論点1第967条民法
遺言者の押印を欠ぐ自筆遺言証書が有効とされた事例
裁判要旨英文の自筆遺言証書に遺言者の署名が存するが押印を欠く場合において、同人が遺言書作成の約一年九か月前に日本に帰化した白系ロシア人であり、約四〇年間日本に居住していたが、主としてロシア語又は英語を使用し、日本語はかたことを話すにすぎず、交際相手は少数の日本人を除いてヨーロッパ人に限られ、日常の生活もまたヨーロッパの様式に従い、印章を使用するのは官庁に提出する書類等特に先方から押印を要求されるものに限られていた等原判示の事情(原判決理由参照)があるときは、右遺言書は有効と解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和49年12月24日 昭和48(オ)1074
- 登載
- 民集 第28巻10号2152頁
- 参照法条
- 民法960条,民法967条,民法968条
論点2第968条民法
運筆について他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言と民法九六八条一項にいう「自書」の要件
裁判要旨運筆について他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言が民法九六八条一項にいう「自書」の要件を充たすためには、遺言者が証書作成時に自書能力を有し、かつ、右補助が遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされていて単に筆記を容易にするための支えを借りたにとどまるなど添え手をした他人の意思が運筆に介入した形跡のないことが筆跡のうえで判定できることを要する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和62年10月8日 昭和58(オ)733
- 登載
- 民集 第41巻7号1471頁
- 参照法条
- 民法968条1項
論点3第968条民法
遺言書中の特定の条項の解釈
裁判要旨遺言の解釈にあたつては、遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書の特定の条項を解釈するにあたつても、当該条項と遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して当該条項の趣旨を確定すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和58年3月18日 昭和55(オ)973
- 登載
- 集民 第138号277頁
- 参照法条
- 民法968条
論点4第968条民法
一 遺言無効確認訴訟における確認の利益の判断にあたり原告の相続分が生前贈与等によりなくなるか否かを考慮することの可否
二 遺言無効確認訴訟が固有必要的共同訴訟にあたらないとされた事例
三 同一の証書に記載された二人の遺言の一方に方式違背がある場合と民法九七五条
裁判要旨一 遺言無効確認訴訟における確認の利益の存否を判断するにあたつては、原則として、原告の相続分が被相続人から受けた生前贈与等によりなくなるか否かを考慮すべきものではない。
二 単に相続分及び遺産分割の方法を指定したにすぎない遺言の無効確認を求める訴は、固有必要的共同訴訟にあたらない。
三 同一の証書に二人の遺言が記載されている場合は、そのうちの一方につき氏名を自書しない方式の違背があるときでも、右遺言は、民法
九七五条〈共同遺言の禁止〉により禁止された共同遺言にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和56年9月11日 昭和54(オ)1208
- 登載
- 民集 第35巻6号1013頁
- 参照法条
- 民法902条,民法903条1項,民法903条2項,民法908条,民法968条1項,民法975条,民法985条,民訴法62条,民訴法225条
論点5第968条民法
自筆証書遺言における明らかな誤記の訂正について方式違背がある場合と遺言の効力
裁判要旨自筆証書遺言における証書の記載自体からみて明らかな誤記の訂正については、民法
九六八条二項〈自筆証書遺言〉所定の方式の違背があつても、その違背は、遺言の効力に影響を及ぼさない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和56年12月18日 昭和56(オ)360
- 登載
- 民集 第35巻9号1337頁
- 参照法条
- 民法968条2項
論点6第968条民法
自筆遺言証書の日付として「昭和四拾壱年七月吉日」と記載された証書の効力
裁判要旨自筆遺言証書の日付として「昭和四拾壱年七月吉日」と記載された証書は、民法
九六八条一項〈自筆証書遺言〉にいう日付の記載を欠くものとして無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和54年5月31日 昭和54(オ)83
- 登載
- 民集 第33巻4号445頁
- 参照法条
- 民法968条1項
論点7第968条民法
数日にわたつて作成された自筆証書遺言が有効とされた事例
