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罪/汚職の罪

汚職の罪の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

汚職の罪は、公務員が職権を濫用したり、職務に関して賄賂を受け取ったりする行為を処罰する規定です。公務員職権濫用の系統(193〜196条)と、収賄・贈賄の系統(197〜198条)の2つに大きく分かれます。

汚職の罪
条文主体行為刑罰
193条(職権濫用)公務員職権濫用で義務なき行為をさせる2年以下の拘禁刑
194条(特別公務員職権濫用)裁判・検察・警察職務者等職権濫用で逮捕・監禁6月以上10年以下の拘禁刑
195条(特別公務員暴行陵虐)裁判・検察・警察職務者、看守者等暴行・陵辱・加虐行為7年以下の拘禁刑
196条(致死傷)194・195条の犯人致死傷の結果発生傷害罪と比較し重い刑
197条(収賄等)公務員賄賂の収受・要求・約束5年以下(請託あれば7年以下)
197条の2(第三者供賄)公務員第三者に賄賂を供与させる5年以下の拘禁刑
197条の3(加重収賄等)公務員不正行為+収賄、事後収賄1年以上の有期拘禁刑等
197条の4(あっせん収賄)公務員他の公務員へのあっせん報酬5年以下の拘禁刑
198条(贈賄)賄賂を渡す側供与・申込み・約束3年以下の拘禁刑又は250万円以下の罰金
  • 197条2項は公務員になろうとする者が対象で、実際に公務員になった場合に処罰される。
  • 197条の3第3項は公務員であった者の事後収賄で、在職中の請託が要件。
  • 197条の5は収受した賄賂の没収・追徴を定める(犯人だけでなく情を知った第三者も対象)。
  • 196条は194条・195条の罪を犯し致死傷させた場合に限られる。
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汚職の罪

汚職の罪について、条文は何を定めているか。

第193条公務員職権濫用公務員が権限を悪用して人を従わせる罪1項判例 5件
  • 職権を濫用し、義務のないことをさせたり権利行使を妨げたりする行為が対象
  • 法定刑は2年以下の拘禁刑
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第194条特別公務員職権濫用裁判・検察・警察職務者による違法な逮捕・監禁1項判例なし
  • 裁判、検察、警察の職務を行う者やその補助者が対象
  • 職権を濫用して逮捕・監禁した場合に成立
  • 法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑
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第195条特別公務員暴行陵虐被拘禁者らへの暴行・陵辱・加虐を罰する規定2項判例 4件
  • 1項は裁判・検察・警察職務者等が被告人・被疑者等に暴行等をした場合
  • 2項は拘禁された者を看守・護送する者が対象
  • いずれも法定刑は7年以下の拘禁刑
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第196条特別公務員職権濫用等致死傷194条〈特別公務員職権濫用〉・195条〈特別公務員暴行陵虐〉の罪で死傷させた場合の加重1項判例 1件
  • 194条〈特別公務員職権濫用〉・195条〈特別公務員暴行陵虐〉の罪を犯し、その結果人を死傷させた場合が対象
  • 傷害の罪と比較して重い方の刑で処断される
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第197条収賄、受託収賄及び事前収賄公務員が賄賂を受け取る罪の基本形2項判例 49件
  • 職務に関して賄賂を収受・要求・約束すると5年以下の拘禁刑
  • 請託を受けていた場合は7年以下の拘禁刑に加重
  • 2項は公務員になろうとする者の収賄で、就任後に5年以下の拘禁刑
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第197_2条第三者供賄1項判例なし
第197_3条加重収賄及び事後収賄3項判例なし
第197_4条あっせん収賄1項判例なし
第197_5条没収及び追徴1項判例なし
第198条贈賄賄賂を渡す側(贈賄)を罰する規定1項判例 25件
  • 197条〈収賄、受託収賄及び事前収賄〉から197条の4〈あっせん収賄〉までの賄賂を供与・申込み・約束した者が対象
  • 法定刑は3年以下の拘禁刑又は250万円以下の罰金
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第193条刑法

いわゆる破棄判決の拘束力についての判例違反の主張が前提を欠くとされた事例−いわゆる宮本身分帳閲覧事件−

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和62年12月21日 昭和59(あ)24
登載
集刑 第247号1357頁
参照法条
刑法193条,裁判所法4条
論点2第193条刑法

裁判官が刑事被告人を裁判所外に呼び出した行為が公務員職権濫用罪に当たるとされた事例

裁判要旨裁判官が、私的な交際を求める意図で、自己の担当する窃盗被告事件の女性被告人を、夜間、電話で、被害弁償のことで会いたいなどと言つて喫茶店に呼び出し、同店内に同席させた本件行為(判文参照)は、裁判官としての職権を濫用し義務なきことを行わせた行為に当たる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和60年7月16日 昭和58(あ)1309
登載
刑集 第39巻5号245頁
参照法条
刑法193条
論点3第193条刑法

一 刑法一九三条〈公務員職権濫用〉にいう職権の濫用の意義
二 裁判官が職務上の参考に資するための調査行為であるかのように仮装して刑務所長らに対し身分帳簿の閲覧等を求めた場合と公務員職権濫用罪の成否

裁判要旨一 刑法一九三条〈公務員職権濫用〉にいう「職権の濫用」とは、公務員が、その一般的職務権限に属する事項につき、職権の行使に仮託して実質的、具体的に違法、不当な行為をすることを指称するが、右一般的職務権限は、必ずしも法律上の強制力を伴うものであることを要せず、それが濫用された場合、職権行使の相手方をして事実上義務なきことを行わせ又は行うべき権利を妨害するに足りる権限であれば、これに含まれる。
二 裁判官が、司法研究その他職務上の参考に資するための調査・研究という正当な目的による調査行為であるかのように仮装して、これとかかわりのない目的のために身分帳簿の閲覧、その写しの交付等を求め、刑務所長らをしてこれに応じさせた場合は、公務員職権濫用罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和57年1月28日 昭和55(あ)461
登載
刑集 第36巻1号1頁
参照法条
刑法193条,監獄法4条2項
論点4第193条刑法

公務員職権濫用罪が成立するとされた事例。

裁判要旨執行力ある和解調書の正本には、土地を執行吏の保管に付し、その公示を命ずる旨の条項が存在しないのに、執行吏が職権を濫用し、右和解調書の執行として「本職之を占有保管する」旨虚偽の記載をした公示札を土地上に立てたときは、その土地がたまたま第三者の所有に属し、公示札表示の土地と異なるものであつても、公務員職権濫用罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年5月13日 昭和36(あ)134
登載
刑集 第17巻4号279頁
参照法条
刑法193条
論点5第193条刑法

警察官の電話盗聴行為が公務員職権濫用罪を構成しないとされた事例

裁判要旨警察官が職務として行つたものであつても、終始何人に対しても警察官でないことを装つてした本件電話盗聴行為は、職権を濫用して行つたものとはいえず、公務員職権濫用罪を構成しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成元年3月14日 昭和63(し)76
登載
刑集 第43巻3号283頁
参照法条
刑法193条
論点6第195条刑法

いわゆる準起訴手続における公訴時効停止の時期

裁判要旨いわゆる準起訴手続において公訴時効は刑訴二六六条二号により裁判所の審判に附する決定があつたときに停止されるであつて、審判請求時に遡つて停止されるのではない
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年5月27日 昭和31(あ)745
登載
刑集 第12巻8号1665頁
参照法条
刑訴法266条2号,刑訴法267条,刑訴法254条,刑法195条
論点7第195条刑法

