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債権/不当利得

不当利得の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

法律上の原因なく利益を得た者の返還義務(703条・704条)と、弁済をした側から返還請求ができなくなる場面(705条〜708条)を整理しています。受益者が悪意かどうかで返還範囲が変わる一方、非債弁済・期限前弁済・他人の債務の弁済・不法原因給付では、給付した側の返還請求そのものが制限されます。

不当利得
条文場面返還請求の可否
703条法律上の原因のない利得現存利益を返還
704条受益者が悪意だった利息付きで返還、損害賠償も
705条債務なしと知り弁済返還請求不可
706条期限前に弁済返還請求不可
707条他人の債務と誤信弁済返還請求不可
708条不法原因のための給付返還請求不可
  • 704条:悪意の受益者は利息を付けて返還し、なお損害があればその賠償責任も負う
  • 706条:期限前の弁済でも、錯誤による給付なら債権者は得た利益を返還する義務を負う
  • 707条:返還請求不可となるのは、債権者が善意で証書を滅失・損傷、担保を放棄、または時効で債権を失った場合に限る
  • 707条:この場合でも、弁済をした者から債務者への求償権の行使は妨げられない
  • 708条:不法な原因が受益者についてのみあるときは、給付者は返還を請求できる
1

不当利得

不当利得について、条文は何を定めているか。

第703条不当利得の返還義務法律上の原因のない利得は現存利益を返す1項判例 40件
  • 他人の財産や労務で得た利益に法律上の理由がなければ返還義務がある
  • 返還する範囲は「利益の存する限度」、つまり手元に残っている分だけ
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第704条悪意の受益者の返還義務等悪意の受益者は利息も損害も負う1項判例 14件
  • 法律上の原因がないと知っていた受益者は利息を付けて返還する
  • なお損害が残るときはその賠償責任も負う
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第705条債務の不存在を知ってした弁済債務がないと知って払えば返還請求不可1項判例 7件
  • 弁済の時点で債務が存在しないと知っていた場合、その給付の返還は請求できない
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第706条期限前の弁済期限前弁済は原則返還請求できない1項判例なし
  • 弁済期にない債務を給付しても、返還請求はできない
  • ただし錯誤で給付した場合は、債権者は得た利益を返還する
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第707条他人の債務の弁済他人の債務と誤信した弁済の扱い2項判例 2件
  • 錯誤で他人の債務を弁済し、債権者が善意で証書滅失・担保放棄・時効消滅させたら返還請求不可
  • この場合でも、弁済をした者は債務者への求償権を行使できる
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第708条不法原因給付不法な目的の給付は返還請求できない1項判例 21件
  • 不法な原因のためにした給付は、その返還を請求できない
  • 不法な原因が相手方(受益者)だけにあるときは請求できる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第703条民法

第三者所有の不動産に設定された抵当権が不存在であるにもかかわらず右抵当権の実行により債権者に対してされた弁済金の交付と不当利得の成否

裁判要旨債権者が第三者所有の不動産の上に設定を受けた抵当権が不存在である.にもかかわらず、右抵当権の実行により第三者が不動産の所有権を喪失したときは、第三者は、売却代金から弁済金の交付を受けた右債権者に対し不当利得返還請求権を有する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和63年7月1日 昭和62(オ)1057
登載
民集 第42巻6号477頁
参照法条
民法703条,民事執行法84条,民事執行法184条,民事執行法188条
論点2第703条民法

一 賃金の仮払を命ずる仮処分の執行後に仮処分命令が控訴審で取り消された場合と仮処分債務者の仮払金返還請求権
二 賃金の仮払を命ずる仮処分の執行に係る仮払金の返還請求訴訟と仮処分債権者が本案訴訟で訴求中の賃金債権を自働債権とする相殺の抗弁の許否

裁判要旨一 賃金の仮払を命ずる仮処分の執行後に仮処分命令が控訴審で取り消された場合には、本案訴訟が未確定であり、又は従業員としての地位保全の仮処分が同時に発せられていたときであつても、仮処分債務者は、特段の事情がない限り、仮処分債権者に対し仮払金の返還請求権を取得し、その返還義務の範囲は不当利得の規定に準じてこれを定めるべきである。
二 賃金の仮払を命ずる仮処分の執行に係る仮払金の返還請求訴訟において、仮処分債権者が本案訴訟で訴求中の賃金債権を自働債権とする相殺の抗弁を提出することは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和63年3月15日 昭和58(オ)1406
登載
民集 第42巻3号170頁
参照法条
民法505条,民法703条,民法704条,民訴法198条2項,民訴法199条2項,民訴法231条,民訴法756条ノ2,民訴法760条
論点3第703条民法

競売手続において抹消された所有権に関する仮登記の権利者かち仮登記の後に登記を経由した抵当権者に対する代価の不当利得返還請求の可否

裁判要旨先に登記を経由した抵当権者に対抗することができないために競売手続において抹消された所有権に関する仮登記の権利者は、仮登記の後に登記を経由した抵当権者に対して、不当利得を理由として、その者が交付を受けた代価の返還を請求することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和63年12月1日 昭和61(オ)532
登載
民集 第42巻10号719頁
参照法条
民法703条,競売法33条,民事執行法84条,民事執行法188条,不動産登記法105条1項,不動産登記法146条1項,仮登記担保契約に関する法律15条2項
論点4第703条民法

幼児引渡義務と養育費等の不当利得返還義務との間の同時履行関係の有無

裁判要旨幼児を養育していた者から親権者への幼児引渡義務と親権者から右養育者への養育費等の不当利得返還義務とは、同時履行の関係に立たない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年9月28日 昭和59(オ)462
登載
集民 第142号381頁
参照法条
民法533条,民法703条,民法820条
論点5第703条民法

商行為である金銭消費貸借に関し利息制限法所定の制限を超えて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権の消滅時効期間

裁判要旨商行為である金銭消費貸借に関し利息制限法所定の制限を超えて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権の消滅時効期間は、一〇年と解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年1月24日 昭和53(オ)1129
登載
民集 第34巻1号61頁
参照法条
民法167条,民法703条,商法522条,利息制限法1条,利息制限法4条
論点6第703条民法

民法三九一条〈抵当不動産の第三取得者による費用の償還請求〉にもとづく優先償還をすることなく抵当権者に対してされた競売代金の交付と不当利得の成否

裁判要旨抵当不動産の第三取得者が、民法三九一条〈抵当不動産の第三取得者による費用の償還請求〉にもとづく優先償還請求権を有しているにもかかわらず、抵当不動産の競売代金が抵当権者に交付されたため優先償還を受けられなかつたときは、右第三取得者は、抵当権者に対し不当利得返還請求権を有する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年7月12日 昭和47(オ)807
登載
民集 第27巻7号763頁
参照法条
民法391条,民法703条,競売法33条2項
論点7第703条民法

不動産の固定資産税を課せられて納付した登記簿上の所有名義人の真の所有者に対する不当利得返還請求権の成否

裁判要旨真実は不動産の所有者でない者が、登記簿上その所有者として登記されているために、右不動産に対する固定資産税を課せられ、これを納付した場合には、右所有名義人は、真の所有者に対し、不当利得として、右納付税額に相当する金員の返還を請求することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年1月25日 昭和46(オ)766
登載
民集 第26巻1号1頁
参照法条
地方税法343条,民法703条
論点8第703条民法

過去の扶養料の求償と民法第八七八条および第八七九条

裁判要旨扶養権利者を扶養してきた扶養義務者が他の扶養義務者に対して求償する場合における各自の扶養分担額は、協議がととのわないかぎり、家庭裁判所が審判で定めるべきであつて、通常裁判所が判決手続で定めることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年2月17日 昭和41(オ)783
登載
民集 第21巻1号133頁
参照法条
民法878条,民法879条,民法703条,家事審判法9条1項乙類8号
論点9第703条民法

民法第五四五条第二項〈解除の効果〉の利息債務の発生と同法第五四六条第五三三条の同時履行の抗弁権の関係

裁判要旨民法第五四五条第二項〈解除の効果〉の利息債務は、実質は不当利得返還の法理より生ずるもので、同法第五四六条第五三三条所定の同時履行の抗弁権にかかわりなく発生し、ただその債務の履行が右抗弁権の作用をこうむるにすぎないと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年9月10日 昭和40(オ)60
登載
集民 第80号271頁
参照法条
民法545条,民法546条,民法533条,民法415条,民法419条,民法703条
論点10第703条民法

時効による債務の消滅と不当利得の成否

裁判要旨約束手形の振出人が、手形上の債務を時効によつて免かれた場合には、手形上の権利者に対し不当利得償還義務を負わない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年10月12日 昭和38(オ)222
登載
集民 第80号705頁
参照法条
民法703条,手形法77条1項8号,手形法70条
論点11第703条民法

一 銀行業者が不当利得した金銭を利用して得た運用利益と民法第一八九条第一項〈善意の占有者による果実の取得等〉の適用の有無
二 銀行業者が不当利得した金銭によつて得た法定利率による利息相当額以内の運用利益につき返還義務があるとされた事例
三 不当利得された財産に受益者の行為が加わることによつて得られた収益についての返還義務の範囲

