破産法 / テーマ別まとめ

破産手続開始の効果/相殺権

相殺権の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

破産手続が始まると、破産者に対して債務を負う破産債権者は、破産手続によらずに相殺できるという特別な扱いを受けます。もっとも、相殺に使える額には上限があり、条件付きの債権をめぐる担保提供や寄託の手続、一定の場合の相殺禁止、破産管財人からの確答催告といった細かなルールが定められています。ここでは第67条から第73条までの内容を、実務担当者向けに整理しています。

相殺権
場面誰が可否主な条件
原則的な相殺(67条)破産債権者相殺できる破産手続によらず可
相殺できる額(68条)破産債権者額に上限あり103条2項の区分による額
解除条件付債権(69条)破産債権者相殺できる担保提供または寄託が必要
停止条件付債権等(70条)相手方寄託請求できる弁済額の寄託を請求可
相殺禁止(71条)破産債権者相殺できない開始後の債務負担等4類型
相殺禁止(72条)相手方相殺できない開始後の債権取得等4類型
催告(73条)破産管財人確答を求められる1月以上の期間を定めて催告
  • 71条2号〜4号は、法定の原因・支払不能等を知る前の原因・開始申立ての1年以上前の原因に基づく場合は禁止されない
  • 72条2号〜4号も同様の原因のほか、破産者との契約に基づく取得の場合は禁止されない
  • 71条3号・72条3号は、支払の停止の時点で支払不能でなかったときは禁止の対象外
  • 68条2項の額の限度は、無利息債権または定期金債権を有する場合にのみ適用される
  • 73条の催告は、破産債権者の負担する債務が弁済期にあるときに限られる
  • 69条の担保提供・寄託は、相殺によって消滅する債務の額について行う
1

相殺権

相殺権について、条文は何を定めているか。

第67条相殺権破産手続によらず自由に相殺できる2項判例 2件
  • 開始時に破産者へ債務を負う破産債権者は、破産手続によらず相殺できる
  • 破産債権者の債権が期限付・解除条件付でも相殺できる
  • 破産債権者の負う債務が期限付・条件付・将来の請求権でも同様に相殺できる
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第68条相殺に供することができる破産債権の額相殺できる額には上限がある2項判例なし
  • 相殺に使える破産債権の額は、103条2項〈破産債権者の手続参加〉各号の区分に応じた額による
  • 無利息債権・定期金債権は、99条1項2号〈劣後的破産債権等 破産手続開始後に期限が到来すべき確定期限付債権で無利息のもののうち、破産手続開始の時から期限に至るまでの期間の年数(その期間に一年に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。)に応じた債権に対する破産手続開始の時における法定利率による利息の額に相当する部分〉から4号の部分を控除した額が上限
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第69条解除条件付債権を有する者による相殺解除条件付債権者は担保提供・寄託が必要1項判例 2件
  • 解除条件付債権で相殺する者は、消滅する債務額について担保提供か寄託が必要
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第70条停止条件付債権等を有する者による寄託の請求停止条件付債権者等は弁済額の寄託を請求できる1項判例 3件
  • 停止条件付債権・将来の請求権を持つ者は、弁済時に寄託を請求できる
  • 敷金返還請求権者が賃料債務を弁済する場合も同様に寄託請求できる
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第71条相殺の禁止破産債権者側からの相殺が禁止される場合がある2項・7号判例 5件
  • 開始後に破産財団に対して債務を負担したときは相殺できない
  • 支払不能・支払停止・開始申立て後に、それを知って債務を負担した場合も相殺できない
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第72条相手方からの相殺が禁止される場合がある2項・8号判例 29件
  • 開始後に他人の破産債権を取得したときは相殺できない
  • 支払不能・支払停止・開始申立て後に、それを知って債権を取得した場合も相殺できない
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第73条破産管財人の催告権破産管財人は相殺するか確答を催告できる2項判例 1件
  • 一定の時期以降、1月以上の期間を定めて相殺するか確答するよう催告できる
  • 対象は弁済期にある債務に限られ、期間内に確答がないと相殺を主張できなくなる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第67条破産法

1 保証人が主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合に保証人が取得する求償権の破産債権該当性
2 保証人が主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合に保証人が取得する求償権を自働債権とする相殺の可否

裁判要旨1 保証人が主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合において,保証人が主たる債務者である破産者に対して取得する求償権は,破産債権である。
2 保証人が主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合において,保証人が取得する求償権を自働債権とし,主たる債務者である破産者が保証人に対して有する債権を受働債権とする相殺は,破産法72条1項1号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。〉の類推適用により許されない。
(1,2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成24年5月28日 平成21(受)1567
登載
民集 第66巻7号3123頁
参照法条
(1,2につき)民法462条,破産法2条5項 (2につき)破産法67条1項,破産法72条1項1号
論点2第67条破産法

