論点1第537条民法
電信送金契約は第三者のためにする契約であるか
裁判要旨電信送金契約は、特別の事情のないかぎり、第三者たる送金受取人のためにする契約であるとはいえず、被仕向銀行は、右契約により、仕向銀行に対する関係においては、送金受取人に送金の支払をする義務を負うが、送金受取人本人に対する関係においては、そのような義務を負うものではなく、単に仕向銀行の計算において送金の支払をなしうる権限を取得するにとどまると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和43年12月5日 昭和40(オ)1399
- 登載
- 民集 第22巻13号2876頁
- 参照法条
- 民法91条,民法92条,民法537条
論点2第537条民法
一 臨時物資需給調整法第四条ノ〈成年 年齢十八歳をもって、成年とする。〉二に違反した行為の効力
二 第三者のためにする契約において契約の利益を受ける者に反対給付を課しうるか
裁判要旨一 臨時物資需給調整法
第四条ノ〈成年 年齢十八歳をもって、成年とする。〉二に違反した行為も、私法上その効力がないとはいえない。
二 民法
第五三七条〈第三者のためにする契約〉の第三者のためにする契約においては、契約の利益を受ける者に反対給付を課することを妨げない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和42年10月27日 昭和41(オ)269
- 登載
- 集民 第88号793頁
- 参照法条
- 臨時物資需給調整法4条ノ2,民法90条,民法537条
論点3第537条民法
将来出現することが予期された者を民法第五三七条の第三者とすることができるか。
裁判要旨第三者のためにする契約は、たとい契約の同時に存在していなくても将来出現するであろうと予期された者をもつて第三者とした場合でも、有効に成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年6月26日 昭和33(オ)31
- 登載
- 民集 第16巻7号1397頁
- 参照法条
- 民法537条
論点4第537条民法
電信送金契約の性質
裁判要旨送金依頼人の委託に基く委託銀行と受託銀行との間の電信送金契約が、第三者のためにする契約であつてこれにより第三者たる送金受取人に直接受託銀行に対する権利を取得させる趣旨のものであるかどうかは、単に電信送金制度の目的からのみこれを決すべきではなく、右両行間に結ばれている電信送金に関する基本契約である電信為替取引契約の内容および送金依頼人と委託銀行との間における契約の趣旨をも考察してこれを決すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年12月6日 昭和30(オ)58
- 登載
- 民集 第11巻13号2078頁
- 参照法条
- 民法537条
論点5第537条民法
団体定期保険(いわゆるAグループ保険)に基づいて被保険者である従業員の死亡により保険金を受領した会社が生命保険会社との間の合意をもって社内規定に基づく給付額を超えて上記保険金の一部を死亡従業員の遺族に支払うことを約したと認めるべきであるとした原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨Y社が,複数の生命保険会社との間で,保険金受取人をY,被保険者をYの従業員全員とし,死亡保険金の合計額が従業員1人につき6000万円を超える団体定期保険(いわゆるAグループ保険)契約を締結し,従業員の死亡により保険金を受領する一方,当該従業員の遺族Xに対しては,社内規定に基づく給付額である1000万円程度の死亡時給付金を支払ったにとどまる場合において,1 他人の生命の保険については被保険者の同意を求めることでその適正な運用を図るべく保険金額に見合う被保険利益の裏付けを要求する規制を採用していない立法の下では,直ちに上記契約が公序良俗に違反するとはいえないこと,2 Yは,団体定期保険の主たる目的が受領保険金を従業員に対する福利厚生制度に基づく給付に充てることにあることは認識していたものの,死亡従業員の遺族に支払うべき死亡時給付金が社内規定に基づく給付額の範囲内にとどまることは当然と考え,そのような取扱いに終始していたのであり,社内規定に基づく給付額を超えて受領した保険金の全部又は一部を遺族に支払うことを黙示的にも合意したと認める余地はないことなど判示の事情の下では,上記のような団体定期保険の運用が公序良俗に違反することを前提として,これを免れるためには,Yは,生命保険会社との間の第三者のためにする契約をもって,社内規定に基づく給付額を超えて死亡時給付金として社会的に相当な金額(3000万円)に満つるまでの額をXに支払うことを約したと認めるべきであるとした原審の判断には,違法がある。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成18年4月11日 平成14(受)1358
- 登載
- 民集 第60巻4号1387頁
- 参照法条
- 商法674条1項,民法90条,民法537条,民訴法247条
論点6第537条民法
甲が丁の強迫により消費貸借契約の借主となり貸主乙に指示して貸付金を丙に給付させた後に右強迫を理由に契約を取り消した場合の乙から甲に対する不当利得返還請求につき甲が右給付により利益を受けなかったものとされた事例
