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遺言の方式/普通の方式

普通の方式の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

民法967条から975条は、自筆証書・公正証書・秘密証書という「普通の方式」による遺言の作成要件を定めています。証人・立会人になれない人の範囲、口がきけない人や成年被後見人が遺言をする場合の特則、共同遺言の禁止も合わせて規定されています。

普通の方式
方式証人・立会人作成の要点特徴
自筆証書証人不要全文・日付・氏名を自書し押印財産目録は自書不要
公正証書証人2人以上口授→公証人が作成公証人法に基づき作成
秘密証書公証人1人・証人2人以上署名押印し封印、申述方式不備でも自筆証書として有効な場合あり
  • 成年被後見人が一時回復して遺言する場合は医師2人以上の立会いと付記・署名・押印が必要
  • 未成年者、推定相続人・受遺者やその配偶者・直系血族、公証人の配偶者等は証人・立会人になれない
  • 遺言は2人以上が同一の証書ですることはできない(共同遺言の禁止)
  • 口がきけない者の公正証書遺言・秘密証書遺言には通訳人の通訳や自書による代替方式がある
  • 自筆証書の加除等の変更は、場所指示・変更旨の付記・署名・押印がなければ効力を生じない
  • 特別の方式によることを許す場合はこの限りでない(967条ただし書)
1

普通の方式

普通の方式について、条文は何を定めているか。

第967条普通の方式による遺言の種類遺言は自筆・公正・秘密の3方式のみ1項判例 1件
  • 普通方式は自筆証書・公正証書・秘密証書の3種類
  • 特別の方式が認められる場合は例外となる
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第968条自筆証書遺言自筆証書は全文・日付・氏名を自書し押印3項判例 19件
  • 全文・日付・氏名は自分で書き、押印が必要
  • 財産目録は自書不要だが毎葉に署名・押印が必要
  • 加除等の変更は場所指示・付記・署名・押印がないと無効
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第969条公正証書遺言公正証書は証人2人以上の立会いと口授で作成3項・2号判例 9件
  • 証人2人以上の立会いが必要
  • 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する
  • 作成手続は公証人法の定めによる
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第969_2条公正証書遺言の方式の特則口がきけない人は通訳や自書で口授に代える2項判例なし
  • 通訳人の通訳による申述、または自書で口授に代えられる
  • 公証人はその旨を証書に記載・記録する
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第970条秘密証書遺言秘密証書は署名押印・封印し公証人らに提出2項・4号判例 1件
  • 遺言者が証書に署名・押印する
  • 証書を封じ、証書と同じ印章で封印する
  • 公証人1人・証人2人以上の前で申述し、全員が封紙に署名押印
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第971条方式に欠ける秘密証書遺言の効力秘密証書の方式不備でも自筆証書として有効な場合1項判例なし
  • 970条〈秘密証書遺言〉の方式を欠いても968条〈自筆証書遺言〉の要件を満たせば自筆証書遺言として有効
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第972条秘密証書遺言の方式の特則口がきけない人の秘密証書は通訳や自書で申述に代える3項判例なし
  • 通訳人の通訳、または封紙への自書で申述に代えられる
  • 通訳による場合、公証人はその旨を封紙に記載する
  • 自書による場合、公証人はその旨を封紙に記載し申述記載に代える
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第973条成年被後見人の遺言成年被後見人の遺言には医師2人以上の立会いが必要2項判例 1件
  • 事理弁識能力が一時回復した時に医師2人以上の立会いが必要
  • 立ち会った医師は弁識能力を欠く状態でなかった旨を付記し署名押印
  • 秘密証書の場合はその旨を封紙に記載し署名押印する
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第974条証人及び立会人の欠格事由証人・立会人になれない人を定める1項・3号判例 3件
  • 未成年者はなれない
  • 推定相続人・受遺者やその配偶者・直系血族はなれない
  • 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記・使用人はなれない
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第975条共同遺言の禁止遺言は2人以上が同一証書ではできない1項判例 2件
  • 共同遺言は禁止されている
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第967条民法

