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総則/契約の解除

契約の解除の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

このページは、民法における契約の解除の規定を整理したものです。解除の意思表示の方法、催告による解除と催告によらない解除の要件、解除の効果(原状回復・損害賠償)、解除権が消滅する場合など、契約を解除する際に確認すべき条文上のルールをまとめています。

契約の解除
解除の種類要件催告の要否解除の範囲
催告解除(541条)履行遅滞+相当期間経過必要全部
無催告解除(542条1項)履行不能・拒絶意思等不要全部
無催告一部解除(542条2項)一部の履行不能・拒絶不要一部
  • 541条ただし書:期間経過時の不履行が契約・取引上の社会通念に照らし軽微なときは解除できない
  • 543条:不履行が債権者自身の責めに帰すべき事由によるときは解除できない
  • 544条:当事者が複数のときは全員から又は全員に対してのみ解除でき、1人につき消滅すれば全員につき消滅する
  • 545条ただし書:原状回復義務は第三者の権利を害することができない
  • 547条:解除に期間の定めがないとき、相当期間を定めた催告に期間内の通知がなければ解除権は消滅する
  • 548条ただし書:解除権を有することを知らなかったときは目的物の損傷等があっても解除権は消滅しない
1

契約の解除

契約の解除について、条文は何を定めているか。

第540条解除権の行使解除は意思表示で行い撤回できない2項判例 20件
  • 契約や法律の規定で解除権があるときは、相手方への意思表示で解除する
  • 一度した解除の意思表示は撤回できない
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第541条催告による解除催告し期間内に履行なければ解除できる1項判例 54件
  • 相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ解除できる
  • 期間経過時の不履行が軽微なときは解除できない
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第542条催告によらない解除催告なしで直ちに解除できる場合2項・7号判例 1件
  • 全部の履行不能や明確な履行拒絶なら直ちに全部解除できる
  • 一部不能等で残存部分のみでは目的を達成できないなら全部解除できる
  • 一部の履行不能・一部拒絶のときは一部のみ解除できる
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第543条債権者の責めに帰すべき事由による場合自分の落ち度による不履行では解除不可1項判例 6件
  • 不履行が債権者自身の責めに帰すべき事由によるときは、541・542条〈催告によらない解除〉の解除ができない
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第544条解除権の不可分性当事者が複数なら全員で・全員に解除2項判例 4件
  • 当事者の一方が数人いる場合、解除は全員から又は全員に対してのみできる
  • 1人について解除権が消滅すれば、他の全員についても消滅する
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第545条解除の効果解除すると原状回復・利息・果実も4項判例 21件
  • 解除したら原状回復義務を負う(ただし第三者の権利は害せない)
  • 金銭は受領時からの利息、金銭以外は受領後の果実も返す
  • 解除しても損害賠償請求は妨げられない
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第546条契約の解除と同時履行原状回復は同時履行の関係になる1項判例 3件
  • 533条〈同時履行の抗弁〉(同時履行の抗弁)の規定が原状回復義務にも準用される
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第547条催告による解除権の消滅催告しても返事なければ解除権消滅1項判例なし
  • 解除権行使に期間の定めがないとき、相当の期間を定めて確答を催告できる
  • その期間内に解除の通知がなければ解除権は消滅する
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第548条解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅目的物を故意等で損傷すると解除権消滅1項判例 2件
  • 故意・過失で目的物を著しく損傷・返還不能にすると解除権が消滅する
  • 加工・改造で他の種類の物に変えたときも同様
  • 解除権があると知らなかったときは消滅しない
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第540条民法

一 株式会社に対し会社更生法三九条の規定により弁済禁止の保全処分が命じられたのちに契約上の会社の債務の弁済期が到来した場合とその履行遅滞を理由とする契約解除
二 買主たる株式会社に更生手続開始の申立の原因となるべき事実が生じたことを売買契約解除の事由とする旨の特約の効力

裁判要旨一 株式会社に対し会社更生法三九条の規定により弁済禁止の保全処分が命じられたのちに、契約上の会社の債務の弁済期が到来しても、債権者は、会社の履行遅滞を理由として契約を解除することはできない。
二 買主たる株式会社に更生手続開始の申立の原因となるべき事実が生じたことを売買契約解除の事由とする旨の特約は、無効である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和57年3月30日 昭和53(オ)319
登載
民集 第36巻3号484頁
参照法条
民法540条1項,民法541条,会社更生法1条,会社更生法39条
論点2第540条民法

一 リース物件の売主がリース会社からの借主に対し性能不良を理由として賠償すべき額を算定するに当たり損益相殺すべき借主の利益の額につき判示した事例

二 リース物件の性能不良のため借主がリース会社に対する売主にその引取方を要求したのちに右リース物件が水害により使用不能となつた場合についてその損失を売主において負担すべきものとした事例

裁判要旨一 リース会社に対し会計機を売却した者が、リース契約によりリース会社から右会計機を借り受けた者に対し、直接その性能を保証し、保証した性能を欠くときは借主の受ける損害を賠償する旨の損害担保契約を結んだ場合において、右会計機が保証された性能を欠くため借主の業務に適合せず、そのため借主が売主にその引取方を要求して使用を中止したなど原判示の事実関係があるときは、売主が借主に対して賠償すべきリース料相当の損害から損益相殺すべき借主の利益の額は、借主が右会計機の使用を中止するまでの間であつて、売主の協力を得て利用できた期間のリース料相当額によつて算出するのが相当である。

二 リース会社に対し会計機を売却した者が、リース契約によりリース会社から右会計機を借り受けた者に対し、直接その性能を保証し、保証した性能を欠くときは借主の受ける損害を賠償する旨の損害担保契約を結んだ場合において、右会計機が借主の手元で水害にあい使用不能となつても、右会計機が保証された性能を欠くため借主の業務に適合せず、そのため右の水害前すでに借主から売主にその引取方を要求していたなど原判示の事実関係のもとでは、右会計機の使用不能の事実は売主が借主に賠償すべき損害の算定に当たり考慮すべきでなく、右水害による損失は売主において負担すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年4月9日 昭和53(オ)1339
登載
集民 第132号531頁
参照法条
民法416条,民法540条,民法545条1項,民法548条,民法559条,民法566条,民法570条
論点3第540条民法

土地賃貸借契約につき無断増改築禁止の特約違反を理由とする解除権の行使が信義則上許されないとされた事例

裁判要旨(省略)(最高裁昭和三九年(オ)第一四五〇号同四一年四月二一日第一小法廷判決・民集二〇巻四号七二〇頁参照)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年6月3日 昭和47(オ)90
登載
集民 第118号1頁
参照法条
民法540条,民法594条,民法601条
論点4第540条民法

相手方の同意を得てした解除の意思表示の撤回と民法五四〇条二項

裁判要旨民法五四〇条二項〈解除権の行使〉の規定は、契約解除の意思表示をした者が相手方の同意を得てした右意思表示の撤回の効力を妨げるものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和51年6月15日 昭和49(オ)343
登載
集民 第118号87頁
参照法条
民法540条2項
論点5第540条民法

有限会社の取締役相互間における辞任の申合せと撤回

裁判要旨有限会社の取締役が、その相互間において新取締役選任の決議の手続に入るまでに辞任すべき旨を申し合わせても、後にその申合せを撤回して辞任の手続をとらないことは許される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年6月17日 昭和47(オ)355
登載
集民 第112号119頁
参照法条
有限会社法32条,商法254条3項,民法651条,民法540条2項
論点6第540条民法

賃料不払を理由とする不動産賃貸借の解除に催告を要しないとされた事例

裁判要旨不動産の賃貸借において、賃借人が、約九年一〇か月の長期間賃料を支払わず、その間、当該不動産を自己の所有と主張して賃貸借関係の存在を否定し続けたなど原判示の事情(原判決理由参照)があるときは、賃貸人は、催告を要せず賃貸借を解除することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年4月26日 昭和45(オ)603
登載
民集 第28巻3号467頁
参照法条
民法540条,民法541条,民法601条,民法620条
論点7第540条民法

建物所有を目的とする土地賃貸借契約の借地人が無断増改築等を禁止する特約に反してなした建物改修工事が賃貸人に対する信頼関係を破壊するものと認められた事例

裁判要旨建物収去土地明渡請求事件につき成立した裁判上の和解において、新規に土地賃貸借の合意が成立したが、その際特に無断増改築を禁止する旨の条項が付せられたにもかかわらず、賃借人が右特約に反し賃貸人に無断で借地上の木造映画館を一階はスーパーマーケットに、二階はアパートに、それぞれ改造する等判示の改修工事を施したときは、右工事は土地賃貸借当事者間の信頼関係を破壊するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年4月13日 昭和47(オ)1261
登載
集民 第109号97頁
参照法条
民法540条,民法601条
論点8第540条民法

賃借権譲渡に賃貸人の書面による承諾を要する旨の特約と賃貸借の解除

裁判要旨賃借権譲渡に賃貸人の書面による承諾を要する旨の特約があるにかかわらず、賃借人が賃貸人の書面による承諾を得ないで賃借権を譲渡した場合であつても、右書面による承諾を必要とした特約の趣旨その他諸般の事情に照らし、右譲渡が賃貸人に対する背信的行為であると認めるに足りない特段の事情が存する事実について、賃借人から立証がなされたときには、前記特約に基づく賃貸借の解除は、許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年2月13日 昭和42(オ)1382
登載
民集 第23巻2号316頁
参照法条
民法540条,民法612条
論点9第540条民法