裁判要旨一 銀行業者が不当利得した金銭を利用して得た運用利益については、民法第一八九条第一項〈善意の占有者による果実の取得等〉の類推適用により同人に右利益の収取権が認められる余地はない。
二 第一項の運用利益が商事法定利率による利息相当額(臨時金利調整法所定の一箇年契約の定期預金の利率の制限内)であり損失者が商人であるときは、社会観念上、受益者の行為の介入がなくても、損失者が不当利得された財産から当然取得したであろうと考えられる収益の範囲内にあるものと認められるから、受益者は、善意のときであつても、これが返還義務を免れない。
三 不当利得された財産に受益者の行為が加わることによつて得られた収益については、社会観念上、受益者の行為の介入がなくても、損失者が右財産から当然取得したであろうと考えられる範囲において損失があるものと解すべきであり、その範囲の収益が現存するかぎり、民法第七〇三条〈不当利得の返還義務〉により返還されるべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年12月24日 昭和35(オ)674
登載
民集 第17巻12号1720頁
参照法条
民法189条1項,民法703条
論点12第703条民法

一 経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第四条〈成年〉による株券の没収は株主催に及ぶか
二 右株券が押収に係るものである場合の没収の効力の発生時期
三 右株券没収の言渡を受けた者が没収の効力発生後国に対する名義書換までの間に交付を受けた利益配当金及び無償交付新株と不当利得の成否

裁判要旨一 経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第四条〈成年〉により株券が没収されたときは、没収の効力は右株券に表彰される株主催に及ぶものと解すべきである。
二 右の株券が押収されている場合には、検察官の命令による執行をまたず、没収の判決の確定と同時に没収の効力(没収の言渡を受けた者と国との間における国庫帰属の効力)を生ずる。
三 右の株券没収の言渡に受けた者は、株券没収の効力発生後国に対する名義書換までの間に交付を受けた利益配当金及び再評価積立金の資本組入による無償交付新株を不当利得として国に返還すべき義務がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年4月20日 昭和32(オ)628
登載
民集 第16巻4号860頁
参照法条
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律4条,商法290条2項,株式会社の再評価積立金の資本組入に関する法律3条,株式会社の再評価積立金の資本組入に関する法律5条,民法703条,刑訴法490条
論点13第703条民法

一 貯蓄信用組合理事が組合名義で組合員以外の者から貯金を受入れた場合とその金銭所有権の帰属
二 背任罪における目的の主従と同罪の成否

裁判要旨一 貯蓄信用組合理事がその資格をもつて、組合の名において、組合に対する貯金として受入れたものである以上、たとえ、右貯金が組合員以外の者のした貯金であるが故に、組合に対する消費寄託としての法律上の効力を生じないものであるとしても、貯金の目的となつた金銭の所有権は組合に帰属する。
二 主として、不法に融資して第三者の利益を図る目的がある以上、従として、右融資により本人(貯蓄信用組合)の貸付金回収を図る目的であつても、背任罪を構成する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年11月5日 昭和27(あ)5403
登載
刑集 第8巻11号1675頁
参照法条
民法192条,民法703条,刑法247条
論点14第703条民法

債権執行による差押えと物上代位権の行使としての差押えとが競合した場合において双方の差押債権者に対し二重に弁済をした第三債務者の不当利得返還請求権

裁判要旨同一の債権につき、甲の強制執行による差押えと乙の物上代位権の行使としての差押えとが競合した場合に、甲乙に対し二重に弁済をした第三債務者は、甲に対し不当利得として右弁済金の返還を請求することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年2月25日 平成5(オ)1612
登載
集民 第181号313頁
参照法条
民法481条,民法703条,民事執行法145条,民事執行法155条1項,民事執行法193条
論点15第703条民法

遺産である建物の相続開始後の使用について被相続人と相続人との間に使用貸借契約の成立が推認される場合

裁判要旨共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右の相続人との間において、右建物について、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認される。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年12月17日 平成5(オ)1946
登載
民集 第50巻10号2778頁
参照法条
民法249条,民法593条,民法703条,民法898条,民訴法185条
論点16第703条民法

商行為たる船体保険契約及び質権設定契約に基づき保険者から質権者に支払われた保険金に関する不当利得返還請求権の消滅時効期間

裁判要旨法定の免責事由があるにもかかわらず、商行為たる船体保険契約及び質権設定契約に基づき保険者から質権者に保険金が支払われた場合の不当利得返還請求権の消滅時効期間は、一〇年である。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成3年4月26日 平成1(オ)1232
登載
集民 第162号769頁
参照法条
民法167条1項,民法703条,商法522条,商法641条
論点17第703条民法

債権又は優先権を有しないのに配当を受けた債権者に対する抵当権者からの不当利得返還請求の可否

裁判要旨抵当権者は、債権又は優先権を有しないのに配当を受けた債権者に対して、その者が配当を受けたことによって自己が配当を受けることができなかった金銭相当額の金員の返還を請求することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成3年3月22日 平成2(オ)1820
登載
民集 第45巻3号322頁
参照法条
民法703条,民事執行法84条1項,民事執行法85条,民事執行法89条
論点18第703条民法

神奈川県議会政務活動費の交付等に関する条例(平成13年神奈川県条例第33号。平成25年神奈川県条例第42号による改正前の題名は「神奈川県議会政務調査費の交付等に関する条例」)に基づいて交付された政務調査費及び政務活動費について,その収支報告書上の支出の一部が実際には存在しないものであっても,当該政務活動費等の交付を受けた会派又は議員が不当利得返還義務を負わない場合

裁判要旨政務調査費及び政務活動費につき,具体的な使途を個別に特定した上で政務活動費等を交付すべきものとは定めておらず,年度ごとに行われる決定に基づき月ごとに一定額を交付し,年度ごとに収支報告を行うこととされ,その返還に関して当該年度における交付額から使途基準に適合した支出の総額を控除して残余がある場合にはこれを返還しなければならない旨の定めがある神奈川県議会政務活動費の交付等に関する条例(平成13年神奈川県条例第33号。平成25年神奈川県条例第42号による改正前の題名は「神奈川県議会政務調査費の交付等に関する条例」)に基づいて交付された政務活動費等について,その収支報告書上の支出の一部が実際には存在しないものであっても,当該年度において,収支報告書上の支出の総額から実際には存在しないもの及び使途基準に適合しないものの額を控除した額が政務活動費等の交付額を下回ることとならない場合には,当該政務活動費等の交付を受けた会派又は議員は,県に対する不当利得返還義務を負わない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成30年11月16日 平成29(行ヒ)404
登載
民集 第72巻6号993頁
参照法条
地方自治法(平成24年法律第72号による改正前のもの)100条14項,地方自治法(平成24年法律第72号による改正前のもの)100条15項,地方自治法100条14項,地方自治法100条15項,地方自治法100条16項,神奈川県議会政務調査費の交付等に関する条例(平成13年神奈川県条例第33号。平成25年神奈川県条例第42号による改正前のもの)13条1項,神奈川県議会政務活動費の交付等に関する条例(平成13年神奈川県条例第33号)14条1項,民法703条
論点19第703条民法

貸金業者Yの完全子会社である貸金業者Aが,その顧客Xとの間の基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る債権をYに譲渡した場合において,YがAのXに対する過払金返還債務を承継したとはいえないとされた事例

裁判要旨貸金業者Yの完全子会社である貸金業者Aが,Yとの間の債権譲渡基本契約に基づき,Aの顧客Xとの間の基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る債権をYに譲渡した場合において,上記債権譲渡基本契約が,Yの国内の消費者金融子会社の再編を目的として,Aの貸金債権をYに移行し,その貸金業を廃止するために行われたもので,同契約にはAが顧客に対して負担する過払金返還債務をYが併存的に引き受ける旨の条項があったとしても,次の⑴,⑵など判示の事情の下では,Yは,AのXに対する過払金返還債務を承継したとはいえない。
⑴ 上記債権譲渡基本契約には,個別の債権譲渡によりAの契約上の地位がYに移転する旨又はAの負担する過払金返還債務が当然にYに承継される旨を定めた条項はない。
⑵ Xは,上記債権譲渡に係る通知を受けてから上記の併存的債務引受けに係る条項が効力を失うまでの間に,Yに対し,弁済をしただけであって,上記条項に係る受益の意思表示とみる余地のある行為をしていない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成24年6月29日 平成24(受)539
登載
集民 第241号1頁
参照法条
民法91条,民法703条,民法第3編第1章第4節(債務引受)
論点20第703条民法

貸金業者Yとその完全子会社である貸金業者Aの顧客Xとが,金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結するに当たり,YがXとの関係において,AのXに対する債権を承継するにとどまらず,AのXに対する債務についても全て引き受ける旨を合意したものと解された事例

裁判要旨貸金業者Yとその完全子会社である貸金業者Aの顧客Xとが,金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結し,この際,Xが,Aとの継続的な金銭消費貸借取引における約定利息を前提とする残債務相当額をYから借り入れ,これをAに弁済してAとの取引を終了させた場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,XとYとは,上記基本契約の締結に当たり,Yが,Xとの関係において,Aとの取引に係る債権を承継するにとどまらず,債務についても全て引き受ける旨を合意したと解するのが相当である。
(1) Yは,国内の消費者金融子会社の再編を目的として,Aの貸金業を廃止し,これをYに移行,集約するために,Aとの間で業務提携契約を締結し,同契約において,Aが顧客に対して負担する過払金債務等一切の債務をYが併存的に引き受けることや,Aと顧客との間の債権債務に関する紛争について,Yが,単にその申出窓口になるにとどまらず,その処理についても引き受けることとし,その旨を周知することを,それぞれ定めた。
(2) Yは,上記業務提携契約を前提として,Xに対し,上記基本契約を締結するのはYのグループ会社再編に伴うものであることや,Aとの取引に係る紛争等の窓口が今後Yになることなどが記載された書面を示して,Yとの間で上記基本契約を締結することを勧誘した。
(3) Xは,Yの上記勧誘に応じ,上記書面に署名してYに差し入れた。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成23年9月30日 平成23(受)516
登載
集民 第237号655頁
参照法条
民法91条,民法703条,民法第3編第1章第4節(債務引受)
論点21第703条民法

貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合における,借主と上記債権を譲渡した業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転及び上記取引に係る過払金返還債務の承継の有無

裁判要旨貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合において,上記債権を譲渡した業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんにより,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が上記債権を譲り受けた業者に当然に移転する,あるいは,当該業者が上記取引に係る過払金返還債務を譲渡の対象に含まれる貸金債権と一体のものとして当然に承継すると解することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成23年7月8日 平成22(受)1405
登載
集民 第237号159頁
参照法条
民法91条,民法703条,民法第3編第1章第4節(債務引受)
論点22第703条民法

貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合における,借主と上記債権を譲渡した業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転及び上記取引に係る過払金返還債務の承継の有無

裁判要旨貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合において,上記債権を譲渡した業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんにより,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が上記債権を譲り受けた業者に当然に移転する,あるいは,当該業者が上記取引に係る過払金返還債務を譲渡の対象に含まれる貸金債権と一体のものとして当然に承継すると解することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成23年7月7日 平成22(受)1784
登載
集民 第237号139頁
参照法条
民法91条,民法703条,民法第3編第1章第4節(債務引受)
論点23第703条民法

貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合における,借主と上記債権を譲渡した業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転の有無

裁判要旨貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合において,上記債権を譲渡した業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんにより,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が上記債権を譲り受けた業者に当然に移転すると解することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成23年3月22日 平成22(受)1238
登載
集民 第236号225頁
参照法条
民法91条,民法703条,民法第3編第1章第4節(債務引受)
論点24第703条民法

保全すべき権利が発令時から存在しなかったものと本案訴訟の判決で判断され,仮処分命令が事情の変更により取り消された場合において,当該仮処分命令の保全執行としてされた間接強制決定に基づき取り立てられた金銭につき,不当利得返還請求をすることができるか

裁判要旨仮処分命令における保全すべき権利が,本案訴訟の判決において,当該仮処分命令の発令時から存在しなかったものと判断され,このことが事情の変更に当たるとして当該仮処分命令を取り消す旨の決定が確定した場合には,当該仮処分命令を受けた債務者は,その保全執行としてされた間接強制決定に基づき取り立てられた金銭につき,債権者に対して不当利得返還請求をすることができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年4月24日 平成20(受)224
登載
民集 第63巻4号765頁
参照法条
民事執行法172条1項,民事保全法38条1項,民事保全法52条,民法703条
論点25第703条民法

継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合における,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効の起算点

裁判要旨継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生したときには,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合は,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は,特段の事情がない限り,上記取引が終了した時から進行する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年3月6日 平成20(受)1170
登載
集民 第230号209頁
参照法条
民法166条1項,民法703条,利息制限法1条1項
論点26第703条民法

継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合における,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効の起算点

裁判要旨継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生したときには,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合は,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は,特段の事情がない限り,上記取引が終了した時から進行する。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年3月3日 平成20(受)543
登載
集民 第230号167頁
参照法条
民法166条1項,民法703条,利息制限法1条1項
論点27第703条民法

継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合における,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効の起算点

裁判要旨継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生したときには,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合は,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は,特段の事情がない限り,上記取引が終了した時から進行する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成21年1月22日 平成20(受)468
登載
民集 第63巻1号247頁
参照法条
民法166条1項,民法703条,利息制限法1条1項
論点28第703条民法

破産管財人が破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除した際に破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をして上記賃料等の現実の支払を免れたことにより敷金返還請求権の質権者に対し不当利得返還義務を負う場合において破産管財人が悪意の受益者であるとはいえないとされた事例

裁判要旨破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際して破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をし,上記賃料等の現実の支払を免れたことにより,敷金返還請求権の質権者に対し不当利得返還義務を負う場合において,法律上の原因の有無が,破産債権者のために破産財団の減少を防ぐという破産管財人の職務上の義務と質権設定者が質権者に対して負う目的債権の担保価値を維持すべき義務との関係をどのように解するかによって結論の異なり得る問題であって,この点について論ずる学説や判例も乏しかったことや,破産管財人が上記合意をするにつき破産裁判所の許可を得ているという事情の下では,破産管財人を悪意の受益者であるということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成18年12月21日 平成17(オ)184
登載
集民 第222号643頁
参照法条
民法362条,民法619条2項,民法703条,民法704条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)47条7号,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)47条8号,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)49条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)50条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)95条,破産法65条,破産法148条1項7号,破産法148条1項8号,破産法151条
論点29第703条民法

1 大学と当該大学の学生との間の在学契約の性質
2 大学の入学試験の合格者が納付する入学金の性質
3 大学と在学契約等を締結した者が当該在学契約等を任意に解除することの可否
4 大学の入学試験の合格者による書面によらない在学契約の解除の意思表示の効力
5 大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約等を締結して当該大学に入学金を納付した後に同契約等が解除された場合等における当該大学の入学金返還義務の有無
6 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の性質
7 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約等の消費者契約該当性
8 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に関する消費者契約法9条1号〈成年被後見人の法律行為〉所定の平均的な損害等の主張立証責任
9 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に対する消費者契約法9条1号の適用の効果
10 専願等を出願資格とする大学の推薦入学試験等の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に対する消費者契約法9条1号の適用の効果

裁判要旨1 大学と当該大学の学生との間で締結される在学契約は,大学が学生に対して,講義,実習及び実験等の教育活動を実施するという方法で,大学の目的にかなった教育役務を提供するとともに,これに必要な教育施設等を利用させる義務を負い,他方,学生が大学に対して,これらに対する対価を支払う義務を負うことを中核的な要素とするものであり,学生が部分社会を形成する組織体である大学の構成員としての学生の身分,地位を取得,保持し,大学の包括的な指導,規律に服するという要素も有し,教育法規や教育の理念によって規律されることが予定されている有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約である。
2 大学の入学試験の合格者が納付する入学金は,その額が不相当に高額であるなど他の性質を有するものと認められる特段の事情のない限り,合格者が当該大学に入学し得る地位を取得するための対価としての性質を有し,当該大学が合格者を学生として受け入れるための事務手続等に要する費用にも充てられることが予定されているものである。
3 大学と在学契約又はその予約を締結した者は,原則として,いつでも任意に当該在学契約又はその予約を将来に向かって解除することができる。
4 大学の入学試験に合格し当該大学との間で在学契約を締結した者が当該大学に対して入学辞退を申し出ることは,それがその者の確定的な意思に基づくものであることが表示されている以上は,口頭によるものであっても,原則として有効な在学契約の解除の意思表示であり,入学試験要項等において所定の期限までに書面で入学辞退を申し出たときは入学金以外の所定の納付金を返還する旨を定めている場合や,入学辞退をするときは書面で申し出る旨を定めている場合であっても,解除の効力は妨げられない。
5 大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約又はその予約を締結して当該大学に入学し得る地位を取得するための対価としての性質を有する入学金を納付した後に,同契約又はその予約が解除され,あるいは失効しても,当該大学は当該合格者に入学金を返還する義務を負わない。
6 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,在学契約の解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金の定めの性質を有する。
7 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約又はその予約は,消費者契約法2条3項所定の消費者契約に該当する。
8 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約に納付済みの授業料等を返還しない旨の特約がある場合,消費者契約法9条1号所定の平均的な損害及びこれを超える部分については,事実上の推定が働く余地があるとしても,基本的には当該特約の全部又は一部の無効を主張する当該合格者において主張立証責任を負う。
9 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,国立大学及び公立大学の後期日程入学試験の合格者の発表が例年3月24日ころまでに行われ,そのころまでには私立大学の正規合格者の発表もほぼ終了し,補欠合格者の発表もほとんどが3月下旬までに行われているという実情の下においては,同契約の解除の意思表示が大学の入学年度が始まる4月1日の前日である3月31日までにされた場合には,原則として,当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして,同号によりすべて無効となり,同契約の解除の意思表示が同日よりも後にされた場合には,原則として,上記授業料等が初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り,上記平均的な損害を超える部分は存しないものとして,すべて有効となる。
10 入学試験要項等の定めにより,その大学,学部を専願あるいは第1志望とすること,又は入学することを確約することができることが出願資格とされている大学の推薦入学試験等の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,上記授業料等が初年度に納付すべき範囲内のものである場合には,同契約の解除の時期が当該大学において同解除を前提として他の入学試験等によって代わりの入学者を通常容易に確保することができる時期を経過していないなどの特段の事情がない限り,消費者契約法9条1号所定の平均的な損害を超える部分は存しないものとして,すべて有効となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日 平成17(受)1158
登載
民集 第60巻9号3437頁
参照法条
(1,2,5につき)民法第3編第2章 契約,(1につき)学校教育法52条,学校教育法69条の2第1項,教育基本法6条1項,(2,5,6,8〜10につき)学校教育法6条,(2,5につき)学校教育法施行規則4条1項7号,(3,4につき)民法540条1項,(3につき)憲法26条1項,学校教育法施行規則67条,(5につき)民法703条,(6,8〜10につき)民法420条,(7につき)消費者契約法2条,(8〜10につき)消費者契約法9条,(8につき)民訴法第2編第4章第1節 総則,(9につき)学校教育法施行規則44条,72条1項
論点30第703条民法

大学の入学試験に合格し同大学に授業料等を納付するなどして納付済みの授業料等の返還を制限する特約の付された在学契約を締結した者が同大学の職員から入学式に出席しなければ入学辞退として取り扱う旨告げられたため3月31日までに同契約を解除することなく入学式に欠席することにより同契約を解除した場合において同大学が同特約が有効である旨主張して授業料の返還を拒むことが許されないとされた事例

