論点1第32条労働基準法
労働基準法所定の労働時間の制限を超える公務の執行と公務執行妨害罪の成否
裁判要旨法令により公務に従事する者とみなされる日本国鉄道職員であつて労働基準法の適用を受ける者に対する職務命令が、同法所定の労働時間の制限を超えて就労することをその内容としており、かつ、その者の就労が右制限を超えたからといつて、そのために、職務の執行が具体的権限を欠いて違法となり、その者に対する公務執行妨害罪の成立が妨げられるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和48年5月25日 昭和44(あ)1629
- 登載
- 刑集 第27巻5号1115頁
- 参照法条
- 刑法7条,刑法95条1項,日本国有鉄道法34条1項,労働基準法32条1項
論点2第32条労働基準法
労働基準法第六〇条第三項〈労働時間及び休日〉と第三二条第一項〈労働時間〉との関係。
裁判要旨労働基準法
第六〇条第三項〈労働時間及び休日〉の規定は、満十五才以上で満十八才に満たない年少労働者の労働時間の規整に関する基準規定であつて、労働者一般の労働時間の規整に関する同法第三二条第一項の特別規定である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年9月14日 昭和35(あ)632
- 登載
- 刑集 第16巻9号1366頁
- 参照法条
- 労働基準法60条3項,労働基準法32条1項,少年法37条1項3号
論点3第32条労働基準法
いわゆる時間外労働の義務を定めた就業規則と労働者の義務
裁判要旨使用者が、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)
三六条〈時間外及び休日の労働〉所定の書面による協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合において、当該事業場に適用される就業規則に右協定の範囲内で一定の業務土の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して時間外労働をさせることができる旨を定めているときは、当該就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、労働者は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて時間外労働をする義務を負う。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成3年11月28日 昭和61(オ)840
- 登載
- 民集 第45巻8号1270頁
- 参照法条
- 労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)32条,労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)36条,労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)89条,労働基準法93条
論点4第32条労働基準法
基本給を月額で定めた上で月間総労働時間が一定の時間を超える場合に1時間当たり一定額を別途支払うなどの約定のある雇用契約の下において,使用者が,各月の上記一定の時間以内の労働時間中の時間外労働についても,基本給とは別に,労働基準法(平成20年法律第89号による改正前のもの)37条1項〈時間外、休日及び深夜の割増賃金〉の規定する割増賃金の支払義務を負うとされた事例
裁判要旨基本給を月額41万円とした上で月間総労働時間が180時間を超える場合に1時間当たり一定額を別途支払い,140時間未満の場合に1時間当たり一定額を減額する旨の約定のある雇用契約の下において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,労働者が時間外労働をした月につき,使用者は,労働者に対し,月間総労働時間が180時間を超える月の労働時間のうち180時間を超えない部分における時間外労働及び月間総労働時間が180時間を超えない月の労働時間における時間外労働についても,上記の基本給とは別に,労働基準法(平成20年法律第89号による改正前のもの)
37条1項〈時間外、休日及び深夜の割増賃金〉の規定する割増賃金を支払う義務を負う。
(1) 上記の各時間外労働がされても,上記の基本給自体が増額されるものではない。
(2) 上記の基本給の一部が他の部分と区別されて同項の規定する時間外の割増賃金とされていたなどの事情はうかがわれない上,上記の割増賃金の対象となる1か月の時間外労働の時間数は各月の勤務すべき日数の相違等により相当大きく変動し得るものであり,上記の基本給について,通常の労働時間の賃金に当たる部分と上記の割増賃金に当たる部分とを判別することはできない。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成24年3月8日 平成21(受)1186
- 登載
- 集民 第240号121頁
- 参照法条
- 労働基準法32条,労働基準法(平成20年法律第89号による改正前のもの)37条1項
論点5第32条労働基準法
労働基準法32条1項〈労働時間〉(週単位の時間外労働の規制)違反の罪と同条2項(1日単位の時間外労働の規制)違反の罪との罪数関係
裁判要旨労働基準法
32条1項〈労働時間〉(週単位の時間外労働の規制)違反の罪が成立する場合においても,その週内の1日単位の時間外労働の規制違反について同条2項違反の罪が成立し,両罪は併合罪の関係にある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成22年12月20日 平成22(あ)148
- 登載
- 刑集 第64巻8号1312頁
- 参照法条
- 労働基準法32条1項,労働基準法32条2項,労働基準法119条1号,刑法45条前段
論点6第32条労働基準法
1 労働基準法36条1項〈時間外及び休日の労働〉に基づき月単位の時間外労働の協定が締結されている場合における協定時間を超えた時間外労働と同法32条1項違反の罪
2 週単位の時間外労働の規制違反に係る訴因の特定が不十分で,その記載に瑕疵がある場合に,訴因変更と同様の手続を採ってこれを補正しようとした検察官の予備的訴因変更請求について,裁判所の採るべき措置
裁判要旨1 労働基準法
36条1項〈時間外及び休日の労働〉に基づき月単位の時間外労働の協定が締結されている場合において,協定時間を超えた時間外労働があるときには,原則的な労働時間制の下では,始期から順次1週間について40時間の法定労働時間を超えて労働させた時間を積算し,協定時間に至るまでは協定の効力によって時間外労働の違法性が阻却されるが,これを超えた時点以後は,1週間について40時間を超える時間外労働がある各週につき同法32条1項違反の罪が成立する。