借地上の建物についてした工事が無断増改築禁止の特約違反を理由とする借地契約解除の原因とならないとされた事例

裁判要旨(省略)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和44年12月16日 昭和44(オ)948
登載
集民 第97号775頁
参照法条
民法540条,民法616条,民法594条,借地法11条
論点10第540条民法

売買契約解除の前提としての催告が信義則に反し無効とされた事例

裁判要旨土地の売買契約において、買主が該売買契約によつて所有権を取得し、その引渡をも受けた後に、売主が、買主不知の間に、該土地に第三者のため根抵当権および地上権の設定登記をしたものである等原判示事情がある場合(原判決理由参照)に、売主が残代金の支払を催告し、その不払を理由に土地の売買契約を解除したときは、右催告は信義則に反し無効である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年5月30日 昭和43(オ)186
登載
集民 第91号191頁
参照法条
民法1条2項,民法540条1項,民法541条
論点11第540条民法

無断増改築禁止特約違反を理由とする土地賃貸借契約解除を有効とした事例

裁判要旨無断増改築禁止特約に違反し、借地上の居宅(実測一五坪五合)中九坪五合をバー店舗に改築した場合には、土地賃貸借関係の継続を著しく困難にする不信行為として、右賃貸借契約を即時解除することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和42年9月21日 昭和40(オ)1169
登載
集民 第88号469頁
参照法条
借地法11条,民法540条
論点12第540条民法

一 借地契約における増改築禁止の特約と解除権行使の許否
二 前項の特約がある場合において建物の増改築を理由とする解除権行使の効果が生じないとされた事例

裁判要旨一 建物所有を目的とする土地の賃貸借中に、賃借人が賃貸人の承諾をえないで借地内の建物の増改築をするときは、賃貸人は催告を要しないで賃貸借を解除することができる旨の特約があるにかかわらず、賃借人が賃貸人の承諾を得ないで増改築をした場合において、増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは、賃貸人は、前記特約に基づき、解除権を行使することは許されないものというべきである
二 前記の特約がある場合において、借地人がその居住用建物の一部の根太などを取りかえ、二階部分を拡張してアパート用居室として他人に賃貸するように改造をしたが住宅用普通建物として前後同一であるなど判示事実(判決理由参照)のもとでは、賃貸人が右特約に基づいてした解除権の行使はその効力を生じないと認めるのが相当である
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年4月21日 昭和39(オ)1450
登載
民集 第20巻4号720頁
参照法条
民法540条,民法601条,借地法11条
論点13第540条民法

賃貸人が賃貸借契約解除後その効力を争う賃借人が賃料として供託した金員を受領した場合の効果。

裁判要旨賃貸人が賃貸借契約解除の意思表示をなした後に、右解除の効力を争う賃借人が右解除の日以降の賃料として供託した金員を受領した場合であつても、右受領により賃貸借の解除の効果を消滅せしめ、もしくはそのときに新たな賃貸借契約を締結したものと認めるべき特別の事情でもあれば格別、却つて右供託金受領の前後を通じて賃貸借契約が解除されたことを主張して家屋明渡訴訟を維持している場合には右解除の効力に影響はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年4月10日 昭和36(オ)323
登載
集民 第73号71頁
参照法条
民法494条,民法540条
論点14第540条民法

継続的保証契約と保証人の解約告知権。

裁判要旨与信契約および継続的保証契約において極度額、責任限度額および期間の定めがない場合には、保証人は、取引慣行ならびに信義則に照らして相当と認められる期間が経過した後は、保証契約の解約告知権を取得するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年9月6日 昭和37(オ)1260
登載
集民 第67号537頁
参照法条
民法446条,民法540条
論点15第540条民法

一 米国海軍政府布告の効力につき当事者の立証がなく職権調査によつても明らかでない場合の裁判方法
二 家屋明渡の催告書に契約解除の意思表示を含むと認めるのが相当とされた事例

裁判要旨一 米国海軍軍政府布告の効力につき、当事者の立証がなく、職権調査によつても明らかではない場合には、同布告の適用によつて利益を受けるべき当事者の不利益において裁判するほかない。
二 家屋明渡の催告書中に契約解除の文言を使用していなくても、判示のごとき事実関係のもとでは、契約解除の意思表示を含むと認めるのが社会観念上相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年5月1日 昭和31(オ)915
登載
集民 第60号475頁
参照法条
民訴法第3章第1節,民法540条
論点16第540条民法

訴状の送達による契約解除の意思表示の到達を認めた事例。

裁判要旨解除権者が訴を提起し、契約解除による効果の実行を求めた場合には、当該訴状が相手方に送達された時に当該契約解除の意思表示があつたものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年11月9日 昭和35(オ)741
登載
民集 第15巻10号2444頁
参照法条
民法540条,民法97条
論点17第540条民法

一 生命保険契約の保険契約者兼保険金受取人である有限会社が意思表示の受領権限を有する者を欠く状態にある場合において保険金請求権の転付債権者に対して告知義務違反を理由とする解除の意思表示をすることの可否
二 保険会社が告知義務違反による生命保険契約の解除原因を知った時に解除の意思表示の受領権限を有する者がいない場合における解除原因を知った後一箇月を経過したときには契約を解除することができない旨の約款の解釈

裁判要旨一 有限会社を保険契約者兼保険金受取人とする生命保険契約における被保険者が死亡し、かつ、右有限会社が意思表示を受領する権限を有する者を欠く状態にある場合において、転付命令により保険金受取人の保険会社に対する生命保険金支払請求権を取得した者があるときには、保険会社は、右転付債権者に対しても告知義務違反を理由とする生命保険契約の解除の意思表示をすることができる。
二 有限会社を保険契約者とする生命保険契約に適用される約款に保険会社が告知義務違反による解除の原因を知った日からその日を含めて一箇月を経過したときには契約を解除することができない旨の定めがある場合において、保険会社が右の解除の原因を知った時に解除の意思表示の受領権限を有する者がいないときには、右の一箇月の期間は、保険会社が右受領権限を有する者が現れたことを知り、又は知り得べき時から進行するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年6月17日 平成7(オ)949
登載
民集 第51巻5号2154頁
参照法条
民法91条,民法540条,商法644条2項,商法678条,民事執行法159条,民事執行法160条
論点18第540条民法

いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約中の,ユーザーについて民事再生手続開始の申立てがあったことを契約の解除事由とする旨の特約の効力

裁判要旨いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約中の,ユーザーについて民事再生手続開始の申立てがあったことを契約の解除事由とする旨の特約は,無効である。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年12月16日 平成19(受)1030
登載
民集 第62巻10号2561頁
参照法条
民法91条,民法540条1項,民法601条,民事再生法1条
論点19第540条民法

1 大学と当該大学の学生との間の在学契約の性質
2 大学の入学試験の合格者が納付する入学金の性質
3 大学と在学契約等を締結した者が当該在学契約等を任意に解除することの可否
4 大学の入学試験の合格者による書面によらない在学契約の解除の意思表示の効力
5 大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約等を締結して当該大学に入学金を納付した後に同契約等が解除された場合等における当該大学の入学金返還義務の有無
6 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の性質
7 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約等の消費者契約該当性
8 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に関する消費者契約法9条1号〈成年被後見人の法律行為〉所定の平均的な損害等の主張立証責任
9 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に対する消費者契約法9条1号の適用の効果
10 専願等を出願資格とする大学の推薦入学試験等の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に対する消費者契約法9条1号の適用の効果

裁判要旨1 大学と当該大学の学生との間で締結される在学契約は,大学が学生に対して,講義,実習及び実験等の教育活動を実施するという方法で,大学の目的にかなった教育役務を提供するとともに,これに必要な教育施設等を利用させる義務を負い,他方,学生が大学に対して,これらに対する対価を支払う義務を負うことを中核的な要素とするものであり,学生が部分社会を形成する組織体である大学の構成員としての学生の身分,地位を取得,保持し,大学の包括的な指導,規律に服するという要素も有し,教育法規や教育の理念によって規律されることが予定されている有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約である。
2 大学の入学試験の合格者が納付する入学金は,その額が不相当に高額であるなど他の性質を有するものと認められる特段の事情のない限り,合格者が当該大学に入学し得る地位を取得するための対価としての性質を有し,当該大学が合格者を学生として受け入れるための事務手続等に要する費用にも充てられることが予定されているものである。
3 大学と在学契約又はその予約を締結した者は,原則として,いつでも任意に当該在学契約又はその予約を将来に向かって解除することができる。
4 大学の入学試験に合格し当該大学との間で在学契約を締結した者が当該大学に対して入学辞退を申し出ることは,それがその者の確定的な意思に基づくものであることが表示されている以上は,口頭によるものであっても,原則として有効な在学契約の解除の意思表示であり,入学試験要項等において所定の期限までに書面で入学辞退を申し出たときは入学金以外の所定の納付金を返還する旨を定めている場合や,入学辞退をするときは書面で申し出る旨を定めている場合であっても,解除の効力は妨げられない。
5 大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約又はその予約を締結して当該大学に入学し得る地位を取得するための対価としての性質を有する入学金を納付した後に,同契約又はその予約が解除され,あるいは失効しても,当該大学は当該合格者に入学金を返還する義務を負わない。
6 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,在学契約の解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金の定めの性質を有する。
7 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約又はその予約は,消費者契約法2条3項所定の消費者契約に該当する。
8 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約に納付済みの授業料等を返還しない旨の特約がある場合,消費者契約法9条1号所定の平均的な損害及びこれを超える部分については,事実上の推定が働く余地があるとしても,基本的には当該特約の全部又は一部の無効を主張する当該合格者において主張立証責任を負う。
9 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,国立大学及び公立大学の後期日程入学試験の合格者の発表が例年3月24日ころまでに行われ,そのころまでには私立大学の正規合格者の発表もほぼ終了し,補欠合格者の発表もほとんどが3月下旬までに行われているという実情の下においては,同契約の解除の意思表示が大学の入学年度が始まる4月1日の前日である3月31日までにされた場合には,原則として,当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして,同号によりすべて無効となり,同契約の解除の意思表示が同日よりも後にされた場合には,原則として,上記授業料等が初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り,上記平均的な損害を超える部分は存しないものとして,すべて有効となる。
10 入学試験要項等の定めにより,その大学,学部を専願あるいは第1志望とすること,又は入学することを確約することができることが出願資格とされている大学の推薦入学試験等の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,上記授業料等が初年度に納付すべき範囲内のものである場合には,同契約の解除の時期が当該大学において同解除を前提として他の入学試験等によって代わりの入学者を通常容易に確保することができる時期を経過していないなどの特段の事情がない限り,消費者契約法9条1号所定の平均的な損害を超える部分は存しないものとして,すべて有効となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日 平成17(受)1158
登載
民集 第60巻9号3437頁
参照法条
(1,2,5につき)民法第3編第2章 契約,(1につき)学校教育法52条,学校教育法69条の2第1項,教育基本法6条1項,(2,5,6,8〜10につき)学校教育法6条,(2,5につき)学校教育法施行規則4条1項7号,(3,4につき)民法540条1項,(3につき)憲法26条1項,学校教育法施行規則67条,(5につき)民法703条,(6,8〜10につき)民法420条,(7につき)消費者契約法2条,(8〜10につき)消費者契約法9条,(8につき)民訴法第2編第4章第1節 総則,(9につき)学校教育法施行規則44条,72条1項
論点20第540条民法

