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不法行為

民法の出題範囲にある論点です。条文と判例から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

不法行為による損害賠償は金銭賠償を原則とし、将来の利益・費用を賠償額に含める場合は法定利率で中間利息を控除する。被害者に過失があれば裁判所がこれを考慮して賠償額を調整でき、名誉毀損では賠償に代えて、又は賠償とともに名誉回復の処分を命じることもできる。請求権は知った時から3年・不法行為時から20年で時効消滅するのが原則だが、生命・身体を害する場合は知った時からの期間が5年に延び、生命・身体の侵害による損害賠償請求権一般についても10年の時効が20年に延長される。

不法行為
項目内容期間・数値
損害賠償の方法金銭賠償が原則-
中間利息の控除法定利率で控除-
過失相殺(不法行為)裁判所が賠償額を調整裁量
過失相殺(債務不履行・参考)責任の有無・額に考慮必要的
時効(通常・短期)知った時から起算3年
時効(生命・身体・短期)知った時から起算5年
時効(通常・長期)不法行為時から起算20年
時効(生命・身体・長期)一般則の長期時効を延長10年→20年
名誉毀損の救済原状回復の処分も可能-
注文者の責任過失なければ原則無責-
責任能力(未成年)弁識能力なければ無責-
  • 722条1項は417条・417条の2を不法行為による損害賠償に準用する規定である
  • 167条は不法行為に限らず、生命・身体の侵害による損害賠償請求権一般に適用される規定である
  • 418条(債務不履行の過失相殺)は比較のために掲載した参考規定であり、不法行為の規定ではない
  • 589条(消費貸借の利息)は本表には含めていない
  • 名誉毀損の処分は、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに命じることができる
  • 注文者の責任は、注文又は指図について注文者に過失があった場合に限り生じる
1

不法行為

不法行為について、条文は何を定めているか。

第722条損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺損害賠償の算定と過失相殺の基準を定める2項判例 23件
  • 417条〈損害賠償の方法〉を準用し金銭賠償が原則になる
  • 417条の2〈中間利息の控除〉を準用し中間利息を法定利率で控除する
  • 被害者に過失があれば裁判所が賠償額を調整できる
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第724_2条人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効生命・身体侵害なら短期時効を5年に延長1項判例なし
  • 知った時から3年の時効が5年に延びる
  • 起算点(知った時)は変わらない
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第167条人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効生命・身体侵害なら長期の時効も20年に延長1項判例 18件
  • 10年の長期消滅時効が20年に延びる
  • 一般の消滅時効(10年)を20年にする特則
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第724条不法行為による損害賠償請求権の消滅時効不法行為の賠償請求権は3年・20年で時効消滅1項・2号判例 16件
  • 損害と加害者を知った時から3年で時効消滅
  • 不法行為の時から20年で時効消滅
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第723条名誉毀損における原状回復名誉毀損は名誉回復の処分を命じられる1項判例 8件
  • 被害者の請求で名誉回復に適当な処分を命じられる
  • 損害賠償に代えて、又は賠償とともに命じられる
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第417_2条中間利息の控除将来分の損害額は法定利率で中間利息を控除2項判例なし
  • 将来得る利益は請求権発生時の法定利率で控除する
  • 将来負担する費用も同様に法定利率で控除する
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第716条注文者の責任注文者は原則責任を負わないが指図の過失は別1項判例 4件
  • 請負人が第三者に与えた損害は注文者は原則無責
  • 注文・指図に注文者の過失があれば責任を負う
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第418条過失相殺参考:債務不履行の過失相殺は責任の有無も左右1項判例 5件
  • 債権者の過失は責任の有無・額の両方に考慮する
  • 損害の発生・拡大についての過失も対象
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第712条責任能力是非を判断できない未成年は賠償責任を負わない1項判例 3件
  • 自分の行為の責任を弁識する能力がなければ無責
  • 対象は未成年者に限られる
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第589条利息金銭消費貸借の利息は特約がなければ発生しない2項判例なし
  • 特約がなければ貸主は利息を請求できない
  • 特約があれば受け取った日以後の利息を請求できる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第722条民法

一 公立学校における教師の教育活動と国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」

二 損害賠償請求権者が一時金による支払を訴求している場合と定期金による支払を命ずる判決の許否

裁判要旨一 国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれる。

二 損害賠償請求権者が訴訟上一時金による支払を求めている場合には、定期金による支払を命ずる判決をすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年2月6日 昭和59(オ)1058
登載
集民 第150号75頁
参照法条
国家賠償法1条1項,民法417条,民法722条1項
論点2第722条民法

一、身体傷害による財産上および精神上の損害の賠償請求における請求権および訴訟物の個数
二、不法行為による損害賠償の一部請求と過失相殺

裁判要旨一、同一事故により生じた同一の身体傷害を理由として財産上の損害と精神上の損害との賠償を請求する場合における請求権および訴訟物は、一個である。
二、不法行為に基づく一個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたつては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を認容することができるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年4月5日 昭和43(オ)943
登載
民集 第27巻3号419頁
参照法条
民訴法186条,民訴法224条1項,民法709条,民法710条,民法722条2項
論点3第722条民法

加害自動車と同一方向に進行していた被害自転車の衝突において自転車に過失があるかどうかを判断するにつき審理不尽・理由不備・理由そごの違法があるとされた事例

裁判要旨加害自動車と同一方向に進行していた被害自転車とが衝突した場合において、自転車に過失があるかどうかを判断するにつき、自転車が道路上で方向を転ずるのを自動車の運転手が三・二メートル手前で発見したと認定しながら、判示事情のもとで自転車が自動車の直前においてUターンしたと認むべきではないと認定し、自転車には過失はないと判断したのは、審理不尽・理由不備・理由そごの違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年3月14日 昭和41(オ)54
登載
集民 第90号647頁
参照法条
民法709条,民法722条2項,自動車損害賠償保障法3条,民訴法394条,民訴法395条1項6号
論点4第722条民法

一、証言当時九歳、八歳の児童の証言に信憑性がないとはいえないとされた事例
二、児童の遊戯による傷害に違法性があるとされた事例
三、親権者に児童の監督について過失がないとされた事例

裁判要旨一、証言当時九歳、八歳の児童であつても、その証言事項は単純であり、かつ、印象深い出来事であるなど判示のような事情のもとにおいては、その証言に信憑性がないものということはできない。
二、児童が判示のごとく弓矢を携えてする戦争ごつこまたはインデイアンごつこは、遊戯中の行為であるからといつても、その行為の態様、なかんずく失明という重大な結果を発生するおそれがあることなどからみて社会的に是認されるものとはいえず、違法性がないものとはいえない。
三、児童が弓矢を携行して外出するに際し、親権者である母が、これを現認し、児童に対し弓矢の使用を禁じその旨を約束せしめていたなど判示のような事情のもとにおいては、親権者である父母に児童の監督責任上の過失があるものとすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年2月9日 昭和42(オ)966
登載
集民 第90号255頁
参照法条
民訴法271条,民法722条2項,民法709条
論点5第722条民法

一 児童が道路上で遊ぶことについて親権者に監督上の過失がないとされた事例
二 子が重傷を受けた場合の父母の精神的苦痛について慰藉料請求が認められた事例

裁判要旨一 父母が子の戸外行動についてそのつど特別の具体的注意ないし監視をしないからといつて、右の子が小学校二年生の男児であること、平常より同児に対し道路上で遊ぶ際の車両等に対する一般的注意が父母によつて与えられていたことなど判示事情のもとでは、父母に親権者としての監督上の過失があつたものとはいえない。
二 満七年二月の男児が自動車事故によつて重傷を受け、通算約一一月にわたる入院、約一〇回に及ぶ手術等の加療の結果、両足切断は免れたが、現になお判示のような身体障害をのこしている等判示事情のもとで父母が被つた精神的苦痛は、右事故によつて同児の生命が侵害された場合に比し著しく劣るものでなく、父母は、右苦痛による慰藉料を請求することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年1月31日 昭和40(オ)1004
登載
民集 第21巻1号61頁
参照法条
民法820条,民法722条2項,民法711条
論点6第722条民法

生命を害された責任無能力の子に過失があつた場合に父母のなす慰藉料請求と民法第七二二条第二項

裁判要旨他人の不法行為により生命を害された者の父母が民法第七一一条の規定に基き慰藉料を請求する場合において、たとえ右被害者に過失があつても、その者が行為の責任を弁識するに足るべき知能を具えない幼少者であつたときは、慰藉料の額を定めるにつき民法第七二二条第二項を適用しなくても、違法ではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和31年7月20日 昭和29(オ)726
登載
民集 第10巻8号1079頁
参照法条
民法711条,民法722条2項
論点7第722条民法