2 週単位の時間外労働の規制違反に係る訴因の特定が不十分で,その記載に瑕疵がある本件のような場合(判文参照),訴因変更と同様の手続を採ってこれを補正しようとした検察官の予備的訴因変更については,適正な訴因となるように措置した上,これを許可すべきである。
(1,2につき意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成21年7月16日 平成19(あ)1951
- 登載
- 刑集 第63巻6号641頁
- 参照法条
- (1,2につき) 労働基準法32条1項,労働基準法36条1項,労働基準法119条1号 (2につき)刑訴法256条3項,刑訴法312条1項
論点7第32条労働基準法
1 マンションの住み込み管理員が所定労働時間の前後の一定の時間に断続的な業務に従事していた場合において,上記一定の時間が,管理員室の隣の居室に居て実作業に従事していない時間を含めて労働基準法上の労働時間に当たるとされた事例
2 マンションの住み込み管理員である夫婦が雇用契約上の休日である土曜日も管理員としての業務に従事していた場合において,土曜日については,夫婦のうち1人のみが業務に従事したものとして労働時間を算定するのが相当であるとされた事例
3 マンションの住み込み管理員が土曜日を除く雇用契約上の休日に断続的な業務に従事していた場合において,使用者が明示又は黙示に上記休日に行うことを指示したと認められる業務に現実に従事した時間のみが労働基準法上の労働時間に当たるとされた事例
裁判要旨1 マンションの住み込み管理員が所定労働時間の開始前及び終了後の一定の時間に断続的な業務に従事していた場合において,(1)使用者は,上記一定の時間内の各所定の時刻に管理員室の照明の点消灯,ごみ置場の扉の開閉,冷暖房装置の運転の開始及び停止等の業務を行うよう指示していたこと,(2)使用者が作成したマニュアルには,管理員は所定労働時間外においても,住民等から宅配物の受渡し等の要望が出される都度,これに随時対応すべき旨が記載されていたこと,(3)使用者は,管理員から定期的に業務の報告を受け,管理員が所定労働時間外においても上記要望に対応していた事実を認識していたことなど判示の事実関係の下では,上記一定の時間は,管理員室の隣の居室に居て実作業に従事していない時間を含めて,その間,管理員が使用者の指揮命令下に置かれていたものであり,労働基準法
32条〈労働時間〉の労働時間に当たる。
2 マンションの住み込み管理員である夫婦が雇用契約上の休日である土曜日も使用者の指示により平日と同様の業務に従事していた場合において,使用者は,土曜日は1人体制で執務するよう明確に指示し,同人らもこれを承認していたこと,土曜日の業務量が1人では処理できないようなものであったともいえないことなど判示の事情の下では,土曜日については,同人らのうち1人のみが業務に従事したものとして労働時間を算定するのが相当である。
3 マンションの住み込み管理員が土曜日を除く雇用契約上の休日に断続的な業務に従事していた場合において,使用者が,管理員に対して,管理員室の照明の点消灯及びごみ置場の扉の開閉以外には上記休日に業務を行うべきことを明示に指示していなかったなど判示の事実関係の下では,使用者が上記休日に行うことを明示又は黙示に指示したと認められる業務に現実に従事した時間のみが労働基準法32条の労働時間に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成19年10月19日 平成17(受)384
- 登載
- 民集 第61巻7号2555頁
- 参照法条
- (1〜3につき)労働基準法32条
論点8第32条労働基準法
1 実作業に従事していない仮眠時間と労働基準法上の労働時間
2 ビル管理会社の従業員が従事する泊り勤務の間に設定されている連続7時間ないし9時間の仮眠時間が労働基準法上の労働時間に当たるとされた事例
裁判要旨1 労働者が実作業に従事していない仮眠時間であっても,労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には,労働からの解放が保障されているとはいえず,労働者は使用者の指揮命令下に置かれているものであって,労働基準法
32条〈労働時間〉の労働時間に当たる。
2 ビル管理会社の従業員が従事する泊り勤務の間に設定されている連続7時間ないし9時間の仮眠時間は,従業員が労働契約に基づき仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられており,そのような対応をすることが皆無に等しいなど実質的に上記義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しないなど判示の事実関係の下においては,実作業に従事していない時間も含め全体として従業員が使用者の指揮命令下に置かれているものであり,労働基準法
32条の労働時間に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成14年2月28日 平成9(オ)608
- 登載
- 民集 第56巻2号361頁
- 参照法条
- 労働基準法32条
論点9第33条労働基準法
違法な時間外労働等についても割増賃金不払罪が成立するか。
裁判要旨労働基準法
第三三条〈災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等〉または
第三六条〈時間外及び休日の労働〉所定の条件を充足していない違法な時間外労働ないしは休日労働に対しても、使用者は同法第三七条第一項により割増賃金の支払義務があり、その義務を履行しないときは同法第一一九条第一号の罰則の適用を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和35年7月14日 昭和33(あ)1135
- 登載
- 刑集 第14巻9号1139頁
- 参照法条
- 労働基準法33条,労働基準法36条,労働基準法37条1項,労働基準法119条1号
論点10第34条労働基準法
一、日本電信電話公社の就業規則において禁止されている政治活動の意義
二、勤務時間中に「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と記載したプレートを着用した職員の行為が日本電信電話公社法三四条二項所定の職務専念義務に違反するとされた事例
