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契約/委任

委任の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

委任は、法律行為の処理を相手に委託し、相手がこれを引き受けることで成立する契約です。受任者には通常期待される注意で事務処理する義務のほか、報告、受け取った物の引渡し、費用の前払い・償還など細かなルールが定められています。報酬は特約がなければ請求できず、委任は各当事者がいつでも解除でき、死亡や破産手続開始などによっても終了します。

委任
場面当事者内容
成立委任者・受任者委託を承諾すれば成立
受任者の義務受任者通常期待される注意で処理
復受任者の選任受任者許諾かやむを得ない事由で選任可
報告義務受任者請求時随時、終了後は遅滞なく
受取物の引渡し受任者金銭・物・果実を引渡し
権利の移転受任者自己名義で得た権利を移転
金銭消費の責任受任者消費日以後の利息と損害賠償
報酬の可否受任者特約なければ請求不可
報酬請求の時期受任者原則、履行後でなければ請求不可
途中終了時の報酬受任者履行割合に応じて請求可
成果完成型の報酬受任者成果引渡しと同時に支払う
費用の前払い委任者受任者の請求で前払い義務
費用等の償還受任者費用・利息・代弁済・損害を請求可
解除各当事者いつでも解除可能
解除の損害賠償解除した側不利な時期等は賠償が必要
終了事由―死亡・破産手続開始・後見開始
終了後の処分受任者側急迫時は必要な処分を継続
対抗要件―通知か既知でなければ対抗不可
準委任―法律行為でない事務にも準用
  • 報酬を期間によって定めたときは、民法624条2項の規定を準用する。
  • 成果に対する報酬を約した場合は、民法634条の規定を準用する。
  • 委任の解除の効力は、民法620条の規定を準用する。
  • 受任者が立て替えた債務の弁済期が来ていないときは、委任者に相当の担保を提供させることができる。
  • 代理権を付与する委任で代理権のある複受任者を選任したときは、複受任者は委任者に対し受任者と同一の権利義務を負う。
  • 委任を解除しても、やむを得ない事由があったときは相手方への損害賠償義務を負わない。
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委任

委任について、条文は何を定めているか。

第643条委任委託を承諾すると委任が成立する1項判例 9件
  • 法律行為の委託を相手が承諾すれば効力が生じる
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第644条受任者の注意義務委任の目的に沿った注意義務を負う1項判例 17件
  • 委任の趣旨に沿い、通常期待される注意を払って処理する義務を負う
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第644_2条復受任者の選任等複受任者は許可かやむを得ない場合のみ選べる2項判例なし
  • 委任者の許諾かやむを得ない事由がなければ選任できない
  • 代理権を持つ複受任者は委任者に対し受任者と同じ権利義務を持つ
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第645条受任者による報告求められたら経過を、終了後は結果を報告1項判例 4件
  • 委任者の請求があれば、いつでも処理状況を報告する
  • 委任終了後は遅滞なく経過と結果を報告する
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第646条受任者による受取物の引渡し等受け取った金銭・物・果実は委任者に引渡す2項判例 5件
  • 委任事務で受け取った金銭その他の物を引き渡す
  • 収取した果実も同様に引き渡す
  • 自己名義で得た権利も委任者に移転する
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第647条受任者の金銭の消費についての責任受任者が委任者の金銭を流用すると利息と賠償責任1項判例 1件
  • 引き渡すべき金額を自分のために使ったら消費日以降の利息を払う
  • なお損害があれば賠償責任も負う
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第648条受任者の報酬報酬は特約がなければ請求できない3項・2号判例 10件
  • 特約がない限り受任者は報酬を請求できない
  • 報酬がある場合も原則履行後でなければ請求不可
  • 委任者の責めによらず履行不能・中途終了なら割合に応じ請求可
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第648_2条成果等に対する報酬成果完成型の報酬は引渡しと同時払い2項判例なし
  • 成果の引渡しを要する場合、報酬は引渡しと同時に支払う
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第649条受任者による費用の前払請求委任者は請求により費用を前払いする義務1項判例 3件
  • 委任事務に必要な費用は、受任者の請求で前払いしなければならない
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第650条受任者による費用等の償還請求等受任者は立替費用・債務・損害を請求できる3項判例 6件
  • 必要な費用を支出したら費用と利息の償還を請求できる
  • 必要な債務を負担したら委任者に弁済を求められる
  • 自己に過失なく損害を受けたら賠償を請求できる
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第651条委任の解除委任はいつでも解除できる2項・2号判例 11件
  • 各当事者はいつでも委任を解除できる
  • 不利な時期の解除や受任者の利益も目的とする委任の解除は賠償が必要
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第652条委任の解除の効力委任解除の効力は民法620条を準用する1項判例 1件
  • 委任の解除には民法620条の規定を準用する
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第653条委任の終了事由委任者・受任者の死亡や破産等で終了する1項・3号判例 10件
  • 委任者または受任者が死亡すると委任は終了する
  • 委任者または受任者が破産手続開始の決定を受けると終了する
  • 受任者が後見開始の審判を受けると終了する
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第654条委任の終了後の処分急な事情があれば終了後も必要な処分を続ける1項判例 1件
  • 急迫の事情があれば、委任者側が対応できるまで必要な処分を続ける
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第655条委任の終了の対抗要件終了は通知か相手が知らないと対抗できない1項判例 1件
  • 終了事由は相手に通知するか、相手が知っていないと対抗できない
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第656条準委任法律行為でない事務にも委任の規定を準用1項判例 5件
  • 法律行為でない事務の委託にも、この節の規定を準用する
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第643条民法

非公認市場における金地金の先物取引の委託が公序良俗に反し無効とされた事例

裁判要旨顧客の委託を受けて非公認市場で将来の一定の時期に商品の授受及び代金決済を行う予約取引の方法で金地金の売買を営む会社の社員らが、商品取引の知識のない主婦に対して、引続き三時間にも及ぶ勧誘を続け、その間右取引が投機性を有し、損失を被る虞のあること、委託追証拠金等を必要とすることがあり、これを納めないときには多額の損害を被ることなどについて説明せず、かえつて損失の虞のない安全かつ有利な取引であると強調し、更に、主婦が現金のないことを理由に逡巡するのに、貸付信託通帳でも支障がないなどと述べて執拗に取引を勧め、その結果、主婦が右社員らの言うに委せれば利益を生ずることが確実であると考えて本件取引をするに至つたなど原判示の事実関係のもとにおいては、主婦と会社との間に成立した本件取引は、著しく不公正な方法によつて行われたものとして公序良俗に反し無効である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和61年5月29日 昭和59(オ)12
登載
集民 第148号1頁
参照法条
民法90条,民法643条,商品取引所法2条4項,商品取引所法8条,商品取引所法94条
論点2第643条民法

民事訴訟事件の依頼者と弁護士との間のいわゆるみなし成功報酬の特約がその効力を生じないとされた事例

裁判要旨控訴審における民事訴訟事件につき、依頼者と弁護士との間で、依頼者が受任者に無断で和解、取下等をしたときには、委任事務処理の程度いかんにかかわらず成功とみなして成功報酬の全額を支払う旨のいわゆるみなし成功報酬の特約がされ、依頼者において受任者に無断で右事件の相手方と裁判外の和解をして控訴を取り下げた場合であつても、受任者が、第一審においても右事件の処理を受任して訴訟を追行したが仮執行宣言付の敗訴判決を受け、みずからの手落もあつてその執行により依頼者を窮状におちいらせたこと、控訴審の結果に不安をいだいた依頼者から再三和解により事件の解決をはかるよう求められ、和解成立の機会もあつたのに、その依頼をかたくなに斥けてきたこと等判示のような事情があるときは、依頼者の右和解および控訴の取下は、受任者の責に帰すべき事由によるものとして、右みなし成功報酬の特約はその効力を生じない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年11月30日 昭和47(オ)342
登載
民集 第27巻10号1448頁
参照法条
民法643条,民法648条,弁護士法312条2項8号
論点3第643条民法

経営委託の形式による店舗の使用関係が転貸借契約と認められた事例。

裁判要旨店舗建物の賃借人が、経営委託契約の形式のもとに店舗の一部を使用させ、該使用者は、自己の計算において、鳥禽類の仕入販売を行い、収益如何にかかわらず、前記賃借人に対し月額六〇〇〇円を下らない金員を支払うことを約した場合は、転貸借契約が成立したものと認めるのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年9月24日 昭和38(オ)638
登載
集民 第75号445頁
参照法条
民法612条,民法643条
論点4第643条民法

一 国選弁護人と民法委任の規定の適用の有無
二 国選弁護人と費用償還請求権

裁判要旨一 国選弁護人の選任に基く法律関係については、民法委任の規定を適用すべきものではない。
二 国選弁護人は、裁判所の支給する旅費、日当、宿泊料及び報酬以外に、別に費用の請求をすることはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和29年8月24日 昭和27(オ)483
登載
民集 第8巻8号1549頁
参照法条
民法643条,民法650条,刑訴法38条2項,刑事訴訟費用法7条
論点5第643条民法