破産債権者が破産宣告の時において期限付又は停止条件付であり破産宣告後に期限が到来し又は停止条件が成就した債務に対応する債権を受働債権とし破産債権を自働債権として相殺をすることの可否

裁判要旨破産債権者は,破産者に対する債務がその破産宣告の時において期限付又は停止条件付である場合には,特段の事情のない限り,期限の利益又は停止条件不成就の利益を放棄したときだけでなく,破産宣告後に期限が到来し又は停止条件が成就したときにも,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)99条後段の規定により,その債務に対応する債権を受働債権とし,破産債権を自働債権として相殺をすることができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成17年1月17日 平成13(受)704
登載
民集 第59巻1号1頁
参照法条
破産法67条2項,破産法71条1項1号,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)99条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)104条1号
論点3第69条破産法

建物収去土地明渡請求及び賃料相当損害金請求訴訟の係属中に被告が破産宣告を受けた場合と破産宣告までに発生した賃料相当損害金請求部分の訴訟の受継の手続

裁判要旨建物収去土地明渡請求及び賃料椙当損害金請求訴訟の係属中に被告が破産宣告を受けた場合、破産宣告の前日までに発生した賃料相当損害金請求部分の訴訟は、破産法六九条〈解除条件付債権を有する者による相殺〉所定の破産財団に属する財産に関する訴訟ではなく、同法二四六条〈外国管財人の権限等〉所定の破産債権の確定を求める訴訟であつて、その受継は、同法二四六条、二四四条二項〈特定遺贈の承認又は放棄〉、二四七条〈相互の手続参加〉の定める手続によつてすることを要する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年5月17日 昭和58(オ)333
登載
集民 第142号1頁
参照法条
破産法69条,破産法244条,破産法246条,破産法247条,民訴法214条,民訴法218条
論点4第69条破産法

上告人が上告理由書提出期間経過後に破産宣告を受けた場合に受継手続を経ることなく民訴法四〇一条により上告棄却の判決をすることの可否

裁判要旨上告裁判所は、上告を理由なしと認める場合には、上告理由書提出期間の経過後に上告人が破産宣告を受けたときであっても、受継手続を経ることなく、口頭弁論を経ずに上告棄却の判決をすることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年9月9日 平成5(オ)747
登載
集民 第185号189頁
参照法条
民訴法214条,民訴法222条1項,民訴法401条,破産法69条,破産法246条
論点5第70条破産法

仮差押の債務者が破産宣告を受けたときと第三者異議の訴の利益の有無

裁判要旨仮差押の債務者が後に破産宣告を受けたときは、仮差押の執行は破産財団に対しては効力を失い、仮差押執行の排除を求める第三者異議の訴はその利益を有しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年1月29日 昭和44(オ)568
登載
民集 第24巻1号74頁
参照法条
民訴法549条,破産法70条
論点6第70条破産法

仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止のために担保が立てられた場合における債務者に対する破産宣告と担保の事由の消滅

裁判要旨仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止のために担保が立てられた場合において,債務者が破産宣告を受けたことの一事をもって,「担保の事由が消滅したこと」に該当するということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成14年4月26日 平成14(許)1
登載
集民 第206号401頁
参照法条
破産法70条1項,民訴法79条1項,民訴法259条,民訴法398条1項,民訴法400条2項,民事執行法39条1項
論点7第70条破産法

仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い担保を立てさせて強制執行停止等がされた場合における債務者に対する破産宣告と担保の事由の消滅

裁判要旨仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い担保を立てさせて強制執行の停止又は既にした執行処分の取消しがされた場合において,債務者が破産宣告を受けたことの一事をもって,「担保の事由が消滅したこと」に該当するということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成13年12月13日 平成13(許)21
登載
民集 第55巻7号1546頁
参照法条
破産法70条1項,民訴法79条1項,民訴法259条,民訴法398条1項,民訴法400条2項,民事執行法39条1項,民事執行法40条1項
論点8第71条破産法

一 指名債権譲渡の対抗要件と譲渡人の破産
二 民法施行法五条四号にいう「確定日附アル証書中ニ私署証書ヲ引用シタルトキ」の意義

裁判要旨一 指名債権の譲渡を受けた者は、破産宣告前に右譲渡について民法四六七条二項所定の対抗要件を具備しない限り、右債権の譲受をもつて破産管財人に対抗しえない。
二 民法施行法五条四号にいう「確定日附アル証書中ニ私署証書ヲ引用シタルトキ」とは、確定日付ある証書それ自体に当該私署証書の存在とその同一性が明確に認識しうる程度にその作成者、作成日、内容等の全部又は一部が記載されていることをいうと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年3月22日 昭和57(オ)973
登載
集民 第138号303頁
参照法条
民法467条2項,破産法6条1項,破産法71条,民法施行法5条4号
論点9第71条破産法

