論点1第143条民法
一 刑訴規則第五九条に違反する勾留更新決定書中の更新日の不明瞭な記載と右決定の効力
二 勾留期間満了の日の算出方法
三 被告人が保釈出所をした場合の勾留残存期間の算出方法
四 勾留の残存期間満了の日の算出方法
裁判要旨一 所論勾留更新決定書中の更新日の記載が不明瞭であることは所論のとおりであつて、右は「八」の文字と「七」の文字とを重複記載していることは右記載自体から窺われるのであるが、これを二八日と判読するべきか或はこれを二七日と判読すべきかはかかる文字の記載だけから断定することは困難であつて、かかる記載が刑訴規則第五九条に違反するものであることはいうまでもない。しかし本件勾留更新は九月二八日から行わるべきものであることは前説示のとおりであるから、右勾留更新決定書中の更新日は二八日と記載されたものであると解するのを相当とする。従つて、更新日の記載が前示のように明瞭でないからといつて、右更新決定を無効であるとすることはできない。
二 記録を調査するに本件勾留の起算日は昭和二四年四月二二日(公訴の提起があつた日)であるからそのまま勾留されていれば六月二一日が勾留期間満了の日にあたるのであるが被告人は四月二八日まで勾留され同日保釈決定により釈放されたので四月二九日から勾留期間を暦に従つて算出すれば、五月二八日で一ケ月となり、五月の残存日の三日と六月の残存日の二一日を加算して残存期間は一ケ月二四日となるのである。しかるに被告人は八月四日に再び収監されたのであるから八月四日から右残存期間一ケ月二四日を暦に従つて算出すれば九月二七日が右残存期間の満了日にあたることは計算上明白である。
(抗告人は原審で前示残存期間を日数に換算して五四日と計算し残存期間の満了日を九月二六日であると主張するが前記のように暦に従つて計算すべきであるからその主張は理由がない)従つて、本件勾留の更新は九月二八日から行われるべきものであるから原決定の勾留期間の計算は正当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和26年4月27日 昭和25(し)11
- 登載
- 刑集 第5巻5号957頁
- 参照法条
- 刑訴規則59条,刑訴法60条2項,刑訴法55条2項,民法143条2項
論点2第138条民法
民法七二四条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉所定の三年の時効期間の計算と初日の不算入
裁判要旨民法
七二四条〈不法行為による損害賠償請求権の消滅時効〉所定の三年の時効期間の計算においては、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知つた時が午前零時でない限り、時効期間の初日を算入すべきではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和57年10月19日 昭和56(オ)767
- 登載
- 民集 第36巻10号2163頁
- 参照法条
- 民法138条,民法140条,民法724条
論点3第90条民法
一 賭博の用に供されることを知つてする金銭の消費貸借契約と公序良俗違反
二 相殺の抗弁を容れて原告の請求を棄却した第一審判決に対し原告のみが控訴した場合と不利益変更禁止の原則
裁判要旨一 賭博の用に供されることを知つてする金銭の消費貸借契約は、公序良俗に違反し無効である。
二 原告の訴求債権の存在を認めながら被告の相殺の抗弁を容れ原告の請求を棄却した第一審判決に対し、原告のみが控訴し被告が控訴も附帯控訴もしなかつた場合において、控訴審が、被告の相殺の抗弁について判断するまでもなく、訴求債権の不存在を理由に原告の請求を棄却すべきときは、不利益変更禁止の原則に従い、第一審判決を維持して、原告の控訴を棄却するにとどめなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年9月4日 昭和60(オ)1563
- 登載
- 集民 第148号417頁
- 参照法条
- 民法90条,民訴法199条2項,民訴法384条,民訴法385条,民訴法386条
論点4第90条民法
非公認市場における金地金の先物取引の委託が公序良俗に反し無効とされた事例
裁判要旨顧客の委託を受けて非公認市場で将来の一定の時期に商品の授受及び代金決済を行う予約取引の方法で金地金の売買を営む会社の社員らが、商品取引の知識のない主婦に対して、引続き三時間にも及ぶ勧誘を続け、その間右取引が投機性を有し、損失を被る虞のあること、委託追証拠金等を必要とすることがあり、これを納めないときには多額の損害を被ることなどについて説明せず、かえつて損失の虞のない安全かつ有利な取引であると強調し、更に、主婦が現金のないことを理由に逡巡するのに、貸付信託通帳でも支障がないなどと述べて執拗に取引を勧め、その結果、主婦が右社員らの言うに委せれば利益を生ずることが確実であると考えて本件取引をするに至つたなど原判示の事実関係のもとにおいては、主婦と会社との間に成立した本件取引は、著しく不公正な方法によつて行われたものとして公序良俗に反し無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年5月29日 昭和59(オ)12
- 登載
- 集民 第148号1頁
- 参照法条
- 民法90条,民法643条,商品取引所法2条4項,商品取引所法8条,商品取引所法94条
論点5第90条民法
不倫な関係にある女性に対する包括遺贈が公序良俗に反しないとされた事例
裁判要旨妻子のある男性がいわば半同棲の関係にある女性に対し遺産の三分の一を包括遺贈した場合であつても、右遺贈が、妻との婚姻の実体をある程度失つた状態のもとで右の関係が約六年間継続したのちに、不倫な関係の維持継続を目的とせず、専ら同女の生活を保全するためにされたものであり、当該遺言において相続人である妻子も遺産の各三分の一を取得するものとされていて、右遺贈により相続人の生活の基盤が脅かされるものとはいえないなど判示の事情があるときは、右遺贈は公序良俗に反するものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年11月20日 昭和61(オ)946
- 登載
- 民集 第40巻7号1167頁
- 参照法条
- 民法90条,民法964条
論点6第90条民法
クラブのホステスが顧客の飲食代金債務についてした保証契約が公序良俗に反するものとはいえないとされた事例
裁判要旨クラブのホステスが顧客の当該クラブに対する飲食代金債務についてした保証契約は、ホステスにおいて自己独自の客としての当該顧客との関係の維持継続を図ることによりクラブから支給される報酬以外の特別の利益を得ることを目的として任意に締結したと認められるなど原判示のような事情がある場合には、公序良俗に反するものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年11月20日 昭和60(オ)356
- 登載
- 集民 第149号151頁
- 参照法条
- 民法90条,民法446条
論点7第90条民法
土地付分譲マンション付属の駐車場専用使用権分譲特約が公序良俗違反として無効とはいえないとされた事例
裁判要旨マンシヨン分譲業者がマンシヨンの敷地の持分と右敷地内の付属の駐車場専用使用権とを別個に譲渡することが同一土地から二重に利益を得ることになるものと速断することはできず、マンシヨン購入者の全員において、駐車場専用使用権を土地付マンシヨン本体の分譲とは別個に購入者に対して分譲する権利が分譲業者に留保されていること並びに右専用使用権の分譲を受けた者及びその譲受人が右駐車場を専用使用することを容認・承諾して、分譲業者とマンシヨン分譲契約を締結したことなど原審認定の事情のもとにおいては、右駐車場専用利用権の設定に関する約定が公序良俗に反するものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和56年1月30日 昭和55(オ)747
- 登載
- 集民 第132号71頁
- 参照法条
- 民法90条,民法251条,民法252条,建物の区分所有等に関する法律8条,建物の区分所有等に関する法律9条,建物の区分所有等に関する法律23条,建物の区分所有等に関する法律24条
論点8第90条民法
同業他社への転職者に対する退職金の支給額を一般の退職の場合の半額と定めた退職金規定の効力
裁判要旨原審確定の事実関係のもとにおいては、会社が営業担当社員に対し退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限し、右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給する退職金の額を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることは、労働基準法三条、一六条、二四条及び民法
九〇条〈公序良俗〉に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年8月9日 昭和51(オ)1270
- 登載
- 集民 第121号225頁
- 参照法条
- 労働基準法3条,労働基準法16条,労働基準法24条,民法90条
論点9第90条民法
一、いわゆる拘束された即時両建預金を取引条件とする信用組合の貸付が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条〈審判相互の関係〉に違反するとされた事例
二、いわゆる拘束された即時両建預金を取引条件とする信用協同組合の貸付が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条に違反する場合と貸付契約の私法上の効力
裁判要旨一、信用協同組合が、組合員に現実に借受を必要とする実質貸付額五五〇万円を貸し付けるにあたり、右貸付について十分な物的・人的担保があるのに、実質金利を高める等のため、取引条件として、組合員に、貸付額七五〇万円の本件貸付契約及び同四〇〇万円の別口貸付契約を締結させて実質貸付額を超過する六〇〇万円を貸し付け、その六〇〇万円を即時二〇〇万円の定期預金及び四〇〇万円の割増金付定期預金として組合に預託させ、これに担保権を設定して払戻を制限し、また、実質金利が年一割七分一厘入毛余になるなど、判示の事情のもとにおいては、右各貸付契約及び各定期預金契約は、昭和二八年公正取引委員会告示第一一号(不公正な取引方法)の一〇にあたり、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条に違反するというべきである。
二、いわゆる拘束された即時両建預金を取引条件とする信用協同組合の貸付が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
一九条〈審判相互の関係〉に違反する場合でも、その違反により、貸付契約が直ちに私法上無効になるとはいえず、また、右契約が公序良俗に反するともいえないが、両建預金及び超過貸付があるために実質金利が利息制限法所定の制限利率を超過しているときは、右超過する限度で貸付契約中の利息、損害金についての約定は、同法一条、四条により無効になるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年6月20日 昭和48(オ)1113
- 登載
- 民集 第31巻4号449頁
- 参照法条
- 私的独占の禁止及び公正取引の確保関する法律2条7項5号,私的独占の禁止及び公正取引の確保関する法律9条,昭和28年公正取引委員会告示11号10,民法90条,利息制限法1条1項,利息制限法2条,利息制限法4条1項
論点10第90条民法
一、外国為替及び外国貿易管理法並びに外国為替管理令に違反する保証契約の私法上の効力
二、外国の通貨をもつて債権額が指定された金銭債権と日本の通貨による請求
三、外国の通貨をもつて債権額が指定された金銭債権についての裁判上の請求と日本の通貨による債権額の算定
裁判要旨一、外国為替及び外国貿易管理法三〇条三号、外国為替管理令一三条一項一号、二項に違反して締結された保証契約でも、私法上は有効である。
二、外国の通貨をもつて債権額が指定された金銭債権については、債権者は債務者に対して外国の通貨又は日本の通貨のいずれによつてもこれを請求することができる。
