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罪/公務の執行を妨害する罪

公務の執行を妨害する罪の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

公務員が職務を行っている場面や、強制執行・競売など公権力に基づく手続の場面で、暴行・脅迫や不正な妨害行為によってその執行を妨げることを処罰する規定群です。刑法95条は公務員への暴行・脅迫そのものを対象とし、96条以下は封印・差押表示の破棄、強制執行の妨害、競売・入札の公正侵害など、手続の場面ごとに罪を定めています。

公務の執行を妨害する罪
条文罪名対象行為法定刑
95条公務執行妨害・職務強要公務員への暴行・脅迫3年以下拘禁刑/50万円以下罰金
95条の2電子計算機損壊等公務執行妨害公務用PCの損壊・不正操作3年以下拘禁刑/50万円以下罰金
96条封印等破棄封印・差押表示の損壊等3年以下拘禁刑/250万円以下罰金(併科可)
96条の2強制執行妨害目的財産損壊等財産の隠匿・譲渡仮装等3年以下拘禁刑/250万円以下罰金(併科可)
96条の3強制執行行為妨害等執行妨害・申立妨害の暴行脅迫3年以下拘禁刑/250万円以下罰金(併科可)
96条の4強制執行関係売却妨害売却の公正を害す行為3年以下拘禁刑/250万円以下罰金(併科可)
96条の5加重封印等破棄等報酬目的の加重類型5年以下拘禁刑/500万円以下罰金(併科可)
96条の6公契約関係競売等妨害競売・入札の公正を害す・談合3年以下拘禁刑/250万円以下罰金(併科可)
  • 96条の2は、情を知って財産の譲渡や権利設定の相手方となった者も同様に処罰される
  • 96条の3第2項は、強制執行の申立てをさせない・取り下げさせる目的の暴行・脅迫も対象
  • 96条の5は、96条から96条の4までの罪を人の債務に関し報酬目的で犯した場合の加重類型
  • 96条の6第2項は、公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的の談合も同様に処罰される
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公務の執行を妨害する罪

公務の執行を妨害する罪について、条文は何を定めているか。

第95条公務執行妨害及び職務強要公務員への暴行・脅迫を処罰する2項判例 36件
  • 職務を執行中の公務員に暴行・脅迫を加えると成立する(1項)
  • 処分をさせる/させない、辞職させる目的の暴行・脅迫も同様(2項)
  • 法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
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第95_2条電子計算機損壊等公務執行妨害公務用コンピュータへの妨害を処罰する1項判例なし
  • 職務用の電子計算機や電磁的記録を損壊すると成立する
  • 虚偽の情報や不正な指令を与える行為も対象になる
  • 法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
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第96条封印等破棄公務員が付けた封印・差押表示を壊す行為1項判例 22件
  • 封印や差押えの表示を損壊、または無効にすると成立する
  • 法定刑は3年以下の拘禁刑もしくは250万円以下の罰金、または併科
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第96_2条強制執行妨害目的財産損壊等強制執行を妨げる目的の財産隠し等1項・3号判例なし
  • 対象財産の隠匿・損壊・譲渡や債務の仮装が処罰対象(1号)
  • 財産の現状を変えて価格減損・費用増大させる行為も対象(2号)
  • 無償等の不利な条件での譲渡・権利設定と、情を知る相手方も対象(3号)
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第96_3条強制執行行為妨害等偽計・威力で執行行為を妨げる行為2項判例なし
  • 偽計・威力により立入りや占有者確認等の執行行為を妨害(1項)
  • 申立てをさせない・取り下げさせる目的の暴行・脅迫も同様(2項)
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第96_4条強制執行関係売却妨害強制執行での売却の公正を害す行為1項判例なし
  • 偽計・威力を用いて強制執行の売却の公正を害する行為が対象
  • 法定刑は3年以下の拘禁刑もしくは250万円以下の罰金、または併科
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第96_5条加重封印等破棄等報酬目的で他人の債務に関し前条までの罪を犯す1項判例なし
  • 報酬を得る・得させる目的で人の債務に関し96条〈封印等破棄〉〜96条の4〈強制執行関係売却妨害〉の罪を犯す場合
  • 法定刑は5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、または併科
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第96_6条公契約関係競売等妨害公の競売・入札の公正を害す行為・談合2項判例なし
  • 偽計・威力で契約締結のための競売・入札の公正を害する行為(1項)
  • 公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的の談合も同様(2項)
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第95条刑法

国鉄電気機関士の出区点検行為と刑法九五条一項にいう公務員の職務

裁判要旨国鉄の電気機関士による電気機関車出区点検の行為は、刑法九五条一項〈公務執行妨害及び職務強要〉にいう公務員の職務にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和59年5月8日 昭和57(あ)1805
登載
刑集 第38巻7号2621頁
参照法条
刑法95条1項
論点2第95条刑法

歩行中の集団を停止させた警察官の行為が犯人検挙のための捜査活動として適法な職務執行にあたるとされた事例

裁判要旨集団の一員が、警備中の警察官に暴行を加えてその職務の執行を妨害するとともに傷害を負わせ、右集団にまぎれ込んだ場合において、右犯人を探索して検挙するため、歩行中の右集団を六、七分間にわたり停止させた本件警察官の行為は、当時、犯罪発生後間がなく、かつ、被害警察官が犯人の人相特徴を明確に記憶しているなど犯人検挙の可能性がきわめて高い状況にあり、また、集団が四散する直前で、犯人検挙のためには直ちに集団を停止させてその四散を防止する緊急の必要があり、しかも、その方法が停止を求めるための説得の手段の域にとどまるなどの本件事実関係(判文参照)のもとにおいては、犯人検挙のための捜査活動として適法な職務執行にあたる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和59年2月13日 昭和55(あ)1104
登載
刑集 第38巻3号295頁
参照法条
刑法95条1項,刑訴法197条1項,警察官職務執行法2条1項
論点3第95条刑法

郵便物集配業務に従事中の郵政事務官に対して暴行を加えた者を公務執行妨害罪で処罰することと憲法一四条

裁判要旨Aにおける便郵物集配業務に従事中の郵政事務官に対して暴行を加えた者を公務執行妨害罪で処罰しても憲法一四条に違反しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和58年3月29日 昭和57(あ)294
登載
集刑 第230号671頁
参照法条
憲法14条,刑法95条
論点4第95条刑法

刑法九五条一項〈公務執行妨害及び職務強要〉にいう公務員の職務にあたるとされた事例

裁判要旨郵政省庁舎管理規程に基づく郵便局長の命令により郵政事務官がした本件警備行為は、刑法九五条一項〈公務執行妨害及び職務強要〉にいう公務員の職務にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和55年10月27日 昭和55(あ)417
登載
刑集 第34巻5号322頁
参照法条
刑法95条1項
論点5第95条刑法

国鉄の気動運転士に対する暴行が公務執行妨害罪を構成するとされた事例

裁判要旨国鉄の気動車運転士が急行列車の運転室内で中継駅の運転士と業務の引継・交替を行い、運転当直助役の許に赴いて終業点呼を受けるため駅ホームを歩行していた際、右運転士に対して加えられた本件暴行は、公務執行妨害罪を構成する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和54年1月10日 昭和53(あ)549
登載
刑集 第33巻1号1頁
参照法条
刑法95条1項
論点6第95条刑法

昭和三六年度全国高等学校抽出学力調査の実施と教育基本法一〇条

裁判要旨昭和三六年度全国高等学校抽出学力調査の実施は、教育に対する不当な支配として教育基本法一〇条に違反するものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和54年10月9日 昭和51(あ)1140
登載
刑集 第33巻6号503頁
参照法条
教育基本法10条,刑法95条1項
論点7第95条刑法

