論点1第75条手形法
振出日白地の確定日払約束手形の効力
裁判要旨振出日白地の確定日払約束手形は、手形としての効力を有しない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和58年3月31日 昭和57(オ)1426
- 登載
- 集民 第138号463頁
- 参照法条
- 手形法75条,手形法76条
論点2第75条手形法
一、双方代理により振り出された約束手形と振出完成の時期
二、民法一〇八条に違反して振り出された約束手形の第三取得者に対する本人の手形上の責任
裁判要旨一、約束手形の振出人の代理人と受取人の代表者とが同一人であつて、手形の振出につき双方代理行為が成立するときは、振出行為の完成を留保すべき特段の事情のないかぎり、振出人の代理人として法定の形式に従つて手形の作成をおえた時に振出行為が完成し、その後は受取人の代表者の資格において手形を所持するにいたるものと解すべきである。
二、民法一〇八条に違反して約束手形が振り出された場合において、右手形が第三者に裏書譲渡されたときは、右第三者に対しては、本人は、その手形が双方代理行為によつて振り出されたものであることについて第三者が悪意であつたことを主張・立証しないかぎり、振出人としての責任を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年4月4日 昭和43(オ)813
- 登載
- 民集 第26巻3号373頁
- 参照法条
- 民法108条,手形法75条,手形法8条
論点3第75条手形法
手形の振出が法人のためにされたものであるとも代表者個人のためにされたものであるとも解しうる場合における法律関係
裁判要旨手形上の記載からは、手形の振出が法人のためにされたものであるとも、代表者個人のためにされたものであるとも解しうる場合には、手形所持人は、法人および代表者個人のいずれに対しても手形金の請求をすることができ、他方、請求を受けた者は、その振出が真実いずれの趣旨でされたかを知つていた直接の相手方に対しては、その旨の人的抗弁を主張することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年2月10日 昭和46(オ)209
- 登載
- 民集 第26巻1号17頁
- 参照法条
- 手形法8条,手形法17条,手形法75条
論点4第75条手形法
一、銀行が当座勘定取引契約に基づき手形の印影を照合するにあたつて尽くすべき注意義務の程度
二、印影照合についての銀行の注意義務と免責約款の効力
三、当座勘定取引契約に基づき手形の支払委託をうけた銀行が振出日欄白地の約束手形を支払つた場合における取引先に対する効力
裁判要旨一、銀行が、当座勘定取引契約に基づき、届出の印鑑と手形上の印影とを照合するにあたつては、銀行の照合事務担当者に対して社会通念上一般に期待されている業務上相当の注意をもつて慎重に行なうことを要し、右事務に習熟している銀行員が右のような注意を払つて熟視するならば肉眼で発見しうるような印影の相違が看過されて偽造手形が支払われたときは、その支払による不利益を取引先に帰せしめることは許されない。
二、銀行が手形の印影と届出印鑑とが符合すると認めて支払をした場合は責任を負わない旨の当座勘定取引契約上の免責約款は、銀行が手形の印影照合にあたつて尽くすべき前項の注意義務を軽減する趣旨のものではない。
三、当座勘定取引契約上の支払委託は、特段の事情のないかぎり、振出日欄白地の確定日払の約束手形の支払を含む趣旨とは解されず、銀行が、支払委託の有無を確認するための相当な方法をとることなく、右白地手形の支払をしたときは、その結果を取引先に帰属させることは許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和46年6月10日 昭和42(オ)64
- 登載
- 民集 第25巻4号492頁
- 参照法条
- 民法644条,手形法10条,手形法75条,手形法77条2項
論点5第75条手形法
平年における二月二九日を満期とする手形の記載の趣旨
裁判要旨平年における二月二九日を満期とする手形の記載は、二月末日を満期として記載した趣旨と解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和44年3月4日 昭和43(オ)1079
- 登載
- 民集 第23巻3号586頁
- 参照法条
- 手形法1条4号,手形法2条2項,手形法75条3号,手形法76条2項
論点6第75条手形法
会社が取引上の通称を用いて振り出した約束手形につき振出人として支払の責に任ずべきものであるとされた事例
裁判要旨有限会社カネ一D自転車商会なる商号の会社が、その営業活動の実態の変化に伴い、手形取引も含めて、取引上自己をあらわす名称として有限会社D商会なる名称を使用しているなど原判示の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、有限会社カネ一D自転車商会は、同社が有限会社D商会なる名称を用いて振り出した約束手形につき、振出人として支払の責に任ずべきものである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和44年1月30日 昭和43(オ)1070
- 登載
- 集民 第94号129頁
- 参照法条
- 手形法75条
論点7第75条手形法
他人名義で約束手形を振り出した者に手形振出人としての責任が認められた事例
裁判要旨甲を代表取締役とする会社が手形取引停止処分を受けたため、甲が実兄乙名義で銀行の当座取引口座を設け、その後、半年間に多数回にわたり乙名義を使用して約束手形を振り出しており、乙が経済的な信用や実績のない者であるなど判示の事情のもとにおいては、甲は、右約束手形の振出人として責任を負う。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和43年12月12日 昭和43(オ)854
- 登載
- 民集 第22巻13号2963頁
- 参照法条
- 手形法75条
論点8第75条手形法
一 控訴審で請求併合の態様が変更されたため認容の請求に変更を生じた場合と第一審判決取消の要否。
二 損害賠償額の予定の特約を記載して振り出された約束手形における右特約の効力。
裁判要旨一 第一審では甲乙両請求が選択的に併合されたため甲請求のみが認容されたが、控訴審では乙請求を第一次的請求、甲請求を予備的請求とすることに併合の態様が変更されたため乙請求のみを認容する場合には、甲請求を認容した第一審判決は、当然に失効するものと解すべきであるから、これを取り消すことを要しない。
二 損害賠償額の予定の特約を記載して振り出された約束手形においては、右特約は、振出人と受取人との間において、民法上の効力を生ずるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和39年4月7日 昭和37(オ)1148
- 登載
- 民集 第18巻4号520頁
- 参照法条
- 民訴法227条,民訴法232条,民訴法386条,手形法75条,民法420条
論点9第75条手形法
会社が商業登記簿上の名称以外の名称を用いて振り出した手形が当該会社提出の手形と認められた事例。
裁判要旨商業登記簿上の名称が「D(平仮名)林業株式会社」である会社が営業上「D林業株式会社」の名称を用いるのを常とし、手形取引においてもその名称を用いていた場合、右名称を用いて振り出した手形は右会社振出の手形として有効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和39年4月17日 昭和38(オ)45
- 登載
- 民集 第18巻4号543頁
- 参照法条
- 手形法1条,手形法75条7号,商法16条
論点10第75条手形法
準消費貸借の目的たる約束手形金債務を特定するについて手形要件全部の判示を必要とするか。
裁判要旨準消費貸借の目的たる約束手形金債務を特定するために、必ずしも手形要件のすべてを判示する要はない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和38年3月1日 昭和35(オ)1024
- 登載
- 集民 第65号41頁
- 参照法条
- 民法588条,手形法75条
論点11第75条手形法
約束手形の支払地「東京都」なる記載が適法とされた事例
裁判要旨支払地「東京都」、支払場所「自宅払」、振出地「東京都」、振出人「東京都世田谷区a町b番地『甲』、千葉県野田市cd番地『て』なる記載のある約束手形の支払地は東京都世田谷区と解するのを相当とする。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年2月20日 昭和34(オ)974
- 登載
- 民集 第16巻2号341頁
- 参照法条
- 手形法75条,手形法76条1項,手形法76条第3項,手形法76条第4項,手形法77条2項,手形法4条
論点12第75条手形法
法律上存在しない会社の取締役社長名義による約束手形の振出の効力
