会社法 / テーマ別まとめ

競業取引と利益相反取引

取締役が会社と競合する取引や、会社と取引するとき。承認と報告の義務。

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取締役が自分や第三者のために会社と競合する取引をしたり、会社と直接・間接に取引したりする場合には、事前に株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認を受ける必要があります。取締役会設置会社では、取引後に取締役会への報告も必要です。承認を怠って会社に損害が生じた場合には任務懈怠や損害額についての推定規定が働き、取締役が自己のためにした直接取引については無過失でも責任を免れません。

競業取引・直接取引・間接取引の対比
取引類型承認機関事後報告任務懈怠等の推定無過失免除
競業取引株主総会(設置会社は取締役会)要(設置会社のみ)推定なし(損害額のみ推定)対象外(428条は直接取引のみ)
直接取引株主総会(設置会社は取締役会)要(設置会社のみ)任務懈怠を推定自己のため取引は免除不可
間接取引株主総会(設置会社は取締役会)要(設置会社のみ)任務懈怠を推定対象外(428条は直接取引のみ)
  • 承認を受けた直接取引・間接取引には民法108条(自己契約・双方代理)の規定は適用されない
  • 428条の無過失免除不可ルールは、直接取引のうち取締役が自己のためにした取引に限られる
  • 監査等委員である取締役を除く取締役が当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、423条3項の任務懈怠推定は適用されない
  • 423条3項の任務懈怠推定は、取引を決定した取締役・執行役や取締役会の承認決議に賛成した取締役にも及ぶ
  • 指名委員会等設置会社では、承認決議に賛成した取締役への推定は、会社と取締役間の取引または利益相反取引の場合に限られる
  • 365条2項の事後報告義務は取締役会設置会社にのみ課される
表

承認が必要な取引の全一覧

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号対象となる株主総会(条文原文)関連条文
株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認が必要な取引会社法 第356条第1項取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。該当 3 号
一取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。―
二取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。―
三株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。―
民法の自己契約・双方代理規定の適用除外会社法 第356条第2項民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号又は第三号の取引については、適用しない。
1

承認が要る取引

競業・直接取引・間接取引

第356条競業及び利益相反取引の制限競業・利益相反取引は事前承認が必要2項・3号旧商法 20件
  • 競業取引・自己や第三者のための会社との取引は株主総会の承認が必要
  • 会社が取締役の債務保証をするなど利益相反する取引も承認が必要
  • 承認を受けた直接取引・間接取引には民法108条の自己契約規制は不適用
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2

取締役会設置会社では

承認機関と事後報告

第365条競業及び取締役会設置会社との取引等の制限設置会社では承認機関が取締役会になる2項旧商法 20件
  • 取締役会設置会社では株主総会でなく取締役会の承認が必要
  • 承認を受けた取締役は取引後遅滞なく取締役会に重要事実を報告
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3

違反したときの責任

任務懈怠の推定と特則

第423条役員等の株式会社に対する損害賠償責任損害賠償責任と任務懈怠の推定ルール4項・3号判例 8件
  • 役員等は任務を怠ると会社に生じた損害を賠償する責任を負う
  • 競業取引で取締役や第三者が得た利益の額は会社の損害額と推定される
  • 直接・間接取引で会社に損害が生じれば任務懈怠を推定(監査等委員会の承認があれば推定なし)
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第428条取締役が自己のためにした取引に関する特則自己のための直接取引は無過失でも免除不可2項判例なし
  • 取締役が自己のために会社と直接取引した場合、無過失でも責任を免れない
  • この場合、責任の一部免除など前三条〈法人格〉の規定は適用されない
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第356条旧商法下の裁判例

取締役と会社との取引が株主全員の合意によつてされた場合と取締役会の承認

裁判要旨取締役と会社との取引が株主全員の合意によつてされた場合には、右取引につき取締役会の承認を要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年9月26日 昭和47(オ)1225
登載
民集 第28巻6号1306頁
参照法条
商法265条
論点2第356条旧商法下の裁判例

会社から貸金の返還を求められた取締役と商法二六五条違反の主張

裁判要旨会社が取締役に貸し付けた金員の返還を求めた場合に、その取締役は、商法二六五条違反を理由として右貸付けの無効を主張することができない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和48年12月11日 昭和48(オ)531
登載
民集 第27巻11号1529頁
参照法条
商法265条
論点3第356条旧商法下の裁判例

