論点1第43条刑事訴訟法
一 国選弁護人の解任がやむをえないとされた事例
二 被告人の国選弁護人選任請求を却下した裁判所の措置の当否と憲法三七条三項〈左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。〉
三 国選弁護人の辞任の申出と解任の裁判の要否
四 国選弁護人の解任の裁判と事実の取調
裁判要旨一 被告人が国選弁護人を通じて正当な防禦活動を行う意思がないことを自らの行動によつて表明したものと評価すべき判示の事情のもとにおいては、裁判所が国選弁護人の辞意を容れてこれを解任してもやむをえない。
二 被告人が国選弁護人を通じて正当な防禦活動を行う意思がないことを自らの行動によつて表明したため、裁判所が国選弁護人の辞意を容れてやむなくこれを解任した場合、被告人が再度国選弁護人の選任を請求しても、被告人においてその後も判示のような状況を維持存続させたとみるべき本件においては、裁判所が右再選任請求を却下した措置は相当であり、このように解しても憲法三七条三項に違反しない。
三 国選弁護人は、辞任の申出をした場合であつても、裁判所が辞任の申出について正当な理由があると認めて解任しない限り、その地位を失うものではない。
四 国選弁護人から辞任の申出を受けた裁判所は、解任すべき事由の有無を判断するに必要な限度において、相当と認める方法により、事実の取調をすることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和54年7月24日 昭和51(あ)798
- 登載
- 刑集 第33巻5号416頁
- 参照法条
- 憲法37条3項,刑訴法36条,刑訴法43条3項,刑訴規則1条2項
論点2第43条刑事訴訟法
付審判請求事件の審理方式に対する不服申立の適否
裁判要旨付審判請求事件の審理方式は、裁判所が当該事件について審理に関する方針を宣明するものにすぎず、これによつて直ちに一定の訴訟法上の効果を生ずるものではないのが一般であり、審理方式中関係人に告知することにより一定の訴訟法上の効果を生じさせるものを除き、審理方式自体に不服申立をすることは許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和49年3月13日 昭和48(し)62
- 登載
- 集刑 第191号361頁
- 参照法条
- 刑訴法433条,刑訴法43条,刑訴法262条1項
論点3第43条刑事訴訟法
控訴棄却決定に対する異議申立につき決定をするにあたつての事実の取調と被告人の反対尋問権
裁判要旨裁判所が控訴棄却決定に対する異議申立の理由の有無を判断するため事実の取調をするにあたり、被告人側に立会及び尋問の機会を与えなかつたとしても、憲法三七条二項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二七年六月一八日大法廷判決・刑集六巻六号八〇〇頁)の趣旨とするところである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和49年10月4日 昭和49(し)67
- 登載
- 集刑 第194号7頁
- 参照法条
- 憲法37条2項,刑訴法43条3項,刑訴規則33条
論点4第43条刑事訴訟法
一審判決書作成日が弁論終結日前であることを看過した原審の違法と正義
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和46年10月25日 昭和46(あ)1225
- 登載
- 集刑 第181号849頁
- 参照法条
- 刑訴法43条,刑訴法392条2項
論点5第43条刑事訴訟法
一 保釈または保釈取消に関する裁判手続における疎明資料としての伝聞証拠とこれについての閲覧の機会
二 勾留に関する処分の決定手続のような受訴裁判所の公判手続以外の付随的な手続を利用し被告事件につき受訴裁判所に予断を抱かせる意図をもつてする不必要な書類等の提出の適否
裁判要旨一 刑訴法上、保釈または保釈取消に関する裁判手続においては、疎明資料である書類は伝聞証拠であつても差支えなく、また、疎明資料につき被告人または弁護人に閲覧の機会を与える必要はない。
二 当事者が、勾留に関する処分の決定手続のような受訴裁判所における公判手続以外の付随的な手続を利用し、ことさらに受訴裁判所に対し被告事件につき予断を抱かせるため、疎明資料の提出に名を藉りて不必要な書類等を提出するごときことは違法である。
(注)しかし、本件第二審における検察官の裁判所への書類の提出がかかる場合には該当しないとされたものである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和45年7月28日 昭和44(あ)870
- 登載
- 集刑 第177号431頁
- 参照法条
- 刑訴法43条3項,刑訴法88条1項,刑訴法96条1項,刑訴法299条1項,刑訴法320条,刑訴規則1条2項
論点6第43条刑事訴訟法
判決書の日付に弁論を終結した公判期日より前の年月日が記載されている場合と判決破棄の理由
裁判要旨判決宣告期日として指定された公判期日に、弁論を再開して証拠調をしたのち、弁論を終結し直ちに判決を宣告した場合において、判決書の日付に右公判期日より前の年月日が記載されているときは、右判決は前記弁論再開後の口頭弁論に基づかないでした違法なものと認められ、判決破棄の理由となる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和41年2月24日 昭和40(あ)1407
- 登載
