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罪/放火及び失火の罪

放火及び失火の罪の条文と、裁判所が付した判示事項から整理しています。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

放火及び失火の罪は、建造物等への放火行為や過失による失火、消火妨害、ガス・電気等の漏出について定めた規定群です。対象物が現に人の住居に使われているか、自己の物か他人の物か、公共の危険が生じたかによって、処罰の有無や法定刑が大きく変わります。実務では焼損・損壊の対象と結果を確認したうえで、どの条文が適用されるかを整理する必要があります。

放火及び失火の罪
類型公共の危険法定刑未遂・予備
現住建造物等放火(108条)不要死刑・無期・5年以上拘禁刑未遂・予備とも処罰
非現住建造物放火・他人物(109条1項)不要2年以上の有期拘禁刑未遂・予備とも処罰
非現住建造物放火・自己物(109条2項)必要(なければ不処罰)6月以上7年以下拘禁刑未遂・予備なし
建造物等以外放火・他人物(110条1項)必要1年以上10年以下拘禁刑未遂・予備なし
建造物等以外放火・自己物(110条2項)必要1年以下拘禁刑/10万円以下罰金未遂・予備なし
失火・108物又は他人の109物(116条1項)不要50万円以下の罰金―
失火・自己の109物又は110物(116条2項)必要50万円以下の罰金―
業務上・重過失の失火(117条の2)―3年以下拘禁刑/150万円以下罰金―
  • 108条・109条1項の罪だけが未遂(112条)・予備(113条)の対象
  • 差押えを受け・物権を負担し・賃貸し・配偶者居住権が設定され・保険を付した自己所有物は他人の物として扱う(115条)
  • 109条2項・110条2項の罪から108条・109条1項の物に延焼させると別途111条1項で処罰
  • 110条2項の罪から110条1項の物に延焼させると別途111条2項で処罰
  • 激発物破裂(117条)は結果に応じて放火の例又は失火の例による
  • ガス漏出等及び同致死傷(118条)は放火・失火とは別建ての規定
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放火及び失火の罪

放火及び失火の罪について、条文は何を定めているか。

第108条現住建造物等放火人が住み・いる建物等への放火が最重罪1項判例 15件
  • 死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑
  • 公共の危険の発生は要件とされていない
  • 未遂・予備(112・113条〈予備〉)も処罰される
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第109条非現住建造物等放火人がいない建造物等への放火2項判例 1件
  • 他人所有物への放火は2年以上の有期拘禁刑
  • 自己所有物は6月以上7年以下、公共の危険がなければ不処罰
  • 未遂・予備が処罰されるのは他人所有物(1項)のみ
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第110条建造物等以外放火建造物等以外への放火2項判例 5件
  • 公共の危険が生じて初めて処罰される
  • 他人所有物は1年以上10年以下の拘禁刑
  • 自己所有物は1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金
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第111条延焼放火が重い対象物へ燃え広がった場合2項判例 1件
  • 109条2項〈非現住建造物等放火〉・110条2項〈建造物等以外放火〉の罪から108条〈現住建造物等放火〉等へ延焼で3月以上10年以下
  • 110条2項〈建造物等以外放火〉の罪から110条1項の物へ延焼で3年以下の拘禁刑
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第112条未遂罪放火未遂も処罰される1項判例 3件
  • 108条〈現住建造物等放火〉及び109条1項〈非現住建造物等放火〉の罪は未遂でも処罰される
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第113条予備放火の予備も処罰される1項判例なし
  • 108条〈現住建造物等放火〉又は109条1項〈非現住建造物等放火〉の罪を犯す目的の予備は2年以下の拘禁刑
  • 情状により刑を免除できる
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第114条消火妨害消火の妨害も独立して処罰1項判例なし
  • 消火用の物を隠したり壊したりする行為
  • その他の方法での妨害も含め1年以上10年以下の拘禁刑
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第115条差押え等に係る自己の物に関する特例自己所有物でも他人物扱いになる場合1項判例 3件
  • 差押え・物権負担・賃貸・配偶者居住権設定・保険付きの自己物を焼損
  • この場合は他人の物を焼損したものとして扱う
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第116条失火失火(過失)による焼損の処罰2項判例 9件
  • 108条〈現住建造物等放火〉物・他人所有の109条〈非現住建造物等放火〉物の焼損は50万円以下の罰金
  • 自己所有の109条〈非現住建造物等放火〉物・110条〈建造物等以外放火〉物は公共の危険が生じた場合に処罰
  • いずれも50万円以下の罰金
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第117条激発物破裂火薬・ボイラー等の破裂による損壊2項判例 11件
  • 108条〈現住建造物等放火〉物・他人所有の109条〈非現住建造物等放火〉物の損壊は放火の例による
  • 自己所有の109条〈非現住建造物等放火〉物・110条〈建造物等以外放火〉物は公共の危険が生じれば同様
  • 過失による場合は失火の例による
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第117_2条業務上失火等業務上の重過失による失火1項判例なし
  • 業務上必要な注意を怠った失火は3年以下拘禁刑又は150万円以下罰金
  • 重大な過失による失火も同様
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第118条ガス漏出等及び同致死傷ガス・電気・蒸気の漏出等2項判例なし
  • 漏出・流出・遮断で危険を生じさせると3年以下拘禁刑又は10万円以下罰金
  • 人を死傷させた場合は傷害罪と比較して重い刑で処断
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第108条刑法