一、株式会社がその取締役が代表取締役となつている他の株式会社のために為替手形に引受をする行為と商法二六五条
二、商法二六五条に違反して株式会社が引受をした為替手形を取得した第三者に対する会社の手形上の責任

裁判要旨一、株式会社が、その取締役が代表取締役となつている他の株式会社のために為替手形に引受をする行為は、原則として、商法二六五条にいう取引にあたる。
二、甲株式会社が、その取締役が代表取締役となつている乙株式会社のために、商法二六五条に違反して、為替手形に引受をした場合において、甲会社は、右手形を裏書により取得した第三者に対しては、右手形が甲会社において前述のように乙会社のために引き受けたものであり、かつ、その引受につき取締役会の承認がなかつたことについて、右第三者が悪意であつたことを主張・立証しないかぎり、引受人としての責任を免かれない。
(一につき意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和47年2月22日 昭和42(オ)1258
登載
集民 第105号155頁
参照法条
商法265条
論点4第356条旧商法下の裁判例

会社が自己の取締役が代表取締役を兼ねている他の会社に宛てて約束手形を振り出す行為と商法二六五条

裁判要旨会社が自己の取締役が代表取締役を兼ねている他の会社に宛てて約束手形を振り出す行為は、原則として、商法二六五条にいわゆる取引にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和46年12月23日 昭和41(オ)556
登載
集民 第104号783頁
参照法条
商法265条
論点5第356条旧商法下の裁判例

一、株式会社がその取締役にあてて約束手形を振り出す行為と商法二六五条
二、商法二六五条に違反して株式会社が振り出した約束手形を取得した第三者に対する会社の手形上の責任
三、約束手形の振出につき手形上の記載にかかわらず商法二六五条の適用がないとされた事例

裁判要旨一、株式会社がその取締役にあてて約束手形を振り出す行為は、原則として、商法二六五条にいう取弓にあたる。
二、株式会社は、商法二六五条に違反して振り出した約束手形を裏書により取得した第三者に対しては、右手形が会社からその取締役にあてて振り出され、かつ、その振出につき取締役会の承認がなかつたことについて、右第三者が悪意であつたことを主張・立証しないかぎり、振出人としての責任を免れない。
三、株式会社振出の約束手形において、受取人の記載が右会社の取締役になつている場合でも、現実には、右会社が受取人欄白地の約束手形を振り出して直接取締役以外の者に交付し、その者が右取締役から受取人欄の補充と裏書を受けたものであるときは、商法二五六条の適用はない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和46年10月13日 昭和42(オ)1464
登載
民集 第25巻7号900頁
参照法条
商法265条
論点6第356条旧商法下の裁判例

商法二六五条所定の取引につき取締役会の承認を要しないとされた事例

裁判要旨会社と取締役間に商法二六五条所定の取引がなされる場合でも、右取締役が会社の全株式を所有し、会社の営業が実質上右取締役の個人経営のものにすぎないときは、右取引によつて両者の間に実質的に利害相反する関係を生ずるものでなく、右取引については、同条所定の取締役会の承認を必要としない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年8月20日 昭和43(オ)335
登載
民集 第24巻9号1305頁
参照法条
商法265条
論点7第356条旧商法下の裁判例

甲乙両会社の代表取締役が甲会社の債務につき乙会社を代表してする保証と商法二六五条

裁判要旨甲乙両会社の代表取締役を兼ねている者が、甲会社の債務につき乙会社を代表してする保証は、甲会社の利益にして、乙会社に不利益を及ぼす行為であつて、商法二六五条にいう取締役が第三者のためにする取引にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年4月23日 昭和41(オ)223
登載
民集 第24巻4号364頁
参照法条
商法265条
論点8第356条旧商法下の裁判例

商法二六五条にいう取引にあたるとされた事例

裁判要旨取締役が会社を代表して債権者に対し連帯保証契約を締結する行為は、商法二六五条にいう取引にあたる。
(意見がある。)
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年3月12日 昭和44(オ)610
登載
集民 第98号365頁
参照法条
商法265条
論点9第356条旧商法下の裁判例

株式会社の取締役が使用人として給料の支払を受ける場合と取締役会の承認

裁判要旨株式会社の取締役が、会社の使用人たる地位を兼ね、会社から使用人としての給料の支払を受ける場合には、右給料の支払につき取締役会の承認を受けなければならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和43年9月3日 昭和42(オ)461
登載
集民 第92号163頁
参照法条
商法265条
論点10第356条旧商法下の裁判例