職務質問及び交通の危険防止のため自動車の窓から手を差し入れエンジンキーを回転してスイツチを切り運転を制止した警察官の行為が適法とされた事例

裁判要旨交通違反取締中の警察官が、信号無視の自動車を現認しこれを停車させた際、下車した運転者が酒臭をさせており、酒気帯び運転の疑いが生じたため、酒気の検知をする旨告げたところ、同人が、警察官が提示を受けて持つていた運転免許証を奪い取り、自動車に乗り込んで発進させようとしたなど判示の事実関係のもとでは、警察官が自動車の窓から手を差し入れエンジンキーを回転してスイツチを切り運転を制止した行為は、警察官職務執行法二条一項及び道路交通法六七条三項の規定に基づく職務の執行として適法である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年9月22日 昭和52(あ)1846
登載
刑集 第32巻6号1774頁
参照法条
刑法95条1項,警察官職務執行法2条1項,道路交通法67条3項
論点8第95条刑法

一 刑法九五条一項〈公務執行妨害及び職務強要〉にいう職務の範囲
二 刑法九五条一項における職務の執行中であるか否かの判断に際しその性質上ある程度継続した一連の職務として把握するのが相当であるとされた事例
三 刑法九五条一項における職務の執行が終了したものではないとされた事例
四 公務執行妨害罪の主観的成立要件としての職務執行中であることの認識の程度

裁判要旨一 刑法九五条一項〈公務執行妨害及び職務強要〉にいう職務には、ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれる。
二 刑法九五条一項における職務の執行中であるか否かの判断に際しては、日本電信電話公社の電報局長の、局の事務全般を掌理し部下職員を指揮監督する職務及び同電報局次長の、局長を助け局務を整理する職務は、その性質上、その内容及び執行の過程を個別的に分断して部分的にそれぞれの開始、終了を論ずるべきではなく、一体性ないし継続性を有するものとして把握すべきである。
三 本件電報局長の、電報料金の収納等に関する会計書類の点検、決裁の職務及び本件電報局次長の、電報配達業務等に関する上部機関への報告文書作成の職務の各執行が事実上一時的に中断したとしても、その状態が被告人の不法な目的をもつた行動によつて作出されたものである場合には、刑法九五条一項における職務の執行は終了したものではない。
四 公務執行妨害罪の主観的成立要件としての職務執行中であることの認識があるというためには、行為者において公務員が職務行為の執行に当つていることの認識があれば足り、具体的にいかなる内容の職務の執行中であるかまで認識することを要しない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年6月29日 昭和51(あ)310
登載
刑集 第32巻4号816頁
参照法条
刑法38条1項,刑法95条1項,日本電信電話公社法18条,日本電信電話公社法35条
論点9第95条刑法

公務執行妨害罪における職務にあたるとされた事例―いわゆる徳島専売公社事件―

裁判要旨日本専売公社徳島地方局社内取締規程に基づいて発せられた本件立入禁止命令及び退去命令の同公社職員による執行は、それが民間企業にみられるのと同じ労使間の紛争を処理するためにとられた措置であつても、公務執行妨害罪における職務にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和53年5月22日 昭和52(あ)939
登載
刑集 第32巻3号427頁
参照法条
刑法95条1項,日本専売公社法18条1項
論点10第95条刑法

官公庁の労働争議で派生した暴力事犯に公務執行罪を適用するのは、憲法一四条、二八条に反するとの主張を欠前提で処理した事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和52年8月11日 昭和51(あ)949
登載
集刑 第205号359頁
参照法条
憲法14条,憲法28条,刑法95条
論点11第95条刑法

一、共同加害の目的が認められないとして兇器準備集合罪の成立を成否を否定した原判決に事実誤認の疑いがあるとされた事例
二、無許可集団示威運動と昭和二十五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例四条〈公務員の国外犯〉飯田橋

裁判要旨一 角材の柄付きプラカード等を所持して集団示威運動を行つていた学生集団の先頭部分の学生のうち、所携の右プラカード等を振り上げて警察官をめがけて殴りかかつている状況を相互に目撃し得る場所に近接して位置し、しかもみずから警察官に対し暴行に及んだ者あるいは暴行に及ぼうとしていた者についてまで、右行為は各自の個人的な意思発動による偶発的行為であるとして、兇器準備集合罪にいう共同加害目的の存在を否定した原判決は、判示の事情のもとにおいては、事実を誤認した疑いがあり、破棄を免れない。
二 昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例四条〈公務員の国外犯〉は、同条にいう所要の措置が違反行為の態様、公共の秩序に対する侵害の程度等に応じて必要な限度を超えてはならないことを規定したものであつて、無許可の集団示威運動に対し、これを直ちに実力で阻止し解散させなければならないほど明白かつ切迫した事態にない限り阻止することも許されないとする趣旨ではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和52年5月6日 昭和49(あ)1200
登載
刑集 第31巻3号544頁
参照法条
刑法95条1項,刑法208条ノ2第1項,刑訴法411条3号,集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(昭和25年東京都条例44号)4条
論点12第95条刑法

一、地方教育行政の組織及び運営に関する法律五四条二項〈一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理〉と昭和三六年度全国中学校一せい学力調査の手続上の適法性
二、憲法と子どもに対する教育内容の決定権能の帰属
三、教育行政機関の法令に基づく教育の内容及び方法の規制と教育基本法一〇条
四、昭和三六年当時の中学校学習指導要領(昭和三三年文部省告示第八一号)の効力
五、昭和三六年度全国中学校一せい学力調査と教育基本法一〇条
六、教育の地方自治と昭和三六年度全国中学校一せい学力調査の適法性

裁判要旨一、地方教育行政の組織及び運営に関する法律五四条二項〈一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理〉は、文部大臣に対し、昭和三六年度全国中学生一せい学力調査のような調査の実施を教育委員会に要求する権限を与えるものではないが、右規定を根拠とする文部大臣の右学力調査の実施の要求に応じて教育委員会がした実施行為は、そのために手続上違法となるものではない。
二、憲法上、親は一定範囲においてその子女の教育の自由をもち、また、私学教育の自由及び教師の教授の自由も限られた範囲において認められるが、それ以外の領域においては、国は、子ども自身の利益の擁護のため、又は子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲において、子どもの教育内容を決定する権能を有する。
三、教育行政機関が法令に基づき教育の内容及び方法に関して許容される目的のために必要かつ合理的と認められる規制を施すことは、必ずしも教育基本法一〇条の禁止するところではない。
四、昭和三六年当時の中学校学習指導要領(昭和三三年文部省告示第八一号)は、全体としてみた場合、中学校における教育課程に関し、教育の機会均等の確保及び全国的な一定水準の維持の目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な遵守基準を設定したものとして、有効である。
五、昭和三六年度全国中学校一せい学力調査は、教育基本法一〇条一項にいう教育に対する「不当な支配」として同条に違反するものではない。
六、文部大臣が地方教育行政の組織及び運営に関する法律五四条二項の規定を根拠として教育委員会に対してした昭和三六年度全国中学校一せい学力調査の実施の要求は、教育の地方自治の原則に違反するが、右要求に応じてした教育委員会の調査実施行為自体は、そのために右原則に違反して違法となるものではない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和51年5月21日 昭和43(あ)1614
登載
刑集 第30巻5号615頁
参照法条
地方教育行政の組織及び運営に関する法律23条,地方教育行政の組織及び運営に関する法律32条,地方教育行政の組織及び運営に関する法律43条,地方教育行政の組織及び運営に関する法律54条2項,刑法95条1項,憲法13条,憲法23条,憲法26条,憲法92条,教育基本法 前文,教育基本法10条,学校教育法38条,学校教育法106条,学校教育法施行規則54条の2
論点13第95条刑法