1 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」等の記載がある大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約を締結した場合における入学式の無断欠席と在学契約の解除の意思表示
2 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」等の記載がある大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料を返還しない旨の特約に対する消費者契約法9条1号〈成年被後見人の法律行為〉の適用の効果

裁判要旨1 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約を締結した場合において,当該合格者が入学式を無断で欠席することは,特段の事情のない限り,黙示の在学契約の解除の意思表示に当たる。
2 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,入学式の日までに明示又は黙示に同契約が解除された場合には,原則として,当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして,同号によりすべて無効となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日 平成17(受)1437
登載
民集 第60巻9号3597頁
参照法条
(1につき)民法第1編第5章第1節 総則,民法540条1項,(2につき)消費者契約法9条,民法420条,学校教育法6条
論点21第541条民法

更新料の支払義務の不履行を理由として土地賃貸借契約の解除が認められた事例

裁判要旨建物の所有を目的とする土地の賃借権の存続期間の満了にあたり賃借人が賃貸人に更新料の支払を約しながらこれを履行しなかつた場合において、右更新料が、将来の賃料の一部、借地法四条一項及び六条所定の更新についての異議権放棄の対価並びに賃借人の従前の債務不履行行為についての紛争の解決金としての性質を有する等判示のような事実関係があるときは、賃貸人は、更新料の支払義務の不履行を理由として、更新されたのちの賃貸借契約を解除することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年4月20日 昭和58(オ)1289
登載
民集 第38巻6号610頁
参照法条
借地法4条1項,借地法6条,民法541条
論点22第541条民法

公営住宅の明渡請求と信頼関係の法理の適用

裁判要旨公営住宅の入居者が公営住宅法二二条一項所定の明渡請求事由に該当する行為をした場合であつても、賃貸人である事業主体との間の信頼関係を破壊するとは認め難い特段の事情があるときは、事業主体の長がした明渡請求は効力を生じない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年12月13日 昭和57(オ)1011
登載
民集 第38巻12号1411頁
参照法条
公営住宅法22条,民法541条,民法601条
論点23第541条民法

競売手続中の他人の不動産の売主が履行期に所有権移転登記手続等の義務を履行しなかつたとしても履行遅滞の責任がないとされた事例

裁判要旨競売手続中の他人の不動産の売主が履行期に所有権移転登記手続等の義務を履行しなかつたとしても、それが競落許可決定に対し即時抗告の申立がされたことによるなど原判示のような事情がある場合においては、売主の責に帰することのできない事由によるものとして履行遅滞の責任を負わない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和57年7月1日 昭和57(オ)328
登載
集民 第136号217頁
参照法条
民法415条,民法541条,民法560条
論点24第541条民法

土地賃貸借契約における賃料不払につき賃貸借関係の基礎をなす信頼関係を破壊するものと認めるに足りない特段の事情を認める余地があるとされた事例

裁判要旨土地賃借人が当年度分年末払とされた賃料の支払を約四か月遅滞したとしても、土地賃貸借関係が長期間にわたるものであつて過去において相互の信頼関係を損うような事情もなく、右遅滞が当該土地の賃料が近隣の地代相場に較べて二倍以上になるためその減額交渉を求めていたことによるものであり、右交渉中に契約解除の意思表示を受けるに及んで直ちに土地賃貸人の要求する賃料額を供託したなど判示の事情があるときは、土地賃借人の賃料不払につき賃貸借関係の基礎をなす信頼関係を破壊するものとは認めるに足りない特段の事情を認める余地がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和57年11月19日 昭和57(オ)141
登載
集民 第137号495頁
参照法条
民法541条,民法601条
論点25第541条民法

継続した地代不払を一括して一個の解除原因とする賃貸借契約の解除権の消滅時効の起算点

裁判要旨継続した地代不払を一括して一個の解除原因とする賃貸借契約の解除権の消滅時効は、最後の地代の支払期日が経過した時から進行する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和56年6月16日 昭和53(オ)790
登載
民集 第35巻4号763頁
参照法条
民法166条1項,民法541条
論点26第541条民法

工事未完成の間における既施工部分についての請負契約解除の可否

裁判要旨建物等の工事未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に請負契約を解除する場合において、工事内容が可分であり、かつ、当事者が既施工部分の給付について利益を有するときは、特段の事情のない限り、右部分についての契約を解除することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和56年2月17日 昭和52(オ)630
登載
集民 第132号129頁
参照法条
民法541条,民法632条
論点27第541条民法

土地賃借権譲渡の承諾に附帯して譲受人が負担した債務の不履行を理由とする土地賃貸借契約の解除が認められた事例

裁判要旨賃貸人の承諾を得て甲地の賃借権を譲り受けた者が右承諾に附帯して自己の占有する乙地を明け渡す旨を約しながらその履行を怠つたときは、賃貸人は、右債務の不履行を理由に甲地の賃貸借契約を解除することができる(最高裁昭和四六年(オ)第五五五号同四八年三月六日第三小法廷判決・裁判集民事一〇八号三七一頁参照)。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年3月6日 昭和53(オ)893
登載
集民 第129号235頁
参照法条
民法541条,民法601条
論点28第541条民法

違約手附金流しの意思表示と契約解除の要否並びに効果

裁判要旨違約手附金の約定が契約関係を清算する趣旨でされた場合においては、手附金受領者は相手方の違約を理由にあらかじめ契約解除の手続を経ることなく手附金流しとしてこれを確定的に自己に帰属させることができるとともに特段の事情のない限り、右告知によつて契約関係も当然に終了する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年9月6日 昭和53(オ)1075
登載
集民 第127号375頁
参照法条
民法420条,民法541条,民法557条
論点29第541条民法

地代家賃統制令に基づく土地の賃料の統制額が適正額を上回る場合において賃料増額請求により増額された部分の賃料の不払を理由とする借地契約の解除が権利濫用にあたるとされた事例

裁判要旨地代家賃統制令の適用のある土地賃貸借につき賃料増額請求がされた場合において、統制賃料額が適正賃料額を上回つており、賃貸人が従前統制額が比較的低額であつたころはこれをかなり超過する賃料を受領しており、また、増額請求後賃借人のした適正な賃料額の提案に応じなかつたなど判示の事情があるときは、増額された部分の賃料の不払を理由として賃貸人がした借地契約の解除は、権利の濫用として許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年11月30日 昭和53(オ)596
登載
集民 第125号745頁
参照法条
借地法12条1項,借地法12条2項,借地法等の一部を改正する法律(昭和41年法律第93号)附則8項,民法1条2項,民法1条3項,民法541条
論点30第541条民法

整地請負契約における契約の一部解除の認定が相当でないとされた事例

裁判要旨対価として土地一〇〇〇坪の譲渡を受けるという約定のもとに、自動車学校の用地の整地、練習用コース周囲の明渠の設置及び排水の諸工事を請け負つた者が期日までに約一〇分の二程度の工事しかせず、全工事完成の見込みがたたなくなつたので、注文者が残工事部分の打切りを申し入れるとともに、既に請負人に譲渡ずみの土地五〇〇坪全部の返還を要求しているなど判示の事情のもとにおいては、他に特別の事情がない以上、注文者は契約全部を解除する旨の意思表示をしたものと解するのが相当であり、残工事部分のみについての契約解除の意思表示をしたものと断定するのは相当でない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和52年12月23日 昭和52(オ)583
登載
集民 第122号597頁
参照法条
民法541条,民法632条,民訴法185条
論点31第541条民法