裁判要旨甲が丁の強迫により消費貸借契約の借主となり貸主乙に指示して貸付金を丙に給付させた後に右強迫を理由に契約を取り消したが、甲と丙との間には事前に何らの法律上又は事実上の関係はなく、甲が丁の言うままに乙に対して貸付金を丙に給付するように指示したなど判示の事実関係の下においては、乙から甲に対する不当利得返還請求について、甲が右給付によりその価額に相当する利益を受けたとみることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成10年5月26日 平成8(オ)497
- 登載
- 民集 第52巻4号985頁
- 参照法条
- 民法96条1項,民法537条,民法587条,民法703条
論点7第536条民法
一 労働基準法二六条の「使用者の責に帰すべき事由」と民法五三六条二項〈債務者の危険負担等〉の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」
二 部分ストライキのため会社が命じた休業が労働基準法二六条〈管理人の改任〉の「使用者の責に帰すべき事由」によるものとはいえないとされた事例
裁判要旨一 労働基準法二六条の「使用者の責に帰すべき事由」は、民法
五三六条二項〈債務者の危険負担等〉の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含む。
二 定期航空運輸事業を営む会社に職業安定法四四条違反の疑いがあつたことから、労働組合がその改善を要求して部分ストライキを行つた場合であつても、同社がストライキに先立ち、労働組合の要求を一部受け入れ、一応首肯しうる改善案を発表したのに対し、労働組合がもつぱら自らの判断によつて当初からの要求の貫徹を目指してストライキを決行したなど判示の事情があるときは、右ストライキにより労働組合所属のストライキ不参加労働者の労働が社会観念上無価値となつたため同社が右不参加労働者に対して命じた休業は、労働基準法二六条の「使用者の責に帰すべき事由」によるものということができない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和62年7月17日 昭和57(オ)1189
- 登載
- 民集 第41巻5号1283頁
- 参照法条
- 労働基準法26条,民法536条2項
論点8第536条民法
部分ストライキと民法五三六条二項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」
裁判要旨部分ストライキによつてストライキ不参加労働者の労働義務の履行が不能となつた場合は、使用者が不当労働行為の意思その他不当な目的をもつてことさらストライキを行わしめたなどの特別の事情がない限り、右ストライキは民法五三六条二項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」に当たらない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和62年7月17日 昭和57(オ)1190
- 登載
- 民集 第41巻5号1350頁
- 参照法条
- 民法536条2項
論点9第536条民法
使用者がその責めに帰すべき事由による解雇期間中の賃金を労働者に支払う場合の労働基準法一二条四項〈被保佐人及び保佐人〉所定の賃金と労働者が解雇期間中他の職に就いて得た利益額の控除
裁判要旨使用者が、その責めに帰すべき事由による解雇期間中の賃金を労働者に支払う場合、労働基準法一二条四項所定の賃金については、その全額を対象として、右賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に労働者が他の職に就いて得た利益の額を控除することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和62年4月2日 昭和59(オ)84
- 登載
- 集民 第150号527頁
- 参照法条
- 民法536条2項,労働基準法12条1項,労働基準法12条4項,労働基準法24条1項,労働基準法26条
論点10第536条民法
ユニオン・シヨツプ協定に基づく解雇が無効である場合における労働者の賃金請求権
裁判要旨労働組合から除名された労働者に対してされたユニオン・シヨツプ協定に基づく解雇が権利の濫用として無効である場合には、右解雇を理由として労務提供の受領が拒否されても、労働者は、賃金請求権を失わない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和59年3月29日 昭和55(オ)1030
- 登載
- 集民 第141号461頁
- 参照法条
- 労働基準法24条,民法536条2項
論点11第536条民法
甲組合のピケにより本来の業務に就くことができなかつた乙組合員について、会社との間で具体的労務の提供及び受領があつたとされた事例
裁判要旨(省略)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和56年12月17日 昭和52(オ)70
- 登載
- 集民 第134号557頁
- 参照法条
- 労働基準法第2章労働契約,民法536条2項
論点12第536条民法
ロツクアウトの継続が違法とされた事例
