論点1第412条民法
自動車損害賠償保障法一六条一項に基づく保険会社の被害者に対する損害賠償額支払債務の履行遅滞となる時期
裁判要旨自動車損害賠償保障法一六条一項に基づく保険会社の被害者に対する損害賠償額支払債務は、期限の定めのない債務であり、被害者から履行の請求を受けた時に履行遅滞となる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年10月9日 昭和59(オ)696
- 登載
- 集民 第149号21頁
- 参照法条
- 自動車損害賠償保障法16条1項,民法412条3項
論点2第412条民法
不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用の賠償債務が履行遅滞となる時期
裁判要旨不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用の賠償債務は、当該不法行為の時に履行遅滞となるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和58年9月6日 昭和55(オ)1113
- 登載
- 民集 第37巻7号901頁
- 参照法条
- 民法412条,民法709条,自動車損害賠償保障法3条
論点3第412条民法
一 安全保証義務違背を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務の履行遅滞となる時期
二 安全保証義務違背の債務不履行により死亡した者の遺族と固有の慰藉料請求権の有無
裁判要旨一 安全保証義務違背を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であり、債権者から履行の請求を受けた時に履行遅滞となる。
二 安全保証義務違背の債務不履行により死亡した者の遺族は、固有の慰藉料請求権を有しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和55年12月18日 昭和51(オ)1089
- 登載
- 民集 第34巻7号888頁
- 参照法条
- 民法412条,民法415条
論点4第412条民法
正当な賃料支払の相手方を確知できないため賃料の支払をしなかつた土地賃借人につきその責に帰すべき履行遅滞がないとされた事例
裁判要旨賃貸人甲が係争土地をその弟乙に売渡し、乙がさらにこれを甲の養子丙、丁に売渡した場合において、甲の死亡後その実子とされている戊と丙、丁との間に係争土地及び甲の相続財産の帰属に関し深刻な紛争を生じ、戊から丙、丁を相手方として係争土地に処分禁止の仮処分をし、また、戊の訴提起により甲〜丙、丁間の養子縁組の無効確認を求める訴訟及び係争土地の所有権移転登記手続を求める訴訟が係属していたなど判示の事情があるときは、正当な賃料支払の相手方を確知できないため賃料の支払をしなかつた係争土地の賃借人につき、その責に帰すべき履行遅滞はない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和50年2月27日 昭和48(オ)345
- 登載
- 集民 第114号241頁
- 参照法条
- 民法412条,民法494条
論点5第412条民法
賃料増額に関する調停において増額分の支払につき履行期が定められなかつた場合におけるその履行期
裁判要旨賃料増額に関する調停において増額分の支払につき履行期が定められなかつたときは、即時その履行期が到来すると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和49年7月22日 昭和47(オ)274
- 登載
- 集民 第112号405頁
- 参照法条
- 民法412条3項
論点6第412条民法
使用者の一方的通告による解雇に原因する社宅使用貸借の終了と明渡義務の発生時期
裁判要旨社宅の使用貸借の終了が使用者の一方的通告による解雇に起因する場合であつても、当事者間に明渡猶予の合意が成立するなど特別の事情のないかぎり、被用者は、使用貸借の終了したことを認識した時から明渡義務を負うべきものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和41年4月19日 昭和40(オ)209
- 登載
- 集民 第83号239頁
- 参照法条
- 民法597条,民法412条
論点7第412条民法
一 労働基準法に基づく災害補償と慰藉料との関係
二 労働基準法第七五条の療養補償債務の履行遅滞となる時期
三 労働基準法第七六条の休業補償債務の履行遅滞となる時期
裁判要旨一 加害者である第三者が被災労働者に支払つた慰藉料は、使用者が労働基準法に基づいて被災労働者に支払うべき災害補償の額に影響を及ぼさない。
二 労働基準法第七五条に基づく使用者の療養補償債務は、少なくとも、当該補償の事由が生じた月の末日の経過とともに履行遅滞となるものと解すべきである。
三 労働基準法第七六条に基づく使用者の休業補償債務は、少なくとも、当該休業期間の属する月の末日の経過とともに履行遅滞となるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和41年12月1日 昭和38(オ)1035
- 登載
- 民集 第20巻10号2017頁
- 参照法条
- 労働基準法84条2項,労働基準法75条,労働基準法76条,労働基準法施行規則39条,民法711条,民法412条
論点8第412条民法
一 金員貸渡の日時につき主張と認定との間に同一性が害されず当事者の主張もない事項について判断したとはいえないとされた事例
二 遅延損害金の支払を命じた点に審理不尽理由不備があるとされた事例
裁判要旨一 原告が昭和二四年九月一一日から同二五年一〇年二〇日にわたる二五口の金員消費貸借契約の成立を原因として、その貸金請求を併せてする訴訟において、右のうち一口の貸渡日時が昭和二五年九月一〇日と主張されているのに対し、被告が他の二四口の貸渡日時自体については争わず右一口の貸渡日は昭和二三年中であると主張して消滅時効を援用した場合、それが昭和二五年九月一〇日に貸し渡されたことは確認できないが、早くとも昭和二五年八、九月中に、遅くともその後の同年中に貸し渡されたことが認められるとして、時効期間満了の主張が排斥され、右一口の請求が認容されたとしても、当事者の主張と同一性を害する事実を認定して主張しない事項について判断したとはいえない。
二 期限の定めのない消費貸借において借主が履行遅滞に陥つた事実を確定することなく、漫然貸渡より後の年の一月一日以降遅延損害金の支払を命ずる判決には、審理不尽、理由不備の違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年12月26日 昭和38(オ)206
- 登載
- 集民 第70号625頁
- 参照法条
- 民訴法186条,民訴法395条1項6号,民法591条,民法412条
論点9第412条民法
一 通行人の死亡による損害が国道管理の瑕疵のため生じたものと認められた事例
二 不法行為に基づく損害賠償債務の遅滞の時期
裁判要旨一 原動機付自転車に乗つた通行人が夜間国道上を通行中、暗渠新設工事のため同国道上に横たえられた枕木に激突、転倒し、死亡した場合において右枕木の位置およびその付近の夜間照明等について原判決認定のような事情(原判決理由参照)があるときは、右通行人が多少酒気を帯びており、右工事が同国道の管理者の許可を受けない等違法のものであつても、同管理者があらかじめ右工事を中止させて国道を原状に回復させ、これを常時安全良好な状態において維持しなかつたかぎり、右死亡による損害は同国道の管理に瑕疵があつたため生じたものというべきである。
二 不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥るものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年9月4日 昭和34(オ)117
- 登載
- 民集 第16巻9号1834頁
- 参照法条
- 国家賠償法2条,国家賠償法3条,道路法32条,道路法施行令15条5号,民法412条
論点10第412条民法
一 商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二六六条ノ三第一項前段所定の損害賠償債務の履行遅滞となる時期
二 商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二六六条ノ三第一項前段所定の損害賠償債務の遅延損害金の利率
裁判要旨一 商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二六六条ノ三第一項前段所定の損害賠償債務は、履行の請求を受けた時に履行遅滞となる。
二 商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二六六条ノ三第一項前段所定の損害賠償債務の遅延損害金の利率は、年五分である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成元年9月21日 昭和59(オ)15
- 登載
- 集民 第157号635頁
- 参照法条
- 商法(昭和56年法律第74号による改正前のもの)266条ノ3,民法404条,民法412条
論点11第412条民法
一 請負人の報酬債権と注文者の瑕疵修補に代わる損害賠償債権との相殺がされた後の報酬残債務について注文者が履行遅滞による責任を負う時期
二 仮執行宣言に基づく給付金に商事法定利率による金員を付加してその支払を求める民訴法一九八条二項の申立てが認容された事例
裁判要旨一 請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負う。
二 (省略)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年7月15日 平成5(オ)2187
- 登載
- 民集 第51巻6号2581頁
- 参照法条
- 民法412条,民法506条2項,民法533条,民法634条2項,民訴法198条2項,商法514条
論点12第412条民法
火災保険普通保険約款上保険会社が保険金の支払につき遅滞の責めを負うべき時期
裁判要旨保険会社は保険契約者又は被保険者が保険の目的について損害が発生したことを通知し所定の書類を提出した日から三〇日以内に保険金を支払う、ただし、保険会社が右期間内に必要な調査を終えることができないときはこれを終えた後遅滞なく保険金を支払う旨の火災保険普通保険約款の条項は、右三〇日の経過により保険金支払の履行期が到来することを定めたものと解すべきであり、保険会社は、右期間内に必要な調査を終えることができなかったとしても、右期間経過後は保険金の支払について遅滞の責めを免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年3月25日 平成5(オ)1858
- 登載
- 民集 第51巻3号1565頁
- 参照法条
- 民法91条,民法412条,商法629条,商法665条
論点13第412条民法
請負契約の注文者が瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬全額の支払との同時履行を主張することの可否
裁判要旨請負契約の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等にかんがみ信義則に反すると認められるときを除き、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払を拒むことができ、これについて履行遅滞の責任も負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年2月14日 平成5(オ)1924
- 登載
- 民集 第51巻2号337頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法412条,民法533条,民法634条
論点14第412条民法
一 ゴルフ場建設工事中に締結されたゴルフクラブ入会契約における開場すべき債務の履行期が工事の遅延に関して予想される合理的な期間が経過した時という不確定期限であるとされた事例
二 ゴルフ場建設工事中に締結されたゴルフクラブ入会契約における開場すべき債務の履行につき不確定期限が到来していないとされた事例
三 ゴルフ場建設工事中に締結されたゴルフクラブ入会契約においてゴルフ場経営会社にゴルフ場の高低差等のコースレイアウトに関する債務の不完全履行があるとはいえないとされた例
裁判要旨一 ゴルフクラブ入会契約がゴルフ場の建設工事中である昭和六二年五月に締結されたが、右契約に基づくゴルフ場施設を利用可能な状態にした上これを会員の利用に供すべき債務の履行期を記載した契約証書が作成されておらず、募集パンフレットには完成同六三年秋予定という記載があったにすぎず、右契約当時においては平成元年に開場することが予定されていたなど判示の事実関係の下においては、右債務の履行期は、工事の進ちょく状況及び社会経済状況に照らして、右開場予定時期から工事の遅延に関して予想される合理的な期間が経過した時という不確定期限とみるべきである。
二 ゴルフ場の建設工事中である昭和六二年五月に締結されたゴルフクラブ入会契約に基づくゴルフ場施設を利用可能な状態にした上これを会員の利用に供すべき債務の履行期が、開場予定時期である平成元年から工事の遅延に関して予想される合理的な期間が経過した時という不確定期限である場合において、調整池予定地の買収ができなかったことなどが原因で工事が遅延したが、その後の努力により工事が進ちょくし、右契約を解除する旨の意思表示がされた同四年二月一日には、既に視察プレーの名目の下における営業が開始され、近々債務の本旨に従った履行がされることがほぼ確実に見込まれていたなど判示の事実関係の下においては、右意思表示の時点において右債務の履行期が到来していたとはいえない。
三 ゴルフ場の建設工事中にゴルフクラブ入会契約が締結されたが、コースレイアウトについて図面等に基づく詳細な合意がされたものではなく、募集パンフレットには、高低差一〇メートル以内のフラットなコースとする旨の記載があるが、他方、一五メートルの高低差のあるホールの断面図も記載されており、また、当初の予定は調整池予定地の買収ができなかったことなどが原因で変更されたものの、ゴルフ場完成時においては全一八ホール中過半数のホールが高低差二〇メートル未満であったなど判示の事実関係の下においては、ゴルフ場経営会社に、コースレイアウトについてできるだけ高低差が少なく全体としてフラットといい得るコースを作るという債務の不完全履行があるとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年10月14日 平成7(オ)48
- 登載
- 集民 第185号361頁
- 参照法条
- 民法第3編第2章契約,民法412条2項,民法415条
論点15第412条民法
詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務が履行遅滞となる時期
裁判要旨詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務は,履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成30年12月14日 平成30(受)44
- 登載
- 民集 第72巻6号1101頁
- 参照法条
- 民法412条3項,民法424条1項
論点16第412条民法
1 民法910条〈相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権〉に基づき価額の支払を請求する場合における遺産の価額算定の基準時
2 民法910条に基づく価額の支払債務が履行遅滞となる時期
裁判要旨1 相続の開始後認知によって相続人となった者が他の共同相続人に対して民法910条に基づき価額の支払を請求する場合における遺産の価額算定の基準時は,価額の支払を請求した時である。
2 民法
910条〈相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権〉に基づく他の共同相続人の価額の支払債務は,履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成28年2月26日 平成26(受)1312
- 登載
- 民集 第70巻2号195頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法910条 (2につき)民法412条
論点17第412条民法
1 不法行為によって死亡した被害者の損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受けるなどした場合に,上記の遺族補償年金との間で損益相殺的な調整を行うべき損害
2 不法行為によって死亡した被害者の損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受けるなどしたとして損益相殺的な調整をするに当たって,損害が塡補されたと評価すべき時期
裁判要旨1 被害者が不法行為によって死亡した場合において,その損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定したときは,損害賠償額を算定するに当たり,上記の遺族補償年金につき,その塡補の対象となる被扶養利益の喪失による損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する逸失利益等の消極損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきである。
2 被害者が不法行為によって死亡した場合において,その損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定したときは,制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,その塡補の対象となる損害は不法行為の時に塡補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 平成27年3月4日 平成24(受)1478
- 登載
- 民集 第69巻2号178頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法709条,労働者災害補償保険法16条 (2につき)民法412条
論点18第412条民法
1 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づき取締役が会社に対して支払う損害賠償金に付すべき遅延損害金の利率
2 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務が履行遅滞となる時期
裁判要旨1 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づき取締役が会社に対して支払う損害賠償金に付すべき遅延損害金の利率は,民法所定の年5分である。
2 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務は,履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成26年1月30日 平成24(受)1600
- 登載
- 集民 第246号69頁
- 参照法条
- (1,2につき)商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,会社法423条1項(1につき)民法404条,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)514条(2につき)民法412条
論点19第412条民法
1 検察官は金融商品取引法21条の2第3項にいう「当該提出者の業務若しくは財産に関し法令に基づく権限を有する者」に当たるか
2 金融商品取引法21条の2第3項にいう「虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項」の意義