三、外国の通貨をもつて債権額が指定された金銭債権について日本の通貨により裁判上の請求がされた場合、日本の通貨による債権額は、事実審の最終口頭弁論期日の外国為替相場によつて外国の通貨を日本の通貨に換算した額である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年7月15日 昭和48(オ)305
- 登載
- 民集 第29巻6号1029頁
- 参照法条
- 外国為替及び外国貿易管理法30条3号,外国為替管理令13条1項1号,外国為替管理令13条2項,民法90条,民法403条
論点11第90条民法
いわゆる仮登記担保契約と民法九〇条
裁判要旨いわゆる仮登記担保契約は、被担保債権額と目的不動産の価額との間に著しい較差がある場合であつても、特段の事情のないかぎり、暴利行為として公序良俗に反するものということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和50年4月10日 昭和48(オ)889
- 登載
- 集民 第114号497頁
- 参照法条
- 民法90条,民法482条,民法556条
論点12第90条民法
仮登記担保と目的不動産による旅館営業
裁判要旨仮登記担保権者が予約完結権を行使して目的不動産の引渡を受けるとともに、債務者との特約に基づき右不動産による旅館の営業権をその施設、器具ともども引渡を受けたなど判示事情のもとでは、債権者が目的不動産を換価して清算するまでこれを使用して旅館営業を継続しても右不動産に対する債務者の所有権を侵害するものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和50年12月26日 昭和46(オ)267
- 登載
- 集民 第116号935頁
- 参照法条
- 民法90条,民法200条,民法709条,不動産登記法2条,不動産登記法7条2項
論点13第90条民法
一、国際的裁判の合意の方式
二、外国の裁判所を専属管轄裁判所与る国際的専属的裁判管轄の合意
三、船荷証券に基づく国際的専属的裁判管轄の合意が公序違反として無効とはいえないとされた事例
裁判要旨一、国際的裁判管轄の合意は、両当事者の署名のある書面によつてされることを要せず、特定国の裁判所を管轄裁判所として明示的に指定する当事者の一方が作成した書面に基づいて締結されれば足りる。
二、ある訴訟事件についてわが国の裁判権を排除し特定の外国の裁判所を第一審の専属的管轄裁判所と指定する国際的専属的裁判管轄の合意は、当該事件がわが国の裁判権に専属的に服するものではなく、かつ指定された外国の裁判所がその外国法上当該事件につき管轄権を有する場合には、原則として有効であり、その外国法上右合意が有効とされること又は当該外国裁判所の判決につき相互の保証のあることを要しない。
三、国際海上物品運送契約に基づく荷主の運送人に対する損害賠償請求訴訟につき、国際的海運業者である被告の本店のあるオランダ国の裁判所を第一審の専属的管轄裁判所と指定する国際的専属的裁判管轄の合意は、たとえそれが被告の発行した船荷証券上の管轄約款に基づくものであり、また、右合意に従うとき荷主の負うこととなる費用及び手数が増大するとしても、それだけでは公序違反として無効とはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年11月28日 昭和45(オ)297
- 登載
- 民集 第29巻10号1554頁
- 参照法条
- 民法1条,民法90条,民法521条,民訴法25条,民訴法200条4号,民訴法515条,1924年8月25日にブラツセルで署名された船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約3条8項,国際海上物運送法15条1項
論点14第90条民法
一、相続人間の相続分譲渡契約が公序良俗に違反すると認められた事例
二、相続財産一般につき相続人がその相続分該当の権利を有することの確認請求が認容された事例
裁判要旨一、二(省略)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和48年6月22日 昭和47(オ)1311
- 登載
- 集民 第109号411頁
- 参照法条
- 民法90条,民法900条
論点15第90条民法
一、憲法一四条、一九条と私人相互間の関係
二、特定の思想、信条を有することを理由とする雇入れの拒否は許されるか
三、雇入れと労働基準法三条
四、企業者が労働者の雇入れにあたりその思想、信条を調査することの可否
五、試用期間中に企業者が管理職要員として不適格であると認めたときは解約できる旨の特約に基づく留保解約権の行使が許される場合
裁判要旨一、憲法一四条や
一九条〈審判相互の関係〉の規定は、直接私人相互間の関係に適用されるものではない。
二、企業者が特定の思想、信条を有する労働者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。
三、労働基準法三条は、労働者の雇入れそのものを制約する規定ではない。
四、労働者を雇い入れようとする企業者が、その採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることは、違法とはいえない。
五、企業者が、大学卒業者を管理職要員として新規採用するにあたり、採否決定の当初においてはその者の管理職要員としての適格性の判定資料を十分に蒐集することができないところから、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨で試用期間を設け、企業者において右期間中に当該労働者が管理職要員として不適格であると認めたときは解約できる旨の特約上の解約権を留保したときは、その行使は、右解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和48年12月12日 昭和43(オ)932
- 登載
- 民集 第27巻11号1536頁
- 参照法条
- 憲法14条,憲法19条,民法1条,民法90条,労働基準法3条,労働基準法第2章
論点16第90条民法
賭博による債務の履行のために交付された第三者振出の小切手の支払につき所持人と振出人との間に成立した和解の効力
裁判要旨賭博による債務の履行のために第三者振出の小切手の交付を受けた所持人が、振出人との間で小切手金の支払に関し和解契約を締結した場合においては、右契約の内容である振出人の所持人に対する金銭支払の約定は、公序良俗に違反し無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和46年4月9日 昭和46(オ)134
- 登載
- 民集 第25巻3号264頁
- 参照法条
- 民法90条,民法696条,小切手法22条
論点17第90条民法
一 臨時物資需給調整法第四条ノ〈成年 年齢十八歳をもって、成年とする。〉二に違反した行為の効力
二 第三者のためにする契約において契約の利益を受ける者に反対給付を課しうるか
裁判要旨一 臨時物資需給調整法
第四条ノ〈成年 年齢十八歳をもって、成年とする。〉二に違反した行為も、私法上その効力がないとはいえない。
二 民法
第五三七条〈第三者のためにする契約〉の第三者のためにする契約においては、契約の利益を受ける者に反対給付を課することを妨げない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和42年10月27日 昭和41(オ)269
- 登載
- 集民 第88号793頁
- 参照法条
- 臨時物資需給調整法4条ノ2,民法90条,民法537条
論点18第90条民法
自動車の割賦売買契約における違約金の特約が民法第九〇条により無効といえないとされた事例。
裁判要旨自動車の割賦売買契約で、割賦金遅滞のときは契約を解除され、買主は自動車を返還する外、売買代金相当額の違約金を支払うものとする特約がされていても、該特約を一概に民法第九〇条により無効とすることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年5月21日 昭和38(オ)1347
- 登載
- 集民 第79号125頁
- 参照法条
- 民法420条,民法90条,割賦販売法6条
論点19第90条民法
貸金の遅延損害金の約定が公序良俗に反しないとされた事例。
裁判要旨貸金の遅延損害金を日歩一〇〇円につき三〇銭と約定したからといつて、直ちに右約定が公序良俗に反するとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年1月26日 昭和38(オ)63
- 登載
- 集民 第77号137頁
- 参照法条
- 民法90条,民法420条
論点20第90条民法
譲渡担保契約に伴う代物弁済の約定部分を無効と解すべき場合でも譲渡担保契約全体が無効となるとは限らないとされた事例。
裁判要旨譲渡担保契約において、期限に債務の弁済がないときは担保物件を債務の代物弁済に供する旨の約定を含む場合、被担保債権額に比し担保物件の価額が著しく高額であつて、債務者の経済的困窮に乗じて右の約定をなしたものとして右約定部分を公序良俗に反し無効と解すべきときでも、必ずしも譲渡担保契約全部が無効となるとは限らない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和38年1月18日 昭和36(オ)1162
- 登載
- 民集 第17巻1号25頁
- 参照法条
- 民法90条,民法92条,民法555条
論点21第90条民法
共同事業達成のため関係官庁に対する運動費として当事者の一方が相手方に交付した金員の返還を約する当事者間の合意が有効とされた事例
裁判要旨当事者間の共同事業を達成するために、市復興区画調整委員会等に対する運動費として、当事者の一方が相手方に対し、合計金三〇万円を交付した場合、右が不法原因給付に当るとしても、後にその返還を約する当事者間の合意は、民法
第七〇八条〈不法原因給付〉の禁ずるところではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年5月25日 昭和35(オ)1215
- 登載
- 民集 第16巻5号1195頁
- 参照法条
- 民法90条,民法708条
論点22第90条民法
一 停止条件付代物弁材契約が公序良俗に違反しないとされた事例
二 同一審級における裁判官の過半数の更迭と民訴法第一八七条第三項後段の適用の有無
裁判要旨適用なし。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年12月21日 昭和37(オ)616
- 登載
- 集民 第63号831頁
- 参照法条
- 民法90条,民法482条,民訴法187条
論点23第90条民法
一 知事の許可を停止条件とする農地売買の効力
二 民法第五五七条〈手付〉にいわゆる「契約の履行に著手」したものと認められた事例
裁判要旨一 知事の許可を停止条件として締結された農地の売買契約は、無効ではない
二 土地の買主が約定の履行期後、売主に対し、しばしばその履行を求め、かつ売主において右土地の所有権移転登記手続をすれば、何時でも支払えるよう残代金の準備をしていたときは、民法
第五五七条〈手付〉にいわゆる「契約の履行に著手」したものと認めるのが相当である
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和33年6月5日 昭和30(オ)995
- 登載
- 民集 第12巻9号1359頁
- 参照法条
- 農地法3条1項本文,農地法3条4項,農地調整法4条1項,農地調整法4条5項,民法90条,民法557条
論点24第90条民法
酌婦としての稼働契約に伴い消費賃借名義で交付された金員の返還請求の許容
裁判要旨酌婦としての稼働契約が公序良俗に反し無効である場合には、これに伴い消費賃借名義で交付された金員の返還請求は許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和30年10月7日 昭和28(オ)622
- 登載
- 民集 第9巻11号1616頁
- 参照法条
- 民法90条,民法708条
論点25第90条民法
