論点1第188条民法
金銭の占有と所有。
裁判要旨金銭の直接占有者は、特段の事情のないかぎり、その占有を正当づける権利を有するか否かにかかわりなく、金銭の所有者とみるべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年1月24日 昭和38(オ)146
- 登載
- 集民 第71号331頁
- 参照法条
- 民法188条,民法192条
論点2第188条民法
民法第一八八条〈占有物について行使する権利の適法の推定〉の推定が覆えされたとされた事例。
裁判要旨不動産所有権の帰属を争う甲乙のうち該不動産を占有する甲が民法
第一八八条〈占有物について行使する権利の適法の推定〉により一応所有権者と推定される場合においても、該不動産は、乙の先代が他からこれを買い受けて所有権保存登記を了し、次いで乙が家督相続により右所有権を承継した事実が証明されたときは、(他に、乙の先代または乙が所有権を喪失した事由がない限り)前記推定は覆えされたものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年7月4日 昭和37(オ)803
- 登載
- 集民 第67号7頁
- 参照法条
- 民法188条
論点3第188条民法
登記簿上の現所有者名義人が前所有名義人から不動産所有権を取得したと主張する場合現所有名義人は登記の推定力を援用しうるか。
裁判要旨登記簿上の現所有者名義人は、前所有名義人から不動産所有権を取得したと主張する場合には、前所有名義人に対し、登記の推定力を援用し得ない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和38年10月15日 昭和35(オ)198
- 登載
- 民集 第17巻11号1497頁
- 参照法条
- 民法188条
論点4第188条民法
所有者から占有権限を伝来取得したと主張する占有者は所有者の包括承継人に対し民法第一八八条〈占有物について行使する権利の適法の推定〉の権利推定を援用しうるか
裁判要旨所有者から物の占有権限を伝来取得したと主張する占有者は、前主たる所有者に対して民法第一八八条の権利推定を援用しえないと同様に、右所有者の包括承継人に対しても、これを援用できない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年4月20日 昭和35(オ)998
- 登載
- 集民 第60号377頁
- 参照法条
- 民法188条
論点5第188条民法
他人の不動産を占有する正権原の立証責任。
裁判要旨他人の不動産を占有する正権原があるとの主張については、その主張をする者に立証責任があると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和35年3月1日 昭和33(オ)683
- 登載
- 民集 第14巻3号327頁
- 参照法条
- 民法188条
論点6第189条民法
賃貸人と賃借人、不法占有者との間の関係と民法第一八九条第一九〇条の適用の有無
裁判要旨賃貸人と賃借人ないし不法占有者との間には民法第一八九条、第一九〇条の適用はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和41年8月26日 昭和40(オ)1200
- 登載
- 集民 第84号287頁
- 参照法条
- 民法189条,民法190条,民法607条
論点7第189条民法
一 銀行業者が不当利得した金銭を利用して得た運用利益と民法第一八九条第一項〈善意の占有者による果実の取得等〉の適用の有無
二 銀行業者が不当利得した金銭によつて得た法定利率による利息相当額以内の運用利益につき返還義務があるとされた事例
三 不当利得された財産に受益者の行為が加わることによつて得られた収益についての返還義務の範囲
裁判要旨一 銀行業者が不当利得した金銭を利用して得た運用利益については、民法
第一八九条第一項〈善意の占有者による果実の取得等〉の類推適用により同人に右利益の収取権が認められる余地はない。
二 第一項の運用利益が商事法定利率による利息相当額(臨時金利調整法所定の一箇年契約の定期預金の利率の制限内)であり損失者が商人であるときは、社会観念上、受益者の行為の介入がなくても、損失者が不当利得された財産から当然取得したであろうと考えられる収益の範囲内にあるものと認められるから、受益者は、善意のときであつても、これが返還義務を免れない。
三 不当利得された財産に受益者の行為が加わることによつて得られた収益については、社会観念上、受益者の行為の介入がなくても、損失者が右財産から当然取得したであろうと考えられる範囲において損失があるものと解すべきであり、その範囲の収益が現存するかぎり、民法
第七〇三条〈不当利得の返還義務〉により返還されるべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和38年12月24日 昭和35(オ)674
- 登載
- 民集 第17巻12号1720頁
- 参照法条
- 民法189条1項,民法703条
論点8第189条民法
一 民法第一八九条第二項〈善意の占有者による果実の取得等〉の「本権の訴」の意義
二 建物の占有者の居住による利得と民法第一八九条
裁判要旨一 民法
第一八九条第二項〈善意の占有者による果実の取得等〉の「本権の訴」とは、占有者から所有名義人に対して提起した所有権取得登記抹消登記請求の訴ないし所有権確認の訴をも含むと解すべきである。
二 建物の占有者の住居による利得は民法
第一八九条第一項にいう果実に当る。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年2月27日 昭和33(オ)454
- 登載
- 集民 第58号977頁
- 参照法条
- 民法88条,民法189条,民法189条2項
論点9第189条民法
一 本権の訴における敗訴者は不法行為についても起訴の時から悪意の占有者とみなされるか
二 後訴における主張が前訴の既判力に牴触しない一事例
三 不法行為による物の滅失毀損と損害賠償額算定の基準時期
裁判要旨一 係争物件を自己の所有と信じ占有していた者が、本権の訴において敗訴したからとて、右敗訴者は、当然には、不法行為の関係についてまで、起訴の時から悪意の占有者とみなされるものではない。
二 甲が乙を相手として船舶の所有権確認、同引渡請求の訴(前訴)につき勝訴の確定判決を得た上、さらに乙を相手として、右船舶の滅失毀損による不法行為を理由とし損害賠償請求の訴(後訴)を提起した場合、たとえ前訴において、乙が右船舶を現に占有している事実を認めていたとしても、後訴において、乙が、右船舶は前訴の口頭弁論終結前乙において売却処分し、その頃右船舶が滅失毀損したと主張することは、なんら前訴の既判力に牴触しない。