破産宣告後は破産財団に属する財産に対し新たに国税徴収法による差押をすることができるか

裁判要旨破産宣告後は、破産財団に属する財産に対し、財団債権である国税債権をもつて新たに国税徴収法による差押をすることはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年7月16日 昭和39(行ツ)47
登載
民集 第24巻7号879頁
参照法条
破産法47条2号,破産法71条,国税徴収法47条
論点10第71条破産法

破産者の財産に対する滞納処分手続における交付要求に係る配当金を交付すべき相手方

裁判要旨破産者の財産に対する滞納処分手続において交付要求がされたときは、交付要求に係る請求権に基づき破産宣告前に国税徴収法又は国税徴収の例による差押え又は参加差押えがされている場合を除き、交付要求に係る配当金は、破産管財人に交付すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成9年12月18日 平成8(行ツ)111
登載
集民 第186号685頁
参照法条
国税徴収法82条,国税徴収法129条1項,国税徴収法133条1項,破産法47条2号,破産法49条,破産法51条1項,破産法71条1項
論点11第71条破産法

破産者所有の不動産に対する競売手続における交付要求に係る配当金を交付すべき相手方

裁判要旨破産者所有の不動産に対する競売手続において交付要求がされたときは、交付要求に係る請求権に基づき破産宣告前に国税徴収法又は国税徴収の例による差押え又は参加差押えがされている場合を除き、交付要求に係る配当金は、破産管財人に交付すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年11月28日 平成7(オ)1937
登載
民集 第51巻10号4172頁
参照法条
民事執行法84条,民事執行法87条1項,民事執行法188条,破産法47条2号,破産法49条,破産法51条1項,破産法71条1項,破産法95条,国税徴収法82条
論点12第72条破産法

一 保証又は担保の供与と破産法七二条五号にいう無償行為

二 いわゆる同族会社の代表者で実質的な経営者でもある破産者が当該会社のためにした保証又は担保の供与が破産法七二条五号にいう無償行為に当たる場合

裁判要旨一 破産者が義務なくして他人のためにした保証又は担保の供与は、債権者の主たる債務者に対する出捐の直接の原因をなす場合であつても、破産者がその行為の対価として経済的利益を受けない限り、破産法七二条五号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。〉にいう無償行為に当たる。

二 いわゆる同族会社の代表者で実質的な経営者でもある破産者が義務なくして当該会社のために保証又は担保の供与をしたことを直接の原因として、債権者が当該会社に対して出損をしても、破産者がその行為の対価として経済的利益を受けない場合には、右行為は、破産法七二条五号にいう無償行為に当たる。
(一、二につき反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年7月3日 昭和58(オ)734
登載
民集 第41巻5号1068頁
参照法条
破産法72条5号
論点13第72条破産法

いわゆる同族会社の実質的な経営者である破産者が当該会社のためにした保証又は担保の供与が破産法七二条五号にいう無償行為に当たる場合

裁判要旨いわゆる同族会社の実質的な経営者である破産者が義務なくして当該会社のために保証又は担保の供与をしたことを直接の原因として、債権者が当該会社に対して出損をしても、破産者がその行為の対価として経済的利益を受けない場合には、右行為は、破産法七二条五号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。〉にいう無償行為に当たる。

(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和62年7月10日 昭和58(オ)735
登載
集民 第151号369頁
参照法条
破産法72条5号
論点14第72条破産法

立証についての釈明権の不行使が違法とされた事例

裁判要旨破産管財人が破産者のした代物弁済を否認してその相手方に対し目的物である中古トラックの価額償還を求める訴訟において、裁判所が価額償還請求権の発生を肯認する判断に達したが、否認権行使時の時価については原告の主たる立証の対象とならず、また被告もこれを積極的に争わないという場合に、代物弁済時及び相手方の処分時の価額については書証があつて、否認権行使時の時価が零であるとは到底考えられず、またその立証も可能であるなど判示のような事情があるときは、裁判所は、右時価の立証を促すべきであり、かかる措置に出ることなく、その立証がないとの理由で請求を排斥することは、釈明権不行使、審理不尽の違法を免れない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和61年4月3日 昭和58(オ)1447
登載
集民 第147号489頁
参照法条
破産法72条,破産法77条,民訴法127条
論点15第72条破産法