消費貸借成立のいきさつに不法の点があつた場合における貸金返還請求と民法第九〇条〈公序良俗〉および第七〇八条〈不法原因給付〉の適用の有無
裁判要旨消費貸借成立のいきさつにおいて、貸主の側に多少の不法があつたとしても、借主の側にも不法の点があり、前者の不法性が後者のそれに比しきわめて微弱なものに過ぎない場合には、民法
第九〇条〈公序良俗〉および
第七〇八条〈不法原因給付〉は適用がなく、貸主は貸金の返還を請求することができるものと解するのを相当とする。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年8月31日 昭和27(オ)13
- 登載
- 民集 第8巻8号1557頁
- 参照法条
- 民法90条,民法587条,民法708条
論点26第90条民法
一 隠居者と家督相続人との合意の下になされた、確定日附のない財産留保の効力
二 民法第一六二条第二項〈所有権の取得時効〉の無過失の一事例
三 隠居者が相続財産全部を保留した場合の効力
裁判要旨一 隠居者の財産保留は、家督相続人との合意の下になされたときは、確定日附がなくとも、当事者間においては効力があるものと解するを相当とする。
二 隠居者が確定日附ある証書による財産保留をしなかつたため、家督相続人において建物の所有権を相続したとしても、原審認定の事実(原判決参照)の下に、隠居者がこれを有効に保留し得たものと信じたのは過失がない。
三 隠居者の財産全部の保留は、相続人の遺留分について問題を生ずるだけで、保留を全面的に無効ならしめるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年12月24日 昭和27(オ)368
- 登載
- 民集 第8巻12号2271頁
- 参照法条
- 旧民法988条,民法162条2項,民法90条
論点27第90条民法
一 証拠方法を放棄したものと認むべき一事例
二 代物弁済の予約が公序良俗に反すると認められる一事例
裁判要旨一 証拠申請につき許否を決定しないで口頭弁論を終結した場合、当事者が異議を述べないときは、その証拠方法を放棄したものと認むべきである。
二 代物弁済の予約につき、後記事由(第二審判決理由参照)があるときは、公序良俗に反し無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和27年11月20日 昭和24(オ)138
- 登載
- 民集 第6巻10号1015頁
- 参照法条
- 民訴法258条,民法482条,民法90条
論点28第90条民法
土地家屋の譲渡契約に附された譲受人の帰郷居住等を内容とする停止条件の適法性
裁判要旨土地家屋の譲受人が、現住所を引き揚げて帰郷し、右家屋に居住し、相続人として病臥中の実父を扶養し、且祖先の祭祝を行うという、右譲渡契約に附された停止条件は、譲受人の個人的自由を拘束するものではないから、不法ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和23年9月18日 昭和22(オ)11
- 登載
- 民集 第2巻10号231頁
- 参照法条
- 民法90条,民法132条
論点29第90条民法
前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条項の一部が公序に反し無効とされた事例
裁判要旨すべての原因による不就労を基礎として算出した前年の稼働率が八〇パーセント以下の従業員を翌年度のベースアップを含む賃金引上げの対象者から除外する旨の労働協約条項は、そのうち労働基準法又は労働組合法上の権利に基づくもの以外の不就労を稼働率算定の基礎とする部分は有効であるが、右各権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分は公序に反し無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成元年12月22日 昭和59(オ)303
- 登載
- 集民 第158号805頁
- 参照法条
- 民法90条,労働基準法39条,労働基準法65条,労働基準法66条,労働基準法67条,労働基準法68条,労働基準法76条,労働組合法2章,労働組合法14条,労働組合法16条,憲法28条
論点30第90条民法
ユニオン・ショップ協定の効力
裁判要旨ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法
九〇条〈公序良俗〉により無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成元年12月21日 昭和62(オ)515
- 登載
- 集民 第158号659頁
- 参照法条
- 憲法28条,民法90条,労働組合法2章,労働組合法3章
論点31第90条民法
前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条項の一部が公序に反し無効とされた事例
裁判要旨すべての原因による不就労を基礎として算出した前年の稼働率が八〇パーセント以下の従業員を翌年度のベースアップを含む賃金引上げの対象者から除外する旨の労働協約条項は、そのうち労働基準法又は労働組合法上の権利に基づくもの以外の不就労を稼働率算定の基礎とする部分は有効であるが、右各権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分は公序に反し無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成元年12月14日 昭和58(オ)1542
- 登載
- 民集 第43巻12号1895頁
- 参照法条
- 民法90条,労働基準法39条,労働基準法65条,労働基準法66条,労働基準法67条,労働基準法68条,労働基準法76条,労働組合法第2章,労働組合法14条,労働組合法16条,憲法28条
論点32第90条民法
ユニオン・ショップ協定の効力
裁判要旨ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法
九〇条〈公序良俗〉により無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成元年12月14日 昭和60(オ)386
- 登載
- 民集 第43巻12号2051頁
- 参照法条
- 憲法28条,民法90条,労働組合法2章,労働組合法3章
論点33第90条民法
賭博債権の譲渡を異議なく承諾した債務者が右債権の譲受人に対して賭博契約の公序良俗違反による無効を主張することの可否
裁判要旨賭博の勝ち負けによって生じた債権が譲渡された場合においては、右債権の債務者が異議をとどめずに右債権譲渡を承諾したときであっても、債務者に信義則に反する行為があるなどの特段の事情のない限り、債務者は、右債権の譲受人に対して右債権の発生に係る契約の公序良俗違反による無効を主張してその履行を拒むことができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年11月11日 平成7(オ)2025
- 登載
- 民集 第51巻10号4077頁
- 参照法条
- 民法90条,民法468条
論点34第90条民法
いわゆる従業員持株制度に基づいて取得した株式を退職時に額面額で取締役会の指定する者に譲渡する旨の会社と従業員との合意が有効とされた事例
裁判要旨定款で株式の譲渡制度を定めている会社において、いわゆる従業員持株制度に基づいて取得した株式を退職時に額面額で取締役会の指定する者に譲渡する旨の会社と従業員との間でされた合意は、従業員が、右制度の趣旨、内容を了解した上で株式を額面額で取得し、毎年八ないし三〇パーセントの割合による配当を受けていたなど判示の事実関係の下においては、商法二〇四条一項に違反するものではなく、公序良俗にも反せず、有効である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成7年4月25日 平成3(オ)1332
- 登載
- 集民 第175号91頁
- 参照法条
- 商法204条1項,民法90条
論点35第90条民法
タクシー会社の乗務員が月ごとの勤務予定表作成後に年次有給休暇を取得した場合に皆勤手当を支給しない旨の約定が公序に反する無効なものとはいえないとされた事例
裁判要旨タクシー会社の乗務員に対し、月ごとの勤務予定表どおり勤務した場合には月額三一〇〇円ないし四一〇〇円の皆勤手当を支給するが、右勤務予定表作成後に年次有給休暇を取得した場合には右手当の全部又は一部を支給しない旨の約定は、右手当の支給が代替要員の手配が困難となり自動車の実働率が低下する事態を避ける配慮をした乗務員に対する報奨としてされ、右手当の額も相対的に大きいものではないなどの判示の事情の下においては、年次有給休暇取得の権利の行使を抑制して労働基準法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものとは認められず、公序に反する無効なものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成5年6月25日 平成4(オ)1078
- 登載
- 民集 第47巻6号4585頁
- 参照法条
- 民法90条,労働基準法39条,労働基準法134条
論点36第90条民法
認定司法書士が弁護士法72条に違反して締結した裁判外の和解契約の効力
裁判要旨認定司法書士が委任者を代理して裁判外の和解契約を締結することが弁護士法72条に違反する場合であっても,当該和解契約は,その内容及び締結に至る経緯等に照らし,公序良俗違反の性質を帯びるに至るような特段の事情がない限り,無効とはならない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成29年7月24日 平成28(受)1463
- 登載
- 民集 第71巻6号969頁
- 参照法条
- 弁護士法72条,司法書士法3条1項7号,民法90条
論点37第90条民法
歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の賃金規則上の定めが公序良俗に反し無効であるとして未払賃金の請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の賃金規則上の定めが公序良俗に反し無効であると判断するのみで,当該賃金規則における賃金の定めにつき,通常の労働時間の賃金に当たる部分と労働基準法37条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができるか否かや,そのような判別をすることができる場合に,当該賃金規則に基づいて割増賃金として支払われた金額が同条その他の関係法令に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かについて審理判断することなく未払賃金の請求を認容すべきものとした原審の判断には,割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った結果,審理を尽くさなかった違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成29年2月28日 平成27(受)1998
- 登載
- 集民 第255号1頁
- 参照法条
- 民法90条,労働基準法37条
論点38第90条民法
過払金が発生している継続的な金銭消費貸借取引の当事者間で特定調停手続において成立した調停であって,借主の貸金業者に対する残債務の存在を認める旨の確認条項及びいわゆる清算条項を含むものが公序良俗に反するものとはいえないとされた事例
裁判要旨過払金が発生している継続的な金銭消費貸借取引に関し,借主と貸金業者との間で特定調停手続において成立した調停であって,借主の貸金業者に対する残債務の存在を認める旨の確認条項及び調停条項に定めるほか何らの債権債務がないことを確認する旨のいわゆる清算条項を含むものは,次の(1)~(3)など判示の事情の下においては,全体として公序良俗に反するものということはできない。
(1) 上記調停における調停の目的は,上記の継続的な金銭消費貸借取引のうち特定の期間内に借主が貸金業者から借り受けた借受金等の債務であると文言上明記され,上記確認条項及び上記清算条項もこれを前提とするものである。
