民法 / テーマ別まとめ

債権の消滅/相殺

相殺の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

相殺は、互いに同種の目的の債務を負う当事者が、一方からの意思表示によって対当額の範囲で債務を消滅させる制度です。要件や効力の発生時期に加え、時効消滅した債権、不法行為に基づく債権、差押えを受けた債権など、相殺が制限・禁止される場面が条文ごとに個別に定められています。実務では、どちらの債権を相殺で消そうとしているか(自働債権・受働債権)を区別して、禁止規定に触れないか確認する必要があります。

相殺
場面相殺の可否補足
双方の債務が弁済期できる性質上不可なら不可
履行地が違うできる損害賠償が必要
自働債権が時効消滅できる消滅前に相殺適状なら
悪意の不法行為の債権が受働できない譲受債権なら可
生命身体侵害の債権が受働できない譲受債権なら可
差押禁止債権が受働できない対抗不可
差押後取得の債権が受働できない差押前の原因なら可
差押前取得の債権が受働できる対抗可
  • 相殺禁止・制限の特約は、知っていたか重過失で知らなかった第三者に対抗できる
  • 相殺の意思表示に条件・期限は付けられない
  • 相殺の効力は双方が相殺に適するようになった時にさかのぼる
  • 悪意の不法行為・生命身体侵害の債務でも、その債権を譲り受けた債権者は相殺できる
  • 差押え後取得の債権でも、差押え前の原因に基づけば対抗できる(他人から譲り受けた場合を除く)
  • 相殺の充当は、別段の合意がなければ相殺適状になった時期の順序による
1

相殺

相殺について、条文は何を定めているか。

第505条相殺の要件等同種の債務で弁済期なら相殺できる2項判例 29件
  • 同種の債務を負い合い、双方が弁済期にあれば対当額で相殺できる
  • 債務の性質上相殺が許されない場合は相殺できない
  • 相殺禁止・制限の特約は、悪意または重過失の第三者に対抗できる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第506条相殺の方法及び効力相殺は一方的な意思表示で行う2項判例 12件
  • 相手方への意思表示で相殺でき、条件や期限は付けられない
  • 効力は双方が相殺に適するようになった時にさかのぼる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第507条履行地の異なる債務の相殺履行地が違っても相殺できる1項判例なし
  • 双方の債務の履行地が異なっても相殺できる
  • 相殺した当事者は相手方に生じた損害を賠償する義務を負う
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第508条時効により消滅した債権を自働債権とする相殺時効消滅した債権でも相殺できる場合1項判例 6件
  • 消滅前に相殺に適する状態だった債権は、時効消滅後も相殺に使える
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第509条不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止悪意の不法行為等の債権は相殺で消せない1項・2号判例 8件
  • 悪意による不法行為に基づく損害賠償債務は相殺で対抗できない
  • 生命・身体侵害による損害賠償債務も相殺で対抗できない
  • 債権者がその債権を他人から譲り受けた場合は相殺できる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第510条差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止差押禁止債権は相殺で消せない1項判例なし
  • 差押えを禁じられた債権の債務者は、相殺を主張できない
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第511条差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止差押え後に得た債権では原則相殺できない2項判例 13件
  • 差押え後に取得した債権による相殺は差押債権者に対抗できない
  • 差押え前に取得した債権による相殺は対抗できる
  • 差押え前の原因に基づく債権なら差押え後取得でも対抗できる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第512条相殺の充当相殺は適状の早い順に充当される3項・2号判例 1件
  • 別段の合意がなければ、相殺に適した時期の順序で充当される
  • 一つの債権で債務全部を消滅できない場合は、他の充当規定を準用する
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第512_2条一債務で複数給付がある場合も同様に扱う1項判例なし
  • 一個の債権・債務の弁済として数個の給付をすべき場合も、512条〈相殺の充当〉の充当規定を準用する
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第505条民法

一 賃金の仮払を命ずる仮処分の執行後に仮処分命令が控訴審で取り消された場合と仮処分債務者の仮払金返還請求権
二 賃金の仮払を命ずる仮処分の執行に係る仮払金の返還請求訴訟と仮処分債権者が本案訴訟で訴求中の賃金債権を自働債権とする相殺の抗弁の許否

裁判要旨一 賃金の仮払を命ずる仮処分の執行後に仮処分命令が控訴審で取り消された場合には、本案訴訟が未確定であり、又は従業員としての地位保全の仮処分が同時に発せられていたときであつても、仮処分債務者は、特段の事情がない限り、仮処分債権者に対し仮払金の返還請求権を取得し、その返還義務の範囲は不当利得の規定に準じてこれを定めるべきである。
二 賃金の仮払を命ずる仮処分の執行に係る仮払金の返還請求訴訟において、仮処分債権者が本案訴訟で訴求中の賃金債権を自働債権とする相殺の抗弁を提出することは許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和63年3月15日 昭和58(オ)1406
登載
民集 第42巻3号170頁
参照法条
民法505条,民法703条,民法704条,民訴法198条2項,民訴法199条2項,民訴法231条,民訴法756条ノ2,民訴法760条
論点2第505条民法

金融機関が記名式定期預金の預金者と誤認した者に対する貸付債権をもつてした預金債権との相殺につき民法四七八条が類推適用されるために必要な注意義務を尽くしたか否かの判断の基準時

裁判要旨金融機関が、記名式定期預金につき真実の預金者甲と異なる乙を預金者と認定して乙に貸付をしたのち、貸付債権を自働債権とし預金債権を受働債権としてした相殺が民法四七八条の類推適用により甲に対して効力を生ずるためには、当該貸付時において、乙を預金者本人と認定するにつき金融機関として負担すべき相当の注意義務を尽くしたと認められれば足りる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年2月23日 昭和55(オ)260
登載
民集 第38巻3号445頁
参照法条
民法478条,民法505条
論点3第505条民法

保証人が民法四六〇条に基づいて主たる債務者に対して取得するいわゆる事前求償権を自働債権とする相殺の可否

裁判要旨保証人が民法四六〇条に基づいて主たる債務者に対して取得するいわゆる事前求償権は、これを自働債権として相殺の用に供しえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和58年12月19日 昭和55(オ)909
登載
集民 第140号663頁
参照法条
民法460条,民法461条1項,民法505条1項
論点4第505条民法

