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罪/略取、誘拐及び人身売買の罪

略取、誘拐及び人身売買の罪の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

略取、誘拐及び人身売買の罪は、未成年者略取・誘拐(224条)を基本形としつつ、営利・わいせつ等の目的や身の代金目的、国外移送目的といった目的の有無・内容によって法定刑を段階的に加重する構成になっています。人身売買(226条の2)や被略取者の引渡し・収受等(227条)、被略取者等の国外移送(226条の3)まで一連の行為が処罰対象とされ、未遂処罰(228条)、解放による刑の減軽(228条の2)、予備罪(228条の3)、親告罪(229条)といった付随規定も置かれています。実務では、目的の有無や被害者の年齢、行為の態様によって適用条文と法定刑が大きく変わる点に注意が必要です。

略取、誘拐及び人身売買の罪
罪名(条文)対象・目的法定刑未遂親告罪
未成年者略取・誘拐(224)未成年者/目的不要3月以上7年以下の拘禁刑処罰ありあり
営利目的等略取・誘拐(225)営利・わいせつ・結婚・加害目的1年以上10年以下の拘禁刑処罰ありなし
身の代金目的略取等(225の2①)財物交付目的で略取・誘拐無期又は3年以上の拘禁刑処罰ありなし
身の代金要求行為(225の2②)略取後に財物交付を要求無期又は3年以上の拘禁刑規定なしなし
国外移送目的略取・誘拐(226)国外へ移送する目的2年以上の有期拘禁刑処罰ありなし
人身売買・買受(226の2①)人を買い受け(目的不要)3月以上5年以下の拘禁刑処罰ありなし
人身売買・未成年者買受(226の2②)未成年者を買い受け3月以上7年以下の拘禁刑処罰ありなし
人身売買・目的付買受等(226の2③④)営利等目的で買受・売渡し1年以上10年以下の拘禁刑処罰ありなし
人身売買・国外移送目的(226の2⑤)国外移送目的で売買2年以上の有期拘禁刑処罰ありなし
被略取者等国外移送(226の3)略取・誘拐・売買された者2年以上の有期拘禁刑処罰ありなし
被略取者引渡し等(227①)224・225条等幇助目的3月以上5年以下の拘禁刑処罰あり224条部分は該当
身の代金幇助引渡し等(227②)225の2①幇助目的で引渡し等1年以上10年以下の拘禁刑処罰ありなし
営利目的等引渡し等(227③)営利・わいせつ等目的で引渡し等6月以上7年以下の拘禁刑処罰ありなし
身の代金目的収受等(227④)財物交付を要求する行為含む2年以上の有期拘禁刑前段のみありなし
身の代金目的略取等予備(228の3)225の2①の実行前の予備2年以下の拘禁刑対象外(予備罪)なし
  • 227条1項は224・225・225の2・226・226の2・226の3の罪を幇助する目的の行為をまとめて規定しており、親告罪となるのはそのうち224条を幇助する目的の部分のみ(229条)。
  • 228条の未遂処罰は225の2第2項、227条4項後段には及ばない。
  • 228条の2の解放減軽は225の2または227条2項・4項の罪を犯した者が、公訴提起前に安全な場所へ解放した場合に適用される。
  • 228条の3の予備罪には、実行に着手する前に自首した者への刑の減軽又は免除規定がある。
  • 226条の2の法定刑は、買受・売渡しの目的・対象により3月以上5年以下から2年以上の有期拘禁刑まで幅がある。
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略取、誘拐及び人身売買の罪