三、電報電話局の局所内において「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と記載したプレートを着用して勤務した職員の行為が局所内における政治活動を禁止した就業規則の規定に違反するとされた事例
四、電報電話局の局所内における職員のビラ配布行為が局所内におけるビラ配布等につき事前に局所の管理責任者の許可を受けなければならない旨の就業規則の規定に違反するとされた事例
五、休憩時間中の局所内における演説、集会、貼紙、掲示、ビラ配布等についても局所の管理責任者の事前の許可を受けなければならない旨を定める日本電信電話公社の就業規則の規定が休憩時間の自由利用に対する合理約な制約であるとされた事例
裁判要旨一、日本電信電話公社の就業規則において禁止されている政治活動とは、人事院規則一四―七所定の政治的目的をもつてされる政治的行為を指すものではなく、社会通念上政治的と認められる活動をいう。
二、日本電信電話公社の職員が勤務時間中に「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と記載したプレートを着用してこれを職場の同僚に訴えかけることは、日本電信電話公社法三四条二項所定の職務専念義務に違反する。
三、電報電話局の局所内において職員が社会通念上政治的な意味をもつ「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」という文言を記載したプレートを着用して勤務しこれを職場の同僚に訴えかけることは、局所内の秩序風紀の維持を目的とする日本電信電話公社の就業規則の政治活動禁止規定に違反する。
四、電報電話局の局所内において局所の管理責任者の許可を得ないでした職員のビラ配布行為は、その配布の態様につきとりたてて問題にする点はなかつたとしても、上司の適法な命令に抗議する目的でされ、その内容においても上司の適法な命令に抗議し局所内での違法なプレート着用等をあおりそそのかすことを含むものであつて、局所内の秩序を乱すおそれがあつた以上、局所内の秩序風紀の維持を目的とする局所内のビラの配布等につき事前に局所の管理責任者の許可を受けなければならない旨を定める日本電信電話公社の就業規則の規定に違反する。
五、休憩時間中であつても、局所内における演説、集会、貼紙、掲示、ビラ配布等を行うことは、局所内の施設の管理を妨げるおそれがあり、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げひいてはその後の作業能率を低下させるおそれがあり、その内容いかんによつては企業の運営に支障をきたし企業秩序を乱すおそれがあるから、休憩時間中にこれを行うについても局所の管理責任者の事前の許可を受けなければならない旨を定める日本電信電話公社の就業規則の規定は、休憩時間の自由利用に対する合理的な制約というべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和52年12月13日 昭和47(オ)777
- 登載
- 民集 第31巻7号974頁
- 参照法条
- 日本電信電話公社法33条,日本電信電話公社法34条1項,日本電信電話公社法34条2項,労働基準法34条3項,労働基準法89条
論点11第34条労働基準法
一、使用者の事業所等の管理権に基づく休憩時間中の労働者に対する行動規制
二、休憩時間中の基地内における集団行動を禁止した駐留軍基地司令官の命令が無効とはいえないとされた事例
裁判要旨一、使用者の事業所等の管理権に基づく労働者に対する行動規制は、休憩時間中のものであつても、管理権の合理的な行使として是認されうる範囲内にあるかぎり、有効なものとして拘束力を有する。
二、(省略)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和49年11月29日 昭和40(オ)797
- 登載
- 集民 第113号235頁
- 参照法条
- 労働基準法34条3項
論点12第35条労働基準法
休日出勤の業務命令を拒否した工員に対する減給処分が懲戒権の濫用として無効とされた事例
裁判要旨(省略)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和53年11月20日 昭和49(オ)60
- 登載
- 集民 第125号655頁
- 参照法条
- 労働基準法35条,労働基準法36条
論点13第36条労働基準法
郵政職員が時間外労働の義務を負うものとされた事例
裁判要旨労働協約及び就業規則に、やむをえない事由がある場合には郵政職員に時間外労働又は休日労働をさせうる旨定められており、かつ、労働基準法
三六条〈時間外及び休日の労働〉所定の協定が締結されている場合において、職員に時間外労働をさせるにつき右労働協約に定めるやむをえない事由があつて、「国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法」
六条〈中間搾取の排除〉の規定に基づいて郵政大臣が制定した「郵政事業職員勤務時間、休憩、休日および休暇規程」の定めるところにより職員が時間外労働を命ぜられたときは、右職員は、時間外労働の義務を負う。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和59年3月27日 昭和54(行ツ)74
- 登載
- 集民 第141号453頁
- 参照法条
- 労働基準法36条,国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法6条
論点14第36条労働基準法
一 使用者が労働組合に対し組合集会等のための従業員食堂の使用を許諾しない状態が続いていることをもって不当労働行為に当たるということはできないとされた事例
二 使用者が労働組合にいわゆる三六協定の締結適格があるかどうかを確認する目的で従業員に記名式の照会票を配付して組合加入の有無を調査したことが不当労働行為に当たらないとされた事例
裁判要旨一 使用者が、労働組合の結成通知以来約九箇月にわたり、組合からの許可願の提出があれば業務に支障のない限り従業員食堂の使用を許可していたところ、就業時間後食堂で行われていた組合の学習会の参加者の氏名を巡回中の守衛が記録したことに反発した組合執行委員長らが右記録用紙を守衛から提出させたことを契機として、組合による食堂使用を拒否したのに対し、組合が、使用者が食堂に施錠するまで五箇月近くの間、無許可で食堂の使用を繰り返し、その間、使用者は食堂の使用に関し施設管理者の立場からは合理的理由のある提案をしたが、これに対する組合の反対提案は組合に食堂の利用権限があることを前提とするかのような提案であったなど判示の事実関係の下においては、使用者が組合に対し組合集会等のための食堂の使用を許諾しない状態が続いていることをもって、不当労働行為に当たるということはできない。