遺言者の押印を欠ぐ自筆遺言証書が有効とされた事例

裁判要旨英文の自筆遺言証書に遺言者の署名が存するが押印を欠く場合において、同人が遺言書作成の約一年九か月前に日本に帰化した白系ロシア人であり、約四〇年間日本に居住していたが、主としてロシア語又は英語を使用し、日本語はかたことを話すにすぎず、交際相手は少数の日本人を除いてヨーロッパ人に限られ、日常の生活もまたヨーロッパの様式に従い、印章を使用するのは官庁に提出する書類等特に先方から押印を要求されるものに限られていた等原判示の事情(原判決理由参照)があるときは、右遺言書は有効と解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和49年12月24日 昭和48(オ)1074
登載
民集 第28巻10号2152頁
参照法条
民法960条,民法967条,民法968条
論点2第968条民法

運筆について他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言と民法九六八条一項にいう「自書」の要件

裁判要旨運筆について他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言が民法九六八条一項にいう「自書」の要件を充たすためには、遺言者が証書作成時に自書能力を有し、かつ、右補助が遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされていて単に筆記を容易にするための支えを借りたにとどまるなど添え手をした他人の意思が運筆に介入した形跡のないことが筆跡のうえで判定できることを要する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和62年10月8日 昭和58(オ)733
登載
民集 第41巻7号1471頁
参照法条
民法968条1項
論点3第968条民法

遺言書中の特定の条項の解釈

裁判要旨遺言の解釈にあたつては、遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書の特定の条項を解釈するにあたつても、当該条項と遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して当該条項の趣旨を確定すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和58年3月18日 昭和55(オ)973
登載
集民 第138号277頁
参照法条
民法968条
論点4第968条民法

一 遺言無効確認訴訟における確認の利益の判断にあたり原告の相続分が生前贈与等によりなくなるか否かを考慮することの可否
二 遺言無効確認訴訟が固有必要的共同訴訟にあたらないとされた事例
三 同一の証書に記載された二人の遺言の一方に方式違背がある場合と民法九七五条

裁判要旨一 遺言無効確認訴訟における確認の利益の存否を判断するにあたつては、原則として、原告の相続分が被相続人から受けた生前贈与等によりなくなるか否かを考慮すべきものではない。
二 単に相続分及び遺産分割の方法を指定したにすぎない遺言の無効確認を求める訴は、固有必要的共同訴訟にあたらない。
三 同一の証書に二人の遺言が記載されている場合は、そのうちの一方につき氏名を自書しない方式の違背があるときでも、右遺言は、民法九七五条〈共同遺言の禁止〉により禁止された共同遺言にあたる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和56年9月11日 昭和54(オ)1208
登載
民集 第35巻6号1013頁
参照法条
民法902条,民法903条1項,民法903条2項,民法908条,民法968条1項,民法975条,民法985条,民訴法62条,民訴法225条
論点5第968条民法

自筆証書遺言における明らかな誤記の訂正について方式違背がある場合と遺言の効力

裁判要旨自筆証書遺言における証書の記載自体からみて明らかな誤記の訂正については、民法九六八条二項〈自筆証書遺言〉所定の方式の違背があつても、その違背は、遺言の効力に影響を及ぼさない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和56年12月18日 昭和56(オ)360
登載
民集 第35巻9号1337頁
参照法条
民法968条2項
論点6第968条民法

自筆遺言証書の日付として「昭和四拾壱年七月吉日」と記載された証書の効力

裁判要旨自筆遺言証書の日付として「昭和四拾壱年七月吉日」と記載された証書は、民法九六八条一項〈自筆証書遺言〉にいう日付の記載を欠くものとして無効である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年5月31日 昭和54(オ)83
登載
民集 第33巻4号445頁
参照法条
民法968条1項
論点7第968条民法

数日にわたつて作成された自筆証書遺言が有効とされた事例

裁判要旨遺言者が、遺言書のうち日附以外の全文を記載して署名押印し、その八日後に当日の日附を記載して右遺言書を完成させたときは、特段の事情のない限り、右日附を記載した日に作成された自筆証書遺言として、有効である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和52年4月19日 昭和51(オ)978
登載
集民 第120号531頁
参照法条
民法968条
論点8第968条民法

年月の記載はあるが日の記載のない自筆遺言証書の効力

裁判要旨年月の記載はあるが日の記載のない自筆遺言証書は、民法九六八条一項〈自筆証書遺言〉にいう日付の記載を欠く無効のものである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和52年11月29日 昭和52(オ)886
登載
集民 第122号271頁
参照法条
民法968条1項
論点9第968条民法