一、商法第二六五条にいう取引の意義
二、商法第二六五条に違反する取引の効力

裁判要旨一、商法第二六五条にいう取引には、取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反行為のみならず、取締役個人の債務について、その取締役が会社を代表して、債権者に対し債務引受をする等取締役個人の利益となり会社に不利益を与える行為も包含されるものと解すべきである。
二、会社は、商法第二六五条に違反する取引のうち、取締役と会社との間に直接成立すべき取引については、右取締役に対して、その無効を主張することができるが、取締役が会社を代表して自己のためにした会社以外の第三者との間の取引については、右第三者が取締役会の承認を受けていなかつたことについて悪意であるときにかぎり、その無効を主張することができる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和43年12月25日 昭和42(オ)1327
登載
民集 第22巻13号3511頁
参照法条
商法265条
論点11第356条旧商法下の裁判例

一 理由不備の違法があるとされた事例
二 株式会社の一人の清算人がした自己あてにした取引の効力

裁判要旨かりに株式会社の清算手続が清算人ひとりですることができるとしても、その清算人は、特段の事情のないかぎり清算会社と取引することができず、これに違反する取引は無効である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年12月15日 昭和42(オ)460
登載
集民 第89号427頁
参照法条
民訴法395条1項6号,商法430条2項,商法265条
論点12第356条旧商法下の裁判例

一 中小企業等協同組合法に基づく協同組合と株式会社間の取引においてその組合の代表理事が右会社の代表取締役を兼ねているときと同法第三八条の準用。
二 中小企業等協同組合法に基づく協同組合の理事会の招集につき一部の理事に対する通知もれと理事会の決議の効力。

裁判要旨一 中小企業等協同組合法に基づく協同組合と株式会社間に取引がされた場合において、その組合の代表理事が右会社の代表取締役を兼ねているときには、前記取引について同法第三八条の規定が準用されると解すべきである。
二 中小企業等協同組合法に基づく協同組合の理事会の招集につき一部の理事に対し通知もれがの違法があつたときは、原則として、右理事会の決議は無効であるが、右理事が出席しても理事会の決議の結果になんらの影響がないときは、右理事会の決議の効力に消長を来さないと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年8月28日 昭和36(オ)1147
登載
民集 第18巻7号1366頁
参照法条
中小企業等協同組合法38条,中小企業等協同組合法36条の3,中小企業等協同組合法42条,商法265条
論点13第356条旧商法下の裁判例

代位弁済と商法第二六五条。

裁判要旨取締役が第三者の会社に対する債務を代位弁済した場においては、取締役の右行為は、債務の履行に関する行為というべきであつて、なんら会社に不利益を与えるものではないから、商法第二六五条の取引に該当しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年2月6日 昭和35(オ)672
登載
集民 第72号53頁
参照法条
商法265条
論点14第356条旧商法下の裁判例

手形裏書が商法第二六五条の取引にあたらないとされた事例。

裁判要旨会社が約束手形を取締役に裏書譲渡するに際し、取締役から手形金額と同額の金員の交付を受けた場合においては、右手形裏書は、商法第二六五条の取引に該当しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月28日 昭和34(オ)1228
登載
民集 第18巻1号180頁
参照法条
商法265条
論点15第356条旧商法下の裁判例

約束手形の振出は商法第二六五条にいう取引にあたるか。

裁判要旨株式会社がその取締役に対して約束手形を振り出す行為は、商法第二六五条にいう取引にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年3月14日 昭和35(オ)1139
登載
民集 第17巻2号335頁
参照法条
商法265条
論点16第356条旧商法下の裁判例

会社の代表者が自己の利を図る目的で会社の名においてした行為の会社に及ぼす効力。

裁判要旨会社の代表者がその権限を濫用し会社の損害において自己の利を図る目的で会社の名においてした行為は、相手方において右権限濫用の事実を知つていたという事実関係のもとでは、商法第二六五条の適用を問題とするまでもなく、その効力を会社に及ぼさない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年1月31日 昭和36(オ)798
登載
集民 第64号281頁
参照法条
民法53条,商法265条
論点17第356条旧商法下の裁判例