起訴猶予処分となつている放火の事実を重過失失火罪成立の要件である注意義務の存在を認定する資料として判示することと憲法第三九条後段

裁判要旨原判決は、すでに起訴猶予処分となつている所論一四個の放火事実を、本件各重過失失火罪成立の要件である注意義務の存在を認定する資料として判示したにすぎず、右一四個の放火事実について被告人に対し刑事上の責任を問うたものでないことは原判文上明らかであるから、憲法第三九条後段違反であるとの所論はその前提を欠くものである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和42年3月9日 昭和41(あ)2369
登載
集刑 第162号831頁
参照法条
憲法39条後段,刑法117条ノ2,刑法116条,刑法108条
論点2第108条刑法

故意犯(現住建造物放火幇助)と過失犯(失火)との間に公訴事実の同一性の認められた事例。

裁判要旨被告人に対する本件現住建造物放火幇助の公訴事実と失火の公訴事実(各判文参照)との間には同一性があるものと認むべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和35年7月15日 昭和31(あ)1357
登載
刑集 第14巻9号1152頁
参照法条
憲法39条,刑訴法312条,刑訴法337条1号,刑法116条,刑法108条,刑法62条
論点3第108条刑法

放火の手段、方法の一部に属する事実を被告人の自白だけで認定することの可否。

裁判要旨所論放火の手段、方法の一部に属する事実のごときは被告人の自白だけでこれを認定しても差支えない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和34年3月12日 昭和33(あ)1547
登載
集刑 第129号343頁
参照法条
刑法108条,刑訴法319条2項
論点4第108条刑法

不作為による放火罪の成立する事例。

裁判要旨自己の過失により事務室内の炭火が机に引火し、燃焼しはじめているのを仮睡から醒めて発見した者が、そのまま放置すれば右事務所を焼燬するに至ることを認識しながら、自己の失策の発覚をおそれる等のため、右結果の発生を認容して何らの措置をすることなくその場から逃げ去つたときは、不作為による放火の責任を負うべきである。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年9月9日 昭和31(あ)3929
登載
刑集 第12巻13号2882頁
参照法条
刑法108条
論点5第108条刑法

刑法第一〇八条〈現住建造物等放火〉にいう「人」の意義

裁判要旨刑法第一〇八条〈現住建造物等放火〉にいう「人」とは、犯人以外の者を指称する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和32年6月21日 昭和29(あ)805
登載
刑集 第11巻6号1700頁
参照法条
刑法108条
論点6第108条刑法

訴因罰条の変更を要しない一事例 ―刑法一〇八条〈現住建造物等放火〉の放火未遂を一一〇条一項〈建造物等以外放火〉の放火の既遂と認定する場合―

裁判要旨裁判所が刑法一〇八条の放火の未遂の起訴に対し、同法一一〇条一項の放火の既遂を認定するについては、訴因罰条の変更手続を経る必要がないものと解するのが相当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和28年11月10日 昭和27(あ)4808
登載
集刑 第88号259頁
参照法条
刑法108条,刑法112条,刑法110条,刑訴法312条,刑訴規則209条
論点7第108条刑法

一 建物の庇下に堆積せる藁に放火した事実によつて建物延焼の認識ありと認め得られるか
二 証拠の一部に矛盾があつても綜合して事実認定ができる場合と採証法則違背の有無