- 刑集 第20巻2号49頁
- 参照法条
- 刑訴法43条1項,刑訴法411条1号,刑訴規則53条,刑訴規則54条,刑訴規則58条
論点7第43条刑事訴訟法
一 訴訟遅延のみを目的とする忌避申立却下決定に対する即時抗告と刑訴第四二五条〈即時抗告の提起期間内及びその申立があつたときは、裁判の執行は、停止される。〉の適用の有無及び憲法第三七条第一項
二 刑訴第二八五条第二項〈拘留に当たる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告…〉にあたる事件で被告人不出頭のまま公判の審理をした場合と被告人の不出頭許可決定
裁判要旨一 刑訴
第二四条〈訴訟を遅延させる目的のみでされたことの明らかな忌避の申立は、決定でこれを却下しなければならない。この場合には、前条第三項…〉により、訴訟を遅延させる目的のみでなされたことの明らかな忌避申立を却下した決定に対する即時抗告については、刑訴
第四二五条〈即時抗告の提起期間内及びその申立があつたときは、裁判の執行は、停止される。〉の規定は適用されないものと解しても、憲法第三七条第一項に違反しない。
二 刑訴
第二八五条第二項〈拘留に当たる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、裁判所は、被告…〉の適用を受ける事件において、被告人が召喚されていた公判期日に出頭しなかつた場合に、裁判所が被告人不出頭のまま審理をなし、公判調書にもその旨記載されているときは、裁判所は被告人に不出頭を許可し、その旨の決定があつたものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和31年3月30日 昭和29(あ)2760
- 登載
- 刑集 第10巻3号422頁
- 参照法条
- 憲法37条1項,刑訴法24条,刑訴法25条,刑訴法425条,刑訴法285条2項,刑訴法43条,刑訴規則33条,刑訴規則34条
論点8第43条刑事訴訟法
刑落第四三五条六号〈再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができ… 有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。〉にもとずく再審の請求と証人の取調
裁判要旨刑訴
四三五条六号〈再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができ… 有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。〉にもとずく再審の請求にあたり、あらたに発見した証拠として証人の取調を求めている場合でも、再審の請求が理由があるかどうかを判断するためには、必ずその証人の取調をしなければならないものではないことは、当裁判所の判例とするところである。(昭和二八年(し)第一二号同年一一月二四日第三小法廷決定、集七巻一一号二二八三頁昭和二九年(し)六〇号同年一一月二二日第二小法廷決定集八巻一一号一八五七頁参照)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和31年3月27日 昭和31(し)11
- 登載
- 集刑 第112号841頁
- 参照法条
- 刑訴法435条6号,刑訴法445条,刑訴法43条3項
論点9第43条刑事訴訟法
控訴審と公開裁判
裁判要旨原審は刑訴法に従つて公開の公判廷において弁護人の控訴趣意の陳述、弁論を聞いた上判決しているのであつて、公開の公判を開かないわけではなく、また原判決は執行猶予の期間を変更したのみで、犯罪事実の認定、刑の量定そのものは第一審判決と同様に判示しているのであるから、原審が刑訴法第四〇〇条但書によつて破棄自判したことが憲法第三七条に違反するとの所論は本件に副わないものとして採用することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年7月5日 昭和29(あ)3043
- 登載
- 集刑 第107号147頁
- 参照法条
- 憲法37条,刑訴法43条,刑訴法389条,刑訴法400条但書
論点10第43条刑事訴訟法
刑訴第四三五条第六号〈再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができ… 有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。〉に基く再審の請求と証人の取調。
裁判要旨刑訴
第四三五条第六号〈再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができ… 有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。〉に基く再審の請求にあたり、あらたに発見した証拠として証人の取調を求めている場合でも、再審の請求が理由があるかどうかを判断するためには、必ずその証人の取調をしなければならないのではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和29年11月22日 昭和29(し)60
- 登載
- 刑集 第8巻11号1857頁
- 参照法条
- 刑訴法435条6号,刑訴法445条,刑訴法43条3項,刑訴規則283条,刑訴規則33条3項
論点11第43条刑事訴訟法
公判の審理に関与しなかつた裁判官が判決に関与した違法と刑訴第四一一条〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する…〉の適用
