会社法 / テーマ別まとめ

役員の責任と株主代表訴訟

取締役が負う義務、会社・第三者への損害賠償責任、責任を軽くする3つの方法、そして株主が訴える手続。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

取締役をはじめとする役員等は、会社に対して法令・定款・株主総会決議を守り忠実に職務を行う義務を負い、これに違反して任務を怠れば、会社や第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。この責任は総株主の同意がなければ全部免除できないが、善意で重大な過失がない場合に限り、株主総会決議による一部免除や責任限定契約により軽減する道が用意されている。会社が責任追及を怠るときは、一定の株主が自ら会社のために訴えを提起して役員等の責任を追及することができる。

役員等の種類ごとの責任比較表
役員等の種類会社への責任(423条)第三者への責任(429条)一部免除の可否(425条)責任限定契約(427条)
取締役任務懈怠で賠償責任(推定あり)悪意・重過失、虚偽記載等も対象総会決議で一部免除可※非業務執行取締役のみ可
会計参与任務懈怠で賠償責任悪意・重過失、計算書類虚偽記載等総会決議で一部免除可締結可
監査役任務懈怠で賠償責任悪意・重過失、監査報告虚偽記載等総会決議で一部免除可締結可
執行役任務懈怠で賠償責任(推定あり)悪意・重過失、虚偽記載等も対象総会決議で一部免除可※不可(対象外)
会計監査人任務懈怠で賠償責任悪意・重過失、会計監査報告虚偽等総会決議で一部免除可締結可
  • ※取締役・執行役が自己のためにした取引(356条1項2号の自己取引)による責任は、不可抗力を理由に免れることができず、一部免除・責任限定契約のいずれも適用されない(428条)。
  • 会社に対する責任は、総株主の同意があれば全部免除できる(424条)。表の「一部免除」は善意かつ重大な過失がない場合に限る一部免除(425条)を指す。
  • 責任限定契約を結べるのは非業務執行取締役等(業務執行取締役等を除く取締役・会計参与・監査役・会計監査人)に限られ、執行役は対象に含まれない(427条1項)。
  • 監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では、取締役・執行役の責任の一部免除の議案を総会に提出するには監査役等の同意が必要(425条3項)。
  • 役員等が会社又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合、他の役員等も責任を負うときは、これらの者は連帯債務者となる(430条、種類を問わず共通)。
  • 監査役設置会社(取締役2人以上)等では、定款の定めにより取締役の過半数の同意又は取締役会決議で責任を免除できる旨を定めることができる(426条)。

この表の根拠: 会社法、公認会計士法(条文原文はe-Gov法令検索から取得)

表

承認が必要な取引の全一覧

会社法第356条の項・号をすべて展開しています。号の本文はe-Gov原文そのまま。関連条文のチップにカーソルを合わせるとその条の見出しが出ます。

一覧を表示
号対象となる株主総会(条文原文)関連条文
株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認が必要な取引会社法 第356条第1項取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。該当 3 号
一取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。―
二取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。―
三株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。―
民法の自己契約・双方代理規定の適用除外会社法 第356条第2項民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号又は第三号の取引については、適用しない。
1

役員は会社とどういう関係か

そもそも何を根拠に義務を負うのか

第330条株式会社と役員等との関係会社と役員等の関係は委任と同じ1項判例 2件
  • 会社と取締役・会計参与・監査役・会計監査人の関係は委任に関する規定に従う
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第355条忠実義務法令・定款・総会決議を守り忠実に職務1項判例 1件
  • 取締役は法令・定款・株主総会決議を遵守する義務を負う
  • 会社のため忠実に職務を行う義務も負う
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
2

やる前に承認が要る取引

競業・利益相反はどこまで許されるか

第356条競業及び利益相反取引の制限競業・利益相反取引は総会承認が必要2項・3号旧商法 20件
  • 取締役が自己・第三者のため会社の事業と同種の取引をするには総会承認が必要
  • 取締役が自己・第三者のため会社と直接取引するにも総会承認が必要
  • 会社が取締役の債務を保証するなど利益相反行為にも総会承認が必要
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第365条競業及び取締役会設置会社との取引等の制限取締役会設置会社は取締役会が承認2項旧商法 20件
  • 取締役会設置会社では356条〈競業及び利益相反取引の制限〉の「株主総会」は「取締役会」と読み替える
  • 承認を受けて取引した取締役は取引後遅滞なく取締役会に重要事実を報告する
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
3

会社に損害を与えたとき

任務を怠った場合の賠償責任

第423条役員等の株式会社に対する損害賠償責任任務を怠ると会社への賠償責任を負う4項・3号判例 8件
  • 取締役・会計参与・監査役・執行役・会計監査人は任務を怠ると会社に賠償責任を負う
  • 競業取引の規定に違反したときは得た利益の額を損害額と推定する
  • 利益相反取引で会社に損害が生じたときは関与した取締役等の任務懈怠を推定する
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
4