転付債権者・第三債務者間の債権債務の相殺適状は債務者・第三債務者間の債権債務の相殺適状より後に生じたが転付債権者の相殺の意思表示が第三債務者の相殺の意思表示より先にされた場合と相殺の優劣

裁判要旨転付債権者に転付された債務者の第三債務者に対する甲債権と第三債務者の転付債権者に対する乙債権との相殺適状が甲債権と第三債務者の債務者に対する丙債権との相殺適状より後に生じた場合であつても、第三債務者が丙債権を自働債権とし甲債権を受働債権とする相殺の意思表示をするより先に、転付債権者の甲債権を自働債権とし乙債権を受働債権とする相殺の意思表示により甲債権が消滅していた場合には、第三債務者による右相殺の意思表示はその効力を生じない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年7月10日 昭和53(オ)547
登載
民集 第33巻5号533頁
参照法条
民法505条1項,民法506条
論点5第505条民法

債権額の異なる請負人の報酬債権と注文者の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権とを相殺することの許否

裁判要旨請負人の注文者に対する報酬債権と注文者の請負人に対する目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権とは、右両債権額が異なる場合であつても相殺することが許される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年9月21日 昭和52(オ)1306
登載
集民 第125号85頁
参照法条
民法505条,民法533条,民法634条
論点6第505条民法

一 民訴法一九八条二一の損害賠償義務と民法五〇九にいう「不法行為ニ因リテ生シタ」債務
二 民訴法一九八条二項の原状回復及び損害賠償が別訴で請求された場合にその債務者が前訴請求債権と請求の基礎を同じくする債権をもつてする相殺

裁判要旨一 民訴法一九八条二項の損害賠償義務は、民法五〇九条〈不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止〉にいう「不法行為ニ因リテ生シタ」債務にあたらない。
二 民訴法一九八条二項の原状回復及び損害賠償が別訴で請求された場合には、その債務者は、前訴の請求債権と請求の基礎を同じくする債権であつても、これを自働債権とする相殺をもつて債権者に対抗することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年12月21日 昭和53(オ)436
登載
民集 第32巻9号1749頁
参照法条
民訴法198条2項,民法505条,民法509条
論点7第505条民法

注文者の請負人に対する目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とし請負人の注文者に対する工事代金債権を受働債権とする相殺が当事者間の特約により許されないとされた事例

裁判要旨請負工事の目的物の瑕疵をめぐり紛争が生じたため、当事者間において、請負人のなすべき修補工事の内容を特定したうえ、注文者は予め弁護士である第三者に工事残代金を預託し、同人に請負人が右修補義務を履行したかどうかの判断権を委ね、右第三者がその履行があつたものと科断したときは、預託金を請負人に支払い、当事者双方は相互にその余の一切の請求権を放棄する旨を覚書で定めたなど判示の事情があるときは、注文者は自己独自の判断に基づき工事の目的物に瑕疵があるとしてその瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とし請負人の工事残代金債権を受働債権とする相殺を主張することは、許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年11月30日 昭和53(オ)765
登載
集民 第125号763頁
参照法条
民法505条,民法634条
論点8第505条民法

仮登記担保の目的不動産につき後順位権利者がある場合と被担保債権以外の債権を自働債権とする清算金支払債務との相殺の許否

裁判要旨仮登記担保権者は、目的不動産につき後順位権利者があるときは、債務者に対する被担保債権以外の金銭債権をもつて自己の負担する清算金支払債務と相殺することができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年9月9日 昭和45(オ)1156
登載
民集 第29巻8号1249頁
参照法条
民法369条,民法482条,民法505条,民法556条,不動産登記法2条,不動産登記法7条2項,不動産登記法105条,不動産登記法146条
論点9第505条民法

公立学校の教員につき給与過払による不当利得返還請求権を自働債権としその後に支払われる給与の支払請求権を受働債権としてした相殺が労働基準法二四条一項本文の規定に違反し許されないとされた事例

裁判要旨省略
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和50年3月6日 昭和46(オ)569
登載
集民 第114号299頁
参照法条
労働基準法24条1項本文,民法505条1項,地方公務員法25条1項
論点10第505条民法

民法六五〇条二項〈受任者による費用等の償還請求等〉前段の代弁済請求権と相殺

裁判要旨受任者が民法六五〇条二項前段に基づいて有する代弁済請求権に対しては、委任者は、受任者に対する債権をもつて相殺することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和47年12月22日 昭和44(オ)135
登載
民集 第26巻10号1991頁
参照法条
民法505条1項,民法650条2項
論点11第505条民法

一、賃金過払による不当利得返還請求権を自働債権としその後に支払われる賃金の支払請求権を受働債権としてする相殺と労働基準法二四条一項本文
二、公立学校の教員につき給与過払による不当利得返還請求権を自働債権としその後に支払われる給与の支払請求権を受働債権としてした相殺が労働基準法二四条一項本文の規定に違反し許されないとされた事例

裁判要旨一、賃金過払による不当利得返還請求権を自働債権とし、その後に支払われる賃金の支払請求権を受働債権としてする相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされ、しかも、その金額、方法等においても労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのないものである場合にかぎり、労働基準法二四条一項本文による制限の例外として許される。
二、公立学校の教員らに対して昭和三三年一〇月および一二月に支給された給与中に最高一か月分給与の約二七・三。パーセント、最低同じく約三・八。パーセントに相当する金額の過払があり、右過払金の返還請求権を自働債権とし、同三四年三月二〇日に支給されるべき同月分の給与の支払請求権を受働債権として相殺がなされた場合、右相殺の遅れた主な原因が、その事務を担当していた県教育委員会事務局において、相殺をするかどうかまたはその法律上の可否、根拠等の調査研究等に相当の日時を費し、あるいは他の所管事務の処理に忙殺されていた点にあつたなど判示の事情があるにとどまるときは、右相殺は、いまだ労働基準法二四条一項本文の規定による制限の例外として許される場合にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年10月30日 昭和42(行ツ)61
登載
民集 第24巻11号1693頁
参照法条
労働基準法24条1項本文,民法505条1項,地方公務員法25条1項
論点12第505条民法

一、賃金過払による不当利得返還請求権を自働債権とし、その後に支払われる賃金の支払請求権を受働債権としてする相殺と労働基準法二四条一項
二、公立中学校の教員につき、給与過払による不当利得返還請求権を自働債権とし、その後に支払われる給与の支払請求権を受働債権としてした相殺が労働基準法二四条一項の規定に違反しないとされた事例