裁判要旨振出当時いまだ法律上存在しない会社の取締役社長何某として振出人欄に署名して振り出された約束手形は、右何某個人によつて振り出されたものと認めるものが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和37年2月15日 昭和32(オ)294
- 登載
- 集民 第58号605頁
- 参照法条
- 商法57条,手形法8条,手形法75条
論点13第75条手形法
約束手形の振出人欄の肩書と押印から会社が振出人であるとされた事例。
裁判要旨振出人欄に「B」、その肩書部分に「たからや」の記載がなされ、右「B」名下に「有限会社D洋装店代表取締役印」の押印がなされている約束手形の振出人は、有限会社D洋装店と認めるのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年10月30日 昭和35(オ)1360
- 登載
- 集民 第62号1059頁
- 参照法条
- 手形法75条
論点14第75条手形法
組合の代表者名義で提出された約束手形に対する組合員の責任の有無。
裁判要旨民法上の組合の代表者が、組合のために、その組合代表者名義で約束手形を振出した場合には、同組合の組合員は、共同振出人として、同手形について合同してその責を負うものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和36年7月31日 昭和32(オ)693
- 登載
- 民集 第15巻7号1982頁
- 参照法条
- 手形法75条7号,手形法47条
論点15第75条手形法
自己の信用を利用させる意味で約束手形の共同振出人となつた事実と連帯保証債務負担の意思の推認。
裁判要旨金員を借り受けるにつき自己の信用を利用させる意味で他人と共同して約束手形を振出した事実があるからといつて、その他人に対し、右金員借受につき連帯保証債務を負担すべきことを諾約し、その意思を自己に代つて表示する権限を与えたものと推認しなければならないものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和35年9月9日 昭和32(オ)1084
- 登載
- 民集 第14巻11号2114頁
- 参照法条
- 手形法75条,民法454条
論点16第75条手形法
約束手形が無効でないものと認められた一事例
裁判要旨約束手形の表面に紙片を附し、振出人が「本手形ハ他人ニ交付又ハ譲渡シタルトキハ無効トスル」旨記載したとしても、約束手形を無効ならしめるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和32年7月12日 昭和30(オ)173
- 登載
- 民集 第11巻7号1247頁
- 参照法条
- 手形法75条,手形法76条,手形法77条,手形法11条
論点17第75条手形法
満期の日として振出日より前の日が記載されている確定日払の約束手形の効力
裁判要旨満期の日として振出日より前の日が記載されている確定日払の約束手形は、無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成9年2月27日 平成6(オ)363
- 登載
- 民集 第51巻2号686頁
- 参照法条
- 手形法75条
論点18第77条手形法
手形の被裏書人の記載の抹消と裏書の効力
裁判要旨約束手形の裏書のうち被裏書人の記載のみが抹消された場合、当該裏書は、裏書の連続の関係においては、右抹消が権限のある者によつてされたことを証明するまでもなく、白地式裏書となる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和61年7月18日 昭和59(オ)1453
- 登載
- 民集 第40巻5号977頁
- 参照法条
- 手形法16条1項,手形法77条1項1号
論点19第77条手形法
一 「壱百円」の記載と手形法六条一項〈為替手形ノ金額ヲ文字及数字ヲ以テ記載シタル場合ニ於テ其ノ金額ニ差異アルトキハ文字ヲ以テ記載シタル金額ヲ手形金額トス〉にいう文字をもつてした記載
二 金額を「壱百円」及び「¥1,000,000―」と記載した約束手形の手形金額が一〇〇円と認められた事例
裁判要旨一 約束手形の金額欄の「壱百円」の記載は、手形法
六条一項〈為替手形ノ金額ヲ文字及数字ヲ以テ記載シタル場合ニ於テ其ノ金額ニ差異アルトキハ文字ヲ以テ記載シタル金額ヲ手形金額トス〉にいう文字をもつてした記載に当たる。
二 金額欄に文字で「壱百円」と記載され、その右上段に数字で「¥1,000,000―」と記載されている約束手形の手形金額は、一〇〇円が手形金額としてはほとんどありえない低額であり、右手形に一〇〇円の収入印紙が貼付されているとしても、一〇〇円と解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和61年7月10日 昭和57(オ)1175
- 登載
- 民集 第40巻5号925頁
- 参照法条
- 手形法6条1項,手形法77条2項
論点20第77条手形法
手形債権の一部の指名債権譲渡の方法による譲渡の効力
裁判要旨手形債権の金額的一部の指名債権譲渡の方法による譲渡は、無効である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和60年7月2日 昭和60(オ)243
- 登載
- 集民 第145号125頁
- 参照法条
- 手形法12条2項,手形法77条1項,民法466条
論点21第77条手形法
約束手形の裏書に付加された取立委任文言が抹消された場合と譲渡裏書としての効力を生ずる時期
裁判要旨約束手形の取立委任裏書を受けてこれを所持している者が、裏書人との間で当該手形の譲渡を受ける旨の合意をして、後日右裏書中の取立委任文言を抹消しても、右裏書が譲渡裏書としての効力を生ずるのは、取立委任文言の抹消の時からであつて、譲渡の合意の成立時に遡つてその効力を生ずるものではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和60年3月26日 昭和57(オ)1382
- 登載
- 集民 第144号233頁
- 参照法条
- 手形法12条,手形法18条,手形法77条
論点22第77条手形法
約束手形の第一裏書人及び第二裏書人がいずれも保証の趣旨で裏書したものである場合に手形を受戻した第二裏書人に対し第一裏書人が負うべき遡求義務の範囲
裁判要旨約束手形の第一裏書人及び第二裏書人がいずれも振出人の手形債務を保証する趣旨で裏書したものである場合において、第二裏書人が所持人から手形を受戻したうえ第一裏書人に対し遡求したときは、第一裏書人は民法四六五条一項の規定の限度においてのみ遡求に応じれば足り、右の遡求義務の範囲の基準となる裏書人間の負担部分につき特約がないときは、負担部分は平等である。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和57年9月7日 昭和56(オ)851
- 登載
- 民集 第36巻8号1607頁
- 参照法条
- 民法427条,民法442条,民法465条1項,手形法17条,手形法30条1項,手形法47条1項,手形法47条3項,手形法49条,手形法77条1項1号,手形法77条1項4号,手形法77条3項
論点23第77条手形法
期限後裏書の被裏書人に対抗しうべき人的抗弁の範囲
裁判要旨期限後裏書の被裏書人に対しては、その裏書の裏書人に対する人的抗弁をもつて対抗することができるが、右期限後裏書が戻裏書と同一に評価しうるような特段の事情がない限り、右裏書人の前者に対する人的抗弁をもつて対抗することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和57年9月30日 昭和57(オ)296
- 登載
- 集民 第137号261頁
- 参照法条
- 手形法17条,手形法20条1項,手形法77条1項1号
論点24第77条手形法
自己の債権の支払確保のため約束手形の裏書を受けた手形所持人が右原因債権の完済後に振出人に対してする手形金請求と権利の濫用
裁判要旨自己の債権の支払確保のため約束手形の裏書を受けた手形所持人は、その後右債権の完済を受けて裏書の原因関係が消滅したときは、特別の事情のない限り、振出人に対し手形金を請求するのは権利の濫用にあたり、振出人は、右所持人に対し手形金の支払を拒むことができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和57年7月20日 昭和56(オ)1108
- 登載
- 集民 第136号737頁
- 参照法条
- 手形法17条,手形法77条1項,民法1条2項,民法1条3項
論点25第77条手形法
約束手形の裏書人が振出人の手形金支払義務の時効による消滅に伴い自己の所持人に対する償還義務も消滅したとしてその履行を免れようとすることが信義則に反し許されないとされた事例