いわゆるチェック・オフと個々の組合員からの委任の要否

裁判要旨使用者と労働組合との間にいわゆるチェック・オフ協定が締結されている場合であっても、使用者が有効なチェック・オフを行うためには、賃金から控除した組合費相当分を労働組合に支払うことにつき個々の組合員から委任を受けることが必要である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成5年3月25日 平成3(オ)928
登載
集民 第168号127頁
参照法条
労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)24条1項,民法643条,民法651条1項
論点6第643条民法

運航委託契約により船舶の運航を受託した者につき船長に対する安全配慮義務が認められた事例

裁判要旨運航委託契約により船舶の運航を受託した者が、船舶を自己の業務の中に一体的に従属させ、船内事故の被害者で直接の契約関係にない船長に対し指揮監督権を行使する立場にあり、船長かち実質的に労務の供給を受けていたという事実関係の下においては、右受託者は、船長に対し信義則上の安全配慮義務を負う。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成2年11月8日 昭和62(オ)1047
登載
集民 第161号191頁
参照法条
民法1条2項,民法415条,民法643条,民法656条
論点7第643条民法

信用保証協会を債権者とし被担保債権の範囲を保証委託取引により生ずる債権として設定された根抵当権の被担保債権に,信用保証協会の根抵当債務者に対する保証債権は含まれるか

裁判要旨信用保証協会を債権者とし被担保債権の範囲を保証委託取引により生ずる債権として設定された根抵当権の被担保債権に,信用保証協会の根抵当債務者に対する保証債権は含まれない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成19年7月5日 平成18(受)597
登載
集民 第225号1頁
参照法条
民法398条の2第2項,民法446条,民法643条,信用保証協会法20条1項
論点8第643条民法

会社の執行役員を退任した者が会社に対し退職慰労金の支払を請求することができないとされた事例

裁判要旨会社の従業員であった者が退職して執行役員に就任し,その後退任した場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,会社が従前支給してきた内規所定の金額の退職慰労金は,功労報償的な性格が極めて強く,執行役員退任の都度,代表取締役の裁量的判断により支給されてきたにすぎないものであり,上記の者が会社に対し退職慰労金の支払を請求することはできない。
(1) 会社の導入した執行役員制度の下において,執行役員は,従前は取締役が就いていた職務上の地位に就任し,報酬その他の待遇面においても,従前の取締役と同等の待遇が保障されていた。
(2) 上記制度の下において,従業員であった者が執行役員に就任する場合,いったん退職した上で,取締役会からの委任により執行役員に就任するものとされていた。
(3) 退職慰労金の支給金額を定めた上記内規は,代表取締役の決裁で作成,改定されるものであり,上記内規には,退任する執行役員に対し退職慰労金を支給する場合に適用する旨が定められていたにすぎず,これを必ず支給する旨の規定は置かれていなかった。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成19年11月16日 平成19(受)478
登載
集民 第226号317頁
参照法条
民法623条,民法643条,民法648条1項,労働基準法11条,労働基準法89条3号の2
論点9第643条民法

売主から委託を受けてマンションの専有部分の販売に関する一切の事務を行っていた宅地建物取引業者に専有部分内に設置された防火戸の操作方法等につき買主に対して説明すべき信義則上の義務があるとされた事例

裁判要旨防火設備の一つとして重要な役割を果たし得る防火戸が室内に設置されたマンションの専有部分の販売に際し,防火戸の電源スイッチが一見してそれとは分かりにくい場所に設置され,それが切られた状態で専有部分の引渡しがされた場合において,宅地建物取引業者が,購入希望者に対する勧誘,説明等から引渡しに至るまで販売に関する一切の事務について売主から委託を受け,売主と一体となって同事務を行っていたこと,買主は,上記業者を信頼して売買契約を締結し,上記業者から専有部分の引渡しを受けたことなど判示の事情においては,上記業者には,買主に対し,防火戸の電源スイッチの位置,操作方法等について説明すべき信義則上の義務がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成17年9月16日 平成16(受)1847
登載
集民 第217号1007頁
参照法条
民法1条2項,民法555条,民法643条,民法709条
論点10第644条民法

一 当座勘定取引契約において取引印として届け出られていない実印を使用して偽造された手形小切手の支払いをした銀行に過失があるとされた事例
二 債権者の従業員のした行為が債務不履行の原因となつている場合と過失相殺

裁判要旨一 銀行は、当座勘定取引契約において取引印として届け出られていない実印を用いて振り出された手形、小切手を支払うにあたつては、当該実印が右契約の締結及び取引印の届出に際し使用されていたとしても、取引先に対し支払委託の有無を確認すべき注意義務があり、これを尽くすことなく偽造手形、偽造小切手の支払をしたときは、過失の責を免れない。
二 銀行が取引印として届け出られていない実印の押捺された偽造に係る手形、小切手の支払をしたことが当座勘定取引契約に基づく債務の不履行となる場合において、右手形、小切手の偽造が右取引契約の取引先の経理担当事務員によつてされたものであり、しかも右事務員は、取引先の売掛金、買掛金の記帳、集計、小口現金払等及び取引印の押捺以外の手形、小切手の振出事務を担当し、手形、小切手用紙及び実印が保管されている金庫の番号を記憶し、かつ、その鍵を所持していたなど、判示の事情があるときには、右事務員がした手形、小切手の偽造は、債務不履行に基づく損害賠償責任及びその金額を決するにあたつて取引先と同視すべき者の有責行為として斟酌すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年4月7日 昭和56(オ)57
登載
民集 第37巻3号219頁
参照法条
民法415条,民法418条,民法644条
論点11第644条民法

振出日白地の確定日払の為替手形の取立委任を受けた銀行に白地補充等の義務がないとされた事例

裁判要旨振出日白地の確定日払の為替手形の取立委任を受けた銀行と取立委任者との間に白地補充について特段の合意がなく、かつ、各種金融機関が取立委任を受ける確定日払の手形には振出日白地のものが多数あり、金融機関は、手形所持人に白地補充を促したり、自ら補充したりしないでそのまま取立に回すのが慣習であり、手形交換所の定めにおいても確定日払の手形の振出日の白地は「形式的不備」に該当しないものとされていたなど、原判示の事実関係のもとにおいては、銀行は委任者に対し、右白地の補充を促し又は自ら補充する義務を負うものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和55年10月14日 昭和54(オ)771
登載
集民 第131号1頁
参照法条
手形法1条7号,手形法10条,手形法18条,民法644条
論点12第644条民法

一 中小企業等協同組合法に基づく企業組合の脱退組合員に対する払戻持分の計算のための組合財産の評価に当たり将来退職する組合役員・従業員に支払われるべき退職慰労金・退職金につき当期末現在で算出したその相当額を負債として計上することの可否
二 中小企業等協同組合法に基づく企業組合の理事全員の協議により組合の経理業務を担当することとされた理事の事務処理に非違があつた場合と同法三八条の二第一項所定の損害賠償責任

裁判要旨一 中小企業等協同組合法に基づく企業組合の脱退組合員に対する払戻持分の計算のため組合財産を評価するにあたり、将来退職する組合役員・従業員に支払われるべき退職慰労金・退職金につき当期末現在の状態を基準として算出したその相当額を負債として計上することはできない。
二 中小企業等協同組合法に基づく企業組合の理事会の全員の協議によつて右組合の経理業務を担当するものとされた理事にその事務処理について故意又は過失に基づく非違があつたときは、右理事は、業務担当理事として負担すべき善良な管理者の注意義務ないし忠実義務に違反するものとして、組合に対し、同法三八条の二第一項所定の損害賠償責任を負担するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和54年2月23日 昭和50(オ)326
登載
民集 第33巻1号125頁
参照法条
中小企業等協同組合法20条,中小企業等協同組合法38条の2第1項,中小企業等協同組合法42条,商法254条3項,商法254条の2,民法644条
論点13第644条民法

登記権利者及び登記義務者双方から登記手続の委託を受けた司法書士が登記義務者から登記手続に必要な書類の返還を求められた場合における登記権利者に対する委任契約上の義務

裁判要旨登記権利者及び登記義務者双方から登記手続の委託を受け、右手続に必要な書類の交付を受けた司法書士は、手続の完了前に登記義務者から右書類の返還を求められても、登記権利者に対する関係では、同人の同意があるなど特段の事情のない限り、その返還を拒むべき委任契約上の義務がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年7月10日 昭和51(オ)102
登載
民集 第32巻5号868頁
参照法条
民法644条,民法651条,司法書士法1条
論点14第644条民法