一 任意捜査において許容される有形力の行使の限度
二 任意捜査において許容される限度内の有形力の行使と認められた事例

裁判要旨一 任意捜査における有形力の行使は、強制手段、すなわち個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段にわたらない限り、必要性、緊急性などをも考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において、許容される。
二 警察官が、酒酔い運転の罪の疑いが濃厚な被疑者をその同意を得て警察署に任意同行し、同人の父を呼び呼気検査に応じるよう説得を続けるうちに、母が警察署に来ればこれに応じる旨を述べたので、連絡を被疑者の父に依頼して母の来署を待つていたところ、被疑者が急に退室しようとしたため、その左斜め前に立ち、両手でその左手首を掴んだ行為(判文参照)は、任意捜査において許容される限度内の有形力の行使である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和51年3月16日 昭和50(あ)146
登載
刑集 第30巻2号187頁
参照法条
刑法95条1項,刑訴法197条1項
論点14第95条刑法

公共企業体等職員の労働争議の際のピケツテイングが違法であるとしてこれを鎮圧排除しようとした警察官の実力行使に対してなされた暴行が公務執行妨害罪を構成するとされた事例

裁判要旨争議行為に際して行なわれた犯罪構成要件該当行為について刑法上違法性阻却事由の有無を判断するにあたつては、その行為が争議行為に際して行なわれたものであるという事実をも含めて、当該行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かが判定されなければならない(最高裁昭和四三年(あ)第八三七号同四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻三号四一八頁参照)のであつて、かかる見地から本件をみると、被告人両名を含む本件ピケ隊によるピケツテイングは、原判決判示の事実関係に徴すると、法秩序全体の立場から許容されるものとはいい難く、刑法上違法性を欠くものではないから、これについて威力業務妨害罪の成立を認め、これを鎮圧排除しようとした警察官の実力行使に対してなされた被告人両名の本件暴行が公務執行妨害罪を構成するとした原判決の判断は、結論において正当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和49年7月4日 昭和47(あ)2295
登載
集刑 第193号1頁
参照法条
刑法95条1項,刑法234条,刑法35条
論点15第95条刑法

労働基準法所定の労働時間の制限を超える公務の執行と公務執行妨害罪の成否

裁判要旨法令により公務に従事する者とみなされる日本国鉄道職員であつて労働基準法の適用を受ける者に対する職務命令が、同法所定の労働時間の制限を超えて就労することをその内容としており、かつ、その者の就労が右制限を超えたからといつて、そのために、職務の執行が具体的権限を欠いて違法となり、その者に対する公務執行妨害罪の成立が妨げられるものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和48年5月25日 昭和44(あ)1629
登載
刑集 第27巻5号1115頁
参照法条
刑法7条,刑法95条1項,日本国有鉄道法34条1項,労働基準法32条1項
論点16第95条刑法

一、勤労者の争議行為に際して行なわれた犯罪構成要件該当行為について違法性阻却事由の有無を判断する一般的基準
二、A労働組合員らの争議行為の際における信号所侵入行為が刑法上の違法性を欠くものでなくその刑事責任を問うことが憲法二八条に違反しないとされた事例
三、鉄道営業法四二条一項により鉄道係員が旅客公衆を車外または鉄道地外に退去させるにあたり必要最少限度の強制力を用いることの可否と憲法三一条
四、旧「鉄道公安職員基本規程」(昭和二四年一一月一八日総裁達四六六号)三条〈国民の国外犯〉、五条〈外国判決の効力〉(現「鉄道公安職員基本規程(管理規程)」(昭和三九年四月一日総裁達一六〇号)二条〈すべての者の国外犯〉、四条〈公務員の国外犯〉)に定める鉄道公安職員の鉄道施設警備等の職務と公務執行妨害罪における公務
五、A労働組合員らの争議行為の際におけるてこ扱所二階の信号所への立入り、同所に通ずる階段へのすわり込みが鉄道営業法三七条、四二条一項三号にいう公衆がみだりに鉄道地内に立ち入つた場合にあたるとされた事例
六、鉄道公安職員がてこ扱所二階の信号所に立ち入り同所に通ずる階段にすわり込んだA労働組合員らを鉄道営業法四二条一項により退去させる場合に許される強制力行使の程度

裁判要旨一 勤労者の組織的集団行動としての争議行為に際して行なわれた犯罪構成要件該当行為について刑法上の違法性阻却事由の有無を判断するにあたつては、その行為が争議行為に際し行なわれたものであるという事実をも含めて、当該行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを判定しなければならない。
二 A労働組合員らの争議行為の際における被告人ら三名の本件信号所各侵入行為(被告人甲は、信号所の勤務員三名を勧誘、説得してその職務を放棄させ、勤務時間内の職場集会に参加させる意図をもつて、駅長の禁止に反して侵入したもの、また、被告人乙および丙は、労働組合員ら多数が同信号所を占拠した際にこれに加わり、それぞれ侵入したもの。判文参照)は、いずれも刑法上違法性を欠くものではない。このように解して被告人ら三者の刑事責任を問うことは、憲法二八条に違反しない。
三 鉄道営業法四二条一項により鉄道係員が当該の旅客、公衆を車外または鉄道地外に退去させるにあたつて、旅客、公衆が自発的な退去に応じない場合、または危険が切迫する等やむをえない場合には、鉄道係員において当該具体的事情に応じて必要最少限度の強制力を用いることができる。このように解しても、憲法三一条に違反しない。 (注)判示事項および裁判要旨の四項以下はカード番号二六号の二に続く。
四 旧「鉄道公安職員基本規程」(昭和二四年一一月一八日総裁達四六六号)三条〈国民の国外犯〉、五条〈外国判決の効力〉(現「鉄道公安職員基本規程(管理規程)」(昭和三九年四月一日総裁達一六〇号)二条〈すべての者の国外犯〉、四条〈公務員の国外犯〉)に定める鉄道公安職員の鉄道施設警備等の職務は、公務執行妨害罪における公務にあたる。
五 A労働組合員らの本件てこ扱所二階の信号所への立入り、同所に通ずる階段へのすわり込み(判文参照)は、鉄道営業法三七条、四二条一項三号にいう公衆が鉄道地内にみだりに立ち入つた場合にあたる。
六 鉄道公安職員は、本件てこ扱所二階の信号所に立ち入り、同所に通ずる階段にすわり込んだA労働組合員らを鉄道営業法四二条一項により退去させるにあたつては、必要最少限度の強制力の行使として、自発的な退去を促したのに、これに応じないで階段の手すりにしがみつき、あるいはたがいに腕を組む等をして居すわつている者に対し、手や腕を取つてこれをほどき、身体に手をかけて引き、あるいは押し、必要な場合にはこれをかかえ上げる等して階段から引きおろし、退去の実効を収めるために必要な限度で階段下から適当な場所まで腕をとつて進行する等の行為をもなしうるものであり、このような行為が必要最少限度のものかどうかは、労働組合員らの抵抗の状況等の具体的事情を考慮して決定すべきものである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和48年4月25日 昭和43(あ)837
登載
刑集 第27巻3号418頁
参照法条
刑法35条,刑法95条1項,刑法130条,憲法28条,憲法31条,鉄道営業法37条,鉄道営業法42条1項,日本国有鉄道法32条1項,日本国有鉄道法34条1項,旧鉄道公安職員基本規程(昭和24年11月18日総裁達466号)3条,旧鉄道公安職員基本規程(昭和24年11月18日総裁達466号)5条,鉄道公安職員基本規程(管理規程)(昭和39年4月1日総裁達160号)2条,鉄道公安職員基本規程(管理規程)(昭和39年4月1日総裁達160号)4条
論点17第95条刑法