裁判要旨約束手形の裏書人が、その所持人に対して、自己の償還義務について消滅時効の利益の放棄ないし債務の承認をしたうえ、専ら自己に対する信頼に基づいて右手形を取得した所持人本人及びその代理人である弁護士に対して、再三にわたり、しかも振出人の債務とは必ずしも関係なく自己固有の債務として手形金の支払義務があることを認めるような態度を示し、同人らに確実にその履行がされるものとの期待を抱かせながら、のちに右態度をひるがえし、その信頼を裏切つて償還義務を履行しようとせず、やむなく右所持人より提起された手形金請求訴訟においても当該手形の裏書自体を否認したりその他種々の主張を提出して引延しとみられる抗争をすることによりその審理に長期間を費やさせ、その間に所持人が専ら裏書人を信頼してその義務履行が確実にされるものと期待する余り振出人に対する手形金請求権についての消滅時効中断の措置を怠つたがために振出人の手形金支払義務が消滅したのに乗じ、これに伴い自己の償還義務も当然消滅するに至つたとしてその履行を免れようとする所為に出ることは、信義則に反し許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和57年7月15日 昭和53(オ)728
- 登載
- 民集 第36巻6号1113頁
- 参照法条
- 手形法50条1項,手形法70条1項,手形法77条1項4号,手形法77条1項8号,民法1条2項
論点26第77条手形法
裏書の連続を欠く手形による手形金請求の訴えの提起と消滅時効の中断
裁判要旨裏書の連続を欠く手形による手形金請求の訴えを提起した場合でも、手形所持人がその実質的権利を証明するときは、右手形債権の消滅時効は中断する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和57年4月1日 昭和56(オ)783
- 登載
- 集民 第135号633頁
- 参照法条
- 手形法16条,手形法71条,手形法77条1項8号,民法147条
論点27第77条手形法
白地手形による手形金請求を棄却する判決の確定後に白地部分を補充して手形上の権利の存在を主張することの許否
裁判要旨白地手形の所持人は、手形金請求の前訴において、事実審口頭弁論終結前に白地補充権を行使しえたのにこれを行使しないため手形要件を欠くとして請求棄却の判決を受け、これが確定したときは、特段の事情のない限り、その後に白地部分を補充しても、後訴において手形上の権利の存在を主張することは許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和57年3月30日 昭和54(オ)110
- 登載
- 民集 第36巻3号501頁
- 参照法条
- 手形法10条,手形法77条2項,民訴法199条1項,民訴法545条2項(昭和54年法律第4号による改正前のもの),民事執行法35条2項
論点28第77条手形法
約束手形の満期前に遡求の要件を満たすためにすべき呈示の場所
裁判要旨約束手形の満期前に遡求の要件を満たすためにすべき呈示の場所は、振出人の営業所又は住所である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和57年11月25日 昭和57(オ)755
- 登載
- 集民 第137号509頁
- 参照法条
- 手形法43条後段2号,手形法44条5項,手形法77条1項4号
論点29第77条手形法
手形の裏書の連続があるとされた事例
裁判要旨約束手形の受取人「D商品株式会社」と第一裏書人「D商品株式会社E」との間には裏書の連続がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和56年7月17日 昭和56(オ)218
- 登載
- 集民 第133号395頁
- 参照法条
- 手形法16条1項,手形法77条
論点30第77条手形法
約束手形の受取人の氏名に続けて「限り」と明白に読みとれる記載がある場合と手形法一一条二項〈為替手形ハ指図式ニテ振出サザルトキト雖モ裏書ニ依リテ之ヲ譲渡スコトヲ得〉
裁判要旨統一手形用紙を使用した約束手形の受取人欄に受取人の氏名に続けて「限り」と明白に読みとれる記載がある場合には、右記載は、手形法
一一条二項〈為替手形ハ指図式ニテ振出サザルトキト雖モ裏書ニ依リテ之ヲ譲渡スコトヲ得〉にいう指図禁止と同一の意義を有する文言の記載にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和56年10月1日 昭和56(オ)196
- 登載
- 集民 第134号1頁
- 参照法条
- 手形法11条2項,手形法77条1項
論点31第77条手形法
手形偽造者の悪意の取得者に対する手形上の責任
裁判要旨手形を偽造した者は、その取得者が悪意であるときは、手形法
八条〈代理権ヲ有セザル者ガ代理人トシテ為替手形ニ署名シタルトキハ自ラ其ノ手形ニ因リ義務ヲ負フ其ノ者ガ支払ヲ為シタルトキハ本人ト…〉の規定の類推適用がなく、右取得者に対し手形上の責任を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和55年9月5日 昭和55(オ)375
- 登載
- 民集 第34巻5号667頁
- 参照法条
- 手形法8条,手形法77条2項
論点32第77条手形法
約束手形の所持人と裏書人との間において支払猶予の特約がされた場合と所持人の裏書人に対する手形上の請求権の消滅時効の起算点
裁判要旨約束手形の所持人と裏書人との間において裏書人の手形上の債務につき支払猶予の特約がされた場合には、所持人の裏書人に対する手形上の請求権の消滅時効は、右猶予期間が満了した時から進行する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和55年5月30日 昭和54(オ)1104
- 登載
- 民集 第34巻3号521頁
- 参照法条
- 手形法70条2項,手形法77条1項8号,民法166条1項
論点33第77条手形法
不渡の符箋等により満期後の支払拒絶が手形面上明らかにされたのちの裏書と手形法二〇条一項〈満期後ノ裏書ハ満期前ノ裏書ト同一ノ効力ヲ有ス但シ支払拒絶証書作成後ノ裏書又ハ支払拒絶証書作成期間経過後ノ裏書ハ民法第三編…〉
裁判要旨約束手形の支払拒絶証書作成前でその作成期間の経過前にされた裏書は、不渡の符箋等により満期後の支払拒絶の事実が手形面上明らかにされたのちのものであつても、満期前の裏書と同一の効力を有する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和55年12月18日 昭和54(オ)271
- 登載
- 民集 第34巻7号942頁
- 参照法条
- 手形法20条1項,手形法77条1項1号
論点34第77条手形法
手形の満期が変造された場合と所持人の振出人に対する手形債権の消滅時効の起算点
裁判要旨約束手形の満期が振出後に変造された場合には、右手形の所持人の振出人に対する手形債権の消滅時効は、変造前の満期から進行する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和55年11月27日 昭和55(オ)801
- 登載
- 集民 第131号173頁
- 参照法条
- 手形法69条,手形法70条1項,手形法77条1項7号,手形法77条1項8号
論点35第77条手形法
手形金額に錯誤のある裏書と悪意の取得者に対する償還義務の範囲
裁判要旨手形の裏書人が、金額一五〇〇万円の手形を金額一五〇万円の手形と誤信し同金額の手形債務を負担する意思のもとに裏書をした場合に、悪意の取得者に対して錯誤を理由に償還義務の履行を拒むことができるのは、右手形金のうち一五〇万円を超える部分についてだけであつて、その全部についてではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和54年9月6日 昭和53(オ)1281
- 登載
- 民集 第33巻5号630頁
- 参照法条
- 民法95条,手形法12条2項,手形法17条,手形法77条1項
論点36第77条手形法
手形の満期が日曜日でその翌日が国民の祝日にあたる場合と手形の支払呈示期間
裁判要旨手形の満期である昭和五二年一〇月九日が日曜日であり、翌一〇月一〇日が体育の日であつて、いずれも法定の休日にあたるときは、右手形の支払呈示期間は同年一〇月一三日までである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和54年12月20日 昭和54(オ)985
- 登載
- 集民 第128号269頁
- 参照法条
- 手形法38条1項,手形法72条1項,手形法77条1項,手形法87条
論点37第77条手形法
手形の書替により新旧両手形の所持人となつた者が一方の手形の支払を受けた場合と他方の手形の支払請求の可否
裁判要旨支払延期のため旧手形がこれを回収せずに新手形に書き替えられた場合に、新旧両手形の所持人となつた者が新手形を書替手形と知つて取得した悪意の取得者であるときは、右所持人は、いずれか一方の手形の支払を受けたのちに、振出人に対し重ねて他方の手形の支払を求めることはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和54年10月12日 昭和53(オ)1375