一 否認権行使の相手方が否認された行為のあつたのちに総破産債権が不存在となつたことを主張して否認権行使の効果を否定することの可否
二 総破産債権につき詐害行行為取消権の消滅時効が完成した場合と破産法七二条一号所定の否認権の消長

裁判要旨一 否認権の行使を受けた相手方は、否認された行為のあつたのちに破産者に対する債権がすべて消滅し、総破産債権が現存していないことを主張して否認権行使の効果を否定することはできない。
二 破産法七二条一号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。〉所定の否認権は、総破産債権者につき詐害行為取消権の消滅時効が完成しても、消滅しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和58年11月25日 昭和55(オ)134
登載
民集 第37巻9号1430頁
参照法条
破産法72条1号,破産法85条,民法426条
論点16第72条破産法

強制執行としてした行為と破産法七二条二号の適用

裁判要旨破産法七二条二号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。〉にいう「債務ノ消滅ニ関スル行為」には、同法七五条〈破産管財人に対する監督等〉の執行行為に基づくものをも含むが、この場合に、右行為に関しては、破産者が強制執行を受けるにつき害意ある加功をしたことを必要とするものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和57年3月30日 昭和56(オ)1072
登載
集民 第135号599頁
参照法条
破産法72条2号,破産法75条
論点17第72条破産法

破産者の行為が否認された場合と右行為を原因とする登記を原状に回復する登記の方法

裁判要旨破産者の行為が否認されたことを理由に右行為を原因とする登記を原状に回復するには、破産法一二三条〈期日終了後の破産者の異議〉の否認の登記によるべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年6月27日 昭和46(オ)242
登載
民集 第28巻5号641頁
参照法条
破産法72条,破産法123条
論点18第72条破産法

強制執行としてした行為と破産法七二条二号の適用

裁判要旨破産法七二条二号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。〉の債務消滅に関する行為とは、破産者の意思に基づく行為のみにかぎらず、賃権者が同法七五条の強制執行としてした行為であつて破産者の財産をもつて債務を消滅させる効果を生じさせる場合を含む。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年12月21日 昭和48(オ)544
登載
集民 第110号807頁
参照法条
破産法72条2号,破産法75条
論点19第72条破産法

破産者がした債務の弁済が否認され給付したものが破産財団に復帰した場合と連帯保証債務

裁判要旨破産者がした債務の弁済が破産管財人により否認され、その給付したものが破産財団に復帰したときは、さきにいつたん消滅した連帯保証債務は、当然復活する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年11月22日 昭和48(オ)726
登載
民集 第27巻10号1435頁
参照法条
破産法72条,破産法77条1項,破産法79条,民法446条,民法458条
論点20第72条破産法

破産法七二条一号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。〉但書と受益者の無過失の要否

裁判要旨破産法七二条一号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。〉による否認権行使の場合において、受益者が同号但書により否認を免れうるためには、その行為の当時破産債権者を害することを知らなかつたことが認められれば足り、その知らないことにつき過失がなかつたかどうかは問わないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年6月15日 昭和46(オ)912
登載
民集 第26巻5号1036頁
参照法条
破産法72条1号但書
論点21第72条破産法

詐欺を理由に取り消された法律行為に基づく利得を破産者が返還した場合と破産法七二条一号の適用

裁判要旨破産会社が、破産宣告を受ける前に、その経営が事実に反し健全であるかのように装つて第三者を欺罔し、新株の引受および貸付の意思表示をさせて金員の給付を受けたのち、その意思表示が詐欺を理由に取り消されたため、その利得の返還として同額の金員を同人に支払つた場合においても、破産債権者を害する意図のもとに支払をしたときは、その弁済について破産法七二条一号が適用されるものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年12月19日 昭和42(オ)699
登載
民集 第26巻10号1937頁
参照法条
破産法15条,破産法72条1号,民法96条,民法121条
論点22第72条破産法

一、債権者の代物弁済予約完結の行為が破産法第七二条第二号により否認されうる場合
二、右予約完結に際し代物弁済予約による所有権移転請求権保全の仮登記が存する場合およびその後右仮登記が権利放棄を理由に債権者により抹消された場合と破産法第七二条第二号による否認

裁判要旨一、債務の弁済期が未到来のため債権者が代物弁済一方の予約に基づく予約完結権を行使できない間に、債権者および債務者が債務者に対し破産の申立がされたことを知つて、両者が相通じ、債務者は期限の利−益を放棄して予約完結権の行使を誘致し、債権者は債務者に対し一方的予約完結の意思表示をし代物弁済の効力を生ぜしめた場合には、債権者の右予約完結の行為は破産法第七二条第二号により否認することができる。
二、右の場合において、債権者の代物弁済の予約による所有権移転請求権保全の仮登記がされているときは、特別の事情のないかぎり、破産管財人は、債権者の右行為を破産法第七二条第二号により否認することはできないが、右仮登記が、その後、権利放棄を理由に債権者により抹消されて右仮登記に基づく本登記がありえなくなつた場合には、債権者の右行為の当時に右仮登記が存したことをもつて否認権の行使をさまたげられるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年11月15日 昭和40(オ)1107
登載
民集 第22巻12号2629頁
参照法条
破産法72条2号,民法482条,不動産登記法2条2号,不動産登記法7条2項
論点23第72条破産法