一 地方議会の議事進行に関連する議員の刑事犯罪と議会または議長の告訴告発
二 地方議会の議事進行に関する議長の措置が会議規則に違反していたとしても刑法第九五条第一項にいう公務員の職務の執行にあたるとされた事例

裁判要旨一 地方議会の議事進行に関連する議員の刑事犯罪については、議会または議長の告訴告発を訴訟条件と解すべきではない。
二 地方議会の議長が議員から提出された質疑打切り、討論省略、全上程議案一括採決の動議に基づき全上程議案の一括採決を議場に諮ろうとした措置は、かりに会議規則に違反するものである等法令上の適法要件を完全には満たしていなかつたとしても、原審の認定した具体的な事実関係(原判文参照)のもとにおいては、刑法第九五条第一項〈公務執行妨害及び職務強要〉にいう公務員の職務の執行にあたる。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和42年5月24日 昭和38(あ)1184
登載
刑集 第21巻4号505頁
参照法条
憲法51条,刑訴法230条,刑訴法239条,刑訴法338条4号,刑法95条1項,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)31条,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)32条,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)36条,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)37条,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)38条,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)39条,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)76条,佐賀県議会会議規則(昭和32年3月14日佐賀県議会規則1号による改正前のもの)77条
論点18第95条刑法

公務執行妨害罪における職務としての現行犯人逮捕行為の適法性の判断基準

裁判要旨公務執行妨害罪における職務としての現行犯人逮捕行為の適法性の判断は、逮捕行為当時における具体的状況を客観的に観察して、現行犯人と認められるに十分な理由があつたか否かによるべきものであつて、事後において犯人と認められたか否かによるべきものではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年4月14日 昭和40(あ)2241
登載
集刑 第159号181頁
参照法条
刑法95条1項,刑法36条,刑訴法212条
論点19第95条刑法

一 国鉄の事業ないし業務は刑法第二三三条第二三四条にいう業務に含まれるか
二 国鉄の業務と民営鉄道の業務との間の法律上の保護の差異と憲法第一四条

裁判要旨一 国定の行なう事業ないし業務は、刑法第二三三条〈信用毀損及び業務妨害〉、第二三四条〈威力業務妨害〉にいう業務に含まれる。
二 国鉄の業務が、これに対する妨害に対し、業務妨害罪または公務執行妨害罪の保護を受け、民営鉄道の業務との間に、法律上の保護に差異があることは、憲法第一四条に違反しない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和41年11月30日 昭和36(あ)823
登載
刑集 第20巻9号1076頁
参照法条
刑法233条,刑法234条,刑法95条1項,憲法14条
論点20第95条刑法

鉄道公安職員に対する暴行と公務執行妨害罪の成立。

裁判要旨鉄道公安職員は、日本国有鉄道法第三四条第一項により法令により公務に従事する者とみなされ、犯罪捜査のほか、鉄道公安職員基本規程により、鉄道業務の円滑な遂行のためこれを侵害するものを排除するなど警備的職務に従事するものであるから、その職務の執行にあたり、これに対して暴行を加えたときは、公務執行妨害罪が成立するものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年8月25日 昭和38(あ)515
登載
集刑 第152号587頁
参照法条
刑法95条,刑法7条,日本国有鉄道法34条1項,日本国有鉄道法32条,日本国有鉄道法2条,日本国有鉄道法3条,鉄道公安職員の職務に関する法律1条,鉄道公安職員の職務に関する法律8条,鉄道公安職員基本規程(昭和24年2月18日総裁達466号)3条,鉄道公安職員基本規程(昭和24年2月18日総裁達466号)5条
論点21第95条刑法

現行犯人としての逮捕が適法であると認められた事例。

裁判要旨一 本件逮捕が適法である旨の原判断の結論は正当である。
二 (原審判断の要旨)被告人は現行犯人として逮捕されたものではなく、任意同行したものであると主張するが、浅草警察署勤務の甲乙外二名の警察官は警察庁本部からのaのクラブ「A」で若い者が乱暴しているから急行せよとの指令により右クラブに行き、入口で経営者より被告人がグラス二個を床に投げつけ損壊したとの説明を受けた様、乙外一名の巡査が店内地下室にはいつたところ、被告人の坐つているテーブルの上にビール瓶が横に倒れており、グラスの破片は既に取片づけてあつたけれども附近にビールが散乱しており、従業員が被告人を指示して被告人が乱暴した旨を述べたので、右両巡査は被告人に対し「コツプを投げたことで本署に行つて貰いたい」と告げたところ被告人は「俺が何を悪いことをした、逮捕するなら令状を持つて来い」等の暴言をはいてなかなか応ぜず、漸く甲巡査部長の説得によつて同行に応じたのであるが、「ああ警察に行つてやるよ」等といつて相変らず不遜の態度を示し、自動車に乗る際も「お前も一緒に乗れ」といつて甲の袖を引いたりして、素直に同行に応じたものではなかつたことが認められるのであつて、右警察官が被告人に対し「逮捕する」との言葉を用いたかどうかについては必ずしも明確ではないが、被告人は警察官の強制によつてその要求は拒否し難くこれに応じたものであつて、決して被告人の意思にもとづき警察官と同道して警察に任意出頭することを承諾したものとは認められないから、警察官に逮捕されたというべきで、右逮捕は刑訴法第二一二条第二項第一号の要件を具備するものと認められる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年10月27日 昭和37(あ)2558
登載
集刑 第152号1131頁
参照法条
刑訴法212条,刑法95条1項,刑法208条
論点22第95条刑法

公共企業体等労働関係法第一七条違反の争議行為と労働組合法第一条第二項。

裁判要旨公共企業体等労働関係法第一七条に違反してなされた争議行為に対しては、労働組合法第一条第二項の適用はない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和38年3月15日 昭和37(あ)242
登載
集刑 第146号723頁
参照法条
公共企業体等労働関係法17条,労働組合法1条2項,刑法95条1項,刑法95条204条,刑法95条35条
論点23第95条刑法

一 強盗傷人とならない一事例
二 牽連犯の要件

裁判要旨一 前夜岡山県下で強盗を行つて得た賍物を舟で運搬し、翌晩神戸で陸揚げしようとする際巡査に発見され、逮捕を免れるため暴行を加え、これを傷害した所為は、強盗傷人ではなく、強盗と公務執行妨害、傷害との罪が成立する。
二 牽連犯が成立するためには犯人が主観的に数罪の一方を他方の手段または結果の関係において実行したというだけでは足りず、その数罪間にその罪質上通常手段結果の関係が存在することを必要とする。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和32年7月18日 昭和31(れ)16
登載
刑集 第11巻7号1861頁
参照法条
刑法240条,刑法238条,刑法236条,刑法95条,刑法204条,刑法54条
論点24第95条刑法

一 刑訴法第二〇一条第二項の準用する同法第七三条第三項にいわゆる「急速を要するとき」にあたる一事例
二 逮捕状を所持しない司法巡査が被疑者を逮捕しようとするに当り被疑者を奪還するためになした暴行と公務執行妨害罪の成立

