度にまで立証したことにはならないにもかかわらず,上記の立証をするだけで盗難の事実が推定されるとした原審の判断には,主張立証責任の分配に実質的に反する違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成19年4月23日 平成17(受)1841
- 登載
- 集民 第224号171頁
- 参照法条
- (1,2につき) 商法629条,商法641条,民法91条,民訴法第2編第4章第1節 総則 (2につき) 民訴法247条
論点91第91条民法
自家用自動車総合保険契約の記名被保険者の子が胎児であった時に発生した交通事故により出生後に傷害を生じその結果後遺障害が残存した場合における同契約の無保険車傷害条項に基づく保険金請求の可否
裁判要旨自家用自動車総合保険契約の記名被保険者の子が,胎児であった時に発生した交通事故により出生後に傷害を生じ,その結果,後遺障害が残存した場合には,当該子又はその父母は,当該傷害及び後遺障害によってそれぞれが被った損害について,同契約の無保険車傷害条項が被保険者として定める「記名被保険者の同居の親族」に生じた傷害及び後遺障害による損害に準ずるものとして,同条項に基づく保険金の請求をすることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成18年3月28日 平成17(受)1751
- 登載
- 民集 第60巻3号875頁
- 参照法条
- 商法第3編第10章 保険,民法91条,民法721条
論点92第91条民法
建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において賃料を減額しない旨の特約が存することにより賃料減額請求権の行使を妨げられることはないとされた事例
裁判要旨建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において,3年ごとに賃料の改定を行うものとし,改定後の賃料は,従前の賃料に消費者物価指数の変動率を乗じ,公租公課の増減額を加算又は控除した額とするが,消費者物価指数が下降してもそれに応じて賃料の減額をすることはない旨の特約が存する場合であっても,上記契約の当事者は,そのことにより借地借家法11条1項に基づく賃料減額請求権の行使を妨げられるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成16年6月29日 平成15(受)751
- 登載
- 集民 第214号595頁
- 参照法条
- 借地借家法11条1項,民法91条
論点93第91条民法
1 破産宣告を受けた有限会社の取締役と火災保険約款の免責条項所定の「取締役」
2 有限会社の取締役が会社の破産宣告後にした放火による建物の焼失が火災保険約款の免責条項所定の「取締役」の故意による事故招致に当たるとされた事例
裁判要旨1 有限会社の取締役は,会社が破産宣告を受けた後であっても,火災保険の保険契約者又は被保険者の取締役の故意等によって生じた損害に対しては保険金を支払わない旨の約款中の免責条項にいう「取締役」に当たる。
2 有限会社を保険契約者兼被保険者として締結された火災保険契約に適用される約款中に,保険契約者又は被保険者の取締役の故意等によって生じた損害に対しては保険金を支払わない旨の免責条項がある場合において,当該有限会社の取締役が会社の破産宣告後に保険の目的である建物に放火し,当該建物が焼失したという事実関係の下では,上記放火による建物の焼失は,上記免責条項にいう「取締役」の故意による事故招致に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成16年6月10日 平成12(受)56
- 登載
- 民集 第58巻5号1178頁
- 参照法条
- 有限会社法32条,商法254条3項,商法641条,商法665条,民法91条,民法653条,破産法7条
論点94第91条民法
地代等自動改定特約と借地借家法11条1項
裁判要旨地代等自動改定特約において地代等の改定基準を定めるに当たって基礎とされていた事情が失われることにより,同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には,同特約の適用を争う当事者は,同特約に拘束されず,同項に基づく地代等増減請求権の行使を妨げられない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成15年6月12日 平成14(受)689
- 登載
- 民集 第57巻6号595頁
- 参照法条
- 借地借家法11条1項,民法91条
論点95第91条民法
1 現金自動入出機による預金の払戻しと民法478条〈受領権者としての外観を有する者に対する弁済〉の適用の有無
2 無権限者が預金通帳又はキャッシュカードを使用し暗証番号を入力して現金自動入出機から預金の払戻しを受けた場合に銀行が無過失であるというための要件
