会社法 / テーマ別まとめ

役員の報酬の決め方

取締役・監査役・会計参与の報酬を誰がどう決めるか。お手盛りを防ぐ仕組み。

原文解釈このページは論点を軸に条文と判例を横断して整理したものです。論点の名称と構成は当サイトの整理であり、条文上の区分ではありません。リード文・要点・比較表も当サイトによる解釈です。条文原文と判例の判示事項・裁判要旨は転記です。

取締役・会計参与・監査役の報酬は、定款に定めがなければ株主総会の決議で決めることとされており、経営陣が自分の報酬を自由に決められないようにする仕組みになっている。会計参与・監査役が複数いる場合や監査等委員である取締役の報酬は、定款・総会に定めがなければ本人たちの協議で個別の配分を決める。監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社では、取締役会や報酬委員会が個人別の報酬の決定方針・内容を定める別の仕組みも用意されている。

報酬の決定機関・意見陳述権の比較
対象決定機関個別配分ルール意見陳述権
取締役定款、なければ総会決議監査等委員は協議で決定監査等委員のみ総会で陳述可
会計参与定款、なければ総会決議複数なら協議で配分総会で意見陳述可
監査役定款、なければ総会決議複数なら協議で配分総会で意見陳述可
  • 定款に別段の定めがある場合は、その定めが優先する
  • 監査等委員会設置会社は監査等委員である取締役とそれ以外を区別して報酬を定める
  • 有価証券報告書提出義務のある監査役会設置会社(公開会社・大会社)と監査等委員会設置会社は、取締役会が個人別報酬の決定方針を定める(個人別に定款・総会で定めた場合を除く)
  • 指名委員会等設置会社では報酬委員会が執行役等の個人別報酬を決定し、361条・379条の規定は適用されない
  • 指名委員会等設置会社での会計参与の個人別報酬は額が確定しているものに限られる
  • 報酬等を定め・改定する議案を総会に提出した取締役は、相当とする理由を説明しなければならない
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取締役の報酬

定款か株主総会か、何を決議するか

第361条取締役の報酬等取締役の報酬は定款か総会で決める7項・8号判例 3件
  • 額が確定なら額、未確定なら算定方法、株式等も対象に定める
  • 監査等委員会設置会社は委員とそれ以外を区別して定める
  • 有報提出の監査役会設置会社と監査等委員会設置会社は取締役会が個人別配分方針を決定
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会計参与と監査役

独立性を守る決め方

第379条会計参与の報酬等会計参与の報酬は定款か総会で決める3項判例なし
  • 定款に額の定めがなければ株主総会決議で決める
  • 複数いる場合、定めがなければ範囲内で協議して配分
  • 会計参与は総会で自分の報酬について意見を述べられる
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第387条監査役の報酬等監査役の報酬は定款か総会で決める3項判例なし
  • 定款に額の定めがなければ株主総会決議で決める
  • 複数いる場合、定めがなければ範囲内で協議して配分
  • 監査役は総会で自分の報酬について意見を述べられる
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委員会型の会社

報酬委員会が個人別に決める

第404条指名委員会等の権限等指名・監査・報酬委員会の職務を定める4項・5号判例なし
  • 指名委員会は取締役等の選解任議案の内容を決める
  • 監査委員会は執行役等の職務執行を監査する
  • 報酬委員会は執行役等の個人別報酬を決定する
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第409条報酬委員会による報酬の決定の方法等報酬委員会は方針に従い個人別報酬を決める3項・6号判例なし
  • 報酬委員会は個人別報酬の決定方針をまず定める
  • 決定方針に従って個人別報酬を決めなければならない
  • 額確定は額、未確定は算定方法など事項ごとに定める
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論

主要な論点と判例

原文ママ

論点の見出しと結論は、裁判所が付した判示事項・裁判要旨をそのまま転記しています。文中の〈 〉内は条文の見出しを当サイトが補ったものです。

論点1第361条会社法

株主総会の決議を経て内規に従い支給されることとなった会社法361条1項にいう取締役の報酬等に当たる退職慰労年金につき,集団的,画一的な処理が制度上要請されているという理由のみから,内規の廃止により未支給の退職慰労年金債権を失わせることの可否