裁判要旨遺言者が、遺言書のうち日附以外の全文を記載して署名押印し、その八日後に当日の日附を記載して右遺言書を完成させたときは、特段の事情のない限り、右日附を記載した日に作成された自筆証書遺言として、有効である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和52年4月19日 昭和51(オ)978
- 登載
- 集民 第120号531頁
- 参照法条
- 民法968条
論点8第968条民法
年月の記載はあるが日の記載のない自筆遺言証書の効力
裁判要旨年月の記載はあるが日の記載のない自筆遺言証書は、民法
九六八条一項〈自筆証書遺言〉にいう日付の記載を欠く無効のものである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和52年11月29日 昭和52(オ)886
- 登載
- 集民 第122号271頁
- 参照法条
- 民法968条1項
論点9第968条民法
自筆証書遺言における日付の誤記と遺言の効力
裁判要旨自筆遺言証書に記載された日付が真実の作成日付と相違しても、その誤記であること及び真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、遺言はこれによつて無効となるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年11月21日 昭和52(オ)696
- 登載
- 集民 第122号239頁
- 参照法条
- 民法968条1項
論点10第968条民法
自筆遺言証書における押印と指印
裁判要旨自筆遺言証書における押印は、指印をもつて足りる。
(反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成元年6月23日 昭和62(オ)1180
- 登載
- 集民 第157号207頁
- 参照法条
- 民法968条1項
論点11第968条民法
自筆遺言証書における押印と指印
裁判要旨自筆遺言証書における押印は、指印をもつて足りる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成元年6月20日 昭和63(オ)955
- 登載
- 集民 第157号147頁
- 参照法条
- 民法968条1項
論点12第968条民法
自筆遺言証書における押印と指印
裁判要旨自筆遺言証書における押印は、指印をもつて足りる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成元年2月16日 昭和62(オ)1137
- 登載
- 民集 第43巻2号45頁
- 参照法条
- 民法968条1項
論点13第968条民法
封筒の封じ目にされた押印により自筆証書遺言の押印の要件に欠けるところはないとされた事例
裁判要旨遺言者が、自筆証書遺言をするにつき書簡の形式を採ったため、遺言書本文の自署名下には押印をしなかったが、遺言書であることを意識して、これを入れた封筒の封じ目に押印したものであるなど原判示の事実関係の下においては、右押印により、自筆証書遺言の押印の要件に欠けるところはない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成6年6月24日 平成6(オ)83
- 登載
- 集民 第172号733頁
- 参照法条
- 民法968条1項
論点14第968条民法
一 カーボン複写の方法によって記載された自筆の遺言と民法九六八条一項〈自筆証書遺言〉にいう「自書」の要件
二 二人の遺言が一通の証書につづり合わされている場合と民法九七五条
裁判要旨一 カーボン複写の方法によって記載された自筆の遺言は、民法
九六八条一項〈自筆証書遺言〉にいう「自書」の要件に欠けるものではない。
二 一通の証書に二人の遺言が記載されている場合であっても、その証書が各人の遺言書の用紙をつづり合わせたもので、両者が容易に切り離すことができるときは、右遺言は、民法
九七五条〈共同遺言の禁止〉によって禁止された共同遺言に当たらない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成5年10月19日 平成4(オ)818
- 登載
- 集民 第170号77頁
- 参照法条
- 民法968条1項,民法975条
論点15第968条民法
いわゆる花押を書くことと民法968条1項の押印の要件
裁判要旨いわゆる花押を書くことは,民法
968条1項〈自筆証書遺言〉の押印の要件を満たさない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成28年6月3日 平成27(受)118
- 登載
- 民集 第70巻5号1263頁
- 参照法条
- 民法968条1項
論点16第968条民法
遺言者が自筆証書である遺言書の文面全体に故意に斜線を引く行為が民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し遺言を撤回したものとみなされた事例
裁判要旨遺言者が自筆証書である遺言書に故意に斜線を引く行為は,その斜線を引いた後になお元の文字が判読できる場合であっても,その斜線が赤色ボールペンで上記遺言書の文面全体の左上から右下にかけて引かれているという判示の事実関係の下においては,その行為の一般的な意味に照らして,上記遺言書の全体を不要のものとし,そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であり,民法
