論点1第108条刑法
起訴猶予処分となつている放火の事実を重過失失火罪成立の要件である注意義務の存在を認定する資料として判示することと憲法第三九条後段
裁判要旨原判決は、すでに起訴猶予処分となつている所論一四個の放火事実を、本件各重過失失火罪成立の要件である注意義務の存在を認定する資料として判示したにすぎず、右一四個の放火事実について被告人に対し刑事上の責任を問うたものでないことは原判文上明らかであるから、憲法第三九条後段違反であるとの所論はその前提を欠くものである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和42年3月9日 昭和41(あ)2369
- 登載
- 集刑 第162号831頁
- 参照法条
- 憲法39条後段,刑法117条ノ2,刑法116条,刑法108条
論点2第108条刑法
故意犯(現住建造物放火幇助)と過失犯(失火)との間に公訴事実の同一性の認められた事例。
裁判要旨被告人に対する本件現住建造物放火幇助の公訴事実と失火の公訴事実(各判文参照)との間には同一性があるものと認むべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和35年7月15日 昭和31(あ)1357
- 登載
- 刑集 第14巻9号1152頁
- 参照法条
- 憲法39条,刑訴法312条,刑訴法337条1号,刑法116条,刑法108条,刑法62条
論点3第108条刑法
放火の手段、方法の一部に属する事実を被告人の自白だけで認定することの可否。
裁判要旨所論放火の手段、方法の一部に属する事実のごときは被告人の自白だけでこれを認定しても差支えない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和34年3月12日 昭和33(あ)1547
- 登載
- 集刑 第129号343頁
- 参照法条
- 刑法108条,刑訴法319条2項
論点4第108条刑法
不作為による放火罪の成立する事例。
裁判要旨自己の過失により事務室内の炭火が机に引火し、燃焼しはじめているのを仮睡から醒めて発見した者が、そのまま放置すれば右事務所を焼燬するに至ることを認識しながら、自己の失策の発覚をおそれる等のため、右結果の発生を認容して何らの措置をすることなくその場から逃げ去つたときは、不作為による放火の責任を負うべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和33年9月9日 昭和31(あ)3929
- 登載
- 刑集 第12巻13号2882頁
- 参照法条
- 刑法108条
論点5第108条刑法
刑法第一〇八条〈現住建造物等放火〉にいう「人」の意義
裁判要旨刑法
第一〇八条〈現住建造物等放火〉にいう「人」とは、犯人以外の者を指称する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年6月21日 昭和29(あ)805
- 登載
- 刑集 第11巻6号1700頁
- 参照法条
- 刑法108条
論点6第108条刑法
訴因罰条の変更を要しない一事例 ―刑法一〇八条〈現住建造物等放火〉の放火未遂を一一〇条一項〈建造物等以外放火〉の放火の既遂と認定する場合―
裁判要旨裁判所が刑法一〇八条の放火の未遂の起訴に対し、同法一一〇条一項の放火の既遂を認定するについては、訴因罰条の変更手続を経る必要がないものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和28年11月10日 昭和27(あ)4808
- 登載
- 集刑 第88号259頁
- 参照法条
- 刑法108条,刑法112条,刑法110条,刑訴法312条,刑訴規則209条
論点7第108条刑法
一 建物の庇下に堆積せる藁に放火した事実によつて建物延焼の認識ありと認め得られるか
二 証拠の一部に矛盾があつても綜合して事実認定ができる場合と採証法則違背の有無
裁判要旨一 建物の庇下に堆積されている藁に放火すればその建物及びこれに隣接する住家に延焼する危険があることは常識上認められる事柄であるから、特に所論Aの供述のようなものがない場合でも、各被告人に建物に延焼の認識があつたものと認め得られるのである。
二 証拠にはおのずから強弱、直接間接の別があるから、綜合する証拠の一部に矛盾するがごとき感を呈する部分があるとしても、本件の場合のごとく全体として事実の認定を肯認することができる限り採証の法則に反する違法を認めることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和26年3月22日 昭和25(れ)1873