無催告解除の特約がある場合に反対給付の提供をすることなく相手方の履行遅滞を理由としてした解除の効力

裁判要旨双務契約の当事者の一方が、相手方の債務と同時履行の関係にある自らの反対給付の提供をすることなしに、相手方の履行遅滞を理由としてした契約解除は、相手方の履行遅滞があれば催告を要することなく契約を解除しうる旨の特約がある場合においても、効力を生じない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年12月2日 昭和51(オ)291
登載
集民 第119号299頁
参照法条
民法533条,民法541条
論点32第541条民法

売買代金を完済した農地の買主が農地法五条の許可申請手続に協力しない場合と売主の契約解除権

裁判要旨農地の買主が農地法五条の許可申請手続に協力しない場合でも、売買代金が完済されているときは、特段の事情のない限り、売主は買主が右協力をしないことを理由に売買契約を解除することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年12月20日 昭和51(オ)982
登載
民集 第30巻11号1064頁
参照法条
民法541条,農地法5条
論点33第541条民法

賃借人が賃料の支払を一か月分でも怠つたときは建物賃貸借契約は当然解除となる旨の訴訟上の和解条項に基づく契約の当然解除が認められないとされた事例

裁判要旨訴訟上の和解によつて、建物の賃借人が賃料の支払を一か月分でも怠つたときは賃貸借契約は当然解除となる旨の定めがされた場合においても、賃料の延滞が一か月分であり、賃借人は、和解成立後賃貸人から賃料の受領を拒絶されるまで、約二年間右一か月分を除いては毎月の賃料を期日に支払つており、右延滞もなんらかの手違いによるものであつて賃借人がその当時これに気づいていなかつたなど判示の事情があり、賃貸借当事者間の信頼関係が賃貸借契約の当然解除を相当とする程度にまで破壊されたといえないときは、右和解条項に基づき賃貸借契約が当然に解除されたものとは認められない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和51年12月17日 昭和51(オ)633
登載
民集 第30巻11号1036頁
参照法条
民法第3編第2章第7節第3款,民法541条,民法695条,民訴法203条
論点34第541条民法

製造物供給契約の目的物が商法五二四条の供託又は自動売却に適しないとして注文者の受領拒否を理由とする受注者からの契約解除及び損害賠償請求が認められた事例

裁判要旨化粧品の製造販売を業とする被上告人はかねて化粧品の販売を業とする上告人より注文を受け同人の指示にしたがつて化粧品を製造して供給し、右化粧品は上告人の販売網を通じて他に売却されていたところ、昭和四一年二月二四日及び同年四月四日被上告人は上告人よりマニキュア、除光液及びアイライン等計四六〇〇ダースの注文を受け製造にとりかかつたところ、上告人は同年四月、正当の理由がないのに右化粧品の納入中止を申し入れ、その受領を拒否したのであり、右目的物は注文により製造され、注文者の販売網によつて売却される大量の化粧品であるから商法五二四条〈遅延した承諾の効力〉の供託又は自動売却に適さないものというべく、かかる場合被上告人は上告人の目的物の受領拒否を理由に右契約を解除し、損害賠償を請求することができる、と解するを相当とする。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和50年9月26日 昭和49(オ)721
登載
集民 第116号87頁
参照法条
商法524条,民法541条
論点35第541条民法

土地買受代金の支払について所有権移転登記手続との同時履行を主張することが信義則上許されないとされた事例

裁判要旨土地の買主が、所有権移転登記をうけなかつたが申請手続の過誤により隣地につき所有権移転登記がされたためであり、土地の引渡はうけその使用をつづけた等判示の事実関係のもとにおいては、買受代金の支払について所有権移転登記手続との同時履行を主張することは信義則上許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和50年12月26日 昭和49(オ)1202
登載
集民 第116号959頁
参照法条
民法1条2項,民法533条,民法541条
論点36第541条民法

一、敷金返還請求権の発生時期とその額
二、長期にわたる賃料不払と催告不要の特約に基づく賃貸借契約解除

裁判要旨一、建物賃貸借における敷金は、賃貸借終了後、建物明渡完了の時において、それまでに生じた延滞賃料や賃料相当損害金などを控除した残額につき発生する。
二、建物の賃借人が一〇年以上にわたり全く賃料を支払わない場合に、賃貸人が賃貸借契約上の催告不要の特約に基づき無催告で右契約を解除することは、あながち不合理ではなく、その解除は有効である。(昭和四二年(オ)第一一〇四号同四三年一一月二一日第一小法廷判決・民集二二巻一二号二七四一頁参照)。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年3月22日 昭和44(オ)781
登載
集民 第108号479頁
参照法条
民法541条,民法619条
論点37第541条民法

取立払の定めのある賃料を債権者が取立に赴かなくてもその不払を理由とする賃貸借契約の解除が許されるとされた事例

裁判要旨六箇月ごとの取立払の定めのある賃料につき、賃貸人が再三賃借人方に取立に赴きまた督促のため電話したのに対し、賃借人がその事実を知りながら支払の意思を示す態度がなかつたなどの判示の事実関係のもとにおいて、賃貸人が一年七箇月分の賃料を持参して支払うよう催告し、催告期間内に賃借人方に取立に赴かなかつたとしても、賃借人が弁済の準備をしその旨を賃貸人に通知して取立を促す等信義則上の措置に出ないで催告期間を徒過したときは、賃貸人は、右催告にかかる賃料の不払を理由に、賃貸借契約を解除することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年1月20日 昭和46(オ)882
登載
集民 第105号7頁
参照法条
民法484条,民法493条,民法541条,民法601条,民法1条2項
論点38第541条民法

土地の売買契約において買主が負つた公租公課の負担義務と付随義務

裁判要旨土地の売買契約において、買主が代金を五年間にわたつて分割支払い、その完済後売主が所有権移転登記をなし、その支払期間中の公租公課を買主が負担する旨約された場合には、右買主の公租公課負担義務は付随義務とはいえず、売主はこの義務不履行を理由に契約を解除することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年11月28日 昭和46(オ)1158
登載
集民 第107号265頁
参照法条
民法415条,民法541条,民法555条
論点39第541条民法

一、賃貸借契約における信義則上の義務違反と契約解除
二、用方違反または信義則上の義務違反を理由とする賃貸借契約の解除が認められなかつた事例

裁判要旨一、賃貸借契約の当事者の一方が、右契約に基づき信義則上当事者に要求される義務に違反して、その信頼関係を破壊することにより、賃貸借関係の継続を著しく困離ならしめたときは、他方の当事者は、催告なくして賃貸借契約を解除することができる。
二、建物所有を目的とする土地賃貸借契約の賃借人が、借地の約半分にあたる空地をトラツク置場とし、無免許で自動車運送事業を営み、また、そのトラツクが完全に格納できずに公道上に約一メートルはみ出し公衆の通行を妨害している場合においても、格納を完全にするための工事が比較的容易であり、近隣や歩行者から苦情が出たこともない等原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいては、賃貸人は、用法違反または信義則上の義務違反を理由として、賃貸借契約を解除することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年11月16日 昭和45(オ)942
登載
民集 第26巻9号1603頁
参照法条
民法541条,民法594条1項,民法601条,民法616条
論点40第541条民法

信頼関係の破壊を理由とする無催告の賃貸借契約解除が許容された事例

裁判要旨家屋の一室を除く部分の賃借人が、賃借外の右一室につき、賃貸人の承諾なく判示のような改造を施し、これを賃借部分とあわせて使用している場合には、賃借人の右行為は、賃貸借契約の継続を困難ならしめる著しい不信行為に該当し、賃貸人は、催告なしに賃貸借契約を解除することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和44年6月17日 昭和44(オ)78
登載
集民 第95号509頁
参照法条
民法541条,民法616条,民法594条1項
論点41第541条民法

取立払の定のある債務について債権者が取立に赴かなくても解除権の行使が許されるとされた事例

裁判要旨取立払の定のある賃料について、増額請求を受けた賃借人が、賃貸人の一箇月分の賃料の取立にさいしてその全額の支払を拒絶し、その後引続き適正額の賃料の支払をも拒絶する態度を示している等判示事実関係のもとにおいては、賃貸人が客観的に適正とされる額によつて五年分の賃料を自己の住所へ持参して支払うよう催告し、催告期間内に賃借人の住所に取立のため赴かなかつたとしても、賃借人が弁済の準備をしその旨を賃貸人に通知して取立を促がす等の措置に出ないで催告期間を徒過したときには、賃貸人は、賃貸借契約を解除することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年8月2日 昭和42(オ)1066
登載
集民 第92号55頁
参照法条
民法484条,民法493条,民法541条,民法601条,民法1条2項
論点42第541条民法

相殺の遡及効が契約解除に及ぼす影響の有無

裁判要旨賃貸借契約が賃料不払のため適法に解除された以上、たとえその後賃借人の相殺の意思表示により右賃料債務が遡つて消滅しても、解除の効力に影響はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年1月14日 昭和40(オ)611
登載
集民 第82号41頁
参照法条
民法506条,民法541条
論点43第541条民法

建物の一部の賃借人が他の部分を不法に占拠して賃借部分と併用している行為が著しい不信行為であるとして無催告の賃貸借契約の解除が許容された事例。

裁判要旨賃貸人の所有建物の一部の賃借人が、他の部分について賃貸人から賃貸の交渉を受けたにかかわらず、これに対する諾否を明らかにしないまま、五ケ月あまりの間、当該部分を不法に占拠して賃借部分と併用している等原判示の事情(原判決理由参照)がある場合には、賃借人の右行為は賃貸借契約の継続を著しく困難ならしめる不信行為に該当し、賃貸人は、催告なしに賃貸借契約を解除することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年8月2日 昭和39(オ)822
登載
民集 第19巻6号1368頁
参照法条
民法616条,民法594条1項,民法541条
論点44第541条民法