三 不法行為による物の滅失毀損に対する損害賠償の金額は、特段の事由のないかぎり、滅失毀損当時の交換価格により定むべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和32年1月31日 昭和28(オ)849
- 登載
- 民集 第11巻1号170頁
- 参照法条
- 民法189条,民法709条,民訴法199条1項,民訴法709条
論点10第190条民法
証人または当事者本人として真実を陳述することに対する対価として金員を支払う旨の契約が公序良俗に反するとされた事例
裁判要旨民事訴訟において、証人または当事者本人として、一方の当事者(甲)に不利な虚偽の陳述をした者(乙)が、その後翻意し、甲に対し、真実を陳述する旨申し出るとともに、その対価として金員を要求した場合に、甲が自己の権利を守るため必要であると考えて、乙との間で、真実を陳述することに対する対価として金員を支払う旨の契約を締結したとしても、右契約は、公序良俗に反するものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和45年4月21日 昭和44(オ)752
- 登載
- 集民 第99号99頁
- 参照法条
- 民法190条
論点11第192条民法
登録を受けている自動車と民法一九二条の適用の有無
裁判要旨道路運送車両法による登録を受けている自動車については、民法
一九二条〈即時取得〉の適用はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和62年4月24日 昭和61(オ)1499
- 登載
- 集民 第150号925頁
- 参照法条
- 民法192条,道路運送車両法4条,道路運送車両法5条1項
論点12第192条民法
荷渡指図書に基づき倉庫業者の寄託者台張上の寄託者名義が変更され寄託の目的物の譲受人が指図による占有移転を受けた場合と民法一九二条〈即時取得〉の適用
裁判要旨寄託者が倉庫業者に対して発行した荷渡指図書に基づき倉庫業者が寄託者台帳上の寄託者名義を変更して右寄託の目的物の譲受人が指図による占有移転を受けた場合には、民法
一九二条〈即時取得〉の適用がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和57年9月7日 昭和55(オ)185
- 登載
- 民集 第36巻8号1527頁
- 参照法条
- 民法184,民法192条,商法597条
論点13第192条民法
即時取得と法人の善意・無過失
裁判要旨法人における民法一九二条の善意・無過失は、その法人の代表者について決するが、代理人が取引行為をしたときは、その代理人について決すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年11月21日 昭和45(オ)84
- 登載
- 民集 第26巻9号1657頁
- 参照法条
- 民法101条,民法192条
論点14第192条民法
登録を受けていない自動車と民法一九二条
裁判要旨道路運送車両法による登録を受けていない自動車については、民法
一九二条〈即時取得〉の規定の適用がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和45年12月4日 昭和45(オ)827
- 登載
- 民集 第24巻13号1987頁
- 参照法条
- 民法192条,道路運送車両法5条,道路運送車両法16条(昭和44年法律第68号による改正前のもの)
論点15第192条民法
民法一九二条〈即時取得〉の適用につき占有取得者に過失があるとされた事例
裁判要旨質屋営業および金融業を営む甲が乙から軽自動車を金融のため買い受けるにあたり、乙においてこれを丙からいわゆる所有権留保の割賦販売の方法により買い受けその代金を完済していないためいまだ所有権を取得していないものであり、このことについては右軽自動車が一見新車と認めうるものであつたことから甲においても疑問を抱くべきであつたのに、甲は、知人の紹介を受けたほかは、乙の処分の事情および処分権限の有無につきなんら調査をしないで、乙に処分権限があるものと信じ、その引渡を受けたものであるときは、甲の右軽自動車の占有開始につき過失がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和44年11月21日 昭和44(オ)714
- 登載
- 集民 第97号433頁
- 参照法条
- 民法192条
論点16第192条民法
動産の競落と民法第一九二条の適用の有無
裁判要旨執行債務者の所有に属さない動産が強制競売に付された場合であつても、競落人は、民法
第一九二条〈即時取得〉によつて右動産の所有権を取得することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和42年5月30日 昭和41(オ)851
- 登載
- 民集 第21巻4号1011頁
- 参照法条
- 民法192条,民訴法577条
論点17第192条民法
民法第一九二条〈即時取得〉にいう「過失ナキ」ことの立証責任
裁判要旨民法
第一九二条〈即時取得〉により動産の上に行使する権利を取得したことを主張する占有者は、同条にいう「過失ナキ」ことを立証する責任を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和41年6月9日 昭和39(オ)550
- 登載
- 民集 第20巻5号1011頁
- 参照法条
- 民法192条
論点18第192条民法
取得時効の基礎たる平穏な占有の意義。
裁判要旨甲と乙とが同一地域を重複して管理している場合には、甲の占有は平穏な占有とはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年9月4日 昭和38(オ)495
- 登載
- 集民 第75号159頁
- 参照法条
- 民法192条
論点19第192条民法
動産の強制競売における競落人の善意無過失が認められた事例。
裁判要旨動産の強制競売において代金が執行吏に交付されてその集計点検中に、競売物件につき所有権を主張する第三者が現われたが、執行吏がこれを取り上げず、そのまま代金の授受を終り、競落物件の引渡しがなされた等判示の事情がある場合には、競落人がたとえ右主張のあつた事実を知つていても、民法
第一八六条第一項〈占有の態様等に関する推定〉の善意の推定を覆えすには足りず、また、他に特段の事情のないかぎり、競落人において右動産の所有権者を確認するための調査をしなかつたとしても過失があるとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年5月29日 昭和38(オ)204
- 登載
- 民集 第18巻4号715頁
- 参照法条
- 民法186条1項,民法192条,民訴法577条2項
論点20第192条民法
一 民法第一九二条〈即時取得〉の占有取得の相手方