裁判要旨組合がその組合員数を半減し力も弱くなつていたのに対し、会社(タクシー会社)はD組合員等によつてタクシーの車両数も増やして平常に近い営業を行い、その経営内容も著しく改善されるなど判示の事情があるときは、組合の就労要求を拒否した時点以降会社が継続したロツクアウトは、使用者の正当な争議行為と認められず、会社は右時点以降の賃金支払義務を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年2月28日 昭和47(オ)440
- 登載
- 集民 第120号185頁
- 参照法条
- 労働組合法8条,労働関係調整法7条,民法536条2項,民法623条
論点13第536条民法
注文者の責に帰すべき事由により仕事の完成が不能となつた場合における請負人の報酬請求権と利得償還義務
裁判要旨請負契約において仕事が完成しない間に注文者の責に帰すべき事由によりその完成が不能となつた場合には、請負人は、自己の残債務を免れるが、民法
五三六条二項〈債務者の危険負担等〉により、注文者に請負代金全額を請求することができ、ただ、自己の債務を免れたことにより得た利益を注文者に償還すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和52年2月22日 昭和51(オ)611
- 登載
- 民集 第31巻1号79頁
- 参照法条
- 民法536条2項,民法632条
論点14第536条民法
いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)が正当性を欠くとしてその期間中における使用者の賃金支払義務が認められた事例
裁判要旨省略
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和50年7月17日 昭和48(オ)267
- 登載
- 集民 第115号465頁
- 参照法条
- 労働組合法8条,労働関係調整法7条,民法536条2項,民法623条
論点15第536条民法
一、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)の正当性
二、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)とその期間中における使用者の賃金支払義務
裁判要旨一、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)は、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過組合側の争議行為の態様、それによつて使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、衡平の見地から見て労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められる場合には、使用者の正当な争議行為として是認される。
二、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)をした使用者は、それが正当な争議行為として是認される場合には、その期間中における対象労働者に対する賃金支払義務を免れる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年4月25日 昭和44(オ)1256
- 登載
- 民集 第29巻4号481頁
- 参照法条
- 労働組合法8条,労働関係調整法7条,民法536条2項,民法623条
論点16第536条民法
民法上いわゆる代償請求権が認められるか
裁判要旨履行不能が生じたのと同一の原因によつて、債務者が履行の目的物の代償と考えられる利益を取得した場合には、債権者は、右履行不能により受けた損害を限度として、債務者に対し、右利益の償還を求める権利があると解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和41年12月23日 昭和38(オ)1030
- 登載
- 民集 第20巻10号2211頁
- 参照法条
- 民法536条2項
論点17第536条民法
使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得た場合、使用者が、労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、右利得金額を賃金額から控除することの可否およびその限度。
裁判要旨使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得た場合、使用者が、労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、右利得金額を賃金額から控除することはできるが、その限度は、平均賃金の四割の範囲内にとどめるべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年7月20日 昭和36(オ)190
- 登載
- 民集 第16巻8号1656頁
- 参照法条
- 民法536条2項,労働基準法26条,労働基準法24条1項
論点18第536条民法
連合国軍関係事務系統使用人給与規程並びに同技能工系統使用人給与規程の各休業手当に関する各項の法意。
裁判要旨連合国軍関係事務系統使用人給与規程並びに同技能工系統使用人給与規程の各休業手当に関する各条は、休業期間中における駐留軍労務者の最低限度の生活を保障するために特に設けられた規定であつて、軍の都合による休業が民法第五三六条第二項にいう「債務者ノ責ニ帰スヘキ事由」に基づく履行不能に該当し、労務者が政府に全額賃金の支払を請求し得る場合においても、その請求権を平均賃金の六割に減縮せんとする趣旨に出たものではないと解するのを相当する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年7月20日 昭和36(オ)522