県が職員らの不正につき損害賠償金を支払ったことにより取得した求償権の一部を知事において行使しないことが違法な怠る事実に当たるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨県が教員採用試験における職員らの不正のため不合格となった受験者らに損害賠償金を支払ったことにより取得した求償権の一部を知事において行使しないことが財産の管理を違法に怠るものであるとして提起された住民訴訟において,上記不正は県の教育委員会の職員らが現職の教員を含む者から依頼を受けて受験者の得点を操作するなどして組織的に行われ,一部は賄賂の授受を伴うなど悪質なものであり,その結果も本来合格していたはずの多数の受験者が不合格となるなど極めて重大であったことに鑑み,これに関与した職員らに対する退職手当の返納命令や不支給は正当なものであったという事情の下では,教員の選考に試験の総合点以外の要素を加味すべきであるとの考え方に対して上記教育委員会が確固とした方針を示してこなかったことや,上記返納命令に基づく返納の実現が必ずしも確実ではなかったこと等の抽象的な事情のみから直ちに上記求償権のうち上記返納に係る額に相当する部分を行使しないことが違法な怠る事実に当たるとはいえないとした原審の判断には,違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成29年9月15日 平成28(行ヒ)33
登載
集民 第256号77頁
参照法条
国家賠償法1条2項,民法1条2項,民法722条2項,地方自治法242条の2第1項3号,地方自治法242条の2第1項4号
論点8第722条民法

労働者に過重な業務によって鬱病が発症し増悪した場合において,使用者の安全配慮義務違反等に基づく損害賠償の額を定めるに当たり,当該労働者が自らの精神的健康に関する一定の情報を使用者に申告しなかったことをもって過失相殺をすることができないとされた事例

裁判要旨労働者に過重な業務によって鬱病が発症し増悪した場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,使用者の安全配慮義務違反等に基づく損害賠償の額を定めるに当たり,当該労働者が自らの精神的健康に関する一定の情報を使用者に申告しなかったことをもって過失相殺をすることはできない。
(1) 当該労働者は,鬱病発症以前の数か月に休日や深夜を含む相応の時間外労働を行い,その間,最先端の製品の製造に係るプロジェクトの工程で初めて技術担当者のリーダーになってその職責を担う中で,業務の期限や日程を短縮されて督促等を受け,上記工程の技術担当者を理由の説明なく減員された上,過去に経験のない異種の製品の開発等の業務も新たに命ぜられるなど,その業務の負担は相当過重であった。
(2) 上記情報は,神経科の医院への通院,その診断に係る病名,神経症に適応のある薬剤の処方等を内容とし,労働者のプライバシーに属する情報であり,人事考課等に影響し得る事柄として通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される性質の情報であった。
(3) 上記(1)の過重な業務が続く中で,当該労働者は,同僚から見ても体調が悪い様子で仕事を円滑に行えるようには見えず,頭痛等の体調不良が原因であると上司に伝えた上で欠勤を繰り返して重要な会議を欠席し,それまでしたことのない業務の軽減の申出を行い,産業医にも上記欠勤の事実等を伝え,使用者の実施する健康診断でも頭痛,不眠,いつもより気が重くて憂鬱になる等の症状を申告するなどしていた。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成26年3月24日 平成23(受)1259
登載
集民 第246号89頁
参照法条
民法418条,民法722条2項
論点9第722条民法

自動車保険契約の人身傷害補償条項の被保険者である被害者に過失がある場合において上記条項に基づき保険金を支払った保険会社による損害賠償請求権の代位取得の範囲

裁判要旨保険会社は保険金請求権者の権利を害さない範囲内に限り保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する旨の定めがある自動車保険契約の人身傷害補償条項の被保険者である被害者に過失がある場合において,上記条項に基づき被害者が被った損害に対して保険金を支払った保険会社は,上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が民法上認められるべき過失相殺前の損害額を上回るときに限り,その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成24年5月29日 平成22(受)2035
登載
集民 第240号261頁
参照法条
商法(平成20年法律第57号による改正前のもの)662条,保険法25条,民法91条,民法709条,民法722条2項
論点10第722条民法

1 自動車保険契約の人身傷害条項に基づき保険金を支払った保険会社による損害金元本に対する遅延損害金の支払請求権の代位取得の有無
2 自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に過失がある場合において上記条項に基づき保険金を支払った保険会社による損害賠償請求権の代位取得の範囲

裁判要旨1 被害者が被る損害の元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めがない自動車保険契約の人身傷害条項に基づき被害者が被った損害に対して保険金を支払った保険会社は,上記保険金に相当する額の保険金請求権者の加害者に対する損害金元本の支払請求権を代位取得するものであって,損害金元本に対する遅延損害金の支払請求権を代位取得するものではない。
2 保険会社は保険金請求権者の権利を害さない範囲内に限り保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する旨の定めがある自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に過失がある場合において,上記条項に基づき被害者が被った損害に対して保険金を支払った保険会社は,上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が民法上認められるべき過失相殺前の損害額を上回る場合に限り,その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する。
(1,2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成24年2月20日 平成21(受)1461
登載
民集 第66巻2号742頁
参照法条
(1,2につき)商法(平成20年法律第57号による改正前のもの)662条,保険法25条,民法91条,民法709条,(2につき)民法722条2項
論点11第722条民法

Aが運転しBが同乗する自動二輪車とパトカーとが衝突しBが死亡した交通事故につき,Bの相続人がパトカーの運行供用者に対し損害賠償を請求する場合において,過失相殺をするに当たり,Aの過失をBの過失として考慮することができるとされた事例

裁判要旨Aが運転しBが同乗する自動二輪車と,これを停止させる目的で前方の路上に停車していたパトカーとが衝突し,Bが死亡した交通事故につき,Bの相続人が上記パトカーの運行供用者に対し損害賠償を請求する場合において,(1)AとBは,上記交通事故の前に上記自動二輪車を交代で運転しながら共同して暴走行為を繰り返し,上記パトカーに追跡されていたこと,(2)Aは,道路脇の駐車場に停車していた別のパトカーを見付け,これから逃れるため制限速度を大きく超過して走行するとともに,その様子をうかがおうとしてわき見をするという運転行為をしたため上記交通事故が発生したものであることなど判示の事実関係の下では,Aの上記(2)の運転行為はAとBが共同して行っていた上記(1)の暴走行為の一環を成すものとして,過失相殺をするに当たり,Aの上記(2)の運転行為における過失をBの過失として考慮することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年7月4日 平成19(受)1386
登載
集民 第228号399頁
参照法条
民法722条2項
論点12第722条民法

業務上の過重負荷と基礎疾患とが共に原因となって従業員が死亡した場合において,使用者の不法行為を理由とする損害賠償の額を定めるに当たり,使用者による過失相殺の主張が訴訟上の信義則に反するとして民法722条2項の規定を類推適用しなかった原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨業務上の過重負荷と従業員Aの基礎疾患とが共に原因となってAが急性心筋虚血により死亡した場合において,(1)Aは,虚血性心疾患の危険因子となる家族性高コレステロール血症にり患し,冠状動脈の2枝に障害があり,陳旧性心筋梗塞の合併症を有していたこと,(2)使用者は,原審(控訴審)において初めて過失相殺の主張をしたが,第1審の段階ではAが家族性高コレステロール血症にり患していた事実を認識していなかったことがうかがわれることなど判示の事情の下では,使用者の不法行為を理由とする損害賠償の額を定めるに当たり,上記過失相殺の主張が訴訟上の信義則に反するとして民法722条2項の規定を類推適用しなかった原審の判断には,違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成20年3月27日 平成18(受)1870
登載
集民 第227号585頁
参照法条
民法722条2項,民訴法2条
論点13第722条民法

交通事故の加害者Yが被害者Xに賠償すべき人的損害の額の算定に当たり,Xの父が締結していた自動車保険契約の人身傷害補償条項に基づきXが支払を受けた保険金の額を控除した原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨Yが運転する車両との衝突事故により傷害を負ったXが,Xの父が保険会社との間で締結していた自動車保険契約の人身傷害補償条項に基づき保険金の支払を受けた場合において,上記保険金の支払をもってYの損害賠償債務の履行と同視することはできないこと,上記保険契約にはいわゆる代位に関する約定があり,上記保険会社は上記保険金の支払によってXのYに対する損害賠償請求権の一部を代位する可能性があるが,原審が確定した事実関係からは,上記条項を含む上記保険契約の具体的内容等が明らかではないことなど判示の事情の下では,上記事故によるXの人的損害についてYが賠償すべき額を算定するに当たり,上記保険契約の具体的内容等について審理判断することなく,Xの過失割合による減額をした残損害額から上記保険金の額を控除した原審の判断には,違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年10月7日 平成20(受)12
登載
集民 第229号19頁
参照法条
民法709条,民法722条2項,商法662条
論点14第722条民法