無利息無担保の金銭消費貸借は商法第二六五条にいう取引にあたるか。

裁判要旨株式会社に対しその取締役が無利息、無担保で金銭を貸し付ける行為は、商法第二六五条にいう取引にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年12月6日 昭和37(オ)437
登載
民集 第17巻12号1664頁
参照法条
商法265条
論点18第356条旧商法下の裁判例

商法第二六五条違反の為替手形と裏書人の責任。

裁判要旨為替手形の振出行為、引受行為が商法第二六五条違反によつて無効であるとしても、裏書行為自体に何らの瑕疵もない以上、裏書人の責任に消長をきたさない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和38年10月3日 昭和35(オ)574
登載
集民 第68号125頁
参照法条
商法265条,手形法7条
論点19第356条旧商法下の裁判例

取締役会の招集手続の省略

裁判要旨株式会社の取締役の全員が会社の業務執行に関する事項につき協議決定したときは、たとえ取締役会の招集手続を経ない旨の明示の同意なしにその手続を経なかつた場合でも、当該事項につき取締役会の決議がなされたものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年6月29日 昭和29(オ)749
登載
民集 第10巻6号774頁
参照法条
商法259条ノ2,商法259条ノ3,商法260条,商法265条
論点20第356条旧商法下の裁判例

商法二六五条一項の取引を行うにつき同法二五四条三項(民法六四四条)、商法二五四条ノ三に定める義務に違反した取締役と同法二六六条一項五号の責任

裁判要旨株式会社の取締役が商法二六五条一項の取引によって会社に損害を被らせた場合、当該取締役は、同法二六六条一項四号の責任を負う外、右取引を行うにつき故意又は過失により同法二五四条三項(民法六四四条)、商法二五四条ノ三に定める義務に違反したときには、同法二六六条一項五号の責任をも負う。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成12年10月20日 平成10(オ)920
登載
民集 第54巻8号2619頁
参照法条
商法254条3項,商法254条ノ3,商法265条1項,商法266条1項4号,商法266条1項5号
論点21第423条会社法

1 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づき取締役が会社に対して支払う損害賠償金に付すべき遅延損害金の利率
2 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務が履行遅滞となる時期

裁判要旨1 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づき取締役が会社に対して支払う損害賠償金に付すべき遅延損害金の利率は,民法所定の年5分である。
2 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務は,履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成26年1月30日 平成24(受)1600
登載
集民 第246号69頁
参照法条
(1,2につき)商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,会社法423条1項(1につき)民法404条,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)514条(2につき)民法412条
論点22第423条会社法

A社が事業再編計画の一環としてB社の株式を任意の合意に基づき買い取る場合において,A社の取締役に上記株式の買取価格の決定について善管注意義務違反はないとされた事例

裁判要旨不動産賃貸あっせんのフランチャイズ事業等を展開するA社が,事業再編計画の一環としてB社を完全子会社とする目的で同社の株式を任意の合意に基づき買い取る場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,株式交換に備えて算定された上記株式の評価額が1株当たり6561円ないし1万9090円であったとしても,上記株式の買取価格をB社の設立時の株式の払込金額を基準として1株当たり5万円とする決定をしたことについて,A社の取締役が取締役としての善管注意義務に違反したということはできない。
(1) B社の株主には,A社が事業の遂行上重要であると考えていた上記フランチャイズ事業の加盟店等が含まれる。
(2) 非上場株式である上記株式の評価額には相当の幅があり,事業再編の効果によるB社の企業価値の増加も期待できた。
(3) 上記の決定に至る過程で,A社の役付取締役全員により構成される経営会議において検討がされ,弁護士の意見も聴取されるなどの手続が履践された。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成22年7月15日 平成21(受)183
登載
集民 第234号225頁
参照法条
会社法330条,会社法355条,会社法423条1項,会社法847条,民法644条
論点23第423条会社法

株主代表訴訟の対象となる商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条1項にいう「取締役ノ責任」には,取締役が会社との取引によって負担することになった債務についての責任も含まれるか

裁判要旨株主代表訴訟の対象となる商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条1項にいう「取締役ノ責任」には,同法266条1項各号所定の責任など同法が取締役の地位に基づいて取締役に負わせている責任のほか,取締役が会社との取引によって負担することになった債務についての責任も含まれる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成21年3月10日 平成19(受)799
登載
民集 第63巻3号361頁
参照法条
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条1項,会社法423条1項,会社法847条1項
論点24第423条会社法