- 登載
- 民集 第16巻8号1684頁
- 参照法条
- 連合国軍関係事務系統使用人給与規程(昭和22年5月27日絡設労合408号)6のへ,連合国軍関係技能工系統使用人給与規程(昭和23年4月10日特調庶発446号)26,民法536条2項
論点19第536条民法
使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得た場合、使用者が、労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、右利得金額を賃金額から控除することの可否およびその限度。
裁判要旨使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得た場合、使用者が、労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、右利得金額を賃金額から控除することはできるが、その限度は、平均賃金の四割の範囲内にとどめるべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年7月20日 昭和36(オ)189
- 登載
- 集民 第61号737頁
- 参照法条
- 民法536条2項,労働基準法24条1項,労働基準法26条
論点20第536条民法
賃貸人が賃貸物件を使用させない期間の賃料支払義務。
裁判要旨賃貸人が賃借人に対し賃貸物件を使用させない期間は、賃借人は賃料支払義務を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和36年7月21日 昭和34(オ)848
- 登載
- 民集 第15巻7号1952頁
- 参照法条
- 民法601条,民法536条1項
論点21第536条民法
賃借土地の使用に事実上の支障がある場合と賃料支払義務。
裁判要旨建物所有の目的で賃借した土地の地上建物が戦災により滅失した後、右土地は特別都市計画法による区画整理区域に指定されたが、換地予定地の指定が遅れ、その間原審認定のような事情があつて(原判決理由参照)、事実上これを家屋所有の目的で使用することに支障を来したとしても、賃借人の使用収益が全面的に不能であつたものとは認められないときは、賃借人は賃料の支払義務を当然に免れたものということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年12月4日 昭和31(オ)393
- 登載
- 民集 第13巻12号1588頁
- 参照法条
- 民法536条,民法611条
論点22第536条民法
使用者の責めに帰すべき事由による解雇の期間中の賃金につき使用者が支払義務を負う金額を算定する場合において期末手当等の全額を対象として労働者が他の職に就いて得た利益の額を控除すべきであるとされた事例
裁判要旨使用者の責めに帰すべき事由による解雇の期間中の賃金につき使用者が支払義務を負う金額を算定する場合において,労働者が同期間中に他の職に就いて得た利益の額が当該利益を得た期間における平均賃金合計額の4割を超え,かつ,使用者が労働者に対し労働基準法12条4項所定の賃金に当たる期末手当及び勤勉手当を支払うこととされているという事実関係の下では,上記利益を得た期間に時期的に対応する期間に係る期末手当及び勤勉手当の全額を対象として,上記の平均賃金合計額の4割を超える利益の額を控除すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成18年3月28日 平成15(受)1099
- 登載
- 集民 第219号1033頁
- 参照法条
- 民法536条2項,労働基準法12条1項,4項,労働基準法24条1項,労働基準法26条
論点23第533条民法
物上保証人からされた被担保債権の将来の弁済を原因とする抵当権設定登記又はいわゆる仮登記担保権の仮登記の抹消登記手続請求における弁済と抹消登記手続義務との関係
裁判要旨物上保証人からされた被担保債権の将来の弁済を原因とする抵当権設定登記又はいわゆる仮登記担保権の仮登記の抹消登記手続を求める請求は、将来物上保証人が被担保債権を弁済することを条件としても、認容することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和63年4月8日 昭和59(オ)594
- 登載
- 集民 第154号11頁
- 参照法条
- 民法474条,民法533条
論点24第533条民法
売買代金債務を目的とする準消費貸借契約が締結された場合であつても売主が自己の所有権移転登記手続債務につき売買契約に基づいて有していた同時履行の抗弁権を失わないとされた事例
裁判要旨土地の売買代金債務を目的とする準消費貸借契約が締結された場合であつても、右契約が、従来明確でなかつた残代金の支払時期とこれに付すべき利息の利率を定めるとともに連帯保証人を付すことを目的としてされたなど原判示の事情(原判決理由参照)があるときは、売主は、買主に対する所有権移転登記手続債務につき、売買契約に基づいて有していた同時履行の抗弁権を失わず、右準消費貸借契約上の債務の履行の提供があるまで、自己の債務の履行を拒むことができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和62年2月13日 昭和61(オ)1036
