民事保全法 / テーマ別まとめ

保全執行に関する手続/仮処分の執行

仮処分の執行の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

仮処分の執行に関する手続を整理したものです。仮処分の執行は仮差押えの執行又は強制執行の例によるのが原則ですが、不動産等の登記請求権を保全する場合や占有移転禁止の場合など、仮処分に固有の執行方法が定められています。また、債務者が仮処分解放金を供託したときは執行が取り消されます。

仮処分の執行
類型執行方法根拠条文
作為・不作為を命ずる仮処分仮処分命令=債務名義とみなす52条2項
不動産の登記請求権保全(所有権)処分禁止の登記53条1項
不動産の登記請求権保全(所有権以外)処分禁止登記+保全仮登記53条2項
不動産以外の登記・登録請求権保全53条の規定を準用54条
建物収去土地明渡請求権保全処分禁止の登記55条1項
占有移転禁止仮処分(債務者不特定)占有者を特定できないと執行不可54条の2
仮処分解放金の供託仮処分の執行を取消し57条1項
  • 53条3項・55条2項:処分禁止の仮処分の執行には47条2項3項及び民事執行法48条2項・53条・54条を準用
  • 56条:法人代表者の職務執行停止・代行者選任の仮処分等は裁判所書記官が登記所に嘱託(登記事項でないときを除く)
  • 57条2項:仮処分解放金供託による執行取消しの決定には51条2項を準用
  • 52条1項:この節に定めのない事項は仮差押えの執行又は強制執行の例による
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仮処分の執行

仮処分の執行について、条文は何を定めているか。

第52条仮処分の執行仮処分の執行は強制執行等の例による2項判例 2件
  • この節に定めのない事項は仮差押え・強制執行の例による
  • 作為・不作為を命じる仮処分は命令自体が債務名義になる
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第53条不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行不動産の登記請求権は処分禁止登記で執行3項判例 2件
  • 所有権の登記請求権保全は処分禁止の登記のみで執行
  • 所有権以外の権利の保存・設定・変更は保全仮登記も行う
  • 47条2項〈不動産に対する仮差押えの執行〉3項と民執48条2項〈船舶に対する仮差押えの執行〉・53条・54条〈不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行〉を準用
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第54条不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行登記・登録が要件の権利にも53条〈不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行〉を準用1項判例なし
  • 不動産以外でも登記・登録が対抗要件等の権利は53条〈不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行〉準用
  • 仮登記・仮登録を除く登記又は登録請求権が対象
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第54_2条債務者を特定しないで発された占有移転禁止の仮処分命令の執行占有者を特定できないと執行できない1項判例なし
  • 債務者不特定の占有移転禁止仮処分(25条の2第1項〈債務者を特定しないで発する占有移転禁止の仮処分命令〉)が対象
  • 占有を解く際に占有者を特定できない場合は執行不可
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第55条建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の執行建物収去土地明渡請求権も処分禁止登記で執行2項判例 1件
  • 建物の処分禁止仮処分命令は処分禁止の登記で執行
  • 47条2項〈不動産に対する仮差押えの執行〉3項と民執48条2項〈船舶に対する仮差押えの執行〉・53条〈不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行〉・54条〈不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行〉を準用
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第56条法人の代表者の職務執行停止の仮処分等の登記の嘱託職務執行停止仮処分等は登記所に嘱託登記1項判例なし
  • 法人代表者等の職務執行停止・代行者選任の仮処分等は書記官が嘱託
  • 本店・主たる事務所(外国法人は各事務所)所在地の登記所へ
  • 登記すべき事項でないときは嘱託不要
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第57条仮処分解放金の供託による仮処分の執行の取消し仮処分解放金の供託で執行取消し2項判例なし
  • 25条1項〈仮処分解放金〉の金額相当を供託したと証明すれば執行取消し
  • 51条2項〈仮差押解放金の供託による仮差押えの執行の取消し〉の規定を取消決定に準用
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第52条民事保全法

仮処分決定により干拓地の潮受堤防の排水門を開放してはならない旨の義務を負った者が第三者の提起した訴訟の確定判決により上記排水門を開放すべき義務を負っているという事情がある場合における上記仮処分決定に基づく間接強制決定の許否

裁判要旨仮処分決定により干拓地の潮受堤防の排水門を開放してはならない旨の義務を負った者が第三者の提起した訴訟の確定判決により上記排水門を開放すべき義務を負っているという事情があっても,執行裁判所は上記仮処分決定に基づき間接強制決定をすることができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成27年1月22日 平成26(許)26
登載
集民 第249号67頁
参照法条
民事執行法172条1項,民事保全法52条
論点2第52条民事保全法

保全すべき権利が発令時から存在しなかったものと本案訴訟の判決で判断され,仮処分命令が事情の変更により取り消された場合において,当該仮処分命令の保全執行としてされた間接強制決定に基づき取り立てられた金銭につき,不当利得返還請求をすることができるか

