会社法 / テーマ別まとめ

社債管理者と社債管理補助者

社債権者のために誰が動くか。設置が義務づけられる場合と、省ける場合。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

社債を発行する会社は、原則として社債権者のために弁済の受領や債権保全などの社債管理を行う社債管理者を設置しなければならない。ただし各社債の金額が一億円以上である場合など一定の場合は設置が不要となる。社債管理者は社債権者に対して公平誠実義務・善管注意義務を負い、権限の行使や辞任には社債権者集会の同意など一定の手続が必要となる。

社債管理者と社債管理補助者の対比
項目社債管理者社債管理補助者
設置義務原則必須対象条文に規定なし
資格対象条文に規定なし対象条文に規定なし
権限の範囲弁済受領・保全に必要な一切の行為対象条文に規定なし
善管注意義務善管注意義務を負う対象条文に規定なし
  • 各社債の金額が一億円以上の場合など、法務省令で定める場合は社債管理者の設置が不要(702条ただし書)
  • 社債管理補助者に関する規定は、今回まとめた対象条文には含まれていない
  • 社債管理者の資格要件も、今回まとめた対象条文には含まれていない
  • 支払猶予・債務免除・和解や訴訟等について決議が不要となるのは、676条8号の定めがある場合(706条1項ただし書)
  • 社債権者と社債管理者の利益が相反する場合は、裁判所が特別代理人を選任する(707条)
  • 社債管理者の辞任は原則発行会社と社債権者集会の同意が必要だが、委託契約に定めた事由による辞任もできる(711条)
1

設置が要るか

義務と例外

第702条社債管理者の設置社債発行時は社債管理者の設置が原則必須1項判例なし
  • 社債を発行する会社は社債管理者を定め、弁済の受領や債権保全などの管理を委託しなければならない
  • 各社債の金額が一億円以上である場合などは設置しなくてよい
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
2

何ができるか

弁済の受領・保全・裁判上の行為

第705条社債管理者の権限等社債管理者は弁済受領や保全に必要な権限を持つ4項判例 1件
  • 弁済を受け、又は債権の実現を保全するため裁判上裁判外の一切の行為ができる
  • 社債管理者が弁済を受けた場合、社債権者は償還額・利息の支払を請求でき、時効は10年
  • 管理に必要なら裁判所の許可を得て発行会社の業務・財産状況を調査できる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第706条支払猶予や訴訟等は社債権者集会の決議が必要4項・2号判例なし
  • 支払猶予・債務免除・和解は原則、社債権者集会の決議が必要
  • 訴訟や破産・再生・更生・特別清算に関する行為も原則、決議が必要
  • 決議によらず行った場合は遅滞なく公告し、知れている社債権者に個別通知する
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第707条特別代理人の選任利益相反時は裁判所が特別代理人を選任1項判例なし
  • 社債権者と社債管理者の利益が相反し、社債権者のための行為が必要な場合が対象
  • 社債権者集会の申立てにより裁判所が特別代理人を選任する
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
3

責任と辞任

善管注意義務・損害賠償・辞任

第704条社債管理者の義務社債管理者は公平誠実・善管注意で管理する2項判例なし
  • 社債権者のために公平かつ誠実に社債の管理を行わなければならない
  • 社債権者に対し善良な管理者の注意をもって管理を行わなければならない
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第710条社債管理者の責任法令・決議違反や利益相反行為には賠償責任2項・4号判例なし
  • 法律や社債権者集会の決議に違反する行為で損害を与えたときは連帯して賠償責任を負う
  • 支払停止の前後3カ月以内に自己の債権へ担保提供を受ける等をすると賠償責任
  • 誠実な管理を怠らなかった等を証明すれば免責される
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
第711条社債管理者の辞任辞任には発行会社と社債権者集会の同意が必要3項判例なし
  • 原則、発行会社と社債権者集会の同意を得て辞任でき、他にいなければ後任を定めておく
  • 委託契約に定めた辞任事由があれば辞任できる(後任の定めがない契約を除く)
  • やむを得ない事由があれば裁判所の許可を得て辞任できる
条文原文を見るこの条文の詳細ページ
論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第705条会社法

外国国家が発行した円建て債券に係る償還等請求訴訟につき,当該債券の管理会社が任意的訴訟担当の要件を満たすものとして原告適格を有するとされた事例

裁判要旨外国国家Yが発行したいわゆるソブリン債である円建て債券に係る償還等請求訴訟について,当該債券の管理会社であるXらは,次の⑴~⑷など判示の事情の下では,当該債券の債権者Aらのための任意的訴訟担当の要件を満たし,原告適格を有する。
⑴ XらとYとの間において,Xらが債券の管理会社として,Aらのために当該債券に基づく弁済を受け,又は債権の実現を保全するために必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する旨の条項を含む管理委託契約が締結された。
⑵ 上記⑴の授権に係る条項は,Xら,Y及びAらの間の契約関係を規律する「債券の要項」の内容を構成し,Aらに交付される目論見書等にも記載されていた。
⑶ 当該債券は多数の一般公衆に対して発行される点で社債に類似するところ,上記⑴の授権に係る条項を設けるなどしてXらに訴訟追行権を認める仕組みは,社債に関する商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)の規定に倣ったものである。
⑷ Xらは,いずれも銀行であって銀行法に基づく規制や監督に服するとともに,上記⑴の管理委託契約上,Aらに対して公平誠実義務や善管注意義務を負うものとされている。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成28年6月2日 平成26(受)949
登載
民集 第70巻5号1157頁
参照法条
民訴法第1編第3章 当事者,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)309条1項,会社法705条1項
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