責任を軽くする3つの方法

総会決議・定款+取締役会・責任限定契約の使い分け

第425条責任の一部免除善意無重過失なら一部免除可5項・8号判例なし
  • 悪意・重過失がなければ最低責任限度額を超える分は株主総会決議で免除できる
  • 免除できる額は年間報酬相当額の6倍(代表)・4倍(業務執行取締役等)・2倍(その他)を控除
  • 監査役設置会社等では免除の議案提出に監査役等の同意が必要
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第426条取締役等による免除に関する定款の定め定款で取締役会決議等による免除も可能8項判例なし
  • 監査役設置会社等は定款の定めにより取締役の過半数同意等で免除できる
  • 免除に異議がある株主が述べる期間は1箇月を下ることができない
  • 総株主の議決権の3%以上(定款で引下げ可)が異議を述べれば免除できない
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第427条責任限定契約非業務執行取締役等と責任限定契約を結べる5項・3号判例なし
  • 対象は非業務執行取締役・会計参与・監査役・会計監査人で執行役は対象外
  • 限度額は定款の範囲内で会社が定めた額と最低責任限度額の高い方
  • 契約後に業務執行取締役等に就任すると契約は将来に向かって効力を失う
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
5

会社の外の人への責任

第三者が直接請求できる場合

第429条役員等の第三者に対する損害賠償責任悪意・重過失で第三者に賠償責任2項・4号判例なし
  • 役員等に悪意又は重大な過失があれば第三者に生じた損害を賠償する責任を負う
  • 取締役・執行役は募集時の虚偽通知や虚偽の登記・公告等でも責任を負い得る
  • 会計参与・監査役等・会計監査人もそれぞれの書類の虚偽記載で責任を負い得る
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
6

株主が訴える

株主代表訴訟の手続と期間

第847条株主による責任追及等の訴え六箇月保有の株主が責任追及の訴えを請求5項判例 4件
  • 六箇月前から株式を保有する株主が会社に提訴を請求できる(非公開会社は保有期間不要)
  • 請求から60日以内に会社が提訴しなければ株主自ら会社のために提訴できる
  • 回復できない損害のおそれがあるときは60日を待たず直ちに提訴できる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第330条会社法

A社が事業再編計画の一環としてB社の株式を任意の合意に基づき買い取る場合において,A社の取締役に上記株式の買取価格の決定について善管注意義務違反はないとされた事例

裁判要旨不動産賃貸あっせんのフランチャイズ事業等を展開するA社が,事業再編計画の一環としてB社を完全子会社とする目的で同社の株式を任意の合意に基づき買い取る場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,株式交換に備えて算定された上記株式の評価額が1株当たり6561円ないし1万9090円であったとしても,上記株式の買取価格をB社の設立時の株式の払込金額を基準として1株当たり5万円とする決定をしたことについて,A社の取締役が取締役としての善管注意義務に違反したということはできない。
(1) B社の株主には,A社が事業の遂行上重要であると考えていた上記フランチャイズ事業の加盟店等が含まれる。
(2) 非上場株式である上記株式の評価額には相当の幅があり,事業再編の効果によるB社の企業価値の増加も期待できた。
(3) 上記の決定に至る過程で,A社の役付取締役全員により構成される経営会議において検討がされ,弁護士の意見も聴取されるなどの手続が履践された。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成22年7月15日 平成21(受)183
登載
集民 第234号225頁
参照法条
会社法330条,会社法355条,会社法423条1項,会社法847条,民法644条
論点2第330条会社法

1 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合における破産手続の終了と刑訴法339条1項4号にいう「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」
2 破産手続開始当時の会社を代表する権限を有する取締役と当該会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続についての代表権の有無
3 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合における破産手続の終了と当該刑事事件に係る訴訟手続についての取締役の代表権の消長
4 汚水を下水道に放流する行為が下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)の罰則の対象となり得ることと廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)16条〈通知義務〉違反の罪の成否

裁判要旨1 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件が係属している場合には、破産手続が終了したとしても、刑訴法339条1項4号にいう「被告人たる法人が存続しなくなつたとき」に当たらない。
2 破産手続開始当時の会社を代表する権限を有する取締役は、破産手続開始によりその地位を当然には失わず、破産手続が終了するまでの間、当該会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続について当該会社を代表する。
3 破産手続開始の決定を受けた株式会社を被告人とする刑事事件に係る訴訟手続について当該会社を代表する取締役は、会社法478条1項2号〈清算人の就任 定款で定める者〉又は3号に掲げる者がある場合を除き、破産手続の終了後は、当該刑事事件に係る訴訟手続について清算人の立場で当該会社を代表する。
4 汚水を下水道に放流する行為は、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)によって基準に適合しない下水の排除として規制され、同法の罰則の対象となり得るとしても、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)16条〈通知義務〉違反の罪が成立し得る。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和8年4月7日 令和6(あ)1479
登載
―
参照法条
(1、3につき)会社法475条1号、会社法476条、会社法481条1号 (1につき)刑訴法339条1項4号 (2、3につき)刑訴法27条1項 (2につき)会社法330条、会社法349条1項、民法653条2号、破産法78条1項 (3につき)会社法478条1項、会社法483条1項 (4につき)廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)1条、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)16条、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)25条1項14号、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和4年法律第68号による改正前のもの)32条1項、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)1条、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)12条の2第1項、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)38条1項1号、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)45条、下水道法(令和3年法律第31号による改正前のもの)46条1項1号
論点3第356条旧商法下の裁判例

取締役と会社との取引が株主全員の合意によつてされた場合と取締役会の承認

裁判要旨取締役と会社との取引が株主全員の合意によつてされた場合には、右取引につき取締役会の承認を要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年9月26日 昭和47(オ)1225
登載
民集 第28巻6号1306頁
参照法条
商法265条
論点4第356条旧商法下の裁判例