裁判要旨公判の審理に関与しなかつた裁判官が原判決に関与した場合は、判決に影響を及ぼすべき法令違反であつて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する場合にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年4月17日 昭和26(あ)2521
- 登載
- 刑集 第7巻4号873頁
- 参照法条
- 刑訴法411条1号,刑訴法43条1項,刑訴規則54条
論点12第43条刑事訴訟法
刑訴第四三五条第六号〈再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができ… 有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。〉にもとずく再審の請求と証人の取調
裁判要旨刑訴
第四三五条第六号〈再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができ… 有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。〉に基く再審の請求にあたり、あらたに発見した証拠として証人の取調を求めている場合でも、その再審の請求が理由があるかどうかを判断するために、その証人の取調をするか、又はこれをしないで、趣意書に添えた証拠書類等及び確定事件記録につき必要と認める調査をするにとどめ、あるいはさらにその証人の取調以外の方法による事実の取調をするかは、再審の請求を受けた裁判所の合理的な裁量にゆだねられているものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年11月24日 昭和28(し)12
- 登載
- 刑集 第7巻11号2283頁
- 参照法条
- 刑訴法435条6号,刑訴法445条,刑訴法43条3項,刑訴規則283条,刑訴規則33条3項
論点13第43条刑事訴訟法
一 併合審理の決定があつたと解される一事例
二 最初の事件につき付した国選弁護人の弁護権の範囲と追起訴事件
裁判要旨一 さきに起訴された事件と併合審理しても被告人の権利保護を害するおそれのない事件が追起訴され、公判延において右両事件につき事実上併合して審理が行われ、被告人弁護人ともに異議なく手続が進行された場合は、併合審理の決定はあつたものと解すべきである。
二 最初起訴された必要的弁護事件につき被告人のため付した国選弁護人の弁護権は、裁判所の別段の意思表示もなく、被告人および右弁護人になんら異議がない以上、その被告人に対し追起訴されて先の事件と併合審理された他の必要的弁護事件にも及ぶものと解するのを相当とする。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和27年11月14日 昭和25(あ)1976
- 登載
- 刑集 第6巻10号1199頁
- 参照法条
- 刑訴法313条,刑訴法43条,刑訴法289条,刑訴規則178条,刑訴規則210条
論点14第43条刑事訴訟法
一 公判手續の瑕疵と手續の更新
(辯論更新前における刑訴第四三條第二項の違反)
二 辯護人不出頭のまま行われた公判手續を更新した場合と辯護權の不法制限
三 強盗共犯者の犯意の認定と他の共犯者の行爲に對する共同責任
四 勾留六ケ月後にした自白と不當に長い拘禁後の自白
五 十一歳の小學兒童の證人資格
六 刑訴第二〇一條第一項の取調をした旨の記載を缺く證人訊問調書の證據能力
七 刑訴第一九九條の法意と僞證の罰を告げないでした證人訊問の効力
八 共同被告人に對し訴訟費用の分擔を命ずる場合と裁判所の自由裁量
九 刑訴法第二四二條の法意
裁判要旨一 原審は右第一回公判期日において審理を終結したのではなく、その後公判手續は第二回及び第三回各公判期日においてその都度適法に更新され、第二回公判期日には被告人Aの私選辯護人伊藤博夫が、又第三回公判期日には同様同被告人の私選辯護人桑名邦雄がそれぞれ出頭して審理に立曾つていることが記録上明かであるから、右第一回公判期日における前記瑕疵(利害相反する相被告人の辯護人をして被告人を辯護せしめたこと)は右審理更新の結果原判決に影響を及ぼさないものというべきである。
二 原審が右のように第一回公判期日において被告人Aの辯護人伊藤博夫から提出した所論期日變更申請を却下し、同辯護人不出頭のまま同期日の審理を行つたことは所論のとおりであるが、その後第二回公判期日は同辯護人にも適法に通知され同期日には同辯護人出頭の上、公判手續が更新されたこと前示のとおりであるから、結局原審手續は不當に辯護權を制限した違法のものということはできない。
三 原審判決が、被告人Aは相被告人Bにおいて判示被害者宅内で判示暴行脅迫を行つた現場には居合わせず屋外にいたと認定したからといつて直ちに被告人Aは、右暴行脅迫の事實について認識していなかつたとはいえないのみならず、同被告人が暴行脅迫行爲を現認しないからとて、共犯者中の他の者が暴行脅迫を加えて財物を奪取している以上強盗の共犯としての責任を免れ得るものでもない。
四 被告人が勾留されたのは所論のとおり昭和二一年一二月一九日であり、又同被告人の原審における自白は昭和二二年六月五日の第一回公判以後同年八月三〇日の第三回公判を通じてなされているのであつて、右勾留後第一回公判期日迄に約六ケ月、第三回公判期日迄には二五〇日餘を經過していることが明かではあるが、本件事案の内容、取調の経過、相被告人の供述内容等諸般の事情に鑑み、右程度の勾留は未だ不當に長い拘禁とはいえない。