判決に理由不備の違法がある一事例

裁判要旨一定の時に被害者に脳出血による何らかの身体的症状の生じたことを前提として被害者の受傷と死亡との時間的間隔を判定した場合に、右身体的症状を生じたことを認定するための証拠が明らかにその証拠の趣旨と矛盾し、かつ他にこれを認定するにたる証拠のない判決には理由不備の違法がある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年12月25日 昭和23(れ)1738
登載
集刑 第71号431頁
参照法条
旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条19号,刑法195条,刑法205条
論点8第195条刑法

少年補導員が刑法一九五条一項にいう警察の職務を補助する者に当たらないとされた事例

裁判要旨大阪府警察本部通達に基づいて警察署長から委嘱を受け、非行少年等の早期発見・補導等を行う少年補導員(判文参照)は、警察署長から私人としての協力を依頼され、警察官と連携しつつ少年の補導等を行うものであって、警察の職務を補助する職務権限を何ら有するものではなく、刑法一九五条一項〈特別公務員暴行陵虐〉にいう警察の職務を補助する者に当たらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成6年3月29日 平成4(し)120
登載
刑集 第48巻3号1頁
参照法条
刑法195条1項,刑訴法262条1項
論点9第195条刑法

特別公務員暴行陵虐致死被告事件につき,懲役3年に処し5年間その刑の執行を猶予した控訴審判決の量刑が甚だしく不当であるとまでは認められないとされた事例

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成15年10月21日 平成12(あ)821
登載
集刑 第284号455頁
参照法条
刑法195条1項,刑法196条,刑訴法411条2号
論点10第197条刑法

市長の再選後に担当すべき職務に関し受託収賄罪が成立するとされた事例

裁判要旨市の発注する工事に関し入札参加者の氏名及び入札の執行を管理する職務権限をもつ市長が、任期満了の前に、再選された場合に具体的にその職務を執行することが予定されていた市庁舎の建設工事の入札等につき請託を受けて賄賂を収受したときは、受託収賄罪が成立する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和61年6月27日 昭和59(あ)1087
登載
刑集 第40巻4号369頁
参照法条
刑法197条1項(昭和55年法律30号による改正前のもの)
論点11第197条刑法

市議会議員の会派内における議長候補者選出行為が市議会議員の職務に密接な関係のある行為に当たるとされた事例

裁判要旨市議会議員が、現職議員によつて構成される会派内において、市議会議長選挙に関し、所属議員の投票を拘束する趣旨で、投票すべき候補者を選出する行為は、市議会議員の職務に密接な関係のある行為として収賄罪にいわゆる職務行為に当たる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和60年6月11日 昭和58(あ)194
登載
刑集 第39巻5号219頁
参照法条
刑法197条
論点12第197条刑法

大学設置審議会委員の職務に密接な関係のある行為にあたるとされた事例

裁判要旨大学設置審議会及びその歯学専門委員会の委員である被告人が、歯科大学設置の認可申請をしていた関係者らに対し、教員予定者の適否を右委員会の審査基準に従つて予め判定してやり、あるいは同委員会の中間的審査結果をその正式通知前に知らせた行為は、右審議会及び委員会の委員としての職務に密接な関係のある行為として収賄罪にいわゆる職務行為にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年5月30日 昭和57(あ)246
登載
刑集 第38巻7号2682頁
参照法条
刑法197条
論点13第197条刑法

公務員が法令に規定された職務上の権限を行使しないという不作為と収賄罪の規定にいう職務の関連性

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年12月9日 昭和58(あ)1001
登載
集刑 第232号1047頁
参照法条
刑法197条1項
論点14第197条刑法

収賄被告事件につき市長としての職務権限が認められた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和55年4月18日 昭和54(あ)636
登載
集刑 第217号535頁
参照法条
刑法197条1項
論点15第197条刑法

一 ゴルフクラブ入会保証金預託証書がいわゆるゴルフクラブ会員権を表章する有価証券とはいえないとされた事例
二 いわゆるゴルフクラブ会員権を賄賂として収受した場合における没収・追徴

裁判要旨一 証書上からはいわゆるゴルフクラブ会員権の内容が明らかでないうえ、指図文句の記載もなく、会員権の譲渡にゴルフクラブの承認が必要とされている等の本件ゴルフクラブ入会保証金預託証書(判文参照)は、ゴルフクラブ会員権を表章する有価証券とはいえない。
二 いわゆるゴルフクラブ会員権を賄賂として収受した場合には、会員権それ自体は没収の対象となるものではなく、これを収受した時点におけるその価額を追徴すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年12月22日 昭和52(あ)1732
登載
刑集 第34巻7号747頁
参照法条
刑法197条ノ5
論点16第197条刑法

枉法収賄と贈賄の各訴因の間に公訴事実の同一性が認められる事例

裁判要旨「被告人甲は、公務員乙と共謀のうえ、乙の職務上の不正行為に対する謝礼の趣旨で、丙から賄賂を収受した」という枉法収賄の訴因と、「被告人甲は、丙と共謀のうえ、右と同じ趣旨で、公務員乙に対して賄賂を供与した」という贈賄の訴因とは、収受したとされる賄賂と供与したとされる賄賂との間に事実上の共通性がある場合には、公訴事実の同一性を失わない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年3月6日 昭和52(あ)1115
登載
刑集 第32巻2号218頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑法197条ノ3,刑法198条
論点17第197条刑法

工場誘致に関する事務を担当していた地方公共団体の職員に対する贈賄罪の成立が否定された事例

裁判要旨工場誘致に関する事務を担当していた甲県及び乙市の職員が、乙市内に工場用地を買いたい旨申し込んだ者を、乙市において開発し工場誘致を図つていた工場団地に案内したが、希望にそう土地がなかつたことから、かねて被告人らから売却処分方を依頼されていた土地に案内しこれを買い入れるようあつせんした場合において、被告人が、右あつせん行為に対する謝礼として、前記職員に対し現金を供与しても、贈賄罪は成立しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和51年2月19日 昭和49(あ)2887
登載
刑集 第30巻1号47頁
参照法条
刑法197条1項,刑法198条1項
論点18第197条刑法

学校教諭が父兄からギフトチエツクを反覆収受した事案につき収賄罪認定に誤認、審理不尽ありとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和50年4月24日 昭和49(あ)1180
登載
集刑 第196号175頁
参照法条
刑法197条,刑法411条1項1号
論点19第197条刑法

国家公務員共済組合法三六条、一三条に定める国家公務員共済組合連合会に使用されその事務に従事する者にあたるとされた事例

裁判要旨国家公務員共済組合連合会理事長の正当な職員任命権に基づいて同連合会の「嘱託」を命ぜられ、同連合会施設の設計、工事に関する指名業者の選択、入札等の事務に従事する者は、国家公務員共済組合法三六条、一三条に定める国家公務員共済組合連合会に使用され、その職務に従事する者にあたると解すべきであり、「嘱託」の職名が職制に関する規定上明記されていないことは、右の解釈を妨げるものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和47年5月25日 昭和45(あ)448
登載
刑集 第26巻4号272頁
参照法条
国家公務員共済組合法36条,国家公務員共済組合法13条,刑法7条1項,刑法197条1項
論点20第197条刑法