裁判要旨一 某会社に勃発した労働争議に関し、発生した建造物損壊被疑事件の被疑者に対し逮捕状が発せられたので、某警部補指揮の下に甲、乙両巡査を含む司法巡査五名が右会社工場内外付近各所において、右被疑者が工場を出てくるのを待つて、右逮捕状を執行すべく待機中、自転車で工場から出て来た被疑者を甲、乙両巡査が発見したが、逮捕状の所持者と連絡してこれを同人に示す時間的余裕がなかつたので、逮捕状が発せられている旨を告げて逮捕しようとした当時の情況は、刑訴法第二〇一条第二項の準用する同法第七三条にいわゆる「急速を要するとき」にあたる。
二 右の如き情況の下において、折柄被疑者の求めに応じて工場から馳せつけた被告人等が被疑者奪還のため、甲、乙両巡査に対し暴行を加えた以上、被告人等の右所為は公務執行妨害罪を構成する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和31年3月9日 昭和26(あ)4557
登載
刑集 第10巻3号303頁
参照法条
刑訴法201条2項,刑訴法73条3項(昭和28年法律172号による改正前のもの),刑法95条1項,憲法33条
論点25第95条刑法

一 上告申立をした原審弁護人がその資格で提出した上告趣意書の効力
二 上告趣意書提出期間後に上告審の弁護届を提出した原審弁護人が右期間内に提出した上告趣意書の効力
三 刑法第九五条〈公務執行妨害及び職務強要〉と鉄道営業法第三八条との関係

裁判要旨一 自ら上告申立をした原審弁護人が上告趣意書提出期間内にその資格で上告趣意書を提出した場合でも、右上告趣意は審理の対象とさるべきものである。
二 上告趣意書提出期間内に、原審弁護人が、その資格で上告趣意書を提出した場合でも、裁判の時まで上告審の弁護届が追完されたときは、右上告趣意は拒否さるべきではなく、審理するを相当する。
三 公務員たる鉄道係員(駅助役)の執務中、同係員の脅迫してその職務の執行を妨害した場合には、一個の行為にして刑法第九五条と鉄道営業法第三八条との二個の罪名に触れるものとして、重き前者の刑を以つて処断すべきである。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和29年7月7日 昭和24(れ)1028
登載
刑集 第8巻7号1052頁
参照法条
旧刑訴法379条,旧刑訴法423条,旧刑訴法41条1項,旧刑訴法42条,刑法54条,刑法95条,鉄道営業法38条
論点26第95条刑法

税務署員が被告人等の暴行脅迫により捜索差押許可状を呈示できなかつた場合と公務執行妨害罪の成立

裁判要旨税務署員において捜索差押許可状をその処分を受ける者に対し呈示することが法の要請するところであるとしても、本件の如く相手方においてこれが呈示を要求した事実の認められないのは勿論、これを呈示することが事実上不可能であつたと認められる場合においては、たとい税務署員が許可状を呈示しなかつたとしても、唯だその一事により、その調査が公務の執行たることを妨げられるものではなく、暴行脅迫によつてこれを妨害した被告人等の所為が公務執行妨害罪を構成することは多言を要しない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年6月19日 昭和27(あ)37
登載
集刑 第83号319頁
参照法条
刑訴法110条,国税犯則取締法2条,刑法95条
論点27第95条刑法

刑訴第四一一条にあたらない一事例−収税官吏が臨検捜索にあたり被告人の暴行により令状を示すことができなかつた場合

裁判要旨収税官吏が令状を被告人に示さなかつたことは論旨主張のとおりであるが、右は収税官吏が臨検捜索をなさんとしたとき被告人が不在であつたので警察吏員立会のもとにこれを開始したが、その執行の途中で被告人が帰宅するや、これを見た被告人は痛く憤慨して収税官吏に暴行を加えたので令状を被告人に示すことができなかつたためであるときは、令状を示さなかつた違法があるとはいえない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年6月12日 昭和26(あ)3865
登載
集刑 第82号641頁
参照法条
刑訴法110条,刑訴法411条,国税犯則取締法2条,国税犯則取締法6条,刑法95条
論点28第95条刑法

脅迫行為にあたる事例

裁判要旨被告人が、司法巡査から被疑者として取調を受けるにあたり、同巡査に対し、「お前を憎んで居る者は俺丈けじやない。何人居るか判らない。駐在所にダイナマイトを仕掛けて爆発させ貴男を殺すと云つて居る者もある。」「俺の仲間は沢山居つてそいつ等も君をやつつけるのだと相当意気込んで居る」と申し向けた行為は、脅迫行為にあたる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年7月25日 昭和25(あ)1992
登載
刑集 第6巻7号941頁
参照法条
刑法222条1項,刑法95条1項
論点29第95条刑法

一 収税官吏が検査章を携帯せずにした物件検査行為とこれに対する公務執行妨害罪の成否
二 収税官吏に対して暴行脅迫を加えてその職務の執行を妨げた場合の罪責

裁判要旨一 所得税に関する調査等をする職務を有する収税官吏が、所得税法第六三条により帳簿書類等の検査をするにあたつて、法定の検査章を携帯していなかつたとしても、納税義務者等において右検査章の不携帯を理由として右収税官吏の検査を拒んだような事実のない以上、これに対して暴行又は脅迫を加えたときは公務執行妨害罪を構成する。
二 収税官吏が所得税法第六三条により帳簿書類等の検査をするにあたり、これに対して暴行脅迫を加えてその検査を妨げた場合には、公務執行妨害罪のみが成立し、所得税法第七〇条の別罪を構成するものではない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和27年3月28日 昭和25(れ)1325
登載
刑集 第6巻3号546頁
参照法条
所得税法63条,所得税法70条9号,同法施行規則63条,刑法95条1項
論点30第95条刑法

捜索差押許可状の許可する範囲――公務執行妨害罪の対象たる公務執行の適法性

裁判要旨一 記録を調べても、右捜索行為が本件臨検捜索差押許可状の許容する範囲を逸脱し、公務執行妨害罪の対象となり得ないものであるとは解されない。
二 (上告趣意要旨)
三 ところが該臨検捜索差押許可状によれば捜索すべき場所自体又は物として「臨検すべき場所に在る土地建物」が指示されてあり差押えるべき物として「酒税法違反事件を証明すべき物件」と指示されてあるから右許可状によつて司法警察員が捜索するに当つてはその対象を臨検すべき場所に在る土地建物に限るべきであつて建物内のタンスの如き鍵をかけられ得るような、筐匣用具の内部に及ぶことは許されないとせねばならず又差押の対象は酒税法違反を構成する造酒の材料用具容器に限られるのであつて封緘紙の如きそれのみを以ては右違反を証明し得ない物件に及ぶべきことは許されないのである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和26年7月6日 昭和24新(れ)454
登載
集刑 第49号439頁
参照法条
刑法95条,刑訴法218条,刑訴法219条
論点31第95条刑法

一 納税者の有志で組織したA同盟員と共同して税務署長等に対し納税者に有利な処分を為すべきことを交渉する行為と憲法第二八条
二 被告人に訴訟費用の負担を命じるその額を明示しない判決と憲法第三一条第三二条

裁判要旨一 税務署長の税務行政処分に不服な納税者等の有志をもつて組織されたA同盟の同盟員等と共同して右税務署の署長、直税課長、庶務課長等に対し、納税者に有利な処分を求むるため交渉することは、憲法第二八条により保障された団結権ないし団体交渉権にもとずくものとはいえない。
二 判決において訴訟費用は被告人等の連帯負担とする旨言い渡しただけでその訴訟費用の額を明示しないからといつてその判決は検事に対し訴訟費用に関する実質的な裁判をすることを許したものではない。
裁判
最高裁判所大法廷 昭和26年5月16日 昭和24(れ)139
登載
刑集 第5巻6号1157頁
参照法条
憲法28条,憲法31条,憲法32条,刑法95条,旧刑訴法237条,旧刑訴法245条
論点32第95条刑法