五 原審證人Cが原審における取調べを受けた當時一一年(昭和一二年三月生)の小學兒童であつたことは同證人訊問調書の記載から明かであるが、この程度の年齢の者は絶對に證人たる資格がないとはいえないのであつて、同調書記載の同證人の供述内容から見ても同人は本件強盗の被害當時の状況について、詳細に記憶しているその實驗事實を順序良く訊問に答えて陳述報告しているのであつて、事理を辯識する能力を備えていた者と認めるべく、かかる年齢の證人の供述を證據として採用するか否かは事實審たる原番の自由になし得るところであるから、原審が同證人の右證言を判斷の資料に供したとて無効の證據を罪證に供した違法があるということはできない。
六 證人訊問調書に、その證人が刑訴第二〇一條第一項各號に該當するかしないかの取調をした旨の記載がなくても、右證人の供述内容その他によつて、右各號に該當せず宣誓を要する證人であることが明白であり、且つ、宣誓をなさしめて訊問をしている場合には、右訊問調書はこれを證據として差支えない。
七 元来刑事訴訟法第一九九條は、證人にその供述をなす前あらかじめその注意を促し、良心に從つてありのまゝにその實験した事實を供述させるとともに、僞證罪に問われることのないようにさせるため設けられた訓示的規定であるから、證人に宣誓をなさした上供述させている以上、たとえ宣誓前に僞證の罰を論示しなかつたからといつて、宣誓の効力には何ら影響がなく、その證人の證言を無効と考える必要は少しもない。
八 共同被告人中のある者が公訴事實を認め、他の者がこれを否認している場合に、裁判所がその公訴事實の審理のため證人を喚問するのは、結局眞實を發見するためであるから、かような證人に支給した旅費日當などの訴訟費用を、その共同被告人をして連帶して負擔させるか又はその中のある者のみに負擔させるかは、裁判所が自由に定めることのできる問題であつて、從つて、審理の結果右の公訴事實が證明され判決において認定された場合には右の費用は、公訴事實を否認していた被告人のみに負擔させるべきであつて當初からこれを認めていた被告人には負擔させてはいけないという理由はない。
九 刑事訴訟法第二四二條によれば、訴訟費用の負擔を命じる裁判に對しては本案の裁判について上訴する場合に限り不服を申立て得るものであつて、本案の裁判と獨立して上告の申立をすることはできないものである。從つて、本案の裁判に對する上告が理由があるときは、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服もこれを維持することができるけれども、本案の裁判に對する上告が理由がないときは、これの離れて、訴訟費用の負擔を命じた裁判に對する不服のみを維持することはできないものと解するのが相當である。しかるに本件において本案の裁判に對する上告が少しも理由がないものであることは、上に説明したとおりであるから、結局論旨は上告適法の理由とならないものといわなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和23年4月17日 昭和22(れ)209
- 登載
- 刑集 第2巻4号364頁
- 参照法条
- 刑訴法43条2項,刑訴法411条,刑訴法334条,刑訴法410条10号,刑訴法184条,刑訴法201条,刑訴法199条,刑訴法238条,刑訴法242条,刑法60条,刑法236条,憲法38条2項,刑訴応急措置法10条2項
論点15第43条刑事訴訟法
1 最高裁判所から高等裁判所判事の職務を代行させる旨の人事措置が発令されていない判事補が構成に加わった高等裁判所により宣告された原判決が,刑訴法411条1号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄された事例
2 上告裁判所が原判決を破棄するに当たり,口頭弁論を経ることを要しないとされた事例
裁判要旨1 判事補の職権の特例等に関する法律1条の2第1項に基づいて最高裁判所から高等裁判所判事の職務を代行させる旨の人事措置が発令されていない判事補が構成に加わった高等裁判所により宣告された原判決は,その宣告手続に法律に従って判決裁判所を構成しなかった違法があり,刑訴法
411条1号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄するのが相当である。
2 上告裁判所が原判決を破棄するに当たり,原判決の宣告手続に法律に従って判決裁判所を構成しなかった違法があるという破棄事由の性質,被告事件の内容,審理経過等本件事情の下では,必ずしも口頭弁論を経ることを要しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成19年7月10日 平成19(あ)567
- 登載
- 刑集 第61巻5号436頁
- 参照法条
- (1,2につき)刑訴法377条1号,刑訴法411条1号,刑訴法413条 (1につき)裁判所法18条,裁判所法19条,判事補の職権の特例等に関する法律1条の2第1項 (2につき)刑訴法43条1項,刑訴法408条
論点16第43条刑事訴訟法
上告裁判所が原判決を破棄するに当たり,口頭弁論を経ることを要しないとされた事例
裁判要旨上告裁判所が原判決を破棄するに当たり,原審の公判審理に関与していない裁判官が原判決に関与した違法があるという破棄事由の性質,被告事件の内容,審理経過等本件事情の下では,必ずしも口頭弁論を経ることを要しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 令和2年1月31日 令和1(あ)1987
