民法 / テーマ別まとめ

相続の効力/総則

総則の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

相続の効力に関する総則は、相続人が被相続人の財産上の権利義務をどのように受け継ぐかという基本ルールをまとめた部分です。相続開始と同時に生じる包括承継の原則、祭祀財産の別扱い、相続人が複数いる場合の共有関係と対抗要件までを定めており、財産の名義変更や権利関係の整理を行う際の土台になります。

総則
条文対象効果
896条相続財産全般権利義務を包括承継(一身専属除く)
897条祭祀財産慣習・指定・家裁で承継者決定
897条の2相続財産の保存家裁が管理人選任等を命令可
898条共同相続財産共有となる
899条共同相続人の承継相続分に応じて承継
899条の2権利承継の対抗要件法定相続分超過分は対抗要件必要
  • 897条の2但書:単純承認済み・遺産全部分割済み・相続財産清算人選任済みの場合は保存処分の対象外
  • 897条2項:祭祀主宰者を定める慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定める
  • 898条2項:共有持分は900条から902条までの規定で算定した相続分による
  • 899条の2第2項:債権について遺言や遺産分割の内容を明らかにした通知は共同相続人全員が通知したものとみなす
1

総則

総則について、条文は何を定めているか。

第896条相続の一般的効力相続人は権利義務を丸ごと引き継ぐ1項判例 30件
  • 相続開始と同時に承継が生じる
  • 被相続人の一身に専属した権利義務は承継されない
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第897条祭祀に関する権利の承継祭祀財産は別扱いで承継者を決める2項判例なし
  • 系譜・祭具・墳墓は慣習に従い祭祀主宰者が承継する
  • 被相続人の指定があればその人が優先して承継する
  • 慣習が明らかでないときは家庭裁判所が承継者を定める
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第897_2条相続財産の保存家裁が相続財産の保存処分を命じられる2項判例なし
  • 利害関係人や検察官の請求でいつでも申立てできる
  • 相続財産管理人の選任など保存に必要な処分を命令できる
  • 単純承認済み・分割済み・清算人選任済みの場合は対象外
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第898条共同相続の効力相続人が複数なら財産は共有になる2項判例 32件
  • 相続人が数人いる場合、相続財産はその共有に属する
  • 共有持分は900条〈法定相続分〉から902条〈遺言による相続分の指定〉までの相続分による
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第899条各相続人は相続分に応じて権利義務を承継1項判例 16件
  • 承継の割合は各共同相続人の相続分に対応する
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第899_2条共同相続における権利の承継の対抗要件法定相続分を超える承継は対抗要件が必要2項判例なし
  • 登記・登録など対抗要件がなければ第三者に対抗できない
  • 遺産分割によるかどうかを問わず適用される
  • 債権は遺言・分割内容を明示した通知で全員通知とみなされる
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第896条民法

無権代理人を本人とともに相続した者が更に本人を相続した場合における無権代理行為の効力

裁判要旨無権代理人を本人とともに相続した者がその後更に本人を相続した場合においては、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和63年3月1日 昭和58(オ)1362
登載
集民 第153号465頁
参照法条
民法113条,民法117条,民法896条
論点2第896条民法

一 農地の売買契約締結後農業委員会の許可前に買主が死亡した場合における相続税の課税財産
二 農地の買主の死亡により相続人が取得した当該農地の所有権移転請求権等の相続税の課税財産としての価額

裁判要旨一 農地の売買契約締結後農業委員会の許可前に買主が死亡した場合における相続税の課税財産は、右売買契約に基づき買主たる被相続人が売主に対して取得した当該農地の所有権移転請求権等の債権的権利である。
二 農地の買主の死亡により相続人が取得した当該農地の所有権移転請求権等の相続税の課税財産としての価額は、売買契約による当該農地の取得価額相当額と評価すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和61年12月5日 昭和57(行ツ)18
登載
集民 第149号263頁
参照法条
相続税法2条1項,相続税法22条,民法896条
論点3第896条民法

一 共有登記の一部抹消(更正)登記請求訴訟と共有名義人全員を被告とすることの要否
二 被相続人の不動産に関する登記義務が共同相続人によつて承継された場合における当該共同相続人の登記義務の性質

裁判要旨一 自己の持分を登記上侵害されている共同相続人の一人がこれを侵害している他の複数の共同相続人に対して妨害排除としての実質を有する一部抹消(更正)登記手続を請求する訴訟は、右他の共同相続人全員を被告とすべき固有必要的共同訴訟ではない。
二 被相続人の不動産に関する登記義務が共同相続人によつて承継された場合における当該共同相続人の登記義務は、不可分債務である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和60年11月29日 昭和58(オ)49
登載
集民 第146号197頁
参照法条
民訴法62条,民法430条,民法896条,民法898条,不動産登記法63条
論点4第896条民法