会社から貸金の返還を求められた取締役と商法二六五条違反の主張

裁判要旨会社が取締役に貸し付けた金員の返還を求めた場合に、その取締役は、商法二六五条違反を理由として右貸付けの無効を主張することができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和48年12月11日 昭和48(オ)531
登載
民集 第27巻11号1529頁
参照法条
商法265条
論点5第356条旧商法下の裁判例

一、株式会社がその取締役が代表取締役となつている他の株式会社のために為替手形に引受をする行為と商法二六五条
二、商法二六五条に違反して株式会社が引受をした為替手形を取得した第三者に対する会社の手形上の責任

裁判要旨一、株式会社が、その取締役が代表取締役となつている他の株式会社のために為替手形に引受をする行為は、原則として、商法二六五条にいう取引にあたる。
二、甲株式会社が、その取締役が代表取締役となつている乙株式会社のために、商法二六五条に違反して、為替手形に引受をした場合において、甲会社は、右手形を裏書により取得した第三者に対しては、右手形が甲会社において前述のように乙会社のために引き受けたものであり、かつ、その引受につき取締役会の承認がなかつたことについて、右第三者が悪意であつたことを主張・立証しないかぎり、引受人としての責任を免かれない。
(一につき意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年2月22日 昭和42(オ)1258
登載
集民 第105号155頁
参照法条
商法265条
論点6第356条旧商法下の裁判例

会社が自己の取締役が代表取締役を兼ねている他の会社に宛てて約束手形を振り出す行為と商法二六五条

裁判要旨会社が自己の取締役が代表取締役を兼ねている他の会社に宛てて約束手形を振り出す行為は、原則として、商法二六五条にいわゆる取引にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和46年12月23日 昭和41(オ)556
登載
集民 第104号783頁
参照法条
商法265条
論点7第356条旧商法下の裁判例

一、株式会社がその取締役にあてて約束手形を振り出す行為と商法二六五条
二、商法二六五条に違反して株式会社が振り出した約束手形を取得した第三者に対する会社の手形上の責任
三、約束手形の振出につき手形上の記載にかかわらず商法二六五条の適用がないとされた事例

裁判要旨一、株式会社がその取締役にあてて約束手形を振り出す行為は、原則として、商法二六五条にいう取弓にあたる。
二、株式会社は、商法二六五条に違反して振り出した約束手形を裏書により取得した第三者に対しては、右手形が会社からその取締役にあてて振り出され、かつ、その振出につき取締役会の承認がなかつたことについて、右第三者が悪意であつたことを主張・立証しないかぎり、振出人としての責任を免れない。
三、株式会社振出の約束手形において、受取人の記載が右会社の取締役になつている場合でも、現実には、右会社が受取人欄白地の約束手形を振り出して直接取締役以外の者に交付し、その者が右取締役から受取人欄の補充と裏書を受けたものであるときは、商法二五六条の適用はない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和46年10月13日 昭和42(オ)1464
登載
民集 第25巻7号900頁
参照法条
商法265条
論点8第356条旧商法下の裁判例

商法二六五条所定の取引につき取締役会の承認を要しないとされた事例

裁判要旨会社と取締役間に商法二六五条所定の取引がなされる場合でも、右取締役が会社の全株式を所有し、会社の営業が実質上右取締役の個人経営のものにすぎないときは、右取引によつて両者の間に実質的に利害相反する関係を生ずるものでなく、右取引については、同条所定の取締役会の承認を必要としない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年8月20日 昭和43(オ)335
登載
民集 第24巻9号1305頁
参照法条
商法265条
論点9第356条旧商法下の裁判例

甲乙両会社の代表取締役が甲会社の債務につき乙会社を代表してする保証と商法二六五条

裁判要旨甲乙両会社の代表取締役を兼ねている者が、甲会社の債務につき乙会社を代表してする保証は、甲会社の利益にして、乙会社に不利益を及ぼす行為であつて、商法二六五条にいう取締役が第三者のためにする取引にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年4月23日 昭和41(オ)223
登載
民集 第24巻4号364頁
参照法条
商法265条
論点10第356条旧商法下の裁判例

商法二六五条にいう取引にあたるとされた事例

裁判要旨取締役が会社を代表して債権者に対し連帯保証契約を締結する行為は、商法二六五条にいう取引にあたる。
(意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年3月12日 昭和44(オ)610
登載
集民 第98号365頁
参照法条
商法265条
論点11第356条旧商法下の裁判例

株式会社の取締役が使用人として給料の支払を受ける場合と取締役会の承認

裁判要旨株式会社の取締役が、会社の使用人たる地位を兼ね、会社から使用人としての給料の支払を受ける場合には、右給料の支払につき取締役会の承認を受けなければならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年9月3日 昭和42(オ)461
登載
集民 第92号163頁
参照法条
商法265条
論点12第356条旧商法下の裁判例

一、商法第二六五条にいう取引の意義
二、商法第二六五条に違反する取引の効力

裁判要旨一、商法第二六五条にいう取引には、取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反行為のみならず、取締役個人の債務について、その取締役が会社を代表して、債権者に対し債務引受をする等取締役個人の利益となり会社に不利益を与える行為も包含されるものと解すべきである。
二、会社は、商法第二六五条に違反する取引のうち、取締役と会社との間に直接成立すべき取引については、右取締役に対して、その無効を主張することができるが、取締役が会社を代表して自己のためにした会社以外の第三者との間の取引については、右第三者が取締役会の承認を受けていなかつたことについて悪意であるときにかぎり、その無効を主張することができる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和43年12月25日 昭和42(オ)1327
登載
民集 第22巻13号3511頁
参照法条
商法265条
論点13第356条旧商法下の裁判例