自筆証書遺言における日付の誤記と遺言の効力

裁判要旨自筆遺言証書に記載された日付が真実の作成日付と相違しても、その誤記であること及び真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、遺言はこれによつて無効となるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和52年11月21日 昭和52(オ)696
登載
集民 第122号239頁
参照法条
民法968条1項
論点10第968条民法

自筆遺言証書における押印と指印

裁判要旨自筆遺言証書における押印は、指印をもつて足りる。

(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年6月23日 昭和62(オ)1180
登載
集民 第157号207頁
参照法条
民法968条1項
論点11第968条民法

自筆遺言証書における押印と指印

裁判要旨自筆遺言証書における押印は、指印をもつて足りる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成元年6月20日 昭和63(オ)955
登載
集民 第157号147頁
参照法条
民法968条1項
論点12第968条民法

自筆遺言証書における押印と指印

裁判要旨自筆遺言証書における押印は、指印をもつて足りる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年2月16日 昭和62(オ)1137
登載
民集 第43巻2号45頁
参照法条
民法968条1項
論点13第968条民法

封筒の封じ目にされた押印により自筆証書遺言の押印の要件に欠けるところはないとされた事例

裁判要旨遺言者が、自筆証書遺言をするにつき書簡の形式を採ったため、遺言書本文の自署名下には押印をしなかったが、遺言書であることを意識して、これを入れた封筒の封じ目に押印したものであるなど原判示の事実関係の下においては、右押印により、自筆証書遺言の押印の要件に欠けるところはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成6年6月24日 平成6(オ)83
登載
集民 第172号733頁
参照法条
民法968条1項
論点14第968条民法

一 カーボン複写の方法によって記載された自筆の遺言と民法九六八条一項〈自筆証書遺言〉にいう「自書」の要件
二 二人の遺言が一通の証書につづり合わされている場合と民法九七五条

裁判要旨一 カーボン複写の方法によって記載された自筆の遺言は、民法九六八条一項〈自筆証書遺言〉にいう「自書」の要件に欠けるものではない。
二 一通の証書に二人の遺言が記載されている場合であっても、その証書が各人の遺言書の用紙をつづり合わせたもので、両者が容易に切り離すことができるときは、右遺言は、民法九七五条〈共同遺言の禁止〉によって禁止された共同遺言に当たらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成5年10月19日 平成4(オ)818
登載
集民 第170号77頁
参照法条
民法968条1項,民法975条
論点15第968条民法

いわゆる花押を書くことと民法968条1項の押印の要件

裁判要旨いわゆる花押を書くことは,民法968条1項〈自筆証書遺言〉の押印の要件を満たさない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成28年6月3日 平成27(受)118
登載
民集 第70巻5号1263頁
参照法条
民法968条1項
論点16第968条民法

遺言者が自筆証書である遺言書の文面全体に故意に斜線を引く行為が民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し遺言を撤回したものとみなされた事例

裁判要旨遺言者が自筆証書である遺言書に故意に斜線を引く行為は,その斜線を引いた後になお元の文字が判読できる場合であっても,その斜線が赤色ボールペンで上記遺言書の文面全体の左上から右下にかけて引かれているという判示の事実関係の下においては,その行為の一般的な意味に照らして,上記遺言書の全体を不要のものとし,そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であり,民法1024条〈遺言書又は遺贈の目的物の破棄〉前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し,遺言を撤回したものとみなされる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成27年11月20日 平成26(受)1458
登載
民集 第69巻7号2021頁
参照法条
民法968条2項,民法1024条前段
論点17第968条民法

遺言書の記載のみに依拠して遺言書の条項の文言を形式的に解釈した原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨丁の遺言書中の特定の遺産を一部の親族に遺贈等をする旨の条項に続く「遺言者は法的に定められたる相続人を以って相続を与へる。」との条項について,丁は,その妻戊との間に子がなかったため,丁の兄夫婦の子甲を実子として養育する意図で丁戊夫婦の嫡出子として出生の届出をしたこと,丁と甲とは,遺言書が作成されたころを含めて,丁が死亡するまで,実の親子と同様の生活をしていたとみられること,遺言書が作成された当時,甲は,戸籍上,丁の唯一の相続人であったことなど判示の事情を考慮することなく,遺言書の記載のみに依拠して,上記の遺贈等の対象とされた特定の遺産を除く丁の遺産を甲に対して遺贈する趣旨ではなく,これを単に法定相続人に相続させる趣旨であるとした原審の判断には,違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成17年7月22日 平成16(受)443
登載
集民 第217号581頁
参照法条
民法第4編第3章 親子,民法968条
論点18第968条民法