商品の先物取引において仲買人が委託者の指図に従う義務

裁判要旨商品の先物取引において、仲買人は、商品の売付け又は買付けの委託を受けた場合に、取引が終了するまでは、反対売買等につき新たな合意を要することなく、委託者の指図に従う義務がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年7月15日 昭和47(オ)334
登載
集民 第115号419頁
参照法条
商法552条2項,民法644条
論点15第644条民法

商法二六六条一項五号と同法二五四条三項、民法六四四条〈受任者の注意義務〉

裁判要旨商法二六六条一項五号には、取締役が同法二五四条三項、民法六四四条〈受任者の注意義務〉の定める注意義務に違反した場合も含まれる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年4月25日 昭和45(オ)375
登載
集民 第105号843頁
参照法条
商法266条1項5号,商法254条3項,民法644条
論点16第644条民法

一、銀行が当座勘定取引契約に基づき手形の印影を照合するにあたつて尽くすべき注意義務の程度
二、印影照合についての銀行の注意義務と免責約款の効力
三、当座勘定取引契約に基づき手形の支払委託をうけた銀行が振出日欄白地の約束手形を支払つた場合における取引先に対する効力

裁判要旨一、銀行が、当座勘定取引契約に基づき、届出の印鑑と手形上の印影とを照合するにあたつては、銀行の照合事務担当者に対して社会通念上一般に期待されている業務上相当の注意をもつて慎重に行なうことを要し、右事務に習熟している銀行員が右のような注意を払つて熟視するならば肉眼で発見しうるような印影の相違が看過されて偽造手形が支払われたときは、その支払による不利益を取引先に帰せしめることは許されない。
二、銀行が手形の印影と届出印鑑とが符合すると認めて支払をした場合は責任を負わない旨の当座勘定取引契約上の免責約款は、銀行が手形の印影照合にあたつて尽くすべき前項の注意義務を軽減する趣旨のものではない。
三、当座勘定取引契約上の支払委託は、特段の事情のないかぎり、振出日欄白地の確定日払の約束手形の支払を含む趣旨とは解されず、銀行が、支払委託の有無を確認するための相当な方法をとることなく、右白地手形の支払をしたときは、その結果を取引先に帰属させることは許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和46年6月10日 昭和42(オ)64
登載
民集 第25巻4号492頁
参照法条
民法644条,手形法10条,手形法75条,手形法77条2項
論点17第644条民法

一、政治資金の寄附と会社の権利能力
二、会社の政党に対する政治資金の寄附の自由と憲法三章
三、商法二五四条ノ二の趣旨
四、取締役が会社を代表して政治資金を寄附する場合と取締役の忠実義務

裁判要旨一、会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎり、会社の権利能力の範囲に属する行為である。
二、憲法三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものであるから、会社は、公共の福祉に反しないかぎり、政治的行為の自由の一環として、政党に対する政治資金の寄附の自由を有する。
三、商法二五四条ノ二の規定は、同法二五四条三項、民法六四四条〈受任者の注意義務〉に定める善管義務をふえんし、かつ、一層明確にしたにとどまり、通常の委任関係に伴う善管義務とは別個の、高度な義務を規定したものではない。
四、取締役が会社を代表して政治資金を寄附することは、その会社の規模、経営実績その他社会的経済的地位および寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内においてなされるかぎり、取締役の忠実義務に違反するものではない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和45年6月24日 昭和41(オ)444
登載
民集 第24巻6号625頁
参照法条
民法43条,民法644条,商法166条1項1号,商法254条ノ2,商法254条3項,憲法3章
論点18第644条民法

一 甲会社が同社のすべての発行済み株式を有する乙会社の株式を取得することと商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二一〇条
二 甲会社が同社のすべての発行済み株式を有する乙会社の株式の売買により損失を被った場合と乙会社に生じる損害

裁判要旨一 甲会社が同社のすべての発行済み株式を有する乙会社の株式を取得することは、商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二一〇条にいう自己株式の取得に当たる。
二 甲会社が同社のすべての発行済み株式を有する乙会社の指示により同社の株式を売買して買入価格と売渡価格の差額に相当する損失を被った場合、乙会社の取締役は、特段の事情のない限り、その全額を乙会社に生じた損害として、賠償の責めに任ずる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成5年9月9日 平成1(オ)1400
登載
民集 第47巻7号4814頁
参照法条
商法(昭和56年法律第74号による改正前のもの)210条,商法254条3項,商法266条1項5号,民法415条,民法644条
論点19第644条民法

証券会社の従業員の無断売買によつて生じた差損などを顧客の信用取引口座から曳き落とす処理がされた場合と顧客の損害発生の有無

裁判要旨証券会社の従業員が顧客の信用取引口座を利用して無断売買をし、その結果生じた差損などに相当する金員をその顧客の信用取引口座から引き落とす処理がされたとしても、顧客に右金員相当の損害が生じたものということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成4年2月28日 昭和63(オ)386
登載
集民 第164号113頁
参照法条
民法415条,民法644条,商法552条,証券取引法49条
論点20第644条民法

債務整理に係る法律事務を受任した弁護士が,特定の債権者の債権につき消滅時効の完成を待つ方針を採る場合において,上記方針に伴う不利益等や他の選択肢を説明すべき委任契約上の義務を負うとされた事例

裁判要旨債務整理に係る法律事務を受任した弁護士が,当該債務整理について,特定の債権者に対する残元本債務をそのまま放置して当該債務に係る債権の消滅時効の完成を待つ方針を採る場合において,上記方針は,債務整理の最終的な解決が遅延するという不利益があるほか,上記債権者から提訴される可能性を残し,一旦提訴されると法定利率を超える高い利率による遅延損害金も含めた敗訴判決を受ける公算が高いというリスクを伴うものである上,回収した過払金を用いて上記債権者に対する残債務を弁済する方法によって最終的な解決を図ることも現実的な選択肢として十分に考えられたなど判示の事情の下では,上記弁護士は,委任契約に基づく善管注意義務の一環として,委任者に対し,上記方針に伴う上記の不利益やリスクを説明するとともに,上記選択肢があることも説明すべき義務を負う。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成25年4月16日 平成24(受)651
登載
民集 第67巻4号1049頁
参照法条
民法415条,民法644条
論点21第644条民法

A社が事業再編計画の一環としてB社の株式を任意の合意に基づき買い取る場合において,A社の取締役に上記株式の買取価格の決定について善管注意義務違反はないとされた事例

裁判要旨不動産賃貸あっせんのフランチャイズ事業等を展開するA社が,事業再編計画の一環としてB社を完全子会社とする目的で同社の株式を任意の合意に基づき買い取る場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,株式交換に備えて算定された上記株式の評価額が1株当たり6561円ないし1万9090円であったとしても,上記株式の買取価格をB社の設立時の株式の払込金額を基準として1株当たり5万円とする決定をしたことについて,A社の取締役が取締役としての善管注意義務に違反したということはできない。
(1) B社の株主には,A社が事業の遂行上重要であると考えていた上記フランチャイズ事業の加盟店等が含まれる。
(2) 非上場株式である上記株式の評価額には相当の幅があり,事業再編の効果によるB社の企業価値の増加も期待できた。
(3) 上記の決定に至る過程で,A社の役付取締役全員により構成される経営会議において検討がされ,弁護士の意見も聴取されるなどの手続が履践された。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成22年7月15日 平成21(受)183
登載
集民 第234号225頁
参照法条
会社法330条,会社法355条,会社法423条1項,会社法847条,民法644条
論点22第644条民法

特定の種類の商品先物取引について差玉向かいを行っている商品取引員が,専門的な知識を有しない委託者との間で締結した商品先物取引委託契約上,委託者に対して負う説明義務及び通知義務

裁判要旨特定の種類の商品先物取引について差玉向かいを行っている商品取引員が専門的な知識を有しない委託者との間で商品先物取引委託契約を締結した場合,商品取引員は,上記委託契約上,商品取引員が差玉向かいを行っている特定の種類の商品先物取引を受託する前に,委託者に対し,その取引について差玉向かいを行っていること及び差玉向かいは商品取引員と委託者との間に利益相反関係が生ずる可能性の高いものであることを十分に説明すべき義務を負い,委託者が上記の説明を受けた上で上記取引を委託したときにも,自己玉を建てる都度,その自己玉に対当する委託玉を建てた委託者に対し,その委託玉が商品取引員の自己玉と対当する結果となったことを通知する義務を負う。

※差玉向かい:板寄せ(商品取引所の立会において,同一限月の各商品につき,売付けと買付けの数量が合致したときに,そのときの値段を単一の約定値段とし,同数量の売付けと買付けについて売買約定を締結させる競争売買の方法)による取引について,商品の種類及び限月ごとに,委託に基づく売付けと買付けを集計し,売付けと買付けの数量に差がある場合に,この差の全部又は一定割合に対当する自己玉を建てることを繰り返す商品取引員の取引方法
※自己玉:商品取引員が自己の計算をもってする取引※委託玉:商品取引員が委託に基づいてする取引
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成21年7月16日 平成20(受)802
登載
民集 第63巻6号1280頁
参照法条
商法551条,商法552条2項,民法644条,民法645条,商品取引所法213条,商品取引所法214条9号,商品取引所法217条1項4号,商品取引所法施行規則103条2号,商品取引所法施行規則104条1項8号
論点23第644条民法