一 理由不備の違法があるとされた事例
二 株式会社の一人の清算人がした自己あてにした取引の効力

裁判要旨かりに株式会社の清算手続が清算人ひとりですることができるとしても、その清算人は、特段の事情のないかぎり清算会社と取引することができず、これに違反する取引は無効である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年12月15日 昭和42(オ)460
登載
集民 第89号427頁
参照法条
民訴法395条1項6号,商法430条2項,商法265条
論点14第356条旧商法下の裁判例

一 中小企業等協同組合法に基づく協同組合と株式会社間の取引においてその組合の代表理事が右会社の代表取締役を兼ねているときと同法第三八条の準用。
二 中小企業等協同組合法に基づく協同組合の理事会の招集につき一部の理事に対する通知もれと理事会の決議の効力。

裁判要旨一 中小企業等協同組合法に基づく協同組合と株式会社間に取引がされた場合において、その組合の代表理事が右会社の代表取締役を兼ねているときには、前記取引について同法第三八条の規定が準用されると解すべきである。
二 中小企業等協同組合法に基づく協同組合の理事会の招集につき一部の理事に対し通知もれがの違法があつたときは、原則として、右理事会の決議は無効であるが、右理事が出席しても理事会の決議の結果になんらの影響がないときは、右理事会の決議の効力に消長を来さないと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年8月28日 昭和36(オ)1147
登載
民集 第18巻7号1366頁
参照法条
中小企業等協同組合法38条,中小企業等協同組合法36条の3,中小企業等協同組合法42条,商法265条
論点15第356条旧商法下の裁判例

代位弁済と商法第二六五条。

裁判要旨取締役が第三者の会社に対する債務を代位弁済した場においては、取締役の右行為は、債務の履行に関する行為というべきであつて、なんら会社に不利益を与えるものではないから、商法第二六五条の取引に該当しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年2月6日 昭和35(オ)672
登載
集民 第72号53頁
参照法条
商法265条
論点16第356条旧商法下の裁判例

手形裏書が商法第二六五条の取引にあたらないとされた事例。

裁判要旨会社が約束手形を取締役に裏書譲渡するに際し、取締役から手形金額と同額の金員の交付を受けた場合においては、右手形裏書は、商法第二六五条の取引に該当しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月28日 昭和34(オ)1228
登載
民集 第18巻1号180頁
参照法条
商法265条
論点17第356条旧商法下の裁判例

約束手形の振出は商法第二六五条にいう取引にあたるか。

裁判要旨株式会社がその取締役に対して約束手形を振り出す行為は、商法第二六五条にいう取引にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年3月14日 昭和35(オ)1139
登載
民集 第17巻2号335頁
参照法条
商法265条
論点18第356条旧商法下の裁判例

会社の代表者が自己の利を図る目的で会社の名においてした行為の会社に及ぼす効力。

裁判要旨会社の代表者がその権限を濫用し会社の損害において自己の利を図る目的で会社の名においてした行為は、相手方において右権限濫用の事実を知つていたという事実関係のもとでは、商法第二六五条の適用を問題とするまでもなく、その効力を会社に及ぼさない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年1月31日 昭和36(オ)798
登載
集民 第64号281頁
参照法条
民法53条,商法265条
論点19第356条旧商法下の裁判例

無利息無担保の金銭消費貸借は商法第二六五条にいう取引にあたるか。

裁判要旨株式会社に対しその取締役が無利息、無担保で金銭を貸し付ける行為は、商法第二六五条にいう取引にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年12月6日 昭和37(オ)437
登載
民集 第17巻12号1664頁
参照法条
商法265条
論点20第356条旧商法下の裁判例

商法第二六五条違反の為替手形と裏書人の責任。

裁判要旨為替手形の振出行為、引受行為が商法第二六五条違反によつて無効であるとしても、裏書行為自体に何らの瑕疵もない以上、裏書人の責任に消長をきたさない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年10月3日 昭和35(オ)574
登載
集民 第68号125頁
参照法条
商法265条,手形法7条
論点21第356条旧商法下の裁判例

取締役会の招集手続の省略

裁判要旨株式会社の取締役の全員が会社の業務執行に関する事項につき協議決定したときは、たとえ取締役会の招集手続を経ない旨の明示の同意なしにその手続を経なかつた場合でも、当該事項につき取締役会の決議がなされたものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年6月29日 昭和29(オ)749
登載
民集 第10巻6号774頁
参照法条
商法259条ノ2,商法259条ノ3,商法260条,商法265条
論点22第356条旧商法下の裁判例

商法二六五条一項の取引を行うにつき同法二五四条三項(民法六四四条)、商法二五四条ノ三に定める義務に違反した取締役と同法二六六条一項五号の責任

裁判要旨株式会社の取締役が商法二六五条一項の取引によって会社に損害を被らせた場合、当該取締役は、同法二六六条一項四号の責任を負う外、右取引を行うにつき故意又は過失により同法二五四条三項(民法六四四条)、商法二五四条ノ三に定める義務に違反したときには、同法二六六条一項五号の責任をも負う。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成12年10月20日 平成10(オ)920
登載
民集 第54巻8号2619頁
参照法条
商法254条3項,商法254条ノ3,商法265条1項,商法266条1項4号,商法266条1項5号
論点23第423条会社法