内縁の夫の運転する自動車に同乗中に第三者の運転する自動車との衝突事故により傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合にその賠償額を定めるに当たり内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することの可否

裁判要旨内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが衝突し,それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において,その損害賠償額を定めるに当たっては,内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成19年4月24日 平成18(受)688
登載
集民 第224号261頁
参照法条
民法722条2項,民法第4編第2章第1節 婚姻の成立
論点15第722条民法

差押えがされている動産引渡請求権を更に差し押さえた債権者が先行する差押事件で実施される配当手続に参加するために執行裁判所に対して競合差押債権者の存在を認識させる措置を執るべき義務の有無

裁判要旨差押えがされている動産引渡請求権を更に差し押さえた債権者には,先行する差押事件で実施される配当手続に参加するために,自らの差押事件の執行裁判所及び先行する差押事件の執行裁判所に対し,自らの差押事件の進行について問い合わせをするなどして,競合差押債権者の存在を認識させる措置を執るべき義務はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成18年1月19日 平成17(受)761
登載
民集 第60巻1号109頁
参照法条
民事執行法85条3項,民事執行法165条4号,民事執行法166条,民法722条
論点16第722条民法

1 自動車損害賠償保障法72条1項後段の規定による損害のてん補額支払義務の履行期と履行遅滞
2 自動車損害賠償保障法72条1項後段の規定による損害のてん補額の算定に当たっての過失相殺と国民健康保険法58条1項の規定による葬祭費の支給額の控除との先後

裁判要旨1 自動車損害賠償保障法72条1項後段の規定による損害のてん補額支払義務は,期限の定めのない債務であり,政府が被害者から履行の請求を受けた時から履行遅滞となる。
2 自動車損害賠償保障法72条1項後段の規定による損害のてん補額の算定に当たり,被害者の過失をしんしゃくすべき場合であって,国民健康保険法58条1項の規定による葬祭費の支給額を控除すべきときは,被害者に生じた現実の損害の額から過失割合による減額をし,その残額からこれを控除する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年6月2日 平成16(受)29
登載
民集 第59巻5号901頁
参照法条
民法412条3項,民法722条2項,自動車損害賠償保障法施行令21条14号,自動車損害賠償保障法72条1項,自動車損害賠償保障法73条1項,国民健康保険法58条1項
論点17第722条民法

複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故においていわゆる絶対的過失割合を認定することができる場合における過失相殺の方法と加害者らの賠償責任

裁判要旨複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において,その交通事故の原因となったすべての過失の割合(いわゆる絶対的過失割合)を認定することができるときには,絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について,加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成15年7月11日 平成14(オ)1689
登載
民集 第57巻7号815頁
参照法条
民法719条,民法722条2項
論点18第722条民法

1 交通事故と医療事故とが順次競合し運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において各不法行為者が責任を負うべき損害額を被害者の被った損害額の一部に限定することの可否
2 交通事故と医療事故とが順次競合し運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合の各不法行為者と被害者との間の過失相殺の方法

裁判要旨1 交通事故と医療事故とが順次競合し,そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって,運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において,各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯責任を負うべきものであり,結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害額を案分し,責任を負うべき損害額を限定することはできない。
2 交通事故と医療事故とが順次競合し,そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって,運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において,過失相殺は,各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり,他の不法行為者と被害者との間における過失の割合をしんしゃくしてすることは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成13年3月13日 平成10(受)168
登載
民集 第55巻2号328頁
参照法条
民法719条,民法722条2項
論点19第722条民法

一 長時間にわたる残業を恒常的に伴う業務に従事していた労働者がうつ病にり患し自殺した場合に使用者の民法七一五条に基づく損害賠償責任が肯定された事例
二 業務の負担が過重であることを原因として心身に生じた損害につき労働者がする不法行為に基づく賠償請求において使用者の賠償額を決定するに当たり右労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等をしんしゃくすることの可否

裁判要旨一 大手広告代理店に勤務する労働者甲が長時間にわたり残業を行う状態を一年余り継続した後にうつ病にり患し自殺した場合において、甲は、業務を所定の期限までに完了させるべきものとする一般的、包括的な指揮又は命令の下にその遂行に当たっていたため、継続的に長時間にわたる残業を行わざるを得ない状態になっていたものであって、甲の上司は、甲が業務遂行のために徹夜までする状態にあることを認識し、その健康状態が悪化していることに気付いていながら、甲に対して業務を所定の期限内に遂行すべきことを前提に時間の配分につき指導を行ったのみで、その業務の量等を適切に調整するための措置を採らず、その結果、甲は、心身共に疲労困ぱいした状態となり、それが誘因となってうつ病にり患し、うつ状態が深まって衝動的、突発的に自殺するに至ったなど判示の事情の下においては、使用者は、民法七一五条〈使用者等の責任〉に基づき、甲の死亡による損害を賠償する責任を負う。
二 業務の負担が過重であることを原因として労働者の心身に生じた損害の発生又は拡大に右労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が寄与した場合において、右性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでないときは、右損害につき使用者が賠償すべき額を決定するに当たり、右性格等を、民法七二二条二項〈損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺〉の類推適用により右労働者の心因的要因としてしんしゃくすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成12年3月24日 平成10(オ)217
登載
民集 第54巻3号1155頁
参照法条
民法709条,民法715条,民法722条2項
論点20第722条民法

一つの交通事故について甲及び乙が連帯して損害賠償責任を負う場合に乙の損害賠償責任についてのみ過失相殺がされて両者の賠償すべき額が異なるときに甲のした損害の一部てん補が乙の賠償すべき額に及ぼす影響

裁判要旨一つの交通事故について甲及び乙が被害者丙に対して連帯して損害賠償責任を負う場合において、乙の損害賠償責任についてのみ過失相殺がされ、両者の賠償すべき額が異なるときは、甲がした損害の一部てん補は、てん補額を丙が甲からてん補を受けるべき損害額から控除しその残損害額が乙の賠償すべき額を下回ることにならない限り、乙の賠償すべき額に影響しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成11年1月29日 平成9(オ)2049
登載
集民 第191号265頁
参照法条
民法719条,民法722条2項
論点21第722条民法

夫婦が別居を開始してから九箇月余り後に出生した子を被告として嫡出否認の訴えによらずに夫が提起した親子関係不存在確認の訴えが不適法とされた事例

裁判要旨夫婦が子の出生する九箇月余り前に別居し、夫婦間にはその以前から性交渉がなかったが、夫は、別居開始から子の出生までの間に、妻と性交渉の機会を有したほか、妻となお婚姻関係にあることに基づいて婚姻費用の分担金や出産費用の支払に応ずる調停を成立させたなど判示の事実関係の下においては、嫡出否認の訴えによらずに夫が提起した親子関係不存在確認の訴えは、不適法である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年8月31日 平成7(オ)1095
登載
集民 第189号437頁
参照法条
民法722条,民法775条,人事訴訟手続法第2章 親子関係事件ニ関スル手続
論点22第722条民法

裁判所が自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に対する損害賠償の額を定めるに当たり民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して被害者に対する加害行為前から存在していた被害者の疾患をしんしゃくしその額を減額する場合における上記条項に基づき人身傷害保険金を支払った保険会社による損害賠償請求権の代位取得の範囲

裁判要旨被保険者が自動車の運行に起因する事故等に該当する急激かつ偶然な外来の事故により傷害を被った時に既に存在していた身体の障害又は疾病の影響により、上記傷害が重大となった場合には、保険会社は、その影響がなかったときに相当する金額を支払う旨の定めがある自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に対する加害行為と加害行為前から存在していた被害者の疾患とが共に原因となって損害が発生した事案について、裁判所が、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項〈損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺〉の過失相殺の規定を類推適用して、上記疾患をしんしゃくし、その額を減額する場合において、上記疾患が上記定めにいう身体の障害又は疾病に当たるときは、被害者に対して人身傷害保険金を支払った保険会社は、支払った人身傷害保険金の額と上記の減額をした後の損害額のうちいずれか少ない額を限度として被害者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和7年7月4日 令和5(受)1838
登載
民集 第79巻5号2155頁
参照法条
保険法25条、民法91条、民法709条、民法722条2項
論点23第722条民法

1 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合に,同逸失利益は定期金による賠償の対象となるか
2 交通事故に起因する後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当たり被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることの要否
3 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合に,同逸失利益が定期金による賠償の対象となるとされた事例

裁判要旨1 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において,不法行為に基づく損害賠償制度の目的及び理念に照らして相当と認められるときは,同逸失利益は,定期金による賠償の対象となる。
2 交通事故に起因する後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当たっては,事故の時点で,被害者が死亡する原因となる具体的事由が存在し,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り,就労可能期間の終期より前の被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることを要しない。
3 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において,同人が事故当時4歳の幼児で,高次脳機能障害という後遺障害のため労働能力を全部喪失し,同逸失利益の現実化が将来の長期間にわたるなど判示の事情の下では,同逸失利益は,定期金による賠償の対象となる。
(1,2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和2年7月9日 平成30(受)1856
登載
民集 第74巻4号1204頁
参照法条
(1~3につき)民法417条,民法709条,民法722条1項,民訴法117条 (2につき)民法416条
論点24第167条民法