- 登載
- 刑集 第74巻1号257頁
- 参照法条
- 刑訴法411条1号,刑訴法43条1項,刑訴法408条,刑訴規則54条,刑訴規則55条
論点17第44条刑事訴訟法
判決宣告当時理由についても書面の作成されていることが必要か
裁判要旨判決宣告当時、少なくとも主文だけは書面に作成されていなければならないが、理由については必ずしも書面に作成されていなければならないものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和45年4月20日 昭和44(あ)2672
- 登載
- 集刑 第176号211頁
- 参照法条
- 刑訴法44条1項,刑訴規則35条2項
論点18第44条刑事訴訟法
累犯となる前科の認定とその証拠摘示の要否。
裁判要旨累犯となる前科の事実は、審理において適法な証拠調をした証拠によりこれを認定することができる限り、判決においては、その事実を判示すれば足り、必らずしもこれを認定する証拠の標目を挙示するを要しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年5月23日 昭和38(あ)2389
- 登載
- 刑集 第18巻4号166頁
- 参照法条
- 刑訴法44条1項,刑訴法305条,刑訴法335条1項
論点19第44条刑事訴訟法
被害者の傷害と死亡との間の因果関係の存否に関する判断に理由不備があつて、刑訴法第四一一条一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉にあたるとされた事例。
裁判要旨被告人から濃硫酸約五合を浴びせかけられ、頭部、顔面、頸部、前胸部、両上下肢等殆んど身体の全部位に治療数ケ月を要する硫酸腐蝕傷を受けた被害者が、入院加療の途上、該硫酸腐蝕傷は八割以上治癒したが結核性胸膜炎を誘発し、これに基づく循環機能不全により死亡するに至つた事案において、原審が、専門医に対し右被害者の受傷の部位、程度、治療の経過、治療中の健康状態等について具体的に何ら示すところがなく、単に「硫酸腐蝕傷を受けた患者がその症痕形成において約八割以上治癒した場合右受傷に基因して結核性胸膜炎による循環機能不全を発病する場合ありや」との鑑定を求め、その鑑定結果は「硫酸腐蝕傷を受けた者が結核性胸膜炎にかかり循環機能不全をおこすことは極めて稀れである」との一般的判断のみを示したに止まるにも拘わらず、他に特段の事由を説示することなく、右鑑定結果だけで、被害者の傷害と死亡との間に因果関係がないと判断したのは、証拠理由不備の違法があり、刑訴
第四一一条第一号〈上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反する… 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。〉により破棄を免かれない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年8月21日 昭和33(あ)1588
- 登載
- 刑集 第16巻8号1303頁
- 参照法条
- 刑法205条1項,刑訴法44条1項,刑訴法335条1項,刑訴法411条1号
論点20第44条刑事訴訟法
一 証拠を排斥する理由を説明することの要否
二 刑訴法第二二七条〈第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日において…〉、第二二八条〈前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。〉により被告人、被疑者または弁護人に審問の機会を与えずに作成された証人尋問調書を証拠とすることは、憲法第三七条第二項に違反するか。
三 旧銃砲刀剣類等所持取締令にいう「刃渡」の意義。
裁判要旨一 判決において個々の証拠につき、その採るをえない理由を逐一説明する必要はない。
二 刑訴法
第二二七条〈第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日において…〉第二二八条〈前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。〉により被告人、被疑者または弁護人に審問の機会を与えずに作成された証人尋問調書を、その証人が公判廷において尋問され、被告人側の反対尋問にさらされ、その証人尋問調書につき尋問を受けている場合に、証拠とすることは憲法第三七条第二項に違反しない。
三 旧銃砲刀剣類等所持取締令にいう「刃渡」とは鋩子と棟区とを直線で測つた長さをいうのであつて、刃渡が一五糎以上あつたものがたまたま・によつて刃の一部が覆われていても、そのために「刃渡」の長さが変るものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和35年12月16日 昭和33(あ)1439
- 登載
- 刑集 第14巻14号1947頁
- 参照法条
- 刑訴法44条,刑訴法318条,刑訴法227条,刑訴法228条,憲法37条2項,旧銃砲刀剣類等所持取締令(昭和30年7月4日法律51号による改正前のもの)1条
論点21第44条刑事訴訟法
判決に理由を附しなかつたことにならない事例
裁判要旨原判決が量刑不当の控訴趣意は後記自判の際示されるとしたのは、「懲役六月に処し」といつて一審判決と同じ判決をしたことによつて右控訴趣意の理由のないことが示されるとの趣旨であつて、何ら理由を附しなかつたことにならない