3 無権限者が預金通帳を使用し暗証番号を入力して現金自動入出機から預金の払戻しを受けたことについて銀行に過失があるとされた事例
裁判要旨1 現金自動入出機による預金の払戻しについても民法
478条〈受領権者としての外観を有する者に対する弁済〉が適用される。
2 無権限者が預金通帳又はキャッシュカードを使用し暗証番号を入力して現金自動入出機から預金の払戻しを受けた場合に銀行が無過失であるというためには,銀行において,上記方法により預金の払戻しが受けられる旨を預金者に明示すること等を含め,現金自動入出機を利用した預金の払戻しシステムの設置管理の全体について,可能な限度で無権限者による払戻しを排除し得るよう注意義務を尽くしていたことを要する。
3 預金通帳を使用し暗証番号を入力すれば現金自動入出機から預金の払戻しを受けられるシステムになっているのに,銀行がそのことを預金規定等に規定して預金者に明示することを怠っていたなど判示の事実関係の下では,銀行は,真正な預金通帳が使用され,入力された暗証番号が届出暗証番号と一致することが機械的に確認された場合であっても,無権限者が現金自動入出機から預金の払戻しを受けたことについて過失がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成15年4月8日 平成14(受)415
- 登載
- 民集 第57巻4号337頁
- 参照法条
- 民法91条,民法478条
論点96第91条民法
宿泊客がフロントに預けなかった物品の滅失毀損等につきホテル側に故意又は重大な過失がある場合とホテルの損害賠償義務の範囲を制限する宿泊約款の定めの適用
裁判要旨ホテルの宿泊客がフロントに預けなかった物品等で事前に種類及び価額の明告のなかったものが滅失,毀損するなどしたときにホテルの損害賠償義務の範囲を15万円の限度に制限する宿泊約款の定めは,ホテル側に故意又は重大な過失がある場合には適用されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成15年2月28日 平成13(受)1061
- 登載
- 集民 第209号143頁
- 参照法条
- 民法91条,商法594条,商法595条
論点97第91条民法
いわゆる一括支払システムに関する契約においてされた国税徴収法24条2項による告知書の発出の時点で譲渡担保権を実行することを内容とする合意の効力
裁判要旨いわゆる一括支払システムに関する契約において譲渡担保権者と納税者との間でされた国税徴収法
24条2項〈仮住所〉による告知書の発出の時点で譲渡担保権を実行することを内容とする合意は,同条5項の趣旨に反して無効である。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成15年12月19日 平成10(行ツ)149
- 登載
- 民集 第57巻11号2292頁
- 参照法条
- 国税徴収法24条,民法91条
論点98第91条民法
1 生命保険契約において被保険者の死亡の日の翌日を死亡保険金請求権の消滅時効の起算点とする旨を定めている保険約款の解釈
2 生命保険契約に係る保険約款が被保険者の死亡の日の翌日を死亡保険金請求権の消滅時効の起算点とする旨を定めている場合であっても上記消滅時効は被保険者の遺体が発見されるまでの間は進行しないとされた事例
裁判要旨1 生命保険契約に係る保険約款中の被保険者の死亡の日の翌日を死亡保険金請求権の消滅時効の起算点とする旨の定めは,当時の客観的状況等に照らし,上記死亡の時からの保険金請求権の行使が現実に期待することができないような特段の事情が存する場合には,その権利行使が現実に期待することができるようになった時以降において上記消滅時効が進行する趣旨と解すべきである。
2 生命保険契約に係る保険約款が被保険者の死亡の日の翌日を死亡保険金請求権の消滅時効の起算点とする旨を定めている場合であっても,被保険者が自動車を運転して外出したまま帰宅せず,その行方,消息については何の手掛かりもなく,その生死も不明であったが,行方不明になってから3年以上経過してから,峠の展望台の下方約120mの雑木林の中で,自動車と共に白骨化した遺体となって発見されたなど判示の事実関係の下では,上記消滅時効は,被保険者の遺体が発見されるまでの間は進行しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成15年12月11日 平成12(受)485
- 登載
- 民集 第57巻11号2196頁
- 参照法条
- 商法663条,商法683条1項, 民法91条,民法166条1項
論点99第91条民法
いわゆる自動継続特約付きの定期預金債権に対する仮差押えの執行と同特約に基づく自動継続の成否
裁判要旨いわゆる自動継続特約付きの定期預金債権に対する仮差押えの執行がされても,同特約に基づく自動継続の効果は妨げられない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成13年3月16日 平成11(受)320
- 登載