(2) 上記確認条項は,上記(1)の借受金等の残債務として,上記特定の期間内の借受け及びこれに対する返済を利息制限法所定の制限利率に引き直して計算した残元利金を超えない金額の支払義務を確認する内容のものである。
(3) 上記清算条項に,上記の継続的な金銭消費貸借取引全体によって生ずる過払金返還請求権等の債権を特に対象とする旨の文言はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成27年9月15日 平成25(受)1989
- 登載
- 集民 第250号47頁
- 参照法条
- 民法90条,民法91条,民法695条,利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項,民事調停法16条,特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律2条,特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律3条
論点39第90条民法
公序良俗に反する無効な出資と配当に関する契約により給付を受けた金銭の返還につき,当該給付が不法原因給付に当たることを理由として拒むことは信義則上許されないとされた事例
裁判要旨破産者甲との間の契約が公序良俗に反して無効であるとして,乙が当該契約により給付を受けた金銭の返還を求められた場合において,当該金銭は無限連鎖講に該当する事業によって給付された配当金であって他の会員が出えんした金銭を原資とするものであり,当該事業の会員の相当部分の者は甲の破綻により損失を受けて破産債権者の多数を占めるに至っており,甲の破産管財人が破産債権者への配当を行うなど適正かつ公平な清算を図ろうとするため乙に対して当該配当金の返還を求めているなど判示の事情の下においては,乙が当該配当金の給付が不法原因給付に当たることを理由としてその返還を拒むことは,信義則上許されない。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成26年10月28日 平成24(受)2007
- 登載
- 民集 第68巻8号1325頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法90条,民法708条,破産法78条1項,無限連鎖講の防止に関する法律2条,無限連鎖講の防止に関する法律3条
論点40第90条民法
1 建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする請負契約が公序良俗に反し無効とされた事例
2 建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする公序良俗違反の請負契約に基づく本工事の施工が開始された後に施工された追加変更工事の施工の合意が公序良俗に反しないとされた事例
裁判要旨1 注文者と請負人が建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする請負契約を締結した場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記請負契約は,公序良俗に反し,無効である。
(1) 上記請負契約は,建築基準法所定の確認及び検査を潜脱するため,法令の規定に適合した建物の建築確認申請用図面のほかに,法令の規定に適合しない建物の建築工事の施工用図面を用意し,前者の図面を用いて建築確認申請をして確認済証の交付を受け,一旦は法令の規定に適合した建物を建築して検査済証の交付も受けた後に,後者の図面に基づき建築工事を施工することを計画して締結されたものである。
(2) 上記建物は,上記(1)の計画どおり建築されれば,耐火構造に関する規制違反や避難通路の幅員制限違反など,居住者や近隣住民の生命,身体等の安全に関わる違法を有する危険な建物となるものであった。
(3) 請負人は,建築工事請負等を業とする者でありながら,上記(1)の計画を全て了承し,上記請負契約の締結に及んだのであり,請負人が上記建物の建築という注文者からの依頼を拒絶することが困難であったというような事情もうかがわれない。
2 建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする公序良俗違反の請負契約に基づく本工事の施工が開始された後に施工された追加変更工事は,同工事が区役所の是正指示や近隣住民からの苦情など様々な事情を受けて別途合意の上施工されたものであり,その中には上記本工事の施工によって既に生じていた違法建築部分を是正する工事も含まれていたという事情の下では,上記追加変更工事の中に上記本工事で計画されていた違法建築部分につきその違法を是正することなくこれを一部変更する部分があるのであれば,その部分は別の評価を受けることになるが,そうでなければ,その施工の合意が公序良俗に反するものということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成23年12月16日 平成22(受)2324
- 登載
- 集民 第238号297頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法90条,民法632条
論点41第90条民法
個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効であることにより,購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となるか
裁判要旨個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効とされる場合であっても,販売業者とあっせん業者との関係,販売業者の立替払契約締結手続への関与の内容及び程度,販売業者の公序良俗に反する行為についてのあっせん業者の認識の有無及び程度等に照らし,販売業者による公序良俗に反する行為の結果をあっせん業者に帰せしめ,売買契約と一体的に立替払契約についてもその効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り,売買契約と別個の契約である購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となる余地はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成23年10月25日 平成21(受)1096
- 登載
- 民集 第65巻7号3114頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法90条,割賦販売法(平成20年法律第74号による改正前のもの)2条3項2号,割賦販売法(平成20年法律第74号による改正前のもの)30条の4,割賦販売法2条4項,割賦販売法35条の3の19
論点42第90条民法
債権の管理又は回収の委託を受けた弁護士が,その手段として本案訴訟の提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為の私法上の効力
裁判要旨債権の管理又は回収の委託を受けた弁護士が,その手段として本案訴訟の提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は,他人間の法的紛争に介入し,司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われたなど,公序良俗に反するような事情があれば格別,仮にこれが弁護士法28条に違反するものであったとしても,直ちにその私法上の効力が否定されるものではない。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成21年8月12日 平成20(許)49
- 登載
- 民集 第63巻6号1406頁
- 参照法条
- 弁護士法28条,民法90条
論点43第90条民法
株式会社の従業員がいわゆる持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じたときは持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意が有効とされた事例
裁判要旨いわゆる持株会が採用した株式譲渡ルールに従い,株式会社の従業員が持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じたときは持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意は,次の(1)〜(4)などの判示の事情の下では,会社法107条及び127条の規定に反するものではなく,公序良俗にも反せず,有効である。
(1) 上記株式譲渡ルールは,日刊新聞の発行を目的とし,日刊新聞法1条に基づき定款で株式の譲受人を事業に関係ある者に限ると規定して,株式の保有資格を原則として現役の従業員等に限定する社員株主制度を採用している当該会社において同制度を維持することを前提に,これにより譲渡制限を受ける株式を円滑に現役の従業員等に承継させるためのものである。
(2) 非公開会社である当該会社の株式にはもともと市場性がなく,上記株式譲渡ルールにおいては,従業員が持株会から株式を取得する際の価格も額面額とされていた。
(3) 当該従業員は,上記株式譲渡ルールの内容を認識した上,自由意思により持株会から額面額で株式を買い受けた。
(4) 当該会社が,多額の利益を計上しながら特段の事情もないのに一切配当を行うことなくこれをすべて会社内部に留保していたというような事情はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成21年2月17日 平成20(受)1207
- 登載
- 集民 第230号117頁
- 参照法条
- 会社法107条,会社法127条,民法90条,(日刊新聞法)日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律1条
論点44第90条民法
従業員と使用者との間でされた従業員に対し特定の労働組合から脱退する権利を行使しないことを義務付ける合意と公序良俗違反
裁判要旨従業員と使用者との間において従業員が特定の労働組合に所属し続けることを義務付ける内容の合意がされた場合において,同合意のうち,従業員に上記労働組合から脱退する権利をおよそ行使しないことを義務付けて脱退の効力そのものを生じさせないとする部分は,公序良俗に反し無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成19年2月2日 平成16(受)1787
- 登載
- 民集 第61巻1号86頁
- 参照法条
- 労働組合法第2章 労働組合,民法90条,憲法21条1項,憲法28条
論点45第90条民法
団体定期保険(いわゆるAグループ保険)に基づいて被保険者である従業員の死亡により保険金を受領した会社が生命保険会社との間の合意をもって社内規定に基づく給付額を超えて上記保険金の一部を死亡従業員の遺族に支払うことを約したと認めるべきであるとした原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨Y社が,複数の生命保険会社との間で,保険金受取人をY,被保険者をYの従業員全員とし,死亡保険金の合計額が従業員1人につき6000万円を超える団体定期保険(いわゆるAグループ保険)契約を締結し,従業員の死亡により保険金を受領する一方,当該従業員の遺族Xに対しては,社内規定に基づく給付額である1000万円程度の死亡時給付金を支払ったにとどまる場合において,1 他人の生命の保険については被保険者の同意を求めることでその適正な運用を図るべく保険金額に見合う被保険利益の裏付けを要求する規制を採用していない立法の下では,直ちに上記契約が公序良俗に違反するとはいえないこと,2 Yは,団体定期保険の主たる目的が受領保険金を従業員に対する福利厚生制度に基づく給付に充てることにあることは認識していたものの,死亡従業員の遺族に支払うべき死亡時給付金が社内規定に基づく給付額の範囲内にとどまることは当然と考え,そのような取扱いに終始していたのであり,社内規定に基づく給付額を超えて受領した保険金の全部又は一部を遺族に支払うことを黙示的にも合意したと認める余地はないことなど判示の事情の下では,上記のような団体定期保険の運用が公序良俗に違反することを前提として,これを免れるためには,Yは,生命保険会社との間の第三者のためにする契約をもって,社内規定に基づく給付額を超えて死亡時給付金として社会的に相当な金額(3000万円)に満つるまでの額をXに支払うことを約したと認めるべきであるとした原審の判断には,違法がある。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成18年4月11日 平成14(受)1358