3 金融商品取引法21条の2第5項にいう「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り」の意義
4 虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券につき,投資者がこれを複数回にわたってそれぞれ異なる価額で取得しこれを複数回にわたってそれぞれ異なる価額で処分した場合における,上記投資者が金融商品取引法21条の2に基づき請求することのできる額の算定方法
5 金融商品取引法21条の2に基づく損害賠償債務が遅滞に陥る時期
裁判要旨1 検察官は,金融商品取引法21条の2第3項にいう「当該提出者の業務若しくは財産に関し法令に基づく権限を有する者」に当たる。
2 金融商品取引法21条の2第3項にいう「虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項」とは,虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実をいう。
3 金融商品取引法21条の2第5項にいう「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り」とは,投資者が虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券を取得するに当たって実際に支払った額と当該取得の時点において当該虚偽記載等がなかった場合に想定される当該有価証券の市場価額との差額に相当する分の値下がりに限られず,有価証券報告書等の虚偽記載等と相当因果関係のある値下がりの全てをいう。
4 虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券につき,投資者がこれを複数回にわたってそれぞれ異なる価額で取得しこれを複数回にわたってそれぞれ異なる価額で処分した場合において,個々の取引ごとの取得と処分との対応関係の特定並びに取得価額及び処分価額の具体的な主張,立証がされていないときは,裁判所は,当該有価証券の取得価額の総額と処分価額の総額との差額をもって金融商品取引法21条の2第1項にいう「
第19条第1項〈審判相互の関係〉の規定の例により算出した額」とした上で,当該差額と同法21条の2第2項によって推定される損害額の総額とを比較し,その小さい方の金額をもって,上記投資者が同条に基づき請求することのできる額とするという算定方法によることができる。
5 金融商品取引法21条の2に基づく損害賠償債務は,損害の発生と同時に,かつ,何らの催告を要することなく,遅滞に陥る。
(3につき補足意見及び反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成24年3月13日 平成22(受)755
- 登載
- 民集 第66巻5号1957頁
- 参照法条
- (1〜5につき)金融商品取引法21条の2 (5につき)民法412条
論点20第412条民法
1 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働者災害補償保険法に基づく保険給付を受けたときに,この社会保険給付との間で損益相殺的な調整を行うべき損害
2 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働者災害補償保険法に基づく保険給付の支給がされ,又は支給されることが確定したときに,損益相殺的な調整に当たって,損害がてん補されたと評価すべき時期
裁判要旨1 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働者災害補償保険法に基づく保険給付を受けたときは,この社会保険給付については,これによるてん補の対象となる特定の損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきである。
2 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働者災害補償保険法に基づく保険給付の支給がされ,又は支給されることが確定したときには,制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,てん補の対象となる損害は,不法行為の時にてん補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整を行うべきである。
(1,2につき補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成22年10月15日 平成21(受)1932
- 登載
- 集民 第235号65頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法709条,労働者災害補償保険法22条の2,労働者災害補償保険法22条の3 (2につき)民法412条
論点21第412条民法
1 自動車損害賠償保障法72条1項後段の規定による損害のてん補額支払義務の履行期と履行遅滞
2 自動車損害賠償保障法72条1項後段の規定による損害のてん補額の算定に当たっての過失相殺と国民健康保険法58条1項の規定による葬祭費の支給額の控除との先後
裁判要旨1 自動車損害賠償保障法72条1項後段の規定による損害のてん補額支払義務は,期限の定めのない債務であり,政府が被害者から履行の請求を受けた時から履行遅滞となる。
2 自動車損害賠償保障法72条1項後段の規定による損害のてん補額の算定に当たり,被害者の過失をしんしゃくすべき場合であって,国民健康保険法58条1項の規定による葬祭費の支給額を控除すべきときは,被害者に生じた現実の損害の額から過失割合による減額をし,その残額からこれを控除する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成17年6月2日 平成16(受)29
- 登載
- 民集 第59巻5号901頁
- 参照法条
- 民法412条3項,民法722条2項,自動車損害賠償保障法施行令21条14号,自動車損害賠償保障法72条1項,自動車損害賠償保障法73条1項,国民健康保険法58条1項
論点22第412条民法
高齢者の医療の確保に関する法律による後期高齢者医療給付を行った後期高齢者医療広域連合が当該後期高齢者医療給付により代位取得した不法行為に基づく損害賠償請求権に係る債務についての遅延損害金の起算日
裁判要旨高齢者の医療の確保に関する法律による後期高齢者医療給付を行った後期高齢者医療広域連合は,その給付事由が第三者の不法行為によって生じた場合,当該第三者に対し,当該後期高齢者医療給付により代位取得した当該不法行為に基づく損害賠償請求権に係る債務について,当該後期高齢者医療給付が行われた日の翌日からの遅延損害金の支払を求めることができる。
(意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 令和元年9月6日 平成30(受)1730
- 登載
- 民集 第73巻4号419頁
- 参照法条
- 高齢者の医療の確保に関する法律58条,民法412条,民法709条
論点23第412条民法
離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務が履行遅滞となる時期
裁判要旨離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時に遅滞に陥る。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 令和4年1月28日 令和2(受)1765
- 登載
- 民集 第76巻1号78頁
- 参照法条
- 民法412条,民法709条,民法710条
論点24第413条民法
一、いわゆる仮登記担保者と仮登記に遅れて目的不動産を占有する第三者に対する右不動産の換価処分における損害賠償請求
二、目的不動産の換価処分前に被担保債権について弁済の提供を受けその受領を拒絶したいわゆる仮登記担保権者と仮登記に遅れて右不動産を賃借し占有する第三者に対する明渡請求
裁判要旨一、いわゆる仮登記担保権者は、目的不動産の換価処分前においては、自己が右不動産を使用収益することができる旨の約定がある等特段の事情のないかぎり、仮登記に遅れて右不動産を賃借し占有する第三者に対し、賃料相当の損害金の賠償を請求することができない。
二、いわゆる仮登記担保権者が、目的不動産の換価処分前に、被担保債権について適法な弁済の提供を受けその受領を拒絶しながら、換価手続の一環として、仮登記に遅れて右不動産を賃借し占有する第三者に対しその明渡を請求することは、許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年2月25日 昭和46(オ)653
- 登載
- 民集 第29巻2号112頁
- 参照法条
- 民法369条,民法413条,民法482条,民法492条,民法556条,民法709条,不動産登記法2条2号,不動産登記法7条2項
論点25第413条民法
硫黄鉱石売買契約の買主に引取義務が認められた事例
裁判要旨硫黄鉱区の採掘権を有する甲が鉱石を採掘して乙に売り渡す硫黄鉱石売買契約において、甲は、乙に対し、右契約の存続期間を通じて採掘する鉱石の全量を売り渡す約定があつたなど判示の事情がある場合には、信義則上、乙には、甲が右期間内に採掘した鉱石を引き取る義務があると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和46年12月16日 昭和40(オ)548
- 登載
- 民集 第25巻9号1472頁
- 参照法条
- 民法1条,民法413条,民法555条
論点26第413条民法
建物の賃貸人が現実に提供された賃料の受領を拒絶した場合とその後における賃料不払を理由とする契約の解除
裁判要旨建物の賃貸人が現実に提供された賃料の受領を拒絶したときは、特段の事情がないかぎり、その後において提供されるべき賃料についても、受領拒絶の意思を明確にしたものと解すべきであり、右賃貸人が賃借人の賃料の不払を理由として契約を解除するためには、単に賃料の支払を催告するだけでは足りず、その前提として、受領拒絶の態度を改め、以後賃料を提供されれば確実にこれを受領すべき旨を表示する等、自己の受領遅滞を解消させるための措置を講じなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和45年8月20日 昭和42(オ)803
- 登載
- 民集 第24巻9号1243頁
- 参照法条
- 民法413条,民法493条
論点27第413条民法
債務者は債権者の受領遅滞を理由として契約を解除できるか。
裁判要旨債務者が債権者の受領遅滞を理由として契約を解除することは、特段の事由のないかぎり、許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年12月3日 昭和40(オ)208
- 登載
- 民集 第19巻9号2090頁
- 参照法条
- 民法413条,民法541条
論点28第413条民法
過大催告の効力。
裁判要旨催告の額が多額に失しても、債権者において客観的に正しい賃料額を受領しない意思が明瞭でない場合においては、債権者は、債務者の履行の提供がないかぎり、契約を解除することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月28日 昭和38(オ)265
- 登載
- 集民 第71号419頁
- 参照法条
- 民法541条,民法413条
論点29第413条民法
一 民法第五四一条〈催告による解除〉の催告と付遅滞の要否
二 受領遅滞にある者のする催告の要件。
裁判要旨一 契約解除の前提としての催告が有効であるためには、少くとも催告と同時に相手方が遅滞に付されることを要する。
二 双務契約上の債務の受領遅滞にある者が契約解除の前提としての催告をするためには、受領遅滞を解消させた上でこれをしなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和35年10月27日 昭和31(オ)686
- 登載
- 民集 第14巻12号2733頁
- 参照法条
- 民法541条,民法413条
論点30第414条民法
一 執行吏の行なう代替執行と国家賠償法第一条第一項
二 確定判決に基づく強制執行を延期する義務の存否
裁判要旨一 執行吏が債権者の委任をうけ、いわゆ代替執行を行なつた場合には、その執行行為は国の公権力の行使に当る公務員の職務行為というべきである。
二 執行吏は、立木収去を命じた確定判決の強制執行をするにあたり、該執行を移植適期まで延期する義務を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和41年9月22日 昭和39(オ)128
- 登載
- 民集 第20巻7号1367頁
- 参照法条
- 国家賠償法1条,民法414条2項,民訴法733条
論点31第414条民法
子の引渡しを命ずる審判を債務名義とする間接強制の申立てが権利の濫用に当たるとされた事例
裁判要旨婚姻中の父母のうち父に対して長男A,二男B及び長女Cを母に引き渡すよう命ずる審判を債務名義とするAの引渡しについての間接強制の申立ては,次の(1),(2)など判示の事情の下では,権利の濫用に当たる。
(1) 上記審判を債務名義とする引渡執行の際,B及びCが母に引き渡されたにもかかわらず,A(当時9歳3箇月)については,引き渡されることを拒絶して呼吸困難に陥りそうになったため,執行を続けるとその心身に重大な悪影響を及ぼすおそれがあるとして執行不能とされた。
(2) 父及びその両親を拘束者,Aを被拘束者とする人身保護請求事件の審問期日において,A(当時9歳7箇月)は,母に引き渡されることを拒絶する意思を明確に表示し,その人身保護請求は,Aが父等の影響を受けたものではなく自由意思に基づいて父等のもとにとどまっているとして棄却された。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成31年4月26日 平成30(許)13
- 登載
- 集民 第261号247頁
- 参照法条
- 民法1条3項,民法414条1項,民法766条1項,家事事件手続法75条,家事事件手続法154条3項,民事執行法172条1項
論点32第414条民法
1 放送法64条1項の意義
2 放送法64条1項の合憲性
3 日本放送協会の放送の受信についての契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合に発生する受信料債権の範囲
4 日本放送協会の放送の受信についての契約に基づき発生する,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権の消滅時効の起算点
裁判要旨1 放送法64条1項は,日本放送協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者に対しその放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,日本放送協会からの上記契約の申込みに対して上記の者が承諾をしない場合には,日本放送協会がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め,その判決の確定によって上記契約が成立する。
2 放送法64条1項は,同法に定められた日本放送協会の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の,日本放送協会の放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めたものとして,憲法13条,21条,29条に違反しない。
3 日本放送協会の放送の受信についての契約を締結した者は受信設備の設置の月から定められた受信料を支払わなければならない旨の条項を含む上記契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合,同契約に基づき,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する。
4 日本放送協会の放送の受信についての契約に基づき発生する,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(上記契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は,上記契約成立時から進行する。
(1につき補足意見,1,2につき補足意見,1,3につき補足意見,1~4につき反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 平成29年12月6日 平成26(オ)1130
- 登載
- 民集 第71巻10号1817頁
- 参照法条
- (1~4につき) 放送法1条,放送法第3章 日本放送協会,放送法64条1項 (1,3につき) 民法414条2項ただし書,民事執行法174条1項本文 (2につき) 憲法13条,憲法21条,憲法29条 (4につき) 民法166条1項
論点33第415条民法
不動産売買契約が解除された場合の損害賠償額の予定に関する約定の解釈
裁判要旨売主の責に帰すべき履行不能により不動産売買契約が解除された場合の損害賠償額の予定に関する約定は、それが履行不能による賠償額算定の争いを避けるためにされたものであり、解除の有無によつて買主の請求しうる額に差異がない等判示の事情のもとにおいては、買主が契約を解除することなく本来の給付に代わる填補賠償を請求する場合にも適用されると解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和63年11月25日 昭和58(オ)548
- 登載
- 集民 第155号149頁
- 参照法条
- 民法415条,民法420条,民法543条,民法545条
論点34第415条民法
請負契約が請負人の責に帰すべき事由により中途で終了した場合に注文者が残工事に要した費用の賠償を求めうる範囲
裁判要旨請負契約が請負人の責に帰すべき事由により中途で終了した場合において、残工事の施工に要した費用として、注文者が請負人に賠償を請求することができるのは、右費用のうち、未施工部分に相当する請負代金額を超える部分に限られる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和60年5月17日 昭和59(オ)543
- 登載
- 集民 第145号13頁
- 参照法条
- 民法415条,民法416条,民法632条
論点35第415条民法
宿直勤務中の従業員が盗賊に殺害された事故につき会社に安全配慮義務の違背に基づく損害賠償責任があるとされた事例
裁判要旨会社が、夜間においても、その社屋に高価な反物、毛皮等を多数開放的に陳列保管していながら、右社屋の夜間の出入口にのぞき窓やインターホンを設けていないため、宿直員においてくぐり戸を開けてみなければ来訪者が誰であるかを確かめることが困難であり、そのため来訪者が無理に押し入ることができる状態となり、これを利用して盗賊が侵入し宿直員に危害を加えることのあるのを予見しえたにもかかわらず、のぞき窓、インターホン、防犯チェーン等の盗賊防止のための物的設備を施さず、また、宿直員を新入社員一人としないで適宜増員するなどの措置を講じなかつたなど判示のような事実関係がある場合において、一人で宿直を命ぜられた新入社員がその勤務中にくぐり戸から押し入つた盗賊に殺害されたときは、会社は、右事故につき、安全配慮義務に違背したものとして損害賠償責任を負うものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和59年4月10日 昭和58(オ)152
- 登載
- 民集 第38巻6号557頁
- 参照法条
- 民法415条,民法623条
論点36第415条民法
一 当座勘定取引契約において取引印として届け出られていない実印を使用して偽造された手形小切手の支払いをした銀行に過失があるとされた事例
二 債権者の従業員のした行為が債務不履行の原因となつている場合と過失相殺