農業協同組合の代表理事が,補助金の交付を受けることにより同組合の資金的負担のない形で堆肥センター建設事業を進めることにつき理事会の承認を得たにもかかわらず,その交付申請につき理事会に虚偽の報告をするなどして同組合の費用負担の下で同事業を進めた場合において,資金の調達方法を調査,確認することなく,同事業が進められるのを放置した同組合の監事に,任務のけ怠があるとされた事例

裁判要旨農業協同組合の代表理事が,補助金の交付を受けることにより同組合の資金的負担のない形で堆肥センター建設事業を進めることにつき理事会の承認を得たにもかかわらず,補助金の交付申請につき理事会に虚偽の報告をするなどして同組合の費用負担の下で同事業を進めた場合において,代表理事が,(1)理事会において,それまでの説明に出ていなかった補助金の交付申請先に言及しながら,その申請先や申請内容について具体的な説明をすることなく,補助金の受領見込みについてあいまいな説明に終始した上,(2)その後の理事会においても,補助金が入らない限り同事業に着手しない旨を繰り返し述べていながら,補助金の受領見込みを明らかにしないまま,同組合の資金の立替えによる建設用地の取得を提案したなど判示の事実関係の下においては,代表理事に対し,補助金の受領見込みに関する資料の提出を求めるなどして,建設資金の調達方法を調査,確認することなく,同事業が進められるのを放置した同組合の監事は,その任務を怠ったものというべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年11月27日 平成19(受)1503
登載
集民 第232号393頁
参照法条
農業協同組合法(平成17年法律第87号による改正前のもの)33条1項,農業協同組合法(平成17年法律第87号による改正前のもの)33条2項,農業協同組合法(平成17年法律第87号による改正前のもの)39条1項,農業協同組合法(平成17年法律第87号による改正前のもの)39条2項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)274条1項,民法644条,会社法381条1項
論点24第644条民法

A銀行が,県から要請を受け,県において再建資金の融資を計画していたB社に対し,上記融資が実行されるまでのつなぎ融資をした後に,B社に追加融資をしてもその回収を容易に見込めない一方で,これをしなければB社が破綻,倒産する可能性が高く,上記つなぎ融資まで回収不能となるおそれがある状況の下で,B社に対して追加融資をした場合において,その追加融資の一部につき,これを決定したA銀行の取締役らに善管注意義務違反があるとされた事例

裁判要旨A銀行が,県から要請を受け,県において再建資金の融資を計画していたB社に対し,上記融資が実行されるまでのつなぎ融資として9億5000万円を融資した後に,B社に追加融資をしてもその回収を容易に見込めない一方で,これをしなければB社が破綻,倒産する可能性が高く,県のB社に対する融資により回収することを予定していた上記つなぎ融資まで回収不能となるおそれがある状況の下で,B社に対し,約3年の間に数十回にわたり合計8億5000万円余りの追加融資をした場合において,(1)上記追加融資を続ける過程で,A銀行は,県の担当者から,知事がB社の創業者であるC及びその親族をB社の経営から排除することを県のB社に対する融資の条件とする意向を示している旨の連絡を受けたこと,(2)その当時,法的手続を通じてC及びその親族をB社の経営から排除することは困難な状況にあり,その後も,同人らを排除することができない状況が続いたこと,(3)その間,A銀行は,県に対し,2度にわたり期限を定めて県のB社に対する融資の実行を求めたにもかかわらず,県は2度目の期限も徒過し,その時点で,上記(1)の連絡を受けてから10か月以上が経過していたこと,(4)上記時点までには,A銀行自身も,資産査定において,B社の債務者区分を要注意先から破綻懸念先に変更するに至っていたことなど判示の事情の下では,上記時点以後は,A銀行の取締役らにおいて,上記つなぎ融資の回収原資をもたらす県のB社に対する融資が実行される相当程度の確実性があり,その実行までB社を存続させるために追加融資をした方が,追加融資分が回収不能になる危険性を考慮しても全体の回収不能額を小さくすることができると判断することは,著しく不合理であり,上記時点以後の3億0500万円の追加融資については,これを決定したA銀行の取締役らに善管注意義務違反がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年11月27日 平成19(受)1056
登載
集民 第232号353頁
参照法条
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条,民法644条,会社法423条1項,会社法847条
論点25第644条民法

1 銀行が,第三者割当増資を計画する企業から新株引受先として予定された当該企業の関連会社に対する引受代金相当額の融資を求められ,これを実行した場合において,融資を決定した取締役らに忠実義務,善管注意義務違反があるとされた事例
2 銀行が,積極的な融資の対象であったが大幅な債務超過となって破たんに直面した企業に対し,同企業を数か月延命させる目的で追加融資を実行した場合において,追加融資を決定した取締役らに忠実義務,善管注意義務違反があるとされた事例

裁判要旨1 A銀行が,第三者割当増資を計画するB社から,発行する新株の相当部分を引き受ける予定のB社の関連会社に対する引受代金相当額の融資を求められ,これを実行した場合において,次の(1)〜(4)など判示の事情の下では,A銀行の取締役らが上記求めに応じて融資を決定したことは,当該融資が,A銀行が当時採用していた企業育成路線の一環としてされたものであったとしても,A銀行の取締役としての忠実義務,善管注意義務に違反する。
(1) 当該融資は,引受予定のB社の新株を担保とし,弁済期に当該株式を売却した代金で融資金の返済を受けることを予定したもので,保証人となるB社代表者の資産も大部分はB社の株式であり,債権の回収は専らB社の業績及び株価の動向のみに依存するものであった。
(2) 当該融資の額は200億円近い巨額のものであった。
(3) 新株発行後のB社の発行済株式総数に占める担保株式の割合等に照らし,融資先が弁済期に担保株式を一斉に売却すれば株価が暴落するおそれがあることは容易に推測できた。
(4) A銀行が以前に行った調査において,B社につき,財務内容が極めて不透明であり,借入金が過大で財務内容は良好とはいえないとの報告がされていた。
2 A銀行が,新興企業育成路線に基づく積極的な融資の対象であったが大幅な債務超過となり破たんに直面するに至ったB社に対し,もはやB社の存続が不可能であるとの認識を前提に,B社がA銀行から資金の融資を受けて継続中の大規模なリゾート開発事業が完成する予定の数か月後までB社を延命させる目的でそれに必要な資金409億円の追加融資を実行した場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,A銀行の取締役らが追加融資を決定したことは,A銀行の取締役としての忠実義務,善管注意義務に違反する。
(1) 追加融資に際し新たに担保を設定した不動産等の担保価値は到底追加融資相当額に見合うものではなく,追加融資の大部分は当初から回収の見込みがなかった。
(2) 上記事業は,完成したとしてもその採算性が疑わしく,中長期的にも,上記事業を独立して継続させることにより追加融資に見合う額の債権回収が期待できたということはできない。
(3) B社を数か月間延命させたとしても,それにより関連企業の連鎖倒産を避けられたとも,B社に多額の資金を融資していた信用組合が破たんしてA銀行に支援要請が来る事態を回避できたとも考え難い。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年1月28日 平成17(受)1440
登載
集民 第227号105頁
参照法条
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条ノ3,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,民法644条,会社法423条1項
論点26第644条民法

1 いわゆる仕手筋として知られるAが大量に取得したB社の株式を暴力団の関連会社に売却するなどとB社の取締役であるYらを脅迫した場合においてAの要求に応じて巨額の金員を交付することを提案し又はこれに同意したYらの忠実義務,善管注意義務違反が問われた行為について過失を否定することができないとされた事例
2 会社から見て好ましくないと判断される株主が議決権等の株主の権利を行使することを回避する目的で当該株主から株式を譲り受けるための対価を何人かに供与する行為と商法(平成12年法律第90号による改正前のもの)294条ノ2第1項にいう「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」利益を供与する行為

裁判要旨1 いわゆる仕手筋として知られるAが,大量に取得したB社の株式を暴力団の関連会社に売却するなどとB社の取締役であるYらを脅迫した場合において,売却を取りやめてもらうためAの要求に応じて約300億円という巨額の金員を融資金の名目で交付することを提案し又はこれに同意したYらの忠実義務,善管注意義務違反が問われた行為について,Aの言動に対して警察に届け出るなどの適切な対応をすることが期待できないような状況にあったということはできないという事情の下では,やむを得なかったものとしてその過失を否定することはできない。
2 会社から見て好ましくないと判断される株主が議決権等の株主の権利を行使することを回避する目的で,当該株主から株式を譲り受けるための対価を何人かに供与する行為は,商法(平成12年法律第90号による改正前のもの)294条ノ2第1項にいう「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」利益を供与する行為に当たる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年4月10日 平成15(受)1154
登載
民集 第60巻4号1273頁
参照法条
(1につき)商法254条3項,商法254条ノ3,商法266条1項5号,民法644条 (2につき)商法(平成12年法律第90号による改正前のもの)294条ノ2,商法(平成15年法律第134号による改正前のもの)266条1項2号
論点27第645条民法

