論点1第180条民法
建物の壁面に取り付けられた広告用看板の所有者が壁面を占有していないとされた事例
裁判要旨広告用看板を建物本体の柱にボルト等で接合したうえ接合部分を壁面の一部としてモルタル吹付を施してはめこみ式に密着して取り付けた等の判示の事実関係のもとにおいては、右看板の所有者が建物の壁面を占有しているとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和59年1月27日 昭和56(オ)583
- 登載
- 集民 第141号123頁
- 参照法条
- 民法180条
論点2第180条民法
占有と相続
裁判要旨土地を占有していた被相続人が死亡し相続が開始した場合には、特別の事情のないかぎり、被相続人の右土地に対する占有は相続人によつて相続される。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和44年10月30日 昭和44(オ)265
- 登載
- 民集 第23巻10号1881頁
- 参照法条
- 民法896条,民法180条
論点3第180条民法
一 店舗について共同占有の成立を認めた事例。
二 訴額の算定の違法と訴訟行為の効力。
裁判要旨一 判示の事情のもとでは、本件店舗については、真実の経営者と、経営者名義人の両名による共同占有が成立するものと認めるのが相当である。
二 かりに訴額の算定について違法であつても、これを看過してなされた訴訟行為の効力は無効とはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年4月20日 昭和38(オ)246
- 登載
- 集民 第78号649頁
- 参照法条
- 民法180条,民訴印紙法11条,民訴法22条,民訴法223条
論点4第180条民法
家屋の賃借人と家屋敷地の占有。
裁判要旨家屋を賃借居住する者は、家屋敷地を占有する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年3月16日 昭和39(オ)708
- 登載
- 集民 第78号317頁
- 参照法条
- 民法180条,民法206条
論点5第180条民法
他人の使用人として家屋に居住するにすぎない者に対する家屋明渡ならびに賃料相当の損害金の請求の当否。
裁判要旨他人の使用人として家屋に居住するにすぎない者に対しては、特段の事情のないかぎり、その不法占有を理由として家屋の明渡ならびに賃料相当の損害金の支払を請求することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和35年4月7日 昭和32(オ)1041
- 登載
- 民集 第14巻5号751頁
- 参照法条
- 民法180条
論点6第180条民法
会社の代表者として土地を所持する者の占有権の有無
裁判要旨株式会社の代表取締役が会社の代表者として土地を所持する場合には、右土地の直接占有者は会社自身であつて、代表者は、個人のためにもこれを所持するものと認めるべき特段の事情がないかぎり、個人として占有者たる地位にあるものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年2月15日 昭和29(オ)920
- 登載
- 民集 第11巻2号270頁
- 参照法条
- 民法180条,民法181条
論点7第180条民法
換地予定地の指定と占有権移転の有無
裁判要旨換地予定地に指定されただけでは、当然にはその土地の占有権の変動移転を生ずるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年7月19日 昭和28(オ)1203
- 登載
- 民集 第9巻9号1110頁
- 参照法条
- 民法180条,特別都市計画法14条
論点8第180条民法
家督相続により家屋所有権を取得した者は右家屋の占有権を承継するか
裁判要旨被相続人の死亡による家督相続により家屋所有権を取得した者は、右家屋に対す被相続人の占有権を承継したものと認むべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年4月24日 昭和26(オ)535
- 登載
- 民集 第7巻4号414頁
- 参照法条
- 民法180条,民法187条,旧民法986条
論点9第180条民法
一 占有の訴を本案とする仮処分申請と本権の理由による判断の可否
二 換地予定地の指定と占有権移転の有無
三 換地予定地の指定を受けた者に対し占有の訴を本案として立入禁止の仮処分をすることは行政事件訴訟特例法第一〇条第七項に反ずるか
裁判要旨一 占有の訴を本案とする仮処分申請の当否については、専ら占有関係によつてのみ判断すべきであつて、本権の理由(特別都市計画法第一四条による換地予定地を使用収益し得る権原)によることを得ない。
二 換地予定地の指定があつても、従来の事実上の占有状態に変更のないかぎり、当然には、その土地の占有権に変動移転を生ずるものではない。
三 換地予定地の占有者が、同土地について、換地予定地の指定を受けた者を相手方として、占有の訴を本案とする立入禁止、占有妨害禁止の仮処分を申請した場合、右仮処分は行政権の作用を阻止するものではないから、これを許しても、行政事件訴訟特例法第一〇条第七項に反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月6日 昭和25(オ)30