一 市の雇と公務員
二 公務執行妨害罪における暴行脅迫と結果発生の要否

裁判要旨一 市長により任命され市統計課で市の統計事務に従事する市雇は、公務員である。
二 刑法第九五条〈公務執行妨害及び職務強要〉の公務執行妨害罪の要件たる暴行脅迫は、これにより現実に職務執行妨害の結果が発生したことを必要とするものではなく、妨害となるべきものであれば足りる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和25年10月20日 昭和24(れ)2898
登載
刑集 第4巻10号2115頁
参照法条
刑法7条,刑法95条
論点33第95条刑法

交通整理等の職務に当たっていた警察官につばを吐きかけた者に対して職務質問のためその胸元をつかみ歩道上に押し上げた警察官の行為が適法な職務執行に当たるとされた事例
(反対意見がある)

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年9月26日 平成1(あ)17
登載
集刑 第252号529頁
参照法条
刑法95条1項,警職法2条1項
論点34第95条刑法

公務執行妨害罪にいう「暴行」に当たるとされた事例

裁判要旨罵声を浴びせながら一方的に抗議する過程において、丸めた紙を相手方の顔面付近に突きつけてその先端をあごに触れさせ、相手方の座つているいすを揺さぶつた行為及び相手方がいすから立ち上がるのを阻止するためその手首を握つた行為は、いずれも公務執行妨害罪にいう「暴行」に当たる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年3月9日 昭和59(あ)1036
登載
刑集 第43巻3号95頁
参照法条
刑法95条1項
論点35第95条刑法

休憩宣言後の県議会委員長に対する暴行が公務執行妨害罪を構成するとされた事例

裁判要旨県議会委員長が委員会の休憩を宣言して退出しようとした場合であつても、なお審議に関して生じた紛議に対処するなどの職務に従事していたと認められる本件においては、その際委員長に対して加えられた暴行は公務執行妨害罪を構成する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成元年3月10日 昭和61(あ)848
登載
刑集 第43巻3号188頁
参照法条
刑法95条1項
論点36第95条刑法

教職員組合員らによる建造物侵入,公務執行妨害等の所為について違法性に欠けるところはないとされた事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成3年11月28日 昭和61(あ)1311
登載
集刑 第258号403頁
参照法条
刑法95条1項,刑法130条,刑法204条,刑法208条,暴力行為等処罰に関する法律1条
論点37第96条刑法

有効な差押の標示として刑法96条の罪の客体になるとされた事例

裁判要旨執行官により立てられ、その後何者かにより包装紙で覆われその上からビニールひもが掛けられていて、そのままでは記載内容を知ることができない公示札であつても、容易にこれらを除去して記載内容を明らかにすることができる状態にあるときは、有効な差押の標示として刑法九六条の罪の客体になる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和62年9月30日 昭和62(あ)341
登載
刑集 第41巻6号297頁
参照法条
刑法96条
論点38第96条刑法

威力入札妨害罪が成立するとされた事例

裁判要旨地方公共団体が行う指名競争入札に関し、他の指名業者に対し自社を落札者とすることの談合を持ちかけ、これに応じなかつた会社の代表取締役に脅迫を加えて右談合に応ずるよう要求したときは、威力入札妨害罪が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和58年5月9日 昭和57(あ)542
登載
刑集 第37巻4号401頁
参照法条
刑法96条ノ3
論点39第96条刑法

強制執行を免れるため長男の承諾を得てその名義でなされた建物の所有権保存登記が不法原因給付にあたらないとされた事例

裁判要旨建物を建築してその所有権を取得した者が、自己の債権者からの強制執行を免れるため、長男の承諾を得てその名義で所有権保存登記を経由した場合であつても、その登記を経由した当時はいまだ右建物につき現実に強制執行を受けるような客観的状態がなかつたなどの事実関係が認められるときは、長男の名義でなされた右所有権保存登記は、民法七〇八条本文にいう不法原因給付にあたらない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和45年10月22日 昭和45(オ)472
登載
集民 第101号141頁
参照法条
民法708条,刑法96条の2
論点40第96条刑法

占有者を誤認してなされた仮処分の執行と封印破棄罪の成否

裁判要旨執行吏代理が、被告人の占有していた家屋を、仮処分決定の債務者の占有にかかるものと誤認して、執行吏の占有保管に移す旨の執行をし、その公示をした場合において、右執行吏代理には故意に被告人の権利を侵害する目的がなく、かつその執行が当然無効あるいは不存在と認められるようなものでないときは、被告人が、法律上の救済手続をとることなく、右家屋に入居する行為は、差押の標示を無効ならしめたものとして、封印破棄罪に該当する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和42年12月19日 昭和41(あ)1622
登載
刑集 第21巻10号1407頁
参照法条
刑法96条
論点41第96条刑法

入札妨害罪の成立に必要な「公ノ入札」が行なわれたか否かの判断基準

裁判要旨入札妨害罪の成立に必要な「公ノ入札」が行なわれたというためには、権限のある機関によつて、適法に入札に付すべき旨の決定がなされたことが必要であり、かつそれをもつて足りる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和41年9月16日 昭和40(あ)2014
登載
刑集 第20巻7号790頁
参照法条
刑法96条ノ3
論点42第96条刑法

一 債権者からの差押を免れるためにした不動産の仮装売買が不法原因給付にあたらないとされた事例
二 代表取締役の欠けている株式会社の訴提起と民訴法第五八条第五六条の類推適用

裁判要旨一 会社が債権者からの差押をうけるおそれがあつたので、第三者が当該会社の財産管理処分の任にあたつていた取締役と図り、会社所有の不動産につき売買を仮装して、自己の名義に所有権移転登記手続を経由した場合において、やがて会社に対し右不動産の所有名義を返還すべきことを知悉していたなど、判示事実関係のもとでは、第三者は民法第七〇八条本文にいう不法原因給付を主張して不動産所有名義の返還請求を拒むことができない。
二 株式会社が代表取締役を欠くにいたつた場合において、会社を代表して訴を提起するため仮代表取締役の選任の方法によつたのでは遅滞のため損害を受けるおそれがあるときは、利害関係人は、民訴法第五八条、第五六条の規定を類推して特別代理人の選任を申請することができる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和41年7月28日 昭和40(オ)740
登載
民集 第20巻6号1265頁
参照法条
民法708条,刑法96条の2,民訴法58条,民訴法56条
論点43第96条刑法

執行吏占有地上の未完成建物の完成行為と封印破棄罪の成否

裁判要旨原審の認定した事実関係の下においては、本件土地全部の占有は、仮処分命令の執行によつて執行吏職務代行者の占有に帰し、右執行当時、該地上には、未だ独立して占有の対象となるべき家屋その他の工作物は存在しなかつたものと認められるから、被告人が右地上に不動産である家屋を完成せしめたことは、右執行吏の占有の態容に重大な変更を与えたものというべきであり、従つてその占有を侵害したものとして、封印破棄罪の成立を認めた原審の判断は相当である。

(原審の認定した事実関係の要旨)被告人は甲より不法占有として明渡を求められ係争中である宅地のうち西北方の九坪三合六勺の上に、甲には無断で新に間口三・六五米奥行六・五二米の木造二階建の家屋の建築にとりかかつたため、甲は右九坪三合六勺の土地につき、「一、右土地に対する被申請人の占有を解き申請人の委任した執行吏にその保管を命ずる。二、被申請人は右土地の上に建物その他工作物を設置してはならない三、申請人の委任した執行吏は、右命令の趣旨を公示するため適当の処置をとらなければならない。」旨の不動産仮処分決定を得て、執行吏職務代行者乙にその執行を委任し、右乙は即日現場に臨んで右仮処分を執行し、右土地についての被告人の占有を解き自己の占有に移し、同時に右仮処分内容をしたためた公示札を建築中の家屋の柱に釘付けした。執行当時右建物は基礎たるコンクリートの上の柱の仕組が終つたばかりで、屋根にするトタン板及び二階床板はいずれも釘付けせず並べてあるに止り、何等の造作も施されていなかつたものである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和40年1月28日 昭和38(あ)2302
登載
集刑 第154号527頁
参照法条
刑法96条
論点44第96条刑法

