民法 / テーマ別まとめ

法律行為/無効及び取消し

無効及び取消しの条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

法律行為が無効になる場合と、いったん有効に成立した行為を後から取り消せる場合について、誰が取消しを主張できるか、取消し・追認の効果、追認とみなされる場合(法定追認)、取消権の期間制限、そして無効な行為に基づく給付をどう清算するか(原状回復)までを整理する。契約や合意の効力を確認する実務担当者向けに、条文の要件を平易に示す。

無効及び取消し
項目無効取消し
効果初めから効力なし取り消されると初めから無効とみなす
追認追認しても無効のまま追認で以後取消し不可
主張できる人特に定めなし制限行為能力者・意思表示者等に限る
期間制限定めなし5年(知った時)/20年(行為時)で消滅
原状回復給付受領者に原状回復義務取消し後は無効と同様の扱い
  • 無効な行為でも、当事者が無効と知って追認したときは新たな行為をしたものとみなす(119条ただし書)
  • 取消権者は制限行為能力者本人・法定代理人・承継人・同意権者、または錯誤等の意思表示をした本人・代理人・承継人に限られる(120条)
  • 追認は取消しの原因となる状況が消滅し、かつ取消権を知った後でなければ効力を生じない(法定代理人等が追認する場合を除く)(124条)
  • 履行、履行の請求、更改、担保の供与、権利の譲渡、強制執行があると法定追認となるが、異議をとどめた場合を除く(125条)
  • 無効な無償行為に基づく給付を受けた者が、無効(または取消しにより無効とみなされること)を知らなかったときは現存利益の限度で返還義務を負う(121条の2第2項)
  • 意思能力を有しなかった者・制限行為能力者であった者は、現に利益を受けている限度で返還義務を負う(121条の2第3項)
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無効及び取消し

無効及び取消しについて、条文は何を定めているか。

第119条無効な行為の追認無効な行為は追認しても有効にならない1項判例 3件
  • 無効な行為はやり直しても元々無効のまま
  • 無効と知って追認すれば新しい行為をしたことになる
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第120条取消権者取消しを主張できる人は限られる2項判例 1件
  • 制限行為能力者本人や法定代理人、承継人、同意権者に限る
  • 錯誤・詐欺・強迫の場合は意思表示をした本人や代理人、承継人に限る
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第121条取消しの効果取り消すと最初から無効だったことになる1項判例 5件
  • 取消しの効果は行為の時点まで遡る
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第121_2条原状回復の義務無効な行為の後始末のルール3項判例なし
  • 給付を受けた側は原則相手を元の状態に戻す義務を負う
  • 無効な無償行為で無効と知らなかった場合は現存利益の範囲で返還
  • 意思無能力者・制限行為能力者は現に利益を受けている限度で返還
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第122条取り消すことができる行為の追認取り消せる行為も追認すれば取り消せなくなる1項判例なし
  • 120条〈取消権者〉の追認権者が追認すると以後取消しできない
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第123条取消し及び追認の方法取消し・追認は相手方への意思表示で行う1項判例なし
  • 相手方が決まっている場合は意思表示ですると定める
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第124条追認の要件追認には要件がある2項・2号判例 1件
  • 取消しの原因がなくなり、かつ取消権を知った後でないと効力なし
  • 法定代理人や保佐人・補助人が追認する場合は状況消滅を待たなくてよい
  • 制限行為能力者(成年被後見人を除く)が同意を得て追認する場合も同様
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第125条法定追認一定の行為をすると追認したとみなされる(法定追認)1項・6号判例 2件
  • 履行、履行請求、更改、担保提供、権利譲渡、強制執行があると追認とみなす
  • 異議をとどめていた場合は法定追認にならない
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第126条取消権の期間の制限取消権には期間制限がある1項判例 1件
  • 追認できる時から5年で時効消滅
  • 行為の時から20年経過でも消滅
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第119条民法

譲渡禁止の特約のある指名債権を譲受人が特約の存在を知つて譲り受けたのち債務者がその譲渡につき承諾を与えた場合と承諾後債権の差押・転付命令を得た第三者に対する右債権譲渡の効力