債務者は債権者の受領遅滞を理由として契約を解除できるか。

裁判要旨債務者が債権者の受領遅滞を理由として契約を解除することは、特段の事由のないかぎり、許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年12月3日 昭和40(オ)208
登載
民集 第19巻9号2090頁
参照法条
民法413条,民法541条
論点45第541条民法

賃料増額の請求がなされた場合と従前の額による賃料提供の適否。

裁判要旨賃料増額の請求がなされた場合には、従前の賃料額と適正増額賃料額との差が僅少である等信義則上従前の賃料額の提供をもつて債務の本旨に従つた履行の提供とみられるような特別の事情があるときのほか、債務者は、従前の賃料額をもつて相当であると考えたとしても、従前の賃料額を提供しただけでは、履行遅滞の責を免れない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年12月10日 昭和38(オ)1365
登載
民集 第19巻9号2117頁
参照法条
借家法7条,民法492条,民法541条
論点46第541条民法

借家人の無断増改築が著しい不信行為であるとして無催告の賃貸借契約解除を有効とした事例

裁判要旨二階建家屋の賃借人が、無断で賃借家屋の階下の店舗部分の柱一本を切除して一畳半の床部分を落間とし、賃借家屋の廂の下からトタン葺の下屋をさげて約三畳の間を増築する等判示の増改築をした場合には、賃貸人は著しい不信行為のなされたことを理由として催告なしに賃貸借契約を解除することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年11月16日 昭和39(オ)1035
登載
集民 第81号57頁
参照法条
民法541条,民法616条,民法594条
論点47第541条民法

賃借人に著しい不信行為があるとして無催告の土地賃貸借契約解除が有効とされた事例。

裁判要旨土地賃借人が賃貸人の申し入れた地代値上の交渉をことさらに回避し、かつ、地下室の建設を禁ずる旨の約定があったのにこれを無視して地下室建設工事に着手し、賃貸人において工事中止もしくは原状回復の催告をしたとしても賃借人がこれに応じたとは到底認め得ないような事情(原判決理由参照)があるときは、賃貸人は、賃借人に著しい不信行為があることを理由として、催告なしに賃貸借契約を解除することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年6月4日 昭和37(オ)601
登載
集民 第74号11頁
参照法条
民法400条,民法541条,民法543条
論点48第541条民法

一 家屋賃貸借における賃料の取立債務の約定と新所有者たる賃貸人による承継の有無。
二 催告金額以下の金額では賃貸人において受領しないことが明確であることを理由として催告が効力を生じないとされた事例。

裁判要旨一 家屋賃貸借における賃料の取立債務の約定は、賃借人と前賃貸人との間の特殊事情に基づいて成立したものであつても、新所有者たる賃貸人に承継される。
二 賃貸人が適正賃料である月三、九八九円を一、〇一一円しかこれない賃料月五、〇〇〇円の割合による賃料債務の支払を催告した場合であつても、賃貸人が右催告金額以下の金員ではこれを受領しないことが明確であるときには、右催告は、その効力を生じない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年6月26日 昭和38(オ)1071
登載
民集 第18巻5号968頁
参照法条
民法600条,民法614条,民法541条,借家法1条
論点49第541条民法

過大催告の効力。

裁判要旨催告の額が多額に失しても、債権者において客観的に正しい賃料額を受領しない意思が明瞭でない場合においては、債権者は、債務者の履行の提供がないかぎり、契約を解除することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月28日 昭和38(オ)265
登載
集民 第71号419頁
参照法条
民法541条,民法413条
論点50第541条民法

違約手附金倍戻の請求と契約解除の要否。

裁判要旨違約手附金の約定が契約関係を清算する趣旨のものである場合は、右違約手形附金を交付した者が相手方の違約を理由として手附金倍戻を請求するためには、あらかじめ契約解除の手続を経ることを要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年9月5日 昭和37(オ)880
登載
民集 第17巻8号832頁
参照法条
民法420条,民法541条,民法557条
論点51第541条民法

借家人の無断増築が著しい不信行為であるとして無催告の賃貸借契約解除が有効とされた事例。

裁判要旨土蔵造り瓦葺二階建家屋(建坪六坪)の賃借人が賃貸人所有の右敷地またはこれに隣接する同人所有地上に木造瓦葺二階建居宅一棟(建坪約六坪)を無断で建増ししたような場合においては、賃貸人は著しい不信行為のなれたことを理由として催告なしに賃貸借契約を解除することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年9月27日 昭和37(オ)588
登載
民集 第17巻8号1069頁
参照法条
民法541条,民法543条,民法616条,民法594条1項
論点52第541条民法

土地賃借人が借地に隣接する賃貸人所有地に越境建築したことが借地自体の用方違反になるとされた事例。

裁判要旨建物所有を目的とする土地賃借人が借地に隣接する賃貸人所有地にまで越境して建物を建築した場合、右越境建築が当該隣地における賃貸人の店舗経営上以上な支障をきたすなど判示のような事実関係のもとでは、右越境建築により、借地自体の用方違反があるということができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年11月14日 昭和36(オ)361
登載
民集 第17巻11号1346頁
参照法条
民法541条,民法616条,民法594条1項
論点53第541条民法

相殺の遡及効が契約解除に及ぼす影響の有無

裁判要旨賃貸借契約が、賃料不払のため適法に解除された以上、たとえその後賃借人が費用償還請求権を自動債権とする相殺の意思表示により、右賃料債務が遡つて消滅しても、解除の効力に影響はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年8月14日 昭和34(オ)1191
登載
集民 第62号161頁
参照法条
民法506条,民法541条
論点54第541条民法

賃料延滞による賃貸借の解除と転借人に対する催告の要否

裁判要旨適法な転貸借がある場合、賃貸人が賃料延滞を理由として賃貸借契約を解除するには、賃借人に対して催告すれば足り、転借人に対して右延滞賃料の支払の機会を与えなければならないものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年3月29日 昭和33(オ)963
登載
民集 第16巻3号662頁
参照法条
民法541条,民法612条,民法613条
論点55第541条民法

不動産の買戻特約と買主の代金不払

裁判要旨不動産の買戻特約がなされた場合に、買主が代金の支払を全然しないときには、売主は契約費用のみを提供して買戻権を行使できる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年1月19日 昭和33(オ)1106
登載
集民 第58号231頁
参照法条
民法579条,民法583条1項,民法541条
論点56第541条民法

一 立木の二重売買と債務不履行の成立時期
二 売主の債務不履行のときは内入金の倍額を買主に支払い、買主の債務不履行のときは内入金を放棄するとの約定と賠償額の予定
三 予定賠償額の請求と契約解除の要否

裁判要旨一 売買の目的物である立木を売主が買主以外の者に売却して伐採搬出されたときは、そのときに買主に対する債務不履行が成立する。
二 売主が債務不履行のときは内入金の倍額を買主に支払い、買主の債務不履行のときは内入金を放棄するとの約定は、債務不履行の場合に当事者間の契約関係を清算しようとするための損害賠償を予定したものと解することができる。
三 右のような場合に、売主が買主の債務不履行を理由として損害賠償を請求するためには、契約を解除する必要はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年12月26日 昭和37(オ)11
登載
集民 第63号1099頁
参照法条
民法415条,民法557条,民法420条,民法541条
論点57第541条民法

一 相殺の遡及効が契約解除に及ぼす影響
二 法律解釈の根拠を判示することの要否

裁判要旨一 建物賃貸借契約が賃料不払に因つて解除された後、賃借人の相殺の意思表示によつて賃料債務が遡つて消滅しても、契約解除の効力に影響はないものと解すべきである。
二 法律解釈の根拠・理由を判決に示さなくても、理由不備の違法があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年11月22日 昭和35(オ)1322
登載
集民 第63号307頁
参照法条
民法506条2項,民法541条,民訴法395条1項6号,民訴法191条1項3号
論点58第541条民法

一 過大催告の効力を否定すべきでない場合
二 判決正本に裁判官の記名がない場合と責問権抛棄

裁判要旨一 正当な賃料額の提供があつても債権者においてこれを受領しないことが明らかであつたとの特別の事情が認められない以上、過大催告の効力を否定すべきでない。
二 送達された第一審判決正本に裁判官の記名がなくても、これを異議なく受領して控訴を提起している以上、責問権を抛棄したものと認められる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年10月4日 昭和35(オ)6
登載
集民 第62号679頁
参照法条
民法541条,民訴法193条,民訴法141条
論点59第541条民法

賃借建物の無断増築が契約解除原因に当らないとされた事例。

裁判要旨借地上の建物の賃借人が空地に建物を無断で増築した場合でも、増築部分が賃借建物の構造を変更しないでこれに附属せしめられた一日で撤去できる程度の仮建築であり、しかも賃借建物は賃借人が自己の費用で適宜改造して使用すべく家主において修理しない約定で借受けた等の経緯であるときは、賃借人の右増築行為は、建物の賃貸借契約を解除しうる背信行為に当らない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年7月21日 昭和33(オ)719
登載
民集 第15巻7号1939頁
参照法条
民法541条,民法616条,民法594条1項
論点60第541条民法