一 同一物について森林窃盗と窃盗の両罪の成立が認められた事例。
二 地番誤記の仮処分決定にもとづく執行と刑法第九六条の差押の標示。

裁判要旨一 森林窃盗の犯人が伐採して森林内に放置していた伐採木を、仮処分決定の執行により執行吏が占有した後、右犯人がそのことを知りながら、さらにこれを自己の占有に移した場合には、森林窃盗のほか刑法第二三五条の窃盗罪が成立する。
二 申請人の錯誤により、地番を誤記して申請した仮処分決定にもとづき、目的物についてなされた差押の標示は、その取消がなされるまでは刑法第九六条の差押の標示というを妨げない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年8月28日 昭和38(あ)1822
登載
刑集 第18巻7号443頁
参照法条
森林法197条,刑法235条,刑法96条,民訴法755条,民訴法756条
論点45第96条刑法

刑法第九六条〈封印等破棄〉所定の公務員の施した差押の標示を無効ならしめた罪にあたると判断された事例。

裁判要旨一 被告人の所為をもつて刑法第九六条所定の「公務員の施した差押の標示を無効ならしめた罪」にあたるとした原判断は正当である。
二 (原判決の判断の要旨)執行吏が仮処分の執行として物の占有を自己に移し、その旨の標示をした上、現状不変更を条件として使用を許したときは、仮処分の執行を受けたものは、これを使用するについて、破損箇所の修繕等その物の保存に必要な行為のほか、現状不変更を条件とする使用許可の趣旨に反しない限度において、些少の変更を加えることはもとより許されるとしても、その物の現状において許された通常の使用方法によらず、物の構造上の変更を来たすが如き造作がなされる場合は、現状のまま保存占有しようとする差押の目的を直接妨害することとなり、差押の標示を実際上滅却又は減殺するものというべきであつて、その変更が被保全権利の実行を不能又は著しく困難ならしめたか否かにかかわりなく、刑法第九六条〈封印等破棄〉にいわゆる差押の標示を無効ならしめた罪に該当するものと解すべきである。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年8月13日 昭和38(あ)1604
登載
集刑 第152号457頁
参照法条
刑法96条,民訴法755条
論点46第96条刑法

刑法第九六条ノ〈封印等破棄 公務員が施した封印若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法によりその封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分を無効にした者は、三年以下の拘禁刑若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。〉二にいわゆる財産の隠匿にあたるとされた事例。

裁判要旨架空の金銭債権を記載した公正証書に基づく有体動産の仮装の競売手続により、債務者の所有物件があたかも名義上の競落人の所有に帰したかの如く偽つた行為(原判文参照)は、右財産の所有関係を不明にするものであつて、刑法第九六条ノ〈封印等破棄 公務員が施した封印若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法によりその封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分を無効にした者は、三年以下の拘禁刑若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。〉二にいわゆる財産の隠匿にあたる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年3月31日 昭和36(あ)2902
登載
刑集 第18巻3号115頁
参照法条
刑法96条ノ2
論点47第96条刑法

一 刑法第九六条ノ〈封印等破棄 公務員が施した封印若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法によりその封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分を無効にした者は、三年以下の拘禁刑若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。〉三第二項のいわゆる談合罪の主体。
二 談合罪の成立には競買等の希望者全員の参加が必要か。

裁判要旨一 刑法第九六条ノ〈封印等破棄 公務員が施した封印若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法によりその封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分を無効にした者は、三年以下の拘禁刑若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。〉三第二項のいわゆる談合罪の主体は、競買等の希望者に限られるものではなく、自らはその希望をもたないものであつても、自己と特別な関係にある競買等の希望者があつて、これに影響を及ぼすことのできる地位にあるものであれば足りる。
二 刑法第九六条ノ三第二項の罪が成立するためには、競買等の希望者全員が談合に参加することは必要でないものと解するが相当である(昭和三〇年(あ)第二七一八号同三二年一二月一三日第二小法廷判決、刑集一一巻一三号三二〇七頁参照)。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和39年10月13日 昭和37(あ)2024
登載
刑集 第18巻8号507頁
参照法条
刑法96条ノ3,刑法96条ノ3第2項
論点48第96条刑法

強制執行を免れるためにした財産の仮装譲渡が不法原因給付にあたらないとされた事例。

裁判要旨遺産相続人が、被相続人の債権者からの強制執行を免れるために、相続財産である不動産につき売買を仮装して、第三者に対する所有権移転登記を経由した場合であつても、右登記が当該第三者の主導的提唱に基づきなされたものであり、当時右不動産につき強制執行を受けるべき差し迫つた具体的危険が認め難いなど、判示事実関係のもとでは、右仮装譲渡は民法第七〇八条本文にいう不法原因給付にあたらない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和37年6月12日 昭和33(オ)183
登載
民集 第16巻7号1305頁
参照法条
民法708条本文,刑法96条ノ2
論点49第96条刑法

刑法第九六条ノ〈封印等破棄 公務員が施した封印若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法によりその封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分を無効にした者は、三年以下の拘禁刑若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。〉三第一項にいわゆる「偽計ヲ用ヒ公ノ入札ノ公正ヲ害スヘキ行為ヲ為シタル者」に該当する事例

裁判要旨町教育委員会の決議に基き、小学校の改築工事が敷札による競争入札により、敷札に最も近い入札者を落札者とすることとされ、且つ敷札額の決定は、同町長、同町議会議長、同副議長たる被告人及び同教育委員長の四名に一任された場合、被告人が右敷札額を特定の入札予定者のみに内報し、同人をしてこれに基き入札させた所為は、刑法第九六条ノ〈封印等破棄 公務員が施した封印若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法によりその封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分を無効にした者は、三年以下の拘禁刑若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。〉三第一項にいわゆる「偽計ヲ用ヒ公ノ入札ノ公正ヲ害スヘキ行為ヲ為シタル者」に該当する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年2月9日 昭和34(あ)387
登載
刑集 第16巻2号54頁
参照法条
刑法96条ノ3第1項
論点50第96条刑法

入札日前日の契約保証金の増額発表と不正談合罪の成否。

裁判要旨契約保証金に関する原判決の判示は正当である。

(原判決判示の要旨)
入札の目的物件の数量、範囲等に関して入札施行者側の手落などにより隠れたかしのあつたことが後日発見されたため、当該入札において公正なる価格の形成が期待されなかつたような場合は格別、契約保証金の増額が入札日の前日入札参加者に公知されたからといつてこれを以て弁護人所論のように売却条件に重大なかしがあり不正談合罪は成立しないとすることはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和37年10月24日 昭和34(あ)2237
登載
集刑 第144号781頁
参照法条
刑法96条の3
論点51第96条刑法

横領罪および封印破棄罪が成立する事例。

裁判要旨執行吏により仮処分の標示と封印との施された物件につき代理占有保管方の委任を受けた者が、売却する意思をもつてこれを指定された場所から搬出し、他の場所の倉庫に預け入れたときには、横領と差押の標示ならびに封印を無効ならしめた犯罪が成立する。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和36年12月26日 昭和33(あ)233
登載
刑集 第15巻12号2046頁
参照法条
刑法252条1項,刑法96条
論点52第96条刑法