裁判要旨大学の平成16年度の入学試験に合格し,同大学に入学金,授業料等の所定の納付金を納付して,平成16年3月25日までに入学辞退を申し出た場合には入学金を除く納付金を返還する旨の特約の付された在学契約を締結した者が,同月26日に入学辞退に関する問合せをした際に,同大学の職員から入学式に出席しなければ入学辞退として取り扱う旨告げられたため,同月31日までに同契約を解除すれば同特約は消費者契約法9条1号により無効となったのに,同日までに同契約を解除することなく同年4月2日の入学式に欠席することにより同契約を解除したなど判示の事情の下では,同大学において,同特約が有効である旨主張して,授業料の返還を拒むことは許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日 平成18(受)1130
登載
集民 第222号511頁
参照法条
民法1条2項,民法420条,民法703条,消費者契約法9条1号,学校教育法6条
論点31第703条民法

1 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約と公序良俗違反
2 私立医科大学の平成13年度の入学試験の合格者が同大学との間で納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した後に同契約を解除した場合において同特約は公序良俗に反しないなどとして同大学に対する納付済みの授業料等の返還請求が認められなかった事例

裁判要旨1 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,その目的,意義に照らして,合格者の大学選択に関する自由な意思決定を過度に制約し,その他合格者の著しい不利益において大学が過大な利益を得ることになるような著しく合理性を欠くと認められるものでない限り,公序良俗に反しない。
2 私立医科大学の平成13年度の入学試験の合格者が,同大学に授業料等を含む所定の納付金を納付して,同大学との間で,平成13年3月21日正午よりも後に入学辞退を申し出た場合には授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した後,同月27日ころ同契約を解除した場合において,医科大学においては入学辞退によって欠員が生ずる可能性が潜在的に高く,欠員が生じた場合に生ずる損失が多額になることは否定し難いこと,上記特約が当時の私立大学の医学関係の学部におけるそれとの比較において格別合格者に不利益な内容のものであることがうかがわれないことなど判示の事情の下では,上記授業料等の金額が614万円であり,このうち教育充実費については6年間に納付することとされている合計額950万円のうち500万円を在学契約締結時に納付すべきものとされていることや,同大学に定員割れが生じていないことなどを考慮しても,上記特約は公序良俗に反するものではなく,同大学が上記授業料等の返還を拒むことが信義に反するともいえず,上記合格者から同大学に対する上記授業料等の返還請求は認められない。
(2につき反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日 平成16(受)2117
登載
民集 第60巻9号3732頁
参照法条
(1,2につき)民法90条,民法420条,学校教育法6条,(2につき)民法1条2項,民法703条
論点32第703条民法

銀行が相続財産である預金債権の全額を共同相続人の一部に払い戻した場合について他の共同相続人にその法定相続分相当額の預金の支払をした後でなくても当該銀行には民法703条〈不当利得の返還義務〉所定の「損失」が発生するものとされた事例

裁判要旨甲銀行に対し預金債権を有していた丁の死亡により,乙,丙及び戊が当該預金債権を相続したのに,甲銀行が当該預金債権の全額を乙及び丙に払い戻したこと,乙及び丙は,戊の法定相続分相当額の預金については,これを受領する権限がなかったにもかかわらず,払戻しを受けたものであり,この払戻しが債権の準占有者に対する弁済に当たるということもできないことなど判示の事情の下においては,甲銀行が戊にその法定相続分相当額の預金の支払をした後でなくても,甲銀行には民法703条所定の「損失」が発生したものというべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成17年7月11日 平成16(受)2134
登載
集民 第217号329頁
参照法条
民法478条,民法703条,民法899条
論点33第703条民法

不当利得返還請求訴訟において不当利得返還請求権の成立要件である「損失」が発生していないと主張して請求を争うことが信義誠実の原則に反するとされた事例

裁判要旨甲が,乙と共に相続した預金債権のうちの乙の法定相続分に当たる部分について何らの受領権限もないのに受領権限があるものとして金融機関から払戻しを受けていながら,その払戻しに係る金員について乙が提起した不当利得返還請求訴訟において,一転して,上記払戻しは民法478条の弁済として有効であるとはいえず,乙が上記金融機関に対して乙の法定相続分に当たる預金債権を有していることに変わりはなく,乙には不当利得返還請求権の成立要件である「損失」が発生していないと主張するに至ったなど判示の事情の下では,甲が上記主張をして乙の不当利得返還請求を争うことは,信義誠実の原則に反し許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年10月26日 平成16(受)458
登載
集民 第215号473頁
参照法条
民法1条2項,民法478条,民法703条,民法899条,民訴法2条
論点34第703条民法

一 不動産の共有者が当該不動産を単独で占有する他の共有者に対し不当利得返還請求ないし損害賠償請求をすることの可否
二 請求の一部についての予備的な請求原因となるべき相続取得の主張を原告がしていなくても裁判所は被相続人の死亡等の事実をしんしゃくすべきであるとされた事例

裁判要旨一 不動産の共有者は、当該不動産を単独で占有することができる権原がないのにこれを単独で占有している他の共有者に対し、自己の持分割合に応じて占有部分に係る賃料相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することができる。
二 原告が、夫の父が土地を夫に贈与し夫から右土地を相続取得したと主張して、右土地を占有する被告らに対し地代相当損害金等を請求する訴訟において、裁判所は、当事者の主張に基づいて右父の死亡、夫がその相続人の一人であること等の事実を確定した以上、右死亡により夫が右土地の持分を相続取得したことを原告が主張しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこれらの事実をしんしゃくし、夫の相続による持分の取得及び原告の相続による当該持分の取得を理由に原告の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成12年4月7日 平成9(オ)1876
登載
集民 第198号1頁
参照法条
民法249条,民法703条,民法709条,民訴法246条
論点35第703条民法

甲が丁の強迫により消費貸借契約の借主となり貸主乙に指示して貸付金を丙に給付させた後に右強迫を理由に契約を取り消した場合の乙から甲に対する不当利得返還請求につき甲が右給付により利益を受けなかったものとされた事例

裁判要旨甲が丁の強迫により消費貸借契約の借主となり貸主乙に指示して貸付金を丙に給付させた後に右強迫を理由に契約を取り消したが、甲と丙との間には事前に何らの法律上又は事実上の関係はなく、甲が丁の言うままに乙に対して貸付金を丙に給付するように指示したなど判示の事実関係の下においては、乙から甲に対する不当利得返還請求について、甲が右給付によりその価額に相当する利益を受けたとみることはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成10年5月26日 平成8(オ)497
登載
民集 第52巻4号985頁
参照法条
民法96条1項,民法537条,民法587条,民法703条
論点36第703条民法

配当期日に配当異議の申出をしなかった一般債権者が配当を受けた他の債権者に対して不当利得返還請求をすることの可否

裁判要旨配当期日において配当異議の申出をしなかった一般債権者は、配当を受けた他の債権者に対して、その者が配当を受けたことによって自己が配当を受けることができなかった額に相当する金員について不当利得返還請求をすることができない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成10年3月26日 平成8(オ)983
登載
民集 第52巻2号513頁
参照法条
民法703条,民事執行法84条1項,民事執行法85条,民事執行法89条
論点37第703条民法

内縁の夫婦による共有不動産の共同使用と一方の死亡後に他方が右不動産を単独で使用する旨の合意の推認

裁判要旨内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成10年2月26日 平成6(オ)1900
登載
民集 第52巻1号255頁
参照法条
民法249条,民法703条,民法第4編第2章第1節婚姻の成立,民訴法247条
論点38第703条民法

カルテル行為について私的独占の禁止及び不正取引の確保に関する法律違反被告事件において罰金刑を科せられるとともに不当利得返還請求訴訟を提起されている者に対し課徴金の納付を命ずることと憲法三九条、二九条〈管理人の担保提供及び報酬〉、三一条〈失踪の宣告の効力〉

裁判要旨カルテル行為について私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反被告事件において罰金刑を科せられるとともに取引の相手方である国から不当利得返還請求訴訟を提起されている者に対し同法七条の二第一項の規定に基づき課徴金の納付を命ずることは、憲法三九条、二九条、三一条に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成10年10月13日 平成9(行ツ)214
登載
集民 第190号1頁
参照法条
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律7条の2第1項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律48条の2第1項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律89条,民法703条,憲法29条,憲法31条,憲法39条
論点39第703条民法

別荘地内に土地を所有する者が当該別荘地の管理会社に対し管理費として相当と認められる額の不当利得返還義務を負うとされた事例

裁判要旨不動産の管理業等を目的とする株式会社であるXは、甲別荘地内に土地を所有する者との間で個別に管理契約を締結し、甲別荘地において上記管理契約に基づく管理業務を行っており、Yは、甲別荘地内に土地を所有するものの、Xとの間で上記管理契約を締結せず、管理費を支払っていない場合において、次の⑴~⑸など判示の事情の下では、Yは、Xに対し、上記管理業務に対する管理費として相当と認められる額の不当利得返還義務を負う。
⑴ 甲別荘地は、多数の土地及び道路等の施設から成る大規模な別荘地として開発され、現在も別荘地として利用されている。
⑵ 上記管理業務の内容は、①道路、側溝及びマンホール等の雨水排水設備、街路灯、消火栓、ゴミ集積所等の保全及び維持管理、②毎日2回のパトロール実施、道路ゲートの開閉管理、関係者以外の立入り防止、天災地変時の見回り点検、③道路両脇の雑草の刈込み作業、U字溝内部の清掃作業である。
⑶ 上記管理業務に要する費用は、甲別荘地内に土地を所有する者から上記管理業務に対する管理費を収受することによって賄うことが予定されている。
⑷ Yは、甲別荘地が別荘地であることを認識して、その1区画である土地を取得した。
⑸ 上記管理業務は、甲別荘地内に土地を所有する者が個別になし得るものではなく、地方自治体による提供も期待できないものであって、X以外にこれを提供することができる者がいることはうかがわれない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和7年6月30日 令和5(受)2461
登載
民集 第79巻4号2131頁
参照法条
民法703条
論点40第703条民法