裁判要旨一、賃金過払による不当利得返還請求権を自働債権とし、その後に支払われる賃金の支払請求権を受働債権としてする相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、かつ、あらかじめ労働者に予告されるとかその額が多額にわたらない等労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのないものであるときは、労働基準法二四条一項の規定に違反しない。
二、公立中学校の教員に対して昭和三三年一二月一五日に支給された勤勉手当中に九四〇円の過払があつた場合において、昭和三四年一月二〇日頃右教員に対し過払金の返納を求め、この求めに応じないときは翌月分の給与から過払額を減額する旨通知したうえ、過払金の返還請求権を自働債権とし、同年三月二一日に支給される同月分の給料および暫定手当合計二万二九六〇円の支払請求権を受働債権としてした原判示の相殺(原判決理由参照)は、労働基準法二四条一項の規定に違反しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和44年12月18日 昭和40(行ツ)92
登載
民集 第23巻12号2495頁
参照法条
労働基準法24条1項,民法505条1項,地方公務員法25条1項
論点13第505条民法

一 口頭弁論終結前に相殺適状にある場合において右弁論終結後の相殺による債務消滅は請求異議の原因になるか。
二 弁護士法第二五条第一号または第二号に違反しないとされた事例。
三 弁護士法第二五条第三号の「受任している事件」の意義。
四 債権譲渡の通知前に相殺適状にある場合と債権譲受人に対する相殺の適否。

裁判要旨一 債務名義たる判決の基礎となる口頭弁論の終結前に相殺適状にあつたとしても、右弁論終結後になされた相殺の意思表示により債務が消滅した場合には、右債務の消滅は、請求異議の原因となりうる。
二 甲の代理人として乙に対する調停の申立をなし、その調停によつて乙の甲に対する贈与契約を成立させた弁護士が、後に乙の訴訟代理人となつて、右贈与契約上の債権を甲から譲り受けた丙を被告として、右債権が乙の甲に対する反対債務をもつてする相殺によつて消滅したと主張する訴を提起しても、当該訴訟事件の相手方から協議を受け、または依頼を受諾したことがあるとはいえないから、弁護士法第二五条第一号または第二号に違反しない。
三 弁護士法第二五条第三号の「受任している事件」とは、すでに終了した事件を含まない。
四 債務者が債権譲渡の通知を受ける前に譲渡人に対し相殺適状にある反対債権を有している場合には、右譲渡通知を受けた後においても、債務者は債権譲受人に対し相殺をもつて対抗することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年4月2日 昭和38(オ)1066
登載
民集 第19巻3号539頁
参照法条
民訴法545条,弁護士法25条1号,弁護士法25条2号,弁護士法25条3号,民法468条,民法505条
論点14第505条民法

労働者の賃金債権に対し不法行為を原因とする債権をもつてする相殺の許否。

裁判要旨労働者の賃金債権に対しては、使用者は、労働者に対して有する不法行為を原因とする債権をもつても相殺することは許されない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和36年5月31日 昭和34(オ)95
登載
民集 第15巻5号1482頁
参照法条
労働基準法24条,労働基準法17条,民法505条,民法509条
論点15第505条民法

一 いわゆる無記名定期預金債権の性質
二 無記名定期預金の債権者の判定
三 無記名定期預金の債権者でない者が単に届出印鑑を使用してなした相殺の効力

裁判要旨一 いわゆる無記名定期預金債権は無記名債権でなく氏名債権に属する。
二 甲が乙に金員を交付して甲のため無記名定期預金の預入れを依頼し、よつて乙がその金員を無記名定期預金として預入れた場合、乙において右金員を横領し自己の預金としたものでない以上、その預入れにあたり、乙が、届出印鑑として乙の氏を刻した印鑑を使用し、相手方の銀行が、かねて乙を知つており、届出印鑑を判読して預金者を乙と考え、預金元帳にも乙を預金者と記載した事実があつたとしても、右無記名定期預金の債権者は乙でなく、甲と認めるのが相当である。
三 右無記名定期預金において、相手方の銀行は、無記名定期預金証書と届出印鑑を呈示した者に支払をすることにより免責される旨の特約がなされている場合、届出印鑑のみを提出した乙との間に、右無記名定期預金と乙の銀行に対する債務と相殺する旨の合意をしても、右銀行はこれによつて、甲に対する無記名定期預金払戻債務につき、免責を得るものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年12月19日 昭和29(オ)485
登載
民集 第11巻13号2278頁
参照法条
民法666条,民法86条3項,民法467条1項,民法505条
論点16第505条民法

甲乙間でされた甲の乙に対するA債権と乙の丙に対するB債権とを相殺することができる旨の相殺予約に基づく相殺をもって丙がB債権の差押債権者丁に対抗することができないとされた事例

裁判要旨甲乙間で、甲の乙に対するA債権と乙の丙に対するB債権とを相殺することができる旨の相殺予約をしたが、乙の債権者丁がB債権を差し押さえた後に甲が右相殺予約に基づき乙に対して相殺の意思表示をしたなど原判示の事実関係の下においては、丙は、右相殺をもって丁に対抗することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成7年7月18日 平成3(オ)906
登載
集民 第176号415頁
参照法条
民法505条,民法511条
論点17第505条民法

一 金銭債権の一部請求と相殺
二 金銭債権の一部を請求する訴訟において相殺のため主張された自働債権の存否の判断の既判力

裁判要旨一 特定の金銭債権の一部を請求する訴訟において相殺の抗弁が理由がある場合には、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、請求額が残存額の範囲内であるときは請求の全額を、残存額を超えるときは残存額の限度でこれを認容すべきである。
二 特定の金銭債権の一部を請求する訴訟において相殺のため主張された自働債権の存否の判断は、右金銭債権の総額から一部請求の額を控除した残額部分に対応する範囲については既報力を生じない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成6年11月22日 平成2(オ)1146
登載
民集 第48巻7号1355頁
参照法条
民法505条,民訴法186条,民訴法199条2項
論点18第505条民法

別訴において訴訟物となっている債権を自働債権とする相殺の抗弁の許否

裁判要旨別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として、相殺の抗弁を主張することは、許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成3年12月17日 昭和62(オ)1385
登載
民集 第45巻9号1435頁
参照法条
民法505条,民訴法199条2項,民訴法231条
論点19第505条民法

