この条文が出てくる場面
原文整理テーマ別まとめ概要
原文解釈- 取締役は、競業取引・直接取引・間接取引を行おうとするときは、株主総会において当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
- 対象となる行為は、取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をする場合(1号)、取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をする場合(2号)、株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間で株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をする場合(3号)の三類型である。
- 1号・2号の取引は、取締役が自己のために行う場合のみならず第三者のために行う場合も規制の対象となる。
- 2項では、1項の承認を受けた2号又は3号の取引については、民法第108条の規定を適用しない旨が定められている。
- この民法第108条の適用除外は2号及び3号の取引に限られ、1号の取引には及ばない。
取締役の競業・利益相反取引の類型と承認要件
原文解釈横スクロールできます| 区分 | 行為類型 | 開示・承認の要件 | 民法第108条の適用 |
|---|---|---|---|
| 第1項第1号 | 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき | 株主総会において当該取引につき重要な事実を開示し、承認を受けなければならない | 2項の適用除外の対象外(2項は2号又は3号の取引に限定) |
| 第1項第2号 | 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき | 株主総会において当該取引につき重要な事実を開示し、承認を受けなければならない | 2項により、1項の承認を受けた場合は民法第108条の規定を適用しない |
| 第1項第3号 | 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき | 株主総会において当該取引につき重要な事実を開示し、承認を受けなければならない | 2項により、1項の承認を受けた場合は民法第108条の規定を適用しない |
主要な判例
原文ママ裁判所が付した参照法条による機械照合で選定本条を直接の参照法条とする登載判例がないため、裁判所が付した参照法条に基づき旧法下の裁判例を掲載しています。現行法との対応関係についての評価は加えていません。
旧商法下の裁判例約束手形金請求
- 位置づけ
- 最高裁大法廷 / 民集登載
- 事件番号
- 昭和42(オ)1464
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和46年10月13日 棄却
- 登載
- 民集 第25巻7号900頁
- 参照法条
- 商法265条
- 判示事項
- 一、株式会社がその取締役にあてて約束手形を振り出す行為と商法二六五条 二、商法二六五条に違反して株式会社が振り出した約束手形を取得した第三者に対する会社の手形上の責任 三、約束手形の振出につき手形上の記載にかかわらず商法二六五条の適用がないとされた事例
裁判要旨一、株式会社がその取締役にあてて約束手形を振り出す行為は、原則として、商法二六五条にいう取弓にあたる。
二、株式会社は、商法二六五条に違反して振り出した約束手形を裏書により取得した第三者に対しては、右手形が会社からその取締役にあてて振り出され、かつ、その振出につき取締役会の承認がなかつたことについて、右第三者が悪意であつたことを主張・立証しないかぎり、振出人としての責任を免れない。
三、株式会社振出の約束手形において、受取人の記載が右会社の取締役になつている場合でも、現実には、右会社が受取人欄白地の約束手形を振り出して直接取締役以外の者に交付し、その者が右取締役から受取人欄の補充と裏書を受けたものであるときは、商法二五六条の適用はない。
二、株式会社は、商法二六五条に違反して振り出した約束手形を裏書により取得した第三者に対しては、右手形が会社からその取締役にあてて振り出され、かつ、その振出につき取締役会の承認がなかつたことについて、右第三者が悪意であつたことを主張・立証しないかぎり、振出人としての責任を免れない。
三、株式会社振出の約束手形において、受取人の記載が右会社の取締役になつている場合でも、現実には、右会社が受取人欄白地の約束手形を振り出して直接取締役以外の者に交付し、その者が右取締役から受取人欄の補充と裏書を受けたものであるときは、商法二五六条の適用はない。
旧商法下の裁判例売掛代金請求
- 位置づけ
- 最高裁大法廷 / 民集登載
- 事件番号
- 昭和42(オ)1327
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和43年12月25日 破棄自判
- 登載
- 民集 第22巻13号3511頁
- 参照法条
- 商法265条
- 判示事項
- 一、商法第二六五条にいう取引の意義 二、商法第二六五条に違反する取引の効力
裁判要旨一、商法第二六五条にいう取引には、取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反行為のみならず、取締役個人の債務について、その取締役が会社を代表して、債権者に対し債務引受をする等取締役個人の利益となり会社に不利益を与える行為も包含されるものと解すべきである。
二、会社は、商法第二六五条に違反する取引のうち、取締役と会社との間に直接成立すべき取引については、右取締役に対して、その無効を主張することができるが、取締役が会社を代表して自己のためにした会社以外の第三者との間の取引については、右第三者が取締役会の承認を受けていなかつたことについて悪意であるときにかぎり、その無効を主張することができる。
二、会社は、商法第二六五条に違反する取引のうち、取締役と会社との間に直接成立すべき取引については、右取締役に対して、その無効を主張することができるが、取締役が会社を代表して自己のためにした会社以外の第三者との間の取引については、右第三者が取締役会の承認を受けていなかつたことについて悪意であるときにかぎり、その無効を主張することができる。
実務注記
原文解釈- 開示事項は「重要な事実」に限定条文は「当該取引につき重要な事実を開示し」と定めており、開示すべき事項は当該取引に関する重要な事実である。
- 承認機関は株主総会条文上、1項各号の取引について承認を行う機関は株主総会と定められている。
- 「自己又は第三者のために」を見落とさない1号・2号は、取締役が自己のために行う場合だけでなく第三者のために行う場合も規制対象に含まれる旨が明記されている。
- 民法108条の適用除外は2号・3号のみ2項は「前項の承認を受けた同項第二号又は第三号の取引については」と定めており、1号の取引には民法第108条の適用除外は及ばない。
- 3号は保証に限られない3号は「株式会社が取締役の債務を保証すること」を例示しつつ「その他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引」を広く対象としている。
条文原文
原文ママ会社法 第356条(競業及び利益相反取引の制限)
(競業及び利益相反取引の制限)
第三百五十六条取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
2民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号又は第三号の取引については、適用しない。
一次情報
- 条文e-Gov法令検索 会社法 第356条
- 判例裁判所ウェブサイト 裁判例検索
- 注記法令は改正されます。実務判断の際は上記リンクで最新の条文を再確認してください。