裁判要旨一 銀行は、当座勘定取引契約において取引印として届け出られていない実印を用いて振り出された手形、小切手を支払うにあたつては、当該実印が右契約の締結及び取引印の届出に際し使用されていたとしても、取引先に対し支払委託の有無を確認すべき注意義務があり、これを尽くすことなく偽造手形、偽造小切手の支払をしたときは、過失の責を免れない。
二 銀行が取引印として届け出られていない実印の押捺された偽造に係る手形、小切手の支払をしたことが当座勘定取引契約に基づく債務の不履行となる場合において、右手形、小切手の偽造が右取引契約の取引先の経理担当事務員によつてされたものであり、しかも右事務員は、取引先の売掛金、買掛金の記帳、集計、小口現金払等及び取引印の押捺以外の手形、小切手の振出事務を担当し、手形、小切手用紙及び実印が保管されている金庫の番号を記憶し、かつ、その鍵を所持していたなど、判示の事情があるときには、右事務員がした手形、小切手の偽造は、債務不履行に基づく損害賠償責任及びその金額を決するにあたつて取引先と同視すべき者の有責行為として斟酌すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和58年4月7日 昭和56(オ)57
- 登載
- 民集 第37巻3号219頁
- 参照法条
- 民法415条,民法418条,民法644条
論点37第415条民法
競売手続中の他人の不動産の売主が履行期に所有権移転登記手続等の義務を履行しなかつたとしても履行遅滞の責任がないとされた事例
裁判要旨競売手続中の他人の不動産の売主が履行期に所有権移転登記手続等の義務を履行しなかつたとしても、それが競落許可決定に対し即時抗告の申立がされたことによるなど原判示のような事情がある場合においては、売主の責に帰することのできない事由によるものとして履行遅滞の責任を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和57年7月1日 昭和57(オ)328
- 登載
- 集民 第136号217頁
- 参照法条
- 民法415条,民法541条,民法560条
論点38第415条民法
手形の不渡届に対する異議申立手続の不履行を理由とする損害賠償請求事件において損害額の認定に違法があるとされた事例
裁判要旨手形の振出人が、不渡届に対する異議申立手続を怠つた銀行の債務不履行により手形金の支払を余儀なくされたため手形金相当額の損害を被つたといえるためには、右振出人が手形所持人に対して手形金の支払義務を負つていなかつたことが必要であり、したがつて、右支払義務の存否について格別の判断を加えることなく、振出人が手形金の支払を余儀なくされたことから直ちにこれと同額の損害を被つたものと認定することは違法である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和57年6月17日 昭和54(オ)1031
- 登載
- 集民 第136号89頁
- 参照法条
- 民法415条,民法416条1項,民訴法395条1項6号
論点39第415条民法
一、土地の賃借人が地上に所有する建物の抵当権を設定しその登記を経たのち第三者が賃貸人の承諾を得て土地賃借権のみを譲り受けた場合と抵当権実行後の右土地賃借権の帰すう
二、土地の賃貸人が抵当権の実行による地上建物の競落人の土地賃借権取得を承諾したことにより右抵当権の設定登記後に賃貸人の承諾を得て土地の賃借権のみを譲り受けた者が賃借人としての地位を失つた場合と賃貸人の責に帰すべき事由の有無
裁判要旨一、土地の賃借人が地上に所有する建物に抵当権を設定しその登記を経たのちに賃貸人の承諾を得て賃借人から土地の賃借権のみを譲り受けた者は、抵当権の実行により競落人が建物の所有権とともに土地の賃借権を取得したときに競落人との関係において賃借権を失い、競落人が右賃借権の取得につき賃貸人の承諾を得たときに賃貸人との関係においても賃借人の地位を失う。
二、土地の賃貸人が抵当権の実行による地上建物の競落人の土地賃借権取得を承諾したことにより、右抵当権の設定登記後に賃貸人の承諾を得て土地の賃借権のみを譲り受けた者が賃借人としての地位を失つても、これをもつて賃貸人の責に帰すべき事由によるものとすることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年3月11日 昭和48(オ)118
- 登載
- 民集 第31巻2号171頁
- 参照法条
- 民法87条2項,民法370条,民法415条,民法601条,民法612条1項
論点40第415条民法
商人間の不特定物を目的とする売買における不完全履行と代物請求権
裁判要旨商人間の不特定物を目的とする売買において、瑕疵のある物が給付された場合においても、商法五二六条一項の適用の結果、買主において契約を解除しえず、また損害の賠償をも請求しえなくなつたのちにおいては、買主は売主に対し、もはや完全な給付を請求することはできないものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年1月25日 昭和46(オ)533
- 登載
- 集民 第105号19頁
- 参照法条
- 民法415条,民法570条,商法526条
論点41第415条民法
土地の売買契約において買主が負つた公租公課の負担義務と付随義務
裁判要旨土地の売買契約において、買主が代金を五年間にわたつて分割支払い、その完済後売主が所有権移転登記をなし、その支払期間中の公租公課を買主が負担する旨約された場合には、右買主の公租公課負担義務は付随義務とはいえず、売主はこの義務不履行を理由に契約を解除することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年11月28日 昭和46(オ)1158
- 登載
- 集民 第107号265頁
- 参照法条
- 民法415条,民法541条,民法555条
論点42第415条民法
不動産の二重売買における一方の買主のための仮登記の経由と他方の買主に対する履行不能の成否
裁判要旨甲が乙に対して不動産を売り渡した場合において、所有権移転登記未了の間に、その不動産につき、丙のために売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記がなされたというだけでは、いまだ甲の乙に対する売買契約上の義務が履行不能になつたということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和46年12月16日 昭和41(オ)802
- 登載
- 民集 第25巻9号1516頁
- 参照法条
- 民法415条,民法543条
論点43第415条民法
一、運送取扱人ないし運送人の運送契約上の債務不履行に基づく賠償請求権と不法行為に基づく賠償請求権との関係
二、国際海上物品運送法一四条と運送人または荷役業者に対する不法行為に基づく損害賠償責任
裁判要旨一、運送取扱人ないし運送人の運送契約上の債務不履行に基づく賠償請求権と不法行為に基づく賠償請求権は競合し、右不法行為責任は、運送品の取扱上通常予想される事態ではなく、契約本来の目的範囲を著しく逸脱する場合にだけ限定されるものではない。
二、国際海上物品運送法一四条は運送人または荷役業者に対する不法行為に基づく損害賠償請求については適用されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和44年10月17日 昭和43(オ)58
- 登載
- 集民 第97号35頁
- 参照法条
- 民法709条,民法415条,商法766条,商法566条,国際海上物品運送法14条,国際海上物品運送法3条
論点44第415条民法
他人の権利を売買の目的とした場合の売主の担保責任と債務不履行による責任
裁判要旨他人の権利を目的とする売買の売主が、その責に帰すべき事由によつて、該権利を取得してこれを買主に移転することができない場合には、買主は、売主に対し、民法
第五六一条〈他人の権利の売買における売主の義務〉但書の適用上、担保責任としての損害賠償の請求ができないときでも、なお債務不履行一般の規定に従つて損害賠償の請求をすることができるものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和41年9月8日 昭和40(オ)210
- 登載
- 民集 第20巻7号1325頁
- 参照法条
- 民法561条,民法415条
論点45第415条民法
限定種類債務の目的物特定後における債務不履行
裁判要旨限定種類債務の目的物が当事者の合意により特定し一時買主の保管下におかれた場合でも、売主において修理を加え完成品として引き渡すことを後日に留保したときは、いまだ売買目的物の引渡しを了したものとはいえず、債務不履行責任を生じうる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和41年9月6日 昭和39(オ)718
- 登載
- 集民 第84号311頁
- 参照法条
- 民法401条,民法415条,民法570条
論点46第415条民法
一 双務契約の当事者の一方が債務の履行をしない意思を明らかにした場合と同時履行の抗弁
二 催告の特定
裁判要旨一 双務契約の当事者の一方が自己の債務の履行をしない意思を明確にした場合には、相手方が自己の債務の弁済の提供をしなくても、右当事者の一方は、自己の債務の不履行について、履行遅滞の責を免れることをえないものと解するのが相当である(昭和三八年(オ)第三二二号、同四一年三月二二日第三小法廷判決参照)。
二 特定の取引にもとづいてその目的物件の引渡を催告している以上、数量を示さなくても、その催告は適法である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和41年7月5日 昭和40(オ)1459
- 登載
- 集民 第84号13頁
- 参照法条
- 民法533条,民法415条,民法545条
論点47第415条民法
民法第五四五条第二項〈解除の効果〉の利息債務の発生と同法第五四六条第五三三条の同時履行の抗弁権の関係
裁判要旨民法
第五四五条第二項〈解除の効果〉の利息債務は、実質は不当利得返還の法理より生ずるもので、同法第五四六条第五三三条所定の同時履行の抗弁権にかかわりなく発生し、ただその債務の履行が右抗弁権の作用をこうむるにすぎないと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年9月10日 昭和40(オ)60
- 登載
- 集民 第80号271頁
- 参照法条
- 民法545条,民法546条,民法533条,民法415条,民法419条,民法703条
論点48第415条民法
家屋の明渡について現実の提供をしたものとは認めがたいとした事例。
裁判要旨本件家屋の主たる倉庫を空け、電話機を取り外して出入口を閉鎖して施錠し、その鍵および右電話機を家主の代理人に交付した事実があつても右倉庫の附属建物であるその管理室ともいうべき建物に居住占拠の状態が残つている以上、いまだ本件家屋の明渡について、現実の提供をしたものとは認めがたいと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年6月1日 昭和37(オ)101
- 登載
- 集民 第79号265頁
- 参照法条
- 民法415条,民法483条
論点49第415条民法
免許を受けるべきであるにかかわらずこれを受けていない自動車運送事業の経営により得べかりし営業利益の喪失を理由とする損害賠償請求を認容した事例。
裁判要旨自動車の売主が債務の履行を遅滞したため、買主が右自動車を運送事業の用に供し、運送賃を取得することができなかつた場合には、その買主が当該運送事業の免許を受けるべきであるにかかわらずこれを受けていないときでも、債務不履行により得べかりし営業利益喪失の損害をこうむつたものとして、売主に対しその賠償を請求することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年10月29日 昭和37(オ)1300
- 登載
- 民集 第18巻8号1823頁
- 参照法条
- 民法415条,民法416条,民法708条,道路運送法4条1項
論点50第415条民法
一 立木の二重売買と債務不履行の成立時期
二 売主の債務不履行のときは内入金の倍額を買主に支払い、買主の債務不履行のときは内入金を放棄するとの約定と賠償額の予定
三 予定賠償額の請求と契約解除の要否
裁判要旨一 売買の目的物である立木を売主が買主以外の者に売却して伐採搬出されたときは、そのときに買主に対する債務不履行が成立する。
二 売主が債務不履行のときは内入金の倍額を買主に支払い、買主の債務不履行のときは内入金を放棄するとの約定は、債務不履行の場合に当事者間の契約関係を清算しようとするための損害賠償を予定したものと解することができる。
三 右のような場合に、売主が買主の債務不履行を理由として損害賠償を請求するためには、契約を解除する必要はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年12月26日 昭和37(オ)11
- 登載
- 集民 第63号1099頁
- 参照法条
- 民法415条,民法557条,民法420条,民法541条
論点51第415条民法
不特定物の売買における目的物受領後の不完全履行による契約解除の可否。
裁判要旨不特定物の売買において給付されたものに瑕疵のあることが受領後に発見された場合、買主がいわゆる瑕疵担保責任を問うなど、瑕疵の存在を認識した上で右給付を履行として容認したと認められる事情が存しない限り、買主は、取替ないし追完の方法による完全履行の請求権を有し、また、その不完全な給付が売主の責に帰すべき事由に基づくときは、債務不履行の一場合として、損害賠償請求権および契約解除権をも有するものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和36年12月15日 昭和32(オ)1222
- 登載
- 民集 第15巻11号2852頁
- 参照法条
- 民法415条,民法541条,民法570条
論点52第415条民法
一 供託金額の不足が弁済提供および供託の効力に影響を及ぼさない事例
二 売渡担保の目的物返還義務不履行による損害額算定の時期
裁判要旨一 消費貸借上の債務弁済のため提供供託された元利合計金一五万三一四〇円が、正当な元利合計額に金一、三〇〇余円不足するとしても、この一事により弁済提供および供託の効果を否定することはできない。
二 債権者が弁済期到来前売渡担保の目的物である山林の立木を伐採したため、弁済により右山林の所有権が債務者に復帰した場合立木の引渡不能によつて債務者の被るべき損害の額は、右不能が確定的となつた伐採時の価格を基準として算出すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和35年12月15日 昭和33(オ)483
- 登載
- 民集 第14巻14号3060頁
- 参照法条
- 民法492条,民法494条,民法415条
論点53第415条民法
一 債務者の妻の過失と夫の債務不履行上の責任
二 債務者の責に帰すべき事由により履行不能を原因とする損害賠償の請求と契約解除の要否
裁判要旨一 家屋賃借人の妻の失火により、右家屋が滅失したときは、賃借人たる夫の責に帰すべき事由により賃借物の返還義務が履行不能になつたものと認めるべきである。
二 債務者の責に帰すべき事由によつて履行不能を生じたときは、賃借人は、契約を解除することなくして填補賠償の請求をすることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年4月19日 昭和28(オ)848
- 登載
- 民集 第9巻5号556頁
- 参照法条
- 民法415条,民法543条
論点54第415条民法
一 医療過誤訴訟において鑑定のみに依拠してされた顆粒球減少症の起因剤の認定に経験則違反の違法があるとされた事例
二 医療過誤訴訟において鑑定のみに依拠してされた顆粒球減少症の発症日の認定に経験則違反の違法があるとされた事例
三 顆粒球減少症の副作用を有する薬剤を長期間継続的に投与された患者に薬疹の可能性のある発疹を認めた場合における開業医の義務
裁判要旨一 顆粒球減少症の副作用を有する複数の薬剤の投与を原因として患者が同症にかかった場合において、鑑定は、右薬剤はいずれも起因剤と断定するには難点があり、発症時期に最も近接した時期に投与されたネオマイゾンが最も疑われるが確証がなく、複数の右薬剤の相互作用により同症が発症することはあり得るものの本件においては右相互作用による発症は医学的に具体的に証明されていないとするにとどまり、本件において右相互作用により同症が発症したという蓋然住を否定するものではなく、証拠として提出された医学文献には同症の病因論は未完成な部分が多く個々の症例において起因剤を決定することは困難なことが多い旨が記載されているなど判示の事実関係の下においては、右鑑定のみに依拠してネオマイゾンを唯一単独の起因剤と認定することには、経験則違反の違法がある。
二 顆粒球減少症の副作用を有する複数の薬剤の投与を原因として患者が同症にかかった場合において、鑑定は、四月一四日より前の患者の病歴に同症発症を確認し得る検査所見及び症候がないこと並びに同日以降の患者の症状の急激な進行から推測して、発症日を四月一三日から一四日朝とするが、これは患者の同症発症日をどこまでさかのぼり得るかについて科学的、医学的見地から確実に証明できることだけを述べたにすぎないものであり、他方、同症発症を確認し得る検査所見及び症候がないのは医師が同症特有の症状の有無に注意を払った問診及び診察をしなかった結果にすぎず、患者の症状の進行が急激であったと断ずるには疑いを生じさせる事情も存在するなど判示の事実関係の下においては、右鑑定のみに依拠して発症日は四月一三日から一四日朝と認定することには、経験則違反の違法がある。
三 開業医は、顆粒球減少症の副作用を有する多種の薬剤を長期間継続的に投与された患者について薬疹の可能性のある発疹を認めた場合においては、自院又は他の診療機関において患者が必要な検査、治療を速やかに受けることができるように相応の配慮をすべき義務がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年2月25日 平成7(オ)1205
- 登載
- 民集 第51巻2号502頁
- 参照法条
- 民法415条,民法709条,民訴法185条,民訴法394条
論点55第415条民法
市立保育園の保母の業務と同人に発症した頸肩腕症候群との間の因果関係を否定したことが経験則に反するとされた事例
裁判要旨市立保育園の保母が、勤務開始後三年目には肩や背中の痛みを、その約一年半後には慢性的肩凝りや右腕等の筋肉の痛みを感ずるようになり、その状態のまま新設保育園に主任保母として着任し、保育開始準備等に集中的に当たった後一、二歳児六名を一人で担当するようになり、その年の夏季合同保育期間中に調理を担当した際右背中に激痛を感じ、その翌月頸肩腕症候群と診断されて通院を開始したが、その後も、業務負担が重くなったことはあっても軽減されることはなく、症状も若干の起伏を伴いながら続いたなど判示の事実関係の下においては、他に明らかに原因となった要因が認められない限り、右保母の業務と右頸肩腕症候群との間の因果関係を否定することは、経験則に反する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年11月28日 平成5(行ツ)85
- 登載
- 集民 第186号269頁
- 参照法条
- 民法415条,民訴法185条
論点56第415条民法
一 雇用者の安全配慮義務違反によりじん肺にかかったことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効の起算点
二 慰謝料額の認定に違法があるとされた事例
裁判要旨一 雇用者の安全配慮義務違反によりじん肺にかかったことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効は、じん肺法所定の管理区分についての最終の行政上の決定を受けた時から進行する。