死亡退職金の受給権が相続財産に属さず受給権者である遺族固有の権利であるとされた事例

裁判要旨死亡退職金の支給等を定めた特殊法人の規程に、死亡退職金の支給を受ける者の第一順位は内縁の配偶者を含む配偶者であつて、配偶者があるときは子は全く支給を受けないことなど、受給権者の範囲、順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則とは異なる定め方がされている場合には、右死亡退職金の受給権は、相続財産に属さず、受給権者である遺族固有の権利である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年11月27日 昭和54(オ)1298
登載
民集 第34巻6号815頁
参照法条
労働基準法23条,民法896条
論点5第896条民法

一 ゴルフクラブの会員の地位の相続が否定された事例
二 ゴルフクラブの会員の死亡と同人を原告とする会員たる地位確認等請求訴訟の帰すう

裁判要旨一 預託金会員制ゴルフクラブの会員の会員資格喪失につき当該クラブの会則中に、会員が死亡したときはその資格を失う旨の定めがあるときは、右クラブの会員たる地位は一身専属的なものであつて、相続の対象となりえない。
二 前項の場合において、会員が原告となつて追行していた右クラブからの除名の無効を前提とする会員たるの地位確認及びゴルフコースの使用を請求する訴訟の係属中に、原告が死亡したときは、該訴訟は終了する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和53年6月16日 昭和50(オ)270
登載
集民 第124号123頁
参照法条
民法896条,民訴法208条
論点6第896条民法

他人の権利の売主をその権利者が相続した場合と売主としての履行義務

裁判要旨他人の権利の売主をその権利者が相続し売主としての履行義務を承継した場合でも、権利者は、信義則に反すると認められるような特別の事情のないかぎり、右履行義務を拒否することができる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和49年9月4日 昭和44(オ)23
登載
民集 第28巻6号1169頁
参照法条
民法560条,民法896条
論点7第896条民法

民法一一七条〈無権代理人の責任〉と無権代理人を相続した本人の責任

裁判要旨無権代理人を相続した本人は、無権代理人が民法一一七条により相手方に債務を負担していたときには、無権代理行為について追認を拒絶できる地位にあつたことを理由として、右債務を免れることができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和48年7月3日 昭和46(オ)138
登載
民集 第27巻7号751頁
参照法条
民法113条,民法117条,民法896条
論点8第896条民法

相続と民法一八五条にいう「新権原」

裁判要旨相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによつて占有を開始し、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、被相続人の占有が所有の意思のないものであつたときでも、相続人は民法一八五条にいう「新権原」により所有の意思をもつて占有を始めたものというべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和46年11月30日 昭和44(オ)1270
登載
民集 第25巻8号1437頁
参照法条
民法185条,民法896条
論点9第896条民法

占有と相続

裁判要旨土地を占有していた被相続人が死亡し相続が開始した場合には、特別の事情のないかぎり、被相続人の右土地に対する占有は相続人によつて相続される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年10月30日 昭和44(オ)265
登載
民集 第23巻10号1881頁
参照法条
民法896条,民法180条
論点10第896条民法

民法上の組合契約ないしそれに類似する無名契約における契約当事者の死亡と業務執行者の地位の相続

裁判要旨民法上の組合契約ないしそれに類似する無名契約にもとづく共同事業において、契約当事者間に、同人らが死亡したときはその相続人が当然に共同事業に関する被相続人の地位を相続する旨の合意が成立していたときでも、右契約をもつて委任された業務執行者の地位は相続の対象となるものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和44年10月21日 昭和42(オ)567
登載
集民 第97号61頁
参照法条
民法667条,民法670条,民法679条,民法896条
論点11第896条民法

無権代理人が本人を相続した場合における無権代理行為の効力。

裁判要旨無権代理人が本人を相続し、本人と代理人との資格が同一人に帰するにいたつた場合には、本人がみずから法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年6月18日 昭和39(オ)1267
登載
民集 第19巻4号986頁
参照法条
民法113条,民法117条,民法896条
論点12第896条民法

預託金会員制ゴルフクラブの規則に会員の死亡後六箇月以内に届出をした相続人が会員の地位を承継し得るなどの定めがある場合に右の届出期間は遺産分割協議が成立した時から起算すべきであるとされた事例