1024条〈遺言書又は遺贈の目的物の破棄〉前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し,遺言を撤回したものとみなされる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成27年11月20日 平成26(受)1458
- 登載
- 民集 第69巻7号2021頁
- 参照法条
- 民法968条2項,民法1024条前段
論点17第968条民法
遺言書の記載のみに依拠して遺言書の条項の文言を形式的に解釈した原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨丁の遺言書中の特定の遺産を一部の親族に遺贈等をする旨の条項に続く「遺言者は法的に定められたる相続人を以って相続を与へる。」との条項について,丁は,その妻戊との間に子がなかったため,丁の兄夫婦の子甲を実子として養育する意図で丁戊夫婦の嫡出子として出生の届出をしたこと,丁と甲とは,遺言書が作成されたころを含めて,丁が死亡するまで,実の親子と同様の生活をしていたとみられること,遺言書が作成された当時,甲は,戸籍上,丁の唯一の相続人であったことなど判示の事情を考慮することなく,遺言書の記載のみに依拠して,上記の遺贈等の対象とされた特定の遺産を除く丁の遺産を甲に対して遺贈する趣旨ではなく,これを単に法定相続人に相続させる趣旨であるとした原審の判断には,違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成17年7月22日 平成16(受)443
- 登載
- 集民 第217号581頁
- 参照法条
- 民法第4編第3章 親子,民法968条
論点18第968条民法
遺言者の住所をもって表示された不動産の遺贈につき同所にある土地及び建物のうち建物のみを目的としたものと解することはできないとされた事例
裁判要旨遺言書には,遺贈の目的として単に「不動産」と記載され,その所在場所として遺言者の住所が記載されているが,遺言者はその住所地にある土地及び建物を所有していたなど判示の事実関係の下においては,所在場所の記載が住居表示であることなどをもって同遺言書の記載を建物のみを遺贈する旨の意思を表示したものと解することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成13年3月13日 平成10(オ)936
- 登載
- 集民 第201号345頁
- 参照法条
- 民法968条
論点19第968条民法
自筆遺言証書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって同証書による遺言が無効となるものではないとされた事例
裁判要旨遺言者が,入院中の日に自筆証書による遺言の全文,同日の日付及び氏名を自書し,退院して9日後(全文等の自書日から27日後)に押印したなど判示の事実関係の下においては,同自筆証書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに同自筆証書による遺言が無効となるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和3年1月18日 平成31(受)427
- 登載
- 集民 第265号11頁
- 参照法条
- 民法968条1項
論点20第969条民法
嘱託人の確認手続に関する記載に誤りがある遺言公正証書の効力が認められた事例
裁判要旨遺言公正証書には、公証人が遺言者から印鑑証明書を提出させたとの記載がありながら、その印鑑証明書が連綴されていない場合でも、その作成にあたり民法九六九条に定める方式に則り証人二人が遺言を確認し、遺言者本人が署名押印したことが証書の記載によつて明らかにされており、かつ、公証人が遺言者の氏名を知り、面識があつてその確認手続において欠けることのなかつたことが、右遺言公正証書の作成の直前に同じ公証人の作成した別の公正証書の記載によつて明らかにされているときは、右遺言公正証書は、その効力を認めて妨げない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和57年1月22日 昭和56(オ)110
- 登載
- 集民 第135号155頁
- 参照法条
- 民法969条,公証人法2条,公証人法28条,公証人法36条4号,公証人法36条6号,公証人法41条1項
論点21第969条民法
公正証書遺言における盲人の証人適格
裁判要旨盲人は、公正証書遺言に立ち会う証人としての適格を有する。
(反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和55年12月4日 昭和52(オ)558
- 登載
- 民集 第34巻7号835頁
- 参照法条
- 民法969条,民法974条
論点22第969条民法
公正証書による遺言が口授の要件を欠くものとはいえないとされた事例