A銀行が,県から要請を受け,県において再建資金の融資を計画していたB社に対し,上記融資が実行されるまでのつなぎ融資をした後に,B社に追加融資をしてもその回収を容易に見込めない一方で,これをしなければB社が破綻,倒産する可能性が高く,上記つなぎ融資まで回収不能となるおそれがある状況の下で,B社に対して追加融資をした場合において,その追加融資の一部につき,これを決定したA銀行の取締役らに善管注意義務違反があるとされた事例

裁判要旨A銀行が,県から要請を受け,県において再建資金の融資を計画していたB社に対し,上記融資が実行されるまでのつなぎ融資として9億5000万円を融資した後に,B社に追加融資をしてもその回収を容易に見込めない一方で,これをしなければB社が破綻,倒産する可能性が高く,県のB社に対する融資により回収することを予定していた上記つなぎ融資まで回収不能となるおそれがある状況の下で,B社に対し,約3年の間に数十回にわたり合計8億5000万円余りの追加融資をした場合において,(1)上記追加融資を続ける過程で,A銀行は,県の担当者から,知事がB社の創業者であるC及びその親族をB社の経営から排除することを県のB社に対する融資の条件とする意向を示している旨の連絡を受けたこと,(2)その当時,法的手続を通じてC及びその親族をB社の経営から排除することは困難な状況にあり,その後も,同人らを排除することができない状況が続いたこと,(3)その間,A銀行は,県に対し,2度にわたり期限を定めて県のB社に対する融資の実行を求めたにもかかわらず,県は2度目の期限も徒過し,その時点で,上記(1)の連絡を受けてから10か月以上が経過していたこと,(4)上記時点までには,A銀行自身も,資産査定において,B社の債務者区分を要注意先から破綻懸念先に変更するに至っていたことなど判示の事情の下では,上記時点以後は,A銀行の取締役らにおいて,上記つなぎ融資の回収原資をもたらす県のB社に対する融資が実行される相当程度の確実性があり,その実行までB社を存続させるために追加融資をした方が,追加融資分が回収不能になる危険性を考慮しても全体の回収不能額を小さくすることができると判断することは,著しく不合理であり,上記時点以後の3億0500万円の追加融資については,これを決定したA銀行の取締役らに善管注意義務違反がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年11月27日 平成19(受)1056
登載
集民 第232号353頁
参照法条
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条,民法644条,会社法423条1項,会社法847条
論点25第423条会社法

商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間

裁判要旨商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は,民法167条1項により10年と解すべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年1月28日 平成18(受)1074
登載
民集 第62巻1号128頁
参照法条
民法167条1項,商法522条,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条ノ3,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,会社法423条1項,会社法430条
論点26第423条会社法

1 銀行が,第三者割当増資を計画する企業から新株引受先として予定された当該企業の関連会社に対する引受代金相当額の融資を求められ,これを実行した場合において,融資を決定した取締役らに忠実義務,善管注意義務違反があるとされた事例
2 銀行が,積極的な融資の対象であったが大幅な債務超過となって破たんに直面した企業に対し,同企業を数か月延命させる目的で追加融資を実行した場合において,追加融資を決定した取締役らに忠実義務,善管注意義務違反があるとされた事例

裁判要旨1 A銀行が,第三者割当増資を計画するB社から,発行する新株の相当部分を引き受ける予定のB社の関連会社に対する引受代金相当額の融資を求められ,これを実行した場合において,次の(1)〜(4)など判示の事情の下では,A銀行の取締役らが上記求めに応じて融資を決定したことは,当該融資が,A銀行が当時採用していた企業育成路線の一環としてされたものであったとしても,A銀行の取締役としての忠実義務,善管注意義務に違反する。
(1) 当該融資は,引受予定のB社の新株を担保とし,弁済期に当該株式を売却した代金で融資金の返済を受けることを予定したもので,保証人となるB社代表者の資産も大部分はB社の株式であり,債権の回収は専らB社の業績及び株価の動向のみに依存するものであった。
(2) 当該融資の額は200億円近い巨額のものであった。
(3) 新株発行後のB社の発行済株式総数に占める担保株式の割合等に照らし,融資先が弁済期に担保株式を一斉に売却すれば株価が暴落するおそれがあることは容易に推測できた。
(4) A銀行が以前に行った調査において,B社につき,財務内容が極めて不透明であり,借入金が過大で財務内容は良好とはいえないとの報告がされていた。
2 A銀行が,新興企業育成路線に基づく積極的な融資の対象であったが大幅な債務超過となり破たんに直面するに至ったB社に対し,もはやB社の存続が不可能であるとの認識を前提に,B社がA銀行から資金の融資を受けて継続中の大規模なリゾート開発事業が完成する予定の数か月後までB社を延命させる目的でそれに必要な資金409億円の追加融資を実行した場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,A銀行の取締役らが追加融資を決定したことは,A銀行の取締役としての忠実義務,善管注意義務に違反する。
(1) 追加融資に際し新たに担保を設定した不動産等の担保価値は到底追加融資相当額に見合うものではなく,追加融資の大部分は当初から回収の見込みがなかった。
(2) 上記事業は,完成したとしてもその採算性が疑わしく,中長期的にも,上記事業を独立して継続させることにより追加融資に見合う額の債権回収が期待できたということはできない。
(3) B社を数か月間延命させたとしても,それにより関連企業の連鎖倒産を避けられたとも,B社に多額の資金を融資していた信用組合が破たんしてA銀行に支援要請が来る事態を回避できたとも考え難い。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成20年1月28日 平成17(受)1440
登載
集民 第227号105頁
参照法条
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条ノ3,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,民法644条,会社法423条1項
論点27第423条会社法