- 登載
- 民集 第6巻5号496頁
- 参照法条
- 民法202条2項,民法180条,特別都市計画法14条,行政事件訴訟特例法10条7項
論点10第180条民法
一 家屋所有者の家屋の所持の態様
二 賃貸借中の家屋についての所有者の所持と「自己ノ為メニスル意思」
裁判要旨一 家屋(空家、以下同じ。)の所有者が、これに錠をかけて鍵を所持し、又は標札貼紙等により自己の占有中である事実が第三者にもわかるようにしておかないからといつて、必ずしも所有者に家屋の所持がないとはいえない。
二 家屋の所有者が、その家屋の隣家に居住し、常に出入口を監視して容易に他人の侵入を制止できる状況にあるときは、所有者はその家屋を所持するものといえる。
三 家屋の所有者が自らこれを所持する場合に、その家屋を他に賃貸中であつても、所有者は必ずしもその所持につき「自己ノ為ニスル意思」がないとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年2月19日 昭和24(オ)91
- 登載
- 民集 第6巻2号95頁
- 参照法条
- 民法180条
論点11第180条民法
道路を一般交通の用に供するために管理している地方公共団体が当該道路を構成する敷地について占有権を有する場合
裁判要旨地方公共団体が,道路を一般交通の用に供するために管理しており,その管理の内容,態様によれば,社会通念上,当該道路が当該地方公共団体の事実的支配に属するものというべき客観的関係にあると認められる場合には,当該地方公共団体は,道路法上の道路管理権を有するか否かにかかわらず,当該道路を構成する敷地について占有権を有する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成18年2月21日 平成14(受)133
- 登載
- 民集 第60巻2号508頁
- 参照法条
- 民法180条,民法199条
論点12第180条民法
宗教法人の代表者(住職)として寺院の土地建物の所持を開始した後に僧籍はく奪の処分を受けた者が右土地建物の所持を奪った右法人に対して占有回収の訴えによりその返還を求めることができるとされた事例
裁判要旨甲が、宗教法人乙の代表者(住職)として寺院の土地建物の所持を開始した後に乙を包括する宗教団体から僧籍はく奪の処分である擯斥処分を受けたが、乙から提起された訴訟において右処分の効力を争うとともに右土地建物の管理を続け、乙との間の右建物の撤去についての話合いの際にも、撤去後の土地の占有継続を主張していたなど判示の事実関係の下においては、甲が個人のためにも右土地建物を所持していたものと認めるべき特別の事情があるということができ、甲は、右土地建物の所持を奪ってこれを占有している乙に対して占有回収の訴えによりその返還を求めることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成12年1月31日 平成11(受)553
- 登載
- 集民 第196号427頁
- 参照法条
- 民法180条,民法181条,民法200条,宗教法人法18条
論点13第180条民法
宗教法人の代表者(住職)として寺院建物の所持を開始した後に僧籍はく奪の処分を受けた者が建物の所持を奪った右法人に対して占有回収の訴えによりその返還を求めることができるとされた事例
裁判要旨甲が、宗教法人乙の代表者(住職)として寺院建物の所持を開始した後に乙を包括する宗教団体から僧籍はく奪の処分である擯斥処分を受け、乙から右建物の明渡しを求める訴訟を提起されたが、右処分の効力を争うとともにこれに応訴し、右建物の管理を続けていたなど判示の事実関係の下においては、甲が個人のためにも右建物を所持していたものと認めるべき特別の事情があるということができ、甲は、右建物の所持を奪ってこれを占有している乙に対して占有回収の訴えによりその返還を求めることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成10年3月10日 平成6(オ)1998
- 登載
- 集民 第187号269頁
- 参照法条
- 民法180条,民法181条,民法200条,宗教法人法18条
論点14第181条民法
一 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力
二 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権と動産売買先取特権に基づいてされた動産競売の不許を求める第三者異議の訴え
三 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において目的物の範囲が特定されているとされた事例
裁判要旨一 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は右譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、右対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物に及ぶ。