刑法一九七条一項〈収賄、受託収賄及び事前収賄〉の罪と公職選挙法二〇〇条二項、二四九条の罪とが一所為数法の関係にあるとされた事例

裁判要旨地方公共団体の議会の議員が、公職選挙法一九九条三項に規定する会社から、その職務に関し賄賂を収受する趣旨および同議会議員の選挙に関し寄附を受ける趣旨で、現金の供与を受けた場合には、刑法一九七条一項〈収賄、受託収賄及び事前収賄〉の罪および公職選挙法二〇〇条二項、二四九条の罪が成立し、両者は一所為数法の関係にある。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和46年12月2日 昭和43(あ)1859
登載
刑集 第25巻9号1041頁
参照法条
刑法197条1項,刑法54条1項,公職選挙法199条3項,公職選挙法200条2項,公職選挙法249条
論点21第197条刑法

慣例上職務と密接な関係を有する行為にあたる事例

裁判要旨市議会議員であり建設常任委員会委員である者が、同常任委員協議会の一員として慣例にしたがい、消防用器具の選定等について市消防本部に意見を伝達すべく、それに必要な調査等に従事した行為は、右議員ならびに委員としての職務と慣例上密接な関係を有する行為にあたる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和46年10月26日 昭和45(あ)1960
登載
集刑 第181号897頁
参照法条
刑法197条
論点22第197条刑法

没収に代えて追徴すべき賄賂の価額の算定基準時

裁判要旨授受された賄賂が没収不能となりその価額を追徴すべき場合には、授受後においてその物の価額の増減があつたとしても、その物の授受当時の価額を追徴額とすべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和43年9月25日 昭和41(あ)1257
登載
刑集 第22巻9号871頁
参照法条
刑法197条ノ5,刑法19条ノ2
論点23第197条刑法

刑訴法第四〇〇条但書に違反するとされた事例

裁判要旨一審無罪の収賄事件の核心たる犯意の点について何ら事実の取調をすることなく、訴訟記録および一審で取り調べた証拠のみにより、犯罪事実の存在を確定し有罪の判決をしたことは、刑訴法第四〇〇条但書の解釈適用を誤り、当裁判所の判例に反する判断をしたものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和43年12月19日 昭和42(あ)2677
登載
集刑 第169号721頁
参照法条
刑訴法400条但書,刑訴法410条,刑法197条1項
論点24第197条刑法

公務員の地位利用と斡旋収賄罪

裁判要旨刑法第一九七条ノ〈収賄、受託収賄及び事前収賄 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の拘禁刑に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の拘禁刑に処する。〉四の斡旋収賄罪が成立するためには、その要件として、公務員が積極的にその地位を利用して斡旋することは必要でないが、少なくとも公務員としての立場で斡旋することを必要とし、単なる私人としての行為は右の罪を構成しないものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和43年10月15日 昭和41(あ)1102
登載
刑集 第22巻10号901頁
参照法条
刑法197条ノ4
論点25第197条刑法

土地改良法第一四〇条第一項の職務に当るとされた事例

裁判要旨土地改良区には、農地の転用に関する法律上の権限はないが、本件a土地改良区においては、その地域内の農地について、知事に対する転用の許可申請書が所轄の農業委員会に提出されると、右委員会の求めにより、土地改良区の立場において、その理事長名をもつて、転用可否の意見書を右委員会に送付する慣行があつたのであり、このような場合、右土地改良区の理事である被告人が、あるいは理事会の構成員として、あるいは理事をもつて構成され、農地転用の可否について審議決定する農地転用委員会の委員として、右転用申請の手続に関与することは、土地改良法第一四〇条第一項の土地改良区の役員の職務に属する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和41年9月13日 昭和40(あ)1577
登載
集刑 第160号685頁
参照法条
土地改良法140条1項,土地改良法18条,土地改良法19条,刑法197条
論点26第197条刑法

刑法第一九八条〈贈賄〉第一九七条〈収賄、受託収賄及び事前収賄〉にいわゆる職務に当るとされた事例

裁判要旨五、〇〇〇坪をこえる農地を農地以外の用途に転用するため、所有権移転の許可申請書を都道府県知事を経由して農林大臣に提出する場合において、市町村農業委員会がまず右申請書を受理し、その内容を検討したうえ意見書を付してこれを知事に送付する慣行があるときは、右農業委員会の委員がその手続における審議及び決定に加わることは、同委員会の委員の職受に密接な関係を有する行為として刑法第一九八条、第一九七条にいわゆる職務に当る。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年2月17日 昭和40(あ)1889
登載
刑集 第20巻2号13頁
参照法条
刑法198条,刑法197条,農業委員会等に関する法律6条3項,農地法5条1項,農地法関係事務処理要領(昭和27・11・25農林省農地局長通達27地局3707号)(既墾地の部)その(1)の(2)の1の5,農地法関係事務処理要領の改正について(昭34・11・13農林省農地局長通達34地局第5507号)の1の(6)
論点27第197条刑法

職務と密接な関係を有する慣例上の行為に関する金員の授受と賄賂罪の成立

裁判要旨ある町において、町長が、予算額五〇万円以上の土木建設事業を施行するにあたり、その円満な遂行を期するため、町議会議長のほか分掌事項上関係ある議員として町議会建設委員会の建設常任委員等をもつて建設委員協議会を設け、工事の計画、設計、指名入札人の選定、敷札金額の決定等について意見を述べる慣例が存する場合において、町議会議長又は右建設常任委員が右建設委員協議会の構成委員として町長の求めに応じて意見を述べることは、町議会議長又は建設常任委員としての職務に由来し、これと密接な関係を有する行為といつて妨げなく、従つて町議会議長又は建設常任委員である被告人等のかような行為に関し報酬として金品を授受すれば賄賂罪が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年10月6日 昭和41(あ)530
登載
集刑 第161号1頁
参照法条
刑法197条1項,刑法198条1項,地方自治法96条1項5号,地方自治法98条1項,地方自治法100条1項,地方自治法138条の4の3項
論点28第197条刑法

刑法第一九八条第二項〈贈賄〉の斡旋贈賄罪が成立するとされた事例。

裁判要旨税務署から法人所得の調査を受け、売上の脱漏を発見された有限会社の代表取締役甲が、予て知合の右税務署直税課法人税係乙に対し、その同僚で右調査の担当官であり、法人税の調査並びに賦課に関する職務権限を有する同法人税係丙をして、同人の右職務につき手心を加え甲に利益な取計らいをさせるよう斡旋をなすことを依頼し、右斡旋の謝礼として供与する意思の下に乙に金員を供与したときは、刑法第一九八条第二項〈贈賄〉の斡旋贈賄罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和40年9月17日 昭和39(あ)2661
登載
刑集 第19巻6号702頁
参照法条
刑法197条1項,刑法197条ノ四,刑法198条
論点29第197条刑法

収賄と詐欺の両訴因につき、事実の同一性が認められた事例。

裁判要旨一 本件収賄と詐欺の両訴因については、事実の同一性を有するものと認められる。
二 (収賄の訴因)被告人は、Aが神戸市土地区画整理事業の対象となつた同市a区bc丁目d番地の八所在同人所有の土地約四十一坪につき、神戸市に対し右所有地を換地用地として買収方を希望しており、同人により右買収価格の査定につき寛大有利な取扱いを受けたい趣旨のもとに供与されることの情を知りながら、昭和三十三年四月十一日頃同市a区ec丁目f番地喫茶店「B」において、現金五万円の供与を受け、自己の職務に関し収賄したものである。