宅地建物取引業者を排除して売買契約が成立した場合に停止条件の成就が故意に妨げられたとして右業者の報酬請求権が認められた事例

裁判要旨土地等の買受人が、その買受につき宅地建物取引業者に仲介を依頼し、買受契約の成立を停止条件として一定額の報酬を支払う旨を約したのに、買受人が右業者を排除して直接売渡人との間に契約を成立させた場合において、右契約の成立時期が業者の仲介活動の時期に近接しているのみならず、当時その仲介活動により買受人の買受希望価額にあと僅かの差が残つているだけで間もなく買受契約が成立するに至る状態にあつたのであり、しかも、買受契約における買受価額が業者と買受人が下相談した価額を僅かに上廻る等の事情のあるときは、買受人は、業者の仲介によつて間もなく買受契約の成立に至るべきことを熟知して故意にその仲介による契約の成立を妨げたものというべきであり、業者は、停止条件が成就したものとみなして、買受人に対し、約定報酬の請求をすることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年10月22日 昭和45(オ)637
登載
民集 第24巻11号1599頁
参照法条
民法130条,民法645条,民法648条
論点28第645条民法

1 金融機関の預金者に対する預金口座の取引経過開示義務の有無
2 共同相続人の一人が被相続人名義の預金口座の取引経過開示請求権を単独で行使することの可否

裁判要旨1 金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負う。
2 預金者の共同相続人の一人は,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成21年1月22日 平成19(受)1919
登載
民集 第63巻1号228頁
参照法条
(1,2につき)民法645条,民法656条,民法666条 (2につき)民法252条,民法264条,民法898条
論点29第645条民法

コンビニエンス・ストアのフランチャイズ・チェーンの運営者が,加盟店に代わって支払った商品仕入代金の具体的な支払内容について,加盟店に報告すべき義務を負うとされた事例

裁判要旨コンビニエンス・ストアのフランチャイズ・チェーンを運営するYとその加盟店の経営者であるXとの間の加盟店基本契約に,XがYの推薦する仕入先からYの提供する発注システムにより商品を仕入れたときはYがXに代わってその委託に基づき商品の仕入代金を支払う旨の定めがあり,これによって仕入代金が支払われたときの支払内容に関するYからXへの報告については何ら定めがない場合において,(1)商品の仕入れは加盟店経営の根幹を成すものであり,Xが自らの仕入代金の具体的な支払内容を知ろうとするのは当然であること,(2)Yには商品の仕入れに関する情報が集約されており,Yがその情報の範囲で上記報告をすることに大きな困難はないこと,(3)上記委託には,Yは費用の前払を受けることなく仕入代金を支払わなければならないなど民法の規定する準委任と比較してYにとって不利益な点もあるが,Yにはこれによって加盟店経営に関する対価の増加を見込めるという利益があることなど判示の事情の下では,上記契約について民法の規定する受任者の報告義務が認められない理由はなく,Yは上記契約に基づきXの求めに応じて上記報告をする義務を負う。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年7月4日 平成19(受)1401
登載
集民 第228号443頁
参照法条
民法91条,民法645条,民法656条
論点30第646条民法

一 不渡異議申立手続の委託に伴う預託金の返還請求権が手形債権者に転付きれた場合と支払銀行が手形債務者に対して有する反対債権をもつてする相殺の許否
二 第三債務者が民訴法六〇九条に基づき被差押債権の存在を認め支払意思を表明したことと相殺権の放棄

裁判要旨一 支払銀行に対し、手形の不渡異議申立手続を委託した手形債務者から異議申立提供金に見合う資金として支払銀行に交付された預託金の返還請求権が手形債権者に転付された場合に、支払銀行が右債権の差押前から手形債務者に対して有する反対債権をもつて被転付債権と相殺することが、預託金返還請求権の性質上制限されるものと解すべき理由はない。
二 民訴法六〇九条に基づき、第三債務者が、差押裁判所に対してした陳述において、被差押債権の「存在を認めて支払の意思を表明し将来において相殺する意思がある旨を表明しなかつた場合でも、その後、これを受働債権として相殺に供すること又は時効により消滅したと主張することを妨げるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年5月12日 昭和54(オ)1134
登載
集民 第129号637頁
参照法条
手形法38条,民法511条,民法646条1項,民訴法609条,民訴法748条
論点31第646条民法

復代理人が委任事務を処理するにあたり受領した物を代理人に引き渡した場合と復代理人の本人に対する受領物引渡義務

裁判要旨本人代理人間で委任契約が締結され、代理人復代理人間で復委任契約が締結された場合において、復代理人が委任事務を処理するにあたり受領した物を代理人に引き渡したときは、特別の事情がない限り、復代理人の本人に対する受領物引渡義務は消滅する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和51年4月9日 昭和49(オ)1026
登載
民集 第30巻3号208頁
参照法条
民法104条,民法107条2項,民法646条1項
論点32第646条民法

一、銀行の貸付金債権についてされた期限の利益喪失約款の差押債権者に対する効力
二、手形の不渡異議申立手続に関し手形債務者が支払銀行に預託する預託金の返還債務の履行期

裁判要旨一、銀行の貸付金債権について、債務者に対し強制執行、仮差押等の手続が開始されたときは、なんらの通知、催告を要せず、右債務が当然期限の利益を失う旨の合意は、右貸付金債権を差し押えた者に対しても、その効力を対抗しうる。
二、手形の不渡異議申立手続に関し、手形債務者が支払銀行に預託する預託金の返還債務の履行期は、支払銀行が、手形交換所から、当該手形の不渡異議提供金の返還を受けた時に到来すべきものと解すべきである。
(一、について意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年8月20日 昭和42(オ)900
登載
集民 第100号333頁
参照法条
民法511条,民法646条,民訴法598条,手形法58条
論点33第646条民法

不渡異議申立手続の委託に伴う預託金の返還請求権が手形債権者に転付された場合と支払銀行が手形債務者に対して有する反対債権をもつてする相殺の許否

裁判要旨手形の不渡異議申立手続を委託した手形債務者から異議申立提供金に見合う資金として支払銀行に交付された預託金の返還請求権が手形債権者に転付された場合に、支払銀行が右債権の差押前から手形債務者に対して有する反対債権をもつて被転付債権と相殺することが、預託金返還請求権の性質上制限されるものと解すべき理由はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年6月18日 昭和43(オ)778
登載
民集 第24巻6号527頁
参照法条
手形法38条,民法646条1項,民法52条
論点34第646条民法

いわゆる不渡異議申立提供金の預託金の返還請求権が手形債権者に転付された場合と支払銀行が手形債務者に対して有する反対債権をもつてする相殺の許否

裁判要旨いわゆる不渡異議申立提供金の預託金の返還請求権が手形債権者に転付された場合に、支払銀行が右債権の差押前から手形債務者に対して有する反対債権をもつて被転付債権と相殺することは許される。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年10月23日 昭和45(オ)125
登載
集民 第101号155頁
参照法条
民法646条1項,民法511条,手形法38条
論点35第647条民法

受任者の金銭消費の責任の成否につき審理不尽の違法があるとされた事例。

裁判要旨小切手の取立委任を受け、所定期日に取立金を委任者に引渡す旨特約した金融機関が、委任者の了解の下に取立金を普通預金としたときでも、判示の事情がある場合には、民法第六四七条〈受任者の金銭の消費についての責任〉による損害賠償の責任が成立する場合があるから右委託事務処理についての特約の存否について顧慮しないことには審理不尽の違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年6月1日 昭和34(オ)910
登載
集民 第61号13頁
参照法条
民訴法395条1項6号,民法647条
論点36第648条民法

不動産取引仲介報酬金についての約定の解釈

裁判要旨不動産取引の仲介に関し、仲介人と依頼人との間で定められた報酬金額は、特段の事情がないかぎり、売買契約が成立し、その履行がされ、取引の目的が達成された場合について定められているものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年11月14日 昭和49(オ)27
登載
集民 第113号211頁
参照法条
民法648条
論点37第648条民法