会社法423条1項〈役員等の株式会社に対する損害賠償責任〉に基づく損害賠償請求訴訟において原告の設置した取締役責任調査委員会の委員であった弁護士が原告の訴訟代理人として行う訴訟行為を弁護士法25条2号及び4号の類推適用により排除することはできないとされた事例

裁判要旨株式会社である原告の設置した取締役責任調査委員会により、原告の取締役であった被告に対する事情聴取が行われた後、原告が、被告に対し、上記委員会の委員であった弁護士を訴訟代理人として、会社法423条1項〈役員等の株式会社に対する損害賠償責任〉に基づく損害賠償責任を追及する訴訟を提起した場合において、上記委員会が被告の上記責任の有無等を調査、検討するために設置されたものであるなど判示の事実関係の下では、上記訴訟において上記弁護士が原告の訴訟代理人として行う訴訟行為について、弁護士法25条2号及び4号の類推適用があるとして、これを排除することはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和4年6月27日 令和4(許)3
登載
集民 第268号323頁
参照法条
弁護士法25条2号、弁護士法25条4号、会社法423条1項
論点28第423条会社法

監査の範囲が会計に関するものに限定されている監査役は,計算書類及びその附属明細書の監査を行うに当たり,当該計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,その任務を尽くしたといえるか

裁判要旨監査の範囲が会計に関するものに限定されている監査役は,計算書類及びその附属明細書の監査を行うに当たり,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても,当該計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,常にその任務を尽くしたといえるものではない。
(補足意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 令和3年7月19日 令和1(受)1968
登載
集民 第266号157頁
参照法条
会社法389条1項,会社法389条2項,会社法423条1項,会社法436条1項,会社計算規則121条2項,会社計算規則122条1項2号,会社計算規則(平成21年法務省令第7号による改正前のもの)149条2項,会社計算規則(平成21年法務省令第7号による改正前のもの)150条1項2号
原

条文原文

原文ママ

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会社法 第356条(競業及び利益相反取引の制限) 詳細ページ
(競業及び利益相反取引の制限)
第三百五十六条取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
2民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号又は第三号の取引については、適用しない。
会社法 第365条(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限) 詳細ページ
(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限)
第三百六十五条取締役会設置会社における第三百五十六条の規定の適用については、同条第一項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。
2取締役会設置会社においては、第三百五十六条第一項各号の取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。
会社法 第423条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任) 詳細ページ
(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
第四百二十三条取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。
3第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。
一第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役
二株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役
三当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(指名委員会等設置会社においては、当該取引が指名委員会等設置会社と取締役との間の取引又は指名委員会等設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)
4前項の規定は、第三百五十六条第一項第二号又は第三号に掲げる場合において、同項の取締役(監査等委員であるものを除く。)が当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、適用しない。
会社法 第428条(取締役が自己のためにした取引に関する特則) 詳細ページ
(取締役が自己のためにした取引に関する特則)
第四百二十八条第三百五十六条第一項第二号(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引(自己のためにした取引に限る。)をした取締役又は執行役の第四百二十三条第一項の責任は、任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができない。
2前三条の規定は、前項の責任については、適用しない。
出

一次情報

原文ママ

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