- 登載
- 集刑 第42号357頁
- 参照法条
- 刑法108条,旧刑訴法336条,旧刑訴法337条
論点8第108条刑法
一 疊建具と刑法第一〇八条にいわゆる「建造物」放火未遂罪の成立
二 強盗の機会に人を殺害した所為と強盗殺人罪の成立
裁判要旨一 疊建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成するものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更らにこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とするものである。従つて、判示布団は勿論判示疊のごときは未だ家屋と一体となつてこれを構成する建造物の一部といえないこと多言を要しないから、原判決の前示判示は、建造物の放火既遂の犯罪事実を認定判示したものではなく、その放火未遂の認定判示であるといわなければならない。
二 強盗の機会に人を殺害すれば、刑法
第二四〇条〈強盗致死傷〉後段の「強盗人ヲ死ニ致シタルトキ」にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和25年12月14日 昭和25(れ)1403
- 登載
- 刑集 第4巻12号2548頁
- 参照法条
- 刑法108条,刑法112条,刑法240条
論点9第108条刑法
エレベーターのかごの側壁の一部を燃焼した行為につき現住建造物等放火罪が成立するとされた事例
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成元年7月7日 昭和63(あ)1257
- 登載
- 集刑 第252号203頁
- 参照法条
- 刑法108条
論点10第108条刑法
複数の建物が廻廊等により接続されていた神宮社殿が一個の現住建造物に当たるとされた事例
裁判要旨本殿、拝殿、社務所等の建物が廻廊等により接続され、夜間も神職等が社務所等で宿直していた本件平安神宮社殿は、全体として一個の現住建造物に当たる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成元年7月14日 昭和63(あ)664
- 登載
- 刑集 第43巻7号641頁
- 参照法条
- 刑法108条
論点11第108条刑法
現住建造物等放火罪に該当する行為により生じた人の死傷結果を量刑上考慮することの可否
裁判要旨現住建造物等放火罪に該当する行為により生じた人の死傷結果を,その法定刑の枠内で,量刑上考慮することは許される。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成29年12月19日 平成28(あ)190
- 登載
- 刑集 第71巻10号606頁
- 参照法条
- 刑法108条
論点12第108条刑法
死刑の量刑が維持された事例(山形東京連続放火殺人事件)
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成28年6月13日 平成26(あ)1655
- 登載
- 集刑 第320号1頁
- 参照法条
- 刑法11条,刑法108条,刑法199条,刑訴法411条2号
論点13第108条刑法
死刑の量刑が維持された事例(大阪パチンコ店放火殺人事件)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成28年2月23日 平成25(あ)1329
- 登載
- 集刑 第319号1頁
- 参照法条
- 刑法11条,刑法108条,刑法199条,刑訴法411条2号
論点14第108条刑法
実母及び実子2名を殺害し,その保険金等を詐取したとして起訴された事案につき,被告人の自白の信用性を否定するなどして無罪とした第1審判決を維持した原判決が是認された事例
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成24年2月22日 平成22(あ)174
- 登載
- 集刑 第307号509頁
- 参照法条
- 刑法108条,刑法199条,刑訴法411条3号
論点15第108条刑法
殺人,現住建造物等放火の公訴事実について間接事実を総合して被告人を有罪とした第1審判決及びその事実認定を是認した原判決に,審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあるとされた事例