一、不動産売買の黙示の媒介契約がされたとして報酬請求権が認められた事例
二、不動産売買の媒介を依頼された者が数人あるときの報酬額の配分基準

裁判要旨一宅地建物取引業を営む商人が不動産の売買契約を成立させるため、買主を現場に案内し、契約の締結に立ち会い、売買代金額について売主、買主の両者の言い分を調整して、両者をして買主の希望価額以下に合意させ、目的物の受渡、代金の授受に関与した等判示事実関係のもとにおいては、買主との間に明示の売買の媒介契約がされなかつたとしても、黙示の媒介契約がされたものと解することができ、右商人は、商法第五一二条により、買主に対し、右不動産売買の媒介の報酬を請求することができる。
二、買主から不動産売買の媒介の依頼を受けた仲介人が数人あるときは、各仲介人は、特段の事情のないかぎり、売買の媒介に尽力した度合に応じて、報酬額を按分して、買主に対し請求することができると解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年4月2日 昭和41(オ)1007
登載
民集 第22巻4号803頁
参照法条
商法512条,商法550条,民法648条,宅地建物取引業法(昭和39年法律第166号による改正前のもの)17条
論点38第648条民法

宅地建物取引業者の報酬について法定の最高額をもつて相当額と認めた原審の判断に審理不尽・理由不備の違法があるとされた事例

裁判要旨(省略)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日 昭和40(オ)173
登載
集民 第93号863頁
参照法条
宅地建物取引業法(昭和39年法律第166号による改正前のもの)17条,民法648条,商法550条
論点39第648条民法

不動産売買仲介の依頼が合意解除された場合における不動産取引仲介業者の報酬請求権。

裁判要旨不動産取引仲介業者に対する不動産売買仲介の依頼が合意解除された後、当事者間の直接取引により右不動産を目的とする売買契約が成立した場合においても、右業者の仲介と当該売買契約成立との間に因果関係がなく、右解除も故意に右業者を除外する目的でなされたものでなく、かつ、右依頼に関して報酬金の特約もなかつたときに、右業者が報酬金を請求できるという一般取引観念が存するものとは認められない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年7月16日 昭和36(オ)1232
登載
民集 第18巻6号1160頁
参照法条
商法512条,商法550条1項,商法546条,宅地建物取引業法17条,民法648条3項,民法641条
論点40第648条民法

一 停止条件の成就を故意に妨げたとして報酬請求権が認められた事例
二 停止条件の成就を故意に妨げた場合と不法行為の成立

裁判要旨一 山林売却斡旋依頼とともに判示内容の停止条件付報酬契約がなされた場合において、委任者が受任者を介せず右山林を他に売却したときは、受任者は条件が成就したものとみなして、約定報酬の請求ができる。
二 停止条件の成就を故意に妨げた場合には、期待権侵害による不法行為が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月23日 昭和36(オ)1307
登載
民集 第18巻1号99頁
参照法条
民法130条,民法656条,民法648条,民法128条,民法709条
論点41第648条民法

委任の報酬額の判定に審理不尽理由不備があるとされた事例。

裁判要旨委任事務処理の報酬支払の特約があつたことを認定した以上、当事者主張の報酬額の特約の事実が認定できなくても、当事者の意思を忖度し諸般の事情を勘案して相当な報酬額を認定すべきであつて、これを確定しない原審判決には審理不尽、理由不備の違法がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年3月22日 昭和37(オ)290
登載
集民 第65号235頁
参照法条
民法648条1項,民訴法395条1項6号
論点42第648条民法

一 弁護士報酬額算定の基準
二 着手金、成功報酬金の額が相当と認められた事例

裁判要旨一 弁護士の訴訟委任事務処理に対する報酬の額につき依頼者との間に別段の定めがなかつた場合には、事件の難易、訴額および労力の程度ばかりでなく、依頼者との平生からの関係、所属弁護士会の報酬規則等その他諸般の状況をも審査し、当事者の意思を推定し、以て相当報酬額を算定すべきである。
二 原判決認定の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいて、弁護士が、訴訟事務処理に関するいわゆる着手金として訴額の五分にあたる金三二万二九八八円、いわゆる成功報酬金として和解による利益金の五分にあたる金三〇万四〇〇〇円を請求することは、不相当とはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年2月1日 昭和36(オ)5
登載
民集 第16巻2号157頁
参照法条
民法648条,民法649条,弁護士法33条2項8号
論点43第649条民法

委任事務終了前における委任者の受任者に対する前払費用についての返還請求権の被転付適格

裁判要旨委任者が委任事務の処理のために受任者に交付した前払費用についての返還請求権は,当該委任事務の終了前においては,券面額を有するものとはいえず,被転付適格を有しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年4月14日 平成17(許)33
登載
民集 第60巻4号1535頁
参照法条
民事執行法159条,民法649条
論点44第649条民法

債務整理事務の委任を受けた弁護士が委任事務処理のため委任者から受領した金銭を預け入れるために弁護士の個人名義で開設した普通預金口座に係る預金債権の帰属

裁判要旨債務整理事務の委任を受けた弁護士甲が,委任事務処理のため委任者乙から受領した金銭を預け入れるために甲の名義で普通預金口座を開設し,これに上記金銭を預け入れ,その後も預金通帳及び届出印を管理して,預金の出し入れを行っていた場合には,当該口座に係る預金債権は,甲に帰属する。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成15年6月12日 平成13(行ヒ)274
登載
民集 第57巻6号563頁
参照法条
民法649条,民法666条
論点45第650条民法

不動産仲介業者の支出した新聞広告料と民法六五〇条一項の必要費

裁判要旨不動産仲介業者が仲介にあたり支出した新聞広告料は、民法六五〇条一項〈受任者による費用等の償還請求等〉にいう必要費に含まれないと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年7月6日 昭和48(オ)298
登載
集民 第109号485頁
参照法条
民法650条1項
論点46第650条民法

民法六五〇条二項〈受任者による費用等の償還請求等〉前段の代弁済請求権と相殺

裁判要旨受任者が民法六五〇条二項前段に基づいて有する代弁済請求権に対しては、委任者は、受任者に対する債権をもつて相殺することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和47年12月22日 昭和44(オ)135
登載
民集 第26巻10号1991頁
参照法条
民法505条1項,民法650条2項
論点47第650条民法

売主が売買契約の合意解除により買主に代金を返還した後右代金額につき財産税を徴収された場合における買主に対する右税額の償還請求権の有無

裁判要旨売主が売買契約の合意解除により代金を買主に返還した後、右代金額につき財産税を徴収された場合においても、売主は、民法第六六五条〈委任の規定の準用〉および第六五〇条〈受任者による費用等の償還請求等〉または第一九六条〈占有者による費用の償還請求〉の規定に基き、買主に対し右税額の償還を請求することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和28年1月8日 昭和24(オ)46
登載
民集 第7巻1号1頁
参照法条
財産税法(昭和21年法律52号)1条,財産税法(昭和21年法律52号)22条,民法196条,民法650条,民法665条
論点48第650条民法

割賦販売法三〇条の四第一項新設前の個品割賦購入あつせんにおける売買契約上の抗弁とあつせん業者に対する対抗の可否

裁判要旨割賦販売法三〇条の四第一項新設前の個品割賦購入あつせんにおいて、購入者とあつせん業者の加盟店である販売業者との売買契約が販売業者の商品引渡債務の不履行を原因として合意解除された場合であつても、購入者とあつせん業者間の立替払契約においてかかる場合には購入者が右業者の履行請求を拒みうる旨の特別の合意があるとき又はあつせん業者において販売業者の右不履行に至るべき事情を知り若しくは知り得べきでありながら立替払を実行したなど右不履行の結果をあつせん業者に帰せしめるのを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り、購入者は、右合意解除をもつてあつせん業者の履行請求を拒むことはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成2年2月20日 昭和59(オ)1088
登載
集民 第159号151頁
参照法条
民法1条2項,民法650条1項,割賦販売法2条3項2号,割賦販売法30条の4
論点49第650条民法

1 普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して行う契約の締結と民法108条の類推適用
2 普通地方公共団体の議会が長による民法108条に違反する契約締結行為を追認した場合における当該行為の法律効果の帰属
3 市の事業である博覧会の開催運営等を行った財団法人と市との間でされた博覧会の施設等の売買契約の締結につき市長等に裁量権の逸脱,濫用があるとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨1 普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して行う契約の締結には,民法108条〈自己契約及び双方代理等〉が類推適用される。
2 普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表するとともに相手方を代理し又は代表して契約を締結した場合において,議会が長による上記行為を追認したときは,民法116条〈無権代理行為の追認〉の類推適用により,当該普通地方公共団体に法律効果が帰属する。
3 市の事業である博覧会の準備及び開催運営を行うことを唯一の目的として設立された財団法人が上記事務を行ったが,博覧会の入場料収入等だけではその開催運営経費を賄いきれないことから,市がその収支の赤字を回避する目的で当該法人との間で博覧会の施設及び物品を買い受ける旨の契約を締結したことにつき,市が当該法人に博覧会の具体的な準備及び開催運営を行うことをゆだねたものとして両者間に実質的にみて準委任的な関係が存したものと解する余地があり,市に上記赤字を補てんする法的義務があると解する余地も否定することができないという事情の下においては,博覧会の準備及び開催運営に関する両者の関係の実質,当該法人が行った博覧会の準備及び開催運営の内容並びにこれに関して支出された費用の内訳を確定することなく,市長及びその代決者に裁量権の逸脱,濫用があるとした原審の判断には,違法がある。
(1につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年7月13日 平成12(行ヒ)96
登載
民集 第58巻5号1368頁
参照法条
地方自治法(平成11年法律第87号による改正前のもの)96条,地方自治法147条,地方自治法149条,地方自治法(平成14年法律第152号による改正前のもの)234条,民法108条,民法113条1項,民法116条,民法650条,民法656条
論点50第651条民法