農地の売買に基づく県知事に対する所有権移転許可申請協力請求権の消滅時効期間の経過後に右農地が非農地化した場合における所有権の移転及び非農地化後にされた時効援用の効力の有無

裁判要旨農地の売買に基づく県知事に対する所有権移転許可申請協力請求権の消滅時効期間が経過してもその後に右農地が非農地化した場合には、買主に所有権が移転し、非農地化後にされた時効の援用は効力を生じない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和61年3月17日 昭和59(オ)211
登載
民集 第40巻2号420頁
参照法条
民法145条,民法167条1項,農地法3条1項
論点25第167条民法

譲渡担保を設定した債務者の目的不動産に対するいわゆる受戻権と民法一六七条二項の規定の適用の可否

裁判要旨譲渡担保を設定した債務者による債務の弁済と右弁済に伴う目的不動産の返還請求権とを合体し、一個の形成権たる受戻権として、これに民法一六七条二項の規定を適用することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和57年1月22日 昭和55(オ)153
登載
民集 第36巻1号92頁
参照法条
民法167条2項,民法369条(譲渡担保)
論点26第167条民法

農地の受贈者の贈与者に対して有する知事に対する所有権移転許可申請協力請求権と消滅時効

裁判要旨農地の受贈者の贈与者に対して有する知事に対する所有権移転許可申請協力請求権は、民法一六七条一項〈人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効〉所定の債権にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年10月1日 昭和56(オ)575
登載
集民 第134号23頁
参照法条
民法167条1項,農地法3条
論点27第167条民法

商行為である金銭消費貸借に関し利息制限法所定の制限を超えて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権の消滅時効期間

裁判要旨商行為である金銭消費貸借に関し利息制限法所定の制限を超えて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権の消滅時効期間は、一〇年と解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年1月24日 昭和53(オ)1129
登載
民集 第34巻1号61頁
参照法条
民法167条,民法703条,商法522条,利息制限法1条,利息制限法4条
論点28第167条民法

借地法一〇条による建物買取請求権の消滅時効が認められた事例

裁判要旨借地法一〇条による建物買取請求権は、当該土地明渡請求訴訟における訴状送達の時から一〇年の経過によりすでに時効により消滅している。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和54年9月21日 昭和54(オ)462
登載
集民 第127号469頁
参照法条
借地法10条,民法167条
論点29第167条民法

所有権移転登記請求権と消滅時効

裁判要旨不動産の譲渡による所有権移転登記請求権は、右譲渡によつて生じた所有権移転の事実が存する限り独立して消滅時効にかからない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和51年11月5日 昭和51(オ)727
登載
集民 第119号181頁
参照法条
民法167条,民法177条
論点30第167条民法

商法二六六条の三第一項前段所定の第三者の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間

裁判要旨商法二六六条の三第一項前段所定の第三者の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は一〇年と解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和49年12月17日 昭和49(オ)768
登載
民集 第28巻10号2059頁
参照法条
民法167条1項,民法724条,商法266条の3第1項
論点31第167条民法

商事普通消滅時効のみを援用する場合に民事普通時効につき判断することの要否

裁判要旨債務者が商法五二二条所定の消滅時効のみを援用することが明らかな場合には、たとえ債権が弁済期から一〇年を経過していても、民法一六七条〈人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効〉所定の時効につき判断することを要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年6月14日 昭和47(オ)1011
登載
集民 第109号349頁
参照法条
民法145条,民法167条,商法522条
論点32第167条民法

一、弁済供託における供託金取戻請求が供託官により却下された場合と訴訟の形式
二、弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効の起算点および期間

裁判要旨一、弁済供託における供託金取戻請求が供託官により却下された場合には、供託官を被告として却下処分の取消の訴を提起することができる。
二、弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効は、供託の基礎となつた債務について紛争の解決などによつてその不存在が確定するなど、供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時から進行し、一〇年をもつて完成する。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和45年7月15日 昭和40(行ツ)100
登載
民集 第24巻7号771頁
参照法条
供託法1条ノ3,供託法8条2項,供託規則38条,民法166条1項,民法167条1項,民法496条1項,行政事件訴訟法3条2項,会計法30条
論点33第167条民法

一、農地の受贈者に農地法第三条第二項の不許可事由のある場合と受贈者より贈与者に対して所有権移転登記手続等を求める訴えの利益の有無
二、時効期間内に農地所有権移転登記手続の請求が提訴され時効期間経過後に知事に対する許可申請手続の請求が追加されたときと許可申請請求権の消滅時効の中断の成否

裁判要旨一、農地の受贈者に農地所有権移転に必要な知事の許可を妨げる事由がある場合であつても、右受贈者から贈与者に対して、知事に対する許可申請手続および右許可を条件とする所有権移転登記手続を求める訴えの利益は失われない。
二、農地の受贈者から贈与者に対し、時効期間内に、農地所有権移転登記手続の請求が提訴された場合において、その後、時効期間経過後に知事に対する許可申請手続の請求が追加されたときは、これにより右許可申請の請求権の消滅時効は中断される。
(原審大阪高裁昭和四〇年(ネ)第八五〇号昭和四〇・一二・二一判決、下級民集一六巻一二号一七八七頁参照。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日 昭和41(オ)441
登載
集民 第93号907頁
参照法条
農地法3条,民法149条,民法153条,民法167条,民訴法225条,民訴法232条,民訴法235条
論点34第167条民法

預託金会員制ゴルフクラブの施設利用権の消滅時効と会員権の消長

裁判要旨預託金会員制ゴルフクラブの施設利用権の消滅時効は、会員が施設の利用をしない状態が継続したことのみによっては進行せず、ゴルフ場経営会社が、会員に対してその資格を否定して施設の利用を拒絶し、あるいは会員の利用を不可能な状態としたような時から進行し、右利用権が時効により消滅したときは、ゴルフ会員権は、包括的権利としては存続し得ない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成7年9月5日 平成3(オ)771
登載
民集 第49巻8号2733頁
参照法条
民法166条1項,民法167条1項,民法第3編第2章契約
論点35第167条民法

遺留分減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権と消滅時効

裁判要旨遺留分権利者が減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権は、時効によって消滅することはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成7年6月9日 平成6(オ)2007
登載
集民 第175号549頁
参照法条
民法167条,民法884条,民法1042条
論点36第167条民法

商行為たる船体保険契約及び質権設定契約に基づき保険者から質権者に支払われた保険金に関する不当利得返還請求権の消滅時効期間

裁判要旨法定の免責事由があるにもかかわらず、商行為たる船体保険契約及び質権設定契約に基づき保険者から質権者に保険金が支払われた場合の不当利得返還請求権の消滅時効期間は、一〇年である。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成3年4月26日 平成1(オ)1232
登載
集民 第162号769頁
参照法条
民法167条1項,民法703条,商法522条,商法641条
論点37第167条民法

抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける場合における当該抵当権自体の消滅時効

裁判要旨抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける場合には,民法396条〈抵当権の消滅時効〉は適用されず,債務者及び抵当権設定者に対する関係においても,当該抵当権自体が,同法167条2項〈人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効〉所定の20年の消滅時効にかかる。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成30年2月23日 平成29(受)468
登載
民集 第72巻1号1頁
参照法条
民法167条2項,民法396条,破産法253条1項本文
論点38第167条民法

宅地建物取引業法30条1項前段所定の事由が発生した場合において,同条2項本文所定の公告がされなかったときにおける営業保証金の取戻請求権の消滅時効の起算点

裁判要旨宅地建物取引業法30条1項前段所定の事由が発生した場合において,同条2項本文所定の公告がされなかったときは,営業保証金の取戻請求権の消滅時効は,当該事由が発生した時から10年を経過した時から進行する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成28年3月31日 平成27(行ヒ)374
登載
民集 第70巻3号969頁
参照法条
民法166条1項,民法167条1項,宅地建物取引業法27条,宅地建物取引業法30条
論点39第167条民法

商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間

裁判要旨商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は,民法167条1項〈人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効〉により10年と解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年1月28日 平成18(受)1074
登載
民集 第62巻1号128頁
参照法条
民法167条1項,商法522条,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条ノ3,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,会社法423条1項,会社法430条
論点40第167条民法

瑕疵担保による損害賠償請求権と消滅時効

裁判要旨瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用がある
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成13年11月27日 平成10(オ)773
登載
民集 第55巻6号1311頁
参照法条
民法167条1項,民法566条3項,民法570条
論点41第167条民法