- 登載
- 集民 第128号1頁
- 参照法条
- 手形法1条,手形法17条,手形法77条1項
論点38第77条手形法
手形面上印刷された指図文句を抹消することなく指図禁止文句が併記された場合と裏書禁止手形
裁判要旨手形の振出人が、手形用紙に印刷された指図文句を抹消することなく、指図禁止文句を記載したため、手形面上指図文句と指図禁止文句が併記されている場合には、他に特段の事情のない限り、右手形は裏書禁止手形にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年4月24日 昭和53(オ)149
- 登載
- 集民 第123号603頁
- 参照法条
- 手形法11条2項,手形法77条1項
論点39第77条手形法
手形割引依頼人に対する買戻請求権の行使と手形債務者に対する権利の行使との関係
裁判要旨割引手形の買戻請求権行使後の手形所持人は、割引依頼人の買戻債務が発生しても現実に履行されるまでは同時履行の抗弁権によりその手形を保有することができ、現実に支払を受けるまでは手形の正当な所持人として一切の権利を行使することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和53年3月28日 昭和49(オ)583
- 登載
- 集民 第123号289頁
- 参照法条
- 手形法43条,手形法77条
論点40第77条手形法
理事が権限を濫用して振り出した約束手形の第三取得者に対する農業協同組合の手形上の責任
裁判要旨農業協同組合の理事が自己又は第三者の利益をはかるため代表権限を濫用して約束手形を振り出した場合において、受取人が右権限濫用の事実を知り又は知りうべかりし状態のもとに手形の交付を受けたときは、民法九三条但書の規定の類推適用により、農業協同組合は理事の振出行為を無効として受取人に対する手形上の責任を免れることができるが、右受取人がさらに手形を他に裏書譲渡したときは、農業協同組合は、手形法
一七条〈為替手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ但シ所…〉但書の規定により、第三取得者が受取人の右知情について悪意であることを立証した場合に限つて、右第三取得者に対する手形上の責任を免れることができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和53年2月16日 昭和52(オ)1109
- 登載
- 集民 第123号65頁
- 参照法条
- 農業協同組合法41条,民法53条,民法93条,手形法17条,手形法77条1項1号
論点41第77条手形法
手形に保証の趣旨で裏書をした場合に原因債務についての民事保証を推認することの可否
裁判要旨金銭を借用するにあたり、借主甲が、借受金の弁済確保のため甲の振り出す約束手形になんぴとか確実な保証人の裏書をもらつてくるよう貸主乙から要求されたため、丙に依頼して右手形に丙の裏書を受けたうえ、これを乙に手交して金銭の貸渡しを受けたという事実関係があるだけでは、右手形が金融を得るために用いられることを丙において認識していた場合であつても、丙が手形振出の原因となつた甲乙間の消費貸借上の債務を保証したものと推認することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和52年11月15日 昭和51(オ)1187
- 登載
- 民集 第31巻6号900頁
- 参照法条
- 民訴法185条,民法446条,手形法15条,手形法77条
論点42第77条手形法
金融機関が手形貸付債権又は手形買戻請求権をもつて転付された預金債権を相殺した場合と手形の返還先
裁判要旨金融機関が預金者から第三者に転付された預金債権を右預金者に対する手形貸付債権又は手形買戻請求権をもつて相殺した結果預金債権が転付前に遡つて消滅した場合には、金融機関は、手形貸付けについて振り出された手形又は買戻の対象となつた手形を右預金者に返還すべきであり、預金債権の転付を受けた第三者に返還すべきではない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和50年9月25日 昭和46(オ)1110
- 登載
- 民集 第29巻8号1287頁
- 参照法条
- 民法468条,民法511条,民訴法601条,手形法39条,手形法50条,手形法77条
論点43第77条手形法
約束手形の満期の変造と裏書人の遡及義務
裁判要旨約束手形の満期が裏書後裏書人の同意を得ないで変造された場合、所持人が右裏書人に対して遡及権を行使するためには変造前の満期にしたがつてその保全手続をとらなければならない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和50年8月29日 昭和50(オ)439
- 登載
- 集民 第115号643頁
- 参照法条
- 手形法44条,手形法46条,手形法69条,手形法77条1項4号,手形法77条1項7号
論点44第77条手形法
手形偽造と手形法八条の類推適用
裁判要旨手形を偽造した者は、手形法
八条〈代理権ヲ有セザル者ガ代理人トシテ為替手形ニ署名シタルトキハ自ラ其ノ手形ニ因リ義務ヲ負フ其ノ者ガ支払ヲ為シタルトキハ本人ト…〉の類推適用により手形上の責任を負うものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和49年6月28日 昭和43(オ)942
- 登載
- 民集 第28巻5号655頁
- 参照法条
- 手形法8条,手形法77条2項
論点45第77条手形法
融通手形の所持人の振出人に対する不当仮差押と振出人につき生じた損害との間の因果関係の認定に理由不備があるとされた事例
裁判要旨約束手形の振出人が融通手形であることを理由としてその支払を拒絶した場合に、右振出人が同一の被融通者に対し額面合計五六七万円余に及ぶ七通の融通手形を振出しており、しかも右被融通者が既に支払を停止しているときは、これらの事実を知つた金融機関は右振出人との金融取引を警戒、敬遠するのが一般であるから、当該手形の所持人の右振出人に対する仮差押の申請、執行が右振出人の無資力であることにつき虚偽の疏明資料を用いたものであるとしても、右振出人が支払拒絶後金融取引に支障を生じたことに因り被つた損害が右不当仮差押によるものというためには、他に特別な事情が存在することを必要とするものと解すべきであり、かかる特別事情をなんら認定しないで右不当仮差押と右損害との間に因果関係があると即断することは、理由不備にあたる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和49年3月15日 昭和47(オ)720
- 登載
- 集民 第111号387頁
- 参照法条
- 手形法77条,手形法17条,民法709条
論点46第77条手形法
約束手形の受取人欄の変造と手形法一六条一項の適用
裁判要旨約束手形の受取人欄が変造された場合であつても、その手形面上変造後の受取人から現在の所持人へ順次連続した裏書の記載があるときは、右所持人は、振出人に対する関係においても手形法七七条一項一号、一六条一項により適法な所持人と推定される。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和49年12月24日 昭和48(オ)931
- 登載
- 民集 第28巻10号2140頁
- 参照法条
- 手形法16条1項,手形法69条,手形法77条1項
論点47第77条手形法
受取人欄白地の手形の振出人とこれを補充した所持人との間に人的抗弁の対抗を受ける当事者としての関係がない場合
裁判要旨数人の手を経由して受取人欄白地の手形の交付を受けた所持人が受取人として自己の氏名を補充した場合、その手形上の形式的記載にかかわらず、右所持人は、振出人との関係においては、原因関係欠缺の人的抗弁の対抗を受ける直接の当事者にあたらない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和49年12月19日 昭和46(オ)876
- 登載
- 集民 第113号647頁
- 参照法条
- 手形法10条,手形法17条,手形法77条
論点48第77条手形法
約束手形の裏書を受けた手形所持人が裏書の原因関係である法律行為が無効であるときに振出人に対してする手形金請求と権利濫用
裁判要旨約束手形の裏書を受けた手形所持人が、裏書の原因関係である法律行為が無効であるにかかわらず、手形を所持していることを奇貨として振出人に対し手形金を請求することは、特段の事情のないかぎり、権利の濫用として許されない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和48年11月16日 昭和47(オ)104
- 登載
- 民集 第27巻10号1391頁
- 参照法条
- 手形法77条,手形法17条,民法1条2項,民法1条3項