二 荷渡依頼書の交付によつて貨物の所有権は移転するか
裁判要旨一 売渡人以外の者から買受物件の占有移転を受けた場合には、その者が売渡人の占有代理人であるようなときでなければ、買受人は右物件を善意取得できない。
二 荷渡依頼書の交付によつて、これに記載された物件の所有権が被交付者に移転するものとは解せられない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和38年5月21日 昭和36(オ)505
- 登載
- 集民 第66号61頁
- 参照法条
- 民法192条,商法519条
論点21第192条民法
工場財団に属する動産と民法第一九二条。
裁判要旨工場財団に属する動産についても民法第一九二条の適用がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和36年9月15日 昭和33(オ)1073
- 登載
- 民集 第15巻8号2172頁
- 参照法条
- 民法192条,工場抵当法5条,工場抵当法14条
論点22第192条民法
占有改定による占有の取得と民法第一九二条の適用の有無。
裁判要旨占有取得の方法が外観上の占有状態に変更を来たさない占有改定にとどまるときは、民法
第一九二条〈即時取得〉の適用はない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和35年2月11日 昭和32(オ)1092
- 登載
- 民集 第14巻2号168頁
- 参照法条
- 民法192条
論点23第192条民法
賍物罪の成立と民法第一九二条。
裁判要旨賍物に対する罪は、被害者が民法の規程によりその物の回復を請求する権利を失わない以上、その物につき成立し得る。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年2月9日 昭和31(あ)3533
- 登載
- 刑集 第13巻1号76頁
- 参照法条
- 刑法256条,民法192条,民法193条
論点24第192条民法
占有改定による占有の取得と民法第一九二条の不適用
裁判要旨占有改定により占有を取得したに止まるときは、民法
第一九二条〈即時取得〉の適用はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年12月27日 昭和30(オ)225
- 登載
- 民集 第11巻14号2485頁
- 参照法条
- 民法192条
論点25第192条民法
一 貯蓄信用組合理事が組合名義で組合員以外の者から貯金を受入れた場合とその金銭所有権の帰属
二 背任罪における目的の主従と同罪の成否
裁判要旨一 貯蓄信用組合理事がその資格をもつて、組合の名において、組合に対する貯金として受入れたものである以上、たとえ、右貯金が組合員以外の者のした貯金であるが故に、組合に対する消費寄託としての法律上の効力を生じないものであるとしても、貯金の目的となつた金銭の所有権は組合に帰属する。
二 主として、不法に融資して第三者の利益を図る目的がある以上、従として、右融資により本人(貯蓄信用組合)の貸付金回収を図る目的であつても、背任罪を構成する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和29年11月5日 昭和27(あ)5403
- 登載
- 刑集 第8巻11号1675頁
- 参照法条
- 民法192条,民法703条,刑法247条
論点26第192条民法
一 民法第一九二条〈即時取得〉にいゆる善意無過失の意義
二 民法第一九四条〈占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは…〉の回復請求権と物の滅失。
裁判要旨一 民法
第一九二条〈即時取得〉にいわゆる「善意ニシテ且過失ナキトキ」とは、動産の占有を始めた者において、取引の相手方がその動産につき無権利者でないと誤信し且つかく信ずるにつき過失のなかつたときのことをいい、その動産が統制品であるにかかわらず、割当証明書によらないで買い受けたという事実は、右の善意無過失を決するための要件とならない。
二 民法
第一九四条〈占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは…〉により被害者が盗品を回復することを得る場合において、その回復請求前その物が滅失したときは、右の回復請求権は消滅するのみならず、被害者は回復に代る賠償をも請求することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和26年11月27日 昭和24(オ)106
- 登載
- 民集 第5巻13号775頁
- 参照法条
- 民法192条,民法194条
論点27第193条民法
窃取された株券の取得につき悪意又は重過失がある所持人に対する受寄者の株券返還請求権
裁判要旨株券を窃取された受寄者は、株券の所持人がその取得につき悪意又は重過失がある場合には、所持人に対し、民法
一九三条〈盗品又は遺失物の回復〉の規定に基づき、その返還を請求することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和59年4月20日 昭和57(オ)496
- 登載
- 集民 第141号565頁
- 参照法条
- 民法193条,商法229条,小切手法21条
論点28第193条民法
民法第一九三条〈盗品又は遺失物の回復〉の期間徒過のため盗品の回復請求ができなくなれば被害者はその所有権を失うか。
裁判要旨盗難の時より二年を経過したときは、被害者は占有者に対し盗品の回復を請求することが不可能となつて、被害者はその所有権を喪失する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和38年2月5日 昭和35(オ)334
- 登載
- 集民 第64号383頁
- 参照法条
- 民法193条
論点29第193条民法
古物営業法第二一条の類推適用を認めた一事例
裁判要旨古物営業法第二一条の規定は、代表取締役個人の名義で古物営業の許可を受け古物商を営んでいる会社の場合にも類推適用すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和31年6月29日 昭和29(オ)433
- 登載
- 民集 第10巻6号764頁
- 参照法条
- 古物営業法21条,民法193条,民法194条
論点30第194条民法
一 民法一九四条〈占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは…〉に基づき盗品等の引渡しを拒むことができる占有者と右盗品等の使用収益権
二 盗品の占有者がその返還後にした民法一九四条に基づく代価弁償請求が肯定される場合
裁判要旨一 盗品又は遺失物の占有者は、民法