1 弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効の起算点
2 債権者不確知を原因とする弁済供託に係る供託金取戻請求の却下処分が違法とされた事例

裁判要旨1 弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効は,過失なくして債権者を確知することができないことを原因とする弁済供託の場合を含め,供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時から進行する。
2 過失なくして債権者を確知することができないことを原因として賃料債務についてされた弁済供託につき,同債務の各弁済期の翌日から民法169条所定の5年の時効期間が経過した時から更に10年が経過する前にされた供託金取戻請求に対し,同取戻請求権の消滅時効が完成したとしてこれを却下した処分は,違法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成13年11月27日 平成10(行ツ)22
登載
民集 第55巻6号1334頁
参照法条
供託法8条2項,民法166条1項,民法167条1項,民法169条,民法496条1項
論点42第724条民法

民法七二四条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉所定の三年の時効期間の計算と初日の不算入

裁判要旨民法七二四条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉所定の三年の時効期間の計算においては、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知つた時が午前零時でない限り、時効期間の初日を算入すべきではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和57年10月19日 昭和56(オ)767
登載
民集 第36巻10号2163頁
参照法条
民法138条,民法140条,民法724条
論点43第724条民法

事務管理により他人の不法行為上の損害賠償義務を免れさせるに足りる費用を支出した場合における右費用償還請求権の消滅時効の起算点

裁判要旨第三者が事務管理により他人の不法行為上の損害賠償義務を免れさせるに足りる費用を支出した場合における右第三者の右他人に対する右費用償還請求権の消滅時効は、右不法行為上の損害賠償請求権とは別個に、右費用償還請求権を行使することのできる時、すなわち、その権利の発生した時から、進行を開始する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年7月9日 昭和43(オ)157
登載
集民 第91号683頁
参照法条
民法166条,民法702条,民法724条
論点44第724条民法

一、民法第七二四条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉の「損害及ヒ加害者ヲ知リタル時」にあたるとされた事例
二、一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴を提起した場合と右残部についての消滅時効中断の効力

裁判要旨一、登記官吏の過失により虚偽の所有権移転登記がされ、これを信頼して土地を買い受け、その地上に建物を建築したものが、右事実関係を知り自己が右土地の所有権を取得しえないことを知つたときは、その時に、右建物を収去することによつて生ずる損害についてもその損害および加害者を知つたものと解するのが相当である。
二、不法行為に基づく損害賠償債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴を提起した場合、訴提起による消滅時効中断の効力はその一部の範囲においてのみ生じ、残部には及ばないと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年6月27日 昭和38(オ)842
登載
集民 第91号461頁
参照法条
民法724条,民法147条1号,国家賠償法1条,国家賠償法4条
論点45第724条民法

信用協同組合が自らの経営破綻の危険を説明すべき義務に違反して出資の勧誘をしたことを理由とする出資者の信用協同組合に対する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効が,遅くとも同種の集団訴訟が提起された時点から進行するとされた事例

裁判要旨信用協同組合が自らの経営破綻の危険を説明すべき義務に違反して出資の勧誘をしたことを理由とする出資者の信用協同組合に対する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は,経営破綻の直後に,上記出資者が上記勧誘に応じて出資をした結果損害を被った事実を認識していたことに加え,次の(1)〜(3)など判示の事実関係の下においては,上記出資者が上記勧誘当時の信用協同組合の代表者の経営破綻の危険性についての具体的認識に関する証拠となる資料を得ていなかったとしても,遅くとも上記出資者と同様の立場にある者らにより信用協同組合に対する集団訴訟が提起された時点から進行する。
(1) 上記出資者が出資をしてから信用協同組合が経営破綻に至るまでの期間は9か月に満たなかった。
(2) 経営破綻の3か月後までには,信用協同組合が経営破綻の前年に実施された監督官庁の検査で既に債務超過と見込まれていたなどの事情が明らかにされた。
(3) 上記出資者と同様の立場にある者らにより,経営破綻の約半年後から信用協同組合に対する損害賠償請求訴訟が逐次提起され,経営破綻の約1年後までには集団訴訟も提起された。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成23年4月22日 平成21(受)131
登載
集民 第236号443頁
参照法条
民法724条
論点46第724条民法

被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出したため相続人がその事実を知ることができなかった場合における上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権と民法724条後段の除斥期間

裁判要旨被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経過した場合において,その後相続人が確定した時から6か月内に相続人が上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは,民法160条〈相続財産に関する時効の完成猶予〉の法意に照らし,同法724条後段の効果は生じない。
(意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年4月28日 平成20(受)804
登載
民集 第63巻4号853頁
参照法条
民法160条,民法724条
論点47第724条民法

1 B型肝炎ウイルスに感染した患者が乳幼児期に受けた集団予防接種等とウイルス感染との間の因果関係を肯定するのが相当とされた事例
2 乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染しB型肝炎を発症したことによる損害につきB型肝炎を発症した時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例

裁判要旨1 乳幼児期に集団予防接種等を受けたX1〜X3がB型肝炎ウイルスに感染した場合において,(1)B型肝炎ウイルスは,血液を介して人から人に感染するものであり,その感染力の強さに照らし,集団予防接種等の被接種者の中に感染者が存在した場合,注射器の連続使用によって感染する危険性があること,(2)X1〜X3は,最も持続感染者になりやすいとされる0〜3歳時を含む6歳までの幼少期に集団予防接種等を受け,それらの集団予防接種等において注射器の連続使用がされたこと,(3)X1〜X3は,その幼少期にB型肝炎ウイルスに感染して持続感染者となり,うちX1及びX2は,成人期に入ってB型肝炎を発症したこと,(4)X1〜X3は,出産時にB型肝炎ウイルスの持続感染者である母親の血液が子の体内に入ることによる感染(垂直感染)により感染したものではなく,それ以外の感染(水平感染)により感染したものであること,(5)昭和61年から母子間感染阻止事業が開始された結果,同年生まれ以降の世代における新たな持続感染者の発生がほとんどみられなくなったということは,少なくとも,幼少児については,垂直感染を阻止することにより同世代の幼少児の水平感染も防ぐことができたことを意味し,一般に,幼少児については,集団予防接種 等における注射器の連続使用によるもの以外は,家庭内感染を含む水平感染の可能性が極めて低かったことを示すものであること,(6)X1〜X3について,上記集団予防接種等のほかには感染の原因となる可能性の高い具体的な事実の存在はうかがわれず,他の原因による感染の可能性は,一般的,抽象的なものにすぎないことなど判示の事情の下においては,上記集団予防接種等とX1〜X3のB型肝炎ウイルス感染との間の因果関係を肯定するのが相当である。
2 乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染したX4及びX5がB型肝炎を発症したことによる損害については,(1)乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染し,持続感染者となった場合,HBe抗原陽性からHBe抗体陽性への変換(セロコンバージョン)が起きることなく成人期に入ると,肝炎を発症することがあること,(2)X4は,昭和26年5月生まれで,同年9月〜昭和33年3月に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染し,昭和59年8月ころ,B型肝炎と診断されたこと,(3)X5は,昭和36年7月生まれで,昭和37年1月〜昭和42年10月に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染し,昭和61年10月,B型肝炎と診断されたことなど判示の事情の下においては,上記集団予防接種等(加害行為)の時ではなく,B型肝炎の発症(損害の発生)の時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年6月16日 平成16(受)672
登載
民集 第60巻5号1997頁
参照法条
国家賠償法1条1項,予防接種法2条,結核予防法4条,結核予防法13条,民法724条
論点48第724条民法

船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効の起算点

裁判要旨船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効は,民法724条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉により,被害者が損害及び加害者を知った時から進行する
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成17年11月21日 平成16(受)1434
登載
民集 第59巻9号2558頁
参照法条
民法166条1項,民法724条,商法798条1項
論点49第724条民法

1 通商産業大臣が石炭鉱山におけるじん肺発生防止のための鉱山保安法上の保安規制の権限を行使しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例
2 加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合における民法724条後段所定の除斥期間の起算点

裁判要旨1 炭鉱で粉じん作業に従事した労働者が粉じんの吸入によりじん肺にり患した場合において,炭鉱労働者のじん肺り患の深刻な実情及びじん肺に関する医学的知見の変遷を踏まえて,じん肺を炭じん等の鉱物性粉じんの吸入によって生じたものを広く含むものとして定義し,これを施策の対象とするじん肺法が成立したこと,そのころまでには,さく岩機の湿式型化によりじん肺の発生の原因となる粉じんの発生を著しく抑制することができるとの工学的知見が明らかとなっており,金属鉱山と同様に,すべての石炭鉱山におけるさく岩機の湿式型化を図ることに特段の障害はなかったのに,同法成立の時までに,鉱山保安法に基づく省令の改正を行わず,さく岩機の湿式型化等を一般的な保安規制とはしなかったことなど判示の事実関係の下では,じん肺法が成立した後,通商産業大臣が鉱山保安法に基づく省令改正権限等の保安規制の権限を直ちに行使しなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
2 民法724条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉後段所定の除斥期間は,不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には,当該損害の全部又は一部が発生した時から進行する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年4月27日 平成13(受)1760
登載
民集 第58巻4号1032頁
参照法条
国家賠償法1条1項,鉱山保安法1条,鉱山保安法4条,鉱山保安法(昭和37年法律第105号による改正前のもの)30条,じん肺法(昭和52年法律第76号による改正前のもの)2条1項1号,石炭鉱山保安規則(昭和61年通商産業省令第74号による改正前のもの)284条の2,民法724条
論点50第724条民法