裁判要旨一 建物の庇下に堆積されている藁に放火すればその建物及びこれに隣接する住家に延焼する危険があることは常識上認められる事柄であるから、特に所論Aの供述のようなものがない場合でも、各被告人に建物に延焼の認識があつたものと認め得られるのである。
二 証拠にはおのずから強弱、直接間接の別があるから、綜合する証拠の一部に矛盾するがごとき感を呈する部分があるとしても、本件の場合のごとく全体として事実の認定を肯認することができる限り採証の法則に反する違法を認めることはできない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月22日 昭和25(れ)1873
登載
集刑 第42号357頁
参照法条
刑法108条,旧刑訴法336条,旧刑訴法337条
論点8第108条刑法

一 疊建具と刑法第一〇八条にいわゆる「建造物」放火未遂罪の成立
二 強盗の機会に人を殺害した所為と強盗殺人罪の成立

裁判要旨一 疊建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とするものである。従つて、判示布団は勿論判示疊のごときは未だ家屋と一体となつてこれを構成する建造物の一部といえないこと多言を要しないから、原判決の前示判示は、建造物の放火既遂の犯罪事実を認定判示したものではなく、その放火未遂の認定判示であるといわなければならない。
二 強盗の機会に人を殺害すれば、刑法第二四〇条〈強盗致死傷〉後段の「強盗人ヲ死ニ致シタルトキ」にあたる。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和25年12月14日 昭和25(れ)1403
登載
刑集 第4巻12号2548頁
参照法条
刑法108条,刑法112条,刑法240条
論点9第108条刑法

エレベーターのかごの側壁の一部を燃焼した行為につき現住建造物等放火罪が成立するとされた事例

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成元年7月7日 昭和63(あ)1257
登載
集刑 第252号203頁
参照法条
刑法108条
論点10第108条刑法

複数の建物が廻廊等により接続されていた神宮社殿が一個の現住建造物に当たるとされた事例

裁判要旨本殿、拝殿、社務所等の建物が廻廊等により接続され、夜間も神職等が社務所等で宿直していた本件平安神宮社殿は、全体として一個の現住建造物に当たる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成元年7月14日 昭和63(あ)664
登載
刑集 第43巻7号641頁
参照法条
刑法108条
論点11第108条刑法

現住建造物等放火罪に該当する行為により生じた人の死傷結果を量刑上考慮することの可否

裁判要旨現住建造物等放火罪に該当する行為により生じた人の死傷結果を,その法定刑の枠内で,量刑上考慮することは許される。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成29年12月19日 平成28(あ)190
登載
刑集 第71巻10号606頁
参照法条
刑法108条
論点12第108条刑法

死刑の量刑が維持された事例(山形東京連続放火殺人事件)

裁判
最高裁判所第二小法廷 平成28年6月13日 平成26(あ)1655
登載
集刑 第320号1頁
参照法条
刑法11条,刑法108条,刑法199条,刑訴法411条2号
論点13第108条刑法

死刑の量刑が維持された事例(大阪パチンコ店放火殺人事件)

裁判
最高裁判所第三小法廷 平成28年2月23日 平成25(あ)1329
登載
集刑 第319号1頁
参照法条
刑法11条,刑法108条,刑法199条,刑訴法411条2号
論点14第108条刑法

実母及び実子2名を殺害し,その保険金等を詐取したとして起訴された事案につき,被告人の自白の信用性を否定するなどして無罪とした第1審判決を維持した原判決が是認された事例

裁判
最高裁判所第一小法廷 平成24年2月22日 平成22(あ)174
登載
集刑 第307号509頁
参照法条
刑法108条,刑法199条,刑訴法411条3号
論点15第108条刑法

殺人,現住建造物等放火の公訴事実について間接事実を総合して被告人を有罪とした第1審判決及びその事実認定を是認した原判決に,審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあるとされた事例

裁判要旨殺人,現住建造物等放火の公訴事実について,間接事実を総合して被告人が犯人であるとした第1審判決及びその事実認定を是認した原判決は,認定された間接事実中に被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは,少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれているとは認められないなど,間接事実に関する審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあり,刑訴法411条1号,3号により破棄を免れない。
(補足意見,意見,反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年4月27日 平成19(あ)80
登載
刑集 第64巻3号233頁
参照法条
刑法108条,刑法199条,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点16第109条刑法