一九四条〈占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは…〉に基づき右盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、代価の弁償の提供があるまで右盗品等の使用収益権を有する。
二 盗品の占有者が民法
一九四条に基づき盗品の引渡しを拒むことができる場合において、被害者が代価を弁償して盗品を回復することを選択してその引渡しを受けたときには、占有者は、盗品の返還後、同条に基づき被害者に対して代価の弁償を請求することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成12年6月27日 平成10(受)128
- 登載
- 民集 第54巻5号1737頁
- 参照法条
- 民法194条
論点31第196条民法
賃借人が賃借建物に附加した部分が滅失した場合と有益費償還請求権
裁判要旨賃借人が賃借建物に附加した増・新築部分が、賃貸人に返還される以前に、賃貸人、賃借人いずれの責にも帰すべきでない事由により滅失したときは、特段の事情のないかぎり、右部分に関する有益費償還請求権は消滅する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和48年7月17日 昭和48(オ)128
- 登載
- 民集 第27巻7号798頁
- 参照法条
- 民法196条2項,民法608条2項
論点32第196条民法
建物の賃借人が有益費を支出したのち建物の賃貸人が交替した場合と有益費の償還義務者
裁判要旨建物の賃借人が有益費を支出したのち建物の所有権譲渡により賃貸人が交替したときは、特段の事情のないかぎり、新賃貸人が右有益費の償還義務を承継し、旧賃貸人は右償還義務を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和46年2月19日 昭和42(オ)779
- 登載
- 民集 第25巻1号135頁
- 参照法条
- 民法608条2項,民法196条2項
論点33第196条民法
売主が売買契約の合意解除により買主に代金を返還した後右代金額につき財産税を徴収された場合における買主に対する右税額の償還請求権の有無
裁判要旨売主が売買契約の合意解除により代金を買主に返還した後、右代金額につき財産税を徴収された場合においても、売主は、民法
第六六五条〈委任の規定の準用〉および
第六五〇条〈受任者による費用等の償還請求等〉または
第一九六条〈占有者による費用の償還請求〉の規定に基き、買主に対し右税額の償還を請求することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和28年1月8日 昭和24(オ)46
- 登載
- 民集 第7巻1号1頁
- 参照法条
- 財産税法(昭和21年法律52号)1条,財産税法(昭和21年法律52号)22条,民法196条,民法650条,民法665条
論点34第198条民法
一 出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めと憲法二一条二項前段にいう検閲
二 名誉侵害と侵害行為の差止請求権
三 公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関する出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めの許否
四 公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によつて命ずる場合と口頭弁論又は債務者審尋
裁判要旨一 雑誌その他の出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めは、憲法二一条二項前段にいう検閲に当たらない。
二 名誉侵害の被害者は、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対して、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる。
三 人格権としての名誉権に基づく出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めは、右出版物が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関するものである場合には、原則として許されず、その表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときに限り、例外的に許される。
四 公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によつて命ずる場合には、原則として口頭弁論又は債務者の審尋を経ることを要するが、債権者の提出した資料によつて、表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であり、かつ、債権者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があると認められるときは、口頭弁論又は債務者の審尋を経なくても憲法二一条の趣旨に反するものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和61年6月11日 昭和56(オ)609
- 登載
- 民集 第40巻4号872頁
- 参照法条
- 憲法13条,憲法21条,民訴法757条2項,民訴法760条,民法1条ノ2,民法198条,民法199条,民法709条,民法710条,刑法230条ノ2
論点35第198条民法
一 村民の村道使用関係の性質
二 村民の村道使用権に対する侵害の継続と妨害排除請求権の成否
裁判要旨一 村民各自は、村道に対し、他の村民の有する利益ないし自由を侵害しない程度において、自己の生活上必須の行動を自由に行いうべき使用の自由権を有する。
二 村民の右村道使用の自由権に対して継続的な妨害がなされた場合には、当該村民は、右妨害の排除を請求することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月16日 昭和35(オ)676
- 登載
- 民集 第18巻1号1頁
- 参照法条
- 地方自治法(昭和38年6月8日法律99号による改正前のもの)10条,民法709条,民法710条,民法198条
論点36第198条民法
いわゆる位置指定道路の通行妨害と妨害排除請求権
裁判要旨建築基準法四二条一項五号の規定による位置の指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成9年12月18日 平成8(オ)1361
- 登載
- 民集 第51巻10号4241頁