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和33年6月24日 昭和31(あ)1703
- 登載
- 集刑 第126号531頁
- 参照法条
- 刑訴法44条
論点22第44条刑事訴訟法
刑訴法第四四条第一項〈裁判には、理由を附しなければならない。〉にいう「裁判の理由」の意義
裁判要旨刑訴
四四条一項〈裁判には、理由を附しなければならない。〉にいう「裁判の理由」とは、主文のよつて生ずる理由を指すのであつて証拠上の理由のごときはこれに含まれないと解すべきであるから、有罪判決においては、所論のように、何故にある証拠を採用し他の証拠を排斥したかの理由、あるいは採用した証拠により如何なる理由を犯罪事実を認定したかの判別について必ずしも一々これを判示することを要するものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年3月14日 昭和32(あ)2429
- 登載
- 集刑 第123号679頁
- 参照法条
- 刑訴法44条1項
論点23第44条刑事訴訟法
控訴審における職権破棄と量刑判断。
裁判要旨控訴審において、職権をもつて、法令違反を理由として第一審判決を破棄し改めて有罪判決をした以上、量刑不当の控訴趣意に対し特に判断を与うるの必要はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年11月17日 昭和33(あ)1446
- 登載
- 刑集 第12巻15号3513頁
- 参照法条
- 刑訴法392条,刑訴法44条1項,刑訴法381条,刑訴法400条但書
論点24第44条刑事訴訟法
いわゆる想像的競合犯中の一部を無罪と認める場合その判断を判決理由に示すことの要否
裁判要旨いわゆる想像的競合犯中の一部を無罪と認める場合には、判決の主文においてその言渡をなすべきではないけれども、理由中でその判断を示すことは必要である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年9月24日 昭和32(あ)1083
- 登載
- 集刑 第120号507頁
- 参照法条
- 刑法54条,刑訴法44条,刑訴法335条,刑訴法336条
論点25第44条刑事訴訟法
刑訴法第四四条第一項〈裁判には、理由を附しなければならない。〉にいう「裁判の理由」の意義
裁判要旨刑訴
四四条一項〈裁判には、理由を附しなければならない。〉にいう「裁判の理由」とは、主文のよつて生ずる理由を指すのであつて、証拠上の理由のごときはこれに含まれないと解すべきであるから、有罪判決において、所論のように、何故にある証拠を採用し他の証拠を排斥したかの理由、あるいは採用した証拠の証明力の判断について必しも一々これを判示することを要するものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和32年6月18日 昭和30(あ)2181
- 登載
- 集刑 第119号505頁
- 参照法条
- 刑訴法44条1項,刑訴法335条
論点26第44条刑事訴訟法
一 公文書偽造罪の判示として正当と認められる一事例
二 偽造外食券の形式外観
三 心神耗弱の主張に対する判断の遺脱は絶対的控訴理由となるか
四 右判断遺脱は訴訟手続の法令違反として常に判決に影響するか
裁判要旨一 原判決が「第一院判決挙示の証拠によると、同判示の偽造公文書は、いずれも、当該公文書の信用を害する危険がある程度の形式外観を具えていることが認められる」旨の判示並びに『第一審判決の判示各偽造外食券に「当該地方食糧配給公団名及び交付配給所名のなつ印」の要求されるのは、整理上交付配給所を明らかにするためで、これを欠くからといつて外食券でないという趣旨ではないと解すべき』旨の判示は、いずれも正当であると認められる。
二 原判決が、所論のごとく第一審判決が心神耗弱の主張に対し、判断をしなかつた違法を認めながら、所論のごとき理由をもつて判決に影響を及ぼさないとして弁護人の主張を排斥したこと、並びに、所論各高裁の判決がかかる違法は判決に影響を及ぼすこと明らかである旨判示したことは、所論のとおりである。従つて、原判決は、右各高等裁判所の判例に違反したものといわなければならない。しかし当裁判所第三小法廷は、原判決後昭和二八年五月一二日原判決と同趣旨に出た昭和二六年九月一三日の東京高等裁判所の判決を是認して、判断遺脱があつても常に必ずしも判決に影響を及ぼさない旨判示しているのである(判例集七巻五号一〇一一頁以下参照)。そして、当法廷においても右の判断を正当と考える。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年12月27日 昭和28(あ)2055
- 登載
- 集刑 第116号555頁
- 参照法条
- 刑法155条,刑法39条2項,刑訴法44条,刑訴法335条1項,刑訴法335条2項,刑訴法378条4号,刑訴法379条
論点27第44条刑事訴訟法
一 期待可能性の不存在を理由として刑事責任を否定する場合、法文上の根拠を示すことを要するか
二 いわゆるピケツテイングが威力業務妨害罪にあたらない一事例
裁判要旨一 論旨は、原判決は被告人の所為について期待可能性がないとしてその刑事責任を否定したのであるが、その根拠としてはただ漫然条理上責任を阻却するというに止まり、何故期待可能性なき場合には刑事責任が排斥されるかを成文との繋りにおいて明示してその法的根拠を充分に説示していないから、結局裁判に理由を附せず又は判決に示すべき判断を遺脱した違法があると主張する。しかし期待可能性の不存在を理由として刑事責任を否定する理論は、刑法上の明文に基くものではなく、いわゆる超法規的責任阻却事由と解すべきものである。従つて、原判決がその法文上の根拠を示すことなく、その根拠を条理に求めたことは、その理論の当否は別としても、なんら所論のような違法があるものとはいえない。