二 使用者が、労働組合に労働基準法三六条所定の協定の締結適格があるかどうかを確認するため、従業員に対し記名式の照会票を配付し、組合加入の有無を調査した場合において、使用者は、労働基準監督署から従業員代表との間で締結された現行協定の適法性に疑義があるとして時間外労働の中止を指示され、早急に新たな協定を適法に締結する必要に迫られており、他方、組合は、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合であると主張して協定の締結を要求しながら、右要件を確認するための組合員名簿の提出は拒否し続けていたなど判示の事実関係の下においては、使用者が右調査をしたことは、不当労働行為に当たらない。
(一、二につき反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成7年9月8日 平成3(行ツ)34
- 登載
- 集民 第176号699頁
- 参照法条
- 労働組合法7条3号,労働基準法36条
論点15第36条労働基準法
併存する企業内組合の一つが使用者の提案する賃金計算方法の変更を承認しないことを理由に使用者が右組合との間で労働基準法三六条所定の協定を締結することを拒否しその組合員の時間外労働を禁止している行為が労働組合法七条一号及び三号の不当労働行為に当たらないとされた事例
裁判要旨従来、時間外割増賃金及び深夜割増賃金を含むとの認識の下に水揚高に一定率を乗じた歩合による賃金を支払っていた使用者が、労働基準監督署から割増賃金部分を明確にするよう指導を受けたため、水揚高に従前の率を若干下回る率を乗じた金額を基礎給としこれに時間外割増賃金及び深夜割増賃金を加算して支払うことを内容とする賃金計算方法を採用することを企業内に併存する甲乙二つの労働組合に提案したのに対し、甲組合はこれを承認したが、乙組合はこれを拒否し、水揚高に従来どおりの率を乗じた金額を基礎給としこれに時間外割増賃金及び深夜割増賃金を加算して支払うことを要求し続けていた場合において、使用者が、乙組合との団体交渉の結果、同組合との間で労働基準法三六条所定の協定を締結することを拒否し、乙組合員の時間外労働を禁止している行為は、使用者が、まず甲組合とのみ右提案及び右協定の締結について協議を行って合意を成立させ、乙組合とは何ら協議を行うことなく乙組合員の時間外労働を禁止し、その五日後に初めて団体交渉を行ったもので、右団体交渉においては、甲組合と合意に達した労働条件を受諾するように求め、これをもって譲歩の限度とする強い態度を示したなど判示の事情があっても、使用者の右団体交渉における主張の主な意図が乙組合の団結権の否認ないし弱体化にあり団体交渉が形式的に行われたにすぎないものと認められる特段の事情があるとはいえず、労働組合法七条一号及び三号の不当労働行為に当たらない。
(反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成7年4月14日 平成5(行ツ)141
- 登載
- 集民 第175号23頁
- 参照法条
- 労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)36条,労働基準法(平成5年法律第79号による改正前のもの)37条1項,労働組合法7条1号,労働組合法7条3号
論点16第37条労働基準法
ストライキ期間中の家族手当の削減が違法とはいえないとされた事例
裁判要旨ストライキの場合における家族手当の削減が昭和二三年ころから昭和四四年までは就業規則の規定に基づいて実施されており、その後右規定が削除され同様の規定が社員賃金規則細部取扱のうちに定められてからも従前の取扱が引続き異議なく行われてきたなど、原判示の事実関係のもとにおいては、ストライキの場合における家族手当の削減は労使問の労働慣行として成立していたものであり、このような労働慣行のもとにおいてされた本件ストライキ期間中の家族手当の削減は、違法とはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和56年9月18日 昭和51(オ)1273
- 登載
- 民集 第35巻6号1028頁
- 参照法条
- 労働基準法24条,労働基準法37条2項
論点17第37条労働基準法
一、県立学校教職員の勤務時間外における職員会議への参加が所属学校長の職務命令に基づくものとされた事例
二、静岡県立学校長の適法な権限に基づかない命令により時間外勤務をした教職員の時間外勤務手当請求権
裁判要旨一、県立学校における職員会議が、校長を主宰者とし、当該学校に勤務する教職員の全部をもつて構成され、その開催の日時場所も校長の指示によりあらかじめ伝達されて教職員はできるかぎりこれに出席すべきものとされており、とくに必要があつて会議が勤務時間外にわたる場合においても、勤務時間の内外によつて審議内容、審議方法等会議の性質および運営にはなんらの差異はなかつたなど判示の事情があるときは、右教職員の職員会議への参加は、正規の勤務時間以外の時間にわたる場合も含めて、所属学校長の職務命令に基づくものというべきである。
二、静岡県立学校において、校長の時間外勤務命令に基づき、教職員が正規の勤務時間以外の時間にわたつて本来の職務の範囲に属することがらについて勤務をした場合には、たとえ校長に右命令を発する権限がなかつたとしても、それが教職員に対し事実上の拘束力をもつものであるかぎり、給与負担者である静岡県は、右職務命令の瑕疵を主張して時間外勤務に対する所定の時間外勤務手当の支給を拒むことは許されないものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年4月6日 昭和44(行ツ)26
- 登載
- 民集 第26巻3号397頁
- 参照法条
- 労働基準法37条,静岡県教職員の給与に関する条例(昭和31年静岡県条例第52号)15条,職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例(昭和28年静岡県条例第32号)8条
論点18第37条労働基準法
一、市町村立小中学校教員の時間外勤務手当の負担者
二、静岡市立学校長の適法な権限に基づかない命令により時間外勤務をした教職員の時間外勤務手当請求権
三、静岡県立小中学校教職員の修学旅行ないし遠足における引率・付添いの勤務による時間外勤務手当請求権が認められた事例
裁判要旨一、市町村立小中学校教員の時間外勤務手当の負担者は、右学校の設置者たる市町村である。