現に人の住居に使用せず又は人の現存しない建造物に対する放火未遂罪の成否

裁判要旨刑法一一五条〈差押え等に係る自己の物に関する特例〉の規定する現に人の住居に使用せず又は人の現存しない建造物に対する放火罪が、その未遂をも罰する法意であることは、放火の目的物に、同条所定の事実が存するときは、たとえそれが自己の所有に係る場合と雖も他人の物を焼燬した場合と同様に取扱われ刑法一〇九条一項の犯罪を構成する旨を定めていること、そしてこの場合は同法一一二条によりその未遂罪をも罰していることに照して明らかである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和28年6月12日 昭和26(あ)5032
登載
集刑 第82号719頁
参照法条
刑法115条,刑法109条1項,刑法112条
論点17第110条刑法

刑法一一〇条一項〈建造物等以外放火〉の罪と公共の危険発生の認識の要否

裁判要旨刑法一一〇条一項〈建造物等以外放火〉の罪の成立には、公共の危険発生の認識は必要でない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和60年3月28日 昭和58(あ)937
登載
刑集 第39巻2号75頁
参照法条
刑法110条1項
論点18第110条刑法

重過失致死罪の成立を認めた事例。―放火後の注意義務

裁判要旨原判決の是認した第一審判決は、(註。被告人は材料置場に置いてある油に放火するときは、A方及びその附近の家屋に延焼し、同家屋居住者の生命身体に危害を及ぼすに至る虞のあることは少し注意すれば容易に予見できたのに拘らず……憤激の余り漫然所携のマツチで右油槽内のシンナ、白灯油等に放火した。)被告人は燃えている物に蒲団、砂をかける等臨機の措置をとつて火勢が拡大し被害が他に及ばないよう沈着適切な行動をとるとともに、当時二階に寝ていたBに対し可及的速かに火災の急を告げて同女を屋外に避難させ、或いは他人に救助を頼む等あらゆる方法をこうじ、もつてBの救助に最善の努力を傾ける注意義務があつた旨を判示している。そして被告人の右注意義務は、原判示の是認した第一審判決の確定した事実関係の下においては、一般通常人の注意を払うことにより、よく罪となるべき事実を認識しうべき程度の注意義務と解するを相当とし、また、その注意義務を果すことが期待不可能であつたとは認められない。しからば、被告人が右の注意を怠り、よつてBを死に致した被告人の本件行為を過失犯をもつて問擬したことは正当である。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和37年3月1日 昭和36(あ)465
登載
集刑 第141号377頁
参照法条
刑法38条1項,刑法110条1項,刑法211条後段
論点19第110条刑法

いわゆる火焔瓶を乗用自動車に投げつけ命中破壊させることと刑法第一一〇条の放火罪の成否。

裁判要旨いわゆる火焔瓶を乗用自動車に投げつけ、これに命中破壊させたが、右自動車の運転台座席覆布の一部を焼燬したにとどまり、火炎瓶の火が自動車に燃え移り独立燃焼の程度に達しないときは、刑法第一一〇条〈建造物等以外放火〉の放火罪は成立しない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和33年9月16日 昭和28(あ)3616
登載
集刑 第127号185頁
参照法条
刑法110条
論点20第110条刑法

1 刑法110条1項〈建造物等以外放火〉にいう「公共の危険」の意義
2 市街地の駐車場において放火された自動車から付近の2台の自動車に延焼の危険が及んだことなどをもって刑法110条1項にいう「公共の危険」の発生が認められた事例

裁判要旨1 刑法110条1項〈建造物等以外放火〉にいう「公共の危険」は,同法108条〈現住建造物等放火〉及び109条1項〈非現住建造物等放火〉に規定する建造物等に対する延焼の危険に限られるものではなく,不特定又は多数の人の生命,身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれる。
2 市街地の駐車場において,放火された自動車から付近の2台の自動車に延焼の危険が及んだことなど判示の事実関係の下では,刑法110条1項にいう「公共の危険」の発生が認められる。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成15年4月14日 平成13(あ)1317
登載
刑集 第57巻4号445頁
参照法条
刑法110条1項
論点21第111条刑法

悪天での連絡船の運航につき過失の存否を争つた主張が不適法とされた事例(みどり丸事件)

裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和49年4月9日 昭和48(あ)1765
登載
集刑 第192号239頁
参照法条
刑法111条,刑法129条
論点22第115条刑法