二 炭鉱労務に従事してじん肺にかかった者又はその相続人が、雇用者に対し、財産上の損害の賠償を別途請求する意思のない旨を訴訟上明らかにして慰謝料の支払を求めた場合に、じん肺が重篤な進行性の疾患であって、現在の医学では治療が不可能とされ、その症状も深刻であるなど判示の事情の下において、その慰謝料額を、じん肺法所定の管理区分に従い、死者を含む管理四該当者につき一二〇〇万円又は一〇〇〇万円、管理三該当者につき六〇〇万円、管理二該当者につき三〇〇万円とした原審の認定には、その額が低きに失し、著しく不相当なものとして、経験則又は条理に反する違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成6年2月22日 平成1(オ)1667
- 登載
- 民集 第48巻2号441頁
- 参照法条
- じん肺法4条,じん肺法13条,民法166条1項,民法415条,民法710条,民訴法394条
論点57第415条民法
一 甲会社が同社のすべての発行済み株式を有する乙会社の株式を取得することと商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二一〇条
二 甲会社が同社のすべての発行済み株式を有する乙会社の株式の売買により損失を被った場合と乙会社に生じる損害
裁判要旨一 甲会社が同社のすべての発行済み株式を有する乙会社の株式を取得することは、商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二一〇条にいう自己株式の取得に当たる。
二 甲会社が同社のすべての発行済み株式を有する乙会社の指示により同社の株式を売買して買入価格と売渡価格の差額に相当する損失を被った場合、乙会社の取締役は、特段の事情のない限り、その全額を乙会社に生じた損害として、賠償の責めに任ずる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成5年9月9日 平成1(オ)1400
- 登載
- 民集 第47巻7号4814頁
- 参照法条
- 商法(昭和56年法律第74号による改正前のもの)210条,商法254条3項,商法266条1項5号,民法415条,民法644条
論点58第415条民法
証券会社の従業員の無断売買によつて生じた差損などを顧客の信用取引口座から曳き落とす処理がされた場合と顧客の損害発生の有無
裁判要旨証券会社の従業員が顧客の信用取引口座を利用して無断売買をし、その結果生じた差損などに相当する金員をその顧客の信用取引口座から引き落とす処理がされたとしても、顧客に右金員相当の損害が生じたものということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成4年2月28日 昭和63(オ)386
- 登載
- 集民 第164号113頁
- 参照法条
- 民法415条,民法644条,商法552条,証券取引法49条
論点59第415条民法
元請企業につき下請企業の労働者に対する安全配慮義務が認められた事例
裁判要旨下請企業の労働者が元請企業の作業場で労務の提供をするに当たり、元請企業の管理する設備工具等を用い、事実上元請企業の指揮監督を受けて稼働し、その作業内容も元請企業の従業員とほとんど同じであったなど原判示の事実関係の下においては、元請企業は、信義則上、右労働者に対し安全配慮義務を負う。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成3年4月11日 平成1(オ)516
- 登載
- 集民 第162号295頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法415条,民法623条,民法632条
論点60第415条民法
建物賃貸人の失火による火災で焼失した賃貸建物内の衣料品類の損害について賃貸人の債務不履行責任を認めた事例
裁判要旨木造二階建ての建物の一部を衣料品類販売店舗として賃貸し、建物の火気は主として賃貸人が住居として使用していたその余の部分にあり、賃貸人の使用部分からの失火によって賃貸部分に蔵置保管されていた衣料品類にも被害が及ぶことが当然に予測されていたなど、判示の事実関係の下において、賃貸人は、その使用部分の火気の取扱いの不注意による失火により賃貸部分に蔵置保管されていた衣料品類を焼失させたときは、衣料品類の損害について信義則上債務不履行による賠償義務を負担する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成3年10月17日 昭和62(オ)1408
- 登載
- 集民 第163号365頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法415条,民法601条
論点61第415条民法
親会社が,自社及び子会社等のグループ会社における法令遵守体制を整備し,法令等の遵守に関する相談窓口を設け,現に相談への対応を行っていた場合において,親会社が子会社の従業員による相談の申出の際に求められた対応をしなかったことをもって,信義則上の義務違反があったとはいえないとされた事例
裁判要旨Y社が,法令等の遵守に関する社員行動基準を定め,自社及び子会社である甲社,乙社等のグループ会社から成る企業集団の業務の適正等を確保するための体制を整備し,その一環として,上記グループ会社の事業場内で就労する者から法令等の遵守に関する相談を受ける相談窓口を設け,上記の者に対し,上記相談窓口に係る制度を周知してその利用を促し,現に上記相談窓口における相談への対応を行っていた場合において,甲社の従業員が,上記相談窓口に対し,甲社の元契約社員であって退職後は派遣会社を介してY社の別の事業場内で勤務していたXのために,Xの元交際相手である乙社の従業員AがXの自宅の近くに来ているようなので事実確認等の対応をしてほしいとの相談の申出をしたときであっても,次の(1)~(3)など判示の事情の下においては,Y社において上記申出の際に求められたXに対する事実確認等の対応をしなかったことをもって,Y社のXに対する損害賠償責任を生じさせることとなる信義則上の義務違反があったとはいえない。
(1) 上記体制の仕組みの具体的内容は,Y社において上記相談窓口に対する相談の申出をした者の求める対応をすべきとするものであったとはうかがわれない。
(2) 上記申出に係る相談の内容は,Xが退職した後に上記グループ会社の事業場外で行われた行為に関するものであり,Aの職務執行に直接関係するものとはうかがわれない。
(3) 上記申出の当時,Xは,既にAと同じ職場では就労しておらず,上記申出に係るAの行為が行われてから8箇月以上経過していた。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成30年2月15日 平成28(受)2076
- 登載
- 集民 第258号43頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法415条,民法709条
論点62第415条民法
運航委託契約により船舶の運航を受託した者につき船長に対する安全配慮義務が認められた事例
裁判要旨運航委託契約により船舶の運航を受託した者が、船舶を自己の業務の中に一体的に従属させ、船内事故の被害者で直接の契約関係にない船長に対し指揮監督権を行使する立場にあり、船長かち実質的に労務の供給を受けていたという事実関係の下においては、右受託者は、船長に対し信義則上の安全配慮義務を負う。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成2年11月8日 昭和62(オ)1047
- 登載
- 集民 第161号191頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法415条,民法643条,民法656条
論点63第415条民法
匿名組合契約の営業者が新たに設立される株式会社に出資するなどし,同社が営業者の代表者等から売買により株式を取得した場合において,営業者に匿名組合員に対する善管注意義務違反はないとした原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨匿名組合契約の営業者であるY1社が,その営業として,新たに設立される株式会社A社の資本金の8割を出資し,A社の発行する新株予約権付社債を引き受け,A社がY1社の代表取締役であるY2及びその弟であるY3から売買によりB社株式を取得した場合において,次の(1)及び(2)など判示の事情の下では,上記の出資,引受け及び売買に係る匿名組合員であるXの承諾の有無について審理判断することなく,Y1社に善管注意義務違反はないとした原審の判断には,違法がある。
(1) 上記売買は,Y1社らがA社設立時に予定し,A社の代表取締役であるY3において実行したものであり,上記の出資,引受け及び売買はY1社による一連の行為といえるところ,上記一連の行為は,これによりY1社に生ずる損益が匿名組合契約に基づき全部Xに分配されるものであり,Y2及びY3とXとの間に実質的な利益相反関係が生ずるものであった。
(2) 上記売買の売主であるY2及びY3が買主であるA社の取締役や代表取締役であること,B社株式に市場価格はなくXが売買代金額の決定に関与する機会もないこと,上記の出資及び引受けの合計額は1億8000万円であり,上記売買の代金額は1億5000万円であって,いずれも匿名組合契約に基づくXの出資額である3億円の2分の1以上に及ぶものであることに照らすと,上記一連の行為はXの利益を害する危険性の高いものであった。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成28年9月6日 平成27(受)766
- 登載
- 集民 第253号119頁
- 参照法条
- 商法535条,民法415条
論点64第415条民法
拘置所に収容された被勾留者に対する国の安全配慮義務の有無
裁判要旨国は,拘置所に収容された被勾留者に対して,その不履行が損害賠償責任を生じさせることとなる信義則上の安全配慮義務を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成28年4月21日 平成26(受)755
- 登載
- 民集 第70巻4号1029頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法415条,刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律(平成18年法律第58号による廃止前のもの)40条,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律62条1項2号
論点65第415条民法
債務整理に係る法律事務を受任した弁護士が,特定の債権者の債権につき消滅時効の完成を待つ方針を採る場合において,上記方針に伴う不利益等や他の選択肢を説明すべき委任契約上の義務を負うとされた事例
裁判要旨債務整理に係る法律事務を受任した弁護士が,当該債務整理について,特定の債権者に対する残元本債務をそのまま放置して当該債務に係る債権の消滅時効の完成を待つ方針を採る場合において,上記方針は,債務整理の最終的な解決が遅延するという不利益があるほか,上記債権者から提訴される可能性を残し,一旦提訴されると法定利率を超える高い利率による遅延損害金も含めた敗訴判決を受ける公算が高いというリスクを伴うものである上,回収した過払金を用いて上記債権者に対する残債務を弁済する方法によって最終的な解決を図ることも現実的な選択肢として十分に考えられたなど判示の事情の下では,上記弁護士は,委任契約に基づく善管注意義務の一環として,委任者に対し,上記方針に伴う上記の不利益やリスクを説明するとともに,上記選択肢があることも説明すべき義務を負う。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成25年4月16日 平成24(受)651
- 登載
- 民集 第67巻4号1049頁
- 参照法条
- 民法415条,民法644条
論点66第415条民法
労働契約上の安全配慮義務違反による損害と弁護士費用
裁判要旨労働者が,使用者の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求するため訴えを提起することを余儀なくされ,訴訟追行を弁護士に委任した場合には,その弁護士費用は,事案の難易,請求額,認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り,上記安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害というべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成24年2月24日 平成23(受)1039
- 登載
- 集民 第240号111頁
- 参照法条
- 民法415条,民法416条,労働契約法5条
論点67第415条民法
契約の一方当事者が契約の締結に先立ち信義則上の説明義務に違反して契約の締結に関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合の債務不履行責任の有無
裁判要旨契約の一方当事者が,当該契約の締結に先立ち,信義則上の説明義務に違反して,当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には,上記一方当事者は,相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき,不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別,当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはない。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成23年4月22日 平成20(受)1940
- 登載
- 民集 第65巻3号1405頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法415条
論点68第415条民法
土地の賃貸人及び転貸人が,転借人所有の地上建物の根抵当権者に対し,借地権の消滅を来すおそれのある事実が生じたときは通知する旨の条項を含む念書を差し入れた場合において,賃貸人及び転貸人が地代不払の事実を土地の転貸借契約の解除に先立ち根抵当権者に通知する義務を負い,その不履行を理由とする根抵当権者の損害賠償請求が信義則に反するとはいえないとされた事例
裁判要旨土地の賃貸人及び転貸人が,転借人所有の地上建物の根抵当権者に対し,借地権の消滅を来すおそれのある事実が生じたときは通知する旨の条項を含む念書を差し入れた場合において,次の(1)〜(3)など判示の事実関係の下では,賃貸人及び転貸人は,上記念書の内容等につき根抵当権者から直接説明を受けておらず,上記念書を差し入れるに当たり根抵当権者から対価の支払を受けていなかったとしても,地代不払の事実を土地の転貸借契約の解除に先立ち根抵当権者に通知する義務を負い,その不履行を理由とする根抵当権者の損害賠償請求が信義則に反するとはいえない。
(1) 上記念書には,地代不払など借地権の消滅を来すおそれのある事実が生じた場合には,賃貸人及び転貸人が根抵当権者にこれを通知し,借地権の保全に努める旨が明記されていた。
(2) 賃貸人及び転貸人は,事前に上記念書の内容を十分に検討する機会を与えられてこれに署名押印又は記名押印をした。
(3) 転貸人は不動産の賃貸借を目的とする会社であり,賃貸人は転貸人の代表者及びその子である。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成22年9月9日 平成21(受)1661
- 登載
- 集民 第234号385頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法415条,民法第3編第2章 契約
論点69第415条民法
当直の看護師らが抑制具であるミトンを用いて入院中の患者の両上肢をベッドに拘束した行為が,診療契約上の義務に違反せず,不法行為法上違法ともいえないとされた事例
裁判要旨当直の看護師らが抑制具であるミトン(手先の丸まった長い手袋様のもので緊縛用のひもが付いているもの)を用いて入院中の患者の両上肢をベッドに拘束した行為は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記患者が転倒,転落により重大な傷害を負う危険を避けるため緊急やむを得ず行われた行為であって,診療契約上の義務に違反するものではなく,不法行為法上違法ともいえない。
(1) 上記患者は,上記行為が行われた当日,せん妄の状態で,深夜頻繁にナースコールを繰り返し,車いすで詰所に行ってはオムツの交換を求め,大声を出すなどした上,興奮してベッドに起き上がろうとする行動を繰り返していたものであり,当時80歳という高齢で,4か月前に他病院で転倒して骨折したことがあったほか,10日ほど前にもせん妄の状態で上記と同様の行動を繰り返して転倒したことがあった。
(2) 看護師らは,約4時間にもわたって,上記患者の求めに応じて汚れていなくてもオムツを交換し,お茶を飲ませるなどして落ち着かせようと努めたが,上記患者の興奮状態は一向に収まらず,また,その勤務態勢からして,深夜,長時間にわたり,看護師が上記患者に付きっきりで対応することは困難であった。
(3) 看護師が上記患者の入眠を確認して速やかにミトンを外したため,上記行為による拘束時間は約2時間であった。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成22年1月26日 平成20(受)2029
- 登載
- 民集 第64巻1号219頁
- 参照法条
- 民法415条,民法709条
論点70第415条民法
精神科病院に入院中の患者が消化管出血による吐血等の際に吐物を誤嚥して窒息死した場合において担当医に転送義務違反等の過失があるとした原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨精神科病院に入院中の患者が消化管出血による吐血,嘔吐の際に吐物を誤嚥して窒息死した場合において,当該患者が,上記吐血,嘔吐の約1時間20分前の時点で,発熱,脈微弱,酸素飽和度の低下,唇色不良といった呼吸不全の症状を呈していたとしても,(1)上記の時点で,当該患者に頻脈及び急激な血圧低下は見られず,酸素吸入等が行われた後は当該患者に口唇及び爪のチアノーゼや四肢冷感はなく,体動も見られたこと,(2)上記の時点で,当該患者に循環血液量減少性ショックの原因になるような多量の消化管出血を疑わせる症状があったとはうかがわれないこと,(3)病理解剖の結果に照らせば当該患者が感染性ショックに陥っていたとも考え難いことなど判示の事実関係の下では,当該患者の意識レベルを含む全身状態等について確定することなく,上記の時点で当該患者がショックに陥り自ら気道を確保することができない状態にあったとして,このことを前提に,担当医に転送義務又は気道確保義務に違反した過失があるとした原審の判断には,経験則に反する違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成19年4月3日 平成18(受)1547
- 登載
- 集民 第224号35頁
- 参照法条
- 民法415条,民訴法247条
論点71第415条民法
Xの開発,製造したゲーム機を順次XからY,YからAに販売する旨の契約が締結に至らなかった場合においてYがXに対して契約準備段階における信義則上の注意義務違反を理由とする損害賠償責任を負うとされた事例
裁判要旨XがAの意向を受けて開発,製造したゲーム機を順次XからY,YからAに継続的に販売する旨の契約が,締結の直前にAが突然ゲーム機の改良要求をしたことによって締結に至らなかった場合において,Yが,開発等の続行に難色を示すXに対し,Aから具体的な発注を受けていないにもかかわらず,ゲーム機200台を発注する旨を口頭で約したり,具体的な発注内容を記載した発注書及び条件提示書を交付するなどし,ゲーム機の売買契約が確実に締結されるとの過大な期待を抱かせてゲーム機の開発,製造に至らせたなど判示の事情の下では,Yは,Xに対する契約準備段階における信義則上の注意義務に違反したものとして,これによりXに生じた損害を賠償する責任を負う。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成19年2月27日 平成17(受)869
- 登載
