会社法 / テーマ別まとめ

計算書類の作成と承認

決算で何を作り、誰が監査し、いつ承認して、どう公告するか。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

この一連の条文は、事業年度ごとの決算書類(計算書類)をどう作り、誰が監査し、どの機関が承認し、どう開示するかを定めている。会社の機関設計(監査役設置会社か、会計監査人設置会社か等)によって監査主体や承認手続が変わる点が実務上のポイントになる。あわせて、事業年度の途中で作る臨時計算書類についても同様の仕組みが用意されている。

計算書類の承認手続:原則と特則
項目原則特則(会計監査人設置会社)
対象会社すべての株式会社会計監査人設置会社のみ
要件取締役会の承認を受けた計算書類を総会に提出適正表示の法務省令要件に該当
効果定時株主総会の承認が必要総会の承認は不要
報告義務事業報告の内容を総会へ報告計算書類の内容も総会へ報告
  • 特則(439条)の対象は会計監査人設置会社に限られる
  • 特則の適用要件(適正表示の基準)は法務省令で定められる
  • 取締役会非設置会社は取締役会承認の段階がなく、監査済みの計算書類等をそのまま総会へ提出・提供する
  • 特則が適用されても事業報告は引き続き定時株主総会への報告が必要
  • 臨時計算書類にも同様の仕組みがあり、要件該当時は株主総会承認が不要になる
  • 計算書類の監査主体は監査役設置会社と会計監査人設置会社とで異なる
1

何を作るか

計算書類と事業報告、附属明細書

第435条計算書類等の作成及び保存決算で作る書類と保存期間を定める4項判例なし
  • 会社成立の日の貸借対照表を作成する
  • 毎事業年度、計算書類・事業報告・附属明細書を作成する
  • 電磁的記録での作成も可、作成時から10年間保存する
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第436条計算書類等の監査等監査役・会計監査人による監査を経る3項・2号判例 1件
  • 監査役設置会社は監査役の監査を受ける
  • 会計監査人設置会社は監査役等と会計監査人の監査を受ける
  • 取締役会設置会社は監査後の書類につき取締役会の承認を受ける
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2

株主に届けて承認を得る

提供・承認・報告で足りる場合

第437条計算書類等の株主への提供招集通知に承認済み計算書類を添付1項判例なし
  • 取締役会設置会社は定時総会の招集通知で株主に提供する
  • 提供するのは取締役会の承認後の計算書類・事業報告
  • 監査を受けた場合は監査報告・会計監査報告も提供する
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第438条計算書類等の定時株主総会への提出等計算書類は総会承認、事業報告は総会報告3項・4号判例なし
  • 会社の区分に応じ監査等を経た計算書類・事業報告を総会に提出
  • 提出した計算書類は定時株主総会の承認を受ける
  • 事業報告は承認でなく内容を総会へ報告するのみ
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第439条会計監査人設置会社の特則会計監査人設置会社は要件満たせば総会承認不要1項判例なし
  • 取締役会承認済みの計算書類が法務省令の要件に該当する場合が対象
  • 該当すれば定時株主総会の承認(438条2項〈計算書類等の定時株主総会への提出等〉)は不要
  • この場合も計算書類の内容は総会へ報告する
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3

公告する

決算公告の方法と期限

第440条計算書類の公告定時総会後遅滞なく貸借対照表を公告する4項判例なし
  • 原則、貸借対照表(大会社は貸借対照表・損益計算書)を公告する
  • 官報・日刊新聞紙で公告する会社は要旨の公告で足りる
  • 有価証券報告書提出会社にはこれらの公告義務は適用されない
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第441条臨時計算書類臨時決算日の財産状況を示す書類を任意作成4項・5号判例なし
  • 臨時決算日の貸借対照表と期間損益計算書を作成できる
  • 監査役設置会社等は監査役等・会計監査人の監査を受ける
  • 取締役会設置会社は取締役会承認、要件非該当なら株主総会承認も必要
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第436条会社法

監査の範囲が会計に関するものに限定されている監査役は,計算書類及びその附属明細書の監査を行うに当たり,当該計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,その任務を尽くしたといえるか

裁判要旨監査の範囲が会計に関するものに限定されている監査役は,計算書類及びその附属明細書の監査を行うに当たり,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても,当該計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,常にその任務を尽くしたといえるものではない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和3年7月19日 令和1(受)1968
登載
集民 第266号157頁
参照法条
会社法389条1項,会社法389条2項,会社法423条1項,会社法436条1項,会社計算規則121条2項,会社計算規則122条1項2号,会社計算規則(平成21年法務省令第7号による改正前のもの)149条2項,会社計算規則(平成21年法務省令第7号による改正前のもの)150条1項2号