- 集民 第201号441頁
- 参照法条
- 民法91条,民法666条,民事保全法50条1項
論点100第91条民法
一 手形につき商事留置権を有する者が債務者に対する破産宣告の後に破産管財人からの手形の返還請求を拒むことの可否
二 手形につき商事留置権を有する銀行が債務者に対する破産宣告の後に右手形を手形交換制度によって取り立てて被担保債権の弁済に充当する行為が破産管財人に対する不法行為とならないとされた事例
裁判要旨一 手形につき商事留置権を有する者は、債務者が破産宣告を受けた後においても、右手形を留置する権能を有し、破産管財人からの手形の返還請求を拒むことができる。
二 手形につき商事留置権を有する甲銀行が債務者乙に対する破産宣告の後に右手形を手形交換制度によって取り立てて被担保債権の弁済に充当する行為は、乙が債務を履行しないときは甲が占有している乙の手形等を取り立て又は処分して債権の弁済に充当できる旨の銀行取引約定書
四条四項〈成年〉による合意が甲乙間に存在し、被担保債権の履行期が既に到来し、債権額も手形金額を超えており、右手形について甲に優先する他の特別の先取特権者が存在することをうかがわせる事情もないなど判示の事実関係の下においては、乙の破産管財人に対する不法行為となるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成10年7月14日 平成7(オ)264
- 登載
- 民集 第52巻5号1261頁
- 参照法条
- 破産法93条,破産法95条,破産法204条,商法521条,民事執行法136条,民事執行法192条,民法91条,民法709条
論点101第91条民法
宅配便の荷受人が運送会社に対して運送中の荷物の紛失を理由として運送契約上の責任限度額を超える損害の賠償を請求することが信義則に反し許されないとされた事例
裁判要旨荷受人甲が、宅配便を利用して宝石類を送付することができないことを知りながら、荷送人乙が運送会社丙の宅配便を利用してダイヤモンド等を送付することを容認していたなど判示の事実関係の下においては、運送中の右ダイヤモンド等の紛失を理由として甲が丙に対し乙丙間の運送契約上の責任限度額三〇万円を超える損害の賠償を請求することは、信義則に反し、許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成10年4月30日 平成6(オ)799
- 登載
- 集民 第188号385頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法91条,民法709条,商法577条,商法578条,商法580条,商法583条
論点102第91条民法
裁判所が自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に対する損害賠償の額を定めるに当たり民法722条2項〈損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺〉の過失相殺の規定を類推適用して被害者に対する加害行為前から存在していた被害者の疾患をしんしゃくしその額を減額する場合における上記条項に基づき人身傷害保険金を支払った保険会社による損害賠償請求権の代位取得の範囲
裁判要旨被保険者が自動車の運行に起因する事故等に該当する急激かつ偶然な外来の事故により傷害を被った時に既に存在していた身体の障害又は疾病の影響により、上記傷害が重大となった場合には、保険会社は、その影響がなかったときに相当する金額を支払う旨の定めがある自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に対する加害行為と加害行為前から存在していた被害者の疾患とが共に原因となって損害が発生した事案について、裁判所が、損害賠償の額を定めるに当たり、民法
722条2項〈損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺〉の過失相殺の規定を類推適用して、上記疾患をしんしゃくし、その額を減額する場合において、上記疾患が上記定めにいう身体の障害又は疾病に当たるときは、被害者に対して人身傷害保険金を支払った保険会社は、支払った人身傷害保険金の額と上記の減額をした後の損害額のうちいずれか少ない額を限度として被害者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 令和7年7月4日 令和5(受)1838
- 登載
- 民集 第79巻5号2155頁
- 参照法条
- 保険法25条、民法91条、民法709条、民法722条2項
論点103第91条民法
1 自動車保険契約の人身傷害条項が、保険金請求権者について、同条項の適用対象となる事故によって損害を被った「被保険者。ただし、被保険者が死亡した場合はその法定相続人とする。」と定めている場合において、上記「被保険者」が上記事故により死亡したときに生ずる人身傷害保険金の請求権の帰属