- 集民 第223号343頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法415条,民法709条
論点72第415条民法
1 建築会社の担当者が顧客に対し融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後にその敷地の一部売却により返済資金を調達する計画を提案した際に上記計画には建築基準法にかかわる問題があることを説明しなかった点に説明義務違反があるとされた事例
2 建築会社の担当者と共に顧客に対し融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後にその敷地の一部売却により返済資金を調達する計画を説明した銀行の担当者に上記計画には建築基準法にかかわる問題があることについての説明義務違反等がないとした原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨1 建築会社の担当者が,顧客に対し,銀行から融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後,敷地として建築確認を受けた土地の一部を売却することにより融資の返済資金を調達する計画を提案し,顧客が,上記計画に沿って銀行から融資を受けて建物を建築したが,その後,上記土地の一部を予定どおり売却することができず,上記融資の返済資金を調達することができなくなったところ,上記計画には,上記土地の一部の売却によりその余の敷地部分のみでは上記建物が容積率の制限を超える違法な建築物となり,また,上記土地の一部の買主がこれを敷地として建物を建築する際には,敷地を二重に使用することとなって建築確認を直ちには受けられない可能性があるという問題があったなど判示の事実関係の下においては,上記問題を認識しながらこれを顧客に説明しなかった上記担当者には,信義則上の説明義務違反がある。
2 銀行の担当者が,顧客に対し,融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後,敷地として建築確認を受けた土地の一部を売却することにより融資の返済資金を調達する計画を提案した建築会社の担当者と共に,上記計画を説明し,顧客が,上記計画に沿って銀行から融資を受けて建物を建築したが,その後,上記土地の一部を予定どおり売却することができず,上記融資の返済資金を調達することができなくなったところ,上記計画には,上記土地の一部の買主がこれを敷地として建物を建築する際,敷地を二重に使用することとなって建築確認を直ちには受けられない可能性があることなどの問題があったなど判示の事実関係の下においては,顧客が,原告として,銀行の担当者は顧客に対して上記土地の一部の売却について取引先に働き掛けてでも確実に実現させる旨述べたなどの事情があったと主張しているにもかかわらず,上記事情の有無を審理することなく,上記担当者について,上記問題を含め上記土地の一部の売却可能性を調査し,これを顧客に説明すべき信義則上の義務がないとした原審の判断には,違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成18年6月12日 平成16(受)1219
- 登載
- 集民 第220号403頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法1条2項,民法415条,民法709条,建築基準法52条 (1につき)民法632条 (2につき)民法587条
論点73第415条民法
冠状動脈バイパス手術を受けた患者が術後に腸管え死となって死亡した場合において担当医師に腸管え死が発生している可能性が高いと診断し直ちに開腹手術を実施すべき注意義務を怠った過失があるとされた事例
裁判要旨冠状動脈バイパス手術を受けた患者が術後に腸管え死となって死亡した場合において,(1)当該患者は,腹痛を訴え続け,鎮痛剤を投与されてもその腹痛が強くなるとともに,高度のアシドーシスを示し,腸管のぜん動こう進薬を投与されても腸管閉そくの症状が改善されない状況にあったこと,(2)当時の医学的知見では,患者が上記のような状況にあるときには,腸管え死の発生が高い確率で考えられ,腸管え死であるときには,直ちに開腹手術を実施し,え死部分を切除しなければ,救命の余地はないとされていたこと,(3)当該患者は,開腹手術の実施によってかえって生命の危険が高まるために同手術の実施を避けることが相当といえるような状況にはなかったこと,(4)当該患者の症状は次第に悪化し,経過観察によって改善を見込める状態にはなかったことなど判示の事情の下では,担当医師には,当該患者に腸管え死が発生している可能性が高いと診断し,直ちに開腹手術を実施し,腸管にえ死部分があればこれを切除すべき注意義務を怠った過失がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成18年4月18日 平成16(受)1147
- 登載
- 集民 第220号111頁
- 参照法条
- 民法415条,民法709条
論点74第415条民法
高等学校の生徒が課外のクラブ活動としてのサッカーの試合中に落雷により負傷した事故について引率者兼監督の教諭に落雷事故発生の危険が迫っていることを予見すべき注意義務の違反があるとされた事例
裁判要旨高等学校の生徒が,課外のクラブ活動としてのサッカーの試合中に落雷により負傷した場合において,その当時の文献には,運動場に居て雷鳴が聞こえるときには,遠くても直ちに屋内に避難すべきであるとの趣旨の記載が多く存在していること,上記試合の開始直前ころには,黒く固まった暗雲が立ち込め,雷鳴が聞こえ,雲の間で放電が起きるのが目撃されていたことなど判示の事実関係の下では,引率者兼監督の教諭は,落雷事故発生の危険が迫っていることを具体的に予見することが可能であったというべきであり,また,予見すべき注意義務を怠ったものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年3月13日 平成17(受)76
- 登載
- 集民 第219号703頁
- 参照法条
- 民法415条,民法709条,民法715条
論点75第415条民法
入院患者がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染した後に死亡した場合につき担当医師が早期に抗生剤バンコマイシンを投与しなかったことに過失があるとはいえないとした原審の判断に経験則又は採証法則に反する違法があるとされた事例
裁判要旨入院患者がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染した後に死亡した場合につき,鑑定書には,担当医師が早期に抗生剤バンコマイシンを投与しなかったことは当時の医療水準にかなうものではないという趣旨の指摘をするものと理解できる記載があることがうかがわれ,医師の意見書は,担当医師が早期に上記抗生剤を投与しなかったことについて当時の医療水準にかなうものであるという趣旨を指摘するものであるか否かが明らかではないなど判示の事情の下において,上記の鑑定書や意見書に基づいて,担当医師が早期に上記抗生剤を投与しなかったことに過失があるとはいえないとした原審の判断には,経験則又は採証法則に反する違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年1月27日 平成15(受)1739
- 登載
- 集民 第219号361頁
- 参照法条
- 民法415条,民法709条,民訴法247条
論点76第415条民法
1 雇用者の安全配慮義務違反によりり患したじん肺によって死亡したことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効の起算点
2 じん肺による死亡に基づく損害額の算定においてじん肺法所定の管理区分に相当する病状に基づく損害賠償請求権の消滅時効が完成しているとしても当該消滅時効に係る損害額の控除を要しない場合
裁判要旨1 雇用者の安全配慮義務違反によりり患したじん肺によって死亡したことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効は,死亡の時から進行する。
2 じん肺による死亡に基づく損害額の算定において,じん肺法所定の管理区分に相当する病状に基づく損害賠償請求権の消滅時効が完成しているとしても,上記死亡に基づく損害を,上記病状に基づく損害とは別個のものであるとし,じん肺による死亡それ自体に係る損害として評価してその額を定める場合には,その額から上記消滅時効に係る損害額を控除しなければならないものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成16年4月27日 平成13(受)1759
- 登載
- 集民 第214号119頁
- 参照法条
- 民法166条1項,民法415条,民法416条,じん肺法4条
論点77第415条民法
1 火災保険契約の申込者が同契約に附帯して地震保険契約を締結するか否かの意思決定をするに当たり保険会社側からの地震保険の内容等に関する情報の提供や説明に不十分,不適切な点があったことを理由とする慰謝料請求の可否
2 火災保険契約の申込者が同契約に附帯して地震保険契約を締結するか否かの意思決定をするに当たり保険会社側からの地震保険の内容等に関する情報の提供や説明に不十分な点があったとしても慰謝料請求権の発生を肯認し得る違法行為と評価すべき特段の事情が存するものとはいえないとされた事例
裁判要旨1 火災保険契約の申込者は,特段の事情が存しない限り,同契約に附帯して地震保険契約を締結するか否かの意思決定をするに当たり保険会社側からの地震保険の内容等に関する情報の提供や説明に不十分,不適切な点があったことを理由として,慰謝料を請求することはできない。
2 火災保険契約の申込者が,同契約を締結するに当たり,同契約に附帯して地震保険契約を締結するか否かの意思決定をする場合において,火災保険契約の申込書には「地震保険は申し込みません」との記載のある欄が設けられ,申込者が地震保険に加入しない場合にはこの欄に押印をすることとされていること,当該申込者が上記欄に自らの意思に基づき押印をしたこと,保険会社が当該申込者に対し地震保険の内容等について意図的にこれを秘匿したという事実はないことなど判示の事情の下においては,保険会社側に,火災保険契約の申込者に対する地震保険の内容等に関する情報の提供や説明において不十分な点があったとしても,慰謝料請求権の発生を肯認し得る違法行為と評価すべき特段の事情が存するものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成15年12月9日 平成14(受)218
- 登載
- 民集 第57巻11号1887頁
- 参照法条
- 商法629条,民法415条,民法709条,民法710条,保険募集の取締に関する法律11条1項
論点78第415条民法
土地の売買契約の買主が売主に対し債務の履行を求めるための訴訟の提起等に係る弁護士報酬を債務不履行に基づく損害賠償として請求することの可否
裁判要旨土地の売買契約の買主は,当該売買契約において売主が負う土地の引渡しや所有権移転登記手続をすべき債務の履行を求めるための訴訟の提起・追行又は保全命令若しくは強制執行の申立てに関する事務を弁護士に委任した場合であっても,売主に対し,これらの事務に係る弁護士報酬を債務不履行に基づく損害賠償として請求することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 令和3年1月22日 令和1(受)861
- 登載
- 集民 第265号95頁
- 参照法条
- 民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)415条,民法416条1項,民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)416条2項,民法555条,民法560条
論点79第416条民法
一 リース物件の売主がリース会社からの借主に対し性能不良を理由として賠償すべき額を算定するに当たり損益相殺すべき借主の利益の額につき判示した事例
二 リース物件の性能不良のため借主がリース会社に対する売主にその引取方を要求したのちに右リース物件が水害により使用不能となつた場合についてその損失を売主において負担すべきものとした事例
裁判要旨一 リース会社に対し会計機を売却した者が、リース契約によりリース会社から右会計機を借り受けた者に対し、直接その性能を保証し、保証した性能を欠くときは借主の受ける損害を賠償する旨の損害担保契約を結んだ場合において、右会計機が保証された性能を欠くため借主の業務に適合せず、そのため借主が売主にその引取方を要求して使用を中止したなど原判示の事実関係があるときは、売主が借主に対して賠償すべきリース料相当の損害から損益相殺すべき借主の利益の額は、借主が右会計機の使用を中止するまでの間であつて、売主の協力を得て利用できた期間のリース料相当額によつて算出するのが相当である。
二 リース会社に対し会計機を売却した者が、リース契約によりリース会社から右会計機を借り受けた者に対し、直接その性能を保証し、保証した性能を欠くときは借主の受ける損害を賠償する旨の損害担保契約を結んだ場合において、右会計機が借主の手元で水害にあい使用不能となつても、右会計機が保証された性能を欠くため借主の業務に適合せず、そのため右の水害前すでに借主から売主にその引取方を要求していたなど原判示の事実関係のもとでは、右会計機の使用不能の事実は売主が借主に賠償すべき損害の算定に当たり考慮すべきでなく、右水害による損失は売主において負担すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和56年4月9日 昭和53(オ)1339
- 登載
- 集民 第132号531頁
- 参照法条
- 民法416条,民法540条,民法545条1項,民法548条,民法559条,民法566条,民法570条
論点80第416条民法
債務不履行による損害の一部の賠償請求権を被保全権利とする仮差押が他の損害について消滅時効を中断しないとされた事例
裁判要旨店舗を賃貸する旨の約定の不履行による損害のうち営業上の逸失利益の賠償請求権を被保全権利としてした仮差押は、通常の借家権価格相当の損害賠償請求権については、消滅時効を中断しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年11月28日 昭和45(オ)121
- 登載
- 集民 第107号241頁
- 参照法条
- 民法147条2号,民法154条,民法416条,民訴法737条
論点81第416条民法
一、企業主が生命または身体を侵害されたことにより生ずる財産上の損害額の算定基準
二、附帯上告が上告理由と同一の理由に基づく場合とその提起期間
裁判要旨一、企業主が生命または身体を侵害されたため企業に従事することができなくなつたことによつて生ずる財産上の損害額は、特段の事情のないかぎり、企業収益中に占める企業主の労務その他企業に対する個人的寄与に基づく収益部分の割合によつて算定すべきである。
二、附帯上告が上告理由と同一の理由に基づく場合において上告審で口頭弁論が開かれたときは、該附帯上告は右口頭弁論の終結時までに提起されなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和43年8月2日 昭和37(オ)611
- 登載
- 民集 第22巻8号1525頁
- 参照法条
- 民法709条,民法416条1項,民訴法396条,民訴法374条
論点82第416条民法
一 賃貸人の承諾をえた賃借権の譲渡による旧賃借人が賃貸借関係から離脱した旨の判断については、当事者の主張を要するか
二 所有者兼賃貸人からする賃借人に対する損害賠償の請求について同人の占有関係を確定しないでこれを排斥することが適法とされた事例
裁判要旨一 賃貸人の承諾をえた賃借権の譲渡による旧賃借人が賃貸借関係から離脱した旨の判断については、当事者の主張を要しない。けだし、これは、適法な賃借権の譲渡の事実から生ずる法律上の効果にすぎないからである。
二 所有者兼賃貸人から賃借人に対する損害賠償の請求は、賃貸借の終了による原状回復義務の債務不履行にもとづくものであると解せられる場合には、その終了が認められない以上、賃借人の占有関係を確定しないで、右請求を排斥しても、違法ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和41年12月16日 昭和41(オ)798
- 登載
- 集民 第85号685頁
- 参照法条
- 民訴法186条,民訴法39条,民法613条,民法416条
論点83第416条民法
不動産売買契約において義務不履行の場合の手付金の不返還又は倍額支払の定めと共に特別の損害を被った当事者は損害賠償請求ができる旨を定めた約定の意義
裁判要旨不動産売買契約において、買主の義務不履行の場合に手付金を返還せず、売主の義務不履行の場合に手付金の倍額を支払う旨の定めと共に、「上記以外に特別の損害を被った当事者の一方は、相手方に違約金又は損害賠償の支払を求めることができる。」旨の約定がされた場合、右約定に基づいて賠償請求することのできる損害は、特段の事情がない限り、相手方の債務不履行によって通常生ずべき損害であると特別の事情によって生じた損害であるとを問わない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年2月25日 平成6(オ)669
- 登載
- 集民 第181号351頁
- 参照法条
- 民法416条,民法420条,民法557条
論点84第416条民法
一 一時的に我が国に滞在し将来出国が予定される外国人の逸失利益の算定方法
二 不法残留外国人の労災事故による逸失利益の算定に当たり我が国における就労可能期間を事故の約五箇月後まで勤めた会社を退社した日の翌日から三年間を超えて認めなかった原審の認定判断が不合理ではないとされた事例
三 損害賠償額を過少に算定した違法があるとしてされた上告の上告理由書提出期間経過後にこれを過大に算定した違法があるとしてされた附帯上告の適否
裁判要旨一 一時的に我が国に滞在し将来出国が予定される外国人の事故による逸失利益を算定するに当たっては、予測される我が国での就労可能期間内は我が国での収入等を基礎とし、その後は想定される出国先での収入等を基礎とするのが合理的であり、我が国における就労可能期間は、来日目的、事故の時点における本人の意思、在留資格の有無、在留資格の内容、在留期間、在留期間更新の実績及び蓋然性、就労資格の有無、就労の態様等の事実的に及び規範的な諸要素を考慮して、これを認定するのが相当である。
二 短期滞在の在留資格で我が国に入国し、在留期間経過後も不法に残留して就労していた外国人が、労災事故により後遺障害を残す負傷をし、事故後も国内に残留し事故の二〇日後から約五箇月後までの間は製本会社で就労するなどして収入を得ているが、最終的には退去強制の対象とならざるを得ず、特別に在留が合法化され退去強制を免れ得るなどの事情は認められないという判示の事実関係の下においては、右外国人の逸失利益の算定に当たり、我が国における就労可能期間を同人が事故後に勤めた右製本会社を退社した日の翌日から三年間を超えるものとは認められないとした原審の認定判断は、不合理とはいえない。
三 損害賠償額を過少に算定した違法があるとしてされた上告の上告理由書提出期間経過後に、これを過大に算定した違法があるとしてされた附帯上告は、不適法である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年1月28日 平成5(オ)2132
- 登載
- 民集 第51巻1号78頁
- 参照法条
- 民法416条,民法709条,民訴法372条,民訴法396条,民訴規則58条,民訴規則57条
論点85第416条民法
一 交通事故の被害者がその後に第二の交通事故により死亡した場合に最初の事故の後遺障害による財産上の損害の額の算定に当たり被害者の死亡を考慮することの許否
二 交通事故の被害者が事故後に死亡した場合に後遺障害による財産上の損害の額の算定に当たり死亡後の生活費を控除することの許否