裁判要旨殺人,現住建造物等放火の公訴事実について,間接事実を総合して被告人が犯人であるとした第1審判決及びその事実認定を是認した原判決は,認定された間接事実中に被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは,少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれているとは認められないなど,間接事実に関する審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあり,刑訴法411条1号,3号により破棄を免れない。
(補足意見,意見,反対意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成22年4月27日 平成19(あ)80
- 登載
- 刑集 第64巻3号233頁
- 参照法条
- 刑法108条,刑法199条,刑訴法317条,刑訴法411条1号,刑訴法411条3号,刑訴法413条本文
論点16第109条刑法
現に人の住居に使用せず又は人の現存しない建造物に対する放火未遂罪の成否
裁判要旨刑法
一一五条〈差押え等に係る自己の物に関する特例〉の規定する現に人の住居に使用せず又は人の現存しない建造物に対する放火罪が、その未遂をも罰する法意であることは、放火の目的物に、同条所定の事実が存するときは、たとえそれが自己の所有に係る場合と雖も他人の物を焼燬した場合と同様に取扱われ刑法一〇九条一項の犯罪を構成する旨を定めていること、そしてこの場合は同法一一二条によりその未遂罪をも罰していることに照して明らかである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和28年6月12日 昭和26(あ)5032
- 登載
- 集刑 第82号719頁
- 参照法条
- 刑法115条,刑法109条1項,刑法112条
論点17第110条刑法
刑法一一〇条一項〈建造物等以外放火〉の罪と公共の危険発生の認識の要否
裁判要旨刑法
一一〇条一項〈建造物等以外放火〉の罪の成立には、公共の危険発生の認識は必要でない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和60年3月28日 昭和58(あ)937
- 登載
- 刑集 第39巻2号75頁
- 参照法条
- 刑法110条1項
論点18第110条刑法
重過失致死罪の成立を認めた事例。―放火後の注意義務
裁判要旨原判決の是認した第一審判決は、(註。被告人は材料置場に置いてある油に放火するときは、A方及びその附近の家屋に延焼し、同家屋居住者の生命身体に危害を及ぼすに至る虞のあることは少し注意すれば容易に予見できたのに拘らず……憤激の余り漫然所携のマツチで右油槽内のシンナ、白灯油等に放火した。)被告人は燃えている物に蒲団、砂をかける等臨機の措置をとつて火勢が拡大し被害が他に及ばないよう沈着適切な行動をとるとともに、当時二階に寝ていたBに対し可及的速かに火災の急を告げて同女を屋外に避難させ、或いは他人に救助を頼む等あらゆる方法をこうじ、もつてBの救助に最善の努力を傾ける注意義務があつた旨を判示している。そして被告人の右注意義務は、原判示の是認した第一審判決の確定した事実関係の下においては、一般通常人の注意を払うことにより、よく罪となるべき事実を認識しうべき程度の注意義務と解するを相当とし、また、その注意義務を果すことが期待不可能であつたとは認められない。しからば、被告人が右の注意を怠り、よつてBを死に致した被告人の本件行為を過失犯をもつて問擬したことは正当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和37年3月1日 昭和36(あ)465
- 登載
- 集刑 第141号377頁
- 参照法条
- 刑法38条1項,刑法110条1項,刑法211条後段
論点19第110条刑法
いわゆる火焔瓶を乗用自動車に投げつけ命中破壊させることと刑法第一一〇条の放火罪の成否。
裁判要旨いわゆる火焔瓶を乗用自動車に投げつけ、これに命中破壊させたが、右自動車の運転台座席覆布の一部を焼燬したにとどまり、火炎瓶の火が自動車に燃え移り独立燃焼の程度に達しないときは、刑法
第一一〇条〈建造物等以外放火〉の放火罪は成立しない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和33年9月16日 昭和28(あ)3616
- 登載
- 集刑 第127号185頁
- 参照法条
- 刑法110条
