民事執行法 / テーマ別まとめ

債務者の財産状況の調査/財産開示手続

財産開示手続の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

財産開示手続は、金銭債権者や一般の先取特権者が、知れている財産への執行だけでは完全な弁済を受けられない場合に、執行裁判所の決定を経て債務者本人に自己の財産を陳述させる制度です。申立ての要件から実施決定、期日での陳述方法、記録の閲覧制限、得た情報の目的外利用禁止まで、民事執行法第196条から第203条が一連の手続を定めています。

財産開示手続
申立人必要書類配当等での結果知れている財産への執行
金銭債権者債務名義の正本完全な弁済を得られず執行しても弁済不十分と疎明
一般先取特権者先取特権を証する文書完全な弁済を得られず実行しても弁済不十分と疎明
  • 債務名義正本に基づく強制執行を開始できないときは、実施決定はできない
  • 申立て前3年以内に本人等が財産開示期日で陳述済みのときは原則不可(一部不開示・新財産取得・雇用関係終了の場合は可)
  • 実施決定は債務者に送達し、確定しなければ効力を生じない
  • 実施決定や陳述義務の一部免除の裁判に対しては執行抗告ができる
  • 財産開示期日における手続は公開しない
  • 得られた財産・債務に関する情報は、債権をその本旨に従って行使する目的以外に利用・提供してはならない
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財産開示手続

財産開示手続について、条文は何を定めているか。

第196条管轄管轄は債務者の住所地の地裁1項判例なし
  • 財産開示手続は債務者の普通裁判籍の所在地の地方裁判所が執行裁判所として扱う
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第197条実施決定誰が申立てでき、いつ決定するか6項・7号判例 1件
  • 配当等で完全弁済を得られない等の場合に、債権者や先取特権者が申立てできる
  • 申立て前3年以内に開示済みなら原則不可(一部不開示等の例外あり)
  • 決定は債務者に送達し、確定して初めて効力が生じる(執行抗告可)
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第198条期日指定及び期日の呼出し決定確定後に期日を指定し呼出す2項・2号判例なし
  • 決定が確定したら、執行裁判所が財産開示期日を指定する
  • 申立人と債務者(法定代理人・代表者含む)を呼び出す
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第199条財産開示期日開示義務者は期日に出頭し財産を陳述7項判例なし
  • 開示義務者は期日に出頭し、一部動産を除く財産について陳述する義務がある
  • 裁判所は質問でき、申立人も許可を得て質問できる
  • 期日は非公開で、申立人が不出頭でも手続は実施できる
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第199_2条音声の送受信による通話の方法による財産開示期日音声通話での期日実施も可能2項判例なし
  • 相当と認めるときは音声の送受信による通話方法で期日を行える
  • その方法で関与した申立人は出頭したものとみなされる
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第199_3条映像等の送受信による通話の方法による開示義務者の陳述映像通話での陳述が認められる場合1項・3号判例なし
  • 出頭困難、精神的圧迫のおそれ、申立人に異議なしのいずれかに該当し相当なとき
  • 映像と音声の送受信により開示義務者に陳述させることができる
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第200条陳述義務の一部の免除同意等があれば陳述の一部を免除2項判例なし
  • 申立人の同意、または完全弁済に支障がないことが明らかな場合に許可を得れば残りの陳述は不要
  • この許可の裁判に対しては執行抗告ができる
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第201条財産開示事件の記録の閲覧等の制限期日部分の記録閲覧は関係者に限定1項・4号判例なし
  • 申立人、債務名義を持つ債権者、先取特権を証する文書の提出者、債務者・開示義務者のみ請求できる
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第202条財産開示事件に関する情報の目的外利用の制限得た情報は債権回収目的以外に使えない2項判例なし
  • 申立人は開示された財産・債務情報を本来の債権回収目的以外に利用・提供してはならない
  • 記録の期日部分の情報を得た債権者等も同様に目的外利用・提供は禁止
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第203条強制執行及び担保権の実行の規定の準用強制執行・担保権実行の規定を準用1項判例なし
  • 債務名義に基づく財産開示手続には第39条〈強制執行の停止〉・第40条〈執行処分の取消し〉を準用
  • 財産開示手続全般に第42条〈執行費用の負担〉(第2項を除く)を準用
  • 一般の先取特権に基づく手続には第182条〈開始決定に対する執行抗告等〉・第183条〈不動産担保権の実行の手続の停止〉を準用
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第197条民事執行法

民事執行法197条1項2号〈実施決定 知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。〉に該当する事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告において請求債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることの許否

裁判要旨民事執行法197条1項2号〈実施決定 知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。〉に該当する事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告においては、債務名義の正本に表示された金銭債権である請求債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和4年10月6日 令和3(許)16
登載
民集 第76巻6号1320頁
参照法条
民事執行法197条1項2号、民事執行法197条5項

関連する会計・監査の基準

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原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