略取、誘拐及び人身売買の罪について、条文は何を定めているか。

第224条未成年者略取及び誘拐未成年者を略取・誘拐した者を処罰1項判例 1件
  • 法定刑は拘禁刑3月以上7年以下
  • 対象は未成年者。目的の限定はない
  • 告訴がなければ起訴できない(229条〈親告罪〉)
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第225条営利目的等略取及び誘拐営利・わいせつ等の目的での略取誘拐を処罰1項判例 5件
  • 目的は営利、わいせつ、結婚、加害のいずれか
  • 法定刑は拘禁刑1年以上10年以下
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第225_2条身の代金目的略取等身代金目的の略取・誘拐と要求行為を処罰2項判例なし
  • ①項:財物交付目的での略取・誘拐を処罰
  • ②項:略取後に財物交付を要求する行為も同様に処罰
  • 法定刑は無期又は3年以上の拘禁刑
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第226条所在国外移送目的略取及び誘拐国外へ移送する目的の略取・誘拐を処罰1項判例 1件
  • 目的は所在国外への移送
  • 法定刑は2年以上の有期拘禁刑
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第226_2条人身売買人身売買の各態様を5項に分けて処罰5項判例なし
  • 買受は3月以上5年以下、未成年者買受は3月以上7年以下
  • 営利等目的の買受・売渡しは1年以上10年以下
  • 国外移送目的の売買は2年以上の有期拘禁刑
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第226_3条被略取者等所在国外移送略取・誘拐・売買された者の国外移送を処罰1項判例なし
  • 対象は略取・誘拐・売買された者
  • 法定刑は2年以上の有期拘禁刑
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第227条被略取者引渡し等被略取者等の引渡し・収受等を幇助目的で処罰4項判例なし
  • 幇助目的の引渡し・収受等を処罰、法定刑は3月〜10年で類型ごとに異なる
  • 身代金目的の収受は2年以上の有期拘禁刑
  • 224条〈未成年者略取及び誘拐〉幇助目的の部分は告訴がなければ起訴できない
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第228条未遂罪各略取誘拐・売買罪の未遂を処罰1項判例 1件
  • 224・225・225の2①・226〜226の3等の未遂を処罰
  • 227条〈被略取者引渡し等〉は1項〜3項と4項前段の未遂を処罰
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第228_2条解放による刑の減軽起訴前に解放すれば刑を減軽1項判例なし
  • 対象は225の2または227条2項〈被略取者引渡し等〉・4項の罪
  • 公訴提起前に安全な場所へ解放した場合に適用
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第228_3条身の代金目的略取等予備身代金目的略取の予備行為を処罰1項判例なし
  • 225の2第1項の罪を犯す目的の予備は2年以下の拘禁刑
  • 実行着手前に自首すれば刑の減軽又は免除
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第229条親告罪224条〈未成年者略取及び誘拐〉の罪等は親告罪(告訴が必要)1項判例なし
  • 224条〈未成年者略取及び誘拐〉の罪、その幇助目的の227条1項〈被略取者引渡し等〉の罪、これらの未遂罪が対象
  • 告訴がなければ公訴を提起できない
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第224条刑法

母の監護下にある2歳の子を別居中の共同親権者である父が有形力を用いて連れ去った略取行為につき違法性が阻却されないとされた事例

裁判要旨母の監護下にある2歳の子を有形力を用いて連れ去った略取行為は, 別居中の共同親権者である父が行ったとしても,監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情が認められず,行為態様が粗暴で強引なものであるなど判示の事情の下では,違法性が阻却されるものではない。(補足意見及び反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成17年12月6日 平成16(あ)2199
登載
刑集 第59巻10号1901頁
参照法条
刑法35条,刑法224条,民法818条,民法820条
論点2第225条刑法

一 刑法第二二五条の二〈身の代金目的略取等〉にいう「近親其他被拐取者ノ安否ヲ憂慮スル者」の意義

二 刑法第二二五条の二にいう「近親其他被拐取者ノ安否ヲ憂慮スル者」に当たるとされた事例

裁判要旨一 刑法二二五条の二〈身の代金目的略取等〉にいう「近親其他被拐取者ノ安否ヲ憂慮スル者」には、単なる同情から被拐取者の安否を気づかうにすぎないとみられる第三者は含まれないが、近親のほか、被拐取者の安否を親身になつて憂慮するのが社会通念上当然とみられる特別な関係にある者も含まれる。
二 A銀行の代表取締役社長が拐取された場合における同銀行幹部らは、刑法二二五条の二にいう「近親其他被拐取者ノ安否ヲ憂慮スル者」に当たる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年3月24日 昭和61(あ)688
登載
刑集 第41巻2号173頁
参照法条
刑法225条ノ2,(第一審判決は、刑事裁判月報第一七巻第九号八九二頁以下に登載)
論点3第225条刑法

みのしろ金取得の目的で人を拐取した者が被拐取者を監禁しみのしろ金を要求した場合の罪数関係

裁判要旨みのしろ金取得の目的で人を拐取した者が、更に被拐取者を監禁し、その間にみのしろ金を要求した場合には、みのしろ金目的拐取罪とみのしろ金要求罪とは牽連犯の関係に、以上の各罪と監禁罪とは併合罪の関係にある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年9月27日 昭和57(あ)1012
登載
刑集 第37巻7号1078頁
参照法条
刑法45条,刑法54条1項後段,刑法225条ノ2,刑法220条1項
論点4第225条刑法

営利略取罪とみのしろ金要求罪の罪数関係

裁判要旨営利の目的で人を略取した者がみのしろ金要求罪を犯した場合には、右両罪は、併合罪の関係にある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和57年11月29日 昭和57(あ)270
登載
刑集 第36巻11号988頁
参照法条
刑法45条,刑法225条,刑法225条の2第2項
論点5第225条刑法

営利誘拐罪における営利の目的の意義。

裁判要旨営利誘拐罪における営利の目的とは、誘拐行為によつて財産上の利益を得ることを動機とする場合をいうものであり、その利益は、必ずしも被誘拐者自身の負担によつて得られるものに限らず、誘拐行為に対して第三者から報酬として受ける財産上の利益をも包含する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年11月21日 昭和35(あ)1096
登載
刑集 第16巻11号1570頁
参照法条
刑法225条
論点6第225条刑法

被告人を死刑に処した裁判員裁判による第1審判決を量刑不当として破棄し無期懲役に処した原判決の量刑が維持された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 令和元年7月1日 平成29(あ)605
登載
集刑 第326号63頁
参照法条
刑法199条,刑法225条,刑法190条,刑訴法411条2号
論点7第226条刑法