論点20第110条刑法
1 刑法110条1項〈建造物等以外放火〉にいう「公共の危険」の意義
2 市街地の駐車場において放火された自動車から付近の2台の自動車に延焼の危険が及んだことなどをもって刑法110条1項にいう「公共の危険」の発生が認められた事例
裁判要旨1 刑法
110条1項〈建造物等以外放火〉にいう「公共の危険」は,同法
108条〈現住建造物等放火〉及び
109条1項〈非現住建造物等放火〉に規定する建造物等に対する延焼の危険に限られるものではなく,不特定又は多数の人の生命,身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれる。
2 市街地の駐車場において,放火された自動車から付近の2台の自動車に延焼の危険が及んだことなど判示の事実関係の下では,刑法
110条1項にいう「公共の危険」の発生が認められる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成15年4月14日 平成13(あ)1317
- 登載
- 刑集 第57巻4号445頁
- 参照法条
- 刑法110条1項
論点21第111条刑法
悪天での連絡船の運航につき過失の存否を争つた主張が不適法とされた事例(みどり丸事件)
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和49年4月9日 昭和48(あ)1765
- 登載
- 集刑 第192号239頁
- 参照法条
- 刑法111条,刑法129条
論点22第115条刑法
刑法第一五五条第一項〈公文書偽造等〉にいわゆる公務所は公務員の作るべき文書の意義。
裁判要旨刑法
第一五五条第一項〈公文書偽造等〉にいわゆる公務所または公務員の作るべき文書とは、公務所又は公務員が印章若しくは署名を使用しその権限内において職務執行上作成すべき文書を汎称し、その職務執行の方法範囲が法令に基づくと内規又は慣例によるとを問わないものと解すべきである(昭和一二年七月五日大審院判決、刑集一六巻一一七六頁・明治四五年四月一五日大審院判決、刑録一八輯四六四頁各参照)。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年8月28日 昭和38(あ)907
- 登載
- 集刑 第152号629頁
- 参照法条
- 刑法115条1項
論点23第115条刑法
刑法第一一五条〈差押え等に係る自己の物に関する特例〉の法意
裁判要旨刑法
第一一五条〈差押え等に係る自己の物に関する特例〉は、同条の物件が犯人の所有に属する場合であつても、若し差押を受け、物権を負担しまたは賃貸し若しくは保険に付したものを焼燬するときは、損害を他人に及ぼしまたは及ぼすおそれがあるので、そのような他人の利益の侵害となる行為を犯罪として処罰する趣旨であつて、犯人の財産権の公私を制限することを内容とした規定ではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和33年3月27日 昭和32(あ)2511
- 登載
- 刑集 第12巻4号666頁
- 参照法条
- 刑法115条,憲法29条
論点24第116条刑法
一 刑法一一七条の二〈業務上失火等〉の業務の意義
二 人の生命・身体の危険を防止することを義務内容とする業務と刑法二一一条の業務
三 易燃物の管理責任者につき業務上失火罪及び業務上過失致死罪が成立するとされた事例
裁判要旨一 刑法
一一七条の二〈業務上失火等〉にいう業務とは、職務として火気の安全に配慮すべき社会生活上の地位をいう。
二 刑法
二一一条〈業務上過失致死傷等〉にいう業務には、人の生命・身体の危険を防止することを義務内容とする業務も含まれる。
三 ウレタンフオームの加工販売業を営む会社の工場部門の責任者として、易燃物であるウレタンフオームを管理するうえで当然に伴う火災防止の職務に従事していた者が、火を失し、死者を伴う火災を発生させた場合は、業務上失火罪及び業務上過失致死罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和60年10月21日 昭和58(あ)829
- 登載
- 刑集 第39巻6号362頁
- 参照法条
- 刑法116条1項,刑法117条ノ2,刑法211条
論点25第116条刑法
給油作業の過誤による火災発生の予見可能性があつたとされた事例