1 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づき取締役が会社に対して支払う損害賠償金に付すべき遅延損害金の利率
2 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務が履行遅滞となる時期

裁判要旨1 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づき取締役が会社に対して支払う損害賠償金に付すべき遅延損害金の利率は,民法所定の年5分である。
2 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務は,履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年1月30日 平成24(受)1600
登載
集民 第246号69頁
参照法条
(1,2につき)商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,会社法423条1項(1につき)民法404条,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)514条(2につき)民法412条
論点24第423条会社法

株主代表訴訟の対象となる商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条1項にいう「取締役ノ責任」には,取締役が会社との取引によって負担することになった債務についての責任も含まれるか

裁判要旨株主代表訴訟の対象となる商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条1項にいう「取締役ノ責任」には,同法266条1項各号所定の責任など同法が取締役の地位に基づいて取締役に負わせている責任のほか,取締役が会社との取引によって負担することになった債務についての責任も含まれる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年3月10日 平成19(受)799
登載
民集 第63巻3号361頁
参照法条
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条1項,会社法423条1項,会社法847条1項
論点25第423条会社法

A銀行が,県から要請を受け,県において再建資金の融資を計画していたB社に対し,上記融資が実行されるまでのつなぎ融資をした後に,B社に追加融資をしてもその回収を容易に見込めない一方で,これをしなければB社が破綻,倒産する可能性が高く,上記つなぎ融資まで回収不能となるおそれがある状況の下で,B社に対して追加融資をした場合において,その追加融資の一部につき,これを決定したA銀行の取締役らに善管注意義務違反があるとされた事例

裁判要旨A銀行が,県から要請を受け,県において再建資金の融資を計画していたB社に対し,上記融資が実行されるまでのつなぎ融資として9億5000万円を融資した後に,B社に追加融資をしてもその回収を容易に見込めない一方で,これをしなければB社が破綻,倒産する可能性が高く,県のB社に対する融資により回収することを予定していた上記つなぎ融資まで回収不能となるおそれがある状況の下で,B社に対し,約3年の間に数十回にわたり合計8億5000万円余りの追加融資をした場合において,(1)上記追加融資を続ける過程で,A銀行は,県の担当者から,知事がB社の創業者であるC及びその親族をB社の経営から排除することを県のB社に対する融資の条件とする意向を示している旨の連絡を受けたこと,(2)その当時,法的手続を通じてC及びその親族をB社の経営から排除することは困難な状況にあり,その後も,同人らを排除することができない状況が続いたこと,(3)その間,A銀行は,県に対し,2度にわたり期限を定めて県のB社に対する融資の実行を求めたにもかかわらず,県は2度目の期限も徒過し,その時点で,上記(1)の連絡を受けてから10か月以上が経過していたこと,(4)上記時点までには,A銀行自身も,資産査定において,B社の債務者区分を要注意先から破綻懸念先に変更するに至っていたことなど判示の事情の下では,上記時点以後は,A銀行の取締役らにおいて,上記つなぎ融資の回収原資をもたらす県のB社に対する融資が実行される相当程度の確実性があり,その実行までB社を存続させるために追加融資をした方が,追加融資分が回収不能になる危険性を考慮しても全体の回収不能額を小さくすることができると判断することは,著しく不合理であり,上記時点以後の3億0500万円の追加融資については,これを決定したA銀行の取締役らに善管注意義務違反がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年11月27日 平成19(受)1056
登載
集民 第232号353頁
参照法条
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条,民法644条,会社法423条1項,会社法847条
論点26第423条会社法

商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間

裁判要旨商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は,民法167条1項により10年と解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年1月28日 平成18(受)1074
登載
民集 第62巻1号128頁
参照法条
民法167条1項,商法522条,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条ノ3,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,会社法423条1項,会社法430条
論点27第423条会社法

1 銀行が,第三者割当増資を計画する企業から新株引受先として予定された当該企業の関連会社に対する引受代金相当額の融資を求められ,これを実行した場合において,融資を決定した取締役らに忠実義務,善管注意義務違反があるとされた事例
2 銀行が,積極的な融資の対象であったが大幅な債務超過となって破たんに直面した企業に対し,同企業を数か月延命させる目的で追加融資を実行した場合において,追加融資を決定した取締役らに忠実義務,善管注意義務違反があるとされた事例