- 登載
- 集民 第150号175頁
- 参照法条
- 民法533条,民法588条
論点25第533条民法
債務の弁済と担保仮登記の抹消登記手続の履行との同時履行関係の有無
裁判要旨仮登記担保権の被担保債務の弁済は、当該仮登記の抹消登記手続の履行に対し先給付の関係にあり、これと同時履行の関係に立つものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和61年4月11日 昭和55(オ)488
- 登載
- 集民 第147号515頁
- 参照法条
- 民法369条,民法533条
論点26第533条民法
幼児引渡義務と養育費等の不当利得返還義務との間の同時履行関係の有無
裁判要旨幼児を養育していた者から親権者への幼児引渡義務と親権者から右養育者への養育費等の不当利得返還義務とは、同時履行の関係に立たない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和59年9月28日 昭和59(オ)462
- 登載
- 集民 第142号381頁
- 参照法条
- 民法533条,民法703条,民法820条
論点27第533条民法
都市公園法附則四項及び七項に基づく損失補償と従前の使用許可による権利の喪失との関係
裁判要旨都市公園法附則四項及び七項に基づく損失補償は、従前の使用許可による権利の喪失と同時履行の関係に立つものではなく、右補償がされなくとも右権利喪失の効果は生じると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和58年11月10日 昭和54(オ)211
- 登載
- 集民 第140号443頁
- 参照法条
- 憲法29条3項,民法533条,都市公園法12条2項,都市公園法12条3項,都市公園法附則4項,都市公園法附則7項,都市公園法附則8項
論点28第533条民法
抵当債務の弁済と抵当権設定登記の抹消登記手続との同時履行関係の有無
裁判要旨抵当債務は、抵当権設定登記の抹消登記手続より先に履行すべきもので、後者とは同時履行の関係に立たない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和57年1月19日 昭和56(オ)890
- 登載
- 集民 第135号33頁
- 参照法条
- 民法533条
論点29第533条民法
債権額の異なる請負人の報酬債権と注文者の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権とを相殺することの許否
裁判要旨請負人の注文者に対する報酬債権と注文者の請負人に対する目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権とは、右両債権額が異なる場合であつても相殺することが許される。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年9月21日 昭和52(オ)1306
- 登載
- 集民 第125号85頁
- 参照法条
- 民法505条,民法533条,民法634条
論点30第533条民法
無催告解除の特約がある場合に反対給付の提供をすることなく相手方の履行遅滞を理由としてした解除の効力
裁判要旨双務契約の当事者の一方が、相手方の債務と同時履行の関係にある自らの反対給付の提供をすることなしに、相手方の履行遅滞を理由としてした契約解除は、相手方の履行遅滞があれば催告を要することなく契約を解除しうる旨の特約がある場合においても、効力を生じない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和51年12月2日 昭和51(オ)291
- 登載
- 集民 第119号299頁
- 参照法条
- 民法533条,民法541条
論点31第533条民法
いわゆる預託金会員組織ゴルフ会員権をその譲渡担保権者から譲り受けた者が譲渡担保設定者に対して有するF理事会の譲渡承認手続請求権と右設定者の譲渡担保権者に対する清算金支払請求権との同時履行関係
裁判要旨いわゆる預託金会員組織ゴルフ会員権を目的とする譲渡担保設定契約において、設定者が、あらかじめ、譲渡担保権者の換価処分によりゴルフ会員権を譲り受けた者のために、Fの規則上譲渡に必要とされているF理事会の承認を得るための手続に協力することを承諾している場合には、設定者は、譲受人に対し、同時履行の抗弁により、譲渡担保権者が清算金を提供しないことを理由として、右譲渡承認を得るための手続に協力することを拒絶することができない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年7月25日 昭和49(オ)246
- 登載
- 民集 第29巻6号1147頁
- 参照法条
- 民法362条,民法369条,民法533条
論点32第533条民法
自動車の割賦売買契約において売主がいつたん買主に引き渡した自動車を正当な事由なしに引き揚げた場合あるいは買主から修理を依頼されその完了後に正当な事由なしに返還しない場合と買主の割賦代金の支払拒絶権