二 炭坑労働組合が同盟罷業中一部組合員が罷業から脱退して会社の出炭運搬業務に従事し石炭を積載した炭車を連結したガソリン車の運転を開始した際、組合婦人部長たる被告人が、右一部組合員の就業は経営者側との不純な動機に出たもので罷業を妨害する裏切行為であり、これにより罷業が目的を達成し得なくなると考え、既に多数婦人組合員等がガソリン車の前方線路上に立ち塞がり、座り込みまたは横臥してその進行を阻止していたところに参加して「ここを通るなら自分たちを轢き殺して通れ」と怒号して就業組合員等のガソリン車の運転を妨害した行為は、未だ違法に刑法第二三四条にいう「威力を用い人の業務を妨害したる者」というに足りない。
(裁判官垂水克己の補足意見)本件所為は、いまだ違法に刑法第二三四条にいう威力を用いて人の業務を妨害したものということができないと考えられる。その主な理由は、右所為は同盟罷業中の組合員が同じ事業場の仲間組合員に対してしたものであり、かつ、被告人の軌道上に赴いてからの右所為は極めて短時分の間に行われたという原判決の認定と解することができ、結局軽微のものとみられるからである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和31年12月11日 昭和24(れ)2273
- 登載
- 刑集 第10巻12号1605頁
- 参照法条
- 刑訴法44条,刑法234条,刑法35条,労働組合法1条,裁判所法11条
論点28第44条刑事訴訟法
第一審が公訴事実よりも供与額を少なく認定した場合、その差額につき特に判決の理由において説明することを要するか
裁判要旨第一審が、被告人Aが昭和二七年九月二五日頃その自宅でBに一二、〇〇〇円を供与したとの公訴事実(第三の9)について、判示第三の8の如くBに対する五、〇〇〇円だけの供与の事実を認定したのは正当である。而してこのような場合に、公訴事実の一二、〇〇〇円と右認定の五、〇〇〇円との差額七、〇〇〇円を認めなかつた理由を特に説明する必要のないことは原判決の説示するとおりであつて、何等所論理由不備の違法はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和30年5月20日 昭和29(あ)3891
- 登載
- 集刑 第105号753頁
- 参照法条
- 刑訴法335条1項,刑訴法44条1項,刑訴法378条4号
論点29第44条刑事訴訟法
法令の適用にあたり誤つて余事を記載しても判決に影響しない一事例
裁判要旨第一審判決によれば、被告人A及び同Bの犯罪事実(註、贈賄の事実を指す)は、理由中第二の事実として摘示されているところであつて、それは旧自転車競技法一七条一項に該当するものである。従つて同判決法律適用の部分は、A及びBの所為を同条項に該当するものとして、それぞれ懲役六月及び懲役四月に処する旨判示した後段のみで事足り、前段中にA及びBの所為を同法一六条刑法六〇条(註、収賄の法条を指す)に該当するものとしてそれぞれ懲役六月及び懲役四月に処すると判示した部分は誤つて余計なことを記したものと認められる。しかしこの誤りのために第一審判決も第二審判決も主文に影響を受けてはいない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年8月31日 昭和28(あ)375
- 登載
- 集刑 第98号421頁
- 参照法条
- 自車競技法(改正前のもの)16条,自車競技法(改正前のもの)17条,刑訴法44条,刑訴法335条,刑訴法411条
論点30第44条刑事訴訟法
一 公判調書における文字の挿入削除が刑訴規則第五九条〈勾引した被告人は、裁判所に引致した時から二十四時間以内にこれを釈放しなければならない。但し、その時間内に勾留状が発せられ…〉所定の方式を欠く場合の効力
二 予備的訴因の追加により公訴事実の同一性が害されない事例
三 予備的訴因につき有罪を認定した場合に主たる訴因に対する判断を明示することの要否
裁判要旨一 公判調書における文字の挿入削除が刑訴規則
第五九条〈勾引した被告人は、裁判所に引致した時から二十四時間以内にこれを釈放しなければならない。但し、その時間内に勾留状が発せられ…〉所定の方式を欠いていても、ただちにその挿入削除を無効とすべきではなく、その効力の有無は、裁判所が諸般の状況に照して合理的な裁量により決すべきものである。
二 「被告人はA税務事務所に勤務中、B日頃、かねて同税務事務所滞納整理係Cから徴収方依頼を受けていた納税者D会社より、固定資産税一六四、七三〇円を同会社振出の同額の小切手で徴収し保管中、その頃擅に着服横領した。」との横領の訴因に対し、「被告人はA税務事務所に勤務中、B日頃、D会社において、その制限なきにかかわらず権限あるをよそおい、Eに対し同会社の固定資産税一六四、七三〇円の請求をし、同人をしてその旨誤信せしめ、よつて同人から同会社振出の同額の小切手の交付を受けて、これを騙取した。」との詐欺の予備的訴因を追加することにより、公訴事実の同一性は害されない。
三 主たる訴因と予備的訴因のある場合に、予備的訴因につき有罪を認定したときは、主文において主たる訴因につき無罪を言い渡すべきでないことは勿論、理由中においても、かならずしもこれに対する判断を明示することを要するものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和29年3月23日 昭和27(あ)5538