1 公職選挙法251条〈共有物の変更〉の規定により遡って大阪市の議会の議員の職を失った当選人は同市に対し当該当選人を唯一の所属議員とする会派の行った大阪市会政務活動費の交付に関する条例(平成13年大阪市条例第25号)5条〈未成年者の法律行為〉所定の政務活動に関し不当利得返還請求権を有するか
2 公職選挙法251条の規定により遡って大阪市の議会の議員の職を失った当選人は同市に対し上記議会の議員として行った活動に関し不当利得返還請求権を有するか

裁判要旨1 公職選挙法251条〈共有物の変更〉の規定により遡って大阪市の議会の議員の職を失った当選人は、同市に対し、当該当選人を唯一の所属議員とする会派の行った大阪市会政務活動費の交付に関する条例(平成13年大阪市条例第25号)5条〈未成年者の法律行為〉所定の政務活動に関し、不当利得返還請求権を有することはない。
2 公職選挙法251条の規定により遡って大阪市の議会の議員の職を失った当選人は、同市に対し、上記議会の議員として行った活動に関し、不当利得返還請求権を有することはない。
(2につき補足意見及び反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和5年12月12日 令和4(行ヒ)317
登載
民集 第77巻9号2229頁
参照法条
(1、2につき)公職選挙法251条、民法703条 (1につき)地方自治法100条14項、大阪市会政務活動費の交付に関する条例(平成13年大阪市条例第25号)2条、大阪市会政務活動費の交付に関する条例(平成13年大阪市条例第25号)5条、大阪市会政務活動費の交付に関する条例(平成13年大阪市条例第25号)別表第1 (2につき)地方自治法203条1項、地方自治法203条3項、大阪市会議員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例(昭和31年大阪市条例第32号)2条、大阪市会議員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例(昭和31年大阪市条例第32号)5条1項、大阪市会議員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例(昭和31年大阪市条例第32号)5条2項
論点41第704条民法

親株の取戻権者の破産管財人に対する配当金および子株の返還請求の許否

裁判要旨株式の取戻権者が株券引渡の訴を提起した後に右株式につき生じた配当金および右株式につき株主に割り当てられた新株を破産管財人において取得した場合には、右取戻権者は、破産管財人に対し不当利得に基づく財団債権として右配当金および新株の返還を請求することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年12月12日 昭和39(オ)496
登載
民集 第22巻13号2943頁
参照法条
破産法47条5号,民法704条,商法206条1項,商法280条ノ21項5号,商法280条ノ4,商法293条
論点42第704条民法

不当利得と法人の悪意。

裁判要旨法人の使用人(A支所長事務取扱)が法人の目的の範囲外の取引をしたことに基き、法人に不当利得ありとされる場合において、右利得につき右使用人の悪意を以て法人の悪意とすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年5月13日 昭和26(オ)298
登載
民集 第9巻6号679頁
参照法条
民法704条,民法43条,民法53条,民法101条
論点43第704条民法

いわゆるリボルビング方式の貸付けについて,貸金業者が貸金業の規制等に関する法律(平成18年法律第115号による改正前のもの)17条1項〈補助人の同意を要する旨の審判等〉に規定する書面として交付する書面に個々の貸付けの時点での残元利金につき最低返済額を毎月の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等の記載をしない場合,当該貸金業者は,最高裁平成17年(受)第560号同年12月15日第一小法廷判決・民集59巻10号2899頁の言渡し日以前であっても,過払金の取得につき民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるか

裁判要旨いわゆるリボルビング方式の貸付けについて,貸金業者が貸金業の規制等に関する法律(平成18年法律第115号による改正前のもの。以下同じ。)17条1項〈補助人の同意を要する旨の審判等〉に規定する書面として交付する書面に個々の貸付けの時点での残元利金につき最低返済額を毎月の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等の記載をしない場合は,当該貸金業者は,同項に規定する書面には上記記載を要する旨を判示した最高裁平成17年(受)第560号同年12月15日第一小法廷判決・民集59巻10号2899頁の言渡し日以前であっても,利息制限法所定の制限を超えて利息として支払われた部分の受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用があるとの認識を有することについてやむを得ないといえる特段の事情があるとはいえず,過払金の取得につき民法704条の「悪意の受益者」であると推定される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成23年12月1日 平成23(受)307
登載
集民 第238号189頁
参照法条
民法704条,貸金業の規制等に関する法律(平成18年法律第115号による改正前のもの)17条1項,貸金業の規制等に関する法律(平成18年法律第115号による改正前のもの)43条1項,利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項,貸金業の規制等に関する法律施行規則(平成19年内閣府令第79号による改正前のもの)13条1項1号チ
論点44第704条民法

いわゆる過払金充当合意を含む基本契約に基づく金銭消費貸借の借主が利息制限法所定の制限を超える利息の支払を継続したことにより過払金が発生した場合における,民法704条〈悪意の受益者の返還義務等〉前段所定の利息の発生時期

裁判要旨いわゆる過払金充当合意(過払金発生当時他の借入金債務が存在しなければ過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意)を含む基本契約に基づく金銭消費貸借の借主が利息制限法所定の制限を超える利息の支払を継続したことにより過払金が発生した場合においても,悪意の受益者である貸主は過払金発生の時から民法704条前段所定の利息を支払わなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年9月4日 平成21(受)1192
登載
集民 第231号477頁
参照法条
民法704条前段,利息制限法1条1項
論点45第704条民法

貸金業者が借主に貸金の支払を請求し借主から弁済を受ける行為が不法行為を構成する場合

裁判要旨貸金業者が借主に対し貸金の支払を請求し借主から弁済を受ける行為が不法行為を構成するのは,貸金業者が当該貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに,あえてその請求をしたなど,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られ,この理は,当該貸金業者が過払金の受領につき民法704条所定の悪意の受益者であると推定されるときであっても異ならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年9月4日 平成21(受)47
登載
民集 第63巻7号1445頁
参照法条
民法704条,民法709条
論点46第704条民法

期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払の任意性を否定した最高裁判所の判決の言渡し日以前にされた制限超過部分の支払について,貸金業者が同特約の下でこれを受領したことのみを理由として当該貸金業者を民法704条〈悪意の受益者の返還義務等〉の「悪意の受益者」と推定することの可否

裁判要旨期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払の任意性を初めて否定した最高裁平成16年(受)第1518号同18年1月13日第二小法廷判決・民集60巻1号1頁の言渡し日以前にされた制限超過部分の支払について,貸金業者が同特約の下でこれを受領したことのみを理由として当該貸金業者を民法704条〈悪意の受益者の返還義務等〉の「悪意の受益者」と推定することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年7月14日 平成20(受)1729
登載
集民 第231号357頁
参照法条
民法136条,民法704条,貸金業の規制等に関する法律(平成18年法律第115号による改正前のもの)43条1項,利息制限法1条1項
論点47第704条民法

期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払の任意性を否定した最高裁判所の判決の言渡し日以前にされた制限超過部分の支払について,貸金業者が同特約の下でこれを受領したことのみを理由として当該貸金業者を民法704条〈悪意の受益者の返還義務等〉の「悪意の受益者」と推定することの可否

裁判要旨期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払の任意性を初めて否定した最高裁平成16年(受)第1518号同18年1月13日第二小法廷判決・民集60巻1号1頁の言渡し日以前にされた制限超過部分の支払について,貸金業者が同特約の下でこれを受領したことのみを理由として当該貸金業者を民法704条〈悪意の受益者の返還義務等〉の「悪意の受益者」と推定することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年7月10日 平成20(受)1728
登載
民集 第63巻6号1170頁
参照法条
民法136条,民法704条,貸金業の規制等に関する法律(平成18年法律第115号による改正前のもの)43条1項,利息制限法1条1項
論点48第704条民法

民法704条〈悪意の受益者の返還義務等〉後段の規定の趣旨

裁判要旨民法704条〈悪意の受益者の返還義務等〉後段の規定は,悪意の受益者が不法行為の要件を充足する限りにおいて不法行為責任を負うことを注意的に規定したものにすぎず,悪意の受益者に対して不法行為責任とは異なる特別の責任を負わせたものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年11月9日 平成21(受)247
登載
民集 第63巻9号1987頁
参照法条
民法704条後段,民法709条
論点49第704条民法

貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したことにつき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められない場合と民法704条の「悪意の受益者」

裁判要旨貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り,民法704条〈悪意の受益者の返還義務等〉の「悪意の受益者」であると推定される。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成19年7月17日 平成18(受)1666
登載
集民 第225号201頁
参照法条
民法704条,貸金業の規制等に関する法律43条1項,利息制限法1条1項
論点50第704条民法

1 各回の返済金額について一定額の元利金の記載と共に別紙償還表記載のとおりとの記載のある借用証書の写しが借主に交付された場合において,当該償還表の交付がなければ貸金業の規制等に関する法律17条1項〈補助人の同意を要する旨の審判等〉に規定する書面の交付があったとはいえないとされた事例
2 貸金業者が利息制限法1条1項〈基本原則〉所定の制限を超える利息を受領したことにつき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められない場合と民法704条の「悪意の受益者」