二 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができる。
三 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において、目的動産の種類及び量的範囲が普通棒鋼、異形棒鋼等一切の在庫商品と、その所在場所が譲渡担保権設定者の倉庫内及び同敷地・ヤード内と指定されているときは、目的物の範囲が特定されているものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和62年11月10日 昭和57(オ)1408
- 登載
- 民集 第41巻8号1559頁
- 参照法条
- 民法85条,民法178条,民法181条,民法183条,民法333条,民法369条(譲渡担保),民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)549条1項,競売法3条
論点15第181条民法
動産の売渡担保契約と債務者の所有権取得の対抗力の有無
裁判要旨債務者が動産を売渡担保に供し引きつづきこれを占有する場合においては、債権者は、契約の成立と同時に、占有改定によりその物の占有権を取得し、その所有権取得をもつて第三者に対抗することができるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和30年6月2日 昭和28(オ)952
- 登載
- 民集 第9巻7号855頁
- 参照法条
- 民法178条,民法181条,民法183条
論点16第182条民法
立木の引渡があつたとはいえないとされた事例
裁判要旨双方立会のうえ検収がすまないかぎり、買主は伐採木を搬出することができない旨の約定がある場合には、検収が終了しないかぎり、売主から買主に木材の引渡がされたものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和42年1月20日 昭和41(オ)1034
- 登載
- 集民 第86号133頁
- 参照法条
- 民法182条
論点17第182条民法
家屋の贈与につき履行が終つたものとされた事例。
裁判要旨病気のため入院中の内縁の夫が、同棲に使用していたその所有家屋を妻に贈与するに際して、自己の実印を該家屋を買受けたときの契約書とともに妻に交付する等判示事実関係のもとにおいては、簡易の引渡による該家屋の占有移転があつたものとみるべきであるから、これにより、右贈与の履行が終つたものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和39年5月26日 昭和38(オ)31
- 登載
- 民集 第18巻4号667頁
- 参照法条
- 民法550条,民法182条2項
論点18第183条民法
差押中の有体動産の占有改定の効力。
裁判要旨有体動産に対する占有権は、差押によつて失われるものではないからその動産の占有改定による引渡は、差押の存続する間、差押債権者に対抗できないにとどまるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年8月28日 昭和32(オ)1140
- 登載
- 民集 第13巻10号1336頁
- 参照法条
- 民訴法566条,民法183条
論点19第183条民法
銀行が,輸入業者の輸入する商品に関して信用状を発行し,当該商品につき譲渡担保権の設定を受けた場合において,上記輸入業者が当該商品を直接占有したことがなくても,上記輸入業者から占有改定の方法によりその引渡しを受けたものとされた事例
裁判要旨銀行であるXが,輸入業者であるYの輸入する商品に関して信用状を発行し,これによってYが負担する償還債務等に係る債権の担保として当該商品につき譲渡担保権の設定を受けた場合において,次の(1)及び(2)の事情の下では,Yが当該商品を直接占有したことがなくても,Xは,Yから占有改定の方法により当該商品の引渡しを受けたものといえる。
(1) XとYとの間においては,輸入業者から委託を受けた海運貨物取扱業者によって輸入商品の受領等が行われ,輸入業者が目的物を直接占有することなく転売を行うことが一般的であったという輸入取引の実情の下,上記譲渡担保権の設定に当たり,XがYに対し輸入商品の貸渡しを行ってその受領等の権限を与える旨の合意がされていた。
(2) 海運貨物取扱業者は,金融機関が譲渡担保権者として当該商品の引渡しを占有改定の方法により受けることとされていることを当然の前提として,Yから当該商品の受領等の委託を受け,当該商品を受領するなどした。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成29年5月10日 平成28(許)26
- 登載
- 民集 第71巻5号789頁
- 参照法条
- 民法183条,民法304条,民法369条(譲渡担保),民事再生法45条,民事再生法53条1項,民事再生法53条2項
論点20第184条民法
賃借人のある建物について買取請求権が行使された場合における建物収去土地明渡を求める相手方の請求。