一 使用者が労働者の同意を得て労働者の退職金債権に対してする相殺と労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条・一項本文
二 使用者が労働者の同意の下に労働者の退職金債権等に対してした相殺が有効とされた事例
三 使用者が労働者の同意の下に労働者の退職金債権等に対してして相殺が否認権行使の対象とならないとされた事例

裁判要旨一 使用者が労働者の同意を得て労働者の退職金債権に対してする相殺は、右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条一項本文に違反しない。
二 甲会社の従業員乙が、銀行等から住宅資金の貸付けを受けるに当たり、退職時には乙の退職金等により融資残債務を一括返済し、甲会社に対しその返済手続を委任する等の約定をし、甲会社が、乙の同意の下に、右委任に基づく返済費用前払請求権をもつて乙の有する退職金債権等と相殺した場合において、右返済に関する手続を乙が自発的に依頼しており、右貸付けが低利かつ相当長期の挽割弁済の約定の下にされたものであつて、その利子の一部を甲会社が負担する措置が執られるなど判示の事情があるときは、右相殺は、乙の自由な意思に基づくものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在したものとして、有効と解すべきである。
三 甲会社の従業員乙が、銀行等から住宅資金の貸付けを受けるに当たり、退職時には乙の退職金等により融資残債務を一括返済し、甲会社に対しその返済手続を委任する等の約定をした場合において、甲会社が、乙の破産宣告前、右約定の趣旨を確認する旨の乙の同意の下に、右委任に基づく返済費用前払請求権をもつてした乙の有する退職金債権等との相殺は、否認権行使の対象とならない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成2年11月26日 昭和63(オ)4
登載
民集 第44巻8号1085頁
参照法条
労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)24条1項,民法91条,民法505条1項,破産法72条,破産法98条
論点20第505条民法

本訴請求債権が時効消滅したと判断されることを条件とする,反訴における当該債権を自働債権とする相殺の抗弁の許否

裁判要旨本訴において訴訟物となっている債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断されることを条件として,反訴において,当該債権のうち時効により消滅した部分を自働債権として相殺の抗弁を主張することは許される。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成27年12月14日 平成25(オ)918
登載
民集 第69巻8号2295頁
参照法条
民法505条,民法508条,民訴法114条2項,民訴法142条,民訴法146条
論点21第505条民法

1 既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというための要件
2 時効によって消滅した債権を自働債権とする相殺をするために消滅時効が援用された自働債権がその消滅時効期間経過以前に受働債権と相殺適状にあったことの要否

裁判要旨1 既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには,受働債権につき,期限の利益を放棄することができるというだけではなく,期限の利益の放棄又は喪失等により,その弁済期が現実に到来していることを要する。
2 時効によって消滅した債権を自働債権とする相殺をするためには,消滅時効が援用された自働債権は,その消滅時効期間が経過する以前に受働債権と相殺適状にあったことを要する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成25年2月28日 平成23(受)2094
登載
民集 第67巻2号343頁
参照法条
(1,2につき)民法505条1項 (1につき)民法136条 (2につき)民法145条,民法508条
論点22第505条民法

1 担保不動産収益執行における担保不動産の収益に係る給付を求める権利の帰属
2 抵当不動産の賃借人が,担保不動産収益執行の開始決定の効力が生じた後に,抵当権設定登記の前に取得した賃貸人に対する債権を自働債権とし賃料債権を受働債権とする相殺をもって管理人に対抗することの可否

裁判要旨1 担保不動産収益執行の管理人は担保不動産の収益に係る給付を求める権利を行使する権限を取得するにとどまり,同権利自体は,担保不動産収益執行の開始決定の効力が生じた後に弁済期の到来するものであっても,所有者に帰属する。
2 抵当不動産の賃借人は,担保不動産収益執行の開始決定の効力が生じた後においても,抵当権設定登記の前に取得した賃貸人に対する債権を自働債権とし賃料債権を受働債権とする相殺をもって管理人に対抗することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年7月3日 平成19(受)1538
登載
民集 第63巻6号1047頁
参照法条
(1,2につき) 民事執行法93条,民事執行法95条,民事執行法188条,民法371条,民法505条
論点23第505条民法

反訴請求債権を自働債権とし本訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁の許否

裁判要旨本訴及び反訴が係属中に,反訴原告が,反訴請求債権を自働債権とし,本訴請求債権を受働債権として相殺の抗弁を主張することは,異なる意思表示をしない限り,反訴を,反訴請求債権につき本訴において相殺の自働債権として既判力ある判断が示された場合にはその部分を反訴請求としない趣旨の予備的反訴に変更するものとして,許される。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年4月14日 平成16(受)519
登載
民集 第60巻4号1497頁
参照法条
民法505条,民訴法114条2項,民訴法142条,民訴法143条,民訴法146条
論点24第505条民法

抵当不動産の賃借人が抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって賃料債権に物上代位権の行使としての差押えをした抵当権者に対抗することの可否

裁判要旨抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成13年3月13日 平成11(受)1345
登載
民集 第55巻2号363頁
参照法条
民法304条1項,民法372条,民法505条,民事執行法193条
論点25第505条民法

有価証券に表章された金銭債権を受働債権として相殺をするに当たって同有価証券を占有することの要否

裁判要旨有価証券に表章された金銭債権の債務者は,同債権を受働債権として相殺をするに当たり,同有価証券を占有することを要しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成13年12月18日 平成10(オ)730
登載
集民 第204号157頁
参照法条
民法505条1項,民法506条1項
論点26第505条民法

別訴において一部請求をしている債権の残部を自働債権とする相殺の抗弁の許否

裁判要旨一個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えを提起している場合において、当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは、債権の分割行使をすることが訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存しない限り、許される。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成10年6月30日 平成6(オ)698
登載
民集 第52巻4号1225頁
参照法条
民法505条,民訴法114条,民訴法142条
論点27第505条民法

訴訟上の相殺の抗弁に対し訴訟上の相殺を再抗弁として主張することの許否

裁判要旨訴訟上の相殺の抗弁に対し訴訟上の相殺を再抗弁として主張することは、許されない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成10年4月30日 平成5(オ)789
登載
民集 第52巻3号930頁
参照法条
民法505条,民訴法114条2項
論点28第505条民法

抵当不動産の賃借人は、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前に賃貸人との間でした、抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と上記の差押えがされた後の期間に対応する賃料債権とを直ちに対当額で相殺する旨の合意の効力を抵当権者に対抗することができるか