裁判要旨自動車の割賦売買契約において、売主が、いつたん買主に引き渡した自動車を正当の事由なしに買主から引き揚げ、あるいは、買主から修理を依頼されその完了後に正当な事由なしに自動車を引き渡さない場合には、買主は、再度自動車の引渡を受けるまで、割賦代金の支払を拒むことができるものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和50年7月17日 昭和49(オ)668
- 登載
- 集民 第115号519頁
- 参照法条
- 民法1条,民法533条
論点33第533条民法
土地の売主の共同相続人がその相続した代金債権を保全するため買主に代位して他の共同相続人に対し所有権移転登記手続を請求することの許否
裁判要旨買主に対する土地所有権移転登記手続義務を相続した共同相続人の一部の者が右義務の履行を拒絶しているため、買主が相続人全員による登記手続義務の履行の提供があるまで代金全額について弁済を拒絶する旨の同時履行の抗弁権を行使している場合には、他の相続人は、自己の相続した代金債権を保全するため、右買主が無資力でなくても、これに代位して、登記手続義務の履行を拒絶している相続人に対し買主の所有権移転登記手続請求権を行使することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和50年3月6日 昭和48(オ)369
- 登載
- 民集 第29巻3号203頁
- 参照法条
- 民法423条1項,民法533条
論点34第533条民法
土地買受代金の支払について所有権移転登記手続との同時履行を主張することが信義則上許されないとされた事例
裁判要旨土地の買主が、所有権移転登記をうけなかつたが申請手続の過誤により隣地につき所有権移転登記がされたためであり、土地の引渡はうけその使用をつづけた等判示の事実関係のもとにおいては、買受代金の支払について所有権移転登記手続との同時履行を主張することは信義則上許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和50年12月26日 昭和49(オ)1202
- 登載
- 集民 第116号959頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法533条,民法541条
論点35第533条民法
賃借家屋明渡債務と敷金返還債務との間の同時履行関係の有無
裁判要旨家屋の賃貸借終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、特別の約定のないかぎり、同時履行の関係に立たない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和49年9月2日 昭和48(オ)30
- 登載
- 民集 第28巻6号1152頁
- 参照法条
- 民法533条,民法619条2項
論点36第533条民法
売買を原因とする所有権移転登記手続が保証書によつてなされる場合と買主の代金支払義務の履行
裁判要旨不動産の売買契約において、売買代金の支払が所有権移転登記手続に必要な一切の書類と引換えに支払う旨が約された場合に、売主が、登記済証が滅失したため保証書による登記手続をしょうとするときには、買主に対し保証書その他の登記申請に要する書類を提供したとしても、登記官吏に対し不動産登記法四四条ノ二第二項所定の申出をしないかぎり、買主は代金支払債務の履行を拒絶しうるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和48年9月7日 昭和47(オ)1071
- 登載
- 集民 第110号21頁
- 参照法条
- 民法533条
論点37第533条民法
一、裁判上の和解において定められた債権債務が同時履行の関係にあるとされた事例
二、弁済のための銀行振出小切手の持参と現実の提供
裁判要旨一、裁判上の和解において甲が一定期日に乙に対し金員の支払をなすべき旨定められていても、他方、乙は甲から右金員の支払を受けると同時に甲に対し登記手続をすべき旨定められているときは、特別の事情の存しないかぎり、右両債務は同時履行の関係にある。
二、債務者が弁済のため銀行振出小切手を債権者方に持参してその受領を催告すれば、これを債権者の面前に提出しなくても、現実に弁済の提供をしたものとみるのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和48年12月11日 昭和47(オ)1174
- 登載
- 集民 第110号653頁
- 参照法条
- 民法493条,民法533条,民訴法203条
論点38第533条民法
売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務と同時履行
裁判要旨売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係にあると解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年9月7日 昭和46(オ)1127
- 登載
- 民集 第26巻7号1327頁
- 参照法条
- 民法96条,民法121条,民法533条,民法546条
論点39第533条民法
特約に基づき賃借権設定登記をする義務と賃料支払義務との同時履行の成否
裁判要旨不動産の賃貸人が特約に基づき賃借権設定登記をする義務を負つていても、右義務と賃借人の賃料支払義務とを同時履行の関係にたたせる旨の特約がなく、かつ、登記がないため契約の目的を達することができないという特段の事情もない場合には、賃借人は、右登記義務の履行がないことを理由として賃料の支払を拒むことができない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和43年11月28日 昭和43(オ)199