- 登載
- 民集 第60巻4号1387頁
- 参照法条
- 商法674条1項,民法90条,民法537条,民訴法247条
論点46第90条民法
1 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分が公序良俗に反しないとされた事例
2 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格を原則として男子孫に限定し同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分が民法90条〈公序良俗〉の規定により無効とされた事例
裁判要旨1 A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分は,現在においても,公序良俗に反するものということはできない。
2 A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち,入会権者の資格を原則として男子孫に限定し,同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分は,遅くとも平成4年以降においては,性別のみによる不合理な差別として民法90条の規定により無効である。
(2につき補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年3月17日 平成16(受)1968
- 登載
- 民集 第60巻3号773頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法2条,民法90条,民法92条,民法263条,民法294条,憲法14条1項
論点47第90条民法
1 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約と公序良俗違反
2 私立医科大学の平成13年度の入学試験の合格者が同大学との間で納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した後に同契約を解除した場合において同特約は公序良俗に反しないなどとして同大学に対する納付済みの授業料等の返還請求が認められなかった事例
裁判要旨1 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,その目的,意義に照らして,合格者の大学選択に関する自由な意思決定を過度に制約し,その他合格者の著しい不利益において大学が過大な利益を得ることになるような著しく合理性を欠くと認められるものでない限り,公序良俗に反しない。
2 私立医科大学の平成13年度の入学試験の合格者が,同大学に授業料等を含む所定の納付金を納付して,同大学との間で,平成13年3月21日正午よりも後に入学辞退を申し出た場合には授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した後,同月27日ころ同契約を解除した場合において,医科大学においては入学辞退によって欠員が生ずる可能性が潜在的に高く,欠員が生じた場合に生ずる損失が多額になることは否定し難いこと,上記特約が当時の私立大学の医学関係の学部におけるそれとの比較において格別合格者に不利益な内容のものであることがうかがわれないことなど判示の事情の下では,上記授業料等の金額が614万円であり,このうち教育充実費については6年間に納付することとされている合計額950万円のうち500万円を在学契約締結時に納付すべきものとされていることや,同大学に定員割れが生じていないことなどを考慮しても,上記特約は公序良俗に反するものではなく,同大学が上記授業料等の返還を拒むことが信義に反するともいえず,上記合格者から同大学に対する上記授業料等の返還請求は認められない。
(2につき反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日 平成16(受)2117
- 登載
- 民集 第60巻9号3732頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法90条,民法420条,学校教育法6条,(2につき)民法1条2項,民法703条
論点48第90条民法
1 いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社に派遣された県職員に対する給与支出が違法であるとされた事例
2 県といわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で締結された県職員を同社に派遣してその給与を県が負担することを内容とする協定が私法上無効であるとはいえないとされた事例
3 県がいわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で県職員を同社に派遣してその給与を負担することを内容とする協定を締結して派遣職員に給与を支出したことにつき知事に過失があるとはいえないとされた事例
裁判要旨1 県が,職務専念義務の免除をするとともに勤務しないことの承認をして,いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社に県職員を派遣し,その給与を支出した場合において,上記派遣が,同社に事業収入がなく,同社が十分な人材を確保していないことを考慮して行われたこと,同社の事業内容は遊園施設等の経営であったこと,派遣職員が従事した職務の内容は同社の業務全般に 及んでいたこと,派遣人数は延べ13人,派遣期間は約7年間に及んだことなど判示の事実関係の下においては,上記給与支出は,違法である。
2 県が,いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で,県職員を同社に派遣してその給与を負担することを内容とする協定を締結し,派遣職員につき職務専念義務の免除をするとともに勤務しないことの承認をして給与を支出した場合において,上記協定が地方公務員法24条1項,30条及び35条の趣旨に反して違法であるとしても,上記協定締結当時,地方公務員の派遣に関する法制度が整備されないまま,全国各地の地方公共団体において第3セクター等への職員派遣が行われており,職務専念義務の免除による職員派遣の場合には派遣職員の給与を支出する例が多かったこと,その適否については定説がなく,裁判例も分かれていたことなど判示の事情の下においては,上記協定が私法上無効であるということはできない。
3 県が,いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で,県職員を同社に派遣してその給与を負担することを内容とする協定を締結した当時,地方公務員の派遣に関する法制度が整備されないまま,全国各地の地方公共団体において第3セクター等への職員派遣が行われており,職務専念義務の免除による職員派遣の場合には派遣職員の給与を支出する例が多かったこと,その適否については定説がなく,裁判例も分かれていたこと,県の同社への職員派遣は条例等の定める職務専念義務の免除等の法的手続を踏んで行われたことなど判示の事情の下においては,上記協定を締結して派遣職員に給与を支出したことにつき知事に過失があるとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成16年1月15日 平成13(行ヒ)266
- 登載
- 民集 第58巻1号156頁
- 参照法条
- 地方公務員法24条1項,地方公務員法30条,地方公務員法35条,職務に専念する義務の特例に関する条例(昭和28年岡山県条例第49号)2条,岡山県職員給与条例(昭和26年岡山県条例第18号)14条,職務に専念する義務の特例に関する規則(昭和28年岡山県人事委員会規則第10号)2条,民法90条,民法709条,地方自治法2条17項,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号
論点49第90条民法
1 法律行為が公序に反することを目的とするものであるかどうかを判断する基準時
2 証券取引法42条の2第1項3号が平成3年法律第96号による同法の改正前に締結された損失保証や特別の利益の提供を内容とする契約に基づく履行の請求をも禁止していることと憲法29条〈管理人の担保提供及び報酬〉
裁判要旨1 法律行為が公序に反することを目的とするものであるとして無効になるかどうかは,法律行為がされた時点の公序に照らして判断すべきである。
2 証券取引法42条の2第1項3号が,平成3年法律第96号による同法の改正前に締結された損失保証や特別の利益の提供を内容とする契約に基づいてその履行を請求する場合を含め,顧客等に対する損失補てんや利益追加のための財産上の利益の提供を禁止していることは,憲法29条に違反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成15年4月18日 平成11(受)1519
- 登載
- 民集 第57巻4号366頁
- 参照法条
- 民法90条,憲法29条,証券取引法42条の2第1項3号
論点50第90条民法
1 出勤率が90%以上の従業員を賞与支給対象者とする旨の就業規則条項の適用に関しその基礎とする出勤した日数に産前産後休業の日数等を含めない旨の定めが公序に反し無効とされた事例
2 賞与の額を欠勤日数に応じて減額することを内容とする計算式の適用に当たり産前産後休業の日数等を欠勤日数に含めた所定の減額を行わずに賞与全額の支払請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨1 出勤率が90%以上の従業員を賞与支給対象者としこれに満たない者には賞与を支給しないこととする旨の就業規則条項の適用に関し,出勤率算定の基礎とする出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し,出勤した日数に上記日数及び育児を容易にするための措置により短縮された勤務時間分を含めない旨を定めた就業規則の付属文書の定めは,従業員の年間総収入額に占める賞与の比重が高いため,上記条項により賞与が支給されない者の受ける経済的不利益が大きく,従業員が産前産後休業を取得し又は勤務時間短縮措置を受けた場合には,それだけで上記条項に該当して賞与の支給を受けられなくなる可能性が高いという事情の下においては,公序に反し無効である。
2 賞与の額を欠勤日数に応じて減額することを内容とする計算式及びその適用に当たりその基礎となる欠勤日数に産前産後休業の日数及び育児を容易にするための措置により短縮された勤務時間分を含める旨を定めた就業規則の付属文書の定めが無効となる理由を具体的に説示することなく,上記計算式を適用せず,産前産後休業の日数等を欠勤日数に含めた所定の減額を行わずに賞与全額の支払請求を認容した原審の判断には,違法がある。
(2につき意見及び反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成15年12月4日 平成13(受)1066
- 登載
- 集民 第212号87頁
- 参照法条
- 民法90条,労働基準法(平成9年法律第92号による改正前のもの)65条,育児休業等に関する法律(平成7年法律第107号による改正前のもの)10条
論点51第90条民法
衣料品の卸売業者と小売業者との間における周知性のある他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用した商品の売買契約が民法90条により無効とされた事例