交通事故による後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効が遅くとも症状固定の診断を受けた時から進行するとされた事例

裁判要旨交通事故により負傷した者が,後遺障害について症状固定の診断を受け,これに基づき自動車保険料率算定会に対して自動車損害賠償責任保険の後遺障害等級の事前認定を申請したときは,その結果が非該当であり,その後の異議申立てによって等級認定がされたという事情があったとしても,上記後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効は,遅くとも上記症状固定の診断を受けた時から進行する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成16年12月24日 平成14(受)1355
登載
集民 第215号1109頁
参照法条
民法724条
論点51第724条民法

1 国が水俣病による健康被害の拡大防止のためにいわゆる水質二法に基づく規制権限を行使しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例
2 熊本県が水俣病による健康被害の拡大防止のために同県の漁業調整規則に基づく規制権限を行使しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例
3 水俣病による健康被害につき加害行為の終了から相当期間を経過した時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例

裁判要旨1 国が,昭和34年11月末の時点で,多数の水俣病患者が発生し,死亡者も相当数に上っていると認識していたこと,水俣病の原因物質がある種の有機水銀化合物であり,その排出源が特定の工場のアセトアルデヒド製造施設であることを高度のがい然性をもって認識し得る状況にあったこと,同工場の排水に含まれる微量の水銀の定量分析をすることが可能であったことなど判示の事情の下においては,同年12月末までに,水俣病による深刻な健康被害の拡大防止のために,公共用水域の水質の保全に関する法律及び工場排水等の規制に関する法律に基づいて,指定水域の指定,水質基準及び特定施設の定めをし,上記製造施設からの工場排水についての処理方法の改善,同施設の使用の一時停止その他必要な措置を執ることを命ずるなどの規制権限を行使しなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
2 熊本県が,昭和34年11月末の時点で,多数の水俣病患者が発生し,死亡者も相当数に上っていると認識していたこと,水俣病の原因物質がある種の有機水銀化合物であり,その排出源が特定の工場のアセトアルデヒド製造施設であることを高度のがい然性をもって認識し得る状況にあったことなど判示の事情の下においては,同年12月末までに,水俣病による深刻な健康被害の拡大防止のために,旧熊本県漁業調整規則(昭和26年熊本県規則第31号。昭和40年熊本県規則第18号の2による廃止前のもの)に基づいて,上記製造施設からの工場排水につき除害に必要な設備の設置を命ずるなどの規制権限を行使しなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
3 水俣病による健康被害につき,患者が水俣湾周辺地域から転居した時点が加害行為の終了時であること,水俣病患者の中には潜伏期間のあるいわゆる遅発性水俣病が存在すること,遅発性水俣病の患者においては水俣病の原因となる魚介類の摂取を中止してから4年以内にその症状が客観的に現れることなど判示の事情の下では,上記転居から4年を経過した時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成16年10月15日 平成13(オ)1194
登載
民集 第58巻7号1802頁
参照法条
国家賠償法1条1項,公共用水域の水質の保全に関する法律(昭和45年法律第108号による改正前のもの)1条,公共用水域の水質の保全に関する法律5条,工場排水等の規制に関する法律1条,工場排水等の規制に関する法律2条2項,工場排水等の規制に関する法律7条,工場排水等の規制に関する法律12条,旧熊本県漁業調整規則(昭和26年熊本県規則第31号。昭和40年熊本県規則第18号の2による廃止前のもの)1条,旧熊本県漁業調整規則(昭和26年熊本県規則第31号。昭和40年熊本県規則第18号の2による廃止前のもの)32条,民法724条
論点52第724条民法

民法724条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉にいう被害者が損害を知った時の意義

裁判要旨民法724条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉にいう被害者が損害を知った時とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成14年1月29日 平成8(オ)2607
登載
民集 第56巻1号218頁
参照法条
民法724条
論点53第724条民法

関連新聞社から記事の提供を受けてこれとほぼ同一内容の記事を掲載した新聞社に対する名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟において被害者が同記事の掲載を認識したとする認定に経験則違反の違法があるとされた事例

裁判要旨関連新聞社甲から記事の提供を受けてこれとほぼ同一内容の記事を掲載した新聞社乙に対する名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟において,甲と乙の各掲載記事の紙面構成や見出しが一見して明らかに異なっており,乙の掲載記事には甲の掲載記事にはない記述が書き加えられており,甲が発行する新聞に掲載された記事でも乙が発行する新聞に掲載されない場合があるという判示の事情の下においては,被害者Aが乙の掲載記事に接する機会があった,又はAが他者から甲の掲載記事と同じ記事が乙の発行する新聞にも掲載されたことを知らされた等の具体的事実の立証がないのに,Aが,甲が乙に提供した記事を東京で発行する新聞に掲載したこと及び乙が九州地方で甲と同一名称の新聞を発行していることを知った時に,乙の発行する新聞に上記記事が掲載されたことを認識したとする原審の認定には,経験則違反の違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成14年1月29日 平成10(オ)780
登載
集民 第205号309頁
参照法条
民法724条,民訴法247条
論点54第724条民法

不法行為を原因として心神喪失の常況にある被害者の損害賠償請求権と民法七二四条後段の除斥期間

裁判要旨不法行為の被害者が不法行為の時から二〇年を経過する前六箇月内において右不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後当該被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就職した者がその時から六箇月内に右不法行為による損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法一五八条〈未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予〉の法意に照らし、同法七二四条後段の効果は生じない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年6月12日 平成5(オ)708
登載
民集 第52巻4号1087頁
参照法条
民法158条,民法724条
論点55第724条民法

1 優生保護法3条1項1号から3号まで、10条〈後見開始の審判の取消し〉及び13条2項〈保佐人の同意を要する行為等〉(3条1項1号〈私権の享有は、出生に始まる。〉、2号及び10条については、昭和23年9月11日から平成8年9月25日までの間、3条1項3号については、昭和23年9月11日から平成8年3月31日までの間、13条2項については、昭和27年5月27日から平成8年9月25日までの間において施行されていたもの)と憲法13条及び14条1項
2 優生保護法3条1項1号から3号まで、10条及び13条2項(3条1項1号、2号及び10条については、昭和23年9月11日から平成8年9月25日までの間、3条1項3号については、昭和23年9月11日から平成8年3月31日までの間、13条2項については、昭和27年5月27日から平成8年9月25日までの間において施行されていたもの)に係る国会議員の立法行為の国家賠償法1条1項所定の違法性の有無
3 裁判所が民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段の除斥期間の主張が信義則に反し又は権利の濫用として許されないと判断することができる場合
4 民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉後段の除斥期間の主張をすることが信義則に反し権利の濫用として許されないとされた事例