論点49第77条手形法
一、約束手形の振出署名者の得た除権判決の効力
二、約束手形の振出署名者の申立にかかる除権判決により手形が無効になつた場合と除権判決前に手形上の権利を取得していた者の権利行使の方法
裁判要旨一、約束手形に振出人として署名したが、これを流通におく前に盗取されまたは紛失した者の得た除権判決は、右振出署名者において、除権判決後その手形を取得した者に対し支払を拒絶しうる効力を有するにとどまり、除権判決前に手形を悪意または重大な過失なく取得し、振出署名者に対して振出人としての責任を追求しえた者の有する実質的権利までも消滅させる効力を有するものではない。
二、約束手形の振出署名者の申立にかかる除権判決により手形が無効となつた場合において、無効となつた手形を所持する実質的権利者は、除権判決前すでに手形上の権利を取得し、除権判決当時手形の適法な所持人であつたことを主張・立証することにより、その権利を行使することができるものと解するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和47年4月6日 昭和44(オ)118
- 登載
- 民集 第26巻3号455頁
- 参照法条
- 民訴法777条,民訴法778条,民訴法784条,民訴法785条,手形法17条,手形法38条,手形法39条,手形法77条,手形法78条1項
論点50第77条手形法
約束手形の呈示期間の徒過と裏書人の遡求義務の消滅
裁判要旨約束手形が法定の呈示期間内に呈示されなかつたときは、裏書人の遡求義務は、右呈示期間の徒過によつて消滅する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和47年2月22日 昭和44(オ)673
- 登載
- 集民 第105号165頁
- 参照法条
- 手形法53条,手形法77条
論点51第77条手形法
盗難手形を取得した金融機関に手形法一六条二項の重過失がないとされた事例
裁判要旨第一裏書人が白地裏書をしたまま保管中盗取された約束手形につき、金融機関が同手形の所持人から金融取引によりこれを取得するに当たつて右所持人等につき原判決理由説示のような調査をしたときは、右所持人が当該手形を所持することにつき疑念を抱かず、かつ、当該手形の振出人および第一裏書人に対し直接照会をしなかつたとしても、右金融機関に重過失があるということはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和47年11月10日 昭和47(オ)762
- 登載
- 集民 第107号169頁
- 参照法条
- 手形法16条2項,手形法77条1項1号
論点52第77条手形法
手形買戻請求権に関する事実たる慣習の存否について審理不尽の違法があるとされた事例
裁判要旨銀行と手形割引依頼人との間の取引約定書に、割引手形の振出人の信用悪化の場合には右割引依頼人において割引手形を買い戻す規定をおきながら、割引依頼人の関係においては、単に手形割引の都度右手形と同額の貸金債務を負担したものとする旨、および同人の信用悪化の場合に、同人の銀行に対する一切の債務について期限の利益を失う旨の規定をおくに止まり、手形の買戻しについては何の規定もおいていないとしても、右約款の趣旨、銀行の行なう手形割引の性格、および昭和三七年公表された銀行取引約定書ひな型の成立した経緯等からすれば、銀行が、割引依頼人の信用悪化の場合にも、同人に対して手形買戻請求権を有する旨の事実たる慣習が存在していなかつたものとは断じ難く、その点について審理をなさず、右の場合における手形買戻請求権を否定した原判には、審理不尽の違法があるものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和46年6月29日 昭和43(オ)934
- 登載
- 集民 第103号293頁
- 参照法条
- 手形法77条,手形法45条,民法92条
論点53第77条手形法
盗難・紛失により流通におかれた約束手形に振出人として署名した者の手形上の責任
裁判要旨流通におく意思で約束手形に振出人として署名または記名捺印をした者は、右手形が盗難・紛失等のため自己の意思によらずに流通におかれた場合でも、連続した裏書のある右手形の所持人に対しては、悪意または重大な過失によつて同人がこれを取得したことを主張・立証しないかぎり、振出人としての責任を免れない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和46年11月16日 昭和41(オ)568
- 登載
- 民集 第25巻8号1173頁
- 参照法条
- 手形法16条2項,手形法77条1項1号,手形法78条
論点54第77条手形法
振出および裏書の原因関係がともに消滅した場合における人的抗弁の対抗
裁判要旨手形振出人は、受取人から手形所持人に対する裏書の原因関係が消滅し、所持人が手形の支払を求めるなんらの経済的利益も有しないときは、受取人との間における振出の原因関係消滅の抗弁をもつて、手形所持人に対抗することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和45年7月16日 昭和45(オ)16
- 登載
- 民集 第24巻7号1077頁
- 参照法条
- 手形法17条,手形法77条1項1号
論点55第77条手形法
手形法一六条一項〈為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ…〉の適用を求める主張があると解すべき場合
裁判要旨原告が、連続した裏書の記載のある手形を所持し、その手形に基づき手形金の請求をしている場合には、当然に、手形法
一六条一項〈為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ…〉の適用を求める主張があるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和45年6月24日 昭和42(オ)747
- 登載
- 民集 第24巻6号712頁
- 参照法条
- 手形法16条1項,手形法77条1項1号,民訴法186条
論点56第77条手形法
主たる債務者の手形債務の時効消滅と手形保証債務の消滅
裁判要旨主たる債務者の手形債務について消滅時効が完成したときは、手形保証債務も消滅する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和45年6月18日 昭和45(オ)18
- 登載
- 民集 第24巻6号544頁
- 参照法条
- 手形法32条,手形法71条,手形法77条1項8号,手形法77条3項
論点57第77条手形法
将来発生することあるべき債務の担保のために振り出された約束手形の受取人が右債務の不発生が確定した後に振出人のための手形保証人に対してする手形金請求と権利の濫用
裁判要旨将来発生することあるべき債務の担保のために振り出され、振出人のために手形保証のなされた約束手形の受取人は、手形振出の右原因関係上の債務の不発生が確定したときは、特別の事情のないかぎり、以後手形保証人に対して手形上の権利を行使すべき実質的理由を失つたものであつて、右手形を返還せず、手形が自己の手裡に存するのを奇貨として手形保証人に対し手形金を請求するのは、権利の濫用にあたり、手形保証人は受取人に対し手形金の支払を拒むことができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和45年3月31日 昭和44(オ)1118
- 登載
- 民集 第24巻3号182頁
- 参照法条
- 手形法77条,手形法32条1項,手形法32条2項,手形法17条,民法1条2項,民法1条3項
論点58第77条手形法
信用組合の表見参事が権限なくして約束手形を振り出した場合と信用組合の手形所持人に対する人的抗弁
裁判要旨手形振出の代理権を有しない信用組合の表見参事が代理資格を冒用して約束手形を振り出した場合において、手形受取人および同人の被裏書人がいずれも右代理権のないことを知つて手形を取得したときには、信用組合は被裏書人である手形所持人に対し、右表見参事が右代理権を有しなかつたことをもつて対抗することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和45年3月27日 昭和42(オ)848
- 登載
- 集民 第98号565頁
- 参照法条
- 商法38条3項,手形法17条,手形法77条1項1号,中小企業等協同組合法44条
論点59第77条手形法
約束手形所持人の振出人に対する手形債権に基づく詐害行為取消請求と手形裏書の原因関係の消滅時効
裁判要旨約束手形の所持人が、その振出人に対する手形債権に基づき、右振出人と第三者との間の行為を詐害行為としてその取消を求める訴訟において、右所持人への裏書の原因関係上の債務につき消滅時効が完成していても、その債務の債務者が時効を援用していないかぎり、被告たち受益者は、右債務の消滅を主張して、右所持人の権利の行使を拒むことができない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和45年1月23日 昭和42(オ)608