2 自動車保険契約の人身傷害条項が、保険金請求権者について、同条項の適用対象となる事故によって損害を被った「被保険者」及び「被保険者の父母、配偶者又は子」と定めている場合において、上記事故による上記「被保険者」の死亡によって精神的損害を受けた上記「被保険者の父母、配偶者又は子」が存在することが、上記「被保険者」が被った損害を填補するための人身傷害保険金の額に及ぼす影響
裁判要旨1 自動車保険契約の人身傷害条項が、保険金請求権者について、同条項の適用対象となる事故によって損害を被った「被保険者。ただし、被保険者が死亡した場合はその法定相続人とする。」と定めている場合において、この定めによって保険金請求権者が定まる人身傷害保険金のうち、上記「被保険者」が上記事故により死亡したときに生ずる保険金の請求権は、同人の相続財産に属する。
2 自動車保険契約の人身傷害条項が、⑴保険金請求権者について、同条項の適用対象となる事故によって損害を被った「被保険者」及び「被保険者の父母、配偶者又は子」と定め、⑵人身傷害保険金を支払うべき損害のうち、上記「被保険者」の死亡により「本人のほか、父母、配偶者、子等の遺族が受けた」精神的損害の額として、上記「被保険者」の属性に応じた区分ごとに単一の金額を定めているが、⑶上記「被保険者」の保険金の額と上記「被保険者の父母、配偶者又は子」の保険金の額とを調整する旨の定め等を置いていない場合において、上記事故により死亡した上記「被保険者」が被った損害を填補するための人身傷害保険金の額は、人身傷害保険金を支払うべき同人の精神的損害の額が上記単一の金額の全額であることを前提として算定されるべきであって、同人の死亡により精神的損害を受けた同人の父母、配偶者又は子が存在することは、上記人身傷害保険金の額に影響を及ぼすものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和7年10月30日 令和6(受)120
- 登載
- 民集 第79巻7号2794頁
- 参照法条
- (1、2につき )保険法第2章 損害保険、民法91条
論点104第91条民法
被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が、上記被害者の遺族に対し、上記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について人身傷害保険金額に相当する額の金員を支払った場合において、上記遺族の加害者に対する損害賠償請求権の額から上記金員を全額控除することはできないとされた事例
裁判要旨被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が、上記被害者の遺族に対し、上記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について、人身傷害保険金として給付義務を負うとされている人身傷害保険金額に相当する額の金員を支払った場合、上記金員について作成された仮協定書に自動車損害賠償責任保険からの損害賠償額の支払の立替払であることを確認する趣旨を含む記載があることがうかがわれないなど判示の事情の下では、その後、上記保険会社が自動車損害賠償責任保険から損害賠償額の支払を受けて上記遺族に対して追加で金員を支払ったことにより人身傷害保険金額を超える額の金員を支払うに至ったとしても、上記保険会社が上記遺族に対して当初支払った人身傷害保険金額に相当する額の金員については、上記遺族の加害者に対する損害賠償請求権の額から、上記保険会社が上記金員の支払により保険代位することができる範囲を超える額を控除することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和5年10月16日 令和4(受)648
- 登載
- 集民 第270号173頁
- 参照法条
- 民法91条、民法第3編第2章契約、民法709条、自動車損害賠償保障法16条1項
論点105第91条民法
被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が,被害者との間でいわゆる人傷一括払合意をし,上記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について被害者に対して金員を支払った後に自動車損害賠償責任保険から損害賠償額の支払を受けた場合において,被害者の加害者に対する損害賠償請求権の額から上記損害賠償額の支払金相当額を全額控除することはできないとされた事例