裁判要旨1 優生保護法3条1項1号から3号まで、10条〈後見開始の審判の取消し〉及び13条2項〈保佐人の同意を要する行為等〉(3条1項1号〈私権の享有は、出生に始まる。〉、2号及び10条については、昭和23年9月11日から平成8年9月25日までの間、3条1項3号については、昭和23年9月11日から平成8年3月31日までの間、13条2項については、昭和27年5月27日から平成8年9月25日までの間において施行されていたもの)は、憲法13条及び14条1項に違反する。
2 優生保護法3条1項1号から3号まで、10条及び13条2項(3条1項1号、2号及び10条については、昭和23年9月11日から平成8年9月25日までの間、3条1項3号については、昭和23年9月11日から平成8年3月31日までの間、13条2項については、昭和27年5月27日から平成8年9月25日までの間において施行されていたもの)に係る国会議員の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受ける。
3 不法行為によって発生した損害賠償請求権が民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段の除斥期間の経過により消滅したものとすることが著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない場合には、裁判所は、除斥期間の主張が信義則に反し又は権利の濫用として許されないと判断することができる。
4 優生保護法(昭和27年法律第141号による改正後のもの)3条1項1号の規定に基づいて生殖を不能にする手術を受けた者及びその配偶者並びに同法13条2項の規定に基づいて生殖を不能にする手術を受けた者が、国に対し、上記各規定を含む優生保護法の関係規定に係る国会議員の立法行為は違法であると主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた場合において、次の⑴~⑸など判示の事情の下では、上記の者らが上記損害賠償を求める訴えを提起した後に「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」が成立し、施行されたことを考慮しても、上記の者らの上記の損害賠償請求権の行使に対して国が民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段の除斥期間の主張をすることは、信義則に反し、権利の濫用として許されない。
⑴ 国は、約48年間にわたり、国家の政策として、優生保護法3条1項1号から3号まで、10条及び13条2項の規定(3条1項1号、2号及び10条については、昭和23年9月11日から平成8年9月25日までの間、3条1項3号については、昭和23年9月11日から平成8年3月31日までの間、13条2項については、昭和27年5月27日から平成8年9月25日までの間において施行されていたもの)に基づく施策を実施してきた。
⑵ 国は、上記施策の実施に当たり、審査を要件とする優生手術を行う際に身体の拘束、麻酔薬施用又は欺罔等の手段を用いることも許される場合がある旨の厚生事務次官通知を各都道府県知事宛てに発出するなどして、優生手術を行うことを積極的に推進していた。
⑶ 上記施策が実施された結果として、少なくとも約2万5000人の者が上記規定に基づいて生殖を不能にする手術を受け、これにより生殖能力を喪失するという被害を受けた。
⑷ 上記訴えを提起した者らについて、上記損害賠償請求権の速やかな行使を期待することができたと解すべき事情があったことはうかがわれない。
⑸ 国は、平成8年に上記規定が削除された後、長期間にわたって、上記規定により行われた生殖を不能にする手術は適法であり、補償はしないという立場をとり続けてきた。
(3につき補足意見及び意見、4につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所大法廷 令和6年7月3日 令和5(受)1319
登載
民集 第78巻3号382頁
参照法条
(1、2、4につき)優生保護法(昭和27年法律第141号による改正後のもの)3条1項1号ないし3号、優生保護法(昭和27年法律第141号による改正後のもの)4条、優生保護法(昭和27年法律第141号による改正後のもの)10条、優生保護法(昭和27年法律第141号による改正後のもの)12条、優生保護法(昭和27年法律第141号による改正後のもの)13条 (1につき)憲法13条、憲法14条1項 (2、4につき)国家賠償法1条1項 (3、4につき)民法1条2項、民法3項、民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条
論点56第724条民法

家屋の評価の誤りに基づき固定資産税等の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権に係る民法724条後段所定の除斥期間の起算点

裁判要旨家屋の評価の誤りに基づきある年度の固定資産税及び都市計画税の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権に係る民法724条後段所定の除斥期間は,当該年度の固定資産税等に係る賦課決定がされ所有者に納税通知書が交付された時から進行する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和2年3月24日 平成30(受)388
登載
民集 第74巻3号292頁
参照法条
国家賠償法1条1項,民法724条
論点57第723条民法

一 人格権又は条理を根拠とするいわゆる反論文掲載請求権の成否

二 新聞紙上における政党間の批判・論評の意見広告につき名誉毀損の不法行為の成立が否定された事例

裁判要旨一 新聞記事に取り上げられた者は、当該新聞紙を発行する者に対し、その記事の掲載により名誉毀損の不法行為が成立するかどうかとは無関係に、人格権又は条理を根拠として、右記事に対する自己の反論文を当該新聞紙に無修正かつ無料で掲載することを求めることはできない。

二 新聞社が新聞紙上に掲載した甲政党の意見広告が、乙政党の社会的評価の低下を狙つたものであるが乙政党を批判・論評する内容のものであり、かつ、その記事中乙政党の綱領等の要約等が一部必ずしも妥当又は正確とはいえないとしても、右要約のための綱領等の引用文言自体は原文のままであり、要点を外したものといえないなど原判示の事実関係のもとでは、右広告の掲載は、その広告が公共の利害に関する事実にかかり専ら公益を図る目的に出たものであり、かつ、主要な点において真実の証明があつたものとして、名誉毀損の不法行為となるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年4月24日 昭和55(オ)1188
登載
民集 第41巻3号490頁
参照法条
憲法21条,民法1条,民法709条,民法710条,民法723条,刑法230条ノ2
論点58第723条民法

民法七二三条〈名誉毀損における原状回復〉にいう名誉の意義

裁判要旨民法七二三条〈名誉毀損における原状回復〉にいう名誉とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年12月18日 昭和43(オ)1357
登載
民集 第24巻13号2151頁
参照法条
民法723条
論点59第723条民法

新聞紙に謝罪広告を掲載することを命ずる判決の合憲性

裁判要旨一 新聞紙に謝罪広告を掲載することを命ずる判決は、その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものにあつては、憲法第一九条に違反しないことは当裁判所の大法廷の判決(昭和二八年(オ)第一二四一号同三一年七月四日大法廷判決、民集一〇巻七号七八五頁参照)の示すところであり、右のごとき判決が憲法第二一条第一項に違反しないことは、右判決の趣旨に徴して明らかである(注、本件は新聞紙の発行人に対するものを含み、代替執行できない点が前記大法廷判決と異なることに留意のこと)。
二 (意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年4月21日 昭和39(テ)35
登載
集民 第83号269頁
参照法条
民法723条,憲法19条,憲法21条1項
論点60第723条民法

民法第七一〇条〈財産以外の損害の賠償〉は法人の名誉権侵害による無形の損害に適用があるか。

裁判要旨法人の名誉権が侵害され、無形の損害が生じた場合でも、右損害の金銭評価が可能であるかぎり、民法第七一〇条〈財産以外の損害の賠償〉の適用がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月28日 昭和34(オ)901
登載
民集 第18巻1号136頁
参照法条
民法710条,民法723条
論点61第723条民法

他誌を誹謗する学界誌の記事につき名誉毀損の成立を否定した事例。

裁判要旨甲学界誌において掲載の承諾を得ている外国人学者の講演内容を、乙学界誌が、本人の承諾を得ずに原判示のような不明朗な手段で、通訳から講演訳文原稿を入手した上、甲誌に先がけて掲載発表する等原判決認定のような経緯があるときは、甲誌編集者らが乙誌を非難するのに「盗載」「犯罪的不徳行為」等の言辞を用いたとしても、乙誌の名誉信用を害するものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年4月16日 昭和34(オ)1019
登載
民集 第17巻3号476頁
参照法条
民法709条,民法723条
論点62第723条民法

一 謝罪広告を命ずる判決と強制執行
二 右判決は憲法第一九条に反しないか

裁判要旨一 新聞紙に謝罪広告を掲載することを命ずる判決は、その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものにあつては、民訴第七三三条〈削除〉により代替執行をなし得る。
二 右判決は憲法第一九条に反しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和31年7月4日 昭和28(オ)1241
登載
民集 第10巻7号785頁
参照法条
民訴法733条,民法723条,憲法19条
論点63第723条民法

公立小学校における通知表の交付をめぐる混乱についての批判、論評を主題とするビラの配布行為が名誉侵害としての違法性を欠くとされた事例

裁判要旨公立小学校教師の氏名・住所・電話番号等を記載し、かつ、有害無能な教職員等の表現を用いた大量のビラを繁華街等で配布した場合において、右ビラの内容が、一般市民の間でも大きな関心事になつていた通知表の交付をめぐる混乱についての批判、論評を主題とする意見表明であつて、専ら公益を図る目的に出たものに当たらないとはいえず、その前提としている客観的事実の主要な点につき真実の証明があり、論評としての域を逸脱したものでないなど判示の事実関係の下においては、右配布行為は、名誉侵害としての違法性を欠く。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年12月21日 昭和60(オ)1274
登載
民集 第43巻12号2252頁
参照法条
民法709条,民法723条,刑法230条ノ2第1項,刑法230条ノ2第3項
論点64第723条民法

放送事業者がした真実でない事項の放送により権利の侵害を受けた本人等が放送法4条1項の規定に基づく訂正又は取消しの放送を求める私法上の権利の有無

裁判要旨放送事業者がした真実でない事項の放送により権利の侵害を受けた本人等は,放送事業者に対し,放送法4条1項の規定に基づく訂正又は取消しの放送を求める私法上の権利を有しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成16年11月25日 平成13(オ)1513
登載
民集 第58巻8号2326頁
参照法条
放送法4条,民法723条
論点65第716条民法

請負人が第三者に損害を与えた場合において注文者に注文又は指図について過失があるとされた事例

裁判要旨注文者が請負人に対し、注文者所有の旧木造建物を取り壊してその跡地一杯に鉄骨ブロック四階建てアパートの建築工事を請け負わせ、請負人の人夫が右旧建物に隣接する第三者所有の建物の屋根に上つて建築資材等を運搬し、屋根瓦上に資材等を落下させるなどして瓦を破壊し、それによる雨漏りによつて野地板、垂木が腐蝕するような損害を与えた場合において、旧建物と第三者所有の建物とが互いに屋根が重なり合うほど密着して建てられていたものであり、旧建物の跡地一杯にアパートを建築すれば、両者の間には、足場を組む余地も、落下物の防止措置を施す余裕もなかつたなどの事情(原判決理由参照)にあるときは、注文者に注文又は指図について過失があつたというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年2月20日 昭和53(オ)1012
登載
集民 第126号107頁
参照法条
民法716条
論点66第716条民法