三 (詐欺の訴因)被告人は、神戸市a区bc丁目に宅地四十坪余を所有しているAが同宅地を神戸市より高価に買収されることを希望しているのを奇貨として、その運動資金名義のもとに金員を騙取しようと企て、昭和三十三年四月十日頃同人に対し、自己は右買収価格査定に関する職務を担当しておらず、又その職務担当の係に対し斡旋運動などしてやる意思がないのにも拘らず、同宅地の買収に関する用務のため建設省に出張する上司に対する運動資金が必要につき明日午前十一時までに五万円出してくれと虚構の事実を申向け同人をしてその旨誤信させ、よつて、翌十一日頃同市a区ec丁目f番地喫茶店「B」において、同人から右土地の高価買収に関する運動資金名義のもとに現金五万円の交付を受けてこれを騙取したものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年8月20日 昭和39(あ)125
登載
集刑 第152号537頁
参照法条
刑訴法256条,刑訴法312条,刑法246条1項,刑法197条1項
論点30第197条刑法

贈賄罪の事実認定につき訴因変更の手続を要しないとされた事例。

裁判要旨被告人が販売した不正な収入印紙および取引高税印紙を貼付使用の登記申請書を審査校合し右不正印紙類を黙認の上登記手続を完了して貰つたことの報酬として金員を供与した旨の訴因に対し、被告人が販売した不正な収入印紙および取引高税印紙を貼付使用の登記申請書を受理し、該印紙類の正不正を審査確認するに当り、厳重な審査をなすことなく、右印紙類に消印除去の痕跡が明瞭に認められない限り、これを正当なものとして寛大且つ有利な取扱をして貰つたことに対する報酬として金員を供与した旨認定するには、訴因変更の手続を要しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年7月12日 昭和36(あ)1881
登載
集刑 第147号791頁
参照法条
刑法198条,刑法197条ノ3,刑訴法312条,刑訴法256条3項,印紙犯罪処罰法2条1項前段
論点31第197条刑法

法令上の根拠なくして県知事に委託された国の行政事務が贈収賄罪における本来の職務と密接な関係のある行為にあたるとされた事例。

裁判要旨県衛生部予防課長事務代理として精神病予防に関する事務を担当する事務吏員が、厚生大臣から法令上の根拠なくして県知事に委託された国の行政事務である精神病床整備費の国庫補助金に関する進達事務を、本来の職務に関連して、慣習上若しくは事実上分掌するときは、その事務の執行は、贈収賄罪における本来の職務と密接な関係のある行為或は準職務行為と解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和38年5月21日 昭和36(あ)190
登載
刑集 第17巻4号345頁
参照法条
刑法197条1項前段,刑法198条1項
論点32第197条刑法

金員の貸与を受け賄賂を収受した場合とその金額の追徴。

裁判要旨公務員たる被告人がその職務に関し金員の貸与を受け賄賂を収受した場合、その金員の没収ができないときは、刑法第一九条第一項第三号〈没収 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物〉、第二項、第一九条ノ二によつて、被告人からその金額を追徴することができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年6月22日 昭和36(あ)139
登載
刑集 第15巻6号1004頁
参照法条
刑法197条ノ5(昭和33年法律107号による改正前197条ノ4),刑法19条1項3号,刑法2項,刑法19条ノ2
論点33第197条刑法

収賄の共同正犯の訴因に対し贈賄の共同正犯の事実を認定する場合と訴因罰条の変更手続の要否。

裁判要旨収賄の共同正犯の訴因に対し、贈賄の共同正犯の事実を認定するには、訴因罰条の変更手続を経ることを要する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年6月13日 昭和32(あ)1919
登載
刑集 第15巻6号961頁
参照法条
刑法197条1項,刑法198条1項,刑法312条
論点34第197条刑法

一 異性間の情交と賄賂の目的物。
二 刑訴法第四〇〇条但書に違反しない事例。

裁判要旨一 異性間の情交は賄賂の目的物となり得る。
二 第一審判決が、収賄の公訴事実につき犯意について証明がないことを理由に無罪を言渡したのに対し、控訴裁判所が、自ら事実の取調として、右犯意の点を主要な争点とする公訴事実につき、犯罪の成否を決する上に関係を有すべき証人五名を取り調べたものである以上、その事実の取調の結果が、争点に直接触れるところにおいて第一審で取り調べた証拠以上に出ないとしても、右事実取調の結果と訴訟記録及び第一審で取り調べた証拠とによつて破棄自判し、有罪の判決をすることは刑訴第四〇〇条但書に違反しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和36年1月13日 昭和34(あ)470
登載
刑集 第15巻1号113頁
参照法条
刑法197条,刑法198条,刑訴法400条但書
論点35第197条刑法

保安庁第一幕僚監部厚生課長が保安庁共済組合の実務主掌者として行う同組合の事務は刑法第七条にいう公務に属するか。

裁判要旨保安庁第一幕僚監部厚生課長が昭和二三年六月三〇日法律第六九号(旧)国家公務員共済組合法七条により同時に保安庁共済組合の実務主掌者として行う同組合の事務は刑法七条にいう公務に属するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年10月3日 昭和32(あ)2663
登載
集刑 第139号471頁
参照法条
刑法7条,刑法197条,(旧)国家公務員共済組合法(昭和23年6月30日法律第69号)7条,保安庁第一幕僚監部組織規程(昭和27年総理府令第45号)19条
論点36第197条刑法

一 国民金融公庫の役職員と刑法第七条にいう「公務員」
二 同公庫の事務と刑法第七条にいう「公務」

裁判要旨一 昭和二七年法律第一五三号による改正前の国民金融公庫法は、同公庫の役職員の職務上犯した非行に対する処罰はあげてこれを刑法の律する所に委ねて居る。換言すれば、同庫の役職員に対し刑法一九七条が適用せらるべきか否かは、同公庫の役職員が刑法七条にいう公務員と解せられるか否かにかかる。同公庫の役職員は右改正前の一七条〈科料〉により国家公務員とされているが故に刑法一九七条の適用を受けるのではなく、それが刑法七条にいう公務員と認められるが故にその適用を受けるのである。
二 国民金融公庫の事務は刑法七条にいう「公務」に当たる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年9月13日 昭和31(あ)4206
登載
集刑 第135号309頁
参照法条
刑法7条,刑法197条,国民金融公庫法(昭和24年法律49号)1条,国民金融公庫法(昭和24年法律49号)2条,国民金融公庫法(昭和24年法律49号)3条,国民金融公庫法(昭和24年法律49号)18条,国民金融公庫法(昭和24年法律49号)28条,国民金融公庫法(昭和24年法律49号)21条,国民金融公庫法(昭和27年法律153号による改正前のもの)17条,国民金融公庫法(昭和27年法律153号による改正後のもの)17条,国民金融公庫法(昭和28年法律136号による改正後のもの)17条
論点37第197条刑法

警察予備隊総隊総監部管理部調達班長の職務

裁判要旨昭和二五年一二月二九日総理府令第五二合警察予備隊の部隊の編成及び組織に関する規程一八条〈労役場留置〉によると、警察予備隊総隊総監部管理部長は、被服その他の需品の購入、配分及び保管の計画並びに補給計画の策定に関する事務等をその職務とするものと定められているところ、原審の認定によれば、進駐軍指令部の指示により、需品の購入等の調達事務も管理部において取り扱うこととされ、原審相被告人鎌田は、調達班長として上司の命令により右調達事務を処理していた。そして管理部における右調達事務は前示総理府令一八条による管理部長の職務と密接に関連するものということができるから、原審が、鎌田の右調達事務の処理を同人の公務員としての地位に伴う職務に該当すると判示したのは正当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年6月21日 昭和31(あ)4058
登載
集刑 第134号207頁
参照法条
警察予備隊の部隊の編成及び組織に関する規程(昭和25年12月29日総理府令52号)18条,刑法197条,刑法198条
論点38第197条刑法