- 参照法条
- 民法1条ノ2,民法198条,民法199条,建築基準法42条1項5号
論点37第198条民法
工場の操業に起因する騒音等により被害を受けているとして隣接地住民がした操業の差止め及び慰謝料の請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨レデイミクストコンクリート製造工場の隣接地住民が右工場の操業に起因する騒音等により被害を受けているとして操業の差止め及び慰謝料の支払を請求したのに対し、住宅の建替えによって被害の程度が変化していること、付近は相当の交通騒音が存在する地域であることなど判示の事情を総合的に考察することなく、右工場の操業が法令等に違反していることを主な理由として、右請求を認容した原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成6年3月24日 平成1(オ)1682
- 登載
- 集民 第172号99頁
- 参照法条
- 民法198条,民法199条,民法709条
論点38第198条民法
一 民事上の請求として自衛隊の使用する航空機の離着陸等の差止め及び右航空機の騒音の規制を求める訴えの適否
二 国に対しアメリカ合衆国軍隊の使用する航空機の離着陸等の差止めを請求することの可否
三 国及びアメリカ合衆国軍隊が管理する飛行場の周辺住民が右飛行場に離着陸する航空機に起因する騒音等により被害を受けたとして国に対し慰謝料を請求した場合につき右被害が受忍限度の範囲内にあるとした判断に違法があるとされた事例
裁判要旨一 民事上の請求として自衛隊の使用する航空機の離着陸等の差止め及び右航空機の騒音の規制を求める訴えは不適法である。
二 国が日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づきアメリカ合衆国に対し同国軍隊の使用する施設及び区域として飛行場を提供している場合において、国に対し右軍隊の使用する航空機の離着陸等の差止めを請求することはできない。
三 国及びアメリカ合衆国軍隊が管理する飛行場の周辺住民が右飛行場に離着陸する航空機に起因する騒音等により被害を受けたとして国に対し慰謝料の支払を求めたのに対し、単に右飛行場の使用及び供用が高度の公共性を有するということから右被害が受忍限度の範囲内にあるとした原審の判断には、不法行為における侵害行為の違法性に関する法理の解釈適用を誤つた違法がある。
(一につき補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成5年2月25日 昭和62(オ)58
- 登載
- 民集 第47巻2号643頁
- 参照法条
- 民訴法第2編第1章訴,日本国とアメリカ合衆国との相互協力及び安全保障条約6条,日本国とアメリカ合衆国との相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定2条,民法198条299条,民法709条,国家賠償法1条1項,国家賠償法2条1項,日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法1条,日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法2条
論点39第198条民法
国に対しアメリカ合衆国軍隊の使用する航空機の離着陸等の差止めを請求することの可否
裁判要旨国が日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づきアメリカ合衆国に対し同国軍隊の使用する施設及び区域として飛行場を提供している場合において、国に対し右軍隊の使用する航空機の離着陸等の差止めを請求することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成5年2月25日 昭和63(オ)611
- 登載
- 集民 第167号359頁
- 参照法条
- 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約6条,日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定2条,民法198条,民法199条
論点40第198条民法
建築基準法四二条二項の指定により同条一項の道路とみなされている土地上に設置されたブロック塀の収去請求が許されないとされた事例
裁判要旨建築基準法四二条二項の指定により同条一項の道路とみなされている土地上にブロック塀が設置された場合において、右ブロック塀の設置により既存の通路の幅員が狭められた範囲がブロック二枚分の幅にとどまり、右ブロック塀の外側に既存の通路があって、日常生活上支障が生じていないときは、隣接地の地上建物の所有者は、人格権が侵害されたことを理由として右ブロック塀の収去を求めることができない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成5年11月26日 平成1(オ)1792
- 登載
- 集民 第170号641頁
- 参照法条
- 建築基準法42条1項,建築基準法42条2項,民法198条,民法710条
論点41第198条民法
道路位置指定処分がされた土地上に設置された工作物の撤去請求が許されないとされた事例
裁判要旨道路位置指定処分がされたが現実に道路として開設されていない土地上に工作物が設置されている場合において、隣接地の所有者は、右処分がされた土地を自由に通行し得ることを前提として、右工作物の撤去を求めることができない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成3年4月19日 昭和62(オ)741
- 登載
- 集民 第162号489頁
- 参照法条
- 建築基準法(昭和34年法律第156号による改正前のもの)42条1項,民法198条,民法710条
論点42第198条民法
検索事業者に対し,自己のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL並びに当該ウェブサイトの表題及び抜粋を検索結果から削除することを求めることができる場合
裁判要旨利用者の求めに応じてインターネット上のウェブサイトを検索し,ウェブサイトを識別するための符号であるURLを検索結果として当該利用者に提供する事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL並びに当該ウェブサイトの表題及び抜粋を検索結果の一部として提供する行為の違法性の有無について,当該事実の性質及び内容,当該URL等が提供されることによって当該事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と当該URL等を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断し,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,上記の者は,上記事業者に対し,当該URL等を検索結果から削除することを求めることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成29年1月31日 平成28(許)45