裁判要旨譲渡禁止の特約のある指名債権を譲受人が特約の存在を知つて譲り受けた場合でも、債務者がその譲渡につき承諾を与えたときは、債権譲渡は譲渡の時にさかのぼつて有効となり、譲渡に際し債権者から債務者に対して確定日付のある譲渡通知がされている限り、債務者は、右承諾後に債権の差押・転付命令を得た第三者に対しても債権譲渡の効力を対抗することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和52年3月17日 昭和48(オ)823
登載
民集 第31巻2号308頁
参照法条
民法119条,民法466条,民法467条
論点2第119条民法

契約の一部が要素の錯誤により無効であつても他の部分の効力には影響がないとされた事例

裁判要旨根抵当権設定の交渉過程において、当初は債権者が債務者を再興させるために一定の条件が成就したときに行なうべき再建融資のみを被担保債権とすることが予定されていたが、その後右条件成就が未定の間に、債権者が債務者の支払手形を決済させるためのつなぎ融資を行ない、根抵当権設定者において後者を被担保債権に加えることに同意する等判示の事情があり、結局右両者を被担保債権とする根抵当権設定契約が成立した場合においては、当該契約中前者を被担保債権とする部分に要素の錯誤が存しても、後者を被担保債権とする部分につきその目的を達成することが可能であるかぎり、当該部分を有効とすることが契約当事者の意思に合致するというべきであり、右契約を全部無効と解すべきではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年12月19日 昭和46(オ)908
登載
民集 第26巻10号1969頁
参照法条
民法119条
論点3第119条民法

一 刑法上の直系尊属にあたらないとされた事例
二 刑法上の直系尊属としての養親の解釈について、民法上の追認に関する法理を容れる余地の有無

裁判要旨一 戸籍上、被告人の養子縁組につき、その代諾権者とされている者が真実の親権者でないときは、右縁組は、適法な届出を欠くものとして、人事訴訟による確定または戸籍の訂正をまたず、無効であり、しかも、被告人が犯行前において右無効原因を認識して右縁組を追認したと認めることができないときは、被告人と事実上の養親との生活事実の如何にかかわりなく、本人たる被告人の無権代理行為の追認があつたと認める余地もないから、右事実上の養親は、刑法上、被告人の直系尊属にあたらないものと解すべきである。
二 一五歳未満の子の養子縁組に関する代諾者の法定代理権の欠缺は一種の無権代理と解し、満一五歳に達した養子は、法定代理人でない者が自己のため代諾した養子縁組を有効に御委任することができ、しかもこの追認は黙示で足り、その意思表示は満一五歳に達した養子から生存養親に対してなすべく、適法に追認がなされたときは縁組はこれにより当初から有効となるものと解するのが相当である(昭和二四年(オ)第二二九号同二七年一〇月三日第二小法廷判決、民集六巻九号七五三頁参照)。このことは、刑法上、直系尊属としての養親にあたるかどうかの解釈についても、少くとも犯罪行為以前における本人の追認に関する限りは、あてはまると考えられる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年12月24日 昭和36(あ)2486
登載
刑集 第17巻12号2537頁
参照法条
刑法200条,民法797条,民法802条,民法113条,民法807条,民法119条
論点4第120条民法

一 未成年の養子のため民法応急措置法施行前に開始した後見は同法施行当時右未成年者に実父母ある場合同法の施行により終了するか
二 未成年者の実父母が法定代理人親権者として未成年者のため共同してなした法律行為取消の意思表示は実父母が親権者でなかつた場合後見人たる実父が法定代理人としてなした意思表示と認め得るか

裁判要旨一 未成年者たる養子のため、民法応急措置法施行前に開始した後見は、戸主たる地位に基く後見人ある場合を除き、同法施行当時右未成年者に実父母がある場合においても、同法の施行により終了しない。
二 未成年者の実父母が法定代理人親権者として未成年者のため共同してなした法律行為取消の意思表示は、実父母が親権者でなかつた場合において、後見人たる実父が未成年者の法定代理人としてなした意思表示と認めることを妨げない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年7月16日 昭和27(オ)909
登載
民集 第8巻7号1359頁
参照法条
日本国憲法の施行に伴う民法の応急措置に関する法律3条,日本国憲法の施行に伴う民法の応急措置に関する法律6条,民法120条
論点5第121条民法

売買を請求原因とする所有権確認の判決が確定したのち後訴において詐欺を理由に右売買を取り消して所有権の存否を争うことの許否

裁判要旨売買を請求原因とする所有権確認の判決が確定したのちは、後訴において詐欺を理由に右売買を取り消して所有権の存否を争うことは許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年10月23日 昭和55(オ)589
登載
民集 第34巻5号747頁
参照法条
民法96条,民法121条,民訴法199条
論点6第121条民法