裁判要旨被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が,被害者との間で,上記条項に基づく保険金について自動車損害賠償責任保険による損害賠償額の支払分を含めて一括して支払う旨の合意(いわゆる人傷一括払合意)をし,上記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について被害者に対して金員を支払った後に自動車損害賠償責任保険から損害賠償額の支払を受けた場合において,保険会社が上記保険金として保険給付をすべき義務を負うとされている金額と同額を支払ったにすぎないなど判示の事実関係の下では,被害者の加害者に対する損害賠償請求権の額から,保険会社が上記金員の支払により保険代位することができる範囲を超えて上記損害賠償額の支払金相当額を控除することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和4年3月24日 令和2(受)1198
- 登載
- 民集 第76巻3号350頁
- 参照法条
- 民法91条,民法第3編第2章 契約,民法709条,自動車損害賠償保障法16条1項
論点106第91条民法
1 賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料等の不払があるときに連帯保証人が無催告にて賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項の消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項該当性
2 賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料等の不払等の事情が存するときに連帯保証人が賃貸住宅の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定める条項の消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項該当性
裁判要旨1 賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料債務等の連帯保証人は、賃借人が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したときは、無催告にて賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項は、消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項に当たる。
2 賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料債務等の連帯保証人は、賃借人が賃料等の支払を2か月以上怠り、連帯保証人が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡がとれない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から当該賃貸住宅を相当期間利用していないものと認められ、かつ当該賃貸住宅を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するときは、賃借人が明示的に異議を述べない限り、これをもって当該賃貸住宅の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定める条項は、消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和4年12月12日 令和3(受)987
- 登載
- 民集 第76巻7号1696頁
- 参照法条
- (1、2につき)消費者契約法10条、消費者契約法12条3項、民法91条、民法第3編第2章第7節 賃貸借 (1につき)民法541条、民法542条1項
論点107第92条民法
倉荷証券の裏書人欄に裏書人である会社の記名及び会社印の押捺はあるがその代表機関の署名ないし記名捺印がない裏書を適式として扱う商慣習法又は商慣習の存否
裁判要旨倉荷証券の裏書人欄に裏書人である会社の記名がされ、かつ、倉荷証券を発行した倉庫営業者にあらかじめ届出がされた右裏書人の会社印が押捺されている場合には、会社の代表機関が会社のためにすることを示して署名ないし記名捺印をしなくても、これを適式の裏書として扱う旨の商慣習法又は商慣習の存在は認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和57年7月8日 昭和53(オ)1284
- 登載
- 集民 第136号429頁
- 参照法条
- 民法92条,手形法13条,商法1条,商法519条,商法603条
論点108第92条民法
宅地賃貸借契約の法定更新に際し賃借人が賃貸人に対し更新料を支払う旨の商慣習又は事実たる慣習の存否
裁判要旨宅地賃貸借契約の法定更新に際し、賃貸人の請求があれば当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習又は事実たる慣習は存在しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和51年10月1日 昭和51(オ)657
- 登載
- 集民 第119号9頁
- 参照法条
- 民法92条,借地法4条,借地法6条