- 登載
- 民集 第71巻1号63頁
- 参照法条
- 民法2条,民法198条,民法199条
論点43第198条民法
被告の所有する土地が建築基準法42条2項所定の道路(いわゆるみなし道路)に当たるとして人格権的権利に基づき同土地上の工作物の撤去を求める訴訟において被告が同土地がみなし道路であることを否定することは信義則上許されないとされた事例
裁判要旨被告の所有する土地が建築基準法42条2項所定の道路(いわゆるみなし道路)に当たるとして同土地周辺の建物所有者である原告らが提起した人格権的権利に基づき同土地上の工作物の撤去を求める訴訟において,被告が同土地がみなし道路であることを否定することは,被告が,建物を建築するに際し,同土地がみなし道路であることを前提に建築確認を得,同土地に幅員4mの道路を開設し,その後5年以上同土地がみなし道路であることを前提に建物を所有してきた上,同土地は公衆用道路として非課税とされているという事実関係の下では,信義則上許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成18年3月23日 平成15(受)1886
- 登載
- 集民 第219号967頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法2条,民法198条,民訴法2条,建築基準法42条2項,憲法13条
論点44第198条民法
1 不正競争防止法2条1項1号,2号にいう「営業」と宗教法人の宗教活動
2 宗教法人の名称を冒用されない権利に基づく侵害行為の差止請求の可否
3 宗教法人Yによる「天理教豊文教会」との名称の使用が宗教法人Xの「天理教」との名称を冒用されない権利を違法に侵害するものとはいえないとされた事例
裁判要旨1 不正競争防止法2条1項1号,2号にいう「営業」は,宗教法人の本来的な宗教活動及びこれと密接不可分の関係にある事業を含まない。
2 宗教法人は,その名称を他の宗教法人等に冒用されない権利を有し,これを違法に侵害されたときは,加害者に対し,侵害行為の差止めを求めることができる。
3 「天理教」との名称の宗教法人Xと被包括関係を設定していた宗教法人Yが,被包括関係の廃止に伴い,その名称を「天理教豊文分教会」から「天理教豊文教会」に変更した場合において,Yは長年にわたって「天理教」の語を冠した名称を使用してきたこと,Yの信奉する教義は社会一般の認識においては「天理教」にほかならないこと,YにおいてXの名称の周知性を殊更に利用しようとするような不正な目的をうかがわせる事情もないことなど判示の事情の下では,Yによる「天理教豊文教会」との名称の使用は,Xの名称を冒用されない権利を違法に侵害するものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年1月20日 平成17(受)575
- 登載
- 民集 第60巻1号137頁
- 参照法条
- (1につき)不正競争防止法1条,不正競争防止法2条1項1号,2号,宗教法人法6条 (2,3につき)民法2条,民法198条,民法199条,憲法13条,宗教法人法12条1項2号
論点45第198条民法
競走馬の所有者が当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対しいわゆる物のパブリシティ権の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることの可否
裁判要旨競走馬の所有者は,当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対し,その名称等が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利(いわゆる物のパブリシティ権)の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成16年2月13日 平成13(受)866等
- 登載
- 民集 第58巻2号311頁
- 参照法条
- 民法198条,民法199条,民法206条,民法709条,知的財産基本法2条2項
論点46第198条民法
名誉,プライバシー等の侵害に基づく小説の出版の差止めを認めた原審の判断に違法がないとされた事例
裁判要旨甲をモデルとし,経歴,身体的特徴,家族関係等によって甲と同定可能な乙が全編にわたって登場する小説において,乙が顔面にしゅようを有すること,これについて通常人が嫌う生物や原形を残さない水死体の顔などに例えて表現されていること,乙の父親が逮捕された経歴を有していることなどの記述がされていることなど判示の事実関係の下では,公共の利益にかかわらない甲のプライバシーにわたる事項を表現内容に含む同小説の出版により公的立場にない甲の名誉,プライバシー及び名誉感情が侵害され,甲に重大で回復困難な損害を被らせるおそれがあるとして,同小説の出版の差止めを認めた原審の判断には,違法がない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成14年9月24日 平成13(オ)851
- 登載
- 集民 第207号243頁
- 参照法条
- 民法1条ノ2,民法198条,民法199条
論点47第198条民法
一 いわゆるみなし道路の通行妨害と妨害排除請求権
二 いわゆるみなし道路に接する土地の所有者から右道路の敷地所有者に対する同人により右道路内に設置された金属製ポールの撤去請求が認められないとされた事例
裁判要旨一 建築基準法四二条二項の規定による指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有する。
二 建築基準法四二条二項の規定による指定を受け現実に開設されている道路にその敷地所有者が自動車の通行の妨げとなる金属製ポールを設置した場合において、右道路が専ら徒歩又は二輪車による通行に供されてきた未舗装のものであり、右道路に接する土地の所有者は、同土地を利用しておらず、賃貸駐車場として利用する目的で右ポールの撤去を求めているにすぎないなど判示の事実関係の下においては、同土地の所有者は、右道路を自動車で通行することについて日常生活上不可欠の利益を有しているとはいえず、敷地所有者に対して人格権的権利に基づき右ポールの撤去を求めることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成12年1月27日 平成8(オ)1248