裁判要旨1 A銀行が,第三者割当増資を計画するB社から,発行する新株の相当部分を引き受ける予定のB社の関連会社に対する引受代金相当額の融資を求められ,これを実行した場合において,次の(1)〜(4)など判示の事情の下では,A銀行の取締役らが上記求めに応じて融資を決定したことは,当該融資が,A銀行が当時採用していた企業育成路線の一環としてされたものであったとしても,A銀行の取締役としての忠実義務,善管注意義務に違反する。
(1) 当該融資は,引受予定のB社の新株を担保とし,弁済期に当該株式を売却した代金で融資金の返済を受けることを予定したもので,保証人となるB社代表者の資産も大部分はB社の株式であり,債権の回収は専らB社の業績及び株価の動向のみに依存するものであった。
(2) 当該融資の額は200億円近い巨額のものであった。
(3) 新株発行後のB社の発行済株式総数に占める担保株式の割合等に照らし,融資先が弁済期に担保株式を一斉に売却すれば株価が暴落するおそれがあることは容易に推測できた。
(4) A銀行が以前に行った調査において,B社につき,財務内容が極めて不透明であり,借入金が過大で財務内容は良好とはいえないとの報告がされていた。
2 A銀行が,新興企業育成路線に基づく積極的な融資の対象であったが大幅な債務超過となり破たんに直面するに至ったB社に対し,もはやB社の存続が不可能であるとの認識を前提に,B社がA銀行から資金の融資を受けて継続中の大規模なリゾート開発事業が完成する予定の数か月後までB社を延命させる目的でそれに必要な資金409億円の追加融資を実行した場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,A銀行の取締役らが追加融資を決定したことは,A銀行の取締役としての忠実義務,善管注意義務に違反する。
(1) 追加融資に際し新たに担保を設定した不動産等の担保価値は到底追加融資相当額に見合うものではなく,追加融資の大部分は当初から回収の見込みがなかった。
(2) 上記事業は,完成したとしてもその採算性が疑わしく,中長期的にも,上記事業を独立して継続させることにより追加融資に見合う額の債権回収が期待できたということはできない。
(3) B社を数か月間延命させたとしても,それにより関連企業の連鎖倒産を避けられたとも,B社に多額の資金を融資していた信用組合が破たんしてA銀行に支援要請が来る事態を回避できたとも考え難い。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年1月28日 平成17(受)1440
登載
集民 第227号105頁
参照法条
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条ノ3,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,民法644条,会社法423条1項
論点28第423条会社法

会社法423条1項〈役員等の株式会社に対する損害賠償責任〉に基づく損害賠償請求訴訟において原告の設置した取締役責任調査委員会の委員であった弁護士が原告の訴訟代理人として行う訴訟行為を弁護士法25条2号及び4号の類推適用により排除することはできないとされた事例

裁判要旨株式会社である原告の設置した取締役責任調査委員会により、原告の取締役であった被告に対する事情聴取が行われた後、原告が、被告に対し、上記委員会の委員であった弁護士を訴訟代理人として、会社法423条1項〈役員等の株式会社に対する損害賠償責任〉に基づく損害賠償責任を追及する訴訟を提起した場合において、上記委員会が被告の上記責任の有無等を調査、検討するために設置されたものであるなど判示の事実関係の下では、上記訴訟において上記弁護士が原告の訴訟代理人として行う訴訟行為について、弁護士法25条2号及び4号の類推適用があるとして、これを排除することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和4年6月27日 令和4(許)3
登載
集民 第268号323頁
参照法条
弁護士法25条2号、弁護士法25条4号、会社法423条1項
論点29第423条会社法

監査の範囲が会計に関するものに限定されている監査役は,計算書類及びその附属明細書の監査を行うに当たり,当該計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,その任務を尽くしたといえるか

裁判要旨監査の範囲が会計に関するものに限定されている監査役は,計算書類及びその附属明細書の監査を行うに当たり,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても,当該計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,常にその任務を尽くしたといえるものではない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和3年7月19日 令和1(受)1968
登載
集民 第266号157頁
参照法条
会社法389条1項,会社法389条2項,会社法423条1項,会社法436条1項,会社計算規則121条2項,会社計算規則122条1項2号,会社計算規則(平成21年法務省令第7号による改正前のもの)149条2項,会社計算規則(平成21年法務省令第7号による改正前のもの)150条1項2号
論点30第847条会社法

1 農業協同組合の理事に対する代表訴訟を提起しようとする組合員が,同組合の代表者として監事ではなく代表理事を記載した提訴請求書を同組合に送付したが,監事において,当該理事に対する訴訟を提起すべきか否かを自ら判断する機会があった場合における,上記組合員の提起した代表訴訟の適法性
2 農業協同組合の合併契約に,被合併組合の貸借対照表等に誤びゅう等があったため新設組合が損害を受けたときは故意又は重過失のある被合併組合の役員個人が賠償責任を負う旨の条項がある場合,被合併組合の理事会で上記契約の締結に賛成した理事等は上記条項に基づく責任を負うか
3 農業協同組合の合併契約中の,被合併組合の貸借対照表等に誤びゅう等があったため新設組合が損害を受けたときは故意又は重過失のある被合併組合の役員個人が賠償責任を負う旨の条項が,被合併組合に貸倒引当金の過少計上があったときには,故意又は重過失のある被合併組合の役員に引当不足額相当額をてん補する義務を負わせる趣旨を含むとされた事例