二、静岡市立学校において、校長の時間外勤務命令に基づき、教職員が正規の勤務時間以外の時間にわたつて本来の職務に属することがらについて勤務をした場合には、たとえ校長に右命令をする権限がなかつたとしても、それが教職員に対して事実三の拘束力をもつものであるかぎり、給与負担者である静岡市は、右職務命令の瑕疵を主張して時間外勤務に対する所定の手当の支給を拒むことは許されないものと解すべきである。
三、静岡市立小中学校の教職員が、所属学校長のあらかじめした命令により、正規の勤務時間をこえて修学旅行や遠足の引率・付添いの勤務をした場合において、当該勤務が、児童生徒に対する教育的効果の達成や危険の予防ないし危険が発生した場合の善後措置の施行等きわめて重大な責任を負担し、心身ともに不断の緊張およびその結果としての疲労を伴うという性質のものである以上、右教職員は、その勤務をした時間につき明確に証明できるものであるかぎり、時間外勤務に対する手当の請求権を取得すると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年12月26日 昭和46(行ツ)84
- 登載
- 民集 第26巻10号2096頁
- 参照法条
- 学校教育法5条,労働基準法37条,労働基準法41条3号,労働基準法施行規則22条,市町村立学校職員給与負担法1条,職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例(昭和28年静岡県条例第32号、昭和46年静岡県条例第50号よる改正前のもの)8条,静岡県教職員の給与に関する条例(昭和31年静岡県条例第52号)15条,職員の給与に関する規則(昭和32年静岡県人事委員会規則7−25)27条2項
論点19第37条労働基準法
ストライキの場合に不就労の時間に応じて控除される家族手当付加額が労働基準法(平成五年法律第七九号による改正前のもの)三七条二項にいう家族手当に当たるとされた事例
裁判要旨家族手当付加額が扶養家族を有する者に対し被扶養者の数に応じて定められた金額を支給するものであり、勤務を欠いたことにより右付加額が控除されるのは例外的であるという原判示の事実関係の下においては、右家族手当付加額は、ストライキの場合に不就労の時間に応じて控除されるとしても、労働基準法(平成五年法律第七九号による改正前のもの)
三七条二項〈時間外、休日及び深夜の割増賃金〉にいう家族手当に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成6年4月8日 平成5(オ)1695
- 登載
- 集民 第172号259頁
- 参照法条
- 労働基準法(平成5年法律第79号による改正前のもの)37条2項,労働基準法37条4項
論点20第37条労働基準法
雇用契約において時間外労働等の対価とされていた定額の手当の支払により労働基準法37条の割増賃金が支払われたということができないとした原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨使用者が労働者に対し,雇用契約に基づいて定額の手当を支払った場合において,当該手当は当該雇用契約において時間外労働,休日労働及び深夜労働に対する対価として支払われるものとされていたにもかかわらず,当該手当を上回る金額の割増賃金請求権が発生した事実を労働者が認識して直ちに支払を請求することができる仕組みが備わっていないなどとして,当該手当の支払により労働基準法37条の割増賃金が支払われたということができないとした原審の判断には,割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成30年7月19日 平成29(受)842
- 登載
- 集民 第259号77頁
- 参照法条
- 労働基準法37条
論点21第37条労働基準法
医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていたとしても,当該年俸の支払により時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということはできないとされた事例
裁判要旨医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていたとしても,当該年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分が明らかにされておらず,通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができないという事情の下では,当該年俸の支払により,時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成29年7月7日 平成28(受)222
- 登載
- 集民 第256号31頁
- 参照法条
- 労働基準法37条
論点22第37条労働基準法
歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の賃金規則上の定めが公序良俗に反し無効であるとして未払賃金の請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の賃金規則上の定めが公序良俗に反し無効であると判断するのみで,当該賃金規則における賃金の定めにつき,通常の労働時間の賃金に当たる部分と労働基準法37条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができるか否かや,そのような判別をすることができる場合に,当該賃金規則に基づいて割増賃金として支払われた金額が同条その他の関係法令に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かについて審理判断することなく未払賃金の請求を認容すべきものとした原審の判断には,割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った結果,審理を尽くさなかった違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成29年2月28日 平成27(受)1998
- 登載
- 集民 第255号1頁
- 参照法条
- 民法90条,労働基準法37条
論点23第37条労働基準法
いわゆる管理監督者に該当する労働者が深夜割増賃金を請求することの可否
裁判要旨労働基準法
41条2号〈労働時間等に関する規定の適用除外 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者〉所定のいわゆる管理監督者に該当する労働者は,同法