- 登載
- 集民 第196号201頁
- 参照法条
- 民法1条ノ2,民法198条,民法199条,建築基準法42条2項
論点48第198条民法
インターネットを利用して短文の投稿をすることができる情報ネットワークにおいてある者のプライバシーに属する事実を摘示するメッセージが投稿された場合にその者が上記情報ネットワークの運営者に対して上記メッセージの削除を求めることができるとされた事例
裁判要旨インターネットを利用して短文の投稿をすることができる情報ネットワークにおいて、ある者が建造物侵入の被疑事実により逮捕されたというその者のプライバシーに属する事実を摘示するメッセージの投稿がされた場合に、上記の逮捕の事実が、不特定多数の者が利用する場所において行われた軽微とはいえない犯罪事実に関するものであったとしても、次の⑴~⑷など判示の事情の下においては、上記の者の上記逮捕の事実を公表されない法的利益が上記メッセージを一般の閲覧に供し続ける理由に優越すると認められ、上記の者は、上記情報ネットワークの運営者に対し、上記メッセージの削除を求めることができる。
⑴ 上記逮捕から約8年が経過し、上記の者が受けた罰金刑の言渡しはその効力を失っており、上記メッセージに転載された上記逮捕の事実の報道記事も報道機関のウェブサイトにおいて既に削除されている。
⑵ 上記メッセージは、上記情報ネットワークの利用者に対して上記逮捕の事実を速報することを目的として投稿されたものとうかがわれ、長期間にわたって閲覧され続けることを想定して投稿されたものであるとは認め難い。
⑶ 上記の者の氏名を条件として上記情報ネットワーク上を検索すると検索結果として上記メッセージが表示される。
⑷ 上記の者は、公的立場にある者ではない。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 令和4年6月24日 令和2(受)1442
- 登載
- 民集 第76巻5号1170頁
- 参照法条
- 民法2条、民法198条、民法199条
論点49第199条民法
道路を一般交通の用に供するために管理している地方公共団体が当該道路を構成する敷地について占有権を有する場合
裁判要旨地方公共団体が,道路を一般交通の用に供するために管理しており,その管理の内容,態様によれば,社会通念上,当該道路が当該地方公共団体の事実的支配に属するものというべき客観的関係にあると認められる場合には,当該地方公共団体は,道路法上の道路管理権を有するか否かにかかわらず,当該道路を構成する敷地について占有権を有する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成18年2月21日 平成14(受)133
- 登載
- 民集 第60巻2号508頁
- 参照法条
- 民法180条,民法199条
論点50第200条民法
占有補助者による占有の侵奪を否定した判断に民法二〇〇条違背の違法があるとされた事例
裁判要旨甲会社がレストラン営業を開始するにつき従業員乙を支配人格とし、同丙をコック長として両名に一任し、外一一名の従業員とともに営業に従事させ、営業遂行に必要な限りにおいて継続的にその店舗を専用させていた、との事実関係のもとにおいて、右乙、丙ら一三名の従業員をもつて甲会社の占有補助者であるとしながら、乙、丙らが甲会社に対し退職届を提出することにより爾後みずから本件店舗を占有する旨を表明した場合につき、乙、丙らによる右店舗の占有侵奪を肯定するためには、甲会社が他の従業員により右店舗の営業を継続しようとするのを乙、丙らにおいて実力で防止する等占有秩序が力によつて破壊されたと目すべき事情を必要とするとの見解を前提にし、右事情の認められないことを理由として、乙、丙らによる占有侵奪を否定したのは、民法
二〇〇条〈占有回収の訴え〉の解釈適用を誤つたものである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和57年3月30日 昭和54(オ)616
- 登載
- 集民 第135号553頁
- 参照法条
- 民法200条
論点51第200条民法
民法二〇〇条二項〈占有回収の訴え〉但書にいう「承継人カ侵奪ノ事実ヲ知リタルトキ」の意義
裁判要旨民法
二〇〇条二項〈占有回収の訴え〉但書にいう「承継人カ侵奪ノ事実ヲ知リタルトキ」とは、承継人がなんらかの形で占有の侵奪があつたことについて認識を有していた場合をいい、占有の侵奪を単なる可能性のある事実として認識していただけでは足りない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和56年3月19日 昭和53(オ)274
- 登載
- 民集 第35巻2号171頁
- 参照法条
- 民法200条2項
論点52第200条民法
譲渡担保として債務者所有の不動産に所有権移転請求権保全仮登記がされた場合における債務者から右不動産の不法占有者に対する明渡及び賃料相当損害金請求の許否
裁判要旨債務者所有の不動産が譲渡担保とされ所有権移転請求権保全の仮登記がされたというだけでは、いまだ債務者において右不動産の不法占有者に対する明渡及び賃料相当損害金の請求が許されないわけではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年1月31日 昭和47(オ)1007
- 登載
- 集民 第114号77頁
- 参照法条
- 民法200条,民法369条
論点53第200条民法
仮登記担保と目的不動産による旅館営業
裁判要旨仮登記担保権者が予約完結権を行使して目的不動産の引渡を受けるとともに、債務者との特約に基づき右不動産による旅館の営業権をその施設、器具ともども引渡を受けたなど判示事情のもとでは、債権者が目的不動産を換価して清算するまでこれを使用して旅館営業を継続しても右不動産に対する債務者の所有権を侵害するものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和50年12月26日 昭和46(オ)267
- 登載
- 集民 第116号935頁
- 参照法条
- 民法90条,民法200条,民法709条,不動産登記法2条,不動産登記法7条2項
論点54第200条民法
私力の行使が許されないとされた事例。
裁判要旨使用貸借の終了した敷地上に建築された原判示仮店舗の周囲に、右敷地所有者(終了前の敷地使用貸主)が仮店舗所有者(終了前の敷地使用借主)の承諾を得ないで、板囲を設置した場合であつても、右仮店舗所有者が右板囲を実力をもつて撤去することは、同人が原判示の経緯で原判示旧店舗に復帰してすでに飲食営業を再開している等原判示の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、私力行使の許される限界をこえるものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年12月7日 昭和38(オ)1236