支払停止後破産申立前になされた仮登記に基づいて破産管財人に対する本登録請求が認められた事例

裁判要旨売主の支払停止前になされた農地の売買について、知事の許可がなかつたため、買主において右支払停止後破産申立前に所有権移転請求権保全の仮登記を経たが、破産宣告が右仮登記後一年を超えてなされたときは、右仮登記についてもはや破産法第七四条第一項による否認をしえなくなり、買主は、右仮登記に基づいて、破産管財人に対し知事の許可を条件とする本登記を求めることができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年8月25日 昭和40(オ)1226
登載
集民 第88号285頁
参照法条
破産法84条,破産法72条,不動産登記法2条
論点24第72条破産法

一 破産債権を有する者が支払の停止または破産の申立があつたことを知つて破産者に対し債務を負担した場合と相殺の許否
二 破産債権者の相殺権行使は否認権の対象となるか

裁判要旨一 破産債権を有する者が支払の停止または破産の申立があつたことを知つて破産者に対し債務を負担した場合には、破産法第一〇四条第三号〈全部の履行をする義務を負う者が数人ある場合等の手続参加〉本文の相殺制限の規定は類推適用されない。
二 破産債権者の相殺権行使は、否認権の対象とならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年4月8日 昭和39(オ)1158
登載
民集 第20巻4号529頁
参照法条
破産法104条,破産法72条,破産法98条
論点25第72条破産法

否認権の行使による返還金に付すべき利息の利率。

裁判要旨破産会社の銀行に対する債権譲渡行為が否認された結果、右銀行が該債権の取立によつて得た金員相当額を返還する場合において、これに付すべき利息は、年六分の商事法定利率によるのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年4月22日 昭和36(オ)1095
登載
民集 第19巻3号689頁
参照法条
破産法72条,破産法77条,商法514条
論点26第72条破産法

一 大口債権者に対する代物弁済等に破産債権者を害する意思が認められないとされた事例。
二 破産法第八四条〈破産管財人の職務の執行の確保〉の適用と当事者の主張の要否。

裁判要旨一 大口債権者が本件土地の所有権を取得することによりその債務が消滅すれば、残る小口債権者に対する支払は必ずしも困難ではなく、破産会社の債権、操業再開も必ずしも不可能でないということを破産会社の首脳部が信じてなした本件土地の右大口債権者に対する代物弁済契約もしくは根抵当権設定契約に破産債権者を害する意思が認められないとしたことに違法がない。
二 否認の主張が破産法第八四条所定の要件に該当するときは、相手方の主張をまつことなく、同条を適用して否認権行使ができないと判断しなければならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年4月22日 昭和37(オ)1262
登載
集民 第78号695頁
参照法条
破産法72条1号,破産法84条
論点27第72条破産法

破産債権者のする相殺権の行使は否認権の対象となるか。

裁判要旨破産債権者の相殺権の行使は、破産法第一〇四条〈全部の履行をする義務を負う者が数人ある場合等の手続参加〉の制限に服するのみであつて、同法第七二条〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。〉各号の否認権の対象となることはないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年4月22日 昭和39(オ)1216
登載
集民 第78号739頁
参照法条
破産法104条,破産法72条
論点28第72条破産法

破産者に対する強制執行に基づく配当行為に対する否認権の行使を認めた事例。

裁判要旨破産法第七二条第二号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。〉の債務の消滅に関する行為には、破産者に対する強制執行に基づく配当行為も含まれ、これに対する否認権行使が許される。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年7月29日 昭和38(オ)916
登載
集民 第74号797頁
参照法条
破産法72条2号,破産法75条
論点29第72条破産法

一 執行行為に基づく弁済の否認と破産法第七二条第一号の適用
二 破産法第七二条第一号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。〉による否認権行使における受益者の悪意の立証責任

裁判要旨一 破産者が強制執行を受けるについて害意ある加功をなした場合には、執行行為に基づく破産者の弁済は、破産法第七二条第一号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。〉によつて否認されうる。
二 破産法第七二条第一号による否認権行使においては、否認を免れようとする受益者がその行為の当時破産債権者を害することを知らなかつたことの立証責任を負う。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年12月6日 昭和37(オ)422
登載
民集 第16巻12号2313頁
参照法条
破産法75条,破産法72条1号,民訴法258条
論点30第72条破産法