裁判要旨預託金会員制ゴルフクラブの規則に、会員が死亡したときは、相続人は、六箇月以内に、預託金の返還、相続人のうち一名への名義書換え又は第三者への会員資格の譲渡のいずれかの手続を選択して理事長に届け出なければならず、相続人が右期間内に所定の届出をしないときは預託金の返還手続がとられる旨の定めがある場合に、右クラブの会員権は、他人に譲渡することが認められ、ゴルフ会員権市場において預託金の金額よりも高額の取引価格で売買されており、相続人から所定の会費が納入されている限り、会員の地位の承継の手続が遅延することによってゴルフクラブ側が格別の不利益を被ることはないなど判示の事情の下においては、右規則は、相続人間で遺産分割協議が成立した後六箇月以内に所定の届出をしなければならない旨を定めたものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年5月27日 平成5(オ)1169
登載
集民 第183号393頁
参照法条
民法第3編第2章契約,民法896条,民法907条
論点13第896条民法

預託金会員制ゴルフクラブの会則等に会員としての地位の相続に関する定めがない場合に会員の死亡によりその相続人がこれを取得することができるとされた事例

裁判要旨預託金会員制ゴルフクラブにおいて、会則等に会員としての地位の相続に関する定めがなくても、右地位の譲渡に関する定めがあるなど判示の事実関係の下においては、会員の死亡によりその相続人は右地位の譲渡に準ずる手続を踏んでこれを取得することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年3月25日 平成6(オ)1593
登載
民集 第51巻3号1609頁
参照法条
民法第3編第2章契約,民法896条
論点14第896条民法

会員契約上の地位の相続性が認められている預託金会員制ゴルフクラブにおける会員の死亡と相続人による預託金返還請求の可否

裁判要旨会員契約上の地位の相続性が認められている預託金会員制ゴルフクラブの会員が死亡した場合には、会則上、特に預託金の返還を求めることができる旨が規定されていない限り、その相続人は、会員の死亡を理由に預託金返還請求権を行使することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年12月16日 平成7(オ)934
登載
集民 第186号603頁
参照法条
民法第3編第2章契約,民法896条
論点15第896条民法

一 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合における所有の意思の立証責任
二 他主占有者の相続人について独自の占有に基づく取得時効の成立が認められた事例

裁判要旨一 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合には、相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を証明すべきである。
二 甲が所有しその名義で登記されている土地建物について、甲の子である乙が甲から管理をゆだねられて占有していたところ、乙の死亡後、その相続人である乙の妻子丙らが、乙が生前に甲から右土地建物の贈与を受けてこれを自己が相続したものと信じて、その登記済証を所持し、固定資産税を納付しつつ、管理使用を専行し、賃借人から賃料を取り立てて生活費に費消しており、甲及びその相続人らは、丙らが右のような態様で右土地建物の事実的支配をしていることを認識しながら、異議を述べていないなど判示の事実関係があるときは、丙らが、右土地建物が甲の遺産として記載されている相続税の申告書類の写しを受け取りながら格別の対応をせず、乙の死亡から約一五年経過した後に初めて右土地建物につき所有権移転登記手続を求めたという事実があるとしても、丙らの右土地建物についての事実的支配は、外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解するのが相当であり、丙らについて取得時効が成立する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年11月12日 平成7(オ)228
登載
民集 第50巻10号2591頁
参照法条
民法162条,民法185条,民法186条1項,民法187条1項,民法896条
論点16第896条民法

不法行為により死亡した者の相続人が加害者に対し死亡者の得べかりし普通恩給及び国民年金(老齢年金)をその逸失利益として請求することの可否

裁判要旨不法行為により死亡した者の得べかりし普通恩給及び国民年金(老齢年金)は、その逸失利益として相続人が相続によりこれを取得し、加害者に対してその賠償を請求することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成5年9月21日 平成1(オ)297
登載
集民 第169号793頁
参照法条
恩給法9条1項1号,国民年金法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)29条,民法709条,民法896条
論点17第896条民法

無権代理人が本人を共同相続した場合における無権代理行為の効力

裁判要旨無権代理人が本人を共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない。(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成5年1月21日 昭和63(オ)1733
登載
民集 第47巻1号265頁
参照法条
民法112条,民法117条,民法896条,民法898条
論点18第896条民法

無権代理人が本人を共同相続した場合における無権代理行為の効力

裁判要旨無権代理人が本人を共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない。

(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成5年1月21日 平成4(オ)87
登載
集民 第167号331頁
参照法条
民法113条,民法117条,民法896条,民法898条
論点19第896条民法

1 振替口座簿に開設された被相続人名義の口座に記載又は記録がされている振替株式等の共同相続により債務者が承継した共有持分に対する差押命令の適否
2 振替株式等の共同相続により債務者が承継した共有持分について譲渡命令を発することの許否