論点109第92条民法
手形買戻請求権に関する事実たる慣習の存否について審理不尽の違法があるとされた事例
裁判要旨銀行と手形割引依頼人との間の取引約定書に、割引手形の振出人の信用悪化の場合には右割引依頼人において割引手形を買い戻す規定をおきながら、割引依頼人の関係においては、単に手形割引の都度右手形と同額の貸金債務を負担したものとする旨、および同人の信用悪化の場合に、同人の銀行に対する一切の債務について期限の利益を失う旨の規定をおくに止まり、手形の買戻しについては何の規定もおいていないとしても、右約款の趣旨、銀行の行なう手形割引の性格、および昭和三七年公表された銀行取引約定書ひな型の成立した経緯等からすれば、銀行が、割引依頼人の信用悪化の場合にも、同人に対して手形買戻請求権を有する旨の事実たる慣習が存在していなかつたものとは断じ難く、その点について審理をなさず、右の場合における手形買戻請求権を否定した原判には、審理不尽の違法があるものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和46年6月29日 昭和43(オ)934
- 登載
- 集民 第103号293頁
- 参照法条
- 手形法77条,手形法45条,民法92条
論点110第92条民法
自動車の割賦販売契約が合意解除された場合に買主に損害の賠償を命じた判断に審理不尽理由不備の違法があるとされた事例
裁判要旨昭和三六年八月二二日締結された自動車の割賦販売契約が、割賦代金の支払の遅滞があつて合意解除された場合に、何らの証拠も特段の事情も示すことなく、一般に、右契約には、売主が自動車の返還を受けて他に売却処分しその売却代金を残存の代金債務の弁済に充て売買契約関係を清算決済する旨の特約が付されるのが通常であり、本件の契約にも右と同趣旨の特約が付されていたと認めるのが相当であると判示したのみで、右特約を前提として、買主に判示の損害の賠償を命じたのは、審理不尽、理由不備の違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和45年3月3日 昭和44(オ)521
- 登載
- 集民 第98号341頁
- 参照法条
- 民法92条,民訴法185条
論点111第92条民法
酩酊運転の場合保険会社は旧自動車保険普通保険約款により損害の填補を免責されるか
裁判要旨保険契約者の被用者である運転手が、酒に酔つて正常な運転ができないのに自動車を運転して事故を起こした場合には、それによつて生じた損害につき、保険会社は、旧自動車保険普通保険約款
第三条一号〈私権の享有は、出生に始まる。〉但書の規定にかかわらず、同約款
四条四号〈成年〉により填補の責を免れると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和44年4月25日 昭和41(オ)16
- 登載
- 民集 第23巻4号882頁
- 参照法条
- 商法629条,商法641条,民法92条
論点112第92条民法
宅地建物取引業者の受ける報酬額についの慣習の認定に審理不尽・理由不備の違法があるとされた事例
裁判要旨宅地建物取引業者が売買の媒介を行なう場合に受ける報酬について、愛知県宅地建物取引業者の報酬額に関する規則(昭和二七年愛知県規則第五九号)の定める最高額により授受される慣習が存在するとするためには、これを相当として首肯するに足りる合理的根拠を必要とし、原判決挙示の証拠のみによつてたやすくこれを認定したのは、審理不尽・理由不備の違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年8月20日 昭和40(オ)228
- 登載
- 民集 第22巻8号1677頁
- 参照法条
- 民法92条,民訴法185条,宅地建物取引業法(昭和39年法律第286号による改正前のもの)17条1項,愛知県宅地建物取引業者の報酬額に関する規則(昭和27年愛知県規則第59号)2条
論点113第92条民法
一、労働者に不利益な労働条件を一方的に課する就業規則の作成または変更の許否
二、五五歳停年制をあらたに定めた就業規則の改正が有効とされた事例
三、就業規則の法的性質
裁判要旨一、使用者が、あらたな就業規則の作成または変更によつて、労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないが、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されないと解すべきである。
二、従来停年制のなかつた主任以上の職にある被用者に対して、使用者会社がその就業規則であらたに五五歳の停年制を定めた場合において、同会社の般職種の被用者の停年が五〇歳と定められており、また、右改正にかかる規則条項において、被解雇者に対する再雇用の特則が設けられ、同条項を一律に適用することによつて生ずる苛酷な結果を緩和する途が講ぜられている等判示の事情があるときは、右改正条項は、同条項の改正後ただちにその適用によつて解雇されることに上なる被用者に対しても、その同意の有無にかかわらず、効力を有するものと解すべきである。