民事執行法 第196条(管轄) 詳細ページ
(管轄)
第百九十六条この節の規定による債務者の財産の開示に関する手続(以下「財産開示手続」という。)については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
民事執行法 第197条(実施決定) 詳細ページ
(実施決定)
第百九十七条執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。
二知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。
2執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者の申立てにより、当該債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。
一強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該先取特権の被担保債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。
二知れている財産に対する担保権の実行を実施しても、申立人が前号の被担保債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。
3前二項の規定にかかわらず、債務者(債務者に法定代理人がある場合にあつては当該法定代理人、債務者が法人である場合にあつてはその代表者。第一号において同じ。)が前二項の申立ての日前三年以内に財産開示期日(財産を開示すべき期日をいう。以下同じ。)においてその財産について陳述をしたものであるときは、財産開示手続を実施する旨の決定をすることができない。ただし、次の各号に掲げる事由のいずれかがある場合は、この限りでない。
一債務者が当該財産開示期日において一部の財産を開示しなかつたとき。
二債務者が当該財産開示期日の後に新たに財産を取得したとき。
三当該財産開示期日の後に債務者と使用者との雇用関係が終了したとき。
4第一項又は第二項の決定がされたときは、当該決定(同項の決定にあつては、当該決定及び同項の文書の写し)を債務者に送達しなければならない。
5第一項又は第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
6第一項又は第二項の決定は、確定しなければその効力を生じない。
民事執行法 第198条(期日指定及び期日の呼出し) 詳細ページ
(期日指定及び期日の呼出し)
第百九十八条執行裁判所は、前条第一項又は第二項の決定が確定したときは、財産開示期日を指定しなければならない。
2財産開示期日には、次に掲げる者を呼び出さなければならない。
一申立人
二債務者(債務者に法定代理人がある場合にあつては当該法定代理人、債務者が法人である場合にあつてはその代表者)
民事執行法 第199条(財産開示期日) 詳細ページ
(財産開示期日)
第百九十九条開示義務者(前条第二項第二号に掲げる者をいう。以下同じ。)は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産(第百三十一条第一号又は第二号に掲げる動産を除く。)について陳述しなければならない。
2前項の陳述においては、陳述の対象となる財産について、第二章第二節の規定による強制執行又は前章の規定による担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項その他申立人に開示する必要があるものとして最高裁判所規則で定める事項を明示しなければならない。
3執行裁判所は、財産開示期日において、開示義務者に対し質問を発することができる。
4申立人は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産の状況を明らかにするため、執行裁判所の許可を得て開示義務者に対し質問を発することができる。
5執行裁判所は、申立人が出頭しないときであつても、財産開示期日における手続を実施することができる。
6財産開示期日における手続は、公開しない。
7民事訴訟法第百九十五条及び第二百六条の規定は前各項の規定による手続について、同法第二百一条第一項及び第二項の規定は開示義務者について準用する。
民事執行法 第199_2条(音声の送受信による通話の方法による財産開示期日) 詳細ページ
(音声の送受信による通話の方法による財産開示期日)
第百九十九条の二執行裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、執行裁判所並びに申立人及び開示義務者が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によつて、財産開示期日における手続を行うことができる。
2前項の財産開示期日に出頭しないでその手続に関与した申立人は、その財産開示期日に出頭したものとみなす。
民事執行法 第199_3条(映像等の送受信による通話の方法による開示義務者の陳述) 詳細ページ
(映像等の送受信による通話の方法による開示義務者の陳述)
第百九十九条の三執行裁判所は、次に掲げる場合であつて、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によつて、開示義務者に第百九十九条第一項の規定による陳述をさせることができる。
一開示義務者の住所、年齢又は心身の状態その他の事情により、開示義務者が執行裁判所に出頭することが困難であると認める場合
二事案の性質、開示義務者の年齢又は心身の状態、開示義務者と申立人本人又はその法定代理人との関係その他の事情により、開示義務者が執行裁判所及び申立人が在席する場所において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合
三申立人に異議がない場合
民事執行法 第200条(陳述義務の一部の免除) 詳細ページ
(陳述義務の一部の免除)
第二百条財産開示期日において債務者の財産の一部を開示した開示義務者は、申立人の同意がある場合又は当該開示によつて第百九十七条第一項の金銭債権若しくは同条第二項各号の被担保債権の完全な弁済に支障がなくなつたことが明らかである場合において、執行裁判所の許可を受けたときは、第百九十九条第一項の規定にかかわらず、その余の財産について陳述することを要しない。
2前項の許可の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
民事執行法 第201条(財産開示事件の記録の閲覧等の制限) 詳細ページ
(財産開示事件の記録の閲覧等の制限)
第二百一条財産開示事件の記録中財産開示期日に関する部分についての第十七条の規定による請求は、次に掲げる者に限り、することができる。
一申立人
二債務者に対する金銭債権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者
三債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者
四債務者又は開示義務者
民事執行法 第202条(財産開示事件に関する情報の目的外利用の制限) 詳細ページ
(財産開示事件に関する情報の目的外利用の制限)
第二百二条申立人は、財産開示手続において得られた債務者の財産又は債務に関する情報を、当該債務者に対する債権をその本旨に従つて行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。
2前条第二号又は第三号に掲げる者であつて、財産開示事件の記録中の財産開示期日に関する部分の情報を得たものは、当該情報を当該財産開示事件の債務者に対する債権をその本旨に従つて行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。
民事執行法 第203条(強制執行及び担保権の実行の規定の準用) 詳細ページ
(強制執行及び担保権の実行の規定の準用)
第二百三条第三十九条及び第四十条の規定は執行力のある債務名義の正本に基づく財産開示手続について、第四十二条(第二項を除く。)の規定は財産開示手続について、第百八十二条及び第百八十三条の規定は一般の先取特権に基づく財産開示手続について準用する。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。