裁判要旨土地賃貸人からの建物収去土地明渡の請求において、建物所有者が借地法第一〇条により買取請求権を行使した場合に、その建物に賃借人があるときは、右収去明渡の請求には、建物の指図による占有移転を求める趣旨を包合するものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和36年2月28日 昭和33(オ)989
- 登載
- 民集 第15巻2号324頁
- 参照法条
- 借地法10条,民法184条,民訴法186条
論点21第184条民法
仮処分の執行として執行吏の保管する有体動産に対しなされた指図による占有移転の効力。
裁判要旨有体動産に対する占有権は、仮処分の執行として執行吏がこれを保管することによつて失われるものではないから、その動産の指図による占有移転は、仮処分債権者に対抗できないにとどまりその他のものに対する関係においては有効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年8月28日 昭和30(オ)712
- 登載
- 民集 第13巻10号1311頁
- 参照法条
- 民訴法566条,民法184条
論点22第185条民法
一 共同相続人の一人によつて相続権を侵害された他の相続人の右侵害排除を求める請求について民法八八四条の適用がないとされた事例
二 共同相続人の一人が相続財産につき単独所有者としての自主占有を取得したとはいえないとされた事例
裁判要旨一 共同相続人の一人甲が、他の共同相続人乙丙の承諾を得ることなく乙丙名義で相続放棄の申述をし、これに基づき相続財産に属する不動産につき甲単独名義の相続登記をして乙丙の相続権を侵害している場合においては、右侵害排除の趣旨で甲単独名義の登記を甲乙丙共有名義の登記に更正することを求める乙丙の請求について、民法
八八四条〈相続回復請求権〉は適用されない。
二 共同相続人の一人甲が、家業である農業を受け継いで相続財産に属する不動産につき単独の占有管理を継続し、他の共同相続人乙丙がこれに異議を述べなかつた場合であつても、相続開始当時甲において他に共同相続人として乙丙のいることを知つており、乙丙の承諾を得ることなく乙丙名義で相続放棄申述をし、これに基づき右不動産につき甲単独名義の相続登記をし、かつ右不動産を単独で占有している、との事情があるときは、甲が相続開始の時から右不動産につき単独所有者としての自主占有を取得したというには疑いがある。
(一につき意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和54年4月17日 昭和51(オ)639
- 登載
- 集民 第126号541頁
- 参照法条
- 民法162条,民法185条,民法884条
論点23第185条民法
農地の賃借人が所有者から右農地を買い受けたが未だ農地調整法四条所定の知事の許可又は農地委員会の承認を得るための手続がとられていない場合と新権原による自主占有の開始
裁判要旨農地の賃借人が所有者から右農地を買い受けその代金を支払つたときは、農地調整法四条所定の都道府県知事の許可又は市町村農地委員会の承認を得るための手続がとられなかつたとしても、買主は、特段の事情のない限り、売買契約が締結されその代金が支払われた時に、民法
一八五条〈占有の性質の変更〉にいう新権原により所有の意思をもつて右農地の占有を始めたものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和52年3月3日 昭和51(オ)1060
- 登載
- 民集 第31巻2号157頁
- 参照法条
- 民法162条,民法185条,農地調整法(昭和26年法律第89号による改正前のもの)4条
論点24第185条民法
所有者の無権代理人から農地を買い受けた小作人が新権原による自主占有を開始したものとされ右占有の始め過失がないとされた事例
裁判要旨甲所有の農地を小作し、長期にわたり右農地の管理人のように振舞つていた乙に小作料を支払つていた丙が、甲の代理人と称する乙から右農地を買い受け、右買受につき農地法所定の許可を得て所有権移転登記手続を経由し、その代金を支払つた等判示の事情のもとにおいては、丙は、乙に甲を代理する権限がなかつたとしても、遅くとも右登記の時には民法一八五条にいう新権原により所有の意思をもつて右農地の占有を始めたものであり、かつ、その占有の始めに所有権を取得したものと信じたことに過失がないということができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和51年12月2日 昭和51(オ)117
- 登載
- 民集 第30巻11号1021頁
- 参照法条
- 民法162条2項,民法185条
論点25第185条民法
共同相続人の一人が相続財産につき単独所有者としての自主占有を取得したと認められた事例
裁判要旨共同相続人の一人が、単独に相続したものと信じて疑わず、相続開始とともに相続財産を現実に占有し、その管理、使用を専行してその収益を独占し、公租公課も自己の名でその負担において納付してきており、これについて他の相続人がなんら関心をもたず、異議も述べなかつた等原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいては、前記相続人はその相続のときから相続財産につき単独所有者としての自主占有を取得したものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和47年9月8日 昭和45(オ)265