裁判要旨1 貸金業者が返済方式を元利均等方式とする貸付けをするに際し,貸金業の規制等に関する法律17条1項〈補助人の同意を要する旨の審判等〉に規定する書面に当たるものとして借用証書の写しを借主に交付した場合において,(1)当該借用証書写しの「各回の支払金額」欄に,一定額の元利金の記載と共に「別紙償還表記載のとおりとします。」との記載があり,償還表は借用証書写しと併せて一体の書面をなすものとされ,各回の返済金額はそれによって明らかにすることとされていること,(2)「各回の支払金額」欄に元利金として記載されている一定額と償還表に記載された最終回の返済金額が一致していないことなど判示の事実関係の下では,償還表の交付がなければ,同項の要求する各回の「返済金額」の記載がある書面の交付があったとはいえない。
2 貸金業者が利息制限法1条1項〈基本原則〉所定の制限を超える利息を受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,民法704条〈悪意の受益者の返還義務等〉の「悪意の受益者」であると推定される。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成19年7月13日 平成17(受)1970
登載
民集 第61巻5号1980頁
参照法条
(1,2につき)貸金業の規制等に関する法律43条1項,利息制限法1条1項 (1につき)貸金業の規制等に関する法律17条1項,貸金業の規制等に関する法律施行規則13条1項1号チ (2につき)民法704条
論点51第704条民法

利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が,判例の正しい理解に反して貸金業の規制等に関する法律18条1項〈補助開始の審判等の取消し〉に規定する書面の交付がなくても同法43条1項の適用があるとの認識を有していたとしても,民法704条〈悪意の受益者の返還義務等〉の「悪意の受益者」であるとする推定を覆す特段の事情があるとはいえないとされた事例

裁判要旨利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が,その預金口座への払込みを受けた際に貸金業の規制等に関する法律18条1項〈補助開始の審判等の取消し〉に規定する書面を債務者に交付していなかったために同法43条1項の適用を受けられない場合において,当該貸金業者が,事前に債務者に約定の各回の返済期日及び返済金額等を記載した償還表を交付していれば上記書面を交付しなくても同項の適用があるとの認識を有していたとしても,当時既に存した判例(最高裁平成8年(オ)第250号同11年1月21日第一小法廷判決・民集53巻1号98頁)の説示によれば,同項の適用が認められるためには償還表が交付されていても上記書面が交付される必要があることは明らかであるなど判示の事情の下では,「上記書面の交付がなくても他の方法で貸付金の元金及び利息の内訳を債務者に了知させていたときには同項の適用が認められるとの見解が主張され,これに基づく貸金業者の取扱いも少なからず見られた」というだけで,上記認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるとはいえず,上記貸金業者は民法704条の「悪意の受益者」であるとする推定を覆すことはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成19年7月13日 平成18(受)276
登載
集民 第225号103頁
参照法条
民法704条,貸金業の規制等に関する法律18条1項,貸金業の規制等に関する法律43条1項,利息制限法1条1項
論点52第704条民法

1 貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合に第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生しその後第2の貸付けに係る債務が発生したときにおける第1の貸付けに係る過払金の同債務への充当の可否
2 商行為である貸付けに係る債務の弁済金のうち利息制限法1条1項〈基本原則〉所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において悪意の受益者が付すべき民法704条〈悪意の受益者の返還義務等〉前段所定の利息の利率

裁判要旨1 貸主と借主との間で継続的に貸付けが繰り返されることを予定した基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し,その後,第2の貸付けに係る債務が発生したときには,特段の事情のない限り,第1の貸付けに係る過払金は,第1の貸付けに係る債務の各弁済が第2の貸付けの前にされたものであるか否かにかかわらず,第2の貸付けに係る債務には充当されない。
2 商行為である貸付けに係る債務の弁済金のうち利息制限法1条1項〈基本原則〉所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において,悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率は,民法所定の年5分である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成19年2月13日 平成18(受)1187
登載
民集 第61巻1号182頁
参照法条
(1,2につき)利息制限法1条1項 (1につき)民法488条 (2につき)民法404条,民法704条,商法514条
論点53第705条民法

債務者が利息制限法所定の制限をこえた利息・損害金を元本とともに任意に支払つた場合と右制限に従つた元利合計額をこえる支払額に対する不当利得返還請求の許否

裁判要旨債務者が利息制限法所定の制限をこえた利息・損害金を元本とともに任意に支払つた場合においては、その支払にあたり充当に関して特段の意思表示がないかぎり、右制限に従つた元利合計額をこえる支払額は、債務者において、不当利得として、その返還を請求することができると解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和44年11月25日 昭和44(オ)280
登載
民集 第23巻11号2137頁
参照法条
利息制限法1条,利息制限法4条,民法705条
論点54第705条民法

債務者が利息制限法所定の制限をこえる利息・損害金を任意に支払つた場合における超過部分の充当による元本完済後の支払額の返還請求の許否

裁判要旨利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息・損害金を任意に支払つた債務者は、制限超過部分の充当により計算上元本が完済となつたときは、その後に債務の存在しないことを知らないで支払つた金額の返還を請求することができる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和43年11月13日 昭和41(オ)1281
登載
民集 第22巻12号2526頁
参照法条
利息制限法1条,利息制限法4条,民法705条
論点55第705条民法

一 登記の欠缺を主張するにつきいわゆる背信的悪意者とはいえないとされた事例。
二 不動産の賃借人が賃貸人から該不動産を譲り受けた後に第三者がこれを二重に譲り受けて先に所有権移転登記をした場合と民法第五二〇条の規定の適用関係。
三 民法第七〇五条〈債務の不存在を知ってした弁済〉の適用がないとされた事例。

裁判要旨一 甲が地主丙から賃借中の土地上に所有する家屋を乙に贈与し、右事実を前提として、甲もみずから責任を持つ旨口添をして乙丙間に該土地の賃貸借契約が締結され、爾来その関係が九年余にわたつて継続してきた等判示のような事実があつたとしても、丙が右家屋を甲から買い受けてその旨の移転登記を経由するまでの経緯について判示の事情があるときは、丙は右家屋について乙の所有権取得登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する第三者にあたらないような背信的悪意者とはいえない。
二 不動産の賃借人が賃貸人から該不動産を譲り受けてその旨の所有権移転登記をしないうちに、第三者が右不動産を二重に譲り受けてその旨の所有権移転登記をしたため、前の譲受人である賃借人において右不動産の取得を後の譲受人である第三者に対抗できなくなつたような場合には、いつたん混同によつて消滅した右賃借権は、右第三者の所有権取得によつて、同人に対する関係では消滅しなかつたことになると解するのが相当である。
三 居住家屋の賃料の支払義務のない者が、該家屋の所有者から賃料支払の催告を受けたため、これを支払うべき筋合はないが賃料不払等とこじつけて家屋明渡訴訟を提起された場合の防禦方法として支払う旨とくに留保の表示をしたうえ、請求額を支払つた等判示事実関係のように、債務の不存在を知つて弁済したことも無理からぬような客観的事情がある場合には、民法第七〇五条〈債務の不存在を知ってした弁済〉の適用はないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年12月21日 昭和37(オ)904
登載
民集 第19巻9号2221頁
参照法条
民法177条,民法520条,民法601条,民法705条
論点56第705条民法

利息制限法第二条により元本の支払に充当されたものとみなされた金員相当額を再度支払つた場合とその返還請求権の有無。

裁判要旨利息制限法第二条により元本の支払に充当されたものとみなされた金員相当額を再度支払つた場合は、借主が同条の趣旨を知つていたものでない限り、その返還を請求する権利が生ずる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年11月1日 昭和35(オ)115
登載
集民 第63号1頁
参照法条
利息制限法2条,民法705条
論点57第705条民法

民法第七〇五条〈債務の不存在を知ってした弁済〉の適用がないと認められた事例。

裁判要旨家屋の賃料が地代家賃統制令による統制額を超えるものであることを知りながら、債務不履行による責を問われることあるべきをおそれ、賃借人が「後日超過部分については、返還請求をなすべき」旨を特に留保して、やむをえず約定賃料の支払をしたときは、民法第七〇五条〈債務の不存在を知ってした弁済〉の適用はないと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年5月6日 昭和30(オ)847
登載
民集 第14巻7号1127頁
参照法条
民法705条,地代家賃統制令3条
論点58第705条民法

地代家賃統制令の統制額を超える賃料の支払と非債弁済。

裁判要旨地代家賃統制令の統制額を超える賃料を、自己に支払義務のないことを知りながら支払つた賃借人は、その返還を請求することができない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和35年4月14日 昭和32(オ)394
登載
民集 第14巻5号849頁
参照法条
地代家賃統制令3条,民法705条
論点59第705条民法

地代家賃統制令違反の権利金の支払が非債弁済と認められた一事例

裁判要旨権利金の受領が地代家賃統制令により禁止されている場合において、借主が貸主に対し権利金の支払を約し、法律上その支払義務のないことを知りながらこれを支払つたときは、他に特段の事由のないかぎり、民法第七〇五条〈債務の不存在を知ってした弁済〉により、借主は右権利金の返還を請求することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年11月15日 昭和30(オ)468
登載
民集 第11巻12号1962頁
参照法条
地代家賃統制令12条の2,民法705条
論点60第707条民法

供託官が供託金取戻請求権についてされた無効な転付命令を有効なものと誤信して右転付命令取得者に供託元利金の払渡をした場合と民法七〇七条一項〈他人の債務の弁済〉の類推適用の有無