裁判要旨1 振替口座簿に開設された被相続人名義の口座に記載又は記録がされている振替株式,振替投資信託受益権及び振替投資口が共同相続された場合において,その共同相続により債務者が承継した共有持分に対する差押命令は,当該振替株式等について債務者名義の口座に記載又は記録がされていないとの一事をもって違法であるということはできない。
2 執行裁判所は,譲渡命令の申立てが振替株式,振替投資信託受益権及び振替投資口の共同相続により債務者が承継した共有持分についてのものであることから直ちに当該譲渡命令を発することができないとはいえない。
(2につき補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成31年1月23日 平成30(許)1
登載
民集 第73巻1号65頁
参照法条
(1,2につき)社債,株式等の振替に関する法律66条,社債,株式等の振替に関する法律121条,社債,株式等の振替に関する法律128条1項,社債,株式等の振替に関する法律226条1項,民法896条,民法898条 (1につき)民事執行規則150条の2 (2につき)民事執行規則150条の7第1項1号
論点20第896条民法

公営住宅の入居者の死亡と相続人による公営住宅を使用する権利の承継

裁判要旨公営住宅の入居者が死亡した場合に、その相続人は、当該公営住宅を使用する権利を当然に承継するものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成2年10月18日 平成2(オ)27
登載
民集 第44巻7号1021頁
参照法条
公営住宅法17条,公営住宅法18条,民法896条
論点21第896条民法

改良住宅の入居者が死亡した場合の使用権の承継について定める京都市市営住宅条例(平成9年京都市条例第1号)24条1項〈仮住所〉と住宅地区改良法29条1項,公営住宅法48条

裁判要旨改良住宅の入居者が死亡した場合において,その死亡時に当該入居者と同居していた者で,市長の承認を受けて同居している者等に限り,市長の承認を受けて引き続き当該改良住宅に居住することができる旨を定める京都市市営住宅条例(平成9年京都市条例第1号)24条1項〈仮住所〉は,住宅地区改良法29条1項,公営住宅法48条に違反し違法,無効であるとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成29年12月21日 平成29(受)491
登載
民集 第71巻10号2659頁
参照法条
住宅地区改良法29条1項,公営住宅法48条,民法896条,京都市市営住宅条例(平成9年京都市条例第1号)24条1項
論点22第896条民法

被相続人が生前に提起して相続人が承継していた所得税更正処分等の取消訴訟において同処分等の取消判決が確定した場合,被相続人が同処分等に基づき納付していた所得税等に係る過納金の還付請求権は相続税の課税財産となるか

裁判要旨被相続人が所得税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分に基づき所得税,過少申告加算税及び延滞税を納付するとともに上記各処分の取消訴訟を提起していたところ,その係属中に被相続人が死亡したため相続人が同訴訟を承継し,上記各処分の取消判決が確定するに至ったときは,上記所得税等に係る過納金の還付請求権は,被相続人の相続財産を構成し,相続税の課税財産となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成22年10月15日 平成21(行ヒ)65
登載
民集 第64巻7号1764頁
参照法条
国税通則法56条1項,相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)2条1項,民法896条
論点23第896条民法

共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権の帰属と後にされた遺産分割の効力

裁判要旨相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,その帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年9月8日 平成16(受)1222
登載
民集 第59巻7号1931頁
参照法条
民法88条2項,民法89条2項,民法427条,民法601条,民法896条,民法898条,民法899条,民法900条,民法907条,民法909条
論点24第896条民法

相続が開始して遺産分割未了の間に第2次の相続が開始した場合において第2次被相続人から特別受益を受けた者があるときの持戻しの要否

裁判要旨相続が開始して遺産分割未了の間に相続人が死亡した場合において,第2次被相続人が取得した第1次被相続人の遺産についての相続分に応じた共有持分権は,実体上の権利であって第2次被相続人の遺産として遺産分割の対象となり,第2次被相続人から特別受益を受けた者があるときは,その持戻しをして具体的相続分を算定しなければならない
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成17年10月11日 平成17(許)14
登載
民集 第59巻8号2243頁
参照法条
民法896条,民法898条,民法899条,民法900条,民法903条,民法907条,家事審判法9条乙類10号,家事審判規則104条
論点25第896条民法

遺贈の対象不動産についてされた共同相続登記を遺留分減殺請求による持分の相続登記に更正することの可否

裁判要旨遺贈の対象不動産についてされた共同相続登記を右登記後の遺留分減殺請求による持分の相続登記に更正することはできない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成12年5月30日 平成10(オ)994
登載
集民 第198号225頁
参照法条
民法896条・民法898条・民法1028条・民法1031条 不動産登記法63条・不動産登記法66条
論点26第896条民法