- 登載
- 集民 第98号33頁
- 参照法条
- 民法145条,民法424条,手形法77条,手形法17条
論点60第77条手形法
一、振出日白地の手形による訴提起と時効中断
二、満期が記載されている白地手形の白地補充権の消滅時効
裁判要旨一、振出日白地の約束手形の所持人が、その満期から三年以内に、振出人に対して、右白地部分を補充しないまま手形金請求の訴を提起し、その後右訴の事実審口頭弁論終結時までに右白地部分を補充したときは、たとえその補充の時が満期から三年を経過したのちであつたとしても、右手形上の権利の時効は、右訴の提起の時に中断されたものと解すべきである。
二、満期が記載されている白地手形の白地補充権は、手形上の権利と別個独立に時効によつて消滅するものではなく、手形上の権利が消滅しないかぎりこれを行使しうるものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和45年11月11日 昭和43(オ)753
- 登載
- 民集 第24巻12号1876頁
- 参照法条
- 手形法10条,手形法70条1項,手形法71条,手形法77条1項,民法149条
論点61第77条手形法
手形法四〇条三項〈為替手形ノ所持人ハ満期前ニハ其ノ支払ヲ受クルコトヲ要セズ〉にいう重大な過失があるとされた事例
裁判要旨甲が乙に対し売買代金債権を有し、乙が右支払のため甲の代理人丙に乙振出甲宛の約束手形二通を交付したところ、丙は、そのうち一通を甲に交付し、他の一通の手形(以下、本件手形という。)については、乙に申し入れて、受取人を甲とする記載部分の抹消を受け、勝手に丙名義に補充してこれを満期に呈示したのであるが、右呈示前、乙は、甲から書面により「本件手形は、丙が引渡しを拒んで所持しているが、甲が受取人とされているから、甲の裏書を偽造しないかぎり丙は手形上の権利を行使できない筈である。したがつて丙らから取立があつても支払わないよう」との申入れを受け、かつ、前記のように、本件手形の受取人欄を白地として丙に交付していたのであるから、乙が、何ら調査をすることなく、慢然、委託銀行をして本件手形金を呈示者丙に支払わしめたことについては、少なくとも、手形法
四〇条三項〈為替手形ノ所持人ハ満期前ニハ其ノ支払ヲ受クルコトヲ要セズ〉にいう重大な過失がある。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和44年9月12日 昭和43(オ)827
- 登載
- 集民 第96号553頁
- 参照法条
- 手形法77条1項3号,手形法40条3項
論点62第77条手形法
一、代理人が権限を濫用して振り出した約束手形と第三取得者に対する本人の手形抗弁
二、手形行為は農業協同組合の目的たる事業の範囲に含まれるか
裁判要旨一、代理人が自己または第三者の利益をはかるため、代理権限を濫用して約束手形を振り出した場合において、権限濫用の事実を知りまたは知りうべかりし状態で右手形の交付を受けた受取人が、これを他に裏書譲渡したときは、本人は、手形法
一七条〈為替手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ但シ所…〉但書の規定により、第三取得者が受取人の右知情について悪意であることを立証した場合にかぎり、右第三取得者に対する手形上の責任を免れることができると解するのが相当である。
二、手形行為は、農業協同組合の目的たる事業の範囲に含まれる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和44年4月3日 昭和42(オ)602
- 登載
- 民集 第23巻4号737頁
- 参照法条
- 手形法77条1項1号,手形法17条,民法43条,民法93条,農業協同組合法10条
論点63第77条手形法
訴訟行為をさせることを主たる目的としてされた手形の裏書と手形抗弁
裁判要旨訴訟行為をさせることを主たる目的としてされた手形の裏書は、隠れた取立委任のためにされたものにほかならないが、右の場合には、信託法一一条の規定により、たんに手形外の取立委任の合意が無効となるにとどまらず、裏書自体も無効となり、すべての手形債務者は、被裏書人たる所持人が手形上無権利者であることを主張してその手形上の請求を拒絶することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和44年3月27日 昭和41(オ)1338
- 登載
- 民集 第23巻3号601頁
- 参照法条
- 手形法77条1項1号,手形法14条,手形法17条,信託法11条,信託法1条
論点64第77条手形法
満期白地の手形の補充権の消滅時効期間
裁判要旨満期白地の手形の補充権は、五年の時効によつて消滅する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和44年2月20日 昭和43(オ)709
- 登載
- 民集 第23巻2号427頁
- 参照法条
- 商法522条,手形法10条,手形法77条1項8号,手形法70条1項
論点65第77条手形法
代理人が権限を濫用して約束手形の振出人のためにした手形上の保証と手形受取人に対する国税滞納処分として手形を差し押えた国に対する保証人の責任
裁判要旨代理人が、自己の利益をはかるため、代理権限を濫用して、約束手形の振出人のために、本人名義で手形上の保証をした場合において、代理人から手形の交付を受けた手形受取人が権限濫用の事実を知りうべきであったときは、受取人に対する国税滞納処分として右手形を差し押えて占有するに至つた国において、差押当時受取人の知情の点につき善意であつたことを主張立証しないかぎり、本人である保証人は、国に対し、手形上の保証による責任を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和44年11月14日 昭和42(オ)694
- 登載
- 民集 第23巻11号2023頁
- 参照法条
- 民法93条但書,民法94条2項,手形法77条3項,手形法32条
論点66第77条手形法
約束手形の振出人の弁済と裏書人の償還義務の一部免除
裁判要旨約束手形の振出人が当該手形上の債務を弁済した場合において、強制和議により右弁済前の時点にさかのぼつて右手形の裏書人の償還義務のみが一部免除されたときは、右償還義務は、右振出人の弁済により、右弁済額から右免除された債務額を控除した残額について消滅する。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和43年12月6日 昭和43(オ)451
- 登載
- 集民 第93号553頁
- 参照法条
- 手形法77条1項4号,手形法47条1項
論点67第77条手形法
自己の債権の支払確保のため約束手形の裏書を受けた手形所持人が右原因債権の完済後に振出人に対してする手形金請求と権利の濫用
裁判要旨自己の債権の支払確保のため約束手形の裏書を受けた手形所持人は、その後右債権の完済を受けて裏書の原因関係が消滅したときは、特別の事情のないかぎり、以後右手形を保持すべき正当の権原を有しないことになり、手形上の権利を行使すべき実質的理由を失つたものであつて、右手形を返還しないで自己が所持するのを奇貨として、自己の形式的権利を利用し振出人に対し手形金を請求するのは、権利の濫用にあたり、振出人は、右所持人に対し手形金の支払を拒むことができる。
- 裁判
- 最高裁判所大法廷 昭和43年12月25日 昭和38(オ)330
- 登載
- 民集 第22巻13号3548頁
- 参照法条
- 手形法77条,手形法17条,民法1条2項,民法1条3項
論点68第77条手形法
手形偽造に民法第一一〇条の類推適用があるとされた事例
裁判要旨無権限者が機関方式により手形を振り出し本人名義の手形を偽造した場合であつても、右の手形振出が本人から付与された代理権の範囲をこえてなされたものであり、かつ、手形受取人において右無権限者が本人名義で手形を振り出す権限ありと信ずるにつき正当の理由がある等原審認定の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、本人は、民法第一一〇条の類推適用により、右の手形について振出人としての責に任ずる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日 昭和41(オ)1204
- 登載
- 民集 第22巻13号3382頁
- 参照法条
- 手形法8条,手形法77条2項,民法110条
論点69第77条手形法
受取人欄白地の手形による支払のための呈示の効力
裁判要旨白地手形による支払のための呈示は無効であつてその呈示期間経過後の補充により右呈示が遡つて有効になるものでないことは当裁判所の判例であり(昭三三年三月七日第二小法廷判決、民集一二巻三号五一一頁)、右につき、受取人欄白地の手形を別異に解することはできない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和43年10月8日 昭和43(オ)679