裁判要旨衣料品の卸売業者と小売業者との間における周知性のある他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用した商品の売買契約は,当事者がそのような商品であることを互いに十分に認識しながら,あえてこれを消費者の購買のルートに乗せ,他人の真正な商品であると誤信させるなどして大量に販売して利益をあげようと企て,この目的を達成するために継続的かつ大量に行ったものであって,単に不正競争防止法及び商標法に違反するというだけでなく,経済取引における商品の信用の保持と公正な経済秩序の確保を害する著しく反社会性の強いものであるなど判示の事情の下においては,民法
90条〈公序良俗〉により無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成13年6月11日 平成12(受)67
- 登載
- 集民 第202号433頁
- 参照法条
- 民法90条,不正競争防止法2条1項1号,不正競争防止法13条1号,商標法78条
論点52第90条民法
やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約における約定の効力
裁判要旨やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約における約定は、無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成11年2月23日 平成7(オ)1747
- 登載
- 民集 第53巻2号193頁
- 参照法条
- 民法90条,民法91条,民法678条
論点53第90条民法
1 宗教法人とその信者との間において締結された不起訴の合意が公序良俗に反し無効であるとされた事例
2 宗教法人の信者らによる献金の勧誘が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨1 宗教法人Yとその信者Aとの間において締結された書面による不起訴の合意は、次の⑴~⑷など判示の事情の下においては、公序良俗に反し、無効である。
⑴ Aは、上記の締結の当時、86歳という高齢の単身者であり、その約半年後にはアルツハイマー型認知症により成年後見相当と診断された。
⑵ Aは、Yの教理を学び始めてから上記締結までの約10年間、その教理に従い、1億円を超える多額の献金を行い、多数回にわたり渡韓してYの儀式に参加していた。
⑶ Yの信者らは、上記書面の文案を作成し、公証人役場におけるその認証の手続にも同行し、その後、Aの意思を確認する様子をビデオ撮影した。
⑷ 上記不起訴の合意の内容は、上記多額の献金について、何らの見返りもなく無条件に不法行為に基づく損害賠償請求等に係る訴えを一切提起しないというものであった。
2 宗教法人Yの信者らによる信者Aに対する献金の勧誘について、次の⑴~⑶など判示の事情の下においては、献金をする者が献金をするか否かについて適切な判断をすることに支障が生ずるなどした事情の有無やその程度、献金により上記の者又はその配偶者等の生活の維持に支障が生ずるなどした事情の有無やその程度等を総合的に考慮し、上記勧誘が勧誘の在り方として社会通念上相当な範囲を逸脱するといえるかについて検討するという判断枠組みを採ることなく、上記信者らが上記勧誘において献金をしないことによる具体的な害悪を告知したとは認められない、Aがその資産や生活の状況に照らして過大な献金を行ったとは認められないなどとして上記勧誘が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断には、献金勧誘行為の違法性に関する法令の解釈適用を誤った結果、上記の判断枠組みに基づく審理を尽くさなかった違法がある。
⑴ Aは、献金当時、80歳前後という高齢であり、種々の身内の不幸を抱えていた。
⑵ Aは、Yに対し、1億円を超える多額の献金を行い、また、自己の所有する土地を売却してまで献金を行い、残りの売得金をYの信者らによって構成される組織に預け、同組織を通じてさらに献金を行うとともに、同組織から生活費の交付を受けていた。
⑶ Aの献金をめぐる一連の行為は、いずれもYの信者らによる勧誘等を受けて行われたものであった。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和6年7月11日 令和4(受)2281
- 登載
- 民集 第78巻3号921頁
- 参照法条
- (1につき)民訴法第2編第1章 訴え、民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)90条 (2につき)民法709条、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律3条1号、2号
論点54第90条民法
宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意の効力
裁判要旨宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,同法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものとして,公序良俗に反し,無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 令和3年6月29日 令和2(受)205
- 登載
- 民集 第75巻7号3340頁
- 参照法条
- 宅地建物取引業法12条1項,宅地建物取引業法13条1項,民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)90条
論点55第93条民法
理事が権限を濫用して振り出した約束手形の第三取得者に対する農業協同組合の手形上の責任
裁判要旨農業協同組合の理事が自己又は第三者の利益をはかるため代表権限を濫用して約束手形を振り出した場合において、受取人が右権限濫用の事実を知り又は知りうべかりし状態のもとに手形の交付を受けたときは、民法
九三条〈心〉但書の規定の類推適用により、農業協同組合は理事の振出行為を無効として受取人に対する手形上の責任を免れることができるが、右受取人がさらに手形を他に裏書譲渡したときは、農業協同組合は、手形法一七条但書の規定により、第三取得者が受取人の右知情について悪意であることを立証した場合に限つて、右第三取得者に対する手形上の責任を免れることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年2月16日 昭和52(オ)1109
- 登載
- 集民 第123号65頁
- 参照法条
- 農業協同組合法41条,民法53条,民法93条,手形法17条,手形法77条1項1号
論点56第93条民法
株式会社の代表取締役のした金銭借入れにつき会社が借主であるとした判断が違法とされた事例
裁判要旨株式会社の代表取締役甲が、新規事業のための調査等に必要な資金として乙から金銭を借り入れた場合において、乙が甲の私的な旧知であり、右新規事業の構想につき役員間に反対があることを知らされていること、右借入れについては、甲から代表取締役の肩書を表示した甲の名刺に右金銭借用の旨を記載した借用書の交付を受け、担保として甲個人の手形の振出し交付を受けただけで、会社の正規の借用書が作成されておらず、右借入金の出納も会社の経理部を経由していないこと等、右借入れが甲の個人的利益のために行われたもので、乙も当然これを知りえたと認める余地のある事実関係を認定しながら、その旨の会社の主張があるのにかかわらず、単に、甲と乙との間に本件借入れの当事者が甲個人であるとする別段の意思表示があつたと認めるに足りないとの理由を示しただけで、借主は会社であると判断したときは、審理不尽、理由不備の違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和51年11月26日 昭和51(オ)689
- 登載
- 集民 第119号265頁
- 参照法条
- 民法93条,商法261条,民訴法395条1項6号
論点57第93条民法
信用金庫の表見支配人が自己の利益を図るためにした行為と信用金庫の責任
裁判要旨信用金庫法四〇条、商法四二条、三八条一項に基づく信用金庫の責任は、相手方が善意である限り、表見支配人のした行為の目的のいかんにかかわらず、これを免れないが、行為者の意図が自己の利益を図るにあり、かつ、相手方が右の意図を知り又は知りうべかりしときには、民法
九三条〈心〉但書の類推適用により、その責に任じない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和51年10月1日 昭和51(オ)523
- 登載
- 集民 第119号1頁
- 参照法条
- 信用金庫法40条,商法38条1項,商法42条,民法93条但書
論点58第93条民法
一、代理人が権限を濫用して振り出した約束手形と第三取得者に対する本人の手形抗弁
二、手形行為は農業協同組合の目的たる事業の範囲に含まれるか
裁判要旨一、代理人が自己または第三者の利益をはかるため、代理権限を濫用して約束手形を振り出した場合において、権限濫用の事実を知りまたは知りうべかりし状態で右手形の交付を受けた受取人が、これを他に裏書譲渡したときは、本人は、手形法一七条但書の規定により、第三取得者が受取人の右知情について悪意であることを立証した場合にかぎり、右第三取得者に対する手形上の責任を免れることができると解するのが相当である。
二、手形行為は、農業協同組合の目的たる事業の範囲に含まれる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和44年4月3日 昭和42(オ)602
- 登載
- 民集 第23巻4号737頁
- 参照法条
- 手形法77条1項1号,手形法17条,民法43条,民法93条,農業協同組合法10条
論点59第93条民法
代理人が権限を濫用して約束手形の振出人のためにした手形上の保証と手形受取人に対する国税滞納処分として手形を差し押えた国に対する保証人の責任
裁判要旨代理人が、自己の利益をはかるため、代理権限を濫用して、約束手形の振出人のために、本人名義で手形上の保証をした場合において、代理人から手形の交付を受けた手形受取人が権限濫用の事実を知りうべきであったときは、受取人に対する国税滞納処分として右手形を差し押えて占有するに至つた国において、差押当時受取人の知情の点につき善意であつたことを主張立証しないかぎり、本人である保証人は、国に対し、手形上の保証による責任を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和44年11月14日 昭和42(オ)694
- 登載
- 民集 第23巻11号2023頁
- 参照法条
- 民法93条但書,民法94条2項,手形法77条3項,手形法32条
論点60第93条民法
表見代表取締役が自己の利益を図るためにした行為と会社の責任
裁判要旨商法第二六二条は、第三者が代表権の欠缺について善意であるかぎり、表見代表取締役のした行為の目的のいかんにかかわらず適用され、行為者の意図が自己の利益を図ることにあつた場合においては、第三者がその意図を知り、または知りうべかりしときにかぎり、会社は、民法
第九三条〈心〉但書の提起を類推適用して、その責を免れることができるにすぎないものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和42年7月6日 昭和41(オ)875
- 登載
- 集民 第88号1頁
- 参照法条
- 商法262条,民法93条但書
論点61第93条民法
代理人の権限濫用の行為と民法第九三条
裁判要旨代理人が自己または第三者の利益をはかるため権限内の行為をしたときは、相手方が代理人の意図を知りまたは知りうべきであつた場合にかぎり、民法
第九三条〈心〉但書の規定を類推適用して、本人はその行為についての責に任じないと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和42年4月20日 昭和39(オ)1025
- 登載
- 民集 第21巻3号697頁
- 参照法条
- 民法93条,民法99条
論点62第93条民法