37条3項〈時間外、休日及び深夜の割増賃金〉に基づく深夜割増賃金を請求することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成21年12月18日 平成21(受)440
- 登載
- 集民 第232号825頁
- 参照法条
- 労働基準法37条1項,労働基準法37条3項,労働基準法41条
論点24第37条労働基準法
雇用契約に基づく残業手当等の支払により労働基準法37条の割増賃金が支払われたものとした原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨使用者Yが、変更後の就業規則等に基づく新たな賃金体系の下で、日々の業務内容等に応じて決定される月ごとの賃金総額から基本給等の額を差し引いた額を割増賃金の額とした上で、そのうち基本給等を通常の労働時間の賃金として労働基準法37条並びに政令及び厚生労働省令の関係規定に定められた方法により算定した額を残業手当等の額とし、上記割増賃金の額から残業手当等の額を差し引いた額を調整手当の額としていた場合において、次の⑴~⑷など判示の事情の下においては、YのXに対する残業手当等の支払により同条の割増賃金が支払われたものとした原審の判断には、割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。
⑴ Yは、新たな賃金体系の導入に当たり、賃金総額の算定については従前の取扱いを継続する一方で、従前の賃金体系の下において自身が通常の労働時間の賃金と位置付けていた基本歩合給の相当部分を新たに調整手当として支給するものとした。
⑵ 従前の賃金体系の下においては、基本給及び基本歩合給のみが通常の労働時間の賃金であったとしても、Xに係る通常の労働時間の賃金の額は1時間当たり平均1300~1400円程度であったことがうかがわれる一方、調整手当の導入の結果、新たな賃金体系の下においては、基本給等のみが通常の労働時間の賃金であるなどと仮定すると、Xに係る通常の労働時間の賃金の額は1時間当たり平均約840円となる。
⑶ Xについては、1か月当たりの時間外労働等は平均80時間弱であるところ、これを前提として算定される残業手当等をも上回る水準の調整手当が支払われている。
⑷ 新たな賃金体系の導入に当たり、YからXを含む労働者に対しては、基本給の増額や調整手当の導入等に関する一応の説明がされたにとどまり、従前の賃金体系の下における基本歩合給の相当部分を調整手当として支給するものとされたことに伴い生ずる変化について、十分な説明がされたともうかがわれない。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 令和5年3月10日 令和4(受)1019
- 登載
- 集民 第270号77頁
- 参照法条
- 労働基準法37条
論点25第37条労働基準法
歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の定めがある賃金規則に基づいてされた残業手当等の支払により労働基準法37条の定める割増賃金が支払われたとはいえないとされた事例
裁判要旨歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の定めがある賃金規則に基づいてされた残業手当等の支払につき,時間外労働等に伴い発生する残業手当等の額がそのまま歩合給の減額につながり,歩合給が0円となることもあるなど判示の事情の下では,これにより労働基準法37条の定める割増賃金が支払われたとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 令和2年3月30日 平成30(受)908
- 登載
- 民集 第74巻3号549頁
- 参照法条
- 労働基準法37条
論点26第38条労働基準法
募集型の企画旅行における添乗員の業務につき,労働基準法38条の2第1項〈労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働…〉にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとされた事例
裁判要旨募集型の企画旅行における添乗員の業務については,次の(1),(2)など判示の事情の下では,労働基準法
38条の2第1項〈労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働…〉にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえない。
(1) 当該業務は,旅行日程がその日時や目的地等を明らかにして定められることによって,その内容があらかじめ具体的に確定されており,添乗員が自ら決定できる事項の範囲及びその決定に係る選択の幅は限られている。
(2) 当該業務について,上記企画旅行を主催する旅行業者は,添乗員との間で,あらかじめ定められた旅行日程に沿った旅程の管理等の業務を行うべきことを具体的に指示した上で,予定された旅行日程に途中で相応の変更を要する事態が生じた場合にはその時点で個別の指示をするものとされ,旅行日程の終了後は内容の正確性を確認し得る添乗日報によって業務の遂行の状況等につき詳細な報告を受けるものとされている。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成26年1月24日 平成24(受)1475
- 登載
- 集民 第246号1頁
- 参照法条
- 労働基準法38条の2第1項
論点27第38条労働基準法
外国人の技能実習に係る監理団体の指導員が事業場外で従事した業務につき、労働基準法38条の2第1項〈労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働…〉にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例
裁判要旨外国人の技能実習に係る監理団体の指導員が事業場外で従事した業務につき、就業日ごとの始業時刻、終業時刻及び休憩時間のほか、訪問先、訪問時刻及びおおよその業務内容等を記入した業務日報が提出されていた場合において、次の⑴、⑵など判示の事情の下で、業務日報の正確性の担保に関する具体的な事情を十分に検討することなく、業務日報による報告のみを重視して、上記業務につき労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないとした原審の判断には、同項の解釈適用を誤った違法がある。
⑴ 上記業務は、実習実施者に対する訪問指導のほか、技能実習生の送迎、生活指導や急なトラブルの際の通訳等であった。