裁判要旨供託官が供託金取戻請求権についてされた無効な転付命令を有効なものと誤信して転付命令取得者に供託元利金の払渡しをした場合において、右転付命令取得者が当該転付命令の執行債権につき証書の毀滅、担保の放棄等の事由を生じさせたとしても、右払渡しに係る供託元利金の不当利得返還請求権について民法七〇七条一項〈他人の債務の弁済〉を類推適用すべきものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和62年4月16日 昭和61(オ)625
登載
集民 第150号705頁
参照法条
民法707条1項,民事執行法160条
論点61第707条民法

民法七〇七条一項〈他人の債務の弁済〉にいう証書を毀滅したときにあたらない場合

裁判要旨手形債権者が手形金の弁済を受けて弁済者に手形を引渡しても、弁済者において不当利得として右弁済金の返還を求めるにあたり右手形の返還を申し出てその履行の提供をしているときは、右返還の申出が時機に遅れたものであることについての立証がない限り、民法七〇七条一項〈他人の債務の弁済〉にいう証書を段滅したときにはあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年11月2日 昭和53(オ)785
登載
集民 第125号551頁
参照法条
民法707条1項
論点62第708条民法

民法七〇八条〈不法原因給付〉にいう給付と既登記建物の贈与に基づく引渡

裁判要旨不法の原因により既登記建物を贈与した場合、その引渡をしただけでは、民法七〇八条〈不法原因給付〉にいう給付があつたとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和46年10月28日 昭和45(オ)10
登載
民集 第25巻7号1069頁
参照法条
民法708条
論点63第708条民法

強制執行を免れるため長男の承諾を得てその名義でなされた建物の所有権保存登記が不法原因給付にあたらないとされた事例

裁判要旨建物を建築してその所有権を取得した者が、自己の債権者からの強制執行を免れるため、長男の承諾を得てその名義で所有権保存登記を経由した場合であつても、その登記を経由した当時はいまだ右建物につき現実に強制執行を受けるような客観的状態がなかつたなどの事実関係が認められるときは、長男の名義でなされた右所有権保存登記は、民法七〇八条〈不法原因給付〉本文にいう不法原因給付にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年10月22日 昭和45(オ)472
登載
集民 第101号141頁
参照法条
民法708条,刑法96条の2
論点64第708条民法

一、不法の原因により未登記建物を贈与した贈与した場合その引渡は民法七〇八条〈不法原因給付〉にいう給付にあたるか
二、所有権に基づく返還請求と民法七〇八条
三、建物の所有者のした贈与に基づく履行行為が不法原因給付にあたる場合における右建物の所有権の帰すう
四、建物の贈与が不法原因給付であつてその所有権が受贈者に帰属した場合における受贈者に対する登記手続請求の許否

裁判要旨一、不法の原因により未登記建物を贈与した場合、その引渡は、民法七〇八条〈不法原因給付〉にいう給付にあたる。
二、建物の贈与に基づく引渡が不法原因給付にあたる場合に、贈与者は、目的物の所有権が自己にあることを理由として、右建物の返還を請求することはできない。
三、建物の所有者のした贈与に基づく履行行為が不法原因給付にあたる場合には、贈与者において給付した物の返還を請求できないことの反射的効果として、右建物の所有権は、受贈者に帰属するに至ると解するのが相当である。
四、未登記建物の贈与が不法原因給付であつてその所有権が受贈者に帰属した場合において、贈与者が右建物につき所有権保存登記を経由したときは、受贈者が贈与者に対し建物の所有権に基づいて右所有権保存登記の抹消登記手続を請求することは、不動産物権に関する法制の建前からいつて許されるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和45年10月21日 昭和41(オ)436
登載
民集 第24巻11号1560頁
参照法条
民法708条,民法206条,民法177条
論点65第708条民法

男性に妻のあることを知りながら情交関係を結んだ女性の慰籍料請求

裁判要旨女性が、男性に妻のあることを知りながら情交関係を結んだとしても、情交の動機が主として男性の詐言を信じたことに原因している場合で、男性側の情交関係を結んだ動機、詐言の内容程度およびその内容についての女性の認識等諸般の事情を斟酌し、女性側における動機に内在する不法の程度に比し、男性側における違法性が著しく大きいものと評価できるときには、貞操等の侵害を理由とする女性の男性に対する慰籍料請求は、許される。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和44年9月26日 昭和42(オ)790
登載
民集 第23巻9号1727頁
参照法条
民法709条,民法710条,民法708条
論点66第708条民法

一 銀行員の預金業務について銀行に民法第七一五条第一項〈使用者等の責任〉の責任があるとされた事例
二 不法原因給付にあたらないとされた事例

裁判要旨一 原審認定の事実関係のもとでは、銀行員がその業務を行なうにあたり預金として受入れる意思がないのに相手方から預け入れ小切手を騙取したものとして銀行に民法第七一五条第一項〈使用者等の責任〉の責任を問うことができる。
二 原審認定の事実関係のもとでは、貸付金が貸主が他から横領したものとしても、右金員の貸付をもつて不法原因の給付とは解せられない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和42年6月22日 昭和39(オ)838
登載
集民 第87号1087頁
参照法条
民法715条1項,民法708条
論点67第708条民法

一 債権者からの差押を免れるためにした不動産の仮装売買が不法原因給付にあたらないとされた事例
二 代表取締役の欠けている株式会社の訴提起と民訴法第五八条第五六条の類推適用

裁判要旨一 会社が債権者からの差押をうけるおそれがあつたので、第三者が当該会社の財産管理処分の任にあたつていた取締役と図り、会社所有の不動産につき売買を仮装して、自己の名義に所有権移転登記手続を経由した場合において、やがて会社に対し右不動産の所有名義を返還すべきことを知悉していたなど、判示事実関係のもとでは、第三者は民法第七〇八条本文にいう不法原因給付を主張して不動産所有名義の返還請求を拒むことができない。
二 株式会社が代表取締役を欠くにいたつた場合において、会社を代表して訴を提起するため仮代表取締役の選任の方法によつたのでは遅滞のため損害を受けるおそれがあるときは、利害関係人は、民訴法第五八条、第五六条の規定を類推して特別代理人の選任を申請することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年7月28日 昭和40(オ)740
登載
民集 第20巻6号1265頁
参照法条
民法708条,刑法96条の2,民訴法58条,民訴法56条
論点68第708条民法

法定額をこえる選挙費用の立替と不法原因給付の成否。

裁判要旨選挙費用の法定額をこえて支出される関係にあることを知りながら候補者のために選挙費用の一部を立て替えた場合でも、右立替は不法原因給付にあたらないと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年3月25日 昭和39(オ)1198
登載
民集 第19巻2号497頁
参照法条
民法708条
論点69第708条民法

不法な契約によつて生じた債権のためにされた抵当権設定登記の抹消請求と民法第七〇八条〈不法原因給付〉の適用の有無。

裁判要旨賭博行為によつて生じた金銭債権のためにされた抵当権設定登記の抹消を請求するについては、民法第七〇八条〈不法原因給付〉は適用されないものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年12月17日 昭和40(オ)362
登載
民集 第19巻9号2178頁
参照法条
民法708条
論点70第708条民法

免許を受けるべきであるにかかわらずこれを受けていない自動車運送事業の経営により得べかりし営業利益の喪失を理由とする損害賠償請求を認容した事例。

裁判要旨自動車の売主が債務の履行を遅滞したため、買主が右自動車を運送事業の用に供し、運送賃を取得することができなかつた場合には、その買主が当該運送事業の免許を受けるべきであるにかかわらずこれを受けていないときでも、債務不履行により得べかりし営業利益喪失の損害をこうむつたものとして、売主に対しその賠償を請求することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年10月29日 昭和37(オ)1300
登載
民集 第18巻8号1823頁
参照法条
民法415条,民法416条,民法708条,道路運送法4条1項
論点71第708条民法

市有地の賃借権を市条例所定の市長の承認なしに譲渡する契約の効力。

裁判要旨市有地の賃借権を譲渡するには、市条例所定の市長の承認を要するとしても、当事者がその承認を予期して右譲渡契約を締結することは違法でなく、その対価を取得しても、不法原因給付とはならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年10月22日 昭和37(オ)98
登載
集民 第68号467頁
参照法条
民法612条,民法708条,昭和24.4.1大阪市条例19号「大阪市財産及び営造物条例」12条
論点72第708条民法

強制執行を免れるためにした財産の仮装譲渡が不法原因給付にあたらないとされた事例。

裁判要旨遺産相続人が、被相続人の債権者からの強制執行を免れるために、相続財産である不動産につき売買を仮装して、第三者に対する所有権移転登記を経由した場合であつても、右登記が当該第三者の主導的提唱に基づきなされたものであり、当時右不動産につき強制執行を受けるべき差し迫つた具体的危険が認め難いなど、判示事実関係のもとでは、右仮装譲渡は民法第七〇八条本文にいう不法原因給付にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年6月12日 昭和33(オ)183
登載
民集 第16巻7号1305頁
参照法条
民法708条本文,刑法96条ノ2
論点73第708条民法

共同事業達成のため関係官庁に対する運動費として当事者の一方が相手方に交付した金員の返還を約する当事者間の合意が有効とされた事例

裁判要旨当事者間の共同事業を達成するために、市復興区画調整委員会等に対する運動費として、当事者の一方が相手方に対し、合計金三〇万円を交付した場合、右が不法原因給付に当るとしても、後にその返還を約する当事者間の合意は、民法第七〇八条〈不法原因給付〉の禁ずるところではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年5月25日 昭和35(オ)1215
登載
民集 第16巻5号1195頁
参照法条
民法90条,民法708条
論点74第708条民法