一 訴因変更手続を要しない事例。―起訴状記載の事実と一審判決認定事実の間における場所の差異―
二 第一審に提出した弁論要旨と題する書面を援用する旨の控訴趣意書の適否
三 収賄罪における税務署法人税課係員の担当地域と職務権限

裁判要旨一 収賄罪における賄賂収受の場所の差異につき、起訴状の記載に「東京都北区ab丁目c番地被告人自宅」とあるのを第一審判決で「東京都北区de丁目b、f番地の当時の被告人自宅」と認定するには、訴因変更の手続を要しない。
二 控訴趣意書自体に控訴理由を明示しないで、第一審に提出した弁論要旨と題する書面の記載を援用する旨の控訴趣意は許されない。
三 収賄罪において、税務署法人税課第六係係員として法人税の課税標準の調査等に関する事務を分掌するとともに、事実上同係次席として係長の職務を補佐していた者につき、その賄賂の対象となつた行為が、同係の管轄区域内ではあるが同人の担当地域外であつたというだけで、直ちにその職務権限に属しないものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年4月19日 昭和31(あ)3605
登載
刑集 第14巻6号685頁
参照法条
刑訴法312条,刑訴法376条,刑法197条,刑訴規則240条
論点39第197条刑法

職務執行と密接な関係にある慣例上の行為に対する金員の収受と賄賂罪の成立。

裁判要旨或る町において、町長が比較的大規模の工事を施行するにあたつては、町会議長のほか分掌事項上関連ある議員として厚生委員会の委員長、各委員などをもつて協議会を組織し、入札業者の指名、入札方法の選定、敷金額の決定等につき意見を求め、また厚生委員が町長の選任により右工事の監督にあたる等の慣例が存する場合において、右協議会で敷金額につき意見を述べること並びに右工事の監督に従事することは、町議会議員で且つ厚生委員としての職務行為そのものではないが、右職務に由来しこれと密接な関係を有する行為であるから、町議会議員であり且つ厚生委員である被告人等がかかる行為の対価として金員を収受すれば賄賂罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年3月2日 昭和31(あ)2282
登載
刑集 第14巻3号224頁
参照法条
刑法197条1項前段,刑法7条,地方自治法96条1項3号,地方自治法96条1項7号,地方自治法96条1項9号,地方自治法98条1項,地方自治法100条1項,地方自治法92条2項
論点40第197条刑法

一 税務署の直税課資料係の大蔵事務官は、所得額または所得税額決定の基礎となる資料の調査蒐集の職務権限を有するか。
二 刑法第一九八条〈贈賄〉の贈賄罪の成立には、贈賄者に収賄者の職務権限に対応する義務があることを必要とするか。

裁判要旨税務署の直税課資料係の大蔵事務官は、所得額や所得税額決定の起訴となる資料の調査蒐集の職務権限を有する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和35年12月13日 昭和30(あ)3991
登載
刑集 第14巻13号1911頁
参照法条
刑法197条,刑法198条,大蔵省組織規程(昭和27年8月大蔵省令110号による改正前のもの)141条(現行142条)
論点41第197条刑法

一 刑法第一九七条〈収賄、受託収賄及び事前収賄〉にいう公務員の「職務ニ関シ」の意義
二 電報電話局施設課線路係長たる電気通信技官の職務権限と電話売買の斡旋行為

裁判要旨一 刑法第一九七条〈収賄、受託収賄及び事前収賄〉にいう公務員の「職務ニ関シ」とは、公務員の職務行為ばかりでなく、これと密接な関係にある行為に関する場合を含むものと解すべきであるが、単にこれと関連性のある行為に関する場合をも含むものと解すべきではない。
二 既設電話の移転工事等の処理、工事指令、現地調査等の権限を有する電報電話局施設課線路係長たる電気通信技官が電話売買の斡旋をすることは、その職務行為と関連性のある行為ではあつても、これと密接な関係ある行為とはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和34年5月26日 昭和31(あ)2084
登載
刑集 第13巻5号817頁
参照法条
刑法197条,刑法198条
論点42第197条刑法

賄賂と職務行為との関係。

裁判要旨賄賂は職務行為に関するものであれば足り、個々の職務行為と賄賂との間に対価的関係のあることを必要とするものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年9月30日 昭和31(あ)3135
登載
刑集 第12巻13号3180頁
参照法条
刑法197条,刑法198条
論点43第197条刑法

刑訴法第四一一条第一号第三号にあたる一事例

裁判要旨贈収賄被告事件において、不可分の供述の一部をとつて全体の意味と異る趣旨を認定して職務に関する饗応を認めた判決は証拠法の違反があると共に事実の誤認があつて刑訴第四一一条第一号第三号によりこれを破棄した上無罪の言渡をすることができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年2月14日 昭和26(あ)5023
登載
刑集 第11巻2号696頁
参照法条
刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法411条,刑訴法413条,刑法197条,刑法198条
論点44第197条刑法

一 受訴裁判所内で受命裁判官による証人尋問を行うことの適否
二 違法な証人尋問についてその手続上の瑕疵が治癒されたものと解せられる一事例
三 刑法一九七条の三〈加重収賄及び事後収賄〉にいわゆる「相当ノ行為ヲ為ササルトキ」に当る場合

裁判要旨一 受訴裁判所内で行う証人尋問を受命裁判官をして行わしめることは法の認めないところであることは所論のとおりであるけれども、本件所論の場合においては、第一審裁判所は、予め検察官弁護人東京高等裁判所訴訟関係人の同意を得た上で、受命裁判官をして証人の尋問をなさしめたものであり、かつ右証人尋問には、被告人弁護人もこれに立会い、しかも、その施行について何ら異議を述べた形跡はなく、また、その後公判において右尋問調書の証拠調が行われた際にも訴訟関係人が異議を述べた事実のないことは記録上明らかであるから、右手続上の瑕疵はこれによつて治癒せられたものと解するを相当する。
二 犯罪捜査の衝にあたる巡査が、とくに被疑者の要望を容れて証拠品の押収を取止めた、本件のごとき場合は、刑法一九七条の三〈加重収賄及び事後収賄〉にいわゆる「相当ノ行為ヲ為ササルトキ」に該当することは、原判決の説示するとおりである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和29年9月24日 昭和27(あ)6178
登載
刑集 第8巻9号1519頁
参照法条
刑訴法163条1項,刑訴法281条,刑法197条の3
論点45第197条刑法

一 勾留中の被疑者が勾留状に記載されていない犯罪事実について供述した場合の供述の効力
二 刑法第一九七条〈収賄、受託収賄及び事前収賄〉にいう「職務」の意義
三 法令と証拠調手続
四 共犯者たる共同被告人の公判廷における供述の証拠能力