裁判要旨一 交通事故の被害者がその後に第二の交通事故により死亡した場合、最初の事故の後遺障害による財産上の損害の額の算定に当たっては、死亡の事実は就労可能期間の算定上考慮すべきものではない。
二 交通事故の被害者が事故後に死亡した場合、後遺障害による財産上の損害の額の算定に当たっては、事故と被害者の死亡との間に相当因果関係がある場合に限り、死亡後の生活費を控除することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成8年5月31日 平成5(オ)1958
- 登載
- 民集 第50巻6号1323頁
- 参照法条
- 民法416条,民法709条
論点86第416条民法
仮差押解放金に充てた借入金に対する利息及び自己資金に対する法定利率による金員と違法な仮差押命令の申立てにより債務者に通常生ずべき損害
裁判要旨不動産の仮差押命令の申立て及びその執行が債務者に対する不法行為となる場合において、債務者が仮差押解放金を供託してその執行の取消しを求めるため、金融機関から資金を借り入れ、あるいは自己の資金をもってこれに充てることを余儀なくされたときは、仮差押解放金の供託期間中に債務者が支払った右借入金に対する通常予測し得る範囲内の利息及び右自己資金に対する法定利率の割合に相当する金員は、右不法行為により債務者に通常生ずべき損害に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成8年5月28日 平成7(オ)531
- 登載
- 民集 第50巻6号1301頁
- 参照法条
- 民法416条,民法709条
論点87第416条民法
売買契約の目的物に対する仮差押命令の申立てが違法である場合において売主が違約金支払による損害を被ることを債権者において予見することができたとされた事例
裁判要旨建物について代金一億円の売買契約が締結された後、違法な申立てにより、売主を債務者として右建物に対する仮差押命令が発せられて仮差押えの登記がされたため、売主が右契約の履行をすることができなくなり買主に違約金を支払ったことにより一〇〇〇万円相当の損害を被った場合には、債権者が、右申立ての時点において、売主が右建物を競売により代金四五二一万円で買い受けたことを知っており、売主が転売の意思を有すること及び売主が転売により少なくとも一三五〇万円の利益を得ることを知ることができたなど判示の事実関係の下においては、債権者は、右仮差押、えにより売主が売買契約を履行できずに一〇〇〇万円程度の違約金を負担せざるを得なくなることをも知ることができたというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成8年5月28日 平成7(オ)839
- 登載
- 集民 第179号71頁
- 参照法条
- 民法416条,民法709条
論点88第416条民法
後遺障害による逸失利益の算定に当たり事故後の別の原因による被害者の死亡を考慮することの許否
裁判要旨交通事故の被害者が後遺障害により労働能力の一部を喪失した場合における逸失利益の算定に当たっては、事故後に別の原因により被害者が死亡したとしても、事故の時点で、死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成8年4月25日 平成5(オ)527
- 登載
- 民集 第50巻5号1221頁
- 参照法条
- 民法416条,民法709条
論点89第416条民法
建物の賃借人の失火により右建物が全焼してその敷地の使用借権を喪失した賃貸人が賃借人に請求することのできる損害
裁判要旨建物の賃借人の失火により右建物が全焼してその敷地の使用借権を喪失した賃貸人は、賃借人に対し、右建物の焼失による損害として、焼失時の建物の本体の価格と土地使用に係る経済的利益に相当する額とを請求することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成6年10月11日 平成3(オ)825
- 登載
- 集民 第173号133頁
- 参照法条
- 民法416条,民法593条
論点90第416条民法
違法な仮差押命令の申立てと債務者がその後に債務者と第三債務者との間で新たな取引が行われなくなったことにより喪失したと主張する得べかりし利益の損害との間に相当因果関係がないとされた事例
裁判要旨債権の仮差押命令の申立てが債務者に対する不法行為となる場合において,上記仮差押命令の申立ての後に債務者と第三債務者との間で新たな取引が行われなくなったとしても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,上記不法行為と債務者がその後に債務者と第三債務者との間で新たな取引が行われなくなったことにより喪失したと主張する得べかりし利益の損害との間に相当因果関係があるということはできない。
(1) 債務者は,1年4箇月間に7回にわたり第三債務者との間で商品の売買取引を行ったが,両者の間で商品の売買取引を継続的に行う旨の合意があったことはうかがわれず,債務者において両者間の商品の売買取引が将来にわたって反復継続して行われるものと期待できるだけの事情があったとはいえない。
(2) 上記仮差押命令の執行は,上記仮差押命令が第三債務者に送達された日の5日後に取り消され,その頃,第三債務者に対してその旨の通知がされており,第三債務者が債務者に新たな商品の発注を行わない理由として上記仮差押命令の執行を特に挙げていたという事情もうかがわれない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成31年3月7日 平成29(受)1372
- 登載
- 集民 第261号87頁
- 参照法条
- 民法416条,民法709条
論点91第416条民法
精神神経科の医師の患者に対する言動と上記患者が上記言動に接した後にPTSD(外傷後ストレス障害)と診断された症状との間に相当因果関係があるということはできないとされた事例
裁判要旨精神神経科の医師が,過去に知人から首を絞められるなどの被害を受けたことのある患者に対し,人格に問題があり,病名は「人格障害」であると発言するなどした後,上記患者が,精神科の他の医師に対し,頭痛,集中力低下等の症状を訴え,上記の言動を再外傷体験としてPTSD(外傷後ストレス障害)を発症した旨の診断を受けたとしても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,上記の言動と上記症状との間に相当因果関係があるということはできない。
(1) 上記の言動は,それ自体がPTSDの発症原因となり得る外傷的な出来事に当たるものではないし,上記患者がPTSD発症のそもそもの原因となった外傷体験であるとする上記被害と類似し,又はこれを想起させるものでもない。
(2) PTSDの発症原因となり得る外傷体験のある者は,これとは類似せず,また,これを想起させるものともいえない他の重大でないストレス要因によってもPTSDを発症することがある旨の医学的知見が認められているわけではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成23年4月26日 平成21(受)733
- 登載
- 集民 第236号497頁
- 参照法条
- 民法416条,民法709条
論点92第416条民法
店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った営業利益相当の損害について,賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期以降に被った損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできないとされた事例
裁判要旨ビルの店舗部分を賃借してカラオケ店を営業していた賃借人が,同店舗部分に発生した浸水事故に係る賃貸人の修繕義務の不履行により,同店舗部分で営業することができず,営業利益相当の損害を被った場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,遅くとも賃貸人に対し損害賠償を求める本件訴えが提起された時点においては,賃借人がカラオケ店の営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を執ることなく発生する損害のすべてについての賠償を賃貸人に請求することは条理上認められず,賃借人が上記措置を執ることができたと解される時期以降における損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできない。
(1) 賃貸人が上記修繕義務を履行したとしても,上記ビルは,上記浸水事故時において建築から約30年が経過し,老朽化して大規模な改修を必要としており,賃借人が賃貸借契約をそのまま長期にわたって継続し得たとは必ずしも考え難い。
(2) 賃貸人は,上記浸水事故の直後に上記ビルの老朽化を理由に賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしており,同事故から約1年7か月が経過して本件訴えが提起された時点では,上記店舗部分における営業の再開は,実現可能性の乏しいものとなっていた。
(3) 賃借人が上記店舗部分で行っていたカラオケ店の営業は,それ以外の場所では行うことができないものとは考えられないし,上記浸水事故によるカラオケセット等の損傷に対しては保険金が支払われていた。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成21年1月19日 平成19(受)102
- 登載
- 民集 第63巻1号97頁
- 参照法条
- 民法416条1項,民法606条1項
論点93第416条民法
課税処分の違法を理由とする国家賠償請求訴訟の提起及び追行に係る弁護士費用が当該処分と相当因果関係のある損害とされた事例
裁判要旨地方税の賦課決定を受けた者が,その税額等を納付した上で同決定について審査請求をし,裁決がされないまま約1年2か月が経過した後に当該賦課決定の違法を理由として国家賠償請求訴訟を提起したところ,ほどなく課税庁が当該賦課決定を取り消し,過誤納金の還付等が行われたなど判示の事実関係の下においては,当該訴訟の提起及び追行に係る弁護士費用のうち相当と認められる額の範囲内のものは,当該賦課決定と相当因果関係のある損害に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成16年12月17日 平成16(受)633
- 登載
- 集民 第215号975頁
- 参照法条
- 国家賠償法1条1項,民法416条,地方税法2条,地方税法17条,地方税法17条の4
論点94第416条民法
不法行為によって扶養者が死亡した場合における被扶養者の将来の扶養利益喪失による損害額の算定方法
裁判要旨不法行為によって扶養者が死亡した場合における被扶養者の将来の扶養利益喪失による損害額は、扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、扶養を要する状態が存続すべき期間などの具体的事情に応じて算定すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成12年9月7日 平成11(受)94
- 登載
- 集民 第199号477頁
- 参照法条
- 民法416条,民法709条,民法877条
論点95第416条民法
一 医師の不作為と患者の死亡との間の因果関係の存否の判断と患者が適切な診療行為を受けていたとした場合の生存可能期間の認定
二 医師が肝硬変の患者につき肝細胞がんを早期に発見するための検査を実施しなかった注意義務違反と患者の右がんによる死亡との間の因果関係を否定した原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨一 医師が注意義務に従って行うべき診療行為を行わなかった不作為と患者の死亡との間の因果関係は、医師が右診療行為を行っていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度のがい然性が証明されれば肯定され、患者が右診療行為を受けていたならば生存し得たであろう期間を認定するのが困難であることをもって、直ちには否定されない。
二 肝硬変の患者が後に発生した肝細胞がんにより死亡した場合において、医師が、右患者につき当時の医療水準に応じた注意義務に従って肝細胞がんを早期に発見すべく適切な検査を行っていたならば、遅くとも死亡の約六箇月前の時点で外科的切除術の実施も可能な程度の大きさの肝細胞がんを発見し得たと見られ、右治療法が実施されていたならば長期にわたる延命につながる可能性が高く、他の治療法が実施されていたとしてもやはり延命は可能であったと見られるとしながら、仮に適切な診療行為が行われていたとしてもどの程度の延命が期待できたかは確認できないとして、医師の検査に関する注意義務違反と患者の死亡との間の因果関係を否定した原審の判断には、違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成11年2月25日 平成8(オ)2043
- 登載
- 民集 第53巻2号235頁
- 参照法条
- 民法416条,民法709条
論点96第416条民法
交通事故の被害者が事故のため介護を要する状態となった後に別の原因により死亡した場合に死亡後の期間に係る介護費用を右交通事故による損害として請求することの可否
裁判要旨交通事故の被害者が事故のため介護を要する状態となった後に別の原因により死亡した場合には、死亡後の期間に係る介護費用を右交通事故による損害として請求することはできない。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成11年12月20日 平成10(オ)583
- 登載
- 民集 第53巻9号2038頁
- 参照法条
- 民法416条,民法709条
論点97第416条民法
1 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合に,同逸失利益は定期金による賠償の対象となるか
2 交通事故に起因する後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当たり被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることの要否
3 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合に,同逸失利益が定期金による賠償の対象となるとされた事例
裁判要旨1 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において,不法行為に基づく損害賠償制度の目的及び理念に照らして相当と認められるときは,同逸失利益は,定期金による賠償の対象となる。
2 交通事故に起因する後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当たっては,事故の時点で,被害者が死亡する原因となる具体的事由が存在し,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り,就労可能期間の終期より前の被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることを要しない。
3 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において,同人が事故当時4歳の幼児で,高次脳機能障害という後遺障害のため労働能力を全部喪失し,同逸失利益の現実化が将来の長期間にわたるなど判示の事情の下では,同逸失利益は,定期金による賠償の対象となる。
(1,2につき補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和2年7月9日 平成30(受)1856
- 登載
- 民集 第74巻4号1204頁
- 参照法条
- (1~3につき)民法417条,民法709条,民法722条1項,民訴法117条 (2につき)民法416条
論点98第417条民法
一 公立学校における教師の教育活動と国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」
二 損害賠償請求権者が一時金による支払を訴求している場合と定期金による支払を命ずる判決の許否
裁判要旨一 国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれる。
二 損害賠償請求権者が訴訟上一時金による支払を求めている場合には、定期金による支払を命ずる判決をすることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和62年2月6日 昭和59(オ)1058
- 登載
- 集民 第150号75頁
- 参照法条
- 国家賠償法1条1項,民法417条,民法722条1項
論点99第418条民法
職権による過失相殺と過失の立証責任
裁判要旨民法
第四一八条〈過失相殺〉による過失相殺は、債務者の主張がなくても、裁判所が職権ですることができるが、債権者の過失となるべき事実については、債務者において立証責任を負う。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日 昭和43(オ)650
- 登載
- 民集 第22巻13号3454頁
- 参照法条
- 民法418条
論点100第418条民法
債務不履行による損害賠償につき債権者に過失があつた場合の賠償額算定方法。
裁判要旨債務不履行による損害賠償につき、債権者に過失があるとしてこれを斟酌して損害賠償額を算定する場合、必ずしも損害額を折半して算定しなければならないものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年7月3日 昭和36(オ)1246
- 登載
- 集民 第61号459頁
- 参照法条
- 民法418条
論点101第418条民法
当事者が損害賠償の額を予定した場合における過失相殺の可否
裁判要旨当事者が損害賠償の額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これをしんしゃくすべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成6年4月21日 平成2(オ)1456
- 登載
- 集民 第172号379頁
- 参照法条
- 民法418条,民法420条1項
論点102第418条民法
労働者に過重な業務によって鬱病が発症し増悪した場合において,使用者の安全配慮義務違反等に基づく損害賠償の額を定めるに当たり,当該労働者が自らの精神的健康に関する一定の情報を使用者に申告しなかったことをもって過失相殺をすることができないとされた事例
裁判要旨労働者に過重な業務によって鬱病が発症し増悪した場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,使用者の安全配慮義務違反等に基づく損害賠償の額を定めるに当たり,当該労働者が自らの精神的健康に関する一定の情報を使用者に申告しなかったことをもって過失相殺をすることはできない。
(1) 当該労働者は,鬱病発症以前の数か月に休日や深夜を含む相応の時間外労働を行い,その間,最先端の製品の製造に係るプロジェクトの工程で初めて技術担当者のリーダーになってその職責を担う中で,業務の期限や日程を短縮されて督促等を受け,上記工程の技術担当者を理由の説明なく減員された上,過去に経験のない異種の製品の開発等の業務も新たに命ぜられるなど,その業務の負担は相当過重であった。
(2) 上記情報は,神経科の医院への通院,その診断に係る病名,神経症に適応のある薬剤の処方等を内容とし,労働者のプライバシーに属する情報であり,人事考課等に影響し得る事柄として通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される性質の情報であった。