裁判要旨抵当不動産の賃借人は、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前に、賃貸人との間で、抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と上記の差押えがされた後の期間に対応する賃料債権とを直ちに対当額で相殺する旨の合意をしたとしても、当該合意の効力を抵当権者に対抗することはできない。
(意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和5年11月27日 令和3(受)1620
登載
民集 第77巻8号2188頁
参照法条
民法304条1項、民法372条、民法505条1項、民事執行法193条1項
論点29第505条民法

請負契約に基づく請負代金債権と同契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権の一方を本訴請求債権とし他方を反訴請求債権とする本訴及び反訴の係属中における,上記本訴請求債権を自働債権とし上記反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁の許否

裁判要旨請負契約に基づく請負代金債権と同契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権の一方を本訴請求債権とし,他方を反訴請求債権とする本訴及び反訴が係属中に,本訴原告が,反訴において,上記本訴請求債権を自働債権とし,上記反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは許される。
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和2年9月11日 平成30(受)2064
登載
民集 第74巻6号1693頁
参照法条
民法505条1項,民訴法114条2項,民訴法142条,民訴法146条
論点30第506条民法

一 民法五〇六条二項〈相殺の方法及び効力〉の法意
二 民法六三四条二項〈注文者が受ける利益の割合に応じた報酬〉所定の損害賠償債権の発生時期及び期限の有無

裁判要旨一 相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺をするに適するにいたつた時点に遡つて効力を生ずるものであり、その計算を双方の債務につき弁済期が到来し、相殺適状となつた時期を基準として双方の債権額を定め、その対等額において差引計算をすべきものである。
二 民法六三四条二項〈注文者が受ける利益の割合に応じた報酬〉の損害賠償債権は、注文者が注文にかかる目的物の引渡を受けた時に発生する期限の定めのない債権である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年3月20日 昭和53(オ)827
登載
集民 第126号277頁
参照法条
民法506条2項,民法634条2項
論点31第506条民法

対立する債権につき相殺計算をする場合の債権額確定の基準時

裁判要旨相殺の計算をするにあたつては、民法五〇六条〈相殺の方法及び効力〉の規定に則り、双方の債権が相殺適状となつた時期を標準として双方の債権額を定め、その対当額において差引計算をすべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和53年7月17日 昭和53(オ)255
登載
集民 第124号407頁
参照法条
民法506条2項
論点32第506条民法

買主が売主に対し民法五七〇条に基づく損害賠償の請求をするとともに該請求権を自働債権とする相殺の意思表示をしたものと解された事例

裁判要旨単価を六五円とする穀用かますの売買契約において引き渡された一二万八一〇〇枚につき、買主が売主にあてて、右かますに欠陥があることを具体的に指摘したうえ、穀用かますとしての商品価値が認められず、一枚当り二〇円、数量一二万八一〇〇枚、この代金二五六万二〇〇〇円としての減価採用で精算させていただく等判示のような記載のある書面を送付したときは、特別の事情がないかぎり、買主は、売主に対し、受領物の瑕疵に基づく損害賠償の請求をするとともに、該請求権を自働債権とし売買代金債権を受働債権とする相殺の意思表示をしたものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和50年2月25日 昭和48(オ)558
登載
民集 第29巻2号168頁
参照法条
民法91条,民法506条1項,民法566条,民法570条
論点33第506条民法

相殺の遡及効が契約解除に及ぼす影響の有無

裁判要旨賃貸借契約が賃料不払のため適法に解除された以上、たとえその後賃借人の相殺の意思表示により右賃料債務が遡つて消滅しても、解除の効力に影響はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年1月14日 昭和40(オ)611
登載
集民 第82号41頁
参照法条
民法506条,民法541条
論点34第506条民法

相殺の遡及効が契約解除に及ぼす影響の有無

裁判要旨賃貸借契約が、賃料不払のため適法に解除された以上、たとえその後賃借人が費用償還請求権を自動債権とする相殺の意思表示により、右賃料債務が遡つて消滅しても、解除の効力に影響はない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年8月14日 昭和34(オ)1191
登載
集民 第62号161頁
参照法条
民法506条,民法541条
論点35第506条民法

一 相殺の遡及効が契約解除に及ぼす影響
二 法律解釈の根拠を判示することの要否

裁判要旨一 建物賃貸借契約が賃料不払に因つて解除された後、賃借人の相殺の意思表示によつて賃料債務が遡つて消滅しても、契約解除の効力に影響はないものと解すべきである。
二 法律解釈の根拠・理由を判決に示さなくても、理由不備の違法があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年11月22日 昭和35(オ)1322
登載
集民 第63号307頁
参照法条
民法506条2項,民法541条,民訴法395条1項6号,民訴法191条1項3号
論点36第506条民法

時効にかかつた譲受債権を自働債権として相殺することの許否。

裁判要旨消滅時効にかかつた他人の債権を譲り受け、これを自働債権として相殺することは許されない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年4月14日 昭和34(オ)678
登載
民集 第15巻4号765頁
参照法条
民法506条,民法508条
論点37第506条民法

一 手形の「依頼返還」の効力
二 弁済期到来前の受働債権の譲渡または転付と債務者の相殺
三 受働債権の譲渡と債務者の相殺の意思表示の相手方

裁判要旨一 手形交換所における手形の呈示後、手形振出人の依頼に基きこれをして取引停止処分を免れさせるため、手形持出銀行がその受入銀行から手形のいわゆる「依頼返還」を受けたとしても、そのために一たんなされた手形の呈示および支払拒絶の効力は失われない。
二 弁済期到来前に受働債権の譲渡または転付があつた場合でも、債務者が右の譲渡通知または転付命令送達の当時すでに弁済期の到来している反対債権を有する以上、右譲受または転付債権者に対し相殺をもつて対抗することができる。
三 債務者が受働債権の譲受人に対し相殺をもつて対抗する場合には、その相殺の意思表示はこれを右譲受人に対してなすべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年7月19日 昭和29(オ)723
登載
民集 第11巻7号1297頁
参照法条
手形法38条,民法468条2項,民法506条1項
論点38第506条民法