会社法 第702条(社債管理者の設置) 詳細ページ
(社債管理者の設置)
第七百二条会社は、社債を発行する場合には、社債管理者を定め、社債権者のために、弁済の受領、債権の保全その他の社債の管理を行うことを委託しなければならない。ただし、各社債の金額が一億円以上である場合その他社債権者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合は、この限りでない。
会社法 第705条(社債管理者の権限等) 詳細ページ
(社債管理者の権限等)
第七百五条社債管理者は、社債権者のために社債に係る債権の弁済を受け、又は社債に係る債権の実現を保全するために必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
2社債管理者が前項の弁済を受けた場合には、社債権者は、その社債管理者に対し、社債の償還額及び利息の支払を請求することができる。この場合において、社債券を発行する旨の定めがあるときは、社債権者は、社債券と引換えに当該償還額の支払を、利札と引換えに当該利息の支払を請求しなければならない。
3前項前段の規定による請求権は、これを行使することができる時から十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
4社債管理者は、その管理の委託を受けた社債につき第一項の行為をするために必要があるときは、裁判所の許可を得て、社債発行会社の業務及び財産の状況を調査することができる。
会社法 第706条 詳細ページ
第七百六条社債管理者は、社債権者集会の決議によらなければ、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第二号に掲げる行為については、第六百七十六条第八号に掲げる事項についての定めがあるときは、この限りでない。
一当該社債の全部についてするその支払の猶予、その債務若しくはその債務の不履行によって生じた責任の免除又は和解(次号に掲げる行為を除く。)
二当該社債の全部についてする訴訟行為又は破産手続、再生手続、更生手続若しくは特別清算に関する手続に属する行為(前条第一項の行為を除く。)
2社債管理者は、前項ただし書の規定により社債権者集会の決議によらずに同項第二号に掲げる行為をしたときは、遅滞なく、その旨を公告し、かつ、知れている社債権者には、各別にこれを通知しなければならない。
3前項の規定による公告は、社債発行会社における公告の方法によりしなければならない。ただし、その方法が電子公告であるときは、その公告は、官報に掲載する方法でしなければならない。
4社債管理者は、その管理の委託を受けた社債につき第一項各号に掲げる行為をするために必要があるときは、裁判所の許可を得て、社債発行会社の業務及び財産の状況を調査することができる。
会社法 第707条(特別代理人の選任) 詳細ページ
(特別代理人の選任)
第七百七条社債権者と社債管理者との利益が相反する場合において、社債権者のために裁判上又は裁判外の行為をする必要があるときは、裁判所は、社債権者集会の申立てにより、特別代理人を選任しなければならない。
会社法 第704条(社債管理者の義務) 詳細ページ
(社債管理者の義務)
第七百四条社債管理者は、社債権者のために、公平かつ誠実に社債の管理を行わなければならない。
2社債管理者は、社債権者に対し、善良な管理者の注意をもって社債の管理を行わなければならない。
会社法 第710条(社債管理者の責任) 詳細ページ
(社債管理者の責任)
第七百十条社債管理者は、この法律又は社債権者集会の決議に違反する行為をしたときは、社債権者に対し、連帯して、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2社債管理者は、社債発行会社が社債の償還若しくは利息の支払を怠り、若しくは社債発行会社について支払の停止があった後又はその前三箇月以内に、次に掲げる行為をしたときは、社債権者に対し、損害を賠償する責任を負う。ただし、当該社債管理者が誠実にすべき社債の管理を怠らなかったこと又は当該損害が当該行為によって生じたものでないことを証明したときは、この限りでない。
一当該社債管理者の債権に係る債務について社債発行会社から担保の供与又は債務の消滅に関する行為を受けること。
二当該社債管理者と法務省令で定める特別の関係がある者に対して当該社債管理者の債権を譲り渡すこと(当該特別の関係がある者が当該債権に係る債務について社債発行会社から担保の供与又は債務の消滅に関する行為を受けた場合に限る。)。
三当該社債管理者が社債発行会社に対する債権を有する場合において、契約によって負担する債務を専ら当該債権をもってする相殺に供する目的で社債発行会社の財産の処分を内容とする契約を社債発行会社との間で締結し、又は社債発行会社に対して債務を負担する者の債務を引き受けることを内容とする契約を締結し、かつ、これにより社債発行会社に対し負担した債務と当該債権とを相殺すること。
四当該社債管理者が社債発行会社に対して債務を負担する場合において、社債発行会社に対する債権を譲り受け、かつ、当該債務と当該債権とを相殺すること。
会社法 第711条(社債管理者の辞任) 詳細ページ
(社債管理者の辞任)
第七百十一条社債管理者は、社債発行会社及び社債権者集会の同意を得て辞任することができる。この場合において、他に社債管理者がないときは、当該社債管理者は、あらかじめ、事務を承継する社債管理者を定めなければならない。
2前項の規定にかかわらず、社債管理者は、第七百二条の規定による委託に係る契約に定めた事由があるときは、辞任することができる。ただし、当該契約に事務を承継する社債管理者に関する定めがないときは、この限りでない。
3第一項の規定にかかわらず、社債管理者は、やむを得ない事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。
出

一次情報

原文ママ

条文は e-Gov法令検索、判例は裁判所ウェブサイトから取得しています。