一 約束手形の裏書人たる破産者が被裏書人から手形を受け戻すにつき手形金額の支払をした場合と破産法第七三条第一項の類推適用の有無
二 破産法第七三条第一項〈破産管財人の催告権〉にいう「手形ノ支払」と「債務者ノ一人又ハ数人ニ対スル手形上ノ権利」の意義

裁判要旨一 約束手形の裏書人たる破産者が被裏書人から手形を受け戻すにつき手形金額の支払をした場合には破産法第七三条第一項は類推適用のされない。
二 破産法第七三条第一項〈破産管財人の催告権〉にいう「手形ノ支払」とは、約束手形にあつては振出人の支払を指し、「債務者ノ一人又ハ数人ニ対スル手形上ノ権利」とは、手形所持人の前者に対する遡及権を指すにほかならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年11月20日 昭和33(オ)689
登載
民集 第16巻11号2293頁
参照法条
破産法73条,破産法72条,手形法43条,手形法53条,手形法777条1項,手形法77条1項
論点31第72条破産法

動産の買主が転売先から取り戻した右動産を売主に対する売買代金債務の代物弁済に供した行為が破産法七二条四号による否認の対象になるとされた事例

裁判要旨甲から動産を買い受けた乙がこれを丙に転売して引き渡したことにより、甲が右動産に対して動産売買の先取特権を行使し得なくなったところ、その後に支払を停止した乙が、右動産を甲に返還する意図の下に、丙との間で転売契約を合意解除して右動産を取り戻した上、甲に対する右動産の売買代金債務の代物弁済に供したなど判示の事実関係の下においては、乙が右動産を代物弁済に供した行為は、破産法七二条四号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 破産手続開始の申立てがあった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、破産手続開始の申立てがあったことを知っていたとき。〉による否認の対象になる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成9年12月18日 平成7(オ)863
登載
民集 第51巻10号4210頁
参照法条
破産法72条4号,民法322条,民法333条
論点32第72条破産法

特定の債務の弁済に充てる約定で借り入れた金員による当該債務の弁済が破産法七二条一号による否認の対象とならないとされた事例

裁判要旨破産者が特定の債務の弁済に充てる約定の下に借り入れた金員により当該債務を弁済した場合において、借入債務が弁済された債務より利息などその態様において重くなく、また、破産者が、右約定をしなければ借入れができず、貸主及び弁済を受ける債権者の立会いの下に借入後その場で直ちに右弁済をしており、右約定に違反して借入金を他の使途に流用したり、借入金が差し押さえられるなどして右約定を履行できなくなる可能性も全くなかったなど判示の事実関係の下では、右弁済は、破産法七二条一号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。〉による否認の対象とならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成5年1月25日 平成1(オ)1062
登載
民集 第47巻1号344頁
参照法条
破産法72条1号
論点33第72条破産法

給与支給機関が地方公務員等共済組合法一一五条二項に基づきD組合の組合員である地方公務員の給与から貸付金残額を控除して右組合に払い込む行為と破産法七二条二号による否認

裁判要旨給与支給機関が、地方公務員等共済組合法一一五条二項に基づき、D組合の組合員である地方公務員の給与から未返済の貸付金に相当する金額を控除してこれを右組合に払い込む行為は、破産法七二条二号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。〉による否認の対象となる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成2年7月19日 昭和62(オ)1083
登載
民集 第44巻5号837頁
参照法条
地方公務員等共済組合法115条2項,破産法72条2号
論点34第72条破産法

給与支給機関が国家公務員等共済組合法一〇一条二項に基づきD組合の組合員である国家公務員の給与から貸付金残額を控除して右組合に払い込む行為と破産法七二条二号による否認

裁判要旨給与支給機関が、国家公務員等共済組合法一〇一条二項に基づき、D組合の組合員である国家公務員の給与から未返済の貸付金に相当する金額を控除してこれを右組合に払い込む行為は、破産法七二条二号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。〉による否認の対象となる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成2年7月19日 昭和63(オ)1457
登載
民集 第44巻5号853頁
参照法条
国家公務員等共済組合法101条2項,破産法72条2号
論点35第72条破産法

一 使用者が労働者の同意を得て労働者の退職金債権に対してする相殺と労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条・一項本文
二 使用者が労働者の同意の下に労働者の退職金債権等に対してした相殺が有効とされた事例
三 使用者が労働者の同意の下に労働者の退職金債権等に対してして相殺が否認権行使の対象とならないとされた事例