裁判要旨路上の車からA重油を店舗内に給油するに際し、店舗外壁に設けられた給油口を開弁せずにコンプレツサーを作動させたため、給油口に連結したビニールホースが裂け、二リツトル程度のA重油が霧状となつて飛散し、たまたま店舗内で燃焼中の暖房用ストーブに降りかかつて引火し、店舗等が火炎により焼燬したという本件事実関係(原判文参照)のもとにおいては、右給油作業の過誤により火災を惹起することにつき、予見可能性があつたということができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和57年11月8日 昭和55(あ)2171
- 登載
- 刑集 第36巻11号879頁
- 参照法条
- 刑法116条,刑法117条の2
論点26第116条刑法
サウナ風呂の開発・製作の担当者がその構造につき耐火性を検討・確保しなかつた場合と業務上失火罪の成否
裁判要旨木製ベンチ部分の下部に電熱炉を据えつける方式の組立式サウナ風呂を開発・製作した者が、その構造につき耐火性を検討・確保しなかつたため、右サウナ風呂を継続使用した浴場内において、右木製ベンチを長期間にわたる電熱炉の加熱により漸次炭化させて火災を発生させた場合には、業務上失火罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和54年11月19日 昭和53(あ)989
- 登載
- 刑集 第33巻7号728頁
- 参照法条
- 刑法116条1項,刑法117条ノ2
論点27第116条刑法
デイーゼル・エンジン自動車の運転者の失火と業務上失火罪の成否
裁判要旨自動車に装置したデイーゼル・エンジンの排気管は、運転中著しく高温となり、これに可燃物が接触すると火災発生の危険があるのに、運転者が、排気管と接触するおそれのある状態で運転席の床にゴム板を装着し、また、運転中ゴム板の燻焦する臭気を感知したにもかかわらず、そのまま運転を継続したため、火災が発生した場合には、業務上失火罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和46年12月20日 昭和45(あ)1809
- 登載
- 刑集 第25巻9号1086頁
- 参照法条
- 刑法11条ノ2,刑法116条2項
論点28第116条刑法
高圧ガス販売業者のガス器具設置方法に過失があつた場合と業務上失火罪の成否
裁判要旨高圧ガス販売業者が顧客の店舗内にプロパンガス容器およびその付属設備を設置した場合において、その設置方法に過失があつたため火災を発生させたときは、業務上失火罪が成立する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和42年10月12日 昭和42(あ)1190
- 登載
- 刑集 第21巻8号1083頁
- 参照法条
- 刑法117条ノ2,刑法116条1項
論点29第116条刑法
公衆浴場経営者の業務上の注意業務。
裁判要旨市内の、水羽葺住家の多い所で、二段式風呂釜を据えつけ、これに経約一尺高さ四〇尺余の煙突を設置し、石炭を燃やして連日開湯する公衆浴場の経営者は、煙道の適当な箇所に消防署係員の指示する金網を装置するのはもとより、しばしば煙突掃除を同う等の処置をなすべきもので、もし右のような措置をなさず、そのまま多量の燃料を燃やそうとするならば、常に風速に注意して火焚きをし、風勢の激しい日には釜焚きを全く中止する等細心の注意を払い、もつて火災の発生を未然の防止すべき業務上の注意義務がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年12月25日 昭和32(あ)1893
- 登載
- 刑集 第13巻13号3333頁
- 参照法条
- 刑法117条ノ2,刑法116条1項,消防法9条
論点30第116条刑法
昏睡者に対する注意義務と過失致死の責任
裁判要旨第一審判決が一般通常人の注意を以つてすれば、当時被告人の夫Aが睡眠剤を嚥下し正常な感覚を失い昏睡状態となつて居たことを容易に認識し得べかりしにかゝわらず、被告人において適当な注意を払わず、夫の容態を確認せず且火気の適当措置を怠つて外出した点に過失責任を認定して失火と過失致死の責任を認めたのは正当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和27年6月24日 昭和25(あ)3133
- 登載
- 集刑 第65号321頁
- 参照法条
- 刑法210条,刑法116条
論点31第117条刑法
重過失失火罪の成立が認められた事例