- 登載
- 民集 第26巻7号1348頁
- 参照法条
- 民法162条,民法185条,民法186条1項,民法187条1項
論点26第185条民法
相続と民法一八五条にいう「新権原」
裁判要旨相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによつて占有を開始し、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、被相続人の占有が所有の意思のないものであつたときでも、相続人は民法一八五条にいう「新権原」により所有の意思をもつて占有を始めたものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和46年11月30日 昭和44(オ)1270
- 登載
- 民集 第25巻8号1437頁
- 参照法条
- 民法185条,民法896条
論点27第185条民法
民法一八五条〈占有の性質の変更〉にいう「新権原」の発生と占有者がこれを所有者に対抗するための登記の要否
裁判要旨民法
一八五条〈占有の性質の変更〉にいう「新権原」の発生を主張するについて、占有者は、その取得につき登記その他の対抗要件を必要としない。
(参考)
一審、札幌地裁昭和三五年(行)第七号、同年(ワ)第三〇八号 昭和四〇年九月二四日判決(訟務月報一二巻二号二六七頁)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和45年2月17日 昭和42(行ツ)79
- 登載
- 集民 第98号217頁
- 参照法条
- 民法185条,民法177条
論点28第185条民法
使用貸借契約により占有を始めた者が賃借権の時効取得を援用するための要件
裁判要旨使用貸借契約により占有を始めた者は、民法
二〇五条〈この章の規定は、自己のためにする意思をもって財産権の行使をする場合について準用する。〉・
一八五条〈占有の性質の変更〉の定めるところに従つて賃借権を行使する意思をもつてする占有に変更されたのちに取得時効に必要な期間を経過した旨を主張立証しないかぎり、賃借権の時効取得を援用することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和44年9月30日 昭和40(オ)666
- 登載
- 集民 第96号657頁
- 参照法条
- 民法185条,民法205条
論点29第185条民法
一 死者の活動年令期の算定。
二 労働基準法第七九条の補償と民法第四二二条。
三 民法第七一五条〈使用者等の責任〉の使用者責任の認められる事例。
裁判要旨一 死者の活動年令期は、死者の経歴、年令、職業、健康状態その他の具体的事情を考慮して算定することができ、必ずしも統計による生命表の有限平均余命の数値に拘束されない。
二 労働者の死亡について第三者が不法行為に基づく損害賠償責任を負担する場合には、労働基準法第七九条に基づく補償義務を履行した使用者は、民法
第四二二条〈損害賠償による代位〉の類推により、その履行した時期及び程度で遺族に代位して第三者に対し賠償請求権を取得する。
三 専ら貨物運送を業とする会社の被用者である貨物自動車運転者が、貨物運送にあたりたまたま他人に同乗を許したため、運転者の過失により惹き起された事故において右の者が死亡するに至つた場合であつても、右同乗が運転者との個人的関係に基づくものでなく、荷受会社の集荷課長として積荷の受渡を便にするためのものであつたときは、右運送会社は民法第七一五条の責任を負うと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和36年1月24日 昭和31(オ)364
- 登載
- 民集 第15巻1号35頁
- 参照法条
- 民法185条,民法709条,民法422条,民法715条,労働基準法79条
論点30第185条民法
一 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合における所有の意思の立証責任
二 他主占有者の相続人について独自の占有に基づく取得時効の成立が認められた事例
裁判要旨一 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合には、相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を証明すべきである。
二 甲が所有しその名義で登記されている土地建物について、甲の子である乙が甲から管理をゆだねられて占有していたところ、乙の死亡後、その相続人である乙の妻子丙らが、乙が生前に甲から右土地建物の贈与を受けてこれを自己が相続したものと信じて、その登記済証を所持し、固定資産税を納付しつつ、管理使用を専行し、賃借人から賃料を取り立てて生活費に費消しており、甲及びその相続人らは、丙らが右のような態様で右土地建物の事実的支配をしていることを認識しながら、異議を述べていないなど判示の事実関係があるときは、丙らが、右土地建物が甲の遺産として記載されている相続税の申告書類の写しを受け取りながら格別の対応をせず、乙の死亡から約一五年経過した後に初めて右土地建物につき所有権移転登記手続を求めたという事実があるとしても、丙らの右土地建物についての事実的支配は、外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解するのが相当であり、丙らについて取得時効が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成8年11月12日 平成7(オ)228