内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に民法七六八条の規定を類推適用することの可否

裁判要旨内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、民法七六八条〈財産分与〉の規定を類推適用することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成12年3月10日 平成11(許)18
登載
民集 第54巻3号1040頁
参照法条
民法768条,民法896条
論点27第896条民法

甲名義の不動産につき乙、丙が順次相続したことを原因として直接丙に対してされた所有権移転登記を甲の共同相続人丁及び乙に対する所有権移転登記並びに乙から丙に対する持分全部移転登記に更正することの可否

裁判要旨甲名義の不動産につき、甲から乙、乙から丙への順次の相続を原因として直接丙に対する所有権移転登記がされているときに、右登記を甲の共同相続人丁及び乙に対する所有権移転登記並びに乙から丙に対する持分全部移転登記に更正することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成12年1月27日 平成11(オ)773
登載
集民 第196号239頁
参照法条
民法882条,民法896条,民法898条,不動産登記法63条,不動産登記法66条
論点28第896条民法

一 被相続人の生存中に相続人に対し売買を原因としてされた所有権移転登記につき被相続人の死亡後に相続を原因とするものに更正することの可否
二 被相続人の生存中にその所有不動産につき共同相続人の一人に対し所有権移転登記がされた上で第三者のために抵当権設定登記がされた場合において被相続人の死亡後に他の相続人がした真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続請求及び抵当権設定登記についての更正登記手続請求が認められた事例

裁判要旨一 被相続人の生存中に相続人に対し売買を原因としてされた所有権移転登記について、被相続人の死亡後に、相続を原因とするものに更正することはできない。
二 被相続人の生存中にその所有する不動産につき共同相続人の一人である甲に対し仮空の売買を原因として所有権転移登記がされ、甲が第三者乙のために抵当権設定登記をした場合には、被相続人の死亡後、他の相続人は、甲に対しては真正な登記名義の回復を原因とする持分の移転登記手続を、乙に対しては甲の持分についての抵当権設定登記に改める更正登記手続を請求することができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成11年3月9日 平成9(オ)953
登載
集民 第192号65頁
参照法条
民法177条,民法882条,民法896条,民法898条,不動産登記法63条,不動産登記法66条
論点29第896条民法

一 不法行為により死亡した者の相続人が被害者の得べかりし障害基礎年金及び障害厚生年金を逸失利益として請求することの可否
二 不法行為により死亡した者の相続人が被害者の得べかりし障害基礎年金及び障害厚生年金についての各加給分を逸失利益として請求することの可否
三 障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者が不法行為により死亡した場合にその相続人がする損害賠償請求において当該相続人が受給権を取得した遺族基礎年金及び遺族厚生年金を控除すべき損害の費目

裁判要旨一 障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、被害者の得べかりし右各障害年金額を逸失利益として請求することができる。
二 障害基礎年金及び障害厚生年金についてそれぞれ加給分を受給している者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、被害者の得べかりし右各加給分額を逸失利益として請求することはできない。
三 障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者が不法行為により死亡した場合に、その相続人が被害者の死亡を原因として遺族基礎年金及び遺族厚生年金の受給権を取得したときは、当該相続人がする損害賠償請求において、支給を受けることが確定した右各遺族年金は、財産的損害のうちの逸失利益から控除すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成11年10月22日 平成9(オ)434
登載
民集 第53巻7号1211頁
参照法条
国民年金法30条,厚生年金保険法47条,民法709条,国民年金法35条1号,厚生年金保険法53条1号,民法896条,国民年金法33条の2,厚生年金保険法50条の2,国民年金法37条,厚生年金保険法58条
論点30第896条民法

本人が無権代理行為の追認を拒絶した後に無権代理人が本人を相続した場合における無権代理行為の効力

裁判要旨本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年7月17日 平成6(オ)1379
登載
民集 第52巻5号1296頁
参照法条
民法113条,民法117条,民法896条
論点31第898条民法

遺産確認の訴えの適法性

裁判要旨共同相続人間において特定の財産が被相続人の遺産に属することの確認を求める訴えは、適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和61年3月13日 昭和57(オ)184
登載
民集 第40巻2号389頁
参照法条
民訴法225条,民法898条
論点32第898条民法

共同相続人が全員の合意によつて遺産分割前の相続財産を構成する特定不動産を第三者に売却した場合における代金債権の性質

裁判要旨共同相続人が全員の合意によつて遺産分割前の相続財産を構成する特定不動産を第三者に売却した場合における代金債権は、特別の事情のない限り、右相続財産に属さない分割債権であり、各共同相続人がその持分に応じて個々にこれを分割取得するものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年2月22日 昭和50(オ)736
登載
集民 第126号129頁
参照法条
民法898条,民法899条,民法907条2項
論点33第898条民法