⑵ 上記指導員は、上記業務に関し、訪問の予約を行うなどして自ら具体的なスケジュールを管理しており、所定の休憩時間とは異なる時間に休憩をとることや自らの判断により直行直帰することも許されていたものであって、随時具体的に指示を受けたり報告をしたりすることもなかった。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 令和6年4月16日 令和5(受)365
- 登載
- 集民 第271号85頁
- 参照法条
- 労働基準法38条の2第1項
論点28第39条労働基準法
勤務割における勤務予定日につき年次休暇の時季指定がされた場合に休暇の利用目的を考慮して勤務割変更の配慮をせずに時季変更権を行使することの許否
裁判要旨勤務割における勤務予定日につき年次休暇の時季指定がされた場合であつても、使用者が、通常の配慮をすれば勤務割を変更して代替勤務者を配置することが可能であるときに、休暇の利用目的を考慮して勤務割変更のための配慮をせずに時季変更権を行使することは、許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和62年9月22日 昭和60(オ)989
- 登載
- 集民 第151号657頁
- 参照法条
- 労働基準法39条
論点29第39条労働基準法
勤務割における勤務予定日につき年次休暇の時季指定がされた場合に休暇の利用目的を考慮して勤務割変更の配慮をせずに時季変更権を行使することの許否
裁判要旨勤務割における勤務予定日につき年次休暇の時季指定がされた場合であつても、使用者が、通常の配慮をすれば勤務割を変更して代替勤務者を配置することが可能であるときに、休暇の利用目的を考慮して勤務割変更のための配慮をせずに時季変更権を行使することは、許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和62年7月10日 昭和59(オ)618
- 登載
- 民集 第41巻5号1229頁
- 参照法条
- 労働基準法39条
論点30第39条労働基準法
公立高校の教諭らが教職員組合の動員指示に従つて年次休暇権を行使して集会等に参加した行動が同盟罷業に当たらないとされた事例
裁判要旨公立高校の教諭らが、教職員組合の三割動員の指示に従い、授業予定日の半日につき年次休暇の時季指定をして地区労主催の集会等に参加した場合であつても、右動員指示が、適法な時季変更権の行使を無視することまで指示したものではなく、各事業場における業務の正常な運営の阻害を目的としたものでないときは、右教諭らの行動は、年次休暇に名を籍りた同盟罷業ということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年12月18日 昭和57(行ツ)166
- 登載
- 集民 第149号341頁
- 参照法条
- 労働基準法39条3項,地方公務員法32条,地方公務員法35条,地方公務員法37条
論点31第39条労働基準法
郵政事業職員の年次有給休暇のうち所属長が年度の初頭に職員の請求により各人別に決定した休暇付与計画による休暇についての年度の途中における時季変更権行使の要件
裁判要旨郵政事業に勤務する職員の年次有給休暇のうち、所属長が年度の初頭において職員の請求により業務の繁閑等をしんしゃくして各人別に決定した休暇付与計画による休暇についての年度の途中における時季変更権の行使は、計画決定時には予測できなかつた事態発生の可能性が生じた場合において、かつ、右事態発生の予測が可能になつてから合理的期間内に限り、許される。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和58年9月30日 昭和55(行ツ)14
- 登載
- 民集 第37巻7号993頁
- 参照法条
- 労働基準法39条3項
論点32第39条労働基準法
一 労働者の指定した年次有給休暇の期間が開始し又は経過したのちにされた使用者の時季変更権行使の効力
二 労働者の指定した年次有給休暇の期間が開始し又は経過したのちにされた使用者の時季変更権行使の効力が認められた事例
裁判要旨一 労働者の指定した年次有給休暇の期間が開始し又は経過したのちに使用者が時季変更権を行使した場合であつても、労働者の右休暇の請求がその指定した期間の始期にきわめて接近してされたため使用者において時季変更権を行使するか否かを事前に判断する時間的余裕がなかつたようなときには、客観的に右時季変更権を行使しうる事由があり、かつ、その行使が遅滞なくされたものであれば、適法な時季変更権の行使があつたものとしてその効力を認めるのが相当である。
二 使用者の年次有給休暇時季変更権の行使が、労働者の指定した休暇の期間が開始し又は経過したのちにされたものであつても、労働者の右休暇の請求が一日又は午前中二時間の期間につき当日の朝宿直員を通じてされたため事前に時季変更権を行使する時間的余裕がなかつたものであり、また、右休暇の請求は事業の正常な運営を妨げるおそれがあつたが、使用者において、労働者が休暇を必要とする事情のいかんによつてはこれを認めるのを妥当とする場合があると考えて休暇の理由を聴取するため時季変更権の行使を差し控え、その後労働者がこれを明らかにすることを拒んだため右のような考慮をする余地がないことが確定的になつた時点に至つてはじめて、かつ、遅滞なく時季変更権の行使をしたなど、判示の事情のもとにおいては、右時季変更権の行使は適法にされたものとしてその効力を認めるのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和57年3月18日 昭和53(オ)558
- 登載
- 民集 第36巻3号366頁
- 参照法条
- 労働基準法39条
論点33第39条労働基準法
他の事業場における争議行為への参加と年次有給休暇の成否
裁判要旨その所属する事業場以外の事業場における争議行為に休暇中の労働者が参加したかどうかは、年次有給休暇の成否に影響しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和53年12月8日 昭和51(行ツ)28
- 登載
- 集民 第125号815頁
- 参照法条
- 労働基準法39条
論点34第39条労働基準法
一、年次有給休暇制度と休暇の利用目的
二、労働基準法三九条三項〈年次有給休暇〉但書にいう「事業の正常な運営を妨げる」か否かの判断基準
裁判要旨一、年次有給休暇における休暇の利用目的は労働基準法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由であると解すべきである。
二、労働基準法
三九条三項〈年次有給休暇〉但書にいう「事業の正常な運営を妨げる」か否かは、当該労働者の所属する事業場を基準として判断すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和48年3月2日 昭和41(オ)1420