裁判要旨1 農業協同組合の理事に対する代表訴訟を提起しようとする組合員が,同組合の代表者として監事ではなく代表理事を記載した提訴請求書を同組合に送付した場合であっても,監事において,上記請求書の記載内容を正確に認識した上で当該理事に対する訴訟を提起すべきか否かを自ら判断する機会があったときは,上記組合員が提起した代表訴訟を不適法として却下することはできない。
2 農業協同組合の合併契約に,被合併組合の貸借対照表等に誤びゅう脱落等があったために新設組合が損害を受けたときは,そのことに故意又は重過失のある被合併組合の役員個人が賠償責任を負う旨の条項が含まれている場合,被合併組合の理事会に出席して上記契約の締結に賛成した理事又はこれに異議を述べなかった監事は,個人として上記条項に基づく責任を負う旨の意思表示をしたものとして,新設組合との関係で,上記責任を免れない。
3 農業協同組合の合併契約中の,被合併組合の貸借対照表等に誤びゅう脱落等があったために新設組合が損害を受けたときは,そのことに故意又は重過失のある被合併組合の役員個人が賠償責任を負う旨の条項は,次の(1),(2)などの判示の事実関係の下では,被合併組合において,不良債権が適正に評価されておらず,貸倒引当金が過少に計上されていることが判明したときには,過少に計上したことに故意又は重過失のある被合併組合の理事及び監事に対して,引当不足額相当額を新設組合にてん補する義務を負わせる趣旨を含むものと解される。
(1) 上記契約は,新設組合に引き継がれる被合併組合の財産が貸借対照表等どおりのものであることを前提とするものであり,被合併組合の総会では,不良債権であるのに,そうでないように見せ掛けるなどした場合に,被合併組合の役員が上記条項に基づく責任を負うことになるなどの説明がされている。
(2) 被合併組合及び新設組合では,不良債権を適正に評価し,必要な貸倒引当金を計上し,自己資本比率の維持,向上を図っていくことが重要な課題となっていた。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年3月31日 平成20(受)442
登載
民集 第63巻3号472頁
参照法条
(1につき)農業協同組合法(平成17年法律第87号による改正前のもの)39条1項,農業協同組合法(平成17年法律第87号による改正前のもの)39条2項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条1項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)275条ノ4,会社法386条2項1号,会社法847条1項,会社法847条3項 (2,3につき)民法第3編第2章 契約
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