不特定物の売買における目的物受領後の不完全履行による契約解除の可否。

裁判要旨不特定物の売買において給付されたものに瑕疵のあることが受領後に発見された場合、買主がいわゆる瑕疵担保責任を問うなど、瑕疵の存在を認識した上で右給付を履行として容認したと認められる事情が存しない限り、買主は、取替ないし追完の方法による完全履行の請求権を有し、また、その不完全な給付が売主の責に帰すべき事由に基づくときは、債務不履行の一場合として、損害賠償請求権および契約解除権をも有するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年12月15日 昭和32(オ)1222
登載
民集 第15巻11号2852頁
参照法条
民法415条,民法541条,民法570条
論点61第541条民法

一 民法第五四一条〈催告による解除〉の催告と付遅滞の要否
二 受領遅滞にある者のする催告の要件。

裁判要旨一 契約解除の前提としての催告が有効であるためには、少くとも催告と同時に相手方が遅滞に付されることを要する。
二 双務契約上の債務の受領遅滞にある者が契約解除の前提としての催告をするためには、受領遅滞を解消させた上でこれをしなければならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和35年10月27日 昭和31(オ)686
登載
民集 第14巻12号2733頁
参照法条
民法541条,民法413条
論点62第541条民法

相殺の遡及効が契約解除に及ぼす影響の有無

裁判要旨賃貸借契約が、賃料不払のため適法に解除された以上、たとえその後、賃借人の相殺の意思表示により右賃料債務が遡つて消滅しても、解除の効力に影響はなく、このことは、解除の当時、賃借人において自己が反対債権を有する事実を知らなかつたため、相殺の時期を失した場合であつても、異るところはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年3月8日 昭和30(オ)332
登載
民集 第11巻3号513頁
参照法条
民法506条,民法541条
論点63第541条民法

一 附帯控訴状と第一審判決の表示
二 過大催告が有効と認められた事例

裁判要旨一 附帯控訴状の記載全体から第一審判決を窺知することができるときは、第一審判決の表示を欠く違法があるとはいえない。

二 賃料延滞額を二三二、〇〇〇円としてなされた催告は、延滞額が一〇〇、二三〇円にすぎない場合であつても、催告金額全部の提供がなければ受領を拒絶すべき意思が明確でないときは、右延滞額の限度において有効と認めるべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年3月28日 昭和31(オ)596
登載
民集 第11巻3号610頁
参照法条
民訴法374条,民法541条
論点64第541条民法

遺産分割協議と民法五四一条による解除の可否

裁判要旨共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が右協議において負担した債務を履行しないときであつても、その債権を有する相続人は、民法五四一条〈催告による解除〉によつて右協議を解除することができない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年2月9日 昭和59(オ)717
登載
民集 第43巻2号1頁
参照法条
民法541条,民法907条,民法909条
論点65第541条民法

一 同一当事者間で締結された二個以上の契約のうち一の契約の債務不履行を理由に他の契約を解除することのできる場合
二 いわゆるリゾートマンションの売買契約と同時にスポーツクラブ会員権契約が締結された場合にその要素たる債務である屋内プールの完成の遅延を理由として買主が右売買契約を民法五四一条〈催告による解除〉により解除することができるとされた事例

裁判要旨一 同一当事者間の債権債務関係がその形式は甲契約及び乙契約といった二個以上の契約から成る場合であっても、それらの目的とするところが相互に密接に関連付けられていて、社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約上の債務の不履行を理由に、その債権者は、法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができる。
二 同一当事者間でいわゆるリゾートマンションの区分所有権の売買契約と同時にスポーツクラブ会員権契約が締結された場合において、区分所有権の得喪と会員たる地位の得喪とが密接に関連付けられているなど判示の事実関係の下においては、屋内プールの完成の遅延という会員権契約の要素たる債務の履行遅滞を理由として、区分所有権の買主は、民法五四一条〈催告による解除〉により右売買契約を解除することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年11月12日 平成8(オ)1056
登載
民集 第50巻10号2673頁
参照法条
民法第3編第2章契約,民法541条
論点66第541条民法

賃料の不払を理由とする賃貸借契約の解除と転借人に賃料の代払の機会を与えることの要否

裁判要旨適法な転貸借関係が存在する場合、賃貸人が賃料の不払を理由として賃貸借契約を解除するには、特段の事情のない限り、転借人に通知等をして賃料の代払の機会を与えなければならないものではない。

(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成6年7月18日 平成4(オ)1598
登載
集民 第172号1007頁
参照法条
民法541条,民法613条
論点67第541条民法

土地賃貸借契約において賃借人が地上建物を賃貸して転居し所在を明らかにしないまま八年以上を経過したことなどが賃貸人に対する信頼関係を著しく破壊するとして無催告の解除が許容された事例

裁判要旨土地賃借人が第三者に地上建物を賃貸して地代の支払をゆだね、その旨を賃貸人に通知することなく転居し、以後自ら土地の管理をせず、所在を明らかにしないまま八年以上を経過するなど、判示の事実関係の下においては、賃借人の行為は賃貸借当事者間の信頼関係を著しく破壊するものであって、賃貸人は、契約上の義務違反を理由として賃貸借契約を無催告で解除することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成3年9月17日 平成2(オ)1735
登載
集民 第163号299頁
参照法条
民法541条,民法601条
論点68第541条民法

保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに生命保険契約が失効する旨を定める約款の条項の,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項〈基本原則〉に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」該当性

裁判要旨生命保険契約に適用される約款中の保険料の払込みがされない場合に履行の催告なしに保険契約が失効する旨を定める条項は,(1)これが,保険料が払込期限内に払い込まれず,かつ,その後1か月の猶予期間の間にも保険料支払債務の不履行が解消されない場合に,初めて保険契約が失効する旨を明確に定めるものであり,(2)上記約款に,払い込むべき保険料等の額が解約返戻金の額を超えないときは,自動的に保険会社が保険契約者に保険料相当額を貸し付けて保険契約を有効に存続させる旨の条項が置かれており,(3)保険会社が,保険契約の締結当時,上記債務の不履行があった場合に契約失効前に保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う実務上の運用を確実にしているときは,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項〈基本原則〉に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に当たらない。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成24年3月16日 平成22(受)332
登載
民集 第66巻5号2216頁
参照法条
消費者契約法10条,民法91条,民法541条,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)第3編第10章 保険,保険法第3章 生命保険,保険法第4章 傷害疾病定額保険
論点69第541条民法

会員募集用パンフレットに記載されたホテル等の施設が設置されなかったことが債務不履行に当たるとして会員からされたゴルフクラブ入会契約の解除を認めなかった原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨ゴルフ場経営会社がゴルフクラブの会員募集用のために作成したパンフレットにはゴルフ場に高級ホテルが併設されることが強調されており、右ゴルフクラブの入会金及び預託金の額は右パンフレットに記載されたゴルフ場の特徴に相応して高額になっていたが、実際にゴルフ場経営会社によって提供された施設はその規模や構造等において右パンフレットの記載には到底及ばないなど判示の事実関係の下においては、パンフレットに記載されたホテル等の施設を設置して会員の利用に供することがゴルフクラブ入会契約の債務の重要な部分を構成するか否かを判断するに当たり右事実関係を考慮することなく、ゴルフ場経営会社の債務不履行を理由とする会員からの解除を認めなかった原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成11年11月30日 平成10(オ)71
登載
集民 第195号593頁
参照法条
民法第3編第2章契約,民法541条
論点70第541条民法

一 建物の区分所有等に関する法律三一条一項〈失踪の宣告の効力〉後段にいう「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」の意義
二 区分所有者が専用使用権を有するマンション駐車場の使用料を増額する規約の設定、変更等が専用使用権者の権利に建物の区分所有等に関する法律三一条一項後段にいう「特別の影響」を及ぼさない場合
三 区分所有者が専用使用権を有するマンション駐車場の使用料を増額する集会決議と建物の区分所有等に関する法律三一条一項後段の類推適用
四 マンション駐車場の専用使用権を有する区分所有者が増額された使用料の支払に応じないことを理由としてされた駐車場使用契約の解除の効力が否定された事例

裁判要旨一 建物の区分所有等に関する法律三一条一項〈失踪の宣告の効力〉後段にいう「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が右区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう。
二 区分所有者が専用使用権を有するマンション駐車場の使用料を増額する規約の設定、変更等は、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者の権利に建物の区分所有等に関する法律三一条一項後段にいう「特別の影響」を及ぼすものではない。
三 区分所有者が専用使用権を有するマンション駐車場の使用料が、規定の設定、変更等によることなく、規約の定めに基づき、集会決議もって増額された場合にも、建物の区分所有等に関する法律三一条一項後段の規定が類推適用される。
四 マンション駐車場の専用使用権を有する区分所有者が、使用料を増額する集会決議の効力を争い、管理組合の主張する増額使用料の支払義務の不存在確認を求める訴訟を提起し、既に三回の口頭弁論期日が開かれていたにもかかわらず、管理組合が、専用使用権者に対して増額使用料を支払うように催告し、その支払に応じないことを理由として駐車場使用契約を解除する旨の意思表示をしたこと、管理組合の主張する使用料の増額が社会通念上相当なものであることが明白であるとはいい難いことなど判示の事情の下においては、管理組合による右駐車場使用契約の解除は効力を生じない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年10月30日 平成8(オ)258
登載
民集 第52巻7号1604頁
参照法条
建物の区分所有等に関する法律第1章第2節共用部分等,建物の区分所有等に関する法律17条,建物の区分所有等に関する法律18条,建物の区分所有等に関する法律21条,建物の区分所有等に関する法律31条1項,民法541条
論点71第541条民法

1 賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料等の不払があるときに連帯保証人が無催告にて賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項の消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項該当性
2 賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料等の不払等の事情が存するときに連帯保証人が賃貸住宅の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定める条項の消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項該当性