共同相続人がその全員の合意によつて遺産を構成する特定不動産を第三者に売却した場合における代金債権の性質

裁判要旨共同相続人が全員の合意によつて遺産を構成する特定不動産を第三者に売却した場合における代金債権は、分割債権であり、各相続人は相続分に応じて個々にこれを行使することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和52年9月19日 昭和52(オ)5
登載
集民 第121号247頁
参照法条
民法898条,民法899条,民法907条2項
論点34第898条民法

連帯債務の相続。

裁判要旨連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合に、相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年6月19日 昭和32(オ)477
登載
民集 第13巻6号757頁
参照法条
民法427条,民法432条,民法898条,民法899条
論点35第898条民法

一 相続財産の共有の性質
二 遺産分割の方法

裁判要旨一 相続財産の共有は、民法改正の前後を通じ、民法二四九条〈共有物の使用〉以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではない。
二 遺産の分割に関しては、民法二五六条〈共有物の分割請求〉以下の規定が適用せられる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月31日 昭和28(オ)163
登載
民集 第9巻6号793頁
参照法条
民法898条,民法256条,民法258条,民法906条,民法907条,旧民法1002条,家事審判法9条乙類10号,家事審判規則104条,家事審判規則107条
論点36第898条民法

相続財産たる金銭その他の可分債権と共同相続人の分割承継

裁判要旨相続人数人ある場合において、相続財産中に金銭の他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和29年4月8日 昭和27(オ)1119
登載
民集 第8巻4号819頁
参照法条
民法898条,民法899条
論点37第898条民法

共同相続人間における遺産確認の訴えと固有必要的共同訴訟

裁判要旨共同相続人間における遺産確認の訴えは、固有必要的共同訴訟と解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成元年3月28日 昭和60(オ)727
登載
民集 第43巻3号167頁
参照法条
民訴法62条,民訴法225条,民法898条
論点38第898条民法

共同相続人の一部の間において土地所有権確認請求を棄却する判決が確定した場合に敗訴原告が右土地につき遺産確認の訴えを提起することの可否

裁判要旨共同相続人甲、乙、丙のうち甲と乙との間において、ある土地につき甲の所有権確認請求を棄却する旨の判決が確定し、右確定判決の既判力により、甲が乙に対して相続による右土地の共有持分の取得を主張し得なくなった場合であっても、甲は右土地につき遺産確認の訴えを提起することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成9年3月14日 平成5(オ)920
登載
集民 第182号537頁
参照法条
民訴法45条,民訴法199条,民訴法225条,民法898条
論点39第898条民法

所有権確認請求訴訟で敗訴した原告が後訴において共有持分の取得を主張することが前訴の確定判決の既判力に抵触して許されないとされた事例

裁判要旨丙の共同相続人である甲乙間の土地の所有権確認請求訴訟において、甲の請求を棄却する旨の判決が確定した場合には、甲、乙がそれぞれ右土地の所有権を単独で取得したと主張して争っており、甲が事実審口頭弁論終結前に生じていた丙の死亡による相続の事実を主張しなかったこと、右判決が双方の主張を排斥して右土地が丙の所有である旨判断したこと、右判決の確定後に乙が右土地の所有権を主張したために甲が後訴を提起するに至ったことなどの事情があるとしても、甲が後訴において相続による右土地の共有持分の取得を主張することは、前訴の確定判決の既判力に抵触して許されない。

(補足意見及び反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成9年3月14日 平成5(オ)921
登載
集民 第182号553頁
参照法条
民訴法199条,民法898条
論点40第898条民法

遺言者の財産全部の包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利の性質

裁判要旨遺言者の財産全部の包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成8年1月26日 平成3(オ)1772
登載
民集 第50巻1号132頁
参照法条
民法898条,民法907条,民法964条,民法1031条
論点41第898条民法

遺産である建物の相続開始後の使用について被相続人と相続人との間に使用貸借契約の成立が推認される場合

裁判要旨共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右の相続人との間において、右建物について、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認される。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成8年12月17日 平成5(オ)1946
登載
民集 第50巻10号2778頁
参照法条
民法249条,民法593条,民法703条,民法898条,民訴法185条
論点42第898条民法