- 登載
- 民集 第50巻10号2591頁
- 参照法条
- 民法162条,民法185条,民法186条1項,民法187条1項,民法896条
論点31第185条民法
農地の小作人が所有者に対し所有の意思のあることを表示したものとして右農地の時効取得が認められた事例
裁判要旨農地の小作人がいわゆる農地解放後に最初に地代を支払うべき時期にその支払をせず、これ以降、所有者は小作人が地代等を一切支払わずに右農地を自由に耕作し占有することを容認していたなど原判示の事実関係の下においては、小作人は、遅くとも右の時期に、所有者に対して右農地につき所有の意思のあることを表示したものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成6年9月13日 平成5(オ)118
- 登載
- 集民 第173号53頁
- 参照法条
- 民法162条,民法185条
論点32第186条民法
一 解除条件付売買契約に基づいて開始される占有と自主占有
二 解除条件付売買契約に基づいて開始される自主占有の条件成就による他主占有への変更の有無
裁判要旨一 売買契約に基づいて開始される占有は、残代金が約定期限までに支払われないときは当該売買契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が付されている場合であつても、自主占有であるというを妨げない。
二 売買契約に基づいて開始された自主占有は、当該売買契約が解除条件(残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨)の成就により失効しても、それだけでは、他主占有に変わるものではないと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和60年3月28日 昭和56(オ)292
- 登載
- 集民 第144号297頁
- 参照法条
- 民法127条2項,民法162条,民法186条
論点33第186条民法
民法一八六条一項〈占有の態様等に関する推定〉の所有の意思の推定が覆される場合
裁判要旨民法
一八六条一項〈占有の態様等に関する推定〉の所有の意思の推定は、占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかつたものと解される事情が証明されるときは、覆される。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和58年3月24日 昭和57(オ)548
- 登載
- 民集 第37巻2号131頁
- 参照法条
- 民法162条,民法186条1項,民訴法185条
論点34第186条民法
民法一六二条〈所有権の取得時効〉にいう「所有ノ意思」の立証責任
裁判要旨占有者の占有が自主占有にあたらないことを理由に取得時効の成立を争う者は、右占有が他主占有にあたることについての立証責任を負う。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和54年7月31日 昭和54(オ)19
- 登載
- 集民 第127号315頁
- 参照法条
- 民法162条,民法186条1項
論点35第186条民法
取得時効における前主の占有と民訴法一八六条
裁判要旨建物を甲から乙、乙から丙、丙から丁、丁から戊が順次買受けて占有を承継し、甲以下の前主の占有を併せると、甲が占有を開始したときから二〇年を経過したときに戊のため取得時効が完成した旨の主張は、仮に乙と丙との間に占有承継人として別の者が介在することが証拠上認められるとするならば、その者の占有をも前記取得時効の期間として主張する趣旨を含むものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和49年11月22日 昭和49(オ)660
- 登載
- 集民 第113号225頁
- 参照法条
- 民法162条,民法186条,民法187条,民訴法186条
論点36第186条民法
占有における所有の意思の有無の判断基準
裁判要旨占有における所有の意思の有無は、占有取得の原因たる事実によつて外形的客観的に定められるべきものであるから、賃貸借が法律上効力を生じない場合にあつても、賃貸借により取得した占有は他主占有というべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和45年6月18日 昭和45(オ)315
- 登載
- 集民 第99号375頁
- 参照法条
- 民法162条,民法186条
論点37第186条民法
動産の強制競売における競落人の善意無過失が認められた事例。