裁判要旨一 背任および臨時物資需給調整法違反が被疑事実によつて勾留された間に被疑者が収賄事実について検察官に対して供述した場合、その一事をもつて直ちに右供述を無効と解すべきではない。
二 刑法第一九七条〈収賄、受託収賄及び事前収賄〉にいう「職務」には、公務員がその地位に伴い公務として取り扱うべき一切の執務を指称するものである。
三 富山県庁達第五二号「土木工事直営施行規程」もまた法令の一種であつて、これを証拠説明の中に雑えて挙示する場合においても別に証拠調手続をすることを要しない。
四 共犯者たる共同被告人の公判廷における供述であるからといつて、証拠能力を欠くものとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年10月27日 昭和26(あ)3999
登載
刑集 第7巻10号1971頁
参照法条
刑法197条,刑訴法62条,刑訴法64条,刑訴法318条,刑訴法305条,刑訴法317条,刑訴法311条3項
論点46第197条刑法

収賄と公印不正使用とは牽連犯となるか

裁判要旨収賄と公印不正使用とは牽連犯にならない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和27年2月7日 昭和26(れ)2098
登載
刑集 第6巻2号208頁
参照法条
刑法165条2項1項,刑法197条1項,刑法54条1項
論点47第197条刑法

一 賄賂収受罪判示の程度−公務員たる法令上の根拠を示す要否
二 兵庫県雇と公務員

裁判要旨一 公務員の賄賂収受罪を判示するに当つては、公務員であることを判断しうる具体的事実を示しその者が職務に関し賄賂を収受した事実を説明すれば足り、公務員たることの資格を認められる法令上の根拠までも示す必要はないのである。(昭和二四年(れ)第八五六号、同二五年二月二八日第三小法廷判決。最高裁判所判例終四巻二号二六八頁参照)
二 被告人は兵庫県知事より任命された国費支弁の雇であつたことが窺われる。そして、同知事にかかる雇の任命権があつたことは大正十五年六月四日勅令第一四七号地方官々制第五条〈外国判決の効力〉第八条〈他の法令の罪に対する適用〉一行の規定の趣旨に徴し明らかである。されば、原判決は被告人の公務員たる判示に欠くるところはない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年7月20日 昭和25(れ)822
登載
刑集 第5巻8号1586頁
参照法条
旧刑訴法360条1項,刑法197条,刑法7条
論点48第197条刑法

旧刑訴法第二〇一条第一項第三号及び第一八八条第二項にいう「共犯」と必要的共犯

裁判要旨旧刑訴第二〇一条第一項第三号〈予備〉及び第一八八条第二項〈礼拝所不敬及び説教等妨害〉にいう「共犯」とは、刑法第六〇条〈共同正犯〉以下の定める共犯(狭義の共犯)のみを指すのではなく、収賄及び贈賄の罪のように、法律がそれぞれ別個の罪として規定していても、その性質上たがいに関与、加担の関係がある場合(いわゆる必要的共犯に属する場合)をも含むものと解すべきである。なぜなら、当該事件の被告人と右のような関係にある者を証人として調べる場合、その宣誓及び供述義務の有無について、刑法上の共犯関係にある者と別異の取扱をすべき理由はないからである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和26年5月1日 昭和26(れ)98
登載
刑集 第5巻6号978頁
参照法条
旧刑訴法201条1項3号,旧刑訴法188条2項,刑法197条,刑法198条
論点49第197条刑法

一 農業団体法(昭和一八年法律第四六号)に定める縣農業会の職員は公務員ではない−同会名義の木炭出荷指図書は私文書である
二 経済関係罰則の整備に関する法律第二条〈すべての者の国外犯〉の趣旨

裁判要旨一 経済関係罰則の整備に関する法律第一条〈国内犯〉の規定と対比して見ると、同条は別表甲号に掲げる経済団体の「役員其ノ他ノ職員ハ罰則ノ適用ニ付テハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ従事スル職員ト看做ス」旨を規定しているが同第二条〈すべての者の国外犯〉には、かかる規定は存在しない。すなわち、以上各規定の趣旨からみれば、右別表甲号、乙号掲記の経済団体の職員はいずれも本来の意義における公務員ではないのであるが、ただ甲号団体の職員に限つて罪則の適用については公務員とみなされるに過ぎないことがわかる。従つて、本件農業会のごとき乙号掲記の団体の職員は、もとより公務員でなく、又公務員とみなされるものでもなく、ただ同法第二条の涜職罪の規定の適用を受けるに止まるものというべきである。その他に右縣農業会の職員を以て「法令ニ依リ公務ニ従事スル職員」と解すべき何らの法規上の根拠はないのであるから、従つて縣農業会は、これを公務所と解すべきでなく、その作成すべき出荷指図書のごときは公文書たる性質を有しないものと解すべきである。
二 今経済関係罰則の整備に関する法律をみると、第二条は同法所定の「会社若シクハ組合又ハ此等ニ準ズルモノニシテ別表乙号ニ掲グルモノノ役員其ノ他ノ職員」について、涜職罪に関する罰則を規定し、右別表乙号には「二二」として縣農業会が掲げられているのであるが、若し縣農業会の職員が公務員ならば、刑法の涜職罪の規定が当然に適用せられるのであつてかかる同罪に関する特則を設ける必要はない。もとより、これらの職員に対して、特に法定刑を軽減するの趣旨を以て刑法涜職罪の規定に対する右のごとき特則が定められたものとは、右「経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律」制定の趣旨からして、到底考えられない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年4月27日 昭和25(れ)1375
登載
刑集 第5巻5号947頁
参照法条
農業団体法1条,農業団体法10条,經済関係罰則の整備に関する法律2条,經済関係罰則の整備に関する法律1条(別表甲号を省く),別表乙号「22」,刑法7条,刑法159条1項,刑法197条,経済関係罰則の整備に関する法律2条,経済関係罰則の整備に関する法律1条(別表甲号を省く)
論点50第197条刑法

一 判決に掲げてある証拠の誤記であることの明瞭な場合
二 賄賂の価格算定の誤謬を主張する上告理由と被告人に不利益な主張
三 農地委員会の職務権限
四 いわゆる荒廃地と自作農創設特別措置法第三条の農地

裁判要旨一 判決に証拠として「被告人に対する検事の第二回聴取書中判示同旨の供述記載」と掲げてあつても、記録中数通ある被告人に対する検事の聴取書中判示事項と同旨の記載ある聴取書は第一回聴取書だけであつて、その余の聴取書には別個の事実についての供述記載しかない場合には、右第二回聴取書は第一回聴取書の誤記であること明らかであるといわなければならない。
二 判示玄米七斗については、当時適用のあつた昭和二二年一一月一日物価庁告示第九六〇号に定めている統制額に基ずいて算出すべきものであつて、同告示により算出すれば、原判示金額より若干多額になること算数上明らかであり、原判決はこの点において違法が存するものといわなければならないが、原判示価格は被告人Aに有利に算出されている結果、同被告人に対する追徴の金額もそれだけ少額になつているので、右玄米七斗の価格の誤謬を指摘する論旨は結局被告人に不利益な主張となる。
三 農地所有権の移転についての地方長官の許可申請書に意見を附し、之を地方長官に進達することは右農地委員会の職務権限に属するものと認むべきである。
四 いわゆる荒廃地であつても、自作農創設特別措置法第三条の農地にあたる以上、政府買収の対象となる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年10月12日 昭和25(れ)1409
登載
刑集 第5巻11号2183頁
参照法条
旧刑訴法360条1項,旧刑訴法409条,刑法197条,農地調整法(昭和21年法律第42号により改正されたもの)4条1項,農地調整法(昭和21年法律第42号により改正されたもの)4条3項,農地調整法施行令(昭和21年勅令第556号により改正されたもの)2条1項,農地調整法施行令(昭和21年勅令第556号により改正されたもの)2条3項,農地調整法施行規則(昭和21年農林省令第68号により改正されたもの)6条1項本文,農地調整法施行規則(昭和21年農林省令第68号により改正されたもの)6条2項,農地調整法施行規則(昭和21年農林省令第68号により改正されたもの)6条3項,自作農創設特別措置法(昭和24年法律第205号による改正前のもの)3条5項5号
論点51第197条刑法