日本人である妻と別居中の外国人が妻において監護養育していた子を母国に連れ去る目的で有形力を用いて連れ出した行為について国外移送略取罪が成立するとされた事例

裁判要旨日本人である妻と別居中のオランダ国籍の者が,妻において監護養育していた2歳4か月の子をオランダに連れ去る目的で入院中の病院から有形力を用いて連れ出した判示の行為は,国外移送略取罪に該当し,その者が親権者の1人として子を自分の母国に連れ帰ろうとしたものであることを考慮しても,その違法性は阻却されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成15年3月18日 平成14(あ)805
登載
刑集 第57巻3号371頁
参照法条
刑法35条,刑法226条1項
論点8第228条刑法

一 刑法二二八条の二〈解放による刑の減軽〉にいう「安全ナル場所」の意義
二 刑法二二八条の二にいう「安全ナル場所」に解放したとされた事例

裁判要旨一 刑法二二八条の二〈解放による刑の減軽〉にいう「安全ナル場所」とは、被拐取者がその近親者及び警察当局などによつて安全に救出されると認められる場所をいい、その場合の安全とは、被拐取者が救出されるまでの間に具体的かつ実質的な危険にさらされるおそれのないことを意味し、漠然とした抽象的な危険や単なる不安感ないし危惧感を伴うというだけでは、ただちに、安全性に欠けるとはいえない。
二 身代金目的の誘拐犯人が、小学校一年生の被拐取者を、夜間、同児の自宅から直線距離で数キロメートル離れた農村地帯の脇道上に解放した場合であつても、その場所自体が危険なものでなく、付近民家の者らによつて救出される蓋然性も見込まれるものであつたことのほか、犯人が同児をその自宅に復帰させるため種々努力したことなど判示の事情のもとにおいては、右解放行為は刑法二二八条の二にいう「安全ナル場所」に解放したものといえる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年6月26日 昭和53(あ)1407
登載
刑集 第33巻4号364頁
参照法条
刑法228条ノ2
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

刑法 第224条(未成年者略取及び誘拐) 詳細ページ
(未成年者略取及び誘拐)
第二百二十四条未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。
刑法 第225条(営利目的等略取及び誘拐) 詳細ページ
(営利目的等略取及び誘拐)
第二百二十五条営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。
刑法 第225_2条(身の代金目的略取等) 詳細ページ
(身の代金目的略取等)
第二百二十五条の二近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、無期又は三年以上の拘禁刑に処する。
2人を略取し又は誘拐した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、前項と同様とする。
刑法 第226条(所在国外移送目的略取及び誘拐) 詳細ページ
(所在国外移送目的略取及び誘拐)
第二百二十六条所在国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、二年以上の有期拘禁刑に処する。
刑法 第226_2条(人身売買) 詳細ページ
(人身売買)
第二百二十六条の二人を買い受けた者は、三月以上五年以下の拘禁刑に処する。
2未成年者を買い受けた者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。
3営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を買い受けた者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。
4人を売り渡した者も、前項と同様とする。
5所在国外に移送する目的で、人を売買した者は、二年以上の有期拘禁刑に処する。
刑法 第226_3条(被略取者等所在国外移送) 詳細ページ
(被略取者等所在国外移送)
第二百二十六条の三略取され、誘拐され、又は売買された者を所在国外に移送した者は、二年以上の有期拘禁刑に処する。
刑法 第227条(被略取者引渡し等) 詳細ページ
(被略取者引渡し等)
第二百二十七条第二百二十四条、第二百二十五条又は前三条の罪を犯した者を幇助する目的で、略取され、誘拐され、又は売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿し、又は隠避させた者は、三月以上五年以下の拘禁刑に処する。
2第二百二十五条の二第一項の罪を犯した者を幇助する目的で、略取され又は誘拐された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿し、又は隠避させた者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。
3営利、わいせつ又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、略取され、誘拐され、又は売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、又は蔵匿した者は、六月以上七年以下の拘禁刑に処する。
4第二百二十五条の二第一項の目的で、略取され又は誘拐された者を収受した者は、二年以上の有期拘禁刑に処する。略取され又は誘拐された者を収受した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、同様とする。
刑法 第228条(未遂罪) 詳細ページ
(未遂罪)
第二百二十八条第二百二十四条、第二百二十五条、第二百二十五条の二第一項、第二百二十六条から第二百二十六条の三まで並びに前条第一項から第三項まで及び第四項前段の罪の未遂は、罰する。
刑法 第228_2条(解放による刑の減軽) 詳細ページ
(解放による刑の減軽)
第二百二十八条の二第二百二十五条の二又は第二百二十七条第二項若しくは第四項の罪を犯した者が、公訴が提起される前に、略取され又は誘拐された者を安全な場所に解放したときは、その刑を減軽する。
刑法 第228_3条(身の代金目的略取等予備) 詳細ページ
(身の代金目的略取等予備)
第二百二十八条の三第二百二十五条の二第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の拘禁刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
刑法 第229条(親告罪) 詳細ページ
(親告罪)
第二百二十九条第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。