一 株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないでした対外的な個々的取引行為の効力。
二 中小企業等協同組合が代表理事に対し委任できる業務執行の意思決定の権限の範囲。
裁判要旨一 株式会社の代表取締役が、取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々取引行為を、右決議を経ないでした場合でも、右取引行為は、相手方において右決議を経ていないことを知りまたは知ることができたときでないかぎり、有効である。
二 中小企業等協同組合は、法令がとくに理事会の決議事項であると定めたものを除いて、理事会に属する業務執行の意思決定の権限を、定款で、代表理事に委任することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年9月22日 昭和36(オ)1378
- 登載
- 民集 第19巻6号1656頁
- 参照法条
- 商法260条,商法261条,商法78条1項,民法93条,中小企業等協同組合法33条,中小企業等協同組合法36条の2,中小企業等協同組合法42条
論点63第93条民法
代表取締役の権限濫用の行為と民法第九三条。
裁判要旨株式会社の代表取締役が自己の利益のため会社の代表者名義でなした法律行為は、相手方が右代表取締役の真意を知り、または、知りうべきものであつたときは、その効力を生じない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年9月5日 昭和35(オ)1388
- 登載
- 民集 第17巻8号909頁
- 参照法条
- 民法93条,商法261条
論点64第93条民法
一 旧民法第八五一条第一号〈後見監督人の職務 後見人の事務を監督すること。〉(新民法第八〇二条第一号〈縁組の無効 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。〉)の意義
二 養子縁組の無効と民法第九三条〈心〉但書
裁判要旨一 旧民法
第八五一条第一号〈後見監督人の職務 後見人の事務を監督すること。〉(新民法
第八〇二条第一号〈縁組の無効 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。〉)にいわゆる「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは、当事者間において真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指し、たとえ養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があつたとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものに過ぎないときは、養子縁組は、効力を生じない。
二 養子関係の設定を欲する効果意思のないことによる養子縁組の無効は、絶対的のものであつて民法第九三条但書の適用をまつてはじめて無効となるのではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和23年12月23日 昭和23(オ)85
- 登載
- 民集 第2巻14号493頁
- 参照法条
- 旧民法851条1号,新民法802条1号,新民法93条但書
論点65第93条民法
一 親権者の代理権濫用の行為と民法九三条〈心〉ただし書
二 親権者において子を代理してその所有する不動産を第三者の債務の担保に供する行為と代理権の濫用
裁判要旨一 親権者が子を代理する権限を濫用して法律行為をした場合において、その行為の相手方が権限濫用の事実を知り又は知り得べかりしときは、民法
九三条〈心〉ただし書の規定の類推適用により、その行為の効果は子には及ばない。
二 親権者が子を代理してその所有する不動産を第三者の債務の担保に供する行為は、親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情が存しない限り、代理権の濫用には当たらない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成4年12月10日 平成1(オ)759
- 登載
- 民集 第46巻9号2727頁
- 参照法条
- 民法93条ただし書,民法824条
論点66第94条民法
民法九四条二項〈虚偽表示〉の適用ないし類推適用がないとされた事例
裁判要旨甲が他から買い受けた建物につき乙名義で所有権移転登記を経由した後これを丙に賃貸してその引渡しを了した場合において、右建物が真実乙の所有であると信じていた丁が、これを乙から買い受けようとした戊に融資をして乙より右建物につき抵当権の設定を受け、その実行により自ら競落人となつて右建物の所有権を取得したときは、丁において右建物の所有者が甲であること及び甲・乙間の賃貸借契約締結の事実を知らなかつたとしても、丙は、右賃借権をもつて丁に対抗することができ、丙に対する関係では民法九四条二項を適用ないし類推適用する余地はないというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和61年11月18日 昭和59(オ)1367
- 登載
- 集民 第149号115頁
- 参照法条
- 民法94条2項,借家法1条1項
論点67第94条民法
土地の仮装譲受人から右土地上の建物を賃借した者と民法九四条二項〈虚偽表示〉所定の第三者
裁判要旨土地の仮装譲受人からその建築にかかる右土地上の建物を賃借した者は、民法
九四条二項〈虚偽表示〉所定の第三者にはあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和57年6月8日 昭和56(オ)988
- 登載
- 集民 第136号57頁
- 参照法条
- 民法94条2項
論点68第94条民法
財団法人の設立を目的とする寄附行為と民法九四条一項の規定の類推適用
裁判要旨寄附行為の一環としてされた財産出捐行為が、財団法人設立関係者の通謀に基づいてされた虚偽仮装のものであるときは、民法
九四条一項〈虚偽表示〉の規定を類推適用して該寄附行為を無効とするのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和56年4月28日 昭和53(オ)823
- 登載
- 民集 第35巻3号696頁
- 参照法条
- 民法39条,民法94条1項
論点69第94条民法
一 原抵当権が虚偽仮装であることにつき善意で転抵当権の設定を受けその旨の登記を経由した者が民法三七六条〈抵当権の処分〉所定の対抗要件を具備しない場合と同人の原抵当権設定者に対する原抵当権設定登記の抹消の承諾義務
二 民法九四条二項〈虚偽表示〉所定の第三者の善意の判定時期
裁判要旨一 甲と乙との通謀により甲から乙に対し抵当権を設定したものと仮装した抵当権設定登記が経由されたのち、乙が善意の丙に対し転抵当権を設定し、丙を権利者とする転抵当権設定登記が経由された場合において、丙は、いまだ民法三七六条所定の対抗要件を具備しないときであつても、原抵当権の設定の無効を理由とする原抵当権設定登記の抹消について、甲に対し承諾の義務を負うものではない。
二 民法
九四条二項〈虚偽表示〉所定の第三者の善意の存否は、同条項の適用の対象となるべき法律関係ごとに当該法律関係につき第三者が利害関係を有するに至つた時期を基準として決すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和55年9月11日 昭和53(オ)1213
- 登載
- 民集 第34巻5号683頁
- 参照法条
- 民法94条,民法376条1項,不動産登記法146条1項
論点70第94条民法
民法上の組合所有の不動産を理事名義に登記することを承諾した組合員が組合から右不動産を譲り受けたのちも理事名義のままにしておいた場合とその後理事の意思に基づいて経由された所有権移転登記どおり名義人が所有者であると信じた第三者に対する責任
裁判要旨民法上の組合が不動産を取得するにあたり理事名義に所有権移転登記を経由することを承諾した組合員甲が、組合から右不動産を譲り受けたのちも理事所有名義のままにしておいた場合において、さらに理事の意思に基づいて第三者乙に対する所有権移転登記が経由されたときは、甲は、乙の所有権取得の無効をもつて善意無過失の第三者丙に対抗することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和52年12月8日 昭和51(オ)858
- 登載
- 集民 第122号303頁
- 参照法条
- 民法94条2項,民法110条
論点71第94条民法
民法九四条二項〈虚偽表示〉にいう善意の第三者
裁判要旨民法
九四条〈虚偽表示〉にいう第三者とは、虚偽表示の当事者又はその一般承継人以外の者であつて、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至つた者をいい、甲乙間における虚偽表示の相手方乙との間で右表示の目的につき直接取引関係に立つた丙が悪意であつても、丙からの転得者丁が善意であるときは、丁は同条項にいう善意の第三者にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年4月25日 昭和49(オ)513
- 登載
- 集民 第114号649頁
- 参照法条
- 民法94条2項
論点72第94条民法
未登記建物の所有者においてその建物が固定資産課税台帳上他人の所有名義で登録されていることを承認していた場合と民法九四条二項〈虚偽表示〉の類推適用
裁判要旨未登記建物の所有者は、その建物が固定資産課税台帳上他人の所有名義で登録されていることを知りながら、これを明示または黙示に承認していた場合には、民法
九四条二項〈虚偽表示〉の類推適用により、右名義人が所有権を有しないことを善意の第三者に対抗することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和48年6月28日 昭和47(オ)1164
- 登載
- 民集 第27巻6号724頁
- 参照法条
- 民法94条2項
論点73第94条民法
通謀による虚偽の登記名義を真正なものに回復するための所有権移転登記手続請求訴訟における被告敗訴の確定判決と口頭弁論終結後被告から善意で当該不動産を譲り受けた第三者
裁判要旨通謀による虚偽の登記名義を真正なものに回復するための所有権移転登記手続請求訴訟における被告敗訴の確定判決は、口頭弁論終結後被告から善意で当該不動産を譲り受けた第三者に対してその効力を有しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和48年6月21日 昭和47(オ)198
- 登載
- 民集 第27巻6号712頁
- 参照法条
- 民法94条2項,民訴法201条1項,民訴法497条ノ2第1項
論点74第94条民法
借地上建物の仮装譲渡の無効は土地賃貸人に対抗しうるか
裁判要旨土地の賃借人が地上建物を仮装譲渡した場合、土地賃貸人は、右譲渡につき民法九四条二項にいわゆる第三者にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和48年4月24日 昭和47(オ)1301
- 登載
- 集民 第109号205頁
- 参照法条
- 民法94条,民法612条
論点75第94条民法
借地上建物の仮装譲渡の場合に土地賃貸人は民法九四条二項の第三者にあたるか
裁判要旨土地賃借人が地上建物を他に仮装譲渡した場合に、右土地の賃貸人は民法九四条二項にいう第三者にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年3月7日 昭和46(オ)777
- 登載
- 集民 第105号259頁
- 参照法条
- 民法94条2項,民法612条
論点76第94条民法
登記簿の記載から賃借権の消滅を信頼した建物の競落人について民法九四条二項〈虚偽表示〉の類推適用がないとされた事例