- 登載
- 集民 第92号501頁
- 参照法条
- 手形法38条,手形法53条,手形法10条,手形法77条
論点70第77条手形法
一 約束手形の満期の記載が変造された場合と変造前の文言の立証責任
二 手形金額の白地補充権の濫用と悪意重過失についての立証責任
裁判要旨一 約束手形の満期の記載が変造された場合には、変造前の文言については、手形所持人が立証責任を負う。
二 約束手形の金額欄の白地の補充について、第三者が、補充権に関する合意に反することを知り、または重過失により知らないで、右白地を補充したこと、または右合意に反して補充された手形を取得したことの立証責任は、振出人が負う。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和42年3月14日 昭和39(オ)1223
- 登載
- 民集 第21巻2号349頁
- 参照法条
- 手形法77条1項7号,手形法77条2項,手形法69条,手形法10条
論点71第77条手形法
白地補充権なくして白地要件が補充された約束手形につき振出人に手形金支払義務があるとされた事例
裁判要旨会社の資力を仮装するため単に見せ手形として使用する約束のもとに振出人欄に記名押印し振出日および受取人欄を空欄として交付された約束手形につき、相手方が約旨に反して右空欄を補充した場合であつても、さらに裏書譲渡を受けた所持人が悪意重過失なくして右約束手形を取得したものである以上、振出人は所持人に対して手形金支払義務を負うものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和41年12月1日 昭和41(オ)586
- 登載
- 集民 第85号489頁
- 参照法条
- 手形法77条2項,手形法10条
論点72第77条手形法
約束手形の振出人のための保証人に対する所持人の権利は遡求手続の懈怠によつて失われるか。
裁判要旨約束手形の振出人のための保証人に対する所持人の権利は、所持人が遡求手続を懈怠したからといつて、失われることはない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和40年5月28日 昭和39(オ)1283
- 登載
- 集民 第79号235頁
- 参照法条
- 手形法77条3項,手形法32条1項,手形法53条
論点73第77条手形法
時効による債務の消滅と不当利得の成否
裁判要旨約束手形の振出人が、手形上の債務を時効によつて免かれた場合には、手形上の権利者に対し不当利得償還義務を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年10月12日 昭和38(オ)222
- 登載
- 集民 第80号705頁
- 参照法条
- 民法703条,手形法77条1項8号,手形法70条
論点74第77条手形法
いわゆる署名代理による手形振出行為の有効性。
裁判要旨いわゆる署名代理による手形振出行為は有効であつて、本人が振出人として手形上の責任を負う。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和39年3月19日 昭和38(オ)581
- 登載
- 集民 第72号581頁
- 参照法条
- 手形法8条,手形法77条2項
論点75第77条手形法
裏書の連続の意義。
裁判要旨手形法
第一六条第一項〈為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ…〉にいう裏書の連続は、その形式によりこれを判定すれば足り、裏書が真正なものかどうかは問うところではない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和38年5月21日 昭和37(オ)1154
- 登載
- 集民 第66号113頁
- 参照法条
- 手形法16条,手形法77条1項1号
論点76第77条手形法
代理人が本人名義の記名捺印をもつてした手形振出は有効か。
裁判要旨手形振出の代理権限を有する者が本人の記名捺印を代つてする権限をも与えられている場合に、本人名義の記名捺印をもつてした手形振出は、手形代理行為として有効である。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和37年7月6日 昭和36(オ)402
- 登載
- 民集 第16巻7号1491頁
- 参照法条
- 手形法8条,手形法77条2項
論点77第77条手形法
権限踰越の署名代理による手形振出と民法第一一〇条の適用
裁判要旨代理権限を踰越し署名代理の方法によつて約束手形が振出された場合にも、民法第一一〇条の適用がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年3月27日 昭和36(オ)282
- 登載
- 民集 第16巻3号632頁
- 参照法条
- 手形法8条,手形法77条2項,民法110条
論点78第77条手形法
一 約束手形の裏書人たる破産者が被裏書人から手形を受け戻すにつき手形金額の支払をした場合と破産法第七三条第一項〈法定又ハ約定ノ期間ニハ其ノ初日ヲ算入セズ〉の類推適用の有無
二 破産法第七三条第一項にいう「手形ノ支払」と「債務者ノ一人又ハ数人ニ対スル手形上ノ権利」の意義
裁判要旨一 約束手形の裏書人たる破産者が被裏書人から手形を受け戻すにつき手形金額の支払をした場合には破産法
第七三条第一項〈法定又ハ約定ノ期間ニハ其ノ初日ヲ算入セズ〉は類推適用のされない。
二 破産法第七三条第一項にいう「手形ノ支払」とは、約束手形にあつては振出人の支払を指し、「債務者ノ一人又ハ数人ニ対スル手形上ノ権利」とは、手形所持人の前者に対する遡及権を指すにほかならない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和37年11月20日 昭和33(オ)689
- 登載
- 民集 第16巻11号2293頁
- 参照法条
- 破産法73条,破産法72条,手形法43条,手形法53条,手形法777条1項,手形法77条1項
論点79第77条手形法
一 手形の補箋の表面になした署名と手形保証の成否
二 申立てない事項について判決をした違法のある事例
裁判要旨一 約束手形の補箋の表面になした単なる署名は保証と看做すべきである。
二 約束手形の共同振出を原因として手形金の請求をしている場合に、手形保証を理由として請求を認容したときは、当事者の申立てない事項について判決をした違法がある。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和35年4月12日 昭和33(オ)643
- 登載
- 民集 第14巻5号825頁
- 参照法条
- 手形法31条3項,手形法77条3項,民訴法186条
論点80第77条手形法
拒絶証書作成不要文句の記載方法。
裁判要旨約束手形の裏書欄に、拒絶証書作成不要の文句を記載する場合には、必ずしも特別の署名をする必要はなく、裏書自体に署名するをもつて足りると解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和34年2月6日 昭和32(オ)669
- 登載
- 民集 第13巻1号81頁
- 参照法条
- 手形法77条,手形法46条
論点81第77条手形法
白地裏書人が手形を受戻した後、さきの白地裏書に記載した裏書を利用して右手形を第三者に譲渡した場合と裏書人としての責任の有無
裁判要旨甲から白地裏書により乙に、乙から記名裏書により丙に、順次交付された手形が甲に返還され、かつ乙のなした裏書が適法に抹消された後において、甲がさきの白地裏書の記載をそのまま利用して、右手形を丁に譲渡したときは、甲は丁に対し、裏書人としての手形上の責任を負担する。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和31年7月12日 昭和30(オ)207
- 登載
- 民集 第10巻7号845頁
- 参照法条
- 手形法14条2項,手形法16条1項,手形法43条前段,手形法77条
論点82第77条手形法
一 隠れたる取立委任裏書と手形上の権利移転の有無
二 裏書の連続を欠く手形上の権利行使の許否
裁判要旨一 隠れたる取立委任裏書により、手形上の権利は、裏書人から被裏書人へ移転するものと解すべきである。
二 手形所持人は、たとえ手形が裏書の連続を欠くため形式的資格を有しなくても、実質的権利を証明するときは、手形上の権利を行使することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和31年2月7日 昭和29(オ)86
- 登載
- 民集 第10巻2号27頁
- 参照法条
- 手形法14条,手形法18条,手形法40条3項,手形法77条1項1号,手形法16条1項,手形法77条1項1号3号
論点83第77条手形法
約束手形の振出人のため手形保証をなした者は、受取人に対し、振出人の受取人に対する人的抗弁を以て対抗しうるか