一 公務員甲、乙に各別に贈賄する意見をもつて二口の金包を何人に贈与するかを指示せず同時に同場所でその旨を告げ甲に交付した場合と乙に対する贈賄罪の成立―右の場合乙が收賄したとき贈賄者に対する擬律
二 第一審において有罪とせられた二個の事実の中一個の事実を無罪としながら、なお第一審判決と同一の刑を科した場合と不利益変更の禁止

裁判要旨一 被告人が二千五百円と千五百円の二口の金包を、何れの金包を何人に贈与するかを指示せず、同時に同場所で判示Aを通じBに交付したとしても、右Bに対する金品の交付行為をもつてしては未だ同人に対する贈賄行為の成立あるに止り、Cに対してはさらに情を知つた右Bが判示の金品をCに交付したときはじめてその実行行為があつたものというべきである。然らば被告人のBに対する贈賄行為と、Cに対する贈賄行為とは別個の贈賄行為であつて、原判決がこれを併合罪の関係にあるものとして処断したのは相当である。
二 旧刑訴法第四〇三条にいわゆる原判決の刑より重い刑を言渡すというのは判決主文における科刑を原判決にくらべて重くするということゝは当裁判所の判例とするところである。(昭和二四年(れ)第一四八四号同年一〇月一日第二小法廷判決参照)そうして論旨引用の各判例もいずれもこれと同旨に出でたものである。されば原判決が第一審において有罪とせられた(イ)(ロ)の各贈賄事実の中(ロ)の事実を無罪としながらなお第一審判決と同一の刑を被告人に科しても旧刑訴法第四〇三条に違脊しないこと明らかである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和25年11月10日 昭和25(れ)757
登載
刑集 第4巻11号2248頁
参照法条
刑法198条,刑法197条,刑法45条前段,刑法54条1項前段,旧刑訴法403条
論点52第197条刑法

検察官調書の任意性を肯定した原判断が是認された事例(反対意見がある)

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年10月27日 昭和61(あ)36
登載
集刑 第253号215頁
参照法条
刑法197条1項,刑法198条,刑訴法319条
論点53第197条刑法

一 いわゆる刑事免責を付与して得られた供述を録取した嘱託証人尋問調書の証拠能力
二 内閣総理大臣が運輸大臣に対し民間航空会社に特定機種の航空機の選定購入を勧奨するよう働き掛けることと賄賂罪における職務行為

裁判要旨一 刑訴法はいわゆる刑事免責の制度を採用しておらず、刑事免責を付与して得られた供述を録取した嘱託証人尋問調書を事実認定の証拠とすることは許容されない。
二 内閣総理大臣が運輸大臣に対し民間航空会社に特定機種の航空機の選定購入を勧奨するよう働き掛けることは、内閣総理大臣の運輸大臣に対する指示として、賄賂罪の職務行為に当たる。
(一につき補足意見,二につき補足意見及び意見がある。)
裁判
最高裁判所大法廷 平成7年2月22日 昭和62(あ)1351
登載
刑集 第49巻2号1頁
参照法条
刑訴法1条,刑訴法146条,刑訴法226条,刑訴法248条,刑訴法317条,憲法38条1項,憲法66条,憲法68条,憲法72条,刑法(昭和55年法律30号による改正前のもの)197条1項,刑法(昭和55年法律30号による改正前のもの)198条1項,運輸省設置法(昭和47年法律105号による改正前のもの)3条11号,運輸省設置法(昭和47年法律105号による改正前のもの)4条1項44号の9,運輸省設置法(昭和47年法律105号による改正前のもの)28条の2第1項13号,航空法(昭和48年法律113号による改正前のもの)100条1項,航空法(昭和48年法律113号による改正前のもの)101条,航空法(昭和48年法律113号による改正前のもの)109条,航空法施行規則(昭和48年運輸省令59号による改正前のもの)210条1項,航空法施行規則(昭和48年運輸省令59号による改正前のもの)220条,内閣法4条,内閣法6条,内閣法8条
論点54第197条刑法

防衛庁調達実施本部副本部長等の職にあった者が,退職後に私企業の非常勤顧問となり顧問料として金員の供与を受けたことについて,事後収賄罪が成立するとされた事例

裁判要旨防衛庁調達実施本部副本部長等の職にあった者が,在職中に私企業の幹部から請託を受けて職務上不正な行為をし,その後間もなく防衛庁を退職して上記私企業の関連会社の非常勤の顧問となり顧問料として金員の供与を受けたなどの本件事実関係の下においては,顧問としての実態が全くなかったとはいえないとしても,供与を受けた金員は不正な行為と対価関係があり,事後収賄罪が成立する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年3月16日 平成17(あ)246
登載
刑集 第63巻3号81頁
参照法条
刑法197条の3第3項
論点55第197条刑法

参議院議員が,本会議における代表質問においてある施策の実現のため有利な取り計らいを求める質問をされたい旨の請託を受け,さらに,他の参議院議員を含む国会議員に対し国会審議の場において同旨の質疑等を行うよう勧誘説得されたい旨の請託を受けて金員を受領したことが,その職務に関し賄賂を収受したものとされた事例

裁判要旨参議院議員が,ある施策の実現を目指す者から,参議院本会議において内閣総理大臣の演説に対して所属会派を代表して質疑するに当たり,その施策の実現のため有利な取り計らいを求める質問をされたい旨の請託を受け,さらに,他の参議院議員を含む国会議員に対し国会審議の場において同旨の質疑等を行うよう勧誘説得されたい旨の請託を受け,これらの報酬として金員を受領したことは,その職務に関し賄賂を収受したものであって,受託収賄罪に当たる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成20年3月27日 平成18(あ)348
登載
刑集 第62巻3号250頁
参照法条
刑法197条1項
論点56第197条刑法

県立医科大学教授兼同大学附属病院診療科部長が医局に属する医師を他の病院へ派遣する行為につき賄賂罪における職務関連性が認められた事例

裁判要旨県立医科大学教授兼同大学附属病院診療科部長が,自己が長を務める医局に属する医師を医局と一定の関係を有する外部の病院へ派遣する行為(判文参照)は,これらの医師を教育指導するというその職務に密接な関係があり,賄賂罪における職務関連性が認められる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成18年1月23日 平成16(あ)272
登載
刑集 第60巻1号67頁
参照法条
刑法197条1項前段,刑法198条
論点57第197条刑法

警視庁A警察署地域課に勤務する警察官が同庁B警察署刑事課で捜査中の事件に関して告発状を提出していた者から現金の供与を受けた行為につき収賄罪が成立するとされた事例

裁判要旨警視庁A警察署地域課に勤務する警察官が,同庁B警察署刑事課で捜査中の事件に関して,告発状を提出していた者から,告発状の検討,助言,捜査情報の提供,捜査関係者への働き掛けなどの有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら,現金の供与を受けたときは,同警察官が同事件の捜査に関与していなかったとしても,刑法197条1項〈収賄、受託収賄及び事前収賄〉前段の収賄罪が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成17年3月11日 平成15(あ)434
登載
刑集 第59巻2号1頁
参照法条
刑法197条1項,警察法64条
論点58第197条刑法