準禁治産者が取消の対象である金銭消費貸借契約によつて得た利益を賭博に浪費した場合と返還義務

裁判要旨準禁治産者が取消の対象である金銭消費貸借契約によつて得た利益を賭博に浪費し、右利益が現存しない場合には、その返還義務を負わない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和50年6月27日 昭和49(オ)1019
登載
集民 第115号153頁
参照法条
民法121条但書
論点7第121条民法

売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務と同時履行

裁判要旨売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係にあると解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年9月7日 昭和46(オ)1127
登載
民集 第26巻7号1327頁
参照法条
民法96条,民法121条,民法533条,民法546条
論点8第121条民法

詐欺を理由に取り消された法律行為に基づく利得を破産者が返還した場合と破産法七二条一号の適用

裁判要旨破産会社が、破産宣告を受ける前に、その経営が事実に反し健全であるかのように装つて第三者を欺罔し、新株の引受および貸付の意思表示をさせて金員の給付を受けたのち、その意思表示が詐欺を理由に取り消されたため、その利得の返還として同額の金員を同人に支払つた場合においても、破産債権者を害する意図のもとに支払をしたときは、その弁済について破産法七二条一号が適用されるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年12月19日 昭和42(オ)699
登載
民集 第26巻10号1937頁
参照法条
破産法15条,破産法72条1号,民法96条,民法121条
論点9第121条民法

未成年者の親権者母が親族会の同意を得ないでした家屋譲渡契約を取り消したことによる原状回復義務と同時履行。

裁判要旨親権者母が、親族会の同意を得ないでした家屋譲渡契約を取り消したときは、その原状回復義務については民法第五三三条を準用すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年6月16日 昭和24(オ)191
登載
民集 第7巻6号629頁
参照法条
旧民法886条3号,旧民法887条,民法546条,民法533条,民法121条
論点10第124条民法

「追認ヲ為スコトヲ得ル時」の意義。

裁判要旨民法第一二六条〈取消権の期間の制限〉にいう「追認ヲ為スコトヲ得ル時」とは、取消の原因たる情況の止んだ時、すなわち未成年者にあつてはこれが成年に達した時をいい、未成年者であつた者が自己の行為を了知したことは、取消権の消滅時効が進行を始めるについての要件ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年9月6日 昭和37(オ)1183
登載
集民 第67号531頁
参照法条
民法126条,民法124条1項
論点11第125条民法

無権代理行為の追認と民法一二五条の類推適用

裁判要旨無権代理行為の追認には、取り消しうべき行為についての法定追認を定めた民法一二五条は類推適用されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和54年12月14日 昭和54(オ)778
登載
集民 第128号215頁
参照法条
民法113条,民法125条
論点12第125条民法

民法一二五条〈法定追認〉の法定追認事由が「取消ノ原因タル状況ノ止ミタル後」に生じたことについての主張・立証責任

裁判要旨民法一二五条〈法定追認〉各号所定の事由が「取消ノ原因タル状況ノ止ミタル後」に生じたことについての主張・立証責任は、同条による追認の効果を主張する者に属する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年2月7日 昭和46(オ)915
登載
集民 第111号47頁
参照法条
民法125条,民訴法第2編第3章第1節
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民法 第119条(無効な行為の追認) 詳細ページ
(無効な行為の追認)
第百十九条無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
民法 第120条(取消権者) 詳細ページ
(取消権者)
第百二十条行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
民法 第121条(取消しの効果) 詳細ページ
(取消しの効果)
第百二十一条取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
民法 第121_2条(原状回復の義務) 詳細ページ
(原状回復の義務)
第百二十一条の二無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
2前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
3第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。
民法 第122条(取り消すことができる行為の追認) 詳細ページ
(取り消すことができる行為の追認)
第百二十二条取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
民法 第123条(取消し及び追認の方法) 詳細ページ
(取消し及び追認の方法)
第百二十三条取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。
民法 第124条(追認の要件) 詳細ページ
(追認の要件)
第百二十四条取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
2次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。
一法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。
二制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。
民法 第125条(法定追認) 詳細ページ
(法定追認)
第百二十五条追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
一全部又は一部の履行
二履行の請求
三更改
四担保の供与
五取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
六強制執行
民法 第126条(取消権の期間の制限) 詳細ページ
(取消権の期間の制限)
第百二十六条取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。