請負人が第三者に与えた損害につき注文者の注文または指図に過失が認められないとされた事例

裁判要旨請負人の施行した道路開設工事による落石のため第三者に損害を生じた場合において、右損害が注文者の作成した設計図および仕様書自体のかしによつて生じたものではなく、注文者は請負人に対し、落石等により損害を生ずることのないような措置を講ずべきことを要求し、これに要する費用を加算して請負代金額を決定し、請負人も、その趣旨を諒承して、自己の責任において事故防止の措置を講ずることを約して工事を引き受け、注文者の具体的指示によらず、自主的な判断によつて岩石の切捨てをしたものであり、注文者は、請負契約上、工事施行方法について判示のような指示監督の権限を有し、かつ、常時監督員を工事現場に派遣していたが、その目的はもつぱら工事が契約どおりに行なわれることを確保することにあつたなど判示の事実関係があるときは、注文者が、当初から右損害の発生のおそれのあることを予知していながら、損害防止に必要な措置を請負人に具体的に命ずることなく工事を注文し施行させたものであつても、注文者の注文または指図に過失があつたものと認めることはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年7月16日 昭和42(オ)647
登載
民集 第24巻7号982頁
参照法条
民法716条
論点67第716条民法

一、民法七六一条〈日常の家事に関する債務の連帯責任〉と表見代理
二、妻の日常家事代理権の範囲内に属するとは認められない事例

裁判要旨一、昭和四三年(オ)第九七一号同四四年一二月一八日第一小法廷判決(民集の二三巻三号二四七六頁)と同旨。
二、原審確定の事実関係のもとでは、妻が夫を代理して本件手形貸付取引契約(注、妻の知人が上告人信用金庫から貸付をうける取引契約である)の連帯保証をなす権限が、妻の日常家事代理権の範囲内に属するとは認められない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年2月27日 昭和44(オ)1274
登載
集民 第98号327頁
参照法条
民法716条,民法110条
論点68第716条民法

請負人が第三者に損害を与えた場合において注文者に注文または指図について過失があるとされた事例

裁判要旨請負人の過失により建築中の建物が倒壊し、隣家の居住者に損害を与えた場合において、注文者が、土木出張所から建物の補強工作を完備するよう強く勧告を受けたにもかかわらず、請負人にその工作をさせることなく、所定の中間検査も受けないままで瓦葺作業に取りかからせたため、瓦の重みで右建物が倒壊するに至つた等判示の事情があるときは、右注文者に、注文または指図について過失があつたものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日 昭和43(オ)26
登載
民集 第22巻13号3413頁
参照法条
民法716条
論点69第418条民法

一 当座勘定取引契約において取引印として届け出られていない実印を使用して偽造された手形小切手の支払いをした銀行に過失があるとされた事例
二 債権者の従業員のした行為が債務不履行の原因となつている場合と過失相殺

裁判要旨一 銀行は、当座勘定取引契約において取引印として届け出られていない実印を用いて振り出された手形、小切手を支払うにあたつては、当該実印が右契約の締結及び取引印の届出に際し使用されていたとしても、取引先に対し支払委託の有無を確認すべき注意義務があり、これを尽くすことなく偽造手形、偽造小切手の支払をしたときは、過失の責を免れない。
二 銀行が取引印として届け出られていない実印の押捺された偽造に係る手形、小切手の支払をしたことが当座勘定取引契約に基づく債務の不履行となる場合において、右手形、小切手の偽造が右取引契約の取引先の経理担当事務員によつてされたものであり、しかも右事務員は、取引先の売掛金、買掛金の記帳、集計、小口現金払等及び取引印の押捺以外の手形、小切手の振出事務を担当し、手形、小切手用紙及び実印が保管されている金庫の番号を記憶し、かつ、その鍵を所持していたなど、判示の事情があるときには、右事務員がした手形、小切手の偽造は、債務不履行に基づく損害賠償責任及びその金額を決するにあたつて取引先と同視すべき者の有責行為として斟酌すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年4月7日 昭和56(オ)57
登載
民集 第37巻3号219頁
参照法条
民法415条,民法418条,民法644条
論点70第418条民法

職権による過失相殺と過失の立証責任

裁判要旨民法第四一八条〈過失相殺〉による過失相殺は、債務者の主張がなくても、裁判所が職権ですることができるが、債権者の過失となるべき事実については、債務者において立証責任を負う。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日 昭和43(オ)650
登載
民集 第22巻13号3454頁
参照法条
民法418条
論点71第418条民法

債務不履行による損害賠償につき債権者に過失があつた場合の賠償額算定方法。

裁判要旨債務不履行による損害賠償につき、債権者に過失があるとしてこれを斟酌して損害賠償額を算定する場合、必ずしも損害額を折半して算定しなければならないものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年7月3日 昭和36(オ)1246
登載
集民 第61号459頁
参照法条
民法418条
論点72第418条民法

当事者が損害賠償の額を予定した場合における過失相殺の可否

裁判要旨当事者が損害賠償の額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これをしんしゃくすべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成6年4月21日 平成2(オ)1456
登載
集民 第172号379頁
参照法条
民法418条,民法420条1項
論点73第712条民法

未成年者の不法行為における注意義務の程度

裁判要旨責任能力がある未成年者の不法行為において、その過失の有無は、成人と同一の注意義務を標準として定めるべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年6月22日 昭和47(オ)212
登載
集民 第106号335頁
参照法条
民法709条,民法712条
論点74第712条民法

「鬼ごつこ」中の傷害行為に違法性がないとされた事例

裁判要旨小学校二年生の児童甲が「鬼ごつこ」中に一年生の児童乙に背負われて逃げようとし、判示の事情のもとに過つて乙児童を転倒させ、よつて右上腕骨骨折の負傷を与えた場合、右傷害行為は、違法性がない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年2月27日 昭和35(オ)114
登載
民集 第16巻2号407頁
参照法条
民法709条,民法712条,民法714条
論点75第712条民法

責任を弁識する能力のない未成年者が,サッカーボールを蹴って他人に損害を加えた場合において,その親権者が民法714条1項の監督義務者としての義務を怠らなかったとされた事例

裁判要旨責任を弁識する能力のない未成年者の蹴ったサッカーボールが校庭から道路に転がり出て,これを避けようとした自動二輪車の運転者が転倒して負傷し,その後死亡した場合において,次の(1)~(3)など判示の事情の下では,当該未成年者の親権者は,民法714条1項〈責任無能力者の監督義務者等の責任〉の監督義務者としての義務を怠らなかったというべきである。
(1) 上記未成年者は,放課後,児童らのために開放されていた小学校の校庭において,使用可能な状態で設置されていたサッカーゴールに向けてフリーキックの練習をしていたのであり,殊更に道路に向けてボールを蹴ったなどの事情もうかがわれない。
(2) 上記サッカーゴールに向けてボールを蹴ったとしても,ボールが道路上に出ることが常態であったものとはみられない。
(3) 上記未成年者の親権者である父母は,危険な行為に及ばないよう日頃から通常のしつけをしており,上記未成年者の本件における行為について具体的に予見可能であったなどの特別の事情があったこともうかがわれない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成27年4月9日 平成24(受)1948
登載
民集 第69巻3号455頁
参照法条
民法709条,民法712条,民法714条
原

条文原文

原文ママ

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民法 第722条(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺) 詳細ページ
(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)
第七百二十二条第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
民法 第724_2条(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効) 詳細ページ
(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条の二人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
民法 第167条(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効) 詳細ページ
(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
第百六十七条人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。
民法 第724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効) 詳細ページ
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二不法行為の時から二十年間行使しないとき。
民法 第723条(名誉毀損における原状回復) 詳細ページ
(名誉毀損における原状回復)
第七百二十三条他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
民法 第417_2条(中間利息の控除) 詳細ページ
(中間利息の控除)
第四百十七条の二将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
2将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。
民法 第716条(注文者の責任) 詳細ページ
(注文者の責任)
第七百十六条注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。
民法 第418条(過失相殺) 詳細ページ
(過失相殺)
第四百十八条債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
民法 第712条(責任能力) 詳細ページ
(責任能力)
第七百十二条未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
民法 第589条(利息) 詳細ページ
(利息)
第五百八十九条貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。
2前項の特約があるときは、貸主は、借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる。
出

一次情報

原文ママ

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