法定相続分を下回る相続分を指定された共同相続人の一人から法定相続分に応じた共有持分権を譲り受けた者が取得する持分の割合

裁判要旨遺言により法定相続分を下回る相続分を指定された共同相続人の一人が、遺産を構成する特定不動産に法定相続分に応じた共同相続登記がされたことを利用し、右登記に係る自己の共有持分権を第三者に譲渡し、第三者が右持分の移転登記を受けたとしても、右第三者は右共同相続人の指定相続分に応じた持分を取得するにとどまる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成5年7月19日 平成1(オ)714
登載
集民 第169号243頁
参照法条
民法177条,民法898条,民法902条
論点43第898条民法

相続人が遺産分割前に遺産である金銭を保管している他の相続人に対して自己の相続分相当の金銭の支払を請求することの可否

裁判要旨相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成4年4月10日 平成1(オ)433
登載
集民 第164号285頁
参照法条
民法898条,民法899条,民法907条
論点44第898条民法

共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるか

裁判要旨共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成29年4月6日 平成28(受)579
登載
集民 第255号129頁
参照法条
民法427条,民法898条,民法899条
論点45第898条民法

共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は遺産分割の対象となるか

裁判要旨共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる。
(補足意見及び意見がある。)
裁判
最高裁判所大法廷 平成28年12月19日 平成27(許)11
登載
民集 第70巻8号2121頁
参照法条
民法264条,民法427条,民法898条,民法907条
論点46第898条民法

1 共同相続された委託者指図型投資信託の受益権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるか
2 共同相続された個人向け国債は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるか

裁判要旨1 共同相続された委託者指図型投資信託の受益権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。
2 共同相続された個人向け国債は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成26年2月25日 平成23(受)2250
登載
民集 第68巻2号173頁
参照法条
(1,2につき) 民法898条,民法899条 (1につき) 投資信託及び投資法人に関する法律6条3項 (2につき) 個人向け国債の発行等に関する省令3条
論点47第898条民法

共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者と遺産確認の訴えの当事者適格

裁判要旨共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,遺産確認の訴えの当事者適格を有しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成26年2月14日 平成23(受)603
登載
民集 第68巻2号113頁
参照法条
民訴法第1編第3章 当事者,民訴法40条,民訴法134条,民法898条,民法905条
論点48第898条民法

共同相続された委託者指図型投資信託の受益権につき,相続開始後に元本償還金又は収益分配金が発生し預り金として上記受益権の販売会社における被相続人名義の口座に入金された場合に,共同相続人の1人が自己の相続分に相当する金員の支払を請求することの可否

裁判要旨共同相続された委託者指図型投資信託の受益権につき,相続開始後に元本償還金又は収益分配金が発生し,それが預り金として上記受益権の販売会社における被相続人名義の口座に入金された場合,上記預り金の返還を求める債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく,共同相続人の1人は,上記販売会社に対し,自己の相続分に相当する金員の支払を請求することができない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成26年12月12日 平成24(受)2675
登載
集民 第248号155頁
参照法条
民法427条,民法898条,民法899条,投資信託及び投資法人に関する法律6条3項
論点49第898条民法

定額郵便貯金債権が遺産に属することの確認を求める訴えの確認の利益

裁判要旨共同相続人間において定額郵便貯金債権が現に被相続人の遺産に属することの確認を求める訴えには,上記債権の帰属に争いがある限り,確認の利益がある。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成22年10月8日 平成21(受)565
登載
民集 第64巻7号1719頁
参照法条
民訴法134条,民法264条,民法427条,民法898条,民法899条,民法907条,郵便貯金法7条1項3号
論点50第898条民法

1 金融機関の預金者に対する預金口座の取引経過開示義務の有無
2 共同相続人の一人が被相続人名義の預金口座の取引経過開示請求権を単独で行使することの可否

裁判要旨1 金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負う。
2 預金者の共同相続人の一人は,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成21年1月22日 平成19(受)1919
登載
民集 第63巻1号228頁
参照法条
(1,2につき)民法645条,民法656条,民法666条 (2につき)民法252条,民法264条,民法898条
論点51第898条民法

甲名義の不動産につき乙,Yが順次相続したことを原因として直接Yに対して所有権移転登記がされている場合において甲の共同相続人であるXが上記登記の全部抹消を求めることの可否

裁判要旨甲名義の不動産につき,甲から乙,乙からYが順次相続したことを原因として直接Yに対して所有権移転登記がされている場合に,甲の相続につき共同相続人Xが存在するときは,Yが上記不動産につき共有持分権を有しているとしても,Xは,Yに対し,上記不動産の共有持分権に基づき,上記登記の全部抹消を求めることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年12月15日 平成16(オ)402
登載
集民 第218号1191頁
参照法条
民法249条,民法898条,不動産登記法66条,不動産登記法68条
論点52第898条民法