関連する会計・監査の基準

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原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

会社法 第435条(計算書類等の作成及び保存) 詳細ページ
(計算書類等の作成及び保存)
第四百三十五条株式会社は、法務省令で定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければならない。
2株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
3計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、電磁的記録をもって作成することができる。
4株式会社は、計算書類を作成した時から十年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない。
会社法 第436条(計算書類等の監査等) 詳細ページ
(計算書類等の監査等)
第四百三十六条監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含み、会計監査人設置会社を除く。)においては、前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、法務省令で定めるところにより、監査役の監査を受けなければならない。
2会計監査人設置会社においては、次の各号に掲げるものは、法務省令で定めるところにより、当該各号に定める者の監査を受けなければならない。
一前条第二項の計算書類及びその附属明細書監査役(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)及び会計監査人
二前条第二項の事業報告及びその附属明細書監査役(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)
3取締役会設置会社においては、前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書(第一項又は前項の規定の適用がある場合にあっては、第一項又は前項の監査を受けたもの)は、取締役会の承認を受けなければならない。
会社法 第437条(計算書類等の株主への提供) 詳細ページ
(計算書類等の株主への提供)
第四百三十七条取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前条第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告(同条第一項又は第二項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。)を提供しなければならない。
会社法 第438条(計算書類等の定時株主総会への提出等) 詳細ページ
(計算書類等の定時株主総会への提出等)
第四百三十八条次の各号に掲げる株式会社においては、取締役は、当該各号に定める計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。
一第四百三十六条第一項に規定する監査役設置会社(取締役会設置会社を除く。)第四百三十六条第一項の監査を受けた計算書類及び事業報告
二会計監査人設置会社(取締役会設置会社を除く。)第四百三十六条第二項の監査を受けた計算書類及び事業報告
三取締役会設置会社第四百三十六条第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告
四前三号に掲げるもの以外の株式会社第四百三十五条第二項の計算書類及び事業報告
2前項の規定により提出され、又は提供された計算書類は、定時株主総会の承認を受けなければならない。
3取締役は、第一項の規定により提出され、又は提供された事業報告の内容を定時株主総会に報告しなければならない。
会社法 第439条(会計監査人設置会社の特則) 詳細ページ
(会計監査人設置会社の特則)
第四百三十九条会計監査人設置会社については、第四百三十六条第三項の承認を受けた計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合には、前条第二項の規定は、適用しない。この場合においては、取締役は、当該計算書類の内容を定時株主総会に報告しなければならない。
会社法 第440条(計算書類の公告) 詳細ページ
(計算書類の公告)
第四百四十条株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
2前項の規定にかかわらず、その公告方法が第九百三十九条第一項第一号又は第二号に掲げる方法である株式会社は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる。
3前項の株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、第一項に規定する貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。この場合においては、前二項の規定は、適用しない。
4金融商品取引法第二十四条第一項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社については、前三項の規定は、適用しない。
会社法 第441条(臨時計算書類) 詳細ページ
(臨時計算書類)
第四百四十一条株式会社は、最終事業年度の直後の事業年度に属する一定の日(以下この項において「臨時決算日」という。)における当該株式会社の財産の状況を把握するため、法務省令で定めるところにより、次に掲げるもの(以下「臨時計算書類」という。)を作成することができる。
一臨時決算日における貸借対照表
二臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時決算日までの期間に係る損益計算書
2第四百三十六条第一項に規定する監査役設置会社又は会計監査人設置会社においては、臨時計算書類は、法務省令で定めるところにより、監査役又は会計監査人(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会及び会計監査人、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会及び会計監査人)の監査を受けなければならない。
3取締役会設置会社においては、臨時計算書類(前項の規定の適用がある場合にあっては、同項の監査を受けたもの)は、取締役会の承認を受けなければならない。
4次の各号に掲げる株式会社においては、当該各号に定める臨時計算書類は、株主総会の承認を受けなければならない。ただし、臨時計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合は、この限りでない。
一第四百三十六条第一項に規定する監査役設置会社又は会計監査人設置会社(いずれも取締役会設置会社を除く。)第二項の監査を受けた臨時計算書類
二取締役会設置会社前項の承認を受けた臨時計算書類
三前二号に掲げるもの以外の株式会社第一項の臨時計算書類
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。