一 委任契約たる税理士顧問契約と民法六五一条一項に基づく解除
二 委任契約が受任者の利益のためにも締結されたとはいえないとされた事例

裁判要旨一 委任契約たる税理士顧問契約は、受任者の利益をも目的として締結された場合でない限り、委任者が、民法六五一条一項〈委任の解除〉に基づき、いつでも、かつ、なんらその理由を告知せずに、解除することができる。
二 税理士顧問契約において、一般に契約の長期継続が受任事務の的確な処理に資する性質を有し、当事者も通常は相当期間継続することを予定して契約を締結するものであり、依頼者から継続的、定期的に支払われている顧問料が受任者たる税理士の事務所経営の安定の資となつている等の事由があつても、右契約が受任者の利益のためにも締結されたものということはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年9月20日 昭和56(オ)47
登載
集民 第139号549頁
参照法条
民法651条1項
論点51第651条民法

別荘地の管理契約の一方的解約が認められなかつた事例

裁判要旨別荘地の所有者が別荘地の分譲業者との間の土地管理契約に基づかなければ分譲業者の水道等の諸施設を利用することができず、分譲業者も右管理契約に基づく管理費によつて別荘地の維持、管理の経費をまかなつているなど原判示の事実関係のもとにおいては受任者である分譲業者から一方的に右管理契約を解約することができない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年2月5日 昭和55(オ)781
登載
集民 第132号85頁
参照法条
民法651条
論点52第651条民法

受任者の利益のためにも締結された委任契約において委任者が解除権自体を放棄したものとは解されない事情がある場合と民法六五一条

裁判要旨受任者の利益のためにも締結された委任契約であつても、その契約において委任者が委任契約の解除権自体を放棄したものとは解されない事情がある場合は、委任者は、やむをえない事由がなくても、民法六五一条〈委任の解除〉に則り右契約を解除することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和56年1月19日 昭和54(オ)353
登載
民集 第35巻1号1頁
参照法条
民法651条
論点53第651条民法

有限会社の取締役相互間における辞任の申合せと撤回

裁判要旨有限会社の取締役が、その相互間において新取締役選任の決議の手続に入るまでに辞任すべき旨を申し合わせても、後にその申合せを撤回して辞任の手続をとらないことは許される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年6月17日 昭和47(オ)355
登載
集民 第112号119頁
参照法条
有限会社法32条,商法254条3項,民法651条,民法540条2項
論点54第651条民法

一、不動産売買契約の媒介を委託する契約に報酬約定がある場合の民法第六五一条第一項の解除権
二、民法第六五一条第二項〈委任の解除〉の「不利ナル時期」の意義

裁判要旨一、不動産売買契約の媒介を委託する契約に、報酬を支払う約定があつても、受任者の利益を目的とする委任契約とはいえないから、依頼者は、民法第六五一条第一項〈委任の解除〉に基づき右契約を解除することができる。
二、民法第六五一条第二項の「不利ナル時期」とは、その委任の内容である事務処理自体に関して受任者が不利益を被るべき時期と解すべく、事務処理と異なる報酬を喪失するにすぎない場合を含まないものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年9月3日 昭和42(オ)1384
登載
集民 第92号169頁
参照法条
民法651条1項,民法651条2項
論点55第651条民法

委任契約に基づく委任事務の処理が受任者の利益でもある場合と右契約の解除事由

裁判要旨委任契約に基づく委任事務の処理が、委任者の利益であると同時に受任者の利益でもある場合においても、受任者が著しく不誠実な行動に出た等やむをえない事由があるときは、委任者は民法第六五一条に則り委任契約を解除することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年9月20日 昭和42(オ)219
登載
集民 第92号329頁
参照法条
民法651条
論点56第651条民法

一 中小企業等協同組合は総会または総代会の決議をもつて理事を解任できるか
二 中小企業等協同組合の理事の罷免と民法第六五一条の準用の有無

裁判要旨一 中小企業等協同組合が、中小企業等協同組合法第四一条所定の改選手続によることなく、総会または総代会の決議をもつて理事を解任することは、許されない。
二 中小企業等協同組合の理事の罷免については、民法第六五一条〈委任の解除〉は準用されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年1月28日 昭和38(オ)940
登載
民集 第20巻1号145頁
参照法条
中小企業等協同組合法35条,中小企業等協同組合法41条,中小企業等協同組合法42条,中小企業等協同組合法55条,商法254条,民法651条
論点57第651条民法

受任者が受任事務の処理について利益を有する委任契約とやむをえない事由による解除の成否

裁判要旨受任者が受任事務の処理について利益を有する委任契約であつても、やむをえない事由があるときは、委任者は契約を解除することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年12月17日 昭和39(オ)98
登載
集民 第81号561頁
参照法条
民法651条
論点58第651条民法

証券業者の外務員につき労働基準法第二〇条の適用がないとされた事例。

裁判要旨証券業者と外務員間の契約により、外務員は右業者の顧客から株式その他の有価証券の売買又はその委託の媒介、取次又はその代理の注文を受けた場合これを業者に通じて売買その他の有価証券取引を成立させるいわゆる外務行為に従事すべき義務を負担し、業者はこれに対する報酬として出来高に応じ賃金を支払うと共に外務員のした有価証券の売買委託を受理すべき義務を負担しておるときは、業者の右契約解除につき労働基準法第二〇条の適用はない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年5月25日 昭和33(オ)1023
登載
民集 第15巻5号1322頁
参照法条
労働基準法20条,証券取引法56条,民法627条,民法651条
論点59第652条民法

一 共謀による共同不法行為と民法四三四条の適用の有無
二 継続性のない事務処理を目的とする委任契約の債務不履行による解除と民法六五二条の適用

裁判要旨一 共同不法行為が行為者の共謀による場合であつても、民法四三四条〈連帯債権者の一人との間の相殺〉の規定は適用されない。
二 民法六五二条〈委任の解除の効力〉の規定は、継続性のない事務処理を目的とする委任契約を委任者の債務不履行を理由にして解除する場合にも適用される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年3月4日 昭和56(オ)173
登載
集民 第135号269頁
参照法条
民法434条,民法652条,民法719条
論点60第653条民法

民法上の組合の性質を有する頼母子講の業務執行者の破産と業務執行権の帰趨

裁判要旨民法上の組合の性質を有する頼母子講の業務執行者である講元が破産宣告を受けたときは、その業務執行権は消滅する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年7月1日 昭和49(オ)126
登載
集民 第118号225頁
参照法条
民法653条,信託法42条1項
論点61第653条民法

破産者は株式会社の取締役となることができるか

裁判要旨破産者は、復権しないかぎり、株式会社の取締役となることができない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和42年3月9日 昭和41(オ)251
登載
民集 第21巻2号274頁
参照法条
商法254条,民法653条,破産法7条
論点62第653条民法

委任者の死亡によって委任契約が終了しないと解された事例。

裁判要旨判示事実関係のもとにおいては、委任契約は委任者の死亡によって当然には終了しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年6月16日 昭和38(オ)1418
登載
集民 第74号95頁
参照法条
民法653条
論点63第653条民法

訴訟復代理権は訴訟代理人の死亡によつて消滅するか

裁判要旨訴訟代理人がその権限に基づいて復代理人を選任したときは、本代理人の死亡した場合でも、これによつて復代理人の訴訟代理権は当然には消滅しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年5月29日 昭和36(オ)341
登載
集民 第60号947頁
参照法条
民訴法85条,民法653条
論点64第653条民法

訴訟復代理権は訴訟代理人の死亡によつて消滅するか。

裁判要旨訴訟代理人は、その選任者である訴訟代理人の死亡によつて、当然に、その代理権を失なうものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年11月9日 昭和36(オ)374
登載
民集 第15巻10号2451頁
参照法条
民訴法85条,民法653条
論点65第653条民法

不動産または電話加入権の譲渡人の死亡後同人またはその代理人の名義でなされた登記登録と相続人の抹消請求の許否

裁判要旨不動産の所有権移転登記または電話加入名義の変更登録が事実上の権利関係に合致するときは、たとえ右登記登録が譲渡人の死亡後同人またはその代理人名義の申請によりなされたものであつても、譲渡人の相続人は、譲受人に対しその抹消を請求することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年12月17日 昭和27(オ)106
登載
民集 第8巻12号2182頁
参照法条
民法111条,民法653条,不動産登記法26条,旧電話規則(昭和12年逓信省令73号)7条
論点66第653条民法