裁判要旨株主総会の決議を経て,役員に対する退職慰労金の算定基準等を定める会社の内規に従い支給されることとなった会社法361条1項にいう取締役の報酬等に当たる退職慰労年金について,退任取締役相互間の公平を図るため集団的,画一的な処理が制度上要請されているという理由のみから,上記内規の廃止の効力を既に退任した取締役に及ぼし,その同意なく未支給の退職慰労年金債権を失わせることはできない。
裁判
最高裁判所第三小法廷 平成22年3月16日 平成21(受)1154
登載
集民 第233号217頁
参照法条
会社法361条1項
論点2第361条会社法

株式会社が株主総会の決議等を経ることなく退任取締役に支給された退職慰労金相当額の金員につき不当利得返還請求をすることが信義則に反せず権利の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨株式会社が退任取締役に対し株主総会の決議等を経ることなく支給された退職慰労金相当額の金員につき不当利得返還請求をする場合において,(1)当該会社では発行済株式総数の99%以上を保有する代表者が内規に基づく退職慰労金の支給を決裁することにより株主総会の決議に代えてきた,(2)退任取締役が上記内規に基づく退職慰労金の支給を催告したところその約10日後に上記金員の送金がされ,これにつき代表者の決裁はなかったものの,当該会社が退任取締役に対しその返還を明確に求めたのは送金後1年近く経過してからであったなど判示の事実関係の下においては,代表者が上記送金をその直後に認識していた事実や退任取締役が従前退職慰労金を支給された退任取締役と同等以上の業績を上げてきた事実の有無等につき審理判断することなく,当該会社による上記請求は信義則に反せず,権利の濫用に当たらないとした原審の判断には,違法がある。
(反対意見がある。)
裁判
最高裁判所第二小法廷 平成21年12月18日 平成21(受)233
登載
集民 第232号803頁
参照法条
民法1条2項,民法1条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)269条,会社法361条
論点3第361条会社法

退任取締役の退職慰労金について内規に従って決定することを取締役会に一任する旨の株主総会決議がされた場合に、上記退任取締役に対し上記内規の定める基準額から減額した退職慰労金を支給する旨の取締役会決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないとされた事例

裁判要旨退任取締役の退職慰労金につき、退任時の報酬月額等により一義的に定まる額を基準とするが、退任取締役のうち在任中特に重大な損害を与えたものに対しこの基準額を減額することができること等を定める内規が存在する株式会社の株主総会において、取締役を退任する者の退職慰労金について、上記内規に従って決定することを取締役会に一任する旨の決議がされた場合に、次の⑴~⑷など判示の事情の下では、上記会社の取締役会がした、上記の者に対し、同人の退職慰労金に係る基準額として算出した3億7720万円から減額した額である5700万円の退職慰労金を支給する旨の決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。
⑴ 上記取締役会は、上記の者が、代表取締役在任中に、①長期間にわたって上記会社から社内規程所定の上限額を超過する額の宿泊費等を受領し、このことが発覚した後には、いったん負担した当該超過分に係る源泉徴収税相当額を上記会社に転嫁するとともに、社内規程に違反する宿泊費等の支給を実質的に永続化する目的で自らの報酬を増額したこと、②複数年度にわたり、交際費として従前の支出額を大幅に超過する額を上記会社に支出させるなどしたこと等を考慮して上記決議をした。
⑵ 上記の者と利害関係のない弁護士等で構成された調査委員会による調査等の結果をとりまとめた調査報告書では、上記①の行為は特別背任罪に該当する疑いがあり、上記②の行為も正当化することができず、上記の者はこれらの行為により上記会社に多大な損害を与えたとの指摘がされた。
⑶ 上記決議は上記調査報告書の内容を踏まえたものであったところ、上記調査委員会が調査等に当たって収集した情報に不足があったことはうかがわれない。
⑷ 上記取締役会は、上記①の行為につき告訴をして退職慰労金を支給しないとする上記調査委員会から提示された案も検討したが、審議の結果、告訴をせずに退職慰労金を大幅に減額する旨の判断に至った。
裁判
最高裁判所第一小法廷 令和6年7月8日 令和4(受)1780
登載
民集 第78巻3号839頁
参照法条
会社法361条1項1号
原