刑法第一五五条第一項〈公文書偽造等〉にいわゆる公務所は公務員の作るべき文書の意義。

裁判要旨刑法第一五五条第一項〈公文書偽造等〉にいわゆる公務所または公務員の作るべき文書とは、公務所又は公務員が印章若しくは署名を使用しその権限内において職務執行上作成すべき文書を汎称し、その職務執行の方法範囲が法令に基づくと内規又は慣例によるとを問わないものと解すべきである(昭和一二年七月五日大審院判決、刑集一六巻一一七六頁・明治四五年四月一五日大審院判決、刑録一八輯四六四頁各参照)。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和39年8月28日 昭和38(あ)907
登載
集刑 第152号629頁
参照法条
刑法115条1項
論点23第115条刑法

刑法第一一五条〈差押え等に係る自己の物に関する特例〉の法意

裁判要旨刑法第一一五条〈差押え等に係る自己の物に関する特例〉は、同条の物件が犯人の所有に属する場合であつても、若し差押を受け、物権を負担しまたは賃貸し若しくは保険に付したものを焼燬するときは、損害を他人に及ぼしまたは及ぼすおそれがあるので、そのような他人の利益の侵害となる行為を犯罪として処罰する趣旨であつて、犯人の財産権の公私を制限することを内容とした規定ではない。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和33年3月27日 昭和32(あ)2511
登載
刑集 第12巻4号666頁
参照法条
刑法115条,憲法29条
論点24第116条刑法

一 刑法一一七条の二〈業務上失火等〉の業務の意義
二 人の生命・身体の危険を防止することを義務内容とする業務と刑法二一一条の業務
三 易燃物の管理責任者につき業務上失火罪及び業務上過失致死罪が成立するとされた事例

裁判要旨一 刑法一一七条の二〈業務上失火等〉にいう業務とは、職務として火気の安全に配慮すべき社会生活上の地位をいう。
二 刑法二一一条〈業務上過失致死傷等〉にいう業務には、人の生命・身体の危険を防止することを義務内容とする業務も含まれる。
三 ウレタンフオームの加工販売業を営む会社の工場部門の責任者として、易燃物であるウレタンフオームを管理するうえで当然に伴う火災防止の職務に従事していた者が、火を失し、死者を伴う火災を発生させた場合は、業務上失火罪及び業務上過失致死罪が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和60年10月21日 昭和58(あ)829
登載
刑集 第39巻6号362頁
参照法条
刑法116条1項,刑法117条ノ2,刑法211条
論点25第116条刑法

給油作業の過誤による火災発生の予見可能性があつたとされた事例

裁判要旨路上の車からA重油を店舗内に給油するに際し、店舗外壁に設けられた給油口を開弁せずにコンプレツサーを作動させたため、給油口に連結したビニールホースが裂け、二リツトル程度のA重油が霧状となつて飛散し、たまたま店舗内で燃焼中の暖房用ストーブに降りかかつて引火し、店舗等が火炎により焼燬したという本件事実関係(原判文参照)のもとにおいては、右給油作業の過誤により火災を惹起することにつき、予見可能性があつたということができる。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和57年11月8日 昭和55(あ)2171
登載
刑集 第36巻11号879頁
参照法条
刑法116条,刑法117条の2
論点26第116条刑法

サウナ風呂の開発・製作の担当者がその構造につき耐火性を検討・確保しなかつた場合と業務上失火罪の成否

裁判要旨木製ベンチ部分の下部に電熱炉を据えつける方式の組立式サウナ風呂を開発・製作した者が、その構造につき耐火性を検討・確保しなかつたため、右サウナ風呂を継続使用した浴場内において、右木製ベンチを長期間にわたる電熱炉の加熱により漸次炭化させて火災を発生させた場合には、業務上失火罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和54年11月19日 昭和53(あ)989
登載
刑集 第33巻7号728頁
参照法条
刑法116条1項,刑法117条ノ2
論点27第116条刑法

デイーゼル・エンジン自動車の運転者の失火と業務上失火罪の成否

裁判要旨自動車に装置したデイーゼル・エンジンの排気管は、運転中著しく高温となり、これに可燃物が接触すると火災発生の危険があるのに、運転者が、排気管と接触するおそれのある状態で運転席の床にゴム板を装着し、また、運転中ゴム板の燻焦する臭気を感知したにもかかわらず、そのまま運転を継続したため、火災が発生した場合には、業務上失火罪が成立する。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和46年12月20日 昭和45(あ)1809
登載
刑集 第25巻9号1086頁
参照法条
刑法11条ノ2,刑法116条2項
論点28第116条刑法