裁判要旨公証人が予め他人作成のメモにより公正証書作成の準備として筆記したものに基づいて遺言者の陳述を聞き、右筆記を原本として公正証書を作成した場合であつても、原審認定の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、右公正証書による遺言は口授の要件を欠くものということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和54年7月5日 昭和54(オ)20
- 登載
- 集民 第127号161頁
- 参照法条
- 民法969条
論点23第969条民法
民法九六九条二号〈公正証書遺言 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。〉にいう口授の意義
裁判要旨遺言者が、公正証書によつて遺言をするにあたり、公証人があらかじめ筆記した遺言内容を読み聞かせたのに対し、遺言者が単にうなづくのみであつて、立会証人の一人が遺言者の真意を十分に確認することができなかつたときは、民法
九六九条二号〈公正証書遺言 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。〉にいう口授があつたものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和52年6月14日 昭和52(オ)185
- 登載
- 集民 第121号1頁
- 参照法条
- 民法969条
論点24第969条民法
民法九六九条二号〈公正証書遺言 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。〉にいう口授の意義
裁判要旨遺言者が、公正証書によつて遺言をするにあたり、公証人の質問に対し言語をもつて陳述することなく単に肯定又は否定の挙動を示したにすぎないときには、民法
九六九条二号〈公正証書遺言 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。〉にいう口授があつたものとはいえず、このことは遺言事項が子の認知に関するものであつても異ならない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和51年1月16日 昭和50(オ)859
- 登載
- 集民 第117号1頁
- 参照法条
- 民法969条
論点25第969条民法
公正証書による遺言の方式
裁判要旨公証人が、あらかじめ他人から聴取した遺言の内容を筆記し、公正証書用紙に清書したうえ、その内容を遺言者に読み聞かせたところ、遺言者が右遺言の内容と同趣旨を口授し、これを承認して右書面にみずから署名押印したときは、公正証書による遺言の方式に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和43年12月20日 昭和43(オ)298
- 登載
- 民集 第22巻13号3017頁
- 参照法条
- 民法969条
論点26第969条民法
民法第九六九条第四号〈公正証書遺言〉但書にいう「遺言者が署名することができない場合」にあたるとされた事例。
裁判要旨遺言者が、遺言当時胃癌のため入院中で手術に堪えられないほどに病勢が進んでおり、公証人に対する本件遺言口述のため約一五分間も病床に半身を起していた後でもあつたから、公証人が遺言者の疲労や病勢の悪化を考慮してその自署を押し止めたため、公証人の言に反対してまで自署することを期待することができなかつた等原審認定(原判決理由参照)のような事情があるときは、民法
第九六九条第四号〈公正証書遺言〉但書にいう「遺言者が署名することができない場合」にあたると解される。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年6月8日 昭和36(オ)827
- 登載
- 民集 第16巻7号1293頁
- 参照法条
- 民法969条4号但書
論点27第969条民法
遺言公正証書の原本に公証人の署名押印がなかったとした原審の認定判断に経験則違反又は採証法則違反の違法があるとされた事例
裁判要旨現時点においては公証人の署名押印がある遺言公正証書原本について,当該原本を利用して作成された謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等の内容に食違いがあることなどを理由として,上記謄本作成の時点において公証人の署名押印がなかったとした原審の認定判断には,上記謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等は,その細部に食違いがあるものの主要な部分で一致していること,原本の各葉上部欄外には公証人の印による契印がされているのに公証人の署名欄に署名押印がされていないとするのは不自然であること,公証人が原本作成と同じ日に作成して遺言者に交付した正本及び謄本には公証人の署名押印がされていることなど判示の事情の下では,特段の事情の存しない限り,経験則違反又は採証法則違反の違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成16年2月26日 平成13(受)398
- 登載
- 集民 第213号581頁