公務員が請託を受けて公正取引委員会の委員長に対し同委員会が調査中の審査事件を告発しないように働き掛けることとあっせん収賄罪の成否

裁判要旨公務員が,請託を受けて,公正取引委員会が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反の疑いで調査中の審査事件について,同委員会の委員長に対し,これを告発しないように働き掛けることは,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)197条ノ〈収賄、受託収賄及び事前収賄 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の拘禁刑に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の拘禁刑に処する。〉4にいう「職務上相当ノ行為ヲ為サザラシム可ク」あっせんすることに当たる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成15年1月14日 平成13(あ)884
登載
刑集 第57巻1号1頁
参照法条
刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)197条ノ4,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)198条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律73条1項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律96条1項
論点59第198条刑法

刑法上の贈賄罪が町議会の議長選挙に関して犯された場合と公職選挙法一一条一項四号にいう「法律で定めるところにより行なわれる選挙投票及び国民審査に関する犯罪」

裁判要旨刑法上の贈賄罪は、それが町議会の議長選挙に関して犯された場合であつても、公職選挙法一一条一項四号にいう「法律で定めるところにより行なわれる選挙、投票及び国民審査に関する犯罪」にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年12月13日 昭和54(行ツ)88
登載
民集 第33巻7号743頁
参照法条
公職選挙法11条1項,刑法198条
論点60第198条刑法

贈賄罪における贈賄者の意思決定の自由。

裁判要旨贈賄罪における賄賂の供与等の行為には、必ずしも完全な自由意思を要するものでなく、不完全ながらも、いやしくも贈賄すべきか否かを決定する自由が保有されておれば足りる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年12月8日 昭和39(あ)1365
登載
刑集 第18巻10号952頁
参照法条
刑法198条1項
論点61第198条刑法

一 賄賂供与申込罪の成立と相手方の賄賂たることの認識の要否
二 証拠により認定した事実を他の事実の証拠とすることの適否
三 刑訴法第四一一条第二号に該当し、刑の執行を猶予するのが相当であるとした事例

裁判要旨一 賄賂供与申込罪の成立には、相手方に賄賂たることを認識し得べき事情の下に金銭その他の利益の収受を促す意思表示をなせば足りるのであつて、相手方において実際上その意思表示を又はその利益が賄賂たる性質を具有することを認識すると否とは、同罪の成立に影響を及ぼすものではない。
二 証拠によつて認定した或る事実を他の事実の証拠としても、少しも違法ではない(昭和九年(れ)第一五六八号同一〇年二月一四日大審院判決、刑集一四巻九二頁参照)。
三 職権により調査するに原判決の判示するところによれば、被告人の本件利益贈与ないし利益提供の動機としては、相手方の職務行為に対する依頼又は謝礼の趣旨のほかに、多かれ少なかれ、それ以外の個人的な友交関係、政治献金、職務に関係のない個人的将来の庇護期待等の趣旨も認められ、必ずしも職務要因のみに基くものというような状況であつたとは認められないとし、また食糧事情が急迫していた当時の状況下においては被告人の右各贈与は犯情として被告人に有利なものを含んでいたとも認定している。そして被告人は逮捕拘禁以来約一四年の長期に亘り心身に有形無形の多大の苦痛を受けたものというべく、また被告人が反省謹慎の日を送りつつあることは一審判決の判示の趣旨からも窺知しうるところである。本件は当時いわゆるA事件として世人の耳目を聳動せしめた大事件であるが、その後の推移はA事件のB関係においては、収賄罪で起訴されたC、Dは無罪、E、F外五名は執行猶予となつている。叙上の諸事情(判文参照)を考慮するときは、被告人Bに対し実刑を科さなければ刑政の目的を達することができないものとは断じ難く、刑の執行を猶予するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年4月13日 昭和34(れ)2
登載
集刑 第141号789頁
参照法条
刑法198条,刑法25条1項,経済関係罰則の整備に官する法律5条,旧刑訴法336条,旧刑訴法360条1項,刑訴法317条,刑訴法335条1項,刑訴法411条2号
論点62第198条刑法

一 農林漁業金融公庫法第一七条、第一九条第二項の各規定の合憲性。
二 刑訴法第四一一条第一号にあたらない事例。

裁判要旨一 農林漁業金融公庫法第一七条、第一九条第二項の各規定は憲法第一四条第一項に違反しない。
二 農林中央金庫の職員に対し贈賄した行為に対する法令の適用として刑法第一九八条が掲げられている以上、農林漁業金融公庫法第一九条第二項の規定によるべき場合に、誤つて、同法第一七条を表示したとしても、刑訴第四一一条第一号にいわゆる判決に影響を及ぼす違法があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年7月25日 昭和35(あ)701
登載
刑集 第15巻7号1216頁
参照法条
憲法14条1項,農林漁業金融公庫法17条,農林漁業金融公庫法19条2項,刑法198条,刑訴法411条1号
論点63第198条刑法

公訴時効完成により刑訴法第四一一条により免訴を言渡した一事例

裁判要旨贈賄の事実については、原判決の言渡後、本件を当裁判所が受理した昭和三一年六月二二日までに既に三年以上経過し、しかも、その間公訴時効の中断の事実のないことは記録上明らかであるので、右の罪に対する公訴の時効が完成したものであるから、共に被告人に免訴の言渡をすべきであつて、この点において原判決は破棄を免れない。よつて、刑訴施行法二条、三条の二、刑訴四一一条により、原判決破棄の上、旧刑訴四四八条、四五五条、三六三条三号、四号により被告人を免訴すべきものとする。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年9月14日 昭和31(れ)8
登載
集刑 第114号695頁
参照法条
刑法198条,刑訴法411条5号,旧刑訴法281条5号,旧刑訴法363条4号
原

条文原文

原文ママ

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刑法 第193条(公務員職権濫用) 詳細ページ
(公務員職権濫用)
第百九十三条公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、二年以下の拘禁刑に処する。
刑法 第194条(特別公務員職権濫用) 詳細ページ
(特別公務員職権濫用)
第百九十四条裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
刑法 第195条(特別公務員暴行陵虐) 詳細ページ
(特別公務員暴行陵虐)
第百九十五条裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、七年以下の拘禁刑に処する。
2法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。
刑法 第196条(特別公務員職権濫用等致死傷) 詳細ページ
(特別公務員職権濫用等致死傷)
第百九十六条前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
刑法 第197条(収賄、受託収賄及び事前収賄) 詳細ページ
(収賄、受託収賄及び事前収賄)
第百九十七条公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の拘禁刑に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の拘禁刑に処する。
2公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の拘禁刑に処する。
刑法 第197_2条(第三者供賄) 詳細ページ
(第三者供賄)
第百九十七条の二公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、五年以下の拘禁刑に処する。
刑法 第197_3条(加重収賄及び事後収賄) 詳細ページ
(加重収賄及び事後収賄)
第百九十七条の三公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期拘禁刑に処する。
2公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。
3公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の拘禁刑に処する。
刑法 第197_4条(あっせん収賄) 詳細ページ
(あっせん収賄)
第百九十七条の四公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の拘禁刑に処する。
刑法 第197_5条(没収及び追徴) 詳細ページ
(没収及び追徴)
第百九十七条の五犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
刑法 第198条(贈賄) 詳細ページ
(贈賄)
第百九十八条第百九十七条から第百九十七条の四までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の拘禁刑又は二百五十万円以下の罰金に処する。
出

一次情報

原文ママ

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