共同相続人間における相続人の地位不存在確認の訴えと固有必要的共同訴訟

裁判要旨共同相続人が,他の共同相続人に対し,その者が被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは,固有必要的共同訴訟である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年7月6日 平成15(受)1153
登載
民集 第58巻5号1319頁
参照法条
民訴法40条,民訴法134条,民法891条,民法898条
論点53第898条民法

相続財産である可分債権につき共同相続人の1人がその相続分を超えて債権を行使した場合に他の共同相続人が不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることの可否

裁判要旨共同相続人甲が相続財産中の可分債権につき権限なく自己の相続分以外の債権を行使した場合には,他の共同相続人乙は,甲に対し,侵害された自己の相続分につき,不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年4月20日 平成15(受)670
登載
集民 第214号13頁
参照法条
民法427条,民法898条,民法899条,民法907条
論点54第899条民法

土地所有権に基づく収去明渡の確定判決の執行債務者が右土地所有権の共同相続持分の一部を取得した場合の執行の許否。

裁判要旨甲の乙に対する土地所有権に基づく建物収去、土地明渡の確定判決の事実審口頭弁論終結後、甲の死亡により土地所有権が丙丁らに共同相続された場合、乙が丙からその土地共有持分を取得したとしても、丙以外の共同相続人らは、民法第四二九条〈不可分債権者の一人との間の更改又は免除〉の法意に従い、乙に対して右判決を執行し得る。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和36年3月2日 昭和35(オ)201
登載
民集 第15巻3号337頁
参照法条
民法899条,民法429条,民訴法201条,民訴法545条
論点55第899条民法

相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合において,遺留分の侵害額の算定に当たり,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することの可否

裁判要旨相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合には,遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り,相続人間においては当該相続人が相続債務もすべて承継したと解され,遺留分の侵害額の算定に当たり,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年3月24日 平成19(受)1548
登載
民集 第63巻3号427頁
参照法条
民法427条,民法899条,民法902条,民法908条,民法1029条,民法1031条
論点56第899条民法

銀行が相続財産である預金債権の全額を共同相続人の一部に払い戻した場合について他の共同相続人にその法定相続分相当額の預金の支払をした後でなくても当該銀行には民法703条所定の「損失」が発生するものとされた事例

裁判要旨甲銀行に対し預金債権を有していた丁の死亡により,乙,丙及び戊が当該預金債権を相続したのに,甲銀行が当該預金債権の全額を乙及び丙に払い戻したこと,乙及び丙は,戊の法定相続分相当額の預金については,これを受領する権限がなかったにもかかわらず,払戻しを受けたものであり,この払戻しが債権の準占有者に対する弁済に当たるということもできないことなど判示の事情の下においては,甲銀行が戊にその法定相続分相当額の預金の支払をした後でなくても,甲銀行には民法703条所定の「損失」が発生したものというべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成17年7月11日 平成16(受)2134
登載
集民 第217号329頁
参照法条
民法478条,民法703条,民法899条
論点57第899条民法

不当利得返還請求訴訟において不当利得返還請求権の成立要件である「損失」が発生していないと主張して請求を争うことが信義誠実の原則に反するとされた事例

裁判要旨甲が,乙と共に相続した預金債権のうちの乙の法定相続分に当たる部分について何らの受領権限もないのに受領権限があるものとして金融機関から払戻しを受けていながら,その払戻しに係る金員について乙が提起した不当利得返還請求訴訟において,一転して,上記払戻しは民法478条の弁済として有効であるとはいえず,乙が上記金融機関に対して乙の法定相続分に当たる預金債権を有していることに変わりはなく,乙には不当利得返還請求権の成立要件である「損失」が発生していないと主張するに至ったなど判示の事情の下では,甲が上記主張をして乙の不当利得返還請求を争うことは,信義誠実の原則に反し許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成16年10月26日 平成16(受)458
登載
集民 第215号473頁
参照法条
民法1条2項,民法478条,民法703条,民法899条,民訴法2条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民法 第896条(相続の一般的効力) 詳細ページ
(相続の一般的効力)
第八百九十六条相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
民法 第897条(祭祀に関する権利の承継) 詳細ページ
(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
民法 第897_2条(相続財産の保存) 詳細ページ
(相続財産の保存)
第八百九十七条の二家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第九百五十二条第一項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。
2第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。
民法 第898条(共同相続の効力) 詳細ページ
(共同相続の効力)
第八百九十八条相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
2相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。
民法 第899条 詳細ページ
第八百九十九条各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
民法 第899_2条(共同相続における権利の承継の対抗要件) 詳細ページ
(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。