- 参照法条
- 民法969条5号,民訴法247条,公証人法39条
論点28第969条民法
一 公正証書遺言において証人が遺言者の署名押印に立ち会うことの要否
二 遺言者の押印の際に二人の証人のうち一人の立会いなく作成された遺言公正証書につきその作成の方式に瑕疵があるがその効力を否定するほかはないとまではいえないとされた事例
裁判要旨一 公正証書遺言において、証人は、遺言者の署名押印に立ち会うことを要する。
二 公正証書遺言において、遺言者が、証人甲乙の立会いの下に、遺言の趣旨を口授しその筆記を読み聞かされた上で署名をしたところ、印章を所持していなかったため、約一時間後に、甲のみの立会いの下に、再度筆記を読み聞かされて押印を行ったが、乙は、その直後ころ、公証人から完成した遺言公正証書を示されて右押印の事実を確認したのであって、この間に遺言者が従前の考えを翻し、又は右遺言公正証書が遺言者の意思に反して完成されたなどの事情は全くうかがわれないなど判示の事実関係の下においては、右遺言公正証書の作成の方式には瑕疵があるというべきであるが、その効力を否定するほかはないとまではいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成10年3月13日 平成9(オ)218
- 登載
- 集民 第187号429頁
- 参照法条
- 民法969条,公証人法2条
論点29第970条民法
ワープロを操作して秘密証書遺言の遺言書の表題及び本文を入力し印字した者が民法970条1項3号〈秘密証書遺言 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。〉にいう筆者であるとされた事例
裁判要旨秘密証書によって遺言をするに当たり,遺言者以外の者が,市販の遺言書の書き方の文例を参照し,ワープロを操作して,文例にある遺言者等の氏名を当該遺言の遺言者等の氏名に置き換え,そのほかは文例のまま遺言書の表題及び本文を入力して印字し,遺言者が氏名等を自筆で記載したなど判示の事実関係の下においては,ワープロを操作して遺言書の表題及び本文を入力し印字した者が民法
970条1項3号〈秘密証書遺言 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。〉にいう筆者である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成14年9月24日 平成14(受)432
- 登載
- 集民 第207号269頁
- 参照法条
- 民法970条1項3号
論点30第973条民法
一 民法第八九五条〈推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理〉と遺贈の目的物についての受遺者の仮処分申請の許否
二 民法第一〇一二条〈遺言執行者の権利義務〉と遺贈の目的物についての受遺者の仮処分申請の許否
三 民法第九七六条〈死亡の危急に迫った者の遺言〉による遺言と医師の立会等の要否
裁判要旨一 民法
第八九五条〈推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理〉の規定は、受遺者が、相続人廃除の手続進行中、相続人から遺贈の目的物を譲り受けた第三者に対し、右目的物につき仮処分を申請することを妨げるものではない。
二 民法
第一〇一二条〈遺言執行者の権利義務〉の規定は、受遺者が自ら遺贈の目的物につき仮処分を申請することを妨げるものではない。
三 禁治産者でない通常人が民法
第九七六条〈死亡の危急に迫った者の遺言〉による遺言をなす場合には、医師二人以上の立会その他同法第九七三条所定の方式を必要とするものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月10日 昭和28(オ)943
- 登載
- 民集 第9巻6号657頁
- 参照法条
- 民法895条,民法1012条,民法976条,民法982条,民法973条,民訴法755条
論点31第974条民法
民法九七四条三号〈証人及び立会人の欠格事由 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人〉にいう「配偶者」と推定相続人の配偶者
裁判要旨民法
九七四条三号〈証人及び立会人の欠格事由 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人〉にいう「配偶者」には、推定相続人の配偶者も含まれる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年5月25日 昭和44(オ)304
- 登載
- 民集 第26巻4号747頁
- 参照法条
- 民法974条3号
論点32第974条民法
法定の推定家督相続人が相続権を失つた後に懐胎出生した直系卑属の代襲相続権の有無
裁判要旨法定の推定家督相続人がその相続権を失つた後に懐胎出生した直系卑属は代襲相続をする権利を有しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和30年1月21日 昭和27(オ)990
- 登載
- 民集 第9巻1号1頁
- 参照法条
- 旧民法974条