(3) 上記(1)の過重な業務が続く中で,当該労働者は,同僚から見ても体調が悪い様子で仕事を円滑に行えるようには見えず,頭痛等の体調不良が原因であると上司に伝えた上で欠勤を繰り返して重要な会議を欠席し,それまでしたことのない業務の軽減の申出を行い,産業医にも上記欠勤の事実等を伝え,使用者の実施する健康診断でも頭痛,不眠,いつもより気が重くて憂鬱になる等の症状を申告するなどしていた。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成26年3月24日 平成23(受)1259
- 登載
- 集民 第246号89頁
- 参照法条
- 民法418条,民法722条2項
論点103第419条民法
国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(昭和二八年条約第一七号。同四二年条約第一一号による改正前のもの)二二条二項〈住所〉所定の運送人の責任限定と遅延損害金
裁判要旨運送人が国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(昭和二八年条約第一七号。同四二年条約第一一号による改正前のもの)
二二条二項〈住所〉所定の限定責任の範囲で損害賠償義務を負う場合、これに対する遅延損害金については右規定による限定を受けない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和52年6月28日 昭和51(オ)112
- 登載
- 民集 第31巻4号511頁
- 参照法条
- 国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(昭和28年条約第17号。同42年条約11号による改正前のもの)22条2項,国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(昭和28年条約第17号。同42年条約11号による改正前のもの)24条1項,商法514条,民法419条
論点104第419条民法
一、裁判所が労働基準法一一四条の附加金の支払を命じるまでに予告手当の支払を完了した場合と附加金の支払を命じることの可否
二、商人である使用者が労働者に対して負う賃金債務の遅延損害金の利率
三、労働基準法一一四条による附加金の支払義務の履行遅滞による損害金の利率
裁判要旨一、使用者に労働基準法二〇条の違反があつても、裁判所が同法一一四条の附加金の支払を命じるまでに予告手当の支払を完了したときは、裁判所は附加金の支払を命じることはできない。
二、商人である使用者が労働者に対して負う賃金債務の遅延損害金の利率は商事法定利率によるべきである。
三、労働基準法一一四条による附加金の支払義務の履行遅滞による損害金の利率は民事法定利率によるべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和51年7月9日 昭和48(オ)682
- 登載
- 集民 第118号249頁
- 参照法条
- 労働基準法114条,商法4条,商法503条,商法514条,民法404条,民法419条
論点105第419条民法
利息制限法所定の制限をこえる利息の定めのある金銭消費貸借において遅延損害金について特約のない場合と遅延損害金の率
裁判要旨利息制限法所定の制限をこえる利息の定めのある金銭消費貸借において遅延損害金について特約のない場合には、遅延損害金は、同法一条一項所定の利率にまで減縮される利息と同率に減縮される。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年2月25日 昭和49(オ)577
- 登載
- 集民 第114号221頁
- 参照法条
- 民法419条1項,利息制限法1条1項
論点106第419条民法
金銭債務の不履行による損害賠償と弁護士費用
裁判要旨債権者は、金銭を目的とする債務の不履行による損害賠償として、債務者に対し弁護士費用その他の取立費用を請求できない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和48年10月11日 昭和45(オ)851
- 登載
- 集民 第110号231頁
- 参照法条
- 民法419条
論点107第419条民法
適法な抗告理由とは認められないとして特別抗告が却下された事例
裁判要旨抗告人と相手方との間には、抗告人が相手方の著作に対する検定という方式を通して相手方の有する表現の自由を糊限したという法律関係が存在する旨の原決定の判示は、抗告人および相手方の判示主張事実を前提とすれば右法律関係が存在することとなるとしているものにすぎず、本件検定が相手方の表現の自由を侵害している旨を原審みずからが判断したものではないから、原審が右のような判断をしたものであるとして原決定の違憲をいう抗告理由は、その前提を欠くに帰し、特別抗告適法の理由とは認められず、右抗告は不適法として却下すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和46年12月17日 昭和44(ク)376
- 登載
- 集民 第104号737頁
- 参照法条
- 民法312条,民法419条ノ2
論点108第419条民法
利息制限法所定の制限をこえる利息の定のある金銭消費貸借において遅延損害金について特約のない場合と遅延損害金の率
裁判要旨利息制限法所定の制限をこえる利息の定のある金銭消費貸借において遅延損害金について特約のない場合には、遅延損害金は、同法第一条第一項所定の利率にまで減縮される利息と同率に減縮されると解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和43年7月17日 昭和40(オ)959
- 登載
- 民集 第22巻7号1505頁
- 参照法条
- 民法419条1項,利息制限法1条1項,利息制限法4条1項
論点109第419条民法
一、任意に支払われた法定の制限をこえる利息・損害金と弁済充当の順位に関する特約がある場合の充当関係
二、法定の制限をこえて支払われた利息・損害金を残存元本等に充当するには債務者からその旨の抗弁が提出されることを要するか
三、法定の制限をこえる利息を支払つた連帯債務者は他の連帯債務者に対して制限超過の利息相当金を求償することができるか
四、利息について法定の制限をこえる約定があるが遅延損害金については約定のない貸金債権と民法第四一九条第一項但書および利息制限法第四条第一項の適用の有無
裁判要旨一、債権者と債務者間に数口の貸金債権が存在し、弁済充当の順序について特約が存在する場合において、債務者が利息制限法所定の制限をこえる利息を支払つたときは、右超過部分に対する弁済は、右特約の趣旨に従つて次順位に充当されるべき債務で有効に存在するものに充当されるものと解すべきである。
(反対意見がある)
二、裁判所は、利息制限法所定の制限をこえて任意に支払われた利息・損害金の存在することが弁論にあらわれ、これを確定した以上、当事者から右制限超過分を残存元本等に充当すべき旨の特別の申立ないし抗弁が提出されなくても、右弁済充当関係を判断することができる。
三、連帯債務者の一人が利息制限法所定の制限をこえる利息を支払つても、他の連帯債務者に対して右制限をこえる利息相当金を求償することはできない。
四、金銭を目的とする消費貸借上の利息について利息制限法第一条第一項の利率の制限をこえる約定があるが、遅延損害金の約定がない場合には、遅延損害金についても利息制限法第一条の制限額にまで減縮され、その限度で支払を求めうるにすぎない。
(反対意見がある)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年10月29日 昭和42(オ)967
- 登載
- 民集 第22巻10号2257頁
- 参照法条
- 利息制限法1条,利息制限法2条,利息制限法4条,民法419条,民法442条,民法491条
論点110第419条民法
利息制限法超過の約定利率による遅延利息を任意に支払つた場合と返還請求の許否
裁判要旨利息制限法(旧法)第二条超過の約定利率による遅延利息を債務者が任意に支払つたときは、右超過部分の返還を請求することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和30年2月22日 昭和28(オ)290
- 登載
- 民集 第9巻2号209頁
- 参照法条
- 民法419条1項,利息制限法(旧法)2条
論点111第419条民法
一 土地収用法一三三条所定の訴訟における補償額についての審理判断の方法
二 被収用者が土地収用法一三三条所定の訴訟において補償金増額分に対する収用の時期以降の法定利率相当の金員を請求することの可否
裁判要旨一 土地収用法一三三条所定の損失補償に関する訴訟において、裁判所は、収用委員会の補償に関する認定判断に裁量権の逸脱濫用があるかどうかを審理判断するのではなく、裁決時点における正当な補償額を客観的に認定し裁決に定められた補償額が右認定額と異なるときは、これを違法とし、正当な補償額を確定すべきである。
二 被収用者は、土地収用法一三三条所定の損失補償に関する訴訟において、正当な補償額と権利取得裁決に定められた補償額との差額のみならず、右差額に対する裁決に定められた権利取得の時期からその支払済みまで民法所定の年五分の利率に相当する金員を請求することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年1月28日 平成5(行ツ)11
- 登載
- 民集 第51巻1号147頁
- 参照法条
- 土地収用法48条1項,土地収用法71条,土地収用法88条,土地収用法133条,民法404条,民法419条
論点112第420条民法
違約手附金流しの意思表示と契約解除の要否並びに効果
裁判要旨違約手附金の約定が契約関係を清算する趣旨でされた場合においては、手附金受領者は相手方の違約を理由にあらかじめ契約解除の手続を経ることなく手附金流しとしてこれを確定的に自己に帰属させることができるとともに特段の事情のない限り、右告知によつて契約関係も当然に終了する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和54年9月6日 昭和53(オ)1075
- 登載
- 集民 第127号375頁
- 参照法条
- 民法420条,民法541条,民法557条
論点113第420条民法
自動車の割賦販売契約が自動車の登録後引渡前に買主の割賦代金支払義務の不履行により解除された場合と登録による自動車の減価相当額の損害賠償
裁判要旨自動車の割賦販売契約が自動車の登録後引渡前に買主の割賦代金支払義務の不履行により解除された場合には、割賦販売法六条一号の規定を適用すべきではなく、しかも、登録による自動車の減価相当額の損害は同法三号所定の「契約の締結及び履行のために通常要する費用の額」にあたらないので、登録減価相当額の損害金の賠償請求は認められない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和52年7月12日 昭和52(オ)215
- 登載
- 集民 第121号91頁
- 参照法条
- 割賦販売法6条,民法420条
論点114第420条民法
代物弁済に関する合意が停止条件付代物弁済契約でなく代物弁済の予約と解された事例
裁判要旨貸金債務を負担するに際し、抵当権を設定するとともに、またはこれに付加して代物弁済に関する契約を締結した場合において、右貸金債務について利息の約定のほかに、右利息の不支払を条件として期限の利益を失い、爾後約定利率に従つた遅延損害金を支払う旨の約定が存在するときは、右代物弁済に関する合意は停止条件付代物弁済契約ではなく、債権者において期限の到来後予約完結権の行使を必要とする代物弁済の予約と解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日 昭和42(オ)1423
- 登載
- 集民 第93号967頁
- 参照法条
- 民法482条,民法369条,民法420条
論点115第420条民法
自動車の割賦売買契約における違約金の特約が民法第九〇条により無効といえないとされた事例。
裁判要旨自動車の割賦売買契約で、割賦金遅滞のときは契約を解除され、買主は自動車を返還する外、売買代金相当額の違約金を支払うものとする特約がされていても、該特約を一概に民法第九〇条により無効とすることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年5月21日 昭和38(オ)1347
- 登載
- 集民 第79号125頁
- 参照法条
- 民法420条,民法90条,割賦販売法6条
論点116第420条民法
貸金の遅延損害金の約定が公序良俗に反しないとされた事例。
裁判要旨貸金の遅延損害金を日歩一〇〇円につき三〇銭と約定したからといつて、直ちに右約定が公序良俗に反するとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年1月26日 昭和38(オ)63
- 登載
- 集民 第77号137頁
- 参照法条
- 民法90条,民法420条
論点117第420条民法
損害賠償の予定たる性質を有する違約手附の約定と認められた事例。
裁判要旨原判示(原判決参照)事実関係のもとにおける売買契約に付随する手附に関する特約は、損害賠償の予定たる性質を有する違約手附の約定と解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年7月16日 昭和38(オ)1300
- 登載
- 集民 第74号619頁
- 参照法条
- 民法420条,民法557条
論点118第420条民法
一 控訴審で請求併合の態様が変更されたため認容の請求に変更を生じた場合と第一審判決取消の要否。
二 損害賠償額の予定の特約を記載して振り出された約束手形における右特約の効力。
裁判要旨一 第一審では甲乙両請求が選択的に併合されたため甲請求のみが認容されたが、控訴審では乙請求を第一次的請求、甲請求を予備的請求とすることに併合の態様が変更されたため乙請求のみを認容する場合には、甲請求を認容した第一審判決は、当然に失効するものと解すべきであるから、これを取り消すことを要しない。
二 損害賠償額の予定の特約を記載して振り出された約束手形においては、右特約は、振出人と受取人との間において、民法上の効力を生ずるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和39年4月7日 昭和37(オ)1148
- 登載
- 民集 第18巻4号520頁
- 参照法条
- 民訴法227条,民訴法232条,民訴法386条,手形法75条,民法420条
論点119第420条民法
違約手附金倍戻の請求と契約解除の要否。
裁判要旨違約手附金の約定が契約関係を清算する趣旨のものである場合は、右違約手形附金を交付した者が相手方の違約を理由として手附金倍戻を請求するためには、あらかじめ契約解除の手続を経ることを要しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和38年9月5日 昭和37(オ)880
- 登載
- 民集 第17巻8号832頁
- 参照法条
- 民法420条,民法541条,民法557条
論点120第420条民法
専願等を資格要件としない大学の推薦入学試験に合格した者が入学年度開始後に在学契約を解除した場合において,いわゆる授業料等不返還特約が有効とされた事例
裁判要旨専願等を資格要件としない大学の平成18年度の推薦入学試験に合格し,初年度に納付すべき範囲内の授業料等を納付して,当該大学との間で納付済みの授業料等は返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した者が,入学年度開始後である平成18年4月5日に同契約を解除した場合において,学生募集要項に,一般入学試験の補欠者とされた者につき4月7日までに補欠合格の通知がない場合は不合格となる旨の記載があり,当該大学では入学年度開始後にも補欠合格者を決定することがあったなどの事情があっても,上記授業料等は,上記解除に伴い当該大学に生ずべき平均的な損害を超えるものではなく,上記解除との関係では,上記特約は,すべて有効である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成22年3月30日 平成21(受)1232
- 登載
- 集民 第233号353頁
- 参照法条
- 消費者契約法9条,民法420条,学校教育法6条
論点121第420条民法
外国語会話教室の受講契約の解除に伴う受講料の清算について定める約定が特定商取引に関する法律49条2項1号に定める額を超える額の金銭の支払を求めるものとして無効であるとされた事例
裁判要旨特定商取引に関する法律41条1項1号所定の特定継続的役務提供契約に該当する外国語会話教室の受講契約中に,受講者が受講開始後に契約を解除した際の受講料の清算について定める約定が存する場合において,(1)受講者は,契約の締結に当たり,登録するポイント数が多くなるほど安くなるポイント単価を定める料金規定に従い受講料をあらかじめ支払ってポイントを登録し,登録したポイントを使用して1ポイントにつき1回の授業を受けるものとされているところ,上記料金規定においては,登録ポイント数に応じて一つのポイント単価が定められており,受講者が提供を受ける各個別役務について異なった対価額が定められているわけではないこと,(2)上記約定の内容は,使用したポイント数に,上記料金規定に定める各登録ポイント数のうち使用したポイント数以下でそれに最も近いものに対応するポイント単価を乗ずるなどして,受講料から控除される使用済ポイントの対価額を算定する旨を定めるもので,上記約定に従って算定される使用済ポイントの対価額は,契約の締結に当たって登録されたポイント数に対応するポイント単価によって算定される使用済ポイントの対価額よりも常に高額となることなど判示の事情の下では,上記約定は,同法49条2項1号に定める額を超える額の金銭の支払を求めるものとして無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成19年4月3日 平成17(受)1930
- 登載
- 民集 第61巻3号967頁
- 参照法条
- 特定商取引に関する法律41条1項1号,特定商取引に関する法律49条1項,特定商取引に関する法律49条2項1号,民法420条
論点122第420条民法
いわゆる鍼灸学校の入学試験に合格し当該鍼灸学校との間で納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した者が入学年度の始まる数日前に同契約を解除した場合において同特約が消費者契約法9条1号により無効とされた事例
裁判要旨いわゆる鍼灸学校の平成14年度の入学試験に合格し,当該鍼灸学校との間で,納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した者が,入学年度の始まる前の平成14年3月27日ころに同契約を解除した場合において,(1)一般に鍼灸学校の入学試験の受験者において,他の鍼灸学校や大学,専修学校を併願受験することが想定されていないとはいえず,鍼灸学校の入学試験に関する実情が,大学のそれと格段に異なるというべき事情までは見いだし難いこと,(2)鍼灸学校が大学の場合と比較してより早期に入学者を確定しなければならない特段の事情があることはうかがわれないこと,(3)当該鍼灸学校においても,入学試験に合格しても入学しない者があることを見込んで補欠者を定めている上,定員割れが生ずることを回避するため入学定員を若干上回る数の者を合格させていることなど判示の事情の下では,当時当該鍼灸学校の周辺地域に同種の学校等が少なかったことや,これまで当該鍼灸学校において入学手続後に入学辞退をした者がいなかったことなどを考慮しても,当該鍼灸学校に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして,上記特約は,同号により全部無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年12月22日 平成17(受)1762
- 登載
- 集民 第222号721頁
- 参照法条
- 消費者契約法9条,民法420条,学校教育法6条,学校教育法83条,あん摩マツサージ指圧師,はり師,きゆう師等に関する法律2条1項
論点123第420条民法
1 大学と当該大学の学生との間の在学契約の性質
2 大学の入学試験の合格者が納付する入学金の性質
3 大学と在学契約等を締結した者が当該在学契約等を任意に解除することの可否