- 登載
- 民集 第22巻12号2833頁
- 参照法条
- 民法533条,民法605条
論点40第533条民法
一 双務契約の当事者の一方が債務の履行をしない意思を明らかにした場合と同時履行の抗弁
二 催告の特定
裁判要旨一 双務契約の当事者の一方が自己の債務の履行をしない意思を明確にした場合には、相手方が自己の債務の弁済の提供をしなくても、右当事者の一方は、自己の債務の不履行について、履行遅滞の責を免れることをえないものと解するのが相当である(昭和三八年(オ)第三二二号、同四一年三月二二日第三小法廷判決参照)。
二 特定の取引にもとづいてその目的物件の引渡を催告している以上、数量を示さなくても、その催告は適法である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和41年7月5日 昭和40(オ)1459
- 登載
- 集民 第84号13頁
- 参照法条
- 民法533条,民法415条,民法545条
論点41第533条民法
他人の物の賃貸借において賃借人が賃料支払を拒否できるとされた事例
裁判要旨他人の物の賃貸借において、賃貸人がその物の所有者に対抗できる何らの権限をも有しないため、賃借人が、その物に対する使用収益に関して、現実に所有者から不法占有を理由とする損害賠償の請求等を受けて、その責に任じなければならない事態となつたときは、賃借人は賃貸人に対する賃料の支払を拒否し得るものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和41年5月26日 昭和38(オ)1458
- 登載
- 集民 第83号605頁
- 参照法条
- 民法576条,民法533条
論点42第533条民法
主債務者の有する引換給付の抗弁権と連帯保証人による引換給付の抗弁の主張の可否。
裁判要旨主債務者が債務者の金員支払請求に対し右金員の支払確保のために振り出された手形の返還との引換給付の抗弁権を有する場合には、連帯保証人は、右債権者の金員支払請求に対し、自己あてに手形を交付すべき旨の引換給付の抗弁を主張することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年9月21日 昭和39(オ)372
- 登載
- 民集 第19巻6号1542頁
- 参照法条
- 民法448条,民法458条,民法533条,手形法2篇
論点43第533条民法
賃借家屋修繕義務の不履行を理由に賃料支払を拒絶できないとされた事例
裁判要旨賃貸家屋の僅かな一部が破損したが、その余の部分に著しい支障もなく居住の目的を達することができ、また、賃料が地代家賃統制例の統制に服している等原判決判示の事情のもとにおいては、賃借人は賃貸人の賃貸家屋修繕義務の不履行を理由に賃料全部の支払を拒むことはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年9月10日 昭和39(オ)1000
- 登載
- 集民 第80号251頁
- 参照法条
- 民法606条1項,民法533条
論点44第533条民法
民法第五四五条第二項〈解除の効果〉の利息債務の発生と同法第五四六条第五三三条の同時履行の抗弁権の関係
裁判要旨民法
第五四五条第二項〈解除の効果〉の利息債務は、実質は不当利得返還の法理より生ずるもので、同法第五四六条第五三三条所定の同時履行の抗弁権にかかわりなく発生し、ただその債務の履行が右抗弁権の作用をこうむるにすぎないと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年9月10日 昭和40(オ)60
- 登載
- 集民 第80号271頁
- 参照法条
- 民法545条,民法546条,民法533条,民法415条,民法419条,民法703条
論点45第533条民法
家賃領収書交付債務の不履行と家賃支払債務の履行の拒絶の可否。
裁判要旨家賃の支払いとその受取証書の交付とは同時履行の関係にあると解すべきであるが、借家人が受取証書の交付を受けないで異議なく家賃の支払いをした場合には、さきに支払つた家賃について受取証書の交付のないことを理由として、その後の家賃の支払いを拒絶することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年10月8日 昭和38(オ)679
- 登載
- 集民 第75号635頁
- 参照法条
- 民法486条,民法533条
論点46第533条民法
同時履行の抗弁についての釈明義務。
裁判要旨同時履行の抗弁の提出がないかぎり、裁判所は、進んで引換給付の判決をすべきものではなく、また、同時履行の抗弁の提出を促すべく釈明する義務を負うものではない(昭和二七年一一月二七日第一小法廷判決、民集六巻一〇号一〇六二頁参照)。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和38年9月13日 昭和35(オ)1323
- 登載
- 集民 第67号541頁
- 参照法条
- 民法533条,民訴法127条
論点47第533条民法
賃貸家屋の修繕義務の不履行を理由に賃料支払を拒絶できないとされた事例。