石油製品配給規則違反の給付と不法原因給付の成否

裁判要旨石油製品配給規則第一条、第一一条、第一二条に違反し配給割当公文書と引換でなしにされた揮発油の譲渡といえども、必ずしも民法第七〇八条にいわゆる不法原因給付に当るとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年3月8日 昭和32(オ)651
登載
民集 第16巻3号500頁
参照法条
民法708条,石油製品配給規則(昭和24年総理庁令、大蔵省令、法務庁令、文部省令、厚生省令、農林省令、商工省令、運輸省令、逓信省令、労働省令、建設省令1号)1条,石油製品配給規則(昭和24年総理庁令、大蔵省令、法務庁令、文部省令、厚生省令、農林省令、商工省令、運輸省令、逓信省令、労働省令、建設省令1号)11条,石油製品配給規則(昭和24年総理庁令、大蔵省令、法務庁令、文部省令、厚生省令、農林省令、商工省令、運輸省令、逓信省令、労働省令、建設省令1号)12条
論点75第708条民法

統制法規に違反してなされた給付と不法原因給付の成否。

裁判要旨統制法規に違反した売買契約に基く給付が、民法第七〇八条〈不法原因給付〉にいう不法原因によるものかどうかは、その行為の実質が当時の国民生活並びに国民感情に照らし反道徳的な醜悪な行為としてひんしゆくすべき程度の反社会性を有するかどうかによつて決するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年9月16日 昭和31(オ)1074
登載
民集 第14巻11号2209頁
参照法条
民法708条,臨時物資需給調整法(昭和21年法律32号)1条1項,指定配給物資配給手続規程(昭和22年内閣訓令3号)1条,農産品配給規則(昭和22年農林省75号)1条1号,農産品配給規則(昭和22年農林省75号)2条,農産品配給規則(昭和22年農林省75号)3条
論点76第708条民法

酌婦としての稼働契約に伴い消費賃借名義で交付された金員の返還請求の許容

裁判要旨酌婦としての稼働契約が公序良俗に反し無効である場合には、これに伴い消費賃借名義で交付された金員の返還請求は許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年10月7日 昭和28(オ)622
登載
民集 第9巻11号1616頁
参照法条
民法90条,民法708条
論点77第708条民法

将来成立しない場合は返還を受くべき約旨の下に将来成立すべき賃借権の対価として金員を交付した場合と不法原因給付

裁判要旨将来不成立の場合は返還を受くべき約旨の下に将来成立すべき賃借権の対価として金員を交付した場合において、その賃借権が不成立に終つたときは、その金員の交付をもつて権利金の交付と目すべきでなくこれをもつて直ちに不法原因給付ということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年9月10日 昭和27(オ)726
登載
民集 第8巻9号1589頁
参照法条
民法708条,地代家賃統制令12条の2
論点78第708条民法

消費貸借成立のいきさつに不法の点があつた場合における貸金返還請求と民法第九〇条〈公序良俗〉および第七〇八条〈不法原因給付〉の適用の有無

裁判要旨消費貸借成立のいきさつにおいて、貸主の側に多少の不法があつたとしても、借主の側にも不法の点があり、前者の不法性が後者のそれに比しきわめて微弱なものに過ぎない場合には、民法第九〇条〈公序良俗〉および第七〇八条〈不法原因給付〉は適用がなく、貸主は貸金の返還を請求することができるものと解するのを相当とする。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年8月31日 昭和27(オ)13
登載
民集 第8巻8号1557頁
参照法条
民法90条,民法587条,民法708条
論点79第708条民法

証券会社の従業員が顧客に利回り保証の約束をして株式等の取引を勧誘し一連の取引をさせた場合に右取引による顧客の損失について証券会社が不法行為責任を免れないとされた事例

裁判要旨証券会社の営業部員が、株式等の取引の勧誘をするに際し、取引の開始を渋る顧客に対し、法令により禁止されている利回り保証が会社として可能であるかのように装って利回り保証の約束をして勧誘し、その旨信じた顧客に取引を開始させ、その後、同社の営業部長や営業課長も右約束を確認するなどして取引を継続させ、これら一連の取引により顧客が損失を被ったもので、顧客が右約束の書面化や履行を求めてはいるが、自ら要求して右約束をさせたわけではないなど判示の事実関係の下においては、顧客の不法性に比し、証券会社の従業員の不法の程度が極めて強いものと評価することができ、証券会社は、顧客に対し、不法行為に基づく損害賠償責任を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成9年4月24日 平成8(オ)390
登載
集民 第183号263頁
参照法条
民法708条,民法709条,民法715条,証券取引法(平成3年法律第96号による改正前のもの)50条1項,証券会社の健全性の準則等に関する省令(昭和40年大蔵省令第60号。平成3年大蔵省令第55号による改正前のもの)1条
論点80第708条民法

公序良俗に反する無効な出資と配当に関する契約により給付を受けた金銭の返還につき,当該給付が不法原因給付に当たることを理由として拒むことは信義則上許されないとされた事例

裁判要旨破産者甲との間の契約が公序良俗に反して無効であるとして,乙が当該契約により給付を受けた金銭の返還を求められた場合において,当該金銭は無限連鎖講に該当する事業によって給付された配当金であって他の会員が出えんした金銭を原資とするものであり,当該事業の会員の相当部分の者は甲の破綻により損失を受けて破産債権者の多数を占めるに至っており,甲の破産管財人が破産債権者への配当を行うなど適正かつ公平な清算を図ろうとするため乙に対して当該配当金の返還を求めているなど判示の事情の下においては,乙が当該配当金の給付が不法原因給付に当たることを理由としてその返還を拒むことは,信義則上許されない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成26年10月28日 平成24(受)2007
登載
民集 第68巻8号1325頁
参照法条
民法1条2項,民法90条,民法708条,破産法78条1項,無限連鎖講の防止に関する法律2条,無限連鎖講の防止に関する法律3条
論点81第708条民法

Yが投資資金名下にXから金員を騙取した場合に,Xからの不法行為に基づく損害賠償請求においてYが詐欺の手段として配当金名下にXに交付した金員の額を損益相殺等の対象としてXの損害額から控除することは,民法708条〈不法原因給付〉の趣旨に反するものとして許されないとされた事例

裁判要旨Yが自己を介して米国債を購入すれば高額の配当金を得ることができると架空の事実を申し向けてXから金員を騙取した場合において,Yが,詐欺の発覚を防ぎ,更なる詐欺を実行するための手段として,あたかも米国債を購入して配当金を得たかのように装い,配当金名下にXに金員を交付したという事情の下では,XのYに対する不法行為に基づく損害賠償請求において同金員の額を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象としてXの損害額から控除することは,民法708条〈不法原因給付〉の趣旨に反するものとして許されない。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年6月24日 平成19(受)1146
登載
集民 第228号385頁
参照法条
民法708条,民法709条,刑法246条1項
論点82第708条民法

1 社会の倫理,道徳に反する醜悪な行為に該当する不法行為の被害者が当該醜悪な行為に係る給付を受けて利益を得た場合に,被害者からの損害賠償請求において同利益を損益相殺等の対象として被害者の損害額から控除することの可否
2 いわゆるヤミ金融業者が元利金等の名目で違法に金員を取得する手段として著しく高利の貸付けの形をとって借主に金員を交付し,借主が貸付金に相当する利益を得た場合に,借主からの不法行為に基づく損害賠償請求において同利益を損益相殺等の対象として借主の損害額から控除することは,民法708条〈不法原因給付〉の趣旨に反するものとして許されないとされた事例

裁判要旨1 社会の倫理,道徳に反する醜悪な行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るとともに,当該醜悪な行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,同利益については,加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく,被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除することも,民法708条〈不法原因給付〉の趣旨に反するものとして許されない。
2 いわゆるヤミ金融の組織に属する業者が,借主から元利金等の名目で違法に金員を取得して多大の利益を得る手段として,年利数百%〜数千%の著しく高利の貸付けという形をとって借主に金員を交付し,これにより,当該借主が,弁済として交付した金員に相当する損害を被るとともに,上記貸付けとしての金員の交付によって利益を得たという事情の下では,当該借主から上記組織の統括者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において同利益を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として当該借主の損害額から控除することは,民法708条の趣旨に反するものとして許されない。
(1,2につき意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年6月10日 平成19(受)569
登載
民集 第62巻6号1488頁
参照法条
(1,2につき)民法708条,民法709条 (2につき)出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民法 第703条(不当利得の返還義務) 詳細ページ
(不当利得の返還義務)
第七百三条法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
民法 第704条(悪意の受益者の返還義務等) 詳細ページ
(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
民法 第705条(債務の不存在を知ってした弁済) 詳細ページ
(債務の不存在を知ってした弁済)
第七百五条債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。
民法 第706条(期限前の弁済) 詳細ページ
(期限前の弁済)
第七百六条債務者は、弁済期にない債務の弁済として給付をしたときは、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、債務者が錯誤によってその給付をしたときは、債権者は、これによって得た利益を返還しなければならない。
民法 第707条(他人の債務の弁済) 詳細ページ
(他人の債務の弁済)
第七百七条債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合において、債権者が善意で証書を滅失させ若しくは損傷し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、その弁済をした者は、返還の請求をすることができない。
2前項の規定は、弁済をした者から債務者に対する求償権の行使を妨げない。
民法 第708条(不法原因給付) 詳細ページ
(不法原因給付)
第七百八条不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。