相殺の遡及効が契約解除に及ぼす影響の有無

裁判要旨賃貸借契約が、賃料不払のため適法に解除された以上、たとえその後、賃借人の相殺の意思表示により右賃料債務が遡つて消滅しても、解除の効力に影響はなく、このことは、解除の当時、賃借人において自己が反対債権を有する事実を知らなかつたため、相殺の時期を失した場合であつても、異るところはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年3月8日 昭和30(オ)332
登載
民集 第11巻3号513頁
参照法条
民法506条,民法541条
論点39第506条民法

一 請負人の報酬債権と注文者の瑕疵修補に代わる損害賠償債権との相殺がされた後の報酬残債務について注文者が履行遅滞による責任を負う時期
二 仮執行宣言に基づく給付金に商事法定利率による金員を付加してその支払を求める民訴法一九八条二項の申立てが認容された事例

裁判要旨一 請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負う。
二 (省略)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成9年7月15日 平成5(オ)2187
登載
民集 第51巻6号2581頁
参照法条
民法412条,民法506条2項,民法533条,民法634条2項,民訴法198条2項,商法514条
論点40第508条民法

一、自働債権である手形債権の時効消滅前に債務者が反対債権である手形債権を取得していたとして相殺の許される場合
二、釈明権不行使の違法があるとされた事例

裁判要旨一、甲と乙とが相互に約束手形を振り出し、甲が乙から振出を受けた手形を債権担保のため銀行に裏書譲渡し、その後右債権の消滅によつて甲が実質上手形上の権利を再取得したが、銀行から甲への戻裏書はおくれてされた場合において、甲が実質的に手形上の権利を再取得した時が乙の手形債権の時効消滅前であるときは、戻裏書の時が時効消滅後であつても、乙は右手形債権をもつて甲の手形債権と相殺することができる。
二、甲が乙に第二約束手形を、乙が甲に第一約束手形を相互に振り出し、甲は第一手形を債権担保のため銀行に譲渡したのち倒産して所在不明となり、甲の債権者丙が甲に代位して銀行から甲への戻裏書をさせたうえ乙に対して手形金を請求する訴訟において、乙が、第二手形債権の時効消滅前に両手形債権は相殺適状にあつたとして相殺の抗弁を主張している場合に、第二手形債権は第一手形の右戻裏書の時には時効消滅しているが、証拠として提出されている第一手形の戻裏書の欄に裏書の日付のほかにそれ以前の日付による「買戻し」の記載があつて、その時に甲が第一手形債権を実質的に取得していた疑いがあり、かつ、その時には第二手形債権がまだ時効消滅していないときには、裁判所は、釈明権を行使して乙に甲が第一手形債権を実質的に取得した時期等について主張立証を尽くさせたうえ相殺の抗弁を審判すべきであり、これをせずに戻裏書の時に第二手形債権が時効消滅していたことから直ちに相殺の抗弁を斥けたことは、釈明権不行使の違法となる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年6月17日 昭和50(オ)847
登載
民集 第30巻6号592頁
参照法条
民法508条,民訴法127条
論点41第508条民法

民法六三七条〈目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限〉所定の期間の経過した請負契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を自働債権とし請負人の報酬請求権を受働債権としてする相殺と同法五〇八条

裁判要旨注文者が民法六三七条所定の期間の経過した請負契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を自働債権とし請負人の報酬請求権を受働債権としてする相殺については、同法五〇八条の類推適用がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年3月4日 昭和50(オ)485
登載
民集 第30巻2号48頁
参照法条
民法508条,民法634条2項,民法637条
論点42第508条民法

時効消滅後の債権による相殺と相殺を主張しうる債権額確定の時点。

裁判要旨時効消滅後の債権による相殺は、相殺適状にあつた時点の債権額の限度でなしうるものであつて、相殺の意思表示の時点における債権額につき対当額で相殺されると解すべきではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年2月20日 昭和37(オ)1005
登載
集民 第72号223頁
参照法条
民法508条,民法145条
論点43第509条民法

同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間における相殺の許否

裁判要旨双方の過失に起因する同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間においても、相殺は許されない。

(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和54年9月7日 昭和53(オ)1198
登載
集民 第127号415頁
参照法条
民法509条,民法709条
論点44第509条民法

不法行為の加害者が被害者に対する自己の債権を執行債権として自己に対する被害者の損害賠償債権について受けた転付命令の効力

裁判要旨不法行為の加害者が被害者に対する自己の債権を執行債権として自己に対する被害者の損害賠償債権について受けた転付命令は、民法五〇九条〈不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止〉の規定を潜脱するものとして無効である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年3月8日 昭和53(オ)970
登載
民集 第33巻2号187頁
参照法条
民法509条,民訴法601条
論点45第509条民法

同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間における相殺の許否

裁判要旨双方の過失に基因する同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間においても、相殺は許されない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和49年6月28日 昭和47(オ)36
登載
民集 第28巻5号666頁
参照法条
民法509条,民法709条
論点46第509条民法

不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし不法行為以外の原因による債権を受働債権とする相殺の許否

裁判要旨民法第五〇九条〈不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止〉は、不法行為の被害者をして現実の弁済により損害の填補をうけしめるとともに、不法行為の誘発を防止することを目的とするものであり、不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし、不法行為による損害賠償債権以外の債権を受働債権として相殺をすることまでも禁止するものではないと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和42年11月30日 昭和40(オ)437
登載
民集 第21巻9号2477頁
参照法条
民法509条
論点47第509条民法

不法行為以外の原因により生じた債権に対し不法行為を原因とする債権をもつて相殺することの許否。

裁判要旨民法第五〇九条〈不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止〉、不法行為以外の原因により生じた債務を負担する者が不法行為による損害賠償債権として相殺することを禁じる趣旨ではないと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年11月5日 昭和40(オ)364
登載
集民 第81号37頁
参照法条
民法509条
論点48第509条民法

一 被害者に業務執行上の過失のある場合と民法第七一五条
二 民法第七一五条〈使用者等の責任〉による損害賠償義務者と相殺の許否

裁判要旨一 被用者たる運転手甲が自動車を運転して当該自動車を輸送する業務に従事中、その過失により自動車を衝突させ同乗していた乙を死亡させたものであるときは、乙が自動車輸送業務の共同担当者たる被用者で右衝突事故の発生につき同人にも過失があつたとしても、使用者は乙の死亡につき民法第七一五条による損害賠償責任を免れない。
二 民法第七一五条〈使用者等の責任〉により損害賠償義務を負担している使用者は、被害者に対する不法行為による損害賠償債権を有している場合でも、相殺をもつて対抗することはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年4月30日 昭和30(オ)199
登載
民集 第11巻4号646頁
参照法条
民法715条,民法509条
論点49第511条民法