- 登載
- 民集 第27巻2号210頁
- 参照法条
- 労働基準法39条
論点35第39条労働基準法
一、労働基準法三九条三項〈年次有給休暇〉にいう「労働者の請求する時季」の意義
二、始期と終期を特定してされた年次有給休暇の時季指定の法的効果
裁判要旨一、労働基準法
三九条三項〈年次有給休暇〉にいう「労働者の請求する時季」とは、労働者の指定する時季にほかならず、そこにいう「時季」とは、季節をも含めた時期を意味するものと解すべきである。
二、労働基準法
三九条に基づき、労働者が、その有する年次有給休暇の日数の範囲内で、始期と終期を特定して休暇の時季指定をしたときは、客観的に同条三項但書所定の事由が存在し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権の行使をしないかぎり、右の指定によつて年次有給休暇が成立し、当該労働日における就労義務が消滅するものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和48年3月2日 昭和41(オ)848
- 登載
- 民集 第27巻2号191頁
- 参照法条
- 労働基準法39条
論点36第39条労働基準法
前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条項の一部が公序に反し無効とされた事例
裁判要旨すべての原因による不就労を基礎として算出した前年の稼働率が八〇パーセント以下の従業員を翌年度のベースアップを含む賃金引上げの対象者から除外する旨の労働協約条項は、そのうち労働基準法又は労働組合法上の権利に基づくもの以外の不就労を稼働率算定の基礎とする部分は有効であるが、右各権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分は公序に反し無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成元年12月22日 昭和59(オ)303
- 登載
- 集民 第158号805頁
- 参照法条
- 民法90条,労働基準法39条,労働基準法65条,労働基準法66条,労働基準法67条,労働基準法68条,労働基準法76条,労働組合法2章,労働組合法14条,労働組合法16条,憲法28条
論点37第39条労働基準法
前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条項の一部が公序に反し無効とされた事例
裁判要旨すべての原因による不就労を基礎として算出した前年の稼働率が八〇パーセント以下の従業員を翌年度のベースアップを含む賃金引上げの対象者から除外する旨の労働協約条項は、そのうち労働基準法又は労働組合法上の権利に基づくもの以外の不就労を稼働率算定の基礎とする部分は有効であるが、右各権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分は公序に反し無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成元年12月14日 昭和58(オ)1542
- 登載
- 民集 第43巻12号1895頁
- 参照法条
- 民法90条,労働基準法39条,労働基準法65条,労働基準法66条,労働基準法67条,労働基準法68条,労働基準法76条,労働組合法第2章,労働組合法14条,労働組合法16条,憲法28条
論点38第39条労働基準法
タクシー会社の乗務員が月ごとの勤務予定表作成後に年次有給休暇を取得した場合に皆勤手当を支給しない旨の約定が公序に反する無効なものとはいえないとされた事例
裁判要旨タクシー会社の乗務員に対し、月ごとの勤務予定表どおり勤務した場合には月額三一〇〇円ないし四一〇〇円の皆勤手当を支給するが、右勤務予定表作成後に年次有給休暇を取得した場合には右手当の全部又は一部を支給しない旨の約定は、右手当の支給が代替要員の手配が困難となり自動車の実働率が低下する事態を避ける配慮をした乗務員に対する報奨としてされ、右手当の額も相対的に大きいものではないなどの判示の事情の下においては、年次有給休暇取得の権利の行使を抑制して労働基準法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものとは認められず、公序に反する無効なものとはいえない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成5年6月25日 平成4(オ)1078
- 登載
- 民集 第47巻6号4585頁
- 参照法条
- 民法90条,労働基準法39条,労働基準法134条
論点39第39条労働基準法
労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日と労働基準法39条1項及び2項における年次有給休暇権の成立要件としての全労働日に係る出勤率の算定の方法
裁判要旨無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日は,労働基準法
39条1項〈年次有給休暇〉及び2項における年次有給休暇権の成立要件としての全労働日に係る出勤率の算定に当たっては,出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成25年6月6日 平成23(受)2183
- 登載
- 民集 第67巻5号1187頁
- 参照法条
- 労働基準法39条1項,労働基準法39条2項
論点40第39条労働基準法
一箇月に満たない期間に集中的に高度な知識、技能を修得させることを目的として行われる訓練期間中における年次有給休暇の請求に対する時季変更権の行使
裁判要旨事業遂行に必要な技術者の養成と能力向上を図るため、各職場の代表者を参加させて、一箇月に満たない比較的短期間に集中的に高度な知識、技能を修得させ、これを職場に持ち帰らせることによって、各職場全体の業務の改善、向上に資することを目的として行われた訓練の期間中に、訓練に参加している労働者から年次有給休暇が請求されたときは、使用者は、当該休暇期間における具体的な訓練の内容がこれを欠席しても予定された知識、技能の修得に不足を生じさせないものであると認められない限り、事業の正常な運営を妨げるものとして時季変更権を行使することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成12年3月31日 平成8(オ)1026
- 登載
- 民集 第54巻3号1255頁
- 参照法条
- 労働基準法39条4項