会社法 第330条(株式会社と役員等との関係) 詳細ページ
(株式会社と役員等との関係)
第三百三十条株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。
会社法 第355条(忠実義務) 詳細ページ
(忠実義務)
第三百五十五条取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。
会社法 第356条(競業及び利益相反取引の制限) 詳細ページ
(競業及び利益相反取引の制限)
第三百五十六条取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
2民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号又は第三号の取引については、適用しない。
会社法 第365条(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限) 詳細ページ
(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限)
第三百六十五条取締役会設置会社における第三百五十六条の規定の適用については、同条第一項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。
2取締役会設置会社においては、第三百五十六条第一項各号の取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。
会社法 第423条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任) 詳細ページ
(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
第四百二十三条取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。
3第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。
一第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役
二株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役
三当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(指名委員会等設置会社においては、当該取引が指名委員会等設置会社と取締役との間の取引又は指名委員会等設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)
4前項の規定は、第三百五十六条第一項第二号又は第三号に掲げる場合において、同項の取締役(監査等委員であるものを除く。)が当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、適用しない。
会社法 第425条(責任の一部免除) 詳細ページ
(責任の一部免除)
第四百二十五条前条の規定にかかわらず、第四百二十三条第一項の責任は、当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、賠償の責任を負う額から次に掲げる額の合計額(第四百二十七条第一項において「最低責任限度額」という。)を控除して得た額を限度として、株主総会(株式会社に最終完全親会社等(第八百四十七条の三第一項に規定する最終完全親会社等をいう。以下この節において同じ。)がある場合において、当該責任が特定責任(第八百四十七条の三第四項に規定する特定責任をいう。以下この節において同じ。)であるときにあっては、当該株式会社及び当該最終完全親会社等の株主総会。以下この条において同じ。)の決議によって免除することができる。
一当該役員等がその在職中に株式会社から職務執行の対価として受け、又は受けるべき財産上の利益の一年間当たりの額に相当する額として法務省令で定める方法により算定される額に、次のイからハまでに掲げる役員等の区分に応じ、当該イからハまでに定める数を乗じて得た額
イ代表取締役又は代表執行役六
ロ代表取締役以外の取締役(業務執行取締役等であるものに限る。)又は代表執行役以外の執行役四
ハ取締役(イ及びロに掲げるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人二
二当該役員等が当該株式会社の新株予約権を引き受けた場合(第二百三十八条第三項各号に掲げる場合に限る。)における当該新株予約権に関する財産上の利益に相当する額として法務省令で定める方法により算定される額
2前項の場合には、取締役(株式会社に最終完全親会社等がある場合において、同項の規定により免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該株式会社及び当該最終完全親会社等の取締役)は、同項の株主総会において次に掲げる事項を開示しなければならない。
一責任の原因となった事実及び賠償の責任を負う額
二前項の規定により免除することができる額の限度及びその算定の根拠
三責任を免除すべき理由及び免除額
3監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社においては、取締役(これらの会社に最終完全親会社等がある場合において、第一項の規定により免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該会社及び当該最終完全親会社等の取締役)は、第四百二十三条第一項の責任の免除(取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)及び執行役の責任の免除に限る。)に関する議案を株主総会に提出するには、次の各号に掲げる株式会社の区分に応じ、当該各号に定める者の同意を得なければならない。
一監査役設置会社監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、各監査役)
二監査等委員会設置会社各監査等委員
三指名委員会等設置会社各監査委員
4第一項の決議があった場合において、株式会社が当該決議後に同項の役員等に対し退職慰労金その他の法務省令で定める財産上の利益を与えるときは、株主総会の承認を受けなければならない。当該役員等が同項第二号の新株予約権を当該決議後に行使し、又は譲渡するときも同様とする。
5第一項の決議があった場合において、当該役員等が前項の新株予約権を表示する新株予約権証券を所持するときは、当該役員等は、遅滞なく、当該新株予約権証券を株式会社に対し預託しなければならない。この場合において、当該役員等は、同項の譲渡について同項の承認を受けた後でなければ、当該新株予約権証券の返還を求めることができない。
会社法 第426条(取締役等による免除に関する定款の定め) 詳細ページ
(取締役等による免除に関する定款の定め)
第四百二十六条第四百二十四条の規定にかかわらず、監査役設置会社(取締役が二人以上ある場合に限る。)、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社は、第四百二十三条第一項の責任について、当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、責任の原因となった事実の内容、当該役員等の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは、前条第一項の規定により免除することができる額を限度として取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって免除することができる旨を定款で定めることができる。
2前条第三項の規定は、定款を変更して前項の規定による定款の定め(取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)及び執行役の責任を免除することができる旨の定めに限る。)を設ける議案を株主総会に提出する場合、同項の規定による定款の定めに基づく責任の免除(取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)及び執行役の責任の免除に限る。)についての取締役の同意を得る場合及び当該責任の免除に関する議案を取締役会に提出する場合について準用する。この場合において、同条第三項中「取締役(これらの会社に最終完全親会社等がある場合において、第一項の規定により免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該会社及び当該最終完全親会社等の取締役)」とあるのは、「取締役」と読み替えるものとする。
3第一項の規定による定款の定めに基づいて役員等の責任を免除する旨の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)を行ったときは、取締役は、遅滞なく、前条第二項各号に掲げる事項及び責任を免除することに異議がある場合には一定の期間内に当該異議を述べるべき旨を公告し、又は株主に通知しなければならない。ただし、当該期間は、一箇月を下ることができない。
4公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「公告し、又は株主に通知し」とあるのは、「株主に通知し」とする。
5株式会社に最終完全親会社等がある場合において、第三項の規定による公告又は通知(特定責任の免除に係るものに限る。)がされたときは、当該最終完全親会社等の取締役は、遅滞なく、前条第二項各号に掲げる事項及び責任を免除することに異議がある場合には一定の期間内に当該異議を述べるべき旨を公告し、又は株主に通知しなければならない。ただし、当該期間は、一箇月を下ることができない。
6公開会社でない最終完全親会社等における前項の規定の適用については、同項中「公告し、又は株主に通知し」とあるのは、「株主に通知し」とする。
7総株主(第三項の責任を負う役員等であるものを除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が同項の期間内に同項の異議を述べたとき(株式会社に最終完全親会社等がある場合において、第一項の規定による定款の定めに基づき免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該株式会社の総株主(第三項の責任を負う役員等であるものを除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は当該最終完全親会社等の総株主(第三項の責任を負う役員等であるものを除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が第三項又は第五項の期間内に当該各項の異議を述べたとき)は、株式会社は、第一項の規定による定款の定めに基づく免除をしてはならない。
8前条第四項及び第五項の規定は、第一項の規定による定款の定めに基づき責任を免除した場合について準用する。
会社法 第427条(責任限定契約) 詳細ページ
(責任限定契約)
第四百二十七条第四百二十四条の規定にかかわらず、株式会社は、取締役(業務執行取締役等であるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人(以下この条及び第九百十一条第三項第二十五号において「非業務執行取締役等」という。)の第四百二十三条第一項の責任について、当該非業務執行取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を非業務執行取締役等と締結することができる旨を定款で定めることができる。
2前項の契約を締結した非業務執行取締役等が当該株式会社の業務執行取締役等に就任したときは、当該契約は、将来に向かってその効力を失う。
3第四百二十五条第三項の規定は、定款を変更して第一項の規定による定款の定め(同項に規定する取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)と契約を締結することができる旨の定めに限る。)を設ける議案を株主総会に提出する場合について準用する。この場合において、同条第三項中「取締役(これらの会社に最終完全親会社等がある場合において、第一項の規定により免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該会社及び当該最終完全親会社等の取締役)」とあるのは、「取締役」と読み替えるものとする。
4第一項の契約を締結した株式会社が、当該契約の相手方である非業務執行取締役等が任務を怠ったことにより損害を受けたことを知ったときは、その後最初に招集される株主総会(当該株式会社に最終完全親会社等がある場合において、当該損害が特定責任に係るものであるときにあっては、当該株式会社及び当該最終完全親会社等の株主総会)において次に掲げる事項を開示しなければならない。
一第四百二十五条第二項第一号及び第二号に掲げる事項
二当該契約の内容及び当該契約を締結した理由
三第四百二十三条第一項の損害のうち、当該非業務執行取締役等が賠償する責任を負わないとされた額
5第四百二十五条第四項及び第五項の規定は、非業務執行取締役等が第一項の契約によって同項に規定する限度を超える部分について損害を賠償する責任を負わないとされた場合について準用する。
会社法 第429条(役員等の第三者に対する損害賠償責任) 詳細ページ
(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
第四百二十九条役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
一取締役及び執行役次に掲げる行為
イ株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録
ロ計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
ハ虚偽の登記
ニ虚偽の公告(第四百四十条第三項に規定する措置を含む。)
二会計参与計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに会計参与報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
三監査役、監査等委員及び監査委員監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
四会計監査人会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
会社法 第847条(株主による責任追及等の訴え) 詳細ページ
(株主による責任追及等の訴え)
第八百四十七条六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。)若しくは清算人(以下この節において「発起人等」という。)の責任を追及する訴え、第百二条の二第一項、第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十三条の二第一項若しくは第二百八十六条の二第一項の規定による支払若しくは給付を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。
2公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。
3株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。
4株式会社は、第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合において、当該請求をした株主又は同項の発起人等から請求を受けたときは、当該請求をした者に対し、遅滞なく、責任追及等の訴えを提起しない理由を書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければならない。
5第一項及び第三項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、第一項の株主は、株式会社のために、直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。ただし、同項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。