遺言者の住所をもって表示された不動産の遺贈につき同所にある土地及び建物のうち建物のみを目的としたものと解することはできないとされた事例

裁判要旨遺言書には,遺贈の目的として単に「不動産」と記載され,その所在場所として遺言者の住所が記載されているが,遺言者はその住所地にある土地及び建物を所有していたなど判示の事実関係の下においては,所在場所の記載が住居表示であることなどをもって同遺言書の記載を建物のみを遺贈する旨の意思を表示したものと解することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成13年3月13日 平成10(オ)936
登載
集民 第201号345頁
参照法条
民法968条
論点19第968条民法

自筆遺言証書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって同証書による遺言が無効となるものではないとされた事例

裁判要旨遺言者が,入院中の日に自筆証書による遺言の全文,同日の日付及び氏名を自書し,退院して9日後(全文等の自書日から27日後)に押印したなど判示の事実関係の下においては,同自筆証書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに同自筆証書による遺言が無効となるものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和3年1月18日 平成31(受)427
登載
集民 第265号11頁
参照法条
民法968条1項
論点20第969条民法

嘱託人の確認手続に関する記載に誤りがある遺言公正証書の効力が認められた事例

裁判要旨遺言公正証書には、公証人が遺言者から印鑑証明書を提出させたとの記載がありながら、その印鑑証明書が連綴されていない場合でも、その作成にあたり民法九六九条に定める方式に則り証人二人が遺言を確認し、遺言者本人が署名押印したことが証書の記載によつて明らかにされており、かつ、公証人が遺言者の氏名を知り、面識があつてその確認手続において欠けることのなかつたことが、右遺言公正証書の作成の直前に同じ公証人の作成した別の公正証書の記載によつて明らかにされているときは、右遺言公正証書は、その効力を認めて妨げない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和57年1月22日 昭和56(オ)110
登載
集民 第135号155頁
参照法条
民法969条,公証人法2条,公証人法28条,公証人法36条4号,公証人法36条6号,公証人法41条1項
論点21第969条民法

公正証書遺言における盲人の証人適格

裁判要旨盲人は、公正証書遺言に立ち会う証人としての適格を有する。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年12月4日 昭和52(オ)558
登載
民集 第34巻7号835頁
参照法条
民法969条,民法974条
論点22第969条民法

公正証書による遺言が口授の要件を欠くものとはいえないとされた事例

裁判要旨公証人が予め他人作成のメモにより公正証書作成の準備として筆記したものに基づいて遺言者の陳述を聞き、右筆記を原本として公正証書を作成した場合であつても、原審認定の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、右公正証書による遺言は口授の要件を欠くものということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年7月5日 昭和54(オ)20
登載
集民 第127号161頁
参照法条
民法969条
論点23第969条民法

民法九六九条二号〈公正証書遺言 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。〉にいう口授の意義

裁判要旨遺言者が、公正証書によつて遺言をするにあたり、公証人があらかじめ筆記した遺言内容を読み聞かせたのに対し、遺言者が単にうなづくのみであつて、立会証人の一人が遺言者の真意を十分に確認することができなかつたときは、民法九六九条二号〈公正証書遺言 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。〉にいう口授があつたものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和52年6月14日 昭和52(オ)185
登載
集民 第121号1頁
参照法条
民法969条
論点24第969条民法

民法九六九条二号〈公正証書遺言 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。〉にいう口授の意義

裁判要旨遺言者が、公正証書によつて遺言をするにあたり、公証人の質問に対し言語をもつて陳述することなく単に肯定又は否定の挙動を示したにすぎないときには、民法九六九条二号〈公正証書遺言 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。〉にいう口授があつたものとはいえず、このことは遺言事項が子の認知に関するものであつても異ならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和51年1月16日 昭和50(オ)859
登載
集民 第117号1頁
参照法条
民法969条
論点25第969条民法