株式会社の取締役等の解任又は選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けた場合における訴えの利益の消長

裁判要旨株式会社の取締役又は監査役の解任又は選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けても,上記訴訟についての訴えの利益は当然には消滅しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年4月17日 平成20(受)951
登載
集民 第230号395頁
参照法条
会社法830条,破産法30条,民法653条,民訴法第2編第1章訴え
論点67第653条民法

1 破産宣告を受けた有限会社の取締役と火災保険約款の免責条項所定の「取締役」
2 有限会社の取締役が会社の破産宣告後にした放火による建物の焼失が火災保険約款の免責条項所定の「取締役」の故意による事故招致に当たるとされた事例

裁判要旨1 有限会社の取締役は,会社が破産宣告を受けた後であっても,火災保険の保険契約者又は被保険者の取締役の故意等によって生じた損害に対しては保険金を支払わない旨の約款中の免責条項にいう「取締役」に当たる。
2 有限会社を保険契約者兼被保険者として締結された火災保険契約に適用される約款中に,保険契約者又は被保険者の取締役の故意等によって生じた損害に対しては保険金を支払わない旨の免責条項がある場合において,当該有限会社の取締役が会社の破産宣告後に保険の目的である建物に放火し,当該建物が焼失したという事実関係の下では,上記放火による建物の焼失は,上記免責条項にいう「取締役」の故意による事故招致に当たる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成16年6月10日 平成12(受)56
登載
民集 第58巻5号1178頁
参照法条
有限会社法32条,商法254条3項,商法641条,商法665条,民法91条,民法653条,破産法7条
論点68第653条民法

破産者が株式会社である場合において破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき破産者の破産宣告当時の代表取締役に対してした別除権放棄の意思表示の効力

裁判要旨破産者が株式会社である場合において,破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき,別除権者が破産者の破産宣告当時の代表取締役に対してした別除権放棄の意思表示は,これを有効とみるべき特段の事情の存しない限り,無効である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成16年10月1日 平成16(許)5
登載
集民 第215号199頁
参照法条
破産法96条,破産法197条12号,破産法277条,商法254条3項,商法417条,民法653条
論点69第653条民法

1 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合における破産手続の終了と刑訴法339条1項4号にいう「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」
2 破産手続開始当時の会社を代表する権限を有する取締役と当該会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続についての代表権の有無
3 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合における破産手続の終了と当該刑事事件に係る訴訟手続についての取締役の代表権の消長
4 汚水を下水道に放流する行為が下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)の罰則の対象となり得ることと廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)16条〈被補助人及び補助人〉違反の罪の成否

裁判要旨1 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合には、破産手続が終了したとしても、刑訴法339条1項4号にいう「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」に当たらない。
2 破産手続開始当時の会社を代表する権限を有する取締役は、破産手続開始によりその地位を当然には失わず、破産手続が終了するまでの間、当該会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続について当該会社を代表する。
3 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続について当該会社を代表する取締役は、会社法478条1項2号又は3号に掲げる者がある場合を除き、破産手続の終了後は、当該刑事事件に係る訴訟手続について清算人の立場で当該会社を代表する。
4 汚水を下水道に放流する行為は、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)によって基準に適合しない下水の排除として規制され、同法の罰則の対象となり得るとしても、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)16条〈被補助人及び補助人〉違反の罪が成立し得る。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和8年4月7日 令和6(あ)1479
登載
―
参照法条
(1、3につき)会社法475条1号、会社法476条、会社法481条1号 (1につき)刑訴法339条1項4号 (2、3につき)刑訴法27条1項 (2につき)会社法330条、会社法349条1項、民法653条2号、破産法78条1項 (3につき)会社法478条1項、会社法483条1項 (4につき)廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)1条、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)16条、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)25条1項14号、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)32条1項、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)1条、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)12条の2第1項、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)38条1項1号、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)45条、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)46条1項1号
論点70第654条民法

1 社会福祉法人において退任した理事が後任理事の選任をすることができる場合
2 社会福祉法人において退任した理事が定款で後任理事の選任に必要とされている同意をすることができるとされた事例

裁判要旨1 社会福祉法人が理事の退任によって定款に定めた理事の員数を欠くに至り,かつ,定款の定めによれば,在任する理事だけでは後任理事を選任するのに必要な員数に満たないため後任理事を選任することができない場合において,仮理事の選任を待つことができないような急迫の事情があり,かつ,退任した理事と当該法人との間の信頼関係が維持されていて,退任した理事に後任理事の選任をゆだねても選任の適正が損なわれるおそれがないときには,民法654条〈委任の終了後の処分〉の趣旨に照らし,退任した理事は,後任理事の選任をすることができる。
2 社会福祉法人が,理事定数を10名から6名に変更する旨の定款変更決議をし,所轄庁の認可を受けないうちに定款変更の効力が生じるとの誤解により,4名の理事について後任理事を選任しなかったので,その任期の満了による退任により,理事会の開催及び後任理事の選任に必要な理事の員数を欠くに至った場合において,(1)理事らが上記誤解に気が付いた時点では,当該年度の収支補正予算案や次年度の収支予算案等の重要議案を審議することが予定されていた理事会の開催を3日後に控えており,仮理事選任手続を了するまで理事会において当該法人の意思決定ができない状態が続くとすれば,当該法人に著しい不利益が生じるおそれが顕著であったこと,(2)任期満了により退任した4名の理事は,退任後も評議員として活動していたことなど判示の事実関係の下では,退任した理事は,上記理事会開催の時点において,定款で後任理事の選任に必要とされている同意をすることができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年7月10日 平成17(受)614
登載
集民 第220号689頁
参照法条
(1,2につき)社会福祉法36条1項,2項,社会福祉法45条,民法56条,民法654条
論点71第655条民法

請負人が材料全部を提供して建築した建物が完成と同時に注文者の所有に帰したものと認められた事例

裁判要旨請負人が、材料全部を提供して、注文者の所有する土地に建物を建築した場合において、請負契約が分譲を目的とする建物六棟につき一括してされたものであり、請負人は、その内三棟については注文者ないしこれから分譲を受けた入居者らに異議なくその引渡を了し、注文者から、請負代金の全額につきその支払のための手形を受領し、その際、六棟全部についての建築確認通知書を注文者に交付したなど、判示の事実関係があるときは、右確認通知書交付にあたり、六棟の建物につき完成と同時に注文者に所有権を帰属させる旨の合意がなされ、いまだ引渡しのされていない建物も完成と同時に注文者の所有に帰したものと認めることができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和46年3月5日 昭和45(オ)1117
登載
集民 第102号219頁
参照法条
民法176条,民法655条
原

条文原文

原文ママ

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民法 第643条(委任) 詳細ページ
(委任)
第六百四十三条委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
民法 第644条(受任者の注意義務) 詳細ページ
(受任者の注意義務)
第六百四十四条受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
民法 第644_2条(復受任者の選任等) 詳細ページ
(復受任者の選任等)
第六百四十四条の二受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
2代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う。
民法 第645条(受任者による報告) 詳細ページ
(受任者による報告)
第六百四十五条受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
民法 第646条(受任者による受取物の引渡し等) 詳細ページ
(受任者による受取物の引渡し等)
第六百四十六条受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
2受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。
民法 第647条(受任者の金銭の消費についての責任) 詳細ページ
(受任者の金銭の消費についての責任)
第六百四十七条受任者は、委任者に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
民法 第648条(受任者の報酬) 詳細ページ
(受任者の報酬)
第六百四十八条受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
2受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。
3受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
一委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
二委任が履行の中途で終了したとき。
民法 第648_2条(成果等に対する報酬) 詳細ページ
(成果等に対する報酬)
第六百四十八条の二委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。
2第六百三十四条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。
民法 第649条(受任者による費用の前払請求) 詳細ページ
(受任者による費用の前払請求)
第六百四十九条委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。
民法 第650条(受任者による費用等の償還請求等) 詳細ページ
(受任者による費用等の償還請求等)
第六百五十条受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
3受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。
民法 第651条(委任の解除) 詳細ページ
(委任の解除)
第六百五十一条委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
一相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
二委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。
民法 第652条(委任の解除の効力) 詳細ページ
(委任の解除の効力)
第六百五十二条第六百二十条の規定は、委任について準用する。
民法 第653条(委任の終了事由) 詳細ページ
(委任の終了事由)
第六百五十三条委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一委任者又は受任者の死亡
二委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三受任者が後見開始の審判を受けたこと。
民法 第654条(委任の終了後の処分) 詳細ページ
(委任の終了後の処分)
第六百五十四条委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。
民法 第655条(委任の終了の対抗要件) 詳細ページ
(委任の終了の対抗要件)
第六百五十五条委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない。
民法 第656条(準委任) 詳細ページ
(準委任)
第六百五十六条この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
出

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原文ママ

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