裁判要旨賃貸家屋の破損、腐蝕の状況が居住に著しい支障を生ずるほどでなく、また、賃料が地代家賃統制令の統制に服している等原判決判示の事情のもとにおいては(原判決理由参照)、賃借人は賃貸人の賃貸家屋修繕義務の不履行を理由に賃料全部の支払を拒むことができない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年11月28日 昭和37(オ)347
- 登載
- 民集 第17巻11号1477頁
- 参照法条
- 民法606条1項,民法533条
論点48第533条民法
造作買取請求権行使の場合における造作代金支払義務と家屋明渡義務との関係――留置権または同時履行抗弁権の成否
裁判要旨借家法第五条により造作の買収を請求した家屋の賃借人は、その代金の不払を理由として右家屋を留置し、または右代金の提供がないことを理由として同時履行の抗弁により右家屋の明渡を拒むことはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和29年7月22日 昭和27(オ)1069
- 登載
- 民集 第8巻7号1425頁
- 参照法条
- 借家法5条,民法295条,民法533条
論点49第533条民法
未成年者の親権者母が親族会の同意を得ないでした家屋譲渡契約を取り消したことによる原状回復義務と同時履行。
裁判要旨親権者母が、親族会の同意を得ないでした家屋譲渡契約を取り消したときは、その原状回復義務については民法第五三三条を準用すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年6月16日 昭和24(オ)191
- 登載
- 民集 第7巻6号629頁
- 参照法条
- 旧民法886条3号,旧民法887条,民法546条,民法533条,民法121条
論点50第533条民法
一 請負人の報酬債権と注文者の瑕疵修補に代わる損害賠償債権との相殺がされた後の報酬残債務について注文者が履行遅滞による責任を負う時期
二 仮執行宣言に基づく給付金に商事法定利率による金員を付加してその支払を求める民訴法一九八条二項〈占有保持の訴え〉の申立てが認容された事例
裁判要旨一 請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負う。
二 (省略)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年7月15日 平成5(オ)2187
- 登載
- 民集 第51巻6号2581頁
- 参照法条
- 民法412条,民法506条2項,民法533条,民法634条2項,民訴法198条2項,商法514条
論点51第533条民法
請負契約の注文者が瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬全額の支払との同時履行を主張することの可否
裁判要旨請負契約の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等にかんがみ信義則に反すると認められるときを除き、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払を拒むことができ、これについて履行遅滞の責任も負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年2月14日 平成5(オ)1924
- 登載
- 民集 第51巻2号337頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法412条,民法533条,民法634条
論点52第533条民法
債務の弁済と譲渡担保の目的物の返還との同時履行関係の有無
裁判要旨債務の弁済と譲渡担保の目的物の返還とは、前者が後者に対し先履行の関係にあり、同時履行の関係に立たない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成6年9月8日 平成6(オ)1025
- 登載
- 集民 第173号21頁
- 参照法条
- 民法369条(譲渡担保),民法533条
論点53第533条民法
自動車の買主が,当該自動車が車台の接合等により複数の車台番号を有することが判明したとして,錯誤を理由に売買代金の返還を求めたのに対し,売主が移転登録手続との同時履行を主張することが信義則上許されないとされた事例
裁判要旨Xが,Yから購入して転売した自動車につき,Yから転売先に直接移転登録がされた後,車台の接合等により複数の車台番号を有するものであったことが判明したとして,Yに対し錯誤による売買契約の無効を理由に売買代金の返還を求めた場合において,Yは本来新規登録のできない上記自動車について新規登録を受けた上でこれをオークションに出品し,XはYにより表示された新規登録に係る事項等を信じて上記自動車を買い受けたものであり,上記自動車についてのXからYへの移転登録手続には困難が伴うなどの判示の事情の下では,仮にYがXに対し上記自動車につきXからYへの移転登録請求権を有するとしても,Xからの売買代金返還請求に対し,Yが上記自動車についての移転登録手続との同時履行を主張することは,信義則上許されない。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成21年7月17日 平成19(受)315
- 登載
- 集民 第231号419頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法533条