公正証書による遺言の方式

裁判要旨公証人が、あらかじめ他人から聴取した遺言の内容を筆記し、公正証書用紙に清書したうえ、その内容を遺言者に読み聞かせたところ、遺言者が右遺言の内容と同趣旨を口授し、これを承認して右書面にみずから署名押印したときは、公正証書による遺言の方式に違反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年12月20日 昭和43(オ)298
登載
民集 第22巻13号3017頁
参照法条
民法969条
論点26第969条民法

民法第九六九条第四号〈公正証書遺言〉但書にいう「遺言者が署名することができない場合」にあたるとされた事例。

裁判要旨遺言者が、遺言当時胃癌のため入院中で手術に堪えられないほどに病勢が進んでおり、公証人に対する本件遺言口述のため約一五分間も病床に半身を起していた後でもあつたから、公証人が遺言者の疲労や病勢の悪化を考慮してその自署を押し止めたため、公証人の言に反対してまで自署することを期待することができなかつた等原審認定(原判決理由参照)のような事情があるときは、民法第九六九条第四号〈公正証書遺言〉但書にいう「遺言者が署名することができない場合」にあたると解される。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年6月8日 昭和36(オ)827
登載
民集 第16巻7号1293頁
参照法条
民法969条4号但書
論点27第969条民法

遺言公正証書の原本に公証人の署名押印がなかったとした原審の認定判断に経験則違反又は採証法則違反の違法があるとされた事例

裁判要旨現時点においては公証人の署名押印がある遺言公正証書原本について,当該原本を利用して作成された謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等の内容に食違いがあることなどを理由として,上記謄本作成の時点において公証人の署名押印がなかったとした原審の認定判断には,上記謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等は,その細部に食違いがあるものの主要な部分で一致していること,原本の各葉上部欄外には公証人の印による契印がされているのに公証人の署名欄に署名押印がされていないとするのは不自然であること,公証人が原本作成と同じ日に作成して遺言者に交付した正本及び謄本には公証人の署名押印がされていることなど判示の事情の下では,特段の事情の存しない限り,経験則違反又は採証法則違反の違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成16年2月26日 平成13(受)398
登載
集民 第213号581頁
参照法条
民法969条5号,民訴法247条,公証人法39条
論点28第969条民法

一 公正証書遺言において証人が遺言者の署名押印に立ち会うことの要否
二 遺言者の押印の際に二人の証人のうち一人の立会いなく作成された遺言公正証書につきその作成の方式に瑕疵があるがその効力を否定するほかはないとまではいえないとされた事例

裁判要旨一 公正証書遺言において、証人は、遺言者の署名押印に立ち会うことを要する。
二 公正証書遺言において、遺言者が、証人甲乙の立会いの下に、遺言の趣旨を口授しその筆記を読み聞かされた上で署名をしたところ、印章を所持していなかったため、約一時間後に、甲のみの立会いの下に、再度筆記を読み聞かされて押印を行ったが、乙は、その直後ころ、公証人から完成した遺言公正証書を示されて右押印の事実を確認したのであって、この間に遺言者が従前の考えを翻し、又は右遺言公正証書が遺言者の意思に反して完成されたなどの事情は全くうかがわれないなど判示の事実関係の下においては、右遺言公正証書の作成の方式には瑕疵があるというべきであるが、その効力を否定するほかはないとまではいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年3月13日 平成9(オ)218
登載
集民 第187号429頁
参照法条
民法969条,公証人法2条
論点29第970条民法

ワープロを操作して秘密証書遺言の遺言書の表題及び本文を入力し印字した者が民法970条1項3号〈秘密証書遺言 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。〉にいう筆者であるとされた事例

裁判要旨秘密証書によって遺言をするに当たり,遺言者以外の者が,市販の遺言書の書き方の文例を参照し,ワープロを操作して,文例にある遺言者等の氏名を当該遺言の遺言者等の氏名に置き換え,そのほかは文例のまま遺言書の表題及び本文を入力して印字し,遺言者が氏名等を自筆で記載したなど判示の事実関係の下においては,ワープロを操作して遺言書の表題及び本文を入力し印字した者が民法970条1項3号〈秘密証書遺言 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。〉にいう筆者である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成14年9月24日 平成14(受)432
登載
集民 第207号269頁
参照法条
民法970条1項3号
論点30第973条民法