- 登載
- 民集 第19巻9号2101頁
- 参照法条
- 民法709条,民法200条1項
論点55第200条民法
強制執行によつて物の占有を解かれた者と占有回収の訴の許否。
裁判要旨強制執行によつて物の占有を解かれた場合には、右執行行為が著しく違法性を帯び、外観上も私人の私力行使と同視しできるようなときを除いて、占有回収の訴によつてその物の返還を請求することは許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和38年1月25日 昭和35(オ)134
- 登載
- 民集 第17巻1号41頁
- 参照法条
- 民法200条
論点56第200条民法
一 執行吏保管の仮処分執行と占有侵奪。
二 執行吏が仮処分による保管物件の換価金を執行債権者の還付申請により誤つて執行債権者に交付した場合と占有侵奪。
裁判要旨一 債務者の占有を解き執行吏の保管に付する旨の仮処分執行として、執行吏が目的物件を所持するに至つても、執行債務者が目的物件に対する占有を侵奪されたことにはならない。
二 執行吏が仮処分による保管物件の換価金を執行債権者の還付申請により誤つて執行債権者に交付した場合、執行債務者が換価金に対する占有を侵奪されたことにはならない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和36年6月6日 昭和32(オ)346
- 登載
- 民集 第15巻6号1501頁
- 参照法条
- 民法200条1項,民訴法758条2項
論点57第200条民法
占有回収の訴の成否。
裁判要旨転借人を占有代理人として間接占有を有する債借人が占有を奪われたとするには、占有代理人の所持が意思に反して第三者によつて失わしめられた場合でなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和34年1月8日 昭和33(オ)449
- 登載
- 民集 第13巻1号17頁
- 参照法条
- 民法200条
論点58第200条民法
甲所有地上の建物所有者乙がこれを丙に譲渡した後もなお登記名義を保有する場合における建物収去・土地明渡義務者
裁判要旨甲所有地上の建物を取得し、自らの意思に基づいてその旨の登記を経由した乙は、たとい右建物を丙に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、甲に対し、建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成6年2月8日 平成4(オ)602
- 登載
- 民集 第48巻2号373頁
- 参照法条
- 民法177条,民法200条,民法206条
論点59第200条民法
宗教法人の代表者(住職)として寺院の土地建物の所持を開始した後に僧籍はく奪の処分を受けた者が右土地建物の所持を奪った右法人に対して占有回収の訴えによりその返還を求めることができるとされた事例
裁判要旨甲が、宗教法人乙の代表者(住職)として寺院の土地建物の所持を開始した後に乙を包括する宗教団体から僧籍はく奪の処分である擯斥処分を受けたが、乙から提起された訴訟において右処分の効力を争うとともに右土地建物の管理を続け、乙との間の右建物の撤去についての話合いの際にも、撤去後の土地の占有継続を主張していたなど判示の事実関係の下においては、甲が個人のためにも右土地建物を所持していたものと認めるべき特別の事情があるということができ、甲は、右土地建物の所持を奪ってこれを占有している乙に対して占有回収の訴えによりその返還を求めることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成12年1月31日 平成11(受)553
- 登載
- 集民 第196号427頁
- 参照法条
- 民法180条,民法181条,民法200条,宗教法人法18条
論点60第200条民法
宗教法人の代表者(住職)として寺院建物の所持を開始した後に僧籍はく奪の処分を受けた者が建物の所持を奪った右法人に対して占有回収の訴えによりその返還を求めることができるとされた事例
裁判要旨甲が、宗教法人乙の代表者(住職)として寺院建物の所持を開始した後に乙を包括する宗教団体から僧籍はく奪の処分である擯斥処分を受け、乙から右建物の明渡しを求める訴訟を提起されたが、右処分の効力を争うとともにこれに応訴し、右建物の管理を続けていたなど判示の事実関係の下においては、甲が個人のためにも右建物を所持していたものと認めるべき特別の事情があるということができ、甲は、右建物の所持を奪ってこれを占有している乙に対して占有回収の訴えによりその返還を求めることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成10年3月10日 平成6(オ)1998
- 登載
- 集民 第187号269頁
- 参照法条
- 民法180条,民法181条,民法200条,宗教法人法18条
論点61第202条民法
占有の訴に対して本権に基づく反訴を提起することの許否。
裁判要旨占有の訴に対しては、本権に基づく反訴を提起することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和40年3月4日 昭和38(オ)654
- 登載
- 民集 第19巻2号197頁
- 参照法条
- 民法202条2項,民訴法239条
論点62第202条民法
一 占有の訴を本案とする仮処分申請と本権の理由による判断の可否
二 換地予定地の指定と占有権移転の有無
三 換地予定地の指定を受けた者に対し占有の訴を本案として立入禁止の仮処分をすることは行政事件訴訟特例法第一〇条第七項〈後見開始の審判の取消し〉に反ずるか
裁判要旨一 占有の訴を本案とする仮処分申請の当否については、専ら占有関係によつてのみ判断すべきであつて、本権の理由(特別都市計画法
第一四条〈保佐開始の審判等の取消し〉による換地予定地を使用収益し得る権原)によることを得ない。
二 換地予定地の指定があつても、従来の事実上の占有状態に変更のないかぎり、当然には、その土地の占有権に変動移転を生ずるものではない。
三 換地予定地の占有者が、同土地について、換地予定地の指定を受けた者を相手方として、占有の訴を本案とする立入禁止、占有妨害禁止の仮処分を申請した場合、右仮処分は行政権の作用を阻止するものではないから、これを許しても、行政事件訴訟特例法第一〇条第七項に反しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年5月6日 昭和25(オ)30
- 登載
- 民集 第6巻5号496頁
- 参照法条
- 民法202条2項,民法180条,特別都市計画法14条,行政事件訴訟特例法10条7項