高圧ガス販売業者のガス器具設置方法に過失があつた場合と業務上失火罪の成否

裁判要旨高圧ガス販売業者が顧客の店舗内にプロパンガス容器およびその付属設備を設置した場合において、その設置方法に過失があつたため火災を発生させたときは、業務上失火罪が成立する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和42年10月12日 昭和42(あ)1190
登載
刑集 第21巻8号1083頁
参照法条
刑法117条ノ2,刑法116条1項
論点29第116条刑法

公衆浴場経営者の業務上の注意業務。

裁判要旨市内の、水羽葺住家の多い所で、二段式風呂釜を据えつけ、これに経約一尺高さ四〇尺余の煙突を設置し、石炭を燃やして連日開湯する公衆浴場の経営者は、煙道の適当な箇所に消防署係員の指示する金網を装置するのはもとより、しばしば煙突掃除を同う等の処置をなすべきもので、もし右のような措置をなさず、そのまま多量の燃料を燃やそうとするならば、常に風速に注意して火焚きをし、風勢の激しい日には釜焚きを全く中止する等細心の注意を払い、もつて火災の発生を未然の防止すべき業務上の注意義務がある。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年12月25日 昭和32(あ)1893
登載
刑集 第13巻13号3333頁
参照法条
刑法117条ノ2,刑法116条1項,消防法9条
論点30第116条刑法

昏睡者に対する注意義務と過失致死の責任

裁判要旨第一審判決が一般通常人の注意を以つてすれば、当時被告人の夫Aが睡眠剤を嚥下し正常な感覚を失い昏睡状態となつて居たことを容易に認識し得べかりしにかゝわらず、被告人において適当な注意を払わず、夫の容態を確認せず且火気の適当措置を怠つて外出した点に過失責任を認定して失火と過失致死の責任を認めたのは正当である。
裁判
最高裁判所第三小法廷 昭和27年6月24日 昭和25(あ)3133
登載
集刑 第65号321頁
参照法条
刑法210条,刑法116条
論点31第117条刑法

重過失失火罪の成立が認められた事例

裁判要旨厳寒期の北海道において、平素から多量に飲酒すると、高度の異常酩酊の状態におちいり、器物を投げつけるなどの粗暴な行為に出る習癖のあることを自覚していた被告人が、飲酒して右のような状態におちいり、燃焼中のストーブの上に椅子を乗せかけて現住建造物を焼燬するに至らせた場合、被告人の右所為は重過失失火罪に該当する。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和48年9月6日 昭和48(あ)554
登載
集刑 第190号67頁
参照法条
刑法117条2後段
論点32第117条刑法

一 爆発物取締罰則第一条〈国内犯〉にいう「人ノ財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタ」罪の構成要件
二 爆発物取締罰則第一の罪質

裁判要旨一 爆発物取締罰則第一条〈国内犯〉にいう「人ノ財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタ」罪は、犯人以外の者の財産を損壊しようという目的をもつて爆発物を使用したときは直ちに成立するものであつて、右損壊が財産の権利者の意思に判するものであることをも要するものではない。
二 爆発物取締罰則第一条の爆発物使用罪は、損壊の客体が財産である場合においても、単にその財産の保護のみを目的とするものではなく、罪質的には公共危険罪の一種であると解するを相当とする(刑法第一一七条〈激発物破裂〉等参照)。
裁判
最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月23日 昭和36(あ)1727
登載
刑集 第18巻1号1頁
参照法条
爆発物取締罰則1条,刑法117条等
論点33第117条刑法

重過失失火罪における他人の過去の存在と重過失者の罪責。

裁判要旨重過失失火罪において、いやしくも被告人の重過失が火災発生に対して一つの条件を与えた以上は、その重過失が右結果に対する唯一の原因ではなく火気取扱責任者の過失と相俟つて共同的に原因を与えた場合であつても、失火の責任を負うべきものである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和34年5月15日 昭和32(あ)359
登載
刑集 第13巻5号713頁
参照法条
刑法117条ノ2
論点34第117条刑法