- 登載
- 刑集 第8巻3号305頁
- 参照法条
- 刑訴規則59条,刑訴法256条3項,刑訴法256条5項,刑訴法312条1項,刑訴法44条1項,刑訴法336条,刑訴法378条3号,刑法252条1項,形法246条1項
論点31第44条刑事訴訟法
一 検察官の冒頭陳述および判決理由中の説示と裁判官の予断偏見
二 信書が刑訴第三二三条第三号〈第三百二十一条から前条までに掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。 前二号に掲げるもののほか特に信用すべき情況の下に作成された書面〉によつて証拠能力を認められる事例
裁判要旨一 或る犯行が、甲の単独犯として起訴せられ申に対し有罪の確定判決があつた後、甲の右犯行は乙の教唆に基ずくものであり、且つ丙および丁は甲の犯行を幇助したものであるとして、さらに乙、丙および丁が起訴せられた場合、検察官が冒頭陳述に際し、さきに甲を起訴した時の検察当局の意見を或る程度説明し、また判決がその理由中に、審判に当り考慮すべき点を列挙して、事件の発端から起訴を見るに至るまでの経過および事件の特殊性を説示しているからといつて、裁判所が予断と偏見に基ずいて審判したものということはできない。
二 右甲が服役中妻との間でやりとりした一連の手紙は公判における右両名の証言および同手紙の外観、内容等により特に信用すべき状況のもとに作成されたものと認められるかぎり刑訴
第三二三条第三号〈第三百二十一条から前条までに掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。 前二号に掲げるもののほか特に信用すべき情況の下に作成された書面〉によつて、乙、丙および丁に対する被告事件の証拠とすることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和29年12月2日 昭和27(あ)4481
- 登載
- 刑集 第8巻12号1923頁
- 参照法条
- 憲法37条1項,刑訴法296条,刑訴法44条1項,刑訴法335条1項,刑訴法323条3号
論点32第44条刑事訴訟法
一 たばこ専売法第七五条第二項〈勾引状の執行を受けた被告人を引致した場合において必要があるときは、これを刑事施設に留置することができる。〉の適用と「没収することのできないとき」の判断
二 追徴と没収することができなかつた具体的理由および追徴金額算出の基礎の各証拠説示の要否
三 刑法第一九条第一項第一九条ノ二とたばこ専売法第七五条との関係
裁判要旨一 製造たばこの価額を追徴するにあたり、たばこ専売法第七五条第二項を適用している以上、その製造たばこが同項にいう「没収することのできないとき」であると判断した趣旨に解すべきである。
二 判決で追徴を言い渡す場合、必ずしも特に、没収することができなかつた具体的理由および追徴金額算出の基礎を、証拠を掲げて説明するを要しない。
三 刑法第一九条第一項、第一九条ノ二の規定とたばこ専売法第七五条の規定とは、一般法と特別法の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年8月25日 昭和27(あ)1525
- 登載
- 刑集 第7巻8号1762頁
- 参照法条
- 刑訴法44条1項,刑訴法335条1項,刑法8条,刑法19条1項,刑法19条ノ2,たばこ専売法75条1項,たばこ専売法75条2項
論点33第44条刑事訴訟法
一 事実認定を異にする判例を援用してした判例違反の主張の適否
二 判決書に裁判所の「部名」を表示することの要否
裁判要旨一 第一審判決は、被害者Aが、被告人は検事であるから代金は支払つてくれるものと誤信した結果、金約五百円に相当する酒食を被告人に提供した事実を認定し、原判決もこの事実認定を肯定しているのである。しかるに所論援用の当裁判所判例では、被害者は畏怖の結果として財物の交付をするに至つた場合なのであるから、本件とは事例を異にし、従つて、原判決は何等右判例と相反する判断を示しているものではない。
二 判決書には裁判所名を示すを以て足り部名を表示することは、刑訴法上要請されていない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和26年8月9日 昭和25(あ)2884
- 登載
- 集刑 第51号793頁
- 参照法条
- 刑訴法405条2号,刑訴法405条3号,刑訴法44条,刑法246条,刑法249条,刑訴規則55条,刑訴規則58条
論点34第46条刑事訴訟法
決定裁判所を構成する裁判官の表示を欠く決定謄本の送達による決定告知の効力
裁判要旨決定裁判所を構成する裁判官の表示を欠く決定謄本は、刑訴規則五七条一項に違反するが、右のような謄本であつても、裁判を受ける者の氏名、決定の主文、その理由及び決定裁判所が東京高裁第六刑事部であることが明示されており、決定の名宛人において、右決定が自己がさきに抗告をした東京高等裁判所の第六刑事部においてなされたものであることを知り、さらに右決定の内容を了知し、これに対して不服申立をするかどうかの判断をするに足りる事項は含んでいるから、これを送達してした決定の告知は無効とはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和54年11月5日 昭和54(し)110
- 登載
- 集刑 第216号249頁
- 参照法条
- 刑訴法46条,刑訴規則34条,刑訴規則57条1項