裁判要旨競落建物について、抵当権設定前にこれに対する賃借権の譲渡を受け、かつ、その引渡を受けた者が、家主および賃借権の譲渡人と通謀のうえ、いつたん転借権の設定登記を経由し、その後これを真実の権利関係に符合させるために、抵当権設定登記後になつて、新たな賃借権の設定登記を、ついで、合意解約を理由とする右転借権の抹消登記を順次経由した場合において、右建物の競落人がこの登記簿の記載のみから、自己に対抗しうる賃借権は存在しないものと信じてこれを競落したとしても、賃借人が当初から建物の占有を継続しており、登記簿上も、右のとおり、抵当権設定登記前から継続して同一人が転借人または賃借人として登記されている事情があるときは、競落人は、民法
九四条二項〈虚偽表示〉を類推して賃借人が自己に対抗しうる賃借権を有しないものと主張することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年2月24日 昭和46(オ)197
- 登載
- 民集 第26巻1号146頁
- 参照法条
- 民法94条2項
論点77第94条民法
仮装の仮登記をする意思で甲の署名押印した書類を乙がほしいままに用いてした所有権移転登記と甲の第三者に対する責任
裁判要旨甲が、乙と相通じ、仮装の所有権移転請求権保全の仮登記手続をする意思で、乙の提示した所有権移転登記手続に必要な書類に、これを仮登記手続に必要な書類と誤解して署名押印したところ、乙がほしいままに右書類を用いて所有権移転登記手続をしたときは、甲は、乙の所有権取得の無効をもつて善意・無過失の第三者に対抗することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年11月28日 昭和46(オ)803
- 登載
- 民集 第26巻9号1716頁
- 参照法条
- 民法94条2項,民法110条
論点78第94条民法
不実の所有権移転登記が所有者の承認のもとに存続せしめられていたものとして民法九四条二項〈虚偽表示〉を類推適用すべきものとされた事例
裁判要旨不動産の所有者甲が、その不知の間に甲から乙に対する不実の所有権移転登記の経由されたことを知りながら、経費の都合や、のちに乙と結婚して同居するようになつた関係から、抹消登記手続を四年余にわたつて見送り、その間に甲において他から金融を受けた際にもその債務を担保するため乙所有名義のまま右不動産に対する根抵当権設定登記が経由されたような事情がある場合には、民法
九四条二項〈虚偽表示〉を類推適用し、甲は、不動産の所有権が乙に移転していないことをもつて、その後にこれを乙から買受けた善意の第三者丙に対抗することができないものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和45年9月22日 昭和43(オ)91
- 登載
- 民集 第24巻10号1424頁
- 参照法条
- 民法94条2項
論点79第94条民法
不動産を買い受けた者が抵当権および停止条件付代物弁済契約上の権利を有するものとして抵当権設定登記および所有権移転請求権保全の仮登記を経由した場合と第三者
裁判要旨甲が、乙からその所有不動産を買い受けたものであるにもかかわらず、乙に対する貸金を被担保債権とする抵当権と、右貸金を弁済期に弁済しないことを停止条件とする代物弁済契約上の権利とを有するものとして、抵当権設定登記および所有権移転請求権保全の仮登記を経由した場合において、丙が乙から右不動産を買い受けて所有権取得登記を経由したときは、丙が善意無過失であるかぎり、甲は、丙に対し、自己の経由した登記が実体上の権利関係と相違し、自己が仮登記を経由した所有権者であると主張することはできないと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和45年11月19日 昭和43(オ)732
- 登載
- 民集 第24巻12号1916頁
- 参照法条
- 民法94条2項,民法369条,民法482条,不動産登記法2条2号
論点80第94条民法
民法第九四条第二項〈虚偽表示〉の適用または類推適用がないとされた事例
裁判要旨部落民全員が、その総有に属する土地について、入会権者として登記の必要に迫られ、単に登記の便宜から、右部落民の一部の者のために売買による所有権移転登記を経由した場合には、民法
第九四条第二項〈虚偽表示〉の適用または類推適用がない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和43年11月15日 昭和42(オ)524
- 登載
- 集民 第93号233頁
- 参照法条
- 民法94条2項,民法263条
論点81第94条民法
共有持分の放棄と民法第九四条
裁判要旨他の共有者に対してなされた共有持分の放棄の意思表示が、右共有者との通謀による虚偽のものであるときは、右意思表示については、民法
第九四条〈虚偽表示〉が類推適用される。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和42年6月22日 昭和41(オ)1277
- 登載
- 民集 第21巻6号1479頁
- 参照法条
- 民法94条,民法255条
論点82第94条民法
民法第九四条第二項〈虚偽表示〉にいう善意の有無を定める基準となる時期。
裁判要旨通謀虚偽の売買契約における買主が当該契約の目的物について第三者と売買予約を締結した場合において、その目的物の物件取得の法律関係につき、予約権利指が民法第九四条第二項にいう善意であるかどうかは、その売買予約成立の時ではなく、当該予約完結権の行使により売買契約が成立する時を基準として定めるべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和38年6月7日 昭和35(オ)15
- 登載
- 民集 第17巻5号728頁
- 参照法条
- 民法94条,民法556条
論点83第94条民法
一 会社役員たる資格を与えるためのいわゆる資格株の譲渡の効力。
二 木工品製作業の附帯事業の範囲。
三 木材統制法と立木伐木の買入。
四 木材業又は製材業が許可事業であることと、その許可を受けずして附帯事業としてなす立木伐木の買入。
五 介入権行使の効果。
裁判要旨一 会社役員たる資格を与えるためのいわゆる資格株の譲渡であつて、後日返還することを約したものであるからといつて、その譲渡を仮装であるということはできない。
二 附帯事業というのは、主たる目的事業に関連のある各種の事業をいうのであつて木工品の製作を主たる目的とする事業の附帯事業のうちには、その資材原料たる立木、伐木等の買入をする事業をも包含する。
三 木材統制法は、木材の生産消費を規正したもので、木工業者が立木、伐木等を買い入れること自体を禁止したものではない。
四 木材業又は製材業が許可を要する事業であつて、木工業者がその許可を受けずしてその資材原料たる立木、伐木等を買い入れたとしてもそのために、その取引が附帯事業の範囲に属すると判断する妨げとならない。
五 商法第二六四条第二項による介入権行使の効果は、取締役は、その取引によつて、取得した金銭その他の物はこれを会社に引き渡し、権利はこれを会社に移転することを要するのであつて、取締役がその取引によつて取得した所有権その他の物権が、介入権の行使により当然に会社に移転するいわゆる物権的効力を有するものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和24年6月4日 昭和23(オ)69
- 登載
- 民集 第3巻7号235頁
- 参照法条
- 民法94条1項,商法204条,商法264条1項,商法264条,商法(昭和25年法律167号による改正前のもの)264条2項,木材統制法1条,木材統制法6条
論点84第94条民法
不実の所有権移転登記がされたことにつき所有者に自らこれに積極的に関与した場合やこれを知りながらあえて放置した場合と同視し得るほど重い帰責性があるとして民法94条2項〈虚偽表示〉,110条〈権限外の行為の表見代理〉を類推適用すべきものとされた事例
裁判要旨不動産の所有者であるXから当該不動産の賃貸に係る事務や他の土地の所有権移転登記手続を任せられていた甲が,Xから交付を受けた当該不動産の登記済証,印鑑登録証明書等を利用して当該不動産につき甲への不実の所有権移転登記を了した場合において,Xが,合理的な理由なく上記登記済証を数か月間にわたって甲に預けたままにし,甲の言うままに上記印鑑登録証明書を交付した上,甲がXの面前で登記申請書にXの実印を押捺したのにその内容を確認したり使途を問いただしたりすることなく漫然とこれを見ていたなど判示の事情の下では,Xには,不実の所有権移転登記がされたことについて自らこれに積極的に関与した場合やこれを知りながらあえて放置した場合と同視し得るほど重い帰責性があり,Xは,民法
94条2項〈虚偽表示〉,
110条〈権限外の行為の表見代理〉の類推適用により,甲から当該不動産を買い受けた善意無過失のYに対し,甲が当該不動産の所有権を取得していないことを主張することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成18年2月23日 平成15(受)1103
- 登載
- 民集 第60巻2号546頁
- 参照法条
- 民法94条2項 民法110条
論点85第94条民法
地目変更等のためと偽って不動産の所有者から交付を受けた登記済証,白紙委任状,印鑑登録証明書等を利用して当該不動産につき不実の所有権移転登記がされた場合において不動産の所有者が善意無過失の第三者に対して当該不動産の所有権が移転していないことを対抗することができないとした原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨不動産の売買等を業とする会社が,地目変更等のためと偽って不動産の所有者から交付を受けた登記済証,白紙委任状,印鑑登録証明書等を利用して,当該不動産につき同社への不実の所有権移転登記を了したが,当該所有者が,虚偽の権利の帰属を示すような外観の作出につき何ら積極的な関与をしておらず,上記の不実の登記の存在を知りながら放置していたとみることもできないなど判示の事情の下においては,民法
94条2項〈虚偽表示〉,
110条〈権限外の行為の表見代理〉の類推適用により当該所有者が善意無過失の第三者に対して同社に当該不動産の所有権が移転していないことを対抗することができないとした原審の判断には,違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成15年6月13日 平成14(受)1008
- 登載
- 集民 第210号143頁
- 参照法条
- 民法94条2項,民法110条
論点86第94条民法
相続税申告の基礎となった遺産分割協議の無効を確認する判決が確定したことが国税通則法23条2項1号〈居所〉に該当することを理由として更正の請求をすることはできないとされた事例
裁判要旨通謀虚偽表示により遺産分割協議が成立した外形を作出し,これに基づいて相続税の申告を行った後,遺産分割協議の無効を確認する判決が確定したという事実関係の下においては,当該判決の確定が国税通則法23条2項1号に該当することを理由として更正の請求をすることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成15年4月25日 平成13(行ヒ)230
- 登載
- 集民 第209号689頁
- 参照法条
- 国税通則法23条1項,国税通則法23条2項,民法94条,民法907条1項
論点87第94条民法
不動産競売手続における建物の買受人が民法九四条二項、一一〇条の法意により建物所有権を取得してもその敷地の賃借権を取得しないとされた事例
裁判要旨土地賃借人甲が右土地上に乙名義で建築確認申請をして建物を建築し、乙名義での家屋補充課税台帳への登録を事後的に承認していたところ、乙が甲に無断で建物につき所有権保存登記を経由した上、右登記を過失なく信頼した丙との間で抵当権設定契約を締結した場合において、右抵当権に基づく不動産競売手続により建物を買い受けた丁は、民法
九四条二項〈虚偽表示〉、
一一〇条〈権限外の行為の表見代理〉の法意により建物の所有権を取得しても、右土地の賃借権について右法意により保護されるなどの事情がないときは、右土地の賃借権を取得しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成12年12月19日 平成11(受)1197
- 登載
- 集民 第200号257頁
- 参照法条
- 民法87条2項,民法94条2項,民法110条,民法370条,民事執行法79条