土地につき執行吏に占有を移す旨の仮処分命令に基き執行吏がその土地の外地上建物についてした執行と刑法第九六条にいう差押の標示の効力

裁判要旨土地につき執行吏に占有を移す旨の仮処分命令に基き、執行吏がその土地につき執行をなし、その旨公示札に記載してこれを標示し、その上なおその地上建物の出入口にあたる部分に繩張を施して、土地のみならず建物への出入をも禁止する方法をとつた場合は、建物の部分の執行は違法であつて、この部分に対しては訴訟法に認められている手続によつてその執行の是正を求めることができるが、その是正がいまだ得られない間であつても、その建物を使用する権利を有する者は、正当な事由であれば、通常の使用方法に関する限りその建物へ出入することはできるものと解するのを相当とする。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和32年1月22日 昭和29(あ)2748
登載
集刑 第117号43頁
参照法条
刑法96条,刑法35条,刑法37条,民訴法755条,民訴法544条
論点53第96条刑法

一 刑法第二五八条〈公用文書等毀棄〉にいわゆる「公務所ノ用ニ供スル文書」にあたる事例
二 封印破毀罪と公文書毀棄罪とは牽連犯となるか

裁判要旨一 収税官吏が所得税法反則事件につきその必要ありと認めて差し押えた帳簿書類は、公文書毀棄罪にいわゆる公務所の用に供する文書にあたる。
二 封印破毀罪と公文書毀棄罪とはいわゆる牽連犯にあたらない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年7月24日 昭和27(あ)1647
登載
刑集 第7巻7号1638頁
参照法条
刑法96条,刑法258条,刑法54条1項
論点54第96条刑法

封印又は差押の標示された物自体を損壊する場合と刑法第九六条及び第二六二条の両罪の成立

裁判要旨論旨引用の大審院大正五年(れ)第二八七七号同六年二月六日宣告の判決は執達吏が強制執行のため差押をなし封印を施した穀類の一部を窃取し封印を破棄した事案に関するものであるが、別段刑法九六条の罪の成立を否定したものではなく、却つて同罪と窃盗罪の両罪の成立を認めた趣旨である。そして、原判決も封印又は差押の標示された物自体を損壊することによつて他人の権利を害し同時に封印又は差押の標示を無効ならしめた場合には刑法九六条の罪と同法二六二条の罪の両罪が成立する旨判決していることは判文上極めて明かであつて、前記大審院の判決と何ら相牴触するものではない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年6月3日 昭和25(あ)1624
登載
集刑 第65号13頁
参照法条
刑法96条,刑法262条
論点55第96条刑法

刑法96条の2〈強制執行妨害目的財産損壊等〉にいう「強制執行」と民事執行法1条所定の「担保権の実行としての競売」

裁判要旨刑法96条の2〈強制執行妨害目的財産損壊等〉にいう「強制執行」には,民事執行法1条所定の「担保権の実行としての競売」が含まれる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 平成21年7月14日 平成19(あ)2355
登載
刑集 第63巻6号613頁
参照法条
刑法96条の2,民事執行法1条
論点56第96条刑法

現況調査に訪れた執行官に対して虚偽の事実を申し向けるなどした刑法96条の3第1項該当行為があった時点が刑訴法253条1項にいう「犯罪行為が終つた時」とはならないとされた事例

裁判要旨現況調査に訪れた執行官に対して虚偽の事実を申し向け,内容虚偽の契約書類を提出した行為は,刑法96条の3第1項〈強制執行行為妨害等〉の「公の競売又は入札の公正を害すべき行為」に当たるが,上記虚偽の事実の陳述等に基づく競売手続が進行する限り(判文参照),その行為の時点をもって,刑訴法253条1項にいう「犯罪行為が終つた時」とはならない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成18年12月13日 平成17(あ)1153
登載
刑集 第60巻10号857頁
参照法条
刑法96条の3第1項,刑訴法253条1項
論点57第96条刑法

裁判所に対する虚偽の賃貸借契約書の提出と競売入札妨害罪の成否

裁判要旨不動産競売の開始決定がされた不動産について、その売却の公正な実施を阻止するため所有者との間で右決定より前に短期賃貸借契約が締結されていた旨の内容虚偽の賃貸借契約書を裁判所に提出したときは、偽計による競売入札妨害罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成10年7月14日 平成10(あ)385
登載
刑集 第52巻5号343頁
参照法条
刑法96条の3
論点58第96条刑法

予定価格等の事前公表前にその近似額等を教示した行為が官製談合防止法(令和4年法律第68号による改正前のもの)8条にいう「公正を害すべき行為」及び刑法(令和4年法律第67号による改正前のもの)96条の6第1項にいう「公正を害すべき行為」に当たるとされた事例

裁判要旨副市長であった被告人が、入札に際して予定価格等が事前公表されるより前に、関係職員しか知り得ない情報として管理されていた予定価格に近似するおおむねの査定決定額等を、建設会社の代表取締役であり談合を主導していた地区建設業協会の会長である者に対して教示したという本件事実関係の下では、その教示行為は、その後予定価格等が事前公表されることを踏まえても、官製談合防止法(令和4年法律第68号による改正前のもの)8条にいう「公正を害すべき行為」及び刑法(令和4年法律第67号による改正前のもの)96条の6第1項にいう「公正を害すべき行為」に当たる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 令和8年4月21日 令和6(あ)1657
登載
―
参照法条
入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(官製談合防止法)(令和4年法律第68号による改正前のもの)8条、刑法(令和4年法律第67号による改正前のもの)96条の6第1項
原

条文原文

原文ママ

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刑法 第95条(公務執行妨害及び職務強要) 詳細ページ
(公務執行妨害及び職務強要)
第九十五条公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
2公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
刑法 第95_2条(電子計算機損壊等公務執行妨害) 詳細ページ
(電子計算機損壊等公務執行妨害)
第九十五条の二公務員が職務を執行するに当たり、その職務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくはその職務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、その電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせた者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法 第96条(封印等破棄) 詳細ページ
(封印等破棄)
第九十六条公務員が施した封印若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法によりその封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分を無効にした者は、三年以下の拘禁刑若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
刑法 第96_2条(強制執行妨害目的財産損壊等) 詳細ページ
(強制執行妨害目的財産損壊等)
第九十六条の二強制執行を妨害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、三年以下の拘禁刑若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第三号に規定する譲渡又は権利の設定の相手方となった者も、同様とする。
一強制執行を受け、若しくは受けるべき財産を隠匿し、損壊し、若しくはその譲渡を仮装し、又は債務の負担を仮装する行為
二強制執行を受け、又は受けるべき財産について、その現状を改変して、価格を減損し、又は強制執行の費用を増大させる行為
三金銭執行を受けるべき財産について、無償その他の不利益な条件で、譲渡をし、又は権利の設定をする行為
刑法 第96_3条(強制執行行為妨害等) 詳細ページ
(強制執行行為妨害等)
第九十六条の三偽計又は威力を用いて、立入り、占有者の確認その他の強制執行の行為を妨害した者は、三年以下の拘禁刑若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2強制執行の申立てをさせず又はその申立てを取り下げさせる目的で、申立権者又はその代理人に対して暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
刑法 第96_4条(強制執行関係売却妨害) 詳細ページ
(強制執行関係売却妨害)
第九十六条の四偽計又は威力を用いて、強制執行において行われ、又は行われるべき売却の公正を害すべき行為をした者は、三年以下の拘禁刑若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
刑法 第96_5条(加重封印等破棄等) 詳細ページ
(加重封印等破棄等)
第九十六条の五報酬を得、又は得させる目的で、人の債務に関して、第九十六条から前条までの罪を犯した者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
刑法 第96_6条(公契約関係競売等妨害) 詳細ページ
(公契約関係競売等妨害)
第九十六条の六偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は、三年以下の拘禁刑若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とする。
出

一次情報

原文ママ

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