裁判要旨一 使用者が労働者の同意を得て労働者の退職金債権に対してする相殺は、右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条一項本文に違反しない。
二 甲会社の従業員乙が、銀行等から住宅資金の貸付けを受けるに当たり、退職時には乙の退職金等により融資残債務を一括返済し、甲会社に対しその返済手続を委任する等の約定をし、甲会社が、乙の同意の下に、右委任に基づく返済費用前払請求権をもつて乙の有する退職金債権等と相殺した場合において、右返済に関する手続を乙が自発的に依頼しており、右貸付けが低利かつ相当長期の挽割弁済の約定の下にされたものであつて、その利子の一部を甲会社が負担する措置が執られるなど判示の事情があるときは、右相殺は、乙の自由な意思に基づくものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在したものとして、有効と解すべきである。
三 甲会社の従業員乙が、銀行等から住宅資金の貸付けを受けるに当たり、退職時には乙の退職金等により融資残債務を一括返済し、甲会社に対しその返済手続を委任する等の約定をした場合において、甲会社が、乙の破産宣告前、右約定の趣旨を確認する旨の乙の同意の下に、右委任に基づく返済費用前払請求権をもつてした乙の有する退職金債権等との相殺は、否認権行使の対象とならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成2年11月26日 昭和63(オ)4
登載
民集 第44巻8号1085頁
参照法条
労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)24条1項,民法91条,民法505条1項,破産法72条,破産法98条
論点36第72条破産法

一 給与支給機関が地方公務員等共済組合法一一五条二項に基づき地方公務員共済組合の組合員である地方公務員の給与から貸付金残額を控除して右組合に払い込む行為と破産法七二条二号による否認
二 給与支給機関が地方公務員等共済組合法一一五条二項に基づき地方公務員共済組合の組合員である地方公務員の退職手当から貸付金残額を控除して右組合に払い込んだ場合と破産法七二条二号による否認の範囲

裁判要旨一 給与支給機関が、地方公務員等共済組合法一一五条二項に基づき、地方公務員共済組合の組合員である地方公務員の給与から未返済の貸付金に相当する金額を控除してこれを右組合に払い込む行為は、破産法七二条二号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。〉による否認の対象となる。
二 給与支給機関が、地方公務員等共済組合法一一五条二項に基づき、地方公務員共済組合の組合員である地方公務員の退職手当から未返済の貸付金に相当する金額を控除してこれを右組合に払い込んだ場合には、その全額について破産法七二条二号により否認することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成2年10月2日 昭和59(オ)454
登載
集民 第161号1頁
参照法条
地方公務員等共済組合法115条2項,破産法72条2号,民事執行法152条2項
論点37第72条破産法

債権譲渡人について支払停止又は破産の申立てがあったことを停止条件とする債権譲渡契約に係る債権譲渡と破産法72条2号による否認

裁判要旨債権譲渡人について支払停止又は破産の申立てがあったことを停止条件とする債権譲渡契約に係る債権譲渡は,破産法72条2号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。〉に基づく否認権行使の対象となる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年9月14日 平成15(受)339
登載
集民 第215号171頁
参照法条
破産法72条2号,民法127条1項,民法466条
論点38第72条破産法

債権譲渡人について支払停止又は破産の申立てがあったことを停止条件とする債権譲渡契約に係る債権譲渡と破産法72条2号による否認

裁判要旨債権譲渡人について支払停止又は破産の申立てがあったことを停止条件とする債権譲渡契約に係る債権譲渡は,破産法72条2号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。〉に基づく否認権行使の対象となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成16年7月16日 平成13(受)1797
登載
民集 第58巻5号1744頁
参照法条
破産法72条2号,民法127条1項,民法466条
論点39第72条破産法

請負人である破産者の支払の停止の前に締結された請負契約に基づく注文者の破産者に対する違約金債権の取得が,破産法72条2項2号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 支払不能であったこと又は支払の停止若しくは破産手続開始の申立てがあったことを破産者に対して債務を負担する者が知った時より前に生じた原因〉にいう「前に生じた原因」に基づく場合に当たり,上記違約金債権を自働債権とする相殺が許されるとされた事例