三、就業規則は、当該事業場内での社会的規範であるだけでなく、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、法的規範としての性質を認められるに至つているものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和43年12月25日 昭和40(オ)145
- 登載
- 民集 第22巻13号3459頁
- 参照法条
- 労働基準法89条,労働基準法93条,民法92条
論点114第92条民法
三重県、和歌山県、奈良県一帯において材木取引業者間の債務決済につき行なわれている「売り権」と呼ばれる慣行による契約の性質。
裁判要旨三重県、和歌山県、奈良県一帯において材木取引業者間の債務決済につき行なわれている通称「売り権」と呼ばれる慣行に従う契約は、いわゆる流質型の、強い効力を有する譲渡担保に該当せず、処分清算型の、弱い効力を有する譲渡担保と解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年4月30日 昭和38(オ)1074
- 登載
- 集民 第78号805頁
- 参照法条
- 民法第2編第10章,民法92条
論点115第92条民法
山林売買の仲介人を代理人と認める慣習の有無
裁判要旨およそ山林売買取引における仲介人は、それが売主の依頼に基づくものであるかぎり、売主の代理人と認められる慣習があると主張するが、右慣習のあることを認めるべき資料は存しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年10月8日 昭和39(オ)1068
- 登載
- 集民 第80号677頁
- 参照法条
- 民法92条
論点116第92条民法
真宗大谷派の末寺が解散した場合の財産の帰属について事実たる慣習が認められた事例。
裁判要旨真宗大谷派の末寺であつて寺院規則を有しない寺が解散する場合には、総代の同意を得て、住職の承継者と目すべきものに残余財産を帰属せしめるという事実たる慣習が存在する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年9月18日 昭和37(オ)225
- 登載
- 集民 第75号265頁
- 参照法条
- 民法92条,宗教法人令14条,宗教法人法50条
論点117第92条民法
共有の性質を有する入会権の処分につき入会集団の構成員全員の同意を要件としない慣習の効力
裁判要旨共有の性質を有する入会権に関する各地方の慣習の効力は,入会権の処分についても及び,入会集団の構成員全員の同意を要件としないで同処分を認める慣習であっても,公序良俗に反するなどその効力を否定すべき特段の事情が認められない限り,有効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成20年4月14日 平成18(受)336
- 登載
- 民集 第62巻5号909頁
- 参照法条
- 民法92条,民法251条,民法263条
論点118第92条民法
一 貸金の元利金の分割払による返済期日が「毎月X日」と定められた場合にX日が日曜日その他の一般の休日に当たるときの返済期日の解釈
二 貸金の元利金の分割払による返済期日が「毎月X日」と定められた場合に貸金業の規制等に関する法律一七条〈補助人の同意を要する旨の審判等〉に規定する書面に記載すべき「各回の返済期日」
裁判要旨一 毎月一回ずつの分割払によって元利金を返済する約定の消費貸借契約において、返済期日を単に「毎月X日」と定めただけで、その日が日曜日その他の一般の休日に当たる場合の取扱いが明定されなかった場合には、特段の事情がない限り、契約当事者間にX日が右休日であるときはその翌営業日を返済期日とする旨の黙示の合意があったことが推認される。
二 毎月一回ずつの分割払によって元利金を返済する約定の消費貸借契約において、返済期日を単に「毎月X日」と定めただけで、その日が日曜日その他の一般の休日に当たる場合の取扱いが明定されなかった場合において、契約当事者間にX日が右休日であるときはその翌営業日を返済期日とする旨の黙示の合意があったと認められるときは、貸金業の規制等に関する法律
一七条〈補助人の同意を要する旨の審判等〉に規定する書面によって明らかにすべき「各回の返済期日」としては、明示の約定によって定められた「毎月X日」という日が記載されていれば足りる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成11年3月11日 平成10(オ)1465
- 登載
- 民集 第53巻3号451頁
- 参照法条
- 民法92条,民法142条,貸金業の規制等に関する法律43条,貸金業の規制等に関する法律(平成九年法律第一〇二号による改正前のもの)17条,利息制限法1条1項,利息制限法4条1項,貸金業の規制等に関する法律施行規則(昭和五八年大蔵省令第四〇号)13条1項1号チ