裁判要旨仮処分命令における保全すべき権利が,本案訴訟の判決において,当該仮処分命令の発令時から存在しなかったものと判断され,このことが事情の変更に当たるとして当該仮処分命令を取り消す旨の決定が確定した場合には,当該仮処分命令を受けた債務者は,その保全執行としてされた間接強制決定に基づき取り立てられた金銭につき,債権者に対して不当利得返還請求をすることができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年4月24日 平成20(受)224
登載
民集 第63巻4号765頁
参照法条
民事執行法172条1項,民事保全法38条1項,民事保全法52条,民法703条
論点3第53条民事保全法

建物の区分所有等に関する法律59条1項〈登記の抹消の通知〉に規定する競売を請求する権利を被保全権利として民事保全法上の処分禁止の仮処分を申し立てることの可否

裁判要旨建物の区分所有等に関する法律59条1項〈登記の抹消の通知〉に規定する競売を請求する権利を被保全権利として,民事保全法53条〈不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行〉又は55条〈建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の執行〉に規定する方法により仮処分の執行を行う処分禁止の仮処分を申し立てることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成28年3月18日 平成27(許)15
登載
民集 第70巻3号937頁
参照法条
建物の区分所有等に関する法律59条1項,民事保全法53条,民事保全法55条
論点4第53条民事保全法

1筆の土地の一部分についての所有権移転登記請求権を有する債権者が当該登記請求権を被保全権利として当該土地の全部について処分禁止の仮処分命令の申立てをした場合における保全の必要性の有無

裁判要旨1筆の土地の一部分についての所有権移転登記請求権を有する債権者が当該登記請求権を被保全権利として当該土地の全部について処分禁止の仮処分命令の申立てをした場合に、当該債権者において当該一部分について分筆の登記の申請をすることができない又は著しく困難であるなどの特段の事情が認められるときは、当該仮処分命令は、当該土地の全部についてのものであることをもって直ちに保全の必要性を欠くものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和5年10月6日 令和5(許)9
登載
民集 第77巻7号1631頁
参照法条
民事保全法23条1項、民事保全法53条1項
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民事保全法 第52条(仮処分の執行) 詳細ページ
(仮処分の執行)
第五十二条仮処分の執行については、この節に定めるもののほか、仮差押えの執行又は強制執行の例による。
2物の給付その他の作為又は不作為を命ずる仮処分の執行については、仮処分命令を債務名義とみなす。
民事保全法 第53条(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行) 詳細ページ
(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)
第五十三条不動産に関する権利についての登記(仮登記を除く。)を請求する権利(以下「登記請求権」という。)を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。
2不動産に関する所有権以外の権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、前項の処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記(以下「保全仮登記」という。)をする方法により行う。
3第四十七条第二項及び第三項並びに民事執行法第四十八条第二項、第五十三条及び第五十四条の規定は、前二項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。
民事保全法 第54条(不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行) 詳細ページ
(不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)
第五十四条前条の規定は、不動産に関する権利以外の権利で、その処分の制限につき登記又は登録を対抗要件又は効力発生要件とするものについての登記(仮登記を除く。)又は登録(仮登録を除く。)を請求する権利を保全するための処分禁止の仮処分の執行について準用する。
民事保全法 第54_2条(債務者を特定しないで発された占有移転禁止の仮処分命令の執行) 詳細ページ
(債務者を特定しないで発された占有移転禁止の仮処分命令の執行)
第五十四条の二第二十五条の二第一項の規定による占有移転禁止の仮処分命令の執行は、係争物である不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができない場合は、することができない。
民事保全法 第55条(建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の執行) 詳細ページ
(建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の執行)
第五十五条建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を保全するため、その建物の処分禁止の仮処分命令が発せられたときは、その仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。
2第四十七条第二項及び第三項並びに民事執行法第四十八条第二項、第五十三条及び第五十四条の規定は、前項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。
民事保全法 第56条(法人の代表者の職務執行停止の仮処分等の登記の嘱託) 詳細ページ
(法人の代表者の職務執行停止の仮処分等の登記の嘱託)
第五十六条法人を代表する者その他法人の役員として登記された者について、その職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされた場合には、裁判所書記官は、法人の本店又は主たる事務所の所在地(外国法人にあっては、各事務所の所在地)を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない。ただし、これらの事項が登記すべきものでないときは、この限りでない。
民事保全法 第57条(仮処分解放金の供託による仮処分の執行の取消し) 詳細ページ
(仮処分解放金の供託による仮処分の執行の取消し)
第五十七条債務者が第二十五条第一項の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したことを証明したときは、保全執行裁判所は、仮処分の執行を取り消さなければならない。
2第五十一条第二項の規定は、前項の規定による決定について準用する。
出

一次情報

原文ママ

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