裁判要旨1 賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料債務等の連帯保証人は、賃借人が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したときは、無催告にて賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項は、消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項に当たる。
2 賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料債務等の連帯保証人は、賃借人が賃料等の支払を2か月以上怠り、連帯保証人が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡がとれない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から当該賃貸住宅を相当期間利用していないものと認められ、かつ当該賃貸住宅を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するときは、賃借人が明示的に異議を述べない限り、これをもって当該賃貸住宅の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定める条項は、消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項に当たる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和4年12月12日 令和3(受)987
登載
民集 第76巻7号1696頁
参照法条
(1、2につき)消費者契約法10条、消費者契約法12条3項、民法91条、民法第3編第2章第7節 賃貸借 (1につき)民法541条、民法542条1項
論点72第543条民法

不動産売買契約が解除された場合の損害賠償額の予定に関する約定の解釈

裁判要旨売主の責に帰すべき履行不能により不動産売買契約が解除された場合の損害賠償額の予定に関する約定は、それが履行不能による賠償額算定の争いを避けるためにされたものであり、解除の有無によつて買主の請求しうる額に差異がない等判示の事情のもとにおいては、買主が契約を解除することなく本来の給付に代わる填補賠償を請求する場合にも適用されると解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和63年11月25日 昭和58(オ)548
登載
集民 第155号149頁
参照法条
民法415条,民法420条,民法543条,民法545条
論点73第543条民法

不動産の二重売買における一方の買主のための仮登記の経由と他方の買主に対する履行不能の成否

裁判要旨甲が乙に対して不動産を売り渡した場合において、所有権移転登記未了の間に、その不動産につき、丙のために売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記がなされたというだけでは、いまだ甲の乙に対する売買契約上の義務が履行不能になつたということはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和46年12月16日 昭和41(オ)802
登載
民集 第25巻9号1516頁
参照法条
民法415条,民法543条
論点74第543条民法

一 賃貸人の債務不履行による土地賃貸借解除と損害賠償の範囲
二 転貸禁止の特約の有無は借地権の評価に影響するか

裁判要旨一 賃貸人の債務不履行による土地賃貸借解除に基づき賃借人の賃貸人に対して請求する借地権喪失による損害賠償の範囲は、右解除当時における当該借地権の価格によるべきである。
二 土地賃貸借解除に基づく賃借人の賃貸人に対して請求する損害賠償額算定の基準としての借地権の評価につき、転貸禁止の特約の有無は影響しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年7月20日 昭和34(オ)113
登載
民集 第16巻8号1583頁
参照法条
民法543条,民法545条3項
論点75第543条民法

一 債務者の妻の過失と夫の債務不履行上の責任
二 債務者の責に帰すべき事由により履行不能を原因とする損害賠償の請求と契約解除の要否

裁判要旨一 家屋賃借人の妻の失火により、右家屋が滅失したときは、賃借人たる夫の責に帰すべき事由により賃借物の返還義務が履行不能になつたものと認めるべきである。
二 債務者の責に帰すべき事由によつて履行不能を生じたときは、賃借人は、契約を解除することなくして填補賠償の請求をすることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年4月19日 昭和28(オ)848
登載
民集 第9巻5号556頁
参照法条
民法415条,民法543条
論点76第544条民法

相続による土地の共同賃借人のうちの一人がした賃借権の無断譲渡を理由に他の賃借人に対しても、賃貸借の解除ができるか

裁判要旨賃貸人が、相続により土地の共同賃借人となつた甲乙に対し、甲のした賃借権の無断譲渡を理由として賃貸借解除の意思表示をした場合、乙は右無断譲渡行為を知らず何らこれに関与していなかつたとしても、解除権不可分の原則が働くのであるから、右解除の効果は乙についても生ずるものといわなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年4月12日 昭和42(オ)1027
登載
集民 第90号963頁
参照法条
民法544条1項,民法612条
論点77第544条民法

共有物を目的とする貸借契約の解除と民法第五四四第一項の適用の有無。

裁判要旨共有物を目的とする貸借契約の解除は、共有者によつてされる場合は、民法第二五二条〈共有物の管理〉本文にいう「共有物ノ管理ニ関スル事項」に該当すると解すべきであり、右解除については、民法第五四四条第一項〈解除権の不可分性〉の規定は適用されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年2月25日 昭和36(オ)397
登載
民集 第18巻2号329頁
参照法条
民法544条1項,民法252条
論点78第544条民法

共同相続人の一人に対する賃借解約の効力

裁判要旨土地賃借権が共同相続された場合、その共同相続人の一人に対してなされた賃貸借解約の意思表示は、その効力がない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年4月19日 昭和36(オ)1056
登載
集民 第60号219頁
参照法条
民法544条1項
論点79第544条民法

賃借人の相続人が数名ある場合と解除の意思表示。

裁判要旨賃借人が死亡し、相続人として妻および子がある場合は、特段の事情の認められないかぎり、子のみに対する賃貸借解除の意思表示を有効ということはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年12月22日 昭和34(オ)378
登載
民集 第15巻12号2893頁
参照法条
民法544条
論点80第545条民法

無断転貸にもかかわらず賃貸借の解除ができない場合にされた賃貸借の合意解除と転借人の地位

裁判要旨土地の無断転貸が行われたにもかかわらず賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が賃貸借を解除することができない場合において、当該賃貸借が合意解除されたとしても、それが賃料不払等による法定解除権の行使が許されるときにされたものである等の事情のない限り、賃貸人は右合意解除の効果を転借人に対抗することができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和62年3月24日 昭和59(オ)1178
登載
集民 第150号509頁
参照法条
民法545条1項,民法612条
論点81第545条民法

債務者が代物弁済に供した不動産をその登記未了の間に第三者に譲渡したがその後代物弁済契約が遡つて失効した場合と債権者に対する不法行為責任の有無

裁判要旨債務者が、債権者に対し賃借権譲受代金債務の支払に代えて不動産を譲渡した後その登記未了の間に、これを第三者に二重に譲渡し登記を経由した場合であつても、右賃借権譲渡契約が解除されて右債務が遡つて消滅し、代物弁済契約による所有権移転の効果も遡つて失われたときは、債務者は債権者に対し、右不動産の所有権侵害による不法行為責任を負わない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和60年12月20日 昭和58(オ)706
登載
集民 第146号355頁
参照法条
民法176条,民法482条,民法545条,民法709条
論点82第545条民法

地上権者が地上権設定契約の合意解除をもつて地上権者からの当該土地の賃借人に対抗しうる場合

裁判要旨地上権者が地上権の目的土地を第三者に賃貸したのちに地上権設定者と地上権者とが合意で地上権設定契約を解除した場合、地上権設定者は、原則として、右第三者(賃借人)に対し、右合意解除により地上権者と賃借人との間の賃貸借契約が終了したと主張することはできないが、地上権設定者が、地上権者の債務不履行を理由として民法二六六条一項、二七六条所定の地上権の消滅請求又は法定の解除権を行使する旨の意思表示をし、これによつて地上権設定契約及びこれを基礎とする右賃貸借契約が既に終了しているといえる事実関係のあるときには、合意解除されても、地上権設定者が、これに応ずるに当たつて、右の賃貸借契約の終了によつて受けうべき利益を放棄したといえる事情のあるときは格別、そうでない限り、地上権設定者は、合意解除により地上権者と賃借人との間の賃貸借契約も終了した旨主張することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年10月8日 昭和58(オ)513
登載
集民 第143号29頁
参照法条
民法266条1項,民法276条,民法398条,民法545条1項
論点83第545条民法

不動産の売買の遡及的合意解除がされた場合と右不動産について仮登記を経由した者の保護

裁判要旨不動産の売買の遡及的合意解除がされた場合、買主から右不動産を取得したが対抗要件としての登記を経由していない者は、たとえ仮登記を経由したとしても、民法五四五条一項〈解除の効果〉但書にいう「第三者」として保護されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年7月5日 昭和57(オ)452
登載
集民 第139号259頁
参照法条
民法177条,民法545条1項但書
論点84第545条民法

売買契約が民法五六一条により解除された場合と目的物の引渡を受けていた買主の使用利益返還義務

裁判要旨売買契約に基づき目的物の引渡を受けていた買主は、民法五六一条〈他人の権利の売買における売主の義務〉により右契約を解除した場合でも、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還しなければならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和51年2月13日 昭和49(オ)1152
登載
民集 第30巻1号1頁
参照法条
民法545条,民法561条
論点85第545条民法

土地賃貸借の合意解除が地上建物の賃借人に対抗できるとされた事例

裁判要旨土地賃貸借が合意解除された当時、地上建物につき土地賃借人と合資会社との間に賃貸借が締結されていた場合においても、右会社は土地賃借人が従前同建物で経営していた事業を自己が代表者となつて会社組織にしたものにすぎず、かつ、右解除の際、土地賃借人が会社設立について言及しなかつたため土地賃貸人が右の事実を全く知らなかつたなど判示のような特別の事情があるときは、土地賃貸人は当該合意解除をもつて右会社に対抗することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和49年4月26日 昭和48(オ)766
登載
民集 第28巻3号527頁
参照法条
民法545条1項,民法601条
論点86第545条民法