裁判要旨約束手形の振出人のために手形保証をなした者は、振出人が受取人に対して有する人的抗弁を以つて受取人に対抗しえない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和30年9月22日 昭和29(オ)660
- 登載
- 民集 第9巻10号1313頁
- 参照法条
- 手形法77条,手形法32条
論点84第77条手形法
貸金債権の未発生の利息の支払のために振り出された約束手形であることを知って右手形を取得した行為と手形法一七条〈為替手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ但シ所…〉ただし書
裁判要旨約束手形の所持人が手形を裏書によって取得する際に当該手形が貸金債権の未発生の利息の支払のために振り出されたものであることを知っていたとしても、貸金債権の元本が弁済期より前に弁済されることによって右利息債権が発生しないであろうことを知っていたなどの特段の事情がない限り、手形法
一七条〈為替手形ニ依リ請求ヲ受ケタル者ハ振出人其ノ他所持人ノ前者ニ対スル人的関係ニ基ク抗弁ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ但シ所…〉ただし書にいう「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ手形ヲ取得シタルトキ」には当たらない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成7年7月14日 平成6(オ)1719
- 登載
- 集民 第176号403頁
- 参照法条
- 手形法17条,手形法77条
論点85第77条手形法
白地手形の満期が補充された場合とその他の手形要件の白地補充権の消滅時効
裁判要旨満期及びその他の手形要件を白地として振り出された手形の満期が補充された場合は、右手形のその他の手形要件の白地補充権は、手形上の権利と別個独立に時効によって消滅することなく、手形上の権利が消滅しない限りこれを行使することができる。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 平成5年7月20日 平成3(オ)1715
- 登載
- 民集 第47巻7号4652頁
- 参照法条
- 手形法10条,手形法70条1項,手形法77条1項
論点86第77条手形法
約束手形の振出人に対する満期前の手形金請求訴訟の提起ないし訴状の送達と遡求権行使の要件である支払のための呈示としての効力の有無
裁判要旨約束手形の振出人に対する満期前の手形金請求訴訟の提起ないし訴状の送達は、裏書人に対する満期後の遡求権行使の要件である支払のための呈示としての効力を有しない。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 平成5年10月22日 平成3(オ)1476
- 登載
- 民集 第47巻8号5136頁
- 参照法条
- 手形法43条,手形法77条1項4号
論点87第77条手形法
手形に保証の趣旨で裏書をした者が原因債務につき保証をしたものと推認するのが相当とされた事例
裁判要旨甲が乙から三回にわたって金銭を借り受けた場合に、丙が、乙とは旧知の仲で右貸借の紹介老でもあり、その貸借の都度、甲に同行して乙と直接会い、その場において、乙の求めに応じ、甲振出の約束手形に保証の趣旨で裏書をして乙に交付し、甲の支払拒絶後は、右三回目の貸金の弁済を求める乙の強い意向に沿う行動をとるなど判示の事情があるときは、丙は、他に特段の事情がない限り、乙に対し、右三回目の貸金債務につき保証をしたものと推認するのが相当である。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成2年9月27日 昭和63(オ)1570
- 登載
- 民集 第44巻6号1007頁
- 参照法条
- 民法446条,手形法15条,手形法77条,民訴法185条
論点88第77条手形法
会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行が,同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を銀行取引約定に基づき同会社の債務の弁済に充当することの可否
裁判要旨会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行は,同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を,法定の手続によらず同会社の債務の弁済に充当し得る旨を定める銀行取引約定に基づき,同会社の債務の弁済に充当することができる。
(補足意見がある。)
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成23年12月15日 平成22(受)16
- 登載
- 民集 第65巻9号3511頁
- 参照法条
- 民事再生法53条1項,民事再生法53条2項,民事再生法85条1項,商法521条,手形法18条,手形法77条1項1号,民法91条
論点89第77条手形法
手形について除権判決の言渡しがあったこととこれよりも前に当該手形を善意取得した者の手形上の権利
裁判要旨手形について除権判決の言渡しがあったとしても,これよりも前に当該手形を善意取得した者は,当該手形に表章された手形上の権利を失わない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 平成13年1月25日 平成10(受)562
- 登載
- 民集 第55巻1号1頁
- 参照法条
- 公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律785条,手形法16条2項,手形法77条1項1号
論点90第78条手形法
約束手形の支払呈示期間内に適法な呈示がなかつた場合と手形法所定の利息
裁判要旨約束手形の支払呈示期間内に適法な呈示がなかつたときは、その後に呈示されても、振出人は、手形法所定の利息の支払義務を負わない。
- 裁判
- 最高裁判所第一小法廷 昭和55年3月27日 昭和54(オ)1375
- 登載
- 集民 第129号359頁
- 参照法条
- 手形法28条2項,手形法48条1項2号,手形法49条2号,手形法78条1項
論点91第78条手形法
手形の騙取と手形の交付
裁判要旨振出人甲が信用金庫の保証を得た約束手形を約束どおり現金と引換えでなければ交付できないと拒絶したが、手形ブローカー乙から融資する者に見せてくるから貸してくれといわれてだまされてとりあげられたときは、右手形の交付があつたものというべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第二小法廷 昭和44年6月20日 昭和43(オ)448
- 登載
- 集民 第95号521頁
- 参照法条
- 手形法78条
論点92第78条手形法
約束手形の善意取得者は振出人に対する手形金請求権を失わないために支払呈示期間内に手形の呈示を必要とするか。
裁判要旨約束手形の善意取得者は支払呈示期間内に手形の呈示をしなければ振出人に対する手形請求権を失うと解しなければならない理はない。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和40年1月19日 昭和38(オ)242
- 登載
- 集民 第77号49頁
- 参照法条
- 手形法38条1項,手形法78条1項
論点93第78条手形法
時を異にする手形の共同振出と再度の交付の要否。
裁判要旨振出によりすでに受取人の所持に帰した約束手形に共同振出人として署名した者は、あらためてこれを受取人に交付する行為がなくても、手形振出人としての債務を負担する。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和39年4月21日 昭和36(オ)652
- 登載
- 民集 第18巻4号552頁
- 参照法条
- 手形法9条1項,手形法78条1項
論点94第78条手形法
商号変更に関する株主総会の決議前に、新商号のもとに振り出された約束手形につき会社が振出人としての責を負うとされた事例。
裁判要旨登記簿上A商号B目的代表取締役甲名義の株式会社が株主総会の決議なしに実際上C商号D目的代表取締役乙名義のもとに三ケ月余にわたつて取引活動をして来た場合、乙がC商号を使用し、その代表者として振り出した約束手形については、その後商号および目的の変更、乙の取締役選任の各決議がなされ、かつ乙が代表取締役に選任され、右につき各登記を経た上、乙の振出を会社が追認したときは、会社が振出人としての責を負うものと解すべきである。
- 裁判
- 最高裁判所第三小法廷 昭和36年10月10日 昭和32(オ)783
- 登載
- 民集 第15巻9号2281頁
- 参照法条
- 手形法8条,手形法78条,商法12条,民法113条