4 大学の入学試験の合格者による書面によらない在学契約の解除の意思表示の効力
5 大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約等を締結して当該大学に入学金を納付した後に同契約等が解除された場合等における当該大学の入学金返還義務の有無
6 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の性質
7 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約等の消費者契約該当性
8 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に関する消費者契約法9条1号所定の平均的な損害等の主張立証責任
9 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に対する消費者契約法9条1号の適用の効果
10 専願等を出願資格とする大学の推薦入学試験等の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に対する消費者契約法9条1号の適用の効果
裁判要旨1 大学と当該大学の学生との間で締結される在学契約は,大学が学生に対して,講義,実習及び実験等の教育活動を実施するという方法で,大学の目的にかなった教育役務を提供するとともに,これに必要な教育施設等を利用させる義務を負い,他方,学生が大学に対して,これらに対する対価を支払う義務を負うことを中核的な要素とするものであり,学生が部分社会を形成する組織体である大学の構成員としての学生の身分,地位を取得,保持し,大学の包括的な指導,規律に服するという要素も有し,教育法規や教育の理念によって規律されることが予定されている有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約である。
2 大学の入学試験の合格者が納付する入学金は,その額が不相当に高額であるなど他の性質を有するものと認められる特段の事情のない限り,合格者が当該大学に入学し得る地位を取得するための対価としての性質を有し,当該大学が合格者を学生として受け入れるための事務手続等に要する費用にも充てられることが予定されているものである。
3 大学と在学契約又はその予約を締結した者は,原則として,いつでも任意に当該在学契約又はその予約を将来に向かって解除することができる。
4 大学の入学試験に合格し当該大学との間で在学契約を締結した者が当該大学に対して入学辞退を申し出ることは,それがその者の確定的な意思に基づくものであることが表示されている以上は,口頭によるものであっても,原則として有効な在学契約の解除の意思表示であり,入学試験要項等において所定の期限までに書面で入学辞退を申し出たときは入学金以外の所定の納付金を返還する旨を定めている場合や,入学辞退をするときは書面で申し出る旨を定めている場合であっても,解除の効力は妨げられない。
5 大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約又はその予約を締結して当該大学に入学し得る地位を取得するための対価としての性質を有する入学金を納付した後に,同契約又はその予約が解除され,あるいは失効しても,当該大学は当該合格者に入学金を返還する義務を負わない。
6 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,在学契約の解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金の定めの性質を有する。
7 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約又はその予約は,消費者契約法2条3項所定の消費者契約に該当する。
8 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約に納付済みの授業料等を返還しない旨の特約がある場合,消費者契約法9条1号所定の平均的な損害及びこれを超える部分については,事実上の推定が働く余地があるとしても,基本的には当該特約の全部又は一部の無効を主張する当該合格者において主張立証責任を負う。
9 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,国立大学及び公立大学の後期日程入学試験の合格者の発表が例年3月24日ころまでに行われ,そのころまでには私立大学の正規合格者の発表もほぼ終了し,補欠合格者の発表もほとんどが3月下旬までに行われているという実情の下においては,同契約の解除の意思表示が大学の入学年度が始まる4月1日の前日である3月31日までにされた場合には,原則として,当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして,同号によりすべて無効となり,同契約の解除の意思表示が同日よりも後にされた場合には,原則として,上記授業料等が初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り,上記平均的な損害を超える部分は存しないものとして,すべて有効となる。
10 入学試験要項等の定めにより,その大学,学部を専願あるいは第1志望とすること,又は入学することを確約することができることが出願資格とされている大学の推薦入学試験等の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,上記授業料等が初年度に納付すべき範囲内のものである場合には,同契約の解除の時期が当該大学において同解除を前提として他の入学試験等によって代わりの入学者を通常容易に確保することができる時期を経過していないなどの特段の事情がない限り,消費者契約法9条1号所定の平均的な損害を超える部分は存しないものとして,すべて有効となる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日 平成17(受)1158
- 登載
- 民集 第60巻9号3437頁
- 参照法条
- (1,2,5につき)民法第3編第2章 契約,(1につき)学校教育法52条,学校教育法69条の2第1項,教育基本法6条1項,(2,5,6,8〜10につき)学校教育法6条,(2,5につき)学校教育法施行規則4条1項7号,(3,4につき)民法540条1項,(3につき)憲法26条1項,学校教育法施行規則67条,(5につき)民法703条,(6,8〜10につき)民法420条,(7につき)消費者契約法2条,(8〜10につき)消費者契約法9条,(8につき)民訴法第2編第4章第1節 総則,(9につき)学校教育法施行規則44条,72条1項
論点124第420条民法
大学の入学試験に合格し同大学に授業料等を納付するなどして納付済みの授業料等の返還を制限する特約の付された在学契約を締結した者が同大学の職員から入学式に出席しなければ入学辞退として取り扱う旨告げられたため3月31日までに同契約を解除することなく入学式に欠席することにより同契約を解除した場合において同大学が同特約が有効である旨主張して授業料の返還を拒むことが許されないとされた事例
裁判要旨大学の平成16年度の入学試験に合格し,同大学に入学金,授業料等の所定の納付金を納付して,平成16年3月25日までに入学辞退を申し出た場合には入学金を除く納付金を返還する旨の特約の付された在学契約を締結した者が,同月26日に入学辞退に関する問合せをした際に,同大学の職員から入学式に出席しなければ入学辞退として取り扱う旨告げられたため,同月31日までに同契約を解除すれば同特約は消費者契約法9条1号により無効となったのに,同日までに同契約を解除することなく同年4月2日の入学式に欠席することにより同契約を解除したなど判示の事情の下では,同大学において,同特約が有効である旨主張して,授業料の返還を拒むことは許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日 平成18(受)1130
- 登載
- 集民 第222号511頁
- 参照法条
- 民法1条2項,民法420条,民法703条,消費者契約法9条1号,学校教育法6条
論点125第420条民法
1 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約と公序良俗違反
2 私立医科大学の平成13年度の入学試験の合格者が同大学との間で納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した後に同契約を解除した場合において同特約は公序良俗に反しないなどとして同大学に対する納付済みの授業料等の返還請求が認められなかった事例
裁判要旨1 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,その目的,意義に照らして,合格者の大学選択に関する自由な意思決定を過度に制約し,その他合格者の著しい不利益において大学が過大な利益を得ることになるような著しく合理性を欠くと認められるものでない限り,公序良俗に反しない。
2 私立医科大学の平成13年度の入学試験の合格者が,同大学に授業料等を含む所定の納付金を納付して,同大学との間で,平成13年3月21日正午よりも後に入学辞退を申し出た場合には授業料等を返還しない旨の特約の付された在学契約を締結した後,同月27日ころ同契約を解除した場合において,医科大学においては入学辞退によって欠員が生ずる可能性が潜在的に高く,欠員が生じた場合に生ずる損失が多額になることは否定し難いこと,上記特約が当時の私立大学の医学関係の学部におけるそれとの比較において格別合格者に不利益な内容のものであることがうかがわれないことなど判示の事情の下では,上記授業料等の金額が614万円であり,このうち教育充実費については6年間に納付することとされている合計額950万円のうち500万円を在学契約締結時に納付すべきものとされていることや,同大学に定員割れが生じていないことなどを考慮しても,上記特約は公序良俗に反するものではなく,同大学が上記授業料等の返還を拒むことが信義に反するともいえず,上記合格者から同大学に対する上記授業料等の返還請求は認められない。
(2につき反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日 平成16(受)2117
- 登載
- 民集 第60巻9号3732頁
- 参照法条
- (1,2につき)民法90条,民法420条,学校教育法6条,(2につき)民法1条2項,民法703条
論点126第420条民法
1 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」等の記載がある大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約を締結した場合における入学式の無断欠席と在学契約の解除の意思表示
2 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」等の記載がある大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料を返還しない旨の特約に対する消費者契約法9条1号の適用の効果
裁判要旨1 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約を締結した場合において,当該合格者が入学式を無断で欠席することは,特段の事情のない限り,黙示の在学契約の解除の意思表示に当たる。
2 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」,「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,入学式の日までに明示又は黙示に同契約が解除された場合には,原則として,当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして,同号によりすべて無効となる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日 平成17(受)1437
- 登載
- 民集 第60巻9号3597頁
- 参照法条
- (1につき)民法第1編第5章第1節 総則,民法540条1項,(2につき)消費者契約法9条,民法420条,学校教育法6条
論点127第420条民法
一 宅地建物取引業保証協会の社員との間の宅地建物の取引に係る契約における損害賠償額の予定又は違約金に関する定めに基づく債権と宅地建物取引業法六四条の八第一項所定の「その取引により生じた債権」
二 宅地建物取引業保証協会がその内部規約において弁済業務保証金による弁済の対象となる損害賠償債権又は違約金債権の内容及び範囲に制限を加えて宅地建物取引業法六四条の八第二項所定の認証を拒否することの許否
裁判要旨一 宅地建物取引業保証協会の社員と宅地建物取引業に関し取引をした者が、その取引に係る契約における損害賠償額の予定又は違約金に関する定めに基づき取得した損害賠償債権又は違約債権は、特段の事情がない限り、弁済業務保証金による弁済の対象である宅地建物取引業法六四条の八第一項所定の「その取引により生じた債権」に当たる。
二 宅地建物取引業保証協会が、その内部規約において、弁済業務保証金による弁済の対象となる損害賠償債権又は違約金債権の内容及び範囲に制限を加え、右債権につき宅地建物取引業法六四条の八第二項所定の認証を拒否することは、許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成10年6月11日 平成9(オ)243
- 登載
- 集民 第188号483頁
- 参照法条
- 宅地建物取引業法27条1項,宅地建物取引業法64条の8第1項,宅地建物取引業法64条の8第2項,民法420条
論点128第420条民法
1 消費者が液化石油ガスの供給等に関する契約を終了させる場合に消費設備に係る配管の設置費用等に関して所定の金額を液化石油ガス販売事業者に支払う旨を定めた条項が、消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの)9条1号にいう 「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」に当たるとされた事例
2 消費者が液化石油ガスの供給等に関する契約を終了させる場合に消費設備に係る配管の設置費用等に関して所定の金額を液化石油ガス販売事業者に支払う旨を定めた条項が、消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの)9条1号により無効となるとされた事例
裁判要旨1 液化石油ガス販売事業者との間で締結された戸建て住宅への液化石油ガスの供給等に関する契約に係る契約書中の、消費者が、上記契約を供給開始日から10年経過前に終了させる場合、上記事業者によって上記住宅に設置された消費設備に係る配管の設置費用等に関し、所定の算定式によって得られた金額を上記事業者に支払う旨を定めた条項は、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの)9条1号にいう「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」に当たる。
⑴ 上記事業者は、上記消費者に販売される前の上記住宅に上記配管等を設置しながら、上記住宅の販売会社に対してその設置費用等を請求しておらず、上記消費者は、上記住宅の購入に当たって上記販売会社より上記事業者から液化石油ガスの供給を受ける必要がある旨説明を受けていた。
⑵ 上記事業者は、上記消費者と上記契約を締結するに当たり、上記事業者から液化石油ガスの供給を受けている間は上記消費者に上記設置費用等を請求しないこととするとともに、上記条項により、上記消費者が供給開始日から10年経過前に上記契約を終了させる場合に上記設置費用等に関して支払うべき金額を経過期間に応じて逓減させることとしていた。
⑶ 上記契約上、上記算定式により得られる金額は供給開始日から10年が経過するまでの間において1か月ごとに一定額ずつ減少するとされているものの、10年経過後には上記消費者が上記事業者に支払うべきガス料金が減額されるという定めはなく、上記設置費用等とガス料金との関係は明確にされていなかった。
2 液化石油ガス販売事業者との間で締結された戸建て住宅への液化石油ガスの供給等に関する契約に係る契約書中の、消費者が、上記契約を供給開始日から10年経過前に終了させる場合、上記事業者によって上記住宅に設置された消費設備に係る配管の設置費用等に関し、所定の算定式によって得られた金額を上記事業者に支払う旨を定めた条項は、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、その全部について消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの)9条1号により無効となる。
⑴ 上記契約上、上記算定式により得られる金額は供給開始日から10年が経過するまでの間において1か月ごとに一定額ずつ減少するとされているものの、10年経過後には上記消費者が上記事業者に支払うべきガス料金が減額されるという定めはなく、上記設置費用等とガス料金との関係は明確にされていなかった。
⑵ 上記契約と同種の液化石油ガスの供給契約において液化石油ガスの価格に法令上の規制がなく、液化石油ガス販売事業者は自由にガス料金を設定することができる。
⑶ 上記設置費用等のほかに、上記契約と同種の消費者契約の解除に伴い、上記事業者に生ずべき平均的な損害に当たり得るものは見当たらない。
(1、2につき補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 令和7年12月23日 令和6(受)204
- 登載
- 民集 第79巻8号2869頁
- 参照法条
- (1、2につき)消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの)9条1号、民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)420条1項、民法420条3項
論点129第422条民法
一 死者の活動年令期の算定。
二 労働基準法第七九条の補償と民法第四二二条。
三 民法第七一五条〈使用者等の責任〉の使用者責任の認められる事例。
裁判要旨一 死者の活動年令期は、死者の経歴、年令、職業、健康状態その他の具体的事情を考慮して算定することができ、必ずしも統計による生命表の有限平均余命の数値に拘束されない。
二 労働者の死亡について第三者が不法行為に基づく損害賠償責任を負担する場合には、労働基準法第七九条に基づく補償義務を履行した使用者は、民法
第四二二条〈損害賠償による代位〉の類推により、その履行した時期及び程度で遺族に代位して第三者に対し賠償請求権を取得する。
三 専ら貨物運送を業とする会社の被用者である貨物自動車運転者が、貨物運送にあたりたまたま他人に同乗を許したため、運転者の過失により惹き起された事故において右の者が死亡するに至つた場合であつても、右同乗が運転者との個人的関係に基づくものでなく、荷受会社の集荷課長として積荷の受渡を便にするためのものであつたときは、右運送会社は民法第七一五条の責任を負うと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和36年1月24日 昭和31(オ)364
- 登載
- 民集 第15巻1号35頁
- 参照法条
- 民法185条,民法709条,民法422条,民法715条,労働基準法79条
論点130第422条民法
使用者の損害賠償債務の履行と労働者災害補償保険法に基づく保険給付請求権の代位取得
裁判要旨労働者の業務上の災害に関して損害賠償債務を履行した使用者は、賠償された損害に対応する労働者災害補償保険法に基づく保険給付請求権を代位取得しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成元年4月27日 昭和59(オ)3
- 登載
- 民集 第43巻4号278頁
- 参照法条
- 民法422条,労働基準法84条2項,労働者災害補償保険法67条