条文原文

原文ママ

e-Gov法令検索から取得した原文を、号・イロハまで省略せずに掲載しています。

会社法 第361条(取締役の報酬等) 詳細ページ
(取締役の報酬等)
第三百六十一条取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三報酬等のうち当該株式会社の募集株式(第百九十九条第一項に規定する募集株式をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
四報酬等のうち当該株式会社の募集新株予約権(第二百三十八条第一項に規定する募集新株予約権をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
五報酬等のうち次のイ又はロに掲げるものと引換えにする払込みに充てるための金銭については、当該イ又はロに定める事項
イ当該株式会社の募集株式取締役が引き受ける当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
ロ当該株式会社の募集新株予約権取締役が引き受ける当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
六報酬等のうち金銭でないもの(当該株式会社の募集株式及び募集新株予約権を除く。)については、その具体的な内容
2監査等委員会設置会社においては、前項各号に掲げる事項は、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して定めなければならない。
3監査等委員である各取締役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、第一項の報酬等の範囲内において、監査等委員である取締役の協議によって定める。
4第一項各号に掲げる事項を定め、又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該事項を相当とする理由を説明しなければならない。
5監査等委員である取締役は、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができる。
6監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができる。
7次に掲げる株式会社の取締役会は、取締役(監査等委員である取締役を除く。以下この項において同じ。)の報酬等の内容として定款又は株主総会の決議による第一項各号に掲げる事項についての定めがある場合には、当該定めに基づく取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令で定める事項を決定しなければならない。ただし、取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会の決議により定められているときは、この限りでない。
一監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって、金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないもの
二監査等委員会設置会社
会社法 第379条(会計参与の報酬等) 詳細ページ
(会計参与の報酬等)
第三百七十九条会計参与の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
2会計参与が二人以上ある場合において、各会計参与の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、前項の報酬等の範囲内において、会計参与の協議によって定める。
3会計参与(会計参与が監査法人又は税理士法人である場合にあっては、その職務を行うべき社員)は、株主総会において、会計参与の報酬等について意見を述べることができる。
会社法 第387条(監査役の報酬等) 詳細ページ
(監査役の報酬等)
第三百八十七条監査役の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
2監査役が二人以上ある場合において、各監査役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、前項の報酬等の範囲内において、監査役の協議によって定める。
3監査役は、株主総会において、監査役の報酬等について意見を述べることができる。
会社法 第404条(指名委員会等の権限等) 詳細ページ
(指名委員会等の権限等)
第四百四条指名委員会は、株主総会に提出する取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の選任及び解任に関する議案の内容を決定する。
2監査委員会は、次に掲げる職務を行う。
一執行役等(執行役及び取締役をいい、会計参与設置会社にあっては、執行役、取締役及び会計参与をいう。以下この節において同じ。)の職務の執行の監査及び監査報告の作成
二株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容の決定
3報酬委員会は、第三百六十一条第一項並びに第三百七十九条第一項及び第二項の規定にかかわらず、執行役等の個人別の報酬等の内容を決定する。執行役が指名委員会等設置会社の支配人その他の使用人を兼ねているときは、当該支配人その他の使用人の報酬等の内容についても、同様とする。
4委員がその職務の執行(当該委員が所属する指名委員会等の職務の執行に関するものに限る。以下この項において同じ。)について指名委員会等設置会社に対して次に掲げる請求をしたときは、当該指名委員会等設置会社は、当該請求に係る費用又は債務が当該委員の職務の執行に必要でないことを証明した場合を除き、これを拒むことができない。
一費用の前払の請求
二支出をした費用及び支出の日以後におけるその利息の償還の請求
三負担した債務の債権者に対する弁済(当該債務が弁済期にない場合にあっては、相当の担保の提供)の請求
会社法 第409条(報酬委員会による報酬の決定の方法等) 詳細ページ
(報酬委員会による報酬の決定の方法等)
第四百九条報酬委員会は、執行役等の個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定めなければならない。
2報酬委員会は、第四百四条第三項の規定による決定をするには、前項の方針に従わなければならない。
3報酬委員会は、次の各号に掲げるものを執行役等の個人別の報酬等とする場合には、その内容として、当該各号に定める事項について決定しなければならない。ただし、会計参与の個人別の報酬等は、第一号に掲げるものでなければならない。
一額が確定しているもの個人別の額
二額が確定していないもの個人別の具体的な算定方法
三当該株式会社の募集株式当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)その他法務省令で定める事項
四当該株式会社の募集新株予約権当該募集新株予約権の数その他法務省令で定める事項
五次のイ又はロに掲げるものと引換えにする払込みに充てるための金銭当該イ又はロに定める事項
イ当該株式会社の募集株式執行役等が引き受ける当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)その他法務省令で定める事項
ロ当該株式会社の募集新株予約権執行役等が引き受ける当該募集新株予約権の数その他法務省令で定める事項
六金銭でないもの(当該株式会社の募集株式及び募集新株予約権を除く。)個人別の具体的な内容
出

一次情報

原文ママ

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