一 不渡異議申立手続の委託に伴う預託金の返還請求権が手形債権者に転付きれた場合と支払銀行が手形債務者に対して有する反対債権をもつてする相殺の許否
二 第三債務者が民訴法六〇九条に基づき被差押債権の存在を認め支払意思を表明したことと相殺権の放棄

裁判要旨一 支払銀行に対し、手形の不渡異議申立手続を委託した手形債務者から異議申立提供金に見合う資金として支払銀行に交付された預託金の返還請求権が手形債権者に転付された場合に、支払銀行が右債権の差押前から手形債務者に対して有する反対債権をもつて被転付債権と相殺することが、預託金返還請求権の性質上制限されるものと解すべき理由はない。
二 民訴法六〇九条に基づき、第三債務者が、差押裁判所に対してした陳述において、被差押債権の「存在を認めて支払の意思を表明し将来において相殺する意思がある旨を表明しなかつた場合でも、その後、これを受働債権として相殺に供すること又は時効により消滅したと主張することを妨げるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年5月12日 昭和54(オ)1134
登載
集民 第129号637頁
参照法条
手形法38条,民法511条,民法646条1項,民訴法609条,民訴法748条
論点50第511条民法

手形割引依頼人が仮差押の申請を受けたことを手形買戻請求権の取得及び弁済期到来の事由とする銀行取引約定書による合意の第三者に対する効力

裁判要旨手形割引依頼人が仮差押の申請を受けたときは通知催告がなくても銀行に対し割引手形の買戻債務を負い直ちに弁済する旨の銀行取引約定書による合意に基づいて手形割引がされた場合に、割引依頼人の債権者が割引依頼人の銀行に対する債権につき仮差押をし差押・転付命令を得たときは、銀行は、特段の事情のない限り、右仮差押の申請があつた時に割引依頼人に対し手形買戻請求権を取得しその弁済期が到来したものとして、右手彩買戻請求権をもつて被転付債権と相殺することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年11月25日 昭和46(オ)457
登載
民集 第30巻10号939頁
参照法条
民法511条,民訴法598条1項,民訴法601条,民訴法750条2項,手形法第1編第6章,手形法第1編第7章
論点51第511条民法

金融機関が手形貸付債権又は手形買戻請求権をもつて転付された預金債権を相殺した場合と手形の返還先

裁判要旨金融機関が預金者から第三者に転付された預金債権を右預金者に対する手形貸付債権又は手形買戻請求権をもつて相殺した結果預金債権が転付前に遡つて消滅した場合には、金融機関は、手形貸付けについて振り出された手形又は買戻の対象となつた手形を右預金者に返還すべきであり、預金債権の転付を受けた第三者に返還すべきではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和50年9月25日 昭和46(オ)1110
登載
民集 第29巻8号1287頁
参照法条
民法468条,民法511条,民訴法601条,手形法39条,手形法50条,手形法77条
論点52第511条民法

債権の差押前から債務者に対して反対債権を有していた第三債務者が右反対債権を自働債権とし被差押債権を受働債権としてする相殺の効力

裁判要旨債権が差し押えられた場合において、第三債務者が債務者に対して反対債権を有していたときは、その債権が差押後に取得されたものでないかぎり、右債権および被差押債権の弁済期の前後を問わず、両者が相殺適状に達しさえすれば、第三債務者は、差押後においても、右反対債権を自働債権として、被差押債権と相殺することができる。
(最大判昭和四五年六月二四日民集二四巻六号五八七頁と同趣旨。大塚裁判官が判決に加つているので、裁判集に登載。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年5月25日 昭和47(オ)1316
登載
集民 第109号269頁
参照法条
民法511条
論点53第511条民法

債権の仮差押前から債務者に対して反対債権を有していた第三債務者が右反対債権を自働債権として被仮差押債権を受働債権としてする相殺の効力

裁判要旨債権の仮差押がされた場合において、第三債務者が債務者に対し反対債権を有していたときは、その債権が仮差押後に取得されたものでないかぎり、右債権および被仮差押債権の弁済期の前後を問わず、両者が相殺適状に達しさえすれば、第三債務者は、仮差押後においても、右反対債権を自働債権として、被仮差押債権と相殺することができる。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和46年11月19日 昭和46(オ)115
登載
集民 第104号413頁
参照法条
民法511条,民訴法598条1項,民訴法750条2項
論点54第511条民法

一、銀行の貸付金債権についてされた期限の利益喪失約款の差押債権者に対する効力
二、手形の不渡異議申立手続に関し手形債務者が支払銀行に預託する預託金の返還債務の履行期

裁判要旨一、銀行の貸付金債権について、債務者に対し強制執行、仮差押等の手続が開始されたときは、なんらの通知、催告を要せず、右債務が当然期限の利益を失う旨の合意は、右貸付金債権を差し押えた者に対しても、その効力を対抗しうる。
二、手形の不渡異議申立手続に関し、手形債務者が支払銀行に預託する預託金の返還債務の履行期は、支払銀行が、手形交換所から、当該手形の不渡異議提供金の返還を受けた時に到来すべきものと解すべきである。
(一、について意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年8月20日 昭和42(オ)900
登載
集民 第100号333頁
参照法条
民法511条,民法646条,民訴法598条,手形法58条
論点55第511条民法

一、債権の差押前から債務者に対して反対債権を有していた第三債務者が右反対債権を自働債権とし被差押債権を受働債権としてする相殺の効力
二、相殺に関する合意の差押債権者に対する効力

裁判要旨一、債権が差し押えられた場合において、第三債務者が債務者に対して反対債権を有していたときは、その債権が差押後に取得されたものでないかぎり、右債権および被差押債権の弁済期の前後を問わず、両者が相殺適状に達しさえすれば、第三債務者は、差押後においても、右反対債権を自働債権として、被差押債権と相殺することができる。
二、銀行の貸付債権について、債務者の信用を悪化させる一定の客観的事情が発生した場合には、債務者のために存する右貸付金の期限の利益を喪失せしめ、同人の銀行に対する預金等の債権につき銀行において期限の利益を放棄し、直ちに相殺適状を生ぜしめる旨の合意は、右預金等の債権を差し押えた債権者に対しても効力を有する。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和45年6月24日 昭和39(オ)155
登載
民集 第24巻6号587頁
参照法条
民法511条,民訴法598条1項
論点56第511条民法