裁判要旨動産の強制競売において代金が執行吏に交付されてその集計点検中に、競売物件につき所有権を主張する第三者が現われたが、執行吏がこれを取り上げず、そのまま代金の授受を終り、競落物件の引渡しがなされた等判示の事情がある場合には、競落人がたとえ右主張のあつた事実を知つていても、民法
第一八六条第一項〈占有の態様等に関する推定〉の善意の推定を覆えすには足りず、また、他に特段の事情のないかぎり、競落人において右動産の所有権者を確認するための調査をしなかつたとしても過失があるとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年5月29日 昭和38(オ)204
- 登載
- 民集 第18巻4号715頁
- 参照法条
- 民法186条1項,民法192条,民訴法577条2項
論点38第186条民法
後見人としての占有と民法第一八六条第一項の所有の意思。
裁判要旨後見人が被後見人の所有土地を同人のために占有していたにすぎない場合には、後見人が自ら所有の意思を以て占有したものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和38年7月9日 昭和36(オ)680
- 登載
- 集民 第67号35頁
- 参照法条
- 民法186条1項
論点39第186条民法
登記簿上の所有名義人に対して所有権移転登記手続を求めないなどの土地占有者の態度が他主占有と解される事情として十分であるとはいえないとされた事例
裁判要旨土地の登記簿上の所有名義人甲の弟である乙が右土地を継続して占有した場合に、甲の家が本家、乙の家が分家という関係にあり、乙が経済的に苦しい生活をしていたため甲から援助を受けたこともあり、乙は家族と共に居住するための建物を建築、移築、増築して右土地を使用し、甲はこれに異議を述べたことがなかったなど判示の事実関係の下においては、乙が、甲に対して右土地の所有権移転登記手続を求めず、右土地に賦課される固定資産税を負担しなかったことをもって、外形的客観的にみて乙が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される事情として十分であるということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成7年12月15日 平成6(オ)1905
- 登載
- 民集 第49巻10号3088頁
- 参照法条
- 民法162条,民法186条1項
論点40第187条民法
占有の承継が主張された場合と民法一六二条二項にいう占有者の善意・無過失の判定時点
裁判要旨不動産の占有主体に変更があつて承継された二個以上の占有が併せて主張された場合には、民法
一六二条二項〈所有権の取得時効〉にいう占有者の善意・無過失は、その主張にかかる最初の占有者につきその占有開始の時点において判定すれば足りる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和53年3月6日 昭和52(オ)658
- 登載
- 民集 第32巻2号135頁
- 参照法条
- 民法162条2項,民法187条
論点41第187条民法
占有の承継人が前主の占有をあわせて取得時効の完成を主張する場合における占有者の善意・無過失
裁判要旨占有の承継人が前主の占有をあわせて取得時効の完成を主張する場合においても、占有者の善意・無過失の要件は、前主につき、その占有の開始時において充足されることを要し、かつ、それをもつて足りる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和46年3月23日 昭和45(オ)1090
- 登載
- 集民 第102号293頁
- 参照法条
- 民法162条2項,民法187条
論点42第187条民法
本訴原告が土地の売渡によりその所有権を喪失したことを理由に本訴原告のその所有権に基づく請求を棄却するとともに反訴原告が右売渡を受けた買主の占有を基礎とする取得時効により右土地の所有権を取得したことを理由に反訴原告のその所有権に基づく請求を認容することが矛盾しないとされた事例
裁判要旨(省略)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和44年3月6日 昭和43(オ)921
- 登載
- 集民 第94号571頁
- 参照法条
- 民法162条,民法187条,民訴法239条
論点43第187条民法
相続人は民法第一八七条第一項の承継人にあたるか
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年5月18日 昭和33(オ)116
- 登載
- 民集 第16巻5号1073頁
- 参照法条
- 民法187条
論点44第187条民法
権利能力なき社団等が法人格を取得した場合と民法一八七条一項
裁判要旨民法
一八七条一項〈占有の承継〉は、権利能力なき社団等の占有する不動産を法人格を取得した以後当該法人が引き継いで占有している場合にも適用がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成元年12月22日 平成1(オ)1382
- 登載
- 集民 第158号845頁
- 参照法条
- 民法33条,民法187条1項