裁判要旨厳寒期の北海道において、平素から多量に飲酒すると、高度の異常酩酊の状態におちいり、器物を投げつけるなどの粗暴な行為に出る習癖のあることを自覚していた被告人が、飲酒して右のような状態におちいり、燃焼中のストーブの上に椅子を乗せかけて現住建造物を焼燬するに至らせた場合、被告人の右所為は重過失失火罪に該当する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和48年9月6日 昭和48(あ)554
- 登載
- 集刑 第190号67頁
- 参照法条
- 刑法117条2後段
論点32第117条刑法
一 爆発物取締罰則第一条〈国内犯〉にいう「人ノ財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタ」罪の構成要件
二 爆発物取締罰則第一の罪質
裁判要旨一 爆発物取締罰則
第一条〈国内犯〉にいう「人ノ財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタ」罪は、犯人以外の者の財産を損壊しようという目的をもつて爆発物を使用したときは直ちに成立するものであつて、右損壊が財産の権利者の意思に判するものであることをも要するものではない。
二 爆発物取締罰則
第一条の爆発物使用罪は、損壊の客体が財産である場合においても、単にその財産の保護のみを目的とするものではなく、罪質的には公共危険罪の一種であると解するを相当とする(刑法
第一一七条〈激発物破裂〉等参照)。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年1月23日 昭和36(あ)1727
- 登載
- 刑集 第18巻1号1頁
- 参照法条
- 爆発物取締罰則1条,刑法117条等
論点33第117条刑法
重過失失火罪における他人の過去の存在と重過失者の罪責。
裁判要旨重過失失火罪において、いやしくも被告人の重過失が火災発生に対して一つの条件を与えた以上は、その重過失が右結果に対する唯一の原因ではなく火気取扱責任者の過失と相俟つて共同的に原因を与えた場合であつても、失火の責任を負うべきものである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和34年5月15日 昭和32(あ)359
- 登載
- 刑集 第13巻5号713頁
- 参照法条
- 刑法117条ノ2
論点34第117条刑法
一 刑法第一一七条の二〈業務上失火等〉前段にいう「業務」の意義。
二 行政官庁の許可を受けていない夜警勤務と刑法第一一七条ノ二の「業務」としての刑事責任。
裁判要旨一 刑法
第一一七条の二〈業務上失火等〉前段にいう「業務」は、当該火災の原因となつた火を直接取扱うことを業務の内容の全部または一部としているもののみに限らず、火災等の発見防止等の任務にあたる夜警の如きをも包含するものと解するを相当とする。
二 所論は被告人は料理人として昼間八時間勤務した上、更に夜警として勤務したものであるところ、右夜警勤務は行政官庁の許可を受けていないから、憲法二七条二項、労働基準法九三条に違反し無効である。従つて被告人の本件刑事責任は否定さるべきである旨主張する。しかしながら右行政官庁の許可の有無は夜警勤務に関する労働契約の効力如何の問題たるに止まり、夜警としての任務に服したものである以上、刑法
一一七条の二の「業務」としての刑事上の責任には何ら消長を来すものとは解することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和33年7月25日 昭和30(あ)4124
- 登載
- 刑集 第12巻12号2746頁
- 参照法条
- 刑法117条の2,刑法117条ノ2,憲法27条2項,労働基準法93条
論点35第117条刑法
鉄道トンネル内における電力ケーブルの接続工事を施工した業者につきトンネル内での火災発生の予見可能性が認められた事例
裁判要旨鉄道トンネル内における電力ケーブル接続工事に際し、施工資格を有してその工事に当たった者が、ケーブルに特別高圧電流が流れる場合に発生する誘起電流を接地するための接地銅板を接続器に取り付けることを怠ったため、誘起電流が大地に流されずに、接続器本体の半導電層部に流れて炭化導電路を形成し、長期間にわたり同部分に集中して流れ続けたことにより、火災が発生したという事実関係の下においては、右の者は、炭化導電路の形成という経過を具体的に予見することができなかったとしても、火災発生を予見することができたものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成12年12月20日 平成10(あ)579
- 登載
- 刑集 第54巻9号1095頁
- 参照法条
- 刑法117条の2,刑法211条