借地法一〇条の建物買取請求権と土地賃貸借の合意解除

裁判要旨建物とともにその敷地の賃借権を譲り受けた者の有する借地法一〇条〈後見開始の審判の取消し〉の建物買取請求権は、賃貸人が賃借人である譲渡人との間で賃貸借契約を合意解除しても、特段の事情がないかぎり、消滅しないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年9月7日 昭和46(オ)528
登載
民集 第27巻8号907頁
参照法条
民法545条1項,民法601条,借地法10条
論点87第545条民法

土地の賃貸人がその賃貸借契約の合意解約をもつて地上建物の抵当権実行による競落人に対抗することができるとされた事例

裁判要旨土地の賃貸人と賃借人との間において土地賃貸借契約が合意解約されたが、一方、土地の賃借人が同地上に所有する建物に設定した根抵当権が実行され、右建物が競落された場合において、右合意解約の原因がもつぱら賃借人の賃料不払にあり、また、右競落は、合意解約により右土地の賃借権が消滅したのちであつて、競落人は右賃借権消滅の事実を知悉しながら競落取得したものである等判示の事実関係があるときは、土地の賃貸人は、右合意解約をもつて競落人に対抗することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年3月7日 昭和45(オ)631
登載
集民 第105号251頁
参照法条
民法545条1項,民法601条
論点88第545条民法

請負契約の合意解除にあたり請負人が注文主に対し前払金返還債務を負担することを約した場合と請負人の保証人の責任

裁判要旨請負契約が合意解除され、その際請負人が注文主に対し請負契約上前払すべきものと定められた金額の範囲内で前払金返還債務を負担することを約した場合において、右合意解除が請負人の債務不履行に基づくものであり、かつ、右約定の債務が実質的にみて解除権の行使による解除によって負担すべき請負人の前払金返還債務より重いものではないと認められるときは、請負人の保証人は、特段の事情のないかぎり、右約定の債務についてもその責に任ずるものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年3月23日 昭和46(オ)126
登載
民集 第26巻2号274頁
参照法条
民法446条,民法447条,民法545条,民法632条
論点89第545条民法

立木の伐採搬出期間経過後は立木売買契約は解除となり残存立木は売主の所有に帰する旨の約定の趣旨

裁判要旨本件「伐採搬出期間内に伐採搬出が終わらないときは売買契約は自動的に解除となり生立する立木および伐採木は売主の所有に帰属する」との約定は、残存立木および伐採木が売主の所有となる旨を定めたにとどまり、全く伐採がなされなかつた場合でも、契約を遡及的に消滅させる趣旨ではないと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和47年12月22日 昭和45(オ)998
登載
集民 第107号441頁
参照法条
民法545条,民法555条
論点90第545条民法

契約を解除した当事者が第三者の登記の欠缺を主張することが信義則上許されないとされた事例

裁判要旨甲所有の丁土地と乙所有の戊土地とを交換する契約が甲乙間になされ、乙が丁土地をさらに丙に譲渡して未だその登記を経ない間に、乙に対する国税の滞納処分として戊土地が差押公売されたため、甲が履行不能を理由に右交換契約を解除した場合において、甲が、交換契約に基づき戊土地を自ら使用しており、他方右契約当時においても丁土地が乙から丙に譲渡されるものであることを了承し、丙の買受後にはその権利移転を認め、丙の地上の建物の建築許可申請手続に協力し、乙、丙との間に、丁土地につき甲から丙に中間省略により直接所有権移転登記をすることを合意しながら、乙、丙の再三の請求にかかわらず自己の都合で右登記手続を遷延して約四年を経過するうち、右滞納処分がなされるに至つたなど、判示の事実関係があるときは、甲が丙の丁土地の所有権取得につき登記の欠缺を主張することは信義則上許されず、甲の交換契約解除にかかわらず丙の権利は否定されないものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年3月26日 昭和43(オ)717
登載
集民 第98号505頁
参照法条
民法545条1項,民法177条,民法1条2項
論点91第545条民法

訴訟上の和解の内容たる私法上の契約の解除と和解による訴訟終了の効果

裁判要旨訴訟上の和解の内容たる私法上の契約が債務不履行のために解除されても、右和解による訴訟終了の効果に影響を及ぼさない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年2月15日 昭和41(オ)630
登載
民集 第22巻2号184頁
参照法条
民訴法203条,民法545条,民法695条
論点92第545条民法

売買契約の解除による買主の損害賠償債務と保証人の責任

裁判要旨売買契約における買主の代金債務についての保証人の責任は、とくに反対の意思表示のないかぎり、売買契約が代金債務の不履行により解除された場合における買主の損害賠償債務についても及ぶものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年11月15日 昭和43(オ)790
登載
集民 第93号319頁
参照法条
民法446条,民法447条,民法545条
論点93第545条民法

一 双務契約の当事者の一方が債務の履行をしない意思を明らかにした場合と同時履行の抗弁
二 催告の特定

裁判要旨一 双務契約の当事者の一方が自己の債務の履行をしない意思を明確にした場合には、相手方が自己の債務の弁済の提供をしなくても、右当事者の一方は、自己の債務の不履行について、履行遅滞の責を免れることをえないものと解するのが相当である(昭和三八年(オ)第三二二号、同四一年三月二二日第三小法廷判決参照)。
二 特定の取引にもとづいてその目的物件の引渡を催告している以上、数量を示さなくても、その催告は適法である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年7月5日 昭和40(オ)1459
登載
集民 第84号13頁
参照法条
民法533条,民法415条,民法545条
論点94第545条民法

土地賃貸借の合意解約が地上建物の賃借人に対抗できるとされた事例

裁判要旨賃料不払による土地賃貸借契約解除に基づく建物収去土地明渡の訴の係属中成立した判示裁判上の和解において、賃貸借契約の合意解約がなされた等判示のような特別の事情があるときは、土地賃貸人は、当該合意解約をもつて同土地上の建物の賃借人に対抗することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年5月19日 昭和40(オ)1152
登載
民集 第20巻5号989頁
参照法条
民法545条1項,民法601条
論点95第545条民法

民法第五四五条第二項〈解除の効果〉の利息債務の発生と同法第五四六条第五三三条の同時履行の抗弁権の関係

裁判要旨民法第五四五条第二項〈解除の効果〉の利息債務は、実質は不当利得返還の法理より生ずるもので、同法第五四六条第五三三条所定の同時履行の抗弁権にかかわりなく発生し、ただその債務の履行が右抗弁権の作用をこうむるにすぎないと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年9月10日 昭和40(オ)60
登載
集民 第80号271頁
参照法条
民法545条,民法546条,民法533条,民法415条,民法419条,民法703条
論点96第545条民法

売買契約解除による原状回復義務と保証人の責任。

裁判要旨特定物の売買契約における売主のための保証人は、特に反対の意思表示のないかぎり、売主の債務不履行により契約が解除された場合における原状回復義務についても、保証の責に任ずるものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和40年6月30日 昭和38(オ)1294
登載
民集 第19巻4号1143頁
参照法条
民法446条,民法447条,民法545条
論点97第545条民法

遺産分割協議と合意解除及び再分割協議の可否

裁判要旨共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成2年9月27日 昭和63(オ)115
登載
民集 第44巻6号995頁
参照法条
民法545条,民法907条,民法909条
論点98第546条民法

売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務と同時履行

裁判要旨売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係にあると解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年9月7日 昭和46(オ)1127
登載
民集 第26巻7号1327頁
参照法条
民法96条,民法121条,民法533条,民法546条
論点99第546条民法

未成年者の親権者母が親族会の同意を得ないでした家屋譲渡契約を取り消したことによる原状回復義務と同時履行。

裁判要旨親権者母が、親族会の同意を得ないでした家屋譲渡契約を取り消したときは、その原状回復義務については民法第五三三条を準用すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年6月16日 昭和24(オ)191
登載
民集 第7巻6号629頁
参照法条
旧民法886条3号,旧民法887条,民法546条,民法533条,民法121条
論点100第548条民法

民法五四八条一項〈解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅〉所定の契約の目的物にあたらないとされた事例

裁判要旨甲建物の増改築と増改築後の建物の所有権の帰属及び賃貸借を内容とする契約が、甲建物の取毀しを前提として、その敷地上に新たに建築される乙建物についての所有権の帰属及び賃貸借関係に関する約定を内容とする契約に変更されたときは、変更後の契約においては、甲建物は民法五四八条一項所定の契約の目的物にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和50年7月17日 昭和48(オ)860
登載
集民 第115号501頁
参照法条
民法548条1項
原

条文原文

原文ママ

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民法 第540条(解除権の行使) 詳細ページ
(解除権の行使)
第五百四十条契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
2前項の意思表示は、撤回することができない。
民法 第541条(催告による解除) 詳細ページ
(催告による解除)
第五百四十一条当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
民法 第542条(催告によらない解除) 詳細ページ
(催告によらない解除)
第五百四十二条次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一債務の全部の履行が不能であるとき。
二債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
一債務の一部の履行が不能であるとき。
二債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
民法 第543条(債権者の責めに帰すべき事由による場合) 詳細ページ
(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
第五百四十三条債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。
民法 第544条(解除権の不可分性) 詳細ページ
(解除権の不可分性)
第五百四十四条当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
2前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。
民法 第545条(解除の効果) 詳細ページ
(解除の効果)
第五百四十五条当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
4解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
民法 第546条(契約の解除と同時履行) 詳細ページ
(契約の解除と同時履行)
第五百四十六条第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
民法 第547条(催告による解除権の消滅) 詳細ページ
(催告による解除権の消滅)
第五百四十七条解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。
民法 第548条(解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅) 詳細ページ
(解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅)
第五百四十八条解除権を有する者が故意若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。
出

一次情報

原文ママ

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