裁判要旨請負人である破産者Aが,その支払の停止の前に,注文者Yとの間で複数の請負契約を締結していた場合において,上記の各請負契約に,Aの責めに帰すべき事由により工期内に工事が完成しないときはYが当該請負契約を解除することができるとの約定及び同約定により当該請負契約が解除されたときはYが一定額の違約金債権を取得するとの約定があるという事実関係の下では,YがAの支払の停止を知った後に上記の各約定に基づき上記各請負契約のうち工事が未完成であるものを解除して各違約金債権を取得したことは,破産法72条2項2号〈破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。 支払不能であったこと又は支払の停止若しくは破産手続開始の申立てがあったことを破産者に対して債務を負担する者が知った時より前に生じた原因〉にいう「支払の停止があったことを破産者に対して債務を負担する者が知った時より前に生じた原因」に基づく場合に当たり,上記各違約金債権を自働債権,上記各請負契約のうち報酬が未払のものに基づく各報酬債権を受働債権とする相殺は,自働債権と受働債権とが同一の請負契約に基づくものであるか否かにかかわらず,許される。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和2年9月8日 平成31(受)61
登載
民集 第74巻6号1643頁
参照法条
破産法72条1項3号,破産法72条2項2号
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

破産法 第67条(相殺権) 詳細ページ
(相殺権)
第六十七条破産債権者は、破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは、破産手続によらないで、相殺をすることができる。
2破産債権者の有する債権が破産手続開始の時において期限付若しくは解除条件付であるとき、又は第百三条第二項第一号に掲げるものであるときでも、破産債権者が前項の規定により相殺をすることを妨げない。破産債権者の負担する債務が期限付若しくは条件付であるとき、又は将来の請求権に関するものであるときも、同様とする。
破産法 第68条(相殺に供することができる破産債権の額) 詳細ページ
(相殺に供することができる破産債権の額)
第六十八条破産債権者が前条の規定により相殺をする場合の破産債権の額は、第百三条第二項各号に掲げる債権の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額とする。
2前項の規定にかかわらず、破産債権者の有する債権が無利息債権又は定期金債権であるときは、その破産債権者は、その債権の債権額から第九十九条第一項第二号から第四号までに掲げる部分の額を控除した額の限度においてのみ、相殺をすることができる。
破産法 第69条(解除条件付債権を有する者による相殺) 詳細ページ
(解除条件付債権を有する者による相殺)
第六十九条解除条件付債権を有する者が相殺をするときは、その相殺によって消滅する債務の額について、破産財団のために、担保を供し、又は寄託をしなければならない。
破産法 第70条(停止条件付債権等を有する者による寄託の請求) 詳細ページ
(停止条件付債権等を有する者による寄託の請求)
第七十条停止条件付債権又は将来の請求権を有する者は、破産者に対する債務を弁済する場合には、後に相殺をするため、その債権額の限度において弁済額の寄託を請求することができる。敷金の返還請求権を有する者が破産者に対する賃料債務を弁済する場合も、同様とする。
破産法 第71条(相殺の禁止) 詳細ページ
(相殺の禁止)
第七十一条破産債権者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。
一破産手続開始後に破産財団に対して債務を負担したとき。
二支払不能になった後に契約によって負担する債務を専ら破産債権をもってする相殺に供する目的で破産者の財産の処分を内容とする契約を破産者との間で締結し、又は破産者に対して債務を負担する者の債務を引き受けることを内容とする契約を締結することにより破産者に対して債務を負担した場合であって、当該契約の締結の当時、支払不能であったことを知っていたとき。
三支払の停止があった後に破産者に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。
四破産手続開始の申立てがあった後に破産者に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、破産手続開始の申立てがあったことを知っていたとき。
2前項第二号から第四号までの規定は、これらの規定に規定する債務の負担が次の各号に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、適用しない。
一法定の原因
二支払不能であったこと又は支払の停止若しくは破産手続開始の申立てがあったことを破産債権者が知った時より前に生じた原因
三破産手続開始の申立てがあった時より一年以上前に生じた原因
破産法 第72条 詳細ページ
第七十二条破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。
一破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。
二支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。
三支払の停止があった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。
四破産手続開始の申立てがあった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、破産手続開始の申立てがあったことを知っていたとき。
2前項第二号から第四号までの規定は、これらの規定に規定する破産債権の取得が次の各号に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、適用しない。
一法定の原因
二支払不能であったこと又は支払の停止若しくは破産手続開始の申立てがあったことを破産者に対して債務を負担する者が知った時より前に生じた原因
三破産手続開始の申立てがあった時より一年以上前に生じた原因
四破産者に対して債務を負担する者と破産者との間の契約
破産法 第73条(破産管財人の催告権) 詳細ページ
(破産管財人の催告権)
第七十三条破産管財人は、第三十一条第一項第三号の期間が経過した後又は同号の期日が終了した後は、第六十七条の規定により相殺をすることができる破産債権者に対し、一月以上の期間を定め、その期間内に当該破産債権をもって相殺をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、破産債権者の負担する債務が弁済期にあるときに限る。
2前項の規定による催告があった場合において、破産債権者が同項の規定により定めた期間内に確答をしないときは、当該破産債権者は、破産手続の関係においては、当該破産債権についての相殺の効力を主張することができない。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。