一 刑法第一一七条の二〈業務上失火等〉前段にいう「業務」の意義。
二 行政官庁の許可を受けていない夜警勤務と刑法第一一七条ノ二の「業務」としての刑事責任。

裁判要旨一 刑法第一一七条の二〈業務上失火等〉前段にいう「業務」は、当該火災の原因となつた火を直接取扱うことを業務の内容の全部または一部としているもののみに限らず、火災等の発見防止等の任務にあたる夜警の如きをも包含するものと解するを相当とする。
二 所論は被告人は料理人として昼間八時間勤務した上、更に夜警として勤務したものであるところ、右夜警勤務は行政官庁の許可を受けていないから、憲法二七条二項、労働基準法九三条に違反し無効である。従つて被告人の本件刑事責任は否定さるべきである旨主張する。しかしながら右行政官庁の許可の有無は夜警勤務に関する労働契約の効力如何の問題たるに止まり、夜警としての任務に服したものである以上、刑法一一七条の二の「業務」としての刑事上の責任には何ら消長を来すものとは解することはできない。
裁判
最高裁判所第二小法廷 昭和33年7月25日 昭和30(あ)4124
登載
刑集 第12巻12号2746頁
参照法条
刑法117条の2,刑法117条ノ2,憲法27条2項,労働基準法93条
論点35第117条刑法

鉄道トンネル内における電力ケーブルの接続工事を施工した業者につきトンネル内での火災発生の予見可能性が認められた事例

裁判要旨鉄道トンネル内における電力ケーブル接続工事に際し、施工資格を有してその工事に当たった者が、ケーブルに特別高圧電流が流れる場合に発生する誘起電流を接地するための接地銅板を接続器に取り付けることを怠ったため、誘起電流が大地に流されずに、接続器本体の半導電層部に流れて炭化導電路を形成し、長期間にわたり同部分に集中して流れ続けたことにより、火災が発生したという事実関係の下においては、右の者は、炭化導電路の形成という経過を具体的に予見することができなかったとしても、火災発生を予見することができたものというべきである。
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成12年12月20日 平成10(あ)579
登載
刑集 第54巻9号1095頁
参照法条
刑法117条の2,刑法211条
原

条文原文

原文ママ

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刑法 第108条(現住建造物等放火) 詳細ページ
(現住建造物等放火)
第百八条放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。
刑法 第109条(非現住建造物等放火) 詳細ページ
(非現住建造物等放火)
第百九条放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期拘禁刑に処する。
2前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の拘禁刑に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。
刑法 第110条(建造物等以外放火) 詳細ページ
(建造物等以外放火)
第百十条放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。
2前項の物が自己の所有に係るときは、一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
刑法 第111条(延焼) 詳細ページ
(延焼)
第百十一条第百九条第二項又は前条第二項の罪を犯し、よって第百八条又は第百九条第一項に規定する物に延焼させたときは、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
2前条第二項の罪を犯し、よって同条第一項に規定する物に延焼させたときは、三年以下の拘禁刑に処する。
刑法 第112条(未遂罪) 詳細ページ
(未遂罪)
第百十二条第百八条及び第百九条第一項の罪の未遂は、罰する。
刑法 第113条(予備) 詳細ページ
(予備)
第百十三条第百八条又は第百九条第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の拘禁刑に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
刑法 第114条(消火妨害) 詳細ページ
(消火妨害)
第百十四条火災の際に、消火用の物を隠匿し、若しくは損壊し、又はその他の方法により、消火を妨害した者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。
刑法 第115条(差押え等に係る自己の物に関する特例) 詳細ページ
(差押え等に係る自己の物に関する特例)
第百十五条第百九条第一項及び第百十条第一項に規定する物が自己の所有に係るものであっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、配偶者居住権が設定され、又は保険に付したものである場合において、これを焼損したときは、他人の物を焼損した者の例による。
刑法 第116条(失火) 詳細ページ
(失火)
第百十六条失火により、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を焼損した者は、五十万円以下の罰金に処する。
2失火により、第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。
刑法 第117条(激発物破裂) 詳細ページ
(激発物破裂)
第百十七条火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を損壊した者は、放火の例による。第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を損壊し、よって公共の危険を生じさせた者も、同様とする。
2前項の行為が過失によるときは、失火の例による。
刑法 第117_2条(業務上失火等) 詳細ページ
(業務上失火等)
第百十七条の二第百十六条又は前条第一項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、三年以下の拘禁刑又は百五十万円以下の罰金に処する。
刑法 第118条(ガス漏出等及び同致死傷) 詳細ページ
(ガス漏出等及び同致死傷)
第百十八条ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
2ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
出

一次情報

原文ママ

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