一 民法第八九五条〈推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理〉と遺贈の目的物についての受遺者の仮処分申請の許否
二 民法第一〇一二条〈遺言執行者の権利義務〉と遺贈の目的物についての受遺者の仮処分申請の許否
三 民法第九七六条〈死亡の危急に迫った者の遺言〉による遺言と医師の立会等の要否

裁判要旨一 民法第八九五条〈推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理〉の規定は、受遺者が、相続人廃除の手続進行中、相続人から遺贈の目的物を譲り受けた第三者に対し、右目的物につき仮処分を申請することを妨げるものではない。
二 民法第一〇一二条〈遺言執行者の権利義務〉の規定は、受遺者が自ら遺贈の目的物につき仮処分を申請することを妨げるものではない。
三 禁治産者でない通常人が民法第九七六条〈死亡の危急に迫った者の遺言〉による遺言をなす場合には、医師二人以上の立会その他同法第九七三条所定の方式を必要とするものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月10日 昭和28(オ)943
登載
民集 第9巻6号657頁
参照法条
民法895条,民法1012条,民法976条,民法982条,民法973条,民訴法755条
論点31第974条民法

民法九七四条三号〈証人及び立会人の欠格事由 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人〉にいう「配偶者」と推定相続人の配偶者

裁判要旨民法九七四条三号〈証人及び立会人の欠格事由 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人〉にいう「配偶者」には、推定相続人の配偶者も含まれる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年5月25日 昭和44(オ)304
登載
民集 第26巻4号747頁
参照法条
民法974条3号
論点32第974条民法

法定の推定家督相続人が相続権を失つた後に懐胎出生した直系卑属の代襲相続権の有無

裁判要旨法定の推定家督相続人がその相続権を失つた後に懐胎出生した直系卑属は代襲相続をする権利を有しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和30年1月21日 昭和27(オ)990
登載
民集 第9巻1号1頁
参照法条
旧民法974条
原

条文原文

原文ママ

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民法 第967条(普通の方式による遺言の種類) 詳細ページ
(普通の方式による遺言の種類)
第九百六十七条遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。
民法 第968条(自筆証書遺言) 詳細ページ
(自筆証書遺言)
第九百六十八条自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
民法 第969条(公正証書遺言) 詳細ページ
(公正証書遺言)
第九百六十九条公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一証人二人以上の立会いがあること。
二遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
2前項の公正証書は、公証人法(明治四十一年法律第五十三号)の定めるところにより作成するものとする。
3第一項第一号の証人については、公証人法第三十条に規定する証人とみなして、同法の規定(同法第三十五条第三項の規定を除く。)を適用する。
民法 第969_2条(公正証書遺言の方式の特則) 詳細ページ
(公正証書遺言の方式の特則)
第九百六十九条の二口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第一項第二号の口授に代えなければならない。
2公証人は、前項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に記載し、又は記録しなければならない。
民法 第970条(秘密証書遺言) 詳細ページ
(秘密証書遺言)
第九百七十条秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2第九百六十八条第三項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。
民法 第971条(方式に欠ける秘密証書遺言の効力) 詳細ページ
(方式に欠ける秘密証書遺言の効力)
第九百七十一条秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、第九百六十八条に定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。
民法 第972条(秘密証書遺言の方式の特則) 詳細ページ
(秘密証書遺言の方式の特則)
第九百七十二条口がきけない者が秘密証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第九百七十条第一項第三号の申述に代えなければならない。
2前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、その旨を封紙に記載しなければならない。
3第一項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封紙に記載して、第九百七十条第一項第四号に規定する申述の記載に代えなければならない。
民法 第973条(成年被後見人の遺言) 詳細ページ
(成年被後見人の遺言)
第九百七十三条成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。
民法 第974条(証人及び立会人の欠格事由) 詳細ページ
(証人及び立会人の欠格事由)
第九百七十四条次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一未成年者
二推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
民法 第975条(共同遺言の禁止) 詳細ページ
(共同遺言の禁止)
第九百七十五条遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
出

一次情報

原文ママ

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