いわゆる不渡異議申立提供金の預託金の返還請求権が手形債権者に転付された場合と支払銀行が手形債務者に対して有する反対債権をもつてする相殺の許否

裁判要旨いわゆる不渡異議申立提供金の預託金の返還請求権が手形債権者に転付された場合に、支払銀行が右債権の差押前から手形債務者に対して有する反対債権をもつて被転付債権と相殺することは許される。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和45年10月23日 昭和45(オ)125
登載
集民 第101号155頁
参照法条
民法646条1項,民法511条,手形法38条
論点57第511条民法

受働債権につき国税滞納処分として差押がなされた場合と相殺の意思表示の相手方

裁判要旨国が国税滞納処分として債権を差し押さえ、その取立権を取得した場合において、第三債務者が債務者に対する反対債権をもつて被差押債権と相殺するには、債務者に対しても相殺の意思表示をすることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和40年7月20日 昭和37(オ)743
登載
集民 第79号893頁
参照法条
民法511条,旧国税徴収法(昭和34年法律147号による改正前のもの)23条の1
論点58第511条民法

一 債権差押の第三債務者が差押前に取得し差押後に相殺適状を生じた反対債権と被差押債権との相殺の効力。
二 相殺に関する契約の対外的効力。

裁判要旨一 甲が乙の丙に対する債権を差し押えた場合において、丙が差押前に取得した乙に対する債権の弁済期が差押時より後であるが、被差押債権の弁済期より前に到来する関係にあるときは、丙は右両債権の差押後の相殺をもつて甲に対抗することができるが、右両債権の弁済期の前後が逆であるときは、丙は右相殺をもつて甲に対抗することはできないものと解すべきである。
二 債権者と債務者の間で、相対立する債権につき将来差押を受ける等の一定の事由が発生した場合には、両債権の弁済期のいかんを問わず、直ちに相殺適状を生ずる旨の契約および予約完結の意思表示により相殺することができる旨の相殺予約は、相殺をもつて差押債権者に対抗できる前項の場合にかぎつて、差押債権者に対し有効であると解すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和39年12月23日 昭和36(オ)897
登載
民集 第18巻10号2217頁
参照法条
民法511条,民訴法598条1項
論点59第511条民法

受働債権につき取立命令がなされた場合と相殺の意思表示の相手方。

裁判要旨債権の差押債権者が差押債権の取立命令をえた場合に、第三債務者は、差押前に債務者に対し取得した反対債権をもつて差し押えられた債権と相殺するには、右取立命令をえた差押債権者に対しても相殺の意思表示をすることができる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年10月27日 昭和37(オ)212
登載
民集 第18巻8号1801頁
参照法条
民法511条,民訴法600条
論点60第511条民法

賃料債権に対する抵当権者の物上代位による差押えと当該債権への敷金の充当

裁判要旨敷金が授受された賃貸借契約に係る賃料債権につき抵当権者が物上代位権を行使してこれを差し押さえた場合において,当該賃貸借契約が終了し,目的物が明け渡されたときは,賃料債権は,敷金の充当によりその限度で消滅する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成14年3月28日 平成12(受)836
登載
民集 第56巻3号689頁
参照法条
民法304条1項,民法372条,民法511条,民法619条2項,民事執行法193条
論点61第512条民法

自働債権又は受働債権として数個の元本債権があるにもかかわらず当事者が相殺の順序の指定をしなかつた場合における相殺充当の方法

裁判要旨自働債権又は受働債権として複数の元本債権を含む数個の債権があり、当事者のいずれもが右元本債権につき相殺の順序の指定をしなかつた場合には、まず元本債権相互間で相殺に供しうる状態となつた時期の順に従つて相殺の順序を定めたうえ、その時期を同じくする元本債権相互間及び元本債権とこれについての利息、費用債権との間で民法四八九条、四九一条の規定の準用により相殺充当を行うべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和56年7月2日 昭和55(オ)396
登載
民集 第35巻5号881頁
参照法条
民法489条,民法491条,民法512条
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民法 第505条(相殺の要件等) 詳細ページ
(相殺の要件等)
第五百五条二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
民法 第506条(相殺の方法及び効力) 詳細ページ
(相殺の方法及び効力)
第五百六条相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
2前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
民法 第507条(履行地の異なる債務の相殺) 詳細ページ
(履行地の異なる債務の相殺)
第五百七条相殺は、双方の債務の履行地が異なるときであっても、することができる。この場合において、相殺をする当事者は、相手方に対し、これによって生じた損害を賠償しなければならない。
民法 第508条(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺) 詳細ページ
(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺)
第五百八条時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。
民法 第509条(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止) 詳細ページ
(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第五百九条次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
一悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)
民法 第510条(差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止) 詳細ページ
(差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止)
第五百十条債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
民法 第511条(差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止) 詳細ページ
(差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第五百十一条差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
2前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
民法 第512条(相殺の充当) 詳細ページ
(相殺の充当)
第五百十二条債権者が債務者に対して有する一個又は数個の債権と、債権者が債務者に対して負担する一個又は数個の債務について、債権者が相殺の意思表示をした場合において、当事者が別段の合意をしなかったときは、債権者の有する債権とその負担する債務は、相殺に適するようになった時期の順序に従って、その対当額について相殺によって消滅する。
2前項の場合において、相殺をする債権者の有する債権がその負担する債務の全部を消滅させるのに足りないときであって、当事者が別段の合意をしなかったときは、次に掲げるところによる。
一債権者が数個の債務を負担するとき(次号に規定する場合を除く。)は、第四百八十八条第四項第二号から第四号までの規定を準用する。
二債権者が負担する一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべきときは、第四百八十九条の規定を準用する。この場合において、同条第二項中「前条」とあるのは、「前条第四項第二号から第四号まで」と読み替えるものとする。
3第一項の場合において、相殺をする債権者の負担する債務がその有する債権の全部を消滅させるのに足りないときは、前項の規定を準用する。
民法 第512_2条 詳細ページ
第五百十二条の二債権者が債務者に対して有する債権に、一個の債権の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺については、前条の規定を準用する。債権者が債務者に対して負担する債務に、一個の債務の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺についても、同様とする。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。